国民生活・経済及び地方に関する調査会 第3号
- 発言数
- 76 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 2023/02/22
会議録
○会長(福山哲郎君) ただいまから国民生活・経済及び地方に関する調査会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日までに、木村英子君及び和田政宗君が委員を辞任され、その補欠として天畠大輔君及び小林一大君が選任されました。 ─────────────
○会長(福山哲郎君) 国民生活・経済及び地方に関する調査を議題といたします。 本日は、「誰もが取り残されず希望が持てる社会の構築」のうち、「社会経済、地方の現状と国民生活における課題」に関し、「現下の経済情勢」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。 御出席いただいております参考人は、大正大学地域構想研究所教授小峰隆夫君、株式会社ニッセイ基礎研究所生活研究部上席研究員久我尚子君及び法政大学経済学部教授酒井正君でございます。 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。 次に、議事の進め方について申し上げます。 まず、小峰参考人、久我参考人、酒井参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず小峰参考人からお願いいたします。小峰参考人。
○参考人(小峰隆夫君) 着席のままで失礼いたします。 御紹介いただきました大正大学の小峰でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 本日は、このような場で私の意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございました。(資料映写) 現下の経済情勢についてということでございますけれども、私の場合は、少し長めに時間軸を取って、平成経済から順番に今日の経済まで振り返ってみたいと思います。 まず、この平成経済を振り返ることの意味なんですけれども、現時点においても、平成経済を振り返ることは大変意味のあることだというふうに私は考えております。平成経済というのは、ここにありますように、次々に今まで経験したことのないような課題が現れてきたということで、それに対する対応も、今まで経験がないものですから、どうしても実験的又は試行錯誤的なものにならざるを得なかったという特徴があります。 それで、残念ながら、これを事後的に評価してみますと、こういった政策的対応は必ずしも成功だったとは言い難いものがたくさんありまして、いろいろ問題があったんじゃないかというふうに思われます。これらの多くの課題は、平成以後、今に至るまで引き継がれているものがたくさんあります。したがって、また改めてこの問題が発生した平成経済から遡って取組を振り返ってみる意義というのはあるのではないかというふうに思います。 以下、順番に時代を区切って簡単に振り返ってみたいと思いますけれども、まず最初は、バブルが生成して崩壊した八〇年代、八九年から九〇年代前半の時期について考えてみたいと思いますが、これはもう一言で言えば、バブルの、これは株価と地価の動きを見たものですけれども、一番左の部分が大きく盛り上がっていますけれども、株価も地価も三倍以上、短期間で異様な盛り上がりを示したということですけれども、今から振り返ってみて改めて気が付くのは、そのバブルの渦中にあってはこれがバブルだということは分からないということが改めて確認されたということです。 この異様な株価、地価の上昇も、そのときにはそれなりの説明をしていたと、こういう理由で上がったんだという説明がそれなりにあったということですので、これが異常な事態であって、これがやがて逆転して日本経済に非常に大きな重荷になるという認識はほとんどなかったというふうに思われます。 それから、次の時代は九〇年代後半の金融危機とデフレの発生ということですけれども、まず、バブルが崩壊しますと、資産と負債のうちの資産が大きく毀損しますので、負債が大きくなって不良債権が発生するということになりますが、これは、当初はこれに対する認識は驚くほど低かったということです。これ、政府の文書で、九二年の経済白書の引用ですけれども、当時の不良債権は七から八兆円程度だったと。これ、実はもっと大きかったということなんですけれども、これは銀行全体の資産と比較すると、延滞債権というのはほんの一部だということで、それから、含み益がありました。この含み益がたちまちなくなってしまうわけですけれども、含み益もあると。したがって、銀行経営にとって危機的な問題ではないというのが一般の認識であり、政府の認識でもあったということです。 それから、当時、宮澤総理がかなり早い段階で、これは不良債権を税金を使って処理してしまった方がいいんじゃないかという提案をいたします。九二年なんですけれども、このときは総理自らが軽井沢のセミナーで発言するんですが、余り話題にならなくて、しかも、それこそ全く四面楚歌、誰も賛成しなかったと。経済学者、政治家、産業界、金融界、みんなそこまでやる必要はないんじゃないかということで、総理の考えだったとはいえ、それが実現することはなかったということがありました。 その後、九五年に六千八百五十億円の住専処理をめぐって公的資金の投入というのが非常に大きな問題だというふうに認識されて、その後、公的資金を使うのがほとんどタブー視されたということで、これは金融危機になって実際にパニックが起きて、これは大変だということがようやく分かって、数十兆円の公的資金が投入されるということになったという経験があります。 それから、デフレが今に至るまで大きな問題になっているわけですけれども、これも最初はデフレが大きな問題、デフレというのは要するに物価が上がらないという状態ですけれども、これが大きな問題だという認識は当初はなかったということですね。むしろ逆に物価を下げようという政策が行われていて、これがいわゆる内外価格差の議論なんですけれども、諸外国に比べて日本の物価は高過ぎると、だから我々は生活の実感として高所得を実感できないんだという議論があって、これは当時の村山総理も内外価格差を縮小していきますというのを表明している。 それから、これに対して、九五年の白書では、内外価格差というのは為替レートのオーバーシュート又は内々価格差、製造業と非製造業の生産性の格差によって起きるんだというようなことを主張していたんですけれども、なかなか、物価が下がるのは良いことだという認識の方が当時は強かったということが言えると思います。 それから、小泉改革の時代は二〇〇〇年代前半なんですけれども、このときは不良債権の処理というのをかなり強引に進めまして、目標は、当時、総資産の八・七%ぐらいだった不良債権比率を二〇〇四年度に半分ぐらいにするという目標を掲げて、かなり強引に不良債権の処理を進めた。しかし、それで実際にそのとおり不良債権が縮小していって目標は達成されたんですけれども、この不良債権の処理はデフレ対策の一環として行われているということですね。当時は、不良債権があるから日本経済はデフレから脱却できないんだという認識が強かったということです。しかし、不良債権を正常化してもデフレからは脱却できないということが分かって、これは不良債権の処理だけでは駄目だということで、だんだん金融の緩和に進んでいくというようなことになったのだと思います。 それから、私自身、かつて経済企画庁の役人をしておりましたので、この小泉改革の中でいろいろ行政的な見直し、仕組みの見直しがあったという中で、新しく出たもの、またそのときに失われたものがあるということを一言申し上げたいと思います。 このとき経済財政諮問会議が新たにつくられて、今に至るまで続いている。それから、年に一回骨太方針を決めるというのも今に至るまで続いていて、それから財政の中期展望、これも最近出ましたけれども、こういったものが一つの、行政が財政をモニターする手段として、非常に有効な手段として整備されるに至ったということで、これは評価できると思いますが、一方で、私から見ますと、失われたものもいろいろありますねということで、例えば、経済審議会と経済計画というものがなくなった。経済審議会は、今の経済財政諮問会議はそもそも総理とか有力閣僚がメンバーなんですから、現在の政権にそれほど違った意見を言うということはそもそもできないという組織だと思いますが、経済審議会というのは、二十数名の各界代表、労働界、消費者団体、学界、産業界、マスコミ、こういった人たちの代表者が集まって、まあ四、五年に一回、経済計画というのを作る。そのときにはいろんな専門委員を二百人ぐらい動員して、半年ぐらい時間を掛けて議論するということが行われてきたということで、だんだん議論していくうちにだんだん角が取れて平凡な結論にはなっていくんですけれども、それほど経済の常識に外れたような政策は出てこないというような仕組みがあったわけですけれども、これがなくなってしまった。 それから、私はまさに官庁エコノミストとして活動していたわけですけれども、こういった存在もなくなってきた。 それから、経済白書、これは私も書いていましたけれども、かつては経済白書というのが出るたんびに日本の経済はどうなっているんだということについて各方面でいろいろ議論が巻き起こったというのがあったんですけれども、最近は経済財政白書ということになって、まあ基本的には政府の方針を追認するような内容のものになっていったというのが、それぞれ得たもの、失われたものがあったのではないかというふうに思います。 それから、ちょっと関係の議員の方もおられるかもしれませんのでちょっと失礼なんですが、民主党政権のときの政策運営についてもいろいろ問題があったということを指摘をさせていただきます。 一つは、やはり官僚批判というのは当時相当強くて、ここに鳩山政権のときの五原則、五策というのが出ていますが、これのかなりの部分が官僚に関する部分になっておりまして、したがって、当時は、官僚を変えれば、官僚の生き方、官僚の扱いを変えれば相当政治、行政が良くなるんじゃないかという認識があったのではないかというふうに思いますが、まあ私自身官僚だったのでちょっと官僚寄りにバイアスがありますけれども、官僚は要するに自分の力で行動することはできないので、官僚をいかに使うかというところに意を用いていただければよかったのではないかというふうに思います。 それから、やはりマニフェストで財源の見通しが甘かったということが明らかになって、これは結局、財政赤字になってしまったということがあると思います。 それから、私、経済政策が専門ですけれども、当時いろいろな議論があって、成長戦略としても例えば第三の道というようなことが言われたり、それから、鳩山内閣のときにはGDPよりも幸福度だというような議論があって、そういうことを目指そうという動きがありましたが、残念ながら練り上げ不足だったのではないかという印象があって、たちまちこういったアイデアは消えてしまったということがありました。 それから最後に、これは今に至るまで続いていますけれども、アベノミクスの展開というのがあります。 これは、安倍政権が発足した当初は、アベノミクスは基本的には大成功だったというふうに言われていました。株価が上がって、物価もマイナスから脱出して、企業収益も増えたということで、かなりこれはうまくいったということだったんですけれども、これは今から振り返ってみますと、一つはアナウンスメント効果、つまり、こういうことをやるぞというアナウンスがマーケットに非常にプラスの影響があったということとか、それから、当時円安が非常に進みましたので、円安で輸出企業がかなりもうかったといったようなこともあったと。それから三番目に、公共投資も拡大した。四番目に、消費税を次の年に上げる予定でしたので、かなり大規模な駆け込み需要が起きたといったようなことがあって、これは今から思うと全て短期的な、一時的な理由だったということが言えるのではないかと思います。 その後、大胆な金融緩和、これは申し上げるまでもなく、インフレターゲットを決め、大胆な、黒田総裁の下での大胆な金融緩和が進み、二〇一四年に追加緩和をやって、それからさらにマイナス金利とかイールドカーブコントロールに進んでいくというようなことが行われたということです。これは、今に至るまで、ここからどうやって出口に向かうかというのが大きな課題になっているということです。 それから、こういった平成経済を振り返ってみて何を我々は学んだらいいのかということについて簡単に申し上げますと、まず、やはり我々の政策というのは、社会の認識に支えられてこそ政策が実現するという点があると思います。 ところが、社会的な認識というのは相当遅れるということですね、気が付くのが遅くなるということはあります。そうすると、例えばさっきの不良債権だとかデフレ問題だとか、そういったものはどうしても当初の認識とかなり違う認識がやがてやってくるというようなことが多い。そうすると、国民が経済的な課題の意味を認識するまでにかなりタイムラグがあるということですが、それは、その民意は世論調査だとか選挙の結果だとか、そういうのに反映されて、それが政策をある程度規定していってしまうということになって、そうすると政策自身は後追いになってしまって、むしろ傷が深くなってから政策が出てくるというようなことになってしまったというのが平成経済の幾つかの面であったのではないかということが言えると思います。 それからもう一つは、これは私、経済をやっていますのでどうしてもこういう結論になってしまうんですけれども、標準的な、つまりオーソドックスな経済学の教えに反した政策というのは結局回り回って社会に大きなコストをもたらすということがあったのではないかということですが、例えば政策割当ての議論というのがありまして、こういう政策はこういう分野に一番効率的に効くんだからそういう分野に割り当てるという割当ての議論があるんですけれども、例えば金融政策を、年収の五倍で住宅が得られるようにしましょうとか、金利生活者が困らないようにしましょうというふうに割り当てると、ちょっと正しい政策割当てと外れてしまう。 それから、経済摩擦があったときに、これは今、むしろ経済摩擦ってなくなってしまいましたけれども、経済摩擦に対応するために内需を拡大するというのをやると、今度は経済が過熱してしまうことにもなりかねない。 それから三番目に、部分均衡的、その当面の効果だけを見て政策を採用していると、例えば地域振興券を配ると商品券は消費に回るんだという議論がありましたけれども、商品券も実は今まで使っていた消費に割り当てれば貯蓄ができてしまうというようなことで、回り回って余り効果がないというようなこともあったということです。 それから、令和に持ち越された課題について簡単にお話ししますと、まず、異次元金融緩和というのが明らかに行き詰まってきているということで、まあ当初は二年で二%ということでしたが、これは七年たっても八年たってもできなかったということですし、長期国債の買入れも、もうだんだん買い入れる種がなくなってきているという限界になっていますし、さらに、円安が最初非常にプラスだったんですけれども、いつまでも円安に頼るわけにはいかない。それから、マイナス金利というのは、これは金融機関の経営にかなりマイナスだということで評判が悪い。それから、長期金利のコントロールというのは、これは教科書的に無理筋だということですね。私が習った教科書では、長期金利というのはマーケットが決めるものであり、規制すべきでもないし、規制もできないというのがオーソドックスな議論であったということです。 それから、財政について、これはもう申し上げるまでもありませんが、日本の債務残高のGDP比が非常に大きい状態が続いているということで、さらに、このところ非常時型、こういう緊急事態なんだからこういう財政支出が必要だということが次々に起きていて、物価が上がったからガソリンを安くしようとか電力を安くしようと。それから、補正予算も毎年のように編成される。コロナでいろんな費用が必要になる。それから、防衛費も必要だ。最近は、今度は少子化も一生懸命やらなきゃいけないということで、言わば次々にパンドラの箱が開いていって、歳出がどんどん膨らんでいくということが起きています。 それから三番目は、輸入インフレにどう対応するかということですけれども、これは消費者物価の今後の予想ですけれども、輸入インフレが収まってくると、また二%より下に物価上昇率が行くのではないかというのが大方の予想になっています。 ただ、これはちょっとなかなか理解するのが、理解していただくのは難しいかと思いますが、これは交易条件が悪くなる、つまり、輸入、我々が日本全体で輸入している物の値段が上がったことによって物価が上がっているので、これは残念ながら、これ自体を防ぐことはなかなか難しいということですね。 そうすると、この表は、実質賃金、一番左の時間当たり実質雇用者報酬というのが二〇二二年平均で〇・九%減っているんですけれども、これは生産性では〇・六%上がっている。それから、分配率も〇・八%上がる方向に寄与している。しかし、交易条件、つまり輸入物価が上がったことで二・二%マイナスになっている。 つまり、輸入物価が上がって交易条件が悪くなったことが実質賃金を減らす一番大きな要因であって、それを生産性とか分配率でカバーしているんですけれども、カバーし切れないから実質賃金が下がっているというバランスになっているということです。 これは、ちょっと説明が複雑なので簡単にしますと、この状況はGDPデフレーターの動きによく表れていて、一番下のGDPデフレーターというのは国内に原因があるインフレ率の動きを表している。国内需要デフレーターという上がっている方は、原因はどこであれ、とにかく物価が上がっているかどうかというのを示している。そうすると、今物価は上がっているんですけれども、国内に原因がある部分はほとんどないということなので、ほとんどが輸入インフレの影響であるということが分かるということです。 それから最後に、人口問題について簡単にお話ししますと、コロナで人口の変化が十年加速したというふうに言われています。簡単に言うと、これが人口の将来展望と実績なんですが、左の出生数の中位推計というのは国立社会保障・人口問題研究所の推計なんですが、これだと二〇三一年に八十一・一万人だというふうに予想されていたんですが、現実には二〇二一年に八十一・二万人になってしまった。つまり、標準的な予想よりも十年進行が早くなっているということです。 それからさらに、これ出生率で、人口が減らないためには二・〇七にする必要があるんですが、現実には一番下の一・三〇だと。 政府の目標は、まずは一・八〇にするという目標を立てていますが、これは希望出生率というふうに言われていまして、結婚したい人が全て結婚して、産みたい子供が全て生まれた場合に一・八になるということなんですが、コロナ後に、これは我々の段階で試算してみると、この希望出生率は一・六ぐらいに下がっているという深刻な状態になっています。 それと最後に、異次元の少子化対策というのが言われていますけれども、私がもし異次元の少子化対策は何ですかと問われればこの五つだというので、それを御紹介して終わりにしたいと思います。 一つは、人口政策について新しい目標が必要だと。人口一億人というのも出生率一・八というのも、これはほとんど実現は不可能だということです。 それから二番目に、少子化関連予算がまだ少ないというのは事実ですけれども、それはやはり効果的な財源を伴う議論である必要がある。 三番目に、これは少子化が病気なのか、ほかの大きな、より大きな問題があって、それの副作用として少子化になっているのかという議論をしっかりしておいた方がいいということがあります。 それから四番目に、人口政策について国と地方の役割分担を見直した方がいいということで、地方で少子化対策いろいろやるんですけれども、これは言わば子育て世代の取り合いになってしまって、少子化率、出生率が非常に上がったという自治体が確かにあるんですけれども、それは逆に言うと、周りの自治体は子育て世代がいなくなったので出生率が下がるということになっているということですね。ですから、人口政策はあくまでも国が主体でやるべきだということです。 それから、最後に五番目、これはなかなか言いにくいんですけれども、今後、相当長い間は日本の人口は減るということは間違いないということなので、人口を増やすというのを当面の目標にするよりは、ある程度人口が減っていっても我々の福祉が損なわれないような社会をまずは目指すということも必要なのではないかというのが私の考えです。 以上で私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) ありがとうございました。 次に、久我参考人にお願いいたします。久我参考人。
○参考人(久我尚子君) ニッセイ基礎研究所の久我と申します。 本日は、大変貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。(資料映写) それでは、現下の個人消費、コロナ禍の個人消費と物価高に対する意識ということでお話をさせていただきます。 本日、二十分ほどお時間いただいていますけれども、このようなお話させていただきます。 まず、三年間、約三年間のコロナ禍の個人消費を少し振り返ってみるということと足下の物価高の状況、そして物価高に対する今の消費者の意識と、そして、消費行動にはやはり需要喚起策が大きな影響を及ぼしますので、その利用状況などについてお話をさせていただきます。 まず、個人消費全体の動きを示した二つのグラフなんですけれども、こちらはどちらも個人消費の水準で、左側が長期時系列、そして右側が、左側のコロナ禍の楕円の部分を拡大して、新規感染者数、月々のものと合わせて見たものです。 右側御覧いただきますと、やはりコロナ禍では、感染状況が悪化して緊急事態宣言などが発出されると消費が落ち込んで、改善すると上向いてということをずっと繰り返しています。 二〇二二年の三月下旬から特段の行動制限が出ておりませんので、へこみが大分浅くなっています。ただ、統計の最新値が二〇二二年の十二月なんですけれども、この時点ではコロナ禍の影響がまだ見られなかった二〇二〇年の二月の値を下回っているというところです。 ただ、昨年の一年間は、やはりオミクロン株の重篤化しにくいという特徴もあって、社会経済活動との両立をする方向に大きくかじが切られた一年間で、消費行動としては外に出る消費というのが非常に活発した影響で、グラフを見ていただきますと、まあ余りちょっとまだ元気がないなという感じではあるんですが、じわじわと上向いてきているという一年間でありました。 コロナ禍の消費としては、やはりプラス要因、文字の方に書いてありますとおり、何よりも感染状況というのがすごく影響します。そして、二年目以降のワクチンの状況ですとか、そして先ほど申し上げた社会経済活動といかに両立を図っていくか。一方で、マイナス要因としては、やはり感染の不安ですとか不透明感、そして足下で物価高が進行している、ここが少し足を今後引っ張っていくのかなというところです。 この物価高の状況について、改めて少し数字的なところを押さえていきたいと思います。 御承知のことと思いますけれども、左側のグラフです。消費者物価について見たものですけれども、この輸入物価、企業物価、まあ川上段階と言われる物価の方はスケールが大分違いますので、グラフでは右軸の方を見ていただいて、消費者物価だけ左軸という見方になります。 輸入物価、企業物価が上がることでコスト増などが転嫁されて、消費者物価が二〇二一年の下期からじわじわと上がって、昨年一年間は少し大きめに上がっているということをお示ししているんですけれども、当初の上昇の主要因というのは原油高によるエネルギー価格の上昇でしたけれども、足下で食料品や日用品などに変わってきているというところです。 消費者の体感としては、消費者物価は毎月公表されると何%でしたという報道ありますけれども、その数値以上に早くから感じていると思われます。どうしてかというと、右側のグラフです。消費者物価の購入頻度別に見てみますと、特に物価が上がり始めた二〇二一年の下期、そして二〇二二年の上期辺りを御覧いただくと、購入が頻繁なもの、食パンとか牛乳とかガソリン代とかですね、こちらの品目ほど消費者物価が上がっているので、消費者の意識としては数値以上のものがあるというふうに推察されます。 そして、実際にそのコロナ禍ということと物価高というのが今消費行動で二つの大きなキーワードなんですけれども、この三年余りの間、実際の消費支出はどういうふうに動いているのかと見たものが四ページ目になります。 まず、左側なんですけれども、こちらは二人以上世帯の消費支出、赤の実線が基礎的支出、つまり食料とか家賃とか生活必需性の高い支出ですね、こちらを見ると、横ばいでおおむね推移している、つまり余りこの三年間で変わっていないということです。一方で、青の点線、選択的支出、まあ娯楽用品ですとか旅行とかレジャーとかですね、こういったものは感染状況に大きく連動して動いているという違いがあります。 ただ、その物価高が二〇二一年下期から進行していますので、基礎的支出が横ばいであるというところにもしかしたら違和感を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、この基礎的支出の中では家賃が少し大きな影響を与えますので、その影響があるということと、やっぱりコロナ禍で、例えば食料ですとか巣ごもり消費で支出が増えたものに関しては、消費者が外へ向かい出すとそれによって買う支出額が減っていく、一方で物価高なので買い控えているという両面がありまして、そこをなかなかデータから分解することは難しいんですけれども、私の印象としては、今のところ外へ行く消費の影響の方が大きく出ているんじゃないかと見ています。 その買い控えの影響というのがやっぱり出やすいのが食料品ですので、念のためにデータで押さえたものが右側になります。食料品の主な品目について、同じように前年同月と物価の影響を差し引いた実質増減率で見たものが右側になるんですけれども、やっぱり巣ごもり消費が活発化した二〇二〇年、ぐっと盛り上がっていって、だんだん落ち着いていって、今、二〇二二年、物価高の影響もなってどうなるのかというところなんですが、実際には二〇二一年よりも二〇二二年の方が食料の支出は減っています。 ただ、コロナ禍前の二〇一九年と比べると、これは図ではお示ししていないんですけれども、食料の品目によってコロナ禍前よりも支出が減っているものもあればそうでもないものもあって、ちょっと今のところまだら模様で、節約志向によって優先度の低いものは買い控えているけれども、全体としては外出型消費によって食料の支出も減っている。個人消費全体では、やはり支出額の大きな旅行とかレジャーの支出が押し上げていますので、冒頭のグラフのように、まあじわじわと個人消費全体としては改善しているというところです。 そして、今、支出額のお話をしたんですけれども、家計収支、可処分所得と消費全体では世帯当たりどうなっているのかと見たものがこちらになります。支出額から、やっぱり消費者の今の意識ですとか、どこの世帯が苦しいとか、具体的な様子というのはなかなかつかみ取りにくいので、ちょっとこちらのデータを御紹介した後、弊社で実施しております消費者の意識調査の話で補填していきたいと思います。 まず、ちょっとこの五ページ、分かりづらいんですけれども、お付き合いいただきたいんですけれども、こちらのグラフ、何をお示ししているかといいますと、まず右上を御注目ください。 二〇一九年、コロナ禍前と比較した二人以上勤労者世帯の家計収支、可処分所得、消費支出、黒字の額の月平均当たりの金額を差を見たものです。ですので、グラフが上向いていますとコロナ禍前よりも増えているもの、下に向いているとコロナ禍前より減っているということです。グラフの固まりが六つありまして、この紙の右下見ていただくと、平均からⅠからⅤという数字があるんですけれども、平均というのは二人以上勤労者世帯の平均で、ⅠからⅤは収入階級を五分類したもので、一番低いのがⅠで一番高収入がⅤグループということになります。このⅠグループに関しては、再雇用などで働いている方の多い比較的年齢が高い世帯、ⅡグループとⅢグループについては世帯主の年齢が比較的若いので子育て世帯が多いというふうに御理解ください。 この前提に立ちますと、この三つのグラフで共通しているのは、全体的に赤の消費支出が下向いている、コロナ禍で消費支出が減っているということです。一方で、少し意外に思われるかもしれないんですけれども、青の可処分所得が上向いているんですね。コロナ禍前よりも増えているということです。 どうしてかというと、右上の二〇二〇年、コロナ禍一年目に関しては、やはり給付金の影響、そして、男性の世帯主の収入というのは、グループⅡからⅤまで、子育て世帯などを含むいわゆる現役世代の方では、男性の収入は減っているんですけれども、中長期的に働く女性が増えているという影響がプラスになって全体的に押し上げられているという結果になっています。 コロナ禍で、確かに非正規雇用の女性の雇用が減っていって、足下でもまだ減ったままではあるんですけれども、正規雇用者の女性の数は実際は増えていたり、医療とか福祉とか、需要が増している領域では正社員が増えているという状況があるので、恐らくこのようなデータになっているんだと思います。 ここで御注目いただきたいのが、左下の丸印のところです。Ⅱ階級ですので、子育て世帯が比較的多いというグループなんですけれども、ほかのグループでは可処分所得が増えているのに、〇・〇で増えていない。そして、二〇二二年は物価がより上がりましたので、物価を考慮した実質増減率で見ると、むしろ減ってしまっている。少し厳しいというところです。 もう一点御注目いただきたいのが、二〇二一年の左下のグラフに目を戻していただいて、Ⅲグループのところです。Ⅲグループの消費支出額、コロナ禍前よりもマイナス一・九万円なんですけれども、右上のコロナ禍一年目ではマイナス一・二なんですね。ですので、行動制限がどんどん緩和されてきているのに、消費に必ずしも積極的になっていない。子育て世帯が多いグループで所得がほかの世帯、グループと比べて増えていない、消費にも余り積極的になれていないという様子が少しうかがえると思います。 支出額から分析するとちょっとこの辺りまでが限界で、弊社ではこのような枠組みで調査を実施して、意識調査と併せていつも見ることにしています。 二〇二〇年六月からおよそ三か月ごとに行動変容の定点観測ですとか、あるいは各調査時点で注目される事象として、本日は九月下旬から十月頭に実施した物価高関連の調査結果について御紹介させていただきたいと思います。 この辺りは御印象のとおりだと思うんですけれども、まず左側のグラフで、一年前と比べて日本国内の物価、どのセグメントも上がったと答える割合が高いです。そして、右側が少し特徴的なんですけれども、物価上昇を実感し始めた時期、実際には二〇二一年の九月からじわじわ上がっていたという消費者物価のグラフを先ほどお示ししましたけれども、消費者の体感としては、九月下旬の調査時点で、このグラフ中ほどの三か月ほど前、つまり六月ぐらいから、そして半年ほど前、三月ぐらいからという回答が比較的多いです。一方で、この丸印の四十代ですね、こちらは一年ほど前、まさに物価上昇が始まった頃から、その辺りからもう既に感じているという方の割合がほかのセグメントと比べて多いというところです。 そして、その物価上昇を実感した理由というのが、こちらも御印象のとおりと思います、食料品の値上がりなどがこのように挙がっています。右側の表なんですけれども、左側のグラフの選択割合と比べて多いところにピンクの色、少ないところが水色で網掛けしてあります。 こちらで見ていただきたいのが次のページです。ライフステージ別に物価上昇を実感した理由というのの違いを見たものなんですけれども、御注目いただきたいのは、表の中ほどの第一子中学校入学、まあ中学生のお子さんのいるような子育て世帯でピンクの網掛けが多い、つまり多方面で物価上昇を実感しているということです。先ほど四十代で比較的早めから物価上昇を実感していたことなどとも通じているかと思います。 そして、十ページ目は御参考までにという感じなんですけれども、世帯年収別に見たものがこちらですということで、やはり高収入世帯では物価上昇といっても例えば海外ブランド品であったりとか外食代とか、少しぜいたくな消費で感じているという特徴があります。 そして、物価上昇を実感して取った行動というのが私は少し面白いデータだなと思って見ているんですけれども、圧倒的に多いのが、できるだけ不要なものは買わないというものなんです。 よく物価高の報道の中で価格転嫁の話題があると思います。そのときに、A企業では価格転嫁して価格を上げました、値上げしました、それに対してライバルのB企業は価格転嫁せずにお値段据置きで頑張りますというような、消費者はまあ安い方に行くんじゃないかというような報道の作りが割と目にするのかなと思っているんですけれども、実際に調査をすると、消費者の行動というのはもっと冷静であると思います。 こちらのグラフのように、家計の負担感が増すと、やみくもにその低価格製品へ行くというんではなくて、まずはできるだけ不要なものは買わない、その上でポイントとかセールを利用してできるだけ支出抑制に励む、その上で生活必需品を安い製品へスイッチするということで、やっぱり日頃使っている製品ほど価格を理由にスイッチはしたくない、なので、ほかをできるだけ我慢するという行動になっているかと思います。 ここでもやっぱり子育て世帯がちょっと厳しそうだなというグラフが十二ページです。第一子中学校入学のところでピンクの網掛けがずらっと並んでいます。つまり、あらゆる面で支出抑制の工夫をしているということです。そして、選択割合としては低いんですが、ピンクの網掛けの一番下ですね、有価証券とか保険を売却、解約すると。本来はしたくなかったというところまで工夫をしているという様子も見えます。 こちらも御参考までなんですが、収入階級別で特徴的なのが、やはり高収入世帯では、右下ですね、一番下の特に何もしていない、物価高を感じても特に何もしていないというのが世帯年収一千二百万円以上で三割ぐらいを占めるんですけれども、これは、特にしていない割合が高いという傾向もあるんですが、裏を返すと、高収入世帯でも物価高進行下で七割の世帯では何らかの対策をしているとも読み取れます。ですので、今、消費が昨年から動き出して、例えばリベンジ消費ですとか需要喚起策で外へ向かう消費が盛り上がってきていますが、その後、気が済んだ後、春闘で賃金の話題になっていますけれども、ここがどうなるかによって節約志向が色濃く出てしまうという懸念があります。 その需要喚起策について簡単に御紹介して最後の話にさせていただきたいんですけれども、需要喚起策については、かなり利用者に偏りがあります。年末の調査時点では、全国旅行支援、GoToも六割は利用していなくて、約四分の一が利用していて、そのうち半分が積極層であると。複数回利用しています。 そして、十五ページはセグメント別に利用率の違いを見たんですけれども、要するに、時間的にも経済的にも余裕のある層で使っているというところです。利用した理由なども、割引額が魅力的であるとか、御想像のとおりだと思います。 こちらは少し調査の御紹介ということで、お時間あるときに数値を見ていただければと思うんですけれども、十九ページ目の利用していない理由というところを御覧ください。やはり利用している方は時間とか経済的な余裕がある方ですので、やはり利用していない方というのは経済的な余裕がないという割合が高かったり、あるいは六十代以上でピンクの網掛けの部分を御覧いただくと、やはり感染不安というのがまだありますので、シニア層の方では、利用したいけれども感染の不安があるということも足かせになっているようです。 こちらはライフステージというところなんですけれども、このような需要喚起策の利用状況ということと、二十二ページの方に参ります。 そのような中で、政府の物価高対策として、やはりエネルギーですとか食料価格ですとか、家計にとってすごく有り難い対策も進んでいます。そして、やはり賃上げ支援、低所得世帯への給付というところで、特に賃上げ支援のところに私は注目をしているんですけれども。 二十三ページ目の方で、その賃上げ支援に絡めて、将来世代の経済基盤の安定化がやはり急務だというお話をして終わりにさせていただきたいと思います。 やはり物価高対策として目の前のその生活困窮世帯の支援は必須ですし、需要喚起策で、利用者が偏っているからといって、やはり動かせる消費を動かしていく、そこで雇用も生みますし、日本経済を回していくという必要性はすごくあると思います。一方で、やはり物価高対策、家計支援、究極のものというのは特に将来世代の経済基盤の安定化だと思います。 左下のグラフを御覧ください。今、人手不足で特に新卒採用などは売手市場という話もありますけれども、実際に非正規雇用者の割合を見ると、女性に関しては近年の女性の活躍で若い女性の非正規雇用率が低下してはいるんですけれども、男性は余り変わらない。で、この家族形成を考える時期の男性の六、七人に一人は非正規雇用で働いている。そして、今の五十代ぐらいの方が新卒採用であった一九九〇年代初頭ですね、この頃と比べて五倍ぐらいの非正規雇用率であるという現状です。 一方で、正規雇用であれば安泰なのかというとそうではないというのが右側のグラフです。青の実線、二〇一八年の男性の大学卒以上の賃金カーブなんですけれども、十年前と比べて、三十代、四十代、子育てなどで出費のかさむ年代でフラット化してしまっている。このマイナスの部分を推計すると大体七百数十万円、夫婦で計算すると千五百万円ぐらいになる。そうなるとやはり、家を買うのか、車を買うのか、子供の教育はどうするのか、そもそも子供を一人にするのか二人にするのかというところに大きな影響を与えてしまいます。 先ほども少子化のお話が少しありましたけれども、やはり特に男性の経済面というのは家族形成にすごく大きな影響を与えますというのが左側のグラフです。 そして、右側です。独身者の方の積極的には結婚したくない理由、こちらを見ると、経済面だけが問題ではなくていろいろあるんですけれども、やはり経済的な面を理由に家族形成などを諦めるというところは救済されるべきだと思います。 そして、やはり安心して働き続けられる環境の整備をと言いたいんですけれども、私は消費行動としていろんな数値のデータを分析しますので、数字的に見るとこういうデータになりますということを御紹介して終わりにしたいと思います。 大卒女性の生涯収入を推計しますと、この棒グラフの上から三番目と四番目を御注目ください、このAのT1とT2というのは、二人子供を産んで産休、育休を合わせて一年間、合計二年間休んで時間短縮勤務を利用して復帰した場合、生涯所得二億円を超えるんですけれども、昔から日本で多くM字カーブの問題となっている、一回退職してパートで再雇用、働き出すと六千万円。大分差がある。 この金額の多寡というのが、多ければいいということではもちろんありません。女性の活躍というのは、やはり本人の希望の働き方をしていくべきだと思います。ただ一方で、やっぱり働きたい希望があるのに働けていない女性がいる、そこの機会損失を計算するとこれくらいになってしまうということです。 ですので、その就労環境の整備というのは回り道のように見えるかもしれないんですけれども、確実に日本経済の底上げになりますし消費喚起策になっていくと、そういうお話をさせていただいて、終わりにさせていただきたいと思います。 ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) ありがとうございました。 次に、酒井参考人にお願いいたします。酒井参考人。
○参考人(酒井正君) 法政大学の酒井と申します。 本日は、意見陳述の機会をいただき、ありがとうございます。(資料映写) 私は、雇用保険を中心とした雇用のセーフティーネットについて研究しておりますが、特に最近は第二のセーフティーネットと呼ばれるものの一つである求職者支援制度をウオッチしているところです。本日は、コロナ禍が始まってからの雇用の状況について見た上で、雇用のセーフティーネットの在り方について私の考えを述べさせていただきたいと思います。 まず、二ページ目なんですが、最初に確認したいこととして、失業率の推移を見たいと思います。リーマン・ショック時はこのように失業率が非常に跳ね上がったということがございましたが、実は二〇二〇年、コロナ禍が到来しましたときは、失業率、まあ上がりましたけれども、それほど高く上がったわけではないということがございます。それはなぜかといいますと、取りも直さず雇用調整助成金、これによるものが大きいと考えております。雇調金の特例措置が大規模に発動されることによって、失業の増加というものが抑えられてきたということが言えると思います。 その一方で、三ページ目になりますが、実質賃金の方は、先ほどからもお話ございますけれども、長らく停滞しているというような状況にあるわけです。 それで、私としましては、こういった雇用の情勢、やはり雇用形態別に見たいというものがございまして、この四ページ目のグラフは、非正規雇用の割合の推移を見たものです。 雇用者に占める非正規雇用の割合というのは、コロナが始まった頃にやはり一旦低くなったわけですけれども、現在ではまた戻してきていて、傾向としてはその非正規雇用の比率というのが以前のような状態に戻ってきている、少なくとも大幅に下がってそのままというようなことはないということが言えるかと思います。 もう一つ、五ページ目にお示ししたのは、雇用形態別の雇用者増減というものを、ちょっとイレギュラーなんですが、対前年ではなくて、コロナ前と比較するために二〇一九年の同月と比べた雇用者数の増減を表しております。これを見ると一目瞭然かと思いますけれども、正規雇用というのはコロナ禍でも基本的には減っていないということなんですね。それに対して、非正規雇用というのはコロナの中でやはり減っていたということが言えるかと思います。すなわち、そのショックに対する非正規雇用というのは、非正規雇用の減少というのは大きいということで、これは昔から言われていることですけれども、非正規雇用の調整弁としての側面がやはり浮き彫りになったのではないかという気がしております。 こういうようなボラティリティーの大きい雇用としての非正規雇用ということなんですが、一方で、先ほど見たように、企業あるいはその経済全体としての非正規雇用への依存というのは、長い基調としてはこのまま続いていくんじゃないかというふうに思われるわけです。したがって、いろいろな対策ということに関しても、この経済が非正規雇用に依存していくんだということを前提にした上で行っていくべきだと考えております。 コロナ禍の雇用のセーフティーネットというのは、今見ましたように、大規模な雇用維持策、すなわち雇調金の特例措置によって担われてきたわけですけれども、この雇調金の大規模な発動というものは、労働需要自体が減退してしまったような状況では求職者にいろいろと支援を行うよりも即効性あるいは包括性といったものがある、そういう意味で有益なものだったというふうに考えます。 しかし、これはよくいろいろなところで言われることですけれども、雇調金、三年近くにわたって続けたことによって、その弊害、副作用というものを指摘されたということです。特に、労働移動を阻害しているんじゃないかということが言われるようになったわけです。実際に、コロナ禍では、入職率、離職率共に停滞していたという現状がございます。 七ページは、雇調金の支給実績を示したものですけれども、現在、実質的に終了の段階に来ているということです。 八ページにお示ししたものは、これ、失業のバスタブモデルと言ったりしますが、今の状況を見るのにいいかなと思って示しました。今の状況を説明するならば、その雇調金という失業への入口を塞ぐ施策から、失業からの出口を広げる施策に重点を切り替える時期に来ているということだと思います。これは政府も既に表明しているところです。また、この失業への入口を塞ぐ施策というのは主に企業に対する支援だったかと思いますけれども、それに対して、失業からの出口を広げる施策というのは、もちろん企業に対する支援ということもあり得るんですけれども、どちらかといえば個人への支援と解釈できるかと思います。後に述べる求職者支援制度という制度についても、失業からの出口を広げる施策の一つとして数えることができるかと思います。 それで、九ページになりますが、私は常々、その雇用のセーフティーネットというものを考えるに当たっては、労働者の立場からすれば、例えば雇用維持策であるとか、あるいはその失業給付であるとか職業訓練であるとかですね、まあいろいろとあるとは思うんですが、労働者の立場からすれば、そのセーフティーネット全体として見たときに穴がないこと、これが重要なんではないかというふうに思っております。ですので、例えば、ある状況においては雇用維持的な政策というものが労働者にとって一番有益なセーフティーネットになり得るんだけれども、別の状況では労働移動した方がよっぽどその労働者にとってはそれがセーフティーネットとして機能するんだという可能性もあるということです。 ということで、今現在、その労働移動への施策へシフトしつつあるというのが現状かと思いますが、一方で、少し懸念するところは、その労働移動施策といいますと職業訓練ということが常に挙がるわけですけれども、その職業訓練だけで労働移動が進むのかというような不安、心配もしております。また、誰にとってどのような職業訓練が必要なのかといったような議論ももう少し深めるべきなのかなというふうに感じております。 それから、これ後でちょっと説明しますが、経済にとって望ましい労働移動とは何だろうかと、それが個人にとっての、個人が望むような労働移動と本当に整合的なんだろうかというようなことも重要かと思います。 ところで、十ページになりますが、人々が仕事を失ったような場合、この雇用のセーフティーネットとして最初に想起されるものというのは、本来は雇用保険の失業給付です。ただ、この雇用保険の失業給付というもの、実は余り機能していないんじゃないかという指摘が以前からなされていました。その理由は、非正規雇用として働く人々たちが雇用保険から漏れ落ちがちだということがあります。 十一ページ目に、失業者に占める失業給付を受給している人たちの割合の推移、かなり長期的なものですけれども、これを示しました。これはよく知られているものですが、長期的に失業者のうち失業給付を受給している人たちの割合というのは低下傾向にあるということです。 そして、十二ページ目になりますが、この傾向というのはコロナ禍以降も変わっておりません。相変わらず失業者に占める失業給付受給者の割合というのは三割を切っているという状況です。 十三ページになりますが、そうしますと、この失業給付の受給者割合が低いのは何でなのかという議論が出てくるかと思います。それはもちろん失業保険、ごめんなさい、失業給付の受給資格を持っていないということで受給できていない人がいるということなんですが、その典型が非正規雇用だというわけなんですね。 そうすると、非正規雇用には雇用保険適用されていないから受給できないんだというふうに言われたりするわけなんですけれども、もちろん、非正規雇用に対する雇用保険の適用率、正規雇用に比べれば低い状況です。ただ、それでも、契約社員、嘱託社員の八割、パートタイムの労働者の六割には雇用保険が適用されているということで、全く適用されていないわけではない。にもかかわらず受給できないとすると、何があるかというと、例えば非正規雇用では、断続的な就業を繰り返しているということで、雇用保険が適用されていても例えば受給に必要な被保険者期間を満たせていないといった可能性が出てくるわけです。そうすると、保険料拠出を条件に給付を行う社会保険の枠組みでは、根本的に非正規雇用に対してセーフティーネットを提供するということが難しいという面があります。 そこで出てくるのが、保険料拠出を必ずしも前提としない、条件としない給付の必要性です。 ちょっとそれを見る前に確認しておきたいグラフは、十四ページになるわけですけれども、今、離職失業者のうち約半数が非正規雇用からの失業者です。正規雇用と非正規雇用、数でいえば二対一くらいだというふうに考えますと、非正規雇用の失業確率というのは極めて高いということが言えるかと思います。つまり、非正規雇用は雇用保障の面においても弱いわけですし、セーフティーネットの方も脆弱であるという意味で、これを最近、二重の脆弱性といった言葉で言ったりします。 先ほど申し上げましたように、保険料の拠出というところがネックとなって、雇用保険ではなかなか非正規雇用に対してセーフティーネットを提供しにくいということでございますので、必然的にこの対策としては、保険料拠出を前提としないような、保険料拠出を必ずしも条件としないようなセーフティーネットというものが考えられるわけです。それが第二のセーフティーネットという発想なわけですけれども、これを具現化した一つの施策が求職者支援制度というものであります。 これは、私、最近、中間層にとっての安全網だというふうに、そういう側面で捉えておりますが、制度の具体的な中身としては十六ページに書きましたが、これは釈迦に説法なので細かいところまで説明いたしませんが、基本的に雇用保険から漏れ落ちた人たちが職業訓練を受けることができる、条件によっては所得保障も受けられるという制度になっております。二〇一一年十月からスタートしました。 そして、この非正規雇用ということに関しては、もう一つ、この十七ページにお示ししましたが、その職業訓練、あっ、ごめんなさい、訓練機会ですね、企業内における訓練機会が乏しいという側面がございます。能力開発基本調査のデータを示しておりますが、ほかの調査でも、正規雇用、正社員に比べて非常に訓練機会が乏しいという面がございます。その観点からも、非正規雇用にとって職業訓練機会というのは非常に重要かと思います。 したがいまして、今、これから求職者支援制度というものについてもう少し掘り下げて見ていくわけですけれども、この求職者支援制度というのは、第二のセーフティーネット、すなわち保険料を前提としないような、保険料の拠出を前提としないようなセーフティーネットという側面と同時に、職業訓練としての顔もあると。この二つの側面、二つの顔それぞれに対してその期待があり、また同時に二つの側面から考察する必要があるのだろうというふうに考えるわけです。 求職者支援制度、二〇一一年にスタートしたわけですが、経緯申し上げますと、その後、労働市場、非常に空前の人手不足ということで労働市場堅調だったため、実はつくってはみたものの余り利用されないで来ました。そういう中で二〇二〇年にコロナが到来したわけです。 ということで、コロナが到来したことによって、この求職者支援制度、第二のセーフティーネットを具現化するものとしての求職者支援制度、ようやく真価を問われるはずだったんですが、コロナ禍に要件を大幅に緩和しました。しかし、爆発的な利用拡大というのには至らなかったというふうに考えております。 二十ページは、その求職者支援制度の求職者支援訓練、この受講者数の推移を示しているものですが、二〇一二年以来減り続けていて、コロナ前まで、コロナ前の段階で最低を記録していたんですが、コロナに入ってから少し増えてきています。ただ、ピークほどではないということで、増え方は低調なんじゃないかなというふうに思います。 そうしますと、なぜコロナ禍でも、この第二のセーフティーネット、私は非常にいい仕組みだと思いますけれども、求職者支援制度、利用は低調だったのかという議論になるかと思います。 その一番単純な答えは、先ほどから言っていますように、雇調金の特例措置によって失業への流入自体が抑えられていた、すなわち求職者自体がそれほど増えていないということが一番単純な答えになるかと思います。 しかし、それだけではないのかなというふうに思うのは、困窮者、やはり全く増えていなかったわけではない。特に、第二のセーフティーネットと呼ばれるものの中には、今は生活福祉資金貸付制度ですとか住居確保給付金といったほかのものも、ほかの制度もございます。こういった制度に関しては利用がかなり拡大していたという現状がございます。 といいますのも、例えばパート、アルバイトといった人たちがシフト減によって非常に収入が少なくなっているということで利用が増えていた。しかし、求職者支援制度に関しては、先ほどから見ているとおり、余り利用者が増えていないというのが現状だったというふうに考えられるわけです。 そうすると、やはり制度、まだまだ何か課題があるんじゃないかというところも思い当たるわけです。 コロナ禍において、要件緩和という形で様々な特例措置が導入されました。これらの特例措置、収入要件の緩和ですとか出席要件の緩和ということで大規模に行われました。細かいことをちょっと見ている時間がないので重要なところだけ示したいと思いますけれども、緑色の丸で囲ったところなんですけど、実は、再就職、転職を目指す人のための制度ということだったんですが、これが、必ずしもその再就職目指さなくても、スキルアップするということのためにも使えるようになったわけなんですね。これは私としては非常に画期的なことだったというふうに考えているんですが、これ残念ながらこの利用者数非常に限られています。 何でこういうことになっているのかといいますと、求職者支援制度というのは、多くは、ハローワークに来た人たちに対してこういう制度がありますよということで、一般求職者に対して、ハローワークを訪れた一般求職者に対して誘導するということが主に行われるわけなんですけれども、ハローワークにすら来ない人たちについては、この求職者支援制度というものがあって利用できたとしてもそれを周知できないということがあって、これ在職者に対するスキルアップの機会というのは非常に私重要だと思うんですが、この辺り、アウトリーチどうしていくのかということが課題としてあるのではないかなということは考えております。これを書いたのが二十三ページの一番下のところということになっております。 二十四ページ以降、もう時間もないので少し速めに話していきたいと思いますけれども、今、求職者支援制度という枠組みで職業訓練見たわけですけれども、もう少し広い観点から職業訓練ということ、あるいは訓練への支援という点で私の思うところを述べてみたいと思います。 もちろん、実証研究では職業訓練、就職に一定の効果があるというのが通説になっておりますけれども、例えば現場、実態を見ますと、例えば同業種、同職種で早期に再就職したいと思っており職業訓練は必要ないと考えるような人も多いということで、職業訓練というのはあくまで再就職の支援のパーツと認識してやっぱり支援というものが構築されていくべきであろうというふうに考えるわけです。 ちょっと二十五ページは飛ばさせてもらいます。 もう一つ、先ほど申し上げましたけれども、求職者支援制度というのは第二のセーフティーネットとしての側面、もちろんその第二のセーフティーネットなわけですけれども、そういった側面から見る必要があると述べましたけれども、ここにお示ししたのは、二十六ページにお示ししたのは厚生労働省が示すような各セーフティーネットの関係なんですね。 これを見ると、求職者支援制度というのは第二層の一部としてあるわけなんですが、ここで私が思うところは、第一の層においては雇用保険という一つの制度で一枚のセーフティーネットが張られていますと。二枚目の層に関しては、まあ言ってみればパッチワーク状になっていると。パッチワーク状になっていること自体は悪いことではないんですけれども、そうだとすると切れ目のないセーフティーネットになっている必要があるというふうに考えるべきだと思います。特に、この求職者支援制度というのは、職業訓練が必要だったならば職業訓練のニーズということに対しては応えていますけれども、就労支援全体の中でその職業訓練が必要か必要じゃないかによって制度が変わるというふうにも見ることができるわけです。 同時に、この求職者支援制度、実は少し対象層がほかの制度と異なるんじゃないかというような指摘もございます。ここに、少し求職者支援制度のところを浮かせて描いているんですけれども、対象層としては実は第一・五層と呼べるくらいの位置にあるんじゃないか。ほかの制度はもう少し低いところに設定しているというようなことがあって、パッチワーク状になっていて、かつ段差があるような制度、あっ、ごめんなさい、第二のセーフティーネットになっているんじゃないかという問題意識があります。この辺りの、第二のセーフティーネットについてですね、この辺りの連携といったものが必要なのではないかと思っております。 それから、職業訓練としてこういったもの、求職者支援制度見た場合によく、職業訓練に限らない話なんですけれども、職業訓練必要ですねと言うと、マスコミなんかでは現在の公共職業訓練のコースが人々のニーズに合っていないんだというようなことが言われたり批判がされたりします。確かに、アンケート調査などでは、訓練を受講しない理由として受講したい分野の職業訓練がないとの声もあるんですが、果たしてそれは本当に問題なのかというようなことがございます。 これは、二十八ページになりますが、求職者支援訓練の各コースごとに、応募倍率、人気ということですけど、人気と就職率の関係を見たわけなんですが、例えば応募倍率、デザインコースでは非常に高いです。しかし、就職率それほどいいというわけではありません。それに対して、例えば慢性的な人手不足である介護福祉の分野、こういったコースに関しては、就職率は非常に高いんだけれども応募倍率は低いということです。 ここから何が言えるかなというふうに考えたところ、例えば個々人のニーズに応じて訓練コースを拡充するだけでは社会経済にとって望ましい労働移動が起きるとは限らない可能性があるということです。 それに関連して、ちょっと二十七ページに戻らせていただきたいんですけれども、労働移動先として我々が何か描く、職業訓練を通じて労働移動というものが生じて人々が労働移動するというと、何か成長産業に移っていくというようなイメージを抱きがち、まあまさにそれが理想なんですけれども、果たして、じゃ、成長産業って何だろうかという議論もあるかと思います。 成長産業というものは、確かに付加価値あるいは売上げが伸びているといったことでは成長産業なのかもしれませんが、例えばそれが雇用吸収力がある産業なのかということ、こういったことについても、あるいは本当に安定的な雇用を提供できるのかといったことに関しても議論しなければいけないんではないかと思います。 済みません、時間が過ぎているのでもうまとめさせていただきますが、今言ったように、やはり非正規雇用への支援というのがいまだ重要だというふうに考えております。その観点から第二のセーフティーネットという発想自体は非常に重要だというふうに考えるわけですけれども、現状である制度が機能しているかどうか、これについては非常にこれからも点検していく必要があるであろうというふうに考えるわけです。 私の最後に述べさせていただきたいこととしては、やはり中間層のために切れ目のないセーフティーネットを構築していくことが重要であろうということです。 以上となります。ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) ありがとうございました。 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑を行います。 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。 まず、各会派一名ずつ指名させていただき、一巡後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。 発言は着席のままで結構でございます。 また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくようお願いいたします。 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間が一巡目はお一人十五分以内となるよう御協力をお願いいたします。 これより一巡目の質疑を行います。 質疑のある方は挙手を願います。 加田裕之君。
○加田裕之君 自由民主党の加田裕之でございます。 本日は、「現下の経済情勢」につきまして、三名の先生方から大変有益な、本当に参考になります御意見、御提言をいただきましたことにまずもって感謝申し上げます。 まず初めに、小峰先生にお伺いしたいと思います。 小峰先生は、大変、ふだんは週刊東洋経済での「経済を見る眼」というのでかなり鋭い指摘をされておりますので、今日はちょっとオブラートを包んでいたんではないかと思う御発言だったんですけれども、是非ちょっとお伺いしたいのは、やはりこれだけ今、コロナ後の日本にとりまして、よく言うグランドビジョンが見えない、そしてプラス、これはまさに政策的にどのようにこれから進んでいけばいいのかという声が多々あります。 よく言われています羅針盤を失った日本という中におきまして、私は、やはりこれは二つちょっと原因があると思うんですけど、先ほど先生がおっしゃいました官庁エコノミストという部分のですね、需要主導型の言わば経済政策を発表する人材の枯渇、それと政府間の分析という、政府の施策の分析というものにつきまして、常に対外的に言わば発言し、まあそれもニュートラルな中でですね、批判の批判という、いろいろな施策というものを打ち上げたときに批判あるというのはこれはもう私は政治の常だと思っているんですけど、その一方で、批判の批判というものに対する視点というものの切り口というのが、今何か、特にですけど、ここ数年、コロナ前からだと思うんですけれども、私は大変強く感じるんです。 ですから、私、兵庫県なんですけど、神戸出身の香西泰先生とか金森久雄先生みたいな、そういう官庁エコノミストという形で中立的な形で言っていくためには、やはり私は、先生の経歴であります経済企画庁とか、これも内閣府に吸収されてから何かそういう視点というのは失っているんではないかなと思うと同時に、それと、先生の経歴であります国交省の方におきましても、国土計画局長を務められたんですけれども、全総という部分について、従来でしたら地方自治体とかにとりましても本当に全てのグランドデザインというもの、国土のデザインというものについて目指すべき方向性というものもあったんですが、もちろん国土形成計画があるじゃないかという声もあるんですが、一方では、そのグランドビジョンが見えない、ソフト、ハードの面についてですね、そういうものの失っている今の日本の現状ということについての先生の御所見をまずお伺いしたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) お尋ねありがとうございます。 私は御指摘のように政府の中でエコノミストとして長く活動をしておりましたので、若干そういう私がやってきた方向がまた戻ってくればいいなというちょっとバイアスがあるということは最初にお含みおきいただきたいんですが。 経済企画庁という役所がなくなって内閣府になると、内閣府って物すごくいろんな仕事がたくさんあるわけですね。そうすると、経済企画庁を志望して来る人は、将来エコノミストとして活動したい又は大学で学んだ経済学の知識を国民のために生かしたいという、かなり特定の目的を持って入ってくる人がたくさんいたということですが、現在では内閣府に行ったからといって必ずしもエコノミスト的な仕事をできるとは限らないという場ですので、そういう志を持った人はちょっと集まりにくいということになってしまっているんだというふうに思います。 それからもう一つは、私が活動していた頃は、比較的、官庁エコノミストというのはちょっとかなり自由な活動を許されていた面がありまして、対外的に原稿を書いたり本を出したり講演したりすることも結構あったということですが、これも最近は相当厳しく公務員の行動が制限をされていて、勤務時間中はそういうことはやっちゃいけないし、もちろん許可を得ればいいんですけれども、それから報酬を得たときにもちゃんと申告しなきゃいけないということで、逆に呼ぶ方が呼びにくくなっているということがあって、ほとんどそういう対外的な活動ができにくくなったということがあります。 それで、これなかなか元に戻せといっても難しいということですので、逆に、そういう経済学的な訓練を得た人たちが、例えばEBPMであるとか行動経済学の知識であるとか、それからマーケットデザインのような知識を生かして、行政にそういった専門知識を生かしていくような仕組みというのがまあ新しい形でできてくればいいなというふうに考えております。
○加田裕之君 ありがとうございます。 やはり先生が述べられているように、日本の経済というのは、石油ショックとかコロナの外生的なショックには強いですけど、内生的な課題というものですね、デフレとか、先ほど言っていました不良債権の問題とか、なかなか認識できない部分があると思います。そういう部分の国民と専門家のギャップを埋めるという方策という部分について、また先ほど言いましたEBPMとかもしっかりとやっていきながら政策形成というものもやっていくべきだと思います。ありがとうございます。 続きまして、次は久我参考人の方にお伺いしたいと思うんですけれども、久我先生においては、今、物価高とか個人消費、それからまた先ほどのことにつきましていろいろ分析、細かく本当にいろいろ分析していただきまして、参考になりました。 ちょっとそれでお伺いしたいのは、これ、いろんなデータはあるんですけど、この都市部と地方、郡部の方ですね、今回我々の調査会も地方という部分の切り口というものが付きました。 先生は二〇一四年に光文社新書で「若者は本当にお金がないのか?」という部分で、本当に「統計データが語る意外な真実」ということでいろいろな分析もされているんですけど、このコロナ前、コロナ後ということについて、これ、行動変容というのは大変変わったと思うんですけど、その中でも不可逆的なものと可逆的なものというものと二つ分類はされるんですけど、その二つの分類というものの視点から見て、この地方とそれからまた都市部という部分でのこのギャップ、それからこの進み方とか、先生なりの、いろいろ地方も回られているとは思いますし、ほかの審議委員会の委員もされているというのも聞いておるんですけれども、先生から見まして、都市と地方のこの切り口の違いというものについてお伺いしたいと思います。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 都市と地方の違いで、そのコロナ禍における行動変容については、弊社でも、本日御紹介した調査結果で、地方とやっぱり都市違うんじゃないかという仮定の下で分析をしたんですけれども、余り違わないという結論でした。というのは、都市と地方という、住んでいる地域というよりは、そこに住んでいる消費者の年齢というところが一番大きく効いていまして、地方では高齢の方が多いので、やはり外出自粛傾向が強いですとか、あるいはデジタル化の進展が少し遅くなっているとか、そういう結論になっていました。 その行動変容の可逆的なものと不可逆的なものなんですけれども、コロナ禍で生活が変わったわけですけれども、実際には、その生活ですとかあるいは価値観の状況については、コロナ禍前からの変化がぐっと加速したという見方が冷静な見方だと思います。全く新しいものというのは余りないです。例えば、働き方でいうとテレワークであるとか、消費行動でいうとキャッシュレスとかネットショッピングとか、コロナ禍前から課題であり進めていくべき方向であったものがぐっと進んだというところです。 ぐっと進んだわけですけれども、ですので、例えばデジタルシフトに関しては、やはりこのぐっと進んだ、加速した高水準の状況で進んでいくと思いますし、あとは、その需要が加速したという面では、食のデリバリーであるとかテークアウトとか、食生活の部分なども変わったんですけれども、家事、そうですね、その辺りに関しては、デジタル化というよりは中長期的な世帯構造の変化、単身世帯が増えている、共働き世帯が増えているというところですね、それが土台にありますので、その結果、不可逆的ではなくて、その流れで一層進んでいくという捉え方をしています。 で、このコロナ禍というか、最近の事象で全く新しいものとして出てきたのは、やはり物価高であるとか、その辺りの足下の状況ですので、実際は、そのコロナ禍で現れた生活の変容というのは、全く新しいものというのは実は余りなかったと思っています。 以上です。
○加田裕之君 ありがとうございます。 先生にはまたソバーキュリアスのことについてもお伺いしたいなと思っていたんですが、ちょっとお時間がないので、またの機会にお願いいたします。 次に、酒井先生にお伺いしたいと思います。 実は昨日も自民党本部の方では新しい資本主義の実行本部で御講演いただきまして、ありがとうございました。 雇調金の問題というのは、やはり我々にとりましても、コロナ禍においては、私は、やはりこの支給のスピードというものと利用者の利便性ということについては大変有益ではあったんではないかと思っております。実際、まあもちろんですけれども、漏れる人というのが出てきたりとか、あと、また成長産業への労働移動を阻害しているという批判があるのは確かだと思います。ただ、アメリカの方とかでの失業給付の上乗せ等で対応しただけの政策でしたら、経済回復が進む中においても雇用の回復が遅れて供給制約が深刻化しているという副作用があると思いますので、やはりこういう危機のときには保護重視で、平時に移りましたら労働移動重視の政策が望ましいというのは、これは基本のキだと思っております。 それで、先生にお伺いしたいのは、やはりこれからのその部分につきまして、求職者支援制度という部分について注目がされているんですが、先ほど最後の方にありました、希望する職種の方と需要のある職種という部分についてのミスマッチが起きていると、その解消というものが課題であるということを言われました。私も、これはどういうふうに、強制するわけにもいかないですし、広報するといっても限界があると思いますので、先生が考える中での特効薬といいますか、また施策がありましたら教えていただけたらと思います。
○参考人(酒井正君) 私も、受講希望者の希望と需要側の、労働需要側のミスマッチというものを簡単には解消できないんじゃないかというふうに思っているんですが、何か媒介するようなところ、施策として何か行えないかということを考えたときに、やはりその気付きを与えるということが非常に重要になってくるんじゃないかというふうに思うわけですね。例えば、ある職業経験を持った人がいたとしまして、その人が一つの職業訓練を受けることによってスキルのパーツが埋まって、実はその本人が全然考えてもいなかった、だけれども、その本人がハッピーになれるようなポジションに移れるということ、そういうことに対して気付きをあげる、与えてあげるということが一番何かできるところなのではないかというふうに思うわけです。 こういったことは、多分、ハローワークといったところで現場レベルで個々の相談員のノウハウ、経験に基づいて行われていることだとは思います。ただ、これが、例えば定量的な分析によってこういったポジションにこういうスキルを加えるとこういったところに移動できるんだよということがシステマチックに分かってきて、それがノウハウとしてシステマチックに共有されるといいんではないかと。もしかしてそれに似たようなことは既に行われているのかもしれませんけれども、より一層そういった取組が進められたらいいんじゃないかというふうに考えております。
○加田裕之君 ありがとうございます。 やはり、先ほど先生おっしゃいました気付きというナッジ理論みたいな形をやはり私も適用していくべきだと思います。そういうもののミスマッチの解消という部分につきましても、また我々も検討して参考にさせていただきたいと思います。 以上で終わります。ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) 小沼巧君。
○小沼巧君 立憲民主党の小沼巧です。 まずは、三人の参考人の方々、お時間をいただき、またそして貴重な御意見をいただきまして、改めて感謝申し上げます。ありがとうございます。 私からは、まず久我参考人にお伺いさせていただきたいと思います。 一つ資料としてございますのが、十一ページに物価高、上昇と、あとは実際に取った行動ということで示されておられました。ここで、確かに最初にできるだけ不要なものは買わないんだなということがまずあって、安い製品へ乗り換えるというのがその約半分ぐらいの割合になっていたということは、私自身も実は驚きでございました。 ここでお伺いしたいのは、このような傾向というものはこの時点だけのものなのか、それとも、実は物価高とかコロナとかそれよりも前から、よりも昔から継続して続いているものなのかと。このことについて、この調査結果ということが、傾向は昔から認められるのかどうなのか、それとも、特異に、今回の状況を踏まえて今回は特異にこのような傾向が出たのか、これについての分析と御見解があれば御知見をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 そうですね、こちらの設問の枠組み自体が物価高を実感して取った行動ですので、ちょっとこれまで設問の枠組みとしてデフレ進行下でできていないというのがあるので、これまでとどうかということはちょっと比較が難しいと思います。 ただ一方で、一九九〇年代から消費生活を振り返りますと、安くて品質が良かったり無料で楽しめるサービスなどがネット上も広がる中で、やはりコスパとか、最近ではタイパ、タイムパフォーマンスを意識するという消費行動が若い世代だけではなくて広がってきているというのを見ると、やっぱり商品を大量消費するというよりは必要なものを効率的に使っていくという志向が高まっていて、不要に物を持たない、サブスクとかシェアを利用して不要なものは買わないで必要なときに必要な量だけ利用するという志向は消費行動の土台として成長しているかとは思います。 以上で大丈夫でしょうか。
○小沼巧君 ありがとうございました。 中長期的な傾向として参考にさせていただきました。ありがとうございます。 次に、酒井参考人にお伺いさせていただきたいと思います。 雇用のセーフティーネットということについて、まさに今回の御説明いただいた内容というのは非常に有意義なものであったなと思います。その中で、九ページにございますところのセーフティーネット全体として見たときに穴がないことということは非常に重要な概念かなと思ってございます。 その中で、どうしても、先ほどの質疑の中でもございましたが、いわゆるこの求職者支援等を見たときに、ここでの単語でございますと職業訓練ということ等あると思いますが、まさに誰にとってどのような職業訓練が必要なのかということは真剣に考えなければいけない論点であり、なかなか一意に答えが出ないようなところだなというのは私も承知しております。 昨今の中では、いわゆるリスキリング等の表現がいろいろ各方面で使われているところでございますけれども、先生から御覧になっていただいたときに、リスキリングということについて、あるべき対象、誰にとってということですね、そしてどのような職業訓練が必要なのかということ、ここの勘どころといったものは先生にとってどのように考えていらっしゃるのか、ここについて御意見をお伺いできればと思います。
○参考人(酒井正君) 非常に難しいテーマだと思うんですけれども、まず、先ほど申し上げたように、実は誰にこういった職業訓練、訓練機会が足りないのかということを最初に考える必要があると。私の考えでは、やはり正規雇用に比べれば非正規雇用という人たちに訓練機会が足りないので、この人たちを優先するような施策が必要だと。ただ、一方で、もしかして正規雇用の中でも結構差があるのかもしれないという議論も出てくるんじゃないかというふうにも思います。正規雇用の人たちが一律に訓練機会に恵まれているかどうか、それもちょっと調べてみないと分からないんじゃないかなという気がしておりまして、そういうところはきめ細かに把握する必要があるだろうというふうに思っております。 ただ、このくらいまでだったらまだ比較的シンプルな話かと思うんですけれども、例えばそれぞれの雇用形態の中でどういう人たちにどういったそのスキルアップの機会を提供すべきかということになると、非常に難しくなってくるんじゃないかというふうに思います。先ほどの質問に対する答えとも重複してくるんですけれども、例えばIT産業、ITに対する教育を行って、単純にIT業界に就職できるのか、あるいはそういうことが本当に労働者にとってハッピーなのか、あるいは企業、労働需要側がそういうことを望んでいるのかというと、どうもそうじゃないという話も出てくるわけですね。 そこで、やはり重要なことは、何かその産業単位とか職種レベル、産業レベル、職種レベルでそういったスキルアップというものを考えるんではなくて、もっとタスクベースで考える。何のタスクの、何のタスクに対するスキルが必要なのかというレベルで考えて、例えば、状況によっては、その本人が同業、同職種での再就職を希望しているというような状況でも、実は違う産業なんだけれども、あなたがハッピーになれるようなスキルアップの機会、それによって希望するようなポジションに転職できるんだというようなことがあれば、そういったことを提供できるような、もっときめ細かな、何というんですか、マトリックスを描いて移動を考えていくような仕組みが必要なのかなというふうに考えております。
○小沼巧君 ありがとうございました。 それでは次に、小峰参考人にお伺いいたします。 平成の経済情勢を振り返っていただくということで、非常に示唆に富むところかなと思いました。様々な政権交代も含めていろんなこともあったということ、私自身も当時、違う役所でありましたけれども、官僚として働いていた経験があったものですから、この辺のところも含めて理解をするところでございます。 先生のところで一番面白いなと思ったところが十一ページで、新たなガバナンスの陰には失われたガバナンスありというところでありまして、伺ってみたいのは、やっぱり経済企画庁とか経済審議会の失われたものの中にあるところについて伺ってみたいと思うんです。 先生の言葉を、このパワーポイントの資料を借りますと、バブルにいたときは分からなかったということがありました。また、不良債権に対しては認識の甘さということも先生のパワポの中にはありました。しかし、こういった中でも経済企画庁という官庁自体は存在をしていたということを考えてみると、そういったまさにところがあったとしても、制度としてはあったとしても、どうして分からないとかあるいは認識が実際問題甘いということになってしまうことになったのか。役所なり箱があったとしても、その議論をしていく調査研究の観点でありますとかミッション設定そのものに改善の余地が実はあったのではないだろうかと、このように思うところなんですけれども、それについてお伺いしたいのが一点目でございます。 関連して、二点目。そういった制度があったとしても、実際、内閣府の方に統合されているところでありますけれども、その中長期的なあるいは現状経済を正しく認識する、今の経済情勢がもし誤ってしまっているのだとすれば正しい現状認識をしていくということがどのような政策立案するにしても最も基礎的なところ、前提となると思いますが、正しい現状認識をするためには現行の制度において追加で加えるべきことなどについて、御知見があれば、御意見があればお伺いさせていただきたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) 御質問ありがとうございます。 一番目の、企画庁があっても不良債権の深刻さとかバブルのことは見抜けなかったではないかというのは、まさにそのとおりだと思います。 私も、当時企画庁におりましたけれども、バブルのときにはやはり、バブルの、資産価格の上昇にはそれなりの理由があったというような説明もあって、なかなかそれに対して私自身がこれは違うんじゃないかというふうに思っていたわけではないということがありますし、それから不良債権の方は、これは実態が分からなかったというのが正直なところです。いろいろ海外で何十兆というような推計が出てきても、当時、大蔵省からは、これこれですと、七兆から八兆ですというような数字が出てきて、なかなかこれは、企画庁で独自にそういった点を、実態を把握するのは難しいという点があるということですので、当然、企画庁のような組織があったり官庁エコノミストがいるから万全だと、それが、そういった組織があれば問題は起こらないということはないというふうに思います。 それから、制度があれば正しく認識できるのかという点については、率直に言って、役人とか官僚というのは時の内閣の指揮下にあるわけですから、官僚が政策の過ちを正すというのは、これはなかなか難しいんじゃないかと思います。 その役割を官僚に担わせるというのはちょっと酷な面があるんじゃないかというふうに思いますので、私は、そういう政策について客観的なデータでそれを評価したりするのはやはり別の組織、これは最近よく独立財政機関というアイデアがありますけれども、例えば財政の見通しを出そうとすると、名目成長率は三%という前提を置くわけですけれども、これは政府の目標が、成長戦略の目標は三%になっているので、それと違う前提を置くと、じゃ、政府は三%は無理だと思っているのかということになってしまいますので、ちょっと本質的に無理があるんですね。ですから、そこは政府とはまた違った独立財政機関であればそういった制約がないのでリーズナブルな前提を置いて財政の見通しを出すということができるということで、これは諸外国でもいろいろできておりますので、財政状態が一番深刻な日本においてこそそういった独立財政機関の設置を真剣に議論すべきではないかというふうに思います。
○小沼巧君 ありがとうございます。 小峰参考人に追加でというか更問いをさせていただければと思いますが、その第三者的な意味で独立的な機関を置くということが客観的な現状認識、より正しい現状認識に近づくんだろうなということは私も同感であります。 その意味で、もし仮に、ここからは仮定の話でありますけれども、御自身の御経験などを踏まえて御自由に御意見いただければという前提なんですが、独立的なそういった第三者機関を設置する場合に、実際に既存の官庁の中で経済分析とか調査をしていたり様々な政策を練っていくこととの何かしらのそごというものが生じる可能性はありそうなのか、あるとすればどういう点に留意しなければならないのか、御自身の御経験交えて御意見をいただければと思います。
○参考人(小峰隆夫君) そこはなかなか、ちょっとやってみないと分からないというところがありまして、恐らくやればやったでいろいろな現実的な問題いろいろ出てくると思いますが、例えば本当に財政の見通しを作るというときに成長率の前提をどう置くかというのは、まあこれはエコノミストであれば大体できるんですが、例えば細かい社会保障の前提で、このまま行ったらどういう社会保障支出が必要になるのかとか、それから、そういった細かいところはなかなか外部の人間には分からないところがあるので、こういった点はどうしても行政組織の協力を得なければいけないということになると思います。 そうすると、協力を得る過程でやはりある程度の行政当局の希望的観測が入り込んでくる余地はありますので、そこはちょっとなかなか難しい問題だなというふうに思いますが、理想的に言えば、なるべくそういった議論の過程を広く公開することによって多くの人のチェックを経ながら進めていくということにすれば、多少はそういうバイアスは免れるのかなという感じがいたします。
○小沼巧君 時間が参りました。終わります。ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) 竹内真二君。
○竹内真二君 公明党の竹内真二です。 三人の参考人の皆様には御多忙の中御出席をいただき、誠にありがとうございます。 初めに、小峰参考人に質問をいたします。平成の経済を振り返りまして今に持ち越された課題というものを分かりやすく説明をいただき、本当にありがとうございました。 二点お聞きします。 最初に、その平成経済というものを見てきたエコノミストの参考人の立場から、この平成の時代というのは、もう一つ、社会保障制度の改革、見直しというものも非常にいろんな形で行われた約三十年間だったと思うんですけれども、最後、平成の終わりには子育て支援というものが加わって、全世代型社会保障という形で今に引き継がれております。 そこで、この平成の時代の社会保障制度改革、またその変遷みたいなものを、エコノミストの立場からはどのように実感され御覧になってきたのかを、受け止めをお聞きしたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) ありがとうございます。 ちょっと私自身は社会保障の専門家ではないのでどの程度正確なお答えができるか分かりませんが、私の印象では、やはり社会保障というのが財政改革にとってみるとかなり大きなハードルになったことが多かったという印象があります。 社会保障は、当然、現在は高齢者向けの社会保障が中心ですから、年金、医療、介護、こういったものは高齢化が進むと自然増でどんどん増えていくということになります。そうすると、当然、それに対して財源をどうするのか、また合理化をどう進めるのかという点が中心になるんですが、ところが、世間一般では、社会保障はより充実すべきものだという意識が非常に強いと。そういうギャップがあるのが常であるわけですね。 したがって、財政改革等で消費税を上げようとしたり、それから社会保障の歳出を削ろうとしたりということをやったときに相当大きな国民的な反発を受けることが多いということで、社会保障の改革というのは、そういう反発を受けるきっかけとしてよくそれが登場してきた。これ、小泉内閣のときもそうでしたし、安倍内閣ではむしろ消費税をなかなか上げられないという形で同じようなことが起きましたので、そういう国民的希望が強い分だけ改革を難しくする役割、そういうことが多かったのではないかなというのが私の印象です。
○竹内真二君 済みません、小峰参考人にもう一問です。 資料の中に、異次元の少子化対策を考えるとあって、少子化関連の予算充実をとも強調されて、一つの政策として子供保険の創出も有力な手段という形で説明をされておりました。 この子供保険についてはいろんな考え方があると思うんですけれども、この一つの有力な手段とされた理由と、仮に導入する場合にはどのような課題があるのか、教えていただきたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) これも私、細かく制度設計をしているわけではないので細かく答えられなくてですね、これは私の同僚の経済学者の間では結構こういうアイデアがよく出てきているのでここにも書いているわけです。 例えば、介護については介護保険があると。全部じゃないですけれども、当然、利用者の負担又は利用者以外の人の負担もある。つまり、介護を受ける人も払っている場合もあるし、払ったけれども介護を受けないで済んでしまう人もいるというので、保険でやるということです。 子供保険というのは、子供を持った人も持たない人も一定の金額を常に払うという保険で、これ、思わぬ災害ではないので保険じゃないんですけれども、正確に言うと保険じゃないんですけれども、みんながコスト負担を分け合うという意味で保険的な制度だということです。 そうすると、まあちょっと表現は悪いですけれども、子供を持たない人は払うだけですから損をすると。で、子供はたくさん持てば持つほど払った以上の見返りがあるので得になるという、だから子供を持つということにはならないと思いますけれども、そういう仕組みを経済学者の間では結構議論されているということで御紹介しました。
○竹内真二君 続きまして、久我参考人にお伺いをいたします。 参考人の方から、資料の二十二ページに政府の様々な物価対策を載せていただきましたけれども、この物価高によってやはり子育て世帯が生活の多くの場面で物価上昇というものをかなり強く感じられているということも御指摘もありましたが、引き続きこの物価高というものは継続されていくような見通しになっておりますが、今後、参考人の立場から見て、どういった対策に一番力を入れていけばいいのかを教えていただきたいと思います。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 物価高対策のメニューとしては割とそろっているという印象です。 どこに一番期待しているかというと、二十二ページでいうとやっぱり賃上げの部分です。その後ろから、やはり将来世代の経済基盤強化が重要ですよと、こういう状況ですよというデータをいろいろお示ししているんですけれども、やっぱりその目先の対策も必要なんですけれども、やはり将来世代が明るい将来の見通し、特に経済的な明るい見通しが立てられることというのが消費にももちろん重要ですし、家族形成、少子化の抑制にもなっていくと思いますので、賃金であるとか人事制度だとか、長時間労働、年功序列であるとか時間で評価をしないとか、いろんなところが各組織で進められているところですけれども、やはりその賃金構造の改革であるとか雇用形態の状況を、若年層で非正規が多いところであるとかその正規雇用への移動であるとか同一労働同一賃金の議論はなされているところ、進められているところですけれども、そういった状況でやはり将来世代の経済基盤の安定化につながる政策が一番重要だと思っています。
○竹内真二君 もう一問、久我参考人にお聞きしますけれども、一番最終ページ、二十五ページのところに女性の活躍という視点というものも書かれておりますけれども、その左側のところの下の図ですね、男女のこの消費性向というところで、その上には男性と比べて旺盛な女性の消費意欲ということも書かれております。 これ、私の周囲を見てもそういうことを実感するシーンが多いわけですけれども、ちょっとこの図のもう少し詳しい御説明をいただきたいのと、男性の消費意欲を高めるようなそういうような何かものというのはあるのかどうか、もし分かれば教えていただきたいと思います。
○参考人(久我尚子君) 済みません、時間の関係上ちょっとはしょってしまったんですけれども、このページで申し上げたかったことは、やっぱり就労環境の整備で、女性のポテンシャルという意味では、まず生涯収入でこれくらいの今機会損失がありますよという話です。働く女性が増えて女性が手にするお金が増えると、左側のグラフで、単身勤労者世帯ではあるんですけれども、年収階級別に男女の消費性向を見ると、同じだけお金を手にすると男性よりも女性の方がたくさん使うので、皆さんの肌感覚としてもあるとは思うんですけれども、やっぱり女性が消費を元気にして、それは日本経済を底上げするという期待を込めた図です。 男性の消費意欲を増すというところは、いろんな角度で男性の消費も分析はしているんですが、正直なところ、女性の方はやっぱりいろんな領域にお金を使う傾向はあります。それは、男性の場合、特に家庭を持っていると、大黒柱として経済的なものを支えないといけない、なので自分よりは家族のものというところがあるのかもしれないですし、そうですね、元々いろんな興味、関心みたいなものの性差というのもあるかと思いますが、男性の消費意欲を後押しするよりは、まずは女性の消費意欲を活発化、活性化させた方が話は早いのかなという印象です。
○竹内真二君 ありがとうございました。 次に、酒井参考人にお聞きいたします。 求職者支援制度について様々な角度からお話がありました。これ、本当に第二のセーフティーネットとしては非常に大事な大事な制度だと思います。ただ、本当にこれ使い勝手がなかなか良くないということで拡充もしたんですが、拡充しても今度は利用が少ないという事態に直面いたしまして、私もPRをするというシーンをよく経験しましたけれども、確かに若い人も含めて、これ知っていますかと聞いても、知らないという方がもうかなり多かった。ですから、周知が大事だという形になったわけですが、それでも参考人がお示しいただいたような形で特例措置等もやっても適用数というものがこの程度の形でとどまっていると。ただ、この程度にとどまったからといって、この制度自体が重要ではないということには全くならない制度だと思います。 そこでお聞きしたいのは、やはりこの制度というものを今後も引き続き拡充をしていくと、第二のセーフティーネットとしてしっかりと、いろんな状況が発生したとしてもきちんとこれを位置付けていくためには、この二十三ページにも幾つかの方向性が書かれておりますけれども、時間の関係でここ飛ばされたと思いますので、少しこの拡充の方向性みたいなものを御説明いただければ有り難いと思います。
○参考人(酒井正君) 求職者支援制度、諸要件緩和したわけですけれども、私としてもこの制度については思い入れがありまして、是非こういうのを、いい制度を使ってほしいなというところがございます。 少し飛ばした二十三ページの各要件緩和に対する評価ですけれども、私、年収要件、世帯年収要件、また出席要件ということに関してはかなり大胆に要件緩和を行ったというふうに思っております。 私も、これ、やや大幅に要件を緩和したなということで、人によってはこれによってモラルハザードみたいなことを懸念する人もいるんですけれども、私としては、ここはもう一旦多くの人にまずは、まずは使ってもらうと。今はそれこそSNSの時代ですから、まあそういうふうに使う人が多く出てくることによって、それが口コミ等によって伝わるということで初めて知られていくんじゃないかなという意味で、要件緩和、モラルハザードということ、多少気になる人もいるかもしれませんけれども、私はここ大胆に要件緩和したことは大きかったと。願わくばこれがもっと続いて、もう少し時間が、一応時限措置ということになっていますけれども、時間があれば、もう少しこれを評価するのに十分な時間になるんじゃないかなというふうには思いました。 それから、訓練期間、訓練時間の短縮という措置も行ったわけですね。現状上がってきている資料によりますと、やはり短時間、短期間のコースだと若干就職率悪いというような結果が上がってきているようです。これに関しても、やはりその訓練の効果が薄まってしまってはしようがないんじゃないかというような意見もございます。私もそれは懸念するところで、著しくこういった就職率が下がるようでしたらこれは改めなければいけないというふうには思います。 ただ、これも先ほどのことと重なり合うんですけれども、今はとにかく利用してもらうということが重要だと思っております。ですので、対象者を拡大するということは、当然ながらいろいろな人が含まれていく。その中で就職率が多少下がるということは、対象者を広げていくという過程ではある意味ではしようがない面もあるんじゃないかということを思っておりまして、この訓練期間、訓練時間、これ以上すべきだというふうには思いませんけれども、いい方向での緩和だったんじゃないかなというふうに思うわけです。 ですので、こういった要件緩和、基本的に評価しておりまして、願わくば続いてほしいなというところは個人的には思うところでありますけれども、一方で、これはあくまでコロナ禍の時限措置ということで、その辺りは今後どうなるのかなというふうには見守っているところです。 ただ、考え方として、先ほど、今その雇調金が終わったので、これからまさにその失業から脱出するための施策を充実させていくというような、そういう時期にあるということを考えれば、こういったものの何らかの恒久化というのも考える必要はあるのかなと思っております。 以上です。
○竹内真二君 ありがとうございました。時間が参りましたので終わります。
○会長(福山哲郎君) 高木かおり君。
○高木かおり君 日本維新の会の高木かおりです。 今日は、三人の参考人の皆様、本当に様々貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。 早速ですけれども、質問に入らせていただきたいと思います。 まずは、小峰参考人から伺いたいと思います。 御経歴からも大変日本経済にお詳しいということで、今日は大変私も楽しみにしてきたわけでございます。参考人の「平成の経済」という御本も読ませていただきましたが、今日のお話の中にもございました、過去の日本経済、よく一般的には失われた三十年という言い方をされますけれども、バブルの崩壊と失われた二十年ということで、これ、政策的にも我々やはり後手に回らないように、先手を打ちたいというふうに政策立案するときにも思うわけなんですけれども、やはりこの過去のバブル崩壊ですとか、本当に、参考人もおっしゃっておられたように、我々思いも寄らないような大きな課題が出てきたとき、それをきちんと我々、社会全体がこれを大きな課題としてリアルタイムで認識するというのはかなり難しいところもあるというようなお話もしていただきました。 ただ、そのときどのような政策を講ずるのが必要なのか、こういったことをしっかり分析する力というのが必要になってくるんだと思います。先ほどもこのお話に関していろいろとありましたけれども、政策を立案してスピード感を持って実行しなければいけないわけなんですけれども、これ、一方で、まあ社会的にといいますか、世論に納得していただくということもやはりこれを現実的に前に進めるには必要なんだと思います。 この部分を、より良い政策を現実的に実行に移すために、タイミングを逃さずに、これ、どのようにすればいいのか、もう少し詳しくお話をいただければと思います。
○参考人(小峰隆夫君) 御質問ありがとうございます。 これはなかなか難しい問題で、私もまだ適切な回答が見出せない状態なんですけれども、私が「平成の経済」というのを書いて、これは書いたときには余り気が付かなかったんですけれども、最後まで来た段階で改めて自分は何を書いていたんだろうかというのを振り返ったら、あるストーリーが浮かんだと。それを今日御紹介したんですけれども。 つまり、政策というのは国民的なやはり意識に裏付けられたものでないとなかなか実行できないということがあると。ところが、国民の認識自体はどうしても現状に引きずられてしまって、なかなか新しい問題の本質的な意味を理解することは難しいと。したがって、政策が国民の意識に近寄れば近寄るほどむしろ適切な政策が取られにくくなってしまうという、ちょっと矛盾したところがある。 〔会長退席、理事小沼巧君着席〕 ただ、これは民主主義の下ではどうしようもないことだということなので、これをどうやって解決していったらいいのかなというのが私の悩みなんですけども、今のところ私が考えているのは三つぐらいあって、一つは、やはり経済の専門家、まあ専門家にもいろいろいるんですけども、やはりそのときの最新のデータ、最新の理論を踏まえたオーソドックスな、正統的な経済の専門家の意見がより政策に反映されるような仕組みをつくった方がいいのではないか。その方が、やはり国民の一般の意識よりは経済の専門家の方が、完全じゃないですけれども、本当の問題点をよく見ているはずなので、できるだけそっちに近づけた方がいいのではないかというのが一つですね。 それから二番目は、やはり情報をなるべくオープンにして、データに基づいた議論をしていくと。そのときの、例えば、これ、ちょっと例が悪いかもしれませんが、物価が上がると、国民はどうしても物価が上がって大変だから何とかしてくれという希望が出るわけですが、そうすると、じゃ、ガソリンの値段を余り上げないようにしましょうとか、電力料金上げないようにしましょうという、財政を使って物価を抑えようとするんですが、これは、私に言わせれば、物価が上がったときに一番必要なのは、電力を余り消費しないようにするとか、輸入エネルギーをなるべく節約するような方向が正しいということですが、これに補助金を出してしまうと、むしろその消費を奨励していることになってしまうわけですね。ですから、これまずいと思うんですけれども、ですから、それは一般の国民の非常にシンプルな要求に応えてしまうとかえって国民を不幸にしてしまうということで。 しかし、私の身の回りの専門家は、やっぱりそういう直接的な補助金は問題だという認識の人が多いので、やっぱりそちらにする。で、そのためには、そういう政策をやるとどういう問題が出るのかといったようなことを分析的に、なるべく客観的な分析で示していって、それを国民の前に出していくというような、データと分析に基づいたEBPM的なアプローチというのをもっと根付かせる必要があるということで。 三番目は、これちょっと申し上げにくいんですが、政治家の方が変わっていただいて、単純に国民の要望を吸い上げるだけではなくて、国民を説得する方の側に回っていただけるといいなというのが私の考えです。 〔理事小沼巧君退席、会長着席〕
○高木かおり君 ありがとうございました。 私たち政治家もしっかりといろいろな情報分析、この分析力というのも、専門家にもいろいろな御知見を聞きながらしっかりやっていかなければいけないと改めて思いました。ありがとうございます。 続きまして、久我参考人に伺いたいと思います。 今日は、本当に様々なデータ分析、大変参考になりました。やはり、今この可処分所得が子育て世代など若い世代で減少しているというお話もお聞かせいただいて、この子育て世代でも多方面でこの物価高の実感が強いというふうにお聞きをしました。 そういう中で、今新入学を控えた子育て世代への支援の在り方という点でちょっとお聞きをしていきたいと思います。 やはり、この物価高で家計が逼迫していて、この子育て世代では大変必要性の高いところでの支出を抑える傾向にある中でこの入学準備の季節を迎えまして、小学校だと入学式のときに背負っていくランドセルですとか中学校の制服、学校指定用品、こういったことも結構高価なものが多くなっています。 自治体によっては所得制限設けないで入学お祝い金とか給付金打ち出しているところもありますけれども、こういった子育て世代への、世帯への支援として、自治体によってこういったことを進める中で、当面この物価高に対してどのような給付の仕方が効果的なのか。例えば現物給付がいいのか現金給付がいいのか、その辺の知見について何かあればお聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 なかなか現物がいいのか現金がいいのか、どの世帯にというのは、いろんなところで議論がありますように、一律でやっていくのはすごく難しいことだと思います。 一人十万円の特別定額給付金のときも、結局十万円を使わないで貯蓄に回したという分析もありますけれども、弊社でも分析をしたところ、やはり将来不安が強いのでそういった形にしているという意味では、やはり現物給付の方が、実際に物を得て消費というか経済が回るという側面はあるかと思います。 やっぱり、繰り返しになってしまうんですけれども、目の前の対処としては、やっぱり現物の方が経済は回ると思います。ただ、どうして現金を給付して使わないのかというと、やっぱり明るい将来に対する見通しが立てられないからですので、併せて中長期的なやはり雇用環境の改善というところ、安心して働き続けられる環境整備というのが、やはり目標を掲げてできてない部分がたくさんありますので、ここを丁寧に進めていくことが併せて重要だと思います。
○高木かおり君 ありがとうございました。 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、続きまして、酒井参考人に伺いたいと思います。 今日は、この求職者支援制度、これについて詳しく参考人の方からいただきました。やはり、今後も、今非正規が増えて、特に女性の非正規も増えているという中で、これは続くという前提で考えていかなくてはいけないというお話もありました。 その中でのこの求職者支援制度ということで、これは雇用保険に入っていない方々の支援制度で、まあ入っている方は公共職業訓練というようなことで分けられているのかと思うんですけれども、今日お話の中で、この職種のミスマッチというお話がありました。この気付きを与えて、まあ与えるといいますか、気付いていただきながら、より自分に合った職を選んでいくと。これは、ハローワークの方で個々のキャリアコンサルタントですとか、そういった専門職の方々の、相談員の方々が実際にそういうアドバイス等も現場でしているという設定になっているかと思うんですけど、なかなかここも大変忙しい中で、きちんとこういう相談に乗って、そして適切なアドバイスができているというのは、なかなか現場では難しいんじゃないかというふうに感じているところでございますが、ここは本当に重要なポイントだと思っています。この雇用の流動化図っていくときにもここの部分を丁寧にやっていくということが大変重要だというふうに思っておりますが、この辺りのところをどのようにお考えなのかという点が一つと。 あと、やはりこれなかなか求職者支援制度が、まあ仕組みはあるけれどもなかなかこの利用者が少ない、増えていかないというのは、仕組みの中での、例えばこの求職者の支援、職業に対する支援はあっても、そのための生活費の給付、ここも、まあないことはないんですけれども、大変まだまだ少ない部分ではないかと。なので、なかなかこれを使って次へということにはつながっていかないんではないかというふうに私自身考えていることと、あともう一つ、この実施機関ですね。この求職者支援制度を活用するためにいろいろなところで勉強するわけなんですが、この実施機関の確保というのが大変厳しい状況だというふうにも聞いております。 この点について、御知見がございましたらお話しいただけますでしょうか。
○参考人(酒井正君) ありがとうございます。 一点目の質問ですけれども、ハローワークの現場できめ細かな対応ということですけれども、ミスマッチを防ぐためにまさにそこが一番大切なところになってくるんじゃないか。ただ、現状で、その現場、なかなか人手が足りないとか十分な時間割けないというようなことは多分にあるんじゃないかなというふうには感じております。 私は現場について詳しく知っているわけではないので、私のような者が軽々に何か提案できるということはできないかと思うんですけれども、例えば、今活発に議論されていますけれども、人工知能、AIといったものの助けを借りる、こういったDX化、どんどんどんどんやはり進めていくべきところなのかな、分野なのかなというふうに感じております。逆に言えば、そういうことでしかこの現場のきめ細かさというのは更に進化できないんじゃないかなというふうに考えている次第です。 あともう一つ、二点目になりますけれども、実は私の問題意識とすごく近くてですね、非常に重要な点かと思うんですけれども、利用者が拡大しないことの一つの大きなバックボーンにあるのが、確かに職業訓練あるんだけれども所得保障の部分が十分じゃないというのは、まさにそのとおりかなという気がします。非常に条件付で所得保障が行われる。あるいは、先ほど申し上げましたけれども、職業訓練を受けるんだったらば所得保障をしますということであると、職業訓練が本当は必要ないんだけれども、就労支援という意味ではしてほしいというような状況で、何かいびつな状態になるんじゃないかというようなところがあると思うんですね。だから、この職業訓練によらないけれども、いわゆる雇用保険、従来の雇用保険から漏れ落ちた人たちに何らかの所得保障をするということの重要性というのは非常に大きなところだというふうに考えております。 ただ、それをどうやって実現したらいいのかということに関してはなかなかまた難しくてですね、この求職者支援制度というもので、何か職業訓練受けないのに所得保障をするということができるのかというところはまあ難しいのではないかなというふうに考えております。しかし、所得保障の重要性ということはやっぱり大事だと思います。 それから、実施機関の確保ですけれども、これについても多分問題がいろいろとあるかと思いますけれども、私、具体案は持たないわけですけれども、これについてもかなり努力していかなければいけないところかなというふうに考えております。 以上です。
○高木かおり君 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) 伊藤孝恵君。
○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。 三人の参考人の皆様、貴重な御示唆をありがとうございました。 冒頭、小峰参考人にお伺いしたいと思います。 いただきました資料の十五ページ、幸福度の追求というのが練り上げ不足だったという御指摘についてお伺いしたいと思います。 私は、このGDPパラダイムからの転換という着眼点、つまりGDPに代わる新たな国の豊かさを示す指標というのを決めて、それらによって社会をトレースしていくということは非常に有益なんじゃないかというような考えを持っておりますけれども、某新聞社の県民調査によれば、幸福度は三つの指標で測れるそうです。一つは経済力、二つ目が健康、三つ目が他者とのつながりなんだそうです。 望まない孤独・孤立対策について私も二〇一九年から取り組みまして、議員立法もしております。このコロナ禍を経て、より一層こういった孤独・孤立対策というのは時代が求める政策なんではないかというふうに思っておりますけれども、小峰参考人のこのGDPパラダイムからの転換というものについての御意見、及び、もしかしてこれは、じゃ、必要だ、有益だというのであれば、どのように練り上げればよかったのか、そういったところについて御所見を伺えればと思います。
○参考人(小峰隆夫君) 御質問ありがとうございます。 幸福度についてはこのように考えます。まず経済、経済政策の最終的な目標というのは、当然、国民の幸福度を上げることだと、なるべく幸せな人を増やす、なるべく一人一人の幸せ度を増すということに尽きるというふうに思います。 ただ、だからといって、人々の幸福度に直接国がタッチするというのが適当なのかというところが難しい問題だと思うんですが、この幸福度の議論でいろいろ分析がこれ以降進んできまして、どういう人が幸福度が高いのかという関係がだんだん明らかになってきたということですが、非常に常識的な話なんですけれども、やはり生活の余裕のある人ほど幸福度が高い。それから、仕事をしている人ほど幸福度が高い。それから、困ったときに助けてくれる人がいるほど幸福度が高い。それから、もちろん健康であるほど幸福度が高い。 こういったことが出てくるわけですけれども、このとき経済政策として何ができるのかというと、やはり経済政策の目標は成長と物価の安定と完全雇用という三つが基本なんですけれども、この三つを追求することは、やはり成長することは生活の余裕を増すことになるし、雇用の安定ももたらされる。それから、物価が安定すると将来についても不安がなくなるということですから、やはり経済の、経済政策の基本的な目標である成長、物価、雇用という三つを追求することは結果的に幸福度の追求に大変大きな役割を果たすということですので、その点で、それを測るのが経済成長率だということになると、それほど、幸福度の追求とGDP追求型の経済政策というのはそんなに根本的に矛盾するものじゃないと、両立するものだと、むしろ幸福度追求の前提になるものだと。 それに乗っかって更に何をするかというと、健康のために何をしたらいいかとか、それから、助けてくれる人を増やすために政府は何ができるのかという、だんだん難しくなってくるんですけれども、それは、個人の選択の自由とか価値観の問題を避けて、できる範囲で政策的にできることがあればやっていくという、そういう順序立てになっている。ですから、経済政策は幸福度の非常に基礎的なところを整備するんだと、そういうのが私の考え方です。
○伊藤孝恵君 よく整理できました。ありがとうございました。 続きまして、次は、マザーフッドペナルティー、母の罰というものについて久我参考人にお伺いしたいというふうに思います。 いわゆる財務省のレポートによれば、出産一年前の収入を基準としたときに、出産一年後の収入は六七・八%減少することが分かっております。親であること、これ、主に母親であることというのが低賃金に結び付く母の罰というのが日本において顕著である理由というのは、性別役割分担意識が根強いためだと指摘されておりまして、この解消がもちろん本丸ではありますけれども、現実的には、一九九六年以降、実質賃金の低下とともに、それらに相関してパートに出るというようなお母さんが増えています。今や働く母は七割を超えまして、三十年前に比べて最低賃金六〇%上がっているにもかかわらず、税制上のいわゆる百三万円の壁、百三十万円の壁、社会保険上の百六万円の壁、百三十万円の壁等々、あらゆる年収の壁というのが据え置かれたままになっております。 そこでなんですけれども、先ほど小峰参考人の方から直接的な補助金というのは否定的だというような御意見もありましたけれども、今、当面、非常にこの家計も苦しい中、それから、働き控えというのと人手不足というのでもう誰も幸せになっていないという状態の中で、当面、壁を突破したときの収入の減少分というのを給付で埋めて、勤労者皆保険というのに近づけていくために、年収の壁を一瞬突破するためのそういった給付というのを考えられるのか否かというところが聞きたいところであります。 今のペースだと最低賃金というのが大体五年後には千五百円ぐらいにはなってきますので、そうするとおのずと壁は突破していく、壁は消えていくというところで、そこまでの暫定という部分での給付という考えになりますけれども、そこについていかがでしょうか。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 その給付であるとか、あとはその控除枠の話というのは昔からありますけれども、今も少し熱い議論がありますけれども、女性の働き方が多様であるので、一つの方法で全てを救うというのはできないと思います。ですので、いろんな議論を拝見していていつも思うのは、どういう女性を救いたくてこれは進んでいるのかという点です。 私の意見としては、その百三万円の壁であるとか、その辺りの対象となるのは年代でいうと四十代以上であると。非正規雇用率というのは、三十代ぐらいまでは半分以上正規雇用で、そこで出産とか育児の両立で一旦離れてというのが四十代以上で、また年齢というのもありますし世代というのもあります。三十代以下ですと、就業継続率も上がっているのでM字の底は随分上がっているという状況があります。ですので、その壁を取っ払う、また給付で埋めていくということを考えるときに、前提として、女性が多様な働き方で、どの層に対して何が必要なのかというのを整理して、多方面でやっていくというところが必要だと思います。 ですので、できるのかどうかという話に関しては、まずその女性の働き方の多様性を整理して、それぞれに対して何が必要なのかということを理解した上で是非進めていただきたいと思っています。
○伊藤孝恵君 非常に同感でありますし、我々本当に団塊ジュニア世代、ポスト団塊ジュニア世代というので、まさにあえぐ四十代の世代真っただ中であります。この就職氷河期世代がもうそっくりそのまんま子育て氷河期世代になっている、そういったような状態の中で、いろいろな課題を整理し、そして政策を打っていく努力したいというふうに思います。 このあえぐ四十代の課題にもつながるんですけれども、続きまして、酒井参考人にフレキシキュリティーの考え方について御所見伺いたいというふうに思います。 岸田政権は、リスキリング、職業能力の再開発、再教育支援というのに今後五年間で一兆円を投じるというふうに表明をされました。まさに今、フレキシキュリティーというのをどう設計するか大変重要な局面でありますし、こういった社会保障によって労働者の暮らしを守りながら、柔軟性の高い労働市場を整えて失業なき円滑な労働移動を促すという政策において、まず議論すべきはセーフティーネットの充実、先ほど参考人も所得保障の重要性というのにも触れられておりましたけれども、ここの、まずというところが非常に今の求職者支援制度では足りないんじゃないかなという課題感があります。まず、十万円じゃ全然足りないですし、こんなところにも所得制限があったりしてですね。 そういった金額の課題のみならず、私、昨年十二月の予算委員会でシンガポールのスキルズフューチャーというのを岸田総理に御紹介申し上げたんですけども、全国民に学習クレジットを支給して、全国民のリカレント、リスキリングに取り組んでいる国ですけども、やっぱりあそこが優れているなと思うのは、国がやっぱり重点産業というものを、二十三個を定めて、そこに労働吸収性とか将来性とか必要なスキルをレポートして、分かりやすく、私も見ましたけど非常にUIも優れていて、分かりやすくレポートして、さらには企業がコミットしているからこそ実際の雇用につながっているというようなところがあります。 そういう点で、この求職者支援制度というのを、いただいた資料の二十六ページを見ると、このパーツというのを充実、改善すればなし得ていくものなのか、そもそももう一からつくった方が本当はいいというふうに参考人が思われているのか、そこのところをお伺いできればと思います。
○参考人(酒井正君) ありがとうございます。 結論から申し上げると、求職者支援制度、これを生かしていくべきだというふうに考えております。ポテンシャルは非常に大きいと思います。先ほどの陳述のところでは飛ばしましたけれども、よくフリーランスといったような新しい働き方ということに対してどうやってセーフティーネットを提供していくのかという議論ございますけれども、これに対しても、私の個人的な見解としては、雇用保険適用するよりも、こういうような求職者支援制度、第二のセーフティーネットによって救済していくということが適当なんじゃないかというふうに思います。 ただ、それには求職者支援制度の側も幾つかボトルネックになっているような部分を解消していく必要があるとは思っています。私は、個人的には求職者支援制度を基盤として、これを何らか使いやすく、更に使いやすくする、拡充するという方向の方がいいと思います。 それで、最初の方の質問、問題提起の方に戻らせていただきますけれども、私、フレキシキュリティーということに関しては具体的にちょっと詳しく存じ上げているわけではないんですけれども、考え方として、柔軟な労働市場の中で失業なき労働移動を実現していくということ自体はすごくいい発想だと思うんですけれども、その過程において、今先生からも御指摘ございましたけれども、例えば、私の先ほどの意見の中でも申し上げましたけれども、成長産業ということに関しても、ちゃんと優先順位、産業の重点的な、どこに移動させるのかというのが明確になってこないと、こういった話って実はできないんじゃないかなという気がしております。そういうときに、本当に雇用吸収力のあるような産業に労働移動していくんだという、何か見える化といいますか明確なイメージが湧かないことにはなかなかこういったことは進まないんじゃないかというふうに思います。 あともう一点、この労働移動ということを考えるときに、どうしても個人への支援ということになるわけですけれども、その個人への支援にとって一番重要なことというのは、実は個人自身がちゃんと考えるということだというふうに私は思います。個人自身が自分のキャリアを考えるということが重要になってくるんですけれども、果たして今それがそういうような方向になっているのかというと、実はこれを考えると、逆説的ではありますけれども、個人が自律的なキャリア形成を考えるためには企業の協力が欠かせないんじゃないかなという面もあるわけです。 そこで、その企業の協力というのは、何もその企業に、従業員に対して何か教育訓練、そういうことを考えさせるような教育を行ってくださいということだけではなくて、例えば、今の日本企業の雇用慣行というものがそもそもなかなかキャリアを考えにくいようなものになっている可能性がある。 そこでよく出てくるのがジョブ型という話なんですけど、私は、ジョブ型だけではなくて、例えば日本企業というのは昇進が遅いことで有名です。これは、メリットがあるからそういうことをやっているわけですけれども、そういった昇進が遅い、遅い昇進といったものを解消していく必要があると。果たしてそれが企業にできるか、これ非常に大きな、どこか一つだけを直せばいいようなものではなくて、日本的雇用慣行を抜本的に改革していくようなことにつながるんじゃないかということで、多くの関係者の協力が必要なんじゃないかなというふうに考える次第です。
○伊藤孝恵君 私も昨年一番衝撃を受けたレポートが経産省が出した未来人材ビジョンというレポートでした。あの中で、団塊ジュニア世代のメンタリティーは、企業へのロイヤリティーもないし、起業か転職のマインドもないし、企業は人に投資をしてこなかったし、個人も学ぶ意欲はない。なのに、団塊ジュニア世代は労働市場に放り出されて非正規などの職業を選ばなきゃいけなかったのに、今いきなり何か学べと言われても付いていけないよというような、そういった悲鳴にも似たレポートでした。そういったところの課題も認識しながら政策立案していきたいと思いました。 ありがとうございました。
○会長(福山哲郎君) 山添拓君。
○山添拓君 日本共産党の山添拓です。 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。 初めに、小峰参考人に伺います。 今日、賃金、雇用の話もそれぞれ話がされてきました。直近では、昨年は、実質賃金が八か月連続で前年を下回り、昨年の十二月もプラス〇・一%ですから、物価高騰に追い付く様相ではないかと思います。また、もう少し長期的に見ても、そもそも日本の賃金は四半世紀にわたって下がり続けてきて、OECDの加盟国の中でも下から数えた方が早い、そういう賃金の上がらない国になってしまっている現実があるかと思います。 非正規雇用の拡大や格差と貧困が指摘され、先日、当調査会に来られた参考人も、食料支援を利用する方が減らないと、こういう現場の話をされておりました。一方で、大企業が五百兆円もの内部留保を抱える事態も生じています。 このように賃金が上がらない国になっている背景や原因について、参考人のお考えをお聞かせください。
○参考人(小峰隆夫君) 御質問ありがとうございます。 これはなかなか難しい問題で、そこが分かれば何とかなるというので、そこがなかなか分からないので多くの人が苦労していると思うんですけれども。 ちょっと私の考えはやや多くの人の考えと違うかもしれませんが、実質賃金、つまり実質的に我々が受ける賃金を増やすための道というのは基本的には私は三つしかないというふうに思っていて、一つは生産性が上がること。つまり、一人一人の生み出す、付加価値で生み出すものがより増えていけばそれは実質賃金の上昇に必ずつながるはずだという、生産性の上昇が重要だと。それから、二番目は分配率ですね。分配、企業の取り分と労働者の取り分で、労働者の取り分が上がれば上がるほどそれは実質賃金は上がりますと。それから、三番目は、交易条件なんですけれども、これは輸入物価と輸出物価の比率なんですけれども、例えば、産油国は自分たちが輸出している石油の値段が上がれば自分たちは別に働かなくても実質賃金はどんどん上がっていくわけですね。ですから、交易条件というのも重要だということですが、これ、長い目で見た場合と現在の賃金とちょっと次元が違うんですけれども、長い目で見ると、私は、基本的には企業の、企業じゃない、日本経済の成長力自身、つまり生産性が、実質生産性、付加価値生産性が上がっていく力が衰えていると。これは要するに成長戦略の問題になるんですけれども、基礎的な成長力が衰えてきたということが基本的には実質賃金の低迷の背景にある。 つまり、これは簡単な話で、我々が取り分を増やそうと思えば誰かがその取り分を生み出さなければいけないということですから、みんなでその生み出す力を増やしていけば取り分も増やしやすくなるということです。誰も生み出す力を増やさないで取り分だけ増やそうということは多分できない。これは分配率を上げればできるんですけれども、分配率を上げ続けることはできないので。企業がもうけ過ぎだというので、それを賃金に回せと言うことはできますけれども、それはもうけ過ぎを解消したらそれで終わりになってしまうので、継続的に賃金が上がるためにはやはり基礎的な成長力が重要だと。それから、交易条件の方は、これはなかなか日本の力でどうこうするわけにはいかないので、外的に与えられてしまうものだと、こういう整理をしております。
○山添拓君 ありがとうございます。 久我参考人に伺います。 非正規雇用や雇用によらない働き方の下で、低賃金かつ不安定で先が見えない、そういう事態があるかと思います。今日は、女性の就労環境の改善、安心して働き続けられる環境をという話をこれまでも何度か御紹介いただきました。やはり女性は非正規雇用が多く、また正規でも女性は賃金が低い、あるいは女性の多い保育や介護、ケア労働と言われるところで賃金が低い実態があります。こうした構造的な問題がその背景には大きくあるかと思います。 今日、将来世代が明るい見通し持てるようにということを言っていただいておりますが、この構造的な問題を解決する上で重要と考えておられる点について御紹介いただければと思います。
○参考人(久我尚子君) 御質問ありがとうございます。 構造的な問題としては、改善傾向には全体的に向かっていると思います。特に、二〇一三年に成長戦略で女性の活躍というのが掲げられて以降、女性の職業生活に関する指標、非正規雇用率は、この二十五から三十四歳の方は、資料でも出しましたけれども、下がっているとか、これは結局、就業継続ができて正規雇用の職に就きやすいとか、女性の活躍という流れの中で企業側なども正規雇用として女性の採用を積極化しているということです。正規雇用の男女の賃金の状況を見ても、縮小傾向にはあるという、改善傾向にはあると思います。 何が一番問題なのかというと、やっぱり女性の非正規雇用率が高いので、結局、全体で見た男女の賃金格差にもなりますし、経済基盤という意味でも不安定になっていく。ですので、まずは、出産、子育てで離職したいという方ももちろんいらっしゃるんですけれども、そうではない女性が働き続けられる就業環境を整備していく、これが重要だと思います。 今の若い世代の男性の就活の状況などを見ても、やはり女性が働きやすい環境というのは男性も働きやすい環境である。そして、新入社員の育休取得意向などを見ても、二〇一七年のデータで約八割の新入社員男性が育休を取得したいと答えている一方で、民間企業では最新値でも一四%しか取得できていない。こういう状況があるので、女性という言い方をすると分かりやすいので言っていますけれども、女性も男性も、働きたい形で働き、安心して将来的に働き続けられる環境の整備として、まずはその出産とか育児で離職をしなくても済むような環境というのがすごく重要だと思っています。
○山添拓君 ありがとうございます。 酒井参考人に伺います。 先ほども少し話題に出ていましたが、円滑な労働移動、雇用の流動化、また、それを通じて賃上げをという発想も政治の側の言葉の中には出てきているかと思うんですが、これは、より高い賃金、より良い労働条件が提示される事業者があれば労働者は移動していくものだろうと、むしろ終身雇用や年功賃金がその移動を阻んでいるという考えも背景にあるのかと思うんですね。 一方で、労働法制の規制緩和が続いて、既に若い世代の半数、あるいは女性の半数が非正規雇用で、終身雇用でもなければ年功型賃金でもない状態があります。安定した仕事に就きたくても、そもそもそういう仕事はそうそうない。その下で賃金が上がらないという現状があると思いますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(酒井正君) ありがとうございます。 私も、この円滑な労働移動ということが最近しきりに言われるわけですけれども、単純に労働移動だけすればいいわけではないというのはまさに問題意識として持っておりまして、労働移動をしているだけならば、今の非正規雇用の人たちがまさにその労働移動をしている。ただし、この人たちはスキルアップもしないし賃金も上がらないというのが実態なわけです。そういう労働移動ではなくて、恐らく政府が目指しているのは、スキルアップして賃金も、生産性も賃金も上がるんだというような労働移動なわけです。 しかし、それを実現するためにはいろいろときめ細かな対策が必要であろうということは言えるわけですね。それがなかなか難しいんではないか。なかなか難しいんではないかというのは、そういうことは実現しないというふうに悲観的に思っているわけではなくて、たくさんの条件が必要になってくるであろうというふうに考えて、私も先ほど、例えば企業側の協力も不可欠であろうし、個人自身がキャリアアップ形成というものを主体的に考える必要というのも必要であろうというふうに申し上げた次第です。 ただ一方で、もう一つ言えることは、例えば、非正規雇用の人の中に、実はその非正規雇用のままで働いていきたい、あるいは、フリーランスの人たちの一定割合はフリーランスとして働き続けたいというふうに考えている人もいるわけです。実は、まあ不思議なことにといいますか、現在の求職者支援制度、正規雇用を目指す人たちだけを対象としておりますので、逆にそこでこういった制度の支援が行き届かない、フリーランスで、フリーランスとして働きたいんだけどスキルアップもしたいというような人にむしろその制度が届かないというようなことになっているということで、非常に難しい状況が生じているのかなというふうに思う次第です。 要は、フリーランスあるいは非正規雇用として働き続けたいと思う人も、あるいは正規雇用にやはりなりたいんだ、だけど今なれないんだという人も含めて、そういったことに関わりなく支援が必要なんじゃないかなというふうに考えている次第です。
○山添拓君 ありがとうございます。 今、フリーランスのお話が出てきましたので伺いたいと思うんですが、政府の調査では四百六十二万人という数字が出されて、まあコロナの下で更に大幅に増えたという調査もあるかと思います。今フリーランスやギグワーカーがセーフティーネットを含めてほとんど無権利状態にあるのは、それ自体は深刻な問題かと思います。 ヨーロッパではギグワーカーを一部労働者であると認めるような判決が出されていたり、あるいはバイデン政権がギグワーカーの労働組合の結成を支援して待遇改善を図ると、こういう方針を出したり、あるいは韓国ではギグワーカーにも雇用保険の適用を拡大すると、こういう動きも報じられています。 ギグワーカー、まあフリーランスなどもですね、そのセーフティーネットを含めた保護法制の在り方について、既に述べられているところもありますが、改めて御意見を伺えますでしょうか。
○参考人(酒井正君) ギグワーカー、まあいわゆるそのフリーランス等に関して、セーフティーネットの提供の重要性というのはここのところ非常に言われているところなんですけれども、一つの在り方として、先ほど御指摘あった雇用保険の適用拡大という方向性はあり得るのかと思います。 ただ、そこで、ちょっと私、法律の専門家ではないので法技術的なこと分からないんですけれども、まずその失業認定といったものでハードルが出てくる可能性があることに加えて、結局フリーランスというのも非正規雇用と同じように、先ほど私、意見陳述の中で、何で非正規雇用が失業給付を受給しにくいのかということに関して、適用されていないということ以外にも、例えば適用されたとしても、結局被保険者期間といったものを条件を満たせずに受給できないということが生じてくる。そういう意味では、結局フリーランスに雇用保険を適用したとしても同じことが生じてくるんじゃないかということが懸念として考えられるわけです。 そうすると、やっぱりそのフリーランスへのセーフティーネットの提供というのも、何かその社会保険の枠組みではないところ、保険料の拠出を条件としないようなセーフティーネットの提供の仕方というのが重要になるんじゃないかと。そういう意味で、私、思い入れがあるから言うわけではないですけれども、求職者支援制度というのは、そういう意味でポテンシャルが本当はあるんじゃないかというふうに考えているところなんですね。
○山添拓君 ありがとうございます。 小峰参考人に伺いたいと思います。 今日、資料の中でも、バブルの中ではバブルと分からなかったと、それから、不良債権についても当時認識は甘かったと、あるいは大成功と思われたアベノミクスの一年目は短期的なものだったというような、その渦中にあっては分からないことがあるんだということを幾つか例を出して御紹介いただきました。今渦中にあって見えていないけれどもリスクと考えられ得ることは、この現在ですね、そういうことは何だとお考えでしょうか。
○参考人(小峰隆夫君) これもなかなか厳しい御質問だと思うんですが、私は財政赤字だと思います。財政赤字、今ほとんど国債発行のコストはゼロなものですから、幾ら発行しても余り債務としてたまらないということがあるんですが、一方で、まあコロナにしても国防費にしても防衛費にしても少子化対策にしても、財政需要がどんどん出てくるという中で、赤字に対してやはり多くの人が余り危機感を持たなくなってきたというのは、まさにバブル的な、その渦中にあってはその危機が分からないという典型のように私には見えます。 ですから、十年後、二十年後の人が我々を評価したら同じ評価になるんじゃないか、バブル的なところなんだけども分からなかったんだなというふうに言われるんじゃないかというのが私の懸念です。
○山添拓君 ありがとうございます。終わります。
○会長(福山哲郎君) 天畠大輔君。
○天畠大輔君 れいわ新選組の天畠大輔です。本日はありがとうございます。 就労困難者への支援について質問いたします。代読お願いします。 代読いたします。 現在、物価高が進む中で給料のベースアップの必要性が叫ばれていますが、そもそも就労困難な私たち障害者は、労働市場から排除されている現実があります。 日本では、一般就労が困難な障害者には、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業所やB型事業所などの福祉的就労しか選択肢がほとんどない状況です。 B型事業所を例に挙げると、労働契約を結ばない前提の制度になっているため、労働契約関係の法律の適用や雇用保険への加入もなく、最低賃金法の適用もありません。工賃と呼ばれる報酬は平均月額一万五千円程度しかなく、親族の支援や障害者年金がなければ生活ができません。東京のあるB型事業所では、PCのデータ入力、バザーの物品販売を一か月行っても、工賃は千五百円から二千円ほどしかもらえません。 このような状況の中で、事業所の全国組織きょうされんの二〇二二年の調査では、障害当事者の約六割が物価高による食費の値上がりに困窮し、洗濯は五日に一度、シャワーは水、衣類を買わないなど、人権侵害とも言われるような明らかに過度な節約を強いられている現状が明らかになりました。物価高対策以前に障害者の所得保障すらされていない現状では、障害者の社会参加は進みません。 さらに、A型、B型事業所では、働いている障害者はあくまでもサービスを受ける対象であり、サービス提供者に利用料を払っています。健常者と対等な立場で働ける環境ではありません。 一方、海外に目を向けると、特にヨーロッパでは、障害者や長期失業者、高齢者、移民、薬物常用者、シングルマザーの方々など、社会的に不利な状況にある人たちがほかの人たちとともに働く社会的事業所、ソーシャルファームの取組が進んでいます。このソーシャルファームの最も重要な理念は、障害などの困難性の有無にかかわらず、皆が同じ報酬で対等な立場で働ける場の提供です。 日本では、二〇〇五年に滋賀県が社会的事業所の制度を創設し、事業所に対する補助も行っています。東京都では、二〇一九年に条例が制定され、ソーシャルファームの創設や活動に対する支援を行っています。しかし、国として社会的事業所を認証し支援する制度は確立されていません。 小峰参考人は、就労困難な人たちへの支援を進める日本財団のワークダイバーシティープロジェクトにも関わっておられると思います。ソーシャルファームの実践も含めて、就労困難者の社会参加を進めるためにどのような方策が考えられるのか、小峰参考人の御意見をお聞かせください。また、久我参考人と酒井参考人からも、ソーシャルファームに限らず、就労困難な人たちへの支援の在り方について御意見がありましたらお願いいたします。
○参考人(小峰隆夫君) 御質問ありがとうございます。 御質問の中にありましたような活動を私もしておりますが、私の担っていた任務というのは、そういった障害者を始めとしてなかなか就労が困難な人たちが世の中にどれぐらい存在して、その人たちが通常の職業を得て、通常の所得を得るようになると経済的にどれぐらいのプラスがあるのかということを推計するというのが私が参加していた委員会の任務でしたので、そういったことをいたしまして、ですから、具体的に何をやればいいかというところまでは私たちの担当した委員会ではやってないんですけれども、少なくとも、潜在的な、そういった今なかなか社会参加ができない人たちがいる、その人たちを社会参加に導いていけば相当大きな潜在力は発揮できるという点を確認したというのが私たちの委員会の成果で、これはまさにこの調査会が掲げている、「誰もが取り残されず希望が持てる社会の構築」ということにもつながるというふうに思います。
○参考人(久我尚子君) その就労困難者の方の支援ということについて、ちょっと私の専門の領域ではなかなか意見を申し上げることが非常に難しいんですけれども、一つは、やはりこういう場でいろんな機会で声を出していただくことは非常に有意義だと思いますし、小峰先生のようなお立場の方がその就労困難者の方のポテンシャルのようなものを、先ほど推計したような数字のお話も出されていましたが、やっぱり世の中を動かしていくにはどれくらいの数の方がお困りになっていて、具体的にどういうところで、希望がかなえられるとこういうポテンシャルがあるというのを具体的に示していくということは非常に重要だと思います。
○参考人(酒井正君) 私として、障害者雇用詳しいわけではないので、就労困難者一般ということで意見を述べさせていただくとすると、やはり、その就労困難者への支援ということを言われるんですけれども、現実的にそれをやっていくというふうになると、いろいろと難しいところが出てくる。 先ほど私の意見陳述の中で詳しく述べた求職者支援制度も、実はこの対象者として就労困難者というのが想定されているわけなんですね。その就労困難者にもかかわらず、例えば出席要件が非常に厳しいというと、そういう人たちの中には、必ずしも一般の人と同じように職業訓練に参加できる、そういう人たちばっかりではないと、そういう配慮から今回このコロナ禍で出席要件緩和されたというふうに私は解釈しておるところなんですけれども。そのように、何か訓練を与えようとして、スキルアップの機会を与えようとしても、そもそもそういうところに乗ってくることが難しいという方に対する対応、配慮というのが今後もどうしても必要なんじゃないかというふうに思っております。 そういう意味でも、そういった人たちへの配慮を持った制度づくりというものが今後も行われていってほしいなと考える次第です。
○会長(福山哲郎君) 速記を止めてください。 〔速記中止〕
○会長(福山哲郎君) 速記を起こしてください。
○天畠大輔君 ありがとうございます。 続いて、障害者のテレワークについて質問いたします。代読お願いいたします。 酒井参考人に伺います。 就労困難者の就労支援を考える上で、業務のオンライン化も重要なテーマであると考えています。パンデミックを契機に業務のオンライン化が進む中で、酒井参考人はテレワークによって中間層の仕事喪失リスクを論じられています。その一方で、テレワークが障害者などの就労の選択肢を広げていることも事実だと考えております。 雇用の観点から、テレワークのメリット、デメリットについて酒井参考人の御意見をお聞かせください。
○参考人(酒井正君) ありがとうございます。 テレワークに関して、私、一応、資料を一番最後に、三十ページ目に参考として用意したわけなんですけれども、ちょっと時間がなくて紹介する機会はなかったんですけれども、テレワークがどういうふうにあるべきかということとは別に、客観的にどういうことを予想するのかということを述べさせていただきたいと思います。 幾つかの調査あるいは研究から、このコロナ禍で急速に広がったテレワークというものが、主に年収の高いような職種でテレワーク実施率が高く実施されているということが分かっているわけです。 私、全般的にテレワークが普及したということは、先ほど就労困難者という話ありましたけれども、まさにいろいろな働き方、働きやすさということを実現する上でも非常に重要です。 また、ちょっと参考資料として、ごめんなさい、今回入っていなかったかと思いますけれども、例えば家庭の在り方ですね、父親の育児、家事参加といったことにもテレワークというのはいい方向に寄与するんじゃないかというふうに希望を込めて書いたこともございます。 ただ、このテレワーク、先ほど年収の高い職種の方が実施率高いというふうに申し上げましたが、単純にこれを何か喜ぶだけでいいのかということがあるかと思います。 長期的な視点で考えたときに、もしかして、現下で、コロナ禍において、テレワーク非常に実施するようになった職種においても、もしかして、これテレワークができるようになったということは、企業にとってはフィジカルな距離といったものが関係なく、その場にいなくても仕事ができるということに気付いたわけですね。そうすると、これ極端な話、この仕事海外にやってもいいんじゃないかと、海外でやってもらっても同じことできるんじゃないかというような発想にもなりかねないわけです。 そうすると、テレワークが実施できる仕事、確かに統計を見れば、年収の高いような仕事で、また比較的非定型的なスキルを要するような仕事だというようなことを言われていますけれども、単純にそれだけかというようなことがあって、もしかして、ある種の雇用喪失を、ジョブディストラクションを発生させるんじゃないかというような懸念を述べた次第です。そこがある意味でのデメリットというか、今後長期的な観点で注視していかなければいけないところだというふうに思います。 ただ、その流れというのは止めるわけにはいかなくて、やはりそのテレワークのメリットというのを生かしながら、海外にも流出しないような仕事、あるいはデジタル化されて奪われないような仕事というものにシフトしていく、そういう中でテレワークというものを使っていくということが重要なのではないかなというふうに考えるところです。
○天畠大輔君 参考人の皆様、ありがとうございました。これで質疑を終わります。
○会長(福山哲郎君) 以上で各会派の一巡目の質疑は終了いたしました。 他に御発言もなければ、参考人に対する質疑はこの程度といたします。 参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。 皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十七分散会