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192回国会参議院2016/11/18

環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会 第6号

発言数
118
登壇者
12
会派数
8
開催日
2016/11/18

会議録

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) ただいまから環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日までに、宮崎勝君、杉尾秀哉君、木戸口英司君、中山恭子君、藤巻健史君、山添拓君、真山勇一君、平木大作君、行田邦子君、佐藤啓君、中西哲君、平野達男君、藤木眞也君、山田俊男君、浜口誠君及び田名部匡代君が委員を辞任され、その補欠として中野正志君、石井苗子君、井上哲士君、川合孝典君、谷合正明君、薬師寺みちよ君、佐々木さやか君、青木愛君、青山繁晴君、堂故茂君、今井絵理子君、小川克巳君、高野光二郎君、江崎孝君、宮沢由佳君及び野田国義君が選任されました。  また、本日、石井苗子君、川合孝典君、井上哲士君及び中野正志君が委員を辞任され、その補欠として片山大介君、藤末健三君、大門実紀史君及び中山恭子君が選任されました。     ─────────────

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、来る十一月二十五日午後一時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を一括して議題といたします。  本日は、両案件の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。  御出席いただいております参考人は、岐阜大学応用生物科学部教授荒幡克己君、明治大学農学部准教授作山巧君及び九州大学准教授磯田宏君でございます。  この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございました。  皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、荒幡参考人、作山参考人、磯田参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  御発言の際は挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをください。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず荒幡参考人にお願いいたします。荒幡参考人。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 御紹介いただきました岐阜大学の荒幡でございます。座らせていただきます。  初めに、本日このような場で発言の機会を与えていただきましたこと、深く感謝申し上げる次第です。  私は、農業経済学、特にその中でも水田農業を中心に研究をしております。本日は、このような視点からの見方に限られますが、少しでも御審議のお役に立てるような知見を提供できればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  お手元には三枚ほどの資料を用意しております。一枚目は全体の発言要旨、二枚目以降がそのバックデータ等でございます。一枚目に示しました順序に沿って御説明させていただきます。  まず初めに、世界の農産物貿易の現状について見ていきます。二枚目のグラフがそのバックデータです。これは、世界の農産物貿易の動向として、ある国が同じものを輸入もすれば輸出もするという双方向の貿易がどれだけ進んできたかを表す指数でございます。これは、例えば日本がパソコンを輸出する、その一方で同じ金額だけ輸入もするということになりますと一・〇になります。輸出ばかりで一切輸入しない、この場合はゼロでございます。半分だけ輸入すれば〇・五ということで、資料のバックデータの縦軸の数字が、〇・七が一番上に来ておりますが、その数字でございます。  この双方向の貿易は、工業製品では既にかなり前から当たり前のように行われております。例えば、日本が自動車をアメリカに輸出して、アメリカも同様に日本に輸出するということが行われてきたわけでございます。  ところが、農産物では必ずしも当たり前ではなかったわけであります。このグラフの最初の一九七〇年代の数字を見ますと、大変低くなっております。これはそのことを表しております。しかし、ここに表しました農産物、すなわちタマネギ、トマト、オレンジ、牛肉、豚肉、チーズ、それから米、いずれの品目も、牛肉だけはBSEの件がありましたのでちょっと変則的な動きがありますが、それ以外はいずれも数字が上昇、右上がりになっております。  この双方向の貿易の例として、例えばアメリカは、御承知のように、今回のTPP交渉では日本に強く牛肉の輸入、すなわちアメリカにとっての輸出を迫ったわけでございますが、そのアメリカは、オーストラリアから大量にコンビーフ用の低品位の牛肉を輸入しております。  では、なぜ農産物でも双方向の貿易が進んだのか。それは、食文化の交流、それから食品市場での高品質と低品質の製品の差別化、これが進んで、それに応じて生産分担も進んだからであります。  それでは、今後、自動車の貿易のように、つまり工業製品の貿易のようになっていくかということでございますが、注意しなければならない点がございます。製造業の品目も含めて全ての品目でこの指数を計測しますと、大体〇・六ぐらいになります。グラフの数字で確認していただくと分かるんですが、〇・六辺りのところに来ます。つまり、これと比較しますと、農産物ないしは食料では、ここに示した中では最も高いチーズでも〇・五五程度で、ほかの品目は〇・三とか低い数字でございます。ちなみに米は〇・一五程度であります。製造業と相当な違いがあるということでございます。  いかに双方向の貿易が進んだとはいえ、自然条件に左右されるのが農業でございます。したがいまして、レジュメの方に書いておりますが、工業製品と同様に双方向貿易、つまり輸出もする、輸入もするということが増加する傾向にはあるんですが、しかし同じ水準にはならないという、この両面性を理解することが重要であると私は考えております。  こうしたことも踏まえながら、今回御提案されているTPP協定の承認と関連法案の是非につきまして私の姿勢をお示しいたしますと、レジュメの方にも書いてございますが、今後、長期的に見て農産物でも一層の貿易拡大は避けられないという認識に立てば、関税等の国境措置を選択的、重点的に維持しつつも、短期的影響を回避した上で、品目に応じて可能なものは長期的、漸進的にそれらを削減する、その一方で、国内対策を競争力強化に重点を置いて実施する、輸出振興もまた同時に推進していくということは、方向としては妥当と考えます。  私は、交渉結果と国内対策をセットとして見るならば賛成の立場に立つものであります。ただし、そこで重要なことは、あくまで適切かつ十分な国内対策の充実が前提であります。  そこで、以下では、国内対策の具備すべき要件を三点ほど述べたいと思います。なお、国内対策といってもいわゆる産業政策の部分と地域社会政策としての部分がございますが、以下では産業政策の方に、しかもその中でも競争力強化という論点に絞って述べさせていただきます。  第一に、既に述べましたように、今回の交渉結果は、国境措置における削減までの期間を十分に長く確保したということが高く評価できる点でございます。これは農業という産業分野の特質として極めて重要であります。どんなにバイテク等によって新品種開発の速度が速まっても、現場では作物は生産者は一年に一回しか試すことができないというのは今も昔も変わらないわけでございます。そこで、国内対策もまたこれに対応して、是非とも息の長い取組としていただきたいと考えております。  思い起こしますと、二十年前ですね、約二十年前に、ガット・ウルグアイ・ラウンドの締結後、関税猶予の例外措置で五年後に再交渉というような話がありましたので、五年後までに対策をという、非常にそういうフレーズが当時の政府の文書の各所に見受けられました。このためもあってちょっと短期間という雰囲気があったわけでございますが、今回は是非とも、そうではなく、息の長い本腰を入れた競争力強化の対策を継続してほしいと考えております。  第二に、競争力強化といいますと、農業分野を専門とする方以外ではどうしても、商工業分野での単純なシナリオ、すなわち市場原理に従い厳しい環境にさらせば、中小規模の競争力の弱い経営が淘汰され、強い大規模だけが生き残り、競争力が強化されるというシナリオを描きがちであります。しかし、これは農業ではうまくいかないわけであります。  二枚目の下の表はこのことを示すデータです。一番左は、畜産、園芸等を全て含めた全営農類型の指標です。この場合、集約的経営もありますので、面積を指標として表すことは不適切です。そこで、保有労働力を尺度として、専従者がいるかいないかによって分類しております。右の二つの指標は、水田作経営に絞った指標であり、規模によって数字を見ております。  いずれのデータでも、いわゆる大規模経営ないし専業経営は農業では財務体質が弱い、小規模兼業農家の方がかえって財務体質が強いという、商工業とは皮肉にも逆の関係になっているわけでございます。このため、単純なやり方ではなくて、単純なやり方をやりますと、大規模農家の方が打撃を受け、小規模安定兼業農家だけが生き残るという、競争力強化の視点からは望ましくない方向に変化してしまうわけでございます。したがって、そうではない、大規模にターゲットを絞って強化策を講ずるということが重要でございます。  第三に、日本産農産物は高品質という過信は禁物という点を指摘したいと思います。  一般に、競争力は、価格競争力と非価格競争力、これは品質であるとかブランドであるとかでございますが、この二つから構成されます。確かに贈答品などでは高くても売れるという状況はありますが、今後一層の輸出増加を図ろうとするならば、その下の中間層の日常の食料消費として日本からの輸出を拡大することが不可欠であります。  その場合、例えば米を例に取りますと、海外では、私がデータにより計測しましたところ、かなり価格に反応しておりますし、また業界紙を見ても、実際に卸で輸出を手掛ける業者の方が指摘していることでございます。価格に反応しているんだということですね。したがって、是非、価格競争力の方を高めていく、こちらの方をやってほしいというわけでございますが。  そこでポイントとなるのはコストダウンであります。コストダウンで重要なことは、日本が幾らコストダウンしても、それ以上の速度で海外が進めば競争力は劣化するわけでございます。  三枚目の上に示しましたグラフ、これは日米の米生産費の比較でございます。為替レートの影響を取り除いております。折れ線が上昇すれば日米のコスト倍率が高まり、日本米が割高になる。つまり、競争力が劣化したということであります。下降すれば競争力が挽回できたということであります。  これを見ますと、四十年間トータルとしては日本の米の競争力は残念ながら劣化したわけでございます。この間、日本の稲作では相当努力いたしまして労働時間の大幅短縮とかが実現しているわけでございますが、それよりもアメリカがもっとコストダウンしたということであります。元々広大な国土を有するアメリカに日本が作付け規模等で劣っていることは事実でありますが、せめて差を広げられないようにしたいと思うわけでありますが、現実にはそうではなかったわけであります。これは日本人として残念なことですが、事実であります。  ここで私が特に強調したいことは、常に世界を見て競争力を磨いていく必要があるということでございます。コストダウンの手法としては、直まき、あるいはほかにも幾つかございますが、他品種の組合せによる作付け分散を図るとか、こういうことも是非やっていただきたいと思います。  ところで、今御覧いただきましたグラフの一番下の折れ線でございますが、これはもし日本がアメリカと同じぐらい単収が増加したならば実現したであろうコスト比率です。すなわち、アメリカが単収が増加したにもかかわらず、日本ではその間余り増加しなかった。よって、生産物当たりのコストでは劣化したわけであります。  実際、世界の農業では単収増加が進んでおります。例えば米を例に取りますと、アメリカ・カリフォルニアでは、最近十五年間で玄米換算で毎年十四・八キロの増加を記録しております。この間、日本は五百三十キロ程度で、余り増えていないわけでございます。こうしたこともあって、大変残念な結果なんですが、世界の稲作ランキングで見ますと、単収ではちょっと下がってしまったということでございます。  この単収が余り上がらないという現象は、日本国内の市場だけを見ると、消費者はおいしい米が欲しい、高品質の米が欲しい、需給は過剰ぎみであると。高い単収を狙うと過剰在庫を招いて、かえって生産者は所得減も危惧されるということで、余り高単収を狙わないということは妥当な行動であります。しかし、一たび目を海外に転じますと、ほかとの違いが分かるわけでございます。  ただ、御存じの方も多いと思いますが、かつて日本では米作日本一表彰事業がございました。ここでは、いわゆる一トン取り、最高は千五十二キロという秋田県の工藤さんの記録がございますが、これだけの潜在的な技術が日本にはあるわけでございますので、当面は過剰生産をすると価格低下が危惧されるのですが、長期的には是非高単収を狙っていただいて、コストダウンを図ってほしいと思うわけでございます。  以上をもちまして私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) ありがとうございました。  次に、作山参考人にお願いいたします。作山参考人。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今御紹介をいただきました明治大学農学部の作山でございます。  本日は、意見陳述の機会をいただき、光栄に存じます。  私は、現在、大学で貿易交渉や貿易協定を中心とする研究と教育に従事をしておりますけれども、三年前までは農林水産省に在籍をしておりまして、行政官として二十五年間勤務をいたしました。農水省では通算で十年近く貿易交渉を担当いたしまして、例えば世界貿易機関、WTOのドーハ・ラウンド交渉、スイスなどとの経済連携交渉、これはEPAです、それからEUとのEPA交渉に向けた協議などにも従事をいたしました。特に、二〇〇八年から二〇一二年にかけては国際交渉官として、またその一時期は内閣官房に併任となり、日本のTPP参画協議などにも従事をいたしました。  本日は、こうした私の実務経験と研究成果を踏まえまして、TPP協定に関する意見を述べさせていただきます。  私のTPP協定に対する基本的な立場は、必ずしも反対というものではございません。  私もかつて従事をしましたWTOでの交渉が進展しない中で、次善の策はTPPのような有志国間での自由貿易協定、FTAしかないのが現状であります。また、TPPの持つ政治的、戦略的な意義も否定できません。例えば、私は二〇〇九年にチェコでEUとの協議に参加しましたけれども、EU側は日本とのEPA交渉には極めてその当時消極的でした。しかし、日本がTPP交渉に参加すると、一転して積極的な姿勢に転じたのも目の当たりにしております。このように、TPPがほかのメガFTAを推進するてこになるという意味で戦略的な効果を持っていることは事実と考えています。  こうした中で、TPPをめぐる論議で私が残念に感じておりますのは、いわゆる賛成派はTPPのメリットのみを喧伝し、いわゆる反対派はTPPの問題点のみをあげつらっている点であります。私は、TPP協定は日本にとってメリットもデメリットもあると思っておりますから、その両者を冷静に見極めるべきでありまして、研究者はその判断材料を提供をするのが使命だというふうに考えております。  その上で、私が問題視しておりますのは、TPP協定の内容そのものよりも、国民への説明に関する政府の姿勢であります。  私は、政府は実際には政治的、戦略的な理由でTPPを推進しているにもかかわらず、国民に対してはその経済的なメリットを過大に説明しているというふうに考えています。また、合意されたTPP協定に対しては生産者の皆さんを中心に多くの懸念が出されているにもかかわらず、政府の説明や情報公開は依然として不十分だというふうに考えております。  このため、本日は、時間も限られておりますので、この問題に絞って意見を述べさせていただきます。  問題点の第一ですが、政府によるTPPの農林水産業への影響試算が大きくぶれているという点であります。  配付資料を用意してございますので、配付資料の二ページを御覧ください。  農水省は二〇一〇年、全世界に対して関税を全廃すると生産額が四・五兆円減少し、供給熱量ベースの食料自給率が一四%に低下するという試算を発表しました。次に、安倍首相がTPP交渉参加を表明した二〇一三年には、TPP参加国に対して関税を全廃すれば生産額が三兆円減少し、食料自給率は二七%に低下するとの試算を出しました。これに対して、大筋合意後の二〇一五年には、TPP合意を反映した市場開放によって生産減少額は最大でも二千百億円にとどまり、三九%の食料自給率も維持されるという、それまでとは著しく異なる試算を示しております。  ここで試算の細かな想定に立ち入ることは差し控えたいと思います。しかし、生産者にとっては二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の衝撃が非常に強く、TPPによって農林水産業に壊滅的な影響が出るという固定観念が形成されたと考えられます。また、二〇一三年と二〇一五年の試算を比較すると、例えば加工用トマトのように、関税撤廃という想定は同一にもかかわらず、生産量の減少率が一〇〇%からゼロ%に変更された品目も見られます。こうした一貫性を欠いた三つの異なる影響試算を公表した結果、合意を反映した二〇一五年の影響試算がほとんど信用されず、生産者のTPPに対する不安はいまだに解消されていないというふうに考えます。  これら三つの影響試算は、いずれも政府の責任で出されたものです。したがって、二〇一五年の影響試算が正しいということであれば、二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の誤りを率直に認め、どの品目でどのような過大評価がなされたのかを生産者に対して詳細に説明することによって政府に対する不信感を解消すべきだというふうに考えます。  問題点の第二は、国会決議との整合性です。  私は、今回のTPP合意は明らかに国会決議に反しており、政府はその事実を明確に認めるべきだというふうに考えています。衆参の農林水産委員会は、二〇一三年四月、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とするということを求める決議を採択いたしました。  配付資料の三ページを御覧ください。  これは、TPP合意における農林水産品の全二千三百二十八タリフライン、これは関税の細目ですけれども、の内訳を整理したもので、重要五品目でも三〇%のタリフラインで関税が撤廃されました。また、関税が撤廃されなかったのは四百四十三ラインございます、この資料には書いてございませんが。そのうち百五十一ラインは税率を維持したものとされ、その割合は重要五品目の二六%にすぎません。  では、この税率を維持したもの、百五十六でも百五十一でもよろしいのですが、これは除外というふうに言えるのでしょうか。  配付資料の四ページを御覧ください。  これは精米の例ですが、関税割当て制度を取っている品目では、あらかじめ定められた輸入量に適用される枠内税率とそれを超えた輸入に適用される枠外税率があるため、タリフラインは二本あります。  私は、本年三月の学会発表で、税率を維持したとされるこの百五十一ラインは、実は全てが関税割当て品目の枠内又は枠外のいずれかである旨を指摘いたしました。つまり、TPP合意では、タリフライン単位で見れば税率を維持したものはありますが、枠内と枠外の二つのタリフラインを合わせた通常の品目単位で見れば税率を維持したものは一つもありません。私のこうした主張については、四月十九日の衆議院TPP特別委員会の質疑において森山農林水産大臣が、枠内税率も枠外税率も変更を加えていないものがあったかと問われれば、それはないと答弁し、結果的に正しかったことを認めています。  従来の日本のEPAでは、除外は、品目を単位として一切の約束から除外するという意味で用いられてきました。つまり、森山大臣の答弁は、国会決議が求めた除外がTPP合意にはないことを認めたものです。それでも政府は依然として、国会決議の趣旨に沿う合意を達成できたと答弁し続けています。これを詭弁と言わずして何なのでしょうか。  TPP合意に除外が皆無な以上、国会決議は一〇〇%守られていないことは明白です。この点は、日本とオーストラリアとの経済連携協定、日豪EPAですが、と比較すればより明確となります。日豪EPAでは、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目は除外又は再協議とする二〇〇六年の衆参の農林水産委員会の決議にもかかわらず、牛肉等で関税削減を約束いたしました。しかし、米のように明示的に除外とされた品目もありますから、決議が守られた面もあるわけです。つまり、今回のTPP合意のように国会決議が一〇〇%守られなかった事例を私は寡聞にして存じ上げません。  問題点の第三は、TPP交渉に関する政府の情報公開の在り方についてであり、私はいまだ不十分であるというふうに考えております。政府は、TPP交渉参加時に締結した秘密保持契約を理由に、交渉経過に関する情報公開を拒んでいます。  ここで、配付資料の五ページを御覧ください。  これは、ニュージーランド政府が公表した秘密保持契約の抜粋でありまして、交渉に関係する文書などをTPP協定発効後四年間は秘匿するという旨が明記されています。しかし、なぜ協定発効後四年間なのでしょうか。交渉官を務めた私の経験からしましても、交渉について秘匿する必要があるのは協定の署名までであり、条文が確定した後の国会審議で秘匿し続ける必要性は乏しいというふうに思います。  次に、配付資料の六ページを御覧ください。  これは日本とASEANとのEPAに関する説明資料で、外務省のウエブサイトに掲載されているものです。資料右下の各国の物品貿易自由化の方式において、日本側は、即時関税撤廃と段階的関税撤廃とを合わせて、貿易額を基準に九三%で関税撤廃することが明記されています。  なぜASEANとのEPAではこうした自由化基準に関する情報が公開でき、TPPではできないのでしょうか。もう一度問いたいと思います。なぜTPP協定にのみ秘密保持契約があり、そして、なぜ秘密保持期間は署名後ではなく協定発効後四年間なのでしょうか。それは、TPPでは日本にとって著しく不利な参加条件が存在し、それを署名直後に公開すると何かと都合が悪いことがあるということだからというふうに考えています。  配付資料の七ページを御覧ください。  これは、各種の報道や私の調査結果を踏まえて要約した日本のTPP交渉への参加条件です。具体的には、日本は、二〇一三年の交渉参加時に先行九か国が合意した事項を原則として受け入れ、再協議は認められない。二番目として、交渉を打ち切る権利は先行九か国にあり、遅れて交渉入りした国には認められないという条件を受諾したと見ています。また、前者の合意済みの事項の中には、一つ目は、品目数ベースで関税撤廃率は九五%以上とする、二つ目は、一切の自由化をしない除外は認められないの二点が含まれていたと考えられます。  まず、九五%の関税撤廃率について検証したいと思います。配付資料の八ページを御覧ください。  この資料は、TPP合意における日本の総タリフラインの内訳に関し、九五%の関税撤廃率の基準を前提とした場合と、これが左側ですが、実際の合意内容とを対比したものです。左側の基準の列を見ると、日本の関税撤廃率を九五%とするためには、工業品の全てで関税を撤廃しても農林水産品で千八百七十八ラインの関税撤廃が不可欠です。これは、三ページにお示しをした関税撤廃の前例がある農林水産品、千四百九十四ラインございますが、これよりも多いので、九五%の関税撤廃率の基準を満たすためには、重要五品目の一部でも関税撤廃が避けられないことを意味します。  再び配付資料の八ページ左、右側の列の下段を御覧いただきますと、九五%の関税撤廃率を前提としますと、関税撤廃を回避できる農林水産品は四百五十ラインとなります。他方で、右側の実際の列の下のところを御覧いただきますと、日本が実際に関税撤廃を回避したのは四百四十三ラインでした。基準と実際との差は僅か七ライン、全品目の関税撤廃率で見ると九五・一%、上の方でございますが、九五%の基準と〇・一ポイントしか差がありません。日本の参加条件としての九五%の関税撤廃率の存在は明らかではないでしょうか。  最後に、日本の参加条件として除外が禁止されていたことに関する証拠も挙げたいと思います。  第一に、TPP参加国からの輸入実績がないコンニャクイモのような品目を含めて、TPP合意の中で関税割当て品目の枠内か枠外のいずれかで市場開放しているということがあります。これはTPP参加国の実利ではなく、交渉ルールとして除外禁止が設定されていたという証拠だというふうに考えます。また、さきに述べた税率を維持したもの百五十一ラインを日本政府が除外というふうに呼ばないのも、TPPで除外が禁止されているからにほかなりません。つまり、TPP参加と除外を求める国会決議とは最初から相入れなかったということです。  要約いたしますと、私はTPP協定に対する国民の理解はいまだ十分に深まったとは言えず、特に生産者の間ではそれが顕著だというふうに考えております。最近の世論調査でも、今回TPPを批准すべきとの意見は少数派となっています。その理由は、私がこれまで述べたように、TPP協定に関する十分な説明や情報公開をせずに批准を拙速に進めようという政府の態度に対する不信感が高まっているからではないかというふうに考えています。国民が政府に求めているのは、国会決議違反に頬かむりをして拙速に批准をすることではなくて、TPP協定の必要性とその内容について愚直に理解を求め続ける姿勢ではないでしょうか。  最後に、配付資料の九ページ以降にはTPP協定に関する私の研究成果をまとめましたので、適宜御参照ください。  私の意見陳述は以上です。御清聴ありがとうございました。

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) ありがとうございました。  次に、磯田参考人にお願いいたします。磯田参考人。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 御紹介いただいた磯田でございます。  事前にお二方の参考人の先生方と打合せをしたわけでは全くございませんが、私のこれから申し述べさせていただく意見陳述は、かなり角度を変えた形になっております。  お二方の先生はそれぞれの視点から、現行の協定としてある意味確定している部分、そして関税率表として確定している部分、これを前提にして御意見を陳述されました。私は、実はそれにとどまらない内容がこの協定には盛り込まれている、組み込まれているということを申し上げたいというふうに思います。  お手元にお配りした表題のように、農林水産業等への影響に関わって承認・協定発効後への不透明要素・リスクが著しく大きい、こういうTPP協定の国会承認には反対するというのが私の結論的意見でございます。  大きく四つの理由から申し上げますけれども、一番目は、農産物等の市場開放は、最終テキストとしてこの場でも審議されている協定及び関税率表だけでは済まない危険性が著しく高いということでございます。  すなわち、農産物等について、協定の現行規定、関税率表以上の市場開放を協議するメカニズムが幾重にも組み込まれており、その協議の主体、範囲、権限、協議結果の取扱いについて不透明要素が著しく多いということでございます。そのために、国会に提出されている承認案だけを審議して承認を決するのはリスクが多過ぎると考えざるを得ないわけでございます。  二番目に、具体的に申しますと、第二章で物品の貿易に関する小委員会というのがございまして、関税撤廃時期繰上げ、その他の貿易促進及び非関税障壁へ対処する、また、農業貿易に関する小委員会が農産品貿易その他の事項を促進しとされ、また、発効後七年以降、五か国いずれかの要請による市場アクセス増大目的での関税、関税割当て及びセーフガード適用に関する協議を義務付けられ、さらに二十七章で関税撤廃時期繰上げによる修正をTPP委員会の任務に挙げているわけでございます。  つまり、農産物等について少なくとも四重の追加的市場アクセス増大協議メカニズムがビルトインされていると。したがって、承認案だけの農産物市場開放では済まされない危険が極めて多いというふうに私は認識しているところでございます。  二番目の理由でございます。農産物・食品の安全性確保、規格、基準、表示、適合性評価手法でも、追加的協議メカニズムによって発効後の規制措置等の確保が著しく不透明化するというふうに認識しております。  第七章、衛生植物検疫措置、いわゆるSPSでございますが、これはそれ自体としても重大な問題を有しておりますが、加えて、そこでも設立されるSPS小委員会の目的が、この章で定める規定の実施促進、相互に関心を有するSPS上の事項検討、SPSに関する連絡・協力促進と著しく抽象的に規定されているため、無限定に広範囲な輸出国側の関心事項等が協議される危険をはらんでいるというふうに考えております。  また、第八章、貿易の技術的障害、略称TBTにつきましても、それ自体が幾つかの無視できない問題をはらんでいるわけでありますけれども、例えば、強制規格・任意規格・適合性評価手続作成に他国の者を参加させ、意見提出させ、それを考慮する義務であったりとか、他国の適合性評価の相互承認促進や国際規格への調和の促進だったりとか、食品規格委員会、FAO、WHOによって設立されている食品規格委員会の基準ですら、効果的でない、適当でないというふうに判断されればラベル記載を要求できないということなどがそれらであります。  それに加えて、ここでも設立されるTBT小委員会が、第八章の実施・運用の監視、規定による義務に関する潜在的な改正・解釈の特定、規定での将来の活動における優先分野の決定と新たな分野別活動の提案検討、附属書、ここには大変我々にとって重要な問題が書かれているわけですけれども、その規定を強化、改善し、それら分野の調和を勧告することまでが任務とされている。これまた著しく広範囲でありまして、国民生活の安全、安心に不可欠な農産物・食品、医薬品等の安全基準、規格、表示、それらへの適合性評価について、日本の規制、基準の緩和や他国のものの承認や調和などが一層進められる危惧を抱かざるを得ないわけでございます。  三点目の理由は、政府調達における国産のあるいは地域産の農林水産物利用が更に妨げられる危険も高まるというふうに考えております。  そもそもが、第十五章、政府調達でもって、外国等の供給者に対して、それが物品、サービスを他の締約国から調達していることに基づいて差別することを禁じておりますし、調達に際しての技術仕様、スペックに関して、特定の産地、生産者、供給者を要件にすることも、さらにそれに言及することさえ禁じられているわけでございます。したがって、市場開放対象の政府調達として附属書で日本国政府が示しているものについては、もう現時点で国産、地域産農林水産物等の利用を課すことは実質的に禁止されているというふうに理解されるわけでございます。  加えて、これらについても、政府調達小委員会が追加的な交渉によって対象機関と範囲の拡大及び基準額の改定、これは当然引下げが旨となるわけですけれども、そのための交渉をすると定められているわけでございます。日本政府は、対象機関として、中央政府の省庁、各種独法、地方機関、地方政府としては都道府県と指定都市を挙げているわけでございまして、また対象範囲の除外としては、地方政府の食料・飲料提供サービス、すなわち学校給食等でございますけれども、その他若干のものを除外としており、基準額についても定めておるわけですが、これらが追加交渉の対象になると。  したがって、対象機関の一般市町村等への拡大、対象範囲として地方自治体の学校給食サービス等の除外の解消、基準額の引下げへ向けた追加的交渉が義務付けられているわけでございます。そうなれば、日本政府と地方自治体が公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律や食育基本法の趣旨に沿って進めてきている国産材、地域産材を利用した公共建築や地産地消型学校給食の促進などは、その存立基盤を縮小、喪失する危険にさらされ、したがって地域の農林水産業と地域経済に一層の打撃を与えることにつながるということが十分に考えられ得るわけでございます。  四点目でございますけれども、これは実はアメリカの側の問題でございます。  御案内のように、アメリカの通商促進権限法が制定されておるわけでございますけれども、その中に、大統領による確認過程というものが定められております。それは、アメリカがそのアメリカ自身の国内法上の手続の一環として、一方的に事実上の追加交渉、再交渉に相当することを可能にする規定があるということでございます。大統領が、他の署名国が協定の義務を遵守する準備を完了したかどうかの確認を行い、それを議会へ報告する義務があるというのがそれでございます。  やや具体的に申しますと、当該協定発効予定日の三十日前までに、大統領が、他の署名国が当該協定諸規定の義務を履行するのに必要な諸手段を取り終えたかどうかを確認し、取り終えたことを議会に書面で通知することを義務付けているわけでございます。この場合、注意を要するのは、当該協定諸規定の義務が何かという解釈は当然アメリカ側による解釈になると、また、それを履行するのに必要な諸手段の解釈も同様と考えるしかないわけでございます。日本側の解釈が入る余地はございません。すると、他の署名国が承認、批准、国内手続を終えた後であっても、アメリカ大統領が、実質的に議会とも密接な連絡を保ちながら、義務の履行に必要な諸手段を取り終えていないというふうに判断すれば、その是正を求めてくる。つまりは、実質的な追加交渉、再交渉がなされ得る法規定になっているというふうに私は判断しております。  アメリカのこのTPA法における大統領確認、議会通知が終わってから初めてアメリカの国内法上の手続が完了するとの解釈に立てば、論理的には、この確認過程はアメリカ側の判断で無限に設定できることにもなりかねません。また、いずれにせよ、当該規定はアメリカが最後に国内法上の手続を終えることを想定しております。後出しじゃんけんでございます。したがって、アメリカに比べて早期に国内法上の手続を終えた国ほどこの確認過程に長期間さらされることになるというふうになろうかと思います。  このような片務的で、アメリカに特権的な事実上の追加交渉、再交渉の実権を与えるメカニズムが存在する限り、TPP協定、実はこのTPA法はTPP協定のためだけに作られた法律じゃございませんからその他も含めてでございますけれども、その承認その他の国内法上の手続を少なくともアメリカに先んじて行うことは得策でないというふうに考えるわけでございます。  以上を踏まえまして、最後に結論でございますけれども、この時点でTPP協定の承認その他の国内法上の手続をすることは著しく不利であるというふうに認識しております。  以上のように、生きている協定ゆえに有する追加的協議・交渉・開放メカニズム、すなわちTPP委員会、各種小委員会、各種作業部会、特定国間協議、そしてアメリカTPA法の大統領確認過程、さらに、今触れることはできませんでしたけれども、投資家国家間紛争解決、いわゆるISDSにおける仲裁廷、こういったものの構成、参加主体とその適格性基準、協議・追加交渉の範囲、権限、判断基準、協議等の結果の法的位置付けなどが明確になって初めて本協定の将来に向けた実質的体系としての全体像が明らかになってくるものと考えられます。  したがって、それらがつまびらかにならない限り承認審議を深めることは極めて困難であり、もし現在の承認案でそれらを明らかにすることが不可能なら、そうした諸点が明確化するようにむしろ協定そのものを改定すべきであると、ですらあるというふうに考えるところであります。  以上をもって、私の冒頭の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力をお願いいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 自由民主党の進藤金日子でございます。  本日は、三人の参考人の方々から貴重なお話をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。  まずは、TPPに関連する一連の報道、あるいは、全国各地を私自身回って、いろいろな方々の御意見などを通じまして、私なりの感想を申し述べさせていただき、その上で参考人の方々に質問をさせていただきたいと思います。  私は、今回のTPPの議論を通じまして、自由貿易を進めるに当たって、やはり農林水産分野への影響が大きくて、かつその影響が全国一律ではなく、地域ごとに異なり、それが各地域の生活に直結するものであることがより一層浮き彫りになった気がしております。そして、独立国家として食料の安全保障をしっかりと確保する必要があること、我が国の国土や環境を守っていく上で、多面的機能の発揮等を通じて農林水産業が果たす役割が極めて大きく、産業としてのみならず、地域を支え、国土を維持していく観点から、農林水産業を健全に発展できる条件を国が責任を持って整えていくことが不可欠であるということが明確になったものと受け止めております。  こうしたことは、国会審議、特にこの参議院におけます真摯な審議を通じて国民の皆様に理解していただける、いや、是非とも御理解いただき、国民全体の共通認識に高められるように引き続きしっかりと中身の濃い審議を行っていくことが極めて重要であると認識している次第であります。  このような観点から、我が国にとって自由貿易の推進は極めて重要でありますけれども、TPPを始めとする自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興は相反する、いわゆるトレードオフの関係にあるとの見方もあるわけであります。この点につきまして、参考人の方々からそれぞれ御意見を伺いたいと思います。  荒幡先生、作山先生、磯田先生の順にお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 自由貿易と農林水産業の関係でございますが、歴史的には、やはり自由貿易が進む、農林水産業が打撃を受けるということは、例えばイギリスの穀物条例の例に見るように、ずっと続いてきたということは事実でございます。特に、気候条件その他自然条件によって、やはり不利な国、有利な国がございますので、どうしてもそういうことは起こるわけでございます。  ただ、先ほど私が冒頭意見陳述で申しましたように、世界の農産物貿易、随分変わってきております。ここを踏まえて、競争力を強化しつつ、輸入にも対抗できる、その一方で輸出もしていくという方向は、これはやはり今後、もう経済全体、農林水産業以外を含めて経済全体で自由貿易によって我が国経済が発展していくということは、これはもうその方向しかあり得ないと思いますので、それを前提とすれば、今回政府が目指しておりますような競争力を強化、これを通じて輸入に対する対抗力と輸出の力両方を高めていく、この方向にやはり向かうべきかなというのが私の非常に長期の、穀物条例以来ということで大分歴史の長い話を申しましたが、現時点での世界貿易と農業観でございます。  以上でございます。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 進藤先生のお尋ねですけれども、端的に申し上げますと、私も十分可能だというふうに思っております。  その方法もございまして、私も貿易交渉も長くやっておりましたけれども、大きな流れとしては、関税には余り頼らずに農家に対する直接補助金で保護をしていくというのが大きな流れですね。アメリカもそうなっていますし、EUもそうなっています。なので、ある意味、私は、今回のTPP合意というのは関税をかなり削減したわけですから、そういう政策に切り替えていく本来はチャンスにすべきだったというふうに考えているわけですね。  ところが、実際の政策は、輸入した分だけお米を買い上げるとか、これはTPPとは関係ありませんけれども、飼料米で価格を維持するというような、どっちかというと価格維持を強めるような形になっているので、ちょっと方向性としては違うのではないかなというふうに思います。  むしろ、関税を下げていって、所得は直接補助金でちゃんと確保されますよというメッセージを生産者の方に出すことによって、そういう機会にすることによってTPPへの理解も深まったのではないかというふうに考えています。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 御質問ありがとうございます。  端的に申し上げますと、これは、経済学の手法を、どのような手法を用いるか、あるいは理論に依拠するかにかかわらず、ほとんどの経済学者、農業経済学者が認める貿易に関する原理として比較生産費説というものがございます。  これは、非常に短く申し上げますと、複数の国々で、非常に単純化するために農業と工業というふうに二つに分類しますけれども、相対的に見て生産性が高い分野が国際競争力、貿易では優位に立つと。そうすると、それぞれの国が農業と工業があって、両方の産業が同時に優位に立つことはできないということを、先ほど荒幡参考人がおっしゃられた穀物法論争の一端を成したデービッド・リカードが明らかにして、それはその後もいろんな形でソフィスティケートされているわけでございますけれども。  そういう観点で行きますと、完全に自由貿易をするということと、それから、それぞれの国々にある農業や工業、あるいは広範な産業が同時に繁栄するということは原理的に言って両立不可能であるというふうに考えておりまして、その例は、日本の過去の歴史、戦後の高度成長期以来今日までの歴史を見ても検証できますし、あるいはアメリカ合衆国、あるいは韓国、あるいは中国、アメリカの場合は農業が比較優位にありますが、製造業は比較劣位にありますから、製造業はどんどん全体としては衰退していると。韓国、中国、日本はその逆であるという現象が起きているということからも見て取れるというふうに思っております。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 どうもありがとうございました。  私は、いろいろな議論がある中で、自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興がトレードオフの関係ではなくて、やっぱりいろいろな努力をしながら双方とも両立するようにしないと我が国の将来はないんじゃないかというような強い覚悟で実効性のある政策を実施しなければならないと考えております。  特に、農業に絞った場合におきまして、自由貿易の推進を見据えた農業政策の在り方、これ、作山先生からも少し触れられましたけれども、これにつきまして改めてまた参考人の方々からそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 今お話ありました自由貿易を見据えたということで、先ほど作山さんからもお話ございましたが、世界の農業政策の流れとして、消費者負担型から財政負担型へ、これは大きな流れで、もう二十年以上前からその方向にシフトしております。  つまり、関税によって障壁を巡らせた上で国内でも高価格を維持していくという手法をやりますと、これは、高価格ですから、食品が高価格ということで、消費者がその負担をするわけでございます。これに対して、関税を引き下げて、その分財政負担をしていく、直接支払とか幾つかの類型がございますが、こうすることによって、同じような保護でありながら、消費者負担から財政負担に移していく。  その方が、これ経済学的なテキストの問題になるんですけれども、価格を高くすると、消費者の行動もちょっと変な方向に歪曲されてロスが生じる、生産者も本来の姿から少し歪曲されるということなんですが、財政負担であれば、生産者は確かに保護されたところを作るようにしますから、少しその部分は同じなんですけれども、消費者については全く経済的なロスが生じないということが理論的に明らかでありまして、その方向に今動いておりますので、今回、TPPということで関税その他の国境措置が、当面はかなり防げると思うんですけれども、長い目で見れば少し低めの国境措置になっていくわけですが、それに対して財政負担をする、こういった方向がやはり日本も妥当な方向だと思っております。  以上でございます。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 進藤先生の御質問、私なりに、貿易自由化の流れの中で農業政策どうあるべきかという御質問だというふうに認識しましたけれども。  対応方法としては二つありまして、一つは政府が守るというやり方ですね。それは、今話が出ていますように、直接補助金、関税から直接補助金というシフトが進んでいるという話も先ほど申し上げました。  ただ、もう一つは、何が何でも政府ということではなくて、消費者の理解を得るということもあると思っていまして、そういう意味では、私、何でもTPP反対、何でも賛成という立場ではありませんので、TPP対策で非常に評価をしておりますのは、原料原産地表示を拡大するということが決まりましたですね、原則として全加工食品に適用すると。あれは非常にいいことだというふうに思っております。  私は貿易が専門なんですけれども、日本では、消費者の方は生鮮食品は非常に国産選好が強くて、例えばリンゴですね、生鮮リンゴはほとんど国産です。ただ、リンゴジュース、原料はほとんど中国産です。これ野菜でも同じようなことが起きていますね。  ということですので、加工食品にも消費者の選択権を与える、消費者に情報を与えるということをすれば非常に強力な国産品を選んでいただけるというツールになると思いますので、そういう環境整備というのもあり得ますので、何でも政府がということではなくて、そういう仕組みもうまくつくっていく、使っていくということも重要かと思っております。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 私も、仮に関税という形での国境措置が長期的にであれ、あるいは、私が申し上げたような危惧が当たって、もっと前倒しにどんどん撤廃されていくということになるようなことになったとすれば、その下で、じゃ、国内農業をどうするかということを考える場合には、既に御指摘ありましたように、直接支払型の、特に、単なる直接支払でなくて不足払い的な要素、すなわち一定のコストなりというものを基準にして、先ほど荒幡参考人も言っておられたような、担い手の経営体がきちっと経営が存立できるような一定の基準というものに対して不足部分を補填していくようなそういうタイプの直接支払、アメリカの二〇一四年農業法も実はそういう内容になっているわけですけれども、そういうものが必要であるというふうに考えます。  それからもう一点、国内の消費者を味方に付けるためのいろいろな施策あるいは輸出を進める施策、これも私は重要性を否定するものでは全くありません。ただ、その場合に、一つは先ほど申し上げた国際貿易上の原理から、もう一つは消費者の側の二極分化ということが国内でも国際的にも起きております。  端的に言うと、格差社会化の進行に歯止めが止まらずに、比較的高い、安全、安心、そして栄養価も高い、出どころもはっきりしている、こういうものを消費できる購買力を持った消費者とそうでない消費者に残念ながら二極化していく流れに歯止めが掛かっていないと。  そういう国内外の消費市場の状況を見ますと、国内農業で伸ばしていけるものは、やはりどうしてもそういうプレミアム的な部分に限定されてくるのではないかと。その部分については当然後押しをするということはやっていくべきだと思うんですが、そうならない部分については、冒頭に申し上げたように、しっかり、仮に国境措置ができなくなるんだとすれば、不足払い的な要素を込めた直接支払ということをかなり強力にやっていく必要があるというふうに考えております。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 先ほど作山先生からTPPに関する政府の説明が不十分だという御指摘もいただいたわけでありますが、私自身全国を回って感じることは、やはり農家の皆様方の理解が進んでいないんじゃないか、あるいは農家の不安が払拭されていないということが感じられるわけであります。  私は、TPPがあってもなくても農業、農村をめぐる状況は厳しいものでありまして、むしろTPPを契機として農業、農村の厳しさを国民の皆様に御理解いただき、国全体で農業、農村を支援できる体制を築いていく、こういったことが大切ではなかろうかなと思っているわけであります。このためには、まずは、私は、政府が定めた、先ほど作山先生からも原料原産地の話でありましたけれども、総合的なTPP関連政策大綱に基づく各種政策をしっかりと実行に移して、その上でフォローアップしていくことが必要なんじゃないかと。  そのためのモニタリングシステムを整備して、責任を持って継続的にTPPの影響を排除していく、あるいはTPPの枠組みを積極的に活用して前に出ていくといったことをやっていくのも一つの考え方ではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、この点について、荒幡先生の御意見、いかがでしょうか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) モニタリング、おっしゃるとおり大変大事かと思います。  この点に関しても、先ほどもちょっと話しましたが、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときは、やはりそういう観点から見ると、いつの間にか何か忘れてしまったといいますか、危機感が薄れてしまった。これは、政府がどうこうというよりも、現場も含めて日本全体であったような気がしております。  ですから、私、息の長い対策をということを先ほど申し上げましたが、それは、政府、それからあと生産現場の生産者の方々、またそれを指導する方、あるいはメディア等も含めて、是非長く危機感を持って、ずっとモニタリングと相まって対策を続けていくべきだなと考えております。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 どうもありがとうございます。  先ほど来、所得補償政策の話が出ております。消費者負担から財政負担ということでございますが、私は、この所得補償政策については、政策論としては一つの有効な手法ではないかというふうに考えているわけであります。  しかしながら、その適用に当たりましては、いつのタイミングでやるのか、あるいは財政規模も含めてその財源どうしていくのか、これ、十分かつ慎重な検討が不可欠であるというふうに考えております。我が国のように農業経営の形態が多様であって、かつ専業、兼業が入り組んでおり、特に水田ではいまだに小規模な経営が多数存在する中におきまして一律的な所得補償を行うと、改善途上の農業構造の固定化につながる懸念もあるというふうに思うわけであります。  私は、小規模兼業農家の方が財務体質が強いといった荒幡先生の御指摘もあったわけでございますけれども、土地利用型農業においては、農業構造の安定化、つまり農地の集積が相当程度進展した段階で、大規模農家には産業政策としての所得補償、あるいは小規模農家には地域政策とか環境政策としての所得補償というケース、これも考えられると思うんですが、これ、作山先生の御意見はいかがでしょうか。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですけれども、進藤先生の今のお話を伺っていると、まず、農家の規模拡大が進むのを待つというような印象を受けましたけれども、そういう指摘は随分何十年も前から言われていると思うんですよね。  実際なかなかそれが、私の思っていますのは、なかなかそれが進まない中でもう担い手がどんどんいなくなってしまっているというのが現状だと思いますので、ある意味、TPPが契機になると私は思っていますけれども、こういう大きな政策変更を契機にある程度規模の大きい方に絞って本格的な直接支払を導入する、思い切って導入するというのがまず重要だというふうに思っています。  小規模でそれの対象にならないよという方は集落営農をやっていただくとか生産組織をつくっていただくとか、いろいろな形ですくい上げる方法はあると思いますので、ヨーロッパと同じような水準まで規模が拡大されていないからまだですというのは、どちらかというと、私も役人生活長いんですけれども、財政当局がよく使うせりふでありまして、必ずしも日本農業の実態には合っていないんじゃないかなというふうに考えております。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 どうもありがとうございました。  荒幡先生の著作も随分見させていただいたんですが、食料の安全保障上、我が国の農地を農地としてこれしっかりと維持していくことが極めて重要だというふうに私も思っております。  我が国の農地の機能を最大限に発揮して、先ほども御指摘ありましたけれども、生産技術を更に高めていく、環境を整えていくことは、国産農産物の消費拡大による食料自給率の向上はもちろんですけれども、これに加えて、やっぱり海外の市場を視野に入れて積極展開していくということもこれ重要なんだろうと思います。  これはもう先生も先ほど来お話ありますけれども、この点について改めて荒幡先生の御意見、お伺いしたいと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 海外への市場展開、これをまさに今政府がその方向で進んでいるというふうに私認識しておりますが、大いにやっていただきたい。  先ほど申し上げましたが、量的に余り大きなものを直ちに期待するのはちょっと禁物じゃないかとは思っているんですが、少しずつ少量であっても、やはり現地を回ってみますと、非常に輸出するということだけで元気が出ると申しますか、ちょっといい例えかどうか分かりませんが、スポーツなんかでも、海外遠征に行ったりしてくるとすごくそのスポーツ団体が活力が出てくるとかいうようなことがございますね。これと同じような雰囲気が出てきているやに感じておりますので、是非この方向でと思っております。

進藤金日子自由民主党

○進藤金日子君 私の質問、これで終えさせていただきたいと思います。どうも皆様ありがとうございました。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 どうも、こんにちは。民進党の野田国義でございます。  今日は本当に、三人の先生方、お忙しい中に参考人として御出席をいただきまして、私からも心から感謝の意を表したいと思います。ありがとうございます。  もう皆さんも御承知のとおり、今日、朝の七時から、トランプ・タワーでトランプ次期大統領と安倍総理との会談があったということでございます。トランプさんは、グローバリゼーションあるいは新自由主義を否定し、大統領に当選をしたと。ですから、公約からすれば、当然これは保護主義に行くだろうということが予想されるわけでありますけれども、どういう会談の内容になったか非常に興味深いところでありますけれども、帰ってみえて、総理にいろいろなことをお聞きもしたいと、そういうことを思いながら質問をさせていただきたいと思います。  このTPP、私もいろいろな思い出がありまして、我々が与党のときなど、反対と言えば、離党してそういう話はしてくれと、そんな話、随分と自民党の議員さんからされたことを今でも根深く思っているところでございますけれども、しかし現実として、批准ということを目標に今、現政権がやられているということであります。私、基本的には、日本の農業をどうしていくかということ、このことが非常にまたこのTPPを機に問われているのではないかなと思っているところでございまして。  私、地元、JA八女というところがあるんですけれども、振り返ってみますと、ブドウとかお茶とか梨とかイチゴ、イグサ、大豆、花卉ですか、全部天皇杯もらっているんですよ。そういうことで、非常に農業が模範的に展開をしておった。基幹産業は農業だと自慢して市長時代言わせていただいておりましたけれども、しかし反面、非常にこの農業という経営が厳しくなっているのも事実であろうと思っております。  ですから、付加価値農業とかあるいは高収益型の農業、ここに果敢に挑戦しているところはある程度のところが保たれている。しかしながら、片方では、土地利用型の農業をせざるを得ないというか、そういうところもたくさんあるわけでありますので、ここをどうこれから強い農業にしていくかということが日本の農業の課題かなと思っているところでございます。  そこで、私、幾つか福岡県内の施設も視察をさせていただいておったわけでありますが、地震、津波でやられました宮城県の山元町ですか、あそこ、イチゴが盛んに今復活をしているところでありますけれども、やっぱりああいった挑戦、リーダー、組合長が率先してやられたという話でございましたけれども、そういう農業を取り組んでいけば本当に農業というのは未来があるんだなということもある面思っているところであります。  そこで、地方創生にも欠かせないわけでありますけれども、荒幡先生の方に、今発言の中に自民党の対策をパッケージとして捉えれば賛成であるという話があったわけでありますけれども、私は、ガット・ウルグアイ・ラウンド、先ほどから話出ておりましたが、あれも経験いたしまして、六兆百億ですか、結局ばらまきに終わっちゃったということでありますが、ここに対策、補正予算あるいは来年度予算も対策が講じられると思うんですけれども、この対策について荒幡先生はどのように評価をされているのか、お聞きしたいと思っております。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 六兆のときは、異常にこう、何といいますか、金額で目立ったといいますか、ということでございますが、それと比較しまして、今回は比較的地道にいいところを補強しつつ進めているなという印象は持っております。  細かいところはまだ詳細に精査したわけではございませんが、一つ言えますのは、私、攻めの農業という言葉でちょっと誤解しておりまして、あれは本当に攻めるので輸出の方だけかと思っておりましたら、そうではなくて、競争力を強化して、入ってくるものに対する抵抗力といいますか、対抗力といいますか、を増すのも含むということでございますので、そういう観点ならば悪くはないなと思っております。  余り攻め攻めと言うのは、先ほど私が説明の中でも申しましたけれども、世界の農産物貿易の潮流として、双方向、つまり食料輸入大国の日本が輸出もするということは何らおかしくない、ごく自然なことなわけでありますので、私は最初、攻めの農業と聞いたとき、何かちょっと力み過ぎではないかというぐらいに思ったわけなんですが、輸出もいいと。しかも、今回、その攻めという言葉の中に、入ってくるものに対する対抗する力を付けるということも入っているというふうにお聞きしましたので、それは結構なことじゃないかというふうに評価しております。  以上でございます。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 ちょっとまだよく分かりませんでしたけれども。  今、輸出ということを触れられましたけれども、輸出を増やすだけで本当に日本の農業が強くなっていくのかなと。一兆円を目指してということで政府も頑張っておられるようでありますけれども、それはほんの一部なんですよね、ある意味では。ですから、このところは先生どう思われますかね、なかなかそれだけで、じゃ日本の農業が強くなるかというと。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) おっしゃるとおりでございまして、私の先ほどの趣旨も同様なんですが、輸出だけで何か全て問題が解決するような雰囲気はむしろよろしくないとさえ思っております。  入ってくるものに対して、例えば先ほど話にありましたが、業務用とかこういう用途ですと結構入ってくるわけですね。しかも、なかなかその製品差別化も難しいと。ここの辺りでやはり地味なコストダウン、国産という、例えば先ほどの話にありました、リンゴ辺りですと国産の良さをアピールできるんですが、リンゴジュースだとそうではないということなんですが、ここの辺りもコストで本当に地味な努力をする。  圧倒的な差を付けられないまでも、かなり接近してくればはね返す力も出てくるわけでございます。是非、水際ではねのけるような守りの力、こういうところにも力を入れて、おっしゃるとおり、輸出だけではなくて、そちら、両面でやはり日本農業の今後の道はあるのかなと思っております。  以上でございます。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 農林水産省が言うようにしていくとなかなか厳しく、これまでそれを繰り返してきたと。いわゆる農政をそうならないようにこれからしっかり取り組んでいかないと。  もう一点だけ、済みません。  作山先生がおっしゃっておりました国会決議は、荒幡先生から見て、今回TPP守られたのかどうか、コメントをお願いしたいと思いますけれども。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 守られたかどうかにつきましてはまさしく国会自身でお決めいただくことかと思いますが、再生産可能なという条項がございます。ここにつきましてはかなり、少なくとも短期には相当、当面の大打撃は回避されておると。長期的に見るならば、ここでしかるべき対策があって、両方セットで、まあ長いスパンを取ってくれましたのでその時間はあると、時間は稼げているということで、再生産に関しては可能かなというふうに判断しております。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 それじゃ、次は作山先生の方にお願いしたいと思いますけれども、作山先生から、政府の説明がなさ過ぎたと。これも、逆に我々が与党のとき再三言われておりましたが、特別委員会をつくってしっかり論議しようということを言われておりましたが、結局、立場変われば、結果的にはそういった特別委員会もできずに、国民への説明責任もなされず今日を迎えたということではなかろうかと思いますけれども。  ちょっと視点を変えまして、作山先生には、この安心、安全、当然食料には、農業には安心、安全が最も私は大切だし、非常に国民はここを不安がっておると。  今日も朝から、青森の五所川原高校、GAPですか、グローバルギャップに取り組んでいる番組が放映をされておりまして、まさしくこういった国際基準を作っていって、しっかり日本の農業、攻められるような環境をつくっていく。二百項目から合意が必要で、毎年それをチェックしていくというようなことでございましたけれども、当然グローバル化していく、TPPが批准されれば多くの農産物が入っていく中で、こういった安心、安全については、作山先生、どうお考えになっておるのか、交渉官なども務められた中で、そういう思いを聞かせていただければと思います。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) ありがとうございます。  二つの点を述べたいと思いますけれども、一つは、TPP協定で安心、安全がどうなるかということなんですけれども、御関心の消費者の方も多いと思いますけど、私自身は、TPP協定それ自体で影響受けるとか懸念が大きくなるということはないというふうに考えております。  私自身も、SPSではありませんけど、いろんな交渉をやりましたけれども、TPP協定のSPS章の最初には、WTO上の権利義務を変更しないというふうに明確に書いてあるわけですから、その上で、いろいろな手続を早くしなさいとか、手続の面について規定を設けているわけですね。ということですので、あれを余り過大に危ない危ないという言い方はどうかなと思っております。  一つ具体例を挙げると、たしか衆議院の審議だったと思いますけれども、アメリカでは家畜の飼育にホルモンが使われておりまして、それは、日本では輸入品には許可しているけれども国内生産には許可していないということがありましたけれども、それはもう今既にそうなっているわけですよね。TPPで変わるわけではないので、そういう意味では、TPPの効果という意味ではそれほど心配することはないのではないかと思っております。  もう一点、今、野田先生がおっしゃったのは、むしろ国内の農産物を差別化していくために、安心、安全を高めていくために、生産現場ですとGAPでしょうし、加工食品だとHACCPになるわけですけれども、やはりそういうのを支援していくというのは非常に重要だと思っております。  私は、研究の中で、研究室の活動では輸出の調査なんかも随分やっているんですけれども、最近は、欧米諸国ではHACCPを義務化するという動きが出てきているんですね、アメリカやEUでは。そうなると、日本でも、今は任意なわけですけれども、それをしっかり取らないと、そもそも輸出する資格がなくなるという可能性もありますね。GAPもそういうふうな広範な利用という形が出てくると思いますので、そういう取組を支援していくということは非常に重要だというふうに考えています。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 どうもありがとうございました。  それでは、磯田先生の方にお聞きしたいと思いますけれども、農業、先ほど担い手の話も出ましたけれども、やっぱり若い人たちが農業に従事するということは、魅力がある。その魅力とは何かというと、やっぱりもうかるかもうからないか、基本的にこれが一番大切なことではないかなと。私も見てきまして、青年部が一番多いところ、これがやっぱりもうかる魅力があるんですよ。  ですから、そういういわゆるもうかる農業にするには、磯田先生、特に、九州いろいろ歩かれて御承知のようでございますけれども、どのような農業の展開を図っていったらいいのかと、お考えをお聞きしたいと思います。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) もうかる農業にするための策というのはなかなか、一言で申し上げられるような特効薬があれば、恐らくもう日本農業は相当今とは違った姿になっていたんだろうなというふうに思うわけでございますけれども。  一つは、先ほど来議論にもありましたように、付加価値を高めていく、そういう新しい市場を開拓していく、あるいは差別化して、国外との競争を避けるような形で販路を切り開いていくということ。  それからもう一つは、消費者との距離感、これは物理的な、地理的な距離感だけではなくて、交流というような、生産者と消費者との交流を通じて互いの信頼関係を高めつつ、その生産者のものを信頼して買ってもらうということも含めた、そういうような道筋でもって、もうかる農業、いわゆるもうかる農業ということが今後もより一層追求していく必要があると思いますし、それから、御指摘の中にあった若手、青年ということについては、ようやく日本政府も始めました青年就農者に対する支援というものを今後一層強化、拡充していただきたい、新規参入者にとどまらず、いわゆる農家の後継ぎについても十二分に支援をしていただきたいと、このように思っております。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 農地を集約しながら大規模農業、しかし、とても、アメリカ辺りで二百ヘクタール、平均ですね、そこに勝てというのが、私はいつも思うんですけれども、ちょっと無理なことなのかなと。ですから、付加価値とか、そういう中でやっていかなくちゃいけないと思うわけであります。  それと、ちょっと荒幡先生の方に戻らせていただきますけれども、しかし片方では、それだけのいわゆる集約的な農業だけでいいのかと、大規模農業だけでいいのかという部分、これも我々はちょっと自民党さんと方向性が違っていて、我々はやっぱり女性のしっかり支えてくれている農業とか、高齢者もしっかり日本の地方というのは支えてくれて、大体地方を回っておりますと、人が集まっているのはスーパーと道の駅というか、そういった農産物の直売所、非常にここは頑張っていると思うんですね。ですから、ここは非常に日本の地方あるいは地方創生にとっては大切なところだと思いますけれども、この兼ね合いはどのようにお考えでしょうか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 私の意見陳述では産業政策ということでちょっと話を絞ったんですが、おっしゃるとおりでございまして、産業政策だけではなくて、やはり地域社会として例えば中山間地域を維持するであるとか、こういった政策の組合せが重要でございます。  ただ、この組合せを、片方の政策をやっているにもかかわらず、産業政策であるかのように見せかけたり、そういう、何といいますか、曖昧な扱いというのは余りよくないわけでございまして、やはりはっきりと、例えば地域に目を向けた政策であれば、生産を刺激しないで、そこに住んでいただくということに価値を見出してしかるべき助成をするということでございますし、産業政策の方であれば、どんどん作ってもらう、あるいはコストダウンをどんどんやってもらうということで、うまく峻別しつつ、使い分けて進めることが肝要かと思っております。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 もう一つは、何といいましても、ここ、忘れちゃいけないことは食料安全保障の問題で、三九%と非常に低いわけでありますので、ここをしっかりと日本が保ち、更に伸ばしていく努力をしていかなくてはいけないと思いますが、よろしかったら、作山先生と磯田先生、そのことについて一言ずつ述べていただければ有り難いと思います。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 簡潔に述べますと、自給率について言いますと、自給率というのはよく使われているのは二つございまして、私も言及しましたけれども、供給熱量ベース、カロリーベース、これ今三九%です。私の意見は、余りカロリーベースには執着しない方がいいんじゃないかなと思っているんですね。というのは、これは穀物や家畜の餌を生産しないとどう考えても上がらないので、日本で上がるというのは正直難しいわけですね。  片や、生産額ベースの自給率というのもございまして、これ六〇%以上ありますけれども、これは付加価値のあるもの、高いものを作れば上がっていくわけですので、実は農水省も以前はカロリーベースのみを目標にしていたんですけれども、最近は二つ、両方目標にしていますので、私自身は、生産額の方に重点を置いていった方が生産者の方も元気が出るんじゃないかというふうに考えています。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 私は、食料安全保障を考える場合に、一つは、量の側面に多くの注目が行きがちな嫌いもあるかと思うんですけれども、その点についてはもう余り重複しないように繰り返しませんが、輸出についても、特に安全性に関する食料安全保障ということについても十分配慮していく必要があると考えております。  その一例が、先ほどちょっとありましたけれども、SPS協定はWTO以上でないということでありましたが、実は予防原則というものを一切書き込んでいない、WTOのSPS協定とは違って、という点はある意味では非常に大きな違いだと思っております。  御案内のように、EUはこれを盾にアメリカ、オーストラリアからの成長ホルモンを使った牛肉の輸入を一貫して拒否してきておるわけですが、日本で仮にそういう新たな科学的な知見等が出てきてそういうことをやろうということになっても、TPPとの関係ではそれはもうその措置はできないという根拠はないわけですね。おまけに、牛肉の輸入について、セーフガードの発動水準が七十三万五千トンですかね、最終的に。これを今の牛肉の需要量を横ばいと仮定しても、そのときはほぼ牛肉の自給率は一〇%になってしまっております。そうなりますと、一〇%になってしまった段階で、いや、そのときに成長ホルモンは実は危ないという科学的知見が出てきたということになっても、これはもう手遅れになるわけでございますね。  そういう点では、量の食料安全保障とともに質の、特に安全性の食料安全保障ということにも十分目を向けていただいてこのTPPという問題を御議論いただければというふうに思います。

野田国義民進党・新緑風会

○野田国義君 どうもありがとうございました。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかと申します。  今日は、三人の参考人の先生方、大変貴重な御意見をいただきまして、改めて御礼を申し上げたいと思います。  このTPPですけれども、私は、自由貿易をこのTPPによって推進をしていくということは、世界の経済の発展のためにも、また日本の経済の再生、また地方創生という観点からも重要であるというふうに思っております。もちろん様々な御意見があるということも承知をしておりますけれども、そうした御心配の声に対しても、今日も説明責任ということが議論になっておりますけれども、この参議院の審議を通じて少しでも説明責任を果たしていきながらまた議論を充実をさせていきたいと、このように思っております。  TPPは、農業だけではなくて、御存じのとおり非常に幅広い新しいルールを決めていく、そうした協定でございまして、非常に大規模な巨大な経済圏が生まれると。やはりこの日本の状況を見ますと、人口減少社会に突入をしていく。日本の国内市場も、もちろんいまだ重要な大きな市場ではございますけれども、やはり成熟をして、また縮小傾向にあるということは皆が恐らく認識していることであると思っております。ですので、この国内の人口減少を乗り越えていく、そして日本の更なる発展につなげていく、そのためにはやはり、農業におきましてもそうでございますが、新しい海外市場を切り開いていくと。これは非常に重要なことでございまして、このTPPというものを是非そのチャンスにしていかなければならないと、こう考えております。  これが私の基本的な認識でございますけれども、まず参考人の先生にお聞きをしたいのが、荒幡先生と作山先生にこの点お聞きしたいと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、やはり農業についても、国内の安定的な食料の供給、食料自給率の維持また向上、もちろん重要でございますが、やはりこのTPPをチャンスにしていくということも非常に重要だと思います。そうしたことも含めて、このTPPが発効していくということが日本の農業にとってどういう意義があるのか、どういう意味を持つのかというところについて荒幡参考人と作山参考人にお聞きをしたいと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) チャンスということで輸出に期待する声は農業分野でも部門によっては大変強いわけでございますが、一方で、全く逆に非常に不安で、どんどん輸入品が入ってくるんじゃないかということで危惧をしているところもあるわけでございまして、むしろ大勢としては後者の方が多いわけでございます。その認識がやはり私は重要だなと思っております。余り、チャンスだ、輸出だという、それもいいんですけれども、やはり現場の声は逆方向でございまして、非常に不安、一体どうなるんだろうということが主たる流れだと思います。  そこを説得する際に、説得するといいますか、理解を得ていく際に、余り、輸出だ、チャンスだということだけではなくて、やはりしっかりと地に足が付いたような政策をやっていくんだということを説明していくことが農業生産の現場にとっては一番重要じゃないかなと思っておりまして、是非その方向で進めていただければと思っております。  以上でございます。    〔委員長退席、理事福岡資麿君着席〕

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 御質問いただいた件ですけれども、国内への影響の話とそれから海外にどう出していくのかという二つの話があると思います。  それで、TPPが発効して国内への影響についてですけれども、私は先ほどの配付資料で申し上げましたけれども、影響はそんなに私自身は大きくないと思っているんですが、それが農家の方にかなり過大に受け取られている面があるんじゃないかというのが私の考え方です。  三つの試算を示しましたけれども、一番最新の試算というのは、TPPでは完全撤廃しなかった品目がかなりあるわけですから、それを反映されていますので実態はそれに近いんじゃないかと私自身も思っていますけれども、農家の方はそう思っていないというところなので、そこが問題だという御指摘をしたわけです。  輸出の方につきましても、私自身は輸出は大変結構なことだと思っていますし、この機会に是非伸ばしていくべきだというふうに思っておりますけれども、輸出についても過大評価されている面が多分にあると思うんですね。  たまたま手元に資料があるので申し上げますと、日本の農林水産物・食品、二〇一五年の輸出先、上から順番に挙げますと、香港、アメリカ、台湾、中国、韓国ですね。このうちTPP参加国はアメリカだけなんですよ。アメリカの農産物の関税率は五%です。一番の香港はゼロなんですね。ですから、香港は自由貿易をやろうがやるまいがもう最初からゼロだということですね。片や、その三番目の台湾は関税率一七%、中国一五%、韓国五三%ですので、これ東アジアと自由貿易をやった方がはるかにメリットがあるわけですね、農林水産物の輸出に関して言えば。  ですので、私は、ただ、TPPで輸出に取り組むというのは、それに取り組むことによってTPP参加国以外にも体制ができるということですから、それはそれで非常に結構なことなわけですね。ですから、TPPで輸出が拡大するというのは私は余りその実態を反映していないと思っていて、むしろTPPを契機にほかのところ、アジアを中心に輸出が拡大できるような体制整備をする。例えば、検疫を下げてもらう協議をする、残留農薬基準について早く変えてもらうとか、そういうことに地道に取り組んでいくことが重要だというふうに考えています。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 農家の、また生産者の皆さんの根強い不安というのは私もいろいろな方面からお聞きをしております。その点についてきちんと受け止めていかなければならないというふうにも思っております。  ただ、今の作山参考人の御説明の中でいろいろ御示唆いただきましたけれども、国内の農業に対する影響について参考人御自身はそう大きくはないのではないかと思っているというふうにもお話がございました。そういうふうに感じられる、思っていらっしゃる理由についてもう少し御説明いただいてもよろしいでしょうか。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件でしたけれども、私の資料の二ページでは農林水産業全体への数字しか示されておりませんけれども、一番大きな理由は、TPPの合意ではお米の市場開放が非常に限定的にとどまっているというのが理由だと思います。  私の二ページ目の二〇一五年の試算では二千百億円しか減らないということになっているわけですけれども、お米はアメリカとオーストラリアから最終的に八万トンぐらいしか買わないわけですね。同じ量の国産米を買い上げるということになっていますので、影響はほとんどないだろうと思います。  片や、影響が大きいものとしては、政府の試算でもそうですけど、一番大きいのは牛肉、豚肉、乳製品の順番になっていますので、地域的な偏りが非常に大きいということですね。全国的にならすと米作農家が一番多いですから、平均的には影響は少ないと。ただ、例えば北海道とか九州ですと畜産農家の方が非常に多いので、そういうところには影響は大きいでしょうし、御心配なさっている生産者の方も非常に多いと思いますので、私の結論は、全体的に見ると少ないけれども地域的な影響はあるというのが私の考えです。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 ありがとうございます。  先ほど、荒幡参考人からお話しいただいたときに、農家を始め生産者の皆さんに理解を得ていく際には地に足の付いた政策を行っていくということをしっかり説明していくべきだと、このようにお話しいただきました。このTPPに関連した国内対策につきましては、政府としても様々取組を行い、また検討しているところでございますけれども、そうした地に足の付いた政策というものに荒幡参考人としてはどういうものが一番重要だと感じていらっしゃるか、また、政府の現在の国内対策に対する評価なども併せてお聞かせいただければと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) これ二つございまして、一つは、やはり経営そのものを安定させるという政策が一つと、あと、長期に、例えば研究開発で生産性の高い農業が実現するような機械化体系であるとかあるいは育種であるとか、この両面かと思います。  後の方はさておきまして、前者の方なんですけれども、こちらの方で、特に私、最近、私も結構現場を回ったりしておりますので感じておりますのは、専業的な経営が多くなってきています。そうしますと、秋の資金繰り、これが非常に大変なんですね。日本の政策は今まで、農家がほかの中小企業とかと同じように資金繰りに困るという感覚が余りなくて、したがって、補助金等の支払の時期が非常に、秋の一番肝腎なときに支払われなくて、例えば最近のもろもろの補償関係の支払も十二月末までというのが多いんですね。  ところが、農家の場合は、農産物ができてから十二月初め辺りにもういろんな支払をしなきゃならないわけですよ。例えば、借地をしていれば、その地主さんへの支払は十二月の半ばとか初めにあります。ところが、資金が下りるのが後になるということで、私も実はおととい千葉県の農家へ行きましたら、いや、実は資金繰り大変なんですよ、銀行から借りないと駄目なんですよということを言っておりまして、やはりこの対策をしっかりやらないとまずいかなと。  こういうのがまさに私が言った地に足が付いた政策でございまして、例えば、比較しますと、アメリカですね、アメリカは一九三三年以来担保融資制度というのがございます。これは、もう十月にできた時点ですぐにお金が出るということで、なぜこの制度がそれ以来、ルーズベルトのときにできて以来もう八十年以上続いてきたかといいますと、秋の資金繰りが楽なんですね。すぐお金を出してくれる。  こういった観点を是非今後重視していただきたいと思っておりまして、こういうイメージを持っているのが私が言います地に足が付いた政策でございます。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 ありがとうございました。  荒幡参考人の今日の冒頭の発言に関連して幾つかお聞きをしたいんですが、まず、世界の農産物貿易の長期的傾向ということで御説明をいただきました。農産物でも双方向の貿易が今後も進んでいくだろうと。まず、その双方向の貿易が進んできた理由として、食文化の交流、高品質、低品質等の製品差別化とその生産分担等と、こういうお話でございました。  やはり今後の長期的な日本の農業ということを考えていくときに、こういった今後どうなっていくのかというところに私も関心があるものですからちょっと教えていただきたいんですが、この高品質、低品質等の製品差別化とその生産分担、特にこの生産分担というのが今後世界の中でどのようになっていくのか、またその中で日本はどういう立ち位置といいますか役割を果たしていくことが期待されるのか、また日本としてどのように戦略的に取り組んでいったらいいのかと、この点について御示唆をいただければと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 高品質のものと低品質のものを、例えば先ほどの説明では、アメリカが牛肉を日本に輸出を迫ってくるんですが、同時に実は大量の輸入国である、アメリカは牛肉の大量輸入国であるというお話をいたしましたが、アメリカも恐らく初めは特に何でも国産ということで作っていたと思うんですけれども、日本といういい市場があるので、そこにステーキ用の牛肉を、アメリカの作る中では比較的高品位のものを輸出していこうじゃないか、そっちの方がもうかるということでシフトしてくるわけでございますね。  一方で、コンビーフ用というのは、いわゆるグラスフェッドといいまして、草を食べて育てた牛肉でございますので、余りステーキにするとおいしくないけれどもコンビーフなら十分だということで、その役割が分担されてきたということがございまして、例えばほかの例を挙げますと、スペイン辺りは非常にオレンジの生産が盛んな国でございますけれども、果汁はブラジルから輸入する、青果を、生のものをほかのヨーロッパ諸国に輸出していくというような形でオレンジ部門が発展しているわけでございます。こんな感じで、恐らく世界の貿易はその方向で進んでいると。    〔理事福岡資麿君退席、委員長着席〕  日本もまた同じように、牛肉でも、攻めの農業といいますのは、いわゆる霜降りの上位の等級の牛肉を輸出していくと。現にWAGYUというブランドが世界的にも名前が通っているということでございまして、場合によっては、オーストラリア辺りが本当の和牛ではないオーストラリア産の和牛を一部の市場には出しているというようなことで、非常に、何といいますか、高級、中級、低級、低品位といいますか、どんどん分かれてきているのが現状でございますので、そこを踏まえつつ日本がいかに戦略的にやっていくかということでございまして、それも、高品位のものを作ればいいというだけではなくて、中ぐらいのが入ってくるのをこれはいかにコストダウンして防御する。非常に階層性が出てきているということを十分認識して、戦略的にやっていく必要があるなと思っております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 そのお話の後に、日本の農産物の競争力を強化をしていくことが重要だ、その中で、特にやはり海外市場では価格に反応しているわけであるから、コストダウンということが重要だと、このようにおっしゃっておりました。  私も、勉強になるとともに、しかしながら、そのコストダウンというところで、日本がほかの国々、例えばアメリカですとか、そういった大きな国と競争していくというのはかなりハードだなという印象も正直なところ受けたんですが、このコストダウンというところで日本が戦っていくにはどのようにしていったらいいのかとお考えでしょうか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) おっしゃるとおりで、完全にコストで例えばアメリカを下回る、これはもうほとんど不可能に近いわけでございます。  ところが、アメリカからこちらに来ますと、運賃、諸掛かりとかありますので必ず何らかの価格はアップします。しかも、国産にはそれだけで安心というような一つのプレミアムがあるということで、何といいますか、コストで勝たなきゃ無理なんだというふうに諦めないで、差を縮めれば何とか拮抗できるんだと、こういうことでやっていけば、現にそれ、できている部分もあると思うんですね。  ですから、私が言いますコストダウンで競争力というのは、決して相手にコストそのもので勝つんじゃなくて、いい線に行くところまで引き下げていくということでございまして、それをまだやる余地は結構あると。先ほど言いましたが、例えば稲作であれば直まきにする、あるいは作期を分散させるとか単収を上げる、いろんな方法まだございますので、是非やっていただきたいなと思っております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 残り時間が少ないので、最後に一問だけ作山参考人にお聞きしたいんですが、消費者や国民の理解というのが重要だというお話、先ほどされました。私もそう思っておりまして、やはり日本の農業の多面的機能の重要性ですとか食料安全保障というものを実現をしていくためには、国産のいいものを選んで買っていただくということも重要になりますし、やはり国民の皆様に国産品、農業への理解を深めていただくと、これは非常に重要なことだと思っておりますけれども、この点について最後にお伺いしたいと思います。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 簡潔に申し上げますと、今、日本では農林漁業者の方も非常に少なくなっていますので、やはり農林漁業者の方、農業団体の方から消費者への理解を求めるという活動をもっとやる必要があると思うんですね。  私は、たまたまですけど、農水省に勤務中、ヨーロッパに三回駐在したことがありまして、合計八年ですけれども、ヨーロッパの例を見ますと、特にスイスとかフランスとか、消費者の方が、国産の方が三倍高いけど国産の卵を買いますよとか、スイスではそういう運動があるんですけれども、なぜそれができるかというと、農家が守っている景観が非常にいいわけですね。それによって世界中から観光客が来るわけですね。それによって所得が得られるということがあるので、農業の価値を国民の皆さんが共有されている、なので高い価格を払ってもいいと。そういう循環を日本でもつくっていくことが大事じゃないかなというふうに考えております。

佐々木さやか公明党

○佐々木さやか君 終わります。

紙智子日本共産党

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今日は、三人の参考人の方、本当にありがとうございます。  それで、私からまず最初に、磯田先生にお聞きをしたいと思います。  TPPというのは生きた協定というふうに言われていて、それで、なぜ生きた協定と言うのかということなんかもめぐって、実は、私も先日、TPP協定の中ではTPP委員会というのがつくられると、それで、いろんな作業部会とかたくさんつくられて進めていくわけだけれども、国会との関わりについても、必ずしも、どういう場面で国会がそこに関与できるかということもよく分からない部分もあるということもあり、このバスは乗ってしまったらどこに連れていかれるか分からないじゃないかというふうに言いましたら、総理が、私が運転席に座っているから大丈夫だという話もされたんですが。  非常に重大な中身が含まれていると思っていて、先ほど磯田先生のお話の中で、たくさんのことが話をされたんですけれども、農業の市場開放でいっても、協定、関税率表だけで済まない危険性の問題もありましたし、それから、その次のところで、食の安全のところでも、規格、基準、表示の問題など、追加的な協議のメカニズムということがあると。それで、先ほどもちょっと議論になりましたけれども、SPS、今までWTOにもあったんだけれども、予防原則が排除しているということも全く今までと違うということなんですけれども、一つには、この予防原則が外されるということは、具体的にはどういうふうな危険性があるかということをお聞きしたいのと、なぜこれ排除したんだというふうに思われるかということをまずお聞きしたいと思います。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 釈迦に説法になろうかとは思いますが、予防原則という考え方あるいは原理は、科学的にほぼ完全に危険性が証明されていないけれども相当程度にリスクが潜んでいる可能性が否定できないと、こういう言わばグレーゾーンと言えるような部分について、更に科学的な分析等が進んで、後にやはり相当程度の高いリスクがあるということが分かった段階まで放置しておくと取り返しが付かないと。したがって、あらかじめ予防的にそれは止めておいて、後でそれが白だということになれば、そこで安心して皆さんが消費すればいいわけですし、いや、やっぱり黒だったということであれば、予防していてよかったなと、こういう考え方であります。  他方、アメリカなどに代表されるのは、冒頭に申し上げましたように、基本的にはその時点で科学的に十二分に徹底的に危険性があるということが証明されない限りは規制すべきでないという、こういう考え方がありまして、これが現在のWTOの協定を結ぶ際には、アメリカ側と当時のEC側とでぶつかり合って、その一種の妥協として、WTOのSPS協定ではそれが条件付ながら入れられたと、こういうふうに認識しております。  今回それが外されたということの意味するところは、先ほど成長ホルモン入り牛肉の例を出しましたが、あの例が一番分かりやすいと思っているわけですけれども、少なくともEU側の食品の安全性のリスクを分析評価する委員会では、これは相当に禁止すべき高さのリスクがあると、こういう結論を得ているわけですのでそれを禁止していると。その足掛かりになっているのが、WTOのSPS協定では条件付ながらそれを認めていると。その結果、両者の紛争の最終的な決着は、EU側がホルモンフリーの牛肉については無関税でアメリカ、オーストラリアから受け入れる、そういう枠を作ってそれをどんどん増やしていくと、こういうところで折り合いを付けているわけですね。  したがって、それが、その文言が一切ないという今回のTPPについては、そういうグレーゾーンを予防的に止めておくという手段をこれから取ろうとしても、それは禁じられているということを意味しているというふうに考えております。

紙智子日本共産党

○紙智子君 もう一つお聞きしたいのは、四番目のところでお話をされたアメリカの通商促進権限のTPA法、これアメリカで可決をされているわけですけれども、この問題をめぐって、やっぱり安倍総理は再交渉を、新しい例えば大統領から再交渉を迫られてもそれは拒否するんだというふうに言われているんですけれども、このアメリカの法律に基づきますとそういうことが通用するのかどうかというのを考えざるを得ないということなんですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 確かにこの特別委員会でも安倍総理大臣が再交渉には応じないということを繰り返し、しかも極めて強い口調でおっしゃられて、私も是非そうあってほしいというふうに願っておるところでございます。確かに、アメリカ側も協定の本文や譲許表そのものを書き換えるという意味での言わばオフィシャルな再交渉というのは、幾ら何でもそう簡単にはできないというふうに考えております。  私がここでより具体性があるなというふうに心配しておりますのは、例を挙げますならば、例えばSBSの国別枠ということで、アメリカについては最終的に七万トンですか、その追加枠をやったと。これは確かに、契約が成り立たなければ入ってこないという意味では義務でないのは確かですが、アメリカは当然これを最大限達成するということを追求しているわけで、そのために、アメリカ、豪州それぞれとの間で国際約束を構成する文書を交わして、国際価格を反映した政府買入れ予定価格を設定しろとか、円滑な運用というのはつまり全量落札消化という、アメリカ側からすれば当然そういう解釈になりますけれども、そのために、最低マークアップ水準を妥当な考慮を払えとか、三か年のうち二か年消化できなかったらマークアップを一五%下げろと、こういうことがあっているわけでございまして、例えば、国際価格を反映した政府買入れ予定価格を設定していますか、あるいは円滑な運用のために最低マークアップ水準に妥当な考慮をしていますか、そのためのはっきりしたアメリカに目に見える手段を取っていますかと、こういうことを例えばこの大統領の確認過程で迫られてきたときにどうするのかと。  これは、明文上の再交渉要求ではないかもしれませんが、内容的には義務でないはずのものが限りなく義務に近づいていくということになりかねないと、そういうような例が例えばですけれども挙げられるのかというふうに考えております。

紙智子日本共産党

○紙智子君 もう一つお聞きしたいんですけれども、ISDSの問題についてはこの委員会でも議論になっているところですけれども、この仲裁廷の問題点ですね、先ほど先生が紹介になられたんですが、濫訴防止ということを取っているので、濫訴防止の対策を入れているのでこれについては心配ないということも言われていますし、日本がアメリカから訴えられることはないのだということも、やり取りの答弁の中で政府の側からは出されているんですけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 私も、訴えられることがないという希望的観測についてはそのとおりで、同意でございます。ただ、そのとおりになるというふうな保証は何らないというふうに考えております。  若干補足しますと、その濫訴の防止ということもあるんですけれども、それ以前に、例えば内国民待遇とか待遇に関する最低基準、ここには公正衡平待遇という概念が含まれているんですが、例えば、こういうことの義務に違反した措置を日本国なら日本国政府が外国投資家に対してとった場合に、ISDSに訴訟を起こされ敗訴される可能性が極めて高まるわけですが、じゃ、その内国民待遇、具体的には、同様の状況において自国投資家よりも不利でない待遇を外国投資家に与えなければいけないという、例えばこの同様の状況とは何かということは協定文を幾ら読んでも分からない、あるいは待遇に関する最低基準、これも分からないし、とりわけ公正衡平待遇という概念は協定文を幾ら読んでも分からない。  そうすると、じゃ、それは誰がどういう解釈を下すのかというのは、結局仲裁廷に事実上、まあ俗な言葉を使わせていただければ丸投げされていると。しかも、判例主義がないということもございますので、そういう意味でいうと、ここにも、その協定だけでは全貌がつかめない、一種の追加的に市場開放、非関税措置の開放を次々と迫られていくメカニズムが内包されていると、こういうふうに考えているわけでございます。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ありがとうございました。  では、次に作山先生にお聞きしたいと思います。先ほど、国会決議との関係で、これが国会決議を守ったとは言えないんじゃないかというお話もあり、実は、私もそこのところは何度もこの質問の中でもやり取りをしてきていて、やはり除外又は再協議というふうに書かれて、それができないときには撤退も辞さないというのが国会決議なわけですけれども、先生は最初から除外ということが含まれていないという話をされていたと思うんですね。  それで、初めからやはり全てのものをテーブルにのせなければいけないということがあって、それをもし拒否して除外ということを言ったとしたら交渉にはそもそも入れなかったという話をされたことがあるんですけれども、ということは、そのことが分かりながら、なぜその国会決議で入れたのかということ、これについてはどのようにお考えでしょうか。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問ですけれども、まず、先ほど申し上げましたように、私は農水省兼内閣官房在職中にTPP参加国との協議に参加したわけですけれども、その結果は公表されています。特に、二〇一二年一月から二月にかけて当時の九か国を全部回りまして、私はそのうち六か国行きましたけれども、除外は認められないというふうに明確に言っている国が幾つもありました。それは、民主党政権下ですけれども、公表された資料にちゃんと書いてあります。ということですね。それはかなり非常に強い意見だったと思います。大勢がそうだというような発言もあったと思います。  次に、国会決議の方ですけれども、さすがにそこ、国会で決議されたものなので、私ごときがそれを解釈するのは大変僣越な話で、正直よく承知しているわけではないんですけれども、私が思いますに、TPPの二〇一三年四月の国会決議というのは、基本的にはやっぱり二〇〇六年十二月の日本とオーストラリアのEPAの国会決議をベースに作られたものですね。途中でいろいろ議論があって豚肉が加わったりとかしているわけですけれども、やはり私の解釈ですけれども、TPPの交渉参加時には大変大きな懸念もあったわけですので、恐らく、特に農業生産者を中心でしょうけれども、除外が認められるのであれば、今までの日本のEPAと同じようなことで交渉できるのであればそれはやむを得ないかという意見が恐らくあり、そういう決議ができたのではないかというふうに思っています。  ただ、決議ができたのは二〇一三年四月で、実際に日本が参加したのは二〇一三年の七月ですから、そのときの条件がどうだったかというのは、私は残念ながら二〇一三年三月三十一日に農水省を退職しておりますので、そこについては残念ながらコメントできる材料はございません。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ちょっと悪考えをすると、分かっていたのに除外又は再協議ということを決議して、決議を守るという話がずっと続いていたわけで、だからそれが、交渉の結果は例外を確保したと、したがって皆さんとの約束を守れたというのは、これはもう私ははっきり国民に対して違うと、裏切りとも言えるというふうに言わざるを得ないんですけれども、そういう国会決議をめぐる問題をめぐっては、やっぱり私は、これは最終的には国会で結論をということでもあると思うんですけれども、しっかりとそこを踏まえてやらなきゃいけないというように思っているところです。  もう一つは、荒幡参考人にお聞きいたします。  それで、私ずっとあちこち回って歩きます。それで、北海道出身なんですけれども、やはり現地を回って歩きますと、TPPは非常に恐ろしいという話が出され、特に北海道の場合は規模拡大ということがずっと強調され、どんどんやっぱり集約されてといいますか、小さな規模の農家がなくなっていって大規模化してくる、専業化していると。しかしながら、TPPになった場合には、これ外国との競争になっていくとなると、価格を下げていくという競争にもなり、そうすると、一番大きなダメージを受けるのは、実は小規模とか中規模じゃなくて、大規模なところが大ダメージを受けるんだという話をよく聞かされるんです。  私は、やっぱりこれまで日本が歩んできた道としていえば、多様な農業とか多面的な機能とか、そういうことで随分重視されてきたと思うんですけれども、TPPというのはそれとは一致しないんじゃないのかと、相反するんじゃないかと思うんですけれども、荒幡参考人のお考えを聞きたいと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 今のお話ですね、私も実は、このTPPの影響がどういうふうに出るかという話が出たときに、ある人は中山間だと言うんですけれども、それ以上に、十勝の平野とか、やはりそういうところが一番打撃を受けるんじゃないかとすぐに思いました。そのとおりの懸念が現在あるということも承知しております。そうした中で、私の印象としては、最低限の、何といいますか、当面の大打撃を回避して時間をある程度稼いで、その間にしかるべき対策を打っていくという期間は持てたかなと思っておるわけなんですが。  そこで、今のお尋ね、多様な農業ということですけれども、これは、日本の中でどういう農業というよりも農村政策を選択していくかという問題ではないかと思いますので、TPPに入るからそれが成立しないという話ではないんじゃないかなと思っております。  いずれにしましても、議員のお話にありました、大規模が打撃を受ける、専業が打撃を受ける、これはもうもっともだと思いますので、やはり日本の農政自体を、少しそこにもう焦点を当てていくということは是非やってほしいなと思っております。  以上でございます。

紙智子日本共産党

○紙智子君 残り三分なので一人一分になりますけれども、今、アメリカの大統領選挙の結果、やっぱりTPP反対の国民的な世論が背景にあるということや、アメリカだけではなくてEUとアメリカの協定でもそうですし、そういう多国籍企業の利益のために農業が壊されるとか、食の安全、環境、雇用が脅かされるという懸念が広がってきていると。ISDSに対する批判もあるということで、そういう世界の動き、流れについてどうお考えかということを一言ずつ最後にお聞きして、終わりたいと思います。

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 残りが限られておりますので、簡潔にお願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 確かにそういう懸念はございますが、私はむしろ、だからこそ自由貿易の方向で、日本経済の繁栄を確保していくためにTPPなりなんなりの自由貿易の方向に持っていくべきであると思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 簡潔に申し上げますと、ヨーロッパについてはそういう貿易に懸念を持つという声は非常に強いと思いますね。たまたま私、去年五月にドイツで講演を頼まれたんですけれども、TPPについて日本の状況の話をしたら、ドイツの人は、ドイツも日本と全く同じだというふうに言っていました。ただし、アメリカについて言うと、トランプさんの考えは正直よく分かりませんけれども、ああいうTPPの多国間の協定はお嫌いかもしれませんけれども、二国間の協定で国益を最大限アメリカが良ければいいという形で打ち出してくる可能性は排除できないと思いますので、日米FTAが求められるとか、そういう可能性はあると思います。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) まず、自由貿易ということなんですが、それを輸出入ということで考えるならば、いろいろ議論のある政府の出された試算でも、TPPのGDPに対する寄与率ということでは、輸出〇・六%に対して輸入マイナス〇・六一%ですから、物の貿易でGDPが上がるという試算は政府ですらされていないわけですね。それが一点。  それから、今起きている、世界中で、イギリスのEU離脱あり、トランプ候補の勝利あり、あるいは韓国での今の大統領に対する猛烈な辞任要求あり、それらは、その根底には、現れ方にはいろいろ違いはあっても、行き過ぎた自由貿易至上主義あるいは新自由主義、行き過ぎたグローバリゼーションが累積させた矛盾に対する、それが、格差や貧困化であったり、農業の衰退であったり、地域社会経済の弱まりであったり、こういうものに対する危惧、懸念、こういうものが噴出してきていると。  日本にはその兆候もあるわけですけれども、しかし日本政府は、WTOのドーハ・ラウンドの開始に当たって、行き過ぎた貿易至上主義の是正、多様な農業の共存という、そういう意味では先駆的な理念を高く掲げておられたわけですから、その先駆的な高い理念を今後も是非堅持していただきたいというふうに思っております。

紙智子日本共産党

○紙智子君 ありがとうございました。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 日本維新の会の片山大介でございます。  今日は、三人の先生方から貴重な御意見をいただきました。また、私は事前に先生方の文献も読ませていただきました。大変参考になりました。  それで、日本維新の会の考え方をちょっとお伝えしておきますと、維新の会はTPPには賛成の立場です。その上で、政府がTPP対策大綱として出してきた農業対策については、これは反対なんです。というのは、まだまだ物足りないからということなんです。  今日は、その点を踏まえて、あと先生方からお話があった点について何点か気になる点もありましたので、お伺いさせていただきたいと思います。それで、それぞれの質問について三人の先生方からお答えをいただいて、それでその違いとかも勉強させていただければというふうに思っております。  まず、荒幡先生がおっしゃった農産物の双方向の貿易、私もこれすごく必要で大切だと思っています。政府は今、二〇一九年に輸出目標一兆円を掲げています。たしか去年が七千四百億余りだったと思うのでこれは恐らく実現はできると思うんですが、私はそれでもまだまだ足りないんではないかと思っています。  日本というのは、輸入が極端に多くて、その分輸出が少ない。純輸入額というんでしょうか、これが世界各国から見ても突出的に高い、中国に次いでぐらいだったような気がするんですけれども。ですけれども、これ五十年前を見てみると、日本は欧米各国とほぼ同じような輸出額を誇っていた。これが、この五十年の間にイギリスは二十倍ぐらい、ドイツは七十倍ぐらいになったのに日本は十倍ぐらいしか増えなくて、その結果、日本は輸出に対して若干後ろ向きになっていたということなんですけど、これはなぜだというふうに思うのかというのと、これをなくしていくためにどのような具体的な政策を取っていけばいいと思っているのか、まず、それぞれ先生方からお伺いしたいと思います。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 五十年前の数字、私ちょっと把握していなかったんですが、確かに思い起こすと結構やっていたかなという気はいたします。更に言うならば、例えば茶とか、これはもう戦前は花形輸出品目だった時代もあったわけでございますので。  それで、じゃ、今後どうしたらいいかということですけれども、何といいますか、やはり輸出自体が視野に入っていなかったということで衰退した面も大きいかと思いますので、今回こういう輸出にもという話が、結構目が向きつつありますので、かなり意識が変わってくるんじゃないかなという期待もできます。  ただ、冒頭の説明でも私申し上げましたが、量的には、私はそんなに、しかも性急に、例えばの話、米であれば、今生産調整をやっているんですが、これをやめて、作りたいだけ作って、百万トン、二百万トン輸出しましょうというような御意見をお持ちの方もあるんですが、これはちょっと無理かなと。少なくとも、五年、十年のうちにそんな数字にはならないなという認識はしております。  量は少なくてもとにかくやっていく、それで少しでもいいから伸ばしていく、そこに元気のもとといいますか、が出ると。そこが輸出戦略の一番キーポイントではないかなと思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 片山先生の御質問の趣旨は、日本だけなぜ輸出の伸びが少なかったのかということだと思いますけれども、二点あると思います。  一点目は、やっぱり円高が進んだことということですね。私、最近、ちょっと試算をしたことがありまして、過去十年ぐらいのデータを使うと、一円円安が進むと、日本の農林水産物の輸出二十五億円ぐらい伸びるんですよ。そういう関係があります。ですから、先生は過去五十年とおっしゃいましたけど、長期的に見ると、三百六十円からいっときは百円を切るぐらいまでなっているわけですから、そこは非常に不利だというのが一つですね。  もう一つは、荒幡先生がおっしゃった輸出も輸入もするというのは、専門的な用語では産業間貿易というんですけれども、ヨーロッパがこれが伸びている理由は、同じような嗜好がある所得の高い国が隣にあるからですね。ヨーロッパの場合ですと、ドイツの隣にはフランスもありますね、近くにはイタリアもあり、海を渡ればイギリスもあり。  所得が上がると、これは私の専門でもあるんですけれども、所得が高くなると違ったものを少しずつ消費したいという傾向が出てくるわけですね。すると、ヨーロッパの中では、例えばチーズなんかは非常に豊富なわけですけれども、ある日はフランスのチーズ、次はドイツのチーズ、そのまた次はスイスのチーズというような消費の仕方をするわけですけれども、残念ながら日本にはそういう国は今まで周りになかったわけですね。日本だけが超先進国、ほかはみんな開発途上国ということですので。最近輸出が増えている一番の理由というのは、日本の周りにも日本と同じような嗜好を持つ高い所得の人が出現したからと、シンガポールであるとか台湾であるとかということ。  二つの要因が一番大きいと思っています。  以上です。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) この莫大な農産物、食料純輸入額を少しでも是正するということでございました。これには、輸入を減らせるのかということと輸出をどこまで増やせるのかと、当然両面あるかと思います。  私の方から言うとちょっと意外かも分かりませんが、輸入をこれから減らしていく、量なり金額を減らしていくというのは、これは、今までの経緯はもう作山参考人言われたことが大きく影響していると思いますが、今後この輸入を減らすということは、正直申し上げて非常に困難であるというふうに言わざるを得ません。よほど国境措置をより強化するとか、あるいは国内対策を強化するということでないと、まあそこまでやっても、私の見通しとしては、これ以上増やさない、逆に言うとこれ以上国内生産を減らさないというのが精いっぱいの努力目標になってくるのが現実的かなというふうに考えております。  他方、輸出を増やすということは私も一定可能と考えております。先ほど申し上げましたように、世界の消費者も二極化が進んでいて、富裕層が作山参考人言われたようにこの近隣でも増えております。その一例として、数年前に米の商業的輸出が数百トンレベルから一千二、三百トンにぽんとジャンプアップしたときがありました。そのとき、具体的な調査対象の名前は伏せますが、ある大手の輸出を扱っている業者さんと東北のある大きな米の産地の農協さんが組んでそれを牽引されたわけですが。  結論として申し上げたいのは、やっぱり富裕層の香港だとかシンガポールだとか、あるいはヨーロッパのあれこれの都市だとかでも競争になって、荒幡参考人が言われたように、例えばカリフォルニア産米のジャポニカ系の高級米とそこそこ価格競争ができて初めてそれなりに増えていくと。それから逆算した生産者の手取り価格は玄米六十キログラム当たり八千五百円なんですね。この現実を見たときにどう考えるかと。この八千五百円のコストで成り立つ稲作経営が日本でつくれるのかどうかと。かといって輸出補助金をやるわけにはまいりませんよね。その辺が、輸出がどこまで増やせるのかということを見定めるときの、米の事例ですけれども、一つのポイントになってくるというふうに考えております。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 ありがとうございます。私、次に聞きたかったのがまさにその価格競争力のことについて聞きたかったんですね。  それで、価格競争力を上げてコストダウンすると。要はそれで価格を下げて、それでたくさん単収を伸ばして売っていくということなんですが、ただ、これは農家の皆さんにとっては、やはり米の価格が下がるというのはすごく抵抗感が絶対にあるはずなんです。今の農家の皆さんの普通の平均所得というのは大体四百万前後ぐらいだと思いますし、今企業がリースの土地所有をしながら、企業の参入は徐々に増えてきていますけれども、そこで働いている就労者の方の賃金というのも物すごく低いわけですね。  だから、そうした中でコストを下げて、それで価格競争に立ち向かっていけばいいと言うんですが、価格を下げることには抵抗感すごくあると思います。これに対してはどのようにお考えなのか、お聞かせいただけますか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) おっしゃるとおり、価格は農家にとってはやはり高ければ高いほどいいわけです。ところが一方で、高いとマーケット自体、特に海外でも縮小してしまうし、また、逆に外から入ってくるものに対する抵抗力も弱くなるということで、私の考えは、逆方向にどんどん上げていくというのはやはり得策ではないんじゃないかなと思っております。一方で、暴落も良くない。これはやはり特に専業的な経営ほどこの影響を受けますので。  内外の状況を見つつ、コストダウンと併せて、でき得れば、先ほど八千五百円という話がありましたけれども、あの辺を目指して少しずつ下げていく、それがコストダウンを伴ってできれば、何といいますか、可能性が広がっていく戦略かなと思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 御質問の件ですけれども、まず価格競争力の件ですけれども、米に例えていいますと、私は、米自身は日本が国際的に競争力を持つのは非常に難しいと思っているんですね。  実際日本が、輸出の例を出しますと、輸出が多い品目というのは牛肉とかリンゴとか緑茶とか、要するに土地が狭くてもできるものなんですよ。ですから、日本が、委員の方々から御指摘ありますけれども、土地が狭いけれども高品質の技術があるとか労働力があるというのは日本の強みなので、アメリカやオーストラリアと同じことをやる必要は全くなくて、元々日本の農家が強いことをやればいいというのが私の考えです。  ただ、例えば、米は土地利用型農業といいますけれども、そういうものの価格競争力をどうするんだという議論もありますので、私の考えは、先ほどちょっと出ましたけれども、大規模農家とか生産組織対象にして、思い切って直接所得補償を導入するというのがいいと思います。  ただ、問題は、政府が補償してくれるというと、そのコストダウンのインセンティブが下がるという問題があるわけですね。ですから、例えば、最初はそれをかなり手厚い単価で直接所得補償を導入して、徐々に単価を下げていくという形にすれば、生産者の方にも規模を拡大をし、生産コストを下げ、単価の低下に対応して生産性を上げるというインセンティブも与えられるということは可能じゃないかと思います。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 輸出との関連でということもございましたので、ちょっと米について少しだけ追加いたしますと、先ほど八千五百円ということがありました。日本再興戦略で御案内のように、二〇二三年度、今から八年後に九千六百円を目指すと言っているわけですが、これ自体も水稲作付面積十五ヘクタール以上が一括でしか捉えられないんですが、一万一千四、五百円ぐらいで、この十年間、残念ながらコストが下がっていないと。これを八年後に九千六百円まで下げるというのは極めて野心的な目標であると。しかし、かつ、その九千六百円を達成しても八千五百円に届かないということが一点。  それから、この九千六百円にしろ八千五百円にしろ、農水省の生産費調査をやる際に、経営者やその家族の労働を幾らで評価しているかというときに、実はそれぞれの都道府県の小企業の賃金でしか評価していないわけですね。具体的には、五人から二十九人の事業所の賃金で評価した上でコストを算出しているんですね。より具体的に言うと、大体全国平均で時給千四百円ぐらいなんですよ。そうしますと、千四百円で、仮に九千六百円が達成できた、八千五百円のコストが達成できたと。じゃ、その値段で売ったら大規模経営でも成立できるかというと、時給千四百円じゃ二千時間働いても二百八十万円ですので非常に難しいということが、そういう点でかなり厳しいものがあると。  それからもう一点、福岡では御案内のように、「あまおう」などが香港等にかなり元気よく輸出しているということで話題になっておりますが、ここが更に規模拡大を進めて、雇用型の経営に転換しようとすると、これは極めて安い賃金で働く労働力が必要だけれども、それを調達するために現実は外国人技能実習生に最低賃金で働いてもらっていると、こういう現実があるわけでございますね。  そういう意味では、賃金を、それなりの所得、賃金に見合うものを確保しつつコストを下げるというのはなかなか難しい、土地節約型の農業であってもなかなか難しいという現実があろうかというふうに認識しております。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 ありがとうございます。  そうした中で、先ほど作山先生からもおっしゃったんですが、その直接支払、やっぱり保護政策が大切になってくると思います。今の日本の保護政策というのは、先ほど言ったように、高関税、消費者負担型と、それともう一つ、直接支払交付金ですか、だから一部直接支払、何か二つ、両方なっているという感じで私は考えているんですけれども、これをやはり直接支払の方にもう今後は比重を変えていくべきなのかどうか。世界は確かにそちらの方が主流になってきているのはあるんですけれども、日本でそれをやると様々な影響が出るのだと思いますし、簡単にそのソフトランディングができないんじゃないかなと思っているんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) おっしゃるとおりでございまして、バランスが大事でございます、結論としては。  例えば、アメリカでも、私も一昨年ですか、ちょっとアメリカの議会関係の方とお話ししたことがあるんですが、やはり余りに過度に財政負担に行き過ぎた政策はちょっと戻そうじゃないかみたいな意見も出たりしているようでございまして、この辺のバランスが重要でございます。特に、日本の場合は財政赤字ということもありますので、やはりある程度、幸いにして交渉の結果、関税等もすぐに撤廃というわけではない品目もかなりありますので、その両者をうまくバランスしつつ、方向としては余り価格政策に依存しない方向を目指していくんですけれども、漸進的に進めていくのが肝要かなと思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですけれども、おっしゃるとおり、生産者を保護する手段としては、関税で高い価格にして守りますということと、直接所得を補填しますというような二つのやり方があるわけですけれども、問題は、その財源の見え方が違うというところなんですよね。直接所得補償ですと、一般財源からが原資になりますので、何千億円、何兆円使っているのか一目で分かります。それに対して、関税ですと、見えないうちに輸入品より高い価格を消費者が払っているわけですから、そのコストは見えないわけですね。  ですから、理論的には、原理的には関税をやめたら直接所得補償すればいいじゃないというのは、言うのは簡単なんですけれども、やっぱり見えない負担から見える負担に転換するので、新たな財源を確保しなければいけないですね。そこが非常に難しいところだと思います。ですから、そこはやっぱり関税よりも直接補助金の方がよいのだというメリットを国民、消費者によく説明していくということだと思うんですね。  具体的に言うと、学者の間ではいろんな研究がありまして、特に高い関税で守ると。日本の場合ですと、米とか基礎的な食料を高い関税で守っているわけですね。そういうことになると、所得の低い方にどうしてもしわ寄せが行くわけですね。所得の低い方は、いわゆるエンゲル係数といいますけれども、食費の支出割合が高いので、高い関税で価格を上げると所得の低い方にしわ寄せが行くので、そこは消費税に換算しても数%のというような負担になっているわけですね。  ですから、そこは、関税をなくします、その分価格が下がります、消費者のメリットが出てくるわけですから、その分を別の形で税金としていただいて農家の所得補償に使うんですと。お金の取り方が変わっただけで、負担は減っていますよというところを分かりやすく説明していくということが重要なんだろうと思います。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 国境措置を短期的であれ中長期的であれなくしていく方向を取る、あるいは取らざるを得ないということを前提にすれば、価格支持政策は、国境措置がなくなっていくに従って、もう取りたくても取れなくなっていくと。結局、幾ら国内で価格支持やっても外国からどんどん安いものが入ってくれば価格支持政策は機能しないわけでございますので、それでも国内農業を支えようとするためには、今お二方が言われたように、直接支払型あるいは財政負担型の政策にシフトしていくしかないというふうに考えております。  その場合に、私もその公平感ということも一つのポイントになってくると思います。確かに、価格を高く維持するというのは消費者負担型ですので、比較的所得の低い方に負担率が多くなると。ところが、財政負担型にすると、今度は納税という形、納税者という目線での負担になりますので、そうなると、所得の格差に応じた所得税なりの累増のシステムがきちんと機能していれば納得を得やすいと思うんですけれども、それがだんだん、今の中長期的に見ている日本のように、所得税の累増の角度がどんどん下がってきている、こういう状況を前提にしていると、なかなか納税者負担型の財政負担による農業へのサポートというのは多くの国民から支持するのは難しい面もあろうかと思いますので、その辺も含めてトータルに検討していく必要があろうかというふうに思います。

片山大介日本維新の会

○片山大介君 どうもありがとうございました。

青木愛希望の会(自由・社民)

○青木愛君 希望の会(自由・社民)の青木と申します。  今日は、大変ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。多少質問が重なるかと思いますけれども、お願い申し上げたいと存じます。  TPPは自由貿易を拡大をして加盟国を豊かにするとしての評価もございますけれども、私は、やはりTPPによって恩恵を受けるのはグローバル企業であって、一般の人々にとっては健康被害の可能性の増大、あるいはその国の社会制度の崩壊によって受ける被害の方が大きいと考えております。今日は、関心のあるところでお伺いをさせていただきます。  まず、食の安全についてでございますが、食の安全について何点か、まず磯田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、安全基準についてでございますけれども、残留農薬、食品添加物、成長ホルモン、遺伝子組換えなどにつきまして日本とEUを比較しますと、EUは人体への影響を配慮して、使用基準、また輸入基準が大変厳しくなっています。それに対しまして、日本は国内での使用は禁止しているものの、輸入する食料、食品、また原材料についての基準は大変甘いといった状況がございます。  日本も輸入に関してEU並みの基準に厳しくすべきだというふうに考えますが、現在のEUのこの安全基準の状況を再度御説明をいただきたいとともに、日本はなぜ輸入に対しては基準が緩んでしまっているのか、また、今後日本はどうすべきなのか、また、TPPに加盟した場合、さらに食の安全についてどのようなことが予想されるのか、その点についてまず磯田先生に御意見を頂戴いたしたいと存じます。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 最初におわびしますけれども、EUの食品安全行政そのものについては、申し訳ないんですけれども、私自身がきちっと研究しているわけではないので、その領域についてお答えすることはできませんので、控えさせていただきます。  ただ、EUの基準そのものあるいは表示制度が、EUの方が、御指摘のとおり、成長ホルモンであったり添加剤であったり、あるいは遺伝子組換え食品であったりについて、基準そのものや表示の制度のものが厳しい、日本より厳しいものがあって、それはその差がなぜ出ているか、あるいは日本が歴史的に見てだんだん緩和する方向に向かってきているのはなぜかという御質問についてですが、一つは、先ほど言ったように、EUは独自の機関を持ち、そしてそれを基準にしてWTOのSPS協定にも依拠しながら独自の政策を貫徹しているということがあって、日本は、これは長年にわたってアメリカから、TPP以前の長年にわたって歴史的に通商代表部等の貿易障壁報告書等、あるいは日米構造協議等々のいわゆる経済交渉という中で様々なプレッシャーを受ける中で、必ずしもアメリカ的基準というわけではありませんけれども、いわゆる国際的な基準に、より高いものは国際基準に合わせるということを、アメリカのプレッシャーも受けつつ基本的には進めてきたということの結果であるというふうに認識しております。  TPPは、そういう方向を強めさえすれ、それをEU的な方向に進路変更するということを著しく困難にする協定だというふうに認識しているところは先ほど申し上げたとおりでございます。

青木愛希望の会(自由・社民)

○青木愛君 ありがとうございます。  今、表示義務のお話がございました。表示義務についてお伺いをさせていただきます。また磯田先生にお答えをお願いしたいと思います。  アメリカやカナダ、オーストラリアなど主要な牛肉の輸出国では、牛を短期間で飼育するために、日本では禁止をされている肥育ホルモン、また塩酸ラクトパミンというものを与えています。しかも、日本ではそうした牛肉を輸入をして販売また提供する際に、そうしたものを使っているという表示をする義務がありません。また、遺伝子組換え食品に関しましても、その加工の段階でDNAやたんぱく質がなくなってしまうものについても表示義務がありません。例えば、遺伝子組換えで作られた大豆やトウモロコシといったものを輸入をして日本でしょうゆや油など加工して販売をしたとしても、それを表示する義務がありません。意外とこうした状況を知らない消費者が多いのではないかと思います。  消費者が安全、安心の食品を選択できるように最低でも表示というものを義務化するべきではないかというふうに思いますけれども、日本の食品表示について、またTPPの影響につきまして御意見をお願い申し上げます。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) これから日本の消費者利益を守るために、表示の在り方について先生御指摘のことには私も全く同感でございます。  ただ、問題は、TPPが発効した場合にそういう条件がどこまで可能かということに、繰り返しになりますが、なってくるわけでございまして、私の冒頭陳述の中でもややはしょって触れたわけですけれども、強制規格、任意規格、適合性評価手続、こういったものの作成、ここに表示も含まれてくるわけですけれども、これに他国の者を参加させ、意見提出をさせ、かつそれらを考慮する義務というものも課されてくるわけですね。また、他国の強制規格や適合性評価結果といったものについて、例えばアメリカならアメリカ、カナダならカナダ、オーストラリアならオーストラリアでなされているものを、向こうでの基準をクリアしていればそれを相互に承認していくということも促進するということがうたわれているわけでございます。  そういうことがうたわれている協定が発効するとなると、現在以上に、先生御指摘のような表示義務を例えば成長ホルモンについて付けるとなると、じゃ、それは科学的根拠があるのかということが争われて、EUはできたけれども、アメリカやオーストラリア、カナダとの関係ではTPPのSPS規定に従わざるを得ませんので、それを突破してなおかつ表示義務をする、まして輸入禁止措置をとるということなどは極めて困難な協定であるというふうに言わざるを得ません。

青木愛希望の会(自由・社民)

○青木愛君 ありがとうございます。  先ほども質問に出ておりましたけれども、科学的根拠と予防原則について磯田先生にお伺いをしたいのと、今質問をさせていただきました食の安全基準あるいは表示義務、また今から質問する点について、もし御所見があれば荒幡先生また作山先生にも是非意見を述べていただけたら有り難いと存じます。  この科学的根拠と予防原則、安全性に関する総理や大臣の御答弁の中に科学的根拠という言葉が頻繁に使われております。科学的に害があることを実証できない限りそれまでは禁止しないという考え方、総理も大臣も取っておられます。これに対する言葉として予防原則というものがあって、先ほど磯田先生からも御説明ありましたように、危険があるかもしれないと予測される限りは実証されなくても規制しておくという考え方であります。  この科学的根拠を取っている日本に対して、日本人はモルモットではないかという言葉が出回っております。症状が現れたときには既に手遅れということになります。消費者の立場に立てば、やはり予防原則を適用すべきであると考えております。ヨーロッパでは予防原則の立場を取っているというふうに聞いておりますけれども、この科学的根拠また予防原則について是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 確かに、EUとアメリカ、大分安全性に対する意見の食い違いがあるというのは承知しております。ただ、私の認識では、今回のTPPに関しましては、それで日本の安全、食品安全性の政策等に大きく変更をもたらすものではないというふうに認識しております。  いずれにしましても、EUで予防原則でかなり、何といいますか、非常に強い規制があるという事実は私たち日本でも十分認識していく必要があるかなと思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですけれども、TPP協定における食の安全、表示の問題ですけれども、まず予防原則という概念、これはWTOのSPS協定の五条七項に書いてあるわけですけれども、TPPのSPS章にないというのは事実ですね。そういうことで御心配なさる方が非常に多いというのはよく分かるんですけれども、私は次の二つの点で、先ほど申し上げましたけれども、TPPのSPS章で食の安全が損なわれるとかその表示義務ができなくなるということはないんじゃないかなというふうに思っています。  一つ目の理由は、TPP協定というのは、既存の国際協定、具体的に言うと世界貿易機関の協定ですけれども、それに上乗せする形で作ってあるんですね。ですから、一般の方には非常に分かりづらいと思いますけれども、TPP協定だけを読んでも加盟国の権利義務関係がよく分からなくて、特にSPS章はそうですけれども、WTOのSPS協定をベースに更に加えますという書き方になっているわけですね。  それで、さっき私申し上げましたように、WTOのSPS協定の権利義務は変えませんとか、ただ、手続規定のところはいろいろ追加しますよというような書き方になっているので、そういう意味ではWTOのSPS協定の予防原則というのはまだ生きているわけですね、そういう意味では。日本はWTO加盟国である以上、WTOのSPS協定を適用する権利はあるわけですから。  二つ目は、これはもうちょっと解釈めいた話になりますけれども、交渉が妥結後の日本政府の文書を見ますと、SPS章のところとTBT章のところは、文書は今手元にありませんので概略ですけど、日本の食の安全が損なわれるような規定はありませんとか、遺伝子組換え食品の表示義務の変更を迫られるようなことはありませんというふうに書いていますね。これは、私も参画協議に従事していたときに大変消費者を中心に懸念があったところで、そこはやはり交渉の中では日本政府はかなり慎重に交渉したというふうに思うんですね。  公務員OBとして申し上げると、政府が文書で書くということはかなり自信がある証拠で、よっぽど自信があるから文書に書いているんだろうなというふうに思いました。逆に言うと、私は、TPPの本質というのは、関税のところが異常に厳しいというのがTPPの本質だと思っていますので、ルールのところはそれほど厳しく切り込まれているわけではないのではないかというふうに思います。  以上です。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) これは作山参考人と理解あるいは解釈の違いもあろうかと、含まれていると思うんですが。  私は、繰り返しになりますが、WTO以上になっていると。予防原則が書いていないのは、WTOに書いてあるからそのまま使えますよと。日本は、仮に発効したとしてですけれども、TPPに加盟していないほかのWTO加盟国については、当然、WTOのSPS協定で対処していくことが可能だと。しかし、WTOに加盟しているかしていないかにかかわらず、TPPの加盟国に対してはTPPのSPS章で書かれていることがベースになる、ならざるを得ないという理解をしております。  それは、ある意味では、例えば関税障壁についても、TPPは明らかにWTOで日本が示した関税面での譲許を大きく上回ることをしているわけですが、じゃ、WTOの引き続き加盟国であるからWTOの加盟国としての権限を行使できるのかというと、決してそういう法構造にはなっていないというのが私の理解でございますので、その点はやはり違ってくるというふうに理解しているところでございます。

青木愛希望の会(自由・社民)

○青木愛君 大変貴重な御意見をありがとうございました。  次に、作山先生にお伺いをしたいと思います。  先ほどの意見陳述の中で、経済以外の効果について政府の説明が足りないという陳述がございました。政治的、戦略的な側面、効果についての御指摘がありましたけれども、その点についてもう少し踏み込んだ具体的な御意見をいただきたいと思いますのと、今回、やはり国の主権が脅かされるということで、ISDSについて大変批判が高まっている中で、今後TPP締結されなかったと、不発に終わったとしても、FTAが結ばれる可能性もあるところでございます。FTAにもこのISDS条項というものがありますけれども、グローバル企業の利益を優先したISDSを修正して、人々の健康あるいは地域の環境といったものを優位に置いた、そうした考えに基づくものに修正をして自由貿易の道を広げることはできないものなのかなという、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 御質問の一番目ですけれども、最初の意見陳述では、私はTPPの政治的、戦略的評価というふうに申し上げましたけど、時間の関係で余り御説明できませんでした。  私がここで政治的と申し上げているのは、安全保障上のと言い換えてもいいのかもしれませんけれども、例えば日米同盟を強化するとか中国に対する牽制効果というのもあると思います。実際、安倍首相も、TPPが交渉が妥結したときだったと思いますけれども、要するに、法の支配とか民主主義というような価値を共有する国とのTPPの協定というのは日本の安全保障上にも大変効果があるというふうにおっしゃっていますね。  ですから、隠しているわけではないと思うんですけれども、私は、多分それが安倍総理の第一のプライオリティーじゃないかというふうに思うんですね。それならそういうふうに言ったらいいんじゃないかというのが私の意見です。アメリカのオバマさんは、TPPが通らないと誰がルールを作るんだと、中国が作るんだというふうに明確におっしゃっていますよね。やはりそこは政治的安全保障上の主導権争いというのを全面的に打ち出しているわけですから、そういうことの方が、正直に言ってもらった方が国民は分かりやすいんじゃないかということですね。  あと、戦略的というのは、私の言っている戦略的はちょっとほかの方と意味が違いまして、さっき言いましたけれども、日本がTPPに入ったら、それから疎外される国、例えば中国であるとかEUが日本市場への輸出に不利になりますから、TPPには入らないんでしょうけど別な枠組みで日本と自由貿易しましょうよと言ってくる、これ実際起こっていますよね、という意味で戦略的というふうに申し上げました。  ですから、私の意見は、恐らく安倍政権は政治的、戦略的な意味でTPPをやられているんだと思いますけれども、なぜかそれを余り正直に言わずに、経済的メリットが大きい大きいというふうにおっしゃっていると。ただ、経済的メリットは私はそれほど大きくないと。農業への被害も大きくないかもしれないけれども、政府の試算でも実は輸出はちょっと減るという試算になっているんですね。五百億円輸出は減りますという試算になっていますし、経済的メリット、余りない経済メリットを膨らまして本当の姿を隠そうとしているというのが問題だろうというのが私の指摘です。  二つ目のISDSですけれども、簡潔に申し上げますと、私は、TPPにはISDSというのは必ずしも必要じゃないんじゃないかなというふうに思っています。  それはどういうことかというと、何というかな、思想的な理由で反対しているわけではなくて、そもそもISDSというのは、日本企業が途上国に投資をしたときに、途上国が勝手にルールを変えたりして工場を接収されたりとかいう投資の不安定さがあるというのが原因なので、基本的には、日本の企業からしたら途上国と結ぶときに入っていれば十分なんですよね。日本の二国間のASEANとの協定でもフィリピン以外は全部入っています。片や、日本やアメリカのような高度な先進国で、司法がしっかりしている国が恣意的な司法判断をするというのは考えられませんので、それであれば別にISDSは必要ないわけですね。  ISDSがどうしても必要というのであれば、別途二国間の投資協定を結ぶとか、やり方はいろいろありまして、日本も、EPAでISDSを結ぶとか投資協定で結ぶとか、入っていないものもありますけど、いろんなやり方があるので、それが本当に必要な国同士なのかということをよく考えて選択的に使っていくと。私が見る限り、TPPでISDSにこだわっているのは、そういうことは交渉している方は分かっているんでしょうけど、一回外す前例をつくると次のFTAをやるときに入れづらくなるので、そういう面が非常に大きいのではないかと思っています。

青木愛希望の会(自由・社民)

○青木愛君 大変貴重な御意見をありがとうございました。  時間はまだありますでしょうか。(発言する者あり)済みません、不慣れで。  ありがとうございました。今日は食の安全について中心に伺わせていただきました。この食の安全を確保するためにも、やはり安心、安全な食料を自ら生産をしていくということが大変大事だというふうに思っております。  荒幡先生にも是非御意見を伺いたかったのですけれども、また機会があったらお願い申し上げたいと存じます。  ありがとうございました。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 無所属クラブの薬師寺みちよでございます。  今日は、本当に私、勉強になりました。ありがとうございます。  まずは、荒幡先生、お願いしたいと思います。  私、このTPPというドラスチックな政策的な判断が農業の世界を変えてくれるんじゃないかという一筋の光を見出しております。実は私、構造改革特区の評価・調査委員といたしまして、まさに規制改革、そして構造改革に打ち込んできたわけですけれども、なかなかこの農業分野というものはそういう力を使ったとしても風穴が空かないというところで大変苦労した覚えがございます。ですから、このTPPの農業の議論をするときに、まず、日本の農業の基盤強化策ということを忘れてしまったらこれは本当にバランスが悪い、しっかりとこれは両軸として動かしていくんだったら動かしていくべきだという考えを持っております。  そこで、先ほど先生からプレゼンをいただきましたときに、大規模農家の方が財務体質が弱く、小規模農家の方が財務体質が強いという御説明があったかと思います。しかし、こういう中で、若者が参入をして更に農業を活性化していくというわけにはいかないと思うんですね。これからはやっぱり株式会社でしたりシステム化する、様々な業界の力を借りて農業を活性化する策というものが私はこのTPPの中でも重要となってくると思うんですけれども、先生の御意見をいただけますでしょうか。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 今のお話にありました若い人が参入するかしないかですね。ここで、私も新潟辺りに行って話を聞きますと、やはり法人だと安心感があるということはよく言われます。そういう意味では、法人経営がどんどん育っていくということは若い人が就農することの受け入れやすさにつながることで期待をしておるわけでございますが。  ただ、その大きさなんですけれども、私がイメージしておりますのは、新潟辺りでも見ておりますのは、ある先進的な経営者の方が家族経営からスタートして二、三人雇用して、若い人も受け入れて五人目、六人目という、そのくらいの規模でございまして、そういう経営が結構今育ってきつつありますので、そういう経営を、先ほど言いましたけど、育ってきているんだけれども実は脆弱性があるんだということで、そこをサポートしていくという辺りが政策のターゲットかなと思っております。  今の議員のお話にありましたもう一方は、もっと大企業の参入という話だと思うんですけれども、これにつきましては、例えば経営ノウハウであるとかそういうことを、むしろ、今言いましたような農業を土台にしてできた五、六人の法人が積極的に取り入れるという方向が肝要かなと思っておりまして、実はその例として、今年の農林水産祭の天皇杯を取りました愛知県の鍋八農産というのがございますが、ここはトヨタの先進的なノウハウをどんどん入れているということで、こういった姿が理想的なんじゃないかなと思っております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 荒幡先生、ありがとうございます。私、選挙区、愛知でございまして、愛知は本当に今元気がいいんです。  実は、トヨタということで、皆様方、製造業というふうに念頭に置かれるかもしれませんけれども、もう日本一の私は農業国だと思っておりまして、やはりこういった、農業という発想だけではなく、いろいろな皆様方の発想を借りて、農業をいかに活性化させていって食の安全を獲得していくかという視点に立たないと、いつまでたっても高齢化の問題であったり小規模農家の問題であったりというものが解決できないのではないか。  私も、日頃からあの辺りを歩きまして、いろんな農業の展開していらっしゃる皆様方にお話を伺うんですけれども、若い方がやはりもっともっと参入してきて、私どもにも新しい農業を教えてほしいとおっしゃる農家の方が多いんですね。ですから、是非是非そういった、こういったことがきっかけとなって、今回法案が通るかどうかは分かりませんけれども、もっとその農業の在り方というものに立ち戻って、しっかりとしたビジョンを今こそ日本は持つべきではないかと思っていますので、是非お願いをしたいと思います。  というところで、私も歩き回って感じることが、やはり農業の風景であったり環境といったようなものが農業の多面的な機能として今再確認されようとしております。農村の環境の保持であったり生態系の保持というものは大変これ重要だと思うんですけれども、TPPによる農業の成長とともに、私はここもしっかりと守っていかなければならないと思っておりますけれども、荒幡参考人と磯田参考人、本当に両立するものなのかどうなのか、御意見をいただけますでしょうか。お願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 今、環境ということで、具体的には、例えば多面的機能を発揮して洪水防止機能であるとかそういうことが発揮できるように、中山間の棚田とか、そういうことを維持するという内容をイメージされているのかと思うんですが、両立可能だと私は思っております。  私の意見陳述では、主として産業政策としての側面からの政策だけに絞ってお話ししましたが、その一方で、地域社会の維持としての観点も重要でございます。この観点から見ますと結構地域差がございまして、東日本、それから愛知県辺りは非常に意欲的な担い手がたくさんおるわけでございますが、西日本の方はかなり本当に担い手としては少なくて深刻でございますので、こういったところでは棚田自体も維持できなくなりつつあるというようなところがございます。  この辺で、じゃ、どうやっていくかというのが一つ悩みなんですけれども、ここで、棚田のその一つの、何といいますか、世界遺産のような形で維持する、こちらも大事なんですが、それさえもできなくなってしまうような地域で、例えばの話、放牧とか、余り水田としての維持にこだわらないのも一つの方向かと思っておりまして、現に農水省の施策の中でも結構そういう水田の畑地化とかいう方向も考えられておるようでございまして、この環境、多面的機能の維持というのも、少しその担い手が多い少ないとか、その辺も含めてきめ細かく見ていかないといけないなと思っております。  いずれにしても、両面から見て大いにそれは両立しなければならない政策目的だと思っております。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 私も、多面的機能と構造改革というものとが両立するかという点については、これは一つは農業基盤の在り方、風土的なものをも含めた農業基盤の在り方、それと政策、この二つによって両立できる場合もあるし、下手をすると両立できないということの両方があると思いますので、そこを非常に慎重に見極めていく必要があると思います。  例えば、アメリカやヨーロッパの特に畑作農業で極めて集約的な農業をやっていた時代には、農業生産を振興すれば振興するほど環境に負担を掛ける、そういう意味では多面的機能という観点からするとマイナスの影響を与えると。そこで、農業を粗放化する、あるいは生産から撤退するということにむしろ積極的に政策的な後押しをするような直接支払等をして、そのことによって多面的機能を維持する、あるいは環境を維持するということを進めてきたかと思うんですね。  他方、日本にも、水田農業だけじゃなくて、畑作農業、あるいは樹園地農業、草地農業ございますけれども、一応水田ということを取りあえず焦点を当てますと、日本の場合は、もちろん水田でも過度な集約、不適切な集約化、こういうことによって水質汚染等の問題が起きることもあり得ますけれども、大きく言えば、多面的機能のうち、水田を中心として農業生産をやっていることを通じて、それが、両方が、結合生産というふうによく私どもは申し上げますけれども、結合することによって農業生産が維持されることによって多面的機能の発揮も維持される、こういう側面がございますので、そういう意味では、農業生産を増進する、あるいはその担い手を強化するということは、単にコストを下げるとかいうことにのみ偏るのではなくて、農業生産そのものが、中山間地域も含めて維持すること自体が多面的機能、多面的機能は大きく言えば、大ざっぱに言えば中山間地域の方がより多く担っているわけですので、中山間地域でも農業生産が維持可能な施策というものを打てるかどうかということに、両立可能かどうかということが大きく懸かってくるんじゃないかというふうに認識しております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  実は、愛知県、先ほど取り上げていただきましたけど、棚田で日本百選に選ばれるぐらい大変きれいな場所もございます。私もそこ、参りましたところ、もう機械が全然入らないぐらいの面積しか、一反はないものですから、実は私も手で一緒に稲刈りをさせていただいたんですね。そういうものをやっぱり体験すると、本当にこれで、高齢化していく農業の中でこういったところがだんだん廃退していくということの大変危機感を持った次第でございます。ですから、今日、先生方からいろいろ御意見もいただきましたので、そういう側面につきましても私も更に取り組んでまいりたいと思っております。  ところで、作山先生に伺わせていただきたいと思います。  先ほど、いろいろお話を伺わせていただきました。今回のTPPの交渉若しくは政府の情報の開示の在り方という、反省すべき点ということが大変数多く挙げられたわけでございます。今回、TPPの交渉で反省すべき点というものは反省をしなければならない、また、それを次に生かしていかないとと私は思っております。  同じ轍を踏まないために、今回先生がこの部分というもの、しっかり守っていかなければならない、若しくはしっかり開示していくべきだろうと感じていらっしゃるところがございましたら教えていただけますでしょうか。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですけれども、冒頭の意見陳述で私はTPP協定の中身には余り意見を申し上げなかったんですけれども、それはなぜかと申しますと、私自身はかなり難しい条件の中で交渉自体はかなり頑張ったのじゃないかなというふうに思っているからなんですね。先ほど申し上げましたように、日本が参加したときにいろいろな条件を突き付けられていますから、交渉をする方はやっぱり本当に大変だったと思います、ある意味手足を縛られて交渉するようなものですので。そういう中では、農産物の中でも二割ぐらい関税撤廃をしないものがあるとか、そういうものは制約の中でした交渉としてはかなりよくできていると思っています。  ただ、片や自動車の方でいうと、攻めの方でいうと、アメリカの自動車の関税は二十五年、三十年撤廃されないので、そこは非常にどうなのかなと。私が政府でTPPをやっているときには、TPPをやるのは、韓国とアメリカが自由貿易協定がありまして、韓国の自動車は来年アメリカに無税で輸出できるようになるんですね、それに追い付くためなんだという説明をさんざん受けた覚えがありますが、二十年、三十年先ではあれは何だったのかという思いがあるわけですけれども、そういう意味では農業の守りの方を中心に、特に交渉結果はそんなに悪くないと思っています。  ただ、先生の御質問に答えて言いますと、そういうふうに政府は政府なりにせっかく頑張ったんでしょうけれども、先ほど申し上げましたように情報公開のところが余りうまくいっていないので、生産者の方、国民の方からは余り評価されていないんじゃないかということですね。具体的に言うと、政府はやっぱり何か隠しているんじゃないかというふうに生産者の方は非常に強い疑念がありますね。  私もいろんな調査で学生と一緒に地方に行ったりしますけれども、例えば農業団体の方でも、全国レベルの方は政府と密接にコンタクトを取っていらっしゃるんでしょうから、まあしようがないかなという方も多いんですけれども、県レベル、市町村レベルになると、どうもだまされたような気がする、どうもよく分からないと。やっぱりそういう形で自分が納得されていないものですから、前向きなところになかなか進めないというところがあると思うんですね。  やっぱり農業者の方々はかなり政府を信頼されて、元々は信頼されていたんでしょうから、裏切られた、だまされたという気持ちが心のどこかにある限りなかなか前向きな改革には進めないと思いますので、そこをしっかり納得していただいて、TPPが発効するならそこはしようがないんでしょうから、前向きな改革を進めていくというところにつなげていく、そういう意味で納得感のある説明をする、コミュニケーションをするというのが一番の反省点じゃないかと思っております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  作山先生、実はもう一点聞きたい点がございまして、生産者の皆様方もそうでしょうけれども、私も女性として、いわゆる家庭に帰れば台所に立つ身でございます。こういった消費者もまだまだ政府の説明に対して納得感というものが及んでいないからこそお母様方が大変心配をしていらっしゃいます。そういうところに関しましても、どのような点を納得していただければいいんでしょうか。まだまだ政府は隠しているんじゃないかというふうに疑念を持っていらっしゃる点というのは、作山先生、その消費者の立場でいかがでいらっしゃいますでしょうか。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問に関してですけど、実は、TPPに限らず自由貿易とか貿易を自由化するということについてアンケートを取りますと、古今東西、女性の方の反対が強いんですよね。これは、日本でもアメリカでもそうです。その理由はよく分かっていないんですけど、やっぱり女性の方が家庭を持っていらっしゃるとか、お子さんに食事を準備するとか、そういうこともおありなんでしょう。そういう意味で、食の安全には関心が高いんだと思いますけれども。  片や、TPP協定の中身というのは、さっき申し上げましたように、非常に技術的なのでなかなか説明は難しいと思うんですよね。先ほど議論にもなりましたけれども、TPPもそうですけど、最近はWTOの協定があり、あと二国間の協定もあり、さらにTPPがありということで、例えば日本とシンガポールの間なんかですと三重、四重に協定が重なっているわけですよね。ということなので、そこの全体像が分からないと食の安全への影響もよく分からないというところが出てきますので、そこはやはり分かりやすい説明に心掛けるということに尽きると思うんですけれども、やはり消費者の方が疑念を持ちそうなところに具体的にお答えするというところが大事じゃないかと思います。  先ほど議論になりましたホルモン牛肉の話についても、TPPという話が出ますと食品安全全てが一緒くたにして議論されてしまうわけですけれども、今まで既にもう流通しているもの、TPPで変わるものということをよく仕分をして説明していくことが大事なのではないかと思います。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございます。  荒幡参考人にお伺いさせていただきたいと思います。これ、最後の質問になると思います。  TPPのメリットを見て批准したとしても、やはり最終的に守るべき分野というものが考えられるかと思います。もちろん、この農業の分野についてもそうだと思うんですけれども、最終防衛ラインというのはどの辺りだと考えていらっしゃいますでしょうか。お願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 守りの方でございますが、大幅に国内生産が縮小するようなことは避けたいわけでございますが、それが当面はとにかく確保されておるということで、最終防衛ラインは確保できていると考えておりますが、そこから先は、やはりある程度自助努力といいますか、競争力を高める努力次第かなと思っておりますので、少なくとも今時点では確保されているというふうに認識しております。

薬師寺みちよ無所属クラブ

○薬師寺みちよ君 ありがとうございました。  やはり、今の荒幡参考人のお答えからもありますように、私も、TPPの議論というのは、貿易というだけの話ではなく、やはり農業をどう構築していくのかという議論を忘れて先に進んでしまってはならないと思っております。ですから、この日本という国自体を考える上で、やはり私どもが培ってきた英知というものをこれからしっかり先に進めていかなければならない。古いものを守るというだけではなく、新しいものを取り入れながらブラッシュアップしていくというような構造改革につきましても、私、今後も議論をさせていただきたいと思っておりますので、是非、今日の議論、私、今後もしっかり先生方の本も読ませていただきまして勉強いたしたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。  今日はこれで終了といたします。ありがとうございました。

中山恭子日本のこころ

○中山恭子君 日本のこころの中山恭子でございます。  今日は、先生方に非常に真摯な御意見をお聞かせいただきまして、心から感謝申し上げます。  TPPの中でも農業問題、非常に重要なポイントでございますし、私自身、一九九九年から二〇〇二年まで中央アジアの国、ウズベキスタン共和国の特命全権大使を務めておりました。ウズベキスタン共和国というのは、ユーラシア大陸のシルクロードのちょうど真ん中にある国でございますが、食料自給率はほぼ一〇〇%あります。砂糖の一部について輸入しないといけないということだと聞いておりました。  ソ連に含まれておりましたが、ソ連時代にはモスコーの食料庫と言われておりまして、そこで住んでおりましても、又は政府の方々と話をしておりましても、やはり食料について全く心配がない国、非常に人々も心が安定しておりますし、対応するときにも、例えば日本に対しては先端の技術、そういったことを是非取り入れたい、日本の発展を見習って自分たちも経済を立て直していきたいという思いがありますが、食料品については全く心配していない。そういう政府、それからその国の人々というのが非常に安定した形で存在しているということを思い知らされたところでございまして、それに比べると、日本の場合の食料自給率、もちろんぜいたくをしていけば幾らでも変わってくるとは思いますが、基礎的に食料自給率が低いということについて、遠いところから日本って大丈夫なのかなと心配しながら過ごしたという思い出がございます。  今日はTPPの中の農業問題、本当に貴重な御意見いただきました。ただ、もちろん当然、今言われていることですが、トランプ次期大統領、共和党になった場合、共和党も強いわけですので、このTPPが発効できるのかどうかということも心配な点でございます。  そういった中で、日本としてはTPPの承認をしますよという形で進むのが、ほかの手がなければそういう形でいいのかななどと思いながらはいるんですけれども、例えば、報道ですけれども、ニュージーランドからは、米国議会がTPPを承認する可能性はゼロに近いとか、メキシコの経済相は、米国の承認手続を待たなければならないという今の規定を米国抜きでTPPを発効させるようなそういう可能性を追求してはどうか、またオーストラリアからは、中国、インドが参加する例のRCEPを追求する方がいいのではないか、またペルーの大統領は、中国、ロシアまで含めてアジア太平洋地域の協定が最善の策であろうというような話が流れてきております。  私自身、日本としてはやはり自由貿易を進めなければやっていけない国であることを考えますと、TPP発効を進めることが最善の策だろうと思っておりますが、先生方に、そういった場合、どうしても多国間協定でなければならないのか、工業品も含めてです、不要とお考えになるのか。  二番目に、アメリカを説得した方がいいとお考えか、又はFTAでいいのかどうか。  三番目に、アメリカ抜きでこのTPPを発効させるという、メキシコの方がおっしゃっているような形があり得るのか、それが成り立つのか。  四番目に、豪州、オーストラリアやペルーの方がおっしゃっているような、中国を入れて動いた方がよいとお考えになるか、又は中国、ロシアまで入れた形での可能性というのが成り立つのか、それが日本にとってよいのかどうか、お答えいただけたら、済みません、突然のお願いかと思いますが、よろしくお願い申し上げます。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) 率直に申しまして、私は二国間より多国間が可能であればその方がいいのかなと思っておりまして、特に、中国は大変外交的にも難しい国だということを聞いておりますし、また、農業分野に関しても相当アメリカとはまた別に全く違った形で影響力がございますので、何といいますか、改めて十分注意をして交渉していく必要があると思っております。  結果としては、今のTPPのような形がもし可能であれば、それがいいのかなというふうに思っております。

作山巧明治大学農学部准教授

○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですが、私はいろいろな交渉に従事をしてきましたので、ちょっと一つずつお答えしたいと思いますけれども。  一つ目は、TPPは十二か国の多国間合意なわけですけれども、それの一番のメリットというのはルール作りができるというところですね。世界貿易機関の交渉も全然進んでおりませんので、日本やアメリカも含む太平洋の十二か国がいろいろなもの、電子商取引とかいろいろありますけれども、投資とかWTOにないルールを作ると、そこは非常に影響力があると。それに対して、二国間ですと日本とアメリカだけしか適用されませんので、大国同士ではあるんですけれども、広がり感はないというところの違いがあると思います。  二つ目のそのアメリカを説得できるかどうかということですけれども、私は十分な情報を持っているわけではありませんけれども、これまでの報道等を見る限り、なかなかアメリカが、次期共和党政権が改心するのは難しいのじゃないかと思っています。  というのは、アメリカも、実はアメリカがTPPに一生懸命になったというのはオバマ政権になってからでありまして、ブッシュ政権が終わるときにTPPに入るというふうに言ったんですけれども、それはもうブッシュ政権がほとんど終わりのときだったので、議会に通知してもう任期が切れたというような形ですので。  さっき申しましたように、オバマさんは恐らく、アメリカがアジア太平洋に回帰するとか、アジアでグループをつくって中国に対抗するとか、そういうそのTPPの対中国戦略上の、安全保障上の側面を非常に重視されていたと思うんですけれども、私が見る限り、トランプさんは、むしろアメリカの国益が大事なんだと、そういうグループで中国に対抗するというよりは、日本とアメリカの貿易で赤字が出ているのがよくないのだと、日本にもっと買わせてアメリカは余り買わないというようなことをおっしゃっていますので、まあなかなか難しいのではないかと思います。  三つ目として、アメリカなしで十一か国でTPPを発効させるというような報道、今特にペルーでAPECの首脳会議などをやっていますので、そういう報道も承知しておりますけれども、私はもう実現可能性ゼロだと思います。それはなぜかと申しますと、やはりアメリカが入っているからみんなが擦り寄ってくるわけですよね。民主党政権のときも、野田首相がTPPに入ろうと考えられたのは、やはりアメリカが入ったからですよね。  過去の経緯も言いますと、アメリカは、二〇〇八年、ブッシュ政権のときに一回TPPに入ると言って、その後、ただ、オバマさんが選ばれて、オバマさんは一年間ぐらいちょっと考え直すので一回やめますというふうに言ったんですよね。そのときにやっぱり日本の中の準備も非常に下火になりましたですね。そのアメリカが入らない協定なんか意味ないよねというような議論が政府内でもありましたので、やはりアメリカがいるかどうかと。  特に、各国の利害を考えても、TPPのメリットというのはアメリカに対して輸出ができるというところが非常に大きいわけですよね。TPPのメリットは余りないと申し上げましたけれども、日本の農産品でいうと、その中でもメリットが大きいのは、アメリカに対して牛肉が輸出できるようになるというところですね、今は高い関税が掛かっておりますので。でも、アメリカが抜けてしまうと、そういうメリットは一切なくなるわけですね。  それに対して、残った国の中には、オーストラリアとかニュージーランドとかいう国が残っているわけですから、そういう国から日本は乳製品などをたくさん買わなきゃいけなくなると。要するに、出てくるところが何もなくなって買うものばかり増えるということなので、何のメリットがあるのということになりますね。これは日本だけではなくて、ほかの国も同じことを考えるわけですよ。ということなので、アメリカ抜きのTPPというのはあり得ないと思います。  四つ目ですけれども、中国が入った枠組みというのは既にありますね。中山委員もおっしゃったRCEPというんですけれども、ASEANと日本、中国、韓国、それからインド、オーストラリア、ニュージーランドの枠組みがありますけれども、これも非常に難航しているんですね。なぜ難航しているかと申しますと、やっぱりこれはASEANが中心の枠組みなのでなかなか進まないんですよね。建前上、このASEANが運転席に座るという標語があるんですけれども、主導するのは俺たちなんだというわけですけれども、十か国もいるので、主導したくても主導できないんですよね、なかなか進まないんです。それに中国とかロシアを入れると、結局彼らにも彼らなりの利害があるので、全く最初から難しい交渉をやることになるので、そこは非常に難しいということなので、結論的には、アメリカと協定を結びたければ日米FTAをやるのが一番早い、それが好ましいかどうかは別問題ですけれども、というふうに考えます。

磯田宏九州大学准教授

○参考人(磯田宏君) 時間も限られていますし、あと、もう一つは私の能力の問題もありますので、限られたことにお答えさせていただきますけれども。  まず、どうしても多国間協定がよいかという問題なんですが、一つ大前提として、WTOが確かに今頓挫しているということからこういう二国間なりあるいは多国間のFTA、EPAが物すごい勢いで増殖し始めるという大きな契機になっているわけですが、じゃ、WTOがなぜ頓挫しているのかというところにもそもそも一つ目を向けておく必要があって、これは、ガットのウルグアイ・ラウンドでは、極めて分かりやすく図式化すれば、EUとアメリカがほぼ主導権を握って、お互いに攻めつつ、しかし最後は妥協して、そして作り上げたと。その際には形式面も含めて途上国の意見というのが反映される機会がなかなかなかったと。  ところが、その後、御案内のように、BRICSを筆頭に途上国が経済的にも多くなった。加盟国そのものも大幅に増えましたし、その中でBRICSのような新興諸国も台頭してくると。また、それに次ぐ途上国も加入国も多くなってきていると。そうすると、この途上国の、途上国も決して一枚岩ではありませんが、それらの意見を反映されない、最初にWTOをつくったときのような、世界はアメリカとEUでほぼ牛耳るんだというようなことはもう許されないと。こういう世界情勢の大きな変化の中でそういう頓挫が、状況が起きているというのが私の、包括的にはそういう認識でおりますので、そういう意味が一つと。  それから、二国間であれ多国間、多国間も、少数国、あるいはTPPやRCEPのように多い国であれ、いずれにせよ、それに入らない国に対しては差別をするという点では変わらない、一種のブロック化なわけですね。そうしますと、それは世界全体に対してはフェアな、それこそフェアなフィールドをつくるという話ではないわけですから、そういう原点はひとつやっぱり押さえた上で議論する必要があるんじゃないかということが一点。  それから、どういう組合せの協定がいいかということはその中身によるのであって、例えば先ほど農業について言いましたけれども、日本政府が高らかにうたったような行き過ぎた貿易至上主義を是正し、多様な農業を共存する。それは、ほかの経済分野、あるいは社会分野、あるいはいろんな制度、政策にも関わると思うんですが、そういう多様性の共存も一方で認めるというような内容の共同体づくりなのか、それとも、そうじゃなくて、格差、貧困を広げるような、特定の利害集団なり多国籍企業などがしばしばやり玉に上がるわけですが、そういうものの利害が優先されるような、そういう中身なのか。そういう中身の方も、どういう組合せかということもさることながら、どんな組合せであれ中身が何なのかということを重視していくということも一つ極めて重要なポイントじゃないかというふうに思います。

中山恭子日本のこころ

○中山恭子君 貴重な御意見ありがとうございます。まさに、たくさんいろんな問題が特に農業の貿易については絡んでくるなということを痛感するわけでございますけれども。  先ほど、オーストラリアの牛肉の話が出ておりました。私ども、視察団の一員として入りまして、オーストラリアのオージービーフを始め、オージーラムもそうですか、その肉についてのオーストラリアの産業としての在り方のようなものを視察に行ったことがございまして、そのとき、おっしゃられましたように、WAGYUというものが一番最上級のレストランで使われている場合、それは全てWAGYUと、この店はWAGYUです、KOBEです。神戸牛の、神戸牛といっても日本の神戸牛ではありませんで、オーストラリアの言う神戸牛というのが最高級の肉として店舗に出ている。  私がしゃべっていたんでは時間がもったいないと思いますが、ただ、そのときにはもう日本で狂牛病は一切何のあれもなくなっていた時期ですのに、日本からの、和牛といってもオーストラリアで牧草で育てたもの、それから飼料だけで育てたもの、両方を割合を付けて育てたもの、どれが一番高級かというような話も含めて、WAGYU、オーストラリアで育てた和牛、これがアメリカに輸出されていて、アメリカでも最高級の牛肉はこのオーストラリアからのWAGYUである。日本の和牛、霜降りなどとは全く比較にならないものでございますけれども、非常に高い評価を得ていた。  そのときびっくりしましたのは、オーストラリアの牛肉というのが工業品と同じような形で輸出産業として成り立っている、もう規格から何から全てが産業になっているという様子を見まして、日本の中で農産品でそういった形で輸出産業として作られている産業というのは見当たらないものですから、その点について荒幡先生のお考え、もう一度お願いいたします。

荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

○参考人(荒幡克己君) ありがとうございます。  今お話がありましたように、オーストラリアのWAGYU、大変成長産業でございます。私の意見陳述の中では、少しオーストラリアの方には何か申し訳ないんですけれども、低品位の部位をオーストラリアからアメリカに輸出するという話だけをしたんですけれども、それはかつての基本パターンなんですが、最近どんどん変わってきまして、日本にももちろんオージービーフはたくさん入ってきます。それと同時に、今おっしゃったように、WAGYUをオーストラリアからアメリカに輸出しているということで、大きく産業として成長しているわけでございます。  低品位のみならず、その上の方の品位が結構いけそうだということで、かなり、したがって、このいわゆる製品差別化といいますか、同じ牛肉の中に階層性があるということを強く意識して、産業として成長する姿をそこに見ますので、非常に日本はまだまだのところがありますので、議員おっしゃいましたように、規格であるとかこういうところの、何といいますか、本当に工業製品と同じような考え方できちっとしたものを出していくんだという意識、これがまだこれからということでございますが、今般の政策の中で結構輸出重視されていることでございますので、量はさておき、そういう意識が出てくることを大いに期待したいと思っております。

中山恭子日本のこころ

○中山恭子君 農業の在り方、いずれ開放されるものでございましょうから、日本としても、農産品を一つずつきめ細かに産品ごとに在り方を検討する必要が、もう至急やらないといけないことだと考えております。  ありがとうございました。

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、松川るい君が委員を辞任され、その補欠として渡辺美知太郎君が選任されました。     ─────────────

林芳正自由民主党

○委員長(林芳正君) 参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会

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