P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
211回国会参議院2023/05/31

憲法審査会 第6号

発言数
105
登壇者
14
会派数
7
開催日
2023/05/31

会議録

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。  参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、憲法に対する考え方についてのうち、参議院の緊急集会について、本日の審査会に防衛大学校教授松浦一夫君、早稲田大学大学院法務研究科教授長谷部恭男君及び京都大学法学系(大学院法学研究科)教授土井真一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。  本日は、憲法に対する考え方についてのうち、参議院の緊急集会について参考人の皆様から御意見を伺います。  この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、松浦参考人、長谷部参考人、土井参考人の順にお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただいた後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  全体の所要は二時間を目途といたします。  なお、御発言は、質疑、答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず松浦参考人にお願いいたします。松浦参考人。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 本日は、意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  防衛大学校の松浦と申します。  参議院緊急集会制度と国家緊急事態の関係につきまして話を進めるに当たり、まず確認すべきことがあります。それは、この制度が、戦後占領期にGHQ総司令部の提示した案に基づく日本国憲法起草時において、ドイツ法をモデルとする緊急命令制度の導入を企図する日本側と、英米法的国家緊急権議会に基づくGHQ民政局次長チャールズ・ケーディスの間の激しい論争の結果生まれた妥協の産物であるということであります。  総司令部案が日本側に提示される以前、日本側で新憲法案を検討していた松本委員会に出席した委員の多くは、いわゆる常置委員会の制度の導入を支持していました。  常置委員会とは、ドイツ・ワイマール共和国憲法と共和国を構成する国の憲法、例えば一九二〇年のプロイセン憲法などが議会閉会中及び任期満了や解散による新議会召集までの議員不在時に議会の権能を維持するため設置したものであります。  この委員会による政府権力の統制、特に緊急命令の事前審査ですね、これを考えていました。帝国憲法時代の日本におきましても、議会が開会できないとき、緊急の必要を名目に、緊急勅令、緊急財政処分による政府権力の濫用があったことに鑑み、帝政から共和制に移行したドイツの制度をモデルとすることが考えられたわけです。  政府が設置した松本委員会の案のみならず、民間憲法草案にも常置委員会の設置を提案するものもありました。そして、後に日本国憲法案の帝国議会での審議の説明を、審議において説明を担当する金森徳次郎も、その著書で緊急勅令、緊急処分の常置委員会による統制を提案していました。  一九四六年二月十三日に総司令部案が日本側に提示され、それまでの松本委員会の検討が白紙に戻った後も、緊急勅令、緊急財政処分に代わる規定を提案する中で、政府単独による緊急命令を修正し、常置委員会によるその民主的統制を提案しましたが、総司令部により拒絶されました。  その後、衆議院解散の場合に限り、常置委員会又は参議院が国会の権限を臨時に代行する案を提案しました。この提案が、国会の権限を臨時に代行する案を提案したわけですが、後にこれが参議院の緊急集会制度につながるわけです。  しかし、ケーディスはこのとき、解散後、次の国会が召集されるまでの七十日間に国会の議決を必要とするような場合は想定できないし、災害発生等のために必要になる緊急の立法や財政措置は政府のエマージェンシーパワーで対応すればいいと言いまして、これを却下しています。  その後、国会が召集不可能な場合に、次の国会で承認を得ることを条件に内閣が臨時に必要な措置をとることができる旨の規定を提案し、内閣主導の緊急事態対応を再度提案しましたが、これも却下されました。  ここでGHQのケーディスが折れまして、以前提案した参議院による衆議院解散時の国会権限代行案、すなわち参議院緊急集会制度に落ち着いたということであります。その結果が今日の憲法第五十四条二項、三項ということになります。  つまり、衆議院不在時の緊急の必要に対応するため、特別な憲法規定は不要であると譲らないGHQから譲歩を引き出すために日本側はその出方を探りながら落としどころを見付けたにすぎず、憲法第五十四条の規定が緊急事態対応規定としては甚だ不十分なものにとどまったこと、それが今日の議論の混乱を招いていることを看過すべきではないと考えます。  さて、五十四条二項、三項の解釈に話を進めます。  解釈による衆議院不在以外、ごめんなさい、訂正します。解散による衆議院不在以外、任期満了による衆議院の不在の場合にも参議院の緊急集会の開会が可能かについて、憲法明文上、解散の場合のみを規定していることから、これを限定的に解釈し、任期満了の場合には開会できないとする説があります。これは憲法制定時に、短期的な政治的事情から衆議院が急に解散された場合、解散後、特別会まで待てない緊急案件が残される可能性が高いのに対して、任期満了の場合にはその時期があらかじめ定まっており、それまでに案件を処理できるため、緊急案件が生じる可能性が少なく、あえて明記する必要はないと考えたからであるとされます。  私は、現行日本国憲法が重大かつ長期にわたる緊急事態対応を想定していないと考える立場ですので、衆議院任期満了の場合には参議院緊急集会の開会は制度上想定されていないと考えます。しかし、実際上、任期満了の場合も解散の場合も衆議院が不在になることに変わりはなく、任期満了後にも緊急案件が発生する可能性も皆無とは言えません。緊急事態の発生は時を選びませんから、任期満了の場合にも緊急集会の開会を可能にすべきという意見ももっともだと思います。  それを可能にするため、五十四条二項の類推解釈で対応すべきとの一部の憲法学者の意見があるようですが、その一方で、国会法の研究者の中には、任期満了による総選挙を選択する場合でも、運用上その直前に衆議院解散の手続を取ることで憲法上の不備に対応すべきとする意見もあるようです。ですので、この争点については意見の対立はそれほど深刻なものではないと考えます。柔軟に対応すればいいと私は思っております。  緊急集会の開会可能期間の問題ですが、これまでの学説では、総選挙が問題なく実施でき、選挙後の特別会が速やかに開会できる平常時の場合、解散から総選挙実施により新たな議席が確定するまでの上限期間である四十日間が参議院の緊急集会開会可能期間であるのか、実際の特別会召集までの間の三十日を加えた最長七十日かについて説は分かれておりますが、いずれにせよ、選挙が平常どおり行われ、特別会が滞りなく召集されることが想定されていると考えられます。  しかし、衆議院解散後あるいは任期満了後に重大かつ長期に及ぶ緊急事態が発生し、総選挙の実施が困難となり、長期にわたり衆議院が不在となる場合については現行憲法は想定していません。この欠落を解釈により補填しようと、参議院の緊急集会があるからこれに国会の権能を必要な期間代行させればいい、緊急の必要がある限り七十日という期間に縛られる必要はないという主張が一部にあります。このような主張は、憲法改正をしないこと、新たに緊急事態条項を導入しないことを大前提として、現行憲法の中にあえて緊急事態対応の根拠を読み込むとすればこのような解釈方法があると主張するものにすぎません。緊急時の政府の迅速な対応と、その議会による民主的統制の確保に最も有効な方法は何かという目的、視点を欠いているように思います。  この目的を達するには、元々制度設計にはない役割を参議院緊急集会に負わせるのではなく、憲法改正により緊急事態宣言の制度を設定し、宣言下での衆議院議員の任期の延長や衆議院解散の禁止などの措置を認め、国会が両院完全な形で政府を統制する方が民主的観点から見てはるかに効果的であると考えます。重大緊急事態対処のためには、個別に処理すべき案件に限らず包括的な案件を提示する必要があるだけに、なおさら衆参両院がそろう完全な国会がこれを審議すべきであると考えます。  国際比較の観点から見ても、緊急事態宣言下での国会の解散禁止や議員任期の延長を認める国は多く見られます。西修駒澤大学名誉教授がOECD諸国を中心に調査されたところによれば、フランス、イタリア、エストニア、スロベニア、スロバキア、ハンガリー、ポルトガル、スペインといった国々が議員の任期延長又は国会の解散禁止あるいはその両方を憲法に規定しております。ドイツもこの制度を採用していますが、この後、改めて言及をいたします。  参議院の緊急集会で臨時に代行できる国会の権能がどこまでに及ぶかについては諸説あるものの、内閣不信任決議など衆議院のみに認められている権能が除外されるほか、憲法改正の発議、条約の承認、内閣総理大臣の指名は認めるべきでない、この点について既に見解の一致があるものと考えます。  一部には、内閣総理大臣の指名について、大規模災害等により総理大臣ほか多数の国務大臣が欠け、かつ総選挙の実施のめどが立たず延期を余儀なくされた場合に例外を認めざるを得ないとして、緊急集会での総理指名も例外的に認められるとする説もあるようです。ですが、そのように政府が正常な統治能力を喪失する非常事態を想定する必要があると真剣に考えるのであれば、国会についても同じ例外を考えなければならないはずです。つまり、参議院の緊急集会を含め、国会自体が集会不能となる非常事態も想定しておく必要があるはずです。  非常時に国会が集会不能となったとき、確実に集会できる小規模な委員会に国会の権能を代行させる制度が考えられます。現にこの制度を採用している国はあります。戦時に限ってではありますが、ドイツがその例として挙げられます。  ここで戦時というのは、ドイツ基本法、ドイツの憲法ですが、この第百十五a条が定める防衛事態のことであり、日本の武力攻撃事態に相当するものです。防衛事態下で連邦議会、連邦参議院が集会不能となった場合、平時から委員が指名されている合同委員会という機関、これは両院の議員四十八名から構成されるものですが、この合同委員会が、一定の条件はあるものの、連邦議会、連邦参議院の機能を代行することが憲法に明記されています。  なお、防衛事態の下では連邦議会の解散も禁じられ、任期満了となった連邦議会及び衆議院の議員の任期は自動的に延長されることになっており、事態終了から六か月後をもって任期を終えることとなっています。  議員以外にも、連邦大統領等の任期の特例も認められています。非常時に議員等の任期が延長されたからといって、国民の参政権が侵害されたとか議会が民主的正統性を欠くといった批判があったという話は私は知りません。  最後に、例え話としていいかどうか分かりませんが、例えば築七十五年の家に幾ら耐震補強工事を施しても、軟弱な地盤、脆弱な基礎の上に建てられた家であればその効果は期待できず、徒労に終わります。国家の基本法である憲法も同じです。その制定過程の特質性ゆえに日本国憲法の基礎は残念ながら脆弱であります。特に、国家の基礎であるべき主権に関わる部分について見解の一致を見ず、いまだに学説の対立があり、問題を生じさせています。  すなわち、対外的主権を最終的に確保するための防衛関連規定の不存在と、非常時における国家統治能力の維持及びその民主的統制に関わる緊急事態関連規定の欠落であります。この欠落から生じる不都合を憲法解釈により解決するにも限界があることは明らかであると私は考えます。  以上でございます。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、長谷部参考人にお願いいたします。長谷部参考人。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。  レジュメを用意しておりますが、時間も限られておりますので、中で幾つかの項目、かいつまんでお話を申し上げます。  まずは、緊急集会の実体的要件のうち、衆議院が解散されたときというこの論点です。  日本国憲法の条文は、衆議院が解散されたときに内閣が緊急集会を求めることができるとしております。このことから、衆議院議員の任期満了により総選挙が実施される場合、緊急集会を求めることができるか、これが論点になります。  そもそも、解散がされず、衆議院議員が任期満了となることも極めてまれではありますが、さらに、公選法は、議員の任期が終わる日の前三十日以内に総選挙を行う、これを規定しておりますので、任期満了によって衆議院議員が存在しなくなることは一般的には想定しにくいところです。  もっとも、例外的には、任期満了直前まで国会の会期が続くと、これもあり得ますので、任期満了によって衆議院議員が存在しなくなることもあり得るといえばあり得ることになります。こうした場合、内閣が緊急集会を求めることはできないとする説もありますが、この説は、衆議院議員の任期満了の期日は解散の場合とは異なり事前に明らかですので、内閣は当該期日までに必要と考えられる措置をあらかじめ講じ得るはずである、このことを根拠としているものと思われます。  もっとも、天災等事前に予測し難い危機が生じまして、そのために総選挙の実施に支障が生じると、こういった場合には、臨時会の召集まで日数を要するということも理論的にはあり得ます。そうした場合、内閣の独断専行を避け、可能な限り憲法の定める制度を活用して権力の抑制、均衡を確保する。そのためには、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合にも、憲法五十四条の規定を類推をして内閣は緊急集会を求めることができると考えることが適切のように思われます。こうした考え方は、現在では多くの学者の支持を得ていると考えられます。  そして、続きまして、レジュメで申しますと四、大きな四になりますが、緊急集会に代わる対応策、この論点です。  どのような事態が想定されているのかという話ですが、最近、外国による武力の行使ですとか大規模な自然災害等のために衆議院議員の総選挙を行うことが長期にわたって困難と考えられる事態におきましては、参議院の緊急集会ではなく、既に失職をした、あるいはこれから失職するであろう衆議院議員の任期を延長する、そのことで対処をするべきであるという憲法改正論が浮上をしております。  こうした提案についてでありますが、第一に、そうした場合というのが、そうした事態が果たしてどれほどの蓋然性で発生し得るのか、また、仮に発生するとしても、長期にわたって総選挙を実施し得ないことを事前に予測し得るという状況がこれもどれほどの蓋然性で発生し得るのか、こういった論点がございます。  重大な緊急事態が発生したために、広範にわたる地域で総選挙の実施が困難となるということは確かにあり得るでありましょう。ただ、そうした天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないときにつきましては、衆議院議員の選挙を含めまして、公職選挙法が既に繰延べ投票の制度を設けております。  もちろん、投票だけではなくて選挙の実施そのものの延期が必要となることもあり得るかもしれませんが、その場合には、参議院の緊急集会が選挙期日を延期する臨時特例等を定める法律、これで対処をするということになるでありましょう。解散の日から四十日という憲法五十四条の定める期限を超える延長となることも考えられますが、これは本日おいでの土井参考人も御指摘のとおり、法が不可能時を要求するものとは考え難いゆえに、後で述べますところの四十日という期限の趣旨からしても、私は憲法はこれを容認するものと考えております。  多くの選挙区で繰延べ投票や選挙の延期が行われることはもちろん好ましい事態ではございませんが、理論的に申しますと、衆議院の定足数に当たる総議員の三分の一の議員の選出がなされれば国会を召集して審議、議決を行うことは可能のはずでございますし、しかも、いずれの地域から選出された国会議員も、憲法四十三条によりますと全国民を代表しております。全ての衆議院議員の選出が終わらないまま、既に選出された議員のみで国会としての審議、議決を行うことに正当性がないとまでは言いにくいように思われます。  また、郵便投票制度の拡充など、自然災害等の場合に避難先からの投票を可能とするような公選法の改正、こういった法制度の改正を行うことで投票の繰延べですとか選挙そのものの延期の必要な場合を減らす、こういうことも考えられます。  最高裁の判例は、選挙権の制限は、これは引用になりますが、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難である場合、そういった場合にのみ許されるとしております。  憲法自体を変えてしまう以上は現行憲法の規定を前提とする判例法理は妥当しないのだという、そういう主張もあり得ないではございませんが、緊急の事態におきましても基本権は可能な限り保障されるべきですので、正当な目的の下、必要最小限度においてのみその制約が許されるという比例原則は、これはなお妥当するはずです。  選挙の実施が部分的とはいえ可能である以上は、緊急の事態におきましても、困難が解消され次第、可及的速やかに順次選挙を粛々と実施することが要請されるはずでございまして、そもそも困難がない選挙区も含めて丸ごと延期をするということはやはり許されないのではないかと思われます。  さらに、そうした状況、万一発生し得るといたしましても、総選挙の実施を長期にわたって先送りせざるを得ないということを前もって予測するということが果たして可能なのか、そういった問題もございます。  理論的には確かにそういった状況、発生することはあり得るでしょうが、先のことははっきり申し上げて分からないはずなのに、また繰延べ投票や選挙そのものの延期も可能であるのに、あたかも将来のことが確実に分かっているかのように総選挙の実施を長期に先送りをすると、こういった判断をすることは国民にいぶかしがられるということになりはしないかという、そういう懸念もございます。  二つ目の緊急事態の恒久化の回避という論点ですが、今申し上げた点に加えまして、こうした対処策を取るべきでない理由は私はもう一つあると考えております。  これは、ドイツの憲法学者で憲法裁判所の判事も務めましたベッケンフェルデ教授が強調する点ですが、緊急事態に対処するための制度的対応に当たってはあくまで臨時の暫定的な措置にとどめること、これには十分な理由があると考えます。  現行憲法五十四条の定める参議院の緊急集会による対応は、これは条文にもありますとおり、限られた期間しか通用しない臨時の、しかも措置です。緊急集会の権限にはそもそも限界があると一般的に考えられてきましたことも、緊急集会の行い得るのが暫定的な臨時の措置にとどまるということと対応をしております。  これに対しまして、衆議院議員の任期を延長するといたしますと、そこには、総選挙を経た正規のものとは異なる異常なものではありますが、国会に付与された全ての権能を行使し得る、まあある種の国会が存在をする、そこでは通常の一般的な法律が成立をするということになります。  そういたしますと、緊急時の名を借りて、通常時の法制度そのものを大きく揺るがすような法律が次々に制定されるリスクもそこには含まれているということになります。悪くいたしますと、任期の延長された衆議院とそれに支えられた従前の政権党が居座り続けて、緊急事態の恒久化を招くことにもなりかねません。緊急事態の恒久化を防ぐためには、これもベッケンフェルデ教授が指摘していることですが、平常時と非常時とは明確に区分をされるべきです。  ところが、衆議院議員の任期延長というのは、つまるところ、平常時そのものを非常時に近づけると、憲法制度の全てを永続する緊急事態へと変質させるリスクを含んでいるのではないかと、そういった疑いがあります。他方、参議院の緊急集会による緊急事態への対処、これは平時の状況が回復したときは可及的速やかに通常の制度へと復帰をする、これが予定されていることを意味しています。  繰り返しになりますが、将来の状況を確実に予測することは極めて困難でして、平常の事態に長期にわたって戻ることはないと予断をしてしまうべきではないと思われます。  これに対しましては、現行憲法の規定は緊急集会が長期にわたって継続することは想定していないのではないか、そういった疑問もあり得るところで、確かに憲法五十四条の規定を素直に読みますと、緊急集会は、解散後四十日以内に行われる総選挙までの間、あるいは長くとも新たな国会召集までの最大七十日間にしか求めることができないかのように見えます。しかしながら、今議論の対象となっておりますのは、国家の存立に関わるような、そういった事態でございまして、通常時の論理がそのままの形で通用すると考えるべきかどうかという、そういう問題がございます。  そうした非常の事態では、あらゆる考慮要素がくまなく総合的に勘案されるべきでございまして、特定の論点、特に日数を限った規定の文言にこだわって、それを動かし得ない切り札であるかのように捉えて議論を進めるべきではないのではないかと考えられるところです。  そもそも、なぜ憲法五十四条が四十日、そして三十日という日数を限っているかと申しますと、解散後も何かと理由を構えていつまでも総選挙を実施しない、あるいは総選挙の後もいつまでも国会を召集しないなど、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにという、そういう考慮からです。同様の規定は各国の憲法にも見られるところです。  緊急集会の継続期間が限定されているかのように見えるのは、実はその間接的、派生的な効果としてにすぎません。にもかかわらず、緊急集会の期間が限定されているかのように見えると、このことを根拠といたしまして従前の衆議院議員の任期を延長をする、それに伴って政権の居座りを認めると、このことはまさに本末転倒の議論ではないかとの疑いを抱かざるを得ないところがございます。条文のそもそもの趣旨、目的を踏まえた解釈、何が本来の目的で何がその手段にすぎないか、その点を踏まえた解釈が求められるように思われます。  参議院の緊急集会制度には、平常時と非常時とを明確に区分をするとともに、そこではあくまで暫定的で臨時の措置のみがとられる。選挙を経て正規の国会が召集され次第、その当否は改めて審議、決定されるものであると、このことを国民に広く示す意味があります。衆議院議員の選挙も、災害等による困難が解消した選挙区から順次速やかに実施をすべきものでありまして、困難がそもそもない選挙区の選挙を含めて丸ごと延期をすべきものではないと考えられます。  このように、現行憲法の定める参議院の緊急集会制度、これは十分な理由に支えられておりまして、これに新たな制度を追加する必要は見出しにくいというのが私の見解でございます。  以上、御清聴どうもありがとうございました。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。  次に、土井参考人にお願いいたします。土井参考人。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 本日は、このような意見を述べる機会を賜り、光栄に存じます。  私から、参議院の緊急集会について、四つの論点を中心に意見を述べさせていただきます。  まず第一に、衆議院の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を開くことができるかという論点です。  憲法五十四条二項は、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と定め、そのただし書において参議院の緊急集会を定めていますので、同項に基づく緊急集会については衆議院が解散されていることがその実体的要件の一つであると解されます。  そこで、この憲法五十四条二項ただし書が、緊急集会の開催を衆議院が解散されている場合に限定したものか、それとも衆議院議員の任期満了による総選挙が実施される場合にも緊急集会を開くことができると解すべきかが問題となります。  この点、従来の多数説は、衆議院議員の任期満了の場合には内閣が緊急集会を求めることはできないと解してきました。その理由は、第一に、憲法制定時に任期満了の場合の緊急集会が必ずしも想定されていなかったこと、第二に、参議院の緊急集会は例外的な事態であり、憲法による明文の根拠を要すること、第三に、衆議院の任期満了の期日は明らかであり、内閣は当該期日までに必要な措置を講じるべきであることなどが挙げられます。  しかし、大規模な自然災害や安全保障上の危機の発生を事前に予測し制御することは困難であり、このような事態が現実に生じれば、解散による場合のみならず、任期満了による場合であっても緊急の措置が必要になると考えられます。また、衆議院が存在しない状況で参議院の緊急集会を認めなければ、緊急事態の法理に依拠するなどして内閣が単独で必要な措置を講じる事態を招きかねません。確かに緊急集会は両院制の例外に当たることから、これを安易に認めることは適切ではありませんが、内閣が単独で法律に代わる措置を講じることは、より重大な例外に当たります。本来、緊急の場合であっても、憲法の定める制度をできる限り用いて権力の抑制と均衡を確保することが憲法の趣旨にかなうと考えられます。  したがって、五十四条二項ただし書の規定は、衆議院が存在しない例として解散の場合について緊急集会を定めたものであると解し、衆議院議員の任期満了による場合にも同条を類推適用して、国に緊急の必要があるときは内閣は緊急集会を求めることができると解すべきであると考えています。  第二に、緊急集会の期間は最長で七十日間に限定されるかという論点です。  憲法五十四条一項に基づけば、衆議院が解散された日から最長七十日で特別会が召集されなければなりませんから、参議院の緊急集会が認められるのもこの七十日間に限定されるとする見解が導かれ得るところです。確かに日数は一義的な意味を有していますので、これを解釈で変更することは困難であるとする見解にも一定の理由がございます。  しかし、五十四条二項に、衆議院の解散の日から七十日以内に限りという文言が直接存在するわけではございません。衆議院が存在しない間における緊急の対応であるという同項の趣旨を踏まえて、まず、緊急集会の開催は衆議院の解散の日から次の国会の召集が可能になるときまでの間に限られるという解釈が導かれます。次に、一項の規定から七十日という数字が導かれるわけですが、これは、二項にとっては、衆議院の解散の日から次の国会の召集が可能になるまでの期間の目安であると位置付けるのが適切ではないかと思います。  したがって、第一に、五十四条一項は総選挙の日から特別会の召集まで最長三十日の期間を置くことを認めていますが、現に総選挙により衆議院議員が選出され、特別会の召集が可能な状態に至れば、たとえ総選挙の日から三十日以内であっても、緊急の必要がある場合には、内閣は緊急集会ではなく特別会を召集すべきであると解されます。  他方、第二に、大規模自然災害や安全保障上の危機のために総選挙を実施できない場合には、たとえ解散の日から七十日を経過したとしても、衆議院議員が選出されず特別会の召集ができない状況は現に存在している以上、このような場合においてなお七十日という数字に厳格に拘束されるべき実質的理由があるかを問う必要があります。  そもそも、解散の日から四十日以内に総選挙が実施できない事態は、文言上、五十四条一項の規定に抵触することになります。しかし、大規模自然災害等で総選挙の実施が事実として不可能である以上、法は不可能を要求しないという法原則に基づけば、総選挙の実施の延期を例外として容認するのが憲法の趣旨であると解すべきであると思います。そうであれば、緊急事態に対応するために、五十四条一項が許容する範囲内で二項により緊急集会の開催を認めることは不合理ではないと思います。  ただし、そのような例外的場合であっても、憲法上、代表民主主義の基盤である国民の選挙権の行使は強く保障される必要があり、また衆議院が存在しない事態は極力回避すべきだと考えられますので、五十四条一項は、可能な限り速やかに適切な方法で総選挙を実施し、国会を召集できるようにすることを求めていると解されます。  なお、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合には、総選挙の時期及び国会、この場合には臨時会になりますが、国会の召集の時期は憲法ではなく公職選挙法及び国会法で定められています。したがって、五十四条一項については異なる取扱いになりますが、二項については同様の考え方でよいのではないかと思います。  第三に、緊急集会において参議院議員が発議できる議案に制限があるかという論点です。  緊急集会において審議される議案について、国会法は九十九条一項において、内閣総理大臣が緊急集会を請求する際に案件を示すことを求め、百一条において、このような案件に関連のあるものに限って参議院議員は議案を発議することができるとしています。このような参議院議員の議案発議権に対する制約が憲法上適切かどうかが問題になります。この点につきましては、緊急集会は国権の最高機関たる国会の権能を代行するものであり、立法の優位を確保しようとする憲法の原則に鑑みれば、一たび集会した以上は、参議院の審議権は集会時に内閣の提示した案件に限定されるべきではないとする見解もございます。  しかし、憲法五十三条が臨時会について各議院に召集要求権を認めているのとは異なり、五十四条二項は緊急集会の要求権を内閣にのみ認めています。これは、衆議院を欠く例外的状況であることから、緊急性を理由に権限の簒奪等が生じることを防止するために、一般的には、衆議院に基礎を置く内閣に緊急集会の開催を要求し案件を提示する権限を委ね、その内閣を統制するための審議、議決権を参議院に認め、さらに事後の同意権を衆議院に認めることで、内閣と両議院により権力の抑制と均衡を図る制度設計にしたものと解するのが適切です。  そうしますと、参議院の議案発議権に対するこのような制約は、憲法上の要請を国会法において具体化したものと理解されます。しかし他方で、内閣が提出した議案の審議、議決のみを行うと解することは狭過ぎると思われます。参議院は、内閣提出の議案について修正案や対案を提出することができると解すべきでしょう。  また、大規模な自然災害等の緊急事態においては、広範な措置を逐次講じる必要があることから、内閣が開催要求時に示すべき案件も包括的なものにするほかなく、それに応じて参議院議員の議案発議権や質疑、討論等が及ぶ範囲も広範になることを認めざるを得ません。国会法百一条などが案件に関連のあるものと定めたのは、このような趣旨に基づくものであると解されます。  第四に、緊急集会の権能に制限があるかという問題に進みます。  憲法は緊急集会の権限及び行為形式を具体的に定めていませんので、緊急集会は、原則として、内閣が示した案件に関連する範囲内で広く国会の権限を代行することができると解するのが適切であると思います。ただ、衆議院が存在しない例外的状況で緊急集会が暫定的な措置として行使することができない権限が類型的に存在すると解するのが一般的です。  このような例外として、第一に、憲法改正の発議があります。そもそも、憲法改正のためには十分に審議を尽くす必要があり、その発議を参議院の緊急集会で暫定的な措置として行うことは適切でありません。また、憲法改正が成立するためには国民投票を実施する必要がありますが、憲法改正の国民投票を行うことはできるが、衆議院議員の総選挙を実施し国会を召集することはできないという事態を想定することは困難です。  第二に、衆議院が存在しない間に内閣総理大臣が欠けた場合に、緊急集会において内閣総理大臣の指名を行うことができるかが問題になります。この点、既に衆議院議員総選挙が実施されることになっており、内閣は総選挙の後に初めて国会の召集があったときは総辞職しなければなりませんから、緊急集会で内閣総理大臣の指名は行わず、内閣総理大臣臨時代理の下、総辞職した内閣に引き続き職務を行わせることが原則であると解されます。  ただし、大規模な自然災害等により、内閣総理大臣のほか多数の国務大臣を欠くことになり、かつ総選挙の実施も延期せざるを得ないような深刻な緊急事態においては、緊急集会による内閣総理大臣の指名を例外として認めざるを得ない場合が生じるかもしれません。  そのほかにも、条約の締結の承認や、両議院又は衆議院に付与された権限の行使などの問題がありますが、時間の都合で省略させていただきます。  最後に、緊急事態への対応に関する検討について一言申し述べさせていただきたいと思います。  大規模な自然災害等の緊急事態において、国民の生命、健康及び権利等を守るために必要な措置を講じることは、国家、政府の重要な役割です。それと同時に、歴史に照らせば、緊急事態は権力の簒奪や濫用が行われる危険性の高い時期ですから、これを防止するための仕組みについては国会において慎重に御検討いただくべき事項であると考えます。  その際にお願いしたいのは、緊急事態から通常時へのレジリエンス、復元力の高い仕組みを御検討いただきたいという点と、そして、通常時に復帰した後、緊急事態において講じた措置について、その合憲性、合法性を審査する機会を適切に確保していただきたいという点でございます。  重要な政治的アクターがこぞって緊急事態の継続に利益を有することになる仕組みは危険であり、例外的に認められた権限の行使には重い責任が伴わなければなりません。この二点は、自由と民主主義を基礎とする立憲主義体制を維持しつつ、緊急事態に対応するために不可欠の要件であると考えます。  この点について、緊急集会は合理的な設計に基づく制度の一つではあります。  第一に、衆議院議員の候補者の皆さんはもちろん、内閣を構成する内閣総理大臣及び国務大臣の多くが慣行上衆議院議員から選ばれていますので、自らの正統性を支える衆議院が存在することになるよう、できる限り早期に総選挙が実施されることを強く働きかける復元力になり得ると考えられます。  そして第二に、次に開かれた国会において十日以内に衆議院の同意が必要とされていますから、緊急事態において講じた措置について、その合憲性、合法性はまずもって衆議院によって網羅的に審査されることになります。  もし緊急集会に代わる仕組みを検討されるというのであれば、今申し上げたような点について緊急集会よりもより優れた仕組みであると国民が納得するようなものとなるよう慎重に御検討いただく必要があることを申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑を希望される方は、氏名標をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言を願います。  なお、質疑が終わった方は、氏名標を横にお戻しください。  参考人の方々におかれましては、答弁の際、挙手の上、会長の指名を受けた後、御発言を願います。  それでは、質疑のある方は、二巡目以降の質疑を希望される方も含め、氏名標をお立てください。  まず、一巡目は各会派一名ずつ指名させていただき、質疑時間は答弁を含め各八分以内といたします。  浅尾慶一郎君。

浅尾慶一郎自由民主党

○浅尾慶一郎君 自由民主党の浅尾慶一郎です。  三名の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。  私からは二点、参考人の皆さんに質問をさせていただきたいと思いますが、まず最初は、三名とも御発言をいただきましたけれども、衆議院の任期満了時における緊急集会の在り方について質問をさせていただきたいと思います。  まず、三名とも、皆さん御発言をいただいておりますけれども、その中で、任期満了のときに類推適用ができるのかどうか、緊急集会の扱いが類推適用ができるのかどうかということであります。実際上は、任期満了の三十日前に総選挙の公示を行わなければいけないということになっております。任期満了の三十日前に総選挙を行わなければいけないという公職選挙法の規定がありまして、なおかつ、その任期があるということでありますから、三十日を超えた中で解散をすることもできるということで、事実上この任期満了時で緊急集会を行うというのはかなり珍しいということでありますけれども、昭和五十一年には一回、任期満了で衆議院の選挙が行われたということがございます。  そうした場合に、繰り返しになりますけれども、現行の憲法の中で緊急集会を行うことが類推適用によってできるかどうか、その点についてまず三名の参考人の皆さんにお答えいただきたいと思います。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 先ほど私の意見の中にも申しておりましたんですが、これ、類推解釈なり類推適用でこれを行うのか、あるいは、運用上ですね、もう全て、これ、任期満了によってそのまま総選挙というのは非常にレアなケースでもありますので、類推適用という形でなくても、その運用上ですね、解散をしてしまうということもできないわけではないので、これは建前論としてどちらを取るかという話だと思います。  ですので、先ほどの私の意見の中でも、それほど深刻な対立ではないということであります。だから、柔軟に考えて類推適用でそれを納得できるのであれば、国会の議員の先生方がコンセンサスがあれば、それでも構わないと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 類推適用は可能だと思います。  以上です。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 私も類推適用可能だと思います。

浅尾慶一郎自由民主党

○浅尾慶一郎君 それでは、次の質問は、この緊急集会をその七十日という期日を超えて開くことができるかどうかということでありますけれども、基本的には、衆議院が解散をされてから四十日以内に選挙を行うということが公職選挙法で定められております。選挙の運動期間は、累次の改正によって現在、衆議院の選挙は十二日というふうに短縮をされておりますので、総選挙の期日はその十二日前に公示しなければいけないというのが公職選挙法において決められているわけでありますけれども、そうすると、仮に一番短い場合で解散の日から十七日とかそんな形で選挙が決まったとしますけれども、その後、非常事態が起きて、その際に、そこから四十日、解散の日から四十日以内では選挙ができないといった場合にどのように取り扱っていくことが可能かということについての御意見を伺っていきたいと思います。  ちなみに、一地域における自然災害等においては繰延べ投票ということがありますので、その際には、全員の議員がそろわないけれども、先ほどもちょっと参考人の皆さんからも御意見ありましたけれども、繰延べ投票という規定がありますが、全国において投票ができなくなった場合に、この四十日を超えて緊急集会、四十日ないしはプラス特別国会の、特別会の三十日を足した七十日を超えて緊急集会を開くことができるかどうか、その点について三人の参考人の方の御意見を伺いたいと思います。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 私自身の考えとしては、七十日を超えて開会はできないと考えます。それは、その七十日を超えて、じゃ、いつまでこれが続くのかという問題があります。先ほどもほかの参考人からもありましたように、将来のことを見通してあることをすると、これも、参議院の緊急集会があるから、緊急の必要があるから続けていいのかという問題がありますが、もし仮にその間に非常に重要な案件があり、その後、衆議院で同意が得られなかったとかいうようなことになった場合、非常に国政は混乱すると思うんですね。  そうであるならば、参議院のみならず衆議院も両方、両翼そろった形でその審議を行う体制を整えるべきだというように考えます。先ほども申しましたように、諸外国ではそうした国会、特に下院の議員の任期の延長というのはそれほど珍しい制度ではございませんので、そちらでその制度設計をされた方が私は賢明だと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 私は、七十日を超えて緊急集会を継続するということは、まあ好ましいことではございません、あり得る話であるというふうに考えております。  先ほども申しましたが、最長七十日で限られているかのように見えるのは、現在の民意を反映しない政権の居座りを防ぐ、それを阻止するということが、これが本来の目的でございますので、その目的を没却するような形の制度をつくるのは考え物ではないかというふうに私は考えているところでございます。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 緊急事態に対応するために憲法を改正するということは理論上はあり得るというふうに思いますが、現行憲法を前提にしてどうあるべきかというふうに考えたときには、大規模自然災害が生じた場合に、現に総選挙が実施できず、衆議院解散から七十日が過ぎた段階で、例えば参議院の皆さん方が国民にとって必要な法案や予算案の審議を打ち切れるかというと、それは非常に困難であって、憲法も、立憲主義の基本的な考え方からすれば、権力の抑制と均衡の機会はできる限り認めるべきだというふうに解するのであれば、七十日を超えて緊急集会を認めることはできると、そう考えております。

浅尾慶一郎自由民主党

○浅尾慶一郎君 ありがとうございました。大変参考になりました。  時間になりましたので、終わります。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 杉尾秀哉君。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉でございます。  三人の参考人の先生方、本日は分かりやすい、そして傾聴すべき御意見を賜りまして、大変ありがとうございます。  早速質問の方に入りたいんですけれども、何分にも時間が限られておりますので、できる限り端的にお答えいただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。  まず、長谷部参考人に伺います。  今の質問にもありましたけれども、この四十日、三十日というこの期限が定められている、憲法五十四条一項に。この趣旨はどういうことなのか。今、政権の居座りを阻止するという、そういう例示がありましたけれども、それ以外の理由もあるかどうかということも含めてお答えいただけますでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) こういった日数を限るというのは世界各国の憲法にある規定ですけれども、これは元々は、立憲体制以前のいわゆる絶対主義的な体制の下で、議会を解散したままなかなか選挙を行わないと、選挙は行ったけれども新たな議会を召集しないということが間々ございましたので、そういうことが起こらないようにということでこういう日数を限っていると、それが主な趣旨であるというふうに考えております。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 ありがとうございます。  そうしますと、その五十四条一項の規定から、緊急集会を七十日間に限定して考えるのは根拠がないと、こういう趣旨であるというふうに理解しておりますけれども、それでは、五十四条二項に書かれた国に緊急の必要があるとき、これが終わるまでは緊急集会の開催は可能というふうに考えてよろしいんでしょうか、どうでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) これは先ほどの報告の中でも申し上げたことなんですけれども、やはり選挙が実施が困難な部分があるといたしましても、困難でないところから可能な限り速やかに選挙を実施すべきものでございまして、その結果、新たな国会の召集が可能になった時点では、これは新しい国会を召集すべきものであるというふうに考えております。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 それでは次に、土井参考人に伺いたいと思います。  五十四条二項の緊急の必要があるときについて、土井参考人は、これ事前に配っていただきました「注釈日本国憲法(3)」の中で、他国からの武力行使、それから内乱又は大規模自然災害等による国家緊急事態、こうしたのを例示として挙げておられます。  これについて、憲法の立法経緯を踏まえて趣旨を具体的に御説明いただけますでしょうか。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) ここの部分につきましては、私の論文の中にも書かれていますし、それから、松浦参考人の論文の百三十五ページにもありますように、英訳はイン・タイム・オブ・ナショナル・エマージェンシーという表現になっております。  このナショナルエマージェンシーというのが広いか狭いかということについて、日本側とGHQの側でやり取りがございます。日本側は、主張していますのは、このナショナルエマージェンシーというのが今御指摘のありましたような他国からの武力の行使、内乱、大規模自然災害等の場合に限定されると解しますと日本側としては狭過ぎると、そういう理解で、もう少し広く理解したいというふうに主張しておりますので、前提としては今申し上げたような点は含まれるものと理解されていたと解されます。  以上です。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 もう一問、土井参考人に伺います。  土井参考人は、同書におきまして、大規模自然災害などで総理大臣や多数の国務大臣が欠ける場合について言及をされておられます。これは先ほどの意見の中にも出てまいりましたけれども。  そこで、三点伺いたいんですが、まず一つ目は、緊急集会で対処できる国家緊急事態の内容や規模には基本的に制限はないという、こういう考え方でよろしいのか、二つ目は、憲法制定時に、緊急集会は憲法七十三条六項の政令委任とともに制定されました。こうした経緯から考えますと、日本国憲法は全体として想定し難い大規模災害のような国家緊急事態への備えができていると、こういうふうに理解してよろしいかどうか、そして三つ目ですが、緊急集会、七十日間に限定せず、先ほどから焦点になっておりますけれども、緊急集会の立法趣旨等を考えますと、必要な間は緊急集会を開催できると考えていいのか、これは先ほどの長谷部参考人の質問にも共通しますけれども、以上三点、お答えいただけますでしょうか。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 基本的には、先ほども申し上げましたように、内閣が示した案件に関連する範囲内で広く国会の権限を代行することができると解すべきだと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、では憲法の改正の発議までできるかというと、それは私はできないと思いますので、限界はあろうかと思います。  それから、全ての緊急事態について憲法は備えているかという問題ですが、およそ緊急事態への備えというのは一長一短ございまして、完璧かと言われた場合に、完璧な備えというのはできないというのが緊急事態の難しい点でございます。ただ、そのような点を想定して作られているかと言われれば、参議院の緊急集会がそのような一例であると考えられると思います。  七十日につきましては、長谷部参考人がおっしゃられたように、選挙が行われて、それから特別会が召集できるという事態になりましたら、それはそちらの道を選ばなければいけないというような限界はあろうかと思います。  以上です。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 ありがとうございます。  それでは最後に、三人の参考人の先生方に同じ質問をしますので、お答えいただけると有り難いです。  一つ目は、憲法に国会の立法機能を代行する参議院の緊急集会制度があります。にもかかわらず、国会議員の議員任期の延長のための憲法改正というのは政策的に本当に必要なのかということ。また、民主主義の在り方として、選挙された国民代表であります我々参議院議員が一旦その役割を担って、その後に選挙された衆議院議員の同意を要件とするいわゆる緊急集会と、選挙を経ずに内閣と国会の判断で任期を延長された国会の、どちらに憲法の基本原理であります国民主権や議会制民主主義における正統性があるとお考えか、それぞれの先生方のお考え、端的にお示しいただきたいと思います。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 今の質問の御趣旨がちょっとよく分からなかったんですが、参議院の緊急集会の方が民主的正統性を担い得るということなんでしょうか。

杉尾秀哉立憲民主・社民

○杉尾秀哉君 どちらとお考えかということです。どちらがその国民主権並びに議会制民主主義における正統性があるとお考えか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) それはもちろん、選挙によって、両院そろって、衆議院、参議院、両院そろって、国民の中から選ばれたわけですから、その両方がそろうということが民主的な正統性、これを確保する上で最上だと思います。  ただ、衆議院が欠けた場合にそれを担うのが参議院の緊急集会ということですが、ただ、それは無限の権限を、つまり、衆議院の権限のみならず、国会全体の権限を全て参議院が担うというのはちょっと無理があろうかと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 現在の民意を反映していない衆議院の任期を延長するということは、やはりその民意の反映という点では問題があるというふうに考えておりまして、そういう意味では任期延長という制度よりは現在の参議院の緊急集会制度を活用して、しかし、なるべく早く選挙は行う、新たな国会を召集する、それが民主的な制度の運用になるかと考えております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 基本的に、民主的正統性というのは、やはり選挙が早急に行われる事態が生じることになるということであろうと思います。  いずれの緊急集会の場合も、あるいは任期を延長する場合にも、共に民主主義的正統性において両院制が機能しているときよりは問題があるというのには変わりございませんので、基本的にはどちらの場合が次の総選挙を速やかに実施できるような仕組みになり得るかというところが重要なんだろうと思います。  以上です。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 西田実仁君。

西田実仁公明党

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。  今日は、三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。  まず、私の考えを述べます。  災害等の緊急事態は政府に権限を集中させる必要があります。その上で、それを過度に妨げることなく、しかし、その活動を国会で適切に監視しなければならないゆえ、国会議員の民主的正統性の確保が重要だと考えます。ゆえに、できる限り選挙を行うべきであり、議員の任期延長や前議員の身分復活は極めて例外的に扱うべきであると思います。  基本は参議院の緊急集会プラス繰延べ投票で対応しつつ、衆議院議員選挙が相当数の選挙区において長期間実施できないという極めて例外的な場合にのみ議員の任期延長や前議員の身分復活を認めるかどうか慎重に検討すべきという立場であります。その際には、参議院の緊急集会での議決を行い、民主的正統性を担保すべきと考えます。  そこで、まず松浦先生にお聞きをいたします。  議員の任期延長や前議員の身分復活の場合において、その権能の範囲であります。十分な民主的正統性が認められない以上、これも暫定的、一時的であり、参議院の緊急集会との間で根本的な差異があるとまでは言えないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 先ほど長谷部参考人の方からおっしゃったことなんですけれども、平時と有事といいますか、平時と非常時の区別というものを截然と分かたなければいけないと。どこからが非常時でどこまでが平時なんだということについての判断というのは非常に難しい問題があると思います。  例えば、自民党の緊急事態条項も、平成二十四年でしたか、発表されて、一度手直しされていますけれども、その非常事態宣言を出すということに対して国会がこれを承認するかどうか。国会の承認がなければこれは失効するわけですね。ですから、政府単独でもってこれを行うということはできないわけで、ただ、その非常時というものを政府がどう考えるか。  選挙などについても、できるできない、どの地域ができてどの地域ができないのか、あるいは広域的にもうできないのか、全部やめてしまったらいいのかというのは、その状況によって全部違ってくると思うんですね。ですから、一律にこれを、私ももちろん総選挙ができれば、なるべく早くできた方がいいというのはそれはもう当然のことなんで、ただ、それができないときにどうするかという話を今させていただいております。  ですので、これはケース・バイ・ケースで、緊急時なんて、緊急事態を宣言するなんということはめったにやっちゃいけないことなんですよ。それをやらざるを得ない状況というのがそれは何なんだということを、まずこれをはっきりさせなければいけないということなんだろうと思います。

西田実仁公明党

○西田実仁君 土井先生にお聞きします。  前議員の身分復活を認めるに対しましての極めて例外的な場合を超えて容易に生じ得るような要件にまで広げた場合、参議院の緊急集会の意義を失わせるおそれはないか、それはひいては参議院の存在意義についての議論につながらないかをお聞きしたいと思います。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 任期延長の問題の中で私自身、憲法理論上最も難しいと考えますのが失職した衆議院の身分の復活させる場合でございます。とりわけ、解散が行われて、その後、衆議院の身分を復活させるということになりますと、実質的に解散の効力を失わせる仕組みになります。  したがって、特に慎重な検討が必要で、もしこの衆議院議員の身分の復活に内閣の関与を不可欠だというふうにしますと、解散を行った内閣自身に解散の撤回を求めるということになりかねませんので、そのような仕組みが機能するかという問題がございますし、既に衆議院が存在しませんので、このような仕組みを行うかどうかは参議院でお決めになると、緊急集会でお決めになるということを考えざるを得ませんが、参議院に内閣の解散権の行使を否認する仕組みを認めるということになりかねないという問題がございます。  したがって、この問題は、参議院の役割を、緊急集会の役割を失わせるという面もあろうかと思いますが、参議院にそこまでのことを認めていいのかという問題点もございますので、理論的には慎重に御検討いただいた方がよいかと思います。  以上です。

西田実仁公明党

○西田実仁君 長谷部先生にお聞きをいたします。  緊急集会プラス繰延べ投票のみでいかなる緊急事態でも対応すべきとした場合、繰延べ投票ではなく、緊急事態が収束するまで議員の任期延長等を行い、全国で一律の投票を行うべきとの指摘がございます。  全国一律に投票を行うべきとの憲法学説は聞いたことはありませんけれども、先生はどうお考えでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 私自身は、全国一律でなければいけない要請というのは憲法上はそれほど強いものではないというふうに考えております。先ほど申しました最高裁の判例を前提として考えれば、可能になったところから順次速やかに選挙というものは実施すべきものであるというふうに考えます。

西田実仁公明党

○西田実仁君 三人の先生に端的にお聞きします。  選挙が困難な事態といわゆる非常事態を立て分けて議論する必要もあると思います。非常事態において、私ども公明党は、緊急政令や緊急財政処分は不要であり、個別法の政令委任や予備費で対応すべきとの考えでありますが、それぞれの先生のお考えを端的にお聞きします。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 事前に法律の委任を、委任の条項ですね、今、災害対策基本法であるとか、もう既にあるものがあります。問題は、その委任を、事前に様々なその危機状況を想定して委任事項を盛り込めばいいんですが、ただ、それが想定できないような状態というものがあったときにどうするかという話、そこだと思うんですね。  だから、平時から非常にその詰めた議論をして、こういう緊急事態においてはこういう政令委任が必要であるということを十分検討されていればいいんですが、しかしながら、その中には人権を制限するということも含まれる可能性が非常に高いわけで、そうしますと、やはり国会でそうした議論をするということについて国民の理解がなかなか得られないということで及び腰になってしまう。そうなりますと、緊急事態が生じたときに、委任事項がないので政府は何もできないかという話になってきたそのときに緊急政令の必要があるかどうかという議論が現実味を帯びてくるんだろうと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 現行の憲法制度の範囲内で可能なことがあるのであれば、それをできるだけ活用するというのは、それは正しい方向性であるというふうに私は考えております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 私も、現行法制度上やれることはそれでやるのが適切だと思いますし、法律の委任という形を取りますと、委任が広範に過ぎると考えるときには法律を改正することによって限定することができます。ただ、憲法で過剰な権限を与えてしまいますと、それを直すのに憲法改正が必要になるという面がございますので、国権の最高機関の方で委任の範囲をお決めになるのが適当かと思います。

西田実仁公明党

○西田実仁君 終わります。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 音喜多駿君。

音喜多駿日本維新の会

○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿です。  三人の参考人の先生の皆様、本日は誠に貴重なお話、ありがとうございます。  まず、長谷部参考人にお伺いをしたいと思います。  衆議院の憲法審査会の方の御議論も拝見させていただきました。長谷部参考人、その中でモーリス・オーリウの緊急事態の法理を紹介されました。非常時になればまずは生き延びることが大事なのである、生き延びるために必要な場合には可能な限りで守るというものでありました。    〔会長退席、幹事山本順三君着席〕  また、一九七〇年代のバーコック、バコック判決ですかね、この判決を紹介されて、赤信号を通過する緊急車両というのは、その必要があって赤信号を通過したのであれば、罰せられるべきではなくて、むしろ褒めたたえられるべきではないかというような判決内容でございました。  しかしながら、憲法にこうした法理を果たして適用していいのかどうか。この緊急事態は、殊更、この権力の濫用、例外を認めれば権力が濫用されるということが問題となります。この憲法で規定されていることを緊急事態であることを理由に幅広く解釈するということは、むしろこれは権力の暴走を招くことであって、長谷部参考人が日頃からこの憲法というのは権力を抑制しているといった御主張ともいささかずれが生じているんじゃないかと思いますが、その点の見解。  また、このバコック判決は、仄聞するところによると、最終的にはやはり法律を改正すべきだという結論になったというふうに聞いております。ですから、これを御紹介されるんであれば、やはり憲法を改正してちゃんとこのルールを変えることが望ましいという結論になるんじゃないかと思われますが、その点の見解も併せてお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) バッコーク判決、これは最後でデニング卿は傍論としてそういう趣旨のことは言っておりますが、これはその判決そのもので問題になった話ではございません。その判決自体で問題になっているのは、あくまで、その当時のイングランドにおきましては、緊急車両、赤信号を通過しても構わないということが明文で定めがなかった場合に、それに対してロンドン市の消防局が、いや、緊急の場合には赤信号を通過してもいいのだという、そういう通達を出した、その合法性が争われたという、そういう問題でございます。それについては、これは合法であるという、そういう判断が示されております。  それから、こういう必要の場合に、必要が生じた場合に、明文の規定に反するようなそういう判断が必要になると、これは好ましい事態でないことはそれはそのとおりなんですけれども、そういった場合に、あくまで前もってそういった場合に対処するようなこれまた明文の規定を設けておくべきなのかどうかというのは、これはまた別の判断が必要になってくる話です。  これ、昔の話になりますが、かつてダッカにおける日航機ハイジャック事件というのがございました。そのときには、人質が次々と殺されていくかもしれない、そういった事態を避けるために、これはテロリストの要求に応じて刑事施設に収容されている言わば仲間を超法規的に釈放したわけです。これについてはもちろん善しあしの判断というのがあり得るでしょうけれども、しかし、それはその当時の政権の判断としては必要やむを得ない、根拠になるような法令は何もないが、そうした事態を、そうした措置をとらざるを得ないということだったとは思います。  しかし、翻って考えてみたときに、そうした場合には、超法規的といいますか、ほかには何の根拠もないのであるけれども、刑事施設に収容されている人間を釈放して構わないのだというふうにあらかじめ明文で決めておくべきなのかということになりますと、これは恐らくそういうものではないだろうということになるはずでございまして、やはり、これはどういった場合にあらかじめ法でもってそういうルールなり準則なりを決めておくべきなのか、事の性質に応じた対応が必要になるのではないかというふうに私は考えております。

音喜多駿日本維新の会

○音喜多駿君 ありがとうございます。ちょっと興味深いお答えなんですが、ちょっと時間がないので次の質問をさせていただきたいと思います。  次も長谷部参考人なんですが、七十日を超える参議院の緊急集会は可能であると、これ容認されるということなんですが、それでは、これはいつまで有効になるのかという問題に直面します。  長谷部参考人は、先ほど来、権力者が居座ることを防ぐということをおっしゃっておりますけれども、これ、参議院は与党がやはり絶対安定多数を占めていて、その参議院の与党がずっとこの緊急集会を延ばして、これ復元しないと、そういう権力の居座り方というのも考えられるんじゃないかと私は思うんですね。  そうしたところについての懸念というのも、むしろこのルールを設けないで柔軟に運用した方がそうした形での権力の暴走というのは招きやすいんじゃないかと思いますが、その点に対する御見解をお願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) これはあくまで現行の制度を前提としての話になりますが、現行の制度では、内閣が提示をした案件が全て終了すれば緊急集会はそこで閉じることになっております。いつまでも延びるということは普通は考えられないということになりますし、先ほども申し上げましたが、衆議院の選挙、場合によっては部分的に延期しなくてはいけないということもあるかもしれませんが、最高裁の判例を前提にすれば、選挙は可能になったところからできるだけ速やかに順次実施をするべきものでございますので、そうなれば、これも速やかに新たな国会が召集されるはずであります。  緊急集会がいつまでも続くということは、それほど御懸念には及ばないのではないかというのが私の考えです。

音喜多駿日本維新の会

○音喜多駿君 ありがとうございます。  では次に、土井参考人にお伺いしたいと思います。  レジリエンスが重要というのは、私も全くそのとおりだと思っております。その点、我々日本維新の会は、国民民主党さんと有志の会さんと任期延長の緊急事態条項の案を策定しまして、緊急事態には任期が延長できると、ただ、それには期間の制限を設けて、延長するのであれば再度国会の議決が必要であるといった仕組みを提案しています。    〔幹事山本順三君退席、会長着席〕  こうした期間の定め、そして延長する場合のルールというのを設けておいた方が、緊急事態から平時に戻すためのレジリエンスはむしろ増すのではないかと。やはり緊急事態だからといって緊急集会をルールなく容認し続ける方がレジリエンス的には私は少し脆弱なんじゃないかなというふうに思いますが、その点に対する見解をお願いいたします。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 先ほども申し上げましたが、内閣総理大臣は恐らく衆議院議員から選ばれており、閣僚の多くが衆議院から選ばれている状況で、衆議院が解散されますと既に衆議院議員の地位を失っているという状態になっています。その状態においては、基本的に自らの正統性を支えている院がないという状態について長期に維持しようという意向が働きにくいと考えられますし、衆議院議員の先生方はその段階では候補者になっておられて、自らの選挙がいつまでも行われないという状態が続く。各党において恐らく衆議院議員の先生方の多くが幹部を占めておられるという状態であれば、その人たちがレジリエンスになってできる限り総選挙を早く実施すべきであるというふうに働きかけをされるというのは私は想定できる事態だと思っておりますので、緊急集会の場合におよそレジリエンスが働かないのだというふうには考えておりません。  以上です。

音喜多駿日本維新の会

○音喜多駿君 貴重なお話ありがとうございます。  ちょうど時間になりました。今日の参考人の皆さんのお話を踏まえて、しっかり議論を深めていきたいと思います。ありがとうございました。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 礒崎哲史君。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 国民民主党・新緑風会の礒崎と申します。  本日は、三名の参考人の皆さん、どうもありがとうございました。  この緊急事態における、緊急集会も含めてですけれども、やはり憲法あるいはこの統治機構という意味では、どういった状況にあろうともしっかりと国会の機能、この統治機能、機構、これをまずはどのように維持していくかということが大変重要だという認識に立っています。またあわせて、この憲法の中で、これも同じく緊急的な状況になった、においてもやはり人権保障がしっかりとなされていく、こうしたことが非常に重要だという認識に立って、これまで党内でも様々な憲法の中身についての課題についての議論をしてきたところでもあります。  先ほど、今、音喜多さんの方からもお話がありましたけれども、本当に大変厳しい状況になったときの衆議院の議員任期延長ということ、究極の状態というふうに考えてもいいと思うんですが、そういう意味で我々も提案をさせていただいているところでもありますけれども、やはりまずはこの参議院の緊急集会、これをしっかりと活用していくということ、これが大変重要だというふうにも考えています。  その中で、先ほど、この七十日に関係して、その更なる延長といいましょうかね、七十日以上のものということで、長谷部参考人、それから土井参考人の方からありまして、今、長谷部参考人の方からはそれほど長期になることが想定できずというふうなお話もありました。要は、内閣からの提案を処理するということだということでもありましたけれども、それが繰り返し繰り返しということになれば、結果としてその全体的な期間としては長くなっていくのではないかなという、こういうことも考え得るんですけれども、こうした最長としてやはりどれぐらいの期間までこの緊急集会というものは許され得る、認められ得るのか、この点について、改めて長谷部参考人と、あと、土井参考人もこの延長はあり得るというお話がありましたので、お二人の参考人から御意見を頂戴できればと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) これ、あらかじめ、例えば何十日とか何か月とかというのをあらかじめ申し上げることは、これは多分できない話ではないかと思います。  私として申し上げられますのは、これ結局、この点も含めまして先のことは分からないわけですね。ですので、この参議院の緊急集会制度というこの制度の趣旨も含めまして、なるべく早く終わらせる、なるべく早く平常時に戻す、そのためには、選挙が難しいだのとおっしゃらないで、可能なところから順次、可能な限り速やかに選挙を実施して新しい国会を召集する、そのためにはできる限りの努力をする、それが第一に重要なことになるのではないかというふうに考えております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 具体的には、やはり自然災害等の緊急事態の実情に即した対応を行うほかないとしか申し上げられないんですが、次の二つの歴史的事実は参考になろうかと思います。  一つは、阪神・淡路大震災の際、あるいは東日本大震災の際に行われた選挙期日の延期で、これが東日本大震災の際には最大七か月程度の延期が実際に行われたということが一つです。  もう一つの事実は、終戦後最初の帝国議会衆議院議員総選挙が終戦後約八か月後の昭和二十一年四月十日に行われているという事態になります。  御存じのように、東京、大阪等の大都市は大空襲に遭っておりますし、広島、長崎に原子爆弾が投下されて、八月十四日にポツダム宣言を受諾したという我が国にとって未曽有の緊急事態だったと思います。しかしこれ、四か月後の十二月八日には衆議院の解散が行われておりまして、政府は一月に総選挙を実施する予定だった。ただ、実際、ちょっとGHQとの関係で四月まで延びておりますが、そのぐらいの間隔で実際に行おうとした。  これが我が国にとって経験した恐らく大きな緊急事態における二つの事例だと思いますので、その辺りを参考にしながら御検討いただくことになるんじゃないかというふうに思います。  以上です。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  今、長谷部参考人から、そうはいってもやはり選挙をできるだけ早くという御発言も、まさにそれができるならばやった方がいいなという思いはあるんですけれども、そこで、ちょっと先ほど選挙に関連して、繰延べの規定ですとか、あるいはできるところからということが長谷部参考人の方からもありました。  これは、そうしますと、随時、想定されておられる考え方としては、随時選挙をやれるところからやっていくという多分お考えだと思うんですけれども、そういった形で行われた選挙において、やはり任期はそれぞれの地域でやはり四年という任期をしっかりと考えて、満期という意味ですね、議員任期という意味では四年ということを想定していくべきなのか、それとも、やはり将来的にはもう一度全国一律の選挙制度に戻していくということを想定すべきなのか、その後どのようにこの選挙制度、ずれてしまった選挙制度を戻していくか、この辺についてもし御見解があればお伺いしたいんですが。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 特にはその点詳しく考えているわけではございませんけれども、繰延べ投票ですとか選挙そのものを延期するということは従来も行っている話ですので、それのときにそんなに困った話には恐らくなっていないはずでございますから、過去の先例に即してしかるべく運用していただくと、それで特に問題はないのではないかというふうに私は考えております。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 ありがとうございます。  それとあと、済みません、もう一つ、ちょっと長谷部参考人の方に、立て続けで恐縮ではありますけれども、あと、この議員任期延長ということをした際に、やはり居座りのような状況になってしまって、それこそ平時で成立させ得るような法律もその中で作られていってしまうこと、これにはやはり問題があるというお話もあったわけですけれども、これも実は我々議論をしている中で、こういう議論もやはりありました。  ただ、その中で、少なくとも四年という任期がそもそもあった衆議院議員を選んでいるので、少なくともその任期中は国民から信任を得たという立場だとすると、解散・総選挙ということでその身分はそのときは失ったとしても、少なくとも元々四年という任期は国民からの信任は得ていたのではないかとすると、その部分の任期延長というような考え方というのはこれはあり得るのではないかなという、こういう考え方もあったんですけれども、そこはやはり解散・総選挙という時点で国民からの信任もそこはやはりなくなったという考え方をした方がそこは整合性が取れるということになるんでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) やはり解散の場合もございますけれども、期限を定めて、その時点その時点での有権者の信任がどこにあるのかと、それを聞いていくということが民主的な政治体制の運用にとっては大変肝腎なことではないかというふうに考えております。

礒崎哲史国民民主党・新緑風会

○礒崎哲史君 時間になりましたので、これで終わります。ありがとうございました。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 山添拓君。

山添拓日本共産党

○山添拓君 日本共産党の山添拓です。  参考人の皆さん、今日はありがとうございます。  松浦参考人にまず伺います。  参議院の緊急集会では対応できない場合があるということで、緊急事態における国会議員の任期延長の必要性について今日も議論がされてきました。これも議論になっていますが、一方で、憲法が国会議員に任期を定めているのは、選挙で国民に選ばれた代表であるからこそ立法を通じた権利の制限あるいは義務を課す、その正統化がされるという理屈であろうと思います。  この任期を延長された国会議員の民主主義的な正統性、あるいは延長された後の国会議員が自らの次の総選挙に向かわせるような、つまり総選挙を行おうというそういうインセンティブですね、それはなかなか働かないのではないかということも思うのですが、その点はいかがでしょうか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) インセンティブの問題というのは、私、国会議員でございませんので余り理解をしておらぬのですけれども、その任期の延長が必要なケースというのは、繰り返しになりますけれども、緊急事態が宣言されて、それに伴って例えば衆議院が解散が禁止されたりあるいは任期の延長がなされるということですから、それを単独でもって任期が延長されるという話ではないんですね。その緊急事態を宣言しなきゃならぬ要件というものはかなり政治的なものでありまして、これはケース・バイ・ケースだと思うんですね。非常に重大な、つまり、通常の統治機構が機能しないような状態になったときにどうするかという話。そのときに、もう選挙をやっている場合じゃないだろうと、で、選挙もできないというときに任期の延長をすべきだと。  一旦はこれ選ばれた議員ですから、国民の信任を完全に喪失したわけではないし、先ほども御質問でありましたように、解散のケースだってあるわけですから、解散は、これ国民が解散したわけではなくて政府の都合で解散しているわけですので、国民の信任をそこで失ったという考え方ではないんだろうと思うんですね。  緊急事態になった場合に何を優先させなければいけないかというのは、もう言うまでもないことですが、国民の生命、財産を守るということが最優先であって、それを優先させるために国会が混乱してはいけないと。政府の統治能力を十全に機能させるために、国会がその権力の濫用は抑制しなきゃならないけれども、国会の機能もちゃんと維持しなければいけないというところが重要なのであって、そのためには一時的に任期の延長が必要になる。衆議院の場合には四年任期ですけれども、解散があったらもっと短いわけですね。  一方で、その参議院の場合は六年任期が保障されているわけです。六年任期だから衆議院よりも任期が長いので、身分が保障されているから、衆議院の優越、これは国民の意識が繰り返し反映されるのでというような議論がありますけれども、それを言ってしまいますと、参議院は六年任期だから国民の信任は薄いことを認めるという話になってしまうと思うんですね。  やはり、場合によっては三年で終わる衆議員もいれば、四年任期を全うできる議員もいらっしゃる、それでも国民の信任を一度は得ている。で、優先しなきゃならない国家の緊急事態にそれを優先する、そのために国会を混乱させてはならないので任期を一時的に延長する、その必要がなければ緊急事態宣言はもう解除するというシステムをつくれば、それは濫用の危険というのはないんだと思います。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  長谷部参考人と土井参考人に伺います。  今の点にも関わるのですが、私は、やはり選挙で選ばれて任期中の参院議員が関与をする緊急集会と、内閣の判断によって、ほかにも幾つかの手続はあり得るとしても、内閣の判断で任期が延長された衆院議員が権限を持つ仕組みとでは、民主主義的な正統性という点では質的な異なりがあると思います。これは、緊急時における緊急の必要あるときの民主主義的な正統性の持つ意味ということかと思います。  その点について、両参考人の御意見を伺いたいと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) これ先ほども申し上げましたけれども、憲法五十四条では、四十日、三十日という日数を限っておりますのは、現在の民意を反映をしていないような政権の居座りを防ぐと、それを阻止するということが、それが主たる目的でございますので、それなのに、それに代わって衆議院議員の任期を延長するということになります。それは結局、現代の民意を反映をしていない政権の居座りを正面から認めるということになってしまうわけでございますから、できる限り慎重にお考えをいただくということが大切ではないかというふうに考えております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 私も先ほど申し上げましたように、いずれの場合であっても完全な民主的正統性がある状態ではないという事態ですので、どちらが民主的正統性があるのかということを議論しても若干観念論に陥ります。なので、先ほど申し上げましたように、正常な事態に戻すためにどちらが有効な方策であるかという点をしっかり御検討いただくのがよいかと思います。  以上です。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございます。  長谷部参考人、土井参考人に続けて伺いたいと思います。  この間、緊急事態条項あるいは緊急集会をめぐる議論は、自然災害への対応を理由とするもの、また新型コロナなど感染症の拡大を理由とするもの、そしてロシアのウクライナ侵略を契機に戦時対応を理由とするものなど、その必要性、議論の根拠自体が変遷を重ねてきたかと思います。  こうした議論の状況を御覧になってお感じのことがありましたら、御紹介ください。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 緊急事態の発生の原因、いろいろなものがあるということ自体はそのとおりだと思いますので、その折々で話題になった問題、御議論になるということ、特に不自然なところは私はないかとは思いますけれども、ただ、そのために憲法を変えることが是非とも必要なのか、それ以前に憲法以下の対処は果たしてできることはないのかということもやはり十分お考えをいただくということが必要ではないかというふうに考えております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 私も、長谷部参考人がおっしゃられたように、緊急事態の問題はその都度その都度の状況を踏まえて御議論になっておられると思いますので、それについて意見を申し上げることはございません。  緊急事態についてできる限り適切な仕組みを検討されるというのは国会の役割でございますので、それについても異論はございません。  ただ、緊急事態というのは余り観念的に議論しても進まない話で、実際にどういう場合があるのかということを想定して御議論になるのが一番現実的であろうと思います。その意味では、現に緊急集会の制度があるわけですから、参議院におかれまして実際に緊急集会をどのような形で開催する必要があるのか、その際にどこに問題があるのかということをしっかり御議論になった上で次のステップに進んでいかれるというのが穏当な方法ではなかろうかと感じております。  以上です。

山添拓日本共産党

○山添拓君 ありがとうございました。  終わります。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 山本太郎君。

山本太郎れいわ新選組

○山本太郎君 参考人の先生方、非常に貴重なお話ありがとうございました。  れいわ新選組の山本太郎と申します。  松浦先生は防衛大学で教えていらっしゃるということで、松浦教授の、先生の二〇一九年の論考、「日本国憲法と国家緊急事態」では、事前に法律で委任した範囲を超える対応が必要になる事態を想定して、憲法で政府に緊急命令権を与える必要性を指摘されています。緊急命令権の濫用を防ぐために、あらかじめ緊急命令の限界を定める、事前に委任事項をできる限り網羅的に整備するなど、できる限り事前に想定して制度をつくり込んでおくことも御提案なさっています。想定外の事態にも対応できるようにというのはこれはもう絶対必要なこと、私自身もそう思います。事前にあらゆる法整備も行わなければならないというメッセージは非常に重要だというふうに感じています。  実際に今、日本を引いて見てみれば、もちろん近隣諸国といいますか、このアジアの緊張が高まっていると、どこからミサイルやロケットが飛んでくるか分からないみたいな状況も、そういうような言わば緊迫したような空気も確かにあるんですよね。そんな状態において、海岸線に原発が並んでいる、核燃料が貯蔵されている、再稼働されているという状態というのは私ちょっと矛盾しているんじゃないかなというふうに思うんです。  外からの攻撃が来るぞ来るぞと、軍備を増強しろ増強しろという空気の中で、絶賛再稼働中、そして準備中というような状況が当たり前にあると。でも、この一年ぐらいで私たちが学んできたことというのは、十分戦争のときにターゲットにされるのが原発であるということだったと思うんですね。原子力規制委員会の安全審査も、内閣府が策定支援する避難計画も、原発が攻撃されること自体が想定されてないんですよ。原発が攻撃されることも想定して、万が一にも原発が攻撃による核惨事が起きないように確実な対応を今すぐ講じるということは、これ、憲法上の責務がこれ国としてあるんじゃないかなというふうに思うんです。  これ、松浦教授、平成二十九年の衆議院の憲法審査会においても御指摘されたとおり、自然災害というふうに見てみても、これ南海トラフ地震による津波浸水被害だったり、東日本大震災の範囲を大きく上回ると、被害というのはもうとてつもなくこれ比べ物にならないんだということをおっしゃっていたと思うんですね、そういう趣旨のことをおっしゃっていたと思うんです。  これ、海岸線の原発、当然これ無事に済むはずはないと。これ、自然災害を考えたとしてもそうです。緊急事態に備えようというような方向で議論がされ、そして憲法改正も目指すというような状況であるならば、当然、まず、これ原発の即時停止、核燃料を早急に搬出して冷却して、国の責任、自衛隊の責任で安全管理することが私は憲法上の要請にもかなうんじゃないかな、そう思うんですけど、先生、いかがお考えですか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 残念ながら、私、原子力政策の専門家でもございませんけれども、全廃してという話はエネルギー政策全般にわたる問題でありますから、止めることを前提として議論するというのは難しいんですが、ただ、山本先生がおっしゃったように、様々な、特に軍事的な目標にされるようなところに攻撃があった場合にどのように対応すべきかということはもう予想できることでありますから、それに対応した避難計画なりなんなりを整備するというのは、これはもちろんのことだと思うんですね。それで不可能であれば立法を考えるし。しかしながら、その一方で、この原発の問題はおくとして、緊急事態に対応する場合に人権の制限というものが常に伴ってくるわけですね。  災害対策基本法なんかでその緊急政令で委任されているものというのはほとんどが経済的自由権の制限に関わる問題がほとんどでありまして、それ以外の人権については非常に微妙な問題がありますので、なかなか触れられないというところがある。非常にその委任の範囲が狭いということがあるわけですね。  ほかにないかといってその検討を進めましても、なかなかこれ立法府が人権の制限を大幅に認めるような委任立法を行うというのは、国民の理解も得られにくいし、なかなか進まないというところがあります。  予想できるそういった危機に対応するための委任立法がもう完璧にできているというのだったらいいんですが、しかし、現状、様々な危機の状態があり、それに対応するだけのものを立法府が全部抱え込んで事前にそれを想定するということはほとんど不可能。なので、緊急事態においてそのときに必要な措置を一時的に緊急政令、これは法律の委任によらない、法律と同一の効力を持つ委任命令というものを一時的に認めて、それを国会が完全な形でチェックするというやり方が最も効率的だと私は思っております。  ちなみに、私はドイツの専門家なんですが、ドイツの場合には、この委任命令のやり方を戦後やめました。やめまして、できる限り憲法の中に緊急事態の類型を全部組み込んで、あらかじめその委任政令といいますか、法規命令とドイツでは言うんですが、それに委任できることを全部法律でだあっと挙げたんですね。冷戦時代にそういうことをやったんですが、ただ、今日、サイバー戦であるとか宇宙戦であるとか、そうした新しい戦場が増えてまいりますと、もうそれでカバーできない部分も出てきている。そこをどうするかということで、今まさにその憲法の類推解釈とかいうようなことでカバーしようとしているんですね。  やはりその想定できることというのは、もうそのときそのとき頑張るんですが、だけど、新しい時代になってくると想定できないことが次々に出てくると。それをどうカバーしていくかということは、暫定的には政府に一時的に任せて、それを国会が有効にチェックするというやり方しかないのではないかと思います。

山本太郎れいわ新選組

○山本太郎君 ありがとうございます。  すぐにでも対応できる、想定されることに対してはすぐ手を打てるという状況にありながら、先ほど言ったとおり、原発に関しても、これは再稼働が進んでいくと、そのままになっている。安全保障の話になったとしても、そのことはなかったことにされてしまうというのは非常にまずい状態だなと、そう思います。  申し訳ございません。今、松浦参考人に聞いたことを長谷部参考人にもお聞きしてよろしいでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 憲法によって対処する以前の問題として、いろいろ喫緊に対処が必要ではないかと思われる政策課題が様々にあるということ自体、これは山本先生のおっしゃるとおりであろうかと思います。  そういう意味では、憲法だけに焦点を当てるよりはいろいろなところに目配りをしていかなくてはいけない、それはおっしゃるとおりであるというふうに私も考えております。

山本太郎れいわ新選組

○山本太郎君 済みません。もう時間も残り少ないので、次は二ラウンド目に譲りたいと思います。  ありがとうございます。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 引き続き質疑を行いますが、これより質疑時間は答弁を含め各五分以内といたします。  赤池誠章君。

赤池誠章自由民主党

○赤池誠章君 自由民主党の赤池誠章でございます。  今日は、三人の参考人の先生方、本当に勉強になりました。  選挙で選ばれた国民代表としての意義、それから、緊急集会を担う議院としての意義について、本当に改めて勉強させていただきました。  その中で幾つか質問をさせていただきたいと思います。  松浦参考人に対して、先ほど冒頭の陳述の中で、欧州各国、民主主義国家の中でも任期延長は幾つもの国で行われていると。そういった国々で、今日も議論になっておりますが、民主的な民意を反映していないとか、民主的統制という、そのような議論というのはあるんでしょうか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) 先ほども申しましたのですが、少なくともドイツでですね、ドイツは先ほど申しましたように、防衛事態、戦時においては、それを連邦議会の、あるいはその州議会の議員の任期は自動的に延長されると。緊急事態が終わった後六か月でこれが、任期が終了するという形で、選挙は行わない、解散もしないという形を取っております。  その選挙ができないからといって、参政権が制限されたとか、あるいは侵害されたとかという議論は一切聞いておりません。やはり、その優先順位の問題なんだと思うんですね。一旦は選挙によって選んだ議員ですから、一応民主的な正統性は確保している。ただ、その選挙が先に延びたということであって、それでその権利が侵害されたというよりも、やはりその国民の生命、財産を守ることを優先に考えて、その参政権の行使というものはある程度制限されるのはやむを得ないんだという、こういう考え方だと思います。

赤池誠章自由民主党

○赤池誠章君 松浦参考人の資料の中に、また冒頭にもお話がありました常置委員会ですね、この問題は、実は余り自民党内、またこういう国会でも議論がなされず、ドイツの事例であったり、過去松本委員会が提案したと。  やっぱり議論する中に、緊急集会だけじゃなくて、いわゆる衆参の常置委員会が大事だという、この緊急集会、参議院の現行の緊急集会とドイツ型のこの常置委員会、これ一体何が違って、どう共通する部分と何が違うのかというのを御専門の立場から御説明ください。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) まず、常置委員会というもの、先ほど申しましたように、ワイマール共和国憲法以降ドイツで発案されまして、実はこれ古い制度でもございませんで、今でも採用している国はあります。例えばスペインですね、スペイン憲法は、一九七八年のスペイン憲法では、この常置委員会、これ百十六条、緊急事態の規定なんですが、この中に常置委員会が下院の権限を代行するという規定がございます。  で、その参議院の緊急集会とこの常置委員会、どこが違うか。ドイツのケースは、これは時代によってちょっと違いますし、国によっても違うんですが、例えば先ほど申しました常置委員会ではなくて、これは合同委員会と申しますけれども、戦時において、まあミニ議会ですね、委員会、これは両院の代表者からこれは選抜されております。で、これは、常置委員会、合同委員会の例を挙げますと、これは四十八名の委員から成っております。そのうちの三分の二は連邦議会、連邦議会はこれ国民の代表機関です。で、連邦参議院というのがありますが、これは選挙によって選ばれずに各州の代表によって選ばれます。これが三分の一。ですので、連邦議会三分の二、連邦参議院三分の一の委員から、つまり両院からこの常置、合同委員会というものが組織されている。  なので、一方だけでこの国会の地位を代行するというのはむしろまれなケースであって、これは参議院の緊急集会制度が採用されたときにも、清宮四郎先生でしたか、非常にまれな制度であるということをおっしゃっております。

赤池誠章自由民主党

○赤池誠章君 ちょっと時間が参りましたが、長谷部参考人、土井参考人に一問ずつ聞きたいと思います。  長谷部先生の中で、選挙が大事だからと、一部でも選挙やって、そのとき、一部延長でも、任期延長でもいいというような御発言をちょっと聞いたんですが、それは聞き間違いで、任期を超えても、選挙をやっているさなか、衆議院議員の任期が超えてもそれはそれで認めるという意味なのか、ちょっとそこら辺を発言の御確認を一点と、土井参考人、それぞれ否定説、肯定説、非常に並べているんですが、このそのものが、我々も含めて、特に国民にとって憲法の法安定性をすごく揺るがすような、何でこんなに解釈が分かれなきゃいけないのかということを素朴に思ったものですから、それぞれ先生方、一問ずつ確認させてください。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 私が申し上げたのは、選挙の実施を延期するという、そういう趣旨でございます。  以上です。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 法律も憲法も、全ての条文について解釈が割れるというところは不可避ですので、それを整理させていただいたということになります。  以上です。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 小西洋之君。

小西洋之立憲民主・社民

○小西洋之君 立憲民主・社民の小西洋之でございます。  私からも御三名の先生方の御教示に心から感謝を申し上げさせていただきます。  まず、土井先生にお伺いさせていただきたいんですが、五十四条一項のこの四十足す三十、七十の解釈で、長谷部先生は権力の居座りを防ぐためというもの、これ、比較法的にも歴史的にもそうであろうということだったんですが、土井先生におかれましても七十日についてはそのような解釈が成り立つというお考えでしょうか。簡潔にお願いいたします。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) はい、そのとおりだろうと思います。七十条で新たに国会が開かれたときに内閣は総辞職しなければならないと定めている規定と併せて、そのように解釈できると思います。

小西洋之立憲民主・社民

○小西洋之君 では、長谷部先生、土井先生にお伺いさせていただきたいんですが、先ほどからの衆議院における任期延長の改憲論の論拠、これ、言わばこの緊急集会七十日限定説、その基本の考え方は、これを文理解釈、七十日として、この間に選挙ができる、平時という言い方をしているんですが、災害などを想定していない平時の制度だという理解なんですけれども、先ほどの七十日というこの期日の趣旨、そして、これ衆参でまだ議論されていないんですが、土井先生の御著書、拝読させていただきましたら、佐藤達夫先生の「日本国憲法成立史」、緊急集会がつくられた歴史ですけれども、明らかに災害ということを繰り返し繰り返し日本側は言ってこの制度がつくられている。  そうすると、緊急集会制度の立法趣旨、すなわち災害などに備えて衆議院がないときの立法機能確保ということを考えると、いわゆる七十日に限定するというものは、七十日のこの文言の、先ほどの、まず権力の居座りを防ぐという解釈、趣旨、そして元々立法趣旨として災害などを想定しているということからしても解釈上無理があると、そのような見解でよろしいでしょうか。簡潔に、長谷部先生、土井先生、お願いいたします。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) そのとおりだと思っております。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) そのように解釈しております。

小西洋之立憲民主・社民

○小西洋之君 では、重ねて、長谷部先生と土井先生にお伺いさせていただきたいんですが、そのようにしてつくられた緊急集会制度が、金森担当大臣によって、憲法制定議会において、戦前の反省から権力の濫用を排除する、どんなに精緻なものを定めても、そこに権力に付け入られる隙が生まれてしまうであろうと、民主政治を徹底する見地と、まあ有名な言葉ですので、かつ、土井先生の御著書にも言及等ございますけれども。  そうしたときに、権力の濫用、戦前の反省から、を排除するという根本趣旨に基づいてつくられた緊急集会があるにもかかわらず、議員任期の延長というのは、先ほどからも議論ありますけれども、様々緊急事態のこの認定、あるいは内閣、国会がそれを、多数派、時の権力の多数派が定める、あるいは再延長もできるというような制度を議論されていますので、そうすると、この憲法の緊急集会制度の根本趣旨である権力の濫用を排除する、そうしたことと矛盾するんじゃないか、立憲主義の見地からも問題があるんじゃないかと思うんですが、どのようにお考えになりますでしょうか。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 参議院というのは、先ほども申し上げましたけど、緊急集会は本来的に権能が限定をされていると、しかもそれは任務が終われば直ちに閉会をして、できる限り新しい国会にその任務を委ねるという、そういうつくりのものでございまして、そういう意味では、おっしゃる権力の濫用のリスクというものを最小化しようとしている、そういう制度であるというふうに考えてよろしいかと存じます。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 参議院の緊急集会について、憲法が緊急事態に対して対応する一つの仕組みとして入れたものであるというのはそのとおりだろうと思います。  じゃ、これで完全かということについては国会で更に御議論いただくべきことで、私自身も国会議員の任期の延長はどうなのかと言われますと、いろいろな考え方あろうかなと思いますが、緊急事態が生じた場合の国会の当然の開会ですとか解散権の制限ですとか、そういった立憲主義の考え方からして必要な部分が更にあるのではないかと言われると、それはあろうかと思いますので、そういう点含めて国会で御審議になること自体は、それは任務ではないかというふうに考えます。

小西洋之立憲民主・社民

○小西洋之君 じゃ、松浦先生にお伺いしたいんですが、先ほど、緊急集会制度は衆議院の同意が取れなければ国会が混乱するというようなことをおっしゃられているんですが、先ほど、今申し上げました戦前の教訓ですね、政府が行った緊急政令によって治安維持法が改悪される、あるいは、これは法律ですが、任期延長させてその間に太平洋戦争が開戦される、そのような国民にとって本当に恐ろしい権力の濫用を考えると、その後の国会同意の制度というのは果たしてどこまでのものかというんですけれども、先生はこの緊急集会の権力の濫用を排除するという、その趣旨の価値を戦前の教訓に鑑みてどのようにお考えになっていますでしょうか。

松浦一夫防衛大学校教授

○参考人(松浦一夫君) まず、旧憲法の下での緊急勅令、緊急財政処分、これが濫用されたという事実ですね。それと、今の日本国憲法の下で緊急政令、緊急処分を比較できるのかという問題がまずあります。(発言する者あり)ええ、ですので、濫用されたということが問題だという、そういう先生の御趣旨でよろしいでしょうか。  ただ、旧憲法の場合、これ、今の国権の最高機関である国会と天皇の協賛機関である帝国議会とそもそもこれ地位が違いますので、その議院、二院制取っておりましても、貴族院と衆議院の関係、それから、これ、常会の会期は今、日本国憲法では百五十日ということで、臨時会も特別会もあります。旧憲法では、これ常会の会期は三か月しかないわけですよね。実際のその開会日数も、日本国憲法では二百二十八日、一方で大日本帝国憲法の下での帝国議会は八十六日と、開会日数がもう全然違うわけですね。その下で、この議会の地位が低い中でその緊急勅令、緊急財政処分で処理せざるを得なかったとか処理するのに都合が良かったというのと、今のその憲法の下でこれをどう考えるかというのはちょっと次元が違う問題のような気がいたします。  小西先生の質問の趣旨とはちょっと違うかもしれませんですけど、比較にならないものですから、そういうお答えにさせていただきます。

小西洋之立憲民主・社民

○小西洋之君 終わります。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 佐々木さやか君。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。  本日は、参考人の皆様、ありがとうございます。  冒頭、私の考えを申し上げますけれども、基本的には、緊急の事態については参議院の緊急集会と繰延べ投票で対応し得るというふうに思っております。  議員任期の延長ということに関しましては、諸外国ではそうした制度を取る国もあるというふうにも承知をしておりますけれども、例えば上院が州代表であるとか、また上院と下院で有する権限が異なってくるという国もございますし、我が国の場合は、それに対して上院、下院共に全国民の代表として、しかも任期も異なると、常に参議院の半数がいるという状況になっておるわけでございまして、そうしたことを踏まえて、我が国でどのような制度を取っていくのが重要かということを考えていかなければならないというふうに思っております。  質問でございますけれども、まず長谷部参考人にお聞きをしたいと思います。  先ほど我が会派の西田委員が、そのときには松浦参考人にお聞きをしたんですが、仮に議員任期の延長ということで衆議院議員の任期を延長した場合を考えたときに、その衆議院議員、解散の場合には元の議員の身分の復活若しくは任期の延長という場合にも、まあ任期を過ぎた後の立場ということでございますので、いずれもやはり暫定的、一時的なものになるというふうに考えざるを得ないのではないかと。  そうなりますと、この参議院の緊急集会も確かに暫定的、一時的なものと考えざるを得ませんけれども、衆議院の任期を延長したとしても、それによるこの両院がそろった国会というのは参議院の緊急集会を超えるものとは言えないのではないかなというふうにも思うんですが、この点についての御見解がありましたらお聞かせいただければと思います。

長谷部恭男早稲田大学大学院法務研究科教授

○参考人(長谷部恭男君) 恐らくは、御発言の御趣旨は、任期を延長したときの衆議院議員、現在の民意を必ずしも反映をしていないということですから、その民主的な正統性は限定があるはずだと、そのような御趣旨だと思います。  参議院の緊急集会については、現行制度の下で元々権能に限定があるということにはなっているんですけれども、ただ、これ衆議院議員の任期を延長してしまいますと、そこにはやはり国会が存在するということになりますので、その国会の権能が限定されていますという、そういう制度づくりが果たしてできるかどうかという、そういう問題がやはり出てくるということになりまして、そうなりますと、佐々木先生が御指摘の民主的な正統性の限定の問題と、しかし権能は限定されていないと、そこに乖離が生じてしまう、そういった問題が出てくるということは確かにあるのだろうというふうに私は考えております。  以上でございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 時間がもう余りないので、土井参考人に一問。  先ほどお話の中で、この参議院の緊急集会と任期延長された衆議院議員とどちらが民主的正統性があるかということを、余りその理屈を言っていてもしようがないというお話がございました。  結局、どちらがその正常な状態に戻す力が働くかどうかと、そこが重要だということでしたが、結論としては、どちらの方がそういった観点でいうと有効というふうにお考えかというところを教えていただければと思います。

土井真一京都大学法学系(大学院法学研究科)教授

○参考人(土井真一君) 理論的に私の学説を申し上げますと、参議院の緊急集会は国会そのものではなく、参議院という国家機関が国会の権能を代行しているというふうに整理する必要があると思います。その意味では、参議院の緊急集会の民主的正統性にも実は問題がある。  ただ、重要なのは、そういう状態であるからこそ正規に戻すレジリエンスが働くので、完全な国会ができているように見えますが、しかし、結局は任期を延長してしまっていて選挙を十分行えていないという存在を完全な国会であるかのようにするよりは、そちらの方がレジリエンスが働くのではないかという、そういう意見を持っているということです。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 終わります。

中曽根弘文自由民主党

○会長(中曽根弘文君) 質疑も尽きないようでございますが、予定の時刻も参りましたので、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  参考人の皆様には貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。審査会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時一分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗