外交防衛委員会 第7号
- 発言数
- 83 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 2019/11/28
会議録
○委員長(北村経夫君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日までに、清水真人君が委員を辞任され、その補欠として山谷えり子君が選任されました。 また、本日、福山哲郎君、山田宏君及び山谷えり子君が委員を辞任され、その補欠として石川大我君、森屋宏君及び岩本剛人君が選任されました。 ─────────────
○委員長(北村経夫君) 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の締結について承認を求めるの件及びデジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を一括して議題といたします。 本日は、両件の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。 御出席いただいております参考人は、中央学院大学現代教養学部教授中川淳司君、東京大学大学院農学生命科学研究科教授鈴木宣弘君及びNPO法人アジア太平洋資料センター共同代表内田聖子君でございます。 この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。 本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 次に、議事の進め方について申し上げます。 まず、中川参考人、鈴木参考人、内田参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず中川参考人からお願いいたします。中川参考人。
○参考人(中川淳司君) 中央学院大学の中川でございます。 お手元にこういう資料が配付されていると思います。パワーポイントのスライドで七ページ用意いたしました。それに沿って、かいつまんで御説明いたします。 まず一枚めくっていただいて、番号で二が付いているところですけれども、この二つの協定の経緯ということでたどっております。 何よりも重要な文脈は、二〇一七年、おととしの一月に、アメリカ・トランプ政権が発足直後にTPPから離脱したということでありました。その後、残る十一か国が早期発効に向けてTPPをまとめるということで、昨年三月にTPP11、CPTPPに署名をし、それが昨年十二月に発効したということがございました。 日本政府は、当初はアメリカにTPPへの復帰を求めるという姿勢を取りましたけれども、アメリカは日本との二国間交渉を要求して、その要求がどんどん強まっていったということがあります。 その背景としては二つあろうかと思います。 一つは、CPTPPが発効し、また日EUのEPAも発効したことで、加盟国に劣後するアメリカの農業界の要望が強く出たと。とりわけ、牛肉農家であります。 もう一つの要素として、米中の貿易協議が非常に難航しております。トランプ政権としては、何としても選挙民にアピールできる貿易関係の交渉の成果を求めた、それが日本との貿易協定であったということがあろうかと思います。 交渉を有利に進めるために、そういうてことして、通商拡大法二百三十二条に基づく自動車の追加関税を発動するという、明確な形ではありませんけれども、そういう脅しを使って交渉に臨んだということがございました。 昨年九月の日米共同声明で、日米貿易協定の交渉開始に合意されました。次の三ページは、日米共同声明からの引用であります。御覧いただくとして、赤字の部分、それから青字の部分に注目していただければと存じます。 赤字は、日本政府としては、日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であること、そういう立場を尊重するということが書かれています。具体的に言いますと、TPPで日本が約束した、アメリカに対して約束した内容がマックスであるということで、交渉にキャップをかぶせた意味がございました。 それから、青字のところですけれども、協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動を取らないと。これは、具体的には自動車に対する追加関税は協議中は発動しないという、そういう約束を明確にさせたわけであります。 次に、四ページに参ります。 日米貿易協定、デジタル貿易協定の交渉は今年の四月に始まり、九月二十五日に交渉が妥結し、十月七日に署名されました。非常に短い期間で交渉がまとまりました。 九月二十五日には、日米首脳会談の後に共同声明が発表されました。ここでは、その四の青字部分を注目したいと思います。日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない。協定はもとより、締結したものは誠実に履行いたしますので、この文言により、自動車に対する追加関税発動の余地を事実上封印したということになります。これは後で成果としてもう一度振り返りたいと思います。 続いて、二つの協定について見てまいりますけれども、まずは日米貿易協定について、これが五ページと六ページにあります。五ページに表にしましたけれども、六ページの箇条書にした方で簡単に説明をさせていただきます。 見出しに書きましたように、私は、日米貿易協定の関税交渉で日本は互角以上の成果を上げたというふうに評価しております。例えば、日本側の約束とアメリカ側の約束を比較した場合に、日本側の約束はTPPで対米約束をした内容を下回っている、そういう意味でTPPマイナスである。TPPの約束がキャップであるということを昨年九月の共同声明で言いましたけれども、実質的に、実際にはそれを下回る、日本にとっては有利な内容になっているということが言えます。 具体的には、米に関してはTPPでは認めた無税の輸入枠を認めませんでした。また、飛ばしますけれども、幾つか、水産品、林産品については約束をしておりません。そして、牛肉に関して、まあこれはアメリカの最大の関心事項でありましたけれども、関税引下げの率はTPPと同じ、セーフガードの発動水準はやや引き下げたということであります。砂糖類、加糖調製品については関税引下げに応じず。かつ、日本側の工業製品で有税の品目が革製品、履物等ありますけれども、それについても関税引下げには応じておりません。 他方で、アメリカに関しては、和牛の輸入枠、低関税輸入枠を二百トンから最大で六万五千五トンに拡大しました。また、日本側の関心の高いしょうゆ、柿、盆栽など農産品四十二品目について関税の引下げ、撤廃を勝ち取りました。工業製品では工作機械、3Dプリンターなどで関税の引下げ、撤廃を勝ち取っております。自動車と自動車部品については更なる交渉による関税の撤廃を約束させました。かつ、追加関税は、先ほど申し上げましたけれども、協定を誠実に履行している間はということで、実際上無期限で追加関税は発動しないということを約束させたわけであります。 以上が日米貿易協定の概要であります。 次に、日米デジタル貿易協定についてであります。 これは、TPPで第十四章に電子商取引という章がございましたけれども、それを基本的に継承し、かつ、それを上回る規律を採用しております。その意味でTPPプラスの内容が盛り込まれております。箇条書でずっと書きましたけれども、赤字の部分だけ、これがTPPプラスの部分でありますけれども、そこを見ておきたいと思います。 一つは、ソフトウエアのソースコードに加えて、アルゴリズムの開示要求の禁止であります。もう一つが、情報通信技術製品に関する暗号技術の開示要求、特定の暗号の使用要求の禁止という縛りであります。 TPPの中でなぜこの章だけを今回合意したのか、かつ、そういうTPPプラスの内容を盛り込んだのかということを理解する上では、もう少し広い文脈を見る必要があります。 現在、WTOでは、有志国によるデジタル貿易協定の交渉が進められています。日米が共同でデジタル貿易協定によって非常に高いハイスタンダードなルールを示すことにより、この交渉をリードしていく基盤となるというものであると考えます。これが想定しているターゲットが中国であるということは、説明多言を要しないと思います。 また、WTOに対して非常に、何といいますか、冷淡な見方を強めているアメリカ・トランプ政権にとって、アメリカをWTOのマルチの場につなぎ止めておくということでもこれは非常に重要な意味がある規定であると考えます。 最後に、今後の見通しについて八ページで触れます。 今年九月二十五日の日米共同声明では、今後の交渉の見通しについて決めています。日米貿易協定、日米デジタル貿易協定が発効して、それから四か月以内に交渉の範囲について協議をし決める、その上で第二段階の交渉を開始するという、そういう決め事であります。 この交渉範囲が非常に限定的なものになるのか、今回のようにですね、あるいはもっと広くTPP並みの広いものになるのかということについては不明であります。しかし、仮にTPPのように広範囲のルールをカバーする交渉が行われることになったとしても、それが日米間のルール交渉である限りにおいてはほとんど意味がありません。ルールはより広い場で、最終的にはマルチですけれども、合意されることが、必要があるからであります。その意味で、私は、引き続き日本は米国にTPPへの復帰を求めていくべきであるし、それだけの理由はあると考えております。 以上で私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。 次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人。
○参考人(鈴木宣弘君) この度はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。 私の方からは、配付いただいております日米貿易協定の虚実というペーパーに基づいてお話をさせていただきます。本協定をめぐる議論には、私が思うには事実と異なる点があると思いますので、そのような点から所見を述べたいと思います。 まず、一つ大きな点は、アメリカが自動車関税及び部品の撤廃を約束したという点でございます。日本政府はそのように話しまして、署名をいたしました。しかし、その後に開示されたアメリカ側の合意内容、英文だけが出ておりますが、それには今後交渉を続けるとしか書いておりません。この英文が関税撤廃を約束したと読めるというのであれば、私には全く理解に苦しみます。アメリカ側も、自動車の撤廃は約束していないと交渉トップがコメントしておりますし、影響試算についても、日本が自動車の関税撤廃を見込んで試算をしているのは理解できないというふうにアメリカ側は指摘しております。 じゃ、なぜ、ない約束をあることにしなくてはいけないのか。それは、約束があることにしないと、アメリカ側の貿易額の九二%を含む協定であると言っているのが、自動車の部分が四割ぐらい抜ければ五割少しに落ち込んでしまう。これは過去に例のない前代未聞の国際法違反協定となります。この点だけでも国会批准は難しくなる。 我々は、差別的なつまみ食い協定の横行が第二次世界大戦まで行ってしまったという反省から、戦後、ガットのルールで、二国間の自由貿易協定をやるときは九〇%以上を含まなきゃいけないというルールをみんなで一生懸命守ってまいりました。その結果、二百ぐらいある自由貿易協定の中で、八五%のカバー率を下回る協定はほとんどない状態になっております。 そういう中で、日米二国のこの大きな経済圏が五十数%の協定を発効するとなりましたら、これは世界の貿易秩序に対する大きな挑戦であります。前代未聞の犯罪行為とも言える、戦後の世界の努力を無に帰すような事態が生じるわけですので、その点をどう考えるのか、非常に大きな問題です。 それから、個別の品目でいいますと、アメリカからの日本の牛肉輸入についてはTPP合意にとどめられたという議論がありますが、日本は、牛肉についての輸入枠、低関税の輸入枠、セーフガードというのを、アメリカの分も含めてTPP11で十一か国に差し出しました、六十一万トン。それにアメリカの分が入っていたわけです。それにアメリカと二国でまた二十四万トンを加えてしまったわけです。ですから、これは既にTPP超えです。 しかも、アメリカの二十四万トンについては、それを超えてアメリカが日本に牛肉を持ってきたら、十日間以内に協議を開始してアメリカの枠を増やしていくということをサイドレターで決めていることが後で明らかになりました。これは、結果的にはアメリカの枠をどんどん増やして、九%でアメリカは幾らでも日本に持ってこれるということをやっていくということでありまして、セーフガードのガードには全くならないという大変な事態を招くことになります。 それから、日本からのアメリカへの牛肉輸出は、アメリカが何十万トンなのに、日本からは僅か二百トンしか低関税枠がございません。それが最大六万トンと言いますが、それはほかの国の枠も含めてのことですから、二百トンを少し超えても、まあ低関税でいいよというぐらいの約束にしか見えません。 ところが、TPP全体のときには、アメリカはその二百トンの枠も拡大し、いずれはなくして、十五年後には関税も撤廃すると日本に約束していたんです。それを完全にほごにされて、二百トンが少し増えるだけになったことが日本の成果だというのは、私には理解できません。 それから、米や乳製品は勝ち取ったと言いますが、米は御案内のとおりカリフォルニアの主産物で、トランプ大統領にとってはどう頑張っても負けるカリフォルニアはむしろいじめた方がいいぐらいの形で対応したと言われております。 じゃ、乳製品などの枠はどうかといいますと、乳製品やその他三十三品目、TPPワイド枠といって、アメリカの分も含めてTPP11の国に既に譲ってしまっておるわけです。だから、TPP水準はそこで日本にとっては実現されてしまっているわけで、アメリカの分がそこに加われば、もうすぐにTPP超えになるわけです。それが回避されたからといって、それはアメリカから見ればTPPマイナスということで、先ほどの先生の評価もあり得ると思いますが、日本から見れば既にアメリカの分も含めてTPP11で実現してしまっているわけですから、その点をよく考えないといけないのではないかと思います。 それから、奇妙なことに、今回の協定の日本側の約束内容の中に、アメリカが将来にわたって特恵的な待遇を強く要求するということが書かれております。これは、アメリカの単なる希望的観測ではございません。日本側の合意内容にこのことが書かれているということは大変重要な意味を持つと考えます。そもそも、アメリカが一度日本から得た合意内容をもう要らないと言うわけはございません。既に米の団体も酪農の団体も何とかしろと言っているわけです。だから、こういうことがこれからすぐに起こるわけです。 そして、自動車のために農業を差し出したわけではない、こういうことはしないというように言っていますが、交渉官が既に記者会見で、これから自動車の交渉をするに当たっては、まだ日本の農産物は大分余裕があるのでそれをカードに使うと本当に言っちゃっているわけですよね。このことは非常に正直だったなと思います。 それから、二五%の自動車関税は発動されないと本当に約束されたのでしょうか。どこにも書いてありません。むしろ、協定本文には、安全保障上の理由で、この規定にかかわらず、本協定の規定にかかわらずやれるんだということが書いてあるわけですから、そのことの意味は大きいと思います。 逆に言えば、このような安全保障上の規定が入っているのであれば、日本の方こそ、安全保障上の理由で食料の関税障壁はもっと高めるというぐらい言い返せばいいじゃないですか。そういうことが問題です。 要は、EUは、二五%の自動車関税で脅されても、それは犯罪行為であるから許さないといって対抗しました。日本は、その犯罪行為に対して、いやいや、それは困るから、いろいろ出すからうちだけは許してくれという話になっちゃったので、どんどんいろんなものを出さされて、そして中国との関係で余ったトウモロコシまで六百億円分尻拭いしなさいと言われて、それまで約束してしまったと。どんどん犯罪者にお金を払って許しを請うような形の交渉をやって、その挙げ句が、日米二国で更なる前代未聞の犯罪行為、WTO違反協定を今本当にこのままやるんですかということになってきたと。 ですから、ウイン・ウインだと言いますけれども、どこがウイン・ウインなんでしょうか。農産物だけ取ってみても、日本側の農産物の関税撤廃率は七二%になっております。アメリカ側は、明治大学の作山先生が書かれていますが、何と農産物のアメリカの関税撤廃率は一%です。 このような形で、トランプ大統領にとっては、自動車も勝ち取りました、日本には撤廃しないということを貫きました、農産物も欲しいものはもらいました。まさにトランプ大統領の選挙対策としてウイン、ウインなわけでございます。それに日本が一生懸命協力しているというのが今の状況ではないでしょうか。 そして、三ページの試算の表がございますが、我々が政府のGTAPモデルというものと同じモデルで再計算をしました。自動車の関税撤廃が行われなかった場合には、日本のGDPの増加率はほぼゼロです。そして、日本の自動車の生産額はむしろ八百億円ぐらい減ります。そして、農産物は最大九千五百億円程度のマイナスが生じます。数字は正直です。自動車も農産物も全て失っておるわけです。 ですから、このような完敗の、完全に日本側が負けているということが明らかな協定を前代未聞の国際法違反まで犯して批准するという事態の深刻さ、誰のために、何のためにこれをやらなくてはいかぬのですか。そのことをよく考えていただきたい。 そして、こういうことをやっていますと、日本の農業は大変なことになります。既に御案内どおり、日本の地域の農業は生産構造脆弱化で、もう五年、十年で集落がなくなるようなところがどんどん増えています。それにこのような畳みかける自由化をやりましたら、何が起こるか。ここに一つの試算がございますが、その四ページの黄色の部分ですね、二〇三五年ぐらいに牛肉や豚肉では自給率が一割台になるかもしれない、こういう状況が目の前に来ておるわけでございます。 だから、このように農産物の自由化を進めることは、農家の問題ではあるが消費者はメリットだと言っていると大変なことになると。安い安いと言っているうちに、アメリカの牛肉のエストロゲンは六百倍も入っているとか、成長促進剤のラクトパミン、全て乳がん、前立腺がんとの関係が強いと言われています。 それから、BSEに、狂牛病にかかっている牛はアメリカでは十分検査がされていませんが、日本は五月十七日にこのアメリカ産牛肉を全面解禁しました。これが日米協定の最初の成果でもあります。 それから、遺伝子組換え食品につきましては、アメリカからの要請を受けて、遺伝子組換えでないというような表示を二〇二三年に実質禁止することが決まりました。ゲノム編集については、十月一日からアメリカの要請を受けて完全野放しにしております。 アメリカのトウモロコシ、大豆、小麦に直接掛けられている除草剤、アメリカがもっと振りかけなきゃいけないということで、日本人の安全基準値を残留が多くなるからもっと高めろということで、これも高めてしまいました。イマザリルとかOPPとか、収穫後農薬、日本では禁止ですが、アメリカから運んでくるときに掛けなきゃいけないと。食品添加物だということで無理やりそれを認めてきましたが、アメリカは、それによって表示をしなきゃいけないのがアメリカに対する不当な差別であるからこれをやめろとTPPの交渉のときから言っていまして、今の日米協定の中でこの表示を廃止する議論が行われていると。これだけ見てもリスク満載ですよ。 これを食べ続けることで、我々は安いと言っていると病気になって早く死ぬと、どこが安いんですかと。牛丼、豚丼、チーズが安いと言っているうちに、どんどん病気が増えて、いかぬ、国産の安全、安心なものを支えなきゃいけないとなったときに自給率が一割になっていたら、もう手遅れです。その瀬戸際まで来ているということを私たちは考えなきゃいけないんじゃないかと。 国民の命を守り、国土を守るには、どんなときにも安全、安心な食料を安定的に国民に供給すること、それを支える農林水産業の持続が不可欠であります。農は国の本なり、そのためには自給率をしっかりと維持していく、これが世界の常識です。それがどんどん下がって、三七%まで下がっても、まだ下がっても構わないと、自給率が死語になろうとしているのが我が国の現状です。 アメリカから何兆円も武器を買いますだけが安全保障ではないと思います。食を握られることは、国民の命を握られ、国の独立を失うことだと肝に銘じて、まさに真の安全保障の一角を担う農林水産業を支える政策を再構築すると。このような止めどない自由化が本当にいいのかということを考えなきゃいけない。食料がなくなってから代わりにオスプレイをかじることはできません。 それと、もう一つ申し上げておきたいのは、今までの経緯を見ていますと、先生方が、あるいは霞が関の皆さんが国会などで発言されたことが後になって違ってくるわけですね、現実が。そのときに誰も責任を取らなくてもいいというこのシステムそのものに私は問題があるんじゃないかと思っています。
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間が来ておりますので、おまとめください。
○参考人(鈴木宣弘君) はい。じゃ、これ一言で終わります。 TPPには参加しないといって参加して、重要五品目は守るといって守らなくて、日米FTAを避けるためにTPP11だといって、今度は日米FTAになったと。(発言する者あり)今回は、自動車関税を……
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間が来ておりますので、おまとめください。おまとめください。どうぞ。
○参考人(鈴木宣弘君) まとめておりますので、お待ちください。 今回もいろんなことがそうではないと言われていますが、これが本当になったときには、じゃ、どうやって責任取るんですか。このことについてきちんと責任を取るシステムをつくっていただかないと、どんどんその場しのぎの虚偽で、次々と悪い段階に物事が進んでいくという、このことを止めることができません。 今回のような協定をこのまま承認すれば、特にアメリカは議会承認が必要ないわけですよ、日本だけがこれをやって世界から非難されることになれば、その責任を取るのは国会議員の先生方です。
○委員長(北村経夫君) 鈴木参考人、時間がもう過ぎております。
○参考人(鈴木宣弘君) はい。 以上でございます。
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。 次に、内田参考人、お願いいたします。内田参考人、お願いいたします。(発言する者あり)
○参考人(内田聖子君) よろしいでしょうか。
○委員長(北村経夫君) 御静粛にお願いします。 内田参考人。
○参考人(内田聖子君) 貴重な機会を与えていただき、ありがとうございます。 私は、NPO、そして国際NGOという立場、つまり国際市民社会の一員として、この貿易協定を、WTOの時代、そしてTPPと追ってきました。今日はその立場から分析等を述べさせていただきます。 まず、この日米貿易協定の基本的な背景、成り立ちというのは、最初の中川先生おっしゃったことと同じですので繰り返しませんが、一点そこで私、強調したいのは、TPPからアメリカが脱退したときに、日本政府は米国抜きのTPPは意味がないと言っておりました。そして、その後、TPP11の審議の際には、日本は米国をTPPに復帰をさせる努力をするということを言っていました。そして、日米FTA、これには応じないんだという方針をはっきりと立てておりました。 これは、日本政府のいわゆるルールベースの包括的なFTAを目指していくんだという主張に沿ったものであり、私は国際市民社会の立場として必ずしもこれに賛同はしないんですが、少なくとも当時の政府の主張には論理の一貫性というのはあったと思っています。 ところが、アメリカが日米FTA、貿易協定を求めてきて、そこに応じてしまったわけなんですけれども、このことが日本にとっては非常に大きな方針の転換ということになったと思います。実は、このことが国会審議でも私はまだ深められていないのではないかと思っています。つまり、日本が、ルールに基づく自由貿易であったり、それからTPPにやっぱりアメリカに復帰してもらうんだと筋を通すという大義を下ろしたということになるわけですね。で、その日米同盟に縛られた関係の中で、この日米貿易協定の交渉が始まっていったと。 つまり、これはそもそも日本が望んでいなかった協定なんです。理にもかなっていない、ルールベースということにも。多国間交渉やってきた、これをねじ曲げて交渉に応じたという点で非常にスタートの時点から矛盾の上に立つ協定だと思っております。 ですから、その矛盾の上に立って交渉した結果、日本の利益はこうだということを後付けのような形で説明をされるわけなので、どうしてもそこには無理がありますし、協定の評価そのものも非常にばらばらだと思っております。 かつ、この間、国会審議を私もインターネット等で見てまいりましたが、その事実関係というところがなかなか明らかになっていない、そして、資料というか根拠となるものもなかなか共有されていないということ。そちらに時間が取られ過ぎていて、やはり今一番考えるべきは、大きな転換をしてしまったというわけなんですが、じゃ、今後日本はどういう通商交渉政策を取っていくのかと、この激動の時代で、中国との関係も含めて、どういう多国間の枠組みをつくるのかという非常に長期的で本質的な議論がなされていないのではないかということに非常に懸念を持っています。 さて、この日米貿易協定ですが、最初はTAGといって始まったわけですが、今では誰も使っていないわけなんですけれども、途中から、交渉の直前から、物品だけではなくて、その後サービスや投資もやるんだという、割と漠然とした形で明示されました。 これは、段階方式というか、まず物品をやって次にその他をやると、段階方式というふうに私は呼んでいますけれども、この在り方自体は貿易協定の中では非常に珍しいというか異例だと思っております。どの国にとっても、どの範囲を交渉するのかということは非常に重要、基本中の基本でして、例えばWTOでも何を交渉するのかで延々と議論して決まらないという状況ありますし、例えばTPPや日本・EUの協定でも、必ず予備交渉をして、何を交渉する範囲にするのかと定義をしてから交渉に入るわけですね。 ところが、今言われている二段階目、物品はこれで仮に批准したとして、今後二段階目やると言われている交渉分野というのはさっぱり分からないわけですね。サービスが入るのか、投資も入るのか、知財も入るのかという非常に不明瞭な状態になっております。 これは、日本にとっては非常に不利な立ち位置にならざるを得ないと思っています。というのは、二段階の交渉というのは、やはり先にたくさんカードを切ってしまった側が不利になりますし、あるいは力関係の中でどうしてもねじ込まれていくというか、応じていかざるを得ないということがあります。外形的にもこの日米貿易協定というのは非常に異例ですし、ある種、片務的であり、非対称ということが言えると思います。 さて、限られた時間でありますけれども、今日、私はたくさん資料を刷っていただいて持ってきました。最初は、アメリカの交渉目的という昨年十二月に出た文書を、ちょっと私自身翻訳したものを付けさせていただいています。 元々、アメリカは包括的なFTAを目指しているのです。ただ、トランプ大統領の選挙対策ということで、まずは物品ということに手を付けているわけですけれども、このそもそもの交渉目的を読むと、もちろんそれはTPPをベースにして、さらにそこに為替操作禁止条項を入れてほしいとか、あるいは非市場国排除条項、これは中国を指しているわけですが、というものも入っている。あるいは、個別の分野でも、様々TPPをよりアップグレードするものをこの協定で最終的には求めているということなんですね。 アメリカは、こうした包括的なFTAを目指すのは、九〇年代以降ずっとそうでして、なぜならば、物品だけでは足りず、やはりルールの部分、非関税部分を求めることによって利益が最大化するからです。ということで、アメリカは、昨年の交渉前から、どの分野をやりたい、どういうふうにやりたいということを明示してきたわけです。 ところが、じゃ日本はどうかというと、これは交渉に入る前に、何が目的か、何を獲得するのかということは明文化はもちろんされておらず、そもそも望んだ協定ではないわけですので、かつ、やはり今回の交渉の問題の大きなところは、日米貿易交渉の最大かつ唯一の目的と言っていいと思いますが、通商拡大法に基づく高関税措置をアメリカにとらせないことと、これがもうマックスな目的になったという設定です。 ですから、ここでもアメリカとは全く立場が違っていて、ですから、その非対称、片務的ということはそういうところにもあるわけなので、是非国会では、そもそもTPPにアメリカを復帰させるという大義はどこに行ったのか、あるいは日本が求めるべき目的は高関税措置を回避をすると、そういうことでよかったのかということを基本中の基本として検証いただきたいと私は強く思っています。 それからもう一つ、非常にアメリカペースでこの交渉進んでいて、実は私、一月一日に発効を目指すと新聞などでも書かれているわけなんですが、この理由がよく分かりません。日本に少なくともこの協定を一月一日に発効しなければいけない合理的な根拠というのはないというふうに思います。トランプ大統領の選挙のためにそうしたいということなんじゃないかと私は思っていますが、そのおかげで非常に拙速な審議が国会でも行われているのではないかと思っています。 TPPや日EUの頃は、少なくとも合意があって、その後、影響試算等も出て、そして議員の皆さんが協定文を、初めて合意後に開示されるわけですから、一定程度、何か月とか吟味をするような時間があって、そして国会審議という流れ、そして国民への説明も、まあ不十分だとは当時から言っておりましたが、一定程度なされてきたわけです。 ところが、今回は、それが圧倒的に日数も足りず、対策予算あるいは政策大綱ですか、農業の、これももう衆議院の可決が終わる頃、あるいは終わった後に出されてしまうと。これでは、やはり議会の権限ですとか透明性、説明責任、そして何よりも打撃を受ける農家の方々に対して非常に私は不誠実ではないかと思っています。国会軽視ということを改めて指摘したいと思います。 そして、この協定の中身の問題ですけど、これは個別に様々あるので、そして鈴木先生も今農業面述べましたので繰り返しませんが、やはり気になるところとしては、この自動車の関税引下げを本当にアメリカが約束をしたのかと、これはWTOの抵触問題ですね、国会でも指摘がなされています。 これについては資料の中に幾つかあるわけなんですけれども、実は九月の合意がなされる前後から、アメリカの側でも、貿易の専門家ですとか、それから研究者、それからシンクタンク等々でこのWTO違反の問題というのはずっと指摘をされてきております。詳しくはこの資料にいろいろ書いておりますけれども、日本の私たちだけが指摘しているわけではなくて、アメリカの側でも専門家はこれは危険だと言っていますし、日米だけでなくて、例えばEUであったり、その他の国の専門家も同じような指摘をしているということを申し上げたいと思います。 そしてもう一つは、高関税措置が本当に回避できたのかということに関しても、これは非常に解釈の余地を残すような文言が共同声明にあるものですから、理解も様々です。日本の中でも政府の見解と違う見解もありますし、これは同じようにアメリカの側でもあるんですが、おおむね必ずしもトランプ大統領は高関税を課さないということを約束したわけではないという理解で共通していると私は思っております。 実は、今日、時間の許す限り、アメリカの議会や業界団体の受け止めは何かという、どういうふうになっているかというのを御紹介をしたいと思っているんです。というのは、これ、同じ事実、確定した事実を基にそれぞれの国で議論する、これはもうやればいいんです。ところが、今言ったように、事実のところがどうもぼやけてはっきりしない、あるいは日米の政府の説明がどうやら何か食い違っているようだということなので、必然的にというか仕方なくというか、やっぱりアメリカではどういう受け止めがあって、どういう議論がされているのかということを我々はしっかり知る必要があるという意味で、少し御紹介をします。 WTO違反の問題の指摘は今言ったとおりですし、加えて、実は先週の二十日、アメリカの下院歳入委員会の貿易小委員会というところで公聴会がありました。ちょうど今日のような形で四人の専門家が証言をしたわけですが、そこの場でも、改めてアメリカが自動車や部品の関税撤廃をしていないという証言が、例えば全米自動車労組の方からもなされています。これは明言されています。それから、CSISといって、国際戦略研究所ですか、のマシュー・グッドマン氏という方も、ワシントンはTPPの下で段階的に削減されるはずだった日本製の自動車への二・五%の関税及び自動車部品への関税を削減することに同意しませんでしたというふうに言っています。これは日本政府の説明と真っ向から矛盾しているんですね。一体、これ事実がどこにあるのかということをもっと深く検証しなければならないと思っております。 アメリカの政府も、この件に関してははっきりとした態度を示していないんですね。ですから、非常に奇妙な構図が生まれていて、日本とアメリカのそれぞれの専門家や議員の方、業界団体、この人たちは、これWTOに違反しているんじゃないかといっていろんな対策も考えているわけです。ところが、両国の政府が、はっきりとそれはどうなのかということを共通の理解として示していないという非常に奇妙な状況が生まれております。 しかも、もしWTO違反であればどうしなきゃいけないかというと、そういう協定は結ばない、あるいは中間協定として位置付けるという方法があります。アメリカの側では、今どちらかというと、こっちの中間協定にして、後付けなんですけれども、そしてWTO違反を回避して、これは、つまり二段階目の交渉というのをかなり期限も内容も明確化してやらなければいけないということになるわけなんです。 というように、様々な議論が今あって、そして二段階目の交渉についてもいろんな意見出ています。お米や乳製品をもっと交渉しなければいけないとか、あるいは、自動車の方は、関税削減なんてもうとんでもないと、むしろ日本の非関税障壁を撤廃させてアメリカの車を日本にもっと売るようにしなさいとか等々やっております。
○委員長(北村経夫君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○参考人(内田聖子君) はい。 ですから、熟議が足りていないということを改めて指摘をしておきたいと思います。 デジタルについても述べたいことはあるのですが、これはもし質問いただければお話をしたいと思います。 ありがとうございました。
○委員長(北村経夫君) ありがとうございました。 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑を行います。 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。 質疑のある方は順次御発言願います。
○猪口邦子君 ありがとうございます。 本日は、三人の参考人の先生から、それぞれのお立場、それぞれの観点からお話を伺いました。まず、ありがとうございます。 まず、私の全体的な認識として、日本と世界の状況について考えますと、世界では、保護主義、ポピュリズムと自由貿易、自由主義、この相克が勢いを増しています。その中でどういうふうに日本が自由貿易推進の側に立って、そういう勢いの中でそれを推進していくことができるかというのが一つ大事なことかと思いますし、また日本は戦後一貫して資源が乏しい中成長し、自由貿易の恩恵を受けながら成長して今日に至っているという、これが基本の私の認識なんですけれども。 そこで、中川参考人にお伺いしますが、まず今回の交渉ですが、非常に圧縮した時間の中で非常に水準の高い緊張感及び集中力を持ってそれぞれが交渉したんだと思います。先生は互角以上の成果があったというふうに説明されましたけれども、その背後にあるものはどういうことかと考えていらっしゃいますか。
○参考人(中川淳司君) いろんな理由があろうかと思いますけど、私の見立ては、アメリカ側がどうしても早くしたかったということはあるかなと思います。特にいろんな、アメリカ・トランプ政権は発足後いろんなことをやってきていますけれども、通商協定として成果を上げたものは今回が初めてなんですね。USMCAというNAFTAを見直したやつがありますけど、あれ、まだ議会で審議中で、成果として上がっていませんし、EUとはもう交渉の入口にも立てないというところで、米中がこういう形で膠着に近いような状態で来ていますから、そういう中で通商分野で成果として選挙民にアピールできるものとしては日米、しかもそこで牛肉を取った、そういうこと、非常に象徴的な記者会見があったと思いますけれども。アメリカ側がとにかく早く目に見える成果を上げたかったということがあったと思います。
○猪口邦子君 つまり、アメリカの側には、やはり先ほど申し上げた相克の勢いが世界にある中で、やはり自由貿易に何らかの形で対応していくというようなことに価値を持つ無数の有権者がいて、もちろんアメリカにとっては選挙の年ですしということがあったかと思われます。 そして、今回の協定で、先生もここで説明されたんですけど、まず交渉中においては、その協議が行われている間、本共同声明の精神に反する行動は取らない、それから、その後、協定が妥結した後には、日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、本協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らないと。こういう形で、私は経済や通商の方の国際法については余り通じていないんですけれども、軍縮交渉についてあるいは軍縮関連の国際法についてはいろいろ経験があるんですけれども、こういう内容ですね。 最近では、例えばデータ・フリー・フロー・ウイズ・トラストとか、フリー・ウイズ・トラストというものを、何かこの困難な中、組み込んでいくという、こういうことが経済の方ではあるのかしらと思いますけれども、先生はこういう立て付けのこういう成果について、いかがお考えですか。
○参考人(中川淳司君) 意見陳述のときも申し上げましたけれども、私は、いい成果、互角以上の成果という、その一つの要素はそこだと思うんですね。 アメリカは、例えば中国に対する関係でも、三〇一条とかいろんな武器を使って中国をねじ伏せようとしてうまくいっていない、そういう感じがありますけれども、自動車を持ち出して日本とEUからディールを勝ち取ろうとしたわけですけれども、そこに対しては、交渉をスタートする段階で、まず交渉中はやらないと、でき上がった段階でこれを誠実に守る限りはやらないということで、そこを完全にねじ伏せたというか抑え込んだというところは高く評価できるところだと思います。多分、欧州の人たちも、ああ、そういう手があるのかというふうに見ているんじゃないかと思います。
○猪口邦子君 それでは、三人の先生方にちょっと全体のことでお伺いしたいと思うんですけれども、この自由貿易を推進するときに、まずマルチの、WTOの枠とか昔のガットの枠とかがありまして、それからこういうバイの、特に大国間バイの今度新たなこういう本格的な交渉、日本とEUのEPAのような形もあります。そして、TPPのような、TPP11のようなリージョナルマルチといいますかね、こういう形もありまして、それでTPPに戻った方がいいという御意見は、中川参考人もそうですし、内田参考人もそういう意見を表明されたと思うんですけれども。 こういう、まずはいろいろ困難があるときに大国間協調という、グレート・パワー・コーディネーションというかコオペレーションというか、そういう一つのバイの形があって、それがまたリージョナルマルチとか大きなマルチの枠と、整合性の中でできるだけそういう交渉をしていくということの価値というのをどういうふうに考えていらっしゃるか、それぞれにお伺いしたいんですけど、まず内田参考人の方から伺っていいですか。
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。 ちょっと的確なお答えになるか分かりませんけれども、結局この今の二国間FTA、あるいはこのTPPのような地域間協定というのが、二〇〇〇年代以降、まあ米国は九〇年代以降ですけど、進んできたのは、やはりWTOが機能しなくなったからそうなってきているわけですね。 ですから、私は、今のWTOというフォーラムは様々な問題を抱えていると思うわけですが、ですけど、やはり唯一の多国間交渉を保障する場であり、途上国も含め百六十か国以上入っていると、一国一票制であるということですので、私たちは、実は市民社会はWTOにもどんどん批判をしてきたわけなんですけれども、つまり途上国がやはり非常に不利な立場になる。 ですけど、時代はどんどん変わっていて、もはやFTAなどでどんどんいろんなレベルのいろんなルールが生み出されて、それが込み入ってスパゲッティボウルというような状況になるくらいであれば、やはりきちんと原点のWTOというところに返って、やはりそこできちんと合意をつくって、透明性も高め、民主的な意見、意思決定をするというところが今一番世界の経済体制、貿易体制が直面していることなのかと。ですから、WTOというところに戻る。 その意味で、アメリカはやはりWTOを非常に軽視していて、問題だという行動を取っていると思っております。
○猪口邦子君 まさに今申し上げたようなこういう保護主義、ポピュリズム対自由貿易の中で、様々なこういう努力ですね、TPP11もそうですし、今回の、昔だったらグレート・パワー・ウオーズの時代だったのが、今度はグレート・パワー・コオペレーションのこういう流れをつくって、WTOがその本来の任務をする、そういうモメンタムをつくる努力をそれぞれがするべきだというようなことにつながればと思いますが、鈴木参考人と中川参考人、今、私が先ほどからお伺いしているこういうマルチ、それからバイ、そしてリージョナルマルチ、それがどういう相乗効果を持つかということについてお伺いします。 鈴木参考人、お願いします。
○参考人(鈴木宣弘君) 私も基本はWTOのような形のマルチの交渉が重要であると。WTOが全ていいわけではございませんが、無差別原則でみんなに同じ条件を与えつつ、世界が全体で発展するようにという考え方が重要で、特に日米のような大きな経済圏がその二国間だけで差別的な協定をやる、しかも部分的な協定をやるということは世界の貿易をゆがめる要素が強いと。これは経済学的にも日本が議論してきたことで、そもそも二〇〇〇年までは日本はWTOを重視して二国間協定を否定してきました。国際経済学者もそういう方がほとんどだったと思います。 そういう中で、WTOが機能しなくなってこういう事態になっておりますけれども、やはり内田さんも言われたとおり、そろそろ、これだけいろんな協定ができて、いろんなルールが錯綜してくると、いろんな弊害も出てくるということで、特に日米貿易のような形の協定は、以前はこれは一番あってはならない協定だと国際経済学者の方々も言っておられた方が多かったと思います。 そういう意味で、こういう形の弊害も見直しつつ、全体として平等に発展できるような仕組みをどうつくるかということを議論すべきじゃないかと思っております。
○委員長(北村経夫君) 時間が来ておりますので、簡単におまとめください。
○参考人(中川淳司君) WTOが今機能しないので、現実には有志国でデジタル貿易ルールを決めるという、もうそれしかないと思います。その場合に、日米で今回決めたルールというのを反映していくというのが現実的にはベストなシナリオだと思っています。
○猪口邦子君 ありがとうございました。終わります。 ─────────────
○委員長(北村経夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、松川るい君が委員を辞任され、その補欠として高野光二郎君が選任されました。 ─────────────
○白眞勲君 立憲・国民.新緑風会・社民の白眞勲でございます。 本日、参考人の皆様に、お越しくださいまして、本当にありがとうございます。 早速質問に入らせていただきます。 まず、中川参考人にお話を聞きたいと思うんですけれども、三人それぞれ今までお話聞かせていただいて、一つだけちょっと中川参考人の方には、協定の附属書に書かれておる、例の米国が将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求するという文言について、私も、これ何で追求なんだというようなことで、余り協定の中には使われていないような言葉をそこで使われているとか、ほかのお二人の参考人についてはこれについても何らかの御指摘はあったんですけれども、中川参考人、これはどうなんでしょうかね。 日本は、今後の交渉分野としては、今まで対政府質疑においては、自動車や自動車部品の関税撤廃だけで、それ以外は想定していないんだと。つまり、この農産品に関する特恵的な待遇を追求するというのは、これは簡単に言えばアメリカが言っているだけの話なんだよねというようなことなんですけれども、中川参考人としてはどういうふうにお考えなのか、お話聞かせていただきたいと思います。
○参考人(中川淳司君) この附属書の文言はアメリカはという文章で始まっていて、特恵的な待遇が獲得できるように努力するというか、それを目指すというか、そういう狙いだと思うんですけれども、それ自体としては特段の法的な効力というのは発生しないと思っています。
○白眞勲君 ありがとうございます。 そうしますと、今、中川参考人は、交渉結果は、関税交渉では日本は互角以上の成果を上げたんだということをおっしゃっているわけなんですけれども、ということは、今の段階において日本は、よく政府はウイン・ウインだと言っているんですけれども、実際には本音では日本がウインなんだということなのかなというふうにも思えるんですね。 これには、関税交渉、関税の撤廃が入っていることを入れてウインなのか、それとも、関税の撤廃が入っていなければどっちがウインなんだろうなというと、何かアメリカの方がウインなのかなというふうにも思えなくはないんですけど、その辺は中川参考人としてはどういうふうに思われますか。
○参考人(中川淳司君) 農林水産品から工業製品に、もうたくさんの品目が、一万近い品目があって、その全てが今回上ったわけではなくて、非常に短期間でしたし、限られた品目ですけれども、日本側としては、TPPプラス、TPPをキャップとして、とにかくTPPマイナスの内容の市場アクセスしか約束しなかったという点は勝利といいますか、守り切れたという面があると思いますし、アメリカとしては一番取りたかった牛肉についてTPP並みの自由化を日本から勝ち取ったということでウイン。 あと大きなのは、日本側に関しては自動車、自動車部品の問題ですけれども、これについても、アメリカがそういうことを言うのならば、対抗上、自動車についても何らかの約束をすべきだということですけど、それについては更なる交渉でやるということが、これはアメリカの譲許表の中に入ったんですかね、それは、譲許表の中でそういうことを書かれていれば、それ自体は条約の本文と同じ扱いですので、法的な意味があるので、その点含めてもウイン・ウインというのは言えると思いますけど。
○白眞勲君 要は、だから日本がウインだと今おっしゃったんだと思うんですけれども、ウイン・ウインじゃなくて日本がウインなんで、ウイン掛ける二が日本なんだということでよろしいわけですよね。
○参考人(中川淳司君) アメリカにとっては牛肉を一番取りたかったので、そこは取れたという意味で、アメリカにとってもウインであると思います。
○白眞勲君 鈴木参考人は逆に、このウイン・ウインは、今アメリカがウイン、ウインだと言っている。要は、ウインどころかウインの自乗がアメリカにあるんだというふうな内容だったと思うので、その辺についてはいかがでございますか。
○参考人(鈴木宣弘君) 農産物につきまして日本側もまだ譲らなかったものがあると言いますが、先ほども御指摘しましたとおり、日本側の農産物の関税撤廃率は七二%になっております。それに対して、アメリカ側は何と農産物の関税撤廃率が一%という状態で、この点においても日本側が大変譲っているということで、牛肉につきましてもセーフガードは無制限に広げていくというような内容を日本が認めまして、そしてアメリカの枠が二重に付いていると。ほかの部分について、アメリカの枠が二重に付かなかった部分も、これは日本側から見ればTPP水準はTPP11で実現してしまっておりますので、そういう意味でアメリカに追加で付いた部分がもう日本にとっては失った部分になりますから、そういう点も含めまして日本側が本当に得たものはほとんどないと。それに対して、私の計算でも、結果的に九千五百億円ぐらいの農業生産額の減少はあり得るという計算でございます。 自動車については、アメリカがTPPで約束した関税撤廃をほごにしているというふうに理解できますので、そうなりますと、日本側は両方失った、トランプ大統領は両方取れたということになるんではないかということです。
○白眞勲君 ということは、鈴木参考人にしてみると、ウイン・ウインで、ウイン・ウインはトランプ大統領がウイン、ウインであって、あっ、トランプって、アメリカ側がウイン、ウインであって、日本はゼロ、ゼロというか、そういったものではないということだということ、イエスかノーかだけでいいんですけど、ちょっとお話しいただきたいと思います。
○参考人(鈴木宣弘君) はい、そういう意味で申し上げました。
○白眞勲君 内田参考人に、これと同じような内容なんですけれども、内田参考人は、先ほど熟議が足りなかったよ、まずはと。これ、いろいろな面では熟議が足りなかったというお話をしましたけど。 私はやっぱり、政府がウイン・ウインの関係になりましたと言っているんですけれども、やはり私もどちらかというと鈴木参考人の意見と似ているんですけれども、どう見てもこれちょっとアメリカの方が有利な交渉になっちゃった、結果としてなっているんではないんだろうか。自動車の撤廃についてだって、まだまだ約束したわけではない、撤廃の期日を決めるんだ、ために今度交渉するんだと言っているんですけれども、何か私も、撤廃を約束したわけではないということですから、この辺については内田参考人にしたら、私はやっぱりウイン・ウインだ、日本側がウイン、日本側じゃない、アメリカ側がウイン、ウインの、何かウインの百倍ぐらいあるんじゃないかなと思うんですけど、その辺についてはいかがでございますでしょうか。
○参考人(内田聖子君) まあ百倍かどうかは分かりませんけれども、基本的に私も、今回の協定はアメリカ側の勝利であると。 理由は、さっき申し上げたように、日本のこの交渉の最大かつ唯一の目的、目標は、高関税措置を回避すると、ここに設定したというところが決定的だと思っています。それを避けるために農産物の関税を下げていくという話がありまして、しかもこれ、実はアメリカは、何というか、勝手にTPPを抜けたわけでして、そこで失った利益を欲しいという主張自体は、これは多国的交渉ルールからすれば何を勝手なことを言っているんだということでして、むしろ日本はそこで強くTPPに、じゃ戻りなさいと言ってもよかったですし、あるいは、入れて、交渉するからという、日本の利益をどんどんどんどん突き付けていけばよかったぐらいに私は思っています。 ところが、実際には逆に、先に農産物の関税の削減については、TPPや日EU・EPA、つまり過去の経済連携協定のレベルという手のうちを先に出しちゃったんですね。先にコミットしちゃったんですね。そうすれば、アメリカはもうそれもらえるねということで、当然、いや、じゃ自動車関税などは譲歩しないよということになりますので、これは交渉術としてもいろんな問題があるのではないかと思っております。
○白眞勲君 最後に、中川参考人にお聞きいたしますけれども、中川参考人は、両協定を締結をすることによって、これからもTPPへの復帰を粘り強く求めていくべきだというお話をされていましたけれども、これ、本当にアメリカのTPPへの復帰というのは現実的にあり得ると思いますか。
○参考人(中川淳司君) 今のトランプ政権では無理だと思います。
○白眞勲君 そうしたら、政府はTPPに復帰するのが望ましいとしています。結局、TPP復帰からは遠ざかってしまったということでよろしいですよね。
○参考人(中川淳司君) 来年、大統領選挙で、民主党で比較的中道の人がなれば可能性が出てくると思いますし、仮にトランプさん勝ったとして、二期目はまた違ったトーンでやるんじゃないかなという期待をしています。
○白眞勲君 期待ということで、まあこれは大統領選挙の行方については、誰も我々どうこうする話じゃありませんけれども、ほかのお二人の考え方について、もう時間が終わりですね、じゃ一言、あっ、終わりました、じゃ、終わりですので、これでやめさせていただきますが。 ありがとうございました。
○秋野公造君 公明党の秋野公造です。三人の先生方、今日はありがとうございました。 まず、内田先生からお伺いしたいと思います。 私、デジタル貿易協定は大変関心が高いので、前国会、委員会でも議論し、次も質疑を続けたいと思っておりますが、ちょっと、今回のソースコードとアルゴリズムの開示要求の禁止、それから暗号技術の開示要求、特定の暗号の使用要求の禁止と、こういったことが定められましたけれども、この意義と先生の懸念につきまして教えていただきたいと思います。
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。デジタルのことは先ほど申し上げられなかったので、ありがとうございます。 デジタル貿易協定の方は、先ほど中川先生からも御指摘ありましたが、TPPをベースにして、そしてアメリカにとってはもう一段USMCAがあって、ちょっとアップデートされていて、さらに、ほぼUSMCAと同じものが規定であるわけですが、ソースコード、アルゴリズムというのは、ソースコードの開示の禁止というのはTPPではありましたが、アルゴリズムは今回入っているということですね。 これは、この部分、デジタルは非常に新しい分野でして、概してどの国も、規制とそれから企業の利益あるいは自由というところのバランスを非常に、バランスを取ることにみんな苦心していて、どれが正しいということはすぐモデルとして出てきませんけれども、EUであれ中国であれインドであれ、やっているわけです。 今回のデジタル貿易協定についての私の懸念は、やはり、この資料の中、後ろの方で、七十二という通番のところをもう見ていただければと思うんですが、TPPと比較してもそうですし、日EUと比較してもそうですし、非常に、いわゆるITやプラットフォーマー企業に有利な規定が作られた、世界で一番そういう意味では企業フレンドリーな規定だと思っています。 日本は国内法を変える必要がないので、余りこの実感がないようなんですけれども、国際的なルールを今作っているという中で、やはり日米が突出してこのような強いルールを作ることは、全体のルール作りに寄与するという考え方はあるんですが、逆に私は、例えば中国やインドやEUという国は全く日米のデジタル貿易協定とは違う思想と具体的な規律を持っていて、そこに非常に刺激するというか、コンフリクトを起こしていくということを懸念しています。実際に、WTOの電子商取引ルール交渉も今やっている中ですが、ほかの国はこの貿易協定を実は非常に警戒をしているという実態もあると思っています。
○秋野公造君 ありがとうございました。 次に、鈴木先生にお伺いをしたいと思います。 先生が保護主義ということを申し上げるつもりはないんですけど、ちょっと大きな観点で、これから我が国は自由貿易を推進すべきか、そして、保護主義、もう少し検討すべきか、ちょっと、ためにする議論になりますけれども、先生のお考え、ちょっと大きな観点から教えていただきたいと思います。
○参考人(鈴木宣弘君) 私も自由貿易そのものを否定しているわけではなくて、自由貿易については、みんながルールを守って平等に、無差別原則に基づいて世界全体で議論していくべきだと。 そういう中で、特に僅かな国で、今回の日米のような大きな経済大国が差別的な協定を、しかもつまみ食い的に行うというような形の貿易協定は大変弊害が大きいということで、それは自由貿易というよりも、まさにアメリカが自分の守りたいものを守るために自動車に二五%の関税を掛けるぞというような脅し、つまりこれは保護貿易的な動きであって、そういうことを濫用することによっていろんな形で言うことを聞かせていくという、こういうふうな形の貿易交渉というのはやはり弊害が大きいというふうに思っておりますので、それをやっぱり解決できるのは、WTO、ガット体制の下でしっかりとこれまで積み上げてきたものをもう一度我々がはっきりと認識し直して、それに基づいて今の状況をどう改善するか。 そういう意味では、WTOの体制というものをもう少し強化する、権限を強化するようなルールの改定について、WTOの中でもう少しいろんな解決ができるような、そういうふうなルール作りをみんなが提案していくべきじゃないかなという気もしております。
○秋野公造君 ありがとうございます。 それでは、中川先生にお伺いをしたいと思います。 先ほど、内田先生から、アメリカの動きとして、中間協定に位置付けるべきではないかと、こういった動きがあるということ、それから紛争解決条項が足りないといったような批判も伺いますけれども、こういった批判に対する評価、二点について教えていただきたいと思います。
○参考人(中川淳司君) 今回の日米貿易協定を単独の、スタンドアローンの貿易協定、自由貿易協定と見るかどうかというところは意見が分かれているところと思います。政府見解では、スタンドアローンの自由貿易協定と見た上で、自由化率を見て、WTOの協定に違反しないということを言われているようですけれども。 理屈としては、今回はアーリーハーベスト、早期に合意できることをやって、その上で次の段階の協定を交渉するということは書かれていますし、それも盛り込まれていますので、最終的な大きなフルセットの貿易協定に至る中間段階の協定であるとして中間協定という位置付けを取ることも可能だろうと思います。その場合には、最終的に第二段階の協定を併せて、その中身が例えばWTOのルールに反しているかどうかということを改めて検討するというふうになるとは思います。 ただ、そういうことを言った上で、何というか、身も蓋もない話をすると、WTOルールはあるんですけれども、これまで一度も発動されたことがなくて、おおよその目安として九〇%の自由化率は必要ですよねということは言われていますけれども、それに違反しないものもありますし、違反したことによって、例えばほかの国から訴えられて敗訴するということも起きていないんですね。 あと、DS条項が二国間でないのはむしろ普通の場合ではないかと。協議による解決をするという形で収めている協定はたくさんあります。
○秋野公造君 終わります。ありがとうございます。
○浅田均君 日本維新の会の浅田均と申します。 今日は、参考人の三人の先生方、貴重な意見聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。 まず、私、中川参考人の方から質問をさせていただきたいと思っているんですが、先ほどのお話の中で、この日米デジタル貿易協定に関しまして、これは有志国によるWTOデジタル貿易協定が進められている、日米が共同で交渉をリードしていく基盤となると御発言されておりますし、書かれております。私も同じ意見なんですが、この日米デジタル貿易協定の意義として、アメリカをマルチの場につなぎ止めておくという効果が期待できると、私もそう思うんです。で、想定されるターゲットは中国であると。 で、もう、このデジタル貿易というか、このデジタルプロダクトに関しては、もうアメリカと中国と、物すごく日本より進んだ二つの国があって、日本は今そこにどういう土台を築いていくかという段階にあるというふうに考えております。 それで、リードしていくというのはいいんですけれども、逆に、先生おっしゃいましたようなアルゴリズムの開示要求の禁止とか暗号技術の開示要求、特定の暗号の使用の要求の禁止とか、そういうことを中に含めてしまったことによって、逆に日本のプラットフォーマーがこれから成長する妨げになる懸念は私は若干あると思うんですが、先生どういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(中川淳司君) 御質問ありがとうございます。 基本的に、これはプラットフォーマーの企業が世界展開をしていく中では必要な規定で、例えば中国なら中国に進出をしたときに、おたくの使っているソフトのソースコードを全部開示しなさいと、あるいはアルゴリズム、そのベースになるもの、文法ですけど、そこも全部出しなさいと言われたら、もう商売にならないですよね。同じ意味で暗号技術にしても非常に重要な企業秘密でしょうし、そこについては強制的に開示させられることはないというのは、ある意味デジタル経済がグローバルに展開していく上でのインフラとなるルールだと思います。 その上で、例えば個人情報は保護しなきゃいけないとか、消費者をどうやって保護するのかとか、そういう問題、あと、国家安全保障上の懸念がある場合にどういうふうにプラットフォーマーなりに規制を掛けていくのかということを話し合うという、そういう立て付けで物は考えていくべきだろうと思っています。
○浅田均君 ありがとうございます。 それで、内田参考人も、これ、事前に配付された資料を読ませていただきましたところ、デジタル貿易に関してはかなり御懸念を表明されておりまして、かなり私自身もこれ進めるべきだという立場なんですが、同意できるところも結構あるので、今プレゼンの中で余りお話を聞かせていただく時間がなかったので、ここで質問する形でお話を聞かせていただきたいんですが。 今、中川先生の方からお話ありましたように、アルゴリズムとソースコードの開示禁止というのがあって、私は、どちらかといいますと、ソースコードというのはプログラム、プログラミング言語で書かれたプログラムそのものですから、これはもう開示しろと言われても、知財に入るというか、公開は当然されないものだと思うんですけれども、アルゴリズムに関しましては、例えばそのデータをどう格納するかとか、データをどう並べていくかとか、格納するか、どう引っ張り出すか、そういうふうな手続面でのことですので、アルゴリズムの中にも公開鍵とか暗号鍵とか、これも絶対企業秘密で表にしてはいけないやつと、別に表にしてもいいではないかと、OSのところ、コンピューターのときも、OSでMS―DOSというのが先行しておって、それに対抗して例えばリナックスなんというのはオープンソースで発表されて、それがコンピューターの発展にすごく寄与した面があると思うんですけれども。 アルゴリズム全般を一くくりにしてこれ開示禁止すべきと言うべきではなしに、一部それは特定秘密というか企業秘密というか知財に属するものでこれは絶対開示できませんというのと、別に開示してもこれからの発展につながるからむしろ開示すべきではないかと思えるような分類ができると思うんです。それを十把一からげにもうすべからく開示は禁止というふうにしてしまったのはちょっと行き過ぎではないかなという気がしないでもないんですが、その点に関しまして内田参考人と中川参考人、御両人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。非常に重要な論点だと思っています。 企業の側からすれば、それは知財に属すかどうかは別として、アルゴリズムというのはまさに企業にとっては一番重要な遺伝子というか設計図というか、そこなので、それをやみくもに開示したくないというのは企業の論理としてはあって、アメリカなんかはやっぱりずっと、そのソースコードであれアルゴリズムであれ、それを開示させなかったことによって企業が大きく育ってきたという経緯があります。 ただ、これ、今アルゴリズムという、特にAIで使われていますが、それがいろんなところに影響を及ぼすようになって、やはり全てがクローズドでいいのかという議論はアメリカでもありますし、これ、USMCAにもこのアルゴリズム、ソースコードの開示要求禁止は入っていて、カナダの研究者なども公共政策との兼ね合いでいいのかという提起はしています。 例えばですけれども、AIで自動車、自動運転、自動走行車というのが恐らく今後一般的になってくるでしょう。じゃ、事故が起こったとき、あるいは今農村でもドローンどんどん飛ばして、それもAIで全部気象状況から計算して勝手にやっている。それ身近になってくると、そういう事故が起こったときに、じゃ、なぜ事故が起こったのか、何が間違いだったのか、これは捜査をしなければいけないわけで、その際に開示要求というのはもちろんなされるべきなんですね。 一応、デジタル貿易協定の中には、一定の規制機関又は司法当局が、他の締約国に対し、特定の調査、検査、検討、執行活動又は司法手続のため、開示要求はできることには一応なっていますけれども、この文章は割と解釈の余地というか、定義がそんなに明確じゃないので、例えば消費者の権利が侵害されたと思うようないろんな事例が出てきたときに、どこまで開示要求して通るのかどうかというのは、非常にインプリメンテーションの、実施のところでいろいろ問題になってくるんじゃないかというふうに懸念をしています。
○参考人(中川淳司君) 御質問の中で、そういうものについては知的財産で保護することも考えられるんじゃないかというお話あったと思うんですけれども、特許にせよ著作権にせよ、一応それは公開されます、公開されますよね。ただ、恐らくそれを公開しないところに意味があるんだろうということで、思っています。 アルゴリズムにしても暗号技術にしても、原則開示要求は禁止とした上で、先ほどの内田参考人の意見にもかぶりますけれども、例外としてそれを開示しなければいけない場合というのを具体的にどういうふうに詰めていくのかというふうに議論を進めていくのがいいかなと思っています。
○浅田均君 あと、そうしたら一つだけ。 これから私たちもそういう社会を実現させたいと思って、自動運転のバスとかを実証実験を始めたいなと思っているんですけれども、そういうときに、もちろんその背景にAIという技術があるわけですけれども、それが何か事故を起こしたと今事例を挙げられましたですけれども、実際そういうことがカナダであったという前提に立ってですか、これは想定のあれですか、お書きになっているのは。 自動化された意思決定プロセスにおいて、個人情報がどのように使用されているのか検証するよう、個人情報委員会等の規制当局が要求されることもあるだろうというふうなことを書かれているんですけれども、先生の引用としてですね。
○委員長(北村経夫君) 時間が参っておりますので、簡単におまとめください。
○参考人(内田聖子君) はい。 そこに書いたのは、実際にカナダで事件が起こった、事故が起こったということではなくて、想定ですね。 ただ、実際、AIを使った技術はどんどん進歩しているわけですが、重大な事故はもちろん目立つから注目されますけど、そうでなくても、日々いろんな、例えば人権ですとか消費者の権利、そういうところとコンフリクトを私は起こしていくと思うんですね。その際に、どういう法体系、法規制が必要かという、権利と企業の自由というのは、もっと私は日本の中でその議論が十分に必要だというふうに思っております。
○浅田均君 ありがとうございました。終わらせていただきます。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。 まず、内田参考人に、デジタル貿易協定に関連してお聞きいたします。 全体として、いわゆる巨大プラットフォーマーに非常に有利な中身になったんじゃないかと思っているんですが、昨年十二月にUSTRが設定、公表した獲得目標を全て実現する中身になっていると思うんですね。 先ほど来、アルゴリズムの開示要求の禁止は話になっていますが、例えばオンラインプラットフォームの民事責任の制限というのが入っておりますが、これなど、むしろ、アメリカの国内ではむしろこの見直しを求める声もあったと思うんですけれども、その辺どのような状況だったかという御紹介いただきたいのと、にもかかわらず、こういうものが盛り込まれた背景というか理由について、まずお願いします。
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。 十八条のコンピューターを利用した双方向サービスという件ですね。 これはまさに、プラットフォーマーというのは、インターネット上の掲示板ですとかSNSであるとか、そういうところを運営する企業のことを指すわけですが、これは、アメリカの通信品位法という国内法がありまして、その中で、随分前からこのプラットフォーマーの責任を免除するという、つまり、ひどい書き込みですね、誹謗中傷とか人権侵害とか、そういった書き込みを誰かがやって、それが誰かを傷つけるということがあっても、掲示している場であるプラットフォーマーに責任がないんだということでして、この規定があることによって、やはりGAFAと言われる企業を含め、発展してきたと言われています。 ただ、非常に面白いというか、今議会の中で、先ほどちょっといろんな意見を紹介しましたが、このデジタル貿易協定の十八条の規定ですね、これに対しての異論はたくさん出てきていて、これ削除すべきだというような意見まで議員から出てきています。なぜならば、やはりこれだけフェイスブックやいろんなものが広がって、日々人権侵害が起きている、犯罪行為、児童ポルノ、たくさん問題があるという中で、プラットフォーマーに一定程度の責任をやはり課していくべきではないかという、非常に新しい議論ですけれども起こっていて、米国議会でもこれ議論されているんですね、通信品位法を変えようと、国内法を変えようと。 そうやって議論しているまさにそのときに、国内法よりも優越する条約で、日米デジタル貿易で、それもう全部免責しますと決めれば、国内の政策スペースはもう狭いまま規定されちゃうんですね。だから、これ、まずデジタル貿易条約からは削除せよと。これは私、だんだんアメリカの中でもこの議論盛り上がってくると思っています。 ですから、日本も、そういう公共政策スペースをまず条約でがちっと決められて、後になってそこが自由に利かないというようなことに陥る懸念を私はしております。
○井上哲士君 もう一点ですね。これが、欧州とかアジア諸国のいろんな考えている制度との違いということをおっしゃいました。例えば、越境データの移転制限やコンピューター関連設備の利用、設置の禁止などなどあると思うんですが、具体的にその欧州やアジアが考えているものとどこがどう違っているのか、そして、その中でこういうものが先行して決められていく、やられていくことがどういう問題をもたらすか、その辺もお願いしたいと思います。
○参考人(内田聖子君) ちょっと、すごく説明が長くなるので大変はしょって言うと、私は、今世界に四つのタイプの、データの移転に対しての四つのタイプがあると思っています。 一つは、今回の日米デジタル貿易協定のように、基本的にデータの移転を自由にしようというタイプですね。それから、EUは割と人権という観点からプライバシー保護。だから、日EUの協定の中で、データの自由な移転というのは規定していないんですね。合意できないんです、EUは、そんな自由にしちゃいけないという考えがあるので。もう一つは、やはり中国ですね。国家で全部抱えてそれを使う、で、透明性は低いと。これはこれで私、問題がいっぱいあると思いますけれども、そういうところは。そしてもう一つは、今インドやインドネシア等の新興国で、割とデータローカライゼーションだったり、それからデータの移転の部分的な禁止という、これを保護主義と称するのは私は異論があるんですが、そういう守るという、国民の利益を守るという観点からですね、あります。だから、その四つがそれぞれにあると。 これが、日米のデジタル貿易協定で一番自由なルールを作ったからといって、その他のところが早々に合意すると私は思っていません。これは先ほど述べたとおりです。ですから、日本においての問題は、難しいのは、日本は既に非常に自由なルールを国内法的にも設定してしまっているので、デジタル貿易協定を今回批准したからといって何かが変わるということは取りあえずないわけなんですね。 ですから、やはり今後、でもやっぱりデータの自由な移転は、国境を越えた移転はもっと規制しようよと、EUのような形でですね、思った際には、この協定、合意している限り、米国との間という限定付きですけど、協定を変えない限りはやはり難しいという、自分たちの政策の変更余地というのが限定されるというふうに思っています。
○井上哲士君 ありがとうございました。 次、鈴木参考人にお伺いいたしますけれども、今後の再交渉の一つの焦点が食の安全の問題になると思うんですね。先ほども少しこの間の日本の規制緩和のお話がありましたけれども、今後、アメリカが非常に強い要求をしてくることが予想されると思うんですが、その辺のおそれ、そして政府は、いや、国益に反する合意はしないと、こう決め文句なわけですけど、この間の経緯を見ますと、その辺の懸念というのはどのようにお考えでしょうか。
○参考人(鈴木宣弘君) 食の安全は日米交渉の中でも重要な部分の一つで、アメリカからのいろんな要求が既にございまして、その中で今既に二つ進行している大きなものが、先ほども少し申し上げましたBSE、狂牛病の輸入条件。これをTPP12のときに、日本はTPPに参加したいならば二十か月齢に抑えているものを三十か月齢まで緩めるようにと事前に言われまして、それを緩めました。三十か月齢になっていたものを今度は撤廃するように要求が続いていた。 そういう中で、食品安全委員会としては、BSEについてアメリカは一応表向き清浄国になっているので、これを言われたらやっぱり撤廃しなきゃいけないということで、準備を整えて、それを発表するタイミングを待っていたと。で、この日米交渉が始まって、国民に対してはこれをアメリカのためにやったとは言えませんけれども、五月十七日にそれを撤廃したというのは、一つの日米交渉の中での成果であるというふうに私は認識しております。 次に出てくるのが、日米レモン戦争でも話題になりましたレモンとかに掛かっている防カビ剤ですよね。これは収穫後農薬で、日本では禁止ですが、アメリカから運んでくるのに掛けなきゃいけないと。食品添加物という無理やりの分類で日本は結局認めたわけですけれども、そうすると、今度はレモンのパッケージにイマザリルとか書かされるのが不当なアメリカ差別だから、これをやめるようにということで、この表示を撤廃する交渉が今進んでいると。恐らくこれは早い時期にこの件について何らかの回答を日本は出さざるを得ないのではないかと。 そのような形でいろんなリストが挙がっている中で、次々と食の安全基準を緩めていくという交渉が今後とも続くのではないかと。それから、遺伝子組換えの表示の問題とか、そういうものも既に進んでいますので、その辺りについての更なる要求、こういうものがまだこれから第二段階の交渉の中でも継続的に出てくるのではないかというふうに懸念しております。
○井上哲士君 あと時間がありませんので、簡潔に。 農産物についての政府の影響試算に非常に問題があるということも書かれていますけど、その点、お願いします。
○参考人(鈴木宣弘君) 政府の試算は、価格が仮に下がっても、関税を撤廃したりして、その分については必ずその差額を補填するか、あるいは対策を打って生産性が向上して、その分は何というか相殺されると、そういう下に、結果的には生産量も所得も変わらないということを前提にして計算しておりますので、正確な意味での影響試算ではないと。影響がないように対策をするから影響がないと言っているような形になってしまっているというのが一番の大きな問題ではないかと思っております。
○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
○伊波洋一君 沖縄の風の伊波洋一です。 中川参考人、鈴木参考人、内田参考人、本日、本当にありがとうございました。 時間が限られておりますので、全員には質問できないと思いますけれども、まず鈴木参考人にお伺いしたいと思います。 特に、今、先ほどの食の安全の問題でもありますが、食料安全保障あるいは食料自給率、今日提出いただいている資料にもありますように、やっぱり日米関係というのは、米国の農産物をめぐる輸出入の問題では、日本が市場として、ずっと戦後占領下、あるいは日米安保条約の下でのある意味で従属的な日米関係の中で、そういう消費の場として位置付けられてきている。 今回の日米交渉もその一つでありますけれども、とりわけ今問題になっておりますのが、米国の農業がいわゆる大規模農業で、そして遺伝子組換え作物、それから枯れ葉剤、除草剤など、そういう機械化された、効率化された中で、この資料にもありますように、食パンのグリホサートの含有率、私たちが一番健康志向の全粒粉というものに一番多く含まれているなど、これが象徴していると思うんですけれども。 今日、連合審査の中でも、学校給食に使われているパンにもグリホサートが混入していると。それに対するいわゆる検査は国として何も行っていないと。これ、地方自治体が行う仕組みがあるのでそういうことになっているという状況で、つまり、まさに私たち国民の健康があんまり、全然精査されないまま、こういう貿易交渉の下で、つまり表示そのものを消していくという流れが動いていますが、この辺、全体の流れをいま一度教えていただきたいと思います。
○参考人(鈴木宣弘君) 先生のおっしゃるとおり、今、日米関係でまさに戦後の占領政策として我々はアメリカの穀物を大量に受け入れて、そして、それによって助けられた面もありますが、我々の食生活は、トウモロコシ、大豆、小麦、アメリカのものをたくさん我々が消費してきたと。 今回は、そのトウモロコシをまだ更に買うようにというような要請も来て、そういう意味では占領政策がまだ続いているような状況でもあるのかなと思いますが、そういう中で、アメリカでは、御案内のとおりのいろんな新たな技術、遺伝子組換え技術とかで、特に大豆、トウモロコシについては遺伝子組換えにして、除草剤を掛けても枯れないようにしたと。小麦については遺伝子組換えになっていないけれども、収穫期にその除草剤を掛けて枯れさせると。それがまさに我々のがんやそれから神経的な病気のもとになっているんじゃないかということで心配になって、四ページに表がありますが、食パン調べましたら、そんなふうな形で出てきていると。 この基準値が、小麦は三〇ppmということに日本はなっていますけれども、それに比べたら低いじゃないか、だから大丈夫だという議論がありますけれども、これは米は〇・〇一ppmです。なぜ三〇ppmになったかというと、アメリカ側から、アメリカでもっともっと除草剤を大豆やトウモロコシや小麦に掛けなきゃいけない、だから日本の安全基準値をそれに合わせて緩めてくれと、そういうものを日本は対応してこういう形にしてしまっていると。 そういうことで、ますますアメリカから輸入の穀物や農産物増えますが、それは先生が言われたとおり、いろんな意味で非常に危険な要素も含んでいると。それが今、今後とも、日米協定の過程の中で更に要求を受け入れざるを得ないということについて、我々はしっかりと考えなきゃいけないんじゃないかと思っております。
○伊波洋一君 指摘されております食料自給率やそういうものの今の危機的な状況に対して、我が国としては国内の農業、いわゆる割と健康志向の中では自国産の麦やそういったものを使うという志向は強いと思うんですけれども、現実的に我が国が自給に向けてやはり努力するということはできない環境にあるんでしょうか、それともできると見ていますか。
○参考人(鈴木宣弘君) まずは、政策的にこういうふうな動きをどう止めるかということは重要ですけれども、それ以上に、私たちが、国民の皆さんがこの実態に気付いて、危険なものは自分たちは避けると。 そういうふうな形で、例えば表示ができなくなっても、アメリカの消費者も動きましたように、表示ができなくされれば、そうすればきちんとした安全、安心なものを自分たちの流通ルートで確保しようと。生産者と消費者の結び付き、あるいは安全、安心なものを流通させてくれる企業、そういうものとしっかりとネットワークをつくって、安全、安心なものをつくる生産者と、それからそれを流通する人たちと、それと消費者の自分たちが自分たちの力で自分たちの命と暮らしを守っていこうと、そういうふうなネットワークをしっかりとつくっていこうという運動、それをみんなで強化していく、このことが非常に重要なのではないかというふうに考えております。
○伊波洋一君 種子法の廃止に伴って、全国でいわゆる、最終的にはグリホサートなどにも関係してくるんですけれども、いわゆる国内の地場の作物が危ないという認識がとても強くなっていますね。 そういう辺りも含めて、私たち、もちろん世界的なこういう国と国との貿易協定というのはいろんな事情があるんでしょうけれども、でも、やはり今これがどうも隠されていく流れの中にある中、やはりこういう日米貿易協定をめぐって本当にぶつかっている国益というのは実は企業益である場合もあって、そういうものをより深く理解するためにはどういったことが必要でしょうか。
○参考人(鈴木宣弘君) そういうふうな情報について、十分に国民の皆さんが認識している状況ではないと思いますので、そういうふうな安全、安心に関する、それは輸入だけでなくて国内のものもそうですが、そういうことについての客観的な情報をしっかり共有できる仕組みをつくる、そういうことを国民、消費者、住民の皆さんにしっかりと知らせていく仕組みを私たちは強化する必要があるんじゃないかと。それによって、どう動くべきかという議論がしっかりとできるんではないかというふうに考えております。
○伊波洋一君 ありがとうございます。 残りの時間で、先ほど中川参考人、それから内田参考人からは、今回の貿易協定の最大の日本政府の成果は、通商拡大法二百三十二条の関税追加措置というものが行われなかったこと、これを行わせないことを担保したというふうに評価しているというふうな形だったように思うんですけれども、しかし、明文上はどこにもそれは出てこないわけですね。つまり、でも、それによって、いわゆるその協定がもたらす金額的な評価ではゼロになるということを前提に、先ほど鈴木参考人が約一兆円のマイナスになるということが否定されているわけですけれども、これについてお二人の参考人の御意見を伺って、終わりたいと思います。
○参考人(中川淳司君) お答えいたします。 協定の本文にはそのことは盛り込まれていませんけれども、二〇一九年九月二十五日付けの日米共同声明の中で、私の用意した配付資料の四ページですけれども、そこで青い字でアンダーライン引きましたけれども、日米両国は、これらの協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らないと。その精神に反する行動というのが通商拡大法の追加関税であるということについては明確な了解がありますので、共同声明、首脳同士の共同声明というところで実際上発動を封印したというふうに解釈できると思います。
○参考人(内田聖子君) ありがとうございます。 私は、目的を拡大法の制裁関税の回避に設定したと申しましたが、これ自体が間違いだと思っていますし、その結果、何の明文化された担保も取れていないというのが私の分析です。 その共同声明の文書にしても、それから関税撤廃の約束をアメリカがしたかどうかという議論の附属書の文書にしても、これ、国会では英文の解釈問題みたいな議論も拝見しましたが、私から言わせれば、まさに玉虫色の、グレーにどっちも取れるという典型的な交渉の中で、もうはっきり言うと、どっちか、どっちも困っちゃうというようなですね、ので、苦肉の策で設定した文書というふうに思っています。 ですから、アメリカの側もはっきりと制裁関税を課さないというふうには書きたくないわけですよ。そして、関税撤廃にしても、将来の交渉の対象にするなんという曖昧なことを書いたのは、私は実は約束していないからだと思っていますけれども、はっきり書けばもう大変なことになるということなので、ここは是非、重大な事実だと思っています。なので、それを曖昧なまま、それぞれの説明が違うという状態を放置したまま批准すれば大変な問題になると思っていますので、是非追及をいただきたい点でございます。
○伊波洋一君 ありがとうございました。
○委員長(北村経夫君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の皆様に一言御礼申し上げます。 参考人の皆様には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十八分散会