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213回国会参議院2024/05/14

農林水産委員会 第9号

発言数
88
登壇者
13
会派数
6
開催日
2024/05/14

会議録

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日、松野明美君が委員を辞任され、その補欠として金子道仁君が選任されました。     ─────────────

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、五名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、東京大学大学院農学生命科学研究科教授中嶋康博君、一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事馬場利彦君、明治大学農学部専任教授作山巧君、特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長野中和雄君及び農民運動全国連合会会長長谷川敏郎君でございます。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、中嶋参考人、馬場参考人、作山参考人、野中参考人、長谷川参考人の順にお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず中嶋参考人からお願いいたします。中嶋参考人。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) ありがとうございます。東京大学の中嶋でございます。  本日は、このような発言をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。  私は、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会の部会長を務めてまいりました。同部会では、委員の皆様から非常に多様な御意見をいただき、我が国の食料、農業、農村において直面する課題を多角的に検討する機会を得ることができました。  そこでの議論は審議会の答申としてまとめることとなりましたが、今回の改正案を拝見して、部会で議論したこと、答申で提案した内容は漏れなく盛り込まれているように感じたことを初めに申し上げたいと存じます。  この後のお話のアウトラインと、関連する図表を資料として用意いたしましたので、そちらも適宜御覧いただければ幸いに存じます。  まず、お話の一番目のポイントは、基本法検証を行う上での前提でございます。  私は、現行基本法の枠組みは非常によくできていて、現在の食料、農業、農村分野における課題と政策を体系的にうまく取りまとめていると評価しておりましたので、検証のやり方としては、枠組みを根本から変更するものではなく、時代にそぐわなくなった事項を外したり、必要になったものを付け加えたりすることで対応できるだろう、それゆえに、現行基本法が制定されたときのような基本問題調査会を立ち上げるようなスタイルは採用しなくてもよいと考えておりました。  部会の開催は限られた回数でありましたが、地方意見交換会も含めれば、それでも一年近く時間を掛けて検討したところでございます。論点を的確に選んで、非常に効率かつ効果的に議論ができたと思っております。  現行基本法は、一九九〇年代の社会経済情勢を背景にしたものとなっております。国内農業界では、九〇年代半ばに開始したWTO体制に身構えたところがございましたが、今振り返ってみますと、あの時期はひとときの安定期ではなかったかと言えそうでございます。  しかし、その後、すぐに大きな転換期を迎えることとなり、現行基本法が制定された後の約四半世紀の間に社会情勢は非常に大きく変化していたことを検証作業を行ってみて認識いたしました。それは、国際的な食料や環境をめぐる課題や政策的な議論が大きく様変わりしていったこと、そして国内的には本格的な人口減少社会に突入したことから、食料、農業、農村分野に様々な課題が突き付けられることとなりました。  また、この期間、景気の回復が遅れたことは我が国の国際的な経済力を低下させ、また、長くデフレから脱却できなかったことは、食料、農産物価格を低迷させてしまったところであります。  そのような状況の中で、様々な課題が現れて、新たな施策が展開されてきました。それらは現行基本法の枠内に収まるものもございますが、やはりどうしてもはみ出てしまうものがあり、今回の改正で理念の変更や条文の追加が行われることになったと承知しております。これについては後半で触れようと思っております。  このように、改正した内容が長く有効であり続けたために、今後二十年間に予想される課題は十分に考慮すべきとされました。それは、気候変動がもたらす食料需要をめぐる懸念、人口減少によって引き起こされる経済的課題、持続可能な社会を築くための国際的な要求事項などが指摘されたところでございます。  続いて、お話の二番目のポイントは、食料安全保障をめぐる事情です。  今回の改正に着手するきっかけは、我が国の食料安全保障に関して懸念が高まったことが背景にあるのは言うまでもないところでございます。二〇二〇年以降、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行、国際的に不安定な農産物の生産状況、ロシアのウクライナ侵攻という地政学的なリスクが引き金となった食料や農業資材の国際マーケットの変動など、断続的に重大な事案が次々に発生しております。  ここでスライドの方を御覧いただきたいと思います。一枚めくっていただきますと、スライド一で、二〇二〇年以降に国際価格が急騰したことが確認できますが、そもそも二〇〇〇年代半ばには一九九〇年代と比べて価格が二倍ほどに上昇し、その後、それ以前の水準には決して戻っておりません。しかも、価格の乱高下が常態化していることが分かります。  次のスライド二はちょっとミスして挿入してしまいましたので、これは飛ばしていただければと思います。  スライド三に移りまして、このような情勢を引き起こした要因をここでは示しております。こちらには、世界の人口、穀物生産、そして輸入貿易量の推移を示しています。  世界の人口はとどまることなく増え続けています。そのために、食料の需要が増えますし、また、ここには示しておりませんが、経済成長が同時に起こって食肉消費が増えることで餌の需要も上昇しております。それに応えるように、世界の生産量も着実に増えております。  世界全体を見渡したときに、生産と消費の偏在は貿易を拡大することとなり、事実、このグラフのように、世界の輸入量、そしてそれは輸出量でもありますが、確実に増え続けていて、それが二〇〇〇年を越えてから急激に拡大していることが確認できます。このことが世界の穀物価格の動向に構造変化をもたらしていると言えます。食料自給率が低い我が国は、海外からの輸入に頼らなければならないので、このような状況は大きな脅威となります。  スライド四は、少々見にくいグラフで申し訳ございませんが、主要国の穀物輸入量の推移を示したものです。  このグラフから、日本は長い間世界で一番穀物を輸入し続けていたことが分かります。現在、これまでのように、好きなだけ輸入できるポジションは揺らいでおります。改めて、国内生産の振興に力を入れるべきであり、食料自給率の向上を目指すべきであります。  このように海外に依存しなければならないような食料自給率の低下がなぜ起こったのかの説明にスライド五がよく利用されます。  そこで示されているのは、国内で自給できる米は需要がどんどん減少する一方で、国内で自給が難しい畜産物や油脂類の需要が増え続けていることが理由とされます。  もちろんそのような食料の構成の問題もあるのですが、歴史的に見てもっと大きく影響したのは、人口が成長し、必要とされる食料が増加したことであります。  スライド六は、食料自給率がどのように低下してきたか、現在はどのように推移しているかを示しております。  青色の折れ線グラフがカロリーベースの食料自給率を表しておりますが、かつては八〇%近くあったのが、現在四〇%ほど、半分程度の水準で低迷しております。自給率は分母を国内消費、分子を国内供給とする比率で計算されるところですが、こちらの図では、分母の国内消費は国内の一日当たりの総供給熱量とし、分子の国内供給は一日当たりの国産総供給熱量で把握しております。  一九六〇年代から九〇年代にかけて自給率は急落していきますが、これは、人口が拡大して分母の国内消費が急激に増えたにもかかわらず、国産供給を向上させることができなかったからであります。なぜ食料生産を増やせなかったかといえば、国内の農地が限られているからです。  スライド七は、国内農地面積では必要とされる食料は生産できないことを示しております。  先ほどのスライド六を再度見ていただくと、現行基本法が制定された後の時期に自給率はしばらく維持されて、その後じりじりと低下しています。このような状況となったのは、分母の国内消費が減少し始めたからです。しかし、残念ながらこの時期に、分子の国内供給は増えませんでした。二〇〇〇年代当初は、消費が減少するのと同じような歩調で供給が減少し、自給率は変わりませんでしたけれども、その後はそれ以上に供給が減少したために自給率が減り始めたのです。  スライド八では、自給率の減少率を生産要因と需要要因に分解して示しました。  消費要因については、二〇〇〇年頃までは消費が伸びていたために自給率を引き下げるように作用しましたが、その後は、消費が縮んでいるために引き上げるように作用しております。一方、生産要因は、一九七〇年代半ばに一時的に自給率を引き上げるように作用しましたが、それ以外は一貫して引き下げてしまっております。特にこの数年は大きな下げ圧力を生み出してしまっています。  スライド九に示すように、国内の農業生産構造は弾力的に大きく変化しています。需要に応じた生産が行われていることがかいま見られます。ただし、産出水準は実は一貫して低下しております。  スライド十は、国内の農業産出額の推移を示しています。名目の産出額、売上額はここのところ増加していることが確認できますが、実は物価調整をして計算された実質の産出額は、一九八〇年代半ばからずっと低下傾向にあります。このことが先ほどの自給率の計算に係る分子を引き下げることになっています。なぜこのように産出が低下し続けるのでしょうか。  それは、スライド十一にございますように、まず経営体が減っているからです。もちろん経営体が減っていてもそこで働く人らが増えていれば問題ないのですが、スライド十二のとおり、農業労働に従事する人は激減しております。それと同時に農地の利用度が低下し続けています。  スライド十三にあるとおり、転用等で農地面積が減少するとともに、農地の稼働率を表す耕地利用率は一〇〇%を切って下がり続けています。  スライド十四は、農業の投資動向を示しておりますが、信じられないほど投資が減り続けています。労働も土地も資本もこれだけ減り続けるならば、生産が伸びないのは当たり前です。  その状況を数値化したのがスライド十五です。  申し訳ございませんが、このグラフの基礎となるデータは農業だけではなく林業や水産業も含んでいるので、やや正確さを欠くところがありますけれども、およその動向を理解する手掛かりとはなります。詳しい説明は省きますが、このグラフからは、一九九〇年以降二〇一〇年頃まで確かに産出が下がっていたものの、実は労働や資本などのいわゆる投入はそれ以上に大きく減少していることが分かります。産出はなぜそこまで減少していなかったかというと、技術進歩によって少ない投入でより大きな産出を生み出すような生産性の向上があったからでございます。グラフでは、全要素生産性、TFPと書いてありますが、この程度が青い縦棒グラフで示されております。例えば労働は、人口減少社会において、今後増やすことはできないと思います。  このように、人手不足が続く中で、この生産性の向上を今後も維持しなければ、日本農業の生産性は立ち行かなくなるのです。このためにスマート農業の推進が鍵となりますが、それには投資が必要となります。しかし、先ほどのスライド十四にも示しましたし、また次のスライド十六が表しているとおり、一九九〇年以降、投資が減少し続けています。何とかして投資を増やしてもらわなければなりませんが、そのためにはそれぞれの経営者が将来の見通しや期待を持てなければ実現しないと思います。そのために、将来を目指した新たな方針が基本法の改正に合わせて提案される必要があると思っております。  お話の三番目のポイントは、今回の改正で加えられた事項です。恐れ入りますが、一枚目のアウトラインにお戻りいただければと思います。  加えられた事項の一番目です。基本理念の変更で、食料の安定供給の確保が食料安全保障の確保へと変更されました。供給を確保するだけでは食料が届かない人がいるという現実を踏まえて、入手可能性という概念を導入し、改めて食料安全保障の概念と政策枠組みを提案されました。このことについて、国際的な観点を導入するという議論が検証部会でされたところです。また、不測時の食料安全保障措置を強化されています。  二番目は、環境と調和の取れた食料システムの確立という五つ目の基本理念を新たに制定したことです。食料システムという概念も改正法案で提起されています。こちらも国際的な議論の枠組みを導入した結果であります。  三番目は、本文中に明確に人口減少を前提とした政策を打ち出していくべきことが書き込まれました。  四番目は、消費者の役割として、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることなどが書き込まれました。  五番目は、価格形成の在り方について、先ほども述べた、環境と調和させるシステムを実現するために持続的な供給に要する合理的な費用へ配慮することが提案されております。  六番目は、食料安全保障の評価指標目標として、食料自給率以外の指標を設けることが提案されています。  七番目は、これまで農産物の貿易政策が輸出入一体的に定められていたのが、輸入と輸出を明確に分けることとなりました。  八番目は人的資本形成への言及、九番目は新技術の活用、十番目は知財管理、そして、十一番目は農業資材政策の拡充を定めております。  十二番目としては、保全に資する共同活動を農業施策の事項として新たに位置付けを行っております。  十三番目は、この十年ぐらいの間に食料供給や農業活動に関わるようになってきた様々な主体を明確にしたところです。これは幾つもございます。第十二条では、新たに団体の努力という条文を定めて、食料、農業及び農村に関する団体の役割を明記しました。これは、第十九条でのフードバンクなどのNPOや、第四十五条での地域おこし活動をするRMOなどが想定されます。第二十六条では、地域の協議に基づきながら、農地の確保につながるような多様な生産活動への期待が示されています。第三十七条では、新技術を積極的に利活用するサービス事業体の活動を促進することとしています。第四十六条では、農福連携が地域農業の振興に資すると位置付けられました。  最後、十四番目に、リスク対策として、伝染病や鳥獣害という脅威への対策を明確に政策体系に組み込むこととなりました。  以上、駆け足となりましたが、今回の改正内容の背景と実際について述べさせていただいたところであります。社会が大きく転換するこの時代に、本改正により我が国の食料、農業、農村分野での新たな取組が強化されて、食料安全保障の確保を始めとした五つの基本理念がしっかりと達成されることを願っております。  以上をもって私の陳述を終えたいと思います。どうもありがとうございました。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ありがとうございました。  次に、馬場参考人、お願いいたします。馬場参考人。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) おはようございます。JA全中で専務を務めております馬場と申します。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。  お手元に資料をお配りしております。食料・農業・農村基本法改正についてということで、私の名前が入ったもので、横組みのものですが、時間も限られておりますので、早速この資料に基づき意見を述べさせていただきます。  資料一ページを御覧ください。  JAグループは、食料安全保障の強化を最重点課題として、食料・農業・農村基本法の改正を強く求めてまいりました。その背景にある情勢認識としては、食と農を取り巻く五つのリスクがあるというものであります。  一つ目は、食料自給率、長きにわたって低迷しており、食料を多くの輸入に頼り続けております。  二つ目は、生産基盤の弱体化でございます。農業生産基盤の弱体化ということで、農家の減少あるいは高齢化、農地の減少が進んでおります。  三つ目は、自然災害の多発ということで、異常気象が常態化しており、日本もあるいは世界も農業への影響が拡大しておるところであります。  四つ目は、国際化の進展です。TPP11や日米貿易協定など国際化は急速に進んでおります。一方、日本の経済的地位の低下等もあり、買い負けも懸念される状況であります。  五つ目は、世界的な人口増加と更なる食料争奪あるいは食料不足が懸念されます。これに新型コロナウイルスやウクライナ情勢も加わり、国民に安定して食料を供給できなくなるリスクが非常に高まっております。  こうした危機感の下、JAグループは、農政の憲法たる食料・農業・農村基本法の見直しを、食料安全保障の強化を最重点課題として訴えてまいりました。  資料二ページを御覧ください。  生産現場の農業者の声を届くべく、令和四年から節目ごとに三度にわたる組織討議を行い、政策提案を取りまとめ、政府に対して提案をしてまいりました。特に、ここにありますように、五つ、食料安全保障の強化と国産への切替え、再生産に配慮した適正な価格形成の実現、多様な農業者の位置付けと農地の適正利用、四つ目に経営安定対策の強化、さらに、五番目にJAなど関係団体の役割強化、この五つの点が、まさに農業所得の増大、農業生産の振興、地域の活性化を実現していく上で重要な点と考えており、特に反映を求めてきたところでございます。  三ページを御覧ください。  では、実際の政策提案とその背景について説明をさせていただきます。三ページの表は、左側にJAグループのこれまでの政策提案のポイントを抜粋しております。右側に基本法改正法案における記載内容を整理したものであります。時間の関係上、先ほどの五つのポイントに絞って説明をさせていただきます。  まずは、食料安全保障の強化に向けて、現行法には不測時の措置しかなかったものを踏まえて、平時における食料安全保障を基本法の目的として明確に位置付けること、その状況を的確に定期的に評価し、施策に反映することなどを訴えてまいりました。その背景には、既に述べたとおり、食と農を取り巻くリスクが急速に高まったことを踏まえたものであります。  この点について、基本法の改正法案の目的には食料安全保障が明確に位置付けられました。また、食料自給率等の目標も、その向上、改善を図るよう定めることに加え、少なくとも年に一回、目標の達成状況を調査、公表することが明記されました。  資料四ページは時間の関係でちょっと省略させていただきます。  五ページまで飛んでいただきまして、適正な価格形成についてであります。  生産資材の価格が、飼料、肥料、燃油を始め、ここ数年で大きく急騰、高止まりをしております。急激に進む円安の動向等によってはまたじわりと高まることも想定されて、先行きが非常に不安、不透明でございます。一方で、世界的な物価高騰の中でも、国産農畜産物は取り残されており、適正な価格形成が進んでおらず、農業者の所得が急激に減少しております。国の様々な対策もあり、何とか営農は継続できておりますが、このままでは多くの地域で営農が継続できるかどうかという危機的な状況に立ち入っております。  こうした中で、農業の再生産に配慮された適正な価格形成を位置付けることと併せて、その仕組みの具体化、さらに、事業者、消費者についても、食料システムを持続可能にする関係者として一定の責務、努力を負うよう提言をしてまいりました。  改正基本法では、消費者において、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めるということが新たに明記されるなど、生産者のみならず、消費者もまた事業者も、それぞれの役割、努力を果たすとされており、持続可能な農業の実現に向けて重要なことだというふうに考えております。  続いて、六ページを御覧ください。  多様な農業者の位置付け、役割であります。地域計画に位置付けられた多様な農業者を位置付けることや、農業サービス事業体の育成、確保を提言してまいりました。  現行の基本法では、効率的かつ安定的な経営体である担い手を育成を重視し、それ以外の農業者の位置付けは不十分なものでありました。農地の受け手となる担い手の育成、確保は重要であることは言うまでもありませんが、生産現場では多様な農業者が共存することで地域の農業、農村が営まれております。農業者の急減により、担い手も農地を引き受け切れないケースも増えております。水路や農道の維持など地域のインフラを良好に保つ上でも、多様な農業者が役割を発揮しているのが現状であります。  今回、望ましい農業構造として多様な農業者が位置付けられたことは、実態を捉えた重要な転換だと考えております。  また、経営安定対策においても、農業生産資材価格の著しい変動、に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じるものというふうに新たに明記されました。幅広い生産資材価格が高騰し、適正な価格形成が追い付いていないこの状況において大変重要な内容であり、厳しい状況に置かれている生産現場からすれば心強い内容であります。  続いて、七ページの環境負荷低減やスマート農業、八ページの輸出や知財、知的財産、九ページの防災・減災や家畜伝染病、病害虫の対応、さらには十ページの農村の活性化については時間の関係上省略させていただきます。  資料十一ページを御覧ください。  JAなど関係団体についても、食料、農業、農村に関する団体の活動が基本理念の実現に重要な役割を果たすことということを新たに位置付けられ、相互の連携も促進するとされました。  以上のように、現在審議されております食料・農業・農村基本法の改正案はJAグループがこれまで提案を行ってきた内容をかなりの部分反映をいただいているものというふうに考えており、その内容を評価いたしております。  今後の課題としては、改正される基本法に基づき、新たな基本計画等を通じていかにして施策を具体化していくかであります。三点ほどそのポイントを、考えていることをお話をさせていただきたいと思います。  資料十二ページでございます。  一点目は、食料安全保障の確保に向けた基本政策の確立であります。  基本法は理念法であり、その理念を実現するためには、必要な施策の具体化と万全な予算の確保が不可欠であります。  ここにありますとおり、一九九九年の現行基本法の成立から現在まで農水省の予算の推移を見ますと、国全体の予算規模が拡大する中で、残念ながら右肩下がりの状況です。  今後は、食と農に関するリスクが高まる中で、食料安全保障の確立に向けて必要な予算を、政策を具体化するかとともに、いかにして安定した予算額を確保するかが農業者が先を見通して営農する上で極めて重要であります。  資料十三ページを御覧ください。  二点目は、次期基本計画の実効性の確保であります。  食料自給率を始め食料安全保障の確保に向けて、適切な目標設定と達成に必要な施策の着実な実行が重要というふうに考えております。  基本法では、少なくとも年一回は目標の達成状況を調査、公表するものとされております。目標達成の状況を基に施策を不断に検証するとともに、必要に応じて機動的に施策を見直すことが必要であります。  既に岸田総理の国会答弁においても、調査結果を踏まえ機動的にその改善を図る旨明言をいただきました。是非ともその方向で取り組み、次期基本計画の実効性を高めることが重要だと考えております。  資料十四ページを御覧ください。  三点目は、適正な価格形成と国民理解醸成、行動変容であります。  国産農畜産物の価格はまさに農業者にとってみれば賃金であり所得であり、生産現場の危機的な状況を踏まえれば、適正な価格形成の実現に向けて速やかに法制化を図ることが必要であります。  国産農畜産物においては、適正な価格形成を進めると需要が国産から輸入に流れるのではないかというような御意見もございますが、お金を出せばいつでも食料を輸入できるという環境ではなくなりつつある中で、価格を上げれば需要は減るというデフレマインドから一歩前に進むのは今しかないと考えております。  政府の適正な価格形成に関する協議会も行われており、その中で、今後の検討方向として、適正な価格形成を新たな商習慣としてサプライチェーン全体で定着させることや、需給と品質を基本としつつ、合理的な費用が考慮される仕組みの法制化を視野に検討する旨記載されてございます。早期にこの適正な価格形成の具体化を図ることが重要だと考えております。  一方で、食料システムの関係者、何よりも国民の理解を得ることが極めて重要です。  残念ながら、そこにもありますが、割高でも国産を選ぶ方の割合減少しています。産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合や、環境に配慮した農畜産物、農林水産物・食品を選ぶ国民の割合も減少しております。  政府が目指す、三十年余り続いたコストカット経済から所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行するということはもちろんでありますが、改正基本法を踏まえて適正な価格形成に向けた理解の醸成、さらには、国産農畜産物を選択する行動変容につながる施策を抜本的に拡充することが必要だというふうに考えております。  資料十五ページでございます。  もちろん、JAグループとしても改正基本法の理念を踏まえて、その実現に向けてしっかりと取り組んでまいる所存であります。  農業者の所得増大に向けて、販売力の強化や低コスト生産技術の普及、さらに、新規就農者の支援などはもちろん、農業者の高齢化や減少が進む中で、農作業の受託、あるいはスマート農業の導入なども増えております。また、環境負荷低減に関する社会の関心が高まる中で、三月には環境負荷に関する環境調和型農業に関する取組方針を定めたところでございます。  十六ページを御覧ください。  単純に環境負荷を低減すれば、生産、所得が確保できなければ取組は継続できません。また、消費者に対しても、安定供給ができなければ、食料安全保障の確保にもつながりません。  JAグループとしても、責任を持って農業の持続性を確保する観点から、農業者の所得確保、増大を、食料安全保障を確保しつつ、自然環境への負荷の低減と適応を図る農業、これを環境調和型農業とし、位置付け、取り組んでいくこととしております。  最後に、資料十七ページを御覧ください。  国民理解の醸成と行動変容に向けたJAグループの取組です。食料安全保障のリスクが高まる中で、私たちの国で消費する食べ物はできるだけこの国で生産するという国消国産をJAグループ独自のキーメッセージを掲げて、JAグループ一体となった運動に取り組んでまいりました。  地域では地産地消を基本とし、日本全体では国消国産に取り組むと、それが結果としてSDGsの達成にも貢献していくということで、昨年から取組を進めておりますけれども、今後とも、引き続き取組を継続して、国産の農畜産物の価値を知っていただき、また、それが持続可能な農業と社会につながることを発信してまいります。  以上をもって、私からの意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ありがとうございました。  次に、作山参考人、お願いいたします。作山参考人。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) ただいま御指名をいただきました明治大学の作山です。  本日は、意見陳述の機会をいただき、光栄に存じます。  私は、公募で明治大学に着任する以前は農林水産省に二十五年間勤務しておりまして、特に、一九九七年から一九九九年には、大臣官房企画室企画官として食料・農業・農村基本法の策定に従事をしました。農業の多面的機能、定量評価や中山間地域等直接支払の導入を担当しました。本日は、こうした行政経験も踏まえて意見を述べます。  なお、意見陳述の際には随時配付資料に言及しますので、各スライドの右下に付したページ番号を御参照ください。  まず、私の総論的な評価を述べますと、今回の改正案は検討期間が短く、過去の政策の検証や評価が十分ではないと、それから、条文の変更は多いのですが、中山間地域等直接支払制度のような生産基盤を強化するための新たな支援策が乏しいといったような問題があると考えています。  こうした観点から、以下では食料安全保障と食料の合理的な価格形成を中心に意見を述べます。  まず、食料安全保障についてです。  配付資料の三ページを御覧ください。  基本法における食料安全保障の捉え方を私なりに整理すれば、現行基本法の第二条第四項は有事における国家レベルの供給確保性に着目しているのに対しまして、改正案の第二条第一項は平時における個人レベルの入手可能性に着目しています。また、後者について農水省は、FAOと略称される国連食糧農業機関による国際的な定義に合わせたと説明しています。  しかし、改正案には二つの問題があると考えます。  配付資料の四ページを御覧ください。  第一は、食料安全保障という用語の使い方です。大辞林によりますと、安全保障は、国外からの攻撃や侵略に対して国家の安全を保障することという有事を指す概念で、平時の入手可能性に食料安全保障という用語を当てるのは語意に矛盾があります。食料・農業・農村政策審議会の会長を務められた生源寺眞一先生を含む多くの有識者もFAOのフードセキュリティーは食料確保や食料保障を指すと述べており、FAO本部で勤務経験のある私も同意見です。  第二は、食料安全保障に関する指標の不在です。FAOは、フードセキュリティーを平時における個人レベルの入手可能性と捉えているからこそ、それを満たさない世界の栄養不足人口を推計し、その削減を目指しています。改正案での定義がFAOと同じなら指標も同じになるはずですが、主に開発途上国を想定した指標が日本にとって妥当とは思えません。この点は改正案の第十七条に規定された基本計画で定めるのかもしれませんが、食料安全保障の新たな定義に即した指標の検討が不十分と考えます。  これに関連して、改正案の第十七条第二項第三号に規定された食料自給率の目標について述べます。  周知のように、基本計画で設定された供給熱量ベースを含む食料自給率の目標はこれまで一度も達成されたことがありません。  配付資料の五ページを御覧ください。  食料自給率は、食料の国内消費を分母、国内生産を分子とし、国内消費に占める国内生産の割合を表したものです。他方で、後述する食料自給力は分子のみに着目し、現在の農業資源で供給可能な熱量を表したものです。  その上で配付資料の六ページを御覧ください。  その左側に示したように、供給熱量ベースの食料自給率の分子は国産供給熱量、分母は総供給熱量で、これらは更に構成要素に分解することができます。このため、六ページの右側に示したように、分子の国産供給熱量は輸入品に代替する国内生産が増えれば増加し、食料自給率は上昇するのに対して、国内で自給できる品目の国内消費が減れば減少し、食料自給率は低下します。他方で、分母の総供給熱量は一人当たり供給熱量や人口が増えれば増加し、それによって食料自給率は低下します。  これを踏まえて、配付資料の七ページを御覧ください。  この図は、一九九八年度を基準に供給熱量ベースの食料自給率の変化要因を二〇二〇年度まで累積したものです。この図によれば、過去二十二年間で食料自給率が低下した主因は米のような自給品目の消費減少で、その大幅な低下を防いでいるのは高齢化による一人当たりの熱量減少という好ましくない要因です。他方で、小麦、大豆、新規需要米の生産増加の寄与は僅か一・二ポイントで、米の国産熱量の減少の四分の一にすぎません。つまり、食料自給率向上のために最も必要なのは消費者の輸入から国産食料へのシフトですが、実際に起こったのはその正反対で、今後もそれが変わる見込みはなく、改正案にも具体的な対策はありません。また、図では、二〇二〇年度に人口の減少が食料自給率の上昇に寄与したことが示すように、今後の人口減少は食料自給率の上昇に寄与しますが、それを抑制しようとする国家目標と矛盾する点も見逃せません。  食料自給率の更なる問題について、配付資料の八ページを御覧ください。  長期的に見ると、左側の軸に示した食料自給率は過去二十年間でほぼ横ばいなのに対して、右側の軸に示した芋類の消費を想定した食料自給力指標は、農業者や農地の減少、芋類の単収減少で低下し、二〇三〇年度には一人一日当たりのエネルギー必要量すら下回ると農水省は見込んでいます。つまり、輸入が途絶すれば日本人全員が生存できないほど生産基盤が弱体して、衰退しているにもかかわらず、分母も低下しているため、食料自給率には反映されません。このように、食料自給率は、有事における国家レベルの供給確保性を反映しない点でミスリーディングです。  基本法の策定時に農水省の事務方は食料自給率の目標設定には反対で、配付資料七ページの分析は、その懸念が正しかったことを示しています。  このため、今後定める基本計画では、有事における国家レベルの供給確保性の指標には食料自給力を用いた上で、それを担保する政策手段として直接支払を位置付けるべきというのが私の提案です。  次に、食料の合理的な価格形成について述べます。配付資料の九ページを御覧ください。  これは、食料の価格形成に関する改正案の条文を抜粋したものです。まず、新設の第十九条は、消費者の視点で、食料の円滑な入手の確保を定めています。また、新設の第二十三条は、生産者の視点で、食料の持続的な供給に関する費用の考慮を求めています。他方で、一部改正される第三十九条では、農産物の価格形成に関して、需給事情及び品質評価の反映という市場原理を規定しています。  これら三つの相互関係を示したのが配付資料の十ページです。  食料の価格は、消費者は安いほど良く、生産者は高いほど良い一方で、多くは市場原理で決定される点で相互に矛盾をはらんでいます。しかし、改正案はそれら三つを単に併記しただけで、矛盾の解消策を示していないように見えます。  食料の価格形成の問題は、長期的にはデフレ、短期的には生産資材価格の高騰による農業の収益性の悪化に起因し、それには大きく分けて二つの対策があります。  第一は、農産物への価格転嫁であり、改正案の第二十三条がそれに該当します。しかし、価格転嫁を強制することはできず、仮に実現すれば、食料価格が更に上昇し、特に低所得者が打撃を受けるという問題もあります。  第二は、生産者に対する直接支払で、その一例として、民主党政権下で実施された米に対する戸別所得補償制度の効果を配付資料の十一ページに示しました。  十一ページを御覧いただきますと、その制度は米の生産農家に十アール当たり一万五千円を払うもので、六十キロ当たりの単価は千六百八十九円になります。その上で、経済理論を用いると、手取り価格の上昇による生産者の利益は六十キログラム当たり六百七十一円なのに対して、市場価格の下落による消費者の利益は六十キログラム当たり千十八円になります。  配付資料の十二ページは、その算出根拠となる経済理論を示したものです。  技術的になりますのでその詳細は省きますが、重要なのは、生産者に対する直接支払は、その全てが生産者の取り分になるのではなく、市場価格の低下を通じて消費者にも利益が及ぶということです。  その上で、実際の米価格の推移を配付資料の十三ページに示しました。  左側の軸は水田作経営における十アール当たりの農業所得で、青色の線がその推移を示しています。また、右側の軸は二〇二〇年を一〇〇とした米の消費者物価指数で、オレンジ色の線がその推移を示しています。  通常は、米が豊作になると価格が下落するため、生産者の所得は低下し、それを受けて翌年の米の消費者価格も低下するため、オレンジ色の線は青色の線より一年遅れて連動します。しかし、戸別所得補償制度が実施された二〇一〇年や二〇一一年には、米生産者の農業所得は上昇する一方で、米の消費者価格は低下しました。つまり、直接支払で市場価格が低下するのは経済理論にとっては当然の結果で、それによって消費者の実質所得の向上、米の消費拡大、輸出の拡大につながる点で、現行の政策より利点が多いことは明らかです。この点は、二〇〇九年に当時の石破茂農相が示した米政策に関する試算でも裏付けられています。  食料価格の低下は、特に所得が低い世帯には朗報です。配付資料の十四ページを御覧ください。  これは、消費支出額に占める食料支出額の割合であるエンゲル係数について、二〇二二年の数値を十段階の年間収入階層別に示したものです。右側の軸に示した折れ線グラフを見ると、エンゲル係数は、最も所得の低い階層では三二なのに対して、最も所得の高い階層では二二と一〇ポイントもの差があります。つまり、食料価格の上昇は特にエンゲル係数の高い所得層に打撃となるため、価格転嫁が無条件に肯定されるわけではありません。  私が提案する相互矛盾の解消策は生産者への直接支払で、その仕組みは配付資料の十五ページのとおりです。  ここで右側の図を御覧いただきますと、相続税、法人税、所得税のような累進構造を持つ税を引き上げると高所得者の消費支出額が減少する一方で、それを財源とした生産者の直接支払を実施すると、さきに説明した仕組みで消費者の食料価格が低下し、消費支出額が減少します。つまり、図の白抜き部分の金額が高所得者から低所得者に移転し、それによって高所得者のエンゲル係数は上昇する一方で低所得者のエンゲル係数は低下するため、その意味で格差は縮小します。なお、最近の円高による空前の利益を踏まえると、輸出企業への課税も有望な財源と考えます。こうした政策によって価格形成をめぐる相互矛盾は解消します。  まず、消費者は、食料価格が低下し、特に低所得者が利益を受けます。また、生産者は、農業所得が上昇し、農業の収益性が改善します。さらに、直接支払は政府が価格に介入しないため、市場原理を損なうこともありません。市場で決定される価格が生産者にも消費者にも適当でない場合に、政府を介した納税者からの所得移転によって、市場原理を尊重しつつそれを補う政策ということになります。これまでの説明を要約したのが配付資料の十六ページです。  私は、食料安全保障と食料の価格形成について意見を述べましたが、改正案の問題点は、食料安全保障では生産基盤の新たな強化策が示されず、食料の価格形成では相互矛盾を放置してその解消策が示されていないことにあると考えています。  しかし、実際には、両者の解決策はリンクしています。つまり、累進課税を原資として生産者に対する本格的な直接支払を実施、導入すれば、生産者価格が上昇する一方で消費者価格は低下することから、生産者と消費者の実質的な所得が上昇し、生産基盤の強化と経済格差の是正を通じて、改正案の意味での食料安全保障が確保されます。換言すれば、直接支払は、食料安全保障と食料の価格形成に対する一挙両得の解決策だということです。こうした直接支払は世界標準の政策でありまして、その導入の検討を附則又は最低でも附帯決議に盛り込むべきと考えます。  最後に、食料・農業・農村政策審議会の関与について付言します。  現行法の第十四条に基づいて、食料、農業、農村の動向、講じられた施策、講じようとする施策が審議会での議論を経て国会に提出されてきました。しかし、第十六条に移動した改正案では審議会の関与は削除される一方で、基本計画を規定した第十七条第七項には食料安全保障の確保に関する事項の目標に関する達成状況の公表が追加されましたが、審議会の関与はありません。  この結果、基本法に基づく審議会の関与は五年ごとに作成される基本計画のみとなり、政策の透明性や説明責任の低下が懸念されます。私としては、こうした審議会の関与を削除する改正は極めて疑問を持っています。  私の意見陳述は以上です。御清聴ありがとうございました。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ありがとうございました。  次に、野中参考人、お願いいたします。野中参考人。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) 本日は、こうした意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。  私は、農村政策について、中心に御説明を、意見を述べさせていただきます。  といいますのも、今までの衆議院等の審議も通じましても、この食料、農業の部分につきましてはたくさんの議論が行われましたけれども、農村の部分につきましてはほとんどと言っていいほど議論が行われていなかったというふうに承知をしております。  そして同時に、私どもの、私どもというか、私の目から見れば、この農村政策の部分には、ある意味、ちょっと法案に誤解というか誤りがあるのではないかというような感じもいたします。この感じというのは、農村政策に対する誤りではないかというような感じ、あるいは違和感というのは、これは単に私がここで申し上げるだけではなくて、多くの農村政策に関わる専門家の方々も同じように意見を表明されたり、そういう感じを持っていらっしゃるということをここで私はまず申し上げたいというふうに思います。  それで、レジュメを作っておりますので、これを御覧をいただきたいと思います。  皆様方は農村政策というふうに言いますと、どういうイメージをお持ちになりますでしょうか。  農村政策というのは、もちろん農村に関する地域の政策、地域政策ということでございます。したがって、そこには地域に関するいろんなこと、仕事、暮らし、福祉とかですね、いろんなことがある。要するに、それを総合的に振興していくというのが地域政策であるわけでございまして、農村政策も同じでございます。  ところが、この農村政策は、今はこの農林水産省が主管をしているわけでございますけれども、かつては農林水産省の所管ではありませんでした。国土庁がこの所管をしておりまして、総合的な政策の企画推進等につきましては、国土庁の、まあ言ってみれば地方振興局というのがありまして、そこで所管をしていたわけでございます。  それが、一九九八年の中央省庁の改革の法案によりまして農林水産省に移ることになりました。その設置法によりますと、このレジュメにありますとおり、第四条の第三十七号に農山漁村及び中山間地域等の振興に関する総合的な政策の企画、立案、推進に関することというのが農林水産省の所管になりました。ちなみに、これと同じようなことが国土庁にあったわけでございます。それに伴いまして、農村振興局というのが設置をされました。  実は、私は、この直前まで構造改善局長というのをやっておりまして、いろいろあったんですけど、その施策を進めるに当たって農村のことをやろうと思ったら、ほかから言われました、他省庁から言われましたのは、いや、農林省は農村は所管していないんじゃないのと、農村は国土庁の所管じゃないのと言われて、大変悔しかった思いをよく覚えております。  ここで農林水産省が農村政策を所管をするということになったわけです。それに伴いまして、基本法でも、御存じのとおり、総合的な振興というのが書かれておりますし、それから基本法に、十七条に基づきます基本計画の中では、ここにも書いてありますように、農林水産省以外の府省の施策もみんな書き込んでいるわけで、農林省の政策が書いてあるだけじゃない、全部、だから総合的に書いてある。そして、その中で地域政策の総合化ということを新たにうたっております。  この地域政策の総合化につきましては、この資料の後ろの方にですね、この二枚目、三枚目、三枚目のところにこの基本計画が掲げてございまして、それを御覧いただくと分かりますけれども、関係省庁が連携をして総合的に進めるということが書いてございます。  そこで、その後、そういう状況から発足を、一九九九年発足したわけでございますけれども、その後、基本法、二十五年を経まして状況が大きく変わってきたわけでございますけれども、その変化というのは、皆さん御存じのとおりでございますが、一口に言ってこの地域政策の総合化というのを一層進めなければならないという状況に変化をしているというふうに考えます。  一つは、農村の価値、魅力の再評価が進んだということで、いろんな人が農村に入ってきて、今いろいろ活躍するようになったということで、農村も自信を取り戻していきつつあるという状況ですね。  それからもう一つは、農村の経済力ですね。これは、前は六次産業化というぐらいしかなかったんですけれども、今や再生可能エネルギーとかデジ活もありますけれども、いろんなことがありまして、農村でも経済が回っていくと、そしてその経済の実を中で循環していけば皆さんの所得につながるというような状況になったわけでございまして、地域政策の総合化というのは一層重要になっているということでございます。  それでは、そういうことを受けまして、基本法というのも当然変わってくる、きてしかるべきでありますけれども、それにつきましては、どういう点が変わるべきかということにつきましては二枚目の資料で御説明をいたしたいと思います。  食料・農業・農村基本法改正案に対する問題点というふうに書いておりまして、冒頭申し上げましたように、この法案に誤りがあるんじゃないかと私ちょっと申し上げましたけれども、そのことをちょっと具体的に申し上げて、皆さんに御審議をお願いしたいと思います。  一番目は、第六条の規定でございます。これは、農村振興の目的として農業の持続的な発展ということを掲げているわけでございます。これだけを掲げているわけですね。しかしながら、現状の農村というのは、農業の基盤であることはもちろんではございますけれども、いわゆる多面的機能が発揮される場ということで、国民もいろいろ、福祉、教育の場、その他国民にとっても非常に重要な場になっているわけでございまして、言わば国民の資産、財産といったような状況になっていると思うわけでございまして、これが農村の方々はある意味自信を付けてこれからやっていこうということで、非常に重要なことになっているわけですよね。これは、したがって、私は基本理念にしっかり書くべきだと。何でこれが基本理念から落ちているのかということは理解できないところでございます。  ちなみに、同じような地域振興立法でございます過疎法とか山村振興法とかは、棚田地域振興法も同様でございますけれども、昔の、以前の法律では非常に過疎地域、山村地域、ある意味遅れた地域というような規定が書いてございましたけれども、最近の、これが全部改正をされまして、最近に改正されました地域振興立法では全部、例えば過疎地域なり山村地域がその多面的機能を有して非常に国民にとってもかけがえのない価値のある地域だという規定をしっかり書き込んでいるわけでございますね。そういう意味では、農村についてなぜ書けないのかということを非常に疑問に持つ次第でございます。これが一点目でございますね。  それから第二番目に、同じく第六条、それから第四十三条二項も同様でございます。農村振興の手段として、農業生産条件の整備と生活環境の整備その他福祉の向上ということが書いてございまして、これだけであります。しかしながら、農村振興には、先ほども申し上げましたように、最近いろいろ可能性が開けてまいりました。再生可能エネルギーだとか、地域で経済循環していけば所得が上がっていってみんなのこの農村地域経済全体が向上すると、で、それによって農家の方も副業所得が入る、それ以外の方々も副業所得が入る、地域全体が豊かになると。そういうことであれば、当然、まあ農業所得がちょっと足りなくてもそれで補ってみんながそこに住むということが可能になるわけでございまして、これは非常に重要な項目でございます。したがいまして、当然この地域資源を活用した所得と雇用の確保というのを農村振興施策として位置付けるべきであるというふうに考えております。  ちなみに、これ三枚目を御覧いただきますと、現行の基本計画でも一番最初に、施策の一番重要項目として、地域の資源を活用した所得と雇用機会の確保というのを掲げているわけでございます。また同時に、EUの共通農業政策なんかでもこの地域経済の振興というのを掲げているわけでございまして、どうして日本の基本法ではこういうことを掲げないのかということは非常に疑問に思っておりまして、これも誤りではないかと思う第二点目でございます。  それから第三番目に、第四十三条第二項と第四十五条に、農村と関わりを持つ者の増加を図るための施策として、産業の振興とか地域の資源を活用した事業活動の促進という規定をわざわざ新設してございます。ところが、今申し上げておりますように、農村におきましては、農業者であっても、あるいは既にもう住んでいる住民の方であっても、みんな農業を、例の水路整備とかで手伝ってくれたりしてやっているわけですね、一緒にね。そういう人たちの、農業者も含めて、そういう方々のために地域で産業を起こしたり、当然、地域資源を活用したいろんなその活動ですね、経済活動、例えば再生エネルギーを生産して経済力を高めてそこからみんな副業収入を得るとかということは、まさに農業者とかそこに住んでいる地域住民の方のために必要なので、どうしてこの関係人口の方、あるいはこれに企業も入ると思いますけど、関係人口、企業のためにだけにこういう規定を新設するのか、こういう活動を推進するのかということは、ここの部分なんかは私は特に間違いじゃないかというふうな気もするわけでございまして、十分な御議論をお願いしたいと思います。  ちなみに、山村振興法では、基本理念に当然この産業の育成による就業機会の創出というのも掲げているわけでございます。当然でございますけどね。  それから、第四番目でございますけれども、まあこれは間違いというほどではないとは思いますけれども、現在農村で一番問題なのは人口減少、それから過疎化の加速化ということでございますけれども、これは何が原因かというと、農業で食べていけないことが原因です。食べていけないことが原因ですね。  それで、農業白書を見ると、農業白書を見ますと、個人経営体の農業所得の項目を見てください。百三万円ですよ、年間。年間百三万円の農業所得で食べていけるはずがないんですね、どんな施策を講じても。ですから、食べていけないということが人口が減って過疎化を進めている原因なんですね。であれば、やっぱり所得の確保というのを基本法としては中長期的な目標に絶対掲げるべきなんですね。何でこれを掲げないのかと思うわけでございます。  ちなみに、これ国際的に引いてもあれですけれども、EUの共通農業政策、これは、今のお渡しをしております資料の後ろから二番目を御覧いただきたいと思いますけれども、CAPの政策目標というのはここに十個出てまいりますけれども、そのトップですね、第一に農業者の公正な所得の確保というのが掲げてあるわけでございまして、最重要項目に所得の確保というのが掲げられている。ですから、日本もやっぱりこの所得の確保というのが大事。  それから、先ほど申し上げました基本計画ですね。基本計画の目次を先ほど御覧いただきましたけど、三ページです、もう一回御覧いただきますと、基本計画でも一番重要な項目として、地域資源を活用した所得及び雇用の確保と。ですから、所得が一番重要であるということは基本計画でも認識をしている。  これを、もし所得を、多分政府が嫌がるのは、この所得と書いたら、何か農業所得、そこまで所得補償しなきゃいけないというふうに思うからいけないんです。そういうふうに思う必要はないわけですね。これ、基本法というのは、どなたかからもありましたように、宣言法でありますから、政府の姿勢を示すものであります。だから、政府の姿勢として、農業者を確保していくためには所得が大事なんだと、ただ、それは今すぐに何か予算で全部カバーするとか、それはできないから中長期的に頑張るけれども、所得の確保ということを目標に掲げて頑張ろうというこの姿勢を示すことが基本法の一番大事な点でありまして、当然そこには、農業所得だけではなくて、先ほど申し上げました地域の経済力全体を高めて、そこから副業収入でもってカバーしていくということがあってもいいわけなんで、所得の目標を掲げた以上、農業政策も頑張るけれども、農村施策のその全体的な経済力の向上でも頑張るということに当然つながってくるわけでございまして、所得の確保、持続可能な所得の確保というのを排除する理由というのは全くないというふうに私は考えているわけでございます。  それから第五番目に、中山間地域政策でございますけれども、これ、残念ながら、現在、直接支払というようないい制度がこの基本法で入りましたけれども、成果を必ずしも十分に上げておりません。限界に来ているというふうに言われているわけでございまして、これはもう刷新をしていく必要があるのではないかというふうに考えます。  この今回の法案を見てみますと、食料安全保障、都市住民の方から見れば食料安全保障というのは非常に重要な項目でございます。ただ、農業者とか農村に住んでいらっしゃる方から見れば、食料安全保障、もちろん重要ではありますけれども、その前に自分たちの仕事、暮らし、農業を続けてやっていけるのか、住み続けていけるのかということがもう一番重要でございまして、そういう意味では農村政策というのは非常に重要なんですね。  そうすると、今回の法案を見ますと、食料、農業の部分は大変改正されて、立派に改正されて、いろんな規定が充実をされておりますけれども、農村の部分ではそうなっていないという、大変不十分な古いままの、時代遅れのままの基本法のままというのは大変残念でございまして、これでは農業者あるいは農村現場の方の失望を招くし、将来に禍根を残すものではないかと思いますので、皆様方の十分な御審議をお願いして、私の意見陳述を終わりたいと思います。  ありがとうございました。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ありがとうございました。  次に、長谷川参考人、お願いいたします。長谷川参考人。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) 農民運動全国連合会、農民連の長谷川です。  食料・農業・農村基本法改正案について意見陳述を行います。  現行法の下で、基本計画で決めた食料自給率目標は一度も達成されず、その検証もないまま、食料自給率向上そのものを投げ捨てる改正案には反対です。  農民連は、多くの団体と協力して、今国会に食料自給率向上を政府の法的義務とすることを求める署名を提出しています。  今、食と農の危機はかつてなく深刻です。食料自給率は三八%ですが、種子、肥料、農薬、飼料、機械、燃油の全てが価格高騰し、そのほとんどを輸入に頼る中で、本当の自給率は一〇%あるかどうか、砂上の楼閣です。いざというときは世界で最初に飢えるのは日本人と言われ、国民の関心、不安はかつてないものがあります。  私は、島根県の中山間地、邑南町で、繁殖和牛二頭、稲作一町二反の農家です。農村現場では、作り手が減り、耕作放棄で荒れる水田が広がっています。コロナ以後の生産者米価の暴落、資材高騰で、あそこもここもと、米作りをやめています。邑南町役場で調べてもらうと、米を作付けする農家はこのたった四年で一六%も減りました。作付けの筆数も一三%減少。こんな農村でいいのでしょうか。また、こんな農村になぜなったのでしょうか。  農民連は、一昨年から、資材高騰対策や日本から酪農・畜産の灯を消すなの運動を取り組みました。米も野菜も果樹も、後継者がなく、経営は赤字。まさに日本から農業の灯が消えるかどうかの瀬戸際です。今こそ政治が本気で食料増産を掲げ、日本農業の再生で食料自給率の向上を目指す農業基本法を作り上げていただきたいと思います。  基幹的農業従事者が二十五年で百二十万人も減りました。坂本農水大臣は、農水委員会で、高齢になって離農されたからだと答弁しました。高齢は誰にでも訪れることです。問題は、減少する担い手を補充する新規就農対策を政府はやらなかったことです。コロナ禍を経て、農業をやりたいという若者が増えています。しかし、農業で食べていけない、国の農業政策では将来が見通せないと言います。子供に農業を継いでくれとは言えない、自分で終わりだ、もう一年、もう一年と頑張ってきたけれど、と離農する農家の仲間がどれほど多いことか。  ところが、改正案では新規就農対策はありません。基幹的農業従事者のうち五十歳以下はたった二十三万八千人。八十歳を超えてなお現役で頑張って生産を支えていただいている農民が二十三万六千人です。こんないびつな農業生産体制がいつまでもつでしょうか。  大事なことは、規模の大小を問わず全ての家族農業を政策対象にし、家族経営の果たす役割を再評価し、農業再生の主人公にすることです。二〇二〇年の総農家数は百七十四万戸、うち自給的農家は七十二万戸です。この方々がいてこそ、地域農業、コミュニティーは支えられています。  今年は、日本も提案国として賛成した国連家族農業の十年の折り返しの年です。農業基本法以来、一貫して進めてきた大規模化、法人化一辺倒を改めるべきです。半世紀近く制度や補助金を集中して育成してきたにもかかわらず、法人、団体は経営体数の三%、農地の三四%を担っているにすぎません。  私は、規模拡大や農業法人を否定するわけではありません。家族農業を古い経営形態だ、丼勘定だなどと攻撃し、政策対象から排除してきたことが誤りだと指摘しているんです。  今回の改正では、効率的でかつ安定的な農業経営を営む者とそれ以外の多様な農業者に分け、それ以外の農業者の任務は農地をお守りしろに限定です。それ以外とは何ですか。この分類は見直すべきです。  皆さんの手元に資料を渡しましたが、私の二十年間の家族農業の経営データを島根大学の先生方が分析し、論文を発表されました。それによれば、小規模で限られた経営資源をどのように配分すれば生産性が高まり、効率的な農業経営ができるかを経営資料から判断し、所得の経営と家計の未分離という弱さを克服しているというのが結論です。  税金申告でも、二〇一四年から全ての事業者の記帳義務が課せられました。農民連の会員は、農業収入・支出記帳簿で記帳し、自主申告を行っています。  これまでの家族農業への不当な攻撃は、事実に反すると言わなければなりません。ヨーロッパでは、一九八四年、EC共通農業政策を転換し、それまでの専業大規模農家の育成から、兼業を再定義し、多重就業農家をきちんと位置付け直しています。  家族農業は多彩な経営があり、経営の重点は、家族の暮らしとその基盤となる地域を大切にします。それは、そこに住み続けるからです。その結果、農業に不可欠な水と土と森、自然と生態系を守ることができます。  家族経営の目標は、農業労働や農業生産の成果を享受し、家族で喜びを分かち合うこと。規模拡大や経営成長、それ自体が目標ではありません。また、家族の構成員の年齢構成の変化による家族周期に合わせて農業経営を伸縮することができます。企業的な農業経営は、雇用労働や多額の設備投資など、固定的な要素により柔軟性に乏しく、気象変動や災害、価格変動のリスクに対して脆弱です。農業法人の倒産が過去最大になっているのはその表れです。  家族経営では、家族内部で労働、所得、財産を柔軟に伸縮、融通することで危機に対応します。こうした家族農業の特性を再評価し、支援することこそ、環境に優しく持続可能な農業経営体を増やしていく道だと考えています。  次に、地球規模での気候変動など、世界の食料生産が不安定です。ところが、改正案は、更に輸入依存、安定的輸入を掲げています。大きな間違いです。お金を出せば幾らでも買える時代は終わり、中国に買い負けや、穀物がバイオエネルギーの原料として取り合いが起きています。国内で農産物を増産することが緊急の課題ではありませんか。  食料輸入の困難さに異常な円安が加わり、農業経営の危機と食料供給の脆弱さが浮き彫りです。農民は作りたくても作れず、離農が進む一方で、貧困と格差の拡大で、食べたくても食べられない人々が急増しています。  日本は、FAO、国連食糧農業機関のハンガーマップで飢餓国に認定されています。世界の食と農の危機は、短期的、一時的ではありません。二〇五八年には地球の人口が百億人と予想される中で、日本の穀物自給率は世界百八十五か国の中で百二十九位です。今、人口一億人以上の国は、穀物自給率一〇〇%を目指す国際的な責務があります。  坂本大臣は、トウモロコシや麦や大豆を全て国内で生産すると現在の農地の三倍は必要だ、それは無理だから輸入と答弁しています。しかし、日本でも、一九六七年から六八年には二千百万トンの穀物を生産していました。米生産による人口扶養力は小麦の二倍から四倍、日本の農地一ヘクタール当たりの人口扶養力は抜群です。日本で作れるものは精いっぱい作り、どうしても足らない分を輸入する政策に転換すべきです。  国土の七割を山地が占め、国民一人当たりの農地面積は三・七アールしかありません。その日本で、太陽エネルギーの変換率が高い水田は、アジア・モンスーン地帯の持続可能な農業の要として重要です。四十万キロの用水路、中山間地の棚田は洪水防止、水源涵養の役割を果たし、あぜの面積は十四万三千ヘクタール。単純に二メートルの幅とすれば七十二万キロ、地球十八周分になります。  水田と里山は、農民の共同の労苦で作られた多様で豊かな生態系として将来に引き継ぐべき貴重な財産です。水田を水田として存続し、穀物自給率を向上させることを提案します。水田の畑地化を条文に書き込み、田んぼを潰す政策を推進するような暴挙は許されません。また、これまでの農業生産の在り方そのものも見直さなければなりません。  一九六一年に定められた農業基本法は、小麦や大豆、飼料をアメリカからの輸入に依存させることを前提に選択的拡大を進め、規模拡大と効率主義を柱に、少品目大量生産、化学肥料、農薬の多用、輸入飼料に依存する畜産など、農業生産にひずみを広げました。現行法は、このひずんだ農業、日本農業に市場原理主義を持ち込み、更に農村と農業の破壊を加速させました。  日本農業を再生させるには、これまでの政策の根本的な反省と転換が必要です。どんな方向が日本農業の再生の道なのか。農民連は、アグロエコロジーを対案として提案します。  アグロエコロジーは、自然の生態系を活用した農業を軸に、地域を豊かにし、環境も社会も持続可能にするための、食と農の危機を変革する方針であり、実践です。循環型地域づくり、多様性ある公正な社会づくりを目指す運動としてFAOも推進し、世界の大きな流れです。  私の三十年余りのアグロエコロジーの実践を資料として配付しました。有畜複合による経営内の資源循環で、化学肥料に頼らず、地力を維持し、殺虫剤をやめたことで様々な虫が増え、その結果として、ツバメやクモ、カエルやヘイケボタル、アカトンボなど、生物多様性が回復され、害虫を抑えています。  また、それは資本の外部流出を防ぐ持続可能な農業経営です。中山間地域は、実に豊かな資源に恵まれた地域です。  島根大学の先生方が、私の経営を多角的に分析されました。今年一月には中国の西北農林科技大学の先生と学生九人が、また、この七月には韓国から二十五人が視察に来る予定です。アグロエコロジーは日本農業の明るい未来を切り開く道しるべです。  現行法制定でばっさり削除された一九六一年の農業基本法の前文を改めて振り返りたいと思います。  我が国の農業は、長い歴史の試練を受けながら、国民食糧その他農産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等国民経済の発展と国民生活の安定に寄与してきた、我々は、このような農業及び農業従事者の使命が今後においても変わることはなく、民主的で文化的な国家の建設にとって極めて重要な意義を持ち続けると確信する、農業の自然的経済的社会的制約による不利を是正し、農業従事者が他の国民各層と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにすることは、農業及び農業従事者の使命に応えるゆえんのものであるとともに、公共の福祉を念願する我ら国民の責務に属するものであると述べていました。  農村政策の基本は、地域農業を再生することです。日本には農業と農村が必要という国民合意をつくり上げるような基本法改定の議論を強く要望し、私の陳述を終わります。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。  また、質疑者におかれましては、円滑な進行のため、できれば各質問の冒頭にどの参考人に答弁を求めるか明示をして質問するようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 自由民主党の山本啓介でございます。発言の機会を、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  また、参考人の皆様方におかれましては、大変貴重なお時間をいただきました。そして、それぞれの知見から専門的なお話、陳述をいただきましたことを心から感謝をしたいと思います。説明いただいた内容につきまして少し私の方から質問をしていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。  まず、中嶋参考人にお尋ねをしたいと思います。  今回の基本法の改正に向けて、基本法の検証部会等々で大変な取りまとめ、御尽力をいただきましたことに、心からの敬意を表したいと思います。それらの経験から本日の陳述もなされたというふうに理解をしています。  ただ、この中に、新しくこの改正案の中では食料安全保障というところが色濃く前面に出てきているわけですけれども、まず、この食料安全保障という言葉、これが農林水産のこの農業の中に出てきている、このことについて、まず率直な認識、感想、評価をいただければと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございます。  検証部会の中でもかなり様々な議論がございました。  まず出発点は、食料の安定供給、これをまず現行基本法の中できっちり維持していかなければいけないと。その延長線上に食料安全保障という概念がオーバーラップしたと認識しております。  先ほどの私の説明にもありましたですけれども、供給をしただけでは人々の手元に食料がきちんと届かない場合がある、それは所得的な要因の場合もありますし、それから地理的な要因もございます。いわゆる食料アクセスが不全を来しているような事例がかなり出てきてまいりました。  そういったことを鑑みますと、安定供給だけでは駄目なんではないかという懸念がかなり共通で部会の委員の中で認識されたというふうに考えております。一人一人の食料安全保障というのにはそういった思いが込められていると思っています。  確かに危機的な状況におけるその安全保障ということにやはりもう少し注目すべきではないかという議論もあるとは思うんですけれども、FAOの定義も引きながら、今回その食料安全保障という概念を改めて基本法の中で書き込んで、そして、それをもって食料安定供給の概念をバージョンアップしたというふうに理解しております。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 ありがとうございます。  そういった前提に基づいて検証部会でも議論が進められたと、そして先ほどの陳述の内容に至るんですけれども、一つは国内の生産力を高めていく、そして、自然現象や外部の国際的な要因など、そういった環境対応の促進や不測時の対応、こういったものについて一つ一つ押さえながらであったかと思います。  今少しお触れになられましたけれども、アクセスの話、先ほどの説明の中では流通という観点が少し説明になかったような気がしたんですけれども、当然この取組というのは、人がいるところ又は人が求める場所において食料が安価に手に入らなければならないということが前提であろうかと思います。流通というキーワードを使って一度補足の説明をいただけましたら有り難いです。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございます。  流通ということも含めて、今回の基本法の中で食料システムという言葉が定義されて、それを使ってかなり施策の整理がされたというふうに私は理解しております。食料システム、生産から消費の間に関わる様々な取組、事業者がここに関わっていて、その中に、流通というのは非常に大きな問題だと思っております。  現在、政府では、二〇二四年問題も含めてその物流危機に対応していらっしゃると思うんですけれども、これは食料生産、そして供給においてやはり大きな問題だというふうに認識しております。ここの部分に関しては、今回の改正の内容ではかなり私は踏み込んで目配りしているんではないかなというふうに考えております。流通は非常に大きな問題だと私も認識しております。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 引き続き中嶋参考人にお尋ねしたいんですけれども、今御発言がありました食料システム、これらが、国全体であり又はそれぞれの地域であり生産地でありと、そういったふうに一つ一つつくられていくことが重要であろうかと思いますけれども、ほかの参考人の方々からもお話がありましたが、農業というのはそもそも我が国において古代から取り組まれた長い産業であろうかと思いますけれども、その地域コミュニティーの言わば原動力の位置付けもあろうかと思います。農家の方々がいらっしゃらなければ、そこの景観は乱れ、経済は止まり、地域コミュニティー自体が、また人材育成とかそういった部分についても影響が及ぼされていくんだというふうに思います。  今回、多様な農業に取り組む方々という位置付けもここの中に付されています。この後、JAの馬場参考人の方にもお尋ねしたいと思うんですけれども、まず、中嶋参考人におかれましては、我が国全体で農業の生産力の向上を果たしていくんだと、その際に、この多様な取組をされている方々をどのようにその中心の生産の中にしっかりと位置付けて取り組んでいくことができるのか、御意見ございましたらお伺いしたいと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございました。  私も、多様な生産者が存在しているということは、日本の農業、そして食料供給にとって非常に重要な要素になるんではないかなと思っております。それはレジリエンスの観点からも重要でもございますし、例えば、日本の食の魅力を考える上でも多様であるということが非常に重要だと思っております。  もちろん私たちの命を支えるために穀物生産は非常に中心になってくるんだと思っておりますけれども、もちろん野菜とか果物とか様々な作物、これは栄養素の面からしても、それから嗜好の面からしても必須でございます。そういったものを支えていく生産者というのはやはり多様であるべきだと思いますし、日本は非常に南北に長い、地域的にも様々な性格を持っております。それに基づいた農産物、そして畜産物を作っているということは、これは今後も誇りを持って継続すべきだと思います。  それを支えるためには生産だけではなくて流通も必要でありますので、それは食料システムという概念でも議論できるところではないかと思っているところであります。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 ありがとうございます。  次に、馬場参考人にお尋ねをしたいと思います。  日頃より、農業振興はもとより、様々な取組、地域の活力に御尽力いただいていますことに敬意を表したいと思います。  今、中嶋参考人から御説明いただいたように、我が国のこの危機的な状況に対応するだけでなく、平時からしっかりとした食料システムというものを構築していくこと、そして生産力の向上を果たしていかなければならないというふうな状況で、今後、この法改正の中身にも触れておりますけれども、まず国内においた生産力の向上と同時に輸出について言及されて、そして法改正の中にも記されています。  この輸出の促進について、馬場参考人の考えについてお伺いしたいと思います。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) 輸出についても基本法改正の中には入ってございますけれども、日頃から我々は、国内生産の基盤たる、基盤をいかに維持するかという観点から、輸出というのも大事なことだというふうに考えています。また、農業者の所得増大にとっても、輸出は国内市場が縮まる中で必要な施策だというふうに思っております。  今現在、各地で輸出に向けた取組も始まっておりますが、なかなか課題も多くございます。輸出協議会等も立ち上げながら、各連合会とも連携して、輸出の促進に向けた取組を進めてまいっておるところでございます。  以上です。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 引き続き馬場参考人にお尋ねしたいんですけれども、我が国の国内の生産力の向上を平時で進めていくことによって、そしてそれらを多く輸出していくと、危機的状況下においてはそれらを国内にとどめることによって食料の安定供給などを図っていく、そういった仕組みがあろうかと思います。  ただ、先ほどほかの参考人の方々やほかの、よく日頃の議論からあるんですけれども、所得補償や生産に対する支援、そういったものについての議論があります。各国、諸外国、そういったものが存在する国はたくさんあるんですけれども、そういう国は大型で大量生産し、そして輸出をしている、そういう国々がそういったそれぞれの安定供給をするための支援としてそういった施策があろうかと思います。  こういった取組について、馬場参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) いわゆる所得補償という議論があることは承知してございますが、基本的に、我が国においてはまずもって需要に応じた生産に取り組むということが重要である、輸出もその一つだと思いますが。  その上で、生産者が望んでいるのは、消費者に評価いただいて、適正な価格で買っていただきたいと思っておるということでありますし、その意味では、今現在、その価格転嫁がなかなかできていないという中では、適正な価格形成の仕組みの法制化こそが重要だというふうに考えてございます。  あわせて、資材価格高騰しているという状況もございますので、それに対する影響緩和対策も改正基本法の中に位置付けられておりますので、そうした経営安定対策の強化と含めて、この基本法に定められた具体策を実行していただくということが必要ではないかというふうに考えております。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 もう時間が来ておりますので、最後の質問になろうかと思います。  野中参考人にお尋ねしたいと思います。  私、元々長崎の島の出身でございまして、農業や一次産業は古くから国土を形成してきている、農業自体が国土を形成してきている、そのような考え方を持っている者の一人です。  今、野中参考人の話も、まさしくその経済というものは大きなものがあって、国全体の産業の位置付けとして農業というのを捉まえていかなければならないけれども、そこに地域の方々の取組があって、それで、先ほど申し上げましたけれども、地域コミュニティーの動力として農業もあるんだと、だからこそ、そういったことの一つ一つを見ながら、その集合体こそが我が国の農業だというふうな認識を持ちました。  その上で、再度御質問していきたいと思うんですけれども、この我が国国内でそういった地域を、それぞれを大事にしながら、これまでどおりの取組が、営みがひいては産業の振興につながっていったり、人口の増加につながっていったりすればいいと私も思います。しかしながら、そうなっていない現実に課題が幾つかあるということをおっしゃいました。それはもう国の政策であったり、世の中の流れであったりということだと思います。  地域内の生産物を地域外に出して地域外から経済を持ってくる、活力を持ってくる、この仕組みについて、いま一度説明をいただければ有り難いです。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) 委員長、ありがとうございます。御質問ありがとうございます。  現在、私の中にも書きましたように地域経済循環という考え方がございまして、従来の地域というのは、自分のところで経済をやっていく上に、例えば電力とかいろんなものを地域外から買わなきゃいけなかったということがあるわけですね。ところが、例えば再生可能エネルギーのように、地域でそれを生産できれば、ほかから電力を買わなくても、地域で小水力とか太陽熱とかで発電できれば、当然買わなくてもいいし、余ったものが所得になるということがあるわけですね。そういうことは電力だけじゃなくてほかのこともいっぱいあるわけでございまして、それを地域経済循環という考え方で、それを推進しようじゃないかということになっております。  そういうようなことをいろいろ考えますと、地域、農村地域のその経済力というのは、従来、二〇〇〇年のあの基本法が制定された当時に比べまして、今、地域エネルギーであるとか、もちろんインバウンドもそうですし、いろんなことで可能性は広がってきているわけでございまして、それを高めていけば、地域の農業者の方あるいは地域の住民の方も間接的にか直接的にか所得につながるわけですね。しかも、それを地域以外から来た、例えば企業の人が経営して、そこでその利益をみんな域外に持って帰るということでは意味がないわけでありまして、できればそこの地域にいる農業者とか、それから住民の方が、例えば電力でも参加をして一緒にそういうシステムをつくるということであれば、地域にその富は残るわけですね。  そして、経済力が上がるということでありますから、そうすると、その農業者も、そういう面でも所得があるということになって、農業がもうかるとは言いませんけど、仮にもうからなくても全体として所得が上がれば、そして当然住みよい地域になっていくので、それならやってみようかということで人も集まってくるということになるんではないかというふうに考えます。

山本啓介自由民主党

○山本啓介君 終わります。ありがとうございました。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 立憲民主党の徳永エリです。  今日は、五名の参考人の皆さん、それぞれのお立場から大変に心に響くお話を伺いました。と同時に、この基本法の改正案では本当に今の我が国のこの農業が抱えている課題を果たして解決できるんだろうかと、非常に重苦しい気持ちにもなりました。  今、我が国が抱えているその農業の課題というのは、農業者努力だけではどうにもならないことがたくさんあると思うんですね。特に、今、歴史的な進行している円安の問題でありますけれども、これもう短期的な問題ではありません。これ、当面の間続くわけですね。そうしますと、やっぱり輸入生産資材の高騰、高止まりということで農業者の経営を圧迫をするということになります。私の地元北海道でも、二〇二二年に、一月の段階ですけれども、年間二百二十一件の酪農家が離農いたしました。恐らく年度末にはもっと増えていたと思います。それから、水活の見直しなどもありまして、やっぱり先の見えない不安から高齢農家の早期離農というのも進んでおります。  そんな状況でありますので本当に心配なんですけれども、取りあえず、この円安の問題ですけれども、これどうやって解決をするかというと、やはり価格転嫁をするか、あるいは生産コストの上昇分を国がしっかり補填をするか、又は再生産可能な直接支払しか農家を救う方法はないと、所得の補償が必要だというふうに思うんですね。  そこで、まずお伺いしたいと思いますけれども、まず、価格転嫁について先ほど作山参考人から、食料の円滑な入手の確保、食料の合理的な価格形成についてちょっと矛盾点にお話が、言及がありましたけれども、この二十三条、三十九条、この条文で果たしてその価格転嫁ができるのかどうかということなんですけれども、まずは作山参考人にこの点についてお伺いしたいと思います。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 徳永先生、御質問ありがとうございます。  私も、価格転嫁ができればもう理想だというのは全く異論がありません。ただ、問題は、実際できていないし、これからもできる見込みがないので、そんなこと、悠長なことを言っていると農家の方が潰れてしまうわけですよね。ということなので、ほかの対策が必要だということを申し上げているわけです。  特に、今政府も検討しているようですけど、その中で検討されているのは納豆とか乳製品とか、もう極めてごくごく一部のものですよね。そんなことでは全くカバーできないので。他方、野菜なんかを見ると、八割が市場経由ですから、市場で交渉で価格転嫁をするというのは原理的に不可能ですよね、需給で決めるというのが市場の目的なわけなので。  ということで、徳永先生おっしゃったことは関連していると思っていまして、私もちょっと申し上げましたが、円安になると輸出企業は爆発的にもうかるわけですけれども、輸入資材に依存している農家は苦しくなるわけですよね。それは、その円安の企業の利得というのは何も努力しなくて自動的に出てくるものなわけです。ということなので、そういうところに課税をしてその輸入競合産業にそのお金を使えば、別に新たな増税をしなくても、その輸出産業への課税によって輸入競合産業を守るということができるので、まさにそれで農家の直接支払に充てるということも考えられると思います。  あと、もう一個申し上げたいのは、その輸出企業というのは、今まで、日米貿易協定とかTPPもそうですけれども、農業が犠牲を払うことによって輸出産業は例えばアメリカから関税を課されないで利益を得ているわけですよね。そういうことのその対価を全く払っていないわけですよね。そういうことからしても、輸出産業にちゃんとお金を払ってもらうというのは理屈があることだというふうに考えています。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 今、直接支払のその財源についてお話をいただきましたけれども、民主党政権時代の戸別所得補償制度について、農水省は、需給バランスが崩れ米価が下がる、農地の集約、集積化が進まず生産性の向上が阻害される、個々の農家に補助金を出すのは国民理解が得られないと、こういうふうに言っているわけですね。これに関しては、作山参考人、どう思われますか。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 御質問ありがとうございます。  先ほど申しましたように、二十五年前に新しい基本法作ったときに、私、中山間直接支払の担当でして、最終答申の原案も書きましたし、財務省と交渉したりとか、そういう骨格を作って、あと担当課に引き渡して実際の制度設計をしてもらったという経緯があります。  やっぱり財源を使う直接支払には非常に抵抗がありまして、そのとき特に財務省から言われたのは、所得補償という言葉を使うなということを、所得補償じゃないんだと、ということなので、我々もいろいろ考えて直接支払という言葉を使っているわけですよね。というのは、単に損したから所得を埋めてくれということではなくて、特に中山間地域は高い多面的機能があるので、それに対する対価支払ということで位置付けて、財務省にも納得してもらってこういう制度ができたわけですよね。  そういうことを考えますと、私の意見陳述でも申し上げましたけど、むしろ直接支払というのは、市場原理をゆがめないで、農家も消費者も得する政策だからこそ世界中でやられていると、特にEUでもやられているということだと思うんです。私の意見陳述でも申し上げましたけど、需給バランスというふうによく政府・与党はおっしゃるようですけど、私に言わせると、今の政策が需給バランスを乱している面があるんじゃないかと。  例えば、分かりやすい例を挙げますと、政府は輸出を非常に力を入れていますよね。ただ、今の政策というのは、お米の生産を削減して転作作物にお金を払うことによって米の価格を一生懸命上げようとしているわけですね。ただ、米の価格が上がると輸出は伸びないんですよ。で、EUがなぜ直接支払やっているかというと、農家に直接支払することによって農産物の価格を下げる、原料の価格も下げる、それによって輸出をどんどんすると、それでもうけるということになっているわけで、日本からするとそういう国と競争しなきゃいけないわけで、ある意味、EUの政策は合法的補助金による輸出ダンピングなんですよね。ただ、これは合法的なので、日本はやっていない、ほかの国はやっているということで、競争条件も不利になってしまうので、私は、その直接支払って、実際にはいろいろな経営安定対策とか中山間直接支払とか環境支払とか、いっぱい例はあるわけなので、直接支払がいけないとか所得補償がいけないということは全くないと思っています。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 中山間地域も、厳しい状況にありながらも今も頑張って高齢農家の方々が経営続けているというのは、やはり中山間地域等の直接支払交付金、この制度があるからだというふうに私は思っておりますけれども、野中参考人、その辺りはいかがでしょうか。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) 委員長、ありがとうございます。  今の点ですけれども、中山間地域直接支払制度というのは、基本法でできた非常に画期的な制度でございまして、非常にいい制度だと思うんですね。  ですから、これをきちっと運用していくことが大事だと思うんですけれども、一つには、私がまず思いますのは、中山間地域対策として思いますのには、中山間地域のまず位置付けが非常に、条件不利地域で何か課題ばかり多い地域だというイメージになっているわけでございますけれども、これ二〇〇〇年当時はそうだったかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、いろんな意味で可能性は出てきております。これはもちろん厳しいですね、非常に厳しいですけれども、可能性は出てきている。だから、過疎法や山振法のように、やっぱりこれ希望を持ってやれる地域だと。  御存じかと思いますけど、山村振興法なんかは、前の法律は遅れた地域と書いてあって、文化的に、こういうみんなその当時は認識だったんですね。だけど、中山間地域も可能性ある地域だとみんな入ってくる、そういうその認識をやっぱり基本法できちっとすることがまず第一。  それから、不足払いは非常にいい制度でありますけれども、現実的に見ますと、それでもなお現地は非常に厳しい状態なんですね。その状況を見ますと、例えば一人当たり、たしか、数字ありませんけど、九万円ぐらいしか支払われていないんですね、要するに。要するに、中山間地域で農業を続けていくためにどのぐらい所得が必要なのかということに対して、非常に僅かな所得、支払になっているわけですね。  先ほど申し上げましたが、主要農家で中山間地域の農業所得というと、平均で百万円、百万円を切りますよね。百万円を切った農業所得で中山間地域で農業を続けていけと言ったって無理ですよね、これね。ですから、それはきちっとしたサポートをしなきゃいけないんですけど、それは、条件が不利だというサポートももちろんそうですけれども、やっぱりそこでもっと環境に調和した、今の時代に合ったきちっとした農業の展開をしてもらって、そういう環境面の重視、役割ということも重視をしてそのサポートをしていくという意味で、トータルで充実をしていく。これ、EUの方向でもありますし、私も今の時代に合った方向ではないかと。  だから、いい制度ではあるけれども、ちょっと時代遅れになっている、行き詰まっているということで、現代風に合わせて、これを抜本的に見直すべきだというふうに考えております。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 中山間地域は、全耕地面積の今三八・二%、四割近くを占めておりますし、農業産出額も、全国では八兆九千五百五十七億円、これは中山間地域だけでも三兆五千八百五十六億円もあるんですね。  今もう本当に、七十代、八十代という方々が中山間地域の中心的な世代で農業を担っているわけでありますけれども、この中山間地域の農業を守っていくということが日本の農業を守ることにつながり、食料安全保障の確保につながると思いますので、新たな制度の見直しということもありましたけれども、これをしっかりやらなければいけないと私も思っております。  それから、馬場参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、民主党時代の米の戸別所得補償制度に関しては、農協も反対をしているということを聞いております。米価が下がると、米価に応じて手数料収入が決まるので収入が減るということで、農協も反対していたんだというふうに聞いておりますけれども、この直接支払に関してどのように受け止めておられるか。  それから、私たちは今、農地の危機ということで、農地維持交付金、これが必要なんじゃないかというふうに思っております。農地を農地として維持する者に対して面積に応じて毎年度交付金を交付する農地維持交付金ということなんですけれども、立憲民主党の農林水産キャラバンで全国を回って歩く中で、農協の組合長さんとも意見交換させていただいておりますけれども、これはいい制度だと、是非財源を確保して実現してもらいたいという声をたくさん聞いております。この点に関してどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) 過去の民主党政権時代の戸別所得補償方式についてですけれども、正直、東日本大震災等があって、具体的にその詳細な分析をしているわけではございません。ただ、一般的に言えるのは、需要に応じた生産に取り組むということがまず重要で、それに当たって必要な対策としてあったんだろうと思いますけれども、それ以上のお答えはございません。  それから、農地維持支払の交付金ですけれども、今も多面的機能支払交付金という形で農地の多面的機能を維持するために共同活動等のための直接支払というのはあるわけですけど、それが十分かどうかというのは非常に私も疑問のところがございまして、しっかりと拡充対策が必要ではないかというふうに思っておるところでございます。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 今、農地が危ないというふうに言われておりますので、いわゆる生産基盤を守っていくという意味でも農地を守ることが大事なので、いかにして守っていくかという意味においては是非ともこの農地維持支払というのも御検討をいただければというふうに思います。  それから、最後になりますけれども、長谷川参考人にお伺いしたいというふうに思います。  改正案の第二十九条に、水田の汎用化に加えて畑地化が入りました。私たちは、水田を潰していいのかと、やっぱり米をしっかりと守らなければいけないんだということを委員会の中で強く主張をさせていただいております。この汎用化に加えて畑地化が入ったことについては、どのように受け止めておられますでしょうか。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) 元々、水田活用直接支払交付金の大前提というか大本は、お米を作るなという減反政策から始まっているわけです。一九七一年の減反から、米を作るな、何を作るなということで、ずっと、カラスが鳴かない日はあっても、米、物を作るなという政策がなかった日はないと、そういう中で結局、田んぼがずっと転作で元に戻せなくなった。それを理由にして、もう田んぼでないから畑だということで水田活用直接支払交付金の支払を止めていく、そういうことだけだと思うんですよ。  実際に水田は、水田の汎用化をすれば当然お米も作れるし、大豆も作れるし、麦も作れるんです。そういう支援をしないで、単に国が勝手に畑だということでこれも政策対象から外すという意味では、私は間違いだと思っています。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 時間でございますので、おまとめください。

徳永エリ立憲民主・社民

○徳永エリ君 はい。  既に北海道では、この畑地化事業で水田の一割が畑地に変わっていくという状況であります。本当に米を作り続けなくていいのかどうか、水田を畑地化していいのかというところは、政府・与党の先生方にも将来を見据えてしっかり考えていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。

横山信一公明党

○横山信一君 公明党の横山信一でございます。  まず、中嶋先生にお伺いしたいと思いますが、先生におかれましては、基本法検証部会の部会長として御尽力をされてきた貴重な経験を踏まえて今日意見陳述をされて、大変に参考になりました。ありがとうございます。  まず、価格形成について伺っていきたいと思うんですけれども、検証部会では、現行の基本法制定後の二十年間と、また今回新たに基本法を改正するに当たって今後の二十年間を見据えてという、そういう視点に立って主要施策を見直してきたというふうにお伺いしておりますけれども、中でもマクロ経済の環境が日本の農業に与えた影響は大きいんだということを先生もおっしゃられていて、現行基本法が制定後は円高に振れて、円高の状態が続いていたということがあって、海外の安い農産物が大量に輸入してきたと。一方、その国内消費の低迷によって国産農産物の価格が引き上げられなかったという状況が続いていた。一方、今は円安に振れていますので、農林水産物の輸出は非常に好調です。  そこで、今回のこの改正案の肝でもあります食料安全保障の課題の一つとしてこの合理的な価格形成というのがあるわけですが、これをこのマクロ経済の視点で見たときにどういうふうに見ていけばいいのか、まず御意見を伺いたいと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございました。  今御指摘ありましたマクロ経済環境がある意味日本農業にとって逆風になっていたというのが、まさにこの検証したこの基本法の時期であったというふうに思っております。  で、価格がやはり上がらなかった、食料価格、農産物価格が上がらなかったというところが、例えば先ほど、担い手が減っていくとか農地の利用が下がっていく、投資が行われないということの原因ではないかなと思っています。そういう意味では、合理的な価格が形成されて、しかるべきその見通しを持って、未来に向かって農家、農業経営体の方々がその生産を遂行、振興、拡大していくということがやはり全てではないかなというふうに思います。  ただ、実際のところ、その検証をした時期というのは、賃金も上がらず、非常にデフレで、いろいろ国民経済も苦難を強いられていたところにあったということを考えますと、実は、その価格、食料価格が上がらなかったというのは国全体に対して大変な恩恵を与えていたのではないかなというふうに思うところであります。  今、賃金が上がるんではないかという状況になってくる中で、そうしたら消費者の方は支払意思額が上がってまいりますので、その合理的な価格に対してそれなりの支持をいただけるんではないか、自然と上がっていく必要があるというふうに思います。  ただ、価格というものは基本、需給バランスで決まるものですから、物が足りなければ値段が上がります。余っていれば下がってしまうという中で、無理に上げると、これはもうかえって破綻をするんではないかと思いますので、非常にきめ細かく状況を見ながら上げられるものがあるかどうかということを考えていただきたいというのが私の考えでございます。

横山信一公明党

○横山信一君 ありがとうございます。  同じこの価格形成について馬場参考人にもお伺いしたいと思いますが、生産者にとって、先ほどの話にもありましたけれども、この近年の生産資材の高騰を価格に思うように転嫁できないというところに対して、持続可能な農業という観点からは非常に強い危機意識を持たれていると、現場ではですね。  価格転嫁の必要性って私も各地でいろいろお聞きをしているところでありますけれども、他方、このコストに見合った生産ということばかりではなく、地域に見合った生産という、いわゆるその農業振興を踏まえた御意見も各地で聞いてきたところでもあります。  どちらも重要だと思いますけれども、生産者というのは、今日の資料にもありましたけれども、消費者に受け入れられる農作物を作ろうとしますので、いわゆるその生産者は常に消費者を意識して生産をしているわけです。一方、消費者の方は、じゃ、生産者の方を向いて買うかというと、必ずしもそういう状況にはなっていないと。  馬場参考人は、食料の生産から消費に至るまでのそれぞれの段階における関係者がこの環境に配慮しつつ農業の持続性の観点から再生産に配慮された価格形成を実現するということの重要性を述べられているわけですけれども、生産者がこの合理的な価格形成ということを踏まえた上で、生産者が求める消費政策というのはどうなんだろうかということをお聞きしたいと思います。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) 御質問ありがとうございます。  合理的な価格について、生産者の立場からすると、先ほども言いましたけど、今回の基本法の改正案では、合理的な価格とは何かを説明する形で第二条五項が新設されて、食料システムの関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されなければならないとされています。明確に明示されています。合理的な費用ということが考慮されなければならないと、こういうことは、生産者側からとってみますと、それは生産コストが考慮されなきゃならないというふうに解釈しております。これこそが適正な価格形成につながる規定だと認識いたしております。  ただ、消費者の理解も得なければなりませんが、他方で、消費者に対しては、改正基本法の中では、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めるということが努力として位置付けられております。今後、適正な価格形成に向けた理解の醸成、さらには国産農畜産物を選択していただける行動変容につながるような施策を抜本的に拡充することを求めていきたいというふうに思います。  JAグループでも、先ほど言いましたように、国消国産運動を全国的に展開しておりまして、基本法改正案を踏まえて、引き続き、国民の行動変容に結び付くよう取り組んでまいりたいというふうに思っています。  以上です。

横山信一公明党

○横山信一君 じゃ、中嶋先生にもこの消費政策について伺いたいんですけれども、農産物価格を引き上げるにしても、食料自給率の向上にしても、この消費者の理解というのは非常に重要です。これまでの農政というのは生産振興が中心だったというふうに思っておりまして、消費政策が必ずしも十分ではなかったと。  先生もおっしゃっておりますけれども、国民の摂取エネルギーの推移では、一九七〇年代から下がり続けて、たんぱく質や炭水化物などの栄養素別の摂取動向では、一九九〇年までは増えるのもあり、減るのもあるという、めり張りのある栄養摂取が続いていたんですが、一九九五年から二〇一〇年にはどの栄養素も減ってきていると、全般的に食事を取らなくなっていると。こうしたその消費動向というのは、農産物価格を抑制するような力が働いていくと。  こうした中で、この二〇一五年の基本計画では、バリューチェーンの構築とか需要フロンティアの拡大といういわゆる消費政策が入ってはいたんですけれども、今回の基本法の策定の中で、今後、消費政策を進める上でどういう点に注目すべきか、御意見を賜りたいと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございました。  消費者とどのように向き合うのかという議論は、検証部会の中でかなり私どもはしたんじゃないかなというふうに思っております。例えば、持続可能なその生産、環境保全型の農業を進展するということは、大変その生産者の方に負担を掛けるわけでございます。コストも掛かり増し経費も掛かるというふうに理解しております。それについて消費者の方に理解していただけなければ、これは続かないと。  ただ、いわゆるその農と食の距離が広がってしまっている状況の下で、なかなかこのことに気付いていただけないんではないか、一部の方はよく御存じなんですけれども、一般的なこの消費行動の中にそこが組み込まれていないというのがやっぱり大きな課題であろうということで、そのためのその仕組みみたいなものを考えていく、こういうことも結構議論したように私は記憶しております。今回、この消費者の努力という部分にこのような文言が入ったのはまさにその議論の反映ではないかと理解しているところです。  それから、食料安全保障の議論をするときに、国際的な文脈では今、健康な食事、ヘルシーダイエットというものをきちんと推進していこうという話がございます。私、九〇年代の消費の動向を見たときに、ちょっとゆがんでいたんではないかなというふうに思います。食べ方というのが少し偏っていたり、もう少しきちんと自分の食というものを目配りするような状況にしていかなければいけないと思っておりまして、その栄養問題への対応、それから広い意味での食育、こういったものをきちんと政策にして推進することによって、どのように食というものを我々は取っていく必要があるのか、それを実現するために農業者や食品産業の方々とどのように協力し合っていくのか、そういうその環境をつくっていく必要があるというふうに思っております。その一歩が今回の改正法の中に私は書き込まれているような印象を持っております。

横山信一公明党

○横山信一君 食育の重要性は先生もいろいろなところで述べられているというふうに思っておりますけれども、大変に参考になります。ありがとうございます。  じゃ、引き続き中嶋先生にお伺いいたしますが、今も話がありましたが、コストが非常に掛かるという環境配慮型の農業でありますけれども、我が国はアジア・モンスーン気候で、まあ言ってみれば雑草も多いし害虫も多いしと、それから病気も頻発するという、有機農業には適さない、はっきり言ってですね、そういう環境とも思えるところで、昨年はみどりの食料システム戦略というチャレンジングな農業をやりますということになったわけですが、この度の改正案にも環境と調和の取れた食料システムの確立というのが明記をされて、環境負荷低減を一層推進することになります。  先生今お話しされたように、それを推進するにはコストが非常に掛かっていくということになります。もちろん、そのスマート化などの技術革新もあるとは思いますけれども、高コストをいかにして消費者に受け入れてもらえるかという課題もあります。  そんな中で、人口増加と地球温暖化が進行している今の国際社会の中で、日本も含めた国際社会の中で、我が国が今回の基本法の中で食料の安定供給と環境負荷低減というのを同時に目指していくという、どちらかというと相反するような目標を同時に目指していくというのは国際社会に対しての強いメッセージになると私は思っておりますけれども、これらの実現に向けて先生のアドバイスをいただければと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございます。  環境保全型農業を推進する上で、日本は非常に苦しい立場にあると思っております。  うまく説明できるかちょっと心配なんですが、例えば、ヨーロッパのかつて、九〇年代の農政改革も含めて、環境保全型農業を進めるための施策を入れましたが、その当時に過剰生産という問題を抱えていたと思います。で、過剰生産を解決するためにその生産レベルを落とす、その手段として環境の保全型農業というものを展開することができたと思います。ところが、日本は自給率が低くて、できれば増産をしたいと。増産をすることをまず、さきの食料安全保障の問題を考えたときには是とするときに、その環境に対して負荷を与えるような農業を推進しなければいけないという、そういう矛盾を抱えてしまうわけですね。  ただ、国際的に見れば、やっぱり農業はいろんな意味で環境負荷を与えている、地球温暖化の問題だとか、それから生物多様性に対しての悪影響。こういったものは、もう世界市民として理解し、これに対して協力していく必要があると思いますので、その技術の開発も含めて新しい農業を展開する必要があると思います。そのときに、どうしてもやはり掛かり増し経費が出てきますので、これについては消費者の一定の理解をいただかなければいけませんけれども、これはある種の公共財を提供するような部分がありますので、場合によってはそれは補助金とか、そういった一定程度の交付金で支えていくということが必要です。  ただ、繰り返しになりますけれども、非常に技術的に困難です。そのためにはイノベーションが必要でございます。そういったイノベーションが、環境保全型農業を進めるイノベーションが生み出されるような補助制度というものを私は求めたいと思っております。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 時間ですので、おまとめください。

横山信一公明党

○横山信一君 はい。  馬場参考人にももっと聞きたかったんですけれども、時間が参りましたので終わらせていただきます。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 日本維新の会・教育無償化を実現する会、金子道仁です。  本日は、参考人の先生方、非常に貴重な御講演、勉強させていただきありがとうございました。お一人お一人に是非少しずつでも深く御質問したいところですが、順に御質問させていただきたいと思います。  まず、中嶋参考人にお伺いします。  基本法の検証作業について、是非私も詳細をお伺いしたいことが幾つか項目あるんですが、二つ教えていただけたらと思います。  一つは、農地の集積、集約についての議論について教えていただければと思います。八割目標に対して現行は六割であると、中山間地域は六割どころか三割、四割。私の地元も中山間なので非常に難しいということはよく理解していますけれども、果たして今後、この八割という、おおよそというところからの目標設定でよいのかどうか、目標をどういうふうにこれから考えていくのか、これからどのように集積、集約をしていくのか、これからの農地バンクの活用等にも関わってくると思いますので、その辺りの議論を教えていただきたいのが一点目。  二つ目は、食料安全保障に関する指標、評価の指標についてこれから計画に、基本計画に盛り込むということですが、具体的にはどういう指標を入れるべきだという議論があったか、お聞かせいただけますでしょうか。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございます。  農地集積の問題は非常に難しい問題だと私も承知しております。これを進める上で、今取り組まれている地域計画をどう立てるかということが重要だと思っております。人・農地プランがベースになると思いますけれども、やはり農地と人、担い手のマッチングをどうするかというのはやはり地域でなければ決められないんではないかと思っております。水田の場合には、それは水をどういうふうに利用するかということも関わってまいります。集積するためには基盤整備も必要でありますけれども、そのための計画も地域で作らなければいけないと思っております。具体的に何割というのはちょっと今の時点で私何とも申し上げられませんけれども、やっぱり地域ごとのきめの細かい観察とそれによるその計画の設定というのが求められると思います。  それから、食料安全保障の指標でございますけれども、これ様々な議論があったように記憶しているんですが、これは基本計画に持ち越しになっているような私は印象を持っております。ただ、元々その自給率の議論と、あと自給力の議論を昔したときに、やはり人、それから技術、それから資源のような辺りがやはりその自給力を支える基盤になってくるというところなので、例えば今回大きな問題になりましたけれども、肥料などの確保がちゃんとできるのかという辺りはやはり見ていく必要があるんではないかと思います。ただ、どんなふうにまとめ上げていくかというのは、ちょっと済みません、今の時点では申し上げられません。申し訳ございません。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 ありがとうございます。  私も、農地の集積、集約、是非、地域計画のより迅速な実施が非常に重要だと思うんですが、地域計画も、全く計画どおりにいくとは思えないような今計画目標が立てられているところも非常に問題だと思います。地域計画に関する推進策が今回基本法の中に余り書かれていないというのは少し心配なところで、もうちょっとそこにお金を付けるべきじゃないかなと思うのと、あと指標の、安全保障に関する指標に関して、食料自給力ということが入ってきたというのは非常に私も賛同するところです。  作山参考人に、是非この食料自給力、先ほど言及がありました、資料の五ページ目、私もこれ非常に重要だと思いますけれども、食料安全保障の中で食料自給率は非常に注目されていますが、食料自給力というものは余り注目されてこなかった、データ等の開示も少ないんじゃないかと思うんですが、食料自給力という観点から、現状、若しくは過去の推移、過去どういうふうに推移してきて今があるのか、今後の見通し、人口減少や農地等で、今、今後どういうふうに食料自給力がこのまま施策をしなかったら推移していくという見通しなのか、そして対策についてお伺いできますでしょうか。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 御質問ありがとうございます。  まさに自給力については私の配付資料の八ページでも御説明させていただいたところです。私が自給力を強調したのは、八ページでも御説明しましたけど、以前は食料自給率と食料自給力というのはほぼ並行、パラレルに動いていたわけですね。実際、食料自給力というのは二〇一五年の基本計画を作ったときに初めてできたものなので昔はなかったわけですけれども、昔は動きが大体一緒だったわけですけど、先ほど御説明したように、最近は自給率が横ばいなのに対して食料自給力が劇的に下がっているというふうに乖離が出てきているので、自給率を見ていてもいざというときに食料が確保できるか全く分からないと。それから、自給率というのは四五とか五〇とか基本計画に書いてありますけど、それだから日本人が安全に生きられるという保証は全くないわけですよね。  という問題があるので、自給力を強調したということで、その上で御質問にお答えしますと、自給力の見通しは非常に実は悲観的で、この八ページの資料に書いたのは私の予想ではなくて農水省の予想で、二〇三〇年にはもう日本人全体が生きられるエネルギー必要量を芋を作っても確保できないというのは農水省の試算なんですよね。なので、ほぼ確実にそうなると思います。その一番の原因はやっぱり農地や人が減っているというのはありますけど、芋の単収が減っているというところがあるので、そういうことになると。  なので、繰り返しになることは言いませんけれども、ということなので、私は、自給率よりもやっぱり自給力の方が日本人が輸入が止まったときに生きられるだけのカロリーを生産できるかということを表しているので、まさに農地や人や技術開発を支援することが大事で、それに直接支払を使った方がいいんじゃないかというのが私の意見でございます。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 ありがとうございました。是非このことも深く議論したいんですが、一言だけ。  芋類中心というのが、いざというときの食料自給力に関して農水省もちらちらと教えていただいているんですが、やはり芋なんでしょうか、米ではないんでしょうかというのがまず一点と、今後の対策のところでちょっとお伺いできなかったので、そのところを教えていただけますでしょうか。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) ほかの参考人にも聞かれるということなので簡潔にお答えすると、実は農水省は、米、麦中心の食生活を前提にした食料自給力も算出しているんですよ。ただ、それを見ると、もう日本人が全員生きられるほどのエネルギー必要量はもう既に産出できないんですね。日本人が全体生きられるの多分八割ぐらいだったと思いますけど。というので、芋を食べさせるのかという御批判はよくあるんですけれども、これは要するに単位農地当たりのエネルギー産出量が最も高いのが芋なので、それで試算をしているということですね。  対策については私さっき申し上げたつもりなんですけれども、自給力というのはまさにその農地や人や農業技術でもって自給力が決まってきますので、特にこの芋類を前提とした場合には、芋類の技術開発をもっと進めて単収が減っているようなことを上げていけば、単収が上がれば、日本人全体が輸入が止まっても生存できるという水準に持っていくことは可能です。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 そうですね、もう一個追加で御質問します。  芋の単収が減じていると、つまり、多収化ではなくて、その生産を調整する、価格を抑えるために多収化ではない方向に今まで農政が行っていたと。今回、基本法で、我々、党は多収品種ということで是非入れていただいて本当に感謝しておりますけれども、その多収化を目指していくというところと価格を守っていく、矛盾した政策をここでしていかないといけないことにはならないんでしょうか。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) それは矛盾はしていないと私は思います。  というのは、日本は今までやっぱり過剰が多かったので、米を中心になんですけど、単収をアップする技術開発は真面目にやってきていないというところがあるわけですね。それで諸外国に遅れているというところがありますので、多収化すれば単位面積当たりの所得は上がりますので農家にとってもいい話なので、そこは全く矛盾していなくて、そういうところの技術開発をどんどんやっていくべきだというふうに思っております。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 ありがとうございます。  ほかの先生方にも是非お伺いしたいので、次に進みたいと思います。  馬場参考人にJAのことについてちょっとお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。  現行の基本法の中では、農業者等とのその努力ということで、農業団体に関しては農業基本法の理念実現に主体的に取り組むよう努めるもの、第九条ですね、が、今回の改正では十二条で、主体的から積極的に取り組むこととするということで内容が若干変わっているような印象も受けるんですけど、そのことについての御意見と、あと、資料の十四ページで、価格の交渉のところ、適正な価格というんでしょうか、合理的な価格形成というんでしょうか、それに対して国の責務も当然なんですが、やはりこの農業者を守る団体であるJAの役割非常に高いと思いますが、既に横山先生からも質問ありましたこの合理的な価格形成に関するJAの今後果たしていける役割、特にこれから賃金が上がっていく、インフレ傾向の中にあって、JAとしてどのような新しい施策、改善を行い、農業者にとっての有利なというか合理的な価格形成に役割を果たしていくか、御意見をお聞かせください。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) まず、団体の役割、努力ですね、の規定というのは今回ちょっと書き分けられているところでございまして、元々基本法では、国、地方公共団体が責務と、農業者とか農業団体、事業者等は努力と、消費者が役割というような形で書き分けられていると思います。これは現行法も改正法も同様であるかと思います。  そういう面で、今回の基本法の中では、第十三条に、国、地方公共団体は団体の自主的な努力を支援するというふうな書きぶりに変わっているかと思います。もちろん、我々としては、農業生産の増大などに向けて不断の改革に努めているところでございます。そういう面では、この書きぶりに従って、政府からの御支援もいただきながら、我々として自らの取組を進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。  それから、生産コストを適正な価格形成に向けてJAとしてもということでありますけれども、適正な価格形成、今検討会をやっておられまして、生産コストの指標の作成に向けて、適正な価格形成に向けたコスト調査等が行われております。対象にはJAグループも含まれておりますので是非積極的に調査に協力したいと思いますが、他方で、JAグループとしても生産コストを買手側に提示して価格交渉を行うという取組も進めてまいっておるところでございます。一部優良事例等を白書なんかに取り上げられていましたけれども、いずれにしても、そうした取組も含めて面的に広がれるよう横展開を進めてまいりたいというふうに思っています。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 価格交渉の優良事例、是非横展開を、私も是非教えていただきたいと思います。後でまた資料教えていただければと思います。  長谷川参考人にお伺いさせていただきたいと思います。  基本法の二十六条の今回の改正の二項で新しく、効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者というところで、非常に、何というんですか、憤慨しておられるというか、我々、中山間地域で家庭的な農業をされている方こそ効率的な農業をしっかり今まで営んで存続してきたというところがあるかと思うんですけれども、二つ質問ございます。  その不利的な扱いを受けてこられたというところ、もう少し具体的な内容をお伺いしたいということが一点目と、現行の二十一条のその効率的かつ安定的な農業経営、担い手というジャンルの中に、既に兼業農家の方々も仕組みとしては入れる仕組みだったと思うんですが、それを入らない選択をされている何か障壁みたいなものがあったかどうか、そういったことをお聞かせいただけますでしょうか。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) 実際問題として、農業の制度融資の場合に、まず担い手になることなどが、様々な条件が付けられています。だから、一般的な兼業農家がちょっと入って支援していただこうということは全くないというのが現実ではないでしょうか。  そういう意味で、不利な扱いを受けたし、全ての農家が対象になっている政策が展開されているということはほとんどありません。この間、持続化給付金のときに、江藤先生、大臣で頑張っていただきましたが、ほぼほぼ全ての農家を対象というのと、民主党時代の戸別所得補償のときにも全ての農家が対象という事例があった程度で、それ以外はほとんど、規模別に分けたり、認定農家であるかないか、そうした具体的な選別、差別が行われたというのが事実です。

金子道仁日本維新の会・教育無償化を実現する会

○金子道仁君 ありがとうございます。非常に参考になりました。  時間が来ましたので、以上にしたいと思います。  ありがとうございました。

舟山康江国民民主党・新緑風会

○舟山康江君 国民民主党の舟山康江でございます。  今日は、五人の参考人の皆様、ありがとうございました。  先ほどの参考人からのお話の中で、野中参考人から、農業人口、農村人口の減少、過疎化の原因、それは農業では食べていけないからと、そんなお話がありました。まさにそこを解決していかない限り、どんなにいいことを言っても、やはり農業の現場から人がいなくなる、農村からいなくなると。そうなると、生産力が低下する、供給能力もなくなる、食料安全保障どころではないということになるのかなと思うんですね。  その、やっぱりそれを解決するためには、何といっても食べていける状況、つまりは所得を、これは農業からの所得、農外からの所得、それから直接支払を含めた所得といろいろあると思いますけれども、とにかく所得をしっかりと確保するということではないのかなと思っています。そこは、EUではまさに所得ということがきちんと明記されている中で、残念ながら今回の基本法の中には、これ何度か私も委員会の質疑等で提起していますけれども、所得という言葉が何もないというのが私は大変懸念しているところなんですね。そのために今回力を入れているのが価格で、所得確保のために価格をしっかりと実現していこうというのが一つの大きな今回の転換点かなと思うんですけれども。  まず、中嶋参考人にお聞きしたい、何点かちょっとお聞きしたいんですけれども、今回いわゆる所得確保の中で価格だけに特化した理由が何なのか。そして、その上で、作山参考人のこの九ページ、十ページの表、この条文と、あとはその関係図ですね、分かりやすいんですけれども、私も価格が実現できればそれはそれでいいと思うんですけれども、ただ、旧基本法から現行基本法に変わるときの大きな柱としては、価格に頼っていたことを、やっぱり価格は市場で、所得は政策でという大きな柱があった。これは先日の大臣からの答弁にもあったんですけれども、その中で、価格で果たして実現できるのか、まさに市場原理で決定する、安いものを求める、でも生産者は高くしたい、そういった三すくみの中で果たしてこういったことが価格で解決できるのか。特に、海外との競合の中で価格を乗せていくことのいろんなデメリットがあると思いますけれども、その辺りをどのように考え、今回価格に特化をした書き方になっているのか、中嶋参考人にお聞きしたいと思います。

中嶋康博東京大学大学院農学生命科学研究科教授

○参考人(中嶋康博君) 御質問ありがとうございます。  ただ、非常に難しい御質問をいただいたというふうに思っておりまして、その価格に特化したということでございますけれども、合理的な価格を形成することは目指すけれどもそれをどのぐらいやり切れるかということに関しては、私個人的にはまだ余り見通しが立っておりません。それを検証をする会議もやっていることは承知しておりますけれども、例えばフランスの事例なども参照しながら、ただ、実際にはそのフランスでも十分には転嫁できていないような実態も伺っているところでございます。  繰り返しになりますけれども、現在の賃金がまだ十分に上がっていないような状況の下で価格転嫁というのは非常に難しいので、価格形成の面でまだ一定程度の配慮はしていかなければいけないというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、需要に応じた生産をしていく過程で食料安全保障を確保する必要があると思いますので、その価格の形成についてはきちんとしたシグナルを農家に与えられるような環境はつくるべきだと思いますので、そこの点は政策的な配慮が必要だと思っております。

舟山康江国民民主党・新緑風会

○舟山康江君 ありがとうございました。  今、いわゆるデフレ傾向の中で価格が上がらない、価格転嫁ができないという問題は、農産物に限らず、全ての産業の面でずっと問題視されてきましたよね、製造業、それから建設現場。そういった中で、やっぱりその局面を変えていこうということで、多くの業界が今適正価格、価格転嫁を掲げている。そのレベルでの価格転嫁はよく分かるんですけれども、果たしてこの基本法に書いてどこまで実効性が上がるのか。今先生からもなかなかその見通しがよく分からないというようなお話もありましたけれども、ちょっと私は一つの、やっぱり安けりゃいいという局面を変えていくという意味でのメッセージとしては分かるんですけれども、何かこの価格転嫁が、何かこう解決、それこそ農業で食べていける状況につなげていくんだというのはなかなか難しい、そういう中で、やっぱり所得の確保策をもっと、まさに政策として書き込む必要があるんじゃないのかなという問題意識を持っているということを申し上げたいと思います。  その上で、JA、馬場参考人からはJAグループの政策のポイント等もいただきました。先ほどの御答弁の中でも価格交渉の横展開をしていきたいという話がありましたけれども、これも、やはり多分、再生産、再生産に配慮したというのは、つまりは、やっぱり所得の確保の一つとして適正な価格形成ということ、ここも、JAグループとしてもここにかなり特化をしているんですけれども、ある意味、JAというのは生産者団体の最大のグループですから、そういった意味では、JAがきちっと再生産に配慮した価格で買う努力をすることによって大きな影響力が発揮できるんじゃないかと思うんですけれども、直接支払も否定されているということは、やっぱりそこしかないのかなという気がするんですけど、その辺り、JAグループとしてしっかり、米に関しても仮渡金が下がればもう価格に影響を与えていますし、そういった意味で、JAグループが高く買ってくれりゃいいんじゃないのかなというふうに思うんですけど、いかがなんでしょうか。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) 米は、買取りはなかなかしていませんので買取りにはなりませんけれども、概算金でもございますが、いずれにしても、合理的な価格形成のところを、合理的な費用が考慮されなければならないというふうなことで基本法の改正案に入りましたので、そこに大いに期待をしておるところでございます。そのことを通じて適正な価格形成が実現することこそ、生産者から見ると再生産可能なコストの実現ということに解釈しているところでございます。  そういう意味では、農協も努力をしなければなりませんが、やはり国民理解の醸成というのは極めて重要な課題だというふうに認識しております。そういう面では、これから法制化も視野にということでございますので、是非ともその法制化に期待をいたしたいところでございます。  以上です。

舟山康江国民民主党・新緑風会

○舟山康江君 ありがとうございました。  基本は、恐らく価格って市場で決まるんですよね。これ、基本法の三十九条にも書いていますけれども、やはり需給事情、品質評価、まさにこれが市場で決まって価格が形成されるというところ、それを、まあ何というんですか、直接支払が要は生産をゆがめるとかですね、需給バランスを壊すというような議論がありますけれども、むしろ、だって、価格政策、食管制度がなくなった背景はやっぱりそこで価格が高くなったがゆえに需給バランスが壊れたわけで、それで市場に任せるってなったわけですよ。  そうなると、私は方向性として、価格によって需給、需要に応じた生産をしていくというのは何かちょっと矛盾するんじゃないのかなって気がしちゃうんですけれども、その辺りの見解をちょっと作山参考人にもお聞きをし、作山参考人からは、やはり直接支払、これはEUでもダイレクトペイメント、直接支払という政策がかなり前に導入をされて、今やもうインカムサポートと、所得補償と名前まで変わっていますよね。  そういった意味では、ある意味まさにこの再生産を促していく、きちっと農業で食べていける、農村に人が住める、そういった政策を、環境をつくるために、まさに直接支払若しくは所得補償的なそういった政策を打つべきだというふうに思うんですけれども、所得、ごめんなさい、価格政策の問題点と直接支払の可能性、あわせて、先ほど質問の中でです、与党からの質問の中で、直接支払は大規模とか輸出国だけでやっているというお話がありましたけれども、本当にそうなのか、その辺りも含めて、現状についてお聞かせいただきたいと思います。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 御質問ありがとうございます。  二点あったと思いますけど、まず一点目、価格転嫁については、先ほど意見を申し上げましたので追加的なことだけ簡単に申し上げますと、私は、やっぱり政府の今の価格転嫁の検討ってちょっと袋小路に入りつつあると思っています。ポイントは舟山議員と全く同じことで、結局、消費者は安い方がよくて、生産者は高い方がいいので、幾ら議論しても意見はまとまるわけないんですよね。  特に、その価格転嫁の議論は私の農水省の後輩の方がやっていらっしゃるようなのでお話を聞いたんです。分かりやすい例は、例えば牛乳ってスーパーで特売でよくされていますよね。生産者の方からしたらけしからぬと思うんでしょうけど、そこはスーパーの価格戦略なわけですよね。安い牛乳で消費者を集めて赤字覚悟でほかの物を買ってもらうと。そういう戦略に政府がこれはいいとか、これは駄目だと言うことはできないですよね、まさに。  なので、そこは直接支払をやったら、いや、そういう安売りをした、もうけたお金を政府に払ってくださいと、それを原資にちゃんと生産者に還元しますよということをやれば、商行為にできもしない介入をせずにちゃんと生産者の利益が得られるということを言っているということです。  その上で、EUについては、舟山先生が大変よく御研究されているので私が付け加えることは余りないかもしれませんけれども、やっぱりEUも、最初はもう二十年、三十年ぐらい前は今まで価格支持をたくさんやっていて、過剰が出て非常に困ったと、それと、あと輸出補助金付けたりして、諸外国との摩擦があるのでそこは補填するということで始めたと思いますけど、やっぱりずうっとやっていくと、何のために農家だけが直接補助金をもらえるんだという問題が出てくるので、そこはEUとしても、環境保全的な農業をやっていますとか、非常に条件が不利なところなので、そこで続けてもらうことに対価を払うんだということで、その直接支払についてちゃんと消費者も納得できるような理屈をいろいろ考えて、それの行為を農業者にも求めるということで正当化しているということがありますので、日本でも直接支払をやるなら、そこは一定程度必要だと思います。  最後に、大規模だけじゃないかというのはおっしゃるとおりで、さっき基本法を作るときに中山間直接支払の創設に寄与したということを申し上げましたけど、EUの場合だと条件不利地域の農業はほとんど補助金一〇〇%なんですよ。補助金がなければ全く生存できないような、そのイギリスの、まあイギリス離脱しちゃいましたけど、イギリスとかフランスとかオーストリアの山の上の農業とか、そういうところを支援するためにまさに直接支払をやっているわけで、むしろ最近では、大規模にやると、面積払いでやると大規模農家に大きなお金が行って、イギリスの王族とかお金持ちばかりに行っちゃうので、むしろ大規模への支給は削減して、小規模農家に優先的に払うというふうになりつつあるので、むしろそういう運用も可能な、柔軟にできると。要するに個人に払うわけですから、政府が幾らでもコントロールできるわけですよね、そういうメリットがあるということです。

舟山康江国民民主党・新緑風会

○舟山康江君 ありがとうございました。  続いて、野中参考人にお聞きしたいんですけれども、私、今回の議論で大変気になっているのが、農業の、要は外部経済効果と外部不経済効果。多分両面あると思うんですね。農業をすることによって、例えば農村を守ったり環境を守ったり、まあ食料の生産はもちろんですけれども、いろんな役割がある、一方で、今回相当強調されていますけれども、いわゆる外部不経済、環境とかいろんなものにマイナスの影響があると。  そこが今回、現行基本法はかなり多面的機能がどおんと出ていますけれども、今回は負の影響に着目をしながら、それを下げていくと。私、これはこれで大事だと思うんですけれども、ただ、やっぱり前提は、農業のこのプラス効果、まさにそこをどう評価をし、それに対する支援をしながら様々な所得を得て農村をつくっていく、農業を維持発展させていくということかと思うんですけれども、そういった農業の持つプラス効果に、プラスマイナス、どこをどう評価をして、直接支払、参考人からの御提言の中にも直接支払を充実刷新させるべきだと、環境と調和の取れた地域づくりを推進するということの御提言もいただいていますけれども、やっぱり生産条件の不利に対するやっぱり穴埋めも必要だと思いますし、その辺りのバランスを、ちょっと済みません、何か難しい質問になっちゃったんですけど、バランスをどう取りながら中山間地域等の直接支払を構築したらいいのかという、もし御提言等ありましたら、よろしくお願いします。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) ありがとうございます。  農業は環境にマイナスの影響を与えているという点もあることはそのとおりではありますけれども、もちろんそれを織り込まなきゃいけないわけでありますけれども、それ以上にと言ったらちょっと問題あるかもしれませんけれども、最近のやっぱり中山間地域、あるいは農村地域というものの果たす役割ですね、これは要するに田園回帰とか、人が大勢行っているって、やっぱりそこの地域でチャレンジしてやりたいとか、それから、何といいますか、老後をそこで過ごしたいとか、子供を教育したいとか、いっぱいいいことが農山村地域にはあるわけですね。  それを基本法のときには、農業の多面的機能というふうに農業に限って書いていたんですね。ところが、その後、やっぱりいろいろ考えてみると、文化的景観とか何かも全部そうですけれども、農業だけじゃなくて地域全体が国民にとっていい影響を与えているということにずっと変わってきているわけですね。これは世界的にも変わってきているし、先ほど申し上げたように、過疎法、山振法でも、その農業の多面的機能じゃなくて、農山村の地域がそういう機能を有しているということがあるわけですね。  ということでありますから、それをきちっと評価をすべきでありますし、それから、そういうことを、これは前から申し上げたように、基本法というのは理念法でありますから、やっぱり農村の方々に自分たちの住んでいる地域はどういう地域かということをメッセージとして伝えることが大事なんですね。基本法で、そういう農村あるいは中山間地域というのは大事な地域だよ、可能性がある地域だよということをしっかり位置付けることによって、そこに住んでいる人たちも自信を持っていろいろ取り組もうとか、あるいはそうじゃない都市の方々も、じゃ、行ってそこでチャレンジしてみようとかいうことになるわけですね。  ところが、今の農業基本法というのは、残念ながら、農村といいながら、それ農業のためだけしか書いてないんですよ。こんな間違った表現というのはないじゃないですか。やっぱりそこにはちゃんとした大きな役割を果たしているということを書いて、そして、もちろんマイナスの影響もあるけれども、それも考慮をした上で先ほどの直接支払というような方向に行くべきものだと思いまして、基本的にどういう地域であるかということ、そこには農業だけでは残念ながらその経済力の向上にないわけですけれども、最近のいろんなことを考えれば、その地域資源とか活用していろんな経済力が増せるわけですよね。そういうこともきちっと規定をしていくと。その規定がまるっきりないと、あるいは、極端に言えば、それは関係人口のためだけに産業振興するみたいな間違った表現で入っているというところは絶対改めていかないと、農業者とか農村にいる方々に対する……

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 時間ですので、お答えをおまとめください。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) 間違ったメッセージ、国民へのメッセージにならないと思いますので、その辺をよろしくお願いしたいと思います。

舟山康江国民民主党・新緑風会

○舟山康江君 済みません。長谷川参考人にもお聞きしたかったんですけれども、もう本当にそういった農業を頑張って続けていただきたい、そのための条件整備を私たちも考えていきたいと思いますので、よろしくお願いします。  ありがとうございました。

紙智子日本共産党

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、参考人の皆さんの貴重な御意見、本当にありがとうございます。  私は、最初に農民連の長谷川参考人からお聞きしたいと思います。  それで、実は私、今年の三月にこの農水委員会で、農民連がアグロエコロジー宣言を出しましたといって、今日もお配りいただいているんですけれども、これを紹介したのと、それから、日本農業新聞が今年はアグロエコロジー元年ですということで論説を書いているということを取り上げさせていただいたんですね。  それで、長谷川参考人には、じゃ、今なぜアグロエコロジーなのかということで、今日はもう一つの資料も配っていただいていて、ちらちら中身見ますと物すごい生き物がいっぱい出てきて、堆肥の中にミミズがいっぱいいたりとか、それからこれはツバメが虫を捕りにいっぱい来ているですとか、それから田んぼがクモの巣がすごい掛かっているんですよね。何でこんなにクモの巣が掛かるぐらい、私、クモ苦手なんですけれども、実は稲害虫の天敵だと、クモは、それで、害虫に余り襲われなくて済むというかね、そのクモが頑張っているということなんだと思うんですけど、とかカエルとかヘイケボタルも実は役割を果たしているということをもう初めてちょっと知ったんですけど、そういう生物が本当に生きていて全体で役割を果たしているということが改めてちょっと見ながら思ったんですけど、ちょっとその辺りのことを含めて、御自身の実践のところから紹介をお願いしたいと思います。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) なぜアグロエコロジーかというところで、今回の基本法の改正案も、農業は一方的に環境に負荷を与えるものとして改善を図るべきだ、減らすべきだという立場だけれども、本来、それはこれまでずっと続けてきた化学肥料や農薬に依存し、商品を大量に作る、産地形成をしていく、そういう農業のやり方であれば環境に負荷を与えるんだろうと。そうでない方向へ日本も切り替えないといけない時期に来ている、そして、その方向は具体的に私がこの資料で示したような、言わば生態系を大事にしていくことからすれば、それは非常に大きな可能性があるんだと。また、それが経営的にも、外部から化学肥料を買うんではなく、また、農薬を買うのもやめていますから、経営的にもそれが合理的な循環の可能性を見出すし、また、里山の手入れした間伐材や除伐材を燃料にしていること、それによって私の家はもう二十年以上灯油とかプロパンガスを買わないで基本的に家を暖房を含めて維持している。  そういう意味では、再生可能エネルギーの使用も含めて合理的な形ができて、野中参考人がおっしゃるような、本当に中山間地が生かせる資源が多いし、それを生かす農業へ転換すること、ここがやっぱり必要だというふうに思っているところです。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ありがとうございます。  私、北海道の出身で、それで、私も農家の娘で生まれ育ったものですから非常に実感として思い出すことはあるんですけど、ただ、今、北海道というのは大農家が多いんですよ。かつては二十三万戸あったと言われていて、今は五万戸切るかという感じになっていますから、一つ一つが物すごく大規模で主業農家が多いですけれども、それはそれで景観もありますから大事にしなきゃいけないんだけれども、同時に、やっぱり中山間地域で果たしている役割というのもすごく大きいと思いますし、多様な農業を本当に大事にしていかなきゃいけないというふうに思うんですね。やっぱり、平たく言えば、人と環境に優しい農政の方向に行くべきだなというふうに思っています。  それで次に、農政の今の課題ということでちょっとお聞きしたいんですけれども、多様な担い手というふうに言った場合に、家族農業であったり兼業農家、この役割が重要だと思っていて、元旦に能登半島で地震がありましたよね、あそこに行ってきたんですけど、大体兼業農家が地域支えてきたんだよというふうに言われたんです。  それで、能登半島だけじゃなくて、こういう状況のところはほかにもいっぱいあるよというふうに思うんですけれども、そういうところで営んでいく上で家族農業や兼業農家の役割ってすごく大事だと思うんですけど、この点について、馬場参考人と、それから作山参考人と長谷川参考人にお聞きしたいと思います。

馬場利彦一般社団法人全国農業協同組合中央会専務理事

○参考人(馬場利彦君) 多様な農業者という規定が今回入れられたわけですけど、いずれにしても、今後も農業者の減少が続く中で、担い手である方と多様な担い手、多様な農業者が連携して地域農業を維持発展していくことが極めて重要だというふうに思います。改正基本法で新たに規定されております多様な農業者が長く農業を営めるよう、施策の拡充を図っていくことが必要だというふうに考えております。  また、多くの担い手からはこれ以上農地を受け入れられないよといった声も上がってきているのも事実でありますし、農地の集約とか、あるいはJAも含めたサービス事業体を通じたスマート農業の技術普及と推進等も必要かと思っております。  以上です。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 紙先生、御質問ありがとうございます。  私も出身は岩手の兼業農家の息子でございまして、多様な農業とか兼業農家の重要性に全く異存はありません。  特に、今回、基本法の議論で私が思いましたのは、多様な農業とかそういうことを言うと、構造政策に逆行するとかそういう議論があったんですけど、私は、それはもう全く時代遅れで、というのはやる人がいなくて困っているわけなので、逆行する農家って一体どこにいるんだというのが私の感じなんですよね。  もう一つ言いたいのは、せっかく御発言の機会があったので、二十七条に専ら農業を営む者というのが出てきまして、これは基本法を作ったときから書いてあるんですけど、これも、実は農業だけ営んでいると非常にリスクが大きいので、むしろ経営はいろいろ農業以外も含めて多角化した方がリスクに強いという面もあるわけですよね。そういう面もあるので、この専ら農業を営む者というのはいかにも専業農家だけがいいような印象を与えるので、小規模な方とか兼業農家のやる気をそぐような規定なので私はやめた方がいいと思っているんですけど、そういう面を含めて、やっぱりもうやる人いないので、農業をやっていただけるだけで有り難いという現実を踏まえた条文にした方がいいと思っています。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) 多様な担い手を本当に多くつくっていくことが非常に大事だと思っています。  元々、日本で農業センサスで専業と兼業というのを分類したのは、一九五一年のセンサスからです。私の家では、戦前の旧瑞穂、旧高原村時代の村民税賦課の議事録がありまして、それを見ると、全てが兼業農家なんですよ。つまり、専業、兼業と分けたのは政府のセンサスで分け、そして兼業も一種、二種に分け、さらに自給農家というような区分けもしてきた、まさにそれは政策なんですね。  実際の現場は、ほとんどみんな兼業農家なんです。無理して専業農家を育てるやり方をやっぱり変えていくことで地域を守っていくことが当然できると思っていますし、そういう支援が必要だと。そういう意味では、今、小さい農家が農機具を更新したいとか耕運機を替えたいんだとか、小さな馬力のトラクターを買いたいんだとかっていっても、何の応援もないわけですよね。やっぱり認定農家だとか大規模だとか、規模拡大することが条件みたいな、やっぱりそこを変えてほしいなと。それをしないとやっぱり、そうすると、小さな農家も受け手がない農地を引き受けて応援することができるように変わっていくというふうに思っています。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ありがとうございました。  日本の農業の九割が一応家族農業というふうに言われていて、国連家族農業年の十年が設定されて、ちょうど折り返し点ということでもあるんですけれども、やっぱり持続可能な在り方、これ本当に追求しなきゃいけないというふうに思っていまして、そういう意味でもやっぱり基本法の中にその趣旨がちゃんと入らなきゃいけないなというふうに思っています。  次に、農業で食っていけないと、農業で生活できないという意見もよく出されているわけですけど、日本生活協同組合連合会が基本法の見直しに関する意見書というのを出していて、その中に、財政支出に基づく生産者の直接支払というのがなきゃ続かないんじゃないかと求めておられるんですけれども、少なくとも、やっぱり再生産できるような所得を下支えできる仕組みというのは必要だと思うんですね。元はあったんですよね、いろいろいっても、下支えできるものあったのに、今もうほとんどなくなっている中で、この仕組みって必要じゃないかと思うんですけれども、これについて、ちょっと時間も迫ってきているので、野中参考人、それから作山参考人、長谷川参考人にお願いします。

野中和雄特定非営利活動法人中山間地域フォーラム副会長

○参考人(野中和雄君) おっしゃるとおり、農業で人口が減って、それで食べていけない、やっていけないということが明らかにあるわけでありまして、先ほど申し上げましたように、EU等でもそれに対して政策を取っておりまして、日本も、先ほど申し上げましたように、その財政所得だけでとか農業所得だけでとかいう必要はありませんけれども、所得の確保が重要であるということをはっきりやっぱり方針として示して、それを支援していくことが大事じゃないかなと思います。  そのときに、先ほどから繰り返し私申し上げておりますけれども、残念ながら、地域で考えても、農業だけで完全に他産業並みの所得を上げていくということは非常に難しい地域がたくさんあるわけでございまして、一方で、農村ではいろんな可能性が広がってきて、せっかく広がってきているわけです。そういう方たちが農村に住んで、農業も支えてくれているわけですね、日本型直接支払とかいいながら。ですから、地域全体で経済力を上げる中で、農家にも所得が行くようにというような視点も踏まえて、それでなお足らざる点を政府がいろんな形で、直接支払という形でカバーしていくのが私はいいんじゃないか、国際的に見てもそれは妥当ではないかというふうに考えます。

作山巧明治大学農学部専任教授

○参考人(作山巧君) 紙先生の御質問ですけど、私もこの生協の提言は非常に注目しております。要するに、消費者が財政負担をやってくれと言っているという意味で。  あと、もう一つ関連してあるのは、私は農水省で長く貿易交渉などをやっていまして、TPPの参加協議などもやっていましたけれども、そのときは経済界も直接所得補償をやってくれということだったんですよ。というのは、貿易自由化をやったら工業製品の輸出が伸びますので経済界にとってはいいことだと、ただ、農家の方は困るでしょうから、それは所得補償で構わないということだったわけですよね。だから、消費者も所得補償をやってくれ、経済界もやってくれと言っているのに何でやらないのかなと。  特に、実際は日米貿易協定とかTPPを進めたのは安倍政権ですけれども、やっぱりそういう大きな政策転換がないと、なかなか財政負担を伴う新しい政策というのはできないので、本当は私は安倍政権のときに直接所得補償を導入すればよかったと思っていて、そこのタイミングを逃したというのは非常に大きな政策的な誤りだと思っております。

長谷川敏郎農民運動全国連合会会長

○参考人(長谷川敏郎君) 農民連は皆さんの方にその提言というのも渡しておりますけれども、価格保障、直接支払、そして今回新しく価格転嫁の方向について、そしてもう一つ、どこも言われないんだけれども、食料支援制度をきちっとつくってほしいと。これが逆に、国がきちっと食料を買い支えて需要を増やしていく、自給率も高めていくということになっていくと思っています。  これについて、そのフードバンクの云々みたいな形の、ちょっとお金を応援するみたいな話しか書いてありませんけれども、やっぱりもっともっと大規模にやっていくと。つい近いところで、アメリカの農業予算の研究を私どもでしていると、二十二兆円規模、国民の八千万人がそれを受けて、計算すれば月に五万円とか、先日農協の方が発表された分でいうと、月一人当たり七万円ぐらいの食料支援を積み上げていく、SNAPという制度でそれをやっていく、それで国内の需給を盛り上げていくという、そういう制度も今回必要だというふうに思っています。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ありがとうございます。  ちょっと時間がもうなくなってしまったので、中嶋参考人にお聞きできないんですけれども、ありがとうございました。生かして、生かせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。  参考人の皆様方には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  参考人の皆様におかれましては、御退席いただいて結構でございます。  この際、先般本委員会が行いました視察につきまして、視察委員の報告を聴取いたします。山下雄平君。

山下雄平自由民主党

○山下雄平君 委員会視察の御報告を申し上げます。  去る五月七日、栃木県において、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案の審査に資するための視察を行いました。  視察委員は、滝波委員長、佐藤理事、山本理事、横沢理事、舟山理事、清水委員、藤木委員、宮崎委員、山田委員、田名部委員、徳永委員、羽田委員、横山委員、松野委員、紙委員、寺田委員そして私、山下の十七名です。  以下、その概要について申し上げます。  まず、那須塩原市のアーデルファーム株式会社を視察しました。  同社は令和三年に設立され、現在約七十五ヘクタールの農地で水稲・畑作物を生産しているとのことです。同社はスマート農業と女性参画に力を入れており、スマート農業の実施には、初期投資の負担、農地の土の中に残る石の処理などの課題がある等の発言がありました。  次に、那須塩原市において、渡辺美知太郎市長から市の農業の概況説明を受けた後、農業関係者と意見交換を行いました。  視察委員からの質疑を受けて、自給飼料割合を維持できる適正規模での酪農経営、農福連携で障害者が体で体験することの重要性、農産物の価値を理解してくれる取引先の開拓、親と学校の間で子供が安心できる子供食堂の必要性、農産物の価格転嫁の重要性、外部人材により安定的な経営継続を可能とする法人化のメリット、将来後継者となる酪農ヘルパーのスキルアップへの貢献等の発言がありました。  次に、那珂川町で小砂village協議会を視察しました。  この協議会は平成二十五年に設立され、小砂環境芸術祭、棚田オーナークラブ、農泊等の村づくりの取組を実施しているとのことです。続いて、福島泰夫町長から町の概況説明がありました。  以上が視察の概要です。  最後に、我々の法案審査のため、現地調査に御協力いただきました渡辺市長、福島町長を始め多くの関係者の方々に対し厚く御礼を申し上げまして、報告を終わらせていただきます。

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 以上で視察委員の報告は終了いたしました。     ─────────────

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につき、現地において意見を聴取するため、来る二十一日、岩手県に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

滝波宏文自由民主党

○委員長(滝波宏文君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十六分散会

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