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193回国会参議院2017/03/09

予算委員会公聴会 第1号

発言数
215
登壇者
21
会派数
7
開催日
2017/03/09

会議録

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成二十九年度一般会計予算、平成二十九年度特別会計予算及び平成二十九年度政府関係機関予算につきまして、六名の公述人の方々から順次項目別に御意見をお伺いしたいと存じます。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十九年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、外交・安全保障について、公述人立命館大学客員教授宮家邦彦君、笹川平和財団参与・国際大学教授山口昇君及び慶應義塾大学名誉教授小此木政夫君から順次御意見を伺います。  まず、宮家公述人にお願いをいたします。宮家公述人。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 座ったままでお許しください。  本日は、誠に誠に光栄に存じます。外交・安全保障というお話ですが、今日は、安全保障と朝鮮半島問題につきましては他にすばらしい公述人がおられますので、私はどちらかというと国際政治を中心に、できれば戦略的な見地から概観をしたいと思っております。  明後日で東日本大震災からもう六年たちます。私は、この間に世界は大きく変わってしまったと思っております。中でも私が一番懸念をいたしますのは、もしかしたら冷戦時代につくられた国際システムというものが、様々な挑戦を受けながら変質しつつあるのではないかという懸念でございます。  例えば、国連、世銀、IMF、もちろんしっかりとした部分もありますが、一部は形骸化が進んでいるかもしれません。そして、AIIB等の新興国からの挑戦がある。欧州方面では、EU、NATO、これもやはり大衆迎合的な民族主義によって挑戦を受けている。中東方面では、一九七八年にキャンプ・デービッド合意というのがありました。そして一回安定したかと見えましたけれども、これもイスラムの過激な思想にチャレンジを受けているように思います。そして、もちろんアジアでありますが、アジアについては、一九七〇年代、七二年に米中、日中の国交正常化があって、そして一つの枠組みができました。しかし、今やその枠組みもチャレンジを受けているのではないかという気がいたします。  非常に皮肉なことなんですが、このようなチャレンジというのは、最大の原因は何かというと、ソ連が崩壊し、ロシアになって、そして冷戦に勝利したことなんですね。  これから申し上げますことは私自身の仮説でしかありません。今後精査をしなければいけない点が幾らもあるんですけれども、こういう前提で今日は、地球レベルで主要な力がどのように変わっていったかというのをひとつ御披露させていただきたいと思います。地球レベル、言い換えれば大陸間の戦略環境の変化というものをまず押さえて、その上でアジアにそれがどのような意味を持つか、さらにはそれが日本の外交にどういう意味を持つかと、こういう流れでお話をしたいと思います。  まず第一ですが、現在の主要国間の戦略関係というのを見てみますと、主要国いろいろあるんですけど、残念ながら、これ野球でいえば二部リーグ制でございまして、メジャーリーグとマイナーリーグがございます。日本は残念ながら、残念ながらでもないですが、立派なマイナーリーグでありまして、メジャーリーグと申しますのは、私が言いますメジャーリーグというのはメジャーパワーというものでしょうけれども、条件が六つあるんです。人口、領土、経済力、軍事力、資源、そして何よりも大国としての嫌らしいほどの意識であります。これがないと大国は張れないのでございますが、残念ながら、これに該当する国は米中ロしかないと思います。日本はいい意味でメジャーパワーではないのです。  続いて、これらのメジャーパワーの力関係がどう変わってきたかを考えますと、地域的にいうと、北米とユーラシアを念頭に置いてください。北米については、アメリカが基本的に過去七十年間、まあ多少の温度差はあるにせよ、力関係は余り変わっていないと思います。それに対してユーラシア大陸の中を見ると、明らかにパワーシフトが起きていると思います。昔はトルコとかペルシャもあったでしょうけれども、最近七十年でいえば、それは、ソ連からロシアへのシフト、そしてロシアから中国へのシフト、力のシフトですね、を感じるのでございます。これに伴って、国際政治も重点が、ソ連から、冷戦時代から、今ロシアということですけれども、国際主義から民族主義に重点がシフトをしている。そして、ロシアから中国ということ、これ西から東に重点なり懸念なり問題がシフトしているように私は思います。  この中で、ユーラシア大陸でもう一か所非常に重要な場所があります。それは中東地域なんですが、この中東地域については、これまでのところまだ激変には見舞われていないんです。一応アメリカがプレゼンスを維持しているために今の状態が保たれているんですが、今後アメリカのプレゼンスがどうなるか次第では、そのエネルギーにとって極めて重要な地域というものが不安定化する可能性、これも十分否定できない、パワーシフトが起きる可能性は否定できないと思っています。  ここで重要なことは、ロシアというのは資源はあるけれども経済力がない国です、メジャーパワーです。そして、中国というのは経済力はあるけれども資源がないメジャーパワーなんです。ということは、一つの可能性ですけれども、ユーラシア大陸の中で、例えば中国と中東が結ぶときに、それは経済力とエネルギーを両方持つ大きなパワーができ上がるということだと思います。そのようなことがどのような世界史的な意味を持つのか、いろいろ考えなければいけないということです。ユーラシア大陸において、旧ソ連、ロシアに代わって新たなメジャーの、強大なメジャーパワーが出現することになったときにどうなるだろうかと。  トランプ政権について私はとやかく言うつもりはありませんが、このトランプさんが、そして世界の指導者が、今申し上げたような、私の仮説ではありますけれども、パワーシフトというものをどのように意識しているかは分からないんです。分からないんですが、どうも、ロシアに甘く、そしてイスラムと中国に厳しいアメリカの今の姿勢を見ていると、無意識のうちかもしれませんけれども、これまで述べてきたようなメジャーリーグのこの国際政治の国際主義から民族主義へ、ロシアから中国へ、懸念の対象がですよ、が大きなパワーシフトを起こしているということを、どうもアメリカの少なくとも一部の人々、政権の一部の人々はそのようなことを感じているのかなとすら思います。これはあくまでも仮説でございます。  続きまして、じゃ東アジアではどういう影響があるかということ、東アジアの国際政治関係の変遷は、変質は何か。  過去七十年間で、まあいろいろありますけれども、朝鮮半島については後ほど小此木先生からお話があるでしょうから、私はやっぱり過去七十年、最大の変化というのは中国だろうと思います。  一九四九年の内戦が終わり、そして七一年にアルバニア決議ができて、そして代表権が代わる。そして、九〇年代以降は中国は民族主義化していくわけですね。このような民族主義的な中国の台頭、この三つが私は一番大きな変化だと思うんですが、特に最近のナショナリズムの高まりというのは、もしかしたら、劣化しつつある中国共産党の統治の正統性をある意味で補完しようとしている動きなのかもしれません。もちろん、私にとって、その内政よりも関心がありますのは中国の対外政策なんですが、この分野でも中国には変化が見られます。一昔前のような韜光養晦と、難しい字ですが、非常に慎重に低姿勢で来る国際協調を中心とする政策から徐々にこれ離れていって、より自己主張を強めるような動きが見えてきている。拡大する国益を守るためにと彼らは言うんでしょうが、中国の外交政策が、外交面だけでなくて安全保障についても受動的なものからより能動的なものに、そして国際協調的なものからより自己主張、単独行動的な方向にシフトしつつあるのではないかと懸念をしております。  こうした動きは実は中国だけではありません。御承知のとおり、欧州の大陸ではロシアが同じようなことをやっているわけです。中国が今東アジアの海でやっていることと、ロシアが今陸でやっていること、これは、現状を不正義と考えて、メジャーパワーが一方的に力による現状変更をしようとしている試みなのかもしれません。  そして、特に気になりますのは、今の中国で、軍部とかPLA、人民解放軍の中に、一部だと思いますけれども、非常に民族主義的な考え方を持つ人が出てきて、そしてそれに対する十分なシビリアンコントロールがないんじゃないかということを私は危惧しております。当然ながら、このような中国の大きな大きな動きというのは周辺国に大きな影響を与えるわけであります。北朝鮮については後ほどお話があると思いますけれども、見方によっては、最近の北朝鮮の動きというのも、こうした強大化する中国に対する一つの答え若しくは抵抗なのかもしれない。同じようなことは東南アジアでも起きています。ミャンマーもそうですし、フィリピンもそうですし、そしてさらにはタイもそうでしょう。そういうことを考えていくと、やはりこれから東アジアの地域というのは、あらゆる意味で安定よりも不安定、激動の時代に入ってくる可能性が高いのではないかと危惧をいたしております。  さあ、最後、日本の外交のあるべき姿なんですが、日本の国家戦略を、目的があって、外交というのはそれを実現する手段でしかありませんが、しかし、日本は低成長になりました。人口も増えません。これってどうやってこの今申し上げたような激動の世界を生き延びていくのか、私はサバイバルが一番大事なことじゃないかと思っております。  そして、ここで、例えば最近一番、一言だけ北朝鮮について申し上げたいのは、ミサイルを撃ちましたと、そしてそれが在日米軍に対する攻撃の訓練だということを公式に言っておるわけですね。あれ、米朝関係の、人ごとのような報道がありましたけれども、私はとんでもないと。在日米軍を狙うということは日本を狙うということなんです。これ、安保条約上の六条事態の極東有事ではないんです。これ、五条事態、日本有事なんですよね。ということは、撃たれたら即これ自衛権発動しなきゃいけないし、発動すべきなんです。  そのときに我々は、今議論しているのは、まさにミサイル防衛で何発落とせるかという議論しかしていないわけですが、本当にこれだけでいいんでしょうか。私は、安倍総理ほか皆さんが新しい段階に入ったと言うのは本当にそういう意味だと私は思っていますので、その意味でも議論はより深くしなければいけないなとつくづく思うわけでございます。  日本の外交はどうあるべきかということですが、簡単に言えば、日本は島国です。そして、大陸において勢力均衡を図り、大陸で覇権国家が出てこないようにする、そして島国はシーレーンを確保して、そして自由貿易で栄える、これが島国の生きる道でございます。これは英国の対欧州大陸戦略にも通ずるものでございますが、島国としての同盟、これはやはり日米安保条約が一番効果的だということ、これはもう言うまでもありません。これの安保による現状維持を図るというのがまず第一でなければいけないと思います。  同時に、もう一つ言えますことは、普遍的な価値の共有ということであります。現状維持勢力である、日本も現状維持勢力ですが、NATO、特に英国との関係、これを強化するのも一つの方法かもしれません。  それから、朝鮮半島については、これは半島に住む方々が最終的に決めることだとは思いますが、日本にとって大事なことは、自由で民主的で独立して安定して繁栄する、そして米国の同盟国である朝鮮半島、こういうものを目指していくのが日本の外交のあるべき姿ではないかと思います。  もう一つ言えますことは、東南アジアの現状維持、南シナ海、東シナ海、言うまでもありません。そして、湾岸地域までのシーレーンの確保、さらには中央アジアの重要性、多々ございます。  ここで、あと二分しかありませんので、最後に申し上げたいことがあります。それは二つ。  一つは、このような激動の時代に日本の外交を考えるときに、特に参議院はこれが可能なんですけれども、と思うんですが、よりイデオロギーにとらわれない現実的で冷徹な計算に基づいた超党派の外交というものを是非考えていただきたいと思うんです。もちろん意見が違うのはよく分かります。しかし、それだけではやはり我々生き延びられないんじゃないかということをつくづく感じるわけでございます。  最後の最後ですが、日中関係について実は一言も述べておりませんので、お話をいたします。  最近の日中関係を見ますと、どうも今申し上げたような国際政治環境の変化に伴って日中関係も変化してきましたし、これからも変化していかざるを得ない部分があるんだと思います。そして、中国との新たな、より安定した大人の関係をつくること、これが日本の外交にとって最も大事な課題だと思っております。一九七二年以来積み重ねてきたこの遺産というものを基に、良いものは残しながら、変わってしまった部分は新たな合意によって補強していく、これが日中関係について求められる姿勢ではないかと思います。  ちょうど時間となりました。私の話はこれで終わります。  ありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  次に、山口公述人にお願いいたします。山口公述人。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) ありがとうございます。  山口でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。  日頃から日本の安全ということをいつも考えております。陸上自衛官として三十五年間自衛隊に勤務をしておりました。そういうバックグラウンドもございまして、常に日本の防衛ということに頭を集中をさせておりますが、そういう者の立場から、今、政府が進めておられる積極的平和主義、これは私は、憲法前文の「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という精神をまさに体現しようとするものであって、この積極的平和主義を体現するための施策が今いろいろと講じられている、それを私は非常に日本にとって有り難いことだと思っております。その理由を今日は三つ述べまして、最後に、これから私として考えなきゃいけないなと思うことを幾つか挙げさせていただきたいと思います。  お手元にパワーポイントの図がございます。こちらを御覧いただきながら話を聞いていただければ幸いであります。  一つは、日本がしっかりしなきゃならないという理由の一つは、中国が台頭します。台頭する中国が穏健になるのかあるいは強硬になるのかということは非常に大きな要素でありますし、それから、米国がアジアにコミットし続けるかどうかという点、このアメリカと中国がどうなるかということは日本の安全保障にとって極めて重要な要因だと思います。  この一ページ目の図の下は、四つの象限ございますが、右上の象限、これは、アメリカが引き続きというか非常に強固にアジアに残って、かつ中国が穏当になるという、まあ言ってみれば夢のようなことかも分かりません。それで、逆にこの左下の象限というのは、アメリカがもういなくなってしまって、しかも中国が非常に強硬になるという、少し考えたくないような象限でございます。  この中で私は右上がいいと思うわけですが、この右上になるのかどうかということを日本として所与の条件として考えるべきではないと思っております。日本としてより望ましい方向を求めるために努力をする余地は大いにありますし、またそのような努力をすべきであると思うわけであります。  その一つは、若干飛躍をいたしますが、我が国自身がしっかりとした防衛の態勢を整えるということでございます。先ほど安保条約五条のお話が出ましたけれども、安保条約の五条というのはアメリカが日本を守るということではありません。アメリカか日本が日本の領域内で攻撃をされたらアメリカと日本が一緒に立ち上がるという趣旨でございますので、日本が立ち上がるということが重要であります。それをしっかり見せるということは、米国に対して関与を明瞭にするものでもありますし、これは中国に対しても、凜としたたたずまいというものを見せることによって、また日米同盟が確固であることを理解していただくことによって、中国が国際秩序を守る側に立つように促すことができるのではないかということでございます。  私が、この積極的平和主義といいますか、今の政策が重要だと思う理由の二つは、我が国を取り巻く安全保障環境が非常に厳しいということでございます。  二枚目の図を御覧いただきたいと思います。  やや旧聞ではございますけれども、二〇〇六年、アメリカの国防省が、二十一世紀、今世紀の脅威として四つの類型を挙げております。これも四つの象限でありますけれども、この図の半分から下は主体が伝統的な主体、国家といった主体、上の半分はテロ組織ですとか犯罪組織あるいはならず者国家あるいは破綻国家というような、今まで余り考えたことのない主体でございます。  左下の象限、伝統型。これは私のように自衛官として冷戦の間を生き抜いた人間としましては非常になじみの深いものでありまして、国家と国家、軍事力と軍事力、それも通常戦力による紛争という脅威でございます。その上、これはテロ組織ですとかあるいは破綻国家あるいはならず者国家というようなものが非正規的な手段、拉致なんかはそうなるわけでありますが、破壊行為、そういったことをやるもの。そういった主体が大量破壊兵器あるいは核・化学・生物兵器、こういったものを使用しますと破滅的な効果をもたらしますので破滅的と規定をしております。右側の下は、今台頭しつつある国、中国とかインドとか、あるいは復古しているようなロシア、こういった国がどっちの方向に行くのかということによって世界の秩序が大きく変わるという混乱型の脅威でございます。  この四つのカテゴリーといいますものを特に北東アジアに当てはめてみますと、例えば伝統型の脅威というのはロシアとの間に若干残っているだけで、ヨーロッパの東と西という対峙はもうないわけでございます。  ところが、我が国周辺を見てみますと、北方領土、これはまさに冷戦の残滓というものが残っているわけでありますし、朝鮮半島に至りましては、北朝鮮総兵力百二十万、韓国が約六十万、合計しますと百八十万以上の軍隊がこの小さな半島で、軍隊と軍隊、国家と国家という形で対峙をしているわけであります。まさに伝統的な脅威がまだ残っている地域であると。さらに、北朝鮮の拉致、不法行動というのは、これは非正規型の行為でありますし、イスラム過激派などによりますグローバルなテロリズムというのが日本に波及するようなことになれば、やはりこの地域にもそういった危険があるわけでございます。  それから、中国、ロシア。中国の台頭。中国が私が望むように既存の国際秩序を守るサイドに立ってくれるのであれば、これは非常に歓迎すべきことであります。一方で、そうでない、例えば海洋ですとかサイバー空間あるいは宇宙といったところでその戦略バランスを大きく塗り替えようというようなことをするとすれば大いに懸念すべき混乱型の脅威となるわけでございます。  次のページを御覧いただきたいと思います。  我が国の防衛ということで、ここ約十年間、防衛省、我が国政府は南西地域の防衛というものを非常に重視しておりますが、これは私は非常に的確なことだと思います。  これは米軍の資料でございますけれども、米軍は、対抗する国家が接近阻止あるいは領域拒否、アンタイ・アクセス、エリア・デナイアル、何といいますか、アクセスを妨害するような行動、能力を発揮して、東アジアにおける作戦行動を妨害されるということを非常に懸念しております。  この点を踏まえますと、我が国の南西諸島というのは実はここで言う第一列島線の一番肝に当たる部分になります。この第一列島線に当たる南西諸島、これを我が国がきっちりと防衛をしていくということは、実はこれは我が国自身が対抗する国家の接近を拒否する能力を持つことになります。日本のA2AD能力だということになります。これによりまして、我が国として、我が国周辺において米軍が行動する際の援護の傘といいますか、守る傘を提供することになり、対抗する国家のアクセス性妨害能力を制約する、さらに我が国周辺における米軍の行動の自由を確保することができれば、日米同盟によって我が国を防衛するという態勢がより強固なものになります。  したがって、我が国自身が自らの領域を防衛する能力を保持することによって、米国に対して同盟上の義務をはっきりと果たすんだと意思を明瞭にする、さらに米軍の行動を容易にするということを通じて日米同盟を堅固にするものとする相乗効果をもたらすと考えてございます。  最後に、幾つかこれからの課題だと思っていることを申し上げます。  積極的平和主義というのは、私はもう正しい方向、まさに日本がすべき、進むべき方向だと思っております。それと同時に、統合、これは陸海空の自衛隊が有機的に活動して、しかも、どこかに止まってじっとしているんじゃない、機動、機動防衛力、これを目指すということはまさに重要なことであると思います。他方、防衛力整備のために充当できる資源というのは限界があります。このことを踏まえますと、この先、やはり我が国として優先順位を考えて選択をするという決断をしなければならないと思っております。この点、もう今週のことでもございます、弾道ミサイルという脅威は非常に切迫したものでございますので、そういった脅威から国民を保護するということは、施策の優先順位は極めて高いといいますか、これはマストであろうと思います。  また、南西地域の防衛態勢の強化という点に着目をいたしますと、南西諸島の周辺海空域、ここは実は本州全部に匹敵するぐらいの地理的な広がりを持っております。この地域を守るということを考えますと、陸上の防衛、離島の防衛、それから海域の防衛、それから空域の防衛と、これが有機的に、お互いにそれを、何といいますか、支援をしながら守っていく態勢を取る必要がございます。また、二百を超す離島を擁する南西諸島の全ての島に兵力、自衛隊の部隊を配置するということは極めて困難でございます。  こういうような点から、統合運用の下に陸海空が協力をして、ふだんはいないけれども、いざというときには部隊をちゃんと運べるというための、例えば航空自衛隊の輸送機でありますとか、あるいは陸上自衛隊の大型ヘリコプター、ティルトローター機、あるいは海上自衛隊の輸送艦という機動力を増すような装備というものは非常に重要でありますし、そういった島に緊急に展開をするためのいわゆる水陸両用作戦能力、これを整備することは、これはかなり重要なことだと思います。  実は、今申し上げましたような能力、装備というのは、大規模な災害ですとか、あるいは国際的な平和協力活動においても有用であります。言わば汎用性の高い装備でありまして、どちらかだけにしか使えないというものではございませんので、当面そういったものを、まあ何といいますか、重点とするという考え方はあり得るのではないかと思います。  少し先のことを考えますと、宇宙空間あるいはサイバー空間、それから海洋の秩序、いわゆる海洋安全保障、これはもう広い意味でございますが、そういった分野についても長期的な視点で考えていく必要がありますし、そのためには研究開発の投資が必要でございます。そういったところにどれだけの資源を充当するのかということを考えていく必要があろうかと考えております。  さらに、長期的な課題として、現在の安全保障法制、新しい安全保障法制で相当部分、防衛の態勢を固めることはできるようになっております。  ところが、私、個人的に申しますと、一つ大きな課題が残っております。長期的な課題として、国連を中心とした集団安全保障体制、この中で日本がどういうような役割を果たしていくのだと。もっと具体的に申しますと、国連軍が編成をされるような事態、国際社会が一緒になって立ち向かわなければいけないような脅威、こういったものに対して対処するために日本はどういう役割を負うのか、あるいは対処するためのリーダーシップをどう発揮していくのかということが私は重要な課題であり、これについてはもう国民的な広さでの深い議論というのをずっと続けていかなければならないと思います。  以上でございます。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  次に、小此木公述人にお願いいたします。小此木公述人。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) ただいま二人の公述人から一々納得のいくお話がございました。私、お二人と意見が大きく違うものではございませんが、昨今の朝鮮半島の情勢というようなものを中心にお話ししてみたいと思います。  昨今の情勢は、一般に考えられている以上に私は深刻だというふうに思っております。幾つかの理由はございますが、しかし、情勢自体が相当に深刻で、先ほど宮家さんはサバイバルというような言葉を使われて、現在の国際政治がそれを中心に動いているとおっしゃられましたが、まさにそのとおりで、今、朝鮮半島で出現している状況というのは、やはり北朝鮮のサバイバル。それに、サバイバルを目指す北朝鮮にどうやって対処するか。そのサバイバルが平和的な方法であればそれはよろしいんですが、必ずしもそうではないということですね。情勢が急速に複雑化して、深刻化しているというような印象を持っております。  過去に例を取り上げるならば、もう一九九三年から九四年の第一次核危機の状況とかなり類似しておりまして、その当時を思い起こさせるところが多いのであります。まあ、今回は、昨年五月初めの朝鮮労働党の大会と前後して、北朝鮮指導部が二回の核実験と、その後数多くのまた各種のミサイル実験を繰り返しているわけですが、その当時はどうであったかと申しますと、やはり誕生したばかりのクリントン政権に対して北朝鮮側が、ちょうどチームスピリット、米韓合同演習というタイミングを狙ってNPT脱退という非常措置をとったわけでございます。これは大きな挑戦であったというふうに言っていいと思うんですね。まさに軍事力を伴った瀬戸際政策でありました。まあ、しかし、それによって彼らが要求したのは、合同演習終了後の米朝の直接交渉でありました。  今回もまた私は同じようなことを考えているのではないかというふうに思います。今回は、核開発を開始するぞというそういうメッセージではなくて、核、ミサイルが完成に近づいているぞと、もうここまで来たんだと、それでも交渉しないのかという、そういう種類の、何というんでしょうか、瀬戸際政策でありまして、先日打ち上げられました四発のほとんど同時に発射されたスカッドERミサイル、それからその前に打ち上げられました、かつてSLBMとして使われていたものの地上発射型でございますが、北極星二号と言われているミサイル、こういったものはそのまま核兵器を搭載することが可能な段階にまで来ているということでございますから、我が国にとっても韓国にとっても深刻な状況でございます。  北朝鮮の核、ミサイルがそういう段階まで達したということは、結局ソウルも東京も同じだということでありまして、今回は在日米軍基地という言葉を使いましたが、これまで全くそういう表現がなかったかというとそうではございませんで、彼らが公然と言っていたのは、第一の目標は青瓦台、大統領官邸と韓国の各種政府機関であると、第二の目標は在韓米軍基地、太平洋に存在する在韓米軍基地。それは日本という言葉が使われていなかっただけであって、その当時から在日米軍基地が標的であるということは公然のように言っていたわけです。  我々が一九九四年に経験した第一次核危機というのはどんなものであったのかということをちょっとお話ししてみたいというふうに感じるのでありますが、あのときには米国の側では、北朝鮮の核施設というものを外科手術的に破壊してしまおうではないかという、こういうペリー国防長官らの意見が台頭しておりまして、それが実行に移されるかどうかというそういう段階まで行ったわけであります。ペリーさんは後ほど回想録を書いていますのでそこに詳しく出ておりますけれども、報告書を提出する直前にカーター元大統領が平壌に訪問するというニュースが入ったと、このように言っております。しかし、我々は大量破壊兵器を使用する戦争の瀬戸際にあったというふうにも述べておりますし、北朝鮮からの先制攻撃の可能性も排除できなかったと、そこまで危機が進展していたということでございます。  今回はそういうところまで行くのかどうか、これはまだ未知数でございますが、北朝鮮側が非常に強い決意を持って今のこのチームスピリットというものを特別のものとみなして対応しているということは、どうも否定できないような気がします。  ですから、かつてであれば、チームスピリットの時期にミサイルの実験だとか核実験だとか、特にICBMの実験なんてやりっこないじゃないか、そんなことはできないだろうと言っていたわけですが、そういうところで瀬戸際のゲームを始めているわけです。米国としては、チームスピリットの最中に核実験をやられたりICBMの実験をやられたら、これはとんでもない話でありますから、それを容認できないということですから、そこで両者の目的が完全に交錯すると言ったらいいんでしょうか、非常に危険な危機状況が発生する、シナリオとしてはそういうことなんですね。  幸いにこの間、米国側は、国防長官や、これから国務長官も間もなく来られるようですが、厳重に半島情勢をウオッチしているようでございますから米国は分かっているんだなとは思いますが、思いますが、様々な対応措置が新政権の下で間に合うのかどうか、あるいは、何というか、過剰の反応や過小の反応というものがありはしないかというようなことを心配しているわけですし、特に心配は、北朝鮮の政権が三十代前半の若い指導者に指導されていること、あるいは韓国では現在、正式の大統領が存在しないような権力の空白の時期にあること、こういったようなことを考えますと、あるいはまた中国でも今年の秋には党大会が準備されているというようなことを考えますと、それぞれのリーダーシップがスタートしたばかりであったり十分でなかったり、あるいは成熟していなかったり、あるいはいろいろ拘束されていたりとか、様々な形でリーダーシップそのものに不安感が伴うということを否定できないわけでして、ここのところが大きな不安定要因になっているように思います。  さて、最後になりますが、韓国情勢について少しお話し申し上げたいと思うんですが、韓国と日本の関係は、様々な心理的な葛藤があるとはいえ、大変重要な関係であることは間違いないのであります。つまり、我々、アメリカとの海洋同盟だけで全て大陸の情勢に対応できるのかと言われると、やはり韓国という友好国との関係というものが重要になってくるわけでありまして、特に朝鮮半島が共産化するというようなことは絶対に避けなければならないわけでありますから、ですから、韓国との関係に対しては、非常に、何と言ったらいいでしょうか、細心の注意というものがやはり求められている、感情に任せてお互いに罵り合えばそれでいいということにはならないということではないかと思うんですね。  ただ、日本側も韓国側も、相手の政治がどういうふうに動いているのかということに関して、何というんでしょうか、よく分かっていません。韓国の政治というものがどういう構造を持ってどういう特徴を持っているのか、こういう状況の下ではどういうふうに対応してくるのかというようなことを意外に日本側は分かっていませんし、日本の政治の特徴に関しても韓国側は分かっておりません。  今の韓国の状況というのは、非常に簡単に言えば、彼らが制度圏の政治と呼ぶもの、つまり制度化されている政治、大統領府、それから議会、与党、野党というようなものと、運動圏の政治。そうではなくて、制度圏の政治が人格化されていくというそういう特徴を持っているとすれば、そういうものを拒否して正義を求める、社会正義をとことん求める、利害関係を無視しながらそれを行うという、ある種原理主義的な運動圏の政治が厳しく対峙している状況というのが今の状況だと思います。  朴大統領は歴代の大統領に比べて特に、何というんですか、非難される理由があるかというような疑問を持たれるかもしれませんが、たまたまそういう意味では、崔順実というようなよく訳の分からない友人を持って、そして財閥との関係、贈収賄関係を疑われたということが非常に大きな結果を呼び起こしているわけでして、運動圏の政治はこれを絶対に許そうとしません。  そして、日韓の慰安婦合意というのは、実は制度圏同士の合意なんですね、制度圏同士の合意ですから。ですから、韓国の大統領が批判されれば、運動圏の政治は日韓合意に対する非難に結び付いて、批判となって現れてくるわけです。日本の国内ではよくゴールポストを動かすとか動かさないとかというような議論があるんですが、そもそもゴールポストが固定されていなかったと、いないんだということ、彼らと合意するということはどういうことなのかというようなことについて、やっぱり我々の側にも理解の不足があったように思います。  大使や総領事が長期にわたって不在というような状況というのはやはり異常な状況でありますし、しかも朝鮮半島が北朝鮮との問題において危機的な状況が懸念される、そういう状況の下では、できるだけ早く今の状況というものを正常化してもらいたいと思うんですが、もちろん、これは外交ですから、ただ正常化すればいいというものではないでしょう。次の政権との間に新しい関係をつくるということが重要になってくるわけですが、次の政権との関係というものをどうスタートさせるかというのは政権当初の動きというものが重要だという意味で、やっぱり大使や総領事の不在というものはよろしくないのではないかというふうに私は考えております。  どうもありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

三宅伸吾自由民主党・こころ

○三宅伸吾君 おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。  三人の公述人の皆様、すばらしい有意義なお話を本当にありがとうございました。  世界の安全保障の行方を占う話題の人といえば、もう言うまでもなくアメリカ・トランプ新大統領でございます。  新聞を最近見ておりましたら、こういう書き出しで始まるコラムがございました、何でこんな人を大統領にしたのか。ここから始まるコラムでございまして、コラムは次のように続いておりました。民主主義のお手本だったはずの米国がなぜ。失望、驚きに軽蔑も入り交じった反応が日本を覆う。マッカーサーはかつて日本人の文明度を十二歳と評したが、経済官庁の幹部からは、どちらが十二歳なのかというような記述のコラムが載っておりました。  マッカーサーの日本人は十二歳の少年だという発言、ちょっと調べてみました。  マッカーサー連合国軍最高司令官、朝鮮戦争が真っただ中の一九五一年四月、毛沢東率いる中国戦略をめぐり、戦線拡大を望まないトルーマン大統領と衝突し、司令官を解任されました。その約一か月後、一九五一年の五月でございますけれども、アメリカ議会上院の軍事外交合同委員会の聴聞会に呼ばれて、そこで発言をされております。  初日が五月三日だったんですけれども、このときにマッカーサー、このような発言をされました。日本には国産の資源はほとんど何もありません。多くの資源が欠乏しています。これらの供給が絶たれた場合には、一千万から一千二百万人の失業者が生まれるという恐怖感がありました。したがって、彼らが戦争を始めた目的は、主として安全保障上の必要に迫られてのことだったとの趣旨の発言をマッカーサーはされました。  この発言、日本のさきの大戦を自衛戦争だと見ていたとも受け取れる発言でございまして、この発言はマッカーサーの米大統領選挙への出馬のブレーキになったとも評価を受けております。  そして、二日後でございます、五月五日でありますけれども、日本人は十二歳の少年発言が飛び出したわけであります。  どういう文脈だったかと申しますと、彼はこのように述べております。アングロサクソン民族が四十五歳だとすれば、ドイツ人もほぼ同年齢だ。日本人はまだ学生で、十二歳の少年である。ドイツ人が現代の道徳や国際道義を守るのを怠けたのは意識的なものであり、国際情勢に無知ではなかった。このように述べて、確信的にドイツは戦争に突入したけれども、日本人は必ずしもそうでなかったかのような発言をされたわけであります。  マッカーサーが解任をされて羽田空港に向かうとき、羽田空港への沿道には二十万人が駆け付けましたけれども、この十二歳の少年発言を機に日本国内では反発が沸き起こったとされております。マッカーサー元帥記念館の建設、そして銅像建立構想もあったわけですけれども、この十二歳発言を機にこの構想はしぼみました。  十二歳発言には、実は様々な解釈があるようでございます。  評価する方は、日本人は思考が柔軟で理想を実現する余地があるという見方もありますし、そうした観点から、軍国主義の再来はあり得ないという趣旨の、日本人を擁護する趣旨だったという見解もあります。  その一方で、こういう指摘もございます。作家の半藤一利氏はこのように書いておられます。日本人はこの十二歳発言を聞いて、こんちくしょうめと憤ったばかりではないのではないかと。戦後、日本人はマッカーサーの命ずるままに、唯々諾々、敗戦、占領という現実に余りにもやすやすと身を寄せた恥ずかしさ、情けなさを、それをマッカーサー発言によって気付かされたゆえの怒りではなかったのかというふうに書かれております。  元へ戻りますけれども、何でこんな人を大統領にしたかと酷評されるトランプ大統領でありますけれども、麻生副総理は本委員会の三月二日に、結構聞き上手の人ではないかというような発言をされておられます。  マッカーサーは、実は別の機会にこんな発言もされております。過去百年に米国が太平洋地域で犯した最大の政治的誤りは共産勢力を中国で増大させたことだと、次の百年で代償を払わなければならないだろうというふうにマッカーサーは別の機会に述べております。  宮家公述人にお聞きしたいと思いますけれども、米国がどのように中国と向き合うかが日本の安全保障、経済、外交に大きな影響を与えるのは間違いありません。できれば、日本の都合のいいように米国の対中政策を誘導できるのであれば誘導したいものだと思いますけれども、こうした視点から宮家先生の御見解をお伺いしたいと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 何でこんな人をというコラムというお話ですが、私のコラムではございません。  非常に難しい御質問です。先ほども申し上げたとおり、トランプさんがロシアと中国とイスラムというものをどのようなバランスで考えているか、いまだによく分かりません。  私の仮説は、もしかしたら中国が持つ脅威というものを、潜在的な脅威というものをより中長期的な観点から見ていて、ロシアについては問題があるにせよ中長期的には必ずしも脅威ではなくなるかもしれないけれども、中国の経済力と人口は脅威だと考えているのかもしれません。  それが日本にとって都合がいいのかどうかは分かりません。私、日本にとって都合のいいアメリカの対中政策というのは、先ほども申し上げたとおり、我々は現状維持勢力ですから、今のこの東アジアの地域の現状を維持できるような形でアメリカが必要な抑止力を提供しながら、しかし中国に対して関与をして、そして、中国にこの地域の国際社会の一員として、責任あるメンバーとしてちゃんと参加してほしいということを言い続ける、これが恐らく日本にとっては一番いい政策なのだと思います。  そういうことがありますと、一方で、中国とアメリカの関係は恐らくこれからも緊張すると思いますが、私は、それを利用しようという意味ではないですけれども、アメリカと中国がこのような新しい戦略的な段階に入るということは、もしかしたらこれは日本と中国の関係改善にも比較的いい作用をもたらすのではないかとすら思っています。  私は、日中関係が先ほど申し上げたような形でより好転する一つの契機になり得る時機でもあると思っておりますので、都合の良いようにというかどうかは分かりませんけれども、トランプさんがアジアを重視して、そして日米同盟を重視をするという、このような状況をうまく利用しながら、日本も中国との関係改善を含めてアジア地域の安定のために努力をすべきだと思っています。

三宅伸吾自由民主党・こころ

○三宅伸吾君 宮家公述人にもう一つお聞きしたいと思います。それは、中国最高指導部における外交的真空についてでございます。  先生が昨年の秋にある雑誌で、中国外交はやり方が稚拙だと書かれておられます。  その代表例といたしまして、南シナ海での領有権を主張し岩礁を埋め立て人工島を造った問題などでフィリピンが国連海洋法条約に基づき常設仲裁裁判所に異議を唱え、そして昨年夏に国際司法判断で中国は完敗しました。それだけではなく、その判断が無効だと中国は主張して、国際社会から、一部の国際社会からは失笑を買ったと思います。そういう例を先生は紹介されながら、AIIB、アジアインフラ投資銀行の創設を除き、中国外交はていたらくだと評価し、その構造的原因を分析されておられます。  具体的には、その構造的問題として、共産党内部に外交、安全保障に関する全党的コンセンサスがない、そして最高指導レベルの政治局常務委員の中に十分な外交、安全保障の知見を持つ者がいないなど、七項目を挙げておられました。加えて、中国の現状を、満州事変を起こした戦前の日本政治の中枢における外交的真空と同じような状況にあるとして、誤算に基づく偶発的衝突の可能性を指摘されておられました。  外交の失敗を続ける中国の政治最高指導層の構造的欠陥で、先生が挙げられていない一つについてちょっと御紹介をしたいと思います。私の発案ではなくて、ある外交のベテラン政治家がおっしゃっておられました。  習近平総書記に対する情報伝達ルートの問題を指摘されておられました。安倍総理は多くの日本の霞が関の局長と、本当に総理動静を見ても分かりますけれども、局長とフェース・ツー・フェースで情報を吸い上げられております。局長から見ると、総理の顔を見ながら、ああ、これ関心持っているなと思えばぐうっといくわけでございますし、まあ余り、優先順位が低いなと思ったらそこで話をやめると。いろいろそこで臨機応変なブリーフィングができるわけでございますけれども、どうも習総書記は紙で報告を受け取っていることが大半だというふうにそのベテランの外交の政治家の方はおっしゃっておられました。  宮家公述人も多くのブリーフィングを政府首脳にされたと思いますけれども、この外交安保の専門の知見を持つ専門家から正確な情報が機動的に習総書記に上がっていないことが中国外交のほとんど失敗の連続だというふうにその方は分析されておられましたけれども、宮家公述人はどのように思われるでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) また難しい御質問でございます。  中南海の中でどのような文書がやり取りをされているか分かりません。少なくとも中華人民共和国、そして中国共産党のトップの人にどのような形で情報が、外交、安全保障に関する情報が上がり、それがどのような形で決定されるかというメカニズム、正直言って我々まだ分かっていません。  しかし、分かっていることは、日本とはまるで違うということであります。日本のように、特に今の総理について申し上げれば、やはり若いときからいろんな外国に行かれて、外務大臣の政務の秘書官として三十八か国を回る。この経験は非常に大きな、三十代でですよ、大きいと思います。それが一つの戦略観を持ち、いろんな目、戦略観があっていいんですけれども、彼なりの戦略観を持ち、そのような戦略観があってこそ初めて入ってくる情報が一つ一つが生きるんです。  ですから、その場合は、口頭であろうが文書であろうが、そこに一つの方程式があればしっかりとした結論が出る、その是非はともかく、御判断があるかもしれませんけれども、そのようなメカニズムが今恐らく中国の共産党のトップにはないのかもしれない。  習近平さんは私とほぼ同じ年で、一九六六年には中学生、中学一、二年ですよね。そして、当然文革に巻き込まれ、そして下放され、そして十分な教育が少なくとも大学時代まではなかった、大変な苦労をされた方です。そのような方に、今のような、我々が議論しているような国際情勢の、最低限のと言ったら失礼ですけれども、知識はないかもしれません。  ですから、どうしても、それを受け入れる側にそのような方程式がないときには、文書で入れるにせよ、どのような形で入れるにせよ、やはり周りの人たちの声により依存していく、若しくは左右されていく可能性が高いというふうには考えております。

三宅伸吾自由民主党・こころ

○三宅伸吾君 山口公述人にお聞きをいたします。  六日、北朝鮮が四発の弾道ミサイルを発射し、うち三発が日本海上の我が国の排他的経済水域に落下しました。この件につきまして、昨日、参議院の本会議で抗議の決議をしたところでございますけれども、公述人にお聞きしたいのは、もし今後、北朝鮮からの弾道ミサイルがEEZに落ち、日本船籍の船に衝突、多数の死者が出たような場合に備えて、我が国の自衛隊はどのような対処方針を事前に用意しておくべきなのでしょうか。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) 御質問ありがとうございます。  四発という数でも大変なものであります。一つ一つの弾頭の重さは大体五百キロ、これが通常弾頭だとしましても、五百キロの爆弾が爆発をすれば相当な破壊力をもたらします。それが仮に、核ではなくても化学兵器であれば、これはもう千人単位、場合によっては万人単位の損害が出ることもあるわけであります。そういったものが実際に北朝鮮の手にあって、しかも試験をされているということは極めて重大な危険であります。それと同時に、そのこと自体、ミサイルの実験をすること自体が国連決議に真っ向から反しているわけでございまして、これはもう国際社会、北朝鮮以外の全ての国が一緒になってこれを糾弾してやめさせるというのが筋なわけであります。  最近見ていますと、少し悪い意味で慣れてきてしまって、あるとき、これは昨年のことでございますが、アメリカの国防省の担当官が国連決議に違反するのかと聞かれて、そうじゃないと、とんでもない間違いを答えたことがあるんですけれども、それぐらい慣れてきてしまっているということを考えますと、この今回の四発、これはかなり高度な撃ち方でありますし、これが少し南に向いていれば全て日本の領土に弾着をするわけであります。船に当たることよりか、そっち側に振られるということを我々は心配しなければいけません。  そのためには、海上自衛隊が持っておりますイージス艦、SMミサイルの組合せ、それから終末弾道にはペトリオットというもので、二段階の方法、防衛をやるわけでありますが、報道によりますと、シアター・ハイ・アルティチュード・エリア・ディフェンス、THAAD、もう少し高いレベル、百キロぐらいの高度で撃ち落とす装備というものを導入するということも検討はされているようでありますが、そんなことも含めまして、もう少しこのミサイル防衛体制というのを強固にする、そういったことも必要でありますし、こういうような危険な場合に、アメリカもイージス艦を持っておりますし、ペトリオットもTHAADも、近々といいますか、韓国には配備をするわけであります。そういう五条事態かあるいは六条事態というんでしょうか、そういった事態においては日本がしっかり自分の頭の上から降りてくるミサイルを、守るというのと同時に、アメリカと一緒になってしっかりリンクをして守る体制が必要だと思います。  ちなみに、沖縄にペトリオットを配備したことがございます。これは二〇一二年に北朝鮮がミサイルを撃ったときでありますけれども、そのときイージス艦も出ておりました。これは沖縄に駐留する米軍に対しても日本の自衛隊が傘をかぶせたということでありますので、そうやってお互いに相乗的に傘をかぶせ合って、より国民の安全を維持するという体制とやり方というのを取っていかなければならないと思います。

三宅伸吾自由民主党・こころ

○三宅伸吾君 最後に小此木先生にお聞きいたします。  あした、韓国の憲法裁判所が朴槿恵大統領を罷免するかどうかの判決を下しますけれども、今後の朝鮮半島情勢、日本にとって最悪のシナリオは何だとお考えでしょうか。そして、それを防ぐために米国に期待すること、日本ができることを簡潔に御教授いただけないでしょうか。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 最悪のシナリオということであれば、まさにやっぱり軍事的な問題になってくると思いますから、それは朝鮮半島での危機がエスカレートして、そこで偶発的な事故が起きること。偶発的な事故が起きればそれは当然日本列島にも波及してくるということになりますから、今、山口さんがおっしゃられたような事態というのはやっぱり懸念されるわけであります。  それ以外のものというのは、韓国との関係その他というのは、率直なところ、そういう事態にどうやって対処するかという観点から考えるということを優先しなければいけないと思うんですね。我々がなぜ韓国との関係を重要視しているかといえば、それはやはり我々は普遍的な価値を共有する民主主義国家でありたいということ、そこから来ているだろうというふうに思います。  ですから、そういう意味でも、やっぱり安全というものが第一であって、これは外交政策の問題になりますから、大変それは難しいことだというふうに思います。万全の備えをしながら、しかし圧力のための圧力ではなくて、何らかの新しい関係を北朝鮮との間でもつくっていかなければいけないということになるんじゃないでしょうか。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 時間が来ておりますので。

三宅伸吾自由民主党・こころ

○三宅伸吾君 終わります。ありがとうございました。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 民進党・新緑風会の杉尾秀哉でございます。  三人の公述人の先生方、有意義なお話、大変ありがとうございました。  私からは、朝鮮半島問題を中心に伺います。  先ほど、小此木公述人のお話で、私もちょっと知っているんですけれども、あの九四年の朝鮮半島危機に今の状況が似ていると、こういうお話がございました。基本的な認識として、当時と今と比較して、その危機の度合いですね、それほど状況が深刻だというふうに考えた方がよろしいんでしょうか、いかがでしょうか。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 九四年の危機のときには、まだ北朝鮮は現在のようなミサイルだとか核兵器を持っておりませんでした。非常に初歩的な段階でしたから、核兵器開発に着手する、NPTを脱退するということが、それ自体が問題になっていたわけですが、今回の、危機と言えるかどうかまだ分かりませんが、これが危機に発展するとすれば、そういうものが保有される最終的な段階まで来た、つまり核とミサイルが結合する段階まで来たんだということを彼らは主張しているわけですから、我々にとっての危険度というのも、安全保障上の危険の度合いというのも、前回とは比べ物にならないというふうに申し上げてよろしいかと思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 では、宮家公述人に伺います。  今の小此木公述人の御意見について、どういうふうに思われますでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 私も同じ考えでございます。私、一九九四年のときにはワシントンと東京におりましたけれども、非常に深刻ではありました。しかし、まだその具体的な兵器ができているわけではありませんでした。  しかし、今回の場合には、本当に、確かにおっしゃるとおり、ここまで来ているのにおまえらはまだ話合いに応じないのかというメッセージを出しているとは私は思うんですが、じゃ、本当に彼らはそれを放棄する気があるのかどうかということも含めて、より深刻な状態になっていると思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 では、山口公述人に伺います。  今回のミサイル実験、映像が出ておりました。金正恩委員長が発射に立ち会って、四発ほぼ同時に発射された。先ほど宮家公述人のお話もありましたけれども、在日米軍を標的にする部隊の訓練だということを、これはっきりと対外的にも言っているわけです。  日本は、こうした同時発射四発、若しくは更に弾頭が多いケースもあるかと思いますけれども、日本の自衛隊の能力で対応できるんでしょうか、どうなんでしょうか。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) 大変難しいお尋ねでございますが、自衛隊のイージス艦のスタンダードミサイル、これは、高度二、三百キロまでの高さで上がっていくもの、降りてくるもの、いずれも撃つことができます。そうしますと、朝鮮半島に近いところに配備をすれば、その後ろがかなりカバーされますので、上がりばなを迎撃するようなことができれば、かなり後ろの範囲が広くなります。そうじゃない場合はイージス艦で、少し狭い分野を守るときに、落ちてくるものを二百キロ、三百キロぐらいの高度で迎撃する。  それで、何発打てるか、その前に、何発を対処できるかということで申し上げますと、イージス艦というものは目標の数を同時にいっぱい処理できるということが一番の能力でありますので、四発であれば、私は、海上自衛隊、航空自衛隊の能力でしっかりとトラックをしまして、それを迎撃をするということはできると思います。  他方、どんなミサイルもこれは一〇〇%ということではありません。仮に、うんと低く見ましてSMのミサイルが五〇%だとしますと、二発撃つと、一発目で五〇%、二発目で二五%落とします。ペトリオットであと一二・五%、七・五%と、その回数によってどんどん危険度を下げてくるわけでありますけれども、五〇%ということは決してございませんので、数発の中距離の弾道弾に対しては私はそれなりに能力を持っていると思いますし、それに加えて、米軍も常にこれを監視をしてございますので、数発であれば私としてはできるのではないかというふうに思っております。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 それでは、これからの見通しをちょっと伺いたいんですけれども、先ほど小此木公述人のお話で、非常に事態は深刻である、宮家公述人も同じことをおっしゃいました。その一つの理由が不透明性ですね。トランプ米大統領の外交姿勢がいま一つまだはっきりしない。今のところ対北朝鮮については強硬姿勢を示しているようですけれども、今回の北朝鮮のミサイル実験も米朝直接交渉を狙っているというのは、誰しも見るところは同じだと思います。  今後の展開として、アメリカによる先制攻撃など、先ほど最悪のシナリオという話がありましたけれども、軍事的オプションの可能性が果たしてどの程度あるのか、それとも、米朝対話の方向に向かっていくのか、ちょっとまだ難しいかも分かりませんけれども、小此木公述人はどういうふうにお考えでしょうか。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 本当に難しいですね。それは両方の、両極端の選択肢が実際に検討されているわけですから、多分、今現在もアメリカでは様々なオプションが検討されていて、その極端なオプションは、一番極端なオプションは北朝鮮と核交渉を行うという、北朝鮮の核保有をある程度まで認めるというものから核施設を破壊するというところまで、全てのオプションを検討していると思うんですね。  極端な、一番極端なものが採用されるというふうには思いませんけれども、しかし、先ほども申し上げましたように、それではICBMの実験が本当に米韓合同軍事演習中に行われるということになれば、それは何もしないでそれを黙認するのかというような議論は当然あるわけですし、そういったこともオプションの中に含まれているはずなんですね。  そうした場合どうするかというようなことも検討されているだろうと思うんです。それは、北朝鮮はまさかそういうばかなことはしないだろうというふうに考えればそれだけの話なんですが、しかし、ばかなことをするかもしれないということでありますから、今の段階では緊張がかなりの程度まで高まっていくのではないか、その後に対話の可能性というのが初めて出てくるんだと思うんですね。対話が初めからということではないと思うんです。  例えば、それも短期的、長期的、様々なケースがあり得ると思うんですよね。私はよく韓国の人たちに申し上げたんですが、もうここまで来たんだから、アメリカの戦術核兵器、撤去したやつをもう一回再導入させてもらったらどうか、アメリカ政府を説得したらどうですか、そうすれば韓国人も安心するじゃないですかと。オバマ政権はそれには拒否的でありましたけれども、トランプ政権はそれを受け入れるかもしれません、それもオプションの中に入っていると思うんですね。  そうしますと、朝鮮半島でかなり密度の高い、何と言ったらいいんですか、相互抑止体制というものができ上がってしまって、北も南も、南というのは当然米韓ですから、ともかく北も南も何もできないという抑止体制ができれば対話に向かうしかないんじゃないか、かえってその方がいいんじゃないかというようなことをよく韓国の友人には申し上げている次第です。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 今の小此木公述人のお話だと、緊張がある程度高まって、その後に対話に向かうんではないかと、こういうふうな分析でしたけれども、同じ質問なんですけれども、トランプ大統領の出方も含めて、宮家公述人はどういうふうに考えていらっしゃるのか。  それと、もう一つ伺わなければいけないのが例のクアラルンプールの事件ですね。これまで金正男氏、比較的フリーに中国マカオを中心として、そしてクアラルンプール、日本にも度々来ていた。これはもう間違いない。いろんなところに行った痕跡残っています。たまたまディズニーランドに行くところで捕まっちゃいましたけれども。あの事件も一つ、これまではちょっと考えにくい。北朝鮮の体制内で何か異変が起きているのではないか、金正恩氏中心としてですね。こういったことも、北朝鮮の中の体制も含めて、全体的な状況を宮家公述人はどういうふうにお考えでしょうか、どう御覧になっていますでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 大変難しい御質問でありますが、私なりのお答えをいたします。  まず、トランプ政権について言うと、私は、彼はまだ選挙キャンペーンのモードから統治モードに完全に移行し切っていない。恐らくトランプさん自身は四年間これからツイートをし続けると思うし、その意味では彼はずっとキャンペーンモードのままなのかもしれません。これがまず第一に。そういいますと、申し上げるということは、例えばキャンペーン中に金正恩さんに会うとか会わないとかいう議論がありました。あれもキャンペーンだと思って聞き流すしかないんだと思うんです。これがまず一つの要素ですが。  もう一つの要素は、そうはいっても、トランプさん、先ほども申し上げたとおり、国際情勢について、意識しているかどうかは別にして、一種の戦略的な動きをしていることは間違いはない。そして、戦略的な問題について、彼はあえてはっきりと政策を打ち出すケースと、それから、あえて曖昧にしたままの、戦略的な曖昧さを維持した部分があると思うんですが、例えばロシアとか中東についてはまだ曖昧にしていますけど、アジア政策についてはかなりはっきりと、選択的にしっかりとした立場を表明しています。これがいい意味でも悪い意味でもアメリカの基本的な方向になっていく可能性が高いのかなと思っています。これが二点目です。  そうなると、やはり今後は、北朝鮮とアメリカ、もちろん中国もそうなんですが、腹の探り合いを、これから始まる可能性があると思います。恐らくアメリカにとっては一九九四年以来初めて北朝鮮若しくは朝鮮半島で力を行使する可能性があるよということを、本当にやるかどうかは別として示している。これ一つのメッセージであり、テストですよね。それに対して北朝鮮がどう出てくるのか。いろいろなこのせめぎ合いをやった後で次の方向性が出てくると思っています。  軍事的なオプションというのは、いろいろなところで言われますけど、非常に無責任な話だと思います。オサマ・ビンラーディンと金正恩の話を同一することは不可能です。パキスタンの小さな町にいた人をやっつけるのと、平壌のどこにいるか分からない、別のところにいるかもしれない、北朝鮮をピンポイントでという話とは全く別のオペレーションになると思います。幾ら、私、特殊部隊が優秀でも、そこまでの情報はないんじゃないかと。さらに、その場合に、もし打ち方を間違えると、それは休戦協定が壊れる可能性すらあるわけです。そのようなことを考えますと、そんな簡単に実力行使をすることは考えられない。当面は、今申し上げたような腹の探り合いをやった中でシグナルを送りながら、強く押したり引いたりしながら次の方向性が見えてくるのではないかなと思います。  それから、今のクアラルンプールの話については、ますます分からないことだらけで、無責任なことを申し上げるつもりはないんですが、私の先ほどの仮説をもし思い出していただければ、先ほど申し上げたとおり、トランプ政権がもしアジア方面においてはより力を示す形の外交政策に変更しているのであれば、それは北朝鮮に対していろんな形で伝わっているはずでありまして、亡命政権だクーデターだといろんな議論があります、そこは私は分かりませんけれども、何らかの形で、北朝鮮の上層部若しくは正恩さん本人が何らかの疑心暗鬼を持った、若しくは過剰反応したという可能性は否定できないだろうと思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 短くなんですけれども、今回のその事件の背景について小此木公述人はどういうふうに分析されているのか、短くお願いします、済みません。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) よく分かりません。全体像とか事件の性質、つまり、なぜ今このタイミングでこういうやり方でというのは、基本的なことになればなるほど不可解なんですね。二人の女性がどうこうしたというような映像に関してであれば幾らでも細かい分析は可能ですが、実はこの事件そのものが何か仮説を立てないと理解できないような事件だと思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 もう一つ、小此木公述人に、先ほどちょっと触れていらっしゃいましたけれども、韓国の情勢なんですけれども、あした憲法裁判所の判断が示されると、こういうふうに言われています。その裁判所の判断の見通しなんですけれども、その見通しと、それから、弾劾が認められた場合、選挙、六十日以内に行われるわけですが、野党の文在寅氏の当選の可能性が高いであろうと、こういうふうに小此木さんはおっしゃっています。  その文在寅大統領が誕生した場合の日韓関係をどういうふうに御覧になっていますか、お願いします。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) ですから、私はちょっと日韓関係の先行きを憂慮しているわけですね。そのような見通しでいって選挙が終わって、じゃ、始めましょう、だけど足下を見たら、まだ釜山には慰安婦像があります、これを撤去もできませんというようなことであったら、そもそも日韓関係そのものが新政権との間にスタートできないということになってしまいますから、そして、ただでさえもそういった問題に積極的に取り組んでくれるかどうか怪しい政権でありますから、憂慮せざるを得ないということなんですね。  私は、早い段階から、やっぱり文在寅さん及びその側近を説得し、さらに韓国の原理主義的な運動団体というものに対して政府が彼らを説得できるような、文在寅さんが先頭に立って説得しなければ日韓関係は動きませんということを早い段階で、彼ら自体、彼らはもうそのことをよく分かっていないと思うんですね。ですから、意思疎通は大変重要だと思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 同じことを宮家公述人にも伺いたいんですけれども、早く大使、総領事を戻すべきではないかという意見に対してはどういうふうに思われますか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 非常に難しい御質問です。日韓関係の重要性、対話の必要性、連絡の必要性、もうおっしゃるとおりだと思います。しかし、これ、あくまでも一時的に事務的に帰しているわけですよね、大使を引き揚げたわけでもないし。その意味では、その微妙な差というものが必ずしも韓国側で理解されていないのかなというのは残念だと思います。売り言葉に買い言葉のマレーシアと北朝鮮のような関係にはなってほしくないので、やはりお互いに冷静に考えて、戻すべき時期が来ることを祈っていますし、必ず来ると思っています。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 時間が残り少なくなってきましたので、ちょっと最後に別のお話をします。  今回のミサイル問題もそうなんですけれども、緊迫する情勢に鑑みて、自民党さんの中にも敵基地攻撃論というのが現実味を持って語られて、検討をこれからされるんでしょうか、その辺については分かりませんけれども、自衛隊の一線にいらっしゃった山口公述人に伺いますが、こうした敵基地攻撃論、これについてはどういうふうな意見持たれていますでしょうか。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) 敵基地の攻撃というのはよくいわゆる議論になります。ここで大事なことは、敵基地を攻撃するというのはそんなに簡単ではないということでありまして、これ、制度とか法律とかそういうことではなくて、技術的にも弾があればいいというわけではありません。どこを攻撃するのかという情報がなければいけませんし、それを破壊したら、破壊した後、それをちゃんと確認するという手段がなければいけない。これは恐らく一国でできる国というのはアメリカぐらいしかないわけですね。  それと、アメリカと日本のざっくりとした役割分担で盾と矛ということをやっております。それをがっちり完全に盾に任せてしまっていいのかという議論は大いにしてもよろしいかと思いますが、そのことは、実は長い弾を買うということではなくて、監視、警戒、それからその効果を確認をするという壮大なシステムを考えるんだということを念頭に置いて議論を進めていただきたいと思います。

杉尾秀哉民進党・新緑風会

○杉尾秀哉君 時間が来たので、終わります。  どうもありがとうございました。

浜田昌良公明党

○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日は、三人の公述人の皆様、とても示唆に富むお話をいただきまして、ありがとうございます。私からは、小此木公述人、そして宮家公述人、山口公述人、この順番で質問させていただきたいと思います。  最初に小此木公述人にお聞きしたいと思いますが、やはり、北朝鮮の弾道ミサイル、三月六日に四発発射されました。これにつきましては、公述人のお話からも、トランプ政権もいろんなシナリオを検討しているんじゃないかという話がありましたし、その中では、朝鮮半島、韓国への戦術核の再配備によって均衡も取れるのではないかという話もありましたが、当面、やはり我々日本政府として目指すべきは、いかに北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させるかということだと思うんですが、これは、これについてはうまくいっていないと思っています。  オバマ政権は、戦略的忍耐という言葉でこの八年間の間、一回も六者会合も開かれませんでした。日本自身も、成果がない会合は開いても仕方がないということでこれに追随したわけですけど、これについては、あらゆるオプションを机の上に置きながら、そして最終的には朝鮮半島の非核化を目指すということを考えるときに、どういうシナリオが一番あり得るんだろうかと、そういう朝鮮半島の核の均衡ではなくて、非核化ということを考えるときに、どういうシナリオが一番あり得るのかについてお聞きしたいと思います。  そのときに、第一次危機があったときのような米朝枠組み合意というのがありましたですけれども、そういう第二次合意というものがあるとすれば、どういう内容になっているんであろうかについて最初にお聞きしたいと思います。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) お答えいたします。  北朝鮮が核開発に着手した基本的な目的というのは、やはり生き残り、サバイバルなんですね。つまり、彼らは冷戦が終結したときに本当に体制の崩壊という危機に直面したというふうに思います。分断国家の一方である韓国は経済的に発展し民主化して、他方、北朝鮮はそれができないだけでなくて経済的に破綻し、そしてソ連や中国、特にソ連、東欧の国家が社会主義を捨ててしまう、さらには中国も体制を変えていくというような、そういう状況の下で、彼らが崩壊するとすれば、あの時期、特に食料危機に直面した九〇年代の後半というのはそういう時期であったように思うんですね。  そのときに金正日総書記がよりどころにしたのが核開発でありましたから、彼らはそこに懸けているわけで、生き残らなくてもいいということであれば核は放棄しますが、そうならない、あるいはそういう保証がない以上、つまり、米朝関係の正常化というような目標というものが達成されない限り、彼らが核を放棄するということはないと思うんですよね。これからもないと思います。  じゃ、それで終わりかと言われると、じゃ、彼らが求めている交渉とは何なのかということに答えたことにならないだろうと思うんですね。彼らが求めているのは多分その中間的なものであって、核は放棄しません、しないけれども、中断はする、凍結はする、開発の凍結はしますと。  先ほど質問の中に出てまいりました枠組み合意というようなもの、これは我々よくばかにするんですが、しかし、よく考えてみますと、クリントン政権、ブッシュ政権、オバマ政権という歴代の政権が八年ずつやった中で、一番成功したのはこの枠組み合意です。なぜか。六年間原子炉が止まっていたんですね。止まっていたんです。もちろん、陰で何をやっていたかとかなんとかという、そういう批判はあり得ると思いますが、しかし、主要なところで北朝鮮の原子炉が止まっていたというもの、この事実はやはり否定できないわけでして、ブッシュ政権の時代にそれを再開させてオバマ政権は放置したわけですから、三つの政権を比べたら私はブッシュ政権が行った合意というものはやはり重要な合意であったというふうに思うんですね。  これを第一次合意とするような第二次合意があり得るのかという御質問ではないかと思うんですが、もしそういうものがあるとすれば、今あるものをどこまで放棄するかということ。多分、放棄はしないけれどもICBMの開発はこれで終わりにしますとか、あるいは査察は受けないけれども国際的な管理に関してはある程度まで受け入れますとか、何かそういう種類のかなり細かい交渉になっていくのではないかと思うんですね。最終的に放棄するのは、彼らが安心できるまで、つまり、北朝鮮の生存が確実だ、南朝鮮と、韓国と共存できるというような保証がなければ、彼らがそう判断しなければ放棄しないということになるのではないでしょうか。

浜田昌良公明党

○浜田昌良君 ありがとうございます。  次に、宮家公述人にお聞きしたいと思いますが、御説明の中で、日本外交のあるべき姿、普遍的価値の共有という項目を挙げていただきました。トランプ大統領の、米国の大統領の外交というのは、ある方によると三つの柱があるという話もお聞きしました。一つは、いわゆる利益の外交、自国の利益を最大化する。二番目には、従来であれば自由、民主主義、法の支配、基本的人権尊重という価値の外交。そして三つ目には、台頭する勢力を抑制するという力の外交とあったわけですが、特にトランプ大統領の場合は、この価値の外交の面が弱いのではないかという評価もあるわけでございます。そういう意味では、逆に言うと、世界の経済大国三番目の日本が、また自由主義国としては二番目の日本がこの価値の外交の面で補っていくということはとても重要と思うんですが、その点についてお聞きしたいのが一点でございます。  二点目には、宮家先生のこの今日のお話によりますと、やはり世界の平和というのが、二つの力が均衡したときに平和がある、冷戦時代ですね、それが崩れてしまったという話だったんですが、じゃ、そういう二つの力が均衡しない限り安定というものはないんだろうかと。もう少しそれが、共和制じゃありませんけれども、複数国による話合いという協調による平和、そのプレーヤーとして日本が果たしていくと、そういう形の平和というものはイメージできないのかどうなのかというのが二点目でございます。  三点目は、今日まとめの点で二点御意見いただきました。一つは、イデオロギーにとらわれない冷徹な超党派の外交を進めてほしい。まさにおっしゃるとおりでございまして、これについては心して進めていきたいと思っておりますし、もう一点言われました日中関係については、大人の関係を築いてほしいとおっしゃいました。これについてもう少し、どういう関係であるのかについて、この三点について御説明いただきたいと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) ありがとうございます。  普遍的価値については、トランプ政権はちょっと今までとは違う考え方をしている。そして、先ほどもお話ししました、戦後つくられたシステムというのは、あれはアメリカのエリート層とそれから国際機関若しくは国際的な企業の利益になるものであって、それは正さなければいけないんだという全く違う考え方を持っている人がブレーンにおります。そういうことを考えますと、やはり日本が、日本にとっては自由貿易そして国際協調というようなことで生き延びていくしかないわけですから、G7の中で必要なリーダーシップを取っていくべきだと思いますが、幸いなことに、アメリカの大統領が替わる、イギリスも替わる、そしてフランスも替わる、そうこうしているうちに日本の首相は何とメルケルさんを除けば古参になってきているわけでございます。これは絶好のチャンスだと思っておりますので、おっしゃるようなことをやれるチャンスが回ってきたなという気がいたします。  力の均衡については、これもいろんな議論がありますけれども、私は、力が均衡するとかえって危ないという考え方もあり得ると思っています。もし、同じような力を持っている国が二つあって、一つが守ろうとして一つが攻めようとしたときに、力の均衡ができたときに、むしろ勝てるんじゃないかと思ったときの方が誤算に基づく戦争は始まりやすいという考え方もあり得ます。私は、力の均衡論というのはあくまでも理念的なものでありまして、必ずしも完全な均衡が安定をもたらすということではなくて、あくまでも、私に言わせれば、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけど、よりましな武力集団がより悪い武力集団をある程度圧倒しないと、その均衡がかえって崩れやすくなるんじゃないか、むしろ力の均衡が完全にでき上がったときの方が危ないのではないかと私は思っております。  三番目、大人の関係。これは、何か日本の心の病とか言う方もおられるようですけど、それはとんでもない話で、そういうことを言うこと自体が大人の関係にまだなっていないんだなとつくづく思います。やはり意識をし過ぎです。そして、あらゆる意味で、大国意識もそうでしょう、若しくはいろいろな歴史の問題もそうでしょう、もちろん議論すべきことは議論すべきだとは思いますが、そのような過去のしがらみというものももちろんありながら、それを乗り越える現実的な関係になる、それを私は大人の関係と呼ばせていただきました。

浜田昌良公明党

○浜田昌良君 続きまして、山口公述人にお聞きしたいと思います。  先ほどパワーポイントで御説明いただきまして、最後のところの結びのところで、我が国の安全保障に関する課題、優先すべき分野と選択で、直面する危険、弾道ミサイルなどからの国民保護と挙げていただきました。これにつきましては、先ほども同僚議員からも質問がございましたが、いわゆるミサイル防衛システムの強化というような中で、現在、高高度ミサイル防衛のTHAADであったりとか、いわゆるイージス艦のSM3を陸上に配置するイージス・アショアというのも議論されておりますが、これらの有効性についてどう考えておられるのかというのが一点。  もう一点は、THAADについては、韓国が配備するにつきまして中国が猛反発をしているわけですね。一説によると、このレーダーの機能がとても高くて、これが配置すると中国の動きが全て見えてしまうということかもしれないと言われていますけど、日本の場合は幸いにして中国大陸から離れておりますので、日本が配備してもそれほど中国の反発はないんじゃないかという見方もありますが、どのように思っておられるか。  三つ目は、少し聞きにくい話なんですが、ミサイルが、じゃ北朝鮮から撃ち込まれてきた、そのときに弾頭に核があるかもしれない、先ほど言われましたように化学兵器があるかもしれない。それを例えばイージスから撃ち落とすとき、THAADが撃ち落とす、またパトリオットが撃ち落とすと、近いわけですよね、だんだん近くなってくると、それに対する防護というのを、撃ち落とすだけじゃなくて備えておく必要があるのかどうなのかについて、この三点についてお聞きしたいと思います。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) お尋ねの点についてお答え申し上げます。  まず、THAADとSM3、これは両方とも高高度のミサイルを迎撃するシステムでありまして、特にTHAADは相当長い射程のものが、長い距離を飛んできて非常に速いスピードで再突入するものを撃ち落とすことができます。そういった意味では、長いものに対する能力という意味ではTHAADは非常に能力が高いと。他方で、SM3と違いますのは、SM3というのは、弾道のどこでも、弾道が低ければですけれども、射程、弾道によっては弾道の最初から最後までをカバーすることができます。そういった意味で申し上げますと、これとペトリオット3、ペトリオットですが、PAC3は数十キロの高度で要撃しますので、自然と守り切れる範囲も狭いわけでございます。それをできるだけ二層三層で広くしようとすれば、このTHAADという選択肢は大いにあろうと思いますし、それぞれ特性のある能力を持っていると思っております。  二つ目でございますが、私は、実は中国がTHAADを警戒しているのがどうしても意味が分からないんですね。レーダーで見られるからというのは何か、いや、そんなことをしなくてもちゃんとアメリカは上からとかいろんなところで見ていますから、それは何か、そうではなくて、むしろ韓国が中国の意に反してアメリカの言うことを聞いてしまうというところに反発をしたのではないのかなと私は思っております。それでいいますと、むしろSM3の方が中国にとっては嫌かもしれません。海岸付近から短い射程のミサイルを撃つとしますと、東シナ海とか日本海、まあ東シナ海ですね、東シナ海でアメリカのイージス艦だとか日本のイージス艦がいれば、近いところであれば上がりばなを迎撃することもできますので。  私は、本当に何で中国があんなに嫌なのか、これはやはり、やっと中国にべったりしてきたと思ってきた韓国がいろんな事情があってああいうことになって、かつアメリカの言うことを聞いてしまうと。ある意味でいうとオセロゲームのゲームの色が変わったような、そんな嫌さを感じているのではないかというふうに思います。  それと、核・化学兵器それから生物兵器に対するミサイル防衛を考えますと、できるだけ高い高度で迎撃をした方が、下に、本土あるいは住民に及ぼす影響は少ないということであります。ですから、最後の最後にペトリオットが十キロぐらいのところで迎撃をすると、そうすると、破片が落ちてくることもございましょうし、危険はございます。ただ、十キロ、二十キロ、三十キロという高度で撃墜をしますと、化学兵器もそうでありますし、生物兵器もある程度拡散をしてしまって、地上に弾着をして、配布をするような効果は得られませんので、どんな時点でも撃墜するという努力をすべきですし、先ほど申し上げました一発で撃墜できる確率というのは一〇〇はございませんので、それを少しでも高くするには、何回迎撃できるかということを考えれば私はよいのかと思っております。

浜田昌良公明党

○浜田昌良君 ありがとうございました。  今、山口公述人から、韓国のTHAAD配備について、中国の対応はむしろ外交的な思惑ではないかという話があったんですが、これについて、一言で結構でございますが、宮家公述人、小此木公述人、この韓国のTHAAD配備に対する中国の対応、反発している理由はどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 私が外務省におりましたときも、日本のSM、いわゆるイージス艦を入れるときに中国は物すごい反発をして、毎日私は怒られていたんです。私は言い返したんですけれども、このミサイル防衛システムというのは日本にミサイルを撃つときに使うんですよ、あなた、日本にミサイル撃つ気あるんですか、撃つ気がないんだったら全然心配ないんですよということを言ったんですが、全然言うことを聞いてくれませんでした。ということは、やはり政治的な意味もあるのかなと思っております。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) そうですね、私もそう思います。  韓国の友人たちは、やはりそこのところを不思議に思っているようでして、なぜ中国はこんなに執拗に韓国を責めるんだろうか。その辺を彼らも軍事的なものだけというふうには考えていないようであります。  私は、だから、それはやっぱり米韓を引き離したいんだと。だから、今すぐ引き離せなくても、長期的に少しずつでもいいからやっていく、これがその第一歩だと思ったらどうですかというふうにお答えしている次第です。

浜田昌良公明党

○浜田昌良君 ありがとうございました。  今日いただきましたお話をしっかり参考にさせていただきまして、外交を進めさせていただきたいと思います。  終わります。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  三人の公述人の皆さんには、大変有意義なお話をありがとうございます。  まず、宮家公述人と小此木公述人にお聞きをいたします。  宮家公述人のお話で、冷戦時代につくられた国際システムの変質、変容ということが言われました。これ、いわゆるアメリカ中心の軍事同盟で見ますと、東南アジア条約機構が七七年に解散をし、中央条約機構が七九年に解散、ANZUS条約は八六年に機能停止、それから、リオ条約ももう今は機能停止ということになっておりまして、今残るはNATO、日米、米韓、米豪ということになっておりまして、こういう軍事同盟で暮らす国民というのは六七パーから一六%に今なっているわけですね。世界の大きな流れでいいますと、軍事同盟から抜け出して仮想敵国を持たない開かれた地域の平和共同体というのがつくられ、ASEANであるとか中南米のカリブ海洋国共同体などが広がっております。  日本はその中で日米安保について、北東アジアの安全保障環境が厳しいということで説明をしてきたと思うんですけれども、一方、一昨年の新ガイドライン、そして安保法制では、特に新ガイドラインですね、アジア太平洋地域及びこれを超えた地域まで大きく対象を事実上広げたわけでありますし、先日の首脳会談では、より大きな役割を同盟の中で日本は果たすと、こういうことが確認をされております。  こういうふうに軍事同盟の、事実上の軍事同盟の対象を大きく広げていくというのは、この冷戦後の世界の大きな流れとはかなり逆行しているんじゃないかと私は考えるんですけれども、その辺の御評価をそれぞれからお聞きしたいと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) ありがとうございます。  私、意見違います。私が申し上げたのは、冷戦時代の方がより安定していて、より確実性があった、逆説的に言っているんですよ。確かに恐怖の均衡はあったかもしれないけれども、それなりの安定がありました。しかし、その時代が終わって、そして、国際主義が崩れて各国で醜いナショナリズムが出てくるようになると、むしろ世の中はより不安定になり、より不確実になっていく、これは当然だと思うんです。その中で各国が安全保障を考えていくときに、軍事同盟の重要性は今以上に、以前以上にはるかに大きいと思っています。そして、残念ながら、冷戦時代よりもそれが機能せざるを得ないような状況は起こり得る可能性は高まっているというふうに考えております。  今委員がおっしゃった趣旨は一つの考え方ではあると思いますが、それは一つの考え方でしかありません。残念ながら、人間はそんなに進歩しないのかもしれません。我々、グローバリゼーションの時代に、こんな相互依存の時代に戦争なんか起きないんだとずっと言われてきました、九〇年代から。しかし、グローバリゼーションが起きたのは技術の部分と制度の部分であって、人間の心までは完全にグローバライズされていないんです。それが証拠にヨーロッパでああいうことが起き、アメリカでもああいうことが起きていることを考えますと、おっしゃることはよく分かりますけれども、残念ながら、私は、むしろ伝統的な同盟、そして抑止力による安定というものが今まで以上に、冷戦時代以上に重要視されるべき時代が入ってきたと私は思っています。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) そうですね、冷戦システムが崩壊し始めたのがいつ頃かというようなことも考えなきゃいけないと思いますが、しかし、最大の要素はやはり中国の大国化だと思いますね、これは間違いないわけで。それ以前と違って、中国が経済的な大国として登場して、二〇〇〇年頃からですね、それから、二〇一〇年頃から軍事的な大国としても登場してきて、その結果として、朝鮮半島でも先ほどお話に出たような韓国まで米中で綱引きが行われるようなことになってきているわけであります。  尖閣列島のケース、南シナ海のケースという形で中国の影響力が拡大してくる、これを地域的な紛争化しないために努力しているわけですから、どうしても、世界戦争の脅威はともかくとして、地域的な紛争というものの可能性というのがやっぱりかつてより高まっているというふうに見てよろしいんじゃないでしょうか。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 北東アジア、アジアのいろんな安全保障環境の厳しさということを言いますと今のような御説明になるんだろうと思うんですが、私、申し上げたかったのは、あの新しいガイドラインで、それをはるかに超えて、アジア太平洋地域及びこれを超えた地域、事実、中東なども大きく対象にして広げていったというのは、そういう説明ではなかなか付かないんじゃないかなというふうに思っておりまして、そこの点をどうお考えか、もう一度、宮家公述人、よろしいでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 日本が資源のない島国として生きていくために、いろいろ考えた結果、私の結論はシーレーンの防衛だということを先ほど申し上げたわけですが、このシーレーンというのはどこまで行くかというと、中東、湾岸地域まで行くんです。そして、御承知のとおり、第七艦隊はインド洋まで、そしてその先は第五艦隊が守っているわけであります。これが実態であり、そこでどこの一つが切れても日本に石油は入ってこなくなるんです。そのようなことを考えたときに、そして一九四〇年代、五〇年代に比べればはるかに能力の高い兵器が、そして武器システムができ上がり、そして人間の活動もはるかに広範囲に、しかも速い速度で動くようになった、このような状況で一九六〇年代の議論がどこまで妥当するのかということは、私、常に考えております。  その意味で、このガイドラインということを今おっしゃいましたけれども、ガイドラインの有無にかかわらず、日本の安全保障というものを考えたときに、そして日本が海洋国であるということを考えたときに、現行の法令上でも十分海を守る、海洋を守る、そしてシーレーンを守る、そしてそれに付随する空域を守るということは、その地域の地域概念というよりは、私はより一体となった日本の利益なんだろうと思います。それが拡大していくこと自体が私は悪いことではないと思います。日本が今までのようなディフェンシブなポスチャーでいる限り、私はその状況が拡大するとしても大きな問題になるとは思っておりません。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 際限のない拡大にならないようにと思っております。  北朝鮮問題について、今度は宮家公述人と山口公述人にまずお聞きしますが、安保法制制定の際に、これによって抑止力が強化されるんだという議論が随分ありました。  実際には、制定後、弾道ミサイル、核などの挑発がむしろ増えているという現状があるわけですね。それに対して米韓合同演習などが行われて、これがまた悪循環になるというような事態が起きているんではないかと思うんですが、ここのところの評価はどういう、つまり、抑止力が強化されるといってやったけれども、こういう事態になっていることについての評価、どうお考えでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 朝鮮半島に必要な抑止力というのは、過去、別に最近急に強まったわけではなくて、一九五〇年以降しっかりと米韓で、そして日米で、そして間接的ではありますけれども日韓で抑止力を、まあ育んできたと言っていいでしょう、それがあるからこそ今のような形で済んでいるんだと思います。もし抑止力がなかったとしたら、より多くの挑発が起き、より大きな変化が起こり得たと思うので、私は今の状況が特に大きな変化が起きたというふうには思っておりません。  むしろ変わったのは北朝鮮側の方でありまして、三代目のリーダーがどのような形でどのような政策をつくっているか、これは私にはよく分かりませんけれども、少なくとも彼が生き残りが懸かっている、小此木先生のおっしゃるとおりです。彼らにとっては安全保障を確保しなければいけないということなんでしょうが、今までのような形で我々が宥和政策をしてきたわけですよ。そして、宥和をするということは、ある意味で条件をのむということですよね。太陽政策もそうです、六者協議もそうです。  宥和政策はそれなりの効果がありますよ。しかし、相手がもし譲歩をしないのであれば、宥和政策は必ずどこかで失敗するんです。私はそれを非常に恐れておりまして、どのような形で評価するかと言われれば、今の状況というのは、やはり北に対してこれまでの成功体験というものを間違いだということを知らしめなきゃいけないし、そして我々は今やっている宥和政策の限界を知るべきでありますし、話合いだけでは無理な部分があるということを我々は自覚して、ある程度力を示して、核を放棄しなければ自分たちはサバイバルできないんだということを考えさせなければ、それは北は絶対に考え方変えないと思うんですね。それが私の評価であります。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) ありがとうございます。  宥和政策というところから申し上げますと、北朝鮮に限らず、例えば日本の防衛体制というものがしっかりしておれば、法制がまた整っておれば、何らかの言わば脅迫といいますか脅しをされたときに、脅しに妥協せざるを得なくなるということの、何といいますか、確率の高さが低くなるといいますか、その脅しに、脅されて相手に何か妥協して与えるということをしないためにも、これは法制もそうですし、法制に基づいて政策を進めていくということが非常に重要だと思います。  更に申し上げますと、これは我が国が直面しているとか、すぐそばでのことだけではなくて、やはり先ほど宮家公述人が申し上げましたとおり、日本の安全というのは世界中が安定していることに懸かっているわけであります。それを全部責任を取れというのはそれは無理でありますけれども、受益をしているものとしては、世界の中でもGDPでも三位ということになれば受益の度合いも高い、その受益の度合いが高い部分に対して国際社会の中でほかの国際社会のメンバーと一緒に汗をかくというようなことをやっていくことが必要でありますから、そういった意味でも、安保法制で、何といいますか、足下を固めたということは正しいことであります。  他方、まだまだ、私の陳述の中でも申し上げましたとおり、これで完成だと思ってはいけませんし、法制に基づいて施策を講じていくということが私は非常に重要だと思っております。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 もう一つ北朝鮮聞きますが、どう対応していくかということで、安倍総理が日米首脳会談を受けての国会答弁で、米国はトランプ政権に替わって、いわゆる戦略的忍耐から政策の変更について今議論をしていると、こういう答弁もありました。これは大変注目をするわけでありますが、アメリカの国内でも様々な議論があったと思います。去年の七月には北朝鮮のスポークスマン声明というのが出されて様々な示唆があったわけですけど、当時の例えばニューヨーク・タイムズは、このことについて、北朝鮮が対話開始の提案とも取れる声明を発表したと。過去十年間、北朝鮮の核の野望を封じ込める上でほとんど何もし得なかったということを、この言わば戦略的忍耐について言っているわけですね。  先ほど宮家さんは話合いだけではと言われましたけど、逆に言えば、この十年間は話合いがほとんど行われなかったということが、結局何らかの非核化の意思を示さなければ交渉に応じないというやり方の中で次々進んでいたということがあろうかと思うんですね。  私は、むしろこの戦略的忍耐からの変更ということで言うならば、その対話の中で、結論は、この放棄なしには北朝鮮の未来はないよというのを分からせるということは必要だと思いますけれども、そういう対話の糸口をつくっていくということは大事だと思うんですけれども、その点どうかということと、小此木公述人にも同じことと、同時に、日本政府もこういう中で対話のための対話は意味がないという言い方をしてきたわけでありますが、まず対話のテーブルに着かす努力をするということが私は大事だと思うんですけれども、それぞれいかがでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 私の見るところ、オバマ政権の戦略的忍耐というのは宥和政策の一環だと、一部だと思っています。  話合いだけで物事が解決するならばこんなすばらしいことはないんですが、恐らく、私の経験からいって、ちょうど私が北京にいたときに、二〇〇四年か、六者協議があの頃始まりましたですね。私は見ていて、中国もこの問題を解決する気がないなと思いました。なぜかというと、六者協議で話合いをするということで、結局、北朝鮮は六者協議の足下を見始めたということだと思っているからです。  対話は確かに大事です、最後は対話です。しかし、対話から対話が生まれるわけではないのです。対話を拒否している人が、対話をしなければ損をするんだ、対話をしなければ自分たちが危うくなるんだということを理解させない限り、対話を拒否している人に対話を説得することは難しい。そのときには、私は誤解を恐れずに言いますけれども、話合いだけではない手段というものがあるんだということを彼らに分からせなければ、決して対話には応じないと思っています。そして、そのような覚悟が彼らになければ、その対話は成功しないと思っています。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 多分、北朝鮮は、アメリカとの対話が難しいとなれば、まず韓国との対話というところから始めるだろうと思います。南との対話を先に先行させて、そしてアメリカの政策に影響を与えると。まあ、対話へアメリカを誘導していくというような、そんなことを考えるんじゃないかと思います。  残念ながら、この間、アメリカの北朝鮮政策は成功してきたとは言い難いんですね。いずれの政策もそれぞれ欠点を持ってきて、結果を見ればそれが一目瞭然になってしまうわけですが、したがって、アメリカの側にも明確な政策があるとは私は思えない。つまり、トランプ政権になっていろんな検討をするでしょう、検討するでしょうが、どのオプションも過去にやってみたオプションになってしまって、これはクリントンのときにやったなとか、これはブッシュのときにやったじゃないかと、これはオバマのときの政策だということになって、自信を持って一つの政策を打ち出せるかどうかということに関して私は疑問を持っています。  そういうところを北朝鮮はよく見ていて、南との対話から始めるだろうと思うんですね。そして、アメリカをできるだけ悪役に仕立てていく。アメリカが戦争をしたがっているんだ、だから南北はお互いに協力していかなければいけないという意味での反米ナショナリズムというものをかき立てようとするんじゃないかなと思って見ていますが、しかし結果的にそれが成功するとも思えませんし、ある種、手詰まりの状態で、実際にどう動くかというのは予測しにくいですね。しにくいけれど、野党政権がスタートすれば南北対話は始まると思います、私は。その上でまた複雑なゲームになっていくだろうというふうに思います。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 小此木公述人、日本はどういう対応をすべきかというのをお願いします。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 日本にできることというのは非常に限界があって、まず身を守ることが先決でしょう。それから、そういうことに反しない形でできるだけ平和的に事態を収拾していく。南北の対話、私は、南北の対話である種の合意がなければ平和は訪れないわけですから、朝鮮半島に共存とか統一とかというような、そういうような目標が、具体的な目標が出てくるまでは今の状態が続くだろうと思います。

井上哲士日本共産党

○井上哲士君 ありがとうございました。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 日本維新の会の清水貴之と申します。よろしくお願いいたします。  本日は、公述人の皆様、お忙しいところ貴重な御意見ありがとうございます。  まず、宮家公述人に何点かお聞きしたいと思います。  初めに御説明、お話しいただいた中で、普遍的価値の共有、日本外交のあるべき姿のところで、特に英国、イギリスとの関係強化という話をいただきました。この辺り詳しくもう少し教えていただければと思うんですが。まあいろんな関係強化がある思います、政治なのか経済なのか、はたまた軍事なのか、この辺りについてはどういった考えをお持ちで、どういった目的を持ってやるべきだとお思いでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) イギリスとは、昔、同盟関係にありました。そして、アメリカの横やりで日英同盟を廃棄して、そして、その後、イギリスは香港から離れ、そしてアジア太平洋国家であることをやめたんですね。しかし、その後、イギリスは、どうでしょうか、EUに、ヨーロッパになり切れなかったんじゃないんでしょうか。そして、やはり彼らは自分たちが海洋国家であるということを再認識したんじゃないんでしょうか。彼らがすぐにアジアに帰ってくるとは思いません。しかし、彼らが単なる貿易国家でないことも事実でしょう。  私は、日本の外交政策、特に大陸に対する外交政策が、イギリスの欧州大陸に対する政策が非常に参考になると申し上げたのはそういう意味で、イギリスは、したたかな人たち、あれだけの大帝国をつくった人たちですから、我々には非常に参考になることが多いと思いますし、いつの日かは、イギリスの船がまた太平洋に帰ってきて、そして、イギリス、アメリカ、日本、オーストラリア、たまたまほかの国はみんな英語をしゃべる国ですが、海洋国家が海洋の自由若しくは海洋の安定というものを共同で維持していく時代が来るんじゃないかなという期待を込めてそのように申し上げました。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 ただ、そうすると、今お話にもあったとおり、EUからイギリスは離脱をするということで、ヨーロッパの中ではいろいろ学んでというか経験をして独自路線を進み始めているわけですね。となりますと、日本とイギリスの関係というのは、日本と他のEU諸国、ヨーロッパ諸国との関係ともつながってくるんじゃないかと思うんですけれども、この辺りというのは、バランスが崩れたり、こういったことは考えられませんでしょうか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) EUとはまた別の日本は関係がございますし、イギリスとはある程度切り離してもいいと思っているんです。私は、EUについて一番心配をしているのは、今後のフランスの選挙、それからドイツでの選挙です。もしここで今、先ほどから申し上げている大衆迎合的な民族主義に流された政権ができてしまうと、それはEUの弱体化につながる。これはイギリスとは全く関係のない欧州大陸の中の世界として十分日本は関心を持たなければいけないし、そういうことが起きないように間接的に、できるかどうか分かりませんが、協力を深めていくべきだと思っています。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 引き続き宮家公述人にお願いしたいんですが、日中関係で、良いものは残し、変わったものは新たに合意をしていくべきだというお話がありました。この辺りも、どういったものを残し、どういったものを変えていくか、具体的にもしお話しいただけたらというふうに思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 日中が今後二度と戦争をしない、対立をしない、それはもう七二年から合意されていることですし、それを変える必要は全くありません。戦おうと言っているのではありません。  ただ、中国のような大きな国が、人口も大きく、領土も大きい国が更に拡大をしようということになれば、それは当然、周辺の国との摩擦なり関係悪化が既にもう起きているわけですね。その中で日本も実は例外ではないでしょうと。  昔、私が中国語を勉強を始めたのは田中角栄首相が訪中した翌年からでありますが、私は当時、日中友好青年だったんですよ。しかし、今のような状態はほとんど考えもしなかったです。しかし、七〇年代のようなあのような、何といいますか、すばらしい時代にはもう戻れないのかもしれません。しかし、お互いに隣人であり、これから一緒に生きていかざるを得ないわけですから、まあ意見が違っても、仲よくじゃないかもしれないけど、とにかく少なくともけんかしないで生きていきましょうという意味では、いや、変えるべきところは変えて仕方がないんじゃないんですか。向こうが我々に求めることと我々が彼らに求めることは残念ながら一致しないことがこれから当分続くという前提で、どうやって不必要な誤算に基づく対立なり衝突なり摩擦を避けるかと、これが求められているんだと思います。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 そういった中で、ほかの周辺国との付き合い方についても是非教えていただきたいと思うんですが、ASEAN諸国、東南アジア諸国であったり、まあインドもそうですね、大国でいいますと、あとオーストラリアというのも非常に大事な友好国だと思います。この辺りの関係というのはどうしていくべきでしょう。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 大陸と海洋で対応は違います。  大陸においては、先ほども申し上げたとおり、大陸の中でのバランス・オブ・パワーが必要です。したがって、大陸の中に一つの強大な覇権国家ができないように、先ほど申し上げたように朝鮮半島においては自由で、独立した、安定した、繁栄した朝鮮半島国家、まあ、どう統一するかは別としてですね。それから、東南アジアについても同じです。陸続きのところについては、同じような形で自由で安定した地域が生まれることが望ましい。もちろん、経済的に繁栄するという意味では、日本はそこで協力できるわけであります。  海の上はまた全く別のメカニズムが働く、まあ、もちろんオーバーラップはいたしますけれども。やはりシーレーンをどうやって守るかという観点から一番大きな問題は、やはり南シナ海をどのような形で天下の公道のままにしておくかということが求められるわけであります。  この点については、大陸国家ではできないことがあります。海洋国家でなければできないこともあると思います。その中で、おっしゃるとおり、オーストラリアであるとかフィリピンも島国です。それからインドネシアもそうですよね。インドは必ずしもそうではありませんけれども、インド洋まで考えますと、インドも重要なパートナーになり得る。別にどこかの国を封じ込めようとして申し上げているのではなくて、あくまでも海の道を開いておこうという観点から協力できることをすべきだということで、大陸と海洋では若干戦略が異なるかもしれません。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 ありがとうございました。  続いて、山口公述人にお願いしたいと思います。  軍事費の問題で、トランプ大統領はアメリカの軍事費、一割ぐらい、六兆円もう増やすんだということを発言をしています。こういったことが、ある一国、大国が急激に軍事費を増やすことによる世界的な影響、他国に与える影響などをどのように考えられますでしょうか。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) トランプさんが言われることの背景には、過去約十年ぐらい少し規模を縮小してきて、それからグローバルなテロとの闘いで軍隊が疲弊をして、それで近代化もままならないということがあろうかと思います。そういったアメリカ軍がもう一度腰を入れてそれなりに国際的な責任を果たすような能力を付けるためには、多分一〇%の増強というのは、これびっくりするように聞こえますが、これ実は中国が毎年やっていることでありまして、余りびっくりするようなことではないわけですね。そういうような意味で、アメリカが本腰を入れてくれるというのは、私は非常に有り難いことだと思っております。    〔委員長退席、理事二之湯智君着席〕  とはいいながら、アメリカにとっても、前々代の統合参謀本部議長ですか、アメリカの安全保障にとって最大の危機は要するに財政の大き過ぎる赤字であると、要するに財政の破綻というのはアメリカにとっての危機だということをおっしゃったわけで、これはアメリカの中で軍事費に一〇%上乗せをするというときに、やはり財政ということもしっかり考えていただかねばなりませんし、それともう一つ、アメリカは日本のように政府が原案を出してそれを審議してもらうというものではなくて、議会が予算を作ります。それに対して予算を作る過程で行政府からこういうのをやってくれと言いますので、トランプ大統領が一〇%と言うとそれがそのままできるかどうか、やってくれれば私はうれしいと思うんですが、余り安心もせず、心配もせず、見守っていきたいと思っております。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 引き続き山口公述人にお願いしたいと思いますが、そんな中、財政状況が厳しいのはこの日本も一緒でして、じゃ、日本の防衛体制というのはどうしていくかという話になるわけですが、やはり限られた予算の中で、でもこの厳しい状況ですから、しっかりと日本の領土、国民を守っていかなければいけないという中で、もう様々やらなければいけないことがあると思います。体制をどうするのか、新しい装備もどんどん値段も上がっているでしょうし、先ほどありましたように、空だけじゃなくて宇宙空間とかそういった話にも、サイバー空間とかいう、こういった話にもなってくるわけですね。  こういうところにどう今後、全部がもちろんできたらそれは安心できることなのかもしれませんが、それはそれで非常に難しいことだと思います。山口公述人はどのように配分をしていく、力の入れ方を変えていくとお考えでしょうか。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) 大変厳しいお尋ねであります。  まず、バブル崩壊後の約二十年間、日本の防衛費というのは全くフラットというよりかは若干右肩が下がるような形でまいりました。それでも何とか自衛隊がいろんなことをできたのは、そのバブルが崩壊するまでの間、経済の成長に応じて約三十年にわたって、あの五%から一〇%近い成長に合わせてそれなりに右肩上がりの整備をしてきたからだと思っております。その貯金がそろそろ尽きてきているというのがここ数年のことでありますので、若干ではありますけれども、右肩上がりになり始めたというのは、これは私は極めて正しい選択だと思っております。  そこで、どういう選択をすべきかというのは、これは、私はむしろ政府のといいますか、行政府の専門家の方にしっかり詰めていただきたいんですが、いろんなことを考えなければいけません。先ほどサイバー、宇宙というちょっと先のことを考えましたが、これは研究開発ですね。それから、将来の陸上・海上自衛隊をどうつくっていくのと。今投資して十五年ぐらいに出てくるものです。それと同時に、今本当に対応しなければいけない危機、それにどれだけのものを割くのかという、将来に投資するのか、今投資するのかというところも選択をしなければいけませんし、それと、もう一つは、私の冒頭の公述の中でも申し上げましたが、日本を守る方に全力を懸けるのか、あるいは国際協力で世界のためになると、憲法の前文を体現しようとするのかという、どちらを重視するかということも考えなければなりません。  それで、私自身ははっきり言ってどれだけ分ければいいかという成算はございませんけれども、冒頭に申し上げましたように、言わば汎用性の高いもの、どちらにでも使えるし、国民を守れる、いろんなことで使い道のよいものというのにある程度の資源を取っておく、そのほか選択肢というのは意外と残ってはいないのかも分かりませんけれども、過去二十年間、防衛費がお隣の国に比べると全くフラットであったというツケを払うための整備といいますか、ちょっとした近代化のようなことを進めながらそういう選択をしていくという時代ですので、私は、私の後輩の自衛官大変だなと。我々のときはとにかく右肩上がりで、これとこれと、いいものから順番に買っていったわけですけれども、そういうわけではないということで、大変政府におかれては御苦労されているんではないかと拝察しております。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 もう一点、山口公述人にお願いしたいと思います。  衆参の予算委員会で南スーダンでのPKOの活動というのも一つの大きな議論、論点となりました。私も話を聞いていて、やはり国民の皆さんに非常に分かりにくいいろいろ議論が起きているなというのを正直に感じます。PKO派遣の五原則がもちろんあるわけですから、安全であることがこれはもう大原則なわけですけれども、じゃ、何をもって、誰がどう判断して駆け付け警護をするのか、若しくは撤退するのか、こういった判断をすることが非常にやっぱり見えにくくなってしまっているなと感じました。日報の話もありますし、ちゃんと情報が上がっているのかなどいろいろ不安材料があると思います。  一方で、実際に行かれている自衛隊の皆さんというのは、これまでの山口公述人のインタビュー記事にもあるとおり、やはり危険を顧みずにもうリスクを承知で任務に当たろうとする強い思いを持って行かれているというのが書いてあって、そうだろうなというふうに思います。この辺りも、やはり行っている自衛隊の皆さんと国民の皆さんとのこの意見の乖離というか思いの違いというのも生じてしまうんじゃないかなというふうなところも感じておりまして、その辺りは、実際現場にいらっしゃった山口公述人、どのように感じていらっしゃるか、お話しいただけたらと思います。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) ありがとうございます。  二つ申し上げたいと思います。  一つは、最後に質問された点でございますけれども、隊員のインセンティブといいますか、隊員のモチベーション、これは正直言うと、日本を守る、あるいは南西諸島のどこかの島をどうしても守るんだと、そのために働くということと、南スーダンで何かをやるというところでは、指揮官としてこういう、このためにやるんだぞというのが非常に難しいですね。  でも、南スーダンでやっていることというのが、今、約二万人近いPKOの部隊が世界各国からあそこの安定が大事だと思って来ているわけですね。中国は工兵大隊だけではなくて歩兵大隊も送って治安を維持しながら道路の補修なんかもやっていると。我々自衛隊はそうではなくて、道路の補修をやるために行っているわけです。道路の補修のため、それが南スーダンのインフラを直して平和を維持するという作業の一部なわけですけれども、それが目的で、少なくとも私の教え子だとかが行って帰ってきますと、やはり誇りを持っています。ほかの国のどんな軍隊にも伍していけるといいますか、むしろ自衛隊の仕事はすばらしいということを自信を持って帰ってきておりますので、ある意味で、そういったところ、世界のいろんな人と一緒に活動をするところで、日本という、日本人であるという矜持を示すということは、ちょっと迂遠ではあるんですけれどもモチベーションになっているように感じます。    〔理事二之湯智君退席、委員長着席〕  一方、駆け付け警護というのは、これ任務は付加されましたけれども、駆け付け警護をやりに行っているわけではなくて、道路を補修する、例えばあるところに、五十人ぐらいの部隊でいい、そこに五十人分ぐらいの部隊を派遣して、その五十人が危なくなったときに、例えば中国とか韓国も行っております、中国の人民解放軍の部隊に済まんけど助けてくれというようなことというのはやはり変なことでありますし、また逆に、中国とはカンボジア以来、PKOで何回か一緒になってございます。韓国とも南スーダンで一緒であります。隣国、それも難しい関係を持った隣国と肩を並べて行っているときに、いざというときに日本は助けられるけれども、向こうに頼まれたときはノーと言わざるを得ないということですと、派遣をされた部隊、特に部隊の指揮官というのはやっぱり仕事をやる上での覚悟の据わり方が全く違うんじゃないかと。そういった意味では、今の方向というのは私は正しいと思っております。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 ありがとうございます。  小此木公述人にお願いいたします。  北朝鮮問題なんですけれども、これまでに出ておりますとおり、やはり私も中国の役割というのが非常に重要になってくるんじゃないかなと思います。  でも、と思う一方で、中国の様々な海洋進出など、尖閣の問題など、日本から厳しく対応しなければいけない部分もありつつ、でも北朝鮮問題では協力をしていくという、非常にバランスを取るのが難しい対応が迫られているんじゃないかと思いますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 中国の政策には幾つかの特徴がありますけれども、私は、一番大きな特徴というのは、中国は南と北、両方一緒ににらんでいるということで、北だけ見ているとか南だけ見ているとかいうようなことはありません。ですから、長期にわたってというのは、毛沢東の時代から平和的、自主的統一と。平和的というのは紛争を起こさない、自主的というのは二人でちゃんと話し合えということ、これを長期的に実践しようとしているんだろうと思います。  ですから、現状でもツートラックでやっていますし、つまり、北朝鮮に対する制裁もやるけれども同時に対話を促すという、中国は北に対してだけじゃなくて、アメリカや日本に対しても対話をしてくれと、北と対話をしてくれと言っているんだろうと思いますが、そういうような姿勢というのは基本的な姿勢であって、将来とも変わらないと思うんですよね。これは悪いことばかりではなくて、半島の紛争を、何というんでしょうか、緩和するような役割も同時に演じていますし、長期構想としてはそれ以外に方法はないことも事実であろうかと思います。

清水貴之日本維新の会

○清水貴之君 どうもありがとうございました。  以上で質問を終わります。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  先生方、大変勉強になるお話をありがとうございました。自由党の共同代表、山本太郎です。  本日は、参議院の先輩方からいろんなお話が出ましたけれども、私からは、安全保障という入口から、自由・社民の会派、希望の会を代表して、今日はテロについてお聞きしたいと思います。もし専門外であったり御所見がない場合にはお答えいただかなくても結構なんですけれども、もし一般論としてお話ができるということであるならばお話しください。よろしくお願いします。  まずは、根本的な部分から。  テロってどうして生まれるとお思いになりますか。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) どなたにお聞きになりますか。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 失礼しました。宮家先生から順番にお三人にお話を伺いたいです。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) それでは、まず宮家公述人。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 突然の御質問ですので、非常にどうお答えしていいか分からないのですが、学術的にはお答えできませんので、私の経験から申し上げましょう。  テロというのは、基本的に戦闘行為ではないですから、要するに、非戦闘員が、軍隊はテロやりませんから、非戦闘員が武装するなりなんなりして、そして何らかの政治的目的を達するために、恐怖を与え、そしていろいろな事件を起こすものだと思っています。私は中東の方しか分かりません、ほかの地域のテロのことは分かりませんが、基本的にテロリストは卑劣です。そして極めて残忍で、一番弱いところを狙い、そして最も、テロというのはテラー、恐怖ですから、最大の恐怖を最も弱い人たちに与えることで最大の政治的効果を得ようとする卑劣な人たちだと思っています。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) テロといいますと、今人ごとのように我々の間で議論をしてしまいますけれども、これは実は日本にとっても結構歴史の長い話でありまして、大正時代、昭和初期、テロというと、大体羽織はかまを着た物騒なものを持った人たちが政治家を脅かしに行くというのがテロでありましたし、一九七〇年代を思い出しますと、それこそ大手町で爆弾が爆発したり、あるいは日本人がイスラエルまで出ていってテロ行為をやるということもあったわけであります。  そういうことを考えますと、テロの原因というのはいろいろありますけれども、思想的な不満、あるいは貧困、貧困だけではなくて、不平等、あるいは貧困の上に抑圧されているというようなことが根っこにあって、その上に、テロをやるにはお金が要りますから、そのお金を供給する側、それが例えば麻薬でお金をつくってテロ集団にそのお金を供給するというような、いろんなものの連鎖がありますので、これからテロと我々が闘っていくというのは非常に複雑な作業だというふうに思います。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) テロと呼ばれるものにも随分いろんな形態があろうかと思うんですね。歴史的にも太古の昔からあったんじゃないかと思いますが、つまり政治的な目的があって、暴力によってでも達成する、単独ででも達成すると言っている。私なんかは朝鮮半島の研究をやってきましたから随分そういうものを目にしています。つまり、独立運動の志士と言われる人たちというのはかなりの部分テロリストですね。朝鮮の独立というもののために日本の軍人、政治家を暗殺するというようなことも多々あったわけですから。  ただ、現在行われているのはそんな高尚な話ではなくて、計画的、組織的に大規模にということになると、これは昔の古典的なテロの定義とは随分違ってくるんじゃないかというふうに思います。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  安倍総理が東京オリンピックのために共謀罪、つまりはテロ等準備罪が必要だと何度も発言されているんですね。テロから国を守るためにどういうことが必要だと先生方はお思いになられますか。また同じスタイルでお願いします。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 私が二度目のイラク勤務を終えて帰ってきたとき、それからその前にアメリカから帰ってきたときも特に思うんですけれども、日本は本当に平和な国なんだなとつくづく思うわけです。  例えば、自動車爆弾がやってきてどうやって止めるんだろうと。日本は本当に簡易なものしかない。あれで止められるのかどうかは、やりませんよ、私はやったことありませんから分かりませんが、あんなもので大丈夫かなと。イラクは完全に要塞化している。これはやり過ぎだとしても、アメリカでもホワイトハウスの周辺が行くたびにどんどんどんどん厳しい警備になっていて、本当に守ろうと思ったら、自動車爆弾を守ろうと思ったらというところまで行ってしまうわけですね。  それに比べますと、日本は、まあそれは警察の努力、それから国民の皆様の御協力があったからだと思いますが、そして元々島国であって守りやすかったということもあるでしょう。武器が入ってきにくいということもあったでしょう。しかし、余りにも、浮世離れとは言いませんが、世界の、世界レベルのテロというのがあるのかどうか分かりませんけれども、中東等で経験したもの、アメリカ等で経験したものに比べれば、はるかにいい状況に日本があると思うんです。しかし、それは一昔前までの話でありまして、残念ながらテロリストというのは、先ほど申し上げたとおり、一番弱いところをもう最大の恐怖を与えるために行動を起こすわけでありますので、そのときに彼らにルールはないんです。  そう考えますと、総理がどのように最近おっしゃっているか存じませんけれども、一般論として考えたらば、人の集まるところ、そしてこれまで警備が弱いところ、そして誰もこんなことは起きないだろうと思っているところ、そこを狙うに決まっているんです。ですから、その意味では、二〇二〇年のオリンピックのときにそのようなこと、今私が申し上げたようなことを考えて対策を取るのは当然だと思います。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) ありがとうございます。  大変難しいことだとは思うんですが、まずざっくりと環境を申しますと、イスラム過激派のテロリストという観点でいうと、地理的に離れているというところと、それから、日本が比較的、セム族的一神教の世界の中では割と中立といいますか、いずれにも敵視をされないというところで、比較的日本は安全だったということがあろうかと思います、特にここ十年、二十年はそうだと思うんですが。ところが昨年、バングラデシュで日本人も含めて殺された事件がありました。そのときに参加をした七人のテロリストのうち、一人はほんの直前まで日本で生活をしていた人だというふうに私は承知をしております。  そういったことを言いますと、水際で全部テロリストを止めてしまうということは実質上不可能になっていると。そうしますと、テロ行為が行われないような雰囲気をつくるということが大事でありまして、そこを考えますと、それこそ宮家公述人が行っておられたイラク、あそこでやるテロというのは、テロで爆弾を投げる、あるいは遠隔操作で爆発をさせる、それをまた宣伝をするためにカメラマンが撮っているんですね。爆弾を投げる人の周りには一般の市民がいるわけです。その一般市民というのは、恐らく警察にも治安軍にも報告をしないんですね。要は、政府がいいのか、そのテロリストがいいのかというのは、どっちを支持しているか分からないからです。  そういった意味では、日本の場合はもうテロは絶対許さないというのはもう国民的な全くの合意でありますので、国民を挙げてテロがやりづらい雰囲気になっているわけですので、そういう雰囲気を崩さないといいますか、決意を示し続けるということが私は必要だと思います。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 私はこの問題の専門家でもありませんから簡単に申し上げたいと思いますが、国内のテロということに関して言うと、それはやっぱり目標を与えないとか、無差別性というようなものに関しては、無差別的なテロであってもそれは目標があるからですから、政治的な目標の対象に日本がなるんだということであればそれは大変懸念されるわけですが、しかし、できるだけそういう、何と言ったらいいでしょうか、逃げるような話ではありますが、政治的な目標を与えないということはやはり重要なんじゃないかと思うんです。  しかし、その上で、まさかのことがありますから、それは、その種のテロに対しては最大限の警備体制というのを整えるべきだと思います。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  日本がテロに狙われるとしたら、どんな勢力だとお考えになられますか。また、その目的は何でしょうか。この部分に関しては少し短めにお答えいただけると助かります。先ほどと同じようなケースでお願いします。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) もう既に狙われており、実際に実行はされているわけですよね。私の知る限り、アルカイダができて、そして行動を起こして、もうかなり早い段階で、二〇〇一年か二年か忘れましたけれども、その頃にもう既に日本は対象になっていました。日本が何か悪いことしたわけでも何でもないんですけれども、勝手に彼らが言うわけですよね。  ですから、その意味では、幾つかこれからお話があると思いますけれども、少なくともアルカイダ系、そして恐らく、御承知のとおり既にもう犠牲が出ているわけですがイスラム国系、これにとっては日本はもう初めからターゲットであるということだと思います。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) 私も同様に思いますし、ただし、そのイスラム過激派だけがテロだと思い込んでしまうのも私はまずいと思います。  オウム・サリン事件を思い出しますと、私はあれ、まだ、当時あの事件のそばを通ったことがありますので忘れることはできませんし、私が学生の頃は、いわゆる過激派という人たちが反日何とか戦線というのでテロをやったわけでありますので、そういういろんな理由で、不満を持ち、抑圧されていると感じ、それでそれを卑劣な手段で、何といいますか、訴えようとする勢力というのはもういろいろな勢力がいるんではないかと思います。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) 確かに過激派のケースとかオウムのケースを言われると、それは日本にも国内テロは深刻なのがあったんだなということになりますね。  イスラムのテロ等をどうも念頭に置くものですから、これはどっちかというと巻き込まれるに等しいような感じがしないでもないんですが、しかし、こちらがどう思うかと関わりなく、向こうが利用価値があると思えば当然やってくるわけですから、最大限の注意を払うべきだろうと思います。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ここ数年の間のテロといえば、これは宮家先生からもお言葉が出ましたけれども、ISが有名になってきたと。もちろん、二〇〇一年に日本でそういうアルカイダの動きがあったけれども、それは未然に防ぐことができた。最近では台頭してきているISだというお話なんですけれども、そのISが誕生した理由というのは何だと思われますか。これは宮家先生にお答えいただきたいです。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 長くしたくないので簡単に言えば、幾つかあったあの種のグループの中で、それまではどちらかというと中東域外のアメリカとか欧州をターゲットにするグループもいれば、そうではなくて、同じような考え方ですけれども、より領域を持って中東の中で活動していくというグループがありました。その人たちの一部がイラクで追い出されましてね、アメリカが入ってきた後、そして、その中でグループができて、シリアが内戦によって力の空白ができたためにそこに根を下ろし、それが今度はイラクに逆輸入してきて広がった。どちらも、シリアとイラクという国家が事実上破綻国家に近くなっていて、まともな正規軍、それから治安部隊を持たなくなったことが原因だと思います。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  ISが誕生した理由の主なものとして語られるのが、アメリカを中心とした国々による中東への介入、特にイラク戦争でのアメリカ軍による戦争犯罪、つまりは一般市民への無差別の殺りくが実際に現場で行われていたと。そればかりか、罪のない方々も捕虜として捕らえられ、アブグレイブ刑務所などで非人道的拷問も繰り広げられたと。その中で、人々は誓い合ったと、必ずこれは仕返しをするということを誓い合ったということも聞いたことがあります。  そのイラク戦争に対しましては、日本もイラク戦争をすぐに支持をした。自衛隊に関しましては実際に現地へ出向いていただきました。特に、航空自衛隊はバグダッドへの輸送に関して、国連関係者と偽って米軍関係者の輸送を手伝ったことも明らかになっています。これ、名古屋高裁の判断では、航空自衛隊のイラク派遣は憲法九条に違反すると、これは特措法に関しても違反をしているんじゃないかという話で判決が出ているというような状況なんですよね。  結局、蓋を開けてみたら、イラクから大量破壊兵器は発見されなかったと。でも、これは最初から分かっていたことだと思うんですね。例えば、これは国連の大量破壊兵器を査察するというUNMOVIC、この委員長のハンス・ブリックスさんが、幾ら捜してもないと、五百か所、七百回捜索が行われたけれども、これは見付からないと言ったけれども、もっと捜せと言われている途中で戦争が始まってしまったということも言われています。  振り返ってみれば、日本のイラク戦争への支持、参加というのは、これ、選択は合っていたんでしょうか。これ、過去に遡ることは難しいですけれども、宮家先生は、恐らく当時官邸に非常に近いといいますか、ところにいらっしゃったんですかね。外務省にもいらっしゃった方ですし官邸にもいらっしゃった方なので、今振り返られてどう思われるかということを、短めにと言ったらちょっと酷ですけれども、教えていただければと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 短くならないかもしれませんが、簡単に申し上げれば、日本があの武力行使を支持した理由は、大量破壊兵器があるかないかとかそういうことではなくて、私の理解では、一九九〇年、九一年のあの一連の事件、クウェート侵攻があって、その後国連安保理決議ができて、その安保理決議に従ってイラクが義務を負っていたのにもかかわらずその義務を十分果たさなかった、それが私は理由だと思っています。その意味では、日本があの行動を支持したことは正しいと思っています。  もし何か間違いがあったとしたら、私自身現場にいて感じたことですけれども、確かに戦後の統治は難しかった。私は、CPAという連合国暫定当局というところに出向をさせていただいていましたけれども、確かにイラクの占領政策若しくはその再建の努力は不十分だったと思います。計画もなかったと思います。それが私は返す返すも残念ですが、少なくとも国連安保理決議に関する判断については正しかったと思っています。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。現場にいた宮家先生からのお言葉を聞かせていただいて、ありがとうございます。  世界中はもう検証始まっているんですね。で、終えているイギリスのチルコット委員会では報告書が出され、イギリスは平和的な方策を尽くす前にイラク侵攻に踏み切った、開戦に法的根拠があると決断する状況には程遠かった。ほかにも、アメリカは、随分前ですけれども、二〇〇五年にブッシュ大統領が設置した独立調査委員会では、約六百ページにわたる報告書を公表して、情報収集活動が完全に誤りだったことを認めて断定していると、米近代史上最も大きな害をもたらした失敗と位置付けた。  これ私、何が言いたいかといいますと、過去の戦争の検証と反省という総括を行わなければ、これテロ対策しているとは言えないと思うんですね。要は、過去に先進国がイラクに土足で踏み入ったことに関して、その根拠がやはり、その後の検証行われた後で、やっぱりそれ良くなかったということが世界中がはっきりしているという時点で日本はもう少し検証を進めなきゃいけないと思うんですけれども、宮家先生、検証必要だと思われるかどうか、教えていただけますか。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 今おっしゃったのは議論の飛躍でございます。私があそこで支持すべきだと言ったのは、確かに検証した結果なかったことはそうでしょう。しかし、あのとき当事者として横で見ていましたけれども、イラクはかたくなに査察を拒否したんです。もし本当にないんだったらば見せればいいんです。それだけのことなんです。我々もそれがされたら、もうそれは無理だよねと思っていたんですが、最後までかたくなに拒否をした部分がありました。したがって、それをもって安保理決議違反と言われても私は仕方がないほど非常に断固として彼らは履行を拒否した、査察を拒否したと理解しています。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 時間です。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  チルコット委員会の報告書も是非先生には目を通していただきたいと思います。  ありがとうございました。

松沢成文無所属クラブ

○松沢成文君 無所属クラブの松沢成文と申します。今日は、公述人の先生方、お忙しい中、御協力ありがとうございます。  先生方から、冒頭の発言で、それぞれの専門の分野の中で非常に大局的に日本が直面する外交、安全保障の課題についてお話をいただきました。私は、もう同僚議員から様々な質問が出ていますので、ちょっと個別の政策について提示しますので、それについての御意見をいただきたいと思います。  まず最初、領土問題なんですが、最初は宮家公述人と山口公述人、お二人からお話を聞きたいんであります。  今、尖閣諸島が、中国が毎日のように領海や接続区域を侵犯をして、海上保安庁の皆さんも必死になってそれを守っているわけですね。当然、私は、尖閣は国際法上も、あるいは歴史上も完全に日本の領土だと思っていますが、残念ながら、中国も領海法とかいう法律を作って尖閣は中国の領土だって法律に書いちゃっているわけですね。  そこで、やはり尖閣諸島が日本のものであるという実効支配のしっかりした形をつくらなければ、やっぱり中国もずっと、中国はひょっとしたら侵略しようと思っていると思いますから、これエスカレートする一方だと思います。  さあ、そこで、私は、まずいきなり自衛隊の施設をといっても、これハレーション大き過ぎますからそれは戦略上難しいと思いますが、まず日本の行政が及んでいるという形をきちっと示すべきだと思います。最初は環境調査から入る、そして次には施設ですね。例えば、船に対応するために通信施設ですとか、あるいは灯台ですとか、更に言えば、船だまりやヘリポートもきちっと造るべきだと思う。ただ、こういう施設は侵略するとき相手にも使われますからいろいろ難しいところはあるかもしれませんが。そして、できれば海上保安庁の警備隊、公務員を常駐させるというところまで持っていくべきだと思うんです。実は、安倍総理も問題意識があって、二〇一二年の総選挙の公約か何かに、きちっと尖閣には維持管理していくために公務員を常駐させますという公約をうたったんですが、その後四年間、全くその政策進んでいないわけですね。  今、国際情勢見ると、例えばアメリカに、安保条約五条、尖閣も適用だ、トランプさん始め重要閣僚にみんな言ってもらいました。アメリカは今、中国と対峙してでもアジアの安全は守ると言ってくれています。そして、もう一つポイントは台湾なんですね。台湾も馬政権から蔡政権に替わりまして、もう馬政権はやっぱり中国寄りです、国民党ですから。そういう意味では、蔡政権は民進党で、日本にも理解がある。当然、台湾も尖閣の領有権は主張していますけれどもね。こういう状況、中国はどんなときでももう尖閣は自分のものだと、これ言い張ると思いますし、行動も続けると思います。  ただ、私は、今非常にタイミングを得ているんじゃないかと思うんです。アメリカからも強い支持がある。そして、このハードルを乗り越えない限り永遠に日本は、実効支配しているといっても国有地になっているだけで、何の行政的な形がないわけですね。国際社会に説得もできないと思います。尖閣の実効支配をしっかりと進めていく今がチャンスだというふうに私は思っているんですが、まず宮家公述人からお話をいただきたいと思います。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 大変核心に迫る御質問だと思っています。慎重にお答えをしなければいけないと思っています。余りぺらぺらしゃべると手のうちが見えるのかもしれませんが、しかし、私は政府の人間ではありませんから、一つの考え方をお話しします。  今おっしゃるとおり、法的な問題、そして物理的な存在の問題というのはもちろん大事なんです。私はそれは否定しません。ただ、もしこれを動かしていくとなると、もし私が責任者であれば、法的な問題、物理的な存在の問題と同じぐらいのエネルギーを対外的な説明に置きます。なぜならば、この問題は単なる、領土問題の、取り合いであると同時に、説明のし合いなんです。いかにその対外説明をするかということがポイントであります。そして、今、昔のように、誤解を恐れずに言いますけれども、領土を取り返すときは戦争ができた時代はもうとっくに終わっているわけです。  したがって、今の日本は、実効支配はしているけれども物が置いていないというものがゲームの始まりになっているわけです。その始まりでゲームをやらざるを得ないし、そのときに、このゲームが何らかの形で展開をしていくときに、それ一つ一つに説明ができなければいけないと思っているんです。  ということは、何を申し上げたいかというと、日本が、じゃ、それは絶対法的に正しいんだからやりますと言ってばっとやれば、それは下手すると逆手を取られて、日本が挑発をしたな、日本が現状変更しようとしたなという形でプロパガンダに使われる可能性があります。したがって、その意味では、おっしゃることは全くそのとおりなんですけれども、私だったらば、そのような形で最終的にプレゼンスを置くためにどのようなナラティブを考えるか、その中で相手側が、どこの国とは言いませんが、相手側が瑕疵があったときに、それに対する対抗措置として置かざるを得ないんだという形のナラティブをつくるのが一番いい方法だと思います。  今既にもう入ってきてはいますけれども、まだ軍艦が入ってきているわけではありません。若しくはドンパチがあったわけではありません。衝突があったわけでもありません。でも、そういうことを彼らがもしした段階で、それは一つの可能性として、説明ができることであればできると思います。ただ、こちらの方から一方的にやるということは、むしろ、何というんですかね、逆効果になる可能性がある。あくまでも我々は、最初から打つのではなくて、カウンターで対応していくというのが私はこのゲームの中で一番重要なことだと思っています。  物すごく時間の掛かるゲームです。これ、もしかしたら永遠に続くかもしれません。我慢比べなんです。そのときに一番大事なことは、相手が瑕疵があって、我々が常に正しいことをしているんだというナラティブが続いていくことだと思います。そのためにいろいろな相手の出方を見ながら、我々がそれに対応する措置をもう既に考えておいて、それをすかさずにやって、それを国際的にちゃんと説明をすると。この幾つかの動きが同時に起きないと失敗する。そうならないように今から準備をしておくべきだと思います。  ちょっと言い過ぎましたが、失礼しました。

山口昇笹川平和財団参与国際大学教授

○公述人(山口昇君) ありがとうございます。  委員の御指摘は、それぞれ全く制度の面ではいつやっても不思議でないことであります。他方、ある政策を取ったときのその、何といいますか、影響というものを考えると、宮家公述人が言ったようなことをしっかり考えなければいけないと。  そこで、私がやっぱり思い出しますのは、二〇一二年に香港の活動家が上陸をしようとしたときに海上保安庁の船が、巡視船がそれを、何といいますか、上がるところを限定するわけですね。で、上がったところには既にもう沖縄県警が待っていると。まさにそういう日本として公権力を行使をして、実効支配といいますか、ちゃんと施政下にあることを示したわけでありまして、それからも海上保安庁は本当に頭が下がる、本当に汗をかかれて苦労をされておられますけれども、ああいった努力を根気強く続けていくと。  それと反対側のことを根気強くなく不用意にやっているのがあの某国の南シナ海でのことですね。サラミスライスとかを少しずつやってごまかしているというようなこと。ああいうことを日本が、何といいますか、国際的に正当化されるような環境でない場合にやらないということが、宮家公述人が言われたとおり、ナラティブをつくるといいますか、我々としてやっぱり正々堂々としているということが私は大事でありますし、忍耐というのが非常に重要であります。

松沢成文無所属クラブ

○松沢成文君 次は竹島の問題を伺いたいと思うんですが、これは国際法が関係するので、宮家公述人と、それから、朝鮮半島との関係ですので小此木公述人にお願いしたいと思います。  尖閣とは全く逆に、竹島は完全に今韓国に実効支配をされています。韓国の施設がどんどんできて、住民もいますし、それで韓国の政治家がもう頻繁に上陸して、それで何か記念碑まで建てちゃっているわけですね。日本は、国際法上も歴史上も竹島は日本の領土であると言っています。また、ただ、韓国が何か行動を起こして上陸したとか新しいものができたと抗議だけをしているわけですね。竹島の日では頑張ろうと言っているわけですけれども。  でも、このままの状況だったら全く変わりません。恐らく実効支配は永遠に続くでしょうし、もし取り返したいのであれば自衛権を使って自衛隊が分捕りに行くということはまず考えられませんよね、現実的に。ただ、そうであったら、一歩でも現状を打破する何か知恵がないのか、私もずっと探してきたんですけれども、これが南シナ海にあったと思っているんです。国際司法裁判所に実は日本は韓国を二、三回訴えてきています、歴史上。でも、相手が同意しない限りこれ裁判にならないんですね。ですから、韓国は、私たちのものだから、そんなものを裁判にする必要ないというわけです。  ところが、国際海洋法条約、これを南シナ海で、特に南沙諸島でフィリピンはうまく使って、海洋法条約の環境とか、恐らく航行の自由も使ったんだと思いますが、スプラトリーを完全に中国がああいう形で占拠をしちゃっているということは、もう環境問題上、航行の自由上、大変問題だということで提訴した。国際海洋法条約の提訴は相手が同意しなくても審理が進んだということで、そして、それで出てきた結果がかなりフィリピンの主張を認めて、中国はもう侵略行為をやっていると、もう環境破壊どころか、九段線なんか認められませんよというところまで国際海洋法条約の提訴で言ってくれたんですね。  これ、国際法上、ぐっと私はフィリピンが有利になって中国が厳しくなったと思います。これと同じ手を、手と言っちゃ失礼かな、同じ戦略を竹島でできないのかと。  例えば、国際海洋法条約で竹島の周辺の環境が心配になってきている、あるいは漁民が乱獲して漁業資源が心配だとか、あるいは航行の自由というのが妨げられていると、こういう理由で国際海洋法条約を使って提訴をして、国際法の中でしっかりと裁いてもらったら、私はこれ、日本に有利に出ると思っているんです。  そうなることによって今後の竹島の領有権の問題も違った展開をつくれるんじゃないかと思っていますが、いかがでしょうか。  まず、宮家公述人から。

宮家邦彦立命館大学客員教授

○公述人(宮家邦彦君) 私は外務省で、国際法の専門家ではありません。地べたをはいつくばっておりましたので、必ずしも正しいお答えができるかどうか分かりませんが。  おっしゃるとおり、フィリピンのやり方というのは、いわゆる領有権の問題ではなくて、領有権以外の問題について裁判所にうまく管轄権を持たせた非常にうまいやり方だったろうと思います。中国からすればとんでもないやり方だろうと思います。  しかし、あれはそれで効果がありましたけど、じゃその後どうなったかというと、フィリピンに対して物すごい圧力が掛かって、そしてフィリピンも、今はどのような状況か分かりませんが、中国と戦争したくないから、戦いたくないから、まあいろいろ、今の状況では少しずつ、和解には向かいませんけれども、棚上げまでいかないけれども、ふにゃふにゃふにゃとしているわけですね。  それを日本が、私は法的に確信を持って言えませんけれども、やろうとすることは一つのオプションとしてあり得ると思っています。ただ、本当に同じような問題、十五ぐらいありましたよね、あれだけのものが竹島の周辺にあるのかどうか私分かりません。しかし、方向として、通常型の国際法上、つまり国際裁判所でも、管轄権、両当事者が認めなければ生じないというその問題を棚上げする意味で、今おっしゃったやり方は一つの方向性だと思います。  しかし、それをやるとなると、これは小此木先生の御判断だと思いますけれども、これ本当にけんかになるんです。ガチンコのけんかになります。そして、結論が出たときに相当もめます。そして、それこそ取り返しが付かないぐらいもめるかもしれません。その可能性はゼロではありません。  したがって、私は、それも一つの方法なんですけど、今委員おっしゃったように、未来永劫返ってこないかと、まあそうかなと思いつつ、希望を私は持っておりますし、この問題はそもそも昔からある話であります。昔はどうしていたかというと、御承知のとおりアグリー・ツー・ディスアグリーだったんです。同意しないことに同意していたんです。お互いに外務大臣レベルで話し合っても、片っ方が文句言って片っ方が文句言い返すと。それで、じゃ次はという形で何とか処理をしてきたわけですよね。それをもし白黒を付けようとして、そして裁判所に行って実際にあれが出すとですね、そのアグリー・ツー・ディスアグリーができなくなるんですよ。それでいいのかという問題と、それから、今、日本ができることは、確かに不愉快なことなんですが、時効を止めなきゃいけないんです。時効を止める方法をほかに考えなきゃいけない。その意味では、提訴をしておくというのも一つの方法かもしれない。何らかの形で国際法的に、日本はそれを認めたのではないんだ、まだまだ先があるんだという形にしておいて、アグリー・ツー・ディスアグリーでいくのが本来一番いい方法かなと私は思っているんですが、どうも今の日韓関係を見ていると、そこまでいかないような気もいたします。

小此木政夫慶應義塾大学名誉教授

○公述人(小此木政夫君) もうガチンコのけんかになる可能性がゼロでないというふうに宮家さんがおっしゃられましたが、私に言わせれば、まあ九〇%以上、ほぼ間違いなくそうなるということではないかと思います、残念ながら。  先ほど、最初の陳述のところで、要するに韓国の政治というのはどういう政治なのかというようなことをちらっとお話しいたしましたが、運動圏の政治というのは、自分たちが正義であると信じたこと、信じたことですよ、をとことん追求する、ほかのことは一切関係ないという原理主義的な運動ですから、ですから、慰安婦問題、慰安婦像よりもはるかに強烈な反応が返ってくると思います。  もちろん、日韓関係よりも竹島の方が重要だというふうに判断すれば、それでもしようがないということになるわけですが、そういうことにはしたくないというのが実は私や韓国の友人の考えでありますので、なかなかそうならずに来ているわけです。  もう一つ申し上げるとすれば、ただし、未来永劫というようなことは私はないと思っているんです、あるいはそういうことは考えたくないと思っているんですね。  それはどういうことかというと、竹島問題が日韓関係を破壊している面もあるんですが、しかし、日韓関係そのものが変わっていけば竹島の問題が変わっていくという面もなくはないというふうに思っております。つまり、竹島という島は日本が自国の領土としてもちろん強く主張しているわけですが、島自体に何らかの価値があるというものではありませんから、ですから、日韓関係が良くなって国境が開かれて、ノービザで今往来していますが、パスポートも必要ないような時代、つまりどこまでが日本でどこまで韓国かということが分からないような、つまりそれは国境の意味ではなくて経済活動その他において、韓国人の若者が日本で働いたり日本の若者が韓国で働いたりというような、ある種のヨーロッパのコモンマーケットのような状態ができたときに竹島の価値というのはますます低くなっていくだろう。  やや夢のように思われるかもしれませんが、どこかの時点で守備隊を置いておく必要がなくなればいいわけでして、守備隊に撤退してもらうと。それで、それ以上は余り問わないというような状態がまあ何十年後かにできてほしいというふうに思っております。

松沢成文無所属クラブ

○松沢成文君 貴重な御意見ありがとうございました。時間ですので、終わります。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時八分休憩      ─────・─────    午後一時開会

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  平成二十九年度総予算三案につきまして、休憩前に引き続き、公述人の方々から御意見を伺います。  この際、公述人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十九年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構です。  それでは、経済・財政・社会保障について、公述人常葉大学教授・副学長・保育学部長稲葉光彦君、慶應義塾大学経済学部教授井手英策君及び横浜国立大学名誉教授萩原伸次郎君から順次御意見を伺います。  まず、稲葉公述人にお願いをいたします。稲葉公述人。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本日は、貴重な機会を頂戴し、誠にありがとうございます。  国が近々の課題として取り組んでいる少子化対策、中でも保育園の待機児童解消に向けた取組について、保育士の育成に取り組む現場からお話をさせていただきたいと思います。  保育の課題を考える上で、まず、私が教鞭を執る常葉大学における状況を説明させてもらいます。  平成二十八年度卒業生、今月卒業を迎える本大学保育学部保育学科の卒業生の中で、就職希望者の八十八名のうち十三名が保育以外の仕事を選んでいます。この数字から、七十五名は保育の仕事を選んだのですから大きな問題ではないと言えるかもしれません。ただ、詳しいデータはありませんが、保育の道を選んでも離職する人も相当数がいるのが実態でございます。大きな希望を持って保育を志し、四年間掛けて学んだ学生が、なぜ保育以外の仕事をしたり途中で辞めてしまうのでしょうか。私が学生から聞いた話を要約しますと、やはり給料が他職種に比べると安いのではないか、キャリアの仕組みが不十分であるという二つの理由に集約されると思います。  一点目の、給料が他職種に比べると安いのではないかということでございます。  厚労省の賃金構造基本統計調査二〇一五年によりますと、全国の保育士の平均賃金は月二十一万九千円で、全職種の月三十三万三千円にかなり及ばないのが実態です。また、保育の仕事は忙しいとはよく言われますが、実際に、各児童の連絡帳や日誌を書いたり、また育児の悩みや家族関係、仕事など様々な悩みを抱える保護者への対応と、大変忙しい仕事です。長時間労働に加え、それでも仕事が終わらず、明日の仕事の段取りをするため家に持ち帰り仕事をする人もいます。そうした仕事の内容や負担に対し給料が安いという声は確かに多いのです。さらに、給料が低いということが即社会的な評価が低いと取られてしまうのです。これでは保育の仕事に誇りが持てなくなります。  もちろん、保育の仕事は大事な教育の一環でありますので、お金が全てではない、働きがいがあると考える人もいます。ただ、常葉大学の保育学科の卒業生を例に取ると、八十八名のうち男性が十四名いますが、将来結婚しよう、子供が欲しいと考えると、生活が立ち行かなくなるという声は多く聞きます。  二点目が、キャリアアップの仕組みが不十分ということでございます。私は、特にこの点の改善が非常に重要だと考えております。  現在、保育の現場で働く人は、以前と比べると保護者との関わる時間が格段に長くなっております。そのため、保護者と接することにより、私は保護者の保育に対する大きな期待に応えられそうもない、あるいは応える自信がないといって保育の道を諦めるケースも多く聞きます。また、私たちが大学の教育現場で教える内容と実際の保育現場ではある種のギャップがあります。そうした現場の変化に対応するには、保育園等でのキャリアアップ教育を充実させなければならないと痛感しております。自信がなかった人もしっかりとしたキャリアアップ教育を受ければ自信が付きますし、その結果、仕事に誇りを持つことができるようになると思います。  さて、こうした、給料が他職種に比べると安いのではないか、キャリアアップの仕組みが不十分であるという声を踏まえ、二〇一七年度予算案には様々な改善策が盛り込まれたことを評価したいと思います。  一点目の、給料が他職種に比べると安いということに対し、保育士の処遇改善として、二〇一七年度予算案には、保育の給与を約二%、月額約六千円を引き上げることが盛り込まれました。さらに、二〇一七年度予算案では、中堅、若手の保育士向けの役職を新設、一定の研修を修了した経験年数おおむね七年以上の職員に月額四万円、そして一定の研修を修了した経験年数おおむね三年以上の職員に月額五千円の賃金を上乗せするとしています。この点は高く評価したいと考えております。  二点目の、キャリアアップの仕組みが不十分ということに対してキャリアアップ研修を創設したことは重要でございます。都道府県等が実施する研修のメニューには、乳児教育、幼児教育、障害児教育、食育・アレルギー、保健衛生・安全対策、保護者支援・子育て支援等が示されていますが、例えばアレルギーを持つ児童は年々増加しております。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎などアレルギーについて正しい知識や対応について研修を受け、しっかり対応できるように、児童の安全に直結しますし、保育士の自信にもつながります。  以上、私の教育現場から見てきた保育の課題と予算案について見解を述べさせていただきました。  続いて、保育所に入れない待機児童について一言述べさせていただきたいと思います。  待機児童は社会的に大きな問題となっております。そのため、厚生労働省は、二〇一三年に待機児童解消加速化プランを取りまとめ、さらに待機児童解消加速化プランの取組を強力に進め、保育所の受入れ児童数の拡大を図るとともに、保育の受皿拡大の中で保育園の入園が円滑に進むよう、例えば入園予約制の導入、地域連携コーディネーターの配置の支援を図るとしています。そして、保育を提供するための延長保育、夜間保育、病児・病後児保育などを支援し、整備し、待機児童の解消に取り組んできていると承知しております。  現在国会で審議中の二〇一七年度予算案には、以上のような保育対策関連費として、昨年度と比べて二千七十二億円増となる一兆一千四百九十五億円を計上しております。先ほども触れましたが、待機児童解消加速化プランに掲げた二〇一七年度末までに五十万人分の保育の受皿を確保するという目標の達成を目指すものと評価したいと思います。今後、約五万人分の受皿の確保を目指す企業主導型保育所とともに、この五十万人分の保育の受皿に着実に推進することが重要であると考えます。  以上のような保育士の処遇改善や保育の受皿拡大といった施策とともに、今後更に保育の量的な拡充や多様なサービスの充実を図ることが求められております。保育所は様々な保育サービスを提供することが求められ、保育所に求められる社会的役割はますます大きくなってきております。  保育所への入所児童数は年々増加し、特に都市部においては顕著であります。各自治体は、待機児童の減らすことの対策は早急に解消していかなければならないため、これまでも様々な施策を実施してまいりました。待機児童の解消のために保育所の最低基準を見直され、待機児童の多い地域においては居室の面積基準が国の基準を下回る基準を条例で制定することができるようになりました。保育所の定員の規制緩和により、都市部は定員の弾力化を実施してきております。  昨年、待機児童になってしまった人のブログが大きな反響を呼びました。こうした人には寄り添う対策が必要であります。そのためにも、小規模保育の増設やベビーシッターなど、居宅訪問型サービスを柔軟な仕組みにすることなどが重要になると考えております。しかしながら、このような保育施設は保育の質の低下を招くとの懸念をする意見もあります。そうした懸念は理解できます。その懸念を払拭するために、例えば施設の情報を開示したり、第三者の評価を義務付けるなどを提案したいと思います。これができれば質はかなり担保できると考えます。  待機児童解消のための施策は当然重要であることは言うまでもありませんが、待機児童解消がゴールではないと申し上げたい。保育の質の担保、質の充実が保育、子育て支援にとって必要条件であり、子供の最善の利益に基づいて保育を実施することが極めて重要であることであります。適切な知識と技術を持った保育士とともに、適切な施設が整った環境の下での子供の最善の利益を保障していかなくてはなりません。  さきに述べました待機児童解消加速化プランの中で、保育士の就業継続支援や処遇改善について触れられていますが、保育士不足も大きな問題であります。保育士の離職率が高いことが問題になっています。今回の予算案で、保育士、幼稚園教諭に関するキャリアアップ、処遇改善等が盛り込まれましたことは、処遇改善、離職防止とともに質の向上につながるものと改めて期待をしております。  そして、保育の現場では、非正規職員の増加に加え、変則労働勤務体系などの労働環境も厳しい一面があることを忘れてはならないと思います。子供の最善の利益を保障するためには、質の高い人材を確保するため、非正規の保育士の給与等の待遇改善も急務であります。  言うまでもなく、保育所、幼稚園は子供の人格形成の基礎をつくる重要な時期に当たります。この時期は教育の原点であり、子育ては未来の日本を支える人材を育てるもので、子供は社会の宝であります。早急に待機児童解消を達成するとともに、今後、誰もが希望する保育を受けられ、子供の健やかな育成に社会全体で取り組み、全ての子供の将来を保障する体制を構築していくことが必要であると申し上げ、私の意見陳情を終わります。  御清聴ありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  次に、井手公述人にお願いいたします。井手公述人。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 慶應大学の井手でございます。本日は貴重な機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。  今日の私からの意見陳述でございますが、平成二十九年度予算の前提にある考え方について私なりの考えをお示しさせていただこうと思っております。お手元に資料があるかと思いますので、めくりながら御覧いただきたいと思います。  まずは三ページ目を御覧ください。ここからしばらく、私たちの日本社会がどうして今のように閉塞感を感じるのかということについての御説明を申し上げようと思います。  青い線を御覧ください。これは、端的に申し上げますと、社会保障、社会支出の中で高齢者の方に向かっている部分を指しております。一方で、赤い方を御覧ください。これは現役世代に向かっている給付の割合を示しております。一目でお分かりいただけますように、日本は先進国の中でも極めて現役世代に対する社会保障、社会支出の給付割合が低い国であるということが分かるかと思います。したがいまして、若い現役世代にとっては、自らが就労し、自らが貯金をする、そうすることによって、子供を塾に行かせる、学校に行かせる、あるいは老後の備え、家を買う、病気になったときの備え、全ての備えを自己責任において行う社会をつくっているということが御理解いただけるのではないかと思います。  おめくりください。私たちの社会は、所得を増やし、そして同時に、貯蓄をすることによって未来の安心を手にする、そういう社会をつくったわけでありますが、この二十年間の間で世帯の収入が二割近く低下をしております。かつ、この図を御覧いただきますと一目で分かりますように、年収四百万円以下の層が明確に増えております。現在、世帯収入が三百万円以下の世帯が全体の三四%を占めているという状況でございます。所得が増えなければ安心して生きていけない社会の中で、劇的に貧しい人たちが増えているということを御覧いただけるのではないかと思います。  おめくりください。五ページ目を御覧いただきますと、一九九七年から八年にかけて、日本経済の歴史的な転換が起きていることが分かります。九八年以前の状況では、人々が高い貯蓄率の中で将来の安心を手にしていたわけであります。そして、その貯蓄がマクロで見ますと企業への貸付けに向かっていたことが分かる図となっております。それに対しまして、九八年以降、大きく経済の構造が変わってまいります。一つには、家計の貯蓄が劇的に下がっていく、これは国民経済計算レベルで見ますとほぼマイナスの状況になっているという状況であります。他方で、貯蓄を増やしているのが企業でございます。この企業の貯蓄がマクロで政府への貸付けに向かっているという状況に変わったというのがこの九八年前後の出来事であります。言わば、貯蓄をしなければ安心できない社会をつくっている一方で、人々は貯蓄ができないような状況に追い込まれているということを示すものであります。  おめくりください。今、九七年から八年にかけて大きな変化があったことを申し上げましたけれども、まさに同じ年に社会的にも大きな変化が起きております。それは何か。自殺率、これは実際に自殺者の数もそうなんですけれども、九七年から八年にかけて劇的に増えているということです。とりわけ四十代、五十代の男性労働者の自殺率が上がっていることが分かると思います。  今日冒頭申し上げましたように、貯金をしなければ人間らしく生きていけない社会を私たちはつくったと申し上げましたけれども、にもかかわらず、貯蓄が難しくなる中で、働く男性は生きることではなく死ぬことを選んでいる。そういう社会、そういう財政を私たちはつくってしまっているというのがまず皆さんに申し上げたい事実の一つ目であります。  おめくりをください。今日申し上げているような自己責任の社会が、私は今の日本の人々の生きづらさの原因ではないかというふうに思っております。  私が国会での議論を拝聴します限り、一つには、経済を更に何とか成長させて、人々がまた貯金をし、将来の安心を勝ち取れるような状況をつくっていこうという、そういう議論があるように感じております。しかしながら、現実には、私の考える限り、日本経済は更なる成長を遂げていく力をかなり失っているのではないかと思います。そのような状況の中で、成長を前提にし、所得を増やし、貯蓄を増やす、そういうモデル自身が実は事実上破綻しているというのが今の私たちの社会ではないのかと考えるわけです。  したがいまして、ここでまた新しい方向性をお話ししたいと思うわけでございます。八ページを御覧ください。今日、皆さんに御提案申し上げたい、私がお話をしたいのは、経済を成長させ、収入を増やし、そして個人の貯蓄を増やしていくのではなく、むしろ経費を軽くする、収入を増やすのではなくて経費を軽くする、そして、人々が感じている将来不安、これをならしていくという戦略について皆さんにお話をしようと思います。  今、Aさん、Bさんという二人の人がここに書かれておりますけれども、当初の所得が二百万円と二千万円というふうにいたしております。これは幾らでも構いません。ここに二〇%の課税を行いまして、課税後の所得が百六十万円と一千六百万円になったというふうに考えております。この課税の割合も、いかような割合でも構いません。  現時点で格差は十倍ございます。しかしながら、ここで発想を転換し、AさんやBさんの所得とは無関係に全ての人々に対して均一な給付を行う、とりわけお金ではなくサービスの給付を行うということをやってみます。そうしますと、現時点では四百四十万円の税収がございますが、このうちの四十万円を借金の返済に回し、例えば四百万円を二百万円のサービス、二百万円のサービスというふうに分配したとします。そうしますと、最終的な格差は五倍になっているということが見て取れるのではないかと思います。  ここで皆さんに申し上げたいことはたった一点。貧しい人に御負担をお願いし、かつ豊かな人に給付をするとしてもなお、あらゆる人々が痛みを分かち合い、あらゆる人々が喜びを分かち合っていけば、最終的には格差を小さくできるという可能性についてお示しをしているわけであります。したがいまして、中間層、富裕層も含めてあらゆる人々を受益者にし、そうすることで、自分がけがをしても病気になっても失業しても、誰もが安心して生きていくような社会をつくっていけるのではないのかということ、これが今日申し上げたい二点目のポイントとなります。  おめくりください。私は、これを不安平準化社会というふうに呼んでおります。私たちが不安なのはどうしてでしょうか。例えば子供が幼稚園、保育園に行く、例えば子供が大学に行く、例えば家を買う、例えば年を取って介護が必要になる。実は、ある人生のポイントポイントで極めて大きな支出が生じてしまうこと、これが私たちの不安の根源ではないかと私は考えております。  したがいまして、そのポイントポイントで必要になるお金を国民みんなが分かち合うような仕組みは考えられないのか、反対に言えば、自分が必要ない、その不安から解き放たれているときには同じ国民、他者のために負担をするような、そういう財政の仕組みというのは考えられないのかということを考えております。  ここで、X軸、横軸を御覧ください。不安を平準化するために現物給付、つまり医療や介護、子育てなどのサービスを少しずつ多くの人々に、所得制限を外して少しずつ多くの人々に提供していきます。そうするとどうなるか。右上がりの関係が出てまいります。所得格差の縮小効果であります。これは単純に申し上げますと、年収一億円の人に百万円分のサービスを出しても一%の効果しかありませんが、年収百万円の人にもし百万円分のサービスを出せば一〇〇%の効果があるということを意味しております。全員にサービスを提供してもなお格差は小さくできる、そういうことを示したグラフでございます。  おめくりください。あらゆる人々の生活を支える、そうすることができていけば、今申し上げましたように格差が小さくなります。では、格差が小さくなるとどうなるか、ジニ係数が小さくなるとどうなるか、このグラフ、この図を御覧いただきますと分かりますように、経済の成長率が高まってまいります。したがいまして、あらゆる人々を受益者にするという戦略は、結果的に格差を小さくするのと同時に、結果的に経済の成長率を高めていく可能性を秘めているということを示しております。  もう一枚おめくりください。ここで示しておりますのは、恐らく今私の話を聞いてくださっている皆さんが一番懸念される点ではないかと思います。全員に配るということは非常に大きな資金、お金が掛かってしまうのではないのかというような疑問であります。一部の人々を受益者にすると左側になります。一方で、右側は全ての人々を受益者にした場合でございます。明確な右上がりの関係が出てまいります。これは一体何かといいますと、税収の動きであります。  要するにこういうことです。一部の人々を受益者にしてしまえば、その結果、中間層や富裕層が税に対する反発を強めていく、その結果、取れるはずの税が取れずに分配することができなくなっていく。それに対して、あらゆる人々を受益者にすることによって中間層や富裕層の税への反発が弱まる、その結果として税収が上がってくる。この一部を人々の暮らしに、そしてこの一部を財政再建のために使っていけば、人々の租税抵抗を緩和することによってむしろ格差を小さくし、かつ経済を成長させ、同時に財政を再建していくための財源も生まれてくる可能性があるということでございます。  おめくりください。今日データを使って皆さんにお示ししたことを私なり整理してお伝えしようと思います。今日皆さんに申し上げたかったことは、誰かの利益ではなくて私たちの利益という領域をもっともっと増やしていきませんかということであります。  私の見る限り、この観点からしますと、二〇一九年の十月は日本の財政の中で歴史的な分岐点になるのではないのかと思います。現在の議論の対立軸を見ますと、一方では二〇一九年十月の消費増税を先送りすべき、あるいはもうやめてしまえという議論があろうかと思います。それに対して、三党合意のスキームで、今のフレームの中で消費増税を行うというのがその対抗軸ではないかと思います。  しかしながら、現在の増税のフレームワークでは、中間層、富裕層の受益がほとんどございません。全体のうちの八割が借金の減少に向けられ、残りの二割がほぼ貧困対策に向かっている状況の中で、中間層や富裕層はこの増税に対して極めて強い抵抗をするのではないのかと思います。増税ができなければそれは財政健全化の先送りであり、他方、増税をすればしたで中間層、富裕層の強い租税抵抗を生み出し、政府への不信感は最高潮に達するのではないのかと思います。  したがいまして、ここで第三の道、もう一つの提案をしたいと思うわけであります。それは何か。二%組替え戦略であります。  現状の二%であれば、私の認識する限り、半分が財政再建、半分が低所得層対策、貧困対策に向かうのではないかと思います。しかしながら、この中のそれなりの割合を中間層の生活のために、私の言葉で申し上げれば、不安の平準化のために使う、そうすることで今後の増税に対する人々の抵抗感を和らげていくという戦略があり得るのではないのかと思います。  私が申し上げたいのは、個人で貯金をしてきた社会、成長が止まれば人々が不安になる社会を終わらせる、そのためにどうするのか。あらゆる人々が痛みを分かち合い、社会に対して貯金を行う、そして、そのことが将来の不安の平準化につながる、成長にただただ依存せずとも生きていける社会をつくっていくことができる、こういうことであります。そして同時に、あらゆる政党が目標にしてきた格差是正、経済成長、財政再建、この全てが目的から結果に変わるということでございます。  誰かの利益を私たちの利益につくり変えていくことができれば、もっと大変な人がいるんだからあなたも我慢しなさいという社会ではなく、一人一人が家族のように支え合い、人間らしい暮らしが全ての人に行き渡るような社会に変わると思います。成長を前提にし、自己責任を前提にするような社会観、人間観を今こそつくり変えていくべきではないか、そういう決意が問われているように感じております。  御清聴いただき、ありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  次に、萩原公述人にお願いいたします。萩原公述人。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 横浜国立大学の萩原でございます。今日は、この公聴会にお招きくださいまして、誠にありがとうございます。  予算ということでございますので、私は、全般的な問題について、あるいは根本的な予算編成というものの基本的精神、そこからどういう問題が発生するのかという点についてお話しさせていただきたいと思います。  平成二十九年の予算編成の基本方針に、安倍内閣は、長く続いたデフレからの脱却を目指し、経済の再生を最優先課題と位置付け、アベノミクス三本の矢を推進してきたと。平成二十七年の十月からはアベノミクスの第二ステージに移りまして、一億総活躍社会の実現を目指し、三本の矢を強化して新三本の矢、戦後最大の名目GDP六百兆円、希望出生率一・八、介護離職ゼロを放ち、少子高齢化という構造問題に正面から立ち向かい、成長と分配の好循環の実現に向けて取り組んでいると書かれてあります。予算編成の基本方針にアベノミクスがありまして、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算だと、誰もが活躍できる一億総活躍社会を実現して、成長と分配の好循環の強化というものをうたうということでございます。  ところが、現実の我が国の経済、ちょっとかいま見てみますと、例えば二〇一六年の名目GDP成長率は一・五%、消費者物価上昇率が〇%、公債依存度が三五・六%でございます。アベノミクスが開始されました二〇一三年の名目のGDPの成長率が二・六%、消費者物価上昇率が〇・九%、公債依存率は四六・三%でありまして、依然として経済再生と財政再建は道半ばであると安倍首相も認めているところだと思います。  なぜこうした状況が続くのかということを私なりに考えてみますと、このアベノミクスという政策が富裕層を重視した経済政策になっておりまして、中間層を重視する経済政策になっていないというところに大きな問題があるのではないかということを申し上げたいわけであります。  御承知のとおり、アベノミクスが登場したのは二〇一二年の十二月、第二次安倍内閣が成立したときでありまして、内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略と、この三本の矢ということが大変有名になりましたが、私が考えますには、この三本の矢の中で、金融政策というものを軸にして経済政策を展開している、つまり異次元の金融緩和政策ということで、二年間で消費者物価上昇率年率二%を達成するということを目標に掲げたということであります。しかし、現在四年たって、黒田日銀総裁もお認めになっていますように、この目標が実現されてはおりません。  異次元の金融緩和の政策というものが円安と株式価格の急騰を引き起こしまして、多国籍化を果たしている輸出大企業が収益を急増させ、この株価急騰とともに日本の富裕層に莫大な富の蓄積を実現したということが事実でございます。つまり、金融政策を実行するということによって、先行させるということによって、今申し上げましたような状況をつくり上げたわけでありまして、そういう点でいいますと、このアベノミクスの政策というものが、先ほど私が申し上げましたような富裕層を重視する政策としてはまさに見事に成功しているというふうに言えると思います。  しかし、問題は、実体経済がどうなのか。消費者物価の上昇率二%というものが達成されなく今日に至っておるわけでありまして、これは要するに、日銀の金融緩和政策には限度があるんだということを見なければならないわけであります。  しかし、そう申しますと、アベノミクスの第二の矢として機動的な財政政策があったではないかという議論が持ち上がってまいります。確かにそのとおりでありますが、この財政政策というのは補正予算でGDPの二・五%にも当たる十三・一兆円の財政支出でありますが、これが要するに緊急の財政出動ということでありまして、かつてケインズ政策が経済政策の中軸になったような、財政政策を基軸とする経済政策に戻ったというわけではございません。  つまり、アベノミクスの金融、財政の積極政策によって、株価の急騰、円安、大企業の収益によって確かにそういう意味では成功したかに思われましたが、実体経済という面に関して言いますと、二〇一四年の四月、御承知のとおり消費税が八%に増税されまして、その増税効果がまさにボディーブローのように我が国日本の経済に効いてくるという状況が起こったわけであります。しかし、そのときに安倍政権は、アベノミクスは第二ステージに入ったと。  これは二〇一五年の六月の日本再興戦略改訂版二〇一五に書いてあることでございまして、第二ステージというのはどういう意味かと申しますと、短期の政策は終わったんだと、つまり、労働需給はタイト化して、GDPギャップは急速に縮小するというのが前提になりまして、基本的にデフレから脱却しているのだと。したがって、第二ステージは供給を重視する、そういう政策に変えるのだというのがこの第二ステージの意味でございます。  現実に、この第二ステージというものが、この十月に新三本の矢ということで、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障という、これが新三本の矢ということで、これを、名目GDP六百兆円というものを生産性革命によって生み出すという、その第二ステージというのは、まず生産ありきという状況になるわけです。それは、言うまでもなく需給不足は基本的に解消しているという認識でありますので、当然生産をいかに活発にするかということが目的にされるわけであります。  そして、生産革命を行うには労働分野の改革が必要でありまして、そして消費が拡大し、その結果として賃金が上がっていくという考え方を取っているわけです。しかし、考えてみますと、それは逆でございまして、最低賃金を引き上げて、あるいは成果配分としての賃金の引上げがあって、消費が活発になり、産業分野の生産とともに生産性が向上していくというのが基本線でありまして、そうした考え方になっていないというところがやはり大きな問題点であろうと思います。  私たちは、米国オバマ政権の経済政策に学ばなければならないというふうに考えます。オバマ政権は何を大きな課題としたのかといいますと、最低賃金を大幅に上げることであると。現在、米国の連邦最賃は七・二五ドルでございますけれども、それを十・一〇ドルに上げるべきだということで議会に、ハーキン・ミラー法案というのを是非通せと、こういうことでオバマ大統領が議会に、要請しましたが、共和党が主流の議会はそれを拒否するということになって、オバマ大統領は、それでは連邦の契約そして仕事にはこの十・一〇ドルを適用するというまさに大統領令に署名するということで実施してくるということになります。  この意味は、連邦最賃を十・一〇ドルに上げれば、最低賃金で働く約二百万の賃金を引き上げて、そして一千万人以上の貧困者を貧困から救うという、そういうことができるのだと。貧困から救うというのは賃金を上げるということによって実現でき、それは企業に任せるのではなくて、公的な形でそのルールを定め、それを実施していけば貧困者がそこでなくなっていくと。  これは、我が国のワーキングプア対策にとっても極めて重要な教訓であると私は考えます。現在、年収二百万以下のワーキングプアと言われている人が一千百万人も存在しまして、貯蓄なしの世帯も増加の傾向にあるという中で、この米国のオバマ大統領の最低賃金を大幅に上げるというこのまさに大統領令は大変重要な意味を持っているのではないだろうかと。全国一律千円あるいは千五百円という、こういう課題を財政というものとリンクさせる。つまり、積極的に零細中小企業に援助するという形で最低賃金を上げていくという、そのことで私は日本の経済の底上げというものが可能になると思っております。  それからもう一つ、オバマ大統領が述べたのは、富裕層の税負担を重くするバフェット・ルールを提唱いたしました。バフェットという方は大変な富豪の方でありまして、その方が提唱した少なくとも年収百万ドル以上の人は実効税率三〇%以上を負担すべきであると。御自分は一四%だったらしくて、秘書の方が実効税率が高いというので驚きまして、これはおかしいと、どう見ても。そういうものを提唱いたしまして、やはりオバマ大統領が議会にこれを要請したわけでありますが、これもやはり議会共和党の反対に遭いまして実現することができなかった。  これは、やはり私は大変重要な教訓を日本にも与えているのではないかと。二〇一六年の三月に安倍首相の招きで日本を訪れたジョセフ・スティグリッツ教授が、消費税の増税を延期すべきことであるとか、あるいは法人税の減税に対して否定的な意見を述べたわけであります。現在、米国の民主党の中で大変大きな力を持ち始めましたバーニー・サンダースという方が、最低賃金を時給十五ドルにすべきであると。これは民主党のヒラリー・クリントンが戦いましたけれども、ヒラリーさんの選挙公約でもございました。そして、応能負担の税制改革をすべきであるし、さらに単一基金の国民皆保険制度をつくるべきであるし、積極的なインフラ投資も実施することによって米国経済の変革というものを唱えているわけであります。  現在、残念ながらトランプ政権になりまして状況は大きく変わりましたが、アメリカには二年ごとに選挙がありますし、四年ごとに大統領選挙がありますので、その中で大きくこの変化を私は期待しているというものでございます。  したがいまして、日本の予算編成も、今までアベノミクスで展開されてきました富裕層を重視する経済政策というものから中間層を重視するそうした経済政策に大きく転換する、そういう時期に来ているのではないかというふうに私は考えるわけであります。  以上、御清聴ありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 自由民主党の中西健治です。  公述人の皆さん、今日は本当にどうもありがとうございます。三者三様、皆さんお得意の分野が違うようでございまして、非常に参考になりました。本当にどうもありがとうございます。  それでは、まず、稲葉公述人にお話をお伺いしていきたいと思います。  待機児童の解消に向けて今の予算の中身などについて御評価をいただきましたけれども、現場での声として、待機児童を解消していくためには、やはり保育士さん不足という、保育士不足というのを解消していかなければいけないという声、非常に強いんだろうというふうに思います。保育所の認可等を条件を緩和するということのほかに、やはり保育士の数ということだと思います。  稲葉公述人のお話の中で、離職率を下げるにはどうすればいいかと、こういうお話いただきましたけれども、よく聞くのが、潜在保育士の方々、資格はあるんだけれども今保育士の仕事から離れている方々の数が非常に多くて、そうした方々に戻ってきてもらうためにはどうすればいいのかということをよく議論として聞きます。  この潜在保育士の方々というのは、私の理解ではその多くが実はママさんだと。実際に子育てをしている方々が多いので、なかなかフルタイムで働いたりすることは厳しいので保育士に戻れないと、こんなような現場の状況があるということでありますけれども、そうしたママさんにまた保育士として戻ってきてもらうためにはどうすればいいのか、ここをまず御意見を伺いたいと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 今、保育士の不足というふうなことでございます。  本当に保育士、資格を取られて、先ほど、せっかく取られた保育士、四年間、あるいは短大で二年間、大変な苦労をされて卒業されて、二つの資格を取られて卒業するということでございますけれども、先ほどお話ししましたように、私たちの大学の方ではかなりいろいろ工夫しておりますけれども、その他の大学においてもいろいろ本当にとどめるということを大変苦労されていると思います。  そしてまた、今、潜在保育士というふうなことで、五年以内に離職するというケースが非常に多いというようなことでございます。それは本当に、先ほどもお話ししましたように、賃金が安いということと、それからまた労働時間が長い、そしてまた責任が重たい、そしてまた事故に対する不安というようなことで、それがあるものですから離職しても戻ることはなかなか難しいということでございますので、そういう問題を解消すれば、厚生労働省の方では、そのアンケートで、六三・六%の人たちがまた戻るというようなアンケート調査がございます。  そういう面で、そういうような改善を早急にいろいろ改善していけばと思います。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 ありがとうございます。  その処遇の改善なんですけれども、申し上げたとおり、ママさんが多いということですので、やはりフルタイムで働きにくいということになると非正規になることが多くなってくるということだと思うんですが、先ほど稲葉公述人の話にも触れられておりましたけれども、全体として見ると保育士さんの給与というのは本当に低いというふうに思います、平均して見ると。ただ、そこを細かく見ると、公立の正規の方と私立の非正規の方で大きな差があるということなんじゃないかと思うんです。そうすると、潜在保育士の方に帰ってきてもらうためには、ここの私立の非正規の部分、もっともっと待遇のことについて考えていかなきゃいけないということではないかと思いますが、そこら辺についていかがでしょうか。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に今言われたとおりで、公立と私立の給与格差が、差が大変あるというようなことでございます。そういう面で、私立の保育園の賃金の是正をというようなことで対応を早急にしていかなければならないと思います。  本当に、保育士の資格を取りながら離職して、今潜在的にいるというようなことで、これをいかに帰ってもらえるかというようなことで、今年も四十六万人の保育士ということでございますけれども、七万四千人が保育士が不足しているというような状況でございますので、そこに潜在的な今まで離職している人たちを戻ってもらうというこの対策が大変大事なことだと思います。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 続きまして、井手公述人にお伺いしたいと思います。  不安の平準化によって経済成長、そして税収も上がるという大変魅力的なお話だったと思います。そして、示唆に富むお話であったというふうに思いますが。  九七年、九八年が大きな転換点であったと、私自身もそういうふうに思っています。九七年、九八年大きな転換をしたので、その後経済も悪かったし、そして社会生活も厳しくなったということですが、その原因をどこに考えるかということだと思うんです。  私は、九七年、九八年は金融危機もありました、そして、そこからデフレの悪いスパイラルに入っていったということだというふうに思っています。  ですので、この九九年、九八年、何があったかというと、そうしたデフレの始まりであったということが大きな問題で、こうした九七年、九八年から自殺者も増えました、三万人を超えました。直近かなり減少してきています。三万人を四年前に切って、今二万三千人ぐらいまで減ってきていると思いますけれども、これは今の経済状況と無縁じゃないんだろうというふうに思います。そして、雇用の増加というのとも大きな相関があるんじゃないかというふうに思っていますが、そこら辺、九七年、九八年の原因についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お願いします。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 九七年、八年に象徴的にデータが動くわけでありますけれども、私の認識でいいますと、その萌芽は既にその前の段階からあったというふうに見ております。  端的に申し上げますと、バランスシート不況のような、企業の方が借金をどんどんどんどん返済しようという圧力を強めていく、あるいは国際的な国際会計基準でありますとかBIS規制でありますとか、そういったプレッシャーの中で企業が借金の返済をどんどん進めていく、そういう状況の中で賃金を抑制しようとするような圧力というのは九〇年代に段階的に強まっていたように感じております。  そして、九五年に日経連から有名な報告書が出されまして、その中で、日本的な企業の在り方、経営の在り方を転換しようという提案がなされます。言わば、九七年、八年は、アジア通貨危機でありますとか消費増税でありますとか、あるいは大手金融機関の破綻でありますとか、そういったものが次々に連鎖的に事件として起きた時期でありまして、それがむしろ引き金になったというふうに見るのが正しいのではないかと思っております。  それともう一点、今お話のあった自殺率、自殺者数の話でありますけれども、確かに近年減ってはおりますが、ただ、国際的に見ると極めて高い水準にあるということは見落としてはいけないと思います。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 先生のお話の中で、以前もお伺いしたことがあるんですけれども、我が国というのは社会的信頼感がアジアの諸国の中でも最低だと、そして政治に対する信頼ということでいうと、やはり先進国の中でもかなり悪いところであるということをおっしゃられたかと思います。がゆえに、増税に対しても抵抗感が大きいんだということでありましたけれども、先生のお話の所得制限を付けないで現物給付を行っていく、あまねく現物給付を行うということを宣言をすれば、それをするぞとすれば、増税も必要なく、税収上がっていくというふうにお考えなのか、それとも、やはり現物給付をするということ、所得制限なしですね、ということを言えば増税に対する抵抗感がなくて財源が生まれやすいと、こういうことなのか、ここら辺のことも含めてお願いしたいと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 私の考えでいいますと、後者の部分であります。  したがいまして、受益を明確にする中で租税抵抗を緩和していく、そして、もちろん増税はしますけれども、その使途を明確にすることによって人々の政府への信頼感を改善していくと同時に、財政再建というのを全く無視するわけにはまいりませんので、これはその一部を財政再建にも使うべきではないかというふうに考えております。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 そうしましたら、今度の二〇一九年十月、二%の増税、このままじゃいけないと、こういうお話でありましたけれども、組替え戦略というふうにおっしゃっていましたが、そこは中間層に行くようにするんだということですが、それだけだと使途が明確でもないように思いますが、具体的にはどうするのがよいというふうに井手先生お考えでしょうか。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 基本的に、私が優先順位をもし付けろと言われるのであれば、一番は幼稚園や保育園の教育の質を改善することだというふうに思っております。これは、単に働いている人の賃金を上げようというだけではなく、教育の質を高めていく、これは結果的に社会に対して非常に大きなインパクトを持ちますし、経済成長にも中期的に間違いなく貢献していきます。しかしながら、子供のためにだけお金を出すと言った瞬間に、例えば子供のいないカップルであったり、あるいは高齢者であったり、つまり子育ての終わった人たちから強い反発が出てまいります。  したがいまして、優先順位でいうならば、育児、保育、子供の教育は重要だと思いますが、これとセットで例えば介護保険の自己負担を軽くするようなものをパッケージで出していくことが重要ではないかと考えます。そうしますと、高齢者の同意と同時に、子供のいないカップルにとってもメリットが出てくる、そういう組合せが今後重要になってくるのではないかと考えております。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 いただいた参考資料の中で、これ麻生政権のときに行った現金給付、これが行政的にも手間がないし、一律で配付したのであれは効果が大きかったと、こういうようなお話も、そういう記述があったかと思いますが、これは今もこういったものに使うというのもよいなというお考えでいらっしゃいますか。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 私が今日申し上げましたように、現物給付、つまりサービスを提供することが重要であると考えております。それは、今の御提案のような現金、お金を配るということとは明確に違うということを申し上げておきたいと思います。  その上で、定額給付金からもし学ぶことがあるとするならば、所得制限を付けなかったことによって極めて効率的に、つまり行政の現場の人たちの負担のない中でお金を給付することが効率的にできたと。したがいまして、所得制限を付けない形での現物給付が最も望ましいというのが私の考えであります。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 ありがとうございます。  現物給付が中心だろうというふうに思っていましたので、そこの記述がどうかなというふうに思った次第であります。  あと一つだけお伺いしたいと思います。  先ほどの二%の組替え戦術とも絡むところではあるんですけれども、今後使途を明確化して、そして所得制限などを付けないようにする、そうしたことであれば国民の理解を得られやすいということですから、そうしますと、例えば教育税ですとか医療税、介護税、そうした、本当に税と社会保障の一体改革を、更に目的を限定して増税をしていくというのが井手先生のお考えに近いということになりますでしょうか。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) これ、財政学の原則がございまして、ノン・アフェクタシオンの原則といいますが、特定の支出と特定の税目を結び付けてはならないという原則がございます。それは、何となれば、この国会、民主主義というのは何のためにお金を使うかを話し合う場なのであって、もし支出と収入をリンクさせてしまうと、この税を何のために使うかという民主主義の本質が骨抜きにされてしまうという懸念がございます。  したがいまして、先ほどパッケージというふうにも申し上げましたが、様々な支出を組み合わせるために一体お金が幾ら必要なのかを考え、そしてその上で増税を行っていくというような組合せが適切ではないかというふうに思っております。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 どうもありがとうございます。  私も特定目的の財源というのは余り好きではないということで考えておりました。  続きまして、萩原先生にお伺いしたいと思いますが、経済政策の目的というのは雇用を創出することだというふうに私自身は思っています。物価目標ですとか株価ですとか、こうしたものは手段にすぎないだろうと、こういうふうに考えております。ということからすると、私は、アベノミクスは大いなる成果を上げているということなんじゃないかと思うんです。  現時点で失業率はもう三・〇%、完全失業率に近い、有効求人倍率も全都道府県で一を超えているという状況をつくり出しているわけですから、これについてはやはり経済目的の大きな部分を達成しているということではないかと思いますが、私、萩原先生の経済政策の目的は何かということをまずお伺いしたいと思います。    〔委員長退席、理事二之湯智君着席〕

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) ただいまの御質問にお答えいたしますと、失業率が低い、大変結構なことでございます。しかし、その雇用の中身を見てみますと、先ほども申し上げましたとおり、大変所得の低い人たちが多くを占めております。大体、先ほど申し上げたとおり、一千百万人という人々が言わば貧困ライン以下といいますか、アメリカでいいますとワーキングプアといいます、ワーキングですから失業じゃないんですね、働いているんですけれども貧困であると。こういう状況の下で生活されているということになるわけです。  そうなりますと、当然、財政のそういう人たちに対する支出、生活保護であるとかその他、大変掛かるわけであります。そうした支出を防ぐためには、やはり賃金というものを上げるということによって解消する、これが先ほど申し上げました、オバマ政権のジェイソン・ファーマンという大統領経済諮問委員会の委員長でありますが、この人が、最低賃金はなぜ上げるのかと、これは要するに財政負担を少なくする意味もあるのだと。  ここが非常に重要なポイントでありまして、そうしたワーキングプアという貧しい人たちを賃金を上げることによって救えば、その人たちも幸せになりますし、財政の負担もそれでなくなってくるという、こういういい効果が出てくるということが大変重要であります。  経済政策の目的というのは、やはり日本の国民が全てが自由で豊かな生活を行う、これがやはり経済政策の目的でありまして、安倍首相もそれをお考えだと思いますけれども、自分の政策を振り返って、反省して、やはり違ったやり方もあるのだということを、私は米国の経済政策から学んでいただきたいということが趣旨でございました。  以上でございます。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 自由で豊かな生活、これはもちろん目指しているところでありますが、雇用が増えなければそれは当然達成できないだろうという意味で、私は、経済政策の目的は雇用の創出であると、こういうふうに考えているところであります。  最低賃金を上げるべきだ、これは確かに安倍政権も今やろうとしているところでありますけれども、むやみやたらに上げていいものでもないだろうというふうに思っています。それはどういうことかというと、むやみやたらに上げていくということになると、それだけ払うことができない中小企業は淘汰をされていくということにもなっていきます。  それから、労働生産性に見合わない最低賃金ということになるとかえって失業者を生むということになっていきますから、これはやはり経済の実態に合わせた形で、少し先を行くぐらいの最低賃金だろうというふうに思っておりますけれども、これが千円だ、千五百円だと、随分幅のあるお話だったと思いますが、これが急に千五百円ということでいいのかということについてお伺いしたいと思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 千円か千五百円かというのは、私もそれは確信はございません。  私が申し上げたいのは、やはり大幅に全国一律で最低賃金を上げるということでございます。一般の企業それから大企業は賃金を払う能力がたくさんあるわけでございますので、特にそうした最低賃金云々に関しては関心は少ないのだと思います。私は、中小零細の分野、その分野で要するに最低賃金をそのレベルに上げると。  先ほど生産性の話がありましたが、これもアメリカの話で恐縮でございますけれども、その七・二五ドルという現在の連邦最賃は、ほぼ大体一九五〇年代の実質的には意味を持っていると。これは余りにもひど過ぎる。つまり、オバマ政権の最賃引上げ戦略というのはそういうことなんですね。ですから、私は、現在の日本におきましても、その最低賃金というものが例えば千円ということを考えてみましても、これは最低でございますので、それは少なくとも全てクリアしましょうよという話になるわけであります。  そして、そうした形で経済の底上げをしませば消費も増えますから、当然のことながらそこで企業は設備投資をしていくという話になりまして、GDP水準も当然上がっていくということになります。現在の状況は余りにも賃金が低く抑えられている、消費が抑えられている……

二之湯智自由民主党・こころ

○理事(二之湯智君) 公述人、時間が参りましたので、まとめてください。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) はい。  ということでございます。

中西健治自由民主党・こころ

○中西健治君 どうもありがとうございました。

宮沢由佳民進党・新緑風会

○宮沢由佳君 民進党の宮沢由佳です。  今日は、公述人の先生方、本当に貴重なお話をありがとうございました。  稲葉先生には、保育士の課題、保育所の課題について細かくお話しいただきました。私も保育士でありますので、大変共感しておりました。つい先日も、小学校六年生の女の子と一緒に給食を食べたところ、将来の夢は何と私が尋ねましたら、私ね、保育士になりたかったんだけど、保育士の給料安いからやめたとばっさり切られてしまって、言い返す言葉がなかったです。  井手先生には、自己責任の社会から不安平準化社会へという大変希望のあるお話を伺いました。  萩原先生からは、富裕層重視の経済政策から中間層重視の経済政策へということで、三人の先生方のおっしゃったことがもしも実現したならば、この日本は大変希望のある、そしてとても夢のある未来を描けるような社会になるのではないかと、大変希望を持って聞かせていただきました。  まず、井手先生にお伺いしたいんですけれども、先生のお話の中で、一部の人々を受益者にすると反発がある。このお話は、私も、先ほど子ども手当のこともありました、どこかに手当を出そうとすると、その対極にいる方々から反発がある、そして対象になった人が大変つらい思いをする。  これは例えば生活保護というものは今いろんなところで問題になっております。  先日の小田原の保護なめんなというジャンパー、これを着てこの対策に当たっていた担当者を社会中が批判をしました。確かに行き過ぎたかもしれません。でも、私は、この生活保護の担当者というのはとても苦しい立場にあると思います。例えば、こちら側からは、何とか生活保護出してくれ、生きていけない、特に子供の貧困では子供が食べることができない。でも、片や、何であんなやつに出すんだよ、ほら、不正受給じゃないか、おまえたち、ちゃんとしっかりしろよと。つまり、この板挟みの苦しい状態の中で、そして、しかもカッターナイフで切り付けられるという事件からあのジャンパーを作ってみんなの士気を高めようとした。  いろいろな課題はありますけれども、こういった一部の人々を受益者とすると反発があるこの生活保護の課題について、先生の御見解をお願いいたします。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 生活保護の小田原の問題が今ございましたけれども、一方では、無駄をなくすべきだ、不正受給を徹底的に取り締まるべきだという納税者の論理があろうかと思います。他方では、そうではなくて、受給者の人権、権利をきちんと守らなければいけないという視点があろうかと思います。この中で、その双方がうまくかみ合っていないことが問題のように私は感じております。  といいますのは、ほとんどの受給者は全く不正受給とは縁のない真面目な受給者であるという事実がある。一方で納税者の論理からしますと、いやいや、分からない、不正受給をしている人はたくさんいるのではないのかという疑心暗鬼の気持ち。この二つは実は相対立するものであってはならないわけであります。すなわち、一方では、真面目な受給者が大部分なんだから、きちんと彼らの生活を保障しようという議論があるべきで、他方では、もちろんのこと、不正な受給、無駄遣いはきちんとこれを取り締まっていかなければいけないということがあるわけであって、そこは全く矛盾をしない。  しかし、問題の本質がどこにあるかと言われるならば、生活保護のように特定の人々を受益者にしてしまう仕組みは、多くの人々の、つまり負担者の疑心暗鬼を生んでしまい、過剰な攻撃を生んでしまうということにあるのではないのかと思います。  そうではなくて、あらゆる人々の、それは育児であれ、教育であれ、あるいは介護であれ、あるいは障害者福祉であれ、様々なサービスを基本的な人々の受益にしていけば生活保護の大部分というのはなくなっていくのではないかと思います。最後に残るのは本当に生きていくために必要な生活扶助の部分、そういった人々の暮らしを保障する中で、誰もの暮らしを保障する中で特定の人々をバッシングしなくていいような政治状況をつくっていく、そういう視点が重要であることを小田原の問題は私たちに教えてくれているような気がいたします。

宮沢由佳民進党・新緑風会

○宮沢由佳君 ありがとうございました。大変奥の深い問題だと思います。  私は特に子供の貧困について大変興味があって、そしてそれを何とかしていきたいという思いを持っているものですけれども、なかなか今、その貧困自体が見えにくくなっている、潜在化しているということが大きな問題ではないかと思います。その貧困が見えなくなったというのは、地域の関わりがなくなった、また、いろいろな家族の構成が変わってきた。そもそも家庭というものを、時々この国会でも取り上げられるんですけれども、昔のイメージを持っている方がまだたくさん社会にはいて、お父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんがいて、子供もたくさんいて、家庭を大事にする、家族を大事にするということを強調される方がいらっしゃるんですね。    〔理事二之湯智君退席、委員長着席〕  そういう中で、今大きく構造が変わっていて、例えば、昔であったら子供もたくさん産めた、そして寿命もそんなに長くはなくて、そして家の近くに働く場所があった。そういう中においては、近所との付き合いもできて、そしていろんな課題も交換できたと思うんですけれども、今は、例えば、両親がいて、そこに本当だったら一緒に同居したくても、例えば都会にしか仕事がない。そして、都会に行って、お父さんは単身赴任、また出張がちでちっとも帰ってこない。そういう、実際にはいるんだけれども、核家族で暮らしている又は母と子だけで暮らしているという方は大変多いんですね。こういった根本的な社会構造が今大きく変わったからこそやらなければいけない政策、また経済政策、そして保障の問題もあると思うんですね。  これについて、お三人の方からそれぞれの御意見を伺いたいと思います。この家庭という構造、社会の構造が大きく変化したことに対して、先生方はどのような政策又は対策が必要だと思っていらっしゃるでしょうか。稲葉先生からお願いいたします。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 今お話をお伺いいたしまして、本当にそういう面で家庭の問題の大きな、日本でそういう問題がやはり出ていると思います。家庭崩壊だとかいろんな問題が今出ておりますので、それをいかに対応していくか。そしてまた、地域コミュニティーというものが非常に希薄になっているというようなことで、そういう面でもやはり地域コミュニティーの構築ということでいろいろ対応していけばと、かようなことでございます。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 今御指摘の点でいいますと、例えば日本の場合は生活保護の受給権があるにもかかわらず、実際にそれを受給される方が二割を切っているというような現実があります。これは、例えばスウェーデンなんかでは八割以上の人がちゃんと受給されるわけですね。あるいは、障害者の発生率も日本は先進国の中で異常に低いんですね。これ、おかしいんです。それはなぜならば、自分が障害を持っていることを親も含めてみんなが隠してしまうという問題があるように思います。それは明らかにおかしい。堂々と、そういう人たちは、そのニーズがあるのであれば、そのニーズに対して要求をすべきであり、かつ受給すべきだと私は考えます。  あるいは、貧困の問題でいいますと、今日申し上げましたように、三百万以下の世帯収入の世帯が全体の三割を超えている。にもかかわらず、国民に聞きますと、九割の国民が自分は中間層だって答えるんですね。要するに、貧困が見えないという御指摘がありましたが、貧困であったとしても、もっと大変な人がいるんだから耐えなければいけない、自分は貧困ではないと自分に言い聞かせようとするような人がたくさんこの社会にはいるということですね。  そういう社会であることを踏まえるならば、つまりぐっと歯を食いしばって耐えるような人々がたくさんいるのであれば、恥ずかしい思いをしなくていいように、あるいは耐えなくていいように、それは障害であれ貧困であれ何であれ、様々なサービスを人々が、みんなが所得とは関係なしに受益者になれるような状況をつくっていくべきだと思います。そうすることによって、誰もが恥ずかしい思いをすることなく堂々とそのサービスを受けて使っていけばいい、僕はそういうふうに考えています。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 今の問題でありますが、先ほど中西議員がおっしゃいましたように、雇用ということですね。その雇用というのは、やはりきちんと生活ができる、そうした雇用を要するにつくり出していくと、これがやはり大きな解消方法になるだろうと思います。生活保護というのは確かに必要ではありますけれども、その必要性というのは、臨時にそういう状況になった、そして生活保護を受けて、そして仕事を見付けていく。しかし、今日の状況は、生活がきちんと賄えるような職というのがだんだん少なくなってきている。つまり、まともな職をどうやってつくり出すかと。これが我が国の大変重要な課題になっているのではないかと思います。  特に消費税増税以来、消費が落ち込むということで経済全体がレベルが落ちてきて、それがGDPにも反映されていますし、様々な面にそれが反映されているというふうに考えます。そう考えますと、やはりどうしても、どうしたらまともなきちんとした職をつくり出すことができるのかということをやはり政府としても本格的に考えていくという、そういうことが重要ではないだろうか。  それで、先ほどの話に戻りますが、賃金を上げるということによって消費が活発になり、そして企業がきちんとした設備投資をするということによって恐らくまともな職が多く出てくる。  現在の状況は、企業が利益があっても設備投資をしないで金融投資の方に向いてしまう。どうしてかというと、金融の方の収益率が高いということがどうしてもあるわけで、企業にしてみれば当たり前でありまして、実物的に設備投資をするよりは金融投資をした方がもうかるということならそっちに行ってしまう。そうなりますと、いつまでも実体経済というものの活性化というのが得ることができないと。そういう点をどう解決するかというところが私は重要な課題になっているんではというふうに思います。

宮沢由佳民進党・新緑風会

○宮沢由佳君 ありがとうございました。  家庭が今、昔と随分変わったことについてお伺いしたと思ったんですけれども、その後に聞こうと思った貧困対策に先にお答えしていただいたというような感じで、ありがとうございました。聞きたかったことですので、大変貴重な意見をいただきました。  そこで、先生方に、是非私に教えていただきたいんですね。先ほどと少し重なるかもしれないんですけれども、私がいろんなところで子育て支援の重要性、保育園の重要性、あとは地域コミュニティーの大切さということを幾たび言っても、社会の中には、昔は良かった、大家族じゃなきゃ駄目だ、今の親は駄目だというふうに決め付けて掛かる方が結構いらっしゃるんですね。特に、女性は家でなるべく子育てをしたり、夫の世話をするとか、つまり昔のタイプの方々がまだまだ大変多くて、その中で、やはり今いろいろ変わってきているということをどのように説明をしたら分かっていただけるのかと。  ちょっと今日の趣旨とずれているようには聞こえるかもしれないんですけれども、でも、ここを根本的に皆さんに、社会に理解していただけないと、例えば家族の形というのは随分変わっていて、夫婦控除、いろいろなことを言われていますけれども、その核になる家族、家庭というのが変化しているということを理解していただかなければ、先ほど井手先生にもお話をいただいたいろいろな保障問題にも関わってきますので、一人で住んでいる人が非常に増えている、そういう中で、やはり女性は結婚しなければいけない、子供を産まなければいけないというような偏見もまだまだ多いというところをどのようにしたら理解していただけるのかというところを、また稲葉先生にも、保育士を育てているという立場から、やはり今、昔と違うんだ、社会は変わっているんだということをどのようにしたら理解していただけるのかを是非教えていただきたいと思います。三人の先生からよろしくお願いします。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 今お話をお伺いいたしまして、本当に家族関係が大変変化してきているというようなことでございます。私たちもそういう面で、家族の問題について、当然大学の中でもいろいろカリキュラムに組まれておりますので、そこら辺でかなり教育をしていかなければいけないと。  それから、やはり今までずっとそういうような問題で、私の年齢だとそういうような教育をかなり受けてきているというようなことで、それに対して、やはりいかに変えていくかというようなことでございます。そういう面では、やはり教育というものが非常に大事なことであると思います。そこで、教育を徹底的に指導していくというようなことであると思います。  最近の学生たちは、大変そういう面では、もう既に日本の社会が変革しているというようなことを十分知っておりますので、そういう面で、さらに家族構成が本当に、今御指摘ありましたように、家族構成がかなり変わってきていると。それから、高齢者の単身世帯、独り暮らしだとか、いろんなことで家族の形が変わってきているというようなことでございますので、そういう面で、いかにそういうような家族構成、それらのものに対していろいろ、それぞれ対応していかなければいけないんではないかと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 一つは、基本的な認識の問題だと思うんですが、例えば地方の現場で見られるような乳幼児の医療費助成なんかを見ていますと、非常に物すごいスピードで今広がっていっているように思うんです。そうすると、一方では、確かに昔ながらの社会構造、家族関係の中で、いや、子供を育てるのは親の責任だろうという発想があるのは分かるんですが、他方で、子供の命に関わるものや子供にとって大切なものをみんなで何とかしていこうという動きも起きているということ、ここをまず見誤ってはいけないのではないかと思います。  二つ目に、例えば子供の、例えば、じゃ、幼稚園、保育園のサービスの質を高めたとしましょう、教育の質を高めたとしましょう。そうすれば、これは例えば将来の経済成長に結び付くじゃないか、あるいは、お母さんたちが働きに行くことによってもまた経済成長に結び付くじゃないか、あるいは、これはアメリカのデータではありますけれども、犯罪の発生率がその地域で下がるというデータも例えばございます。そういった様々なメリットがある中で、これは誰かの特定の利益ではなく社会全体のメリットになっているということをきちんと説明していくということが重要ではないかと思います。  同時に、これ合わせ技一本みたいな話になりますが、先ほど、この前の質問にもお答えをしたように、例えば高齢者にとってのニーズというのもあるはずです。じゃ、三世代同居が難しくなってきた中で、今までのように嫁が私たちの介護をやるんだという前提が成立しているかどうかということを問いかけていただくということも大事だと思います。  したがって、一方ではお年寄りにとっての介護のニーズがあり、他方では子育て、子供の教育というニーズがあり、その二つをパッケージにして、セットにして出していくことによって、全ての人たちが利害を共有するような関係になっていくというような仕掛けも重要になってくるのではないかと思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 大家族制が崩れて、特に女性の自立化というのが進んだと私は思っておりまして、これは大変結構なことであるわけであります。核家族化というものは、やはり一つの歴史の流れではないかというふうに思われます。  ただ、そういう中で、子育ての問題がある。そういうのが大変深刻な事態になっていくことを考えますと、やはり社会が大きく変わる、家族構成が大きく変わる、そういう状況でどのようにそれを対処したらいいかという、対処する側のですね、政府のみならず地方団体その他のですね、そうした人たちをお互いに協力して育てていくという仕組みをどうつくっていくのかということが非常に重要なポイントになってくるだろうと。そういう点でいえば、ある意味でいえば、現在の我が国はそうした過渡的な状況にある、模索している。それを何か一つ、いろいろな仕組みを考える中で合理的な解決というものにしていくという方法しかあり得ないのではないだろうかと。  私、専門じゃないものですから大変抽象的な話をしていますが、その程度のことで御勘弁いただけたらと思います。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 時間が終わっています。

宮沢由佳民進党・新緑風会

○宮沢由佳君 ありがとうございました。先生方のお話をしっかりと胸に、私も頑張っていきたいと思います。  本日はありがとうございました。

平木大作公明党

○平木大作君 公明党の平木大作でございます。  本日は、三人の公述人の先生方から本当に貴重な御意見、様々いただくことができました。ありがとうございます。  限られた時間でありますので、早速質問に移らさせていただきたいと思います。  まず初めに、稲葉公述人に何問かお伺いをしていきたいと思っております。  今日のお話の中でも、まさに保育士を目指される、志を持って今学ばれている方たちが実際進路の選択に迫られたときにこの保育の道を選ばなかったり、また、せっかく就職しても、保育士になってもその後離職されたりと、そういうお話もしていただきました。  じゃ、どうやって保育士、もっともっとこれから育てていくのかというところで、世間でもよくある議論というのは、まずは保育士のやっぱり賃金が低いんだ、処遇が低いんだから上げなきゃいけない。逆に言うと処遇を上げれば増えるのかみたいな話にともするとなりがちな気がしておりまして、ここは今先生御指摘いただいたように、そもそもほかの産業と比べても十一万円ぐらい低い、しっかりこの差を埋めていかなければいけないんだけれども、そこだけではなくて、ある意味、もう一つのところ、つまりそのキャリアアップの仕組みをしっかりつくっていかなければこれはやっぱりいけないんだと、そもそも保育士として働くことのこの誇りというものも含めてつくっていくにはやっぱりこのもう一つの柱が大事なんだと、そういうお話と受け止めさせていただきました。  そういう意味では、我々の中でも、今議論してくる中で、当然、しっかり賃金を上げる、処遇を上げるということと併せて、例えばその専門的な知識ですとか経験ですとか技能をしっかり身に付けていただいて、それを今度は例えば職位だとか役職としてきちっと認めて、さらには結果としてそれが処遇につながっていくという、この二つが互いに密接にリンクして初めてやっぱり機能するんだろうと思っております。  今回のこの予算の中にも、ある意味、この処遇の改善ということと併せて様々な制度の変更というものも入っておりまして、副主任の保育士、あるいは専門リーダーだとか職務別の分野リーダーとか、こういう形で幾つか職位を設けて、経験の年数ですとか様々なものに合わせてこの処遇も引き上げていくという、こういう形になったわけであります。  改めて、今日、先生のお話をお伺いしながら、これは一本の道でしかないなと。一つのステレオタイプなというんでしょうか、今まであった保育士の一つの道でしかなくて、先生も今日御指摘いただいたように、例えば小規模保育ですとか、病児とか障害児の保育ですとか、居宅型のサービスですとか、様々保育の在り方自体が変わってきている中で、実は保育士のキャリアといっても、今の行政として描いた、政府として描いた一本の道だけじゃ多分ないんじゃないかなとちょっと思った次第でありまして、ここについて、例えば今これから保育士を目指そうという学生の皆さんに、例えばこんなキャリアもあるよということをもしお話しになるとしたらどんなものがあるのか、イメージがあれば教えていただけたらと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に、先ほどお話ししましたように、待機児童解消というようなことで、そして、かなり保育士、それから保育所の不足というようなことでございます。そういう面で、かなり柔軟性を持って、待機児童の解消というようなことで、小規模型だとかあるいは企業主導型の保育所だとか、いろいろ考えていかなければいけないことであると思います。そういう面で、保育所のいろいろな規制というものもありますので、そこら辺を、先ほどお話ししましたように、かなり緩和していろいろ対応していくというようなことが言えるんではないかと思います。  横浜市の方式でありますと、待機児童解消というようなことで条例でいろいろ対応して、国の基準とはかなり緩やかに対応して、今、待機児童解消というようなことで積極的に対応しておりますけれども、そういう面で、柔軟性を持ってかなり対応していかなければいけないという点があると思います。  ただし、そこで質の担保というようなことが大きな問題になると思います。そういう面で、先ほどお話ししましたように、そういうような小規模型とか、それから企業が参入してくるということに対して、やはり定期的に評価して開示していただいて、そして、それに対して、その開示が正しいかどうかということを第三者でチェックをするというようなことで歯止めを付けながらやはり対応していかないと、この待機児童解消というものがなかなかとどまらないというようなことでございます。  先ほど待機児童解消がゴールではないという話をいたしましたけれども、しかしながら、今何を早く進めればいいかということになれば、やはり待機児童解消というのが大きな前提だと思います。そういう意味で、それに伴って保育の質を確保していくというようなことでございます。

平木大作公明党

○平木大作君 今、質の確保というところで言及いただきましたので、ちょっと関連してそれについてお伺いしたいんですが、情報を開示していくとか第三者に見ていただく、預ける側の親にとっても透明になっていくということはとても大事だと思うんですが、この質を確保する上で、多分開示というのは対象によって変わってくると思っています。  要するに親御さんには、例えば、もう実際に小規模でやっているところ、カメラを通して常にインターネットでチェックできるみたいなものを見せてあげることで質が担保できるみたいな考え方もあると思いますし、一方で、ちゃんと受け入れる水準として大丈夫ですよというところまで見ていただく、いわゆる第三者の機関等であれば、そうじゃなくて、もうちょっと室内に何があるのかとか財務的なものだとか、そういったものをしっかり開示すればいいということになると思うんです。  このいわゆる開示の在り方だとか見ていただき方、質の担保の仕方について、もし具体的なアドバイスがあればいただきたいと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) この開示でありますけれども、やはり今お話ししましたように、しっかりこれを監視していくという方法についていろいろ検討されております。ただ、やっぱりプライバシーの問題も絡んでくるというようなことでございますけれども、やはり大事な園児を預かるというようなことで、これはしっかり対応していかなければいけない問題であると思います。  それからまた、やはり小規模型保育所でありますといろいろな問題でトラブルも若干あるということでありますので、そこら辺はしっかりやはり監視していくというふうなことも大事な、それからまた公的な機関でいろいろチェックするということも大事なことだと思います。

平木大作公明党

○平木大作君 少し元の論点に戻りまして、じゃ、この現場の保育者の皆さんのキャリアアップにつなげていくためにキャリアアップ教育というのをやっていかなければいけない。  公述人も、大学の教育現場で今教えていることと保育の現場で今求められているものがもしかしたらちょっと違うんじゃないか、ギャップがあるんじゃないか、こんなこともおっしゃっていただいたわけでありますが、例えば、例として食育のこととかアレルギーのことということも言及ありましたけれども、今、そういった意味でいくと、まさに保育士を教育するというこのカリキュラム、先生、多分いろいろ工夫をされていると思っております。  特に今力を入れている新しいカリキュラム、どういったものがあるのか教えていただけたらと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 大学の授業そのものは、今、短大も大学も、幼稚園教諭一種と保育士の二つの資格を取っていただくというようなことで、これから認定こども園だとか、そういうことでございますので、二つの資格が必要になってくるということでございますので、大変カリキュラムが、その二つの資格を取るというようなことでございますので、かなりハードなカリキュラムが組まれていると。  それから、そういう面で、もっと詳しく大学の中で指導していかなければならない問題についてもそれほど詳しく対応できないという面があると。例えば食育のアレルギーという問題についても、それはカリキュラムに必ずどこの大学も組まれてはいるんですけれども、やはり十五こまの中で対応するということ、それからまた、現在、食育、アレルギーの問題についてもかなりいろいろ変わってきているというようなことでございますので、そういう面で、キャリアアップの改革というようなことで先ほどお話ししましたけれども、そういう点で、現場でかなり指導していかないとこういうことには対応できない問題ではないかと思います。  そういう面で、キャリアアップ改善というようなことは大事なことであると思います。

平木大作公明党

○平木大作君 関連して、先ほどのお話の中でも、保護者と関わる時間が長くなってきているというお話をいただいて、それ自体は多分時代の要請とかいろいろあるんだと思うんですが、同時に、その辞めていかれる保育士さんが、保護者の大きな期待に応えられないかもしれない、ちょっと自信がないというふうにして辞められる、ちょっとここまでいくと深刻かなと思っていまして、モンスターペアレントみたいな問題がもしかしたらあるのかなとも思うわけですが、具体的に、例えば最近の、まさに保護者の皆様から現場にいただくニーズというんでしょうか、いわゆる保護者の皆様からいただく期待って今どういうところにあるのか。そこに例えば、じゃ、さっきおっしゃっていただいたようなキャリアアップ研修みたいなところで対応ができそうなのかどうなのか、この点についてもお聞かせいただきたいと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 今、保護者との面談が時間を割くことが非常に多くなったということでありますけれども、やはり保護者にとっては一番相談しやすいところが保育所あるいは幼稚園というようなことでございまして、やはりなかなか悩みを相談できない点があるというようなことで、どうしても身近な保育所あるいは幼稚園へ来て悩みをお話しするということでありまして、そういう面で、かなり保育所あるいは幼稚園でそういうような保護者との面談というものが大変多くなってきているというようなことであります。  そういう面で、大学で実習には行くんですけれども、大学の授業ではそこら辺が大変欠けていると、そういうようないろいろ、こういうような問題が今出ているというような指導はするんですけれども、やはり現場とはかなり違いますので、そこら辺もいろいろカリキュラムで改善をしていかなければいけない問題ではあると思います。  そういう面で、保護者との面談で、それで結構やはり回答できない問題が多いというようなことで、それにやはり自分が自信を喪失するという面が、そういう面でカリキュラム、アップの研修というのは大変大事な問題であると思います。

平木大作公明党

○平木大作君 もう一問だけお伺いします。  今日たまたま朝のニュースでもやっていたんですけれども、男性保育士についてということで、卒業生の中にも十数名男性の方がいらっしゃるというふうにお伺いをしました。  一方で、保育の現場というのは男性にとってとても働きにくい職場だということが言われておりまして、ここに関連して、現場で男性の保育士に今どういう期待が寄せられているのか、あわせて、じゃ、男性にとって働きやすい職場にするにはどういうことを取り組んだらいいのか、お考えをお聞かせいただけたらと思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に、私たちも毎年十何名、十数名抱えるわけでありますけれども、最近そういう男性の保育士に対して非常に見直していただいてきているというのが現状だと思います。やはり男性の保育士しかできない問題もかなりあるというようなことでありまして、そういう面で、当然女性の保育士と男性保育士とが共同でいろいろ対応していくということの必要性というものが認められてきていると。  ただし、男子の保育士だといろんな若干問題があるという点もありまして、そういう面で避けられてきてはいたんですけれども、しかしながら最近はニーズが、社会が変わってきたというようなことで、男性に対する保育所あるいは幼稚園の希望というのは若干増えてきたということは言えると思います。

平木大作公明党

○平木大作君 続いて、井手公述人にお伺いをしたいと思います。  二〇一九年十月の消費増税、次の一〇%への増税というところが本当に大きな分岐点になると、大変説得力のある御議論をいただいたと思っております。  事前に私も読ませていただいた資料ですとか様々見る中で、やっぱり五%から八%に上げたときのこの消費税の痛税感というのは、単純にそのいわゆる上げた絶対額とかパーセントということだけじゃなくて、そもそも、税収は五兆円増えたんだけれども我々が実感できる社会保障の拡充の部分はその十分の一じゃないかと、ここが余りにもアンバランスだからやっぱりなかなかこの税に対する納得感がないんだと。逆を言えば、増税の分だけきちっとみんなが受給しているんだというメリットを感じていただければ税に対する考え方自体が大きく変わるんじゃないかという、こういう御指摘もいただいていて、これは本当に、なるほど、そのとおりだなと思って拝聴したわけであります。  こう考えていったときに、一つは、先ほども少し、その財源をどうするのかという話ですね。なるべく所得の制限を設けないで広く給付をしていこうと考えたときに、やはり財源をどうするのかという問題が出てくると思うんですが、これ、そもそもの考え方として、今は消費税という一つの例を取ったわけでありますが、税の広い体系で見たときに、個人所得税もあれば法人税もある、このいろんな大きな税の体系の中で、果たして広く分かち合うってどういう例えば税の在り方としてお考えがあるのか、少し聞かせていただけたらと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 二つのレベルがあるように思うんですね。  一つは、まず国税でやるのか地方税でやるのかという問題があるように思います。今日申し上げているような現物給付、サービス給付に関しましては、その供給者が基本的には地方自治体であるというふうに私は認識しております。したがいまして、あらゆる人々が負担者になっていくと私が申し上げるときには、基本的には地方税でやっていくというのが筋ではないのかというふうに考えております。  二つ目で、とはいいながらも、様々な税の決定上の難しさがございまして、国税を全く無視することができるかという問題はあろうかと思いますので、その場合、これを全て消費税に頼ってやっていくのか、あるいはそうではなく、租税間の公平性、つまり税にはそれぞれ個性がありますので、例えば逆進性の強い消費税、あるいは累進性のある再分配効果の大きな所得税、そういったそれぞれの特徴を上手に組み合わせながら、例えば法人税や所得税や相続税やそういったものを強化していく中で消費税の上げ幅を下げていくというような、そういうバランスの取り方も論理的には可能ではないかと思います。  したがって、一つの税に依拠して全てをやってしまおうと考えるのではなく、国税と地方税のバランスや、あるいは国税の中でもどのような組合せで税の体系をつくっていくかということは、恐らくそれぞれの論者の思想がそこに表れてくるのではないのかと思います。

平木大作公明党

○平木大作君 もう一点お伺いします。  先ほどもチャートの中で示していただきました。やっぱり日本は、他国と比べてみても現役世代向けの給付と高齢者向けの給付がこんなに差があるんだと、大体実感どおりという多分イメージだと思うんですけれども、お示しいただきました。  日本というのはやっぱりここがスタート地点になるわけですね。ここからある意味全員が受給者になるシステムを目指すというのは結構距離があるなと思っておりまして、もうこの広くやるというときに、先ほども答弁の中でありました、結局、最後納得を得るには、単純に現役世代少ないから現役世代向けではなくて、セットで示していかないと理解が得られないということだったわけでありますけれども、これ一方で、スタート地点がほかの国と違うわけですね。こんなに差が付いているのにやっぱりまだそれでも高齢者向けのものもセットで出さないといけないとお考えなのか、この点についてお伺いしたいと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 今、高齢者向けの給付の割合が大きいということを、私も申し上げましたし今御指摘いただいたわけでありますけれども、重要なポイントが一つあります。それは、高齢化率が先進国の中で極めて高いという事実であります。したがいまして、統計的に見ると当然高齢者向けの給付の割合が大きくなってしまいます。これは仕方のないことです。したがって、今日冒頭申し上げたほどに高齢者がたくさんもらっているということではないと思います。  ただ、私が申し上げたいのは、さはさりながら現役世代向けの給付の割合は極めて低いということでございますので、やはりそのバランスということは重要になってこようかと思います。

平木大作公明党

○平木大作君 以上で終わります。ありがとうございました。

大門実紀史日本共産党

○大門実紀史君 本日はお忙しいところありがとうございます。  この公聴会は経済・財政・社会保障でございますので、最初、全体に共通する話を三人の先生に伺いたいと思います。  お聞きしたいのは、福祉・社会保障分野における、何といいますか、市場原理主義の導入といいますか、福祉・社会保障分野の市場化、マーケット化が進んできたわけですけれど、それに対するお考えを聞きたいなというふうに思っております。  振り返りますと、九〇年代から新自由主義的な流れが強まって、日本でも、特に小泉・竹中路線ということで、あの辺りから大変新自由主義的な流れが強まってきて、新自由主義の自由というのは、もう人間の自由じゃなくて企業のもうけの自由のことでありますけれど、そういう中で、一つ、先ほどからあった雇用の流動化と非正規雇用の拡大とあって、もう一つはやっぱり民営化路線というのがありまして、何でも官から民がいいんじゃないかというような、もうみんながそういうふうに一辺倒になった頃がありまして、その中で、福祉分野も民間企業を参入させようと、市場原理を入れてマーケット化していこうというようなことが強まってきて、元々、官は、公は効率が悪いと、民間は効率がいいんだというようなことを掲げてやったんですけれど、それを過大宣伝してやったんですけれど、その結果今いろんな問題が起きているんではないかということで、保育所が足りないという問題も、もう公立保育所は余り造らないでほとんど減らしていって、民間にやってもらおうと。民間が占めてくる中で、やっぱり賃金が、保育士の待遇がどんどん悪くなって、今度は保育士のなり手もなくなって保育所が増やせないというような悪循環に今来ているわけであります。  そういう面で、申し上げました福祉分野の市場化、マーケット化、こういうものについて、この流れについて、三人の公述人の方々、それぞれいかがお考えか、聞かせていただきたいというふうに思います。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 福祉への企業参入というような問題、これは保育所だとか、いろんな面で、障害者施設だとか、いろんなところでかなり参入がされてきているということでございます。  これは、今の状況でありますと、やはり本来なら公立の保育所が増設されれば、増強されればいいと思いますけれども、財政的な問題だとかいろいろ考えますと、やはり企業型福祉関係の参入というようなことで、そういう点で今相当いろいろ福祉関係に企業が参入してきているということは事実であります。  しかし、そこで、考え方としまして、企業でありますので採算性というようなことを重視してしまうのではないかという懸念、そういう面がやはりあると思います。そういう面で、やはりその質の担保というものをしっかり対応していかなければならないと思いますし、それから私は、社会保障という問題は、やはり余り財源を、これは一番大事な問題であると思います。やはり、安心、安全の社会という、そしてまた、やはり国民が一番求めているのは社会保障の充実というようなことであると思いますので、これ余り予算を削減いたしますと大きな問題になってくると思います。  そういう面で、社会福祉は経済のマイナス効果ではないか、社会保障というのはマイナス効果の要因ではないかというような考え方もあると思いますけれども、いや、それは逆の、社会保障が充実することによって経済も回ってくるというようなことであると思います。そういう面で、余り社会保障に財源を削減するというのは大きな問題であると思いますし、そういう面で、やはり待機児童解消という問題についても、やはり保育所不足、これは、今はどうしても企業が参入、あるいは小規模な形の保育所というのは、今現在はそういうふうな形で解消するということでありますけれども、やはり公的な保育所がベターであると、そう思っております。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) まず、そもそもの話としまして、市場化をすれば経済が成長するのか、人々の所得が増えるのかということを考えなければいけないと思います。私の知る限り、一九六〇年代、七〇年代、八〇年代というように、先進国ではなく世界全体の経済成長率を見てまいりますと、実は、新自由主義化が進む七〇年、八〇年、九〇年、二〇〇〇年、年を追えば追うほどに平均的な成長率は下がっております。したがいまして、まず、そもそもの問題として、自由化、市場化が経済の効率化あるいは経済成長、所得の増大につながっていくかどうかは自明ではないということを確認する必要があると思います。  二つ目に、市場化が目指すものは価格の競争だと思います。したがって、同じサービスをできるだけ安い値段で提供するということに力点が置かれようかと思います。しかしながら、その場合には品質的な保証は行われない、あるいは供給の規模自体が企業側のロジックで決まってしまうということではないかと思います。反対に、価格の競争ではなく、質を競争させるという視点があろうかと思います。それは、同じ価格のサービスをより高い質で提供していくというような、こういう競争であります。とするならば、市場化によって価格の競争を図るのか、あるいは、そうではなく、公的なコントロールの下で質的な競争を促していくのかというのは、一つの論点たり得るのではないのかと思います。  では、なぜ二つの効率性、二つの競争がある中で、経済的な効率性や価格の競争が選択されるのか。それは、たった一つ、予算制約だと思います。すなわち、この国の財政にはお金がないということではないのかと思います。したがいまして、質的な競争を目指す、あるいは質的なコントロールを充実していくのであれば、やはりこの予算制約を突破していくということが重要である。  今までのように、成長に頼って経済を成長させて予算制約を緩和するというのがこれまでの考え方ですが、私はそれはもう不可能だと考えています。したがって、人々が応諾可能な増税の仕組みをきちんと提示しながら、そのお金を社会保障の充実や質的な競争のために使っていくという視点を提示できるかどうかが問われているように思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 市場経済と公共の部門という関係になろうかと思います。  市場経済は市場経済として効率性を追求していく、これはそれなりの当然理由があるわけでありまして、その分野の発展というもので経済が展開してくる、これは当然のことでございますが、しかし、その市場メカニズムで全て律することのできない分野、これがかなり私たちの社会には存在している。したがって、その分野に関しては、やはり公的なものが重要視されなければならない。例えば医療、福祉ですね、今先ほどの待機児童問題その他もそうでありますが、そういうものが非常に重要であるということを皆が認識すれば、それに対する公的な重要性ですね、ということに恐らくなってくる。  しかも、例えば先ほどの待機児童云々の問題でもそうなわけですけれども、それが我が国全体の経済にとっても、今人口が減ってきているというそういう状況の中でどのように人口を増やしていくかという、そういう全体的な戦略としても、やはり就学前の教育というようなものを公の立場で考えていくというのがいよいよますます重要なことになってきているのではないだろうかと。  あるいは、医療の面でもそうですね。医療の面でも、だんだんこの頃、日本の国民皆保険制度も怪しくなってきているわけでありますが、そのことによって我が国全体の国民のレベルが落ちてしまうということではやはり大きな問題になるわけでありまして、当然そうした公的な仕組みというものの必要性、それを国民が認識し、そしてそれを皆で議論して、そして未来の日本の発展と繁栄というものを考えていく、これが大変重要なことではないかと私は考えております。

大門実紀史日本共産党

○大門実紀史君 ありがとうございます。  井手先生に伺います。  井手先生の八ページの資料を見て、大変刺激的な提案で、もっと勉強をさせていただきたいなというふうに思います。人々のマインドといいますか、租税抵抗とか不安の平準化というふうな、本当に頭を柔らかくして私たちもいろんなことを考えなきゃなというふうに大変刺激を受けました。  ちょっとお聞きしたいのは、御提案は分かったんですけど、最初のこの当初所得ありますよね、この八ページでいきますと、二百万と二千万のこの格差。再分配とか後でどうするかと、いろんな形があると思うんですけれども、その当初所得の格差、これをどうまず是正するのかという点で、どのようにお考えでしょうか。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 大きく二つの方向性があるように思います。  一つは、まずは今日も論点になっておりますけれども、あらゆる人々、あらゆる子供たちがきちんと教育を受けられるようなチャンスを保障していくということだと思います。そうすることによって、イニシャルインカム、当初所得の段階での格差を小さくしていこうという戦略であります。つまり、貧しいということによって教育を受けられない、そして質の高い労働者になれないというような問題を回避していくべきだということです。  それともう一つは、何といいましょうか、職業教育のような、つまり自分自身が人生を選択する上で、現状ではほとんどの人々が大学に進むというような道しか提示されていないわけであります。そうではなく、もうちょっと若い段階で、早い段階で、あらゆる子供たちが大学に進むだけではない別の可能性を模索していくような可能性についてもっともっと検討されてよいと思います。  すなわち、ある特定の技術を持っているような道を目指すような選択肢をつくってあげる。そうすることによって、多くの人々が自ら選択した結果そういう道に進んでいくことができるようになれば、そういう職業に対する尊敬の念やレピュテーションのようなものも高まっていき、もう少しそういった中での職業間の格差というものを是正していく道につながるのではないかと思っております。

大門実紀史日本共産党

○大門実紀史君 ありがとうございます。  先ほど中西さんからもあったんですけれど、そもそも九七年、九八年以降、この大変化の大本は何なのかということの一つに、先生おっしゃったように、あの九五年の日経連の新時代の日本的経営の日本の雇用政策、賃金政策を大きく変えるという問題があったと思っておりまして、当初所得でいえばやっぱり賃金格差を是正することが一番重要ではないのかなと実は思っているところでございます。  その点で萩原先生に伺いたいんですけれども、この間、昨日も本会議でちょっと日米経済関係について質問をさせてもらったんですけれども、アメリカに今起きている問題ですよね、格差とか産業の空洞化、特に格差の問題ですね。日本でも同じようなことが広がっております。その点で、このアメリカのトランプ、この前も一月にアメリカ行ってきたんですけれども、いろんな方に話を聞いたんですけれども、そのときに、端的な話として、トランプが大統領になるぐらいだったらトランプ対サンダースで選挙をやらしたかったというぐらい対決軸が本当はそこにあったという話を聞いたりしたんですけれども。  萩原先生、アメリカにお詳しいということで、そのサンダース旋風って何だったのかと。あれだけの支持を得たサンダースの政策って何だったのかと。それがアメリカの今の問題をどう解決する見通しがあったのかとか、今の日本にも非常に勉強になることだと思いますので、先ほどの最低賃金だけじゃないと思いますけれども、オバマケアなどのことも含めて、サンダース政策って何だったのか、ちょっと御紹介いただければと思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 昨年、大統領選挙がありまして、トランプ氏が大統領になったわけであります。相手がヒラリー・クリントンということでありました。重要なポイントは、その民主党の中の候補者選びでサンダース氏が敗れたということが大きな問題点でございました。FOXというメディアがございますけれども、そのメディアが世論調査をしたときには、五月の段階ですが、ヒラリーとトランプではトランプが勝つでしょうけど、サンダースとトランプがやればサンダースが勝つだろうと、こういう予想も出てきたほどでありました。  現在、アメリカでは、大変な新自由主義的な経済政策の結果、格差が開いておりまして、従来タブーとされていた社会主義という言葉がもはやタブーではなくなったと。御承知のとおり、サンダースという人は、一九九〇年にバーモント州の下院議員として出たわけですが、そのときには、共和党、民主党いずれにも属さない、共和、民主いずれも大資本あるいは大金融機関の代弁者だ、私は独立派として、しかもソーシャリストとして議員生活を送りたいということで、当選して以来一貫して無所属と。しかも、無所属でも、ソーシャリスト、社会主義者、デモクラティックソーシャリストという民主的社会主義者だということを公言して今日に至っているわけです。  しかし、それでは世の中を変えることはできないということに気付いたサンダース氏は、昨年、昨年というよりも二〇一五年ですかね、大統領選に出るためにあえて民主党に入って政策を進めていくと。彼の政策は、基本的にはまさにルーズベルトが展開した政策、それをアメリカで実現していくと。つまり、ルーズベルトが展開し、社会主義的なものが次々とこの新自由主義の中で崩されていったんですね。それをやはり九九%の国民に取り返すのだというのが基本的にサンダース氏の考えでありまして、最低賃金十五ドル、これはヒラリー・クリントンもそう言いましたし、それから国民皆保険制度ですね、これも単一の、要するにファンドにおけるところの国民皆保険制度を導入し、そして応能負担の税制というものを実現していくと。  これは、先ほど申し上げたとおり、バフェットというアメリカの大富豪でありますが、この人が、もう是正すべきだ、是正しないとやはり社会がまさにおかしくなると、そういう議論も出てくるわけでありまして、そうした是正の動きが大変強く今日出てきております。  そして、しかもそのサンダース氏の考えというのは、現在民主党の中の非常に大きなグループというよりは、この前、米国民主党の委員長選びがありましたけれども、基本的にはヒラリー派の人が委員長ですけれども、それに接近してサンダース派の人がすぐ副委員長ということに指名されまして、ヒラリー・クリントン派とサンダースのその両委員長、副委員長が共に今までの民主党とは違った政策を実現していこうと、そういうことで、現在トランプ政権でありますが、それに対抗した戦略を展開していくという、そういう点でいいますとアメリカは大きく変わってきているということは実感できるかと思います。  以上でございます。

大門実紀史日本共産党

○大門実紀史君 終わります。ありがとうございました。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 日本維新の会、藤巻です。よろしくお願いいたします。  まず、萩原公述人にお聞きしたいんですが、オバマ政権、最低賃金大幅アップをしようとしたし、日本も見習うべきだという発言だったと思います、千円から千五百円に上げろということだったと思いますが。日本は計画経済ではないんで、計画経済的なことをするとやっぱりひずみが出てくると思うんですよね。先ほど中西議員が質問しましたように、最低賃金を上げ過ぎますと、やっぱり中小零細は潰れてしまって雇用の場がなくなるというようなこともあると思うんですね。    〔委員長退席、理事二之湯智君着席〕  要は、労賃といえどもほかの物とかサービスと同じように需要と供給の関係で決まるわけですよ。それで、日本人の供給というのはもう一定ですから、そうであるならば、日本人の労働に対する需要が増えれば賃金は上がるし、減れば賃金は下がる。これは当たり前の、資本主義国家においてはそれが普通の動きだと思うんですが。  先ほどの中西議員の例ですと、やっぱり働く場がなくなるから、それは需要が減る、だから賃金が落ちるということだったんですね。それに対して萩原公述人は、じゃ、大企業は余力があるじゃないかとおっしゃいましたけれども、大企業の場合には、余り日本人の労賃が高くなれば普通は海外に逃げちゃうんですね。その分、同じ割合だけ円安になればそれは話は別ですけど、為替が同じだったらば、日本人の労賃が高くなれば当然海外に逃げちゃって、日本人に対する需要は減っちゃって、かえってそれは賃金を下げることになるのではないか。政府なり誰かが強制的に最低賃金を上げろなんということを言えば、結果として労賃は下がっていくということになるのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) それはよく言われる議論でございます。私が申し上げましたのは、日本の最低賃金は余りにも低過ぎるということでございます。むやみやたらに上げるべきではない、そのとおりでございます。最低賃金をリーズナブルな線に戻すという点でありまして、これは米国のオバマ政権も同様のことを言っているわけであります。  そして、零細中小の話でありますが、現在の日本の財政の構造を見てみますと、様々な面でやはり大企業、大金融機関に対する手当ては厚いわけでありますが、中小企業、零細に対する言わば手当てといいますか、そういうのが余りに、もちろんありますよ、もちろんあるんですけど、その比率を、そんなに大きくなくても、ちょっとでも変えれば、少なくとも最低賃金千円というものを日本で行う力は十分私はあると思います。  それから、先ほど大企業は逃げるという話でしたが、最低賃金が仮に千円になったとしても大企業は逃げません。これは逃げたらかえっておかしい。これはある意味では本当の意味での最低レベルの話でございまして、その辺はやはり誤解してはまずいんだろうと思います。  アメリカでも同じ議論がありまして、ジェイソン・ファーマン、オバマ政権の大統領経済諮問委員会の委員長が、連邦最賃は、ですから、今の御指摘にもありましたように、共和党の議員が認めないわけであります。それで、アメリカという国は地方自治の国でございますので、連邦最賃が上がらなくてもいろいろな州、市でもって現実に最低賃金が十ドル、あるいは時給十五ドルというふうに上がっていっているわけです。それをファーマンが調べまして、雇用は本当に減ったのか、企業は本当にそこで困ったのかということを見てみますと、賃金が上がるということによってむしろ消費が増え、そして企業も物がよく売れるようになって、これは大変結構なことだということが全米の中に広がっているということは注目すべきことであります。  日本それからEU、大変経済が停滞していると思うんですが、これは非常にリジッドな財政規律という形で展開していることが大きく災いしているんだと思います。アメリカは今申し上げたような形で全体的に賃金レベルが上がり、そして経済成長もそれなりに行い、したがって、連邦準備銀行の政策も金利政策にもう既に戻っておりまして、しかも、トランプ政権の大変な軍事費増強、インフラ整備というような形でもって大変な景気高揚が来る、そして規制緩和だということで連銀は大変心配しておりまして、恐らく今年のアメリカの金利、大体三回ぐらいは上げなければならないのではないかというようなことも言われるようなレベルに回復してきたというのが、私は大変重要なポイントになっているんだと思います。  ですから、御心配は非常によく分かるんですけれども、現実にその先進国アメリカでもってまさに実際にやっている、そのことによって経済が回復してきているということを日本の政策を担当する方たちもやはり真剣に考えるべき時期に来ているのではないかと。御心配は私はもっともだと思いますけれども、それを乗り越えてアメリカが進んでいるということを御理解いただきたいということでございます。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 いや、アメリカ側を見習えというのは私は同意します。ただ、見習うべきなのは、オバマ政権のように賃金を上げろということじゃなくて、労働、自国民の需要を増やすということなんですね。  じゃ、オバマ政権とトランプ政権は何か、トランプ政権はまさにトヨタにアメリカに来いと、メキシコじゃなくてアメリカに工場を造れとか、それからアメリカの工場に海外に行くなといって工場をアメリカに残す、そして労働力を増やす、だからこそ今ああいういろんな政策が出てきているわけですよね。ですから、アメリカは基本的に労働需要を増やすという根本的なところで労賃を上げようとしている、今、日本は政府なり誰かが命令している、それではひずみが起こるんじゃないかということを私は申し上げた次第です。  次の質問をいたしますけれども、応能負担ということでアメリカは富裕層に税金を上げたと、だから日本もいろいろというお話をされていましたと理解していますけれども、アメリカが確かにオバマ政権のときにいろいろ上げました、富裕層に対する。ですけど、例えば相続税でいえば、相続税が非課税、全く無税だったものを夫婦に九億円から以上は相続税払うようにしたわけですね。日本は三千何百万かな、四千万か知りませんけど、かなり低いところから相続税を払っているわけで、九億円から相続税を払うようにした、夫婦二人で、だから応能負担を増やしたんだから日本も同じようにしようというのは、ちょっと議論が飛び過ぎているのかなという気がしましたけれども、いかがでしょうか。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 私が応能負担というふうに申し上げましたのは、この一九八〇年代以降、税の構造というのがどんどんフラット化してきているという、ここが非常に新自由主義的な税制の特徴になっている。つまり、所得のある人も少ない人も同じ税率で貢献する、これが要するに正当なんだという、これが要するに新自由主義を主張している人たちの考えなわけですね。それに対して、やはりそれでは社会はおかしくなる、大変な格差ができてきて、一部の富裕層の人も社会不安というものにおののかなければならないという事態が現実に生じる可能性があるわけですね。そこまで来ているわけです。  ですから、そういう状況を少なくとも少し言ってみれば前に戻していくという、こういう形での動きというのが現在行われているわけでありまして、私は、やはりそうした方向を考えないと、社会それ自体が存続できるか否かというような大変危機的な事態も考えざるを得ないような状況になってくる、その辺を私は大変危惧している。そういう意味で申し上げたわけで、別に相続税云々という、そういう特定な分野での議論ということではございませんでしたというので御理解いただきたいと思います。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 もう一つだけ萩原公述人にお聞きしたいんですけれども、富裕層重視の経済政策をアベノミクスがやったというふうにおっしゃいましたですけど、言われてみればそうなのかもしれないんですけれども、富裕層って日本にいるのかという話でございまして、まあ大リーガーの給料とかサッカー見れば分かりますし、それから、何か今度サウジの王様がいらっしゃるって、それはあの方は富裕層だと思いますけれども、とんでもない富裕層だと思いますけれども、日本にそういう人たちいるのかと。例えば、カルロス・ゴーン氏は日本で最大の給料をもらっているらしいですけれども、アメリカへ行くと平均以下ですからね。私も、実は外資系の金融機関にいましたし、ヘッジファンドにもいたことがあるので、世界中の金持ちというのは随分会いましたけど、これはすごいです。だけど、日本ですごい人を見たことないんですよね、小金持ちもいいところですよ。アメリカのスタンダード。  ですから、そんなに富裕層富裕層といったって、日本でいう、先生がおっしゃった富裕層というのは単なる小金持ちじゃないかと思うんですけれどもね。それについて、確かに富裕層重視なんと言われてもちょっと抵抗感があるかなと。株だって、株、アベノミクスで上がったといったって二万円ちょっとで、三万九千百五十円の、八九年の十二月に比べれば半分以下ですからね。アメリカみたいに史上最高値を更新しているわけではなくて、ちょっと抵抗感があったかなという気がいたします。  ちょっと時間がないので申し訳ないんですけれども、井手公述人にお聞きしたいんですが、井手公述人のあれですと、格差が縮まれば経済も成長するというお話、資料がございましたですけど、今、日本の最大の問題って、これだけ社会福祉とかいろんな問題が大きくなったというのは、やっぱり経済のパイが大きくならなかったせいだと思っているわけですね、私はね。三十年間で名目GDPたった一・五倍にしかなっていないわけですよ。アメリカとかイギリスは四倍ぐらいになっているわけです。シンガポールとかオーストラリアは、ちょっと数字ははっきりしませんが七倍とか、中国なんか七十五倍になっているわけですよ。それは四倍、五倍、七十五倍になれば、社会福祉は、みんな底辺の人だってもうすごく生活レベルが上がるわけで、ほかの国が豊かになっているのに日本が一・五倍にしかならないからこんないろんな問題が出てきちゃっているわけですから、パイを大きくするというのがやっぱり一番の問題じゃないかと私は思うわけですね。  先生のちょっと揚げ足を取るようで申し訳ないんですけど、格差が縮まれば経済も成長するというと、三十年間で七十五倍になった中国というのは物すごく格差がなかったことになりますけれども、今世界で格差が一番あるのは昔の共産国ですよね、ロシアとか中国でね。すると、日本は全然成長しなかったから物すごく格差が大きかったのかというと、さっき言いましたように、私が見る限り、日本って一番、感覚的にはないですよね。私も外資で、たくさんの外国人がいましたけれども、日本ほど平等な国はないといってみんな帰っていきましたから。そういうことを考えますと、一概に格差が縮まれば経済が成長するというのもちょっと言われ過ぎかなというのが一つ。  それで、ついでにもうちょっと申し上げますと、二百万円と二千万円の図で、先ほどありましたですけど、格差がやっぱり、私考えるに、機会が平等で同じ努力をして、結果として二百万と二千万の差が出るというのは、これは私は当たり前であって、そうじゃなかったらみんなやる気ないですよ。だから、二百万と二億円となるとちょっと、まあそれは格差があるというのかもしれないけど、二百万と二千万円では、そのくらいの格差を求めるというか、格差を是正することが国の目的でもなくて、異常なる格差を是正するのは確かに目的かもしれないけれども、程よい格差というのは必要だと私は思っているんですが、その辺について、この二つの点についてお聞きできればと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) まず、格差が小さくなれば経済が成長するということについては、ちょっと誤解があるように思います。それは二つ目の質問とも関係をしております。  私の基本的な発想は、人々の、これは人々です、貧しい人だけではなくあらゆる人々の生活を保障していきましょうということです。そうしますと、結果的に格差が小さくなるというだけであります。これは格差を小さくするためにやっているのではありません。  二つ目に、その格差がもし小さくなったとすれば、なぜ経済が成長するか。それは、格差そのものが問題ではなく、貧しい家庭に生まれた子供たちが教育の機会を提供されることによって中長期的な経済成長の源泉になっていくという意味でございます。  したがって、格差が小さくなれば経済が成長すると申し上げたいわけではなく、あらゆる人々の生活、教育の機会をきちんと保障していきましょう、そうすれば結果的に経済が成長していくのではないのかということを申し上げているわけであります。  それと、日本が平等な国であるという御指摘がございましたけれども、それは恐らく誤解ではないかというふうに思います。ジニ係数で見ましても先進国の中で九番目に大きいですし、あるいは相対的貧困率で見ますと六番目に大きいですので、これは先進国の中でも格差が極めて大きな国の一つであるというふうに申し上げてよいかと思います。  あと、先ほど最後におっしゃった二百万、二千万ぐらいの格差が開いても別にいいじゃないかというお話がございましたけれども、それは、スタート地点がきちんと整備され、あらゆる家庭の子供たちが同じように教育の機会を提供されて、みんなが等しく競争の輪に加わった結果としてこのような格差が生まれたというのであれば、私もそれでいいかと思います。  したがいまして、結果の格差をなくそうと申し上げたいのではなく、社会的な経済的な敗者が勝者に対して惜しみのない拍手を送れるような社会をつくらなければいけない。そのためには、スタート地点であらゆる人々の生存、生活がきちんと保障されなければならないということを申し上げているわけでございます。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 今のことは我が党も当然アグリーでございまして、私が申し上げているのは、結果の平等じゃなくて機会の平等が必要だということを申し上げていて、その機会の平等を確保するために、我が党も教育無償化を憲法改正の中に入れろということを言っているので、その点については井手公述人と全く同じ考えを持っております。  もう一つちょっとお話、時間がないので最後の一つになってしまうかもしれないんですが、最初に井手公述人は、もう何か経済が成長できそうもないからいろんな仕組みを考えるべきだとおっしゃっていたんですが、私はまだまだ日本って成長できると思っているんですよ。確かに三十年間で一・五倍しかならなかったですよ。それは、金融政策を最大限に発揮して、それから財政政策を最大限発揮して、こんなに借金まで膨らんだにもかかわらず全然伸びなかったので。  だからといって、だからといって経済が成長できないというのも私はちょっと言い過ぎかなと思っていまして、私は、経済政策、財政政策、最大限発揮しても経済が低迷したのは、ひとえに円高のせいだと思っているんですよ。やはり経済の教科書によると、為替政策、金融政策、財政政策で、為替が実態に合わないレベルであれば経済は低迷しますよ。それはだって、為替というのは値段そのものですから、景気が悪かったら、普通、商売でも値下げするのに、日本はどんどんどんどん値上げしてきちゃったわけですから、これは駄目に決まっているわけで。適正なる為替、それは、私自身は、為替が変な数字になっちゃったというのは、日本が非常に市場原理が発達しなかったせいだと思っていますけれども、そういうふうに為替がきちんと市場原理にのっとったレベル、今だったら百八円とかであったならば、日本経済はむちゃくちゃに発展したと思うんですよね。  ですから、もう、ちょっと日本が経済成長するのは無理だからという前提の下に議論をするのはちょっとどうかなと思うんですが、その辺についてコメントをいただければと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 一つ目に、小泉政権期に日本企業の海外進出が大分進んだ結果、円安、輸出増、経済成長という経路が基本的に機能しなくなっていると思います。したがいまして、今もし急激な円安が起きたとしても、それがそのまま私たちが思っているような経済成長に結び付くかどうかは分からないということがまずあろうかと思います。    〔理事二之湯智君退席、委員長着席〕  二つ目に、成長するとき、潜在成長率を考えるときには幾つかの要因がございます。一つは設備投資が増えること、一つは労働生産性が上がること、一つは労働力人口が増えていくこと、この三つの基本的な条件は今の日本には当てはまりません。したがいまして、日銀が推計するように、潜在成長率が一%を割り込むようなことになっております。このような状況の中で経済成長に過度な期待をするのは危険ではないかというのが私の意見でございます。  三つ目に、分かりました、それは、じゃ成長は大事だよねという議論があったとしまして、なぜ成長しなければいけないかといえば、所得が増えて貯蓄ができるようになることで私たちが将来不安を払拭できる、この点に尽きているように思います。そういたしますと、むしろ、そうではなく、成長を前提とせずとも、税を通じて私たちの社会保障や教育を豊かにすることによって将来不安を払拭するとするならば、あえて成長を目的化する必要もなくなるのではないかというふうに思います。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 今の潜在成長率の問題ですけれども、確かに人口は減少していますし、生産性の向上というのは難しいとは思いますが、資本の部分で、例えば円安になれば対外直接投資を増やすとかいろんなことで……

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 藤巻君、時間が終わっております。

藤巻健史日本維新の会

○藤巻健史君 資本は増えると思うんですね。  ですから、そういう意味でいうと、潜在成長率が上がらないというのは私はどうかなというふうに思います。  ちょっと最後にコメントで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 先生方、本当に大変勉強になりました。ありがとうございました。  自由党共同代表の山本太郎です。自由・社民の会派、希望の会を代表して聞かせていただきます。  まず、ざっくりしたところから聞かせていただきたいんですけれども、共通の質問とさせてください。順番にお聞かせください。  将来、日本の経済を上向かせるために、そして持続可能な国づくりをするために、今手を打たなければならない分野というのは何だとお考えになりますか。必要なんだけど余り熱心には取り組まれていない分野を、その理由とともにお聞かせいただけると助かります。稲葉先生から順番に聞かせてください。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 今これから日本の中でどんな分野が必要になっていくか、そしてまた一番大事な分野はどれなのかということでございますけれども、私は、一番大事なのはやはり社会保障の充実ということだと思います。これから大変な、介護の問題だとか高齢者の、超高齢社会になってくるというようなことでございまして、そういう面で世界に類のない超高齢社会を迎えるというようなことでございますので、そういう面でやはりそういう対策、それにはやはり社会保障の充実ということが大事なことでないかと思います。  そしてまた、やはり保育分野、先ほどお話ししましたように教育の原理と、原点というようなことでございまして、幼児教育の、乳児教育の大切さというようなことで、これをやはりおろそかにしたら日本の国がどうなるかということはもうおのずから分かることではないかと思います。  そういう面で、社会保障のやはり分野の充実という、財政的なやはりいろいろ歯止めはあると思いますけれども、やはり社会保障が極めて大事な一番のポイントではないかと思います。そういう面で、社会保障の充実によって安心、安全な社会を生み出せるのではないかと思います。そういう面で、一番大事な分野は福祉関係ということでないかと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 私も今の稲葉公述人と基本的に同じ発想を持っておりますが、社会保障という言葉にこだわる必要はないというふうに思っております。それはどういうことかと申しますと、例えばお金をあげる、あるいはサービスをあげるということだけでは私たちの生活が本当の意味では守られないのではないのかという気持ちがするからです。  例えば、アルコール障害があって生活保護をもらっている人がいたとしたときに、その人に、生活保護であれ何であれ、現金を渡せばきっとお酒を飲んでしまうと思います。じゃ、果たして社会保障という形でその人にお金をあげればそれで済むのかと言われたら、私は済まないと思います。  したがって、例えば自殺をする人がいたときには、それは仕事が理由で死ぬのかあるいは借金が理由で死ぬのか家族関係が理由で死ぬのか、きっと様々な理由の中でその人はある困難に直面するんだと思います。そうだとするならば、単純にお金をあげる、サービスをあげるというところを超えて、その人がなぜそのような困難を抱えているのかということをきちんと寄り添いながら判断し、そしてその人たちがまた自立に向かって進んでいけるようなパスをつくれるような、これはいわゆるソーシャルワークという概念になりますが、そういう部分に少しずつシフトを移していくというような視点が大事ではないかというふうに思っております。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 今の御両人の意見と重なるかもしれませんが、社会を持続的に発展させていくということは、先ほどでいいますと潜在成長というものに関わる。潜在成長を伸ばしていくということを考えれば、当然ながらそこには人が関わってくる。つまり、働く人が知的レベルは高く、生産性が高い。それから技術、これもやはり二十一世紀にふさわしい技術というものをつくっていかなければならないということを考えますと、教育ですね、教育というのが非常に私は重要になるんだと思います。  そして、今日、私の時代はまだ大学の授業料が非常に安くていた時代でございますけれども、今日は大変、先ほどでいえば機会の均等がなされていない。勉強しようと思っても、お金がなくて大学に行けないというような時代になっているわけですね。それではやはりこの日本の将来の展望を語ることは僕はできないんじゃないだろうかと。  ですから、そういう意味でいいますと、そういう将来の日本の人、若い人、それに希望を持たせるようなそういう仕組み、特に教育という面で、まさに幼児教育から大学の高等教育まで国はきちんと面倒を見るシステムをつくっていく、そのことによって私たち全体が豊かになっていくということを考えれば、これはやはり大変重要な課題だと私は思っております。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございました。  一番必要なものは何だという問いかけに対して、それぞれの先生からお答えをいただけました。稲葉先生は社会保障だと。この部分に関しては、大きく分ければ三人の先生方は共通している部分だと思いますけれども、稲葉先生は、その中でも幼児教育をもっと深めていく必要があると、大切にしてほしいというお話。そして、井手先生からは、社会保障に関しても個別具体的な寄り添いが必要だと。そして、萩原先生からは、教育にもっと力を割くべきではないかと、これ先行投資という意味でおっしゃっているんだと思います。  続いて、私から、もしお時間が、予定の質問、私の予定している質問が終わった後に時間が余った場合にここ一つずつ聞いていきたい部分もあるんですが、その前にちょっと準備してきた聞きたかったことがあるので、是非これを聞かせてください。  社会保障の中でもセーフティーネット、その中でもこの国のもう本当に一番、何やろな、これしかないんじゃないかと言われるセーフティーネットについてちょっとお話をしたいと思います。  事実上唯一のセーフティーネットと言われているのが生活保護であると。受けるべき人がどれぐらい受けられているかということを示す捕捉率、これ恐らく二割から三割じゃないかというような状況であると。この国に生きる人々の権利でもあるはずの生活保護が、水際作戦であったり親族への照会などによって受給するまでのハードルも高く上げられた上に、生活保護を受けること自体が恥とする風潮も存在するようで、受給者の間では、自分が生きていていいのかと思い詰められて、自分で命を絶たれた方までいらっしゃいます。  この責任は誰にあるのかということなんですけど、私は政治にあると思っています。そして、この制度に対してもっと光を当てなかった、セーフティーネットという部分を、これ一つ、まあいろんなものがありますけれども、結局はこれに頼らざるを得ないというようなセーフティーネットしか構築してこれなかったという部分にあると思います。  セーフティーネット、言葉ではもう一言なんですけれども、この生活保護以外にも、例えばセーフティーネット、国のセーフティーネットをつくっていくというんだったら、どういうものを大切にしていくべきか、どうあるべきかというようなお話を聞かせていただけると助かります。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 三人の方ですよね。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 はい。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 社会保障の中でセーフティーネットというようなことでございますけれども、やはり、まず生活保護の問題、これは本当に大事なセーフティーネット、憲法第二十五条で保障されている問題でありまして、そして、これは権利として認められたのは、本当になかなか成立しなかった問題でありますけれども、ようやく成立したというのは、私も法制史の中で、窮民救助法案というようなことで古来からの歴史を研究しておりまして、そういう面で、権利として生活保護を勝ち取るというのは本当に大変なことでありました。  そういう面で、権利として認めている生活保護でありますので、そういう面で、なかなか、今お話がありましたように、生活保護に対して国民の考え方がいまだに恥だとか、なかなか生活保護を受けることに対して非常に何かちゅうちょするというような点があります。  そういう面が、これが日本の何か根強いそういうような意識、そしてまた、第三者も生活保護を受けていることに対してのやはり壁というものもあると思います。そういう面で、これは国民の権利として認められている問題でありますので、そういう面で、やはり社会の考え方を変えていかなければいけないと絶えず思っております。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 今の議論の前提としまして、困っている人を助けるということがまず大事だという発想があるように伺いました。そこは私はちょっと距離があります。  どういうことかといいますと、一つは、セーフティーネットをたくさんつくっていきましょうということがございます。それは一つの方向性です。私はこう考えます。世の中にたくさん落とし穴があって、そのたくさんある落とし穴に人々がはまって落ちていくときにネットがなければならないという議論ではなく、この穴をなくすべきだという議論、これが僕にとっては非常に重要な視点のように思えるわけです。  もし医療をあらゆる人々がきちんと受けれるようになれば、あるいは介護や教育や、あるいは住宅も含めて、様々なサービスを全ての人々が受け入れられるようになれば、この穴がそもそも減っていくわけです。そして、もし医療、介護、教育、住宅を人々に手厚く提供していけるようになれば、最後に必要な生活保護は生活扶助の部分だけになります。ここの部分はしっかりとしたネットを張るべきだ。最低保障ではない、私に言わせればディーセントミニマム、品位ある保障をやるべきである。  穴を塞ぎながら、もし万が一落ちたときには、しっかりと小さいけれども絶対に破れないネットを張るということが大事なのであって、私はその意味で、生活保護をむしろ最小化していけるような社会が最も良い社会ではないのかというふうに考えています。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) セーフティーネットというのは大変重要である、これは日常的に私どもが生活していく場合にどうしても必要になってくる医療、介護その他もそうでありますけれども。しかし、人間というのは、やはり自分が自立的に、誰に世話にならず、そして生きていきたいという気持ちも確かに持っているわけですね。ですから、そうした私たちの気持ちというものをいかに実現させていくかという社会ですよね。  ですから、先ほどの私の議論でいいますと、働いても二百万以下しか収入がないというような状況では、これはとても安全に生活するというわけにはいかないわけでありますから、そういう点でいいますと、個々人がやはり社会に関わって、その中から正当な報酬を得ることによって生きていけるという、そういう社会をこの公の、ここです、これはまさにそれを議論する場だと思うんですが、そういうことを政府、それから議員の方たちが議論して、そしてそれをつくり上げていくということが非常に重要なことになっていくんじゃないかというふうに考えております。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  続いての質問、井手先生にお聞きしたいんですけれども、先ほども民進党の委員の方から御質問があったと思いますけれども、小田原市での生活保護問題、これ職員の問題行動がクローズアップされたと。これは職員の生活保護制度へのそもそもの理解の欠如などもあったでしょうけれども、私は職員の過重労働という部分にも関係していたんじゃないかなというふうに思うんですね。例えば、ほかの自治体なんかで聞くのには、相談乗る側が、もうこっちが生活保護を受けなきゃいけないぐらいなのに、生活保護を受ける人を受け付けているような状況も実際に生まれているということを聞いています。  小田原市の検討会で座長も井手先生はお務めになっているということをお聞きしました。是非、自治体からどのような要望が出ているのか、生活保護行政改善のための何かそういうような声を聞いていましたら、是非聞かせていただけませんか。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 今議論が進行中でございますので、小田原市の方が、だから、その中身を何かぺらぺらしゃべっていいものかどうかは分かりませんが、現時点でオープンになっている情報を基礎に申し上げれば、一つはまず、保護のしおりという、生活保護をお考えの方がお役所に来られたときに、とにかくあのしおりを読む限りは、もう一体、生活保護の仕組みがいかなるものなのか何なのかさっぱり分からない、難しい言葉がだあっと並んでいるわけです。したがって、ちゃんとその人たちの権利である以上は、そうやって人を突っぱねようとするのではなく、こうすればちゃんと受けられますよと説明ができるようなしおりを作らなければならないと、これが今一番焦点になっている論点であります。  加えて重要なことは、単に生活保護受給者の権利を守るだけではなく、これは当然大切なことです、しかしプラスアルファ、まさに今、山本先生がおっしゃったような、現場のケースワーカーの皆さんや職員の皆さんがちゃんとした真っ当な状況の中でやるべき仕事をできているのかどうかについても光を当てなければならないと思っています。  例えば、ケースワーカーの人たちが声なき声を上げようと思ったときに、小田原市の場合、組合がございません。どのようにして彼らは今の苦情を訴えればいいのか。あるいは、十年前に職員が切り付けられるという事件がございましたが、そのときに全庁的に職員がみんな彼らを、つまりケースワーカーの人たちを支えよう、助けようとしたのか、どうもそうしていない雰囲気がある。  したがいまして、重要なポイントは、生活保護を必要とする人がちゃんと当然の権利としてそれを申請できる状況をつくり出すことと同時に、ケースワーカーの人たちがその組織の中で見下されたり差別されたりすることがないように、堂々と仕事をやっていけるような環境を整えることではないのかというふうに思っております。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 ありがとうございます。  今、日本では、少子化対策がもう待ったなしという状況になっているということがあります。少子化対策って何が必要なのかということを挙げるんだったら、三つあると思うんですよね、よく言われることで。一つは教育だと。教育に本人とその家族の負担が掛からないようにすること。一つは所得であると。所得が少ない場合にはそこに補助していくというシステムがあればいいと。そしてもう一つ、住宅があると。この三つを国が率先して出生率を上げていくために補助していっているヨーロッパの国々では、これが劇的な、劇的なとは言いませんけれども、変化が見られてきているという情報があると思います。  一方、日本を見てみると、例えば社会住宅といいますか、公共住宅というものを全住宅で見てみると五・五%ぐらいしかないと。そのほとんどは、もう若い人たち、若年世帯が入れるような要件はほとんどないというような状況にされてしまっている。一方、先ほどお話ししたヨーロッパなどでは、全住宅に占める社会住宅的なものの割合は一八パーとか一七パーとか、桁が違う状況になっていると。  皆さんがお考えになる少子化対策というものの中で、この住宅の施策というものは重要なものなんでしょうか、やっていくべきだと思われますか。  次は、萩原先生から順番にお聞かせ願っていいですか。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 住宅政策に限ったということでございますが、確かに私はこれが非常に重要な問題になっているというふうに思います。特に日本の場合には、住宅事情というのが昔からそういい状況ではございませんでした。そして、核家族化というのが進む中で、その住宅の需要というものが大変多くなってきている。その中で、結局、日本は民間の要するにディベロッパーですよね、それに任せるという形で、公の住宅政策というのが後手後手に回ってきているというのが大きな問題になっているんだというふうに思います。  したがって、私たちはやはり住宅に対する考え方というのを大きく変えていかないと、やはり民間の家を買えばいいんだという形で、あるいは公的住宅に住んでいる人は所得が少ないからそういうところに住んでいるんだというような、そういうような偏見ですね、いうようなものを言わば私たち自身がなくすことによって、住宅というものが、これは社会が言わばそれを供給するということなのだというような、しかもその住宅は非常に快適な、そういうものを、当然それを造っていくべきなのだという、私たちの意識改革といいますか、そういうものも恐らく必要になって住宅問題というのを解決していくということにつながってくるんではないだろうかと。  そういう点でいいますと、山本議員のおっしゃることは大変よく分かるわけでございまして、そういう点でいうと、ヨーロッパその他から比べて日本のまさに政策というのが、教育もそうですけれども、大変深刻な事態になって、そして、要するに子供もつくれないというような事態で少子化が生まれ、そして人口が減少していくという深刻な状況を招くという事態になって、それはやはり、どうしてもそれを変えていくということが必要になってくるんだろうというふうに思います。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 時間が来ておりますので、大変恐縮ですが、簡潔に御意見を賜れれば幸いでございます。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 低所得層向けとして住宅を提供してしまうと、一種のレッテル貼りになってしまうと思います。そこに住んでいる人たちが貧しいということが分かってしまう。したがって、現物給付でやるのであれば、中間層まで含めて大胆にやらなければいけない。しかし、これは大転換ですので、当面は家賃補助をやっていくというような形で、誰がどこに住んでいると分かりにくいような形にしていくような工夫が必要かもしれません。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に少子化の問題で、やっぱり住宅事情の問題が大きな問題だと思います。それをいかに改善していくかと、これがやはり少子化対策の一つの改善だと思います。

山本太郎希望の会(自由・社民)

○山本太郎君 分かりました。  終わります。ありがとうございました。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。  本当に今日は勉強になりました。ありがとうございました。  時間もございませんので早速質問に移らせていただきたいんですけれども、まず、三人の先生方にちょっと私なりに聞きたいことがございまして、当面日本はどこをゴールとして走っていけばいいのでしょう、そして、その指標となるようなものというものはどのような形で取っていったらいいのか、教えていただけますでしょうか。お願い申し上げます。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 大変大きな問題で、日本はどう走っていけばいいのかということでございますけれども、やはり安心、安全な社会というものを第一番目にして対応していくというようなことが大事なことだと思います。  そして、一億総活躍時代というようなことで、私もかなり地方へ調査に行くんですけれども、そういう面で、地方創生の一つの一環といたしまして、大変高齢者が多い過疎地域、この人たちがやはり高齢になっても働ける場所、生きがいの場所というようなことをやはり大事にしていかなければいけないと思います。  移住という問題も、若い人たちが移住してもらう、これもやはり大事なことだと思いますし、それからまた、時間もないですので簡単にお話ししますけれども、やはり先ほどもお話ししましたように、社会保障の充実と福祉の充実というようなことがやはり大事なことであると思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) ゴールということでございますけれども、私は、多くの人々の将来不安を払拭するということがゴールではないかと思います。そして、もし、指標という御質問ございましたので、それにお答えするならば、内閣府の調査で、ちょっと古いデータになりますが、二〇一一年だったと思いますが、老後は不安ですかという質問に対して国民の八五%が不安だと答えているというデータがあったように記憶しております。したがいまして、こういったデータが改善していくということが重要な指標になっていくのではないのかと思います。  現在の日本を見ますと、先ほど僕申し上げましたように、所得が落ち、これは劇的に落ちております、そして貯蓄率も劇的に下がっております。その中で、将来不安に多くの人々がさいなまれているというのが今の現状だと思います。その中で非常に気になるのは、多くの人々が自己防衛に走ろうとしているということです。  そして、全体の三割以上が低所得層と言っていいような状況の中で、一番私が気になっているのは、社会的な弱者が更なる弱者をたたくような状況が生まれてきていることです。これは、私が住んでいる小田原の、先ほど質問がありましたが、生活保護問題もそうです。私から見れば、ケースワーカーの人たちは組織内の弱者です。この人たちが受給者を差別するようなことが起きます。同じく、神奈川県の相模原を御覧いただければ、加害者はもちろん悪い人ですが、明らかな社会的弱者である加害者が更なる弱者を皆殺しにしようとするような事件が起きる。  将来不安におびえる中間層が更に弱い人々を虐げることによって、見るに堪えないような出来事が次々に起きる。このような社会を変えていくためには、もし一つ指標を挙げろとおっしゃるのであれば、老後をどう考えるか、将来不安はどうかという質問に対して、大丈夫だと答えられるような、そういう社会をつくっていくことではないのかと思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 簡単にお答えしたいと思います。  未来の目標ということでございますが、私ども生きていく中で、やはり自分の自由な時間というものを持てる、そういう社会、これをやはり私たちは目指すべきだと思います。そのためには様々なことが必要になります。これはもう時間の関係で言えませんが、将来は何なのか一言で言ってみろと言われれば、私たちが要するに自由になる、自由な時間を持てる、そうした社会、それが持続していける、こういうものがやはり僕は重要だというふうに思っております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  私ども政治家でございますので、暗い部分だけではなく、やはりしっかり明るい部分に向かって国民に対して走っていこうじゃないかと号令を掛ける役目でもございますので、是非先生方、そういうふうに我々にも様々な示唆を与えていただきたいと思っております。  そこで、実は稲葉先生からも先ほどちょっと出たんですけれども、今回、先生方のちょっとお話を伺っていましても、地方とやっぱり都市部の差という、この格差についてなかなか御意見がいただけなかったところではないかと思っております。  稲葉先生の先ほどからの様々なこの社会保障制度の中の、特に保育の部分ですよね、日本死ねというようなあのフレーズ、地方に行ったら、何を言っているんだ、保育園が余っているじゃないか、この現実ですよね。かつ、その給与が低いといっても、公務員としてしっかり給与がいただけるんだから、もう保育士になりたいと、地方では女の子たちも手を挙げているような状況ではないですか。  やはり、さらに、日本という一つのくくりで見るよりも、やはりそれぞれの地域地域で抱えている問題がこれだけバラエティー豊かになってきて、全く違うような国ではないかと思われるようなこの状況をまず私はどうにかしていかなければならない、地方分権の問題であったり地方再生の問題であったり、様々な問題が含まれていると思うんですけれども、そこをお三人の先生方がどのようにお考えなのか、教えていただけますでしょうか。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に今、保育所の問題一つ挙げても、やはり地方の場合はかなり本当に定員割れというようなところが多いというふうなこと、都市部に関しましては本当に待機児童をいかに解決していけばいいのかという問題、この格差というのが非常に大きな点が見られると思います。  そういう面で、今地方創生というふうなことでいろいろ対応して、そういう面で格差をいかに取り除くかという点もやはり地方創生の政策の一環であると思います。本当に過疎化の地方においては、高齢問題について、介護だとかいろんな問題、本当に深刻な問題を抱えているというふうなことで、介護士の不足、そしてまた保育所の問題についても、やはりいろんな形でいろいろ、定員が集まらない、そういう面で、やはり地方の特性というものをしっかりわきまえながら政策をしていく必要があるのではないかと。  地方においては、やはり小規模な形の保育所というふうな、これも大変批判されたりなんかしておりますけれども、私は地方においては小規模な形の保育所というのは非常に効果があるというようなことで、それぞれ政策というものは、やはり地域ごとにいろんな問題を抱えているということでありますから、そういう面で、やはりその特性だとかそういうものを加味しながら政策を打っていかなければいけないんではないかと思います。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) 地方と都市部の格差、格差といってもいろいろございますけれども、それは確かに極めて重要な点だと思っております。  その中で、一つ目に、人々のニーズがもう余りにも多様化していっているこの状況の中で、行政が全てにきめ細やかに対応していくということが本当にできるかということがまず問われているように思います。  その意味で申し上げたいのは、私があらゆる人々に普遍的にサービスを給付していこうと申し上げるときには、行政の役割が言わばベーシックな部分の生活保障にもう限定されていくということを意味しています。その上で更に人々の生活の質を高めていこうとすれば、行政には頼らない、今日申し上げたソーシャルワーカー的な人たちの役割というのがどんどん高まっていくのではないかと思います。その意味で、ベーシックな部分を行政が可能な限り税を通じて整えるけれども、それぞれの地域には様々な多様な形のニーズの充足の仕方が生まれてくるという状況があろうかと思います。  それと、今のと関連してもう一つだけ。  一極集中の問題とも関係すると思うわけですけれども、東京のですね、なぜ人々が東京に来るのかというならば、お金が、所得が増えると思って皆さん来ているんだと思います。しかしながら、現実に見てみますと、東京は超低出生率です。このことから考えれば、家を買うにせよ子供を育てるにせよ実は物すごいお金が掛かっていて、名目的な所得は増えるかもしれないけれども実は経費が余計に掛かっていて、子供が産めないという状況がつくられているのではないのかと思います。  もしこの認識が正しいのであれば、むしろあらゆる地域に、どの地域に住んでも生活がきちんと保障されていく状況がつくれて、将来不安が払拭される状況ができるのであれば、お金の目的だけで東京に来る必要性というのが劇的に下がってくるということではないのかと思います。これも、地域間、都市と農村の格差を考える上で検討されてよいポイントではないかと思います。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) お二人のお話で尽きているとは思うんですが、一つ付け加えるとしますと、やはり日本全国様々に条件が違うわけですので、そこに住んでいる方のやはり自立的な生き方、そういうものを尊重する形の行政の在り方、それはやはり住民と行政との関係ということにもなりますけれども、そうしたボトムから上の方へと、上から下というのではなくて下の方から上の方にという、そういう形での解決の方法ということを考えていくべきではないだろうかというふうに考えております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  今回の予算を見ましても、やはりどうしても全国一律にという形になりがちではないかと思うんですね。いわゆる、私どもが、先ほど井手先生がおっしゃっていただきましたように、きめ細やかに対応していくためには、ソーシャルワーカーの皆様方などもそうですけれども、やっぱりNPOのような方、民間団体の皆様方にも手厚く何か税制優遇であったり寄附控除のようなことも、様々な施策を講じることによって本当に困っていらっしゃる方にきめ細やかな手を差し伸べることができるようになる。まだまだそういう発想ではなく、お上がというような、どうしてもトップダウンで行っているような気がして私はなりません。  その中で一つ、様々世界の情勢を見てみましても、いわゆる第四次の産業革命を起こそうじゃないかという動きがございます。AI等人工知能も様々育ってまいりまして、インダストリー四・〇という形で、いわゆるスマート社会をつくっていこう。今までは工場でも単純作業は女性が担い、そしてその単純労働の費用が安いがために海外に工場が移ってしまったわけですよね。でも、ドイツだったり、若しくはアメリカもそうですけれども、そういった最新の技能を使って、工場は自国に呼び戻し、そしてしっかりと、その中でも我々というのが知能が高い部分を担って、仕事をしていくための人材育成を行っていこうではないか、もう本当にこれ、産業構造自体を変えていくことによって、その生産性を上げ、そしてその国の在り方まで変えていこうという、本当に国家プロジェクトとして取り組んでいる国がだんだん増えてきているんですけれども、そういうことを考えていけば、まだまだちょっと日本というのは、そこにまで行き着いていないがために何だか古い中で物事を考えがちなのではないかな。平等の在り方であったり、社会保障の在り方であったり、もう少し先進的なビジョンを描きながら、私は、これからの予算の在り方もそうですし、社会の在り方というものを語っていかなければならない時代ではないのかなと思うんですけど、先生方の御意見を少しずつもしいただけましたら、お願い申し上げます。

稲葉光彦常葉大学教授・副学長・保育学部長

○公述人(稲葉光彦君) 本当に産業構造が大きく変わってきているということ、そしてまた単純労働の問題だとか、そういう面でもいろいろ問題があると思います。そういう面で、やはり各省庁が連携しながら、縦割りではなく、かなり横割り的な横断的な政策を取ってはきておりますけれども、更にやはり政策の面で横断的に各省庁がいろいろ対応していければと思います。  本当に地方に行きまして、やはり横断的な政策の必要性と。やはりあらゆる、介護の問題についても、全体の部署で対応していかなければ解決しない、個々の部署では解決できないという点がありますので、そういう面では、本当に画一的な予算編成ではなくて、やはりそれぞれ特性を持った、そしてまた横断的な政策で対応していければというようなことでございます。

井手英策慶應義塾大学経済学部教授

○公述人(井手英策君) もう数年前になるんですけれども、突然電話が掛かってきましてスウェーデン大使館に呼ばれたことがありまして、元大蔵大臣の方と急遽面会することになったことがありました。その方が悲しそうな目をして私におっしゃったのが、日本の皆さん、大変ですねと。つまり、アジアの国々の人たちが作れるような、つまり経済的に言うと若干遅れた国の人たちが作れるようなものを自分たちも作って競争をなさるんですねと。私たちスウェーデン国民は、スウェーデン人にしか作れないものを作りますというふうに言われました。物すごく切ない思いをしたことがありました。  今申し上げたいのは、AIや人工知能のお話がありましたけれども、これ分からないんですよね。つまり、労働生産性を高めるという議論と同時に、一方でむしろ人々の雇用を奪っていくという問題があり、いや、かつ少子化なので奪っても大丈夫だという議論もまたあり、どういうふうに経済が回るかというのはよく分かりません。ただ、重要なことは、人々の、労働者の質を高めていくための教育という視点だけは絶対に欠かしてはならないということです。その結果、私たち日本人にしか作れないような質の高い製品を作っていくことができるんであろう。  同時に、もし、やや百歩譲って、AIなりなんなりというお話をもしするのであれば、決定的に重要なのは基礎研究投資だと思います。日本、これ、基礎研究投資は普通は大学であったり公的機関であったりで行うものですけれども、OECDの中でも恐らく一番低いか二番目に低いぐらいのレベルだと思います。もしそういったイノベーションを求めていくのであれば、こういった基礎的な研究投資を徹底的に増やしていく必要があると思います。  ただ、日本経済の隘路は、今日も申し上げましたが、幾つかある潜在成長率を高めるファクターのうちイノベーションしかもう期待できることがなくなっているというこの現状にあるように私は思っております。

萩原伸次郎横浜国立大学名誉教授

○公述人(萩原伸次郎君) 将来的な、つまり日本の産業構造云々ということになると、先ほどの自由な時間というところにも関係するわけでありますが、そういうものを個々人が享受できるような社会というものをどうつくっていくのかという、これはやはり、どのような社会を私たちが考え、そしてそれをつくるかということを私たち自身がお互い協議し合いながら考えて展開していくということになろうかと思います。  その点で重要なのは、やはり個々人の個性、それを生かす形で多くの人たち、全ての人たちが参加できるようなその社会の仕組みというものをどうやってつくっていくのか、大変これは難しいことだと思いますけれども、質問に、答えには恐らくなっていないと思いますけれども、大変難しい御質問なので。いずれにしても、そうしたことに一歩どう近づくかということの工夫を私どもが考えていかなきゃならない、そういう時期に今は来ているのではないかというふうに、お答えになっていないかと思いますが、取りあえず失礼いたします。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  もう残り時間も少のうございますので、本当に今日はいろいろなところから御意見をいただきまして、ありがとうございます。網羅的なところだけ今日は伺わせていただきましたけれども、そういう視点で私ども、しっかりその予算というものが組み立てられているのかどうなのかということを再度点検させていただきたいと思います。  ありがとうございました。

山本一太自由民主党・こころ

○委員長(山本一太君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は明十日午後一時から委員会を開会することとし、これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時十一分散会

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