国際経済・外交に関する調査会 第2号
- 発言数
- 42 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 2016/02/17
会議録
○会長(柳田稔君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日までに、礒崎哲史君及び小林正夫君が委員を辞任され、その補欠として加藤敏幸君及び浜野喜史君が選任されました。 ─────────────
○会長(柳田稔君) 国際経済・外交に関する調査を議題といたします。 本日は、「国際平和と持続可能な国際経済の実現に向けた我が国外交の役割」のうち、「核軍縮、国連など我が国マルチ外交の課題と外交力強化に向けた取組」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。 本日は、元軍縮担当国連事務次長阿部信泰参考人、京都大学公共政策大学院教授淺田正彦参考人、NPO法人ピースデポ特別顧問・長崎大学核兵器廃絶研究センター・前センター長梅林宏道参考人及び大阪大学理事・副学長星野俊也参考人に御出席いただいております。 この際、一言御挨拶を申し上げます。 各参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。 本日は、各参考人から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。 本日の議事の進め方でございますが、まず、阿部参考人、淺田参考人、梅林参考人、星野参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、阿部参考人から御意見をお述べいただきます。阿部参考人。
○参考人(阿部信泰君) 阿部信泰でございます。今日は、こういう機会をいただきまして誠にありがとうございました。 私は、国連の関係を中心に、国連の基本的機能がどういうことがあるのかということと、そこにおいて、では日本はどういう役割を果たすべきかということを申し上げたいと思います。会長から忌憚のない意見をということなので、今日は私の考えるところ、好きなところを申し上げさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。 国連、去年、設立七十周年を迎えまして、七十年やってきたんですが、元々は第二次大戦という大変悲惨な戦争を経て、何とかこの世界平和を維持したいということで、加盟国全部が集まって力を合わせて世界の平和を維持するという、集団的安全保障ということを目的にしてつくったわけでありますね。そのために、そういう安全保障の問題については安全保障理事会が責任を持つということで、これは憲章に書いてありますけれども、国際の平和と安全に対する脅威というものも安保理事会が認定をしまして、それがもし脅かされておるとなれば国連が適切な措置をとると、こういう仕組みで始めたわけでありますね。 したがいまして、時々いろんな国の外務大臣とか何かが国際の平和と安全が脅かされているという発言をするということは、要するにこれは安保理がアクションを取るべきだと、こういう意味なんですね。これはそういう意味でのキーフレーズでございまして、これはよく使われる言葉でございます。 どうしても平和が維持できないとなったときには強制措置をとると。これは、基本的には経済制裁で何かを止めるかやってもらうか、あるいはそれも駄目なときは軍事行動を取ると、これが強制措置なわけですね。 そのために、国連憲章は、国連の常備軍をつくる、国連加盟国が軍隊を拠出して、それでもって国連が軍隊を持つ、で、必要なときにはそれを使うという構想が憲章にあったんですけれども、これは実現しませんでした。 それから、常任理事国にはいわゆる五大国が常任理事国として入っておりまして、この五か国の意見が一致しなければ決定できないと、こういう仕組みになっていまして、これを拒否権と言っているわけでございますね。 それから、これも大事なことですが、国連加盟国には強制的な決議は実施する義務があります。これは国連憲章に書いてあります。国連加盟国は国連が定めた義務的な行為は実施しますという約束をしております。 また、参考までに、時々混乱しちゃうんですけれども、集団的安全保障というのといわゆる集団的自衛権というのは、これは言葉は非常に似ているんですけれども違いまして、集団的安全保障というのは国連のようなグループの国がみんなで協力して安全保障を維持するという仕組みでございまして、集団的自衛権の方は自衛権の行使を幾つかの国が協力して集団で行うと、これが集団的自衛権でございますね。 次に、ページをめくりまして、こういう理想でスタートしたんですけれども、国連が設立されて間もなく冷戦が始まりまして、東西の激しい対立が続く中でこの安全保障理事会は機能しなくなりました。ソ連がしょっちゅう拒否権を行使する、場合によってはアメリカ側も行使するということでお互い拒否権を行使し合うので、拒否権によってなかなか動かないという事態が生じました。それから、常備軍をつくるということも規定があったんですけれども、これもできることはありませんでした。 そこで、しかしながらいろんな紛争が起こるので、それに対して何か措置をとるということには、応急措置としてPKO、国連の平和維持機能ということで対応してまいりました。ただ、これは御承知のようにあくまでも任意の規定でございまして、それに参加するかどうか、あるいはそれを紛争当事国が自分の国に受け入れるかどうか、これはあくまでもその国の任意でございますので、前の国連の規定のような強制的な義務はないという弱さがございます。 結局、国連の現実がどうなっているかと申しますと、各国は、国連そのもの、その中心である安保理が有効に機能しない、有効に安全を保障してくれない、自分の国の平和も守れないかもしれないということで、結局、各国が独自に個別の自衛権を行使するか、あるいは集団的自衛権の枠組みに属することによって自分の国の安全を確保すると、こういうことをやってきたわけでございますね。 同時に、その間に、国連の事務総長が、しかしながら時々いろんなところで発生する紛争というものを何とか収めたらいいじゃないかということで、事務総長の機能というのが成長してまいりまして、事務総長がいろんなところで紛争の解決のために仲介努力をしたり、あるいは特使を任命してあっせんをするというようなことをするようになりました。それがいろんなところの和平協定にもなりますし、それを実施するために必要なときにはPKOを派遣すると、こういう仕組みができました。 ただ、私も、国連の事務次長として三年近く中で働いていたんですけれども、悲しいかな、今の世界、国連の情勢は、国連憲章に定めていて義務的に実施しなければいけないという例えば経済制裁の決議、あるいは何らかの軍事行動を取るという決議についても、なかなか加盟国がやってくれないというのが実は悲しい現実でございまして、それもあって、国連の加盟国それから事務局もいろいろ知恵を出してまいりました。 一つの方法は、決議を決めます、ある国には核兵器関連のものを輸出しちゃいけないという規則を決めますが、なかなか守ってくれないし、どうもいろんなところで抜け道があるようだということで、これは、それじゃ各国に、あなたの国ではどうやっていますかという報告書を求めると。それを、しかも今度は国連の安保理の下に専門の委員会をつくりまして、この国はこういう報告をしてきたけれども本当だろうか、どこか落ちているところはないかといろいろ調べると。これは、淺田先生が以前国連に行っていまして、そういう仕事をなさったことがありますけれども。そういうことで、できるだけ何とか決議の実効性を上げるという努力をしてまいりました。 しかしながら、今の国連の現状を見ますと、いろんな世界の難題は全部国連に持ち込まれていますね。シリアの平和を何とかしろ、アフリカのいろんなところで戦争が起こっているじゃないか、そういう平和の問題、あるいは最近のシリアの難民の問題ですね。それから、世界の貧困、この問題を解決すべきだ、あるいはアフリカでも最近エボラとか疫病がはやりましたけれども、それに対しても早く手を打てということが出てくる。最も最近では、気候変動の問題に対して国連が指導力を発揮すべきだという声も出てくると。 しかしながら、こういういろんな難しいことがいっぱい持ち込まれるんですけれども、ただ、国連の全体として何か動こうとすればこの安全保障理事会の枠組みで決めてもらわなきゃいけない、しかし、そこには五大国がいて拒否権がある、なかなか物事が決まらないという状況があります。 それから、そこまで至らなくても事務総長が事務局を引っ張っていろんなことができるじゃないかということなんですけれども、これ、今年の国連の予算額見ましたけれども、年間予算が二十五億ドル、日本円にすると三千億円弱ですね。もう日本のその辺の県の予算よりも少ないぐらいですよね。そんなもので世界のいろんな問題に全部対応できるはずがないんですね。でも、国連事務総長には、これはおまえの責任だ、やれやれと、何かうまくいかないと、事務総長がちゃんとやっていない、こういうことを言われると。これが今、国連の現実でございます。 なぜ予算が増えないかといいますと、やっぱり加盟国がなかなか義務的に出せというお金を増やすのは嫌なんですね。みんななかなか抵抗するものですから。実は日本も抵抗しております、日本も厳しい財政状況が続いているので。日本の国もゼロ成長予算だというんだから国連もゼロにしろということで厳しくやっておりまして、そういった声が主にたくさん分担金を払っている先進国から出まして、なかなかその結果予算は増えないと。 そうしますと、事務総長以下の事務方はどうするかというと、何とか、それじゃ、義務的お金じゃないけれども任意拠出というお金ですね、各国からの寄附、贈与みたいなものですけれども、それを集めていろんな課題に当たろうじゃないかと。例えば、難民高等弁務官というところが難民の問題をやっています。UNDPは開発問題をやっています。そういったところはみんな基本的には任意拠出を集めてそれで事業をすると、こういうことでやっています。実際上は、集計すれば恐らくそっちの方が正規の予算よりも多いぐらいのお金が集まっていますね。ですから、逆に言うと、事務局はそういった国にお願いをしてお金を出してもらわないと何も仕事ができないと、こういう状況になるというのが国連の現状でございます。 ページをめくりまして。近年、こういったことで理想を掲げ、しかしながら挫折し、いろいろ困難に直面している国連ですけれども、一つ新しい動きが出てまいりました。人道的介入という言葉で表現されます。いろんな国で悲惨な人道的な状況が起こっているときには、元々は国連は内政不干渉の原則ということで国内問題には介入しないということでスタートしたんですけれども、しかしながら、やっぱり余りにも大規模な殺りくが行われていたり大規模な人権侵害がある、あるいは人道的に必要な食糧、医薬品の支給も届かないというような状況が出てきたならば、やっぱり国際社会は黙って見ているべきではないということで、そこには人道的介入ということを考えるべきだと。 これはもう一つの言葉では、保護する責任、R2Pと書いてありましたけれども、英語でレスポンシビリティー・ツー・プロテクトと言っているものですからR2Pと言っていますけれども。要するに、国家、そこには国があって指導者がいて、まあ支配者がいるわけですけれども、これは何をしてもいいということにはならないんだと、そもそも基本的にそういう指導者は自分の国の国民を守る義務があるんだと、それをちゃんとやっていないときには国際社会は最悪介入することができると。 これはなぜかといいますと、一九九四年にルワンダの大虐殺事件というのが起こりました。これは例のフツ族とツチ族の部族対立で大変な殺りくが起こりました。それから、旧ユーゴスラビアでもスレブレニツァというところで、国連が保護をしていた難民をセルビア軍が殺りくするという虐殺事件が起こりました。こういった事件を踏まえて、こういうことに対して国際社会はほっておくべきじゃないんだということでできた原則でございます。 ただ、これは原則としてうたわれておりますけれども、まだ確立しておりません。アメリカその他西側の国はこれはやるべきだと言っているんですけれども、ロシアとか中国は懐疑的でございます。それから、非同盟の国も懐疑的な国が多いですね。ですから、必ずしも意見は一致していない。 そうこうするうちに、その後、例のテロ事件をきっかけにアフガン戦争が起こりまして、それからイラクでも戦争があった。 なぜここにちょっと書いておきましたかというと、この結果、アメリカは地上軍を出してひどい目に遭うわけですね。その結果、アメリカは国内でもう地上軍を出して外国に介入するのはやめるべきだという空気が非常に強くなりまして、ユーゴスラビアの頃はアメリカの義務だと言っていたんですけれども、その後、介入はできるだけやめようという方向に来て、二〇一一年にリビア危機というのが起こるんですけれども、例のアラブの春を受けてリビアでも民主化を求める動きが起こったんですが、そのときに安保理が決議を採択しまして、非戦闘員、一般の市民もかなり犠牲になっているということで、これを保護するために介入すべきではないかということで、それを認める安保理決議が通りました。ただし、これにはNATOが参加するんですけれども、アメリカは軍は直接送りませんでした。 このときもロシアと中国が批判していたんですけれども、結局、これは今批判されていますけれども、元々、非戦闘員、一般市民を守るためということで介入を許したのに、どうも途中から目的が独裁者カダフィの打倒ということにすり替わって、NATO軍がかなりそれを助けたということがあって、結局彼は逃げて捕まって殺されちゃうわけですけれども。そういった面で、これは安保理が決めた決定を超えているということで、ロシア、中国が批判しております。 その後に起こったのはシリア危機でございまして、これもアラブの春の余波で起こったわけですけれども、今でも続いておりますね。いろんな虐殺事件があり、あるいは化学兵器を大量に使うという事件もありました。その都度、これは断固たる措置をとるべきだという声は上がるんですけれども、なかなか安保理がまとまりませんで、そういう措置はとれません、とれないでおります。 その間、それじゃ停戦を仲介すべく特使を任命しようじゃないかということで、前のアナン事務総長、その後はブラヒミさんという特使、今はデミストゥラさんという特使がやっていますけれども、何とか停戦、和平を実現しようということでやっておりますが、なかなか難航しております。 さてそこで、最後のページになりますが、日本が何ができるのかということでございますが、日本は安保理の常任理事国ではありませんので、そういう意味においては強い権限を持っていろんな決定を左右することはできません。 しかしながら、いろんな決定が安保理あるいは国連総会でなされるときに、その決定がいろいろ難しい状況に陥ることがよくあるんですけれども、そこで日本が中に入っていっていろいろ、こういうアイデアはどうか、この辺でまとめたらどうかというようなことをやって、まあ外交努力でございますね、これが私は日本の果たせる一つの役割ではないかと思います。つまり、国連の意思決定、コンセンサス成立のために協力をすると。 それから、日本はいろいろ経済的には苦しんでおりますけれども、依然として世界の中では非常に豊かな国の一つ、経済的に大きな国の一つでございまして、やはり日本には経済的にも支援してほしいという期待がありますので、任意拠出に依存する活動に対して資金援助を行うということが次の日本のできることではないかと思います。難民問題、保健衛生の問題、あるいは教育の問題とかですね。それから、東京に唯一国連の機関がありまして、国連大学というところが青山にありますけれども、あの資金、あの活動も全てこれは各国の任意拠出で、持ち出しのお金でやっております。 そういう意味において、一番のお金を出しているのは日本政府でございますけれども、これを引き続き続ける、あるいはできることなら増やすということが一つの貢献の道かと思います。 それから、平和維持については、例の平和維持活動というのがなされていますので、これにもできるだけ積極的に参加すると。今、たしか南スーダンに日本は参加しておりますけれども、それが一つの道かと思います。 こういった、ある意味では基本的、地道な貢献に加えて、私はこの日本がもう少し大きな夢を持っていいんではないかと。 一つは日本が安全保障理事会の常任理事国になるということで、これは長年日本がトライしていますけれども、依然として実現しておりません。これは、なかなかこの実現は難しい。しかしながら、私はこの目標は堅持して諦めずにやっていくべきだと思います。達成は容易ではございません。 次に、国連事務総長をひとつ日本から出してはどうかというのが次の高い目標でございます。ただ、これも容易ではございません。一つは、事務総長というのは安保理の常任理事国からは出さない。つまり、常任理事国でもう既に強い力を持っているわけですから、加えて事務総長までやるとこれはやり過ぎだということで出さない。確かに、歴史を見てみますと誰も出ておりません。 そこで難しいのは、日本は、でも常任理事国になりたいと言ったじゃないですかということで、逆に、それじゃ事務総長を引き受けるということは、じゃ、あなた諦めるんですねと、こうなっちゃうので、ここはなかなか難しいところなんですけれども、別にこれは紙に書いた鉄則ではありませんので、その辺は臨機応変にできるかと思います。 それから、これも紙には書いていませんけれども、地域的にできるだけいろんな地域に回すんだというのが軟らかな原則としてございます。今、潘基文さん、韓国の人が事務総長をやっていますので、すぐ後とかすぐ近くはなかなか難しいと思いますね。しかしながら、将来、次に今度アジアから出すというときには是非とも日本から出せれば非常にすばらしいと思います。 ただ、これも、日本でも今まで例えば緒方さんを事務総長にどうかというような声が掛かったことがありますし、あるいは明石さんのように大変成功した方もおられます。そういった方が、うまい人が出てくれば、是非ともこの人にやってもらおうじゃないかというのを担いで動き回れば私は非常にいいチャンスだと思いますね。 将来、そのためにはそういった事務総長候補になり得るような人をふだんから養成しておかなきゃいけないんですね、いきなりぽんとそういう出てくるわけじゃないので。そのためには、例えば国連職員になる、あるいは外務省の職員でもいいですけれども、いろんな国際会議に出る。あるいは、別にそういう公的機関でなくても、会社でも企業でも、あるいはNGOでもいいんですけれども、いろいろ国際的に活動した経験を持つ人、それから、そういう意味で国際的にいろいろあの人はよくできると、よくやるということを認められるような人をふだんから養成しておくということがこの将来の可能性を開くためには大事と思いますので、そういう意味において、長い目で見て人材を養成する努力をすべきだというのが私の最後の提言でございます。 ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 次に、淺田参考人から御意見をお述べいただきます。淺田参考人。
○参考人(淺田正彦君) 京都大学の淺田と申します。本日は、お招きをいただきましてどうもありがとうございます。 会長の方から思うところを自由に述べよというふうにおっしゃいましたので、自由に述べさせていただきたいと思いますけれども、主として三点についてお話ししたいと思います。 第一は、核兵器不拡散条約、NPTといいますけれども、この条約の重要性、とりわけ核軍縮との比較における核不拡散の重要性についてお話ししたいと思います。核不拡散というのはどういうものかといいますと、核兵器を保有している国を増やさないというふうなことが核不拡散と言われるものであります。これを核軍縮との比較において少し述べたいと思います。第二に、最近注目されております核軍縮への人道的アプローチと日本との関係についてお話ししたいと思います。最後に、日本の原子力政策とそれから核軍縮との関係について。この三つについてお話ししたいというふうに思っております。 最初に、NPT、核不拡散条約の重要性でありますけれども、これは当然であって、今更問題にすべきことではないかもしれませんけれども、先ほど言いましたように、核軍縮との関係において少し確認しておくべきことがあるかと思います。 御存じのとおり、NPTでは、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、この五つの国を核兵器国というふうにしまして、核兵器の保有を認めております。それ以外の国が非核兵器国でありまして、核兵器の保有は認められない、禁止されておると。それだけではなくて、禁止されている核兵器を造っていないということを確認するために、国際原子力機関、IAEAの査察を受け入れる義務もあると。このように、NPTというのは二十一世紀においても残る不平等条約というふうに言うこともできます。 そういった不平等性を少しでも緩和するためにNPTでは第六条というところがありまして、これが核軍縮の義務について述べております。レジュメの方に書いてありますので、適宜御参照いただきたいんですけれども。しかし、その義務というのはどういう義務かといいますと、太くしましたように、交渉を行う義務にすぎないと。したがって、不平等性の緩和には必ずしもなっていないということであります。 では、こういった不平等性を解消するための動きはあるかといいますと、そうではありませんで、むしろ核軍縮が非常に緩い義務だということとの関係でも、核軍縮よりも核不拡散を重視するというふうな流れが国際社会では大多数だというふうに私は感じております。その点が如実に示されたのが一九九五年のNPT延長会議の様子であります。 NPTというのは、当初、無期限の条約としては作られておりません。これは無期限にすることに反対があったからでありますけれども、レジュメにありますような、NPTというのは、十条というところを見てもらいますと、当初二十五年間は有効だということで作られておりまして、発効から二十五年後、すなわち一九九五年に一応の期限を迎えると、その後どうするかということは締約国が会議を開いて決めるというふうなルールになっておりました。そのための会議が先ほど言いました一九九五年のNPT延長会議と呼ばれる会議であります。 この延長会議では二つの選択肢が示されております。一つは、NPTを二十五年ごとに小刻みに延長すると。つまり、二十五年がたった時点で更に延長するかどうかということを核軍縮の進展等に照らして決めるという提案であります。これは、この提案によると核軍縮への圧力ということが可能になるという利点がありますけれども、場合によってはNPTをもはや延長しないということで、NPTがなくなるという可能性もある、そういった危険性のある提案でありました。 もう一つは、NPTを無期限の条約にするという提案であります。この無期限にするという提案というのは、NPTが消滅するというふうな危険はありません。しかし、逆にNPTはもう完全に安泰だということで、核兵器国の側に核軍縮の努力をする誘因といいますか、インセンティブがなくなるということが危惧されておりました。この二つの提案の中で議論が行われたわけですけれども、最終的には無期限延長というものが総意、コンセンサスで採択されています。 この事実は、NPTの締約国が、コンセンサスでもって核軍縮を推進することよりも国家安全保障というものを優先させたというふうに理解することができます。つまり、全ての国にとって、当時の米ソの核軍縮が進展するかどうかということよりも、隣の国が核兵器を持たないようにするという核不拡散の保障をしておるNPTが消滅しないということの保証の方を重視したということだと思います。この点は二十年後の今日でも変わっていないというふうに思います。 しかし、核軍縮の努力を軽視していいということではありません。核兵器国が核軍縮の努力を怠る一方で、核不拡散の方の側面のみが強化されるならば、非核兵器国の側に不満がたまると。それがNPT体制を弱体化させるというふうな危険があります。 そこで、次に核軍縮の問題について最近の動きを中心にお話ししたいというふうに思います。 二の人道的結末共同声明と核軍縮でありますけれども、核軍縮を推進する方策として、二〇一二年のNPTの準備委員会以来、核軍縮に対する人道的アプローチというものが注目されております。これはどういうものかといいますと、核兵器を使用した場合の非人道性というものに訴えまして、核兵器がいかなる状況においても決して使用されないということが重要であると、そのことを保証する唯一の方法というのは核の廃絶だというふうに主張して、核兵器の廃絶を唱えるものであります。これは極めて論理的でありまして、かつ説得的な摂理であるというふうに思います。 実際、この声明が出された二〇一二年の当初は僅か十六か国の共同声明にすぎなかったわけですけれども、三年後の二〇一五年、昨年のNPTの会議の際には百五十九か国まで賛同国が増えておるというふうなことであります。 日本政府はどのような対応を取ったかといいますと、当初これに参加していませんでしたが、二〇一三年の秋の国連総会の折に初めてこれに参加しております。被爆国として当然のことであって、むしろ遅きに失したというふうに評価されるかもしれません。しかし、私は、被爆国としての発信の必要性とそれから国家の安全保障の問題というのは混同してはならないというふうに思います。 日本の安全保障というのは、アメリカの拡大核抑止を含む日米同盟に依拠しているというふうな体制を取っております。核抑止というのは何かといいますと、核兵器を使用するとの威嚇をもって潜在的な敵国の攻撃を思いとどまらせるというのが核抑止であります。そういった使用するとの威嚇を行うことによって侵略を思いとどまらせるという政策に依拠しながら、核兵器はいかなる場合にも使用されてはならないというふうな声明に賛同するというのは、果たして一貫性があるのか、矛盾しているのではないかということが問題となります。 実際、この点については国会で質問がありました。二ページ目の方にそれが掲げられておりますけれども、二〇一三年の十月二十八日の衆議院国家安全保障に関する特別委員会での質疑でありますけれども、この共同声明に署名したということで核抑止政策に変更があったのではないかということで質問があったわけですけれども、政府の側からは、我が国の核抑止を含む安全保障政策あるいは核軍縮アプローチとの整合性が取れたから賛同したというふうな回答がなされました。 しかし、本当にそうなのかというところに疑問が残ります。実際、ドイツやオーストラリアなどの西側諸国というのは、まさにいかなる場合にも使用されてはならないというところのゆえにこの共同声明への賛同を見送ったというふうに言われております。 オーストラリアというお話をしましたけれども、この二〇一三年、日本が人道声明に賛同した二〇一三年の国連総会では、今述べました人道的な結末声明とは別にオーストラリア主導の声明も出されております。これが一ページ目と二ページ目の間のところに書かれておるものですけれども、このオーストラリア主導の声明というのは、核兵器の使用の人道的結末に懸念しながらも、核兵器に関する議論が安全保障と人道の両面を認識しつつ行われることが重要であるというふうなことを述べたものでありました。 日本はこのオーストラリアの声明にも賛同しておりますけれども、二つの声明の双方に賛同したのは世界では日本だけでありました。これは、日本の外交の特異性といいますか、私から見ると一貫性のなさというものが現れているように思うわけであります。 国際的に一目置かれるというふうな国になるための最低条件というのは、その国の政策が矛盾なく一貫していると、少なくとも理解できるということが必要ではないかというふうに思います。それは、その国の言う主張が説得力を持ってそもそも聞いてもらえるための大前提だというふうに思います。その意味で、日本としては、自国の安全保障政策を一貫したものとするために、核抑止に依拠する政策とそれから核軍縮外交との関係について早期に整理して明確化する必要があるのではないかというふうに思っております。 ちなみに、核の使用についてのアメリカやイギリス、西側の核兵器国の政策はどのようであるかということを御紹介しますと、レジュメの二ページの(2)のところにありますのがその二つですけれども、アメリカとイギリスというのはほぼ同じような政策を取っておりまして、NPT、核不拡散条約の締約国であり、かつそういった核不拡散の約束を守る国に対しては核兵器を使用しないというのがこれらの国の政策であります。 こういった政策であれば、例えば北朝鮮との関係での核抑止という観点からも日本の安全保障政策と合致するのではないかと思いますので、こういった政策を推進していくと。これとは違う政策を取っている他の核兵器国との関係ではその辺りを指摘しておくということも一つの方法ではないかというふうに思います。 ところが、日本はその後、昨年の国連総会では、いわゆる人道的結末声明、つまり、あらゆる場合に核兵器を使用してはならないということから、核軍縮を述べる人道的結末声明に賛同しつつ、オーストラリアの行っておった声明、すなわち安全保障とそれから核軍縮というものの両方が大事だというふうな声明には、前回は、二〇一三年のときには両方賛同したわけですけれども、昨年の国連総会ではオーストラリアの方の声明からは離脱しております。 私は、人道に訴えるという方向が核兵器の使用を完全に排除する、核軍縮に直結させるという効果を持つことは認めるわけですけれども、逆に、だからこそ交渉の余地を残さないと、核の即時完全廃絶というところまで行かなければもう交渉の余地もないというふうなところに行く危険性というものがあるのではないかというふうに思います。 ちなみに、核兵器に関連する措置としましては、核実験についての包括的核実験禁止条約というのがあります。いわゆるCTBTと言われるものですけれども、この条約は今年署名二十周年を迎えます。しかし、発効の見込みは全く立っておりません。こういった部分的な措置でさえこういった状況であるのに、その何倍も何十倍も困難な核兵器の廃絶というものが容易に実現するようには思えないわけでありまして、むしろ、先ほどのオーストラリアの声明も言っていますけれども、人道的アプローチというものが核兵器国と非核兵器国の間を分断してNPT体制というものを弱体化させるのではないかというふうに危惧しております。 部分的な措置ではありますけれども、例えば、先ほど言いましたCTBTの発効を目指してまだCTBTを批准していないアメリカや中国に働きかけるというふうなことをするとか、あるいは、核兵器の原材料であります核物質等の生産を禁止する条約、FMCTというふうに言われておりますけれども、核物質の生産禁止条約の交渉、これはまだ全く進んでいませんけれども、この交渉の開始に努力するとか、そういったところに努力を傾注するという方が現実的ではないかというふうに思います。 最後に、日本の原子力政策とそれから核軍縮の問題についてお話ししたいというふうに思います。 阿部大使の横で原子力政策を話すのも少し気が引けますけれども、日本は、一方で先ほど述べました人道的アプローチによる核軍縮というものに傾斜しておりますけれども、にもかかわらず、他方では日本に対して核兵器の疑惑というものが付きまとっているのが実情であります。 例えば、三ページ目に挙げましたけれども、昨年十月の国連総会では中国の軍縮大使が日本のプルトニウム問題を取り上げまして、余剰プルトニウムを持たないという日本の政策にもかかわらず、日本には核兵器千三百五十発分の分離プルトニウム十トン余りがあるけれども、それを消費する現実的な方策もなく、国際社会に重大な懸念を引き起こしているというふうに述べまして、具体的な数字を挙げながら批判しておるわけです。 このように、日本には核軍縮をいかに推進していくかという攻めの政策を考える必要があるだけでなく、核開発疑惑というふうにも言っていいような受け身の立場にもあるということを明確に意識しておくということが必要ではないかというふうに思います。 多くの国が日本の核武装を疑っているわけではありませんけれども、最近、読売新聞を見ますと、ロンドンに本部のあります国際戦略研究所のフィッツパトリックという専門家が、北朝鮮の核実験との関連を含めて、日韓あるいは台湾も含めてそういった可能性に言及するようなことを行っておるわけです。そういった指摘がなされた際に、日本としてはすぐに具体的な反論ができるようにしておくということが重要ではないかというふうに思います。 まず、事実の点から足下を固めておくという観点からしますと、プルトニウムの消費に向けた政策を推進していくということが必要ではないかというふうに思います。 昨年から原発の再稼働が少しずつ始まっていますけれども、今年に入ってからは高浜三号機といういわゆるプルサーマル炉、プルトニウムの消費を行うプルサーマル炉が再稼働されていますけれども、プルサーマル炉の一基で消費できるプルトニウム量というのは年間せいぜい〇・五トン程度というふうに言われています。既存の分離プルトニウム、海外にあるものを含めると五十トン弱あるわけですけれども、それに使用済燃料の中に含まれておるプルトニウム、これは百トンを優に超えておりますけれども、こういったものを考えると、プルトニウムの消費量が更に多いと言われるフルMOX炉の完成を含めまして、更なる努力が必要だというふうに思います。 同時に、そういった取組を国際的に発信していくということも重要であります。日本はこうした国際発信において非常に後れを取っておるという傾向がありまして、例えば尖閣問題などは諸外国では中国領だというふうに思われているというふうなところも少なくないわけでありまして、そういった国際発信についても今後力を入れていくということが重要ではないかというふうに思います。 いろいろ申し上げましたけれども、最後に要点をまとめておきますと、我が国の議論では核軍縮に傾く傾向がありますけれども、むしろNPTというのはかなり危ない状況にありまして、その維持強化が重要ではないかということですね。その点では、核兵器国と非核兵器国との間の分断を招く議論というのはNPTの弱体化につながるので、この辺りは少し要検討ではないかというふうに思います。 それから、それとの関連もありますけれども、日本の安全保障政策の根幹にあります日米同盟あるいは核抑止力の問題とそれから軍縮外交との間の整合性の問題というものを早期に整理しておくということが重要ではないかというふうに思います。一挙に核廃絶というよりも、むしろCTBTのような部分的な措置について例えばアメリカや中国に対して働きかけるというふうなことを行う、あるいはFMCTといいます、核兵器の原材料の生産禁止というふうな条約交渉を推進していくということが重要ではないかということ。 それから、日本の足下の問題として、プルトニウムに関わる疑惑の指摘があるという事実を踏まえますと、それに対する対処というものを着実に進めるということが必要ではないかと。こういったあらゆる点を含めて、少なくとも日本からの国際発信というものがもう少しあってもしかるべきではないかというふうに思うわけであります。 以上で、私の思うところを述べさせていただきました。どうもありがとうございました。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 次に、梅林参考人から御意見をお述べいただきます。梅林参考人。
○参考人(梅林宏道君) 梅林宏道と申します。貴重な発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。 お手元にレジュメをお配りしてありますけれども、二つの話題について意見を述べさせていただきます。グローバルな核軍縮の現状、それと密接に関係して日本の核兵器依存政策の転換の必要性という問題であります。 まず、グローバルな核軍縮の現状でありますが、何よりも核軍縮が現在停滞しているというのが大きな特徴であります。二〇一五年のNPT再検討会議が合意文書なしに終わったということが一つ象徴的な出来事でありますけれども、実際にはもっと実質的なところでその停滞が存在をしていると。 まず第一に、核弾頭数の削減が停滞をしているということを申し上げたいと思います。 お手元に図表一をお配りしてあります。それを見ていただきますように、現在、一万五千七百発の核弾頭が地球上にあると。その九四%をアメリカとロシアが保有しています。ところが、図二を見ていただきますと分かりますように、米ロの配備戦略核弾頭数というのは削減が止まって飽和状態になって、二〇一〇年頃以後ほとんど削減が進行していないという現実があります。 二〇一八年までに配備戦略核弾頭を千五百五十発まで減らせるというのが新START条約で米ロが義務付けられていることでありますけれども、実際にはその水準は既に現実に達成されている。にもかかわらず、その次どうするかということについての見通しがほとんど立っていないということであります。それはグラフを見ていただければ非常に分かりやすいと思います。米ロの関係の悪化ということがその背景にあるということは、皆さんも想像していただけるとおりであろうかと思います。 第二に、その米ロが実際には核兵器の近代化に巨額の投資をしているという現実があります。 アメリカにおいては、今後十年に核兵器の維持と近代化に三千五百億ドルを費やそうとしています。これは冷戦期をはるかに超える投資であります。一方、ロシアにおいては、ソ連崩壊後の遅れを取り戻すために野心的な近代化がうたわれてきましたけれども、その結果が今顕著に現れているという状況であります。 詳細は省略いたしますが、レジュメに具体例をアメリカ、ロシアに関して掲げておきました。いずれも二〇二〇年代半ば頃まで、次世代核兵器の建造計画に現在邁進をしているというのがアメリカとロシアの現状であります。近い将来、NPT条約第六条義務に忠実にそれを履行しようという意思が見られないというふうに現状を評価せざるを得ないということであります。 さらに、第三の問題があります。 それは、NPT上の核兵器国、五つの国連安保理の常任理事国でありますけれども、これが共同意思をどのように形成をしているか、核軍縮を達成するというためのどのような話合いが進行しているかということであります。 二〇〇九年以来、NPT条約の履行に関してこのP5は会議を重ねております。これは一つの前進であります。しかし、現在、五か国が核兵器の削減について協議をするという段階には達していません。はるか手前の状態にとどまっているというのが現状です。 フランスは約三百発の弾頭を有していて、アメリカ、ロシアに次ぐ数を有しております。中国は二百六十発ということで、その次の多数の保有国でありますけれども、それぞれアメリカ、ロシアとの差が非常に大きいということで、まず米ロが自分たちの水準に近いところまで削減をせよと、五か国の話合いというのはその後であるという立場を取っています。 私の見解では、米ロが五百発まで減らせるという状況が一つのメルクマールになろうというふうに思っています。 オバマ大統領は二〇一三年のベルリン演説で、千発まで減らしても現在アメリカの安全は保障されるという次の削減の目標を提言いたしました。ロシアはこれに応えておりません。同じ頃、一方、アメリカの軍のこの問題に関係してきたジェームス・カートライト米軍統合副議長、元ですね、は五百発までアメリカの安全を損なうことなく減らせることは可能だという提案をいたしました。これはNGOの報告書の中で行ったものであります。 五百発というのが実現すれば、非常に新しい段階が出てくるだろうというふうに思っています。核抑止論に基づいて必要核弾頭数というのが計算されているわけですけれども、五か国が共通に削減の議論のテーブルに着くとしますと、相互不信が徐々に解消されていくという非常な貴重なテーブルになると思うんですね。そういう意味で、そこを一つのメルクマールとして考える必要があるんではないかと思います。 そういう中で、現在、この状況をどうやって打開しようかという国際的な核軍縮の議論が進行しています。マルチの核軍縮外交、新しい展開の状態にあるというふうに考えます。 先ほど来、話にありましたけれども、二〇一〇年のNPT再検討会議最終文書は初めて人道性の問題を取り上げました。これは初めてなんです。その文言は、核兵器のいかなる使用も壊滅的人道上の結末をもたらすことに深い懸念を表明し、全ての加盟国がいかなるときにも、国際人道法を含め、適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認するというものであります。 NPTで初めて登場したこの人道上の結末に対する議論が、その後三つの主催国によって国際会議を開催する運びとなりました。ノルウェー、メキシコ、オーストリアがその三つの国であります。そこにおいては、これまで、日本における被爆経験も含めまして、様々に出てきた核兵器の人道上の諸問題をファクトとしてもう一度整理をしようと、政治的な議論をする前にもう一度ファクトを押さえようという趣旨の会議であります。 そこで現れてきた、改めて認識された核兵器の人道上の結末を踏まえて、当然のことながら法的な禁止ということをそろそろ議論しなければならないというふうにマルチの議論が進行している、しかしそれには非常な抵抗も同時に起こっているというのが現時点だろうというふうに思います。 昨年の十二月七日、国連総会において、メキシコ、アイルランド、オーストリアなどが主導して総会決議、多国間核軍縮交渉を前進させるというものが採択されました。 そこで、公開作業部会を設置して、核軍縮の法的側面の議論をやろうじゃないかということが決定されました。その公開作業部会のマンデート、任務は、核兵器のない世界の達成と維持のために締結される必要のある具体的で効果的な法的措置、法的条項及び規範について実質的に議論するという内容であります。ジュネーブの国連本部において、二月と五月、八月、計十五労働日の限度でこの公開作業部会が開かれようとしているというのが現状であります。 これは小さな始まりでありますけれども、初めて核軍縮について法的枠組みを議論をするという場となります。画期的な新しいマルチの場が生まれているということになります。 しかし、非常に情勢は複雑です。この決議の採択は、賛成百三十八、反対十二、棄権三十四で採択されました。圧倒的多数の賛成があったわけですけれども、P5全てが反対をいたしました。バルト三国、ハンガリー、ポーランド、チェコなどNATOに加盟した東欧諸国の多くは反対をいたしました。カナダ、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギーなどNATO加盟の西側諸国、それから、オーストラリア、日本、韓国というアジア太平洋のアメリカの同盟国は棄権票を投じました。インド、パキスタンも棄権であります。 ここに非常に分岐といいますか、の構造がはっきりとしたということになります。核兵器保有あるいはそれに依存をした安全保障政策を取っている国対核兵器に依存をしない国という分岐がこの公開作業部会をめぐって現れているということです。 それで、日本が是非とも積極的な役割をここで果たしていただきたいわけですけれども、そのためには日本の核兵器政策の転換が求められているということを申し上げたいと思います。 これは時代の要請であるというふうに捉えます。核軍縮外交が停滞をしていて、何とかここを突破しなければならないということでマルチの外交の積み重ねがありました。やっと実現をした法的枠組みを議論する場というものがあります。そこに日本がどういう役割を果たし得るかということが問われています。戦時使用された核兵器の人道上の結末を体験した唯一の国日本が核兵器依存政策のためにここで役割を果たせないというジレンマにあるとしたら、そのジレンマを解消する安保政策に進むということを考えるべきであろうというふうに思います。 日本が核抑止力に依存しない安全保障政策を求める時代的要求というのは、北東アジアを眺めた場合にもあるというふうに考えます。北朝鮮が核兵器開発を合理化している論理をやはり根本から批判しなければならない。北東アジアの安定的な非核化というのは必要なことです。そのためには、核兵器国である米国や中国ではなくて、核兵器に依存しない地域、国家、日本、韓国等がリーダーシップを取るような、そういう構想が必要であります。そのためにも日本の政策の転換が求められているというふうに思います。この決断は事務レベルではとてもできる決断ではなくて、まさに政治レベルのリーダーシップが必要になっている、そういう局面であろうというふうに思います。 非核兵器地帯という選択肢があるということを次に申し上げたいと思います。 一九六四年の中国の核実験以来、日本の安全保障に係る核兵器政策というのは、核武装か、核の傘すなわち核抑止力に依存するかという、そういう二者択一の議論で支配されてきたと思います。日本は強い反核の世論の中で、一九六八年に非核三原則と核の傘という政策を採択いたしました。一方で、グローバルな核軍縮に努力をするという政策の柱を立てました。 しかし、非核兵器地帯を設立するという、核武装か核の傘かということのどちらでもない、核兵器に依存しないもう一つの安全保障政策の選択肢があります。非核兵器地帯というのは、一九六七年にラテンアメリカで初めて成立して、現在まで五つの地帯が国際条約によって実現している実績のある制度であります。 図表三を見ていただいて分かりますように、現在、地球上には五つの非核兵器地帯で、南半球の陸地はほとんど非核兵器地帯になっているということが分かります。 この地帯というのは、三つの要素を全ての地帯で持っていると。一つは、核兵器がないという当然のことでありますが、もう一つは、その地帯に対して核攻撃も攻撃の威嚇もしないという消極的な安全の保証を与える、そういう保証をすべき地帯であるということであります。三つ目は、その条約の遵守、検証を保証するような制度を確立すると。こういう三つの要素を備えて非核兵器地帯というものが国連の一つの安全保障の考え方としても実績があるということであります。 北東アジアでそれをどうするかということについて、私は長崎大学に在任中に具体的な提案をする努力をいたしました。それは、3プラス3と呼ばれる六か国条約を構想するものです。その最初の3は、三つの地帯内国家、日本、韓国、北朝鮮が非核国になる、後の3というのは、その周辺の核兵器国、アメリカ、ロシア、中国が地帯への消極的な安全の保証をする、そういう義務を負うような六か国条約であります。 これによって関係国はウイン・ウインの利益を得ることができます。日本は中国、ロシアの核の脅威から自由になります。北朝鮮はアメリカの核の脅威から自由になります。アメリカと韓国は北朝鮮の核開発を抑え込むことができます。中国は日本の核武装の懸念を払拭できます。そのような構想に向かうということは、日本が被爆国としての立場を据えつつ、国際的な核不拡散・軍縮に堂々と再登場する、そういう基礎になるというふうに考えます。 どうやってそれを実現するかということに関して、著名な国際政治学者であるアメリカの大統領特別補佐官も務めましたモートン・ハルペリン博士が二〇一一年に包括的協定というアイデアを出しました。このアイデアを基礎にして私たちは包括的な枠組み協定というものを構想いたしました。 非常に現実的だというふうに私たちは考えておりますけれども、四つの章から成る協定であります。第一章、第二章、第三章、第四章をお手元のレジュメに書きましたけれども、この地域の安全保障の根幹に横たわっている困難を同時解決するためのセットにしたアプローチというのがこの特徴であります。そのアプローチの一つとして北東アジア非核兵器地帯ができるという構想であります。 北朝鮮を関与させる可能性があるのかという疑問が必ず当然の疑問としてあると思いますが、割と、情勢をフォローしておりますけれども、その可能性は十分にあるというふうに私自身は考えています。昨年の一月には、北朝鮮は、核実験を中止するということと米韓合同軍事演習を中止するということをバーターでテーブルにのせて議論をしたいということを提案いたしました。昨年の十月、国連総会において北朝鮮は、朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に変えるという交渉を、国連七十周年、今こそそれをやるべきだということで、その用意があるということを演説をいたしました。そのような手掛かりが十分にあるという認識であります。 御清聴ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 次に、星野参考人から御意見をお述べいただきます。星野参考人。
○参考人(星野俊也君) 本日は、大変権威のある本調査会で発言をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。大変光栄に思っております。 本調査会が、核軍縮や国連などを通じて我が国のマルチ外交、その課題とそして外交力強化に向けた取組を考えるということでございますので、私は、本日、阿部参考人の後を受けまして、国連との関係において特に我が国の外交の現状、課題ということについてのお話をさせていただこうと思っております。 まず最初に、我が国にとっての国連と国連にとっての我が国というもの、二番目に、我が国の国連外交はどういうふうに対応していったらいいのかというふうなポイントと、第三番目には、マルチ外交、多国間外交という話ですので、多国間外交というのは二国間外交とどう違うのかというところもちょっと御紹介をさせていただき、最後に、国連改革に向けた現状、課題といったようなものにも多少触れてみたいというふうに思っております。 まず、我が国にとっての国連ということでございますけれども、今年、二〇一六年は国連に加盟をして六十周年という非常に大切な節目の年でございます。十二月の十八日が記念日になります。十年前の国連加盟五十周年のときには、天皇皇后両陛下も御臨席の下に大きな式典が開かれました。ですから、今年も、六十周年ということでございますので、十二月十八日に向けていろんな形で日本と国連の関係を考えるべき年だろうなというふうに思っております。 そしてまた、今年は、一月一日から二年間で非常任理事国、安保理の非常任理事国としての任期も始まっております。さらに、伊勢志摩サミットということもございますので、外交力を強化して、日本が国際社会においてプレゼンスを示すという意味でも非常に大きな意味がある年だと思います。 その二〇一六年が国連加盟の六十周年ということですが、どういう意味があるのかといった場合には、三点考えました。 一つは、一九五六年、国連に加盟したことで日本が戦後の国際社会に完全に復帰したという一つの大きなシンボリックなものになったと思います。 国連は、御存じのとおり、ユナイテッドネーションズですね。これはそのまま訳すと連合国になるわけで、中国は今も連合国という漢字を使って国連のことを称しておりますが、その連合国に日本が入って、今や安保理のメンバーにもなるというのは、これは非常に大きな象徴的なことだと思いますが、そういったような意味で、国際社会で日本のプレゼンスを示すという意味では非常に大きな意味があります。 そして、今、我が国にとって国連というのは本当に不可欠な外交のツールというふうに思います。 一つは、国連が持っている普遍性です。つまり、平和ですとか開発ですとか人権、様々なそういう大きなビジョンに関わるものを体現している組織です。そして、国連は正統性があると言われています。それは普遍性とも関係するんですが、百九十三か国が加盟をしていて、そこで決定されたことであるということは大きな国際社会における公的認証を受けるというふうな意味があると思います。 それから、三番目に効率性。これはちょっと誤解を招くので注意を喚起しないといけません。国連が効率的だと言っているわけじゃないんですけれども、日本にとっては国連は効率的なんです、つまり、一か所に行くことによって百九十三か国といろんな話ができるという意味で。そして、国連総会の場などに参りますと、他国の首脳もたくさん出てきておりますので、一か所に行くだけで様々な国との二国間会合もできる、そんな意味で非常に使い勝手のいい、そういう意味で大事な組織でございます。ですから、我が国にとりまして不可欠なツールということは言えると思います。 そして、日本が国連の中で果たしてきている役割は、先ほど申し上げましたように、旧敵国から今はもう国連メンバー、しかも安保理のメンバーということになっていますけれども、他の先進国と違うのは、痛みの分かる国だということですね。国連の支援を受けて日本は戦後復興をしてきました。援助を与えられる側の思いも分かる、そういった中で国際協調をこれから進めていく、あるいは積極的平和主義を進めていくというふうなことですので、ほかの先進国とはちょっと違った大きな役割があるんじゃないかと思います。 他方、国連にとっても我が国は非常に不可欠な存在だというふうに思います。 私は大学を二年間ほどお休みをして、二〇〇六年から八年までは国連の日本政府代表部というところに、外務省に出向して政務を担当させていただきましたが、そして国連の数々の会合に出させていただいたときに感じたことは、日本が非常に尊敬をされている、そして日本は発言した内容が極めて良識的であると。つまり、国連の中で自己主張をする国はもうたくさんあるわけなんですけれども、日本も当然、国益を基にした自己主張はしますけれども、と同時に相手の意見も聞くし、そして国際社会の公益は何かということも考えて発言することが多いんですね。そういう意味で、非常に尊敬されているということがまず言えるんですけれども、その上で、大口の財政拠出国でもありますし、またそういったこともありますから、安保理の非常任理事国ではこれまで最多の選出国になっているということです。 この一月から第十一回目の任期ということで、二年間でございます。つまり、過去六十年のうちに十一回も非常任理事国として選出されているということは、もうその三分の一以上の時間を安保理の中で過ごしていることではあるわけですね。これだけ選ばれている国なのですから、やっぱりもう常任の席を安保理の中で持ってもいいのではないかということを主張することは十分可能だと思います。日本は、一九五六年に国連に加盟したと申し上げましたが、もうその翌年には非常任理事国に選出されて、一九五八年から二年間は非常任理事国の任期をしているというぐらいのものです。 先ほどの通常の国連の予算の分担率でいきますと、加盟当初は一・九七%でございました。それが二〇〇〇年には、そのときがピークだったんですけれども、二〇・五七%、そして二〇一三年の段階で一〇・八三三%、そして現在二〇一六年は九・六八%。常に拠出国としては二位を保っておりますけれども、やっぱり金額ベースでいきますと、そして分担率のベースというのは国民総所得に連動しておりますので、ちょっと経済力を反映しているのかなというふうな気はいたしますけれども。 しかし、大口の拠出国であり、また非常任理事国の最多選出国であるということがありますが、もう一つ更に申し上げますと、国連で働いている日本人の職員は極めて優秀であり有能であり実直であると。やはり、世界中の皆さんが国連で仕事をしているわけですけれども、この中でどこの人たちが一番能力があって実際に仕事ができるかというと、日本人というのは定評があるんじゃないかなというふうには思います。 しかし、その国連にも限界があります。私は不可欠な組織だと申し上げますが、しかし完全な組織だとは毛頭申しません、不完全な組織だろうというふうに思います。やはり時代錯誤で、日本がまだ、そうですね、なかなか安保理の常任理事国になれないというふうな状況もあります。そして、いろんな問題が政治化されてしまうことによって機能不全が起こるということもあります。また、巨大な官僚組織であったりとか、無駄と書いてしまいましたが、非効率であるというふうなところは否めない。そういうところがこれから改革の課題というふうになるのではないかと思っております。 ところで、我が国が国連を考えるときには、是非お考えいただきたいのは、国連には二種類あるということでございます。二つの国連があると言ってもいいのかもしれません。 一つは、日本もその加盟国の一つとして、各国の国益を主張する政治的な組織、つまり政府間の集団的な意思決定をする場面としての国連でございます。ですから、ここで議論をするのは各国の外交団、あるいは外交の代表団というふうになります。もう一つの国連というのは、それぞれの国の国益からは離れて、国連事務総長という方が一番そのトップにいるわけですけれども、国際公務員として、あるいは国連職員として不偏、中立の立場で国連が掲げる諸目的を実施するという国連。実は、この国連の二つの顔というのが時々ごちゃごちゃになってしまうということがありますので、まず最初に、二種類あるということは指摘させていただきたいと思います。 その上で、政府間の集団的な意思決定機関としての国連としてはどういうことが我々としてはできて、またすべきなのかということは、第一は、やはり我が国の外交目標とするもの、これは国益を当然含みますけれども、先ほど申しましたように、バランスの取れた形で国際公益に係る議論、こういうものを、我が国の外交目標を追求するという場でございます。 そのテーマとしましては、今お話のありました核軍縮や不拡散というのも当然ございますでしょうし、今の時代でしたらテロとの闘いというのもあるでしょうが、国際社会における環境の問題、気候変動の問題、貧困、感染症、様々な問題もあります。さらには、ダイレクトに日本に関係する、今同時進行で進んでいるものとしては北朝鮮のケースとか、そういったものを普遍的な場で、国連という正統性を背景に議論する場であるということだと思います。 そしてもう一つは、我が国の外交目標にも関連しますけれども、グローバルな共通の課題というものに対して、これは一国では対応できませんので、集団的な取組を進める、そのための新しい規範を作ったり政策を作ったり活動を進めたりというふうなことがあるんじゃないかと思います。 そしてもう一つは、安保理等の主要なフォーラムでの議長ポスト、議席をまず持つこと、議長のポストを取ること、あるいはリード国になると、いろんなそういう形でプレゼンスを示すというのも大変重要なのではないかなというふうに思っております。 後ほどもマルチ外交の場で議長を取るというのは非常に重要だというふうな話もさせていただきますけれども、今朝のニュースでは、宇宙飛行士の向井千秋さんが国連宇宙空間平和利用委員会の小委員会の議長に選ばれたというのがあるんですけれども、そういうことがあることによって本当に日本の存在というのが示されます。 今年、日本が非常任理事国のメンバーであるということによってもまた日本の存在が示される、あるいは、いろんな委員会の議長であるということによってその議事を進行する上での権限が与えられる、そういうようなところを活用するというのも政府間の集団的意思決定機関としての国連の中で日本が果たすべき役割ではないか。日本がそういう立場にあれば、やはり最初に申し上げましたとおり、多くの国は信頼を向けてくださると私は確信しております。 もう一つの国連は、国連が掲げる諸目的を実施する機関として、これは開発や人権、難民、公衆衛生、様々な分野があるのは御存じだと思いますが、ここで私が懸念を持っていることの一つは、余りにも日本人の職員が不足しているということでございます。 先ほども申しましたように、日本人というのは最も国連の中で優秀で有能で実直な仕事をするのは多分間違いないと思うんですけれども、しかし少ないと。過小代表、アンダーレプリゼンテーションというふうな言葉が使われます。 確かに、国連憲章の中には百一条というところに、国連の職員は公平な地理的配分に基づいて配置されるというふうに書かれております。ですから、日本人が余りにもたくさん占めることは望ましくないのかもしれません。しかし、常に日本は国連の分担金、分担率でいきますと第二位を占めておりますので、その分担金の比率と職員の比率でいきますと、やはり望ましい職員の数には至っておりません。 今ここで、二〇一五年の国連関係の邦人職員の数は七百六十六名であるという数字を出しました。いや、この数字だけですと、申し訳ございません、大きい数字なのか小さい数字なのかというのが分からないかもしれませんが、しかしこれが、国連には、お手元にお配りさせていただいたように、国連システムというところで百ぐらいもうたくさんいろんな機関がございます。ここに例えば三万人仕事をしている国連のプロフェッショナルがいるとする、そのうち七百人しかいないというふうに考えますと、これはやはり日本は過小代表ということになるのではないかと思います。 そして、国連の本部がニューヨークにございますが、本部の事務局で本当にプロフェッショナルと言われる方たちの数は多分三千人程度じゃないかと思いますけれども、その中で、でも日本が占めている人数というのは八十人程度なのではないか。やっぱりこれも少ない。 先ほど申し上げましたとおり、望ましい職員数でいくと、現在百八十六人から二百五十二人はいてもいいのかもしれないというふうに国連では言われておりますが、その半分にも満たない数の国連職員しか日本人はいないというふうな状況だと思います。 更に深刻なのは、幹部がいないということだと思います。先ほどの七百六十六名のうち、Dレベル、つまりディレクターレベル以上というのは七十二名でございました。そういう意味で、阿部参考人は以前に軍縮担当の国連事務次長をされましたけれども、そういった形で国連の執行部で仕事をする方が限られている、ですから阿部参考人の活動は非常に大きかったわけですけれども、そういうメンバーをこれから増やしていくということが、国連の中の存在感を示すという意味で重要なのではないかなというふうに思っております。 もちろん、事務総長を出すということも重要かもしれませんが、事務総長に至らなくても、事務次長、事務次長補、部長、そういったレベルで幹部として国連を引っ張っていくという人材があってもいいかもしれません。 さらに、国連は、PKO、平和維持活動というのを進めておりますが、そのPKOの部隊として自衛隊が参加する形は割と定着をしてきておりまして、私も非常に喜ばしく思っておるわけですけれども、事務総長の特別代表ですとか副代表、官房長、そういったPKOの執行部に就く日本の人も少ないというふうなことでございます。緒方さんは国連のUNHCRのヘッド、国連事務総長特別代表としてPKOのヘッドをしたのは明石代表と長谷川祐弘さんのみという状況ですね。これをこれからも変えていく必要があるのではないかというふうに思っています。 ところで、多国間外交は二国間外交と違っていろんなところで興味深いものがございます。これは是非知っておいていただくこともいいのではないかと思います。 一つは、参議院もそうでしょうけれども、会議体の外交であるということでございます。その会議体の外交も、国連ですとかG7、G20、そういう形で、総会があり理事会があり委員会があり、そこでどういう意思決定をしていくかというふうな会合もありますし、最近でいえばTPPもございましたが、気候変動、軍縮・不拡散、開発、人権、分野別に会議をしていく外交、これは多数の国々がその場で、一か所で集まってかんかんがくがく議論をするということでございます。 そこで何が重要になってくるかというと、私は選挙だと思うんですね。そして、そこには必ず表決という、投票という行為が関わります。そして、最終的に成果文書として決議や声明や宣言を出していくと。このためにはやっぱり、先生方でしたらばぴんとくるんだと思うんですけれども、多国間外交の運営のためにはいろんなスキルですとかノウハウですとかが必要になってくる。そういったところを日本としても蓄積していくことがとても大事なのではないかと思います。 まず、会議ではビューローというのが組織をされて、議長や副議長、ラポルトゥール、事務局で議題をどうやって決めるか、そして手続をどういうふうに運営をするかということがなされます。その上で、グループで非公式の討議から公式の討議をしていって、最終的には決議、宣言などの採決に至ると。 こういったところでの外交手腕を発揮できるような人脈、そして情報、根回し、貸し借り、説得力、人望、語学力、そういったものを蓄積するようなことが必要だと思います。そういった意味で、やはり政府、民間双方から人材を発掘、育成していくというふうなことも必要ですし、議会に関わる皆様も実力を発揮できる部分があるのではないかと思います。 時間が大分限られてまいりましたので、国連改革について簡単に申し上げますと、まず、安保理改革というのは現在進行形で、やはり非常に重要なものと考えております。議席を拡大するということ、そして我が国としては是非、常任理事国の地位になる。これは、その地位が大事だとか、その地位に就くことが日本にとってふさわしいという問題ではなくて、日本が安保理の中で常任の理事国としての役割を果たせば、恐らく非常に良識的な堅実な仕事をするだろうと、これは国際社会において非常に大きな役割を果たすに違いないというふうに確信があるからでございます。 しかし、今このタイミングを逃すと、なかなか日本を推してくれる国は少なくなるんじゃないかと思うんですね。なぜかというと、経済的な分担率のものもどんどんどんどん下がっているというふうなこともございますし、ちょっと過去の貯金をやや減らしがちなところもあるかもしれません。そして、日本が立候補するためにはアジアの地域から推薦されなければいけないんですが、アジアも今経済成長している国々が多くなって、自分がなりたいという国が増えてきているわけなんですね。そういう意味で、是非早い段階で安保理改革が進んで日本の常任理事国入りができるということが望ましいと思っております。 残りの二つは、国連の効率性を改革するためにマネジメントレベルでの改革をすることと、国連のシステム一貫性といいまして、同じ場所で仕事をしている国連機関はできるだけ共同で物事を進めるというふうなことによる効率化を図ると、こういうことは日本としても大口の拠出国としてやっぱり指摘するべき点じゃないかと思います。 どうも御清聴ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 これより質疑を行います。 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。 委員の一回の発言時間は答弁を含め十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願い申し上げます。 質疑及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。 まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 それでは、質疑のある方は挙手を願います。 三宅伸吾君。
○三宅伸吾君 自民党の三宅伸吾でございます。 四人の参考人の皆様、すばらしいお話をいただきまして、ありがとうございました。 まず、梅林参考人に一つ質問をさせていただきたいと思います。 この北東アジア非核兵器地帯、野心的な構想だと思います。ただし、ちょっと私、素朴な疑問がございまして、今年の一月六日に北朝鮮、第四回の核実験を実施をいたしまして、北朝鮮によりますと初の水爆実験だということでございます。そして、二月の七日には衛星と称しまして弾道ミサイルも発射をしたわけでございますけれども、こういう動きをしている北朝鮮をどのようにここでおっしゃっている地帯内国家に組み込むのか。普通に考えますとなかなか難しいように思うのでございますけれども、梅林参考人は、具体的にどのようなステップといいますか、構想をお持ちでいらっしゃるんでしょうか。
○参考人(梅林宏道君) 北朝鮮が、もちろん核実験というのは強く批判されるべきことなんですけれども、ずっともう一九七〇年頃から一貫して核抑止を追求するということをやっているんですけれども、その目的も非常に一貫しておりまして、アメリカの核の脅威に対して体制を守る、彼らはそういう表現をしませんけれども、北朝鮮の安全を保証するために核抑止力が必要だと、その論理は一貫をしております。 それで、非核兵器地帯というのは、まさにその核の脅威を取り除く方法であるということなので、考え方においては北朝鮮の要求を実現する一つの手段であるということは間違いないんですね。しかし、そのときに、北朝鮮は既に核を持ってしまっているという前提に立って非核兵器地帯を実現をするというのは、これまで存在をしている非核兵器地帯ではなかったような困難を前提とせざるを得ないということで、その困難性というのは、私たち、提案するときにも随分と議論をいたしましたし、簡単ではないということはあります。しかし、先ほど申しましたように、一貫して彼らの核保有の目的というのは明確であって、それを実現をするための方法として説得力を持ち得るというふうに考えています。 我々が開発している条約の中では、既に持っているものをいつの段階で廃棄させるか、その廃棄に不安を抱く日本とか例えば韓国なんかが、この条約で安心をするために、どういう装置を条約の中に組み込めば、日本も韓国も納得できるし、北朝鮮ものみ得るかという、北東アジア非核兵器地帯ならではの条約の細部というものがあって、そういうことも具体的に提案をしようというふうに考えています。 既存の非核兵器地帯、五つあると申し上げましたけれども、それぞれの地帯でやっぱり独特の解決しないといけない国際環境があるわけで、それぞれに特色があります。そういう意味で、北東アジアの抱えている問題も解決可能な特色だと。 北朝鮮の問題、とりわけ御心配のようなことはあるので、条約の中にいかにそれを安心のできるものにしていくかということも考えつつ提案をしているということであります。 よろしいでしょうか。
○三宅伸吾君 ちょっと中国の問題につきまして阿部参考人にお聞きしたいと思います。 中国の問題と申しますか、国際法の専門家として、軍事化という言葉があるかと思います。 例えば、昨年の九月の二十五日でございます、米中首脳会談がございまして、そのときに習主席は、南沙諸島で中国が行っている関連の建設行動は、特定の国を対象にしたり影響を与えるものではなく、中国は軍事化を追求する意図はないと、このようにおっしゃいました。そしてまた、オバマ大統領もこのようにおっしゃいました。習主席に対し、係争地域の土地埋立建設及び軍事化をめぐる重大な懸念を伝えたと。 軍事化という、これ日本語に訳して軍事化という同じ言葉を使っているわけでございますけれども、軍事化と言った場合にとても曖昧だと思います。 現に、本年の一月の上旬でございますか、中国の民間航空機が、南沙の人工島に民間飛行機が飛んでいった、着陸をしたというわけでございます。民間飛行機が行ったわけでございますけれども、民間飛行機が降りられるということは、軍用機も降りようと思ったら降りられる。そのうち、軍用機と民間飛行機の離発着の比重が徐々に増えていくということもあるのかもしれません。 こういうところで、中国は軍事化をしないと言っておるわけでございますけれども、どうもこの軍事化の意味がよく分からない。それから、オバマ大統領が懸念を伝えたという、習主席に軍事化をめぐる重大な懸念を伝えたといったわけでございますけれども、この軍事化という言葉を厳密に定義をしておきませんと、なかなか将来に禍根を残すんではないかと私は思うわけでございます。 国際法上、どのような意味でこの軍事化という言葉が使われるのか、もし関連する近い言葉等があれば御教示をいただけないかという質問でございます。
○参考人(阿部信泰君) なかなか難しい質問でございまして、そもそも中国の南沙諸島あるいは西沙諸島も含めて南シナ海の領有主張、これは私、非常に根拠が疑わしい主張だと思いますね。 過去の歴史のある時点において、それも、しかも大分昔ですけれども、地図の上にとんとんとんと九つ点を打って、この中全部中国のものだと、こういう主張は世界に類を見ない主張で、慣習法としての国際法上も現在の海洋法上もとても認められないものなんですね。今の海洋法条約においては、例えば海の海面の上に常に出ていて、そこがある程度の生活活動の根拠になっているもの以外は領土とは認めないと。沈んでいるものは領土ではあり得ないんですね。 ですから、仮に中国が、この海は、こんな主張はあり得ないんですけれども、俺のものだと言っても、そこにある、海の下に沈んでいるものの上に何を載っけても、これも海洋法条約で、人工的に上に造ってもそれは領土にはならないという規定があるんですね。ですから、あれは全く中国のものではあり得ないんですね。 百歩譲ってどこかの島が、既にある島が中国のものだとすれば、そこは中国の領土なので、そこに基地を造る、何をするかも、これは主権の行使なので自由なわけですよね。ですから、例のもう一つ別の東シナ海の問題では、国有地にするということでかっとなった人がいるわけですけれども、国有地にするとか基地を置くとか公的施設を置くということは、これは明らかに領有権という国際法上の権利に基づいて主権を行使する行為なんですね。 ですから、軍事化もまさにそうなんですね。アメリカは、ですから、それはするなと、こう言っているんだと思いますが、中国が仮にそうした、でも国際法上はそもそも根拠のないものに主権の行使をしているわけですから、それはあり得ないと。だから、現実上はそこに軍事基地ができてミサイルが置かれたりなんかすれば、なかなか人は近づけなくなりますから、これは非常に害は大きいということかと思いますね。
○会長(柳田稔君) 大久保勉君。
○大久保勉君 民主党の大久保勉です。 本日は、四人の参考人の皆様より専門的かつ示唆に富む事柄を分かりやすく説明していただきまして、感謝申し上げたいと思います。 実は、昨年の七月に財政金融委員会で国際機関を訪問しました。日本にあります唯一の国連機関であります国連大学、そして世銀東京事務所等を訪問しまして、日本の人材の面、財政の面での在り方等を議論しました。そのことの知見及び本日の参考人の説明に基づきまして、財政、人材に関して二名の参考人に質問したいと思います。財政面に関しましては阿部参考人、そして人材に関しましては阿部参考人並びに星野参考人にお願いしたいと思います。 まず、財政に関しましては、やはり国連自身が年間二十五億ドルということで極めて少ない予算であると。その多くが義務的分担金並びに任意拠出金ということでありますが、新しい試みはないのかということです。 なかなか国際機関というのは難しいかもしれませんが、例えば個人、財団、企業からの寄附はどうなんだと。若しくは、なかなか微妙な問題がありますが、国会でも、国際連帯税、航空券連帯税であったり国際的な為替取引、金融取引に関しましては連帯税を掛ける、こういった枠組みで新たな独自財源を国連が持つと、こういったことで国連を強化する、こういった話があるのか。 三点目は、これは世銀等で行っておりますが、信用力が高いということで国連自らが資金調達をすると。日本国の信用力よりも高いですから、非常に安い資金を調達して、それで資産運用をすると。よく資産運用に関しましてはアメリカのハーバード大学、エール大学等で行っておりますが、こういったことで収益を稼いで、それを使って国連の活動にすると、こういった試みはなされているか、このことを質問したいと思います。 あと、人材に関してちょっと今日の説明で合点がいかなかったのは、日本人に関しましては、優秀、有能、実直な人材の供給源ということで、これは、もしそうだったら非常に評価すべきでありますし、もしそうじゃなかった場合には現実の課題に対して何ら対策ができないと、こういったことで質問したいんです。 一方で、星野参考人の現状分析としましては、我が国は過小代表と。つまり、人材は優秀なのにどうして過小ということになっているのかと。ちょっと私は合点がいかないです。 外務省の資料を見ますと、日本の出資が九・六八%、それに対して職員数が、日本が八十三名、ちなみに米国は三百五十五名、全世界で七位です。二千九百一名のうち八十三名というのは全体の三%、つまり出資の三分の一以下という状況です。ですから、過小という部分がありますが、どうしてこういった状況が発生しているのかと。 一応、外務省のアクションプランによりますと、課題としましては、日本人は海外就職、赴任や留学を望まない、内向き思考、あとは役所とか会社にいた場合にキャリアパス上問題である、終身雇用ですから、なかなか国連に行けないと。更に問題点は、若手日本人の送り込みに関しては、JPO派遣者の低迷、そして国連事務局YPP試験の低い合格率、二〇一一年から二〇一四年まで僅か一名と。ですから、本当に人材はいいのか、又は日本国が適切な人材を送り込んでいるのか、こういった問題意識を持たないと恐らくは改革はできないんじゃないかと、こういった問題意識です。 ですから、実務家としまして阿部参考人、そして大学で人を送り出す立場、特に星野参考人に関しましては海外の大学でも教えている、若しくは研究機関にも知見がありますから、是非この際、外務省、役所の目を気にせずに率直な意見をください。そうしないと改善ができないと思います。 ちなみに、参議院におきましては、TICADのときに世銀の事務局長をここにお呼びしまして意見交換をして、出資金に対して日本人が少ないと、これはおかしいんじゃないかということで決議をしました。こういったことで実際に日本人の幹部が増えたと、こういったこともありますから、是非この場を利用してもらいたいと思います。 以上です。
○参考人(阿部信泰君) 最初に財政の件でございますけれども、個人が国連などにお金を出すと、これは実際にやっている方もいらっしゃるんですけれども、ただ、制度的にはそういう寄附あるいは国からの任意拠出というものは国連あるいは国際機関の中核的な業務に使ってはいけないという逆の規制がありまして、したがって、その中核的な業務を増やそうとすると、どうしても義務的拠出を増やしてもらわないとその組織は動けないと。もちろん、そのほかの追加的な任意拠出でやるものはできるんですね。 そこで、そもそも、それじゃ、各国からお願いをして義務的拠出を出してもらっているんじゃ駄目じゃないか、国連がもう国の政府のように自分で税金を取ったらいいじゃないかと、これはそういうアイデアもありまして、アメリカのトービンさんという教授がしばらく前に出したアイデアで、トービン・タックスと俗に言われていますけれども。あるいは最近でいうと、航空機の航空券を買うときに税金を徴収したらどうかとか、いろいろアイデアがあるんですが、実現はなかなか難しいと思いますね。 というのは、それを実現するためには国連で決めてやらなきゃいけませんが、決めるときには常任理事国が大きな力を持っていますね。実際上は、例えばアメリカという国は、そういうふうに国際機関にある意味では徴税権という主権を譲り渡すということについては原則の問題として非常に反対が強いんですね。ですから、これはなかなか垣根が高いと思います。 それから、優秀な人材。確かに星野先生がおっしゃるとおり、日本人は真面目でよく働くし、実は能力も非常にあるんですけれども、なかなか国際機関の組織の中に行ってみると、みんな物すごい勢いで競争して動き回っていまして、自分の能力をいかにひけらかして、人に見せて、私はこんなことができるんだ、こんなに知っているんだということをやれることによって採用され、中でのし上がっていくと。これはなかなか日本人は苦手なんですね。こういう島国で、非常にお互いよく知っている社会で育っているものですから、そんなこと言わなくてもちゃんと、あいつはよくやる、あいつはよくできるというと、みんな分かってくれて、ちゃんと日本の社会は上が引き上げてくれるんですね。国連はそういきません。 ですから、そういう意味においては、最近若干日本の教育も少し変わっていて、もう少し自己プレゼンテーションを勉強しようというようなこともやっています。それから、日本でもどんどん企業も外国の企業に買収される企業もあるし、あるいは日本から外へ出ていく。そういうところで働くためにはサラリーマンもやっぱりそういう自己主張、自己顕示もできなきゃいけないということで、そういった類いの教育、人材をつくるということも私は一つの視点ではないかなと思います。 以上です。
○参考人(星野俊也君) 大変貴重な御質問をありがとうございました。 既に阿部参考人の方からも御意見がありましたけれども、国際機関というものがなかなか日本的なシステムではなくて欧米のアングロサクソン的な組織形態で、人事も、空席があって、そこに応募をして、そして国際的に競争するというふうなシステム、これになかなか日本の学生たちも普通は慣れないのかもしれません。 そして、あと三つぐらい要件があるんですね。学歴で修士以上、そして実務経験が一定程度あるということ、当然のことながら語学力と、こういうところでちょっと競争力が足りないということがあるのではないかというふうに思っています。 その意味で、大学の役割ということでございますと、私は、現在はちょっと大学のマネジメントをやっておりますが、教育研究は国際公共政策研究科というところで、国際機関への人材の輩出というものも意図した研究科におりましたものですから、できるだけ海外での、国連機関でのインターンの機会を増やすですとか、またディベートですとかプレゼンテーションとかそういうようなもののスキルを磨くこと、さらには国連に向けての履歴書の書き方の指導とかもしている。一部の大学ではそういうことで、関心のある学生たちに対してはできるだけのサポートをするというふうな形に変わってきているのではないかなと思います。 ですから、二つの段階がございます。つまり、学生たちも含めて、人材に、国連機関に対して働くというインセンティブというか興味を持たせるということと、そして実際応募した者に関しましては、今度は競争力を付けるという二つの段階での努力というのは必要かなというふうに思っております。
○会長(柳田稔君) 山本博司君。
○山本博司君 公明党の山本博司でございます。本日は、四人の参考人の皆様、大変貴重な御提言、御意見をいただきましてありがとうございます。 阿部参考人、淺田参考人、そして梅林参考人のお三方に、核軍縮につきまして二点お伺いを申し上げたいと思います。 二〇一〇年のNPT運用検討会議から五年間、日本はこの軍縮・不拡散イニシアティブ、NPDIと呼ばれておりますけれども、これを主導しながら軍縮外交を進めてまいりました。今まで唯一の戦争被爆国という日本独自の立場に加えまして、昨年のNPT運用検討会議では初めてこのNPDIというグループの一員として活動したわけでございますけれども、今回の会議でも私は一定の役割を果たしたのではないかと評価をしているわけですけれども、こうしたNPDIの取組というのが、今回非常に溝が深まったと言われておりますけれども、核兵器国と非核兵器国、この間の懸け橋、橋渡しを、なることを望むわけですけれども、参考人にお伺いしたいのは、今後のことということでお伺いしたいと思います。 次回のNPT運用検討会議、この五年間、今後もこのNPDIの取組を日本の軍縮外交の軸に据えて展開していくのか、それとも、ほかに重視をした点、いい方法があるのかどうか、この点をまず第一点、お伺いをしたいと思います。 それから二つ目の質問ですけれども、先ほど参考人からもお話ございました核兵器の非人道性の観点から御意見をいただきたいと思います。 核兵器禁止条約も含めまして核兵器のない世界に向けた取組のうち、現在この核兵器の、先ほどもございましたけれども、非人道性に注目した議論、これが活発に行われておりますけれども、今、日本は、先ほどもありましたように、安全保障上の観点から、これを全面的に推し進めるというこういう状況には至っていなくて、大変慎重に軍縮政策を今進めている段階ではないかと思います。 しかし、日本はもう唯一の被爆国でございますから、核兵器のこの非人道性を最も理解している国だとも言えます。その点ではもっと積極的に発信をし、核兵器のない世界に向けた法的な枠組み、これの国際的な合意形成、これを促進することが私は必要ではないかと思いますし、公明党も様々な形で主張しているわけですけれども、この核兵器の非人道性の議論ということに対して我が国がどのような立ち位置をしていったらいいか、この二点、それぞれ質問したいと思います。
○参考人(阿部信泰君) ありがとうございます。幾つかお答えしたいと思います。 一つは、このNPDIで日本が進めているイニシアティブをこれからどうするかと。これは私、幾つか、もう何回か声明を出していまして、いいことがいろいろ書いてあります。ですから、これは私は続けていいんじゃないかと思いますね。 例えば、その中に一つ出ているのは、核軍縮を多国間で進めてほしいと、何もアメリカとロシアだけが減らすんじゃなくて、ほかに中国もイギリスもフランスも持っているでしょうと、そりゃ量はこんなに違うかもしれぬけれども、こっちがこう減らすならこっちも少しずつでいいから減らし始めていいんじゃないでしょうかというふうなことをやって中国も巻き込むと、これは私は非常にいいポイントだと思いますね。 それから、翻って、日本としても考えなきゃいけない問題があります。これは、この項目の中にもう一つ、核兵器の役割を低減するという目標があります。つまり、いろんな国際情勢、緊張したとき、緊急事態にどうやって対応するかというときに、すぐ核兵器を使おうということではなくて、できるだけ核兵器を使うことは減らしなさいということをやる。これは実は日米同盟関係においても非常に大事なことなんですね。 実は、アメリカ国内においても、オバマ大統領は核兵器の役割は低減するということを就任早々言いました。これは是非とも、アメリカのそういう政策にも一致するし、日本の立場からいっても、それは最後は核抑止力に依存するかもしれませんけれども、できるだけ、でも使う道は減らしてほしいんだということを具体的にやはりやって、日本もちゃんとこのNPDIの、自分でも努力しているということを私は示すことも非常に大事だと思いますね。 それから、例の人道的側面の議論でございますけれども、私は、これは人道的側面、非常に悲惨な結果を招くというのを強調するのは非常にいいスタートだったと思うんですけれども、残念ながらそれが、そうだそうだというのでわあっとNGOその他が集まってきまして、核廃絶に持っていこうと、核兵器禁止条約に持っていこうというふうに、流れになっちゃったんですね。これが実はそういう意味において今の分断状態が生じちゃったんですね。兵器を持っている国はすぐ全廃で、禁止条約やるのは無理だということになっちゃったんですけれども。 実はこの問題にはほかの側面もありまして、当初、非人道性を言ったときにはもう一つ強調された点がありまして、核兵器を含めて全ての面において国際人道法は適用されるんだと、こういう原則も強調しております。 つまり、国際人道法というのは、非戦闘員を殺しちゃいけないんだ、無差別な攻撃はしちゃいけないんだと、あるいは、戦争だからそれはあるかもしれぬけれども、被害は最小限にするよう努力しなきゃいけない。幾つかこの人道法の原則があるんですね。それを強調して徹底してくださいということを言えば、現実的に核兵器は非常に使いにくくなるんです。だって、あれだけの被害が出ますから。一旦、そこにいる人は全部無差別に殺されるわけですから。これはすぐ、あなたは人道法に反するじゃないかと言うことができるわけで。 そういう意味において、私はこれは非常に実際上も核兵器の使用の機会を減らすいい議論だなと思ったんですけれども、残念ながら議論はそっちに行かず、禁止条約の方に向かっちゃったんですね。でも、これは私は諦める必要はないので、日本はその点も議論していくべきだと思いますね。 それから、実際我々が、核兵器を減らしてください、禁止してくださいと言っていてもなかなか動かない。我々が核兵器が落ちてこないことを確保するためには、最後に、それを持っている指導者がボタンを押さないようにすることですね。これは、ですからタブーを強めればいいんですね。タブーを強めるという意味においても、使ったらこんなひどいことになるんですよ、あなたは世界史の中で核兵器を使った指導者として残りたいですかと、これをやれば私はかなりまた抑止ができると思うんです。そういったところでもいろんな使い道が私はあると思います。済みません。
○参考人(淺田正彦君) ありがとうございます。 まず最初に、人道的なアプローチとの関係でお話ししたいと思いますけれども、今、阿部参考人がおっしゃったことに近いところがありますが、非人道的であるということを強調し、その結果として、核兵器を使用すればそういう結果になるので核兵器は全廃だという、このやや私から見ると単純な結び付け方というのが現在の混乱を招いているというふうに思います。 核兵器の使用の結果が非人道的であるということは誰も否定しないわけでありまして、日本人はもちろんのことですし、アメリカ政府も否定しておりません。これを否定しているという国は私はないと思います。ですから、それをどのように次のステップに持ってくるかというところにおいてアプローチの違いがあるというふうに思います。 人道的アプローチを追求する国というのは、あらゆる場合に使用を禁止するというふうなところに行くわけで、そこで分かれてくるわけですね。西側諸国、オーストラリアを中心に、私の最初のお話でも申し上げましたけれども、西側諸国を中心に出している共同声明というのも、核兵器の使用が非人道的であるということを認めながら、しかし、あらゆる場合に即使用禁止だというところが引っかかって、そこで意見が分かれているわけでありまして、その辺りで人道性の問題というものを追求するというところは日本の外交という意味でも今後も続けていっていいのではないかと。しかも、唯一の被爆国というふうなことでありますから、その点の主張というのは今後も続けていっていいのではないかというふうに思います。 核兵器の使用と、それから使用の悲惨さというものと、それから核兵器を使った抑止というこの関係なんですけれども、この辺りは、アメリカもその辺りの主張はやっておりまして、核兵器が非人道的であるということとそれから核抑止ということというのは必ずしも両立しないというわけではないと。核抑止というのは、核兵器を使用するためではなくて、核兵器を持って威嚇をして、それによって相手方の攻撃を抑止すると。抑止すれば当然核兵器を使用することもないわけですから、必ず矛盾するというわけではないわけでありまして、しかし、その単純な論理を推し進めて、非人道的だから絶対に使用してはいけない、ないのが一番いいというふうな形で論理を進めると、今日にあるような核兵器国とそれから非核兵器国との間の分断につながるというふうに思います。 この分断の恐ろしさというのは、例えば、先ほど梅林参考人がおっしゃいました公開作業部会を設置するという提案に対して、核兵器国は全て反対しておりますね。そういうふうな状況になってくるというのはまさに逆効果ではないかというふうに思います。 私のもう一つのお話ですけれども、NPDIをどうするかということなんですけれども、星野参考人の話にもありましたが、やはりマルチの外交というのは一国ではなかなか聞いてもらえないというところがあります。私の限られた経験でも、日本は世界的にはかなり大きな国だというふうに見られておりますけれども、一国が主張するのとそれからグループが主張するのとではかなり扱いが違うわけですね。そういう観点からしますと、日本があるグループの一員となって、そのグループの中で議論したものをグループとして発言していくというのは、全体からの受入れという観点からしますと、一国でやるものと比較すると全然違うというところがあります。その点で、NPDIを軸に今後も外交を進めていくということについては正しいと思います。 もう一つNPDIのいいところは、メンバーがかなりいろんな国が交ざっていると。日本以外の国としますと、例えばドイツとかあるいはオランダのようなNATOに参加している国が入っていますし、同時に、非同盟の国として、たしかメキシコとか、あるいはUAEといった軍縮を推進する国とか、あるいは完全に途上国の一員であるというふうな国も入っておりまして、そういう中でいろいろ議論を進めていって何らかの方針を出して進めていくというのは、全体の中で日本が一国で何かを言うというよりも、日本の主張をもんで、その後にその主張を出すという観点からもいい方向ではないかというふうに思っております。 どうもありがとうございます。
○参考人(梅林宏道君) ありがとうございます。 御質問の第一点は、NPDIを今後どうするかという御質問だったと思います。 結論的には、私もNPDIを残して活用するというふうにすべきだというふうに考えています。ただ、NPDIの中でどういう議論をするかということがやはり非常に問われる情勢になっていて、これまでのNPDIではなくて、もう少しNPDI内部の議論が深まらないといけないというふうに思っています。 NPDIと比較すべきといいますか、一つのお手本として、新アジェンダ連合という、現在は六か国ですが、積極的に核軍縮を主張する国家グループがあります。このグループが発足するときは外務大臣声明という形で、まず自分たちは何をするかということから始まったんですね。その最初の、このグループは何かという自己規定みたいなものがあって、それで、それをベースにしてその後の議論を蓄積をしています。 NPDIはそういう意味でどういうグループなのかという定義は、大きく言うと、私は二〇一〇年のNPT再検討会議で非常にいい合意ができたと。その合意を前進させるために、いろんな考えを持った国、それから地域のバランスもいいようなグループが集まったということであって、二〇一〇年合意というのがある意味で共通ベースになっているようなグループではないかというように思うんですね。 その二〇一〇年合意の実施をめぐって、現在の厳しい状況が生まれているわけです。核軍縮が全然進まない、二〇一〇年合意が実行されていないというふうに考えるグループと、少しずつ進行しているじゃないかというグループの分岐というのがこの五年間で蓄積していって、その中に非人道性、これは後にもう少し述べますけれども、そういう議論が重なっているということがありますので、二〇一〇年合意だけをベースにするんではなくて、それを実行させるためには、NPDIとしてはもう一歩、どこを共通認識にするのかということが問われていると。 そこがクリアされると、先ほど来ありましたように、本当にいいバランスの国が集まっている。NATO加盟のカナダとかドイツとか、そういうところ、オーストラリアも入っていると。フィリピンが入って、メキシコという非人道性問題で先頭に立って法的枠組みの議論をすべきだと考えている国も入っていると。ですから、NPDIの議論を深めるということは、日本政府がもっと更に大きなところでブリッジの役割を果たすという、その最初の議論の場として機能し得るんではないかと。 ただ、そこがこれまでのところでは、やっぱりできるだけそこでの合意レベルで動こうとすると、非常に薄まった弱い合意にしかすぎなかったので、現実的にはNPDIが何か大きな働きをしたというふうには私は評価されていないというふうに思うので、先ほど言いましたように内部議論が問われている。しかし、そこを活用するという価値はあるというふうに思っています。 非人道性の問題ですが、単純に非人道性の議論を核兵器廃絶の議論に直結させようという議論というのはほぼないというふうに私は思っています。核兵器廃絶について非常に積極的な国であっても、非人道性を基礎にしてでもステップが要る、そのステップのビジョンを出せと。ベンチマークと時間枠という二つの概念が大事になっておると思うんですけれども、何をいつまでにやるかというような議論に踏み込まないといけないんではないかというふうに思っていて、禁止条約の枠組みというのも非常に千差万別です。 一概に、何というか、近づかない方がいいというような議論を決してしていなくて、例えば国連文書にもなっている核兵器禁止条約という化学兵器禁止条約を倣ったようなドラフトといいますか、一つの案が国連文書になって出回っているんですけれども、それを読んでも、物すごく多様な選択が可能なように、つまり交渉の過程でストップ掛けられるし、どこまで、いつやるかということに関しても、その都度、その次の目標を設定できるというような柔軟な構造が配慮されているようなものでありまして、ですから、非常に単純に法的議論をするとすぐに禁止だという、そういう議論にはとてもなっていなくて、そこに踏み込んでいくのをなぜ恐れるのかというのは私にはもう理解ができない。十分な議論の余地のある案が出ていると、そういう議論に入ろうじゃないかというのが作業部会で進行しようとしていることだというふうに理解すべきだと思います。
○会長(柳田稔君) 市田忠義君。
○市田忠義君 日本共産党の市田忠義です。 大変、今日は貴重な御意見をありがとうございました。阿部参考人と梅林参考人に二つの問題についてお聞きしたいと思います。まず一つ目は、北朝鮮に対する対応、もう一つは、今議論になっています核兵器のない世界をどう実現するかという二つの問題なんですけれども。 まず、北朝鮮問題ですけれども、北朝鮮、一月の核実験に続いて先日は事実上の弾道ミサイル発射をしました。今こそ国際社会が一致をして、政治的、外交的努力を強めて、北朝鮮に核兵器、ミサイルを放棄させると、そのための実効ある措置をとる、これは衆参両院でも全会一致でそういう決議が採択されました。 ただ、この場合、北朝鮮に対する制裁は、制裁のための制裁ではなくて、あくまで北朝鮮を対話のテーブルに着かせると、こういう目的を明確にすることが私大切だと考えます。具体的には六か国協議の再開、これが非常に重要だと思うんですが、六か国協議の有用性、重要性ですね、それを通じた問題の解決の可能性について、お二人の参考人、どのように考えておられるか、これが一点です。 それから、核兵器のない世界をどう実現するかという問題で、世界全体の趨勢から見たら、核保有国は別として、核兵器禁止条約のような法的拘束力のある条約、これの少なくとも交渉開始を始めるべきじゃないかと、これを求める声が高まっておることはこれは事実、客観的な事実だと思うんです。国連事務総長もその五項目提案の中でかねてから核兵器禁止条約交渉の検討を訴えてこられましたし、最終文書の採択には至らなかったけれども、昨年のNPT再検討会議の最終文書の最終案ですね、これ見てみますと、核兵器のない世界の実現に必要な法的規定を含む効果的な措置の特定や策定ということが明記されて、先ほど梅林参考人も言われたように、十二月の国連総会では法的措置を実質的に取り上げる作業部会を設置するという決議がメキシコ主導で採択をされて、日本はこの決議に棄権はしたけれども、たしか作業部会には参加することになっているはずです。 確かに、核保有国の抵抗は強いでしょうけれども、圧倒的な国際世論と多くの国々は、やっぱり核兵器のない世界をつくっていくためには、核兵器の全面禁止と廃絶を義務付ける拘束力のある条約、核兵器禁止条約の具体的検討を始めるということが必要だというふうに、国際世論はそう考えていると思うんです。 そういう圧倒的多数の声に核保有国が押されて、たしか一昨年、アメリカとイギリスは初めて核兵器の人道的影響に関するウィーンで行われた国際会議に参加しましたし、これまでこういう議論を拒否してきたフランスの代表がNPT再検討会議で理解を表明したというのはやはりそういう力だったと思うんですけれども、この法的拘束力のある核兵器禁止条約の具体的検討の必要性について、これは諦めちゃうのか、やっぱり核兵器と人類は共存できないわけで、粘り強くそういう世論を一層強めていくということが私は必要だと思うんですが、しかも、こういう禁止条約の検討が北朝鮮の核問題の解決にもプラスになるのではないかというふうに私は考えるんですが、その点について、お二人の御意見、お聞きしたいと思います。
○参考人(阿部信泰君) まず最初に北朝鮮の問題ですけれども、突き詰めて考えると、北朝鮮と交渉によって核兵器をやめさせるためには、早い話、北朝鮮に、あなた何が欲しいんだということを聞いて、分かったと、じゃ、これやりましょう、その代わりあなたちゃんとやめなさいと言うしかないんですが、これは実は今までやったんですね。九四年の合意もそうですし、共同声明もありますしね。基本的には北朝鮮は経済支援が欲しい、食糧支援、エネルギー支援。それから、アメリカに、そもそも北朝鮮をちゃんと国家として認めて、その上で平和条約を結んでほしいと、それから核攻撃その他の攻撃はしないという約束をしてほしいというようなことですね。 これは、実はアメリカはやりましょうと言ったんですよね。ところが、今まで少なくとも三回、北朝鮮は食い逃げをしちゃったんですね。経済支援とか何かをもらっただけもらって、後で何かいろいろ文句付けて、これでやめだと言ってやめちゃったんですね。これやっていると、なかなかアメリカその他はまたやりましょうということにならないんで、そこをどうやって克服するかですね。 それからもう一つは、北朝鮮が要求しておる条件に、今申し上げたことのほかに、余り言われていませんけれども、彼らは、韓国、日本がアメリカの核の傘から出てください、自分もやめるんだからということを言っていますね。これは先ほど梅林さんが言っていた、まさに北東アジア非核地帯と同じような結果になるわけで、その要求もあるということを日本は忘れてはいけないと思いますね。 それから次に、核兵器禁止条約ですが、私は、核兵器のない世界を目指すというのであれば、どうやったらそういうふうにいって、しかも核兵器がない世界ができるということは、同時に禁止ですよね。ですから、それはそのときは当然禁止するんだということなんですけれども、同時に、それはどういうふうな条約にする必要があるかと考えなきゃいけないですね。 というのは、これはロシアの専門家が言ったんですけれども、核兵器のない世界とオバマ大統領が言ったけれども、これは今の世界マイナス核兵器ではないんだと。つまり、今みたいに方々で戦争していて、殺りくしていて、いきなり核兵器をやめて平和になるかと、そんなことはあり得ないんですね。 したがって、世界平和をどうやって維持するのかという仕組みを、今の安保理じゃ駄目なんで、もっと強化して、どうやったらできるのか、あるいは、核兵器をなくしたときに誰も持っていないということをどうやって確かめるのか、あるいは、たまたまどこかの国が私やっぱり造ると言ったときにどうやってそれを止めるのか、そういうことを全部考えて案を作って用意しておかなきゃいけないですね。私はそれを始めたらいいと思いますね。 残念ながら、今は、持っている国はそれは嫌だと言ってみんな逃げちゃうんですけれども、大分これは食わず嫌いのところがありまして、中を見ないで、梅林さんが言ったみたいに、いろんな案があって、ちゃんとそこには段階的にどうやっていくかと書いてあるんですね。そういう議論は私はしていいと思いますね。
○参考人(梅林宏道君) ありがとうございます。 二つの御質問なんですけど、北朝鮮の問題を議論をする場として六か国協議をどう考えるかということだと思うんですね。 私は、六か国協議というのは、唯一とにかくこの地域でまだ命脈を保っているこの問題を協議する場だというふうに考えます。 国際社会もそういうふうに考えていて、二〇一〇年のNPT再検討会議の最終文書も、それから今回採択されなかったとはいえ、その直前で合意寸前までいっていた文書においても、朝鮮半島の非核化の問題というのは議題に必ずなっていて、そのときの一致した要求は、六か国協議を復活して、そこでの協議で既に合意していることをもう一度再確立せよというような要求になっているわけですね。ですから、国際社会もそれを求めていると。 現在、ある意味で、それを再開するきっかけをどうやって見出すかということであって、そのための提案として、私先ほど申し上げましたように、これまでの議論のぶり返しにならないようなフレッシュな一つのものをテーブルにして、それを議論をするということで、もう一度、これまでの失敗を、おまえが悪かったとか、この合意が駄目になっているとかという、その原因追及をやる泥沼に戻らないためのその議論の準備をせよと、それをもって六か国協議を呼びかける、そういうイニシアティブが必要だというふうに思っています。 北朝鮮はアメリカ、アメリカと言うんですけれども、実際、アメリカの果たす役割は非常に強いと思うんですけれども、アメリカにその場にもう一度戻らせるためにも、やっぱり日本、韓国の果たす役割は非常に大きくて、そのためには、それぞれの国のアメリカ頼みではない地域に対するビジョンというんですか、こういうふうにして北東アジアの非核化を実現するというような構想が必要になっているというふうに思います。 核兵器禁止条約の議論というのは、もう本当にどこかで始めなければならない議論なのであって、それを回避する説得力はないと思うんですね。議論をすれば、すぐにそのことを実行するというような簡単な問題ではないことは明らかなので、とにかくどういうアプローチがあり得るのかということのテーブルにこれはもう誰しも着かないといけない、そういう段階だと思うんです。 それを回避していると、私は、今、核兵器の不拡散の一番の危険というのは、結局核軍縮は進まないじゃないかと。先ほど、六か国全てやっぱり将来計画で相当な予算をつぎ込んで核兵器の永続を狙っているということは、そういう準備をするというのはそれぞれの国の事情であると思うんですけど、とにかくそれが目立つわけですね。そうだとすると、大国たらんとする途上国というのはまだまだありまして、今は北朝鮮問題ばかりを言っておりますけれども、民主化が必ずしも安定していない大国が、もう一度自分たちも、核兵器がなくならないのであれば核武装に進むべきだという議論というのは起こり得ると思いますね。 ですから、軍縮に対するきっちりとした前進を見せなければ、むしろ核拡散が進行するということであって、核兵器禁止条約というのは議論し始める、遅きに失した、絶対にやらないといけないことではないかというふうに思っています。
○会長(柳田稔君) アントニオ猪木君。
○アントニオ猪木君 元気ですか。ということで、今日は本当にありがとうございます、参考人の皆様。 先ほど浜田先生の案内で、パレスチナ、どこだったですか、最近出てこなくて、アッバス議長ともお会いして、北朝鮮に向けてのメッセージをということでちょっと話をさせてもらいましたが、先ほどから北朝鮮問題が出ております。 私も三十回ですかね、前回訪問させてもらった中でほとんどの要人とも話をし、できるだけ拉致問題とそれから核の問題、私はスポーツ交流が基本なものですからその辺の中での。しかし、飲みあるいは食事の中で、雑談の中にそういう話を織り込むと、かなり本音の話が出てくる。その中で、やはり北朝鮮は、今、日本で報道されていますが、どうやって圧力を掛けていくか。でも、これはいつも言うことなんですが、向こうのカダフィあるいはサダム・フセイン、あの人たちを見てくださいと、あの人たちがアメリカの言うとおりにしたらみんな潰されてしまいましたという話をよく聞かされます。 ですから、我々は核は絶対どんなことがあっても造るんだと言い切っていましたが、今回こういう形になって、水爆なのか原爆なのかその辺がはっきりしませんが、その辺の北朝鮮に対する今一番の交渉をしっかりしなきゃいけないんですが、実際にはそこのところ、国連というのは、阿部参考人あるいは星野参考人にお聞きしたいんですが、国連としてのきちっとした役割が見えてこないんですが、その点についてちょっとお聞きしたいと思います。 もう一つ、やはり今、中東、いろいろなところでテロ行為が日常起きておりますが、一つは平和のメッセージという、日本が唯一、その辺、被爆国ということでメッセージが送れるのではないかというふうなことですが、しかしそれは実際には日本の国内で我々が言っているだけで、そのやはり思いはほとんど外国には伝わっていないというのが私がいろんなところを歩いた実感です。 そんな中で、今後、これらのまた技術が進んでいくであろうし、小型化、あるいは水爆は原爆の九百倍ですか、これは、威力というのは。そんなものができてきたときには、もうそれこそ核戦争じゃないけど、その辺のために今回の条約というのはもっと早く早く進めるべきだと思いますが。 だから、一つ言えることは、要するに常任理事国の在り方というのを、先ほどもお話にありました、ここをはっきり日本としてもあるいは世界に呼びかけてこのシステムを変えていかなきゃならないと私も思いますが、まず最初に、阿部参考人あるいは星野参考人、ちょっと国連の在り方についてお聞きしたい。
○参考人(阿部信泰君) 国連の役割、実際には国連の事務総長が動く場合があるわけですけれども、実際、たしか去年のある時点で潘基文事務総長が北朝鮮に行くんだという話が大分流れたことがありますね。何らかの形で潘基文事務総長が仲介の役割を考えたのかもしれませんが、実際上は、しかしながら事務総長というのは拒否権を持っている常任理事国の意向に真っ向逆らってはなかなか動けないですね。それは、潘基文さんは今もう二期目で再選は目指さないと言っていますので心配ありませんけれども、ほかの場合は大体再選してほしい、そうすると安保理で認めてもらわなきゃいけない。五常任理事国が賛成してくれない、完全に敵に回しちゃったら自分のもう再任はないということですからね。そういう意味において、なかなか潘基文さんが自分の完全なイニシアチブで北に行くというのは難しいかと思いますね。 結局、やっぱり北の核は、北朝鮮自身がやめようと思わないか、あるいは中国が本当に真剣にやめろと言ってやるかしない限り、すぐ止まる見通しはないんじゃないでしょうかね。ある程度もうどんどんどんどんやって、しかしこれは何の役にも立たないということが分かったときにやめるかもしれませんけど、残念ながらそういう状況かと思います。
○参考人(星野俊也君) 国連には二つの側面があるというお話をさせていただきましたが、国際的な政府間の政治機関としての安保理、あるいは国連といったときには、どうしてもその国の意向というのが非常に大きく反映されて、その意味で、例えば中国、ロシアと国を挙げてしまいますけれども、が例えば拒否権を行使するというふうなことがございます。 例えば、でも安保理の中でもフランスは、拒否権というのはやっぱり自制すべきだということで拒否権の制限論というのを出していて、その今支持国を募っているような状況で、安保理改革の中で拒否権を制限するというふうな動きというのも見えてきている、そんなところは少し評価すべきかなというふうに思っています。 北朝鮮に関して、今度は政治機関としての国連ではなくて国連本体、何というかな、国連自体の、国連の目的を達成するという意味での国連職員としての活動の中では実は一つ興味深い動きがございます。それは、人権に関しての特別報告者で北朝鮮問題を担当している、これはダルスマンという者ですけれども、北朝鮮の人権状況を今調査して、そして金正恩体制が北朝鮮の人権侵害、これは人道に対する罪に関わるほどに深刻なのではないかというふうな今問題提起をしています。その意味で、これを実は安保理で取り上げて、北朝鮮問題を国際刑事裁判所に付託するというふうなアイデアも出されているぐらいなんです。 しかし、ここでまた政治機関としての安保理の方の動きになり、つまり、金正恩政権の体制下のものを国際刑事裁判にかけるという付託を安保理決議として出すかどうかというふうになったときには、多分、ロシア、中国が反対をするというふうな形ですね。つまり、人権問題を安保理の場で議論したくないというふうな形になってくる、そういうジレンマがちょっと伴います。 ですから、北朝鮮に関しましては、実は今、大量破壊兵器の拡散という観点からの問題提起が多いんですけれども、実はこの人権という観点からのアプローチというのも実は一つの圧力になって、これは北朝鮮の指導部としてはかなり心配というか気になっている部分ではないかなということです。 ですから、そういう形でのアプローチの仕方はあるということは御指摘させていただきたいと思います。
○アントニオ猪木君 淺田参考人にお伺いしたいんですが、中国の軍縮大使の発言ということで、この中に、プルトニウムの、日本、先ほどもお話にありましたが、十・八トンと。この辺の要するに核の廃棄物というか、逆に廃棄物が使い方によってはそういうような原爆の材料になってくるという部分で、この辺についての日本の、世界がそう見ているとしたら日本はどういう対応をしていけばいいのかと。
○参考人(淺田正彦君) ありがとうございます。 プルトニウムに限らずウランもそうですけれども、平和利用と軍事利用の双方があって、濃縮度の違いによって原発の燃料にもなるし原爆にもなるということなんですけれども、日本としては、当然日本が持っておるプルトニウムが平和利用であるということは誰も疑わないわけでして、しかもIAEAの様々な査察の結果として、日本の核物質には全て平和利用のためだというお墨付きもあるわけですね。しかしながら、物としてのプルトニウムやウランというのは、意思さえ変えれば核兵器になり得るものだという事実もあるのはあるわけですね。 その部分を指摘された場合にどのように日本が反論できるかということなんですけれども、日本の国内で平和利用だというふうに言って、IAEAもそういうふうに言っているというだけで果たして万人が納得するかといいますと、全ての国が日本に対して友好的なわけではないわけでして、日本に対していろんな考え方を持っている国があるわけで、そうすると、そういう可能性について指摘するということは当然あるわけですね。そのときに、果たして日本が説得力を持ってあなたの言っていることは違うということが言えるかということなんですね。それはIAEAを出しても、日本に対していい感情を持っていない国というのは、IAEAが言っても本当にそうかというのは分からないということを言えば、これはなかなか本当に説得的かどうかというのは分からない。 そうすると、事実として彼らが、傅大使が主張しているのは、日本のプルトニウムというのは、合理的な削減といいますか、消費の、何といいますか、スキームもない中で持っていると、しかも再処理をするということになりますとどんどん増えていくと、これはどう理解するのかというところを問題にしているわけですよね。 そうすると、残された唯一の解決策というのはそのプルトニウムを減らすというしかないわけで、元々プルトニウムを原発の燃料としようということで、いわゆる核燃料サイクルという方針でやってきたわけですから、元々のアイデアの方にどんどん進んでいって、何といいますか、事実としてそういったものを消費しているということを示せば、これは大分変わってくると思うんですね。そういう意味では、プルトニウムの消費という形で、例えばプルサーマルとかそういう形の消費というのを事実として示せば、これは日本としてそういう批判に対して応えることができるのじゃないかというふうに思います。 ただ、プルサーマルというものがどのぐらいプルトニウムの減少に役立つかとか、その辺りはまた別途議論があると思いますけれども、少なくとも、消費していない限りは増やすだけだと、何のためかと言われた場合に反論ができないわけですね。やはり国際的な場で主張がされたときに、どうやって反論できるか、事実のベースを持って反論できるかというところが大事じゃないかというふうに思っております。
○アントニオ猪木君 終わります。ありがとうございます。
○会長(柳田稔君) 浜田和幸君。
○浜田和幸君 日本のこころ、浜田和幸です。 四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。お一人ずつ、一つずつ質問をさせていただきたいと思います。 まず、阿部参考人ですけれども、やっぱり国連となると、日本にとっては旧敵国条項、この削除というのが長年の悲願だと思うんです。いろんな決意表明もされてきましたし、日本政府が努力もしてきました。しかし、なかなかこの旧敵国条項の削除に至らない。なぜこれだけ戦後七十年もたっているのにこの問題が克服できないのか、また克服するために何が今必要なのか、この点について。 そして、淺田参考人には、資料をいただくと、北朝鮮に対する経済制裁、これは決して万能薬ではない、また政策的にも必ずしも賢明ではないということの言及がございますよね。やはり幾ら経済制裁を行っても、抜け駆けをする国々がいるから、北朝鮮にとっては全然日本の経済制裁なんか何とも思わないという現実があると思いますね。百十を超える国が北朝鮮と通商関係を持っている。中でも、アメリカもイギリスも北朝鮮に、例えばウォルト・ディズニーはアニメの孫請を北朝鮮にやらせているし、イギリスは北朝鮮の水をメード・イン・コリアと称して海外にどんどん輸出していますよね。そういうところを押さえていかないと、経済制裁といっても抜け穴だらけ。そういう点をどうやって克服すればいいのか、その点についてお考えをお聞かせください。 梅林参考人、私も北東アジア非核兵器地帯、これは是非とも実現していただきたいと思います。モートン・ハルペリンさんの下で、オーストラリアもアメリカもモンゴルも韓国も日本も英知を出し合っているわけです。問題は、北朝鮮の人たちがこの提案に対してどのような言ってみれば反応をしているのか。これは何らかの形で北朝鮮との直接の接点、この問題についての話合いというものを試みられた経緯があるのかどうか、その辺りについての見通し。 最後、星野参考人には、やっぱり国連改革ということで、国連機関が、国連大学もありますけれども、海外に置かれている国連機関として、今、朝鮮半島で、南北の平和的統一に向けての対話の機関を是非朝鮮半島に誘致したいという運動が南北力を合わせて展開中であります。今回ああいう大きな実験、地下の核実験ですとかあるいはミサイルの発射実験がありましたけれども、そういう一番、言ってみれば危機に直面しているのは北朝鮮、韓国双方なんですから、そこをニューヨークで議論するのではなくて、朝鮮半島というまさに火種を抱えているところで平和に向けての国連が果たすべき役割をPRする。そういった意味で、朝鮮半島の人たちが国連機関の誘致の運動を今やっていますが、そういうことに対する日本として何らかのサポートができるのか、あるいはそういうような国連機関の役割がこれから本当に朝鮮半島の平和のために役立つものかどうか、その辺りについての見通し、是非お願いします。
○参考人(阿部信泰君) 大変難しい問題で、旧敵国条項はどうするのかということですが、国連総会とか何かで、もはやこれは意味のない条項だというのはありますけれども、実際上は条項はなくなっていない。国連加盟国の中にまだあった方が便利だと思っている国は恐らくいるのでしょうね。したがって、なくならないと。 じゃ、どうすればいいのかということですが、国連憲章は武力の行使を禁止していますが、例外がありまして、一つは安保理が認めた場合。もう一つは自衛権の行使として。三番目は、旧敵国に対しては安保理が認めなくてもやっていいんですね。 したがって、極端なことを考えれば、そういう国との間で日本は安全の保障がないということなんですが、日中は条約がありますが、日ロはまだ平和条約はないわけですね。そういう意味においては、平和条約を結ぶことによって、国連憲章はともかく、二国間の関係で、あなた、うちは攻めてきてはいけないよという状況にするのが一つの方法かなと。 あとはやっぱり、完全ではありませんけれども、この条項はもう意味がないということをできるだけ強調して、国連総会とか何かの議論によって、間違ってもそれを援用することができない状況にしておくということが日本のできることだと思います。
○参考人(淺田正彦君) ありがとうございます。 北朝鮮に対する経済制裁ですけれども、経済制裁がどれだけ効果的かという点については、基本的には非常に経済制裁が効果を持つというのは難しいと。全ての国が一致して経済制裁を実施すればそれは効果的でしょうけれども、そういうことというのは歴史上ほとんどありません。 したがって、経済制裁というのはなかなかうまくいかないんですけれども、しかしイランの例を見ますと、あれはうまくいった希有な例ですね。イランが核合意に至った背景にはやはり制裁があったというふうに言われていまして、それはほぼ一致しております。 じゃ、同じ時期にイランと同じように経済制裁が行われた北朝鮮に対してどうして効果がないのかということがよく聞かれるわけですけれども、多分三つぐらい理由があると思います。 一つは、北朝鮮の経済体制ですね。イランのように国際経済に完全に組み込まれている場合には経済制裁というのがかなり直接の影響はありますけれども、北朝鮮のように、場合によっては中国との間の国境のバーター取引のような形のローカルな経済がかなり残っているようなところでは、国際的に何らかの形で制裁を行っても、それがどれだけ効果があるかということはかなり疑問だということがあります。 それからもう一つは、北朝鮮は独裁だということですね。イランの場合には曲がりなりにも一応選挙をしながら民主主義の形を取っていますけれども、北朝鮮の場合には、いかに制裁の結果として一般民衆が影響を受けても、だからといって国家の政策が変更されるかといいますと、そこに直結しないところがあるというのはやはり独裁制の問題ではないかというふうに思います。 それから、これが恐らく最も重要だと思うんですけれども、北朝鮮は制裁の結果としてどんどん中国との関係が強くなって、現在の中国との貿易関係というのは全体の北朝鮮の九割を占めているというんですね。そうすると、ほかの国がどんなに頑張っても中国が対応しないと全く効果がないというふうな状況になっておりまして、日本が例えばぜいたく品の禁輸を行うと、安保理決議でぜいたく品の禁輸というのは義務付けられているんですけれども、定義がないんですね。そうすると、日本のような国は例えばマグロとかなんとかを指定して制裁しますけれども、定義がないからできないという国が大部分なわけですね。そうすると、真面目に自分でこれがぜいたく品だというふうに決めて、その制裁を行う国が輸出をやめた部分をほかの国がカバーして、どんどんそこで輸出をしていくと。例えば中国などはそういったことをやっているということが実際データで出ています。ですから、そういうところを見ると、経済制裁は元々なかなか効果的になるというのは難しいんですけれども、その辺の問題があるというふうに思います。 今申しましたように、中国がどれだけ本気になるかということが大事なんですけれども、最近のニュースを見ていますと、北朝鮮の核実験に対して最も怒っておる韓国でさえ本当に安保理決議を実施しているかといいますとかなり疑問でして、例えば開城工業団地を停止しましたけれども、あの開城工業団地での賃金の支払が北朝鮮の核開発に行っていたということを先日韓国の統一省が言っていますけれども、そういう形で北朝鮮の核開発につながるような金融資産の移転というのは安保理決議の二〇九四というので禁止されているんですね。これは義務付けられているんです。 にもかかわらず、そういうことがまさか韓国で行われているということになりますと、本当にどの国がどれだけ真面目にやっているかということがかなり疑問になるわけで、その辺りの制裁の実施状況を監督するというのが北朝鮮の制裁委員会というのを安保理の下につくって行っているわけですけれども、なかなかそれぞれの、北朝鮮自体の制裁逃れの手法もいろいろと巧妙ですけれども、そもそもやっている国でさえ、しかも韓国のように一番影響を受けている国でさえそういう決議を実際に真摯に履行していないというふうな状況があるので、これはなかなか簡単ではないと思いますけれども。 一つ、どうするかという点で可能性として考えられるのは、金融制裁というのは効果的であるというふうに思われます。物の禁輸というのは、誰かが送ってしまうと、それで制裁逃れで効果がなくなるわけですけれども、金融制裁という形で北朝鮮の例えば銀行資産の海外にあるものを凍結するということになりますと、北朝鮮は、例えば北朝鮮のドル預金をアメリカにやっていると、そうすると、アメリカから買うということはないでしょうけれども、いろんなところで置いている預金を凍結すると、そもそも何であれ買えなくなるわけですね。この金融制裁というのはかなり効果的で、イランも金融制裁が実施された後というのがかなり軟化したというふうな状況もあります。 この金融制裁というのは一つの方法かなというふうに考えておりますけれども、余り締め上げると逆に体制の崩壊につながるかもしれないというので、中国などというのはそれに対して消極的になると。安保理決議が通らなければ実施もできないということで、なかなか八方塞がりのところがあるというのが現状でして、こうすればうまくいくというふうなことはなかなか言えないんじゃないかというふうに思っています。
○参考人(梅林宏道君) ありがとうございます。 御質問は非常に核心をついた重要な質問をいただいたと思うんですけど、我々が北東アジアの非核兵器地帯を、一般論ではなくて、先ほど骨子を説明しましたけれども、北朝鮮が直面するであろう困難な諸問題、この非核化を考えたときに、アメリカの攻撃を本当に止めることができるようなシステムになるのかどうか、逆に、日本とか韓国が北朝鮮が非核化するということに確信が持てるというふうに思う、そういうプロセスは何かという、かなり踏み込んだ構想を備えて北朝鮮に提案の中身を説明をする必要があると。ですから、通り一遍な彼らのリアクションを得るのではなくて、十分説明ができるチャンスをどうやってつくるかということを一生懸命考えました。 それで、先ほどのモートン・ハルペリン氏を含むアメリカの対北朝鮮外交を実際に担っていた、今はOBになっている、例えば、最近亡くなりましたけれども、ボズワースという大使がいましたけれども、そういう人たちも含めて、どういうチャンネルでちゃんとした説明ができるかということを追求しました。それから、NGOの中に、ノーチラス研究所という、北朝鮮問題に深く関与して、人の行き来も含めてチャンネルを持っているNGOが、我々がこのプランを作るときのパートナーの一つのシンクタンクになっておりまして、彼らを含めてさっき言ったようなプロセスで伝えたいと。そのチャンネル、その場をどうつくるかと、非公式でいいけれどもきっちり議論をする専門家の場をどうつくるかということで努力をいたしました。 今我々が考えていることは、提案文書、それにきっちりと説明を加えた文書は渡ったと、それは確かなチャンネルで渡った、しかるべき人の手にあるというふうに思っています。しかし、それをどう考えるかというリアクションは残念ながら得ていない。そのリアクションを得るために、やはりNGOとしてやれることというのはありますので、そういうことを今追求しているというのが現状で、正確な回答にはなりませんけど、非常にポイントの問題であって、北朝鮮が具体的なこの案に対してどうリアクションしているかということを待っているというようなことだと思います。
○参考人(星野俊也君) 大変興味深い御提案だったと思います。朝鮮半島においての平和を考える国連機関としての存在を目指すという、これは着眼点としても大変鋭いと思っています。 なぜそう思うかというと、二国間外交と多国間外交の違いという私の話と絡めますと、二国間外交の場合、日本は北朝鮮とまず外交関係がありません。アメリカもありません。そして、韓国もない。そういう中で、なぜ国連が面白いかというと、外交関係がない国との間であっても対話をするチャネルがニューヨークにはあるわけです。しかし、ニューヨークまで行かなくても、この地域でその対話ができる場をつくってみるのは興味深いのではないかというふうなことが、国連だからこそそういう場が提供できるという点がまず一点あると思います。 もう一つ、国連には当然、目的を限定した機関というのがございます、それは人権であったりとか環境であったりとか。だから、そこに朝鮮半島というふうな目的を限定した国連機関というのがあっても、これもいいと思います。と同時に、しかし国連で扱う限りにおいては、目的は限定されていても、それはその土地のその場所の問題だけじゃなくて世界全体の問題なんだというふうに考えるからこそ取り上げるという側面がございます。ですから、当然そこに参加する国は、多分南北両国とともに、周辺国で関心を持つ日本、そしてさらには、ちょっと距離は遠いけれどもそこに関心を持つ国などというふうなことで構成をするようなことになると国連の機関らしいのかなというふうに思います。 そして、対立をしているからこそ実は孤立化を防ぐために何かチャネルをつくるというふうな試みとしては、実は、冷戦時代に東西の分断状況の中でも欧州安全保障協力会議、今はOSCEというふうに国際機関になっておりますけれども、そういう形で対話が進められ、信頼が醸成され、そして紛争の予防と最終的には東西の冷戦の解消というふうにつながった前例もございますので、そういう欧州での経験というのを参考にしつつ、いろんなプログラムを作っていくのがいいのかもしれません。 どうしても我々は目先の核拡散の問題ですとか人権の問題で、北朝鮮はどちらかというと責められる側というふうになるんですけれども、しかし、そこに多くの北朝鮮の一般民衆の人たち、その人たちの福祉の問題とかいろいろ目配りをしなければならない課題もあると思います。ですから、そういう福祉的な側面、環境の側面とかいうのもテーマにしながら、何か対話のチャネルをつくっていき、より良い環境に持っていくような、ちょっと時間は掛かるけれどもそういう場をつくるというところは興味深いのかなというふうに思いました。日本は当然そこにはしっかりとした支援というか関与をしていくべきだと考えます。
○浜田和幸君 ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) 以上で各会派一巡をいたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。 質疑のある方は挙手を願います。──それでは、他に御発言もないようですから、本日の質疑はこの程度といたします。 一言御挨拶を申し上げます。 四人の参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、各参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日の御礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後三時四十七分散会