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211回国会参議院2023/02/27

議院運営委員会 第8号

発言数
231
登壇者
10
会派数
7
開催日
2023/02/27

会議録

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) ただいまから議院運営委員会を開会いたします。  まず、参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  日本銀行総裁の任命同意に関する件のため、本日の委員会に参考人として日本銀行総裁候補者・共立女子大学ビジネス学部教授・学部長植田和男君の出席を求め、所信を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 次に、日本銀行総裁の任命同意に関する件を議題といたします。  候補者から所信を聴取いたします。植田和男君。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 植田でございます。  本日は、所信を述べる機会を賜り、大変光栄に存じます。  私は、内外の大学において、主にマクロ経済学、金融論、国際金融論の分野で研究と学生の指導に当たってまいりました。この間、平成十年から十七年までは、審議委員として日本銀行の政策決定と業務運営に参画いたしました。委員退任後はアカデミズムの世界に戻りましたが、日本銀行との関係では、金融研究所特別顧問などの立場でアドバイスを行ってまいりました。また、金融政策の理論や実践について、国際会議などの場で、内外の学者だけでなく、海外中央銀行関係者、市場関係者等の実務家とも議論を行ってまいりました。  まず、金融政策についての私の考え方を述べたいと思います。  金融政策は、景気と物価の現状と先行きの見通しに基づいて運営する必要があります。現在、我が国経済はコロナ禍から持ち直しているところですが、内外経済や金融市場をめぐる不確実性は極めて大きい状態です。消費者物価の上昇率は四%程度と、目標とする二%よりも高くなっていますが、その主因は輸入物価上昇によるコストプッシュであり、需要の強さによるものではありません。こうしたコストプッシュ要因は今後減衰すると見られることから、消費者物価の上昇率は来年度半ばにかけて二%を下回る水準に低下していくと考えられます。  金融政策の効果が発現するまでにはある程度時間が掛かります。金融政策の理論では、需要要因による物価上昇には予防的に対応して需要を抑制する一方、コストプッシュによる一時的なインフレ率の上昇には直ちには反応せず、基礎的な物価、基調的な物価の動向に反応するというのが標準的な対応です。そうでないと、金融引締めによって需要を減退させ、景気悪化とその後の物価低迷をもたらすことになってしまいます。  この点、我が国の基調的な物価上昇率は、需給ギャップの改善や中長期の予想インフレ率の上昇に伴って緩やかに上昇していくと考えられますが、二%を持続的、安定的に実現するまでにはなお時間を要すると見られます。  こうした経済・物価情勢の現状や先行きの見通しに鑑みれば、現在、日本銀行が行っている金融政策は適切であると考えています。金融緩和を継続し、経済をしっかりと支えることで、企業が賃上げをできるような経済環境を整える必要があります。  もし日本銀行総裁としてお認めいただきましたならば、政府と密接に連携しながら、経済・物価情勢に応じて適切な政策を行い、経済界の取組や政府の諸施策とも相まって、構造的に賃金が上がる状況をつくり上げるとともに、一時的ではなく、持続的、安定的な形で物価の安定を実現したいと考えています。  次に、日本銀行の金融政策について、やや長いタイムスパンでお話ししたいと思います。  私が審議委員に就任した平成十年当時、日本経済は、バブル崩壊から金融危機を経て、デフレに突入していたところでした。一方で、政策金利は既に〇・五%を下回っており、通常の金融政策の範囲では緩和の余地はほとんど残されていませんでした。このため、日本銀行は、ゼロ金利政策、時間軸政策、量的緩和政策など、非伝統的な金融政策を世界で初めて次々に導入いたしました。  私は、これらの立案過程に、ほかの政策委員と相談しながら、主に理論面から参画いたしました。このうちの幾つか、例えば時間軸政策は、その後、欧米の中央銀行でフォワードガイダンスとして採用されるなど、世界の金融政策の標準にもなっていきました。  私が審議委員を退任した後も、日本銀行は、量的・質的金融緩和、マイナス金利政策、イールドカーブコントロールなどを採用し、世界でも、また歴史的にも大規模な金融緩和を実施してきました。これらは、実質金利の押し下げを通じて、企業収益や雇用の改善などに貢献し、デフレではない状況をつくり上げたと考えています。  一方で、様々な副作用も生じていますが、先ほどお話しした経済・物価情勢を踏まえますと、二%の物価安定の目標の実現にとって必要かつ適切な手法であると思います。今後とも、情勢に応じて工夫を凝らしながら、金融緩和を継続することが適切であると考えます。  これまで日本銀行が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと継承し、新日銀法施行以来二十五年間、日本銀行にとっても、また私自身にとっても、積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う五年間としたいと考えております。  以上、金融政策についてお話ししましたが、日本銀行のもう一つの重要な責務は金融システムの安定であり、我が国経済にとって金融仲介機能が円滑に発揮されることは極めて重要です。人口減少など、我が国の金融機関、金融システムを取り巻く環境が厳しさを増す中、この面でも適切な施策を実施してまいります。また、銀行券の発行と流通、決済システムの運営、国庫金に関する業務など、いずれも国民経済に必要不可欠のものです。  そうした社会インフラを安定的に運営していくために、日本銀行の約五千人の職員と力を合わせて日々業務に当たってまいりたいと考えております。  どうもありがとうございました。

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 以上で候補者からの所信の聴取は終了いたしました。  これより候補者に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 立憲民主・社民の勝部賢志でございます。植田参考人、どうぞよろしくお願いいたします。  時間が限られておりますので早速質問させていただきますが、今回、植田参考人が日銀の総裁候補ということでノミネートをされたこと、恐らく御自身も相当に悩まれたのではないかというふうに思います。大蔵省や財務省や日銀のOBならいざ知らず、植田参考人はまさにきっすいの民間人ということで、大学の学者さんでありましたから、そういう意味では初めての総裁候補なわけであります。今の内外の社会情勢は非常に厳しい状況で、先行きも芳しくありませんし、また、日銀がこの十年、猪突猛進してきたこれを修正あるいは是正をしていくということがあるとすれば、まあ並大抵なことではないわけで、まさに清水の舞台から飛び降りるようなお気持ちで決断をされたのではないかというふうに私は考えています。  今、所信をお伺いいたしましたけれども、その所信の中にはその辺りの御決断に至る核心部分については触れられておりませんでしたので、もう少しその辺の思いといいましょうか、もしお悩みがあったらそのことも含めてお聞かせをいただけたらと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) ありがとうございます。  あえて申し上げるといたしますと、かいつまんで申し上げれば、委員おっしゃいますように、非常に誰がやっても難しい、厳しい状況である、それがかえって私にとっては非常にチャレンジングな仕事であるというふうに思いまして、過去の日銀での政策担当の経験、学者での経験を生かしてそのチャレンジングな課題に挑んでみたいという一点でございます。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 非常に端的にお答えをいただいて。  そのチャレンジ精神というのは、実は二〇一一年に日経新聞に植田参考人のインタビュー記事が全五回にわたって掲載をされています。その中に御自身のお言葉で、「理論と政策を行き来する」という、これはその連載の題名なんですけど、その中で御自身が、生の経済の動きを理論に反映させる、逆に理論を政策に生かそうとしたりする動きをもっと広げるべきではないかということが一貫した問題意識だというふうにおっしゃっておられます。  それを体現されるかのように、一九八五年、旧大蔵省ですけれども、財政金融研究所の主任研究員を始め、その後、日銀の調査統計局の客員でお仕事をされたり、あるいは日銀の審議委員、それから金融研究所の特別顧問、そして日本政策投資銀行の社外取締役にも就任をされてきています。まさに象牙の塔にこもり続けた学者ではないということは言うまでもないことでありますが、現場のエピソードなどを交え、さぞかし興味深い、面白い講義を大学ではされているのではないかというふうに思ったところであります。  以下、衆議院での質疑もございましたし、今の所信もありましたんですけれども、もう少し詳しく踏み込んでお話を聞きたいと思いますので、是非私どもにも分かりやすく御答弁をいただけたらと思います。  そこで、まず初めにお尋ねしたいのは、物価安定目標二%の根拠についてであります。  政府と日銀の共同声明の根幹であり、アベノミクスを始めとした全ての政策の正当性の根拠とされてきたのがこの物価安定目標二%の実現ということでありました。しかし、この十年間、黒田総裁の答弁では先進各国と同様の二%という答弁が繰り返されておりまして、植田参考人も先日の衆議院の質疑ではほぼ同様のお答えをされたというふうに承知をしております。  しかし、なぜ二%なのかというのがここへ来て非常に疑問というか、のり代ということであれば例えば三%でもいいのではないかというふうに思うわけでありまして、なぜこの二%というのがあたかも金科玉条のように言われてきたのか、そのことについて、是非、理論的妥当性あるいは根拠について詳しくお答えをいただけたらと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) ありがとうございます。  私からは、こういうインフレ目標を決める際の背景にある考え方をちょっと御説明させていただければと思います。  のり代というお話もありましたし、それはもちろん目標決定の際の大事な要素でありますけれども、結局、根本的なところとしましては、物価安定を目指したい、つまり、物価という、物価安定という経済にとってのインフラを構築するという目標を立てたいということですので、ごくごく単純に申し上げますと、物価安定というのはゼロ%インフレのことだと思います。つまり、物事、お金を測る物差しがすごい不安定になっていると経済活動が円滑に行えない、その意味ではここが安定していた方がいいという意味で、物価安定の普通の、本来の定義は零%インフレであると思います。ここからずれればずれるほど、その面でコストが発生するというふうに普通考えます。  その一方で、別の要素といたしまして、物価指数の上方バイアスの話もありますが、より重要なものとして、先ほども出ましたのり代論があります。これは、おっしゃいましたように、インフレ率、インフレ目標が低い、中期的なインフレ率が余り低いとそれに対応した中期的な金利水準も低くなりまして、何かあったときに金利の下げ余地が少なくなる。ですから、そこをある程度確保するためにある程度ののり代があった方がいい。  ただ、先ほどの物価安定の考え方からしますと、ゼロからずれればずれるほどコストが大きいということがありますので、たくさんのり代があればいいというものでもないわけです。そこのバランスを考えて、多くの国で大体二%くらいがいいのではないかというふうに決まっているというのが現状でございます。  それを日本に当てはめて、きちんきちんと計算していったら、二なのか一・九なのか二・三なのかという議論はございますが、そこは余り厳密には最終的に決めることが必ずしもできないような点ですので、一応今のところ二%になっているという、そういう背景を御説明してみました。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 その二%に、スローガンとして掲げるということは理解をいたしますけれども、そこにこだわり続けるということが本当に必要なのかということは今後検証していく必要があろうというふうに思います。  植田参考人は、日銀審議委員時代に、一九九九年、ゼロ金利を導入し、先ほど御自身も触れておられましたけれども、量的緩和、あるいは非伝統的な金融政策に理論的に関わってこられたと言っておられましたとおりであります。その後、二〇一一年に日本経済学会学長に就任をされた講演で、非伝統的金融政策の有効性という論文や、二〇一三年九月には、異次元の金融緩和:中間評価というような論文を発表されておられまして、自ら非伝統的金融政策の分析、評価を行ってこられたと承知をしております。  そこでお伺いをしたいと思いますが、異次元緩和における後期のマイナス金利、また量的・質的金融緩和、いわゆるイールドカーブコントロールの政策有効性をどのように分析、評価されてきたのか、簡単に御説明をいただきたいと思いますのと、あわせて、先ほどもちょっと触れておられましたけれども、異次元金融緩和の副作用という表現を使われておられましたけれども、これはいかなるものなのか、副作用でどういうことが起きているのか、そのことについて御教示をいただけたらと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) お答えします。  マイナス金利を含むイールドカーブコントロールのメリットとしましては、適切な水準、低金利水準でありますが、に金利をコントロールすることで、大規模な金融緩和がつくり出している良好な金融緩和を持続できることが挙げられます。  この長短金利水準の決定に当たっては、金融緩和による経済への刺激効果と同時に、金融仲介機能の、機能への影響にも配慮し、バランスの取れた姿にするという配慮がなされている仕組みとなっております。  一方、デメリットとしては、金利が低位で安定するようにコントロールすることで市場機能に影響があるかもしれないという点が挙げられます。  この点については、日本銀行は、国債市場の機能度に配慮する観点から、国債を貸し出すという制度の要件を緩和する、あるいはその他の様々な手段を講じてきましたし、昨年十二月には、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、円滑にイールドカーブの形成を促すという観点から、長期金利の変動幅を国債買入れを増やしつつ拡大するというような運用の一部見直しを実施しました。現状、この効果を見守っているというところかと思います。  このように、政策には常に効果と副作用がございますが、それを比較考量しながら最も適切な政策を実施する必要があるというふうに考えております。  付け加えますと、現在の金融緩和はメリットの方が副作用を上回っているというふうに考えてございます。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 植田参考人は、日銀の政策の妥当性あるいは継続性をかねてより表明をされています。今御説明がありましたように、副作用が効果よりも上回っているというお話がございましたが、私はそれが実態だというふうに思っています。  しかしながら、大き過ぎる物体を急ブレーキを掛けて止めようとする、あるいは方向転換をするというのは、それ自体にエネルギーもありますし、またリアクションもあるということで、そう簡単にはその転換、変換みたいなことがやりにくいというのが実は一番の理由なのではないかなというふうに私は感じているところであります。このままいつまでもということではないのではないかということも付言をさせていただきます。  さて、そこで、物価安定目標二%は、結果的に、政策手段をいろいろ講じましたけれども、まあ十年掛かっても達成できなかったというのが事実だというふうに思います。  現代の日本において、個人消費拡大の基調に転じるポイント、それはどこにあるとお考えなのか。私は、賃金の上昇しかないのではないかというふうに考えています。実質所得の低迷が我が国のデフレや低成長の一番大きな要因なのではないかと考えますけれども、植田参考人御自身はどのように御所見をお持ちか。  そして、加えて、かつてバーナンキ元FRB議長は、金融政策は米経済が直面する問題に対する万能薬ではないとおっしゃったそうですけれども、賃金の上昇に金融政策がフォローできるところもあるのではないかと考えますが、植田参考人はどのようにお考えか、お聞かせください。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 実質所得、賃金所得の低迷の話がございましたが、私は、これは物価低迷の原因なのか結果なのか微妙なところで、大まかには物価の低迷とともに発生している現象という、発生してきた現象というふうに考えております。  すなわち、バブル経済が九〇年代に崩壊した後、長期にわたり経済が低迷して、その中で物価や実質所得が上がらないという状況が続いたわけですけれども、その背景としまして、不良債権問題、ITバブルの崩壊、リーマン・ショックなど様々な、外的といいますか、金融政策と全く関係ないわけではないですが、その各時点時点では外的なショックがあったということが挙げられるかと思います。さらに、こうした状況の下でよく指摘されることですが、物価や賃金がなかなか上がらないということを前提にした人々の行動が定着してしまったということも賃金の伸び悩みにつながったと思います。  それでも、二〇一三年以降、政府との共同声明の下で、日本銀行、政府、それぞれ様々な適切な施策を実行いたしまして、ベースアップが復活するということもありましたし、それもあって日本経済はデフレではない状況に入っているというふうに考えております。  今後も、金融緩和を継続して総需要を支えるということで、賃金の上昇を伴う形での二%の物価安定目標を持続的、安定的に実現していくことが可能であるというふうに考えてございます。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 新総裁に求められるポイントの一つとして、市場とのコミュニケーション能力ということがよく言われます。それが現黒田総裁に欠けているのか否かについてはこの際、まあここでは問いませんけれど、若干付言させていただくと、金融は、何の遠慮も配慮もちゅうちょもなく、海外のヘッジファンドのように利益のみを追い求める市場が相手なので、予断を与えぬようにあえて説明をしない、サプライズが常態化しているのではないかと思います。それが政策などの説明責任、アカウンタビリティーを回避する逃げ口上になってはいないのかということを問うべきだというふうに私は思っていましてですね。  その一方で、今般の新総裁人事では、内示より四日も早く情報が漏えいしました。政府には猛省を促したところでありますが、リアクションを軽減するために、ある意味意図的なリークが行われたのではないかとの疑いも消えないところなんです。  この間の長期政権で、この間というか、この間のですね、長期政権で、御都合主義が更に蔓延したと思わざるを得ない事態だと思います。その場逃れの口先だけの丁寧に説明をするということではなくてですね、市場もさることながら、国民や国会への丁寧な説明、アカウンタビリティーは民主主義の基礎要件だと考えますけれども、そこで伺いますが、植田参考人は、市場とのコミュニケーション、さらには国民、あるいは国会に対する説明責任についてどのようにお考えか、御所見をお伺いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 金融資本市場は、金融政策が動いたときにそこを通じて金融政策の影響が及んでいくという波及経路の起点に当たりますので、非常にそことのコミュニケーションは重要であるというふうに考えてございます。したがいまして、金融政策運営の考え方、意図を市場に正しく伝えていくことは金融政策にとって極めて重要であるというふうに考えてございます。  ただ、毎回毎回、例えば金融政策決定会合で議論して、時には政策を変更するわけですけれども、その変更の背景としましては、会合と会合の間に入ってくる新しい情報に基づいて経済・物価情勢の見通しを変更して政策を変更するということがございます。それを前もって伝えるということは必ずしも可能ではないので、時々サプライズ的な要素が入るということはやむを得ないかなと思いますが、繰り返しですが、考え方を丁寧に説明していくということかなと思います。  それから、国民、国会に対する説明責任ということにつきましては、やはり経済、物価、金融情勢に関する見方や、それを踏まえた政策運営の在り方について、できるだけ多様な機会で、しかも分かりやすく説明し、国民の皆様の御理解を得ていくということが極めて重要であるというふうに考えてございます。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 ありがとうございます。  戦後直後のハイパーインフレ期の日本銀行を舞台とした城山三郎の「小説日本銀行」では、銀行行内の大蔵省、つまり財政から、日銀、つまり金融の独立が悲願として描かれています。  その後、紆余曲折があって、現在の財務省、金融庁、日本銀行の体制がごく近年確立されたわけですけれども、一方で、野党時代から日銀法の改正までを公約化し、インフレターゲットの受入れや建設国債の莫大な引受けを公言していた第二次安倍政権下で、白川総裁のバッシングがあり、黒田総裁が実現し、そして政府と日銀の共同声明が公表されるという、その後の経緯につながってきたわけであります。  植田参考人は、中央銀行の政治や財政に対する独立性についてどのようにお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 物価安定の実現のために中央銀行の独立性が必要であるという考え方は、様々な歴史的な経験を踏まえまして世界的に確立されておると思いますし、その点は日本銀行法においても明確に規定されています。ただ同時に、マクロ経済政策の運営に当たっては、政府と中央銀行が十分な意思疎通を図ることも必要であると考えます。これも日本銀行法に規定されているとおりであります。  今後、二%の物価安定目標を持続的、安定的に実現するため、政府と緊密な連携を図りながら、必要な政策を責任を持って実行していくことが重要であると考えてございます。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 その日銀の独立性ということでいうと、もう一つは国際協調の関係なんですけれども、金融分野はまさにグローバル化、デジタル化が最も進んでいる分野だというふうに思いますが、国や中央銀行による統制が逆に言うと非常に難しいものだというふうにも感じます。  基本的な大前提としては、G7ですとかG20の先進各国による協調が不可欠であるというふうに考えておりますし、今ほどお話もありましたんですけれども、歴史的にもいろいろ経過を踏まえて今の日銀があるわけで、他の国との関係においてもいろいろな歴史があるわけですから、文化の違いもあり、そういったことを踏まえた上でも、やはりお互いに理解と協調が求められてきているというふうに私は感じています。  そのような中で、参考人のこれまでのキャリアを見ますと、まさに国際色豊かな経験をお積みなので、とりわけ国際協調についても非常に御造詣が深いのではないかというふうに思うんですけれども、その点どのようにお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) リーマン・ショックあるいはコロナ感染症によるショックの際等に各国中央銀行が協力して対応を行ったということに象徴されますように、そのベースとなる情報交換あるいは政策面での連携の重要性は非常に高まっていると思います。  例えば、そういう時期ですと、ドルの供給オペを日本銀行、まあほかの中央銀行もですが、FRBと協調してやっていくというようなことも行って市場の不安定性を低める、鎮めるということがございました。これなど、中央銀行間、FRBを中心にしました、の情報交換、連携の姿勢がないと実現できなかったことであるかなと思っております。  私自身、審議委員を務めたとき、あるいはその後の内外での大学での研究等を通じまして、様々な会議で学者だけでなく実務家と議論、意見交換を行ってまいりました。こうした経験も生かしつつ、今後、もし総裁に選ばれましたならば、海外中央銀行との連携や市場関係者とのコミュニケーションを行っていきたいと考えております。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 植田参考人の総裁就任となれば、遠からぬ時期に新たな共同声明なるものが焦点化していくことは間違いないと思います。  中央銀行の役割や、日銀がその職責から求め続けてきた、今ほど議論をした独立性とは一体どのようなものか。かつて白川前総裁が記者会見でこのようなことをおっしゃったんですが、中央銀行の独立性は長い歴史の中で得られた数々の苦い経験を踏まえて考えられた、やや長い目で経済、金融の安定を図っていく組織が必要であり、それを中央銀行の独立性という形で制度設計したという説明が一番すとんときます。  短期的な成果にこだわりがちな、まあある意味政治とか、あるいは経済、企業、あくまで異なる立場から金融、経済の安定、すなわち国民生活の安定を考えるところが不可欠なんだというふうに思います。  そこで、植田参考人は、このような白川前総裁のお考えをどのように受け止めておられるのか、また、異次元緩和の功罪を共に評価し、曖昧な数字ありきの新たな共同声明の締結は私はすべきではないと考えますけれども、いかがお考えか、見解を伺います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 白川前総裁の御見解については、私、残念ながらちょっと詳細を承知しておりませんので、ここでのコメントは差し控えさせていただけたらと思います。  ただ、その上で、一般論としてですけれども、先ほど申し上げたとおり、物価の安定を実現するための制度的仕組みとして、歴史的な経験に基づいて、世界的にも日銀法においても中央銀行の独立性が必要であるという考え方が示されていると思います。  現状では、二〇一三年ですか、日本銀行は二%の物価安定の目標を自ら金融政策決定会合で決定したというふうに認識しております。その決定に基づいて政策運営をしてきたということかと思います。  ただ同時に、先ほども出ましたが、政府と中央銀行がマクロ経済政策運営に当たって十分な意思疎通を図るということも、法律に書いてあるとおり重要でございます。その考え方に基づきまして、二〇一三年に公表されました共同声明では、こういうこと、加えまして、二%の物価安定の目標もその中に明記し、政府と日本銀行がそれぞれ連携してマクロ経済政策運営に当たるということになっておると思います。その後、両者、適切な、必要な政策を実施してきた結果、最初に申し上げましたように、経済は着実に改善して、デフレでない状況に到達しているというふうに思います。  そういう意味で、現在の共同声明の考え方は適切と考えておりまして、直ちに見直す必要があるというふうには思っておりません。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 ちょっと時間が少なくなってきましたので最後の質問になるかもしれませんが、最初に触れた日経新聞のインタビュー記事で私が一番印象に残ったのは株式投資のお話でした。  植田参考人は、一九八八年、大阪大学時代に、我が国の株式水準について、当時の高過ぎる株価と理論的な水準から見て株価の乖離があると、そこを分析してバブルを予見をされたということが当時評判になったということであります。  その参考人が、机上の研究に飽き足らず、株式投資を実践してバブル崩壊前の高値で売り抜けをした話や、営業が厳しくて、負けて買い直して大半を失った話とか、ワラント債関連商品三千万円をめぐる話も、外見や肩書のイメージからは大変大きく異なる植田参考人の素の一面をかいま見た気がします。  先ほど冒頭に聞いたお話で、日銀総裁にいわゆるノミネートされたときの気持ちはチャレンジ精神だとおっしゃいましたけれども、この株式などはまさにこのチャレンジの気持ちがおありだったのかなというふうに思っていますが、実は衆議院でも質問があったんですけれども、この総裁を受けるに当たって、金融商品など、投資状況をどのようにこの後処置されようとしているのか、ちょっと時間が来ましたので、簡潔にお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私の金融資産運用の拙い部分について事細かにお話しすることは控えさせていただきたいと思います。  いずれにせよ、日銀総裁に就任する場合には、就任日までに日銀の内規に従った形に資産の保有状況をしたいと思っております。

勝部賢志立憲民主・社民

○勝部賢志君 終わります。ありがとうございました。

東徹日本維新の会

○東徹君 日本維新の会の東徹でございます。  今日は、日銀総裁の候補の植田参考人に是非御質問させていただきたいというふうに思っておりまして、大変光栄に思います。  先ほどもお話がありましたが、もう今非常に日本の経済というのはやっぱり厳しい状況にあって、総裁になられるということはよっぽどの重責を担うやっぱり覚悟がなかったら非常に厳しいというふうに思っておりまして、その重責を担う覚悟ですね、受けたことにまずは敬意を表させていただきたいというふうに思います。  その中で、まず、経済学者でもあるということでありますので質問させていただきたいと思いますが、まず、失われた三十年ということをよく言われます。これ、我が国では、この三十年間、GDPも伸びていないし、また賃金も伸びていないと。これは世界の先進国の中でやはり日本だけだということを言われてきました。  先日、日経新聞見ておりましても、ドイツの名目賃金が日本に肉薄してきたというような記事もありました。ドイツというのは人口八千三百二十万人ですから、日本の六七%なわけですね。そういったドイツが肉薄してきているというような状況。そしてまた、インドも世界一の人口ということで、これから二〇二〇年代後半になれば、このインドもやっぱり伸びてくるというふうに考えられます。  そんな中で、日本の世界経済の存在感というものがだんだんとしぼんできているのでないかというようなことが言われているわけでありまして、この二〇一三年からは大規模な金融緩和もこれ行ってまいりましたけれども、失われた三十年というのはやっぱり変わっていないという現状、GDPや賃金というものがやっぱり上昇していないわけでありまして、植田参考人はこの原因をどのようにお考えなのか、まずはお聞かせいただきたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) バブル経済が崩壊した後、御指摘のように、長期にわたり経済が低迷し、物価、賃金がなかなか上がってこない状況が続いたわけでございますけれども、これは先ほどの質疑にもございましたように、様々な不良債権問題、ITバブル崩壊、リーマン・ショックなど、ショック、ネガティブなショックが経済を襲ったということが一つ大きかったと思います。  また、こういう状況が続いた、物価、賃金がなかなか上がらないということが続いた結果としまして、人々の行動がそれを前提にする行動になってしまった。何かちょっと物価を上げた方がいいということが起こっても、ほかの人が追随してこないんではないかという考え、予想の下に自分もやめてしまうというような行動が定着したということが物価や賃金の伸び悩みにつながったと思っております。  ただ、それでも二〇一三年以降、量的・質的金融緩和の下で良い動きが見られておりまして、ベースアップが復活する等の結果、デフレという状態ではなくなったということかなと思います。  それでも、今申し上げましたデフレあるいはゼロインフレ辺りを前提にする人々の行動の物価や賃金を上がりにくくするという影響はまだ少し残っておりまして、二%の持続的な安定的なインフレ目標の実現にはもう少し時間が掛かるというふうに見てございます。

東徹日本維新の会

○東徹君 いろいろ御説明がありましたが、一つの原因として、お話の中には余り出てこなかったかもしれませんが、日本ではやっぱり設備投資というものが進まなかったんではないのかと。やっぱり日本に、日本での、国内でのやっぱり設備投資が進まなくて海外にどんどんどんどんと工場だとかそういったものが移っていったと。そのことによって、日本のマネーというものがやっぱり海外に流出していったと。こういった状況というのも大きな原因ではないのかと思ったりもしますが、その点についてはいかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘のように、この間、設備投資といいますか企業による投資ですね、これがなかなか国内で行われず、行われる場合は海外で行われてきた期間が長かったというのは事実でございます。  では、なぜそうかというのはすごい難しい問題でございますが、学者的に今考えてみますと、九〇年代のどこかくらいから我が国の期待成長率が下方に屈折した、その中で、他方、海外の、特にエマージング諸国では、期待成長率、利潤率の期待値、こういうものは高かったということでそういう結果になっていると思います。  ですので、この点をどうやって是正していくかというのは難しい問題ですが、中長期的に期待成長率を上げる、あるいは潜在成長率を上げるような試みが必要だということは、それはそうだと思います。

東徹日本維新の会

○東徹君 期待成長率、潜在成長率も上げていく、非常に難しいことだと思いますが、ここはまた是非お伺いをしていきたいなというふうに思います。  次に、国債の格付についてお伺いをさせていただきたいと思います。  日銀は大量の国債を保有しておりますけれども、世界各国の国債の信用を測る機関として、例えば米国の格付会社S&Pとか、それからムーディーズ、こういったものがあります。一九九〇年代というのは、日本の国債の格付というのはS&PなんかではやっぱりトリプルA級だったわけですね。今はどうかというと、Aプラスになっているわけですね。  これ、下がっておるわけでありまして、中国とかリトアニアなどと同じだということになるわけですけれども、もちろん経済学者によってはこれはもう関係ないんだと言う方もおられますが、日本の国債がこのような格付になっていることについて植田参考人はどのようにお考えなのか、是非お聞かせをいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 民間の格付機関の御判断についてコメントすることは差し控えさせていただければと思います。  その上で、一般論として申し上げれば、やはり財政運営に対する信認がしっかりと確保されるということが重要であるというふうに考えております。

東徹日本維新の会

○東徹君 分かりました。  では、続いて、増税についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  二〇一三年一月に政府と日銀が共同声明を公表して、二%の物価安定目標というものを掲げて、異次元の金融緩和というものがスタートいたしました。そこで目指していたものは、当時の行き過ぎた円高を是正し、企業の収益力の向上を図っていく、そして賃上げにつなげていく、で、賃上げが消費の拡大、そして設備投資の拡充に至るという好循環を実現させるということが大きな目標であったというふうに思います。  実際には、当時、一ドル七十円台後半ということもありました。過度の円高の是正というのはこれ実現したわけでありますし、そしてまた株価も回復してきたわけですけれども、賃上げを伴う物価の上昇というのはなかなかこれ実現してこなかったというのは、もうこれまで皆さんが言ってきたとおりです。  その中で、二度にわたる消費税の増税というものがありました。消費税の増税というのは、消費をやっぱり冷え込ませ、デフレ圧力を強めてしまったことを掲げる経済学者もおられます。もしこれがそのとおりということであれば、今後やっぱり増税すべきではないというふうに考えますが、増税になっていくと、デフレ脱却どころか、またデフレに戻っていくという懸念もあります。  植田参考人にお聞きしたいのは、この二度の消費税の増税でありますけれども、これ、金融緩和に与えた影響についてどのようにお考えなのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 一般論として、税制を含めた財政運営については、政府、国会の御判断と責任において行われるものと認識しております。  その上で、消費税引上げの影響についてちょっと考えてみますと、一般的に引上げは、駆け込みの需要とその反動という効果、それから税率の引上げに伴う家計の実質所得の減少という経路から消費、経済に影響を及ぼすということが考えられます。さらに、消費税率の引上げは、より少し理論的に考えてみますと、若干将来に不安を覚えているような家計にとって、将来の財政の信認を少し高めるということから、前向きな支出行動を後押しする面もあると言う学者もおります。  こうしたことが全て合わさって、消費税率の変更、引上げの経済への影響が発生すると思います。そういう意味で多面的な影響が出るというふうに考えております。これらをよく分析の上、金融政策は、その他の経済に起こっていることを総合的に考えて決定するというものであるかなというふうに考えてございます。

東徹日本維新の会

○東徹君 大変言いにくいことであったというふうに思いますが、御答弁いただきましてありがとうございます。非常に多面的に影響があったというふうに私も思いますし、また、消費税の二度の増税はやっぱりやるべきではなかったなというふうに思います。  次に、一九八〇年代の日銀総裁を務められた日銀出身の前川春雄さんという方がおられまして、これ、本の中でちょっと私読んだので、ちょっと触れたいと思うんですけれども、中央銀行とは、これからの宴会が盛り上がろうとするときにメインの料理をテーブルから引っ込めるようなものだという例え話をされたそうです。早め早めの金融引締めというものこそ日銀の基本的な姿勢であって、物価が上がり過ぎることは警戒をするものの、物価が下がることには余り関心ないという体質をこれ示しておって、その後、日銀総裁になった白川氏も、金融政策では物価を押し上げられないという考えを持っておられました。  植田参考人は、そもそも金融政策で物価の引上げができると考えているのかどうか、改めてこのことについてお伺いしたいと思いますし、デフレを脱却していく上でも日銀はどのような役割を果たすべきと考えているのか、改めてお伺いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これ一般論でございますけれども、金融政策は財・サービスに対する総需要に働きかけるという政策でございます。引締め方向でも緩和方向でも寄与力を発揮すると思います。  局面局面によってなかなか緩和方向での効き目が弱いということも、例えば過去の、過去数十年の日本のようにあるかもしれませんが、一般論としては、金融政策で総需要に働きかけ、金融緩和で働きかけ、物価や賃金を上昇させるということは可能であるというふうに考えております。

東徹日本維新の会

○東徹君 デフレではないけどもデフレ脱却したとは言えないと、これ政府もよく答弁で使いますけれども、このような中で金融緩和の見直しをやっぱり行っていくということは、円高を促し、エネルギーや輸入品の価格を抑えることにはなるかもしれませんが、決して景気がいいとは言えない現在の我が国の需要を冷え込ませ、景気後退につなげる可能性は否定できないわけであります。  そうすると、企業収益が悪化したりとか、名目賃金が引上げの動きを止めてしまうという可能性もありますが、金融緩和の見直しを行うに当たって、当たってですね、具体的に緩和策のどこをどのように見直すことが今後適切と考えているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現状では、所信でも申し上げましたけれども、消費者物価全体は四%くらいの率で上昇しているわけでございますが、基調的な動き、定義するのはなかなか難しいものではありますが、これはまだちょっと二%には間があるというふうに考えております。ですので、金融緩和を継続するということが適当であるという判断でございます。  したがいまして、これを見直す、引締め方向で見直すということであるとしますと、その基調的な物価の判断が大きく改善するということが必要かなと思っております。その際にどういうふうに見直していくかという具体論については、考えていないわけではございませんけれども、様々な影響もございますし、今後の経済情勢の変化に応じてどういうやり方が適切かということもいろいろ変化してまいりますので、この時点で具体的にお話しさせていただくことはやや不適当かなと考えてございます。

東徹日本維新の会

○東徹君 では、次にイールドカーブのゆがみについてお伺いをさせていただきます。  昨年十二月に、イールドカーブのゆがみをなくすということで、日銀は長期金利の上限を〇・五%に拡大をいたしました。これ、経済学者の中には、イールドカーブのゆがみをなくすためであれば八年、九年の国債を買えばいいだけであって、長期金利の変動幅の拡大にはイールドカーブのゆがみを正す効果は余りなかったのではないかというふうなことも言われる方もおられます。  植田参考人は、昨年十二月の長期金利の変動幅の拡大、〇・二五から〇・五に拡大したわけですが、この点についてどのように受け止めておられるのか、お伺いをさせていただきたいというふうに思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) お答えします。  昨年十二月のイールドカーブコントロールに関する措置でございますけれども、趣旨としては、市場機能の低下が若干、昨年、国債周りの市場機能の低下ですね、見られた中で、イールドカーブコントロールによる金融緩和の持続性を高めるためにとられた措置というふうに考えてございます。  現在は、その市場機能へのプラスの影響が出るかどうか見守っているという状況かなと思っております。

東徹日本維新の会

○東徹君 続けて、我が国の経済の成長についてお伺いさせていただきたいと思いますが、先ほどの植田参考人からもありました潜在成長率のことについてでありますけども、日銀は我が国の潜在成長率について、最近、最新のですね、数字では〇・三一ということで発表しております。  アメリカと比べると、米国と比べると二ポイントぐらい低いんではないかというふうに思うわけでありますが、これまで十年間、異次元の金融緩和を行ってきても安定的に二%の物価上昇に至らなかったのは、そもそも我が国の潜在成長率が低いままであったからではないのかということも言われます。  低い潜在成長率と二%の物価安定目標、これはちょっとかなり乖離があるんではないのか、釣り合っていないのではないかというふうに思ったりもしますが、参考人は、この二%の物価安定目標とこの我が国の潜在成長率、最新の数字で〇・三一、このことについてどういうふうに見ておられるのか、お考えなのか、お伺いをさせていただきたいというふうに思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 御質問の点は、経済理論的に考えますと、非常に難しい点に関する御質問かなと思っております。  先ほどもちょっと申し上げましたように、潜在成長率が低い経済では、のり代を確保するというような意味での目標インフレ率は、場合によっては高めの方が望ましいという議論もございます、経済を刺激するのが難しいんで。  他方、潜在成長率が低いところで、しかし現実の物価上昇率が目標インフレ率よりも低い、下回っている、そこで目標インフレ率にたどり着くという努力をするということは、おっしゃるように潜在成長率が低いほどなかなか難しいということがございます。ですので、経路の途中では、潜在成長率が低いと頑張らないと上に行けないということがございます。  一方で、あくまで理論的にでございますけれども、潜在成長率が低いと、できれば高いところまで行きたいという議論も一方にございます。ただ、現状は、二%という目標を前提とした上で、潜在成長率が低いことからくる金融緩和の需要を支える力がもう一つであるということも踏まえつつ、強い金融緩和を継続しているということかなと思っております。

東徹日本維新の会

○東徹君 そうなると、低い潜在成長率のままで幾ら物価安定目標二%だ、二%だと言っても、なかなかこれ上がっていかないから、ずっと金融緩和ばっかりを継続していくということにはならないのでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) それは、なかなか難しい、あるいは潜在成長率が高い場合に比べますと、努力が、より一層の努力が必要になるということは言えるわけですけれども、永久に無理であるという結論は出てこないかなと思います。

東徹日本維新の会

○東徹君 まあ永久に無理とは私も思いませんが。  続けてお伺いさせていただきたいと思います。  我が国の潜在成長率が低いということは、それだけで経済にやっぱり力がないというわけでありまして、この成長率を、成長力をどうやって取り戻していくのかというところが大変重要だということは先ほども植田参考人からのお話にもありました。我が国の構造改革、規制改革を進めて経済成長をやっぱり実現していくこと、経営者に成長への期待を持ってもらうということが非常に必要でありまして、そうすれば自然利子率も上昇し、名目金利の引上げ余地も生じてくることから、異次元の緩和の出口につながっていくというふうに考えます。  二〇一三年の政府と日銀の共同声明がありますが、そこの特に三番なわけでありますけれども、「政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する。」というふうに書かれております。「また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」というようなことがこの共同声明の中に書かれておるわけであります。  私は、まだこの政府の構造改革とか規制改革、こういったものがやっぱり不十分で我が国の成長戦略を描けていないというふうに思うわけでありまして、参考人はこの我が国の成長戦略としてどのようなことが必要と考えておられるのか、お伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘のように、成長率が中長期的に高まっていくためにはいろいろな意味での投資が増えるということは極めて重要と考えます。設備投資、研究開発投資、あるいは人的資本投資等でございます。この点、政府は賃上げの促進やデジタル化などの様々な成長力強化の取組を行っていらっしゃるものと承知していますし、そういうことが良い成果を生んで成長率が高まっていくと、引き上げられていくということは非常に望ましいと考えております。  それから同時に、人口、特に生産年齢人口が増えていくということは経済の供給能力を増やしていくという効果を当然持ち、完全雇用における生産水準を引き上げるという効果を持ちます。この点は、ここ十年の政府が推進してまいりました働き方改革によって女性や高齢者の労働参加が進み、人口減少ではあったわけですけれども、生産年齢人口は減らずに、あるいは雇用は増えるという効果を持ってきたところであります。  しかし、今後は、その辺、いろいろなことを考えますと頭打ちになっていくということが予想されますので、やはり一層生産性の上昇というところに力を入れていくということが必要かなと思います。  付け加えますと、現行の金融緩和は、低金利環境を続けるということで広い意味の投資にとってはプラスの環境を続けているという効果があるかなと思っております。

東徹日本維新の会

○東徹君 そこでなんですが、日銀というのは、前の衆議院での質問でも植田参考人が答弁なされておられましたけれども、全国に今支店があって、事務所もあって、そして五千人の職員の方がおられてということで、各支店が地域の声も聞いておるということでありました。  私は、この地域の経営者とのいろんなコミュニケーションをされているというふうに思います。日銀の短観だってそうだと思うんですけれども、経済の状況を把握しているのがやっぱり日銀の各全国の支店だというふうに思っておりまして、そういった地域の声を集約していく、日銀の情報のネットワークをやっぱり生かしていく、こういったことを政府にやっぱり伝えていくことというのが非常に効果的な政策をつくっていくことになるんではないかというふうに思いますが、日銀と政府が連携する中で日銀が提言などの形で地域の声を政府にしっかりと反映させて伝えていく、こういったことをされてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) おっしゃいますように、日本銀行はたくさんの支店、事務所を抱えており、そこで中小企業から大企業まで様々なヒアリングを行っております。その結果は、毎四半期ですかね、定例のレポートとして対外公表されておりますが、それに加えまして、あるいは、そこの附属資料として、様々なトピック的なことに関してヒアリングで吸い上げられた情報を、特に地域の企業が課題と考えているようなテーマにつきまして問題提起を行っているセクションもございます。  こういうことも含めまして、日本銀行が行う政府との意見交換等の際には、地域の声を政府にお伝えするということは今後も一生懸命やっていきたいというふうに思っております。

東徹日本維新の会

○東徹君 共同声明のことになりますけれども、先ほども申し上げましたように、政府とのこの共同声明の中で、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用、思い切ったことを総動員しということがあるわけでありますが、このところがまだまだ私は不十分だというふうに考えておりまして、政府の規制改革や構造改革の実行というものをいつまでにという期限をやっぱり区切って求めるような形で共同声明をこれ結び直した方がいいのではないかというふうに思いますが、植田参考人、この点についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) おっしゃいますように、構造改革で潜在成長率を高めていくという努力は極めて重要だと思います。ただ、生産性がどれくらいそれによって高まるか、あるいは、ここまで何年後までに高めないといけないというふうにきちんと時期や程度を区切ってファインチューニングができるようなものではないというふうに考えておりますので、数値目標的なものはなかなか難しいのではないかなというふうに思ってございます。

東徹日本維新の会

○東徹君 数値目標というか、いつまでにどれぐらいを達成していこうという大きな目標に向けてやっていくということは大事ではないのかなというふうに思ったりもいたしております。  いずれにしろ、大変厳しい日本の経済のやっぱりかじ取りを担おうというもう本当にチャレンジ精神に敬意を表して、私からの質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 国民民主党の浜野喜史でございます。  御質問させていただきます。  我が国は様々な課題がありますけれども、その中でも持続的な経済成長が最重要課題であると認識をいたしております。そのためにいかなる政策を取るべきなのか、経済政策全般につきまして、日銀総裁候補、また経済学者のお立場からの御見解をお伺いしたいと思います。  通告に沿いまして質問させていただきますけれども、中には関連をしてということでも質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  まず、我が国の経済が二十年以上にわたって低迷を続けております。その原因等につきましては、衆議院、そして本日の場においても様々な御説明いただきました。  私なりに理解するところは、バブル崩壊以降、何回かの経済危機を経て、日本の経済状況が、国民の皆様方は消費することよりもお金をためることを優先するようなマインドといいますか、そういうような状況になってきた。そして、企業においても、将来に向けて投資をするということよりも、企業内部に、何といいますか、資金をため込む方を優先するようになったと、そういう状況に陥ってしまったということかなというふうに理解するんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) そこは、結果的にはそういうことだと思っております。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 そういう状況に陥ってしまったということをいかに打開をしていくかという状況になってきているというふうに理解をいたします。  約十年前に、安倍政権時に、経済の再生に向けまして、大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略のいわゆる三本の矢を柱とする経済政策が打ち出されました。  その三つについてお伺いしていくということで質問をしたいと思いますけれども、三本の矢の一つでありますこの十年間の金融緩和政策について妥当であったというふうに考えておられるというふうに御説明されてきましたけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。改めて御確認をいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 基本的に、目標の二%のインフレ率を下回ってきた中で金融緩和を続けたということは妥当であったと考えております。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 十年間の金融緩和政策についてはおおむね妥当であったというふうに認識をされているということでありました。  その上でお伺いいたしますけれども、先ほど来からも御質問がございました、そもそも物価上昇が経済成長にどのような経路で結び付いていくというふうに今日まで日銀は考えてきたのか、そのことについて候補はどのようにお考えなのか、御説明をいただきたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) ここは、理屈の上では二つの経路があると思っております。  一つは、二%の目標に向けて努力してそこに近づいていく過程で、金融緩和は総需要を支えるという政策でございますので、総需要が支えられることによって雇用や企業収益も増える、これが消費や設備投資に良い影響を与えるという効果があるかなと思います。  もう一つは、金曜日にもちょっとお話ししたことですが、二%の目標がうまく達成されて、持続的にそういう状態にあって、物価安定というインフラが整備されると、その下で経済活動は安心して活発に行い得る、行うことができるようになる、これが日銀法では国民経済の健全な発展という表現になっているかと思います。そうしますと、それが生産性を高めたり潜在成長率を高めるという効果を持ってまいるかなというふうに思っております。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 二つの経路があるというふうにおっしゃいました。私、一つ目の経路ですね、物価が上がることによってやはり消費が結果的に喚起されるということはまあ理解できるんですけれども、二つ目の経路ですね、物価が上がることによって経済が伸びていくというような経路があるんだということ、いま一つ理解ができませんでしたので、もう一度分かりやすく御説明いただけませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは今日の先ほどの目標インフレ率の話のときにもちょっと御説明して、私の説明がまずくて申し訳なかったんですが、物価安定というのは経済のいろいろな金融活動を測る物差しをしっかり安定させるという政策でございます。逆にこれが不安定ですと、経済活動を測るというところがいろいろ誤差が入ったり不安心理が、不確実性が増えるということで、うまくいかなくなるという問題が発生します。そういう問題を最小限に抑えるというのが物価安定目標の達成ということかなと思います。  それによって安心して人々が経済活動に専心することが、通常の経済活動に専心することができる、これが中長期的に良い影響を生産性等にもたらすという意味でございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 関連して更に御質問したいんですけれども、先ほど来の質疑で候補は、その物価安定というのは基本的にはゼロ%というのが安定なんだという説明をされました。私は、あれっというふうにちょっと思ったんですね。  といいますのも、今日まで日銀は、物価安定というのは、まあ何%かは別としても、適度に物価が上がっていくということが物価安定なんだというふうに説明されてきたんではないかなと私は理解をしているんですね。先ほどはゼロが安定の基本なんだというふうにおっしゃいましたんで、その辺りを更に説明していただけませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 一方に、物価安定は概念的にはゼロインフレに対応するものであるという考え方がございまして、もう一方に、先ほど来議論のありました、のり代をできれば確保したいという議論がございまして、こちらの方からしますと少し高いインフレ率の方が望ましい。この両方をバランスしてどの辺がいいかということを考えた結果、大体二%くらいがいいんではないかというのがいろいろな国で出ている結論でございます。それを物価安定の現在時点における定義というふうにほとんど全ての中央銀行が表明していると思います。  したがって、そういう意味での物価安定の定義に基づきますと、若干プラスのインフレ率で物価が上がっていく状態が物価安定ということでございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 ありがとうございます。  理論的に正確に候補は説明されておられるのかなというふうに思うんですけれども、私は、まあ私も含めてかも分かりません、国民の皆様方の多くが、日銀がその目標として物価上昇を置いているということの意味合いをどれぐらい理解されているのか、それを私も理解できていないのかもしれません。なぜ物価上昇を求めているのか、それがどう経済成長に結び付くというふうに考えているのか、より分かりやすく説明をしていただくということが極めて大事ではなかろうかというふうに思うんですね。  私が考えるには、大ざっぱに理解すれば、仮に物価が上がらないとすれば、国民の皆様方は、消費するよりもむしろ消費を手控えられるということになるんではなかろうか。さらに、企業においても、将来に向けて投資をするというよりも資金を手元に置いておくという行動に走る可能性が高いんではないかと。そうなると経済は回りませんので経済は伸びていかない、そういう状況を打開するために日銀は物価の上昇ということを目標に置いているんだと。こんな説明をしていっていただいたらいいんじゃないかなというふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 先ほど、何で目標インフレ率が二%なんだということの理論的な根拠を御質問されたというふうに思いましたので学界での標準的な説明をちょっとさせていただきましたが、かえって分かりにくい面があったという御指摘だと思いますので、今後分かりやすく説明させていただくように注意してまいりたいと思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 関連して御質問いたしますけれども、物価上昇二%ということで目標を置いておられるわけですけれども、現状は四%程度になってきていると。ただ、四%程度になっているんだけれども、賃上げを伴う物価上昇になっていないからまだ目標には未達なんだという説明なんですね。これも分かったようで分からないような感じもするんですね。  とすれば、例えば、国内で生み出された全ての最終財とサービスの物価指標であるところのGDPデフレーターの上昇と、これもまあ小難しい指標だとは思いますけれども、GDPデフレーターの上昇というようなことを目標に据えておけば、このように、四%超えだったんだけれども目標未達だという説明をする必要なかったんじゃないかなというふうにも思うんですけれども、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 確かに、物価安定の指標として、消費者物価的なものではなくてGDPデフレーター周辺のものを使ってはどうかという議論は昔からございます。  ただ、普通、消費者物価あるいはそれに類するものを多くの中央銀行が使っている一つの大きな理由は、結局、経済活動は、最終的には、家計がどういう財・サービスを購入し、どういう条件で購入して、どれくらいの満足を得ることができるかというところを測りたいということからきているのかなと思います。  その上で、広い意味の物価、より広い意味の物価の動き、あるいは物価の基調の動きを把握するためにGDPデフレーター等も見てはどうかという見解は検討に値すると思いますが、ただ、技術的な難点としまして、GDPデフレーター、四半期に一回しか手に入らないとか、あるいは、もっと技術的になりますが、原油の価格が上がって、それが国内財に転嫁されないようなときには、かえってGDPデフレーターは下がってしまうというような難しい問題もあったりしまして、今のところ参考指標程度にとどめているという中央銀行が多いのかなというふうに思ってございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 さらに、関連してお伺いしますけれども、日銀は金融政策だけで物価上昇が生み出されると考えてきたのかどうか、候補はどのようにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) そこは日本銀行内部でも人によって違うかもしれませんが、現在、私としては、もちろん金融政策は物価に影響がある、金融緩和は物価上昇につながるということを思っておりますが、それだけで物価が決まるというわけではございませんので、その他の要因の大きさ次第では金融緩和が物価上昇を生み出すのに時間が掛かるというふうに考えてございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 今の候補のお答えは、金融政策だけでは必ずしも物価上昇が生み出されるものではないという御説明だったというふうに理解をいたしましたけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) それは、もちろん外的なショックの大きさとか持続性次第ということだと思います。非常に大きなマイナスのショックが長い期間続くということになりますと、その期間はかなり金融政策面で頑張っても直ちにはプラス、物価の上昇につながらないということもしばしばあるかなとは思っております。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 ここからは日本の財政及び財政政策についてお伺いしたいと思います。したがって、日銀総裁候補というよりも経済学者のお立場で是非御見解をお伺いできればというふうに思います。  まず、通告はしていないんですけれども、日本の財政の状況について、時には危機的な状況にあるといったようなことも言われたり、日本の財政には極めて問題があるんだというようなことも言われますけれども、日本の財政の現状について経済学者としてどのように見ておられるか、御見解をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) ここは、経済学者としての見解と申しますよりは、私、日銀総裁候補として今日ここに立っておりますので、財政政策は政府と国会がお決めになる権限と責任を持っていらっしゃるということですので、具体的な評価は差し控えさせていただければなと思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 そういうふうに断定されてしまいますとその後の質問がしづらくなるんですけれども、こちらもちょっと都合がありますので、是非、経済学者としての御見解をお伺いしたいと思います。  二〇二一年の十―十二月期以降、GDPギャップはマイナス二%程度で推移をいたしております。総需要が総供給に追い付いてきていない状況にあるわけであります。  こうした中においては、普通、一般論でいえば、また経済学的に見れば、財政支出をしていくということが必要なんだろうというふうに私は思うんですけれども、経済学者としていかにお考えか、お答えをいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私の知る限り、GDPギャップにつきましては、日本では内閣府と日本銀行の推計が出ていると思います。それぞれ推計方法が違いますので、異なった結果が出ていて、GDPギャップの推計という場合は幅を持って見る必要があるかなと思います。  ここまでは申し上げられますが、私の方も都合がございまして、やはり総裁候補という立場では財政政策の具体的なことについて評価することは差し控えさせていただければなと思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 まあお答えいただける範囲で結構ですので、これは私の考えも是非聞いていただくという意味で御質問を続けたいと思いますけれども。  やはりマイナスのGDPギャップがある中で増税をするということは、やはり経済成長に逆行するというものだと考えるんですね。したがって、それは当然避けるべきものであろうというふうに考えます。それについての御見解もお伺いしたいなというふうに思います。今と同様の質問になるかと思いますけれども、御見解をお伺いします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 増税含めまして、財政政策は政府と国会がお決めになるというふうに思っておりますので、具体的な評価は差し控えさせていただければなと思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 財政関係についてはこれで最後にいたしますので、よろしくお願い申し上げます。  最後に、財政関係で、財政健全化目標についてお伺いしたいんですね。  プライマリーバランスを黒字化目標を掲げることにつきましては、機動的な財政支出を妨げることとなり、不適切ではないかというふうに私は考えます。例えば、政府の利払い費をGDP比二%以内にするであるとか、又は政府の利払い費と利息収入を比較するといったような指標を設定すべきではないかというふうに考えるんですけれども、これもなかなかお答え難しいのかも分かりませんけれども、精いっぱい御見解を表明いただければ有り難いと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 財政政策は政府と国会が決める権限と責任をお持ちですので、具体的な評価は差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、その上で申し上げますと、共同声明にも含まれておりますように、政府サイドで中長期の財政運営に対する市場の信認が得られるような財政構造を確立するよう努力するというふうに記述がありますが、この点は重要であるというふうに考えてございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 ちょっと金融政策にも少し戻る質問になろうかと思いますけれども、お伺いしたいと思うんですね。  日銀が保有する国債の水準ですね、政府が出している国債のうち五割を超える国債を日銀が保有するに至ったということで、それは異常だというふうな言い方も時にされたりすると思うんですけれども、保有する比率が適正な水準であるとかないとかいう何らかの基準が、基準というか水準、指標があるんでしょうか。御見解をお伺いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) それは特にないと思います。日銀、日本銀行は、その物価目標、持続的、安定的に二%目標を達成するということのために量的・質的緩和政策の一環として国債を購入してきたものだというふうに思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 少し御質問させていただきまして、少し私のまた意見表明みたいなことになるのかもしれませんけれども、候補は金融政策だけで必ずしもその物価目標二%を達成できるものではないというふうに説明されました。私は、やはり金融政策に加えて財政政策等も合わせ技でないとその目的は達成されない可能性が高いのではないかというふうに考えるところでございます。  そういう中において、この財政健全化目標が私は国民の皆さん方の無用の不安をあおってしまうということになってないのかという問題意識を持つところでございます。といいますのも、政府が健全化目標と、財政健全化目標というその目標の立て方をすると、現在、日本の財政には問題があるんだということを表明してしまっているに等しいことではないかなと私は理解をするんですね。  質問終わったつもりだったんですけれども、このように考える私の考え方について、経済学者としていかにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私の考えでは、日本だけでなく世界の多くの中央銀行において、金融政策を考えていく際には、財政政策は所与のものとしてどういう金融政策がいいかという観点から考えていくものだと思っております。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 冒頭申し上げましたように、安倍政権時に打ち出された金融政策、そして財政政策、そして成長戦略という流れで質問させてまいりました。  最後に、いわゆる成長戦略についてお伺いしたいと思います。  そもそも、経済を成長させる成長戦略というようなものがそもそもあり得るのかということについて、少し大ざっぱな質問になりますけれども、これまた経済学者のお立場で御見解をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 例えばということで申し上げれば、全く架空の例えばでございますけれども、経済成長を促進するということであれば、投資が増えることは望ましいわけでございますが、そのために投資を促進するような税制等の措置をとるということは一つの政策にはなり得るかと思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 これも非常にお答えが難しいとは思うんですけれども、お答えいただける範囲で経済学者としてお願いしたいと思うんですけれども。  現在、政府は、GX、グリーントランスフォーメーションについて、GXを加速させることはエネルギーの安定供給につながるとともに、我が国経済を再び成長軌道へと戻す起爆剤としての可能性も秘めていると、こういうふうにしているんですね。  経済学者として、このGXがどのような経路で成長を生み出すというふうに理解ができるのか、経済学的にですね、御見解を示していただければ有り難いと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、脱炭素社会の実現に向けた様々な活動が必要になるわけですが、特に設備投資あるいは研究開発投資が大規模に展開されるということになることがグリーントランスフォーメーションを加速させることになると思います。そうしますと、投資の増大につながりますので、新しい成長機会がもたらされるというふうに考えられると思います。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 私は、政府が成長を生み出す起爆剤としての可能性を秘めていると言うことは否定するものじゃないんですけれども、ただ、そのGX、脱炭素をしたからといって、新たな、何といいますか、付加価値が生み出されるとか商品が生み出されるというものでもないかなという気もいたしまして、本当にこのGXが成長を生み出すのかどうかということは注目を引き続きしてまいりたいなというふうに思っております。  そして、少し話題が変わりますけれども、政府は賃上げが今後の成長の鍵だというふうに説明をされておられます。このことについては私も全く基本的には賛同する立場でありまして、この春においても賃上げをしっかりと実現をしていくということが成長を生み出していく本当に大きな鍵ではなかろうかというふうにも思うところであります。  こういう賃上げが成長に結び付くんだということを、これまたお立場は違うかも分かりませんけれども、日銀のお立場でも、日銀のお立場を踏まえた上で国民の皆さん方に対して表明をしていくということが大事ではないかというふうにも考えるんですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員おっしゃいますように、現在の金融緩和は、経済をしっかり需要面から支えることによりまして企業が賃上げをできる環境を整えることが重要であるという考えに基づいているものと思います。  そういう考え方について、これまでも日本銀行は講演その他で情報を発信してきたものというふうに認識しておりますし、引き続き、より分かりやすい説明を努めていくということが重要であるというふうに考えてございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 賃上げに関して、これまた経済学者のお立場で御見解をお伺いしたいと思うんですけれども、賃上げを実現するためには様々なポイントが、重要なポイントがあろうかと思いますけれども、私は、改めて我々が重視しなければならないことは価格転嫁、公正取引ということではないかなというふうにこの頃強く感じるに至りました。  といいますのも、賃上げはせよ、ただコストは企業の内部で消化せよと言われると、これ、賃上げが続かないと思うんですね、毎年。したがって、やはり賃上げをした、コストが上がった、その部分は価格転嫁をして、それを社会的に理解し合おうと、こういうことが極めて大事である。逆に言えば、そういう理解が今日まで、ここ数十年、もしかすれば日本社会はできてこなかったんではなかろうかというふうにも考えるところでございます。  経済学者としてどうお考えか、御見解をお伺いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) まず、一般論として、金融緩和等で総需要を支え、企業収益を支えることが最終的に賃上げにもつながるということは言えるかと思います。  それから、企業同士の取引関係のところでございますと、例えば民間の試みとして、パートナーシップ構築宣言等に見られますように、大企業の収益増が幅広く経済に行き渡るというための努力もなされつつあるというふうに考えてございます。

浜野喜史国民民主党・新緑風会

○浜野喜史君 ありがとうございました。終わります。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  これまでの質疑も踏まえて、異次元の金融緩和政策の反省と転換について植田候補の姿勢をお聞かせいただきたいと思います。  異次元の金融緩和は、アベノミクスの第一の矢として続けられてきました。十年前、復活した安倍政権が、デフレこそ日本経済最大の問題、デフレの原因は金融政策、大胆な金融緩和をやれば克服できると唱えて量的・質的金融緩和が開始された当時から、我が党は、世界で異常な日本経済の長期停滞の原因は賃金引下げと物価下落の悪循環と指摘をし、政府が進める低賃金で不安定な非正規雇用の拡大をやめよと主張してまいりました。二〇一三年の共同声明の発表直後にも、金融政策頼みのインフレターゲットではなく、大企業の内部留保の活用など、賃上げ目標、賃上げターゲットこそと、暮らし、経済の立て直しを提案をいたしております。  実際、二年で二%の物価上昇という目標は十年たっても達成できませんでした。そして、今や政府も、企業にお願いすると言うばかりなんですが、それでも賃上げが経済再生の鍵と言うようになりました。  デフレの原因は金融政策という診断も異次元の金融緩和という処方箋も間違っていたから効果が上がらず失敗したのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) デフレそのもの、賃金と物価両方ですね、これの原因としましては、先ほど来御説明しておりますように、ちょっと古く、九〇年代くらいから振り返ってみますと、様々な外的ショックがあったこと、それでデフレ経済に陥ったことが人々の行動をデフレに合ったものにしてしまいまして、それが物価を上がりにくくしているということにつながってしまったこと等かなと思います。  その上で、様々な金融緩和政策を取ってきたわけですが、それは、二〇一三年以降、特にデフレを食い止める、デフレでない状態をつくり出すということには効果があったと思いますが、今申し上げたような金融政策外の要因もあったために、完全に二%の目標に達するというところには至っていないというふうに考えてございます。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 現に実質賃金は上がらなかったわけです。幾ら雇用者総所得が増えたといっても、それで一つ一つの家計が良くなるということとは違うわけで、実質賃金が上がり、国民生活が向上する中で実体経済を良くしていくということが私は必要だと思うんですね。  そこで、もう少し聞きたいと思うんですけれども、黒田総裁は、アベノミクスの当初、二〇一四年の三月に日本商工会議所の講演の中でこう言われています。賃金が上昇せず、物価だけが上昇するということは普通には起こらない、商品やサービスの価格上昇により企業の売上げが伸び、収益が増加すれば、それに見合って労働者に支払われる賃金は増加すると当然のように強調していたんですけれども、全くそうはならなかったわけです。  物価上昇と賃上げの関係について、植田候補は衆議院の審議の中で、物価の方で二%が達成された暁に賃金の名目上昇率がどれくらいかということを前もって確信を持って申し上げるのは極めて難しい、その時々の経済情勢によってかなりの幅を持って変動し得るとお述べになられたと思うんですね。となると、大規模金融緩和を続けても、十分な賃上げ、あるいは十分な賃上げを伴う持続的、安定的な物価上昇というのは、これ、おぼつかないということになりませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 後段の、御質問の後段の、持続的な二%の物価上昇が達成された暁にどういう賃金の動きになるかという点でございますが、それは持続的な賃金の上昇になるというふうに考えてございますが、それが何%になるかということは、そのときの生産性の上昇率とか、それから、労働者の構成がいろいろ過去も変化しておりますので、それによって平均賃金が変化するという効果もありまして、前もって言うのはなかなか難しいという意味でございます。  御質問の前段の、特に足下の状況を御指摘されているんだと思いますけれども、物価が上がってもなかなか賃金の上昇に結び付いていないという面があるということだと思いますが、ごく足下では賃金の上昇が少し追い付きつつありますが、これまでの物価上昇が、特に昨年来ですが、コストプッシュ的なものであったためになかなか賃金にしばらく波及しにくかったという面はあるかなと思っております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 学者らしい御説明なのかなとも承るんですけどね、今、賃上げは、これ、あれこれの一つではなくて、物価を上回る、物価を十分に上回る賃上げ、これが経済立て直しの決定的な鍵だと思うんですね。黒田総裁は昨年の秋に、アベノミクスが始まった段階でというのを念頭に、もう少し賃金のことをはっきり言うべきではなかったかというのはそのとおりだと、参議院の財政金融委員会で答弁をされました。  もうこれまでも議論ありましたけれども、二度にわたる消費税の増税、社会保障の負担増、こうしたアベノミクスで家計は痛め付けられてきたわけです。そこに今、食料品やエネルギーなどの物価高騰が暮らしと営業を直撃しているわけです。  家計こそがGDPの六割を占める経済の土台なわけですから、だからこそ、今春闘で連合は五%、全労連は一〇%の賃上げを要求しています。そうした賃上げが必要だと政府や経済界に向かって言うべきではありませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 持続的な二%のインフレが達成される、あるいは、今ちょっと二%には届いていないけれども、基調的なインフレ率、これが着実に上がっていくためには、賃金がもう少しきちんと上がるということが必要であるという認識は私も持っておりますし、日本銀行もいろいろなところで表明しているというふうに思っております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 どうもはっきりしないんですけれども、先ほど生産性の向上というお話もありましたけれども、今のこの緊急の日本経済の立て直しのことを考えたらなおのこと、私どもは、大企業に積み上げられてきた今や五百兆円に上るこの内部留保に適切な課税を含めた対策を打って、これが実体経済、とりわけ賃金に還元されるというそうした中で抜本賃上げをしっかり果たしていくということが必要だというふうに思います。  実質的賃金が上がらない一方で、物価がどうなったのかということについて続けてお尋ねしたいと思うんですが。  消費者物価指数を、生活必需品、食料や家賃、水光熱費や衣服、交通費や保健医療費などの生活必需品とぜいたく品に分類して動向を比較した調査がこの間行われています。それ見ると、二〇一四年度以降、つまり大規模金融緩和が始まった時期以降、ぜいたく品は横ばいで推移する一方で、生活必需品は明らかに上昇している。その上昇も、結構急といいますか、上がっているというトレンドだと思うんですよね。  物価の二極化という表現もあるかと思うんですが、そこに加えて、さらに、日本の物価高騰があります。これはウクライナ危機、気候危機などを背景にした世界的インフレに、円安、つまり一年前の一ドル百十五円台がさきの十月、百五十円を突破したといった異常円安が重なって引き起こされました。  生活必需品は低所得の家計ほど比重が高いですから、だから、これによって低所得層の負担増、実質購買力というのは、これ低下するわけですよね。大規模金融緩和によって、大規模金融緩和による円安によって生活、そして営業の困窮が引き起こされているという点について候補はどうお考えですか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) おっしゃるように、必需品を大きなウエートとして含みます消費者物価指数総合は高い率で伸びております。これに対して、何度も申し上げておりますが、基調的なインフレ率は低い、低いと言ってもまあプラスであると思いますが、二%にはまだ間があるという中で、日本銀行の金融政策は後者の方に力点を置いて金融緩和を現在続けているというスタンスになっているかと思います。  ここは、金曜日もちょっと申し上げましたが、私は、国民の皆さんには生活実感との乖離、金融政策がですね、の背景についてもう少し丁寧な説明を今後詳しくしていく必要があるというふうに思っております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 候補のおっしゃる丁寧な説明というのを、総裁候補ですから慎重にお話しになられているのかもしれないんですが、今お話の中にあった候補の御認識、衆議院の議事録で拝見しますと、基調的なインフレ率について少し良い動きが出てき始めている、この芽を大事にして育てていきたいといった御答弁もされたかと思いますが、この近々でいうと、米国の金融引締めという動きだったり、あるいは日米金利差が再び拡大するのではないかというような懸念だったりということの中で、円が百三十六円などの円安に振れていると。  これが再び異常円安ということになれば、そうした見通しというのは吹き飛ばされてしまうんじゃないか。生活は本当に大変だし、二%目標も一層遠のくのではないかと私なんかは心配もするんですけど、候補はいかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 非常に直近の足下では委員おっしゃるような動きが少し見られておりますけれども、少し中長期的に展望します、中長期的と申しますか、数か月、半年、一年というところで展望しますと、これは金曜日、今朝、先ほども申し上げましたように、必需品を含む消費者物価指数総合のインフレ率は現在の四%からかなりはっきりと低下し、年度、来年度半ばくらいですか、二%を下回るというところまで低下していくというふうに考えてございます。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 日銀が今お持ちの見通しを候補としてもお述べになっているということで、果たして本当にそうなのかということが大問題だと思います。  次に、ちょっと話題変えたいと思いますけれども、異次元の金融緩和は、私はデフレ克服の金融政策としては失敗だったと思います。デフレ克服としては失敗でも、円安株高を誘導するという政策としては言わば大成功を収めたんですよね。安倍元首相は、政権奪還をする二〇一二年の総選挙で金融緩和による円安を公約に掲げました。二〇一三年の九月に、ニューヨーク証券取引所での講演はみんなの記憶に新しいところですよね。バイ・マイ・アベノミクスと訴えて、日本株への投資を海外勢にアピールしたわけです。  実際、円安について見ると、二〇一二年の一ドルおよそ八十円くらいという為替レートが、二〇一五年には百二十円くらいまで円安が進行しました。株価は二・六倍に上昇しました。これで利益を上げたのは大企業です。  異次元の金融緩和の本当の狙いというのは、こうした円安株高誘導で大企業をもうけさせることだったのではありませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 円安株高の経済に及ぼす影響は極めて多様な側面があるかと思います。  例えば、円安に限りましても、おっしゃるように、グローバル企業の収益にプラスに作用するという面がありますし、さらに、インバウンド需要が増加すれば、これは地方の中小サービス業にもメリットをもたらすという面があるかと思います。もちろん、マイナス面としては、輸入財を使っている企業あるいはそれを間接的に消費する家計の実質所得を下げるというようなマイナス面があるかと思います。  いずれにせよ、多様な影響がございますので、どれか一つが政策のターゲットであるというようなことではないかなと思っております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 富裕層はどうかと。年収二百万円以下のワーキングプアが増える一方で、富裕層の資産は二倍、三倍に膨らみました。  野村総研のデータで、金融資産五億円を超える超富裕層の資産総額は二〇〇五年の四十六兆円から二〇一九年には九十七兆円へと、十五年間、十五年で二倍以上、一世帯当たり二億円以上に膨らみました。  日銀政策審議委員のお一人、高田創さんの論文で、超金利環境は、超低金利環境は、純金融資産価格の上昇を通じて世の中の格差を一層広げるという趣旨の記述がございます。日銀の異次元の金融緩和が、結果、格差を拡大したと私は思うんですが、候補の御認識はいかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 確かに、株式からの、株式保有からの収益、これに対して、預金の利子率が低金利政策の下では制限される、株の方は場合によっては上がるということで、そこは所得格差の拡大につながる面があるかと思いますが、他方で、金融緩和は住宅ローン金利を低下させてきたという面を通じて幅広く家計の所得あるいは実質所得を支えてきたと思いますし、さらに、金融緩和が経済活動をバックアップしてきたということが雇用等を通じて国民各層に幅広いプラスの影響を持ってきたというふうにも考えてございます。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 そう候補は御説明されるんですけれども、実際には賃金は上がらず、格差は極端に拡大していると思います。結局、この十年、異次元の金融緩和がもたらしたのは円安と株高だけなのではないかと。その真摯な反省の上に立って、異次元緩和の総括と金融政策の正常化に私は臨んでいくべきだと思うんですね。  これからどうするのかということについてお尋ねしたいと思います。物価二%目標を一体いつまで続けるのかと。  先ほど、日米金利差が万が一拡大していくということになれば、先ほど来の少し芽が出てきたという見通しも崩れてしまうんじゃないかということも申し上げましたけれども、そうした中で、候補は衆議院の御答弁の中で、金融政策の効果が及ぶのに標準的な時間は二年ということを前提にされながら、されつつですね、日本経済が過去十年、二十年置かれた状況では標準型が当てはまらないと、何年後に目標が達成できるか、なかなか現状では確信を持って答えることができないという残念な状態にあるとお話しされました。  この御認識そのものは私もそのとおりだなと思う部分もあるんですけども、端的に聞きますと、これでは永久にやめられないと、永久に金融緩和をし続けなければならないということになりませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) それは衆議院での質疑でも申し上げましたが、現在の金融緩和を続けていった場合にもなかなか基調的なインフレ率が時間を掛けても上がってこないという場合には、副作用等も考えまして、より持続性の高い金融政策の仕組み、緩和の仕組みを考えていかないといけないというふうには考えております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 二%目標に縛られ続けると、日銀自身が身動きできないという状態になって、まあ既にその状態に陥っていると思いますが、いつまでも正常化に踏み出せないということになりかねないと思うんですね。  この国債の問題に関して、十年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うという方針がありますね、今、日銀が取っていますね。これを維持したまま、物価二%を達成するまで国債を買い続けるということになるんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 当面、イールドカーブコントロール政策の下で、短期と長期の金利を現在の水準に誘導しつつ必要に応じて国債を買うという政策を続けるということだと思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 上限を設けずというのが今の方針ですよね。これを続けるというのは、これは本当にとんでもないんじゃないのかと。日銀が今保有する国債、これは国債発行の半分以上ということにとうとうなったわけで、政府は借金を平気で増やす、それを日銀が支えるという事実上の財政ファイナンスになっていると思います。  このまま進めば、最後には国の財政や国債の信用が失われ、国債価格の急落、それに伴う金利の急上昇、そして物価上昇が止まらない悪性インフレを招いて経済を破綻させてしまうという、まるで戦前の歴史を繰り返すことにはなりませんか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現在の緩和のスタンスは、繰り返し申し上げていますように、二%のインフレ目標を達成するためにということですので、悪性のインフレになるというようなところまで金融緩和を続けるということでは全くないかと思います。  それから、あえて申し上げますと、最近、国債の購入が日本銀行によって増えている面があるわけですが、これは、市場におけるインフレ期待が多少なりとも高まってきているという中でそういう状況が起こっているという面もあるかと思います。それは、申し上げてきました基調的なインフレ率が上がっていくという点について良い芽が出つつあるという動きとも対応しておるかなというふうに思っております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 そうですかね。  植田候補は、二〇一三年の十二月、日経新聞の「経済教室」で、中央銀行は一般に考えられているよりずっと弱い存在であるとお書きになっていますよね。政治からの強い財政ファイナンス、赤字の穴埋め圧力にはっきり抵抗できたケースはまれと指摘をしておられます。その後十年、コロナ禍を経て世界的に財政悪化が進み、中でも日本は突出しています。  安倍元首相は、昨年五月に、日銀は政府の子会社、政府は一千兆円の、政府の一千兆円の借金の半分は日銀に買ってもらっているという発言をして国民を驚かせました。安倍政権以来、日銀は独立性をないがしろにされてきたのではないのか。  さらに、岸田政権がGDP二%ありき、今後五年間で四十三兆円と際限ない大軍拡に踏み出す中で、国債発行拡大による資金調達、あるいは建設国債の対象に艦船も含めるなどの動きが現にあるわけですね。  これ、ますます政権からの圧力というのは強まるんだと思うんですが、総裁におなりになったら、独立性の堅持についてどう対峙をしていかれますか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 繰り返し申し上げておりますが、金融緩和、あるいはその下で行われています国債の購入でございますが、これは目標インフレ率の達成のためということでございますので、その見通しが立ってくるという状況になれば、例えば国債の購入はだんだん縮小させていくということになるというふうに考えております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 時間が迫ってきましたので、金融政策の正常化に向けての課題について少し伺いたいと思うんですが、私、最大の課題は、投機筋の動きをどう牽制するのかというところにあると思います。  我が党は、日銀が国債やETFを大量に買い出したら後に売るに売れなくなるでしょうと、日銀が売り始めたら国債価格が急落するという、そうしたリスクが大きい、引き返せなくなると、無謀な政策はやめるべきだとこの十年間警鐘を鳴らし続けてまいりました。  日銀の国債買取りも限界に近づきつつある中で、海外の投機筋などからは、異次元の金融緩和の軌道修正のときがもうけのチャンスだと虎視眈々と狙うという、そうした動きがこれ見え見えなんですよね。マスコミでも、そうした長期金利の動きをめぐって日銀・バーサス・ヘッジファンドの攻防などと、こう報じられていますけれども、投機手法の一つが空売りだと思います。日銀は、これに対して国債を爆買いするという形で対応して金利高騰を抑えようとしてきたんですけれど、これがずっと続くのかと、いつまででもそういうやり方できるのかというと、持続可能なやり方ではないと思うんですね。  これからも長期金利の動向をめぐってリスクの高い状況が続いていく中で、私たちは、我が党は、金融市場を不安定化する投機マネーに対する規制、特に国債市場におけるヘッジファンドなど投機筋に対する規制を繰り返し求めてまいりました。  金融規制は直接には金融庁の所管だということは承知をしておりますが、候補はこの分野においても造詣の深い方だと思います。長期金利は金融市場の要です。金融システム危機のリスクもあるわけで、日銀としても国債市場における投機筋の規制について関与していくべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員おっしゃいましたように、金融取引、投機筋を含めました、そこに対する規制の点につきましては日本銀行の管轄ではないというふうに考えてございます。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 日銀には、物価の安定、国民経済の健全な発展とともに、信用秩序の維持という使命がございます。しっかり取り組まなければなりません。  ここまで異常に国債保有を拡大した政府と日銀の責任が厳しく問われるべきであるとともに、これからの対応、正常化に踏み出すに当たっては、機関投資家など国内の市場関係者との様々な対話と協力が必要不可欠ですし、正常化のプロセスで万一金利が急上昇して、例えば個人の住宅ローンや中小企業の借入金に影響を及ぼすような場合には、政府が特別の措置をとって、国民負担が生じないようにすべきだと思います。重要なことは国民の暮らしを最優先に考えることだということを申し述べて、質問を終わります。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 十年七か月ぶりの委員会質問になります。ただ、官房副長官、経産大臣としてアベノミクスの一端に関わってきた者として、どうしても確認をしておきたいことがあるということで、今日はあえて立たせていただきました。  学者御出身の初めての総裁候補ということになります。私の極めて親しい友人が過去一緒に仕事をさせていただいたことがあって、彼が、実務から導き出した理論がいわゆる経済学の教科書と違っていたときに真剣に議論に応じていただいたと、尊敬すべき方だということを申しておりました。私も過去の植田候補の寄稿、発言、読ませていただきました。非常に緻密な分析で大変勉強になりました。  しかし一方で、ああいう論点もあるけどこういう論点もあるというまとめ方が多くて、明確な結論を出されないのがまあ特徴というか、御性格なのかなというふうに思った次第であります。学者としてはそれでいいかもしれませんけれども、日銀トップとしては判断して結論を出していただかなければいけません。  今回の同意人事は、これは法案審議とは違いまして、我々は、今日初めて答弁を聞かせていただいて、それを党に持ち帰って今後審査をさせていただくわけであります。審査上重要な材料になりますので、今日は是非、あれもある、これもあるではなくて、日銀トップになったらどう判断するのかという観点でお答えいただきたいと思います。  今回は衆議院での質疑が先行しました。これ、とても良かったと思います。中二日ありましたので、衆の速記録をしっかり見て、まさに再考の府参議院として衆議院の答弁を踏まえて確認ができる、こういう日程にしていただいた石井委員長を始め理事の皆さんにも感謝申し上げたいというふうに思います。  今日は、衆議院の議論で落ちていた点、曖昧だった点を確認する質疑を行わせていただきたいと思います。  まず、非常に重要でシンプルな論点でありながら衆議院で聞かれなかったことを一問聞かせていただきたいと思います。アベノミクスをどう評価されていますでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは衆議院でもある程度回答させていただきましたが、二〇一三年の日本銀行と政府の共同声明に沿って、日本銀行及び政府が必要な施策を実行してきたと。その結果としまして、一つはデフレでない状態をつくり出したと。内容としては、企業収益が拡大する、ベースアップも実現するというような着実な経済の向上が得られたということであります。  二番目に、政府サイドでいろいろ尽力いただいた結果として、例えば働き方改革等を通じまして、人口が減少する中でも雇用の拡大、特に女性、高齢者等を中心にでありますが、雇用の拡大が見られるというような成果もありまして、着実な成果が上がっているというふうに考えてございます。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 このアベノミクス、成果はありますけど、まだ道半ばだと思いますが、このアベノミクスを継承していかれるんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現状、これも申し上げておりますとおり、基調的なインフレ、日本銀行としてでございますが、としては、基調的なインフレ率がまだ二には少し間があるというふうに考えてございますので、現在の緩和路線を継続するということが適切であるというふうに考えております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 アベノミクスとして継承されるのか、その一端を引き続き担っていかれる決意があるのかどうかを伺っているわけであります。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 共同声明に入っているような日本銀行が目標とするインフレ率が二%、持続的、安定的な二%を達成するということ、これを続けるという意味で踏襲するということでございます。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 では次に、この二%の物価安定目標についてお伺いしたいと思います。  私も衆のやり取りの中で非常に気になったのが、なぜ物価目標、安定目標が二%なのかという質問に対して、植田候補は、これが世界標準であり、金融政策の余地、のり代を広げるためとお答えになりました。今日の質疑では、更にちょっと物価安定という言葉も追加をされました。  これは私は、間違いではないですけれども、不十分なんではないかというふうに思っています。これでは金融政策のための金融政策と捉えられかねないんじゃないかというふうに思っています。やっぱり私、ここで、答弁で落ちているのは私は雇用という言葉、雇用という観点ではないかと思っています。  日銀法は、第二条で「国民経済の健全な発展に資する」と明記してあります。これ、経済じゃなくて国民経済と書いてあるんですね。まさに私は、民のかまどであり、雇用のことをこれは指しているというふうに考えています。また、世界標準とおっしゃいましたが、世界標準ということなら、アメリカのFRBは物価安定に加えて最大雇用の達成を目標として明記をしているところであります。また、経済学の観点からは、フィリップス曲線、これがまさに実証的に日本では二%程度の物価安定が完全雇用水準を実現するという経験則を示しているわけであります。  まさに、しっかりと雇用を生み出して国民経済の健全な発展に資することこそが私は二%目標の第一の意義ではないかと考えていますが、お考えをお聞かせください。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは先ほどの質疑にもございましたが、二%のインフレ目標が持続的、安定的に達成されるという状態では広い意味の完全雇用も達成されている。そうでないと、労働市場にギャップが発生しておりますので、それが賃金の下落圧力、物価の下落圧力となって広がってきまして、二%の状態が安定的に維持できないというふうに考えてございます。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 黒田総裁は、かつての記者会見で企業、雇用を守るための追加緩和について問われたときに、明確に、二%の物価安定目標を定めた上で、企業収益あるいは雇用、賃金の増加とともに物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環をつくり出して、経済の持続的な成長を実現していくことが重要と答えられました。そしてさらに、必要に応じて追加的な緩和措置も十分検討し得ると、極めて明確な、明快な立場を明らかにされているわけですが、こういう黒田総裁の姿勢を継承されるおつもりはありますでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) もちろん、繰り返し申し上げていますが、安定的、持続的な二%インフレの達成のためには、あるいはそういう状態にたどり着けば、物価だけでなくて賃金、雇用が安定的、持続的に上昇するという状態になる、それを目指して金融緩和もその途中の過程では続けるということだと思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 じゃ、更にお伺いしますけれども、この物価安定目標、まあ世界標準とおっしゃいましたが、世界標準二%ということでいいんでしょうか、それとも国によって変わってくるんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、厳密に議論しますと、恐らく国によって少しずつ違うという結論が出るかと思います。  ただ、厳密に物すごい緻密な計算をしても、恐らく、二・一がいいのか一・九がいいのか二・三がいいのか、その辺なかなか決めようがないという中で、さらに国によっても微妙に違うとは思いますが、結局今は二%くらいに落ち着く国が多いということかなと思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 今のお答えではほぼ二%近傍ということでありますが、そういう中で、例えば日本の物価安定目標が諸外国に比べて低いと、もう明らかに低いということになった場合、どういうことが起こるんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは短期と長期で違うかなと思います。  物価安定目標が実現されているケースを仮に考えたとします、まあ長期と呼んだとしまして。例えば、日本が一%のインフレ目標でそれは実現されている、外国が三%で実現されているということであれば二%の差になるわけですけれども、それは中長期的な為替レートの変化率に反映されていくということだと思います。購買力平価が実現するように為替レートが動くということかなと思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 ということは、為替が動くということは、これ円高に振れるということでよろしいんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 日本の物価が一%でしか上がらない、外国の物価が三%で上がるということですので、これは円高になるということだと思います、長期的には。両者の物価が同じ状態で動いていかないといけないということですので。  ただし、短期的に物価目標が二のところから急に一に下げたとします。そうすると、すぐには一に行かないわけですけれども、行く過程で二%のインフレ率を一%に下げようとしますので、これは金融引締めをすることになります。その移行プロセスでは円高が発生するということだと思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 一部メディアや日銀OBの方からは、完全雇用がもう日本は、まあ十二月で二・五%ですね、失業率、まあほぼ実現できているんだから、もうそこに近いところへ来ているんだから、二%目標にこだわらないで一%でもいいと。これ短期のことだと思いますけれども、この考えについてはどういうふうにお考えでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 様々な考え、例えば労働市場の需要と供給のギャップだけでなくて財市場、例えば資本設備が適切に利用されているかどうかという意味での稼働率、そういうものも含めますとまだ若干のGDPギャップがあるという考え方もあるかと思いますし、長期的に、先ほど来議論があったような理由で二%のインフレ目標が適切であるというふうに思っておりますので、緩和は続けるべきであるというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 じゃ、もう一つ伺いますが、黒田総裁が掲げておられるいわゆるオーバーシュートコミットメント、二%よりも一旦高めに行かせてそこから軟着陸するのがいいという考え方についてはどういうふうにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、量的・質的緩和が導入された当初から、それのアナウンスメント効果といいますか、期待に働きかける効果、これを強力なものにするために金融緩和をかなり強いところまで続けるというアナウンスメント効果を出すために採用されたものだと思います。  当面続けるべきだと思いますが、それの副作用、つまり、結果的にインフレ率がインフレ目標を大幅に上回ってしまうリスクがないかどうかは常に注意して政策を運営していくべきかなというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 一方で、最先端の経済学では、もう逆に二%を超えるCPIを一定期間続けた方が雇用や物価の安定に資するんだという、いわゆる高圧経済論というんですかね、これについては総裁候補、どうお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、恐らく長い間二%を下回っている、まあ日本が典型でありますが、アメリカも厳密な意味ではそういう状態にかなりの期間あった。そういうときに、インフレ期待等が下の方に低下したままなかなか上がってこない、そういう状態を解消するために、先ほどのお答えとちょっと重なりますが、一旦は二%を超えても金融緩和を続けるという手法が適切という判断で主張された説かなというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 物価目標二%については、衆議院の議事録を見る限り、直ちにとか当面変えない。まあこれどうしても共同声明とセットで聞かれているからそう言わざるを得ないのかもしれませんけれども、今までのお話を伺っていても、二%目標というのは、これある意味世界共通の目標であって、経済構造が大幅に変わるとか、あるいはフィリップス曲線を何か変えるような理論が出てくるというようなことでもない限りは恒久的に維持されるべきで、物価二%目標について当面とか直ちにはという言葉は余り付けるべきではないと思っていますが、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現在、私が二%インフレ目標をどこかで大幅に変更するということを具体的に何か考えているということでは全くございません。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 だから、今のところではなくて、二%というのはもう世界共通で、これはある意味恒久的に維持すべき物価目標、安定目標二%。オーバーしたら今度は下げなきゃいけないし、足りないときは上げてなきゃいけない。恒久的目標にすべきだというふうに私は考えますが、いかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私の任期がもし任命されたとしても五年ですので、恒久的なというところについてコミットさせていただくのはちょっと無理かなと思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 じゃ、任期五年の間はいかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これも現状では、それを変更するというようなことが何か起こるということを見込めないですけれども、何が起こるか分かりませんので、今日はここでコミットすると言うことは控えさせていただければなと思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 コミットいただけなくて残念だと思いますけれども、じゃ、続いてイールドカーブコントロールについて伺いたいと思います。  これについては、植田候補、珍しく過去の発言、副作用があるなど批判的な発言が目立ちますし、見直しの方向性に踏み込んだ過去の発言も幾つか見られるわけであります。  既にマーケットの方は、植田先生が候補に選ばれたというニュースを受けて、イールドカーブコントロール修正するんじゃないかということで十年物の金利が〇・五に張り付いて、一時は超えてきている。これ、投機筋に足下を見られているんじゃないかというふうに懸念をしています。  また、衆議院の答弁ではイールドカーブコントロールの見直しの可能性を否定はされなかった。今日の質疑でもされなかったというふうに思っています。  イールドカーブコントロールの見直しをほのめかすことは、金利上昇に対する容認姿勢ということになって、金利上昇圧力を更に高めることにつながるんではないでしょうか。この二%物価目標が達成まだ見通せる状況にはない、ここは候補自身も認められているわけですが、今求められているのは私は金融緩和の揺るぎない姿勢ではないかというふうに思っています。二%目標達成まではイールドカーブコントロールを堅持するという明確なメッセージを出すことで政策の不透明性に対する市場の懸念を払拭すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 十二月来、昨年十二月来の日本銀行のイールドカーブコントロールに関する措置は、出口へ向けての措置ではなくて、その持続可能性を高めるというための措置であるというふうに考えております。  先ほど申し上げましたとおり、その効果を現在見守っているところでございますが、一方で、ただ、市場機能の低下というその措置の、市場機能の低下を防ぐという措置の効果がどれくらいあるかということは見極めていかないといけないというふうには思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 その市場機能に関する効果が、じゃ、余り出なかったら、イールドカーブコントロールを見直すということですか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) その場合にどういう措置が可能かとか、どういうタイミングでそうなるか、いろいろな可能性があると思いますが、それについて具体的なことを今日申し上げるのは差し控えさせていただければなというふうに思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 まあいろいろその副作用ありということもおっしゃっているんですが、そう言うのであれば、どういう副作用に対してどういう修正を行うか、私は具体的説明が重要だと思います。それがないんだったら、市場に不安を与えないためにも、現行政策を堅持するということを言って市場を安定させるべきだと思いますが、いかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現行、昨年十二月以降の様々な措置の効果を見守っているところでありますし、もし私が四月に就任した場合にも、その措置の効果を見守る、あるいは直接オペレーションに当たっているデスクの感触を聞いたり、ほかの審議委員の意見を聞いたり、そういうふうにしてじっくり効果を見守るということを続けていきたいと思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 なかなか、イールドカーブコントロールについてもちょっと、堅持と言っていただけないで残念だというふうに思います。  続いて、共同声明の見直しについてお話をしたいと思います。  最近、令和臨調という組織の緊急提言がやたらメディア等で取り上げられて、何だか、臨調という名前ですから、政府関係、公的機関で公正な提言みたいに取り上げられているケースが多いんですが、これは、臨調と名前は付いていますが、この令和臨調というのは民間の有識者、経営者の集まりであります。もちろん大変立派な、私もよく知っている方が多数名前を連ねていらっしゃるわけであります。  その中の会員何人か知っているんで、私、確認しましたけれども、このいわゆる経済、財政に関する緊急提言については、紙が回ってきただけで別に議論とか質問とかする時間はなかったと、これで出しますからということであったということであります。  この提言、緊急提言書いた方は二名と言われています。お一人は、元メガバンクのトップであります。もう一人は、現在メガバンク系のシンクタンクのトップであります。まあ要するに、金融関係者の方だということであります。お二人とも私よく知っていますが、強硬な引締め派であり続けたし、アベノミクス、黒田緩和に関しても批判姿勢をずっと取ってきた方でありますから、この提言はある程度バイアスが掛かっていると思って見なければいけないと思っています。  この提言の中で、政府と日銀の共同声明を見直して、二%目標を長期的な目標にしろ、金利機能の回復と国債市場の正常化を図れと提言をされて、要すれば、これは金融を引き締めろという提言であります。特に二%を長期目標というのは、いつやるか分かんない、いつ達成するか分かんない、はっきり言って、もうやる気がないというメッセージをマーケットに出してしまうんではないかというふうに思っていますが、この提言について、総裁、どうお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 二%目標達成の期限について、現行は、共同声明の中ではできるだけ早くという形容詞になっているわけですが、その今御指摘のありました臨調の方は長期的な目標ということで目標達成の時間軸のところが違うわけですが、私は、現状では、衆議院でも申し上げましたように、基調的なインフレ率の動きについて良い芽が出つつありますので、現行のできるだけ早くという目標の書きぶりを踏襲した上で金融緩和を続けていくのが適切と考えております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 ここは明確で安心をいたしました。  一方で、この共同声明の見直しですけれども、当面見直すつもりないということですが、変える可能性はありますか、あるいは日銀から申し出る可能性はあるんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 現状、私どもの方でそういう、私どもの方でというのも失礼、変でございますが、私個人としてそういうことを考えてはおりません。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 逆に、政府が共同声明を堅持しようということを言ってきたときは日銀としてはどうされますでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) もちろん、政府とはマクロ経済政策について意思疎通を図るというのが日銀法にも書かれているとおりでございますので、当然きちんとお話をさせていただいて、その上で、日本銀行の政策に関わるところにつきましては、政策委員会で議論して回答、回答といいますか、態度を決めていきたいというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 これ、もし見直しの議論になったときに、これ、引締め派からも緩和派からもいろんな注文付きますよ。私も、例えば財政健全なんて表現落としてくれって言いたいですよ。これ、パンドラの箱を開けちゃうことになって収拾付かなくなると思う。私は、今そういうリスクまで取って見直す必要はないと思っていますけども、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 共同声明の具体的な側面についてどういうふうに見直すべきか見直さないべきかということに関するコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、現状では現在の声明が適切であるというふうに考えております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 当面見直さないということが確認できたというふうに思っていますし、総裁候補のお考えもよく分かりました。  あと少し、総論を伺わせていただきたいと思います。  二〇一三年以前の日銀の金融政策、これについての反省点があるとしたらどういう点でしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、今振り返ってみますと二つの点は指摘できるかなと思います。  一つは、インフレ目標について、例えば二%という値をはっきり出して、それを基に政策を行っていくという姿勢が弱かった、あるいは時期によってはなかったということだと思います。  それからもう一つは、手段の面で、それまでは国債、量的緩和もやっていたわけですけれども、国債の購入に関しては短期の国債が中心であった、これが、二〇一三年以降は長期国債の購入にも乗り出した。それは、もちろんまたある種の副作用もあったわけでございますが、金融緩和手段としては有力な緩和の手段を二〇一三年以前は用いていなかった可能性があるということかなと思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 「経済教室」、日経新聞の寄稿を読ませていただきました。二〇〇〇年のゼロ金利解除、そして二〇〇六年の量的緩和の解除、これは失敗だというふうにお考えだというふうに見受けられたわけですけれども、いかがでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) どちらも十分な、まあインフレ率という言葉で表現しますと、持続的なインフレ率の上昇というところを確認しないうちにそういう措置に走ってしまったという面があるかと、あったかなというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 そういう失敗を繰り返さないためには何が必要だというふうにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 基調的なインフレ率の動向についてしっかりとした見通しを立て、それに基づいて、それが持続的、安定的な二%のインフレというところに到達するものであるということを見極める、ちゃんと見極めるということが極めて大切であるというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 大変難しくお答えいただきましたけども、やっぱり物価安定目標が重要だということなんではないでしょうか。この二〇〇〇年と二〇〇六年に物価安定目標二%というものが明確にあれば、解除なんてできなかったはずだと思いますけども、いかがでしょう。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) それは委員おっしゃるとおりかと思います。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 あと、二〇〇三年の植田候補の論文で中央銀行の自己資本が重要だというふうに主張をされているわけでありますけど、このお考えは今も同じなんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これはなかなか難しい話でございますが、両面ありまして、金曜日にもちょっとお話ししたところでございますが、何らかの要因によって自己資本がマイナスになるというケースも中央銀行にとっては時々ございます。しかし、それでも、その中央銀行の通貨に対する信認が保たれていれば、オペレーションや金融政策を続けていくことができます。という意味で、必ずしも自己資本が民間の銀行ほど重要でないという側面はございます。  他方で、自己資本がマイナスになる、しかもそれが非常に大きな規模であるということになりますと、様々な理由でそれが着目されて、金融政策に対する余計な介入あるいは批判がもたらされる、それが信認の低下につながるというリスクもゼロではないかなと思っております。  ですので、基本的には自己資本はそんなに気にする必要はないという立場ではございますが、一応備えはあるということは常に言っておくことは必要であるというふうに思っております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 この現在の金融緩和にとって日銀の財務がリスクになっているとお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、様々な引当金等の措置をとっておりますので、直ちにリスクがあるというふうには考えてございません。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 明確に御答弁ありがとうございます。  最後に一問だけ聞かせていただきます。  日銀の独立性について。これ、目的の独立性と手段の独立性がよく言われます。私は、手段の独立性であって、目的は独立していないと思っていますが、植田候補のお考えをお聞かせください。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、おっしゃるように、独立性に目的の次元と手段の次元と両面あるかと思います。  学者ですので、世界の学界の平均的な潮流という意味で、あるいは一部にある根強い意見という意味で申し上げれば、手段の独立性が重要であって、目標については政府から与えられるものであるという考え方がございます。ただし、現在の日銀の例えば共同声明に盛られている目標については、日本銀行の政策委員会でそれを決定し、それがあの共同声明に政府との合意の末盛り込まれたものというふうに理解しております。

世耕弘成自由民主党

○世耕弘成君 ありがとうございました。

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) この際、植田参考人から発言を求められておりますので、これを許します。植田参考人。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 先ほどの質疑の中で、世耕議員から、オーバーシュートコミットメント、質問がありまして、私の答えで、日本銀行がオーバーシュート、オーバーシュートコミットメント型の政策を導入したのは二〇一三年とお答えしましたが、正しくは二〇一六年九月であったということですので、訂正させていただければと思います。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。  本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  二〇一三年の四月に黒田総裁の下で日銀が量的・質的金融緩和を開始をしまして、間もなく十年となります。この十年間の経済情勢を振り返りますと、二〇一三年十二月以降、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況が実現をいたしました。一方で、大胆な金融緩和により国債を大量に買い入れたことで、日銀の国債等保有残高は、二〇一三年三月末の百二十五・四兆円から、二〇二三年一月末には五百八十三・五兆円まで増加をしまして、財政規律や市場の流動性に与える影響に対する指摘もあるところでございます。  そこで、植田候補にお聞きしたいと思いますが、この十年間の金融緩和の効果及び反省点、これについてどのように認識をされていらっしゃるでしょうか。また、この十年間の経験を今後の政策運営にどのように生かしていきたいというふうに思っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。    〔委員長退席、理事渡辺猛之君着席〕

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) この十年間の金融緩和でございますが、先ほど来申し上げておりますように、金融緩和の効果といたしまして、物価、経済が十分押し上げられて、十分といいますか、しっかり押し上げられてきておりまして、結果として、物価は持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきておるというふうに考えております。また、政府からの働き方改革の効果もありまして、さらに金融緩和の労働需要を支えるという効果も付け加わりまして、雇用者数が増加、さらに雇用者報酬も増加しているというふうに考えております。  一方で、金融緩和の副作用として、金融機関収益への悪影響を通じて金融仲介機能にも悪影響を与える可能性があるということや市場機能の低下の可能性が挙げられております。前者につきましては、金融機関、現状、充実した資本設備、資本基盤を備えておりますので、金融仲介機能は円滑に発揮されているというふうに考えております。また、後者の市場機能の点でございますが、こちらは国債の補完供給をしている、あるいはそれの要件を緩和するというような措置、さらには、先ほど来議論がありましたイールドカーブコントロールの運用を十二月以降見直しているというような措置で手当てをしてきているところでございます。  政策には効果と副作用が常にあるという中で、それらをそれぞれ冷静に比較考量しながら適切な政策を実施していく必要があると思います。現状では効果の方が副作用を上回っているということで金融緩和を続けているのかなというふうに認識しております。  今後もそういう姿勢で金融緩和を継続していく、その結果として、賃金の上昇を伴う形で物価安定を持続的、安定的に二%の目標を実現するということが可能であるというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 日銀は、二〇一三年一月に、消費者物価の前年比上昇率を二%とする物価安定目標を導入をいたしました。今のお話にもありましたとおり、デフレではない状況になったものの、物価安定目標、これにつきましては、現状、達成時期が見通せない状況が続いているというふうに思います。  円安や資源高等を背景とした物価上昇により、消費者物価の生鮮食品を除く総合指数、コアCPIは、二〇二二年四月以降、物価安定目標の二%を上回る状況にあります。一方で、日銀は、現在の資源価格の上昇によるコストプッシュ型の物価上昇は、日銀が目指す賃金の上昇を伴う物価上昇とは異なり、持続的な物価安定目標の達成には至っていないというふうにしております。  これまで取組をしてきていただいたわけでありますけれども、物価安定目標が達成されなかったこの理由についてどのようにお考えになっているか、お聞かせいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) これは、金融緩和としては非常に強力な政策を取ってきたわけでございますが、ここ二、三十年、様々なデフレ方向の力を加える、経済にデフレ方向の力を加えるような様々なショック、その具体例としましては先ほど二、三申し上げたとおりでありますが、が起こってきたこと、あるいは、その結果、長期間デフレ、物価の下落が続く中で、物価や賃金が上がりにくいということを前提とした物価、賃金設定行動が定着して、その転換に、若干良い芽は出つつありますが、時間が掛かっているということが強く影響しているというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 二〇二二年十二月のコアCPIは前年同月比で四%となりまして、一九八二年以来四十一年ぶりの高水準というふうになっております。また、二月、食料品の値上げが集中するなど、物価上昇落ち着くかは見通せない状況にあります。  しかし、二〇二二年の実質賃金は前年比〇・九%減と、賃金上昇が物価高に追い付かない状況にございます。足下の物価上昇をいかにして賃金の上昇を伴う物価上昇につなげていくか、これが今後の重要な課題になるというふうに思います。  黒田総裁は、先日の衆議院の予算委員会におきまして、金融緩和によって経済活動を刺激し、労働市場をタイトにして物価や賃金が上がりやすい形にしていくことが必要であると述べられています。  賃金の上昇を伴う物価上昇を目指すために、あるべき金融政策について候補はどのようにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) まず、実質賃金ということで申し上げれば、足下四%の消費者物価指数の上昇率でありますが、何回か申し上げておりますように、今後かなり急速にその上昇率は、年度、来年度半ば頃にかけて下がっていくというふうに考えております。したがいまして、名目賃金の上昇率がある程度上昇してきますと、実質賃金にも良い動きが出てくるというふうに思っております。  それでは、名目賃金の方でございますが、これは基本的には中央銀行としては、金融緩和を継続して財・サービスの総需要を支える、それが労働市場で労働需要への良い動きにつながるというルートを通じて賃金が上がっていくというふうに考えておりますが、それに加えて、物価上昇が賃金に反映されるかどうかというところの人々の行動もひょっとしたら変わりつつあるということもプラスに働くかなというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 政府と日銀の共同声明についてお伺いしたいと思います。  二〇一三年の一月に公表されました政府、日銀の共同声明では、日銀は、物価安定目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指すとしております。一方で、政府は、機動的なマクロ経済財政運営に努めるとともに、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組の具体化、持続可能な財政構造を確立するための取組を推進するとしておりまして、デフレ脱却に向けて政府、日銀がそれぞれ果たすべき役割について定めているものであります。  共同声明にある政府、日銀のそれぞれの役割について、これまでの両者の取組をどのように候補は評価していらっしゃるでしょうか、お聞かせください。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 二〇一三年以来、共同声明に沿って、政府、日銀、それぞれ必要な政策を実施してきたと考えております。    〔理事渡辺猛之君退席、委員長着席〕  その下で、先ほども申し上げましたように、我が国経済は着実に改善してきております。企業収益は過去最高水準まで増大しましたし、賃金、雇用者所得も上がってきて、緩やかですが上がってきております。物価面では、物価が持続的に下落するというデフレではなくなっているというふうに考えられます。また、政府からの働き方改革の推進もありまして、女性や労働者、高齢者の労働参加が進んだ結果、雇用者数の大幅な増加が実現しているというふうに見ております。  というふうに、政府、日銀の政策連携は、物価と賃金が共に上昇するという好循環の形成に向けて着実に成果を上げてきたというふうに考えております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 次に、いわゆる出口戦略についてお伺いしたいと思いますが、今後、賃金の上昇を伴う物価上昇が実現すれば、いずれ、これまでの金融緩和の出口戦略に着手することになります。日銀は、金融緩和政策を転換する局面となった場合には、拡大した日銀のバランスシートの縮小と政策金利の引上げが課題になるとしております。出口戦略の進め方について現時点で想定していることはあるでしょうか。  また、金融緩和政策を転換するとなりますと、住宅ローン金利の更なる上昇や中小企業等の債務負担の増加などによって国民の生活や日本経済全体に影響があることが予想されます。出口戦略を実行する場合には、少なくともコロナ禍から日本経済がしっかりと回復している状況にあることが求められますけれども、そのタイミングの判断というのをどのようにお考えでしょうか。  出口戦略の実行に当たりまして、市場を混乱させないようにするために政府に求める、望むことがありましたら、併せてお聞かせいただきたいというふうに思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 出口のタイミングでございますが、これは何度か申し上げておりますように、持続的に安定的に二%のインフレが達成できるという見込みが得られるというところまで現在の金融緩和を基本的には続けるということでございます。  それで、そうした見込みが得られるようなときに出口戦略を開始するわけでございますが、様々な側面を持ちます現在の緩和政策のそれぞれをどのように出口に向けて修正していくか、どの手段をどういうふうに先行させるか、後の方に回すかという具体論につきましては、考えていないわけではございませんが、今後の経済・物価情勢の変化に応じて最適な望ましいやり方は変わっていくものと思いますので、現在時点では具体的にコメントすることを差し控えさせていただければなというふうに思います。  政府に向けて望むことはということは、御質問もあったかと思いますが、現在、政府は賃上げの促進やデジタル化などの様々な成長力強化の取組を行っていただいているものというふうに承知しております。これは、出口戦略というよりは、私どもとの関係では物価目標の達成に力となる動きというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 次に、日銀の新型コロナ対応についてお聞きしたいと思います。  日銀は、二〇二〇年三月の金融政策決定会合以降、新型コロナウイルス感染症への対応として、国債やETF等の積極的な買入れや企業金融支援のための措置を行い、金融緩和を更に強化をしてきました。  企業金融支援については、コロナオペを導入しております。金融機関に対して融資の原資を有利な条件で貸し出し、企業の資金繰りを下支えする狙いの下、行ってきたわけでございます。このコロナオペは多くの金融機関に利用されまして、ピーク時の利用残高は約八十六兆円でありました。企業の資金繰りの状況等を踏まえまして、日銀はこのオペの対象を段階的に縮小しており、現在は中小企業向けのうちの一部のみというふうになっております。  候補は、この日銀のこれまでの新型コロナ対応、これについてはどのように評価をしていらっしゃるのか、お聞かせいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘の日本銀行が実行してまいりました新型コロナ対応の様々な措置でございますが、その後の経済の状況を見ますと、企業等の資金繰り支援に十分役に立ってきたと思いますし、金融市場もその後安定的に維持しておりますので、成功であったというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 それでは、気候変動に関する日銀の取組について伺いたいと思います。  各国中央銀行は、気候変動が金融システムに与える影響への対応を進めております。日銀も二〇二一年九月に気候変動対応オペの詳細を決定し、同年の十二月に初回の資金供給を実施しております。  気候変動対応オペとは我が国の気候変動対応に資する投融資を行う金融機関に対してゼロ金利で資金を貸し出すものでありますが、日銀は、気候変動問題は中長期的に経済、物価、金融情勢に極めて大きな影響を及ぼし得るものであり、中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは長い目で見たマクロ経済の安定に資するとの立場を示しています。  気候変動対応オペを含む気候変動に関する日銀の取組についてのその意義、またその在り方について、候補はどのようにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 気候変動問題でございますが、委員御指摘のように、将来にわたってグローバルな次元で社会経済に広範な影響を及ぼす課題となっていると思います。  気候変動問題への対応は、かなりの部分、政府のサイドで行われるもの、行い得るものが多いと思いますが、日本銀行も物価の安定と金融システムの安定という使命に沿って気候変動に関する取組を進めているものというふうに理解しております。  例えば、委員御指摘の気候変動対応オペを導入して、民間の金融機関による投融資を、関連の投融資をバックファイナンスしたりしております。これも民間の投融資に関する判断を尊重するという意味で、中央銀行としては、ミクロの資源配分に直接関与するということを避けつつ、また物価の安定という目標との関連では、将来そこで何かバッティングが生じたときにはこのオペレーションをストップするという条項も加えつつ実行されているというふうに考えております。  気候変動対応オペは一つの例でございますが、そのほか、調査研究も含めまして、包括的に日本銀行がこの問題に取り組みつつあるというふうに理解しております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 次に、金融政策の透明性について御質問させていただきます。  金融政策は国民の生活に大きな影響を与え得るものでありますので、日銀には決定した政策の内容や判断の根拠を分かりやすく説明をする責任があると思います。  しかし、日銀が一月に発表した生活意識に関するアンケート調査を見ますと、日銀の外部に対する説明への評価について尋ねた項目がありますけれども、分かりにくいと回答した人の割合が五割を超える状況でございます。分かりにくい理由につきましては、日銀の説明や言葉が専門的で難しいとの回答が一番多くございました。  日銀の金融政策や取組をより分かりやすく国民に発信するためには、今後どのような取組が求められるというふうにお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘のように、政策や政策の手段について、政策の考え方や政策の手段の運用の仕方について分かりやすい情報発信を行っていくことが日本銀行にとっては極めて重要であると考えておりますが、そのためにも、各種のデータを日本銀行としては丹念に分析し、ヒアリング情報も活用し、判断を合理的に行って、合理的、論理的に行っていくということを心掛けてまいりたいと思いますし、また情報発信については、記者会見あるいは各種の講演などを通じて、金融関係者だけでなく、広く国民の皆さんに分かりやすいと感じていただけるよう工夫の余地がないか考えてまいりたいと思います。  御指摘のように、現在の緩和が極めてある意味では複雑なものとなっていますので、それを分かりやすく説明していくということは必要だと思いますし、それから、今日もいろいろ御議論がありましたが、足下のインフレは四%なのに、日本銀行は基調的な物価の動きはもう少し弱い、だから金融緩和を続けているというところもなかなか国民一般には分かりにくい部分があると思いますので、そこも丁寧な説明を心掛けるべきかなというふうに感じております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 是非よろしくお願いしたいと思います。  日銀総裁としての役割についてお伺いしたいと思います。  日銀総裁には、日銀の目的であります物価の安定と金融システムの安定の達成に向けて約四千六百名の職員の皆さんを束ねていく役割が求められます。現在、日銀の金融政策は足下の物価高をいかに賃金の上昇を伴う物価上昇につなげていくかの正念場とも言えるのではないかと思います。金融緩和の出口戦略の実行という大仕事も待ち受けているわけでございます。また、金融システムが正常に機能し、企業や国民が安心して使用できるよう、金融システムの安定に向けた取組も求められます。  日銀総裁に就任された場合、植田候補におかれましてはどのようにリーダーシップを発揮をして日銀の目的の達成に向けて組織全体を動かしていくおつもりか、御決意を伺いたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 日本銀行には、金融政策運営に加えまして、金融システムの安定確保、銀行券の発行と流通、決済システムの運営、国庫金に関する業務など、幅広い重要な仕事がございます。総裁として選任された場合には、これまでの経験を生かし、両副総裁候補とも協力して、約五千人の職員が十分力を発揮できるよう努めていきたいと思います。  私自身、小さな経験でございますが、大学で、学部長といっても前の学部長から引き継ぐというのではなしに新しい学部をゼロから立ち上げるという仕事をしてまいったり、あるいは審議委員の時代に様々な日本銀行の内部管理の議論にも参加したことがございます。こういう経験を生かして、リーダーシップを発揮し、組織を活性化していければなというふうに思っております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 就任の際には是非お力を発揮していただきたいと思います。  金融政策の決定自体は国や地域ごとになされますけれども、経済やマーケットはグローバル化が進み、世界は一段と一体化しているとの指摘もございます。そのため、日銀総裁には、G7やG20の財務相・中央銀行総裁会議等の国際会議に出席をして、各国の中央銀行総裁と国際金融情勢などについて緊密に意見を交わし、適切な対応について協議することが求められます。また、我が国の金融政策の考え方を丁寧に世界に向けて発信していくということも総裁の重要な役割であります。  植田候補におかれては、日銀総裁に就任された場合、各国の中央銀行総裁らとの議論、世界への発信に際してどのような御決意を持って臨むお考えか、伺いたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) リーマン・ショックや感染症によるショック等、様々な金融不安の事態、金融不安が広がるような事態のときには、先ほどドル供給オペの例もちょっと申し上げましたが、各国の中央銀行が緻密な情報交換を行いつつ、協力して対応を行ってきております。こういうことに象徴されますように、海外中銀との連携の重要性は高まっているというふうに認識しております。その前提となります海外中央銀行との意見交換の重要性も一段と高まっていると思っております。こうした取組、日本銀行は行ってきていると思いますが、それを着実に進めていくことが重要だと思っております。  また、私自身、様々な国際会議等の場で、審議委員であったり大学の研究者の立場で海外の関係者と意見交換を行ってきておりますが、その経験を生かして今後の海外の関係者とのコミュニケーションを適切に行っていきたいというふうに考えてございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 今日御答弁いただいた内容を参考にさせていただいて、是非我が党でも検討させていただきたいと思います。  予定した質問が終わりましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 立憲民主・社民の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。  日銀は我が国の金融政策を主導する立場であり、そのトップである総裁人事は極めて重要であります。なおかつ、黒田総裁時代の長きにわたる異次元金融緩和の弊害があらわになってきている現在の状況下においては、新総裁の選択する方針が日本経済のあしたを左右すると言っても過言ではありません。植田参考人の所信を踏まえて、参考人の問題意識や今後取ろうとされている方向性などを中心に数点お伺いさせていただきたいと思います。  植田参考人が総裁に任命されれば、戦後初の学者出身者の総裁となります。植田参考人は、東京大学経済学部長や共立女子大学ビジネス学部長を歴任され、数多くの著書、論文を発表するなどの経歴をお持ちであると承知しております。また、アメリカのマサチューセッツ工科大学へ留学した際には、著名な経済学者でFRB副議長などを務められたスタンレー・フィッシャー氏からの指導を受けたと伺っております。  日銀総裁には、金融、経済に関する高い見識はもちろん、世界の金融政策や経済事情に詳しい国際感覚も求められるかと思うんですね。植田参考人には、MITなどで研究されていた際の人脈を生かされて、主要国の中央銀行のトップとのコミュニケーションを図るなどの役割を期待されるところでございます。  植田参考人は、御自身の経歴、そして人脈をどのように生かして総裁の任に当たるおつもりか、その決意をお聞かせいただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私はこれまで、審議委員、あるいは委員退任後も学者として金融政策の理論や実践についてタッチしたり研究を深めてきたりしております。また、様々な会議で関係者と議論を行ってきております。こうした知見や人脈を生かして今後の政策運営を行っていきたいと思いますが、特に決定会合等では理論的な側面を含めて議論が活発になるように努力してまいりたいと思っております。  更に付け加えるといたしますと、海外の関係者との議論では、私の経験では、議論や説明を論理的にするということによって相手の共感も得られて様々な情報も得られるというふうに思っておりますので、そういう点も重視しつつ情報交換等に当たっていければというふうに思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 今までの日銀総裁は財務省ないし日銀の出身者が多く、経済学者出身というのは異例の人事だと思うんですね。  植田参考人は、御自身のどのような点が評価されて今回の起用に至ったとお考えでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 私は指名をいただいた立場ですので、自分から人選の理由について何か申し上げられるということではないというふうに考えてございます。  その上で、私が貢献し得ることがあるとしますと、これまで、過去、審議委員として政策決定や業務運営に参画してきた経験や、学界で金融政策の理論や実践について研究してきた知見を生かして理論面からリードするということが可能性として挙げられるかなと思いますし、先ほどお答えしましたように、海外とのネットワークも生かすことができるかなと思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 アカデミズム御出身の方には、困難を極める今後の金融政策のかじ取りに合理的、そして論理的に最適解を出し続けることが望まれると思うんですね。また、学問や研究は真実を追求するものですが、人の意見に耳を傾ける柔軟性も併せて求められる局面でございます。  さらに、総裁になられた際には、学者さん出身だからこそ、しがらみにとらわれず、政治の過剰介入を断ち切り、日銀の独立性を取り戻すことも期待されると思います。日本では経済学者出身というのは異例ですが、欧米ではしばしばあるケースでございます。  二年で二%の物価安定目標を達成しようとした異次元の金融緩和は、十年をたっても目標を達成できず、物価だけ上がって賃金が上がらない現状を改善するどころか悪化させてきました。二年限定のはずだった異次元の金融緩和を長期にわたって継続したことで多くの弊害が生じております。為替相場、国債相場の動きは、従来の異次元の金融緩和が限界であることを示しております。我々は市場の警鐘に真摯に耳を傾けなくてはいけないと思うんですね。  このような認識を前提に、植田参考人に具体的な金融政策についてお伺いしたいと思いますが、植田参考人は、現在の金融政策からの出口戦略についてどのような方針、そして方向性でお考えでしょうか。どのような条件を満たしたときに発動し、どのような順序、段取りで実施し、最終的にどのような状況を着地点、ターゲットとして想定しているのか、総論的な御回答をお願いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 出口をどういうタイミングでということ、出口への動きはどういうタイミングでということを御質問だと思いますが、これは、ずっと申し上げておりますように、二%の物価目標の持続的、安定的な実現が見通せるようになれば正常化に向けた動き、議論を始めるということかなと思いますが、もちろんその前段の段階、現在から含めまして、それがどういうふうになるかという様々なシミュレーションは、我々、常に行うということだと思います。  しかし、それが結果的にどういうふうに具体的なやり方として結実するかというところは、これから出口に至るまでの局面での経済の動きに依存して非常に大きく変わる可能性がありますので、現在どういうふうになるかということ、出口のところでですね、どういうふうに進むかということを具体的にコメントするのは差し控えさせていただければなというふうに思います。  出口を出た場合、最終的にどういう状況を着地点、ターゲットとして想定しているのか、これも具体論にかなり関わってきますので、現在は差し控えさせていただきますが、出口あるいは物価安定の目標の実現が近づいてきました段階では適切な情報発信をしていきたいというふうに思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 出口戦略の遂行には市場と国民の理解が必要だと思うんですね。そのためには、出口とは何かをまず定義する必要があると思うんです。そして、出口に至るまでの経済、物価の条件を明らかにするという段取りなのではないかなと思うんです。  植田参考人は、衆議院での質疑で、黒田東彦総裁の下で十年間続いた現在の大規模金融緩和について、様々な副作用が生じているとの認識を示されました。  では、大規模金融緩和により具体的にどのような副作用が生じていると判断されておられるのでしょうか。また、その副作用の深刻度についてどのように御認識をされておられるのでしょうか。併せてお願いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 大規模金融緩和の副作用でございますが、これは、一つは金融機関収益の影響を通じて金融仲介機能に悪影響が及ぶ可能性、それからもう一つは市場の、市場機能を低下させる可能性という二つかと思います。  前者につきましては、現状、金融機関が自己資本を十分に有しているということ、それから特にマイナス金利につきましては、それが適用される残高、当座預金残高を非常に限定的にしているということなどを考えまして、十分な副作用対策がなされ、ネットの効果、ベネフィットの方が大きいという状態であるというふうに考えております。金融仲介機能は円滑に発揮されている。  後者の市場機能の低下でございますが、これは、先ほど来御議論がありましたように、十二月以降、その機能の低下を限定的にするような様々な措置を発動し、現在その効果を見守っているという状態であるというふうに考えてございます。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 日銀は、昨年十二月の金融政策決定会合で、YCCの、イールドカーブコントロールの柔軟化を決定しました。  植田参考人は、以前、イールドカーブコントロールの修正に向けて、コントロールの誘導対象を十年から五年に変更することを提案しておられます。このお考えに現在も変更はございませんでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 長期金利のコントロールの対象年限を十年からもう少し短いところに移すということでございますが、それは、将来、YCC、イールドカーブコントロールを見直す際の一つのオプションではあると思いますけれども、ほかのオプションもたくさんございまして、その中でどれが相対的によい、あるいはどういうタイミングでどれを採用するのがよい、そういう具体論につきましては、現在お話しさせていただくのが適当な時期とは思っておりません。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 物価高騰を助長する悪い円安の是正と、債券市場のゆがみの修正を図るための、民間経済や国家財政の負担に配慮しつつ、長期金利の許容変動幅を現行のプラスマイナス〇・五%程度から更に拡大するなど、一層の柔軟化を図るべきだと思います。誘導対象の短期化もその趣旨で有用と考えます。  植田参考人は、衆議院の方で、基調的な物価の見直しがもう一段と改善していく姿になっていく場合には、YCCについても見直し、ないし正常化の方向での見直しを考えざるを得ないと発言されておりますが、もう一段の改善というのはどのような状況を指しますでしょうか。もう少し具体的に御説明いただければと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 基本的には、二%の持続的、安定的なインフレ率の達成が見通せる時期あるいはその周辺ということでございます。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 そうすると、済みません、ちょっともう一度同じ質問で申し訳ないです。  もう一段というふうにおっしゃっていた、もう一段の改善というのは具体的にどういう意味なんでしょうか。質疑録見て思ったんですが、ちょっと分からなかったものですから。済みません。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 数値的にもう一段の改善というのを、例えば現在〇%だとしたのが一なのか一・五なのか、そういうふうに具体的に申し上げるのは非常に難しいかなと思います。見通しの中ではっきりとした改善があって、持続的な二%に近づくというイメージが得られたときということかなと思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 黒田総裁の下で継続してきた異次元の金融緩和は、金融市場や金融機関経営に様々な影響をもたらしてきました。この間、日銀は金融システムが総体的に安定しているとの見解を示していますが、総体としてはそうであっても、細部に関しては余りに長期間にわたる金融緩和によってひずみを起こしていないかが懸念されています。  金融緩和が長期化して金利が極端に下がり過ぎると、銀行の収益環境は悪化して金融仲介機能が滞るというリバーサルレート論が指摘されたことがあります。黒田総裁自身も講演で言及したことがあり、植田参考人も、かつて日本経済新聞電子版に、日銀が次に政策金利を引き下げれば、リバーサルレートに到達する可能性が確実に高まると予測、予想したことが報じられておりました。  リバーサルレート論との関係も含めて、金融緩和の長期化と日本の金融システムへの影響について植田参考人の見解をお伺いできればと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘のリバーサルレートでございますが、これは、通常は金融緩和で特に金利を下げていきますと金融緩和効果は強まっていくというふうに考えるわけでございますが、余りに下げていきますと、そこから副作用の方が大きくなりまして、緩和効果と副作用、両方足したネットの効果ではマイナスになってしまうところが出てくる、その境目がリバーサルレートという金利の水準という議論かなと理解しております。  それで、現在、日本がそういう状態にあるかどうかという御質問だと思うんですけれども、現状、日本の金融機関が充実した自己資本を備えているということもあり、信用コストも大幅に低下しているという事態に鑑みますと、現在極端に金融仲介機能が阻害されているというふうには思いません。  こうした意味で、リバーサルレートのところにはまだ達していないというふうに一応評価しております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 長過ぎる異次元の金融緩和は、悪い円安と物価高騰を招き、実質賃金の低迷と相まって日本経済に悪影響を与えただけではなく、金融システムにも大きな打撃とゆがみを生じさせています。それによるマイナスが本格的に表面化するのはこれからだと思うんですね。  現在の金融政策の枠組みであります長短金利操作付き量的・質的金融緩和におきましては、十年物国債金利が零%程度で推移するように国債を買い入れることで長期金利を操作しています。長期金利の操作については、変動幅の拡大など政策の修正を示唆しただけで長期金利が動いてしまうとされています。修正を事前に市場に伝えることが困難であることから、市場との対話が難しい手法であるとも言えます。  植田参考人は、市場との対話に関連して、政策当局者と学者では対外的な発言時に持つべき心構えが違うと考えていると報じられています。日銀審議委員を務めておられた当時、自身のメディアにおける発言が円相場に影響を与えてしまった経験から教訓を得たとされています。植田参考人が総裁に就任されれば、再び政策当局者という立場となります。自身の経験も踏まえて、どのような姿勢で市場との対話に臨み、円滑な情報発信に努めるつもりか、見解をお伺いできればと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 基本線といたしましては、経済、物価に関する情報発信、さらに、政策の決定の背後にある考え方を分かりやすく説明していくということだと思いますが、それに加えまして、市場が現在の経済状態をどういうふうに見て、どういう、その結果として現在こういう市場価格を付けているんだというその背後にある考え方、動きを様々な手段、例えば日本銀行であれば市場に近い金融市場局とか金融機構局、こういうところのヒアリング情報も含めてよく真摯に聞き、市場の動向をつかむということも日本銀行にとって重要かなというふうに考えております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 黒田総裁時代の終盤は市場との対話が混乱していたと評価されております。  二〇二二年の十二月の長期金利の上限引上げや、二〇二三年一月の共通担保オペへの長期化に際しては、市場が納得する論理性を持った説明は日銀から結局なされませんでした。このようなことが続きますと、日銀の金融政策に対する市場の信用が失われると思うんですね。総裁起用報道があった日に、植田参考人は、判断は論理的にすること、説明は分かりやすくすることと述べておられます。市場との対話に必要な資質であると考えております。  さて、日銀はこれまで、二〇一六年九月に総括的な検証を、二〇二一年三月により効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検を行い、その結果を受けて、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入や長期金利の変動幅の明確化といった政策修正を行ってきました。日銀の意図と異なる形ではありますけれども、現実に物価が上昇し、国民生活に影響を与えている中で、今こそ政策修正を見据えつつ、これまでの政策の効果や副作用を全面的、総合的に検証する必要があるのではないかなと思います。  植田参考人も、衆議院での審議におきまして、黒田東彦総裁が主導してきた緩和策の検証は必要に応じて検討していきたいと前向きな姿勢を示しておられますが、こうした検証を行う適切なタイミングについてどう認識しておりますでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 衆議院での質疑でも申し上げましたが、普通の意味での点検、検証は、ある意味毎回の政策決定会合で行われるものであるというふうに考えております。  それに加えまして特別な点検を、日本銀行は過去五、六年では、十年くらいでは二度ほどやっておりますけれども、こうした特別な点検を行うかどうかということについては、今直ちにこういう点検をしたいという考えは私は持っておりませんが、就任後、仮に就任させていただいた後、そういう必要性があるということが分かればもちろんやってまいりたいと思います。  ただ、過去から長く続いてきた金融緩和の様々な側面を総合的に点検するというような点検になる可能性があると思いますので、時間を掛けてゆっくりとした点検を行うという姿が一つ考えられる、その場合はですね、行う場合は考えられるかなと思ったりしております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 時間を掛けてゆっくりということですけれども、総裁、副総裁交代という大きなタイミングですよね。国民の関心が集まるこのタイミングにおいて黒田総裁の任期中の政策を検証することで、これまでの政策効果や今後必要となる政策に対する国民の理解が深まると考えますが、このタイミング、そしてこの考えについての認識を伺いたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 四月以降、当面の政策運営に必要な点検等につきましては、毎回毎回の決定会合の前に十分行えるかなというふうに思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 今の御答弁のようにいずれという感じではなくて、総裁、副総裁がちょうど交代される今だからこそ本格的な検証を行っていただきたいと思っております。是非御検討いただければと思います。  異次元の金融緩和は、日銀のバランスシートなど、財務面でも課題を突き付けています。日銀が半期ごとに決算と併せて公表している保有有価証券の時価評価情報によれば、二〇二二年九月末には、二〇〇六年三月末以来、十六年半ぶりに国債の評価損があることが示され、黒田総裁の国会答弁では、十二月末での国債の評価損は約八・八兆円に及んだとのことです。日銀は、会計上の評価は償却原価法であり、償却しない限り損失が現実化することはないとの立場でありますが、含み損が拡大することについて市場が不安視することは避けられないと思うんですね。  また、今後、金融緩和の出口戦略に進むこととなった場合には、日銀当座預金の超過準備額への金利の付利を引き上げる必要が生じる可能性が高いと考えられます。その場合、金利負担の増加が利益を圧迫して、場合によっては現在の積立金などでは賄えない可能性も否定できないと思うんです。  こうした財務面での課題、具体的にはバランスシートを毀損した、とりわけ債務超過に陥った中央銀行にとって、金融政策を的確に運用し自らに課された最終目標である物価の安定を達成すること、特にインフレを抑制することが困難になるという問題、中央銀行のバランスシート問題と呼ばれますが、日銀が直面するこの課題につきまして、この課題に対して植田参考人の認識をお伺いしたいと思います。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 委員御指摘のように、債券周りで申し上げますと、一方で時価評価すれば含み損が発生している、それから、満期まで債券を持ち続けるという方法で対処した場合にも、まあそうするというふうに私は考えておりますけれども、引締めの局面に入りますと、日銀当座預金の金利を引き上げていくという対応になると思いますので、保有している国債との間で逆ざやが発生し、期間収益にマイナスの影響が出るという可能性がございます。こちらの方は引当金で対応するということでありますが、これも委員御指摘のとおり、十分でないという事態に陥る可能性はゼロではないというふうに思っております。  それら総合しましてバランスシートの問題が発生する可能性はありますが、それでも日本銀行は、日本銀行券という通貨に対する信認が失われない限り、オペレーションを続けたり金融政策を続けたりすることができるというふうに考えております。その根底に何があるかということで申し上げますと、それは二%のインフレ率を守るという姿勢であり、それが実現していくことであるというふうに考えております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 金融政策の決定においては、日銀を含めた多くの中央銀行が委員会制を採用しています。委員会制を採用する利点の一つには、多様な知識を集めて、そして分析水準を高めて、より良い決定を可能にすることがあるとされています。  しかし、現在の金融政策決定会合における議論について、政策委員の意見の違いが小さいのではないかとの指摘もあります。決定会合における議決を見ても、昨年七月に審議委員二名が交代した後、九月以降の決定会合では全会一致での決定が続いております。  政策委員会においては、経済・物価情勢を踏まえた多様な議論に基づき適切な意思決定がなされることが期待されます。政策委員会における議論の多様性を高めるためにどのような方策が考えられるか、植田参考人の見解をお願いいたします。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 最近の政策委員会の議事の運営を、不可能でありますので、直接見ておりませんので、どういう具合になっておるか分からないのでありますけれども、委員がおっしゃるような議論を活性化していくという観点からは、私の経験に基づきますと、自分の意見を、用意してきたものを表明するという時間はなるべく短くして、委員同士の議論の時間を多く取り、活発な意見交換が行われるというようなやり方を運営していければなというふうに思っております。

牧山ひろえ立憲民主・社民

○牧山ひろえ君 時間となりましたので、終わります。

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 速記を起こしてください。  この際、お諮りいたします。  委員外議員舩後靖彦君から日本銀行総裁の任命同意に関する件についての質疑のための発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) 御異議ないと認め、それでは、舩後君に発言を許します。舩後靖彦君。

舩後靖彦れいわ新選組

○委員以外の議員(舩後靖彦君) れいわ新選組、舩後靖彦でございます。  本日は、日銀総裁候補の植田和男教授、御多忙の中、御出席いただきまして、本当にありがとうございます。  私は、ALSという難病により全身麻痺で、喉に穴を空けて人工呼吸器を付けており、声を出すことができません。このため、パソコンによる音声読み上げで質問をさせていただきます。  それでは、質問いたします。  今日が経済学者の植田先生に聞くことができる恐らく最後の機会なので、日銀の所管外の質問にも是非率直なお答えをお願いいたします。  原田泰日銀前政策委員の回顧録にある植田先生のハイパーインフレ発言は事実ですか。このように書かれています。東大の植田和男教授は、通常の歓迎スピーチの機会に、わざわざメモを用意して、長期金利のゼロ%の金利のペッグがハイパーインフレを引き起こす、金融機関経営が厳しくなり、金融仲介機能を壊して経済を悪化させると述べた。  しかし、ハイパーインフレは年率百三十倍以上のとてつもないインフレです。供給力が激しく毀損されるなどしないと起こり得ません。十年物の金利を抑えたぐらいでハイパーインフレになるとは考えられません。  日銀の黒田総裁は、財務官時代に格付会社に対して、日本はハイパーインフレになる可能性はゼロに等しいとした意見書を出しました。実際、二〇一六年九月以降、YCC、イールドカーブコントロールとして十年物の金利をゼロ%辺りで固定していましたが、全くハイパーインフレの兆しは見られません。ハイパーインフレの懸念などという主観的な恐怖心で景気回復のための金融政策を否定するのは間違いと考えます。  今でもYCCでハイパーインフレになるというお考えをお持ちでしょうか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) YCCを続けることによりハイパーインフレが起こるというふうには考えてございません。YCCを続ける、イールドカーブコントロールを続けるという現在の政策は、二%のインフレを安定的、持続的に達成するために続けておるものでございまして、それをはっきりインフレ率が上回ってくれば、当然その政策は終了しているというふうに考えます。  今委員御指摘の私の過去の発言でございますが、思い出してみますと、思い当たるコンファランスは、思い当たるコンファランスといいますか、発言をしたコンファランスを思い出しました。そこでは、御指摘のような、あるいは引用されたような趣旨の発言はしておりません。二つのことを発言しておりまして、一つは、長期金利コントロールという政策は、その当時導入されたばかりだったと思いますが、出口のときに難しい問題を抱える可能性があるということを一つ発言した記憶がございます。それとは全く別に、通貨の信認との関連で、ハイパーインフレは通貨の信認を失わせる現象であるということも発言、別のコンテクストで発言した覚えがあります。  この二つがなぜかくっついてしまって、委員が御指摘のような主張に聞こえたというお話であるかなと思いますが、誤解であるかなというふうに考えてございます。誤解であるというのは、引用された原田元審議委員のコメントが誤解であるという意味でございます。

舩後靖彦れいわ新選組

○委員以外の議員(舩後靖彦君) 経済学者の植田和男先生にお伺いします。  経済学者の伊藤隆敏先生は、日本政府は国債で債務不履行に陥る必要も必然性もない、たとえ国債の買手がいなくとも、日本銀行は現金注入で新規国債やロールオーバー、借換え継続した国債を買い続けることができると述べておられます。また、小林慶一郎教授は、外貨建て国債の場合は、市場で国債が買われなくなると、政府は借換えができなくなり、外貨準備が不十分なら期限が来た国債の償還ができなくなる、これは債務不履行だが、日本の場合にはこのようなデフォルトは起きないとも述べています。そして、黒田総裁は財務官時代に、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられないと意見書で述べています。  植田先生のデフォルト、借換えについての御見解をお伺いします。三人の意見と同じですか。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 国債がデフォルトをするかどうかということでありますが、定義次第だと思いますが、現在、日本の購入が継続、日本の国債がきちんと購入されているということの背景として、政府の財政運営に対する信認が前提となっているものというふうに理解しております。  伊藤先生、小林先生のコメントをちょっと今完全には理解できなかったんですが、少なくとも日本銀行が国債購入を永続的に続けるということはできないと思います。先ほど来申し上げておりますように、これはインフレ率二%を達成するために行っているものでありまして、それが達成された暁には、この大量購入、国債の大量購入はやめるという事態になるというふうに考えてございます。

舩後靖彦れいわ新選組

○委員以外の議員(舩後靖彦君) 質問を続けます。  通貨の信認ということがメディアで言われます。植田先生なりの通貨の信認について簡潔に定義をしてくださいませんか。日本はその信認の危機にあるとお考えですか。  また、一九九八年から日銀の総裁を務められた速水優先生は就任前、著書で、自国通貨の対外価値が上がることは日本への信頼を増す要因となると記しておられます。つまり、円高が望ましいと考えていました。しかし、その後、速水総裁が円高を容認する引締め型の金融政策により、日本の産業は国際競争力を失い、空洞化が進みました。  私たちは、日本の産業空洞化を防ぐためには、むやみに円高にしてはならないと考えております。  ずばりお聞きします。植田先生は、円高が日本経済にとって望ましいことだとお考えでしょうか。端的にお答えください。

植田和男日本銀行総裁候補者/共立女子大学ビジネス学部教授・学部長

○参考人(植田和男君) 前段の、通貨の信認の条件といいますか、そういう御質問だったと思いますが、これはやはり、その通貨が発行されている国のインフレ率が大幅に目標を超えて上がったり、あるいはハイパーインフレになる、そういうようなことが起きないということが条件になるというふうに考えてございます。  後段の為替レートに関する御質問ですが、これは、中央銀行家的な答えで恐縮ではございますが、為替レートはそのファンダメンタルズに沿って推移するのが適切というふうに考えてございます。

舩後靖彦れいわ新選組

○委員以外の議員(舩後靖彦君) 終わります。ありがとうございました。

石井準一自由民主党

○委員長(石井準一君) これにて候補者に対する質疑を終了いたします。  植田参考人に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙の中、御意見をお述べいただき誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会

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