消費者問題に関する特別委員会 第7号
- 発言数
- 85 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 2022/05/18
会議録
○委員長(舟山康江君) ただいまから消費者問題に関する特別委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日までに、杉久武さん、岸真紀子さん、石川大我さん、舞立昇治さん、本田顕子さん及び平木大作さんが委員を辞任され、その補欠として熊野正士さん、三原じゅん子さん、山本博司さん、宮口治子さん、吉田忠智さん及び比嘉奈津美さんが選任されました。 ─────────────
○委員長(舟山康江君) 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日は、法案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。 御出席いただいております参考人は、京都大学大学院法学研究科教授山本敬三様、公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長増田悦子様及び弁護士鈴木敦士様でございます。 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙のところ御出席いただき、本当にありがとうございます。 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 次に、議事の進め方について申し上げます。 まず、山本参考人、増田参考人、鈴木参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず山本参考人からお願いいたします。山本参考人。
○参考人(山本敬三君) 済みません。ありがとうございます。山本敬三です。 本日は、貴重な発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。 最初に、自己紹介を兼ねまして、消費者契約法の改正に関するこれまでの経緯を確認させていただきます。 平成二十一年から民法の債権法改正に関する審議がスタートしまして、私もこの審議に参加しましたが、そこで消費者契約法の規定を民法に取り込むべきかどうかという検討も行われました。しかし、最終的にそのような提案は採用されず、平成二十六年夏には債権法改正の方向性がほぼ明らかになりました。 そうした改正の動向を見極めた上で、平成二十六年八月に消費者契約法の見直しについて消費者委員会に諮問があり、平成二十六年十一月に専門調査会が設置されて検討が始まりました。私はこの専門調査会で座長を拝命いたしまして、この頃から検討に関わっています。 そこから先は御承知のとおりで、まず一致が得られやすい事項について平成二十八年に消費者契約法の第一次改正が行われました。その後、積み残した課題について専門調査会で審議を再開し、その検討を踏まえて平成三十年六月に消費者契約法の第二次改正が行われました。同じ時期に成年年齢の引下げに関する民法改正が行われましたので、それへの対応も一部、第二次改正で図られています。 しかし、この第二次改正でも検討課題が残り、衆参両院の特別委員会で附帯決議が行われたのを受けて、令和元年十二月に消費者契約に関する検討会が設置され、令和三年九月まで検討を行いました。私はこの検討会の座長も拝命し、検討に関わりました。 このような経緯がありますので、参考人として私に求められているのは、これまでの経緯、とりわけこの検討会での検討から見て、今回提出されている法律案をどのように受け止めるかということに関する所見だろうと思います。 以下、そのような観点から所見を述べさせていただきます。 まず、平成二十八年第一次改正と平成三十年の第二次改正でどのような改正が行われたかということを配付資料で整理してお示ししておきました。これは今回の改正の前提に当たりますが、詳しい説明は省略させていただきます。 そこで残された検討課題、次のページですが、のうち最も大きなものは次の二つでした。 一つは、合理的判断ができない事情の不当な利用に関する課題です。いわゆる付け込み型不当勧誘取消し権の創設に向けて更に検討する必要があることが附帯決議でも指摘されました。 もう一つは、九条一号の平均的な損害の額に関する課題です。平均的な損害の額の意義などの要件についても必要に応じて検討しながら、特に立証責任の負担軽減に向けて検討する必要があることが指摘されました。 ほかにも課題はありますが、検討会ではこうした課題について検討することが求められました。 時計数字のⅢです。この検討会がこれまでのものと少し違っていますのは、多様な委員によって多角的な検討が行われたことです。今回は、法学者でも商事法や憲法の研究者が含まれていますし、経済学や心理学の研究者、さらにITの専門家も含まれています。現代における消費者契約に関する先端的な問題を幅広く、かつ掘り下げて検討する体制が取られていたことは特筆に値することだと思います。 更に特筆に値するのは、この検討会での検討を通じて、現実に生じている問題に対処するために、規制が過少になってもいけないが、同時に、社会経済活動に対して規制が過剰になってもいけないという議論の枠組みを共有し、冷静かつ理性的な議論を行うことができたということです。消費者問題に関する議論といいますと、何か消費者側と事業者側が角を突き合わせて論争しているという印象があるかもしれませんが、この検討会での検討はそれとは違うものであったというのが座長を務めた者として実感するところです。 検討会では最後に報告書を作成していますが、これはそれぞれの項目について、考えられる対応となお書きという二つの部分から構成されています。 考えられる対応では、条文案に近いところまで詰められれば詰めるけれども、それが難しいときには一致が見られる考え方の方向性を留意事項とともに示す、その上で、なお書きでは、考えられる対応としてまとめることに反対まではしないものの、それとは異なる意見があったことを示し、法制化に当たっての考慮を求める、そのような趣旨で整理されています。 条文案まで詰めるのが難しかったものが少なくありませんが、これは、第一次改正、第二次改正でも積み残された困難な課題についての検討であったことから、やむを得ない面もあったと言うことができます。 この検討会報告書の考えられる対応と今回の法案を対照してみますと、次のページですが、次のように整理することができます。 まず、報告書の第二、平均的な損害の三、解約時の説明に関する努力義務の導入、第三、不当条項の二、サルベージ条項、五、消費者の解除権に関する努力義務、第四、消費者契約の条項の開示の二、定型約款の表示請求権に係る情報提供の努力義務、三、適格消費者団体の契約条項の開示請求、第五、消費者契約の内容に係る情報提供の努力義務における考慮要素はほぼ法案化されていると見ることができます。 それに対して、第一、消費者の取消し権の二、困惑類型の脱法防止規定、三、消費者の心理状態に着目した規定、第二、平均的な損害の五、立証責任の負担を軽減する特則の導入は、報告書の考えられる対応の一部が法案化されるにとどまっていると見ることができます。 さらに、第一、消費者の取消し権の四、消費者の判断力に着目した規定は、報告書の考えられる対応では取消し権の創設が示されていましたが、改正法案では法案化されていません。ただ、改正法案三条一項二号で年齢、心身の状態を努力義務の考慮事由として追加されていますので、その限度での手当てがされています。第二、平均的な損害の二、平均的な損害の考慮事由の列挙、第三、不当条項の三、所有権等を放棄するものとみなす条項と、四、消費者の解除権の行使を制限する条項も法案化されていません。ただ、これらについては現行法の解釈に委ねられることになりますので、逐条解説等で指摘がされる可能性があります。 以上の改正案は、検討会報告書から見ますと、考えられる対応の全部又は一部を法案化しようとしているものですので、全て速やかに成立することが期待されます。 もっとも、法制化に至っていない事項が残されていますが、これについては、もう何よりもまず法制化に至っていない理由ないし原因を整理、分析する必要があります。 まず、第一、消費者の取消し権についての二、困惑類型の脱法防止規定と、次の三、消費者の心理状態に着目した規定が法制化に至っていない原因はほぼ共通しています。これらについては、対象となる行為をルール、つまり要件を特定した規定として過不足なく定式化することが必要であるとしますと、それは難しい。正常な事業活動は取消しの対象とならないようにする必要があるわけですが、評価の余地のない要件でそれを定めることが必要であるとしますと、それは極めて難しい。そこに原因があると言うことができます。ただ、特に、次のページの③ですが、特に成年年齢引下げに伴う問題が今後実際に生じてくるようであれば、こうした課題を克服するための方策を速やかに検討する必要があります。 次の四、消費者の判断に着目した規定については、規定の必要性については一致が見られていたのですが、民法の意思能力、行為能力の規定との違いを明らかにする必要があります。報告では、判断力が低下していなければするはずがないと考えられる行為を要件とすることで差別化を図ろうとしたのですが、ここでも、取消しを認めるための要件として十分な確定性を備えることが必要であるとしますと、それは備えていないと見る余地が残っていました。 次に、第二、平均的な損害については、そもそも平均的な損害とは何であり、どう算定されるかが明らかでない。消費者に立証責任を課すのも問題ですが、事業者に立証責任を転換しますと事業者も立証に窮することになる。そもそも平均的な損害を不当性の判断基準とすること自体が問題であって、それに代わる基準を設ける必要があるということだと考えられます。 第三、不当条項については、十条の第一要件に例示するものを追加しようとしたわけですが、第一要件は本来、任意法規の適用によるのと異なるということです。ところが、例示は、それ自体として不当性を推認できるものであることを要求しますと、単に任意法規と異なるだけではなく、不当性を示す評価的な要素を挙げる必要が出てきます。しかし、そうすると第二要件と重複が生じる。このジレンマの解決は極めて困難です。むしろ、不当条項のリスト化については、評価の余地を伴う基準を用いた規定とすることを検討する必要があると考えられます。 次のページ。最後に、今後の課題、特に、今後骨太の議論が必要であるということが言われていますので、私からは何がそこでの課題と考えられるかということをお話しさせていただきたいと思います。 まず、法体系の中での民法及び消費者契約法の位置付けと役割について再検討ないし再確認が必要と考えられます。 民法は法体系全体における私法の基本法に当たります。そうした私法の基本法に求められる役割は、市民社会におけるプリンシプルを提示する、行為規範を提示する、紛争の事後的な解決規範を提示するところにあります。特に、紛争解決規範の提示は私法に固有の任務であって、他の法では代替できません。 最初にも少しお話ししましたように、民法の債権法改正では消費者契約法の規定を民法に取り込むことが検討されましたが実現しませんでした。格差の考慮を定める一般的な規定を民法に定めることも実現しませんでした。としますと、格差を考慮したプリンシプルや紛争解決規範は民法の外に求められることになります。しかし、民法の外で格差のある関係一般を規律することは不可能です。そこで、消費者契約に限ってプリンシプルと紛争解決規範を提示する法、それが消費者契約法だと言うことができます。民法と特商法を始めとした個別的な特別法の間に消費者契約法を定めた意味はここにあると言うことができます。 次に、消費者法の中での消費者契約法の役割については次のように整理することができます。 まず、消費者法では紛争を予防するための行為規制が必要です。これを国が公法的規制として定める場合はルールの明確化が不可欠です。しかし、国が一手に引き受けるのではなく、ステークホルダーの協働によるルール形成が現在では重要になっているように思います。また、私法規範による行為規範の形成も私法が果たし得る役割の一つです。努力義務も、プリンシプルを示すという意味もありますが、そうした行為規範を形成する一つの手段として位置付けられます。 消費者法の中でも、先ほど示した消費者契約に関するプリンシプルや紛争解決規範を形成する必要があります。これが、消費者契約法に固有の役割です。ここで、ルール化、つまり要件、効果を具体的に特定して規定するという手法では、プリンシプルの提示はもちろん、紛争解決規範としての役割を十全に果たせないことを理解する必要があります。個々の問題領域に即した紛争解決規範ないし救済規範の形成は個別的な特別法に委ねるべきであって、それを全て消費者契約法に取り込もうとしますと、消費者契約に関して公正な解決をもたらす紛争解決規範を提示するという役割が十全に果たせないことになります。 最後に、民法に定められた規範を消費者契約に即して具体化する規定、あっ、違いました、済みません、民法の特別法としての消費者契約法の意義と可能性、これも見直す必要があります。 その上で、まず民法に定められた規範を消費者契約に即して具体化する規定を定めることも許容すべきです。消費者契約法には、民法では認められないけれども、消費者契約では認められるもののみを定めると考える必要はないということです。現行消費者契約法では、不実告知による取消しなどはそうした規定の例として位置付けられます。 今後の課題としては、例えば、消費者の脆弱性は人間の脆弱性そのものであり、消費者のみに当てはまる事柄ではないため、消費者契約法に規定すべきではないと、そういうように考えるべきではないということが挙げられます。 また、消費者契約に関する考慮から、民法の括弧付きの伝統的な枠組みから離れた要件、効果を設定することも許容すべきです。つまり、消費者契約法も民法の伝統的な枠組みに従う必要があり、その枠組みを超えた規律を設けることは許されないと、そう考えるべきではないということです。ただし、そうした規律を設けるためには、基本に立ち返った丁寧な検討が必要になります。現行消費者契約法では、六条の二の取消しの効果は民法の基本的な規定を修正したものです。 今後の課題としては、まず脆弱性を考慮した救済規定の創設が挙げられます。取消しが認められるのは意思表示の瑕疵がある場合に限られるのか、錯誤・誤認、畏怖・困惑、意思無能力・制限行為能力では捕捉されない意思形成の障害を意思表示の取消し事由として認めることはできないかということが問題となります。 また、救済方法の柔軟化も課題です。無効、取消しとは異なる契約の拘束力からの解放を認める制度を創設することができないか、取消しについても割合的解決が認められないか、取消しに代えて原状回復的損害賠償に限った損害賠償責任を認める規定を創設できないかといったことが問題となります。 最後に、より大きく根本的な問題について所見を述べて、締めくくりとさせていただきます。 御承知のように、一九九〇年代末から二〇〇〇年代にかけて、事前規制から事後規制へということが言われました。それが現実に何をもたらしたかということですが、事前規制が事後規制にスライドし、むしろ規制が強化されたのではないかということです。その結果として、管理社会化が進み、自由な活動が阻害されている面があるのではないかと思います。また、事前規制の考え方が事後規制に及んできて、私法規範の個別ルール化が進行しています。しかし、その結果として、公正な紛争解決の実現が阻害されている面があるのではないかと思います。 しかし、事前規制から事後規制への本来の目的は、活力ある自由な活動を促進し、公正な社会を実現することだったはずです。事後規制については、むしろ私法によるプリンシプルの提示と紛争解決規範による公正な解決への信頼を再確認する、ただし、悪質な参入者を排除するための行為規制は別途強化する、これが今後の方向性ではないかと考えます。 私からは以上です。
○委員長(舟山康江君) ありがとうございました。 次に、増田参考人にお願いいたします。増田参考人。
○参考人(増田悦子君) 公益社団法人全国消費生活相談員協会の増田でございます。 消費生活相談員を構成員とする団体としてこのような機会をいただき、感謝申し上げます。 消費者契約法についてですが、ここに至るまで、長期間にわたって検討していただき、報告書の取りまとめに大変御苦労されました山本先生始め委員の皆様、消費者庁には感謝したいと思います。 平成二十八年改正、三十年改正を経て、難しい課題が残されていましたので、報告書を踏まえた法律が、法案が成立することを期待しております。 しかしながら、消費生活相談の現場を担う者として、この報告書が今回の改正案に反映されていない点、また以前より求めている点について意見をお伝えしたいと思います。 私たち消費生活相談員は、消費者からの相談を受けたときに、なぜ断ることができなかったのか、なぜ相談しなかったのか、なぜそこから退去できなかったのかと思うことがしばしばあります。鍵を掛けられた部屋で監禁されているわけではなく、勧誘から解放された後には友達や親に相談する時間もあります。勧誘が複数回にわたることもあるため、会わなければよいのです。事業者からは、長時間掛けて説明して十分理解してもらった、普通に理解力のある人だ、何回も積極的に会って説明を聞いてくれた、嫌だったら断ってほしかった、いつでも断ることができたはずだなどと反論を受けます。 行動の事実だけを聞くと、普通はそのとおりだと思うでしょう。しかし、相談者の行動についてなぜなのかを確認するために様々な聞き取りをすることによって、その相談者の置かれた状況や気持ちを理解することができ、相談者の判断ミスや浅慮だけではなく、その状況を作出した事業者の行為を把握することができます。 第一に、提案されている困惑類型の改正案では救えないケースが多くあり、包括的な受皿規定を設ける必要があると考えます。 今回の改正案においては、取消しが認められる行為として、勧誘を受けている場所において、威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害することという提案がされていますが、勧誘する場所で威迫してという要件が適用されるケースは非常に限定的です。 自分を変えるためにはまず自分で判断すべきだ、もう成人なんだから自分で決めることが大事だ、商品やサービスの内容を十分に説明できずに相談すると心配を掛けるだけだから今は相談しない方がいいよ、もうけて親をびっくりさせよう、きれいになって驚かせようよなどと言われて、親や友人などの第三者に相談する機会を失っています。これらについて威迫という評価を得ることは難しいと思われます。また、今は威迫するということはほとんどなく、親切で信頼感をつくりつつ勧誘することが多くあります。相談をさせないという意味では同程度の問題性があるにもかかわらず、適用が困難です。 また、改正案においては、取消しが認められる行為として、勧誘することを告げずに、任意に退去困難な場所であることを知りながら同行し勧誘をすることという提案がされていますが、消費生活相談においては、勧誘することを告げたか、任意に退去することが困難な場所か、同行したかについて詳細に確認する必要があり、それぞれ争いになるだろうと推測します。 例えば、社会人一年目、知人にもうかる話があると呼び出された、投資用USBの勧誘で、その業者の責任者から説明を聞いた、投資の説明、勉強は早くからした方がよいと長時間勧められ、疲れて断り切れずに契約した、代金は貯金と消費者金融から借りて払い、USBを受け取ったが、先物の学習教材で、とてもできないと後悔したというような事例があります。 若年者の場合、相手との関係からきっぱり断って退去するということができないという状況がほとんどです。最近はウエブによる勧誘が多くありますが、電話勧誘販売と同様に、簡単に断れない状況が作出されています。また、この事例は、長時間の勧誘により疲れてしまい、通常の判断力を失い、その場から解放されたいという気持ちから契約に至っています。二十代の社会人であり、普通の判断力を持つ人も、状況によっては意思決定がゆがめられるということがあります。 最近は、後出しマルチと称されるものや副業の契約など、連鎖販売取引に該当しない事案がたくさんあります。消費者契約法の活用が必須です。消費生活相談員が事業者と交渉するに当たって、要件が一つでも欠けていたり適用されるかどうか微妙な判断であったりの場合は、相談者の状況を説明して説得するしかありません。問題性は同様であるにもかかわらず、要件が具体的になればなるほど説得が困難になります。 また、消費者の心理状態に着目した規定が必要と思います。 一般的、平均的な消費者であれば締結しない契約であっても、事業者の不当な働きかけにより消費者の意思決定がゆがめられて契約に至った場合について、消費者の取消し権を設ける必要がありますが、この度の改正案には盛り込まれていません。 例えば、便器の水が流れなくなり、ネットで検索して基本料金九百五十円とあったので連絡したところ、作業員が来訪した。ポンプを使うので八千円、便器を取り外す必要があるので二万五千円、今度は下水道管の詰まりのため二十五万円と言われた。仕方ないと思い承諾したが、高過ぎるというような事例があります。 トイレの詰まりなど暮らしのレスキューサービスの契約では、消費者の慌てる心理、断れない心理に乗じた取引が行われています。訪問販売に該当すると判断される場合であっても、事業者は要請があって来たのだから訪問販売ではないと主張してトラブルが解決しない現状があります。事業者交渉するに当たっては、特定商取引法だけでなく消費者契約法が必須です。 そして、消費者の判断力に着目した取消し権が提案されていませんが、以前より喫緊の課題でした。 独り暮らしの自分の家に布団の販売業者が訪問してくる。敷布団の下に敷くカーペット、次に掛け布団、肌掛け、シルク毛布、またその次に光触媒ケットなどを勧められ、これまで総額百七十万円の契約をした。既に百二十万円払っている。先日来訪した親戚が、たくさんの布団を見ておかしいんじゃないかと言ったという相談があります。 高齢者の場合は、契約締結過程の記憶が定かではなく、不当勧誘による取消し事由を把握することが困難なことが多くあります。加えて、成年後見制度が十分に利用されていないことや、判断力低下の発見が遅れる傾向にあることから、認知症の診断を受けている消費者は少数です。判断力が曖昧であっても事業者との受け答えはできるので、後日、事業者は、はきはきと返事をしていたので判断力は十分だと思ったと主張します。しかし、必要ではない高額な商品を契約することは通常の判断力を持って意思決定をしたとは考えられません。判断力が衰えた高齢者の記憶が曖昧な状態に対し、事業者のみが主張できる立場となり、消費者と事業者との格差は更に広がることになって、救済はおよそ困難です。客観的に見て、生活に支障を来してまで不必要な契約をした場合についての取消し権が必要です。また、このような事例においては、過量販売における商品の同種の考え方についても検討が必要だと考えます。 次に、平均的損害についてですけれども、平均的損害の算定は長年にわたって消費生活相談において懸案事項となっています。今回の報告書における平均的な損害を算定する主要な考慮要素として、商品、権利、役務等の対価、解除の時期、契約の性質、契約の代替可能性、費用の回復可能性などを列挙する提案がありました。この提案は、消費者にとって平均的な損害について具体的にイメージができるし、事業者もまた違約金を定める際の参考になり、一定の解決が期待できると考えています。将来の検討課題としては、平均的な損害の額の立証責任の転換を望みます。 高齢化、成年年齢引下げ、デジタル化という社会において、高齢者、若年成人、障害者など脆弱な消費者が多くいます。加えて、新しい商品やサービス、新手の勧誘方法など、消費者を取り巻く環境が目まぐるしく変化し、誰でも脆弱な消費者になる可能性があります。 報告書の冒頭、報告書の取りまとめに当たってでは、消費者の脆弱性には消費者の属性に基づく恒常的、類型的な脆弱性と、消費者であれば属性を問わず誰もが陥り得る一時的な脆弱性とがある、消費者の有する合理性には限界があること、消費者の思考に関する二重過程理論、さらにはデジタル化や複雑化する消費者取引に対する消費者のリテラシーの限界等を踏まえつつ、消費者が事業者との健全な取引を通じて安心して安全に生活していくためのセーフティーネットを整備する視点が欠かせないと、消費者視点の、消費者の本質についての指摘がありました。 これまでに、被害が発生する原因の一つとして、消費者の不注意があること、そのため、消費者教育の必要性が指摘され続けてきました。もちろん、消費者の不注意はあり、消費者教育は必須です。しかし、消費者教育では防ぎ切れないことがあります。どんな人でも様々な願望があり、その願望がかなえられるという勧誘により誘引されることは特別なことではありません。特に、社会経験が少ない若年者や根拠を確認する方法を知らない高齢者等の場合は顕著です。 また、様々な状況によって、通常の判断力を持つ人も一時的に判断力が低下します。この誰もが持つ消費者の本質の指摘は、消費者と向き合い、消費生活相談を知る者としては非常に納得感があります。今後起こり得る様々なトラブルに対して、この指摘を反映した消費者契約法であるべきだと考えます。 次に、消費者裁判特例法についてです。 本協会は、消費生活相談員の団体であると同時に適格消費者団体ですけれども、今後、特定適格消費者団体となるかどうかについてはまだ検討中です。 この度の改正案に賛成し、早期の成立を望みますけれども、その上で、御検討いただきたい点について述べます。 情報開示についてです。 事業者による消費者への個別通知が義務付けとなりますが、事業者が個別通知をしない場合や事業者が消費者の連絡先を持ち合わせていず連絡できない場合など、クレジットカード会社など第三者の持つ情報を開示してもらう制度がなければ広く救済することは困難です。 加えて、事業者の代わりに特定適格消費者団体が消費者に連絡することが求められますが、その費用は被告、事業者が負担する仕組みを検討していただきたいと思います。 また、情報提供の拡充について、近く特商法及び預託法の情報は提供されるようになりますが、景品表示法も情報提供の対象としていただくこと、共通義務確認訴訟において、団体の請求が認容されて相手方の金銭支払義務が確認された以降の財産に関する情報開示について御検討いただきたいと思います。特定適格消費者団体が独自に情報を収集することは限界がありますので、行政機関が保有する情報を特定適格消費者団体に提供することによって迅速な被害回復が図られると考えます。 以上です。ありがとうございました。
○委員長(舟山康江君) ありがとうございました。 次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
○参考人(鈴木敦士君) 弁護士の鈴木敦士です。 本日は、参考人として意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。 着座にて失礼いたします。 消費者契約法及び消費者裁判手続特例法の改正案について、日頃から消費者相談を受け、訴訟を代理し、また特例法に基づく裁判について特定適格消費者団体を代理した立場から課題を述べて、課題になっている事柄についてそれを解決する方法について私見を述べたいと思います。 この法案の評価を述べるに当たって考えるべきことは、現に発生している消費者被害の予防や回復にどのように役立つのか、不足する点はないのかということです。 消費者契約法に関しては、平成二十八年の改正では、重要事項の拡充ですとか過量契約の取消し権、あるいは意思表示を擬制する条項の十条前段への例示など、平成三十年改正では、不安をあおる告知などの取消し権、解釈権付与条項の無効など、骨となる改正がありました。しかし、今回は、検討会の報告書で示された困惑類型の脱法防止規定や判断力不足の取消し権、十条前段の例示の拡充など、骨となる部分が実現されていない言わば骨抜きの改正となってしまっており、被害の予防、回復のためには極めて不十分であります。さらには、消費者契約全般に適用される民事ルールとして一定の原理原則、プリンシパルを示すべきであるのに、過度に規定が細分化しており、被害回復のために活用しにくいものとなっているという課題があります。 消費者裁判手続特例法については、制度の利用促進に役立つ様々な工夫がされており、被害の回復の実効化という観点からは評価できるものです。もっとも、将来課題とされた通知の費用負担の問題、あるいは対象消費者の情報の第三者からの取得、事業者の違法な事業活動や財産状況の情報の行政機関や第三者からの取得などは、本制度によって被害回復を実効化するためには継続的な検討が必要です。加えて、消費者被害の回復に不足がないのかという観点からは、民間団体が行うものであるということからくる費用倒れになるものは取り組めないという課題、あるいは特例法の手続では対応困難な悪質業者に対する被害について対応できないという課題があります。 それでは、これらの課題を解決する方策について私見を述べます。 まずは、消費者契約法の改正についてです。 消費者契約法の改正の課題はこれまで審議の中でも再三指摘され、消費者庁からは、消費者契約法が果たすべき役割、あるいは法体系全体の中で消費者法が果たすべき役割や、各法律の実効的な役割分担などを含めて骨太の議論を行うというふうにしています。その中では、消費者の様々な脆弱性を踏まえた制度の在り方、あるいは契約締結時以外の適用場面の拡大等、既存の枠組みにとらわれないルールの設定の在り方についても検討するとしています。 しかし、これに加えて、努力義務の規定を活用すること、困惑類型の脱法防止規定や判断力不足の取消し権については、骨太の議論をするまでもなく実現可能な問題として迅速な検討を行うことが必要であると考えます。 まず、努力義務の活用です。 先日の審議の中でも、努力義務では不十分ではないかということが再三指摘され、いや、努力義務を規定することで足りると消費者庁からは答弁がありました。 思うに、現に発生している判断力の不足した消費者に付け込んで不要なものを買わせて生活を立ち行かなくさせるというような相談が実際になくなり、あるいはサブスクリプションの解約方法が分からないというような相談が実際になくなるんであれば努力義務でも構わないというふうに思います。努力義務で足りるというのであれば、消費者庁は、単なる周知広報を超えて、あまねく事業者に対して努力義務を守らせるべく強力に指導を行うべきだというふうに思います。努力義務で足りるということを相談数の減少という事実で示していただきたいというふうに思っています。法的効果があればそれによって実現を図るということができますけれども、努力義務規定は法的効果がないので、消費者庁の創意工夫による実現のための努力が求められるんだろうというふうに思います。 次に、困惑類型の脱法防止規定と判断力不足の取消し権の迅速な検討です。 困惑類型の脱法防止規定については、まさに困惑類型ですから、従来からの消費者契約法の枠組みの中での議論だというふうに思います。判断力不足の取消し権も、消費者契約法の位置付けや各法律の実効的な役割を検討しても、統一的な消費者法典を作るとかそういう話でない限りは、消費者に関する取消し権を消費者契約法に置くのがふさわしいということになるように思われます。理論的にも、民法上の公序良俗の無効の一類型である暴利行為論の具体化というふうに位置付けることも可能なように思われます。 結局のところ、要件が明確化されれば規定ができるものだというふうに考えますので、骨太の議論などと言って時間稼ぎをしてはいけないというふうに思います。 ところで、特定商取引法では、契約を締結させるため、人を威迫して困惑させてはならないといって禁止行為としています。禁止行為には罰則があって、行政処分の対象になります。また、判断力不足に乗じ契約を締結させること、迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘することなどは指示行為となっていまして、指示行為は違反をすれば行政処分が行われ、それに従わなければ罰則があります。行政処分の根拠は法律による行政の原理から見ても明確でなければならないはずでありまして、既にそのような規定があることからこれは明確なものだというふうに理解されると思います。行政処分の根拠規定と同程度に明確であれば、取消し権の根拠規定としても十分なはずです。行政処分の根拠規定以上に要件の明確化を求める理由がないというふうに思います。行政は適切に判断できるけれども、消費者はクレーマーもいるから要件をより明確にしなければいけないというような官尊民卑の思想ではないかと、それは問題であるというふうに思います。行政処分の根拠と同程度に明確であれば、事業者はある行為をすべきかどうかということは判断できるので不都合はないはずです。 取消し権行使されたとしても事業者は争うことはできるわけで、最終的には裁判所によって判断されます。情報の量及び質並びに交渉力の格差のある消費者が訴訟を起こすことは容易ではないという、この点で事業者は有利な立場にいます。消費者の取消し権行使は個々の事案にとどまりますけれども、行政処分は一般的な行為全体が対象になります。行政処分の場合には、執行停止がなければ有効だと扱われて刑罰の威嚇もあります。消費者による取消し権行使と行政処分では、行政処分を争う方が事業者にとっては格段に負担が重いはずです。 このような事情に照らせば、行政処分の根拠規定よりも取消し権の根拠規定が明確でなければならないという理由はないのではないかというふうに思います。 確かに、消費者にとっては一見分かりにくい規定になるかもしれませんが、要件が明確であっても、個別の事案をその要件に当てはめるためには相応の法的な訓練が必要ですので、要件が明確であってもなくても一般消費者が権利行使をするには困難はあります。そこは消費者相談の拡充によって対処すべきものだというふうに思います。 先般の議論では、威迫により相談を妨げるという規定について、消費者庁は、想定される相談は全て規定するのだと、特に除外するものは考えていないと言いながら、個別列挙するということにこだわっていました。思うに、方法のいかんを問わず相談することを妨げてはいけないというのは、それは概念として明確なはずです。あるいは、消費者の行為が相談に当たるかどうかを判断するのに相談の方法が規定されていなければ判断ができないというものでもないと思います。要件を明確化するために、そもそも方法を規定する必要はないと思われます。 このような無意味な要件明確化はやめるべきだというふうに考えております。要件明確化についての考え方を改めれば、骨太の議論をしなくても困惑類型の脱法防止規定と判断力不足の取消し権は規定ができるはずだというふうに考えます。 次に、骨太の議論について幾つか意見を述べます。 まず第一に、行政手法の活用です。 従来の消費者契約法の枠組みにとらわれずに議論するということであれば、不適切な勧誘について包括的な規定とともに具体例を例示して行政処分の対象とするというようなことも検討すべきだと思います。 第二に、差止め請求です。 差止め請求権については、平成十八年改正で創設されて以来、消費者契約法に関しては見直しがされていません。差止め請求の対象の拡大や違法行為をやめた場合の差止め請求の在り方であるとか広告規制に関しての立証責任の軽減方法など、検討すべきことが多くあると思います。 第三に、消費者的事業者の保護です。 この問題は、消費者概念の在り方として平成三十年改正の附帯決議でも取り上げられています。一例を挙げれば、零細業者が必要のない高機能のサーバーを高額な価格で売り付けられてリースやクレジット契約をされるであるとか、虚偽、誇大な勧誘によってフランチャイズ契約をしてしまうなどというような問題です。 第四に、民法、債権法改正で消費者の特則として議論されていた事柄も踏まえて検討するべきだというふうに思います。 先日の審議でも話題になった商品、サービスの販売に付随する与信契約の取消しなどはまさにその例ですけれども、複数契約の無効、取消しとか継続的契約の任意解除権などは平成三十年改正の附帯決議にも取り上げられています。 第五に、消費者契約法の位置付けを考えた場合、個別性がやや強くて消費者契約法に規定するのがふさわしくないという問題もあるかもしれません。 折しも、平成二十八年の特定商取引法改正の施行が平成二十九年十二月でして、本年は五年後見直しを開始する時期です。特商法の改正と連動して検討することを求められると思います。骨太の議論が骨太の改正案に結実することを期待します。 消費者裁判手続特例法の改正についても、課題を解決する方策について私見を述べます。 民間団体が行うことによる費用負担の問題と、民事手続で悪質業者に対応するのは困難であるという、この二つの課題について検討するべきだというふうに思います。 民間団体が行う以上、活動の費用を確保しなければいけないので、費用倒れになるような事案には取り組めません。被害額がごく少額の事案では、多数の届出がなされにくく、手続に係るコストが回収が困難になります。そこで、オプトアウト型の制度にするなどの改善が必要だと考えます。 また、民事訴訟では、原告である団体が事業者の所在を突き止め、どのような事業活動をしていたのかを明らかにして、その違法性を指摘して、財産を探して仮差押えをする必要があります。民間団体の調査には限界があり、悪質業者に対する対応としては不十分です。行政が違法な収益を吐き出させて被害者に配分する制度をつくる必要があります。消費者庁では、執行部門も含めた特設チームをつくって法制化に向けて検討すべきだと考えます。 以上のとおり、対応すべき課題は多岐にわたるわけですが、抜本的議論には時間が掛かるとして課題を先送りすることなく、努力義務の実現のための努力をしつつ、取消し権の迅速な検討と違法収益吐き出し制度の創設に向けた検討に早期に着手していただきたいと思っております。 私の意見陳述は以上です。
○委員長(舟山康江君) ありがとうございました。 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑を行います。 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。 質疑のある方は順次御発言願います。
○阿達雅志君 自由民主党の阿達雅志です。 今日は、三人の参考人の皆さんから非常に貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。 三人の参考人の方、それぞれお話しになっている中で、やはりこの報告書と法案において取消し権のカバーする部分について今回大分差があったということでそれぞれが陳述をされたわけですけれども、その中で、やはり今回対象にできなかった部分というのは定式化、それから要件の設定が難しかったという、そういう部分についてはそれぞれの皆さんから話があったんですが、一方で、やはりこの消費者契約法というものについての考え方のところで、それぞれの方、若干意見の相違があるようにも感じたんです。 それは、やはり、鈴木参考人は、消費者契約法の大きな趣旨というのを、やはり実務の観点だと思いますけれども、被害の回復、救済というところに非常にポイントを置かれて、そしてまた増田参考人も同じようなことだったと思うんですけれども、一方で、山本参考人は、これにもう一つのその行為規範の部分、これをやはり消費者契約法ということでしっかり織り込むべきだという、こういう御意見だったというふうに理解をしたんですけれども。 やはり、この消費者契約法がもし民法の特別法ということで限定するのであれば、やはり本来は民法の取消し権の対象になる瑕疵ある意思表示だとか公序良俗に反する行為、この部分が関わってくる。これを、その消費者の場合に要件を多少変えていくという、こういう話なんだと思うんですけれども、そういう考え方を取った場合に、その消費者保護ということを考えて、どこに本当にポイントを置くのか。 鈴木参考人が最後のところでおっしゃったとおり、消費者の方って、そもそもそういういろんな誘いを受けたときに、法律を考えながら対応する方というのはまずいないわけですね。それから、仮に紙を見せられたって、普通はその中身分からない。まして、法律がどうなっているかまではチェックする人というのはいませんから。そうすると、ここで言う行為規範というのは、どうしても事業者側への行為規範ということになるのかなというふうにも思うんですね。 先ほど、もう一つは、その刑事、行政の要件と、やはりこの民法上の要件というのは当然違っていいということ、御指摘がありました。そういう中で、増田参考人が、一点、立証責任を転換するということを御指摘をされたんですけれども、これについてちょっと山本参考人にお聞きをしたいんですけれども、こういう要件を定式化あるいは要件を厳密に決められない場合に、消費者保護という観点で立証責任を転換するということは難しいんでしょうか。いかがでしょうか。
○参考人(山本敬三君) 幾つか御指摘いただきましたので、順に所見を述べたいと思います。 まず、消費者契約法は消費者を救済することを主たる目的としたものであって、例えば無効や取消し等の効果をもたらす、そこに意味があるのではないかという御指摘ですが、これは私自身も強調していたところで、私法の、ほかでは代えられない役割がまさにそこにあるのだろうと思います。これは、民法はもちろんですけれども、消費者契約法においても変わりはないと。 ただ、これは消費者契約法だけではなくて民法もそうなのですが、そこで一定の規定、規範を定めますと、それが現実には行為規範としての役割も併せて果たすことになっていきます。事後的に解決をこうするとした場合、今後そうするとそのようなことをしないようにしなければいけない、あるいはこういうことをすべきであるというようなことが設定されていきます。それは消費者契約法に限らないことかと思います。 私が申し上げたのは、そういう意味を持ち得るということも併せて考えなければならない。もしそうだとすると、幅広く、したがって、どこまでが対象になるか必ずしも明確でないような形で規範を設定しますと、過剰な、本来必要なものを超えた行為規制が及んでいく可能性がある、ここもやはり考慮しないと、とりわけ立法をする際には問題があると。ただ、これもおっしゃるように、そこで具体性、明確性といったものを過度に要求していきますと、本来の役割、つまり公正な紛争解決を実現することはできない。言い方を変えれば、消費者の必要な、公正な救済を実現することはできなくなってしまう。ここのバランスをしっかり考えないといけないというのが私も申し上げたかったところです。 そして、立証責任の転換に関しましては、もちろん立証責任に関しては様々な考え方があるところで、特によく言われるのは、必要な情報が事業者の側にのみあるような場合について、消費者に立証責任を課すと現実の立証がやはり非常に難しくなってしまう。あるいは逆もあります。消費者の側に情報があって事業者の側から分からない場合に、事業者が立証責任課せられますと、どうしても立証し切れないという問題は生じる。そういう課題を解決すべきだという点があるというのは承知しておりますし、私も全くそのとおりだと思いますが。 で、お答えは一点だけですが、何を立証するかというその中身を具体的に挙げることができませんと、立証責任課せられた方が結局どうしようもなくなってしまうという問題がある。平均的な損害はちょっとそういう面がかなり強いんではないかと、それがずっと検討を続けてきて最後に残った問題であると、そういうふうにお答えをさせていただきます。 以上です。
○阿達雅志君 今のお答えについて、ちょっと二点確認をさせていただきたいんですけれども。 一点目は、その行為規範として考えたときに、取消しの対象になる行為と無効の対象になる行為で違うと思うんですね。行為規範という意味では無効というのは非常に強いわけで、取消しというのは、あくまで取消し権ですから、それを申し立てる側のあくまで権利になると。そうすると、行為規範としては本当にどこまで効果があるのかなというのが一点目です。 それから二点目、実は私、立証責任の転換と申し上げたときに、イメージを持ったのは、むしろ事業者側に立証責任を転換するということであって、これは消費者側が立証責任持たされたらほぼ無理だと思うんですけれども、事業者側は、少なくともそれによって利益を得ているんであれば、その程度の立証は、相手がちゃんとしていたという立証ぐらいは本来するべきなんだろうと。これは消費者契約法に限らず民法でも同じではないかというふうに思うんですが、その辺り、いかがでしょうか。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 無効と取消しですけれども、これはもう釈迦に説法のお話でして、取消し、もう取消し権を行使しますと無効という効果が認められます。その限りでは、最終的には効果は同じです。違いは、取り消すことができるという権利を取消し権者が認めるかどうか、ここに違いがあるものであって、行為規範としては大きい違いは必ずしもないのではないかなというふうに私自身は考えております。公序良俗違反と詐欺とで違いがあるかという問題かもしれませんが、やはり詐欺はしてはいけないわけでして、そういう意味でも、行為規範の制定という限りにおいては、少し差はあるかもしれませんけれども機能はするのではないかなというふうに思います。 立証責任の転換につきましては、先ほど全く申し上げたとおりなのですが、事業者側が自分の中でどのような考慮に基づいてどのようにその条項を定めたかと、これは立証可能なんだろうと思いますが、それが平均的損害、自分だけではなく平均的な損害だと言われたときに、それとの関わりでの違いというのを立証し切れるかというと、現実にはなかなかどうも難しそうであるというのがやり取りを通じていて浮かび上がってきたところでして、やはり検討会でも、最後には、この不当条項の不当性の基準自体をやはり変えないと問題を適切に解決していくことが難しいんじゃないかというのが私は共通了解として最後あったのかなというふうに理解しているところです。 以上です。
○阿達雅志君 ちょっと今の部分を確認をさせていただきたいんですけれども、その取消し権についての立証責任の転換の話と損害についての立証責任の転換の話、二つはやっぱりこれ対で議論をされていたということなんでしょうか。
○参考人(山本敬三君) 立証責任の転換について正面から検討をしていたのは、今も申し上げましたとおり、平均的な損害に関する事柄です。これは附帯決議でも検討を求められたことですので、それに当たります。 その他につきましては、取消し権も含めまして、もちろん一般的に誰にどのような立証責任を課すか、つまり規定をどのような形で定めるかという、一般的な検討の中で立証責任を踏まえるというのはございましたけれども、おっしゃっているような消費者の立証、極めて困難なのでどうするかという問題については、一部を除きまして、それが主たる問題として検討されていたわけではないと思います。ただ、一部につきましては、事業者がその認識したことを要件とすべきか、あるいは重過失で足りるか、そういう形での検討というのは行われておりました。 以上です。
○阿達雅志君 ありがとうございます。 どういう審議をされたかが少し分かりました。 ちょっと、もう一つのテーマに移りたいと思うんですが、消費者裁判手続特例法、この活用について、先ほど鈴木参考人の方から、費用がかさむという問題、それから悪質業者に対して実効性がないんじゃないかという、こういう御指摘がありました。 実際にこれ、検討会の中でも、制度の活用範囲がいまだ広がりを欠いているという、こういう指摘がされていたと思うんですけれども、この制度、最初につくったときに、やはりこういう消費者団体訴訟制度というのは社会的インフラなんだと、これからどんどん活用するんだということだったと思うんですが、これが実際には余り活用されていないというところについて、たしか先ほど増田参考人の方からもまだ使っていないというお話ございましたけれども、どの辺りにその使いにくさあるいは今まで使わなかった理由というのがあるのか、増田参考人にお聞きいたします。
○参考人(増田悦子君) 御質問ありがとうございます。 私どもは、今現在、適格消費者団体ではありますが、特定適格になるかどうか非常に悩ましく、検討をしているところです。やはりそれは、それに携わる人材とそれから費用について非常に難しいということが分かっておりますので、現在それ、ちょっと当分の間は無理だと思います。 そしてまた、今現在、直接の、個人の方からすると直接自分の被害が回復できるということにはなっていないので、やはり特定適格でやらざるを得ないと思うんですけれども、その辺の仕組みについて、まだ消費者の方、国民の方々に十分に理解がされていないのかなという、そういう印象を持っております。
○阿達雅志君 山本参考人、何かその点について御意見ございますか。
○参考人(山本敬三君) 済みません、私の方からは特に申し上げることはございません。 消費者契約に関する検討会ではもちろん特定消費者団体等に関する事柄について議論はいたしましたが、今の点に関しては全く別の問題でして、どうすれば活性化できるかというのは別として、問題があると認識しています。 個人的な意見を述べさせていただけるとするならば、やはり支援、団体への支援が不可欠ではないかと思います。諸外国で活用されている例というのはもちろんございますけれども、やはり公的な支援が実際に行われて初めて活動ができているというのが現実だと思います。そこが日本ではまだ足りない。今回、かなりそれを後押ししていただきましたけど、更にそこを考えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
○阿達雅志君 参考人の皆さん、ありがとうございました。 終わります。 ─────────────
○委員長(舟山康江君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、山本博司さんが委員を辞任され、その補欠として平木大作さんが選任されました。 ─────────────
○長浜博行君 立憲民主党の長浜博行でございます。 三人の参考人の方々には、今日はよろしくお願いをいたします。 お話を拝聴していて、消費者問題に関しては消費者と事業者が角突き合わせてやっているわけではないというお話もありましたけれども、なかなか三人のお立場からは拝聴していて緊張感のある意見が出ているなというふうに私は感じました。そこで、この消費者契約に関する検討会があって、そしてこの法改正、三回目の法改正ですね、先ほど経緯を御説明いただきましたけれども、至っているというふうに思います。 まず、総論として伺いたいんですが、先生方から提出された資料なんでしょうか、調査室から入手をした資料の中で、山本参考人が、第二十三回消費者契約に関する検討会の昨年九月七日の議事録を提出をされております。閉会のときの御挨拶で、今後に向けた所感というところでありますが、個々の問題について、何が過少規制であり、何が過剰規制かという点については意見の違いがあるとしましても、過少規制になっても過剰規制になってもいけないという議論の枠組みが共有されることの意味は非常に大きなものだったと言わなければなりません、それがこの検討会の重要な成果というふうにおっしゃっておられますが、このことについてもうちょっと御説明をいただければと思います。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 最終回で座長として二十三回の議論を踏まえた所感を述べた部分が今御指摘いただいたところです。 最初にも先ほど御説明させていただきましたが、かなり以前から消費者契約法の改正については私関わってまいりました。もっと遡れば、民法の債権法改正のときから、一部こういう問題についても関わっておりました。 かつてに関しましては、まあ角を突き合わせるというほどではありませんが、やはりかなり厳しく対立するというような議論をずっと経験してまいりました。私も今よりはずっと若かったものですので、かなり熱く議論をしていたというところもございますが、一次改正、二次改正と続きまして、特に二次改正が終わる頃からは、私が最後の所感で申し上げたような、過剰にも過少にもなってはいけない、これはお互いに共有した上で、何が過剰か、何が過少かという点について争いはあるものの、その枠内で議論をしようという傾向が強くなってきて、そして第三次改正のこの検討の中ではそれはかなりはっきりと現れてきたように私自身は受け止めました。非常に冷静で客観的な議論が行うことはできたんではないかなと思います。 事業者の方も、実際にその消費生活相談事例とか裁判例の問題のある事例を御覧になりますと、やっぱりこれは、こういうもの、こういうケースであれば無効や取消しと認めること自体については特に反対するものではないと、ただ、それをルール化しようとしたときにどう定式化するかとなるとなかなか簡単ではないと、そういうような議論をしていたと私自身は理解しております。
○長浜博行君 失礼しました。 個別の問題に入ります。 これは、増田参考人は陳述の中で述べられておりますので、鈴木参考人に伺います。 今の山本参考人の御意見を受けた上で、検討会で議論された判断力の著しく低下した消費者に係る取消し権の創設が改正案に盛り込まれませんでした。心身の状態を事業者の勧誘時における情報提供の際の考慮要素に追加されることとなったわけでございます。これをどのように評価をされておられるんでしょうか。
○参考人(鈴木敦士君) 率直に言って、判断力の著しく低下した場合の取消し権の規定が実現しなかったというのは残念に思っています。取消し権の三つ提案されている中でも、この取消し権についてはある程度考え方の中で要件が示されていたものだというふうに考えています。 生活に著しい支障を生じるという要件が曖昧であるというような議論があるわけですけれども、それは程度問題でありまして、過量は明確だというふうに消費者庁は再三言うわけですけれども、過量でもなかなかその判断に困る場合はあるわけでありまして、程度問題でして、結局重要なのは、この要件の中では事業者の認識を必要というふうにしていますので、多少不明確な点があっても規定として機能するのではないかというふうに考えていたところです。 以上です。
○長浜博行君 ありがとうございます。 昨日の夜の七時のニュースを見ていて、その後の、見ようとしたわけではないんですが、「クローズアップ現代」に入っていったときに、氾濫するナンバーワンという、何かイメージ広告、みんなナンバーワン、ナンバーワンとこう出すと、その根拠が分からなくても、広告の不当表示じゃないですけれども、そういった問題が出ていました。歯磨き粉の例だったんですが、初回お試しが物すごく安くて、何百円だったかな、で、二回目からは自動的に何千円という単位になるんだけれども、その買っちゃった人が百回電話掛けてもつながらない、解約しようとしてもつながらないというのを昨日の昨晩、偶然見ました。 そこで、本法案では、消費者の求めに応じて消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供することが事業者の努力義務に追加をされました。検討会では、消費者が解除権の行使を円滑に行える様々な手法による配慮を含めて努力義務の内容とすることが議論をされていたというふうに思っております。この様々な手法による配慮と、それから本法案で言う必要な情報を提供するというのは、見方を変えれば同じことなのか、この文脈をどのように判断をしたらいいのか、山本参考人に伺いたいと思います。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 検討会の報告書では、解除に伴う手続に必要な範囲を超えて消費者に労力又は費用を、解除するのに消費者に費用又は労力を掛けさせる方法に制限する条項に、あっ、済みません、間違えました、解除権、努力義務の方ですね、もう一度、撤回して始めます。解除に関する情報提供というのが、契約の解除する際に丁寧にされるべきだと、これがまず第一に強調したところです。その上で、解除権行使のために必要な情報提供にとどまらず、解除権行使のために、そのサポート体制の構築なども含めて、消費者による解除権の行使が円滑に行われるための配慮も有益と考えると、これも努力義務とすることが考えられるというふうに、少し条文化の形ではない形で提案をしていたところです。 これが最終的には、御指摘のように解除権の行使に関して必要な情報を提供することで少しこの必要な情報というのは何かというのが解釈の余地が残っているのかなと思います。その中で報告書で提案したような事柄が取り込まれていけばよいのかなというふうに個人的には思うところではありますけれども、この辺りを詰めていくというのが、法案が成立すればですけれども、課題になるのではないかなと思います。逐条解説等でどのようにそれを示していくかということが現実的には問題なのかなと思います。 以上です。
○長浜博行君 ありがとうございました。 増田参考人に伺いたいと思います。 積極否認の特則に関してでございますが、平均的な損害の額は、立証に必要な情報は事業者が持っているゆえに消費者や適格消費者団体が立証することが難しいというケースが多いと思います。検討会報告書では、平均的な損害の額に関する違約金条項の効力に係る訴訟では、その事業者が自己の主張する平均的な損害の額とその算定根拠を明らかにしなければならないこととする規定を設けることが考えられていたというふうに思っております。更に言えば、乱訴のおそれや、対策や、積極否認特則の利用主体を秘密保持義務のある適格消費者団体や特定適格消費者団体に限定することなども入っていたというふうに思っておりますが、しかし結果的にはこの法案には入っていないということをどのようにお考えになりますですか。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 その点については非常に残念に思っています。 消費生活相談の現場で解決することができない場合というのは、やはり適格消費者団体であったり個人で裁判をするしか方法がございませんので、そういう意味では適格消費者団体、特定適格消費者団体が活用できるものであるべきだというふうに思います。
○長浜博行君 山本参考人、今の件、何か補足ありますか。
○参考人(山本敬三君) 御指摘のとおり、積極否認の特則といいますか、立証責任の負担を軽減する特則というのを検討会では検討いたしまして、これかなり議論を重ねた上でではありましたけれども、とりわけ利用主体を消費者一般に広げるべきかあるいは適格消費者団体に限定するかというところでかなり議論をいたしました。やはり、消費者一般に広げるとなりますとなかなか難しいというので、適格消費者団体であれば、特許法に比べると少し違うかもしれませんけれども、情報の管理、守秘義務等に関しても規律があるということで、これであれば何とか法案化が可能かということで提案をさせていただきました。 最終的には、そこまで明確、特許法と同様のような明確な規定ではないものの、算定根拠を説明するよう要請し、それに対して事業者は、正当な理由がある場合を除いてその要請に応じるよう努めないといけないと。少し緩やかな形にはなりましたけれども、適格消費者団体からこういう要請があってそれに応じないというのは、見方によってはかなり問題があることでして、通常はこれに従って、少なくとも算定根拠で営業秘密等に当たらないものは出されていくのではないかなと期待しているところです。 以上です。
○長浜博行君 これはちょっと私の読み方が間違っていたら教えていただきたいんですが、本改正案では、適格消費者団体から不当条項を含む契約事項について開示要請を受けたとき、また差止め請求の結果、事業者が一定の義務を負い、その義務の履行のために講じた措置について開示要請を受けた場合に、事業者はその要請に応じる努力義務がある。検討会でも議論されたと思いますけれども、それは法的義務を負うべきだったという議論ではなかったのではないかなというふうに思うんですね。 なぜなら、適格消費者団体は消費者の利益を守るために差止め請求訴訟を提起する団体と行政が認定をしているんですから、これは努力義務で、この法律案で努力義務になってしまったんですが、これでよろしいのでしょうか。あるいは、何か読み方が違ったのか、どなたか教えていただければと思うんですが。
○参考人(山本敬三君) 御指摘ありがとうございました。 努力義務に関しましては、今御指摘のこの部分だけではなくて、ほかの部分でも努力義務の新たな導入を提案、法案化して提案されていますし、そもそもが消費者契約法の現行の三条で努力義務が定められております。この努力義務が広がってきているのをどう受け止めるかということとつなげて考える必要があるかと思います。 これは議論の途上であって、まだ確立した考え方ではないかもしれませんが、消費者契約法の成立時点、最初の制定時点から努力義務というのは法的義務かどうかという議論がありまして、立案に関わられた方からは、先生からは、やっぱりこれは法的な義務なのであると、しかし努力義務であると、そういう考え方が示されていました。私もそれがむしろ正しいんではないかなと思います。 ただ、サンクション、違反したときの明確なサンクションは定められていない、そういう性格のものではないかなと思います。私が先ほど申し上げましたのも、サンクションはないけれども、やはり括弧付きの法的な義務であって、やっぱり正当な理由がない限りはそれに応じないわけにはいかないのだろうというふうに考えているところです。
○長浜博行君 終わります。ありがとうございました。
○安江伸夫君 公明党の安江伸夫です。 今日は、三人の参考人の先生方、本当に大変貴重な、これまでの経験、また現場での声等を踏まえたお話をいただきまして、ありがとうございます。 まず、私から山本先生にお伺いをさせていただきたいと存じます。 ちょっとこれはひとえに私の理解力の不足というところで恐縮なんですが、先生に御説明いただいたレジュメの六ページ、終わりにというところで、最後、御提言的なところを含めて記述をいただいているところであります。 前段のこの事前規制から事後規制への現実という項目、①、②でお示しをいただいているところでございますが、それぞれ結果として、この自由な活動が阻害されている面があるのではないか、②のところで、公正な紛争解決の実現が阻害されている面があるのではないかというところ、具体的にいま少し、どういった状況なのか、どういった問題意識なのかというところをいま少し説明をいただければと思います。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 今御指摘いただいた部分、簡潔に書いておりますのでなかなか分かりにくいということではないかと思います。これは、この場におられる方々はリアルタイムで経験したことですのでお分かりいただけるだろうと思いますが、事前規制から事後規制へ、以前は、まあどこまで本当かは別として、行政による事前規制ががっちりと掛けられていて、その結果として自由な市場への参入等が阻害されていて、活力ある活動というのはできないと。で、入口はむしろ広げて、自由に活動してもらって、しかし事後的に問題のあるものはチェックを掛けるという、こういうような発想だったのではないかと思います。 しかし、これは私法については後で申し上げますが、私のいる大学などもそれで設置基準が緩和されまして、参入が容易になった代わりに極めて厳しい事後規制でチェックが入るようになりまして、むしろ実感としては全部守らないといけなくなってしまったと。入口が入った後はむしろ信頼のあるものに委ねたのであって、自由な活動を促進するということだったはずなのに、事細かに全てチェックが入って、何かそれとそごを来していると事後的にサンクションが掛かってきてしまうと。それで、私自身は管理社会化という言葉を用いたわけですが、こういう側面が現に生じてしまっているのではないかと。 これは公法的な規制についてかもしれませんが、私が民法学者としてより切実に思うのは、事前規制の、先ほど過剰なということを申し上げましたけれども、行政あるいは国が介入する以上、規律は明確なものでないといけないと。この考え方が事後規制の要である私法にまで及んできて、私法、民法も含めてですが、事細かな、かなり具体的な規定でないと駄目だというようになりつつある。その結果として、公正な紛争解決というものが実現しにくくなってしまっているのではないかと。 先ほど、私、事業者の方の例を挙げました。実際の裁判例あるいは消費相談生活の事例を実際に見ていただきますと、やっぱりこれはかなりひどいものであって、この場合に無効や取消しというのを認めるべきだというのは事業者の側からもそれは分かると。しかし、それを実現するためにこの個別的な具体的なルールを作ろうとしますと、やはり過不足なくそれを定めるのが非常に難しくなってしまう。このジレンマにこのところずっと苦しんでいる状況ではないかなというふうに思います。 そういう意味で、骨太と言うかどうかは別としまして、基本に立ち返って、私法の中の消費者契約法の役割というのをもう一度考え直していく必要がある。そこから説得しないと、なかなかこの理解が広まっていかないのではないかなと、そう考えた次第です。
○安江伸夫君 ありがとうございました。 続いて、鈴木参考人の方にもお伺いさせていただきます。 先ほど、様々、今回の改正法案に含まれていなかった部分についての問題点をたくさん指摘いただきましたところで、その中で、今後の骨太の議論に向けてのサジェスチョンも幾つかいただいたところであります。行政処分の話、あるいは差止め、この差止め請求の在り方等についても指摘をいただいたところでございますが、このうちの差止め請求を今後しっかり議論していくんだということにつきまして、いま少し御説明をいただければというふうに思います。
○参考人(鈴木敦士君) 差止め請求の件に関しましては、まず、その差止めの対象が現状では取消し権のあるようなことあるいは条項が無効になるようなものに限るという発想になっていまして、かなり限定的なものになっていて、個別の法律で規定しているんですけれども、もう少し差止めの範囲を拡充できないのかという問題があると思います。 また、特に表示についての差止めの場合については、商品の実際のものに比べて優良かどうかというようなことについて、なかなかその商品についての情報が事業者が持っていて分かりにくいということで、行政処分においても合理的な根拠を示す資料を提出させて、それが合理的な根拠と言えなければ優良誤認だとみなすというような考え方が取られているわけでして、そうしますと、適格消費者団体においても似たような立証負担の軽減の方法が必要ではないかというようなことなど、幾つか見直すべき点があるだろうというふうに思っています。
○安江伸夫君 ありがとうございます。 続けて鈴木参考人にお伺いさせていただきます。 今回の、現実に今審議されている改正法案の条文そのものについての評価についてお伺いしたいと思うんですが、今回、四条三項で契約の取消し権を追加をさせていただいております。この今ある規定の条文そのものに対しての評価について、もしあれば鈴木参考人の御意見を伺いたいと思います。
○参考人(鈴木敦士君) 四条三項の困惑類型に取消し権が追加されたことについては、この要するに要件にぴたっと当てはまるものについては、逆に疑問の余地がなくなって取り消せるということが分かってくるということなんですけれども、そういう意味で一定の意味はあるというふうには思うんですけれども、取消し権の三条の四項のところを見ていきますと、一号、二号というのは割とシンプルな規定になっていまして、三号、四号以下は結構長いですよね、要件がいろいろ複雑になってくると。要件が複雑になってくると、それを擦り抜けるような事案というのが容易に出てきてしまいまして、今日の参考人の増田参考人の参考人資料の中にも全相協の資料がありまして、具体的な事例がいろいろ載っていたりするんですけれども、容易に要件を擦り抜けるような規定ができてしまうということで、規定を細分化することによって逆に隙間ができてしまうと。 ある程度抽象的な規定であれば、言わば原理原則を示しているようなところがありますので、そこから何というか、その範囲に含まれるんですけど、明確に細かい要件にすると、そういう範囲に含まれるという解釈できなくなってしまうということで、隙間がどんどんできていってしまうということがあるので、ある程度概略的な規定にできればしていただきたかったなというふうに思っているところです。
○安江伸夫君 続けて、増田参考人にもお伺いをさせていただきたいと思います。 ちょっと法案の内容そのものとは若干離れるかもしれませんが、まさに消費者相談の最前線の現場で日々いろんな方の御相談をいただいている中で、やはり今、Eコマース、インターネットの通販等の被害が大変実数としても増えてきているかなというふうに思っております。現場の相談を担当されている中で、このEコマースによる相談、被害の実態、どのように御認識されているかということをお教えいただければと思います。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 インターネット通販に関しましては、コロナ禍において非常に有益な方法として広く普及しております。それによってトラブルも非常に増大しておりまして、さきにお話ありましたけれども、定期購入に関する御相談が非常に多かったです。でも、それについては特商法で手当てされましたので一定の解決はできるようになっているんですが、更に複雑な契約、購入方法にさせるというような実態も出てきておりまして、それについて今後どうするかという問題。 そして、あと、例えばサブスクみたいな契約というのは今後また増えてくると思うんですけれども、契約の入口と出口が違うというようなこともあります。キャッシュレスで決済するに当たって、自社がキャッシュレス、決済サービスを持たないので、決済サービスの事業者を導入することによって、解約するときには二つの作業が必要になる。そういうことも含めて、解約の方法について、表示を、どの程度丁寧に表示を分かりやすくするかという問題というのは非常に大きいのだろうと思います。消費者のネットリテラシーというのも非常に重要ではありますけれども、やはりその事業者側の表示、広告の在り方というのは非常に大きな問題かなというふうに思っております。
○安江伸夫君 ありがとうございます。 また、増田参考人、先ほど、消費者教育ではやはり不十分であるからこうした契約法等の強化が必要なんだという御指摘いただきました。 その辺りはしっかり今後の審議に生かさせていただきながらも、あえてこの消費者教育等では足らざるという観点で、更に何かもう少しできることはないかということで、もし御意見あれば、消費者教育についてですね、御意見あれば教えていただければと思います。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 消費者教育に関しては、今まさに消費者庁の方で広く実施していただいていますので、これからだというふうに思います。これまでやっていただいていましたけど、まだ十分ではなかったので、今後も継続する必要がある。 そしてまた、消費者教育を受けてこなかった社会人というのがある年代からあります。その方たちがまた高齢者になっていきますので、そういう方たちにどうやって消費者教育を届けるかという問題。そしてまた、高齢者については、オンラインでの講座というのが非常に難しい状況にありますので、この対面が難しい中でどうやって継続的に行っていくか。やっぱり、手口が変わりますと分かりにくくなりますので、継続するということが非常に重要だと思っております。その点については私どもの協会としても頑張っていきたいというふうに思っております。
○安江伸夫君 ありがとうございました。 また、ちょっとネットの通販の関係の問題意識で、やはりBツーCという従来の消費者被害の枠組みというものが、やはりこのCツーCとかあるいは隠れBといった問題意識等もますます今後課題になってくるかと思います。こうした、今後の骨太の議論はそうした観点も含めての議論が必要なのではないかなというふうにも思っているところであります。 そこで、鈴木参考人の方にお伺いさせていただきたいんですが、今後の消費者保護を考えるに当たってのこのCツーCの取引の規制の在り方について、もし御意見があればお伺いをしたいと思います。
○参考人(鈴木敦士君) 御質問ありがとうございました。 CツーCの規律に関しては、一応民法の一般の規定が適用されるということになるんだと思われます。格差はないんですけれども、どちらも、何といいますか、ある意味脆弱な立場に立っていて取引がされるということになります。 ただし、現状で今CツーC取引で問題になっているのは、仲介者がいるんだろうと思うんですね。デジタルプラットフォームなどがあって、それで仲介されて、実際の社会においてはほとんど接触して取引をするはずがないような人たちが一緒に取引をしているというようなことになっているので、仲介者に対して一定程度の役割を果たしていただくと。紛争解決に助力をしていただくとか、そもそも紛争が生じ得ないように余り過大な広告はそもそも載せられないようにするとか、仲介者について役割をきちんと果たしていただくような法整備なり努力義務で、業界で自主規制でも結構ですけど、やっていく必要があるのではないかというふうに思っています。
○安江伸夫君 それでは、時間が来ましたので、私の質問は以上で終わりといたします。 貴重な御意見、ありがとうございました。
○田村まみ君 国民民主党・新緑風会の田村まみです。 今日は、三名の参考人の皆様、本当にありがとうございました。 本当に解決点を見付けるために難しい議論を重ねてこられたということは、検討会の報告書を読めば読むほど伝わってきますし、改めて私たちが今審議している法文、条文を見ると、相当難しい中で様々な言葉を選んで報告書を出されたということには、検討会の皆様、委員の皆様にも感謝申し上げますし、それを受けて、今日、参考人の皆様がそれぞれ陳述していただいたこと、しっかりと受け止めて今後の議論に向き合いたいというふうに思います。 その上で、まず初めに、山本参考人にお伺いしたいというふうに思います。 先ほど来、過剰でも過少でもというような言葉が重ねて使われていまして、今ほど私の、今回の、検討会から法文化に向けてのところでの意見も申し上げました。 平成の二十八年、三十年の改定に携わってきて今回も携わってきたときに、徐々にいわゆる事業者側と消費者側というところの少し対立するような部分というところが冷静な議論に変わってきたというような印象をお話しされたんですけれども、何がそれ、そうさせているのかというところ、変わってきている何かポイントというか、もう所感で結構ですので、教えていただきたいと思います。 というのも、正直やっぱり消費者被害の類型というのが、先ほども例示にありましたネット等の直接の取引も、じゃないような部分で想定外のことが起き始めているわけなので、むしろなかなか難しい問題が増えてくる中で対応できないということでの争点が増えていくんじゃないかと思うんですけれども、相違点が増えていくというふうに思うんですけれども、逆に、皆様の意見が冷静な形できちっと出されていくというふうになっている、そこがどういうことなのかということをちょっと印象でいいので教えてください。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 私も、何がその要因なのかと言われますと、明確な形で申し上げるのは難しいんですけれども、恐らくいろいろな要因があるんだろうと思います。 最も大きいと思われるのは、やはり現在の市場環境あるいは経済社会の状況において、やはり消費者の権利利益を考慮して取引、事業活動をしなければならないと。そうでないと、やはり事業あるいは事業者に対する信頼を維持できないし、そして、ひいてはやっぱり経済社会全体がおかしなことになってしまうと。そういった認識が前からあったとは思うんですけれども、それがより広く、少なくとも検討に関わられるような方々の世界では共通了解になってきているのかなと思います。 規律の細部に関してはいろいろな御意見があってなかなか対立があるのですけれども、その大枠に関してはほぼ共通了解が得られているのではないかなというのが私の印象です。
○田村まみ君 ありがとうございます。 今の質問、山本参考人だけにと思ったんですが、横の増田参考人も少しうなずきながら聞いていらっしゃったので、是非、印象で結構ですので、発言いただければと思います。いかがでしょうか。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 私も、信頼できる事業者さん、大手の事業者さんと、数多くいることを存じておりまして、よく話合いをしたり意見交換する中では、非常に消費者志向が強くなっているというふうに感じています。そういう事業者、消費者の対応をきちんとやって費用を掛けている事業者さんの方がやっぱり報われる社会にならなくちゃいけないと思いますので、そのために何をするかということが必要かなというふうに思います。
○田村まみ君 ありがとうございます。 正直に、そして消費者志向、そして事業者の社会的な責任を果たすという意味で、事業をされている事業者への対応ということはまた配慮されるべきものだというのは私も同感です。しかし、再三出てくる、この法案の審議のときに出てくる、いわゆる脆弱な消費者という表現でこの法案のところで対応すべき人たちを議論していっているんですけれども。 今回、増田参考人にお伺いしたいと思います。あわせて、その後に鈴木参考人にもお伺いしたいと思います、同じ質問です。 消費者の判断力に着目した規定の部分で、いただいた資料にも載っていたんですけれども、判断力の低下に関する基準、これは消費生活センターにおける被害者救済において有効に活用できる方法であることを要望しますというふうに要望とされていました。やっぱり、この先ほどの陳述の中にもありましたけれども、高齢者の方々のその判断力が乏しいという状況を評価するというのがなかなか交渉の場面で難しいということ、そこを、何とか現場では使える形で、判断できる形でのものを規定してほしいというような御要望が書かれておりましたけれども、その点について、具体的に、認知症の診断書がない場合にどのような形でそれができるかということ、現場の工夫も経験もおありだと思うので、是非お示しいただければと思います。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 やはり、その人の生活実態をよく聞き取りをして、お料理ができていたのか、買物は自分で行って、同じものを何回も買ってくるようなことがなかったのかとか、やっぱりそういう、どういう生活をしてきたのかということを非常に細かく聞き取りをしてその方の状況を把握します。ちょっと話したぐらいでは分からないことがあっても、少し話をすると、やはりおかしいなと思うことが結構あるんですね。それがどうして分からなかったんだろうかということは日々の相談の中で感じているところでございます。 ですので、病院での診断書とか法的な評価ということは得ていなくても、やはりそういういろいろな確認というのをして説得をするということをしておりまして、それに応じていただけるケースもあれば、一切応じていただけないケース、まあそちらの方が多いんですけれども、そういう状況に今はあります。
○田村まみ君 是非、鈴木参考人にも、今度、裁判等も扱っていらっしゃる立場でも、この判断力についての対応していくときの何か規定等が用いられるべきなのか、それとも何か工夫の域で対応できるのか、その辺の御所見いただければと思います。
○参考人(鈴木敦士君) 判断力不足についての明確に簡易に立証するというのはなかなか難しい話で、今、増田参考人が述べられたような日常生活上の状況とかそういったことを踏まえて、それが表れている介護保険の認定であるとかカルテであるとか診断書であるとか、そういったもので裁判で判断するんですけれども、それは、今の法律の枠組みによって判断する場合はそうだということで、結局、その判断力が不足していて事理弁識能力がないというか意思能力がないというような状態に至っているかどうかまでを判断するので、かなり要件としてはハードルが高いと、その中で状況を見るということになるんですけど。 今回の新しく作ろうとしていた判断力不足に着目した取消しの規定というのは、むしろ、そういうような状態、意思無能力とかそういうような状態に至る前の状態のことを言っているんだというふうに私は理解していまして、基本的には、少なくとも生活に著しく支障を及ぼすような取引というのに限定しましたので、生活に著しく支障を及ぼすような取引をして、何でそういう取引をしたのか具体的な事情とか状況とかが合理的な説明が付かないというようなものは、翻って、判断力が不足しているのだろうというふうに考えるということなのではないかというふうに思っています。
○田村まみ君 ありがとうございます。 最後に、私の持ち時間があと五分少々なので、三人の皆様に時間の限りお伺いしたいです。 実は、取消し権の部分で、やはり今回、その明確にできないという理由がやはり相当強い権限であるからということなんですけれども、一方で、事業者、悪徳事業者もそうなんですが、いわゆる事業者側が気にしているのは、悪質なクレーマーを気にしているということで、そのような明確化がされていないものについては取消し権がなかなか使えないというふうに、その辺のバランスがあるんじゃないかなというふうに推察しております。 実は私、悪質クレーム対策というものを常々取り扱っていまして、なかなか、消費者問題特別委員会、消費者庁の方と話すと、やっぱり消費者保護ですので、言うべきクレームというのは守られなければいけないから、なかなか悪質クレーム対策ということを一緒に取り組みましょうという形にはなりません。 名前、ネーミングは別としても、やはり昨今、令和二年度には、消費生活センターの皆様が、いわゆる相談されているはずの人たちが悪質な相談をしてくるということで、その対応のマニュアルまで消費者庁が予算費付けてまで作ったような状況も実際にはあるわけです。 であれば、この法律かどうかは別としても、いわゆる悪質なクレーム、クレーマーということに対しての何らかの表現をすることで、逆にこの取消し権ということをもう少し事業者側が、何でしょうね、悪質なクレーマーでなければということで、広い範囲で受け止められるのではないかというふうに逆説的に考えているんですけれども、いかがでしょうか。山本参考人からお願いします。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 これは、先ほど消費者教育に関してやり取りがありましたが、それとも関わる部分かと思います。 といいますのは、これ消費者に限らない問題だと思いますが、やはりそれぞれの人がそれぞれに権利や利益、法律上保護されるべき利益があり、あるいは自由があり、それを害してはいけないというのが市民社会の基本ルールだと思います。こういう基本ルールをやはり教育を通じて浸透させるというのは私は非常に大事なことだと思います。そして、消費者教育もその中に位置付けるべきだと思います。 消費者として言えること、言うべきこと、守らないといけないことは一体何かと、そして、相手にも同じように権利や利益はあるわけであって、そこを害してしまうということはやはり許されない、じゃ、どういうことができるのか、できないのか、こういう教育をしていくということも織り込んで、消費者教育の実現、充実というのは課題かなというふうに私自身は思っています。
○田村まみ君 増田参考人、お願いいたします。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 悪質なクレーマーについては、消費生活センターでも非常に受けておりまして大変な状況にあります。ですので、先生のおっしゃることは非常によく理解できるんですけれども、それを消費者契約法の中に取り入れるということになりますと非常に難しいなというふうな印象をあります。意図せずやってしまうようなケースというのもありますので、やはりその悪質クレーマーというのはどういうものであるかということの判断というのが難しいのではないかなというふうに思っております。
○田村まみ君 鈴木参考人、お願いいたします。
○参考人(鈴木敦士君) 悪質クレーマー対策問題は労働組合でもUAゼンセンさんとか提言されているということはよく承知しておりまして、弁護士としても、事業者側から相談を受けることもあれば、弁護士自身も事業者でして、悪質クレームというようなものに対して困っているというような事例とかがあったりとかするわけでありまして。 消費者教育も重要なんですけれども、事案に接していると、もう、ちょっと教育とか啓発とかいうレベルを超えているようなところもありまして、事業者としてはやっぱり担当者任せにせずにきちんと社内で体制をつくっていただくということをしないと、やはりその矢面に立っている人が潰れてしまうだろうなというのを思っていまして、パワハラとかセクハラとかと同様に、事業主の対応体制というのをきちっとするべきなんだろうというふうに思っておりますが。 消費者契約との絡みでいいますと、正当な権利行使なのか理由がないものなのかというのは第三者を入れて判断するということも必要でして、紛争解決制度がより使いやすくするようにして、もうちょっとそっちに早く移ってもらって第三者に決めてもらうというようなふうにするしかないのではないかというふうに思っております。
○田村まみ君 ありがとうございました。 時間ですので、終わります。 ─────────────
○委員長(舟山康江君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、高橋克法さん及び比嘉奈津美さんが委員を辞任され、その補欠として馬場成志さん、藤末健三さんが選任されました。 ─────────────
○音喜多駿君 日本維新の会の音喜多駿と申します。 三人の参考人の先生方、今日は貴重なお話をいただきまして、誠にありがとうございます。 質疑者も後半になりましたので、私が用意していた質問のほとんどは出尽くしておりまして、ちょっとこれから聞くのは、重複をする点、あるいは細かな点、そして法案とは直接関係ない点も含まれると思いますが、よろしくお願いを申し上げます。 まず、鈴木参考人にお伺いしたいんですけれども、今回、この当日いただいた資料の中で諸外国の対応状況等に触れられている資料もございます。こうしたEUやイギリス、アメリカ等々、その他の国でも行政の対応が進んでいく中で、そこと比較という観点から、今、我が国のこの法体系で不十分な点であるとか、あるいは行政対応において改善点、こうした点があれば、せっかくですので少しお話しいただきたいんですが、お願いいたします。
○参考人(鈴木敦士君) 御指摘いただきましたのは、行政における分野横断的な行政ルールを作るというような点についてのお話だと思いまして、EUでは、不公正な取引ということで一定包括的な規律を設けて、かなり詳細な具体的な例を別表というふうにしておりまして、それを禁止するということなんですが、どういうふうにして禁止するのかというのは加盟国に委ねられているようなところもありますが、割と行政的な手法を活用して禁止しているところが多いと。一部には、中には取消しとか無効とかそういった民事的な効力を付けている場合もありますけれども、全部についてそうしているわけではないというようなことなんですが、そういう包括的なルールがあると。 日本の場合は、個々の業法にいろいろなルールがあってかなり見通しが悪い状態になっていて、似たような取引でも業法がなければ適用されないというようなことになっているので、その辺が課題なんだろうというふうに思っているところです。
○音喜多駿君 ありがとうございます。こうした法律や行政対応を考える上で諸外国の対応というのは非常に参考になりますので、ありがとうございました。 続いて、山本参考人にお伺いいたしたいと思います。 少し大枠の話からなんですが、今日の資料でも、この平成の二十一年から、民法改正審議開始からの年表をお配りいただきました。こうした十年以上続く様々な審議の中で、この消費者問題に関わる大きな環境の変化としては、やはり成人年齢の引下げというようなものは一つ大きな転換点だったのではないかなというふうに考えておりまして、先ほど来、この審議、検討会の少し議論の雰囲気も変わってきたとかそういったお話もありましたけれども、この成人年齢の引下げということがこうした消費者問題のこういう議論やあるいは法律改正において影響を及ぼした点、そういうお感じになる点等があれば参考にお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございました。 配付資料の一ページ目に年表を掲げておきました。御指摘の民法の成年年齢引下げの成立自体は平成三十年、二〇一八年で、消費者契約法改正の第二次改正と同時ということになっております。 先ほども少し言及いたしましたけれども、この民法改正が現実に進むということをまさに受けて、消費者契約法の第二次改正でも、これは専門調査会の報告書でも意識はされていて問題提起はしていたところですけれども、具体的な条文案までには至っておりませんでしたけれども、立案、法案の成立、立案及び国会での審議の中で、この配付資料でいいますと二ページ目の上の方にありますが、経験不足、社会生活上の経験が不足するという文言等を入れることによって若年成年者への対応を一定程度図ったということが出ております。 そういう点では大きな影響を与えたという御指摘はそのとおりかと思いますが、もちろんそれだけではなく、より広い問題として検討する必要があると。専門調査会の検討でも、やはり若年成年者、それも十八歳、十九歳にピンポイントで当てたような規定を設けるというのは消費者契約法としてはふさわしくない、むしろこういう判断力とか、あるいは熟慮に基づかない契約をしてしまう、ここをうまく拾えるような、そういう意味での受皿的な規定を設けるというのを突き詰めようと、付け込み型の問題指摘されたのを受けて検討してきたと、そういう形でのつながりというのはございます。 以上です。
○音喜多駿君 ありがとうございます。 続けて山本参考人にもう一問お伺いしたいんですけれども、今回、法改正においても多くの点では努力義務ということでとどめ置かれたという、整理が正しいか分かりませんが、努力義務というふうになりました。今回いろいろと政府参考人等々とも議論する中で、こういう消費者の法改正というのは、消費者の権利を守ること、裏を返せば権利を拡大していくことであるというようなことも言われまして、誰かの権利というのは誰かの義務であるというところでありますので、消費者のこの権利をしっかりと守ると、拡大するというのであれば、この努力義務以上のものを課すということも考えられたのではないかと思う中で、とりわけこのインターネット社会が非常に進んできた中で、業者の悪質性みたいなものというのもやはり従来の伝統的な対面で販売する事業者に比べると増してきているのではないかと。特に、インターネットでは口コミ、評判というのが、実際の店舗であればすぐに逃げるということができなくても、インターネットの店舗はもうサイトを消していなくなってしまって、少し衣替えすればまた再出発できてしまうという点で、少しこの悪質性というか、ちょっと対応の難しさが増してきていると。 こうしたのは果たしてこの努力義務で本当に消費者たちを守り切れるのかどうかという点についてはまだるる指摘や議論が残っているところだと思うんですが、この法的義務から更に踏み込んで、実効性がある罰則であるとか、そうした法令を整備することについての山本参考人の御見解を改めてお伺いできればと思います。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございました。 先ほどの御質問の中で、努力義務というのは法的義務かという点について、私自身の理解では、これは法的義務だけれども、サンクション、違反したときのサンクションがないものであるというふうにお答えをいたしました。 これは消費者契約法の制定当時からそういう意見が強いということもありますが、それとともに、私自身、このコロナ禍の状況下でワクチン接種が、努力義務というよりは推奨なんですけれども、その対象を子供にまで、年齢の低い子供にまで広げるかどうかでかなり強い議論をされた結果、子供にまではやっぱり推奨できないと、これは努力義務を課すことがやっぱりできないものというのもあるということを認識させたのだと私は思っています。 つまり、これはやはり、努力義務として制定されると、社会全体に対してはこれは守るべきものであるということを示すという意味合いをやっぱり持っている。これ外国語に訳しにくいんですけれども、やはりこれは義務として設定しているんではないかなと私は思います。そういう意味で、サンクションはないけれども、このような義務として定めていくことには積極的な意味があると、今回もそういうふうに受け止めます。 ただ、おっしゃるように、これは社会一般に対してはそういう義務なんですけれども、いわゆる悪質な事業者に対しては余り効果がないというのはもう御指摘のとおりかと思います。ですので、私も最後の提案として、悪質な事業者に対しては、やっぱりこれを排除するそういう行為規制、公法的な規制だけではないかもしれませんけれども、そういったものをやはり強化していくことが同時並行で行われないといけないと、そう考えております。
○音喜多駿君 分かりやすく、ありがとうございます。 山本参考人に最後にもう一問お伺いしたいんですけれども、ちょっと今回の法案からストレートには外れるかもしれませんが、先ほども参考人の質疑の中で出てきたサブスク契約について、私この問題少し取り組んでおりまして、アメリカのカリフォルニア州とかですと、オンライン上で契約したサブスク契約についてはオンラインで解約できなければいけないと。オンラインでしたので、入口がオンラインだったら出口もオンラインを用意を必ずしなさいという規制、ルールがあるということを聞いております。 こうした、ホワイトな事業者にしてみれば、こうした規制があっても何も困らないと、一方で、最初から何かちょっとたくらんでいる悪質な業者にとっては困るということで、こうした規制はあっても、そこまで事業者側を萎縮させることにはならないんじゃないかなというような意見もある中で、この事業者の方ともフラットにお話をしてきた民法学者としての先生から見て、ただ、やっぱりこういうふうに、入口もこうなんだから出口もこうしなさいということを法律で義務化するところまでは踏み込み過ぎだと考えるのか、やはり行政的にはちょっとそれは踏み込み過ぎじゃないかという意見も多く聞かれるんですが、この点に対して山本参考人の御見解をお聞かせいただければと思います。
○参考人(山本敬三君) 御指摘どうもありがとうございます。 検討会の報告書というよりは議論の過程で、御指摘のようなカリフォルニア州のルールなどにつきましても、憲法の研究者及びITの専門家の方からこういうものも参考になるのではないかという御指摘があり、検討いたしております。 ただ、最終的な報告書にそこまでの形で明確なルール化をするというのはしておりませんけれども、しかし、それはやはり、解約のときの手続として本人の確認が必要だったり、合理性を持った場合もあり得るというような御指摘がいろいろあり、やっぱりそこまで現時点において書き切るのは難しいのかなというふうになったという経緯がございます。サブスクリプション契約に限った行為規制として何か定めていくというのであれば、十分考える余地はあるのではないかなと思います。 そういう意味では、消費者契約法にそれを定めるというよりは、別の考え方もあり得るのかなと。ただ、そういうものが広がっていけば、最終的には消費者契約法に落ち着かせることも可能ではないかなというふうに思います。 以上です。
○音喜多駿君 ありがとうございます。 まさに、このインターネットを通じたサブスク契約は恐らく増えていく一方で、今後ますますこの立法事実という検討に値する課題も出てくるかと思いますので、引き続き私も提言、調査を続けていきたいと思います。 では、最後に増田参考人にお伺いしたいと思います。 消費生活相談に長年乗っておられたというところから、こうした、長年、本当にずっと長きにわたるこうした消費者問題の議論がある中で、相談者の傾向、また年齢層であるとか属性、こうしたものに目に見える何か変化があったりとか、そうした点でお感じになること、あるいはデータがあれば、そういったお話があればお聞かせいただきたいんですが、いかがでしょうか。
○参考人(増田悦子君) 御質問ありがとうございます。 相談者の年齢ですけれども、やはり若年者の方の御相談というのが割合としては以前より少なくなっていると思います。これは、やはり電話を掛けないという状況から出てきていると思いますけれども、やはりインターネット上で解決をしようとする、誰かに相談するよりはネット上でいろいろ情報を得て解決するという傾向があるかなと思います。 ただ、その結果、その情報が正しいかどうかということ、それから解決レベルがそれでよいのかというようなこともございますので、問題だなというふうには思います。
○音喜多駿君 ありがとうございます。 まさにその点でして、電話での相談が多分若い人からは相対的に少なくなってくると。そうすると、今まで基本的に電話で来て、いろんな情報が、知識やケースが蓄積されていたのが、目に見えないものが生まれてきてしまったりであるとか、あるいは、もちろんインターネット、デジタル社会の進展によって、結構相談員の方々の情報収集というのも非常に大変なものになってくると思うんですよね。 これまで電話で受けていれば大体ケースが把握できたものが、自ら能動的に飛び込んでいかないとなかなかこの消費者問題の実態がつかめなくなってきたりとか、そうした中で、相談体制の強化、相談員のなり手を増やしたりとかスキルアップという点で少々課題はあるんじゃないかなと思いますが、その点、現場から見て、御意見があれば是非お願いいたします。
○参考人(増田悦子君) 全国、都市部、地方に限らず、今現在、消費生活相談員は人材が不足しておりまして、高齢化という評価もいただいているんですけれども、やはり長くやらざるを得なくなっているという現状があります。これは非常に処遇の問題が大きく関わっている。それから、各自治体において、消費者行政に対する認識、私は電気、ガス、水道と同じようにインフラであるというふうに理解しているんですけれども、そのように地方消費者行政の中で理解していただいているのかどうか、また、国の方からの支援が十分かどうかという問題があるのかなというふうに思っております。 今後、消費生活相談のデジタル化ということも今議論されている最中ですけれども、それについてもいろいろ私も不安に思うことがたくさんございますので、何かあったら意見を述べていきたいと思います。
○音喜多駿君 ありがとうございます。 これから相談受付体制も、まさに電話だけではなく、LINEであるとかSNSを通じたものも増えてくると思いますので、こうした法改正と同時に、相談支援体制のバックアップ、これを政治として、行政としてどう取り組んでいくかということもしっかりと今後問題提起をさせていただきたいと思います。 ちょうど時間になりましたので、終わりたいと思います。 参考人の皆様、ありがとうございました。
○大門実紀史君 大門実紀史です。 今日は、お忙しい中、ありがとうございます。 この間、消費者被害、高齢者がターゲットになるということが多くて、私も、ジャパンライフなど、ほとんど高齢者の被害が大変増えていますし、中には認知症の方もかなりいらっしゃったわけであります。 その点で、今回の改正で、もう既にありましたが、判断力が著しく低下した消費者の取消し権が入らなかったというのは、ちょっと何を考えているのかと、とても残念で、もう今目の前で被害が広がっているわけですよね、そのことにも手が打てないような改正案って何だろうと、一番問われるべきではないかなと思っておりますし、これはもう、骨太の議論だとか、将来どうだとか、消費者法全体とか、それはそれでやるならやってもいいと思うんですけど、以前の問題で、目の前で今これだけ広がっていることに対して何の手も打てないのかということが国会としても消費者庁としても問われているんではないかというのがまずあるわけですね。 その点で、消費者契約法というのはそもそも何なのかということなんですけれども、二〇〇〇年ですかね、平成十二年でしたかね、制定されまして、当初は、やっぱり民法の特別法としての包括的な民事ルール、包括的な民事ルールというふうな位置付けで始まったと思うんですけれど、どういうわけか、その後は、大体被害が起きるとそれに対処する、何か起きるとそれに対処する、類型、規定を次々と設けていくというような、そういうふうになって、それが細分化して明文化するというのはある意味大事かも分かりませんが、そのことによって逆にそれを隙間をつくということで、何かイタチごっこをずっとやっているようなところあるんですね。 今回、それが非常に影響して、こんな何にもできないようなことになったんじゃないかとちょっと思いますので、その点で参考人の方々の御意見を聞きたいと思います。 元々の考え方からいくと、類型、細かいことを明文化したもの、非常に具体的なものを規定していくというよりも、判断力の低下に対処するためにも、その取消し権の場合も、これこれこういう場合だけ取消しできますというようなことを追求するんではなくて、一定包括的な規定にすべきだったんではないかと、受皿規定にすべきだったんではないかと。その点で、この検討会の出されたのを、私、そのままもう、何でこれを規定に、法に、法律にしなかったのかと思うんですね。判断力の著しく低下した消費者が、自らの生活に著しい支障を及ぼすような内容の契約を締結した場合は取消しできると、このまま入れちゃってよかったんじゃないかと思うんですね。 なぜかといいますと、先ほど申し上げたように、これ以上この場合はあの場合はとやっていくと、結局使えない、結局それを擦り抜けるようなことになって、また何か作らなきゃいけないと。今言ったようなところでとどめ置いた、若干包括的な、受皿的な規定にしておけば、例えば増田さん、ずっと現場で頑張っておられて、現場で相談が来ると、良質な事業者だったら、そういう判断力の低下した人とは思わなかったと、あっ、そうだったんですねということで、分かりましたと対応するのはいますよね、ほとんどいますよね。悪質な事業者だと、知らなかったと。で、結局相談センターに来るのは、繰り返し同じような事業者が名前が出てきたりするわけですね。これ悪徳事業者ですね。それが収まる場合もあれば収まらない場合もありますよね。相談センターが前に出てくるともう引き下がるというのはありますけれど、結局、その後は裁判になって私はいいと思うんですね。 この消費者の問題というのは、ずっとやっぱり、行政もいろいろ頑張ったりしたけど、新たな問題ではやっぱり裁判で一個一個つくってきたものあるわけですよね。裁判恐れてはいけないんで、何か全部法律で悪質業者を全部羽交い締めにできると思ったら大間違いで、裁判によっていろんなものつくってきたというのはあると思うんですよね。 そういうことを考えると、申し上げたいことは、その判断力低下の取消し権について言えば、この検討会が出されたちょっと包括的なあれで十分で、あれでやっていった方が現場でも、増田さんたちや相談員の方々、その方が使いやすいんじゃないかと思うんですね、現実的に、実践的にですね。その点、まず増田さん、いかがでしょうか。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 本当に先生おっしゃるとおりだと私も考えております。事業者交渉の中で、やはり問題の指摘をすることで、心ある事業者であれば、今後それに対して気を付けていくというふうになりますし、そうじゃない事業者に対しては、やはり最終的に裁判しても、こういうケースであれば消費者も裁判する覚悟ができるということで、私たちも背中を押すことができるんですね。これは争いに多分、争ったら難しいというふうに思うと簡単に背中を押すことはできませんので、やはりその場で解決できなくても、こういう規定があるということは非常に重要だと思っております。
○大門実紀史君 それで、消費者庁が答弁で繰り返しおっしゃっているのは、取消し権というのは、契約全体の効力が否定されるという強い効果を伴うので、事業者の行動規範としても機能するので、三つのことを満たさなきゃ駄目だと。 一つは、消費者被害の救済に有効性があること、これは当たり前ですよね。二つ目に、何が不当なのかということについて事業者の予見可能性が確保されること、つまり、これをやっちゃいけないということが事業者に分かるようにする必要があるということですね。三つ目に、これらのための要件が明確であることと。この三つを満たさないから駄目なんですということを消費者庁は繰り返し答弁で言ってきたんですけれど、ちょっと違うんじゃないかなと思うんですよね。 例えば、事業者の予見可能性と言いますけれど、こんなものは事業者はやっちゃいけないことぐらい細かく言われなくたって分かるべきでありまして、一個一個言ってくれと、それはやらないからというようなことで一個一個並べさせる、これに応えようとしていることそのものがちょっと違って、まともに事業やって商売やるなら、やっちゃいけないことぐらい自分で考えろと、大まかなことさえ決められたらですね、そう思うべきでありますし、それに基づいて更に明確な、要件を明確にするなんて言ったら、今までの同じこと繰り返すだけでありまして、ちょっと、これそのものがちょっと何か間違っているんじゃないかというふうに私思うんですけど、この点、鈴木参考人、いかがでしょうか。
○参考人(鈴木敦士君) 私も大門委員がおっしゃっているとおりだというふうに思っておりまして、その取消し権の三つの要件とか、別に余り法律の教科書に書いてあるの見たことないんですけれども、いずれにしろ、何といいますか、事業者にとって、行為規範だから事業者は予見できなければいけないといっても、一定のことが書いてあれば分かるはずですし、明確性といっても、無理に個別具体的に列挙するまでの必要性はないのではないかと。 現に、消費者契約法も、消費者契約法十条という、条項を無効にする規定では一定抽象的な規定を置いているわけでありまして、明確性の程度が最近はかなりどんどんどんどん要求度が高まっていると、これは問題だろうというふうに思っています。
○大門実紀史君 山本参考人に伺います。 今日いただいた資料で大変私ちょっと関心持ったのは、六ページ目にございますけれど、今の取消し権云々の話があるんですが、救済方法の柔軟化というところがございまして、取消しに代えて、例えば原状回復的損害賠償に限った損害賠償責任を認める規定を創設すると。取消しじゃないけれども、損害賠償という形で救済するといいますか、あるいは防ぐ規定と。これは一つちょっと非常に関心持つんですけど、もう少しちょっと御説明お願いできますか。
○参考人(山本敬三君) ありがとうございます。 御指摘いただいた部分は、民法の括弧付きの伝統的な枠組みから離れた救済の可能性というのを消費者契約法で定めるということを認めていくべきではないかということの中の一つとして御指摘をいただきました。 実は、この私が消費者契約法の改正課題の例として挙げたものというのは、検討会に先立って、消費者契約改正に向けた専門技術的側面の研究会というのがございまして、そこで既に検討され提案されていたものを取り込んでいるというものです。とりわけ、無効、取消しとは違う契約からの解放を認める制度というのは特にそうでした。 ただ、取消しに関しては、もう御質問の前提にありますように、オール・オア・ナッシングになってしまうんですね、取り消すか取り消さないか、どちらかで。そして、実際に事業者に払ったものを全部返せ、返さないと、そのいずれかになってしまい、それがやはり取消しが非常に大きなラディカルな制度というふうに事業者からも受け止められ、かつ、裁判所に行った場合でも、やっぱり裁判所がそこをちゅうちょしてしまうということが多々あるというふうに伺っています。 ですので、取消しであっても、原状回復なんですけど、そこで消費者側の事情も考慮して、あるいは事業者側の考慮もして、割合的に、払ったものの全額ではなくて何割かを返すというような制度が設けられないかと。ただやっぱり、取消し制度そして原状回復制度にそういった要素を持ち込むということに関しては、民法の伝統的な考え方で余りなかったものですので、それがどうしても支障になるというのであれば、損害賠償という形で考えることはできると。 ただ、損害賠償も、ここで考えるべきなのは、取消しと同じ効果を実質的にもたらすもの、つまり、ここで原状回復と申し上げていますが、実際に払ったものあるいは支出したもの、それを返してもらうと、そこにターゲットを絞って、実質的には取消しに代わる損害賠償として創設すると。しかし、損害賠償ですと過失相殺という制度が現在でもありますので、そこで必要に応じて割合的な解決を実現していくことはできる。こういうような可能性は民法とそう矛盾するものではないと思いますが、この原状回復に限った形での創設というのが一つのポイントになるかなというふうに考えております。 実際、裁判例を見ましても、多くは不法行為を理由に損害賠償を認める、救済しているケースはあるんですが、そこでも、実質見ますと、この私の言う原状回復的な損害賠償を認めている例が少なくありません。これはやはり、取消しでは難しいけれども損害賠償であれば割合的な解決ができる、それがやはり裁判所としても使いやすいと、弁護士さんたちも主張していくときには認めてもらいやすいと、そういうものではないかなというので、試みにここに挙げている次第です。
○大門実紀史君 今、取消しのことばっかり私たちも考えていますけれど、そういう意味ではちょっと広く考える必要があるかと思います。 最後に、増田参考人に、もう長いこと現場で頑張っていただいて、国会にも何回か来ていただいて、もう感想で結構なんですけれど、前回の書面デジタルもそうですけど、今回も何か現場の方々が、消費者団体の方々が期待したようなものが出てこない、法案として成らない、あるいは期待していないものが急に出てくるというような、ちょっと何か消費者庁に、今の消費者庁に対して何か御感想とか御意見ありますか。
○参考人(増田悦子君) ありがとうございます。 書面のデジタル化に関しては非常に残念に思いまして、今でも私はじくじたる思いがあります。 いろいろな御提案いただいている中で、やはり消費生活相談の現場が非常に煩雑になることが想定されることがだんだん多くなってきていますので、人材が少なくなっている、かつ相談現場が煩雑になってくるというようなことを考えますと、もう少し考えていただければなと思っております。 以上です。
○大門実紀史君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(舟山康江君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。 参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十五分散会