法務委員会 第17号
- 発言数
- 107 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2017/05/16
会議録
○鈴木委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案及びこれに対する平口洋君外四名提出の修正案並びに階猛君外二名提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案の両案及び修正案を一括して議題といたします。 本日は、両案及び修正案審査のため、参考人として、弁護士・ニューヨーク州弁護士木村圭二郎君、中央大学名誉教授・弁護士椎橋隆幸君、弁護士海渡雄一君、弁護士加藤健次君及び成城大学法学部教授指宿信君、以上五名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙のところ御出席賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、木村参考人、椎橋参考人、海渡参考人、加藤参考人、指宿参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。 それでは、まず木村参考人にお願いいたします。
○木村参考人 おはようございます。 本日は、法務委員会の参考人として意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。 私は、昭和六十二年に弁護士登録をし、登録後間もなく大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会に所属し、平成十九年には大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務め、昨年六月より日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務めています。 また、コーネル大学ロースクールに留学し、ニューヨーク州でも弁護士登録をしています。 民暴対策にはおおむね三十年かかわっていることになります。その間、五代目山口組の組長責任訴訟や暴力団組事務所の差しとめ訴訟等にかかわってまいりました。また、日弁連の代表として、国際組織犯罪に関する国連会議に出席させていただいたこともあります。 まず、法務委員会として、これまでテロ等準備罪及びTOC条約に関し詳細な論議を重ねてこられたことに敬意を表させていただきたいと思います。 私の方では、本日、意見陳述の項目を記載したレジュメと、テロ等準備罪の論点をQ、Aの形式で整理した資料一、立法ガイド、パラグラフ五十一の解釈に関する意見を記載した資料二を配付させていただきました。 本日は、テロ等準備罪に賛成する立場から、資料一を参照しながら、民暴対策に関する活動を通じて得た知識や経験をもとに、レジュメの順に従ってお話をさせていただきます。もとより、意見にわたる部分は個人的見解であることをあらかじめ御了解お願いいたします。 まず、関連法案についてですが、現在、従前の共謀罪の構成要件を厳格化したテロ等準備罪が審議されているわけですけれども、さらに、自民・無所属の会、公明及び日本維新の会の修正案、与党側修正案と言います、と民進党・無所属クラブ及び自由党の対案、民進党側対案と言います、もあわせて審議されている状況にあると伺っております。 最初に、この点について申し上げたいと思います。民進党側対案では、TOC条約は包括的な共謀罪を創設せずとも締結することが可能であるということを前提とされておられます。これまでの審議で、全体としてTOC条約に批准しなければならないことは合意形成がされながら、TOC条約の批准に共謀罪規定が必要か否かというところで意見の対立があることについては、まことに残念なことだと思っています。 その問題についての議論は尽くされているように思いますが、私の意見は、お手元の資料一のQ3からQ5に記載のとおりです。 Q3に対応するA3に記載のとおり、共謀罪規定はTOC条約の批准のための国内法上の義務であり、Q4に対応するA4に記載のとおり、共謀罪規定の義務を留保、回避することはできないと考えています。また、Q5に対応するA5に記載のとおり、予備罪規定ではTOC条約第五条の要件を満たすことができないことは明らかであると思っております。 したがいまして、まことに恐れながら、民進党側の対案ではTOC条約の批准要件を満たすことができないのではないかと考えております。 与党側の修正案につきましては、捜査上の実際の懸念に配慮を求めるというもので、特段の異論はありません。 次に、立法ガイド、パラグラフ五十一についてですが、日弁連も、かつて、立法ガイドのパラグラフ五十一を根拠として、共謀罪も参加罪もTOC条約の義務ではないという主張をしていました。しかし、そのような主張が誤訳に基づくものであることは、英文の原文を見れば明らかだと思います。資料二に記載のとおりです。 日弁連の平成二十九年二月十七日付のテロ等準備罪に対する反対の意見書におきましては、立法ガイド、パラグラフ五十一に関する主張は完全に抜け落ちています。平成二十九年二月の意見書で、これまで主張されていたパラグラフ五十一の記載がなくなっていることからして、パラグラフ五十一に関する日弁連の見解は撤回されたものであると私は理解しています。 法務委員会の審議でパラグラフ五十一の解釈がいまだ論点として残っているように思われましたので、参考として資料二を提出させていただきました。 ここで、日弁連の意見書について一言申し上げたいと思います。 余談になりますが、現在の日弁連会長の中本和洋先生は、私が大阪弁護士会の副会長をしたときの会長でして、人格、識見に秀でた大変にすばらしい方で、私が尊敬する弁護士の一人です。しかし、残念ながら、今回のテロ等準備罪に関する日弁連の意見書には正面から反対をさせていただいています。日弁連の意見はすばらしいものが多いのですが、時に、特定の考え方を持った会員の意見が強く反映されることがあるように思います。テロ等準備罪への反対意見書もそのようなものと考えています。 私は、弁護士が一枚岩となって反対しているという誤解を与えてはいけないと思い、呼びかけ人の一人として、百三十名の弁護士の意見として、組織犯罪対策としてのテロ等準備罪に賛成をする立場で提言書をまとめ、関係省庁及び各政党に対し送付をさせていただきました。 これまで、日弁連は、濫用等の危険を述べて、暴対法について反対をしました。しかし、暴対法が労働組合や市民団体に適用されたということは聞いたことがありません。暴対法が施行されたおかげで暴力団の弱体化が現実のものとなり、我々が暴力団を相手とする事件において大きな力を発揮しています。 日弁連の意見に基づき暴対法が廃案になっていたとすれば、恐ろしい事態になっていたと思います。組織犯罪処罰法にも日弁連は反対をしましたが、それが濫用されているという事実はないと思います。 日弁連のテロ等準備罪に関する意見書は、そもそも条約等の解釈に問題があり、参考にすべきものではないと考えています。 五番目の濫用の危険についてです。 テロ等準備罪の濫用の危険について議論がされていますが、濫用の危険については二つの論点を分けて考える必要があると思っています。 一つ目の論点は、テロ等準備罪の構成要件の問題です。資料一のQ8とQ9に記載しています。仮に、過度に広範な刑罰規定、処罰規定であれば、その修正が必要であることは言うまでもありません。しかし、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の定義の核心部分として、結合関係の基礎としての共同目的が一定の重大犯罪を実行することと規定しています。この定義は組織犯罪の核心をついており、その特徴をよくあらわしていると思います。 井田教授も指摘されておられましたけれども、テロ等準備罪の組織的犯罪集団の定義は厳格であり、通常の労働組合や市民団体がこの要件に該当する余地はないと言ってよいと思います。 もう一つの論点は、捜査機関が誤って法執行をするという意味での濫用の問題です。完璧な人間はいませんので、さまざまな理由で、結果として間違った捜査が行われる可能性は否定できません。 この点も井田教授と同じ意見を持っておりまして、それは刑罰規定全てに共通する問題で、テロ等準備罪の特有の問題ではありません。刑事制度全体の問題として、捜査側の不祥事も含め、間違った捜査が行われないようにするということが重要であることは言うまでもないと思います。 お手元の資料一のQ10に対応するA10の回答で、この点を指摘させていただいています。抽象的に間違った法執行の可能性があることを理由として刑罰法規に反対するということであれば、極端に言えばあらゆる刑罰法規に反対をしなければならないことになるということを記載しております。 私は、テロ等準備罪に特有の濫用の危険はないと考えています。 それから、治安維持法であるとの批判についてです。 さすがに法務委員会の議論のレベルは高く、テロ等準備罪は治安維持法の再来であるといった批判はされていないように思います。しかし、テロ等準備罪に反対をしている弁護士や集会等のビラなどでは、テロ等準備罪を治安維持法の再来と表現しています。 お手元の資料一のQ11に記載しているとおり、治安維持法は、国体を変革することを目的とした結社を処罰し、予防拘禁制や行政検束制などにより、司法手続を経ない拘束、そして拷問までもが行われた悪法です。テロ等準備罪を治安維持法の再来と批判するのであれば、どのような事態が生ずるかについて主張される必要があると思いますが、具体的な主張はされていないように思います。 治安維持法の問題は、旧憲法下での制度、戦時体制という時代背景が前提となっています。成熟した民主主義と司法手続、マスコミ等による監視が行き届いている現在で、治安維持法と同様の事態が生ずる可能性は皆無であると考えています。 七番目の監視社会を招来するとの批判についてです。 テロ等準備罪が監視社会を招来する、そういう批判がされることもあります。この論点は資料一のQ12に取り上げています。テロ等準備罪は実体法規定ですので、同法の規定が捜査手続に直接的な影響を及ぼすとは考えられません。そもそも、監視社会という批判がどのような事態を想定しているのか曖昧だと思います。 人間関係が希薄になっている現代社会において、防犯カメラの設置や顔認証システム、サイバー空間の捜査の強化は、テロ等準備罪の導入のいかんにかかわらず、犯人検挙や犯罪抑止のために必要性が高まっていると理解しています。 しかし、そのような必要性が高まっていることも犯罪捜査一般の問題です。テロ等準備罪を立件するために警察が日常的に適用事例を追いかけ回して捜査をする、そういったことはないと思います。 八番目のテロ等準備罪の必要性について、簡単に申し上げます。 私は、具体的な事件で、組織的詐欺の被害者の民事事件を二件経験したことがあります。一件は現在も係属中でして、被害は十億円を超えるものです。だまし取られた金額のほとんどが海外の預金口座に隠匿されています。また、現在破産管財人として担当している破産事件では、四十億円もの現金が海外に流出させられています。弁護士の体感として、犯罪の国際化が進んでいることを指摘させていただきたいと思います。 TOC条約には、捜査共助や情報交換、また没収財産の被害者への返還の考慮等の規定等があり、TOC条約の批准を契機に我が国の組織犯罪捜査の国際化が進み、犯罪被害の回復が図られることには大きな意味があると思います。 九番目のテロ対策についてです。 東京オリンピックに向けて海外から多数の方が日本を来訪する、そのことは好ましいとはいえ、やはり国民目線としては、テロ組織や組織犯罪の関係者が紛れ込まないか、そういう不安があると思います。テロ対策としてできる限りのことをやるということで、TOC条約に批准し、海外のテロ情報を集め、我が国の安全、安心を達成していただきたいと思います。 テロ等準備罪だけで、テロ対策や組織犯罪対策として十分であるということはありません。しかし、この罪ができることで組織犯罪に対する牽制力が発揮されることは間違いないと思います。 次に、十番目の項目です。 テロ等準備罪の話は離れますけれども、今回のTOC条約対応の立法で、不法収益の隠匿罪、いわゆるマネロン処罰の拡大が犯罪被害者の被害回復に大きな力を発揮する可能性があると思っています。 具体的には、金融商品取引法百九十七条の二の無登録での有価証券取引業の規定です。それがマネロン処罰の前提犯罪となっていることです。我が国の詐欺被害は年間四百億円を超えると言われています。金商法違反をマネロン罪で立件することができれば、投資詐欺型の特殊詐欺対策として有効だと思っています。 民暴対策委員会の活動として、FBIや司法省等の組織犯罪対策の調査に行ったことがあります。アメリカでは、刑事事件の立件というのが被害者救済と強く結びついていました。我が国でも、暴力団などの組織犯罪から被害回復をするためには、刑事事件が先行しない限り、実態解明が難しく、困難であるということが実情であります。 終わりにということで、最後に一言です。 犯罪者による海外への資金移転は日常的になっています。TOC条約に批准し、海外捜査機関との連携を密にし、犯罪被害回復を実現していただきたいと思っています。 テロ等準備罪は構成要件が厳格であり、刑罰法規として特段の問題はないと考えています。TOC条約に批准するために早急に本法案を成立させる必要がある、そのことを強調させていただき、意見陳述を終えさせていただきます。 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、椎橋参考人にお願いいたします。
○椎橋参考人 中央大学名誉教授、弁護士の椎橋隆幸でございます。 本日は、このような委員会で陳述する機会を与えていただき、光栄に存じます。 私は、テロ等準備罪法案に賛成の立場から陳述させていただきたいと思います。今の木村先生のお話と内容的に重複する面もございますけれども、御容赦いただきたいと思います。 まず、本法案は、国際組織犯罪防止条約を締結して、国際社会と協調して国際的な組織犯罪を防止、根絶するための協調体制をとる必要があるということと、他面で、実質的に考えて、テロが九・一一以降世界各地で頻発して日本人がその犠牲になる、あるいは日本がその標的になるという事実がございまして、テロの危険が日本に迫っている、テロの危機が増大しているという中で、国民の生命、安全、財産を保護するという必要、この二つの側面があるというふうに考えております。 まず、国際組織犯罪防止条約、以下TOC条約と言わせていただくことが多いかと思いますが、その中身等についてお話しさせていただきたいと思います。 テロを含む組織犯罪、これは犯罪組織による薬物密輸でありますとか銃器の不正取引、人身売買、マネーロンダリング等々でございますけれども、この防止、根絶を目的とした条約であります。 この種の組織犯罪によりまして犯罪組織は多額の利益を不正に得て、大きな勢力となって、一国の民主主義政治決定過程にも不当な影響を及ぼしたり、あるいは自由な経済体制にも悪影響を与えてきております。このような組織犯罪の犠牲になるのは一般の人々、特に子供や女性といった社会的弱者にも及んでおります。この犠牲となる女性とか子供の人権を守るためにもTOC条約は必要であるというふうに考えます。 この条約は、国際刑事法条約であることはもちろんですが、同時に、今申しましたように人権条約というような性格も持っているわけであります。このような条約の趣旨が国会議員の先生方の間でも理解、共有されて、平成十五年、二〇〇三年五月に、TOC条約は、留保を付することなく、圧倒的多数をもって国会で承認されております。 次に、国際犯罪組織を効果的に防止、根絶するためには、国際社会と緊密に連携することが必要不可欠でございます。TOC条約の締結によりまして、逃亡犯罪人の引き渡し、捜査共助の効率化、情報交換の円滑化が可能となります。この実際的効果というのは、テロ等組織犯罪の防止、撲滅という点では非常に重要な効果を持つものでございます。 現在、百八十七の国と地域がTOC条約を締結しており、未締結国は我が国を含む十一カ国のみというふうになっております。この状況も、世界的に考えて、直視しなければいけないだろう。テロを含む組織犯罪を未然に防止し、摘発する上で、我が国は、国際的取り組みの中で組織犯罪の抜け穴になってしまうという事態を避けなければなりませんし、それと同時にというか、むしろそれ以上に、世界における経済的あるいは政治的な地位というものを考えますと、その国にふさわしい積極的なリーダーシップを持った取り組みが必要なのではないかというふうに私は考えております。 それから、TOC条約の内容でありますけれども、もともとからこれはテロ対策というものが含まれているということであります。テロ対策かそうでないかというような議論は余り意味がないのではないかというふうに思っております。 むしろ、テロ犯罪というのは組織犯罪の典型でありまして、テロそのもの以外に、テロ集団は、そのテロ活動を行うための活動資金を獲得するために女性や子供の誘拐、身の代金要求、人身売買、薬物、銃器の売買を行う。これは、世界各地で起こっているいろいろなことにもよくあらわれていると思います。 そして、TOC条約というのはテロ対策も含んでいるというのは、このTOC条約ができたときの国連総会決議においてもその趣旨のことが表明されておりますし、それから二〇一四年十二月に採択された国連安保理決議においても、テロ防止へ共同に取り組む必要性とTOC条約等への加入等を加盟国に求めております。 それから、経済協力開発機構の金融活動作業部会、FATF、これは国際組織犯罪対策をまとめる上で非常に重要な役割を果たしている会議でありますけれども、この勧告が数多く出されております。特にその中でも二〇一二年二月に統合、改定された四十の勧告及び特別勧告は、我が国に対して、TOC条約を締結していないということ、それからテロリストの資金に関する凍結義務を十分に実施していないと、かなり手厳しい指摘をされております。 他方で、我が国はテロ対策が十分だという御議論もあります。実際、十三のテロ防止関連条約を締結しておりますけれども、しかし、必ずしもこれだけではテロ対策としては十分ではないというふうに思います。十三のテロ防止関連条約でカバーできない態様のテロについて、TOC条約は対応できるという面がございます。 例えば、テロ対策の関連条約の中で、包括的といいますか、一番よく引き合いに出されるテロ資金提供処罰法について申し上げますと、公衆等脅迫目的の犯罪行為について、公衆または国もしくは外国政府を脅迫する目的をもって行われることを要件としている。これは第一条にその規定がありますけれども、この目的のない犯罪行為のために資金等を受領してもこの条約によって処罰されないということになります。それから、もっと広く、薬物に関する犯罪、人身に関する搾取犯罪、資金源に関する犯罪、司法妨害に関する犯罪のほとんどが同法の対象犯罪には当たらないわけであります。この穴を埋めるというか、テロ等準備罪にはその役割を果たされることが期待されると思います。 次に、国際組織犯罪防止条約の要請でありますけれども、これはレジュメに書いてあるように、TOC条約の要請に従って、共謀罪または参加罪の創設、あるいは資金洗浄、腐敗行為、司法妨害。これについてはそれぞれ、共謀罪は新設、それ以外のものについては、証人等買収罪を新設する、組織犯罪処罰法の拡大、あるいは贈賄罪の国外犯処罰規定の整備というような形で対応しているということであります。 それから、次に、現行法のままで国際組織犯罪防止条約を締結できるかということでありますが、これは先ほどの木村先生の御発言とかなりかぶるところではありますけれども、非常に重要なことでありますので申し上げますと、条約の五条一項(a)号には、加盟国に参加罪か共謀罪かの少なくとも一方を犯罪化することを義務づけている。これはマストであります。シャルであります。 立法ガイド、パラグラフの五十一及び五十五というのがあります。これは必ずしもそれに従う必要はないという解釈がされているわけでありますけれども、これを五条一項との関係で素直に読めば、共謀罪を持たない締約国が参加罪を導入した場合に共謀罪の導入を求めるものではなく、その逆も同様であるというふうに、片方を持っていればいいということであります。しかし、片方は持っていなければいけないということです。 それから、その国の原理原則、制度との兼ね合いの問題につきましては、例えば導入する共謀罪の規定ぶりはそのまま条約を直訳しないでいい、規定ぶりについては締約国に任せる。それから、犯罪阻却事由等をどうするかというような法原則については締約国に委ねられている。だから、他方で、絞るという意味で重大犯罪に限ると限定をするのも、この趣旨によって生かされているということだと思います。 それから、次に、テロ等準備罪について。 我が国はテロ等準備罪を考えている、それは共謀罪型のテロ等準備罪ということでありますけれども、もちろん、るるこの間に指摘されてきておりますように、非常に厳格な要件というものが課されているということによって、前に言われた共謀罪とは大きく異なっているということであります。 時間が余りなくなりましたので、この中で特に問題になりそうなことを申し上げますと、まず、テロ等準備罪が成立するためには、一定の対象犯罪である重大な犯罪の実行を目的とする組織的犯罪集団が、団体の活動として、重大な犯罪を実行するための組織によって行われるということが要件としてございます。 これは、組織的犯罪集団ということによってかなりその対象が限定されるということが言えると思います。テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団というものがこれに当たるということでありまして、労働組合とか市民団体、宗教団体、学生のサークル活動というのはこれには当たらない。この関係で、世上、いろいろな、こういう場合は危ないんじゃないかというふうに言われているものがございますけれども、まずこの要件に当たらないということで抜け落ちるものがたくさんございます。 それから、捜査権限は拡大するんじゃないかというようなことが言われておりますけれども、しかし、これは、まずテロ等準備罪は実体法の改正でありまして、手続法の改正は予定されておりません。ですから、手続法の分野である捜査権が拡大されるものではありません。それから、手続法は実体法によって規制されるものでありまして、テロ等準備罪が成立するためには、組織的犯罪集団、計画、実行準備行為、この三つの厳格な要件が求められております。適用対象が組織的犯罪集団に限定されていることによって捜査の対象も組織的犯罪集団の構成員や周辺者に限定されるということになりますし、計画に基づいた実行準備行為がなければ、捜査、特に強制処分である逮捕等もできません。捜査機関の判断次第で捜査権限が歯どめなく拡大していくとの議論は現実的ではないと思います。 それから、最後に、我が国の刑事司法システムというのは、警察、検察、裁判所という機関等から成っております。 そこで、考えてみますと、警察は警察で、犯罪の嫌疑がなければ捜査というものはできませんし、検察は、公訴を維持できる、有罪の高度の見込みがあるというものでなければ起訴しません。また、起訴できると判断して起訴したという場合でも、その後、公平中立な裁判体が起訴事実について合理的な疑いを超えるまで証明しなければならない、有罪を認定できないという厳しいハードルがそれぞれあります。したがって、私は、こういう法運用のあり方というのは、今、基本的には健全に機能していると思われますので、テロ等準備罪の適用においてもこのような形で法運用は行われるというふうに信じております。具体的な点については、後でもし機会があれば申し上げたいと思います。 これで終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、海渡参考人にお願いいたします。
○海渡参考人 組織的犯罪処罰法改定案、いわゆる共謀罪法案について公述の機会をいただきましたことについて感謝いたします。 私は日弁連の共謀罪法案対策本部の副本部長を務めておりますが、本日の意見は、日弁連の意見として断らない限り、私の個人的な意見であることを最初にお断りしておきたいと思います。 先ほど木村参考人から、日弁連の中にはいろいろな意見があるという御意見がございましたが、全国の五十以上の単位会で、共謀罪法案については反対とする反対の意見を表明しておることをつけ加えさせていただきます。 まず、この法案になぜ反対なのかということからお話しします。 刑法は、犯罪の定義を定めておりますが、裏返せば、人の行動が自由である範囲を定めている法律です。犯罪とは、人の生命や身体、自由、名誉に被害を及ぼす行為として説明されてきました。 法益の侵害またはその現実の危険性が生じて初めて事後的に国家権力が発動されるというシステムは、我々の社会の自由を守るための制度なのでございます。 約三百もの多くの犯罪について共謀の段階から処罰できることとする共謀罪法案は、既遂処罰を基本としてきた我が国の刑法体系を覆し、人々の自由な行動を制限し、国家が市民社会に介入する際の境界線を大きく引き下げるものであります。 次に、人と人との犯罪の合意をする手段は、会話、目くばせ、メール、LINEなど、人のコミュニケーションそのものによってなされます。その合意の内容が実際に犯罪に向けられたものか、実行を伴わない口先だけのものかという点は、犯罪の実行が着手されていない段階では大変難しい判断となります。その捜査は、会話、電話、メールなど、人の意思を表明する手段を収集することになります。予算委員会では、法務大臣は、共謀罪を通信傍受の対象とするかどうかは将来の課題であると明言されております。 国連越境組織犯罪防止条約の目的は、マフィア対策、経済的な組織犯罪対策です。この条約は、決してテロ対策の条約ではありません。 日本は、国連の十三の主要テロ対策条約について、その批准と国内法化を完了しております。法案には二月の段階でもテロの文字は全くなく、法案提出直前にテロリズム集団という言葉を法案に入れ込みましたが、この修正にはテロの定義もなく、法の適用範囲を限定する意味は全くございません。 政府は、一月の国会審議の中で、共謀罪をつくらないとテロは防げないとして、ハイジャック犯人が航空券を買ったり、危険な化学物質の原料を調達しても、その段階で予備罪は成立しないというふうに説明しました。しかし、特別刑法の権威ある注釈書にこれらは典型的な予備行為として掲げられており、政府の説明は間違いでした。政府は、テロ対策の穴を何一つ具体的に指摘できていないのです。 森林法、所得税法、著作権法など、組織犯罪やテロとは全く無縁で、未然防止が必要とは考えられない多くの犯罪について共謀罪をつくることが本当にテロ対策でしょうか。テロ対策としてほかにやるべきことがもっとあるのではないでしょうか。 政府がこの法案制定の最後のよりどころとするUNODCから寄せられた口上書を見てみました。ここにも、犯罪の規定ぶりは締約国の国内法に委ねられている、本条約の犯罪化の要求を満たすために、国が定める国内法上の犯罪は、必要な行為が犯罪化される限り、本条約と全く同じ方法で規定される必要はないと、はっきりこの口上書にも述べられています。 日本政府が二〇〇三年につくった法案が国連のガイドに沿っていなかったことは明らかです。実は、このガイドは二〇〇四年に出版されており、国内法の制定が検討されたのは二〇〇二年でした。国内法案の制定を急ぎ過ぎたためにこのガイドを参照することができなかったのであります。政府は、当初言われていたように長期四年の刑を定める全ての犯罪の共謀罪の制定が条約のために不可欠という立場は既に放棄されています。そうだとすれば、明確な基準を示して絞り込みの議論をしなければならないはずです。 そもそも、この条約五条は何を求めていたのでしょうか。この条約は、組織犯罪集団の関与が想定される重大犯罪について、未遂に至る前に処罰可能であることを加盟国に求めているのだと思います。このことは、条約の五条に、括弧して、犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪を定めなければいけないと明確に書かれていることにあらわれております。そして、この条約は国内法の原則に従って実施すればよいのです。このことは条約の三十四条に明記されています。 条約審議以前に広範な共謀罪が制定されていた国は、イギリス、アメリカ、カナダくらいです。そして、その後に制定された国は、ノルウェーやブルガリアしか報告されていません。 日本には、テロや暴力犯罪など、人の命や自由を守るために未然に防がなくてはならない特に重大な犯罪約七十については、共謀、陰謀罪が二十、予備、準備罪が五十あります。これによって、重大な組織犯罪、テロ犯罪の未遂以前の段階はおおむね処罰可能となっていると言えます。 暴力団対策法そして暴排条例など日本の組織犯罪対策は、銃器の所持すら認められているアメリカと比較しても決して遜色がないというふうに言い切れると思います。 日弁連は、これ以外に、人を殺傷する犯罪の予備段階を独立罪としている銃砲刀剣類所持取締法違反、凶器準備集合罪や、重大窃盗の予備段階を処罰しているピッキング防止法などにも着目しております。 日弁連も政権交代時の民主党も、新たな立法なくして条約は批准できると述べてまいりましたが、二〇一一年の十一月、民主党政権のもとで、平岡法務大臣は、法務省、外務省の関係部局に対して、条約の目的、趣旨に基づいて防止すべき犯罪について、既に当該の罪について共謀罪、予備罪があるものを除いて、予備罪を創設することについてどのような問題があるかということを指示しました。平岡大臣の調査によれば、サウジアラビア、パナマなどはそういう対策をとったようでございます。当時の法務省の稲田刑事局長は、これに基づいて作業するというふうに国会でも答弁されています。 この国会に、民進党は、組織的人身売買、組織的詐欺の二つの犯罪について予備罪を設けるという提案をされました。このような提案について、五月十二日の法務委員会審議において、畑野君枝議員の質問に対し、外務省の水嶋氏は、客観的に危険性が認められる程度の準備が整えられていなければ処罰ができないので、このような提案は条約五条の趣旨に反するおそれが高いというふうに答弁されました。 しかし、これは過去の政府の答弁と明らかに異なっております。二〇〇五年十月二十一日の衆議院法務委員会で神余隆博氏は、オバートアクトのかわりに予備行為を要求することが条約の趣旨に反するか否かといったことについては確たる定義はないとはっきり述べておられていたのです。 そもそも、合意を推進する行為について、どのような行為を法的に要求するかは、各国が国内法の原則に基づいて判断できる事柄です。 また、新たに予備罪を制定すべき犯罪としてこの二つの犯罪を選択したことにも十分な根拠があると思います。 すなわち、最終的には条約本文に残されませんでしたが、条約に重大犯罪のリストを記載すべきであるという意見がエジプト政府などから提案されておりました。きょうの参考資料の三として添付させていただきました。 このリストは、テロ関係の犯罪について入れるということについて反対意見があった。日本も反対したんですけれども、結局条約の中に採択はされませんでしたけれども、十五項目しかありません。長期四年以上の刑を定める六百七十六の犯罪の中から絞り込みを行うとすれば、このリストに従う以外にないのです。 さらに、日弁連と法務省が新たな立法は不要であるという意見を公表した二〇〇六年、この年、法務省が二〇〇六年の十月の六日に公表されているペーパーの中では、この提案に対して、組織犯罪が行うことが容易に想定できる詐欺罪、人身売買が抜けている、そういう意見を述べられています。その段階で恐らく法務省は、我々が今見ているリストと同じものを見て、その中から抜けている二つを提案されたのではないかというふうに思われるわけです。 この二つの予備罪を加えることで、日本では合計七十四の重大犯罪について未遂以前の処罰が可能となります。これは、外務省が調べた重大犯罪の数、自民党の部会に配られたもののようですが、きょうの資料に参考資料四として添付しておきましたが、スペインでは四十六個しかありません。外務省が数えたとされる数字でも、北欧諸国などは七十ぐらいです。この数字と比べても、特に少ない数字ではないのです。 今回の民進党の提案は、先ほどの平岡法務大臣の指示に沿って立案されたもので、バランスがとれており、我が国のこれまでの刑事法の法原則にも合致するものです。私は、この案に個人的に大賛成です。このような抑制のとれた考え方に基づいて、与野党で真剣な協議をしていただきたいと思います。 きょうの、先ほど見ました椎橋先生のペーパーの三ページにも、人身売買と詐欺以外にあと三つぐらいの犯罪がつけ加えられていますが、それ以上の指摘はされていないということも言いたいと思います。 また、二〇〇七年の段階で、自民党は小委員会案というものをつくられていました。この小委員会案では、対象犯罪は百二十八まで絞られ、自首の必要的減免規定なども削除されていました。それでいいとまで私は言いませんが、政府・与党の姿勢が後退しているのではないかというふうに指摘せざるを得ません。 私は、沖縄で既に弾圧の道具に使われている威力業務妨害罪に着目したいと思います。組織犯罪処罰法が一九九九年に制定されましたが、この段階以前には、威力業務妨害罪、強要罪、信用毀損罪などは、法定刑は長期三年でした。共謀罪の対象犯罪とはされない刑期だったんです。それが、九九年に法定刑が引き上げられ、共謀罪に取り入れられました。もともとこれらの犯罪は、構成要件が曖昧で、弾圧法規として使われてきた問題のある犯罪です。これらの犯罪一つだけでも、治安維持法に匹敵する濫用の危険性があるというふうに私は思っております。 自民党の二〇〇七年の小委員会案では、今申し上げたこれらの犯罪は共謀罪の対象から除外していただいていたのでございます。前回、早川忠孝先生がここに来られましたけれども、早川先生がつくられたときの案からは除かれていたのでございます。なぜこのような極めて危険性の高い共謀罪が復活しているのか、私には全く理解できません。組織的威力業務妨害罪、組織的強要罪、組織的信用毀損罪の共謀罪は、真っ先に削除するべきだというふうに考えます。 本日の公述では、法案に関する問題点を数々提起させていただきました。この法案については、多くの刑事法学者、メディア関係者、そして多くの国民が疑問と不安を覚えています。けさの朝日新聞の報道によりますと、今国会で成立すべきではないという意見は、成立させるべきであるという意見の三倍以上に上っております。 二〇〇五年、六年の国会では、真剣な審議と協議がされました。そのときも私は参考人に呼んでいただきましたが、最終的に、二〇〇六年の六月段階で強行採決が予定されましたが、これは回避されました。この強行採決を回避した判断は、小泉純一郎首相と河野洋平衆議院議長の話し合いと決断によってなされたというふうに私は聞いております。 事は、一国の刑事法体系を崩しかねない重要問題なのです。民進党の提案された予備罪の追加法案、これにまた二つ三つつけ加えても構いませんが、このようなものだけで条約を批准しても、他国の例を見れば、国際的には全く問題にはなりません。政府法案の修正案を決して強行採決することなく辛抱強くこの法務委員会の場で審議を尽くしていただき、日本の国の人権保障と民主主義の未来に禍根を残す法案の成立は何としても断念していただくように訴え、私の公述といたします。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、加藤参考人にお願いいたします。
○加藤参考人 本日は、意見陳述の機会を与えていただき、ありがとうございます。 私は今、自由法曹団という全国約二千百名の弁護士が加入する団体の幹事長を務めております。 きょうは、共謀罪を創設する法案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。 本法案に対する重要な論点の一つに、共謀罪の創設がいわゆる監視社会をもたらすのではないかという点があります。政府の方からは、例えば捜査機関において適切な運用がなされるとか、あるいは一般人が対象となることはないという答弁がなされております。しかし、これらの答弁は、法案の規定の内容からも、また警察等が現に行っている活動に照らしても、説得力のあるものではないというふうに考えます。 私たち弁護士は、具体的な事件を通じて捜査機関の具体的な活動内容に触れる機会がたくさんあります。今回、法案の審議に資するために、警察による市民監視が問題となった具体的事例を紹介することによって審議を深めていただこうと思いまして、事例集をつくりました。本日は、資料三ということで、「今も行われている市民監視の実態 事例集」という資料を配付させていただいております。そういう具体的な事実に基づいた議論をしていただきたいということで、以下、意見を述べさせていただきます。 まず、この事例集の具体的な事件を紹介する前に、市民の側から見た場合に警察というのは一体どういう活動を行っているのかという、特に情報収集にかかわる活動について、資料一、二を作成いたしました。 よく国会の議論を聞いておりますと、いつ逮捕されるのかとかいう議論がされておりますけれども、実際に我が国の警察の活動は、警察法二条一項に基づく公共の安全と秩序の維持、この目的のための情報収集活動、いわゆる行政警察あるいは予防警察と呼ばれる側面と、それから、実際に犯罪の嫌疑が生じた場合の犯罪捜査、いわゆる司法警察に大別されます。そして、捜査の中には、令状を必要とする強制捜査、令状を必要としないいわゆる任意捜査と呼ばれているものに大別されているわけですが、ここで確認していただきたいのは、警察による情報収集というのは、行政警察、司法警察を通じて、いわば切れ目なく、シームレスに行われているということです。 そして、もう一つは、逮捕とか捜索、差し押さえという強制捜査にわたらない段階で、任意捜査というとあたかも非常に軽いイメージがありますけれども、実際には、この表にありますように事情聴取、尾行、写真・ビデオ撮影、所持品検査、あるいはさまざまな捜査事項の照会等々という形で、実はプライバシーを大きく侵害しかねない活動が現に行われております。この点は、いわゆる行政警察における情報収集においても同様の活動が行われていることをまず注意していただきたいというふうに思います。 結論から言いますと、共謀罪を創設するということは、犯罪の成立時期を、具体的な結果発生、あるいは結果発生の危険性がある段階よりも前に前倒しをすることになります。この表でいいますと、一、二を比べていただくと、捜査の開始時期がかなり早まることが御理解いただけるというふうに思います。 しかも、この前倒しというのは、単に時間的に早くなるというだけではなくて、客観的な結果が発生していない、あるいは客観的に見て結果の発生の危険性、そういうものを示すものがない、そういう段階での捜査の開始になりますから、極めてハードルが低くなり、濫用の危険が多くなる。 そういう意味で、この共謀罪の創設は、警察の情報収集活動、捜査権限の拡大につながることは明らかだというふうに考えます。 幾つか具体的な事例を御紹介いたします。 事例集の二ページに、大垣市における大垣署の市民監視事件を紹介してあります。これは、風力発電に反対する運動が広がる、そういう見込みのもとに、大垣警察がさまざまな市民の情報を収集し、風力発電を計画している会社に提供したというものであります。 この中で、大垣警察の署員は、大垣警察署としても回避したい行為、つまりこの反対運動が広がることを回避したい、そして、今後、情報をやりとりすることによって平穏な大垣市を維持したい、それで協力をお願いするというふうに述べています。しかも、岐阜県警は、当事者からの質問状あるいは抗議に対して、大垣警察署員の行為は、公共の安全と秩序の維持に当たるという責務を果たす上で、通常行っている警察業務の一環であると判断いたしましたというふうに明確に回答しております。 それから、四ページの、イスラム教徒、いわゆるムスリム監視事件においては、警察が、我が国に居住するイスラム諸国会議機構に加盟する五十七カ国の出身者全員の身元把握を目標にして、大使館員を含むムスリムに対する情報収集活動を行ったというものです。これはまさに、犯罪の嫌疑も何もない段階でムスリム全体をテロ予備軍というふうに勝手に決めつけて情報収集を行う、プライバシーを侵害するというものでした。 そして、三ページにある別府の盗撮事件。これは実は、警察の弁解によりますと、公職選挙法違反の捜査という名目で労働組合事務所の人の出入りを盗撮していたという事案です。このときの犯罪の嫌疑というのは何かというと、この労働組合事務所には公務員の労働者が出入りしている、そうすると、この公務員労働者が公職選挙法違反をする可能性があるから、それを捜査するために盗撮したというのが警察の言い分です。そして、この事件が発覚した後、警察庁は、要するに無断で敷地に入って設置したのが間違っていた、そういう総括をいたしまして、令状なしの盗撮をもっと、見つからないようにというか、問題にならないようにやれ、そういう通達を出しております。 こうしたいわゆる警察の市民監視の事件は、たまたま一人二人の警察官が思いつきで行ったとか、突出して行ったというものではありません。いずれも、警察の組織方針に基づいて、日常活動として行っている活動です。そして、このときに警察が何をもって公共の安全と秩序に反するものとみなすのか、あるいは公職選挙法に違反する人たちとみなすのかというのは、結局、監視する警察の判断に委ねられている、そういうことがこの事例からもおわかりいただけるというふうに思います。ぜひ、この点を前提にした議論をお願いしたいというふうに考えております。 次に、事例集にも掲載されておりますが、私が直接関与しました堀越さんという方の国家公務員法事件。これは、国家公務員であった堀越さんが休日に赤旗号外を配布したことが政治的行為の禁止規定に反するということで逮捕、起訴された事件です。 約九年にわたる裁判を経て、最高裁は、二〇一二年十二月七日に、この堀越さんの機関紙配布行為は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない、そういうふうに判断しまして、無罪判決を言い渡しました。つまり、法益侵害の危険性がない、そういう行為だというふうに最高裁が判断をしたわけです。 きょう申し上げたいのはその理屈の話ではなく、そういう全く法益侵害の危険性のない堀越さんの機関紙配布行為、これは本来、表現の自由、政治活動の自由として保障されるべき行為でありますが、この行為を把握するための捜査と称して、どのような形で堀越さん本人、それから関係者のプライバシー侵害がされたかということです。 お手元に資料四というのを配ってあります。これは行動確認実施結果一覧表と申しまして、警察というのは尾行のことを行動確認といいますが、その結果の一覧表であります。この裁判で裁判所の勧告に応じて検察から提出された資料の一部をコピーしたものですから、この出所は明らかであります。 全部を紹介している暇はないのですが、例えば一枚目の十月十二日の欄を見ていただきたいと思います。 この日は休みで、日曜日なんですけれども、自宅を出てから最後はカラオケ屋に入るんですけれども、そこまでびっちり捜査員六名が尾行し、行動を確認しています。この中で、堀越さんが演劇を見に行く、一緒に行った人、それからその後一緒に飲食店に入った人、さらにはその後カラオケに入った人、この人たちは全部監視の対象となっております。 そして、この中で、居酒屋に入った後も尾行を続けておるんですね。この点について、実際にこの尾行をした警察官に、なぜ居酒屋に行った後も尾行を続けておるんですかと聞いたところ、いや、飲んだ後だってビラをまく可能性があるというふうに明確にお答えになりました。 結局、この堀越さんの事件では、三日間の配布行為だけが起訴の対象となっているんですが、二十九日間にわたって、捜査員延べ百七十一名、少なくとも四台の車両と六台のビデオカメラが使用され、堀越さんの行動は、こうやって記録に残されるだけではなく、ビデオカメラにもおさめられておりました。 ここで強調したいのは、堀越さんというターゲットを決めた瞬間に、本人のプライバシーがまず丸裸にされるだけではなくて、これと接触するあらゆる人が監視の対象、プライバシーの侵害の対象となる、この現実が実際にあったということです。 この事件は、最終的には無罪になりました。しかし、こうした堀越さんの権利侵害に対する謝罪等は全く行われておりません。 詳しいことは後で資料を読んでいただきたいのですが、こうした事例からわかることは、一つは、警察というのは、法律上与えられた権限を抑制的に使うことはないということです。真面目な警察官ほど使えるものは全て使うというのが警察の実態です。 それから、もう一つは、そのときに何を監視の対象とするか、例えば先ほど言っている公共の安全と秩序の維持に反する動き、あるいは反する人は誰なのか、あるいは犯罪を犯したと思われる人は誰なのか、この判断が極めて恣意的かつ主観的に行われていることです。とりわけ、今の政府に反対の意見を持っている、そういうグループあるいは人に対しては、警察は極めて厳しい目で監視をしていることがこれらの事例からわかるというふうに思います。 それから、あと、事例集の六ページに、高層マンション建設反対の事例を挙げました。 実際、私たちも弁護士の仕事をしておりますと、高層マンションが建って環境が破壊される、何とかしたいという相談を受けることはたくさんあります。 当然、住民の皆さんは、何とか建設をやめてもらいたいということで、どうやったら建築をとめられるかということを一生懸命考えます。そして、現場でいろいろなやりとりをするわけですけれども、威力業務妨害に当たるかどうかというのは、現場でのやりとりを通じながら、その場で判断をしながら進めていくのが実際のやりとりなんですが、共謀段階で犯罪の対象となるということになると、威力業務妨害をやろうとした、つまり、マンション建築を何としても阻止するぞ、こういうことを話し合っただけでこの犯罪の対象になり得る、そうすると、意見表明自体が犯罪の対象となるというゆゆしき事態になります。 そうではないという意見をよく聞きますけれども、この法律の規定を見ますと、別にその人がある暴力団等の組織集団に属しているかどうかは問題ではありません。二人以上が法律に決められている犯罪をやろうと計画をし、準備行為を行った、そしてその際にその二人以上の集団が犯罪を行うために専ら集まっているというふうにみなされれば、これは共謀罪の対象となるというのがこの規定なんですね。それを無視して、一般人は関係ないとか、組織的犯罪集団に限られていると答弁するのは、私は極めて不誠実だというふうに思います。 最後に申し上げたいのは、今言いましたように、共謀罪の新設というのは、極めて強力な意見表明に対する抑止力をもたらします。 この点に関して、法案審議の中で、よく政府が一般人という言葉を使います。しかし、法律の中にはこの一般人などという言葉はないんですね。私が言いたいのは、政府が、あなたは一般人、あなたは一般じゃないという仕分けを平気でしゃべっているこの状況、これ自体が、憲法の個人の尊厳だとかいう点から見て非常に問題ではないかというふうに思うわけです。 したがって、私は、共謀罪の創設というのは、単に新しい法律が一つできるということではなくて、警察の活動領域そのもの、活動の仕方そのものを大きく拡大していく。そして、犯罪の発生、あるいは結果、危険の発生もない段階で捜査をするためには、話し合い自体、あるいは準備行為と言われる行為が何を目的としているかということを探らなければいけなくなります。そうすると、既に警察からは盗聴法の拡大、会話の傍受、あるいは潜入捜査などを要望する意見が出ておりますけれども、必ずそういうさらに権利侵害の高い捜査手法を求める可能性は否定できないというふうに思います。 皆さんが、ぜひ、こういう具体的な今の警察の活動、そして共謀罪の創設がもたらす状況を具体的に考えていただいて、一体どういう法律をつくろうとしているのかについて責任を持った議論をお願いいたしまして、私の意見陳述を終わります。 ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、指宿参考人にお願いいたします。
○指宿参考人 成城大学の指宿です。 私は、専門が刑事訴訟法ですので、手続法の観点から意見を申し述べさせていただきます。 カラー刷りの本日の陳述のレジュメと、資料を三種類、資料一、二、三を用意しております。陳述はこのカラーのレジュメに沿って申し述べさせていただきます。 最初に、一枚目の下に写真が張りつけてありますが、左側の二枚は監視カメラです。よく御存じのものですけれども、これは大阪市西成区、いわゆるあいりん地区に警察が設置している監視カメラでございます。これは警察官がカメラを操作することによって利用されています。真ん中の二枚ですが、上がGPSの発信装置で、これが最近話題になりました、車両等に取りつけてその移動履歴を警察が把握していたという装置でございます。下のものは、先ほど加藤参考人が触れられましたけれども、大分県で発見された監視カメラと同種のものであります。これはかなり、人の手をかりないでも機械が移動であるとかその出入りを録画する、そういう装置です。さらに右側のもの、これはそうした機器の設置すら不要の最新のテクノロジーでございます。 きょうは、こういった技術の進化に伴ってどういう捜査手法が使われているかということもお話ししたいと思います。 めくっていただきまして、さまざまな捜査手法が今後もしテロ等準備罪の捜査を進めるとすれば導入されるのではないかと予想されますところ、非常にたくさんございますので、きょうは、供述を取得するための取り調べと組織等に潜入する秘匿捜査、そして人々の行動を監視する捜査手法について意見を申し述べたいと思います。 まず最初に、取り調べですけれども、その下、これは、世界各国の被疑者の取り調べの録音、録画をめぐる範囲を一覧できるように私が開発した可視化の概念マップと言われるものです。縦軸のY軸は、一回の取り調べでどの程度録音、録画することが義務づけられるかということを示しております。右側のX軸は、どれぐらいの対象犯罪が録音、録画の対象になっているかということです。 今般の刑事訴訟法の改正におきまして、我が国では、記録対象を裁判員裁判対象事案と検察独自捜査事件に絞っているところですけれども、この場合、Y軸は、全ての取り調べを録音、録画するとしても、対象犯罪は非常に限定されております。私の計算では我が国で行われる取り調べの〇・二%程度ではないかと思いますが、非常に、もうほとんどゼロに近いX軸の値になると思いますので、左上になります。可視化先進国と言われているイギリス等では右上に位置するのではないかと思います。 言うまでもありませんけれども、テロ等準備罪の政府側が出された対象犯罪はほとんどが可視化の対象になっていない、現状ではそうなっておると思います。 では、取り調べを適正化するには、こうした可視化の範囲を広げることは言うまでもありませんけれども、可視化先進国であるイギリスにおきまして、多様な取り調べの規制が行われてまいりました。 三ページ目の上段ですけれども、その法律、PACEといいます。私はPACE効果と呼んでいるんですが、なぜイギリスで取り調べの規制が成功したかといいますと、録音、録画だけではございません、弁護人による取り調べの立ち会い、要支援被疑者への支援者の付き添いといったものが相まって取り調べの適正化が成功したと言われています。 では、取り調べの規制を成功させるには、さらにどういうことが必要かということを考えてまいりたいと思いますが、下の段に参りますけれども、オーストラリアの警察の法の専門家であるデービッド・ディクソン教授は取り調べを適正化するために五つの提案をなされていますが、本日は四番目に掲げています取り調べ官の訓練というところに着目してみたいと思います。 取り調べの録音、録画が進みますと、その媒体に記録されている取り調べ官の尋問技術の巧拙、うまい、下手が如実に記録されることになります。そこで、世界各国では、取り調べ官の訓練、いわゆる取り調べ技法の開発が非常に進んでおるところです。 私は、イギリスの取り調べ技術訓練所という専門的な訓練所の視察に参りましたけれども、イギリスでは、取り調べの技法に応じて一級から五級まで階級が設けられておりまして、テロ犯や連続殺人犯の取り調べはこの五級を獲得した者だけができることになっております。また、アメリカでも、テロ犯等の取り調べについては専門的なチームが当たっているところですが、我が国ではこのような技術が開発されているのか、私は存じ上げません。 では、続いて、ページをめくっていただきまして、二番目、秘匿捜査について御紹介いたしたいと思います。 イギリスの例でございますが、イギリスでは二〇〇〇年に警察捜査規制法という法律ができまして、ここで行動監視や身分秘匿捜査について明確な根拠規定が設けられました。さらに二〇〇五年には、そうした身分秘匿捜査、つまり潜入捜査官を、身分を秘匿したまま公判手続で匿名証人として証言させることを許容する法律が生まれました。 ところが、二〇〇八年、当時の最高裁、現在の最高裁ですが、貴族院デービス事件判決という判決の中で、この匿名証人手続について、これが欧州人権規約に抵触するという驚くべき判断を示したわけです。 その三日後に、イギリス議会は緊急立法をしました。というのは、そのデービス判決の時点で三百八十人の匿名証人が公判待機しておりまして、そのうちの十分の一が匿名捜査官であった。つまり、この法律が無効になってしまうと彼らの身分がばれてしまうということで、非常に危険が及ぶということで緊急立法したわけです。それで、匿名証人を許容する手続が新たにつくり直されました。 しかしながら、その後、この潜入捜査官によって起こされた非常に恐るべき民主主義の破壊例が発覚したのが、二〇一一年のケネディ事件と言われるものです。 これは、民間の環境NGOに七年間おとり捜査官が潜入し、違法活動を誘発していた、犯罪行為を誘発していたというスキャンダルでございます。この七年間にわたって、イギリスの警察は何と、二十万ポンド、当時の金額にして三億円以上をこの秘匿捜査に費やしていたと言われております。 二〇一三年にイギリスの下院の内務委員会はこの調査報告書を出して、現在の潜入捜査に関する手続では不十分であるので、立法するように勧告しているところでございます。 三番目に進みたいと思います。捜査手法の監視です。 こちらにつきましては、資料の二に詳細な私の考えあるいは知見を述べておりますので、こちらを御参照いただきたいと思います。 まず、今般、三月十五日に最高裁判所の大法廷で判決が出たところでございますが、車両のGPS利用の追尾やあるいは人に対する長期間の監視撮影など、テクノロジーを利用した捜査手法が各国でも行われています。しかし、重要なことは、こうした捜査手法について法的な規制がきちっと整備されているところでございます。 例えば、カナダでは、テレビカメラあるいは他の同種の電子機器の手段によってプライバシーに対する合理的期待を有しているような状況で監視をする場合の令状が定められております。アメリカのニューヨーク州でも、盗聴やビデオ監視令状が規定されているところでございます。オーストラリアのニューサウスウェールズ州でも、監視装置規制法というもので、一般的に承諾のない利用が禁止され、こうした利用についてはオンブズマンが監督するということになっております。 各国、事前規制や事後規制、あるいは令状の有無についてはまちまちでございますけれども、立法府によってきちっとこうした監視捜査に対する規制がなされているということを強調しておきたいと思います。 では、こうした監視捜査の先にあるのは一体何なのかということでございますけれども、これが先ほど申し上げました、今日では設置等の手間すら不要な最新のテクノロジーが用意されているところです。 きょう御紹介するのは、ISMIキャッチャー、私は偽装携帯基地局と訳しておりますけれども、先生方がお持ちのスマートフォンや携帯電話にはSIMカードが入っておりますが、このSIMカードには全て固有の番号が付されております。これが、インターネット・サブスクライバー・モバイル・アイデンティフィケーション、略称ISMIです。 このISMIを全く自動的に取得する装置がございます。これがISMIキャッチャーです。一定エリアで稼働する移動通信端末を通信事業者の協力なくキャッチできますので、令状を持って通信キャリアのところへ行く必要がございません。例えばこの部屋にこのISMIキャッチャーを置けば、先生方あるいはここにおられる全ての方の携帯電話を把握することができる、そういう機械でございます。 これは、もともと軍事技術として開発され、諜報機関や法執行機関によって広く利用されるようになりました。一番有名なのが、冒頭、写真を添付いたしましたアメリカのハリス社によるスティングレーというマシンでございます。これにつきましては資料三に詳しく紹介してございます。アメリカではこれが非常に問題になりまして、法執行機関の利用について問題になりまして、現在、各州で立法による規制が始まっているところでございます。 では、最後のページをおめくりください。 今般の最高裁判所の大法廷、三月十五日の判決が何を意味しているのか、最後に申し述べたいと思います。 三月十五日の判決は、憲法三十五条が保障する住居、所持品、書類の法的保護に加えまして、それらに準じて国民をプライバシー権で守るべき新たな私的領域というカテゴリーを承認しています。そして、今回争点になりましたGPS捜査のような長期にわたって人の行動を追跡し記録するテクノロジーを利用した捜査手法によって私的領域が侵されるということを明らかにし、そうした捜査手法を立法によって規律することを国会に求めたのでございます。 すなわち、最高裁判所の大法廷判決の最も重要な示唆というのは、任意捜査の名のもとにこれまで我が国で繰り広げられてきたさまざまな監視型捜査に対して、立法義務を国会に明示している点ではないでしょうか。諸外国ではそうした捜査手法につきまして法的規律を進めているのは申し述べたとおりでございます。 GPS捜査や監視捜査の実態解明をまず行った上で、どのような規制手法が妥当なのかを国会の場において御審議いただきたいと思います。 最後になりますけれども、我が国でこれまでもう既にテロ犯罪、テロ行為が行われてまいりました。どうしてそうしたテロ行為、テロ犯罪を防ぐことができなかったのか、そういった国を挙げての御議論あるいは研究調査というものを私は目にしたことがございません。 そうした過去起きた事件に対して、どうして未然に防ぐことができなかったのか、また犯人を突きとめることができなかったのか、例えば、地下鉄サリン事件をなぜとめることができなかったのか、なぜ赤報隊と言われる人たちを逮捕できなかったのか、なぜ警察庁長官銃撃事件の犯人を突きとめることができなかったのか、そういった反省なしにこうしたテロを防ぐための法案を用意するということは、私は合理性を欠いていると思います。 二〇一五年十一月にパリで悲劇的な同時多発テロがございました。次の年、二〇一六年二月には、フランス議会は、どうしてそれを食いとめることができなかったのかということについて検証を行い、それに立った上でのテロ対策というものを打ち出しております。 ぜひ国会の先生方におかれましても、過去の経験に学んで、この国でどのような実体法の整備と捜査手法の整備が必要なのかという冷静な御議論をお願いして、私の意見にかえさせていただきます。 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。 —————————————
○鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。
○山田(賢)委員 私は、自由民主党の山田賢司でございます。 本日は、五名の参考人の方々、お忙しい中お越しいただき、また、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。これまで委員と政府のやりとりを重ねてまいりましたけれども、それだけではなく外部の方からの貴重な御意見を賜ること、大変参考になります。本法案の意義、論点についての理解が大変深まったと改めて感謝申し上げます。 さて、それでは早速質問に入らせていただきます。 私は、法曹資格を持っているわけでもない、いわゆる法曹資格から見た一般人でございますけれども、一般人を代表して質問させていただきます。 刑事法制を議論する際に、犯罪の抑止と人権の保護のせめぎ合いということがよく言われるんですけれども、冤罪があってはならないというのは当然のことなんですけれども、実際に犯罪を犯した者であっても、一定の人権を保護する必要性は認められるだろうと思っております。 ただ、国家権力が人権を侵害するという観点ばかりが注目されているんですけれども、実は、犯罪によって命を奪われる被害者の方々、あるいは、一生懸命お金をためて、ためた貯金をだまし取られる方々、こういった何の罪もなく平穏に生活している方々が、ある日突然命を奪われたり財産を奪われるような、こんなことがあってはならないと思っております。 人権といえば聞こえはいいんですけれども、犯罪集団の人権に配慮するのもいいんですが、やはり私は、犯罪とかかわりのない一般の方々の人権を守る、被害に遭ってから救済をするとか、そういうことはもちろんなんですけれども、被害を未然に防止するように最大限努力するということを願うものでございます。 私を含めた普通の一般人なら、組織的な犯罪集団が犯罪を計画しているから、その時点で捕まえてくれ、こういうふうに思うわけでございますが、そこを一定の配慮をして、本法案では、準備行為という何らかの外形的な行為があらわれたというときにそこを取り締まるということで、これはぜひやってほしいと願うのが私なんかの考えでございます。 この点、木村参考人、民事暴力対策にも取り組んでこられたということでございますけれども、被害者の立場から、犯罪を未然に防止する、とりわけ組織的な犯罪の未然防止の必要性について、改めて御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
○木村参考人 今まさに先生がおっしゃっていただきましたとおり、犯罪というのは、一回生じてしまいますと取り返しのつかないものになります。私どもが関与させていただいた暴力団組長訴訟に関する事件でも、自分の娘さんを暴力団に殺されたりとか、そういうことがたくさん起きています。暴力団に関して言えば、そういう抗争をどうやって抑え込むかというのが非常に重要な事柄になっておりまして、御承知のとおり、暴対法の改正等もそれによって行われたわけでございます。 したがいまして、今御指摘いただきましたとおり、犯罪を事前にどうやって抑止するか、これは極めて必要なことだと思っております。 以上です。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 そこで、この議論を聞いておりまして、日弁連さんからいろいろな御意見をいただいて、反対だという御意見をいただいているんですけれども、これは海渡参考人にぜひお聞きをしたいんですが、日弁連というのは、テロ準備罪、いわゆる共謀罪とおっしゃっておられますが、これに対して反対の意見を表明されているんですが、日弁連の中でも違う意見、例えば木村参考人とかのようにこの創設に賛成の立場の弁護士さんもいらっしゃるんでしょうか。この辺について、認識を簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
○海渡参考人 もちろん、木村先生のような御意見があることは、木村先生が来られていますから明らかですけれども、先ほども申し上げましたが、日弁連は、その理事会で十分議論して、二〇〇三年の段階から、二〇〇六年、二〇一二年、そしてことし、共謀罪法案についてはずっと反対という意見を表明してきております。 さらに言うと、全国の単位会の中で、全単位会というふうにきょう言えればよかったんですが、一つだけまだ出ていないところがあるんですが、ここも間もなく出るのではないかと私は期待していますけれども、各会で議論した結果、やはりこの共謀罪法案については行き過ぎていると。 もちろん、先生がおっしゃったように、日弁連の中には、民事暴力だけじゃなくて犯罪被害者の対策のための委員会などもありますし、昨年、死刑の廃止の問題を議論したときにも、犯罪被害者の弁護に当たっておられる方々と随分討論しながら意見をまとめていったんですね。 ですから、先生がおっしゃるように、犯罪被害に遭われる方の人権、それも非常に重要であることは言うまでもないことですけれども、だからといって、行き過ぎた法執行機関の活動によって人権が侵害されてもならない、バランスのとれたところを目指すべきである。 そういう意味で、民進党さんが今回出されているものというのは、二百七十七に比べると、七十四個の未遂以前の段階ですから、数が少ないとおっしゃるかもしれませんが、二〇〇七年には百二十八まで自民党の小委員会案は減っていたわけですから、その差は五十個ぐらいなわけですよね。だから、きょう、あと三つぐらい入れたらどうかという御提案が椎橋先生の方から出ていますけれども、どう考えても非常に危険性の高い類型というものがこの共謀罪法案の中には含まれていますから、そういうものを除くということは、ぜひとも御議論いただいて、委員会で一致していただければなと思います。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 そこで、改めて木村参考人にお尋ねしたいんですが、木村参考人のようにこれはぜひとも創設すべきだというような御意見というのは、日弁連さんの意見表明なり決議なりの過程においては反映されなかったのか、あるいは、こういったことを言う機会があって、十分議論して、その上で日弁連全体としてこの意見表明になっているのか、この辺をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
○木村参考人 日弁連が今回、反対の意見書を出すに当たって、さまざまな内部手続が行われるんですけれども、それに対して私は言いたいことがたくさんあるんですが、ここに出席するに当たりまして、執行部の方から、日弁連の内部手続については一切口外してはいけないというふうに言われましたので、そのお答えについては、ちょっとお答えできかねます。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 そこが私は大変不思議なところで、弁護士さんというと、まさにコンプライアンスですとか企業でいう組織のガバナンスとかということを一生懸命見ておられる方々が、その中が、意見の集約をする過程において民主的な手続がとられているんだろうか、あるいは、意見の形成過程をオープンに開示されるんだろうかというアカウンタビリティーの問題とか、こういったものがしっかりしているのかなと。これは、余り言うと、組織のことだから言えないということなので。 私も、弁護士さんは御見識の高い方をたくさん知っておりますけれども、どうしても、意見書が出てくると、何でこういう意見になるのかなと疑問に思うようなところがたくさんあります。 もちろん、それは、たとえ犯罪の被疑者であろうと人権は守らないとという人権保護の立場に立っておられるということはよくわかるんですけれども、であれば、その意思決定過程をオープンにしていただいて、こういう賛成の意見、でも、その賛成の意見に対してはこんな批判があるよということを開示していただいて、なるほど、プロフェッショナルな法律家の方々はこういう議論をされて、こんな意見を出しておられるんだなというのをぜひ開示していただきたいなというふうに考える次第でございます。これは、余り言っていてもいかぬですから、次に質問をさせていただきます。 これまでずっと議論してまいりましたが……(発言する者あり)
○鈴木委員長 御静粛に願います。
○山田(賢)委員 与党はもちろん、野党の先生とも意見が一致しているところは、TOC条約にはとにかく入らないといけないということでは反対の方はいらっしゃらなくて、論点としては、この政府が出している法案でTOC条約へ入るのか、それともこれがなくても入れるのか、これはさまざまな御意見があろうかと思います。 そこで、今度は椎橋参考人にお聞きしたいんですけれども、民進党さんとか海渡参考人が御主張されるように、現行法のまま、何ら法整備がなくてもTOC条約に入ることは可能なのか、あるいは、先週金曜日に民進党さんが対案を提出されましたが、この法案によってTOC条約の定めるような義務を満たすことはできるとお考えでしょうか。お聞かせいただけますでしょうか。
○椎橋参考人 お答えいたします。 TOC条約は、第五条一項(a)で、参加罪または共謀罪を立法することを義務づけております。これはこの条約の一番のコアの部分でありますから、したがって、予備罪を追加するという形ではこの条約を満たすということにはなりません。 そうでなければ、今までもいろいろ、十数年もう議論を重ねてきているわけでありまして、OECD等からもいろいろな要請があって、もしそのままでいいんだったら、日本はどうぞこのまま入ってくださいというような声が起こっても全然おかしくないんですけれども、やはりそうではないというのは、この条約の考え方で、起草者の考え方からもその点は、先ほど説明しましたけれども明らかであると思います。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 今の話が物すごくすとんと入って、多分そうだろうなと思うんですけれども、であれば、なぜ、日弁連さんの意見では、テロ等準備罪を創設しなくてもTOC条約に加盟ができるんだという議論になっているのか。この辺が、ぜひ日弁連さん、もっとはっきりと言っていただきたいなと思うんです。どういう議論、先生方のような、木村参考人あるいは椎橋参考人のような意見があるけれども、こうだという反論を聞けば、なるほど、それに対してはこういう批判があるのかということがわかるんですけれども。 そこで、一つお聞かせいただきたいのは、論点の一つで……(発言する者あり)やじらないようにしてください。まず、論点の一つとして、パラグラフ五十一の解釈について、誤訳があるということを木村参考人が御指摘されました。資料の中に載っているということなんですけれども、これは専門的なことで、資料を見られる方、見られない方もいらっしゃるので、議事録に残す意味でも、改めてこの立法ガイドの解釈、日弁連さんはどう誤訳をしておられたのか、この点について簡単に御説明いただければと思います。
○木村参考人 今回、資料二ということで、英文についての私の方の考え方を御説明させていただいています。 日弁連が恐らく理解をしているのは、通しページ八分の六というところがありますけれども、「without requiring the introduction of either notion--conspiracy or criminal association--」そういう部分があるんですけれども、これを either conspiracy or criminal association という形でくっつけてしまって、全否定というんでしょうか、その両方とも、両方の犯罪の導入を要件とすることなくというふうに間違って解釈されたんですね。 まず、この構文を見たらわかりますように、「without requiring the introduction of either notion」まずそこで区切られていて、その「either notion」の中の説明を「conspiracy」と「criminal association」がしている、そういう関係にあるわけなんですね。したがって、この文章だけを見ても、いずれかの考え方の導入を要件とすることなくというふうにまず読めると思うんですね。 それ以前に、「The options」というのがありまして、「The options」というのは、その三行上の「The two alternative options」という言葉があるんですけれども、「alternative」というのは、一般に御理解していただいているんだと思うんですけれども、代替的または択一的という、そういう言葉があるわけなんですけれども、そのいずれかのオプション、いずれかを採用するオプションということがこれははっきりしていると思うんですね。その「The two alternative options」を受けて「The options」というのが次に来ていますので、その二つのうちのいずれかのオプション、第三のオプションがあるという意味ではなくて、その二つのうちのいずれかのオプションがここで認められている、そういう解釈にしかなり得ないというふうに私の方は思っているわけです。 全訳もつけさせていただきましたけれども、一番問題となっている第四文につきましては、このオプションは、関連する一方の法的概念を有しない国々において、当該一方の考え方、つまり共謀罪または犯罪結社罪の導入を要件とすることなく、組織犯罪グループへの有効な措置を認めているということでして、途中の文にもありますけれども、ある国々では共謀罪しかない、ある国々では犯罪結社罪しかない、そういう場合に、その一方があればいいんですよ、その両方を規定する必要はないんですよということを規定しているということは条文として明確だ。それを、冒頭申し上げましたように、いわゆる「either」「or」、中学生、高校生が英語で習うような言葉なんですが、それをくっつけて訳してしまって、そのどちらも要らないんだとこの部分だけを取り上げて解釈したところが誤訳であるというふうに思っています。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 約束というものは守らないといけないというのは、条約に限らず日常社会でも原則でございます。その約束を勝手な解釈をするということは許されないと思っておりまして、わかりやすい例で言うと、あした、みんな八時に集合ねと言って、集合時間に遅刻してきた人が、私の時計ではまだ七時五十分なんだから遅刻じゃないよというのが通用するかというと、多分通用しないと思うんですね。やはりこの辺はしっかりと、国際的にも信頼を失わないように、条約が求めていることを履行することが大事だと思っております。 続きまして、テロ等準備罪を設けると内心の自由が侵されるとか人権侵害の法案だとかとよく言われるんですけれども、そうすると、日本を除くほとんどの先進国が既にこのTOC条約を満たす国内規定を設けているということは、こういう国々というのは内心の自由が保障されないような人権侵害国家なのかという疑問が生じるんです。 これは、では、椎橋参考人にまたお聞きしたいんですけれども、他の先進国、こういった共謀罪、合意罪、参加罪といったものを設けている国というのは、内心の自由が奪われているというような批判は出ているのでしょうか、お聞かせください。
○椎橋参考人 英米圏は共謀罪、それからヨーロッパ大陸諸国は参加罪を設けている国が多いんですけれども、いずれの国においても、特に英米を中心に申し上げますと、コンスピラシー、共謀罪について、捜査され、起訴され、裁判に付されている事件は相当数ございます。もちろん、有罪になったり無罪になったりということはございますけれども、この共謀罪自体は法制度の中に定着していると言っていいと思います。 この共謀罪があることによって人権侵害が増しているとか、あるいは共謀罪自体が憲法に反するとか、そういった判断は下されておりません。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。それを聞いて安心いたしました。 続いて、これは加藤参考人にお聞きしたいんですけれども、いろいろな、監視の例とか、大変勉強になりました。こういうのはやはり気をつけないといけないことだと思っておりまして、私、賛成意見ばかりでなくて、政府に対する批判の意見、そういったことも聞いて、問題があるところについては十分対応をとっていかないといけないなと思っておるんですが、それでは、民進党さんが出しておられるこの法案、これだと監視社会にはならないのかどうか、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。
○加藤参考人 民進党の案は予備という限定をつけておりますから、少なくとも結果発生の危険性はあるという段階を処罰の対象にするということですから、一般に、計画と準備行為だけで包括的に犯罪とする類型とは全く違う発想だというふうに私は理解しております。もちろん、警察がどういう濫用をするかは法律だけでは決まりませんけれども、少なくとも、今の政府案と比べれば、全然レベルが違うというふうに思っております。 それからあと、実際に警察が使うことを考えると、包括的な共謀罪の創設というのは、やはり、先ほども言いましたように、捜査のスタートラインを大幅に前倒しするということと、捜査に入ることが正しかったのかどうかということを客観的に判断できる痕跡だとか、あるいは外から見て明らかにこれは危ない、こういう客観的な縛りがないものですから、警察の判断で捜査に入って、私がさっき言ったようなさまざまな監視活動、情報収集活動などが行われたときに、それを客観的にチェックできない、私が言いたいのはそこなんですね。捜査の開始時期について、警察の判断を規制するそういう客観的なものがない、だから、私は、共謀罪ができることによって捜査権限の濫用のおそれが高いというふうに言っているわけです。 これは、現実に警察がやっていること、しかも、さっき申し上げませんでしたが、警察の監視活動は野党だけではありません、与党の中にも当然行われているということを前提に申し上げました。 以上です。
○山田(賢)委員 ありがとうございます。 そのとおりで、これは私も、そのとおりと言ったのは、だから、この法律、テロ等準備罪を創設しなくても、これはあってはならないことなんだけれども監視というのが行われているとすれば、この法律をつくるかつくらないかではなくて、今そんなことをやっちゃいけないよという議論をしないといけなくて、今御指摘になられたのは、いみじくも加藤参考人がおっしゃられたように、自公案、政府・与党案よりはましだということなんだけれども、もし自公案が出ていなければ、民進党さんがこの法案をもし出していたとするならば、それは監視が強まる、そういう理解でよろしいでしょうか。
○加藤参考人 いや、ちょっと正確に理解していただいていないようなんですが、予備というのは今もある犯罪なんですよ。ですから、一定の重大な結果をもたらす犯罪について予備を設けるかどうかというのは、その予備行為というのは、その行為自体に危険性が認められなきゃいけないから、それは十分僕は考慮に値するし、警察の権限濫用という点から見れば、今の政府案とは質的に違う発想に立っているというふうに先ほど申し上げたつもりです。 以上です。
○山田(賢)委員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきますが、ぜひ被害者の人権に配慮して、やはり、犯罪の未然防止、起こってからの救済も大事ですが、未然に防止できるように、とりわけ組織的犯罪集団による重大犯罪が行われないように、本法案の成立を願って、私の質問を終わらせていただきます。 本日はどうもありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。 本日は、五名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。 質問に入る前に、まず、海渡参考人は先ほど、森林法などはテロ等の組織犯罪対策のためになるんだろうかというような趣旨のことを、きょう資料をいただいたので、私も詳細にこの内容を把握しているわけではありませんけれども、そういう趣旨のことをおっしゃって疑問を呈されたと思います。 この点については、先日、五月十二日の当委員会におきまして我が党の浜地委員がこの点について質疑をしております。かいつまんで言いますと、森林法における保安林の区域内における森林窃盗については、実際に、良質の山砂を盗掘して販売する目的で、保安林の区域内である国有林で長期間にわたり継続的に従業員等を使ってユンボなどの重機を用いて山砂の掘削を繰り返して、時価約四千万円にも相当する五万立方メートルを超える山砂を採取した事例もある、このように紹介をされております。 これ以外にも、対象犯罪につきましては、浜地委員初めさまざま、野党の委員の方も言われていますし、与党の委員も質疑をしておりますので、反対派の中心者としてこれまで長年御奮闘されてきた先生に敬意を表しながら、ぜひこれらの議事録についてもまた後ほど見ていただければと思います。(海渡参考人「議事録は読んでいますよ」と呼ぶ)ありがとうございます。 では、質問に入らせていただきます。(発言する者あり)
○鈴木委員長 御静粛に願います。不規則発言はおやめください。
○國重委員 まず、今回の法案では、かつて廃案となった共謀罪に比べまして構成要件を厳格化して、テロ等準備罪の主体を結合の目的が重大犯罪を実行する団体である組織的犯罪集団に法文で明確に限定して、行為は、具体的、現実的な計画のほか、計画に基づく実行準備行為を要するとしております。いわば、先日の参考人質疑でも、お越しになられた井田参考人が、三重の縛りがかかっているというようなことをおっしゃっておりました。 このことを踏まえた上で、まず五名の参考人の皆様全員に、事例を通して基本的なことをお伺いしたいと思います。きょうの参考人質疑は二十分という限られた時間でございますので、五名に当てますので、まず結論のみ簡潔にお答えいただきたいと思います。 事例を言います。居酒屋で労働組合の役員が、会社の幹部は自分のことしか考えないとんでもないやつだ、一発殴ってやるかと酒の勢いで冗談で話し合い、意気投合した場合。 ただそれだけでテロ等準備罪は成立するか、私は当然成立しないと思いますが、成立するか成立しないか、結論のみ、五名の参考人それぞれにお願いいたします。では、木村参考人からお願いします。
○木村参考人 成立しません。
○椎橋参考人 成立しません。
○海渡参考人 幾つかの要件をつけ加えれば成立するかもしれませんが、その段階ではまだ成立しないと思います。
○加藤参考人 結論だけ申し上げます。それは調べてみなければわからないというのが多分現実的な結論だと思います。
○指宿参考人 逮捕、勾留後、どのような取り調べでどのような供述を引き出されるか確定していないので、この御質問にはお答えすることはできかねます。
○國重委員 今それぞれの参考人から答弁いただきましたけれども、私はこれは明らかに成立しないと思います、今の事例であれば。まず組織的犯罪集団に当たらない、具体的、現実的な計画もない、また計画に基づく実行準備行為もない。テロ等準備罪、また反対派の方が言われるいわゆる共謀罪が成立するわけがない、これは私は争いのない明白なことだと思っております。 しかし、例えば先ほどの事例でテロ等準備罪が成立するといったような、明らかな誤った法案の説明を仮にチラシのような配布物あるいはインターネットなどで流布した場合、私は、国民の皆さんに本当は犯罪に当たらない行為が犯罪であるかのような誤解を与えてしまって、かえって自由な言論に対する萎縮効果が生じてしまうことになるのではないかと思いますけれども、こういったことがあった場合に言論が萎縮すると思うのか、全くこのようなことでは萎縮しないと思うのか、五名の参考人それぞれに、また結論のみ、次は指宿参考人からお願いいたします。
○指宿参考人 質問の御趣旨がわからないので、もう一度お願いします。
○國重委員 要するに、法案の内容と異なるような、本来は犯罪が成立しない事例を犯罪が成立するというようなことで、事実と異なるような内容を、そういった情報を流布したような場合、これは国民の自由な言論等を萎縮させる効果が生じるんじゃないかというふうに私は思います。 例えば、よく言われる、居酒屋で、上司を殴ってやろうか、そうだそうだ。これで犯罪が成立するというような、かつては荒唐無稽なこういった主張がされましたけれども、こんなものが犯罪になるというようなことを言っていれば、それは、国民の皆さんは法案の中身は見ないですから萎縮するのは当然だと私は思います。それでも答えられないと言われるのであれば、代表して木村参考人にお願いします。 では、木村参考人から順にお願いします。
○木村参考人 今の國重先生のお話、非常に大事なところを含んでいる点もあると思っていまして、今回、テロ等準備罪というのは、団体でなければだめである、それから組織的犯罪集団でなければだめである、そういう構成要件が前提になっているんですけれども、まさに今御指摘されましたとおり、世間では居酒屋で何か犯罪的なことを話せばそれで処罰されるというようなことが行き渡ってしまっていますので、その誤解を解くことは非常に重要だと思っています。 その誤解を解かないままに今回のテロ等準備罪が通過したときに、国民の方が誤解をしてしまう、それによって萎縮が起きる、今そういう趣旨でおっしゃっていただいたんだと思うんですけれども、国会の審議の中では、そういうことはないんだ、先ほどみたいな中途半端な意見ではなくて、居酒屋でのそういう単なる話し合いではテロ等準備罪は成立しないんだということ自体は明確にしていただきたいと思っています。
○國重委員 済みません、これから結論のみ言っていただきます。ちょっと時間の関係で、ほかの質問を用意していますので、結論のみでよろしくお願いいたします。
○椎橋参考人 マスコミが事実を、法案の中身を正確に伝えて、そして判断するのは国民だというのが報道のあり方だというふうに思います。 私も、先ほど先生が言われたように、事実とは違う、犯罪が成立しないにもかかわらず成立するとか、あるいは成立するおそれがあるという記事がたくさん出ております。国民の意見がどうであるかということを判断する上でアンケート調査を行っておりますけれども、正確な事実を伝えていないためにアンケート調査がぶれているというようなことがあって、それは大変私は危惧している。マスコミはもうちょっと事実を正確に伝えるということを中心にしていただきたいという感想を持っております。
○海渡参考人 どんな場合に適用されるかということについては、私が、きょうの公述要旨の三ページに七つほど例を挙げておきました。こういうケースについて聞いていただければいいと思うんですけれども……(國重委員「まず、萎縮効果が生じるかどうかだけ。質問に対して答えていただけますか」と呼ぶ)いや、実際に、基地建設に抵抗している市民団体に威力業務妨害罪が適用されております。労働組合に対して強要罪が適用される場合もあると思います。 そういう意味では、具体的にどんな場合に適用されるかを議論するということはとても大切なことで、そういう議論自身をしてはいけないかのように言われることに私は賛成できません。
○加藤参考人 私たちは、法案の内容を素直に法律家として読んで、どこまであり得るかという想定をして正確な議論をしているつもりです。むしろそこをネグレクトして、あり得ない、あるいは一般人は対象になり得ないと断言される議論こそ、誠実な議論ではないということを申し上げたいと思います。
○指宿参考人 例示された居酒屋での会話の対象犯罪は、成立した改正刑事訴訟法の中では取り調べの録音、録画義務の対象外ですので、どのような取り調べで、どのような供述がそこから引き出されるのか、テロ等準備の計画があったというところまで供述が引き出されかねませんので、しかし、我々はそれを事後的に何ら検証することができませんので、私は、それは萎縮効果を与えるような例示ではなく、適切な例示なのではないかというふうに考えます。
○國重委員 ありがとうございました。 それぞれの参考人の御意見を聞きましたけれども、私は、多分皆さんと同じで、国民の自由な言論に悪影響を及ぼすような、萎縮効果を及ぼすようなことはあってはならない、これは恐らく賛成派、反対派、共通の願いであるんだろうというふうに思います。私は、今のような事例は善良な国民の皆さんに萎縮効果をもたらすんじゃないかというふうに懸念しております。 私の手元にビラがございます。ここには先ほどの事例のようなことが書いてあります。何と書いてあるか。酒場で労働組合の役員が、会社の幹部は自分のことしか考えないとんでもないやつだ、一発殴ってやるかと酒の勢いで冗談で話し合い、意気投合したら、その後、実際には何もしなくても共謀の罪になります、まさに冗談も言えない共謀罪です、このように書いてあります。 先ほどの言っていただきました意見、さまざまな意見がありましたけれども、私は明らかに本法案の内容とは異なるものになっているというふうに思います。これは断言しております。 これは、本年四月十五日に共謀罪NO!実行委員会というところが行った「共謀罪はいらない!新宿駅西口大街宣」で配布されたチラシで、海渡参考人はこの実行委員会のことについて御自身のツイッターでも触れられておりますので、恐らく御存じのことかと思いますけれども、実行委員会のホームページで誰でも閲覧、ダウンロードできるようになっております。私もきのう拝見させていただきました。 この実行委員会の方々というのは、私は恐らく真面目で善良な方々が多くいらっしゃるんだろうと推察をしております。ただ、このチラシには、国民の皆さんに対して誤解を与えかねない、萎縮効果を与えかねない、こういった内容が記載されておって、私はこの点では著しく不適切なものだと言わざるを得ないと思っております。 ほかにも本法案と異なる内容を書いたチラシはいろいろあるんですけれども、例えば本年四月十六日に京都弁護士会主催で行った「共謀罪の制定を阻止する市民集会in京都」、この市民集会では海渡参考人と前回の参考人質疑でお越しいただいた高山先生が御講演をされたようであります。 この宣伝用のチラシには、共謀罪は考えたり相談したりしただけで処罰しようという法律ですと、これまたテロ等準備罪の法案の内容とは全然違うことが書かれてあるわけですね。さらに、このチラシには、一たび犯罪の計画があると疑われると、誰でも盗聴されたり逮捕されたりする可能性があるとも書かれております。どのような法的根拠でそうなるのかと、私は理解に苦しむところでございます。 ここで、椎橋参考人にお伺いします。時間の関係で、本当に失礼なんですけれども、結論だけお答えいただきたいと思います。現行法あるいは本法案によってもテロ等準備罪は通信傍受の対象にならないと私は認識、理解しておりますけれども、それで間違いないか、簡潔にお答えください。
○椎橋参考人 対象犯罪によるというふうに思います。そして、多くの場合は、要するに現行法の通信傍受の要件に当てはまれば通信傍受ができますけれども、そうでなければできない。新たに今度は通信傍受の範囲を広げるというわけではありませんし、先ほど先生が言われたような事例では通信傍受はできないと思います。
○國重委員 テロ等準備罪について現行法で通信傍受の対象になっていないということであれば、本法案では新たに対象の網にかけるわけではありませんので、対象にならないと私は理解をしております。 また、先ほどのチラシ、計画だけではなくて実行準備行為の嫌疑がなければ強制捜査である逮捕はされませんので、私から言わせると、弁護士会が、これは京都弁護士会が主催のチラシなんですけれども、本当に失礼な言い方になりますけれども、よくぞこんないいかげんなチラシをつくったものだなと。私は感じざるを得ないんです、これは本当の意味で。 私は、先ほど木村参考人がおっしゃったように、日弁連の会長初め、弁護士会には数多くの敬意を表する先生方がいらっしゃいますし、お世話になっている先生方もいらっしゃいます。ただ、そのこととこれとは別問題で、国民の不安をいたずらにあおるようなものに関しては、やはりおかしいものはおかしいというふうに言っていかなければならないと私は思っております。 木村参考人にお伺いいたします。 木村参考人は、民暴対策に約三十年にわたってかかわってこられ、現在は日弁連の民暴対策の委員長をお務めになっております。 この法案を検討するときに、先ほど山田委員からもありましたけれども、組織犯罪によって侵害される被害者の人権にも思いをいたして、しっかり考えていかないといけないと思っております。被害者の人権の観点から、被害者に寄り添って闘ってこられた参考人として、テロを含む組織犯罪と闘うテロ等準備罪の法案につき、先ほどのような、誤った事実によってと私は認識していますけれども、法案に対する国民の不安をあおるような手法についてどのように思われるか、お伺いいたします。
○木村参考人 これは民暴対策委員会の委員長ではなくて個人としての意見ですけれども、先ほどのような誤った表現による反対運動については個人的に極めて遺憾であると思います。
○國重委員 私は、言論の自由を守るためにテロ等準備罪の法案に反対する、これはいろいろな見解、立場があっていいと思うんです。政府に対する批判的な意見もどんどん言えるような社会でなければならないと私は思っております。 ただ、見解とか評価の相違のレベルを超えて、それでは済まない明白な事実、内容の誤り、あるいはデマによって国民の不安をあおり、言論をかえって萎縮させる、このようなことがあれば、もはや本末転倒であると思っております。言論の自由を最大限保障するといっても、国民の言論を萎縮させる風評被害的なものを発生させるような悪質なデマ等が仮にあれば、それを何らの指摘もすることなく漫然と放置したままでは、私は真の意味での国民の自由な言論というのは確保されないと思っております。私は、私の立場で……(発言する者あり)
○鈴木委員長 御静粛に願います。
○國重委員 人権保障の観点から、構成要件の内容を明確化するような質問を、当委員会においても与えられた時間の中でしてきたつもりでございます。 このことについて、先ほど言った共謀罪NO!実行委員会のホームページにおきましても、四月十九日の当法務委員会の質疑に関してこのようなことが書かれておりました。公明党の國重委員は、私たちが問題としている点を次々質問していき、金田法務大臣が答弁しているところの市民の不安や懸念を払拭できた法案であることを立証しようとしていました云々と書いていただいております。 海渡参考人、加藤参考人とは立場の違いがあるものの、それぞれの信念に基づいた活動には私は敬意を表しております。その上で、参考人らが、いろいろな集会とかに参加されておりますけれども、そういった中で先ほどのような事実、内容の明白な誤りが仮に見られたとすれば、国民の言論を萎縮させないという点、これは先ほど言いましたとおり共通の願いであると思いますので、この点でぜひ適切な対応をしていただけますと幸いに思います。どうかよろしくお願いいたします。 質問をほかにも残しましたけれども、要は、私はこれまで当委員会で構成要件の中身とかを聞いてきました。これは人権保障の観点から縛りをかける意味でやってきましたけれども、逆方面でやはり不安をあおるような、こういったものについてもしっかりと指摘をしておかなければならないという観点で本日の参考人質疑をさせていただきました。失礼な点があれば申しわけございませんでした。それぞれの参考人の貴重な御意見に感謝をいたします。 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 民進党、信州長野県の井出庸生と申します。 五人の参考人の皆様、きょうは本当にありがとうございます。 冒頭、五人に伺ったお話から伺ってまいりたいと思います。 最初に指宿先生にお尋ねをしたいのですが、先生は最後に、共謀罪、テロ等準備罪が立法の合理性を欠いているとお話しであったかと思います。また、かつて、ことしの二月には共謀罪の提出に反対する賛同者にもなられていると思うんですが、共謀罪、テロ等準備罪に対する先生の賛否、お考えを一点。 それから、もう一点、先生のお話の冒頭に、監視カメラ、GPSの端末機、携帯基地局、その写真を示されて、こうしたものの導入がテロ等準備罪で予想されると。そういうことを冒頭お話しになったかと思いますが、その理由についても教えていただきたいと思います。
○指宿参考人 第一点の私の反対理由につきましては、きょう申し上げているのと全く同じですので、そうした観点から反対をしております。 二番目の御質問につきましては、テロ等準備罪というのは、すなわち内心を、つまり、行為予定者と言った方がいいのかもしれませんけれども、嫌疑を受けた者の内心を立証しなければならない以上は、供述や行動から、行動は情況証拠になるんでしょうけれども、証拠を収集しなければならないという点で、こうした技術を挙げさせていただきました。 何より、このような任意捜査の名のもとに行政警察活動や司法警察活動の両面で行われている捜査手法について、ほとんどこれまで我が国では法的規制がなされていなかった、海外との比較からこのことを明確に申し上げたいために、きょうは私の陳述内容としております。
○井出委員 ありがとうございます。 私は、最近、携帯の偽装基地局がたしかフランスで立法化されるか、されたかというような論文を読んだときに先生のお名前を拝読いたしました。また、取り調べの可視化の議論の際にも先生の論文を多数読ませていただきまして、きょうはお話を伺えるのを大変楽しみにしておりました。 もう一つお尋ねしたいのですが、きょう私は資料を二種類用意させていただいておりまして、こちらの黄色いもの、下になっているかと思いますが、この黄色い二枚紙の二枚目を見ていただきたいと思います。 捜査手法の関連でございますが、三月七日に金田法務大臣は私との質疑の中で、テロ等準備罪を通信傍受の対象犯罪には全く予定していないと。将来にわたって通信傍受の対象犯罪にしないと明言できるかというふうに言われました、それに対しましては法改正は予定はしておりませんと答えられた。それから、四月の十四日に、これは井野政務官なんですが、いろいろ書いてございます、読んでいただいて、その最後、監視社会になるということはあり得ないというふうに考えておりますと。 指宿先生にお尋ねをしたいのですが、私も、特に例えば先生がいろいろ論文を書かれているGPS捜査、かつてであれば尾行をしなければいけなかった、それがいろいろな技術の進展によって効率化、そしてその対象を拡大することができるようになった。一昨年、昨年の刑事訴訟法改正の通信傍受の大幅拡大についても、かつては携帯電話会社のところに行って立ち会いをしてやってきた、それが法改正によって暗号化という技術が導入されたから、行っても立ち会いしなくていい、行く行くはそのデータを警察本部とかに送っていただいてやれるようになる。 この技術の革新と、それから今先生がおっしゃった共謀罪、テロ等準備罪の内心、行動の立証、そういうことを踏まえますと、私は先生と思いが一緒でして、やはりこうした大臣や政務官の答弁は余りにもこの世界に対する御存じがないのかなと。むしろ、私は、そうした技術の進歩に対して、先生のいろいろな御提案というものは、ではどういうルールをつくっていくのか、どういう歯どめをかけていくのか、そういう観点での問題提起をいろいろされているかと思うんですが、この答弁について先生の御意見をいただきたいと思います。
○指宿参考人 本日は資料として配っておりませんけれども、きょう申し上げたいことは、国会において取り組むべき課題が、大変失礼ながら、多く残されているのではないかということでございます。 裁判所が機能している点でも監視型社会になることはあり得ないというふうに答弁がございますけれども、これは要するに、起訴されて裁判で争われなければわからない、しかも証拠として提出されなければわからないということでございます。 例えば、GPS捜査につきましても、これは警察庁の方で指針が出されておりまして、検察官にも捜査実態は知らせない、また令状請求に当たって裁判官にも提示しないという形で、完全に保秘で実施されておりました。この実態、実施されていたことについてはもう既に、インターネット等で警察の内部文書が流出したために二〇〇六年以前から行われていたのではないかということは確認されておりますけれども、法廷に提出されるまでは裁判官も見たことがなかったということでございます。 また、先ほど加藤参考人が紹介されました堀越事件でも、当初、長期間のビデオ監視というものは知らされていなくて、たまたまこれは証拠開示勧告が出たために法廷に提出されたものと思っております。 三月十五日の最高裁の大法廷が全員一致でこのような画期的な判断を示したのには布石がありまして、二〇一二年、今から五年前に合衆国の最高裁判所が、こちらも全員一致でGPS捜査は令状が必要であるというふうに結論づけております。 昨年の八月に、私は、WEBRONZAというウエブジャーナルでこのように書きました。 国会議員の皆さんに尋ねてみたい。あなた方の車に、それが公用車両だろうと、私用車両だろうと、捜査機関が承諾のないままGPS発信装置を一カ月取りつけたとしても、それでもあなた方は何の憲法問題も生じないとお考えになるのでしょうか。 どうして私がこのように書いたかと申しますと、これは先ほど、二〇一二年に合衆国最高裁が令状必要説を明示した際に、ロバーツ最高裁長官が政府代理人に対して最高裁の口頭弁論でこのように質問をしています。 長官が、あなたの考えでは、我々皆の車にGPSを取りつけて一カ月間我々の動きを監視しても、それは捜索に当たらないというのですね。政府代理人、本法廷の判事の皆さんのということですか。長官、そうですよ。ここで法廷が爆笑になります。政府代理人、私どもの考えでは、そして本法廷の先例に基づけば、本法廷の判事の皆様が公道を走られている際にはプライバシーの期待はないものと。長官、ということは、はいということですね、では、あした、あなたが我々皆の車にGPSを取りつけて一カ月間我々を追尾しても憲法上何の問題も生じないというわけですねという質問をされています。 この質問から予想されるように、合衆国最高裁は全員一致で、GPSは令状がなければ、裁判所の事前規制がなければ実施できない処分であるというふうに判断したわけでございます。 これをもじって、私は先ほど、国会議員の皆様に立法を促す意味でこのように書かせていただきました。すなわち、これは現在使われているテクノロジーでございまして、既に海外ではそれよりもさらに進んだテクノロジーが使われているわけですので、そうした現状を踏まえた上で、監視捜査に関する法的規制を一刻も早く我が国でも立ち上げていただきたいと望んでいるところでございます。
○井出委員 大変専門的な見地から、この分野について重要な御示唆をいただいたと思います。ありがとうございます。 次に、その同じ資料、一枚目に戻っていただきまして、一般の方々が捜査の対象になるかということをずっと言われてまいりました。そういう心配は杞憂である、そういうお話がきょうは椎橋先生の方からあったかと思います。先生にもいろいろ刑訴法の関係なんかでも国会に来ていただきまして、論文を拝見しておりまして、大変お世話になっております。 この一枚目の大臣の答弁について椎橋先生に伺いたいのですが、これは、捜査の対象になるか、告発の対象になるかといろいろ議論をしていくうちに、真ん中から見ていただきたいんですが、民進党の逢坂委員、誤って一般の方が捜査対象に入っていた、こういうことは違法なのかと。ただいまの御質問のような事態は想定できないと。さらに重ねて逢坂委員は、間違って一般の方々が捜査対象になることは一〇〇%ないということですね、間違っても、誤りもないのかと。大臣は、ないと申し上げたいと思いますと。 私は一般の方々をめぐってるる議論をしてきたところなんですが、さすがに、誤りまでないと言われますと、ちょっと私も考え込んでおりまして、先生、御専門の見地から、この答弁に賛同されるかどうか、御意見をいただきたいと思います。
○椎橋参考人 この捜査がどこまで進んでいるのかというシチュエーションがよくわからないんですけれども、まず共謀罪が成立するためには重大犯罪を実行する合意というものがなければなりませんから、合意した、そして実行準備行為をするということが必要ですので、その疑いがあれば捜査の対象になるということであります。 そのときに、団体として活動しているという場合に、その中の誰が合意した人なのか、準備行為をした人なのか。まずこの準備行為までの段階じゃないかと思うんですけれども、合意した人かどうか。ということは、した人もいるし、していない人もいるので、しない人についてはここから外れますね。それから、実行準備行為をしたかどうかということが問題になりますので、それはやはり外形的な証拠によって実行準備行為があったかどうかということをしないとわかりませんので、そういった慎重な捜査をした上で、対象に当たるかどうかということになると思います。 ですから、最初の段階でグループの中にいて何かやっていたというようなことがあった場合にも、合意に賛成した人なのかどうかということをまさに慎重に判断しますし、さらに実行行為が行われたか、行った人なのかどうかということを判断しなければいけませんので、仮にも誤ってそうでない人をということについては、あるいは場合によってはあるかもしれませんが、それは当初の任意捜査の段階で落ちていくというふうに思います。
○井出委員 慎重な捜査が必要である、誤りも場合によってはあるかもしれないし、それは任意捜査で、捜査の過程の中でだんだんだんだん白が証明されていくというようなお話であったかと思います。ありがとうございます。 指宿先生に伺いたいんですが、GPSの最高裁判決のときは、十九人もの車にGPSの端末がつけられたと。確かに、窃盗団のグループを追尾するという捜査の手法としては、令状をとっていないことは違憲とされましたが、捜査自体は認められたかと思います。 この十九人という事例を見ますと、私はやはり、当該容疑者の知人、家族、その中にはそういう犯行をしている人なんか全く知らない人もいる、そういうグループにいることも全く知らない人もいる、そういう人にもGPSが設置されたとなれば、一般の方がまかり間違っても一〇〇%対象になるということは、にわかに言いがたいんじゃないかなと思いますが、その辺は、先生、いかがでしょうか。
○指宿参考人 大阪の事例でございますけれども、これは十九台ですね。被疑者、被疑者の友人、それから、つき合っていた女性等の車両に設置されていたということは裁判上明らかになっているところですが、設置にかかわって、誰を対象にして、どのような容疑でこれを設置してよいかというのは完全に内部で判断されていることですので、これが証拠として出されない限り、裁判所もその適否を判断することはできません。 これまで十年以上恐らくこのGPS捜査は使われてきているはずですけれども、今日に至っても一体どれぐらいの対象犯罪で、対象台数で実施されてきたかということが全く明らかになっていないわけですので、私はむしろその方が恐るべき事態ではないかというふうに思います。 もちろん、犯罪を摘発するために容疑者の位置情報を情況証拠にして利用するということが有効であることは言うまでもないわけですけれども、これに関して手続的な担保が何もないということを今回の最高裁の大法廷判決は明確に指摘したものと考えております。
○井出委員 用意しましたもう一つの資料を皆さんに見ていただきたいと思います。 この資料一枚目は、赤の計画、実行準備行為、ここを、テロ等準備罪を共謀罪と呼ぶ私のような者もおりますので、こういうくくりにしてあります。それから、危険性、実行可能性が予備、未遂、既遂とだんだん高くなっていく、これは時間的軸と捉えてもらっても結構でございます。 予備と実行準備行為の間に政府の答弁が、もうこれは耳にたこができるほど聞いてまいりましたが、予備行為自体が相当の危険なものでなければ処罰されないと考えている、だから、それ以下の計画プラス実行準備行為が必要だと。政府の思いに立ってこの資料をつくってまいりました。 一枚資料をめくっていただきますと、対象犯罪二百七十七の中で、一枚目の資料で見れば時間的に犯罪に至る前、それから予備行為と実行準備行為の比較においてはその危険性も違う、そういう状況の中で対象犯罪二百七十七を洗いますと、予備の量刑が二年ないし三年、それに対して、時間的にも危険性的にも前である共謀、テロ等準備罪はその量刑が五年と大変重くなっております。しかも、これはなぜか全て、私が調べたのがたまたまなのか、全部五年ということになっております。 これは、同じグループが、予備行為から犯罪を進めようとするか、共謀、計画段階から始めようとするか、そういうことを考えたときに、私は大きな不整合ではないかなと思います。ここは、五人の皆様にそれぞれ専門的な御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。では、木村先生からお願いいたします。
○木村参考人 量刑と書いてあるのは、法律に定めている法定刑のことということでよろしいですかね。 この一ページの図で、実行準備行為、予備、未遂、既遂というのは大ざっぱに言うとこういう関係にはあるのかもしれませんが、今回のテロ等準備罪では主体を組織的犯罪集団に限定していると思うんですね。一定の集団ないしは身分的なものを限定することによって重罰化するという犯罪類型というのはあると思いますので、単に予備罪とテロ等準備罪の法定刑を比較して、予備罪の方が短期であるので不整合であるということにはならないのではないかなというふうに思っております。
○椎橋参考人 テロ等準備罪が五年以下というのは、TOC条約の要請も一つあると思います。 それから、では実質的にそれが重過ぎないかということですけれども、これは、組織によって行われる、場合によっては取り返しのつかない結果を生ずるということで、個人とか、あるいは共犯で行う場合もありますけれども、個人が行う場合のある犯罪に比べれば、組織的に行われた場合の方が実現可能性も高いし、結果の重大性も大きいということで引き上げたということだと思います。 そして、これは、その中での役割の違いに応じて五年以下ということで、役割が小さければさらに軽い刑に値するということになろうかと思います。
○海渡参考人 私は、明らかにこれは不整合になっているというふうに思います。 どうしてこういう不整合になるかというと、日本では未遂以前の処罰は予備を基本としてきました。それを今回、共謀罪を無理やり三百個もつくろうとしていることから起きていることで、そういう意味で、組織犯罪が関与することが想定される犯罪で抜けているものがないか、その部分について予備罪をつくるという新たな提案、これが非常に意義があるのではないかと思います。 先ほども申し上げましたけれども、二〇一一年十一月九日の衆議院予算委員会の審議では、石破自民党幹事長の質問に対して、平岡法務大臣が出されていた予備罪を新設するという対策について、ただいま大臣からも御答弁ございましたようなことを踏まえて今後やっていかなければならないというふうに稲田刑事局長は答えられております。この線に沿って法務省も作業をされたというふうに聞いております。どこまで作業が進んだのかもこの委員会の中で明らかにしていただく必要があるんじゃないかと思います。
○加藤参考人 私も、これ自体は本当に立法上の不備としか言いようがないというふうに考えております。 あわせて言いますと、先ほど私が示した表の中でも、共謀罪を導入することによって、本来罰せられない未遂や予備でさえない罪が罰せられるというのが入ってまいります。 これについて、組織的犯罪集団だから合意あるいは準備行為段階で危険があるんだとおっしゃいますけれども、客観的には何の制限もないんですね。客観的には何の危険性も認知できないし、法文を見ても、その組織的犯罪集団なるものがどういう範囲でどういう定義なのかが全くわからない定義になっています。 ですから、はっきり言って、計画、準備行為段階でこういう不均等な法定刑を科す実質的な根拠というのが、今までの審議を聞いても納得のいく答弁はなかったというふうに私は理解しております。 以上です。
○指宿参考人 本日は、訴訟法、手続法の観点から陳述することを予定しておりますので、この量刑につきましては、取り調べ規制の観点からのみ答えさせていただきまして、法定刑の重さについては陳述を控えさせていただきます。 共謀ですから、お互いがどのような分担行為をしたかということを取り調べで供述を引き出さなければならないわけです。 最高裁判例によれば、切り違え尋問、要するに、AにBはしゃべったと言い、BにAはしゃべったと言って供述を引き出す技術は違法とされております。このような技法を用いて得た供述は任意性がないということになっておりますが、これは、取り調べの録音、録画が記録化されていない限り、そのような切り違え尋問が行われたかどうかという確証は持てないわけですね。最高裁判例がありましても、現場でこのような技法が使われたかどうかということは我々は容易に知ることができません。被疑者がそれを訴えるのみで、これが裁判所によって認められるかどうかは定かではございません。 したがいまして、この中では裁判員裁判対象事案がございますけれども、対象になっていないところ全てが録音、録画の範囲から漏れ落ちていて、そうした分担に関する供述の任意性、信用性が担保できないものと考えます。
○井出委員 大変貴重な御意見、皆さん、ありがとうございました。また今後とも御指導ください。 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、畑野君枝君。
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。 参考人の皆さん、本日は大変貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。 まず初めに、参考人の皆さん全員に伺います。 共謀罪法案に関して、捜査機関が権限を濫用するおそれがあるという声があります。そこで、取り調べその他の捜査を行うに当たっては、その適正の確保に十分に配慮しなければならないと規定し、その運用に期待するということだけでよいのかという点についてお考えを伺いたいと思います。木村圭二郎参考人、椎橋隆幸参考人、海渡雄一参考人、加藤健次参考人、指宿信参考人の順で伺いたいと思います。
○木村参考人 今、濫用ということをおっしゃったんですけれども、先ほど、私、陳述を述べさせていただきましたとおり、二通りの意味があって、今おっしゃったのは、捜査機関が誤って捜査をする、そういう意味での濫用だと思うんですが、それは刑罰法規全てに通じるようなことでありまして、誤った捜査が行われないようにしてほしいということですね。 今回、いろいろな事情の中で、先ほどおっしゃったような、附帯決議というんでしょうか、それを入れる案というのが出ているということなんですけれども、そういうことが入れられるということで私は十分ではないかなと思っています。
○椎橋参考人 このテロ等準備法案は非常に厳格な三要件がございます。これはまた申し上げるまでもないと思いますが、この要件に従って行われていく。捜査自体は、手続法の改正はないということでありますから、今ある手続法、捜査権限というものを用いて捜査機関は捜査していく。そういう意味では濫用のおそれはないと思います。
○海渡参考人 これだけでは全く不十分だと思います。 共謀罪そのものが、人の合意の段階、それに多少の準備行為があった段階から成立するというふうに言われているわけで、そもそも曖昧な条件で成立してしまいます。 そして、その対象となっている犯罪の中には、構成要件そのものが非常に曖昧な、先ほども言いましたが、威力業務妨害罪であるとか強要罪であるとか信用毀損罪とか、信用毀損なんというのは言論行為そのものを取り締まる法律になっているわけですけれども、そういうふうな観点からいいますと、法案の対象となる行為そのものをうんと小さくしない限り、濫用のおそれはなくならないんじゃないかと思います。
○加藤参考人 最初に述べた事例からしても、それだけでは不十分だと思います。 ただ、この修正案が入ったのは、恐らく、この審議の過程で、やはり濫用されるのではないかという不安がかなり、相当広がっているという反映だと理解しますが、であるとすれば、警察に適正な捜査の配慮を求めるレベルではなくて、濫用の余地のない法律にするというのが国会の仕事であって、そうでないと、使える権限はちゃんと使うというのが警察の体質というか、そういうものですから、やはりそこに期待するというのは僕は国会としての怠慢としか言いようがないというふうに思います。
○指宿参考人 捜査機関自身がこのような捜査を進めるに当たってどのような規律を持つかということが明確に示されていないわけですので、例えば国会に対する報告義務であるとか、先ほど御紹介しましたような事前規制や事後規制の立法がない限り、違法な監視というのは、我々は行われていることすら知らないのではないかというふうに恐れている次第でございます。
○畑野委員 参考人の皆さん、ありがとうございました。 次に、指宿参考人に伺います。 参考人質疑の前回のときに高山佳奈子教授が紹介されておりました、二〇一七年二月一日の共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明、これに指宿参考人は賛同されていらっしゃると思いますが、その理由について御説明いただけますでしょうか。
○指宿参考人 今回の反対の署名には、実体法研究者のみならず、訴訟法の研究者も多数参加しているところですけれども、私は、この場で申し上げることができるのは、きょう最初に陳述したとおり、捜査手法の規制の観点からこのような実体法の整備というのは行うべきではない。 あるいは、これまでテロ行為を抑止できなかった、あるいは犯人を検挙できなかった理由が明らかにならないまま、立法事実が不確定なことについて立法を進めるのは時期尚早であるし、もちろん被害が起きることは防がなければならないわけでありますけれども、既に被害は起きているわけでございまして、そうした被害に関する国会の調査というものがきちっとなされるべきではないか、それを踏まえて初めて立法事実が生まれるのではないかというふうに私は考えている次第です。
○畑野委員 ありがとうございます。 引き続き、指宿参考人に伺います。 先ほどのお話の中でも、捜査技術が高度化している、その中で、捜査を前倒しするとプライバシー侵害のおそれが高まるのではないかという危惧をするのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○指宿参考人 今般の三月十五日の最高裁の大法廷で示されました私的領域という概念でございます。 憲法三十五条は、住居や所持品、書類などについて、令状がなければそれを侵されないということが明記されているわけですけれども、これはいわば明白なプライバシーでございます。 他方、路上での尾行や車の追跡というのは犯罪捜査にとって不可欠ですから、これまでも任意捜査として実施されていたわけですけれども、今回、GPSという技術によって長期間、無制限に記録され続けるというのはやはり何らかの規律が必要だということで、恐らく最高裁の判事の皆様は、どのような考え方に立ってこれを規律すればいいかと。 公道上だから自由にやれば構わないのではないかという考え方で恐らく警察庁はこれまで捜査を進められてきたところでありますし、先ほど加藤参考人が紹介された堀越事件でも、路上でのビデオ撮影が行われてまいりました。 私は、堀越事件の東京地裁の一審で、専門家証人として、ビデオの長期監視はプライバシー侵害であるというふうに証言しました。東京地裁が一カ所、違法判断を出しております。それは、堀越さんが政党事務所にチラシをとりに行って出入りするところが、思想信条の自由を侵害するというふうに判断されました。 先ほど冒頭紹介しました西成のあいりん地区のカメラについても、これは労働団体のビルを撮影している部分が民事裁判で違法判断が出ております。 これまでも、日本の司法は、監視捜査について全く無制約に、フリーハンドで認めてきたわけではありませんけれども、そうした時代を経て、とうとう全員一致で十五人の裁判官がこれは何らかの規制が必要だと、これまで任意捜査で無規制に行われてきた、法的にでございますけれども、無規制に行われてきたことに初めてメスを入れた。これは、最高裁史上、始まって以来、戦後初ではないかと私は思うのでございますけれども。 先生方には大変失礼な言い方になりますけれども、やはりこれは立法府の怠慢が指摘されたのではないかというふうに私自身は考えておりますので、先生方におかれましては、ぜひこの点を御考慮の上、テロ対策にも励んでいただきたいというふうに私自身は考えているところです。
○畑野委員 ありがとうございました。 次に、海渡参考人に伺います。 先ほど与党の議員から、集会などのチラシについて、表現の自由にかかわる発言がございました。それについて反論権が与えられていなかったと思いますので、先生の御意見を伺いたいと思います。
○海渡参考人 反論の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。 率直に言って、集会のチラシは市民の方々が自由に書かれるものなので、私から見ても、ちょっと事実に反しているかなというものも中にはあるかもしれませんけれども、集会の場では、少なくとも私がしゃべっているときには、正しいことをしゃべっているつもりです。そういうことは相互批判の中でやっていけばいいことだと思うんですが。 先ほど、日弁連の意見についてもさまざまなことが言われたんですけれども、我々は、立法ガイドだけをもとにして今回のような法案は必要ないというふうに言っているわけではなくて、条約そのものの、五条のところに、これらの犯罪は未遂または既遂と区別されると書いてあるんですね。これは予備を含むことは明らかなんです。 そして、このこと自身については、合意を推進する行為が予備となってはいけないのかというふうに聞かれて、そこは定義がないというふうに二〇〇六年の段階で外務省の神余さんは答えられていたんですね。 それを勝手に変えてしまっておられて、まさにその間に民主党政権があり、そして予備罪をつくるということでできないのかということがあり、そしてその段階で、稲田刑事局長はその方向で進めますというふうに言われていたのに、それに対して、当時石破幹事長は官僚の矜持はどうしたんだというようなことを追及されていましたよ。 そういうようなやりとりがあったのに、政権が交代したときから新しい刑事局長は御苦労されていると思いますけれども、やはり、そういう過去の経緯を見たときに、もっと小さな法案にできるということは明らかなので、そこをやってほしいということを言っていて、このことは条約の解釈と全く矛盾しないというふうに私は思っております。
○畑野委員 海渡参考人に引き続き伺いたいのですが、二点伺いたいと思います。 資料の中に載っていて触れられていなかった点なんですが、一つはイギリス、アメリカの共謀罪について、もう一つは、共謀罪法案は現代版治安維持法だという声も聞きますが、両者の共通点についてどのようにお考えなのか、伺います。
○海渡参考人 詳しい説明は、時間もないでしょうから簡単にしますが、イギリスにおける共謀罪というのは長年にわたって労働運動の弾圧に使われましたし、アメリカにおける共謀罪は、まさしく、労働運動だけじゃなくて、アメリカ共産党を組織することそのものに対して適用された、そういう意味では治安維持法とそっくりな使われ方をしたことがあるんですね。ベトナム戦争のときには反戦運動の取り締まりに使われたという、人権侵害を生み出してきたことは紛れもない歴史的な事実だと思います。 治安維持法につきましても、きょうの資料の十ページに書きましたけれども、私も全く同じだと言うつもりはありません。全く違うたてつけの法律です。しかし、どこが似ているかといえば、団体を規制するための刑事立法であって、要件が曖昧である、そして、今、政府は濫用のおそれがないと言っていますが、実は治安維持法のときもそういうふうに言っていたんですね。 しかし、それが十年、二十年たつうちに、とんでもない法律になっていった。最初は天皇制の廃止を主張する団体だけに適用すると言っていたのに、天皇制と相反するような宗教結社全てを取り締まれるような悪法になっていってしまったということで、このままの組織的威力業務妨害、組織的強要、組織的信用毀損なんというのをつくってしまったときには、僕は、一つだけでも治安維持法並みの恐ろしい効果を発揮する悪法になるのではないかというふうに思っております。
○畑野委員 ありがとうございました。 続いて、加藤参考人に伺います。 この間、秘密保護法、安保法制、すなわち戦争法、盗聴法拡大、刑訴法の改悪、そして先日の安倍総理の九条改憲発言などの流れの中で、今回、共謀罪法案が提出されている、この点についてどのようにお考えになりますでしょうか。
○加藤参考人 まず、結論から申し上げますと、やはり一体の流れだろうというふうに考えております。 とりわけ、九条を中心とした憲法の問題でいえば、やはり、戦争するためには、これは歴史が証明していることですけれども、一つは情報の統制、つまり、政府の都合のいい情報は流すけれども都合の悪い情報は隠す、それからもう一つは、国民の中に反戦気分あるいは抵抗する運動が広がらないように監視し、できるだけ早い段階で芽を摘んでいく、こういう体制が必要であるということは歴史的にも明らかだと思います。 この間の秘密保護法、それから安保法制、いわゆる戦争法を見ましても、やはり、今までにない、そういう戦争に向かった体制をつくろうとしているなということを私は痛感します。 せっかくの機会なので一言申し上げますが、私は、その中身もさることながら、この間の国会における審議の仕方自体に非常に危惧を覚えます。 先ほどちょっと反論の機会がなかったんですが、例えば、同じ、法案の中身を正確に言っていないとしても、いろいろ不安を感じた市民が、こういう不安もあるんじゃないか、こういうことも起こるんじゃないかということを訴えることと、法案を提出した責任者である総理大臣や法務大臣が、明らかに法文を読んだらそういうことを言えないことを、例えば一般人は対象になり得ないとかと断言することは、僕は質が違うと思います。 そういう意味でいうと、言論を萎縮させ、自由な議論を妨げているのは、まさにこの共謀罪の議論でいえば、こちらが一生懸命法文の中身に沿ってそういう可能性を指摘しているのに対して、あり得ないというふうに断言して切って捨てる、私は、この手法自体がやはり憲法から見ても非常に危ない。そういう意味でも、戦争への道に近づいているなという危惧を覚えているということを最後に申し上げたいと思います。
○畑野委員 ありがとうございます。 引き続き、加藤参考人に伺います。 憲法との関係で共謀罪法案についてどう思われるかということなんです。 先ほども海渡参考人にも伺いましたが、集会のチラシなどについて、この委員会で、表現の自由にかかわる、こういう発言が与党議員から出るということについて、私は大変懸念を感じるんですね。そういったことを含めて、憲法を改めてこの共謀罪法案との関係で見た場合にどうなのか。私は憲法違反の法案だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○加藤参考人 まず最初に、これも先ほどちょっと反論の機会を与えられなかったんですが、この共謀罪法案を正確に理解すると、話し合っただけあるいは考えただけで処罰されるというのは全く正確だと私は思っています。準備行為は誰がしてもいいんですね。それから計画の仕方については一切制限がありません。それから組織的犯罪集団の要件も、それは計画をしたという段階でその人たちがどういう集団かというのを捜査機関が捜査をして決める、こういう仕組みになっています。そういう仕組みでないと言うのなら、そういうきちっとした答弁を今後の質疑でお願いしたいと思うんですが。 そういう意味でいうと、やはり、考えたことあるいは話し合ったこと自体を処罰の対象にするという意味では憲法十九条や二十一条に反する法律であるし、それから、何よりも、刑法の原則に反するという点では三十一条以下の条文にも反すると思います。 そもそも、今の日本国憲法というのは、戦前の侵略戦争あるいは植民地支配の反省からできたというのは皆さん共通の認識だと思うんですけれども、その中でやはり一番、一つの大きな問題となったのは刑事手続の問題です。 治安維持法のもとで、非常に思想、良心の自由が侵される、あるいは刑事手続の原則が無視された捜査が行われるという中で、やはり刑事手続をきちっと規制しなければ人権が守られないとか民主主義社会が成り立たない、そういう想定のもとに、百のうちの十、一割が刑事手続に関する規定を憲法は置いています。 共謀罪というのは、その戦後憲法のもとで辛うじて維持されてきた、例えば、犯罪の結果の発生の危険性がない段階では刑罰は介入しないというこの原則を根本的に転換するものなんですね。そういう意味では、この共謀罪法案というのは、規制される側の人権保障という点から見ても、あるいは刑事法の原則から見ても、憲法の原則をかなり根本的に変える、そういう自覚を持って審議をしていただきたいなというふうに本当に痛切に僕は思います。 若干余談になりますが、私が所属している自由法曹団というのは戦前からある組織です。戦前のもとでも、私たちの先輩は刑事事件で、例えば治安維持法の被告を弁護してきました。中には、治安維持法の被告の弁護をしただけで、目的遂行罪ということで処罰された先輩たちもいるわけですね。 そういういろいろな方々の経験をくぐって今の憲法があって、いろいろな原則ができてきた。この重みをもっと反映した審議をやるには、もっともっと徹底した審議が必要だというふうに僕は思います。やはり、憲法から見て今の共謀罪法案は本当に問題が多いというか、真っ向から反するというふうに言っていいというふうに私は考えております。
○畑野委員 参考人の皆さん、大変貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。 昨日、五月十五日発表のNHK世論調査では、共謀罪法案について、賛成が二五%、反対が二四%、どちらとも言えないが四二%でした。よくわからないという国民が圧倒的多数、賛成は本当にわずかだということでございますので、参考人の皆さんの御意見を参考にして、さらに国民の皆さんの意見にしっかりと応えて、当委員会での徹底審議を求めると同時に、私は、憲法違反のこの共謀罪法案は廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、松浪健太君。
○松浪委員 日本維新の会の松浪健太であります。 本日は、五人の先生方、本当にありがとうございます。 我が党は、恐らく、この法案の審議が始まった当初、賛否を決めていなかった唯一の政党であろうと思います。そして、この法案審議に臨むに当たって、我々のコンセプトは、やはりテロというものに対しては鋭い矛で立ち向かっていこう、そして国民の皆様を重厚な盾で守っていこうと。これは何も矛盾するものではなくて、やはり矛よりも盾、国民を守る方が重要であろうというのが我々のスタンスでありました。 そして、この中で、特にきょうは象徴的だと思います、五人の参考人の先生方の中で、椎橋先生、海渡先生そして指宿先生については我が党でそれぞれヒアリングをさせていただいた先生でありまして、こうやって見ても、我々はバランスよくヒアリングしたものだなということをつくづく感じるわけであります。 先ほどから、立法ガイドの話もありました。この立法ガイドについては、我々、外務省にヒアリングした際に、三月末だったと思います、立法ガイド、特に五十一等が非常にコントラバーシャルな課題になっている、外務省としてはこれをどうやって確認しているんだと。口頭だと言うものでありますから、そこで、話し合いをして、では外務省の方はこれを正式に国連の方とやりとりして口上書を出すという次第になって、この委員会審議が始まって中盤過ぎぐらいにこの口上書の正式なというか、仮訳ができてきたわけであります。 まずもって、私も、立法ガイド五十一、この審議の前の予算委員会か決算委員会で、これは普通に読めばどっちともとれるし、第三のオプションもあり得るなということを感じたわけであります。この口上書ではこのことはばっさりと否定されているとは思いますけれども。 木村参考人に伺いますが、この立法ガイドのパラグラフ五十一というのは、五十五は大変わかりやすいんですけれども、なぜ、どちらとも読めるような、わざわざ多くの先生方が解説をしなければならないような内容として出てきた、その背景というか、こういう出方をした意図というのはどういうふうなところにあったのか、伺います。
○木村参考人 この立法ガイド、パラグラフ五十一がどうして問題になったかというのは私はわかりません。素直に読むと、先ほど私が申し上げた解釈しかあり得ないんじゃないかと思っています。 先ほども申し上げましたけれども、この問題となっている第四文の「without requiring the introduction of either notion--conspiracy or criminal association--」、そういう文章があるんです。これは中学、高校程度の英語で理解して、「without」「either」「or」で、これは全否定の文章というふうに考えられたと思うんですが、まずこの文章を見たときに、私は、この「either notion」、アイザー・ノーションとも発音しますけれども、その中身を説明したのが「conspiracy or criminal association」であって、この部分も含めて文章にしてしまおうという解釈がまず私には理解ができませんでした。 それから、先ほど申し上げましたように、「two alternative options」で、その中身で、五条のパラグラフ1の(a)と、そのパラグラフ1の(a)の(2)項を引用されている。その二つしかあり得ないのに、三つ目のオプションがある、そういうのは非常に強引な解釈だと思っています。 さらに、最後に「the relevant legal concept.」、「concept」は可算名詞なので、これが両方とも要らないというのであれば、恐らくこれは複数形にならきゃおかしいと思うんですけれども、単数形である。 そういうふうな解釈をきちっと見ていくと、これが第三のオプションがあるというのはおよそ考えつかないと思うんですが、恐らく、先ほど申し上げた「either」「or」というのがぱっと頭の中に来て、「either」「or」だから両方とも排除できるんだということを誰かが思いついて、それを、立法ガイドを根拠に義務化が免れるんだということを言いたいということで主張されたんじゃないのかなというのが私の感想です。
○松浪委員 おっしゃる意味はわかるんですけれども、私ももともと新聞記者をしていたんですが、これの日本語訳を読んでも何か両方とれるなという感じを持つので、こういうものはやはり明確に書くべきだと今となっては思うわけです。 あと、海渡参考人に伺います。 そもそもこの審議がされているのも、長年TOC条約がこうやって批准されてこなかったからなんですけれども、私もかつてこの法務委員会で、平岡先生が野党筆頭理事をされている時代に御一緒しました。先生は平岡先生と御著書もこの間もお出しになっているんですが、おっしゃるように、こうした共謀罪を立法化しなくてもこの条約は批准したとおっしゃるのであれば、やはり民主政権時代に、平岡先生、大臣とも大変お近い状況だったので、そのときにTOCを批准していればこんな議論にはならなかったとまさに思うんですけれども、なぜそのときにそれができなかったのかという反省点を伺います。
○海渡参考人 御質問ありがとうございます。 まず、第三オプションがあるということは、きょうの私の公述要旨の五ページを見ていただくと、この立法ガイドというのは、実は、九九年の一月に日本政府が出した条約の修正提案理由説明とそっくりの文言になっているんですね。 ここでは、「世界各国の法体系が英米法、大陸法という二つのシステムに限定されていないことから、第三のオプション(選択肢(3))、すなわち、「参加して行為する」ことを犯罪化するオプションを考慮に入れなければならない」、こうなっていて、この文章がほとんどそのまま立法ガイドに採用されているというふうに思います。 木村先生は何か僕らの言っていることを誤解されていると思うんですけれども、私たちは、共謀罪も参加罪も、そしてそれとはちょっと違う形での組織犯罪対策もたくさん日本にはあるじゃないか、それらが総合して、この条約の求めている、組織犯罪集団が関与する犯罪について未遂以前の段階で処罰するような法体系ができ上がっていればいいんじゃないかというふうに言い続けているんですね。 だから、共謀罪、準備罪、予備罪で七十幾つある、そして暴対法関連は参加罪のオプションの変形みたいなものですね、そして予備罪を独立罪化しているものもたくさんあります、そして共謀共同正犯もある、共犯処罰はかなり広範に行われている、そういう法体系を見たときにこの第三オプションになるんじゃないかと言ったんですが、きょうの私の公述は少しそれとは違っていて、むしろ、共謀罪オプション、そして共謀罪というのは、合意を推進する行為をつければ予備行為でいいんじゃないか、そして六百幾つのものを二百七十七に減らせるんだったら、これは七十四に減らしたっていいんじゃないかと。 確かに、どう見ても、国連で議論されていた重要犯罪リスト、十四ページに載っておりますけれども、この十五個の犯罪のリストを見ていただいて、この中で抜けているものがあるかというふうに議論したときには、人身売買と金融機関に関する詐欺が出てきますねと。それは法務省も二〇〇六年の段階で、予備罪も何も要らないと言ったときに、この二つは絶対不可欠だというふうに言われているわけですよね。そういう意味で、その二つをつくったらどうかと。 そういう意味では、僕が松浪先生に期待するのは、もっとやはり与野党で協議をしていただいて、民進党さんなんかも入れた形で、このオプションでできるんじゃないかという点を詰めていただきたいなと思っております。よろしくお願いいたします。
○松浪委員 ありがとうございました。 では、次は、加藤参考人に伺いたいと思うんです。 先ほど、矛の話をいたしまして、先生の先ほどの資料を読ませていただきますと日本でも大変たくさんの問題があるなということも認識する一方で、私もこの法務委員会の冒頭で、各国の捜査についての対照表というのをつくらせていただきました。GPSの捜査がどういうふうになっているのか、そして無令状捜索の幅がどの程度各国によって広いのか、また通信傍受については、司法傍受、行政傍受、各国はどのように行っているのか。 物によっては、法務省に聞いても調査局に聞いても調べ切れないという分野もあるぐらいで、不十分なところもありはしたんですけれども、事行政傍受を除いて司法傍受という分野についても、日本では昨年の令状も恐らく四十件ほど、そしてアメリカに行くとこれが四千件にふえて、そしてフランスに行くと五万件ぐらいにふえていく。それに加えて、これがまさに氷山の一角で、海水の下にある見えないところの行政傍受というところについては知る由もないというのが、こうらしいよみたいな話は聞くんですけれども、そういった大きな大きな闇というか、わからないところがある中で、僕は、海外に比べたら日本は随分かわいいものだなという印象を持つんですね、普通に、この令状の数とか、行政傍受ができないとか、そういうことを見ると。 また、捜査機関についても、海外では情報機関というのが大変発達をしているわけでありまして、それも加えると随分な違いがあるなと思うんですけれども、日本でも問題はあるというのはわかりながらも、それでは、ほかの先進国というのは暗黒社会なのかどうか、先生の御所見をいただきたいと思います。
○加藤参考人 国際比較をする場合に、大体、警察白書などを読んでも各国ではこういうことをやっているというのが出てきますが、特に日本の場合、考えなきゃいけないのは、刑事手続における被疑者、被告人の権利を比べると、全くレベルが違うということです。例えば、弁護人には取り調べの立ち会い権もないですし、それから身柄拘束期間もかなり長いものが認められているなどなどいろいろなことを考えて、やはりそのバランスで考えなきゃいけないのであって、ほかの国でもやっているから日本でもやっていいんじゃないかという議論は、僕は不正確だというふうに思います。 それから、もう一つだけ言うと、いわゆる傍受について言うと、果たして、その傍受をしたことがどれだけ実態解明、捜査にとって役に立ったのか、立たなかったのかの点でいうと、関係のない会話がほとんどだというのが大体出ている記録ではあると思うんですね。ですから、そういう意味でも、諸外国がやっているから日本はまだまだやれるんじゃないかという議論はやや短絡的だというふうに思います。 何より、警察が違法なことを行ったときに反省していないという点において、やはりそれをそのままにして、ほかの国もやっているから同じことをやらせろと言われても私としては承諾できない、こういうことです。
○松浪委員 今、弁護人の立ち会いの話もありましたけれども、我が党が最初に出した修正案というのは、特に項目の中にはあと二つ、我々がやったのは、盾としては今回の可視化が我々は一番重要視したものでありますけれども、弁護人の立ち会い。そしてまた、GPS捜査に加えて、我々としては、やはり矛という面では、通信傍受というのももうちょっと真剣に考えたらいいんじゃないかというふうに伺いました。 それは、特に椎橋先生に伺いたいんですけれども、TOC条約ではテロを含んでいるとおっしゃっているわけであります。しかしながら、私もこの委員会で通信傍受の件を、一覧表を出させていただきました。特に平成十年に通信傍受法が出たときに、政府がこれはテロだと出して、前回、二回目の、あれは第何表でしたかね、二表か三表か忘れましたけれども、今回拡大した部分についても入らなかった、そこにまさに飛行機の強取、いわゆるハイジャックとかサリンとか、こういう罪が通信傍受に入っていないという現実がある。平成十年の段階でですね。先ほど指宿先生がおっしゃったように、サリンなんか、サリン事件のときに十分反省したはずなのに、いまだにこれは通信傍受にも入っていない、まあいいかげんな話やなと思うんですけれども。 こうした重要な通信傍受に対する現状で、テロ対策、どのように有効だとお考えになっているのか、椎橋先生に伺います。
○椎橋参考人 通信傍受法につきましては、十七年前に大変な議論がありまして成立しました。そのときは、この法律が成立したら、あしたからあなたの家の電話も盗聴されますよというようなマスコミやあるいは週刊誌の報道があって、私は、今の状況と非常に似ているなという感じがしております。 ところが、できた法律については、対象が四類型の犯罪について、しかも司法傍受に限って、使い勝手が悪いくらいの、がちがちの、非常に厳しい要件をつけられていたということがあります。そのためもあって、それから捜査機関も慎重に行ってということがありましたので実施件数は少なくて、それから、その間に、違法とされた通信傍受というのは報告されておりません。そういった意味で、一度法律をつくれば、日本の捜査機関はそれを守る傾向が非常に強いというふうに私は考えております。 通信傍受法の成立過程にもありましたように、極めて限られた組織犯罪対策ということでつくられたわけでありますから、そういう意味では、テロ対策というものはそのときは余り考えていなかった。 ただ、昨年の五月に刑事訴訟法等の一部改正がありまして、通信傍受の対象が広がりました。しかし、広がりましたけれども、今でもヨーロッパとか英米とかの国に比べれば対象犯罪は少ないし、それから要件も厳格であるということがございます。しかし、前よりは広がりましたので、テロ等組織犯罪対策としてもそれは活用できる。 もちろん、これは厳格な要件のもと、法に従ってやらなければいけないので、踏み出していいということでは決してありません。だけれども、そのとおりやればテロ対策にも相当有効であるというふうに考えております。
○松浪委員 今の通信傍受の件もなかなか非常にコントラバーシャルなところもあると思いますけれども、私、この委員会でもずっと言ってきたんです、日本の刑法体系というのは憲法九条みたいなものだなと。日本のように地理的に海で隔てられた国境しかないような国、そしてまた銃においても、皆さん、スラグ弾というのを撃っているんですね、銃を持っている人は。十年間散弾銃を持たないとライフルも持てないような国というのは世界のどこを見ましても、銃規制も大変統制されているという、私は、日本の憲法九条以上に守るべき文化だなとこの審議を通じて本当に感じる次第なんです。 そこで、先ほどの指宿先生の論文を私もずっと読ませていただいて、先週金曜日にこの委員会で、質問をほとんどスティングレーに充ててさせていただいた。びっくりしたのが、最初、スティングレーについての研究を警察庁に通告しようと思いました。研究していないと。では、それだと話にならないから、もう警察庁はいいよ、政府としての意見を出してくださいと。では、法務大臣にしますということで、法務大臣に質問をしました。金曜日の話ですからまだ議事録もできていないのであれなんですけれども、大臣の答弁は、今、スティングレーがどういうものかわからないから、答弁することができませんと。 先ほど指宿先生がおっしゃったように、アメリカではもうこれを使って問題になって、法規制されているというようなことで、日本はこれでテロ対策、大丈夫かなという思いなんです。 その答弁は聞いていらっしゃらないと思いますけれども、大臣の答弁が今のようなものであったという日本の危機感について、指宿先生、手短に感想をいただけますか。
○指宿参考人 議事録を拝見していないので、なかなかお答えしにくいですけれども、既にこの技術は、陳述でも申しましたように、最初は軍事技術で、有名な映画でも、ビンラディンを捕捉する映画の中でもこの技術が用いられているシーンが出てまいりますし、最近公開されたエドワード・スノーデン氏を描いた映画の中でもこの技術が本当にわずかですけれども出てまいりますので、法務省あるいは警察庁の専門家の方であれば当然存在は御存じであろうかと思いますが、こうした技術を大臣や責任ある部署の方が御存じないというのは私としては意外でありますし、むしろ、捜査の高度化を誇るのであれば、こうした技術は当然検討されるべきなのではないかというふうに今感じた次第でございます。
○松浪委員 ありがとうございます。 いやしくも、テロ等準備罪、テロを冠すると言われる法律をやっている割には、我々、結局この議論も、頭隠して尻隠さずというか、本当に立法事実というのがもしかしたらTOC条約に加盟するだけに今はとどまっているのかなと、我々としてもここで反省をするところであります。 そこで、私も、GPSについては、今、可視化についてはまだトライアルの状況でありますので、今まで、可視化の中でテロ準備罪というのは全く前回の刑訴法改正のときには出ていなかったわけで、今回は附則の中でこれをトッププライオリティーにしてくれというような形をとっているんですけれども、やはりGPSだけだと私は不十分だと思います。 やはり包括的な監視についての規制法というか基本法というものが必要だというふうに私も考えるんですけれども、それはいかなるものが考え得るのかということを最後に指宿参考人に伺いたいと思います。
○指宿参考人 御紹介申し上げましたように、先進国ではそうした規制法が用意されております。 事前規制、事後規制、さまざまなそれぞれの国の手法がございますけれども、重要なのは二つ、そうした捜査手法に対する可視化と説明責任、これを国会がきちっと監督する、この三点だと信じております。
○松浪委員 五人の参考人の先生方、ありがとうございました。
○鈴木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 この際、参考人御各位に一言御礼を申し上げます。 参考人の方々には、それぞれ大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 正午散会