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190回国会参議院2016/04/19

法務委員会 第8号

発言数
151
登壇者
14
会派数
5
開催日
2016/04/19

会議録

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、申し上げます。  この度の熊本地方を震源とする地震により、甚大な被害が発生し、多くの尊い人命を失いましたことは誠に痛ましい限りでございます。  お亡くなりになられた方々に対し、深く哀悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。  どうぞ御起立をお願いをいたします。黙祷。    〔総員起立、黙祷〕

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 黙祷を終わります。御着席ください。     ─────────────

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省人権擁護局長岡村和美さん外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案を議題といたします。  発議者矢倉克夫君から趣旨説明を聴取いたします。矢倉克夫君。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ただいま議題となりました本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。  近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられる事態が頻発化しております。かかる言動は、個人の基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ地域社会の基盤を揺るがすものであり、到底許されるものではありません。  もとより、表現の自由は民主主義の根幹を成す権利であり、表現内容に関する規制については極めて慎重に検討されなければならず、何をもって違法となる言動とし、それを誰がどのように判断するか等について難しい課題があります。  しかし、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではありません。  本法律案は、このような認識に基づき、憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進しようとするものであり、いわゆるヘイトスピーチを念頭に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないとの理念を内外に示し、かかる言動がない社会の実現を国民自らが宣言するものであります。その主な内容は次のとおりです。  第一に、前文を置き、我が国において、近年、不当な差別的言動により、本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの、すなわち本邦外出身者が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせており、このような事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしてもふさわしいものではないという本法律案の提案の趣旨について規定するほか、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言することとしております。  第二に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義を置き、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動をいうこととしております。  第三に、基本理念として、国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。  第四に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施について国及び地方公共団体の責務を規定することとしております。  第五に、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとしております。また、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしております。  以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。  本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されず、その解消に向けた取組が必須であることについては、参議院法務委員会において、実際にかかる言動が行われたとされる現地への視察や真摯な議論を通じ、与野党の委員の間で認識が共有されたところであると考えます。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。皆さん、おはようございます。  我が党は、ヘイトスピーチの根絶は政治の重大な責任であって、立法措置を含めた国会での大いな議論を求めてまいりました。そうした下で、このヘイトスピーチを社会的に包囲し、根絶の先頭に立つという政治の責任も強調をしてきたわけですけれども、昨年来、当委員会で議題となってきた、当時の民主党の皆さん始めとした野党の提出法案に続いて、今日こうして与党案が提出をされ、実質審議に入るということになったわけです。  これは、このヘイトスピーチを根絶をしようという運動、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さと当事者の皆さんの身を振り絞るような声を受けて行われているものであって、そうした意味で本当に大きな歴史的な意味を持っていると理解をしております。私たち参議院の法務委員会のこうした取組がヘイトスピーチ根絶の実りを上げるように、我が党としても力を尽くしていきたいと思うんです。  こうして与党の案が提出をされた下で当委員会を中心にして各党の協議が始まるに当たって、今日は、この与党案の意味するところについて様々な立場からの御意見が寄せられている中で、今日は与党案のその趣旨、意味というものをできる限りまず確認をさせていただきたいと思うんですね。特に三点について、法案の柱について御質問したいと思っております。  まず、その第一は、理念法の法たるゆえんということに関してです。先ほどの趣旨説明でも明らかですが、法案は、不当な差別的言動を、あってはならず、そして許されないことを宣言すると、そうした趣旨を前文で規定をされるとともに、第一条で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であるという認識を規定をした上で、第三条、基本理念として、国民の言わば努力義務という趣旨なのかと思うんですけれども、努めなければならないという規定ぶりで基本理念を記しておられるわけですが、このような規定にされた理由は一体どういうことでしょうか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 仁比委員の質問にお答えさせていただきます。  まず、この法律は、理念法という形で、禁止という形を取っておりません。その一番大きなのは、要するに、憲法上の表現の自由の保障をしっかりしなければならない、これは、やっぱりどうしてもこれは一番守らなければならない、そういう価値であるということを考えた結果、我々がこういう前文において本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないということを宣言をし、更なる人権教育と人権啓発などを通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進するものであります。  表現内容を規制するのは、先ほども言いましたけれども、表現行為の萎縮効果をもたらすおそれがありますから、このような不当な差別的言動の禁止や、その禁止に違反した場合の罰則を定めるということはあえてしていないわけであります。もっとも、御指摘のとおり前文で不当な差別的言動を許されないと宣言しましたが、法律でそういうメッセージを発信すること自体が非常に私は重要な意義があるものだと考えております。  さらに、三条においては、国民に周知を図ってその理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進することとすることを受けて三条は書いているわけでありますけれども、この中で、いわゆる憲法の保障する表現の自由に関わる問題でありますから、警察などの公権力、ここで規制をして強制的に進めるのではなくて、まず国民全体が、国民一人一人が理解をしてそういう差別的言動のない社会の実現に寄与していくと、そういうことを図るべきであるということをこの法律によって示すことによって、国民にもその努力義務があるということを示させていただいているわけであります。  この効力でありますけれども、これらの規定と併せて、国に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施義務や、地方公共団体にその実施の努力義務がまた掛かることになります。  この法律は、こうした結果、表現の自由に萎縮効果が生じないようにするためにこのような内容にしたものでありまして、禁止規定がないからといってヘイトスピーチを認めるとか、また我々与党側がヘイトスピーチに対して及び腰でやっているとかそういう姿勢ではなくて、憲法の保障する表現の自由との兼ね合いの中で最大限効果が発揮でき、国民にも理解を求めていくと、そういう趣旨でこの前文と併せて作ったということを御理解いただきたいと思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 今、自民党西田発議者からは、禁止規定は置いていないのであるというまず御発言が、御説明があっているわけですけれども、この点について強い意見がとりわけ当事者団体から上がっているのは御承知のとおりだと思います。  例えば、私たち国会議員に在日本大韓民国民団の主催をされる緊急集会が呼びかけられていますけれども、その呼びかけ文には、ヘイトスピーチによって自らの尊厳を傷つけられた当事者である私たちとしてはこの法案内容に対する極めて深い失望感を禁じ得ません、罰則規定を設けないいわゆる理念法であるにしてもヘイトスピーチが違法であるという明確な規定が不在だからであり、これではとても容認できないのですというくだりがあるんですけれども。  先ほど、公明党矢倉発議者からの趣旨説明の中では、ヘイトスピーチといいますか、この法が対象とする言動というのは違法であるという前提の認識が示されているようにも思うんですね。つまり、先ほどの提案理由説明の第三段落目ですが、何をもって違法となる言動とするのかということがこの法案の提出の意義として語られているわけですけれども。  この禁止規定は置かないということと、この法案が対象とする言動が違法であるということとの関係というのは、これはどういうふうに理解をしたらいいんですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  こちらの趣旨説明において何をもって違法となる言動としという文言は、そもそも表現の内容についての規制をするとき、我々認識しているヘイトスピーチというのは具体的にイメージできるんですが、規制となるとどこが外延かというのがやはりどうしても見えなくなるという問題があると思います。そのような表現の内容を、禁止という形で規制をすることに内在している本質的な問題が、やはり違法となるというところがどこまでかという問題であるので、そのような問題があるというところであります。  これをもって、今回、理念法で違法かどうかという判断をこれは提示をしたという趣旨ではないというふうに御理解をいただければと思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 ここ、これからの法案の議論をしていく上で極めて大事だと思うんですけれども。  提案者は、つまり与党は、定義の明確性、つまり違法かそうでないかという外延が明確であることが重要であるというのはそのとおりだと思うんです。その外延が明確であるという定義をすることができるのであれば、その定義に当たる言動、これは法違反である、違法であるという、その書きぶりはいろんな書きぶりがあるのかもしれませんけれども、違法であるということは宣言する、あるいは法で定めるべきであると、そういうお考えなんでしょうか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 そこが一番大事なこの法律の核心部分なんですけれどもね。  我々の与党側の考え方といいますのは、要するに、このヘイトスピーチを厳格に定義をして、それを国が例えば認定をして、違法行為であるからこの行為はすべきでない、禁止規定になってくるわけですね。また、禁止規定、罰則がなくても、そういう認定を公権力がするということはできないというのが我々の発想であります。  といいますのは、それについては、違法であるか違法でないか、それがヘイトになるかどうかというのは結局は司法の場で判断されるべきもので、公権力の行政側のところでこの部分は違法だということをしちゃいますと、かつての、これは戦前のいわゆるあの治安維持法のように、国の方が決めた言論や思想や表現にたがうようなことをすればたちまち取締りになると。若しくは、禁止規定がなくてもそのことを国が違法性を認定してしまいますと、様々なことが行政の方からそのした本人にいろんな形で圧力と申しましょうか、掛けられるわけです。  もちろん、そういう規定があった方がヘイトスピーチそのものには禁止ができて、圧力が掛かっていいじゃないかということはもちろんあると思うんですよ。しかし、同じように、ヘイトかどうか微妙な部分のところで、そこを国が規定して、そしてまた国の方がその個人に関与しているということになりますと、違う事態が想定されますね。つまり、ヘイトだということを理由に行政の方が違う形で市民に圧力を掛けてくるということが、ほかの法律でも同じような枠組みで作られることも考えられます。  我々は、そういう公権力が個人の表現の自由や内心の自由に関わるようなところに入っていくべきではないというのが自民、公明のこの法律を作る上での一番最初の入口の部分であります。そして、その部分は、ヘイトであったかどうかという認定は、これはむしろ裁判の場で、司法の場でやっていただくんです。  じゃ、この法律は一体何の意味があるのかというと、こういう理念を掲げて、そもそも国民がこういうヘイトはすべきでないんだと、また、そういう差別のない社会をつくるのが国民も努力していかなければならない、そしてそのことを国と地方公共団体が教育や啓発、相談などを通じて広げていこうということを示すことによって行政側が様々な判断するときの一つの指針になるのではないかと思います。  もちろん、その指針によって、された行為、例えばデモをやっていたり、道路使用許可を止めろとかいう話も当然出てくると思いますよね。そのときに仮にそういう指針によって止められたら、逆にやった側がこれはおかしいじゃないかということを訴えることも当然想定されます。しかし、そのことを彼らが訴えて、結局それがヘイトであったかどうかというのは最終的に司法の場で判断をしていただかなければならないと思っているんです。それをまず第一義的に行政の方が線引きをしてここから先はヘイトだどうだという、公権力側にその権力行使を与えてしまうと、私は違う事態が出てくるということを大変恐れているわけでございます。そのことを御認識いただきたいと思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 我が国において、とりわけ国家権力によって思想、表現が抑圧、弾圧された歴史があり、そして、戦後、憲法が公布されてから七十年に至りながら、法を濫用した行政、警察による人権侵害というのは後を絶たないわけです、今日現在も。その認識というのは私は前提にもちろんあるわけですけれども、ですが、この法でヘイトスピーチの許されないということをどう規定するかということは、その定義の明確性と併せて真剣な探求が必要だと思うんですよね。  今の西田発議者の御答弁で、つまり、この法案が民事裁判や行政処分を争うそうした裁判においての法規範たり得るということをおっしゃっているんだと思うんですけれども、それはつまり許されないとされる言動が法違反であるという前提認識に立ったものなのであって、これはヘイトスピーチはしてはならないなどの、これを禁止という用語を使うのが与党としていろいろごちゅうちょがあるのかもしれないんだけれども、このあってはならないとか、許されないという表現、文言ではない書きぶりというのはこれはあり得るのではないかなとも思うんですが、これは今、西田委員に伺いましたので、矢倉発議者、いかがですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  まず、今、西田委員がおっしゃった部分というのは、これまでは特定人に対しての規制というものはあった、ただ、今回我々は不特定人に対してのこのような言動も許されないものであるという理念を、これにより明確にしたわけであります。それがいろんな裁判の場で出てくる。場合によっては、損害賠償であるとか、そういうような民法の規定の文脈などで違法等の話が出てくるかもしれないですけれども、そういう文脈での違法を判断するときに、この法律により、許されないものであるということを理念として表した、国として姿勢を表したということが裁判所の判断に影響を与えるだろうという部分の説明であると思います。このような意味合いで、これを違法判断かどうかというところはまた違う考慮があると思いますが、いずれにしろ違法判断に対してある程度影響を与える判断にはなるであろうというところであると思います。  書きぶりの問題なんですけれども、これは、してはいけないという禁止規定にしますとどういうことになるかといえば、先ほども申し上げたとおり、表現内容の規制という形にやはりこれはなってしまう。それはどういうことをいうかといえば、憲法の検閲の禁止などにも抵触する可能性も出てくる。また、表現内容は、御案内のとおり、憲法上は非常に厳格な基準がない限りは合憲とならないというような、そのような制約があり、してはならない言論が何かということを定義付けなければいけない。じゃ、その概念がどこまでかということもこれは明確にしなければいけないというような制約も出てくるところであります。そのような判断から、してはいけないというのは、憲法の問題を克服できないというところで、我々は取るべきではないという判断をいたしました。  他方で、実効性を確保する意味では、やはり許されないものだということを宣言して、その許されないものを排除する社会を、国民全般がこれをつくっていこうということを主体的にうたっていくという在り方の方が、むしろ実効性は上がるのではないかということで判断をしたところであり、この表現が我々としては正しいというふうに認識をしております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 少し議論をしてしまうことになるんですけれども、そうした憲法上の表現の自由の保障との関係も十分考慮をされた上で全国で様々な取組がされてきていると思うんです。その一つの例として、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例における対象行為の定義規定についての評価を今のお話の流れで矢倉さんにお尋ねしたいんですが、この大阪市条例はヘイトスピーチとされる表現活動を具体的に三つの条文に分けて規定をしているわけです。  第一は、次の三つの目的のいずれかを目的とすること。つまり、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を社会から排除すること、あるいは権利又は自由を制限すること、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおることのいずれかを目的として行われ、表現の内容又は表現活動の態様が相当程度侮辱し又は誹謗中傷するものであること、脅威を感じさせるものであることのいずれかに該当すること、そして三つ目に、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること、こうした定義によって外延を明確にしていると思うし、私はその規定ぶりというのはよく理解ができるというふうにも思っているんですが、矢倉さんはいかがですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 大阪のヘイトスピーチの条例について、こちらが詳細に定義をしたというのは、やはり効果との関係から考えなければいけないと思うんですよね。これ、大阪市長が表現活動について拡散防止の措置及び公表措置をとることにしたと、そのような行政権、公権力が関係するようなことを前提にしている以上は、やはり定義を明確に厳格にしなければいけないというところもあるかと思います。  これは出発点の問題もあり、先ほど西田理事からもお話もあったとおり、むしろ我々としてはこのような、何かこれがいけない言論だということをある程度定義をして公権力が規制をするというような話ではなくて、むしろこのような不当な言動、地域社会から排斥するような言動があってはならない、そういう社会をつくるんだという理念を定めて、そのような社会に向けた国民全体の協力義務というものをこれを規定する、そのような理念法を定めた上で、それを全体で実現していこうという理念を定めた法律であり、そういう部分での概念の定め方というところの出発点がそもそも違うというところは御認識をいただきたいというふうに思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 その点はよくこれから議論をしていく必要があるのかなと思うんですね。  少し先ほどの西田発議者の御答弁に戻りますと、行政がこの表現あるいは言動の違法的方法を直接審査するのかどうかという、そうした問題をおっしゃったわけですけれども、仮にそうした措置を置かないとしても、国民の皆さんに、こうした言動はあってはならない、してはならないというふうに呼びかけるのかどうか、違法であることをはっきりさせるのかどうか、これはつまり社会的に根絶していく上で極めて重要だと思うんです。そうして、この法案によっても、努力義務とはいえ、そうしたものを課すわけであり、この外延を明確にするということはとても大事なことなのではないかと思うんですね。そこはどうお考えですか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 外延をまず定義、つまり定義を明確化してやっていくとかいう話になってきますと、新たな問題が実は出てくると思うんですね。といいますのは、定義した、定義を明確にすればするほど、その定義の外側に隠された言葉は、じゃいいのかと。つまり、ここからここまでは駄目だけれどもここから外側はいいんだよということを、逆にヘイトスピーチをする方々にお墨付きを与えるようなことにもなりかねないんです。ですから、我々、そこは全体の文脈の中で判断すべきことだと思っております、そもそも。だから、そういうことも含め、禁止規定を設けたり定義をまた明確にしたりすると、そういったまた別の次元の問題が出てくるわけですね。  もっと言いますと、我々はこのヘイト問題というのは、実際に現場を見たり、また映像を見たりもしておりますけれども、断じて許すことはできないと思っております。そして、この法律が、我々が法的措置をしましても、それに対して彼らは挑戦的な行動をするかもしれませんよ。だから、そのことも含めて我々は、彼らがやってくる行動は最終的にはこのヘイト法によって抑え込まねばならないと思いますけれども、最終的にはやっぱり裁判の場でこれを、彼らの行動は恥ずべき行為であるのだと、行政のやった措置がこれは適法だったのだという、そういう形のやっぱり文脈になっていくと思うんです。  したがいまして、そういう意味で我々は、禁止規定ではなくてまずモラル、それから啓発、教育、こういうことは恥ずかしいことなんだということをやっぱり国民全体でこれ共有して、そしてそういう意識の中で国が、また地方公共団体が啓発活動していく、そこが一番大事だと思うんです。つまり、やっている人間が、自分たちがやっている行為は恥ずべき行為なんだという、やっぱりそういう認識に立ってもらわないと、これはヘイトスピーチというのはなくならないんです。  そして、現に私は視察に行って感じましたのは、在日一世、二世、いろんな方の話を聞きましたけれども、我々が小さいときも、戦後、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方に差別的な言動があったり、目の当たりに見たりしましたよ。しかし、今やっぱりどんどんそういうのは少なくなってきたというお話をされました。しかし、この二十一世紀、平成の時代になって、またもう一度突然こういったヘイトスピーチを公然として扇動していくような目に余る行為が出てきたわけですよね。  だから、我々は、こういったことは改めて恥ずべき行為だということを宣言すると同時に、やっぱり教育、啓発、この効果というのを大いに私は期待しなければならないし、そのことを通じてしか私はヘイトというのは根源的になくすことはできないのだと思っているんです。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 この禁止あるいは違法という法の規定のありようについて、これもっともっと議論が必要だと改めて明らかになってきているように思うんですけれども、ちょっと残る時間が五分ほどになってきているので、法案について具体的に、定義に関わってお尋ねしたいことがあります。三点、ちょっとまとめて質問します。  先ほど来お話のある本邦外出身者という規定が第二条に置かれているわけですが、一つ目の質問は、この本邦外出身者という、我が国領域を言わば基本的な概念にした内外というこの考え方は、人種差別撤廃条約の理念と異なるのか、それとも含んでいるのか。国籍あるいは民族、人種というものによる差別ということを意味しているのかどうなのかということが一点。よろしいですかね。  二点目は、そうした下で、専ら適法に居住するものという規定ぶりになっています。これは、例えば在留の適法性が争われているというオーバーステイだったり、あるいは難民申請が政府の不当な判断によって認められなかったりといった方々に対するヘイトスピーチが許されるというものではまさかないと思うんですけれども、あわせて、アイヌ民族に対するヘイトスピーチということも公然と行われています。これを許すというものではないと思うんですが、この適法に居住するということの意味がどうかが二つ目。  最後、三つ目は、そうした本邦外出身者を地域社会から排除するというふうにお書きになっておられるんですが、私たちが視察で訪ねた桜本のような集住地域ではない場所、大都会の例えば銀座だとか新宿だとか、こうしたところで発せられる言動というのはこの地域社会から排除するということに当たるのかどうなのか。  この三つが御質問ですが、いかがでしょうか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 まず、いわゆるこのヘイトスピーチですけれども、現在も問題となっているヘイトスピーチ自身は、いわゆる人種差別一般のように人種や人の肌とかいうのではなくて、特定の民族、まさに在日韓国・朝鮮人の方がターゲットになっているわけですよね。ですから、そういう立法事実を踏まえて、この法律に対して対象者が不必要に拡大しないように、立法事実としてそういう方々が中心となってヘイトスピーチを受けているということで、本邦外出身者ということを対象として限定しているわけでございます。  したがいまして、先ほどのアイヌの問題ありますけれども、我々は実は、アイヌに対するヘイトスピーチがあるという、そういう立法事実を今、問題把握しているわけではございません。ですから、この中にはアイヌの話は入っておりませんが、もとよりアイヌ民族に対するヘイトが許されるものではないということは申すまでもございません。  それからもう一点、何でしたっけ。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 在留が違法な場合。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 それと、在留の話ですけれども、適法にというのは当然の話でありまして、例えば不法に入国したりした場合は、当然入管法によりましてこれは本国に送還される、そういうことになるわけでございます。ですから、そういう方々は本来不法に滞在していたら本国に、我が日本にはおれないわけでございますし、その方々は当然戻ってもらわなきゃなりませんので、ヘイトスピーチのこの法律の対象にはなっておりません。しかし、その方々に対するもちろんヘイトスピーチを肯定するものでもございません。  それから、いわゆる難民認定をされている、その今手続中であるとかそういう方々は、これはここで規定する適法に居住する方々に該当すると考えております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 地域社会の話はないの。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 例えば、銀座から出ていけとかそういうものですよね、桜本とかではなく、居住しているところではなく、ただそういう一定の場所から出ていけというような話でもあると。  今回の我々が捉えている不当な差別的言動というのは、要するに、ある方々の存在自体を否定して、そこから出ていけというような、その存在を否定するという理解の下で出ていけというようなことを扇動するような言動というふうに理解をしています。  具体的な地域社会かどうかというのはやはり前後の文脈等も見ながらということになると思うんですが、そのような趣旨に合うような発言であれば該当するというふうに理解はしたいと思っています。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 仁比君、時間ですが。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 あともう一点質問したかったのは国、地方公共団体の責務に関わるものなんですが、もう時間が参ってしまいました。  いよいよ、もっともっと議論が必要だというふうに思うんですね。とりわけ、不法入国の場合などの議論もありましたけれども、そうした場合だからといって法の保護が与えられないということには私はならないと思うんですね。一層の議論を求めて、質問を終わります。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫です。  時間がないので端的にお尋ねしますが、三条で努力するということが定められていますけれども、努力をするつもりがない人あるいはそもそもその努力に反する行動を取ろうとする人に対してはどういうふうに効果が及ぶんでしょうか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 まさにそういう人が出ないようにするということで理念を訴えているところであると思います。  この前も視察に行きましたときに、視察でお話をされた方がおっしゃっていたのは、昔は例えばヘイトスピーチのようなことが起きても対抗するような方がいらっしゃらなかったけれど、最近やっぱりそういうような声を上げてくださる方がいるようになったと、これは日本が成熟している社会であるということをおっしゃっていたと思います。  今回の法律は、まさに国民全体、国民の中でも当然このヘイトスピーチが良くないことだということは頭では分かっていても声を上げられなかったという方がやっぱりいらっしゃる、そういうような方も含めて国民全体でこういうのがない社会をつくろうという理念をしっかりとうたって、前向きに、さらに主体的に動いていこうということを宣言する、それをすることで、今おっしゃったような、努力をする気持ちもないような方もそういうような渦に巻き込んでいって変えていくというようなことをうたっているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 いや、御理解できないですね。  要するに、多くの国民はこういうヘイトスピーチは好ましくないということは分かっていて行動しているし理解しているわけですよ。だけど、そういう理解を全く無視して今ヘイトスピーチが行われているわけですよ、国民の気持ちを無視して。  だから、私が聞いているのは、そのうちに国民が理解すればそういう人たちに及ぶでしょうなんという話じゃなくて、法律の効果として、努力するつもりがない人、努力に反する行動を取る人に対してどういうことが対応できるのかと聞いているわけです。法律の効果を聞いているわけです。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 小川委員の御質問でございますけれども、努力のする気がない人にどうするのかと、それを法律で強制できるのかということだと思うんですね。まさにそれを強制してしまうことが戦前の治安維持法に通ずる、公権力が個人の思想、信条、そういうところに介入してきて、結局はヘイトスピーチをそれで止められたとしても重大なこれ人権侵害という事案になってしまう可能性があるわけなんです。  そしてまた、そういう法制度を我々がつくり上げていくと、同じように気に食わないことがあったら、このヘイトスピーチだけに限らず、様々な法律、これを法律で作ってやめなさいと、その一つ一つの事実は正しい正義によるものかもしれません、しかし、結局正しいか悪いかというその線引きの部分でまた微妙な、ケース、ケースによって事態が出てくるわけですね。一瞬、一見するとそういう差別的言動であったけれども、実はその方々とのその裏にあったのは非常に愛情を持った行動であったということもあるかもしれません。そういうふうに事態、事態によって違うわけなんですよね。  ですから、一概にこのヘイトを禁止してやっていくということにやってしまうと、これは違う問題が出てくる、人権侵害になってくる。弁護士、そしてまた検事、裁判官、法曹の三つの仕事をされてきた小川委員なら御理解いただけると思います。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 全く理解はできませんですね。私の質問は、この法律の効果を聞いているんです。この法律によって、ですから、努力をするつもりがない人、そもそも努力に反する行動を取ろうとする人に対してどういう効果がありますかと聞いているわけです。  私は、結局はそういう人に対しては法律上の効果は何もないというのがこの法律だと思うんです。そうしますと、もっと端的に言いますと、全く努力するつもりもない人、今もそういう国民の気持ちに反して、地域の人の気持ちに反してやっているわけですよ、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが。そういうヘイトデモを規制することもできないわけですね。ですから、この法律が通ってもヘイトデモは全くやまないと、こういう状況になるんじゃないですか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 それは、そうではないと思いますね。  具体的に言うと、恐らく先ほど私、仁比委員のときにも答えましたけれども、今ヘイトをやっている方は、この法律ができてもヘイトをする可能性はございます。当然、彼らは挑戦してくるかもしれませんね。そのことをおっしゃっているわけですよ。  しかし、この法律ができたことによって、行政側が、国権の最高機関としての国会が、このヘイトというのは許されない行為であるということを決め、そして宣言し、そしてそのことを、国民とともに差別のない社会をつくろうという、そういう姿勢を、国としての、国民としての姿勢を示した以上、やっぱりそこは行政側が我々のこの法律に、指針を受けて行政判断をしていただけると思うし、そしてそのことによって、例えば行政側がヘイトを禁止する行為をしたとしましょう。したときに、今度はヘイトをした側が、それは我々の表現の自由を何で行政側が制限するんだ、何でデモを許可しないんだと、内容でするのはおかしいじゃないかという当然裁判になると思いますよ。その裁判になってきたときにも、結局は、我々が出したこの法律が成案したことにより、裁判所も我々の、国権の最高機関のこの法律、この成案をベースにした判断がされるものと私は期待しております。  そして、そういう判例が積み重なっていくことによって、公権力がいわゆるヘイトかヘイトでないかというそこの線引きをするのではなくて、司法の場でそういうものが確定されてくる。そして、結局は、そういうことが積み重なってくると、ヘイトスピーチをしようと思っても、行政側が仮に道路の使用許可を出さないと、そういう判断をして、そしてそれが裁判になり、その裁判が行政側の勝訴になった、それが確定していくと。これは今後、そういうヘイトスピーチをしようと思ってもできないということが司法と行政によって確定してくるわけなんですよ。  だから、そういう手続を踏んでいかなければならないということなんです。その手続を経ずに、司法の手続を経ずに、先に行政側の方が公権力行使で禁止をして云々という規定になると、私はまた別の人権侵害というのが出てくる可能性があるから、我々はその人権侵害のないように、また新たなヘイト事案が出ないように、こういう形の規定をしているということを御理解いただきたいと思います。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 ですから、全く理解できないんですよ。裁判、裁判、行政が何らかの処分をするから裁判というけれども、行政が何らかの処分をするための根拠となり得る法律なんですか。だから聞いているわけです。努力する義務がある、じゃ努力する義務を守らなかった人に対して行政がこの法律を根拠に何らかの処分ができるんですか。何らかの処分ができるんだったら、その処分に対して不服申立てという裁判になるけどね。  これ、行政が何らかの処分をする、じゃ、もっと端的に聞きましょう、もっと分かりやすく。ヘイトデモが行われるときのデモの許可申請がある。それに対して、この法律を根拠に公安委員会はデモを不許可にすることができるんですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 今、小川委員がおっしゃったようなことは、要するに、何が禁止される表現かどうかを解釈する権限を行政に与えるということだと思うんですね。それこそ、我々の価値判断としては、そのような規制、私たちがイメージしているヘイトデモ、これはもう許されないし絶対禁止すべきだということはあるわけですけど、そこに法規制になると解釈が出てくるわけなんです、どうしても文言ですから。その解釈権限を行政権に与えるということが危険だという理解でまず発しています。  ですので、そうではなくて、そのような形の文言ではなく、実効性を担保する上では、このような理念法として、国民全体でこういうような社会をつくるために全力でやっていこうと、許されないということを宣言するというところから入ったということであります。  出発点がそもそもそのような形で、何が表現内容、許される内容かどうかということを行政権が判断するということは憲法上問題があるというところ、そこがまず出発点であり、そこがちょっと認識として違うところであるというふうに思っております。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 ですから、最初の質問と同じことで、答えが出ていないから何回も何回も聞くわけです。  まず、答えを言ってくださいよ、先に。すなわち、この法律ができても、この法律を根拠にデモを不許可にすることはできないんでしょう。できないという前提で、そのことを答えないで、何かいろいろ、やれ表現の自由だとか何かあれこれあれこれ言うから分からない。  まず、私が聞いているのは、この法律ができたら、この法律を根拠にヘイトデモの不許可を、許可をしないという処分を公安委員会ができるのかどうか、できるのかどうかをまず答えてください。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 これは、今、我々提案者側の方ですから、これは公安委員長、警察側が答弁すべきことだと思いますけれども、原則的な話で言いますと、今、矢倉委員がお話ししましたように、要するに、事前にこの表現内容、デモ内容にチェックして道路使用許可を与えるかどうかという仕組みには今なっておりません。しかし、この法律ができましたからといって直ちにこのヘイトスピーチやるんだったら禁止だという話にはならないと思います。  しかし、大事なのはそこから先でして、こういう理念法、これ宣言することによって、我々は行政も含めてこういうことはさせてはならないと。そうすると、実際にはいろんな法律がまだまだあるわけですよ。その法律の運用規定につきましても、例えば騒音防止条例とかそれから名誉毀損とか、様々なものがありますよね。そういうことも含め、我々はヘイトスピーチを公然とやっていることを許すことはできないという、このことを宣言することによって、様々な法律の解釈の指針も、また我々は指針を与えることになると思っています。そういう合わせ技を含めて、行政がこのヘイトスピーチに対して抑止力を発揮できるものだと考えております。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 法律の提案者が、この法律ができたときに公安委員会が不許可にするかどうか、それは自分は知らない、公安委員会が決めることだと言われちゃ困るんですよ。法律の提案者ですから、この法律の効果はどこまで及ぶかということは大変重要なことです。  今日は、熊本での大地震ということで、公安委員長が防災担当大臣ということで、本来ならこの席に来て答弁していただくところを出席しないということになったわけでありますけれども、その公安委員長が先般言っておりました。ヘイトデモ、何で不許可にしないんだと、その質問に対して公安委員長はこういうふうに言っていました。不許可にする根拠の法律がないからしようがないんだと、これが公安委員長の答弁でした。ですから私は聞いているわけです。公安委員長は、不許可にする根拠となる法律がないから不許可にできないんだと。だったら、不許可にできるその根拠となる法律を作ればいいじゃないかという議論になるわけですけれども、この法律はそういう根拠には全くならない法律だと私は思います。  であるならば、元々国民の多くの声を無視して、世論からどんなに批判受けても堂々と法律に違反しないからといってヘイトデモを繰り返している、この人たちが更にこの法律が通った後もヘイトデモを繰り返すときに何の規制もできない、何の効果も法的には及ばないですねと私は聞いているわけです。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 まず、そもそも不許可にするにしても、表現内容を理由にして不許可にするということは、これは憲法上許されないということは改めて申すまでもないことだと思います。  仮に不許可にするとしたらどういう場合かというと、時とか場所とか時間とかそういう外形的なところを判断の材料としてやると。その判断、これはいろんな法律の文脈もあるかと思います、今、西田発議者からもお話もあった。その判断をする際に、このヘイトデモの時、場所等の判断をする際にこれが禁止されるべきものかどうかということを判断するしんしゃく材料として、この理念法が、許されないものであると言うところが、どのような態様のものが許されないかというところの判断に当然しんしゃくされる部分はあるかと思います。ただ、これがあるからこれだけを根拠にして禁止する、表現内容を根拠にして禁止するということはあってはならないというふうに思っております。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 この法案に対して本当に多くの質問するべき事項がございます。だけど、今日は一点のことしか議論できませんでした。大変残念ですけれども、また改めて機会があると思いますので、そのときに質問させていただきます。  今日は終わります。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。  まず、お二人に端的にお聞きをします。  四月八日にこの法案が提出されて以降、当事者である民団あるいは長くこの問題に携わってきた外国人人権法連絡会あるいはヒューマンライツ・ナウなど、少なくとも十の団体が与党案についてのコメントを出しておられます。評価をしつつも、実効性がないのではないかというような指摘がありますが、その様々な団体のコメント、お読みになりましたでしょうか。そしてまた、そこに何が書かれていたか、どのように理解されているのかをまずお二人からお聞きをします。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 そういうような意見が表明されているということは大まか知っておりますけれども、個別的な話は、つぶさに見ておりませんので、承知しておりません。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 私も、直接民団の方等と話をされた方からいろいろ話も聞いたり、私も聞いたりはしております。ただ、どういうような文書があるかとかそういうのは詳細は把握はしておりません。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 事務所に送られていると思いますので、是非お読みをください。  さらに一方で、これまでずっとヘイトスピーチを続けてきた、例えばアドルフ・ヒトラー生誕百二十五周年を祝うそういう日本版ネオナチなどは与党案に対して大歓迎であると、お墨付きをもらったというふうにコメントを出しておりますが、御存じですか。お二人、お答えください。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 それも有田委員から教えていただきまして、そういうことがあるのは知っておりますけれども、つぶさには詳細は知りません。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 私も詳細には知りません。ただ、お墨付きをあげた法案では絶対ありません。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 御自身が積極的に出された法案ですから、様々な関係団体及び一方のヘイトスピーチを繰り返し今でもやっている人たちのコメントを是非お読みになっていただきたいというふうにお願いしたいというふうに思います。  おととい、岡山市内でも、在特会の前会長が来て、ヘイトスピーチのデモと集会、街宣が行われました。江田五月議員と私もそこに抗議のために参加をしましたけれども、彼らは端的にこう言っておりました、自分たちは適法的にデモと集会を申請をしてやっているんだと。言っていることはもうヘイトスピーチのオンパレードですよ。  じゃ、そういうものを本当に制限できるようなものになるのかということを与野党一致してこれから充実したものにしていかなければならないと思いますが、日本版ネオナチと私はあえて言いますけれども、ナチスそれからアドルフ・ヒトラーを今でも称賛している人物は、与党案に対してこう語っております。この定義の中に、つまり与党案の定義の中に適法に居住するものの文言が盛られたことは大きい、なぜならば、このように決まった以上、適法に居住していない外国人に対しての言動はヘイトスピーチに当たらないことになります。もう少し紹介します。我々は、これまでイラン人追放やカルデロン一家のフィリピン送還を訴えてきましたが、そのような活動はこの与党案ではヘイトになりません。  あるいは、別の常習的なヘイトスピーカーがこう言っております。在留資格を有さない不法滞在外国人であれば、子供であろうと老人であろうと、日本からの排除を主張し又は扇動しても決して差別、ヘイトには該当しないというお墨付きだと、そのように書いております。  あるいは、別の差別の扇動を今でもやっている人物。我々レイシストにとって一番良い状態ができ上がる、やりたい放題である、笑い。その後とんでもないことを言っています。在日シナ・チョンは首つって死ね。これは、彼らが、公明党の有力な議員がこの法案についてツイッターで書き込んだその下にこういう文言を書いておりますが、どのように思われますか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 今おっしゃったような発言は、私、聞くだに本当に吐き気がするほど恥じるべき言動だと思っております。もちろん、ですから、この法律の中で、いわゆる違法にオーバーステイされているとかそういう方々に対する、不法滞在だから、これヘイトスピーチをしても我々の言っていることは適法とされるというか認められるということには当然なりません。  これはもう全体の文脈で考えるべきものでありまして、この法律を元々作ったのは、立法事実として、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方々、その方々に対する不当な差別的な言動があったということから作っておりますけれども、しかし、だからといって、その方々以外の方に何を言ってもいいんだとか、そんなことには当然ならないわけでありまして、一番大事なのは、ここで言っているのは、理念法でやっているわけですよ。理念法でやっているというのは禁止規定もなければ何もないじゃないかとおっしゃるけれども、しかし、逆に言うと、そういう理念を掲げているからこそ、我々はそういうヘイトスピーチは不法滞在者に対してやっていいんだという形で限定されてこない、むしろ、もっとそういう理念を生かして、教育も啓発もそうだし、行政が様々な判断するときの指針として扱ってくれるものと考えております。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 今、西田委員は、在日韓国・朝鮮人の方々に対する差別扇動、ヘイトスピーチをなくすための法案だとおっしゃいましたけれども、この二〇〇八年以降、例えば在特会が日本で行ってきたヘイトスピーチの実態というのは、在日コリアンの方々だけではなくて、一番目立った最初の時点は二〇〇八年に埼玉県蕨市で行われたフィリピン人一家に対する追放デモなんですよ。在日コリアンだけではなくてフィリピン人、中国人、あるいはアイヌ民族などなど、様々なヘイトスピーチが吹き荒れてきたというのが現実なんですよね。  これだと、在特会が行ったフィリピン人一家追放デモというのは不当な差別的扇動に当たらなくなってしまうんではないですか。先ほどヒトラー、ナチス礼賛者が言っていたように、不法と付ければ差別してよいというお墨付きを与えられるんだと、むしろ差別の扇動を推進してしまうことになりませんか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 これは、特定の人に対してそういうことをすると当然別の法律で罰せられることになってきますよね、いわゆる名誉毀損なり侮蔑的なことをやってきたりすると。ですから、そうじゃなくて、もう少し大きなくくりでこの法律はヘイトスピーチを規制するためにやっているわけです。  いずれにしましても、私たちは、有田理事がおっしゃいますように、そういうことを本当に、ヘイトをするのが楽しみのようにやっている人間がいるんですよね。これ許されるべきものじゃありません、本当に恥ずべき行為でありますけれども。しかし、それを強制力を持って法律で排除するということが、なかなか現実問題、この憲法の保障している基本的人権を考えるとできないわけなんですよ。  じゃ、我々が何ができるかというと、立法府の中でこの議論をして、そういうやっている人間というのが、本当に恥ずべき行為であって、そしてまた一般の社会の中からも当然認められるものではないと、そういうことを我々がお墨付きを与えることによって、彼ら自身が言動に自ら恥じ入る行為はしないように持っていくということ以外なかなか、その表現内容、言っていることで直ちにそれで取り締まって禁止をしてという形にはなれないと、むしろ逆さまの、それが、そういう規定があれば違うことに使われてしまう。  これは、民進党、旧民主党が出された人種差別撤廃法に対して参考人質疑をさせていただきましたけれども、そのときに参考人の方々が指摘されていたということを皆さん方も覚えておられると思いますけれども、予期せぬ、本来ヘイトをやめさせようと思ったその禁止規定行為が逆にほかのことに使われてしまって公権力の暴走につながってしまうと、それを我々、一番警戒しなければならないと思っております。同時に、その枠の中でいかにしてヘイトを止めるかと。  ですから、これは、まずこの法律を作って、そして国が宣言することによって国民のモラルを高めていくという、そういう方法で我々はヘイトを抑え込んでいきたいと思っております。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 第二条、定義のところにある適法に居住するというところなんですけれども、もう一度具体的にお聞きをしますけれども、在日コリアンに対する差別的表現の本質というのは、国籍ではなくて民族的出身に基づく排除であるというのは京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の最高裁判決でも明らかなことですけれども、それは何度も強調をされております。ましてや、在留資格というのは無関係じゃないですか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 在留資格無関係というのは、つまり、私が言っているのは、適法に居住している人は当然ここで、日本の国に居住する権利があるわけでございます。しかし、適法でない方は、これは国の法律によって本国に送致されてしまうという形になるわけであります。ですから、法律がしっかり機能していますと、本来不法な方はおられない形になってくるわけなんですね。  今現在またやっているのも、現実問題起こっている立法事実としては、適法に住んでおられる在日コリアンの方々がそういうヘイトスピーチの被害を受けておられると。ですから、そういう立法事実に鑑みこの法律を作っているわけでありまして、もとより、だからといって、先ほどから言っていますように、適法に住んでいない方々にヘイトスピーチをやってもいいとか、そういうことを言っているわけではもちろんございません。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 先ほどの仁比委員への答弁だったと思いますけれども、難民認定申請中の方はそれは当たらないというお話でしたけれども、それは法務省は知っているけれどもヘイトスピーチをやる連中は知らないわけですから、これまでどおり排除のデモをやるということを、それを止めることはできないというふうに思います。  もう一点、人種差別撤廃委員会の一般的勧告の三十第七項にはこう書かれております。人種差別に対する立法上の保障が、次です、出入国管理法令上の地位に関わりなく市民でない者に適用されることを確保すること、及び立法の実施が市民でない者に差別的な効果を持つことがないよう確保すること。  与党案ではそれに反することになりますので、人種差別撤廃条約の違反だと、そういう国際的な指摘がなされる可能性があると思いますが、いかがですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 まず、与党案がというか、人種差別撤廃条約上の義務というのは、もう既に現行法で担保されているという理解であります。そもそも一般的勧告ですので、これは特定人、特定国に対しての勧告ではないという理解でありますが、どの部分を指していらっしゃるのかはちょっと定かではないんですが、今回の法律がこれに違反するというような認識には立っておりません。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 そういう認識に立ってもらわなければ困ります。  もう一点最後に、時間が来ましたので、アイヌ民族に対するヘイトスピーチです。  二〇一四年からずっと続いております。二〇一四年八月十一日、アイヌ民族、今はもういない、二〇一四年八月二十二日、アイヌ利権がある、二〇一四年の十一月八日には銀座でアイヌをターゲットにしたヘイトスピーチデモが行われました。そういう事態が現実にあるわけですから、これはもうアイヌ民族へのヘイトスピーチについては立法事実があるんですよね。ところが、与党案では外国籍者あるいは外国の出身者が不当な差別的言動の対象になっておりますけれども、アイヌ民族については除外されている。  やはり、人種差別撤廃条約の定義に基づいて民族というものを外してはならないのではないかというのがこのヘイトスピーチ問題の核心的部分だと思いますが、いかがでしょうか。

西田昌司自由民主党

○西田昌司君 我々側としましては、今目の前で行われてきたこの在日コリアンの方々に対するヘイトスピーチをいかにして食い止めるかという、そこを立法事実としてこの法律を作ってきたわけでございます。  もとよりアイヌの方に対する差別が、またヘイトが許されるものではありません。しかし、そこはこの法律を議論していく中で、いわゆる行政のこの法律の運用面含めて、この国会の議論の中で、アイヌの方々も含めヘイト許されないということは運用面で、運用面と申しましょうか、要するにこれ理念法でございますから、宣言することによって可能ではないかと思っております。附帯決議始め、そこにも当然含まれるんだと、そういう御意見は是非先生方からお寄せいただいて、実りある立法にさせていきたいと思っております。

有田芳生民進党・新緑風会

○有田芳生君 時間が来たので終わりますけれども、小川委員からも多くの質問、残したままになっております。今、西田委員からも、この法案を審議する過程でとおっしゃいましたので、是非とも今日で終わりにすることなく、与党案をより良いものに変えていき、日本からヘイトスピーチをなくしていく、その大きな力にしていきたいという思いを表明して、質問を終わります。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。  質問の少し順番を変えまして、今ずっと議論になっておりますこの定義と申しますか、この法律は第一条に目的書いてありまして、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とすると、こういうふうに書いております。  この法律の肝は、もう何度も議論になっておりますけれども、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」、これがキーワードでございます。法案のタイトルを含めまして法文全部で十四回この言葉が出てまいります。この「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が何かということが一番大事なことでございまして、これは皆さんも御案内のように、第二条にこの定義の規定がございます。  ただ、この定義規定、じっくり読みませんとなかなか難しいのではなかろうかと思います。もう何度も読み上げられておりますけれども、ちょっともう一度読みますけれども、第二条、「この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」と、このように第二条書いてございます。  この第二条の肝は、私二つあると思いまして、まず第一は、第二条で言うと四行目でございますか、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、」、これが第一の要件ではなかろうかと思います。そして、第二の要件が次の「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と、こういうふうに書いてございます。  じゃ、この第二条の最初の方に書いてあるものはこれ何だということでございます。最初の方には、専らから始まりまして、いろいろ書いてありますが、最後に、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなどと書いてございます。これは、典型例をここに示して、これを中核として、その中核の行為を含んで、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動と、こういうふうに私は読むんであろうと思うんですけれども、発議者の矢倉さん、いかがですか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  今、三宅理事から、これ典型例だというふうにお話もありました。まさに理念法として、我々が理念として掲げているのは、あのような不当な差別的言論があることで地域社会、共生社会を分断する、そして暴力を誘発するような社会があってはいけないと、まさにそういうようなものをなくしていこうというところであります。でありますので、概念として広く逆に捉えることもできる。これが、先ほど来からの話ですと、禁止規定とかですと、公権力がどこまで介入できるかということをきっちり決めなければいけないので、逆に言うと反対解釈というようなことも余地が出てくる。それ以外のところは公権力が介入していいんだというような反対解釈があるわけですけど、そのようなことはこのような法案ではないと。  今おっしゃったような形で、理念の下で、我々としては、まず大きなくくりとして、本邦の域外にある国又は地域の出身者であることを理由とした本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動ということを挙げました。それを表す典型例として、今申し上げたような話も申し上げたわけであります。  でありますので、じゃ、ここに公然と書いているから、それ以外のものが全く差別的言動をしていいものかというような解釈があるわけではなく、当然、文脈上、我々が理念として掲げている社会、それを侵害するような言動であればそれは許されないという方向の解釈になるかと思います。  具体例ということでありますが、例えば公然でないということでありますので、その公然でないような状況での言論ということになる。ただ、その前後の文脈で、最終的に地域社会の分断となるような言論であればそれは対象になるという方向に行き着くというふうに理解しております。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 私の次の質問までお答えいただきまして、ありがとうございました。  私が次にお聞きしようとしたのは、この専らから告知するなど、これが典型例だと、要するにここの部分は誰がどう考えてもけしからぬヘイトスピーチの表現行為だろうということを確認をさせていただいた上で、この典型例の中を読みますと公然とという言葉があるものですから、じゃ、公然じゃないものはもう関係しないのかと。そうじゃないという可能性も典型例であるならば、例外として公然でない差別的言動もあるんではないかという御質問に対するお答えを今、矢倉発議者からいただいたというわけでございます。  じゃ、この関係でもう一点お聞きさせていただきます。この典型例の中に適法に居住するものという、適法にという言葉が入っております。先ほど来、西田委員が、違法に日本に入ってきた方はどうするんだということに対して、原則ということでお答えになったと理解をしております。  ただ、極めて例外的なことを私これから申し上げます。これは、専ら適法にという方々をこの概念のコアとして例示をしているわけでございますので、原則、適法に日本に住んでいる方に対するヘイトスピーチは良くありませんよというのはもう当然でございますし、それを前提に西田委員がお答えになったのもよく分かりますけれども、ちょっと重箱の隅をつつくようなことを申し上げますけれども、この第二条をきちっきちっと重箱の隅をつつくような目で読みますと、適法に居住していないものを対象にしても、場合によっては不当な差別的言動にはならないんでしょうか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 適法でないものに対しての言動が不当な差別的言動になる、今申し上げたとおり、これはその文脈によって、ただ、ヘイトスピーチ、不当な、じゃ、適法にいない者に対してこのような非常に許されないような態様でやっていいかということを、お墨付きをあげているものでは当然ございませんで、それは全て文脈上によると。この定義というか、我々が理念としている、地域社会の分断とかそういうものを許されてはいけないという、そういうようなものに該当し得るものであればやはりそれは該当し得るし、ただ、正当な言論として、これはいろいろな言論はあると思いますし、政治的な表現として様々な意見もありますので、そういうようなものに該当するというような判断がなされればそれは当たらないということであると思います。  ただ、当然ですけれども、何度も言います。今、ヘイトスピーチをやっているような人たちがこれに反対解釈をして、そのような人たちに対してのヘイトスピーチを、これお墨付きを与えたものだということは、これは一切当たらないというふうに改めてお伝えしたいと思います。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 まさに今、矢倉委員がおっしゃったとおりだと思うんですね。ここに「専ら」と入れて典型例だというふうに書いておけば、典型例以外のものも極めて例外的には差別的言動に当たると、こう読めるわけでございますので、禁止規定がないからといってお墨付きを与えているわけではないというふうに私は解釈をした次第でございます。  それで、ちょっと第三条でございますけれども、本法案は、いわゆるヘイトスピーチの解消を目指して新法の制定を目指す法律案であります。法律である以上、公権力に対して何らかの作為、不作為の行為規制をかけたり、国民等の権利と義務について新たな法的規範を創設したりするのが普通の法律案だろうと思うわけでございます。  この法案が成立すれば国民にとってどのような権利義務の変更があるのか、第三条を踏まえてお答えいただけないでしょうか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます、三宅理事がおっしゃっていた、権利義務というふうにおっしゃっている念頭のものは、恐らく公権力等、一般的な概念でいえば、公権力等が国民の権利を、行為を抑止させるであるとか、そういうような部分の文脈であろうかと思います。そういう意味合いの上での権利義務というところであれば、これは変更はないというふうに理解はできるところであります。  他方で、この三条にのっとってという話ですが、三条は、先ほど来からも申し上げましたとおり、やはりヘイトスピーチというものがない社会を、これは許されないという価値判断をまず宣言した上で、そのようなものがない社会を国民がしっかりつくっていく、主体者となってしっかりとつくっていくという、これは宣言であります。既に先ほどもお話もしたところですけれども、国民の大多数の人はこのようなヘイトスピーチは許されないということをこれは理解はされているわけですが、それを更に一歩進めて、行動にもつながるような行為をしていってこれを根絶していこうという、それを一体としてつくっていこうというその宣言である。  そういう意味での、このような社会をみんなでつくっていこうということを、方向性を国民の行為として定めたものとしては、義務という形よりは努力義務という形になるかもしれませんが、規定をさせていただいたということになります。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 次に、第四条から七条についてお聞きをしたいと思います。  四条以下は国と地方公共団体について定めたものでありますけれども、国につきましては、第四条一項で、最後の文末のところですけれども、「措置を講ずる責務を有する。」と書いてございます。第五条を読みますと、「必要な体制を整備する」、第六条、第七条は、最後、「取組を行う」とあります。これは国に関する規定でございますけれども、一方で、地方公共団体については、第四条から七条の二項全ての文末が「努めるものとする。」と、こういうふうに書いてありまして、大分ニュアンスが違う書き方をしております。  国に対する法律の要請対象と地方公共団体に対する法律の書きぶりと違う書きぶりをしてありますけれども、この国と地方公共団体の書きぶりの違いはどういう意図を持たれているのか、御説明いただけますでしょうか。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 国においては、例えば、法務省を中心に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた様々な施策を実施する責務を有するということであります。とりわけ啓発活動でありますとか、これも理念としてこういうヘイトスピーチは許されないということを初めて国としてうたったわけであります。その方向性に従って、啓発活動とかその他の人権擁護施策等は、これ広く国民一般に向けられたものとして国が主体的にやる責務があるというところであります。  他方で、地方公共団体等、その本邦外出身者の方が人口の中でどれくらい占めるかとか、もろもろな事情もあります。あと、こういう言動が行われている頻度等もある。そういった実情に応じて、その解消に向けた取組に関して施策を講じるように努めたと。これは、要するに、国と地方公共団体が果たすべき役割の違いを踏まえて書き分けを行ったというところであります。  ただ、その上で、この前も視察に行って現場の方がおっしゃっていたのは、地方公共団体とかに話を持っていっても、やはり国が何かしら方向性を示していないから我々は何もできないんだというようなお声があったというところもあります。  今回、このような形で理念法として、国の法律としてヘイトスピーチは許されないという姿勢をしっかり表したことは、今後、地域の住民の方が地方自治体に対して様々な施策を訴えるときの後押しをすることにはなるというふうに理解もしております。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 ありがとうございました。  私は、この法案は、ヘイトスピーチに対する我が国、そして国民の取組を加速する貴重なリーガル・イノベーションの一歩だというふうに高く評価をしたいと思います。  最後に、ヘイトスピーチをめぐって様々な裁判例等が過去もあったと思いますけれども、野党提案の法案も含めまして、一つの契機となった事件があったと思います。もう有田委員が何度もこの委員会で取り上げていらっしゃる京都での朝鮮人学校に対する示威活動に関する裁判例でございます。これ、学校関係者を原告として、在日特権を許さない市民の会などを被告とする損害賠償と街頭宣伝差止め請求事件が民事の分野では提起をされて、判決ももう確定しているところでございます。  私がこの判決を読ませていただいて、またニュースも読んで一つだけ、余り話題になっていないことを一つ取り上げたいと思います。平成二十五年の京都地裁判決によりますと、朝鮮人学校に対する三回目の示威活動は実は仮処分の決定を無視してなされております。その仮処分の内容は、学校の北門中心点から半径二百メートルの範囲内での示威活動はやるなという仮処分が出ておったんでございます。しかし、それを明白に認識した上で、無視してやっちゃえというような事実認定が判決に書いてあります。  最高裁にお聞きしたいんでありますけれども、我が国では、裁判所の命令を無視しても、その命令無視それゆえをもって身体拘束をされたり罰金を科す制度がないと私は理解をいたしております。一定の金銭を支払わせる民事執行法の間接強制というのはありますけれども、これは後日の損害賠償の保証的な制度だと理解をしております。  英米法では法廷侮辱罪をもって裁判所の権威を守り、司法判断を維持していると。日本は英米法体系とは違いますので、まあ英米の話かなと思っておりましたけれども、実は大陸法のドイツにも同じような制度がございます。若干アメリカとは違いますけれども、罰金刑、身体拘束も可能でございます。それから、中国においてもドイツと似た制度があるというふうに聞いております。  そこで、最高裁判所にお聞きいたします。  仮処分命令が無視される状況は過去どのぐらいあるのでございましょうか。例えば、私が知っているだけでも、日教組とあるホテルの会場を使う使わないという問題がございまして、あのときも仮処分命令を無視して使わせなかったということがございました。その司法判断の無視される事案ということは、司法の権威を軽んじているというか、ちょっと言葉は下品でございますけれども、裁判所がというか、日本の司法権がなめられているんじゃないかというふうにも受け取れるわけでございます。  その仮処分命令が無視される状況の程度と、それから、こうしたことが起きていることについてどのように最高裁として受け止めていらっしゃるか、御所見をお聞きいたします。

菅野雅之最高裁判所事務総局民事局長兼最高裁判所事務総局行政局長

○最高裁判所長官代理者(菅野雅之君) お答え申し上げます。  裁判所の仮処分命令に違反する事例につきましては統計がございませんので把握しておりませんが、委員御指摘のとおり、公刊物に登載されている裁判例の中に仮処分命令違反があったことがうかがわれるものがあることは十分承知しているところでございます。  一般論といたしますと、裁判所の仮処分命令の効力が生じている以上はこれが遵守されるべきことは当然であり、仮処分命令に違反する事例が存在することにつきましては誠に遺憾であると申し上げるほかないところでございます。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 遺憾でなかったら困るわけでございます。遺憾であるだけでとどまって、果たして司法改革をしようとずっと二十年近くやってきたこの日本国政府はこれでいいと思っているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのでございます。  ちょっと法務省にお聞きいたしますけれども、法廷等の秩序維持に関する法律というのが既にあるんでございますけれども、この法廷外での不作為等を内容とする仮処分決定とか差止め判決を無視する行為は本法の対象にならないということをまずちょっと確認をさせていただいた上で、対象外であるなら、先ほど最高裁の方から遺憾であるという御発言がございましたけれども、遺憾である状態がずっと続いているわけでございますけれども、司法の権威を守る何らかの法制度整備の必要性について法務省としてどう考えているか、お聞かせいただけますか。

萩本修法務大臣官房司法法制部長

○政府参考人(萩本修君) 御紹介のありました法廷等の秩序維持に関する法律、この規定に沿って御説明しますと、この法律は、第一条で、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的としておりまして、第二条で、裁判所又は裁判官が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所等が命じた事項を行わず若しくはとった措置に従わない行為又は不穏当な言動で裁判所等の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害する行為を制裁の対象としているものでございまして、委員御指摘のような裁判所の仮処分決定に従わない、無視することにつきましては、この法律の制裁の対象に当たらないというように考えております。  御指摘のとおり、司法の権威を守るという観点からは、これも御紹介がありましたが、英米法における法廷侮辱、裁判所侮辱のこの思想を参考に、我が国でも裁判所の仮処分決定や判決に当事者が従わない場合に制裁を科す制度を導入すべきという意見が、意見といいますか見解があることは承知しております。  もっとも、我が国の民事裁判手続におきましては、一方当事者が裁判所の仮処分決定や判決に従わない場合に、裁判の実効性を確保をする方策としましては、その相手方当事者の判断により仮処分決定や判決に基づく執行手続を取ること、別途損害賠償請求訴訟等を提起することなどが予定されているところでございます。  このような法体系の下で、司法の権威を守ることを目的として裁判結果に従わないことにつき制裁を科す制度を導入することにつきましては、制裁までの必要があるかどうか、司法の権威を制裁によって保持することが手段として適切、妥当か、司法の権威は国民の理解と信頼に支えられるべきではないか、そういった種々の観点から慎重に検討を要するものと考えております。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 ありがとうございました。  ヘイトスピーチの対策関連法を含めても、その法律を作りました、しかし、最後一番大事なのは、その運用、それから執行、最後は司法救済でございますけれども、その司法救済の司法判断が無視されるようなことではそもそも良くないのではないかということでございます。  今おっしゃいましたその民事分野の日本の法体系の過去のいろいろ積み上げはあるというのはよく分かりますけれども、そんなことを言っておりましたら裁判員制度はできなかったということになりますし、ロースクールもできなかったということになります。それから、可視化法案もできなかった。それから、様々な司法改革、二十年間のこの議論の前と後とは、私は世界が本来であれば違うべきではなかろうかと思っております。  裁判所の権威をいかにして守るか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、二割司法とか日本社会の日陰、片隅で、司法はそれでいいんだと、余り出しゃばるなという世界であれば、私は、今法務省の方がおっしゃったような、これまでの体系の上でやっておればよかったということかもしれませんけれども、少しずつ世界が変わってきているように思いますので、また機会を見てこの点は議論をさせていただきたいと思います。  今日はありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十一分休憩      ─────・─────    午後一時開会

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席いただいております参考人は、日本弁護士連合会司法調査室副室長河津博史君、東京大学大学院法学政治学研究科教授大澤裕君、弁護士小池振一郎君及び布川事件冤罪被害者桜井昌司君でございます。  この際、参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、河津参考人、大澤参考人、小池参考人、桜井参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。  それでは、河津参考人からお願いいたします。河津参考人。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 日本弁護士連合会司法調査室副室長の河津でございます。  まず、今回の熊本地震で被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げたいと存じます。  本日は、取調べの録音・録画制度の創設並びに証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設について意見を申し上げます。  今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、日本弁護士連合会は、全体として刑事司法改革を確実に一歩前進させるものと評価し、本法律案が充実した審議の上、早期に成立することを強く希望しております。  日本弁護士連合会では、かねてより、警察や検察の捜査において不適正な取調べが行われることがあり、公判においても供述の任意性や信用性が必ずしも的確に判断されておらず、それらの結果、冤罪がつくられていることを我が国の刑事司法制度が抱える深刻な問題として認識しておりました。そして、不適正な取調べを防止し、かつ供述の任意性や信用性の的確な判断を可能にするための方法として取調べの可視化制度の創設を求めてまいりました。  不適正な取調べを防止し、冤罪を防ぐ必要性は一部の事件に限られるものではありません。また、不適正な取調べは、被疑者が逮捕又は勾留されている間に行われるとも限りません。したがって、日本弁護士連合会は、基本的に全ての事件の全ての取調べの可視化を求めてまいりましたし、これからも求め続けてまいります。  過去の冤罪事例の多くは、不適正な取調べを原因とするものです。そして、それらの冤罪事例には、冤罪被害者本人が虚偽の自白を強要された類型の事例のほか、共犯者とされた人物等が冤罪被害者が犯行に関与したとする虚偽の供述を強要され、又はそのような供述に誘導された類型の事例があります。  いずれの類型からも共通して導かれる教訓は、供述証拠は後から作り上げることができるものであるということ、特に取調べで圧力が加えられたとき捜査機関の筋書に沿う内容の供述証拠が作られやすいこと、それゆえ供述証拠に基づく犯罪事実の認定は相当慎重に行わなければ冤罪をつくる危険が大きいということです。  今回の法改正の契機となった郵便不正厚生労働省元局長事件は、共犯者とされた人物が取調べにおいて、村木厚子さんが犯行に関与したとする検察官の筋書に沿った供述を強要され、又はそのような供述に誘導されたという事案でした。この事件では、逮捕、勾留された厚生労働省職員に対し、村木さんから指示を受けたとする虚偽の供述が強要されました。在宅被疑者として取り調べられた複数の厚生労働省職員についても、村木さんが関与したとする内容虚偽の供述調書が多数作成されました。このことは、在宅被疑者であっても、逮捕されるおそれ等を感じさせるだけで捜査機関の筋書に沿って供述させるのに十分な圧力となり得ることを示しています。  また、この事件では、自称障害者団体の会長が村木さんから直接公的証明書を受け取ったとする検察官の筋書に沿った供述について、公判でも一部を維持し、判決でその信用性が否定されています。このことは、取調べにおける誘導等の影響は、捜査段階の供述にとどまらず、公判供述にも及び得ることを示しています。  この種の事件の再発を防止するためには、まず、筋書に沿って供述させるような不適正な取調べを抑止する必要があります。そのためには、被疑者が逮捕、勾留されているか否かを問わず、取調べが可視化されるべきです。さらに、公判においても、供述証拠の危うさを踏まえ、供述証拠に基づく犯罪事実の認定は相当慎重に行うのでなければ、冤罪は繰り返しつくられていくおそれがあります。  証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度は、検察官が不起訴処分や特定の求刑をすることと引換えに、被疑者、被告人が他人の刑事事件についての供述等をする旨の合意をすることを認めるものです。このように、不起訴処分や軽い求刑という恩典と引換えになされた供述は捜査機関の筋書に沿ってなされる可能性が一段と大きいものであり、供述証拠の中でも特に厳重な警戒を要するものです。  郵便不正厚生労働省元局長事件においても、検察官の筋書に沿う供述をした被疑者は、逮捕、起訴を免れ、あるいは起訴後直ちに保釈されるなどの恩典を受けており、明示的又は黙示的な取引があったことを疑わせる状況がありました。起訴後直ちに保釈された被告人の一人については、保釈保証金は百万円を相当と思料するとの意見書を検察官が提出し、極めて低額の保釈保証金で保釈されるよう便宜が図られたことが判明しています。  このように、検察官が訴追裁量又は保釈意見や求刑意見を利用して共犯者とされる者に恩典を与え、それと引換えに他人の刑事事件についての供述等を求めるという事実上の取引は、これまでも行われていたのが実情です。そして、取引の結果として供述がなされたという事実は、標的とされた被告人やその弁護人には知らされず、通常、知ろうとしても知ることができません。その場合、裁判所は、取引の結果としてなされた供述について、そうであることを認識しないまま信用性判断をすることになります。これは事実認定を誤らせる危険が非常に大きいと言わなければなりません。  このような、検察官が恩典を約束ないし示唆して他人の刑事事件についての供述を求める事実上の取引について、これまで実務の現場では必ずしもその違法性が明確にされてこなかったように思われます。しかし、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度が創設されるのであれば、その要件を満たさない事実上の取引は違法であると解するべきです。そのように解するのでなければ、本法律案が条件を限定し、合意内容書面によって合意をした事実を明らかにする義務を検察官が負うことを前提として合意を認めた意味が乏しくなってしまうからです。  証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の立案趣旨は、組織的な犯罪の上位者、背後者の関与を含む全容の解明にあると説明されています。合意をした者が真実の供述をする場合においては、合意が全容の解明に資することもあるのでしょう。しかし、郵便不正厚生労働省元局長事件の捜査においても、まさに組織的な犯罪等の上位者、背後者の関与を含む全容の解明の名の下に、誤った筋書に沿って何人もの供述が作り上げられたことを忘れるべきではありません。同じ過ちを繰り返さないためには、やはり取調べの可視化を徹底するべきです。取調べの可視化を徹底すれば、筋書に沿って供述を誘導するなどの不当な取調べは抑止することができます。  また、合意に基づく供述は、その信用性を特に慎重に吟味しなければならないことに異論はないと思われます。供述の信用性判断に当たっては、初期供述が重要であることが従前から指摘されています。供述者が最初はどのように供述していたのか、合意の結果、供述内容がどのように変わったのか、ほかの証拠と整合するように供述を修正した場面があるか等を事後的に検証できるようにするためにも、取調べの可視化を徹底して供述経過を客観的に記録するべきです。  そして、最終的には、公判において供述証拠に基づく犯罪事実の認定を相当慎重に行うことが冤罪を繰り返さないためには必要であると言わなければなりません。長年、供述調書に過度に依存した刑事裁判に慣れ親しんできた我が国の法律家は、より本質的には供述証拠の危うさについての認識が不足しているのではないか自問しなければならないと思われます。  今回の刑事訴訟法改正案は、取調べ録音、録画の義務付けの対象を一部の身柄事件に限定し、また複数の例外事由を設けているなどの点で不十分と言わざるを得ないものです。しかし、取調べの録音・録画義務を対象事件については全過程を原則とする形で刑事訴訟法に規定することは、踏み出すべき第一歩であると考えます。また、今回の対象事件の中には、死刑や無期懲役という重大な人権制限を内容とする刑罰を法定刑とする事件が含まれています。そのような事件については、速やかに取調べの録音、録画を義務付ける必要があると言うべきです。  日本弁護士連合会は、本法律案が成立した際には、改正法の内容や弁護活動上の留意点を会員に周知し、十分な弁護が提供されるよう研修等に努めます。また、施行三年後の見直しを見据えて、義務化対象事件以外の取調べがどの程度可視化されるか、例外規定がどのように運用されるか、可視化されなかったときにどのような取調べが行われるか、可視化された取調べ、可視化されなかった取調べ、それぞれにおける供述の任意性等について裁判所がどのような判断をするか、合意に基づく供述の信用性について裁判所がどのような判断をするか等について、継続的に情報を収集し、注視してまいります。  刑事司法の実情について、国民に対し情報を開示していくことも日本弁護士連合会が果たすべき役割の一つであると考えます。法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会における最終的な取りまとめに当たり、村木委員は五人の一般有識者委員を代表して、「これが大きな改革の第一歩になると理解をして、多くの課題は残るものの速やかに第一歩を踏み出す方向にかじを切るべきとの判断に至りました。」と発言されました。  日本弁護士連合会としても、これが大きな改革の第一歩になると理解をし、引き続き残された課題に全力で取り組むことを前提に、速やかに第一歩を踏み出すことを求めるものです。  ありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。  次に、大澤参考人にお願いいたします。大澤参考人。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 東京大学で刑事訴訟法を担当しております大澤でございます。本日は、貴重な機会を与えていただき、光栄に存じております。  今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案は、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判の在り方の見直し、これを基本的な課題とするものです。これまでの我が国の刑事司法には、長年の実務の積み重ねを通じて形成されてきた運用上の特色として、取調べ及び供述調書に多くを依存する傾向が認められました。そのような日本型とでもいうべき刑事司法の在り方に対し一定の見直しが必要であるということについては、刑事訴訟法を研究する者の間で共通認識が存在をしていたように思います。  今回の法律案については、とりわけその核となる取調べの録音・録画制度について、それが十分であるかどうか評価が分かれておりますが、我が国の実務に深く根を下ろしてきた日本型の刑事司法の在り方を、刑事司法の機能を大きく損なわないという前提の下で一朝一夕に大転換するということには直ちに現実性があるとも言い難いところもあり、そうだとしますと、今回の法律案は、それを大きいと見るか小さいと見るかは別として、あるべき見直しの方向に一歩を踏み出すものとして評価できるものであるように思います。それは、様々な立場、意見の相違を乗り越えつつ、最終的に全会一致で今回の法律案の基となった法整備の答申案を取りまとめた法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会が最後に到達をした認識でもあろうかと思います。  以下、法律案のうち、本日のテーマである可視化、すなわち取調べの録音・録画制度と、司法取引、すなわち証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度について、特に争いとなっている点に絞って所見を述べることといたします。  まず、取調べの録音・録画制度についてでありますが、この制度をめぐっては、録音、録画を義務付ける対象事件及び対象となる取調べの範囲について制度設計の段階から厳しい見解の対立があり、それがなおくすぶっているように見えます。  法律案は、録音、録画を義務付ける対象事件を裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件に限定する一方、そのような対象事件について身柄拘束中の被疑者の取調べを行うときは、原則として、その全過程を録音、録画しておかなければならないこととしました。ただし、対象事件の取調べであっても一定の例外事由に当たる場合には、録音・録画義務は及ばないこととしております。  録音、録画の制度は、取調べの適正を確保しつつ、被疑者の供述の任意性等が争われた場合にその的確な立証ができるようにすることを目的としております。そのような目的に照らせば、できる限り広く録音、録画を義務付けるということが目的にかない、法律案の録音・録画制度は余りに限定的であるとの見方も生じ得ます。  しかし、この点では次の二つの点にも留意が必要であるように思われます。  第一に、録音、録画は、取調べの適正を確保し、供述の任意性等の的確な立証ができるための極めて有力な手段でありますが、唯一絶対の手段であるというわけではありません。また、取調べも、適正に行われる限り、捜査手段としてその機能を否定されるべき理由はありません。  したがって、録音・録画義務の範囲は、その有用性とともに、録音、録画に伴う人的、物的なコストのほか、録音、録画が取調べの機能に与える影響をも考慮し、最終的には政策的に定められるべきこととなります。  そのような観点から見たとき、録音・録画義務の対象犯罪を、類型的にその必要が特に高く、外延が明確な一定の犯罪に限定するということも一概に不合理とは言えないように思われます。また、そのように類型的に必要性が高い犯罪を対象犯罪とした場合、その取調べについては全過程を録音、録画することが原則となる、これが筋であるはずですが、録音、録画が取調べの機能を特に損なうような場合について一定の例外を設けるということも、先ほどの考え方からすれば直ちに否定されることではないということになりましょう。  第二に、録音、録画の義務が及ばない取調べであっても取調べ自体は適正でなければならず、供述の任意性を損なうものであってはならない、そして供述の任意性が争いとなったときには任意性は訴追側が立証しなければならない、この点は録音・録画義務が及ぶ場合であろうが、そうでない場合であろうが同じだという点です。  録音、録画の記録媒体は、現在、任意性の立証を的確に行う最良の手段と言えます。他方、被疑者段階の刑事弁護の拡大、充実が進む中、捜査機関による不適正な取調べが認められた場合、弁護側において効果的に任意性を争い得るよう、そのための手掛かりを残す工夫が様々に試みられるようになっております。そのような中、訴追側にとっては録音・録画義務が及ばない取調べについても任意性が争われた場合に備えて録音、録画することを積極的に考えざるを得ない、そのような状況が生まれてきつつあるように思われます。実際、検察においては、近時の実務において、取調べの状況の立証のために最も適した証拠は取調べを録音、録画した記録媒体であると認識をされ、捜査段階における供述の任意性、信用性等をめぐって争いが生じた場合に同記録媒体による立証が求められているとの認識に基づき、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件以外の事件でも必要と認める場合について録音、録画の試行が進められています。  法制審議会の特別部会は、答申案の附帯事項として、実務上の運用において、可能な限り幅広い範囲で録音、録画がなされ、かつ、その記録媒体によって供述の任意性、信用性が明らかにされることを強く期待すると述べ、先般、本法律案を審議した衆議院法務委員会でも、附帯決議において、録音・録画義務が及ばない場合であっても、取調べ等の録音、録画を、人的、物的負担、関係者のプライバシー等にも留意しつつ、できる限り行うように努めることとの一か条が設けられております。  改正案が対象事件とする裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件は、経験的に取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすい事件である一方、前者は取調べ状況について裁判員にも分かりやすい立証が求められるという点で、また、後者は被疑者が異なる捜査機関の取調べを受ける機会がなく取調べ状況について異なる捜査機関に対する供述状況を踏まえた判断ができないという点で、録音、録画を義務付ける必要が類型的に特に高く認められる、そのことについてほぼ異論のない犯罪と言えます。  しかし、そのような犯罪にとどまらず、新時代の刑事司法制度特別部会あるいは衆議院法務委員会の附帯決議が述べるように、録音、録画がより広く積極的に行われる運用が期待できる状況にあることも踏まえれば、法律案のような対象事件で制度化を図りつつ、さらに全体的な運用を踏まえた見直しを加えていくというのが現時点においては最も現実的な選択肢ではないかと思います。  次に、いわゆる協議・合意制度について申し上げます。  協議・合意制度は、いわゆる捜査・公判協力型の司法取引の性格を持つ制度です。このような制度について最も問題とされているのは、合意をした被疑者、被告人によって他人の刑事事件についてなされる供述の信用性です。協議、合意をした被疑者、被告人が供述するのは、多くの場合、共犯関係にある他人の刑事事件についてであると考えられますが、共犯者の供述は、一般に、自己の刑事責任を軽減するため他人を引き込んだり他人に責任転嫁する危険があるということが認められています。また、合意した被疑者、被告人による供述は、自己の刑事事件に対する有利な扱いを求めて行われた供述であることになりますが、一般に、約束や利益誘導による自白は類型的に虚偽のおそれが大きく、任意性に欠けるとされています。そこで、その趣旨に照らすと、同じ供述を他人の刑事事件について用いるという場合にも虚偽のおそれが大きく、証拠として用いることが許されないのではないかという問題が生じてくることになります。  しかし、既に指摘されているように、合意制度には、合意によって虚偽の供述が誘発されることを抑制する一定の仕組みと、他人の刑事事件において虚偽供述による誤った事実認定が生じないようチェックするための一定の仕組みが用意されていると言ってよいように思われます。  その第一は、協議、合意の過程において、被疑者、被告人の弁護人の関与が必要的とされている点です。もとより、被疑者、被告人の弁護人は、合意によって得られた供述により刑事責任を追及されることになる他人を保護すべき立場にあるわけではありません。しかし、被疑者、被告人の代理人、保護者としての立場だけでなく、裁判の公正及び適正手続の実現に努めるべき客観的な立場も併有をしているはずです。そのような弁護士が関与するということは、その関与がない場合に比べて、虚偽供述の誘発に抑止的な役割を果たし得ると思われます。また、合意に基づく虚偽供述に対しては罰則の適用があるということに鑑みれば、被疑者、被告人の利益を保護するという立場においても、虚偽供述を行わないよう必要な助言が求められることになるはずです。もとよりパーフェクトを求め得るものではないかもしれませんが、虚偽供述がなされることに対し一定の抑制効果を期待し得るものではあると思われます。  第二に、公判廷での虚偽供述には偽証罪が、また公判廷外での虚偽供述には新設をされる罰則規定が適用をされます。これらによっても虚偽供述は一定程度抑制をされるはずです。  第三に、合意が基づく供述が他人の公判で用いられる場合には、同時に合意内容が記載された書面が取調べ請求され、刑事責任を追及されることとなる他人にも、またその事件を審理する裁判所にも、合意に基づく供述であることが明らかにされ、その下で反対尋問による信用性の吟味がなされます。また、合意に基づく供述は、利害関係ある者による供述として一般に信用性に危険があるものとして扱われますから、裁判所においても意識的に信用性の厳格な評価が行われることが期待をされます。検察官においても、そのことを自覚すれば、裏付け証拠の十分な収集に努め、それが得られない場合には合意に基づく供述を用いることは控えるのが通常であろうかと思われます。  また、約束、利益誘導による自白との関係では、そのような自白が不任意自白として排除されるのは、約束、利益誘導によって不当な心理的圧迫、影響を受けた結果、虚偽の供述を行うおそれが認められるような場合だと言えます。その点に鑑みますと、法律に定められた手続に従い、弁護人も関与した下で行われる協議、合意は、そのような不当な心理的圧迫、影響をもたらす場合とは区別が可能であるように思われます。  これらのことを考慮すれば、合意による供述も裁判所の自由心証による信用性評価に委ねてよい程度の信用性の手続的な担保は備えていると見ることが可能であるように思われます。  時間が参りましたので、ここまでといたします。  御清聴ありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。  次に、小池参考人にお願いいたします。小池参考人。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 弁護士の小池と申します。  このような機会をいただきまして、ありがとうございます。  私は、日弁連の中で監獄法改正等、様々な活動をしてまいりました。主に刑事関連の委員会で活動してきましたけれども、今回は、この法案につきましては日弁連とは反対の立場で意見を述べさせていただきたいと思います。  先日、今市の事件判決がありましたけれども、これは各方面に衝撃を与えました。商標法違反という別件逮捕から始まった事件ですが、その別件起訴された日に検事取調べで初めて自白したと、殺害を自白したと言われております。しかし、その過程は録画されていません。それまでに警察での取調べがあったと思われますが、録画されていません。その後も、殺していないと言ったら平手打ちをされて、額を壁にぶつけてけがをしたと、こういう場面が警察の取調べであったようですけれども、これも録画されていません。殺してごめんなさいと五十回言わされたとか、自白すれば刑が軽くなると、こう言って取り調べられた場面は録画されていません。被告人は、死刑になるよりも、少しでも軽い罰を受けるという選択をして自白をしたものと思われます。  別件逮捕から本件殺人での起訴まで五か月間ずっと代用監獄に収容され、取り調べられています。起訴後も一か月半たってようやく拘置所に移されました。  裁判員裁判の法廷では取調べの録画が再生されました。約八十時間の警察、検察の取調べ録画を七時間余りに編集したものです。判決は被告人に無期懲役を言い渡しました。客観的事実のみからは被告人の犯人性を認定することはできないと断定し、自白供述をよりどころにして犯人性を認定しています。判決後の記者会見で裁判員が、録音、録画がなければ判断できなかった、録画を見なければ違う結論になったかもしれないと正直に述べています。自白の重要な部分で客観的事実と矛盾するところが随所にあったようですけれども、客観的証拠ではなくて、取調べの録画で有罪の心証を取ったわけです。  判決は、自白は実際に体験しなければ語れない具体性に富んでいるとして自白供述の信用性を認めていますが、これは大体常套文句ですね。犯人でないと分からないとされる事実も、裏で捜査官が教えれば難なく具体的な供述はできるのです。さらに、捜査官に迎合するために想像をたくましくして一生懸命創作することもしょっちゅうあります。隣の桜井さんは、自らそういう形で想像しながら自白供述をしたというふうに聞いております。  パソコン事件では、逮捕された無実の四人のうち二人が自白しました。今回の法案作成のきっかけとなった郵便不正事件では、調べられた十人のうち、村木さんを含めて十人調べられているんですが、そのうちの五人が村木さんの関与を認めているんです。全て真っ赤なうそなんですね。約五〇%、半分が、無実であるにもかかわらず、自白を強要されれば、あるいは捜査官の筋書に沿った供述を強要されれば、その場の苦しさから逃れようとして半分の人が大体取調べ官に迎合した供述をする、それほど取調べはきついものだということを認識していただきたいというふうに思います。  取調べで屈服させて人格を丸ごと支配し、代用監獄で二十四時間監視し、そして自白を強要する、そこは録画しないで、想像も交えながら身ぶり手ぶりで具体的に言われたとおりの供述をする場面は録画する、そして、その部分だけが証拠提出されて、裁判員たちがその録画で、うん、なるほど、身ぶり手ぶりで真実性があるということで、そこで心証を取る、これはたまったものではありません。ビデオが視聴覚に訴える力は圧倒的に強いものです。捜査側に都合のいいところだけ一部録画されていると分かっていても影響されます。  今市判決は、七時間余りの録画を見て有罪としたのです。取調べの録画がこのような使われ方をしていいのでしょうか。法案が成立するとどうなるかと。今市のこのような事態が改善されるのでしょうか。  まず、商標法違反というものは裁判員裁判の対象事件ではありませんから、法案が成立しても録画の対象にはなりません。別件逮捕による取調べは録画なしで行われます。本件の殺人での取調べは法案では原則録画しなければならないという建前になっています。しかし、自白を強要する場面は実は録画しないで、屈服させた後、犯行内容を淡々と語る場面を録画して自白調書を取るおそれがないと言えるでしょうか。  法案では、その自白調書を証拠請求し任意性が争われると、その取調べの録画を証拠申請しなければなりません。そうしなければ自白調書の証拠請求が却下されます。しかし、その自白調書というのは、調書が作成されたときの取調べの録画だけを証拠請求すればいいんです。最初から最後まで、何日も、百日も掛かるその取調べの、今市でいうとそういうぐらい取り調べられているんですが、その全部の録画がなくても、当該の自白調書、その一つの回の午前中なら午前中、午後なら午後だけかもしれません、その取調べのときの自白調書を証拠申請するときにはそのときの録画だけ申請すればいいと。まさにこれでは尻抜けということになるのではないでしょうか。  法案の建前は、そうはいっても、全過程可視化を原則としておりますから、録画する義務は一応あるわけです。しかし、自白に至るまでの録画がなくてもペナルティーがないんですね、それを録画しなくても。ペナルティーがないわけです。  先日のここでの討論で政府答弁がありました。そういった場合には懲戒の対象になる、全過程録画しない場合には懲戒の対象になるという政府答弁がありましたけれども、これは対象になるというだけであって、実際に懲戒するかどうかは疑わしいし、刑事訴訟法の手続でも何でもないわけです。これでは全過程可視化義務付けといっても名ばかりで、実際は部分可視化を容認するという抜け穴だらけだということが言えると思います。  それから、法案では全過程可視化の例外規定を幾つも設けています。可視化すれば自白が得られそうにないというふうに取調べ官が認めた場合には録音、録画しなくていいという例外規定なのです。これが活用されますと、要するに、自白しそうにないときは録画しない、自白しそうなときは録画するという、単に仕分するだけであって、例外規定でも何でもないというふうに思います。  このような形で取調べ官が例外規定に当たるというふうな形で録画しなかったというふうになれば、今度はそのときの自白調書を証拠申請しても、録画がなくてもオーケーということになるわけです。法案は部分可視化を容認する役割を果たしています。  今市事件のように、自白に至るまでは録画しないで犯行内容や心境を語らせる場面を録画して、その部分録画が証拠として採用され、裁判の心証がそこで取られるということは、法廷ではなくて、弁護人の立会いもない密室での取調べの録画で裁判の心証が取られるということであります。これはおよそ公判中心主義とは言えません。公判中心主義の裁判とは言えません。  したがって、元々この取調べの録音、録画というものは、これは公訴事実を直接証明するための実質証拠として採用されることには疑問がありました。余り提出されませんでした。ところが、昨年の二月十二日、最高検依命通知で、録音、録画を有罪立証の実質証拠として検討するようにとの方針を出しました。  法案は、自白調書を証拠申請する以上、その任意性が争われれば、そのときの録音、録画を証拠申請しなければならないとされていますから、一応義務として録音、録画が証拠申請されることになるわけです。ビデオ録画の恐ろしさというものは先ほど指摘したとおりなんですけれども、自白調書の任意性判断という名の下で、義務としてビデオ録画が堂々と証拠採用される。これがどんどんどんどん増えていくということになれば、事実上、これで裁判員たち、裁判官も含めて心証を取ることになりますので、実質的証拠として機能するだろうと思います。  法案は、今市事件のやり方を更に前に推し進める役割を果たします。捜査段階ではなくて公判廷で心証を取る近代刑事司法にしようということで裁判員裁判が始まったはずなのに、法案は、ビデオ録画を法廷に次々と証拠提出することによって公判中心主義の破壊に道を開くものであり、捜査段階の取調べに依存する方向への逆戻りになるわけであります。それを促進していることになると思います。  先ほどの最高検依命通知は、法制審答申が出された後、法案が国会に提出される直前に出されました。ビデオ録画が裁判員裁判でこのように任意性立証のためだけでなく実質証拠としても使えると、そういう方向がどんどん進んでいけば、本当にこの刑事司法というものはどうなるかということで、大変なことになるだろうと思います。  恐らく、この法案を推進してきた人たちも、ビデオ録画がこのような形で使用されるとは想定していなかったんではないでしょうか。全過程可視化が現実に実現することが前提でこの法案を推進してきたと思いますが、実際には抜け穴だらけのこの法案が成立しても、むしろ悪くなるだけだというふうに思います。一歩前進どころか、むしろ改悪になるというふうに言わざるを得ません。  次に、司法取引です。  余り時間がなくなりましたのではしょりますけれども、これまでも司法取引は事実上ありました。司法取引が合法化されれば、不起訴になるという確実な保証が得られますから、他人について捜査官の期待に沿うように供述しようというインセンティブがより強く働くでしょう。冤罪が格段に増えると思います。会社や労働組合の団体が狙われます。下っ端を捕まえて司法取引してトップを捕まえるということがこのシステムでできるわけです。  弁護人の同意が必要だとされていますけれども、弁護人は、その共犯者の事件について、何が真相かということについても、そのターゲットとされる事件については証拠開示されませんから、真相が分からないわけです。弁護人は依頼者の利益のために取引に応じざるを得ず、その依頼者が言っていることはどうかなと思っても、不本意ながら冤罪に加担するおそれが出てきます。  自らが有利な取扱いを受けるために他人を罪に陥れる危険がこの司法取引制度には内在していると言わざるを得ません。法案で司法取引を合法化することになりますと、事実上、今まで行われていた裏取引というものも無感覚になって、ますます増えるということになると思います。  アメリカでは合法とされている司法取引ですけれども、実際は裏取引で行われるというケースが八〇%ぐらいあると言われています。司法取引というのは表と裏で相乗作用を起こし、密告社会をつくっていくことになりかねません。  終わりに、刑事訴訟法というものは国の根幹に関わる法律です。政局やメンツに左右されず。強行採決するような性格の法律ではありません。そんなことをすれば世界中の恥さらしになると思います。今市事件をきっかけにこのビデオ部分録画の危険性というものが明らかになった以上、改めてこの法案を一から見直すべきだというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。  次に、桜井参考人にお願いいたします。桜井参考人。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 布川事件という冤罪事件を体験しました桜井と申します。衆議院の法務委員会に続きまして、参議院の方にもお呼びいただきまして、ありがとうございます。  昨年の六月の当時と私たちの危機感は全く違います。今、小池先生がおっしゃったように、今市事件の結果は、五十年前の私たちと同じように、この刑訴法改正の部分可視化によってますます冤罪をつくるものという確信になりました。今日は、鹿児島の志布志事件の川畑幸夫さん、そして栃木の足利の菅家利和さん、東京で築地警察署公妨事件、冤罪事件の二本松進さんが同じ危機感を持ってこの会場に来ています。  先日、私たち冤罪被害者は法務委員会の皆さんに文書をお届けしましたけれども、お読みいただいたでしょうか。私たち、あの事件に名を連ねました東電OL殺人事件のゴビンダさん、志布志事件の藤山さん、袴田事件の袴田秀子さん、そして氷見事件の柳原さん、痴漢冤罪事件の矢田部さん、石田さん、そして、新しく冤罪の仲間となったといいますか、大阪東住吉事件の青木さん、あるいは鹿児島のレイプ事件、天文館レイプ事件の岩元さん、全てが同じようにこの刑事訴訟法の一部改正に危機感を持っています。  私たちが反対しますのは、簡単なんですね。委員の皆さんやそして国民の多くの皆さんと違うのは、私たちは体験として警察の悪辣さを知っているということなんですね。河津先生、大澤先生のお話を聞いて、五十年前が懐かしいなと思いましたね。私も警察は信じていました。多分、ここにいらっしゃる川畑さんも菅家さんも二本松さんも同じだったと思います。こういう冤罪にならないと、警察がどんなひどいことをするということが分からないんですね。残念ながら、警察は証拠を捏造します。証拠を改ざんします。  平岡義博さんという科学者がいらっしゃいます。科捜研に勤めていらっしゃいまして、今は退職して、日本でも始まりましたイノセンス・プロジェクトの一員として活動されています。この方が「法律家のための科学捜査ガイド」という本を書きました。科捜研に勤める者が警察からどんな圧力を受けて科学的事実をねじ曲げてしまうのか、率直に書かれています。  元北海道警の原田宏二さんは「警察捜査の正体」として、本を書かれました。警察が真実を離れて、正義を離れて、どんなあくどいことをするかということを御自身の体験に重ねて書かれているんですね。  私は、このような警察に全面可視化を義務付けるのではなくて、捜査官の裁量によって録画しなくてもよいというような可視化法案を与えて、まともな可視化すると思えないんですよ。あり得ません。  今、小池先生がおっしゃったように、今市事件では、裁判員の方が何か映像を見て、動揺しているとか泣いているとか笑っているとか、そういう映像が非常に犯人として理解できたとおっしゃっていますけれども、無実の人が取調べを受けて、その苦痛に負けて人殺しの罪を認めるんですよ。その意に反した殺人事件の自白をするのに泣かないはずないじゃないですか。動揺しないはずないじゃないですか。当然のことなんです。そのような映像を見て、なぜ犯人と確信できるんでしょうか。  事の本質は、その動揺するに至った、泣くに至ったその取調べそのものだと思うのに、それが映像されない、今度のような一部可視化法案で本当に冤罪が防げるんでしょうか。私たちは、全くそう思われる委員の方たちの心根が理解できません。  先日、ここでも仁比さんが、法務省にいられる検察官の林眞琴さんという方に、布川事件の録音テープがあるから聞いてみたらとおっしゃってくださいましたね。そうしたら、何か林さんは、プライバシーだとか言って出さないとかおっしゃっていましたね。私たち、本当に何聞いてくださっても、今更プライバシーなんてありませんので、是非議員の皆さん、聞いていただきたいんですよね。菅家さんも多分、聞かれて困るようなプライバシーないと思います、今更。  私の自白テープと言われるものを聞いていただければ分かりますけど、私、当時二十歳でしたけれども、警察におまえが犯人だ、おまえと杉山だ、見た人がある、認めないと死刑だ、朝から晩まで責められて、うそ発見器に掛けられて心が折れました。そして、心ならずもやったとうその自白をしてしまいました。  うその自白をするんですから、それは明るい声じゃしゃべれないですよね、もちろん。淡々と暗い声でしゃべっていますよ。私自身が聞いても、あの録音テープを聞くと、これなかなか迫真性があるなと思うんですよね。多分、今委員の皆さんがお聞きになっても、あれ、桜井ってこれ犯人じゃないか、もしかしたら誤解されるかもしれません。そういう中身ができるんですね、誰でも。それに今度は映像が付いて、その泣いたり動揺したりというそこに至る映像が撮られなくて、果たして本当に冤罪が防げるんでしょうか。犯人だとだまされなくて済むんでしょうか。  私、今市事件のあの裁判員の方たちのコメントを聞くまでは、この裁判員制度というものに期待しましたし、一部とはいえ録画することによって真相を分かってくれる人がいるんじゃないかと期待しましたけど、全く無駄だということが分かりました。残念ながら、河津先生や大澤先生がおっしゃるような第一歩にはなりません。その第一歩は、多分たくさんの冤罪事件がつくられる第一歩になるだろうと私たちは確信しています。  可視化の問題というのは、検察庁ではなくて警察が問題です。警察が殴ったり蹴ったり脅したりうそを言ったり、身体的、精神的に苦痛を与えてうその自白をさせるわけですけれども、その苦痛を映像にしないで、なぜ犯人として自白できるのか、あるいは犯人として語れるのかは明らかにできないと思うんですよね。検察庁の可視化というのは、私たち余り問題にしていません。警察が全てを可視化されれば、冤罪は格段に防げるだろうと思っています。そのことを是非委員の皆さんには御理解くださって、是非是非私たちの録音を聞いていただきたいと思います。どんなに一部可視化というものが危険か、お分かりいただけると思います。  費用とかいろんな面があってといいますか、現実性があってと先ほど大澤先生もおっしゃっていましたけれども、冤罪の苦痛と困難、苦難というのは、罪の重さではありません。痴漢冤罪事件、僅かな微罪でも人生が狂ったり家庭が崩壊したり、本当に人生そのものを失ったりするんですね。私たちは、決して重い事件だけが冤罪仲間じゃないですし、苦しんでいると思っていません。私たちは全ての冤罪事件を可視化してほしいと思っています。  先日のこちらの審議会の議事録を拝見しましたら、可視化に掛かる機械の費用とか、何人かの方が質問なさっていましたけれども、衆議院でも申し上げましたけれども、可視化の問題というのは、全てをまず現実的に始めようとしたらICレコーダーでもいいわけですよね。アメリカでは既にボディーカメラの装着というものまで進んでいます。なぜ日本では全面可視化すら実現できないんでしょうか。警察の言うがままに、あるいは検察の言うがままに、こんな不完全な一部可視化になってしまうんでしょうか。私は、委員の皆さんに、是非冤罪をなくすために、全面可視化となる方向に示したこの法案の改正、修正、必ず必ずしていただきたいと願っています。  私たちは、この一部可視化の代わりのように、引換えのようにして他人を冤罪に引き込む司法取引には全く反対です。これも一定の、何というんですか、方向性が期待できる、あるいは偽証があると大澤先生おっしゃいましたけど、検察官が偽証として捉えるのは、裁判で問題になるのは、きっとあの人が犯人だよといったのが、いや違うよといったケースしかないんですよね。検察官に迎合したのを否定したときにしかこの偽証罪は使われないんですよ。今までもそうじゃないですか。たくさんの冤罪事件の中で、たまたま真相を告白しようとした警察官がどんな苦難な生活を送ったか、静岡県の事件で、先生方、御存じないでしょうか。  私たちは、残念ながら、警察の悪辣さを知ってしまったために警察を信用するという気持ちになれません。警察官の立会いで盗聴を防ぐなどという、このような修正ができ上がること自体信じられません。  そして、この司法取引の修正が、検察官がと書いてあるんですね。司法警察員はないんですけど、これはどうしてなんでしょうか。司法取引が警察でつくられて、検察官のところまで行ったらどうなるんでしょうか。  そして、合意のための協議の際に弁護人が常時関与することとしたということが一定の歯止めになるとおっしゃいましたけれども、取調べそのものに立ち会えるんでしょうか。弁護士のいないところで検察官と調べられる者が一定の合意の話をして、さあ、その後、弁護士さんが来てくださいといって、果たして冤罪を防ぐ司法取引は防げるんでしょうか。全く夢物語のようにしか私たちは思えません。  この法廷で、やっぱり仁比さんが戦後における冤罪事件の統計をと言ったら、林眞琴検察官じゃなくて、あの人、刑事局長ですかね、あの方は、統計を取っていませんとおっしゃいましたね。冤罪事件をつくっている、つくってしまったという認識は法務省にあるんでしょうか。警察にあるんでしょうか。検察庁にあるんでしょうか。  裁判所は、立法府である国会が冤罪事件の検証や検討をしようとすると、司法への干渉であるなどと言ってかたくなに拒否されます。そうなんでしょうか。三権分立の立法府として、国民の代表として、警察や検察、裁判所を監視されることは皆さんの重要な職責の一つじゃないんでしょうか。今まで何件もの死刑事件、無期事件、たくさんの冤罪仲間が苦しんできたのに、立法府では一度たりともその検証をしたことがありません。これが国民の代表の立法府の姿なんでしょうか。私たちは非常に暗たんたる思いでいます。どれだけ多くの仲間が冤罪に苦しんだら、冤罪をなくす手だてを国会の方たちは考えてくださるんでしょうか。どれだけ国民が冤罪に苦しんだら、立法府は民主主義の最高の立場として冤罪を防ぐ法律を作ってくださるんでしょうか。  私たち冤罪者は、ただ冤罪をなくしてほしいと願っているだけなんです。良識の府と言われる参議院、どうか強行採決などなさらないで、問題点を十分審議くださって、私たちの、冤罪者の思いに応える法律にしていただきたいと思います。心から心から心からお願いしまして、私の発言とさせていただきます。  ありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人の意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 自由民主党の三宅伸吾です。  四人の参考人の皆様、貴重なお話を賜りまして、本当にありがとうございました。心より御礼を申し上げます。  今お話を伺っていまして、四人の皆様とも、できる限り可視化の対象事件は幅広い方が望ましい、かつ全面可視化するのが望ましいという点では一致しているように思いました。しかしながら、この法案の評価につきましては、河津参考人は一歩前進、大きな改革の第一歩という表現をされました。その一方で、小池参考人は冤罪を助長する法案であるというような趣旨の御発言をされました。評価が分かれているわけでございます。  私、つらつらずっとこの法案の審議入りから考えておったわけでございますけれども、少なくとも全面可視化された事件においては冤罪が減る方向に働くという意味では前進であることは間違いないんではなかろうかと思いますけれども、桜井参考人のお話を伺いますと、部分録画、小池さんもそうだと思いますけれども、部分録画の場合においては冤罪を助長する法案だと、こういうネガティブな御評価であったというふうに思う次第でございます。四人、少しずつニュアンスが違いますけれども、真ん中でこう御意見が分かれているように思いました。  是非、河津参考人、大澤参考人、小池参考人、それから桜井参考人、他の三参考人の御発言を聞いて、思うところ、反論等ございましたら、是非忌憚のない御意見を賜りたいと思います。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) お答えいたします。  小池参考人の御意見をお聞きしまして、やはり全面的な可視化を実現するべきだという根本的な思いは同じであると思いました。また、桜井参考人の御意見をお聞きして、やはり冤罪被害者御自身の見解を踏まえた御意見ですので、大変重く受け止めなければならないと思いました。  ただ、この法律案に対する最終的な評価が食い違っておりますのは、ここでこの法律、刑事訴訟法に録音・録画義務を規定するのがよいのか、規定しない方がむしろ冤罪が少なくなるのかという見通しの違いであると考えております。  この点について、私は、やはり刑事訴訟法という基本法の中に録音・録画義務を規定するメリットの方が大きいと評価するべきだと考えております。この点が両参考人との意見の違いの根本にあるのだと理解をしております。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件については、これは原則全過程を録画するけれども、しかし一定の例外がある。その例外がある点を捉えて、結局それは一部録画ということになってしまうのではないかという御指摘があったのかと思います。  そして、その一部録音、録画されていない部分について何か行われたとしたら、その部分は分からないじゃないか、結局、部分的に撮られたもの、そこの印象だけが走って、それが誤判の原因になるんじゃないかという御指摘だったのかと思います。  しかし、撮られていないところがあるということを考えてまいりますと、これは取調べ室を全て録音、録画してみたとしても、それじゃそれ以外のところで何かやられることはあるのかという形で問題を立てていけば、どこまでたってもこれは全てをカバーするということはあり得ない話だということです。  したがって、録音、録画というのは非常に有力な手段ではありますけれども、やはり一つの手段であって、それと刑事弁護の充実等が組み合わさっていくことによって、例えば何か録音、録画されていないところでおかしなことがあった場合には、それが刑事弁護人を通じて表に出ていく、そのことについて一定の問題提起がされたときに、じゃ、捜査機関の側としてどうやって反論していくんですかと、そういう形で問題というのは考えられるのかなと私は思っております。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 先ほど河津参考人から、規定した方がいいか規定しない方がいいのかと、ここで分かれると、そのとおりだというふうに思います。  私は規定しない方がいいという考え方ですが、なぜならば、もう既に今、部分録画始まっているわけですね。しかし、それは結局、取調べ官の裁量で、ここは録音しよう、ここは録画しよう、録画しないようにしようという区分けしているだけの話なんです。今市の事件がそうだったんです。法案ができれば、じゃ、そこは改善されるかというと、改善されないということを私は先ほどお話ししたんですね。例外規定が非常に曖昧で抽象的で、自白しそうになければ録画しなくていいというのは、これ、例外でもなくて単なる区分け規定にすぎない。  それともう一つは、全過程を可視化する、例外規定がない場合を前提としても、自白調書を証拠として申請する、そのときの取調べの録画だけ出せばいいと、それ以外は録画しなくていいということになれば、全過程可視化と銘打っていても結局名ばかりであって、実際にはいいとこ取りの録音、録画にしかすぎない、それをこの法案が推し進めることになるということになるだろうと思います。  先ほど、大澤参考人は、なかなか全部は難しいというお話もありましたけれども、どこまで録音、録画するのかという話がありましたけれども、私は、少なくとも取調べ室に入ったところから出るまで、これは全部録音、録画すべきであると、任意取調べも含めてですね。任意という名の下で実際は自白を強要することが圧倒的にこの冤罪事件、多いわけです。  それと、費用の面でいいますと、少なくとも録音、録画でなくて、録音だけは全部どの事件だってできるだろうというふうに思います。実際にイタリアやオーストラリアなどでは全て録音はすべきであると、録画も基本的にはすべきであると。そして、証拠採用についても、自白調書を申請するときの一本、そのときの取調べの録画を出せばいいということではなくて、供述調書を証拠に出す以上は、全部、全過程可視化しない限りはどの一つの供述調書も出してはいけないと、こういうことがイタリアやオーストラリアではなっているわけです。日本でもそれができないわけない。  この法案は、そういう形で修正を少なくともして、全過程可視化されない限りは一つの供述証拠も出してはいけないというふうにやるべきだ、そうであれば、いろんな問題点がクリアされるだろうというふうに思います。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 何か最後に発言すると、徹底的にやっつけられるので有利のような気がするんですけれども。  可視化はした方がいいか、しなかった方がいいかといったら、それはした方がいいに決まっているんですよ。したら増えるか、しない方が増えるかなんというのは、そんなのは前提にならないじゃないですか、議論して。私たちは、そんなことを言っているんじゃなくて、可視化して、中途半端な可視化をされたら、その映像によって冤罪者がつくられるという心配をしているんですね。なぜ日弁連がこんな一歩で法案成立という、奔走するのか全く理解できません。大澤先生がおっしゃることというのは、もう可視化ができるという前提でなっているような気がしまして、なぜそう言えるのか不思議なんですよね。  警察というのは必ず抜け道やるんですよ、抜け穴といいますか脱法行為といいますか。もう我々も本当に身にしみて体験した。この中では体験した方はいらっしゃらないと思いますけれども、本当に彼らは巧妙といいますか悪辣といいますか。ですから、抜け道用意したら駄目なんですよね。それを案じているだけでありまして、可視化をされることがいいか悪いかといったら、我々だって、そこにいる仲間だって、いいとは言いますよ。いいことなんです。ただ、それを確実に実施する法律にしていただきたいと私たちは願っていますので、そこのところを理解していただきたいなと思います。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 桜井参考人に確認と質問をさせていただきます。  ちょっと私、聞き間違いかもしれませんけれども、先ほど、警察、ポリスですね、警察の取調べを全面録画していれば、検察ですね、検察の方の可視化は一部でもいいかもという趣旨の御発言があったような記憶があるんですが、それが正しいかどうか。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 正しいです。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 その理由は何でございましょうか。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 冤罪は警察でまずつくられるんですね。基本的に先生方が逮捕される場合は多分特捜になると思いますので違うと思いますけど、我々は警察なんですよ。ですから、警察が可視化されていましたら、その部分を、逮捕されてからずっと録画されたら、私たちはここにいませんよね、例えば菅家さんもいないと思いますし、もう川畑さんなんかもすぐあんなふうにならないで。  ということは、私たち、本当に警察さえ全面可視化をしていただけるんだったら、多少盗聴されても仕方がないかなと許してやる気持ちになりますけど、もう本当に、警察は自分たちが、何というか、焼けているというのに何も焼けていないじゃないですかね、この可視化法案で。  だから、私たち、検察庁は余り問題にしていません。警察でうその自白をさせられて、そこで記憶したものをまた検察で調べられて、記憶したことを役者がしゃべるようにしゃべった記憶がありますので、警察さえ全面可視化にされましたなら多分冤罪は半分以下に減るだろうと確信していますので、是非是非それをお願いしたいと思っています。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 小池参考人から頂戴いたしました法と民主主義二〇一六年四月号にこういう記述がございます。  元々、取調べの録音、録画が公訴事実を直接証明するための実質証拠として採用されることには疑問があった。そのため、通常、証拠申請する自白調書の任意性立証のための証拠とされてきた。そこで任意性ありとされた供述調書が実質証拠としてその信用性が判断される建前であった。しかし、法概念上は任意性と信用性が区別されていても、実際は録画で心証を取り、供述調書の任意性だけではなく、信用性もあると判断されることになるのではないか。裁判官も裁判員も、実際問題として、任意性と信用性を区別して判断するのは事実上不可能であろうと、このようにお書きになられているんですけれども。  ここをもう少し分かりやすく、裁判員の方にもというか、今日傍聴されている方にも分かりやすく御説明をいただいた上で、大澤参考人に小池参考人の御意見に対する御所見を賜りたいと思います。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 供述調書の任意性を争うために録音、録画が重要であるということは前から言われていたことであります。それはなぜかというと、自白調書、これが本当に任意性があるかどうかで延々と法廷の中で警察官やその他の方が何十人と出たりして、任意性で、そのために時間が掛かっている、これはやめようという形で録音、録画がいいのではないかということになったわけです。  しかし、実際問題として、それが登場しますと、自白調書の任意性だけではなくて、やっぱりこの自白調書で言っていることは信用性があるなというふうに、人間ですから、そういうふうに余り区別できないだろうと思われます。そういう危険性があるわけです。ですから、従来は余り使用されてこなかったわけです。  ところが、今回、この五年、十年の取調べの可視化の運動の中で、日弁連も含めて言ってきたのは、取調べの可視化をすれば捜査側にとっても有利だよと。なぜなら、任意性立証が楽になるよということでやってきたわけです。こういう運動の中で、その運動自身を私全否定するわけではないんですけれども、一つの考え方だと思いますが、基本的にはそればっかりで運動してきたという面があったのではないか。そのために、検察側も裁判所もこの録画を証拠採用しやすくなってきている。実際、この間、この数年間の間に多分数十件、百件近くビデオ録画が証拠採用されてきているという経緯があります。中には実質証拠として出されているケースもあります。  それはそれでいいんだろうかという問題があるわけです。実際そこで心証が取られてしまう、いいとこ取りで。全過程可視化されていれば別なんです。部分録画だから私、問題にしているんです。部分録画でいいとこ取りされたところだけが証拠として出されて、そこで心証が決まるというのは大変まずいし、裁判の公判中心主義に反するのではないかと、それはむしろ控えた方がいいのではないかと。  そういうところで、最高検の先ほどの依命通知まで出されて、もっともっと実質証拠化しよう、これは任意性、信用性を更に飛び越えて自白調書、調書よりもビデオそのもので有罪か無罪か、公訴事実の有無を判断した方がいいでしょうと、これが実質証拠というわけですが、それをやりましょうというのが先ほどの最高検依命通知です。こんなことがどんどんまかり通ったら、本当に裁判の公判中心主義は形骸化してしまう。  これを今回の法案は、先ほど桜井さんも言われましたように抜け穴だらけですから、部分録画を容認している法案であるから、それを結局促進してしまうだろう、実質証拠化的な形でやってしまうだろうと、これに警告を発しているということでございます。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 確かに、お話がありましたように、録音、録画というのは、特に裁判員制度が導入をされるに際して、従前のように自白調書の任意性が争われたときに、捜査官と被告人との間でやったやらないという水掛け論になったらこれは大変なことになる、むしろ録音、録画ということを導入すべきじゃないか、そういうことが最初に裁判員制度導入の際に言われて、そして試行的にそういうことが行われるようになってきたという経緯があったかと思います。その際には、確かに、録音、録画についてはこれは任意性判断のための資料に限るのであって、実質証拠、つまりそこで述べられたとおりの事実があったという、例えば自白がされている場合にはその自白どおりの事実があったという、そういう証拠には使えないという仕切りが最初の時点ではされていました。  しかし、取調べそのものを撮っているビデオを見て、しかし、じゃ、それで任意性があると認められた場合に、調書は、これはよく御存じのとおり、一問一答式で何かがずっと書いてあるという形式のものではなくて、要約調書です。取調べの中で述べられたことを捜査官が一人称の形で要約をしたものです。その調書が調べられる。調書が調べられるのと、取調べで現に行われたことそれ自体を見て心証を形成するのと、どちらが良いのかという問題は私はあるだろうと思います。  録音、録画の場合も、これは公判廷外でなされた供述を記録したものだということであれば伝聞証拠だということになりますけれども、任意性が認められれば、録音という機械的な記録であれば、署名押印がなくてもこれは伝聞例外として採用できるということになります。そこの点では法的には実質証拠として使うこともできますし、要約されて出てくる供述調書と比べたときにどちらが良いのかという問題は私はあるだろうと思います。  ただし、取調べというのは長く延々とやっていますから、そのビデオを見て果たして分かりやすいかという問題はもう一つ残ります。膨大な時間が掛かるかもしれません。その辺りの問題というのは残っているのかと思いますが、実質証拠が私は一概に駄目だとは考えておりません。

三宅伸吾自由民主党

○三宅伸吾君 河津様、大澤様、小池様、そして桜井様、貴重な御意見ありがとうございました。  終わります。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。  今日は参考人の方々、貴重な御意見ありがとうございます。  まず、可視化のことについて専門家のお三方にお尋ねいたします。  私も、取調べの状況を録画する、そうすると、取調べの状況が明らかになるから任意性の判定に非常に寄与するということはよく分かりますが、その録画で判断する場合には、やはり録画というものが始めから終わりまで全部なければならないんじゃないかと。特にビデオという非常に見ている人に与える印象が強いような映像物ですので、都合のいいところと都合の悪いところというところが切り取られてしまってあってはいけないので、やはり最初から最後まで全て録画されているものが基本じゃないかというふうに考えております。  そうした中で、特に河津参考人、大澤参考人の中で、一定事件の取調べの全部の可視化ということはお述べいただきました。そして、例外があるということまでお話しいただいたんですが、その例外が果たして本来の正しい判断に影響を及ぼすようなことがないのか、その例外の扱いについて、例外があるということは御意見伺いましたけれども、例外についてのもう少し中身に入ったところで、例外があることがいいのか悪いのか、例外の範囲は妥当なのかどうか、そこら辺について御意見をお聞かせいただければと思いますが。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 私どもは、例外規定については、仮に設けるとしても、該当するのかどうかが明確なものに限定されるべきであると考えておりますし、そもそも録音、録画というのが取調べの適正化を確保するために行われるものであるということを考えると、取調べ官の側が例外事由に当たるかどうかを判断し、録画をしないことができるということは望ましくないと考えております。  仮に例外規定を設けるとすれば、録音、録画をすると供述をしたいのにすることができないという事情を被疑者の側が持っているときに録音、録画を止めることができるという規定を設けることには一定の理由があるのではないかと考えます。  また、今回の改正法案の中では録音と録画が一体のものとして規定をされておりますけれども、録画は望まないが録音はしてほしいということを被疑者が望む場合に、録音で記録をするべきではないかということも考えております。  したがいまして、今回の例外規定の定め方について私どもも問題意識を持っておりますが、結論としましては、今回の改正法が成立することを希望し、その上で、この例外規定の運用状況について継続的に情報収集をし、どのように運用されているのかということを調べ、次の改正につなげたいというのが私どもの基本的な立場でございます。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 例外については、特に機械の故障で撮れないなどというのは比較的明確なのかもしれませんけれども、録音、録画をしていたのでは供述ができないという類いの例外事由というのが入っていて、それは供述できないときと認めるときということになっていますから、第一次的にはその取調べをする捜査官が判断して止めるということになってくるのかと思います。  しかし、先ほど小池参考人のお話にありましたけれども、録音、録画の場合、まず取調べ室に入るところからこれは録音、録画をしているはずです。そして、取調べに入って、その中で一体その被疑者がどういう対応をするのか、どういう反応をするのか、そういう記録までは録音、録画の中に残ってきて、そして例外事由に当たるかどうかが判断されるということになります。  そして、この判断は、第一次的には捜査機関による判断ということかと思われますが、事後的にその部分の記録がないということが正当化されるかどうか、その部分での供述調書の証拠調べが請求されたような場合にその部分の録音、録画がないということが正当化されるかどうかということになれば、その例外要件に当たるかどうかは裁判所が裁判所の立場で判断するということになりますので、捜査機関としては恣意的な判断でやはり例外に当たるとは多分認めにくくて、裁判所を説得できるようにきちっとした材料を残していかないといけないということにはなるのであろうと思います。  その点で、例外事由自体が広いのかどうなのかということについてはまた御議論があるかと思われますが、捜査機関が認めるときと書かれているから恣意的な運用になると言えるかどうかということについては、私は必ずしもそうではないというふうに思っております。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 先ほど小池参考人の方から指摘されました、要するに、録音、録画が必要とされる事件じゃない事件で逮捕されているときに、いわゆる別件捜査で殺人などの必要とされる事件について実質的に取調べを行うというようなケースが、まさに今市事件がそういうことで争点になっておるようでありますけれども、小池参考人からは先ほど御意見をお伺いしました、むしろそういう別件逮捕でということが問題が指摘されたわけでございますが、この点につきましては、河津参考人、大澤参考人はいかがでございましょうか。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 私は、今回の法律案において、別件逮捕中に対象事件の取調べが行われたときは義務の対象になるという趣旨の規定であると解すべきであると考えております。この法律案では、対象事件について逮捕若しくは勾留されている被疑者を第百九十八条第一項の規定により取り調べるときというふうに要件を規定しておりまして、その逮捕又は勾留されている罪名は問わず、例えば殺人事件であれば殺人事件の取調べをする限りは録音・録画義務があると読むのが自然であろうと考えております。  四月十四日の法務委員会の速記録を拝見しまして、その中で、林局長から、被告人の取調べについては、被疑者を取り調べるときという規定になっているものですから、例外的に被告人を取り調べるときはその義務の対象にならないという趣旨の答弁がございました。これについては、確かに文言上は被疑者の取調べとなっていますから、被告人の取調べが全て録音・録画義務の対象になるということにはならないのかもしれません。ただし、今言及のございました今市事件のように、別件被告人勾留中に対象事件である殺人事件の取調べを行うときは、この条文の文言に照らすと録音・録画義務があると読むのが自然なのではないかと考えられます。  なぜならば、これはまさに対象事件である殺人事件について、別件被告人として勾留されている対象事件の被疑者として取り調べるときに当たると考えるのが通常の読み方であると思われるからです。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 今の点は、恐らく河津参考人が言われたとおりであろうかと思います。その点については、基になる答申案を議論した新時代の刑事司法制度特別部会の中でもその種の議論があり、今、河津委員がお答えになられたように、対象事件には当たっていない別件で身柄拘束中の被疑者を対象事件について取り調べる場合というのは、これは録音・録画義務が生じる場合だという整理がされていたかと思います。この点は、録音、録画の義務の範囲を明確に区切るという点からいうと、いささか際どいところもありまして、こういう定めにしたというのは、私はある種非常に画期的なことだというふうに思っております。  ですので、たまたま身柄拘束中の余罪について取り調べていたら、被疑者の方からぽろっと対象事件のことをしゃべり始めた。この場合は、その部分については致し方ないということになりますけれども、捜査官が対象事件について余罪で身柄拘束されている被疑者を取り調べる、あるいは先ほどのようにぽろっと出た場合に、もうそれを受けて更にぎちぎちと取り調べるということになれば、これは対象事件について取調べをしているということになりますから、恐らく録音・録画義務が及ぶという整理になるのだろうと思います。私は、その点はそれなりに画期的な作りになっているかなというふうに評価しているところです。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 聞いていませんけれども、いいですか。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 はい。小池参考人、どうぞ。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 今のお二人のお話についてなんですが、別件取調べ中に本件の取調べに入ったときに録音・録画義務があるという政府答弁、その解釈は私もそれでよろしいかというふうに思います。  しかし、別件の取調べ中、いつからその本件の取調べに入ったのか、それは非常に曖昧模糊とした形がありますので、桜井さんは警察を信用できないとおっしゃいましたけれども、その辺がきちんと截然と、ここから先は本件取調べにします、それで録画しますよなんという形で運用されるとはとても思えないんですね。  しかも、別件の取調べと本件の取調べ行ったり来たり、行きつ戻りつするものですから、実際の取調べはそういうものなんですから、じゃ、どこから本件の取調べとして録画義務が発生するかというのは非常に曖昧で、警察は自分に有利な方向で運用するだろうというふうに思います。  それともう一点、先ほど別件起訴後の問題で河津参考人が言われましたことについては、私は意見を異にします。林刑事局長の答弁の方が正しいだろうというふうに思います。つまり、別件逮捕から別件起訴までの間は先ほどの話でいいんですけれども、商標法違反で今市の場合には別件起訴されたその日から自白が始まったと言われているんですけれども、別件起訴後は林局長は任意取調べになるという趣旨の答弁をされました。そうだろうと思うんですね。  というのは、事件単位の原則というのは捜査過程ではもう貫徹していますから、逮捕、勾留は何の事件で逮捕、勾留されたか、別件の商標法違反で逮捕、勾留された、その事件の間に本件の取調べをするなら本件も録画義務があるわけです。ところが、別件で起訴されますと、これはまた状況が違ってきますので、起訴後の取調べになります。起訴後の取調べは一般的に任意の取調べとされていますので、起訴後の取調べについては、政府答弁にあるように録音・録画義務はないというふうに考えられます。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 今度、録音、録画、採用されて、ただ、取調べですから、取調べ室に入って取調べ室を出るまでというのが可視化の対象なんでしょうけれども、よく考えてみると、被疑者は、取調べ室だけじゃなくて、留置場にいるときも、あるいは留置場から取調べ室に連れてこられる間もこれは捜査官と接しておるわけでありますから、捜査官が、じゃ、取調べ室に入ったら録音、録画されちゃうから、その入る前にさんざんなことをやっておいて、おまえ、部屋に入ったらもう静かにしているんだぞというようなことが絶対あるとは断定しないにしても、考えれば考えられ得るわけでありまして、そういうこともあるかもしれない。ですから、可視化があっても、その部分が制度改善されても、やはりそれから漏れる部分があると思うんですね。  どうでしょう、警察の留置場にいれば常に警察官が被疑者を監視するというか、接している、押送する場面もある、まさにいろんな場面があると思うんですけれども、そこまで考えてくると、可視化も、可視化されたから全てが解明されるものではないなと、こういうふうに思うので、ある程度の一定の限界があるとは思うんですけれども、そこら辺の私の今話したところについての御感想を、またお三方、いや、桜井さんも含めて四方から意見をいただければと思いますが。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 私の場合は、もう五十年前の話ですので今とは比較にならないかもしれませんけど、取調べ室で調べたわけじゃありませんでした。留置場の看守の寝る部屋に捜査官二人が来まして、おまえがいる間は取手警察署に誰も入れないから安心してゆっくり泊まっていけなんて言われまして、それでもうマンツーマンでやられましたですね。  ですから、小川先生がおっしゃったように、どこまでやったら、あるいは河津先生、大澤先生がおっしゃるように、どこまでやったから全てということはないと思うんですね、それは。ただ、最低限、取調べ室に入って、そこから全てが録音されるとなった場合、それが現実となった場合、本当にこの制度というのは大幅に変わると思うんですね、私たちも安心できますし。  ただ、あくまでも、何というんですかね、先ほど大澤先生もおっしゃったように、被疑者が拒否するという理由が分からないんですよ。可視化があると自白しなくなるなんという例、どこにあるんでしょうか。これ、不思議でしようがないんですよ。よく警察の方や検察の方は、可視化すると何か自白しなくなると、これ、どこかにあるんですか、データが。何もないはずですよね。今や台湾、韓国でも可視化されているじゃないですか。あの国だって可視化されているのに、なぜ日本だけできないんでしょうか。それが私、理解できないんですよ。  今や町の中歩けば、我々全部監視カメラでやられている。あるいは、よく食いに行くんです、くら寿司なんて行ったら、くら寿司にありますよね。これ、気にならないって聞いてみたんです。そうしたら、最初は気になったけど慣れましたとおっしゃっていましたね。ですから、取調べ室には映像があるのが当たり前だとなればいいんですよ、それだけで。始める前にああだこうだ心配してもしようがないじゃないですか。  そして、何というんですかね、私は法律なんか全然知らない、田舎の刑務所に三十年いた人間ですからよく分からないんですけど、こう読めます、ああ読めますなんという法律は私たちには理解できません。こうしなさい、ああしなさいという法律にしない限り、こう読めます、ああ読めますの隙間を縫うのが警察なんですよ。ですから、法律を作っていただく場合は、大澤先生なんかも学者なんですから、我々国民に分かる、そして警察にもちゃんと納得させる、こうしなさい、ああしなさいという法律にしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 私も、可視化が全てだというふうには思わないんですね。もちろん、可視化する以上は、部分録画じゃいいとこ取りになってむしろマイナスになると、可視化する以上は全面可視化で例外のない可視化にすべきだというふうに思いますが、それじゃ全て解決されるかと、そういう問題ではないと思います。  そもそも、この法案は、取調べに依存し過ぎている、供述調書に依存し過ぎている、これはもう前近代だ、近代的な刑事司法にしようじゃないかということで始まったわけですが、そうである以上は、取調べの可視化と弁護人の立会い、取調べ時間の規制、この三点がセットで実現されるべきだというふうに思います。  韓国でも弁護人の立会いと取調べの可視化はセットになっているんですね。そして、実際の取調べ時間も、諸外国ではもうほとんど数時間とか数回なんです。  どこまでがいいかという問題は慎重に議論した方がいいと思いますけれども、日本と外国とはレベルが全然違う。そういう中で取調べの可視化の問題があるのであって、やはり取調べに弁護人が立会いすべきだと、それから取調べの時間もきちんと例外の抜け道のないように法律で規制すべきだと、これがセットで実現すべきだというふうに思っています。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) おっしゃられましたことは私も先ほど申し上げたことと共通するかと思いますけれども、取調べを仮に全部可視化したとしても、やっぱりそれじゃ、身柄拘束されている場合の生活部分というのもあるわけですから、そこで何かされたらどうなるんだという、常にどこかカバーされていない部分というのは出てきてしまう。  ですから、録音、録画をどの範囲でするのかというのはそれなりに、取調べなら取調べという一つの仕切りの中できちっと仕切った上で、しかしそうでない部分についても、これは弁護人がきちっと接見をしていろいろ話を聞いていけば、例えばこんなことされましたというような話は出てくるかもしれませんし、あるいは直後の取調べの中に何か痕跡が残るかもしれない。あるいは、警察での取調べでは何も言えなかったけれども、検察庁の取調べに行って、警察の取調べどうだと聞かれたときにぽろっと何か言うというようなことがあるかもしれない。そういう形で、そういうものが何らか記録に残っていくということが、後からそういうものを埋もれさせないためには重要なことだろうというふうに思っています。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 小川議員御指摘のとおり、どのような制度をつくったとしても、限界や隙間というのは生じてしまうのかもしれません。であるからこそ、冤罪を防止するためには、最後に、公判において供述証拠の危うさというものを認識して、供述に基づいて犯罪事実を認定するには相当慎重であることが求められると考えます。

小川敏夫民進党・新緑風会

○小川敏夫君 ありがとうございました。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。  四人の参考人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございました。  主に可視化についてお伺いをしたいと思うんですが、私のこの問題に対しての基本認識をちょっと一言申し上げると、可視化は、その趣旨は、まずはやはり捜査の適正化だと思います。可視化をすることで捜査機関に心理的ないろんな要素等も与えて、やはり適正な捜査手続というものをしていくと。もう一方で、可視化した証拠、可視化することで供述証拠の任意性の立証が資すると。この二点があるんですけど、私の感覚としてもやはり前者の方を基調にしなければいけないと。供述調書の任意性立証のための可視化という位置付けはやはり良くないし、小池先生がおっしゃったとおりの、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思います。  その上で、この法案自体は、河津参考人がおっしゃったとおり、まさに第一歩として、今申し上げた捜査の適正化に資するための第一歩として非常に評価をするところであるし、他方で、今後、運用で捜査の適正化に資する形でしっかりと全面可視化ということをやっていかなければいけない、そのセットをもってやらなければいけないという理解であります。  その上で、ちょっとお伺いしたいのは、大澤参考人に三点ほどお伺いしたいんですが、先ほど小池参考人がおっしゃっていたところ、部分可視化というものの弊害というところは非常に重要なポイントでもあるかと思います。これを、どのようにこの弊害をなくしていくのかという部分の理解がやはり必要かなと思っておりまして、まず一点目ですけれども、先ほど小池参考人が弊害となる法律上の今回の改正法の根拠として、やはり例外事由のところであるというふうに挙げられていたと思います。具体的には、私の理解では被疑者の拒否の条項ですよね。拒否という明文のみならず、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという文言があった。  先ほど、大澤参考人のお話だと、これは後に捜査機関の方でこの部分を立証するという、その立証の部分で担保できるからというお話だったんですが、この条文の解釈そのものもやはり拒否というものに準ずるようなものでなければいけないという解釈がやはりあるべきであると。明示に拒否したわけではなくて、録画はしてはいいけど、その代わり録画したら私はしゃべらないよとか、そういうようなことを言う被疑者の方もいたりとかする。  そういった録画によって結局捜査が進展しないというようなこともある場合に、どういうようなことなのかというような事情もやはりあると思うんですけど、まずお聞きしたいのが、その他の被疑者の言動により云々、これが裁量の余地がないようにやはり拒否というものと準ずるぐらいの厳格な定義であらなければならないというような解釈はあるべきだと思うんですけど、その辺り、どのようにお考えでしょうか。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 拒否を受けて、その他被疑者の言動とされているわけですから、それはやはり拒否に相当するようなということかと思います。  ただ、供述できないというのが、大事なことは、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だ、もう一つ、後ろの方からの掛かってくる部分もあるのかなというふうに思っております。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  じゃ、二点目、また済みません、大澤参考人に引き続きなんですが。  先ほどの小池参考人の御意見の中ですと、全面可視化というところでありますけど、結局、録画請求の場面では、やはり自白調書が作成されたとき、そこに関係するところだけ録画請求というような、要は裁量で一部分だけを表に出してきてというようなことがあるんじゃないかというようなお話もあったところであります。これについては改正法の中でどのように担保をされているか、その濫用のおそれをなくす担保をされているのか、あと運用上どういう工夫が考えられるのかという点について御意見賜れればと思います。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 自白の取調べが請求された場合に任意性が争われたというときには、その自白が獲得された取調べについて録音、録画の取調べ請求をせよということになっていますが、もちろん、任意性を疑う事由というのがその当該取調べよりも例えば前の取調べの中にある、そのように被疑者、被告人の側から主張をしていく、そういう場合というのは当然あるんだろうと思います。  その場合については当然そこが争点ということになってきますから、その点をきちっともし言っていって公判前整理手続ということになっていけば、恐らく争点関連証拠としてそこの部分の録音、録画というのが弁護人側に開示されるということにもなってくるでしょうし、また、それが弁護人の側で検討をして任意性を争う証拠として使えるということになれば、弁護人の側からそれを請求していくということもあり得るのかもしれません。  あるいは、ここの部分でこういう任意性を疑わせる事情がありましたと、当該取調べよりも前の部分にあって、それがずっと影響してきているんですということになれば、検察が、訴追側としては、そこにそういう本当に何か問題のある取調べがあったのかどうか、なかったのか、その点を立証する、あるいは、仮にあったとしても、それは当該取調べにはもはや影響していないんだということを立証するのか。それを立証していかなければいけないということになると思いますが、その際には、やはりその間の取調べの録音、録画というのは非常に有力な資料になるだろうと思います。  ですから、必要があれば検察側から取調べ請求をするということもあるでしょうし、先ほど申し上げましたように、はっきりと被告人側からその点に争いがあるんだということで公判前整理に持っていけば、それは証拠開示の対象にもなっていくんではないかというふうに認識しております。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 今、弁護人の動きというものもお話あった。後ほど河津参考人にも、弁護人としてどのようにこの辺り実効性を確保していくのかということはちょっとお伺いしたいと思うんですが、ちょっともう一つ、大澤参考人に、済みません。  先ほど小池参考人がおっしゃっていた別件逮捕、これは対象事件じゃない、別件としては対象事件じゃないわけですけど、その別件の取調べのさなかに対象事件である余罪の取調べが開始をされる、このような事案があったわけですけど、今政府の答弁などでも、そのような別件逮捕中に余罪が、対象事件が取り調べられたときにもこれは録音、録画の対象になるというようなことはあったわけであります。ただ、どこからどこまでが切り分けが難しいかというようなお話があったというふうに理解しています。  先ほど大澤参考人、供述の中で録音・録画義務がない場合も任意性を立証させるためには録音、録画しないといけないという方針をお話をされていたんですけど、例えば今のような場合を想定すると、何といいましょうか、別件で取り調べている最中に対象事件の余罪が取り調べられるようになったというようなときに、そこから余罪を切り分けというのが難しければ、最初からそういうのを想定してできる限り幅広く録音、録画をしておくというような運用をすべきだというような意見もあると思うんですが、その辺りについてはどのようにお考えでありますでしょうか。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) もし捜査機関の側が初めから余罪を取り調べるつもりであったのだとすれば、それはやはり撮っておかなければいけないという方向になるんだろうと思います。  ただ、いきなりぽろっと出てきたとかいう場合については、ぽろっと出たものについて撮っておけというのはこれはなかなか難しいわけで、しかし、ぽろっと出たことについて更に今度はそこについて聞いていくということになれば、これは対象事件についての取調べだというふうに仕切っていかざるを得ないということでしょうから、一旦そこで止めて、もしそれについて更に聞くということならば録音、録画をしていくということになるんだろうと思います。  小池参考人が恐らく言われたようなケースというのは、余罪とそれから対象事件とがかなり密接に関連していて、実は余罪について質問していることが対象事件にも関わりを持ってくるような場合ということなのかもしれません。ここの部分はなかなか切り分けが確かに難しいということになりますけれども、結局どっちについて聞いているのかということで考えていくしかないということではないかと思います。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  では、河津参考人に、やはり法曹三者の中でどういうふうにこの適正化のための運用をしていくのかというところが大事だと思うんですが、とりわけ今の、先ほど小池参考人や桜井参考人の方からも部分可視化の危険というようなお話もあった。それは弁護人の立場から、どのようにそういうのがなくなるように実務を行っていくべきとお考えか、ちょっと御意見をいただければと思っております。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) まず、やはり部分可視化が危険であり全面的な可視化がされるべきであるという点について、私もお二人と意見を同じくしております。  ただ、全面的な可視化がなされない、あるいは例外規定に当たるなどの理由で可視化されていない部分があるときにどのような弁護活動を行うのかということについて、私どもは専門家集団として検討しなければなりません。  具体的には、録音、録画された取調べの中に任意性を疑わせるような何か事情が記録されている場合には、私どもは当然、記録媒体について証拠開示請求をして開示を受け、その部分の証拠調べ請求をすることになるだろうと思います。  逆に、録音、録画されていない取調べにおいて任意性に疑問を生じさせるような言動等があった場合、例えば私どもは弁護人の接見記録であるとか、被疑者から受け取った手紙であるとか、あるいは被疑者ノートなどを活用して、そこで問題のある取調べがあったということを公判で立証していくことになるだろうと思います。  先ほど村木厚子さんの事件を御紹介しましたが、その事件の中では被疑者ノートというのが証人の供述の任意性、あるいは信用性の証拠として重要な役割を果たしました。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございます。  桜井参考人にお伺いをしたいと思います。  先ほどのお話、やはり警察というものの潜在的な考えなければいけない点というのは、本当に胸に迫るようなところもあったと思います。これについて、職務として警察もやっている、ただ、それがなぜそういうような形になってしまうと思われるのか、率直に御意見がありましたら。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 警察の側に立ってみますと、犯罪者ってうそつきなんですよね。私もちょっと昔悪いことをしたのでよく分かるんですけどね。そういう人を日常的に相手にしていると、多分真実を言う人の真実を見抜けなくなってしまうんじゃないかと思います。  警察官って人を信じませんよね。多分ここの表に立っている人も、誰か悪いことするやついないかって立っていますよね、あの連中は。いつもいつも人を疑う人格というのは、残念ながら、正義の思いを持って警察官になってもゆがんでしまうと、私これ確信を持っていますね。ですから、一人の警察官の正義感とか警察官の善意というのを疑うわけじゃないんです。あの方たちが組織に入ってしまったら、その組織に、論理にはまらなくちゃ生きていけないんですよ。  そして、多分、私これが一番大きな原因だと思うんですけど、あの方たちは逮捕したことをもって一〇〇%犯人と確信します、愛媛県警から流出したあの捜査規範でもお分かりになると思うんですけれども。その一〇〇%目の前の人間を犯人と思った場合が、この人を犯人にするのが社会正義、我々は正義を守る、だから多少の悪いことはしてもいい。社会の人も思いますよね、どうせ逮捕されたような人は何か悪いことをしているんだもん、少し厳しくしてもしようがないよと。私自身も実は逮捕されるまでそう思っていました。  ですから、警察という組織というのは残念ながらこういう違法行為を行ってしまう組織なんだと思うんですね、日常的な思いで。ですから、その部分に法律的なちゃんとした歯止めがない限り、こう解釈できる、ああ解釈できるというような法律では、多分この全面可視化とかいろんな部分で冤罪が防がれるような法律にはならないだろうなと思います。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 濫用のおそれというのがないように運用していくというところがやはり非常に大事であるなというふうに改めて感じたわけですけど、最後、小池参考人と大澤参考人と河津参考人に、改めてこの可視化の部分について、それぞれのお立場はあると思うんですが、このような形でまずは一歩として法定義務化をしたということについての評価を一言ずついただければと思います。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 先ほど大澤参考人が言われたことについてちょっと触れさせていただきたいと思うんですが、任意性立証のためにということで、録画されたよりもその前の録画を出すということでいいではないかという趣旨の御発言がありました。その前の録画を出すことによって、公判前整理手続の中で要求して、それを弁護側が出せばいいんだというお話がありました。もちろん、それはそうしなければならないと思うんですが、実は、しかしそれは録画があるという前提での話であって、録画がない場合はどうするんでしょうか。  先ほど愛媛県警の捜査マニュアルの話が出ましたけれども、この人が真犯人だと思えば、もう徹底的に気迫を持ってやれと、被疑者を弱らせるまでやれというのがその捜査マニュアルなんです。そういう場面、録画しませんよ。そういうときにどうするんですか。こんなのは公判前整理手続で録画出せと言ったって、ないものは出せませんよね。そういうときの対応ができなくなるというふうに思われます。  ということで、今回の法案はいろいろな抜け道、そういう場合にペナルティーがないわけですね、今のような場合に。全過程可視化していないから一つでも供述調書を出しちゃ駄目というのなら分かるんですが、そうでない限りは、この法案では欠陥があると言わざるを得ないと思います。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 今の点について一言だけ私も申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。  仮に、そこの部分についてなかった、しかし被告人側からそこの部分にこういう問題があったというふうに言われたときに、そこが任意性立証の一つの争点となったとしますと、そこに正当な理由がないにもかかわらず録音、録画がないということは、これは多分訴追側にとってはかなり立証上大きなダメージになることではないかというふうに考えています。  その上で、今回の録音・録画制度ですけれども、先ほど来、特に警察の取調べが問題なんだということが御指摘がございました。  現在、運用あるいは試行という形で検察ではかなりの程度に録音、録画が行われつつあります。それに対して、警察の方はなかなかそこまで付いていっていないという状況です。そういう状況の中で、一定の限定された事件についてではありますけれども、原則全面的に録音、録画をする。そこにも、しかし、取調べが重要な証拠収集手段だからその機能を損ないたくないということで一定の例外がありますけれども、しかし、例外を残しつつも、一応原則としては全過程の録音、録画だ、それを警察についても導入することになっている、そこが一つこの法案の非常に重要な点であろうかと思います。私は、そういう点で一歩前進であろうというふうに思っているところです。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 現在、六法を開いて刑事訴訟法の全ての条文を見ても、取調べの録音・録画義務というのはどこにも規定されていません。したがって、捜査機関が幾ら運用で録音、録画をしているといっても、彼らがある事件でしなくても、それは直ちに違法の評価を全く受けないということになります。しかしながら、今回の法律案が成立し、一定の限られた事件とはいえ録音・録画義務が刑事訴訟法の中に書き込まれれば、録音、録画をしないことは違法の評価を受けることになります。  しかも、今回の法律案では、対象事件については身柄事件に限定されていますけれども、全過程が原則という形で規定することになっています。これは恐らくほとんどの事件で多くの取調べが録音、録画の対象になるはずです。そうであるとすれば、それらの録音、録画されている取調べの中で不適正な行為が行われることは相当抑止できるはずです。そうであるとするならば、第一歩としてこの法律案を成立させることが重要であると私は考えております。

矢倉克夫公明党

○矢倉克夫君 ありがとうございました。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  四人の皆さん、本当に今日はありがとうございます。  前回の対政府質疑のときに、私、今日お招きをした桜井参考人の実際の姿を見ていただければ、なぜこの人がうその自白をしたのか、これほど気の強い人がと皆さん思われるに違いないと申し上げたんですが、どのようにお感じでしょうか。  その桜井参考人にできるだけ端的に伺いたいんですけれども、つまり、人はなぜうその自白をするのか、させられてしまうのかということなんです。先ほど御自身のお話の中で、心を折られてしまったという、つまり、小池参考人の言葉でいう屈服させられる、精神的に支配される、そうした言葉を使われたわけですけれども、よほどのことがない限り人間はそのような状況には陥らないんですね。まして、やってもいないことを詳細に迫真的に語るなんというようなことはできません。ところが、数々の冤罪事件でそうしたうその自白がさもあったかのように行われているわけですね。  そこで、今日おいでいただいている、傍聴席におられますが、あの志布志事件の冤罪被害者の皆さんなどは、任意同行という形で多数の方々が警察の取調べ室に呼ばれて、元々完全に食い違っている供述、これが完全に一致させられていくという、警察の筋書に沿ったたたき割りという取調べが行われました。ところが、前回の対政府質疑で林刑事局長は、この任意同行中の取調べというのは、身柄拘束をされていないから、だからこの取調べの録音、録画の対象にはなりませんとはっきりさせて、何しろ任意なんですから、いつでもお帰りいただけるとおっしゃったんですね。この任意同行という実態はどういうものなのかということが一つ。  ここに併せて、代用監獄というのがあります。代用監獄で警察の留置の下に置かれたときに、例えば北九州の引野口事件という冤罪事件がありますが、留置場の中で密告者となった同房者からも働きかけられる、その同房者を警察が取調べをして供述調書を作っていくというみたいな汚いことも行われる。そんなことも含めて身柄がずっと拘束され続けるわけですね、支配され続ける、二十四時間丸ごと、それがいつまで続くか分からないと。  もう一つの要素として、桜井さんのお話にもありましたが、客観的証拠の捏造という問題があります。例えば志布志事件でも、お話の中に触れられた氷見事件でも、客観的に存在するアリバイが否定をされたり、あるいはアリバイ証拠を警察はつかんでいたにもかかわらず、それをなかったことにして自白を迫る、そうしたことを行ってきましたし、足利事件、菅家さんの事件では、DNA鑑定が完全に誤っている、その鑑定が示されたことが自白のきっかけになったというふうにも言われているわけですね。  こうした、なぜ人は自白させられてしまうのかということについて、桜井さんがこれまでの取組の中でお感じになっていることがあればお聞かせください。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 私自身もこういう立場になるまでは、うその自白があるとは思わなかったんですね。でも、実際に警察の留置場に入ってみますと、全ての時間は管理されます。当時はトイレも中にありませんでしたので、一々お願いして表へ出ていくとか、もちろん御飯、食べ物も、留置場の弁当ってほんの少ししかなくて、何か買ってほしいと言っても、それはおまえ、魚心あれば水心だと言って買ってくれませんよね。  まず、逮捕されて全裸にされます。その全裸にする立場とされる立場の圧倒的な違いの中で、おまえが殺人犯だ、人を殺したと言われることがつらいんですよ。よく皆さんに話すんですけれども、夫婦げんかしたり何かとけんかしたら逃げる場所があるじゃないですか。狭い部屋で、おまえだ、違うというこの精神的な争いをすること自体がもう人間は疲れるんですよ。  私、今市事件で思ったんですけれども、あの人の一日の取調べを映像でないものだろうかと。一日、朝の八時頃から夜中の十二時頃まで、おまえだ、おまえだ、おまえだと言われる苦しさ、想像できないんでしょうかね。そのときに私はうそ発見器に掛けられて、おまえと出てしまった、逃れられないよと言われた瞬間にぼきっと折れちゃったんですね。これはしようがない、死刑にされたら困るというような気持ちになってしまった。あれは、本当にあの中で、時間も全て管理されているあの中で、時間を失う中で責められる痛みというのを分からない限り、一生理解してもらえない部分はあるんですかね、やっぱり。  私はいろんな冤罪事件を知っていますけれども、やっぱりそれぞれ、菅家さんは殴られたと言っていますよね。東住吉事件は、やっぱり夫とされた人の娘さんに対する暴行事件があって、それで何というかな、がっかりしてしまったとかありますよね、いろいろ聞いて。  ですから、それぞれの事件いろいろあるんですけれども、やっぱり警察の朝から晩まで続く肉体的、精神的痛みというのは経験しなくちゃ分からないといいますかね。私自身、今警察官になったら、きっと先生方、一週間あれば自白させてみせるかもしれませんね。谷先生と丸山先生はちょっと柔道が強いらしいので無理かもしれませんけれども。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 ありがとうございます。  人がなぜ自白をさせられてしまうのかというここの心理というのは、私たちの委員会でもよく検討する必要がある、徹底して審議する必要があると思うんですね。  その上で、小池参考人にちょっと改めて確認なんですけれども、今回の法案が対象事件については全過程の録音、録画が義務付けられていると、政府はそう説明しますし、今日、大澤参考人、河津参考人も基本的にそういう御説明をされていると思うんですけれども、本当にそうかと。私は、対象事件が絞られているだけではなくて、その対象事件の捜査、起訴、そして裁判に至るプロセスで全ての取調べは録音、録画されないではないか、つまり、小池参考人のおっしゃる意味での部分録音、録画ではないかということを前回の対政府質疑で明らかにしたつもりなんですけれども。任意同行それから別件逮捕、別件起訴ですね、この起訴後勾留を利用しての取調べというのは取調べの録音、録画の義務化をされるのか、その上で録音、録画が必ずされるのか、それともされないものがあるのか、そこについての小池参考人なりの整理をお聞かせいただきたいと思うんです。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 私は、先ほどからずっと言っていますけれども、この法案が成立しても全過程が可視化されることはないだろうというふうに思います。もちろん、全ての事件でそうだと言っているわけじゃないんです。自白して問題のないケースの方が圧倒的に多いんですよ。そういうのは、取調べってそんなに多くもないし、どうってことないんです。  問題は、今市のような事件、厳しい事件について、もう世間が注目して警察に対する圧力が物すごく掛かるときにどうするかということなんです。そのときに、全過程本当に録画して自白を徹底的に迫るということが、警察やるだろうか。やらないと思います。録画のないところで自白を強要するだろうというふうに思います。  先ほど大澤参考人が、そういう場合には、全過程可視化が原則なんだから、そこの録画がないということになれば、もうそこで任意性の問題で弁護側が結構有利になるじゃないかというお話がありました。しかし、取調べの記録によって、このとき取調べしたけれども録画がないという場合には何でないんだという話になるんですけれども、実際には、取調べのそういうしたという記録もしないで、全く別枠で、録画なしで脅迫したり利益誘導したりするということは十分考えられるだろうというふうに思います。その立証って物すごく難しいです。幾ら被疑者、被告人がそのときやられたと言っても、水掛け論になるだろうと思います。  もう一つ、仮にそういう記録があって、このとき取り調べたはずなのに録画がないでないかというふうに言われたとき、じゃ、どうしようもないかというと、いや、まさに例外規定があって、そのときは録画すれば自白しそうにない、こういう例外規定に当たるから取り調べなかったんだというふうに言えばまた免れると。幾らでも抜け道をつくっているのがこの法案であって、そういう法案であれば、あるよりもない方がいい。その法案があることによって、どんどん録画が法廷に出されることによって実質証拠的に使われて、公判中心主義が形骸化してしまうというふうに思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 私も、前回明らかにしたとおり、全ての取調べは対象にはならないと思うんですね。  ちょっと先に、弁護士同士で河津参考人にお尋ねしたいと思うんですが、冒頭の意見陳述で初期供述の危険性と重要性、その事後検証としての客観的記録の重要性ということを出発点としてお語りになったんですね。今市事件や今回の法案は、つまりその初期供述の録音、録画はやらないということを可能にするものではないのかということを私、提起しているんです。  その下で、先ほど来、小池参考人が紹介をされている二〇一五年の二月十二日付けの最高検の依命通知、これはつまり、取調べの録音、録画を行った場合の供述証拠による立証の在り方についてとした通知なんですが、恐らくお読みになったことあるんだと思うんです。ここで何と言っているかというと、被告人の捜査段階における供述による立証が必要となった場合には、事案によっては、より効果的な立証という観点から、被疑者供述を録音、録画した記録媒体を実質証拠として請求することを検討する、事案の内容、証拠関係、被疑者供述の内容等によっては、当初から記録媒体を同項に基づいて実質証拠として請求することを目的として録音、録画を行っても差し支えないと述べているわけですね。  つまり、この供述を、この取調べを先々、有罪立証の証拠として使うために録音、録画をするということを方針にしているわけですが、そうした方針の下で部分録画が行われるとなれば、これは捜査側の恣意的な濫用のおそれというのは強いんじゃありませんか。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 仮に実質証拠、有罪立証にするためだけに録音、録画を行い、ほかの部分で録音、録画をせずにその証拠で人を有罪にするということについては、御指摘のとおり大きな危険があると思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 この法案でそうならないという保証がありますか。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) この法律案は、少なくとも対象事件の身柄事件については全過程を録音、録画することを原則として定めているということは、通常の法文の読み方をすれば明らかであると私は理解をしております。したがいまして、御指摘は必ずしも当たらないと私は考えております。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 先ほど来、河津参考人やそれから大澤参考人から、この法案はこれこれと読むべきである、あるいはこのように運用されるべきである、あるいは捜査側がこのように運用するであろうと、そうした御発言があって、その一つ一つはそれぞれ御見識に基づくものだと私も受け止めるんです。  ですが、この法案を、まず立法者意思を持ち、明らかにし、まず運用するのは捜査機関なんですね。その捜査機関が、例えば先ほどのお話であれば、起訴後勾留は任意である、だから取調べの可視化の対象にはならないと明言しているにもかかわらず、それと違う法解釈を前提にこの法案の是非を議論することは私にとってはできない、国会議員にはできないことなんですよね。  その関わりで、法制審の特別部会の委員であられた後藤昭教授が法律時報の一月号でこういうくだりを述べておられるんですが、河津参考人、大澤参考人の御意見を伺いたいんですが、警察捜査を規制するための立法が警察組織の反対を乗り越えてはできない、その現実の下では、限定的であり、かつ新たな危険を伴う立法であっても法改正を実現することに重要な意味があると私は考えると後藤教授は述べているんです。これ、私はこの立場には立てないんですね。  つまり、新たな危険はないというんだったらばいいです。ですが、新たな危険があるのにそこに踏み出すということは、これは憲法三十一条と刑事訴訟法の在り方として間違っている、私はそう思いますが、お二人はどうですか。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 新たな危険ということの中身は当然問われるべきだと思います。しかしながら、これが全体として刑事司法をより良いものにするのか、それとも悪い方向に働くのかということについて、私どもは専門家集団として会内でも当然厳しい議論をいたしました。  しかしながら、全体としては、取調べ録音・録画義務を刑事訴訟法の中に明記するということの意義を含めて、これは踏み出すべき第一歩であるというのが私どもの立場でございます。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 後藤先生がその論文の中で弊害、危険ということとして何を言われていたのか、私、今記憶が定かでございませんけれども、しかし、恐らく後藤先生の意図としては、そのような危険を踏まえてもなお、警察に一定の事件について原則全面化して録音、録画、それを制度化するということ、警察を含めて制度化するということがやはり得難い重要性を持っているからこの法律案を通すべきだと、多分後藤先生はそういう御趣旨で言われているということなのではないかと思います。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 時間がなくなってきましたので、最後に大澤参考人と河津参考人に一問ずつお尋ねしたいんですが、趣旨は同じ趣旨です。  一つは、例外規定、取調べの録音、録画の例外規定の立証に関わってなんですが、例外に当たるという立証を結局どのような証拠に基づいて行うということが考えられておられるのか、そのことを大澤参考人にお尋ねしたい。  河津参考人には、それを刑事弁護人はどう争えるのか、その争うことによって適正な取調べの実現を可能だというふうに確信をしておられるのかということ。  河津参考人にはもう一点。刑事弁護の立場として、司法取引に関わって、制度化された要件を満たさなければ違法であることになるはずだというお話がありましたが、そうした方向で、濫用を防ぐ弁護が、立会いもない、可視化もされていない司法取引においても行えるということかと思うんですが、どのように弁護をするのか。この二点を聞きたいと思います。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 先ほども少し申し上げましたけれども、身柄拘束されている被疑者については原則全過程を録音、録画するということですから、ある回の取調べの開始時点、取調べ室に入ってくる時点というのは、これは録音、録画が撮られているはずです。そして、その具体的な取調べの状況において、例えば拒否なり、あるいは被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないというふうに認めるような事情があるのかどうか。それは録音、録画がされている下で判断をされて、そして、その時点で録音、録画を止めるなら止めるということになっていくということかと思います。そうすると、その最初の部分で撮られている録音、録画というのは非常に有力な資料になるだろうというふうに思います。  それ以外には、捜査報告書の形で記録を残す等いろんなことが考えられるのかと思いますが、初めから録音、録画が撮られている部分というのが非常に私は大きいだろうと思います。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 二点目の御質問、申し訳ございませんが、可視化がない、立会いがないということと合意制度の濫用を防げるかということの関係のちょっと御質問の趣旨が理解できませんでしたので、一番目の御質問についてお答えさせていただきます。  この例外事由に該当するか否かということについて、我々弁護人がどのような弁護活動をするべきかということですけれども、例えば被疑者が供述を拒んだこと、その他の被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときと、この例外を使って可視化をしていない、録音、録画を止めているというふうに判断されるときには、被疑者にはそのような事情がないのだと、被疑者は録音、録画を求めているのだということを内容証明郵便で捜査機関に送付するなり、あるいはそれを記録を残して確定日付を取るなりして、この要件に該当しないということを公判で立証していくことになるのだろうと思います。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。

仁比聡平日本共産党

○仁比聡平君 時間が来ていますから、終わりますが。  結局、今の取調べ室、これは司法取引の場合も同じだと思いますが、つまり取調べ官のイニシアチブなんですよね。事後にそれ分かって内容証明を送っても、実際に取調べは終わっている。そのことによる、例えばうその自白をさせられたという影響は、その後続自白にずっと残り続けるということになるんだと思うんですよ。そうした危険というのはこの法案ではなくならないということを私は改めて感じました。  終わります。

谷亮子生活の党と山本太郎となかまたち

○谷亮子君 谷亮子です。よろしくお願いいたします。  本日は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、特に取調べの録音・録画制度及び証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設に関する参考人の先生皆様に対する質疑ということでございまして、大変貴重な御意見を拝聴させていただきました。引き続き私も伺ってまいりたいと思います。  本委員会では、四月十二日に通信事業者及び警視庁原宿警察署を訪問いたしまして、取調べの録音、録画に関する現状等について視察を行い、さらに十四日には本改正案に対する対政府質疑を行わせていただいたところであります。  そこで、初めに、河津参考人、桜井参考人に伺いたいと思います。  取調べの録音、録画の試行により、捜査機関が自白を強要できなくなったことで、これは報道ベースの情報になりますけれども、黙秘がしやすくなったという指摘があります。取調べの録音、録画の義務化により黙秘が増加するおそれがあるということであれば、捜査機関としては、自白頼りの捜査手法から脱却し、物証などの客観的な証拠に基づいて捜査をすることが求められるのではないかと思います。  そこで、今回の改正案により導入される取調べの録音・録画制度によって取調べに与える影響と、そして今後懸念される事項について、二人の参考人の方にそれぞれお聞かせいただきたいと思います。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 取調べの録音、録画がなされるようになれば、黙秘権を行使することができる場面というのは確かに増えるだろうと思います。と申しますのが、これまで被疑者が黙秘権を行使した場合に、それに対して脅迫的な言動が行われたり弁護人に対する非難が行われたりするということがあったのが現実だからです。録音、録画された取調べの下ではそういった不適正な行為というのは相当程度減るのではないかと思います。そして、黙秘権の行使が増えて供述証拠によって有罪を立証することが困難になっていった場合、捜査機関としては、御指摘のとおり、当然より客観証拠を重視する方向に今後移行するのではないかと考えております。  懸念するべき点といたしましては、この取調べの録音、録画や、あるいは弁護活動の充実化によって自白を獲得することが困難になった、その代わりとして関係者、共犯者の供述によって人を処罰するという傾向が強まるのではないかということは懸念をしております。そういった関係者が、もちろん対象事件の身柄拘束された被疑者であればそれも録音、録画をされるということによって不適正な取調べは一定程度抑止することができると思われますけれども、これが在宅被疑者であって録音、録画の義務化の対象でないという下においては、そういった取調べによる冤罪の危険というのは残るのではないかと考えております。  そういった意味でも、在宅被疑者を含めた取調べの可視化の徹底が行われるべきであると私は考えております。

桜井昌司布川事件冤罪被害者

○参考人(桜井昌司君) 確かに、可視化されれば黙秘しやすくなるといいますか、すると思うんですけど、私、そもそもこの考えが逆転していると思うんですよね。なぜ犯罪捜査を自白によって解明しようとするんだろうかと、それがもう昔から不思議で、江戸時代と変わらないじゃないですか。捕まえて、殴って蹴って、やったと言わせて、はい、それで一件落着、それで有罪だというのなら裁判所なんか要らないじゃないですか。そもそも、警察が逮捕した時点で持っている証拠で犯人と断定できないようだったら逮捕しちゃそもそも駄目じゃないですか。  ですから、その懸念といいますか、私はもう警察を信じたいんですけど信じられない立場にありますので、彼らに抜け道を与えるような法律である限りは、どんどんどんどん抜け道で同じような冤罪つくられるだろうなという感じなんです。要するに、自白、はい、映像していますといったら、映像しないような理由をつくって、陰で、おまえ頼むよ、言ってくれよなんてやった後にやるんじゃないかとありますので、もうとにかく中途半端な可視化というのは、どちらも含めて我々にとっては賛成できないものだなと思っております。

谷亮子生活の党と山本太郎となかまたち

○谷亮子君 ありがとうございました。  懸念する点については私も同感なところもありますので、今後の審議に反映させていただきたいというふうに思っております。  続きまして、大澤参考人、小池参考人にお伺いさせていただきます。今回の法案の可視化の例外規定について伺いたいと思います。  今回の法案のこの可視化の例外規定については、例外として、十分な供述が得られそうにないと取調べ官が判断したときは録音、録画をしなくてもよいとされておりまして、取調べ官の裁量に任されているというところがございます。この点で、取調べ官はどのような役割を果たすとお考えでいらっしゃいますでしょうか、お伺いさせていただきます。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 例外の中の、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき、これは認めるときかどうかというのは、もちろんその取調べをしている段階ではその取調べをしている取調べ官だということになろうかと思いますけれども、それじゃ全くそれは自由な判断なのかといえば、これは義務を免れるための理由であり、後に争いが生じた場合には、この例外事由に当たったということは、これは今度は裁判所の目で判断をされますから、先ほども申し上げたように、この例外事由に当たるということが、単に主観的に捜査官の判断としてそうできるということではなくて、きちっと客観的な裏付けを持ったものとして、後に争いになればそれをきちっと裁判所に対して立証できるようなものとして行っていくということが求められることになるはずです。その意味で、私は、決して主観的、恣意的な運用ということではなくて、それなりに客観的な運用がされるはずだというふうに考えております。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 捜査官の裁量によって結局例外規定に当たるかどうかが決まるわけですが、それを認定するのは裁判所、検察側が例外に当たるかどうかを立証する責任があると言われています。  大澤参考人が言われますように、取調べ室の最初にビデオが回っていて、それで、それから例外規定に当たるかどうかという判断がされるというのは、それは確かに一般的かもしれません。しかし、結局、例外規定に当たるかどうかというのは非常に抽象的、曖昧ですから、被疑者の言動により、録画すれば自白しそうにないと捜査官が、取調べ官が判断すれば録画しなくていいわけですから、言動というのはしぐさでもいいんですよ、ちらっとビデオを見て嫌そうな顔をすれば、ああ、これはビデオがあるから自白しそうにないんだなと捜査官が思ったので、それから後は録画しませんでしたということが通用するんですよ。いや、必ず通用するかどうか、それは分かりません。裁判所の判断です。じゃ、裁判所はそんなに頼りになるかということなんです。  袴田事件を見てください。袴田事件は、自白調書、何十通もの、四、五十通ありましたかね、自白調書を全部任意性がないというふうなことで却下しましたが、一通だけ、なぜか、どうしてその一通か分からない自白調書を採用しました。どうしてもこれを有罪にしたいと思えば、物的証拠が薄い事件はもう自白調書しかないわけですよ。それをどうしても採用しない限り有罪にできないという場合には、例外規定に当たるかどうかが、こんなのはやっぱり水掛け論的なところがありますから、裁判所は、薄いな、例外規定に当たらないかもしれないなと思っても、その自白調書をどうしても採用したいと思えば、これは例外規定に当たるので録画しなくてもいいんだということで自白調書を採用することになるだろうと思います。  そういう裁判所の実態、冤罪がつくられた実態というものを見れば、そんなに例外規定に当たるかどうかは明白じゃないですから、必ずやはり問題になって抜け道になるだろうというふうに思います。

谷亮子生活の党と山本太郎となかまたち

○谷亮子君 大変重要な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  続けまして、時間が限られておりますので続けさせていただきたいと思います。  次に、河津参考人、大澤参考人、そして小池参考人に御意見を伺いたいと思います。虚偽の供述を防ぐため、協議に至るまでの取調べ及び協議の合意に至る過程の記録を行い、保管する必要性について伺いたいと思います。  合意制度の手続適正化を図るため、協議に至る過程の記録を行い、保管することなどについては、法制審議会、これは特別部会においても議論となっておりました。そこでは、その運用は検察官に任されることになっており、記録がどこまで詳細なものになるのか、また、協議の内容が逐一これは記録されるのかについては必ずしも明らかではありませんという声もありました。このため、虚偽の供述を防ぐため、協議に至るまでの取調べ及び協議の合意に至る過程の録音、録画を行い、保管をすることが必要であるという意見もございます。  そこで、このような意見について、それぞれお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

河津博史日本弁護士連合会司法調査室副室長

○参考人(河津博史君) 意見陳述の中でも申し上げましたが、合意に基づく供述によって人を有罪にすることについては相当慎重である必要があると思います。そして、この合意に基づく供述の信用性を本当に慎重に判断をするためには、やはり取調べの可視化を徹底するべきだと思います。取調べの可視化を徹底することによって、初期供述から合意後の供述、その供述がどのように変わったのかということを吟味できるようにすることが重要なのではないかと考えております。

大澤裕東京大学大学院法学政治学研究科教授

○参考人(大澤裕君) 協議の過程で合意によって得られる供述に虚偽が含まれるようになることを防ぐ、そういう観点から、きちっとその過程を記録しましょうと。問題意識としては非常に分かるところもありますけれども、そこで、じゃ、具体的にどういう形で虚偽が生まれてくるのかというところが一つの問題かと思われます。  検察官の働きかけによって何か強引な誘導等がなされるのではないかとか、あるいは利益を求める余り被告人の側から何か虚偽を言ってもいいような取引を持ちかけるんじゃないか、もし仮にそういうことが問題なんだとしますと、協議の過程には全て弁護人の立会いが必要的となっていますから、本当にこの人がしゃべっていることが本当かどうかということを弁護人が逐一確認するというのは、これは非常に難しいのかもしれませんけれども、しかし、その協議の過程でおかしなことがされるかどうか、そこの部分を担保するという意味では、弁護人が関与している意味というのは私はそれなりに大きいと思います。ですから、それによる検察官の方からの不当な働きかけということは恐らく排除されるでしょう。  あとは、どの程度の記録を残しておくのかということで、現在は、書面では記録を残す、保管するということが言われているということかと思いますが、それはそれで結構なことなのかと思っています。

小池振一郎弁護士

○参考人(小池振一郎君) 司法取引の協議にどの段階から入るかというのは、非常にこれは曖昧なんですよね。被疑者の取調べの多分どこかから、何かきっかけがあってということになるんでしょうけれども、どこから協議なのかということは明確ではない。ですから、弁護人がどこから同席するのかということもはっきりしないという問題点があります。  それから、記録といっても録画していないわけですから、ただ記録される、どこまでどの程度記録されるかということについても非常に疑わしいと思います。  それから、政府答弁で、この司法取引はターゲットとされる事件との関係は共犯関係を想定しているという政府答弁がありました。しかし、法案上は共犯関係に全く限定されていないんですね。全然関係なくてもターゲットとされる余地がというか、法案上はそうなっているわけです。であれば、共犯関係を想定しているのであれば、共犯に限定するというふうに法案を修正しなければならないというふうに思います。

谷亮子生活の党と山本太郎となかまたち

○谷亮子君 ありがとうございました。今後の審議に是非とも反映させていただきたいというふうに思います。  ありがとうございました。

魚住裕一郎公明党

○委員長(魚住裕一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言御挨拶申し上げます。  本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十二分散会

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