法務委員会 第12号
- 発言数
- 177 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 9
- 開催日
- 2016/12/06
会議録
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日までに、小野田紀美君、猪口邦子君、牧野たかお君及び柳本卓治君が委員を辞任され、その補欠として元榮太一郎君、青山繁晴君、徳茂雅之君及び渡辺美知太郎君が選任されました。 ─────────────
○委員長(秋野公造君) 部落差別の解消の推進に関する法律案を議題といたします。 本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。 本日御出席いただいております参考人は、部落解放同盟中央本部書記長西島藤彦君、京都産業大学文化学部教授灘本昌久君、全国地域人権運動総連合事務局長新井直樹君及び弁護士石川元也君でございます。 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。 本日、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。 議事の進め方について申し上げます。 まず、西島参考人、灘本参考人、新井参考人、石川参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。 本日の質疑形式ですが、まず大会派順に各会派等十五分質疑を行います。各会派等一巡後、再度大会派順に質疑を希望する会派が二十五分質疑を行うことといたします。 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。 それでは、西島参考人からお願いいたします。西島参考人。
○参考人(西島藤彦君) 部落解放同盟の本部の西島です。どうぞよろしくお願いします。 参議院の法務委員会の委員長並びに委員の皆様におかれましては、今回私どもも呼んでいただきまして、ありがとうございました。また、さきの国会でヘイトスピーチ解消法の成立に精力的に尽力していただきました各委員の皆さんにも敬意を表していきたいというふうに思います。部落差別解消法案の提案者の皆様にもお礼を申し上げたいと思います。 それでは、私の方から意見を述べていきたいと思います。 私は、ふるさとを愛し、この生まれ育ったふるさとで、部落の自治発展に今日まで取り組んでまいりました。町づくり、ふるさと自慢づくりに自らを高め、磨きながら努力をしてまいりました。しかし、一方で、差別が厳しいゆえに、長い歴史の中で部落から出ていく人たちも今日まで多くいました。このように、部落を捨て、ふるさとを捨て、部落出身であることを隠す人も多く見てまいりました。 二〇〇二年まで三十三年間続いた特別措置法は、劣悪な住環境を改善し、進学率などの教育面でも大きな成果を上げてきたというふうに考えております。しかし、部落差別はなくしていくことへの課題を残しながら特別措置法は終了いたしました。そうした課題は、一九九六年の地域改善対策協議会の答申でも指摘をされているところであります。 今日、インターネット上でも日々の暮らしの中でも部落差別事象が存在し、厳しい実態がある状況であり、今回の部落差別解消推進法案の制定は大きな意義を持つと思っているところであります。 最近の差別事件の事例を何点か報告をしていきたいと思います。 私の地元である京都の事例から報告をさせていただきたいと思います。私の出身地のところで、同世代の人、仲間が結婚を機に部落から出ていき、子供にこの苦しい思いを伝えない、こんなところから出ていきました。先日、そのお子さんが私のところに訪ねてこられまして、実は自分は結婚差別を受けた、こういう話を私にされました。 また、これも私の地元の京都市内で起こった結婚差別事件でありますが、この事件は、司法書士によって戸籍謄本や除籍謄本が両親はもちろん祖父母の分まで取られ、父親が部落出身であることを理由に結婚に反対が起こった差別事件であります。 結婚差別に遭った女性は、幼い頃両親が離婚し、母親とともに一般地区で生活をしていました。その女性には結婚を約束した男性がいましたが、ある日、この男性が彼女の家に飛び込んできて、おまえ同和なんかと聞いてきました。男性の話では、彼の両親に結婚の話を伝えたところ、親族会議が開かれて、そこに彼女の両親の戸籍謄本などが出され、彼女の父親が部落出身であるとして、同和や、結婚は認めない、別れろとその場で責め立てられたことであります。 彼女は、実は自分が部落出身ということも知りませんでした。それどころか、彼女自身が部落への偏見すら持っていました。しかし、結婚ということをきっかけに、相手が部落への偏見すらも、最悪の形で自分の出自を知らされたわけであります。そして、彼女が母親に聞いたところでは、彼女が幼い頃に離婚したこともあり、父親が部落出身だということは聞いていたが、話していなかったようでありました。自分の結婚のときには特に反対がなかったということでした。衝撃を受けた彼女は泣き明かして、その後、私たちに相談の電話が入ってまいりました。 詳細は省きますが、誰が戸籍謄本を取ったのか私たちが京都市に請求開示をしたところ、司法書士が取ったことまでは判明しましたが、離婚した両親だけでなく、双方の祖父母の除籍謄本まで取られたという事実が明らかになりました。男性の両親が依頼し、身元調査をしていたわけであります。男性の父親は税理士、母親は同和教育をしてきたはずの元教員でありました。現行法では戸籍を不正取得しても刑事罰はなく、行政処分としての過料のみでありました。依頼した両親にも何の罰もありませんでした。 二人は反対を押し切って結婚し、大阪で生活を始めました。子供が生まれ、一歳の誕生日の前に、初孫を見せれば変わってくれるかも、こういう思いを持ちながら男性の両親のところに訪ねていったわけでありますが、何しに来た、帰れという罵声でありました。二人の淡い期待は打ち砕かれ、以後、今に至っても絶縁状況が続いているところであります。 また、関西地方での結婚差別の事例は、前回の委員会で有田議員が紹介した事例とは別ですが、女性の両親が反対しているものであります。二人は結婚に向けて頑張っていますが、一度は家に連れ戻され、そして、祖父母、両親、親戚などに反対を言い渡されながら、軟禁状態の時期もありました。おばあさんは、部落民と結婚したらおまえを刺すと脅すなど、家族そろっての強い反対があり、悩んだ彼女が近隣の法務局に訪ね、人権擁護委員に相談してきたわけでありますけれども、残念ながらその対応が全くされていない状況であります。 言いたいのは、部落外との結婚は確かに通婚の広がる中で広がってまいりました。しかし、差別がなくなった、なくなりつつあるという考え方があるわけでありますが、部落外との結婚が広がったのは事実でありましょうが、また、報告した事例のように反対を押し切ってとか、両親も親戚も結婚式に出席しないような、本来多くの人に祝福されるはずの結婚が、そうしたことになっていない場合が数多くあるわけであります。 こうした事象は差別事件としてもカウントされませんし、法務局にも集約されていないのが実情であります。その背景には、先日、有田先生の方からも出された全国の各地の意識調査の中においても明らかなように、依然として相手の身元を調べるという意識の高さが存在をしておりますし、そういった背景を見たときに、この間明らかになった戸籍の不正取得事件、プライム事件というふうに我々は呼んでいるわけですが、本社が東京にありまして、町の興信所や探偵所に依頼されて、町の興信所、探偵所が処理できない、依頼に応え切れない、こういうものを一切に受けていく興信所、探偵所の大本があることの存在がこの事件で明らかになりました。 このプライムという会社は東京に本社があるわけですが、職務上の請求用紙を偽造し、二万枚も印刷をしながら不正取得に利用したものが二〇一一年から発覚し、一通五千円から二万の料金で販売していることが明らかになりました。公判の中で、この主犯格の人物は、ニーズがあった、調査依頼のほとんどが結婚の際の相手側の身元調査であったと、これは裁判の中でも証言をしているところであります。 また、一九九五年から二〇一五年の二十年間で、行政機関などにどこが部落かの問合せをする電話が二百数十件、実はありました。それぞれの市町村の行政に、ここが部落であるのかないのかという電話の問合せが今も絶えないわけであります。その際、今度結婚するが相手の出身地が部落かどうか知りたい、そういう理由を公然と役所のところに電話をしながら伝えるという事件が今も続いているところであります。 今日は私どもピンク色の資料を用意しまして、これは、この間、今年になって発覚をいたしました部落地名総鑑の原典、全国部落調査復刻版というものが今年の二月にネット上で出てまいりました。戦前の融和事業の際に、融和事業協会が全国の被差別部落五千五、六百の同和地区の調査をしています。そこの部落の地名、世帯数、人口、そして主な職業、生活程度、こういうものを書いた本を彼がどこから入手をしたのか、それをネット上からそれぞれの地方にどんどん発信しながら、もちろん戦前でありますから地名も変わっております。そういうものを変えながら、本にして販売しようという状況が生まれました。 現在、私たち、もちろん本人に直接抗議もしましたけれども、それをやめないという状況が繰り返し起こっておりましたので、出版の差止めの裁判を争っている状況であります。このように、現行法では、このことを取り締まるに当たって、名誉毀損とか損害賠償とかでしか差別であることを理由としての裁判をすることはできないわけであります。 また、もう一つ資料を入れさせていただきましたが、このカラーのところでありますが、昨年から今年にかけてでありますが、大阪、兵庫、京都に大量の差別文書が配布する事件がありました。郵便ポストに入れる、郵送される、こういう事件がありまして、これも訴えていったわけですが、軽犯罪で科料九千九百円で本人が釈放されると、こういう状況がありました。これも私の名前のこの資料の方に入れてあるところでありますので、見ていただきたいと思います。 今回の法案に対する私たちの考えでありますが、第一条にある目的、インターネット上の差別情報の氾濫という新たな差別の実態が生まれていますし、三十三年間の特別措置法で部落内の住環境は大幅に改善をされました。しかし、差別事件が引き続き発生しており、新たな差別の実態を含めて、改めて部落差別は社会悪であるということを明らかにし、部落差別の撤廃に向けて努力しようと呼びかける意義は非常に大きいということで、私たちも何とかこの実現を望んでいるところであります。 また、第二条においても、部落差別のない社会の実現のために国民一人一人が努力することを明らかにしています。部落差別は社会悪だということを改めて宣言することに重きを置いた法案であり、さきのヘイトスピーチ解消法と同様に、この法案の実現を私たちも強く求めているところであります。 また、三条から六条に関わっても、相談体制の充実や、多くの擁護委員さんは真剣に課題に取り組んできているわけでありますけれども、ともすれば名誉職的な存在になっている側面もあり、先ほどの結婚差別に関わる人権擁護委員さんのような事例も決して少なくありません。人権擁護委員を始め相談体制に関わる多くの方々が様々な人権問題に精通していく研修の契機とともに、文字どおり相談体制の充実を期待しているところであります。 二〇二二年には全国水平社が創立して百年を迎え、あと五年四か月で百年を迎えようというこの時期に、この法律を成立されて、何のためらいもなくふるさとが語れる社会、私たちも不断の努力を重ねながら、この法律の精神が全国民に深化する社会の実現に向けて頑張る決意でありますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ありがとうございました。
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。 次に、灘本参考人にお願いいたします。灘本参考人。
○参考人(灘本昌久君) 京都産業大学の灘本です。よろしくお願いいたします。 本日は、自由同和会の御推薦をいただきましてここに参上いたしました。私は、現在六十歳ですけれども、一九七二、三年、高校時代ぐらいからこの同和問題に関わってきておりまして、一九七八年頃、大学生の学部の頃から同和問題の研究をずっとやって現在に至っております。本日は、ここで審議されている法案について、今までの同和問題、同和事業の経過を少し私なりのお話をさせていただいて、この法律をどうするかということについての意見を申し述べたいと思います。 皆様御存じのように、一九六九年に同和対策事業特別措置法というのができておりまして、それまでは国が本格的に大規模に予算を投入して、同和問題の解決を図るには至っておりませんでした。確かに、戦前から中央融和事業協会という政府系の外郭団体があっていろいろと努力はしてきたんですけれども、同和地区の抱える非常に低位な生活実態を根本的に変えるには至っていないと。それに対して、部落解放同盟を中心とした同和問題を解決する声が政府をつき動かしまして、一九六九年に同和対策事業特別措置法ができた。 この法律は、同和事業、同和地区の生活改善とか環境改善をするときに、住宅を建てたり道路を直したりするときに、その三分の二を国が面倒を見る、残りの三分の一のうちの八割を地方交付税交付金で見る、残りのちょっと残った部分を地方自治体が見るという、当時、財政事情の非常に厳しいところに同和地区というのは概してあるわけですけれども、そういう自治体が全然手を着けられなかったところを財政的に国が本格的にバックアップして同和事業を進めるという点で、非常に画期的な法律だったと思うんですね。 ただ、今日から振り返りまして、当時、じゃ、同和事業の法律ができましたと、で、財政の乏しい地方自治体もこうやって同和事業できますよという法律ができたんですが、じゃ、すぐに同和事業が推進されたかといいますと、これはなかなか大変なことでありまして、当時、解放同盟が旗を振って太鼓をたたいて同和事業を推進しようとしたんですが、同和地区の住民はもう総スカンで、解放同盟に対して、同和事業なんかしてくれるなと、そんなことをしたらここは部落やとばれるからそっとしておいてくれという、いわゆる寝た子を起こすな論というのがもう大勢でありまして、当時は部落解放同盟は、そういう寝た子を起こすなを一生懸命話をして、懇々と話をして、個々人が隠したいのは分かるけれども、全体としては、これ同和地区を根本的に改善して、生活を向上し教育を振興していかないと百年待っても差別はなくならないと、こういうことを言って同和事業を推進したわけです。 その点、ですから、一九六九年から最初の十年間の時限立法でありましたこの同和事業、立ち上げに当たっての解放同盟の運動というのは非常に、地域の側からの、受け手の側からの働きかけということで、その功績は大いに認められなくてはいけないというふうに私は思います。 今、地域住民は反対だったというふうに言いましたけれども、当時の生活というのは本当に悲惨で、もうとても放置できないような状態だったことは事実なんですね。 例えば、先ほど発言されました西島さんの地元の同和地区でも、学校の先生が、小学校の先生が夜家庭訪問に行ったら、家は小さい、六畳一間に数人が住んでいる、雨漏りがするとかそういう生易しいものじゃなくて、行ったらもう屋根の一部が腐り落ちて星が見えているという、そういう悲惨な状態だったんですね。足下で何かごそごそ動くものがいるなと思ったら、小さい子が蚊帳にくるまって寝ていて、寝具がないと、そういう状態であったわけですね。 そんな悲惨な状態があっても、地域の人は部落がばれるから同和事業はやめておいてくれと言う時代だったわけですね。そこをこじ開けて同和事業が推進されたと。だから、最初の十年、時限立法で十年だったわけですが、その十年で非常に、同和事業が立ち上がって順調に同和事業が推進されて部落の生活が一変したということは事実であろうと思います。 それで、最初の十年が過ぎまして、時限立法、恒久法でやろうという意見も最初あったんですが、当時の部落解放運動の指導者が、こういうのは長々とやるべきものじゃない、十年で集中して一挙に解決するんだという意見が強かったわけなんですね。ですから、当時、若い解放運動の活動家が大きな集会に出て、わあ、すごい大きな集会だなと言って、あと十年したらこれより何倍もすごい大集会になりますねと言って、ある運動の幹部にその話をしたら、その運動の幹部は、何を言っておるか、そんないつまでも我々はやるつもりはないんだ、もう早急に片付けて解放同盟を解散するのが我々の目的であるというふうに言ったというんですね。当時の一般的な意見として、部落解放運動というのはそんな長々やるべきものではなくて、集中的にやって早く我々は解散するんだというのが、私が高校時代ぐらいの運動家の、まともな運動家の一般的な意見だったと私は思っております。 そういう形で十年で集中的にやろうとしてやったわけですが、さすがに最初は地域の総スカンで始まっておりますので、十年掛かりでやっとこさ軌道に乗ったということだったんですね。それで、最初の十年が終わって、三年間は延長しましょうということでしたが、それでもなかなか片付かないというので地域改善対策特別措置法と名前は変えまして五年間延長された。 その頃になりますと、しかし、同和事業によって同和問題を解決する、部落差別を解消するという、そういう考え方がちょっと逆、本末転倒になってきまして、同和事業というのは非常に地域住民にとってのおいしい話であると、個人給付とかいろんな奨学金とか様々な個人給付もありますし、それから、余り表には出ませんけれども税の大幅減免がありまして、同和地区の人が土地とか建物を売って不動産を売却したときに掛かる税金もほとんどもうただ同然ぐらいにですね。だから、そういう場合は数百万の、あるいはもう一千万を超えるぐらいの減免があるということもありましたし、それから、同和地区の企業者も大幅な税が減免されていた。そういうもろもろの、余りにも同和事業をめぐる経済的便宜が大きかったもので、これが、何というんですか、同和地区からはもう離せなくなった点があると思うんですね。ですから、とにかくこの法律を続けてもらいたいと。 昔は同和問題を解決し部落差別をなくすためにいろんな施策をするんだということだったんですが、もう施策そのものが自己目的化されて、解放同盟自体もそこにいろんな獲得物を分配しないと運動として推進できなくなったという、そういう本末転倒なことに一九八〇年代半ばからはなってきたかなと私は思います。 その頃に、五年ずつ延長され延長されてずっと三十二年間来たわけですけれども、後半、一九八〇年代の後半から以降は、果たしてその同和事業の法律が本当に同和問題解決に有効だったかどうかというのは、私はちょっと疑問の点が多々当時からありました。その点は、共産党さんが批判する解放同盟の腐敗、堕落だという、そういう問題は、一面私は当たっていたというふうには考えております。 当時、私、一九八〇年代半ばからは何を考えていたかといいますと、部落問題だけに特化してやるんではなくて、そろそろもう少し幅を広げて、同和問題は中心に、あるいは重要課題としては認識しつつ、いろんな本人の責に帰せられないような貧困とか差別をもう少し広く救済するような、社会的公正を期するような法律に徐々に転換していって、同和事業をめぐる法律そのものは軟着陸していくべきではないかなと思っておりました。 ところが、運動自体は、解放同盟と政府の間で、自民党の間で綱引きみたいなことになりまして、よこせ、よこさないみたいなことを延々と一九八五年から十数年間続けてしまって、大事な時期を十何年間、僕は無駄に費やしてしまったと思いますが、ともかく部落解放基本法を作れと、これで同和事業をますます推進していけと解放同盟は要求する、政府の方は、自民党の方はもうそんなことはできないといって、綱引きがずっと十何年続いてきたわけですね。 僕は、軟着陸してもうちょっと社会的公正を期すべきだと思いましたけれども、結局、二〇〇二年の三月でばさっと同和事業の法律が切れてしまった、まさしくハードランディングで、もう同和事業の法律が吹っ飛んでしまったと。辛うじて二〇〇〇年に人権教育・啓発推進法というのが残りまして、いろんな人権問題の課題を解決するための教育、啓発を進めましょうと、そのうちの一つのテーマとして同和問題がありますよ程度の残り方をして現在に至っているわけなんですね。 私は、二〇〇二年の三月に切れたときに、これでもう部落解放運動の命脈は尽きて、後はもう野たれ死にしていくしかないと、もうそれは、私も含めてそういう運動に関わってきた者の自業自得だとも思いましたけれども。どうこの運動なりその施策が推移していくかなと、しかし、まあまあやろうという気のある人が頑張ればいいんじゃないかぐらいに思っていたんですが、人権教育・啓発推進法という大きい人権の網を掛けた中の一項目だけで同和問題をほっておくと、意外にもう全然扱われなくなったという感じが私としては今しております。 ですから、思いのほか切れたことの悪影響というのは大きくて、同和問題というのはもうほとんど忘れ去られていて、例えば学校の教育現場で心ある先生がそれを扱おうとしても、もう何か今更そんなことをという空気が蔓延してしまって、なかなかそういう啓発そのものも進められないということが起こってきていると思うんですね。 私は、それでも、昔の古い、何か物取り運動みたいなのがよみがえってくるよりは、新たな時代を切り開くための産みの苦しみで、同和問題に関する法律はなしでいいんじゃないかとずっと思ってきましたが、人権という包括的、抽象的な概念で余りぎゅうぎゅうこの事柄を推し進めるというのもちょっとどうかなというのが最近の考え、感想でして、ヨーロッパやアメリカでいろんな、物すごく、従来だったら言えないようなことを口走る人が多数出てきて、しかも、その人が大統領になったり首相になったりみたいなことが最近目に付いてくるのを見ていますと、やっぱり個別法でそれなりにしっかりしたことをやりつつ、その個別の課題をきっちり押さえた上での人権という網を掛けないと、個別の問題を余りしっかり片付けないで人権という刀だけ振りかざしてやると、結局、ヨーロッパみたいに、あるときに一挙にそれが反動で吹き飛んでしまうようなことがあるというおそれもありますので。 私は、この際、今更の感じはありますけれども、同和問題に関する象徴的意味合いになるかもしれませんけれども、同和問題の法律を作っていただいて、もうあと少し片付けようじゃないかという人がもう少し動きやすい、あるいは教育現場で啓発教育をしやすい状況をつくっていただければなということを思っております。 ただし、啓発だけで私はこの問題を片付けられるとは思っておりませんで、実際には、地域の町づくり、自治会運動的、町内会運動的ですね、そういう運動を強化して、日々の生活のいろんな諸問題、高齢化の問題とか一人親家庭への支援とか、そういうもろもろのを、同和地区でも一生懸命それを支える運動をした中で、同和問題というのは地域社会の理解を得ていけるものだというふうに考えておりますので、今回の法律ではちょっとその町づくりの方は余りカバーできないような内容ですので、今回の法律ができたら同和問題が大幅に前進するかというと、やや心もとない感じはしないではありませんけれども、しかし、ないよりましと言ったら申し訳ないんですが、今回の法律で少しでも人権の中の同和問題というのが忘れられずに扱っていただければなというふうに考えております。 ちょっと冗長な話で申し訳ありません。以上で発言を終わりたいと思います。
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。 次に、新井参考人にお願いいたします。新井参考人。
○参考人(新井直樹君) 全国地域人権運動総連合事務局長の新井です。 部落差別の解消の推進に関する法律案は時代錯誤であり、部落問題に新たな障壁をつくり出すもので、断固反対の立場から意見を述べます。発言要旨についてはお手元の資料にお配りしてあります。 まず、全国人権連の成り立ちと運動の課題です。 全国地域人権運動総連合、略称全国人権連の成り立ちを説明します。 組織の前身は全国部落解放運動連合会、略称全解連と言います。一九七〇年に、部落解放同盟の暴力と利権あさりをただし、運動の正常化に向けた全国組織である部落解放同盟正常化全国連絡会議を解放同盟組織人員の三分の一を結集して発足し、一九七六年には全解連に発展的改組、国民的融合論を実践してきました。その後、全解連は、社会問題としての部落問題は基本的に解決されたとの到達点を共通認識にし、二〇〇四年四月に全国人権連に発展的転換をし、地域人権憲章を掲げ、十二年の実践が経過しています。 私が、一九七九年、部落解放運動に参画した当時は、国民的融合による部落問題の解決を基本に、新旧二つの差別主義、つまり、古い遅れた考えなどに基づく差別と、差別を利用した物取り主義による新たな差別の助長を克服することが基本でした。 また、解放同盟の推薦なしに同和対策事業が実施できない、受けられないなどの同和対策事業の私物化を排除すること、教育集会所等の指導員や講師、運営委員の解放同盟による独占をなくすこと、同和対策事業を実施するために地区指定の申請を住民、行政の合意の下に行うこと、周辺住民の理解の得られる事業の取組や考え方を行政に徹底することなどが主要な課題でした。 次に、部落問題とその解決とは何かということです。 元々、部落問題は、近代社会への移行の際に徹底した民主主義が実現せず、社会の仕組みに前近代的なものが再編成された結果、新たに生み出され残されてきた問題です。 全解連は、一九八七年三月、第十六回大会で、二十一世紀をめざす部落解放の基本方向という綱領的文書を決定しました。そこで、部落解放運動団体として初めて、部落問題、その解決された状態について四つの指標を提起しました。 一つ、部落が生活環境や労働、教育などで周辺地域との格差が是正されること、二つ目に、部落問題に対する非科学的認識や偏見に基づく言動がその地域社会で受け入れられない状況がつくり出されること、三、部落差別に関わって、部落住民の生活態度、習慣に見られる歴史的後進性が克服されること、四番目、地域社会で自由な社会的交流が進展し、連帯、融合が実現することです。 特に重要な点は、差別事象が起きてからそれを問題化して取り上げるのではなく、常日頃から部落問題に対する非科学的認識や偏見に基づく言動がその地域社会で受け入れられない、その状況を積極的につくり出していくことを打ち出した点であります。 そのための課題として、当時、一つ目には、部落解放同盟が言う、部落民以外は差別者などという部落排外主義の理論を駆逐し、私たちのいわゆる国民的融合、国民連帯の理論と政策を住民の間に積極的に普及して、正しい運動への支持と共感を広げる。二つ目には、自主、民主、合意を原則とした啓発を行う。三番目には、教育の現場で、偏向教育である解放教育、いわゆる部落民宣言を子供たちに強要する、さらには部落問題だけを社会問題で重要であると言わんばかりにそれを第一主義的に教える教育、こうした解放教育を排除して、子供の人権、教職員の人権、その権利を保障する、憲法を教育の軸にするということが必要というものです。 重ねて言いますけれども、部落問題の属性、つまり固有の性質は、封建的身分そのものではなく、封建的身分の残滓、残り物、後遺症です。部落問題は、民主主義の前進を図る国民の不断の努力を背景に、特別対策や高度経済成長とこれに起因する社会構造の変化もあって、解消に向かって大きく前進しました。そして、部落問題は、その後の我が国の企業社会、管理社会化、さらにはバブル経済の崩壊による国民一般の犠牲が強化される中においても、不可逆的に解決が進んできたものです。その結果、国民の多くが日常生活で部落問題に直面することはほとんどなくなり、新たに部落問題に関心を寄せる若い世代も急速に減少することになりましたが、この事実は部落問題解決の著しい前進とともに喜ばしいことと評価できるものです。 三つ目に、この部落差別の解消の推進に関する法律案の問題点です。 一つ、表現の自由を侵害し、糾弾を合法化する。 部落解放同盟などは、一九八五年に部落解放基本法の制定運動を始めます。法案解説文では、理由を次のように述べています。高度情報化時代を反映して、インターネットを利用した差別扇動が多発しており、教育、啓発の更なる充実強化と同時に、悪質な差別に対しては法的規制が考慮されなければなりませんと述べていました。 今回のこの法案は、かねてからの解放同盟の要求を下敷きにし、部落差別は許されないと概念規定もなしに記述しています。これは、解放同盟らの勝手な解釈を認めるものです。自らの不利益まで部落差別と捉える運動団体にとっては、言論、表現の分野のみならず、自治体での施策実施を迫る際、この文言が介入の口実を与えることになります。それは、無法で私的制裁そのものである差別糾弾の合法化に通ずるものです。これでは差別の解消ではなく、新たな人権侵害を引き起こします。 二つ目、立法事実は存在しません。 社会問題、つまり、資本の搾取、収奪が特に激しく行われるような社会集団、社会層がある場合で、社会的差別を特別な内容としている問題に部落問題が位置付けられてきました。しかし、三十三年に及ぶ同和対策事業の実施により、部落の世帯構成などに著しい変化が生じ、政府も、二〇〇二年三月末で特別対策を終結した理由の中で大きな変化を認めています。それは配付した資料の中にも記されています。 総務省大臣官房地域改善対策室が二〇〇二年三月にまとめた「同和行政史」の中で、特別対策を終了する理由を三点挙げていますが、特に三点目だけ述べます。第三は、経済成長に伴う産業構造の変化、都市化等によって大きな人口移動が起こり、同和地区においても同和関係者の転出と非同和関係者の転入が増加した、このような大規模な人口変動の状況下では、同和地区、同和関係者に対象を限定した施策を継続することは実務上困難になってきていることであるというふうに記しています。 ここで同和地区においても同和関係者の転出と非同和関係者の転入が増加と指摘している点については、いわゆる従来言われてきた部落と言われるものが部落でなくなっている状況を指しているものです。今から二十三年前の一九九三年の時点ですら、全国の同和地区の状況は、政府調査を基にした統計で推定すれば、全世帯のうちで夫婦とも同和関係者は二四・七%、夫婦いずれか一方が地区外は一五・八%、夫婦とも同和関係者でないは五九・五%となっています。いずれにしても、従来の部落の枠組みが崩壊し、部落が部落でなくなっている状況です。 いわゆる部落及び部落民は、いずれも部落の住宅・居住環境や生活実態に見られた低位性、格差の解消、部落内外の人口、世帯の転出入の増加、部落民としての帰属意識の希薄化などに伴って、今日では既に消滅及び過去の歴史的概念になりつつあり、実態として現実把握がし難いものとなってきているということであります。 よって、部落問題は、従来の社会問題としての性格を大きく変えており、変化した問題を正しく認識しないと解決の道を誤ることになります。このことからも、部落差別の定義は置かなくとも国民の誰もが一義的に理解する、歴史的経緯を踏まえたら定義しなくても一義的に明確などという発議者の答弁は実態から全く懸け離れているものです。 一方で、具体的な実害としての部落差別は、ヘイトスピーチ問題とは異なり、公然と差別言辞や行動を起こす状況にはありません。そうした行為が時として発生しても、それらの言動を許さない社会的合意が強く存在しています。また、インターネットでの匿名による陰湿な情報流通も起きたりしますが、それらも公然と支持が得られる状況にありません。 三つ目の問題点、同和特権と事業利権復活のもくろみです。 法案は、地域の実情に応じ、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うとなっており、同和対策事業の復活につながりかねない非常に無限定な規定があります。地方自治体は同和行政を進めてきましたが、この法の規定が逆流を起こさせ、自治体や住民に混乱を招くものです。私たちは、行政が偏見を拡大している人権意識調査の問題の是正、さらに封建社会の身分制の一面を強調する義務教育段階での学習の廃止、教科書記述の見直し、これらの問題なども提起しています。 四点目の問題です。部落の固定化と旧身分の洗い出しという人権侵害を恒久的に行う問題があります。 法案は差別の実態調査を国や自治体に要請していますが、同和に関わる特別法は十四年前に既に失効し、行政上、同和地区、同和関係者という概念は消滅しています。これを復活させ、部落と部落外という人為的な垣根を法律の名で固定化させるものです。調査は、調査の名による関係住民の特定化、顕在化で差別の垣根を未来永劫残すことになります。また、かつての意見具申、啓発推進指針が問題の是正を指摘した課題も払拭し切れない下で、国民の内心に介入し、差別意識の改変を啓発や教育と称して迫ることは憲法違反であり、人権侵害甚だしき事態であり、法を盾にした強要は許されません。 終わりに、全国人権連は、部落問題の解決を図ってきた歴史的、社会的営みの到達点を政治的思惑で根底から壊すことになる部落差別固定化法案の参議院での徹底審議、廃案を求めて、意見発表を終えます。 以上です。
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。 次に、石川参考人にお願いいたします。石川参考人。
○参考人(石川元也君) 弁護士の石川でございます。 私は、部落差別問題を始め多くの人権問題に関わってまいりました。今年で弁護士六十年を迎えますが、部落問題にほぼ五十年近く関わってまいりました。その経験とその中で闘った裁判の結果、そして、その裁判の結果が政府機関である地域改善対策協議会、地対協の意見書に反映し、今も紹介がありました政府の啓発推進指針、そういうものになっていって、そして、とうとう平成十四年、二〇〇二年に三十三年に及ぶ同和事業が終了した、その経過の中の問題点を御紹介し、それが、今の状況をどう見るか、そして新しい法案が本当に必要なのかどうか、そういうことに対する材料を提供いたしたいと思います。 私の意見陳述の要旨、お手元にございますので見ていただきたいんですが、部落問題と同和問題、よく議論にはなりますが、実質は同じことですが、ちょっとミスがありますので訂正しますと、水平社宣言まではいわゆる特殊部落という言葉を使ってきて、それがその後、被圧迫部落あるいは被差別部落と言われ、あるいは、戦後は未解放部落、被差別部落という言い方もされましたけれど、戦争中の昭和十六年に、それまでの融和事業と言われていたのが同和奉公会という、大政翼賛会の一翼を担うんだという形で同和という言葉が使われて、戦後はずっと行政側は同和ということでやってきた。 しかし、これは、いずれにしましても、一般の集落を意味する部落、通常のといいますか、普通の部落と区別したのをどう考えて、どう解消していくかという、言葉の中でいろいろ言われてきたのでありますが、この同和事業として戦後続いてきたものも全てこの部落差別の解消を目的とするものであったということは言うまでもないことで、この同和事業の成果と弊害、到達点、問題点を見る、そのことを今日は中心にお話をしてみたいと思います。 昭和四十四年、一九六九年に同和対策特別法が十年の時限法で始まりました。この始まる少し前に大阪で矢田中学事件という問題が起こっています。これがこの糾弾の始まりであり、その後、吹田二中事件、八鹿高校事件、その他全国の高校で学校に糾弾という事象が持ち込まれた、その最初の年でありますが、昭和四十四年の矢田事件が起こって、それが裁判でどう見られたか。お配りしています「部落問題に関する基本的判例」の一番を御覧いただきたいと思います。 これ、刑事事件は一審無罪ということでありましたけれど、検事控訴の結果、二審で有罪になり、最高裁でも有罪が確定しています。 この刑事事件と民事事件の違いというものを簡単に申し上げますと、刑事事件は被害者側の告訴などによりますけど、検察官が公訴を提起し公判を維持します。そして、被告側の弁護団、被告の防御権というものがあるわけでありますけれども、被害者側は当時この裁判に一切関与する道もなかった。検察官は事実関係の立証だけでありますけれども、弁護側としてはその背景事実、正当性の主張をいろいろやる。そういう中で、裁判所の方として、有罪としても執行猶予を付すような場合には執行猶予になる理由を裁判所として挙げるわけですね。そういう中から、被告に同情的な判決がある程度出てまいります。 しかし、これから挙げます吹田二中あるいは八鹿高校事件など、刑事事件としても厳しく有罪認定されました。 矢田事件は何かというと、その年の二月に行われた組合の支部の役員選挙に立候補した中に、進学のこと、同和のこと、いろいろ重要な問題があって私たちの仕事が夜遅くまでやらなきゃならぬ、上の方から管理的な締め付けもあると、そういう中でどうして労働条件守るか、こういうことを訴えた役員の立候補の挨拶状、はがきにやった短いものが、この同和のことというのが一つ入っているのが部落差別を助長するものだ、あるいは助長するおそれがあるものだと言って、学校で勤務中の先生を連れ出して公民館に運び、十数時間にわたって暴力的な監禁をやった、これが逮捕監禁事件として刑事事件になりました。大阪市教委は、この解放同盟の言い分をそのままのみ込んで教員らを別の学校に配転し、さらに教壇に立てない、引き離すように教育研究所というところへ閉じ込めて数年もその状態が続いたのであります。 それについて民事事件の方で私たちが原告側の代理人となってやった判決がここに紹介しておるものでありますが、問題は、この市教委などが言う、同和教育の推進あるいは同和問題の解決を阻害するおそれのある文言を記載したものだと、こういうものが差別文書であると言うけれども、元々何が差別であるかということを一義的に捉えることは極めて難しいんだと。しかし、この被告側が言っておるこれがそうだということにはならない。同和教育の推進あるいは同和問題の解決を進めるについて様々な意見や理論的対立が存在することが考えられるが、特定の思想なり運動方針に固執する者が右のような差別文書の定義を採用するときは、容易に反対の意見を封ずる手段として利用され、同和教育の推進あるいは同和問題の解決に対する自由な批判、討論が不活発となり、この問題に対する開かれた自由な雰囲気がなくなって、ついにはそのような考えを持つ者の存在をも許さないことになる。 まさに自由な意見交換ができなくなるような社会であっていいのかというのがこの判決なのでありまして、先ほどちょっと紹介しました啓発推進指針が新井参考人の資料で配付されていますから、ちょっとその部分を紹介したいと思いますから御面倒でもこれを見ていただきたいと思うんですが、初めから五枚目ぐらいのところに大きい字で地域改善啓発推進指針、昭和六十二年三月の総務庁の長官官房地域改善室長の都道府県知事、政令指定都市に対する通知がありますが、これは、その次にいろいろ目次が出てくるわけでありますが、どういうもので作られたかといいますと、昭和六十一年に、それまでの同和行政の振興やそれに関する多くの裁判例が出た、これから後紹介しますが、そういう中で、これまでの同和行政を見直す必要があるということで、六十一年に地対協基本問題検討部会というものがつくられて、これは専門家、主に学者の人たちで、運動関係や役所も入らずに、専門家で基本問題検討部会がやると。これがその年の十二月に意見具申、全体協議会の意見具申となりました。 これを受けて、政府はそれまでの地域改善対策を終了させて、ごく特定の地域改善の財源を確保するという法律に変えていくんですが、その際に同和行政について根本的な見方を変える必要があるということでこれを出したものなんです。 その基になった基本問題検討部会報告書の中でどういうことが言われているかということをちょっと紹介いたしますと、こういうことを今の判例を引用しながら言っている。判例の名前は書きませんが、検討部会報告書の中で、差別行為のうち、侮辱する意図が明らかな場合は別としても、本来的には何が差別かというのは一義的かつ明確に判断することは難しいものである、民間運動団体が特定の主観的立場から恣意的にその判断を行うことは、異なった意見を封ずる手段として利用され、結果として異なった理論や思想を持った人々の存在を許さない独善的な閉鎖的な状況を招来しかねないことは判例の指摘するところであると。この判例の指摘するというふうに地対協意見が言ったのが、今言った矢田事件の大阪地裁の判決なのであります。 そしてまた、この同じような学校への糾弾事件は、次の、この判例の二ページの三番目の吹田二中事件というものを見ていただきたいんですが、これは矢田事件の二年後の昭和四十七年、三年になりますか、八鹿高校事件の二年前に起こった、起こされた事件でありますけど、これは解同、解放同盟の支部の推薦を受けて、支部の指導に従いますという一札を入れて教育委員会から採用をされたという極めて教員採用に関わる不可解な事案でありますが、その女教師が実際に勤務に就いてみると、解放同盟の言われるような形で学校の授業をやっていくわけにはいかないということで、それから離れるということを、それを支持する教員も出てきました。そうすると、学校へ押しかけて、これらの教員を罷免しろと、辞めさせろということで学校へ二週間にわたって大量動員をして授業ができなくなる、こういうふうな事件があり、その中で、教師に対する暴力事件は刑事事件として起訴され、有罪になりました。その教員たちを、同じ吹田市内ですけど、別の学校へ不当に配転したということで、その配転取消しの訴訟が大阪高裁の判決で認められました。 この判決の中身をちょっと読んでみますと、解同支部が公的な場所、しかも中学生の教育現場に二週間も大量動員をして糾弾闘争をし、生徒を巻き込み教育現場に大混乱を発生させた、これは現行の法秩序から見れば暴挙と言うべきである、市教委及び校長は毅然として支部に学校からの退去を求め厳重に抗議すべきであった、抗議が聞かれないときは秩序回復のため警察力の導入も要請すべきであったというふうに、学校秩序に対する侵害という事態についての裁判所の判断を示しました。 ついでに言いますと、最高裁は、同一市内の配転というものは教職員の裁判で訴える利益はない、法的利益はないから却下せざるを得ない、しかし、この却下の判決であるのに、二審の判決の事実認定を延々と援用して、そして、その後ろに、原判決がこういうふうに判断したことは首肯できないでもない、つまりそれは是認することができる。つまり、最高裁として、当時この矢田事件、吹田二中事件がいずれも最高裁へかかって、同じ部にかかって判決が一週間後になされました。当時、私どもは、調査官に早く判決をと要請している中で、最高裁として同和問題について座りのいい判決を今考えておられるということを漏らされたことがあります。つまり、最高裁も却下の判決だけしたのでは、この事案の問題点について判断をしないことになる、だから二審の判決をということであります。 かなり時間をオーバーしてしまいました。簡潔に、結論になります。 八鹿高校事件については、皆さん既にこの委員会審議の中で紹介されているというので、まとめますが、民事の判決では、この学校が解放研、解放同盟が指導する学内の研究会を置くというようなことは、教育上それは許されないのは当然だということを言っております。 そういうふうなこれらの事件を受けて、啓発推進指針に至る地対協の基本問題検討部会やあるいは地対協の意見書において、教育現場におけるそれはもちろん、新たな部落問題の解決に障害が生じた、それは民間運動団体の著しい介入が行政の主体性を奪ったということを言っています。 あと、私のメモの方に戻りまして、簡潔にあと二分ぐらいで終わりにします。
○委員長(秋野公造君) 石川参考人に申し上げます。時間が過ぎておりますので、御意見をおまとめください。
○参考人(石川元也君) はい、まとめます。 だから、一番そういうことを言って、最後に、平成十四年に解消したときに、行政の施策は、本来、全国民に受益が及ぶように講ぜられるべきものだ、私はここが非常に大事なところだと思うんですが、部落出身ということで特別な受益をやるような法律は全く例外的にこの当時の時限法であったけれど、今後についてはこういうことをするものでないということを国として明確にした、そのことからいって今回の立法についてその必要性はない。その理由について述べる時間がなくなりましたので、これで一応意見を終えておきます。 どうも失礼いたしました。
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。 以上で参考人の意見陳述は終わりました。 ─────────────
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、青山繁晴君が委員を辞任され、その補欠として猪口邦子君が選任されました。 ─────────────
○委員長(秋野公造君) これより参考人に対する各会派等の質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○西田昌司君 自民党の西田昌司でございます。 今日は、四人の参考人の皆さん方、本当に貴重な御意見をありがとうございました。 今回は、このいわゆる同和解消法ですけれども、元々、先ほど西島参考人もお話しになりましたけれども、いわゆるヘイト解消法、これが一つのきっかけとなって出てきたわけでございますが、ヘイト解消法は私が発議者となって成案になったんですが、そのときも発議者としても説明しておりましたのは、同和差別もそうですし、ヘイトも含め、こういうことは日本人として認められるものではないし、恥ずべき行為だと、そういう認識ではそれぞれ一致していると思うんですね。 ところが、これを法律にしたときに、今度は逆にその法律が基になっていわゆる新たな問題が生じてくる、例えば表現の自由とか内心の自由含めそういう基本的人権が制限されたり阻害されたりするのではないかと、その辺がヘイト法のときにも非常に重要な問題としてなったわけです。同じく、今回のこの同和解消法もそういうことになっては困るわけなんですね。だから、そのことを含めて、実態的にどういう実態があるのかということでそれぞれ参考人の方々にお越しをいただいたわけでございますが。 まず、西島参考人にお聞きいたしますが、具体的な結婚差別、そのことについてのお話がありました。そこで、そのときに、いわゆる解放同盟としてはそういう相談を受けてどういう対処をされたのかと。まあ糾弾されたりということはないんだろうと思うんですけれども、現実的に今どういう対応を、そういうことがあった場合、皆さんがされているのかということをお聞かせいただきたいと思います。 それからもう一つ、灘本参考人は、先ほど税の話もちょっとおっしゃったんですけれども、実は私、税理士をやっていまして非常にショックを受けたことがあるんですよ。 というのは、今からもう二十年以上前です、三十年近く前ですけれども、開業して間なしですけれども、税法どこを見ても、同和の方々に対して税を優遇するなり、そういうところはどこにも書いていないんですが、実は公然としてあったわけですね、それは、実は税の現場でそういう通達なりされていたようでありますけれども。そのときに、いわゆるえせ同和行為というのがあって、同和団体の、かたって税の過少申告をしていたというのが、実際に私、現場でも見たことありますから、あったわけなんですね。 こういうことはとんでもないと思うんですけれども、そもそもえせ同和行為はそれはもうとんでもないという話は当然なんですけれども、そもそもそういう、つまり、いわゆる地対財特法のような法律でされていることを超えて、現実、そういう税の、ある意味で特典がされていたという現実があるわけなんですけれども、こうしたことはどうだったんだろうかということについて率直的な御意見をお聞かせいただきたいと思います。 それから、新井参考人ですね。新井参考人には、立法事実がないというふうに書かれているわけですね。その場合、例えば、今、西島参考人がお話しになったようなケース、これは立法事実としては認められないのか、若しくはこういう事態は新井参考人としてはどういうふうに解決されるべきと考えておられるのか、それについてお聞かせいただきたいと思います。 それから、石川参考人につきましては、八鹿高校事件など法律的な問題についてお話しいただきましたけれども、じゃ、今、こういう八鹿高校事件もそうですけれども、いわゆる不当な糾弾がされたりして、そのことで石川参考人が、現実こういう糾弾会があったりして問題になっているというようなことがあるのかどうか、それについてそれぞれお答えいただきたいと思います。
○参考人(西島藤彦君) 私は、今、結婚差別事件の事例を何例か出しました。本当に、双方が結婚していこうという意思を持ちながら、この問題の根のところに触れていかなければならないという、極めてデリケートで正面から行けない課題があります。大半がやっぱり仲間を支えながら、頑張って支えながらしっかりと生きていくためのフォローを限りなくしていくというのが基本であります。 二例目の京都市の差別事件、現実に二人とも世帯を持ちました。子供まで生まれました。しかし、いまだにその付き合いはされていない。人権擁護委員さんに要請したり法務局にも訴えながら、私たちも一緒になって訴えながらやってきましたけれども、これを、相手をただしていくためにしっかりと取り組んでいく、相手の親に訴えていくということも正直困難なんです。これをすることによって更にその二人の関係が困難な状況になってくるということで、極めて直接的な対応が難しいということで、私は、間接的にそういう環境をつくる、周りの人権擁護委員さんも含めて相手の両親を説得する環境をつくっていくなり、その夫婦がやっぱりしっかりと頑張って生きていく環境をつくっていくなり、そういう状況をこの間、最初の事件も後の事件も含めてでありますけれども、基本的には、そういう環境を我々は支えをしながらつくっていくということでやってまいりました。 今日、それとこの資料、説明できなかったんですが、全国部落実態調査のこの資料、この資料が出ました。ここには全国の被差別部落の地名が出ています。私たちへ来ている情報によりますと、自分の娘が結婚を控えている、この図書に私どもの地名が出ていると、どうしたものだ、このことによって結婚が破談になるんではないか、こんな強い訴えもこの間全国から寄せられてきているところであります。しかし、これを縛る法律がないわけです。 私は、何としてでも今回のこの法律は、国を挙げて一つの方向性を示すわけでありますから、もちろん我々も不断の努力をしながら解決していかなきゃならないわけですけれども、こういうところにも有効な役割が来るんではないかなと、このように思っているところでありますので、よろしくお願いします。
○参考人(灘本昌久君) 税の減免のことですね。何をお答えすればいいかというのはちょっと難しいんですが、先ほど言いました、同和事業が立ち上がるときに地域全体が寝た子を起こすなで反対であった、解放同盟がそれを一生懸命指導して同和事業に向かわせたという話をしましたが、そのときに一番その同和事業に反対していたのは同和地区の中の比較的生活安定層というんですかね、そういう人たち。だから、ある程度土地を持っていたり財産があったりして、同和地区に住んでいるけれども、改めて同和事業で何か助けてもらいたいことはないという人は本当にもう大反対だったんですね。 それに対して、そういう中産階級ぐらいの人たちに対する同和事業からの配り物という点で、その税の減免というのは非常に、何というんですかね、効果があったんだ、いい意味ではないですけれども、その反対を抑えるという点では、そういう人たちにもおいしい目をさせるという点で、その中産階級の反対をある程度抑える意味では良かったのかもしれませんけれども、そもそもそんなことが必要だったのかと問われると、私は非常にその同和事業の推進自体をゆがめるものだったろうとは思うんですね。そういうことです。 それで、特に、言われておられました、法律にないようなことがさじ加減で、多分大阪の国税局か何か辺りとの話でそういうことになったんだと思うんですけれども、それは良くなかっただろうと思うんですね。ただ、運動を推進する立場からいうと、そういう中産階級の人たちの反対を抑えて、かつ、その減免された部分の相当部分はカンパとして、例えば、相当大規模な土地の買収というか売買がありますと、場合によってはもう億単位のお金がそこの一支部だけでもカンパとして入りますので、自主財源としては非常に運動としても金銭的には助かったんでしょうけれども、長期的に見るとやはりそれもいろんなゆがみを生じさせる問題があったと思います。 以上です。
○参考人(新井直樹君) 基本的な考え方としては、二〇〇二年三月末に総務大臣談話が出されて、いわゆる特別対策を終了するということを国民の前に政府が明らかにした。結局それは、それまでのその対象地域や対象住民に対する施策も通常施策でやっていくという決意と。同時に、その当時も、法務省の人権侵犯処理規程に基づく処理件数等を見れば、いわゆる言動も含むそうした件数は法務省の方でも上がっていました。ですから、その当時もそういう件数はあったんですけれども、部落に特化した法律で対応ということではなく、人権侵害救済とか人権擁護とかいう形でそういう問題があれば対応していくということがその当時の大きなコンセンサスだった。 一方、二〇〇〇年には、僕らは財政措置で十分と思ったんですが、議員立法で人権教育・啓発法ができました。そこでは同和問題も高齢者、障害者問題の中に位置付けられて、解決を図るための基本計画が政府や自治体でも作られた。それは教育、啓発や相談体制も含むことを念頭に置いた計画になっているわけですよね。ということは、つまり、その当時ですらですよ、十四年前ですら部落に特化した法律ということでの動きもなく、ましてや、その当時からすれば、若い世代での部落内外婚が非常に拡大してきているということであれば、それだけその住民の間に、自分たちの民主主義の力でそうした結婚問題も含む人権侵害は解決していける、そういう力が育ってきているんだというふうに思うんです。 だから、たまさかそういう、たまさかというのは失礼ですけれども、たまたまそういう事案も出てくると思いますが、それも公的機関や国民の民主主義の力で解決できるというふうに私は思っております。ですから、新たな立法を作るその前提となることにはならないというふうに思っています。
○参考人(石川元也君) 私が紹介したようなのが今なお続いているか、現在どうだということですが、現在は確かにそのようなあからさまな暴力的な糾弾というのはありません。 しかし、私が申し述べる時間がなかったのではしょったんですが、これらのことを指摘した地対協の意見やあるいは政府の啓発推進指針を各自治体へ配付したときに、部落解放同盟はこれを返上しろということを言って、大阪府などでは、府下全部の市町村を含めて、二つの例外だけでしたが、返上するというふうな、そのかつての行為についての反省や、それを見直すということが綱領上も明確にはなっていないように、だから、形を変えて、例えば出版物に対する抗議、こういうような形が依然として起こったりする。 表現の自由の問題、自由な意見交換のできる環境づくり、このことに対する障害のおそれというものが今度の法案を契機にまた起こり得る、その可能性が高いということを申し上げておるわけであります。
○西田昌司君 結構です。
○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。 今回の法案のテーマというのは、現在の部落問題をどのように捉えるのか、そして、部落の解放というものをどう考えていくのかだろうというふうに考えております。その前提となるのは、やはり事実だというふうに思っております。 十二月一日の法務委員会で私はこの問題について質問させていただきました。現在も西日本の方でひどい結婚差別があること、一件について言えば、娘の結婚に反対するお父さんが娘の居場所を探すためにGPSまでを使って居どころを確認をしたという件。あるいは、やはり西日本地方の結婚差別ですけれども、前回の法務委員会でもお示ししましたように、念書を取って、今後は結婚しても実家及び親戚一同との縁を切る申出を約束して、一切の関係を絶つことを約束させていただきます、去年の十二月十一日付けの文書、これも皆様方に資料としてお見せをいたしました。 事実に基づいて問題を解決する方向を考えて、そしてそこから判断をしていかなければいけない。だけど、事実があるにもかかわらず、それに対して立場あるいは視点によって方向性が変わってくるというのが現実だというふうに思いますけれども、そこで新井参考人と西島参考人にお聞きをしたいというふうに思います。 私は、前回の法務委員会で資料を出したときに、各自治体による人権意識調査結果というものをお示しいたしました。かいつまんで改めて御紹介をいたしますと、二〇一四年度の鳥取県の人権意識調査結果報告書によると、子供が同和地区出身者と結婚することに反対、一三・一%。あるいは二〇一二年度の愛知県の人権に関する県民意識調査、子供が同和地区出身者と結婚することに反対、四八・五%。あるいは二〇一三年度東京都人権に関する世論調査、子供が同和地区出身者と結婚することに反対、二六・六%。もう一つだけ御紹介しますけれども、二〇一三年度の新潟県人権に関する意識についてのアンケートでは、結婚相手の身元調査は当然、仕方がない、六五・四%。これが現実です。 その上で、まず新井参考人にお聞きをしたいのは、先ほどのお話の中にも、立法事実は存在しませんという、お配りくださったものにもありますけれども、確かに地域の変化あるいは家族の変化というのがあるというのは私もそうだというふうに思いますが、しかし、厳然たる結婚差別あるいは身元調査というものが今でも行われている。 私は、この間、土曜日、日曜日、福岡に出張に行きましたけれども、やはり福岡でも今でもそういう話を聞くだけではなくて、学校に差別落書きが行われている。今の話なんですよね。だから、こういうことをどう捉えていらっしゃるのか、立法事実はないということなのか、それをまず新井参考人にお聞きをし、さらに、西島参考人には、そういう事実というのは全国各地にあると私は自分なりに、私なりの範囲で確認しておりますけれども、先ほど京都の事例を西島参考人はおっしゃっていましたけれども、部落解放同盟として全国各地のそういう事実についてはどのぐらい把握されているのでしょうか。
○参考人(新井直樹君) 立法事実がないといいますのは、結局、何といいますか、言われるような部落を理由とした結婚に関わって忌避をするという人権侵害が結婚差別であるとするならば、どれだけその、何というんですか、いわゆる社会に蔓延しているであるとか、この法をもってしなければ対処できないとか、そういう事態にあるのかと、その現実と言われるものが。だから、私たちは、そのように広く蔓延し、かつての二〇〇二年三月で大臣談話でやめたにもかかわらずそれ以降大きく広がっている事案で、社会的に対応を法的に迫られる事態ではないと思っていますから、立法事実がないという言葉を使っています。 それと、もう一つは、その人権意識調査で、仮にあなたの子供さんがとかあなたが部落の人と結婚する、部落の人と分かったときにそのことをどうしますかといって、反対が一三%とかいうふうな数字とか挙げられましたけれども、じゃ、鳥取県でその若い世代で婚姻に関わって一三%も結婚に関わる人権侵害事案が起きているかというと、実際的には起きてないですよね。これはあくまでも、問題のある設問の立て方で聞いた結果が、あなたの子供の場合に部落の人との結婚を認めるか認めないかと、その場合の部落というのがどういうふうなイメージを持った部落なのか、人それぞれによって異なっていて、そこで得られた数字が即その現実の人権侵害行為になっているわけではありませんから、あくまでもこの問題のある、私は問題のある人権意識調査だと思っていますが、この数字よか素直に見るんならばそれ以上でもそれ以下でもない数字というふうに見るべきだと思うんです。 あなたのお子さんが部落の人だと分かった場合というものの部落というのがもういわゆる人権侵害の実際的なところよりも大きく変わっていて、いわゆる来住世帯と言われるところが大阪でももう六割を超えている、地域によっては元々そこで生まれ住んだ人が住んでいるのがもう一割しかないという、そうしたときに、そこを部落と言えるのかと。また、部落の子と分かった場合に結婚を許す許さないというときの、本当にその旧来の閉鎖的な障壁に囲まれた中で育ってきた人たちをイメージしてのことなのかどうなのか、そこも分からないところがあります。 ですから、基本的に、問題にすべきは、具体的ないわゆる権利侵害実態がどれだけあるのかという、そこの現実というものを見ることが大切なんじゃないかと。だから、有田議員おっしゃるようなことのケースについては、やはり、ほっておけというふうには私も思いません。事実であるなら、やっぱり住民団体も一緒になってきっちり対話を通じて解決、若しくは裁判という手もあるでしょう。そういうふうにして、本来の憲法原則がそこに生きる、当事者の合意がきっちりかなうようなことを周りがどうやっていくかということで考えていくのが筋であって、そこに法律が関与することというのはどういう意味があるんだろうかと。逆に、その法律を盾にそういう気持ちが離れていっていくような二人をくっつけるという逆作用まで起こしたらば何の意味もないだろうという、その法の持つ作用、副作用というのも、一方では立法事実というときの懸念の中にはあるということなんです。ちょっと分かりづらいかも分かりませんけど、そのようなことを質問の中から考えました。
○参考人(西島藤彦君) 私は、冒頭に言いましたように、自分のふるさとを何のためらいもなく、誰から聞かれてもやっぱり堂々と答えられる、そして自分の子供には、孫にも、また親戚にも含めて、何のそこでそのことを伝えても不利益が生まれない社会、こういう社会を我々は目指しているわけです。残念ながら、私は冒頭言ったように、もうこの不利益があるから、村を捨てながら、部落を捨てながら、外で生活しよう、もうこんな人をたくさん私は見てきました。先ほどの結婚差別事件もその事例として発表させていただきました。 要は、堂々と自分のふるさとを名のれるような、そしてそこに何ら不利益は生まれない、こういう社会を我々目指しているわけでありますし、まさに今回の法律は、部落差別は社会悪だという、高らかに宣言されているものでありますから、それを国民こぞってその社会を目指していくというところに私たちも大きな共感を持っているところであります。 同時に、有田先生の方から人権の意識調査の問題が出ました。私たちもこの実態はつかんでおります。更に分析をしますと、最近若い層が、若い層が身元を調べるというところの数が増えているという報告も我々の中には聞いているんです。これまだほんの三年―五年ぐらい、二、三年から三年ぐらいの、四、五年ぐらいの調査ですよね、これ。最近の傾向として、若い世代がそういう意識が高まっているという報告も受けております。 同時に、先ほど言ったように、プライム事件、二万通も戸籍の不正取得事件が発覚しました。主犯は捕まりました。興信所、探偵所に、結婚に関わって相手の身元を調べてもらいたい、こういう現場の興信所、探偵所、依頼された興信所、探偵所は、自ら役所の窓口へ行って調べることができないから大本のプライムに依頼をする。ここにどんどんどんどん情報が集まってきて、高額の金でその情報が流れてくる。そして、先ほども言いましたように、その多くは、この主犯格が公判の中で述べているのは、結婚の際の相手側の身元調査であるんだということを堂々と公判の中で述べているわけであります。 まさに、二〇〇二年に特別措置法は終わりました。十四年経過しました。部落問題は自然に解決していくのか。私は、いやなしに、ますます陰湿、悪質化しながら、一皮むけばそれぞれ人々の本音のところで依然として差別が生きていると言わざるを得ない、こういう状況を強く感じているところであります。だからこそ、今回の法律については大きな私たちも希望を持っているところでありますし、是非ともそれで実現をお願いいたしたいと思います。 それと、結婚差別事件の事例でありますが、全国的な差別事件の状況を私たち一応つかんでおります。ただし、これは本当に機微に関わる話でありますし、もう生きている話でありますから本当に表に出せない、情報としても出せない、こういう状況があるわけです。それぞれがもう現在進行形で動いている話でありますから、非常に、相手に寄り添いながら、支えをしながら、その事件が広がらないように支えをしながら、そしてその事件の解決に向けて様々な関係者に要請をしながら取り組んでいるというのが現状であります。
○有田芳生君 結婚差別というのは、御承知のように、顕在化しないことが多いというのは前回の法務委員会でもお話ししたとおりで、それはなぜかといえば、二人に何とか結婚してもらいたいということだから表に出さない形で解決をしていくということが多くて、今、西島参考人が、プライム事件についてのお話がありました。実は部落地名総鑑を最初に作った人物が証言していることによれば、興信所が調査する九九%は部落出身かどうかなんだと。それは今でもインターネット上で広がっている状況の下で、そういう現実あるわけですよね。 そこで、新井参考人に、もう時間ありませんけれどもお聞きをしたいんですけれども、全国人権連からこの法案には反対だというファックスがもういっぱいいただきました。その中に何度も、インターネット上の部落地名総鑑を取り上げるのは騒いでいることだという表現が何度もありました。私はこの法務委員会で、インターネット上の部落地名総鑑は非常に問題だと何度も何度も取り上げてきましたが、これは騒いでいるというような、やゆされるような問題なんでしょうか。
○参考人(新井直樹君) かつての行政調査による全国の部落実態調査が出版される、またネット上に現在の字名、それから名字も含めて載るという問題については、私たちも、個人を特定する、地域を特定するようなことにつながりかねないということで、法務省や法務局の方に削除依頼はしました。 ただ、ネット上のではなく、いわゆる地名総鑑的なものの情報流通に関わってそれをどう見るかということで、私どもじゃない運動団体の二〇一一年度運動方針というのを資料として出したわけです。その団体の考え方も分かる部分もあるし、いわゆるそういうネット上の空間に載っかったそういう部落や同和に関わっての情報をどう整理するか、議論するかということはやっぱり本当に必要だとは思っています。 だから、何とか騒いでいるというのは、私たちの方針ではなくてほかの団体さんの方針をそこで載せたものです。よく読んでいただければ分かりますけど、二〇一一年度のほかの団体さんの方針です。うちはその問題、方針に書いていませんから。基本的な対処は、先ほど言いましたように、法務省や法務局にも適切な対応を求めています。
○有田芳生君 続きは後ほど。
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかと申します。 今日は、参考人の皆様に貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。早速質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず西島参考人に質問させていただきます。 今日は、お話の中で結婚差別というものの現状についてお話をいただきました。今日配付していただいた資料の中に就職差別についての資料がございましたけれども、この点については特に触れていらっしゃらなかったので、就職差別というものが現在もあるのか、またその状況について教えていただければと思います。
○参考人(西島藤彦君) 時間がありませんで、この説明できませんでした。 この取組は、四十一年前の部落地名総鑑が初めて発覚した後の様々な取組を集約する形で冊子を作りました。 四十一年前に全国の大手の企業が、分けても人事担当が、非常に高額な、当時四万とも五万とも言われる高額な金額で今の部落地名総鑑、今我々が問題にしている地名総鑑の最初の地名総鑑でありますこの図書を、企業の将来百年の計ということに対して、企業の人事担当に販売する取組がありました。本当に百社も二百社もいわれる企業が、それも名立たる企業がその図書を購入しました。そして、人事の担当はそれを持ちながら採用に関わって、全国の被差別部落の地名が一覧が載っているわけでありますから、それが人事の担当に渡るということは、社員の採用をめぐって調査がそこにされるわけであります。それが内部の告発によって、その関わっている内部の告発によって、こんな図書があるんだということが四十一年前に発覚をいたしました。 その後、当時国を挙げて、窓口は労働省でありましたけれども、国を挙げてこのことの解決に向けた取組が全国的に広がりました。購入企業は、自らの社会的立場に立って、再びこういう差別的な採用はしないということを確認しながら、自ら日々人権研修を繰り返しながら取り組んでいくということが生まれました。同時に、採用をめぐっても、企業内に推進員というものを設置をしながら、内部の研修や採用の不公正さを取り除く取組が展開されてきました。 そういう積み重ねの中で、一九九九年には職業安定法が改正をされまして、五条の四項という新しい項目がこの中に入っておりますけれども、本人の属性や背景についての調査を禁止する法律で、一九九九年にうたわれました。まさに、一連のそういう取組の中でこういう改正がされてきました。 ここで私たちは、いろんな方々とも共闘しながら、一ページ目にあるこの項目、表紙のところの項目については職業安定法五条四項に違反する事項なんだと、こういうことを企業のみならず社会にも徹底をさせていこうということで、こういう冊子を作りながら現在も取組を進めてきているところであります。 しかし、入口の段階の、申請の段階での改正はかなりされてきましたが、面接所の中におけるこういう項目を問いただす事件が残念ながら今も後を絶ちません。親の職業を聞いたり、どういう環境の下で生活しているのか、その周りの環境の問題を聞いたり、人生観や思想、信条の問題も含めて、こういうものは全て五条四項で禁止の対象になっているわけであります。 私たち、それぞれの労働局のまとめを聞いても、面接の中での不適切な質問事項が今も後を絶たない、こういう状況も聞いているところでありますし、そういう課題を集約しながら克服のための学習教材に使っていくとか、これは法律でうたわれているから完全になくなるんではなしに、繰り返し繰り返しそのことを根絶するための取組を今もやっていると、こういうところでこういう冊子を作ったところでありますので、広くこれを普及していきたい、こう考えているところであります。
○佐々木さやか君 ありがとうございました。 今回の部落差別の解消の推進に関する法律案ですけれども、基本理念を定めたものでございます。この中に、部落差別といったものは憲法に照らして許されないんだと、こういったことを明確に規定をしていると。その意味というのは私も非常に重要なものであるというふうに思っております。 私が思うに、この法律案の重要なポイントの一つは、そうした意識を国民一人一人の間にしっかりと浸透させていくということだと思っています。そのためには、この法案の中にもあるんですけれども、教育及び啓発というものが重要であろうというふうに思っています。 ただ、この教育、啓発、具体的にどのように行っていくかということはこの法案にはありませんけれども、これからどのように行っていったらいいと思っていらっしゃるか、この点については逆に何か差別を助長するような形であってはならないというふうにも思いますし、そういう声もありますけれども、西島参考人はどのようにお考えになるでしょうか。
○参考人(西島藤彦君) 先ほども出ましたが、二〇〇〇年に議員立法で人権教育・人権啓発推進法ができました。それぞれの自治体では、それを基にしながら行動計画というものを作り、日々の市民研修の中で活用されているところであります。 先ほども出ましたが、人権という非常に大ぐくりのテーマでは、残念ながら部落問題がこの間、とりわけ二〇〇二年、法律が終結以降、部落問題をテーマにした議論がどんどん希薄化しているというふうに私どもも感じています。そういう意味では、今回そこに焦点を当てるということで、もう一度、人権は何も一くくりで語れませんし、ヘイトの問題と部落差別を一つで語れないわけでありますが、それぞれの社会性がありますから、個別の中でしっかりとした公教育や研修の中でそういうものが語られることによって、私はもう一度、一面、二〇〇二年以降、若者層まで含めて身元調査やそういう意識が広がってきていることに対する改善の取組ができるんではないかなというところで、今回の法律については強く期待しているところであります。 もうこの間、正直言いますと、人権という大ぐくりの中の話でありますから、個別のそれぞれの課題に合わせた研修や、とりわけ部落問題に関わって言うならば、どんどん希薄化していったという我々も現場での歯がゆい思いや経験を持っておりますから、是非ともそういう個別の中の研修の積み重ねによって、今言う問題が私は目に見えて前進してくるんではないかな、このように思っているところです。
○佐々木さやか君 ありがとうございます。 今の教育、啓発の問題について新井参考人にもお聞きしたいと思うんですけれども、この法案自体には反対の立場でいらっしゃるとは思いますが、教育とか啓発ということが必要と、どういう形かにもよるかもしれませんけれども、教育、啓発が必要ということについては恐らく思っていらっしゃるんじゃないかと思うので、今後の教育、啓発の在り方について御意見をいただきたいと思います。
○参考人(新井直樹君) 先ほど、国連人権教育十年を日本国内で進めるという立場で日本の人権教育・啓発法が議員立法でできました。政府の審議会答申は財政措置で十分だと言ったんです。私たちもそういう主張でした。 つまり、法律を作ることによって、啓発の場合なんかは特に人々の心の中をえぐり出す、そしてその差別意識を改変するというところに行くことの、法律はそのアクセルになってしまって、ブレーキが利かなくなると。だから、そのようなものは法律じゃなくて財政措置で、自主的な啓発や学校での自主的な教育によって、人権教育とか人権啓発を行うべきだという考えなんです。 日本の場合のおかしさというのは、結局、国連人権教育十年というのが対象にしていたのは、行政や官僚や政治家や、いわゆる権力に近い人たちに対して国連の宣言とか規約を学べと言っている。日本の場合は、日本のそういう人たちに憲法学べというようなことじゃないんです。国民の人権意識を高めるために差別意識や偏見をなくすと、そのための教育や啓発をやりなさいと言って、国民が責任を持たされちゃっているという、そこが大きな違いなんですね。だから、人権教育・啓発法で今作られている基本計画も、同和問題を始め様々な問題があり、それにどう対応するかという書きぶりになっている。 今度、この法律が部落特化法ですから、そうすると、部落問題だけの教育・啓発計画作りというのがそこでは法によって強制されかねないんです。いわゆるもう啓発によって高校生なんかの意識調査もやるわけですけれども、部落の成り立ちについて聞いて、人種、民族が違うとか、宗教が違うとか、政治がつくったとか、分からないという設問を出して、高校生困っちゃうわけです。分からないと書くと怒られそうだけれども、どれも丸にならない。それが結局、設問そのものが変な偏見を、部落に対する偏見を押し付けている形になっていて、ですから、今ある啓発がやはり是正をしなければ問題なんです。 だから、それを拍車を掛けるのが今回の法だと思っている。だから教育でも同じなんです。江戸時代の身分制の一面だけ強調していて、近世はどういう社会で、前の社会から比べたらどう前進しているのかとか、人々の暮らしはどう良くなったかとか、そういう基本を押さえないで底辺の話だけをすると、やはり受けた教育によっては子供たちが、やっぱり人種、民族が違うんじゃないか、どこか違うんじゃないかという偏見を持ってしまう。だから、この法ができることによってそういう大きな弊害が生じることをまず心配するわけです。やめた方がいいんです、そういうことは。基本に立ち返った教育、啓発の方がいいというふうに思っています。
○佐々木さやか君 時間が参りましたので、終わります。 ありがとうございました。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。 先ほど来の指摘があっている問題点にも関わって、まず部落解放同盟の西島参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、差別をどう捉えるのかという問題について、部落解放同盟綱領、二〇一一年の綱領に関わる解説のための基本文書を拝見をしますと、社会意識としての部落民に対する差別観念として、「自己が意識するとしないとにかかわらず、客観的には空気を吸うように一般大衆の意識のなかに入り込んでいる」という規定がここにもなおあるわけです。部落民以外は全て差別者だとかつておっしゃっていました。今もそうおっしゃるのかもしれません。その差別の有無やあるいは本質を、だから被差別者、つまり解同が確認し、その人間性を変革するとして糾弾をするということがエスカレートして深刻な事態をもたらした。 これは、さきの質問で、民間運動団体の行き過ぎた言動等によって行政の主体性の欠如あるいはえせ同和行為の横行が見られるという指摘は私の指摘のとおり、このような問題が差別意識の解消を阻害し、また新たな差別意識を生む要因となり得るという点については現在も変わらないものと承知をしているというのが法務大臣の答弁なんですけれども、その確認・糾弾について、この基本的考え方には、狭山差別裁判などの部落差別事件や差別実態に対する糾弾の取組を堅持し、糾弾の社会的正当性の確保と定着を図ることということが今後の部落解放運動の基本課題の第一に掲げられているわけです。 この確認・糾弾の考え方というのは、これは変わらないわけですか。
○参考人(西島藤彦君) いつの時代の資料で言われているのか私は分かりませんけれども、部落民以外は差別者だということは、少なくとも私が同盟の責任者の今の段階で言うならば、そんな議論はありません。 例えば、奈良の事例を出します。奈良は、差別、被差別、両側から越える、お互いに差別、被差別の関係を両側から越えながら、その垣根をよりより低くしながら差別撤廃の取組をしていこうという運動が始まっています。 もちろん、今も我々のところには様々な差別事件の情報が寄せられます。その差別事件に対しては、限りなく公開性、説得性、そういうものを持ちながら進めていきたい、またそういうふうに私も責任者として進めてきているところであります。 先ほど、いろんな事件の事例が出ました。正直言いますと、もう五十年ほど前の話を、私もまだ子供の時代の話です。聞き及んでおります。聞き及んでおりますけれども、それが今現にあるかのごとくの議論というのは、非常に時代がもう一気に五十年ほど飛んでいるのではないかという思いを持ちますし、その空気を吸うようにとか、部落民以外は全て差別者という議論は、今全くありません。
○仁比聡平君 五十年も遡らなくても、二〇〇六年の二月に、部落解放同盟中央本部が他の二団体の方々とともに国連の特別報告者に回答した文書があるんですが、今申し上げている糾弾闘争について、先ほど石川参考人が指摘をしておられる、あるいは基本判例として紹介をしておられる数々の判例がありますけれども、これらの裁判では、①差別の存在は認めた、②差別が受けた者が差別した者に対して抗議行動を展開し反省を求めることも認めた、が、③実力を行使した面は有罪として運動側が裁かれたという報告をしておられるようで、つまり実力、暴力というものを行使しない限りは、この判決、諸判例、これに基づいて到達した例えば地対協の意見具申など、この指摘について、どうもそのまま受け入れているとは思えない記述なんですが、御認識はいかがでしょう。
○参考人(西島藤彦君) 例えば差別事件が起こったとしましょう。差別された側がそれを何ら抗議もなく受け入れるということはないと思います。もちろん、その痛みに対して強い怒りでもって相手に抗議するでしょう。様々な抗議の方法はあると思いますけれども、何ら抗議をしないということはないわけです。ただ、そこでは、我々は組織の責任者として、限りなく公開性、説得性、そして第三者も含めた立会いの中での公開性、こういうところを指導してきておりますから、少なくとも私が見ている限りにおいてはそういう事例はないというふうに思っております。
○仁比聡平君 別のテーマで、この法案の、部落差別を許さないとされるんだがその部落差別の定義規定がないということに関わって、提案者が、部落の出身であることによる差別である意味において一義的に明確であり、それは行政にとってもそうであるはずだという答弁を繰り返しておられるのは御存じのとおりなんですが、これは部落解放同盟の二〇一一年に規定されている部落民という規定と同じ意味ではないですかという私は提起をしてきました。 この部落民という規定について、この綱領解説のための基本文書に、「われわれは、被差別部落に現在居住している人を「部落住民」、被差別部落にかつて居住していた人を「部落出身者」と呼称する。」というふうに規定されているんですが、この出身という考え方がどこまでのことを意味をしておられるのか、部落解放同盟としての御理解を伺いたいんです。つまり、今住んでいるというのは居住者なわけですよね。となると、生まれ育って過去住んでいたとか、一度も住んだことがないんだけれども親がその地域に過去住んでいたとか、あるいはおじいちゃんやおばあちゃんがその地域に住んでいたことがあるとか、更に遡って何代前までとか、その本籍だとかあるいは血縁だとかをたどるようなことになりはしませんか。
○参考人(西島藤彦君) 私どもがそういうことを相手に求めているのではなしに、先ほど報告したように、社会が身元調査の中で例えば遡って調べているわけです、社会が。我々は、それは綱領でありますから、同盟員とかそういう会員になるに当たってそういう一定の基準を作っているわけですけれども、社会が、遡って部落出身をそこにカウントする社会の存在があるから問題なんです。 差別事件を、先ほど京都市の事例も出しましたけれども、本人は部落から出ている、そして親から自分が出身者も教えられていない。しかし、その別れた父親が同和地区出身ということを調べながら暴いて、あんたは部落民だということで差別されているわけです。もっと言うなら、あんたのおじいちゃん、おばあちゃんはかつて同和地区に住んだ人なんだからあなたも部落民だということを社会が騒いで差別の対象にしているわけです。そこを今問題にしているんです、我々は。
○仁比聡平君 今そういうお話だと、実態調査を考える上でも、そうした対象地域の住民であることと様々な現象との関係というようなことが問われてきてしまうのかなというふうにも思うんですけれども、ちょっとその辺りは後で議論させていただくとして。 自由同和会の関係で灘本参考人に今の点をお尋ねしたいんですが、二〇一一年の自由同和会の運動方針を拝見しますと、今私が申し上げた点について、つまり部落解放同盟が部落民呼称を大会で決めたことについて、このことは同和地区の固定化と同和地区内住民を混乱させるとともに分断化につながる、また、同和地区以外に住む人たちにまで部落民とのレッテルを貼ることは大きなお世話である、今回の決定は被差別部落の解放とは逆行し、融和を妨げるものであり、単に運動側の都合だけであると言わざるを得ないといった認識を示しておられると思うんですけれども、これはどういうお考えかということと、それから、部落の出身者であることによる差別という言葉が、法案の提案者が言うように一義的に明確なのかという点についてはどんなお考えでしょうか。
○参考人(灘本昌久君) 済みません、私は直接的に自由同和会のメンバーではないので、その二〇一一年のときの自由同和会からの批判についてちょっと詳しく今解説する立場にはないんですけれども、私がいろいろ研究している過程で考えることは、昔は、部落民であるか部落民でないかというのは割とみんなの意識の中で截然と分かれているわけなんですね。ある一人の人間を取ってきて、この人は部落民であるのかないのかということは、さあ、どっちやろうということはまあ少なくて、一九七〇年ぐらいでしたら、部落出身でありますとか、そうではありませんというのはもうはっきりしていた時代があったんですね。だけれども、一九八〇年、九〇年代になってきますと、特に例えば小学生なんかで日常的に差別されるようなことがなくなってきますと、部落に生まれ育っていても、自分が部落出身であるとか同和地区民であるとかというアイデンティティーはもうない状態でずっと育ってくるわけなんですね。 ですから、私が一九九〇年頃に書いたり話したりしたことの中で、これからはそういう部落民であるかないかということをはっきり分けた状態を前提にした運動というのはもう成り立たない時代が来ていますよということは前々から言っていまして、だから今、解放同盟が幾ら一生懸命部落民の定義を頑張って作っても、やっぱりどこかに外れてくるところがあって、だから部落民であるかないかという定義はもうそろそろ必要がないんじゃないかなというふうに今は考えています。 ちょっと質問のことに対する直接的答えではないと思うんですけれども。
○仁比聡平君 ちょっと残り時間少なくなって、一問だけ聞いておきたいのは、実態調査の中で、先ほど来話題になる意識調査というのがあります。 現に、大分県の宇佐市でこの間行われてきた意識調査の一つの問いだけ御紹介しますけれども、封建時代に制度としてあった被差別地区はどのような起源でできたと思いますかという問いに対して選択肢が挙げられているんですが、ア、民衆を支配するための手段として政治的につくられた、イ、人種が違う人々の集まり、ウ、宗教が違う人々の集まり、エ、特別な職業に就いていた人々の集まり、オ、昔から言い伝えられていた、カ、戦に負けた人々の集まり、キ、分からないと。 こうした項目での意識調査を今行うということについて必要と考えるか、それとも何らかの御意見があるか、西島参考人、灘本参考人、新井参考人、それぞれ端的に伺いたいと思います。
○参考人(西島藤彦君) ちょっと一面的、そのことだけ切り取ってはちょっと私も答えられない。 少なくとも、いろんな手法の意識調査の取組がありますので、先ほど有田議員の方からもあったように、私も鳥取や新潟や愛知の情報を持っておりますけれども、そういう選択肢やなしに自分で書く方法もありますからね。だから、今のその問いに対してはちょっとコメントできません。
○参考人(灘本昌久君) 今の質問というのは昔々よく、はやってやった質問で、正解は、政治的な都合によって人民を分断支配するためにつくったんだというのに丸というのが正解だったんですけど、現在の部落の歴史研究ではそういうことによってできたのではないということがもう主流になっておりますので、そもそも今のその選択肢の中でちょっと正解というのは見当たらないわけなんですね。そこを強いて聞く必要はないし、多分、これから先、そういう意識調査をするときに、今の設問というのが使われることはちょっと考えづらいように私は思いますけれども。
○参考人(新井直樹君) 同和対策事業をやっていた時代には、同和対策事業を円滑に進めるために周辺住民の人たちの協力が必要で、そのための啓発を行うと。それにはそういう、人々がどういうところに問題関心とか偏見を持っているのかというのを調べる上では必要な調査であったと思います。ですから、それはもう二〇〇二年三月で終わるべき内容の項目であって、今日は有害でしかない設問だと思います。 それから、意識調査というのが人権施策を進めるための、いわゆる住民がどこに問題関心を持っていてというのを知るための調査であるのならいいんですが、差別意識をそこから拾い出そうとしている今の行政上のやり方は、やっぱり問題があるから即刻やめるべきだというふうに思っています。
○仁比聡平君 終わりますが、今の宇佐市の調査というのは平成二十五年に行われているものです。 終わります。
○高木かおり君 日本維新の会の高木かおりです。 本日は、お忙しい中、参考人の皆様におかれましては御出席を賜りまして、誠にありがとうございました。貴重な御意見もいただきました。 時間もございませんので早速質問に入らせていただきたいと思いますけれども、部落差別解消の推進に関する法律案につきまして、私は前回の委員会で、この法案を成立させることについての必要性と法案が成立された場合の効果についてお聞きをいたしました。いわゆる同和三法とその後の政府の取組につきまして、各省庁どういった取組をしていただいているのかということをざっとお聞きしたわけなんですが、それで既に取り組んでいただいていることがたくさんあると。それによりまして、ある一定程度の効果も上がってきているように思われます。少しずつ部落差別というものが世間一般で薄れてきているんではないかというふうに感じているわけなんですが、そういった中で、それにもかかわらず、こういった法案が今回提案をされました。 その点につきまして、発議者の先生方にお伺いしましたところ、環境整備ですとかそういった物的な格差というものが解消がかなりできてきて、できてはきたんですけれども、やはり今なおこの部落差別というのは歴然と残っていると。やはり当事者の皆さん方の思いといいますのは、私たちがふだん感じている以上に切実な思いであるという認識を持っておられると。今更取り上げることによって寝た子を起こしてしまうと、そういった御意見もある中で、それは一定、事実だと思うけれども、今インターネットによってそういう差別意識を目覚めさせる事象がこれから懸念されるのではないかということもあって、今回提案したといった内容のことをおっしゃっておられたと思います。 もちろん、こういったことは地域差などもあるかと思いますけれども、本日、参考人の皆様から様々な御意見がある中で、一つ、同じ質問で皆様にお聞かせいただきたいんですけれども、重なるかとは思いますけど、この法案を成立させる必要性について、必要性の御見解をお聞きしたいということと、あと、今回の法律案に具体的にどのような点を期待されるのか、また、この法案に反対する立場の方は、今後、これ以外にどのような対策がほかに必要だと思うか、こういった点につきましてお聞かせをいただきたいと思います。 大体、時間が余りございませんので、お一人三分程度かと思いますので、よろしくお願いいたします。
○参考人(西島藤彦君) まず、今回の法案の第一条であります部落差別は社会悪であるという、このところの具体的な行動の取組に対して、もちろん国民も挙げてしっかりと努力していかなければなりませんし、我々も含めて、ここに一番の大きな期待を持っているところであります。 それと、二〇〇二年に特別措置法の終結に向けて国は地対協の意見具申を九六年に出しているんですね。その九六年の基本認識のところで、改めて昭和四十年の同和対策審議会答申がそのときに指摘している内容の精神をしっかり踏まえながら、今後も国民の一人一人が同和問題の解決に向けて主体的な努力をしていかなければならない、そして、同和問題は過去の課題ではない、この問題の解決に向けて今後の取組を人権に関わるあらゆる課題の解決につなげていくという、広がりを持った現実の課題であるということをこの九六年の地対協意見具申は基本認識の中で示しました。そして、二〇〇二年に終わりました。 しかし、先ほどから言っているように、人権教育や人権啓発の取組はそれなりにされてきたわけでありますが、やっぱり同和問題の取組はどんどん希薄化していった、他方で、様々な意識の実態がまた新しく芽生えてきた、私は今そういう状況ではないかな。そういう中で、今回のこの法律は、改めてもう一度国、国民挙げてそのことを許さない強い決意を法律に示すことによって、我々も不断の努力をしながらその具体化を求めていくというところに大きな期待を持っています。
○参考人(灘本昌久君) 私は、仕事柄といいますか、やっている研究上、よく小中学校の先生の職員人権研修に呼ばれるんですね。夏休みの比較的授業のない、子供たちを集めることのない八月の下旬辺りは、午前中どこかの小学校、午後どこかの中学校といって研修することがよくあるんですけれども、最近、一度は頼まれたんですけれども、後でまた電話が掛かってきて、済みません、実は携帯電話の使用の危険性についての研修にちょっとテーマを変えたいのでまたにお願いしますといって、テーマが変わって、同和問題のことで話す、何というんですか、計画が飛んでしまうことというのが結構ぽつぽつここ数年あるんですね。 特に学校の方はそんなに悪意でやっているわけじゃなく、まあしかし、職員で議論したところ、取りあえず緊急の課題でこういうのがある、こういうのがあるというので結局飛んでしまうということなのかもしれませんけれども、一方で、それ飛んでしまうと、もう同和問題のドも知らない状態の先生が、でも同和地区を抱えて、それなりに何か問題を抱えているのにそういうことの研修が全くされない状態があって、教頭先生、校長先生もううんと言って困ってはることも結構あるんですね。 だから、今回の法律で少しその同和問題も一つの位置付けができれば、例えば小中学校の先生たちの研修の数年に一回ぐらいは同和問題の研修をするような機会ができるんじゃないかなと思いますが、その程度の効果は期待できるのかなと思います。
○参考人(新井直樹君) 私は、この法律はかえって部落問題解決に大きな障害をもたらすから要らないと。 ない場合に何をやるのかというと、冒頭、私の一九七九年からの話もしましたけれども、新しい差別ですね、今問題なのは。古い遅れた意識に基づく因習的な差別が要因で結婚問題が起きているのかどうか、そこも分析必要ですけれども、八六意見具申とか啓発指針が、もうその頃から既に新しい差別を生み出している要因、これを取り除かない限りそういう事象は減らないでしょうというわけです。だから、特にそこでは、いまだに続いている個人給付的事業の問題だとか、いわゆるここで九一年の今後の地域改善対策に関する大綱でも言っているんですけれども、地方税の減免措置の一層の適正化、国税の適正な課税の執行、民間運動団体に対する地方公共団体の補助金等の支出の一層の適正化、公的施設の管理運営の適正化、教育の中立性の確保等々、こういう従来からそういうものをなくさないといわゆる差別事象というものは減っていかないですよと言われているんです。だから、そういうことをきちっとやっていくことがそういう結婚差別も含む人権侵害を真に減らしていくことになると。もう一つはやっぱり住民自身の民主主義の力ですよね。そこにやっぱり依拠してこういう問題、結婚差別もそうですけれども、なくしていくんだというところで力をつくっていくことだというふうに思います。
○参考人(石川元也君) 私が先ほど落としたところをちょっと補充しながら今の問題に触れます。 先ほど一九九六年の意見具申の認識ということをおっしゃられましたが、西島さん、それの後の二〇〇二年に、総務庁が同和行政を終結する理由として三つ挙げた中に、生活環境の改善が進んだことと同時に差別意識も確実に解消されてきているということを二ページのところに書いてあります。これが当時の政府の認識であって、更に継続する必要は、むしろ有害である、有効とは言えないというふうにしたわけです。それ以来十四年たって、差別意識の解消は進みこそすれ、個別的な例外事象がそれは時に起こるでしょう、絶滅ということはなかなかできないと。しかし、それはそれに対する個別の厳しい追及の仕方を考えるべきだと。 人権全体について私が書いておりますのは三ページのところですが、全ての人権を視野に入れた政府から独立した国内人権機関、これが国連からも求められているものなんです。西島さんが再三にわたって、希薄化されてきている、こう言っています。希薄化されてきたということは、まさに部落差別の解消が進んで、部落問題というのは国民の間に大きな問題としていまだに残っているということではない。たまたま結婚差別とか何かという厳しい事例はあるでしょう。それから、インターネットでけしからぬのもあるでしょう、それはそれについてやる。インターネットの削除の問題や、それなどは部落差別以外にもひどいのもある。そういうもので特別な対策が必要ならば、インターネットに共通する規制がどういう形ならできるかどうかという議論をすべきで、部落差別が大きくなっているというふうにそれを捉えるんじゃないと思うんです。 先ほど来、事実と言っていますが、私は弁護士としてずっと事実を追求しながらやってきたつもりですが、こういう点でいって、希薄とか、あるいは委員の方でおっしゃられているように忘れられてきていると、それは結構なことで、それが今の社会の、一時あれほど荒れ狂った糾弾とか部落問題、部落は怖いという意識、そういうものがなくなってきている証拠だと思う。だから、今更この法律を作ることはない。部落問題を含めて差別やら人権侵害やらについては、それらを全てきちんと扱う人権機関というものを確立して、それが受皿になってやるという、そっちの方を考えていただくべきだと思うんです。 憲法の侵害は非常にあります。残業問題で過労死したあの女性の問題もそうですけれど、行政がそれぞれやるべきことをやって、きちっとやったかといえば、やっぱりそうでないところがああいうことが出てきているんじゃないか。そういうことを考えて、この法律を作るよりは、全ての人権にきちんと対応するそういう機関を、しかも政府から独立したというところが大事なところなんだ、そういうことを申し上げておきたいと思います。
○高木かおり君 ありがとうございました。参考にさせていただきます。これで終了させていただきます。
○糸数慶子君 沖縄の風の糸数慶子と申します。よろしくお願いいたします。 本日は、参考人の皆様におかれましては、お忙しい中御出席をいただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、心よりお礼を申し上げたいと思います。 実は、私の方も四人の参考人の皆様に、今回のこの法案の評価について、それぞれ参考人の皆様、特に懸念であるとか、それからこの法案の改善点あるいは問題点などありましたら御意見をお聞かせいただきたいと思いましたが、今、高木委員の中からも大分御質問ありました。 それで、今答弁されたこと以外にどうしてもこれだけはという強調する点がありましたら、それぞれ参考人の方々にお伺いしたいと思います。
○参考人(西島藤彦君) 先ほど言ったとおりでありますし、本当に、さきの国会から継続して審議をいただきまして、我々とすれば、何とかこの国会で皆さんの御努力で成立をお願いしたいという思いでいっぱいであります。 先ほどからいろんな事例も出していますように、それぞれの本音の内面に内面に探っていけばいくほど、まだまだ差別意識という存在に我々ぶち当たるわけであります。中には、寝た子を起こすなになるんではないかとか、しかし、先ほど私、事例言いましたように、寝た子を起こさないで、いきなりがんと差別で起こされる事例だってあるわけでありますから、だから、やっぱりそういう事実は事実でお互いに共有をしながら、それとやっぱり向かい合える、そのことを許さない国民の広がり、こういうものを我々も不断の努力でこれは頑張っていかなければならないわけでありますし、そういうものを求めているところであります。 したがって、今回のこの法案、我々とすれば、何とかその目的にあることを法制化することによって、我々も一国民としてそこに依拠しながら不断の努力を図っていく、そして差別のない社会をつくっていく、こういう思いで頑張っていく所存でありますので、一日も早いひとつ成立をよろしくお願いいたします。
○参考人(灘本昌久君) 大体先ほど来申し上げているとおりなんですけれども、この法律自体は、結局、相談とか調査とかいうことを、最初は理念的なことが書いてありますけど、結局その理念に基づいてどういうことをするんだといえば、相談体制を充実させるとか調査をするというようなことだと思うんですね。ですから、そんなに何か事新しく今までと違う事業がどかんと起こってくるようなことじゃないと思うので、私としては、先ほど言いました、ちょっと同和問題がどちらかといえばもう忘れられたふうになっている中で、少しそれに対する研修の機会が若干増えるという効果がある程度かなというふうに思っております。 と言うと、何か余り期待していないようなことになってしまいますが、できましたら、この法案とは別に、今、日本社会が、何といいますか、両極分解というか、生活困難層はますます苦しくなっているようなところもありますので、そういう地域を下支えするような、地域を最後のところで受け止めて崩壊しないようにするような、そういう施策もまた同時に検討していただけたらと私は思います。 以上です。
○参考人(新井直樹君) 一つは、ヘイトスピーチ根絶法との関係です。 私も、ああいう特定の地域に押しかけていって、そこに平穏に暮らしている人を出ていけとやるような、そういう諸言動は何らか規制は必要だなとは思っていました。 その際に、この委員会の議論をずっと聞いていまして、いわゆる表現の自由を侵さない形でそういう諸言動をどうやったら排除できるかというところを一生懸命議論されて、ある意味では分かりにくいような差別的言動の規定がなされて、濫用できないような形できっちり作られていると思います。ただ、やはり表現行為に関わる規制ですから、ちょっと半分は懸念するところもあるんですけれども、踏み込み過ぎていない形で作ろうとすると、もうやっぱりあれがぎりぎりなのかなと思ったんですね。 今回のこの法律で、部落差別とか、部落差別は許されないと、ずっと二十か所ぐらい文言があるんですけど、部落差別とは何か、許されないというその対象となる事柄は何かというのが全然書いていないんですよね。だから、法律としてどうなんだというところと、それから、基本に戻れば、部落差別というのは法律上規定することはやっぱり困難じゃないのか、困難だから書けなかったんじゃないのかと。そうすると、書けなかったんならばこの法律は作らない方がいいんじゃないのかという考えになっていくんです。 つまり、同じ差別的言動という形で発議者の方には部落出身者に対する差別というのが言われるんだけれども、部落そのものが変わってきちゃっていて、そこでの出身者というのも、どこまでを出身者というふうに社会的に見れるかというのも非常に変わってきちゃっていて、特定の地域の例えば沖縄に住んでいる人というのとはまた異なる中身なんですね。 だから、差別の根っこは同じってこの前先生言われたけれども、やっぱり差別の属性が異なっていて、それを法律でなくす、許されないといったときに、やっぱり厳密にやらないと、言論、表現の自由に抵触し、それを侵すことになりかねないという危惧があるんです。 だから、作ってほしくないんです、こういう無限定なものは。とりわけ、差別の根っこが同じで、なくそうというんであれば、違った形の教育の在り方、啓発の在り方をもっと議論すべきだと、そのそれぞれの領域でですね、法務委員会じゃなくてそれぞれの領域で議論すべきだというふうに僕は思います。
○参考人(石川元也君) 関連して申し上げますけれど、私は、理念法だからというんですが、理念はもう確立しているというのが私たちの見解、考えです。だから、これが、法律作らなくても、部落差別ということは許されないという社会の通念はなっておる。だから、今の法律、この法律は作らなくても、今までのもので最高裁判所の判決が出たり、あるいは差止めの横浜の地裁のものが出たりしています。 私が紹介しました基本判例でも、例えば埼玉県の市長選挙が選挙無効になった事件があります。同和対策是か否かということについて、それを差別だとして解放同盟と、それから選挙管理委員会がそのポスターに紙を貼ったというような事件がある。そのときに、裁判所は、差別が許されないということは憲法十四条をまつまでもなく当然そのことは違法なことなんだと、許されない。許されない行為について、どういうのがあればどういうふうに法律的に適用して対応していくかという、そういうことは今でもできるわけです。 問題は、そういう社会意識も確立し、社会理念としても確立しているけれど、これを作らなければどうしても駄目なんだという、そういうふうには私は思えない。むしろ、作った場合の弊害が、今までも御指摘しているようなことがありますし、それは、人権全てについての確立した救済機関というものをする方がよっぽど先なんだ。その中に、部落問題でも極端なあるいはひどいものについては当然その中で救済される。問題は、部落問題だけ特別の法律を作るという考え方が、この三十三年間の行政を通じて、そういうことはもう二度としないというふうになったはずじゃないか。そういうことを申し上げたいと思います。
○糸数慶子君 ありがとうございました。 差別がなくなるために、やはりいい法律を作ることはもちろんなんですが、それはやっぱり使う人に人権感覚がなければ差別はなくならないというふうに思います。 そこで、時間ももう残り少なくなっておりますけれども、人権の専門家でいらっしゃる参考人の皆さんに土人発言についてお伺いをしたいと思います。 お分かりだと思いますが、これは、沖縄県の東村高江でヘリパッド建設に反対する市民に対して機動隊員が土人と罵倒したことは、私、沖縄県民の一人として許し難い差別発言だと思いますが、土人とは未開の土着人を指すわけでして、この言葉は、単独でも人に対して使えば言われた方は差別的だというふうに受け取ります。 機動隊員は、土人発言の直前に、触るな、どこつかんどんじゃ、ぼけという侮蔑的な発言を行っておりますが、この一連の発言を政府は差別と断定できないというふうにしておりますけど、この差別的言動を行った側が差別に当たらないと主張しても、言われた側が差別であると受け止めればそれは差別に当たると思うわけですけど、参考人の皆さんに一言ずつ、これが差別発言であったかどうかということを御見解を伺いたいと思います。
○参考人(西島藤彦君) その発言の出た後、我々組織としては代表して抗議の行動を起こしました。かつて法律の中にも、アイヌの人たちを、旧土人保護法という名称で法律もかつてありましたし、そういう意味では、そういうアイヌ新法の運動にも我々も参加をしながら取り組んできましたし、今言う件についてはすぐさま私たち組織としては抗議の行動を起こしたということだけ理解してください。
○参考人(灘本昌久君) この間の警察官による発言は、もう明らかに差別的な意味を込めて言っているので差別発言だとは思いますが、土人という言葉がいついかなる場合でも差別に当たるかどうかというのはこれはまた別の話で、アイヌに関する旧土人保護法の土人というのも、実は昔、先住民というような意味合いとかなり近い状態で使っている時代もありましたので、今土人という言葉が差別的だから、ずっと歴史的に遡って、どんな場面で出てきても土人という言葉はこれは使った人が差別を込めて言ったに違いないと類推することはちょっとできないかなと。 この間の警察官の発言はもう明らかに問題発言と思いますが、それをしかし政府が差別であるかないかというのを決定して言うということがいいかどうかというのもまたちょっと、少なくとも大変な問題発言であるということさえ認めれば、差別であるという規定をしたかしないかは余り重要なことではないんじゃないかと私は思っております。
○参考人(新井直樹君) 言われた側がそう受け止めたから差別かという立て方だけでなく、やはり言った、土人やシナ発言もありましたけど、やっぱり侮蔑、排斥、見下す、そういう意図が感じられる、そういう流れの中での発言だと思いますから、これは明白に差別的言辞だと思います。 ただ、それを認めない担当大臣というのは何なのかと。やはり、そこの方の人権教育の方が本当大変大切だと、そっちの方を教育していただきたいと思います。
○参考人(石川元也君) 私は、もう明白な差別発言だと思います。同時に、今もありましたが、言われた側の感覚が、同時にそれが社会的支持を受けている。昔の、踏まれた者しか分からないというのとは違って、言われたのがひどいということを全国の人たちが皆そう支持しています。私たちの団体、自由法曹団もあれには抗議をしています。 問題は、政府の要職にある人がそういうことを認めない、その方のなりというか、その職にふさわしくないですね、それはもう。そういうことだと思います。やはり、重要な職にあり、部下といいますか、それを監督する立場にあるんですから、はっきりそのことを認めて部内での処理をきちっとする。大阪府警だけの処分になっていますけど、これは全国の警察官の問題だろうと思いますから、おっしゃるとおり、あのことは極めて不当なことだと思います。
○糸数慶子君 ありがとうございました。終わります。
○山口和之君 無所属の山口和之と申します。 まず初めに、灘本参考人にお伺いしたいんですが、心もとない法律で、ちょっと前に進めばまあいいかなというぐらいに、感覚でいらっしゃるということなんですが、どういう法律だったらよかったかなということをちょっと教えていただきたいなと。
○参考人(灘本昌久君) 私自身は、同和問題に特化して大きな事業をどんどん進める法律が今必要だとは思っていないんですね。だから別にそれがないからこの法律は要らないということは思っていなくて、ただ、二〇〇二年に同和対策事業の法律が切れたときに、まあまあ仕方がないかなと思ってここ十何年来観察していますと、やはり、元々その啓発事業の中で同和問題というのは割と扱いづらいテーマではあって、高齢者問題とか障害者問題とか児童虐待とか、そこは割と先生がぱっぱっと勉強して何か扱うことは可能なんですが、同和問題というのはなかなか相当専門的に勉強した人でないと何か研修で扱うというのは難しい性質がありますので、どうしても置き去りになりがちだったと。だから、今回の法律ができたことにより少しそれが改善されればなと思うんですが。そういうことです。
○山口和之君 では、同じく灘本参考人に、どうすれば同和問題というのは解決するのかというのを伺いたいなと。
○参考人(灘本昌久君) 私自身の現状認識は、そんなに同和問題は重大、深刻だとはもう思っておりませんで、私が大学時代に京都に来たときに中学校の校長先生に聞いた話では、やはり京都の同和校で勤めていると、若い人が部落の外と中の結婚は四つあったらまあ三つは問題になると言われたんですね。それで、僕はもう大変なことやなと思って、もう一九七〇年代、中のことですけれども。現在はそんなに、何か四つそういうことが起こったら三つ問題になるというほどではなく、かつ問題になってもある程度解決可能だという場合が多いので、その点では随分と、だから同和問題というのは僕はうまく解決してこれたなとは思っているんですね。 ただ、そこの、まだ少しでも残っている部分が案外、目立たないけれども相当あるので、そこを、先ほども言いましたけれども、一つは啓発という、正しい知識を普及するということも大事ですし、一方で地域自体をやはりより住みやすく、また地域の人たちのいろんな教育や文化的な向上をもっと図らないと、同和地区の中で比較的高学歴になった人は出ていく傾向にあるんですね。 アメリカの黒人スラム街なんかはもっとそれが露骨で、ちょっとでも定職に就いたらもうばあっと出てしまうので、もうスラム街に残る人は本当に職のない人で固まってしまうということがあるんですが、日本の同和問題も、そういう形で比較的高学歴の人が流出する、比較的生活困難層が流入してくるということで、新たな社会、どう言うんですかね、問題を抱えた地域として徐々に変質しながら、何か昔の、代々同和地区に住んでいますというようなことではなくて、しかし、昔から同和地区として差別されたところに新たな人が流入してきている状態がありますので、そういう人も含めて、だから、それを部落民であるかないかという定義は僕はもう今更の感がありますので、余り必要だとは思わないんですが。 是非、一人親家庭で十分に教育が受けられないとか、高齢者で困っているとか、そういう人がまあ何とか生きていける、生きやすいような地域づくりのための法律を片っ方でやらないと、現在の同和地区に対して幾ら啓発事業をぼんぼんぼんぼんやっても、実際にその日その日の生活になかなか窮している人が流入してきたり残留していますと、やはり地域社会に対して周りの一般市民の人が見る目というのはなかなか厳しいものが残ってしまいますので、そこは十分に改善、手当てをしなくちゃいけないんではないかなというふうに思います。
○山口和之君 西島参考人にお伺いしたいんですが、今回の法案が通った場合に何が大きく変わってその効果が得られてくるのかというのを少し教えていただきたいと思います。
○参考人(西島藤彦君) 先ほど言いましたが、人権教育・人権啓発推進法があるんですよね。今も話があったように、どんどん時間の、法律の経過の中で、同和問題の学習や取組が希薄化しているというのを特に強く感じます。 他方で、意識調査の問題や社会で起こっている現象を見れば、依然として身元を調べたり、そういう内面に入り込んだことを見聞きしよう、調べていこうという意識が増幅されている。さらに、それが若者層の中でやっぱり我々としては広がっているという思いを持っているんです。 だからこそ、今回の法律というのは、まさに正面からその問題を、正面においてしっかりと国民がこぞってこの問題の解決を進めていこうという強い決意の法律であるというふうに思いますので、私はやっぱりそのことを通して、いま一度、国民の中でそういう連帯した行動ができるのではないか、解決に向けての行動ができるのではないかという強い期待を持っています。
○山口和之君 同じく西島参考人にお伺いしたいんですけれども、この法案について少し不満があるとか、もっとこうしてほしかったということはありますか。
○参考人(西島藤彦君) 本当に、この法案に携わった先生方、限られた時間の中で議論をしていただきまして、私はしっかりとまとめていただいたというふうに評価をしておりますし、是非今国会で何とか実現してもらいたいということの思いでいっぱいであります。
○山口和之君 では、新井参考人と石川参考人にお伺いしたいんですけれども、どのようにして部落差別、根深く残っているように自分は勉強していると思ったんですけれども、解消していくためには、どのようにして部落差別を解消していくのが理想的なのか、どうしたらできるのかということを教えていただきたいと思います。
○参考人(新井直樹君) 二十一世紀を目指す部落解放の基本方向というものの考え方の中で、いわゆる部落が周辺地域と格差がなくなる、教育、就労環境で。 それからもう一つは、今大きいのは、部落差別事象が起きてもその地域社会の中で解決していける力をつくるということ、基本はそこです。そこがいわゆる十分育ってきていると思いますし、まだ不十分なところでは、結婚差別に関わって、本人や親はいいんだけど親戚が反対するなんて事例もあるということで、やっぱりそこら辺のところを、なぜ反対するのかということも明らかにしながらですけれども、やはりみんなの力で、互いの会話の中で解決していける人間関係、地域社会の力というのをつくっていくことが長く見ていってもやっぱり一番重要で、そこがポイントだと思います。 それにもかかわらず、そういう方向を目指さずに、法律でもって教育や啓発をやったり実態調査をやったりということで、とりわけその実態調査を、例えば五年、十年で終わりますじゃなくて、ずっとやっていくとなった場合、その対象となる地域はもう既に部落ではなくなっているんだけれども、そこの部落を念頭に、そこに住んでいる人を対象とした調査という形で、大阪の専門部会でも議論になりましたけれども、行政がやることによって、あなたは部落ですよ、あなたのその部落差別の経験を聞かせてくださいということを行政がするという、その個人情報の収集に関わってやっちゃいけないことをやらされてしまうという。つまり、もう分け隔てなくなってきているにもかかわらず、その分け隔てをこの法によってつくってしまう。それを行政ができないと言っているのに、無理やりやれという。 だから、本当に社会的交流がずっと自然に、対策事業やいろんな取組もあって、国民の努力もあって社会的交流が進んできているのに、そこに新たな法律によって障壁をつくっちゃうと。また、部落民という出身者というのをその中で特定化するという作業を行政にやらすことで新たな人権侵害をつくっちゃうんですと。だから、そういうことをやらなければ今の社会的交流の前進が更に進む、そういう民主主義の力を国民がもう持ってきているというふうに思います。
○参考人(石川元也君) 今おっしゃられた前提として、根深く残っているというふうには私どもは考えていない。ただ、根絶はされていないし、時として不心得者が出てくることはある。だから、そういうものに対して、社会としてはそれは容認しないよという雰囲気がもう形成されつつあるんですね。形成されていると言ってもいい。 問題は、人を個人として尊重するという社会のあらゆる分野でのいわゆる人権の尊重、そういうことを強める中で、残された、時として起こる不心得な部落差別的な事象、そういうものにも厳しく対応していく、個別に対応していけばいい。そのことを、概括的な法律作ればそれでできるというわけのものじゃないわけで、具体的に、今の実情とこの法律ができたときで直接変わることはあるのかといったら、具体的な対応については必ずしもできるわけじゃない。 だから、理念としてやることが大事だということを先ほどから言われますけど、それをしなくとも現にできているのと、それから、これからもっと個人の尊重、そういうことの強まっていくリベラルな社会、そのリベラルな社会をどうやってつくっていくかという中でこの問題は自然に解消、自然にというか逐次解消されていく、こう思います。 解放同盟の方が言われたように、我々も問題解決すれば組織要らなくなるんだと言われる。そういう形でいくならば、忘れられているというのは、それはあれじゃないでしょうか、世間がもうそこまで到達してきている結果だからであるというふうに考えていただきたいと思います。 だから、現状認識というところが非常に問題ですが、それは私の方は、平成二年に政府が認定したように、この問題についてはあえて新しい行政措置を必要としない、法律も必要としないとなった。それ以後で新しくできたかといえば、そうではないんだというふうにお考えいただけないだろうかと思っています。
○山口和之君 最後に、灘本参考人、それから西島参考人にお伺いしたいんですけれども、国や自治体の相談体制の現状で、どういうふうに評価されているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
○参考人(灘本昌久君) 現在は、何か事象があって公的機関に持っていこうとすれば法務局か人権擁護委員に相談するしかないと思うんですけれども、じゃ、そこをもっと強化して部落差別のすごい解決能力を持った窓口がそんなに可能であるかどうかというのはちょっとなかなか難しくて、やはり地域の中でみんなで解決していく方向に持っていくのが筋だとは思うんですけれどもね。 現状は、ただ、人権擁護委員さんは本当にもうありとあらゆる、それこそ夫婦げんかの仲裁から何から全部やっていますので、その人権擁護委員さんに余り過大な期待をするのもちょっと気の毒かなというふうに思います。ですから、そこはもう少し手当てをしていく必要があるんじゃないかなというふうには思います。
○参考人(西島藤彦君) 現状は、今も出たように、法務局と人権擁護委員さん、とりわけそれぞれ地域の直接的な相談窓口は人権擁護委員さんになってくると思います。残念ながら、やっぱり今もありましたように多忙ということ、どちらかというと無給で名誉職的な役割、地域の有力者がなられておりますから、なかなか時間を割いて親身にということになってきますと、非常に時間の私は制約があると思います。 そういう中で、我々に相談来られて、我々が一緒になりながら行政の窓口に、行政に対して話合いを持ったりとかいろんなことやってきていますけれども、しかしこの法律の相談というものができれば、国や自治体の中でも同様の窓口が開かれて、もう少し総合的に、問題を総合的に解決する仕組みが今後生まれる可能性があるのではないかなという期待を持っています。
○山口和之君 ありがとうございました。
○委員長(秋野公造君) 暫時休憩いたします。 午後三時五十分休憩 ─────・───── 午後三時五十七分開会
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、部落差別の解消の推進に関する法律案を議題とし、参考人に対する質疑を行います。 再度、大会派順に希望会派の質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○西田昌司君 自民党の西田でございます。 先ほどからずっと各党会派の質問を見ていまして、新井参考人と石川参考人はこれに対して反対、明確な御意見であったんですけれども、灘本参考人のお話も聞いていますと、同和の定義というのが、混住もしてきましたよね、それで、同和の部落といっても、その定義をするのが、そもそも混住していると、そこに住んでいる方自体は、いわゆる被差別部落出身者でもなければかつての同和法で援助される形でもないと。そうなってくると、そもそも、これからはそういう定義も難しいし、むしろ違う形のことを灘本さんはおっしゃっているようで、ということは、新井参考人の意見も含めて、一般法でもう少し、そういう差別意識を持つこと自体が昔と違って今の新しい時代、封建時代から民主的な時代になった中では非常に恥ずかしいことなんだと、こういう教育をやっていくべきじゃないかと。 これは、実はヘイトのときも私同じようなことを実は現場へ行って感じたんですけれども、そういうことを灘本さんもおっしゃっているような気がしたわけなんですけれども。もう一方で、推薦団体である自由同和会の方はこれを是非成立させてくれという話になっているかと思うんですけれども、その辺の兼ね合いと申しましょうか、どうなっているのかというのをちょっと灘本さんにお聞きしたいと思います。
○参考人(灘本昌久君) 私自身は、先ほど来言っていますように、厳密に同和地区とか部落民というのを定義して、その人たちに対して何か施策を打つということは、何というか、本人のアイデンティティーももう希薄化していて、私は部落民ですというようなことがもうだんだん薄れてきているわけですから、従来の手法の同和対策というのはいずれにせよ難しくなってくるとは思うんです。 今回問題になっています啓発に関しては、別に誰かを同和地区、部落民という定義をする必要はないので特段問題はないだろうとは思うんですけれども、特に個人を対象とした施策などは、何か特別、部落に特化してという必要はだんだんなくなってきているんじゃないかと。 大阪府で最近同和問題の審議をした委員会があったんですけれども、そこでいろんなデータを見ますと、大阪府下で同和地区と同じ生活レベルの人口というのはその五倍ぐらい広がっているわけなんですね。従来は同和地区に対して同和政策、同和政策でやってきたんだけど、実は似たり寄ったりの生活をしている地域というのはその五倍ぐらいあるわけで、そこは比較的放置されてきたことがあると思いますので、しかし、今そういうところを放置していますといろんな問題をこれから抱えていく可能性もありますし、そこに生まれ育っただけでまさしく高校にも大学にも行けないというふうな、そういう環境に育っている子もたくさんいるわけですから、これは私が一九八〇年代から言っているように、そういう人も含めてもう少し社会的公正を期するような方向に持っていく。 ただ、それを本当に一般対策に全部丸投げして今それがうまくいくかどうかというのもちょっと心もとなくて、やや、そういう特定の地域に、ある程度、だから、大阪府だったらその五倍のところにばあんと網掛けるぐらいの若干手厚い施策は必要かなというふうに思っております。
○西田昌司君 それで、西島参考人にお聞かせいただきたいのは、この法律、賛否いろいろあるんですけれども、我々も正直一番懸念しているのは、かつての運動団体が、その糾弾が余りにもひどいことがあったじゃないかと、そのことによって同和というのが逆に怖いという形の偏見が出てくるわけですよね。だから、この法律によってまた同じようにそういうことがされたりしたら、これはもう本当にとんでもないことになると思います。 そういうことはないと思いますけれども、改めてこの国会の場で、そういうことはないということを是非、西島さんの方からもお話、決意をお聞かせいただきたいと思いますが。
○参考人(西島藤彦君) 先ほどから私、その辺りも含めて述べておりますが、今も残念ながら社会の中に様々な差別があります。私たちに訴えられる件数も結構あります。 もちろん、事実確認をしながら、本当に差別であるのかないのか、差別であるとするならどうこれを是正し改革していくのか、限りなく社会性、公開性、説得性というものを追求しながらやってきておりますし、先ほどから出ている、もう本当に五十年ほど前のあの話があたかも今あるようなことを言われるわけでありますけれども、少なくとも私は、その責任者として携わっている中で、できるだけ相手に説得をしながら、理解をさせながら共に差別のない社会の役割を果たしてもらうと、そういう思いで取り組んでおりますので、この法律ができようができまいが、ここの考え方は変わりません。
○西田昌司君 それで、もう一つちょっとお聞きしますのは、西島さんが冒頭からおっしゃっていた、要するに自分のふるさとを愛して、家族を愛して、その地域が不当な差別を受けることなしに子孫が胸張って生きられるような、そういう社会をつくりたいと、そういう趣旨のことをおっしゃっていまして、非常に大事なことだと思います。 私、同和問題の一番難しいところは実はここにあると思うんですね。といいますのは、先ほどからおっしゃっていますように、要するに、ある程度裕福になられたり、学歴のある方が出ていかれたり、また逆にそれで混住が進んだり、それで同和問題がある種、まあ忘れ去られることも一つの時代の流れですから、ある種の解決を見ているんですよね。ところが、もう片っ方で、一生懸命そこでそういう運動をしてくると、逆にそのことがあだとなってという言い方をすると非常に失礼なんですけれども、なかなか難しい問題が出てきますよね。 だから、この問題を本当に解決していくのは、これまさにそういうことも含めて、そういう差別意識を持つこと自体が問題なんだという、教育によらなければならないと思うんですね。 私は、この問題をやるときに、もう一度「破戒」を読んだときも、もうつくづくそういうことをちょっと感じたわけなんですけれども、そう思ったときに、では、具体的にこの先、どういう形で本当にこの同和問題の解決というものができるのか。ふるさとに住んで、しかも差別意識をなくしていくという、一番本質に関わる問題なんですけれども、その辺のところ、ちょっと西島さんにお聞かせいただきたい。
○参考人(西島藤彦君) 私たちの運動は、教育に始まり教育に終わるということで、私も諸先輩から学んできました。まさに今、西田先生言われたように、やっぱり教育に始まり教育に終わる、もうそこに尽きるというふうに思うんです。 しかし、この十年、十数年の状況を見ていますと、特に特措法が終わった以後の状況を見ていますと、どんどんどんどん同和問題が希薄化しながら、いわゆる教育で語られなくなりながら、片方で、人生の大事な節目のところでそれが出てくるという、こういうところに我々実はぶち当たりながら非常に苦慮しているところなんです。 そういう意味では、もう一度原点の教育のところでしっかりと学習しながら、先ほど言ったように、そのことが明らかになっても自分が出身と高らかに名のれるような社会を我々としては目指していきたい。だから、そういうものをしっかり学びながら、お互いにそこに何ら偏見も差別も持ち込まない、こんな社会を我々は運動の中で目指しているわけでありますし、まさに今回の法案というのは部落差別は社会悪だという高らかに宣言をされているわけでありますから、それを国民こぞって、どうそこにアプローチ掛けながら行動していくのか、私も、我々も含めてそこに課せられたテーマかなと、このように思っております。
○西田昌司君 同じ質問なんですけど、新井参考人、いかがでしょう。
○参考人(新井直樹君) 二〇〇二年三月まで特定の地域を同和対策事業の対象地域として住環境の改善やそこに住む人たちの暮らしぶりを良くするための取組がされて、それは一定の効果を上げて格差是正ということの到達の中で事業は終了したわけですが、今どうかという問題があるんですね。当時建てたいわゆる部落向けの公営住宅がやっぱりもう老朽化していると。それから、高学歴や定職が外に求められた人は中から出ていってしまう。そうすると、古いその公営住宅に外へ行けない低所得の人たちが残ってしまい、いわゆるエレベーターもない、階段でとことこという、水道管の詰まりもありながら暮らしている地域もあるわけですね。 だから、ふるさとに誇りを持つには、やっぱりそういうところもきっちり地域づくりという形で皆さんの協力を得ながら住みよくしていくということをやらないと、部落差別は許されないということだけ言ってもそこの地域変わらないもので、やっぱりそういう声高に言わずに、みんなで一緒に良く暮らしを立て直していこうよ、つくっていこうよということがそこの地域運動には求められるんだと思うんですね。それを積極的に啓発を通じて地域づくりを促すとか、もう啓発の中身もそういうふうに変えていくべきなんじゃないかなと思います。
○西田昌司君 終わります。
○有田芳生君 皆さんのお話を伺っていて、やはり一つの事実をそれぞれが共通に確認できた場合でも、見る立場によって相当その見方というのは変わってしまうものだなということを思いました。 結婚差別、潜在的なものも含めていまだ多くあると思います。就職差別もあります。さらには、現代的な大きな課題として、皆さんお帰りになってインターネットを見てもらえれば、部落差別書き込みというのは部落をなくそうというものを圧倒的に凌駕するぐらいに残っております。これは、ヘイトスピーチ解消法ができても、ヘイトスピーチ、それから個人的な攻撃がいまだ異常なほど、例えば特定個人に対して六十万件ぐらい攻撃が殺到するというような事実からも、インターネット時代においてやはり現代の部落差別問題をどう解決するかというのは本当に重要な課題だというふうに思っております。 そこで、そういうことをなくしていくために今度の法律案が有効なのかどうかというところからお聞きをしたいというふうに思います。 まず、西島参考人にお聞きをしたいと思います。 部落解放同盟の機関紙である解放新聞の広島県版、これは今年の九月十五日、それから二十五日発行号です。主張という欄がありまして、部落差別解消推進法案をどう見るか、上下で主張が出ているんですけれども、そこに、解放同盟、広島県版ではこういう疑問が呈されております。 法案提出は部落解放同盟を自民党の支持基盤にするための懐柔策でもあるというような評価があって、かつてそのように自治体を巻き込み、自民党を突き上げて政策変更を迫るという部落解放運動本来の在り方で法案が提出されたわけではないというような評価をされているんですが、まず、そこについての見解をお示しください。
○参考人(西島藤彦君) 私たちの組織は、大衆運動でありますから、いろんな考え方も含めて、政党の下部組織でもありませんので、地区住民を結集しながら、差別撤廃というこの一点で結集して集まっている大衆団体であります。 もちろん、今回の部落差別解消法案については、組織として何としてでもこれを実現させていこうという、本部の中では討議をしながら決定をしました。ただ、大衆組織がゆえに、一応その方針は隅々まで出すわけでありますが、必ずしも全てのところが同じような考えでなるということにはなかなかなり得ない。それは、大衆組織がゆえにいろんな意見もそこで出てくるわけであります。 そういう枝葉の議論を総体の議論というふうに捉えてもらいますと非常に我々としては困るわけですけれども、我々としては、この法律は非常にこれからの、今ある差別事象に対して有効な役割になってくるのではないかという評価もしておりますから、是非とも実現をしていきたいということであります。
○有田芳生君 もう一度、更に西島参考人にお聞きをしますけれども、組織にあってもいろんな議論があるということは非常に健全なことだというふうに思っております。 さらに、解放新聞広島県版の下の方ではこう指摘があるんです。解放に向けた実質的な取組の具体的施策、財政的裏付けがなければ部落解放を達成することはできないという指摘なんですが、それについてはどうお考えでしょうか。
○参考人(西島藤彦君) 我々、今、事業法の議論は二〇〇二年以降求めていませんし、少なくともそれ以降、依然として残る差別に対してもう一度しっかりとした法整備をしてもらいたいというのが我々の思いでありますから、それぞれ県連や支部、末端の中においてはいろんな意見もあることも事実でありますし、だからといって、それが我々本部総体の意見ではないということだけ理解をしてください。
○有田芳生君 次に、新井参考人にお聞きをします。 全国人権連の機関紙でしょうか、「地域と人権」十一月十五日号には、十月二十四日に名古屋市で行われた第三十五回人権問題県民講座、ここには新井参考人も御出席になっているんですが、そのタイトル、こうあります、差別を受けた人は非常に少ない。それは、そういう認識でいらっしゃるんでしょうか。
○参考人(新井直樹君) そのシンポジウムにおいて、つまり、部落問題とそれから部落差別とは何かという規定を立ててみた場合にということですよね。 結局、近世封建社会の旧えた身分を主従とする地域を部落として、そこに住む人が部落民だと。そうすると、それがだんだんと大正時代でも一割方の人が部落内外婚をしていくわけですね、どんどん。そして、一九九三年の全国調査では、差別を受けたというのがもう一割に減っているという調査結果が出ている。一方、二十代では、もう二十三年前ですけれども、七割方が部落内外の婚姻になっていると。そして、人権侵犯処理規程等々を見ても、報告されている数は氷山の一角と見る人もいますが、その数値を見れば、発言が六割だと、一方、九割方は援助、説示で解決できていると。 となった場合、部落差別というその事象はどうなのかというのを歴史的に見ていくと、やっぱり部落差別を受けている人は非常に少なくなっているというふうに見るのが素直で自然じゃないかと、そういう議論をそこでしたわけです。
○有田芳生君 もう一度お聞きをします。 印象で話すことが多く、実態を反映していない、差別を受けた人は非常に少ない、本当にそうなんでしょうか。新井参考人、もう一度お聞きします。さらに、西島参考人に、そういう評価でよろしいんでしょうか。
○参考人(新井直樹君) もう一遍質問を。
○有田芳生君 印象で話すことが多く、実態を反映していないと。差別がある、差別がある、差別があるというような印象で話す人が多くて、差別事象は、差別を受けた人は非常に少ないという集会のまとめのタイトルですよね。そういうことでいいんでしょうか。
○参考人(新井直樹君) 記事ですから、僕が言った発言ではないかも分かりませんけれども。 そのように、例えばある研究所が差別の年鑑というのをまとめていまして、それをこの十年間分析した学者の方がいます。その方の分析によると、結婚差別の事象というのが少ない、例としてね。最近の例では、子供たちが結婚したんだけれども、その後、その親が何で部落と結婚するんだというふうなことを言ったというのがその事例で載っかっている。「あいつぐ差別事件」という年鑑の中の事例を例に、差別は根深く残っているとか頻繁にあるとかというけれども、その年鑑を見ても、非常に人権侵害としての結婚問題と言えないものまでその中に載っかっているんですという紹介をしたんです。それがそういう記事となって表れているんです。 ですから、私も、結婚問題そのものというのは、なかなか本人同士の合意で行くことというのは部落問題に限らず難しいところもあります。ただ、反対があっても本人の合意を貫いて一緒になるケースもあれば、やめていくケースもあるわけですね。いわゆる部落ということが、何というんですかね、価値のあることとして、差別としての価値があることとして思わなくなってくればいいわけですね。 つまり、あの人は部落の人だということがそれで判明しても、だからどうしたということで本人たちが結婚しちゃえばいいわけですよね。それが憲法の実現としての両性の、両性というか互いの合意になるわけで、だから、そういう結婚のゴールというところを見た場合に、この部落差別ということの問題が、だんだんとその重きを成さなく、意味を成さなくなってきている時代である中で起きている事象というふうに今の歴史的時点を捉えた方が正しく見れるんではないかなと思うんです。
○有田芳生君 西島参考人、いかがでしょうか。
○参考人(西島藤彦君) 先ほどから言っていますように、一つは、意識調査で直近の、国民の、市民の身元を調べたいという、身元を調べるという意識が依然と高いという数字がありました。先ほど、プライム事件で、年間二万件に及ぶ不正取得の事件の背景を見たときに、その主犯格は、結婚に関わる身元を調べるという依頼が大半であったという報告が、これはもう公判で証言していますから出ています。このことを見ても、私は、身元を調べる、相手の背景や属性を調べるということは依然として数多く出ていると思います。 とりわけ、結婚差別の事例を言いましたけれども、結婚差別事件はほとんど事件化されない。現に差別があって一緒に添え合えなかった人においても、これはもう出したくない、これ以上自分の傷を広げたくない、こんな思いが働きますから、仮に一緒になったとしても、その背景は様々あって、本当に祝福されたというところで見るならばかなり厳しいと言わざるを得ない、こういう状況でありますし、このことが数字としてカウントできない、そういう非常にデリケートな背景を持っているんだということをひとつ理解お願いしたい。 だから、数がない、件数が少ない、こういうことにはイコール私はつながってこないと思いますし、結婚を間近に控えた家族の方が相手の身元を調べるという実態がこれほど多く存在しているわけでありますから、そこに何らかの差別的な対応があって当然だと、我々はそう理解をしているところであります。だからこそ、今回の法案というものが私は有効な役割を示すのではないかというふうに思います。
○有田芳生君 新井参考人に更にお聞きをします。 「地域と人権」、全国人権連の機関紙十一月十五日号で、十月二十三日に人権連三重県連の会合が行われております。その集会の、定期大会の結論のタイトルは、部落が消える日を迎えというふうにあります。タイトルというのは象徴的な中身をタイトルにするというのがもう基本ですけれども、そこで三重県の方針にこう書かれている。いよいよ部落そのものが消える日を迎えようとしているが、部落を掘り起こそうとする逆流も後を絶たない。 この逆流というのは何を示していらっしゃるのでしょうか。
○参考人(新井直樹君) 三重県伊勢市のことを念頭にした記事とタイトルだと思います。 三重県の伊勢市では、地域にある集会所で、そこの地域の大半の親たちは反対しているんですけれども、そこのある学年の子供たちと先生方との、教育委員会も入っての勉強会やっているんですね、なかよしと。親たちは、小学校四年生にもう部落問題を教えてくれるなと、そういうふうなところへ参加させたくないんだということで、その地域の中で自治会長選も含めていろいろとここは問題になった。やめるという側の自治会長がなって、一遍それは凍結、中止になりました。 ところが、その自治会長もいろいろと心労が重なっちゃったもので、違う方になったらば別な、何というんですかね、集会所での地域の歴史学習というのが始まっちゃって、親たちは、もういつまでも自分のところを部落と見られたくない、そういう子供にも育てたくないということで、自立した子供たちを育てたいということでそういうふうな教育を拒否したんですが、それにもかかわらず、それが一つは、部落が消えるというのはそういう、実態的にはもう部落でないのに部落の子ということでやらせられることは止めたから、部落というのが消えるという表現になるわけです。 ところが、そこへ教育委員会だとかが、やはり将来、いわゆる大きくなったときに差別に負けない、そういう子供たちにするには小さいときからきっちり勉強させなきゃ駄目なんだということで部落問題学習をさせるという、その親たちの願いとは異なる逆流のことを押し付ける動きがある。 そういうことでの、親たちは、もう部落が消えた、消えつつあるんだ、消える方向に向かっているんだと言うんだけれども、そうさせない逆流というのがあって、三重県の伊勢市では、まだ非常に住民と教育委員会、学校との間で話合いが続いている、そういうことの記事の反映です。
○有田芳生君 この逆流という中には、今回の法案は意味はしていないということですね。
○参考人(新井直樹君) あります。つまり、法案の中に教育、啓発と相談ということを特に自治体が国の意見の下に行う、自治体によっては何らかの施策を講じなさいということになっているわけですよね。そうすると、今行われている学校教育の中で部落問題に特化した歴史や公民分野が行われていると。いわんや社会教育の分野では、そういう集会場を使って子供たちに特別な、ある意味では、何というんですか、部落の子と、自分でそのアイデンティティーを決めることができずに、教育委員会、学校が、おまえは部落の子と言う形、親の意見も聞かずにそうやっちゃっているという、そういう人権侵害が行われていることが、この法律ができることによってそういう強制力が生まれてしまう。 部落差別を許さない。じゃ、そういう子供を教育でどう育てるのといったらば、小さい頃からそういう差別に負けない子を育てるんだという、そういう理屈になってくるわけです。そうすると、今、部落は消えつつあると親たちは思っているのに、逆流としてのそういう教育が押し付けられちゃう。だから、この法律は逆流を助長する法律になる、解消する方向じゃないということです。
○有田芳生君 更に新井参考人と西島参考人にお聞きをしますけれども、部落と言われてきた地域がなくなれば部落差別はなくなるんでしょうか。
○参考人(新井直樹君) 部落という地域は残っていますよね、どこかみんなで集団移転したわけじゃないんですから。ただ、旧来の封建時代の名残のある世帯構成で部落民同士が結婚して一〇〇%というのからでは、もうどんどんどんどんと世帯のありようも、それから人の出入りも含めて旧来の部落ではなくなってきたと。 だから、何というんですか、部落が消えるという表現もあれですけれども、旧来の、従来で言われていたような部落はもう消えて新しい地域になっているんですよという意味としてこれは見ることではないかと思う。集団移転したりするのを、消失してなくなったということを意味しているんじゃない。そこにあることはありますが、そこの地域はもうかつての部落ではないんだということです。
○有田芳生君 西島参考人にもお聞きをしたいんですが、その前に、今の新井参考人のお答えに加えてもう一度お聞きをしますけれども、被差別部落と言われてきた地域が消えていけば部落差別というのはなくなるんでしょうか。端的にお答えください。
○参考人(新井直樹君) 消えることはありませんし、そのようなことでなくても差別は解消に向かってきています。
○参考人(西島藤彦君) 先ほどからも言っているんですが、部落から出た人を追い打ちを掛けるように、じいちゃん、ばあちゃんのところまで調べながら、かつてあなたのおじいさんは、おばあさんはこの部落に住んでいた、だからあなたは同和地区の人やからうちの結婚は受け入れない、こういうふうに、我々がしているんではなしに、社会が追求しながら、追い求める社会があるわけですね。 かつて、行政によっては、部落分散論ということで地区からどんどん出す施策もあった行政もありました。しかし、今言うように、差別というのはそういう形では解決しない。現に、世代を超えて調べていこうという社会の意識がこれ存在する以上、そこにメス入れして、その意識を変える社会をつくっていかない限り、私は真の解決方法はないと思います。
○有田芳生君 賤民廃止令からもう百五十年になる時代に部落差別が残っている現状で、今の時代にどう部落差別をなくすかというのは大きなこれはみんなの課題だというふうに思っております。 そして、もう時間が来るので、もう一度、新井参考人にお聞きをしたいんですけれども、角岡伸彦さんという被差別部落出身のジャーナリストがいらっしゃることは、当然専門家でいらっしゃるから御存じでしょうけれども、彼は大阪の箕面の地域で取材をされて、本当に被差別部落と言われていたところ、そしてそれ以外のところ、その中間のところが大事だということで、物すごくいろんな人が外からも入ってくる、中からも外に出ていくというようなことで、毎年活発なお祭りなどを今でも続けていらっしゃる。彼はこう言っている。部落差別はなくさなければならない、しかし、その営為は必ず部落を残すことを伴うと言っている。要は、どんな部落を残すかが重要であろうと。 だから、今日、皆さんのお話にあったように、町づくりのこととつながっていくんだと思うんだけれども、やはりそういう歴史的に形成された土地があったとしても、それが消えれば部落差別がなくなるんではないと私は思っているんですよ。だから、本当に新しい町づくりをやるということが大事だと考えているんですが、新井参考人、そして西島参考人、いかがでしょうか。
○参考人(新井直樹君) おっしゃるように、消えるということが、何というんですかね、そこの地域から部落を排除するものではないというのは先ほど来言いました。部落を残して差別を解消することが解決の道というんでしょうが、部落と言われていたその部落が本当に従前と変わらない部落なのかと。その角岡さんの北芝でもそうですけれども、非常に住民構成も変わり、新しい人たちも来て、NPO的にどんどんいろんな事業をやって、にぎやかで豊かな町づくりということを目指して取り組んでいって、それはそれでそういう取組だというふうには思います。それは、別に部落を消すも部落を残すも、そんなこと関係なくやっているわけですよね。そこで、そういう周辺との壁、わだかまりというのが取れてきている地域ならば、僕はそれでもそういう地域のありようとしてはあるんだろうと思います。 だから、部落を残さなければ差別解消とは言えないとか部落を残すことを前提に解消を考えるというのはやはり角岡さんの考えであって、実態的に部落がもう大きく変わっちゃったのに、それをいつまでも前提としての部落として位置付けることというのは、やっぱり旧来の、やっぱり二十三年前の発想が頭にあるんではないかなと。やっぱり今の若い人たちは、そういうふうなこと関係なく人の出入りも含め交流が進んできているんだから、彼らにとっての地域づくりというのはもっと全然違う視点になっているというふうに僕は思います。
○有田芳生君 時間がもうないので、西島参考人、もう一つ追加で質問をさせていただきますと、今日も話に出た、例えば矢田事件、八鹿高校事件、今からもう四十二年前の話です。私は、当時、部落解放同盟のやり方はおかしいという立場で学生の様々な自治会活動をやっておりました。 今日も話題になったんだけれども、その矢田事件とか八鹿高校事件を取り上げることによって、例えば今度の法律ができることによって行政に介入する絶好の口実を与えかねないという評価がされてしまっているんですが、例えば矢田事件とか八鹿高校事件についてはどういう総括をされているのかということも最後にお聞きをしたいというふうに思います。
○参考人(西島藤彦君) 私たち、今全国的に福祉の町づくり、こういうものを、それぞれの村の特徴ある自慢できる町づくりを目指そうということで、いろんな事業や本当にユニークな取組をしています。例えば、貧困家庭の子供たちを隣保館に集めて、それも部落だけではなしに、その行政区の中を集めながら事業をするとか、本当にそういう多様な事業を、館を中心とした取組をしています。まさに福祉や人権をキーワードとした町づくり運動を、まさに部落の中から発信し取り組んでいこうという運動をしています。 そういうことを通して、周辺交流を進めながらお互いに差別問題を学習するという一つの機会にしていこう、こういう思いで取組を進めていますし、今回の法律ができますと、やっぱりそこに依拠しながら、更にその取組は私は大きく広がってくるんではないかというふうに思っております。 それと、何でしたかね、最後に言われたのは。
○有田芳生君 矢田事件とか八鹿高校事件についての。
○参考人(西島藤彦君) 正直言いますと、いろんな法案も、双方の意見を取り入れたような判決結果になっております。当時は同和対策事業もまだ地に付いていない、非常にそういう中での、我々現場としては一日も早く事業の推進してもらいたい、なかなか行政も、やる側の行政もその理解がない、いろんなやっぱりまだまだ不十分な状況の中でそういう状況が一部出たかなというふうに思っております。 ただ、今の時代、一定の三十三年に及ぶ同和対策事業によって大きく同和地区の住環境や教育の問題が様変わりをしてきました。環境改善が、変わったのに差別がなくならないというのが今の私は現状だと思うんです。 だから、なぜなくならないのかというところをしっかりと総括をしながら、それがイコール事業ということではなしに、なぜなくならないのか、周辺含めてどうその垣根を越えていく取組をしていくのか、ここがやっぱりこの法律を通してお互いに学び、取り組んでいかなければならない課題かなと、このように思っております。
○有田芳生君 終わります。
○仁比聡平君 先ほど有田議員の質問の中で、部落問題の解決というのがどんな今到達点にあるのかという議論があったと思うんですけれども、新井参考人は冒頭の意見陳述で、従来の部落の枠組みが崩壊し、部落が部落でなくなっている状況である、今日では既に消滅及び過去の歴史的概念になりつつあり、実態として現実把握がし難いものとなってきている、よって、部落問題は従来の社会問題としての性格を大きく変えており、変化した問題を正しく認識しないと解決の道を誤るという御趣旨の意見を述べられたわけです。 それを前提に灘本参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、八月かと思うんですが、自由同和会の京都でのシンポジウムが開かれておりまして、灘本参考人とそれから平河事務局長がパネラーとして意見交換をしておられますけれども、ここでその平河事務局長の述べた部分として、一部団体が部落差別はいまだに根深く厳しいという表現をしますけれども、本当はそうではない、それを示している数字として、先ほども少しお触れになりましたけれども、二十代の若者が結婚する場合、約八割、灘本先生は九割と言われているそうですが、八割以上が部落以外のいわゆる一般の方と結婚し、その八割の中の七割までが結婚に際して全く反対がなかったという数字、それから、混住率ですけれども、今や同和地区の中にいる同和関係者は僅か四割であって、あとの六割は一般の方が入ってきている、このくらい同和問題は解決に近づいており、やはり一番重要な問題は混住率なんだがと、そういった趣旨を述べておられる部分があるんですけど、これは平河事務局長がということなんですが。 灘本参考人のこの部落問題の今の到達点というのはどんな状態にあるというお考えでしょうか。
○参考人(灘本昌久君) 私は、諸外国のいろんな被差別グループに対する差別をなくす施策がいろいろあるわけですけれども、そういう中では日本は非常にうまくなくしてきているんじゃないかと思います。 ですから、先ほど来言われている西島さんの現状認識はちょっと差別の過大評価だと思いますし、新井さんが言われている、ほとんどなくなっているからもういいんじゃないかというのはちょっと過小評価じゃないかなという気を持っております。
○仁比聡平君 そのシンポジウムで、私が先ほど伺った、本法案について定義がない、部落差別の定義がないという問題について、自由同和会の平河事務局長が、この定義がないことについて一番メリットがあるのは運動団体なんですと、あれも差別、これも差別だと言っておけばいいわけで、定義があればこれ以外は部落差別にならないわけですから、だから、定義がないから何でもかんでも運動団体は差別にしてしまうんです、これはこの法律の一番怖いところ。解放同盟は、恐らくこれも部落差別だからこれを解消するためにこれをやれというような要求を地方公共団体に言っていく可能性は僕は非常に高いと思っていますと述べておられるんですが、これはかつて自由同和会の運動方針などにも、先ほどもその一部は触れましたけれども、そうした認識というのはこれまでも示しておられるのではないかと思うんですが、参考人はどんなお考えでしょうか。
○参考人(灘本昌久君) この法律によっていろんなことを差別と言い立てる人が出てくるんじゃないかという危険性があるかないかということですかね。 私は、いや、この法律ができるという話を最初に聞いたときに非常にそういう危惧を持ったことは事実ですが、この法案を見ると、何かよこしまな人が入ってきてあれもこれも差別だと言い立てて、何か利権を昔のように貪るようなことは到底不可能な程度のと言ったらちょっと申し訳ないですけれども、そういう法律じゃないかなとは思うんですね。だから、それほど何かおいしいことは何も書いていないんじゃないかというので、そういう危惧は私は法案を読む限りは払拭しましたけれども。 それと、定義の話なんですが、同和対策事業特別措置法の中にもそんなに同和問題の定義というのは書いてあるわけじゃなくて、歴史的、社会的理由により安定成長を阻害されている地域を同和地区というという、何か何を定義しているのか分からぬような定義ではあるんですね、同和対策事業特別措置法も。ただ、余りこの法律に関して定義がきっちりしているからいいとか定義がきっちりしていないから危険だということは、私は特に感じないんですけれどもね。
○仁比聡平君 定義の規定が曖昧であれば極めて危険ということになり、それがこの差別の問題を法律で考えるときに極めて重大な争点になると私は思うんですけれども、今回の法案についてはその定義規定がそもそも全くない。 部落差別とは何かと聞かれると、発議者が、部落の出身であることによる差別であって、これは一義的、明確であると、我々は肌で分かっているという答弁を繰り返しておられるわけですが、提案者の答弁の中には、この部落差別に当たるか否かは個別の事象によって判断をするという答弁をしている部分もあるんです。つまり、判定の基準が示されていないんだが判定されるということを述べている部分もあるんですけれども。 質問をちょっとさせていただきたいのは、灘本参考人にまず、一義的に明確かと、つまり部落の出身であることによる差別という提案者の答弁は、これは一義的に明確なんでしょうか。
○参考人(灘本昌久君) 何かそれは同義反復のようには思いますけれども。 でも、先ほどから言っていますように、同和対策事業特別措置法でも何か規定しているようで規定していないということもありますし、それから、今回の法律は特に何かを取り締まるような法律ではないので、啓発したり相談したりするという程度の話ですから、同和問題の定義がそんなに厳密に範囲を確定していなくても、それほど何か私は危なっかしい感じはしなかったんですけど、それは甘いでしょうか。
○仁比聡平君 今の点、西島参考人は、一義的に明確だという発議者の答弁についてどう思われますか。
○参考人(西島藤彦君) 私は、目的で十分その思いは達しているというふうに思うんですけれども、最初の目的で。先ほど灘本さんが言われたように、我々の部落民という理解と社会の理解は少なくともイコールではありませんしね。先ほど言ったように、どんどんどんどん社会の中でやっぱり広がっていっているんですよ、部落民の定義を、定義というのは部落民という対象を、過去まで遡って。 だから、そこにそんなに重きを置く私は必要もないし、あえてここは理念法で、部落差別を許さないという決意を国が国民と共有していこうということの法律でありますから、私はそこに重大な大きな評価をしているところです。
○仁比聡平君 部落民という定義をむしろ社会の側がどんどん広げていると。つまり、出自をどんどんたどって差別を広げているという御趣旨なんだと思うんですよね。 そうした理解に立つと、例えば実態調査に当たって、私も大阪府が今年の一月に出している報告をせんだっての委員会で紹介をしたんですけれども、対象地域に見られる生活実態の課題が部落差別に基づくものなのかどうかということを把握をしようとすれば、対象地域の住民を対象にして調査対象を抽出するとともに、その調査の対象になる方々に対して、居住地が対象地域である、つまり旧同和地区であるということをはっきり示した上で、その出身者であることの自覚がありますかと、自己認識あるいはアイデンティティーがありますかと、そのことによって被差別体験を受けたことがありますか、それが生活実態の上での幾つかの課題と関連があると思いますかと、そうした調査をしないといけなくなってしまうと。けれども、そんなことはできないというのが大阪府の担当課の見解なんですが、これは、西島参考人は、部落の出身であることの差別ということを実態調査をしていこうとすると、今私が申し上げたような調査を望むというか、そういうふうに求めるということになりませんか。
○参考人(西島藤彦君) 今回のこの法案ではそこまで書かれておりませんので、我々としては、先ほどから出ているような事業をやる効果測定を図っていく。例えば、社会の意識がどう変わっていったのか。現に、人権教育・人権啓発推進法というのがありますから、様々な人権課題が事業化されておりますし、それの効果測定を図っていくということで先ほどの意識調査もやられているのではないかというふうに見ているところです。 だから、そういうところでやられるのかなというまだ見方しか今できていません、今段階では。
○仁比聡平君 灘本参考人、新井参考人にちょっと関連してお尋ねしたいんですけれども、実態調査の中身については、これは判定の体制とか評価の体制なども含めて、あるいは施策にどうやって生かしていく仕組みにするのかということも含めて法案には一切書いていないし、繰り返し問うても提案者はお答えにならないんですけれども、その際にこの実態調査が今私が懸念しているようなものにならないという保証は私ないんじゃないかと思うんですが、仮になったときに灘本参考人はどうお考えになりますか。
○参考人(灘本昌久君) その調査すること自体が同和問題解消に障害になるようなことが起こるんじゃないかということですか。というか、私は、本当に同和地区に対する例えば悉皆調査というか、もう全世帯に調査員を入れて相当細かい調査をするというのは、多分実際には無理だと思うんですね。あれは、地域に隣保館というちゃんとセンターがあって、そこに長年勤めた行政マンがいて、地域の人の、何というか、日頃の付き合いもあり信頼関係もあって初めてできる調査なので、それが一九九三年段階でももう相当難しかったですから、そういう行政施策が切れてもう長いことたっていて、そんな地域に根差した行政マンがいない状況で何か同和地区の調査をするというのは、やったとしても割と簡単な調査しかできないんじゃないかなと思うんですね。そんなに、おお、すごい、よく分かるという調査もできそうにないし、逆に、こんな調査をしたからすごく地域の中が何か混乱したり、同和問題解消に悪影響を与えるというようなことができるとも思わないんですけれども。
○仁比聡平君 新井参考人は、この実態調査の危険性あるいは懸念についてどんなお考えでしょうか。
○参考人(新井直樹君) 基本的にはやるべきではない、やるべきではないという考えです。 法律をもって行うことが、例えば人権のくくりの調査で人権擁護の調査というのもありますけれども、これは部落差別に関わっての実態調査です。実態調査の中には意識調査も当然含むものと思われます。そうすると、これを五年で終わらすんじゃなくてずっとやっていくんだということになれば、いわゆる特定の地域とそこに住む人をずっと特定していかなければこの調査は成り立たない。そうすると、先ほど来言っているように、もう部落は部落でなくなったと二〇〇二年三月の段階でも政府は言っているし、一九九三年の調査でも明らかになっていると。にもかかわらず、それを前提にしてその部落の実態調査をやるんだというんですから、部落の調査じゃないんですよ、やった結果も含むやり方も問題になるけれども。 だから、それを基にその自治体が施策を何らかやるということになったらば、やはり、何というか、大きな混乱を生じるだけのことになって、何ら住民の幸福実現にもつながらない、人権侵害になるものだから、やらない方がいいです。法律も必要ないと、そういうことです。
○仁比聡平君 今の実態調査の御意見を伺った上で、それをどう生かすのかという問題についてお三方の御意見を伺いたいんですが。 つまり、実態調査というのは、法律上も、部落差別解消の施策に資するものとして行うんだと、国の責務、地方の協力を求めるというふうになっているわけですよね。ということは、その実態調査は何のためにやるのかということが問題になってくるわけですけれども。 部落解放・人権研究所の所長の谷川さんという方が、最近、この法案との関係で、法案が成立すればまず重要になってくるのが実態調査であるという認識と、それから、理念法である部落差別解消法の不十分さを補うためにも、部落差別の定義、差別被害の救済、実態調査の実施、審議会の設置などを盛り込んだ部落差別解消条例の制定運動に取り組むべきだというふうにお書きになっているものがあると思うんです。つまり、各自治体に部落差別解消条例を実現をせよという、こういう求めていく運動が次に必要だとおっしゃっているように思うんですが、西島参考人はいかがでしょう。
○参考人(西島藤彦君) 我々本部の中では、そんな考えは今はありません。 私の理解では、この実態調査というのは、今までやられてきた人権に関わる事業や、また今後やる事業に対する効果が上がっているのか上がっていないのか、そういうところにさした実態調査項目かなと、このように理解しています。
○仁比聡平君 昨年の二〇一五年の七月ですけれども、部落解放同盟が部落解放行政を確立するための基本要求書という要求の全国的な取組をされていると思うんですね。その中では、一九六五年の同対審答申や九六年の地対協文書などを基にして同和行政の拡大が要求されていると思うんです。保育所、幼稚園、小中学校までの同和教育のカリキュラム化あるいは市の職員の研修の強化、民間の医療や介護関係者の同和教育の推進、あるいは対象地区の農林水産業への助成措置、漁業から離れる者、離農者の報奨金の制度、部落中小零細企業への助成、あるいは同和加配の教員の増員と特別昇給、研究校や研究団体への補助金の拡大、ほかにもたくさんあるんですけど、例えばそういうような項目の要求が出されていると思うんですよ。──どうぞ。認識をお伺いします。
○参考人(西島藤彦君) それは、私、承知していません。そういう要求書は聞いていません。 かつて、もう大分かなり古い前の話のようにしか今は聞こえなかったんですけど、その要求書というのは、特措法時代の。
○仁比聡平君 いや、二〇一五年の七月、宇佐市に提出をされた要求書で全国で行われているというふうに理解をされ…… 〔参考人西島藤彦君「全国で行われていないでしょう。全国で行われていません」と述ぶ〕
○仁比聡平君 今の参考人の御発言はそれ自体大事なことですから記録にとどめるとともに、宇佐市はこの全面的な受入れを表明したというふうに言われている。 そうした中で、この実態調査を踏まえた今後の問題について西島参考人が、プライム事件に関わってだったと思いますけれども、今現状、名誉毀損、損害賠償でしかできないという現行法についての限界のような認識をお示しになったんですね。それから、相談体制として、人権擁護委員の言わば研修が必要であるという認識もありました。 この法案によって、法的な根拠、つまり名誉毀損による損害賠償以外の何かがどうにかなるのか、それから、研修ということで、どんな内容の研修を誰が行うことが必要だと考えているのか、お聞かせ願えますか。
○参考人(西島藤彦君) 研修の、研修は誰かとかそういうものは、まだ現実にこれ具体化されていない話でありますから、我々はちょっと理解できないですね、どうしていくとかいうのは。
○仁比聡平君 先ほど灘本参考人も、研修が増えるんじゃないかと、あるいはその程度でしょうということなんだけれども、これ誰にでもできるものではないというお話もありました。 実際、かつての確認・糾弾の中で、企業だとか自治体だとか、あるいは教員だとかいうことに、その特定の特異な理解の研修というのが強要されていったという歴史はこれはあると思うんですけれども、これは灘本参考人はどんなふうに研修が拡充されるという御理解ですか。
○参考人(灘本昌久君) この法律が通ったことによって、そういう部落問題の研修がどう変わっていくかということですか。いや、今でも相当人手不足なので、これができたからといって、そんなに今までやっていないところにがんがんと研修の機会が増えるということは、物理的にそもそも無理じゃないかと思うんですね。 さっきちょっと申し上げたように、現在は随分ともう、例えば一つの小学校を取ったときに、昔は時々やっていたけれども最近は例えば数年間やっていないというような小学校があったとすると、まあ四、五年に一回ぐらい教員に研修の機会ができるという程度じゃないかなとは思いますけれども。
○仁比聡平君 結局、今お尋ねしている、差別の定義もない、どんな事業といいますか施策になっていくのかという基本的な概念も法案の中にないという下で、本当に大丈夫ですかと委員会の皆さんに申し上げたいと思うんですが。 最後、石川参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、石川参考人の御意見の要旨の中に、相談事業について、部落問題だけ特別相談事業とすべきでないというくだりがありまして、大阪府下では、人権協会(同和推進団体の名称替え)に不当に委託する例もというくだりがあるんですけれども、これも含めて、相談や、それから研修、あるいは啓発、教育というものに対してどのような問題意識を我々国会議員がちゃんと持っておくべきかということについて御意見を伺いたいと思います。
○参考人(石川元也君) 相談事業というのは、今現に各自治体で生活相談あるいは人権侵害相談というのは全部やっているんですね。そのことが先ほど来の話に、法務局と人権擁護委員と、この二つだけ言っておられるけれど、実際には自治体でやっておる。大阪府下の相談事業のそれを言いますと、大阪府からかなりの助成金が出て、各市町村が市民サービスの一つとして人権、福祉、生活相談、いろんな名前で各市役所の、市内何か所かに相談所を設定して職員を配置しています。その中でこの問題だって十分できることなんです。 ただ、大阪で問題のある都市が幾つかありまして、人権協会の名の下に、元は同和事業促進協議会、同促協という名前がそのまま人権協会に名前を変えて、若干の官側、つまり市の人たちもメンバー入っていますけど、専従職員を解放同盟の役員などがやって、そこへかなりの委託料を出してやっている。実際、監査請求などこの間もありましたが、それは、窓口聞いて、市役所の方へまた通報して、結局、市役所の職員が後の処理をするというような、こういう実体のない相談事業というのが結構あって、そして委託料だけ頂戴するというふうな、そういうのは不当な公金支出に当たるじゃないかというような形になったのもあるんです。これは全部の市がそうだというわけじゃありませんが、幾つかの市で実質同和の復活と言われるようなのが行われているところがあるということを申し上げていますね。 あと、啓発とか研修ですけど、研修といってもいろいろある。先ほど仁比議員が言われた企業への研修というのは、部落差別があるといって企業に研修を強要するんですよね。これは、いわゆる自主的な研修じゃなくて、社員教育と称して解放同盟の役員の人たちが社内の教育をやって自分たちの考えをやる。それで、企業の方はそれを、承りました、今後はしませんと言って一定の示談金を出すとか、そういうような研修もありますから。研修の名前で、灘本先生の言われるのは教員に対する研修のことを言っておられるけど、いろんなのがある。 一般市民に対する社会啓発としての研修とか何かになると、本当に行政が内心に踏み込むような研修というか啓発をやっていいかどうかという問題ありますから、その在り方については非常に検討を要する、こういうふうに思います。しかし、全体として、部落差別解消の道へ進むために人権の考え方が広く市民、国民の中に広がる、その中に部落差別の問題もあるだろうと思うんです。 ちょっと、一つだけ私、落としていたので、この機会に補充させてもらいますが、部落差別の定義も大事ですが、私が一番言いたいのは、何が部落差別に当たるかという、その判断ですね。私が紹介した判決例は皆、裁判所では部落差別に当たらぬという結論が出ているのにかかわらず、当時は、これは部落差別なんだという解放同盟の主観的、恣意的な判断というものがやられた。そこに今後も同じ問題が起こると。 だから、何が部落差別に当たるかという判断が誰がやり、どうやるのかという辺りを十分、委員の先生方、お考えいただきたい。それが五十年前の事件だと、こういうことにはならないし、先ほどの有田議員の質問に、その事件の総括どうかと言われても総括の直接のお答えがないように、やっぱりかつての判断の独占、それがもたらす弊害というのは今後に続きかねないという危惧を申し上げておきたいと思います。
○仁比聡平君 時間がもう超えてしまっているんです。終わるほかないとは思うんですけれども、先ほどの指摘に対して、もし西島参考人に、御意見があれば、伺わないのも不公平かなと思います。もう後は委員長にお任せします。──なら結構です。
○委員長(秋野公造君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。 本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 本日の本案に対する審査はこの程度にとどめます。 速記を止めてください。 〔速記中止〕
○委員長(秋野公造君) 速記を起こしてください。 ─────────────
○委員長(秋野公造君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 再犯の防止等の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務大臣官房審議官高嶋智光君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(秋野公造君) 再犯の防止等の推進に関する法律案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。 まず、提案者にお尋ねしますが、「犯罪をした者等」の定義が広過ぎるように思いますが、この点について提案者のお考えをお示しください。
○衆議院議員(山下貴司君) 御質問ありがとうございます。 この提案の趣旨につきましては、やはり、これまで犯罪を犯した者、これが様々な場面、例えば入口支援であるとか出口支援、様々な場面で支援のニーズがあるということを踏まえたものでございます。そうしたことからいたしますと、刑事司法の手続の様々な段階において支援が必要であれば手を差し伸べるべきではないかということで、「犯罪をした者等」につきましては幅広に定義をさせていただいたというところでございます。 ただ、さはさりながら、これは基本理念にもありますように、必要な指導及び支援、これを考えておりまして、必要でないものについてはこれは本法に基づいて行うべきではないというふうに思っておりますし、また、これは適切なものでなければならない、特性に応じた適切なものでなければならないということは十分踏まえて運用がなされるべきであるということは我々も先生と理解を共有していると考えておりますので、そのような運用を期待しているところでございます。
○小川敏夫君 更生保護法はですね、現行の、民間人の活動を国が支えると、これが主体の構造となっておるわけでございますが、本法案はこの民間人の支援活動に対する規定がちょっと直接は見当たらなくて国の責務となっておるんですが、この民間人の協力について、これはどのような位置付けになるんでございましょうか。
○衆議院議員(井出庸生君) お答えをいたします。 今、小川先生おっしゃるとおり、更生保護法上の保護観察、更生緊急保護において民間の協力が重要であることはおっしゃるとおりでございます。また、その再犯防止におきましても、保護司や協力雇用主を中心とした民間の協力者による活動が不可欠であると考えております。 本法案では、まず、目的を定めました第一条で国民の理解と協力を得つつと規定をしております。また、第五条、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他関係者と国や地方公共団体との連携協力、また情報提供について定めております。 基本的な施策の中では、第十三条で、少年院等の関係機関と学校、家庭、地域社会及び民間団体等の連携、また十四条では、入札における協力雇用主の受注の機会の増大を図ることとしております。また、財政面におきましても、第十六条で、民間法人が運営をする更生保護施設、また二十三条で、保護司会及び協力雇用主その他民間団体、そうした団体に財政の措置等を行うこととしておりまして、先生御指摘のとおり、この法律においても民間の活動というものは大変重要なものと位置付けさせていただいております。
○小川敏夫君 この本法案二十一条の指導、支援ですが、条文上、対象者の意思に反してはならないという文言がないんですが、この点について改めて御説明いただけますか。
○衆議院議員(山下貴司君) 確かに、小川先生御指摘のとおり、二十一条には対象者の意思に反してはならないという文言はございません。 これは、そもそも指導という概念、支援もしかりでございますが、指導については、相手方に対して強制力その他の法的効果を持たず、相手方がこれに従うかどうかというのが任意であるということが法令用語上も一般的な理解というふうに考えておりますので、そのような記載をしなかったわけでございます。 これを逆に、意思に反してはならないということを注意書きしますと、例えばほかの法律において用いられる指導については意思に反するものを含むのかというふうな反対解釈、余計な反対解釈を生みかねないということで記載しております。 したがって、この法律については意思に反してはならないという文言はございませんけれども、それはもう自明の理ということで、本法に基づいて意思に反するようなことが指導あるいは支援の名の下に行われてはならないというふうには考えております。
○小川敏夫君 最後に、法務大臣にお尋ねします。 今回、議員立法でこうした法案が成立したとした場合、法務省においてはどのような取組ということを考えておられるでしょうか。
○国務大臣(金田勝年君) ただいまの小川先生の御質問にお答えをいたします。 法務省といたしましては、本法案の成立、施行の際には、その趣旨をも踏まえまして、厚生労働省を始めとする関係行政機関等と密接に連携しますとともに、再犯防止推進計画の策定、あるいは推進に必要な人的、物的体制の整備、そしてまた広報啓発活動の実施、そして更生保護ボランティアといった民間の協力者に対する支援の充実など、再犯防止対策をより一層推進させていきたいと、このように考えておる次第であります。
○小川敏夫君 終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。 私からも簡潔に法務省と提案者に確認をしたいと思うんです。 本法案で指導の対象となる「犯罪をした者等」について、未決の者又は刑の執行を終えた者などの地位に鑑みて指導の対象とすべきでない者を指導の対象にしてしまうということになってしまうと無罪推定原則と矛盾するのではないか、あるいは刑の執行を終えた者を社会でずっと監視し続けるということになるのではないか、日弁連を始め厳しい、この法案の、そうした解釈の余地を残しているのではないかという指摘があるわけですね。 そこで、法務省にまず確認をしますが、現在そうした者に指導を行う法令上の根拠はありませんし、実際行っていないと考えますけれども、まず、いかがですか。
○政府参考人(高嶋智光君) お答えいたします。 委員御指摘の指導に関する部分でございますが、指導というふうに一言で言った場合、その意義はいろんな意味がございまして、本法案における指導がどういうものを指しているのかということについてはお答えする立場にはありませんけれども、法令上一般に指導というふうに言う場合は、それは相手方に対して強制力を持たず、相手方がこれに従うかどうかは任意とされているものと理解しております。したがいまして、恐らく本法案における指導という文言も、国が強制力を持って再犯防止のための措置をとる法令上の根拠とはならないものと考えております。 いずれにしましても、現在、未決の者や刑の執行を終えた者に対して国が強制力を持って再犯防止のための措置をとることはございません。
○仁比聡平君 ちょっと確認しますが、様々なものが指導に含まれるだろうという前提でのお話です。 そこで、ちょっと絞って、保護観察上の改善指導というのは、今私が申し上げている者に対しては法令上の根拠はないし、実際行っていないと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(高嶋智光君) 保護観察、更生保護法上の保護というふうな観点から申し上げますと、様々な保護が考えられているんですが、例えば刑の執行を終えた者、それから、刑の執行を終えた者あるいは刑の執行猶予の判決を受けた者、こういう者につきましては、例えば親族がなく、帰住先がなく、そういう者につきましては、本人の意に反しない限りにおいて、本人の申出を条件として更生保護法に基づき必要な指導、支援を行っているもので、することがございます。 ただ、これは今申し上げましたように、本人の申出がある場合に限ってということで、これも強制的にわたるものではございません。
○仁比聡平君 つまり、今度の法案がそのような者に対して、つまり意思に反する、強制的な、そうした新たな働きかけを行う根拠にはならないんだという御答弁だと思うんです。 加えて、もう一つ確認をしておきます。 附帯決議も検討をしているわけですけれども、一般に法令的に次の言葉をどのような意味として使うかと。言葉というのは、有罪判決の言渡し若しくは保護処分の審判を受けた者という言葉なんですけれども、これ、言渡しあるいは審判を受けた者というだけだと、一審であるいは家庭裁判所でそういう判決や審判を受けたけれども、控訴をして争っているということも含むのかという誤解が生まれることもあるかと思うんですけれども、この言葉は有罪判決又は非行事実ありとした審判が確定した者を指す言葉だという意味だと思いますが、いかがですか。
○政府参考人(高嶋智光君) 附帯決議につきましては、これは、その内容は政府としては説明すべき立場はありませんので、あくまでも一般論として、委員のおっしゃる有罪判決の言渡し若しくは保護処分の審判を受けた者というのがどういうふうな、一般的にどういう意味なのかということについて御説明させていただきますと、この文言がどのような意味を表すのかということは、それがどのような文脈で使われているのかということにもよるために、一義的にこの言葉はこういうことを意味しますというふうにお答えすることは難しいのでありますが、仮にその文言が、その者が罪を犯したのか等の事実の確定という文脈で使われる、用いられるのでありましたら、判決が確定した者、判決等が確定した者というものを意味すると解するのが自然であるというふうに考えられます。
○仁比聡平君 きちんと説明してもらおうとすると一層ややこしくなるという御説明になっているわけですが、提案者は御理解いただいていると思います、このやり取りの意味について。 法務省の答弁のとおりでよいかということと、それから、前回、この法によっての福祉施策との連携を図っていこうという、この積極的な意義についてお互い議論をし合ったわけなんですけれども、何にせよ、国や地方に計画を立ててもらおうとかいうような具体化はこれから進むんですが、この法によって何か新たな働きかけの根拠が直接できるものではないと、そういう意味ではこれからに懸かっているんだという、そういう法案なんだと思うんですが、そのことを基本法とおっしゃっているんだと思うんですが、そこの理解についてお願いします。
○衆議院議員(井出庸生君) お答えを申し上げます。 今、先ほど法務省、政府の方から答弁ございましたが、基本的には法務省の認識のとおりでありまして、また、今先生からそのお話がありましたが、この法律は、やはり刑を終えて、その犯罪、一度関わってしまったその犯罪を二度と繰り返したくないと、そう望む人に対して、福祉施設との連携のお話もございましたが、環境を整備をしてあげるというものでございまして、参議院のこの委員会の中で御議論いただいてまいりました何か強制的な指導ですとか、そういう御懸念も大変重大な御指摘だと思いますが、その立ち直り、犯罪との関係を絶ちたいという人たちに少しでも救いとなるような、そういう方向性からこの法案を御提案をしてまいりました。 今先生おっしゃられたその福祉施設のみならず、一人でも多くの再犯の方が減って自立していけるような、そういう環境整備のための法案であると、そのように御理解をいただきたいと思います。
○仁比聡平君 終わります。
○委員長(秋野公造君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。 本案の修正について仁比君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。仁比聡平君。
○仁比聡平君 ただいま議題となっております再犯の防止等の推進に関する法律案に対し、日本共産党を代表して修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりであります。 これより、その趣旨について御説明申し上げます。 本法律案は、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めようとするものであり、我が会派も衆議院において賛成したものですが、なお幾つかの疑義が残っております。 まず、本法律案第一条は、その目的について、「国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与すること」を規定していますが、加えて「犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進する」ことを明記する必要があると考えます。 次に、本法律案第二条第一項で定める「犯罪をした者等」の定義が不明確であるため、本法律案における犯罪をした者等に対する社会内での「指導」に関する規定については、未決の者、刑の執行を終えた者等にも指導がなされるように解釈される余地があります。 未決の者等に対する「指導」は明らかに無罪推定を受ける地位と矛盾し、刑の執行を終えた者等に対する「指導」はそれらの者を引き続き社会内で監視をする制度につながりかねません。そこで、無用な誤解を生まないよう、未決の者、刑の執行を終えた者その他その地位に鑑み指導の対象とすべきでない者に対しては「指導」は行わず「支援」にとどめるよう本法律案を厳格に執行することを法文上も明確にする必要があると考えます。 以下、主な内容について御説明申し上げます。 第一に、法律の目的に「犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進する」ことを加えることとしております。 第二に、基本理念に「再犯の防止等のための指導は、未決の者、刑の執行を終えた者その他その地位に鑑み指導の対象とすべきでない者に対しては行わないものとする」を加えることとしております。 以上が修正案の趣旨であります。 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○委員長(秋野公造君) これより原案及び修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに再犯の防止等の推進に関する法律案について採決に入ります。 まず、仁比君提出の修正案の採決を行います。 本修正案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(秋野公造君) 少数と認めます。よって、仁比君提出の修正案は否決されました。 それでは、次に原案全部の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(秋野公造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、真山勇一君から発言を求められておりますので、これを許します。真山勇一君。
○真山勇一君 私は、ただいま可決されました再犯の防止等の推進に関する法律案に対し、自由民主党、民進党・新緑風会、公明党、日本共産党及び沖縄の風の各派並びに各派に属しない議員山口和之君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 再犯の防止等の推進に関する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。 一 本法における「犯罪をした者等」の認定に当たっては、有罪判決の言渡し若しくは保護処分の審判を受けた者又は犯罪の嫌疑がないという以外の理由により公訴の提起を受けなかった者に限定するなど、本法の基本理念を踏まえ、かつ、その罪質、犯罪のなされた時期を考慮し、不当に拡大した適用をすることがないようにすること。 二 本法における指導及び支援は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、対象者の意思に反して行ってはならないものであることに鑑み、その旨並びに指導及び支援を受けるように説得する場合には執拗に行ってはならないことを周知徹底させること。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(秋野公造君) ただいま真山君から提出されました附帯決議案を議題として、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(秋野公造君) 全会一致と認めます。よって、真山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、金田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金田法務大臣。
○国務大臣(金田勝年君) ただいま可決されました再犯の防止等の推進に関する法律案に対します附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処をしてまいりたいと存じます。
○委員長(秋野公造君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時二十八分散会