P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
211回国会参議院2023/03/09

予算委員会公聴会 第1号

発言数
224
登壇者
25
会派数
8
開催日
2023/03/09

会議録

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算及び令和五年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人の方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、経済・財政・雇用について、公述人PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト片岡剛士君及び昭和女子大学特命教授八代尚宏君から順次御意見を伺います。  まず、片岡公述人にお願いいたします。片岡公述人。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 皆さん、おはようございます。PwCコンサルティングの片岡と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  私の方からは、主に四点、経済・雇用・財政に関連する話題についてお話をさせていただければと思います。お手元の方に資料がございますので、そちらに沿って順次お話をしたいと思います。  まず、一枚おめくりをいただきまして二ページ目のところを御覧いただければと思いますけれども、最初に物価の動向についてであります。  図表の一のとおり、日米ユーロ圏の消費者物価上昇率の推移を見ますと、二〇二一年に入った辺りからじわじわと物価が上昇しております。その中で、日本も二〇二三年の一月になりますと、全ての財を含むベースで四・三%、それから、食料、エネルギーを除いたいわゆる欧米型コアと呼ばれている物価上昇率でも一・九%と、こういう形で、欧米の物価上昇に引きずられるような形で上昇していると、こういう形になっております。  図表の二の方を御覧いただければと思うんですけれども、この物価上昇というのがどういう形で起こっているのかというものを消費者物価を構成している財別に見たものであります。日本のケースは一番下の方に書いてございますけれども、四・三%の物価上昇率のうち、日本が輸入品等から影響を受けています食料、エネルギーといったものが二・四%分ございまして、ある意味半分ちょっとぐらいでしょうか、いわゆる国内の需給関係というよりかは輸入品価格の上昇によってインフレが起こっていると、こういうことでございます。ただ、一・九%、食料、エネルギー除く物価上昇率というのは、これは一九九三年以来でございまして、いわゆる需要要因で物価が高まっているといった話もかなり強くなってきているということが言えるかと思います。  先ほど申し上げましたように、物価上昇につきましては全ての品目で四%を超えるという状況でございますので、日本銀行として、例えば二%の物価安定目標、これで達成できるのかどうかというところが焦点になってくるわけでございますけれども、図表の三のように、消費者物価の基調的な変動というものをいろんな指標で見ていきますと、こちらは、刈り込み平均値というものにつきましては既に三・一%という状況でして、二%を上回っている。それから、加重中央値、最頻値といったところも一%台というところで、かなり二%に近接しているという状況であります。  私自身は、この三つの指標が二%に近づく、ないしは二%を超えるというような状況になりますと二%の物価安定目標というのが達成されると、こういうふうに判断してもいいんじゃないかなというふうに考えている次第であります。  図表の四の方を御覧いただければと思うんですが、これは、消費者物価を構成しております五百品目以上の品目を取り上げまして、それぞれの価格上昇率というものを横軸に取り、その価格上昇率というのが全体の中で何%ぐらいの割合を占めているかというものを見たものであります。  一九九二年十二月といいますのは、これは、食料、エネルギーを除く総合ベースの指数で二%超の物価上昇率を記録したときの品目別の価格変動分布であると。で、これに近いような状況であれば、まあ二%、食料やエネルギー除いても物価上昇しているということなので大丈夫だという話になるわけですね。オレンジの棒グラフといいますのが二〇二三年の一月というところでありますけれども、七%以上の価格上昇率を示している品目の割合というのは、実は一九九二年十二月と比較しても割合としては大きくなっているわけですね。ですから、こういった高くなっている品目が三%以上の物価上昇まで落ち着くと、価格上昇まで落ち着くということになれば、おおむね二%の安定目標が達成できるということになります。ですので、今後は持続性が焦点ということになろうかと思います。  次のページを御覧いただければと思いますけれども、では、こうした物価上昇を支える経済動向はどうであったのかというところであります。  図表五、図表六、図表七といいますのは、物価、マネー、それから企業利益、賃金、そして図表七が価格判断、需給判断と、こういったようなものを見ておりますけれども、コロナ禍以降、日銀は政府と協力しつつコロナ対策という形でマネーを供給しました。このマネーの供給というのが、一つは物価上昇の力になっているということであります。それから、企業利益もコロナ禍以降落ち込んだところから改善をしておりまして、足下でも前年比で経常利益というのは高まっていると、こういう状況であります。  それから、価格判断なんですけれども、図表の七の方を御覧いただければと思いますが、販売価格判断、それから仕入価格判断といいますのは、これは価格上昇しているというふうに見ている企業さんというのが非常に増えている状況です。  従来であれば、こういった中で人々の所得が価格上昇に追い付かないという状況になりますと、そうしますと早晩需要がもたなくなりますので価格が下がっていくと、こういうふうになるわけですけれども、今回がこれまでとはちょっと違うのが、この国内需給判断の小売というものが、これが需要超という格好になっている部分というのが違いであります。もちろん全品目では需要超過という形にはなっておりませんけれども、小売に限っていいますと需要超過の状況になってきていると、こういうことになります。ただ、こちらの指標をそれぞれ御覧いただいてもお分かりのとおり、足下でちょっと上昇度合いが緩やかに垂れてきていると、こういう形になります。  図表の八の方を御覧いただければと思いますが、これは先行きの景気を示したCI先行指数というものを見ておりますけれども、二〇一八年の十月といいますのが直近の景気後退期の始まりの時期でありました。この指標の数字と比べますと、足下二〇二二年の十二月の数字というのは、いずれも景気後退が始まりました二〇一八年の十月の水準を下回っております。そして、トレンドとして見ますとやや下がっていくような、そういった動きになっております。  こうしたような動きというのが広がっていくということになりますと、景気後退というのが現実的に起こるかもしれないと、そういう情勢であるということで、先行きの景気には不安材料もあるということであります。  続きまして、雇用状況についてお話をしたいと思います。  四つ図表を挙げさせていただいておりますけれども、アベノミクス前後の経済動向ということで図表の九に掲げさせていただいておりますが、名目GDP、企業収益、就業者数、完全失業者数、倒産件数、国、地方の税収、いずれも改善したということが言えると思います。  特に大きく改善したのが雇用であります。図表の十の方を御覧いただければと思いますが、こちらは十五歳以上人口に占める就業者の割合、つまり働ける可能性のある方の中で実際職に就いた方の割合、それから実際の就業者数というものをグラフにしたものであります。  一九九八年以降のデフレ期、二〇一二年辺りまで続きましたが、こちらの時期といいますのは、就業率でいいますと六〇・七%当時あったものが二〇一二年には五六・五%まで低下し、就業者数は六千五百十四万人であったものが六千二百八十万人まで減少すると、こういうことになりました。二〇一三年以降のアベノミクスを通じて雇用は大きく改善し、就業率は六〇・九%、それから就業者数は六千七百二十三万人という形で、ようやくデフレ期前の状態に戻ったということがこの数字から言えるのかと思います。  そして、図表の十一の方ですけれども、正規雇用、非正規雇用の動きということで、ちょうど今年、アベノミクス十年みたいな話が言われるわけですが、二〇〇二年から二〇一二年の十年間、それから二〇一二年から二〇二二年の十年間で正規雇用、非正規雇用の方たちというのがどれぐらい増減したのかというのを、まず図表の十一の左では見ております。  正規雇用を見ていきますと、二〇〇二年から二〇一二年の十年間で正規雇用は百四十四万人減りました。そして非正規雇用は三百六十五万人増えたと、こういう状況になっております。一方で、二〇一二年から二〇二二年の間を見ますと、正規雇用は二百四十三万人、そして非正規雇用は二百八十五万人という格好になっていまして、共に増えると、こういう格好になっています。  それから、非正規雇用についてなんですけれども、理由別の非正規雇用者数というものを見ますと、自分の都合の良い時間に働きたいと答える方の割合というのが二〇一三年以降ずっと高まっているということが分かります。他方で、正規の職業がないからと、こういう理由で非正規職業を選んでいる方の度合いというのは逆に少なくなっていると、こういう形になっています。ですので、理由が変わってきていると、こういうことになります。  そして、昨今、名目賃金どれぐらい上がれば二%の物価安定目標の達成できるんだろうかと、そういう議論がございますけれども、図表の十二はその参考ということで、横軸に所定内給与の前年比を取りまして、縦軸に物価上昇率を見たというものであります。過去のデータを通じて見ますと、所定内給与の伸びが前年比で三%以上になりますと大体物価上昇率が二%ぐらいになると、こういうことになっております。  今、足下で二〇二二年の十二月時点の所定内給与の伸びは二・三%ということでありますから、まあもう少し伸びれば二%に近づいてくると、こういうことが言えると思います。ですので、そうした意味では、強固かつ持続的な名目賃金の上昇を通じた所得拡大というものをやっていくというのが必要になると、こういうことになるわけです。  次のページ御覧いただければと思いますけれども、財政の話なんですが、図表の十三、こちらは、二〇一二年の第四・四半期、つまりアベノミクス始まる直前の消費、それから設備投資、輸出といったものにつきまして、そこを一〇〇として足下までずっと推移を見たものであります。  輸出とそれから設備投資、もちろん上下はありますけれども、輸出の場合は二〇一二年の第四・四半期と比べますと四割超増加したと。それから、設備投資は一五・六%伸びたということでございますけれども、民間最終消費を見ますと、これは九九・八というふうになっていまして、二〇一二年の第四・四半期の水準よりもやや低いと、こういう状況になっております。  やや細かくこの指標を見ていただきますと、二〇一四年の第一・四半期辺りまでは緩やかに拡大していることが分かります。二〇一四年の第二・四半期に落ち込んで、そこからずっと横ばいになり、さらに、二〇一九年の第四・四半期に落ちて、二〇二〇年、コロナ禍の下で更に落ち、今、回復過程にあると、こういう流れになりますけれども、落ち込んでいる二つの時期といいますのは、これはまさに消費税を増税した時期なんですよね。ですから、ある意味、これは何を示しているかといいますと、消費税を増税したということが民間消費の落ち込みの背景にあるということであります。こういう状況になりますと、経済成長なかなか進められないということになるわけですね。  昨今話題になっております防衛費なんですが、図表の十四といいますのは、赤い線で当初予算ベースの防衛関係費、これは実績の値を挙げておりますけれども、黄色い線、こちらは名目GDPの成長率で毎年三%成長したら足下の防衛関係費、実はどれぐらいになっているのかというものを示したものであります。  現状、五・四兆円の防衛費なんですけれども、一九九七年、デフレに日本が陥った以降、仮に名目GDPが三%成長をずっと続けていたら、GDP比一%ぐらいの防衛費でも実は十一・〇兆円になると、こういうことになります。つまり、経済成長をしていれば、GDP比二%という形で防衛費を積まなくても、実は防衛費は増えているんだということです。  これは何を意味しているかといいますと、我々の暮らしを支えるためには経済成長が必要であるということです。経済成長と両立する形での財政を考えていく必要があるという話になります。  図表の十五、十六は、そうした意味で財政政策の在り方という話について書いております。デフレ期、なかなか長期金利が上がらないと、こういう時期においては、経済学の世界では積極的な財政支出を行っても問題ないということが言われます。  それから、図表の十六にこれからの財政の在り方ということで少し書かせていただいておりますけれども、私は三点必要なことがあるんじゃないかというふうに見ています。  一つは、正しい情報ということであります。例えば、六十年償還ルール、債務償還費の扱いと、こういったものは日本としては正しいというふうに使っておられるのかもしれませんけれども、グローバルスタンダードの視点で見ますと、こうしたものを使っている国というのはほとんどない。それから、グロスとネットの違いというものを財政においては押さえる必要がありますし、予算と決算額というものの違いというのもしっかり押さえていく必要があるというふうに思います。  それから、正しい認識と書きましたけれども、デフレ下とインフレ下で財政政策の在り方は異なります。デフレ下の中では長期金利なかなか上がりませんので、むしろデフレから早期に脱却するために積極的な財政が必要になります。他方で、インフレ率が高まってきて、日本銀行が、仮にですけれども、二%の物価安定目標を達成したと、こういう話になりますと、長期金利は緩やかに上がってきますので、こうなったときに初めて財政健全化と、こういう議論を開始していけばいいんじゃないかと、こういう話になります。  それから、正しい戦略ということで書かせていただいておりますけれども、本予算と補正予算の位置付けを明確にすべきだというふうに思います。補正予算は例えば景気の下押しを回避するための使途に限定するとか、そういうような話が必要で、本予算は中長期的な観点に立ってしっかりお金を支出していくと、こういうことが求められるのかなというふうに思います。  済みません、私からは以上です。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  次に、八代公述人にお願いいたします。八代公述人。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) おはようございます。昭和女子大学の八代と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。  私は、二〇〇六年から第一次安倍内閣のときの経済財政諮問会議の民間議員として、特に規制改革、労働市場改革等の分野で安倍総理の指示の下で参加しておりました。そのときと比べて今の日本経済の状況は更に悪化しているわけでありまして、そういう意味でも安倍総理がやり残されたこの三本の矢のうちの成長戦略というものをどんどんやっていく必要があろうかと思っております。  一枚めくっていただきまして、日本経済の現状ですけれども、私は実は、また八〇年代末まで、パリにあるOECDという国際機関で日本担当の経済分析の責任をやっておりましたが、その当時、諸外国はこの強過ぎる日本をどうするかということに随分議論をしておりまして、なぜこんなに日本経済が強いのかというようなことが重要な要素になってきたわけです。しかし、現在はその逆に、何で日本がこんなに弱いのか、全く正反対の議論が行われているわけですね。  ですから、なぜこんなに大きく変わったのか、誰か悪者がいるんじゃないかと、誰か悪い人が日本をこんなに苦しめているんじゃないかというようなことがよく言われるわけですが、私はそれは間違っていると、日本は何も変わっていない。日本の企業も日本の労働者も、八〇年代前も現在も一生懸命働いているわけですが、それでなぜこんなに日本経済がうまくいかなくなっているのかということが大きなポイントかと思います。  かつて日本は、GDPで見ますとアメリカとほぼ同じペースで成長しており、一人当たりGDPで見ましても一時はアメリカを上回った時期があるわけですね。それが、GDPでは二〇一〇年に中国に追い抜かれ、どんどん差は広がっている。一人当たりGDPで見ますと、もう韓国とほとんど同じレベルで、また、追い抜かれる危険性が高いわけですね。  ですから、この違いはなぜかというと、私は、日本は何も変わっていないと、問題は世界が変わったんだということですね。九〇年代にベルリンの壁が壊れて社会主義経済が市場経済化した、旧ソ連や東欧、それから中国が経済発展をして、特に製造業の分野で日本を急速にキャッチアップしてきたと。こういうような大きな海外の変化、それから国内では少子高齢化、デジタル化、そういう大きな変化になかなか対応できなかった。  ですから、日本の企業も政府も、過去の成功体験が余りにもすばらしかったがゆえに変えようとしなかった。で、こういう問題は一時的なもので、いずれ台風が去ったら青空が広がるというような感じで、まあその場しのぎの対応でやってきたわけですが、もうそれはやめるべきであって、基本的なやっぱり構造改革を進める必要があるんじゃないかということです。  次のページを見ていただきますと、ですから大事なのは、その不作為ということですね。企業の不作為、政府の不作為、それがやっぱり今の大きな問題ではないか。  日本の産業構造は元々二重構造と言われていまして、製造業は市場経済に基づいて世界で戦ってきたわけですが、農業やサービス業はとかく政府の保護を求めるという、まあ社会主義に近い仕組みになっていた。言わば、昔のドイツが西ドイツと東ドイツに分かれていた状況が日本の現状ではないか。そうした中で、効率的な製造業がどんどん海外に出ていってしまうことで、その穴を埋めるべき農業やサービス業の生産性の低さというのが大きな問題になっているんじゃないか。  しかし、これは逆に言うと、それだけある意味で含み資産があるわけでして、農業やサービス業の制度や規制の改革をすることによって製造業並みの生産性を実現すれば、日本は立派に立ち直ることができるんじゃないかということであります。  もう一枚めくっていただきまして、アベノミクスの評価。  アベノミクスから十年ということなんですが、アベノミクスが失敗したという意見が一部にあるわけですが、私はそうは思っておりません。アベノミクスの一本の矢、金融政策、二本目の矢、財政政策、三本目の矢の成長戦略で、一、二本はまあそれなりにうまくいったと思いますが、三本目の肝腎のその成長戦略が腰砕けになってしまったと、これを是非継承していくのが現在の政府の役割ではないかと思っております。  ですから、せっかく労働需給が逼迫しているのになぜ賃金が上がらないかという問題が大きいわけですが、やはりこれは生産性の低さが足を引っ張っている。ですから、制度、規制の改革を通じて、特に今は農業とサービス業を中心としてやる余地は大きいんじゃないかと思っております。  それから、次のページで、少子高齢化への対応、これが一番大きなポイントだと思われます。  少子化の方は、最近既にもう岸田総理が異次元の少子化対策というのを打ち出されたわけですが、実は少子化よりも重要なのが私は高齢化だと思います。  日本の人口は二〇六〇年ぐらいに一億人を下回るという予測があるわけですが、しかし、まだ一億人いるわけです。この一億人というのは一九六〇年ぐらいの水準と変わらないわけで、問題は、一九六〇年は高齢化率が六%にすぎなかった、それが今度の一億人を切る二〇六〇年にはもう三八%まで上がるという予測があるわけで、この違いが極めて大きいわけです。ですから、この膨大な高齢者に、高齢化問題にどう対応するか、基本的な考え方をやっぱり検討していただく必要があるんじゃないか。  右のグラフがありますが、これは、一概に高齢者といっても二つに分かれるわけですね、七十四歳までの前期高齢者と七十五歳以上の後期高齢者。それが赤線で示してありますが、今起こっていることは、単に高齢者が増えるだけじゃなくて、後期高齢者が今後急速に増えていく、言わば高齢者の高齢化という現象が起こっているわけです。  これに対してどう考えるかといいますと、なぜ高齢者が増えるかというと、それは一つは、最大の要因は、寿命が延びるわけですね。で、寿命が延びるということはいいことなんです、個人にとっても家族にとっても。なぜそれが社会にとって悪いことになるのか。それは社会の仕組みが間違っているからであって、寿命が延びた分だけ高齢者が活躍できるようにする。  具体的に言いますと、前期高齢者、六十五から七十四歳は、支えられる側じゃなくて支える側に回っていただくということですね。そうしますと、七十五歳以上の高齢者というのは、実は高齢化のピークでも二五%にすぎない、四人に一人なんですね。これは十分支えられるわけです。ですから、具体的に言えば、今の労働慣行とかあるいは社会保障制度を七十五歳以上の高齢者をきちっと守るという方向に持っていく。もちろん、高齢者は多様でありますから、六十歳でもう働けなくなる人もいる、しかし八十歳になっても元気で働ける人もいるわけで、そういう、高齢者を一括に扱うんじゃなくて、エージフリーという言葉が英語にあるわけですが、年齢を問わない社会に変えていくというのが大きなポイントではないかと思います。  それから、次を見ていただきますと、この異次元の少子化対策ということで、岸田総理がいろいろ御苦労されているわけですが、これに対してはやっぱり抜本的な制度改革が必要である。具体的に言えば、少子化のための固有財源が必要だと思っております。今、政府の一部には、残念ながら、そういう抜本的な財源は難しいから、年金とか医療とか既存の保険から少しずつお金を出してもらってやりくりしようという非常にこそくな考え方がはびこっているわけで、これは間違っていると思います。本当の少子化対策をするためには、やっぱりそれのための固有の財源が必要であります。  これは日本では既にあったことで、介護保険がそうなんですね。二〇〇〇年にできました介護保険というのは、当時の厚生省で、私も審議会に入れていただきましたが、これから増える高齢者に対して家族では対応できない、だから高齢者の介護を社会全体で負担するために医療保険のような介護保険が必要だという大英断をしたわけですよね。  同じことが子育てにも必要だと思います。これからの社会を支える大事な子供を家族だけに任せるんじゃなくて、介護保険と同じように社会全体でシェアするという考え方が大事で、そのためには子供保険というようなものが必要になるんじゃないか。で、これを新たにつくる必要はないわけです。  具体的に言いますと、今の介護保険は幸か不幸か四十歳以上が被保険者という非常に変な形になって、いろんな経緯があるわけですけれども、幸いにして二十から三十九歳の被保険者が空いていますので、ここにすっぽり子供保険という形で介護保険に間借りすると。で、全体を合わせて家族保険という形にしていくと。  これを負担増だという批判する方もおられますが、将来の宝である子供を育てるためには、子供がいる人、ない人も合わせてきちっとした負担をしていくということについて、国民がそんなに大きな反対をするかというと、私は疑問に思うわけです。  介護保険にすることによって、家族が働くか働かないかに無関係に介護サービスを活用できたわけですが、今の保育というのは保育認定が必要なんですね。これは、ですから働いていないと保育所を使えないという非常にひずんだ形になっているわけで、こういう過去の福祉としての保育という考え方をやめて、サービスとしての保育でどのような家族でも使えるという方向に持っていく必要があろうかと思います。  もう一つめくっていただきまして、ですから、少子化対策というのは、そういう意味で女性の社会進出と並行してやるということに考えないといけないと思います。  それから、時間も押しておりますので、一番大きな改革の一つの柱としては、やはり日本的雇用慣行の改革というのがあります。  今の日本の働き方というのは、過去の高い高度成長期を支えた非常に貴重なものであります。未熟練の大卒や高卒の人を企業が喜んで採用してくれる国はほとんどないわけで、それによって若年失業率を随分低く下げているというメリットはあります。  しかし、今の低成長、少子高齢化の中でこれをいつまでも続けていくことはできないわけです。高齢化が進む中で高齢者に年功賃金を払い続けていたら企業ももたない。それによって正社員の数も相対的に小さくなっているわけですね。ですから、正規、非正規の格差をなくすためにも、やはり今の日本的雇用慣行を部分的に修正していくと。  具体的に言うと、同一労働同一賃金ですね。これは安倍総理が、元安倍総理が強く言われた同一労働同一賃金の法律なんですが、法律自体はよくできています。ただ、問題は、ガイドラインというものがありまして、このガイドラインに問題が潜んでいるわけです。  規制の弊害は細部に宿ると昔から言われておりますが、このガイドラインに何が書いてあるかというと、正規社員と同じ勤続年数の非正規社員で同じ仕事をしている人には同じ賃金でなきゃいけないと書いてあるわけで、しかし、そんな非正社員はほとんどいないわけですね。正社員と非正社員の大きな違いは勤続年数の違いなわけで、こういうことをやめて、勤続年数にかかわらず、同じ労働をしていれば同じ賃金だという欧米のやり方をやっぱり導入する必要がある。それによって本当の正規、非正規の格差の是正にもつながるわけです。  それからもう一つは、高齢者になっても働き続けるためには、やっぱりリスキリングというのが必要になってくるわけです。これも今重視されておりますが、リスキリングというのはオン・ザ・ジョブ・トレーニングではできないわけであって、あくまでも、やっぱり仕事を離れて、少なくとも一年、大学とか大学院に来て勉強していただく。  そのためには、やっぱり雇用保険から補助が必要なわけです。現在も学費等については補助はありますけれども、休んでいる間の所得保障はないわけですね。ですから、これを育児休業と同じような形の教育休業制度にしていくと。それによって安心して勉強することができるという仕組み、これができれば育児休業の男性による取得も更に高まることになると思います。こういうふうに、やっぱりリスキリングの重要性を考えるなら、それに伴う財源ということも同時に考えていかなければいけないわけです。  今後の社会保障制度を支えるためにも高齢者が長く働く、それによって年金財政を守るためにも平均寿命の延びに応じた年金の支給開始年齢の引上げというのが絶対不可欠なわけですが、残念ながら、今始まった年金の審議会でも支給開始年齢の引上げについては全く触れてないわけですよね。だけど、これはやっぱり高齢化社会を乗り切るときには国民にきちっと説明した上でエージフリーの社会にしていく、働ける高齢者はいつまでも働いてもらえるような制度的な仕組みを是非御審議いただければと思います。  御清聴ありがとうございました。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

足立敏之自由民主党

○足立敏之君 自由民主党の足立敏之でございます。  お二人の先生方には、大変著名な先生方で、大変お忙しい中、予算の審議のために御出席をいただきまして、ありがとうございます。心から感謝申し上げたいと思います。  私は、長年、建設省、国土交通省で勤務をした、インフラ整備や災害対策を専門とする技術屋でございます。その辺をベースにして今日は御質問させていただきたいと思います。  日本のGDP、先ほど八代先生の資料の中にもありましたけれども、アメリカだとか中国などが持続的に上げてきているのに対しまして、日本はここのところほとんど横ばいということになっています。現在、世界第三位ですけれども、間もなくドイツに抜かれるという話もあります。一時は世界第二位を誇っていたわけですので、とても残念なことだというふうに思いますが。  特に、アメリカ、イギリスが、この二十年ぐらい見ていますと、二・五倍ぐらいですかね、伸びているのと、それから韓国なんかは四倍ぐらいに伸びているんですけれども、そういう状況を見ると、何とかしなくちゃいけない、そんなふうに思います。さらに、国全体のGDPではなくて、先ほどの資料にもありましたけれども、人口一人当たりのGDPとなると、日本の順位はもう二十何位というようなことで、大変低迷しております。  一方、日本の賃金レベルにつきましても、OECD加盟国の中で見ますと、平均の八割ぐらいという非常に低いレベルで、二十四位ということになっています。韓国が二十位ですので、それにも後れを取っている状況でございますけれども。GDPが、先ほど一人当たりのGDPが二十何位と言っているのと同じ傾向で、賃金レベルも低い。これはまだ相関しているんだと思いますけれども、そんな状況になっています。  賃金レベルが低いと、日本の優秀な人材が海外に流れ出していったり、あるいは海外の人たちが日本でなかなか働いてくれない、そんなことになってしまいますので、賃金レベルはしっかり上げていかなくちゃいけない。そのためには、日本のGDPをしっかり上げていく、経済成長をしていくことが大事だというふうに思っています。  で、お二人にお聞きしたいんですけれども、先ほども申しましたけれども、私、建設省、国土交通省で長年勤務をしまして、やっぱりインフラ整備だとか防災のためのインフラ投資、こういったものが非常に重要だというふうに思っている立場なんですけれども、これから日本の経済を再び立て直して日本が光り輝く活力のある国に戻っていくためには、どのように、特にインフラ整備なんかにつきましてどういうようなやはり考え方で進めていくべきなのか、御教示いただければ有り難いと思います。よろしくお願いします。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問にお答えしたいと思います。  先ほどお話しいただきましたように、日本の、特に名目GDPでしょうか、こちらは過去二十年、三十年間ほとんど横ばいの状況でして、特に諸外国と比べますとその差は歴然としているわけです。  これは様々な理由があると思いますけれども、一つ大きなポイントとしては、デフレがずっと続いていたというところが大きなポイントなんだと思うんですね。ですから、デフレが続いたことで賃金が上がらない、その結果、国民の所得が全体として伸びないと、こういう状況が長らく続いていたわけであります。  ただ、二〇一三年以降は、やや成長率については名目成長率も二%弱ぐらい伸びていると、こういう状況でありますので、ですから、その辺りは少しずつ改善が図られてきているのかなというふうにも私は見ております。ただ、そうした改善の中で、今後、製造業、サービス業、特にサービス業だと思いますが、そちらの方々で働いている賃金が上がっていくということが重要であるということです。  お尋ねの点なんですが、インフラ投資、これはちょうど、御承知だと思いますけれども、高度経済成長期の頃にかなりインフラ整備をしまして、それが今耐用年数を迎えていると。もう超過したものもかなりあると思うんですが、そういう状況であります。こうした中では、防災絡みだけにかかわらず、広く国民の生産性を高めるためのインフラ整備というのは必要だと思います。  その中で、どのような形でインフラ整備を進めていくのかということなんですが、これは、単年度の決算ないしは予算で毎年毎年計上していくというよりかは、中長期的な観点に立ってしっかり毎年インフラ整備の投資を支出していくと、これが大事だと思います。  これがなければ、例えば建設業者の方々たちから見ても、来年も再来年も安定的な仕事があるという前提に立たないと人が雇えません。それから、現状ですと、例えばブルドーザー等の工事用の機械を扱う方というのも非常に少なくなっていますし、スキルも非常に必要であります。こういったようなところを考えると、中長期的な公共投資の計画というものをしっかり立て、それを明示していくということが必要なんじゃないかと、このように考えています。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  まさにこれからの社会資本投資というのは更新投資がやっぱり重要になってくるわけで、そのときに今ある社会資本を全部更新しようとしたらもうとても財源は足らないわけで、集中と選択が必要になってくるわけですね。ですから、そこがやっぱり政治的にすごく難しいところだと思いますが、それを是非やらなければいけない。  それから、都市と地方との格差ということが言われてきて、これまでは、どっちかというと生産性の低い地方に重点的に公共投資をすることで格差を是正しようという、公共投資を所得再分配の手段のように使ってきた面があって、これはやはり間違っているんじゃないか、公共投資はあくまでもそれが民間投資をどういうふうに刺激するかという補完的な役割で進めないといけないと思います。  その意味で、是非先生方に御議論いただきたいのは、今の東京一極集中是正というのがあたかも当然のように議論されている。東京一極集中に、人が集まり過ぎるから問題だ、で、昔の工場等立地規制法のように、今回は大学の二十三区の規制ということが行われたわけですけれども、こういう規制によって日本経済を発展させるというのは不可能なわけです。  ですから、地方は地方で知恵を絞って頑張る、それも全体的に頑張るというのは無理ですから、地方の中核都市に集中して、福岡とか札幌とか仙台とか、そういう元気のいいところに人口とお金を集中して発展させるというようなことで、東京はやはりこれからもっと世界の主要都市と競争するために発展しなきゃいけない面もあるわけですので、国内と国際の両面を見て適切な社会資本投資の配分をするということが必要ではないかと思います。  以上です。

足立敏之自由民主党

○足立敏之君 お二人の先生から貴重な御意見、ありがとうございました。  八代先生の御指摘の、まあ恐らく地方を切り捨てるという意味ではないんだと思いますけれども、東京を強くして国際競争力を高める、そして私は、併せてやはり地方もしっかりインフラ基盤を整備をして、経済的にもある程度自立していくようなそういう地方にしていかなくちゃいけない、そんなふうに思っています。  そんな中で、公共投資の話を引き続きお聞きしたいと思いますけれども、予算、百十兆を超える予算の中で今公共投資というのは、先ほど片岡先生からお話がありました当初予算において六兆円ぐらいの規模でございますので、規模的には本当に六%切るような、そんな予算になってしまっています。もう少し、今言われたようなインフラ投資というのは改めてしっかり日本も再構築していって、老朽化対策のみならず、やはり世界にもう既に負けてしまっている、例えば高速道路ネットワークだとか鉄道だとか港湾だとか空港だとか、こういった交通物流ネットワークをしっかり整える、再構築していくというような、インフラ整備をしっかりやっぱりやり直さなくちゃいけないというふうに思います。  いろんな国に行って、日本のインフラ投資、公共事業、これじゃ駄目だなって多分先生方も皆さん思っていらっしゃると思うんです。私もこの間シンガポールに行きまして、もう日本はもう全然付いていけないぐらいひどい状態になってしまっているなって痛感したんですけれども、そういったところを、やっぱりしっかり将来のことを考えて立て直していく必要があるというふうに思います。  残り時間限られていますので、申し訳ありませんが、片岡先生の方からお話を聞かせていただければというふうに思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) どうもありがとうございます。  私自身も、日本国内のインフラというのがやはり他国と比べて見劣りするんじゃないかという思いは海外に行くと非常に強く思っております。  特に、そのインフラ整備ということについて是非先生方に考えていただきたいのは、足下の予算の手当てですね。例えば六兆円というお話がございましたけれども、これが財政上非常にこれ以上出すのは厳しいなというふうにお考えの部分もあるかもしれませんけれども、公共投資というのは将来的に国民のメリットにもなるということですよね。生産性を高めたりとか、ないしは事業をするために必要な道路とか、そういったものというのは、今の支出であるんだけれども、将来はそれが経済成長という形でお釣りとして戻ってくると。そこの部分をやっぱりよく考えていただいて判断していただくことが大事なんだと思います。

足立敏之自由民主党

○足立敏之君 大変貴重な御意見、ありがとうございました。以上で終わります。

村田享子立憲民主・社民

○村田享子君 おはようございます。立憲民主・社民の村田享子です。  今日は、両先生方、貴重な話、どうもありがとうございます。  まず、片岡公述人にお聞きをいたします。  先生の五ページ目の資料の中にも、経済成長なしの財政健全化、そして防衛費拡大は亡国への道である、そういった記述がございました。この防衛費につきましては、今、岸田総理の方からは、このGDP二%にする財源、それを、一兆円を増税で賄うということで、法人税、たばこ税、また復興特別所得税の流用といった話が出ております。また、この増税について今国民が納得している状況とは言えませんし、また、先ほどの先生の資料の中にも、消費税の増税がやっぱり消費が落ち込んだ要因であったといった御指摘もございました。  また、私、元々物づくり、製造業の労働組合の出身でございまして、今まさに春闘が行われているわけなんですけれども、やっぱりその中でも法人税の増税というのはやっぱり労使交渉に影響を与えているというふうにお聞きをしております。  今回の防衛費についての増税について片岡公述人の御見解と、これから所得拡大が課題だという意味で今回の春闘どのように受け止めていらっしゃるか、この二点について教えてください。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。  防衛費の件についてお答えしたいと思います。  名目GDP比で二%にするというのは、これは私自身、諸外国と比べてもやはりもう一%というのは少ない水準だったわけですから、諸外国並みの水準にするということは望ましいんだというふうに理解をしています。  ただ、名目GDPが伸びない状態で二%をしても、一旦は一%から倍に増えるかもしれませんが、それ以降は全く増えない状況になります。そうなりますと、今、台湾情勢等々で非常に諸外国からのプレッシャーというものが意識されている中、結果的に支出が伸びないという話になりますと、更に名目GDP比三%、四%という形で国民に過大な負担を課すということにもつながるわけですよね。  ですから、何が言いたいかといいますと、成長なくしてこういった防衛費の拡大という話も持続不可能であると、こういうことが重要なんだと思います。ですから、成長と財政的な負担というものを両立させていくということが大事だというふうに思っています。  それから、二点目の御質問なんですが、済みません、もう一度お願いしてもよろしいですか。

村田享子立憲民主・社民

○村田享子君 先生、もう一度お尋ねします。  今、春闘が行われている時期ということで、今の春闘への受け止めをお願いします。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 分かりました。ありがとうございます。  春闘の件なんですが、インフレ率が高まる中で、かつてないほど賃上げの力というか圧力というものが加わってきているように思います。  例えば、皆様方も報道等でよく御案内かもしれませんけれども、大企業の一部では五%、六%、ないしは一〇%というような賃上げを行う会社さんも出ていっています。こうした話というのはこれまでなかった動きですし、その中で中小企業も大企業の動きに引きずられるような形で賃上げをしていくという流れが出てきています。  こうしたものは、私自身、先ほど八代先生の方からアベノミクスは効果がなかったという議論があるという話がありましたが、私自身はアベノミクス効果があると思っているんですけれども、じわじわと、特に雇用の面を中心に労働需要を刺激し続けることで賃上げの圧力、コストプッシュの圧力というものが企業に掛かっていると。こういったものが今限界を迎えてきているんだと思うんですね。  売上げを立てるためには売値を上げないといけない、そのためにいい人を雇うためには当然ながら賃金を上げなければいけない、こういう流れというのがだんだん本格化してきているというふうに見えますので、この流れが続いていくということを非常に期待しているという次第であります。  ありがとうございます。

村田享子立憲民主・社民

○村田享子君 片岡先生、どうもありがとうございました。  続きまして、八代公述人にお聞きをいたします。  今、片岡公述人の方からも、いい人を雇うためには賃上げをしないといけないということで、ここについては、岸田総理、新しい資本主義というのを掲げて、リスキリング、日本型職務給の確立、そして成長分野への労働移動といったことで構造的な賃上げを実現しようとしておりますけれども、ずっと制度・規制改革、労働市場改革に携われてこられた八代先生から見られて、この新しい資本主義であったりこの構造的な賃上げで本当に日本の賃金が持続的に上がっていくのか、これについての先生の御見解をお聞かせください。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  その前に一言。  私は、アベノミクスが失敗したとは言っておりません。アベノミクスは、最初の大幅な円高を是正して日本経済を立ち直させるために非常に大きな影響を及ぼしたわけで、その点では成功していると。ただ、肝腎の三本の矢が十分に実現できなかったので、言わば一段目、二段目のロケットは噴射したけど、三段目が失速してしまったということで、これを継続するのがやはり今の政府に是非求められることだと思います。  その上で、難しいのはやはり、今の新しい資本主義ということですが、一番大事なのはやっぱりいかにして継続的な成長を実現できるか。そのためには生産性を上げていかなきゃいけない。生産性が上がって初めて賃上げも実現するわけですね。  ですから、今労働組合が賃上げを求めているというのは私は大事なことだと思いますが、画一的な賃上げはやっぱり好ましくないんじゃないか。特に、春闘においては、ベアと定昇という区別があるわけですが、ベアの方は幾ら上げても問題ないと思いますが、定期昇給を強く要求されるとこれは年功賃金をそのまま維持することになって、連合の特に若い組合員の立場を考えて中高年の方は少し我慢するというような、そのめり張りの利いた賃上げというのが重要になってくるんじゃないか。  それから、今一部の企業でやっていますが、ベアの中身を一律にするんじゃなくて、ちゃんと能力主義に応じた労働者の中の再配分をすると、こういうことにやっぱり組合の方も協力していただきたいと思います。  それから、先ほども言いましたように、教育投資、これは政府だけじゃなくて企業の中でもできる部分が多いわけですので、労働者の能力を上げて、より高い賃金を上げていくということが大事ではないかと思います。  ですから、その意味で、日本の労働市場のいいところは、やっぱり企業と労働組合が欧米のように対立するんじゃなくて、ちゃんと協調してやっていけるという点は重要なわけですが、そのときに、正規だけじゃなくて非正規社員との賃金格差の是正についても組合の方も考えていただく。そのためには、例えば今の正規社員の方もある程度歩み寄りが必要じゃないか。  例えば、今一部で行われている限定正社員ですね。雇用は守られるけれども、今の、現在の普通の正社員のように長時間労働あるいは頻繁な転勤、そういうことは何でも受け入れなきゃいけないという働き方じゃなくて、ある程度職種や転勤を抑制するというような限定した働き方の正社員というものをつくろうという動きが厚労省であるんですが、どうしてもやはり組合の方は心配されて余り賛成をされないわけですが。  これはやはり、特に女性の働き方において転勤というのが一番の障害なわけですね、夫か妻かどっちかが転勤すると家庭が崩壊してしまうと。だから、転勤なしの雇用保障というのをやっぱり組合としてもやはり追求していただければ有り難いと思います。  以上でございます。

村田享子立憲民主・社民

○村田享子君 先生、どうもありがとうございます。  確かに、共働きの世帯が増えてきて女性も働くことが当たり前になってきた中で、やっぱり多様な働き方というのは私も必要だというふうに思います。  最後、一問、片岡先生にお尋ねします。  同じく資料の先ほどの五ページのところで、やっぱり本予算と補正予算の位置付けを明確にといった先生の御提案がありました。  昨年の補正予算におきましても、新たな基金の造成であったり、また巨額な予備費を積むということがちょっとよく見られるなというふうに感じておりますけれども、こういったところにつきまして先生の御見解をお聞きしたいと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。  本予算と補正予算の使い分けの話なんですけれども、昨今、私自身統計を見ておりますと、本予算の中で、歳出圧力を避けようとする余りに、必要な支出というものをあえて立てずに、それをその本予算に回すという事例が散見されるようにちょっとお見受けします。  これは、先ほど委員御指摘されていた予備費を積んだりとか、そういった話もございますし、それから補正予算の中で、十年、二十年ぐらいの中長期的な効果をもたらす支出といった話も補正予算に積まれていると。ですから、こういったものはある意味是正する必要があるのではないかというふうに考えています。

村田享子立憲民主・社民

○村田享子君 今日はどうも貴重なお話ありがとうございました。以上で終わります。

若松謙維公明党

○若松謙維君 公明党の若松謙維です。  片岡委員、八代委員、今日はありがとうございます。  まず、片岡委員にお伺いいたします。  私も、「正論」ですか、読ませていただきましたが、本当にリフレ派、そして国債償還、予算計上不要、借換えで対応可能と、非常にすっきりとした分かりやすい議論なんですが、どうしても、私も会計士なんで、どうしてもリスクというのを考えてしまいます。  特に私は、いわゆる世界恐慌というんですか、三つあると思って、まず一つ目は、御存じの一九三〇年代の世界恐慌、いわゆる貿易信用収縮ですね。二度目が、二〇〇七年から一〇年までのリーマン・ショックの世界金融危機、いわゆる金融信用収縮と。三回目が、いわゆる先進国の国債、いわゆる国債発行の拡大による信用収縮リスク。これが現在の例えばIMFとかG7とかG20、財務、中央銀行の対応等でリスクが回避できるのか。そこら辺はどういうふうに先生お考えでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。  先ほど私の記事を御紹介いただきまして、誠にありがとうございます。  国債の金利上昇のお話だというふうに理解をしておりますけれども、資料の方にも書かせていただいたとおり、これはインフレ期とデフレ期で考え方が随分違うんじゃないかというふうに思います。  デフレ期の状況ですと、中央銀行もそうですが、むしろ金利が上がるというよりは金利が世界経済ないしは経済の先行きに応じて下がってしまうと。これはデフレの影響もあると思うんですが、そういう中でどのように経済を再生化していくのかというのが課題になるわけですね。こういう状況ですと、財政を支出をかなり増やしたとしてもなかなか金利が上がらないという状況で、むしろ経済を活性化して金利を上げられるような形で正常化するということがポイントになります。  インフレの状況ですと話は逆になりまして、むしろ金利はプラスで上がりますので、こういったときには過度な財政支出というのは控えるべきであるということであります。  日本の問題というのは、デフレ期なのに過度に財政支出を心配し過ぎているということに私自身はあるんじゃないかなと、こういうふうに考えております。  以上です。

若松謙維公明党

○若松謙維君 多少心配しているのが強い私の質問になるんですけど。  いわゆる日本の政府の資金繰りというんですか、全てキャッシュフローで動いていますから、そうすると、今のところはまさにアベノミクスで中央銀行の国債購入、さらに植田新総裁ですか、日銀、替わりますけれども、いわゆるこういう流れの中で、今御存じのように経常収支がかなり厳しくなっていると。それをカバーするように、過去には三百兆円ぐらいあるんですか、海外投資のいわゆる配当とか利子ですね、こういうリターンによって何とか日本のキャッシュフローはもっているけれども、先ほどのこの日本の生産性なり、やっぱり為替が弱いというのは日本経済のファンダメンタルでしょうし、そういったリスクというのは乗り越えなくちゃいけないんですけど、かなりそういうものがあると思うんです。  そのリスクについては先生はどういうふうにお考えなのか。いわゆる日本発の、先ほどの世界、まあ国債信用収縮ですか、起きるかどうか、それについてはどのようにお考えですか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問の件にお答えしたいと思います。  結論から申し上げると、現状ではそのような危機的な状況を心配する必要はないのかなと思います。ただ、日本の財政状況自体は、これは二十年超の経済停滞の結果として起こっている事態でありますので、ですからこれを改善に向かわしめるためには相応の時間が掛かるということがまず重要なんだと思います。  その中で、経済成長を進めつつ、まずはデフレから完全に脱却すること。そこの中で、デフレから脱却した状況を維持しながら、増税、歳出カットを含めた財政健全化の方策というのを考え、実行していくと。これを長期にわたってしっかり行っていくということが問題解決には必要なのかなというふうに理解しています。

若松謙維公明党

○若松謙維君 そうしますと、片岡委員、そうすると、いわゆる現在の、あのアベノミクスをベースに引き継いで、今、岸田政権としていわゆるDX、GX、働き方改革、そして異次元の子育て政策と、こういう形の方向性、それは恐らく間違っていない、だけど大きな課題、そこはどういうふうに総括されていますか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) ありがとうございます。  政策という意味では、私自身は基本的な発想というのは間違えていないと思うんですけれども、個人的には、日本の企業の生産性というものをどうやって高めていくかというのがこれからの課題なんだと思います。  ですから、規制緩和とかそういった形で政府が市場機能を改善するための方策を講じることも重要ですし、それから、インフレが高まりつつある状況の中で、企業として新しいサービス、製品というものを値段を上げることを通じて消費者の方にいかに受容してもらうのか、そうした形で、働き方ということも含めて、どういう生産性を高める方策をやっていくのかというところがこれからの日本の課題なのかなというふうに感じています。

若松謙維公明党

○若松謙維君 ありがとうございます。  それでは、八代委員にお尋ねをいたします。  私もマネーという記事を読ませていただきました。いわゆるこの企業の賃金体系、日本型職務給導入を政府が直接指導は本末転倒だと、大変これ厳しい御指摘なんですけれども、今度、三月十五日に八年ぶりの政労使会議が行われますね。この会議はどのような会議とすることが望ましいのか、もし先生のお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  今の労働市場の問題というのは、やっぱり企業ができることとできないことというのがあるわけでして、企業の方も一生懸命改革には取り組んでいるわけですね。だけど、先生が先ほど言われたような私の記事は、政府がこういう職務給制度が望ましいからこれを企業にやれというようなことを押し付ける、これは私は社会主義だと思うんですよね。政府がやるべきことは最低賃金を決めると、これはもう当然政府の役割ですが、それを上回る普通の賃金体系というのはやっぱり労使で決めるものであって、それがなかなか進まないから政府の言うことを聞けというのは本末転倒だと思います。  そもそも、政府がどれだけ、何というか、そういう企業の中の賃金体系についての知識があるのか、できるのか。ですから、やっぱりそこは、政府は政府、民間は民間で、お互いの役割分担をきちっと考える必要があるんじゃないか。  私は、よくそれについては、サッカーの試合を考えたときに、選手は自由にプレーするようにすると、で、審判は選手の不正なことをやめさせるということであって、審判が特定の選手をえこひいきしたり、あるいは選手に対して、おまえたちは下手だから審判が見本を示してやるとゴールキックをするとか、そういうようなことは断じてするべきじゃないんですが、とかく日本の政府は、何か民間不信といいますか、民間に任せておくとろくなことがないから政府を指導するという、かつての産業政策のような思想がまた首をもたげているということを懸念しているわけですね。  ですから、政労使の会議においても、あくまで政府は審判の立場に立って、労使がきちっと決めることを尊重していくというのが何より大事ではないかと思います。  以上です。

若松謙維公明党

○若松謙維君 ちょっと私、政府の立場、ちょっと弁解するわけじゃないんですけど、まあ、どちらかというとデフレ、もちろん日本政府のいろんな対応のミスもあると思います。しかし、やはり本当に労使が向き合ってこなかったという現実もあると思います。そこを後押しするのが、今おっしゃったように政労使の会議の大きな目的かなと、それはもう理解できます。  その上で、特に企業のある意味内部留保が大きくなっている、いわゆる投資の不足、また、社員の皆さんのそれぞれの、何というんですかね、いわゆる子育て優先ということをなかなか勇気を持って言えない、そんなところをやっぱり議論しなくちゃいけないんですけれども。  そこで、先ほど異次元の少子化対策、お話ございました。二〇一九年にも消費税上げさせていただきました。現実には、そこからやはり子育て政策頑張ると、そういう機運になってきたこともありまして、その上で、子供保険がいいのか、いわゆる消費型の消費税がいいのか、恐らく財源の問題だと思うんですけど、やはりこの少子化対策は非常に重要なので、そこに対しての財源、そこはやっぱり知恵の出し方であって、こうじゃなくちゃいけないという問題よりも、どうやって国民の皆さん理解をして負担していくか、そういう議論だと思いますが、どんなふうにお考えでしょうか。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  まさにこれからの少子化対策を考えるためには国民にもやっぱり一定の負担は必要だと思いますが、そのときに、やはり私は、目的税方式といいますか、まあ社会保険も一種の目的税なんですが、このためにこれだけの負担をしてくださいというのが明確にした方が、国民の、何というか、同意は得られやすいんじゃないかというふうに思っているわけですね。  ですから、子供のためにこれだけのお金をお願いします。それから、同じことはやっぱり今既に介護保険という形でそういうことは実現していて、これは幅広く受け入れられているわけですね。介護保険ができたおかげで高齢者の介護というのが非常に今はスムーズにいっている。同じことを是非子供保険についてもやりたい、やってほしいと。そうでないと、なかなか今のように、例えば専業主婦は保育所をなかなか使えない、働く女性の場合もフルタイムならば優先だけどパートタイムは駄目とか、そういう福祉の論理というか、選別の論理というのを子育て政策ではやめていただきたいと。子供を育てるあらゆる家庭に対して支援を、しかも、できれば現金ではなくて、そういう物的といいますか、サービスの支援をできるような仕組みをつくっていく必要があるんじゃないかと思っております。

若松謙維公明党

○若松謙維君 貴重な意見、ありがとうございました。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 日本維新の会の片山大介です。  今日は、両先生、どうもありがとうございました。  まず私が聞きたいのは、労働生産性と実質賃金との関係です。  賃金上げる前提として、やっぱり生産性上げなきゃいけない、これよく言われている話ですが、これ、ある研究者のデータ、調べたデータだと、日本はEUやアメリカに比べて、その生産性が上がってもそれに伴う形で賃金の伸びが起きていないという、乖離が起きていると、これが日本の一つの特徴になっているというんですけれども、ここについて、なぜこうなっているのか、そこをどうしたらいいのか、お伺いできたらと思いますが。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問にお答えしたいと思います。  先ほど片山先生がおっしゃっていた疑問に加えて申し上げると、物価が上がっても賃金がなかなか上がらないというのがこの日本の特徴でもございまして、まあいろんな見方があると思うんですけれども、私自身は、やはりデフレを続けていたということがなかなかその労働生産性に見合う賃金水準ですらも達成できないというところに大きく寄与しているんじゃないかと。  特にサービス業に関していきますと、過去二十年超、価格を変えていないと、いわゆるサービスの価格を上げていないと、そういうところがありますので、そうなりますと、賃金も当然全く上がらないと、こういう状況になります。  ですから、価格の変化を通じて経済を動かしていくというようなマインドに変わっていくということが、これは労使共に必要になるんじゃないかなと、こういうふうに思います。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  賃金を上げるためには生産性の上昇が必要だと言いながら、実際は生産性が上がっても賃金がちゃんと上がっていないじゃないかという御質問だと思いますが、これは、おっしゃるように、そういう指摘は大きいわけです。  これは、一つは、日本の場合はどうしても雇用安定を最優先するために、今賃金を上げたら雇用が将来大丈夫かという懸念を労働組合の方も持っておられるということがあるというふうにも聞いておりますが、やはりそれは、やっぱり付加価値に応じた賃金、その労働生産性が上がってもそれが価格に上昇を伴わなければ結局付加価値は上がらないわけですね、特にサービス業の場合なんかは。  ですから、やはりそういうサービス業なんかでもきちっとその付加価値を上げていく、つまり値上げをするということが大事だと思いますが、そのときに一つの障害になるのは公定価格の存在なんですね。例えば、今、介護が一番典型的な例なんですが、介護サービスというのは非常に不足しております。労働者が十分に集まらない、これは介護事業者の労働者の賃金が低いからなんですが。しかし、それを上げようと思っても介護報酬の壁にぶつかってしまう。ですから、政府が言わば介護サービスの値段を実質的に決めているわけなんですね。  私は、これはおかしいと思います。政府が決めていいのは、医療保険とか介護保険の方からどれだけのその報酬をその保険で見るかということはもちろん政府が決めていいんですが、それと市場価格が一致しなきゃいけないというのは私はやり過ぎだと思います。つまり、同じ介護サービスを受けていても、利用者がそれをより高く評価してくれる、事業者の創意工夫を基にですね、それであれば、事業者がそれに対してより高い価格を付けるということを認めるべきだと思いますね。  これはサービスの世界では当たり前で、質が良ければより高い価格を取るというのがサービスの常識なんですが、これが介護とか医療とか政府が関与している分野では全く利いていないわけです。これは、保険と保険外サービスの組合せ、選択的介護というような言葉で言われているんですが、これが実は部分的にしか認められないということも一つの大きな要素じゃないか。  ですから、価格というのはできる限り自由にすべきであると、その上で生産性の上昇に応じた価格付けを実現していくということが大事じゃないかと思っております。  以上です。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 ありがとうございます。  それで、その次に、非正社員とその賃金の関係をやっぱりちょっと聞きたいんですけれども、日本の場合は、非正社員の割合が大体四割弱、女性に限っては六割になっていますね。  それで、先ほど片岡先生がこれデータもちょっと少し出していただきましたけれども、やはりここをちょっと見直ししていく必要があるんじゃないか。それで、八代先生は、先ほど同一労働同一賃金とおっしゃったんですけど、やっぱりガイドラインがあるがゆえにやっぱり形骸化している問題もある。かつて、安倍さんのときは非正規という言葉なくすと言ったけど、やっぱり実際としてはなくなってない、かなりの数がいる。  ここはどのようにしていけばいいのかというふうにお考えか。これもやっぱりお二人から、じゃ、お願いしたいと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。  非正規雇用の方の問題という話だと思うんですけれども、二〇一三年以降、先ほどの資料でもお示ししたように、非正規雇用として働く方の理由付けというものが若干変質してきているという部分というのは見逃してはいけない変化だというふうに私自身は思っています。  ですから、従来は、例えば男性の場合、女性の場合、共に正規職業に就けないから非正規で働かざるを得なかったという方が、まあ今もいらっしゃるわけですけれども、足下ではそういった方の比重が減って、むしろ自由に時間を使って仕事をしたいと。これは、例えば男性の場合ですと、今非正規社員の方、一番多い年齢層というのが六十五歳以上なわけですけれども、女性の場合ですと四十五から五十四歳の層だと思うんですが、要は、一回正規社員という形でお仕事をされた中で引退をされて、そのスキルを生かそうという形で非正規社員になっている方が男性では多くなっているし、女性の場合ですと主婦業をされてからという形で働いている方が多いと。  こういう方たちが今多くを占めてきている中で、おっしゃるように、その賃金どうこうみたいな話については、その正規社員との比較でちょっと低いみたいな部分というのはあると思うんですけれども、これは制度的にも問題な部分はあると思うんですが、私自身は、基本的には、労働需要が大きく強まって労働者の地位が上がらなければ、やはりこの正規、非正規の賃金格差みたいなものというのはなかなかなくなっていかないんじゃないかなというふうに思います。  ですから、むしろもっと経済状況、いわゆる労働需要を高めて労働者の地位を上げていく、こういうことが制度整備に加えて必要なんじゃないかなと、こういうふうに思っています。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  この正規、非正規の問題というのは非常に労働市場における大きな課題になっているわけですが、誤解がかなりある面があると思います。  例えば、今非正規社員が増えている一つの大きな要因は定年退職後の再雇用者。これは、再雇用者というのは非正規なんですね。つまり、正規社員というのは定年までの雇用を保障するという定義なわけですから、定年後にはもう当然正規社員というのはあり得ないわけですので、この方たちが随分増えてきている。これは悪いことなのかというと、そうではないわけですよね。これは、高年齢者雇用安定法ということからきているわけなんですが、これ自身には実はそこまで政府が企業に強制していいのかという問題はありますが、現にそういう法律があることによって高齢者の非正規が大幅に増えているという現実が一つあります。  それから、それ以外の分野については、やはり先ほど申し上げましたように、正規社員の働き方が余りにも硬直的であって、過去の高い成長期のままでやっている。ですから、企業は低成長の下でも雇用を保障しなければいけない正規社員の数はどうしても制限せざるを得ない。減らしてはいないわけですよ。日本全体で見ましても、正社員の数は横ばいになっている、低成長の下では。だけど、増やすことはできないわけです。ですから、やはり先ほども言いましたように、正社員の働き方も変えていく。限定正社員という形で、今のような働き方を限定しない正社員というのは世界にはないわけで、こういう働き方をやめて、正規と非正規の格差というか、働き方の違いを縮めていくと、それによって賃金格差も縮めていく。  それからもう一つは、企業の立証責任というのがありまして、非正規社員でも正規社員とほとんど同じ仕事をしている人たちがいる、それでも実は賃金格差が非常に大きいと。こういうときは、企業の方になぜその賃金格差があるかということを立証する義務が例えばアメリカなんかあるわけですね。だから、アメリカで、例えば労働者が差別されていると思ったら裁判所に訴える。そうすると、企業は差別していないということを立証しなければいけない。これは、今回の同一労働同一賃金の議論でも出てきたんですが、最後に潰れてしまったわけです。  やっぱりこの企業の立証責任というのを私はきちっと義務付ける。それによって、その意味のないというか、間違った、根拠のない正規と非正規の格差というのを企業はなくさなければいけないという方向に企業の人事部の考え方を変えていただくというのが、私は一番の正規、非正規格差の是正に重要だと思っております。  以上です。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 終わります。ちょうど終わりましたので。先生からいただいた御意見、きちんと審議に生かしていきたいと思います。  ありがとうございました。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 おはようございます。国民民主党・新緑風会の礒崎哲史でございます。  今日は、二人の先生から本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。  私、元々民間企業で働いておりまして、組合の役員をやっておりまして、まさに今賃上げに関しては労使交渉をやっていた立場です。なので、ちょっと自分の反省も含めて今日は一部質問もさせていただきたいと思うんですが、やはり今賃金が上がっていないということが非常に問題になって、まさに我々国民民主党としては、今回を賃上げ国会と位置付けて、賃金が上がっていく機運をやはりつくっていくと、こういうことも我々としては訴えさせていただいております。  その中で、今日、片岡公述人の方から御説明いただいた資料の中で、図表の十三の中で、GDPの構造、ここの中で、輸出あるいは民間企業の設備投資、これについてはずっと上がってきたという資料。ただ、その中で、民間の消費ですね、最終消費が上がっていないと。まさにここが、戦後最長の好景気と言われながら、実感なき好景気と言われた原因、そして賃金が上がっていないということがまさにここに図表としても示されているんだというふうに理解をするんですけれども。  そこで、片岡公述人にお伺いしたいのは、やはり賃金が上がらなかった最大の要因は何だったのか、ここの点についてお話をいただければと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問にお答えしたいと思います。  私自身、賃金が上がらなかった最大の理由は、賃金を上げてこなかったからだと思います。  というのは、これは、十年超、二十年超、デフレを続ける中で、国民全体、企業全体、それから働いている方全体として、これまでと全く変化がない状態で同じ物を売り、同じ物を作りというような、そういうものが、流れがですね、経済としては常態化してしまったということが大きいんだと思うんですね。  ですから、例えば新製品を作ったり新しいサービスを提供しますということになると、ここに変化が生まれるわけです。変化が生まれるということは、新しいサービスには対価が付くわけですので値段が上がるということになるわけですけれども、実際問題、過去の日本を見ていきますと、売値を上げるという行為はほとんどなかったわけですね。売値が上がらなければ、当然企業としては利益がなかなか上がりませんので、賃金を上げたりとか、そういったような状況を変えていくという動きは生じないという話になります。  ですから、経済動向という意味でいきますと、こうしたデフレを長く続けていたということが賃金が上がらなくなってしまった最大の理由であるということです。  ですので、二〇一三年以降、物価はゼロでない状況になりましたが、ただ、賃上げまでなかなか動きが進んでいないのは、過去の停滞が非常に長いことで、変化がないということに国民の方も含めて慣れてしまったというところが大きいんじゃないかなと、こういうふうに思っています。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  もう一つ、今の点で、ちょっと確認という意味になりますけれども、そうすると、やはり一言で言うとマインドというのが一番大きかったのか。また、そこは私もすごく理解をしているところなんですが、マインド以外の制度上の何か問題点というので先生がお気付きの点があれば教えていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございました。  済みません、八代先生の方がお詳しいと思うのであれですが、私自身、やはり、何というんですか、労働市場をもっと円滑にするような、そういう仕組みづくりというのは考えてもよかったのかなという気はします。  ただ、これは労働需要、景気の動向次第の部分もございまして、景気が悪いところで非常な規制緩和を行うと逆効果になってしまうところもありますので、ですから、そういう意味では制度と経済動向のバランスが大事だというふうに理解しています。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  今、景気が悪いからなかなかできない、改革ができないということがあって、まあそれはそうだと思いますが、景気が良くなるともう改革しなくてもいいということになって、どっちにしてもできないということがこれまで続いてきたわけです。  ですから、やっぱり今議員のおっしゃった点について言えば、やっぱり新陳代謝ですね。やっぱり企業の中でも、若手からいろんないい意見が出てきてもなかなか、上の中高年の上司が潰してしまうというようなことも聞いているわけでして、やはりもっとその新陳代謝が進まなければいけない。これは昔もそうなんですが、日本経済が発展していたときは企業組織もどんどん拡大していきますから、年功賃金の下でも機会はあったわけですが、それが低成長の下になって非常に硬直化が進んでしまった、どうしても現状を維持するという方向に企業も政府も行ってしまったということです。  ここで、非常にこれは、何というか、批判を浴びるかもしれませんが、今解雇の紛争解決ということを厚労省で検討しているわけですね。これは、一定の金銭を払うことによって労働者と企業との契約を解消するというもので、一般には首切り自由にするというような誤解があるわけですよね。これは私は、大企業に注目しているからそういう議論が出るので、中小企業では既に首切り自由なんですよね。中小企業では、労働組合も強くないし、労働者も裁判に訴えるという余裕がほとんどありませんから、結果的に今の一か月分の給料というような解雇手当だけで解雇されてしまうわけです。  ですから、今の問題点は、私は厚労省の怠慢だと思いますが、解雇手当が低過ぎるんですよね。解雇規制が実は緩過ぎる。よくこれは財界の方も日本は解雇規制が厳し過ぎるから緩めるべきだと言われますが、それは間違っていて、労働基準法の解雇規制というのは解雇手当しかないんですよね。もちろん、育児休業中とか組合運動をしたから解雇というのは駄目だというのはそれぞれの法律であるんですが、原則はそれだけなんです。ですから、一か月では余りにもひどいということで労働者が裁判に訴えると、裁判官がかなりいろんな判断をして、場合によっては青天井の解雇補償金が出るケースがあるわけですね。したがって、非常にこれは労働者の間でも不公平な状況になっている。  私が思うのは、きちっと労働基準法を改正して解雇手当を大幅に引き上げる、ヨーロッパのような勤続年数に応じた解雇手当にする。今、一律なんですよね。それをベースにして、裁判官はその解雇手当の水準を個々の事情に応じて上げたり下げたりすればいいわけで、今全くの白紙の状態から裁判でやりますので非常に長い時間が掛かる。それで、裁判で解雇無効判決ができたら、実質的にはその後和解という形で金銭補償をするわけですよね。  ですから、そういう、そのところでやっぱり、そのきちっと裁判に訴えられる豊かな労働者と訴える余裕がない貧しい労働者の格差が余りにも大きいわけでして、ですから、そこをきちっと公平なルールにするというのが今厚労省で検討されている解雇の金銭補償の解決手段で、これができますと、随分労働市場のいろんな意味で流動化が進み、若手の人の意見も聞けるようになるんじゃないかと思っております。  以上でございます。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  やはり正しい認識といいますか、情報をしっかりと共有をしながら進めていくということが大変重要だと思いますし、大企業、中小企業、また業種も様々ありますので、それぞれに合わせて、多くの人たちが理解、納得できる制度づくりというのが大変重要だというふうに思います。ありがとうございます。  ちょっと時間がなくなってきていますので、ちょっと全く違う観点で片岡公述人にお伺いをしたいんですけれども、国民民主党、今の状況では引き続き積極財政を行って、景気回復を行って、そして物価上昇を更に上回る賃金上昇、この環境をまずつくることが第一というふうには考えています。  ただ、その一方で、やはり財政規律についても気にしなくてはいけないというふうには思っているんですけれども、限られた中でどうやって財源をしっかりと回していくかという観点で、今、我々、永久国債、一部、日銀の保有の国債の一部永久国債化ということを提案、一つの考え方として提案をさせていただいています。こうすることによって、政府としての債務、これを少し身軽にするという、ざっくり言うとこういう考え方ではありますけれども、この一部国債を永久国債化していくという考え方について御所見をいただければと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。お答えしたいと思います。  日銀が保有している国債の永久化という話なんですが、具体的にどれぐらいの金額を考えるかというところによっても対応は変わってくるのかなと思います。  現状は、御案内のとおり、大規模な金融緩和を続けている中で国債を日銀が買い取っているという状況でございますが、ただ、二%の物価安定目標を日銀が達成できたと、それから出口政策に踏み込んでいくというタイミングになりますと、今度は逆のことが起こってくるわけですね。ですから、これも現状ではどういう形で国債を売っていくのかというのは甚だ不明ですので、この場でなかなかお答えしづらい部分でありますが、そうした状況を踏まえて、どれぐらいの金額を永久国債化するのかということを議論としては考える必要があるんじゃないかなと、こういうふうに思っています。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 今日は大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。引き続き、予算委員会の中で、先生方からいただいた意見、しっかりと審議の中で生かしてまいりたいと思います。  今日はどうもありがとうございました。終わります。

山添拓日本共産党

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  公述人の皆さん、今日はありがとうございました。  まず、片岡公述人に伺います。  アベノミクスの第一の矢の異次元の金融緩和は、デフレ克服という掲げてきた目標の達成との関係では、まだそこには至っていないと思います。ただ、円安と株高を誘導し、大企業と富裕層が巨額の利益を得たという点では、これは狙いどおり進んできたのではないかというふうにも思います。  大企業の内部留保が五百兆円を超えて、資産五億円以上の超富裕層の純金融資産の保有額が百五兆円、二〇〇五年以降最多とされています。一方で、ワーキングプアが増加し、コロナと物価高、食料支援を求める人が後を絶たないと、こういう現状もあります。  超低金利政策が格差を拡大させる結果を生んできたということについて、どのようにお考えでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございます。  私自身は、今委員がおっしゃった意見というのは全く賛同できないものでございまして、というのは、その格差を拡大させたとおっしゃいますが、その理由付けというか、格差が拡大したというようなことを示している証拠というのはない状況じゃないかと思うんですよね。  例えば、ジニ係数というようなもの、指標で見ても格差が拡大しているというわけではございませんし、それから、アベノミクスの金融緩和というお話をおっしゃっていたと思うんですけれども、アベノミクスでは先ほどお話をしたように雇用が改善していると。雇用の改善というのは、これは豊かな方々だけではなくて、要は職を得ていない方が職を得られるようになったという話にもつながりますので、ですから、むしろ、上から云々というよりかは、職を得ていない方ないしは資産価格等々を通じた大企業とかそういったところ、両面に影響したんじゃないかと、こういうふうに見ております。

山添拓日本共産党

○山添拓君 私自身は、この間、多くの方が食料を求めて列を成しているという場も見ているものですから、そういう中で、一方で内部留保を積み上げる、あるいは金融資産の額を積み上げる、そういう状況があるということについて伺ったつもりでありました。  この間、日銀の総裁候補の植田氏なども国会の場で、超低金利政策が格差を拡大させる、そういう面があるということについてはお話しされていたものですから御意見を伺いましたが、ありがとうございました。  次に、片岡公述人、八代公述人、それぞれに伺いたいと思います。  賃金の問題が先ほども話題になっておりました。賃金が上がらない原因として、まあこれいろいろあるかと思うんですが、私もやはり非正規雇用の問題、それから男女の賃金格差の問題も背景としてはあるのではないかと思います。  先ほどの片岡公述人は、制度的な問題もあると、非正規の問題でですね、ということをおっしゃっていましたので、その辺り少し詳しくお聞かせいただければと思います。  また、八代公述人は限定正社員ということも触れておられました。確かに正社員にはなるわけですけれども、しかし、正社員となっても給料は非正規と同じ状況、最低賃金水準というケースも伺ったりしております。ですから、非正規雇用や非正規と同水準で働くような正社員、そういう低賃金の問題などについてお聞かせいただければと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございました。  先ほど私の発言について少し補足をさせていただきたいと思うんですけれども、私自身、金融緩和が、何というんですかね、格差を助長したというふうには考えていないんですけれども、他方で、格差を是正する必要はあるというのは当然そう思っています。  アベノミクス自体は、財政政策、金融政策、成長戦略を通じた成長を高めるパッケージですので、ここには社会保障ないしは所得再分配といった政策というのは含まれていないわけですよね。ですから、そういった意味では、その所得再分配というのは成長しつつやっていくということだと思うんですけれども、別途、所得再分配政策というのは充実させるべきだと思いますし、それはやる必要があるというふうには考えております。  お尋ねの件なんですけれども、非正規雇用等々、制度的な問題があるという話なんですが、これは、先ほど八代先生が指摘しておられた、その待遇の問題ですとか同一労働同一賃金とか、そういったお話であります。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  限定正社員というのは、別に賃金とは無関係であるわけで、非正社員並みの賃金では全然意味がないわけですね。あくまで正社員の賃金と雇用保障の下で、しかし、普通の正社員のように、企業の言うままにどこでも転勤する、長時間労働も当たり前というような状況を改善するという、あくまでも正社員の一部なわけですね。  むしろ、今、先ほど議員の言われた点の問題点は大企業と中小企業の格差であって、今の正規、非正規の問題はどっちかといえば大企業の問題であって、中小企業になってくると、そもそも正社員、非正社員の差は余りないわけです。だからこそ、流通業のようなどっちかといえば正社員の賃金も低いところでは、非正社員の組織化、組合化というのもかなり進んでいるわけだと思います。  ですから、問題はやはり、その大企業と中小企業の格差というときには、もっと労働の流動性を高めることによって移動を自由にできるようにするということが一つではないか。今は、一旦大企業に入ると、終身雇用の下で生産性に関わりなくどんどん賃金が上がっていく、中小企業や非正社員はそれほど上がらないという年功賃金の格差なわけですね。だから、年功賃金の是正ということはやっぱりこの面でも重要だと思います。  それから、男女の賃金格差なんですが、これは、例えば厚労省の資料なんかを見ますと、日本や韓国は非常に男女の賃金格差が大きいんですが、同時に勤続年数の男女格差も大きいんですよね。で、女性の勤続年数を国際比較すると、日本の女性の勤続年数は決して短くないんですよね。むしろ国際標準なわけで、男性の勤続年数が非常に長いために勤続年数の格差が生じて、それが逆に言うと、女性の管理職比率が低くなって男女の賃金格差を広げている、これは韓国も同じわけですけれども。  ですから、やはりここは日本的雇用慣行の中に男女間賃金格差を拡大させる大きな要因があるわけで、そういう意味では、日本的雇用慣行を見直していく、少なくとも法律によって保護するということはやめていくべきで、競争に任せて、ある企業はもう徹底した日本的雇用慣行をやる、別の企業はしない、どちらでもいいという形でやっていく必要があるんじゃないか。で、いろいろな労働法制を中立的な形にしていくというのが大事ではないかと思っております。  以上です。

山添拓日本共産党

○山添拓君 続いても、八代公述人に伺いたいと思います。  先ほどの意見の中で、政府がやるべきは最低賃金だという御発言がありました。それを上回る賃金については労使で協議していくべきだけれどもという御趣旨でしたが、その最低賃金について少し伺いたいと思うんですが、例えばEUでは、働く貧困層をなくすということで指令を出して、平均賃金の五割、六割というような最低賃金を定めるべきだと、そういう指令を出し、ドイツでは実際に千七百円という賃金額にしていったという経過があります。  日本の最低賃金の課題、また、もちろん中小企業でも上げられるようにするには、そのための一定の支援なり、何がしかの対応が必要かと思うんですけれども、最低賃金を引き上げることによって全体を底上げしていくことは、これはやはり必要なことだと思うんです。その辺りについて御意見を伺えますでしょうか。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。極めて重要な指摘だと思います。  最低賃金の引上げがやはり非常に大事で、しかも有効であるということは今の政府も分かっていて、随分最近は上がっているわけですね。ただ、おっしゃったEUとの比較という点では、一番大きな問題は、EUは職種別賃金なんですよね。ですから、元々同じ職種であれば、大企業、中小企業、それから正規、非正規の違いは元々ないわけでして、そうした中で最低賃金を普通の一般の労働者の何割にするというのは意味があるわけですが、日本のような年功賃金の体系の下で最低賃金を例えばその年功賃金の真ん中の半分にするというのは、これはやっぱりもたないんではないか。ですから、やはり今の日本的雇用慣行を変えていくという過程でそのEUのやり方も参考にしていくというのが筋ではないかと思っております。  以上です。

山添拓日本共産党

○山添拓君 御意見いただいてありがとうございました。今度の審議にも生かしていきたいと思います。  終わります。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 両名の公述人の皆さん、今日は本当にありがとうございます。  まず一番最初に、片岡公述人に基本的なことを聞きたいんですが、普通、一般の企業経営人というのは、借金をして投資をして、そしてそこで売り上げて利益を上げていくと。景気のいいときは当然そういった投資をしていくわけですけれども、先行き不安だとかいうと投資を控えますよね。当然、そういうときに政府がしっかりと投資をして、公共事業で上げていきながら国全体の景気を上げていくような形をやっていかなくちゃいけない。じゃ、政府が企業と同じに借金するといったら、当然国債を発行していくわけですね。で、この国債の償還についていろいろ議論があるんですけれども、片岡公述人の、この国債に関する考え方とその償還のルールだとかそういったところの意見をお聞きしたいと思います。  八代公述人には、消費税が導入されるときの議論で、私の記憶が正しければ、何か国民福祉税とかいうような言葉が出てきて、目的税化されるのかなとかいうイメージがあったんですね。で、今の消費税というものに対して、公述人が、高齢者も負担する年金目的消費税というような検討をしたらどうかというお話をお伺いしているんですけれども、今の消費税というのは社会保障に使われている税なのかという、ちょっとそこら辺の認識等を含めて御指導ください。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問ありがとうございました。  国債の扱いということだと思うんですけれども、委員御指摘のとおり、景気が悪い、ないしはそういった兆候があるという段階の下で政府は弾力的な財政政策を行っていくというのは、これは経済政策の要諦でございまして、そうしたようなことを通じながら経済活動を安定化するような形で推移するというのは非常に重要なポイントなんだと思います。  お話の、私の方の資料でもちょっと書かせていただいておりますけれども、債務償還費等々の扱いについてなんですが、私自身、諸外国の状況を見ますと、一般会計の中に債務償還費という形でお金を立てているという国は余りないというのが現状だと思います。  で、この債務償還費をなくしたところ、一般会計からですね、ただ、それが、じゃ、全く十七兆円のものがゼロになるというわけでは当然ないわけです。ですから、なくしたことで何かしら追加的な財源がそのことで発生するというわけではないというふうには思います。  ただ、一般会計の中でこうした十七兆ものお金が積まれている状況になりますと、歳出圧力がなかなか増やせないと、こういう制約の下では、ほかに例えば公共投資ですとかいろんな必要な支出があるにもかかわらず、歳出百兆円超、増やせないみたいな制約の下の中では、ほかに必要な支出があっても増やせないという事態に陥る可能性というのがあるんじゃないかと。  ですから、債務償還費というのはできれば外した中でしっかり歳出というものを考えていく必要があるんじゃないかというふうに私個人は考えている次第です。  それから、歳出に関して申し上げると、例えば近年の補正予算の中身を見ても、例えば経済効果という意味で四%超という数字が出てきておりますが、実際、蓋を開けてみますとほとんど効果がないという状況が散見されております。これはどうしてなのかといいますと、本来であれば、景気に対して直接的に影響しない予備費ですとか、ないしは数十年後以降に使われるべきお金というものが補正予算に計上されていて、それが全体のパッケージとして幾らという形で示されているということに問題があると思うんですね。  ですから、財政健全化を気にされるのであれば、やはりその支出の中身というものをしっかり考えていただく必要があると。それから、目的に応じてその支出というものをしていただく必要があるんじゃないかと。特に補正予算の場合は、景気の安定化のためにメインで対策を行うということが主題でありますので、やはりそうした歳出に限るような形で支出をするというのが正しい姿なんじゃないかと、こういうふうに感じております。  以上です。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  今の社会保障のために消費税を使うというのは、建前はそうなんですが、必ずしも一対一の関係にはないわけですね。私が申し上げましたのは、これは私個人の意見というより、かつて福田内閣のときに社会保障国民会議というのがあって、そこの答申の中に、今の基礎年金、まあ国民年金と同じですけれども、これをやめて、代わりに目的消費税を導入すると、基礎年金目的消費税、それは三・五%だという試算までできているわけですね。これは増税ではないわけです。なぜならば、これまで真面目にきちっと基礎年金の保険料を払っていた人にとっては損得なし。  ただ、今の国民年金というのは、厚労省は六割納付されていると言っていますが、これは私はかなり問題であって、免除者をどんどん増やす形で納付率を上げているわけで、実際の納付率というのは四割をコンスタントに維持しているわけですね。だから、六割の人は払ってないわけです。でして、その部分の穴埋めは結局サラリーマンの厚生年金から行っているという、非常に不透明で不公正な状況になっているわけです。  ですから、この国民年金の財源を目的消費税という形で国民からいただく、その代わり保険料をなくす、これはサラリーマンの年金からも同額なくす。これは極めて合理的であり、かつ、別途、女性の年金権なんかも非常に複雑になっているのをこれによって解決できる。  今、女性の年金というのは、学校を出て働くと第二号になり、結婚して専業主婦になると第三号になり、夫が脱サラして自営業になると第一号になると。そんなことはほとんどの人が知らないので、手続を忘れて無年金者になるという問題があるわけです。この目的消費税方式だと六十五歳になったら四十年間日本にいるということだけを証明すればいいわけで、これはもう簡単にできるわけで、そういう意味でも極めて効率的な案だったんですが、残念ながら潰されてしまったわけです。  ですから、こういうような形で、やはり国民の負担感を少しでも減らすためには、年金目的消費税、場合によっては医療目的消費税というふうに細かく消費税を分けて、それで、もっと年金を充実しろというんだったらそれに応じて消費税を何ポイント上げる、もっと医療の充実が必要だといったら医療目的消費税を上げるという形で、給付と負担をきちっとリンクすることによって、福祉は必要だ、増税は嫌だという、言わばそういう、何というか、破綻した議論を封じ込めるという意味で非常に重要な役割を持つんじゃないかと思っております。  以上です。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 八代公述人、ありがとうございます。  私も、もう目的をはっきりして、納得して国民の皆さんが納めることのできるような消費税とかいう部分で、まあ名前は、消費税という名前はちょっとあれなんですが、そういうことが必要だというふうに理解をしております。ありがとうございます。  片岡公述人にお伺いしますが、実際、この国債六十年償還ルールといって借換債でどんどんどんどん返していると。それをどうしても一般会計の中に入れていくと、そういう抑制されるという部分があるので、本当それは外すべきだと思うんですね。  今回、インボイスが議論されていますけど、インボイスというのは、私個人的な考え方は、国民総背番号じゃないですが、企業総背番号、企業のマイナンバー版だという理解なんですけど、このインボイスは必要かどうかというと、先生、お考えはどんな感じでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問どうもありがとうございます。  消費税のインボイス制についてなんですけれども、私自身は原則としては必要なんだと思うんですね。それはどうしてかといいますと、結局、今、インボイス制導入前はみなしの状態でその消費税の負担というものが計算されていた部分があるわけですが、そうしたものの実態というのをしっかり明らかにして、負担に応じた形で負担を、消費税を負担していただくというところは原則として重要だと思います。  ただ、これを実際、じゃ、どうやってやっていくのかという話についてはまだ議論の余地があるような気がしておりまして、やはりこの辺り、もう少しいろんな制度的な要件ないしは日本の現状を踏まえた上で検討していく必要があるのかなというふうには個人的に感じております。  以上です。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 私の理解は、消費税を導入するときに、中小零細、個人事業主にはこういった益税、益税という言葉は良くないですよね、こういう制度で、皆さん、導入に賛成してくださいと。で、大企業には輸出戻し税だったりとか研究開発税制だとかいうものを導入して理解を得たと。じゃ、こっちの中小零細、個人事業主の部分をもう締めていくんであれば、もう大企業のそういった恩恵もなくしていけという、そういう発想なんですが、どうでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 投資目的税みたいな部分につきましては、これは私個人は、原則として、そうした特別的な減税策を講じるというよりかは法人税を減税するとかそういった形で、その特定の会社さんのみに恩恵が及ぶような形でない税制を目指すべきだというのが基本的な考え方だと、こういうふうに理解しています。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 終わります。ありがとうございました。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 浜田聡でございます。  お二人の公述人の先生方、本日はどうもありがとうございました。  早速、片岡公述人にお聞きしていきたいと思います。日銀の審議委員として大変お疲れさまだったと思います。  私の問題意識としては、日本が経済成長するために大きな問題の一つは、国民負担率四八%というのは高過ぎるんではないかなという、そういう問題意識はあります。先生は日銀で金融政策担当されたわけですが、一方で財政政策に関しても多分いろいろと言いたいことがあったのではないかと思います。  で、私の質問としては、今後、日本、特に消費税どうあるべきか。税率、具体的な税率など教えていただければと思います。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問どうもありがとうございました。  国民負担率の議論がございましたけれども、私自身、日本の現状といいますのは、所得がほとんど増えない状況で国民負担率が四七、八%と、こういう状況ですので、これは過大ではないかという理解をしています。  ですから、そういう意味では負担を下げていく必要があると思うんですけれども、金融政策という意味で申し上げれば、やはりそのためにはデフレから完全にしっかり脱却をして、賃金が増える、所得が増えると、こういう状況をまずつくっていくということが重要なんじゃないかというふうに思います。で、その上に立って、消費税を含む税率の負担というものを考えていく必要があるのかなというふうに理解しています。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  引き続き、片岡参考人にお聞きしたいんですけれど、金融緩和をアベノミクスの下進めて、私はしっかりと効果があったと思いますし、財政政策が、消費税増税が足を引っ張ったとも思っております。  ただ、この金融緩和なんですけれど、やっぱり物価の安定的上昇が軌道に乗るまではという表現が正しいのかどうか分かりませんが、ある程度続ける必要があるとも思いますが、今後どのくらいの期間続けるべきだと考えていますでしょうか。

片岡剛士PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミスト

○公述人(片岡剛士君) 御質問どうもありがとうございます。  金融緩和、現状のものをどれぐらい続けるべきなのかということなんですが、一つのメルクマールとして、やはり二%の物価安定目標を日銀が達成できたというふうにまず判断することというのが大事だと思います。  現状は、来年、再来年度以降、物価が徐々に下がっていくという中で、二%の目標が達成できないというふうに日銀としては判断されておられると思うんですけれども、そういう状況であれば、現状の金融政策を転換するというのは難しい。  そして、持続的という話が日銀の中では目標としては掲げられているんですけれども、これはどういうことを意味するかというと、賃金が安定的に上がっていく状況をつくり出すということなんだと思うんですね。ですから、現行のようにコストプッシュ的な要素を幾分含んだ物価上昇ではなく、所得が増える形の中で、ディマンドプルですね、需要が増える形で物価が上がっていくと。こういう状況がしっかり観察できて、それが多少のことで崩れない、そういう状況になるというのが、これが必要条件なんだというふうに思います。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  それでは、八代公述人にお聞きしていきたいと思います。  私、昨年から予算委員会に出席させていただいて、岸田総理が雇用の流動性という言葉を使っておられるのが非常に印象的だったわけでございます。私も、やはり雇用の流動性、非常に重要だと思います。  先ほど礒崎委員のやり取りで、日本の解雇規制に関するお話がありました。改めて、日本の解雇規制の在り方について今後どうすべきかということをお聞かせいただきたいんですけれど、解雇を考える際に、例えば金銭解雇をする際にも、これ大企業と中小企業で結構事情が変わってくるんじゃないかなと思いますので、その点を踏まえた今後の解雇規制の在り方について教えていただければと思います。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 御質問ありがとうございました。  雇用の流動性というのはいろんな意味があるわけですけれども、少なくとも私は、労働者が一旦会社に入った後も自由に別の会社に移れるようにするということが大事ではないかと思います。これは、例えば東京とカリフォルニアのロサンゼルスかどこかの労働者の意識調査を比較した研究があるわけですが、アメリカの労働者の方が幸福度が高い、現状の職場に満足度の高い人の方がはるかに多いという結果が出ていると。これはなぜなのかというと、アメリカの労働者の場合は今の職場に不満があれば自由に移れるわけなんですが、日本の会社では、移ることはもちろんできるんですが、移ると結果的に年功賃金の下で損をしてしまうという形で、今の会社に閉じ込められてしまっているという状況があるんじゃないかと。  ですから、年功賃金というのは、一見すると労働者にとってメリットがある仕組みなわけですけれども、同時に、企業から見ると、企業内訓練をした労働者を企業の中に閉じ込める仕組みでもあるわけなんですね。それが、幾ら閉じ込められても過去の高い成長期のように企業の組織がどんどん発展していけば労働者にとってのメリットは大きいわけですが、ほとんど企業が成長もしない低成長の時代に、企業の中に閉じ込められてどんどん働かされる。長時間労働を幾らしても、それが将来の昇進に結び付けばいいわけなんですが、そういう時代は終わって、結果的に、何というか、出世もできないのに猛烈に働かされているというのが日本の現状ではないかと。  こういうときには、やっぱりもっと労働者が自由に動けるようにする必要があるんじゃないか。そのためには、やはり行き先を広げることもあるわけでして、やはり企業から見て辞めてほしい人というのは必ず一定数いるわけですよね。そういう人はもちろん希望退職にも応じてくれないわけで、そのときに、やはり正社員の雇用保障というのを守りつつ、しかしミスマッチというものは防ぐということで、ヨーロッパではドイツから始まって、解雇の金銭補償というルールを政府が定めるわけですね。これ、一種の私は解雇手当だというふうに理解しているわけです。  ですから、勤続年数等に応じた公平な形での解雇手当というものをつくることによって労働者も企業も満足できるような形で会社を替わるということができるようにするというやり方を、なぜ日本では受け入れられないのかということを考えているわけですね。あくまでも、これは労働者の目線から考えて私は必要なものだと思います。  それから、委員が先ほどお話ししました大企業と中小企業の差なんですが、私はそれは余り考えてはいけないと思うんですよね。つまり、それを認めたら統制経済になってしまうわけで、そもそも大企業と中小企業の差は何なのかということで、今、中小企業が優遇されているのでどんどん大企業が減資をして中小企業のふりをする、あるいは会社を分割して、そういうことも進んでいるわけで、余り規模別の違いというのは労働法制では余り考える必要はないんじゃないかというふうに思っております。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  引き続き、八代公述人にお聞きしたいんですけれど、労働者の保護というのは非常に重要だと思います。一方で、日本は、まあ労働三法というのもありますし、更に労働組合の存在もあります。この法律とその組合に関して今後どうあるべきかみたいなお考え、あれば教えていただきたいと思います。

八代尚宏昭和女子大学特命教授

○公述人(八代尚宏君) 今は労働組合法というのがちゃんとありまして、組合活動は保護されているわけですね。ただ、問題は、日本の労働組合というのが欧米の職種別と違って企業別の組合なわけでして、これはいい面も悪い面もあるわけですよね。  いい面というのは、会社との利益の協調ということで、欧米のようにやたらにストライキはせずに、会社、企業が成長してその利益を賃金に分配するという形でウイン・ウインの関係にあるという点は非常にいいわけですが、一方で、これはインサイダー、アウトサイダーの議論ということで、会社の中で正社員として守られる労働者と守られない非正社員との格差というのはどうしても拡大してしまう。  ですから、この中のその折り合いをどう付けるかということで、これは労働組合の、まあ何か法的なものをいじるというよりは、一部の先進的な労働組合がやっているような企業内の最低賃金、つまり政府が決めた最低賃金を上回るものを個々の企業内で組合が交渉して定めると。で、正社員の場合はほとんどそれは影響ないわけで、そこで働く非正社員の人も利益の上がっている企業の場合は労働組合の力で最低賃金をつくることによって引き上げると、そういうことを企業内労働組合ができるような仕組みを促していくというのは大事じゃないかと思っております。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 時間が来ましたので終わります。  今後の政策立案に生かしていきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  速記を止めてください。    〔速記中止〕

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 速記を起こしてください。     ─────────────

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) それでは、引き続き公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、社会保障・少子化対策・教育について、公述人恵泉女学園大学学長大日向雅美さん及び東京大学大学院教育学研究科教授本田由紀さんから順次御意見を伺います。  まず、大日向公述人にお願いいたします。大日向公述人。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 恵泉女学園大学の大日向と申します。本日は意見陳述の機会をいただきまして、感謝申し上げます。  目下、現金給付とか財源確保などについて鋭意議論が交わされておりますが、それが本当の少子化対策となるために、まず、子育てを社会全体で支えるとはどういうことなのか、徹底した議論とコンセンサスが必要と考えます。  子育て支援は少子高齢化で閉塞感に陥っている社会を活性化する鍵となる、そのためには三つが重要と考えます。第一に子育て観の見直し、第二に女性活躍に新しい道筋を付けること、第三に子育てを支える地域の人材養成、この三点につきまして、女子教育と子育て支援の両方の現場に立つ者として意見を述べさせていただきます。  まず、子育て観の見直しと新しい女性活躍についてです。  日本社会の女性たちの現状は、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数でも先進国の中で最低水準です。しかし、女性たちの現状は、この指数が示す以上に厳しいです。若い世代は、これからの生き方、社会に不安と葛藤の気持ちを非常に強めています。結婚、出産どころではないのです。  また、四十代前半から三十代前半の第二次均等法世代、女性活躍推進法世代が理想とするライフコースには変化が見られております。これまでの専業主婦や再就職コースではなく、両立、就業継続を希望する傾向が顕著です。でも、仕事も子供も両方求めるとなると、まるで罰ゲームを受けるみたいなんです。これが現実です。  子育て支援は大事だと言うけれど、旧来の子育て観はさほど変わっていない、子供を産んだら女性が子育ての大半を担って当然という子育て観が依然として払拭されていないと思います。  皆様は、「母親になって後悔してる」という本、御存じでしょうか。オルナ・ドーナトさんというイスラエルの社会学者が二〇一六年に著した本で、昨年の春、日本にも紹介されました。日本の女性たちからは共感の声が寄せられました。  一方、日本社会からは非常に厳しい批判の声が出ました。そんなこと言うなら産まなければよかったじゃないか、母親失格だ、人格異常者だと。確かにタイトルは衝撃的ではありますが、しかし、女性たちは子育ての大切さも子供を愛することも決して否定していません。ただ、自分の人生も大切にしたいのだ、子育てで自分の人生全てを失いたくないと言っているのです。  子育て支援を語るのであれば、私たちはこうした女性たちの心の叫びにどう応えようとしているのかを私は問いたいと思います。  私からの提案は二つです。一つは、女性の活躍について、具体的には働き方改革、そして新しい女性活躍像の提案です。そしてもう一つは、若い世代を支える地域の人材養成です。  まず、働き方についてでございますが、三十代から四十代の女性たちが理想とするライフコースは、仕事と家庭、子育ての両立、就業継続だと申しました。両立、就業継続は、仕事と家庭のバランスを無理なく取れる環境あってのことです。仕事も家庭も一〇〇%完璧にというのは所詮無理です。ライフステージに応じて仕事と子育て、家庭に注ぐ力のバランスが取れるように、それは女性だけでなくパートナーである男性にも試みていただきたいことです。  職場でも、働く人の状況に応じて助け合う仕組みとマインドが必要です。子育て、そして昨今は介護も重いです。こうした経験を評価して再雇用に生かす企業の取組も是非進めていただきたい。家族的責任を担いながら就業継続できる仕組み、そしてマインドの醸成もまた子育てを社会で支えることだと考えます。  そして、新しい女性活躍像です。  これまでの日本社会は強いリーダーを求めてきました。高度経済成長を築き、厳しい国際競争を乗り越えることができたのも、人口増社会を牽引してきた競争的強いリーダーあってのことだと思います。でも、今、人口減少社会です。そして、コロナ禍に苦しみ、理不尽な戦争を目の当たりにして痛感することは、誰一人として取り残さない、取り残されない平和な共生社会の構築にほかなりません。  他者を押しのけ、他者に打ち勝つことに価値を置いてきた競争的リーダーに代わって、共生社会を支える分かち合いのリーダーの提示こそ、これからの女性たちが安心して活躍できるんだ、これからの人生に確かな夢を持てることにつながると私は考えております。  この分かち合いのリーダーとは、何があっても生涯にわたって自分らしく生きる目標を忘れず、自分を大切にする、そして、自分の大切さを知った人であるからこそ同じように他の方の存在を尊重し、他者との共生の心を持って地域、社会に尽くすことに喜びを見出して生きていく力です。  私は、この力を、勤務する女子大学、恵泉女学園大学で三十五年掛けて実践し、生涯就業力として確立したところでございます。これからの時代を生きる女性たちにこの力を磨いてほしい、そしてそれを社会挙げて応援していけたらと願っております。  二つ目の提案は、子育て世代を支える地域の人材養成です。  こちらは二十年前からNPO活動として取り組んでおります。原点は、一九七〇年代初めに起きたコインロッカーベビー事件でした。当時の子育ては孤軍奮闘の一言に尽きました。子育て支援という言葉も発想もほとんどない時代でした。母親たちは、三百六十五日、二十四時間、年中無休のコンビニを一人で切り盛りしているみたい、こうつぶやくばかりでした。  女性一人にだけ育児を課す弊害を訴え、そこから女性たちを解放することが私の研究者としてのライフワークであり、その実践の場がNPO法人あい・ぽーとステーションです。子育てひろば事業と理由を問わない一時保育事業を主な柱として、都内三か所を拠点として展開しております。  子育てひろばは、親子が自由に集い、子供の育ち、子育ての喜びを分かち合う場です。理由を問わない一時保育では、子供を預ける理由を一切問わず、ゼロ歳から就学前までのお子さんをほとんど年中無休でお預かりしております。育児不安、育児ストレスの苦しさを軽減するには、いっときでも安心して子供を託せる人と場所が必要です。  働く親に、安心して預けられる良質な保育の保障はもちろんでございますが、専業主婦の方、育児休業中の親にも同じように保障されるべきです。かつては、母親が子供から離れるには仕事や通院、冠婚葬祭というしかるべき理由が求められていましたが、喫茶店でコーヒー一杯飲む時間、本や雑誌に目を通したり、新しい資格を取るための勉強など、母親が自分自身のために使える時間がどれほど必要か。それは決して子育てを放棄することではありません。自分を大切にできてこそ、子供にも子育てにもゆとりを持って当たれます。  問題は、こうした子育てひろば、一時保育を支えてくれる人の確保でした。  私の法人では、二〇〇五年から始めた子育て・家族支援者養成、幾つかの自治体で展開し、十年の間に二千名近くの認定者が誕生し、二〇一五年から厚生労働省の認定資格、子育て支援員にしていただきました。認定者の多くは子育てや仕事が一段落した女性たちです。子育てのつらさを次の世代に味わわせたくない、誰かの役に立てることがうれしいと講座に集まってくれています。最近は、自分の子育てのときにお世話になったから今度は恩返ししたいと受講する方々も増えて、まさに地域で支え、支えられて、お互いさまの循環が生まれております。  そして、二〇一二年からは、企業の助成をいただき、シニア世代男性たちの地域活動支援にも取り組んでおります。定年を迎えた団塊世代の男性たちに、長年職場、組織で培った知識、技術、経験を今度はどうか地域の子供たち、親たちのために生かしてほしい、現役時代の名刺で勝負してと呼びかけて、十一年の実践を重ねております。シニア世代の男性の多くは、高度経済成長を支え、九〇年代以降の厳しい国際競争を生きてきた方々です。地域の親子と触れ合う中で、現役時代には経験しなかった喜びと癒やしを得て、まさに共生社会を体感されています。  こうしたミドル、シニア世代の方々は、子育てひろばで親子が快適に過ごせるように、理由を問わない一時保育では、保育者として、あるいは、どんな親子の相談にも耳を傾け、必要に応じて地域の専門機関につなげる利用者支援の相談員として、さらには地域の児童相談所や子ども家庭支援センターと連携して地域の要支援家庭のお手伝いにも活躍しています。このコロナ禍で家庭に閉じ込められている親子にいち早くオンラインでの支援に動くなど、地域での人材養成の大切さを改めて痛感しております。  今、全国各地で様々な団体がそれぞれの地域のニーズに即して活動を展開して、親子の支えになっています。一九九〇年の一・五七ショックから子ども・子育て支援新制度に至る四半世紀余りの時間を掛けて、社会を挙げて、何より議員の先生方が超党派でつくり上げてきてくださった施策の中で都度示されてきたことから芽生えたことの一つです。今あたかも地域の地下からマグマのように噴き出して動き始めている地域の人々のパワーにどうか目を留め、応援していただきたいと思います。  この四月からこども家庭庁がスタートして、新しい取組も次々と打ち出されております。期待をしております。  ただ、どんな施策も、どんな施設をつくっても、親子が利用してこそだと思います。コロナ禍で、子育て世代の格差も家族問題も非常に深刻化しております。子育て支援を親子の元に届けたい。誰がどのようにそれを担うのかに私は一番関心を抱いております。  十二月に出された全世代型社会保障構築会議の報告書に、多様な主体による地域づくりの推進の必要性が明記されております。子育てもまた、行政始め、地域、企業、教育機関等連携で社会挙げて支えることが必要であることを申し上げまして、私からの意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  次に、本田公述人にお願いいたします。本田公述人、どうぞ。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 東京大学の本田由紀と申します。本日は意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。  今日は、私が専門とする教育社会学の立場から、主に日本の教育の問題点とその是正の方策についてお話ししたいと思います。お手元の資料で、四ページまでが意見となっておりまして、五ページ以降に図表や参考資料をまとめておりますので、適宜御参照ください。  今日、私が主張したいことは、最初の枠のところにまとめてあります三点です。第一に正規教員の増員と少人数学級化によるきめ細かい公教育の実現、第二に高校、大学の入学者選考等の変革による学校歴社会から学習歴社会への転換、第三に子育てと子供の教育に関する保護者の経済的、精神的な負担や責任の軽減という、この三点が是非必要であると私は考えております。  これらの三つの主張は、教育をめぐって子供や若者、保護者が置かれている慢性的、構造的な問題状況の是正が今こそ必要であるという考えの下から申し上げたものです。そして、この一から三に取り組むことが結果的に少子化対策になると考えております。そしてまた、この中で一と三については、教育に対する国家支出の思い切った増大を必要とする事柄です。言い換えれば、これまで教育に対する国家支出を抑制したことが、教育の問題状況や少子化、ひいては経済社会全体の停滞の原因となっていると私は考えております。  これが主な主張になりますけれども、以下では、これらの主張がどういう現象として現れているのかというところを第一節で述べ、第二節でそれがどういうダメージを社会全体に生んでいるかについて述べ、第三節にはなぜこのような問題状況が生じているのかということについて、順番に述べてまいりたいと思います。  まず、第一節、日本の教育の問題状況ですけれども、四点挙げております、AからDまで。  まず、Aとしましては、日本の児童生徒は、非常に学習意欲が低く、また選抜や試験に対する不安が強く、そしてまた学習の意義、学んでいる内容そのものへの意義や面白さ、楽しさといったようなことについての認識が国際比較で見ても極めて低いということは、これは繰り返し検証されております。  また、第二点目のBにつきましては、これも現在様々に報道されておりますけれども、不登校や子供の自殺が急増するような状態にあります。つまり、学校教育に対する子供たちの悲鳴のような不適応というものが、こうした不登校や自殺という形ではっきりと現れるようになっていると。  三点目のCは、これも御存じと思いますけれども、日本の教員の長時間労働、過重労働は世界最悪です。今やその結果、なり手の不足にさえ直面しているということです。  第四点目のDについては、日本における教育費の高さということですけれども、高等教育の学費が高いことはもちろんなんですけれども、もう一つ重要なのは、学校外教育に掛ける各家庭のお金が毎年増えてきている、それが非常に圧迫となっているということが重要です。そしてまた、子供の教育にどれほどのお金を支出することができるのかということに関しては、当然ですけれども、家庭の経済状況に応じて大きな差があります。それが子供の学力に反映し、ひいては教育歴に反映しといったような、格差が教育を通じて再生産されていくような構造が日本の中にははっきりと認められます。これらは現象形態としての問題状況です。  次の第二節は、こうした問題状況が、単に教育問題ということに限られず、社会や経済全体に及ぶ甚大なダメージを生んでいるということについて述べております。  まず、第二節の小文字のaにつきましては、こうした、学ぶんだけれども、それが児童生徒の中に学習することへの嫌気、拒否感のようなものを形成してしまっているということが、これは成人して、学校教育を離れて成人して仕事に就いたりしてからの人材育成であったり、あるいは学び直しが日本では非常に機能不全状態にあるということにつながっています。  これもデータで確認されておりますけれども、国際比較で見ると、日本の社会人の方々は学んでいないという状況が世界で物すごく、著しく低いわけですね、ということが確認されております。現在のように技術の進展が著しい社会においては、こういうスキルや知識をアップデートしていくということが機能していないということは、これが極めて経済的なダメージにつながっているということです。  ただ、学び直しにつきましては、例えば企業の雇用形態の在り方が、長時間労働であったりとか何ら結果を評価しないといったようなこともつながってきている問題ですけれども、その前段階として、人生の初期に経験する学校段階のことも重要であるというふうに考えております。  そして、弊害の二番目としての、小文字のbのところですけれども、こちらも繰り返し、繰り返し確認されておりますけれども、日本の子供、若者は、社会に対して、社会の中で積極的に振る舞っていこうとする意識が非常に低いということが確認されております。社会は変えていけるとか積極的な社会の担い手の一員として役割を果たしたいというような発想が非常に低いと。これは、私は子供や若者をバッシングしたくて言っているのではなく、社会やあるいは学校教育がこういう若者や子供の状況に追い込んでしまっているという、その本のところを是正しなければならないということを申し上げたくてこの小文字のbのところを指摘しております。  で、cですが、言うまでもありませんけれども、著しく進んでいる日本の少子化、そしてその原因として保護者の経済的な負担やあるいは子育てに関する不安というものが著しいわけです。言うまでもなく、少子化が進めばこの社会を維持していくだけの人口がこれから保っていけるのかということにも非常に不安が大きい状況になっております。  次に、では、なぜこのような状況になっているのかということについて、その原因について、三節のところで①、②、③とかが書いてあります。  まず、第一点目に指摘しておきたいのは、これは、これも繰り返し指摘されたことですけれども、日本においては、教員一人が担当する児童生徒数、言い換えれば一学級当たりのその児童生徒数ですね、学級規模とも言われますけれども、が極めて多いと。一学級に児童生徒がひしめくような状態というものがこれまでずっと続けられてきたということです。それは、言い換えれば教員数が少ないということの現れでもあります。こうした、一学級当たりに多くの生徒が詰め込まれ、一斉授業であったりとか教師が牽引するような授業の形態になってしまっており、児童生徒一人一人の個性や思考や感性に合ったきめ細かい教育ができていないということ、これもデータで確認されております。  このように、学校教育がある意味粗雑なものになっているからこそ、保護者たちは多額のお金を掛けて学校外教育で我が子だけは何とか補いたいという、そういう行為に駆り立てられるようになっているわけです。  そしてまた、日本の子供たちが学ぶことそのものの意味、意義ということを感じることができず、かつ試験や選抜の不安にさいなまれていることの背景には、日本の義務教育よりも上の段階、具体的には高校やあるいは大学における入学者選抜の脅威というものがあります。  図表の十六や十七にありますように、子供たちは、自分の学力がその試験をくぐり抜けることができるのかという、そういう不安の中で、選択というよりも選抜されるのかどうかという、そういう中で学業に取り組まなければならなくなっていると。  こうした事柄に関しては、大学に関しては高大接続などの形で検討されてきましたけれども、私は、より大きな問題は、高校入試の問題ということについて非常に検討が少な過ぎるというふうに考えております。  次に、第三点目なんですけれども、日本においては、子育てや子供の教育に関して、従来から歴史的に長く保護者に対して多大な責任が課せられてきましたけれども、それが今世紀に入って、様々な法令や条例などにおける文言として、もっと一層保護者が責任を果たせ、第一義的責任を担うのは保護者であるといったような文言が次々に含まれるようになってきています。  このような圧迫、子供に何かあったらそれは全て保護者の責任であると、教育上失敗しても何か社会的な不適応になってもそれは全て保護者の責任であるといったような、ある意味強迫的な状況の下に置かれているということが日本の保護者の取り巻かれている状況ですけれども、このような中で子供を産むことなど怖くてできないといったような状況がもたらされているという、これは非常に重大な問題であるというふうに考えております。  第四節では、これまで述べてきた事柄が非常に複雑な連関構造を取っているということを示しております。お互いに流れ込み合って、最終的には人材育成の機能不全や若者の消極性や少子化というものを生み出しているのだということを図示してあります。  そして、こうした日本における教育を中心とする、少子化も含めた大きな問題状況を打破といいますか、是正していくためには何が必要かということを第五節にまとめてあります。  もちろん、先ほど申し上げた、問題の根源が何かということは三節で申し上げたわけですけれども、この三点を何とかするというのがこうした負の連関構造の大本を絶つ上で必要になってきます。  まず、原因①、つまり教員当たり児童生徒数の多さに関しては、これは言うまでもなく、教員を増やし、少人数学級を実現するということが是非必要と考えております。  二〇二〇年に小学校だけが三十五人ということになって、学年進行で今実施されておりますけれども、中学校に関しては二〇二一年の骨太の方針で言及されておりますけれども、その後しいんとしておりまして、一切その改善ということが議論に上っていない。三十人というのは特に世界的に見て少人数学級ではないのですけれども、取りあえずは三十人を目標としてその実現に向かって進む必要があると。こうした充実によってこそ、学校外教育に多額なお金を掛けたり、あるいは不安にさいなまれたりしなくても、保護者が出産したり子育てをしたりできるということになります。  そしてまた、それは当然ながら教員の過重労働ということの是正にもつながります。  今、教員の過重労働の是正に関していわゆる給特法の改善ということが議論されておりますけれども、給特法というのは賃金に関わる法律ですが、その賃金の是正ということも必要なんですが、そもそもその教員の過重な業務ということを軽減するということが最大にして最も重要な要因であり、そこに着手する必要があるということです。  そのためには、教員を増員するためにはどのような方策が必要かということですけれども、今現在、学校現場では非正規教員が非常に増加しておりまして、非正規のなり手も減ってきているような状態にありますけれども、まずはこの非正規の方々を正規の教員になっていただくということがありますし、あるいは、過去の採用倍率が高かった時期に教職に就けなかった教員免許取得者の方々を、ここには氷河期の方々も含まれておりますけれども、そういう方々を積極的に採用していくこと、あるいは、教員免許を取って教育若しくは研究に対して従事する者も含みたいと思いますけれども、奨学金返還特別免除制度というのは廃止されてしまいましたけれども、これを復活されることなど、あらゆる手段を取って教員の増員ということを推進していく必要があると思っております。  教員の質の保証のためには、採用時だけではなくて、教員になった後の研修、研さんということも当然必要になりますけれども、今、日本の教員は多忙の余りに、これも国際比較で見て、こういった研修や研さんが十分にできていない状況にあります。であればこそ増員が必要であるというふうに考えております。同様のことは保育士や学童保育についても言えます。  米印のところはちょっと補足的な詳細の説明ですので、時間がありませんので、読んでいただければと思います。  次に、原因②についてですけれども、つまり高校入試あるいは大学入試の脅威ということなんですが、これに関しましては、一点刻みの相対競争の中で上から定員に満ちた人だけを入学させていくといったような現在の在り方に関するドラスチックな見直しが必要であると私は考えております。  ここ、これを実現するのはかなり遠い道のりが必要かと思いますけれども、目標としてはこの原因②についてというところに書いてあるようなことを構想しております。それは、義務教育修了程度、高校修了程度の習得水準をまず確認すると、確認した者には全て次の段階に関する進学を保証すると。個々の教育機関においては、定員未満の場合は入学者選考は実施せず、アドミッションポリシーと志望、経験の適合性により選抜するということで十分であるというふうに考えております。  また、高校以上の学校段階に関しては、複数の教育機関にわたる単位取得を緩和し、どこの学校に所属しているといったような、いわゆる学校歴社会においてはそこに執着するような状況がありますけれども、そうではなく、何を学んだかが重視される学習歴社会への転換が必要であるというふうに考えております。  続いて、原因の③につきましてですけれども、これも、保護者責任を強調する諸法令、条例を改正し、どのような家庭に生まれた子供も社会が確実な成長を保証するという理念を明確に打ち出すことが必要であるというふうに考えております。  日本では、自助が必要だとか家族責任が重要だという、いわゆる家族主義ということが非常に強調されがちですけれども、これが非常に弊害が多く、少子化につながっているという指摘は数々あります。そこから脱却するのだという方針をまずは明確に示していただきたい。それに加えて、具体的な施策として教育の無償化、これもなかなか大きな課題ではありますけれども、それに向けて一歩ずつ歩を進めていただきたいと、確実にですね、ということを考えております。  次に、第六のところでは、これまで申し上げ切れなかった事柄、多々、多々あるわけなんですけれども、日本の社会には問題が今山積みの状態にありまして、具体的に改善していかなければならない事柄は本当にたくさんあるんですけれども、その中で今日申し上げておきたいことを箇条書にまとめてあります。  ちょっともう時間が足りない状況になっておりますので、後のもし質疑などの際に言及していただければお答えいたしたいと思います。  以上です。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

高橋はるみ自由民主党

○高橋はるみ君 自由民主党の高橋はるみでございます。  大日向先生、本田先生、大変有意義なお話、誠にありがとうございました。  今私たちは、出生数が年間八十万人を下回るという大変衝撃的な状況に直面しているところでございます。もとより、コロナ禍の影響も大きかったとは思うわけでありますが、こうした状況は、我が国の社会保障のありようばかりではなく、経済社会の存立にも関わる重大な問題であると、このように認識をし、だからこそ抜本的な少子化対策を各方面行っていかなければならない、このことが不可欠であると、このように考えるところであります。  そうした観点から、幾つか両公述人にお話をお伺いをしたいと思います。  まずは、経済的な支援、今両公述人からもお話ございました、現金給付、あるいは教育費、保育費、子供の医療費、それから不妊治療費など様々な経済的な支援策について議論がされているわけであります。こうした少子化対策を実行するに当たり、数値目標を設定すべきかどうかという議論があります。政策のパフォーマンスを評価するため必要であるとする議論がある一方で、最近特に世の中の関心が高まっておりますLGBTへの対応を始め、価値観を押し付けてはならないという議論もございます。  こういった中で、例えば合計特殊出生率であるとかあるいは希望出生率といった数値目標を設定して政策を実行すべきか否かについての両公述人の御見解をいただきたいと思います。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) それでは、大日向先生から。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えさせていただきます。  数値目標が必要かどうかということでございますが、必要な領域もあるかと存じます。でも、子育て現場の女性たち、親たちの声を聞いている者といたしましては、出生率、希望出生数とか希望出生率を言われても、なら産もうということにはならないわけです。希望出生率一・八という数値はあくまでも結果だと思います。  それよりも、先ほど申しましたように、若い世代が自分たちの人生に安心と希望を持てるような施策、そこには今先生がおっしゃってくださったような見えないもの、財源、数値だけではなく、価値観、家族観、子育て観、人々の多様な生き方をみんなで認め合う共生社会をつくっていくんだ、安心して生きられる、その社会を目の当たりに実現させていただいてこそ、若い世代がそれなら子供も家庭も持てるんだ、そして結果的に数値につながるというふうになれば私はよろしいかと思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 私の意見も大日向公述人とほぼ同じです。  出生率、希望出生率であったり、あるいは例えば未婚率を下げるといったようなそういう数値目標が掲げられれば、産めとか結婚しろといったような圧迫につながる。そういう圧迫こそが、今、日本の多くの人々、若年世代層を含む人々を生きづらくさせているものであると。そうした圧迫の除去というか、不安を取り除き、安心して大丈夫と、大丈夫だからというメッセージを社会全体に充満させることによって、結果的にそういう出生率や結婚を選択する人たちが増えていくということになると考えております。  以上です。

高橋はるみ自由民主党

○高橋はるみ君 ありがとうございます。大変参考になりました。  二つ目にお伺いをしたいと思いますのは、政策の実施主体がどこであるのがいいのかという点であります。  地域ごとに人口構造あるいは産業構造、住民の意識などがそれぞれ異なる状況にございますために、地域それぞれに合ったきめ細やかな少子化対策を行う主体というのは、自治体、これは都道府県もございますし市町村もあろうかと思いますが、自治体が最適であるという主張がございます。  私自身も自治体にもいた経験もあるわけでありますが、他方、やっぱり地域によって、地方によって財政力に格差がございます。そういった状況の中で、自治体に任すよりは国主導の全国一律の政策実施がよいという議論もあろうかと思うわけであります。  そこで、両公述人にお伺いをしたいんでありますが、少子化対策、とりわけ経済的な支援の部分、私は想定して今御質問をさせていただいておりますが、その実施主体は自治体が中心がよろしいのか、それとも国主導がよろしいと思われるのか、いずれが望ましいと思われるかについて、それぞれの御見解をお伺いできればと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えさせていただきます。  今の御質問に対して、私は、例えば家を建てるときをイメージしてみたいと思うんですね。家を建てるとき、土地を確保し、そしてその建てる必要なお金、これはやはり国がやっていただきたい。でも、どういう家が必要なのか、どういう間取りで、ひさしの長さは、窓の大きさはどうかというのは、寒い地方と暖かな地方では違うはずです。そこは自治体が担う。  ですから、国と自治体どちらがではなく、それぞれの特性に応じて、大きなポリシーと財源確保は国に、そして、自治体は一番住民のニーズを身近に聞いていらっしゃる、ですから細かなところは自治体に任せていただきたいと思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 済みません、再び大日向公述人とほぼ同じお答えになりますけれども、やはりベーシックなナショナルミニマムとして確保しなければならないことは国の施策としてやっていただきたいと。それに加える形で、各地域でできること、あるいは必要と考えることについては、自治体が独自に実施できる部分というものを、二階建てというか、上層部分としてその余地も残しておくという、そういう構成が必要であると考えております。  以上です。

高橋はるみ自由民主党

○高橋はるみ君 ありがとうございます。まあ、私もおおむね両公述人と同じような考え方でございます。  こうした質問をいたしましたのは、仕事の転勤等で例えば東京から私の地元でございます北海道の札幌に引っ越すと、教育費の支援あるいは子供の医療費の支援などが異なって戸惑いがあるというような、そういうお話もございましたからでございます。  次の質問でございますが、私自身も働きながら子供を育てた経験もあるわけでありますが、両公述人ともおっしゃっておられたとおり、経済支援、これが重要なことは論をまたないと思うのでありますが、それと同時に、社会全体で子育てを支える仕組みづくり、例えば共働きなんだから共育てのモデル、こういったものを確立しなければならないということは当然だと思いますし、また、女性が子育てを行いながら社会の中で自由で多様な活動ができる仕組みづくり、こういった社会環境整備が不可欠と考えるわけであります。  こういったことについて、更に両公述人のお話を少しずつお伺いできればと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 御質問ありがとうございます。  先生のおっしゃるとおりだと思います。これから、働きながら多様な家族の形態の中で無理なく子育てもできるということが不可欠の時代になってきているというふうに思います。  そのときに、先生方が四半世紀掛けてつくってくださった施策が非常に重要だと先ほど申しました。それは、超党派で、子供を社会のみんなで育てるということ、一言に尽きると思います。そのためには、経済的支援ももちろん重要です。でも、全ての子供の発達を保障するためには、現金給付だけでなく現物給付も必要です。子供たちが安心して学べる環境、本田先生が言われたこと、同じゅうございます。  それから、親たちが生活スタイルにかかわらず安心して子供を育てることができる、そのための現物給付といいますと、例えば保育の質の向上、もちろんそれも大きなことでございます。  そうした施策を是非進めていただきたいと思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 済みません、大日向先生のお話がすばらしくて、いつも同じですと申し上げるにとどまってしまうんですけれども、事実上同じなんですけれども、まさに社会全体で育てるということが必要であると思っています。  家族というのは、家族しかできないことというのは、それもどのような家族であっても、つまり同性婚であってもそうなんですけれども、やはりほっとすることができる、愛情の宿る場と、そこでは許されるという、これが家族の主な役割であって、それ以外の、例えば子供の教育であるとか何か有益なことをなさなければならないといったようなそういう圧迫は家族の外で、近隣で手にすることができて、家に帰ればほっとできるような、今日もすごいいいことしてきたんだよって子供がお母さんに言って、わあ良かったね、じゃ、うちではほっとしようかみたいな、そういう状況というものをつくり出していくということが必要だと思っております。  そのためには、これも大日向先生がおっしゃったとおりなんですけれども、現物給付という言葉になるかもしれませんけれども、家族の外で、近隣で、子供に対して引き取って、安心や有益な機会ということを与えてくれる場というものを拡充というか確保していく必要があると。それは、保育園でも、保育所でもそうですし、学童保育もそうですし、公立図書館でもそうですし、様々な公園でもそうですし、そういう無償若しくは極めて安価で自由に活用することができる場というものを地域社会に整えていくということが必要であるというふうに考えております。  親が躍起になって目を血走らせて、子供にとって役に立つような塾やお稽古事を選んで、高いお金を払って、送り迎えをしてというような厳しい状況から保護者たちを解放していただきたいと心から思います。  以上です。

高橋はるみ自由民主党

○高橋はるみ君 終わります。ありがとうございました。

古賀千景立憲民主・社民

○古賀千景君 こんにちは。立憲民主・社民の古賀千景と申します。  今日は、お二人とも貴重な御意見を様々伺わせていただいて、本当にありがとうございました。  大日向公述人におかれましては、子育てで、地域で変えていこうというようなこと、また、本田公述人におかれましては、今の教育の課題というところをしっかり話を聞かせていただきました。  私は学校現場の出身です。三十年間、学校教員として働いてきました。そのうち二十年が臨時採用教職員で、非正規という立場で働いてきたところです。  まず、大日向公述人の方に御質問させていただきたいと思います。  三月八日、国際女性デーでした。二日の日に世界銀行の方が男女の格差について出しました。百四十か国中、日本は百九位、先進国では最下位でした。そして、職場のセクハラに法律がないのも日本だけというような状況だったと思います。  私は、この女性と男性の格差というところに少子化の要因が大きくあるのではないかということを感じています。女性の働き方、非正規の方が今全国で四割と言われますが、かなりの数女性がいます。子育て、介護、出産、出産は女性の仕事ですが、子育てと介護は女性の仕事と決められたものではありません。しかし、働き方、日本の働き方は、多くは男性を中心に働き方が組まれていると私は思います。時間外、夜遅くなっても働ける、土日も働ける、そのような男性中心の働き方が今まで日本の中にはあり、それが女性というところで働くことができない、子育て、介護のために非正規としてしか働くことができないということがあります。それが女性の経済的な自立を妨げている。そういう流れの中が、こういうことが少子化に結び付いているのではないかと思っております。  先生がおっしゃられました、地域を囲んでというところ、社会保障制度の充実や女性の地位向上などの法整備が必要なのではないかと私は思いますが、今、先生がいろいろ御活躍されている中で、こんな法律が女性の地位向上のために必要ではないかと思われることがありましたら教えてください。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えさせていただきます。  先生の力強いメッセージ、大変うれしく聞かせていただきました。  おっしゃるとおりです。日本の女性の置かれている状況は、ジェンダーギャップ指数では、もう百四十六か国で百十六、それからエコノミストでつい先日発表されたのは、二十九か国の中で二十七番。この状態をどうにか変えなくてはいけない。当然です。そのために私は、老若男女共同参加ということを、その法律はもう既にありますが、それを更に現実のものとなるようなことを推進していただきたい。  同時に必要なことは教育だと思っています。女性たちがそういう現実にめげずに生きていく、女性活躍と言われているけど女性活躍半ばじゃないか、だからこそ自分たちが今これから新しい時代をつくっていくんだ、そういうマインドを教育していくこと。これが法律以上にも、法律ももちろん大事です、でも、法律以上に教育現場の中でそういう実践を積み重ねてまいりましたし、そこはこれから更に若い世代たちに、道半ばだからこそあなた方の手で今までになかった新しい女性活躍の時代をつくってほしい、そして男性たちには、これから一緒に生きていく女性を人生のパートナーとして生きていく、そこをしっかりと認めないと生きていけないし、結婚どころではないのよということは是非是非声を大きくして申し上げたいと思います。  以上でございます。

古賀千景立憲民主・社民

○古賀千景君 ありがとうございました。  では、続きまして本田公述人の方にお伺いしたいと思います。  先生が現場のことをよく御存じでいらっしゃって、とても心強く思っています。学校現場、時間外勤務は百二十三時間だと言われています。昼休みは九分。そして、昼休みが零分と答えた教職員は五四%です。トイレにも行けないという日々を教職員は送っています。その結果、一か月以上精神疾患で病休になった教職員は二〇二〇年に九千人を超えました。こんな職場に誰が希望して入ってくるかということです。大変な教職員を見て、大学生も教員はやめておこうとか、保護者も教員はやめておきなさいねとか、そんな言葉があって、どんどん採用試験の志願者が減っていっております。  国の政策としては、採用試験の早期化とか複線化ということを訴えていらっしゃいますが、私としては、そうやって民間から先に採用試験を受けて教員となっても、現場が大変ならばそれをすぐ辞めてしまう、そのような状況を改善することの方が先ではないかというふうに思っています。  先生もおっしゃられました給特法、この法律が大きく要にあると思っています。教員の勤務の特殊性ということで、労基法ではなく給特法が使われておりますが、これは時間外勤務を一切認めていかない。そして、勤務の命令、校長から、管理職からの命令というのも限定四項目しかありませんので、あとは全て自発的な行為で教員がやっていると思われております。  このような、教員の働き方が大変だ、そして志願者がいない、病休者が出ていく、そして代替者がいない、それでどんどん悪のスパイラルとなって今学校現場は大変なことになっています。このスパイラルをどうやって打ち切っていけばいいのかということを私たちはとても悩んでいます。  もしよろしければ、御示唆いただければと思います。お願いします。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 今、古賀議員がお話しくださった現場の状況、まさにそのとおりです。  物すごく憂えております。一体、これどうするのか。もう教育が維持可能ではないと。教員とか、校長とか副校長までが担任を持ち始めたり、それでも足りないといったようなことがもう山のように起きているわけです。これを放置しているのが今の政治だとすれば、その責任の大きさということ、もう本当にどれほど言葉を尽くしても言い切れないほどです。  さっきも大急ぎで触れましたけれども、給特法において時間外勤務が限定四項目しか認められておらず、定額で働かせ放題になっているということは大きな問題で、かつその業務がどんどん増えていくと。いろんな課題を抱える子供たちも増えてきておりますので、大変その業務自体が増えていっているということが長時間労働の原因になっているわけですね。だからこそ、だからこそ、私は、教員を増やす、そして業務そのものを軽減する、これ以外ないというふうに、考えた結果そこに至ったわけです。  給特法で残業代が払われるようになれば、働かせ放題にはなくなるかもしれません。でも、死ぬほど働いて、疲れ切りながら、メンタルも病みながら、残業代だけ払われても、それは教員の状況を改善したことにはならないわけです。であれば、業務そのものを軽減する必要がある。そしてまた、業務の軽減に関しては、ICTの活用であるとか、コピー取りなどいろんな事柄に関してはほかの人に委ねるとかいうことも議論されておりますけれども、なかなかそれが今うまくいっていないような状況です。  それよりも、非常に決定的な解決策になるのが、担当する子供の数を減らすということです。これは実証的な、計量的に検証した結果もあるんですけれども、担当している学級の一学級当たりの児童生徒数が多い教員ほど長時間労働になっているということは言うまでもない、検証するまでもないんですけれども、実際明らかにそうなっているということは検証結果があります。であれば、そこを減らす。そこを減らして、担当している児童生徒の数を減らすことによって、例えば保護者対応であったり、例えば提出物の管理であったり、成績付けであったり、今様々な事柄を教員は実際要請されているわけなんですけれども、その総量自体を減らしていく、これしか解決策はないと思います。  それによって、教員というのが非常に、元々有意義な仕事ではあるわけですけれども、それほど、死ぬほど大変なわけではないということを確実にしてこそ希望者の増加にもつながっていくと思います。  さっき言及してくださった採用試験の早期化、そんなことでは全く解決にならない、何を言っているのかと言いたいぐらいです。教育実習も終わっていない人たちに早期に内定を出したとしても、それは辞退する人が後ほど続出するに終わるわけですね。そんなこそくな施策でごまかしている場合ではないのだということをちょっと怒りを込めて申し上げたいと思います。

古賀千景立憲民主・社民

○古賀千景君 ありがとうございました。  時間も余りありませんので、本田公述人が言われた高校入試の点数、私も学校現場の中に点数、点数という点数主義が入ってきているということを感じています。それは、今学校で、小学校六年生、中学校三年生で行われている全国学力実態調査、これも全校の学校でやっているというようなことも含まれるのではないかと思っています。  今日、私は女性、男性という言葉を使いましたが、私は、この二つの性ではないということを理解した上で、今日はあえて一般論として使わせていただいたことを御理解いただければと思います。  終わります。ありがとうございました。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。  お二人の公述人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございました。  早速、私からは、まず大日向先生にお伺いをしたいというふうに思います。  先生、先ほどおっしゃった、女性の自分らしくという心の叫び、これはまさに他者の存在を大切にするという前提として重要だというお話は、もうそのとおりだなというふうに思っております。  改めて確認の意味も込めてなんですが、先生は学長としても多くの学生の方からもお話も聞かれているかというふうに思います。この学生たちの声から見える自分らしさということのイメージ、それとともに、それを支えるために必要な子育て支援のサービスであったり、また、その担い手の具体像というのをどういうものだというふうにお考えかを、まず改めて教えていただければと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 御質問ありがとうございます。  女性たちが求める自分らしい生き方ということでございますが、実に多様なんです。女性といっても様々で、一言でくくれない。個性も潜在力も実に多様です。  ただ、一つ言えることは、自分の力をどこにどう生かしたらよいか分からない、どういう活躍ができるのかというイメージが示されていないということだと思います。女性の生き方についてこれまで示されてきたイメージが余りにも画一的過ぎた。二〇二〇・三〇運動、残念ながら未達ですが、そこで示された画一的なイメージではないもっと多様なイメージを私は社会が示していくことだと思います。  そのためには、SDGs、これは、今こそ高校生、大学生に自分事として考えてもらうことが大切だと思います。世界には、社会にはこんなに問題があるんだ、それのどこに自分が一番尽くしたいのかと、そのためにどういう学びが必要でどういう資格が必要か、そういうことをまず私どもは大事にしたいと思っています。  それから、もう一つ大切なことは、自分らしい生き方とか自分が本当にやりたいことというのは社会に出てから見付かることが多いんです。三十代になって気が付いて、そこから学び直し、やり直せることです。子供がいるからできないではなくて、子供がいるからこそ見えてきたこと、そこをどうやって社会が応援するかです。普通のお母さんってそんなことしないわよ、子育てに専念すべきでしょというような子育て観はどうか一刻も早く払拭していただきたいと思います。  そして、子育てをしながらでも自分らしい多様な生き方を求めることができるためには、先ほど申し上げた、理由を問わない一時保育、様々な学び直しの機会、そうしたことを社会挙げて取り組んでいただけたらと思っております。  以上でございます。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 まさにコーヒーを一杯飲むためだけの時間、それすらないその環境、そこに対しての支援ということも含めた意味合いもすごく重要だなというふうに改めて思わせていただきました。  もう一つ、大日向先生にちょっとお伺いしたいんですが、まさに今、女性像も画一的、そこを変えなきゃいけないと。男性とかも、この子育てというものに対する考え方も画一的だったところがあるかというふうに思います。それを、今まさに子育てに対する男性とか企業の意識改革というのもやっぱり非常に重要かなと。  今までは、子育てというのは、仮に関わるとしても自分は助ける側だという男性が非常に多くて、助けてやっているぐらいの感じになっているかもしれない。けど、そうすると、例えば育休取っても、実際、育休で育児をやるわけではなく、ただの休みになってしまってお母様方の負担になったり、企業も、育休を取らせる側は男が関わることに対しても意識もないものだから、結局育休取得というものは進まないと。本当に根本的に意識改革をしなければいけないと思うんです。  ですから、そういう点では、改めてこの子育てに対する男性とか企業の意識改革をどのように施策として進めていくべきかという点と、あわせて、先生が先ほど御紹介いただいた、あい・ぽーとステーションで、シニア世代の男性、これを通じて喜びと癒やしを得たというふうにお話がありましたけど、この方々が担い手として参画する意義を、今の文脈から改めて先生のお言葉でいただきたいと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えさせていただきます。  男性の意識ということに関しては、私、以前、育児休業を取った男性のインタビューで忘れられない声を聞いたことがございます。どうしてあなたは育児休業をお取りになったんですかと伺ったときに、自分はパートナーと結婚するときにこういう約束をした、結婚して子供ができたときに、喜びはお互い倍にしよう、失うものがないようにしようと。それなのに、子供が生まれて、自分は子供が生まれてうれしい、父親になってうれしい、仕事も続けられる、でも、パートナーである妻が仕事を失う、これでは約束違反だと。  こういう男性の意識というのは本当に貴重だと思います。男性の育児参加は女性との人生の分かち合いだということを、社会挙げて、特に教育の場でも徹底していただけたらと思います。  もう一つお尋ねいただきましたシニア男性のことでございますが、今関わっておりますシニア男性たち、本当に優しいです。あっ、シニア男性みんなが優しいと申し上げているわけじゃなくて、中には優しくない方もおられるとも思いますけれども、いろいろ地域のこと、子供のこと、御自分の経験しなかったことを学んでくださって、本当に人としての喜びを味わっていらっしゃいます。現役時代は、うまく仕事ができると昇進した、昇給できた、よくやったと褒められる。でも、今地域で活動すると、ありがとうと言われる。人の役に立つ喜び、これはどの人生、どの世代でも必要だと思います。  こうしたミドル、シニア世代、老若男女問わずですね、その方々が地域を支えてくださる、あるいは、本田先生がずっとおっしゃっていらっしゃる教育現場の厳しさ、ここも担っていただける可能性は非常にあると思います。子育ての現場、教育の現場を地域に開いていただくことが本当に大切なときを迎えていると思っております。  以上でございます。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございました。  先ほど、大日向先生からも、自分らしさということは、自分の、女性の皆様がお一人お一人のこの生きる選択肢とともに、社会に与える影響の多様性というのをいかに発揮していただくかというような趣旨の話もあったかというふうに思います。  お二人の先生にちょっとお伺いしたいんですが、女性活躍というと、今まで弱い立場にいた女性を何とか支えて活躍というような、ある意味、そういうニュアンスがどうしても出てくるんですけど、私は、やっぱりこれから女性の力が発揮できるような社会をつくることが全ての人の幸せにつながっていくと。やっぱり女性というのは、そういう社会の、今の社会を救っていく大きな力がある、だからみんなのために女性に活躍していただかなきゃいけないという、そういう理念だと思っているんです。  ちょっと、改めてお二人に、その辺りの女性活躍の意味合いについて教えていただければと思いますが。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えいたします。  本当にうれしいお言葉をいただきました。  女性の力というのは、これからニューノーマル時代、いろんな変動が起きるときにピンチをチャンスに変える力だと私は思っております。これまで、必ずしも一直線に生きてこれなかった、こう生きたいと思っても様々なライフイベントで変更しなくてはいけなかった、都度、女性たちはしなやかに、したたかに生きてきた。その力をニューノーマル時代、人口減社会には、まさに先生がおっしゃるように、女性に活躍の場を与えていただきたい。その潜在力をいかに引き出すか、そこに働き方改革、地域の、地域挙げての支援を発揮していただきたいと思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) これまで日本で事実として女性活躍という言葉で推進されてきた事柄は、中身をよく見ますと、子供を産め、ちゃんと育てろと、老人は介護しろと、外でも働けと、経済的にも役に立てという、社会の様々な諸課題を女性に、ごみ箱のように放り込むような事柄を女性活躍と呼んできたように思います。  実際に、これもやはり様々なデータで見ると、あらゆる公的な場所で、日本の女性は極めて存在感が薄いというか、人が少ないですね。管理職も教員もそうですし、医師もそうですし、議員もそうですし、どのような職種や立場を取っても日本の女性が少ないことは確かですから、そういう意味では、そこにもっと女性に出ていっていただくということは、これは不可欠ですが、それを女性活躍という言葉で呼ぶことに対しては、私は実のところやや疑問を持っています。それも、これまでごみ箱のように女性に何でもかんでもやらせてきたことの延長で女性活躍という言葉を使い続けるのであれば、そんなことは大間違いだと思っています。  私は、むしろ日本社会の異常さというのは男性側にあると。女性に何か改善すべき点があるから、そこにもっとてこ入れをして云々といったようなことは大間違いだと思っています。女性の進出を阻む男性側の在り方、企業も国会もそうですけれども、そのように男性が独占している状況そのものが問題です。異常なのは男性側。女性をいじってもっとやらせようという、その方針そのものが日本の女性を追い込んできているのではないかと。  そういう意味では、女性活躍という言葉をこれまでのニュアンスで使い続けることに対しては、私は大きな疑問があります。  以上です。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございました。  最後、本田先生に住居の関係をお伺いしようと思ったんですが、ちょっと時間の関係もありますので。こちらは、私個人の思いとしては、先生のおっしゃった、この若者世代の住居支援というのも非常に重要だと、少子化対策という意味合いでも。例でも、住居が狭いから子供がなかなか、希望するような子供を育てられないという声も多かったという声もありました。この関係は、また政治の課題として、先生のお言葉も承ってしっかり頑張っていきたいというふうに思っております。  私からは以上でございます。改めて、ありがとうございました。

青島健太日本維新の会

○青島健太君 日本維新の会の青島健太と申します。  まだ議員になりたて、半年ばかりでありますけれども、まずは本田先生の怒りに議員としてもエネルギーをいただきました。ありがとうございます。  まず、本田先生から伺わさせていただきます。  私事ですけど、私、プロ野球引退してから一年弱、オーストラリアで日本語の教師をしておりました。また、一応社会科の教職も取っていて、まあ先生にはなっていないので、先生のなり手が少ないというところの一因にもなっているかと思いますけれども。オーストラリア、あと、ちょっと私の子供の関係でイギリスの学校も見せてもらいましたけれども、やっぱり日本と比べて思うのは、先生のやっぱりステータスというのが非常に高いなというふうに思います。また、普通の先生方でも夏休みは一か月ぐらい平気で海外旅行に行っていますので、非常に時間的にもライフスタイル的にも余裕を持ちながら子供たちと接しているなというところを感じます。  たまたま昨日、私、予算委員会で中学校の部活動の地域移行をやらせていただきましたけれども、中学校の先生方の残業は、まあ全員とは言いませんけど、多くの方々はやはり部活を担当してとんでもない残業量になっている。これ改めるために地域移行ということも非常に有効な政策というか、ことだという形でも昨日取り上げさせていただきました。  ただ、先生のステータス上げる、あるいは今のシステム急に変えるというのはなかなか難しい面もあると思うんですけど、ただ、やっぱり子供たちにいい質の教育を用意するということであるならば、これは今日にでもあしたにでもやらなきゃいけないということなんだろうと思います。  子供たちの数、生徒の数というお話もありましたけれども、もっともっと社会に関わっていくんだ、あるいはもう世界に飛び出していくんだ、そういう志のある子供たちをどうやって育てていくのかというところ、本田先生、プログラム、学校の中で何を用意したらいいのか、どういうところを刺激していったらいいのかという辺りは何か御意見をいただけますでしょうか。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 御指摘いただいたとおり、他国では教員のステータスはもっと高く、時間的にも余裕があります。部活動の地域移行というのは、できる地域もあるとは思うんですけれども、地域によって条件がかなり異なるという点から、そうした地域間格差をよく考えた上で検討していただきたいと思います。  良い質の教育のためには、少人数化を恐らく前提としていただいた上で、もっと具体的な教育方法として何が可能かということを質問してくださったものと理解しております。  これに関しましては、例えば探求的な、総合的な探求の時間であるとか、子供個々の考え方や問題関心を重視してということも少しは取り組まれているわけなんですけれども、そういう志を育てる教育を行ったとしても、結局のところ、例えば待ち構えているのは高校入試であったり、あるいは大学で一般入試を考えている人は、結局のところ、勉強して模擬試験の偏差値を上げなければならないといったようなところに追い込まれており、そういう、今取り組まれているような、良い質の教育を目指した、ある意味理想論というものが学校現場では形骸化しているような事態があるんです。  ですから、いろんな試みや提言や構想はあるわけですね。今議論されている中教審や人材育成プログラムの構想もそうなんですけれども、協働的であったり個別最適であったりとか探求的といったような、そういう良い言葉は理念としては躍っているんですが、学校現場においてそれがうまく機能していない。  だからこそ、そこで負担になってしまっているような選抜の脅威ということを取り払っていく。で、少人数学級の下で、問題関心を生かして、十分に伸ばすことができるような教育内容と方法というものを確保するということが必要であると考えております。  以上です。

青島健太日本維新の会

○青島健太君 ありがとうございます。  あのコロナ禍の中で部活動なんかが制限された中で、実は先生方、部活動担当していた方が、授業の準備が実はすごく時間が持てるようになったということで、そこで、こういうふうにやりたいんだな、やれればなということをおっしゃっていた先生のお話も伺いました。まずやっぱり余裕を持って働いていただくということは大きな要素なのかなと思います。  それともう一つ、先ほど矢倉先生がお尋ねしようとして途中でやめられました。私もそこ関心持っていましたので。  いただいた資料の六番目に、少子化の一つの原因として、もっと、何というか、普通に言っちゃうと広々とした住環境があるということが子育てにとっては大事なんじゃないかという御指摘がありました。住宅補助をして、子供を育てようという世帯にはもっと住みやすいところ、広いところを用意したらいいのではないかという御意見ですけど、私も大賛成なんですが、ここもう少し、どのような考え方なのか。はっきり言って、例えば、じゃ、子供が二人、三人いるのに部屋が一つしかないというよりはもっとあった方が子育てしやすいというのは一般的には言えるんだろうと思うんですけれども、この辺り、いかがでしょうか、本田先生。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 住宅のことに関して関心を持ってくださってありがとうございます。大変大きな問題だと思っております。  これについては、一部議論が始められているようなんですけれども、報道などで知る限りでは、先日、萩生田議員ですか、が、公営住宅などに入ってもらえばいいといったようなことを発言したということも言われておりますけれども、その公営住宅が今、現状では非常にぼろぼろになっていたりとか、そんなところに入りたいなら入れみたいな、そんなやり方では、全然それは子育て世代のニーズに合ったことにはならないと思います。  ただ、これ具体的にどうしていくのかということはかなり難しい問題で、財政余裕があればというか、是非そこに財政を使っていただきたいわけなんですけれども、標準的な住環境を確保した上で、そこに子育てあるいは多子世帯に入っていただく、優先的に入っていただくということはあり得るかもしれません。  あるいは、今空き家が非常に増えております。あるいは、使われていないような公務員住宅であるとか、資源自体は結構あったりしているのに使われていないということもあります。そういうところを整備したりする、きちんと住める環境にするというためには一定の準備が必要だと思いますけれども、整えた上で募集して、恐らくは低所得世帯でかつ子供が多かったりとかいうところからどんどん入っていただくということを拡充していただきたいと思います。  どういう形で政策的に実現していくかについては、細かいところを詰める必要があるということは重々承知しております。  以上です。

青島健太日本維新の会

○青島健太君 続いて、大日向先生にお伺いします。  女性をある程度想定した分かち合いのリーダーと、そのありようを、先生のお話しぶりやたたずまいが、まさにまたそれを見せていただいているなというふうに思いましたけれども。  これは世代的に同じなので気になったのですが、シニア世代の方、自分の名刺で勝負してくださいというようなうたい文句。裏を返すと、そこに非常にこだわってしまうシニア層というものも見えてまいりますけれども、このことの意味とか、あるいはそれでやる、その名刺にこだわるという意味はどういうことでしょうか。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お尋ねいただきましてありがとうございます。  先生のおっしゃるとおりで、シニア世代の方々は、自分の肩書、すごくそれにこだわって、地域活動の邪魔だと今まで言われてきたんです。私は部長をやってきたとか、こういう仕事をしてきたと。  でも、私は、その一枚の名刺には、そうした肩書人間の不要なプライドではない、長年組織、企業、団体で培った経験、技術、知識、たくさん込められていると思います。それを、私のやっているNPO法人では徹底的に変な不要なものはそぎ落としていただきます。そして、子育てとは、親とは、地域はこういうものだということをしっかりと学んでいただきます。  受講動機は、やっぱり社会とつながっていたい、現役時代終わっても社会とつながっていたい。それから、シニア世代のもう一つの動機は、御自分の人生への悔恨、ざんげなんです、自分の子育ては何もできなかった。それからもう一つは、パートナーである妻から、定年迎えてずうっとうちにいられてもということで、出てってちょうだいと言われて追い出された。理由は様々です。  でも、そうした方々がしっかりと、子供とは、子育てとは、地域とは、学んでいただいたとき、そこからにじみ出る優しさというのも同時にあります。不要な肩書人間は当然捨てていただきます。例えば、講座を受けているときにも一緒に椅子を片付けていただく。それから、私の法人ではカフェもやっておりますが、コーヒーもちゃんと入れる、カフェマスターにもなっていただきます。現役時代は入れてもらったけど、入れて飲んでいたけど、入れたこともないような方が入れる側になってみたとき、初めてサービスとはどうあるかということを学んでくださる。  そういう意味では、長年組織、団体で培った技術、知識というのは、私は物すごい宝、だから現役時代の名刺で勝負してという、その小さな名刺にはあなたの人生全てが入ってますよね、それを今度は地域の親、子のためにどうか生かしてくださいという願いを込めてのことで、それに十分に今応えていただいていると思っております。

青島健太日本維新の会

○青島健太君 ありがとうございます。  私、六十四歳ですけど、我々の仲間はもうほぼ定年をしているわけですが、まあそのアイデンティティーとか自分のキャリアまで全部捨ててしまうとなったら本当に不安ですけれども、今先生のお話のように、それを自分の真ん中に置きながら活動していくということは大事なことだなというふうに思います。  時間があと一分になってしまいました。  分かち合いのリーダーというお話、大変共感をさせていただきます。私、スポーツ長く関わっていますけれども、例えば、今日から始まりますけど、WBC日本代表を率いる栗山英樹監督、あるいはサッカー日本代表を率いた森保一監督、今までのリーダーと違うように思います。非常に分かち合うリーダーで、多様性を認めて、そしてみんなの力を総力で戦おうというスタンスのように思います。  これ、リーダーというのはどうあるべきかというのはむしろ時代が決める、あるいは時代の要請の中でこういうマネジメントやリーダーシップというのがこの時代に合う、それを持ち合わせている方々が登用されていく、まあスポーツの場合は選ばれるわけですけれども、そんなふうに思う中で、女性だけじゃなくて分かち合うリーダーというのはもうこの今の時代にはとっても必要な存在なんだということを感じさせていただきました。  お二人の先生、どうもありがとうございました。

嘉田由紀子国民民主党・新緑風会

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。国民民主党・新緑風会の嘉田由紀子と申します。  大日向様には、ちょうど十年前、二〇一三年に、私が知事の現職のときに滋賀県の方に講演に来ていただきました。十年ぶりでございます。ありがとうございます。  それから、本田様には、私はずっとファンだったんです。もう若者と教育社会学の本はたくさん読ませていただきました。  ということで、本当に今日、お二人に中身のある大変重要な御提案いただきまして、大変うれしく思います。時間が十一分しかありませんので、前半を大日向様。私、先生って言われるのが苦手でして、さん呼びでいいですか。大日向さんでいいですか、本田さんも。自分が先生と言われるのが苦手なので、さん呼びにさせていただきますけれども。  大日向さんの、まさに日本の少子化の理念、哲学、大いに共感をいたします。それで、私は知事時代に、子育て、例えば保育は、保育に欠ける措置ではなく、福祉ではなく、誰もが必要な子育て支援ということで、知事時代に専業主婦でも使える保育クーポンを全部県費一〇〇%で、全国でも初めてだったと思います、進めました。そうしたら大変な抵抗がありまして、二つの抵抗が。一つは首長さんたちから、そんな予算出せない。それからもう一つは現場も抵抗があったんですけど。ただ、結果的には、地域の子育て力、まさに専業主婦の方が困っていたんです。虐待の加害、かなり多くが家にいるお母さんだったというようなところから、進めてまいりました。  それと併せて、女性の活躍で生涯就業力、これも大事ですね。それを分かち合いのリーダーと言っていただいている。実は私は、ちょっと古典的ですが、タルコット・パーソンズが手段的リーダー、強いリーダーですね、それに対して情緒的リーダーということで言ってきたんですけど、この分かち合いのリーダーっていいなと思いまして、これから使わせていただきたいと思います。  それで、二つ質問というか、教えていただきたいんですけど、実は私は、知事終わって、大学の、スポーツ大学の学長をさせていただきました。そのときに、大学のその将来計画、子供たち、生徒さんの将来計画が、就職どうするかばっかりで、就職の先、あなたの人生どうするのって、結婚は、子育てはということで、ほとんどこの部分が大学教育の中にないんですね。それで、大日向さんがやっていらっしゃるまさに生涯就業力を女子学生に付けるというのは大変重要だなと思います。  でも、実は学長・理事長会議に数百人いるんですけど、そこでライフプランを大学でやりましょうと言ったんですけど、何というんでしょうか、会場はしいんとして誰も共感してくれなかったんですね。そして、文部科学省にも提案したんですけど。私は、学長、教授として、男性も聞いてくださいと、男子、女子全員に、あなた、一生、結婚、子育てどうしますかと考えていただいて、それを戻すというのをやっていたんですけど、今後、文部科学省さんなどにその辺りの提案、男性も含めてライフプラン作れるような教育が大学で必要ではないかと思うんですけど、それを一点、お願いします。  それからもう一点は、一人母親、あるいは、どちらかというと、離婚の後、日本は単独親権ですから、子供さんとお母さんが孤立するんですね。それを私は現場で見てきたので、やはり単独親権を、まあ海外ほとんど共同親権ですけど、共同養育計画を作り、共同親権にしましょうとずっと法務委員会で提案しているんですけど、なかなかこれが進まないんですね。DVから逃げられない、あるいは虐待から逃げられない、単独親権を維持してほしいというのが一人親の女性から多いんです、声が。  この辺りのところで、この三組に一組が離婚するような今の時代、どうやったら孤立する母親、あるいは貧困や虐待に苦しむ子供たち救えるのかということで、共同親権というのは現場で取り入れると大きな問題があるかどうか、その辺り、済みません、二点御質問させていただきたいんですけど、よろしくお願いします。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 十年の時を経てお目にかからせていただきまして、ありがとうございます。  まず、一点目でございますけれども、保育に欠けるという言葉、当時欠如の欠けるだったと思いますが、嘉田さんがなさったことはまさに保育に意気込みを掛けることと、そういうふうに私も応援させていただいてまいりました。  そういうことを社会全体でコンセンサスとして得るために教育はどうあるべきか、とりわけ大学教育はどうあるべきかという御質問だったと思いますが、そこは私は一般教育の在り方を見直すことが必要だと思います。私の時代は一般教育というのはありましたが、最近はなくなってきた。一般教育に代わるものとして、共生社会を生きるということはどういうことかと、社会保障とはどういうことかと、男女共同参画とはどういうことかということを男女問わずしっかりと若いときに学問としても学ぶ、そういう機会を私は必要だと思いますし、そういう方向に向けて動き出すことも考えているところでございます。  もう一点は、親権の問題でございます。  これ、本当に難しゅうございますね、単独親権がいいのか、共同親権がいいのかと。私も、それほど多くはありませんが、離婚に至ったときの親権問題、相談にあずかったことがございます。実に多様です。DVから逃げるためには単独親権が必要な御家庭もあります。一方で、今までの母性優先の原理だけでは、本当はお父さんだって親権欲しいという、そういうときに共同親権が必要な場合もあるかなと経験いたしました。  問題は、それぞれの事情に応じて丹念に自治体あるいは地域が耳を傾けることです。私も、一回、二回のヒアリングでは到底どちらがいいかという結論が出せない事例が多うございました。そういうことに関して、回を重ねてきちっと当事者の話を聞き、子供をいかに守るか、そういう仕組みです。そして、児童相談所、家庭、子ども家庭支援センターと連携して、私たち市民が何ができるか、そういう方々を一人として取り残さない、それは子供を守るためでございます。そのための地域挙げての仕組みとマインドづくりについて今日お話をさせていただいたところでございますが、それに関連した御質問をいただきましてありがとうございました。

嘉田由紀子国民民主党・新緑風会

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。丁寧な、また現場からのお声聞かせていただきました。この後また法務委員会などで議論重ねさせていただきたいと思います。  本田さんの方には二件お願いしたいんですが、一件はまさに予算ですね。  私も、四十人学級に直面をして、実は知事選挙に出るときに、公共事業はもちろん必要ですけど、公共事業を節約してでも子育て、教育にお金を入れましょうということで、かなり批判もいただきながら、ダムを止めたり駅を止めたりしながら、その予算を少人数学級の方に回したんです。それで、二〇〇六年のときには四十人を三十五人に、そして三十人にということでやり始めたんですが、結局、二期八年掛かって三十五人までしかできませんでした。予算不足です。  三分の二が自治体です、今、御存じのように。三分の一が国です。これも、二〇〇五年の知事会以降、自治体が半分になってしまったんですけど、自治体が三分の二になったんですけど、それまでは国が半分持っていたんですね。  そうすると、毎年ですから、教員の、一般財源をきちんと充てないといけないので、一回限りで例えば今年は四十人を三十五人に一学年ずつ、一学年変えるのに、滋賀県は大体一万二千人の教員がいるんですけれども、二十億くらい掛かる。そうするとといって、本当に予算がないんですね。  このことを考えると、まさに京大の柴田先生が、二・一兆円あったら高等教育どうにかなるんだということで、予算の確保についてですね。あるいは今、今日、本田さん出されたのは三千六百億円で三十五人学級実現ですよね、それから三十人ということで。ここは何としても与野党協力して、先生の数が増やせるように、これが一番原点だろうと思います。  それからもう一点は、私、七三年、アメリカへ留学したときに、教室がスタディータイプじゃないんですよね。空間が既に小グループでディベート方式、七三年です。これでは、日本はいつまでたっても教えてもらうスタディー方式。この空間の配置だけでも、学校、基本的には小グループで、スタディー方式やめましょうというようなことの提案ができないかなと、二点目はそれでございます。  予算の問題と空間配置の問題、教えていただけますか。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 重要な御質問ありがとうございます。  予算については、これは決断して割いていただくということしかないと思っています。  御指摘いただいたとおり、義務教育費国庫負担金が三分の一ということに減らされてしまったということも日本の教育に対しては大きなダメージになりました。そういうことをずんずんやってきてしまったわけです。それを元に戻していただくものは元に戻し、きちんと保障していただきたいということです。  資料にも書きましたけれども、防衛予算などに関しては物すごい額が今年増やされております。ということは、予算の余裕はあるということです。これは決断の問題です。ですから、今、日本の国民全体に対して、この苦しみの根源になっているような教育の在り方に回していただくという選択をしていただければ済むことと思っております。  教室空間の話なんですけれども、そういったようなグループを含むような学習を可能にするためにもやはり少人数は必要だと思います。ただし、今のひしめくような学級の中でも班別の活動みたいなことはそれなりに行われてはいますので、グループ活動のために少人数化が必要というよりも、もう少し丹念な指導のために必要というふうに主張したいと思います。  以上です。

嘉田由紀子国民民主党・新緑風会

○嘉田由紀子君 ありがとうございます。大変勉強になりました。  この後また、私ども立法府の責任として、子育てしやすい、また何よりも日本の子供が自己肯定感を持って国際的にも活躍できる場にしていけたらと思います。  ありがとうございました。

田村智子日本共産党

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。今日は本当にありがとうございます。  まず、大日向参考人にお聞きをいたします。  理由を問わない一時保育って本当に大切だなというふうに思いました。やはり行政ではできないところをそういうふうにNPOの方、市民の方、そういう皆さんで補っていって、全体で子育て、特に女性、母親を支援していくということはとても大切になってくるというふうに思います。  それで、その行政との連携の在り方というのを一点お聞きしたいのと、もう一つ、私が最近感じておりますのは、大日向参考人が先ほど言われた、自己肯定感が非常に乏しい。そうすると、母親にとっては自分の子育てを採点されているような、否定をされるような、こういうことを恐れて様々な社会的な場に連れていかれない。あるいは、保育士さんの家庭訪問というところに来られたら何か否定されてしまうんじゃないかというおそれがあって面談を回避するというようなことも起こっているんじゃないだろうかというふうに思うんです。  そういうNPO等々の皆さんの子育て支援の行政との連携の仕方と今のような私の問題意識について、何か御意見をお聞かせいただければと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 御質問ありがとうございます。  行政との連携は、まさに二十年掛けて取り組んでまいりました。結論と申しますのは、ウイン・ウインの関係でありたい。行政が持っていらっしゃるのはやはり社会的信頼とお金です。NPOはフットワークの軽さと当事者意識。その両方がお互いにどれだけ力を携え合うことができるかです。  幸い、私どものNPOが関わらせていただいている幾つかの自治体は対等にNPOを扱ってくださる。この対等にが非常に大事です。でも、全国的に見ると、NPOを対等には見てくださらない。  こんな逸話があるんですね。子育て支援活動を表彰する団体にも、活動にも携わらせていただいているんですが、表彰して何がうれしかった、表彰されて何がうれしかったかというと、どこどこからこういう表彰を受けたと言われたら、その市役所に行ったら、今までどんなにアポを取っても廊下の立ち話だった、それが椅子が出てきたと、パイプ椅子がですよ、そこで初めて話ができた。これが現状です。  ですから、私は自治体の方に、もう本当に私どもは恵まれておりますが、是非お願いしたいのは、地域には本当に当事者性とフットワークの軽さ、やる気がある人たちが本当たくさんいる、その方々の思いをどうかきちっと向き合っていただきたい。  そしてもう一つ、行政はジェネラリストでいらっしゃいます。これも大事です。でも、私は、この三月末から四月に向けていつもどきどきするのは、異動通知なんです。せっかく時間を掛けてタッグを組めたと思ったら、新しい方がいらしたらそこからまたやらなくてはいけない。どうか前任者の良いところは引き継いでいただきたい。これは行政、自治体にいつもお願いしていることでございますけれども、対等なパートナーシップが一つでございます。  それから、母親たちが自己肯定感を持てない、まさに先生がおっしゃるとおりです。私は生きていていいんだろうか、母親になったけどこんなにいろんなものを奪われて、夫とも会話ができないという女性たちがいます。対等な言語がない。働いているときは対等な言語で会話ができた。でも、子育て楽しい、子供もかわいい、幼児語も大切、でも、はっと気が付くと、夫がどんな声でも聞くよ、言ってごらんと言われても、そんな高みから言わないで、共通言語がない、この声なんです。  ここを、私は、まず男性にも、それから女性たちがお母さんとなってからも、学ぶ機会、自分の時間を大切にしてほしい。社会人としての自分をしっかりと取り戻させて、それが実は、いろんな生き方があっていい、いろんな子育てがあっていい。そして、何よりも、子供の育ちは子供が決めます。親が、大人が方向を示すものではありません。その子らしく生きていく、その傍らに寄り添う、そういう親である。  今もう一つ心配なのは、間もなく小学校が始まりますと、お母さんたちは、これができなきゃ駄目よ、小学校へ行ってから恥ずかしいのよと。とんでもないことです。小学校は楽しいと言ってあげたい。  でも、なぜそんなことを言わなくてはいけないかというと、私の子育てが小学校へ行ってから評価されるんじゃないか。これもできない、字も読めない、これもできない。そんなことではなく、母親一人の子育てから社会の皆で担ってということは、そういう思いを込めてのことでございました。  御質問ありがとうございました。

田村智子日本共産党

○田村智子君 本田参考人にお聞きしたいと思います。  少人数学級のお話、改めて聞きまして、これはやっぱり二十年から三十年のスパンでどうだったかということを考えなきゃいけないなと改めて思いました。  一九九〇年代の終わりぐらい、後半ぐらいに国政上の大争点になったんですよね、少人数学級は。長野県のある自治体が独自にやったら、教育委員会と国からそれは駄目だと言われて弾圧されて、それでいいのかということで野党が共同で少人数学級法案を出したりということが九〇年代の後半にあったわけです。  それで、やっぱり少人数学級やらない理由として、競争的な環境が子供たちの成長には必要だということを文科省は言い続ける。これが今、人口減少の下では学校統廃合で、やっぱり一定規模の子供がいなければ駄目だといって統廃合が進んでいく。それから、一人一人を大切にといったときには、到達度別の授業をやればいいというふうにして少人数学級を否定し続けてきたわけですね。  そうやって育ってきた子供たちが、今二十代後半から三十代なんですよね。二十代、三十代なんですよ。そういう教育が何を今若い世代にもたらしているのかということを、やっぱり少子化という問題考えたときに今検討すべきではないかと。それ、二十年、三十年スパンで検討することは必要じゃないかと思いますが、このことについて御意見いただければと思います。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 大変重要な御質問ありがとうございます。  もうおっしゃるとおりで、一時期までは順々に学級規模が減らされてきたわけなんですけれども、特に今世紀に入ってからそういう動きは止まってしまったんですね。全部、おっしゃったように、習熟度別学級がどうのこうのとかいう、そういういわゆる加配ですね、特定の目的に関して多くは非正規の教員を配置するような形で、定数自体を改善するというそういう動きは止まってしまったわけです。  多くの場合、それを止めてきたのは財務省だということも、これも教育に関わる者であれば全員が知っていることです。財務省と文科省の間の攻防みたいなことも毎年のように繰り広げられていることも、これはもう知れ渡っています。  なぜこのように財務省が頑強に教育にお金を付けようとしないのかということ、その理由については外部からは心底分かっているわけではありませんけれども、そこに大きな問題があるということ自体は極めて確かです。  競争的な環境がどうのこうの言われていますけれども、その結果、日本で、日本の教育がどうなっているかということを示したのが、一番象徴的なのが今日の図表の一です。  競争を強いられ、学ぶことの意味は形骸化し、不安にさいなまれ、勉強嫌いのがり勉なんだという言葉を今の子供たちを称して表現したインターネット上の発言があったんですけれども、まさにそういうですね。あと、追い立てるような、大人数の中で競争に向けて、その垂直的な序列の中で少しでも上に行くことを目指して駆り立てるようなことが、教育が、今の子供たちの、若者の状況を生み出してきてしまっていると。  それは、一時期の大量生産のような時代であれば、何かそういうがつがつやるだけの人たちが重要だった時期もあったかもしれませんけれども、今や社会も経済もそんな状況では全くなくなっているのに、極めて古い、お金を掛けない、効率のみを重視した学校教育の在り方を少なくとも財務省は強硬に続けようとしていますね、財務省だけではないかもしれませんけれども。  この大問題、それは国全体、国民全体を疲弊させ、たたき潰すような結果になっているということについて、議員の方々はもう心底から認識していただきたいと心から思います。

田村智子日本共産党

○田村智子君 もう一問、本田公述人にお聞きをします。  その二十年、三十年スパンで考えたときというのは、やはり、メモのところに書かれている、非正規の雇用が非常に割合として増えた。ここ何年間かで減ったというので見ているだけでは駄目だと思うんですよ。やっぱり二十年、三十年のスパンで考えたときに、若い人たちの中にこの非正規の雇用の割合が明らかに広がってしまっていると、このことが今この少子化問題等々にもたらしている問題、このいただいたペーパーの中にはあるものですから、少しこの点についてお話をいただければというふうに思います。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 済みません、今質問してくださったのは、非正規教員の話、非正規雇用全般の話ですね。  それはもう明らかに増えてきております。特に、九〇年代に入って九五年に日本経済団体連合会がそれを是認するような報告書を出して以降、それが拍車を掛けて、今や非正規は非常に増えてきていると。特に女性の中でじりじりじりじり増えたりとか、今や高齢者も一回退職した後に働かなければならなかったということも大きな理由にはなっておりますけれども、若年男性の中でもじりじり増えてきています。  こういう非常に近視眼的な、短期的な見通しの下で、要るときだけ人を雇おうとするようなやり方を日本の企業というのはどんどん進めてきたわけですね。これが、賃金の低さや、日本で賃金が、実質賃金が全然上がらないような状況であったりとか、あと将来不安、未婚化ということの根源にあるということは、まあ確かだと思います。そして、このような非正規雇用の問題が、例えば若年層であれば非大学進学層であるとか、特定の地域とかに凝縮された形で生じているということも大きな問題だと思います。  それに直撃された九〇年代の苦しみを味わったのが氷河期世代であって、そういう今四十代になっている彼らは非常にその不利をまだ引きずっている。今後も加齢とともに社会保障が必要な対象になっていくということが大問題なわけですけれども、そこも十分な手が打たれないままになっているということは大きな問題だと思います。

田村智子日本共産党

○田村智子君 ありがとうございました。終わります。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 お二人の公述人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。  まず最初に、大日向公述人にお伺いいたします。  ちょうど私の恵泉出身の知り合いがいたんですが、自分自身、開拓者として道を明るく照らせる女性におなりなさい、真っすぐな狭い道、人踏みならした道を行くことに満足しちゃならないというような、そういう理念で育てられた方だったんだなというのを改めて学ばせていただきました。生涯就業力を身に付けるために、今、世の中に足りないものは何でしょうかというのを一問。  それから、本田公述人に。  私自身は、自分の能力がないためか、女性にはかなわないなというふうに常に思っている人間なんでございますが、今、学校の先生たちも一生懸命いろいろ頑張っていらっしゃると思うんですけれども、それだけじゃなかなか足りないと。だから、私はいつも民間教育の皆さんとの連携とかそういうノウハウを取り入れて公教育をやることの必要性というのを考えるんですが、その御意見をいただきたいと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) 私ども恵泉女学園大学、学園の創立者、河井道の言葉を引用してくださいまして、本当に感謝でございます。  一九二九年、自立した女性が世界平和を築く、そこを願って女子教育に祈りと願いを掛けて創立した学園であり、大学でございます。今、その理念を生涯就業力というところに受け継いで、私が学長になってから六年、七年掛けて確立したことでございますが、何が一番大切かというお尋ねかと思います。  それは、女性だけでなく男性もそうだと思いますが、これからの人生、一直線ではないんだということです。どんなときでもやり直せる。それも一人ではない、みんなで共生の心でやり直せる。その手応えを私は学問として学んでもらう。そして、社会もそのために、NPOでそうした地域挙げて若い世代、ミドル世代も応援したいということでございます。  生涯就業力は、大学で学んでいるときだけではなく、私の大学では卒業後も応援しています。生涯にわたって、卒業してから長い人生、女性の一生を確かなものとする、この理念、そこが社会を挙げて様々な仕組みをつくっていただけたらと思いますが、何よりも、女性自身もしなやかに、したたかに、たゆまず生きていく力、マインドを蓄えることだというふうに考えております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 学校現場が疲弊しておりますので、既に民間教育のノウハウを取り入れようとする動きは様々に大きく動いております。  危惧されるのは、例えばその民間教育と言われるものは、いわゆる教育産業のような事柄を、会社をイメージするならば、それは必ず収益というものを意図して食い込んできているということが危惧されるところです。  また、NPOとか、別に収益重視ではなくて、いわゆる志の下に何か学校現場ではない発想を入れてくださろうとするところは有り難いとは思うんですけれども、ただ、NPOというのは多くの場合小規模であって、やはり全国的にナショナルミニマムとして何かのサービスを提供できたりするわけではないんですね。というと、非常に偶発的でむらむらな、その恩恵にあずかれるところもあればあずかれないところもあるということで、非常に地域間で教育の質に差が付くことになってしまいます。  また、今は学校現場が疲弊しているからこそ、そういう教育産業であれ、NPOであれ、力を借りたくなっている状況があるわけなんですけれども、それが一部を丸投げしてしまったり、かなり重要な業務であっても丸投げしてしまったり、それが結局のところ教員の方々のスキルをそぐことにつながってしまわないかとか、非常に様々な懸念があります。  それよりは、公教育の本体をきちんと充実させていくと。まだらに、むらに、時には収益重視の教育産業に恩恵を回すようなやり方をするのではなくて、まあ部分的にそういう場合を全否定するわけではありませんけれども、そういうことが仮になくとも本体の公教育で事が足りるような充実が必要であり、そのためにこそ教員の増員ということを私は提案しております。  以上です。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 ありがとうございます。  大日向公述人、私は、やはり人は人の関わりの中で生きているんだというふうに思っていて、やはりどうやって社会に出て、例えば子育てであったり仕事であったりとか、全てをやっぱりいろんな人とうまくやっていけるその人間力、協調力であったりとか共生力、こういうものがやっぱり必要だと思うんです。  そうすると、今引きこもりとかよく言われる不登校の子供たちは人と触れないですよね。だから、これ、いかにそうやって人と触れるような仕組みをつくっていくかということが大事だと思うんですが、特に不登校やニートと言われる、まあニートというか引きこもりと言われるそういう人たちの対策でお知恵があれば是非御教授いただきたいということ。  それから、本田公述人に。  私は元々、塾で勉強を教えていたんですね。それで、公教育のレベルが上がれば当然民間教育のレベルも上がるんだと、そして日本の国力、教育力が上がることによって国力が上がっていくという、そういう発想でこの十二年間ぐらいずっと、現職のときも公教育と民間教育の連携というものをずっと提唱していったんですね。  おっしゃるように、大企業じゃないと全国一律にできないというのはあるんですが、私自身の考え方は、地域の特性を生かした教育があってしかるべきと。だから、国はそれこそ箱を用意する、教育するその場所。で、その教育の理念は、元々、寺子屋だったような私学であったりとか、そういうところの知恵を生かしていくという、そして、地域には藩校みたいな、一校そういうものがあればいいと、昔のですね。  だから、そうやって地域性のある教育、独自な教育をやっていくべきだという考え方もあって、そういう意味において、大企業が収益を目的に参入するというのは、私自身は大学入試改革の中でいろんな弊害をずっと見てきているので、そういうことはあってはならないというふうに思っておりますので、そういった意味においての民間活力と公教育の連携というか、そういうところの融合について、もう一度御意見いただきたいと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えさせていただきます。  まず、不登校の問題でございますが、おっしゃったように、人と関わるということは、不登校だけでなく引きこもりも全てそうだと思います。そこで大事なのは、人と関わる場というのを、既成の概念を外すことだと思うんですね。  これまで、学校に行けない子供たちに対してとにかく学校に戻すことを非常に重視してきた。でも、教育機会確保法というのができて、学校を休むことも認めてくれた、これとっても大きなことです。階段を上るときに、一気にばあっと駆け上るのではなくて、途中で踊り場がある、そこでゆっくり休むことも大事、こういうメッセージが、行きたくても学校になかなか行けない子供たちの私は救いとなると思います。また、何よりも不登校の子供を抱えている親の心の痛み、これは想像を絶するものがあります。もう学校行って当たり前という既成概念、そこからいかにみんなでほぐしていくことが大事かと思います。  私が、昨年ですが、つくばの方に伺ったときに、自治体と地域の方が総出で不登校の子供、そして親を支える大きなイベントをしてくださっていました。そこでは本当にあったかい空気が流れていて、ああ、人と人とが関わるということはこんなに場所あるいは既成概念とらわれないと豊かなものになるんだということを勉強したことを思い出しました。  また、引きこもりですが、これは当人ももちろんですけど、家族、親の苦しみも想像を絶するものがあります。何かタイトルちょっと失念してしまったんですが、文部科学省がそうした引きこもりの人たちと家族を応援するサイトというのを立ち上げてくださって、そこに丹念な相談ということをしておられる実践を拝見したことがあります。そこで何が救われるかというと、家族なんです。家族、親たちが引きこもっている自分のお子さんたちに対して、まず、あるがままで認めていこう、そこからスタートするということでございます。  御指摘のように、人と関わる関わり方を共生社会の中でこれから本当に社会挙げて求めていきたいというふうに思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 再びの御質問ありがとうございました。  ちょっと繰り返しっぽくなってしまうかもしれませんが、ちょっと大島議員が公と民間の連携であるとか藩校のような地域独自の教育ということでどういうことを具体的にイメージしていらっしゃるのかいま一つ定かではないのですけれども、さっき申しましたように、そういう良い塾もあるでしょう、良い藩校のようなところもあるでしょう。ただ、それ、あったりなかったりするんですね。つまり、極めて偶発的なわけです。  そういうものは、私は国の政策の議論をしておりますので、そういう、何かあるんだったらそれは利用していただいても構いませんけれども、それはオプショナルであって、それがないところでは何もかも成り立たないような政策というのは国としては考えるべきではないと。なくても成り立つようにするためには何かということを考えた場合に、余りにも民間との連携であるとかいうことを強調し過ぎてはいけないと考えております。  実際には、学校現場ではいろんな方に入ってきていただいたりとか連携したりしている例はもう結構あると思います。それ以上に何を言うのかということがやや疑問ではあります。  以上です。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 ありがとうございました。  大日向公述人がおっしゃった、まずは人とのその関わりという部分は大変参考になりましたので、そこは頑張っていきたいというふうに思います。そしてまた、本田公述人、ありがとうございました。  終わります。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 浜田聡でございます。  昨日まで会派名NHK党だったんですけど、本日から政治家女子48党とさせていただきました。私自身は男性なので、この名前、私含めて皆さん違和感あると思いますが、よろしくお願いいたします。基本的には、政治に挑戦したい方、候補者としては女性という形になります。よろしくお願いします。  本日、公述人のお二人の方々、どうも本当にありがとうございました。  早速質問していきたいと思うんですけれど、まず、ちょっと本筋から離れるかもしれなくて恐縮なんですけれど、国際比較の指標の適切性についてお聞きしたいと思います。  といいますのも、例えばジェンダーギャップ指数というのが度々聞かれるわけですね。こちらは、よく言われることですが、先進国は日本は最下位とされております。一方で、ジェンダー不平等指数というのがあります。こちらは内閣府のウェブサイトにも載っているものなんですけれど、こちらは日本の順位見てみると二十四位ということで、さほど世界の中で劣っているわけではないように思うわけで、何が言いたいかというと、指標の選択によって結構変わってくるなというところなので、この国際比較の指標についてお二人の御意見をいただければと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えいたします。  御指摘のとおり、国際比較というのは非常に難しゅうございます。背景となる文化、社会の仕組み、様々に違うという、そこをやはりどれだけ勘案するということが大事だと思います。  ただ、ジェンダーギャップ指数で私は注目すべきは、日本の女性が置かれている経済分野、政治分野の低さです。昨年の指数では、百四十六か国の中で経済分野は百二十一、政治参画分野は百三十九、これは指標の背景にある文化、社会の構造の仕組みを問わず、例えば議員の参加率を見ても明らかです。あるいは、女性の非正規雇用が多い、賃金格差、これも明らかです。  明らかなところ、特に女性に関しては政治的参画と経済的自立、これは女性が、まあ全ての人がということですが、自分らしく、自分の大切に生きるメルクマール、まず第一歩だと思います。そこは私は大事な点だと思っております。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 国際比較、確かに難しいんですけれども、重要なことが二つあると思います。  それは、できるだけ多くの国際比較データを使う、多角的に見るということです。あともう一つは、ジェンダーギャップ指数もそうですけれども、ざっくりしたランキングみたいになっているものは、それが一体どういう項目の寄せ集めから成り立っていて、それは妥当なのかどうかということまで掘り下げて見ていくということが重要で、小さい項目に下りれば下りるほどそこから得られる日本の状況が詳しく分かったりすることは多々ありますので、この二点に気を付けて使えば、国際比較の様々なデータを、日本の状況が、日本が今どんな国なのかということを把握するために使うことはむしろ不可欠だと思っております。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。大変参考になりました。  次に、本田公述人にお伺いしたいと思います。  教育不足と関連して、その対策の一つになるかどうかということで、教育のDXについてでございます。  これ、デジタル技術を用いて教育現場を良くするということだと私は承知しているんですが、私自身、大学二回行っておりまして、特に二回目の受験のときには、いわゆる民間の教育、予備校、いわゆる予備校でお世話になったわけなんですけれど、二十年前なんですけれど、衛星放送、衛星教育といいますか、そういう授業だったわけですね。つまり、教員の方が目の前にはいなくて、画像を通して授業を受けるというものでございます。  これですと、いろいろといいことがありまして、一人の教員の労力で全国各地で授業ができるという利点もありますし、もう一つは、やっぱり衛星放送で授業をさせるということは、それなりに教え方がうまい者が選ばれるわけなんですね。  ということで、これについては、教員不足の解消、まあ解消になるかちょっと分からないんですけど、そこの対策にもなると思いますし、あと、教育、教員のレベルアップにもつながると考えているわけなんですが、先生の教育DXに関するお考え、いただければと思います。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) ICTは、私は、例えば学校の運営業務などに関しては使っていけばいいと思います。ちょっと情報の管理、個人情報などは学校はなかなか厳密にしなければならないので、そこはしっかりやるとしても、業務を効率化していくということは必要だと思います。  教育のごく一部にオンラインでの教育などが含まれていてもいいと思いますけれども、それで今の教育の大問題が全部解決されると思ったら大間違いであって、オンラインというのは、多くの全国の、おっしゃいましたね、全国の多数の子供、児童生徒は一人の教員の授業を見ることはできますね。見るわけです。もう数万の児童生徒対一人の教員の授業ですね。これは極めて一方向的ですね。一方向の知識を伝達してくださるものを多くの児童生徒が受動的に受け止めるような形態の授業にならざるを得ないわけです、オンラインというのは往々にして。そうではない双方向的なオンラインもありますけれども、それは当然ながら多数の教員が少ない子供たちを相手にしなければなりませんね。  ということで、今必要なのは、きめ細かいやり取りであったり、個々の教員がそれぞれの子供のつまずきや良いところをきちんと見取って、足りないところは埋め、良いところは伸ばしという、そういうやり取りが必要なわけで、それはオンライン教育などで解決されるものではない。  だから、事務的なところでDXは最大限活用していただき、教育では部分的には活用可能だと思いますけれども、それが魔法のつえのようになるわけではないということは申し上げておきたいと思います。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございました。  次は、お二人にお聞きしたいんですけれど、少子化対策ということで、子育て支援のお話、多くいただきましたし、教育に関するお話もいただきました。ただ、少子化対策というのは、そもそも結婚というのが非常に重要なんじゃないかなと思います。もちろん、今の世の中、多様な社会ありますので、家族の在り方はいろいろあると思いますが、やはり結婚というのは重要だと思います。  そこで、結婚という選択を後押しするような政策に関して御意見をいただければと思います。

大日向雅美恵泉女学園大学学長

○公述人(大日向雅美君) お答えいたします。  私は、結婚は、愛する人と人生を共にするためにすべきものであって、少子化対策ではないと思っています。子供を産むために結婚するわけではありません。不妊の方もいらっしゃいます。様々な事情で子供を持たない選択がなさる方もいらっしゃいます。多様な生き方をどれだけこの日本社会は認めてこなかったか。  今、少子化対策というその、まあ確かに有事だと言われます。だからといって、結婚を後押しすればいいということでは私はないと思っています。むしろ、繰り返して恐縮でございますが、女性が本当に自分の人生を自分らしく生きられる、そしてそれを、パートナーである男性も同じです、共に生きる、それが結果的に結婚という形になれば、それはとても良いと思いますが、少子化対策に結婚の後押しということは私はうなずけません。  以上でございます。

本田由紀東京大学大学院教育学研究科教授

○公述人(本田由紀君) 私も大日向公述人と同じです。  既に地域によっては、いわゆる官製婚活と呼ばれるような、結婚しろしろ的な施策が打たれているような地域もあります。そういう圧迫、近隣に何か仲人を名のるような人がいて、しないのかとか、しろとか、これはどうじゃとか言ってくるような状況そのものが、むしろその地域から若者、特に女性ですね、を外に流出させるようなことになってしまっていると思います。  大体、人の気持ちの機微というものは、少しでも分かっていれば、結婚しろしろ施策みたいなことになるわけがないんです。何か条件で人を釣って、子供を産んだら幾らとか、結婚したら幾らとか、そういうことをすればするほどむしろ逆効果になってしまうという、人間の心というものをよく知った上での施策というものを練っていただきたいと考えております。  大日向さんも言ったとおりなんですけれども、したいと思えば安心してできるような、あるいは自然な出会いの場が豊富に得られるような、そういう側面援護であれば、別にさりげない形でやっても構わないと思いますけれども、絶対にそれが圧力のような形になってはいけないと考えております。  以上です。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 大変貴重な意見、ありがとうございました。やはり私自身も、やっぱり先入観があること、気付かされました。今後の政策立案に生かしていきたいと思います。  本日、ありがとうございました。終わります。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、大変有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。記憶と心に残るお話でございました。ありがとうございます。(拍手)  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ─────・─────    午後二時開会

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  令和五年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、令和五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、外交・安全保障について、公述人東京大学公共政策大学院教授鈴木一人君及び防衛ジャーナリスト半田滋君から順次御意見を伺います。  まず、鈴木公述人にお願いいたします。鈴木公述人。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ただいま御紹介にあずかりました東京大学の鈴木でございます。今日は、こういった参議院の予算委員会にお招きいただきまして、ありがとうございます。  本来、ここ予算委員会では恐らく防衛費に関連する議論が中心となろうかと思いますけれども、私は、今日は外交・安全保障というテーマで、より広く、現在我が国が置かれているこの国際情勢、国際社会がどうなっているかという、この状況と枠組みについて概略的なお話をさせていただきたいというふうに考えております。  一言で今日私が申し上げたいことを申しますと、簡単に言えば、この第二次大戦後八十年近く続いてきた国際秩序というのは今まさに変化しているという、こういうところにあるというふうに考えております。  この第二次大戦以降の国際秩序というのは、大きく三つの柱があったというふうに考えております。  そのうちの一つが、核をめぐる力関係。大国が、大国のみが核を持ち、そして大国が責任を持って行動をすることによって国際秩序が一定程度の安定を保つ、こういうことが前提にありました。これは、後ほども述べますように、ロシアのウクライナ侵攻によって大きく変わっているということが一つあります。  第二が、政治と経済の分離というのが終わったということに、そこに起因するものだと思っております。これまで、第二次大戦後の世界経済秩序というのは、ガット、WTOを中心とした自由貿易の仕組みであった。つまり、自由貿易というのは経済の活動に政治的な介入をしない、関税や規制を緩和して、そしてグローバル化、経済のグローバル化を進めることによって国際社会において一つのグローバル市場をつくっていくことが、これが何よりも最も効率的であり、最も豊かになる方法である。そして、それは結果的にこの国際社会の安定をもたらすものだというふうに考えられてきた。  ところが、二〇一〇年の例えば中国のレアアースの輸出禁止ですとか、今アメリカが進めているような中国に対する半導体輸出規制など、政治的な目的のために経済的な市場に介入する、そういうのが今当たり前になりつつあるという意味で、この第二次大戦後の世界をつくってきた自由貿易の仕組みというものが今変化しつつあるという状況にあると思います。  そして、第三のこの柱というのが、先進国が中心となった世界秩序をつくるということ自体が今変化しているということになってきていると思います。  第二次大戦後、例えば一九五〇年代、六〇年代、七〇年代というのは、世界経済の八割近くをこのいわゆる西側諸国、OECD諸国が担っていたわけですけれども、しかし、今になって、このいわゆるグローバルサウスと言われる新興国、途上国、その代表格として、中国ですとかインドというのが自らをこのグローバルサウスの代表として任ずるような、そういうような行動というのを取るようになってきて、それが一定のパワーとなってきているという意味で、これまで世界はG7、その先進国を中心として構築されてきた、そういう秩序であったのが、今やG7が国際社会におけるマイノリティーになりつつあるという状況にあるということが、この第二次大戦後の国際秩序を変えているもう一つ大きな柱の変化だというふうに思います。  お手元にあります資料は、それを少し具現化したような内容になっております。  まず第一の、先ほど申しました三つの中心のうち、今、経済と政治の分離の問題は、一番色濃く現れているのがこの米中対立であるというふうに考えております。とりわけ、米中対立の性格として、ツキディデスの罠というふうに書きましたけれども、これは、まさに覇権国が挑戦国、これは歴史的に、例えばかつてのイギリスですとか、かつてのスペインですとかオランダですとか、覇権国は常に挑戦国のチャレンジを受けてきて、そしてその多くが戦争で終わっているというのがこのツキディデスの罠と言われるものでありまして、覇権国と挑戦国が並び立たない、何らかの形で競争関係にあった場合、往々にして戦争になる。まあ唯一戦争にならなかったのはイギリスとアメリカの覇権の交代なんですけれども、これは、どちらかというとそれ以外のところでいろんな戦争が起きて、結果的には覇権の交代が起きたという格好になるわけですが、今特にやはりアメリカはこの罠にはまっているというふうに言って過言ではないと思います。  アメリカは、この急速にキャッチアップしてくる中国に対する恐怖、恐れ、これを非常に強く感じていて、それを何とか止めておきたい。そしてそのためには、中国のチョークポイントであるこの半導体の製造、特に先端半導体を作れなくするというような状況をつくりたいということで、ここでギャップ理論というふうに書きましたけれども、米中のギャップ、この能力の差ですね、これを維持する、そして中国が伸びてくるのを止め、そしてその間に西側先進国が先に進んでこのギャップを広げていく、そうすることによってこの優位性を維持していくんだという、こういう戦略を持って、今、米中の間でアメリカは、積極的に中国に対してその成長を、ないしはその台頭を押しとどめようとするという、こういう方向になっていくと思います。  それは、取りも直さず、アメリカはこれからどんどんと、まあ内向きというか、保護主義的というか、中国に対しては非常に厳しくいろんなものを制限するような関係になってくると思います。近くアメリカは、対中投資、アメリカから中国に対する投資も制限するというような大統領令が出るというふうにも今報じられております。  こうした中で、どんどんアメリカの壁が高くなっていく、そういう中でアメリカと協力して例えば技術開発を進める、国際共同開発を進めるといったことを考える上で、これはまた別の議論になりますけれども、セキュリティークリアランス、アメリカが求めるようなそうした機微な情報にアクセスするということが可能になるような制度的仕組みが必要になるというような環境が整いつつあるのかなというふうに思っております。  ですので、今後、自由貿易、WTOの機能も、上級委員が任命されない今、なかなか期待することが難しい状態で、できるだけこの自由貿易、日本は自由貿易の下で経済成長してきたわけですけれども、この自由貿易の仕組みを維持しながらこの米中対立の中でサバイブしていくためにはどうしたらいいのかということで今出てきている考え方がこのミニラテラルという考え方で、これは、いわゆる同志国ですとか有志国、能力を持つ国同士の集合体をつくって、その能力を持つ国がルールを作っていくということ。特に半導体の場合は、チップ4と言われるような、アメリカ、日本、韓国、台湾といった国々で、まあそこにオランダですとかドイツが入ってくるわけですけれども、こうした国々の小さな少数国連合というのをつくってルール作りをしていくという流れがこれから強まっていくのではないかというふうに考えられます。  二番目のポイントでめくっていただきますと、今度はロシアのウクライナ侵攻ですね。これは、まさに先ほど言いました一番目の柱、大国同士の核による国際秩序だけでなく、責任を持った大国が本来ならばこの国際秩序を維持するという責任を持たなければならないのに、それを見事に打ち捨てたのがこのロシアであるということが言えるかと思います。  ただし、ここでももう一つ重要なポイントがありまして、ロシアはウクライナに対しては攻撃はしているけれども、それ以外のNATO諸国に対しては、いかにNATOが、NATO諸国がこのウクライナに武器支援をしても、一発も弾を撃つことはできないという状態が生まれている。これは、まさにロシアとNATO諸国、究極的にはアメリカの間に抑止が効いているからということでありまして、ある意味、責任は放棄しているけれども核抑止という仕組みは生き残っているというか、それは厳然と機能しているということが重要なポイントであろうというふうに思います。  もう一つ、このロシアのウクライナ侵攻で明らかになったことというのが、力による現状変更をロシアが仕掛けても、ウクライナは極めて強く抵抗し、そして、これだけ火力の差、兵力の差があるにもかかわらずウクライナは持ちこたえていると。もちろん、それは西側の支援があってのことなんですけれども、同時に、それだけの抵抗をする、それだけの固い意思を持った国々は容易に占領されない、容易に負けないということも証明したということであります。  これは、将来的には力による現状変更を目指す、例えば中国の台湾侵攻が仮にあるとすれば、やはり台湾がこういう形で対応していく可能性があるということを見せることが重要ですし、それはどの国にとっても、恐らく我が国にとってもそうした継戦能力、こうした力による現状変更を拒否する能力というものが求められるし、そしてそれを示していかなければならないということを今回のウクライナは身をもって示しているのだと思います。  また、こうしたこのロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー価格が相当に高くなっている、我が国でもガソリン価格、電気料金、いずれも非常に上がっている状態にありますけれども、しかし、こうした状況でも、やはり一番の問題は、これまでがロシアに依存をしていた、まあこれは日本だけではなくて、特にヨーロッパがロシアに依存していたことによって国際エネルギー秩序というものが成立していたわけですけれども、それが機能しなくなったときにはこうした問題が起こるということであれば、やはり事前にこうした敵対するような国、懸念があるような国々に対する依存は減らしていかなければならないということをまた教えてくれているものだというふうに思います。  三つ目のポイントとしては、やはりグローバルサウスでありまして、このグローバルサウスはまさに世界が多元化していくということを示しているものだというふうに思います。  ただ、世界は多元化しているんですけれども、じゃ一枚岩なのか、グローバルサウスは一枚岩なのかというと、必ずしもそうではない。少なくとも西側諸国ではないという点では共通した性格を持つわけですけれども、しかし、その間にも対立関係はある。ただし、彼らが共通して今直面しているのがこのエネルギー価格ですとか食料価格の高騰ということで、これが人々の生活を苦しめているという状態にある中で、日本は今年G7の議長としてこのグローバルサウスとどう向き合うのかということが問われるかと思います。  ということで、最後のスライドでございますけれども、こうした米中対立、ロシアのウクライナ侵攻、そしてグローバルサウスの中で、この日本が何を目指していくべきなのか。  米中対立に関しては、一方では戦略的な競争関係、これは政治的な競争関係にあるわけですけれども、同時に、日本は中国に対する経済的な依存、相互依存という状態は深くあるわけです。これをいきなり全てをデカップリングするわけにはいかない。そのためには、きちんと、戦略的なものは何か、安全保障に関わるものは何かをきちんと特定した上でそれはデカップリングする。しかし、それ以外のものについては経済的な相互依存を促進し、我が国の経済発展に貢献するというような形にしていくということ。  そして、何といってもG7の議長国として大きなテーマになるのが、このウクライナ侵攻において、やはりウクライナの領土一体性を主張すること、これは原則として譲れないことをやはり再確認していくということが重要になる。  そして最後に、やはりグローバルサウスに向けても、日本は議長国として、まずはG7がこの国際社会においてマイノリティーにならないというような形でアピールをしていくこと、そのためにできることは何かということで、グローバルサウスの国々が苦しんでいるエネルギー価格ですとか食料価格に対する働きかけというようなことが求められるのではないかなというふうに考えております。  ということで、時間になりましたので私の話は以上で終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  次に、半田公述人にお願いいたします。半田公述人。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 本日は、こういった予算委員会の場で私の意見を発表する機会を与えていただき、ありがとうございます。  早速意見を申し述べます。  政府は、昨年十二月の閣議で安全保障関連三文書を改定をし、安全保障政策を大転換しました。改定された国家安全保障戦略には、「本戦略の内容と実施について国民の理解と協力を得て、国民が我が国の安全保障政策に自発的かつ主体的に参画できる環境を政府が整えることが不可欠である。」とあります。そこで、本日は、国民の理解と協力が得られるかという視点で三文書を見ていきます。  政策は、専守防衛を定めた憲法との整合性、法的、運用面での課題、費用対効果の三点について検証が欠かせないのは言うまでもありません。しかし、今回の安全保障政策の大転換は、国会における議論を経ることなく、閣議により決まりました。その中身を議論すべきこの国会、通常国会においても、現状では国民の理解と協力を得られるほど詰め切れていないと指摘することができます。  資料一を御覧ください。反撃能力について防衛省がまとめたものです。反撃能力は、やむを得ない必要最小限の措置として行うことが明記されています。憲法の制約の下で行う反撃ですから、必要最小限であるのは当然のことです。  二月二十七日の衆議院予算委員会で長妻昭議員から、戦闘機による爆撃、上陸作戦も解禁されたのかと質問された岸田首相は、ミサイルによる対処が基本としながらも、スタンドオフ防衛能力以外にもあり得ることは否定できないと答弁しています。現に三文書にも、スタンドオフ防衛能力等を活用するとあります。末尾に等などがあることにより、ミサイル反撃以外の方法も想定していることが分かります。戦闘機による爆撃や上陸作戦は戦争そのものと言えます。緊急避難的にミサイル基地の破壊を目指し戦争を呼び込むとすれば、必要最小限の措置と言えるでしょうか。その点に大きな疑問があります。  また、資料一のとおり、反撃能力は武力の行使の三要件に基づくとあります。武力行使の三要件は平和安全法制で定められています。  仮に、武力攻撃事態が発生したとします。資料二を御覧ください。これは、防衛省が作成した地上発射型の中距離ミサイルについての一覧表です。注目されるのは、中国が合計二千二百発のミサイルを保有している点です。米国防総省は、中国のミサイルのうち、千二百五十発が日本を射程圏に入れているとしています。日本が巡航ミサイル、トマホークを持ったとしても、その反撃能力は限定的であり、中国のミサイルが強力であることを示しています。  次に、資料三を御覧ください。これも防衛省の資料です。  昨年、北朝鮮は多くのミサイルを試射しました。注目されるのは、変則軌道との表記が多いことです。米国で開発され日本が導入したミサイル防衛システムは、変則軌道のミサイルに対してはほとんど無力です。武力攻撃事態に際し、中国や北朝鮮に対してミサイルで反撃することは、倍返しどころか日本を壊滅的被害に導くおそれがあると言えます。  今年一月、米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所、CSISが、二〇二六年に中国が台湾に着上陸侵攻するというウォーゲームを実施し、分析したレポートを発表しました。レポートは、中国本土を攻撃する計画を立ててはならないとし、実際のウォーゲームでも、艦艇、航空機への攻撃にとどまり、中国本土を攻撃対象としていません。核戦争への発展を避けるためです。  米国でさえ行わない中国本土への攻撃を日本は行うのでしょうか。それとも、核保有国か否かの違いによって反撃能力の行使についてさじ加減をするのでしょうか。このままでは国民の理解と協力を得るのは困難と言えます。  政府は、ミサイル発射の着手をもって反撃可能との見解を示していますが、三文書には着手の定義は示されておらず、今国会においての野党からの質問に対しても、政府は相手国に手のうちを明かすことになると繰り返すばかりです。また、自民党が昨年まとめた提言の中で、反撃対象は指揮統制機能等を含むとありますが、何を反撃対象とするか、三文書には書かれていません。現状では、反撃のタイミングも反撃対象も不明なままです。これでは、国民の理解と協力を得られないばかりでなく、他国にも日本の政策変更の実態が伝わらず、安心供与につながらない残念な結果になっています。  再び資料一を御覧ください。  一番下に、日米の基本的な役割分担を変更するものではなくとありますが、岸田首相は今月一日の参議院予算委員会で、今後、アメリカの打撃力に完全に依存することはないと言明しました。日本が盾ばかりでなく矛も持つことになるのですから、明らかに役割分担の変更に当たります。  存立危機事態における反撃能力について見てみます。  これまでの政府答弁から、密接な関係にある他国に米国が含まれることは明らかです。それも、米国が攻撃された場合に限らず、米軍の損耗だけでも存立危機事態に当たる可能性があることは否定できません。  資料一には、先制攻撃は許されないことは言うまでもないとあります。存立危機事態が認定される時点では日本は攻撃を受けていない可能性が高いのですから、日本から反撃を受けた相手国にとっては先制攻撃されたことになります。三文書には先制攻撃はしないとあるので、明らかに矛盾します。  専守防衛の堅持、先制攻撃はしないと何度言明されても説得力を持ち得ないのは、三文書の中身と国会における政府答弁がその言葉どおりに受け止められないからだと考えられます。  日本が反撃した場合に受ける影響について考えてみます。  例えば、台湾有事が発生して在日米軍が出撃すれば、その基地が攻撃されて、日本有事に発展します。米軍が損耗を受けて存立危機事態が認定された場合であっても、日本が受ける影響は同じであると言えます。  中国に近い南西諸島の沖縄県には百四十六万人の県民がいます。全て離島にいるので、住民避難は極めて困難です。国民の生命、財産を守るには、戦争を回避する必要があります。三文書にはその処方箋として防衛力強化を提示していますが、防衛力強化による抑止は破られることがあるからこそ、三文書は対処力の強化、つまり防衛力の使用についても触れています。その一方で、外交による戦争回避への言及が驚くほど少なく、不安を感じないわけにはいきません。  次に、資料四を御覧ください。これは、米政府から装備品を購入する際の対外有償軍事援助、つまりFMSによる契約額の推移です。  二〇二三年度防衛予算案では一兆四千七百六十八億円となっており、過去最も多かった二〇一九年度の七千十三億円の実に二倍以上となっています。トマホークなどのまとめ買いが契約額を押し上げる要因です。FMS契約に無駄はないのでしょうか。  今月一日の参議院予算委員会でも取り上げられましたが、滞空型無人偵察機グローバルホークには問題が多い。自衛隊装備品の購入は、陸海空いずれかの幕僚監部から要求が上がり予算化されますが、このグローバルホークは背広組の内局が予算要求しています。つまり、政治と接点を持つ内局が要求した政治案件であると推測することができます。しかも、届いた機体は米軍が廃棄を決めた旧式のブロック30である上、陸上監視が得意な機体を周囲が海ばかりの日本でどのように活用するのか大いに疑問と言うほかありません。  海上自衛隊は、二〇二三年度から青森県の八戸基地で洋上監視用の無人偵察機シーガーディアンの試験運用を開始をします。八戸基地では、先行してシーガーディアンの運用を始めた海上保安庁と連携するので、コスト面、運用面の効果が期待されます。費用対効果を考えたときに、グローバルホークとシーガーディアンの二機種を併せ持つのではなく、一機種に絞るという政策決定がないことは残念と言うほかありません。  イージス・アショアの代替策として建造することにしたイージスシステム搭載艦も問題が多いと考えられます。地上に置くべき大型レーダーを載せることから、艦艇自体が大型化し、全長二百十メートル、全幅四十メートルと報道されました。最新のイージス護衛艦「まや」型の全幅二十一メートルと比べて二倍近く幅が広く、鈍重な艦艇となるおそれが出てきたことから、小型化へ向けた見直しが始まりました。  振り返れば、イージス・アショアの導入が閣議で決まるまでに、当時の安倍首相が就任したばかりのトランプ大統領と首脳会談を行い、その際、米国製兵器の追加購入を求められてから僅か十か月、配備中止からイージスシステム搭載艦の建造を決めるまでたった半年でした。  先日、書籍「防衛省に告ぐ」を上梓した元海上自衛艦隊司令官香田洋二元海将は、イージス護衛艦の構想から建造まで足掛け六年を費やしたと書いています。それと比べると、いかにも拙速な印象を受けます。香田氏は、陸上から海上へ、大型艦を小型化へと二転三転するイージスシステムは、まさに政治的な迷走の象徴ですと指摘しています。  イージスシステム搭載艦は、米海軍の最新版レーダー、SPY6を採用することなく、日本オリジナルのSPY7を発注したことで、開発経費や運用経費を米国と分担できるスケールメリットを失いました。将来のバージョンアップも、米政府の提示する言い値を払い続けるので、多額の出費が予想されます。  香田氏は、レーダーに伴うコスト増を数千億円単位と見込み、一体この責任は誰が取るのか、恐らく誰も取らないと指摘しています。そして、こう断言しています。今のまま防衛費を対GDP比二%に増やしても防衛力強化につながらない、政治と自衛隊の間で意思疎通できていなければ、自衛隊が有効に機能することはない。  FMSによる米政府への支払が増えたことから、防衛省は支出年限特別措置法を国会上程し、国内産業などへの分割払期限を五年から十年へと二倍に延長してきました。国内では防衛部門から撤退する企業が目立ち始めていました。防衛費を倍増させる対GDP比二%という数字が積み上げ方式でないのは、米国製装備品の爆買い路線を維持しつつ、国内企業への支払問題を解決する魔法の数字を求めた結果であると言うことができます。予算が倍増され、余裕が出てきたせいでしょうか、綿密な将来見通しの上に立ち装備品開発を計画しているのか、大きな疑問が出てきました。  三文書には、一二式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、極超音速誘導弾という三種類の国産ミサイルを同時開発することが記されています。  一二式地対艦能力向上型の開発と量産は三菱重工業が受注しました。元々、一二式は三菱重工の八八式地対艦誘導弾を改良したもので、八八式のSSM1に対してSSM1改と呼ばれています。  二〇〇四年、同社は必要な強度試験を行わないまま試射を実施、さらに、設計の不備や評価書の誤記など多くのミスも見付かりました。SSM1改の納入が遅れたことから、防衛省は延納金を請求、さらに、二週間の競争入札指名停止処分としました。  SSM1からSSM1改への改良は、短射程ミサイルから短射程ミサイルへの移行です。今回の能力向上型は、射程を十倍にも伸ばす新型ミサイルの開発に等しい事業に当たります。予定する二〇二六年度までに納入できるのでしょうか。  同じ年度には、島嶼防衛用高速滑空弾の配備も始まります。一方、FMSで米政府からまとめ買いするトマホークは、やはり二〇二六年度に配備予定となっています。国産の二種類のミサイルとトマホークが同じ年度に納入となる理由は、国産ミサイル開発が遅延するのを見越してのこととされています。  新型ロケットH3の打ち上げ失敗、国産ジェット旅客機の開発断念などを見るとき、巨額の費用を投じ、結局予定どおりにならないという事態にならないか、精査した上での同時開発なのか、疑問が残ります。  前出の香田氏は、昨年十二月二十三日付け朝日新聞でこう述べています。今回、二%の掛け声が先行し、政治からあれもこれもやるべきだという声も強かったのではないでしょうか。それに悪乗りしている防衛省・自衛隊の姿が見えるのです。  見てきたとおり、今回の三文書と三文書をめぐる政府答弁は、専守防衛を定めた憲法との整合性、法的、運用面での課題、費用対効果の三点において疑問があります。綿密な検討が行われた結果とは考えられません。修正を図らなければ、国民の理解と協力を得ることは困難となり、周辺国に対しても誤ったメッセージとなることから、国会における更なる議論が不可欠だと考えます。  御清聴どうもありがとうございました。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

片山さつき自由民主党

○片山さつき君 ありがとうございます。自民党の片山さつきです。  まさに、米中対立、覇権国対挑戦国の分析、鈴木教授、全く私どもの認識に近いなと伺っておりました。  実は、シェルターという議論をこの国は全くしてこなかったんです。私は一六大綱のときの防衛担当主計官で、かつ二十年前の国民保護法を審議、作成した時点での法規課担当主計官でありまして、そのときからずっと、正面から、万が一の場合にいかにして国民が堅固な避難施設に逃げるか、それをどう誘導するかの正面議論をできなかったんですが、今回、意を決しまして、十二月に我が自民党も初めて五十六名の発起人でシェルターの議員連盟をつくりまして、堅固な避難施設を作成するべきことを防衛三文書に入れてくれというふうに申し入れて、そのとおりに入れられております。  つまり、今のお話を伺っておりますと、やはり台湾がそうであるように、備えよということが前提としてあると思います。確かに、今から地下を掘るのかというといろいろ考えられる方がいらっしゃると思いますが、二月に参議院の議運のお許しのおかげで台湾を訪問できて、そちらで国会の議長にも会わせていただきました。そして、副総統にも会わせていただきましたが、完全に危機管理のレベルを二月の時点で上げております。  そして、あちらの国では二、三十年前から、建築基準上、一定のビルには全て地下五、六階の深さのシェルターがありまして、このように誰からも分かるところの入口に、ここには何人が入れるよと、二千人とかね、そういう人数ですよ、入れるよと、管理は地域の何々警察局だよと書いてあり、かつ、さらに、これがアプリで誰からも分かるんですよ。  ということがありますので、このようなことにすぐにできるわけではないですけれども、いかなる抑止力としてこのシェルターが日本にとって有効かについて、鈴木教授の御意見を聞かせてください。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 今日、掲示物は聞いておりませんので、控えてください。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) 御質問ありがとうございます。  ただいま、シェルターの問題について台湾の例が示されたと思うんですが、歴史的に見ますと、もう一つやはりシェルターで代表的なのが、国民保護法を持つスイスであります。  スイスは、御存じのように永世中立国を目指し、永世中立国という立場で、どの国とも同盟を結ばない、つまり何かあったときには誰も助けてくれないということは、同時にそれは自分たちで自らを助けなければならないという、こういうことを運命付けられた、そういう存在であるという自覚を持って、そして国家の責任において国民を保護するという、このためにこのシェルターというのを備えるようにしております。  もう一つ顕著な例がイスラエルだと思います。  御存じのように、イスラエルは、建国以来、周りに何度も戦火を重ねてきて、そしてこの危機管理の意識が非常に高い。先ほどの台湾の例と同様ですけれども、イスラエルも公的な空間には必ず、シェルターへの道筋が書いた矢印が必ず表示されていて、公園ですとかビルですとか大学のキャンパスですとか、そういったところにも必ず、爆弾、空襲警報が鳴ったらここに逃げなさいという、こういう指示が出ています。  こうした、我が国は幸いにしてそういった常にこの危機の状態にあるわけではありませんけれども、しかし、そういう日がもしかしたら来るかもしれないという前提からこのシェルターを備えておくということには大変な意味が、意義があるというふうに考えております。  まさに、この世界の秩序が変わっていく中で備えておくこと、こうしたことも、事が起こってからではもう遅い。今まさにウクライナでも、空襲警報が鳴ったときに地下鉄に逃げ込んだり、ビルの地下に地下室がある。そういうところは、別に戦争が始まってから掘ったわけではありません。やはり、そういうことは備えてあるということが今多くのウクライナ人の人たちの命を救っているものだというふうに理解しております。

片山さつき自由民主党

○片山さつき君 ありがとうございます。  まさに我々の意を得たりなんですが、先ほど半導体や先端技術に対するお話も出まして、まさに先端技術に対する産業やエネルギー政策と安全保障は今や一体だと、それで国を守らざるを得ないと、そういうことがこのミニラテラルという有志国のルールにもつながってくるんですが。  台湾で議論しましたところ、この二十年間、TSMCのようなトップ企業が現れるようにこの業界をしっかりと育成してきたと。なぜならば、そういう地位に台湾がなれば、台湾海峡にいざ有事というときに米軍の大型の空母が二隻入るだろうと、そうなれば台湾の独立は堅持できると、そういうお話を台湾の政官財界から聞きました。  まさにその臨戦感というのは我が国にはないものですが、いずれにしても、今、経済安全保障法ができましたし、重要な産業の国内への取戻し、立地補助金も先般の補正予算で措置されております。今までの三文書にとどまらず、先ほどおっしゃったセキュリティークリアランスも含めて、経済、防衛、安全保障、産業政策を一体とした文書、戦略を日本でも作るべきではないかと考えますが、鈴木教授のお考えを伺いたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) まさに今、片山議員がおっしゃった点、大変重要なポイントだと思っております。  いわゆる台湾におけるこの半導体産業の育成というのは、シリコンシールド、護国神山と、国を護る神の山と書いて護国神山なんですけれども、こうした、自分たちのところに不可欠性があれば、他国はその国に対して攻撃をすることをためらうであろうという意味で、この抑止をする一つの大きなアセットとして台湾は半導体産業を考えていると。  翻って、我が国がそのアセットとしてあるものは何なのか。日本にはたくさんの様々な資産があると思います。それは長い歴史であったり文化であったり、そういったもので、まあ美しい光景であったりするわけですけれども、しかし同時に、やはり日本がこの不可欠性を持つ国でなければならないと。  日本は、今でも国際的な競争力を持つ、そういう産業は幾つもありますけれども、しかし、それを守らなければならないものにしていくにはどうしたらいいのかということを考える必要があると思います。その点で、今、片山議員がおっしゃられたその経済、安全保障、防衛、様々なこの国家の戦略として、そういった守らなければならないもの、ないしは他国が何としてでも守らなければ、他国から守ってもらい、他国が守りたくなるようなものをどうやってつくっていくかというのが、今後の日本の経済でもあり安全保障でもある課題だと思っております。

片山さつき自由民主党

○片山さつき君 旧ソ連が崩壊したときの担当も私はやっておりまして、強烈に覚えておりますのは、麻布にある大使館、旧ソ連大使館の一部は我々のものですから保全してくださいというレターを出してきたのは、十五か国の中で、国際法上の継承国はロシアですからソ連のものは自動的にはロシアに行くんですが、ウクライナだけでした。ということの、ロシア公国、キエフ公国からのずうっとの歴史も考えても、今回は旧ソ連が崩壊して以降のロシアの自分探しの行き着く先だったのかなと。  私は安倍政権の閣僚でもございましたので、東方フォーラムも何回か御一緒させていただいておりますが、やはりそこで見てきたその国際的なロシアのアプローチを見ても、今回ロシアがどこで戦いをやめるのかが非常に難しいと思います。だから全く停戦の状況が見えないと。  この中で、G7のホスト国である我が国として、岸田総理が大変配意を重ねて国際会議を事前にセットしたりされていますが、率直に申し上げて、今、安全保障上だけの観点からいって、仮に岸田総理がG7ホスト国としてキーウに入られることについてどのようにお考えか、鈴木教授に伺いたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  総理のキーウ訪問については様々な考え方があろうかと思います。ただ、今、バイデン大統領ですら、高齢を押して、また非常に長い時間、これまでアメリカの大統領が米軍の駐留していないその町に訪問するということはまずあり得なかったわけですけれども、そういうリスクを冒してまでやはり支援を示したと、支援の意を示して訪問したというところは我々も感じるべきところなのかなというふうには思っております。  やはりG7をまとめる立場として、総理のキーウ訪問というのは個人的には是非実現すべきであり、そしてそれがG7としてのメッセージでもあり、日本からのメッセージにもなろうかと思っております。

片山さつき自由民主党

○片山さつき君 時間がございませんが、まさにおっしゃっていたように、G7のホスト国としての世界へのメッセージという部分と、それから今回の事象が中国に与えたインプリケーション、G7とG20のこの関連の立場に立ち得る国としては日本が一番それにふさわしいということは歴史的にも痛感をいたしております。そういった部分の分析もこれからもっと政府内でやっていかなければならない、またその意味で今日両先生からお伺いしたお話は極めて有益でございました。  大変ありがとうございました。ちょうど時間でございます。

石垣のりこ立憲民主・社民

○石垣のりこ君 立憲民主・社民の石垣のりこです。どうぞよろしくお願いいたします。  お二方、今日は貴重なお話、誠にありがとうございました。  まず、鈴木公述人に伺います。  先ほど、米中対立がツキディデスの罠に陥っているというお話がありました。その上で、ギャップ理論を用いてその中国の軍事、経済、技術の前進を止めるという考え方があると。この中に日本の今回のこの防衛費の倍増というのも一つ含まれてくると思うんです。  こういう考え方も一つあるとは思うんですが、一方で、G7議長国としての日本の役割というところで示されました、グローバルサウスに対して日本は、もう既にG7はマイノリティーであると、国際社会においてG7とG20の橋渡しをしていく、取り込むのでもなく対立するのでもなく寄り添うことでG7を孤立させないという考え方が示されました。  そういう点から考えると、日本が抑止力の向上という大義を持ってこの防衛費を倍増していくというのが、ある意味、その米中対立、ツキディデスの罠に対して火に油を注ぐようなことになり得るということも考えられると思うんですが、その辺、いかがでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) 御質問ありがとうございます。  果たして日本のこの新しい安全保障戦略、それから防衛費の増額というのがどの程度この米中対立に影響があるのかということに関しては、何というんですか、数値的に測ることは難しいとは思うんですけれども、全体で見ますと、やはり米国の防衛費、それから中国の軍事費を全体から見ますと、日本のその防衛費の増額が果たしてどのくらいの大きなものになるのか。つまり、米中対立の中で、米中はもちろん、アメリカだけではなくて、日本も韓国も台湾ももちろん、トータルの構造の中でこのアメリカの拡大抑止というのが成立していますので、そういう意味では、中国から見ると、日本だけが防衛費を増やしているだけではなくて、アメリカの国防費の増額ですとか、アメリカの、何というんですかね、攻撃的なというか、中国に対して非常にいろんな形の圧力を掛けていく方がより大きな問題であって、恐らく、全体で見ますと、日本のその防衛費の増額が火に油を注ぐとはいっても、それほどの大きな効果があるのかと言われると、むしろ今までが少なかったものが増えた、中国からすれば、中国の水準にもまだ満たっていないというレベルの増え方なんだなというふうに見えるのではないかというふうに考えます。

石垣のりこ立憲民主・社民

○石垣のりこ君 ありがとうございます。  どのくらい影響を与えるのかは確かに未知数なところはあるんですけれども、今回、今国会では防衛費倍増、あとは安全保障政策の大転換について今国会で議論されておりますけれども、その議論をする前提におきまして、政府からは、GDP比の二%、五年で四十三兆円という予算規模が示されております。そのほか、これは予算に関してでありますが、その議論をする前提として、やっぱりこの情報の開示、議論をする前提に必要な情報の開示が非常に不足していると。まあ野党側から言わせていただくと、必要な情報が開示されないがゆえにこの予算の内容が適切であるか否かというのが審議されない、もう前提条件が崩れてしまっているというふうに私自身は認識しております。  その上で、両参考人に伺います。  予算審議に必要な情報開示のラインについて、鈴木参考人に関しましてはセキュリティ・クリアランスの有識者会議の委員であるとも認識しておりますけれども、これはあくまでももう少し個別の詳細におけるセキュリティー問題であると思いますけれども、そのような観点からもお話しいただきたいと思いますし、先ほど半田公述人に関しては国民の理解と協力を得られるかという点でお話しいただきましたので、両公述人から、その点から、どこまでその情報を開示できるかという点のある種基準であるとか物差しがありましたら、是非教えていただきたいと思います。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 鈴木先生から。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  情報の開示は、もちろん国会の中で審議する上で重要なことだと思います。ただ、同時に、防衛費、防衛に関するものは特定情報、機密情報にもなりますので、そうした意味でのこの開示がどこまでできるかというのは、それぞれの、例えば具体的な技術ですとか、その納入先、まあどこから買うかといったことも含めて、公開できるものとできないものというのがあるということは承知しているつもりです。  ただ、一般論として情報は開示すべきですけれども、可能な、提示できる情報の中で議論をする、その中で、特にやはり予算審議の場合は、大枠、何にお金を掛けるべきなのか、どの程度掛けるべきなのかということを定めていくことが非常に重要なことだと思いますので、そういう意味では、現在出されている情報が十分かどうかということは私は判断する立場にありませんけれども、しかし、今出ている情報でも十分議論はできるのかなというふうに私は理解しております。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 情報開示については、まず運用面における情報開示というのもある程度必要であろうというふうに思います。それはまさに、この通常国会において、例えば反撃能力の行使というのは着手で可能だという政府見解がありますが、何が着手かということについて全く一切触れられていないと。さらに、反撃対象というのは敵基地だけなのか、それとも指揮統制機能等を含むのか、ここも全く示されていないわけですね。  例えば、平和安全法制ができる以前の安倍内閣のときでも必ずしも情報開示が十分だったとは思いませんけれども、安保法制懇の報告書を受けて、例えば集団的自衛権の行使の事例として、アメリカ軍の輸送艦に乗せられて日本に帰ってくる母子の絵を示して、こういった人たちを守ることができない、これでよいのかということを安倍首相は問いかけましたし、さらに、平和安全法制の議案が審議されているさなかには、その絵は出てこなくなりましたけれども、例えばペルシャ湾の機雷除去、これが集団的自衛権の唯一の事例だというようなことで、そういった運用面における例示というのもされてきたわけですね。それが今国会においては全くないと。  三文書に書かれていない以上、この国会の場で開示を求める以外に国民が理解と協力を得る方法はないわけですけれども、そこに触れられていないというのは、これは極めて残念と言うほかないと。  また、もう一つは費用対効果についてですね。先ほど公述いたしましたけれども、国産の三種類の新型ミサイルを開発を今進めるということです。これは三文書に書かれております。また同時に、ほぼ似た機能であるアメリカ製の巡航ミサイル、トマホークというのも購入するということが出てきていますね。そうすると、なぜ三種類の国産ミサイルやアメリカ製のトマホークが必要なのかと。どのような状況でどういうことが生起されると考えるからこういったミサイルが必要なんですという、そこの説明がないわけですよね。  そうすると、その今回の三文書に書かれたこと、そして今、国会で議論されている来年度予算における防衛費六兆八千億円というのは、本年度予算と比べると実に一兆四千億円も増えるわけです。こういった増額の理由というものが見えない。したがって、国民の協力と理解を得るというような機会を政府は残念ながら自ら放棄していると言わざるを得ないということだと思います。

石垣のりこ立憲民主・社民

○石垣のりこ君 ありがとうございます。  午前中の公述人であります片岡剛士氏のお話の中に、富国強兵の富国なしの防衛費拡大は亡国への道であるというお話がありました。日本国憲法を頂く我が国において、強兵自体をどういうふうに考えていくかという議論はあると思いますけれども、日本は二十年来、経済成長率、G7でも最低ですし、ほぼ横ばいという経済状況の中で、この防衛費の倍増、五年で四十三兆円というこの防衛政策に関してどのように捉えるべきかというところで、お二人から一言ずついただきたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  富国なくしてというか、もう既に日本は経済成長を一九七〇年代までに大きく成し遂げ、そして豊かな国の一部になったわけで、であるからこそ、今G7というこのいわゆる先進国クラブの中に入っているわけですから、そういう意味では、これから延々と経済成長が続くということも期待できないと思いますし、おっしゃるとおり、過去二十年経済成長がなかなか上がっていかないという点では問題というか、問題視されるべきであろうとは思いますが、それと、多分、今我々が直面しているこの安全保障環境の変化ということとはまた別の問題なのではないかというふうに思っております。  日本が経済成長していようがしまいが、今世界が先ほど私が説明したように大きく変わっている中で何をしなければならないかということを判断すると、やはり今、これまでのような防衛の在り方で十分な防衛が可能なのか、特に中国、北朝鮮、ロシアという戦略的なライバルに囲まれた中でこうした安全保障に対する備えをどうやって進めていくのかということの中で、今こうした防衛費の増額というのが議論されているものだと理解しております。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 半田公述人、時間が迫っておりますので、できましたら簡潔にお願い申し上げます。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) はい。  確かに、ロシアのウクライナ侵攻という大国による侵略行為があったのは事実です。これにより国民の不安な気持ちが高まったということも事実だと思いますが、直接我が国の周辺でいえば、例えば北朝鮮、例えば中国、これらの国々が果たして脅威というふうに断言できるんだろうかというふうに私は考えます。  脅威というのは意思と能力の掛け算ですね。両国がこれを両方併せ持っているのかということもちゃんと緻密に考えた上で、そしてやはり防衛費というのは積み上げ方式によらなければいけないと。つかみ金のような枠を与えるから好きにしなさいというものでは到底国民の理解と協力は得られない、そんなふうに思います。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 御協力ありがとうございました。

石垣のりこ立憲民主・社民

○石垣のりこ君 ありがとうございました。

宮崎勝公明党

○宮崎勝君 公明党の宮崎勝です。  今日は、両公述人の先生、ありがとうございます。貴重な御意見ありがとうございます。  まず、鈴木公述人にお伺いしたいと思います。  先ほど、G7議長国としての日本というお話をいただきました。今回は広島で開催をするということもございまして、日本としては唯一の戦争被爆国として核廃絶への機運を高める機会にすべきではないかということも一面あるかと思います。  そういった意味で、今回、ロシアが核による威嚇などを繰り返す中で、今回のG7広島サミットの中で核のない世界に向けたそういう取組、こうしたものをすべきだとは思うんですけれども、先生としての御認識をお伺いしたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  今回、G7のサミットが広島で開かれるということは極めて画期的なことだろうというふうに理解をしております。当然ながら、被爆地の広島でこの核廃絶に勢いを付ける、そういう機会になろうかとは思います。  ただ、核のない世界が、じゃ、本当に安全な世界なのかと言われると、やはりそれは、核がなくなったときでも安全な世界をどうつくるかということをこれから考えていかなければいけない。核だけが兵器ではないので、その核がなくなったとしてもどういう世界をつくっていくのか、そういったところにビジョンをはせていく。それがあって初めてこの核廃絶というのは進むものだというふうに思っていますので、そういったメッセージが出せればよろしいのではないかというふうに考えます。

宮崎勝公明党

○宮崎勝君 ありがとうございます。  もう一点、先ほど片山先生からの言及もあったお話でもあるんですけれども、岸田総理ですけれども、まず、現時点ではまだウクライナを訪問、訪問する御意思はあってもなかなか現実はできていないということと、あと、日本はG7で唯一ウクライナに対する武器の援助はしておりませんので、こういうこともあるかと思います。  そういう中で、果たして日本が議長国としてリーダーシップを発揮できるのかどうかと、また、もし、また発揮できるとして、どういう角度で今回のこの問題に取り組むべきかということ、ウクライナ問題にですね、取り組むべきか、こうしたことについての御認識を伺いたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  総理のキーウ訪問については既に片山議員からの御質問でお答えしたとおりなんですけれども、日本が武器援助をしていないということを私は余りマイナスに捉える必要はないというふうに考えております。これ、各国がそれぞれ自らの持っている法律ですとかルール、それに基づいて各国が主権的に判断すべきことであって、それができないというのは、これは多分多くの国で理解されていることであろうと思います。  ただ、同時に、ウクライナが最も求めているものも武器であるということも確かなんですが、しかし、それができない以上、別の形で我々はリーダーシップを発揮しなければならないというふうに考えております。  そのリーダーシップの発揮の仕方ですけれども、やはり重要なのは、いかにしてG7をまとめ上げて、将来的な復興に貢献できるかということに尽きるかと思います。特に今、戦争が一年以上続く中で、支援疲れですとか、こうした継続的な支援をすることに対して国内的に反発が高まっている国もございます。  そういう中で、いかにしてG7として、そして世界秩序を、先ほどG7はマイノリティーになっている、世界秩序の中心ではなくなってきているという話をしましたけれども、G7が再びこの世界の秩序をつくっていく立場であるとすれば、まさにそういった戦争をいかにやめさせ、そして復興に結び付けていくかということを、このビジョンを描くことがやはり一番のリーダーシップの発揮の仕方かなというふうに考えております。

宮崎勝公明党

○宮崎勝君 ありがとうございます。  次に、半田公述人にお伺いしたいと思います。  今回、反撃能力を保有する背景として、先ほど来出ておりますけれども、北朝鮮による度重なるミサイル発射であるとか、あるいは能力の向上であるとか、あるいは質、量ともの戦力の強化であるとか、そうした背景があるかと思っておりますけれども、そうした中で、この日本の既存のミサイル防衛ではなかなかこうしたことに対して対応することが難しくなってきているということで、この反撃能力を持つということが一定の抑止力になるのではないかという、そういう背景があるかと思います。  また、一方で、中国の挑戦的な、戦略的な挑戦ということで、その問題が背景としてあるかと思うんですけれども、先生は先ほど、安保三文書にはなかなかそうした外交、一方で、そうしたこの反撃能力の保持という一方で、なかなか外交的な部分での言及がないというお話もありました。  そこで、半田公述人が考えるこの地域の安全保障戦略というものがございましたら、外交戦略ですかね、ものがありましたら是非お聞かせいただきたいと思うんですけれども。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 日本は、かつて、一九八〇年代頃には、全方位外交という形で、敵をつくらないという方向で外交を進めてきたと思います。現在、日米安保条約、さらに経済的なつながり、政治的なつながりから、アメリカとの関係は極めて良好であるというふうに考えております。それが多少軍事的な面においても引きずられ始めているのではないかなというふうに考えております。  アメリカは、来年度の国防予算は百十四兆円ですね。我が国の国家予算と同額。これだけ巨額の費用を積んでいく。その中で、なぜ我が方まで一緒になって矛を持たなければいけないのかというのが、どうもその辺りの理解が困難であるというふうに思います。  アメリカに対して単に盲目的に追従するだけでなくて、やはり米中の対立があって、万が一にも台湾有事に発展した場合に、太平洋を隔ててはるか遠くにいるアメリカと日本が受ける被害の度合いというのは、これは全く異なるものだというふうに理解をした上で、決してアメリカに対して台湾有事というものの関与はしないでほしいということを言うと同時に、また、中国に対しても、日本と中国は国交正常化に際して永遠の友情を誓って平和を誓ったわけですから、その言葉どおりに、中国に対してもこの軽挙妄動な行為は慎まなければいけないということを言わなければいけない。我が国はそういったスタンスでアメリカと中国に物を言わなきゃいけないということはあると思います。  同時に、これは多勢に無勢であるということであれば、例えば在韓米軍がある韓国においても日本と同じような環境にあるということが考えられます。やはり、在韓米軍が出撃していけば、韓国は無事では済まないであろうと。だとすると、今回、徴用工の問題で多少前進はしてきた日韓関係を更に良好に進める、その橋渡しとして、決して中国やアメリカに戦争しないということを求めていくというような方策というのは非常に有効であろうというふうに思いますし、また、中国にもアメリカにも依存しているASEANの国々、絶対に戦争を引き起こしては困る国というのは幾らでもあるわけですね。  これは何もアジアに限らない。ヨーロッパの国であっても、世界一の経済大国と第二位の経済大国がいわゆる通常兵器を使って戦争するだけでも大きな被害を被るおそれがあるわけですから、これはそういった影響を受けそうな国々に対しても、特に最近関係が深まっているイギリスなどに対して一緒に働きかけをしていくというような外交のネットワークをつくっていく、日本が大きな座布団を敷いていくということが有効ではないかなというふうには思っています。

宮崎勝公明党

○宮崎勝君 ありがとうございます。  最後に、鈴木先生にもう一問だけお願いします。  いわゆる国連改革の話なんですが、いわゆる常任理事国であるロシアのウクライナ侵略ということで、安保理が機能不全に陥っているということでございます。そうした中で、今後の安保理改革、国連改革というのは日本にとっても大きな課題ではあるかと思いますけれども、この辺についての御見解ございましたらお聞かせいただければと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  国連改革、もちろん今のままの国連でいいというふうに私も思わないんですけれども、現在の国連を改革しようとすると、どうしても国連憲章の改定というのが必要になってくると。そのプロセスには非常にハードルが高い、総会の三分の二、それから批准の三分の二というのを必要となっていて、これは当然ロシアですとか既得権益を失うような国々も含まれることになる。そうなると、この国連改革を実施するということ自体は非常に難しい。  ということを前提に考えますと、今ある国連をどうやって生かしていくかということの方がより重要なことなんだろうと思います。特に、今、これでもロシアはこの国連の会議にも出てきていますし、それはやはり拒否権があるから国連を離脱することなく国連にとどまり続けているという意味では、より、何というか、そういう国を外に追い出すよりは中で議論をしていくということを続けていくことが大事なのかなというふうに思います。

宮崎勝公明党

○宮崎勝君 終わります。ありがとうございました。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 日本維新の会の串田誠一です。  今日はどうもありがとうございます。  まず、半田公述人にお聞きしたいと思うんですが、資料二を見させていただきますと、アメリカとロシアはINF条約を締結しているということで、地上発射型中距離ミサイルが持っていないということでございます。一方で、中国はこれに締結していないということで保有しているということなんですけれども。ロシアが中国と親しい関係というようなところもあって、中国が持っているんであればロシアは締結していいんじゃないかと思ったんだろうと思うんですけれど、中国が締結しないこと分かっていながら、アメリカがこれに締結して、このミサイルを持たなくなったアメリカの判断というのはどういうふうに分析されているでしょうか。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) それは多少時程が違っているところがありまして、そのINF条約というのは、冷戦時代の一九八七年にアメリカとソ連の間で締結された、いわゆる中距離ミサイル、これは核弾頭であれ通常弾頭であれ、持たないし、開発しないし、造らないと、そういう取決めなんですね。現に、その当時どういう状況にあったかというと、ソ連はSS20という中距離ミサイル、核ミサイルをソ連や東欧諸国に配備をして、そして、これに対抗する手段としてアメリカがパーシングⅡというミサイルをやはりNATO側に置いたわけです。これは、つまり同じ状況をつくった上で、両方話合いの土俵をつくって、これを廃棄をしたと、これがINF条約なんですね。  一九八七年というと、まだ中国はそれほどの軍事力というのは持っておりませんで、陸軍国として、むしろドメスティックな地域問題に軍を使うというような形でありましたから、そういった対象国というふうには当時のアメリカもソ連も考えなかったと。したがって、中国は入らなかったと。入らなかったけれども、冷戦が終わり、そして中国が経済成長を遂げて、徐々にその軍事力を外向きにしてきたことによって、中国が突出してミサイルを持つというふうな形になったということだと思います。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 重ねて、半田公述人にお聞きをしたいんですが、地政学的リスクというのもよく言われるんですけれども、日本と中国、まあ北京の場合、二千百キロぐらいと言われていて、ちょうどこのミサイルが合致しているということであります。巡航ミサイルというのが中国三百発持っているということなんですが、今回、トマホークも巡航ミサイルの中に入ると思うんですけど、この中国が三百発持っているということの対比の中で日本が四百発にしたというふうに考えられるのかどうか、半田公述人はどのように分析されているでしょうか。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) いや、今そのことをお話持ち出されて、へえ、そうなのかと思ったぐらいで、余り関係はないかと思いますね。巡航ミサイルで、特に日本が購入するトマホークは、もう半世紀近く前に開発をされた亜音速で、実際には我々がふだん使うジェット旅客機程度の速度しか出ないものであって、これの使い方というのは、軍事的に弱い国に撃つとか、あるいは飽和攻撃をするとか、いろんな条件がなければ効果を発揮しないと。  現在の中国というのは、今の防衛費というのは三十兆円になりましたし、特に電子的な妨害に関しては世界でも有数レベルの高い能力を持っています。したがって、日本がトマホークを仮に中国相手に発射をしたとしても、相当数が撃ち落とされてしまったり、電磁的な妨害によって目的を達成しないというようなおそれが高いと思います。  また、先生おっしゃらなかった残りの千九百発の方、この方には、東風17と書く、東風17という極超音速滑空ミサイルが含まれておりまして、これはアメリカが開発して我が国でも導入をしたミサイル防衛システムでは到底撃ち落とすことのできないマッハ五以上出るものですから、これはもうトマホークの四百発などというレベルと比較しても全く意味がないと。残念ながら、このミサイル能力においては、仮にトマホークを四百発買ってもこれは大した中国にとって脅威ではないし、そもそも我が国には、専守防衛でやってきたわけですから、中国軍のミサイル基地がどこにあるかさえ、トマホークはGPSで必ずその座標値を定めていかないと飛んでいかないわけですね。その場所さえ分からないわけです。そうすると、アメリカ軍の情報を得ながらやるということになって、なかなかこれは厳しい運用の下でやると。  そういった複雑なものを考えていくと、余りこのトマホーク四百発による効果というのは期待できないのではないかなというふうに私は思います。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 次に、鈴木公述人にお聞きをしたいんですけれども、ロシア、ウクライナ紛争、まあ侵略の話が出たんですが、中国は、このロシア、ウクライナ侵略で何を学んだと思われるでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  中国が何を学んだのかというのは、多分多くのことを学んだと思います。一つは、先ほど言いましたように、独立を守ろうとする国を侵略することは非常に難しい、力による現状変更は容易ではないということも学んだと思いますし、もう一つは、もし武力を行使した場合、かなりハードな経済制裁が実施されると。中国は今、ロシアに対して武器の供与等はしていないというふうに言われますけれども、そのやっぱり一つの大きな理由として、もしそれをすれば、アメリカから少なくとも経済制裁のような何らかのある種の圧力が掛かるということを恐れているのではないかなというふうに考えます。  そういう意味では、この中国が何を学んだかというのは、いろんなことを学んでいると思うんですけれども、今回ロシアが必ずしも成功していないという観点からしますと、中国も武力によって現状変更することの難しさやそのマイナス面というのを相当学んだのではないかなというふうに理解しております。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 鈴木公述人にお聞きをしたいんですが、今の話を引き取りまして、今、ロシアは相当世界からも非難されているし、うまくいっていないというような部分も中国は学んだというふうに言えるとするならば、いろいろと想定されている台湾有事も、いろいろと話が出るわけですけれども、今回のこのロシア、ウクライナのことを見て、中国は台湾有事に関してネガティブな、要するに、そういったようなことを起こすこと自体が可能性が低くなったというふうに分析されているでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  確率論からいえば、恐らくその確率は減ったというふうに言えるかと思います。ただ、中国という国は、ただ、マイナス面を学んだから、じゃ、そのままやめようかというふうに判断するかというと、恐らくそうではなくて、そのマイナス面をいかに克服するかという努力を続ける可能性はあると思います。  そのときに、このマイナス面が克服できるというめどが立ち、そしてそれに対する自信が付いたときにはまた台湾有事の可能性がまた高まってくるという、そういうような状況にあると思いますので、これで台湾有事というこのこと自体が可能性としてなくなったとか過ぎ去ったとか、そういうことではないというふうに理解しております。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 鈴木公述人にお聞きしますが、今の話をまた引き取りさせていただきますと、台湾有事に関する条件というのが、先ほど政治と経済というのがかつては分離されていたのがかなり近づいてきたという部分の中で、どういうような条件がそろってくるとこれ危険性が高まってくるとお考えでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  条件は、多分、相当複数あると思います。まずは、その政治的な正当性という意味で、台湾が独立を宣言するかどうか。これが多分一番大きな条件になろうかと思います。もう一つは、台湾の経済に対する中国の依存度がどの程度になるか。これが、依存度が高ければ、やはり台湾に武力をもって侵攻するというよりは平和的な統一を続けて目指そうという、こういう意思を持つであろうというふうに思います。  同時に、これ独立と関係しますけれども、中国に対して融和的な政権ができれば、この台湾有事、武力を使う可能性というのは減っていくであろうというふうに思います。  恐らく最後には、やはり中国自身の軍事力がどの程度のものになるか。特にアメリカの介入を排除できるだけの軍事力が持てるということと、あとは、いわゆる海を渡ってこの兵力を輸送する、ないしは兵力を移動させて自らの目標を実現するという、こういう能力が高まった時点でその条件がそろうことになるのかなというふうに思います。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 最後に、鈴木公述人にお聞きをしたいんですが、G7はマイノリティーになりそうだということで、グローバルサウスが台頭するんですが、このグローバルサウスを制御するのは一体誰になるんでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) 大変難しい質問だと思います。グローバルサウスは一枚岩ではないので、どこかのポイントがあって、そのリーダーを押さえればそれで問題が解決するというわけではないと思います。  ただ、今回、G20の議長国としてインドがおりまして、そしてインドはグローバルサウスの代表というこういう自覚を持って、今年一月にはそのグローバルサウスのサミットというのをやっております。そういう意味では、やはりインドというのが一番のキープレーヤーになろうかというふうに思います。

串田誠一日本維新の会

○串田誠一君 今日はどうもありがとうございました。終わります。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎哲史と申します。どうぞ今日はよろしくお願いをいたします。  私が所属しております国民民主党としても、この防衛という分野で、安全保障はやはり状況が変化してきているということで、党としてもまた新たなまとめを昨年の末にしたところでもあります。  その中で、我々やはり特に注目していたのが、やっぱりサイバーディフェンスです。サイバーの脅威というものはやはり年々増してきていると思いますし、日常的な企業活動においてもやはり油断ならないところに来ているということでもありましたので、その点、非常に我々は、今後しっかりと防衛力高めていくべき、こういう観点でその内容もまとめさせていただいているんですけれども、そんな中で、今回のウクライナの戦争において、よく言葉として、ハイブリッド戦になるとか、こういう話はありました。ロシアが、当初は短時間でのこの戦術の成功をというような話もありましたけれども、実際にはもう一年以上戦争が行われる。で、現在の状況でいけば、戦車あるいはロケットを飛ばすということで、実際は従来と同じような形の戦争が長引いているということからすると、このサイバーの攻撃も伴った、こうしたハイブリッド戦というのは実際どうなんだろうかと。  今回のこのウクライナの戦争が、各国のこういったサイバーディフェンス、あるいはサイバー攻撃、さらにはこのハイブリッド戦というものに与えた影響というのをどう見ればいいのかな、そこから日本として学び、何を防衛として今後整えていくべきか、この辺について両先生から御意見を頂戴したいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  今回、まさにロシアのウクライナ侵攻において、このサイバーの部門、特にハイブリッド戦、これは二〇一四年のクリミア半島の占拠において見事に、まあ見事と言っていいのかどうか分かりませんが、ロシアがまさにハイブリッド戦を展開して、そして、極めて限られた犠牲者の中でこのクリミア半島の占拠を成立させたというところから注目されたわけですけれども、今回も、当初ロシアはサイバー戦を含めたハイブリッド戦を仕掛けてきたというふうに認識しております。ただし、それは見事に失敗したというのが結論で、それはなぜかというと、やはりウクライナがもう二〇一四年の教訓からきちんと学んで、そして備えていたということが一番大きいと思います。  東欧のシリコンバレーなんというふうに呼ばれたりもしますけれども、ウクライナはITのこの技術者、研究者というのを非常に国家事業として進めて育てていたということ、そして、米軍を始めとして様々な西側諸国からの支援があったということもございました。ですので、このハイブリッド戦がなくなったわけではなくて、ハイブリッド戦が失敗したのが今回のロシアのウクライナ侵攻の現実であろうというふうに思います。  なので、将来的にこれがなくなるということではなくて、恐らく、このサイバーも、そして実際の戦車もという、こういう戦争がこれからも繰り返されていく可能性は高いというふうに思いますが、いずれにしても、このサイバーの部門におけるこのウクライナの準備、そして人の人材育成、こういったところは学ぶべきところは多いのではないかというふうに考えます。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 私も鈴木先生と同じ意見です。  確かに、二〇一四年のときはロシアの仕掛けたハイブリッド戦が大成功したわけですね、ロシアとロシア軍に親近感を持つウクライナ人たちの組織一万五千人が五万人のウクライナ正規軍を破ったわけですから。このときに、特に様々な電子的な妨害を掛けるなどしてウクライナ軍の通信網を破壊をし、そして、最終的にはウクライナ軍たちが使っている連絡がもう携帯電話しかないと、2Gですね、2Gの携帯電話しかないということを理解した上で、そこに偽情報を送り込んで、誤ったところにウクライナ軍を集めて、そこを一網打尽に攻撃を仕掛けると。  これ、絵に描いたようなハイブリッド戦が成功したわけですが、まさにその反省から、ウクライナはこの二〇一四年以降、徴兵制を復活させましたし、また、ハイブリッド戦にも備えるべく、様々な技術者を養成してきたということから、これは今まさに使ったわけですけれども、当初予定したほど、期待したほどは効果を発揮しなかったと。  実は、その二〇一四年のウクライナ侵攻を見ていたのがアメリカなんですね。アメリカの欧州軍は、今のアメリカにはとてもじゃないけどこのロシアのようなハイブリッド戦はできないといって、本国に情報をもたらして、アメリカはこの時期何をやっていたかというと、中東におけるテロとの戦いに奔走していたわけですね。したがって、ロシアに後れを取ったと。で、ロシアと中国って、装備品という武器などを見ると、これ相似形のものがよくあります。したがって、ロシアがハイブリッド戦に強いということは中国も間違いなく強いと。で、実際強いわけです。  そうすると、これに備えなければいけないということから、アメリカは、この二〇一四年以降、目の色を変えてやってきたと。我が国も、二〇一八年の防衛計画の大綱で宇宙、サイバー、電磁波に力を入れるようになったというのは、まさにこのウクライナ侵攻を見たアメリカの影響を受けたんだということが言えると思います。  今回、しかしながら、やはりそのハイブリッド戦に対抗する措置がとられていくと、結局は第二次世界大戦と同じような人海戦術になっていくということですよね。戦車や火砲や歩兵によって戦いが出てくると。したがって、我が国においてもその双方に備えなければいけないということが出てきているということはもう間違いないだろうというふうには思います。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  今お二方からは、備えとして、ウクライナ、それからまたアメリカの例ということで、人材の育成という言葉がございました。  それで、改めて、ちょっとその点で半田公述人にお伺いしたいのは、じゃ、日本の技術者、人材育成の今の足下の状況は果たしてどうなっているのか。また、特に軍事産業でいけば、日本の軍事産業は撤退している企業も増えてきて、だんだん人材としては細くなっているんではないかと。防衛能力として人材の部分がそもそも弱くなっているんではないかということも危惧されるわけですけれども、この人材育成の観点で御所見いただけますでしょうか。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) そのとおりなんですね。今、防衛省・自衛隊の中にサイバー部隊というのがございますが、まだ五百人とか八百人とか、できたばかりだし、全然その数は足りないと。今回の三文書の中では最終的に二万人規模にまでするというようなことが書き込まれていますが、本当にそれができるのかというふうに思います。  というのは、やはり今若い人たち、大学生で、本当にそういった専門家を養成しようとしても、そもそも少子化であるのに加えて、そういった大学に国がお金を掛けないことから、なかなかそういった人が集まらない上に養成できないと。それを自衛隊だけで二万人も集めていって、じゃ、ほかの民間企業はどうなるんだという、バランスが取れないんじゃないかという話は当然出てくると思うんですね。  少子化の中で自衛隊の隊員の頭数をどうするかということもずっと防衛省・自衛隊は悩み続けてきましたから、特に有能な、そういった能力の高い人たちを集めるためには、まず海外に逃がさないということが重要であるということ、そしてまた逆に海外から優秀な人材を集めていくということも重要だというふうに思います。その人材育成のための根本的なありようというものをちゃんと考えて実行していかなければいけないんではないかというふうに思います。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  最後に一問、鈴木公述人にお伺いをしたいんですけれども、資料の中でミニラテラルという言葉が出てきました。今まで経済連携ということでいけば、より幅広いものにしていこうと、TPPであったりRCEPであったり、経済圏を大きくしていってという流れとは今度は全く違う動き、さらには政治的な側面と、戦争に至ってしまう、こういった側面とが、今まで切り分けられていたところが境目がなくなってきたというお話でもありました。  ただ一方で、先ほどのお話の中で、台湾の位置付けとしては、護国神山ですね、お話がありました。不可欠性を高めていくということもございました。  そうすると、この後、この経済圏、協力圏というものと、実際にその軍事同盟といいますか、安全保障で固まっていく、こうした仲間のこのくくりというのはどういう様相になっていくのか。細かいもの同士ができ上がって、さらにそれが経済的な対立に今度は発展しているのか。ちょっと先の話で不透明な部分は多いですけれども、今の時点での御所見いただければと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  これは細かく言い出すと切りがないんですけれども、大枠だけお話しさせていただきますと、まずはミニラテラルというのは、能力のある国が、その能力のある国、特に例えば半導体ですとか医薬品ですとか、そういったこの能力を持つ国が集まって、そしてそれぞれのテーマごとに、その半導体なら半導体、医薬品なら医薬品のルール作りをしていく、能力がある国がそうした主導権を握っていく。でも、これは必ずしもほかを排除するわけではなくて、まずはリーダーシップを取るためのグループをつくるという意味でのこのミニラテラルだというふうに思います。  それが結果的にはこのグループが全体で不可欠性を持つことになり、それが結果としては安全保障上も強固な、そういうこの力になっていく。であるがゆえに、やはり同じ能力を持っている国であっても、敵対的な国とはなかなかこのミニラテラルを組むことはできないということで、安全保障とこの能力とが重なる部分のグループ、日本が例えばアメリカと韓国と台湾と一緒に半導体をやるというような形の枠組みにこれからなっていって、それが、多くが、多数が積み重なっていきながら、それぞれでリーダーシップを発揮して不可欠性を発揮していくという、こういうふうに考えていくものではないかと考えております。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 大変参考になりました。ありがとうございました。  終わります。

山添拓日本共産党

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  公述人の皆さん、今日はありがとうございました。  半田公述人に伺います。  安保三文書により、敵基地攻撃能力の保有を始め、安保政策の大転換が図られようとしています。なぜ今このような転換が迫られているのか、背景も含めてお考えをお述べください。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 今回の大転換のきっかけというのは、私は、二〇二〇年の九月に持病の悪化を理由にお辞めになった安倍元首相が、その際、安倍談話を残したことが今回はそのきっかけであるというふうに思っています。この安倍談話は、一つは、イージス・アショアの代替措置を考えてほしい、そして迎撃だけでは足りないといって、そして敵基地攻撃能力も検討してほしいと、これを二つを言い残して、一つは、イージスシステム搭載艦の建造は菅首相が閣議で決め、そして、残りの反撃能力については去年の十二月に岸田首相が閣議で決めたと。これが今回の呼び水だと思います。  特に今回、今まで、実は二〇一三年には、自民党が大綱、中期防に盛り込むべき提言としてまとめた中に、策源地攻撃能力の保有といって、それを持てと。二〇一八年には、敵基地反撃能力の保有といって、それを持てと。昨年には、反撃能力を持てと。これは、ずっと振り返ってみれば、安倍政権が誕生して以来、ずっと敵基地攻撃能力を持ちたいというようなことを、安倍首相と、そして自民党の皆さんがお考えになってきたのではないかなと。  たまたま昨年の二月にロシアのウクライナ侵攻がありました。このほぼ二か月後辺りの各新聞社の世論調査を見ると、防衛力強化に七割が賛成をし、そして、たしか毎日新聞だったと思いますが、敵基地攻撃能力の保有は六六%の方が賛成をしているんですね。つまり、以前からやりたかったことではあったんだけれども、世論の後押しという形で実現可能になったと。それが去年の十二月だったのだろうというふうに考えております。

山添拓日本共産党

○山添拓君 続いても、半田公述人に伺います。  今お話あった敵基地攻撃能力の保有などの大軍拡だと思いますが、これは国民の生命、財産を守るためのものだと説明をされています。しかし、実際には、現実には日本が戦争に巻き込まれる危険を高めるということも考え得ると思います。この点について御意見をお聞かせください。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 山添先生がおっしゃるとおりだと思います。日本が敵基地攻撃能力を、反撃能力を持てば、相手がひるんでミサイルを撃ってこなくなる、それで日本の安全は高まるというような、そういった政府の説明はありますけれども、今直ちに例えば北朝鮮からミサイルが落ちてくるのか、直ちに中国が日本本土を、あるいは南西諸島に侵略してくるのかというと、余りそういったことは現実的ではないかなと思います。むしろ、今差し迫って起こり得る可能性があるのは台湾有事ではないかと。  そのとき、現に今年の二月にバーンズCIA長官が、習近平国家主席が人民解放軍に勝利できるような準備をしろというような命令を出したというような報道もありました。そういうのを見ると、台湾有事というのが一番日本にとって差し迫った脅威である可能性はあると思います。  そのとき、在日米軍基地からの出撃を認めた場合、これは当然ながらその基地が攻撃対象となって日本有事になりますね。あるいは、その米軍が台湾の近海などで攻撃された場合、アメリカ軍が損耗することによって存立危機事態が認定されて、そして自衛隊が出動してアメリカ軍と戦うことになると。そういったところが一番この可能性としては高いと。  それは、結局は日本が戦争に巻き込まれていくということですから、今回の敵基地攻撃能力の保有、あるいはその一つ前、安倍先生が、安倍首相がやったようないわゆる安全保障関連法に基づく集団的自衛権の行使、これが相まって化学反応を起こして、より一層危険になる可能性は出てきたと。もちろん、抑止力が効いて安全になるということもゼロではないとは思いますけれども、これはもろ刃のやいばであるということは忘れてはならないというふうに思います。

山添拓日本共産党

○山添拓君 もう一点、半田公述人に伺います。  安保三文書によって進められる日米の軍事的な一体化について御意見を伺います。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 例えば、日本は専守防衛でやってきたわけですから、やってくる敵をはね返すための能力というのは、これ世界有数の力があるというふうに思っています。一方、じゃ、敵基地に攻撃に行くための情報があるかといえば、この情報収集の手段ははっきり言ってまあほぼないと言って過言ではないと思います。  例えば、外征軍であるアメリカの場合であれば、たくさんの偵察衛星を打ち上げたり、あるいは各種のレーダーや、あるいはスパイであるヒューミントの力などを複合的に併せ持って、海外を攻撃する能力は高いものがあると思いますが、日本はそれらが全て欠けていると言わざるを得ません。  したがって、もし日本がアメリカと共に行動する、あるいは日本が単独で敵基地攻撃をしようとした場合であっても、アメリカの情報抜きに行動するということはまず考えられないわけですね。特に、アメリカが今進めているIAMD構想、先日、岸田首相は明確に参加しないと言いましたが、しかしながら、このシステムに入らなければ全くその日本の反撃能力というのは機能しようがないわけですから、実質的にはこの中に取り込まれていくのであろうと。アメリカ軍からすれば、自分たちはその能力も限界もよく知っているトマホークを日本が四百発買うわけですから、日本が買ったそのトマホークで何時何分何秒の方向に撃てというような指示が出てくると、まさしくそれこそが日米一体化であろうというふうに思います。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  続いて、鈴木公述人と半田公述人、それぞれ伺いたいと思います。  米中の対立が激化することによる戦争を回避するには、軍事ブロックで中国との対立を深めるのではなく、中国も含んだ地域全体の包摂的な枠組みによる平和的な外交努力、これはいかなる立場に立つとしても、そういう努力そのものはやはり必要ではないかと思います。  鈴木公述人の資料でも、G7を孤立化させない、グローバルサウスについて取り込むのでもなく対立するのでもなく寄り添うということを先ほど来も御指摘ありましたが、そういう意味で、分断、対立ではなく包摂的な関係の必要性について、それぞれ御見解を伺えますでしょうか。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  多分、防衛費を増やす、安全保障戦略を備える、これが分断を促すということになるのかどうかというところの多分論点になろうかと思います。  私は、こうした備えをすることと分断を回避し地域間の包摂的な枠組みをつくるということは矛盾しないというふうに考えております。  日本は、もし何かがあったときのための備えはしておくけれども、しかし、積極的にそれを対立に持ち込むのではなく、まずは外交があり、そして、例えば日本は中国と、中国が初めて入った自由貿易の枠組みでありますRCEP等、中国と日本は同じところに入っていますし、これまで日中韓というこの三か国の枠組みというのもまだございます。  そういうようないろんなまだチャンネルは持っていて、その使い道というのは多分いろいろあると思うので、そういったものを活用していくこと自体は、今この防衛費を増やすですとか安全保障戦略を整えるということとは矛盾せずに、両方同時にやっていくべきことなのだろうというふうに考えております。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 包摂というのは極めて重要だと思います。  例えばTPPですが、これは、TPP自体に様々な評価はあるとはいえ、日本が入っているにもかかわらずアメリカは出ていってしまったわけですね。で、中国がこの加盟を申請して間もなく台湾も加盟を申請しましたね。これ、私は両方入れるべきではないかと。同じ土俵の中に台湾と中国を入れて、そして議論のテーブルの場というものを一つつくるいい機会ではないかと思います。  もう確かにRCEPもありますし、例えばASEANの中のARFというのもありますけれども、それだけではまだ足りないと。包摂するためにチャンネルが幾つあっても構わないと思います。それは是非、日本はそういった場をつくる可能性のある一番いい機会が今年から来年ぐらいにかけてではないかなというふうに思っています。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  鈴木公述人にもう一点伺います。  米中対立に関わって、今日のお話でも、半導体規制など、経済に政治が介入する問題について御指摘がありました。アメリカが今このような態度を取るその政治的な意図について、また、それが対立をよりあおる方向に進むのだとすれば、その緩和のために日本は何をするべきかという点について御意見をお聞かせください。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  アメリカにもいろんな考え方があるとは思うんですけれども、今アメリカは社会が非常に分断している状態で、共和党と民主党の対立というのは非常に激しい状態になっていますが、唯一超党派で同じ目標へ向かっているのがこの対中対立というか対中強硬派、どっちの党がよりこの中国に対して強く出るかという、こういう競争になっている部分というのがあると。  先ほども申したように、ツキディデスの罠の形で、やはりキャッチアップしてくる中国に対する恐れというものと混ざり合うか、その党派性の対立というのが競争になって、中国に対する、どっちが強く出ているかという、こういう競争になっていることから、なかなかヒートアップした状態というのが解消できないというところにあるんだと思います。  これをどうやって鎮めていくかというのはなかなか難しいんですけれども、一番重要なのは、中国がいたずらにそのあおるような方向に行かないことだと思います。現在、中国は比較的冷静に受け止めているという状況にありますので、この状態が続いてくれることを祈りたいと思うのと、また、日本は、アメリカと中国の間に立って、やはり中国の実態ないしは中国のこの怖さというか、アメリカが持っている恐れというものを緩和していく様々な努力、中国にもいろんな弱点があって、日米で協力することによってそうした恐れを抱かなくてもいいんだという状態をつくっていく、ないしはそういうことを、そういう雰囲気をつくっていくことが大事なのだろうと思います。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。終わります。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 お二人の公述人、本当にありがとうございます。  それでは、まず最初に鈴木公述人に、台湾有事の際に日本で一番危険な地域とかいうのはどのようにお考えなのかというのを一点。それから、半田公述人に、イージス・アショアだったりオスプレイだったり、いろんなものをアメリカから買っていますけど、この爆買いという、この爆買いローンのツケについての御見解をお願いします。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  台湾有事がどのような形で展開するかによって日本に掛かるリスクというものがどういうものになるのかということの性格も変わってくるんですけれども、地理的に当然、南西諸島、まあ沖縄県は非常に近いところにありますので、様々な意味でもう逃れられないというか、一番大きな影響を受けることは間違いないだろうというふうに思います。  当然ながら、それ以外にも、先ほど半田先生の方からもお話ありましたように、米軍が日本から、台湾を支援する形で日本の在日米軍基地から飛び立つようなことがあれば、当然そういったところがリスクの高い地域ということになろうかと思います。ただ、台湾の、台湾有事の性格によっては、もしかすると、例えば、日本における例えば経済的な台湾とのつながりの深いところですとか、そういったところもまた可能性としてはあろうかと思います。  いずれにしても、こうしたものというのは多分日本全体に掛かってくる大きなリスクでありまして、どこの特殊な地域、ある特定の都市ですとか都道府県がこの対象になるというよりは、複数が全体的に日本はこの台湾有事においてリスクにさらされる可能性があるというふうに考えておいた方がいいのかなというふうには思っております。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) FMSの爆買いのことですよね。  例えば一九〇〇年代であれば、日本とアメリカの経済的な差によって、ドル減らしを目的にして、C130輸送機を大量に購入をしたり、あるいはP3C哨戒機を大量に購入をすると、それにより、アメリカの兵器を買うことで日本の産業をアメリカの圧力から守ると、そういったやり方というのもされていたと思います。  ただ、今となってはもうアメリカと日本の経済的な差というのはどんどん開いていって、それほどアメリカから強く求められているわけではないのに、むしろアメリカをそんたくをして積極的にそのアメリカの兵器を買うという形ができているように思います。  その際、今日お話ししたように、本来、自衛隊の装備品というのは、陸海空自衛隊が、こういう戦争があり得るからこういう戦いをするんだと、そのためにこういうものが必要だ、だからこの武器を買いたい、それが国産であったりアメリカ製であったりするわけですね。しかしながら、近年の武器の、特にアメリカから購入する武器を見ていますと、もう自衛隊との相談を抜きにして結局政治の判断でもって武器を買うと、その方が目立ってきているわけですね。  今日御紹介したグローバルホークなども、陸海空どこも欲しくないので、最後に、最後はあれ飛ぶんだから航空自衛隊持ったらどうだみたいな乱暴な話で決まっていったり、あるいはイージス・アショアにしても、ミサイル防衛システムはイージス護衛艦の四隻体制を八隻体制に倍増することが決まっていったり、また地上迎撃型のPAC3も、PAC3MSEという広い範囲で守れるものがどんどん入ることが決まっているのに更に上乗せされてしまっていると。  こうなってみると、結局、必要か必要でないかはともかくとして、これを買ってやるからこれで戦えみたいな形になってしまっていると。その本末転倒であるからこそ、香田洋二さんという元自衛艦隊司令官が、仮に二%、GDP比の二%となっても防衛力強化につながらないと。つまり、現場の声を聞かずに政治で、特に政治とつないでいるのがいわゆる内局と言われる防衛省の官僚組ですけれども、内閣人事局ができて以降、この官僚が政治、首相官邸の方ばかり見るようになって、制服組の意見を聞かなくなっているわけですね。その結果としてずれが生じてしまっていると。それがどんどん広がっていて、今解消されない状態でお金だけがどおんと二倍に増えることになったと。  これは決して好ましくないし、最終的には税金の無駄遣いにつながりかねないと。だから、精査をする必要があるというのはそういうことだと思います。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 ありがとうございます。  鈴木公述人に、沖縄、先ほど台湾の話がありましたけれども、外国から攻められても、他国が、ああ、台湾はこういうところだから守んなきゃいけないと、今言う沖縄に、下地島とかに空港があったりしますよね。そうすると、韓国、台湾、中国とかいうそういったアジアの国々と連携して、アジアの皆さんと国際航空大学みたいなのをつくることによってそこが一つ守られるような、そういう戦略もあるのかなというふうに考えるんですが、それに対する御意見をお願いしたいと思います。  そして、半田公述人には、防衛省は、米政府への支払を優先させるために、これまで最長五年だった国内企業への分割払を最長十年に延ばすということを決めて、その結果、防衛部門から手を引く企業が増えて国内の防衛産業基盤を弱体化させたというふうにおっしゃっているんですが、この間、ロケットのエンジンが不具合だったりとか、やっぱりそういうところにも影響が来ているのかなと思うんですが、そこの見解をお願いします。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  沖縄に国際航空大学ですとかアジアの複数の国によって成り立つようなそういう機関をつくるというのは、これはまさに不可欠性というか、その地域を守るための、守る価値のある場所にするという意味では大変良いアイデアだと思います。  これを実際にこれまでやってきたのは、伝統的にはスイスがそうですね。ジュネーブに国連機関、これ国際連盟のときからですけれども、第一次大戦後にこの国際機関を集めて、そして今でもUNHCRですとかWTOですとか、スイスに拠点を置くような国際機関というのは多数あります。  同じく、今それをアジアでやっているのはネパールですね。カトマンズに国連のアジアの機関、ESCAPですとか、そういった組織の本部があって、やはり国際機関をそこの町に置くことによって他国がなかなか侵略しにくくなるという、こういう効果はあろうかと思います。  その意味で、こうした国際的な、各国が関与する、そういう組織ができるということは大変喜ばしいことだと思いますし、それが安全保障の一つの手段だというふうに思います。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) アメリカへの支払がかさんだ結果、国内の防衛産業への支払が滞ったことから、特別措置法を作って、これまで五年で払い切ったものを十年に倍増させると。これは実際に特別措置法が出されて、国会を通っているわけですね。通った後に、特措法ですから期限があるんですが、これをまた更に延ばして今でも生きているということですよね。  その結果、例えばもらえる予定だったお金がもらえなくなったり、あるいはそういった支払が悪くなるということは、例えば研究開発費などの支払が鈍くなるということになりますので、実際に防衛部門をやっていたかつての著名な企業などもどんどん撤退しているというのは、これ事実なわけです。  その中身を見たときに、先ほど申し上げたように、アメリカ製の武器を買うことを最優先にして、特にFMSの場合には代金先払いというルールがありますから、アメリカに待ってもらうわけいかないわけですよね。そのときに、本当に真に必要なものかどうかということの見極めがないまま契約をすることによって防衛費全体が圧迫をされて、国内の防衛産業にしわ寄せが行っているということなんですね。  たまに見直しはあるんです。例えば、二〇一八年に閣議、閣議了解でしたね、閣議了解で百五機のF35を爆買いをすることを決めたんですね。このときに、F35Bという、空母化する「いずも」に載せるということから四十二機を、これは日本で生産していないので、これはFMSで買う以外にないんですが、一方、F35Aというのは国費で三菱重工に生産ラインをつくっているんですね。つくっているのにもかかわらず、アメリカ製の方が安いということで、これを買うことにしてしまったと。だから、結局、三菱はそのF35Aの生産ラインを生かすことができていなかったと。  これは見直しされて、本年度などは三菱で組立てを行っていますけれども、それでもやはり国内産業に対する目配りというのはほぼなかったということがそういったことになったんだろうというふうに思います。

大島九州男れいわ新選組

○大島九州男君 ありがとうございます。  日本独自でやはり守る防衛の知恵というものは必要だと思うし、また、それを世界に発信して平和な国をつくっていかなくちゃなりません。そしてまた、防衛を通じて日本国内産業の育成と技術革新もやっていかなくちゃいけないというのを改めて強く感じました。  本当にありがとうございました。終わります。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 浜田聡でございます。  お二人の公述人の先生方、本日はどうもありがとうございました。今後の展望を考えて、我が国であったり我々がどうすべきかというのを考えていきたい、いく必要がある、重要なんだなという思いであります。  まず、半田公述人にお聞きしたいと思います。  あらかじめいただいていた無人戦闘機の資料などを興味深く見させていただきました。戦闘機であったり兵器であったり、もちろん時がたてば技術進歩していくわけでございますが、数多くいろいろ見られてきたと思うんですけれど、御自身で感じた技術の進歩のペースであったり、あと、あるいはそれを踏まえた上での今後の展望など、お聞かせいただければと思います。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) もう私、防衛記者をやって三十年になりますけれども、まあ三十年前のものは本当に陳腐化していて、到底現代の戦闘には役に立たないものが多数ある一方で、当時のものであってもまだ有効なものもあると。ですから、我々の社会の進み方と比べた場合、兵器の世界というのはむしろゆっくり進んでいくということもあるんだろうというふうに思います。  他方、今日ありましたように、ハイブリッド戦のような新しいジャンルが出てきて、そこも取り込んでいかないと日本としては守りを固めぬわけにはいかないというようなことも出てくると。そうすると、実は、新旧のものを取り合わせて使うということや、あるいは新しい分野にマンパワーや予算を投入するということが同時に行われないといけないわけですね。したがって、それをバランスよく配分していくということが日本を本当に強くする方法だというふうに思います。  ここのところ、やはり見ていくと、政治の介入という形で、本当に必要であるかどうかということを度外視した上でどんどんアメリカから武器を買ってしまって、その結果、苦しくなって枠を広げると。本来であれば、予算というのは貴重な財産、国民から集めた税金でかなりの部分を賄っているわけですから、積み上げ方式が必要だと思うんですね。今回の二%というのは、枠をいきなり与えてしまって、この枠の中で自由にやっていいというような誤解が今防衛省・自衛隊には生まれているんではないかと。  今日お話ししたように、三種類のミサイルの国産同時開発、これできないと私は大変失礼ながら思いますね。そういったものの尻拭いを誰がするんだと。結局、国民が、自分の国を守るための兵器が足りない、だけれども税金だけは取られた、そんな話になってはいけないなと、そのように思います。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  引き続き、半田公述人にお聞きしたいんですけれど、今度は北朝鮮を視点にしたいんですね。北朝鮮の軍事力の向上ペース、あと今後の展望、お聞かせいただきたいと思います。

半田滋防衛ジャーナリスト

○公述人(半田滋君) 北朝鮮のミサイル能力というのは非常に目覚ましいものがあると思います。ただ、そのミサイル開発になぜ力を入れているのかということにもちゃんと注目しなければいけないと思います。  やはり北朝鮮は、北朝鮮の労働党の機関紙である労働新聞などでも度々言っているように、例えばリビアやイラクの二の舞にならないための強力な抑止力が必要なんだと。つまり、リビアもイラクもアメリカの一方的な攻撃によって指導者が殺害をされたという事実があります。したがって、同じような目に遭わないためには、アメリカに対抗する強力な抑止力が必要だと。しかしながら、通常兵器をたくさんそろえるほどの予算的な余裕がないことから、まあ一点豪華主義で核とミサイル開発に今は進んできているということですよね。  したがって、北朝鮮は、その一撃の反撃能力はあるとはいえ、継戦能力といって戦争を続けるための能力というのはほぼないと。だけれども、その一撃さえあればアメリカからは攻撃されないというような、そういった確証を得たいと。さらに、それが国内向けには、我が国はアメリカに対抗し得る軍事力があるんだというふうに見せて求心力を高めることにもなるし、同時に、アメリカに対する対話のための材料として出すこともできると、そんなふうに使われていると思います。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  次に、鈴木公述人にお聞きしたいと思います。  先日、H3ロケットの打ち上げがありました。その前はイプシロンロケットなどもあったと思うんですけれど、我が国の宇宙政策に関する現状、あと今後の展望など、お聞かせいただければと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございます。  今回のテーマと、外交・安全保障に直接関わるわけではないんですが、私は内閣府の宇宙政策委員もやっておりますので、簡単に。  H3とイプシロンが失敗したということは極めて残念なことであります。ただ、H3は今回初めての打ち上げで、初めてのロケットが失敗することは間々あることでありますので、そういう意味では、これで何か全てが終わったというわけではないだろうというふうに思います。初号機の失敗が将来的には糧になって次からの成功につながっていくということになるのが一番望ましいとは思いますが、ただ、やはり国際的な、特に市場からの信頼を回復するためには、かなり地道に努力をし続けなければならない。そのためにも、政府が続けて、今後もこの打ち上げを続けるというコミットメントをし続けなければならないだろうというふうに思います。  日本の宇宙開発は、ちょうどこの安保三文書が出まして、その中には宇宙の部門も書かれていまして、安全保障上の宇宙利用ということについても、また宇宙空間の安全保障をどうやって守っていくのかということについても今新しい局面に入ってきておりますので、日本としてこの宇宙開発を続けていく、そして安全保障のみならず社会経済全般にこの宇宙を活用していくということがこれから目指すべき方向性だと思っていまして、それはあのロケットの失敗で終わるものではないと思っております。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  引き続き、鈴木公述人にお聞きしたいと思います。ロシアのウクライナ侵攻についてでございます。  どちらも全力で戦っている状況かと思いますが、ただ、ウクライナが戦うのをやめてしまうと侵略が成立してしまうわけですが、ロシアに関しては戦うことをやめるという選択肢があるのではないかと思います。どちらも状況苦しいと思うんですけれど、ロシアについてもやはり苦しいという状況がいろいろな情報から感じられるところでございます。  ということで、今後、ロシアが侵攻をやめる可能性、そういった展望などありましたらお聞かせいただきたいと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) ありがとうございました。  ロシアが今どういう意図を持って戦争を継続しているかということがなかなか理解しづらいところがある。最初は、短い時間で一気にキーウまで陥落させ、そしてゼレンスキー大統領が逃亡し、そしてロシアは容易にウクライナを支配できるだろうと思って始めたものが、今やもう一年たって、なかなか始めてしまった以上やめられないという状態に今あろうかと思います。  ただ、やはりプーチン大統領といっても、無限に弾があるわけでも、無限に資金があるわけでも、無限にサポートがあるわけでもないので、いつかどこかで弾切れですとか資金切れですとか、プーチン大統領自身の足下の支持が失われていくというような環境が生まれてくれば、その状況次第では戦争をやめなきゃいけないという判断に至る可能性はあると思います。  ただ、やはり一番のポイントになるのは、やはりウクライナ軍がこれからどれだけ抵抗ができるか。その抵抗も、やはり今ウクライナもなかなか、やっぱり戦争を続けるための力というのを出し続けるというのはなかなか難しい状態ですし、また西側の支援というのも必要になってくる。これが今膠着状態になっている理由ではありますけれども、我々ができることというのは、経済制裁をより徹底して、ロシアの弾切れ、それから資金切れ、これを加速させるということに尽きるのかなというふうに思います。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございます。  最後、ちょっと時間もなくなっているんですけれど、鈴木先生にお聞きします。  安倍政権から岸田政権にかけての外交・安全保障の変化というか、あるいは評価などをお聞かせいただければと思います。

鈴木一人東京大学公共政策大学院教授

○公述人(鈴木一人君) 安倍政権が非常に長かったので、長い間そのいろんな変化があったと思うんですけれども、安倍政権の一つの目標であったのは、多分一番大きいのは対ロシア政策が変わった部分だろうと思います。それはやはり、元々北方領土の返還ということをライフワークにされていた安倍元首相の対ロ交渉、これが結果的にはその返還には結び付かなかったわけですけれども、それと、この岸田政権になってから、このロシアのウクライナ侵略があったことによって対ロ政策というのは大きく変わったというふうに思います。  ただ、全体として、その圧倒的な変化があったというよりは、やはり継続の中で、この日本の外交・安保政策というのが一定の流れの中で継続されているんだろうなというふうに思っておりますし、それが外交・安保政策のあるべき姿なんだと思います。

浜田聡政治家女子48党

○浜田聡君 ありがとうございました。終わります。

末松信介自由民主党

○委員長(末松信介君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時六分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗