国際経済・外交に関する調査会 第6号
- 発言数
- 58 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 2015/05/27
会議録
○会長(柳田稔君) ただいまから国際経済・外交に関する調査会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日、羽生田俊君が委員を辞任され、その補欠として馬場成志君が選任されました。 また、本日、福山哲郎君が委員を辞任され、その補欠として小見山幸治君が選任されました。 ─────────────
○会長(柳田稔君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 国際経済・外交に関する調査のため、本日の調査会に内閣官房内閣審議官澁谷和久君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(柳田稔君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○会長(柳田稔君) 国際経済・外交に関する調査を議題といたします。 本日は、「国際平和と持続可能な国際経済の実現に向けた我が国外交の役割」のうち、「我が国の経済連携への取組の現状と課題」に関し、政府から説明を聴取し、参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。 本日は、慶應義塾大学総合政策学部教授・同大学院政策・メディア研究科研究委員渡邊頼純参考人に御出席をいただいております。 この際、一言御挨拶を申し上げます。 参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございます。 本日は、参考人から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いをいたします。 本日の議事の進め方でございますが、まず内閣官房から二十分程度説明を聴取し、その後、渡邊参考人から二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。 なお、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、初めに内閣官房から説明を聴取いたします。澁谷内閣審議官。
○政府参考人(澁谷和久君) 内閣官房の澁谷でございます。よろしくお願いいたします。 それでは、お手元に「TPP協定交渉について」という内閣官房の資料がございます。これに沿って、TPPの話を二十分でというのは大変難しいことでございますが、何とかコンパクトにお話をしたいと思います。また、後ほど質疑の時間がございますので、そこで補足的な御説明をさせていただければと思います。 表紙をめくっていただきまして、一ページ目に、これまでのTPPの関連の動きがございます。最初はもっと大きな字だったんですが、ずっと年月を経るに従って字が小さくなっております。TPP、トランス・パシフィック・パートナーシップといいまして、環太平洋経済連携協定あるいは環太平洋パートナーシップ協定と言っておりますが、現在十二か国、右下に絵がございますが、こういった国々で交渉を行っているものでございます。 日本は十二番目の参加国でございます。その年表の真ん中ぐらいにございますが、二年前に正式な参加表明をいたしまして、二年前の七月の二十三日に、マレーシアのコタキナバルで開催をされていた第十八回の交渉ラウンドの中で、日本が正式に参加をしたというものでございます。私、二年前の七月一日に内閣官房、このポストに就いており、その後、正式参加して以降、閣僚会議等は全て出席をしているものでございます。 七月二十三日の午後二時をもって日本が正式に参加を認められまして、初めていわゆる交渉テキストという、条文、協定の案文でございますけれども、当時六百ページぐらいございました、これに初めて日本はアクセスをしたわけでございます。日本は、当時、各省の担当官を連れて現地に行ったわけでございますが、一晩で、みんな徹夜をしたわけですが、一晩でテキストを全部読み込みまして、翌日私が記者会見をしたんですが、テキストを全部解析をして、我が国にとって大きな懸念事項は現時点ではないということを翌日私が記者会見で発表したのを、まさに昨日のことのように思い出す次第であります。 その後、ざあっとございますけれども、十二か国の閣僚会議が七回開催をされております。当初、二年前は、年内に終わるんだということをずっと言われておりまして、終わらず、昨年も、昨年は十一月、APECがあるのでそこで終わるんじゃないかといろいろ言われてみんな必死に頑張ってきたんですが、結局去年も終わらずということでございます。本年どうなのかという見通しはまた最後にお話をさせていただきたいと思いますが、今日まで、一番下に書いてございますが、グアムにて首席交渉官の会合が開催をされておりまして、今日で終わる予定でございます。その後どうなるかというのは、また後ほど御説明をしたいと思います。 二ページ目でございます。 これは、正式に交渉参加を表明したときの日米の首脳会議をやった後の共同声明でございます。全ての物品が交渉の対象とされる、その上で日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品という、これはセンシティビティーが存在するということをお互いに認めた上で交渉に参加したということでございます。ただし、最初の段落にございますように、全ての物品が交渉の対象とされるということでございますので、いわゆる関税撤廃の例外については交渉の中で勝ち取るということがこのとき決められたということでございます。 三ページ目でございます。 これが、一昨年の三月十五日の安倍総理大臣の記者会見でございます。後ほど、TPPの意義などについては渡邊先生の方からより詳しく御説明があるのではないかと思いますので簡単にしたいと思いますが、安倍総理がこのときおっしゃったのは、真ん中にございますように、こうしたルールを守る、お互いに普遍的な価値を共有する国々とともに、アジア太平洋地域における新しいルールを作り上げていく。さらに、下から三段落目でございますが、重要なプレーヤーとして我が国は新たなルール作りをリードしていくことができるということでございます。実際、これなかなか御説明できないのがこちらも悔しいんですけれども、二年前の七月に初めて見たテキストと現在のテキストは全く内容が違っております。相当日本がリーダーシップを持って中身をかなり書き換えたというのが正直なところでございます。また後ほど、各論のところで少しお話をしたいと思います。 TPPの効果というものを、四ページ目でございますけれども、これも二年前の三月に経済効果として発表したところでございます。GTAPというマクロ経済モデルを回しまして、政府統一試算ということで、これは当時からずっと御説明してございますが、仮に全ての関税が撤廃をされ、かつ何の対策も行わないという極めて極端な前提に基づいて試算をしたものでございます。実質GDPを三・二兆円底上げ、農林水産物の生産額は三兆円減少。農林水産物の減少、これは生産額でございます。GDPは付加価値でございますのでこれはベースが全く違いますが、こういう試算でございます。 次のページが、五ページでございますが、これは経済学者が中心となって、政府とはまた、独自に試算をしたPECCの試算でございます。かなり、これは関税撤廃効果だけではなくて非関税、非関税といいますのは、サービスとか投資について、日本以外の国が外国の企業だけを差別する規制をたくさん持っております。こういったものを全て規制緩和をしてもらうという、そういうことの経済効果というものも入れますと、これは関税の効果よりもはるかに大きいと、こういう試算でございます。 TPPの経済効果というのは、前回のこの調査会でも私お話ししたかと思いますが、何種類かございます。一つがまず古典的な経済学のあれによります関税の撤廃効果、これがあるわけでございますが、それに加えて、非関税と言われております各国の関税以外の様々な規制を緩和することに伴って、投資やサービスの投資が活発になるということの経済効果というのもかなり大きいものでございます。ただし、これはまだGTAPのモデルの中では確立されたものではありませんので、これをどこまで定量化できるかということがこれからの検討事項になります。 ただ、もうそれ以上に大きいと言われておりますのは、安倍総理の記者会見の中にもございましたが、TPPの本質的な意義というものは、この十二か国、アジア太平洋の中で新しい経済連携を進めていく、つまり新しいバリューチェーンを構築していくということでございます。お互いにルールを守り、そのルールの下で安心していろんな投資ができる、それが新しいバリューチェーンを構築する。つまり、今ある特定の産業あるいは特定の国が一方的に得をするというものではなくて、新しいバリューチェーンをお互いにアイデアを出し合ってどんどん構築していくことで、それがお互いにとって付加価値を高めるという、そういうことが可能になるようなルール作りをするというのがTPPの本質でございます。 したがって、TPPができた後、これを民間がどう活用して、新しい付加価値をどうやってどんどん生み出していくかということがTPPの本来的な意義でございます。各国の、十二か国の民間企業がお互いに切磋琢磨をしてアイデアを出し合って、その上でイノベーションが促進をされ、よってもって日本を含めた各国の生産性が向上するというのが一番大きな経済効果でございます。 ただ、これをどういう形で特に定量化してお示しできるかというのは、これはどの国でも学術的には発展途上の分野でございますので、いずれ妥結をして御承認のお願いをするために国会に御説明をしなきゃいけない、そのときにはTPPの効果というものを当然、国民の皆様にも国会の皆様にも御説明をしなきゃいけないことだと思いますが、その際に、今申し上げたことをどれだけ分かりやすく御説明できるかということを我々は今検討しているところでございます。 次のページ、六ページでございます。 TPPのメリットを定性的にお話をしたわけでございますが、いつもメリットのお話だけをすると、デメリットの話が全然ないと言ってお叱りをいただくものでございます。ただ、俗にデメリットと言われているものにつきましては、既に、この六ページにございます農林水産委員会の決議、二年前の四月でございますが、この決議の中の一項目めから五項目めが、農林水産委員会の決議でありますけれども、多くの国民の皆さんの懸念事項だというふうに我々は認識しているところでございます。一項目めがいわゆる五品目、農産品についての、これを守れという、そういうのが一項目めでございます。二項目めは食の安全に関する懸念であります。三項目めは林産品であります。四項目めは漁業補助金。五項目めがISDSについての懸念事項でございます。 ほかにもいろいろございますが、農林水産委員会の決議に明記されておりますこうした懸念事項にいかに応えていくかということが、我々交渉していく中で常にこの決議、頭に入れて交渉しているところでございます。特に関税の交渉に当たっては、この決議を英訳したものを何度も何度も交渉相手国には見せて、配っています。何度も配るんで、ある日どこかの国から、本当にこれが正しいかどうかチェックしたいから日本語を見せろと言われたこともあります。何度も配っていて、これはどの国も熟知をしているところでございます。 その上で、七ページ目でございます。 七ページ目でございますが、TPPは、日本が入る前、ホノルルというところでホノルル宣言というものが出されております。関税撤廃が原則だと、全ての品目の関税を完全に撤廃することが原則だという趣旨のことがうたわれているわけで、これがTPPの原則だと言われているものでございます。日本は、入ってから、この農林水産委員会の決議、それから日本がいかに農林水産物に関して非常にセンシティブであるかということを繰り返し粘り強く主張をしてきたところでございます。 今、七ページの上の方に書いてございますのは、昨年の十一月、北京で首脳会議が開催されたときに、これ毎年出るんですけれども、TPPの閣僚から首脳への報告書というものが出されます。毎年この報告書には関税撤廃が原則だということが書かれているんですけれども、この北京の昨年の報告書をよく見ていただきますと、ウィ・アチーブ・アウトカムズ・ザット・リザルト・イン・サステインド、コマーシャリーミーニングフル・マーケット・アクセスという言い方でございます。商業的に意味のある市場アクセス、これがアウトカム、成果だという。そういう、つまり関税撤廃には必ずしもこだわらずに、その代わりミーニングフル・マーケット・アクセスというものをお互いに追求するということでございます。これは、関税撤廃というものが全ての品目についてやることはとても無理であるという日本の粘り強い主張が、ある意味ここは皆の共通認識になったというふうに理解しているところでございます。 なお、現時点で五品目を含む農林水産物などの関税の交渉はどうなっているかということでございますが、繰り返し、総理、甘利大臣、林大臣など答弁してございますが、いずれ私ども国会で御承認をいただかなければいけないわけでございますので、当然、決議の内容を含めて国会で御承認いただけるような、そういう内容の妥結をしなきゃいけないということは繰り返し国会でも答弁を申し上げているところでございます。 それから、関税の交渉はまだ終わっておりません。新聞だけ読みますと、何か大分決まったかのような数字が出ているわけでございますが、一番下に、これは甘利大臣の答弁でございますが、頭の体操をお互いにいろいろしている中でいろんな数字が飛び交うと、だけれども、まだ、全体をパッケージで我々は合意するということで交渉しているので、決まっているものはないんだという御説明をしているところでございます。 八ページ目でございます。以下、各交渉の各論をざっと御説明をしたいと思います。 二十一分野と言われておりますが、現在のテキストは二十九のチャプターから成っております。この差は、例えば十八番が六つのチャプターになっているとか、二十一番が四つのチャプターになっているということが差分でありますけれども、二十九のチャプターになる。今、十一ぐらいのチャプターがクローズしているところでございます。 次のページを見ていただきますと、以下、各論、詳しくは後ほど御覧いただければと思いますが、例えば二番の原産地規則であります。 TPPは多国籍企業にだけ何か恩恵があるんじゃないかと言われますが、既にグローバル化している多国籍企業はもうTPPがあろうがなかろうがグローバル化しているわけでありまして、むしろ、海外進出をしたい、海外展開をしたい中小企業がTPPを活用していただくということが意味のあることだと思っておりまして、この原産地規則というところでは、ジェトロの調査なんかで、海外進出をしたい中小企業が海外進出をためらう一番大きな理由が、この原産地証明の手続が大変面倒くさいということであります。 ここは、原産地の分科会の中の交渉で、様々なオプションを設けることによって非常に使いやすい、原産地証明を非常に取りやすい、そういうようなルールを今決めようとしているところでございますし、この九ページの原産地の下の段落にございますが、累積のルールという言葉がございます。原産地というのは、その国で一定割合作らないとその国産と認めないということですが、二国間のEPAを結んでいますと、例えばマレーシアで自動車工場がありますと、マレーシア産と認めてもらうために多くの部品をマレーシアで作らなきゃいけない。そうすると、日本の部品メーカーまでマレーシアに行かなきゃいけないということで、部品メーカーまでが空洞化するわけであります。 累積のルールが認められるというのは、これがマルチのいいところでございまして、TPPの域内から調達をすれば原産地にカウントするということですので、仮にマレーシアに最終の加工組立て工場ができたとしても、日本のハイテクな部品メーカー、中小企業は、日本にいながらにして、マレーシアに部品を輸出すればこれはメード・イン・TPPになるというのが累積のルールでございます。つまり、非常に競争力の強い日本の部品メーカーなどの中小企業は、日本にいながらにして海外展開ができるというのを可能にするというのがTPPのルールでございます。 三番目の貿易円滑化。どなたも御注目いただけないチャプターなんですけれども、この中で、税関の手続の簡素化、様式の統一化など、日本では既にやっておりますシングルウインドー化など、これも中小企業にとって非常に要望の強いものでございます。これを十二か国でルール化、統一化しようということが決められているわけでございます。こういったことはなかなか定量化できませんが、実はかなり大きな経済効果を呼ぶものと思っているところでございます。 次のページ、十ページに参りまして、SPSとTBT。食の安全について御懸念が随分ございますが、SPSとTBTは、既存のWTOのSPS協定、TBT協定にほぼ準拠しているものでございます。食の安全あるいは遺伝子組換え食品の表示義務などについて、我が国の制度を変えるような規定は入っておらないということでございます。 次のページの十一ページでございます。 知的財産が、最も難航している分野でございます。我が国にとっての利害というよりは、むしろ日米以外、特に医薬品の問題でございますが、医薬品、新薬を開発するような薬品メーカーがない国が日米以外の十か国でございます。その国と日米との利害が、これ決定的に対立をしてございます。恐らく最後の閣僚会議までこれはもつれ込むんじゃないかというふうに考えています。グアムでもこの件はなかなか大きな進展はなかったということで聞いているところでございます。 十二ページでございます。 国有企業というのが九番目の後半に出てございます。国有企業も新しいルールでございますけれども、我が国は、定義上、国有企業に当てはまるものがたくさんございますが、基本的にこれは海外に展開をして海外でビジネスをする国有企業に国が補助金を出したりするのをやめようというルールですので、我が国の独法など、形式上、国有企業に当てはまるものについての影響はほとんどないということでございます。 それから次のページでございます。十三ページでございます。 電子商取引、十四番目でございますけれども、これはむしろ我が国がほとんど主導して作ったルールでございまして、例えば、電子商取引をしようとすると自分の国にホストコンピューターを置けというような規制を持っている国がありますが、そういう規制はしないと。自由なデータの移動というものを確保するための新しいルールでございます。 十四ページの十五番の投資、ISDSでございますが、これも決議で懸念事項が示されております。 ISDSで最も心配されるのは、各国がよその国の企業から訴えられるのを心配をして本来必要な規制を行うのをためらうのではないかということをどの国も心配をしておりまして、そこで、この十五番の一番最後にございますが、保健、安全、環境保護を含む公共の利益を保護する政府の権限、これは留保するんだということが条文上明記されているところでございます。 十六番の環境で、漁業補助金についても決議で御懸念がございました。 ここに書いてございますが、今、環境のテキストで議論されているのは、あくまで過剰漁獲につながるような漁業補助金でございます。したがって、日本の漁業補助金は問題がないというふうに理解をしておるところでございます。 最後に、今後でございますが、現在、アメリカの議会でTPA法案という貿易促進権限法案の議論が続いておりまして、上院の本会議を先週通過したところでございます。これから、休会明け、六月に入りましてTPA法案、下院での審議が始まると聞いております。 どの国も、アメリカがこのTPAの法案を通さない限り最後のカードを切れない状態にあるというのは共通認識でございます。TPA法案がアメリカできちんと通って、その後で大筋合意を目指した閣僚会議を開くという、そういう段取りになると思いますが、それが、じゃ、いつなのかということについては、今、グアムで首席交渉官会合を今日までやっております。その宿題を各国でこなした上で、その上でアメリカの議会の動向を見ながらこれから調整されるということでございます。 大分最後はしょりましたが、後ほどの質疑の中で補足的な説明をさせていただきたいと思います。 説明は以上でございます。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 次に、渡邊参考人から御意見をお述べいただきます。渡邊参考人。
○参考人(渡邊頼純君) 柳田会長、ありがとうございます。慶応大学の渡邊頼純でございます。 本日は、こういう席にお呼びくださいまして誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。 いただいた時間は二十分ということでございますが、私の簡単な略歴等につきましては既に事務局からお配りいただいた資料に出ていると思います。それを御覧になっていただければお分かりになっていただけると思いますが、私は大学の教師をしておりますが、過去にはジュネーブで五年ほどウルグアイ・ラウンド、これを、日本政府の代表部の方と、それから、当時はガットでございますが、ガット事務局の方、合わせて五年の間見ておりました。また、一番近いところでは二〇〇二年から二〇〇四年、外務省の経済局の参事官ということで、当時交渉が始まりました日・メキシコの経済連携協定、こちらの首席交渉官を務めさせていただいたことがございます。考えてみますと、まさにもうこの三十年から三十五年の間、国際通商の問題、これを大学で議論すると同時に、そういう交渉現場に入って交渉をさせていただいたということがございます。 そのようなことでございますので、今日はできるだけ、学者としての側面と実際に交渉を見てきた人間という立場も踏まえて、少し、よりダイナミックな議論ができればなというふうに考えております。 お手元に既にカラーで事務局で御準備いただいたものがございます。やっぱり大学の教師ですのでまず最初は用語解説から入ったりしておりますが、幾つかキーワードがあります。 一つは、やはりWTOという貿易に関する国際機関でございます。そこでは、特に最恵国待遇といいまして国と国との間で差別をしないという原則がございます。言わば、この最恵国待遇の原則の例外として自由貿易協定というものがある。この自由貿易協定というのは、TPPも基本的には自由貿易協定ですし、それから日本が経済連携協定と言っておりますのも基本的には自由貿易協定でございます。自由貿易協定というのは、その域内の加盟国の中で関税あるいは非関税障壁といったようなものを撤廃をして可能な限り自由で開かれた通商を行っていくと、そういうことでございます。日本はこれを経済連携協定と呼んでいるということでございます。 非常に重要なポイントとしては、このFTAのところに書きましたように、赤字で出ておりますが、実質上全ての貿易、英語ではサブスタンシャリー・オール・ザ・トレードと言っていますが、可能な限り実質的に全ての貿易をカバーするんだということが条件となってこの最恵国待遇からの逸脱が認められているというところがポイントでございます。 一枚めくっていただきまして、スライド三ページでございますが、まず最初に先生方と共有しておきたい現状認識としてこの三枚目のスライドを書いております。つまり、国際秩序は現在大変動揺していると。それをあえて一つの表現でくくるとすれば、世界は現在、統合に進むのか、インテグレーションの方に行くのか、それとも非統合、あるいは分裂と言ってもいいかもしれませんが、ディスインテグレーション。統合に進むのか、あるいは非統合に進むのか。 ウクライナ情勢、ISISの問題、それから昨年議論になりましたスコットランドのイギリスからの独立、あるいはイギリス自身がこれからEUから離脱するかもしれないというような議論も現在行われております。そして、やはり中国が主導しておりますAIIB、アジアインフラ投資銀行、あるいはBRICS銀行といったような、アメリカが戦後の国際秩序をつくってきて、その基本にあるブレトンウッズシステム、これに対するチャレンジということが始まっている。こういうようなことを全て含めて、統合か非統合かというところで国際関係は大いに揺れており、どういう国際秩序がこれからできていくのか。これは、まさに今日のテーマであります国際平和、そして持続可能な国際経済の秩序、それに非常に重い課題を投げかけていると申し上げていいかと思います。 次のスライド、四枚目のスライドでございますが、タイトルはWTO体制と三つのメガ経済圏というふうになっております。ここはやはりもう一度先生方と確認をしておきたい点なんですけれども、私の考えでは、今世界経済というのは三つの成長の極があると考えております。 一つはEU。ここには五億人超の人間がいまして、二十八か国で一つの経済共同体をつくっているというわけです。それが徐々に、経済だけではなくて政治、安保の面でも緊密な協力、あるいは国家主権というものを超えたレベルでの統合が進められている。もちろん今ユーロの通貨の危機とかいろいろあるわけですけれども、一つの重要な国際経済の一角を成していると。 大西洋を渡りますと、北米大陸にはアメリカを中心としてNAFTA、北米自由貿易圏というのがあるということでございます。そしてまた南アメリカ大陸に下りますと、そこにはメルコスールといったような、これも南米共同市場という形で経済統合を目指しているということでございます。 そこから太平洋を渡りまして東アジア。これが三つ目の成長の極だと思いますが、この東アジアには現在、ASEAN十か国、さらにはそこに日中韓を加えたASEANプラス3、さらには日本が提案をしておりましたオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたASEANプラス6といった東アジアの枠組みがございます。この東アジアの枠組み、日本が主張しましたASEANプラス6が、現在はRCEP、リージョナル・コンプリヘンシブ・エコノミック・パートナーシップということでRCEPとなっておりますが、これが東アジアのFTAを構築しつつあるということでございます。 二十一世紀の今日の国際経済体制というのは、非常に興味深いのは、この三つの成長の極、あるいは三つの成長の極でそれぞれ経済統合が進んでいるわけですね、EUとかNAFTAとかあるいは東アジアのそれでありますとか。面白いのは、EUと米州、それから米州と東アジア、そして東アジアとEUとの間に、御覧のように、例えばアジア太平洋にはAPECがあります。そして、APECを見習ってアジアとヨーロッパの間にはASEM、アジア欧州会合があります。そして、EUと米州との間にはトランスアトランティックがあります。こういう形でその三つの成長の極、三つの大きなメガ経済圏が、その経済圏と経済圏を結ぶ地域間の枠組みがあるということが、これが二十一世紀の非常に興味深い展開ではないかと思います。 そういうことからいいますと、一枚めくっていただきますと、メガFTAというのが現在展開をしているということでございます。世界のFTAの数は現在二百五十二件あるとジェトロが調べて数を出しておりますが、つまり、やはり一つの大きなトレンドとして現在はこのFTAが随所にあると。その随所にあるFTAが徐々に収れんしつつあって、それが、アジア太平洋ではTPP、あるいは東アジアではRCEP、日本とEUとのEPA、さらにはアメリカとEUとの間のTTIPというように、メガFTAが一つのトレンドになってきているということが特徴ではないかと思います。 そこで、日本のEPAが今日どういう状況にあるかというのがその次の図でございます。 これちょっとアップデートする必要があるんですが、締結済み十三件とありますが、さらにオーストラリアが、今年の一月十五日に日豪のEPAが発効しておりますし、また日本とモンゴルとのEPAも署名が済んでおりますので、十五件と申し上げていいのかと思います。そういう形で日本も積極的に経済連携をこれまで展開してきていると。 もう一度一枚めくっていただきますと、そこに先ほどの図にちょっと変化を加えた図が出ております。 それは、もちろん三つのメガリージョンがある、そして、そこにそれぞれ、APEC、ASEMあるいはトランスアトランティックという地域と地域を結ぶ枠組みがあるわけですが、そこから、赤字で書いてありますけれども、APECからTPPが出てきて、そしてASEMから日本とEUとのEPAが交渉されている、そしてトランスアトランティックではTTIPが議論されているというふうに、この三つの成長の極を結ぶ三つの地域間協力の枠組みが、単なる協力の枠組みを超えてお互いに権利と義務の関係を条約という形で、法的に拘束力を持たせた自由貿易協定として現在交渉をしているということでございます。それがTPPであり、日本・EUのEPAであり、そしてまた米・EU間のTTIPであると。そこでそういう法的な拘束力を持たせたものにアップグレードしたというところが、まさにその重要性かと思います。 その下の図は、広域FTAの枠組みとメンバーシップということで、それぞれがどういう重みを世界の貿易の中で、あるいは世界の総GDPの中で占めているかということを描いたものでございます。 そしてまた、その次の図は、それを世界のGDPにどういったパーセンテージで重みを持っているかということを示しております。TPPは三八%、世界のGDPの約四割でございます。また、JCKと書いてありますのは日本と中国と韓国の三国間FTAですが、これができますと世界のGDPの二割。それが核となってできるRCEPは二八%という数字が出ております。そして、米・EU間のTTIPは何と四七%になる。 このように、世界のメガFTAというものが現在交渉されていて、それが地域と地域の間のある意味で障壁というものをできるだけ小さくして、物とかサービスとかあるいは資本の動きあるいは人の動きというものをより活発にしていこうということになっているわけでございます。 メガFTAの各種統計的数値というものを次の十枚目のスライドに挙げてございますので、それを御覧いただきたいと思います。 特に日本にとってどういう重要性があるのかということでございます。それがその次、また一枚めくっていただきますと十一枚目のスライド、そして十二枚目のスライドに挙がっている点でございます。 これを御覧になっていただきますと、日本から対世界の輸出で見ますと、TPPが御覧のように約三〇%という数値が出ております。そして、RCEPもやはり重要でございまして、四五・八%という数字が出ている。一部、TPPとRCEPではメンバーシップも重なっておりますけれども、どちらもやはり非常に重要であると。 また、右の円グラフは直接投資の残高でございますけれども、これはTPPが四一%、RCEPが三〇%ということで、御覧のように、貿易と投資いずれを取りましても、日本としてはTPPもRCEPも、つまりアジア太平洋の枠組みもそれから東アジアの枠組みも極めて重要なものであるということがこの図から分かるわけでございます。 さらには、十二枚目のスライドを御覧になっていただきますと、二〇〇〇年の図が左側、二〇一〇年の図が右側ということでございますが、これは特に先生方によく見ていただければ幸いなんですが、何を意味しているかといいますと、いわゆる中間財ですね、これは部品ということになります。 それは電気、電子の部品であったり、あるいは自動車の部品であったりということになりますが、その部品の、中間財の貿易のパーセンテージが七割あるいは六割というのが例えば紫色あるいは濃いブルーの色で示されているわけでございます。 ですから、例えば二〇一〇年の図、右側の図で見ていただきますと、日本から中国への中間財の輸出というのは、実は輸出全体の六〇%強ですね、これが中間財の貿易としてなされているということです。同じく、ASEANから中国への貿易も見ていただきますと、やはり中間財の比率が非常に高い。しかも、ASEANには日本から投資が行きまして、ASEAN各国、タイとかマレーシアとかフィリピンとか、そういうところで作られた、日本からの投資を行った会社ですね、その会社がASEAN各国で作りました部品を中国へ輸出する。日本とASEANから、中間財貿易は非常に比率が高いというのは、そこにまさに日本の企業の参画というのが非常に大きいということを意味しております。 そして、中国からEUへ、中国から北米のNAFTAへというのは、今度は黄色ないしはオレンジ色の矢で示されております。これはどういうことかというと、中間財が比較的少なくて完成品の輸出が多い場合に黄色ないしはオレンジ色になっております。これはどういうことかといいますと、まさに日本から出た部品あるいは日本の会社がASEAN各国で作った部品が中国へ行って、中国で完成品を作ってEUないしはNAFTAの非常にハイレベルのマーケットに輸出をされているということでございます。 ですから、このメカニズムをどう生かしていくかというのは、まさに日本の国益にかなうかどうかという話になってくるところでございます。 二〇〇〇年と二〇一〇年、左と右を比べていただきますと、明らかに矢印が太くなっている。つまり、この十年間の間にバリューチェーンあるいは生産ネットワークというものが更にアップグレードしたということが、量的、質的にアップグレードされたということが分かるわけでございます。 次のスライド、十三枚目、十四枚目というのも、同じことを別の角度から繰り返して申し上げていることでございます。 一枚めくっていただきますと、TPPとRCEPにおける交渉分野の比較といったようなものが出ております。 TPPにおける投資。現在、世界的には貿易に関するルールとしてはWTOがございますが、投資に関するルールは、残念なことに国際的なルールはございません。そういう意味から、このTPPにおいて投資が議論されているというのは極めて重要なことだというふうに考えております。 既に澁谷審議官の方からISDSについての言及がございましたけれども、ISDSがあるということが、実はASEAN諸国ないしは他の諸国に進出をしておられる日本の企業にとっては一つの安心材料、セーフティーネットでございます。そういう意味でこの投資は非常に重要と。 それから、ISDSですけれども、やはり投資家、投資をされる方々は、その投資を受け入れてくれる国の裁判所がどこまで中立的なのか、特に発展途上国のそういう裁判所の中立性には大変な不安を持っていらっしゃいます。ですから、インベスターが受入れ国の政府を訴えることができるということが、文言が入るだけでも非常に有り難いというのが企業の方の本音ではないかと思います。 そういう意味で、日本のEPAの中でも、これまで十五件結んでまいりました。しかし、その中で、例えばASEANでいいますと、フィリピンを除いて他のASEAN諸国との間ではISDSを入れた投資章ができ上がっております。 ISDSについては、次のスライド、十八枚目ですが、アメリカ企業だけに有利ではないかということもよくTPPに反対される方から議論されております。しかし、御覧になっていただきますと、必ずしもアメリカ企業が一方的に勝っているということではない、アメリカ企業も負けているケースも結構あると。アメリカ企業の勝訴率というのは必ずしも高くないということを御覧になっていただけるかと思います。 あといただいたお時間は一分少々でございますけれども、既に澁谷審議官の方から御説明がございました競争をめぐる議論、特に国営企業、ステート・オウンド・エンタープライズに関するこの議論も、将来中国などがTPPに関心を持って入ってくるときのことを想定いたしますと極めて重要であるということが申し上げられると思います。 それから、また一枚めくっていただきますと、政府調達のことが出ております。 政府調達というのは、どこの国でも大体その国のGDPの一〇%ぐらいのマーケットということになっております。極めて重要な政府調達のマーケットが各国にあります。ところが、WTOの政府調達協定に入っております途上国というのは極めて少ないです。そういう意味では、日本がこれまで積み上げてまいりました二国間のEPA、あるいはTPPの中でこの政府調達が議論されるというので、大変日本にとってはメリットが大きいというふうに申し上げていいかと思います。 そういうWTOの政府調達協定に入っている国が少ないということですので、この交渉の落としどころは、恐らくどこまでWTOの政府調達協定に準拠したレベルまで各国の政府調達のマーケットを開放していくか、広げていくかということだろうと思います。ですから、そういう意味では、TPPの政府調達交渉というのは日本にとって非常に大きなメリットがあると申し上げてよろしいかと思います。 まためくっていただきまして、二十四枚目のスライドでございますが、ここでは、RCEPという東アジアのFTAの枠組みと、同じく環太平洋のTPPの枠組み、この両方に日本はメンバーシップを持っております。アメリカはRCEPには加わっておりません。関与しておりません。ですから、まさに日本は東アジアとそして環太平洋とを結び付ける、そういう非常に重要な役割を果たしているというふうに考える次第でございます。 一枚めくっていただきますと、日本のセンシティビティーということで農産品関税を挙げております。 いろいろ難しい産品がそこに挙がっておりますけれども、これについては、おおむね日本はこの関税を維持するということについて交渉上成功しておられるように、報道されるところではそういうふうに申し上げていいんではないかなと思っております。なかなか難しい交渉をやってこられた政府の方々には心から敬意を払いたいと思います。 直近の動き、これにつきましては、あと議論の中で、澁谷審議官あるいは私から知り得る限りの範囲で御説明をさせていただければと思う次第でございます。 大変、最後の方は少し長くなってしまって、二分ですか、超過しております。申し訳ございません。 以上でございます。ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) ありがとうございました。 これより質疑を行います。 質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。 委員の一回の発言時間は答弁を含め十分以内となるよう、また、その都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願い申し上げます。 質疑及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。 まず、大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いします。 それでは、質疑のある方は挙手を願います。 長峯誠君。
○長峯誠君 自由民主党の長峯でございます。 この度は、両参考人には大変参考になるお話をお聞かせいただきまして誠にありがとうございます。 まず、渡邊先生にお伺いをしたいんですが、我々がいただいている資料で渡邊先生の幾つかの投稿論文があるんですけれども、その中で、二〇一三年の記事で、将来的に中国がTPPに入ってくるということを視野に入れてしっかり今回はやっていかなきゃいけないということが書いてあります。これは、当初、アジアの成長を取り込むという目標を掲げていたTPPと合致しているような気がするんですね。しかし、先日、一五年の五月一日の新聞記事では、AIIBを例に出されまして、中国主導のルール作りがこのTPPとは別にアジア地域で進んでいく可能性があるという御指摘をいただいております。 これが、二つ、逆方向の御指摘をされているんですが、将来的にどういうふうに中国がこの国際貿易の中で立ち位置を取っていくのかというお話をちょっと伺いたいと思います。
○参考人(渡邊頼純君) ありがとうございます。大変的確な御質問を頂戴して、心から感謝申し上げます。 実は、この中国イシューというのは、TPPを考えるときにやはり欠くことのできない要素だというふうに考えております。 まず申し上げますと、当初は、TPPというのは新しい中国囲い込みであると、そして、したがって、中国が入らない、あるいは韓国も入っていない、こういうTPPに日本が参画するのはいかがなものかということも反対派の皆様から指摘があったところでございました。 しかしながら、私、もうこの過去三年ぐらいの間、中国の様々なレベルからアプローチを受けております。それは、例えば政府系のシンクタンク、例えば中国社会科学院でありますとか発展研究中心でありますとか、そういったようなところから質問とか、あるいは場合によっては話しに来てくれというようなことでずっとコンタクトを受けております。 そこで、私が理解しておりますことを申し上げますと、基本的には、中国はTPPに対して警戒感を当初持っておりました。しかし一方で、WTOの交渉が進まない、それから中国が入っている日中韓でありますとかRCEP、東アジアの包括的な経済連携ですね、RCEP、これがなかなか進まないという中で、中国も徐々にTPPに対して関心を示すようになってまいりました。 そして、中国自身も、WTOの交渉が動かない中、次のルール作りは一体どこでやったらいいんだと。で、TPPでそのルールの交渉が進んでいる。例えば知的財産一つ取りましても、我々はかつては、中国こそ知的財産権をちゃんと守っていないというふうに見ていたわけですけれども、最近の中国は徐々に変わってきておりまして、中国自身も自ら知的所有権を持っていて、ハイアールとかそういったメーカーなんかも、持っている知的所有権をどうやって守るかという知的所有権保護の観点からこれを強化したい、エンフォースメントを強めたいと思っていることがあります。ですから、新しいルールを作るというところに中国も参画し、新しいルールを作って、それを通して中国の知財を守りたい、中国の国益を守りたいという意欲が出てきております。 それと、アメリカの政府からも、例えばブリンケンというアメリカの国務副長官が日本に三月に参りましたが、そのときにもブリンケンははっきりと、TPPは中国囲い込みではないということを言っております。そういう表現は、アメリカの相当ハイレベルから中国に対して直接インプットされている。そういう中で、中国でも徐々にTPPに対する警戒感というものを低くしていっているという感じがございます。 そこで、次の点なんですけれども、中国は、恐らく貿易というイシューについては、一方でTPPというカードを持ち、もう一方でRCEP、日中韓というカードを持っていると思います。そして、TPPがうまく進めば、そのTPPの行方を見ながら、将来的には自らもTPPに入る準備を進めていくという用意を今しつつあると申し上げていいかと思います。これは、中国の発展研究中心であるとかあるいは中国の社会科学院の人たちと意見交換をしている中で、彼らが、中国はいずれTPPに入らざるを得ないということをもう平気に平場で言うようになってきています。 そういう中国でございますが、しかし、TPPがうまくいかなければ、彼らはもう一枚のカードである日中韓とかRCEPを出してくるということでございます。まさにAIIBがそうでありますように、ADBがインフラ投資についてなかなか逡巡しているとAIIBを出してくるというのと同じでございまして、貿易、通商、投資に関しても、彼らはこの二枚のカードを巧みに操っているというところがございます。 ですから、そういう対中政策ということから考えても、TPPを今、成功裏にまとめるということは極めて重要でありまして、魅力的なTPPにすればするほど中国はTPPに擦り寄ってくる。そして、その中で、例えば知財の問題、例えばマーケットアクセスの問題、そういうので彼らも彼らのオファーを出してくる可能性がございます。これは、ここ二年、三年というタームというよりは五年、十年のタームで考えるべきだと思いますが、私は、中国のTPPに対するオープンネスといいましょうか、少しずつ彼らがTPPに対して寛容になると同時に、それに対して関心を高めているということを申し上げたかったわけでございます。 以上です。
○長峯誠君 それでは、澁谷審議官にお伺いしたいんですが、四ページに出ております二〇一三年三月十五日の経済効果でございますけれども、これ極端な前提を置いてのものということは十分踏まえながら、しかし一方で、例えば米国への自動車関税というのは五%でしたか、非常に低い、そもそもが低い水準である。それが関税がなくなったところで大きなメリットではないんじゃないかということが当初言われておりましたし、また、その後の為替の大幅な変動でもうほとんどそれをのみ込んでしまってお釣りが来るぐらいの状況になっていると思うんです。 二〇一三年の為替水準で出したこの試算と現在の為替水準で出したときの試算というのは、かなり大きく変動しているんじゃないかなという気がいたしております。その辺のところをちょっと解説をいただければと思います。
○政府参考人(澁谷和久君) この経済効果でございますが、為替水準だけではなくて、実際の交渉で中身が大きく変わっております。いずれ交渉がまとまれば、また新しい形でこの効果というものも御説明しなきゃいけないんですけれども、それをどういう形でやるかということを今まさに検討しているところでございます。 全ての国が全ての関税を即時撤廃したというこの前提なんですけれども、少なくとも今の交渉は全くそうなっておらないわけでございまして、それをちょっとどういうふうに扱うのか。今御指摘の為替の問題もありますけれども、まずは中身の問題として、中身をこれからどうやって御説明していくのか。ただ、実際は、先ほど御説明しましたように、関税の効果以外のものがかなりのウエートを占めてくることになりますが、これをGTAPと同じレベルで定量化できるかというのもなかなか悩ましいところでございます。 トータルとしてこのTPPの効果をいかに分かりやすく、かつ適切に御説明できるかということをこれから少しきちんと検討していきたいと思っています。
○長峯誠君 終わります。ありがとうございます。
○会長(柳田稔君) 牧山ひろえ君。
○牧山ひろえ君 民主党の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。 参考人の皆様、とても有益な御教示をいただきましてありがとうございました。 本日のテーマであります経済連携の取組につきましては、日本が貿易立国として今後ますます発展していくためには高いレベルの経済連携を推進しなければならないですし、また、それによって世界における経済連携のルール作りを主導する必要性があると私も考えております。 しかし、高いレベルの経済連携協定に関しましては、その影響が経済関係だけにはとどまらず、国民の生活ですとか健康、そして生命にも大変大きな影響を与えることになりますので、それらにつきましては、国益を守るという観点から是々非々で慎重に対処しなければならないと思います。 この前提に立ちまして、具体的に質問させていただきたいと思います。渡邊先生と澁谷審議官にお伺いしたいと思います。 まず、終盤に差しかかっていると言われておりますTPP交渉ですが、非常に多くの分野に関わる協定だけに、合意がまとめ切れずに、WTOのドーハ・ラウンドのように交渉が漂流していくことも危惧されております。今後の締結に向けてのスケジュールにおきまして、交渉が漂流してしまうことはないんでしょうか。また、俗な言葉で言えば、どこの山を越えれば合意への可能性が高くなると言えるんでしょうか。今後の交渉の流れに関する予測も併せ、お二人のお考えを御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○政府参考人(澁谷和久君) 先ほど私の説明の最後の方に、すごい短い時間でざっと御説明してしまったんですが、まず、アメリカでTPA法案が、今上院は通りましたけれども、下院の審議はまだこれからでございます。この票読みがなかなか難しいといろいろ報道されているところでございますし、仮に上院と下院で中身が違えば、両院でその調整をするという作業がございます。という形で、いつこれが成立するのかということがまだ大きな関心事項でございます。 TPA法案が成立をいたしますと、今の法案ですと、署名の九十日前に議会に通知をするということになっております。署名をした後、ファストトラックの規定が働けば、議会開催日九十日で採決という、そういう手続になるわけでありますけれども、その前、妥結をして、我々はリーガルスクラビングと称しまして、妥結をした後のテキストを法律の専門家で全部読み合わせをして、全文をチェックして正文に仕上げるという作業が必要でございます。その後で署名ということになるわけですけれども、この間、そう短時間では済まないということがございます。 アメリカの議会は、来年大統領選挙が本格化するということもございまして、年内にある程度めどを付けておきたいというふうに聞いているところでございまして、そういうタイムリミットから考えますと、そろそろやはり合意というものにこぎ着けないとなかなか難しいということでずっと言われてきたわけでございますが、今年も、三月にはまとまるんじゃないかとか、五月の末、ちょうど今頃閣僚会議をやるといううわさが数週間前まで流れていたわけですけれども、やはりアメリカの議会の関係、それから実際、先ほど申しました知的財産の調整状況などもございますし、またマーケットアクセス、物品の調整もまだ終わっていないわけでございますので、非常にそういう意味では厳しい交渉の中でいかに早期に妥結するかということがこれからの課題ということでございます。 十二か国の共通認識は、TPA法案が成立をしないとなかなかどの国も最後のカードを切りにくい、その代わり、そういう状況になれば閣僚会議を開催をしてお互い全体をパッケージとして早期の合意を目指すんだというところは共通認識を十分確認しているところでございます。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 牧山先生から、これもまた大変適切な御指摘、御質問頂戴いたしまして誠にありがとうございます。 確かに二十一の交渉分野、TPPありますということで、交渉分野がこれだけ広いと議論も拡散して大変じゃないかと、こういう御心配もおありかと思うんですが、実は私はかつてジュネーブにおりまして、五年間見ておりましたウルグアイ・ラウンド、これは十五の交渉分野がございました。しかも、この十五の交渉分野の中には初めてガットとして手を着けたサービス、それから知的所有権、さらには貿易関連投資、そして驚いたことに東京ラウンドまでは実はガットで農業交渉をしたことはなかったんですね。ウルグアイ・ラウンドで初めて農業に手が着いたわけでございます。それだけ交渉分野が広かったにもかかわらず、ウルグアイ・ラウンドは何とか、一九八六年に始まりましたが一九九四年に終わることができました。しかし、ドーハ・ラウンドは二〇〇一年から始まってまだ終わっていません。 これ、どこが違うのかといいますと、実はドーハ・ラウンドというのは、二〇〇三年以降はルールメーキング、ルールに関する交渉をもう全部途上国が反対したことによって進まなくなっておりまして、実はドーハ・ラウンドというのはマーケットアクセスだけなんですね。ほかにも紛争解決についての修正とか少しあるんですけれども、大きなところでいいますとマーケットアクセスがもうメーンになってしまっています。 実は、国際交渉、貿易交渉といいますのは、いろんな幅のあるトレードアジェンダ、貿易アイテムがあればあるほど、難しい交渉を、ある分野とある分野をリンクすることによってブレークスルーをつくっていくことができるんですね。まさにウルグアイ・ラウンドがそうでした。知的所有権に反対する途上国を、繊維の貿易を自由化するところで妥協を示して、嫌がる途上国に知的所有権をのませたりとか、そういう交渉ができたのがウルグアイ・ラウンド。ドーハ・ラウンドというのは、残念なことにマーケットアクセスだけになっていますので、まさにがっぷり四つに組んじゃっているわけですね。 ですから、実はこのTPPも二十一の分野というのがありまして、この二十一の分野が今はそれぞれ縦割りで交渉されていますけれども、恐らく私の想像では、最終局面になると、例えば知的財産権の分野とマーケットアクセスとか、あるいは競争の分野とどこか別の分野というのがリンクして、それによってお互いに痛み分けをする形で交渉をまとめていくといったような作業が展開される可能性もあると思います。ですから、交渉の幅の広さということが必ずしも交渉の漂流ということにはつながらないということが、ウルグアイ・ラウンドとドーハ・ラウンドの比較から言えるのかなというふうに思います。 以上でございます。ありがとうございました。
○牧山ひろえ君 澁谷審議官にもう一つお聞きしたいんですが、経済連携には、先ほども申し上げましたようにプラスの影響とマイナスの影響の双方があります。ですので、経済連携協定の締結によって得られる国益、また失う国益の双方をしっかり比較して交渉していただいていると信じております。 経済連携協定による国益に関し、事前にいただきました内閣府の資料の四ページの中にTPP参加による経済効果が掲載されておりますが、実質GDP〇・六六%、金額にしますと三・二兆円の底上げとする試算です。ただ、これは二年以上前の数字なんですね。 その後二年が経過し、経済状況も変化しましたし、また交渉も進展し、またある程度固まってきた部分もあるかと思うんですが、例えば二〇一三年に出された日米でのTPP交渉に関する事前協議の合意の中で、アメリカ側の輸入自動車関税について、現在の、例えば乗用車に関しては二・五%ですが、輸入関税をTPP交渉における最大限度期間で段階的に撤廃するとしています。 先ほどお話ししました二〇一三年の経済効果試算というのは、関税は全て即時撤廃し追加的な対策を計算に入れない仮定、そういった仮定でなされている試算ですので、既にその前提が違ってきているわけですね。 公表するかしないかは別として、国益を最大化するためには、極力最新の状況が組み込まれた経済効果試算を基に交渉を行うべきと思いますが、その点につきましてはいかがでしょうか。
○政府参考人(澁谷和久君) 先ほど長峯先生の御質問にもお答えしましたが、関税の効果だけではなくて、それ以外の効果をどのような形で、いずれ各国とも妥結した後国内で説明が必要でございます。それをどういう形で説明するかということについて今各国でいろいろ、特に専門家レベルで検討、相談をしているところでございます。 アメリカの場合は、新しいTPA法が通りましたら、ITCというそういう組織がTPPの、TPPというか、国会にかかる協定案の経済効果をITCというところがレポートとして国会に提出することになっております。それは署名から百五日以内ということであります。 したがって、どの国も最終的に合意文書ができませんと作業が本格化できないわけでございますが、現時点で各国ともどういう形の御説明が可能なのかということを今内々相談をしているところでございます。 先生の御関心なり御指摘は重々承知してございますので、なるべく早く国民の方にきちんと御説明できるように準備をしたいと思っております。
○牧山ひろえ君 時間になりましたので、終わります。
○会長(柳田稔君) 谷合正明君。
○谷合正明君 公明党の谷合です。 まず、渡邊参考人にお伺いしたいと思います。 我が国の二〇一四年の経常収支につきましては、これは通商白書でも報告されているところなんですけれども、過去最小の黒字だと。それから、貿易収支は過去最大の赤字となっていると。このことは、我が国が持つ輸出する力であるとか呼び込む力、外で稼ぐ力、呼び込む力というのは、観光客が来るとかあるいは我が国で起業するとか、そういうことだと思うんですけれども、輸出する力、呼び込む力、外で稼ぐ力の在り方が変化しているのではないかというふうに指摘があるわけでありますけれども、渡邊参考人は、こうした我が国が本来持っている力が今日どのように変化をしてきているのかということについてどのような認識を持っていらっしゃるのか。そして、日本の成長を支えていく上での力を伸ばしていくために通商政策、今回でいえばTPPでありますけれども、TPPをどのように生かせばいいのかということをお伺いしたいと思います。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 谷合先生、どうもありがとうございました。 何といいましょうか、国際経済学のストライクゾーンの質問で、大変重要なポイントだと思います。 確かに、日本は今は貿易赤字が少しずつ基調になっておりますし、したがいまして経常収支が少なくなってきている、小さくなってきている、経常収支の黒字が減少してきている、まさにそのとおりでございますが、他方では、日本の投資からの収益でありますとかあるいは知的財産権の、何といいましょうか、日本への移転の収支ですね、こういった移転収支の枠が非常に大きくなってきているということが一つのトレンドとしてあると思います。 つまりは、これまでの、物の貿易で物を輸出して外貨を稼いで貿易黒字をためて貿易黒字が経常収支の黒字の大きな部分を占めているという八〇年代、九〇年代までの発展のパターンから、二十一世紀になりますと、恐らく収支の中でも特に投資収益でありますとかあるいは知的財産権に対する支払、ライセンス料とか特許料とか、そういったようなものの移転収支といったようなものがこれからより重要になってくると。そういう意味では、日本の経済全体がある意味で成熟過程に入ってきている。物を一生懸命作って輸出して外貨を稼ぐというパターンから、知識集約型の産業で、特にそれはサービスなんかも含まれてくると思いますが、そういうところで日本経済が稼いでいくということになるのではないかと思います。 そういうことで、やはり海外における日本の企業の投資環境、それから知財に対するエンフォースメントの強化といったようなことがこれから日本の経済にとっては極めて重要というふうに認識をしております。 他方、いわゆる伝統的な貿易に関しましても、これまで余り輸出をしてこなかった農産品、これがやはり一つの希望を我々に与えてくれているのではないかというふうに思います。今、例えば一キログラム大体五百円ぐらいの標準米が、中国に輸出されますとそれが一キロ千三百円ぐらいというふうに言われております。それは、薫蒸義務といいまして、煙を米に掛けて虫をあぶり出すと、そのための薫蒸義務があって、そのコストとかいろんなコストが、一キロ五百円の国内価格の米が輸出されると千三百円になっているというふうに指摘されております。 もし、こういったような本当に必要ではない薫蒸義務を少しでも削っていく、本当に必要とはされていない様々な衛生検疫基準といったようなものをそぎ落としていくことによって、この一キロ五百円の日本のお米が例えば八百円とか九百円とかといったような価格で売れるようになりますと、これ日本のお米が更に輸出項目として伸びていく可能性がございます。 ですから、今までの日本の農政とその農政の結果としての農業産品をめぐる国際貿易交渉というのは、日本もおたくには輸出しないからおたくも日本に輸出するのは控えてくれという、どちらかといえば縮小均衡的な発想で通商外交、特に農産品をめぐる通商外交をしていたかと思います。しかし、これからは縮小均衡ではなくて拡大均衡、うちもどんどん輸出するからおたくの農産品もいいものであれば買うといったような形で相互に開放していくというようなアプローチ、これが日本の農業を活性化していく一つのきっかけになるのではないかというふうに考えている次第でございます。 以上です。ありがとうございました。
○谷合正明君 それでは、澁谷審議官にお伺いします。 TPP交渉の妥結に向けては、一つはTPPの貿易額の大宗を占める日米間の協議の進展、もう一つはTPA、大統領貿易促進権限法案の見通し、この二つのファクターが大事だということであろうかと思います。 特に、日米間につきましては、衆参農林水産委員会の決議をしっかり踏まえていくという方針についてはこれ変わりないということで認識はしているわけでありますが、TPAの方なんですが、これは本来の趣旨は、米国議会が協定内容の修正を求めず、迅速な審議によって締結を一括して承認するか否かのみを決するという法律だということでは承知しているんですが、一方で、例えばTPAを無効化するというんでしょうかね、そういう条項の要件緩和がなされているんじゃないかと。 かつて米韓FTAでは、署名時にTPAが成立していたけれども、米国議会が批准に反対したため追加交渉が行われたではないかというようなことも指摘もされているわけでありますが、我が国といたしましてTPP交渉合意後の再交渉には応じないと、これが今の十二か国の交渉のコンセンサスというか、各国ともそういうことになっているのか。つまり、TPA法の成案というのが必要十分条件なのか、必要条件なのか、どのようなものなのかという位置付けをお伺いしたいと思っております。
○政府参考人(澁谷和久君) TPA法案が成立すれば直ちにTPPがまとまるかというと、これは全くそういうことではなくて、皆が最後のカードを切りやすい条件になるということでありまして、やはり中身はサブスタンスであります。日米の交渉だけではなくて、知的財産もかなり日米以外の国にとっては相当センシティブな問題でありますし、それ以外にそれぞれの国にとってセンシティブなルールの分野というのはかなりあるわけでございます。これを、先ほど渡邊先生お話ししましたように、マルチであること、それから非常に多様な分野を抱えているということの特性をうまく活用してパッケージでいかに合意にこぎ着けられるかということがポイントではないかと思います。 TPAについては、今の法案いろいろ、先生御指摘のように御議論があるところでありますけれども、二〇〇二年のTPA法においても、たしかアメリカとコロンビアのFTAのときに、当時のTPA法案にはなかった、下院だけが決議をするということで、コロンビアとの協定が非常に遅れたという事案がございます。したがって、TPA法案がどうであろうと、いずれにしても、アメリカの議会がどういうことを言ってくるかということは予測できないわけでございますので、いずれにしても、どんなことがあっても一度合意したものについて再協議には一切応じないということをこれまでも日本は明確にしておりますし、今後もその姿勢は貫きたいと思っております。
○谷合正明君 終わります。 ─────────────
○会長(柳田稔君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、馬場成志君が委員を辞任され、その補欠として羽生田俊君が選任されました。 ─────────────
○会長(柳田稔君) 柴田巧君。
○柴田巧君 維新の党の柴田巧です。 今日は、お忙しい中、参考人の方には本当にどうもありがとうございました。私からも感謝を申し上げたいと思います。 まず最初に、渡邊参考人にお聞きを二点したいと思います。 一つは、先ほど時間の関係もあって、今後の展望といいますか、TPA法案、TPP交渉全体の今後の展望について十二分にお話しされなかったかなと思いますが、これがどういうふうに渡邊参考人の見立てでは展開をしていくと考えていらっしゃるのか。特に、ここにも書いてありますが、TPA法案が、議会を通しやすくなったけれども、中身は共和党寄りになる可能性が大ということをお書きになっておりますが、このことがTPPの交渉全体に、あるいは日本に対して、我が国に対してどのような影響があるというふうにお考えになっていらっしゃるか、これが一つ。 それからもう一点は、先般から、御承知のように西村副大臣のいろいろ発言、またその撤回で大騒ぎになったりしましたけれども、我々正直、なかなかこの情報が十二分に提供されないということに大変もどかしさを感じているわけですが、御案内のとおり、衆参の農林水産委員会の決議の中にも、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、」というふうに書いてあります。 また、我々維新の党は、民主党さんとも共同でTPPの情報公開を求める法案も出しているところなんですが、やはりこのテキストが国会議員が閲覧できないということはいかがなものかと思っているんですが、日本でその情報開示がどういう形で実現でき得ると、もししたらどういうものが考えられると渡邊参考人はお考えか、併せて、二点ですが、お聞きをしたいと思います。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 柴田先生、ありがとうございました。 まず一点目の御質問、今後の展望ということですが、私の不手際で十分に先ほど冒頭の陳述で申し上げることができなくて大変申し訳ございませんでした。柴田先生のおかげで、もう一度この点について触れることができるのを大変感謝申し上げます。 このTPAというのは、やはり先ほど澁谷審議官が非常に適切におっしゃったと思いますが、各国が最後のカードを切りやすい状況というのを生みやすくなったということがあると思います。ですから、今回のグアム会合は必ずしも交渉妥結にならなかったとしましても、それはこう理解ができると。つまり、ここまでTPAについての議論が深まっておりますと、これができた方がはるかに各国にとって安心してオファーを出せる、あるいはオファーの交換ができるということになろうかと思います。 ですから、やはりこのTPA法案が、まあ五月末は難しいかもしれませんが、六月中に下院も通過するということになりますと、これがTPPにとっては一つ大きな前進の材料になるということは間違いないと思います。 他方では、今、オバマ大統領は、いわゆるレガシーというやつですね、三つの自分の在任中の成果というものをレガシーという形で残そうとしていますが、その一つはイラン、そしてもう一つはキューバとの国交回復、そして三つ目がTPPだと思います。 それぞれ非常に難しく、しかも、その三つがお互いにリンクしているというような状況もあろうかと思いますが、そういう意味では、このTPPを促進するためにTPAができるというのにオバマ政権としてはやはり相当力を入れていらっしゃる。そして、特に有り難いのは、上院、下院、その上下両院で今、共和党、つまり非常にプロビジネス、経済的な権益ということを重要視するプロビジネスの共和党がねじれることなく両院で多数派を握っているということは非常にいいことで、オバマ大統領が上手に野党である共和党の仲間を見付け、そして、お膝元の民主党で少しでもTPPについて賛成をしてくれる人を増やすことによって、このTPA法案というのがまとまりやすい状況というのがアメリカの議会の中でできているというのは大変日本にとっても幸運なことではないかなというふうに思っております。 他方、確かに共和党寄りになる可能性というのがあるわけで、例えばそれが、アメリカには全米精米協会なんというところがありますが、そういったようなところは、やはり日本に米の枠について少しでも増やしてほしいということがあろうかと思います。もう既に、一つの懸案であった豚肉については、全米養豚協会の会長が日本にも来たりして、その交渉結果に全米養豚協会としては満足であるといったようなことが表明されております。 そういう形で、今度は米についても少し圧力が高まってきたりするということはあろうかと思いますけれども、基本的には共和党というのは、マルチにせよあるいは地域にせよ、こういう自由貿易の枠組みに対しては民主党よりも前向きですので、その政党が多数派を上下両院で握っているというのは日本にとってプラスではないかというふうに考えております。 二つ目の御質問、交渉の情報公開でございます。 これはなかなか、私自身も、日・メキシコの交渉を担当した者としては、やはり最後の段階で交渉の詰めをしているときに、万が一にでも、先ほど言いました、あるイシューとある別のイシューとのリンクでもって解決しようとしているときに、その情報が出てしまうということによって交渉のパッケージ全体が崩れてしまうという危険性はございますので、それに対してはやっぱり交渉当事者としてはなかなか情報の開示は難しいかもしれないということは理解できるわけでございます。 他方では、アメリカの場合を見ますと、アメリカでは、ピーターソン国際経済研究所のジェフリー・ショットとか、そういったようなこういう問題に造詣の深い研究者あるいは大学教授たちは、みだりに交渉結果をリークすることはしませんといったような、何といいましょうか、宣言をして、その宣言にちゃんとサインをして、そういった刑事罰も覚悟するということを含んだ上で一定の情報を受け入れて、それを使って論評をするというようなことがあるわけでございます。 そういうことからいいますと、日本においても、議員の先生始め一部のステークホルダー、それから私のような一介の研究者も含めて、そういう制限を掛けた上で、あるいはみだりに外に出さないということを約束させた上で情報をいただけると、国民の広い層へこの問題を共有していくときに、あるいは広報していくときにプラスになるのではないかというふうに考えております。 以上、これが二つ目の御質問に対するお答えでございます。
○柴田巧君 ありがとうございました。 時間がおよそ来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○会長(柳田稔君) 紙智子君。
○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。お二方、どうも今日はありがとうございます。 澁谷審議官は度々農水委員会でもお聞きしていますので、渡邊参考人からお聞きしたいと思います。 渡邊参考人は、以前、ガットの事務局や外務省の官房参事官なども経験をされて、経済外交問題に大変お詳しいというふうに思いますが、二〇一三年末の熊本日日新聞のインタビュー、さきにいただいている資料の中にありますけれども、その中で、TPPは言わば日米軍事同盟の経済版だというふうに述べられております。それはどういう意味なのかということを一つお聞きしたいのと、それから、TPPは十二か国の交渉ですので、この日米軍事同盟の経済版という価値観をそのまま十二か国全ての国に共有する価値観ということになれば、これは少し飛躍があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(渡邊頼純君) 紙先生、ありがとうございます。 そうなんですね、私、別のところでも、TPPというのは日米の経済安全保障だという言い方をしております。軍事面あるいは政治面での安全保障につきましては日米安全保障協定があるわけでございますが、実は経済については、日米の経済関係について、何といいましょうか、これを見ていく枠組みというのは、これまではマルチのガットないしはWTOしかないわけですね。 ですから、戦後の日米の経済関係を見ますと、例えばそれは一九五〇年代の繊維に始まり、そしてそれが鉄鋼、造船、ボールベアリング、そしてテレビも白黒テレビに始まりカラーテレビ、いつも日米の間で、日本側の輸出の自主規制でありますとか、あるいはボールベアリングの場合のように一方的にアメリカからアンチダンピング税を取られるとかそういう形で、日本は、アメリカのマーケットの大きさ、あるいはアメリカのマーケットに依存している日本経済の特質として、やはりアメリカからの圧力に対してなかなか抗し難いというところがあったと思うんですね。 今回のTPPというのは、一つは、これはある意味で日本経済にとって究極のマーケットであり、日本経済にとって究極のパートナーであるアメリカとの間で、そういう貿易紛争とか経済紛争というものをルールに従って解決する、そういうルール、つまり英語だとリーガルインスツルメント、法的な手段といいましょうか、法的な道具といいましょうか、そういう面が非常にあると思うんですね。 ですから、TPPというのは十二か国でございますが、その中でGDPで八割を占める日米があらゆる広い分野、マーケットアクセスに限らず投資とか知的所有権とかいろんな分野でルールを共に作って、その共に作ったルールに従って、問題があったときには紛争解決をルールに従ってすると。かつてのように、アメリカから圧力を掛けられて、日本側が泣く泣く自動車の自主規制をするといったようなことではなくて、ちゃんとルールに従って、場合によっては日本がアメリカをTPPの紛争処理の中で訴えるというようなこともあるかもしれません。 ですから、日米安全保障の経済版であるということを申し上げたのは、そういうルールに基づいた問題解決、紛争防止、そういうことがこのTPP協定によってできるということでございます。ですから、軍事同盟の、何といいますか、ホットウオー的なことを想像していただくとちょっとミスリーディングになってしまうと思います。 ですから、言葉遣いは私も気を付けなきゃいけないと思うんですが、日米の経済同盟というのは、日米の経済安保というのは、そういう形でお互いにルールに基づいて問題解決をし、あるいは問題を未然に防いでいく、そういう法的な受皿がTPPであるという意味で申し上げているわけでございます。 以上です。ありがとうございます。
○紙智子君 参考人も資料の中で書いておられますけれども、TPPの出発というのは二〇〇六年のP4協定から始まっていて、この四か国で例外なき関税撤廃と非関税障壁の撤廃を原則にして始まっていると。恐らく、最初のところはそれぞれの国にとって利益になるという中身で話し合われて出発したんだと思うんですけれども、二〇〇八年に米国がここに参加をして、より高度で包括的な自由化を進めようということで、P4協定にはなかった中身を加えて大きくやってきているんですけれども、それ以降、私、性格が変わってきているんじゃないのかなというふうに思うわけですよね。 今年四月の末に日米の首脳会談があって、その中でも、経済のみならず、これは安全保障に資するんだという、そういう文言も入っているんですけれども、本来やっぱり自由貿易というのは対等、平等の立場でやられるべきもので、お互いの国の違いを尊重しながらやって成り立つものだというふうに思うんですけれども、やっぱりこの交渉というのは、参加各国のそれぞれの国の経済や国民生活に非常に大きな影響を与えるにもかかわらず、国民や議会の、交渉の内容が秘密になっている、全然肝腎なことが知らされないままやられているということ自体、各国の主権を侵害する可能性もあるんじゃないかというふうに非常に心配もしているわけですよね。 ちょっとそういうことも含めてですけれども、もう一つ参考人にお聞きしたいのは、資料の中を読んでいきますと、保護主義に対して批判的だなというふうに思います。その保護主義というのはどういうことなのかということと、それから、各国が重要な産業をそれぞれ保護するというのは当然だというふうに思うんですけれども、やっぱり農業なんかもそうなんですけれども、主要な国で農業を保護せずに完全自由化やってうまくいっている国があるのかなと。まあシンガポールという国はちょっとまた違うんですけれども、それ以外でそういう国があるのであれば紹介をしていただければと思います。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 私、もう今日の場に来るときに、共産党の先生からはきっと難しい質問が来るだろうなと考えていたんです。といいますのは、私、一九九四年にWTO特別委員会というのがありまして、そこにやっぱり参考人として意見陳述を求められたことがあります。共産党の先生の御質問というのは、本当にある意味で非常にアカデミックなんですね。ですから、そういう意味では学者としては非常にうれしい部分もあります。 御質問にお答えしようと思いますが、そうなんですね、確かに二〇〇六年にP4としてスタート、発効したときというのは、これは四か国、ニュージーランド、それからシンガポール、ブルネイ、そしてチリでございます。これ、いずれも、どちらかといえば小国で、オープンエコノミーというのをその性質として持っている非常に開放度の高い国々です。ですから、そこでは非常に例外なき関税撤廃ということを掲げていて、これら四国は確かにほとんど例外がないですね。一部、若干ございますけれども、ほとんど例外がない。非常に高いレベルの、さっきのガットの二十四条の表現を借りますと、本当に実質的に全ての貿易を自由化しているということが言えると思います。 日本が入るまではやはりその方向で来たと思うんですが、日本が二〇一三年の七月二十三日から交渉に入った段階から大分変わってきたと。それは、アメリカが変わったというよりは、むしろ日本が入ることによってTPPの在り方が大分変わった。それはまさに、先ほども澁谷審議官が言われたように、各国のセンシティブなセクターに配慮するという形で変わっていって、ある意味で一番配慮してもらっているのは日本かなと。特に日本の農産品において配慮が各国から提示されているというのは、日本にとっては非常によかったことだと思っております。 ですから、アメリカが入ったことによって変わったというよりは、日本が入ることによって、少なくともマーケットアクセスの部分については各国のセンシティビティーに配慮するということが基本線になったというふうに申し上げていいんではないかなと思います。 それから、アメリカが入ったことによってTPPの安全保障的な面が強調されるようになってきたというお話でございますが、ただ、これは翻って考えてみますと、経済統合で安全保障的な要素を全く勘案しない経済統合というのはあるのかと。 私どもは、やはりガットとかWTOの多国間の貿易体制が一番いいと思っています。しかし、実際には、先ほど申しましたように、ジェトロの調査によると、二百五十件以上のFTAがある。これ、二百五十件のFTAは、ほぼ全て必ず政治的な検討に基づいて行われていると思いますね。 例えば一番いい例はEUであって、EUも当初、政治的な思惑、つまり、東を見たらソ連があって、西を見たらアメリカがあって、あの伝統のヨーロッパが沈没していく、ヨーロッパが両大国に挟まれてその存在感が薄れていっている、そんな中から一念発起してヨーロッパの復興、没落する西欧ではなくて、もう一度復活する西欧というのを取り戻そうとしたと思います。 ですから、経済統合というのは、やはりそういう意味では何らかの政治的な思惑あるいは安全保障上の思惑というのに基づいて行われている。TPPもやはりそうだと思います。 FTAにせよ、EPAにせよ、TPPにせよ、そういう政治的な検討を踏まえた、政治的な考慮を踏まえた経済統合体の価値は、それがどこまで本当にオープンかということだと思うんですね。 ですから、そういう意味では、先ほど長峯先生の御質問にお答えしたときに申し上げたように、中国に対しても、中国を敵視するものではない、将来中国が入ってくることも想定しております、中国を排除する目的がこのTPPにはありませんということを明確にするということはとても重要だと思うんですね。それによって、TPPのオープンネスといいましょうか、開放性というのを維持しているということ、これはアメリカも日本も恐らく共有をしているということだと思います。 主権を侵害しているのではないかという御指摘がございました。 これも、経済統合体、例えばEUのような関税同盟、NAFTAのようなFTA、そして今のTPP、いずれも、関税自主権という関税を自ら課すという国家主権、経済主権の一部を譲渡しているわけですね。ですから、経済統合をよしとするということは、つまり一定の国家主権に対する制限を諦めて、その代わりに経済的なメリットを得よう、獲得しようとして努力をするということだろうと思います。ですから、主権は確かに一部、関税自主権という経済主権については制限をするわけですけれども、それによって得られるメリットが大きいということだろうと思うわけでございます。 保護主義について御質問がございました。 私どもは、ガットにしても、WTOにしても、あるいはFTAにしても、何といいましょうか、ちょっと表現は悪いですけれども、丸裸にすることが目的ではないと思います。そこに、まさにこのTPP交渉がそうでありますように、センシティビティー、つまり非常に触れば痛い部分があるということをお互いに理解をする、そしてそれに対して一定の考慮をお互いに払う、その上で可能な限り貿易に対する制限、投資に対する制限を下げていこうということであって、国際経済学の教科書の中にあるような完璧な自由貿易というのを求めた経済協定というのはないんだろうと思うんですね。ですから、そういう意味では、やはり適切な保護をセンシティブな分野に与えつつも、しかし可能な限りその保護は減らしていくということが基本線だろうと思います。 では、保護主義はどうしていけないかと私が考えているかといいますと、保護主義というのは、比較優位を失って衰退産業になってしまっている産業をいつまでも保護していたのでは駄目だということなんですね。ですから、もう一度保護することによって息を吹き返す産業もあれば、もう衰退産業になって比較優位を失っていることが歴然としている産業もある。そこに国民の、大事な国民から与えられた税金を掛けて補助金を与え続けるというのは、これは血税の浪費になる可能性もあるわけですね。 ですから、そこは、衰退産業に対する保護というのはやっぱり見極めが重要だと。日本は、やっぱりそういう意味では、農業についてはそういう見極めを今しつつあるのではないかなというふうに考える次第でございます。 以上です。ありがとうございます。
○紙智子君 時間が来ていますので、また後で時間があったらお聞きしたいと思います。 終わります。
○会長(柳田稔君) アントニオ猪木君。
○アントニオ猪木君 今日はどうもありがとうございます。 先ほどからお話を聞いていて、非常に幅が広いし、今までウルグアイ・ラウンド、それからガット、経験を経て、その結果が進化したのかどうかというのが、今回、TPPに集約されていくのかもしれませんが。 一つ、この資料を読ませてもらって、たしかウルグアイ・ラウンドかな、アジェンダ21のときですかね、持続可能なという言葉がよく使われていますが、私なりに、持続可能というのは必ず終わりがあるということ。例えば経済でいえば、Sカーブ理論というのが昔あったと思うんですが、Sが、成長期、第一弾、二弾、三弾、それで安定期、衰退期に入る、その衰退に入る前に新しいSカーブを描いていくという理論だったと思いますが、その点で、時のはやりの言葉であったりなんかするんですが、その持続可能なと言われる言葉がそろそろ変えてもいいんじゃないか。 構造の変化という、昔これも使われた言葉ですが、ピラミッドに例えると、自分が個人で事業をやるときには親戚とか仲間で何かをやり、事業を起こし、そして二つの今度は視点で立って、上から物を見なきゃいけない、その変化が、脱皮というかチョウのプロセスという形で、幼虫からさなぎ、さなぎからチョウへ変わっていくプロセスなんですが、今回のTPPがその過程を踏んでいるのかどうかというのは、今回いろいろ見させてもらいました。 そして、一つ、今日は、この中にあります、もういろんな話が先ほども出ましたので、残留農薬と食品添加物の基準、遺伝子の組換え食品を表示する義務、遺伝子組換え種の規制、輸入材料の原産地表示と、非常に食の問題が、まあ中国の問題も随分新聞に出ましたね、いろんなものが。そういう中で、遺伝子組換えというのは、今、これは何という会社だったですかね、そこが支配をして、まあ牛耳っていると。そうすると、この辺、TPPと関わってくるのかどうかということについてお伺いしたいと思います。
○会長(柳田稔君) 誰に。
○アントニオ猪木君 済みません、渡邊先生に。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 アントニオ猪木先生、ありがとうございました。 まず、ウルグアイ・ラウンド、あるいはそれ以降のいろんな発展ということでございます。ウルグアイ・ラウンドがうまくいったから、ガットを補完して、発展的にガットを乗り越えてWTO、世界貿易機関というのが九五年からできているわけでございます。 ただ、猪木先生、問題は、実はウルグアイ・ラウンドというのは一九九四年にまとまっております。それで、実はそれ以降、九五年にWTOが発足して以来、多国間の新しい貿易ルールというのはできていないんですね。今、我々がWTOでサービスとかWTOで知的所有権って、これ全部ウルグアイ・ラウンドで交渉した枠組みなんですね。 ですから、これだけリーマン・ショックとか中国の台頭とか、いろいろ新しい問題があったにもかかわらず、一九九五年以降新しい貿易ルールがマルチでできていない、多国間でできていないというところは、やっぱりこれ非常に重要な問題だと思っております。 特に、確かに持続可能性という言葉がもう使い古されているかもしれませんが、持続可能性のある国際貿易の、何というんでしょうかね、開かれた国際貿易体制というのを維持していく、しかも、その時代時代の国際経済の変化に対応、即応しなきゃいけないはずの国際貿易体制で、ルール作りが九五年以降止まっちゃっているんですね。そのルール作りの言わば真空地帯を埋めようとしているのがTPPであり、EUとアメリカとの間のTTIPであり、あるいは日中韓のFTA、RCEPだということだろうと思うんですね。 ですから、そういう意味では、今は、WTOのルールメーキングができない中でTPPでそれをやろうとする十二か国が集まって交渉しているということではないかと思います。 そして、この貿易の自由化というのは、先生、ちょうど自転車のペダルを踏むようなものなんですね。自転車というのは、二輪車であればペダルを踏んでいないと倒れてしまうわけですが、自由貿易というのは、常に自由貿易を維持するためにルールを作ったりマーケットアクセスを改善したりという交渉を続けて自転車のペダルを踏み続けないと、自由貿易体制、倒れてしまうんですね。 ですから、そういう意味では、今、WTOの自転車がちょっとうまくペダルをこげなくなっている、油を差さなきゃいけない、そういうときに、TPPで少し行った議論を例えばWTOへもう一回戻して議論できないかというふうなことも将来的には可能性があるんだろうと思います。 先生が御指摘の残留農薬あるいは遺伝子組換えに関してでございますが、これももう既に澁谷審議官の方から衛生検疫基準という、SPSということがあります、サニタリー・アンド・ファイトサニタリー・メジャーズということですが、このSPSというのも、実はWTOの中にSPS協定があります。そして、科学的な合理性があれば、国際的な標準よりもより厳しい検疫基準とか衛生基準を設けることも許されております。それを更にTPPの中でSPSについても議論しましょうということで議論していらっしゃると思いますね。 ですから、そういう形で問題のある農産品に対して、科学的な根拠をもってそれに対して抑制を掛けることについては、各国はその権限を維持することができるということで、この点については余り御心配をいただく必要はないんではないかなというふうに考えている次第でございます。
○アントニオ猪木君 中国の記事がテレビに出ない日がないんですが、いろんな、今後はやっぱりTPPに、先ほどもちょっとお話がありましたが、中国の動向が非常に重要視される部分ですね、参加する可能性、先ほどちょっとお話出ました。 ただ、中国の駆け引きというのはなかなか読み切れない部分がありますので、今後、その辺はどのような予測をされていますか。
○参考人(渡邊頼純君) ありがとうございます。 これは、先ほど申し上げましたように、中国は二つのカードを持っていると。一方には、中国も参画をしている日中韓とかそれからRCEP、東アジアの枠組みがある。もう一方には、TPPも隠し持っていると。ですから、TPPがうまくいくかいかないかというのが中国のこれからの貿易体制への取組のアプローチを決めてくると思います。 中国も、WTOに入ったのが二〇〇一年ですけれども、その中で中国も相当、自らの貿易ルールでありますとか国内の産業政策でありますとか、輸出、輸入に関する政策もWTOに準拠する形に変えてきているというところがございます。もちろん、レアメタルやレアアースの輸出制限とかそういうことをしたり、いろんな問題点がございました。しかし、レアメタル、レアアースの件もWTOに提訴されて、中国負けました。その負けた後、ちゃんとレアメタル、レアアースの件についても中国はWTOのルールに適合するということをしております。ですから、このような中国の通商面での政策を見ていますと、彼らも、もし将来TPPができて、そして将来そのTPPの中に中国が入ってきたときには、そういうルールを守っていくということが想定されます。 じゃ、その中国を入れるためにどうしたらいいのか。一番いいのは、今十二か国のTPPができるだけ早く、可及的速やかに成立をして、そしてそれが成功裏に実施されていくことだろうと思います。 やはりマレーシアとかベトナムで作られた靴とかあるいは繊維が、アパレルが、中国の産品と比べて、アメリカのマーケットに入っていくときに、ベトナムやマレーシアのそういった産品はアメリカにデューティーフリーで入っていくのに、中国の同じ産品、同種の産品がアメリカのマーケットに入っていくときには関税が掛かります。この差というのは中国にとっては何とか乗り越えたい差なんですね。ですから、その辺りが中国にまさにインセンティブを与えるということがあると思います。あと、ルールの面でも、さっき申し上げた知的所有権などで、中国としては自らの知的所有権を守るということも問題意識として持っておりますので、そういう意味では、魅力的なTPPになればなるほど、中国はTPPに入ろうとして努力をする。 もし失敗したらどういうことになるかというと、中国主導の日中韓であり、あるいはRCEPであり、そこで中国というのは圧倒的な影響力を持っております。中国が何か右へ行くと言うと、ASEANの国は多くはやっぱりそれを黙認せざるを得ないような状況があります。それはAIIBを見ていてもお分かりのとおりだと思うんですね。 ですから、そういうことからしますと、やはり中国のためにもTPPをいち早くまとめていくということが非常に重要ではないかというふうに考える次第でございます。
○アントニオ猪木君 時間が来ました。ありがとうございます。
○会長(柳田稔君) 浜田和幸君。
○浜田和幸君 次世代の党の浜田和幸です。 まず、澁谷審議官に確認させていただきたいと思います。 このTPPの交渉のテキストについては、アメリカの議員の場合には、議会のビジターセンターの地下一階で、きちんとした監視の下であれば一章ごとにテキストを読むことができると。ただし、メモは取ってはいけない、そこで読んだことは外部では話してはいけない、そういう条件ですよね。そういう厳しい条件があるがゆえに、本来この協定に賛成をしている共和党の上院議員五十四名のうち、確認しましたら、たった二人しかこの協定の中身を読んでいない、セッションズ上院議員とリー上院議員。これで、二人の人が読んで、このTPPには賛成できないというコメントを出しています。 やはり、これには制度的な問題があるんじゃないかと思うんですね。様々なテーマ、広範なテーマを議論し、十二か国にとって大きな影響がある。その中身をやはりきちんと議員に対して、また国民に対して情報公開をしていくことで初めてこの中身が理解され、本当の意味での自由貿易という枠組みができると思うんですが、そういった議員に対してもかなり制限を加えさせている。 しかし、その反面、アメリカの大手企業六百人の経営者には、常時この交渉のテキストがアクセスできるパスワードを提供している。これはまさに議会の軽視ではないか、そういう批判がアメリカの一部の消費者団体から上がっています。実際のところはどうなんでしょうか。
○政府参考人(澁谷和久君) 今、アメリカの連邦議員のテキストへのアクセスの状況は、浜田先生がおっしゃられたとおりでございます。閲覧させているのはテキストといいますかルールに関する条文案でありまして、いわゆる関税の譲許表とかそういうものは出していないようでありますけれども、少なくともルールに関するテキストの協定案は閲覧に供しているというのは事実のようであります。 ただ、今アメリカでいろんな議員から批判が出ていますのは、一般への公開が全然できていないというところであります。そうすると、要は、アメリカの議員も仮に閲覧して読めたとしても、それを余りオープンに議論できないということで、かえってやりにくいと。実際、アメリカ、議員は読んでいるかもしれませんが、例えばこういう委員会でこのテキストがこうだという、そういう議論はされていないわけでありますので、そこが問題じゃないかと、むしろオープンにすべきだという今要望が来ています。先週、上院の本会議でTPA法案採決されましたが、ウォーレン議員が出した修正案はまさにテキストをパブリックにしろという、そういう修正案でありました。否決されましたけれども、そういう案でありました。 また、今お話があったアドバイザーでありますけれども、一九七〇年代からクリアードアドバイザー制度というのを設けているようでありまして、各業界の代表者をアドバイザーとして指名をして、これはアメリカ特有の制度ですけれども、セキュリティークリアランスという、CIAとかFBIがチェックする、あの物すごい大変ないわゆる身体検査のようなものをクリアした人で、かつノンディスクロージャーアグリーメントにサインをさせて、刑事罰を受ける可能性があるということを認識していますということをサインをした上で、その人には関係の部分についてテキスト等の情報にアクセスをさせて、その代わり、おたくの業界、こういう内容だったらどうだろうかという、そういうアドバイスをもらっていると、これはまさにアドバイスをもらうための制度であります。 アメリカなんかはステークホルダーに全部見せているんじゃないかという、よくそういううわさが流れますが、そうではなくて、あくまでも特定の業界に専門的な知識を持っている人をアドバイザーとして選んで、その人の意見を聞いている。その人はステークホルダーには言えないわけですね、こういう内容だったよとか言えないし、聞けもしないということであります。 今批判になっているのは、その六百人のうち大企業の役員みたいな人が相当程度いるというのはおかしいじゃないかという議論がされているところであります。今アメリカは、我が国もそうですけれども、情報開示に向けて、この情報開示、非常に難しいところです。渡邊先生おっしゃったように、交渉中に情報が漏れるということは非常に交渉にどの国も悪影響がありますし、しかしながら、いずれ国会ないし国民の御理解を得なきゃいけないわけですから、その透明性と秘匿性、このバランスが非常に難しいところでございます。 アメリカでは、オバマ大統領以下声明を出していまして、一般にテキストを直ちに公開せよという要望があるけれども、一度合意がなされたらそう間を置かずに、エブリカンマ、エブリピリオドと言っていますけど、テキストのもう詳細に至るまで公表するんだと、最終的に国会の承認を得るまでに必ずそれは公開するんだということをアメリカは声明を出しているところでございます。実際、新TPA法案では署名の六十日前にテキストをこれはパブリッシュしろという、そういうことでございます。 私どもは、合意後、どういうタイミングでどの程度の内容を公開するかということを今十二か国でずっと議論しているところでございます。やはり、どの国も透明性の向上に対する要請が非常に大きいわけでございますので、できるだけそういう声に応えるために、今十二か国で、これは十二か国で共同歩調を取らなきゃいけませんので、どういう形をすればいいかということを今相談をしているところでございます。
○浜田和幸君 ありがとうございます。 先般、安倍総理がワシントンで日米首脳会談に臨まれて、そのときの記者会見においてもこの問題がアメリカの記者から投げかけられたわけですよね。 今、澁谷審議官がおっしゃったように、オバマ大統領が、このTPP、自分が署名する前に議会には六十日の審査期間があるんだと、さらに議会で議決するまでに数か月の時間があるから十分今情報公開しなくても一般公開できるんだと、まあ十分な審議時間を確保するということをおっしゃったと思うんですが、しかし、これまで十年近く議論が様々発展してきて、審議官言われるように、日本が最初に入ったときの六百ページのテキストと比べると、今進行中のテキストは全く中身が違っているという話ですよね。そうすると、その間の経緯ですとか変化というものをこの数か月でしっかりと言ってみれば評価する、判断するというのはかなり酷な話ではないかと思うんですね。 ただ、そういうことに対して、アメリカの交渉責任者のフロマンさんは、頭の悪い連中に幾ら説明しても分からないんだと、だから経済学の知識のないやつらは黙って承認すればいいんだという極めて強圧的なコメントを言っておられるんですね。これはやっぱり、こういった傲慢な姿勢がある限りアメリカの議会でも問題になると思いますし、私、甘利大臣がフロマンさんとの協議終わるたびにどんどん体調が悪くなって、本当に髪も白くなって、本当に気の毒だと思うんです。 ですから、そういうアメリカの交渉スタイル、傲慢さ、そういうものは恐らく日本だけじゃなくて他の国々もかなりいらついていると思うんですけれども、そばで支えておられる立場で、澁谷審議官、どうですかね、このアメリカの交渉の仕方、そういうところについてちょっと率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(澁谷和久君) 二年前の八月、ブルネイで閣僚会議がありまして、甘利大臣が初めて参加したのはその会議であります。会議の冒頭、甘利大臣が冒頭で発言したことは、こういう十二か国でルールをまとめようとするときはどの国も謙虚でなければならない、特に一番大きな国、強い国が最も謙虚でなければならない、これはアメリカとは言いませんでしたけれども、ましてや特定の国のルールをほかの国に押し付けようなんてことは断じてあってはいけないということを甘利大臣、デビュー戦の最初にお話をしたところでございます。 その後、各国の大臣とバイの協議をずっとしているんですが、どの国からも、名指しは避けたけど、そういうことを指摘した国以外の全ての国から、あの発言は本当によかったということを皆さんおっしゃる。どうも何か日本以外の国は平場ではなかなかそういうことを言えないような雰囲気だったようでありまして、初めて日本が参加して、しかもデビュー戦で甘利大臣がそういうことを言ったということで、皆、どの大臣も感銘を受けていたということであります。 日本が随分途上国とアメリカの間に入って、特に国有企業の調整、今、本当難航していたんですけれども、各国の例外を認めるとか、様々な形で日本が間に入って知恵を出して、何とかまとめる方向に努力をしているところでございまして、そうしたところはかなり各国から評価をされているんじゃないかというふうに思います。
○浜田和幸君 ありがとうございます。 是非、甘利大臣ほか外務省、交渉の担当の方に踏ん張っていただきたいと思います。 渡邊参考人にも一つお聞かせいただきたいんですけれども、ISDS、これが決してアメリカ企業には有利でない、アメリカも必ずしも企業が訴えてこれまで勝ったケースは全てじゃないということなんですが、世銀の下部機関にMIGA、多国間の投資保証エージェンシーございますよね。ですから、ISDSに限らなくても、既存のそういう投資保証機能を使えば、各国の企業が万が一投資上の不利益を被ったときには問題解決に至るのではないかと思うんです。 ISDSについて、相当日本でもこれは一方的に政府が訴えられてしまうということの危惧を表明する人が多いんですけれども、その辺りはどういう具合に捉えておられますか。
○参考人(渡邊頼純君) 浜田先生、どうもありがとうございました。 ISDSについての御質問でございますが、確かに世銀のMIGAでありますとか、あるいは国連にもUNICITRALというのがございますね。ですから、幾つかそういう紛争解決に資する機関があると思いますが、それがもう少し拡充されてもいいだろうという考え方でございます。 それから、私どもが例えばメキシコとのEPA交渉をしましたときには、投資受入れ国が本当にどこまで裁判手続を投資受入れ国の裁判手続でちゃんと公正にやってくれるかどうか、やはり不安があるということなんですね。ですから、是非メキシコとの投資交渉の中でもISDSのファンクション、機能を入れてくれというようなリクエストがやはり企業の方から出てまいります。 ですから、恐らくある種のセーフティーネットを日本の企業は非常に求めていらっしゃって、必ずしもそれで相手国を訴えようという、最初からその気持ちがあるというよりは、むしろそれがあることによって、受入れ国が最初に示した投資のプランあるいはそれに対するインセンティブなどについて、ちゃんと約束を守るということを確保したいということだろうと思います。最初は、そういうインダストリアルパークとかいろいろなものを設けて、水もガスも電気も全部大丈夫ですと、あるいは法人税最初の五年間大丈夫ですと言っていたのが、いざ実際に行って操業を始めたら全然違う条件を出してくる、そういったことはよく途上国相手にあるわけですよね。ですから、そういうときの、何といいましょうか、紛争解決の仕掛けが既に協定の中に入っているということが安心材料を提供するということなんだろうと思います。 そういう考え方に基づいて、ISDSというものをやはり入れてくれということが日本の企業の皆様からのむしろリクエストとしてこれまで上がってきていたということではないかと思います。 ありがとうございます。
○浜田和幸君 ありがとうございました。 終わります。
○会長(柳田稔君) 以上で各会派一巡をいたしましたので、これより自由に質疑を行っていただきます。 質疑のある方は挙手を願います。 紙智子君。
○紙智子君 ありがとうございます。 先ほど時間がちょっと足りなくなって、渡邊参考人に途中まで答えていただいたんですけど、あとやっぱり日本農業の問題で、先ほどの話の中で、ちょっと確認もしながらなんですけれども、衰退していく傾向にあるところはやっぱりもう一回見直さなきゃいけないんだという話だったのかなと思うんですけど、日本農業がそういうことなのかということと、私はやっぱり食料というのはその国その国の基本になる問題、農業もそうですけど、したがって、その保護というのは必要なことだと思っていますし、世界を見ても保護をしていない国というのはむしろない。アメリカもそうですし、ヨーロッパなんかもそうだと思うので。 日本は、じゃ特別保護をされ過ぎているかというと決してそうではなくて、むしろやっぱりもっとちゃんとやった方がいいというふうに思うぐらいなんですけど、そういうふうに思っていることについてどう思われるかということを一つお聞きしたいと。 シンガポールなんかは本当に小さな国なので、農地造るといったって無理ですよね、そもそも。だから、やっぱり最初から国の行き方というのは、その道は無理なので食料は輸入というふうになっていて、その代わりということでいろいろやっていると思うんですけど、やっぱり基本的には日本のように作れるところは作って、食料のないところもあるわけですから、貢献していくということが必要じゃないかということで一つお聞きしたいということ。 それから、澁谷審議官にお聞きしたいんですけれども、先日、五月の十五日に一般の方を対象に初めてTPP対策本部主催の説明会を開いて、そのときに澁谷審議官が説明をされたということなんですけれども、国会決議を、相手国に対して今まで何回も日本の立場というのを言ってきたんだと。まだ個々別々のことについては決まっていなくて、パッケージで議論をしているから、一品目ごとに内容を決めているわけではないと。論点はほぼ出尽くしているので、あとは政治決断だというふうにおっしゃったというふうにちょっと聞いているんですけれども、あとは政治決断ということは一体どういうことなのかということについてお話しいただければと思います。
○参考人(渡邊頼純君) 会長、ありがとうございます。 紙先生、ありがとうございます。 さっきの保護主義との兼ね合いで、保護主義はいけないと。保護主義というのは、衰退していく産業を保護すること、これがいけないんだという、そういうことを申し上げたのに対して、果たして日本の農業をそういう衰退産業と考えているのかという御質問が最初にあったかと思います。 私は、日本の農業というのは衰退産業だとは全く考えておりません。これは、私もこういう分野いろいろ見てまいりまして、例えば北海道なんかに行きますと、もう耕作放棄地、耕作放棄された土地というのが北海道なんかは出ないんだそうですね。つまり、誰かが耕作をやめるということになりますと、引退されるとかで、そうすると必ず手が挙がって、それを貸してくれ、ないしはそれを買いたいというような形で、北海道なんかでは耕作放棄地が出てこないというようなお話も聞きます。 私が北海道の十勝の方で見学をさせていただいたある農家は、四百ヘクタールの土地を耕して、ジャガイモでありますとか麦でありますとかてん菜大根を作っていらっしゃいますが、さぞかし四百ヘクタール、日本の今の一農家当たりの平均の面積は二・一ヘクタールぐらいですから、二百倍といったような物すごく大きな規模の土地を持っていらっしゃるわけですが、何人ぐらいでやっていらっしゃるんですかと言ったら、その方は三十八歳ぐらいの方でしたが、自分と家内、二人でやっていますと、こう言われるんですね。二人で可能なんですかと言ったら、これを見てくださいと言われて拝見したら、農機具、農機具といいましても非常に大きな農業トラクターなんですね。その名前が、何かアマゾネスというんですね、すごい名前です。どこで買われたんですかと言ったら、これはフランスでやっている農機具の博覧会に行って、そこで買い付けてきたものですと。それで、その機械は自動的に、例えばジャガイモのつるを植えて、上から均等に土を掛けてという、全部オートマチックでやるらしいんですね。自分は乗り込んで冷房とGPSのスイッチを入れたら、寸分のたがいもなくきちっと四百ヘクタールに植え付けていくと、こうおっしゃっていました。 そういう農家が、やはり少しずつ北海道や九州やというところで出てきているということが非常に農業の将来を明るくしているなと私は思いました。 あるいは、長野県、本州ですと、川上村の村長さんとお話をするチャンスがございましたが、そのときに川上村の村長さんが言われたのは、自分のところでは葉物野菜、特にレタス、白菜、キャベツといったようなものを作っていらっしゃる。これが、かつて物すごい寒村で、本当に大変だった寒村の村で、葉物野菜をブランド化することによって、今、見事にこの川上村の再興にこれが重要な役割を果たしているというようなお話を聞きました。 これはオフレコでと言っても、オフレコになるかどうか分かりませんけど、その村長さんに、何といいましょうか、川上村の成功の秘訣は何ですかと聞いたら、いや、この村は寒村で貧し過ぎてJAが振り返ってもくれなかったんですと、こう言われたんですね。そういうところもございます。 ですから、日本の農業というのは、私は衰退していく産業どころか、むしろこれからますます伸びる可能性があると思っています。ですから、私はもうかねてから、TPPというのは日本の農業を良くするための起爆剤になるんだということを申し上げてまいりました。 安全性が確かに重要だということはそのとおりでございます。ただ、私も先生方にお配りさせていただいた著書の中に書いてございますけれども、OECD、経済開発協力機構の調査などによりますと、日本というのはやっぱり、保護のためにお金を使っている順位は、一番がアイスランド、二番がノルウェー、三番がスイスで、四番目ぐらいが日本、五番目が韓国といったような、そういう序列なんですね。今挙げた国は全て、WTOの農業交渉においても農業の自由化には反対な国あるいは慎重な国ということになっております。 これだけ保護のためにお金を使っている、世界で見ても第四位ぐらいに位置しているということなんですけれども、実はもう一つOECDの報告書は書いていることがあります。それは何かというと、モアサブシダイズド、モアポリューテッドだと言うんですね。つまり、補助金を出していれば出しているほど実は汚染されているという言い方をしています。それは、ある意味で、補助金を出している、単位面積当たりの収量を増やさなきゃいけない、それで化学薬品あるいは肥料、農薬を使うということを意味しているんだろうと思います。これも、ある調査によりますと、日本の単位面積当たりに掛ける農薬とかあるいは化学肥料、それの量というのは、アメリカの平均的な農家の六倍から八倍だというふうに言われています。 ですから、是非、紙先生にお願いしたいと思うのは、そういう日本の農業の安全性というものを本当にチェックしていただきたいと思うんですね。日本にはラルフ・ネーダーみたいなきっすいの、何といいましょうか、消費者運動をする人がいません。主婦連、地婦連、いろいろありますけれども、皆さん、農協と非常に関係が深いんですね。 ですから、私も、ある農家を訪れて、あれはメロンの農家でした。メロンというのは、収穫期が近づくとどれぐらい甘いかという糖度検査をいたします。大きな注射器みたいなものをぐっと入れて、それをぐっと抜いて、中の実がどれぐらい糖分があるかというのをチェックします。私は単純に、その糖度検査した後のメロンを、もったいないから皆さん食べるんでしょうと聞いたら、いやいや、そんなの絶対食べないですと。物すごくもう農薬を塗りまくって害虫が付かないようにしていますから、とてもじゃないけど怖くて食べれませんということを言われました。ですから、そういうことを考えますと、是非この際、日本の農業の本当の安全性ということも考えていただければ有り難いなと思う次第でございます。
○政府参考人(澁谷和久君) 五月十五日の一般向けの説明会での私の発言についての御質問でございます。 実は私、今御指摘いただいた点、二つのことを別々にお話をしたものでございます。 よく言われる二つの疑問があるわけでございまして、一つは、農産物の交渉で、物品の交渉で、もうさすがに大詰め、もう何度も何度もやっているんだから、大詰めなんだから、特に日米、もうずっとこれだけ長いことやっているんだから、しかももう大詰めだと言っているんだから、さすがに例えば牛肉とか豚肉はもう終わっているんじゃないかと、最後残された品目はちょっとなんじゃないかと、どうなんだと、こういうことをよく聞かれますということと、もう一点、他方、知的財産なんかは物すごくたくさんの論点がまだ未解決でずっと残っているじゃないかと、これがたった一回、最後の閣僚会議をやって本当に終わるのかと。私は、この二つのよく言われる疑問点に対してそれぞれお答えをしたものでございます。 最初の農産品については、今御指摘あったように、一品目ずつ潰していくというやり方ではできないんですと。例えば、アメリカとある程度やっても、同じ品目についてほかの国が違うことを言うと。ですから、ジグソーパズルのピースを一つ一つ埋めていって最後に一ピースという形じゃなくて、ほかの国とやっているとジグソーパズルの形が途中で変わるんです、物すごく難しいんですという話をいたしました。したがって、これは全部パッケージで決めなきゃいけないので、何かが決まっていてだんだんだんだんということ、そういうことにはならないんですという話をしました。 二つ目の知的財産に関して、物すごく多くの論点が未解決で残っているのは事実だけれども、交渉官は相当長いこと交渉をしています、お互いの交渉官の家族構成まで熟知していますと。そういう中で、どの論点についてどの国がどういう立場で何がセンシティブなのかということはみんな分かっていますと。したがって、最後の最後、ある国がどうしても欲しいこと、ある国がどうしても守りたいこと、それを全体のパッケージでどうやってまとめていくかということは最後の段階で調整が可能なのではないかということを申し上げたと、この二つのことを申し上げたという趣旨でございます。
○会長(柳田稔君) 他に御発言もないようですから、本日の質疑はこの程度といたします。 一言御挨拶を申し上げます。 渡邊参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日のお礼とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後三時十分散会