国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会 第2号
- 発言数
- 69 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 8
- 開催日
- 2015/03/04
会議録
○会長(鴻池祥肇君) ただいまから国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日、江崎孝君及び辰巳孝太郎君が委員を辞任され、その補欠として難波奨二君及び大門実紀史君が選任されました。 ─────────────
○会長(鴻池祥肇君) 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査を議題といたします。 本日は、「デフレからの脱却と財政再建の在り方など経済状況について」のうち、「経済の再生と財政再建の在り方」に関し、デフレからの脱却と成長戦略について、参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。 御出席をいただいております参考人は、法政大学大学院政策創造研究科教授小峰隆夫参考人、株式会社日本総合研究所副理事長湯元健治参考人及び早稲田大学政治経済学術院教授若田部昌澄参考人でございます。 この際、参考人の先生方に一言御挨拶申し上げます。 御多忙の中、本日はわざわざ御出席をいただきまして、誠にありがとうございました。 本日は、皆様方からの忌憚のない御意見を頂戴をいたしまして、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。 本日の議事の進め方でございますが、まず、小峰参考人、湯元参考人、若田部参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃まで質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いを申し上げます。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、小峰参考人からお願いをいたします。小峰参考人。
○参考人(小峰隆夫君) 法政大学の小峰でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 本日は、このような場にお招きをいただきまして、大変光栄に思っております。どうもありがとうございました。 私から、「デフレからの脱却と成長戦略」と題しますレジュメをお手元にお配りしておりますので、これに基づきまして簡単に私の考えを申し上げます。 いわゆるアベノミクス、安倍内閣になってからの経済政策というのが二〇一二年末から始まっているわけですけれども、私はこれを三つに時期的に分けるというのが適当ではないかというふうに考えております。第一幕というのが、このアベノミクスが始まって二〇一四年の三月ぐらいまでの時期が第一幕。それから、その後、これは二〇一四年末ですね、二〇一四年末までの第二幕。それから、一四年末、最近になってからの第三幕という、そういう三つに分けて考えるのがいいのではないかということです。 まず第一の第一幕なんですけれども、これにつきましては、一連の財政金融政策が大変大きな効果を発揮したというふうに判断をしております。 まず金融政策ですけれども、これは、金融政策自体がマネーの動きを変えたり等々によって効果があったというよりは、むしろアナウンスメント効果、つまり、こういうことを言ったと、発言したと、約束したと、そういう言ったこと自体が市場関係者、周りの人々の期待を変える、考え方を変えたという、これはよくレジームチェンジとかそういう言い方をされるんですけれども、そういうものをもたらして大変大きな効果を発揮したのではないかというふうに判断をしております。 具体的には、まずインフレターゲットというのを採用いたしまして、政府と日銀が二%という目標を共有して、これに近づくべく政策を打っていくということを約束したわけです。この二%のインフレターゲット自体はそれほど珍しい政策ではなくて、ほかの国でもやっておりますので、そんなに驚くようなものではなかったんですけれども、このインフレターゲットを採用する前に日本ではいろんな議論がありまして、インフレターゲットを採用すればうまくいくという議論と、いや、そんなのはとんでもないという議論が非常に極端に分かれて議論しておりましたので、その一方の採用するということを決めたことがますます大きなインパクトを持ったんじゃないかというふうに、実体以上に大きなインパクトを持ったんじゃないかというふうに考えております。 それから、黒田新総裁になりまして異次元金融緩和というのが行われまして、これは金融緩和の中身自体も相当思い切ったものだというふうに判断できるわけですが、それ以上に私が大変印象に残っていますのは、この金融緩和の打ち出し方というか説明の仕方、プレゼンテーションというのが大変前任の白川総裁とは変わりまして、白川総裁のときには何となく、金融緩和をやっても本当はそれほど明確な効果は期待できないんだが、まあやらざるを得ないのでというようなニュアンスが非常に強かったんですが、黒田新総裁になって、これをやればできますということを非常に明確におっしゃって、これがまた市場のセンチメント、期待を大きく変えたのではないかというふうに判断をしております。 それから、二番目、こういった中で株高とか円安が起きたわけですけれども、私は特に円安の効果が大きかったというふうに考えております。これは、輸出製造業の収益を増やし、輸入物価が上昇しましたので消費者物価が上昇する、デフレからの脱却を助けるという意味で大変大きな役割を果たしたという判断をしております。 これについては、一ページ目の下に図表がありまして、円安下での経済パフォーマンスという、ここ二年ちょっとの円レートの動きと関連指標を整理したものを表として出しておりますが、これにありますように、円レートはアベノミクスが始まる二〇一二年の頃は約八十円ぐらいだったんですけれども、これが約百円、百六円、最近はもっと円安になっていますけれども、こういう形で、これは年平均ですのでこれぐらいになるんですけれども、大変大きく円安に二年間で動いたということが分かります。 円レートが動きますと、まず輸出価格、輸入価格が当然変化することになります。 輸入価格の方は、これは話は簡単で、今まで輸入していたものが円安の分だけ高くなりますので、円建てで見て輸入価格は上昇するということになります。これで見ていただきますと、輸入価格は二〇一三年、一四・五%、一四年も四・三%上がっておりますので、これは円安がそのまま輸入価格の上昇となって現れた。 輸出価格の方は、これはちょっと話が複雑でして、これには二つの考え方があります。一つは、今までと同じ値段で売っていれば、外貨建てで今までと同じ値段で売っていれば円の手取りが大きく増えるという効果があります。逆に、今までと同じ円の手取りでいいと考えれば売る値段を大きく下げることができる。どっちを取るかは企業の判断だということですが、ここにありますように、結果を見ると、ほとんどの輸出企業は値段を変えなかったというのが結果から出ている。これを見ていただきますと、輸出価格の円建てというところがありますが、値段を変えなければ円建ての輸出価格は上昇するということなんですが、これは大変上昇していまして、一三年は一一・七%、一四年は三・四%上昇している。したがって、今までと同じ輸出をしていて手取りが大きく増えるわけですから、これは製造業の収益は大幅に増えるということになります。 一方、契約通貨建てという統計もあるんですけれども、これを見るとほとんど下がっていません。二〇一三年が一・八、二〇一四年は一・七、つまり、輸出企業は販売する値段を変えなかった、下げなかったということです。したがって、値段を下げなかったんですから売る量は変わらないということになりまして、しばしば円安になったのに輸出量が増えないという話が出てくるんですが、これは私に言わせれば当然だと、つまり、輸出量が増えるためには値段を下げなければいけないんですけれども、下げていないと。で、輸出数量はほとんど変化しなかったというのもこのデータから分かります。 したがって、これはしばしば経常収支にどう影響したかというと、円建てで見ると輸入価格が大きく上がって輸入金額が増えます。輸出の方は、輸出数量が余り増えませんので、輸出金額はまあそれほどは、円建ての分だけ増えるんですけれども、輸出数量が上がっていくということにはならない。したがって、かつてJカーブという議論がありまして、Jカーブがあれば、円安になってしばらくたつと貿易収支が黒字の方向に向かうということが期待されていたんですけれども、輸出数量が増えないわけですから、このJカーブは現れないということになって、経常収支は黒字がどんどん減っていくということになったということだと思います。一方、輸入価格が上がりましたので、消費者物価はゼロ、マイナスから脱してプラスになっていった、それから製造業の経常利益は大幅に上昇したと、こういうことになっていたのではないかと思います。 それから、元の文章に戻っていただきまして、公共投資も大変大きく第一幕の成長に寄与しまして、一三年度の公共投資、公的固定資本形成は一〇・三%も増加しておりますので、これだけで成長率を〇・五%引き上げていると。大変大きな効果があったと思います。 結論から言うと、(4)に書いてありますように、二〇一三年度の成長、また物価上昇というのは、ここでは四点セットと言っているんですけれども、円安、株高、公共投資、それから消費税の駆け込み、この四つが大きく影響したというふうに判断をしております。 次のページに進んでいただきまして、第二幕になるとこれがどうなるかということになりますが、第二幕になりますとだんだん問題点の方が、限界の方が現れてきているというのが私の診断になります。 まず、金融政策の異次元緩和の方なんですけれども、私はこれをブーメラン効果と言っているんですけれども、最初うまくいったことが一年ぐらいたって逆に作用し始めているということでブーメランと言っているんですけれども、これはどういうことかと申し上げますと、黒田新総裁は異次元緩和を打ち出すときに、二年間で二%の消費者物価を実現する、それができそうもないときはちゅうちょなく追加緩和を行うということを明言しておりました。これを明言したことは、明言した時点ではさっきのセンチメントを変えることによって市場に非常に大きなインパクトがあったということなんですが、ところが、二年間で二%というのがだんだん難しくなってきております。 この③の後に「(参考)」というのがありますが、これはESPフォーキャスト調査というのがありまして、約四十人の第一線のエコノミストにこれからの経済のことを毎月アンケートで聞くというのがあるんですけれども、二年間で二%が実現するかという問いに対しては、最新時点では、実現するという答えはゼロ、ほとんど全員の第一線の専門家はこれは実現できないという判断をしている。 これが、昨年の秋頃からだんだんそういう感じになってきたものですから、ちゅうちょなく追加策というのをやらなければいけませんから、昨年の十月末にちゅうちょなく追加緩和を行ったということになります。 ところが、これによってまた第二段の円安が起きたわけですけれども、この円安が、さっき申し上げましたように、一時的に企業収益は増やすんですけれども、輸出数量になかなか結び付かない。輸出数量が増えないんですから企業は設備投資もしないということになって、持続的な成長にはつながらないということがだんだん明らかになっていった。つまり、効果は一時的であると。したがって、もう一度追加緩和をやってまた円安になったわけですけれども、これも持続的な成長にはつながらないということは同じだというふうに思われます。 それどころか、原油が安くなって、原油が安くなることは日本にとって実質所得が増えるという形でプラスの影響があるんですけれども、円安が更に進んだために、むしろ円安によって輸入価格が上がりましたので、せっかくの原油安の効果が打ち消されてしまったということで、私から見ると、これはやらない方がよかったということになります。しかし、最初の段階でちゅうちょなく緩和ということを言っていますので、その約束を守るためにはやらざるを得なかったということで、逆にブーメランとなって返ってきているというのが私の判断です。 それから、(2)の公共投資ですけれども、これも先ほど申し上げましたように、第一幕では大変大きな効果を発揮したんですが、これは元々公共投資を増やしているときにしか効果はありません。二〇一五年度、これは政府の見通しが出ていますが、二〇一五年度は公共投資は一五%も減るという見通しになっていますので、アベノミクスの第二の矢の財政、公共投資というのは、むしろ一五年度については大きく足を引っ張るような効果しか出てこないということです。しかも、歳出を増やしていますから、財政赤字の拡大というこれは非常に大きな副作用をもたらすということになって、公共投資についても限界、むしろマイナスの側面が出てきているということだと思います。 問題は第三幕で、これからどうするのかということですけれども、これは当然、多くの人が言っていますように、成長政策というのを着実に実行することが一番重要だということだと思います。 元々、財政金融政策というのは、財政金融政策で持続的な成長が実現するかというとそうではなくて、財政金融政策というのは一時的な経済の振れを是正するという効果しかないわけで、財政金融政策で時間を稼いでいる間に本来の持続的な成長に結び付く成長戦略を実行していくということが本来必要であったということだと思います。 その基本は、この②に書いてありますように、基本的には企業が活動しやすい経済環境を整えて人的資源の質を高めていく、そのためにはいわゆる岩盤規制のような規制緩和を行っていくというのが、これが多くの経済学者が考える最もオーソドックスな成長戦略だということになります。 そういう成長戦略を実行していきますとむしろ日本の生産性が上がりますので、為替レートは恐らく円高に進むであろうというふうに思われます。したがって、多くの人は円安に経済を浮揚させる力を期待しているんですけれども、私はむしろ、長期的に経済がうまくいけば円高になるということですので、持続的な成長と整合するのはむしろ円高であると。これは別に円高にすれば成長するというわけじゃないんですけれども、むしろ円高になることを覚悟するというか、そういう環境にするのがむしろ望ましいのではないかというふうに考えております。 それから、そういった中でも特に雇用面の改革というのが大変重要だというのが私の判断で、これは最近よく雇用のタイプをメンバーシップ型とジョブ型というふうに分ける分け方が随分議論されているんですが、メンバーシップ型というのは、あるメンバーに入れてもらうと、後は雇用が安定して賃金も上がっていくということなんですけれども、ジョブ型というのはメンバーに入らないで、自分はこういうジョブをする人間であるという専門能力を持って、特定のメンバーシップにはこだわらない、メンバーシップを移動しても構わないというタイプの働き型がジョブ型ということなんですが、まあこれは詳しい議論は省略しますが。 私は、メンバーシップ型、日本は終身、いわゆる終身雇用というのは全くのメンバーシップ型ですから、非常に強いメンバーシップ型の雇用制度を維持している、これが回り回って女性の社会参画を阻んでいる、又は少子化の原因にもなっているといったようなことで、むしろマイナスが目立っているということですので、長期的には働き方をメンバーシップ型からジョブ型へというふうに変えていくことが重要だというふうに考えております。 それから、今後は、アベノミクスというのはこれまで三本の矢ということで、金融政策、財政政策、成長戦略というのが三本の矢というふうに言われていたんですが、私の判断では、先ほど申し上げましたように、第一の矢の金融政策、第二の矢の財政政策の限界、むしろマイナス点が出てきているということを考えれば、もはや三本の矢という組合せは不適当である、むしろ三本の矢に入っていない分野に力を入れる必要があるということを考えております。 その一つが財政再建ということなんですけれども、これは、政府は三つの財政再建目標を持っていますけれども、しばしば議論になります二〇二〇年度基礎的財政収支を黒字にするという目標は相当困難ということが、いろいろ計算してみると大体明らかになってきております。 多くの人はこの二〇二〇年の議論をするわけですけれども、私は二〇二〇年度以降の方がもっと厳しいというふうに判断をしております。というのは、デフレからやがて脱却したときには金利が上がってきます。それから、二〇二五年ぐらいから、これは私がそうなんですけれども、団塊の世代が後期高齢者になっていく。その段階で社会保障に対する経費が非常に膨らんでくるということを考えると、二〇二〇年度というのは通過点にすぎない、本当の問題はその後だというふうに考えております。 このときに、金利が上がってきますとこれは財政にマイナスの影響がありますので、まあ場合によってはこれを更に金融政策で金利の上昇は抑える、しかし物価は上がるということになりかねないということなんですが、これは何をやっているかというと、預金が目減りしますので、政府の借金も目減りするんですけれども、国民全体が持っている預金が目減りしますので、これは言わば貯蓄税だと、消費税ではなくて貯蓄税で財政再建をすることになってしまうという、これは非常に最悪のシナリオだと思いますけれども、そういった懸念も十分あるというふうに考えております。 それから、社会保障の改革というのも大変重要で、これも三本の矢に入っていないものとして重要だということで、これは財政上も重要ですし、それから、現在、社会保障の費用が、言わば企業の負担又は働く人の所得からの負担という形で働く人からかなり取っているという形になっていますので、これは言わば企業にとってみれば、人を雇えば雇うほど社会保険料が上がってしまうという形で一種の雇用税になっているということですから、これは成長戦略としても社会保障改革を進めるということが大変重要だというふうに考えております。 それから最後に、三ページ目に、最近大きな問題になっております地域再生という、これも三本の矢には入っていないけれども大変重要な課題であるということですが、私は、この二番目にあります地域づくりの在り方というのを長期的に考えてみますと、国から地方へ、それから分散から集中へ、それから社会資本依存から地域資源活用型へという大きな流れであるべきだという、これはべき論なんですけれども、そういうふうに考えておりますが、最近の地域づくりは、再び国が地域創生を主導するという方向に向かっている、それから東京一極集中是正ということで再び分散を志向している、それから国土強靱化という中で社会資本に対する期待が非常に大きいという点で、私はこれは本来あるべき姿から逆行しているという点があるのが心配だというふうに考えております。 それから、地方再生というとどうしても遅れた地域をどうやって元気にするかという点を議論しがちですが、私は大都市にこそ大きな問題があると。これから後期高齢者は大都市で大きく増えますし、医療、介護の問題は大都市圏でこそこれから大きな問題になっていくということですので、地域の問題は大変重要ですけれども、都市の問題というのも是非考えていく必要があるというふうに考えております。 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。 次に、湯元参考人にお願いをいたします。湯元参考人。
○参考人(湯元健治君) 日本総合研究所の湯元でございます。 本日は、このような場でお話をさせていただく機会を頂戴いたしまして、大変有り難く、光栄に存じております。 それでは、お手元に配付させていただいておりますレジュメに基づきましてお話を申し上げたいと思います。(資料映写) まず、私の方からは、我が国経済、デフレを脱却して、少子高齢化あるいは人口減少という状況が続く中でも持続的な経済成長を続けていくためにはどのような努力が必要かという観点から、現時点でのアベノミクスの評価あるいは今後の課題というところを交えて私見を述べさせていただきたいと存じております。 まず、デフレ脱却の定義ということなんですが、これは内閣府が定義をしているわけでございますが、今、現時点で日本経済の現状はもはやデフレではないという判断をされているところでありますけれども、まだデフレ脱却という宣言にまでは至っていないわけであります。デフレ脱却の定義というのはデフレに後戻りしないというふうに判断されるということで、物価指標等がプラスになっているから脱却というような即断をするようなことはしていないということであります。 実は、デフレ脱却を判断するために四つの指標をベースに判断をしているというふうに認識しておりますが、一つが左側のグラフにありますコアコアCPI、GDPデフレーターという物価関連の指標でございます。これは、双方ともゼロからプラスに出ているという状況であります。 それからあと二つは、ユニット・レーバー・コストという、企業が単位当たり生産を行う場合に掛かる労働コストでございます。これとGDPギャップ、これは需給ギャップとも言われておりますが、この二つの指標を見ておるわけでありますが、ユニット・レーバー・コストはコスト面からインフレになっていく環境になっているかどうかということで、これはプラスの方に上がってきていると。それから、一方でGDPギャップ、需給ギャップの方はまだマイナス圏にあるということで、需要不足、供給過剰という状態が続いているということであります。 この指標から見ると、四つのうち三つがプラスに転じているということで、何となくデフレ脱却が近いというようなイメージもあるわけですが、ただ、注意していただく必要がありますのは、消費者物価の方は、コアコアCPIの方は消費税の影響を除いて出しておりますけれども、ほかの部分は、まあちょっとテクニカルに除くのが難しいということもありまして除かれておりませんので、消費税の影響で上に出ているという側面もありまして、今年四月以降、消費税の影響がなくなって以降、こういったデータがどうなるかということをきちっと見ていく必要があるんだろうと思っております。 それから、もう一つ重要なことは、デフレからインフレへの転換という際にどういうプロセスを経てインフレになっていくかということなんですが、二つのパターンが大きく分けますとあり得るかなと思っておりまして、一つはコストプッシュ型ということで、コストが上がって収益が企業のサイドでは圧迫されますので、製品価格を値上げして実際に消費者物価が上がっていくというコストプッシュ型インフレ、それから二つ目がディマンドプル型インフレということで、需要が非常に好調だと、物が売れて売れて仕方がないと、こういう状況になって、値上げしても消費者が買ってくれるという形でインフレが進むという進み方であります。 何を基準に後戻りしないと判断できるのかというのは、これは私の私見ではございますが、コストプッシュ型よりはやはりディマンドプル型のインフレになっていくということが後戻りしないということの大きな条件になっていくんじゃないかなと思っておりまして、少なくともこれまでのインフレはもちろんコストプッシュ型の色彩とディマンドプル型の色彩が入り交じっている部分はありますが、どちらかといえば、やはり需給ギャップがまだマイナスにあるというところからも明らかなとおり、コストプッシュ型インフレの色彩の方がやや強いということでございまして、結論的には、まだデフレ脱却には時間が掛かるだろうということでございます。 そもそも、そのデフレというものの本質について、消費者物価等の物価指標は下がる、景気が落ち込むとかそういうことも含めて、そういった表面的な現象というものがありますけれども、私自身、このデフレの本質とは何かと突き詰めて考えてみますと、特に、企業などの経済主体が積極的にリスクを取らず、リスク回避的な行動をし続けるということであります。将来物価が下がるということが予想されているわけですから、余り積極的に打って出てもいいことはない、できるだけ縮小均衡で、シュリンクをしていこうと、そういう判断にどうしてもなってしまうということであります。 これを端的に表しておりますのが、二つグラフ載せさせていただきましたが、左側の部分は制度部門別の貯蓄投資バランスというものでありまして、特にこの赤で表しています企業部門の貯蓄投資バランスが上の方に、プラスに出ております。これは、企業が投資よりも貯蓄の方が多いという状況で、通常の経済状態ですとこれはマイナスに出るのが普通なんですが、ちょうど一九九八年以降プラスが続いているということであります。デフレが一九九八年以降続いているということとまさに合致しているわけでございまして、こういった貯蓄投資バランスのデータから見ましても、まだすぐに貯蓄超過から投資超過に転じるという兆しはない、すなわちデフレ脱却に至るという兆しはまだ大きくは見られていないということであります。 同様に、右側のグラフのところを御覧いただきますと、これは企業部門のROAという収益率の改善の要因を分析したものでありますが、結論だけ申し上げますと、どうしてこのROAが改善してきたのかということは、一つは低金利と借金の返済、それから二つ目に人件費を抑制してきた、三つ目に設備投資などを圧縮してきたと、つまり縮小均衡によって収益率を上げてきたということであります。 そして、このROAという概念ともう一つ別にROEという、自己資本利益率という概念がありまして、こちらは外人投資家がかなり重視している経済指標でございますけれども、このROEを見ますと、日本企業は大体平均で大企業で八・五%ぐらいと言われておりますが、欧米諸国は一五%、二〇%というふうに言われておりまして、ここが低いのが一つの日本企業の弱点、問題点だという指摘がなされてきたわけですが、このROEを積極的に引き上げていくためには、実は、レバレッジと言いまして、積極的に外部から負債を取り入れて、つまり借金をして投資を行っていき、その投資が果実を生むという形で利益率を引き上げていくことが必要だということでありまして、企業部門のスタンスを見る限りにおいてはまだそういう状況に至っていないということであります。 したがいまして、デフレ脱却というのはどういうことかというと、やはり経済主体が積極的にリスクテークをしていくことだというふうに考える次第でございます。 そういう中で、先ほど小峰参考人からも日銀の金融政策についての御評価があったかと思いますが、私なりにも、少し重複する部分があるかもしれませんが、申し上げたいと思います。 最大の目的というのは、やはり市場や企業や家計の期待を変化させるということが最大の目的だろうと思っております。そういう中で、期待インフレ率という概念がありまして、これをいろんな尺度で測って見ております。細かいところは、技術的なところは省略いたしますが、結論的に見ますと、それぞれある程度インフレ期待が上昇している、市場においても家計においても企業においても上昇してきているということが見て取れます。 右側の図は、ちょっとこれは専門的なので省略いたしますが、フィリップス・カーブというインフレ期待の変化を表す分析でありますが、これにおいても、ややデフレ期と比べると上昇している、つまりインフレ期待が高まっているということが見て取れるわけでございます。 ただ、これは私の私見ではございますが、このインフレ期待の高まりというのが日銀の異次元緩和ということのアナウンスメント効果によって高まってきたのか、あるいは、日銀の金融緩和の結果として生じた円安による物価上昇圧力あるいは消費税の引上げによる物価上昇圧力、こういう形で現実の物価が上昇した結果としてインフレ期待も高まってきたのかというと、どちらかと言えば後者の方ではないかなと。現実に、現実の物価上昇率、最近は下がってきておりますけれども、それに応じて一部短期のインフレ期待は下がってきているというような状態になっていることからも明らかなのではないかというふうに思うわけでございます。 もっと申し上げますと、実は、日銀の金融緩和の大きな目的はインフレ期待を高めることだということではあるわけですが、インフレ期待さえ高まれば経済が非常にいい状況になるのかどうか、あるいは、実際にインフレ期待が高まって物価が上昇するだけで経済が良くなるのかということでいうと、昨年のその状況、消費税の影響が大きかったということではありますが、物価が上昇しただけで賃金がそれに追い付いてこないという状況になりますと経済には大きなダメージが及ぶということでありまして、大事なことは、インフレ期待を高めるということもさることながら、成長期待というものを高めていく、企業サイドで経済が先行き成長するという期待が高まれば、それによって先ほど言ったような投資が増えていくという循環につながっていくんだろうと思っております。 それから、別の角度から日銀の金融緩和の評価をしてみたいと思うんですけれども、期待というルートではなくて実体経済を通じたルートというのは、一つ考えられますのは、日銀から民間の金融機関に大量のマネーを出すということで、この赤い線で示されていますマネタリーベースというものが急速に上昇しておりますけれども、それがうまく経済全体にどこまで回ってきているのかということでいいますと、この青い線というのがマネーストック、従来、マネーサプライと呼ばれていたものですけれども、厳密に数字で見ますと、もちろん従来と比べてやや上昇してきているということは間違いありません。最近地銀などでも貸出しが増えてきているところですね。変化が見られることは事実でありますけれども、この赤い線の上昇幅と比べた青い線の上昇幅というのは目で確認できるほど大きいという形ではないということでございます。 それから、他方で、異次元緩和の結果として生じた円安によって副作用的なものも実は起きているということでありまして、それが貿易収支の赤字拡大ということでございます。これは昨年一年間の貿易収支を見たものでありますけれども、先ほど小峰参考人からも御説明ありましたけれども、数量ベースの効果が余り出ずに価格サイドの効果が大きく出て、昨年一年間では一兆九千億という金額のマイナスだったわけですけれども、一昨年は実は四兆六千億円ぐらいの貿易赤字拡大の結果になっておりまして、結論的に申し上げますと、金融緩和に過度に依存してデフレ脱却を目指しますと副作用がそれに伴って大きく出てくるということかと思っております。 ただ、最近の経済情勢は、昨年秋以降、幸いにも景気回復基調に戻ってきているということでありまして、今年もそれなりの経済成長が実現できるだろうと、一%台の後半辺りの経済成長が見込めると思っておりますが、その最大の要因は原油価格の低下という形で、試算の内容は詳しく御説明いたしませんが、円安によるデメリットを原油価格の低下によるメリットが相殺して余りあるような状況になってきているということであります。企業業績にも原油価格の低下が大きなプラスになってくるだろうということでございます。 さて、デフレ脱却に向けて極めて重要なことは、基本的に、経済の好循環、企業業績が増えてそれが賃上げにつながり個人消費の拡大につながっていくということなんですが、もちろん、名目賃金が上がるだけでは十分ではなくて、物価上昇率を差し引いた実質賃金がプラスになっていくということが重要だろうということであります。 そして、その実質賃金がプラスになるためには、当たり前のことでありますけれども、毎年のようになされるベースアップというのが着実に毎年行われ、それが、更に伸び率が徐々に高まっていくということが必要でございます。 それから、こういった動きは足下でも現れておりますが、パートタイマーなどの特に非正規雇用、賃金水準が低い非正規雇用が正規雇用にどんどん転換していくといったような動き、それから、時間給にして正規と非正規の差があるわけでありますけれども、これを、同じ仕事をしているのであれば同じ時間給を払っていくような動きに持っていくということが必要かなと思っております。 そして、四番目に挙げましたのは、二%インフレ目標というのは期待を高めるためには重要な目標設定だったというふうに思っておりますが、名目の賃金が十分に上がってこない段階で物価上昇を更にどんどん目指していくということはむしろ去年の経験からも明らかにマイナスであったわけでありまして、そういう意味では、マイルドなインフレといいますか、二%物価目標を急ぐ必要はないということだろうというふうに思っております。 さて、地方経済あるいは地方創生というテーマでお話し申し上げたいと思いますけれども、アベノミクスの効果が地方に隅々まで行き渡っていないという指摘がございます。これ、経済学の用語で言うと、トリクルダウン効果が非常に小さいというふうに言われております。 特に、アベノミクスのプラス効果というのは円安や株高を通じて大企業とか大都市圏中心に現れているという形になっておりますけれども、地方の方はどちらかというと中小企業が大きくて、円安が進めば進むほどデメリットを受ける企業が大きい。それから、株高は、金融資産をたくさん持っている高齢層などは大都市圏に数の上ではかなり多くいらっしゃるということで、株高のメリットも大都市圏の方が大きいと。さらには、中小企業の方が賃上げ幅がどうしても小さくなるということで、賃金の面でも中小、地方の方が厳しくなると。 それから、輸出数量が伸び悩んできているということ。これも、大企業の工場での稼働率がなかなか上がらないということで、中小下請企業への仕事がそれほど増えないという原因につながっておりまして、このトリクルダウン効果というのを高めていく必要があるんですが、これは、なかなか政策的に高めていくのはそう簡単ではございません。 ただ、最近では、白物家電とか、一部の業界で生産拠点の国内回帰の動きも見られてきているとか、輸出数量そのものもこの一月に入ってちょっと伸びが高まる兆しが出てきているとか、これから先、ちょっとトリクルダウン効果がやや強まっていく兆しも見られ始めたところでありまして、全く効果が行き渡っていないということではないんじゃないかと思います。それから、円安の方も、実は外国人観光客の増加という効果を通じて地方経済にもプラス効果を与えているというふうに思っておりまして、そういう意味ではもう少し時間が掛かるという側面もありますが、徐々に浸透していくという方向性かと思っております。 ただ、難しいのはやはり人口という要因でありまして、少子高齢化に加えて人口が減少している、特に地方圏から大都市圏に人口が流出しているという状況の中で、アベノミクスの中で地方創生ということを新しいテーマとして掲げ、それを推進しようとされてきているということで、これは非常に重要な取組だろうというふうに思っております。 いろんな戦略が今実施されつつあるというふうに認識しておりますが、基本的には、そういう人口減少、流出というところで悩まされているところをどうやって再生させるかという部分は、地方に持っている資源を最大限活用して、いろんなものを輸出して外から稼いでくるというのが戦略の一つになろうかと思います。観光もそうですし、食や農業、農産物もそうですし、コンテンツなどもそうかと思いますけれども、そういったものの輸出をどんどんサポートしていくということが重要かと思います。 それから、あと、十万人地方から大都市圏へ人口移動があるというお話ですけれども、これについても、方向性自体はこういうことをやっていかないといけないというふうに思いますが、なかなか思ったとおりに十万人移動を食い止めるというのは簡単なことではないんだろうと思います。 そういう意味では、ちょっとここで③、④で書かせていただいておりますが、まず、地方で仕事をつくるというのが大事だろうと思います。これには当然、地方の中小企業に新しい技術開発や製品開発をどんどん進めていって、地方の中小企業のパワーを強くしていくということが必要ですし、それから地方発で新しいベンチャーが生まれてくるような環境整備が必要だということでございまして、それに加えて、実は、地方に住んでいる方が地方にいながら大都市圏から仕事をもらってやるという新しい、インターネットを使ったクラウドソーシングという働き方が徐々に浸透し始めておりまして、こういったところを強化していくということも重要なんじゃないかと思っております。 ちょっと長くなってしまいまして恐縮でございます。お時間がなくなってきましたが、日本の中長期的な問題は、デフレ脱却できたとしても潜在成長力を引き上げていかないと持続的な成長が難しいということで、足下は〇・五%まで低下しております。これは成長戦略によって引き上げていくということが最大の目標でありまして、今現在の成長戦略、私なりの評価をちょっと右側に一覧表でまとめさせていただきました。 効果が全然出ていないとか成長戦略が実行されていないとかいう批判も耳にしますけれども、実際、成長戦略の実行という意味では、この二年間で四十本以上の関連法案が成立しておりますので、私は一定の進捗があるというふうに思っております。 それから、効果についても、例えば電力・エネルギー、農業、再生医療といった一部分野でいろんな企業の新規参入、新しい取組というものも目立ってきておりまして、そういう意味では、こういったことをより広い分野で、日本全国で広げていくということが重要なんだろうと思っております。 あと、法人実効税率あるいは岩盤規制改革などで一部課題が残っておるかと思います。それから、TPPなどでも、まだ締結していないということでありますので、こういったところを急いでやっていく必要があるのかなというふうに思っております。 ちょっとお時間が迫ってまいりましたので、残りはちょっと省略させていただきます。 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。 次に、若田部参考人にお願いをいたします。若田部参考人。
○参考人(若田部昌澄君) 早稲田大学の若田部です。よろしくお願いいたします。本日は、このような場にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。 デフレからの脱却と成長戦略ということで、概要をまず最初に述べさせていただきます。(資料映写) まず最初に、私は、デフレ脱却に関しては、金融政策は効果があったというふうに考えております。ただ、消費税増税が行われたということは非常な足かせでありまして、現状でデフレ脱却を妨げていると言うべきだと思います。 二番目の経済成長ですが、これは国民生活にとって極めて重要でして、しかも可能であるということを申し上げたいと思います。本日は格差の是正については余りお話ししませんが、格差の是正とも両立可能であるということが極めて大事だと思います。 三番目に、非常に重要なのは、ここから先、何をするかというときに、政治的な決断が問われているということです。これから皆さんがどういうような決定をされるかということがこれから先の日本をつくっていくということでございます。 日本経済に必要な三つのRということで、経済政策の基本というのは、景気の安定化、経済成長、所得再分配とよく言われます。つまり、凸凹をならして景気が余り加熱しなく、なおかつ不況にもならないようなものをするというのが景気の安定化、そして、人々の生活水準を上げていくという意味で経済のポテンシャルを上げていくというのが経済成長、そして、その成長の成果というものを人々に分配していくというのが所得再分配ということになります。これを現状の日本経済について必要な三つのRと私は呼んでいるんですが、置き換えるならば、リフレーション、リフォーム、リディストリビューションという三つになるかと思います。この三つをバランスよく達成していくことが今の日本に求められているというふうに申し上げたいと思います。 まず第一次アベノミクス、第一次というのは現状までということでお考えいただきたいんですけれども、あるいは日銀が追加緩和を実施した二〇一四年十月三十一日までというふうにお考えいただきたいんですけれども、私も論理と方向は非常に正しかったというふうに評価しております。特に有効だったのは第一の矢でしたと。ただ、それで実際に緒戦において成功を収めたということは事実だと思います。ただ、消費税増税によって、うまくいっていたものが、これまで一番最初の段階ではアクセルをずっと踏んでいたものが、アクセルとブレーキを同時に踏むようなことが起きてしまって今こういう状況になっているということです。 次の五ページ目はアベノミクスのある種の概念図でございまして、ある種のドミノ倒しというか、をやっているというふうにお考えください。第一の矢ともう一つ第二の矢、つまり大胆な金融緩和と、それと機動的な財政政策によって予想インフレ率を上げていくというのが全ての要になっています。ここが成功すれば、あとは経済学のロジックどおりにぱたぱたとドミノが倒れていくということになります。詳しくは余り説明しませんが、基本的には、消費、投資、輸出、政府支出増加ということを通じて総需要が増加して、デフレギャップの改善、資金需要増加、労働需要増加ということによってインフレ率の上昇、信用創造機能の回復、これは貸出しが増える、そういう状況ですね、あるいは名目賃金が上昇していくというような方向へ持っていくというのがアベノミクスの大体の概念図でした。そして、大体このとおりに進んでいるというふうに言っていいと思います。 ただ、先ほども申し上げましたが、第二の矢を実行したことによって、第二の矢を実行したまではよかったのですが、ここが消費税増税によって全く逆の方向に矢が放たれることになりましたので、予想インフレ率とそして政府支出の増加という部分にまた毀損が生じているということです。このプロセスが理論どおりにいけば大体二年ぐらいで完結するだろうというふうに考えられたのですが、しかし、今ブレーキが掛かってしまいましたので、もう一回再起動が必要という状況になっております。 先ほど来、輸出が増えていないという話が出ていましたが、貿易統計によりますと、直近で発表された一月の貿易統計などでは、前年比で一七%輸出額が増える、輸出数量で見て一一%増えているというようなことが起きています。これは、私はいわゆるJカーブ効果というのが働きつつあるというふうに考えております。Jカーブ効果というのは大体効果が出るまでに二年ぐらい掛かるので、いよいよその効果が出てきているということだと思います。あと、円安が非常に段階的に起きていますので、そのJカーブ効果の発現というか、効果が出てくるのがまた時間的に掛かってしまうということがあります。 設備投資も最近停滞はしておりますけれども、設備投資の停滞は、これは何といってもまだリーマン・ショックの時期までの稼働率を達成していないということが大きいです。これから先も設備投資が非常に重要になると思いますが、現状で設備投資は、まだリーマン・ショックの前の水準にまで稼働率が戻っていないところではこれ以上はやれないという形になっていると思います。 さて、それで、予想インフレ率につきましては、当初上昇していたものが停滞し、下落しているという状況です。ここで上昇したところから停滞して、この青線のブレークイーブンで見るのが一つの見方ですけれども、この停滞が始まったのが大体消費税増税が始まった頃です。そして、最近下がっているのは、これは恐らく原油安というのが大きく関わっていると思います。 ただ、消費者の物価指数の方も下がってきているのは事実でして、予想インフレ率の上下動と軌を一にするような形で実際の物価もちょっと下がりつつあって、現状でデフレからの脱却というのが本当に可能なのかどうかというのも多少危ぶまれているところはあります。 その次は、株価の上昇と円安がもたらされたということなので、これは省略いたします。 いろいろと良い兆候があるというのも幾つか挙げておりますが、こちらも省略させていただきます。 アベノミクスの成果で一番簡単に分かるのは、何といっても雇用が増えているということです。これは就業率で取っております。これは就業者人口、労働人口のうちでどれぐらい就業者がいるかという率で見ていますけれども、アベノミクスが発動された辺りから上昇トレンドへと入っていると。ただ、それでもまだリーマン・ショックのところにまでは至っていないということです。 失業率の低下しているということに加えまして、十ページ目でございますが、自殺率も低下しているということは大変喜ばしいことだと思います。何といっても人命が失われるのが一番経済にとっても社会にとっても悪いことですので、そういったことが失われていることが少なくなったというだけでもアベノミクスは成果があったと言っていいと思います。 ただ、GDPギャップ、需要と供給のギャップを見ますと、アベノミクスで縮小していたのですけれども、消費税増税で拡大するということが起きました。その十二ページのところが最近を見たものですけれども、アベノミクスが始まったところから消費税による駆け込み需要などがあって、それの反動ということですけれども、反動減とはちょっと言い切れないほどに今や消費税増税の効果は出ていると。大体このギャップが概算で十兆円ぐらいあるというふうにお考えください。 〔会長退席、理事森まさこ君着席〕 消費税増税の影響は現状でまだ続いておりまして、これは消費税の導入とそしてその引上げ二回を比較した図ですけれども、消費支出に対して、この最初のところが導入したところ、この点線の部分が前回の引上げ。今回は、ここの図で表されているように、いまだに弱い動きが消費で続いているということになります。 このことによって、よく実質賃金が下がっているということが言われるわけですけれども、消費税増税によって大体二・一%ぐらいの物価がある種人為的に押し上げられているということがございまして、赤線で見たものがその消費税増税の増大分、上昇分というのを外したときの実質賃金の動向というふうなことになっています。多少マイナスのところもありますけれども、もしも消費税なかりせば、恐らく実質賃金は今頃プラスの領域に来ていただろうということです。 そうすると、ここからどうするかということですけれども、私はアベノミクスを再起動すべきだというふうに考えておりまして、ネオアベノミクスという言葉を使っておりますけれども、基本的には三つの矢の方向は正しいと。プラス第四の矢という形で所得再分配政策を加えるというのが望ましいというふうに考えております。 第一の矢は、これは日銀が追加緩和をしたことによって埋め合わせをしました。これ、埋め合わせと申し上げたのは、恐らく日銀は、まあ恐らくというか、日銀は判断の誤りをしたと思います。判断の誤りというのは、消費税増税の影響はないというふうに考えていたのですけれども、実際にはあったと。それを埋め合わせるために追加緩和をしたのが十月三十一日です。ここの部分を更に強化するためには、本日は余り申し上げませんが、日銀がそのインフレ目標を達成するということを政府と日銀が共同でもって強めていく、そういう予想を強めていくということが必要になると思います。それは、日銀法改正というような形で、何らかの法的な形でインフレ目標あるいは雇用の最大化というようなことを法律に明記するというふうなことが必要ではないかというふうに考えています。 第二の矢の部分は、消費税増税の延期を決めたことは非常に良かったわけですし、補正予算で三・一兆円、プラス本予算で九千億ぐらいが増えたというのも良いことではありますけれども、ギャップが十兆円あるところですので、金融政策と合わせたときに、このギャップを埋めるのに十分なのかどうかというのが問題になるかと思います。それから先どういうふうな手段が望ましいのかということについては、私は減税と給付金を中心にした方がよいというふうに考えております。 〔理事森まさこ君退席、会長着席〕 第三の矢、本日の話の後半部分の成長戦略についてはもう少し詳しく述べますが、やはりこれは実効性のある経済成長政策を実行してほしいというふうに思います。 まず最初に、経済成長がなぜ重要かということですけれども、これは、釈迦に説法ではございますが、経済成長は万能薬ではございません。万能薬ではございませんが、様々な問題を解決するのは事実です。例えば貧困、例えば失業率、例えば格差が縮小すると言う人もいます。これは最近話題のトマ・ピケティの「二十一世紀の資本」ですが、彼のロジックに従うと、格差が拡大するというのが、資本の収益率と経済成長率の間に格差があるからだと。そうすると、そのgを上昇させるということは格差を縮小するような方向に行くんだというような論理を立てることができます。あるいは社会保障サービスや財政再建、これも経済成長が必要不可欠の前提です。あるいは環境問題。環境問題は、これから先、例えば温暖化ガスを縮小していくということを考えても技術進歩が必要です。そのためには、経済成長によってそのための研究資金を調達するということが必要になると思います。 景気対策、経済成長が貧困対策だというのはこの図でお示ししていますが、これは最底辺の所得層と、それと所得の中央値、大体真ん中ぐらいで所得を取っている人はどれぐらいかという、経済成長があると最底辺の人はどういうふうになるかというのを示したものです。大体、日本の所得が下がり始めるのは一九九五年ですけれども、そこを境にしまして貧困層の所得というのはどんどん下がっているということが見て取れます。 それと、財政再建につきましては、経済成長をすると財政再建が可能になっていくと。私はそれだけが条件だとは思いませんが、まず何よりも必要条件として必要なのはこの経済成長であるということです。これは、GDPに対する比率で見たプライマリーバランスというものがどういうふうに推移しているかと見てみますが、これは名目GDPについては一年前を取っています。一年前の成長率が高くなるとプライマリーバランスが縮小していくと。つまり、赤字から黒字の方へと向かっていくということが示されています。 それと、経済成長によって財政再建が行われるということは、プライマリーバランスだけではなくて純債務残高でも見て取ることはできます。実は、純債務残高で見たときに、日本の純債務残高が横ばいから下落へと向かった時期がございました。これは小泉政権から第一次安倍政権の頃でした。 次に、経済成長の基本ですけれども、私は基本は三点あると思っております。 資料の二十ページになります。 まず最初に、成長は非常に大事ですけれども、成長政策は非常に難しいということです。だからやらなくていいということでは全くなくて、やるべきなんですけれども、その難しさをまず理解する必要があると思います。 二番目に、成長の要はこれは民間です。政府の仕事というのは、その民間を補助するということになります。インフラの整備も含めて、民間を補助するというのが政府の仕事です。 いずれにせよ時間が掛かります。これは、国会議員の皆さんが議論して法律にして、それが効果が現れるというので、軽く三年から五年というのはすぐにたっていくというようなものだということです。 それと、基本についていろいろとごちゃごちゃと書いてはあるんですけれども、基本的に理論というところに書いたイノベーションと効率化が重要というのに尽きます。基本的に、経済成長の原動力は何か新しいことをするということ、あるいは既存でやっていることの効率を良くすると、この二つに尽きます。そのためには新規参入というのが重要で、あと、都市というのが経済成長のエンジンになります。 私が経済成長を考える上でどういう方向が望ましいのか。仮に日本が経済成長を持続的に維持しようとするならば、望ましいのはオープンな世界だというふうに考えています。オープンというのは、基本的には新規参入者を歓迎するような仕組みです。その新規参入者を歓迎するときに、ルールでもってその政策を決めていくと。ですから、裁量的にやるのではなくてルールでもっていろんなことを決めていくというようなことがあると、日本というのはもっと成長できるだろうというふうに考えております。 成長に関しましては、世上、いろいろな疑問がございます。まず最初に、成長の余地はあるのか。二番目に、人口が減少しているのに成長できるのかという話があります。私は、日本に成長の余地はあると思っています。二番目に、人口の減少で、これは確かにいろいろと悲観的になる可能性もありますが、悲観的になる必要はないというふうに申し上げたいと思います。 一つ、私が楽観的であるのは、日本は、実は政策という面で見ると開発途上国です。どういうことかというと、二十年以上にわたって停滞が続いている中で、世界的に見ると様々な政策がもう既に先進的に実現されています。なので、逆に言うと、日本にとってはキャッチアップの余地があります。ですから、そういう政策で、例えば一か国だけじゃなくていろんな国で成功しているという政策を日本で実行するというだけでもかなりのキャッチアップの余地があるというふうに考えています。 それと、いろいろな変な規制があるということは言われています。これは岩盤規制とかいろいろと言われていますけれども、私はかなり常識の範囲で分かるような規制を潰していけばいいというふうに考えています。 時間の関係で余り詳しくは申し上げませんが、例えば日本の場合、法務省が決めている法令によりまして、外国人の方が日本で飲食業でシェフになるというときに、外国で行われているものをシェフとして入れるのは構わないと。つまり、フランス人のフランス料理のシェフが入ってくるのは構わないけれども、フランス人が日本食を作るシェフに入るのはいかぬというような法令があります。そういったような変な規制がたくさんあるので、そういった規制を個別に潰していくということを考えるだけでいろいろな余地があるというふうに考えています。 それと、人口減少につきましては、一人当たりのGDPの成長率と人口増加率については相関関係がないという図を八田達夫先生という大阪大学の招聘教授の方が述べております。人口増加が成長の決定要因でないというのは二十七ページの図からも明らかです。 潜在成長率の話ですが、私は潜在成長率というのはかなり実績によって左右されていると思います。最近の潜在成長率が下がっているという理由の一つは、資本が増えていないということにも大きく依存しています。なので、投資をしやすい環境になってくればこの部分が増えていくということは考えられるわけですし、規制をいろいろと撤廃することによって更に生産性を増やすということも可能かと思います。 いろいろと格差是正についても用意はしてまいりましたが、こちらは時間がございませんのでちょっと省略します。 最後に、一点だけ、地方経済ということで、御関心もあるということなので申し上げたいと思います。 地方経済につきましては、成長と格差是正の両立ということが重要だと思います。これは、お金を与えるのではなくて、お金を継続的に生み出すエンジンをいかに地方において再構築するかということが必要です。そのときに、成長戦略と同じで、やはり主役は民間にならざるを得ません。しかし、政府には役割があって、いろいろな制度設計ができると思います。そのときには地域間と地域内の移動をむしろ促進する方向が重要です。それと、財源や権限や人間を地方に移転するということが必要だと思います。私は、意思決定構造を改革するということが重要だと思っています。道州制とよく言われていますが、その個々の点は別として、私は意思決定構造改革ということに関しては考慮の余地があるというふうに考えております。 最後に、政治的な決断ということですが、高度成長の前の時期に下村治という経済学者の方が述べたのがこの言葉です。現在の状況は単純に過去の条件によって機械的に決定されているものでもなく、また将来についての希望と夢に従って勝手に形成されるものでもない、過去の実績を背負い、将来の可能性を頭に描きつつ、我々自身が営々として創造し、築き上げるものである、過去は決定された世界であるが、将来は不確定な可能性の世界であり、現在は可能性を現実のものとして創造する世界であると。 恐らく、この言葉が現在でも当てはまると思います。成長ができない、格差是正ができない、デフレ脱却ができないというのではなくて、積極的にその三つのことを実行していくということが大事だと思っています。 御清聴ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) ありがとうございました。 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。 これより質疑を行います。 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。 まず、各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。 質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようにお願いをいたします。 質疑及び答弁は着席のまま行い、質疑の際はその都度答弁者を明示していただきますようお願いをいたします。 なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内になるよう御協力をお願いをいたします。 それでは、質疑のある方は挙手を願います。 西田昌司君。
○西田昌司君 自民党の西田でございます。 三人の先生方、どうもありがとうございました。十分しかないので余り質問できないんですが、私の意見も含めてちょっとさせていただきます。 といいますのは、元々このデフレ調査会つくったときの、私、自民党の筆頭理事でありまして、このデフレ調査会つくった目的といいますのは、これはそれぞれ委員によって違うんでしょうけれども、少なくとも私とか民主党の方も含め共通の認識は、やっぱりこの二十年間かなり、バブルが終わった後、新自由主義に行き過ぎたんじゃないのかと。余りにも自由に民間の力で、官から民へという形で、政府の予算も小さくしたし、減税もした。そして、その結果何が起こったかというと、政府は財政赤字にどんどんなっちゃうと。しかも、民間の方は期待に反してどんどん内部留保ばっかりやってくると。そして、海外に投資をやって移転をして、円安になっても直接的には日本に余り利益にならない。むしろ円安によって貿易収支は赤字になっていますよね、これは。それは石油だけの話じゃなくて、要するに一般の電気製品なんかが海外、中国から輸入しているのが物すごく増えているということにも現れているんですが、要するにそういうバブル以降の経済政策の誤り、これは自民党が多くをやってきたわけですけれども、そういうところを感じているわけなんですね。 そこで、安倍政権になったときに、我々、安倍総理に提言してきたのは、まずそういう方向転換をしていただきたいと。というのが、まず一つは、日銀の話が出ましたけど、元々我々が言っていたのは、政府が主導的に財政出動する、それは公共事業だけじゃなくて、社会保障も含め、やらなきゃならないものをやっていくと。そのときに、しばらくの間は増税をすぐにできないから、その間、日銀と共同、アコードしながら、日銀が市場から国債を買い支えながらやっていけば財政は回っていくと。そして、最後に民間の経済が火が付いて大きくなるという絵で我々は考えていたんですが、ちょっと今のところ出ているのは、いわゆる金融政策の方ばっかりが注目されまして、皆さん方もかなり金融政策賛成という形の意見だったと思うんですね。財政ももちろんあったんだけれども、財政出動も効果あったという先生方もおられましたけれども、要するに、私がちょっと疑問に思いましたのは、そういう、この二十一世紀になってからの、平成になってからの経済政策がかなりおかしかったと、そこが原因でデフレを起こした、だからそこの修正、そこの認識がないと私はデフレ脱却の道筋は立てられないと思っているんです。 そこで、そのことについて、そもそもなぜデフレになったのかと。だから、その原因が今言ったように新自由主義にあると私は考えていますが、だとすると、そこのことの整理をしないとまだ私は脱却できないと思うんですよね。これを三人の先生に聞くと時間がないので、申し訳ございませんが、若田部先生にこれは代表して質問させていただきたいと思います。
○参考人(若田部昌澄君) ありがとうございます。 バブル以降の経済政策が誤りであったというのは、私もそのとおりだと思います。ただ、それを新自由主義という言い方で概括していいのかどうかについて私は多少まだ確信が持てないということだと思いますが、バブル以降の政策で何が間違っていたのかということを申し上げるならば、やはりバブル以降やるべきだったのは、まず最初に資産価格が下がる、そしてそれが一般価格の下落へとつながっていく、その過程で需要が縮小していくという中においては、まず取るべきだった政策というのは、財政と金融政策を一体となってこれは拡張的に運営していくという下支えがまずは必ず必要だったというふうに思います。ただ、それが財政と金融の側の拡張の度合いであるとか、あるいは拡張のタイミングというのがかなりずれていたというのはそのとおりでございまして、この点に関しては、私はやはり失敗があったというふうに考えております。 ただ、それ以上に、例えば規制の緩和であるとか民営化であるというところがどれぐらいの効果があったのかなかったのかというのは、これはいろいろと議論があるところではございますが、私が考えるところでは、適切なマクロ経済政策の支えがあるところにおいては、そこから先はやはり、これは経済成長の天井と我々は申し上げていますが、潜在成長率を上げなければいけないというところに課題が移ってきます。 そうなりますと、そのときに何が有効なのかというのを、経済学の理論、そしていろいろな実証というのを見ますと、やはり民間部門ができるだけ主体となって、それがその経済の成長率を上げていくということに尽きるのかなということです。その過程で政府にも非常に重要な役割があるというふうには思います。 例えば、規制の緩和と申し上げても、規制のどこを緩和するのか。規制を緩和すると、今度はもっと規制を強化しなければいけない部分もあるというふうなことがあると思います。あるいは、インフラというふうに一言で言いましても、これは教育というような非常に重要なインフラもございます。ですので、そういった部分についてはやはりめり張りのある政府のサポートというのが必要であるというふうには考えます。 以上、お答えになったかどうか分かりませんが、私の考えは以上のとおりでございます。
○西田昌司君 ありがとうございます。 先生のおっしゃることは私もかなり共鳴できるところ多いんですね。 そこで、今その貧困対策も含め、教育とか福祉とか、これ全部、結局、公共政策で政府が財政出動しなければならないものなんですよね。そうなると、基本的に、時期はタイミングがあるとしましても、私は、国民負担率を上げる、税率を上げていくと。それは消費税に限らず、やはりもう少し富裕層の方から取っていく、累進課税をもう少し、かつてほどきつくやらなくてもいいとしましても、上げるべきだと思っているんです。そのことによって貧困とかいうことも解消できてきますし、思うんですが。 民間にやれといっても、さっき、先生の資料だったかな、その前の湯元先生の資料だったか忘れましたけれども、要するに、民間はどんどん、貯蓄超過ですからやらないんですよね。だから、民間にお金を回すと、海外に行くか金をためるか、どっちかになってしまうので、それは金融政策で使うか、それとも税制で取るか、どちらかだと思うんですけれども、その辺がちょっと先生のところには触れておられないというか、逆さまのことを言っておられるように思うんですけれども、いかがなんでしょう。
○参考人(若田部昌澄君) 税制、社会保障の改革が重要だというのは、私、そのとおりだと思います。 そのときに、やはり現状で消費税だけに焦点が当たっているというのは、これは問題でございまして、やはり所得税、相続税、固定資産税と、様々な税制を全て一体的に改革するということが必要だと思います。 あとは、歳入を強化するということも現状で必要かと思います。現状でクロヨンとよく呼ばれるような所得税に関しての捕捉の問題もございますので、そういったことを改革するというようなことは必要だというふうに考えております。
○西田昌司君 ありがとうございます。 私もそのとおりだと思います。 ですから、やっぱりこれから是非先生方にお願いしたいのは、今の話聞きまして私もかなり納得したところあるんですけれども、やっぱりバブル以降の政策の間違い点、これは我々も政権与党だったから責任もあるんですけれども、お互いにそれを共有しませんとなかなか、経済政策、これからよくやっていこうというのも議論がかみ合わないので、今日は非常にそういう意味でいい勉強になりました。 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、尾立源幸君。
○尾立源幸君 民主党・新緑風会の尾立でございます。 三名の参考人の先生方、ありがとうございました。前回もQQEについての参考人の方から御意見をいただきまして、今日は更に先生方から大変貴重な御意見をいただいて、ありがとうございます。 時間がないので端的にお聞きしたいと思います。 私自身は、前回の参考人の方々からの御意見もあって、アベノミクス全体の評価というのはまだ時期尚早だと思っておりますし、また、QQEについてはとりわけ、まだ平常時モードに戻っていない中、非常時状況を続けているという意味では、やはり出口が終わって何ぼの世界だと思っていますので、ここは楽観できないし、非常に逆に危機感を持っておるという立場でございます。 そんな中で、まず小峰先生には、円安で輸出数量が基本的に伸びていない、つまり外貨建ての価格を変えない戦略を日本企業は取ったということをおっしゃったと思うんですけれども、まずそれはなぜかということをお聞きしたいと思います。 私自身の感覚では、もう日本が過去のように円安を背景に、生産拠点として輸出戦略で稼ぐというところからもう終わっているんじゃないかと思っておるんですけれども、その辺、一点お聞きしたいと思います。 それと、湯元先生には、二ページ目に、企業がリスクを取らない姿と家計部門の貯蓄がマイナス、これ緑ですけれども、多分マイナスで、なくなっちゃっていると思うんですけれども、この御指摘をいただいたことと、六ページにデフレ脱却と賃上げということで、やはり何といっても実質賃金がプラスにならないことには内需が拡大しないんだと私も思っております。 そんな中で、御指摘いただいていますように、パートなど非正規の正規化、正規、非正規の賃金格差是正、これは本当に大事なことだと思っておりますが、ただ、今の政府はこれと反対の方向に政策を進めようとしておりますので、その辺りの御見解、とりわけ下への格差の拡大が今進んでいる、一人親、働く世帯ですね、この辺の貧困が非常に厳しいということを認識する中で、この辺りについて先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。 最後に、若田部先生なんですけれども、先ほど申し上げましたように、QQEの評価というのは、これ出口が見えてこないと、終わらないと私は評価できないと思っています。 そういう意味で、日銀の大量国債の買入れで将来のコストを内在したまま今進んでおりますが、その辺のコストの負担の在り方などについては先生はどのように分析されているのか、プラスの面を一生懸命おっしゃっていただいたんですが、そういう実は国民負担があるんだよということについてはどう御認識されているのか、簡単に、済みませんが、お願いしたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) 企業がどうして売る値段を下げて輸出数量を増やさなかったのかという理由については、尾立先生と私は同意見です。これはもちろん、円安になればもうかるようになりますから、やがて輸出も多少は増えてくるということもありますので、全く効果はないというわけではないんですけれども、これまでのところは効果は少なかったと。 これは大ざっぱに言えば、尾立先生御指摘のように、日本の企業は恐らく、今後、日本国内で生産してどんどん輸出をしようというモデルはもう捨ててしまったのではないかと。これから増やすのであれば、海外で生産して海外で売っていくというモデルにだんだんなってきているということですので、そういう意味では、円安に輸出拡大で持続的成長というのを期待するのは、現在の日本企業の持っているビジネスモデルと合わないということではないかと思います。 これは恐らく、そこが合わないので、円安になっても輸出数量は増えない。輸出数量は増えないので、設備投資も余り増えない。設備投資も余り増やさないんですから、余り長期的な雇用も輸出企業は増やさないということになって、持続的成長にはつながらない。それをカバーするためには、やはり本来の成長戦略を行っていくことによって、医療とか福祉とか環境とかそういった新しい分野で国内マーケットを形成していくというのが本来の成長政策だというふうに考えております。
○参考人(湯元健治君) 日本の労働市場につきましては、私の認識は、例えばヨーロッパとか欧米諸国なんかを見たときにかなり異質な部分がありますのは、例えば女性の就業カーブがM字カーブになって、出産、子育てを機に会社を辞める方が非常に多いという形になって、子育てが終わった後もう一回働こうと思うとパートぐらいしか仕事がないという形になって、賃金水準がどうしても従前とは下がってしまうと。そうなるのが嫌なのでなかなか子供をつくらないとか結婚もしないとかいう方も増えてきてしまっているということで、まず、この女性の活用の仕方というのを改めるというのは、正規、非正規以前の問題として改革していかないと、欧米並みの女性の活用レベルに上げていくということが、これは例えば一人当たりの所得の上がり方がそれほど大きくなくても、共働きというのが増えていくとこれは世帯の所得というのが当然増えていきますので、家計も豊かになっていくということかと思います。 例えばスウェーデンでの専業主婦世帯って僅か二%しかなくて、そこまで目指せるかどうかは別問題としても、そういう世界を目指していくというのがまず一つ方向性としてあると思います。 それから、パートや非正規の正規化というのは、これはべき論としてそういう方向に持っていくのが正しいかどうかというのは、もちろんその働いている方々の意識の違い、いろんな方がいらっしゃって、自分はこういう派遣とか少し自由な働き方ができる働き方をしたいという方も、アンケート調査を取ると正規社員になりたいという方と自由に働きたいという方が大体半々ぐらいの感じでいらっしゃるので、政策的にどこまで何を進めていくかということはありますが、やはり正規社員になりたいと思っていらっしゃる方が正規社員になれるような方向付けというのをきちっとしていく必要が当然あるんだろうと思います。 それから、そもそも時間給というのがやっぱり同一労働同一賃金でいろいろ言われてきてはいますが、現実問題として、統計データを見る限り時間当たり賃金に正規と非正規で大きな格差があることも事実です。ただ、それが本当の、それだけ大きい格差かどうかというところも、仕事の内容が同じかどうかというのをしっかりと評価した上で見ていかないといけませんので、こういう法律を作って同一労働同一賃金という方向性に向かっていくことは非常にいいことだと思うんですが、その仕事の質の評価、成果の評価、そういうものがきちっとできるような仕組みというのをつくっていかないと現実問題として難しい側面もあるということかと思います。つまり、単に格差を是正するということだけではなくて、そういう仕事の在り方、働き方も含めて、いろんな多様な世界を認めながらも、結果的には時間給のところで平等になるという方向性を目指していくと。これは、ヨーロッパでは大体そういう国が多いということなので、日本のやや遅れている側面だろうというふうに思っております。 以上でございます。
○参考人(若田部昌澄君) 世上言われている恐らくコストというのは三種類あると思います。一つはインフレ率が非常に高くなる、二番目に長期金利が急激に上昇する、三番目に日銀のバランスシートが毀損すると。このうち、インフレ率が高騰するというのは、インフレ目標を実施している限りにおいては余り生じ得ないだろうと。 二番目の長期金利は財政と銀行システム二つに影響が及びますが、どれぐらい上昇するのかというときに、例えば二%ぐらいだとしても財政に関してはその分だけ税収が名目で増えてきますので、このことは余り問題にならない。銀行システムに関しましては、日銀の一応金融システムリポートなどで見ますと、これぐらいの金利の上昇には耐えられるということになると思います。 三番目の日銀のバランスシートの問題ですが、これは政府と併せて見ますと、今、国債を買ってもらっていることの利益が政府の方に来ていますので、日銀の方でバランスシートで毀損があっても、統合政府、二つで考えると、原理的にはそれはチャラになると。ただ、制度的にはそのいろいろな補填なりが必要かと思いますが、現実には今来ている政府の利益というのを日銀の側の補填に回すということだけで可能だと思います。 なので、私自身は、十五年以上続いたデフレから脱却するというときですので、まだまだ出口は遠いというふうに考えておりますが、出口についての将来のコストについても、以上述べたような形で余り懸念する必要はないというふうに考えております。 以上です。
○尾立源幸君 結構です。 ありがとうございます。
○会長(鴻池祥肇君) 平木大作君。
○平木大作君 公明党の平木大作でございます。 本日は、大変貴重な御講演、ありがとうございます。 まず、最初に私の方からお伺いしたいのは、デフレからの脱却に際しての金融政策、三人の参考人の皆様が大変立場が本当に三者三様というか違うなという今お話を伺って印象を得ました。まず小峰参考人ですけれども、ブーメラン効果というものを考えると、やらない方がよかったんじゃないかというようなコメントも先ほどいただきました。また、湯元参考人は、一定の評価はするんだけれども、金融政策に過度に依存をしてしまうとその副作用も大きいんだという御指摘をいただいたと思っております。そして、若田部参考人に関しましては、一番大事なのがまさに第一の矢、リフレ政策なんだと、金融政策なんだというようなところにそれぞれ力点があったんじゃないかなというふうに思っております。 私の方からも、再度、これ今、若田部参考人からは御回答をいただきましたので、改めて、小峰参考人、そして湯元参考人のお二人にお伺いしたいんですけれども、これ実は先週の議論の際にも、この金融政策の出口において何を一体懸念しておくべきか、何を、どういった準備をしておくべきかということが大変大きな話題になりました。今、若田部参考人の方からは、日銀のバランスシートが毀損するようなおそれというのは余りないんじゃないかという御指摘があったんですが、先週は、大分毀損して大変なことになるというようなお話も一方でいただいております。 この点に関して、この今の量的・質的金融緩和を、出口を迎えるに当たって、両参考人から、懸念すべきこと、また御示唆等をいただけたら幸いでございます。
○参考人(小峰隆夫君) 金融政策について、出口についてお話しする前に、今、平木先生の方から、私、金融政策の異次元緩和をやるべきではなかったというわけではなくて、私の意見は、オーバーコミットメントだったという意見です。つまり、二年間で二%というのは約束のし過ぎであったと。それから、できそうもないときはちゅうちょなくやるというのも、これも余りにも約束し過ぎているので、それが足を縛ってしまっているという意味です。 今の御質問ですけれども、出口はやがて必ずやってきますので、私はなるべく早く出口の議論を始めるべきだというふうに思います。これは幾つかステップがありますが、今アメリカが日本に先行してこのステップを歩んでいるわけですけれども、まず出口の議論を始めるというアナウンスメントが必要になりますが、これは出口の議論を始めるわけですけれども、この段階で恐らく今まで出口の議論はしていないということになっていましたので相当なショックになりますので、金融政策の方針が将来、現実に変わり得るというアナウンスメントをすることになりますので、この時点で恐らくマーケットがどう反応するかというのが第一のリスクになると思います。場合によっては、長期金利がこの段階でもう上がってしまうということも十分考えられるということですね。 次は、今度は国債の買入れをだんだん縮小していくということが必要になります。それから、やがてこれが、買入れの縮小をやめて、量的緩和をやめて、今度は金利を徐々にゼロから引き上げていくということが必要になるわけですけれども、そうするとこれは、長期金利はこれは確実に上がってきますので、これがどのくらい上がるのかというのがまた大きなリスクになりますし、それから、その段階で国債の金利が上がりますので財政に相当大きな負担がある。ただでさえ財政再建が厳しい中で、これまでのところは財政の債務残高が増えていっても国債金利が下がっていましたので、債務の支払、償還費とか利払い費そのものは減ってきていたわけですけれども、これからは、金利が上がりますと、財政再建をやって債務を一生懸命減らしても金利が上がるので利払い費が増えていってしまうという状況になりかねないということで、財政にかなり大きな影響が及ぶだろうということですが。 最後に、これが日銀のバランスシートを毀損する可能性があるということですが、これは日銀、大量の国債を持っていますから、これが大幅に値下がり、金利が上がって値下がりすれば資産サイドが大幅に減少しますから毀損するということですが、そのままずっと持っていればやがて償還されますのでいつかはなくなるんですが、現在の異次元緩和で残存期間の長い国債を持つということをやりましたので、これは相当時間が掛かるので、ずっと持ち続けるというのはなかなか、余りにも長く持ち続けるので、これはこれで相当難しいのではないかということですので、その段階で毀損したときに日銀が債務超過になったときには、これ今ルールがないというふうに理解していますけれども、これはやはり財政で救うしかないので、これも財政の負担要因になるということで、そういったもろもろのリスクが、次々に難しいハードルが控えているということだと思います。
○参考人(湯元健治君) やはり出口に関するプロセスというのが非常に大事で、アメリカのQE3の終了、それから利上げを今見込んでいるというような状況から推定しますと、まずは量的拡大をどこかの時点で止めるという判断が必要になってきます。その次に、次のプロセスで短期の政策金利を引き上げるというプロセスに入ってきます。そして、第三段階でバランスシートそのものを縮小する、資金を市場から吸収するというオペレーション、この三つのプロセスがありまして、アメリカの経験を見ましても、まず最初のプロセスで、量を止めるといった段階で経済に対して懸念なり不安が残っていますと非常にマーケットに大きな影響が及んだりしているわけですので、やはり経済が完全にデフレを脱却して非常に安定的な経済成長が持続できる、そういうことが判断できるまではなかなかそう簡単に止めることも難しい状況になっていると。特に二%インフレが仮に目標として達成されたとしても、実質賃金はマイナスというような状況であれば経済は良くなっているわけでは決してないわけでありますので、べき論として早く終わらせて出口に向かうべきだという議論は当然私もそう思っていますけれども、現実論としてはなかなかそう簡単に終わらせることはできないんじゃないか、踏み込んでしまった以上できないんじゃないかというふうに思っております。 それから、次のプロセスで、その止めるということを何とかやったとして、今度は金利を引き上げる、これは技術的にはアメリカでもいろんな議論はされていて、ある程度の金利引上げはできるということになっておりますけれども、これもどこまで引き上げられるかというところもありまして、恐らくそんなに一%も二%も政策金利を上げるというようなところまではそう簡単にはできないというふうに思います。 ただ、政策金利が上がる状況になってきますと当然それ以外の期間の長い金利も上昇してきますので、例えば日銀だけではなくて金融機関などが当然評価損等を被るおそれというのも出てくるわけであります。もちろん、金融機関が持っている国債を全て日銀が買ってしまっているという状況であればその評価損は全部日銀の方に回ってくるということなので、多分このペースでどんどん買っていくと、例えば日銀の保有比率は四割とか、場合によってはそれが長期化していくともっと比率が上がっていくということになりますので、そこのところの評価損というのをどうするのかという問題があろうかと思います。 そして、最終的にバランスシート縮小に着手した段階では、当然、更に債券が売られ、国債、債券が売られますので更に評価損が拡大すると。これはちょっと私もシミュレーションとか計算していませんのでどれぐらい大きな規模なのかというのは分かりませんけれども、恐らく兆円単位ということは間違いないと思います。 したがいまして、それはもうある意味、そういうものが発生した場合には、例えば日銀の納付金の縮小とか、あるいは、それがもうそれだけでは足りないということであれば当然財政資金で穴埋めするということになるかと思いますので、これは、そういうことがあるので今すぐやめるべきだというべき論の世界はあるんですけれども、もう当然ここに踏み込んで、期待に働きかける政策をやってしまい、これを途中で目標を変更する、あるいは途中でやめるといったようなアナウンスをしますと逆のアナウンスメント効果も生じかねないという状況にありますので、私は、ここまで来た以上は、ある程度デフレ脱却が見通せるまでやるべきだと思うんですが。 ただ、二年間で二%という目標にこだわり過ぎて、とにかく二%行きそうもないので更に緩和だ、更に緩和だということになると、出口に近づくどころか、もう出口がどんどん遠のいていき、出口戦略の実行がどんどん難しくなっていくということがありますので、ここはもう、第一の矢、第二の矢はそれなりの効果を果たしてきたわけでありまして、第三の矢を主軸に経済再生を進めていくということがやっぱり望まれる方向性だろうというふうに思っております。
○平木大作君 時間が参りました。以上で終わります。 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 藤巻健史君。
○藤巻健史君 維新の党の藤巻です。よろしくお願いいたします。 尾立委員、平木委員に続いての質問なんですけれども、若田部参考人が更なる量的緩和もと、必要だという御発言があったので、若田部参考人にお聞きしたいんですが。 私、量的緩和というのは、皆さん、言葉尻で、市中にお金をじゃぶじゃぶにして景気を良くしよう、インフレにしよう、デフレから脱却しようという政策のように思われている人がほとんどだと思うんですが、私自身は、それよりも、異次元の量的緩和というのは国が倒産しないための施策にすぎないと思っているわけですよ。要は、今、日銀以外誰も国債を買っていない、すなわち国にお金を貸していないという現状を考えますと、日銀が量的緩和をしないと我々の給料は出ないわけですね。公務員の給料も出ない、地方交付税も出ないということで、国が資金繰り倒産をしてしまうわけですね。資金繰り倒産を回避するのが異次元の量的緩和だと私は理解しています。 その上で、ちょっとお聞きしたいんですが、実はこの前も財政金融委員会で私が聞きましたところ、来年度の日銀の国債購入額、来年度ですかね、来年、二十七年か、どっち、ちょっと忘れましたけれども、百十何兆円とおっしゃっていたんですね。今年度の国債発行額は百五十三兆円とかその辺の数字だと、ちょっとうろ覚えなんですけれども。ということは、七〇%以上、約七〇%日銀が買っているわけですよ。これは、政府がマネタイゼーションとみなされないようにとかなんとかおっしゃっても、国が発行している国債の七〇%の額を日銀が買っているというのは、これはもうまさにフルサイズのマネタイゼーションそのもの、ザ・マネタイゼーションなんです、これ。 ということは、これは若田部先生、更に買ってもいいということは、マネタイゼーションの、経済学上マネタイゼーションは、皆さん、どの経済学の本を読んでも駄目だと書いてあるんですが、どういうデメリット、それは、当然ハイパーインフレの懸念があるからマネタイゼーションというのは禁止されているし、駄目だというふうになっていると思うんですけれども、若田部先生は、マネタイゼーションをしてもハイパーインフレにならないという、それから、それを抑える方法があるとお考えになっているのかどうかをお聞きしたいと思います。 それから、あとのお二人の先生には、先ほど来、聞いていますと、どうも更なる円安について余り積極的な意見をお持ちでないようだったのでお聞きしたいんですが、最初の西田先生のお話で、このバブル崩壊以降、なぜ日本経済、経済政策が間違えたかというと、私はひとえに円高のせいだと思っているわけですね。というのは、結局、為替というのは値段そのものですから、日本経済が悪くなったにもかかわらず、日本人の労賃、日本人の提供するサービス、日本人の提供する物、全て値上げしてきたということですね。 例えば、輸出のことばっかりを為替のときに皆さん考えますけれども、一番問題だったのは労働力だと思うんですが、日本人は仕事をどんどん失ってきたわけですね。要するに、強い円で外国人を安く買える、どんどん空洞化して、どんどん工場が外へ行けば日本人の仕事はなくなっちゃうわけです。幾ら法律で労働者を守ったって、仕事がなくなれば、それは労賃は下がるし、非正規は増えるし、決まっているわけで。この日本人の労賃を安くする、相対的にですよ、ということは、円安にしないことには日本人の仕事なんか増えるわけなくて、賃金も増えるわけなくて、非正規の人間が減ることもあり得ないわけですね。ということで、労働だけのことを考えても、若しくは農産物もそうです、円が強いがゆえに外国産がどんどん入ってきちゃうから日本の農産物は駄目になるということで、要するに日本人が作っている農産物の価格は競争力を失うということなんです。 ということは、やっぱり景気が悪ければ値段を安くするというのが商売の常道であって、ということは、今後とも円安を進めていかないことには、日本の物も売れない、労働力も売れない、仕事はなくなる、それから日本の生産物も売れないということで、このままの百二十円レベルで円安が止まってしまったら日本の将来は全くないと私は思っているんですけれども、それについてはどうコメントされるか、お二人に聞きたいと思います。
○参考人(若田部昌澄君) マネタイゼーションはハイパーインフレーションを起こさないかという話ですけれども、マネタイゼーションというのは一体何なのかというところから本当は話さなければいけないと思うんですけれども、現状で日本国債を買いたいという需要は非常に強いです、民間において。なので、日銀が買わなければ日本国債を買ってくれないというわけではないと思います。これは、クレジット・デフォルト・スワップとよく言われるような日本国債の破綻確率を表すようなものでも非常に低いですし、長期金利が低位に低迷しているということも、一つにはまだデフレ期待が残っているということはあると思いますけれども、そのデフレ期待の下で最も安全な資産は何かというときにやはり国債になっているというところがあると思います。 それで、マネタイゼーションかどうかというのはともかくとして、ハイパーインフレーションが歴史的にどういうふうに起きたのかというのはよく分かります。それは、必ずしもマネタイゼーションが必要十分条件というわけではなくて、ハイパーインフレーションが起きるというのは、例えばフランス革命後のアッシニア紙幣であったり、あるいは第一次大戦後のドイツであったり、第二次大戦後のハンガリーであったり、あるいはジンバブエというようなところです。こういうところは、生産設備が非常に毀損して、政府自身も給料をお金で払わなければいけないというような状況。戦争や革命が起きて国が混乱しているところで更にマネーを増やすということが起きれば、これはハイパーインフレーションになります。なので、ハイパーインフレーションになることを防ぐというというか、日本がハイパーインフレーションになるという条件は現状でゼロだと私は思います。 現状でやっているような財政金融政策がハイパーインフレに行くのかということに関して言えば、これは現状、例えばまだデフレから脱却するかどうかというのを議論しているような状況ですので、しかもその後の目標に関してはインフレ目標二%というのが設定しておりますので、そこから先、急激にインフレが起きるということは考えにくいというふうに考えております。 以上です。
○参考人(湯元健治君) 為替につきましては、まず基本認識として、今回、アベノミクスによって確かに円安に振れたことは間違いないと思いますが、政府の経済政策あるいは中央銀行の金融政策によって自由に為替相場をコントロールするということはかなり難しいのではないかというふうに思っています。百二十円より百五十円の方がいい、あるいは二百円の方がいいと思ってその方向に持っていけるかというと、これは非常に難しい問題だと思います。 今回のアベノミクスによる円安も、ある意味アベノミクスで今までにない金融緩和が行われそうだといったような情報を基に海外の投機筋がかなり大きな仕掛けをして円安になってきたというようなことも実際にはありますし、それから二回目の金融緩和をした後は余り逆に円安が進んでいないと。ほかの要因があるわけでありまして、日本の要因以外にアメリカの要因とかあるいは原油価格ですとか国際的なグローバルな要因も関わってきますので、かなりコントロールすること自体が難しいというふうに思います。 そして、過去のデフレの根因が円高であるという御指摘、私は円高も非常に大きな要因の一つだというふうに思っております。これは、円高というのは、本来あり得べき水準から行き過ぎた円高が生じる結果、こういったデフレ的な圧力が掛かってくると。それに加えまして、やっぱり韓国、台湾、中国といったような人件費の非常に安い国がどんどん日本製品に近いようなレベルの品質のものを作れるようになって価格競争を強いられるようになったと。それに対して、日本企業ができるだけ良いものを安く作っていくというのが日本企業のこれまでの美徳でありビジネスモデルであったということなんで、そういう円高に対応するために、よりコストを削減してより良いものを更に作っていこうと、そういう努力をしてきたということだろうと思います。あるいは、円高に対応していろんな、海外に生産拠点を移すとか、そういうことも努力として実施してきたんだろうと思います。 そういう中で、確かにアベノミクスによって円安、まあ百円程度の円安に振れたというのは、行き過ぎた部分がかなり是正されたというふうに私は思っておりますし、それから一方で、これが百二十円近くになってきますと、もちろん上場企業の中の輸出にかなり依存しているような企業は引き続き円安は有り難いということだろうと思いますけれども、例えば非製造業関係ですとか素材関係ですとか、そういうところはやはり原材料コストや仕入れコストが上がってきて厳しいという声が、いろんなアンケート調査で見ても出てきておりますので、貿易収支が円安の影響によって赤字になるということ自体は、日本全体で所得が海外に流出しているということだと思います。 もちろん、日本経済が円安によって良くなったというのは、この円安に伴って株価も上昇したためでありまして、一年目五七%も株が上昇したわけで、この資産効果が大きく効いたと思います。ただ、二年目の株価上昇率は約七%ぐらいということで、円安に行くに従って比例的に株価が上昇するのであれば、これはプラス効果が持続するというふうに見ることもできるかと思いますが、現実にはなかなか、それは日本企業の収益力が基本的に高まっていくということが確認されないと持続的な株価上昇というのは難しいということだろうと思っておりまして、円安でダメージを受ける企業も出てくるというところを見ますと、それは即また従来と同じようなペースで株価上昇に結び付かないというのもマーケットの判断としては当然なんだろうなと思っておりまして、基本的に、何といいますか、私自身の考え方は、この百二十円レベルから更に円安が進みますと、先ほど言いましたような貿易収支の赤字、これは基本的には輸入インフレの増加を通じてコストプッシュ型のインフレを招来してくるということが昨年の実績でも判明していますので、できれば、もちろん株式市場というところを考えると、この辺りのレベルというのはいいレベルだという判断もできますけれども、円は少なくとも安定をすると、やや円高に振れた方がむしろいいかなというふうに個人的には思っておりますけれども、それが日本経済全体にとっては一番サステーナブルだというふうに考えております。 以上です。
○参考人(小峰隆夫君) 私も湯元参考人と大体同意見です。 一つは、円安、円高というのは、我々がいかにこれぐらいがいいなと思ってもそこにすることはできないということだし、そもそもどれぐらいがいいかということ自体も決められないということですので、円安を政策手段にするということ自体が無理だというふうに思います。 その上で、恐らく、さっきも申し上げましたけれども、これは要するに、日本の実質所得が上がっていくためには、やはり一つは生産性が上がるということと、それから交易条件が改善するという二つの道があるんですけれども、円高というのは本来、交易条件が改善するんですけれども、かつての円高の局面では、日本はむしろ、円高になっても値段を、コストを下げて付加価値を切り下げて同じような輸出を維持しようとしたために、むしろせっかくの交易条件の改善効果を十分享受できなかった。ドイツなんかは、石油の値段が上がったり下がったりしても交易条件が余り変わらない。これは、輸入価格が上がれば輸出価格も上げられるというような対応をしている。 ですから、その辺が、新興国とダイレクトに競争するような産業構造ではなくて、もうちょっと付加価値の高い、技術力の高い、値段を上げようと思えば上げられるような分野で産業構造を変えていくということしかないんじゃないかなというふうに思います。
○藤巻健史君 反論とか更なる聞きたいことはあるんですけど、時間がないんでこれで終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 次に、大門実紀史君。
○大門実紀史君 大門でございます。 私も異次元緩和に関連して質問をさせていただきますが、時間の関係で、湯元参考人が比較的一番民間に近いのかなと思いますので、ちょっとマーケット関係もありますので湯元参考人に絞って伺います。 私もふだん財政金融委員会で、今のあった出口論といいますか、出口なしだと思っていますけれども、そういう議論はしてきましたけれど既にありましたので、もう一つ、この間指摘されているおかしな問題として、官製相場という言い方がされておりますけれども、つまり日銀マネーが市場、相場を形成、ゆがめていると、つくっているというふうなことで指摘されている話ですけれども。 十月三十一日に追加の緩和がありまして、これは御存じのとおり、国債の追加購入と、もう一つはETF、上場株式の投資信託ですね、こういうものを買い増すと。国債は、もう御案内のとおり、全体の三割を日銀が保有しようとすると。ETFでいきますと、調べてもらったら、ETFの全体の三六%ぐらいが日銀が保有するというふうなことになって、これは本当に、もちろん年金基金のGPIFも加わるわけですけれども、相場形成に公的なマネー、日銀マネーが大きく関与してきて、それで株価の急上昇が起きるということがありまして、今も続いているわけですけれども。 要するに、日銀とかGPIFがこういうものに手を出しますと、日銀は数年間売らないと、GPIFも数年間売らないだろうと、逆に言えば、下がったらまた買うだろうと、こういう予測が働いて、何といいますか、買えば上がると、上がれば買うというようなことが続いて今株高になっているという、そういう構図になっているんじゃないかと思いますが。いずれにせよ、こういうことは私が言うだけじゃなくていろいろ指摘されている、いわゆる官製相場、公的マネーがつくった相場という点でありますけれども。 私が思うには、このおかしな点として、こういう日銀のマネーが、本来民間自身が決めるべき価格形成をゆがめているということですね、これは市場経済としておかしいんじゃないかと。公的マネー、日銀マネーが市場の価格形成を左右しつつあると、あるいはしていると、ある局面では。 もう一つは、これは国債の出口なし論とも、出口論とも関わるわけですけれども、こういうふうにETFとか、日銀は株も持っておりますけれども、こういうものに手を出していくと、売るに売れない、売れば下がるというようなことですね。また、国債と違いまして償還期限がありませんから、そういうことも含めて出口が国債以上に難しいという性格があるわけでありまして。 したがって、この官製相場の問題は、かなり民間に与える影響としては、国債の、いずれどうなるかというのは後で相当のツケを国民に回すと私は思っておりますけれども、この官製相場の問題は今ゆがめているという点でまともな姿ではないと思うんですけれども、湯元参考人のお考えをお聞きしたいと思います。
○参考人(湯元健治君) こういう公的なマネーで株式相場を支えるということの弊害について、あるいはリスクについて御質問いただいたというふうに認識しております。 この異次元緩和というものの捉え方というか認識の仕方ということで申し上げますと、そもそもこれだけの異次元緩和をやるかどうかということについて賛否両論が元々ありました。私の認識は、やらないで済むならやらない方が良かったと思っておりますが、今もう踏み込んでしまっている状況だということであります。 こういう異次元緩和というのは、当然大きな効果というのは特に市場を中心に出ていて、それが日本経済にプラスになっていることも事実であります。そのプラスというのは、将来の何かリスクや弊害を先取りしてプラスを享受している可能性もあるわけであります。つまり、この株価が本当に公的マネーで支えられている状況であれば、そして日本企業の収益力とかそういうものが全然高まらないと、あるいは成長戦略の実行によってその効果が現れて日本企業の国際競争力が非常に強まるとか、そういうポジティブな効果がもし現れないということになりますと、これは公的な資金で底上げしたものはいずれ元に戻るというのが理屈の上では考えられることであります。 今おっしゃったようなゆがみが大きくなるというのはもう当然理屈の上では起きるわけでありまして、そういう意味では、この政策というのは、もう清濁併せのむといいますか、プラスも大きいけどマイナスも大きいことを覚悟して踏み込んだと、そして、プラスをどんどん大きくしていってマイナスをのみ込めるぐらいにプラスを大きくするにはこの金融政策だけでは不可能でありまして、やはり第三の矢の成長戦略でまず成長力を底上げしていかないといけないということかと思います。それまでにマイナスの影響が顕在化してこないかどうかというところは非常に懸念されるところでありますけれども。 それと、ちょっと今御指摘の話と少し趣旨がずれる部分もありますが、日本の株式市場そのものの問題点として、やはり外国人投資家の存在感が極めて大きいと。売買比率においても保有比率においてもそうですけれども。 したがいまして、特にこの安倍政権の成長戦略も、株式市場の投資家に対してインパクトを与えるような政策が多いということなんですが、特に外国人投資家を意識したものが多いと思うんですけれども。外国人投資家の中で、長期的に株を買う年金資金等はどんどん入ってきていただいた方がいいと思っておりますけれども、短期的に利ざやを稼ぐようなヘッジファンドのような投資が今のところ多いと。そういうところは当然もうかれば売るという形になりますので、非常に不安定な相場形成がなされる。上がるときには急激に上がりますけれども、下がるときも大きく下がると、かなりこのアベノミクス相場の中でも下がった局面も相当あったわけでありまして。 そういう意味では、大事なことは、この官製相場、やむを得ず官製相場の形で支えるなり上げるなりしていますけれども、それで時間を稼いでいる間に、やっぱり日本人の一般の普通の投資家が、短期的にお金をもうけようということではなくて、長期的に資産形成をしたいと思っていらっしゃる投資家が地道に株を買っていくと。 例えば、今の家計部門の株式保有比率というのは一割強ぐらいでありまして、欧米の三割から五割とかそういうところと比べると相当低いわけでありまして、こういうところを地道に拡大していくところが、例えば日本版NISAとかそういうことでいい政策が打たれ始めていると思いますけれども、それ以外にも、四〇一k年金の非課税枠の拡大とか、それから利子配当、キャピタルゲインの損益通算拡大とか、あるいはより長期の投資、長く持っているということに対して税制の優遇措置を与えていくとか、そういった、日本人の投資家が長く持って、それが自分の資産の増加につながっていくと、そういう対策を早く打ってこの官製相場で支えなくて済むような状況というものをつくっていくことが非常に重要だと思っております。
○大門実紀史君 もう終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 中山恭子君。
○中山恭子君 三人の参考人の先生方、大変貴重なお話ありがとうございます。 私からは二つ御意見を伺いたいと思っております。 一つは、成長戦略の中に含めていいと思いますが、定年制についてですね。この定年制ができたのは、多分平均寿命が六十歳代の頃に今の定年制の基本のところができていると思いますけれども、相当に平均寿命も違ってきておりますし、さらには商業でも農業でも皆さんお元気な限りみんな働いているわけでして、企業の中の定年制、まあ官庁もそうですが、そういったものを廃止してしまっていいのではないかと考えております。もちろんお給料はある一定の段階でぐんと下げて構わないと思うんですが、そのことについて先生方はどのようにお考えか、伺っておきたい。 もう一点は、日本は高福祉社会と言っていいと思っておりますが、小峰先生の中でも社会保障改革は急務であるというようなお話がありました。そういった中で、高福祉社会であれば高負担でないと成り立たないわけでございまして、日本のこの社会福祉制度というものをこのまま維持、続けていいものか、又は全く違う形の制度というものがつくれるのかどうかというようなことに関して参考人の皆様にお考えをお聞きしたいと思っています。 さらに、若田部先生に、貧困層の問題、今日は飛ばされましたけれども、その点についてもお話を加えていただければと思っています。 ありがとうございます。
○参考人(小峰隆夫君) まず、定年制についてですけれども、私は、本来、なるべくこれからは柔軟な働き方、流動性の高い労働市場というのをつくっていくことが必要だというふうに考えております。そういった観点からは、我々はどうしても、ずっと続いてきたものですから定年制は当然ある、それから退職金も当然もらえるというような前提で物事を考えるのですが、よく考えると、これは二つとも人為的な制度ですからなくてもいいということで、ない制度設計というのもできる。 例えば、アメリカでは、定年制は年齢差別禁止法に引っかかりますので定年制はないということですので、日本も私は特定の年齢になったから辞めなければいけないという定年制はない方がいいというふうに思っています。ただ、そのためには、基本的には同一労働同一賃金的なものにしていって、さっき私が申し上げたメンバーシップ型からジョブ型、つまり、一人一人が自分の能力、専門分野を持って、その専門分野を生かしながらキャリアアップをしていくという働き方に変えていくというのとワンセットでやらないとなかなか難しいのかなというふうに思います。 それから、福祉の問題ですけれども、私は、やはり先ほども申し上げましたように、これからは財政の問題もありますし、成長戦略との関係でも、企業負担の問題等もありますので、社会保障をより効率化していくということが必要だと思います。これは国民一般の意識と相当ギャップがある問題で、世論調査なんかを見ますと社会保障をもっと充実してほしいという声ばっかり出てくるんですけれども、本当に求められているのは効率化である。 これは、簡単に言うと、給付をもっと削らないといけないということで、なるべくこれを本当の困った人に給付が行くように、例えば高齢者は全て弱者ではないとか、それから中小企業は全て弱者じゃないとか、そういう本当の弱者に必要なお金が効率的に回るような意味での効率化というのを進めていくことが必要だというふうに思います。
○参考人(湯元健治君) まず、定年制についてでございますけれども、御案内のとおり、高齢者雇用安定法で六十五歳までの定年引上げか、六十五歳までの継続雇用か、あるいは定年制の廃止、このいずれかを義務付けられているということでありまして、この中で大多数の企業が六十五歳までの継続雇用と、六十歳で一旦定年した後、継続雇用という形を選んでいるということであります。 ただ、私の個人的見解では、定年というのは、これはちょっと言い方が厳しくなるのであれなんですけれども、企業サイドから見ますと、年齢を口実とした退職勧告に近いというところは確かにありまして、先ほどの小峰参考人の御意見にもありましたとおり、これは年齢による差別であるということに該当するおそれもあるわけであります。したがいまして、年齢ではなくて、やはり能力や仕事の成果、あるいは経験、実績、こういうものをしっかりと評価した上で年齢に関わりなく雇用するという制度が最も望ましいのではないかと。 実は、近年においては、定年制を廃止して、六十歳以上になっても現役で能力、実績ある方はどんどん働いてくださいというような制度を新しく導入した会社も徐々に増え始めているということであります。 そういう意味では、特に日本は将来労働力不足に悩まされるわけでありまして、高齢者の方もよく六十歳というところで切られてしまって、そこから先、継続雇用であと五年あるとしても、かなり給料が半分近くになったりとか、非常に能力や経験と違う給料が払われているというような事例も多分あると思うんですけれども、そういう形ではなくて、制度自体がやっぱり能力や実績に見合った評価がなされ、そういった方々がいつまでも働きたいと思えば生涯現役という形で働ける、こういう世界を目指していくというのが望ましいんではないかというふうに思っております。 それから、あと、社会保障あるいは社会福祉の問題であります。これは当然社会保障や社会福祉が充実している国は国民の負担も重い、充実していない国は負担も軽いということなんですが、日本の場合は恐らく高福祉までは行っていなくて、中福祉という状況だと思いますが、ただ、負担の方も実際には税金や保険料で取り切れていない部分があって、中福祉低負担という形になっています。この差額は財政赤字という形になっていますので、これをどういうふうに埋めていくかというのは、その中福祉を更に圧縮して埋めていくのか、低負担を中負担に上げていくのか、あるいはその両者の組合せかということであります。 そして、例えばスウェーデンとか北欧諸国のように高福祉というところを目指していくのならば、更にそこから負担が上がっていくと。国民負担率でいうと四三%台ぐらいでありますけれども、財政赤字等を入れればもう五〇%を超えている状況であります。 ただ、スウェーデンは、一時八〇%ぐらいの国民負担になったことがありますが、それでは経済活力が落ちるということで、近年、ちょっと負担を抑える、社会保障の効率化といったような改革もやってきていまして、今は大体五八%ぐらい。イギリスの方がむしろ国民負担が高いという状況になっているわけですけれども。 そういう意味では、国民負担と福祉のレベルというのは、国民性とか国民の価値観とかいろんなものによって国によって差があると思いますので、どれがベストかというのはなかなか決め付けるのは難しいんですが、一つの大きな考え方として、やっぱり受益に見合った負担をしているというような状況になれば、負担が高くても納得性があるということだと思います。今は、負担を上げるという形になりますと反対がどうしても多くなる、しかしながら福祉はもっと充実してほしいと、こういう矛盾のあるアンケートの回答結果がよく出てくるんですけれども、それはやっぱり受益と負担の関係が実感として感じている人が少ないと、負担だけ何かさせられているような感じが強いということなんだろうと思います。 そういう意味では、大きな方向性の流れとしては、受益と負担の関係をもう国という大きな単位で決めていくということはなかなか困難になってきているので、地方で住民と行政が意見を交わしながら、あるいは地方の政治が、地方で自由にレベル観を決めていくと。 例えば、今スウェーデンの例で申し上げましたけれども、例えば住民税率が二八%から三四%という、自治体によって税率が違います。社会保障のサービスレベルも自治体によって違うと。しかしながら、身近なところで議論をしてどのサービスをどれだけやるかということを決めていますので、非常に納得性はあって、住民税が三割近い、三割前後というのは、日本人から見るととんでもなく高いという感じがいたしますが、納得感が醸成されていて、それほど不満を持つ人は少ないという状況にありますので、そういう形で進めていくというのはいいのではないかというふうに私は個人的に思っております。
○参考人(若田部昌澄君) ありがとうございます。 定年制についてはちょっと、もう既にお話があったので省略します。 一応、福祉の在り方ということでいうならば、私の資料でいうと二十九、三十、三十一という辺りです。 福祉をどうするかというのは国民の価値観が一番反映する部分ですので、どうするかというのはありますが、まず、一番納得できるのは、貧困は問題であろうということだと思います。貧困に関しては、現状で一番、全体的に貧困率が上がっているというのもありますが、大人が一人であるような世帯の貧困率というのは非常に高いということになります。これが問題になっています。 三十ページに見ているのは、二十年間で日本がどういうふうになっているかという所得の分布を示しているものですけれども、所得の分布が左の方に寄っていると。これは、所得が、その格差が広がっているというよりも、全体が貧しくなっているということだと思います。 なので、三十一のアベノミクス、第四の矢ということで言っているのが、やはり何よりもまず貧困対策をすると。そこで、まず女性と子供の貧困対策に徹底的に集中するということが日本では必要だと思います。 それから先に、格差の是正というのはどの程度のレベルの福祉を求めるかによってきますけれども、私が望ましいと思うのは、例えば田舎に住んでいる、老人である、あるいは、ある種の企業が、規模が違うということによって待遇が違うのではなくて、あらゆる国民が、貧しいならばその人に対してはお金が行くというような仕組みだと思っています。それは、給付金であったり、あるいは給付付き税額控除であったり、あるいは負の所得税と呼ぶものであったり、最近だとベーシックインカムというようなものですけれども、私は、集団ベースから個人ベースへと再分配を切り替えてそして貧しい人を救うというのでまずその部分をケアできるんじゃないかと。 それ以上に、年金の部分、医療・介護保険をどうするかというのは、これは非常に論点が錯綜してはいるんですけれども、基本的には、私は、老齢者であるから救うと、お金を渡すというのでなくて、基本的には貧しい人を救うというような仕組みにしていくというのが望ましい方向だろうと。その下で、どれぐらいの支出が必要なのかというのはこれまた議論があるところだというふうに考えております。 以上です。
○中山恭子君 ありがとうございました。 終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 中西健治君。
○中西健治君 中西健治です。 今日は、お三方、どうもありがとうございました。 それぞれ一問ずつ質問させていただきたいと思いますが、若田部参考人にまずお伺いしたいと思います。 先ほど藤巻委員の方から、更なる円安についてということで、湯元参考人そして小峰参考人の御意見というのはお伺いしましたけれども、今百二十円前後のところにいて、円高に行く局面でも百二十円というのはなかなか突破できなかった壁だったんですけれども、だから今百二十円ぐらいで止まっているんだというふうに私は思っているんです、足踏みしているというふうに思っていて。日米の金融政策の方向性の違いを考えれば、当然、今後円安に更に進んでいく可能性は高いだろうと思っていますし、若田部参考人は、アベノミクスの再起動ということですから、また結果として円安に行くことは十分、更に可能性は高くなるというふうにお考えになっているんじゃないかなと思いますが、円安のデメリットもいろいろと言われている中、全体としては経済にとってプラスだという御意見かどうかというようなことについてお伺いしたいと思います。 湯元参考人には、財政再建の道筋についての考え方というのをお伺いしたいと思います。小峰参考人、若田部参考人、共に消費税について少しメンションしていただきましたので、湯元参考人は国民負担を上げていくという考え方なのか、それともやはり経済成長というものを重視する考え方なのか、そこら辺を中心に簡潔にお答えいただければなというふうに思います。 そして、小峰参考人には、経済成長戦略のメニューについて、政府の今の経済成長戦略のメニューで足りないものは何なのか。雇用政策というのもお述べいただいたんじゃないかと思いますが、足りないものはどういうものなのかということについてお伺いできればというふうに思います。 よろしくお願いします。
○参考人(若田部昌澄君) ありがとうございます。 まず、おっしゃるとおり、日米の金融政策のスタンスの差というのがやはり為替に関わってくるというふうに思います。なので、私は、円安というのはある種チャンネルの一つというか、金融緩和によってデフレを脱却しようとするということによって必然的に伴うことであって、円安そのものを目的としているというふうには思いませんが、そういうことが起きると思います。 そして、これは私もうやはり、円高が非常にこの二十年ぐらい続いてしまった、もう少し遡れば、三十年ぐらい前のプラザ合意以降、ずっと円高基調に来てしまったというのが日本経済にとってやはりダメージがあったというふうに思います。これはただ、反面で何が起きたのかというと、やはり資産デフレであるとかデフレが起きたということですので、それを是正するという中で一定程度円安方向に行くというのは自然な流れだというふうに思っています。 そこで、プラスなのかマイナスなのかということですけれども、内閣府が示している日本経済の短期計量経済モデルによりますと、一〇%円安が進むと実質成長率が一年目で〇・〇八%上がると、それからその次、二年目以降は〇・四%上がるということを言っています。これは一〇%なので、この三年三か月ぐらいで大体五〇%ぐらい円安が進んでいますので、この効果というのが少しずつ出てくると。内閣府のモデルでも、最初の段階では実は景気が良くなると輸入が増えるので、決して貿易収支が少なくなるというのは悪いことではないんですね。輸入が増えてそして輸出がそれほど伸びないというところで赤字になっているというだけなので、これはもうモデル的にはそうなっているということになると思います。なので、私は全体にとってはプラスであると。 現状で、例えば生産拠点が少しずつ国内に回帰するという動きがありますし、企業収益がもう既に上がっているということもありますし、訪日外国人の数が、昨年度、一千三百万人というふうに来ているということでありますので、この程度の円安はメリットが大きいというふうに考えます。これ以上に進んだときにどうかという部分は多少議論が必要かと思いますが、やはりデフレから脱却する中で国内経済が温まっていくというところですので、そうしますと、単純にその経常収支、貿易収支が赤字になるというのではなくて、バランスの良いような形でその回復がなされていくんじゃないかというふうに期待しております。 以上です。
○参考人(湯元健治君) 財政健全化に関しましては、私の資料の一番最後の参考五の方にちょっと図を載せさせていただいておりますけれども、基本的に、今、二〇二〇年度プライマリー黒字目標、極めて厳しいというか困難であるという状況にあるかと思います。ただ、このグラフを御覧いただいても、二〇〇〇年代前半の景気がいい局面というのはプライマリーバランス赤字が縮小してきていて、リーマン・ショックの後大幅に悪化し、それが景気回復とともに少しずつまた縮小してきていると。 そういう意味では、経済成長と財政健全化というのはそれなりに整合性が取れる部分がある。つまり、経済成長が損なわれるようなことが起きますと、幾ら増税、歳出削減で赤字を減らそうとしても結果的には赤字が減らない、これは厳然たる事実であります。 ただし、全て経済成長が持続すれば赤字も順調に減っていくのかということでいえば、内閣府が今出しておりますプライマリーバランスの試算も、名目経済成長率が二〇二〇年までの平均値で三・四%というかなり高い前提で計算をしていますが、それでも二〇二〇年は九兆四千億円ぐらいのプライマリーバランス赤字が残ると。もし経済成長率が低くなるとということで、低いケースも計算されていますけれども、それでも十六兆円以上残るわけでありまして、これは消費税率換算にして、高いケースでも四%、低いケースでは六%ということになろうかと思います。 つまり、財政再建を実現していくためには、経済成長は大前提で必要なことなんですが、経済成長だけでは難しいというのが現実だろうと思っています。 私の考えておりますのは、例えば、マクロ経済予測というものは常に政府も出しているわけでありまして、それに基づいて財政健全化のルールを一つ作ってしまうというのが、これは法律にしてやるのがいいのかルールとしてやっていくのがいいのかというのは議論のあるところだと思いますが。 例えば、経済成長率あるいは名目経済成長率というのはほぼ税収の伸びというふうに考えますと、これを上回るような歳出の伸びというのは、やはり何らかの財源手当てをしていかないと財政赤字が悪化していきますということで、消費税がいいんではないかと、その財源としてはですね、そういう議論がありますけれども、仮に消費税で賄うということであれば、少なくとも経済成長率を上回る社会保障の伸びの部分については増税で手当てしていく。それを一回一回増税すべきかどうかというのを大きな議論をしてやっていくというのは非常に大変なので、経済が悪化した場合にはもちろん止めるということが必要ですけれども、なるべくそれがある程度、必要財源の増加に合わせて税率が上がっていくような仕組みというのをまずつくってしまうというのが非常に重要なんじゃないかなと思っております。というのは、社会保障の財源として増税をするということであれば、その取った税金は国民にまた還元されるわけですので、理論的にはそれほど経済成長に大きな影響が及ぶわけではないというふうに思っております。 社会保障以外の歳出については、これも一定のルール化が必要で、少なくとも名目経済成長率あるいは税収の伸び率以下に伸びを抑制するというルールが設定されるべきだろうと思います。 この二つのルールが設定されると、時期はともかく、方向性は間違いなく財政が徐々に健全化していく方向に向かっていくということでありまして、それは、どれだけ名目成長率よりも低い伸びに抑えるかというのは、どの時点に目標を設定しているかということにも大きく依存しますので、二〇二〇年というとあと五年ぐらいしかない話ですので、かなり、伸び率としてはゼロ%とか物価上昇並みとか、それくらいに抑えていかないといけないということだろうと思いますが。 いずれにしても、この右側にスウェーデンの予算設定の仕組みを載せておりますけれども、中期で歳出をキャップをはめて抑制していくということなんですが、これは日本でも導入されているわけですが、個別の歳出項目二十七分野に分けて、省庁別ではなくて政策分野別に分けまして、そこでもキャップをはめます。個別の合計が全体の合計に一致しなくなりますので、当然個別歳出項目の優先順位を決めていかないといけないと。この優先順位は、当然、役人にやってくれといっても、各省庁、うちが一番欲しいということになりますので、これは政治の力で優先順位を決めていくと。そして、個別のキャップが全体のキャップの中に入っていくようにしていくと。 そして、あと一つ大事なことは、日本の場合は当初予算で厳格に財政健全化をやろうとしていますけれども、補正予算については特に法律で縛るものは何もないという状況になっておりますので、もちろん景気が悪化したときには一定の経済対策はしないといけないんですが、スウェーデンでは、補正予算そのものも、向こう三年間のバジェットマージンというものを、一定のマージンを設けまして、そのマージンの範囲内で補正予算をやっていくというような仕組みを取っておりまして、こういうところも変えていかないと、経済成長するとともに自律的に財政が健全化していくというのは、放っておくと必ずしもそうならないおそれがあるというふうに私自身思っております。 以上です。
○参考人(小峰隆夫君) 成長戦略につきましては、政府が成長戦略を出しておりますが、これはかなり大部なもので、ほとんどあらゆる項目がこの中に入っておりますので、項目として何か新たに付け加えるようなものはほとんどないというふうに思います。 問題は、何を重点としていくか、どういう考え方でやっていくかというところなんですけれども、これは私自身の考え方というよりは、経済学をやっている人は大体こういうふうに考えるんですけれども、大体三つぐらいあると思うんですけれども。 一つは、雇用の流動化ということで、なるべく発展分野に優れた人材が流動的に集まっていく、衰退分野から人がどんどん出ていくという流動化が必要だということで、これから、さっき申し上げたようなメンバーシップ型より、メンバーシップ型はどうしても固定的になりますので、ジョブ型になるべくした方がいいんじゃないかという方向が出てきます。 それから二番目は、やはり企業の活動の場をなるべくオープンにして活動しやすいような環境をつくる、新しい成長分野にある程度のリスクを企業が取りながら進出できるようにするというのが基本だと思いますが、そういった点では、誰もがこれからは医療とか介護とかそういった分野が成長分野だと言うんですけれども、これはなかなか、社会保障の範囲になっているので簡単に料金設定とか賃金水準を決めることはできませんので、この辺は混合診療とか混合介護を認めて、もっと高いお金を出していいから質の高い医療、介護を受けたいという人は、そういう場をつくれば、これは経済学者がよくビジネスクラスと言うんですけれども、医療とか介護にビジネスクラスをつくればそういった部分でもうけることができるので、もっと民間の活力を生かしやすくなるということがあります。 それから三番目は、さっき若田部先生のお話にもありましたが、地域問題については、やはり人の居住地選択がもっと自由になって人が移動しやすいようにするというのが大変有効ではないか。つまり、サラリーマンを辞めて老後は農業をやりたいという人は地域に移り住んで農地をある程度手に入れることができやすいようにしていけば移動がしやすいということですが、日本の場合はどうしても持家主義になってしまったり、それから長期雇用が前提としていますので、そういった居住地の移動を阻むような仕組みがあちこちにあるということですので、そういったことも考えていくべきではないかと思います。
○中西健治君 どうもありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 吉田忠智君。
○吉田忠智君 社会民主党の吉田忠智でございます。 三人の参考人の先生方には大変貴重な御意見をありがとうございました。私からは、一点、三人の先生にお伺いしたいと思います。今もお話がありましたが、成長戦略の一環として今検討が進められております雇用政策についてであります。 具体的な法案としては労働者派遣法の改正案が既に提出をされまして、去年の通常国会、臨時国会で廃案になりまして、もうじき若干微調整をして出されるということのようでございます。そして第二弾が、ホワイトカラーエグゼンプションの焼き直しという形で、高度プロフェッショナル労働制というんですか、一定程度以上、幾ら残業してももう残業手当を出さなくていい。働き方の多様化という一環で出されようとして、次の法案でまた今通常国会に出されるというふうに聞いております。そして、今内部で検討されておりますのが解雇しやすいルール作りというんですか。 大きく言うと、ほかにいろいろあると思いますけれども、そういうことが今政府部内で検討されていますけれども、そのことに対する評価と、これからの、今の日本の現状に照らして雇用政策がどうあるべきか。私は、今のまま行くと日本の基盤が壊れていくのではないかということを大変懸念をしているわけでありますけれども、その点について三人の先生方にお聞きしたいと思います。
○参考人(小峰隆夫君) これは、私の考えは若干極端な考えですので、ちょっとその点は御了承いただきたいと思いますが、私は、従来の日本型の働き方、つまり新卒で大学を出てある企業に入って定年までそこで働くというようなタイプの働き方そのものが相当時代の要請に合わなくなってきているのではないかという考え方があります。 それで、もっと言うと、よく正社員とか正規社員という言葉があるんですが、私はこれは一種の差別用語ではないかというふうに考えていて、正という言葉が付きますので、そういう働き方が一番正しい働き方だと、それが一番いいんだということになって、どうしても非正規はなるべく正規にした方がいいと。みんな正社員になった方がいいんだという考え方がどうしても出てきてしまうんですが、そこはあくまでも同一労働同一賃金的なものになっていけば、雇用期間が無期であろうと有期であろうと、働く時間が長くても短くても、そこは待遇としては同じになりますので、余り正規か非正規か、いわゆる今の正規か非正規かという区別がそもそもなくなっていきますので、そういった方がよいと。 今のまま行きますと、メンバーに入って正規という立場を取った人とその立場を取れなかった人の差が非常に大きくなってしまうということがあって、これはかえって格差になってしまいますし、かといって働きたい人全員を正規にするというのはとても無理な話だということですし、これは湯元さんも先ほど申し上げましたが、そうでない働き方を自分自身が希望している方もいるということですので、その辺はなるべく柔軟にしていった方がいいということですので、私は、やはり解雇規制ももうちょっと柔軟にしてもいいし、時間に縛られない働き方も柔軟にしていっていいのではないかという考え方をしております。
○参考人(湯元健治君) 労働市場改革の議論がなされるときに、なぜ必要かというときに、やはり日本の労働市場は硬直的であり、流動化が必要であるという議論がベースになっていると思います。そこから、さらに、じゃなぜ流動化が必要なのかというところに遡って考える必要があろうかと思っておりまして、先ほどのデフレが長期化した原因というのは、あるいは長期的に抜け出せなかった原因として、なかなか産業構造が高度化しようにもそう簡単に高度化してこなかったと。まだ、いまだに電機、自動車、機械という、そういったところの業界が日本経済全体をリードしているという状況なんですが、どんどん新興国の追い上げに遭ってどうしてもキャッチアップされてきてしまうと、そういう状況があって、彼らができないような、作れないようなものを、より付加価値の高い物を作り、あるいはより付加価値の高いサービスを生み出していくという努力、これこそが成長戦略であり産業構造の高度化ということなんだろうと思います。 それを考えたときに労働市場はどうあるべきかということは、流動性を高めるというのはその一つの方策だろうと思っておりますけれども、それ以外にも、個々人の持っている能力、エンプロイアビリティーというふうに呼ばれていますけれども、それを高めていく。それは、もちろん個人の自助努力に負うところは大きいんですが、ヨーロッパ、北欧などで言われている積極的労働市場政策というのがありまして、個人が自発的にいろんな形で新しい技能を学ぶ、あるいは知見を学ぶということが社会人になってからも自由にできるような仕組みになっていまして、より自分の年収を上げるためには、より収益性の高い、生産性の高い業界あるいは企業に転職してやらないといけない、そのためには能力を身に付けないといけない。そのためには、それを政府が無償でサポートしてくれるといったような制度になっておりまして。 私の基本認識は、労働市場改革という一つの輪の中でいかに労働市場をどのように改革すべきかという議論にどうしてもなりがちですが、いかに産業構造をどういうふうに高度化して、どの産業を伸ばしていくか。これは、ターゲティングポリシーという形になって、なかなかどの産業が伸びるか分からないという側面もありますけれども、少なくともコンセンサス的にこういう分野は将来伸びるんではないかとか、こういう分野は日本の技術力が相対的に高いんではないかとか、そういうところがあるわけでありまして、そういうところで不足してくるのはそういったところに必要な専門の人材であろうかと思います。 したがって、そういった産業政策と、それからこの労働市場の改革と、それから積極的労働市場政策というのは三位一体で同時に実現していく方向になっていかないといけないんじゃないかなと思っておりまして、そうしますと、もちろんこの派遣法、ホワイトカラーエグゼンプション等々の改革というのは全く必要じゃないというふうに私は思いませんけれども、例えば働き方というのが、働き方に対する価値観とかどういう形態で働くかということに対する価値観も非常に多様化していますので、正規、非正規だけではなくて、限定型正社員制度というのも導入されてきましたけれども、もっともっと多様な働き方があり、多様な形態があるという方向に持っていくというのが一番いい方向性なんじゃないかなと思います。 例えば、女性の能力を十分活用できていないのはなぜかというと、例えば子育て期に在宅でも仕事ができるみたいな形で、会社を辞めないでITを使って仕事ができるというふうなことが一般的になっていけば女性の潜在的な能力を活用していけますし、それから、先ほどちょっと申し上げましたクラウドソーシングみたいなことも、高齢者が地方に移住した後、ITを使って仕事をやるみたいなことが可能になってくる。 そういう意味では、労働市場の中の改革のウエートというのは、そういう働き方の多様化や雇用形態の多様化を進めていく、個々人が自分の生活スタイルやニーズに合った方向で働き、それを適正に評価していただいて一定の収入を得ることができる、そういう世界を目指していくこと自体が産業構造の高度化にも恐らく資する方向性になっていくのかなというふうに思っておりまして、個別の法律が、これこれがいいか悪いかというのは、全体の政策がどっちを向いているのかによって評価が変わってくるということだろうと思っております。
○参考人(若田部昌澄君) この問題は非常に難しい問題でして、確かに、基盤が壊れるという御懸念を持つのももっともだと思います。岩盤と言われているところは基盤と呼ぶのかどうかありますが、御懸念があるのは事実だと思います。 分かっていることだけ申し上げますと、恐らく労働市場の規制が非常に強ければ、確かにこれは害があるというのはそうだと思います。ただ、日本の場合、労働市場の規制がそんなに強いのかというと、これは実は大企業と中小企業でまた全然違うというふうなことがあります。 これまで、やっぱり改革の論議というときに何が欠けていたのかというと、まず労働者が動けるような、まさに働き方の多様性を求めるような環境が余り整備されていなかったということだということは事実だと思います。ですから、例えば昔フリーターという言葉が出たときには、実はあれは非常に積極的な意味を持って使われました。八〇年代の終わりぐらいです。それが、不況になったがゆえにフリーターというのは何か劣ったような存在のように見られましたけれども、実はそうではなかったと。 ですから、アベノミクスによって景気の対策と成長がうまくいけば、労働市場が過熱することによって、まず働き方の多様な選択ということを労働者の側が求めてくるというふうになると思います。そうなったときにはやはりある程度の改革というのが必要で、私が見るところ、それはルール作り、ルールを明確化するというところに尽きるのではないかと思います。 先ほども、成長に必要なのはクローズドなレジームからオープンなレジームと申し上げましたけれども、日本の場合、中小企業では解雇は非常に容易に行われてはいるけれども、実際にそのことが問題になることはないと。大企業で解雇された人が裁判を起こすと解雇規制が問題になるというふうなことはあります。そうではなくて、解雇については一律な規制というのが必要でして、そういった形での例えばルール作りというふうなことを提案していくと。社会保障制度改革や税制改革とも一緒になって、会社に働くという、正社員として働くという人生がいいというんではなくて、もう少し選択することがより良い人生になるような制度づくりをしていくということが大事じゃないかというふうに考えます。 以上です。
○吉田忠智君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 以上で各会派代表しての質疑は終了いたしました。 他に質疑のある方は挙手を願います。 山田君。
○山田俊男君 会長、ありがとうございます。 三人の先生方、大変ありがとうございました。お三方とも、細部は違うのかもしれないんですが、アベノミクスの金融財政改革を評価しつつも、課題は成長戦略の具体化だぞというお話だったかというふうに思います。 ところで、小峰先生は、その成長戦略の中で雇用、農業等、岩盤規制の改革が必要だと、こうおっしゃっておられました。湯元先生は、実質賃金プラスにするということが必要だぞというふうにおっしゃった上で規制緩和や構造政策をおっしゃって、農業は民間企業の参入とTPPの締結をおっしゃっておられたかというふうに思います。若田部先生、貧困対策をおっしゃって、その対策が必要だぞとおっしゃる一方で、オープンレジームを改革として項目ごとに挙げておられまして、農業はTPP対応型農業が必要で、さらには、農業については関税撤廃と民間企業の農業への参入が必要だと、こんなふうにおっしゃっておられたかというふうに思います。 その場合、お三方共に簡潔でいいですからお聞きしたいんですけど、日本の、まあまあそれなりに世界の中で多様性のある国土、農業の実態があるわけでありまして、日本を壊さないか、ないしは日本型とも言うべきそれぞれの農業等の成長戦略があるのではないかという、ここの部分についてはひとつどんなふうにお考えなのかお教え願えたらと、こんなふうに思います。よろしくお願いします。
○参考人(小峰隆夫君) この問題は、私は必ずしも専門ではありませんので十分なお答えはできないんですが、ただ、農業、農林漁業全てそうなんですけれども、ヨーロッパの先進国を中心に、いずれも、農業も漁業も林業も十分高い賃金を払いながら産業として成り立っているし、輸出もどんどんしている、競争力を持っているということがありますので、同じ先進国の一員として競争力のある農業をつくり上げるということは十分可能だというふうに思います。 ただ、この場合、生産性が大幅に上がりますので、上げないといけませんので、今農林漁業で働いている人は全員同じように働き続けることができるかというのは必ずしも保証できないんですが、そこを、その生産性の向上を十分図れば、これは十分日本の農林漁業が国際競争の中に伍して戦っていくことができると。 そのためには、どこをどうするというのは、これは個々の農林漁業に従事している企業なり生産者の努力次第ということですので、そういった努力を促す仕組みが、市場をなるべくバリアを少なくしていって国際的な競争の場にさらしていくという中で競争力が強くなるという方向を目指すのがいいのではないかなというふうに思っています。
○参考人(湯元健治君) 農業の改革をどこまでどう進めていくべきか、欧米並みにできるのかどうかということでいったときに、国土面積が狭いということが非常に大きな生産性向上の制約になっていることは事実だろうと思います。 他方で、TPP参加するかしないか、聖域五分野を守るか守らないかということとは全く別次元の問題で、日本の平均就農年齢がもう六十六歳に達していて、今後このまま新しい担い手が現れないと十年後は平均七十六歳になりますから農業が崩壊してしまうんじゃないかと、こういうこともありまして、私は当然大規模化できるところはどんどん大規模化して生産性を上げていくというのがまず一つあるかと思います。 それから二つ目は、やはりその若い方々の担い手を増やしていくような政策を取っていかないと、まだ農業所得が百万とかそういうところで若い方々がどんどん入ってくるかというと、限定的なものにとどまっているということもありますので、農業がやっぱり所得が増える、あるいは産業として成長していくということが大前提にないとそういうことも現実的には難しいというところはあるんですけれども、今の成長戦略の中には、六次産業化というものを目指して、農産物だけではなくて食も含めて、加工、流通も含めて一つのビジネスモデルをつくり上げていこうと、そういう方向性やコンセプトが示されているというふうに思います。 そういう中で、その担い手のもう一つの期待される主体というのは企業、株式会社ということなんですが、今、現時点では農業生産法人に出資する形で企業が関与できる、一部関与できるような状況になっていて、そういう中で農業生産法人の数も増えていますし、それから農産物輸出も、金額的にはまだ六千億ちょっとではありますけれども過去最高を記録するといったような方向で、かなり農業界と産業界、あるいは金融界も含めて協働して新しいビジネスモデルをつくり上げ、新しい農業が産業になるような方向性で改革が進められているという印象を持っております。 ただ、もちろんこの株式会社の参入も農業生産法人への出資なんかの規制がまだ強く残っているとか一定の制限もありまして、そこをどうしていくのかというのは、これから出てくる実績が思うほどに上がってこなければそういうことだろうと思いますし、国土面積が最初狭いということを申し上げましたが、つまりこれは生産性を上げたくても上げられないとか、集約したくても集約できないところをどうするのかという問題ありまして、零細農家等をどうするのかという別次元のまた政策というのが必要になってくるんだろうと思っておりますけれども。 いずれにしても、私は今やっている方向性は間違っていないと思いますし、更に歩を進めていっていただきたいなというふうに思っている次第でございます。
○参考人(若田部昌澄君) 私は、日本の農業はポテンシャルがあると思っていまして、それは日本経済が成長できるということと全く同じです。ただ、そのポテンシャルを生かすためには、やはりいろいろな制度改革が必要であるということになるかと思います。一つのポイントは、先ほど来いろいろとお話出ていますように、やはり新規参入を促進するということだと思います。 変な規制の例というところで一つ挙げましたが、農業ベンチャーを立ち上げたときに、その取締役というのは農業従事義務というのがあるというのが現状での農地法です。ですので、例えばそういったことをどうするのかというようなことを考える必要があるでしょう。 耕地の面積に関しましては、オランダのように成功した例もあって、耕地面積が少ないところでもうまくやっているというところはあります。ただし、その場合、TPP対応型で関税を廃止して、そして減反も廃止すると。そこでもう一つ付け加えなければいけないのは、欧米型の補償の仕組みでいうと戸別所得補償というのがあります。これは、先ほど申し上げたルールに基づいて再分配というのを、集団ベースから個人ベースへとやっていくということの流れにも一つ関わってきますけれども、関税で取っていたようなお金の部分というのを今度は戸別所得補償という形で渡すという形で、むしろもっと働いてくれた人にはもっとお金を渡すというふうな補助金の使い方もあるのではないかというふうに思います。 ですので、私は、日本の農業というのは適切に制度改革をすればうまく産業として成長できるというふうに信じているものであります。 ありがとうございます。
○山田俊男君 ありがとうございました。
○会長(鴻池祥肇君) 舞立君。
○舞立昇治君 自民党の舞立でございます。 今日は三人の参考人の先生方、ありがとうございました。 私からもちょっと手短に御質問させていただきたいんですが、今日西田先生が、この十五年のバブルというのがやっぱり新自由主義に偏り過ぎた感があって、それが主な原因じゃないかといったようなことも指摘されましたが、私もそういうふうに思っていまして、いつの間にか競争競争、市場原理というので政府支出を削減して、いつの間にか社会保障以外の対GDPの予算が先進国では最悪になったと。それが地方の疲弊を生み、東京への一極集中を加速し、このような超少子高齢化、そして人口減少社会に陥った原因だと思っていまして、今デフレからの脱却と成長戦略、財政再建というのが論点になっているんですけれども、やっぱりデフレからの脱却をしても、またちゃんと経済成長できるかどうかもちょっと分からないというような状況の中で、やはり今、デフレからの脱却と財政再建と、もう一つやはり日本の大きな課題として地方創生を確実に成し遂げていかないといけないと。 東京からの一極集中の是正と出生率の向上、人口減少をできる限り食い止めていくといったような中では、非常に長期的なスパンで考える必要があると思っていまして、そういうことからすると、恐らく三人の先生方皆さん、二〇二〇年のあのPBの黒字化目標は困難というふうに思っていらっしゃると思いますけれども、じゃ、これから財政再建の在り方、特に歳出削減、私はもうかなり切り込んできて限界に達しつつあるという認識で、それは不断の努力はしていくべきだと思うんですけれども。 じゃ、この日本にとって、これから財政再建、特に歳出削減の在り方、内容等についてどのような考えを持っておられるのか、ちょっと具体的に三人の先生にお聞かせいただければと思います。
○参考人(若田部昌澄君) ありがとうございます。 歳出についてどう考えるかと、歳出削減をするとするならばどういう形にするかということだと思うんですけれども、私自身は日本の成長力を割に楽観視している人間ですので、しかも日銀が二%のインフレ目標にコミットすると、あの体制が続くということであるならば、政府が目標としている実質経済成長が二%、それでインフレ目標の部分が二%ということになりますので、普通で考えると名目成長率四%という世界になると思います。ただ、この四%というのが日本の最近の十五年ぐらいの歴史では非常に破格に高い数字になりますが、ほかの先進国では普通に達成されている数字です。なので、名目成長率四%ぐらいを実現するというのは、私は何も難しいことではないというふうに考えています。 その下で、財政についてはやはり好転が見込めるだろうというふうには考えています。ただ、その後に歳出の部分をそのままずっと伸ばしていくのかどうかというのは、これはやはり慎重に考えなくてはいけなくて、もしもそうなると、債務残高のGDPに対する比率というのが一定の割合で下がっていくのか、あるいは本当に下がっていくのか、どの水準にまで下がっていくのかというのがかなり危うくなってくると思います。 なので、やはり成長があって、なおかつ歳出については見直しをするなどが必要だと思いますが、基本的に、例えばそのときに何が大事なのかというときに、その歳出がどれぐらいの社会的な効果を持っているのかということについて何らかの評価をするようなことが必要だと思います。まず尺度が必要ですね。それから、それをどういうふうに実行していくのかというようなことです。 ですから、私は、その財政政策についても、オープンレジームと申し上げていますけれども、やはりルール化して、そのルールの下でこういう形の財政支出は必要だ、必要でないということを何か精査するような、そういった仕組みであるとかというのがあればいいのかなというふうに思っています。 ただ、その社会保障費が自然に増加していくというのをこのまま許容していると、これは四%名目成長率があったとしても財政がなかなか立ち行かなくなってくる可能性はあるというふうには思っていますので、何らかのそのオープンなルールに基づくような仕組みをつくっていくという方向にかじを切っていただければというふうに考えております。 以上です。
○参考人(湯元健治君) ちょっと先ほどのお答えと重複する部分があるかもしれませんけれども。 財政再建を進めていく上には、当然経済成長がないと駄目だというのがまず第一段階です。それから、当然、社会保障のように経済成長あるいは税収の伸びを上回るような歳出については、これは一定の効率化は必要ですが、これが経済成長率以下に抑えるような歳出削減というのはかなりいろいろな問題が生じる可能性が高いというふうに思います。 したがって、経済成長の伸びを上回る部分については、効率化を図りつつも、基本的に財源を消費税等の増税で調達するのが望ましいのではないかというふうに思っております。それ以外の歳出については、これも先ほど申し上げましたが、経済成長率や税収の伸び以下に抑えるというルール化をしていくと。 となりますと、今度は削るといっても、これまでどんどん例えば公共事業などを削って減少し続けてきたということなんですけれども、それは社会保障のところの財源を調達しなかったがゆえに全体の財政赤字が膨らむという形になって、それ以外のところで大きく削らざるを得ないと、そういう局面になったわけでありますが、社会保障のところでしっかりと財源調達ができる仕組みができ上がれば、今度は経済成長すればその範囲内で一定の伸びが認められるような形に当然なっていくんだろうと思います。ただ、どの分野についても同じように伸ばすということではなくて、やはり優先順位を付けて、めり張りを付けて、まさに費用対効果がどれぐらい上がるかという評価も含めて優先順位を付けて歳出の伸びを管理していくと。 これをもう制度として予算制度なり財政政策の中にビルトインしていくというのが大事で、どの分野の歳出をどれぐらい削減すべきかというのは、これはもう本当に人々の価値観によって違うところでありますので、私もここをもっと集中的にやるべきだというのはあえて申し上げませんけれども、いずれにしても、そういうルール化をし、なおかつ優先順位がしっかり付けられていくということであれば、財政というのは基本的に経済成長し続ける中で着実に改善していくということだと思っております。
○参考人(小峰隆夫君) 私も、財政を再建していくためには経済成長の実現と歳出の削減とそれから歳入の増加、この三つが恐らく全て必要だということだと思います。 ただ、これは経済成長すれば税収増えますし、それから所得が増えたから医療費が増えるということはありませんので、やはり増えれば増えるほど保険料も入ってきますから、財政的には楽になりますので成長は大変望ましいということですが、ただ、誤解のないように申し上げておきますと、財政のために成長を追求するというのは本来あり得ない。成長というのは、そもそも成長することはいいことなんですから、雇用も安定するし所得も増えるわけですから、成長を最大限追求するというのは財政が黒字であっても赤字であっても追求すべきだということで、財政が大変だから成長しようという、そんな簡単な話ではないというふうに思います。 最大限成長を追求した上でも恐らく財政赤字が相当残るということですので、これは歳出のカットと歳入増、これは経済学者でもいろんな議論がありますが、両方やる必要がある。歳出カットの方は、恐らく社会保障が、これは自然増が相当ありますのでここを重点にせざるを得ないということで、これは無駄を削るとかいうよりは、必要なものもある程度削っていくぐらいの考え方をしないと本当は削れないんじゃないかというふうに思いますし、それから、消費税の方も、これは経済学者の多くは、どう考えても二〇%ぐらいまでは必要なのではないかという考え方をする人が多いということです。 それから、ルールという点では、私は、長期的な財政の運営としては、楽観的な経済成長を前提として財政計画を作ってしまいますと、多めの歳入を前提にして財政計画が作られるということですので、それがうまくいかなかった場合に計画どおりいかないということになりますので、私は、堅めの成長率を前提として財政再建計画を作って、経済がうまくいけば計画よりももっと歳入が増えてくるわけですから、計画よりももっと財政再建がうまく進むということになりますので、そういった道を取るべきではないかと。その際に重要なのは、歳入が増えて剰余金が出たときに、これを補正で使ってしまいますと元も子もないということですので、私は補正も含めて財政再建の枠組みを決めていくということを考えた方がいいんじゃないかと思います。
○舞立昇治君 ありがとうございました。 終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 尾立君。
○尾立源幸君 済みません、二巡目で申し訳ございません。時間がちょっと余っておりましたので、私自身の質問をさせていただきます。 若田部参考人にもう一度お聞きしたいんですが、その前に、まずこの三十一ページの、何よりもまず貧困対策、そして格差是正等々、このメニュー、私も全くまずはそのとおりだと思っております。本当にこういったことを、特に下への格差の拡大を防いでいくためにも大事だなとまず思っていることは申し上げたいと思います。 その上で、量的緩和、質的緩和の出口の話で、先ほど三つのリスクについてお話をいただきましたが、最後の日銀のバランスシートが毀損をしていくときの話で、政府と日銀は、まあ大きな意味で政府なんだから、連結すれば余りリスクないんじゃないかみたいなお話をされたように聞こえたんですけれども、実際、例えば三百兆の国債で一%の金利上昇になった場合に三兆軽くこれ含み損が出ていきますし、二%なら六兆、こういうことがもう見通せるわけなんですけれども。 この損失が出たとき、日銀自体に、これはお考えでは政府、財務省を中心とした政府がこの損失を補填してやる、助けてやるという、まさに公的資金の注入ということをおっしゃった上で、連結すればツーペイだからいいんじゃないのということなのか、そのために別の法律を作って助けなきゃいけないのか、そういうことを少しお聞かせいただきたいと思います。もしこれが民間銀行が持っておったらそんなことできないわけですから、ちょっとその真意をお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(若田部昌澄君) 連結するときのリスクがないというよりは、現状で日銀が国債を買っていることによって政府にはもう既に利益が入っているという認識なんですよね。なので、その利益と日銀の将来生じるであろうという損失は、理論値的にはこれは一緒になるはずなんです。 つまり、そのところで、例えば日銀の納付金ですよね、納付金の減額などによって例えばそこの調整をするというのが一つの考え方。もう一つは、それでも仮に日銀のバランスシートが毀損するということであるならば、基本的には政府の方で既に生じていた利益があるはずなので、それによって日銀の損失というのは基本的には相殺をすることができるということです。 これは私だけでなくて、竹森俊平先生という人が「世界経済危機は終わった」という本でもそういうことをお書きになっていますし、実はアメリカの前FRB議長であるベン・バーナンキという人も、基本的には日銀のバランスシートの問題というのは気にする必要はないと。 それで、いろいろとやり方はあって、例えばほかでやるならば、例えば金利をスワップすると。つまり、日銀に損失が出ないような形でスワップするというような形はできると思います。それは、そうすることによって、逆に政府がこれまで得た利益をそこに補填するというのをそういう形でやってやると、ボンドコンバージョンと呼ばれるようなやり方ですよね。 なので、やり方はいろいろとあると思うんですけれども、しかし、私が言っているのは、日銀だけの単体のリスクを見るというのは、これはちょっともっと大きなことが必要でして、政府と日銀が統合政府としてやっているということを認識した方がいいということでございます。
○尾立源幸君 終わります。
○会長(鴻池祥肇君) 他に御意見もないようでございますので、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。 一言御礼を申し上げます。 お三方の参考人の先生方には、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきました。おかげさまで有意義な調査を終了することができました。心から御礼を申し上げます。ますますの御活躍を祈念申し上げております。ありがとうございました。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十一分散会