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221回国会参議院2026/06/10

憲法審査会 第5号

発言数
120
登壇者
17
会派数
8
開催日
2026/06/10

会議録

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。  参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、憲法に対する考え方についてのうち、緊急集会を中心とした緊急事態対応について、本日の審査会に早稲田大学法学学術院教授長谷部恭男君及び専修大学大学院法務研究科教授只野雅人君を参考人として出席を求め、その意見を拝聴することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。  本日は、憲法に対する考え方についてのうち、緊急集会を中心とした緊急事態対応について参考人の皆様から御意見を伺います。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にしたいと存じておりますので、よろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、長谷部参考人、只野参考人の順にお一人十三分程度で順次御意見をお述べいただいた後、各委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  全体の所要は二時間を目途といたしております。  なお、御発言は、質疑、答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず長谷部参考人にお願いをいたします。長谷部参考人。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 本日は、このような発言の機会与えていただきまして、どうもありがとうございます。  それでは、お手元に配付資料というものをお配りしてあるかと思います。これを基に話を進めてまいります。  そこに掲げられておりますのは、衆議院法制局、そして衆議院憲法審査会事務局の方で作成になりました、まずは緊急事態条項のイメージ案というものでして、御存じのとおり、一、国会機能の維持に係る緊急事態条項、二、選挙困難事態における国会機能の維持、そして三がオンライン国会、四が国会機能の維持が困難となった場合における国家機能の維持に係る緊急事態条項と、そういった四つのイメージ案から成り立っております。  本日は、時間の関係もございますので、三を除く残りの三点についてお話ができればと存じます。  このイメージ案のうちの一と二に関しましては、これは従来からしばしば議論されてきました論点、すなわち、衆議院が解散されたときに大規模な災害や外国の武力侵攻が発生をしまして総選挙がすぐには行えない場合も考えられる、そういった場合は、解散された衆議院を復活させて、衆参両院がそろった国会としての活動が可能となるようにすべきだ、そういう主張と関わっているように思われます。  最初に、この主張自体に関する結論を申し上げますと、こうした改正は私は必要ではないと考えております。衆議院が解散された後に大規模な災害等が起こったとき、現行の憲法の条文にもそれに対処するための制度が規定をされておりまして、それは参議院の緊急集会制度であります。つまり、参議院の一院だけで国会の機能を暫定的に代替することができるということになっておりますし、この緊急集会では法律の制定も予算の議決も可能であります。  それから、そもそも、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定める現憲法四十三条一項の規定からいたしますと、失職した議員、まあ衆議院議員の方々のことですが、選挙を経ないでまた衆議院議員とするというのは、これはやはり異常な制度設計と言わざるを得ないのではないか。  ただ、わざわざ解散された衆議院を復活させる制度をつくらなければならないとおっしゃる方々の理屈は次のようなものでした。  つまり、憲法五十四条の一項は、衆議院が解散されたときは、それから四十日以内に衆議院議員の総選挙を行い、それから、選挙の日から三十日以内に国会を召集しなければならないと定めておりますので、この条文を素直に読めば、参議院の緊急集会で国会の機能を代行できるのは四十日プラス三十日の七十日が上限のはずではないか、それ以上の時間が掛かるようでは緊急集会では対応できないのではないかと、そういうお話だったわけですが、この議論には私はいろいろ問題があると考えております。  まず第一に、なぜこの五十四条一項が四十日、三十日という日限を設けているのかという、そういう問題でして、それは、内閣が衆議院を解散したまま総選挙をいつまでも行わないとか、総選挙を実施したが、その結果が自分たちにとって思わしくないという理由で新たな国会をいつまでたっても召集しない、そういった事態を避けるため、つまり、従来の政府が居座り続けることのないようにこうした日限が設けられております。  しかし、それなのに、その従前の衆議院議員の方々の任期を復活し、更に延長して政権の居座りを認めるということは、これは実は本末転倒の提案にはなっていないだろうかという疑いを抱かざるを得ないところがございます。  それから、第二ですが、参議院の緊急集会が国会の機能を代行できるのが七十日以内に限られるべき、カンマ限られると考えるべきかという問題があります。  というのも、七十日を過ぎると途端に参議院の審議能力、議決能力が低下する、極端に低下をすると考えるべき理由はないように思われます。四十日、三十日という日限は、先ほども申しましたとおり、政府の居座りを許さないための数字でありまして、緊急集会の機能の時間的な限定を狙いとしている、そういった日限ではございません。  それから、第三、五十四条一項の定めにもかかわらず、例えば四十日以内に総選挙を実施できないという事態が生じた、例えば、その結果、五十日後に総選挙を実施することになったとしても、それが果たして憲法違反で無効の総選挙となるかという、そういう問題があります。まあ、そうはならないのではないかと思われます。  これが違憲無効の選挙だというふうに例えば裁判所が判断をするということがありますと、いつまでたっても有効な選挙を実施できる見込みはございません。そうなれば、いつまでたっても衆議院は新たに成立することはございませんし、そうなりますと、国会はその後はおよそ存在し得なくなってしまいますので、日本の裁判官はそれほど非常識ではないと私は考えております。  以上の諸点からいたしますと、仮に四十日以内に総選挙を実施できない、そういった状況が生じたとしても、選挙の実施が可能な選挙区から順次実施をする、可及的速やかに全ての選挙区での選挙を実施されるよう努めるべきでありますし、そのための制度整備を進めていくべきではないかとも思われます。  なお、先ほども申しましたとおり、両議院の議員は全国民の代表でございますから、選挙が実施されない選挙区がたとえ僅かに残ったとしても、定足数に達していさえすれば、衆議院が活動すること、つまり国会が活動を開始することは可能のはずであります。  それから、第四の問題ですが、衆議院が解散された場合でなく、衆議院が任期満了となった場合に緊急の必要が生じた場合にはどのように対処するべきかという問題、ないわけではございませんが、この場合は、学説の大勢は、こうした場合でも参議院の緊急集会で対応することは可能だとしております。常識的に考えればそうなるように思われます。  上述のイメージ案の一でございますが、国会機能の維持に係る緊急事態条項というのは、以上のような、現在の条文を常識的に解釈すれば当然帰結するはずの結論、それを条文の形で示す、明確化をするという、そういったイメージ案になっておりまして、その意味では、こうした改正を行ったとしてもさほど懸念する必要はなさそうです。マイナスにはならないと言えるとは思いますが、逆に申しますと、何かプラスはあるのか、常識的な解釈から出てくるはずの結論をわざわざ憲法を改正して明確化するまでの必要はあるかどうかという、そういう疑問はあり得るところだろうと思います。  それから、イメージ案の第二点ですが、選挙困難事態における国会機能の維持に係る緊急事態条項でございますが、これは、緊急事態の発生によって衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が広範囲において相当程度長期間にわたり困難であることが明らかな場合、そういった場合については、国会の事前の承認を条件として、総選挙又は通常選挙の実施、選挙困難事態の終了に至るまで延期をすると、これを可能とする改正案のイメージとなっております。  これは、解散後に総選挙の実施が困難となった場合に解散された衆議院を復活させるべきだという従前からある議論を、解散前にも、また参議院の通常選挙の実施が困難となった場合にも拡張して実現しようとする御提案のように見られます。  この提案については、以下のような問題があるように思われます。  第一に、解散後に総選挙の実施が困難となった場合、これは、イメージ案の第一について論じましたとおり、総選挙の実施を暫時延期しつつ可及的に速やかに総選挙の実施に努めることで問題は解決可能のはずでございます。  第二に、解散前に選挙困難事態が予想されるのであれば解散をしなければよいと、ただそれだけではないかと思われます。  それから第三に、三年ごとに行われる参議院の通常選挙の実施が困難となる場合ですが、参議院の場合は半数改選ですから、半数の議員の先生方はそのまま在任しておられます。定足数は三分の一ですから、直ちに参議院が機能停止に追い込まれることはないはずでして、これも可能な限り速やかに通常選挙を実施するよう努めればそれで十分なはずでございます。  それから、この御提案には、任期が延長された国会議員は一体いつまで議員でいることになるのかという懸念がございます。上限を設けるべきだという見解もおありでしょうが、国会の議決によって延長が可能だという制度といたしますと、止めどなく任期が延長すると、そういうリスクもないわけではございません。  それから、イメージ案の第四点になりますが、こうした憲法改正提案に関連をいたしまして、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときには、内閣が法律と同一の効力を有する緊急政令を制定をすると、あるいは、国会による予算の議決を待ついとまがないと認める特別の事情があるときには、内閣は財政上必要な処分を行うことができるとする制度がここでは提案をされております。  私はこれは極めて不穏当な御提案ではないかというふうに考えておりまして、第一に、参議院の緊急集会によるにしろ、新たな国会を可及的速やかに召集するにしろ、国会による法律の制定や予算の議決を待ついとまがない場合、果たして想定できるのかという、そういう問題がまずあるかと思います。  第二に、法律の制定を待ついとまがないと認めるのは誰かと。それは国会自身であるはずはございませんので、恐らく内閣がそう認めるということになりましょうが、内閣のみの判断で国会での審議と議決を省略し、政令で法律を次々と変更できるということになりますと、日本という国の在り方自体が根本からゆがめられるリスクがあると思われます。  こうした事態は旧憲法にあった緊急命令に倣ったものと思われますが、伊藤博文名義で刊行された旧憲法の注釈書「憲法義解」も、この緊急命令を定めた憲法八条の注釈でこの制度の危険性に十分注意を促しているところでございます。  他方、国会による予算の議決を待ついとまがないという状況については、既に現憲法の八十七条が、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができるという予備費の制度を設けておりますので、これで対応することは可能だと思われますし、一予備費でも対応し得ない事態が生じたときは、これは緊急集会又は国会で補正予算あるいは暫定予算の議決を求めるべきであろうかと考えております。  以上で私の意見の陳述を終わります。どうもありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) ありがとうございました。  次に、只野参考人にお願いいたします。只野参考人。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 今御紹介いただきました只野でございます。  本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げたいと思います。  ただいま長谷部参考人から詳しいお話がございまして、私の方から新しくどのぐらいのことが付け加えられるか、いささか心もとないところでございますが、せっかく機会をいただきましたので、精いっぱい努めさせていただければというふうに思います。  本日のテーマ、緊急事態と参議院の緊急集会と、こういうことでございますが、まず前提として幾つかお話をしておこうかなと思うことがございます。おおむねレジュメに沿ってお話を進めてまいります。  まず、憲法化と書きましたが、これ緊急事態について憲法に規定を設けると、こういう趣旨でございますけれども、そうすることで事態をきちんと位置付けられる、それから統制の仕組みをつくることができると、こういうことも言われるわけでございます。それはそのとおりですが、ただ一方で、通常のルールに例外を設ける、言わば立憲主義のルールに穴を空けると、こういう側面があることも否定し難いところでございます。特に、非常に深刻な事態が長期化すると、しかもそこで万全な対応をしなければいけないということまで考えてまいりますと、相当に強い手段、相当に広い例外を認めることにもなりかねない。その辺りのバランスを考えて議論する必要があるだろうと、こう思うわけでございます。  また、各国の憲法を見渡しますと、この種の条項を設けている憲法はもちろんあるわけですが、全てがそういうわけではございません。正面から緊急事態の規定がない憲法、それでは不備があるのかというと、通常はそう考えないわけでございまして、何がしかの手掛かりになる規定があったり、ある種の法理が前提になったりしていて、そういった事態への対応が取られることになるのであろうと、こう考えるわけでございます。  日本国憲法の場合も、正面からこの緊急事態に関する規定があるわけではない。しかしながら、やはりそれは不備と見るべきではなくて、何がしかの対応は可能だと、こういう視点から憲法を捉え直すべきじゃなかろうかと、今日はそんな視点でお話をしてみようと思います。  その手掛かりが言うまでもなくこの五十四条と、こういうことになるわけでございます。特に今、長谷部参考人からお話がありましたこの四十日プラス三十日という枠ですね、これをどう考えるのかということが一つ問われてくるのかなと、こう思っております。  次に、この五十四条ではどう見ていくのかと、こういうことでございますけれども、今回、事前にいろいろ詳しい資料を準備していただきましたけれど、制定過程でございますね、いわゆる三月二日案と言われているものの中で、日本側が戦前の緊急命令とか緊急財政処分に類するようなことを考えた、GHQ側がそれに反対し、立法で対応できるではないかと、こういったやり取りがあり、結果的に、妥協という書き方はよくないかもしれませんが、合意ができて五十四条が作られたと、こういう経緯があるわけでございまして、やはりある種、緊急事態のようなものは想定しながら条文が作られたと、こういう経緯はひとまず押さえておく必要があるのかなというふうに思っております。  その上で五十四条できたわけでございますが、基本的に参議院の緊急集会に国会の機能を代替させると、これ内閣ではなく国会が対応すると、こういうことかなというふうに思いますし、それから、参議院の場合は継続性とか安定性を備えた議院、ハウスとして設計されておりますから、そうしたハウスにふさわしい役割としてこういったものが参議院に任されたんだろうと、通常こんな説明がされるところかなというふうに思っております。  こうしたことを前提に、少し条文についても考えてまいりたいと、こう思っております。  一つ要件になっておりますのが、衆議院が解散されたときということでございまして、こちらも先ほどお話があったところでございますが、これ衆議院が存在しない場合、これを想定しているわけです。解散の場合は規定があるけれども、任期満了の場合はどうなのかと、こういう問題があるわけでございますが、衆議院が存在しないという条件は同じでございますので、緊急の必要があれば類推解釈が許されるのじゃないかと、私もそう考えておりますし、学説でもおおむね合意ができつつあるんじゃないかなと、こういう印象を持っているところでございます。  さて、それから次に、一番問題になりますのが、解散から四十日以内に総選挙を行い、それから、総選挙から三十日以内に臨時会を召集すると、この規定をどう考えるかということでございます。  今回事前にいただいた資料の中にも過去の代表的な学説引かれておりまして、例えばそこを見ますと、最長七十日間と、こういう表現が出てくるわけでございます。しかし、どこまでこれを厳格に考えるのかという問題はあるような気がいたしまして、といいますのは、この七十日という期間内に総選挙を実施し、さらに国会を召集するということが当然に可能であると、こういう前提でお話をされていたんじゃないか。ただいま国会で議論されていますように、それが広い、全国的な範囲で不可能になるような極めて特殊な、例外的な事態が、しかも数年に一度の選挙というタイミングで起きるということまで想定した議論ではなかったんじゃないかと、そんな印象を持っているところでございます。  まさに、非常に想定外の、例外的な事態が、しかも選挙というタイミングで起きるということは普通なかなか考えませんので、そのことが仮に可能性とあるとしたら、この五十四条を改めてどう見るのかということをもう少し考えてみる必要が出てくるのではないか。従来と申しますか、この憲法改正の議論が出てくるまでは余り十分に主題化されていなかった問題ですね。まあ、これはこれとして新しい問題として見ることはできるだろうというふうに思うわけでございます。  そこに、次に、国に緊急の必要があるときという言葉でございますけれど、臨時会の召集の場合も似たような問題はあるのですが、当然、臨時会の召集などよりもこれは厳しく解さなきゃいけないと、ここも合意があるところかなと思っております。  じゃ、具体的にどういう場合が想定されるかといいますと、大きく二つぐらいに分けてみましたが、一つが治安上の緊急事態が生じた場合、これはいろんなものがあるかと思います。それから、もう一つよく言われますのは、災害等の問題ですね。これ、憲法の制定過程でも日本側はこういうことを言っているわけでございます。こういうものが一つあり、しかしそこには限られないということで、もう一つ付け加えられますのが、憲法や法律を施行する上で特別会の召集を待てないような、こういう場合というのが挙がってまいります。こちら、本来は会期中に処理すべき案件が処理し切れなかった、しかし七十日待てないと、こういう場合のものでして、これは当然七十日以内に処理しなければいけない、こういう案件でございます。二件の先例ございますが、これはいずれもこういうものだったというふうに思っております。  もう一つの方ですね、多分、普通、緊急の場合といいますと、治安上の緊急事態とか災害等、特に最近は災害等を念頭に置かれること多いと思いますが、こういったものが普通考えられるし、そう考えるのはすごく解釈として合理的かなというふうに思っておりますけど、よくよく考えてみますと、こういう事態というのは長期化することがあるわけでございます。大体七十日以内におおむね終息するような気はいたしますが、事態の性格考えますと、長引くことというのは当然あるわけですね。  ただ、通常は、そうはいっても、一部の地域で選挙ができないというようなことはあるかもしれませんけれども、長期にわたって全国的に選挙の実施ができないということはなかなか想定し難いわけです。ですから、長引くとしても、まずは必要なら緊急集会を開いて、その後七十日後までに衆議院をつくり直して、国会として対応に当たっていくと、こういうことで十分であろうと。その先まで考えないというのはやむを得ないことだと思いますし、また、考えようとすると例外的な対応を長引かせることになりますから、現在のような規定ぶりに五十四条がなっているということには十分な理由があるように思っております。  ただ、今申しましたように、緊急の場合として通常想定される事態というのは当然長引くことがあるわけであります。繰り返しになりますが、それが選挙のタイミングで起きて、しかも全国的に選挙が実施できないということはほとんど、なかなか普通は考えにくいのですが、仮にそういう可能性があるとしますと、やはりそういう可能性踏まえて、この緊急集会というものを活用する、緊急集会で対応するということも解釈としては許容され得るのではないか。  緊急の場合というのはなかなか広い可能性を実は含んでいる。通常はそれは七十日という中で処理されるものでございますけれども、それを超える可能性、事態がそれを超えて広がる可能性もあるということを考えますと、はっきり規定はいたしませんけれども、そういった対応、緊急事態、緊急集会による対応というのが許容される余地は解釈としてあるんじゃなかろうかと、こう考えている次第でございます。  ただ、もちろん、このように考えますと、いろいろ御批判や御懸念もあるところかと思いますので、その辺りも想定して少し幾つかの事柄を付け加えさせていただきたいと思います。  一つは、緊急集会に限らないことでございますけれど、通常とは違う例外的な扱いをすると、こういうことでございますから、やはり例外を例外にとどめるための対応というのは国会としてしっかりやっていただく必要があろうかと、こう思っているわけでございます。  現に、いろいろな事態が起きますと、それを踏まえて法改正ということが行われております。今回の資料にもございますように、緊急事態に関する条項というのは結構たくさんあるわけでございます。これはそれぞれ過去の事例を踏まえて作られたところでございますし、さらに今後、新しい災害等あれば、改めてそれをしっかり検証して、国会としてきちんと法律を整備いただくという作業は継続して必要かなと、こういうふうに思っております。そうすることで、この例外的な事態への負荷を大きく減らすことができるだろうと、こう考えるわけでございます。  いま一つは、こちらも先ほどお話があったところでございますけれど、やはり、選挙の実施が難しいような場合であっても可及的速やかに選挙を実施していく。それから、できれば最低限、まずは定足数の充足が見込めるような状態をつくっていくと、そうすることで衆参そろって対応ができるわけでございまして、ここも非常に重要なところかなというふうに思っております。  選挙はやはり十全な形でやるのが望ましいと、これも一つのお考え方と、考え方かなというふうに思うわけでございますが、しかし、十全な形で選挙をしようとしますと、勢いやはり慎重にならざるを得ない、なかなか選挙の実施に踏み切れない、こういうことになるのではないかということも懸念するわけでございます。  また、緊急集会を長い間使うということになると歯止めがあるのかと、こういう御懸念もあろうかと思います。これもなかなか難しいのですけれども、緊急集会というのはやはり内閣主導で進んでいくところがあり、国会の機能としては通常とは違う形が取られますので、やはり通常に復していこうと、こういう形の力学は働きやすいんだろうと思います。加えて、今想定されている事態では衆議院が欠けていると、こういうことでございますから、これはやはりできるだけ早く選挙を実施しようと、こういう方向で動いていくことは当然期待できるのかなというふうに思っております。  緊急集会の性格考えますと、それなりの歯止めになる余地はあるんじゃないかと、こう思うわけでございます。ですから、現行憲法でも対応は可能じゃないかと、こう考えるわけでございますが、それはそれとして、しかし規定があった方がよいだろうと、こういう御意見もあるいはあるかもしれません。  ただ、繰り返しになりますが、その規定を設けるというのはなかなか、制度設計が非常に難しいところでございます。例えば、選挙困難事態ということについても、私、まず定足数が最低限充足されればよいのじゃないかと、こういうことを申しましたが、想定されている事態は実はそれより広いように見受けられます。どこまで詳しく憲法に規定するのかと、これは非常に難しい問題でございますけれども、できるだけ幅広い事態、蓋然性が低くても幅広くいろんな事態を想定して、しかもそこに十全な対応をしていこうということになりますと、どうしても例外の幅は大きくなってしまうと、こういうことがあるわけでございます。  日本国憲法の場合は緊急事態正面から規定していない、こういう憲法でございますから、憲法の規定の趣旨ですとか、その背景にあるものを踏まえながら対応するということは十分あり得ることかなと、こう考えている次第でございます。  以上となります。どうも機会を与えていただきましてありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑を希望される方は、氏名標をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言を願います。  なお、質疑が終わった方は、氏名標を横にお戻しください。  参考人の方々におかれましては、答弁の際、挙手の上、会長の指名を受けた後に御発言を願います。  それでは、質疑のある方は、二巡目以降の質疑を希望される方も含めて、氏名標をお立てください。  まず、一巡目は各会派一名ずつ指名させていただき、質疑時間は答弁を含め各八分以内といたします。  古賀友一郎君。

古賀友一郎自由民主党・無所属の会

○古賀友一郎君 自由民主党の古賀友一郎でございます。  長谷部先生、只野先生、ありがとうございました。御意見を拝聴して、特に参議院の緊急集会の点については、私の考えとかなり符合するような印象を受けました。  私は、我が国がどのような状況に陥ったとしても、国家の機能を維持できるようにすることこそが緊急事態条項の目的であって、それに対しては、できる限り国民主権原理を働かせるべきだと、このように考えております。  そうした観点から、国政選挙が実施できないほどの緊急事態が発生して、国会議員の任期が切れそうになった場合であっても、国権の最高機関である国会の機能を衆参両院とも維持するため、この濫用防止の厳格な要件を設けた上で、選挙を延期するとともに、当該国会議員の任期を延長する憲法改正が必要であると、このように考えております。  しかし、衆議院が解散された後、総選挙が実施される前にそうした緊急事態が発生し、選挙の実施が難しくなって両院をそのまま維持することができなくなってしまった場合には、総選挙が実施され、衆議院が再構成されるまでの間、現行憲法に規定されている参議院の緊急集会が国会の機能を暫定的に代行する必要があると、このように考えております。  そして、その代行する期間について、私は、今申し上げたとおり、総選挙が実施され、衆議院が再構成されるまでの間と、こういうふうに考えているわけでございますけれども、先ほど来御指摘があったとおり、衆議院解散から四十日以内に総選挙を行い、選挙の日から三十日以内に国会を召集すべしとするこの憲法五十四条一項の規定を理由として、その期間が七十日以内に制限されると、こういう考えがあるわけであります。  しかしながら、この緊急事態はまさに千差万別であって、画一的に七十日以内に制限するのではなくて、事態の状況に応じて柔軟に対応できるようにすべきと考えますし、そもそも、これも御指摘があったと思いますけれども、この四十日や三十日という日数自体、通常の解散の場合を想定したものでありますから、その日数が緊急事態の際に参議院の緊急集会の活動を制限するほどの根拠になり得るのか、甚だ疑問であります。  そこで、一部言及はあったかと思いますが、改めて両参考人にこの点についてまとめてお伺いしたいと思うんですけれども、この現行憲法下で緊急事態が発生をして、仮に、四十日以内に解散・総選挙が実施できず、憲法五十四条一項に抵触する事態となった場合、また、この総選挙は四十日以内にできたとしても、国会召集が三十日以内にできなかった場合、当該総選挙それから当該国会召集の法的効力、これをどのようにお考えになるのか、また、その間に参議院の緊急集会がとった措置の法的効力についてどうお考えになるか、お二方からそのお考えを御提示いただければと思います。よろしくお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) どうも御質問ありがとうございました。  私も、古賀先生の四十日、三十日という日限に関するお考え、基本的に同意をして、賛成をしております。  四十日、三十日というのは、先ほどの意見陳述でも申し上げましたが、狙いがどこにあるかと申しますと、従前の政府がそのまま居座り続けること、これを止めると、なるべく早く総選挙を実施し、新たな国会を召集をして新たな政府を組織をすると、そのために設けられている日限でございまして、何も参議院の緊急集会の活動期間を制限することを狙いとしてできている、そういう規定ではございませんで、七十日、最長七十日に限られているかのように見えますのは、あくまで、言ってみれば間接的、派生的にそのように見えているというだけであるかと考えております。  したがいまして、たとえ、例えばその四十日の期間内に総選挙ができない、五十日目あるいは六十日目に総選挙を施行することになったからといって、その総選挙の効力が否定されるいわれは私はないと思いますし、裁判所もまさかそんな非常識な判断はしないというふうに私は考えております。  これは、そういったことを明確化するような憲法改正をするよりは、これは先ほど只野参考人がおっしゃったこととも関連をいたしますが、解釈によってそういうことも実は可能なのだという、そういう解決策で事態を解決をしていった方が原則への復元力が働きやすくなると。つまり、できるだけ早く総選挙を実施し、できるだけ早く特別国会を召集しなくてはならないのだと、そういう事態になるべく早く復元をしなくてはいけないという、そういう力が働くはずでございますので、そういったやり方の方が私はよろしいのではないかと考えております。  以上でございます。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 私からも、簡単でございますけれど、お答えをさせていただこうかと思います。  この四十日、三十日という規定の趣旨でございますけれど、これは、まさに今お話がございましたように、解散が行われるということと関わっておりまして、民意を問う必要ありということで解散が行われるわけでございますから、やはり、一定の短い期間の中で衆議院を選び直して、さらに総理大臣を指名し直すと、こういう趣旨で設けられている規定かなと思っております。通常は、例えば災害等ありましても、基本この期間を超えることはないであろうと、こういう想定は通常できるのかなと、こうも思っているわけでございます。  今問われておりますのは、なかなかちょっと普通には想定し難いような大きな事態が、しかも選挙というタイミングでたまたま起こると、蓋然性が非常に低いものでございます。ですから、あえて憲法に規定する必要もないところはあるけれども、しかし、全くそれが想定されていないかといいますと、先ほど御質問にもありましたように、緊急事態というのは千差万別でございますし、長引くこともあるわけでございますから、そういったことも実はその緊急の場合の中には含まれている可能性がある。あえて書いてはいないけれども、そうした場合、七十日超えて緊急集会が機能するということは否定されないのではないかと、こう考えるわけでございます。  そこでとられた措置の効力というのは、もちろん衆議院が構成されました場合にはそこで御確認いただくことになりますし、一旦確定したものを遡及して取り消すということは通常しないかなというふうには思いますが、これ立法によってどうお決めになるかと、こういうことでもあるのかなというふうに思っております。  以上でございます。

古賀友一郎自由民主党・無所属の会

○古賀友一郎君 ありがとうございました。  私も、この憲法五十四条一項はいわゆる訓示規定だと、こういうふうに見ておりまして、緊急事態でその日数を徒過した場合であってもいずれも有効ではないかなと、こういうふうに見ております。そうでなければ、もう、一度日数を超えてしまうと永久に衆議院を再構成できなくなってしまうと、そのように考えております。  今日は大変有意義な御意見をいただきました。ありがとうございました。御礼申し上げて、私の発言を終わります。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 小西洋之君。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 立憲民主・無所属の小西でございます。  私からも両先生に深く御礼を申し上げます。  まず、長谷部先生に御質問をさせていただきます。  先生におかれましては、二〇二三年に土井先生とともにこの場で本当に有り難い陳述を賜りまして、衆参の我々の議論の熟議に大きな影響をいただいたことを深く御礼を申します。そのときの先生の御主張がいかなるものであったかということについて様々な指摘がありますので、先生自身の学説がどういうものかということについてまず御確認をさせていただきたいと思います。  まず、ちょっと言わずもがななんですが、先生が先ほどおっしゃられた五十四条一項の、四十と三十を足して七十が緊急集会の開催期限の上限で、それ以上は対応できないと。つまり四十、三十という規定が緊急集会の開催期間を法的に制限する規範であるという考え方で、これは連関構造説ということが言われているんですが、長谷部先生はこの連関構造説には立っていない、むしろそれは憲法解釈として誤っているという御主張であると。よろしいでしょうか、簡潔にお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 誤っているとまで申し上げるつもりはないんですけれども、標準的な場合は、これは七十日以内に参議院の緊急集会の活動は収まるはずのものであると、それは五十四条は恐らく想定はしているんだろうとは思います。  ただ、先ほどから、古賀先生も御指摘のとおり、四十日、三十日というのは、これは狙いはどこにあるかというと、従前からの政府の居座りを防ぐという、それが狙いで、何も参議院の緊急集会の活動期間をこれ七十日に限定しようと、それが狙いでできているものではないというふうにそれは考えております。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 ありがとうございます。  三年前は、七十日限定説、私の質問で、解釈上無理があるという私の質問で、そのとおりだと思いますという答弁いただいておりましたんですが。  ちょっと続けて、その長谷部先生の学説が連関構造説プラス緊急事態の法理に基づく無限定説をおっしゃられているんじゃないかという指摘があるんですが、それについて伺わさせていただきたいと思います。  三年前の二〇二三年の五月の十八日、衆議院の憲法審査会の国民民主の玉木代表の御質問で、先生は、フランスの公法学者のモーリス・オーリウの緊急事態の法理の考え方、あるいはイングランドのバーコック判決の例を引きながら答弁をされているんですが、このときの先生の答弁というのは、仮にそういう連関構造説に基づく七十日限定説に立ったとしても、緊急事態の法理を持ってきて考えれば、その七十日を超えても緊急集会を開催できるという考えがあり得るんじゃないかと、そういうことをおっしゃっていたという理解でよろしいでしょうか。簡潔にお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 同じ結論を説明する議論の仕方というのは複数あって当然のことでございまして、ただ、今の小西先生のおっしゃるような結論の正当化の仕方ももちろんあり得るかと考えております。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 分かりました。  つまり、長谷部先生がそのときのおっしゃった趣旨というのは、そういう趣旨であったということでよろしいでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 今となっては、どういう趣旨であったかと私自身もなかなか確かでないところはございますが。  以上でございます。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 もう一つ、長谷部先生の三年前の学説の御主張が以下のようなものであったということが衆議院の当時の橘さんという法制局長からおっしゃられているんですが、総選挙実施が見通せるような場合には、条文の姿形を前提とすれば、原則として期間限定はあるのだろうと、しかし、そのようなことを言っていられない場合には、期間限定はないということになるはずである、その結果、全体として煎じ詰めれば、期間限定はないということになるということで、これは後に、橘局長が、長谷部先生の衆参の三年前の国会の中の陳述ではなくて、個別にいただいたメールの内容の御紹介だということを国会の中で言って、会議録も今残っているんですが、その趣旨について御説明いただきたいんですけれども、特に、総選挙実施が見通せるような場合には、この条文の姿形を前提とすれば、原則として期間限定はあるのだろうというのは、長谷部先生の学説として、四十日、三十日の規定が法的に効力を持って緊急集会の開催期限を制限する、そういう考え方をお示しになっているものではないという理解でよろしいでしょうか。その点だけお答えいただけますでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 私が恐らくそのときに言ったことは何か思い出してみますと、現在の五十四条の姿形というのは、少なくともやっぱり標準的な状況では、四十日プラス三十日の期間内で新しい特別国会の召集まで行くということが想定された条文の姿形ですから、したがいまして、参議院の緊急集会の活動もその範囲内に収まっている、それが標準的な状況であろうと、そういうことを申し上げたように思います。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 済みません、ちょっと時間限られてまいりましたので、イメージ案について両先生に御質問をさせていただきたいと思います。  イメージ案の別紙である緊急集会と議員任期特例のすみ分けという資料があるわけでございますけれども、そこは、相当程度長期間を超える場合は緊急集会は開催できなくなるというような考え方に基づいて、長期間は緊急集会の開催ではなくて任期延長の特例となっているわけですが、まず長谷部先生に伺いますが、緊急集会は、一定の期間を超えると憲法上、法的に開催できなくなる制度なんでしょうか。もう端的にお願いいたします、そういう制度か。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) これは、あらかじめそういう事態を予想するということは果たして可能かどうかという点について、私は疑いを持っております。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 只野先生、同じ質問で、ちょっと端的に、申し訳ございませんが。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) そうですね、今のお話ともちょっと関わるのですけれども、四十日、三十日という規定があるわけですから、可能であればその中で処理をすると、これは当然のことかというふうに思います。  しかし、先ほどの御質問にもありましたように、事態にはいろんな要素がある、一応七十日で処理できる、こういう前提で緊急集会開いたのだけれど、事態の推移によって選挙がうまくいかなかったと、こういう場合には緊急集会なくなるのかというと、通常はそういう対応はしないわけでございます。事実上、延ばしてしまうということではなくて、緊急の場合というのはいろんなものが広く考えればあり得るわけですので、そのような七十日超えた機能というのは一概に否定できないんじゃなかろうかと、こういうお話をさせていただいたところでございます。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 では、重ねて両先生にイメージ案について伺わさせていただきます。  イメージ案の根幹の考え方で、国政選挙の一体性という原則を挙げております。これが、憲法十五条や四十七条の根底にある国政選挙の公正性確保といった、憲法価値に由来するという考え方が共有されているというように説明されているんですが、ここでいう国政選挙の一体性というものは、十五条や四十七条に由来する憲法価値と言えるのでしょうか。長谷部先生、只野先生、それぞれ簡潔にお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) それは大変難しい質問だと思うんですが、私は、この種の統治機構の在り方、動かし方に関する規定について、一体性という極めて抽象的な概念をなるべくなら使わない方がいいと。やはり、余り漠然とした意味内容の概念を使いますと、権限の濫用のおそれが大きくなると私は考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 私からもお答えをさせていただきます。  一体性ということにどこまでの意味を持たせるかということに依存するのかなというふうに思いますけれど、憲法から申しますと、一番重要なのは、やはり選挙人が適切に意思表明ができると、こういうことでございますね。ですから、一遍に選挙ができればこれは多分一番分かりやすい、そういう点で憲法の趣旨にはかなうところでございますけれど、今般問われておりますのはそれとは少し違う事態ですね。  仮にそれが難しいときに、でもしかし、やっぱり一体性というのを重視して選挙を延ばした方がいいのか、それともできるだけ速やかに国会機能を不十分であっても回復するということを優先させるべきなのか、こういうお話なのかなというふうに思っております。

小西洋之立憲民主・無所属

○小西洋之君 ありがとうございました。終わります。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 川合孝典君。

川合孝典国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 国民民主党・新緑風会の川合孝典と申します。  両参考人には、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  この緊急事態対応の議論というのは、想定し得ない事態を想定して議論をするということになりますので、なかなか議論が見えにくいところではあるんですが、そのことを踏まえた上で、まず長谷部参考人にお伺いをしたいと思います。  七十日、四十日、三十日、いわゆる七十日ルールというのは居座りを防止するためということで設定されているものであるから、万一の事態にそれを超えても、いわゆる違憲、言い方によっては違憲の訴訟を提起されても問題はないといった趣旨の御発言をされています。  可能な限り速やかに総選挙を行って衆議院を選び直すということをおっしゃっているわけでありますが、あり得ない事態として私どもが想定しておりますのは、東日本大震災で、いわゆる東北地方の各県がちょうど選挙ができなくなって、最長でたしか八か月間選挙がずれたといったことがございました。七十日では全くカバーできない日数、自治体議員選挙ということではありますが、できなかった。  こういった事態が国政選挙のタイミングで生じてしまったということになったときに、この七十日ルールの参議院の緊急集会の幅というものを延長させることで八か月に対応できるという理解、先生はそのようにお考えでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) これは、先ほども陳述、意見陳述の中で申し上げたことでもございますけれども、要するに、定足数を満足するほどの衆議院議員の方々が選挙できるかどうかというのがまずはミニマムなところであろうかなと思います。  と申しますのも、国会議員の先生方というのはどこから選出されようと全国民を代表しているというわけでございますから、一部の選挙区から選出された国会議員の方々がたとえいらっしゃらないとしても、それによって国会としての活動に正当性が失われるということに私はならないというふうに考えております。

川合孝典国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 只野先生、今私が質問した内容について、只野先生の御見解もお聞かせいただきたいと思います。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 先ほど申し上げたことと重なりますけれども、やはり選挙が行われないという場合、可及的速やかに選挙を行っていくと、これは非常に重要なことだというふうに思っております。  差し当たりは、今、長谷部参考人からお話がありましたように、定足数の充足がある程度見込めるような形で、まずはそこをゴールに選挙の実施を考えていくと、こう考えることで、かなり期間というのは短く見積もることができるんじゃなかろうかと、こう思っているわけでございます。

川合孝典国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございます。  只野参考人に重ねて御質問させていただきたいと思いますが、只野参考人は、緊急事態条項の創設について、法律に基づかない政令について何よりも懸念されるのは濫用のリスクであるということをお述べになられておられますし、実際、憲法五十三条規定が、国会の召集を、総議員の、両院の、各院の、議員数の四分の一以上の要求で召集しなければいけないということが定められているにもかかわらず、国会の召集の期限が切られていないことから、二〇二〇年、二〇二一年と、召集に政府が応じていないといったようなことが現実問題としてあるということを考えたときに、実際の運用上懸念が生じるという御指摘されるのは当然のことだと思うんですけれども、この緊急事態条項の創設を議論するに当たっては、こうした解釈の余地というものを極力塞ぐということで、いわゆる居座りですとか濫用といったようなことを防止する必要性が極めて高いのではないのかと私は考えているんですけれど、この点について只野先生の御見解をお聞かせください。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございます。  条文で明確にしておいた方が解釈に紛れがない、いざという場合にもそちらの方がよいだろうと、これも確かに一つのお考えかなというふうには思っております。  ただ、今般問われている事態というのは、やはりかなり例外的な、蓋然性が決して高くない、こういう事態でございますね。そのときに、どこまで憲法に細かな規定を置くのかと、こういう難しい問題もあるように思っております。  それから、先ほどもお話ししましたように、今問題になっている緊急事態あるいは緊急集会ということに限って申しますと、実は、緊急集会を七十日超えて行っていくような場合、やはり、先ほど原状に復する力というような話をしたわけでございますけれども、できるだけそれを解消していこうと、こういう力学が働きやすいと、こういう面もあるのかなというふうに思っております。  一般論として、解釈に紛れがない条文の方がよいのかどうか、これはいろいろ議論の余地があるかと思いますが、現下問題になっておりますこの緊急集会について言えば、私、今のようなことでよろしいんじゃないかと、こういうことでお話をさせていただいた次第でございます。

川合孝典国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 ありがとうございます。  時間が近づいてまいりますので、両参考人に最後に同じ質問をさせていただきたいと思いますが、この衆議院における緊急事態条項、緊急事態への対応ということの議論を進めるに当たっては、当然、参議院側の緊急集会との間での整合性というものがどう図られるのかということが極めて重要になってくると思っているんですけれど、両参考人は、この両院の緊急事態条項と緊急集会との整合性について、どのようなものであるべきと考えていらっしゃるのかを両参考人にお聞かせいただきたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 私の考え方というのは、この種の問題について憲法を変えることはプラスよりはマイナスの方が大きいという考え方をしておりますので、したがいまして、現状の憲法の条文の姿形を前提にした、そういった形で参議院の緊急集会の権限等についても考えていくべきであると、そういうふうに考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 先ほど冒頭申し上げたところと重なりますけれども、日本国憲法の場合というのは、正面からはっきりと緊急事態条項のようなものを置いていないわけでございます。  ただ、これ欠陥と見るべきものではなくて、やはり置かない中で何がしかの対応というのが想定され得るんじゃないかと、こういう趣旨で憲法全体見るべきなのかなというふうに思っているところでございます。

川合孝典国民民主党・新緑風会

○川合孝典君 貴重な御意見頂戴しまして、ありがとうございました。  問題意識としては、過去想定し得なかったような様々なパンデミックを始めとして、また周辺事態も緊迫化の度合いを増してきているという状況の中で、遅滞なく国政が機能する、立法府が機能するためにどうあるべきなのかという、いわゆる前向きな姿勢での我々議論を進めたいというふうに考えております。  他方、そのことの結果として権力の暴走につながるような事態を生じさせるというのは本末転倒のことでもありますので、本日、両参考人から頂戴した御意見しっかりと受け止めさせていただいた上で、今後の議論に生かしていきたいと思います。  本日はありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 平木大作君。

平木大作公明党

○平木大作君 公明党の平木大作でございます。  今日は、両参考人から大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  まず、お話を受けて、長谷部参考人の方からは、特にこの緊急事態条項ということに関して、衆議院の方で出たイメージ案ということもたたきにしていただきながら、そもそもの現在のこの憲法の条文を常識的に解釈をすれば済むものを、わざわざ書いて、ある意味メリットよりもデメリットの方を大きくしてしまうような必要はないんじゃないかと、この部分についての改正は必要ないんじゃないかというふうに受け止めさせていただきました。  また、只野参考人の御意見も、特にいわゆる選挙実施困難事態と言われるようなもの、そのそもそもの蓋然性が低いんじゃないか、さらには、そこを認めたとしても、今度は、じゃ、その三分の一と言われているこの定足数をそもそも満たせないような状況というのは更に蓋然性低いんじゃないかと、そういう中で現行憲法における対応で十分に可能なんじゃないかと、こういうお話だったかというふうに思っております。  基本的にお二人の参考人の御意見に賛同するものでありまして、お伺いしていて、やはりその根底には、そもそもどうやって民意を反映していくのか、あるいはこの民主的な正統性をどう確保するのかというロジックがやっぱりきちっとなければいけないという御指摘だったと思っております。  そういう意味でいきますと、やはりこういった様々な緊急事態のような大変な状況を想定するにつけ、平時からこの選挙の実施がそもそも困難にならないような対応をしっかりやっておくべきだと、特に立法でできることをしっかりやっておくべきだと、こういうふうに受け止めたんですけれども、その理解でいいのかということと、そして、立法による対応ということで考えますと、もし何かその際検討すべきこととして御示唆があれば両参考人から、長谷部参考人から順にお伺いをできたらというふうに思っております。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 私は、基本的に平木先生のおっしゃるとおりであると、できる限り立法による対応、それを進めていくべきであるというふうに考えております。  どのような立法による対応が可能であるかについて、私の方で特に知見があるというわけではございませんけれども、これは第九十回帝国議会における憲法草案、現在の憲法草案の審議におきましても、こういう緊急状況、緊急的な事態に対応するための法律においては、それはなるべく広範な委任を行政府に対して行うことを通じて様々な事態に対応するということが可能ではないかと、そういう示唆が審議の中で行われておりますので、それは恐らく一つ参考になる点ではないかというふうに考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございました。私の方からもお答えをさせていただきます。  平時の立法による対応が必要だと、これはまさに御指摘のとおりかというふうに思っておりまして、先ほども触れさせていただきましたように、今回御準備いただいた資料の中にもいわゆる緊急事態に関する様々な規定、紹介があるわけでございます。国会でもその都度検証され、見直しをされてきたのかなと思いますし、これは必要なことかなと。  もう一つ、やや難しいのが、法律だけで対応できないような場合ですね、例えば政令に委任しなきゃいけない事柄があるんじゃないかということも議論の余地がありますが、例えば災害対策基本法などを見ますと、少し概括的な形ではあるのですけれども、あらかじめ委任の範囲を少し絞る形で委任をして、事後に国会の同意を求めると、こういうフレーム取られているわけでございます。これも一つの工夫の仕方かなというふうに思っておりまして、緊急事態に政令作りますと、どうしてもなかなか十分な精査ができない、国会のチェックも利きにくいわけでございますね。  ですから、平素からこういう形の対応、いろんな形でお考えいただくというのはすごく重要なことかなというふうに考える次第です。

平木大作公明党

○平木大作君 ありがとうございます。  続いて、憲法五十四条の解釈について是非お伺いをしたいというふうに思っております。  この参議院の緊急集会、これまで二回実施はあるんですけれども、なかなかそのいわゆる今議論しているような緊急事態に即した実施ではございませんでした。これをいかに有意義に使っていけるようにしていくかということがとても大事だと思っているんですが、憲法五十四条の条文をやはりそのまま読んでいきますと、基本的には、これ緊急集会というのはあくまで内閣が開催を求めて開かれるということであります。となりますと、いわゆる緊急事態ですから、様々なことをやらなければいけない、決めなきゃいけないというときに、ある意味、この国会の承認を得なければいけないみたいなことが面倒になると、ある意味、そういった事態になってみると、行政の側からすると、やや面倒なプロセスになってきてしまうこの緊急集会を招集しないということも考えられ得るんじゃないかというふうに思うわけであります。  改めてこの部分、例えば同じ憲法に基づく召集であっても、臨時会の場合には、基本的にはこの国会の求めに応じて臨時会を召集できるわけでありますけれども、緊急集会については内閣が招集をするということ、ここについて、これも長谷部参考人、只野参考人、お二人、どのように受け止めていらっしゃるのか。  我々は、例えばその解釈で乗り越えるやり方ってあるのか、院としてある意味決議をする中で、緊急集会を例えば参議院で独自に開催をできるみたいなことが解釈上あり得るのか。もしかすると、解釈上なかなか難しいのであれば、憲法改正のときに、まさにここは民主的統制を緊急時にこそ働かせるという趣旨で、ある意味参議院のこの緊急集会の自主的開催権みたいなことを検討してもいいんじゃないかなということまで考えているんですが、この点について、それぞれまた長谷部参考人から順にお伺いをできたらと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) これは憲法、現在の憲法の五十四条の条文から申しましても、国に緊急の必要があるということでございますから、そのときに内閣が参議院の緊急集会を求めることをちゅうちょするということはあるはずのないことだというふうに私は考えております。そんな内閣が存在するようでしたら、この国ももうおしまいということではないかと思うんですが。  それはやはり、少数の人間だけで、何か仲間内だけで相談をして、これがいい、あれがいいということを考えるよりも、やはり様々な立場の方々が一ところへ集まって審議をするということで、そこで初めて知恵が生まれてくるということは当然あるわけですから、それは当然緊急集会を通じて、緊急の措置ではございますけれども、法律の制定なり予算の議決なりを行っていくべきものであろうかと考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 内閣が恐らく主導権取るというのは、事柄の性格上やむを得ないところかなというふうに思っておりまして、しかし、じゃ、招集しない場合があるんじゃないかと、こういうお話で、憲法の作りとしては多分いろんな選択肢はあると思うのですけれど、重要な事柄については、例えば政令の制定等について、さっき概括的な委任みたいなお話いたしましたけれど、緊急集会できちんと同意を取りなさいと、こういう仕組みをつくっておけば、やはり勢い緊急集会を開くということにならざるを得ないんじゃないかと、一定の手当てはできるんじゃないかというふうに思っております。

平木大作公明党

○平木大作君 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 松沢成文君。

松沢成文日本維新の会

○松沢成文君 日本維新の会の松沢成文と申します。  今日は、両参考人の皆さん、ありがとうございました。  我々日本維新の会は、現行憲法に是非とも緊急事態条項を設けるべきだということで、先般衆議院の方で発表されたイメージ案ですね、これについても方向性としては賛成の立場なんです。ただ、確認の意味で、今日、両参考人にちょっと御意見を伺えればと思っております。  まず、長谷部参考人お願いします。  長谷部参考人は、緊急集会は七十日を超えて継続し得るとして、また今日の意見表明でも、大災害時等により総選挙が実施できないまま衆議院議員が任期満了で不在となった場合でも、憲法第五十四条を類推適用して、内閣は緊急集会を求め得ると述べております。しかし、同条の第三項は、緊急集会の措置を臨時のものとし、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意がなければ失効すると定めております。  緊急集会は、近い将来に二院制の国会が復帰することを前提とした暫定的な制度であり、類推適用が認められるとしても、選挙が長期にわたり実施できない事態までも想定したものとは言えないのではないでしょうか。衆議院を欠いたまま、緊急集会のみで半年あるいは一年を超えて国政を担い続けるということは、二院制の例外状態を恒久化させ、暫定性の趣旨を超えるのではないでしょうか。むしろ、厳格な統制の下での議員任期の特例の方が二院制と暫定性の趣旨にかなうものと考えますが、この点をどのように評価するのか、見解を伺いたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございます。  御指摘の論点なのですけれども、そもそも長期にわたって衆議院の総選挙ができないということが果たしてどこまでが想定可能、あるいは実際に可能な状況なのかということが、これが恐らく大変な問題なんだろうと思います。衆議院の総選挙は、これはとてもとても長い、長期間にわたってできない、しかし参議院の緊急集会は可能であると、そういうことが両立しているという事態が、これが果たしてあるのかということなんですね。  ですから、これは、何と申し上げたらよろしいんでしょうか、緊急集会が七十日を超えるということは恐らくあると、私はあると思うんですけれども、いずれはそれは可及的に速やかな形で衆議院の総選挙は実施をされていかなくてはいけないはずのものでありますし、それは先ほども議論になりましたけれども、ミニマムな数としては定足数が満足できるというそういう、衆議院の先生方の数がそろえばミニマムではそれは活動は可能になるはずで、どこの選挙区から選出された衆議院選の先生方でもそれは全国民の代表ではあるというわけですから、その点において民主的な正統性に欠けるということはないはずでございますから、そういう意味では、御懸念の点は確かにあるとは思うんですけれども、それほど御懸念には及ぶ必要は私はないのではないかと、それが私の考え方でございます。

松沢成文日本維新の会

○松沢成文君 もう一問、長谷部参考人に伺います。  緊急集会の限界はその権能の面にも及びます。国会法第九十九条第一項及び第百一条により、緊急集会で審議し、議員が発議し得るのは、内閣が示した案件に関連するものに限られています。加えて、一年間の本予算は組めず暫定予算にとどまること、内閣総理大臣の指名も原則として行えないこと、内閣不信任決議も行えないことなど、権能には性質上の限界があると指摘されています。  長期の緊急事態において、参議院が緊急集会で包括的に国政を担うことはそもそも想定されていません。しかも、任期満了時の対応は、見解の分かれる類推適用の解釈に委ねられています。国会機能の維持という統治の根幹を、なお解釈や類推適用に委ねたまま放置することは法的安定性の観点からも適当でないと考えます。  緊急時こそ、憲法に明文の緊急事態条項を設けて、国会機能の維持を担保すべきと考えますが、権能の限界の評価と明文化の意義についての見解を伺います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) この問題は、これは先ほど只野参考人もおっしゃった点とも関連をするのですが、私は、憲法を改正をするというのは、やはりプラスとマイナスを考えたときにプラスの方が明らかに上回るという、そういう場合にやはり私は限定するべきであるというふうに考えております。プラスになるのかマイナスになるのかよく分からない、でも、何となくその方が、明確化した方がよい、そういった場合には私はやめておいた方がよいのではないかという、そういう考え方を持っておりまして、やはり、これは解釈によって乗り切る方が原状に復元をする力という、そのばねが大きく働いてくるんですね。そうでなくて、こういうような新しい制度、緊急事態に対応するような制度を一旦つくってしまいますと、これは一体、これ自体が、この異常な事態が一体いつまで続くのかという、そういう問題が逆に起こってまいります。  これ、只野参考人の御専門の国だと、フランスでかつて第五共和制、ドゴール大統領の下でアルジェリアの現地軍が反乱を起こしたことがあります。反乱は三日間で鎮圧されたんですけれども、それを契機として発動をされた緊急事態というのが五か月間続きました。こういう形で緊急事態に対応する権限というのは濫用されがちなものですが、これ、どこの国を見てもそういうものです。そういう懸念があるということを一つ私は考えております。

松沢成文日本維新の会

○松沢成文君 只野参考人に伺いたいと思います。  只野参考人は、「選挙の正統性」や「例外的状況と憲法」といった論考において、選挙と代表の正統性の問題を論じてきたと承知しています。議員任期の延長が新たな選挙を経ないまま議員がその地位にとどまることを意味し、代表の正統性との間に緊張を生じさせるとの指摘は、我が党も理解をしています。  他方で、任期の延長を行わなければ、長期にわたり衆議院議員が全員不在となり、緊急集会のみが国政を担うこととなります。選挙が実施不可能なことで国会議員が不在となる事態こそ、代表民主制と選挙の正統性をより深く損なうのではないでしょうか。厳格な統制の下での短期の任期の特例と、長期にわたり衆議院議員を欠いた緊急集会のみの統治とでは、選挙の正統性の観点から、いずれがより大きな問題と考えますでしょうか。  また、任期の特例を設けるとすれば、その正統性を担保するために、憲法上いかなる要件や統制が不可欠と考えますでしょうか。見解を伺います。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) ありがとうございます。  なかなか大きな御質問で、はっきり答えるのが難しいところがございますが、確かに、議員を欠いた状態と、これ非常に大きな問題でございます。ですから、先ほど申しましたように、できるだけ速やかに、可及的速やかに選挙を行っていく、ミニマムでよいから国会機能を回復させると、多分こう考えることになるのだろうと。  長期間議員がいない状態というのをどのぐらい大きく見積もるかというのは、例えば、どういう形の選挙を想定するかということにも依存するお話でございまして、先ほど来御議論になっておりますように、やはり全国的に十全にやることが必要なんだと考えますと、なかなか選挙に踏み切れない、どうしても任期延長が延びていってしまう、こういうことになりがちなのかなというふうには思うんですね。  いずれにしても、緊急事態、なかなか十全な形の対応難しいところでございますから、まずは、できるだけ速やかに選挙を実施して、最低限の正統性を担保する、その中で対応を考えていくということは十分あり得るんじゃないかと。どちらを選択するかというと、なかなか難しいところでございますが、私自身はそう考えているところでございます。

松沢成文日本維新の会

○松沢成文君 時間ですので終わります。  両先生、ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 安達悠司君。

安達悠司参政党

○安達悠司君 参政党の安達悠司です。  今日は、両先生、ありがとうございます。  参政党は、憲法を一から作り直す創憲ということを言っていまして、今の参議院の緊急集会の規定だけではやはり不十分な点もあると思っています。ただ、そのためには、そもそも緊急事態を起こさせないというような、ふだんから食料、エネルギー、個人情報や外資規制も含む、総合的な国の守りの規定をきちんと作っていくということが必要ではないかと思っています。  ただ、その際に、憲法を変えるという選択肢を最初から除外していてはクリエーティブなものが生まれていかないし、国民生活も良くならないではないかと思っています。  憲法の条文の中に日々新たなアイデアをどんどん提示していくといったことを考え続ける必要があるんではないかと思っておりますし、これは私たち国会議員もそうですし、憲法学者の先生にも是非やっていただきたいと。日々やっておられると思いますけれども、是非これからも続けていただきたいと思っております。  そこで、まず長谷部参考人にお尋ねしたいんですけれども、今の我が国にはたくさんの課題があります。三十年間ほとんど賃金が上がっていない、経済成長が停滞しているとか、経済格差が拡大して、若い人が特に結婚がなかなかできなくて少子化になったり、外国人人口が増えていると。食料自給率が低下したり、子供の不登校や自殺も過去最大クラスになっていまして、投票率も低いですよね。  こういうふうな今の日本の課題というのは、これ実は憲法にも原因があるんではないかと、その日本国憲法が今の日本の課題をつくり出している一因になっていると、こういう考えについてはどう思われますか。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 具体的に憲法のどこがどういう問題を引き起こしているのかということをちょっと御指摘いただかないとなかなかお答えがしにくいところではございますけれども、憲法というものの役割は何かというと、これは、何か日々の暮らしについて具体的な政策を定めるとか、それを打ち出すとか、実施をするということよりは、むしろその日々の暮らしを良くするための高いレベルでの政治の在り方、ここで、様々な、先生方もそうですけれども、様々な主体なり、行動主体なり、いろいろな機関なりが相互作用を行いますので、その相互作用がスムーズにいくようにいろいろなルールを定めているというのはこれ憲法の役割でございますから、その憲法の機能なり役割なりから直ちにその具体の日々の政治のいろいろな問題が出てくるということはそうそうあることではないのではないかと、まあ一般論でございますが、そういうふうに考えております。

安達悠司参政党

○安達悠司君 ちょっと分かりにくかったのかもしれないので補足しますと、要は、今、日本で問題が起きているのは、これは日本国憲法のとおりきちんと運用しない政府が悪いんだと、あるいは国会議員が悪いんだというふうな考え方が取られてきたかと思うんですけど、実はこれは日本国憲法にも原因があるんじゃないかと。  例えば、スポーツの試合で、選手がきちんと今まで決めた作戦のとおりにしないから悪いんだと、作戦のとおりにすれば勝っていたんだというのに対して、いや、実は作戦そのものが間違っていたんじゃないかと。戦争でも、例えば、いや、ちゃんと戦わなかったから悪いんだと、いや、でも、そもそも作戦やプラン自体が間違っていたんじゃないかと、こういった話でございます。  憲法も、GHQが草案を作り、今まで憲法学者の方が意見を述べてこられましたが、そもそも憲法のとおり執行しない政府が悪いのか、それとも憲法そのものに問題があるのかということです。  確かに、三十年前までは、今の憲法の下、高度経済成長したではないかと、日本も豊かになったじゃないかということで良かったんじゃないかと思われてきたんですけれども、ただ、それは日本国憲法の前の憲法の下で教育を受けた世代が政治を行ってきて、三十年ほど前からはそういった世代が退出して、日本国憲法の下、教育を受けた世代が政治を行い、今のような状況になったと言えるんではないか。  政権も、社民党もかつて政権を取りましたし、民主党も政権を取って、その今の憲法の下、いろんな手を尽くしてきたんですけれども、それでも日本は良くならない。そうしたら、最初は憲法を変えなくてよいと思っていた国民も、だんだん、実は何か憲法がおかしいんじゃないかと、憲法を変えないと駄目なんじゃないかというふうな国民が増えたんではないかと思っています。  そういう意味で、じゃ、なぜ、さらにどこが悪いのかというと、今の憲法ではやはり国の守り、こういったものが軽視されていることと、公益的な保護の規制というのが弱いんじゃないか。  例えば、公益に関して言いますと、個人の権利を最大限尊重していけば、それはいいことだと思われるんですが、それは言葉を換えて言えば私益、私益の追求であり、企業の最大価値の利益追求を是認することになります。  ここでいう私益は、裁判所でも例えば金銭で換算できる利益が重視されて、金銭で換算し難い利益は軽視されていきますね。例えば農業とか、生態系とか、確率の低い副作用とか、将来生まれたかもしれない子供、こういったものの利益というのは換算されにくい。その結果、輸入農作物や添加物が増加したり、安い森林が買収されて環境破壊が起きたり、現役世代の利益が優先されて将来世代が減ったり、そういった動きが起きてくるんではないか。  だから、そこに、公益的な規制、公共の福祉ってあるんですけれども、ただ、公共の福祉の規定は具体化されていないので、国が本来守るべき公共の福祉や公益を軽視して、結果的に、規制緩和とかいって様々な公益的な規制を次々と緩和して、若者の所得やいろんなものが低くなっていくと、で、外資が参入するというようなことを招いているんではないかということなんです。  そういう意味で、その国の守りも始め、公益的な規制も始め、今の憲法に限界があるんではないかと、こういった考え、参考人はどうお考えになりますか。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、憲法というのは、何かこういうことをしよう、ああいうことをしようということを定めているものではございませんで、それは旧憲法、大日本帝国憲法も私は同じだと思っております。ああしろこうしろということを定めているわけではなくて、高度の、高いレベルの政治の世界で、様々な主体がどういうふうに相互関係を築いて、いろいろな行動をしていくべきなのか、その基本的なルールを定めているというわけですので、そのルールの枠内でどのような施策をつくり、どのような公益を実現をし、個人の権利と公共の福祉のバランスをいかに取っていくべきなのか。これは、先生方を始めとする国会議員の先生方も含めて、そういったような高次の政治的なレベルにある方々がお決めになる話でございまして、現在の憲法はその障害になっているというふうにはちょっと私には思えないところがございます。

安達悠司参政党

○安達悠司君 あと、最後一点、長谷部参考人にお尋ねしたいんですが、長谷部参考人は、平成二十七年六月四日の衆議院の憲法審査会、十一年前になりますが、その中で憲法の基本原理に関して、大規模で長期にわたる戦争はいかにして終結するかといえば、負けた側が勝った側の憲法の基本原理を採用することによって、そういった大規模な戦争は終結いたしますと、まさに日本は、あっ、日本はまさにそういう選択をしたということでございまして、そうした選択をして、憲法の基本原理は、これは変えられない、そこに改正の限界がある、そういうことになるだろうと思いますと述べておられます。  つまり、日本は戦勝国の基本原理を採用し、その基本原理は憲法改正でも変えられないんだと、こういった見解を当時述べておられまして、私は大変驚いたんですけれども、そのように、主権者たる国民がただそうやって望んだとしても、戦勝国の基本原理は変えられないのか。今、実際、その戦勝国であるアメリカも欧州も、移民問題、財政問題、対外戦争などで大変大きな問題を抱えています。そういう中でも、例えば九条二項の削除も含めて、こうしたものは変えられないのかということを最後にお伺いしたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 現在の憲法九条、それの特に第二項が規定をしておりますのは、戦争遂行能力は保持をしない、それから、戦争する権利は、これを国には認めないという、そういうことでございます。  だから、戦争というのは、一項にある国際紛争を解決する手段、つまり国と国、国家間の紛争を解決する決闘としての戦争はしないということを、それは一項が定めております。戦争というのはそういうものです。勝った方が正しいというのが決闘としての戦争であります。  そういう決闘としての戦争をする能力は持たないということを九条二項は言っているわけでありまして、これは日本に限ったことではございません。不戦条約を締結している国々、そして国連の憲章、これに従っている国々は全てこの考え方を取っておりますので、したがいまして、九条の二項に定めてあること、あるいは九条の一項に書いてあることということは、現在の世界で申しますと、極めて標準的な物の考え方がそこに定められているというふうに考えることができると思います。

安達悠司参政党

○安達悠司君 時間なので終わります。ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 山添拓君。

山添拓日本共産党

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  お二人の参考人、今日は大変ありがとうございました。  内閣が国会を経ず、法律と同じ効力を持つ緊急政令を定められるとする緊急事態条項は、その緊急事態の宣言も、またその下での権利制約も、権力の恣意的な判断を許すのではないかと危惧されます。  権力を縛り、権利を保障するという立憲主義の下で、緊急事態条項は必須の制度なのか。先ほど只野参考人から不備とは考えないという御発言もありましたが、この点を改めて両参考人に伺いたいと思います。只野参考人からお願いいたします。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございました。  先ほど不備という話をしましたのは、日本国憲法の場合には、正面から緊急事態を規定していないわけですね。何か足りない規定があるのかと、まあこういうお考えはあるかと思いますが、必ずしもそう見るべきものではないんじゃないかと、こういうお話をさせていただいた次第です。  各国の緊急事態条項を見回しましても、憲法に詳細な規定を設けている場合もあれば、必ずしもそうじゃない場合もあるわけです。しかし、そうじゃない場合というのは対応を考えていないのかというと、通常はそう考えないわけですね。  日本国憲法の場合にも同じように考えることができるんじゃないかと、また、五十四条を手掛かりにすると、一定の対応をそこから引き出すことができるんじゃないかと、こう考えた次第です。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 私は、現在の日本の憲法には緊急事態条項あると考えておりまして、それは参議院の緊急集会制度であるというふうに考えております。現在のところはこれで十分間に合うのではないかというのが私の考え方でございます。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  現在、一部の政党が主張している衆院議員の任期延長は、広範かつ長期に国政選挙が実施できない選挙困難事態を理由に、半年、一年、場合によっては更に延長して、長期にわたって任期延長議員が国会にとどまることを想定しています。先ほど長谷部参考人からは、それがいつまでかという懸念があるという発言がありました。  一方、現行憲法の緊急集会は臨時のものという規定があり、総選挙後の国会が開会されると十日以内に衆議院の同意が必要と、暫定的な措置とされています。最長七十日までとすべきかどうかは議論の余地があるかと思いますが、いずれにせよ、暫定的な位置付けは変わらないかと思います。  今日、お二方の御意見の中で、いずれも原則への復元の力、復元力という言葉もあり、それは一つのキーワードではないかと思っております。この暫定的な措置としての緊急集会と原則への復元力ということについて、長谷部参考人、只野参考人、それぞれ御意見を伺います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 御指摘のとおり、原則への復元力、これを保っておくという、これは大変重要なことでありまして、先ほど、憲法改正することについてのメリットとデメリット、プラスとマイナスをやはりよく考えなくてはいけないというふうに申し上げましたけれども、変えることによって原則への復元力が失われるということになっては、これまた大変困った話でございまして、私の考えるところでは、解釈に応じて状況も解決をする、問題を解決をすると、そういう態度を取っている方が、この復元力を保つのには役に立つというふうに考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 私からもお答えします。  先ほど二点指摘したとおりなのですけれども、一つは、緊急集会というのはやっぱり通常の国会の機能とは違う、内閣が主導権を持つわけですね。国会としても、それは元に戻そうと、こういうお考え当然働きやすいんじゃないかということもありますし、それから、何より衆議院が欠けた状態というのは非常に大きいわけです。通常はやはりそれは解消しなきゃいけないと、当然国会議員の先生方はそう考えるわけでございまして、緊急集会に限って言いますと、やはり復元力というのは期待できるんじゃないか、こう考えているところでございます。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。私もそのように思います。  その上で、ちょっとお二方に、今日は御意見も伺って、改めて伺いたいなと思ったのですが、今言われているような緊急事態、災害であれ、対外的な有事であれ、そうしたものを長期に想定しようとしているわけですが、その長期にわたって全国的に、かつ定足数にも至らないぐらいに選挙が実施できない、それは一体どういう場合が想定できるかと御意見をお持ちでしょうか。また、そうした事態を国政がそもそも想定すべきなのかどうか、この点についてちょっと率直に伺えればと思っております。只野参考人、長谷部参考人の順でお願いいたします。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) どこまで想定できるかというのは率直によく分からないのですけれども、かなり例外的なものではあるだろうと思います。  災害でそういったことがあるかと、全くないとは申しませんけれども、かなり少ないだろうし、治安上の事態の場合、なかなか想定し難いところはありますけれども、逆にそういった事態を正面から想定して、十全な対応をしましょう、それを明文化しましょうということになりますと、そのことに伴うデメリットも大きいんじゃないかなということも懸念するわけでございます。  何が正解かというのは、なかなか事態たくさんありますから難しいのですけれども、ある程度想定される事態というものを前提にしながら制度をつくっていく、運用を考えていくと、そこには一定の合理性はあるかなと思っております。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 確かに、山添先生がおっしゃるとおり、どういう事態がそれに当たるのかってなかなか難しいところでして、例えば昔の話になりますが、二・二六事件は、クーデターが起こったという、まあ議会は当然召集できないし、じゃ、内閣は動いているかといえば、内閣も動かないわけですね。首相も殺されてしまったかもしれないと、そういう事態でございますので。議会は動かないかもしれないけど、内閣だけは動くだろうという事態が本当にどこまであるのかと、それもやはりなかなか見当の付かないところもございます。  山添先生がおっしゃるような事態、果たしてどこまでそういうことがあり得るのかということはなかなか難しいところですし、私が先ほど申しましたプラスとマイナスを考えなくちゃいけないというのは、そういっためったに起こりそうもないような例外的な事態のことのために憲法を改正することのプラスとマイナスということをやはり考慮に入れる必要はあるだろうというふうに私は考えております。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  国会機能の維持という任期延長改憲が主張されておりますが、これはやはり選挙で審判を受けない居座りの国会議員による国会となり、民主的な正統性を欠きます。緊急集会とは全く異質の存在であり、緊急時に名を借りた民主主義の停止というべき、そうしたものへの改憲は容認できないと、この意見を申し上げまして、質疑を終わります。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 奥田ふみよ君。

奥田ふみよれいわ新選組

○奥田ふみよ君 れいわ新選組の奥田ふみよです。  本日は、両参考人による貴重な御意見、本当にありがとうございました。  憲法は、八十年前の先人たちが再び権力の居座りをもくろむ者が現れることをちゃんと予測し、二度と政治屋たちが暴走しないように、先人の知恵が詰まっているのが五十四条と考えています。  戦前の一九二八年、政府の緊急勅令によって治安維持法の改悪で国民を黙らせた後に、戦争が始まるぞと緊急事態をあおり、一九四一年二月に衆議院の議員任期を延長、その年の十二月には日本は真珠湾攻撃を仕掛けて戦争を勃発させています。だから、日本国憲法前文冒頭にあるように、日本国民は正当に選挙された代表者を通じて行動と記されてあるのだから、緊急事態であると脅して国民の自由を奪って黙らせたり、議員任期延長や国会議員の居座りを絶対に二度と許してはいけないということを歴史が教えていると思っています。  このような改憲ありきの憲法審査会開催などは違憲、憲法違反、愚劣の極みだと訴え続けています。  先ほど御見解を伺ったところではあるんですが、一体この緊急事態というのは何なんでしょうか。なぜ緊急事態だからといって選挙ができないと決め付けるんでしょうか。災害のときには選挙には行けないと言いますが、平時のときから災害時でもちゃんと選挙ができるように事前に議論を重ねればいいと思いますし、本来国民はどんな事態でも投票の権利を持っているのだから、それを国会が全力で守らなければいけないのではないでしょうか。  そもそも、今年二月の衆院選だって、有権者にとっては選挙困難事態だったと思います。最短の選挙期間で、公営掲示板が大阪市では三分の一に減らされ、青森県弘前市では、豪雪の影響もあり六分の一以下に減らされたという報道もありました。それでも選挙を強行した自民党が選挙困難事態と、どの口が言うのでしょうか。  そこで、只野参考人にお尋ねいたします。  要件が不明確なまま改憲すれば、戦前のように内閣が制度を濫用するおそれがあると指摘されていますが、どうすれば内閣の濫用を抑えられるとお考えでしょうか。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございます。  なかなか難しい御質問だと思うんですけれども、一つはやはり、きちんとやはり制度を考えると、ここは重要かなというふうに思っておりまして、今日のお話で申しますと、すごく例外的な強い事態想定して十全な対応をしようとすれば、どうしても大きな例外をつくらなきゃいけなくなると、このことのデメリットというのはやはり考えざるを得ないんじゃないかと、これが今日お話ししたことでございました。これは多分、内閣を抑えると、内閣が権限濫用することを抑えるということにつながってくるかなと、こういうふうに思っております。  もう一つが、やはり国会の方できちんとコントロールをしていただくということもすごく大事かなというふうに思っておりまして、いわゆる憲法化という話を最初させていただきましたけれど、そのメリットの一つでよくそれは挙げられるわけですね。しかし、これは相当やっぱりよく考えて作らなきゃいけないところでございまして、多数党が内閣を支えるというのが議院内閣制でございますから、それだけで十分なのか。いろんなことが多分考えられると思いますし、何より平素の国会の活動の足腰をきっちり鍛えていただくってすごく大事かなと、こう思っております。しっかり審議をする、しっかり統制すると、通常の国政運営の中でそういうことを積み重ねていただくということも非常に大事かなと考える次第です。

奥田ふみよれいわ新選組

○奥田ふみよ君 ありがとうございます。  緊急事態条項のイメージ案には緊急政令、緊急財産処分の規定を盛り込み、戦前と同じように、立法府の権限を根底からなし崩しにしようとしています。ましてや、文春疑惑渦中の高市自民党にこれ以上独裁を許してはいけないと思っています。  しかしながら、一番の問題は、はっきり申し上げますが、多くの国民の危機感のなさや無関心によるものだと考えています。沖縄の活動家、阿波根昌鴻さんも、平和の最大の敵は無関心である、戦争の最大の友も無関心であると言っています。  なぜ主権者がここまで無関心になってしまったのか、この点、長谷部参考人にお伺いいたします。  今のこの憲法改正議論そのものが最大の緊急事態であるぞということを一人でも多くの主権者が気付いてもらえる方法は何かないでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 大変根本問題をついた難しい御質問いただきました。どうもありがとうございます。  ただ、一般の国民の方々というのはそんなに政治については関心がないものだというのは、これは、ジャン・ジャック・ルソーという人が、「山からの手紙」という書簡集の中でルソーがそう言っております。民主主義の神様のように思われている方ですけれども。というのも、一般の庶民の人たちというのは、もう毎日の自分の商売のこととか金もうけのこととか自分の暮らしのことで頭の中はもういっぱいと、だから国全体の政治のことについてまで、そこまで頭が回らない、そんな暇はないんだと、そういうものなんだというふうにルソーは言っております。  したがいまして、そういう多くの一般市民の方々はそこまでの時間もエネルギーも余裕もないというわけです。だからこそ、国会議員の先生方が全国民の利益のために頑張って国政を担って審議や議決を行っておられると、そう思いますので、やはりここはそういうプロフェッショナルの国会議員の先生方、政治家の先生方の頑張りに期待をする、それは奥田先生も含めての話でございますけれども、そこに期待をするしかないのではないかというふうに考えております。

奥田ふみよれいわ新選組

○奥田ふみよ君 ありがとうございます。  再三申し上げておりますが、改憲ありきのこの憲法審査会を開くこと自体が憲法違反であり蛮行であると、れいわ新選組は否定し続けています。憲法審査会を開くのであれば、改憲論議ではなく、そもそも今の内閣がちゃんと憲法を守っているのかを精査しなければいけないのではないのでしょうか。  日本は、四十年近く、先進国グループの中でも最も経済衰退しっ放しの経済の大愚策が続いています。責任ある積極財政と言いながら、元々不況なのに、コロナが来て物価高、中東情勢悪化により更なる物価高が覆いかぶさり、国民の生活はまさに緊急事態。それなのに国民は、政府は、失礼いたしました。それなのに政府は、国民に積極財政は施さず、しょぼい支援のみ。国民の六・五人に一人が貧困なんですよ。とにもかくにも、自民党・政府は憲法二十五条を全国民に保障してからです。国が本気で保障すれば一、二年で貧困者をゼロにすることだって可能です。改憲したい国会議員たちはまず貧困者をなくせ。とっとと国民生活を守れ。  主権者の皆さん、あなたの自由や生きる喜びを根底から破壊する、ろくでもない改憲をもくろむ国会議員どもは、主権者たちの力でしか憲法のおりに閉じ込めることはできません。この緊急事態をまだ気付いていない主権者に、先に気付いたあなたが伝えてください。おかしいことにはおかしいだろうと声を上げて、みんなで変えて、みんなで笑って暮らしましょう。  終わります。ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 引き続き質疑を行いますが、これより質疑時間は答弁を含め各五分以内といたします。  若井敦子君。

若井敦子自由民主党・無所属の会

○若井敦子君 自由民主党の若井敦子でございます。私からもお伺いをさせていただきます。  憲法五十四条一項は、解散から四十日以内に総選挙、選挙から三十日以内に国会召集と規定されており、文言上はこの日数を厳格に区切っているように見えるわけでございます。しかしながら、先ほど来からの議論を伺っておりますと、この四十日、三十日という日数は、時の内閣が何かと理由を付けて選挙をいつまでも先延ばしにして民意を反映した国会を開かないというこの権力の濫用を防ぐためであるという考え方があるということを改めて認識をさせていただきました。  本日のこの審査会に挑むに当たりまして、過去の衆参の憲法に関する議事録などを調べさせていただきました。その中には、この五十四条一項の日数をめぐる様々な意見があるということが分かりました。また、法は不可能を強いるものではないという法格言が示す超法規的措置をめぐる議論も幾つかそこの中には見られたわけでございます。過去のこの発言の中には、憲法の規定がなくても、やむを得ない場合には超法規的措置に頼ればいいという考え方に懸念を示している発言もその中にはございました。  例えば、平成十五年の参議院憲法調査会で参考人として御出席をいただきました駒澤大学法学部教授の西修先生は、こう述べられておられました。日本公法学会で、かなり古い時期に、既に立命館大学の教授だった大西芳雄先生が次のように言っておられます。憲法にも法律にも非常事態に対する何らの措置をも予定しない国は、一見、立憲主義に忠実であるかのように見えて、実はその反対物に転落する危険性を含むものと言ってよいだろう、このような発言がございました。  そして、西修先生が引用された大西芳雄教授ですが、昭和五十年に出された「憲法の基礎理論」の中で、次のように述べられておられます。それが、空白状態のまま放置すれば、政府は必要は法を破るということわざを利用し、不必要に権力を濫用しないとも限らないし、むしろ憲法に緊急権の発動の条件を厳密に規定し、かつその非常措置の効力をも限定し、かつ責任追及の方法も明記しておく方が立憲的であるというものでございました。これらの言葉は、緊急事態条項を考える上で、私は極めて含蓄のあるものと受け止めております。  そこで、先ほど来から長谷部参考人、只野参考人は、わざわざ憲法を改正して明文化しなくてもこの解釈で十分対応できるとのお考えであるということを理解いたしましたけれども、東京大学のケネス・盛・マッケルウェイン教授は、著書の中で、緊急事態条項を明記している憲法は、一九五〇年頃の六割程度から二〇二〇年時点で九割以上になっていることを示されておられます。  このように、世界において緊急事態条項を備える憲法が増加している背景につきまして、長谷部参考人、只野参考人はそれぞれどのようにお考えなのか、お伺いをさせていただきます。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 各国が憲法、どのような憲法を備えているのか、そしてその各国の憲法において緊急事態条項を備えるか備えないか、それは国によってそれぞれ事情がございますので、全体的な傾向があるのかないのかということは余り簡単には言えないことだろうというふうに私は考えております。  例えば、何かというとモデルにされたり、アンタイモデルにされたりすることの多いアメリカ合衆国でございますけれども、緊急事態条項に当たるような条項、私の見るところでは、ないですね。ヘービアスコーパスの限定に関する条項は一つございますけれども、それ以外に、緊急事態だからどうこうという、そういう憲法上の条項はございません。  ですから、様々な国が様々な憲法を持ち、様々な緊急事態条項あったりなかったりと、それは確かにおっしゃるとおりなんですけれども、日本は、現在の日本の憲法を出発点として、本当に緊急事態条項を備える必要があるのかないのか、それこそプラスマイナスをよくよく考えてお考えになるのがよろしいのかなというふうに私は考えております。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 発言の前に恐縮ですが、時間の関係もございますので、答弁は簡潔に、恐縮ですが、お願いいたします。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 承知いたしました。  まず一つは、今もお話ありましたように、憲法の背景にいろいろ相違がございますので、その歴史的なものとか文化的な背景、あるいは法的な考え方の違い、こういったものがあるだろうと。単純に数だけで決め切れない部分があろうかと、こう思っているわけでございます。  それから、日本国憲法について申しますと、まさに、マッケルウェイン教授、御指摘のように、比較的規定が簡略にできていると、こういうこともあるいは関係しているのかなと。ただ、簡略にできているということは規定されていないことと同義ではないと、こう考えております。

若井敦子自由民主党・無所属の会

○若井敦子君 ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 小沢雅仁君。

小沢雅仁立憲民主・無所属

○小沢雅仁君 立憲民主党の小沢雅仁です。  本日のテーマは緊急集会を中心とした緊急事態対応であるところ、任期延長改憲の選挙困難事態の一類型とされている国家有事・安全保障事態に関して、自衛隊明記改憲について先生方の見解をお伺いしたいと思います。  自衛隊明記改憲論を唱える政党は、歴代政府の九条解釈は変更せず、憲法の平和主義は維持して、自衛隊を明記するだけと訴えていますが、武力行使を行う組織である自衛隊を憲法に明記すると、その自衛隊という規定における自衛隊が行使できる武力行使と、憲法九条一項が放棄している武力の行使や二項が定めている戦力の不保持や交戦権の否認、さらには憲法前文の政府の行為による再びの戦争の惨禍を許さない決意など、平和主義の理念との法的な関係に曖昧さや矛盾が生じ、結果として九条の規範の内容や憲法前文の平和主義の法理の内容が変質してしまう可能性があるのではないでしょうか。  長谷部先生、只野先生、それぞれ御見解をお伺いしたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) どうもありがとうございます。  九条に関しまして、自衛隊の存在を明記をすると、そういう御提案があることは承知をしておりますが、自衛隊というのは実は言ってみれば日本独自の制度、組織でございまして、自衛隊は、これを置くというふうに憲法の条文に定めただけでは、これは一体どういう組織でどういう権限を持っているものなのか、それは明らかになりません。  そうなりますと、例えば自衛隊の組織と権限についてはこれを法律で定めるという条文を置くことも考えられますが、そういたしますと、法律の定めようによって権限がどんどん拡大をしていくという懸念がないわけではないと。その懸念を解消しようと、解決しようとすると、現在、自衛隊法でポジティブリストで並べられている自衛隊の権限、災害派遣から、あるいはインド洋における海賊討伐までですね、あらゆる具体的な権限を全て憲法の中に書き込むのかという、そういう対処の仕方も考えられないではありませんが、これは極めてバランスの悪い憲法の姿形になってしまいますし、今後、その自衛隊の権限を多少とも増やしたり減らしたりしようとすると、そのたびに憲法改正をしないといけないという大変面倒な、難しい問題が出てくるだろうと思いますので、そういった改正、先ほどからずっと申しておることですが、プラスとマイナスよくよくお考えになった方がよろしいのではないかというふうに私は考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 私からも、簡単ですが、お答えいたします。  従来の九条解釈の意味というのはどこにあったかと。簡単に申しますと、自衛権の行使に憲法解釈で一定の枠がはまっていたと、こういうことなのかなと思っております。ここ、若干修正はあったわけでございますけれども。  自衛隊明記といってもいろんなプランがあるかと思いますが、自衛官あるということ、自衛隊があるということを正面から書くということは、従来憲法解釈で縛られていたものを政治判断に委ねる、こういうことにつながっていくのではないか。  それでよいというお考えあるかもしれませんが、一方でそのデメリットと、こういうものもあるわけでございますし、従来の九条なり、その解釈が担ってきたもの、その意味をしっかり見据える必要があるかなと、こう考えている次第でございます。

小沢雅仁立憲民主・無所属

○小沢雅仁君 ありがとうございます。  もう一点お伺いしたいと思いますが、この国会や内閣による自衛隊の民主的統制を強化するために自衛隊を憲法に明記すべきという主張がありますけれど、自衛隊を憲法上の特別の国家機関として規定すると、国民が国家権力の武力の行使あるいはそのための組織である自衛隊を民主的に統制するという力が法的あるいは政治的に弱まってしまうことが生じるのではないでしょうか。端的に、長谷部先生、只野先生にお伺いしたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 軍あるいはそれに類似する組織に対する民主的な統制が十分機能するかどうかというのは、その国の政府がどれだけしっかりした民主的正統性に支えられているのか、そしてその政府自体にどれほど実効的な統治能力があるのかに依存する問題でございまして、憲法の条文の定めように依存するものではないというふうに私は考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 先ほど申しましたように、従来憲法解釈で枠がはまっていたものが政治による統制に委ねられると、こういうところでございますから、まさに政治の在り方が強く問われると、こういうことかなと思います。  もう一言申しますと、政治が軍事力統制するというのは、裏を返せば、政治が軍事力を利用すると、こういう側面も持っているわけでございますので、やはりその政治の在り方というのは強く問われることになろうかと思っているところでございます。

小沢雅仁立憲民主・無所属

○小沢雅仁君 終わります。ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 浅田均君。

浅田均日本維新の会

○浅田均君 日本維新の会、浅田均でございます。  両参考人の先生におかれましては、貴重な御意見賜りまして、本当にありがとうございます。御礼申し上げます。  私は、只野先生のレジュメにお書きになっております緊急事態の憲法化の得失に関して質問させていただきたいと思っております。  憲法改正、とりわけ緊急事態に関して、只野先生のお考えは、事前配付いただきました資料を読ませていただきましたので、かなり理解したと思っております。  「例外的状況と憲法」の中で、先生は、緊急事態条項を憲法に置くことは、立憲的な憲法秩序では正当化が難しい措置を容認することを意味しており、それ自体が立憲主義に対する例外規定を正面から認めるものであるとお書きになっております。  ところで、只野先生も御存じだと思いますが、フランスの憲法学者であるドミニク・ルソー教授は、緊急事態という状況が民主主義社会においていかに権力の濫用や法の支配の空洞化を招きやすいかという点につき、鋭い警鐘を鳴らしています。  先ほど、長谷部先生からアルジェリアの事例に関して言及がございました。只野先生とルソー教授、同じような主張です。  ルソー教授の主張の根底には、憲法は権力を制限し、市民の自由を守るためのものという信念があると思われます。ただ、ルソー教授は、もし緊急事態条項を導入するのであれば、それは危機に備えて政府を強くするためにあるのではなく、たとえ危機的状況であっても、政府が独裁的な振る舞いに陥ることを防ぎ、民主主義と人権の最後のとりでとして憲法を機能させるためにこそ、強力な歯止めをセットで組み込まなければならないとも主張されております。  そこで、只野先生にお伺いしたいんですが、ルソー教授は、緊急事態条項の導入が、政府に政策遂行の便宜を与えるのではなく、むしろ政府の暴走を縛るための憲法上の措置でなければならないと説いておられます。もし緊急事態条項を新設する場合、緊急時において政府が平時よりも強い権限を持つ際に、それに対し、単なる追認ではなく、実効性のある民主的コントロールを確保するため、憲法上に何らかの統制の仕組みを定めることはできないものか、憲法条文に直接どのような権力行使の限界を明記すべきか、先生のお考えをお聞かせいただきたく存じます。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございます。  憲法化というお話、冒頭でさせていただいたのですが、そこにメリット、デメリットがあるというのはまさに今御指摘のとおりで、特にフランスの憲法学者とお話ししていますと、やはりきちんと統制をした方がよいんだというお話を聞くこともしばしばございます。  ただ一方で、統制の仕組みをどうつくるか、これ非常に難しい問題でございます。やはりうまくいかないとマイナス面が強く出てくる、こういうところもあるのかなと考えているところで、本日は、マイナス面の方を重視した、こういうお話をさせていただいたところかなというふうに思っております。  どちらがいいかと原理的にすぐに決められるものではないのですけれども、どういう事態を想定して、どこまで強い措置をとるのか、そのことによってどういうデメリットがあるのか、このことをやっぱり慎重に見極める必要があるんじゃなかろうかと。ここは、私としてはずっとそう考えているところがございます。

浅田均日本維新の会

○浅田均君 それでは、もう一問簡単に質問させていただきます。  緊急事態の常態化というわなを回避し、国家が極限状態にあるときこそ法の支配が機能していることを示すために、緊急事態条項の中にどのような再評価のプロセスを明記すべきだとお考えでしょうか。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 先ほど、ちょっと申し忘れたところがございまして、現在の五十四条、一定のコントロールの仕組みってやっぱり入っているんじゃないかと、こう考えているところがございます。先ほど、復元力というところの関連で申し上げたような事柄でございますね。ですから、全く何もないということでは日本国憲法の場合はないんだと、一応これが前提ということになります。  やはり一番重要なのは、もしつくるとすればその統制の仕組みということでして、多数決ではなくて、例えば特別多数を設けるとか、それから、特に定期的にチェックを入れるような仕組みというのはすごく大事だというふうに思うんですね。それを踏まえた上で、制度化するのと五十四条で対応するのとどちらがよいかということで、後者がよろしいんじゃないかと、こういうお話をさせていただいたところです。

浅田均日本維新の会

○浅田均君 ありがとうございました。終わります。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 原田秀一君。

原田秀一国民民主党・新緑風会

○原田秀一君 国民民主党・新緑風会の原田秀一です。  貴重なお話をいただきました長谷部、只野両参考人に心より感謝を申し上げます。  御両人に、両参考人にお尋ねいたします。  憲法五十四条三項は、緊急集会においてとられた措置について、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意がない場合は失効すると定めています。緊急集会は国会の権限を代行するものでありますから当然の規定だと思いますが、もし、巨大災害等、総選挙の実施が長期間延期された場合、緊急集会は、本予算の議決や法律の改廃、さらには防衛出動の承認など、重要案件の決定を積み重ねていくことになります。仮に衆議院が事後に不同意の判断を下した場合、その効果は遡及しないと解されていると思いますが、将来に向かってであっても、国家の政策を根底から覆ることになります。事態が長期化するほど、不同意のリスクは大きくなるものと考えます。  この観点からも、長期化に際しては、緊急集会ではなく二院制の回復を図るべきと私は考えますが、両参考人の御見解をお聞かせいただければと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) これ、まさにどちらの方のメリット、デメリットが大きいか、小さいか、それに関する評価の問題になってくるんだろうと思います。  私それから只野参考人が本日基本的に申し述べておりますのは、現在の憲法の条項を前提とし、その解釈によって事態を切り抜ける方が本来の原則に対する復元力が大きく働くので、つまり、衆議院の総選挙をなるべく早くやらなくちゃいけない、そういう事態、そういう方向に力も働きますし、緊急集会によることに対しても、これもなるべく早く終わらなくてはいけない、そういう原則、原状に対する復元力というのが強く働く、そういう仕組みになりますので、そちらの方がメリットが大きいと。  これ、新しい制度をつくりまして、それで元の衆議院の先生方も復活をさせて、ちょっと異様な形の国会が成立をして、それが続いていくということになりますと、一体これはいつまで続くのか、そういう逆のリスクが出てまいりますので、そういったプラスとマイナスを考えますと、私は、憲法を変えることのマイナスの方が大きいというふうに私は考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 御質問ありがとうございます。  最後にございました二院制を回復すると、やっぱりすごく重要なことだと私も思っておりますが、どういうやり方が一番良いのかと、結局ここに尽きるのかなというふうに思っておりまして、今お話がありましたように、民意を問う必要ありということで解散が行われ、しかし、そこで前に選ばれていた議員の方々に続けてやっていただくと、これが長引くことが本当に良いのか。まずは参議院だけで対応いただくことにはなるけれども、その中でできるだけ速やかに、三分の一という定足数充足が見込めるところで選挙を考えていくと、こういう回復の仕方がいいのか。多分そういう選択の問題なのかなというふうに思っております。

原田秀一国民民主党・新緑風会

○原田秀一君 ありがとうございます。大変勉強になりました。  時間がないのであれですけれども、先ほどから私ちょっと余りしっくりきていないのは、余り想定しないものは考えないし、それを規定してやっていくことがデメリットが大きいというような御発言が長谷部参考人の方からもあったかと思うんですが、具体的にどういった、まあ緊急事態って、想定していないものを想定するのが緊急事態の条項なのかなと思っておるんですけれども、どういったデメリットが、憲法を変えるということのデメリットってもちろん分かるんですが、それ以外にどういったデメリットがあるかというのをちょっと、私ちょっと理解ができていないかもしれないんですが、お聞かせいただけると。お願いします。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 幾つかのことが考えられるのですけれども、一つのデメリットというのは、めったに起こらないことのために、これだけの国会議員の先生方の時間とエネルギーを使って、どのような憲法改正が良いのか悪いのか御審議をいただくということ自体についても、私は、メリットとデメリットとどちらが大きいだろうかなと、そういうことを疑問には思っております。

原田秀一国民民主党・新緑風会

○原田秀一君 ありがとうございました。大変勉強になりました。  時間が参りましたので、これで質問を終わります。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 佐々木雅文君。

佐々木雅文公明党

○佐々木雅文君 公明党の佐々木雅文でございます。  本日は、両先生方から制度趣旨、また目的に遡っての大変分かりやすい、また示唆に富むお話をいただきまして、本当にありがとうございました。  両先生方から、そもそも憲法改正の必要性があるのかどうかというお話もいただきました。その上ででございますけれども、仮に議論をするといたしましても、先ほど浅田先生からもお話ありました、緊急事態条項だけを先行して進めるのではなくて、やはりそれは統制の在り方とセットにして話を進めていかなければならないのではないのかなというふうに思っております。  そこで、両先生方にお伺いしたいのが、諸外国でも、緊急事態条項、ある場合、ない場合あるというお話を伺っておりますが、そうした緊急事態を設けている国を踏まえてどういった統制を図ろうとしているのかということと、その上で日本においてどういった議論を進めていくのがよろしいのかどうかという点も併せて御見解をお聞かせいただければと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 先ほど、只野参考人からも御指摘ありました現在のフランスの憲法の第十五条ですか、憲法院が、果たしてこの緊急事態、緊急事態を続けていいのか、大統領が発動するわけですけど、それについて意見を述べると、そういう制度ができております。これは、先ほど申し上げました、三日で反乱は鎮圧されたのに五か月も緊急事態条項を延ばすというような、まあ見たところは、緊急事態権限の濫用と見えるような過去の経験があったからなんですね。  ただ、これは意見を述べただけで、それに従って大統領が本当にやめるかどうかと、それは別の問題です。コントロールの仕方というのはいろいろあるとは思うんですが、こういう形で、司法府なり違憲審査に当たるような機関がもうやめたらどうですかというふうに見解を述べるということはあり得るんですけれども、やめなさいという、これ本当にやめさせてしまうという制度をつくることは私は非常に難しいと思います。  そういう点からいたしましても、緊急事態に関する権限というのは一旦発動するともうなかなかやめさせることが難しい、そういうものだろうというふうに考えております。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) やはり今お話ありましたように、政治の外にある機関の判断を組み合わせると、これは一つ考えられるところなのですが、私の限られた知識でも、やはり、なかなか実際にそういう事態が起きたときに統制が十全に機能するというのは簡単なことではないんだろうというふうに思っております。  あえて申し上げると、やはり定期的にチェックを掛ける仕組みというのはすごく大事だと思っておりまして、事態が起きた直後というのはなかなか統制って話にならないわけですね。少し時間が掛かるとそれは変わってくるということですから、繰り返しやっぱりチェックが掛かるような仕組みというのは考えていただかなきゃいけないのかなと思っております。

佐々木雅文公明党

○佐々木雅文君 ありがとうございました。  時間が参りましたので終わります。ありがとうございます。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 宮出千慧君。

宮出千慧参政党

○宮出千慧君 参政党の宮出千慧です。  本日は、両参考人には貴重なお話をいただき、ありがとうございました。  まず、両参考人にお伺いをしたいと思います。  本日議題となっております緊急集会ですけれども、これがうまく機能するかどうかは、二院制を取る我が国で、衆議院と参議院のそれぞれの役割分担やそれぞれの存在意義、国会議員の構成や選挙制度の在り方から考える必要があるのではないかと考えます。  両議院の構成につきまして、憲法四十三条一項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定めており、これも改正の可能性も含めて考えるとアプリオリな規定ではないことはもちろんですが、衆議院、参議院それぞれの選挙制度を考える上で、全国民を代表するの意義をどう考えるべきかは重要な問いであるかと思います。  現在、衆議院におきまして比例定数四十五議席の削減が指示されたとの報道がありますが、このとおり進めば、政党を通じた得票と議席に乖離がますます進むということにもなりますけれども、こうした比例定数のみの議席数の削減をどう考えるか、お伺いします。

只野雅人専修大学大学院法務研究科教授

○参考人(只野雅人君) 現在の選挙制度の改正のお話でございますが、まず定数削減についてですけれども、特にほかの国との比較、それから過去の日本の定数との比較ってすごく大事だと思っております。どの定数がよいかと、これ経験的にしか分からないことですけれど、比較の中からある程度答えが出てくるだろうと。  そういう点で申しますと、現在の衆議院議員定数が多いとは、私、決して思っておりません。むしろもっと増やしてもよいのではないかと。他国ですとか過去の定数ですね、これをよく見ていただかないと、十分民意が反映できないということになると。  それから、小選挙区残して比例だけ減らすということになりますと、当然、これ政治的な有利不利、大きくこういう問題が出てまいります。特に、二月に衆議院選挙あったばかりでございますけれど、それを踏まえるとどういう事態になるのか、ここはよく御検討になってしっかり考えていただく必要があるんじゃないかと。安易に定数を減らしたらよいというものではないということは是非申し上げておきたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) 私も只野参考人と全く同意見でございまして、現在の衆議院議員の先生方の定数が多いとは私は全く思っておりません。

宮出千慧参政党

○宮出千慧君 ありがとうございます。  次に、長谷部参考人にお伺いをいたします。  先生は、衆議院議員の任期延長につきまして、令和五年五月三十一日の参議院憲法審査会におきまして、平常時そのものを非常時に近づけたり、憲法制度の全てを永続する緊急事態へと変質させるリスクを含んでいるという大変に重たい表現を用いて警鐘を鳴らしておられました。  そこで、この平常時の非常時化とは具体的にどのような現象を指しているのでしょうか。例えば、例外措置の常態化、政府権限の肥大化といった点につながっていくのか、憲法秩序全体への影響という観点から御説明いただけると助かります。

長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授

○参考人(長谷部恭男君) これは、先ほど来申し上げていることとつながっているんですけれども、こういう緊急と見えるような事態が生じたときにやはり重要なのは、なるべく早く原状、元々の原則に戻すということが、これがとてもとても大事です。それにもかかわらず、緊急事態に対応するための制度、新たな制度を一旦つくってしまって、それが現に走り出してしまいますと、先ほどから、これまた先ほどからずっと申していることなんですけど、なかなか元に戻らないんですね。  フランスの例を先ほども申し上げましたけれども、例えば衆議院、一旦解散をされてしまった衆議院の先生方、復活をさせて国会として機能するようにしたとしましても、これが一体いつまで続くのかという問題が実は出てまいります。一定の期限を設けたといたしましても、それはやっぱり、やはりまだまだだから続けましょうと、議決によって延ばすということもあり得るでしょうし、その議決の際に両院の議決が食い違うということも当然あり得るわけで、食い違ったときにはこの制度、新しい制度そのものが、参議院の先生方の審議と議決は信用できないという出発点にひょっとすると立っている可能性がございますから、そうすると、当然のことながら衆議院の議決の方が優越をするということになるはずでして、参議院の先生方の御意思にも反してどんどん、異様な形の国会というのが、任期がどんどん延長していくと、そういうリスクもございます。まさに平常時が異常時に変容していくと、そういうリスクがあるという、そういうことを申し上げております。

宮出千慧参政党

○宮出千慧君 ありがとうございます。  時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。

長浜博行立憲民主・無所属

○会長(長浜博行君) 他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人の皆様には貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。審査会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時十分散会

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