法務委員会 第14号
- 発言数
- 151 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2016/12/07
会議録
○鈴木委員長 これより会議を開きます。 第百八十九回国会、内閣提出、民法の一部を改正する法律案及び民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 本日は、両案審査のため、参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授中田裕康君、弁護士新里宏二君及び弁護士岩田修一君、以上三名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人各位に委員会を代表しまして一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、中田参考人、新里参考人、岩田参考人の順に、それぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。 それでは、まず中田参考人にお願いいたします。
○中田参考人 おはようございます。御紹介いただきました中田です。 本日は、発言の機会を与えてくださいまして、ありがとうございます。 私は、東京大学の法学部と大学院で民法の研究教育をしております。今回の民法改正に関しましては、法制審議会民法(債権関係)部会の委員として審議に参加いたしました。本日は、一人の民法研究者として、民法改正法案について意見を申し上げたいと思います。 お手元のレジュメに沿ってお話をさせていただきます。 現在の民法は、明治二十九年、一八九六年に財産法の部分が公布され、一八九八年に家族法の部分も追加して公布され、この年に全体が施行されました。 この民法については、第二次大戦前に七回の改正がありました。いずれも比較的小規模のもので、家族法に関するものが多く、債権法の改正はありませんでした。 戦後は、より大きな改正がありました。まず、日本国憲法の制定に伴い、昭和二十二年に家族法の部分が全面改正され、民法総則の一部も改正されました。その後も、親族法、相続法、担保物権法の改正、また、民法総則では、成年後見制度の新設や公益法人制度の全面改正などがありました。 しかし、債権法の部分の改正は、平成十六年の保証制度の改正と現代語化によるもの以外にはほとんどありませんでした。 民法の債権法の部分が現在まで百二十年間にわたって維持されてきたことの理由は、幾つか考えられます。 まず、民法の債権に関する規定には、ヨーロッパの長い歴史を経た普遍性、抽象性のあるものが少なくなく、長もちしたということがあります。もっとも、ヨーロッパでも次々に民法の改正が進んでいますので、これは決定的な理由とは言えません。 第二の理由は、民法が多くの判例や特別法によって補完されてきたことです。これは、裏返せば、民法自体の規律は後ろに下がっているということでもあります。 第三の理由は、民法の債権法の規定が基本的には任意規定であり、特に、契約法においては契約自由の原則があることです。民法の規定が時代に合わなくなっているとしても、当事者が自由に契約をすることで対処することができます。他方、そのために民法自体の問題点が意識されにくいことにもなります。 第四の理由は、ドイツの学説の影響です。二十世紀初頭から、ドイツの民法学説が日本に直輸入され、日本民法の条文を、文言や沿革にかかわらず、ドイツ流に解釈する現象が生じました。学説継受と呼ばれています。その結果、条文の文言が軽視され、その改正に対する関心も弱まることになります。この傾向は二十世紀後半まで続いたように思います。 第五の理由として、民法の債権法の改正が難しいということがあります。民法の規定は、ローマ法にまでさかのぼるものや、明治時代の諸外国の法を参考にしたものが多くあります。また、民法制定から一世紀以上を経て、民法を基礎として、多くの特別法、判例、学説、実務慣行が形成されてきました。この間、外国法も発達しています。これらの蓄積の持つ意味を正確に理解し、吟味する必要があります。さらに、民法改正が他に及ぼす影響も慎重に検討しなければなりません。このため、改正には大きなエネルギーを要します。 これらの事情により、民法の債権法は今日までほとんど改正されずに来ました。しかし、それは、民法に問題がないからではなく、問題点が覆い隠されているからにすぎないのではないかという疑問が生じます。 問題点は、二つに整理することができます。 一つは、民法の具体的な内容がわかりにくくなっていることです。 表現面での難しさは、平成十六年の現代語化によってかなり解消されました。現在の大きな問題は、判例法理が反映されていないことです。民法制定から今日まで、多数の判例法理が発達しました。その結果、法律家でない人々にとって、あるいは海外から見ると、日本民法は、条文を読んだだけでは実質的な内容がわからないという状態になっています。 もう一つの問題点は、民法が、社会、経済の変化や科学技術の発達に対応していないことです。 民法が制定された十九世紀末の日本と現代とでは、通信手段、交通手段はもとより、取引の対象や方法、生産、流通や決済のシステムなど、大きく変わっています。そのため、民法と現実との間にずれが生じ、規定の根拠づけが難しくなっていたり、必要な規定が不足していたりします。これまで特別法や当事者間の契約によって対処してきたのですが、やはり基盤となる民法自体が百二十年前のままだというところに無理があります。 そこで、この二つの問題点を解決することが求められます。すなわち、民法の実質的な規律内容を明らかにすること、また、民法の規律内容を現代化することです。 このような状況は、実は、日本だけのことではありません。二十世紀の終わりころから、諸外国でも債権法や契約法の改正が進められています。例えば、ドイツでは二〇〇一年に、フランスではことしの二月に、それぞれ民法の債権法の部分の大改正がありました。債権法や契約法の改正は、国際的な潮流でもあります。 では、今回の法案はどういう意義を持つのでしょうか。三点申し上げたいと思います。 第一の意義は、民法の規律内容が明らかになっていることです。 まず、多くの判例法理が明文化されています。例えば、意思能力のない人のした法律行為は無効であること、登記のある不動産賃借権に基づいて不法占拠者を排除できることなど、判例法理が明文化されました。明文化に当たっては、何が判例法理なのか、現代でも妥当するものなのか、他の規律との整合性が保たれるのかなど、慎重な検討がされました。 次に、基本的な原則や概念が明示されています。 例えば、契約自由の原則は近代法の大原則ですが、これまで明文がありませんでした。また、債務者が弁済すると債権が消滅するのは、当然のことのようですが、やはり明文がありません。法案は、このような基本的な原則や概念について規定を新設し、あわせて、その範囲についても明確にしています。 最後に、他の法律との関係が整序されています。 民法制定後、関連する規律が発達しました。商法、労働法、民事執行法、倒産法などです。そのため、民法と接続する領域では、規律の調整を要することがあります。今回、それぞれの分野の専門家も加わり、調整が進められました。その結果、私法の領域における基本法としての民法と他の法律との関係が明瞭になり、全体の見通しがよくなったと思います。 法案の第二の意義は、規律内容の現代化です。 民法が制定された明治の時代から今日まで、社会経済情勢の変化、科学技術の発展は著しいものがあります。そこで、民法の規律自体を現代社会に適合するようにする必要があります。代表的なものを四つ御紹介いたします。 まず、債権の消滅時効制度の改正です。 現行法では、債権の消滅時効期間は、原則は十年ですが、医師の診療債権は三年、弁護士の報酬債権は二年、旅館の宿泊料債権は一年など、細かい規定がたくさんあります。このような特別の短期時効の背景にはヨーロッパの古い歴史や明治期の日本の慣習があるのですが、現代社会に適合していないものが少なくありません。また、職業間で違いを設けることの説明は難しくなっています。これらの特別の短期時効は廃止するのが適当であると考えられます。そうすると、これまで一年や二年で時効になっていたものが一挙に十年になり、混乱が生じるおそれがあります。 他方、商事の時効は現行法でも五年です。さまざまな観点から検討がされ、民事、商事を通じて、債権者が権利を行使できることを知ったときから五年、権利を行使できるときから十年とされました。 時効期間の単純化と短期化は、大量かつ迅速な取引の発達に伴う法律関係の早期安定の要請にも合致していますし、外国の民法改正の方向とも軌を一にしています。ただ、人身損害に関する損害賠償については、被害者保護の観点から、時効期間を長くする特則が置かれています。 消滅時効制度については、他にも改正点があり、規定が整備されています。 次に、法定利率です。 現行法では年五%の固定制ですが、これは現在の金利水準とは大きく離れています。この法定利率は、利息について利率の合意がない場合に適用されるほか、支払いがおくれた場合の遅延損害金や、交通事故で将来の収入を失った損害を現在価値に引き直す際などの中間利息控除において、大きな役割を果たします。法案は、これを緩やかな変動制にし、金利水準を反映しつつ、激変による混乱を小さくする制度としています。 第三に、保証人の保護があります。 保証は、古くからある制度で、広く用いられています。しかし、特に個人が保証人になる場合には、時として軽率に、合理的でない判断によってされることがあります。その結果、巨額の債務を負担するという悲劇が生じることもあります。 そこで、平成十六年の民法改正で、保証人の保護が図られました。保証契約は書面でしなければならないこととされ、また、貸金等根保証契約について、極度額や元本の確定に関する規律が新設されました。 今回の法案は、この保護をさらに拡充しています。すなわち、事業に係る債務について個人保証をするためには、経営者保証などの場合を除き、公正証書の作成を必要としています。また、保証の各段階で、保証人や保証人となろうとする人に対する情報提供義務が課されています。さらに、根保証において、貸し金等以外の根保証についても、それぞれの特性に留意しつつ、個人保証人の保護を広げています。債権者にとって、信用補完やリスク分配のためのさまざまな制度が発達している現代社会において、保証という古くからある制度の不合理な部分を是正し、現代化しようとするものです。 第四に、定型約款に関する規定の新設があります。 現代の取引では、至るところで約款が用いられています。事業者と消費者の間のものが多いのですが、事業者間のものもあります。約款については、相手方は個々の条項に同意したわけではないのに、なぜそれに拘束されるのかという問題がかねてから議論されてきました。また、約款の内容が時として不当なものであることがあり、その適正化が求められます。このような観点から、各種の立法、判例、学説によって、約款規制が進められてきました。 他方、約款には、大量の取引について、トラブル発生時の対応などの条件を画一的に定めることにより、取引の予測可能性を高め、安定的なものとするという意味もあります。約款による取引は、現代社会における取引の重要な一態様ですので、基本法である民法の中に、その内容の適正化を図りつつ、きちんと位置づけるのが適切であると考えられます。 ただ、約款とは何かは、人によって理解が分かれます。そこで、法案は、定型約款という概念を新たに設定し、そこで個別条項を合意したものとみなし得る要件や定型約款の変更に関する規律を定めています。 約款一般については、従来どおり判例や学説に委ねられますが、そのうち定型約款に当たるものについて規定するものです。これは約款による取引全体の安定化と適正化にも資すると思います。 以上の四つが代表的なものですが、法案では、ほかに多数の現代化が見られます。通信手段の発達を反映する契約成立時期に関する規律の改正、預貯金システムの発達に伴う新たな規律、取引実務においてなされる将来債権の譲渡に関する規定の新設等々です。 法案の意義の第三点として、さまざまの考え方が調和されていることが挙げられます。 第一は、民法の編成に関することです。 債権や契約に関する規律全体を改正するとすれば、民法の編成の刷新もあり得ます。研究者グループでは大規模な変更が検討されたこともありました。しかし、法案では、現在の構成と条文番号が基本的に維持され、幾つかの追加や変更がされる形となっています。これは、現行法になれた方々には歓迎されると思います。他方、一度は全体の見直しが検討されたことにより、民法の規律の構造の理解が深まりました。 結果として、刷新と存続の利点が生かされたと思います。 第二は、学説と実務の関係です。 債権法の改正の提言は二十世紀末から始まり、研究者グループの研究成果が幾つか公表されました。これは、社会の変化や判例、学説、外国法の展開を踏まえたものでした。 その後、動きは学界以外にも広まり、弁護士会や経済界なども検討を進めました。法制審議会の部会には、民法その他の分野の研究者のほか、多くの実務家、関係省庁が参加しました。また、二度にわたるパブリックコメントに寄せられた多数の意見が考慮されました。 その結果、法案は、判例を基本としつつ、実務の要請と学説の成果を反映するものとなっています。 第三は、何を明文化し、何を明文化せずに判例による法形成に委ねるのかという問題です。 例えば、信義則に基づく各種の判例法理を明文化することが検討されました。しかし、条文の表現について意見が一致せず、見送られました。これは、現時点の判例法理を条文によって固定するよりも、今後の法形成に委ねる方がよいという選択がされたものだと理解しています。このように、明文化するか、判例に委ねるのかの調整もされています。 以上のような調和が図られた結果、法案は形式的にも内容的にも穏やかな改正になりました。法制審議会の部会に参加した研究者で、自分の学説が全て採用されたという人はいないと思います。しかし、全員が、自分とは異なる見解を理解した上、要綱案に賛成しました。法案は、長年にわたる多くの人々の共同作業の到達点であると考えています。 結論を申し上げます。 今回の法案は、穏やかな改正ではありますが、民法の規律を明らかにし、現代化するものです。国際的な潮流に沿うものでもあります。私は、法案がぜひとも早く成立してほしいと願っています。 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、新里参考人にお願いいたします。
○新里参考人 参考人の新里でございます。 お呼びいただきまして、本当にありがとうございます。 私自身は、仙台弁護士会に所属しておりまして、三十四年間弁護士活動をしております。当初から多重債務問題に取り組み、さらに、平成十年十二月からは、商工ローン被害に対応するため結成されました日栄・商工ファンド対策全国弁護団の副団長も務めておりました。平成十八年十二月、グレーゾーン金利の廃止等を伴う貸金業法の大改正では、参議院の財政金融委員会でも参考人で意見を述べる機会も与えていただきました。 貸金業法の大改正の残された課題として、保証被害を防止する仕組みづくり、特に第三者保証人の禁止が必要であると考えておりました。平成二十五年六月十日、当時の民主党が提案されました民法の一部改正、第三者保証の禁止を求める改正案に賛成の立場で参考人としてお話しする機会があり、それで本日もこのような機会を持たせていただいたのではないかと考えております。 私自身は、日弁連の副会長も務めましたし、現在でも日弁連の消費者問題対策委員会の委員を務めております。今回、参考人としてお声をかけていただきましたけれども、商工ローン被害に取り組んできた一実務家として、民進党さんが第三者保証禁止の修正を考えているということもお聞きしましたので、極めて短い期間ではありましたが、保証の問題について賛成の立場から意見を述べるということを考えている次第でございます。 実は、平成二十五年六月十日の参考人でもお話しさせていただきましたけれども、私の実体験も少しお話しさせていただければと思っております。 実は、闇金の被害でそれを解決した私の元依頼者が、商工ローン業者に発行した手形が決済できず不渡りを出し、その朝、未明に首をつるという自殺をしました。遺書があり、生命保険で保証人に迷惑をかけないように、わざわざ、新里弁護士に依頼して債務整理をしてくれということでした。それを聞きまして、何でもう少し前に相談に来なかったのかとすごく悔やんだのでありますけれども、保険金が三千万あったということで、保証人は、公務員を勤めた兄、それから取引先の社長でございました。何とか保証人に迷惑をかけない形で債務整理ができました。 今回、法制審議会が保証問題についても利害を調整し、多大な労力をかけ取りまとめていただいたことについては、高く評価をしているところでございます。保証被害を抑制する観点では、大きな改革となると理解をしております。ただし、第三者保証の禁止については意見がまとまらず、公証人による保証意思の確認という形になったことについては残念に思っているところでございます。 先日の参考人質疑でも、日弁連の消費者委員会の委員の黒木弁護士が指摘した、平成二十四年一月の日弁連の意見書がございます。資料として配付されたと聞いております。その意見書を採択した際の担当の副会長でもありました。法務省にも法改正の論点として提出させていただいております。 具体的には、事業貸し付けにおける第三者個人保証の禁止、裁判所による保証人の責任減免、契約締結時の債権者の説明義務、情報提供義務、説明を怠った場合の契約取り消し、契約締結後の情報提供義務、比例原則、保証契約締結時において、保証債務の内容が自然人である保証人の財産、収入に対して過大であった場合、保証請求された時点で、それに足りる財産及び収入を有する場合でない限り、債権者は保証債務の履行を請求してはならないなどを求めたものでございました。 今回の改正法では、改正案四百六十五条の六で、公証人による保証意思の確認が定められました。保証人が個人であって、事業のために負担した貸し金等債務を主たる債務とする保証債務契約、または主たる債務の範囲に事業のために負担する貸し金等債務が含まれる根保証契約について、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一カ月以内に作成された公正証書で保証人となろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じないとするものです。 ただし、例外として、保証人となろうとする者が、主たる債務者の理事、取締役、執行役またはこれらに準ずる者、主たる債務者または親会社の総株主の議決権の過半数を有する者、主たる債務者と共同して事業を行う者、主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者について、公証人での意思確認が不要とするものでございます。 そして、四百六十五条の二で、貸し金等根保証に限らず、個人が保証人となる根保証契約について、極度額の定めがない場合、無効とするものでございます。 四百六十五条の十は、主たる債務者に対して、契約締結時の情報提供義務を課し、義務違反の場合に、主たる債務者の義務違反を債権者が知り、または知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができる。 それから、四百五十八条の二は、保証人が主たる債務者の委託を受けて保証人となった場合、保証人の請求があった場合の主たる債務の履行状況についての情報提供義務。 そして、四百五十八条の三で、主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報提供義務でございます。 多くの保証被害を抑制する規定が盛り込まれたと考えているところでございます。しかし、第三者保証の禁止が公証人での保証債務を履行する意思の確認に変わり、さらに、出口としての比例原則など責任制限が、条文上、つくり方が非常に困難であるということで、盛り込まれませんでした。 次に、公証人での保証意思の確認についてでございます。 私ども、商工ローン被害を取り扱った弁護士からすると、やはり、もう一つ苦い経験がございます。商工ローン業者であった商工ファンドが複写式の契約書の三枚目などに公正証書作成委任状を忍び込ませておいて、その委任状により、公証人役場で執行認諾つき公正証書が作成されます。保証人は、そのような証書が作成された事実も知りません。 そして、主債務者が支払いを怠ると、保証人に請求がなされ、すぐに給料の差し押さえなどがなされます。会社から呼び出され、やむなく支払いをする。まさしく、公正証書が取り立ての武器として利用されたのでございました。公証人は、保証人作成の委任状が書面上そろっている以上、そのまま執行認諾つき公正証書を作成しています。このようなことが多数起こり、商工ローン被害と言われる状況が生じました。 二〇〇四年、私ども日弁連は、日本の公証人法の母法であるドイツへも調査に行きました。そこで、公証人が極めて尊敬される法律家であり、そこでは、日本ではない教示義務が法定されていることがわかりました。 教示義務とは、公証人は、当事者の意思を探求し、事実関係を明らかにし、当事者に行為の法的射程を教示して、当事者の意思表示を誤解のないよう明確に証書中に再現しなければならない。その際、公証人は、錯誤と疑問を避けるよう、さらに、無経験でふなれな当事者が不利益を受けないよう注意しなければならないとされ、さらに、行為が法律に適合するか、あるいは当事者の真意と一致するかにつき疑いがあるときは、その疑問について当事者と議論しなければならない。公証人が行為の有効性について疑いを抱いたにもかかわらず、当事者が証書作成に固執する場合には、公証人は、当事者にした教示内容とそれに対する当事者の釈明を証書中に記載しなければならないなどと規定されております。 日本では、公証人法二十六条で、「公証人ハ法令ニ違反シタル事項、無効ノ法律行為及行為能力ノ制限ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行為ニ付証書ヲ作成スルコトヲ得ス」と定められておりますけれども、ドイツでいう教示義務を定めたものとは考えられておりません。このような中で、公正証書によるトラブルが十分防止できなかったのではないでしょうか。 では、口授による公証人の保証債務の意思確認で保証人の保護が図れるのかということでございます。 これまでの参考人の質疑の中でも、公証人の実務では口授が形骸化していることがこの委員会の中でも議論がなされております。 銀行取引などでは、金融庁が監督を緩めない限り、現状の、原則として保証人をとらない運用と相まって、一定の効果を生む可能性を否定するものではございません。 しかし、貸金業者はこれまで、貸金業法の改正で、貸し付けの際、特定公正証書作成委任状を徴求することが禁止されてきました。いわゆる特定公正証書とは、まさしく執行認諾つき公正証書のことでございます。今回、公証人での保証債務履行の意思確認に続いて、執行認諾つき公正証書を作成するようになりますと、裁判を提起することなく強制執行が可能となり、保証人が追い込まれかねない事態が招来されかねません。公証人による意思確認が形式的に行われ、かえって、公正証書による差し押さえによる被害が懸念されるところでございます。 私は、前回の参考人でもお話ししましたとおり、公証人による保証意思の確認ではなく、第三者保証の禁止について今回盛り込むべきではなかったかと考えているところでございます。その理由は、保証が自己破産などの原因となっているということでございます。日弁連の破産調査でも、常時二五%前後となっております。さらに、保証が自殺の原因になっていることは既にお話ししたとおりでございます。さらに、保証が再チャレンジの阻害要因となっているものでございます。身ぐるみ剥がれてしまうという状況が再起を不可能にしかねないということでございます。 他方、金融実務におきましては、平成十八年以降、信用保証協会で第三者保証の原則禁止で、ほとんど第三者保証人がとられないような仕組みとなっております。平成二十三年の金融庁の主要行向け、あるいは中小・地域金融機関向け監督指針で、経営者保証以外の第三者の保証人を求めないことを原則とする融資慣行の確立を明記しております。 保証は、親戚、一定の深い関係から依頼を断れない関係にある、よく情義性と言われます、迷惑をかけないからと言われ軽率に行われやすく、経営にタッチしていない以上、利害計算が不可視的であり、さらに、被害が多発していることからすると、第三者保証を民法で禁止する許容性、合理性は存するものではないかと考えるところでございます。 さらに、今回の改正案の中で、主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者について、公証人での意思確認も不要とされております。これにつきましては、保証を断ることが困難な情義的保証の典型であり、新しい民法にふさわしくないのではないかと考えているところであり、修正が必要ではないでしょうか。 既に述べましたように、出口での比例原則など、保証責任の軽減策が採用されておりません。実は、被災者の二重ローン対策としての個人版私的整理ガイドラインにおいては、保証人に責任を求めるケースが限定され、ガイドラインの運用の実務上もこれが定着しております。さらに、経営者保証のガイドラインにおいても、経営者保証人ですら、その責任の軽減策が実行されております。ぜひ、保証責任の負担軽減策についても早期に検討、実行されることを望むところでございます。 さらに、今回は議論はされておりませんけれども、奨学金の保証人の問題でございます。親の連帯保証人、おじさんの保証人など、本人が正規の就職ができず支払い困難にあるにもかかわらず解決ができないのは、この保証の問題でございます。奨学金の保証人の負担軽減を図るガイドラインの策定も焦眉の急の課題ではないかと思われます。 公証人での意思確認については、もしこのまま採択されるのであれば、公証人法の改正、例えば日本における教示義務を認めるなど、具体的な対策を講じなければ禍根を残すのではないかと危惧するものでございます。特に執行認諾つき公正証書の乱用を抑える仕組みはどうすべきか、検討しなければならないのではないかと考えるところでございます。 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 次に、岩田参考人にお願いいたします。
○岩田参考人 皆様、おはようございます。弁護士の岩田と申します。東京弁護士会所属です。 本日は発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。 私は日弁連の司法制度調査会というところの委員をしておりまして、法制審に委員、幹事として出席していた弁護士四名をバックアップするという会議に参加しておりました。それと並行して、東京弁護士会でも消費者問題特別委員会の委員であります。また、日弁連でも消費者問題対策委員会の委員だった時期もあります。そのようなことと、あと、業務上も消費者被害事件というのを今まで多く扱ってきたという経歴があるものですから、消費者保護目線で債権法の改正を見詰めてきたという経緯があります。その観点から、しばらく意見を述べさせていただきたいと思っております。 我が国の民法ですけれども、適用の対象は抽象的な、人というところが伝統的な概念になっていたわけですが、そのため、特に消費者とか事業者という概念は取り入れられてきていませんでした。これは、民法が制定された明治時代に消費者という概念などは乏しかったというか、ほぼなかったということが原因であると思われます。 しかし、現代社会においては、資本主義の発展とともに、契約者間の知識経験の有無の差というものが生じ、それに基づいて経済的格差も生じ、事業者でない者、つまり消費者が経済的弱者として被害をこうむる状況が顕著となってきています。そこで、特に消費者を保護するための立法の必要性が生じ、これまでもさまざまな立法が行われてきたという経緯があります。 ただし、消費者保護を拡充しようと考える人の中でも、例えば消費者契約法というものがありますが、そのような規定を民法の中に直接取り入れるということについては、必ずしも賛成という意見ばかりではありませんでした。消費者契約法の一部だけをかいつまんで民法に取り込むということは、消費者保護の観点からするとかえって薄れてしまうのではないかという疑念があったからだということがあります。 今般、消費者契約法について改正法がことし成立したということがありますが、これとは別に、特別法と明確にすみ分けをするということで、まずは民法、民事法の根本法ですので、民法の範囲内で消費者保護につながる規定をできるだけ盛り込みたい、盛り込んでいただきたいということは強く望まれてきたところであると思われます。 その中でも、今回の民法改正の法案の中で挙げられている代表的なものとして、保証人保護の規定の話と、あと、定型約款のお話について、特にお時間を割いてお話をさせていただきたいと思います。 保証に関してですが、今、新里先生の方から詳細な御説明がございましたので、私の方からお話しするのもちょっとはばかられるところではあるのですが、少しお話をさせていただきます。 改正の議論が始まったのがもう十年ぐらい前なわけですが、当初の学者案の中でも、また当初の法制審の中でも、保証についての規定をどれだけ盛り込むかということについては余り重視されていなかったと認識しています。ただ、保証に関しては非常に重要なもので、保証人を保護するという観点は重視しなければいけないというところがありましたので、日弁連、特に日弁連消費者問題対策委員会が中心になって、保証人の保護の規定をぜひ盛り込んでほしいということで意見を述べてきたという経緯があります。 これまでも金融庁の監督指針というものは存在していたわけですが、民法においては、保証契約は書面で行う必要があるということや、貸し金等債務に関しては極度額の規定がある、あとは元本確定の規定があるなど、ごく限られた保証人保護の規定しか設けられていませんでした。 しかし、御存じのとおり、今も非常に具体的なお話がありましたが、第三者が保証人となるということに関しては、保証人の立場からすると、みずからが借り入れをしているわけではないのに負債を負ってしまう、それによって自己破産、一家離散、または自殺という本当に悲惨な状況が発生するということがありました。もちろん主債務者も、保証人に迷惑をかけてはいけないということで同じように自殺を図ってしまうということは、今もお話をされていたとおりだと思います。 いわゆる商工ファンド事件というものがありますが、これは、裁判所や公証役場などが商工ファンドにうまく利用されてしまったということで多くの被害者を出してしまった、実務家としてはとても苦い経験になっていると思います。 これらのことを考えますと、一歩でも二歩でも、保証人保護の規定を設け、先ほど述べました保証人において起こる、ひいては主債務者にも起こるわけですが、悲劇を防止するということが非常に重要な社会的施策だと考えております。 ですから、保証人保護の規定を拡充するというこの改正の議論ということに関しては、積極的に評価をさせていただいております。速やかに成立していただいて、無用で安易な保証契約というものが締結されないように、改正法が一刻も早く適用される状況になり、さらに、これからお話しするようなさらなる改正の契機としていただきたいと考えております。 詳細な制度の内容に関してはここでは多くをお話しできませんので、レジュメもお配りしておりますから参考にしていただければ助かりますが、とにかく、今回の件では個人保証の制限ということが特に重要な話になります。また、個人保証ができるかできないかという話だけではなくて、情報提供義務というものが設けられている、整備されたということは大きな前進だと考えております。 ただし、配付したレジュメでも書きましたが、公正証書というものに関しては必ずしも十分なものではないという認識は私もあります。悪用されてきたという歴史がありますので、悪用される危険性ということの存在を把握しながら進めていかなければならない。そのために、保証人保護として十分であるかどうかというのは、今後も公正証書のことは特に十分な議論をお願いしたいと考えております。 また、配偶者に関しても、「主たる債務者が行う事業に現に従事している」という限定がついていますが、配偶者も公正証書なく保証人になることができるということになっています。ただ、そもそも夫婦といっても、取締役でもない限り、経営者と言えるかというとそうではないわけで、配偶者という地位だけで保証人になってしまうということについてはまだ疑問が残っています。 これについて反対だという強い意見もあることは存じ上げておりますが、私は反対とまでは言うつもりはございません。しかし、今後の将来の議論の中で生かしていくことということも観点としてはあると思いますので、配偶者を公正証書なく保証人とできることに関してはぜひ慎重な議論をお願いしたいと考えております。 次に、定型約款に関してです。 定型約款に関しては、法制審の議論でも最終版に至るまで案が固まらず、当局と経済界の間の折衝が続いたというお話を伺っております。 約款に関する規定は、諸外国では明文化されているという例もある中で、我が国の民法ではこれまで規定がなかったわけです。 ただ、経済的格差の中で優位に立つ事業者の都合で作成された約款というものに不特定多数の消費者が拘束されてしまうということは、何もこれについて民法に規定がなく認められてしまっているということに関して非常に問題があると言えます。民法において約款に関して規定化されるという方向で議論されてきたということに関しては、これも積極的に評価をしております。 ただし、さまざまな折衝のもとでこの定型約款に関しての規定が法案として上がっているという事情もあると思われますが、現在の法案については、まだまだ今後もいろいろ発展していくこともあると思っておりますので、十分な議論、審議をお願いしたいと考えております。 特に、約款というものの中の一部に定型約款というものが位置づけられるという概念の関係があると思われますが、そもそもの今まで言われていた約款と今回の定型約款というものの違い、区別、限界というものが明確かというと、必ずしもそうではないというところがあると言えますし、また、みなし合意の規定というものも大分緩和されたものになっております。また、定型約款の変更の規定に関しても、大分緩和された要件で設けられる方向に法案がなっていると考えられます。 これらについては、やはりかなり緩くなってしまっているというところを重視して、このような約款の規定を設けることには反対だという意見のあることも存じ上げているところではありますが、むしろ何もないことが問題なのであって、まずは議論を尽くして明文化していただいた上で、さらに実務の積み重ねを経た上でまた修正をするような形が理想的なのではないかと考えておりますので、審議の中でも説得力ある御検討がされることを期待しております。 その他でございますが、今般、消費者保護に関しての改正の議論というのが行われてきた中で、そもそもコンセンサスが得られなかったということで落ちてしまったものが幾つかあります。 幾つかありますが、特に、ここでは一つ、暴利行為というものを挙げざるを得ません。 暴利行為に関しては、いわゆる中間試案までは案としては出ていたんですが、法案になる前で落ちてしまいました。 ただ、いわゆる現代的な暴利行為論というものがあるわけですが、そのようなものの議論が深まる中で、暴利行為に関して知識経験のある事業者が、暴利を追求するために消費者を食い物にしてしまうということがやはり後を絶たないということがあります。特に、高齢者を狙った、例えば投資被害とか不動産の投資関係とか証券関係の被害とか、そういうものがありますが、これらは非常に金額も多くて、暴利につながるものだと考えています。これは、事件の関係で扱っている弁護士としては非常に頭が痛い、裁判所も非常に、冷たいと言ってしまっていいのかどうかわかりませんが、非常に頭の痛いところがあります。 このような悪徳事業者に対抗しようということで、訴訟の手段を我々弁護士としては用いるわけですが、法律的に十分な武器が与えられているかというと、必ずしもなかなかそれが難しいところがありまして、暴利行為というのは非常にその一つの手助けになる規定だと思われていたので、規定化されることを期待していたんですが、現在、残念な状態になっています。 将来にわたってまた必要な議論になってくると思いますので、その点も念頭に置いて審議をしていただきたいと考えております。 また、詐欺の取り消しの場合に特にありますが、取り消しの後にどういう効果が生じるかというところで、原状回復義務というのがあるわけですが、原状回復義務に関しても、取得した利益を全部返すということになると、消費者としては非常に損害が大きくなるということがあり、現存利益に限られる範囲で消費者の利益が図られるということも十分考えられるところであります。 消費者契約法の中では盛り込まれたところでもありますが、民法の中でも考えていただきたいと思っている次第です。 以上のとおりで、短い時間ではございましたが、日弁連の中で中心に検討してきた事項に関して、私自身の見解も入れてお話をさせていただきました。 今後十分な審議がなされますことをお祈りしまして、お話を締めさせていただきたいと思います。 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○鈴木委員長 ありがとうございました。 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。 —————————————
○鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。
○藤原委員 おはようございます。ただいま御紹介いただきました自由民主党衆議院議員の藤原崇であります。 本日は、三名の参考人の先生方にお越しをいただいて、それぞれの御見解をお聞きいたしました。大変恐縮ではありますが、私の方から何点か、二十分という時間で質問をさせていただきたいと思っております。 まずは、三名の先生方のお話を私の方で聞かせていただきました。それぞれの立場から、それぞれの御経験に基づいたいろいろな見解だったと思うんですが、おおむねの民法改正の流れとしては是であるというふうに私は理解をいたしました。もちろん保証の問題であるとかいろいろなところはあるということですが、まずは評価をしていただいているというふうに理解をしております。 そういう中で、私の方からきょう何点か御質問をするのは、今お話を聞いたもので急に御質問をしてしまうところもあるんですが、まず一点目が保証の問題であります。 まず、中田先生にお聞きをしたいと思っております。 先ほど、新里先生からの御意見の中で、第三者保証を全面禁止するべきではないか、そういうような議論、あるいは出口における債務の縮減、そういうことも必要ではないかということもありました。法制審において議論をしていく中で、いろいろな見解、いろいろな利害対立の中で調整をしたというお話がありましたが、まず、この点について、実際、民法の改正にかかわった一人として、御見解を御教示いただければと思っております。中田先生、よろしくお願いします。
○中田参考人 御質問ありがとうございます。 保証の被害ということは共通認識でありまして、それをどうしたら少なくすることができるのか。抜本的な解決としては、確かに個人の第三者保証をなくすというのが根本的な解決かもしれません。しかし、他方で、保証についての需要というのがありまして、とりわけ中小企業の方からは、資金調達のために保証が必要であるという御意見がありました。 さらに、広く考えてみますと、保証という制度は、きのうきょうできたものではありませんで、大昔から、あるいは外国でも広くあるものでありまして、それだけ社会的な需要があるだろう。仮に保証という制度をなくしてしまったとすると、今度は別の形で同じようなことを狙うことが出てくるかもしれない。 そうであれば、むしろ、保証についてできるだけ合理的な制度を設けた上で、さらに、それに加えて、各種の保証の類型に応じてきめ細かい保証人保護を図ることが望ましいだろうというのが大体の考えであり、その方向で、具体的には、貸し付けに係る債務についての個人保証についての規律、さらに情報提供義務、あるいは根保証の保証人の拡充ということが図られたわけでございます。 さらに、出口において債務を縮減するということも、実際そういう御意見もあり、検討されました。ただ、そうすると、結局は保証制度についての利用が非常にしにくくなり、結果的に保証についての需要に十分応えられなくなる、つまり保証が頼りないものであるということになると、今度はそれだけ中小企業などに対する貸し付けが十分になされなくなる、そういう懸念もあり、最終的にはこの法案のような形になった次第でございます。
○藤原委員 ありがとうございます。非常にわかりやすい説明だったと思います。 特に、私、お話を聞いていてふと思ったのは、仮に第三者保証を禁止した場合には、また別のやり方というのを、これは業者さんの方もあるいは金融機関の方も考えるんだろうと思っております。 商工ローンの問題で、いわゆる公証人に対する委任状で、執行認諾つき文言についての作成の委任状をとったというのも、一つ一つの制度はそういうのは昔からあったんですが、それをうまく組み合わせた、うまくという言い方はあれなんですが、逆を言うと、そういうスキームを開発したということで、それで大変なことになったということです。 私もふと思うのは、やはり、仮に第三者保証を禁止したのであれば、住宅の場合ローンがついているのも多いんですが、ではかわりに物上保証で、誰かの不動産、これは出してくれ、そういうような話になってくるということも、一つの考え方としてあるのかな。そうすれば、結局、仮に第三者保証をできなくても、お世話になっている方だから、私の家は住宅ローンが終わったから、そんなに担保価値はないけれども、では抵当権をつけていいですよとか、そういう新たな方策というか対応の仕方をやはり金融機関さんも考えていくということもあるんだろうと思っています。 そういう意味では、第三者保証について、公正証書で、履行意思宣明証書でしたか、そういう形をするというのは、一つのやり方として私は合理的なんだろうと思っております。 保証すること、これはいろいろな動機があると思います。お世話になったから、知人だから、あるいは金銭的にお世話になっているから、いろいろな動機があると思うんですが、私は、動機自体はそれはいいんだと思っています。大事なのは、どれくらいのリスクがあるかということをしっかり認識した上で、この人のためであればこれくらいのリスクはとってもいい、あるいは、お世話になっているけれどもそこまではちょっとと。 一番大事な問題というのは、保証人になる方がどれくらいのリスクを負うか。それは、保証契約書を見れば書いてはいるんですけれども、なかなかそれを現実的に捉えられないというところが問題なんだろうと思っております。 そういう意味で、公正証書で履行意思を確認するということ、このことは一つの調和点として一歩前進だろうと思っております。 ただ、その中で一つ議論になっているのが、改正案の四百六十五条の九第三号ということになっております。いわゆる主たる債務者の配偶者、これについて、四百六十五条の九ということになります。「主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」、これについては公正証書から除くということになっております。 これがどうなのかということもあるんですが、私の個人的な見解としては、公正証書が要らないというケースというのは本当に限定的なのではないかなというふうに思っております。 その点について、それぞれの先生方、これは実務家として、中田先生はちょっと実務から離れている時間も長いのかもしれないんですが、お聞きをしたいと思っております。これは三名の先生にお聞きをいたします。 まず第一点、この三号で注目すべき点としては、括弧書きで「法人であるものを除く。」というふうに書いております。そうすると、いわゆる中小企業のオーナー社長さんが保証するのは公正証書は要らないけれども、中小企業のオーナーの配偶者が保証する場合には公正証書が必要になるというふうに、これは私もちょっと確認をしたんですが、そういうふうになるというふうに確認をしております。すると、実際は、個人事業主、弁護士なんかが典型ですが、個人事業主が融資を受ける場合にのみこれは適用になるんだろう。 さらに、もう一つのくくりとしては、「事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」とあります。ちょっとお聞きをしたいのは、この「事業に現に従事している」という要件について、どのように考えるかということであります。 仮に夫が自営業で働いていて奥様がお手伝いをしているというケース、逆もあると思うんですが、それを想定した場合に、お手伝いといってもいろいろなレベルがあると思うんですね。週に一、二度来て事務所の掃除をして、たまにお茶を出すだけというレベルから、機械的に毎日出ているけれども電話番と郵便物を開封するぐらい、あるいは、もう少し関与が高くなると経理とかそういうことにも携わっている、あるいは、もしかしたら実質的な経営者が奥様というケースもあるかもしれません。こうなった場合に、この「事業に現に従事している」というのはどういうような場合を指すのか。これは広くとるのか狭くとるのかということですね。 今私が言ったのは例示なんですけれども、ある程度抽象的に、この文言というのはこういうふうに解釈するべきではないですかと。そういうところ、これは恐らく、これから法律が施行されれば絶対問題になってくるところだと思いますので、この点について、参考人の方々それぞれから御見解をお聞きしたいと思っております。 中田参考人、新里参考人、岩田参考人の順で、少しこの文言の解釈についての御見解をお聞かせいただければと思っております。
○中田参考人 この主債務者の配偶者については法制審議会でも議論がございました。 一つは、表現として、配偶者という言葉が非常に強く浮かび上がってきて、配偶者だから簡単に保証人にしていいというような印象を与える等、何か夫の借金は妻の借金みたいに見えて、それは変じゃないかという違和感が一見あったのかもしれません。 ただ、他方で、実態として、特に個人事業で家族経営の場合には配偶者が重要な役割を果たしていることがある、財産も、夫と妻と、あるいはその事業等がはっきり分けられていないということもある。そういった実質的に共同経営であるような場合においては、やはりこういう制度はあってもいいのではないかということで、最終的にこうなった次第であります。 ただ、表現の面で配偶者というのが目につくものですから、違和感があるということだと思いますが、これは決して思想的に夫の借金は妻の借金と言っているわけではなくて、今御指摘のように、単に配偶者であるというのではなくて、「主たる債務者が行う事業に現に従事している」という要件がかかっております。 そうしますと、この要件の解釈については、今申し上げたような趣旨、決して思想的に配偶者だから当然そうなるというのではなくて、むしろ、実質的には夫婦の共同事業であり、また、財産関係についても、一体として協力して事業をしているというような趣旨を踏まえて解釈すべきではないか。つまり、この点については、実質的には、今御指摘のように、かなり絞りがかかっているというように理解しております。
○新里参考人 私自身も絞りをかけるべきであるというふうに思っております。 ただ、そうなってしまいますと、「主たる債務者と共同して事業を行う者」という規定があるわけですから、それで賄えるのではないのかなと。殊さら、従事するという格好で、どんな従事でもいいように読めてしまって、配偶者というのが出てくるとすれば、もう前の条項で賄い切れて、特段これを残す意味はないのではないかなというふうに理解しております。 以上でございます。
○岩田参考人 私も、これはかなり制限を設けなければいけないものだとは思っています。 もともとの議論の中で、この案が出るもっと前の段階では、実質的に経営する者という者を経営者という形にして、その人に関しては、第三者保証ということについては余り問題視しないような形にしていたところを、実質的な支配とかという概念というのはすごくアバウトなものなので、ですから、ほかの例では取締役とか理事とか、そういう文言で来ていたところで、では、実際にその限界がどこまで行くかというところで最終的に出てきたのが配偶者というところで、ただ、配偶者もただの配偶者ではさすがにまずいというところで限定がかかっているものだと考えています。 ですから、「現に従事している」というのは、やはり経営状況をある程度理解しているくらいのレベルが求められるものだということは、従前の議論からすると推測ができるところだとは思っています。ただ、この文言だけですと、どういうふうにとられるかというのはまた実務の中の進展を待たなければいけないところがあるので、そこは注意が必要だと思っています。
○藤原委員 ありがとうございました。 それぞれの先生方からのお話がありましたが、おおむねこれについては、無制限の配偶者ではなく、ある程度実質的に本当に関与しているということが要件になるのではないか、まあ、最終的には最高裁が決めることですので、そういう御見解でありました。 私も、新里先生おっしゃるように、「共同して事業を行う者」と同時に並列でありますので、「共同して事業を行う者」よりは少し、この文言でやる場合には、緩いけれどもかなり高いというような形にしないと、二つ並べた意味はないんだろうというふうに思っております。 そして、次に聞きたいのは、実際に、では、そういうことというのは、保証人として配偶者にサインをいただくときに本当に判断ができるんだろうかということになるわけです。 保証のサインをするときに、では、この方は三号の後段の主たる債務者の「従事している」に当たるんだというふうに融資の場で判断するのはかなり難しいと思うんですね。会社の役員かどうかとかそういう話じゃなく個人事業主ですから、完全に融資する相手方の内部の話なので、ではどういうような証拠資料をそろえればこの要件をクリアしたと確信を持ってサインができるんだというのは、これはすごく難しい問題だと思うんですよ。 そうすると、次に出るお話は、岩田参考人にお聞きしたいんですけれども、仮に銀行とかが融資をするときに、こういう場合、配偶者からサインを、配偶者がこの三号に当たるかどうか相談がありました、ある程度事情は聞いた、だけれどもどうかとなったら、私、弁護士さんであれば、まあ、それであれば念のため公正証書で確認をした方がいいんじゃないですかと。私、普通の弁護士であればそういうアドバイスをするような気がするんですけれども、そこについての御見解はいかがですか。
○岩田参考人 まさしくそれは一つの意見だと思っています。 やはり、公正証書で保証人になるということ、保証の意思を確認した上で保証契約するということがある意味原則的な規定になるとすると、それはやはり重視をしなければいけない。そうすると、公正証書は要らないという場合については、ある程度慎重にならなければいけない。立証責任がどうなるかということはまたこれから発展する話だと思いますが、銀行の方が立証しなければいけないという義務が出てくるとなると、慎重を期すためにはやはり、公正証書で公証人の目を通してということが必要になるのではないかとは思っております。
○藤原委員 ありがとうございます。 実務家としてお聞きをさせていただきました。なかなか、現場でこの三号を一気に使っていこうというのは結構勇気が要ると思うんですね。 例えば、弁護士さん、あるいは融資の担当者の方で、いや、これは三号に当たりますと言っても、五年後、十年後、相手方がどう言ってくるかもわからないとなると、なかなか勇気が要る、それであればしっかりとっていこうという方向に行くと思うんですね。 これは、どちらに転ぶ話とは別で、事実としてそういうことがあるということは押さえた上で議論をこれから進めていく必要があると思っております。 では、この三号はどういう場合に使えるか、それを審議の中で明らかにしていくことも必要かもしれませんし、あるいはそれ以外のやり方もあるかもしれないけれども、まずはこの条文を出発点にして、実際にこれが実務に出たらどういう使われ方をするのか、そこをやはり頭に入れなければいけないんじゃないかなと。 私、条文を見たとき、意外とこれは使われる場合が少ないんじゃないかと思って、かなり限定されている条文かなと思ったので、お聞きをしました。 それから最後に、一点、全く違うお話なんですが、中田先生にお聞きをしたいと思っております。 新里先生から、執行認諾文言つきの公正証書のお話がありました。大きな問題だったと思っております。しかし、これは別に、私、企業の回し者というわけではないんですが、そもそも債権回収とかのときに裁判をしなくてもいいように、これは公正証書としてあるわけなんですよね。そうすると、あるべき認諾文言つきの趣旨というか、これはどうあるべきかということ、これは研究者としてお聞きをしたい。 こういうものはもしかしたら全廃した方がいいという御見解があるのかもしれませんが、これは素直に、ちょっと、あるべき今後の課題として、研究者の立場で、執行認諾文言つき証書についてはどうあるべきか、商工ローン等の問題を踏まえて、もし御見解があればということで、いただければと思います。
○中田参考人 強制執行認諾文言という制度自体はそれなりの利用がされ得るものであって、制度自体がいけないというものではないと思います。むしろその使われ方が懸念されるわけでございまして、とりわけ、先ほど新里先生からのお話もありましたように、保証人になる意思の確認の際に、ついでにといいますか、強制執行認諾文言までとられてしまうということの懸念というのをお示しになられました。 ただ、公証人のなすべきことを考えますと、公証人は、保証契約をすることの意味をきちんと説明して、その意思を確認する、これは当然でございますけれども、強制執行認諾文言はそれとは別の話であって、それもやはりきちんと分けて説明をし、強制執行認諾文言というのは決して保証契約の要件ではなくて別の問題なんだけれども、しかし、裁判がなくても強制執行される可能性があるんですよということをきちんと説明した上で、さらにその真意を確認する、二つの真意をそれぞれ確認するという作業が必要であろうと思います。そうすることによって、この懸念は相当程度緩和されるのではないかと考えております。
○藤原委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。審議に生かしていきたいと思います。 本日はありがとうございました。終わります。
○鈴木委員長 次に、吉田宣弘君。
○吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。 本日は、中田先生、新里先生、岩田先生、本委員会にお越しいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、非常に、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。 私も、この民法改正について、これまで審議に臨ませていただきましたけれども、今回の改正は、民法制定から百二十年というふうな長い期間を経ての改正ということでありまして、この間、さまざまな事件が裁判になって判例となって、また、先輩方がたくさん積み重ねてこられた経験を踏まえた実務、こういうものが集積をされて、これが一つ、民法の明文化、国民にわかりやすい民法という形で、今回改正が行われ、提起をされるということかと承知をしておりますけれども、私自身は、ちょっとこの百二十年という期間はいささか長いのではないかというふうな印象を持っております。先ほど中田先生から諸外国の例も少しありましたが、ドイツでは意外と頻繁に改正があっているというふうな印象を私は持ちました。 そこで、中田先生にお聞きしたいんですけれども、外国の例で、もし御存じであればということですけれども、例えばフランスもありますし、ドイツもありますし、また英米法になるとちょっと変わってくるのかもしれませんけれども、この民事法、特に民法は大体どのくらいの期間で改正をしているものなのか、もしお教えいただければ、教えを請いたいというふうに思っております。
○中田参考人 ありがとうございました。 小さな改正というのは、外国でも日本でもそれなりにあると思います。 ただ、大きな改正ということになりますと、ドイツは、民法ができたのが一八九六年でございますけれども、その後、債権法の改正が二〇〇一年になされまして、二〇〇二年から施行されております。 フランスは、一八〇四年に民法ができたのですけれども、債権法の部分について言えば、二〇〇四年まで改正がなくて、それ以前に家族法については大改正があったんですけれども、二〇〇四年に、民法典ができて二百周年ということで、当時のシラク大統領が、債権法や契約法の大改正をする必要があるだろう、現代化する必要があるだろうということで、そこから幾つかの草案が出された結果、最終的に、ことし、二〇一六年の二月に改正が成り、十月一日から施行されております。 ですから、大改正ということでいうと、結構、やはりそれぞれの国、なかなか動かしがたいところがありますのでかなり間があくんですが、ただ、今、フランスとドイツの例を挙げましたけれども、それだけではなくて、オランダや、そのほかラテンアメリカの国、あるいは南アメリカの例えばアルゼンチンなどでも改正があったりいたします。ちょうど二十世紀終わりくらいから、そういった世界的な潮流があるという状況でございます。
○吉田(宣)委員 ありがとうございました。 済みません、少し中田先生のお話を聞き違えていたようでございまして、意外と、ほかの大陸法系のフランス、ドイツも、割と長い期間かかって集積されたものが、大改正という形で今世紀になって改正をされたということのようでございますし、やはり、グローバル化されて高度通信情報の社会になったのでしょうか、各国もそういったことで、今世紀になって改正をされているというふうなことをお教えいただきました。 では、少しずつ各論に入っていきたいと思います。 先ほど藤原先生からもお話がありましたけれども、執行認諾文言つきの公正証書と言われるものが本委員会でもこれまで議論をされてまいりました。この公正証書、紙一枚と言うとちょっと申しわけないですけれども、この文言がついた公正証書があればそのまま強制執行をかけられるという意味では、確定判決と全く同じ効力、強力な効力を有する公正証書であるというふうな理解を私はしております。 私は、確定判決と同じぐらいの効力というものを、公正証書に認諾する文言が入っているだけという理由で強制執行ができるということについて、いささかちょっと違和感を持っているところでございます。 済みません、また続けざまに中田先生にお聞きをしたいのですけれども、この執行認諾文言つきの公正証書の制度がそもそもある理由というものはどういうことなのか、なぜ確定判決と同じ効力を、いわゆる、繰り返して申しわけないんですけれども、表現は悪いですが、紙一枚のことはないでしょうけれども、紙一枚に付与をしているのか。その理由、制度趣旨等について教えていただければと思います。
○中田参考人 私は民事執行法の専門家ではありませんので、正確なことを申し上げられるかどうかわかりませんですけれども、当事者の間で紛争があって、その紛争を解決するというときに、幾つかのやり方があると思います。裁判所に行って簡単な形での和解にするという方法もあると思います。それはそれで強制執行ができるという状態になります。そうではなくて、金銭債権に限ってですけれども、裁判所に行かなくても、そこに行ったのと同じような形での証書を作成するということで、同じ効果をもたらすことができるというような例えばニーズがあると思います。 その際に、確かに、おっしゃるとおり紙切れ一枚かもしれませんですが、公証人が関与するわけでございまして、公証人というのは、御承知のとおり、日本においては、裁判官や検察官を長年経験されたベテランの方々がなさる。そうすると、裁判所でやるような意味での公正さも、それに準ずるような公正さも担保されるのではないかということで、社会の需要にも鑑みてこういう制度を設けられているのではないかと思いますけれども、さっき申しましたとおり、専門家ではありませんので、ごく概略的なことでお許しください。
○吉田(宣)委員 ありがとうございます。 私も、ニーズというものについてはあるのかなというふうに思っております。 例えば養育費の件を取り決めるときに、これは裁判をしてというふうなこともあるのかもしれませんけれども、そうでなく、やはり、継続した生活というものを前提にすれば、早くしてしまうという意味では大切なことだろうとも思いますし、もし別れた御主人が養育費を払ってくれないというようなときには、やはり公正証書できちっと執行をかけていくということは私も大切なことだと思いますが、一方で、この大改正の中で問題になっているいわゆる保証について、この執行認諾文言つきの公正証書の運用というものについては私はやはり少し心配をしております。 今般の改正で、公正証書を作成するに当たって、保証意思というものを公証人が、先ほど中田先生がおっしゃったように、元裁判官であったり検察官の方であったり、しっかりとした法律の素養を持たれた方がちゃんとお聞きをするということなのかもしれませんけれども、強制執行をそのままできる公正証書に直接結びつくというふうなことは私は心配もしておりますし、そうでない公正証書ももちろんあるわけです、執行の認諾文言がついていない公正証書もあるわけであって、それについては、私は今般の改正というのは非常に有意義であろうと思うんですけれども、この認諾文言つきの公正証書にダイレクトに行くには少し心配をしております。 したがって、この二つの公正証書というのは運用においては差別化されなきゃいけないのではないか、この認諾文言つきの公正証書の作成に当たっては手続等々を厳格にしなければいけないのではないかというふうな思いを私は持っております。 先ほど新里先生から、その点、いわゆる教示義務、ドイツのあり方、そういったものの御説明がありました。これもやはり、日本の中に公証人法の改正という形で取り入れてくることは私は大切なことだろうと思います。今後しっかりその点も深めていかなければならないと思いますが、現状まだそういうふうなところまで至っていないという意味において、今度は新里先生と岩田先生とお二人にお聞きしたいんです。 保証契約において執行認諾文言つきの公正証書として作成をする場合には、より一層厳格な運用というものが求められなければいけないと私は思っておりますけれども、この点、もし、いや、そんなことはないんだとおっしゃるのであれば、それはそれでおっしゃっていただければいいと思います、もしそうだというふうにお思いであるのであれば、具体的な実務運用の中でどういうふうな方法があるのか、そういったことについて、まず新里先生からお教えください。
○新里参考人 新里でございます。 先ほど中田先生が、いわゆる保証意思の確認と違う公正証書、執行認諾のをつくるんだということをきちっと説明すれば誤解が解けるという話もありました。 ただ、先ほど言った教示義務ということを、例えば日本でいうと説明義務だったり介助義務とかと言うかもしれませんけれども、そこの規定が公証人法にもないのですね。今回、きちっと説明する義務的なものがこの民法の中にも出ております。ただ、口授を受けて確認をして署名をするというだけになっていて、そこに機械的な作業しかないという格好になっていて、当事者、保証人の誤解を解くようなことの仕組みづくりがないのですね。ですから、この民法の改正のどこにもありませんし、公証人法の中にもない、そこをどうつくっていくかというのが一つではないのかな。 そこを議論しておかないと、もともと裁判官や検察官がやっていたことだから大丈夫だよということではなくて、やはり仕組みとして、公証人制度として当事者の誤解を防ぐような仕組みがあるのかどうかということを議論して、ではそれを使いますかということにならざるを得ないのではないか。 それで、先ほど来言ったように、どうも、やはり形式的審査権しかないんだということを公証人さんがよく言われる、私たちにいろいろなことを言われたって困るよねということを前提にして制度を考えてはいけないのではないかな。そこをきちっと変えていく作業をしながら、もしこういう運用でやるとすれば、そうなるのではないかなというふうに思っております。
○岩田参考人 御質問ありがとうございます。 その問題意識というのは、先ほど私もお話しさせていただいたことにつながるんですが、やはり公正証書、執行認諾文言つきというところで悪用されてきたということがどうしてもあります。ですから、公正証書がもちろん万能ではないということがありますので、公正証書に認諾文言を入れること、そういう制度自体を保証の場合なくすというところまでいくとなるとなかなか難しいかもしれませんが、運用の面で改善する余地はいろいろあると思います。 公証人もやはりどうしてもばらつきが出てくる可能性もありますので、公証人の中で、保証人になろうとする人に対してどのようなことを確認するかということをちゃんと類型化するとか、あとは、それをどういうふうに説明するか、説明義務というのか、名称はいろいろあるでしょうけれども、説明するときの技術の問題とかもあると思いますので、これは本当に、明文にするものではないかもしれませんが、十分検討していただいて、どういう具体的によい制度になるかというところはぜひ検討していただきたいと思います。
○吉田(宣)委員 ありがとうございます。 我々も当然勉強をしていかなければいけませんし、今後の検討だろうと思います。 私なんかは、執行認諾文言つきの公正証書の場合には必ず、例えば依頼者が弁護士さんにきちっと介在をしていただいているような、保証人となる方の保護がしっかり担保されているようなことも一案なのかなと思うんですけれども、とはいえ、それを制度化するとまた法改正というふうなことにもなりますので、そういった意味では、私も勉強を深めていかなければいけないというふうに思います。 次に、もう最後のお話になると思いますけれども、やはり保証人の保護を完全に貫徹するためには、第三者保証というものを全面的に禁止するというふうなことが一番早かろうということは私もそのとおりだと思うし、そういった観点からの委員会審議もこれまで行われてまいりました。しかし、今般の改正ではそのようになっていない。それにはさまざまな要因があって、その一つに、やはり中小企業の皆様の強い要望があるというふうなことだと理解をしております。 では、そもそも、中小企業の皆様がなぜ保証人を立てないとお金を融資していただけないような仕組みになっているのか。その点、金融庁がここにいればちょっとお聞きをしたいところなんですけれども、きょうは参考人ということでございますので、岩田先生と新里先生に、将来、第三者保証を全面禁止するというふうなことになって、クリアしなければいけない中小企業の皆様の側の事情というふうなものについて何か見聞がございましたら、新里先生、岩田先生の順番でそれぞれお教えいただければと思います。
○新里参考人 やはり、どんどん金融実務が変わってきて、金融庁が主体的に第三者保証人をとらない金融実務というのをどんどん進めてきて、本当に少なくなっているのではないでしょうか。 それから、以前は保証協会が、保証協会というのはまさしく中小企業が借りるときに保証人がいないときのための制度なのに、その保証協会が保証をとっていたということを平成十八年からやめているわけですね。 ですから、ほとんど第三者保証というのは少なくなってきているのではないのかなという中で、では今、だからこそ民法の中でも言えるのではないかというところを私どもは思っているところでございます。それぐらい金融実務というのが変わってきた。 それは、金融庁が主体的に進めてきていただいたという中でそういう実務が進んでいるのではないか。それはきっと、政府としても、保証人になって、それが再チャレンジを妨害するんだという認識が非常にあるということを踏まえて進んできたんだろうなというふうに思っています。 ただ、今もし阻害要因があるとすれば、やはりそういう中小事業者が借りられないという思いは抱いていらっしゃる。それをどういう補完をするかというと、例えば、何らかの保険制度なり共済制度的なことを一部中小企業団体の方でもつくることを検討されているというのも聞いたことがありますし、違う補完作用を考えるということ、みんなで負担し合うというような仕組みでないと、個人の、その人が負担をするんじゃないような仕組みを考えないといけないのかなというふうには思っております。 以上でございます。
○岩田参考人 なかなか難しい問題だとは思います。 金融実務については詳しくないのでなかなかお話はできませんけれども、これは聞いたお話で、やはり、現状、経営者として保証人にならなきゃいけないというモラルハザードの問題がありますが、そういう事情はなかなかなくなりはしないものの、ただ、実情としては、経営者が保証するという場面でも保証人にならなくてもよい例というのが出てきているというお話も聞いたことがあります。それはもちろん、長年金融機関とのつき合いがあって信用があるからということもあるでしょうし、物上保証があるからそれでいいということもあると思いますが、いろいろな事情で保証人にならなくてもよい、保証人がとられない事情というのは拡大してきているのではないかという実感はあります。 本当にこれはもう、後、どういうふうになるかというのは、貸し金でいえば、貸し金の部分でどれだけの金額を貸すかで、また、保証などの担保をどれだけとるかということも影響してくるとも思われます。ですから、多額の金銭を貸すということが本当にいいのかどうかというところも含めて、金融関係のところでもう少し大きな議論が必要な話なのかもしれないと思っております。
○吉田(宣)委員 三名の先生、本当にきょうはありがとうございました。 質問を終わらせていただきます。
○鈴木委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 民進党、信州長野の井出庸生と申します。 本日は、三名の先生方、大変急なお願い、お忙しいところ、お時間をいただきまして、心から感謝を申し上げます。 早速質問に入らせていただきます。 まず、中田参考人にお伺いをしたいんですが、先ほどの議論でも改正の頻度というものが議論になったかと思うんですが、大改正という意味においては、国際的な潮流に今回沿うものだというお話なのかと思います。ただ、議論のまとまらなかったところもあるかと思いますし、判例法理を盛り込んだものと、見送って今後に委ねたものとあるかと思うんです。 例えば、よく法律の審議ですと、国会では、三年後にもう一度見直しをして、必要があれば検討するというような条文をくっつけたりするようなこともあるんですが、それは三年か五年か十年がいいのかわかりませんが、今後の改正の必要性というものについて御意見をいただければと思います。
○中田参考人 ありがとうございました。 今回の改正でたくさん規定を設け過ぎて、その結果、近々もう一遍見直しの必要があるというものよりも、むしろ、意見がまとまらなかったから、本当は明文化を求める指摘も相当あったけれどもそれが取り込まれなかったというものが多いのではないかと思います。そうすると、むしろ、今後の見直しという観点からいうと、今回の法案について、何年かたって見直しをするというよりも、今後さらにつけ加えるものがないだろうかという、そっちの方の話になるんじゃないかと思います。 と申しますのは、先ほどの意見でも申しましたけれども、今回取り込まなかったのはなぜかというと、明文化することによって規律ははっきりしてわかりやすくなるというメリットはあるわけですが、その文言について、ひとり歩きすることに対する懸念というものも相当示されました。そうすると、非常に厳格な文言にしていけばいくほど、今後、判例などによる法形成がかえって拘束されてしまうだろうというような配慮で、今回は立法化はしないで、将来の判例による法形成に委ねた方がよいだろう、こういう判断をとられたのだと私は理解しております。 そうしますと、将来、さらに判例が進展いたしまして、かなりもう法理が明確になってきたということになってきますと、それをまた民法に取り込むということはあってよろしいのではないかと思います。
○井出委員 ありがとうございます。 もう一点、きょう、少し保証の関係で三名の先生方にお話を聞きたいんです。 まず中田先生に伺いたいのですが、法制審の議論に参加をされていたときの御記憶でお願いをしたいのですが、今回、配偶者は保証の公正証書は要らないよというような議論をするときに、夫なり奥さんが仕事をしていて、そこに従事をしている、その配偶者というのは恐らくほかには仕事をしていないんだろう、その御夫婦の夫なり奥様が一生懸命お仕事をしているのを毎日お支えになっているような方が想定されているのかなと思うんです。 さはさりながら、別に仕事をされる配偶者も昨今大変多くなってきておりますし、別にお仕事をされている配偶者の方がむしろ財産という意味では保証人にふさわしいのではないか、そういう見方もできるとは思うんです。そうした、配偶者という考え方も時代によって変わってきていると思うんですね。そのあたりの御議論というのが法制審であったかなかったか、教えていただければと思います。
○中田参考人 今の御指摘の点については、配偶者という概念をここで持ち込むことについて、先ほども申し上げましたけれども、あたかも夫の借金は妻の借金というように見えてしまうということについての懸念というのがあったと思いますが、そういう違和感というのがあるのかもしれません。あるいはまた、もう一つは、常に夫婦が一体であって同じ仕事をしているという家族観を前提としているというような疑いを持たれるという懸念がひょっとしたらあったのかもしれません。そういう議論があったわけではないのですけれども。 ただ、さっきも申し上げましたとおり、「主たる債務者が行う事業に現に従事している」という点が特に重要だと思っておりまして、個人事業で家族経営などの場合に、夫婦が一緒に仕事をしていて、かつ、その財産もどっちの財産かよくわからないようなものがあるというときに、共同事業というその前の部分に当たらないとしても、やはり、それが配偶者であるということから、それに近いものと見られるんじゃないか、こういうことだったと思います。 もう一つは、配偶者という言葉を入れることによって逆に言うと絞り込んでいるという面もありまして、例えば内縁の配偶者はここでは多分入らないのではないかと思うのですけれども、そうすると、かなりここは限定的な絞りがかかっているということであり、かつまた、思想的に夫の借金は妻の借金だとか夫婦は一緒に仕事をすべきだというものとは異質な内容のものであるというふうに理解しております。
○井出委員 具体に配偶者というものの御議論は別としても、そういういろいろな古い観念といいますか、危惧があって、それに対してはきちっと対応された、議論がなされたというお話だったと思います。ありがとうございました。 次に、新里先生に伺いたいのですが、公証人の部分なんですが、ドイツに視察に行かれた、それから、特に教示義務のところをお話しされていましたが、公証人というものを、私も最近、日本の公証人という人がどういうことになっているのかなと思って、お話に出ていますが、裁判官、検察官、平均年齢はたしか六十四歳と聞いておりまして、検察官は、私が調べたところ、検事正経験の方が大変多いんですね。 とある弁護士さんが、これはもうブログで世間に書いているんですが、検察官出身の弁護士さんが、自分がかつて仕えた検事正は検事正時代から公証役場探しを一生懸命やっていたというようなことを、これはもう公に書かれているのでお話をしますが。 今の日本の公証人の選任の仕方、そういった人選の中で、果たして教示義務というものが、ドイツはもっとお若い、例えば検察官が公証人になるとしても、もっと実務を一生懸命やっている四十代、五十前後ぐらいの人がやっているのかとか、その辺のところを少し、わかる範囲で教えていただければと思います。
○新里参考人 裁判官それから検察官の第二の職場的なものになっているのかなというふうに思っているところで、ですから、実は私、六十四歳でございまして、今出た平均年齢のところなのかもしれませんけれども、どうもやはり年齢が高いのかなというふうには思っております。 ドイツの場合は、最低で三十五歳だったと調査報告書に書いてあったと思いましたけれども、やはり、別のルートでも、公証人というのは非常にステータスが高い、町の中でのいわゆるエリートという位置づけで、そういう意味では、私らが教えていただいた方も四十代の、実際、教示義務を果たしている契約書作成の場に立ち会わせていただきましたけれども、そういう若い、ばりばりという感じの方がやっていらっしゃるというところでございます。 ですから、一時、公証人のトラブルがあったということで、公募制度をきちっとやろうということでやりましたけれども、それが広まらなかったというのが現状になっているのではないのかなと。 僕は、個人的には非常にすばらしい法曹の方がなっているというふうに理解しております。ただ、制度の仕組みとして、それを生かす仕組みになっていないのではないのかなというふうに思っています。その中で、例えば大量事件等が持ち込まれると言われて、商工ファンドがどんどん来るということになると、それがお得意さんになってしまってスルーパスになるケースも出てきて、そこで被害が出たのではないのかな。 そうすると、やはり、きちっとした教示義務というか、少なくとも介助義務、説明義務とかみたいなのが必要になってきます。 ドイツでは、個人事業者だということで、公務員という扱いですけれども国賠ではなくて個人責任が認められているということで、きちっとやらないと自分の責任。ですから、保険制度とともに個人責任というのが確立していると聞いておりますけれども、日本の場合は、法改正の中で、いわゆる国賠、国家賠償法の中で責任を負うという格好になっていて、個人責任は問われない、それから具体的なそういう義務のところもないというところがあって、すばらしい人材の方が制度として生かされていないのではないかなというふうに理解をしております。 だから、個人的な方で、あの人はひどいなというようなつもりはございません。制度の問題として考えていくべきじゃないのかなという理解でございます。
○井出委員 私も、公証人されている方で大変すばらしい方を幾人も存じ上げているので、制度論としてこのことを議論していきたいと思うんです。 新里先生は、第三者保証の禁止について、また公証人の制度などについても、もし取り入れるのであれば見直しが必要だという、教示義務のところですね、それは今回の法改正とあわせてできれば議論をしてほしいというお考えなのかと思うんですが、その第三者保証のところで、最後に奨学金の保証の問題にもお触れになりまして、私も、個人事業主、今回、配偶者のところが焦点になっておりますが、そういう部分だけじゃなくて、もう少し保証のあり方を見直すのを、奨学金もそうでしょうし、ほかにもいろいろあるんでしょうけれども、少し分野横断的にこの保証の問題を考えていかなければいけないと思うんです。 第三者保証の禁止を、今回、民法の債権法のところに現状としては入っていない、できれば入れたい、もし第三者保証の禁止が入ったとすれば、そういったものが横へ横へ、他分野へも拡大、そのような効果も見込めるとお考えか、そのあたりをちょっと教えてください。
○新里参考人 法制審の中でもいろいろな議論がなされていて、日弁連の中でも第三者保証を全部という話をした時期もあります。ただ、どうもやはり難しいということで、例えば創業三年の中で金融が得にくいところについてはやはりしなきゃだめだねということもあっていろいろな提案をさせていただいた、だけれども、なかなか皆さんの合意が得られなかったということで今回見送られたということだと思います。 あるべき論からすれば、僕は、第三者保証がないような社会をみんなで協力してつくっていくべきではないかなというふうに思っております。 それから、横の広がりという意味では、奨学金の保証人の問題、特に、同一生計ではない、今、機関保証という格好がどんどん進んできましたけれども、まだ、今までの保証からすると、連帯保証の、両親のどちらか、それから、よくあるのはおじさんが保証人という格好になっていて、そこらに不動産があったりして、通常であれば、もう支払い切れないね、破産をしたいんだけれどもと言うんだけれども、破産もできなくて困っているというのがある、そこらをどう考えていくかというのが先ほど述べたところです。 それから、今一番問題になっているのは家賃保証の仕組みではないでしょうか。やはり高齢者がふえていく中で、保証人がなければ借りられないよといったときに、ではそういう高齢者の保証人になる人がいるのかというと、なかなかいない。今、単身高齢者が非常にふえてくる中で、それの居住の安定をどうつくっていくかというのが社会の大きな課題になってきて、それの障害になっているのが保証人だということ。 ただ、ここについては、いろいろな団体または株式会社も含めて保証をつくる、ただ、保証だけしてしまうと貸し倒れが非常に出てしまうので、見守りの仕組みをつくりながら、保証は保証でしていく、そういう居住の安定をどうしていくかという大きな取り組みが進んできていて、その効果が少しずつ見えてきているのかな。そんなところにも、住居の安定のために、個人保証をとらなきゃだめだよねという仕組みから、やはり国がかかわった仕組みに変えていかなきゃいけない。 そういう意味で、個人保証のところのここは突破点だと思いますけれども、いろいろ広がりがあるし、非常に重要な問題になっているのではないかなというふうに思っております。 以上です。
○井出委員 ありがとうございました。 次に岩田先生にもお話を伺いたいのですが、先生のきょうの冒頭のお話ですと、例えば公正証書のところが不十分であるとか、定型約款についてもさらに実務を積み重ねて修正が必要だと。全体としてこの改正を評価しつつ、ただ、具体的にも暴利行為が落ちているところもございますし、改正の指摘をされております。 先ほどの中田先生への質問と重なるんですが、三年後の見直し、五年後の見直し、まあ十年後の見直しでも結構なんですが、今後の改正、見直しの必要性、これを、さすがに百二十年またこのままというわけにも到底いかないと思いますし、先生のお話ですと、もう一度見直しをする機会というのは割合早い方がいいのではないかなという印象を受けたんですが、その点についてお願いいたします。
○岩田参考人 御質問ありがとうございます。 お話ししたとおりで、法案になっている内容が十分なものかというと、とても、まだまだ検討の余地があるというのは一応あります。ただ、基本的には賛成で、やはり改正というのは、一度に全部ざっとできて、それでもう完璧ということはあり得ないので、そういう意味では、理想的に考えたら、少し前進して、不備があればまた改正してというのが多分いいと思われます。ただ、民法なので、余り頻繁な改正というのが本当に望ましいかという問題もあるので、その辺がなかなか難しいところだと思っています。 ただ、本当に今回の件は、法制審の議論の中でも、いろいろ内容が変わったりとか、あと落ちてしまったりとかいうところがあって、内容の変わったところも、いろいろな議論に基づいて変わっているので、本当にそれが正しかったかどうかというのも今の時点ではまだまだわからない、将来にわたって考えなければいけないことがあると思いますから。 本当は、見直しの機会も、何年先というふうにはっきりは言えないと思いますが、個人的にはそういう機会が近い将来あっても十分だと思いますし、まだ議論を尽くしていない、先ほどの暴利行為に関しても議論がなかなか尽くされていない、暴利行為というのが何を示しているかというところがなかなかコンセンサスが得られないというのがあったので落ちてしまったところがあるんですが、これは実際には判例の積み重ねはありますので、本当に近い将来で明文化するということは十分あり得ると思いますので、そういうのも含めて、改正の機会がさらにあればいいなとは、これはもう本当に個人的な意見で、思っております。
○井出委員 ありがとうございます。 もう一点、各論を教えていただきたいんですが、定型約款のところです。みなしの合意、また変更のところについて、緩和されたというようなお話を冒頭されていたかと思うんですが、例えば変更の規定は落としてほしい、これは、勝手に変更されてしまうんじゃないか、ただ、逆に、約款をつくる側からすれば、何かあったときに変更できなきゃ困るという議論もあると思います。あと、その前段、定型約款のみなし規定のところを、少なくとも、みなしじゃなくて、具体的な事実があればきちっと反証できる推定にするべきでないかという先生もいらっしゃるんですが、その二点、推定にすべき、それから変更は落とすべきという、その規定というのは、いずれも不特定多数の皆さんのお立場に立った御主張なのかなと思って聞いております。 そもそも約款自体初めての規定ですから、そういう意味では、少し慎重な書きぶりから入るということも一定の理があるのではないかなと思うんですが、先生の御見解をいただきたいと思います。
○岩田参考人 約款というのは、本当に規定が今までなくて、それを新たに明文化しているというところがあるので、やはりいろいろ懸念があるというところはあり、また、各団体というか、いろいろな思惑があるというのはどうしてもありますから、今みたいな懸念というのは出てくると思います。 このみなしの合意というのももうちょっと厳しかった、定型約款の内容が事前に開示されていて、それが認識が可能な状態まで必要ではないかというような議論もあったわけですが、そこまでは要らないというところで緩和された中で、一つ戻すために表示義務というのもあるわけで、少し揺り戻しもあるわけですが、そこのところで、約款自体が無効になってしまってはいけないという前提が一つありますから、どうしても、少し状況として、緩やかにある程度は認められるような、契約の効力が発生するようなことになっているという方向はあると思います。 それが実際に、まあ、不適切とまで言うわけではないですが、いろいろ支障が出てくるかどうかというのはまだちょっとわからないところもありますので、もう少し、また制定された後で様子を見なければいけないかなと考えているところはあります。 変更の規定も、もともと、やはりあらかじめ約款の中に変更の規定を設けていないと変更ができないんじゃないかというところは議論がされたところではあるんですが、それだとやはりちょっと窮屈過ぎるというところがあって、あらかじめこういう事情があった場合には変更できるという規定がなくても、後の事情で変更できる場合というのを要件を立てて設けているわけです。 この要件自体は割といろいろな要素を盛り込んで、相当かどうかというところ、合理性があるかとか、そういうところで要件を設けて、それに該当する場合は変更ができるというふうになっていますが、これも、その要件立ての仕方が本当にわかりやすいかとか、あと、適用が、どういうふうに適用されるか、厳格に適用されるのか、緩和されて適用されるかというのがまだわからないところもありますので、この辺は、ちょっとまた御議論もいただいた上で、どういう解釈の方向に行くのかというところはまたいろいろ変わっていくのかなという感じはしています。
○井出委員 時間になりましたので、終わります。 きょうは本当にありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、藤野保史君。
○藤野委員 日本共産党の藤野保史です。 三人の参考人の皆様、御多忙の中、貴重な御見解をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。よい民法にしたいという思い、一歩でも二歩でもというお言葉もありましたけれども、本当にそうした強い思いをきょうも感じさせていただいております。私も、これをしっかり受けとめて、今後さらに一層充実した質疑を通じてこの民法を本当にいいものにしなければならないというふうに思っております。 きょうも感じたんですけれども、やはり皆さんの長い蓄積の上で今法案が国会に提出されているというふうに改めて思いました。前回も、黒木参考人から、日弁連として全国で六十人弱のバックアップチームをつくって、百二十四回も議論をして法制審に臨んでいたというお話もお聞きしました。学者の皆さんもさまざまな準備をされてきたとも認識しております。ただでさえお忙しい皆さんがそうやって熱意を持って主体的にかかわってこの案をつくっていただいているということだと認識しております。 黒木参考人は、前回、なぜそこまで忙しい中でやったのかということについて、こうおっしゃっております。通奏低音として、ずっとそこに響いている音として、契約格差の問題が意識され、議論されたからだと。契約格差の問題、そうおっしゃっておりました。ですから、私も、きょうはこの角度から三人の皆様に幾つか質問させていただきたいと思っております。 まず、岩田参考人にお伺いしたいんですが、契約格差という点でいいますと、消費者の問題を御専門としてやられてきて、先ほども消費者目線という言葉がありました。今法案には、消費者という定義、あるいは事業者という定義が入っていないわけですけれども、審議の段階では、入れるべきだという議論がかなりあったというふうに認識をしております。 実は、当委員会ではまだこの問題についてはそれほど議論が深まっておりませんで、これから深めていかないといけないと思っているんですが、今後の我々の審議に向けまして、どうして消費者という概念が必要なのか、そういったことについて先生のお考えを含めて教えていただければと思います。
○岩田参考人 御質問ありがとうございます。 消費者という概念は、明治の、制定されたときにはほぼ概念としてはなかったと思われるわけで、普通に、ただ人について規定していればよかった、抽象的な、すごくシンプルな規定だったわけです。 ただ、それは、社会の進化に伴っていろいろな立場の人間が出てきて、おっしゃるように契約の格差、経済的な格差というところが出てくると、どうしてもそこは、弱者に関しては保護しなければいけないという政策的な判断が多分出てくるということになったときに、本来、これはもう消費者というだけではなくて、弱者であればほかにもいろいろ考えなければいけないことはあると思います。 もともとは、未成年者というのは判断能力が乏しいために制限能力があるわけですが、同じような形で、消費者が能力が劣っているというわけではないんですが、ある意味、経済的なこと、事業的なこととなると、事業者からすると、やはり知識とか経験とか能力とか、そういうところはどうしても劣ってもやむを得ないというところがありますので、特にそれを、今までは、消費者契約法なり特商法なり、いろいろな法律があって保護されてきたところがあります。それはそれで立法としては非常に重要なことだったんですが、消費者という概念というのは、今となってはかなり普遍的な概念になってきているという見方もできると思います。 消費者の規定を民法の中にどれだけ取り込むかというと、またこれはいろいろ考え方がある。民法が余りにも膨大になり過ぎると、かえってわかりづらいとか、あと、これは、特に消費者だからこそ保護しなきゃいけないからこういう規定が必要なんだけれども、一般の人にはそれはなかなか該当しないという場合もありますので、必ずしも民法の中に全て取り込むというのが適切かというのはまたいろいろ問題があると思いますが、消費者という概念はある程度普遍化しているという観点からすると、民法の中にある程度しっかり規定する、最低限のものを規定するということも議論の一つにはなってくるかと思います。 ただ、今回は、消費者という概念は特別に入れていませんが、実質的に消費者を保護するための規定というのが、先ほどお話ししたようなものがありますので、そういうところで少し発展した、少しというか大分発展したのではないかと考えています。
○藤野委員 ありがとうございます。 次に、新里参考人にお伺いしたいんですが、多重債務問題に長年にわたってかかわってこられたということで、先ほども、本当に闘いに裏づけられた見識を教えていただいたと思っております。 この点で、私も、秘書の時代なんですけれども、多重債務問題に多少かかわらせていただきまして、さまざまな、先ほど教えていただいたことがあるんですが、先ほどお触れになられた平成二十五年六月十日の参議院の参考人のところでこうおっしゃっておりまして、「このように、平成十六年民法改正以降、第三者保証人の制限、禁止、さらには経営者保証人の制限へ向けて日本の社会が大きく動いていると言って過言ではないと思います。」、こう指摘をいただいております。 日本社会が大きく動いてきているということにつきまして、先ほども金融庁のガイドライン等のお話もありましたけれども、やはりこの参考人のときにも、例えば政府の成長戦略を初め、おっしゃられていて、やはり事業再生やあるいは個人の再チャレンジといったさまざまな日本社会が抱える課題にとっても、保証の問題で先生方が築いてこられた前進が今社会のものになってきている、大きな社会の変化、動きをつくっているという点をもう一度詳しく教えていただければと思うんです。
○新里参考人 前の議事録を見ていただきまして、ありがとうございます。 やはり、私どもからすると、先ほど言った商工ローン被害という格好で、平成十一年ですか、十二月に法改正、出資法の上限金利が四〇・〇〇四から二九・二に下がり、そして、保証人の保護をきちっとしなきゃいけないというのがいわゆる現場の話として出てきてしまった。 それを受けて、やはりそういう保証人を潰してしまうことが日本の社会にとっても非常によくないねということが、その法改正だけじゃなくて、政府の動きの中で、安倍政権が再チャレンジできる社会をつくっていこうというのが大きかったのではないでしょうか。個人保証になって、身ぐるみとられちゃってもう動きがとれないよだと、もう少し簡単な、例えば財産も残して解決できるということであれば早く店じまいの処理ができる、そうすると、余力を残して次に進めていくというような大きな社会の流れが、やはり政府自体が変わってきたんじゃないかなと思います。それを、例えば金融庁も、制度として、保証に依存しないような社会をつくっていこうという仕組みをつくっていった。 被害があり、政府があり、そして金融庁等の金融当局も、そういう意味では、全体としてそういう流れをつくれてきたんじゃないのかな。その上で、今、民法の改正の中でも、第三者保証の禁止は入らなかったんですけれども、やはりきちっとしたいろいろな改革というのを示していただいた、それは大きな前進になっているというふうには理解をしております。 以上でございます。
○藤野委員 ありがとうございます。 今、被害がありというお言葉がありましたけれども、政府も動いたんですが、やはり被害に基づくさまざまな形での闘いがあったからこそ、今政治に反映し、動いているというふうに認識をしております。 そして次に、中田参考人にお伺いしたいんですが、先ほども出ました個人保証の問題、あるいは配偶者の問題も出ております。 考えますと、やはり情義性の問題、これはなかなか民法では難しいんだというお話とか、いろいろあって、そもそも保証というものが今の社会あるいは世界の中でどういう役割を果たしているのか。先ほど新里参考人からもあったんですけれども、歴史的役割として保証というものが終わっている部分もどこかであるんじゃないかと私は思っているんですが、そこを先生の視点からはどのようにお感じでしょうか。
○中田参考人 保証といってもいろいろな保証がございます。 今ここで主として考えられているのは貸し金保証でありまして、これはもう本当に昔からありますし、外国でも多々あり、例えば、父親の巨額の債務を若い子供が負担する、一生かかってその債務をしょい続けるというのに対して反省があり、ドイツではそれに対する対応がされてきたとか、幾つかの対応があるわけです。 今、日本でだんだん考えられてきますのは、御指摘の情義性だとかあるいは軽率性ですとかというタイプの伝統的な保証以外に、信用保証協会がする保証ですとか親会社が子会社の保証をするとかもありますし、あるいは信用売買、商品取引における保証もありましょうし、あるいは身元保証もあるし、それから賃貸借契約の保証などもある。恐らく、保証一般についての合理化とともに、各類型について、それぞれ特性がございますので、合理化が必要だと思います。 例えば、賃借人の保証ということを考えてみますと、昔は、賃借人の保証というのは別に大したことではないんだ、家賃を一カ月か二カ月しょわされることがあるくらいだということで、それほど保護の必要はないんじゃないかというふうに考えられていたと思うんですけれども、しかし、だんだん、借家契約、借地契約の更新が強制されるようになって、そのツケが保証人に来るとか、あるいは産業廃棄物を土地に入れて大変な巨額の債務が発生するとかというようなものが出てくる。そうすると、それを全部保証人にしょわすのは適当ではないんじゃないか。 そこで、今おっしゃいましたとおり、それ以外に、例えば保険であるとか、あるいは敷金など別の担保であるとか、いろいろな形の合理化が必要でして、その幾つかのツールの中で保証特有の意味というのを、残るところがあるのであれば、限定した上で使うということだと思います。 その意味で、さまざまなほかの制度が発達している現代社会において保証の持つ意味というのを具体的類型ごとに考えていくべきだと思っております。
○藤野委員 ありがとうございます。 今、家賃保証というお話もありましたので、新里参考人にもお伺いしたいんですが、やはりこれは本当に、各地で、高齢化社会を含め、あるいは若者にとっても、学費の問題で、高い学費、ローンになってしまって保証人という話もあって、保証というものがさまざまな形で今問題になってきていると認識をしております。 一方で、自治体の中には、家賃保証がなくても住めるような制度をつくりますよとか、あるいは介護保険施設とかそういうところに入るときも保証人は要りませんよとか、そういう町づくりをしますよという自治体も少しですが生まれてきていると認識をしております。 そういった中で、これは政治の役割かもしれないですし、そういう部分も私は認識しているんですが、そういう政治の役割は踏まえながらも、参考人としては、そうした保証のあり方、家賃保証や奨学金のこともおっしゃいましたが、どのようにお感じでいらっしゃいますか。
○新里参考人 ありがとうございます。 実は、私自身は仙台の弁護士でございますので、被災地でございまして、復興公営住宅に保証人がいないと入れないよということで、それは今は、国交省の通知とか自治体の中で、なくても入れるようにしなきゃ、それは当然だよねというふうな流れになって、自治体の中でもそのようになってきております。 それから、先ほども言いましたけれども、単身高齢者の住居をどう確保するかというところの中で、公的な問題、または単に公が担うだけではなくて、保証協会的なものでは、やはり民間の会社がきちっと担って、ただ、それだけではできない。 何が一番そういう場合の要因になっているかというと、家賃の滞納だけではなくて、亡くなったときにどう遺体を皆さんで埋葬し、そして最後に残ったものを処理するのか、そういうようなことが非常に心配されることもあるので、単なる家賃保証の仕組みをつくればいいだけではなくて、最期のそういう見守りの仕組みをどう自治体の中でつくっていくのかどうか、そういうところが、今、国交省や厚労省が協力するような形で少しずつ制度化されていくのではないかな。そんな中で、全部が個人保証に頼っていれば、今のようであれば住居の安全が図れないという問題を、どう制度として、全体として解消していくかという取り組みが出ております。 それから、奨学金については、以前は個人保証でしたけれども、機関保証という格好でどんどん進んできて、今、機関保証の方が半分以上になっていると言われています。ただ、そうなってくると、今度は保証料が高いのではないか、そういう問題も出てきますけれども、個人保証に頼らずに制度をつくっていくというふうに社会自体が少しずつ変わっていっているのではないかなというふうな認識を持っておるところでございます。
○藤野委員 ありがとうございます。 次に、岩田参考人にお伺いしたいんですが、先ほど暴利行為という御指摘をいただきました。これも今後当委員会で深めていかなければいけない論点でありまして、これもやはり社会と深くかかわっているといいますか、高齢化社会を迎えていく中で、典型的な被害者として、いわゆる契約弱者である高齢者の問題がございますし、今後、十八歳という形に成年の年齢が引き下げられていきますと、この十八歳以降の人たちもこうした対象になってくるというおそれも指摘をされております。 その点で、先ほど、中間試案まではこの暴利行為というのがあったんだけれども、法案では落ちた、頭が痛いとおっしゃっていらっしゃいましたけれども、この暴利行為をめぐる被害の実態、これは裁判のお話もありました、裁判の実態、さらには、この暴利行為が民法で規定されることの意義といいますか、そういうものを教えていただければと思います。
○岩田参考人 暴利行為、その定義をどうするかというのもいろいろ議論があったわけですけれども、相手方の困窮とか経験の不足、知識の不足など合理的に判断することができないような事情を利用して著しく過大な利益を得ようとしたというのが一つの案になっていたわけです。 相手方の、困窮と言うとちょっとあれですけれども、経験の不足とか知識の不足というのは、例えば金融商品を、投資関係で商品を買わされた高齢者の方というのは事件でかなり多いんですけれども、金融商品だと商品の内容が非常に複雑なものが多くて、私でも何か理解ができないような商品はいっぱいあります。先物取引とかですと大分理解が進んできて、怪しいというのが大体伝わってきていると思うんですが、そうではない商品というのはまだまだたくさんあって、それが全部おかしいと言うつもりはありませんけれども、そういうものに関しては金額も非常に高かったりするわけです。 ハイリスク・ハイリターンということになっていくと、それは、商品を売った側の方にはすごく利益になり、被害者としてはすごく被害が大きくなるということがあって、そうなると文言的に暴利行為というのが当てはまる事例というのが今後ふえる可能性はあると思うんです。 ただ、暴利行為というのは、判例ではあるわけですが、その判例でも基準というのはなかなか厳しいところがありまして、裁判例の中でこれは暴利行為ですと認定された事案というのは、余りというか、かなりないはずなんですね。ありますけれども、容易に適用されるかというとそうではないという事情がありますので、明文化されることによって裁判官の認識とか世間一般の認識というのも変わってくる面があると思いますから、やはりそれは、形ができるかできないかというのは大きな違いだと思っています。
○藤野委員 ありがとうございます。 時間が参りましたので、まだまだいろいろとお聞きをしたいんですけれども、質問を終わらせていただきます。 きょうは本当にありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、木下智彦君。
○木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。 きょうはお時間をいただきまして、本当にありがとうございます。 では、早速質問に入らせていただきたいと思います。 きょうもお話をいろいろと聞いていて、特に保証制度については皆さんいろいろな御意見があったというふうに思っております。また、こちらの委員の方からもいろいろと保証制度の懸念点についてお話をさせていただいたんですけれども、ちょっとだけ、そこの中で気になるなと思ったところがあります。 そこは、一つ、きょうも出ておりましたけれども、今の政府の政策の中で、経済政策の重点政策という形で、ちょっとこれは繰り返しになるかと思うんですけれども、特に中小企業それから小規模事業者のあり方といったところで、やはり、これから先、生産性を高めていくという中では、新陳代謝の促進と、それから事業承継の円滑化であるとか、事業のポートフォリオの組みかえ、こういうことを促進していく。そのためには何が必要なのかというと、保証に頼らないような金融制度の確立、これを推奨していく、そういう趣旨が政策としてはあります。最終的に目指すのは、労働の流動性を高めていくであるとか生産性の向上を目指すためにいろいろそういうふうな施策がある。 その中で、例えば経済産業省であるとか金融庁であるとかというところは、保証に頼らないような金融制度が必要なんじゃないか、そういうガイドラインなども示しながらやってきている。 今回の民法の改正というものを見てきたときに、保証人の保護というふうな観点はあるといいながら、条文に落とし込んでいったときには、どうしても、取り決めの中ではかえって保証制度というものを、特に第三者保証であるとかというところは維持しようというふうな書き方になってしまう。そうすると、法律を遵守しながら、もしくは法律の範囲内でやるといいながら、実質的にこの保証制度を活用していこうというのが民間の普通の流れだというふうに思うんですね。 ここは前置きというふうに考えていただきたいんですけれども、そうなったときに、今回の民法の改正といったときに、先ほどちょっとありました、消費者の目線が割と普遍性がある、ですからそれが反映されていくというのはある程度は妥当な部分があるんじゃないかというふうな参考人からの御意見もあったんです。それと同じかどうかというところもあるんですけれども、こういった政府の政策自体が普遍性があるかどうかというのは別としながら、その政府の政策、これから先目指すところが、特に民法、普遍性が保たれていかなければならないであろうと思われる民法の中に、私の感覚では余り反映されているというふうに思えないんです。 そこで、ちょっと聞きたいところが、民法の中にそういった政策的要素というのが実際に反映されていってしかるべきものなのか、それとも、民法が普遍性を保つという意味では、そんなに政策的要素というものは入れない、排除されるべきものなのか、こういったところを皆さんのお一人ずつの御意見として聞かせていただきたいんですけれども。順番にお願いいたします。
○中田参考人 大変難しい御質問ですけれども、民法が基本法であるということを考えますと、非常に鋭敏にどんどん変えていくというものではなくて、ある程度基本的なものである。しかし、他方で、方向性というものは、当然、法体系全体の中に占めるものですから、反映することになるんだろうと思います。 ただいまのお話とつながるかどうかちょっとわからないんですけれども、例えば破産や詐害行為取消権というのがありまして、余り規律のルールを不明確にしておいて、後になってひっくり返される、否認されたり、詐害行為によって取り消されるということになるとうまくいかないだろう、そういう全体の流れがある。その中で、まず破産法が改正されまして、その否認の対象となる行為を非常に明確化いたしました。今度、民法改正に当たっては、否認によってなされたようなことも考慮しながら詐害行為取消権の方を整備していったということでございます。 ですから、すぐに反映するというものではないかもしれませんけれども、時間をかけながら、方向性としては、全体として統一を保った方向に向かっているのではないかと考えております。
○新里参考人 なかなか一実務家からすると難しいことかなと思っておりますけれども、特に、私自身からすると、保証のところからすると、やはり保証に頼らない社会というのが日本の社会が進むべき、ただ、それで目詰まりが起こっちゃいけないよ、だからいろいろな制度もつくっていこうという中で、今回の保証人の保護というのは、推奨しようということではなくて、社会が変わっていく中で、ただ、もしかするとまだ残されたことがあるとすればそこについて手当てをしなきゃいけないという中で、やはり、大きな社会の中を意識しながら、ただ、普遍性を持ちながら法改正というのはできていくんだろうかなというふうに思っております。 適切な答えになっているかどうかわかりませんけれども、そのように思っております。
○岩田参考人 御質問ありがとうございます。 債権法の改正と一口に言っても、どういう観点で改正するかというところは非常にあると思っていて、一つは、すごく理論的な改正というのがあると思います。例えば、債務不履行とか解除とか危険負担とか、そういう制度に関しては非常に理論的な側面が強いと思うんですね。そういうところに余り政策的な判断というのが入ってくるかというと、それは多分違うと思います。 でも、中には、きょうのお話の中でもあったような保証とか定型約款とか、それ以外にもいろいろもちろんありますけれども、そういうものは、理論がどうとかいうよりは、むしろやはり政策的な側面が強いと思うんです。決めの問題、どう決めるかを判断すれば、それはそれで一つ動いていくような分野だということが言えると思います。 民法の世界なので、民法の世界というのはもう本当に、明治、一八九八年ですか、制定なので非常に歴史が長い。そうすると、その時々ではすごく政策的な話があると思いますけれども、それが積み重なっていくとさらにまた理論的なところになっていったりとかというのもありますし、ある程度見えてくるところもあると思います。 政策的な判断というのも非常に重要な目線で、かつ民法ですので、長いその歴史の中で政策的判断をいろいろ積み重ねた結果、やはりこういうのがあるべきものだというところが出てくると、それは、単なる政策的な判断ではなくて、より理論的な方に少し動いてくるところもあると思いますから、明確にこれは政策的な要素だというふうに単純に言えるかというとなかなか難しいところもあると思いますが、そういうふうに考えている次第です。
○木下委員 ちょっと難しい質問をさせていただいたのかなと思いますけれども、その辺をもう少し突っ込んで話がしたいと思っているんです。 今の前提で話をしていったときに、今回の民法改正の原案ができて、実質的に法制審議会の中で五年、六年というふうな審議を重ねてきた、皆様もいろいろな形で、その中に入られたり、その関係で御意見を言われたり、特に日弁連なんかは意見集約をして話をされていたりとかというふうな形のことをされております。 そうして考えたときに、では、実際に法制審議会の中で、今言ったような、これは政策の中身にもよるのかもしれませんけれども、政府が今考えているような政策が反映されるような仕組みになっているかどうかというふうに考えると、議事録も相当膨大な量で、全部は目が通せていないところは本当に恥ずかしいんですけれども、見ていても、日弁連の方々が何人も入られていたり、業界団体の方が御意見を言われたり、パブリックコメントみたいなものもあったりということをして、それから法務省の方からも常時当然のことながら入っている。ただ、法務省の中も、民事局の人間であったりというところで、特に政策が今こうであるからどうこうというものが反映されるような議論がされながらこういう原案というのができ上がったというふうに私は余り感じられないんですね。 これは今回の件もそうですけれども、今後、法制審議会のあり方といったときに、その政策自体が正しいかどうかという論争があるのかもしれませんけれども、実質的に政策がある程度反映される、そういった意見がその中で議論されながらこういう原案ができていくという仕組みをもう少しつくっていくべきではないかなというふうに私は少し思っているんですね。 これは相当難しいところだと思います。というのは、行政の中で、閣法と言われている、まず最初に内閣から法律がつくられる、そして、それが提出されて、こちらの立法の方で審議がされるというふうな形になるので、どうしてもそこにある種の偏りはあってしかるべきだということはわかるんですけれども、では果たして本当にそうかなというところがある。 というのは、例えば今回の第三者保証についても、一律でもう廃止だというのは行き過ぎだ、そういった形で今回の法案になってきている。では、果たして一律にやるのが行き過ぎなのかどうなのか。これを見ていると、やはり業界団体であるとかそういったところの意見を色濃く反映している。これは社会を回していく中ではある程度必要なのかもしれない。ただ、私なんかは、第三者保証、特に個人保証なんかはもうやめてしまっていいんじゃないかなと。 というのは、ここはちょっと路線を外れますけれども、保証をする人間自体に実質的な利益がないわけですから、そういう保証をやっていてもしようがないだろう。もしくは、それをやるんだったら、保証する人間自体がしっかりと保証するだけの資産を持っているかどうか、そういう調査をした上で、そういう人に保証人になってもらうべきなのに、そこが抜け落ちていながら保証制度が必要だと。 それとか、これはほかの審議の中でも言わせていただいたんですけれども、今回の債権というよりも、家を賃貸する際にもこれは連帯保証人が必要だといいながら、二年でその契約が更新されたとしても、今度はその連帯保証の人がその保証を続けるかどうかというふうな意思確認をしなくて実質的にいい。ただ、こういうのも、社会のニーズとして、一々借り手の方も頼みに行くのは嫌だし、一々そういうことをやっていくのは面倒くさい、それで回っているからというふうなことはあるんだと思うんですけれども。 そういったところの論点を考えると、一業界団体ではないかもしれないけれども、社会のニーズと、本当に取り決めなきゃいけないこと、それから政策面であるとか、そういった部分がどうしても法制審議会の中ではうまく回っていないのではないかな。 今後の法制審議会のあり方という部分で、今いろいろな事例を言いましたけれども、果たしてこのままでいいのか、それとも何らかの要素を組み合わせていく必要があるのか、そういったところの御意見を皆さんからこれまたお聞きしたいな。ちょっと難しいところですけれども、できる範囲内でお答えいただければと思います。
○中田参考人 御承知のとおり、法制審議会のあり方自体が、十数年前でしたか、大きく変わりました。 それまでは常設の機関であって、学者だけから構成されていて、それで、特に諮問がなくても意見を言う、こういうシステムであったわけですが、それではよくないだろうということになって、現在の法制審議会のスタイルに改まったわけでございます。そこでは、個別の諮問を受けて、その諮問に対して答申する、こういうふうになったということ自体が、多分、かつての法制審議会からすると非常に大きな変化だと思います。 また、構成メンバーにつきましても、かつては学者が中心というか、ほとんど学者だったわけですけれども、例えば今回の民法改正について申し上げますと、各種の、経済界、あるいは銀行、労働組合、消費者団体、あるいは関係省庁の方々も参加しているということで、非常に広くメンバー構成がされておりまして、その中で、今おっしゃいました政策的な面というのも議論の中に出てくると思います。 さらに今回の民法改正について申しますと、パブリックコメントを、普通とは違って二回にわたっていたしまして、その結果、さまざまな方面から寄せられた意見を真摯に検討し、反映されているところでございます。 そうすると、もう学者なんか要らないんじゃないかということになるかもしれませんが、恐らく、研究者は、より遠いところから、あるいは外国も含めた広いところから基礎的なことを考える、そういう役割はあるんだろう。それに対して、実務に近い方々から現実の状況であるとかニーズとかをお示しいただいて、それで協力していい法制をつくっていくということが現在の姿ではないかと思います。 私自身はそういうふうに認識しておりますが、私自身が法制審議会を運営しているわけではございませんので、恐らく今の御指摘も今後また検討されるのではないかと思いますけれども、私は以上のような認識でございます。
○新里参考人 私自身は、繰り返しになりますけれども、保証のところをきょうお話しさせていただいていて、主義からすると、第三者保証のない社会が望ましいのではないかなという話をしておりますけれども、ただ、そういう立場だけではなくて、いろいろな立場で議論されて、一人一人がと言ったら変ですが、拒否権ではありませんけれども、やはりいろいろな利害調整をしないと基本法であればうまくいかない、そういう利害調整を僕は相当粘り強くつくってきたのが今回の法制審だったのではないかな。私の思いとは違うところがあるとしても、それはそれとして多とするべきではないかなというふうには思っております。
○岩田参考人 法制審そのものについてなかなかコメントできるわけではないんですが、先ほどもお話がありましたとおり、いろいろな団体から委員、幹事で出席して構成されていた、全部で四十人弱だったと思いますけれども。その中で、弁護士も四人しかいない。しかと言っていいのかわかりませんが、弁護士も、はっきり言って、自分がどういう立場で活動するかによっていろいろ考え方があって、必ずしも一枚岩ではないというところがありますから、いろいろな考え方に基づいて、また自分の中のいろいろな政策的な考え方とかそういうのに基づいて参加されているのが法制審だと思われます。 今そういう組織になっていると思われますので、政策的な判断というのを、何をもって政策的な判断と言うかということもありますので一概には言えませんけれども、多様な考え方がいろいろ集積されて一つの案ができてきて、それはもちろん、その案が本当に国民にとっていいものかどうかというのは、それはまた次の話で、また議論が必要になりますから、一応、そういうことで一つの案としてできるまでの過程としてはそれなりの機能を果たしてきていたのかなという実感はありました。
○木下委員 ありがとうございます。 難しいところだなと思っているんですけれども、特にこういうものは、普遍性を保ちながらも社会のニーズに合わせ、なおかつ政策的な要素もこれから入れていかなければいけない、そういった中で、これからのあり方と、それからこちらの方の審議のあり方というのも考えていかないといけないというふうに思っておりますので、大変貴重な意見をありがとうございました。
○鈴木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表し厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午前十一時三十五分休憩 ————◇————— 午後零時四十五分開議
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 この際、お諮りいたします。 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長小川秀樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野中厚君。
○野中委員 自由民主党の野中厚でございます。 法務委員会に所属をさせていただきまして初めての質問の機会をいただきました。また、この機会が、制定後約百二十年が経過し、初めて改正する債権法について質問させていただくということに対しまして感謝を申し上げ、質問に入らせていただきたいと存じます。 まず、そもそもの質問でありますけれども、一八九六年の制定から約百二十年もの間、一部を除いて改正されていなかったこの債権法を、今回、約二百項目に及ぶ大改正ということでありますが、なぜ今改正するのか、お聞かせいただきたいと思います。
○小川政府参考人 お答えいたします。 法務省が所管いたします民法、商法、民事訴訟法などは、おおむね明治の半ばから大正にかけて制定されてまいりました。これらの法律については、その後の社会、経済の変化などを踏まえまして、必要に応じて部分的な法改正が行われてまいりましたが、制定以来百年前後が経過する中で、部分的な手直しによる対応が困難な諸課題もあらわれてきましたことから、特に平成に入って以降は、緊急性がより高いと考えられるものから、相次いで全面的な法改正が行われてまいりました。 民法のうち債権関係の規定につきましても、かねてより、社会、経済の変化への対応を図るとともに、国民一般にわかりやすいものとするなどの観点から、規定内容の全般的な見直しを行う必要が生じておりました。 しかし、民法の債権関係の規定は取引社会を支える最も基本的な法的インフラでありますことから、その規定内容の見直しは、取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがあると考えられます。このため、その見直し作業は、法律の専門家ではない国民各層からも広く意見を聴取しながら慎重に進められる必要がございました。 ところが、民法の財産法の部分の条文の表記は、明治二十九年の制定時のままで、片仮名文語体でございましたので、法律の専門家でなければ、まさに文字どおり読むことすら困難な状態にございました。そこで、まずは実質的な規定内容の改正に先立って、民法の財産法の部分を現代語化する改正を行うことといたしまして、これが平成十六年の民法改正により実現されたところでございます。 一方、商法の問題もございまして、商法に関しましては、企業を取り巻く環境の変化などに伴って、会社に関する規定の見直しが優先的に進められました後、平成十七年、これを商法から分離して新たに会社法が制定されました。 他方、商取引を規律いたします商行為編の規定は、近時では、保険ですとか運送など個別の取引類型に関する部分的な見直し作業が行われておりますが、商行為総則ですとか、あるいは商事売買に関する規律を初めとするその余の部分については、実質的な見直しがほとんど行われないまま現在に至っております。このような商行為法の規律についても、社会、経済の変化への対応などを図る必要が生じておりますが、その見直し作業の前提条件という意味でも、一般法であります民法の債権関係の規定を現代社会に適合したものに改めることが急務となっておりました。 以上のように、民法のうちの債権関係の規定につきましては、それ自体としても全般的な見直しが必要な状態に至っていたほか、商法のうちの商行為編の改正作業の前提としても見直しが急がれる状況にございました。 そこで、平成十六年に民法の現代語化をまず実現させた後、平成二十一年から法制審における五年余りの慎重な審議を経て、全会一致で決定された要綱の答申を得た上で、今回の法案提出に至ったものでございます。
○野中委員 社会、経済の変化、また国民にわかりやすい、一般目線に立った観点から、そしてその他もろもろの長い説明を頂戴しましたが、改正に至るということでありますが、さまざまな論点で本委員会でも質問がなされました。消滅時効、法定利率、保証債務、定型約款等々ございますが、特に委員の方々からは、保証債務について質問が集中していたと思います。 私も、まずは保証債務について質問をさせていただきたいと存じます。 何事も、ルールを決めるとか、また、そこで線を引くというのは大変難しいものでありまして、ここまでは適用する、ここからは適用外とか、今回は、まず配偶者を個人保証の制限の例外とすることについて、多くの委員の方々から質問がありました。 その他、今税調でも、扶養控除の適用を幾らにするか、どこまでは適用にするかとか、何事も、法について、何歳以上は可とする、何歳以下は不可とする、そして、年収幾ら以上は適用外、年収幾らまでが適用する、線を引くというのは本当に大変難しいものであります。 今回、第三者の保証の例外を定める際、まず審議会でどのような議論があったのか、お伺いします。
○小川政府参考人 まず、審議会での議論ということで申し上げますと、法制審における審議の過程におきましては、事業資金の貸し付けについての個人保証は、いわゆる経営者によるものを除いて制限するという考え方をとることを前提として議論が進められた上で、まさに、そのいわゆる経営者という表現であらわした制限の例外に該当する者の範囲を法律上具体的にどのように定めるべきかが検討されました。 ここで、いわゆる経営者による保証については制限が必要でないと考えられました根拠は、経営者が主債務者の事業の状況を把握することができる立場にあり、保証のリスクを十分に認識せずに保証契約を締結するおそれが類型的に低いと言えるほか、中小企業に対する融資の実情として、企業の信用補完や経営の規律づけといった観点から有用とされているためということでございました。 以上が、改正法案の立案過程における、前提としての議論でございます。
○野中委員 経営者の制限の例外を設ける、これは私も当然賛成でありまして、やはり自己責任の部分があるのではないかというふうに思っております。 今回、この第三者保証の例外において、理事、取締役、執行役、そしてまた株の議決権の過半数を有する者、また配偶者、共同事業者等々が例外として記述されております。 私、以前、法務委員会に所属をさせていただく前に経済産業委員会に所属をさせていただいておりまして、また、党の部会でも経済産業部会に所属をしております。中小企業に対する思いがあるという観点から、これは確認の意味も込めて質問をさせていただきたいと思うんです。 平成二十五年の、中小企業庁からいただいたアンケートで、第三者保証の提供者は誰かというアンケートに対する答えが、約七割五分が代表者の親族、そして代表者親族以外の役員がおよそ一〇%、そして、その他等々は取引先の社長というふうにアンケートの答えがあります。 代表者の親族ということは、保証人として当然、恐らく配偶者や家族で会社に携わっている人は対象の確率は低いというふうに思っておりますし、また、本法案というのは保証人保護の観点から改正されております。また、昨今、信用保証協会が第三者を保証人として求めることを原則禁止している流れもありますので、あくまでこれは確認なんですけれども、今回の改正によって中小企業に悪影響を及ぼすものは何かあるんでしょうか。一応、確認も込めて質問をさせていただきたいと思います。
○小川政府参考人 お答えいたします。 個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は我が国社会において極めて重要なものであるというふうに認識しておりますが、他方で、個人保証を利用することを全面的に禁止した場合には、特に信用力に乏しい中小企業の資金調達に支障を生じさせるおそれがあるとの指摘が中小企業団体を初めとする実務界から強く寄せられておりまして、この指摘も重く受けとめる必要があると考えております。個人保証の問題に関しましては、これらの相反する要請をどのようにバランスのとれたものとしていくかが重要であったものと認識しております。 改正法案の立案に当たりましても、これらの要請をどのように調和のとれたものにするかに配慮しつつ検討が行われましたが、最終的な結論といたしましては、事業性の融資に関して保証契約を無効にするという強力なルールを設けることを前提に、このルール、いわゆる意思確認の手続を経るということですが、このルールの適用対象は、弊害が顕著である第三者が保証するケースに限定し、かつ、第三者保証についても、これを全面的に禁止することはしないということとしたものでございます。したがいまして、改正法案が中小企業の円滑な資金調達に支障を生じさせることはないものと考えております。 また、金融庁の監督指針と相まって、第三者の個人保証を求めないことを原則とする慣行を中小企業融資の実務において確立し、その適正化を図るということに資するものになるというふうに考えております。
○野中委員 悪影響を及ぼさないということで、これはあくまで確認でしたが、確認をさせていただきました。 次に、認知症を発症している方にちょっと焦点を当てて質問をさせていただきたいと存じます。 今、高齢化社会が進んでいる中で、認知症を発症する方は大変ふえておりまして、認知症対策というのは今後の政治の大きなテーマではないのかなというふうに思っております。 今回、定型約款に関する規定の新設、これによって、宅配、引っ越し、保険、クレジットとか運送、いろいろな約款を利用しているところがありますけれども、認知症を患って、発症している方に対してその義務を生じないということは非常によいことではないかというふうに思っております。 先ほどの保証人保護のところにおきまして、第三者保証、ここに、改正案の内容において、事業用融資の保証契約は、公証人があらかじめ保証人本人から直接その保証意思を確認しなければ効力を生じないというふうに記述をされておりますが、認知症の患者の方というのは、度合いにもよりますが、非常に波があるということであります。 これは仮にでありますけれども、公証人がその当時、保証人として意思能力があると認められた方が、実は後々、認知症を発症していたというケースにおいては、その場合、認知症を発症している方は保証人としての責任を負わなければならないのか否か、その点についてお伺いします。
○小川政府参考人 お答えいたします。 改正法案におきましては、判例、通説に従いまして、まず、法律行為の当事者が意思表示をしたときに意思能力を有していなかったときは、その法律行為は無効とすることとしております。そのため、これは認知症を発症した上でということで、意思能力がないということが当然の前提でございますが、意思能力を有しない者がした保証契約もこれを理由に無効となるものでございますので、このことは、公証人による意思確認手続を経た上で締結された保証契約であったとしても変わるところはございません。 事業性の貸し金等債務を主債務とする保証契約については、公証人による意思確認の手続を経なければ効力を生じないこととする規定が設けられておりますが、公証人による意思確認を経たからといって、それ以外に無効といった形で扱われるべき事由のある法律行為が有効になるというわけではございませんので、先ほど申し上げましたように、御指摘のありました保証契約は無効ということでございます。
○野中委員 ありがとうございます。 後に確認をされても、意思能力がなければ無効になるということでありまして、意思能力がある、ないというのは非常に難しいところだなというふうには思いますが、難しいだけに、仮に保証人が後に認知症と確認された場合、そのときに、公証人は当時は意思能力があると一回判断するわけですけれども、私の意見としては、そこに、公証人に責任を負わすというのは酷であると考えますけれども、この場合、公証人は、そこによって被害をこうむった相手側から何か賠償請求等の法的責任を負わなければならないのか、お伺いします。
○小川政府参考人 お答えいたします。 公証人は、無効の法律行為などについて公正証書を作成することはできませんで、当該法律行為が有効であるかどうかについて疑いがあるときは、関係人に注意をし、かつ、その者に必要な説明をさせなければならないとされておりますので、具体的な事案において、嘱託人の意思能力に疑いを持った場合には、嘱託人に注意をし、必要な説明をさせなければならないということになります。 また、公証人は、国の公務であります公証作用をつかさどるものでありますので、国家賠償法の適用がございまして、国家賠償法の適用については公務員に当たるものというふうに解されております。公証人がその職務を行うことについて故意または過失によって違法に他人に損害を与えましたときは、国家賠償法上の責任として国が賠償責任を負うことになりますが、さらに、公証人個人の責任という問題であれば、公証人に故意または重過失があった場合には、これも国家賠償法上の規定として、公証人が求償債務を負う、個人の責任を負うということとなっております。 お尋ねがありました、保証人になろうとする者が認知症により意思能力を有しなかったのに、公証人がそのことに気づかずに保証意思宣明公正証書を作成した場合の公証人個人の責任についてでございますが、個別の事案ごとの判断ではございますが、嘱託をした当時の言動等から見て保証人になろうとする者が明らかな意思無能力状態であったにもかかわらず、公証人がそのことに気づかずに公正証書を作成したような、極めて例外的なケースと言えようかと思いますが、こういったケースでは、重過失があったものとして公証人自身も責任を負う場合があり得るというふうに考えております。
○野中委員 責任を負うケースはあるが、過失がなければ責任を負うことはないということなんでしょうか。ごめんなさい、聞き漏らしたかもしれません、お願いいたします。
○小川政府参考人 国家賠償法は、公務員個人が責任を負うということではなくて、国が責任を負うことになるわけですので、公務員の職務の執行についての過失があった場合に国家賠償法が適用されます。その上で、個人の公務員に重過失があれば、求償債務の請求を受けるということでございます。
○野中委員 理解しました。失礼いたしました。 きのう委員会で、認知症また暴利行為について階委員から質問が出ておりました。きのうの議事録でありますけれども、暴利行為論について、なぜ明文化しないのかという点であります。 大臣より、「現時点で一定の要件を設定することで将来の議論の発展を阻害しかねないとも考えられた、」「社会、経済の変化への対応という観点からも、暴利行為に関する規定を設けるということはまだ困難である、」と。そしてまた、参考人より、法制審の中でいろいろ議論があったが、「まだ、暴利行為論がいろいろな意味で確立したというのはなかなか言いにくい面もあろう」という御答弁がありました。 先ほど井出委員も参考人に質問をされておりましたが、暴利行為など、今回の改正で明文はされていないわけですが、検討事項で最後まで審議をされていた論点というのは存在をいたします。今回の改正は、一部を除いて、制定から約百二十年がたった。まさか百二十年後またということではなくて、やはり審議されて論点が存在するということでありますので、これは社会の変化に応じこれから改正をしていくお考えがあるのか、金田大臣にお伺いします。
○金田国務大臣 野中委員の御質問にお答えいたします。 今後、社会、経済の変化に対応して民法の改正を行うということがあるのだろうかという御指摘だと思います。 民法制定以降、これまでの間の我が国の社会経済情勢の変化というものにつきましては、取引量が劇的に増大しているとか、取引の内容が高度化、複雑化しているとか、そういう一方で情報伝達の手段が飛躍的に発展したといったような、さまざまな面で著しい変化がある。そして、今回の改正法案は、このような社会、経済の変化に対応することを目的としているのは事実であります。 したがいまして、今後も民法を社会、経済の変化に対応させていくことは重要であるというふうに認識をしているわけであります。 また、社会、経済の変化を踏まえて、判例や学説上の考え方の一つであったものが実務に広く受け入れられて確立したルールになっているというときはその明文化を検討することもあり得る、このように考えられるわけであります。 他方で、民法の債権関係の規定というのは我が国の取引社会を支える最も基本的な法的インフラである、このようにも言えるわけでありまして、その規定内容の見直しというものは我が国の取引社会に多大な影響を及ぼすおそれがあるということを考えますと、その改正に伴う社会的なコストというものも非常に大きなものになり得るものだと考えられます。 したがいまして、私ども法務省としては、社会、経済の変化への対応の必要性と改正に要しますコストというものを勘案しながら、改正法案の施行後の状況を注視していくという姿勢が大事だろうというふうに思いますし、その上で、さらなる民法改正の必要性について検討をしていくということになるのではないかなというふうに将来的には考えております。
○野中委員 社会、経済の変化に応じて変える意思がある一方、社会への影響も勘案して、少なくとも改正に対しては入り口を閉ざさない中で、またこういった議論を積み重ねればいいのかなというふうに思っております。 次の質問でありますけれども、賃貸借についてお伺いしたいと存じます。 私も、ひとり暮らしで、アパートとかを何回か契約したことがありますけれども、そのときにすぐ出るのが、敷金が何カ月分か、礼金が何カ月分か、そしてまた保証人を誰にお願いするかということでありました。 今回、極度額の定めを義務づけ、全ての根保証の契約に適用するというのは、私も保証人をうちのおじに頼んだことがあって、万が一火の不始末をしてしまったら、もちろん住居、住んでいらっしゃる人にも迷惑がかかりますし、うちのおじにも大変な迷惑がかかるということで、火元はちゃんと確認したけれども、もう一回鍵をあけて部屋に戻ったり、本当に迷惑をかけてはならないという思いで保証人になってもらったことを今思い出しております。もちろん、極度額を定めた現状においても、やはりそういった意識は持たなきゃいかぬというふうには思っております。 その中で、賃貸借における敷金についてお伺いをしたいと存じます。 敷金というのは、やはり貸す側、借りる側で大きなトラブルが発生する要因かなというふうに思っておりまして、私の体験談を話しますと、一番最初に借りたとき、やはり私の使い方がよくなかったと思うんですけれども、一円も返ってきませんでした。次に、相当昔の話になりますけれども、今回はちゃんときれいに使おうというふうに思って、自分の中ではきれいに使ったつもりなんですけれども、ほとんど返ってこなかったんですね。 敷金というのはどういった中で計算されているのかな、ほぼ返ってこないんじゃないかというふうに私は当初思っていたんですが、今回、敷金を賃貸借において明文化することの意義についてまずお伺いしたいと存じます。
○小川政府参考人 お答えいたします。 建物などの賃貸借におきましては、賃借人が敷金を交付することが多く見られるわけですが、現行法上は、敷金に言及する、敷金ということを内容として含む規定はございますが、敷金の定義ですとか、敷金返還債務の発生時期、あるいは返還すべき金額など、敷金に関します基本的な規律を定めた規定は設けられておりません。 しかし、敷金の返還をめぐる紛争は日常的に極めて多数生じております一方で、この種の紛争に関しましては既に安定した判例も形成されております。 そこで、改正法案におきましては、敷金の定義や基本的な規律についてその明文化を図ることとしたものでありまして、敷金という賃貸借契約に関する重要なルールを国民一般にわかりやすいものとするという意義があるものと考えております。
○野中委員 ありがとうございます。 次に、通常損耗そしてまた経年変化についてもお聞かせください。
○小川政府参考人 お答えいたします。 改正法案におきましては、六百二十一条において、従来の確立した判例実務を踏まえまして、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗、すなわちいわゆる通常損耗ですとか賃借物の経年変化については賃借人は原状回復義務を負わないことを明文化することとしております。このうち、通常損耗とは賃借人の通常の使用により生ずる賃借物の損耗等を意味し、経年変化とは年数を経ることによる賃借物の自然な劣化または損耗などを意味するというふうに考えられるところでございます。
○野中委員 通常損耗は、例えば自分の中で喫煙をして、ついてしまった壁紙についてとかなんでしょうかね。わかりました。その辺については、ありがとうございます。 賃貸借においてよくあるケースでありますけれども、大抵二年契約だと思うんですけれども、二年契約の賃貸契約を延長する際に、よく更新料とか、また、一部残っているのが、少なくなっていますが、そこでも敷金が発生する例もあります。 この更新時に発生する更新料、また、少なくなってきていますが、一部発生する敷金については、取り扱いはどのようになるんでしょうか。
○小川政府参考人 改正法案におきましては、敷金の定義といたしましては、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」と定めておりまして、その意味では、性格づけとしましては、賃借人が負う債務の担保でございます。 他方、いわゆる更新料でございますが、更新料は、判例において、「期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃借人と賃貸人との間で授受される金員である。」とされまして、その法的性質についても、「一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するもの」とされております。 このような更新料の理解に照らしますと、更新料は、敷金とは異なりまして、将来において返還を要する担保的な性格のものではないため、基本的には、改正法案におきます敷金という形で扱われることはないものというふうに考えられます。 もっとも、更新料授受の契約の内容に照らしてそれが担保的な性格を有するものである場合には、個別の事案によるとは思いますが、敷金としての性格が重視されて、敷金と扱われるということもあるものと考えております。
○野中委員 ありがとうございます。 賃貸借において、今回明文化することによって少しでもトラブルの事例、件数が減少することを期待しております。 時間もちょっと限りが出てまいりましたので、二つ飛ばしまして、井野政務官に質問をさせていただきたいというふうに思っております。 周知活動についてでございますが、今回そもそも法案を改正することになった要因の一つとして、国民一般向けにわかりやすくする必要があるという指摘があったということであります。 我々、日ごろ生活していますと、プロフェッショナルの方は抜かして、民法を意識して生活している人はいないと思うんです。生活をしていて何かトラブルに巻き込まれたときに、民法によって時には責任をしょわなきゃいけないし、また民法によって守られるということではないかというふうに思っております。 今後の周知徹底ということですが、広くわかりやすく国民に周知するために、わかりやすい事例等々も挙げ、発信すべきだというふうに私は考えておりますが、政務官のお考えをお聞かせください。
○井野大臣政務官 御質問ありがとうございます。 今回の改正法案は、民法のうち債権関係の諸規定を全般的に見直すものでございまして、国民の日常生活や経済活動に広く影響を与え得るものでありますから、法律として成立した後は、その見直しの内容を国民に対して十分に周知する必要があるというふうに考えております。これは本当に私も弁護士としてもまた一から勉強し直さなきゃならないなと思っているところではございますけれども、そこら辺も含めて、ぜひ周知をしていく必要があるというふうに考えております。 その上で、改正法案については、近時の民事基本法の改正と比較しても長期の準備期間を確保する趣旨で、改正法の施行日を原則として公布の日から三年、通常は一年のところを三年、三年を超えない範囲において政令で定める日としております。 また、法務省としても、説明会の開催や具体例を示した解説など、わかりやすいものを公表することを検討しておりまして、改正法が適切に施行されるよう、施行日までの間に国民各層に対して効果的な周知を実施していきたいというふうに考えております。 以上でございます。
○野中委員 ありがとうございました。質問を終わります。
○鈴木委員長 次に、赤澤亮正君。
○赤澤委員 自由民主党・無所属の会の赤澤亮正でございます。 きょうは、二十五分間、民法改正について質問をさせていただきたいと思います。 今回の民法改正については、当委員会でもう既に大変精力的な審議が行われております。もう二十時間を超えているということでありまして、与野党の先生方の御熱意に心から敬意を払うものであります。極力まだ取り上げられていない条文とか論点について質問したいと思いますが、何分、大分蓄積されておりますので、もしちょっとダブることがあればお許しをいただきたいと思います。 何度もこれは触れられている点ですけれども、百二十年ぶりの大改正ということですね。明治二十九年、一八九六年。ちなみに、何があった年かちょっと調べてみたんです。ヘンリー・フォードが初めての四輪車を試作したということで、それを考えると、今、自動運転がもう問題にされている時代ですから、えらい変わったなと思うのが一点ですが、もう一方で、国土強靱化、防災をライフワークとする私にとって忘れられないのは、明治三陸地震というのが起きた年です。マグニチュード八を超える三陸沖の地震が起きたのは二千年間に四回しかなくて、そのうちの一回が起きた年で、やはり二万人が命を落としているということです。だから、百十五年間たって、東日本大震災でやはり二万人の同胞の命を失う我が国というのは、防災、国土強靱化、どこが変わったんだという気もする。大きく変わったなと思う一方で、何も変わっていないじゃないかというような感じもする、一八九六年以来の債権関係の民法の改正ということであります。 総じて、今までの質疑を聞いて、あるいはきょうの参考人の質疑も受けて思ったのは、与野党いずれの推薦に係る参考人も今回の改正については一定の肯定的評価をしておられたということで、この点は大変うれしく思った次第でございます。 各論に入る前に、まず、心から尊敬をする、旧運輸省の先輩でもあります盛山副大臣にお話を伺いたいと思うんですけれども、今回の改正の目的というか趣旨なんですね。 私自身は、二〇一二年に享年八十六歳で亡くなられた星野英一先生、大学の法学部の先生でありましたが、先生の授業で民法についてどういうことを教わったかというと、一言で言えば契約自由の原則です。対等な私人間の契約は自由である、だから、それが成立する仕方も自由だし、別に何か紙にする必要もなければ、合意だけで成り立つのだ、しかもその内容も自由だというのが大原則なんだ、これこそが、刑事法とかそういったほかの分野と民法を画する一番大きな違いなのであると。もっとわかりやすく言っちゃうと、たとえ一方当事者に不利であっても、民法としては原則として関知しない、こういうことであります。要は、不利な契約を望んでするのであれば、それはもう国として、あるいは政府として、あるいは公的な機関は関与をしない、これが大原則なのであると多分最初の授業で先生がおっしゃったことを忘れずに記憶しているわけであります。 そういう意味で、ちょっとおやっと思ったのは、新聞の記事などを見ていると、平成二十六年八月、九月、それぞれ毎日、読売が、「消費者保護の姿勢貫け」、毎日新聞ですね、社説の見出しであります。読売新聞は「消費者保護の観点を忘れずに」と来ているわけです。翌年になって、二十七年ですけれども、やはり毎日新聞は「消費者重視へ大幅改正」、読売も「消費者保護鮮明に」と。 百二十年ぶりの改正で、文言は変わっていないわけですから、たとえ約四十年前であれ、私が授業を受けたときと基本的に変わっていないはずだと思うんですけれども。 そこで、ちょっと盛山副大臣にお考えを伺いたかったのは、法律というのは全体として体系をつくっているものであって、およそ情報の非対称性とかがないプロ同士の取引を律する商法、これは凡ミスでしたみたいなことはむしろ許さない、一方当事者が極端に弱いとかそういうことを想定しなくていいので、それは何か、してやられるやつがいればそっちが悪いのだ、プロ同士の話なんだという世界があって、その一方で、弱者保護それ自体を目的とする消費者契約法などがある。金銭貸借でいえば貸金業法がありますし、割賦販売法もあれば製造物責任法などがあるということになります。 民法の位置づけなんですけれども、私自身は、民法というのは、弱者保護それ自体を目的とする、それに特化した法律ということでは決してなくて、やはり、物事の考え方として、対等な私人がお互い合意の上で結ぶ契約であれば、それは内容も自由なんだということをうたったその上で必要な規定を整備する。もちろん、結果的に消費者保護になることはあるわけで、そういうところも目指していかなきゃいけないけれども、そういうたてつけなのだというふうに理解をしております。 その点も含めて、今回の改正の目的について、盛山副大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
○盛山副大臣 私は、たしか、星野先生には民法の第二部で物権を習ったんじゃないかと思います、債権ではなかったかと思います。星野先生がどうおっしゃったか、私はもう覚えておりませんけれども。 今、赤澤委員が御指摘でございましたけれども、民法は私法の一般法でございます。対等な私人間の法律関係を規律するというものかと思います。そういう点で、プロ同士のものであるとか、そういうものではないと思います。 そのため、取引当事者の情報や交渉力の格差の是正を図るなど、弱者保護を主たる目的とする規定を設けるのであれば、先ほど赤澤委員が御指摘された特別法である消費者契約法、こういったものによるのが基本かなと私も思います。多分、先生も運輸省におられるときに関与されたのではないかと思いますし、私も課長として、消費者契約法の窓口課長で担当した覚えがございます。 今回の民法の第三編の改正では、例えば賃貸借のように国民に身近な法律関係に関しまして現在の実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することなどにより、法律の専門家ではない国民一般にも民法をわかりやすいものにすることが目指されているところです。 そしてまた、社会、経済の変化への対応の一環として、先ほど先生がおっしゃったとおり、百二十年ぶりということで大きく世の中は変わっているわけでございますので、例えば消費者契約でも多用されている約款に関しまして、これまでの議論でも明らかになりましたように、基本的な法律関係を明確化することにより、紛争の解決あるいは紛争の予防などを目指しているものでございます。 これらの改正は、赤澤委員御指摘のとおり、結果的に消費者の保護に資することとなると我々は考えておりますけれども、情報や交渉力の格差を是正する観点から、消費者の保護を図ることだけを目的とするというものではございません。
○赤澤委員 ありがとうございます。 私の方で補足するのもあれなんですけれども、今回の改正では、わざわざ、五百二十一条ですか、「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。」第二項では「契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。」と。 端的に言えば、保護に値するような場合以外であれば、不利なものを決めようがそれは当事者の自由だということがやはり大原則として契約の章にうたってあるわけです。 私が申し上げたいのは、要は、今回の改正について言えば、盛山副大臣がおっしゃったように、国民一般にわかりやすい民法とするため、判例等の積み重ねなど、でき上がった基本的なルールは明文化しておこうということと、それから社会経済情勢の激変に対応しましょうということであって、結果的に消費者の保護に資することになる規定の数々はありますが、これ自身は、情報や交渉力の格差を是正する観点から、消費者の保護を図ること自体を目的とするものではない。 そういう意味で、報道機関の皆様にも、ある意味、私は認識しておいていただきたいなと思うのは、この民法だけを見て消費者保護が足らぬとか、そういう議論というのは割とバランスを失しやすくて、法体系全体を見て、消費者保護が本当に足りているのか足りていないのか、各法律の体系の中でいろいろな目的を持つ法律が全体として消費者をきちっと守っているのかどうかという評価をしなければならないので、民法だけを取り出して消費者保護を貫けなかったとか、そういう議論というのは十分注意してやる必要がある、必ずしも的確なものではない場合があり得るということは指摘をしておきたいというふうに思います。 次に、これまで売買や賃貸借などについていろいろな質問をされていますけれども、請負も重要な契約類型の一つであると認識しております。 身近な例を挙げれば、大概の人間にとって一番高いお買い物である家を建てるときには、大工さんに頼んで建ててもらう、家を建てる人と大工さんの関係というのは典型的な請負契約ということだろうと思います。 請負をめぐっては、実際の実務でも、その報酬請求あるいは損害賠償請求権をめぐってさまざまな紛争が生じているというふうに承知をしております。 今回の改正で、請負契約について具体的にどのような改正を行っているのか、御当局から御説明いただきたいと思います。
○小川政府参考人 お答えいたします。 改正法案では請負についても幾つかの改正項目がございますが、主要なものを取り上げますと、まず一つは、土地工作物を目的物とする請負契約について、瑕疵があっても注文者は契約を解除することができないというのが現行法六百三十五条ただし書きの規定でございますが、この規定を削除するというのがございます。 それから第二に、請負人の担保責任の期間制限についての起算点の変更などの見直しを行っております。
○赤澤委員 今御説明があった改正、六百三十五条ただし書きの削除ということなんですけれども、これについてちょっといろいろな経緯とか資料とかに目を通してみると、瑕疵があっても注文者は契約解除ができないということについて、ではその損害賠償は求められるのかということで、過去には、解除権もないんだから損害賠償なんか求められるわけないだろうという考え方に立った判例と、いやいや、解除権は法令で明文に規定されているけれども、それはなくても損害賠償はできるんだと、判例が二つに分かれていた。 ところで、平成十四年に最高裁の判決が出て、判例も、建てかえ費用相当額の損害賠償は認めるということが確定をしたということであります。だから、解除の制限が実質的に空文化したということになると思うんです。この判決に基づいて、六百三十五条ただし書きは既に実質的には空文化しているということなんですけれども、今回それを削除するというのは、入念的というか確認の意味でやっているというような理解、あるいは先ほどの盛山副大臣の言葉で言えば、国民にわかりやすくということできちっと明文化しておくんだというような趣旨でよろしいんでしょうか。
○小川政府参考人 お答えいたします。 現行法の六百三十五条ただし書きは、土地の工作物の建築には多くの資材や労力が投下されており、除去される場合による社会的、経済的な損失ですとか、あるいは請負人にとって過酷ではないかなどの理由から、仕事の目的物が建物その他の工作物である請負契約については、注文者は契約の解除をすることができないとしております。 そして、建物に重大な欠陥がある場合に、注文者の請負人に対する建てかえ費用相当額の損害賠償が認められますと、これは、みずから欠陥のある建物を注文者側が撤去することができますので、実質的に請負契約の解除を認めたことと同じことになることもあって、御指摘ありましたように、かつては、建てかえ費用相当額の損害賠償が認められるかどうかについて争いがございました。これにつきましては、先ほど御指摘ありましたように、平成十四年九月二十四日の最高裁の判決において建てかえ費用相当額の損害賠償が認められ、この争いには決着がつくこととなりました。 御指摘のように、この判決によって、建てかえ費用相当額の支払いを受けてみずから欠陥のある建物を撤去することができるため、現行法六百三十五条ただし書きは実質的に意味を失ったという評価も可能でございます。しかし、形式的には同条ただし書きが残っております関係上、この判決を知らなければ、注文者の方といたしますと、請負契約を解除することはできず、契約を解除して建物の撤去などの原状回復を求めることはできないと受けとめる可能性もございました。 そこで、改正法案は、判決の趣旨をも踏まえ、現行法第六百三十五条ただし書きを削除しましたものでございまして、これは国民にわかりやすい民法とするという観点から意義があるものというふうに考えております。
○赤澤委員 国民が、契約を解除して建物の撤去など原状回復を求めることはできないものと受けとめるほかない状況にあった、それを改正法案で、判決の趣旨も踏まえて、国民にわかりやすい民法とするという観点から改めたということであります。それなりに意義はあるんだろうというふうに理解をいたします。 次に、時効の話についてもちょっとお伺いをしたいと思います。 時効の中断を、今回、時効の完成猶予と更新に再構成するというふうに承知をしております。昨日ですか、辻委員が質問を行っておられました。本日はもうちょっと具体的な話について伺ってみたいと思いますけれども、今回の改正では、当事者間で権利について協議中のケースは、一定の要件のもとで消滅時効の完成が猶予されることになっております。経済界などからも賛同を得ている改正というふうに私自身は承知をしておりますけれども、どのような趣旨か教えていただきたいと思います。
○小川政府参考人 お答えいたします。 現行法においては、当事者が権利をめぐる争いを解決するための協議を継続しておりましても、時効の完成が迫ると、完成を阻止するためだけに訴えを提起するとか調停の申し立てをするなどの措置をとらざるを得ず、そのことが、当事者間で自発的で柔軟な紛争解決を図るという上での障害となっております。そのため、このような協議を行っている場合には時効が完成しないように手当てをする必要があると考えられたわけでございます。 そこで、改正法案におきましては、当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面または電磁的記録によりされた場合には時効の完成が猶予されるという新しい規定を設けることとしております。
○赤澤委員 念のために確認をさせていただきたいと思いますが、単に協議を行う旨の合意があるだけでは時効の完成を猶予するのに法律関係が不安定になりかねないと思うんですけれども、具体的にどのような要件があれば時効の完成が猶予されるんですか。
○小川政府参考人 御指摘ありましたとおり、権利義務の当事者間において何らかの協議が行われたり、あるいは協議を行う合意があったというだけで時効の完成が猶予されることとなりますと、事後的に時効の完成猶予がされたか否かなどをめぐる紛争が生じ、かえって法律関係が不安定になるおそれもございます。 そこで、改正法案におきましては、権利義務の当事者間において権利についての協議を行う旨の合意が書面または電磁的記録でされた場合に限って時効の完成が猶予されることとしております。
○赤澤委員 ホウゲンとだけ聞くと、何か地方でなまっているという感じの方言かと思うかもしれませんが、法諺というのがあって、これも授業で習った、権利の上に眠る者は保護に値しないと、権利の上に眠る者は保護せずということだと思います。その典型例として挙げられるのが時効ということなんですけれども、逆に言うと、書面を出して協議さえ続けていればずっとある意味時効にならないというような形だと、ちょっとバランスを失しているような感じもいたしますけれども、その辺はどんな感じになっていますか。
○小川政府参考人 今御指摘ありましたように、いつまでもということではございませんで、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予される期間を定めております。 その内容ですが、合意があったときから一年を経過したとき、それから、合意において一年未満の協議期間を定めた場合はその期間が経過したとき、あるいは、協議の続行を拒絶する旨の書面などによる通知を受けたときにはそのときから六カ月を経過したときのうち、いずれか早い時点までという期間制限をしております。 したがいまして、一度の合意によって完成が猶予される期間は最長でも一年ということでございます。 しかし、この完成猶予の期間内に協議を行う旨の合意を繰り返すことによって、完成猶予の期間を延長していくことも可能としております。もっとも、時効制度にはもちろん、長期間にわたって不確定な状態が継続することを防ぐという公益的な機能もございまして、時効の完成猶予の効力の延長を私人であります当事者に無制限に委ねるということは妥当とは言いがたいところがございます。 そこで、協議を行う旨の合意を繰り返す場合でも、本来の時効の完成すべきときから通算して五年を超えて完成が猶予されることはないということとしております。
○赤澤委員 時効について、協議中であっても訴えないと中断されないみたいなことで、円満に協議しているのに無理やり訴えなきゃいかぬみたいな話はやはりちょっと法律の不備だと思うので、今回、私は、特にここについては、割といい改正だなというふうに評価をしているということを申し上げておきたいと思います。 加えて、残りの時間でちょっと大臣にお伺いをいたします。 民法の関係というのは思ったより身近なんだなということも思いましたし、やはり法律というのは大事なんだなと思ったのは保証の関係であります。 私自身は、昨年の十月九日まで内閣府の金融担当の副大臣でした。麻生太郎大臣のもとで金融担当の副大臣をやっておりました。 そういうことで、平成二十五年、二〇一三年の十二月五日につくられた、基本的には民間が自主的かつ自律的な準則としてつくった経営者保証に関するガイドライン、これをもって、保証をした結果、何か一家離散になったり、場合によっては本当に世をはかなむみたいな悲惨な事態が生じないようにしていく。その方向としては、担保がなければ金貸さぬというような担保の有無で物を判断するのでなく、その企業の事業性で判断をするという方向に物事を変えていかなきゃおかしいじゃないか、さらには、事業用資産とそれ以外は分けて考えるべきだとか、いろいろなことがあると思うんですが、そういうことを一生懸命やっておりました。 そんな中で、地元で実は私を支援してくださる美容師さんたちの集まりというのがあって、十数名の集まりでちょっとお話をしているときに、こういう話があったんです。 金融担当の副大臣を私はやっています、経営者保証のガイドラインをやって、こんな話をしているんだよねと。話しているときの私の感覚は、そういう話が聞いている人に受けるかどうかもわからないし、ぴんとくるかなと思ってしていたのが実際なんですけれども、テーブルにいたのは四人か五人だったと思いますが、何とそのうち二人が一斉に、それを早くやってほしかった、私も子供のころに、両親が事業に失敗をして住んでいた家から出なきゃいけなかったという経験をしていますということを言われたのを鮮明に覚えているんですね。 そういうことで、やはり本当に法律というのは制度をうまく仕組まないと、国民に迷惑をかけるといいますか、非常に大きなものがあるなというふうに感じた経験でありました。 そういう意味で、保証について言うと、今回も、私自身は、経営者保証についても本来は事業用資産とそれ以外をきちっと分けて考えるべきだとかいろいろな思いがありますが、それはまあニーズがあるということでおいておいて、第三者保証について、公証人による保証意思確認の制度が入るということになりましたね。 ただ、一言で言うと、よくわからずに保証しちゃったというケースは、公証人から丁寧に説明を受ければなくなることが期待できると思うんだけれども、一番ありがちなのは個人的情義、あの人に頼まれたら断れないという場合は、幾ら説明を受けてもやはり断れないということが多いような気もするんです。 大臣に伺いたかったのは、これによって第三者保証の件数は減少することが見込めますかという点であります。私にとっては非常に重大関心事なんですけれども、よろしくお願いします。
○金田国務大臣 赤澤委員からの御質問でございます。お答えいたします。 まず、公証人は、保証人になろうとする者が保証契約のリスクを十分に理解した上で、相当の考慮をして保証契約を締結しようとしているか否かを見きわめる、仮に保証意思を確認することができない場合には公正証書の作成を拒絶しなければならないということに改正法案のもとではなるわけであります。 このように、公的機関であります公証人が保証人になろうとする者の保証意思を確認するという手続を設けることによりまして、安易に保証契約を締結してしまうという事態は抑止することが可能となりますし、この手続が存在することによりまして、個人的な情義に基づいて保証人になろうとした者が結果的に保証人となることを差し控える例も相当数出てくるのではないか、このように考えている次第であります。 したがいまして、具体的な数字などを申し上げることはできませんけれども、個人的な情義に基づいて安易に保証人になるという事態は相当程度減少することになるものと期待をしております。これにより、保証の件数自体も一定程度減少することになるのではないか、このように考えている次第であります。
○赤澤委員 時間が来たのでこれで終わりますが、今の保証の件も含めて、やはり今回の改正の効果の検証というのが非常に重要であると私は思っています。そのフォローをしっかりやって、不断に関係者が見直していただくことを強く求めて、私の質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、土屋正忠君。
○土屋(正)委員 このところずっと専門の、学識の深い方々の質問が続いて、私も大いに勉強させていただいている次第でございますが、きょうは、私の方からは、大臣に、この法律の一つの大きなポイントになっております保証の話について、実態に合った法律改正でなければならないんじゃないかという角度から質問をさせていただきたいと存じます。 お手元に、中小企業数の規模別法人数の概要、これは出典は中小企業庁でありますが、これを見ると、個人事業主が小規模事業で百九十七・三万者、いわゆる法人成りした小規模事業者が百二十七・九万者、合わせて三百二十五万二千者ということになり、ここに勤める従業員の数は一千百万人程度と推定をされておりますので、相当いろいろな経済活動に影響する話だな、こんなふうな気持ちであります。 その上で、保証ということを考える際に、ずっと考えてまいりましたが、これは今、明治以降始まったわけじゃなくて、ずっと長い歴史があるものだと思います。また、幾つかの小説の中にも出てきたりして、私は、ふと思いついたのは、「走れメロス」という小説で、友人が保証人になって、王から三日間の死刑執行の猶予を与えられたメロスが、三日間走り続けてふるさとへ帰って、妹の結婚式に出て帰ってくるという、あれは命をかけたいわゆる第三者保証だ、こんなふうに思いました。そういうことも含めて、相当さまざまな角度から物を考える必要があるだろうと思います。 このたびの四百六十五条の九の三、またその一もそうなのでありますが、「主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」が保証人になる場合には公証人がつくる公正証書を必要としない、こういう規定がございます。 今、赤澤議員からもお話がありましたが、第一の論点は、我が国は、契約自由の原則で、いわゆる私有財産制のもとに自由に生産活動を行う、こういう大原則があるわけでありますが、そこに、社会的な合意を得て一定のルールをつくっていく、これが民法であり、今、赤澤議員がおっしゃったような消費者保護法だとかいろいろなことがあろうと思います。 しかし、同時に、こういった体制の中にあって一番大事なことは、私的契約の自由、こういうことの原則を厳しく規制し過ぎて、実体経済や、あるいは国民の生活や経済活動に影響を与えてはならないのではないか、このように考える次第でございます。 今、一定の条件のもとに公証人のもとで公正証書をつくりなさいよという法文が出されました。同時に、その例外規定として四百六十五条の九の一、二、三があるわけでございますが、とりわけ三の場合には、個人事業主でありますから、相当よく実態を見て評価しなければならないだろうと思います。 そこで、個人事業主の集まりであります青色申告会や、あるいは法人も含めた小規模な企業の集まりであります商工会、商工会議所はどちらかというと中堅ぐらいの方が入っておりますが、商工会の幹部にこれらについて意見を求めました。 まず、東京都の商工会の幹部でありますが、会員は政策金融公庫の無担保無保証などの融資を利用することが多い、そしてそれは商工会を経由して、商工会が、大丈夫ですよみたいな、一種の、保証じゃないんですけれども、添え書きみたいな感じをすることによって無担保無保証の融資を受けている、それ以外の資金は、少額の場合には配偶者が保証人になる場合も多い、これが実態で、今までこのルールで来ていて、とりたてて不都合であるという話は聞いていないと。つまり、配偶者が保証人になっても、それによって決定的な不都合が起こったという話は聞いていない、事業を円滑に進めるためにも、よく実態を見て、その上で民法の整備をしてほしい、こういう御意見でありました。 さらに、青色申告会、これも東京都レベルの幹部でありますが、この方は自分でも個人事業主でありますが、この方に聞いてみました。個人事業主の多くは夫婦単位で仕事をやっている、人件費が高いので従業員を使っている事業者は少ない、こう言っていました。 金融機関から融資を受けることはたびたびある、運転資金であったり事業用の車の購入であったり店舗の一部改修であったり、こういうところに数百万の単位のお金を借りるときがある、これらの、二百万、三百万の比較的少額なものは配偶者が保証人になるのが普通だ、店舗を大改装したりアパートを建てて、事業に窮する場合には、一千万円を超えると金融機関は物的な担保を求めてくる、また保証協会の保証をつけてくださいと言われる、これが実態である。配偶者が保証人になるのに一々予約をとって公証人役場に行くことは金や時間がかかることなので勘弁してほしいと。勘弁してほしいという非常に口語的な言い方をしておりました。 そしてさらに、仕事というのは真心を込めてやって、色気を出さなければ商売は回っていくよ、こうもおっしゃっていました。個人事業は、父ちゃん、母ちゃんの仕事だから、健康には一番気をつけているんだ、こういう発言でありました。 こういう個人事業主の声にかなった今回の法改正、つまり、第三者保証で軽率性や情義性には一定の歯どめをかけながらも、しかし、この二百八万者の個人事業主を初め、そういった小規模事業に対して実態に合わせた判断をしている、私はこう思うわけでありますが、大臣はいかがお考えでしょうか。
○金田国務大臣 ただいま土屋委員から、実際に個人事業主の声と実態といいますか、そういうものを調査された結果に基づいた御指摘がございました。 私どもも、この問題に関しましては、個人事業主に関しましては、経営と家計の分離が必ずしも十分ではない、そして、主債務者とその配偶者が経済的に一体であると見られることが多い、こういう実態を考えて、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も現に少なくないのも実情であろう、こういうふうにその問題については認識をしている次第であります。 そういうことから、主債務者の配偶者を保証人とすることの制限の可否につきましては、主債務者である個人事業主の資金調達の実態、声と実態といいますか、そういう実態を踏まえた上で判断する必要がある、まさにそのように考えております。 そうした意味におきまして、ただいま委員から、聞き取り調査の結果に基づいて御意見がございました。個人事業主の資金調達の実情というものは、中小企業における資金調達の実態をあらわしているものと考えております。
○土屋(正)委員 ありがとうございました。 いろいろな見方がありますが、やはり基本は、国民の自由な経済活動を法が余り規制してしまってはいけない、さりとて、国家のルールとして一定の価値観を持ってやっていく、このバランスが大事だろうと思っております。 そして、今大臣からは、何よりも実態に基づいて法律をつくっていくんだ、こういう御趣旨の答弁をいただいた、このように受けとめさせていただきたいと存じます。 さて、これまでの議論の中で、公証役場で公証人が保証人の保証の意思を確認するという作業を口述によって公正証書にするということがされたわけでありますが、その際、軽率的な保証人になることには一定程度効果があるだろうと。 しかし、さきの質問でもありましたように、情義性については、情義性というのは専門用語でありますが、夫婦の情愛と言った方が一般的なことかもわかりませんが、第三者の場合には情義性ですけれども、あるいは個人的な友人その他のあれだと思いますが、こういうものについてなかなか排除できないね、あるいは排除する必要があるのかというようなことが出されました。かつての議論の中には、中小企業の経営者同士がお互いに保証しっこしている、こういう実態も話されたわけであります。 そこでさらに、一つの論として、配偶者に過大な負債を負わせることの是非ということがあり、議論されているわけでありますが、この点について意見を聞きたいと思います。 配偶者間の情義性は、婚姻という人生最大の選択を通し、親子、兄弟姉妹とともに、極めて情義性が深いものだ、このように思います。 さらに、私はこんな経験があります。 ある市の市長の話でありますが、配偶者、奥様が重い腎疾患になりました。腎臓移植しか助かる道はない、こう判定をされたようであります。ところが、なかなかドナーがあらわれないということで、たまたま血液型がこの市長、御主人の方に合ったので、二つある腎臓のうちの一つを奥様に提供した。これはもう最大の情義性ですよね。これを文学的な表現で言えば情愛と言ってもいいかもしれない。何というか、自分でできるかと言われれば、なかなか動揺しますが。 おかげさまで奥様は回復した。ところが、腎臓を提供した方の市長が、今度は残った腎臓が悪くなって、数年後に亡くなったわけであります。私はもちろん御葬儀にお伺いして、奥様にお目にかかったわけでありますが、いかがな思いかと思って、人間の、夫婦の、あるいは配偶者のと言ってもいいかわかりませんが、結びつきの深さ、強さ。これは、友達ぐらいじゃ絶対やらないでしょうね。友達ぐらいと言うとなんでございますが、友達でもいろいろあるからあれですけれども。 このことに象徴されるように、やはり婚姻による、めぐり会って婚姻して長い間一緒に生きていくということの意味の情義性の強さを感じたわけであります。 日本の憲法は、両性の合意のみによって婚姻が成立する、こういう規定をいたしております。しかし、これは戦後の考え方でありますが、ヨーロッパの、とりわけキリスト教のサクラメンタルチャーチの考え方でいきますと、教会婚、教会で婚姻を挙げた場合には、ローマンカソリックの世界では、この世に生を受けてから、最後、終油に至るまでの七つの神様の秘跡がある、その七つの秘跡のうちの一つが婚姻だと。つまり、自分の意思ではなくて神の恩寵だという非常に深い考え方で、これはイスラムの世界でも同様のようであります。 したがって、教会婚では、何か最近、教会で式を挙げるのがはやるというか、とてもあれしておりますが、私ども、出ますと、最後に、なんじは妻を病めるときも愛しますかと聞かれて、そのときノーと言ったらこれは成り立ちませんから、大概皆さんイエスと言う。だけれども、言ってみれば、そういうふうな深い前提の上に、少なくともキリスト教やイスラム教の立場からすると、女性が男性にめぐり会うのも、また男性が女性にめぐり会うのも神の恩寵だと。だから離婚はできないんですね。 だけれども、ちなみにフランスはローマンカソリックの国でありますが、私が行ったときに、教会婚が最近はやらないんだと。法律婚がはやって、法律婚は離婚を認めるからと。 こういうことになっていますから、夫婦の実態もいろいろあるんですけれども、そういう深い情義性に基づいて人生を送っていって、その人生を送る途中で、父ちゃん、母ちゃんの商売があり、みんなで力を合わせて、もうかってよかったよかった、海外旅行へ行こう、それが調子が悪くなって、どうもえらいことになったというのを共有の運命として甘受していくんじゃないかと思います。 したがって、そういう婚姻とか情義性についてきっちりとした人間観を持った上で民法がなければならないだろうと思うんですが、余り通告していない質問で恐縮ですが、大臣の賢明な御所見を承りたいと思います。
○金田国務大臣 土屋委員から、市長時代の御経験も踏まえて、いろいろ、夫婦のきずなの強さといったような深い話をお聞きしました。 私どもは、主債務者の配偶者ということで申し上げますと、個人事業主に関しましては、やはり、お話のあったように、経営と家計の分離が必ずしも十分ではない、そして主債務者とその配偶者が経済的にも一体であると見られることが多いので、配偶者を保証人とすることによって金融機関から融資を受けている事例も現に少なくないというのが実情であろう、このように受けとめております。 改正法案におきましては、こうした融資の実情を踏まえて、主債務者が個人事業主である場合のその配偶者について、主債務者の事業に現に従事していることを要求し、主債務者の事業内容を把握可能な立場にある場合になお一層限定をして、例外として扱うことといたしております。 この要件に該当する配偶者につきましては、これを主債務者の保証人とする実務上のニーズも強く、かつ保証のリスクを認識することも可能なものと言えるのではないか、このように考えておりますので、公証人による意思確認の対象としないことも合理性があるんだ、このように考えている次第であります。 このような立場にあります配偶者が実際に保証人となるかどうかについては、配偶者の意思によるところもございますが、融資を受けることで家業の事業継続が可能になるといったような事態も想定いたしますと、みずからが保証人となることで融資を得たいという配偶者の判断は一概に軽率であるとか安易であるとは断じがたい面があると考えられます。 したがいまして、法務省といたしましては、改正法案の成立後は、配偶者による保証を含めて個人保証に依存し過ぎない融資保証の確立に向けて引き続き取り組んでまいりたいなとは思っておりますが、ただいま申し上げたように、配偶者の判断を尊重もしていきたい、このように思っている次第であります。
○土屋(正)委員 ありがとうございました。 国民生活を安定させ、繁栄させ、実態に応じた法の内容であると思いますし、また、それに基づいて、これらを広く国民に知らしめるときには、そういうことも含めてぜひしっかりと国民にPRしていただきますようお願いして、きょうの質問を終わります。 きょうはどうもありがとうございました。
○鈴木委員長 次に、國重徹君。
○國重委員 公明党の國重徹でございます。昨日に引き続いて、本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。 きょうは、主として債権譲渡に関してお伺いしていきたいと思っております。 早速質問に入らせていただきます。まず、債権譲渡の中でも、将来債権の譲渡、また対抗要件に関して伺ってまいりたいと思います。 中小企業にとって運転資金をいかに確保するか、これは極めて重要な課題でございます。ここ最近、中小企業の資金調達の手法として急増しているのが将来債権の譲渡ということで、例えば、中小企業がその事業において将来発生する売り掛け債権を売買等によって譲渡しまして、そのかわりに資金を調達する、こういったものが将来債権の譲渡でありますけれども、この将来債権の譲渡については現行民法上規定がありませんでした。ただ、判例実務上は認められていたということで、今回の改正法案では、将来債権の譲渡が可能であるということを明らかにするための規定が新設をされております。 改正法案四百六十七条では、債権譲渡の権利行使要件、また第三者対抗要件について、現行民法第四百六十七条の内容、通知または承諾が必要であることでありますけれども、これを維持した上で、将来債権の譲渡の場合も、債権発生前の段階で、権利行使要件、第三者対抗要件、これを具備することができるとしておりますけれども、この趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 現行法のもとでは、現に発生していない、いわゆる将来債権の譲渡の対抗要件については条文上は明確ではございませんが、判例は指名債権の譲渡と同様の方法によってこれを具備することができるとしてございます。 そこで、改正法案におきましては、民法を国民一般にわかりやすいものとする観点とともに、将来債権の譲渡の対抗要件の具備の方法を明確にし、将来債権の譲渡をより円滑に行うことができるようにするという観点から、将来債権の譲渡についても、既に発生している一般の債権の譲渡と同じ方法で対抗要件を具備することができるということを明文化することとしております。
○國重委員 そのような、債権譲渡また将来の債権譲渡、それぞれ対抗要件はあるわけでございますけれども、債権が二重譲渡された場合、債権が二重に譲渡をされて、二人の譲り受け人がともに第三者対抗要件である確定日付ある証書による通知を受けている場合、譲り受け人相互間ではいずれが優劣するのか。これについては、到達時、つまり通知が債務者に到達した日時の先後によって決まる、これが判例でございます。 なぜこうなるのかといいますと、債務者に通知が到達すれば、債務者が債権譲渡の事実を認識することができる、そうなれば、債務者に登記所と同じような公示機能を働かせることができるというような理由で、いわゆる到達時説というのが判例ということになっております。 ただ、これによりますと、債務者に公示機能を働かせる、インフォメーションセンターのような役割を果たさせるということになれば、債務者の負担が極めて大きくなる。具体的には、例えば、譲り受け人が債務者の複数の支店と取引している場合、同一の債権の譲渡に関して通知が別々の支店に届くことがある。その場合、通知の到達の先後を把握することがより債務者にとって難しくなる、また、同一の債権の譲渡通知の有無を全ての支店、部署に確認しなければならなくなって、非常に煩雑になる、このような問題があると言われております。 このような実務的な問題、現在の対抗要件制度の問題を解消するために、法制審議会の部会では、対抗要件制度を新たに整備していこうじゃないかということで検討がされましたけれども、結局、これは合意がまとまらずに、将来債権の譲渡に関しては改正法案で新設されたけれども、それ以外については従前のままということになりました。 債権譲渡の対抗要件に関する部会での議論の経過、また法改正が見送られた理由、そして、このことに関して法務省はどのように捉えているのか、今後の検討課題として捉えているのか、お伺いいたします。
○小川政府参考人 債権譲渡の第三者対抗要件につきましては、今委員の方から御指摘ございましたように、しばしばインフォメーションセンターという用語を使いますが、債務者が公示に深くかかわるという制度となっております。このような債務者の負担を軽減する観点から、法制審議会において、その立案の過程の中で、こういった、現行の四百六十七条の通知または承諾による対抗要件にかえて、債権譲渡の登記に関する制度を一般的に創設し、対抗要件を登記に一元化することが検討されました。 このような制度が実現すれば、債権を譲り受けようとする者は登記を確認すれば足りるということになりますし、債務者は債権を譲り受けようとする者からの照会に応ずる煩雑さから解放されることになって、取引の安全確保という観点からも、それから、先ほど来御指摘ありますような、債務者の認識に頼る制度といった点から見ましても、より確実なものということが考えられるわけでございます。 もっとも、現在の対抗要件制度の持つ意味といたしましては、非常に簡易、かつ、コストの面でも安価であるという点がございます。こういった利点を失わせないような登記制度の構築は必ずしも容易ではなく、また現行制度における債務者の負担もさほど重いものではないのではないかという評価もあることから、登記による対抗要件制度の創設は時期尚早であるという結論に至りました。 以上のとおり、現時点におきましては、現行制度にかわる制度を創設することが困難であると考えられたことから、改正法案においては、債権譲渡の対抗要件制度について現状を維持することとしております。 ただ、債権譲渡の対抗要件制度をより使い勝手のよいものとすることは、中小企業の資金調達の円滑化にも資することになるため、重要であるものと認識しております。法務省といたしましては、引き続き、今回の立案過程での議論の蓄積を踏まえ、債権譲渡実務の今後の状況などを注視してまいりたいと考えております。
○國重委員 大臣、今局長の方に答えていただきましたけれども、債権譲渡の対抗要件、この制度の新設についてさまざま議論がされた、今回は合意はまとまらなかったけれども、しっかりと注視していくというような局長の答弁であったかと思いますけれども、大臣はいかがでしょうか。
○金田国務大臣 國重委員の御質問にお答えします。 ただいま局長が述べておりましたとおり、現時点におきましては、現行制度にかわる制度を創設するということは技術的にも困難であったものと認識をしております。 しかし、債権譲渡の対抗要件制度をより使い勝手のよいものにすることは、中小企業金融の円滑化の観点からは重要であると認識をしておりますために、法務省としては、対抗要件制度の利便性の向上を目指して、引き続き債権譲渡の実務の状況等を注視していきたい、このように考えております。
○國重委員 ありがとうございました。 私も、何か明確な答えを持っているわけではありませんけれども、また、悩ましい課題だと思いますけれども、ぜひまた今後もしっかりと取り組んでいっていただければと思います。 続きまして、債権譲渡における抗弁の承継、抗弁の切断に関してお伺いいたします。 債権譲渡というのは、債権の同一性を保って移転をする、また、債権譲渡によって債務者が一方的に不利な立場に置かれてしまうことは許されるべきではない、そういったことで、債務者は、債権譲渡によって誰が債権者になろうとも、これまで主張できた抗弁は全て主張ができる、これを抗弁の承継といいまして、これが原則になります。 もっとも、現行民法四百六十八条一項では、債務者が異議をとどめずにその債権譲渡を承諾してしまった場合には、譲渡人に対して主張できた抗弁を、善意無過失の譲り受け人には主張できない、いわゆる異議をとどめない承諾による抗弁の切断を定めております。 この異議をとどめない承諾による抗弁の切断の保護を受ける譲り受け人の主観的要件として、判例上、善意無過失、これが必要とされておりますけれども、まずこの趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 お答えいたします。 現行法のもとでは条文上には規定はございませんが、御指摘ありましたように、判例は、異議をとどめない承諾によって抗弁を対抗することができなくなるのは、債権譲渡の譲り受け人が善意無過失、過失なくしてそのことを知らなかったという場合に限られるものとしております。 その趣旨は、異議をとどめない承諾の制度趣旨は譲り受け人の利益を保護し一般債権取引の安全を保障する点にありますが、悪意または過失のある譲り受け人を保護する必要性は低いと考えられること、また、異議をとどめない承諾の制度は、債務者の単なる承諾のみによって、譲渡人に対抗することができた事由をもって譲り受け人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものでありますので、悪意または過失のある譲り受け人との関係でもその効果を生じさせるのは両当事者間の均衡を欠くと考えられたことにあるとされております。
○國重委員 異議をとどめない承諾による抗弁の切断でありますけれども、改正法案では、異議をとどめない承諾、この規定を削除しております。この趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 現行法四百六十八条一項では、債務者が異議をとどめないで債権の譲渡の承諾をしたときは、債務者が譲渡人に対抗することができた事由、いわゆる抗弁の事由があっても、これをもって譲り受け人に対抗することができないこととされております。 しかし、単に債権が譲渡されたことを認識した旨を債務者が通知しただけで抗弁を対抗することができなくなるという効果が発生するのは、これは、債務者にとっては予想が困難な事態というべきでございます。そのため、債務者から異議をとどめない承諾の効力の有無が争われるといったことも少なくありませんが、実務では、債務者が承諾によって生ずる効果を認識していたか否かを考慮した上で抗弁の対抗の可否が決せられており、その結果として効力が否定される例もあらわれております。 このように、実務が条文の文言そのものとは異なった状況になっているのは、条文の文言どおりに解釈したのでは、異議をとどめない承諾に、債務者の予想を超えた、抗弁を失うという強力な効果を持たせることになってしまうためでありますが、より公平で合理的な制度とする観点からは、抗弁を対抗することができなくなるのは債務者の意思に基づく場合に限ることとして、異議をとどめない承諾の制度それ自体を廃止するというのが適当ではないかと考えられるわけでございます。 また、この制度がなくなっても、譲り受け人としては、債務者が抗弁を放棄する旨の意思表示をしたことを確認して債権を譲り受ければよいのでありますから、そのことによって取引の安全が害されることもないと考えられます。 そこで、改正法案におきましては、異議をとどめない承諾の制度を廃止することとしております。
○國重委員 ありがとうございます。 済みません。今、局長にいろいろ答えていただいていますけれども、私、順番をいろいろと入れかえていますので、少々混乱するかもしれません。 今、局長が答弁の中で、債務者が抗弁の放棄の意思表示をした際には、抗弁の切断をした債権を譲り受けることができるというようなことを言われたと思います。 異議をとどめない承諾によって抗弁の切断をする、これは債務者にとって過重な負担になっていた、公平性に欠けるところもあったというようなことで、この規定に関してはなくす、私もこれについては賛成でございます。 ただ、そのかわりにというか、当たり前のことでありますけれども、債務者が抗弁の放棄の意思表示を譲り受け人にした場合には、その抗弁を切断した債権を譲り受け人は譲り受けることができるということになりますけれども、では、この場合、譲り受け人の主観的要件として善意無過失は必要なんでしょうか、どうでしょうか。
○小川政府参考人 善意無過失は、異議をとどめない承諾の制度のもとで考えられた理屈でございますので、今御指摘のあったような点では不要でございます。
○國重委員 全くそのとおりだと思います。 では次に、相殺、差し押さえと相殺、また債権譲渡と相殺に関連してお伺いしていきます。 まず、差し押さえと相殺について伺います。 現行民法第五百十一条では、差し押さえを受けた債権を受働債権とし、差し押さえ後に取得した債権を自働債権とする相殺はできないと定めておりますけれども、改正法案五百十一条一項では、差し押さえ前に取得した債権を自働債権とする相殺をすることができることを追加しております。これは、きょうお配りしている資料「債権譲渡・差押えにおける相殺に関する条文比較」というのがありますので、適宜ごらんいただければと思います。 このように、改正法案五百十一条一項で、差し押さえ前に取得した債権を自働債権とする相殺をすることができることを追加した趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 ある債権が差し押さえを受けた場合に、その債権の債務者、いわゆる第三債務者といいますが、その第三債務者が、自分の有する債権を、それに基づいて相殺をしていく自働債権とし、差し押さえられた債権の方を受働債権とする相殺、そういった相殺をすることができるかは、これは金融関係などでは実務上頻繁に生ずる問題でございます。 現行法の五百十一条は、差し押さえられた債権について、第三債務者が合理的な相殺の期待を有する場合にはそれを保護するという観点から、差し押さえ後に取得した債権による相殺をもって差し押さえ債権者に対抗することができないと定めておりますが、この規定を反対解釈いたしまして、第三債務者が差し押さえ前に取得した債権であれば、これによる相殺を無制限に差し押さえ債権者に対抗することができるかどうかという点については、これは非常に大きな争いがございました。 この点について、判例は、かつては自働債権の弁済期が受働債権のそれよりも先に到来することを要するという見解、弁済期の先後で決めるという考え方をとったこともございますが、その後、弁済期の先後を問わず、自己の有する債権を差し押さえ前に取得している限り、第三債務者は相殺を無制限に対抗することができるとする見解に立っておりまして、これによりまして、いわゆる相殺の担保的機能というものが保護されているところでございまして、今日ではこの判例が広く支持されております。 そこで、改正法案におきましては、この確立した判例を明文化するため、先ほど御指摘ありました五百十一条第一項におきまして、差し押さえ前に取得した債権を自働債権とする相殺を差し押さえ債権者に対抗することができるということを文言として追加することとしたわけでございます。
○國重委員 今、局長からるる答弁をいただきましたけれども、要は、キーワードが出てきたと思います、債務者の相殺の担保的機能に対する期待、合理的期待ということがありましたけれども、では、債権譲渡と相殺に関しまして、改正法案四百六十九条一項、二項で、これは配付した資料にも条文を書いておりますけれども、債権譲渡がされた場合に債務者が相殺の抗弁の主張ができるための要件をここで新設しております。この趣旨について伺います。
○小川政府参考人 債権譲渡と相殺の関係でございますが、現行法の四百六十八条二項は、譲渡人が譲渡の通知をしたときは、債務者は、その通知を受けるときまでに譲渡人に対して生じた事由を譲り受け人に対抗することができるとしております。 そして、この規定のもとでは、債権が譲渡された後であっても、債務者は、譲渡された債権と債務者が譲渡人に対して有していた債権とを相殺によって消滅させることができると解されております。 もっとも、債務者が相殺することができる、相殺権を行使することができる要件に関しましては、より具体的には、譲渡人が譲渡の通知をした時点において債務者が有する債権と譲渡された債権の弁済期が到来していることを要するか否か、これらの債権の弁済期の先後が問題となるか否かなどについて、これは先ほどの差し押さえと相殺と同様に明確な規定は設けられておりませんで、解釈上も争いがございました。 また、近時広く行われております将来債権の譲渡につきましても、将来債権の譲渡が行われた場合を念頭に置きますと、相殺権を行使することができるのは債務者が有する債権が譲渡の通知をするときまでに生じた場合に限られるとした場合には、相殺することができる場合が限定されるということになりまして、債務者の合理的な相殺への期待を保護することができないという問題もございます。 そこで、改正法案におきましては、債務者の合理的な相殺への期待を保護するという観点から、債権譲渡がされた場合に債務者が相殺権を行使することのできる要件を明確にするために、四百六十九条第一項、第二項の規定を新設することとしたものでございます。
○國重委員 ここでも債務者の相殺に対する合理的期待を保護するというような観点が出てきたかと思います。 改正法案四百六十九条一項、二項では、債権譲渡があった場合に、譲渡人に対して有する反対債権が、対抗要件具備時より前に債務者が取得した債権、これは四百六十九条一項、対抗要件具備時より前の原因に基づいて債務者が取得した債権、これは同条二項一号、譲り受け人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権、これは同条同項二号ということになりますけれども、こういったものであるときは、債務者は当該債権による相殺をもって譲り受け人に対抗することができるとしております。 それでは、四百六十九条二項一号に言う、前の原因に基づいて債務者が取得した債権とは具体的にどのようなものを想定しているのか、お伺いいたします。
○小川政府参考人 御指摘ございましたように、改正法案四百六十九条第二項第一号におきましては、譲り受け人が対抗要件を具備した時点よりも後に債務者が取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が対抗要件の具備時よりも前の原因に基づいて生じたときは、債務者はその債権による相殺をもって譲り受け人に対抗することができるとしております。 この対抗要件の具備時よりも前の原因に基づいて生じた債権の具体例ということでございますが、例えば、挙げますと、対抗要件の具備時よりも前に締結されていた賃貸借契約、これに基づいて対抗要件の具備時よりも後になって発生しました賃料債権、それから、対抗要件の具備時よりも前に債務者と保証人との間で締結されていた保証委託契約に基づいて対抗要件の具備時より後に発生しました事後求償権などを挙げることができようかと思います。
○國重委員 では、そのような四百六十九条二項第一号を設けた趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 先ほど申し上げましたように、四百六十九条二項一号では、譲り受け人が対抗要件を具備した時点よりも後に債務者が取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が対抗要件の具備時よりも前の原因に基づいて生じたときは対抗を可能とすることとしております。 この理由でございますが、対抗要件の具備の時点で債権の発生原因が生じていれば、まさにこれも相殺への期待というものも既に生じていると考えられること、それから、実際に債権が発生する時点と対抗要件の具備の時点のどちらが先行するかというのは、これは偶然の事情に左右されるところも多いといったことも考慮しまして、相殺への期待を保護するというものでございます。
○國重委員 相殺への合理的な期待を保護するというような観点からこの規定が設けられたということですけれども、この四百六十九条二項一号の、「対抗要件具備時より前の原因に基づいて」債務者が取得した債権と、支払いの差しどめを受けた債権を受働債権とする相殺を定めた五百十一条二項の「差押え前の原因」、これはお配りした資料に下線を引いておりますけれども、この四百六十九条二項一号の「前の原因」と五百十一条二項の「差押え前の原因」、これは同じなのか、違うのか、お伺いいたします。
○小川政府参考人 お答えいたします。 御指摘がありましたように、第四百六十九条二項と五百十一条にそれぞれ「前の原因」という表現を用いる部分がございます。これらはいずれも、債務者が有しておりました相殺への期待をどの範囲で第三者に対抗することを認めるかという問題でございまして、その具体的な債権の範囲につきましては、その債権による相殺の期待が保護に値するかという観点から検討されることになると考えられます。 したがいまして、「対抗要件具備時より前の原因に基づいて」取得した債権と、「差押え前の原因に基づいて生じたもの」、これは五百十一条二項ということになりますが、この二つの「前の原因」というものの範囲は基本的には一致することになるものと考えております。
○國重委員 債務者の相殺に対する合理的な期待を保護という観点から、この両者は基本的には同じという答弁でありました。 そうしますと、次に、今二項一号のことを聞きましたけれども、四百六十九条二項二号に「譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権」ということが明記されておりますけれども、これは具体的にどのようなものを想定しているのか、お伺いいたします。
○小川政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、改正法案四百六十九条二項二号におきましては、譲り受け人が対抗要件を具備した時点よりも後に債務者が取得した譲渡人に対する債権であっても、さらには、その債権が対抗要件の具備時よりも後の原因に基づいて生じたものであっても、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じたものであったときには対抗可能ということとしております。 この譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権の具体例といたしましては、将来発生する売買代金債権を将来債権として譲渡する合意がされ、その対抗要件が具備された後に、その売買代金債権の発生原因であります売買契約が締結されましたが、その売買契約に基づいて今度は損害賠償債権が事後的に発生したというような事案における、その損害賠償債権を典型例として挙げることができようかと思います。
○國重委員 それでは、そのような四百六十九条二項二号が設けられた趣旨についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 これも相殺の期待を問題とするわけでございまして、同一の契約から生じた債権債務については特に相殺の期待が強いと考えられることから、その相殺の期待を保護するという観点で、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権については特別に相殺権の行使を可能としたものでございます。
○國重委員 今、債権譲渡と相殺と、差し押さえと相殺に関して伺ってまいりました。四百六十九条二項一号と、これは債権譲渡に関する規定ですけれども、差し押さえに関する五百十一条二項、これに関してはほぼ基本的に同一だということでありました。 ただ、債権譲渡と相殺に関しての条文として、差し押さえと相殺に関してない条文がございます。これは四百六十九条二項二号、今説明していただいたものでありますけれども、四百六十九条二項二号の規定が差し押さえと相殺の局面で規定されなかった理由についてお伺いいたします。
○小川政府参考人 もう一度四百六十九条二項について繰り返しますと、債権が譲渡された場合に、譲渡人に対して有する債権と譲渡された債権の相殺を譲り受け人に対して対抗することができる範囲といたしまして、その債権が対抗要件の具備時よりも前の原因に基づいて生じたとき、これが一号ですが、それだけではなくて、その債権が対抗要件の具備時よりも後の原因に基づいて生じたものであっても、譲渡された債権の発生原因である契約に基づいて生じたときには相殺を対抗することができることとしているわけで、この二号に相当する部分は、御指摘のとおり、五百十一条にはございません。 これらは、債務者が有していた相殺の期待をどの範囲で第三者に対抗することを認めるかという問題でありまして、基本的には問題状況は一致しております。 もっとも、債権譲渡について見ますと、債権譲渡の場合は、先ほど来お話がありますように、将来債権の譲渡を幅広く現行法のもとでも許容されておりますし、今回新たに規定を置くわけでございまして、そういった相殺期待を有する債務者の利益を保護する観点から、相殺の範囲を拡大し、譲渡後に債務者が取得した債権との相殺についても広い範囲で相殺を可能とする必要があると考えられます。要するに、将来債権譲渡の場合を考慮したものでございます。 これに対しまして、債権の差し押さえの場合には、差し押さえの時点でその債権の発生の基礎となる法律関係が存在していることが要請されておりまして、さらに言えば、差し押さえによる強制執行を実効的なものとすることも重要でありますので、債権譲渡の場合と同様に債務者の利益を保護するのは妥当でないと考えられます。 こういった利益状況の違いを考慮して、債権譲渡と差し押さえとで規定を異にするということでございます。
○國重委員 よくわかりました。 続いて、逆相殺についてお伺いいたします。 改正法案四百六十九条一項、二項で、債権譲渡がされた場合に、債務者が相殺の抗弁の主張ができる場合、債務者がその相殺の主張をする前に、譲り受け人の方から先に、譲り受け債権を自働債権、債務者の譲り受け人に対する債権を受働債権として相殺する旨の意思表示、いわゆる逆相殺をした場合には、その後になって債務者が相殺の抗弁を譲り受け人に主張することができるのか。 債務者の相殺に対する期待をどの程度保護するのかにかかわる問題ですけれども、これに関してお伺いいたします。
○小川政府参考人 今のような事例として、転付命令を得た差し押さえ債権者についての判例がございます。 その判例の考え方を申し上げますと、転付命令を得ました差し押さえ債権者が、転付命令によって取得した債権を自働債権とし第三債務者に対していわゆる逆相殺の意思表示をした後に、第三債務者が、債務者に対して有する債権を自働債権とし転付命令の対象となった債権を受働債権とする相殺を主張した事案、そういった事案の中で、相殺の優劣関係についてどう考えるかという点が問題になりました。判例は、相殺の意思表示の先後によって優劣関係が決せられるというふうに判断しております。 この判例は先ほど申しましたように転付命令の場合の判例でございますが、債権譲渡がされた場合における、債権の譲り受け人による相殺と債務者による相殺権との優劣関係についても、転付命令と債権譲渡の類似性から見まして妥当するものというふうに考えております。 改正法案のもとでどうなるかということですが、改正法案のもとにおきましてもこの判例の考え方は維持されるものと考えられますので、お尋ねのありましたような事案につきましては、債務者は相殺権による債権の消滅を譲り受け人に対抗することはできないというふうに考えられます。
○國重委員 その限度では、債務者の相殺に対する期待は保護しないということですけれども、相殺の効果というのは意思表示によって発生させると民法が定めておりますので、意思表示の先後によって決めるというのはこれは別に当然のことなんだろう、合理的なんだろうというふうに私も思います。 債権譲渡については今質問をさせていただきましたので、ここまで質問が行けると思いませんでしたけれども、テンポよくやってきましたので、次に、預貯金口座に対する払い込みによる弁済に関してお伺いいたします。 現在、金銭債務の履行の多くが預貯金口座への払い込みによってなされておりますけれども、預貯金口座への払い込みによる債務の履行に関する規律について、現行民法には規定がございませんでした。解釈に委ねられておりました。そのため、例えば預貯金口座への払い込みによる金銭債務の消滅時期がいつか、こういった基本的な法律関係が必ずしも明確ではないという課題がありました。 今般、改正法案四百七十七条で、預貯金口座に対する払い込みによる弁済の効力について新設がされております。 では、この規定によって、債権者の預貯金口座に払い込めば債務の弁済にできるという趣旨なのか。債権者が同意もしていないのに、債務者が債権者の預貯金口座番号等を知っていて勝手に払い込みをした場合も債務の弁済に当たるとするのは不合理なような気もしますけれども、これに関してお伺いいたします。
○小川政府参考人 お答えいたします。 まず、四百七十七条の改正法案の内容の方から申し上げたいと思います。 まず、現代社会においては、金銭債務の弁済の多くは預貯金口座を通じた振り込みによって行われておりますが、現行法上、そのような振り込みによる弁済の効力などに関する規定がございません。 預貯金口座を通じた振り込みによる弁済については、銀行の過誤によって債権者の預貯金口座に金銭が振り込まれないといった事案が散見されますが、この場合における弁済の効力の有無は、法律の規定上必ずしも明らかではございません。 そのため、法律関係を明確化するという観点から、預貯金口座を通じた振り込みによる弁済の効力発生に関する規律、こういったものを設ける必要があると考えられたわけでございます。 そこで、改正法案におきましては、債権者の預貯金口座に対する払い込みによってする弁済は、債権者がその預貯金債権の債務者に対してその払い込みに係る金額の払い戻しを請求する権利を取得したとき、このときにその効力を生ずる旨の規定を新たに設けることとしております。 この規定に基づいて、預貯金口座への払い込みによって弁済をすることができるかどうかという点につきましては、これは、当事者間の合意の有無ですとかあるいは取引慣行を踏まえて個別に決せられることになるものと考えられます。 したがいまして、今御指摘のありましたような事例におきましても、要するに、債権者の意思に反するという場合でありましても当然に預貯金口座に対する払い込みによって弁済をすることができる、弁済の効果が生ずるということになるわけではないと考えております。
○國重委員 以上で質問を終わります。 ありがとうございました。
○鈴木委員長 次回は、来る九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時四十三分散会