法務委員会 第28号
- 発言数
- 194 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2015/07/03
会議録
○奥野委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 この際、お諮りいたします。 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官大原一郎君、警察庁長官官房総括審議官沖田芳樹君、警察庁刑事局長三浦正充君、消費者庁次長川口康裕君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長林眞琴君及び法務省人権擁護局長岡村和美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○奥野委員長 次に、お諮りいたします。 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○奥野委員長 本日は、特に証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度等の創設について質疑を行います。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。
○階委員 おはようございます。民主党の階猛です。 本日は、司法取引という、全体の中で限られたテーマについてお尋ねしますし、また、根本的な、基本的なところをお尋ねしたいと思っていますので、参考人登録はしておりません。ぜひ両大臣から忌憚のない御意見を聞かせていただければと思います。 最初にお尋ねしたいのは法務大臣に対してですが、今回、いわゆる司法取引によって犯罪者に恩典を与えることが正当化される根拠について御説明いただけますか。
○上川国務大臣 おはようございます。よろしくお願いいたします。 現行の刑訴法の規定によりますと、検察官におきましては、広範な訴追裁量権が認められているところでございます。同法の二百四十八条におきまして、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」という規定でございますが、証拠上、犯罪事実が認定できる場合であっても、検察官の裁量によりまして公訴を提起しないことが認められている、こうした起訴便宜主義にのっとった規定であるというふうに理解をしているところでございます。 また、審判対象であります訴因の設定につきましては、検察官の専権であるというふうに解されているということでございまして、判例におきましても、検察官が、事案の軽重、立証の難易等諸般の事情を考慮して、犯罪事実の一部により、または訴因事実を選択して訴追することができる旨を認めているところでございます。 合意制度についてでございますけれども、こうした広範な訴追裁量権を背景といたしまして、被疑者、被告人の事件について処分の軽減等を行うことを可能にするものであるということでございます。被疑者、被告人が他人の刑事事件の捜査、公判に協力したことを、検察官が、同法の二百四十八条にも規定されております犯罪後の情況として被疑者、被告人に有利に考慮し、これを訴追裁量権の行使に反映させることができるということを根拠とするものでございます。
○階委員 他人の事件を密告することが、犯罪後の情況として、訴追裁量権を行使する上で、被疑者、被告人に対してその罪を軽減する方向で考慮できるというお話でしたけれども、今読み上げていただいた刑訴法二百四十八条の条文の中には情状という言葉も出てきますね。 情状ということでいえば、自己の事件について罪を認めて本当のことをしゃべった、それによって恩典を受けるということの方が、なおさら、起訴便宜主義のもとで被告人、被疑者にとって有利に考慮すべき事情に当たると思うんですけれども、今回は自己の事件についてはなぜ司法取引の対象に含まなかったのか、今の二百四十八条との関係では私は矛盾があるのではないかと思いますけれども、御説明いただけますか。
○上川国務大臣 この合意制度につきましては、先ほど条文を挙げて御説明をさせていただきましたけれども、広範な訴追裁量権を検察官が有しているということにつきまして、被疑者、被告人の捜査、公判への協力を考慮して、事件について処分の軽減等を行うということを可能にする制度でございます。 このような観点がございまして、今回の合意制度におきましては、協議、合意の要素を有する証拠収集方法の導入について、初めてということでございまして、対象犯罪につきましても、必要性が大変高い、その利用にも適している、また、国民の皆さんからも理解されやすい一定の類型の犯罪に限定をして取り組むということでございます。 その意味で、合意制度につきましてはこの訴追裁量権が背景ということでございまして、先ほど申し上げた犯罪後の情況という記述に即した形での根拠というふうに理解しているところでございます。
○階委員 御自身で何を答えているのかわかっていないような気がするので、もう一回お尋ねしますね。 私が聞いたのは、今回、司法取引によって他人の事件を密告した人に恩典を与える根拠として、刑訴法の二百四十八条を挙げられました。その中の犯罪後の情況という言葉が根拠になるということをおっしゃられました。 他方で、その条文の中には情状という言葉も出ているかと思います。情状という意味でいえば、自分の犯罪について自白して、それで恩典を受けるという自己負罪型の司法取引の方が、二百四十八条からの帰結としてより正当性があるのではないかと思います。しかし、二百四十八条を根拠としつつ、今回、自己負罪型を入れられなかったのはなぜかということを聞いているんです。
○上川国務大臣 ただいま、合意制度の中に大きく二つある中で、御質問は、自己負罪型に係る部分についてむしろ取り組むべきではないかという御主張だというふうに理解しているところでございます。 今回は、被疑者、被告人が、他人の刑事事件についての協力行為を提供することに合意をする捜査・公判協力型ということで取り組むということでございます。一般的に、この捜査・公判協力型につきましては、主として組織的な犯罪等の解明について目的とするものでございまして、また、今委員御指摘の自己負罪型につきましては、主として事件処理の効率化を目的としているというふうに考えられるところでございます。 我が国の刑事司法制度におきましては、検察官と被疑者、被告人がやりとりをした上で、互いに相手方の求めるものを提供し合うという、協議、合意の要素を有する手段であるということで、今回は初めての取り組みになるということでございまして、先ほどちょっと説明いたしました、証拠の収集方法として特に必要性が高いと考えられる捜査・公判協力型の制度の導入からスタートするということが相当ではないかということでございます。 自己負罪型の制度につきましても、捜査・公判協力型の制度を導入した上で、その運用状況等も踏まえながら、必要に応じて、そのような制度が我が国の刑事司法制度にどのような影響を与え得るかということも十分に見きわめながら検討を行っていく、そういう意味で、段階的に取り組んでいく必要があるのではないかという認識に立っているところでございます。
○階委員 全然かみ合わないですね。 政策的な合理性を聞いているのではなくて、二百四十八条の解釈の帰結として、他者負罪型よりも自己負罪型の方がより整合するのではないかということを言っているんです。それについてまともに答えられないということであると、納得できませんね。(葉梨副大臣「自由裁量なんだから、優先じゃない」と呼ぶ)不規則発言はやめてください。(葉梨副大臣「不規則じゃないよ、事実を言っているんだよ」と呼ぶ)不規則発言ですよ。 委員長、不規則発言をやめさせてください。委員長。
○奥野委員長 ちょっと、階君、落ちついて。(発言する者あり)ちょっと待ってください。 もし質問の趣旨がしっかりと理解できていないとあなた方はおっしゃるならば、こっちは質問の趣旨が違っているよということを言っているわけだから、副大臣は細かいことをよく知っているようですから、もし副大臣に答弁を許してくれるならば、副大臣に答弁させますが。(階委員「いえ、大臣で結構です」と呼ぶ)大臣でいい。だけれども、それだったらかみ合わないかもしれないよ。(階委員「かみ合わないということは、大臣として説明義務を果たしていないということになります」と呼ぶ) では、もう一度やってください。
○階委員 はい、わかりました。 二百四十八条、先ほど文言を読み上げられました。その中の犯罪後の情況という文言が根拠となって、今回、他者負罪型の司法取引を導入されるんだということを最初に答弁されました。しかし、二百四十八条の文言を根拠とするのであれば、犯罪者の情状というものも考慮して訴追裁量権を行使すべきというたてつけになっているわけですから、なおさら、自己負罪型については導入する正当化根拠が認められるのではないかということを申し上げたんです。 そのことについて、なぜ自己負罪型が二百四十八条のもとで入れられなかったのかということをお聞きしています。
○上川国務大臣 前の質問でお答えをさせていただきましたけれども、合意制度には二つの類型があるということでございます。これはいずれも検察官の訴追する権利に基づいて行われるということでありますけれども、大別して、捜査・公判協力型と自己負罪型ということであります。もちろん、二百四十八条に照らして、今委員御指摘の自己負罪型がそれに合致しないということを申し上げているわけではございませんで、そちらの方も当然入るということではございます。 しかし、今回は、日本の国で初めて取り入れるということもございまして、そういう意味で、証拠の収集方法として特に必要性が高いと考えられる捜査・公判協力型の制度の導入ということが相当ではないか、こうした判断の上で、まず捜査・公判協力型の制度を導入した上で、その運用状況も踏まえながら、必要に応じて、今御指摘のありました自己負罪型制度につきましても検討を行っていくことが適当ではないか、こういうことでございます。
○階委員 まず、二百四十八条の文言に照らしてみても、あと、後ほど述べます冤罪の可能性という点に照らしてみても、自己負罪型ではなく、最初に他者負罪型をやるのはおかしいのではないかということを最初に申し上げておきます。 その上で、自己負罪型ではなく他者負罪型の司法取引を導入されたということなんですが、犯罪後の情況として、事実解明に協力したということを恩典を与える根拠にするとすれば、事実解明に協力するという意味では、重大な事件であればあるほど、その解明に協力した人にはより大きな恩典が与えられるというのが筋だと思います。 先般こちらに見えられた参考人も、地下鉄サリン事件のときの林被告の例を挙げられていました。ああいう重大事件の事実解明に協力した人には恩典を与えていいんだというようなこともおっしゃっていましたけれども、今回は、あえて対象事件を限っている、しかも重大事件については外している。 私が持っている問題意識は、ターゲットとされる人の事件の範囲ですよ。本人の事件ではないですからね。本人の事件は、私は、るる大臣も説明されていますけれども、本人の事件、重い事件について、捜査に協力したから簡単に罪を免れるということは余り認めるべきではないと思います。しかし、他者の事件については、むしろ重大な事件であればあるほど、捜査に協力したら恩典を与えるのは筋ではないかと思うんですが、なぜ今回、他者の事件についても狭い範囲、しかも比較的罪が軽い範囲に限定されているのかということをお尋ねします。法務大臣。
○上川国務大臣 先般の参考人の質疑の折にそうした御指摘があったということについては承知をしているところでございます。 今回、合意制度につきまして、捜査協力型の合意制度に取り組むということにつきましては、判断としては、この制度の対象とすべき必要性が高い、そしてその利用にも適している、そしてまた、被害者を初めとして国民の理解も得られやすいと考えられる一定の類型の犯罪に政策的に限定をするということが相当ではないか、こういう判断のもとで、一定の財政経済犯罪、そして薬物、銃器犯罪に政策的に限定することとしているところでございます。その意味では、一番初めにスタートするということでありますので、政策的にそうした二つの類型に限定をするということで始めていくことが適当ではないかというふうに考えております。
○階委員 私の問題意識は、他者の事件と自己の事件とで、今回は別に、自分と関連のない事件についても事実解明に協力すれば刑の減免などの恩典が受けられるわけですから、何も一致させる必要はないのではないかと。一致させずに、むしろ、重い犯罪であればあるほど、事実解明に協力したら恩典を与えるべきではないかということを言っているんですが、あえて一致しなくちゃいけない合理的な根拠というのはあるんですか。大臣、お願いします。
○上川国務大臣 委員の問題意識そのものにつきましてはよく理解をさせていただきました。問題意識そのものは大変重要な御指摘だというふうに思っております。 今回の合意制度、我が国で初めて取り入れられる制度ということでございまして、その意味では、この制度そのものを、必要性の高い部分、そして国民の皆さんからも理解を得やすいということで、政策的な判断ということで対象を絞っているということでございますが、その後、さまざまな運用の段階の中でさらに検証を深めながら、そのことにつきましても検討していく余地は私はあろうかというふうに思っております。
○階委員 何か、このあたりの説明も十分煮詰まっていないような気がします。 次に、司法取引により得られた他人の事件に関する供述、これに証拠能力を与えることが正当化される根拠について聞きたいと思います。 先日の参考人質疑でも、従来は、約束ないし利益誘導による自白の証拠能力が否定されるという法理があったわけですけれども、今回は、まさに約束とか利益誘導による、典型的には共犯者の自白の証拠能力を認めるということで、百八十度証拠能力の考え方が変わってきていると思います。 しかも、その背景で説明されていたのは、まず、恩典が与えられることによって必ずしも虚偽のことは言わないんだ、あるいは、仮に虚偽のことを言ったとしたら処罰されるんだということあたりから、証拠能力が認められることも問題ないんだということを言っていましたけれども、果たしてそれが想定どおり機能するのかどうか。むしろ、罪を免れるということであれば、安易に他人のことについてうそのことも言いかねないだろうし、覆したら処罰されるということであれば、一回うそのことを言ってしまったらその後もずっとうそを言い続けなくてはいけないということで、むしろ、今回の制度には、証拠能力について否定するような事情すらあるのではないか。 そういったことを考えると、なぜ司法取引により得られた他人の事件に関する供述に証拠能力を与えることが正当化されるのかということを疑問に思うわけです。 この点について、法務大臣、納得できる説明をお願いします。
○上川国務大臣 委員御指摘がございました、判例によりましても、約束による自白、約束自白ということにつきまして任意性を否定したものということでございます。 その理由についてでありますけれども、これは、虚偽供述のおそれが類型的に高いということを中心に理解するというのが通説的な見解であるというふうに思われるところでございます。約束による自白は虚偽供述のおそれが高いということでございます。 一方、合意制度におきましては、協議の開始から合意の成立に至るまで、弁護人の関与ということを規定しているところでございますので、被疑者、被告人といたしましても、弁護人の助けを得ながら、合意に応じるか否か、つまり、自己に有利な取り扱いを受ける、恩典を受けるということと引きかえに供述をするか否かにつきまして、検察官と一対一で対峙するという形ではなく、弁護人の同席とその援助を十分に得ながら任意に判断することができる、こういう仕組みでございます。 さらに、合意制度におきましては、自白をすることではなく、あくまで真実の供述をする、真実の供述につきましては、自己の記憶に従った供述をすることを約束するということになるわけでございます。自白は反対尋問にさらされないということでありますが、この合意に基づく供述につきましては第三者の公判で徹底した反対尋問にさらされるということでございますので、その信用性につきましては厳しく吟味をされるということになるわけであります。 虚偽の自白につきまして、基本的に処罰の対象とならないということでありますが、合意をした者による捜査機関に対する虚偽の供述等につきましては、新設いたしました罰則によりまして処罰の対象になる、こうした制度をつくっているところでございます。 また、検察官といたしましても、合意に基づき供述が得られた場合に、その供述が公判におきましても十分に信用され得るものかどうかということについて判断をするために、徹底的に裏づけ捜査を行うことになるわけでございます。 その結果、仮にその供述が虚偽であるということが明らかにされるということになりますと、これは合意から離脱するということが可能となるということでありまして、被疑者、被告人として有利な取り扱いを受けられないということになる上、さらに虚偽供述罪によりまして処罰され得るということにもなるということになります。 したがいまして、合意に基づく供述につきましては、たとえ虚偽であったといたしましても、特定の供述をしようというような誘因が必ずしも強いというふうに言えないのではないかということでありまして、言いかえて申し上げますと、虚偽供述のおそれが類型的に高いということは言えず、むしろ真実を供述する誘因が働き得るというふうに考えているところでございます。 したがいまして、合意制度のもとでの合意に基づく供述につきましては、任意性が否定された判例の事案におきます、いわゆる約束に基づく自白とは異なるものということでありまして、現行法のもとでの考え方と矛盾をしない、証拠能力を認めることに問題はないというふうに考えられるところでございます。
○階委員 今、大きく分けると三つ、証拠能力を与える根拠を述べられました。一つは弁護人の関与があるということ、それから、自白ではない供述だから反対尋問のチェックを受けるということ、それから、裏づけ捜査によって問題があれば証拠から排除されるということ、三つのことをお話しされたということで理解しましたが、それでよろしいですね。端的に。ほかに何か言いましたか。
○上川国務大臣 ただいまの御質問に対しまして、主な内容として今の三つの視点ということでまとめていただきましたけれども、そのように申し上げたところでございます。
○階委員 そこで、三つについてお尋ねしますけれども、司法取引の協議に弁護士が立ち会うから虚偽の供述というものがなされる可能性が少ないと言いましたけれども、そこで問題となってくるのは、弁護士の能力とか倫理観がちゃんとしていなければ、今お話しになったことは絵に描いた餅になるわけですね。 実は、弁護士以前に検察官の問題として、先日の参考人の中で高井さんという方が、最近、被疑者の供述が得られにくくなっている理由として、若い検察官の取り調べ能力が落ちているという指摘もあったところです。そうすると、安易に司法取引で事件を処理しようという検察官もふえてくるかもしれない。 他方で、先ほどの弁護人の関与ということが重要なわけですけれども、弁護人としては、真実を見きわめる高い能力も要求されるだろうし、他方で、取引に応じれば、依頼者は不起訴等の恩典が得られて、弁護人も労せずして報酬が得られるということですから、安易に司法取引に応じるインセンティブもあるわけです。 そこで、司法取引が導入されると、今まで以上に検察官や弁護士に高い能力と倫理観が求められるというふうに考えております。これは確認ですけれども、同意していただけますか。
○上川国務大臣 この間の参考人質疑の折にもそのような御指摘があったということでございますが、そもそも、そうした裁判にかかわる法曹の皆さんの倫理観ということにつきましては、極めて高い能力が必要とされるものというふうに考えております。 冤罪をなくしていくというこの法律の当初の目的から照らしてみても、その意味で、高い高い倫理観を持って、それぞれが役割を果たしながら、真実の究明とそれに基づく処罰ということについても、国民の皆さんからしっかりと理解され、信頼されるものとしなければいけないという意味では、これはどの状況におきましても限りなく追求していくべき課題ではないかというふうに考えます。
○階委員 そこで、現在の法曹養成制度がそういう高い能力と倫理観を養うものに資するものかどうかということを議論したいんです。 私もこの委員会で何度も指摘していますけれども、現行の法曹養成制度のもとで、年々志願者が減っている。昨年は、合格ラインを前年より大幅に引き下げたにもかかわらず、合格ラインを超えた人数は、前年より二百人も減って千八百人ぐらいになっている。また、今の制度になってから弁護士人口が急増したこともあって、年々就職環境が悪化していて、新人弁護士の収入が減る、あるいはOJT、オン・ザ・ジョブ・トレーニングを受ける機会も減っているということも指摘されています。 こういう状況で、果たして司法取引にたえられるような高い能力と倫理観を持った弁護士は育つものだろうかということについて私は疑問に思っていますけれども、大臣の所見を伺います。
○上川国務大臣 高い能力と倫理観を持った法曹の養成ということについて、これはもう最大の目標として法曹養成の理念に掲げているところでございます。 今回、さまざまな法曹養成教育をしながらということで、新しく導入されたこの制度につきまして、目標としていたものに対して、先ほど御指摘のあるように、法曹になりたいと思っている若い世代の皆さんが、現状が大変厳しいという中で、本来、やりたいと思っていて使命感の高い方たちが、魅力のある場所としてこの法曹養成のコースになかなか乗りにくくなっている。このことを踏まえて、今回、改革ということでの道筋をつけようということで、新たな取り組みをこれからするところでございます。 まさに、こうした刑事訴訟法の改正において新しい制度ということについて導入されるわけでありますので、そこの質の部分についての極めて高い倫理観そして能力を養成することができるようなものにしていくということも極めて大事なことであると思いますし、現在携わっている法曹の皆さんにおきましても、いかなる状況であろうとも、絶えず自己改革、自己研さんをしながら高い能力を身につけ、また、倫理観をしっかりと持って取り組んでいくということ、これは、理想的過ぎるのではないかというふうに思われるかもしれませんけれども、そうした目標の中で、まさに改革をし続けていかなければいけないと思っているところでございます。
○階委員 まさにその法曹養成制度改革について、先日会議で決定がされましたね。その中で、例えば、当面、すなわち五年間、千五百人の合格者を輩出するよう必要な取り組みを進めるだとか、あるいは、予備試験については、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成制度の理念を損ねることがないよう配慮するということで、これはどちらかというと予備試験についてネガティブな考え方が示されているかと思います。あと、司法試験については、選択科目の廃止の是非について引き続き検討というようなことがあります。 私が考えるに、当面、千五百人を五年間維持するということは、純増という意味でいいますと毎年千人ぐらいになって、五年間やると五千人もふえちゃうわけですね。先ほど言ったような就職状況の悪化、OJT環境の低下、こういったことを考えると、これで果たして質の向上につながるのだろうか。 また、予備試験というのは、御案内のとおり、いかなる法科大学院よりもこれまで高い合格実績を上げてきた。合格率が高かったわけですね。そういったところを経て司法試験を通る人を減らすということが質の向上につながるのだろうか。 あるいは、司法試験も、選択科目を廃止して受かりやすくするということは、逆に言うと、今までより楽に司法試験に受かるようになるということですから、これも果たして質の向上につながるのだろうか。 ということで、質の向上ということを目指していかなくてはいけない、司法取引の導入を議論している状況下において、それとちょっとベクトルが違うのではないかという気もするんですが、この点についての大臣の御見解をお聞かせください。
○上川国務大臣 ことし六月三十日でありますけれども、法曹養成制度改革推進会議におきまして、今後の法曹養成制度改革の取り組み内容ということで決定をいたしました。御指摘いただいたような内容も盛り込まれているところでございます。 この決定の目標としては、まさに、高い能力を持った法曹を輩出していこうという大きな目標に基づいて、その上で、法曹養成制度そのものを抜本的に改革すべく、法科大学院全体としても、司法試験の合格率について、現状では十分ではない、むしろ期待されていた目標に達していないという状況を踏まえた上で、志願者自身も減少しているのではないか。こうした問題があるということを真摯に受けとめた上で、法曹志願者数を回復させる。 法曹志願者数を回復させるということは、そもそも、法曹の分野に若い世代の皆さんがどんどんチャレンジしていただくことができるように、魅力のある、また新たな時代にふさわしい制度にしていこうということでございまして、まさに質の高い法曹が要請されていることを受けて、これから、千五百名ということで当面の目標を掲げながらも、法科大学院の修了者につきましては相当程度合格をしていくことができるような充実した教育ということについては、組織の見直しを初めとして、教育の質そのものも向上していただくということを織り込んだ形でそれぞれが努力をしていかなければいけないということで、今、法科大学院の場合には三十年を目標に改革を進めていただくということで、法務省といたしましても、こうした各機関の協力を得ながら着実に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○階委員 二年間、法曹養成制度改革推進会議というところで議論されてきて、結局こういう提言しか出なかったということは、私は大変遺憾に思っています。もっと今の危機的な状況にメスを入れるような結論が出てくるかと思っていたんですけれども、二年間かけて、大山鳴動してネズミ一匹のような話だと思っています。ここは、質の高い法曹を育てることが大事だとおっしゃるのであれば、ぜひ、これにとどまらず、積極的な法曹養成制度の改革を法務省が率先して進めていただくようお願いします。 それで、議論を次に進めますけれども、先ほど、なぜ証拠能力が与えられることが正当化されるかということで、二つ目の根拠として、自白でないから反対尋問でチェックできるんだということを言いました。 反対尋問というのは公判になってからの話なんですね。冤罪と言うかどうかは別として、一般の社会人にとって、そもそも刑事被告人として公判に呼び出されるということ自体が、社会的にはほとんど冤罪のようなものですよ。これは、最終的に無罪になったとしても、そこで刑事被告人になったということでどれだけのダメージを受けるか。それを考えたときに、反対尋問でチェックされるから問題ないんだというのは、余りにも捜査機関側の発想であって、裁かれる側の観点というのが欠落していると思います。 現に、個人的なことで恐縮ですけれども、私も昔、日本長期信用銀行というところに勤めておりまして、経営破綻したときに、当時の経営陣三人が告発され、そして逮捕されて刑事被告人になったわけです。最終的に無罪になりましたけれども、それまでの十年間、マスコミには極悪人のような書かれ方もされて、裁判でも多大な労力を経て、十年かけてやっと無罪ですよ。無罪になったときにはもう既に現役生活は終えられていて、これから何か挽回しようと思っても到底できないような、そういうような多大なダメージを受けたんですよ。 反対尋問でチェックを受けるんだから問題ないというのは、私は理解できないんですね。それを根拠に挙げるというのはやや認識が間違っていると思うんですが、ここは、何というんでしょうか、冤罪という言葉とはちょっと違うかもしれません、しかし、社会的な意味では冤罪被害と同じことだと思っています。今回の司法取引を導入することによってそういう被害がふえるのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○上川国務大臣 今回の法律案、さらに合意制度を導入することで冤罪が増加する可能性があるということについての御質問でございますけれども、取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況につきましては、そうした状況が起こるということは、取り調べによる事案の解明を追求する余りに、取り調べにおける手続の適正確保が不十分となり得る、さらに、供述調書の信用性に関する検討が公判立証において不十分となって、公判での事実認定を誤らせるおそれがあるということで、こうした状況を改めるということで今回の法律改正になったところでございます。 特に、組織的な犯罪につきましては、末端の実行者などの組織内部の者からの供述を得なければ事案解明につきまして極めて困難であるということに鑑み、現行のもとにおける主な捜査手法ということで取り調べということでございますので、取り調べによって供述を得ることが困難化している、そうした事案の解明にということで国民からも強く求められるということで、導入をお願いしているところでございます。 冤罪を防止することができるような措置として三つほど提起させていただきましたけれども、巻き込みの危険、誤判ということについては、必要な担保措置を十分に駆使しながら、真相解明をしっかりとして、その導入によって新たに誤判が増加するようなことにならないというふうに考えているところでございます。
○階委員 国家公安委員長にもお尋ねします。 冤罪という言葉は、普通は、無実の人が有罪判決を受けるということで使われるのかもしれませんが、今私は、有罪判決に至らずとも、無実の人が長期間裁判になって、最終的に無罪になったとしても大変な社会的なダメージを受けるということも含めて冤罪だというふうに述べております。 そういう前提でお尋ねしますけれども、こうした冤罪ないし冤罪的なものの被害を、これから司法取引が導入された後、ふやさない、ふやすことはないと断言できるかどうか、これを国家公安委員長にお尋ねします。
○山谷国務大臣 本制度は、証拠収集手段の多様化に資する一方で、無実の第三者の巻き込みの危険については、虚偽供述の処罰規定、協議や合意への弁護人の一貫した関与等の手当てを設けることとされておりまして、所管の法務省において適切な形で制度設計がなされているものと承知をしております。 警察といたしましては、冤罪はあってはならないことだと考えております。
○階委員 それから、そもそも司法取引について、司法取引に応じる本人が無実の場合に、司法取引というのが成立し得るのかどうか。 普通は、無実の場合であれば、無実を主張するのが被告人や被疑者だと思うんですけれども、痴漢事件などでもそうですけれども、無実なんだけれども、早く釈放されたい、起訴猶予になりたいということで、司法取引をしたいと思うインセンティブもあると思うんですね。こういう無実の人が司法取引に応じることは、この法案の中では排除されているんでしょうか。制度上はそういうことはないと言えるんでしょうか。
○上川国務大臣 被疑者として一定の嫌疑があったものの、捜査の結果といたしましてその嫌疑が解消された場合におきましては、被疑者による協力行為を考慮して不起訴処分をするわけではございませんので、そのような被疑者との間で合意をすることはできないという制度でございます。
○階委員 合意することはできないというのは、捜査機関側から見ればそうなんでしょうけれども、制度としては、本人が有罪を認めた上で司法取引をするということは書いてないわけですね。そうすると、有罪ではないけれども司法取引をするということも可能ではないかと読めるんですけれども、そういう理解でよろしいですか。
○上川国務大臣 ただいま文言上ということで御質問がございましたけれども、捜査の結果において被疑者の嫌疑が解消された場合ということでございますが、被疑者による協力行為を考慮して不起訴の処分をするわけではございませんので、そのような被疑者との間で合意をするということについては、できないというふうに考えております。
○階委員 ちょっと私も質問を整理して、またお尋ねしたいと思います。 私は、この他人負罪型の司法取引の問題点というのは、自己負罪型だと、せいぜい、自分が無実であって、万が一司法取引に応じたとしても、それは、無実だけれども有罪を認めるという意味で、自分だけの問題なんだけれども、他人型の場合は、ひょっとしたら、やっていないにもかかわらず、自分もやっていないということを言わずに司法取引に応じ、かつ、他人についても、ひょっとしたらやっていない人かもしれないのに他人を罪に追いやるようなこと、二つの段階で冤罪の可能性が発生してしまうということが問題だと思っています。だから、私は、司法取引全般について問題があると思っていますけれども、とりわけ他人負罪型、しかも赤の他人負罪型というのは問題が大きいと。先般の参考人の質疑でも、何人もの方がそういう他人負罪型の司法取引の問題点を指摘されておりました。こういう制度設計が問題だと思っています。 まだ時間があるようですから最後にお聞きしますけれども、今回の司法取引が導入されることによって、闇の司法取引、闇というのは、例えば参考人が、あなたについては訴追しないから、あなたと一緒に犯罪を犯したあの人についてちゃんとしゃべってくれといったことに応じた場合などについては、これは被疑者、被告人ではないから司法取引の対象にはならないんだと思うんですね。こういった闇の司法取引というのはどうなるのかということが法制度上明確じゃないので、最後にこの点だけ端的にお答えいただけますか。
○奥野委員長 時間が来ているから、非常に短く答えてください。上川大臣。
○上川国務大臣 ただいまのような事態については、むしろ、そういうことにならないように今回の制度設計をするということでございますので、今のような御質問につきましても、制度そのものをつくるという意味からすると、そうしたものがないようにしていくということでの取り組みになろうかというふうに思います。
○階委員 質問を終わります。ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、山尾志桜里君。
○山尾委員 民主党の山尾志桜里です。 まず、きょうは司法取引についての質疑にしっかり時間を充てたいんですけれども、ちょっと一点だけ、どうしても今聞いておかなければならない、法務省のデータが流出した可能性があるという問題について確認をさせていただきたいというふうに思います。 これは去年の九月の件とことしの六月の件とあるわけですけれども、まず去年の九月の件についてお伺いをいたします。 去年の九月、報道によりますと、法務省民事局総務課長のコメントということで、一般市民の情報が流出した可能性も否定できない、こういうコメントが出ているということですけれども、お尋ねします、法務省、担当の事務方で結構です。 この流出した可能性のある一般市民の情報の中に、人権相談窓口にアクセスをされた人権相談内容が含まれているかいないか、お答えください。
○深山政府参考人 情報の不正流出が九月にあったシステムに存在したデータの中に、今委員御指摘の九月当時に存在した人権相談窓口の相談内容のデータがございました。
○山尾委員 この人権相談窓口は、一般の方が、いろいろな自分の身に起きている人権侵害等について、法務省にアクセスをして相談をするわけなんですね。 大臣、事務のことについては事務方に当分聞きますから、聞いていてください。 これに一般市民の方が相談をする場合、その方の情報としてどういう項目が法務省のデータに蓄積をされるんでしょうか。
○岡村政府参考人 人権相談の相談申し込みに当たっては、一般の方は、入力フォームにその方の氏名、住所、年齢、性別、Eメールアドレス及び相談内容を入力するほか、もしその相談者の方が電話による返信を希望する場合には電話番号を入力いたします。ただし、全ての項目を入力しなくても、相談申し込みをすることはできることになっております。
○山尾委員 本当に最も人の根幹にかかわる情報、そしてその人を特定するのに十二分な情報がデータに蓄積され、それが去年の九月に流出した可能性のある事項の範囲に入っている。 それでは、現時点で、実際に流出があったのかなかったのか、これは把握をされていますか、把握されていませんか。
○深山政府参考人 現時点におきまして、本件による情報流出が実際にあった、このデータが流出したということは確認をされておりませんし、また、情報の流出があったことを推測させるような外部からの問い合わせや苦情なども寄せられておりません。
○山尾委員 私がお伺いしたのは、流出の有無について、あったのかなかったのか、把握をされていますかということです。
○深山政府参考人 あくまで流出の可能性があったという九月に発表した事態のまま推移しておりまして、あったなかったということが確認されたデータがあるということではございません。
○山尾委員 それでは、流出の可能性があるようなウイルス感染が起きたということで、原因は究明されましたか。
○深山政府参考人 原因というと、正確に言えば、誰がいつどのような態様の行為を行って、どういう結果が生じたといういわば事案の全容は解明されておりません。
○山尾委員 原因が解明されていないと。 ということは、原因がわからないわけですから、その原因を解決するような対策も講じられていないということだと思います。それでよろしいですか。
○深山政府参考人 不正アクセスの再発防止のためにさまざまなセキュリティー上の対策等々はこの間打っておりますが、具体的にどういう対策をとったかというのは、セキュリティーにかかわることですので、この場で申し上げるわけにはいかないということでございます。
○山尾委員 平成二十六年九月二十二日報道発表資料を見ますと、「今後の対策等」というところで、「(1)原因及び外部に送信された可能性のある情報の範囲の調査・特定」「(2)上記結果を踏まえた情報セキュリティ対策の強化」、これをこれからとりますよと発表されております。 今の話を総合しますと、「(1)原因及び外部に送信された可能性のある情報の範囲の調査・特定」はできていないですね。したがって、「(2)上記結果を踏まえた情報セキュリティ対策の強化」は当然のことながらできません。(1)の結果を踏まえた情報セキュリティー対策の強化はできませんね、(1)がはっきりしていないわけですからね。 そういう中で、先週、ことしの六月のことが発表されまして、私はいろいろ調べました。お呼びをして事情も聞きました。去年の九月の件も聞きました。 今お話にあったように、十カ月、要は全く事態が進捗していない、調査が何も前に進んでいない、人権データが結局漏れたのか漏れていないのかもわからない。もちろん、漏れた可能性がある、そういう現象が起きたことについての原因も特定されておらず、したがって対策もとれていない。これも驚きました。 でも、もっと驚いたことは、私、この人権相談窓口に、先週の金曜日にアクセスをしてみました。それで、アクセスできました。これは、本当は人権相談のためにやるべきことですから、本来の使い方ではなくて、その点は申しわけない面がありますけれども、今お話に出た、名前、住所、性別、年齢、私自身のiPadのEメールアドレスを入れました。そうしたら、私のiPadにちゃんと戻ってきまして、そしてフォームもついてきました。そこには、千字以内でどうぞ御相談くださいと、相談内容を打ち込めるようになっておりました。幾つか項目があって、それにチェックもできるようになっています。 これは大臣、どうして、これだけ大事なデータが、十カ月、今もなお漏れたかどうかもわからないまま、そして、そういう状況が起きたことについて原因も特定できず対策も講じられていないまま、人権相談窓口が今もなお続いているんでしょうか。これは、聞きました。一旦とまっているんですね、九月に。それで三月に再開されたというんです。 これは、どういうものがデータとして蓄積されるか、少し想像していただきたいんです。 決して周りの人には言えない、それこそ、もしかしたら家庭内の性虐待も含めた虐待の相談があるのかもしれない。ある特定の地域の出身だということで、大変いわれのない差別を受けていて、それを相談している人もいるでしょう。あるいは、特定の御自身の性的な考え方や性自認について、周りの人にはどうしても相談できないけれども、わらにもすがる思いで、ここは秘密を保持してくれるからと法務省の人権窓口に相談される方もいるでしょう。それが千字以内にまとめられて、そして、名前、性別、年齢、住所、Eメールアドレス、これは普通、全部入れますよ。それで、電話で相談したい人は電話番号も。 今もなお、この窓口があいて、データが蓄積され続けている。これは、原因究明されるまで、やはり閉じたらいかがですか。どうですか、大臣。
○上川国務大臣 人権相談をされた方たちの機微に触れる情報につきまして今の事件の対象になっているということについては、本当にゆゆしき事態に陥っているというふうに思っております。 再開をするに当たって、そのことを踏まえた上で十分に対応しているというふうに私は思っているんですけれども、その点については、事務当局より、そのときにそうした判断をした理由ということについてしっかりと答弁をさせたいというふうに思っております。 今、御心配ということの中の、とめるべきだということでございますけれども、さまざまな判断をした上で再開をしているということでございまして、こうした事態が起きないようにということを踏まえた上で対応しているものというふうに私は考えておりますけれども、今委員からも御指摘がございましたので、そのことも踏まえて当局の方から答弁をさせたいと思います。
○山尾委員 今大臣が、御自身はしっかりとこれを踏まえてさまざまな対応がなされていると考えているとおっしゃいました。なぜそう考えているのか、大臣は何を根拠にそう考えているのか、それだけでも大臣の口から教えていただけませんか。 私は、原因が解明できていないのに、対応をとれないんじゃないですかと申し上げています。それを覆しても、今は十カ月前と違ってこういう対応がとられているから大丈夫なんだと大臣は考えているとおっしゃいました。何を根拠にそう考えていらっしゃるか、これは大臣にしか聞けませんので、大臣にお願いします。
○奥野委員長 それでは、先に事務方……(山尾委員「いや、今手を挙げていただきましたので」と呼ぶ)いや、ちょっと待ってください。事務方がやっていることをきっちり説明していただいた後で、大臣に、そのうちのこの判断は私が示したというふうに言ってもらいます。 高嶋大臣官房審議官。
○高嶋政府参考人 昨年の九月以来、法務省として、特に法務局の事案に関してとった措置でございますが、全く何もやっていないということではございませんで、その後、時期等についてはちょっとここで言及は差し控えさせていただきますが、セキュリティーをよりきつくする、そういう措置をとってございます。 それで、それだけでも十分という考え方もあるんですけれども、しかし、念には念を入れまして、ウエブ閲覧につきましては、今はもう全部閉鎖している状態でございます。 ただ、今度は、逆にメールの方は、これはもともと、メールによる情報流出というのは、非常に技術的に難しいところがございまして、極めてその可能性が低いというふうに言われております。しかも、昨年の九月以降、既にかなりセキュリティーをきつくしているというところがございましたので、他方、本来の事務やそれから人権相談、これはメールでやっておりますので、そういうニーズも非常に高いということから、メールについてだけは再開しようということで再開した、そういう事実関係にございます。
○上川国務大臣 セキュリティーに対して、守らなければならない、大変機微に触れる情報であるということに鑑みましても、再開する以上は、そのことについての十分な確認をした上で再開したというふうに理解をしているところでございまして、私自身も、この間の取り組みがどうなっているのかということについて、委員の御指摘と同じような問題意識の中でやりとりをいたしたところでございます。 セキュリティーについては、今の技術、最善の技術で十分な強化を図るということ、そして、安全性の確保をした上での再開ということになったということであります。 先ほど高嶋の方から説明をいたしましたけれども、メールにつきましては、これを通じた情報流出のリスクが特に極めて低いものであるということ、そして、しかしそれでもそうした事態が起こらないとも限らないということもあって、念のためにインターネットによりますウエブ閲覧につきましてはこれを遮断する、そういう意味で、二重の安全性を担保する形で、そうした事態の中でメールを復旧したということでございました。 人権相談につきましても、非常に緊急性の高い案件もございますので、再開については、今のような措置を講じた上での対応ということについては、先ほど申し上げたような答弁に至った状況でございます。 こうした事態について、少なくとも起こらないようにしていくための措置については幅広く検討しなければいけないということもあわせて指示をしているところでございます。
○山尾委員 大臣は理解したと言いますけれども、私は理解できませんね。 だって、法務省自体が報道で発表した資料に、対策とは何か、今後の対策は、原因及び外部に送信された可能性のある情報の範囲を調査して特定することだ、そして、それを踏まえて情報セキュリティーを強化することだと。これが根本ですよ。 今言っていただいたのは、セキュリティーはきつくする、ウエブ閲覧も閉鎖をし、でもメールによる流出は一般論として極めて可能性が低いと言われているから再開したと。全然、起きた問題に対する根本の解決はなされていないじゃないですか。これは一般論ですよ、今の話は。 なぜこれが起きたのかということは、十カ月、本当に特定できていないんですか。流出したかどうか、本当に特定できていないんですか。 今聞いても、わからないとおっしゃいましたから、私は、これは提出をしていただきたいと思います。昨年の九月の件についてきのういただいた資料の中で、この件について専門業者から報告書が提出され、さらに調査を継続している、こういう御報告を法務省から紙でもいただきました。専門業者に頼んで報告書を出させたということでしょうから、これは提出していただきたいです。 大臣、提出をお願いします。
○深山政府参考人 今御指摘のあった民間の専門業者が作成した調査報告書というのは、その内容を明らかにしますと、防衛する法務省の側の対処能力やシステムの弱点、あるいはさらなる攻撃対象について、無用な情報を攻撃者側に提供することになりかねませんので、その内容を明らかにするということは差し控えさせていただきたいと思います。
○山尾委員 中身を全く見られていませんので、本当にその全てが今言ったような危険があるものかどうかを判断するすべがございません。 これは理事懇で協議をさせていただきたいと思いますが、委員長、よろしいでしょうか。
○奥野委員長 まあ、ここで議論するよりは、理事懇で議論した方がいいと思います。それより、早く本題の方の議論をしてもらいたいと思いますから、理事会で引き取りましょう、今の件は。
○山尾委員 私も、委員長以上に、司法取引の質問がいっぱいあるんです。 でも、私はなぜ今この場で問うているかといえば、まず、十カ月何も進んでいないのはおかしいでしょう。そして、これは、漏れた可能性のあるのは、もしかしたら年金情報以上に本当に絶対に知られてはならない、絶対人に知られたくない、でも、人権の最後のとりでである法務省に、わらにもすがる思いで相談をした内容が漏れた可能性があるんでしょう。もっと法務省は危機感を持ってくださいよということを言わねばならないから、今聞いています。 そして、それが再開されている、原因も特定されていないまま、根本の対策がとられていないまま。これはしっかり検討していただいた方がいいと思いますよ。 大臣、何かこの件について、最後、コメントはございますか。
○上川国務大臣 事件が、事態が発生してから、緊張感を持って取り組んでいくようにという指示のもとで、できるだけ速やかに原因究明と、それへの対策ということについては、民間の専門の業者も含めて、鋭意努力をしながら、今も継続してやっているところでございます。 その意味で、委員の御指摘も、大変重要な御指摘をいただいておりますし、私も同じ思いでございますので、その意味でしっかりと対応していきたいというふうに思っております。
○山尾委員 しっかりと対応していただきたいと思いますが、何もわからない状況では、それを信じることもなかなかできません。 では、一旦、司法取引に入ります。 この前、参考人の質疑がありまして、改めて、私、司法取引というのはどういうものをイメージしたらいいんだろうとわからなくなりました。 それは、つまり、高井参考人から、必ずしも出てきた別事件についての起訴を前提としていないんだ、こういうお話がありました。これは、覚醒剤の譲り受けのA、B、Cの話がありましたよね。必ずしも起訴を前提としていないと。事実上起訴できなかったということはあるにしても、念頭に別事件の起訴というのが必ずしもないのかと。こういうお話でございました。 もう一つ、ミミズと蛇のお話もございました。これは、要するに、合意するまでは、箱の中にあるものなんてわからないんだ、ミミズか蛇かもわからないんだと。合意をした後に、秘密の暴露とか、きっちり裏づけがあるかどうかをこれはやるんだと。裏づけがあればこれは使えるし、裏づけがなければ使えないし、使えなければ起訴できないこともあるだろうしと。こういうものなんでしょうか、司法取引というのは。 刑事局長にお伺いします。 これは、起訴を必ずしも前提としていない、目標に置いていない、念頭に置いていない制度なんですか。合意のときにはどれぐらいの裏づけが必要かどうか。私は、合意のときに相当程度の裏づけがあってこそ合意するんだと思うんですけれども、そういうものでもないんですか。ちょっとお尋ねしたいと思います。
○林政府参考人 まず、検察官は、合意をする場合には、これに基づきまして被疑者、被告人の事件について有利な取り扱いをすることになるわけでございますので、他人の特定の事件の解明に直接役立てる目的ではなく、単に一般的な情報収集にとどめるような前提で合意制度を利用することは、この合意制度の典型的な利用のあり方として想定しているものではございません。 それから、合意をしますと合意内容書面というものを作成するわけでございますが、その時点におきまして、例えば、被疑者、被告人から提供される協力行為の中身あるいは供述の中身というようなものがどこまで確定されるかという御質問でございますけれども、まず、少なくとも、合意制度におきまして合意の内容とすることができるのは、特定の内容の供述をすることではなくて、あくまでも真実の供述をすること、すなわち、自己の記憶に従った供述をすることでございます。したがいまして、その合意内容書面において被疑者、被告人がすべき協力行為というものを記載する際も、被疑者、被告人がすると見込まれる供述の内容を記載するのではなくて、まず解明の対象となる事件を特定した上で、その事件について自己の記憶に従った供述をする旨を記載することとなります。 そして、その合意内容書面を確定する時点、いわゆる合意の段階で、では、被疑者、被告人がすると見込まれる供述内容を例えば検察官の側でどの程度把握し得るかにつきましては、これは、弁護人がどのような弁護方針をとって、被疑者、被告人にどのような助言をするのか、あるいは、被疑者、被告人がそれを受けてどの程度具体的な供述をするのか、そのようなことが協議の過程の中でどのように進んでいるかということに左右されることになりますので、事案によってさまざまであろうかと考えます。
○山尾委員 これはまず一点聞きたいんですけれども、与党がお呼びになった参考人が、まさに今局長が否定された、いわば単に一般的な情報収集を典型例としているようなものだという御説明をなさったんですよね。今の局長の話とは全く真逆だと私は思います。 局長の話では、そういった単に一般的な情報収集はこの制度の典型例ではないと。でも、与党がお呼びになった参考人は、皆さんお聞きになったと思いますけれども、覚醒剤の事案で、いわば、別に特定の事件を念頭に置いたというのではない、単に一般的な情報収集で、売人の名前を挙げさせてその譲り受けを起訴する前提でもないんだ、こういうお話でしたよね。 では、刑事局長、私は局長の答弁を聞いて少しは安心しましたよ、単に一般的な情報収集は典型例ではないと。とはいえ、これは法文上は、特定の事件を想定せず、単に一般的な情報収集も取引の対象となる、目的となり得るわけですか。お伺いします。
○林政府参考人 高井参考人のここでの御発言の中でも、あくまでも、組織犯罪の典型的な事例を挙げまして、その解明のためにこの制度が資するのであるということを当然の前提としてなされておりました。 その上で、私が先ほど答弁いたしましたように、この合意制度というものにつきましては、あくまでも、検察官は、訴追裁量権というものを背景にした上で被疑者、被告人の事件について有利な取り扱いというものをすることになるわけでございますので、他人の特定の事件、これは多くの場合、組織犯罪であろうかと思いますけれども、組織犯罪の解明に直接それを役立てる目的なくして、単なる一般的な情報収集にとどめる前提、すなわち、あらかじめ他人の具体的な組織犯罪の解明を全く目的とせずに、一般的な情報収集にとどめるような前提でこの合意制度を利用するということは全く想定しているものではございません。
○山尾委員 いや、私が申し上げているのは、この前のお話は、起訴するのが決して前提ではない、起訴するかどうかはあくまで検察の裁量だ、だからセンスのいい検察官だったらとても使い勝手がいいよ、こういうお話だったんですよ。局長はそうではないとおっしゃいますけれども、ただ、法文上は何ら限定がなく、高井参考人がおっしゃったような使い方もできる制度であるということにおいて、高井参考人が言っていたことは私は正しいと思います。でも、本当にそれでいいんですかと。 そしてもう一つ、今局長の答弁は、これについては、ああ、なるほど、合意の時点でその供述の内容というのはどの程度まで詰まるかどうかというのは全くさまざま、その時々によるんだ、こういうお話でございました。合意書面には供述の内容は書かれないんだ、その供述によって追及できる事件と、その事件についてこの人が記憶に従った供述をするよ、これは書かれるけれども、内容は書かれないんだとおっしゃいましたよね。 これは本当に、その合意の時点で中身もまちまち、何が期待できるのか、どの程度他人の事件の起訴に貢献するものなのか、こういうことが全く法文上担保されず、事件によりけり、検察官によりけりという状態で、この制度をこのまま使っていいんでしょうか、大臣。 刑事訴訟法第一条には、刑罰法令の適正な実現とあります。検察庁法四条には「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求」すると書いてあります。 こんな海のものとも山のものともわからないような供述、要は、他人の事件についてどの程度貢献できるかも法文上ルールがない、どの程度裏づけ捜査をすべきかということも何もルールがない、しかも、運用についてどういうものを予想しますかと局長にお尋ねしても、それは事件によりまちまち、検察官によりまちまちだ、こういうふうになっている。こういう状態のまま、それをまさに検察官の裁量に任せて、求刑を下げたり、あるいは起訴をのみ込んだり、こういうことで最も大事な検察官の職責が果たせるんでしょうか。 大臣、答弁をお願いします。(葉梨副大臣「それが起訴便宜主義です」と呼ぶ)
○奥野委員長 上川大臣。今の質問にまとめて答えてください。
○上川国務大臣 今回の合意制度につきまして、合意の内容とすることができるということにつきましては、特定の内容の供述をするということではなく、あくまで真実の供述をするということ、真実の供述をするということは自己の記憶に従った供述をすることということでございます。先ほど合意内容書面の話も出ましたけれども、その意味では、供述の内容そのものを記載するのではなくて、自己の記憶に従った供述をいたします、その旨の記載をするということになるわけでございます。 協議というのは極めて大事な段階でありまして、弁護人も参加をし、被疑者、被告人も参加をし、検察官も参加をする。つまり、三者の中で協議をするわけでございますが、その折に、被疑者、被告人に対しまして供述を求めていくということは可能であるわけでございます。この協議の過程において被疑者、被告人の供述が得られた場合におきましては、検察官の側としては可能な範囲内で裏づけ捜査を行うということ、そして、合意をした場合に被疑者、被告人からどのような証拠が提供され得るのか、その証拠そのものがどの程度信用されるのか、また、被疑者、被告人が合意を真摯に履行する意思があるのかどうか、こういったところについて見きわめていくということが極めて大事であるというふうに考えております。 他方、合意が成立した後に、合意に基づいてさらに詳細な供述が得られた場合におきましては、検察官の側でも徹底した裏づけ捜査を行うということでありまして、他人の公判の中で厳しい信用性の吟味を受けても、さらにその吟味を受けた上でも信用性が高いというふうに判断するということが極めて大事であるということでございます。 ですから、そうした事情が十分にあると認められる場合にその供述を他人の公判で用いるということになるわけでありまして、もしそうでないというふうに認められた場合には公判で用いることができないということでありますので、この供述は断念しなければいけないということであります。
○山尾委員 見きわめが甘くて断念をするということは、もともとの事件について刑罰の適正な実現ができていない可能性が高いということもあるんですよ。要は、ほかの事件についてしっかりと起訴をしたいから、今ある事件について求刑を下げたり、のみ込んだりするという制度でしょう。断念をするなんて、そう簡単に言ってもらったら困るんですよ。だからおかしいんじゃないですかと問うています。 副大臣から、それが起訴便宜主義だというような不規則発言がありましたけれども、今、新しい立法をしようとしているんです。起訴便宜主義の中で、こんな検察官によってまちまちな、さらなる起訴の独占権とさらなる起訴の便宜性を本当に与えていいのかどうかということを立法府として今議論しているんです。(葉梨副大臣「起訴便宜主義を制度化」と呼ぶ)結構です、副大臣、発言は結構です。不規則発言はとめてください。 公安委員長、山谷大臣、お伺いします。 警察として、もちろんこれはかかわりがあるわけですけれども、この裏づけ捜査は、合意の時点でどの程度なされているということを、法文上は何のルールもありませんから、運用の面で予定していらっしゃるんですか。
○山谷国務大臣 本制度においては、協議、合意を行うかどうかやその内容等についての判断は、訴追に関する権限を有する検察官が行うものと承知しております。 一方、合意制度を利用して他人の刑事事件についての捜査を行う場合であって、司法警察員が検察官に先行して当該他人の刑事事件について捜査を進めているときなどには、協議において被疑者、被告人に供述を求める行為等を司法警察員にさせる方がより的確な捜査に資する場合もあり得ることから、警察の関与についての規定が設けられたものと承知をしております。 本法案においては、検察官と司法警察員の連携、協調を十分なものにするという観点から、司法警察員が送致した事件等について検察が被疑者側と協議を行う際には、事前に警察と協議しなければならないとの規定も設けられているところでございます。
○山尾委員 大臣、質問と関係ない答弁で、大事な時間を使わないでください。 私が聞いたのは、警察としては、合意の時点で警察として裏づけ捜査をどの程度進めるつもりなのか、運用上、今予定されているものがあったら言ってくれ、こういうことを申し上げました。全く回答がございませんでした。 本当にこれはもう一回考えていただいた方がいいと思いますよ。合意の時点でどれだけ本当に取引に値する供述が得られるのか、それには裏づけがあるのか、それによって起訴できる可能性がどれぐらいあるのか。そんなこと、フリーハンドでは渡せないですよ、起訴便宜主義だ、起訴独占主義だといったって。これはぜひ議論も深めたいですし、しっかりと検討していただきたいというふうに思います。 残りあと二分、一点、さらにお伺いをいたします。 合意に至らない場合は、協議の過程で出てきた他人の事件に関する供述は証拠として使えないというふうにされています。 そこでお伺いします。 協議で出た供述は使えない、でも一方で、今回、刑事免責を付与して、不利益供述も証人に義務づける、こういう制度が置かれております。合意に至らなかった協議とは別に、刑事免責を与えて、その内容の供述を証人として証言させることに、今回の制度で何か制約はあるんでしょうか。
○林政府参考人 合意制度におきましては、協議をしたものの合意に至らなかった場合、被疑者、被告人がこの協議においてした供述は、第三者の関係でも証拠とすることができないこととしております。また、検察官が合意に違反した場合、被疑者、被告人が合意に基づいてした供述は、第三者の関係でも、異議がない場合を除いては証拠とすることができないこととしているわけでございます。 他方で、刑事免責制度は、証人が自己負罪拒否特権に基づいて証言を拒み得る場合に、裁判所の決定により、証言及びこれに基づいて得られた証拠が証人自身の刑事事件において不利益な証拠とされないという免責を付与することによって、証人に対して、本来、自己負罪拒否特権の対象となる事項についても証言を義務づける制度でございます。 刑事免責制度により得られる証言は、協議においてした供述や、合意に基づいてした供述とは別個の手続によって得られるものでありますので、御指摘のような場合において刑事免責制度を利用することは、制度上否定されないものと考えております。
○山尾委員 時間になっているのは知っています。 制度の説明は私がしましたから、もう制度は結構です。最後のところだけ言っていただきたいんです。 要は、協議をして供述が何か出てきた、でも、結局合意に至らなかった、あるいは合意をしたんだけれども離脱がなされた。それによって、この制度では、その協議における供述は使えないけれども、新しくその人を証人として呼んで、刑事免責を付与するからしゃべれといって証言させることはできるんですよ。やはりこのたてつけはおかしくないですか。 大臣、コメントはありますか。
○上川国務大臣 今回の制度の中で、今局長が答弁したように、適正に運用していくためのさまざまな制度をつくっているということでありますので、その意味では、それぞれの制度の合理性というところをしっかりと踏まえた上での適用になろうかというふうに思っております。
○山尾委員 議論すればするほど問題がどんどん出てきますので、ぜひしっかりと続けてまいりたいと思います。 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、柚木道義君。
○柚木委員 民主党の柚木道義でございます。 私も、刑事訴訟法、特にきょうは司法取引を中心に、多分、これをやるだけで一時間ぐらいかかっちゃうんですが、質問通告もさせていただいているんですが、あわせて、どうしてもきょう、主にこれは大臣とやりとりをさせていただきたい案件がございまして、その点から申し上げたいと思うんです。 刑事訴訟法、真犯人の検挙、そしてもちろん、冤罪を生まない、そして法的な対応をとる、これが当然、行政府、そしてもとより我々にも課せられた責務であると同時に、そうした犯罪の被害に遭われた方、遭われる方の人権を保護しなければいけない、これも、同等あるいは場合によってはそれ以上に重い責務を我々は負っていると私は思っています。 そういった中で、委員の皆さんでもう読まれた方もおられるかもしれませんが、これは私の手持ち資料でお持ちしたんですが、神戸連続児童殺傷事件、元少年Aが今回書かれた「絶歌」という本でございます。もちろん、この本のみならず、私は、この御両親が書かれた「「少年A」この子を生んで…… 父と母悔恨の手記」、そしてまた、被害に遭われた当時十歳だった山下彩花ちゃんのお母さんが書かれた「彩花へ 「生きる力」をありがとう」、あるいは当時十一歳だった土師淳君のお父さんの土師守さんが書かれた「淳」というそれぞれの本を読ませていただき、表現の自由が憲法上保障される中で、同時に、犯罪被害者保護との関係について、今回のこの「絶歌」という本の出版は、今、大変大きな議論を生んでいると認識をしております。 上川大臣、この「絶歌」という本、お読みになられたか、そして、お読みになられたとすれば、読まれてどう思われたか。さらには、この「絶歌」の出版について、当然、表現の自由はあるわけですが、賛否もある中で、大臣としてどのように受けとめておられるか。これは別に追及とかそういう質問ではありませんので、大臣のお考えと、そして、もし読まれたのであれば御感想をお聞かせいただけますか。 〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
○上川国務大臣 御指摘の手記につきましては、私は読んでおりません。 この出版に関しましては、被害に遭われた御遺族の方からも大変大きな憤りを表明されているということでございます。出版に関しましてもさまざまな意見があるということでありますし、また、先生も、その本を読まれて、たくさんの附箋がありますけれども、多くの人の手によってまた二次被害、三次被害というようなことが起き得るということも、かけがえのない家族、子供たちを失った御遺族の皆様から見れば、大変心が苦しい思いをさらに上乗せしてしまうということになるということについては、大変残念な状況であるというふうに思っております。 社会全体で御遺族の皆様を初めとして被害者の皆さんに対して本当に寄り添っていただきたいというふうに思う、そしてその気持ちをもとに犯罪がない社会をつくっていく、その叫びが被害者のさまざまな手記にもあらわれているというふうに思っております。 今回手記が出されたということでございますが、これにつきましては、特定の出版行為ということでございまして、個別の刑事事件にかかわることでもあるということでございますので、私の方からそれについての当否とかということについてお答えすることは差し控えさせていただきたいというふうに思っておりますが、先ほど前段で申し上げたような思いでいるということにつきましては表明をさせていただきたいというふうに思っております。
○柚木委員 非常に率直に、また、大臣御自身の誠実なお言葉で今見解を述べられたと思うんですね。 もちろん、特定の事件あるいはそれに関する著作物でございます。他方で、被害に遭われた淳君のお父さんの土師守さんが、全国犯罪被害者の会も含めて、いろいろな見解、そしてまた、私も、手元にこの土師守さんの出版社側に対する申し入れ書、本当に胸の潰れるような思いで書かれたものを、そのような思いで拝見もしております。 もちろん、表現の自由というものが保障される中でこの議論を行うべきだという、私も、今の立場からしてもそういう立場で発言をしているわけですが、例えば、淳君のお墓もある兵庫県の明石市におきましては、犯罪被害者等の支援条例に基づいて、書店における販売の自粛や、あるいは図書館での購入を行わないなどの対応がとられているわけでございます。 もちろん、それぞれの自治体の中での御判断、あるいは、図書館においても、図書館協会の見解もありますし、それぞれの書店における対応もまちまちでございます。私がこの本を買いに行った書店も、非常に難しい言い方で、知る権利と、求める方がおられる以上、大々的ではないけれども販売をしておりますという見解でした。何が正しいのか、何がそうでないのかというのは、ここでつまびらかにできるものではないと思うわけですが、他方で、そういう、明石市におけるような対応もとられているわけでございます。 今後、それぞれの書店なり自治体における対応というのがなされていくわけでありますが、そういった状況の中で、やはり所管の法務省として、あるいは法務大臣として、今回のこうした重大事件の加害当事者による出版が加害者御自身や社会全体としての犯罪や再犯の抑止につながり得るのか、逆に模倣犯のような形を助長するおそれがあるのかないのか、そういった視点については、私は、専門家の分析を行っていただく必要もあるのではないかと。 つまり、被害者の方は現におられて、そして、被害に遭われて命を失われた方はもう帰ってこない。他方で、この方は匿名で出版をされております。そういう表現の自由と犯罪被害保護とのバランスというものもまた考慮していく必要があると思われる中で、やはり法務省としては、矯正や再犯の防止といったものに資する観点については、私は、ぜひ分析をいただくこともあっていいのではないかと思うわけであります。 法務大臣、この出版の是非というよりも、こういう加害者の方による手記の出版の影響についての研究というものは、私はあっていいかと思いますが、いかがお考えになられますか。
○上川国務大臣 さまざまな形で出版物が出されているということについては、日本の中では、出版の自由ということもありますし、表現の自由ということもありますので、それを一律にどうこうするという形については、先ほど、法務大臣としても具体的な案件についてはお答えを差し控えさせていただきたいと申し上げたところでございます。 被害者の置かれている状況の中で、二次被害、三次被害というものもあるということ、そして、時間の経過とともに、本来ならば平穏な生活にスムーズに、なるべく早い時期に立ち返っていただきたい、そういう中で基本法の理念にのっとって対応していくということでありますので、そうした法の求める趣旨、そして、先ほど御指摘いただいた矯正あるいは立ち直りというような形の中での動き、さまざまな視点があろうかと思います。注意深くしっかりと見詰めながら、必要なことがあればまた対応していくということが大事であるというふうに思っております。
○柚木委員 必要な対応をお考えいただける中で、私は、今大臣が本当に誠実に御答弁をいただいておるように、御遺族の方にとっては、本当にここは、「息子は二度殺された」と、淳君のお父さんの心境、資料にもおつけをしておりますし、御遺族の方の苦しい心情、残念な状況にあるという認識に寄り添っていかなければいけないという御答弁は、私は、本当に血の通った答弁だと思います。 寄り添っていく、向き合っていくことが我々に求められる中で、私自身、今回の出版があって以降、アメリカにおいてサムの息子法という言い方をされていて、これは御案内のところかと思いますが、かつて、一九七七年、アメリカ・ニューヨークで若い女性やカップルら六人が襲われた連続猟奇殺人事件がきっかけで、そして、その事件の犯人に対して大変な高額の出版のオファーがあって、それに対するさまざまな批判も沸き起こった中で、その著作の収入を被害者の補償金に充てることを内容とする法律が制定をされ、幾つかの改定を重ねて、今でも採択、運用されている法律でございます。 私も調べてみましたら、過去にもこういった殺人事件を犯された方の著作というものは出版されています。その著作自体も、逆に、こんなに出版されていたんだなと思うぐらい、実は出版されているんですね。皆さんもまだ記憶に新しい事件も入っております。秋葉原の連続殺傷事件であったり、あるいは連続幼女誘拐殺人の宮崎勤、当時の被告、あるいは、もっと昔でいえば永山事件の永山則夫さんや、大久保清さんなど、私がいろいろな報道を調べてみると、十三点、いろいろな、それぞれの殺人事件で有罪が確定した方々による著作が出版されているんですね。 他方で、今回の「絶歌」の著者の方と、私が確認できた他の著作の方と、異なる点があります。それは、これまで出版されている方というのは、既に死刑が執行されたり、確定をされたり、病死をされたり、そういった方々がほぼ全てでございます。他方で、この「絶歌」の元少年A、当時十四歳で、少年法がその後改正もされていくわけですが、現在三十二歳、当然御存命でいらっしゃるわけであります。 そういうことも含め、今後、これは予断を持って言うことは余り好ましくありませんが、報道等によれば続編とかそういったことも報じられる中で、やはり、犯罪被害者保護法の理念から考えても、アメリカにおいて制定をされているサムの息子法のような形で法定化することを議論するということは、私は、被害者保護の趣旨からも整合性があるものと考えるわけであります。 これは、ぜひ、法務省におかれまして、こういった著作に対する、もちろん法務省独自ということにならないかもしれませんので、政府におかれまして、あるいは我々立法府としても、こういった、まさにサムの息子法のような形の立法というものを検討していく必要があるのではないかと考えるわけであります。 これはもちろん、大臣というお立場、あるいは一議員というお立場もそれぞれあると思うんですが、大臣御自身は、私は、そういった点に非常に理解のある大臣ではないかと考えております。せんだっても、名古屋の闇サイト殺人事件、死刑執行が行われました。お母様のコメントも、本当に胸が塞がる思いで私も拝見しております。 失われた方は帰ってこない、それは変わりがない中で、他方で、加害者の方も生き続けなければならないという部分もある中で、そのバランスというか、そういったものを、どうやってこの矛盾を我々が受けとめていくかということを考えるときに、こういったサムの息子法のようなものを、我々立法府として、あるいは行政府として、我が国においても導入を検討していくことの意義について、大臣、御見解をお述べいただけますか。
○上川国務大臣 犯罪被害者等基本法の理念のもとで、犯罪に巻き込まれた方が犯罪の被害を受けた時点から平穏な生活に戻るときまでしっかりと権利利益の保護を図るという、そうした理念に基づいて、基本法のもとで基本計画が定められながら今に至っているということでございます。 出版という形の中のこうした事態ということでありますので、そうした問題があるということについてはやはりしっかりと向き合っていかなければいけない、この問題についてもしっかりと向き合っていかなければいけないというふうに思っております。 〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○柚木委員 これは、我々立法府としてもこういった法定化については議論を進めていくべきだと思っておりますし、同僚委員の皆さんとも知恵を合わせながら、力を合わせながらやっていくという必要は感じておるところでありまして、ぜひこれは、大臣としてもそういった認識を共有いただければありがたいと思うんですが、それについては共有いただけますか。
○上川国務大臣 まさに委員がおっしゃったように、これは、一人一人の議員の立場でいろいろな形での御議論をいただくべきことだというふうに思っております。そうした議論をしていくということそのものも大事ではないかというふうに思っております。何か大きな事件があると、そのときの一過性にとどめることなく、そのことの教訓を生かしていくというためにも非常に大事な指摘だというふうに思っておりますので、これは本当に、議員の皆さんの中でも、しっかりとさまざまな視点での御議論をいただきたいというふうに思っております。私も、議員の一人として、その問題意識につきましては共有させていただいているところでございます。
○柚木委員 ありがとうございます。 では、続きまして、司法取引の方の質問に移りたいと思います。先ほどの山尾委員の情報漏えいの質問通告もしておりますが、ちょっと時間の都合で、時間が残れば補足的に質問をさせていただきたいと思いますが、先に司法取引に関しての質問に入らせていただきたいと思います。 これまでの質疑や参考人の皆さんの意見陳述も含めて、私、改めて感じるのは、仮に今後、捜査協力型の取引の導入が検討されていくとするならば、やはりその協力過程が見える化、可視化されない中でこの取引が導入されていくということになれば、これは本当に、新たな冤罪が、これはあってはいけないという答弁が先ほどもあるんですが、私は、起こり得てしまうという懸念、疑念を、むしろ、この議論をすればするほどそういう認識を持たざるを得ません。 そもそも、この捜査協力型の司法取引が導入をされていく前提として、導入されるとするならばですよ、我々は非常に懸念を持っておりますが、この合意の過程、現場こそがまずは可視化、記録されるべきだというふうに私は考えるわけであります。 この間、もちろんさまざまな議論をされているわけですが、私はここはポイントだと思いますので、通告の中でも、ぜひ大臣に御答弁をいただきたいというふうに通告をしております。この過程の記録化、また、その捜査過程の、もちろんさまざまプロセスがあるわけですが、まずはぜひこれをしっかりと見える化していただくことが必要だと思いますが、大臣、御所見をお述べください。
○上川国務大臣 ただいまの御質問でございますが、まさにいろいろなプロセスがあるところでございます。さまざまな協議の過程あるいは合意後の動きということにつきまして、しっかりと考えていかなければいけないというふうに思うところでございます。 まず、協議の過程におきましての供述の録音、録画ということでございますが、この点につきましては、三者間で自由に意見を交換しながら、合意するか否かも含めまして見きわめていく大変重要な協議のプロセスがあるわけでございまして、そこのところを録音、録画するということになりますと極めて大きな萎縮が起きるのではないかという御指摘もございます。そういう意味で、録音、録画が協議の機能そのものを大きく阻害するのではないかということでございます。 また、合意後の取り調べの録音、録画ということでございますが、検察官によりましての供述の誘導などにつきましては、三者間の協議の中では誘導ということにつきましてはできないということでございまして、録音、録画をしても、供述に至る経過が記録されることにつきましては、ないというものでございます。 また、検察官といたしましても、信用性に影響を及ぼすような取り調べとならないような十分な配慮につきましては、これは極めて高い要請をされているところでございますし、また同時に、裏づけ捜査につきましても、非常に限られた中から、見きわめながら裏づけ捜査を徹底して行うということでございまして、その意味で、供述の信用性につきましても、十分なる吟味ということについては、これは不可欠になるところでございます。 また、証拠の開示ということにおきまして、他人の公判におきまして、合意に基づく供述の信用性を争うためにということになりますと、これはもう必要かつ十分な証拠が開示されていくということでございまして、その意味では、結論として申し上げるところでございますが、録音、録画を義務づけるというところについての必要性につきましては、乏しいというふうに考えているところでございます。
○柚木委員 私は、今のそれぞれの説明を、最後に、義務づけることの必要性については認識が共有できていないということなんですが、やはりここを、いかにお互いが国会の審議を経てしっかりと歩み寄って共有化していけるかどうかというのが、とりわけこの日本型の司法取引の、いわばほかの人の罪を、密告と言うと言葉は悪いですけれども、そう証言することによって自分の罪が軽くなる、これは本当に、過去にも、あるいはアメリカ等他国においても、ある意味、冤罪の温床になっていることを考えても、今の御答弁の内容を詰めていくことがなければ、これは、捜査に対しては非常に有用なツールになっても、やはり冤罪の発生というものを防ぎ得ないと、私は今の答弁を聞いても思います。 私が今質問した前段として本当はお聞きしようと思っていたんですが、司法取引、合意の対象範囲となる特定犯罪ですね、この特定犯罪の選定理由と裁判員裁判の対象事件との関係についていま一度整理したいので、法務省の方、御答弁をいただけますか。
○林政府参考人 まず、この合意制度、協議、合意の要素を有する証拠収集方法を導入するのは今回が初めてであることからしますと、この合意制度の対象犯罪につきましては、この制度の対象とすべき必要性が高く、その利用にも適していて、かつ、被害者を初めとする国民の理解も得られやすい、こういったもので考えられる一定の類型の犯罪、これに政策的に限定することが相当であると考えられます。 そして、死刑または無期の懲役、禁錮につきましては、極めて犯情の重いものでありますことから、そのような罪に係る事件の被疑者、被告人が他人の刑事事件の捜査、公判に協力したからといいましても、この制度によって処分の軽減等を行うことにつきましては、現時点においては国民の理解が得られにくいのではないかと考えられます。 こういったことから、今回、合意制度の対象事件は、一定の財政経済犯罪と薬物、銃器犯罪に限定することとしているわけでございます。 他方で、裁判員制度の対象事件は、死刑または無期の懲役、禁錮に当たる罪に係る事件と、いわゆる法定合議事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件とされているわけでございます。したがいまして、合意制度の対象事件には裁判員制度対象事件は含まれないという関係にございます。
○柚木委員 今の整理の御答弁なんですが、これまでにも、まさに、事実上司法取引というものでいわば冤罪が起こってきているわけです。それは、過去にも、引野口事件とか福井女子中学生殺人事件とか、そういうまさに殺人事件等においてもそういったことが起こっておりますし、アメリカにおいても同様の事例というものはたくさん起こっております。 こういうことがある中で、裁判員裁判対象事件との関係についても、私はさらなる議論が必要だと思います。このいわば日本型の司法取引がこのまま導入されていくということは、先ほど申し上げましたような、他者の罪を申告、もっと言うと密告、しかもそれがこれまでにも冤罪を生んできている、そういう部分が、本来であれば、自己負罪型、まさに自分の罪の申告によって自分の罪が軽減されるというこれまでの議論が、なぜ捜査協力型の導入というふうになったかという経緯を聞いても、どうしても私はやはり釈然としないところがあるわけでございます。 そこで、これは法務省の方にも通告しておりますが、これまでの、自己負罪型の制度が先送りされた経緯、そして今回の捜査協力型導入に向けての議論の経緯をもう一遍簡潔に整理をして御説明いただけますか。
○林政府参考人 今回、こういった自己負罪型の合意制度についての先送り等の経緯でございますけれども、合意制度については、捜査・公判協力型それから自己負罪型が考えられているということで、これらにつきましては、いずれにつきましても、法制審議会におきまして議論がなされたところでございます。 この両方をいずれも導入すべきとする意見もございましたけれども、他方で、一般的に、自己の犯罪を認めるかどうかを協議、合意の対象といたしますと、いわゆるごね得ということで、最初から自白するよりも、まずは否認して検察官と交渉した方が有利な取り扱いが受けられるという事態、こういったものを招いて、結果として被疑者に大きく譲歩せざるを得なくなって、結局、事案の解明でありますとか真犯人の適正な処罰を困難にする、こういった意見も強く出されたところでございます。 その結果として、法制審議会における答申においては自己負罪型については採用されなかったものでございまして、この自己負罪型の制度につきましては、捜査・公判協力型の制度を導入した上で、それのまた運用状況等も踏まえながら、必要に応じて、そのような制度が我が国の刑事司法制度にどのような影響を与えるのかを見きわめながら検討を行っていくのが適当であろう、そういうふうに考えられたものでございます。
○柚木委員 今の認識、御答弁だと、やはり私は、冤罪の防止という観点が欠落していて、むしろ捜査主体の側に非常に比重が置かれた御認識だというふうに思うんですね。 これは、私も調べてみますと、過去にも、これは通告もしているんですが、きょう全部答弁いただく時間はないと思いますが、例えば平成七年二月二十二日の最高裁大法廷判決、これはロッキード事件の最高裁判決、この中で、我が国の司法取引の導入等について、私、非常に参照すべき判決の内容があると思っておりまして、それぞれ個別に質問をしているんですが、その中の三点目の質問だけ、ちょっと時間がないので申し上げたいんです。 この中で、公正な刑事手続の観点から、今私が質問しているような司法取引の導入といったものが、これはちょっと前段の二問をはしょっているので、それも配慮して御答弁いただければ幸いなんですが、「国民の法感情からみて公正感に合致するかどうかなどの事情を慎重に考慮して決定されるべきものであり、」というふうに、これは判決の中にあります。 今回、私、先ほども申し上げているんですが、要は、人の罪を申告して自分の罪を軽減させるというような、そういう手法というものが、国民の法感情から見て本当に公正感に合致するのかどうなのかについては、私は現段階でも非常に疑念があるところでありまして、こういった点について、いかに慎重に考慮して、いかなる判断が下されたのかについては、先ほどの局長からの答弁も含めて、私は非常に釈然としないものがあります。 この点について、今後この制度が導入されたときに、運用する法務大臣あるいは国家公安委員長として、こういったいわば他人密告型のような司法取引の導入というものが本当に日本人の公正感に合致していくというふうに、いかなる根拠を持ってお考えになられているのか、法務大臣からまず御答弁いただけますか。
○上川国務大臣 判例の判示するところが合意制度にどの程度及ぶかということにつきましては、必ずしもその内容から明らかではないわけでございますが、組織的な犯罪等につきまして、その全容を解明して、そして刑事責任が重い者を適切に処罰するために必要な場合におきましては、合意制度により、比較的責任が軽い者について、刑事手続上一定の有利な取り扱いをすることと引きかえに捜査への協力を得ることにつきましては、事案の真相を明らかにして適正な処罰を実現するという刑事司法の目的からも、真に処罰すべき者を処罰するという公平の観点からも、合理性を有するものというふうに考えております。 したがいまして、今回、合意制度の創設につきましては、国民の法感情から見た公正感、公平感に対して反するものではないというふうに考えるところでございます。
○山谷国務大臣 我が国の治安に責任を持つ国家公安委員会委員長といたしまして、安全、安心を求める国民の声や、事案の真相解明、真に悪質な犯罪者の摘発を願う被害者等の思いに接しているところであります。安全、安心は暮らしの基盤であります。 合意制度は、組織的な犯罪等において、他の捜査手法によっては困難な事案の真相解明や、より処罰の必要性が高い上位者等の検挙に資するものでありまして、安全、安心や事案の真相解明を願う国民の思いに応え得るものと考えております。
○柚木委員 今、法務大臣と国家公安委員長の御答弁をいただいたわけですが、私は完全に認識が相反しておりますし、国民感情からも乖離していると思いますよ。 なぜならば、そもそも、まさに今回の刑事訴訟法改正の中で可視化導入の大きな端緒となった村木事件においても、私が以前、法務大臣にも質問しましたが、当時、取り調べ過程において村木さんの部下だった厚労省の職員の方々が行った証言を、実際に公判過程の中で翻す形になって、もちろん、フロッピーのデータの改ざん等いろいろなことも含めて無罪という判決になるわけですが、もし、このプロセスの中で今回の捜査協力型司法取引が既に導入をされていて、しかも虚偽供述罪が制定されていたとするならば、自分が言ったことが虚偽のことであったときに、真実を述べることも困難になってしまって、むしろそのこと自体が冤罪の温床になっていく、こういうようなことも想定されるし、当時も、私は、実際にそうだったらそういう結果になっていたかもしれないという懸念をいまだに持っております。 そういった中で、今のような御答弁をいただくと、むしろ、私は、ああいった村木さんのような事件がまさに冤罪になっていくんじゃないか、そういう認識を持たざるを得ないわけですよ。今のような御答弁だと、むしろ、国民の皆さんは、安心するどころか、冤罪がふえてしまうんじゃないか、そういうふうに私は思わざるを得ません。 では、村木さんのときのあの事件、私が法務大臣に、これまで、前々回だったかな、御答弁をいただいたときに、もしあのときに既に今議論をしている法制度のもとでの取り調べ、裁判が行われていたとすれば、あのとき一旦供述過程の中で述べたことを翻したことというのは虚偽供述罪に問われるんですかというふうに質問したことを覚えていらっしゃいますか。改めて、もしこの法制度が導入をされたら、あのときの村木事件というものが、証言を撤回したことは虚偽供述罪に当たるんですか、当たらないんですか。
○林政府参考人 一般に、捜査段階で捜査機関に供述していた者が公判において証言に立ちまして、捜査段階での供述と異なる証言をした、そのことについて、それが本人の記憶に従ったものであるならば、何ら罪に問われることはないわけでございます。
○柚木委員 結果として今言われるような見解を示されても、美濃加茂市長の事件もあったわけですが、私は、実際の現場において、捜査協力型の取引導入によって巻き込みあるいは冤罪がふえるという国民の懸念は払拭されないと思いますよ。虚偽罰則規定を置いているから大丈夫というような答弁がこの間もあるわけですが、しかし、そもそも現場で、村木事件においてもあるいは美濃加茂事件においても、運用面で、警察、検察が取り調べ過程の中でそのようなまさに事実上の司法取引をこの間行ってきている中で、それがうそであったとして、今回の捜査協力型司法取引並びに虚偽供述罪の導入というものは、やはり証言を撤回して真実を語るということの足かせになるというふうに私は考えております。 それに対して、法務大臣、国家公安委員長、国民の皆さんが、そういうことであれば納得できると、先ほどの御答弁ではむしろ逆ですよ、冤罪をさらに生み出してしまう、私はそういうふうな懸念の方が高まると思っております。納得のできる、そしてまたわかりやすい御答弁をそれぞれいただけますか。
○上川国務大臣 今回、制度を御議論いただくに当たりまして、この間一貫して説明を申し上げてきたところでございますが、そうしたさまざまな巻き込みのリスクということに対しましては、しっかりと法的な、制度的な手当てをしていこうということでございます。 その中の一つとして、合意をした者が捜査機関に虚偽の供述等をすると新設する罰則の対象ということでありますが、まず、協議の開始から合意に至るプロセスに弁護人が参加をする、つまり三者間で協議をしていくということでございます。 また、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときにおきましては、合意内容そのものが裁判所においてオープンにされるということでございまして、検察官といたしましても、十分な裏づけ証拠がある場合でない限りなかなか証拠として使えないという状況の中で、虚偽の供述が起こらないようにしていくというところでございます。 また、虚偽の供述をした場合のブレーキという形の中で処罰の対象とする。 こうした制度の手当てをして、今御指摘いただいたような巻き込みの危険に十分に対処することができるというふうに考えているところでございます。
○山谷国務大臣 今、法務大臣からも御説明がございましたが、合意に基づく供述は、それが他人の刑事裁判で用いられる場合は、そのことがオープンにされ、信用性が厳しく吟味される仕組みとなっていることなどから、必然的に十分な裏づけが求められるものであり、制度の適正な運用が担保されるものと考えております。 なお、捜査機関に対する不信感という御指摘につきましては、引き続き、緻密かつ適正な捜査の徹底について警察を指導するなどして、国民の信頼確保に努めてまいりたいというふうに思っております。 とりわけ、取り調べの適正確保につきましては、被疑者取り調べ監督制度の導入、取り調べ時間の管理の厳格化等の措置を講じましたほか、心理学的知見に基づく取り調べ技術習得のための教育訓練を行うなどしているところでありまして、引き続きこうした取り組みを強力に推進してまいりたいと思います。
○柚木委員 今、それぞれの答弁をいただいたわけですが、私は、そのブレーキとなるようなものが本当に機能するかどうかというのは、例えば、こういうことを聞いたら多分御答弁いただけないと思うから質問通告はしなかったんですけれども、では、冤罪事件で、虚偽供述で被告人を罪に陥れようとした方を検察が偽証罪で追及した事例は過去に何件あるのかとか、本当にブレーキと言うのであれば、逆に、冤罪事件において無実の被告人のアリバイを証言した人々が偽証罪で追及された事例というのは、八海事件、甲山事件などがあって、偽証罪というのはむしろ検察組織のために利用されてきたのではないか、そういう歴史もあるというふうに私は思うわけでありまして、今のような、それぞれ御答弁いただいたものが、捜査協力型、そしてまた虚偽供述罪、罰則規定があるから、そういうことをもって本当にブレーキになるというふうには到底思えないわけでございます。 しかも、これは、合意がなされた場合だけじゃなくて、合意が破綻するケースもあるわけですが、その場合においても、被告、弁護人は、期待していた刑の減免は得られなくなる一方、警察、検察側においては、合意のもとに得たいろいろな証言、ほかの事件にかかわる部分もありまして、これは、直接利用できなくても、そういった情報をその後の捜査に活用していくことができるということで、警察、検察にとっては損をすることは全くない。しかし、この合意制度の対象になる、あるいは、場合によってはそれによって冤罪の被害を受ける、そういう方にとっては非常にリスクのある制度であるというふうに言わざるを得ません。 そもそも合意という言葉も、私は取引だと思うんですが、本当にそういうことであれば対等な合意取引であるべきだと考えるわけですが、今申し上げたような観点からいうと、やはり捜査機関側にとっては非常に都合のいい制度であると言わざるを得ないと思います。 質疑時間が来ていますが、大臣の方に通告しておりますので、そこを本当に対等な形の制度とする観点から、ちゃんとした御答弁をいただくことはできますか。
○奥野委員長 時間が来ていますから、非常に端的な答弁をお願いします。上川法務大臣。
○上川国務大臣 この合意制度につきましては、合意の当事者のいずれか一方のみが得をすることがないようにするために、当事者間の公平、公正さに対して十分配慮する内容の制度設計をお願いしているところでございます。
○柚木委員 またこの次、質疑させていただきます。 終わります。どうもありがとうございました。
○奥野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午前十一時十三分休憩 ————◇————— 午後一時開議
○奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。井出庸生君。
○井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いいたします。 司法取引の審議で、細かいところですとか、大分難しい言葉が出ておりまして、委員長も大分お疲れのように感じておりますが、私も時にはおもしろいことでも一言言えればいいんですけれども、きょうはそういうネタもございませんが、一生懸命審議をしてまいりたいと思います。 前回質問をさせていただきました、そもそも司法取引を新たに導入する必要性があるのかと。例えば、裁判所がそうした類いの供述証拠についてはより一層注意をして見ていくことになるというような話もありましたし、警察についても、当初は反対したけれども、うまく参加できるような仕組みが整ったので賛成をしたと。それでも、私は、本当に警察のかかわりという意味でどうなのかなというところはまだ疑問として残っているんです。 きょうまでの議論を含めて、まず大臣にざっくばらんに伺いたいんですけれども、司法取引というのは、いろいろ議論されてきましたが、端的に言うと、小さな罪、小さな犯罪、組織の末端の人間から話を引き出して、罪を軽減することになると思いますが、そういった、小を捨てて大をとるといいますか、犯罪のより大きなものを解明していくために小さいものは若干捨ててもやむを得ないと。 今まではそれを検察の裁量の中でやってきたということだと思うんですけれども、これからはそれを明確に制度化して、小さいものを時に捨てることもやむなし、そういう転換、そういう面がやはり本質的なのかなと思うんです。そのあたりについては、そういうお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
○上川国務大臣 合意制度ということで、非常にわかりやすい形で、イエスかノーかという話ではございますけれども、合意制度そのものは、取り調べ及び供述調書に過度に依存しているという状況から脱却するための大変大事な手段の一つとして、特に証拠の収集方法の適正化と多様化に資するものというふうに位置づけながら、そして、対象事案としては、大きな組織型の犯罪の中で、末端の実行者のところのみならず、全体の真相の解明のためには、さまざまな形での証拠の収集方法を多様化していくということの一つとしてこの制度に取り組むということでございます。 そういう意味で、全体の真相の解明に資することができるような手段の一つということで、大変重要な新しい制度であるということで、御審議に付しているところでございます。
○井出委員 林刑事局長にも伺いたいんですが、長年実務、現場にもいらっしゃったかと思いますが、司法取引というのは、小さい犯罪というのもちょっと言い方が余りよろしくないんですけれども、わかりやすくということで、より大きな犯罪の真相を解明するために、時に小さい犯罪を、起訴猶予する、罪に問わないこともあると。 今まで裁量の中でやってきたけれども、もうそれを制度化しなければいけないんだ、そういう危機感というものがあるのかないのか、改めて伺っておきたいと思います。
○林政府参考人 まず、出発点としては、かねて指摘されております、取り調べとか供述調書への過度の依存からいかに脱却するか、そういった観点から、やはりそのためには、証拠収集方法の適正化、多様化を図るなどして、基本的に、取り調べへの比重あるいは供述調書に頼る比重というものを少なくしていく、これが出発点であろうかと思います。 そして、犯罪情勢との関係でいきますと、これまで、組織的な犯罪というものを解明しようと思っても、なかなかその全体像、真相の解明というものが得られなかった。そして、それを解明しようと思うと、やはりその末端の実行者から供述を得る、これは取り調べという方法しか基本的にはなかったものですから、そこに非常に比重がかかる。 しかしながら、取り調べ、特に組織犯罪の中での取り調べというものは非常に困難をきわめて、なかなかその全体像を解明することができない。そういったことの問題点に対応する対処の一つとして、今回の合意制度というものが制度設計されたものと考えております。
○井出委員 今の林局長のお話ですと、取り調べに過度に依存せずに、ほかにきちっと証拠が得られるように、その一つの手段として司法取引があるということだと思うんですが、そうであるとするならば、やはり司法取引で得られる証拠というものは、やるからにはきちっとした証拠をとりたい。先ほどのミミズと蛇の話ではないんですけれども、司法取引、協議をして合意をする、そのときに一体何と何を取引して合意に至ったのか。 それが、被疑者の記憶に基づいて真実の話をする、そういうところまではきちっと明確に合意書に書かれる。ある特定の事件について被疑者が真実の供述、ないし裁判で証言に立つのかわかりませんけれども、そういうところまではきちっとやるけれども、その中身の部分まではなかなか合意書面では踏み込めない。 一方で、合意書面では、検察の方が、起訴を猶予するのか、こういう求刑をするのか、そういうところはきちっと書かなければいけないという法整備かと思っているんです。検察側の立場に立ちますと、これは検察にとってリスクが大きい制度ではないかと思いますけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
○林政府参考人 この協議・合意制度の中で、合意内容書面というのができます。この合意内容書面といいますのは、犯罪の事実認定に資するための実質証拠というものがありますが、これは実質証拠ではございません、あくまでも手続的な内容を定める書面でございます。 ここで何を掲げるのかというのは、双方が行うべき行為であります。被疑者、被告人側が行うべき行為、そして、それが具体的にどの事件において行う行為なのかをまず特定いたします。それから、検察官側が行うべき行為、これもまた検察官がどの事件について行うか、これを明示します。 そして、こういうことを合意内容として書面化しておくことによりまして、その後の手続におきましてそれぞれの合意違反があったのかなかったのか、そういったことが確定できる、あるいは他人の刑事裁判においてこういう合意に基づいて行われた協力行為であるということが明示されるようにしておく、こういったことで行われるわけでございます。 その際に、検察側のリスクというようなことを言われましたけれども、やはり当然、これは対等な形で協議を行って、最後に合意に至るわけでございますので、そのときに自分たちの行為、双方の行為が見合ったものになっているのかどうかというのは、それぞれが判断すべきことだと思います。 それで、その際に、検察側の観点だけでいきますれば、やはり当然、協議、合意の中でなされる被疑者、被告人が行う協力行為というものにはさまざまなものがございます。単に供述だけではなくて、証拠物の提供とか、そういったことも一方でございます。 ただ、供述の場面ということでいきますと、これは合意内容書面では、やはり当該具体的な事件について真実の供述、すなわち自己の記憶に基づいた供述を行うこと、これが合意事項となります。ですから、その後どのような供述がなされるかによっても、その供述が当該者の記憶に基づいた供述であれば、被疑者、被告人側の合意違反ということにはなりません。むしろ、合意を履行したことになります。 ですから、そういった場合に、具体的にどのような供述がなされるのか、あるいは最後の公判においてどのような証言がなされるのかということについては、やはりそれは協議の過程で十分に確かめることになろうかと思います。これは当然、一対一で確かめるわけではなくて、弁護人がおりますので、弁護人も加わる形で、その中でどのような供述がなされるであろうかということをまず協議の段階で確かめて、それで合意を行うわけでございます。当然、そこに至るまでの間でも、ほかの裏づけ捜査なども行って、これが合意をすべき、合意していい事案なのかどうか、また被疑者、被告人の協力への意思が真摯なものなのかどうか、こういったことはできる限りそこで確かめた上で合意に至るわけでございます。 ただ、合意に至ってからも、先ほど申し上げたように、合意内容書面に特定の供述というものが書いてあるわけでございませんので、さて、合意以後にどのような供述がなされるかというのは、その後の取り調べでありますとか、あるいは提出される供述書だったり、あるいは最後には公判での証言ということになるわけですが、公判に至るまでの間に、やはり被疑者、被告人から出てくる供述について、それを手がかりに十分な裏づけ捜査を行って、それを確かめ、かつ、裏づけ捜査で証拠が得られれば、それを合わせた形で他人の刑事裁判における公判立証に臨む、こういった形になるわけでございます。
○井出委員 協議があって、合意があって、そして合意に基づいて裁判がある。お話があったように、一番重要なのは協議だと。何か、委員会でいえば、理事懇、理事会、委員会なのかなみたいな気もするんです、委員会の場合は筆頭間というものもあるんですけれども。一番大事なのはやはり協議、それは私もそう思うんですね。ですから、協議の部分、そこは裁判所から見ても、非常に、一番知りたいところだと思います。 ただ、検察側からすれば、そこの立証というものは一体どういうふうにやっていくのか。 例えば、取り調べの可視化対象事件で司法取引が起こる可能性もあります。そのときは協議の段階で弁護人が入りますので、協議に入ったら可視化はしない、そういう説明を受けているんですが、先日来ていただいた参考人の方も協議の記録というところをおっしゃられている方がいました。 そこは、なかなか自由な協議ができないと言われる部分もあるんですけれども、裁判所に協議の部分をきちっと立証してくれ、そう言われたときはどういう手を尽くしていくのか、今の段階でのお考えを聞かせてください。
○林政府参考人 もし公判の段階で協議の過程というものが問題になるとすれば、やはりそれは、協議の過程でもう既に何らかのいろいろな強い働きかけがあったり、不正な働きかけがあったり、あるいは誘導があったりというようなことが具体的に主張された場合だと思います。 それに対して、協議の場自体は、一対一で協議をしているわけではございませんで、弁護人が入って三者で行っているわけでございますので、そういった部分については、基本的に、そういった誘導というか、そういうような事態は起こり得ないと思いますし、あるいは、それを主張されても、基本的にそこを強く立証しなくてはいけない状況になるんだろうと考えます。 すなわち、弁護人も加わった三者での協議というものがなされているわけでございますので、そこにおいて、協議の過程でのさまざまな問題的な検察官側の行為というものについては通常は行われないし、また、行われたという疑いをかけられても、三者が入っているということによって、そのようなことが行われていないということは十分に主張、立証ができると思っております。
○井出委員 協議に裁判官が疑いを持った場合は今お話があったような御説明なのかな、それで余りケースがないのかなと思うんです。 ただ、そうはいっても裁判所側は、こういう手の話、供述、そこから出てくる証拠というものは、今だって、共犯者の供述とかそういうものに対しては厳しく見ていかなきゃいけないのが共通認識だということは法制審でも言われてきましたし、裁判所が、やはり、疑いのあるなしでなく、フラットな、中立的な考えの中で、どういう協議をしたんだ、説明をしてくれと言うことはあり得ると思うんですが、それはできるんですか。
○林政府参考人 それは必要に応じて、そういった協議における内容というものを主張することはできると思います。 また、それで本当にもし疑いが出て、そういう疑いを晴らすというような形での立証を求められるとすれば、それは、実際に参加していた弁護人、合意をした者の弁護人でありますが、弁護人にやはり証言をしていただくとか、そういったことも当然あり得ると思います。
○井出委員 弁護人も入っているということで、そうすると、むしろ弁護人が入らない協議直前の取り調べ、そこもまた大事になってくるのかなと思うんです。 一つ伺いたいのは、協議になったら弁護人が入る、ただ、被告なり弁護人が、三者でやらなくていい、被告人だけとやっていい、弁護人だけとやっていいというときは、必ずしも弁護人が入らなくていい、そういう条文になっているかと思うんですけれども、そういう例外を認めている理由というのはどういう理由なんでしょうか。
○林政府参考人 これは、協議というものが余り定型的じゃなく、非常にさまざまな形態で行われるということに鑑みまして、それで、時に、協議の全部ではないけれども一部について、一つには、例えば特に法律的な事項について協議をするような場合には、必ずしも被告人、被疑者がそこに加わっていない場合でも、検察官と弁護人との間で協議を行うということはあってもいいんだろう、あるいは、弁護人について、緊急の用事とかがあって、そのときに一瞬たりとも協議の場から離れているということが必ず許されないんだというようなこと、そこまで硬直的に考える必要はないんだろう。 そういうことから、そういった一部について、これはあくまでも一部でございますが、協議の一部について、そういう形で、どちらか一方がいない形でも協議は行い得るとしているものでございます。 ただ、もとより、そこの例外を検察官側からの意向で幅広く使おうとするということはあってはならないので、やはりそれは全て、被疑者、被告人とそれから弁護人の両方の異議がないときにしかできないという制限はかけているわけでございます。
○井出委員 ケースによっては、弁護人の弁護方針と被告の考えが合わなくて、弁護人が解任されている状態とかもあると思うんです。不在の状態ですね。 この制度をやっていくというのであれば、おっしゃられたように、法律的なことをやるから被疑者はちょっときょうは要らない、きょうはそんなに大事なところじゃないから弁護人は午前中はいなくてもいいですよとか、そのぐらいの話だったら、私は今のお話は多少理解できるんですけれども、弁護人が、例えば解任で、いない被疑者に対してとか、全く一切関与しない形、これだけは絶対あってはならないと思うんですが、そのあたりのお考えはいかがでしょうか。
○林政府参考人 本制度は、あくまでも協議というものは三者、被疑者、被告人と検察官と弁護人とで行うということ、それを開始するときもその三者の意思の合致が必要でございます。 弁護人がいない状況、解任されて、いないような状況、あるいはもとより弁護人がついていないような場合、本制度上、そういう場合には、そもそも協議・合意制度というのは使えないということになっております。
○井出委員 使えないというところを、ちょっともう一度私も条文を読み直してみたいと思いますが、そこは条文で読み込めるようにはなっているんでしょうか。
○林政府参考人 本法律案の三百五十条の四で、「協議は、検察官と被疑者又は被告人及び弁護人との間で行うものとする。」こう書いてございますので、弁護人が欠けている場合には協議が行えません。ましてや、最後に合意をするには弁護人の同意が要りますので、当然合意もできません。 まず、協議もできませんし、これは当たり前のことですが、協議ができない以上合意もできないわけでございますが、合意成立の形式的要件にも弁護人の同意というものが必要でございます。
○井出委員 わかりました。 そして、司法取引の事件なんですが、きょうの階先生の自己負罪型の議論とも少しかかわってくるんですけれども、ここまでの議論を聞いていますと、司法取引をする被疑者がそもそも自分がやった事件を否認したり一部否認していたら、そういう否認している人間と協議するというのはちょっと考えられないかなと思うんです。そのあたりは、被疑者の自分の事件に対する供述とこの制度の関係というものをどのようにお考えか、教えてください。
○林政府参考人 協議・合意制度については、自己負罪型あるいは捜査・公判協力型があるわけでございます。本法律案は捜査・公判協力型でございますので、結局のところ、他人の刑事事件における証拠収集の一つの手段として位置づけているわけでございます。 そうしますと、自分の事件自体を否認している、それで検察官としてはそれは否認であるというふうに考えているような場合に、結局、その否認供述自体が信用性が乏しいわけでございます。そういった信用性の乏しい者の供述というものは、結局、他人の刑事事件における信用性に影響を及ぼすわけでございますので、基本的に、そうした自分の事件を否認している被疑者、被告人との間で検察官が合意をするということは考えがたいわけでございます。 もう一つ言えば、被疑者、被告人について有利な取り扱いをするということの根拠は、やはり、基本的に、その人の情状面で他人の刑事事件の解明に寄与するといったことを有利に解釈するわけでございますので、そういったことについても、信用性の乏しい否認をしている被疑者、被告人についてはそういった有利な取り扱いをするということが適当であると検察官が考えることはないであろうと考えます。 したがいまして、一般的に、こういった自己の事件を否認している被疑者、被告人との間で本制度を使って合意をするということは考えがたいと思います。
○井出委員 今、考えがたいというお話で、今のお話を聞いていれば、自分の罪をしっかり認めた被告でなければ余り司法取引の対象にならないのかなとも思うんですけれども、そうであれば、そういう被告に対して自己負罪型の方も制度設計として今後考えていくということもあり得べしではないかな、今、そういうような思いを持っております。 それともう一点、協議、合意の関係で伺いたいんですが、やはり、この間、参考人の方がおっしゃっていた検察のセンスの問題なんですけれども、一つの事件で被疑者を逮捕して、そこから供述を引き出して、次の被疑者をちょっとすぐには逮捕しないで、逮捕できるようになったら逮捕して、またそこから新たな供述を引き出してとやっていくという話があったんです。 あの話を聞いていると、私は、司法取引で合意したものが裁判に全く出てこないケースもあるんだなというようなことを思ったんです。司法取引に応じた人間が、合意書を交わした、それによって起訴猶予になって、また次の人間が今度別の人間のために司法取引に応じて起訴猶予になってというようなケース、あれが一番使い勝手がいいんだというようなお話だったんです。 もし合意したものが裁判に出ないと、さんざん言われてきた、裁判の場での徹底的な反証というものも実現し得ないと思いますし、そこはちょっと制度上の課題じゃないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。
○林政府参考人 合意がなされたけれども、最終的に他人の刑事事件の起訴に至らないというような場合が当然あり得ると思います。必ず起訴がされて、他人の刑事裁判で、合意に基づく何らかの協力行為の結果がそこに出される、あるいは証言という形で出るというようなことが必ずあるかといえば、それはないんだろうと思います。 しかしながら、それは結果的にそういうことがあるということでございまして、制度の目的は、やはり、他人の刑事事件、特に組織犯罪等における上位者の刑事事件、こういったものの解明に資するための制度でございます。そのためにこの制度を使うのであって、単なる一般的な情報収集のためにこの制度を使うものではございません。 そうでなければ、他人の刑事事件の事案を解明して、本来処罰すべき者を処罰するということの目的を達成されないからでございます。 そうすると、実際に他人の裁判が行われないということもあるとなると、この制度の何か欠陥ではないかというような部分でございますけれども、そもそも協議・合意制度の目的は、一つは、やはり取り調べ及び供述調書に過度に依存しているという状況から脱するということでございます。 従来、ともすれば、刑事司法というのは、捜査もあれば、その後に公判がございました。捜査の中にも、取り調べという捜査もあれば、それ以外の捜査もございました。その中で、特に取り調べというものが非常に比重が高かった。また、そこで供述調書ができますと、それが非常に重要な証拠として、公判、裁判でもそれが一番主要な証拠として採用されるというような実態がある、こういうふうに指摘されておりました。 今回、そこの点については、協議・合意制度で合意をなしますと、合意後の取り調べで何らかの供述が得られたといたしましても、結局は、裁判で、公判の中で最終的にはその供述というのは証拠として使われるわけでございます。そのために、供述調書ができてしまえば、それで将来の他人の刑事事件の立証ができるのかと申し上げると、そういうことにはなりません。 したがいまして、検察官としては、取り調べ段階での供述調書が仮にできても、その後、本来の裏づけ捜査というものを徹底的に行います。そして、結局、そもそも信用性が低いとされている取り調べ段階での供述調書について、さらに裏づけ捜査を経て、裏づけ証拠を得ることによって初めて使えるようになるものですから、その過程において、最終的にはそういった裏づけ捜査がうまくできなかった場合、結局のところは、その供述調書のみでは立証ができないということが明らかになった場合には、やはりそれは起訴ができないという事態が生ずるということでございます。
○井出委員 ちょっと頭が回っていないので、よく今の答弁を、裏づけをちゃんと速記録で見た上でまた質問させていただきたいと思います。 司法取引はアメリカでも見直しの議論があったりしているということは参考人の話でもありましたし、それをもし導入するのであれば、世界で一番水準の高いといいますか、目的に資する制度にしていかなければいけない。そういう意味では、まだまだ議論を尽くすべき各論が多いのかなと思っております。 終わります。どうもありがとうございました。
○奥野委員長 次に、重徳和彦君。
○重徳委員 維新の党の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。 まず、司法取引につきまして、前回の質疑におきまして、自己負罪型と捜査協力型、この関係といいましょうか、違いについて御質問をさせていただきました。 自己負罪型については事件の処理の効率化ということを目的とするんだ、そして一方でごね得という事態が生じる、一言で言えばこんなことが法制審議会で行われた結果、今回導入は見送られたという話でございました。 ごね得ということについては理解しなくもありません。例えば、AとBの二つの犯罪、Aだけは認めてBは認めない、今までだったらそうだったところを、これからはAについても刑をまけてくれないから認めない、こういうこともあるかもしれないということなんです。 しかし、本来、捜査協力型であっても、自分の罪か他人の罪かという違いはもちろんありますけれども、こういった駆け引きというものはあるものだと思いますし、むしろ、自己負罪型であっても、別にAを認めなくなることがリスクだというよりは、Bを認めるために、事案の真相の解明ということのために導入するということは、やるのであれば、この自己負罪型もやるということはあり得る話ではないかなと考えております。 そこで、まず林局長に確認したいんですが、自己負罪型は手続の効率化が目的であるというような御答弁があったと思いますが、しかし、捜査協力型と同様に、事案の解明という要素も間違いなくあるんじゃないかと思うんですが、その点、確認させてください。
○林政府参考人 自己負罪型の合意制度は、一般的には、主として事件処理の効率化を目的とするものとされております。これは、例えば、米国におきまして自己負罪型で合意をしますと、事実認定に対しまして、十分な証拠がなくてその事実を認定できる、実際上存在している制度がそういうものと結びついているものですから、結局、事件処理の効率化を目的とする、こういうふうに理解されているわけでございます。 他方で、もちろん、委員御指摘のように、被疑者、被告人が、有利な取り扱いを受けられることを動機としまして、公訴事実を単に認めるだけではなくて、その背景にある自分の事案の真相を供述するということも当然あり得るわけでございます。 そうしますれば、具体的な制度設計によるわけでございますが、自己負罪型に事案の解明という要素というものを持たせることは、それは可能であろうかと思います。
○重徳委員 そういうことだと思います。海外の制度はそういう効率化ということが主であるということでありますが、制度設計次第であろうということでございます。そういう意味で、今回の捜査協力型と変わらないような制度設計も可能は可能なんじゃないかなというふうに受けとめました。 それから次に、自己負罪型の導入を今回見送るということなんですが、前回は、法理論上、検察官の広範な訴追裁量権が現行においてもあるんだ、これの範囲内でこれまでも、手続は整備されていなかったものの、やろうと思えばできる、権限的にはやれるんだ、司法取引はやれるんだというお話がございました。そして、その中で、現行、いわゆる司法取引とは呼べないかもしれませんけれども、情状を見て起訴、不起訴を判断したりする、訴因の選択というものもするという中で、自分の罪を認めるといういわゆる自己負罪型的な訴追裁量権が行使をされてきたことも多いのではないかと思うんですね。 であれば、今回、その意味で、現行から今回の制度に入るに当たって、必ずしも捜査協力型だけではなくて、自己負罪型を導入することも、今申し上げましたような意味からなじむのではないかという捉え方もできると思うんです。むしろ、自己負罪型的な訴追裁量権の行使の方が一般にイメージしやすいと思うんです。であれば、むしろ自己負罪型から導入するということも考え得るのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○林政府参考人 確かに、現行法のもとでも、被疑者、被告人が自己の罪を認めている、こういったことによって求刑が変わるとか、最後にはその量刑自体も変わる、そういったことがあるわけでございます。 これは、もちろん、情状というものをどのように判断するかという枠組み、あるいは、それに向かっての検察官の広範な訴追裁量というものがありますので、その枠組みの中で結果として行われていることでございます。そういった意味では、基盤となる考え方自体は検察官の広範な訴追裁量という法理論に共通するところであろう、その点では、委員御指摘のとおりだろうと思います。 その上で、では、それを今度は取引という形で手続において、そういった双方が協議をして、合意をして、それに何らかの効果を与えるというこの手続的な制度をつくるかどうかということが、今回、これは自己負罪型を導入するか、あるいは捜査・公判協力型を導入するか、こういった問題になると思います。 その点においては、そういった協議、合意という要素を有する手法を取り入れるのは今回が初めてでありますので、今回は捜査・公判協力型に限定したということでございます。もちろん、その背後にある法理論的な共通点からしますと、自己負罪型の導入というものについては今後の検討の対象事項であろう、こう考えております。
○重徳委員 御説明の意味はわかりました。 今回、いずれにせよ、捜査協力型からまず導入するということなんですが、これは井出委員も申し上げていることでありますけれども、取り調べによる供述調書に偏った捜査手法を変えるんだということを言いながら、結局、供述に頼った、一つのバリエーションであります司法取引というものを導入する、ちょっと舌をかむ説明になるのではないかと思うんです。 まして、今回、捜査協力型というのは、再三指摘がされているように、いわゆる冤罪誘発のリスク、引き込みのリスクというものがあります。それから、虚偽供述によって事案が混乱すれば、なおさら真相の究明というものから遠のいてしまう、そういうリスクもあるのではなかろうかと思われます。 そういうことで、それを解消するための何点かの指摘が前回の参考人の陳述の中でもされておりましたので、何点か確認をしていきたいと思っております。 まず一つは、冤罪事件の原因の二割から半数までが情報提供者の虚偽証言による、そういう調査研究が、二割から半数、ちょっと幅はありますが、虚偽証言がかなり多くの原因となっている、こんな陳述がございました。 今回の法案では、必ずしも共犯に限定せずに、これはこの間初めて聞いた言葉でありますが、ジェイルの情報提供者の供述まで対象にすることも可能だと。なぜ共犯に限定するということをしないのでしょうか。
○林政府参考人 今回の協議・合意制度の中で、被疑者、被告人が証拠を提供することができる他人の刑事事件というものは、もちろんのこと、共犯者の事件である場合が多いと思われます。ただ、必ずしもそれに限定されるわけではございません。 例えば、一つの暴力団組織に所属している、同じ暴力団組織に特殊詐欺のグループが幾つかあるような場合、同様の特殊詐欺を行っているというような場合があると思います。それについては、それぞれが同様の特殊詐欺を行っておりますので、それぞれが自分の事件を抱えているという関係になろうかと思います。そういった場合に、自分の特殊詐欺のグループとは別のグループについての情報も、当然、同じ暴力団組織でありますので、資金の流れとか指示系統とか、そういうものは供述できるものを持っている場合があろうかと思います。 ただ、それは、刑事事件の共犯という形で限定いたしますと、必ずしも他の特殊詐欺のグループについては共犯者というような関係にはなりません。そういったことから、必ず共犯者の事件である、それに限定されるわけではなかろうと思います。もとより共犯者の事件である場合が多いとは思われますけれども、そのために、今回、共犯関係にある場合ということに対する限定は加えていないわけでございます。 以上でございます。
○重徳委員 捜査協力型の司法取引というのは、絶対やらなきゃいけないというわけじゃなくて、いわば選択的にそういう手法もとり得るということであります。 確かにいろいろなケースがあって、共犯じゃない場合においても有効な証言を得られる可能性はもちろんあると思いますが、一方で、私どもが指摘しているのは、この制度を下手に利用して、虚偽証言が出てくるかもしれない、こういうリスクをやはり限定していかなくちゃいけないと思うんです。 ですから、その意味で、自己負罪型については慎重だということであれば、対象者も少し限定して、まずは共犯者から始めてみて、そして、使い勝手が悪い、運用は安定的になってきた、そういう段階でそれ以外のところにも広げていく、こういった慎重な導入の仕方というのが常識的じゃないかなと思うわけなんです。これを指摘させていただきたいと思います。 そして次に、可視化の問題であります。 可視化によって自発的に行う任意の虚偽供述は防止できるものではないという、前回の参考人、高井弁護士さんの指摘がありました。それはそのとおりかもしれませんが、一方で、笹倉准教授によりますと、実際に一たび行われてしまった供述、証言が虚偽だったのではないかということは、事後的な検証が行われにくい、ましてや、供述者本人はもちろん、捜査側にとってもメリットのあることなのでありますから、信用性が本物かということを解明するインセンティブはないということであります。ましてや、法廷でそういった証言が行われて、事実認定をする裁判官がそれを見抜くことができるかというと、そんな容易なものではないと思うんですね。こういうことがまずあります。 それから、特に協議に入る前の段階では弁護人も関与しないわけですから、可視化というものも有効であろうという意見もあります。 さらに言うと、郷原参考人は、可視化がどういうときに必要かといったときに、供述経過が客観的な証拠が提出されたタイミングと時系列的に合っているかどうか、つじつま合わせをしていないかどうか、これを見きわめるためにも可視化が必要なんだ、こういうことをおっしゃっておられます。 そこで、大臣にお聞きしたいんですが、このように、可視化によって、虚偽供述、特に任意の場合は効力があるないの議論はあるにしても、一般的に虚偽かどうかというのはより判定しやすくなる、そして供述経過の記録のためという意味もあるというこの可視化、やはり必要なんじゃないかなと思うんですが、御意見はいかがでしょうか。
○上川国務大臣 協議の過程そして合意後の供述においての録音、録画の必要性ということでの御指摘でございます。 まず、協議の過程そのものを録音、録画するということを義務づけるというような形にした場合ということでありますが、弁護人を交えて行う合意に向けたやりとりということでありまして、それも含めて録音、録画をすることになるわけでございます。その結果として、三者の間の協議ということでございますので、自由に意見交換をしながら、そして合意をするか否かを見きわめる、そうした協議の機能そのものが大きく阻害されるということから、適切ではないということでございます。 しかも、協議におきましては、被疑者、被告人は、弁護人が必要的に関与する中で、検察官の対応も踏まえながら、どの時点でどこまで具体的に供述するかということについてしっかりと判断をしながら、いわば戦略的に対応していくということになるということでございますので、供述の聴取に当たりましても、その自由を侵害するような不適正な方法がとられる、とられ得るような場面ではないということでございます。また、協議における供述の出現状況等につきましても、基本的には信用性と関連がないというふうに考えられるところでございます。 また、合意後の取り調べの録音、録画ということについてでございますが、この協議、合意の過程そのものには弁護人が一貫して関与するということになるわけでございまして、被疑者、被告人は、この合意後の取り調べにおきましては、どのような供述ができるのかということについては、弁護人との間で絶えず相談をしながら対応することになるということになります。 仮に御指摘のような特定の供述への誘導ということがなされるようなことがあれば、まずもって弁護人に相談をするということが考えられるわけでございます。そのため、検察官によります供述の誘導そのものはできないということでございますし、また、被疑者、被告人がそのようにして供述する以上、録音、録画をしても、その供述に至る経過が記録されることはないということでございます。 また、合意に基づく供述につきましては、他人の公判におきまして信用性が厳しく吟味されるということであります。検察官といたしましても、この信用性に影響を及ぼすような取り調べにならないように十分に十分に留意をして、任意かつ具体的な供述を得た上で、そしてさらに裏づけ捜査等の徹底した捜査を行って、供述の信用性につきましても吟味を重ねることが不可欠である。 したがいまして、仮に特定の供述に誘導をするようなことがあれば、その供述を契機とした形の裏づけ証拠につきましては収集できない、結果として、その供述を立証に用いることが困難となるというふうになるわけでございます。 加えて、他人の公判におきましては、証拠開示制度等によりまして、積極証拠あるいは消極証拠を問わず、事案の内容、当該他人の主張の内容等に応じまして、合意に基づく供述の信用性を争うために必要かつ十分な証拠が開示されるということになるわけでございまして、こうした協議の過程につきましても、合意後の取り調べにつきましても、録音、録画を義務づけるというような必要性につきましては少ないというふうに考えているところでございます。 しかし、事案によりましては、取り調べの録音、録画制度の対象事件として、あるいは運用上の録音、録画ということについてはあり得るものというふうに考えております。
○重徳委員 任意の制度では意味がないと思うんですね、捜査側が判断するわけですから。そうじゃなくて、やはりやるからには義務づけが必要だと思っております。 特に郷原さんがおっしゃったことは、録音、録画、いわゆる今回の刑事訴訟法で議論になっていた可視化というものではなくとも、録音だけでもいい、あるいは取り調べのメモの記載方法をちゃんと厳格化するとか、あるいは検察官、事務官への記録の義務づけなど、供述経過の記録をきちんと義務づける、こんな制度にするべきじゃないか、こういう提案もあるわけでございます。そういったことはやはり実際の事件を担当した方からの現場の提案でもありまして、これは尊重すべきというか、非常に重要な御指摘だと思いますので、この点、ぜひ検討いただきたいというふうに思っております。 次に、公益通報者保護法を前回お話し申し上げました。きょうは、平副大臣にお越しいただいております。 実は、きのう、ある会議が院内でありました。市民のための公益通報者保護法の抜本的改正を求める全国連絡会というものが結成をされまして、消費者団体や弁護士さんが役員となって、消費者庁の消費者制度課長さんも出席をされたところでございます。実際の通報者、通報して、それによって不利益な取り扱いを受けた、余儀なくされた、こんな方からも事例報告がございました。 きょう午前中のこの委員会における議論でも、人の罪に関することを証言して自分の刑を軽減してもらう、これが国民の法意識というか、そういうものに本当にマッチするのか、こういう議論がございました。 その一方で、公益通報者は、これまでいろいろな不利益をこうむっているわけですね。通報してしまったがゆえに、配置転換によってどこかに飛ばされちゃう、立派な方だったのにすごく重要じゃない部門に異動させられる。しかし、そういう不利益も顧みずに、会社のため、この世の中のために正しいことを、ちゃんと通報しよう、こういう方々であるわけでありまして、これこそ国、政府が保護すべき対象なのではないかな、こう強く思うわけであります。実際に刑事事件に発展してしまってからの司法取引も、それは悪くないかもしれないけれども、しかし、それ以前に、国民の利益を守るために動く人、こういう人たちを守らなきゃいけないと思います。 具体的には、きのうあった話は、例えば、まずは事業者の中に窓口があるんですね、そこに通報した。だけれども、その翌日には誰から通報があったということがもう既に情報漏えいされていて、その結果、人事で冷遇されたり、それとなしに退職に追い込まれる。こんなようなことがあった、こういう報復行為を受けたという話。 あるいは、事業者の内部だけじゃ足りないということで、行政機関に通報することももちろんできるんですが、その場合の要件があるんですね。単なる伝聞等ではなくて、通報内容が真実であることを裏づける証拠など、相当の根拠が必要ということなんです。ただ、この根拠というものも、顧客の個人情報に類するものだって当然あるんですが、それを持ち出すことはなかなか難しい、個人情報保護法の関係で許さないことがある、こういったジレンマにさいなまれるということもあるわけでございます。 まず、川口次長にお尋ねしたいんですが、事前通告は二点に分けておりましたけれども、まとめてお答えいただければと思いますが、今申し上げましたような問題があるがゆえに、これからは外部に第三者窓口を設置して、そして安心して通報ができるような、そういう窓口をちゃんと設けるべきじゃないか、そして、通報先の窓口、これは内部の場合もある、外部の場合もあるけれども、そこから情報漏えいがあったとか、それに基づく報復行為があった、こういうことに対して厳罰化をするべきじゃないか、こういう指摘があるわけです。 今後、この間検討が始まったばかりだというお話もありましたが、しかし、問題自体は今に始まったことではありません。現時点で、消費者庁の思いをお答えいただきたいと思います。
○川口政府参考人 お答え申し上げます。 一般論で言いますと、事業者内部ではなく外部に通報するという仕組みをとりますと、誤った通報により風評被害が生じた場合に、被通報主体、事業者の正当な利益に回復困難な影響が生ずる可能性があるということで、事業者の正当な利益の保護とのバランスをとった制度にする必要があると当時も考えられ、現時点でも考えている次第でございます。 ただ、実際に実情、実態を把握すると、この制度の実効性について疑問があるという観点から、さまざまな御意見をいただいているところでございまして、その中には、行政の通報先につき、通報に包括的、専門的に対応するような常設の第三者機関が望ましいという御意見などございますし、また、通報につきまして不利益取り扱いを行った者に対しては罰則を設けてはどうかというような御意見もあるわけでございます。 そうしたいろいろな御意見がございますので、先般御答弁申し上げましたとおり、公益通報者保護制度の実効性の向上を図るため、公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の開催を始めたところでございます。 さまざまな御意見、先生御指摘の御意見、論点も含めまして、しっかりと検討いただきまして、それを踏まえて適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
○重徳委員 刑事訴訟法の世界は、いわば悪いことは警察が捜査をして司法が裁くという世界でありますが、この公益通報者の世界は、成熟国家日本においては、そんな、お上が全部裁くんじゃなくて、市民が、現場の人たちが一番現状を知り、また正したいと思っている、そういう思いがやはりベースにあるんですね。だから、日本もこれだけ成熟国家になってきているわけでありまして、いつまでも悪いことは警察に任せようとか裁判のお裁きを待とうとかいうことじゃなくて、やはり、そういう市民一人一人が強い思いを持って事を正していこう、こういう思いがあるわけであります。そして、そうした市民といいましょうか、その組織の構成員一人の思いに基づいて、組織、企業の犯罪的行為が解明されることも過去にあったわけであります。 そういった正義の見地に立った方々を守っていく、これはいわば、今回議論しております刑事訴訟法の議論以上に大事なことだと思います。国としてまず一番守らなきゃいけない保護法益であるというふうに思うんですが、このあたり、大所高所から、平副大臣から御答弁いただければと思います。
○平副大臣 消費者庁担当の副大臣でございます。 今御指摘いただきました、重要な視点だというふうに思います。 この法律が施行されたのは平成十八年で、その後、運用の状況を見ながら、必要な措置をとるということにもなっています。また、この間、御承知のとおり、検討会も立ち上がりました。 例えば、公益通報者が保護されない場合、最終的には裁判になるわけで、それは、企業が抱えている弁護士さんと、それに対抗するために個人が弁護士さんを雇うということになれば、もう明らかに不利なのは明白なわけでありますので、先生の御指摘も踏まえて、その観点もしっかり検討会に入れて検討し、必要な措置をしてまいりたいと考えます。
○重徳委員 前回は消費者問題特別委員会が開かれないと申し上げましたが、来週あたり開かれる可能性が出てまいりましたので、またそういう場でも議論させていただきたいと思います。本当に大事なテーマだと思いますので、よろしくお願いします。 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、清水忠史君。
○清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。 先日、地元大阪のベテラン弁護士から、あなたの質問は非常にわかりやすいと弁護士仲間でも有名だ、こういうふうに評価をされ、大変恥ずかしい思いになりました。それで、どの辺がわかりやすいんですかと聞いたら、とにかく専門用語が余り出てこない、こういうふうに言われまして、褒められているのかどうか、少し疑問を感じたところではありますが、きょうは少し、専門用語、法律用語も駆使しながら、協議、合意、いわゆる司法取引の問題について質疑を行っていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。 初めに、東電OL事件について伺いたい。 一九九七年三月に発生した東電OL殺人事件では、ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんが逮捕され、無期懲役の判決を受けて服役していましたが、二〇一二年六月、東京高裁による再審開始と刑の執行停止の決定を受けて釈放され、実に事件から十五年ぶりに帰国を果たしたというものであります。同年十一月に東京高裁が無罪判決、刑事補償法によりゴビンダさんには六千八百万円が支払われております。 このゴビンダさんが日本の司法に向けたコメントがありますので、紹介します。 どうして私が十五年間も苦しまなければならなかったのか、日本の警察、検察、裁判所はよく考えて悪いところを直してください、無実の者が刑務所に入れられるのは私で最後にしてくださいとあります。 今回の刑訴法改正案に盛り込まれている司法取引の導入は、こうしたゴビンダさんの重い重い問いかけに答えるものになっているのかどうか、上川陽子法務大臣にお伺いします。
○上川国務大臣 無罪の方を有罪にする誤判ということについても、これは決してあってはならないことでございます。 事件ごとに、その背景あるいは原因その他、さまざまな要因があろうかと思いますが、結果としてそうしたことに至ってしまうということについて、とりわけ検察改革の大きな柱は、そうしたことが二度と起こらないようにという反省を含めてスタートしたということでございまして、そういうことをしっかりと制度上にも反映することができるように、教訓を生かすことができるようにしていくという中で、今回の刑事訴訟法の改正に至ったところでございます。 合意制度につきましても、取り調べあるいは供述調書に過度に依存するような今までの実態から脱却をするということの一つとして、捜査の多様化を図りながら、しっかりとした証拠を得ていきながら、そうした無罪の事件がないようにということの中で提案をさせていただいているところでございます。
○清水委員 冤罪事件の原因究明また再発防止策がなければ、東電OL事件で冤罪被害者とされたゴビンダさんのような悲劇は再び繰り返されるわけなんですね。 今回の司法取引の持つ本質的な危険というものは、みずからの罪を軽くするために人の罪を明らかにする、そういう心理が働くもとで、虚偽の供述を行い、無実の人が引っ張り込まれる新たな冤罪を生み出すのではないか。この本質的な危険については、前回の私の質疑で上川大臣もお認めになられたところです。 これは法務省にお伺いしたいんですが、この東電OL事件では、検察からゴビンダさんや弁護団に対して、強盗殺人なら無期刑だが殺人なら有期刑で済む、殺人だけ認めれば強盗は容疑から外してやってもよいと、不当な取引が持ちかけられたと言われております。 こうした働きかけは検察として行われたのでしょうか。
○林政府参考人 そのような働きかけを検察において行ったという事実は承知しておりません。
○清水委員 このゴビンダさんの支援活動をずっと行ってこられた客野美喜子さんという方も、さまざまな場所で検察からそうした働きかけがあったと証言をされております。 この事件では、警察も取引を行っているとうかがわれるんですね。 資料をごらんください。一枚目、「仕事紹介し取り調べ 同居人、警察に沿う供述」とあります。赤線を引っ張っております。ゴビンダさんの同居人、「不法残留だったのに、警察が消費者金融の仕事を紹介してくれた。今までより多い月給をもらえた」。これは本当だったのかということについて、「ある幹部は「仕事は誰かが探してきた」と認めた。不法残留だった彼らに捜査協力費を支払ったと振り返る幹部もいる。」これは読売新聞で紹介されておりますし、証言した方の写真と名前もこのように出ております。 警察庁にお伺いします。こうした事実はあったんでしょうか。
○三浦政府参考人 警視庁におきまして、本件の捜査に関し、お尋ねのように仕事を紹介したという事実は確認されていないとの報告を受けております。 なお、捜査費の執行の有無につきましては、今後の捜査に支障が生じるおそれがあるため、一般にお答えは差し控えさせていただいているところであります。
○清水委員 「東電OL殺人事件」というドキュメント小説を書かれた佐野眞一さんの本を見ますと、「警察はあなたが不法就労者だということを承知の上で、つまりビザがとっくにきれているのを承知の上で、就職を斡旋したんですね。」というインタビューに対して、このネパール人のゴビンダさんの同居人は「はい、そうです」と。つぶさに書かれております。 新聞にもこのように報道されていることについて、そのような事例はなかった、こうはっきりおっしゃるということについて、果たしてどうなのかなと思うんですね。 今まで、検察、警察が、表に出ない、いわゆる闇で被疑者、被告人と、あるいは参考人や証人と取引をしてきた事例がないのか。わかりやすいのを調べておりますと、最高裁判例集より一つ見つけました。一九八四年、殺人、犯人蔵匿、逮捕監禁事件です。これで警察は被疑者に対してこのように述べているんですね。逮捕監禁だけで済むやないか、あとはええからと言って、供述調書へのサインを迫る。あるいは、おまえは殺人はしていないんやから、殺人幇助で処理するんやから、殺人幇助やったら五年から六年の刑で済むでと、こうして供述調書にサインを迫るわけです。 このときに、起訴の当日、何と、殺人幇助と聞かされていたにもかかわらず、この被疑者、被告人は殺人で起訴される。このときに言った言葉が、警察も検察も汚いやないかと述べたそうです。 これは全て最高裁判例集に書かれているんですが、結果、この裁判はどうなったかといいますと、無罪です。なぜか。供述拒否権侵害の結果できた調書であり、利益誘導の約束の結果成った調書であると。このため、無罪になっているわけですね。 私、改めて大臣にお伺いしたいんですけれども、上川陽子大臣、このように東電OL事件でも報道され、そして今言った最高裁判例集、これはほんの一つだと思いますよ。こうした表に出ない取引などが行われてきたわけだが、これを警察として全く認めようとしない、検察もこれを認めない。 これは私、盗聴とよく似ていると思うんですね、緒方宅盗聴事件。これは、盗聴の事実はあった、しかしそれは警察が組織的にやったものではない、あるいは盗聴があったと推認される、こういうことで、過去の問題に目をつむり、それを認めようとせず、今回、新たな冤罪を生み出しかねない司法取引という制度を初めて日本に導入する。こんな警察や検察に新しい制度を任せていいんですか。しかも、今度の司法取引は警察も関与するんですよ。 今のやりとりを聞かれていて、どうでしょう、大臣。
○上川国務大臣 今回の合意制度につきましては、被疑者、被告人、そして検察、そして弁護人の三者がしっかりと協議をするというプロセスを経た上で合意をしていくという内容になっているところでございます。 まさに、制度化をするという形の中で、先ほど御指摘いただいたような、巻き込みのさまざまな懸念あるいはおそれということについてしっかりと担保することができる制度設計ということでお願いをしているところでございます。
○清水委員 制度化すれば、利益誘導によってもたらされた被疑者、被告人の供述の信用性が高まるのかどうか、冤罪を生み出さないのかどうかということについては後に議論したいと思います。 法案の三百五十条の六の第一項では、警察から送致、送付された事件について、被疑者との間で司法取引を行う際には、あらかじめ司法警察員と協議することが義務づけられているとあります。これはなぜでしょうか、法務省。
○林政府参考人 検察官が合意制度を利用するに当たりまして、仮に司法警察員との間で連携を欠くようなことがありますと、例えば、司法警察員が被疑者の事件について十分な捜査を遂げて、その全容を解明しようとしている場合に、その解明がなされる前に検察官が不起訴合意等をすることによりまして、事実上、司法警察員による捜査というものを遮断することにもなりかねない、こういった支障が生じ得ると考えられます。 そこで、本法律案の刑事訴訟法三百五十条の六第一項におきましては、検察官と司法警察員の連携、協調を十分なものにするという観点から、司法警察員が送致をした事件などにつきまして、その被疑者との間で協議をしようとするとき、その場合には、検察官があらかじめ司法警察員との間で協議を行わなければならないこととしているものでございます。
○清水委員 同じ法案三百五十条の六第二項では、司法警察員に必要な行為をさせるとあります。この必要な行為とは、具体的には何でしょう。
○林政府参考人 こちらの側の司法警察員は、他人の刑事事件について捜査が行われている場合についてでございます。こういった場合の必要な行為の一例を挙げれば、協議におきまして被疑者、被告人に供述を求める行為、これなどがその一つの例として挙げられると思います。
○清水委員 そうすると、司法警察員は、検察官の個別の授権の範囲内、つまり、検察官が協議、合意の内容、例えば不起訴にするだとか、あるいは量刑十年のところを五年から十年の間に軽くしようとか、こうした授権の範囲で合意の内容案について警察が被疑者、被告人に提示できるんですよね。提示した上で、合意に向けた協議を司法警察員がそのまま行うということは、これは許されるんでしょうか。 一つずつ聞きましょうか。まずは、検察官の個別の授権の範囲で、合意の内容案について、それを司法警察員が被疑者、被告人に提示することができると法案に書いているんですが、これは間違いないですね。
○林政府参考人 今御指摘のとおりの、個別の授権の範囲内で、司法警察員に合意内容の提案をさせる、これができるということが法文に書いてございます。
○清水委員 つまりそれは、被疑者、被告人に提示させるということだと思います。提示させた上で司法警察員が、その被疑者、被告人と協議、つまり、取り調べも含めましてできるかどうか、お答えください。
○林政府参考人 協議において司法警察員がこの場合にできるものは、協議の一部でございます。その一部の中に、協議における供述を求める行為というものができることを指しております。ここにおける供述を求めるというのは、取り調べではございません。
○清水委員 供述を求める行為が取り調べと違うというのがちょっとよくわからないんです。 いずれにしても、検察官が示した合意案を提示しながら、五年から十年というふうに検察官は言ってくれているよ、これを示しながら供述を迫る、これは間違いないですね。
○林政府参考人 協議における供述を求める行為と取り調べというのは、法的にも性格が全く異なっております。法律にも分けてございます。 したがいまして、この場合の協議における供述を求めるというのは、協議の過程で、被疑者、被告人が、その後、その合意の内容として、その結果合意がなされた場合にどのような供述ができるのかどうか、こういったことを確認するために供述を求めることができるというふうにしておるものでございます。 したがいまして、協議の一部で、この場合に協議の過程で供述を求めた場合に、その供述を証拠化するということは全く想定されておりません。
○清水委員 ちょっとよくわからないんですが。 早い話、検察官の示した個別の授権の範囲で司法警察員が、検察官が合意の内容とする提案を提示することができるわけで、その提示した上で協議をすることができるわけでしょう。これは法務省は取り調べとは違うと言うんだが、警察が供述を求めるということは間違いないわけですよ。ということは、警察がかなりの権限を持って、事実上の訴追裁量権を持つことにならないか。 刑事訴訟法第二百四十七条にあるとおり、公訴提起は検察官のみに与えられている権利です。国家訴追主義、起訴独占主義、ちょっと法律用語を言ってしまいましたけれども、と言われているものです。警察に、被疑者を不起訴にしたり、特定の求刑をしたりする権限を与えるということになりませんか。どうぞ。
○林政府参考人 この場合の協議の中で、検察官の個別の授権を受けた範囲内で司法警察員ができることは、合意内容の提案をすることだけでございます。その上で、合意をすることについては、司法警察員は何の権限もございません。ましてや、その後に訴追をする行為、訴追をする権限に全く変動を与えるものではございません。 したがいまして、司法警察員が訴追権を持つとか、その裁量権を持つということに至るものでは全くございません。
○清水委員 いや、私はそれはごまかしだと思います。 だって、検察官が与えた授権の範囲、例えば五年のものを三年にするとか、起訴するのを不起訴にするということを提示するわけでしょう、警察が。林局長、提示するんでしょう。提示した上で協議するんでしょう。供述を求めるんでしょう。違うんですか。これが、被疑者、被告人にとって、仮に警察からであろうと検察からであろうと、みずからの供述が、他人に対する罪の告白が自分の罪を軽減するという状況のもとに置かれて供述をする。同じことじゃないですか。どう違うんですか。
○林政府参考人 協議の中で司法警察員ができることは、授権があった場合に、合意内容の提案をすることができるだけでございます。したがいまして、合意を実行する訴追権というものがあるわけではございません。また、それは提案でございますので、相手がどのようにそれを受けるかどうか、単に提案という一部の行為だけができる、授権があればできるということでございます。 その上で、こういった場合に、協議の場には必ず弁護人がいるということ、それから、協議の場での供述を求めている、この行為は、証拠化を目的とするものではございません。
○清水委員 いずれにしましても、警察官が授権の範囲を示しながら協議に加わる、実際、協議の内容について提示をするだけと言いますけれども、それを餌にぶら下げて協議するわけでしょう。その場に警察が立ち会うということですから。 この議論は後に譲りたいというふうに思います。 ここで資料の三枚目を見てください。「「トップを死刑や無期懲役に」異例の極刑言及 警察庁長官、」六月三十日、西日本新聞配信の記事です。「組織のトップを死刑や無期懲役にもっていき、二度と組に戻れない状態をつくり、恐怖による内部支配を崩していこうという戦略。」記事では、「極刑の適用に言及する異例の表現で組織壊滅に向けた決意を語った。」と、金高雅仁警察庁長官の写真が載っております。 犯罪の予防とかあるいは摘発にその任務をしっかりと特化させ、訴追権を持たないとおっしゃいました。訴追権を持たない警察が、法の適用、運用について、権限があるかのように言及しているとも捉えられるわけですよね。極めてこれは重大だと言わなければなりません。 山谷国家公安委員長、この金高長官の発言、どのように受けとめられましたか。 〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
○山谷国務大臣 工藤会は、過去に凶器等を用いた事業者襲撃等事件を多数敢行している団体でありまして、事業者はもとより、市民生活に対しても大きな脅威となっていることから、警察では、工藤会に対する集中的な取り締まりを徹底するとともに、警戒活動の強化を図っているところであります。 お尋ねの発言については、このような情勢の中、凶悪な工藤会の組織ぐるみの犯行と見られる一連の事件について、警察として徹底した捜査を遂げ、その壊滅を目指すという趣旨でのものではないかと思います。
○清水委員 否定されませんでしたけれども、確かに、おっしゃったとおり、工藤会は改正暴力団対策法で特定危険指定暴力団に指定されております。重点的な取り締まりには法的な根拠があると思います。組織暴力団の犯罪を取り締まる上では、有効な手だてを講じることは当然だと思いますし、私たち日本共産党としても、警備、公安に偏重している警察組織を改めて、必要な警察官が足りない場合は増員することも含めて、警察には引き続き市民生活の安全確保に努めてもらいたいと思っております。 しかし、警察庁長官が最初から、死刑だとか無期懲役にするとか量刑を決めて、それに見合う戦略を県警がとってきたんだという発言は、明らかに警察の権限を越えたものではありませんか、大臣。検挙のために全力を尽くすというのはそのとおりですよ。死刑、無期懲役に持っていく、この言葉の重み。 国家公安委員長として警察にどう指導、対応するつもりですか。
○山谷国務大臣 警察といたしまして、徹底した捜査を遂げ、その壊滅を目指すという趣旨でのものではないかというふうに考えております。
○清水委員 いや、もちろん私もそれを言いました。意気込みはわかります。この事件では警察官や一般市民も工藤会によって命を狙われているんです。とんでもないことです。検挙あるいは撲滅、壊滅する、それは当然です。 しかし、そうであったとしても、訴追裁量権を持たない警察官のトップが、死刑、無期懲役にする、そう持っていく、こう発言したことが、よく聞いていただきたいのは、刑訴法二百四十七条で、公訴権については検察のみに与えられている権限です。いわゆる警察の持っている権限を越えるものではないかと聞いたんですね。 大臣が答えにくければ、私は三浦さんに聞きたいんですけれども、警察に、このように死刑だとか無期懲役にするといった、訴追あるいはその裁量を決めるような権限というのはあるんですか。
○三浦政府参考人 もとより警察にそうした訴追裁量権限はないわけでございまして、また、死刑であれ無期懲役であれ、そうした判決、判断を下すのは裁判所でありまして、また、最終的に量刑を決定するのも裁判所というふうに理解をしております。 今回の発言は、死刑あるいは無期懲役に持っていくという発言の後を見ていただきたいと思いますけれども、そのことによってもう二度と組に戻れない状況をつくり、その恐怖による内部支配を崩していこうというのが福岡県警のとった戦略でございます、このように続いているわけであります。 要するに、警察が死刑にするとか無期懲役にするという権限があって、それを発動するなどということを一言も申しておりませんで、警察がそういった事件を丹念に検挙し、積み重ねていくことによって、結果的にそうした裁判所の判断をいただいて、それによってこれまで恐怖支配をしていたトップの影響力というものをその組織から排除していきたい、その恐怖による内部支配を崩す、内部支配というのは工藤会の中の指揮命令系統でありますけれども、そういった支配を崩していく、それによって組の弱体化、ひいては壊滅につなげていきたい、そのように長官は申したものと理解をしております。
○清水委員 この記者会見の中身は全体で七十五分あるんですけれども、うちの事務所で全部これを傍受しました。当該の発言がどこにあるのかというスポット傍受をするんですが、なかなか見つけられなくて、結局、全部聞いた上で原稿を起こしましたから、今、三浦刑事局長が言われたところについても十分承知をしております。 しかし、そういった意気込みがあるにしても、このような発言が許されるということではないと思うんですよ、私は。正当化することはできないと思いますよ。明らかにこれは訴追裁量権を逸脱した発言だと指摘しておきたいと思います。 しかも、私が前段話をしてきたように、東電OL事件では警察が参考人や被疑者に対して不当な働きかけをしていたという問題、あるいは先ほどの一九八四年の暴力団事件においては、殺人幇助にしてやると警察みずからの裁量で被疑者に伝えていたという判例、こうした問題が司法取引制度の中で大問題だとされているときのこの発言ですから、より重いものがあると言わなければなりません。 それでは、法務大臣にお伺いします。 金高長官は、この刑訴法改正案について問われ、暴力団の上の方を狙っていくためには新たな捜査手法を使いこなせるようになれば大きな意味があると期待感も示しておられます。まさに、司法取引に検察だけではなく警察が関与する、こういうことで、これまで闇の部分で行われていたような不当な利益誘導あるいは不当な取り調べなどが行われて、被疑者、被告人の人権にかかわるような問題が起こるのではないかということを私は危惧しているんですが、決してそうならないという担保はあるんでしょうか。警察の暴走にはならないというところ。
○上川国務大臣 御質問の件につきましては、権限濫用ということのおそれについての御指摘だというふうに思います。 先ほど局長が答弁したとおりでございまして、この法律案の合意制度におきまして、司法警察員に対しましては協議における必要な行為をさせることができるというふうにしておるところではございますが、協議の場には、原則として三者においての協議がなされるということで、弁護人が同席をするということでございます。 また、協議のやりとりにおきましても、弁護人とあらかじめ相談をした上で被疑者、被告人もさまざまな供述をしていく、どこまで、どのような時点で供述をするのかということについて判断をしながら協議をしていくということでありまして、その自由を侵害するというようなことにつきましての不適切な方法をとられるというような場面ではそもそもないということでございます。 〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕
○清水委員 終わりますが、弁護人が関与すると申し上げましても、証拠が開示されませんし、補強法則もありませんので、それは、冤罪を生み出さない、引っ張り込みをしないという根拠にはならないということを指摘して、きょうの質問を終わります。 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、上西小百合君。
○上西委員 上西小百合でございます。 まずは、本日、質問の機会をお与えいただきましたことに御礼を申し上げまして、質問に入らせていただきます。 まず、上川大臣にお伺いをいたします。 インターネットのいわゆる闇サイトで知り合った男らが名古屋市の女性会社員を誘拐、殺害した事件で、去る六月二十五日、主犯格の男の死刑が執行されました。 第一次安倍内閣以降、三年半で通算二十二人に死刑が執行されています。上川大臣が御就任されてから初めての死刑執行でございましたが、まだそのことが国会では触れられておりませんので、大臣、今回の死刑執行の理由をこの機会に明らかにしていただければと思います。
○上川国務大臣 申し上げるまでもございません、死刑というのは、人の命を絶つ極めて重大な刑罰でございます。その執行に際しましても、慎重な態度で臨むということ、これが大原則でございます。 同時に、法治国家でございます。確定した裁判の執行が厳正に行われなければならないということ、これも言うまでもないことでございます。 特に、死刑の判決ということでありますが、極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対しまして、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すものでございます。法務大臣といたしましては、裁判所の判断を尊重しつつ、法の定めるところに従いまして、慎重かつ厳正に対処すべきものであるというふうに考えているところでございます。 今回の死刑執行につきましても、このような観点に立ちまして、慎重な上にも慎重な検討を経た上で死刑執行命令を発したものでございます。
○上西委員 御答弁ありがとうございます。 きょうは死刑制度の議論をするつもりはございませんが、大臣も非常に複雑なお気持ちで御決断をなさったと、私もこのように理解をしております。 この事件の被害者は、今の私と同世代で、ごくごく普通の日常を送る会社員でございました。会社の帰り、何の落ち度もない女性が誘拐され、恐怖にさらされ、そしてわずかな金銭を奪うために極めて残忍な手口で殺害された、こういう事件を鮮明に記憶いたしております。 被害者の御冥福をお祈りするとともに、罪を心から憎み、犯罪撲滅のために国会議員として何ができるのか、改めて今考えておるところでございますので、そうした観点から、きょうの論点、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度等の創設についての質問に入らせていただきます。 今回の一連の改正案の提出背景、刑事司法制度改革の発端は、二〇一〇年九月に発覚した大阪地検特捜部による証拠改ざん事件でございました。当時、私は、大阪で会社員をしていましたが、新聞の一面に躍る大きな活字を見て、検察って怖いところなんやね、大阪地検の体質がそうなんかな、こういうふうな会話を友人たちとしていたことを思い出しました。 このたび法務省から提出されました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案関係資料の法律案要綱三ページの「二 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設」の「1 合意の手続」から読んでいきますと、「(一) 検察官は、」で始まり、検察官が主語、主体で合意の手続を始めていくということになっています。これでは、不祥事を起こした検察がその裁量を広げるのか、こういうふうにとられかねませんが、これは適切なのでしょうか。文言を議論する上で少し配慮はできなかったものか、こういうふうに考えております。法務省の方でお答えをいただけますでしょうか。
○林政府参考人 本法律案におきましては、取り調べまた供述調書への過度の依存からの脱却ということで、取り調べによっても事案の解明が困難である組織的な犯罪等につきまして、首謀者等の関与状況も含めた事案の解明ができるようにするために、主として証拠収集手段の適正化、多様化に資する方策として導入するものでございます。 この合意制度は、検察官の広範な訴追裁量権を背景として、被疑者、被告人の事件について処分の軽減等を行うことを可能にするものでございます。 このように、合意制度は、主として証拠収集手段の適正化、多様化に資する方策として導入するということでございまして、検察官の広範な訴追裁量権に基づくものでございますので、本法律案の条文におきましては、主語を「検察官は、」ということとしまして、合意を検察官の権限として規定しているものでございます。 もとより、この合意自体は、検察官と被疑者、被告人とがそれぞれ特定の行為をすることを相互に約するものでございまして、検察官の一方的判断でなし得るものではなく、合意の成立には、被疑者、被告人が合意に応じるとともに、弁護人の同意が必要となります。また、合意をするためには、必要な協議の申し入れは、検察官だけでなくて、被疑者、被告人側からもすることができるものでございます。
○上西委員 ありがとうございます。 要するに、検察官の裁量の範囲を広げるんだからこういう書き方でいいんだということであろうかと思いますが、やはり私、今申し上げましたように、検察の不祥事、特に、私の地元の大阪地検特捜部の不祥事が発端となって刑事司法制度改革をしようということでこういう法案を提出されたのですから、なぜ検事に判断を委ねる記述から始まるのか、これに関しては若干違和感を感じているということを申し伝えさせていただきたいと思いますし、今後、しっかりとそういう観点も御考慮いただきたい、こういうふうに思います。 それから、今から用いる表現でありますが、これは、ある事件の容疑者が、被告が別の事件の他人の犯罪を明らかにすることによって検事が不起訴や罪を軽くする旨の合意ができるという制度ですから、ほかの委員の先生方同様、司法取引という表現を使っていきたいと思います。 今回の司法取引は、他人の事件についての協力ですから、共犯者として他人を巻き込む危険性、いわゆる引っ張り込みが起こる可能性があることについては、審議において何度も指摘をされていますし、そのおそれは特に払拭されていません。ですから、先ほど申し上げました、警察って怖いところなんやねと、このままではないかと思います。 引っ張り込みの危険性に関しては、大臣は、合意の成立に至る過程で弁護士が必ず関与すると御答弁されていますが、本当にそれで担保、防止されるのでしょうか。大臣より御答弁をお願いいたします。
○上川国務大臣 今回の合意制度でございますが、一定の財政経済犯罪等を対象とした形で、首謀者の関与状況を初めといたしまして、組織的な犯罪の全容解明に資する供述等を得ることを可能にするというものでございます。 そして、今御指摘の第三者を巻き込むおそれということについては、指摘をされているところでございまして、そのようなことが生じることのないように、制度上さまざまな工夫をしているところでございます。 手当ての一は、御指摘いただきましたとおり、協議の開始から合意の成立に至るまで弁護人が関与するということ、そして、合意に基づく供述が他人の公判で使われるときにおきましては、その合意内容につきまして裁判所においてオープンにされるということでございます。そのため、検察官におきましても、十分な裏づけ証拠が得られない限り、証拠として使えないということになるわけでございます。合意をした者が捜査機関に虚偽の供述等をするということになりますと、新設の罰則の規定がございまして、処罰の対象となる。 こうした制度を手当てするという形の上で、合意制度の巻き込みの危険性についてリスクを下げる、リスクをなくすという手だてをしているところでございます。的確に巻き込みの危険を除去するということについて、適正な運用を図っていきたいというふうに思っております。
○上西委員 さまざまなリスクを回避するための手当てはされているということでありますが、引っ張り込みというのは、やはり無実の方が取り調べを受けるといった可能性も十分に想定されるわけでありますから、制度にする前にまずしっかりと検討していただきたい、こういうふうに思います。 きょうの質問に合わせて、過去の事件について取材を続けたジャーナリストから私なりに話を聞き、勉強してまいりました。過去の事件ですし、処分も済んでいますから、差しさわりのない範囲でそのあたりを表現、質問させていただきたいと思います。 造船疑獄事件の発端となったと言われる森脇メモを作成した森脇将光氏、吹原産業事件初め多くの事件にかかわり、結局逮捕された田中彰治代議士等、一人の人間が、あるときは有力な情報提供者として捜査機関に接触をしたり、あるときは重大事件の容疑者、被告として摘発をされ、身柄を拘束されたという事例もあります。 このように、検察、警察は、これまである意味、アンタッチャブル、闇社会の情報源をしたたかに活用して、司法取引制度がなくても重大事件を摘発してきたわけでありますが、今度はそれを明確に制度化して、事件摘発に結びつけようとしているわけです。 改めて、司法取引を導入する根拠、制度にしていくという根拠を法務省にお伺いいたします。端的に御答弁をいただきたいと思います。
○林政府参考人 特に組織的な犯罪等におきましては、首謀者等の関与状況を含めた事案の解明が求められますけれども、その解明というものは、末端の実行者などの組織内部の者からの供述を得なければ極めて困難である場合が多いわけでございます。現行法のもとでは、そのような供述等を得るための主な手法は取り調べでございまして、他に有効な手段が存在しないわけでございます。こういったことが取り調べと供述調書への過度の依存を生じてきた要因となっていると考えられます。 その上で、また近時、事案の解明に資する供述を取り調べによって得ることが困難になってきております。取り調べによって供述を得ることが困難な場合にも、なお取り調べによって供述を得ようとする状況、こういったものがあろうかと思います。 こうしたことから考えますと、この取り調べ及び供述調書への過度の依存から脱却するためには、こうした合意制度という形での新たな証拠収集手段を創設することが必要であるということから立案されたものでございます。
○上西委員 では、それを受け、次に、警察庁広域重要指定一一四号事件、いわゆるグリコ・森永事件の事例を取り上げていきたいと思います。 このときは、別の事件で逮捕、勾留された容疑者、被告が、当時の報道等では知ることができない、捜査本部の一部の幹部しか知らない事実を次々と暴露を始め、取り調べ官は、この容疑者はもしかしたら犯人もしくは犯人につながる人物を知っているのではないか、こういうふうになり、グリコ・森永事件の捜査本部、警察本部も大騒ぎとなったそうで、取り調べ官も、いわゆる司法取引をちらつかせながらさらに供述を引き出そうとしたわけですが、結局、最終的には供述が変わり、減軽の確約がなければこれ以上しゃべらぬぞ、こういうふうになってしまったということであります。 法務・検察が直接かかわった捜査でないことも承知はしています。弁護士も介在はしていません。三十年近く前の事例で、非公式、かつ現場の取り調べ官の判断だったとはいえ、他人の犯罪、しかも組織的な犯罪について供述を得ようとしてもうまくいかなかった、いわば失敗の事例だったと思います。 過去には学ぶべきだと思います。今回、司法取引を導入すればこういった失敗事例はなくなるというふうにお考えでしょうか。法務省の御見解をお願いします。
○林政府参考人 今、前提とされた事案、全く承知しておりません。 その上でお答えしますと、基本的に、今回、合意制度というものができますと、そういった法定の手続にのっとった形で行う。それでなければ、捜査行為というものが証拠能力とかそういったものに影響いたしますので、こういった合意制度によらない捜査方法、捜査手段というものをとることができなくなります。そういったことから、今後、この合意制度ができれば、今度はこの合意制度の要件、手続に従いまして、適正にこれを運用していくということになろうかと思います。
○上西委員 一応通告はさせていただいているんじゃないかと思うんですけれども、今さまざま申し上げましたような事件で、司法取引がうまくいっていなかった、こういう状況があるというふうなことを申し上げたかったということであります。 余り時間がなくなってきたわけなんですけれども、次に、一九八八年から八九年、首都圏を震撼させた連続幼女誘拐殺人事件、これは警察庁広域重要指定一一七号事件で、この容疑者は既に死刑執行されていますが、その容疑者はわいせつ未遂事件で警視庁に逮捕され、そのわいせつ未遂事件の取り調べ中に、東京と埼玉で女の子を四人誘拐して殺したのは私ですと上申書を提出して、次々とほかの事件を自白していったということであります。 こういう事例を見れば、取り調べ官が容疑者、被告ときちんと向き合うことに成功すれば、何もほかの人からの情報提供がなくても重大事件の解明、取り調べは可能なのではないか、こういうふうに思いますが、司法取引を制度化することではなく、取り調べ技術を磨く、向上させるという方策では対応できないのか、これについて法務省のお考えをお聞かせください。
○林政府参考人 今例に挙げられたものは、一つには単独犯の事案だと思いますけれども、合意制度の導入の一つの目的は、やはり組織的な犯罪の解明ということが一番大きな目的となっているわけでございます。そういったことでは、取り調べのみに依存するわけではなく、こういった新しい証拠収集手段というものが必要であろうか、こう考えております。 それにいたしましても、今度の合意制度ができれば取り調べ自体が全て不要となるわけではもとよりございません。したがいまして、取り調べの技術向上ということにつきましては非常に重要な課題と思っておりまして、今後とも検察当局において、各種の研修でありますとか、日々の具体的な事件の捜査処理における指揮監督の中で十分に努めていくものと承知しております。
○上西委員 さまざまな対応で捜査技術の向上をしていくということでありますが、司法取引に関しましては、アメリカでは既に見直しの機運もいろいろ出てきているということも申し上げたい、こういうふうに思います。 そして、仮にこの制度が導入された場合、検事全員が本当にこの制度を使いこなせるのか、こういうふうにも思います。当然、検事にも経験等に基づいた取り調べ技術のレベルがあると思います。吉永祐介さんや石川達紘さんのような捜査の神様と呼ばれた特捜検事もいらっしゃいます。そして、おとつい参考人としていらした高井弁護士や郷原弁護士といった方々、また、数多くの特捜事件、大型経済犯罪を立件してきた剛腕検察官のような方ならば、新しい制度もきちんと使いこなせるのではないか、こういうふうに思います。 要するに、取り調べはいわば職人の世界、こういうふうに思います。ですが、取り調べを受ける側からすれば、一生を左右する場でありますから、取り調べ官によって対応がまちまちという状況は好ましくありません。 ですので、今、研修等そういった対応をしっかりとやっていく、取り調べの技術レベルを向上させる努力をしていくというふうにお答えをいただきましたが、仮に司法取引がよい制度で導入されたとしても、実際の運用は人間が行う。運用にてレベルの差、技量の差が出てしまったのでは、法の下の平等に反します。 そうした行為をチェックする意味からも、私が前の質問で主張させていただきましたとおり、録音、録画、全面可視化が必要不可欠だと思いますし、視察で検察庁にお邪魔して伺った意見を取り入れましても、法務・検察の方々にとってもその方がいいのではないかというふうに思います。 大臣、それでも全事件への録音、録画の導入はされませんでしょうか、御見解をお伺いいたします。
○上川国務大臣 協議の過程、あるいは合意後の取り調べについて録音、録画を制度化すべきではないかという御質問でございますけれども、協議における録音、録画につきましては、協議でございますので、自由に三者間で意見を交換しながら、合意をするか否かというのを見きわめる、そうしたプロセスということでございます。この協議の機能そのものを録音、録画は大きく阻害するということになるのではないかというふうに考えているところでございます。 また、被疑者等につきましては、弁護人が関与する中で戦略的に供述をするということでございまして、そうした不適正な聴取はなされないということでございます。 また、合意後の取り調べの録音、録画につきましても、これは、被疑者等につきましても、弁護人とよくよく相談をした上で取り調べに対応する、こうしたことを踏まえて考えますと、不適正な聴取につきましては想定されないということでございまして、録音、録画をする必要性は乏しいというふうに考えているところでございます。
○上西委員 ありがとうございます。 今、可視化することによってそういった協議の妨げになることもあるというふうに御答弁をいただきましたが、そうじゃなくて、やはり今申し上げたように、法の下の平等といったものを国民の皆さん方にもしっかりと見ていただく、御判断をいただくという上でも、全面可視化、全面録音ということでしっかりと検討していただきたい、こういうふうに申し上げまして、私の質問とさせていただきます。 どうもありがとうございました。 —————————————
○奥野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 ただいま議題となっております本案審査のため、来る八日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 次回は、来る七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後二時五十四分散会