法務委員会 第13号
- 発言数
- 81 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2015/05/13
会議録
○奥野委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日は、本案審査のため、参考人として、弁護士望月晶子君、一般社団法人裁判員ネット代表理事・弁護士大城聡君及び松戸事件被害者遺族荻野美奈子君、以上三名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いします。 次に、議事の順序について申し上げます。 まず、望月参考人、大城参考人、荻野参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。 それでは、まず望月参考人にお願いいたしたいと思います。
○望月参考人 おはようございます。弁護士の望月と申します。本日は、貴重なお時間をいただきまして、どうもありがとうございます。 私は、弁護士十六年目で、当初より犯罪被害者支援業務に携わってまいりました。また、三年前にNPOを立ち上げまして、性犯罪の被害者のために、公的支援に限らず、総合的支援を提供するような活動を行っています。 そういった経験等を踏まえて、主に性犯罪に関する観点からきょうは意見を述べさせていただきます。 それに当たりましては、皆様に、いま一度、強姦罪というもの、それが被害者に与える影響についてよく考えていただきたいと思います。 強姦というのは、嫌な相手に、無理やり服を脱がされ、裸にされて体をさわられ、もてあそばれ、性器を挿入されるもので、加害者と長時間著しく密着します。その間、被害者は、殺される恐怖や汚されていく屈辱感、無力感等を感じ、その体験は事件後も長期にわたって被害者を苦しめ、事件から何年たってもフラッシュバックやパニックを起こして、まともな社会生活を送れなくなったり、自殺してしまう被害者すらいます。 そんなひどい被害体験であるにもかかわらず、その実態がなかなか表に出てこないのは、ほかの事件とは違って、性犯罪の被害者は、できるだけ事件のことを知られたくないという思いがとても強く、苦しみを外にあらわすことができないのです。内閣府の調査でも、異性に無理やり性交されても誰にも相談していない女性が六七・五%に上っています。 そういったことを私のレジュメの一ページ目から五ページ目に簡単に書いておきましたので、ぜひ後でごらんください。 この被害者の知られたくないという強い思いを前提に、以下、お聞きいただければと思います。 レジュメの三ページ目の下に、私の申し上げたい十一項目を書きました。これからその順に沿ってお話しさせていただきます。 まず、今回の改正案の四点目、秘匿決定があった事件では、「正当な理由がなく、」裁判員候補者に「被害者特定事項を明らかにしてはならない。」とされた点ですが、私は、この「正当な理由がなく、」というのは不要ではないかと考えます。 いただきました衆議院調査局法務調査室の解説によれば、正当な理由とは、候補者が不適格事由に該当しないかなどの判断をするために、候補者に対して被害者の氏名等を明らかにせざるを得ない場合とありますので、つまり、候補者に対し被害者の氏名等を明らかにすることで、候補者に自分に不適格事由があるか判断してもらうというたてつけであると思われます。そして、候補者が判断するような不適格事由というのは被害者との一定の身分関係に基づくものですから、判断に当たっては被害者の氏名等を明らかにしなければ実際は無理ではないかと思います。 つまり、この正当な理由というのは常に存在し得るため、限定する機能を持ち得ず、ほぼ意味がないのではないかと思います。ですから、この「正当な理由がなく、」は削除して、常に明らかにしてはならないとしていただきたいと思います。そのようにしても、不適格事由自体は極めて限定的ですから、候補者名簿によって被害者の方で確認可能であると思います。 次に、ですが、仮に今私が申し上げた正当な理由というのが残った場合、今の法案のままの場合、このときには、守秘義務に違反した場合について、さらに罰則規定を設けるべきだと思います。義務を守らなくても何の制裁もないということですと、ただの訓示になってしまい、実効性がどこまで担保されるのか、被害者の不安は解消されません。 この点、先日のこの会議で、守秘義務違反の行為があった場合には民法七百九条の不法行為や刑法の名誉毀損の対象となり得るので、それらで対応をというお話がありましたが、性犯罪の被害者に、事件に遭って、刑事裁判を経て、さらに民事裁判を行えばよいと言うのは、被害者の負担が増すばかりで、立法のあり方として無責任だと思います。被害者としては、プライバシーが露呈されてしまった後に民事裁判を起こして慰謝料をもらっても意味はありません。 また、性犯罪の被害に遭ったということは、プライバシーの問題ではありますが、名誉毀損には当たらないと私は考えます。名誉というのは人の社会上の地位や価値をいいますが、性犯罪の被害に遭ったという事実は社会上の地位や価値を損なうものではないからです。 守秘義務を破られた場合に受ける被害者の深い傷についていま一度お考えいただき、そのようなことが起こらないようにするために、ぜひ罰則を設けていただきたいと思います。 次に、今回の改正では取り上げられなかった点について述べさせていただきます。 レジュメ五ページの下、3です。 性犯罪の被害者は、特に、知り合いに知られたくない、裁判員になってほしくないと思っています。この点について、現在は、検察庁の方で御配慮いただいて、運用で、事前に被害者に裁判員候補者の名簿を見せるなどして、検察官が被害者と知り合いである可能性のある人をできるだけ排除するようにしてくださっています。 しかし、知り合いであるということは不適格事由ではないので、四名から七名が限度の理由なき不選任で外されています。これでは、知人がそれ以上になるときに対応し切れません。被害者の数がふえれば、より困難になっていきます。 そこで、被害者の知人、面識ある人及びその可能性のある人を裁判員の不適格事由ないし不選任できる事由としていただきたいと思います。 次に、4、裁判員の辞退事由ですけれども、これに、類似犯罪の被害経験があることを加えていただきたいと思います。 性犯罪の被害者が自分が遭ったのと同じような事件で裁判員になった場合、被害経験を思い出し、フラッシュバックを起こしたり、心身の調子を崩す可能性があります。そのような被害者に裁判員の負担を課すのは余りに酷です。 そして、一方では、現在、裁判所から候補者に配られる質問票の中に、被害経験の有無、もしくは、あなたや家族に過去同様の被害経験があったことがあるなどの事情があって、公平に判断することが困難と考えますかといった質問があるようです。 被害経験という高度なプライバシーについて、裁判員候補者になったからといって、なぜ聞かれなければ、答えなければならないのでしょうか。被害者に対し、二次被害も与えかねない質問です。このような質問はやめるべきですし、この質問自体、被害経験を辞退事由とすれば必要なくなると思います。 次に、5、性犯罪については、裁判員のジェンダーバランスを保つことができるような仕組みを導入していただきたいと思います。 裁判員の公正性は、不適格事由ある人を除いた後に無作為抽出を行うという方法で保たれていますが、性別は考慮されていません。性が問題の根源となっている性犯罪においては、裁判員の性別が偏ることは好ましくないと考えます。 したがいまして、性犯罪の場合、裁判員の男女比ができるだけ半々となるよう、少なくとも六人中二対四といった比率は保てるような工夫をしていただきたいと思います。 次に、6、公判前整理手続のことですが、これは必ずしも性犯罪に限りませんが、公判前整理手続に被害者の出席を認めていただきたいと思います。 被害者は、整理手続の内容は、検察官を通じて後から知ることができるだけです。検察官は公益の代表で、被害者は事件当事者ですから、見方や考え方が違いますし、検察官がどんなに丁寧に説明してくださっても一〇〇%再現できるわけではありませんから、実際に出席してその場で直接に聞くのとではどうしても違ってきます。 裁判は公開の法廷で行われるのに、そのための争点整理、証拠開示、分単位での審理計画といった重要な事項が公判前整理という密室で決められ、公開の法廷はそれに沿って進められるというあり方は、被害者に疎外感や司法に対する不信感を与えかねません。被害者参加制度によって被害者が被告人質問や意見陳述等を行うことができるのに、審理計画に携わることができないのは不便ですし、不公平です。被害者参加制度が導入された趣旨からしても、公判前整理手続にも被害者の出席を認めていただきたいと思います。 次、7から、ここから実際の公判廷での問題について述べさせていただきます。 何度も申し上げますが、被害者は、自分が被害に遭ったことをできるだけ知られたくないと思っています。それにもかかわらず、裁判員には名前などを知られてしまいます。自宅が被害現場であれば、自宅もわかってしまいます。被害者はそれを甘受しなければいけないのでしょうか。被害者が誰なのか、どこに住んでいるのか、裁判員には知られずに済む仕組みができないのか、ぜひ検討していただきたいと思います。 次、8、証拠の提出方法ですが、これは、まずは、性犯罪ではなく、多くは殺人事件の問題ですけれども、現在、証拠として、遺体の写真などは出さずにイラストが出されたり、イラストすら出されない、そのため、どのような殺され方をして、遺体がどのような状況であったのかがよく伝わらずに裁判がなされるケースがふえていると聞きます。 悲惨な殺され方をした遺体は、確かに、見た人をPTSDに罹患させることもあり得るひどいものですが、それをイラストにしてしまっては、殺人の凄惨さや悲惨さが伝わりません。裁判員の方の負担軽減も大切ですけれども、実際に起きた事件、事実をできるだけ正確に理解して判断していただくことを多くの被害者、遺族は望んでいます。 一方、性犯罪の被害者の場合には、たとえ顔が隠されていたとしても、傷つけられた自分の体のリアルな写真を見られたくありません。性犯罪の場合にはイラストが適しているでしょう。 このあたりのすみ分けをきちんと整理し、証拠の提出方法について一定のルール化が必要だと考えます。 次、9、ビデオリンクと遮蔽措置についてです。 ちょっと細かいんですけれども、被害者が証人となる場合及び心情の意見陳述を行う場合にはビデオリンク方式が法律上認められていますが、被害者参加人となって意見陳述をする場合にはビデオリンク方式は認められていません。 性犯罪の被害者でも、みずから裁判所に行って意見陳述をしたいという方も相当いらっしゃいます。ですが、そうすることで裁判員に顔を見られてしまうことがハードルとなって、被害者参加をして意見陳述をすることをためらう被害者も存在します。 裁判員裁判が被害者参加を妨げるようなことがあってはなりません。裁判員裁判で被害者参加をする場合にビデオリンク方式が使えるようにしていただきたいと思います。 また、現在の遮蔽措置は、被告人及び傍聴人と参加人との間を遮るものだけですので、裁判員から見られないように、裁判員との間を遮るような遮蔽措置についても検討していただければと思います。 次、10、国選被害者参加弁護士の複数選任を広く認めていただきたいと思います。 裁判員裁判で、被告人には、多くの場合、複数の国選弁護人がつけられているようですが、被害者には、多くは一人の国選被害者参加弁護士しか認められていません。このことは、被害者に、国は加害者側を守っているという不公平感を感じさせますし、実際、被害者参加弁護士の業務量は多く、かつ、精神的な負担も大きいです。打ち合わせでは、法律問題だけではなく、被害者や遺族の苦しみや悲しみを受けとめたり分かち合ったりもします。 また、性犯罪被害者の場合、女性弁護士を希望されることも多いですが、いまだ女性弁護士の数は決して多くはないので、負担が偏ってしまいます。そういった場合に、主に被害者とかかわるのは女性弁護士が行いつつ、男性弁護士と共同して、分担して仕事を行うといったことができれば、性犯罪被害者支援もよりスムーズに進められると思います。 被害者が国に守られていると感じるためにも、被害者参加弁護士の業務遂行を円滑にするためにも、広く国選被害者参加弁護士の複数選任を認めていただきたいと思います。 以上、いろいろな問題点を述べてまいりましたが、性犯罪を裁判員裁判で審理することについては、解決できない問題はまだまだ残ります。 知人等が裁判員に選ばれなかったとしても、裁判員を務めた人と将来出会ってしまう可能性は残ります。また、裁判員等に守秘義務や罰則があっても、一旦話されてしまえば、被害者の受けた傷というのは慰謝料で回復できるようなものではありません。 さらに、現実に起きている問題として、裁判員裁判を避けるために、強姦致傷ではなく強姦罪にしてもらうといったケースもあったと聞いています。それでは、加害者に適切な刑罰を科すことができず、事件が潜在化してしまいます。また、そこまでして裁判員裁判を避けようとしても、被告人が別に強姦致傷事件を起こしていて、事件が併合された場合には、裁判員裁判になってしまうということも起こり得ます。 ですので、私は、やはり性犯罪は裁判員裁判から外す、もしくは選択制にしていただきたいと強く思います。 裁判員裁判は、性犯罪の被害者にとってはまだ多くの問題があり、今回の法案ではほぼ未解決のままです。被害者の視点を入れてさらに改正作業を続けていっていただきたいと思っております。 私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)
○奥野委員長 ありがとうございました。 次に、大城参考人にお願いいたします。
○大城参考人 おはようございます。一般社団法人裁判員ネット代表理事で弁護士をしております大城聡と申します。 きょうは、裁判員ネットの活動を中心にして、市民の視点から見た裁判員制度の現状と課題についてお話をしたいと思います。 裁判員裁判が始まって、見て聞いてわかる裁判になる、裁判員が法廷で見て聞いてわかるということになったので、実は、傍聴席から見ても、裁判員とほぼ同じ状況を市民が見ることができます。そういった意味で、制度開始当初から、裁判員裁判の法廷を傍聴して、裁判員裁判を市民の視点から検証するという市民モニターというものをやってまいりました。また、あわせて、裁判員経験者にインタビューを行い、経験者ネットワークという取り組みでは、交流会で裁判員経験者のお話をこれまで二十一回聞いてまいりました。きょうは、そういった裁判員経験者もしくは裁判員になるかもしれない市民の視点からお話しできればと思います。 その中で、私が一番強く感じているのは、これまで専門家に委ねられていた刑事事件の問題、刑事司法の問題を自分のこととして受けとめる方が非常に多いということです。これは、経験者のお話の中でとても印象深く思っている点です。 このようなお話を聞く中で、現在、政府から出されている法律案の改善点だけではなくて、これからお話しする三つのテーマについても、ぜひ、裁判員として主体的に参加をするために体制づくりをする、そのための見直しをしていただきたいと思っております。 資料の二ページ目から具体的な問題を書いておりますので、ごらんください。 まず第一の点は、裁判員の体験を市民が共有できるようにすることです。 現在、裁判員の候補者には、自分が裁判員の候補者であることを公表してはいけないという禁止規定が裁判員法にあります。また、裁判員を経験した人には守秘義務が課されている。この二つの壁があって、裁判員の経験を市民が共有できない状況になっていると思います。 これまで裁判員候補者の通知を受け取った方は百九十七万人ですので、有権者の五十三人に一人が実は裁判員候補者の通知を受け取っていることになります。ただ、私がお話を聞いていても、それほど裁判員制度の話が会話で出るわけでもないですし、社会の中に制度として定着しているとは言えないのではないかと思います。これは、いろいろな世論調査の結果を見ても明らかなことだと思っております。 裁判員候補者であることを公表することを禁止する規定の趣旨は、裁判員候補者に不当な働きかけがないように平穏を保つという趣旨で設けられているんですが、毎年秋に二十万人から三十万人の人に一斉に発送する候補者通知を受け取ったからといって、御本人も、どの裁判を担当するかわからないんですね、その時点では。当然、働きかけのしようがないというか、不当な働きかけがされるおそれはかなり少ないというふうに言っていいと思います。 一方で、事件が決まって、六週間前から、裁判所にいつ来てくださいという呼び出し状を受け取ります。この時点からは、担当する事件が特定されますので、場合によっては不当な働きかけのおそれもある。 そういう趣旨からすると、裁判員候補者通知を受け取ったこと自体は、本人が公表したいと思えば、それは禁止するというふうにはしないで、呼び出し状を受け取ったことについては公にしてはいけないというふうに、ぜひこの規定を改めていただきたいなと思います。 裁判員ネットで裁判員制度に関するシンポジウムをやっていて、終わった後にこっそりと寄ってきて、実は私、候補者なんですけれども、お話ししてもいいですかと、何かすごくいけないものを受け取ってしまったみたいな形で来るんですね。 ここは、国民が司法に参加をするという、まさに法律の制度趣旨からしても、候補者であることを公表してはいけないというのはやはりおかしいのではないかというふうに思っております。 また、守秘義務についてですが、裁判員の経験の中心部分、核心部分というのは、まさに評議の中にあります。裁判官と裁判員とがどういう話をしたのか、どういう意見が出たのか、そこの部分が今、守秘義務によって全く話せない。感想は言えるというふうになっております。 資料の中に、裁判員経験者、二十代の男性の方のお話を引用しておりますが、「評議の内容の中には守秘義務があるとされていますけど、評議の内容にこそやっぱり一番いろいろと感じたことだったりとか、考えさせられたことというのが詰まっていました。ですから、そういったことを公開できないとなると、やっぱり経験を話すことは、少し窮屈といいますか、萎縮してしまう部分はあると思います。」というお話をされています。 関係者のプライバシーを守ることや裁判員の意見を自由に言う、評議の自由を守るというために一定程度の守秘義務はもちろん必要ですが、例えば、誰が発言をしたのか特定をしないとか、多数決であったのか全員一致であったのか、そういったことについては、守秘義務の範囲を縮小して、守秘義務の対象から外すべきだというふうに考えております。 この二つによって、社会の中で、裁判員を経験するとこういうことになったんだ、自分はこうやって感じたんだということも伝えられますし、次に裁判員になる方が、自分は全く法律の素人だけれども、裁判にかかわってどういうことができるのかというのを自分の問題として考えることができるようになると思っております。 次に、裁判員の心理的負担についてですが、裁判員経験者ネットワークでは、裁判員を経験された方に心の負担についてのアンケートを行いました。四十二人に回答していただいたうち、三十人の方が、心の負担があると感じておりました。特に、いつ感じたのかという質問については、審理前、審理中、審理後とそれぞれいて、審理中が一番多いんですが、しばらくたってから負担を感じましたという方もおります。例えば、被告人が控訴をしたということを知ってからとか、一定程度時間がたって自分の出した判決を考える中で思うことが出てきたという方もいらっしゃいます。そういう意味では、各段階において心のケアをしっかりとしていく必要があると思います。 裁判員になる前の段階は主に心の準備ということになると思いますが、今回、改正案の中に、著しく長期にわたる事件は外すというふうにありますが、ここについては、裁判所が、仮に恣意的にであるとか安易に裁判員の対象事件から外すようになってしまうと、逆に、市民の側からすれば、重要な問題は裁判官に任せておいて自分たちはそうでない問題をやるんだというふうにもし捉えられてしまえば、それは制度の本質を損なうことになると思いますので、仮にこういう規定ができるとしても、慎重に判断できるようにすべきだと思っております。 また、現在、百日を超える長期の裁判というのが何件か行われておりますので、特にそういった長期の事件についてどういった運営上の問題があるのか、もしくは裁判員にどういった点が負担になっているのかということを集中的に検証することが必要だろうというふうに思っております。 裁判員を務めている間の心のケアなんですが、これはぜひ、裁判所に臨床心理士を配置して、何かあればすぐ相談をできるようにしていただきたいと思います。昨年、国賠が起こってから、裁判所ではかなり運用に気を使っているようですが、裁判官は法律の専門家であって心理の専門家ではないですから、やはりその事件の内容ではなくて、自分の体調とかを見て、こういう状況なんだけれども続けても大丈夫かというようなことがすぐ相談できれば、安心をして審理に集中できると思います。そんなに難しいことではないと思いますので、ぜひこれは実施をしていただきたいと思っております。 次に、裁判員を務めた後の段階ですが、これは、守秘義務の問題がここでも関係をしてまいります。やはり、何か悩みがあるときに、守秘義務があって自分の親しい人に相談できないということが一つの負担になっているというのもアンケートで浮かび上がってまいりました。 今、裁判所は裁判員メンタルヘルスサポート窓口というのを設けておりますが、これは利用率が極めて低いんですね。負担を感じていないのであれば利用率が低くても構わないですが、アンケートの結果、三十人の負担を感じる人の中でも、この窓口を利用したのはお二人だけでした。しかも、お二人の自由記述を見ると、特にそれによってよくなったということはなくて、むしろ裁判員制度のことをちゃんとわかっている人に相談をしたかったというように書いている方もいるので、この窓口の改善というのは極めて重要だと思います。 特に、現在、五回まで無料という回数制限があるのが、本当に負担を感じている方はかえって相談しにくい。その後はどうなるんだろう、有料になるのかとか、放り出されるんじゃないかとなるので、濫用されるかどうかではなくて、本当につらい思いをしている人に寄り添うような制度にしていただきたいというふうに考えております。 最後に、市民の視点から検証する体制をつくるということで、今お話ししてきたこと以外にも、裁判員経験者のお話を聞く中で、裁判員の役割というのは判決までなんですが、その後、控訴されたかどうか非常に気になるというお話をよく伺います。これは、裁判体によっては、控訴がありましたというふうに裁判長が教えてくれるケースもあるようですけれども、制度上はそうはなっていないので、判決を出したらもう裁判員の役割は終わりというふうになっております。ただ、被告人がどうなるのか、もしくは、被害者も含めて事件の関係者のために自分が出した判決がどうなっていくのかということを知りたいというのは極めて当たり前だと思いますし、そこの点については、今の制度では抜け落ちているというふうに考えております。 被告人のその後が気になるというのは、判決のその後だけではなくて、特に更生の問題、有期懲役の場合には刑務所に行く、もしくは、執行猶予の場合には保護観察がついているケースがとてもふえております。そういう意味で、裁判員としてかかわることで、裁判所での判決だけではなくて、刑事司法全体についての関心は非常に強くなっているというふうに思います。 その中で、自分がいる社会の中で犯罪が起こらないようにどうしたらいいのかとか、家族のことを考えたりというふうに、経験した御自身が変わってくるということも多く見られます。 これはある裁判員経験者の言葉で、職業裁判官の方は何度も判決を書いているけれども、自分は人生に一度だけだ、やはりそこをすごく考えます、被告人のことも被害者のことも考えると。何で犯罪が起こってしまったのか、そういう社会的なことも自分が裁判員になったことで初めて真剣に考えるようになりましたというお話を聞いています。 こういった声を、個別の裁判の適正さだけではなくて、裁判員制度自体にもぜひ反映していくような仕組みづくりをしていただきたい。 そのために、一つは、今、裁判員法では附則九条に従って見直しが行われていますけれども、ここが終わると、裁判員法自体には見直しの規定がなくなってしまいます。制度が始まって六年ですが、なかなか予想もしなかったようなことというのはこれからも出てくるでしょうし、制度がスタートしてまだ間もないですから、これからしっかりと見直しをしていくというのはむしろ求められると思います。そういった意味で、ぜひ、この附則九条にかわる見直しの規定というのは入れていただいて、立法府からもしっかりと見直すというような形にしていただければと思います。 それとあわせて、裁判員経験者も含めて、市民の視点から裁判員制度を検証する仕組み。 例えば、裁判員を経験された方というのは、御自分の体験とか御自分の事件はわかるんですけれども、制度全体について何か意見を言うというのはなかなか難しいんですね。そうすると、市民の視点を集約していくような検証機関とか委員会というものがあれば、ではインタビューを一定程度しましょうとか、アンケートをしましょう、これは今、最高裁を中心にやっていますけれども、職業裁判官の視点とはまた別に、本当に市民の視点が反映できるような仕組みづくりはぜひお願いをしたいというふうに思っております。 私からの意見陳述は以上にしたいと思います。どうもありがとうございます。(拍手)
○奥野委員長 ありがとうございました。 次に、荻野参考人にお願いいたします。
○荻野参考人 おはようございます。荻野美奈子です。失礼いたします。 ちょっと感情が高ぶって、自分でもびっくりしています、今。 ことしも母の日がやってきました。残念ながら、娘からの言葉かけは、六年前の母の日を最後に何もありません。 私は、松戸事件と言われております、平成二十一年十月二十一日に殺害され、その後、体に火を放たれて、部屋もろとも焼かれた娘の母親でございます。 私たち家族にとっては娘の存在は、夫や私、息子、それぞれが安心して人生を送っていける大きな大きな力でした。特に、自立が難しい自閉症という発達障害がある息子にとっては、私たちがいなくなった後、娘に支えてもらえる、娘がいるというだけで、とても安心して暮らしておりました。 平成十八年四月に、大きな夢を抱いて、千葉大学に入学をしました。初めてのひとり暮らしに親子ともども不安はあり、とりあえず一年目は、経済的なことも考えて、大学の寮からスタートしました。 二年生になって、専門学部のある松戸キャンパスに生活拠点を移しました。充実した学生生活を送り、あと五カ月で卒業というときに、大学近くに借りていた自宅アパートで無残な最期を遂げました。殺人犯が自分の部屋で待ち伏せをしているなんて、誰が想像できたでしょうか。 前の日は友人の家に泊まって、事件当日の二十一日は、授業に出るために、一度自宅に戻ってから学校に行くつもりだったんです。まさか、そこに前夜から、ベランダの窓を壊して入ってきて、若い女性の部屋だとわかると、じっと帰るのを待っている犯人がいるとは。包丁とストッキングを手元に置き、娘が帰るや否や、自分のやりたい放題。包丁でおどかされ続け、とてつもない恐怖の中で全てを奪われました。裸にされ、手足を縛られ、女性として、人としての尊厳も傷つけられ、金品をとられ、キャッシュカードの番号を言わされたあげくに、三度も深く胸を刺されました。その一撃目で、胸骨が真っ二つに折れておりました。 娘は、助けを求め続けたに違いありません。お母さん、お父さん、お兄ちゃん。 私は、自分が生きている限り、絶対犯人を許しません。 娘友花里を殺した犯人は、強盗強姦、強盗致傷等で懲役七年の刑を二回、娘友花里を殺したときには、その一カ月半前の九月一日に、二度目の七年の刑を終えて、満期出所してきておりました。出所から逮捕に至るまでの二カ月半の間に、住居侵入、強盗強姦、強盗強姦未遂、強盗致傷、監禁、窃盗、窃盗未遂、強盗殺人や建造物侵入、建造物等放火、死体損壊、一部を書いただけで、こんなにいっぱい、立て続けに凶悪犯罪を重ねていました。根っからの悪人です。 娘の事件は、殺されてから一年八カ月後にやっと裁判員裁判で行われ、私と夫は被害者参加制度を利用して、物言えぬ娘にかわり、一緒に臨みました。 平成二十三年六月八日、千葉地裁で行われた第一審の裁判員裁判は、一カ月間、本当に丁寧にしっかりと審理され、厳しく的確な裁判でした。私も夫も意見陳述をし、被告人質問もしました。裁判官はもちろん、裁判員の方々も、事件の核心をしっかり捉えながら、被告人に対してどのような刑を科すべきか、考えに考えて公判に臨まれていたのはひしひしと伝わってきました。裁判員裁判で被害者参加したことで、娘や私たちの無念さが裁判員や裁判官の皆様に伝わったと思いました。 そして、判決の日、主文は後回しと裁判長が言われたときは、この国には間違いなく正義はあると思いました。 裁判長は、「死刑が窮極の刑罰であって、その適用には慎重を期さなければならないということを十分に念頭においても、被告人を死刑に処することはやむを得ないとの判断に至った。」そして、「最も考慮すべき松戸事件の犯行態様が悪質極まりないものであることを指摘しなければならない。」「死刑が人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去る冷厳な極刑であり、誠にやむを得ない場合における窮極の刑罰であるとしても、被告人に対しては、死刑をもって臨むのが相当である。」と。 私は、裁判員裁判が導入された意義があったと心底思いました。 ところが、公判中には死刑の判決が出たらそれに従うと何度も言っていた被告人ですが、すぐに控訴をしてきました。 裁判は東京高裁に移りました。一審の裁判の後、二年待たされました。そして、高裁は、平成二十五年六月四日、たった一回の公判で、これといった審理もなされず、その四カ月後の十月八日に判決を言い渡しました。そのとき、被告人は出廷もしませんでした。どこに向かって裁判長は判決を言ったのかと思います。 長い間待たせたあげくに、死刑は破棄、無期懲役にすると村瀬裁判長は言いました。その瞬間、私も夫も、なぜそんなことになるのか、頭の中が真っ白になり、悔しさと無念と憤りでいっぱいになり、判決理由など聞いていても全然頭に入ってきませんでした。 何度も何度も、娘の最期を思うと、このままでは終わらせない、終わらせられない、何も訴えることができない娘にかわって、娘の思いの何分の一かはわからないけれども、私が正義を、人の道を強く広く訴え続けないといけないと。 被害者みずからが上告はできない今の裁判の制度は、被害者にかわって検察に上告をしてもらわないと、その上での審議はしてもらえない。上告をしたと後日検察から連絡があり、最高裁が開かれることを、弁論の機会を信じて待っていました。いつ弁論が開かれるんだろうかと一日千秋の思いでした。 それなのに、ことしの二月四日に、最高裁の上告棄却の知らせが被害者弁護士を通してありました。上告棄却、高裁の判決支持、そういう決定でした。 「殺害直前の経緯や殺害の動機がどうであったのかが問われるところであり、」「松戸事件の非難の程度に直接影響する重要な情状の一つである。」「本件ではこの点は明らかになっていないといわざるを得ない。」「法廷意見が述べるとおり、死刑の適用には常に慎重さと公平さが求められることからすると、犯行態様が執ようで冷酷非情なものであるとしても、」「前記の事情からすると、第一審が本件につき死刑の選択がやむを得ないものと認めた判断の根拠は合理的なものとは言い難いところである。」と。 何の非もない、抵抗もできない娘を残虐に殺した犯人に対して、殺したのは何か理由があるんだろうから、それがわからないと死刑にはできない、ましてや殺したのはたった一人じゃないか、それも成り行きで殺しただけじゃないか、そんなふうに言われたような高裁、最高裁の裁判官の判決です。 あなたたちこそ人の命を何だと思っているんですか。被害者の命は殺人犯の命よりそんなに軽いものなんですか。そんな判決しか出せない高裁や最高裁に被害者の命のたっとさは到底わかるはずもないと思います。 一人でも殺人を犯した者は、まずは死刑から出発するべきです。強い殺意を持って殺したことは計画性以上に恐ろしいことです。 裁判員裁判を続けるのであれば、高裁も最高裁も裁判員裁判にして、きちんとみんなが納得する、納得できるようにするべきです。さもなくば一審の裁判員裁判をもっと重く真摯に受けとめるべきです。全てを無駄にしないでください。 凶悪な犯人の人権を守って、また被害者が出たら、誰が責任をとるのでしょうか。無責任な判決は出さないでください。司法に対する不信感ばかりが募ります。 法律家の積み重ねてきた判決理由では世の中の人たちには通用しません。もっと一般の人たちに寄り添った、共感してもらえる裁判にしないといけないと導入された裁判員裁判ではないですか。せっかく導入された制度をよりよい方向に進めていく気があれば、今からでももう一度裁判をやり直していただきたいと思います。 先例重視で、自分たちプロが正しいというのなら、こんな制度はない方がいいです。どれほど殺された者や私たちが苦しんで生活をしていかないといけないんでしょうか。 裁判員裁判は一般の国民とともに考えながら築き上げていくものではないでしょうか。被害者の無念は裁判でしか果たせないのをどれだけわかっているんでしょうか。裁判員裁判の意義、役割、今回見直しをされるというのなら、被害者側の意見をしっかり聞いていただきたいと思います。 法律や裁判は、間違いなく正しい者の味方、社会的弱者に寄り添ってくれるものでなくてはならないと思います。決して、悪いことをした者に優しくあってはならないのです。そして、みんなが安心して暮らしていける、社会に役立つ法律改正をしていただきたいと思います。 それから最後に、被害者参加制度を利用して参加をしましたが、私たちの負担は心身ともに相当なものです。そして、それだけではなく、経済的な面も随分違います。自分たちで弁護士を雇わないといけません。先ほど複数の弁護士とおっしゃいましたが、なかなか複数の弁護士さんはお願いできません。そして、高裁や最高裁に行く交通費は残念ながら出ません。そういうことも皆さんは十分御存じだとは思いますが、念のためにつけ加えます。 ありがとうございました。(拍手)
○奥野委員長 荻野参考人には、被害者の御家族というつらい立場でとうとい意見をいただいたこと、感謝申し上げます。 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。 —————————————
○奥野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若狭勝君。
○若狭委員 自民党の若狭勝でございます。 本日は、お忙しいところ、本当にありがとうございます。 特に荻野様におかれましては、昔の、娘さんのことまで思い出させてしまいまして、本当に申しわけなく思います。私も、最近テレビに出まして、今回の最高裁の判決は、裁判員裁判の制度趣旨、導入趣旨を没却するということを明言しました。私も、荻野さんの思いというのは、検察が死刑求刑をしたにもかかわらずということでありますから、痛いほど伝わってきます。 さて、きょうは裁判員裁判ということでありますが、実は私は、裁判員裁判というのは非常に思い入れがあります。と申しますのは、東京地検の公安部長をやっていて、裁判員裁判を広く定着させたいという思いでその検事の職をやめました。ですから、裁判員裁判そのものについては非常に思い入れがあります。 それから、きょうは望月さんにお越しいただいて、性犯罪の話をしていただきましたけれども、強姦罪を初めとする性犯罪についても、私は非常に思い入れがあります。と申しますのは、私が政治家に立候補したときの公約として、強姦罪をきちんと見直そう、その本質を見直そうということを公約に掲げて立候補した次第であります。 ですから、その両方が本日まさしく一緒になっているということで、きょうの質問の機会を与えていただいたことについて非常に感謝申し上げております。 まず、今の性犯罪についてなんですが、特に強姦罪については、明治時代につくられた刑法で強姦罪を規定しているわけですが、これは極めて男尊女卑の思想が強く、いまだにそれが残っている。しかも、強姦罪の本質あるいは保護法益は何かということについて、学者や裁判例では、性的自由に対する侵害というような位置づけをしているんですよね。 性的自由の侵害というのは、被害者が誰と性交渉をするか、その選択する自由を脅かされたということで強姦罪というのはこれまで、学者を含めて、ずっと受け継がれてきているんですよね。 しかしながら、私は、強姦罪というのは、やはり、先ほどの望月さんのお話のごとく、個人の尊厳、人格的尊厳に対する侵害の重大犯罪だということで、その保護法益あるいは本質を捉えなければいけないという思いでずっと訴え続けてきております。 本日は、いみじくも望月さんの方から、強姦罪の話、その被害者の思いというのを非常に強く聞かせていただきました。そのことも踏まえて、いろいろと質問させていただきたいと思います。 まず、望月さんにお聞きしたいんですが、今私が申し上げた強姦罪の本質、保護法益についてはどのようにお考えか。 これについては、基礎の部分というか根っこの部分をきちんと国民的に意識を高めないと、裁判員裁判における性犯罪被害者の保護だとかいっても、いわば一個一個の項目について幾ら議論しても、根っこの部分の意識が変わらないと、なかなか大きな変更、改革にはならないというふうに私は思っているんですよね。 そこで、性犯罪、特に強姦罪の保護法益、本質というものについてはどのようにお考えでしょうか。お聞かせ願えればと思います。
○望月参考人 ありがとうございます。 私も、先生がおっしゃいましたように、性的自由の侵害ということ、誰と性交渉するかといったことが害される、そんな簡単なことではなく、本当に、魂の殺人と言われますように、人間の尊厳を根底から踏みにじるような犯罪、そういう意味で、保護法益としてはもう一度考え直す必要があるというふうに考えております。
○若狭委員 強姦罪を初めとする性犯罪の本質というのをきちんとそこから考え直す、それを国民的にきちんと共有するということによって、今回の裁判員裁判法におけるいろいろな被害者保護の問題、あるいはそれ以外の性犯罪被害者の保護の問題というのが全部解決されていく方向性を見出せるというふうに思うんですよね。 それで、例えば、強姦罪をめぐる刑法の今の問題点について若干申し上げたいんですが、それについても御意見を聞かせていただきたいんです。 まず、強盗が同じ被害者に対して強姦をした場合、刑法には強盗強姦罪という特別の罪があって、それは無期懲役もあります。しかしながら、強姦を先にして、被害者が怖がっているのを見て強盗を働いた場合、強姦強盗罪という特別な罪はないんですよね。しかも、強盗強姦罪というのは無期があるけれども、強姦が先の場合は無期もない、いわゆる有期懲役刑で処罰されてしまう。 被害者女性にとってみると、単に順番が違うだけで、どうして、強盗が先だと無期があって、強姦が先だと無期がないのか、これは極めて不合理な、全く説明がつかない、そういうようなことが刑法に今現存しているんですよね。 それについて、まず根っこの部分の話としてお聞かせ願いたいんですが、望月さん、いかがでしょうか。
○望月参考人 今おっしゃっていただきましたとおり、強盗強姦があるにもかかわらず強姦強盗がないというのは非常にアンバランスですし、女性にとって、強姦された人間にとってどちらがつらいかというと、やはり強盗よりも強姦の方が断然つらいわけですよね。 そうしますと、強盗しました、そこで被害者がおびえている、それに乗じて強姦をするというよりも、むしろ、強姦をしました、そこでおびえている被害者の態様の方がより怖がっている、恐怖に感じているわけですので、どちらの方が重いのかということを改めて考え直して、強姦強盗罪というのはぜひ新たに規定する必要があるのではないかと思います。
○若狭委員 あと、先ほどの望月さんのお話の中で、強姦というのは加害者とずっと、このレジュメによると数十分から数時間一緒にということでしたけれども、私の検事としての経験でいいますと、一昼夜にわたっていわゆる強姦をしまくるという事案もありました。 そのようなことを考えますと、強姦罪というのは極めて重大、悪質なので、無期懲役とかいうこともやはり規定上あってもいいのではないかというふうに言う人もいるんですが、その点については、望月さん、いかがでしょうか。
○望月参考人 強姦罪の刑につきましては、罰則の検討会の方でも強盗罪とのバランスなどが言われていますし、刑罰について見直す必要があるというふうに私も思います。 私が一番考えておりますのは、特に性犯罪の加害者の場合には、単なる欲求というよりも、むしろ、ある意味もう病んでしまっている、何度も何度も犯行を繰り返す、そういう加害者がやはり多いので、刑罰を重くするということももちろん一つの方法ではありますけれども、もう少し全体的な視点を持ちまして、加害者に対しては、治療、処遇プログラムの充実、そういったことも視野に入れてぜひ検討していただきたいというふうに思っております。
○若狭委員 望月さんの今の御指摘は、そのとおりだと思います。ただ、連続強姦で何人もにわたって強姦罪を犯している場合、少なくとも、無期懲役刑というのを規定の上では設けていた方がいいという考え方もあろうかというふうに思います。 そうしますと、仮に無期懲役を設けると、それこそ裁判員対象事件になってしまうわけですけれども、先ほどの望月さんのお話ですと、強姦罪、性犯罪は裁判員対象事件から外した方がいいのではないかという御意見だったと思うんです。そういう意味では、今後、そうした性犯罪に対する見方、捉え方を含めて、裁判員法をどのように変えていくかというのは極めて密着している問題だと思うんですよね。 それで、やはり今後、いろいろと見直しや何かを含めて考えていくべきだというふうに思われますでしょうか。見直し規定を置くということについて、思われますでしょうか。望月さんにお聞きしたいと思います。
○望月参考人 先ほど意見で述べさせていただきましたけれども、対象犯罪の再検討というのは必要だと思っております。 そして、先生が今おっしゃったように、強姦罪の刑が重くなった場合には、今の裁判員法ですと、強姦罪自体が裁判員裁判の対象になってしまう。そのことについて、私個人としては、やはり強姦罪、強姦致傷は裁判員裁判から外した方がよいと思っておりますので、対象犯罪の見直しも含め、今後も改正は必要だというふうに思います。
○若狭委員 続いて、大城参考人にお聞きしたいと思うんですが、私も裁判員ネットについては少しかかわりもありましたし、非常にすばらしい活動をしていただいていると思って、いつも高く評価させていただいているところでございます。 それで、裁判員の人にとってみると、死刑求刑がされて、死刑か無期かという判断をするというのは極めて大きな心の負担だと思うんですよね。 しかも、事実認定、有罪か無罪かというときに、多数決をとって、私は無罪説だという裁判員の人がいたとしますよね。ところが、多数決の結果、有罪説が上回った。そうしますと、今度は、無罪説を述べた裁判員に対して、あなたの無罪意見はこっちにおいておいて、今死刑か無期かが争われているんですから、どっちですかという選択を迫ることにもなりかねないんですよね。これは非常に、二重人格を迫ることになって、普通の裁判員の人にとってみると、耐えがたいというか、尊厳を傷つけることにもなりかねないんですよね。 そういう意味では、やはり裁判員の人においては、死刑が求刑された段階で、いわゆる無期か死刑かを決める評決、多数決には加わらずに、意見としては、裁判官の人に、私はこう思うというようなことを言うのは当然なんですが、評決、多数決自体には加わらないというような制度にする方がいいということを述べている人もいるんですが、その点については、大城参考人はいかがお考えでしょうか。
○大城参考人 死刑判決にかかわることが裁判員にとって大変重い決断になるというのは、まさに御指摘のとおりだと思います。 現在、死刑判決で裁判員がかかわったもの、先ほどの破棄されたものもありますけれども、確定しているものもあります。ただ、執行されているものはないので、死刑判決にかかわった裁判員の心理的負担がどうなるのかということは、実は、現段階ではまだ十分に議論し尽くせる時期ではないというふうに思っております。 その上で、今の問題点があった場合、例えば、自分は無罪だと思っていたのに多数決で有罪になって、求刑で死刑か無期懲役かを判断する、その場合には、裁判員法の辞退理由の中に、精神的に著しく負担がある場合には辞退できると。これは、辞退理由であると同時に、裁判員を務めている間も、同じ理由を述べれば、裁判長が解任することができる。 良心的裁判員拒否というふうに言うのかどうかわからないですけれども、もし本当にそういう状況に追い込まれてしまった場合に、どうしても無罪だと思うのに、なぜ死刑か無期かの判断をしなければいけないのか。そこはやはり御自分の良心に反すると思いますので、そういう場合には、その規定を使って、解任をして、補充裁判員にかわるというのが、今の状況においてもできるし、そうすべきだというふうに私は思っております。
○若狭委員 いずれにしても、その辺のところが密室の中で行われるのでよくわからない、裁判長がどのようにその辺のところをフォローするかというのがよくわからないということがあると思うんですよね。こういう問題がいろいろあると思うんです。 ですから、その意味でも、やはりきちんとした見直し規定というのを今後設けていくということが私は必要だと思うんですが、その点について、重ねてですが、もう一度、大城参考人に御意見を聞かせていただければと思います。
○大城参考人 まさにおっしゃるとおり、まだまだ、そういう意味では本当に、裁判員制度をどのような形で進めていけばいいのか、確定をしていないこと、これからまだ見直していかなければいけないことというのは、今若狭先生が例を挙げられたことのようにたくさんあると思いますので、ぜひ、そこは鋭意、しっかりと見直しをしていく、実態を踏まえて必要な見直しをしていくというふうにする規定は必要だというふうに思います。
○若狭委員 ありがとうございました。 最後に、荻野さんにもう一度お聞きしたいんです。 きょうは、本当におつらい思いをさせてしまって申しわけなく、心がいっぱいでございますが、今、このような、一審で死刑、二審で無期、最高裁で無期という結果になった。先ほど、こんな裁判員だったらもう要らないんじゃないかというようなことをおっしゃられました。 そういうような思いというのは非常に伝わってくるんですが、今裁判員裁判というのがあって、それの法改正を今ここで議論しているんですが、具体的にどうしたらいいか、例えば裁判官の教育だとか、裁判官にもっとわかってもらえる人になってもらいたいとか、いろいろあると思うんですけれども、何か、日ごろ、こうすべきだったんじゃないか、こうあったらよかったんじゃないか、こういう結果を避けるためにはどのようなものがあったのかということを考えたことはございますか。
○荻野参考人 即座にどうしたらいいのかというのはわからないですが、私は、まず、若い司法修習生たちには、殺人事件の被害者の家に行って、一カ月でもその経験をしたらいいのになと思いますね。実際に肌で感じないとわからないと思います。 それから、高裁とか最高裁、上に行けば行くほど、何か、事件の本質が全然見きわめられていないと思うんですね。ただ自分たちの今までのポイント、ポイントで、これは死刑か、これは無期になるのかというそこだけをピックアップして、それでその事件の中身までちっとも踏み込まないで、ただ表面的に捉えている、それだけのような気がします。 だから、もっと、高裁の裁判官もそれから最高裁の裁判官も、被害者に直接意見を聞いて、被害に遭った子はどんな子やったんか、どんな人やったんか、そこまでしっかりと考えていただきたいと思います。
○若狭委員 ありがとうございます。 いずれにしても、私も、予算委員会の分科会で性犯罪被害者に対する保護というのをもっと強化すべきだという意見も述べておりますが、今回の裁判員裁判法の改正においても、やはり性犯罪被害者の保護というのを今後とももっともっと考えていく必要があるというふうに私が思っているということを最後に、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、遠山清彦君。
○遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。 まず、本日は、三人の参考人の皆さん、お越しいただきまして貴重な御意見を賜りましたことを心から感謝申し上げたいと思います。 また、荻野参考人におかれましては、先ほど奥野委員長からもございましたとおり、凶悪な犯罪で最愛の娘さんを亡くされたというその御遺族の御心痛は察して余りあるものでございますし、私も、この場をおかりして、改めて、娘さんの御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。本日は大変ありがとうございました。 順序が逆になりますが、最初に、荻野参考人に二点お伺いをしたいと思います。 もう参考人御承知のとおり、この裁判員裁判というのは、一般の国民の市民感覚を裁判の中に反映していく、そして、今でも最高裁のホームページに明確に書かれておりますけれども、普通の国民とプロの裁判官が一緒になって判決を出していく、これによってより国民の感覚に近い裁判を実現しようというのがこの裁判員裁判が導入されたときの最大の目的でありますし、今もその目的は同じなんですね。 そういう点から、まさに被害者の御遺族という形で不本意ながらかかわられたと思いますけれども、実際に被害者参加制度をお使いになって、一カ月とおっしゃっていましたか、裁判員裁判をずっとつぶさにごらんになって、率直に、この裁判員裁判というものが自分の目から見てどういうものだったのか、その点をまずお聞きしたいと思います。改めての御説明になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
○荻野参考人 先ほど私の意見の中でも申し上げましたが、私は、裁判というものはもちろん初めてですし、裁判員裁判に被害者参加制度で参加するというのももちろん初めてです。 しかしながら、一般の人たち、裁判員の六名の方たち、それから補助裁判員の方が二名いらっしゃったと思います、その方たちは、公平に審理しないといけないと恐らく職業裁判官からは言われているんでしょうけれども、被告人の裁判における態度とか言動とか振る舞いとかを見ていたら、だんだんだんだん、日に日に本性が出てくるというか、恐らく刑事弁護人に、これは言ったらいけないとか、いろいろ入れ知恵をされている様子も何かわかってきたんですね、私は裁判の素人ですが。だから、そういうことも裁判員の方はきちっと見きわめておられました。 それで、友花里の事件に対しても、うそばかり言っているな、本当のところはどこなんだろうな、被告人質問を裁判員の方がされても何かつじつまが合わないようなことばかり言うので、そういうことが重なっていったら、これはおかしいというような結論になったと思うんですね。私たちも発言の機会をいただきましたし、私たちの心情が恐らく裁判員の方たちに伝わっていったことは、裁判員の人たちの被告人への質問内容を聞いているとつくづく感じました。 だから、本当に裁判員裁判はすごいもんやな、日本はすごい制度を導入してくれたんだ、これはもう絶対私らが願っている死刑判決を出してもらえるんじゃないかな、日に日にそういう思いで参加しておりました。 〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕
○遠山委員 ありがとうございます。 私は、娘はいないんですが、以前、大学の教員をやっておりました。よって、松戸事件が起こったときに、私が覚えておりますのは、私自身が強烈な衝撃を受けたんですね。ちょうど私の教え子と同い年ぐらいの友花里さんがああいう形で犠牲になったわけでございますので、もし自分の教え子がああいう目に遭ったら自分はどういう行動をとっただろうかと思いながら新聞の記事を読んだことを覚えております。 今、荻野参考人からは、裁判員裁判という制度を導入して本当によかったというお話がございました。私もきょうお話を伺っていて改めてその思いを強くしたわけでございますけれども、これから、荻野さんのきょうの御発言、それからこれまでのさまざまな場所での御発言は、私は無駄にはならないと思っております。 というのは、プロの裁判官たちは、被害者が一人だからとか、計画性がなかったとか、今までの死刑の判断基準に照らし合わせてどうかとか、そういう観点から判断をされた。その高裁、最高裁の判断に対して、荻野さんは、率直に、被害者の母親として納得できないと。それは大きな当事者としての市民感覚でございますし、また、それを周りの国民が、私ども国会議員も含めて、どう感ずるのかということが今後の死刑判断の考え方等に影響していくと私は思っておりますので、そのことはぜひ御理解いただきたいと思います。 その上で、荻野さんに対する最後の質問なんですが、先ほど、被害者参加制度を利用したけれども、交通費等の支援は実はなかったということをあえておっしゃっておりました。私も公明党の法務部会長を三年やっておりまして、公明党としても、犯罪被害者の支援制度の拡充を実はずっと行ってきております。 平成十九年に法律をつくりまして、二十年、二十三年と改正をして、今、内閣府のホームページを見ていただきますと、犯罪被害者等施策というページがございまして、例えばそこには、犯罪被害給付制度というものが、警察庁が窓口で給付金を出すという制度があります。それから、法務省、裁判所が窓口で、おっしゃっていた、被害者参加制度というものもございます。それから、御遺族が望めば、損害賠償命令制度というものも用意をされているわけでございます。 改めて、被害者参加制度を利用して裁判に参加する中で、十分な支援だったのかどうか、あるいは、当事者じゃないとわからないことが多いものですから、当事者として、もうちょっとこういう支援があったら実際助かったということを率直におっしゃっていただきたいと思います。
○荻野参考人 ありがとうございます。 私たちは、第一審のときには、検察官の御配慮で、裁判中の宿泊費と、それから一回の兵庫県から千葉までの往復の交通費は支給はされました。しかしながら、一回だけですよということでした。高裁、最高裁になると、被害者参加制度を利用して参加しても、一切、何の補助も出ないんですね。 私たちは、千葉県で起こったものですから、千葉の支援センターの方から、こういうサポートの金額が、最高で一回五万円ぐらい出ますからということで、私と夫と、それから、夫はもう目が不自由になってしまいましたので、常にもう一人、誰か家から連れてくるんですが、だから、三人の交通費とか、それから宿泊費は、全部自己負担で頑張ってきました。 国家賠償制度というのがありまして、被告人が私たちに何も弁償できない場合は、国がかわって賠償をしようやないかということで、それも、二年以内に申告しないといけなくて、ちょうど第一審の裁判の時期と重なりまして、裁判のことであたふたしているのに、警察の方からは、早くこの書類を出さないと、二年でほごになっちゃうから、もう出せませんからと言われた。 そうしたら、金額は、本当に、皆さんが御想像になるよりも多分少ないと思います。交通事故で亡くなった方は、単位がちょっと、何千万とかそういうのが出ますが、うちの娘の場合は、大学生で、まだ社会人として何もないから、アルバイトは一応しておりましたから、何か、それでも、最高の金額で二百数十万という金額をいただきました。 それをほごにするというのはやはり友花里に対して申しわけないから、では、それを裁判の費用に使おうとか、お葬式の費用、要った分に補充しようとか、そういう形でそれを使ってまいりましたから、今現在もやりくりはできておりますが、本当に、そのあたりを考えていただけたらと思います。 それから、サポートをしていただける、補助をしていただけるといっても、弁護士の先生をお願いしたときに、荻野さんのところは貯金が百万円ありますかと言われて、それは百万円はあるでしょう、主人が一生懸命働いてくれて百万円ぐらいの貯金はありますよと。じゃ、残念ながら、国からの費用で弁護士は雇えません、誰かお願いしてください、それは自費ですということ。幸い、私たちを支援してくださる弁護士の先生は、VSフォーラムの、被害者側の弁護士の先生でしたから、何百万というお金はお支払いできないので、ウン十万でお願いすることができました。 ただ、そのときに、兵庫県でも雇ってもらえませんかと言われたんです。それだけお金をいっぱい出して、いい先生を雇って、死刑をかち取れて私らの無念を晴らせるんですか、そうしたら、私らはどこからでもお金をかき集めてしますよ、そういうふうに本当は言いたかったんです。だけれども、兵庫県はちょっと、千葉だけではだめですかと言ったら、では頑張ってやりますというようなことをおっしゃっていただきました。そんなぐあいです。
○遠山委員 荻野参考人、言いづらいことも含めて全部お話しいただいて、ありがとうございました。 今後の我々立法府における施策の改善に活用させていただきたいと思います。ありがとうございました。 時間が余りなくなってきたんですが、望月参考人にお伺いをしたいと思います。 参考人の非常にわかりやすいプレゼンテーションの中で、私も実はこの間の審議で守秘義務違反に罰則がないことを林刑事局長とやりとりをさせていただいて、そこを引用していただきましたけれども、守秘義務の違反に対して罰則をつけるべきだ、あるいは、正当な理由はなくすべきだ、要するに裁判員候補者の名簿を被害者側に見せれば関係者が特定できるんだから、そういう一連のお話がありました。 そこで、もう望月参考人はよく御存じだと思うんですが、平成二十一年の九月に、東北の青森地裁で、性犯罪事件で初めての裁判員裁判が行われております。 実は、望月参考人の御懸念に青森地検とか青森地裁が直接応えたわけではないと思いますが、当時の報道を見ると、青森地検は、これは全部運用ですけれども、候補者名簿を被害者に見せて知人がいないかを事前に確認をした、生活圏が重なる候補者を除外するための質問も地裁に求めて採用された。裁判員に選ばれなかった候補者によると、グループと個別で裁判長が全員に質問を実施して、選任までに約二時間二十分かけるなど、先例を上回る時間を手続に割いたということです。 この報道を見る限り、いわゆる強姦等の性犯罪事件を裁判員裁判で裁くときに、まさに被害者の実名であるとか住所であるとか、あるいは知人が裁判員の中にいないかとか、そういうことに対して、私がこれを読む限りは、青森の地方検察も、それから青森地裁の方も、かなりの配慮をして実はやっている。 そうしますと、実は、法律にはそう書いてはいないんだけれども、事実上、望月参考人がおっしゃったような懸念の点をかなり意識して検察や裁判所が運用しているというふうに私には見えるんですが、それでもあえて参考人が法律を少し変えるべきだと思う理由を再度御説明いただければと思います。
○望月参考人 確かにおっしゃるとおりに、今まで、実際に被害者の名前が開示されてということが大きく問題になったことは聞いたことがないと思います。 ただ、そもそも、最初からそのような運用がなされましたのは、裁判員裁判が始まる直前といいますか、性犯罪の被害者が、私たちの名前を絶対に開示しないでほしいという運動を行ったんです。それによって最高検が、被害者と生活圏や生育圏が重なる人を裁判員から外すように、手続の中では被害者の名前を明らかにしないようにというようなことを、事実上確かにやってくださっています。 ですが、やはりそこは事実上なので、どうしても法律できちんと定めていただきたいというのが私の希望です。 その場合に、せっかく今回、秘匿決定があった場合には明らかにしないという条文案を設けてくださった、そこについては非常に感謝するんですけれども、逆にそこに正当な理由というのが入ってしまっているのが、正当な理由というのは非常に曖昧ですよね。なので、私がさっき申し上げたように、正当な理由ということが、この法文の定め方ですと、逆に縛りがないようにもなりかねない。それであれば、いっそのこと、せっかくこういう条文案ができたんですから、一切明らかにしないというふうに定めていただいた方が被害者にとっては安心できる条文になる、そういう趣旨で申し上げました。
○遠山委員 貴重な意見、ありがとうございました。 私も実は正当な理由とは何かという質疑を委員会で既にしているんですけれども、与党なので今出ている法案に賛成しておりますので、今の参考人の御発言もしっかり踏まえて、正当な理由というところについて厳格な運用をとりあえずは求めていきたいと思っております。 最後に、大城参考人に、メンタルヘルスサポートの利用率が低いということで、いろいろ御提言がありました。 私個人の意見を申し上げれば、どうしても守秘義務がかかっている裁判員の方が心理的な負担を持っていて、メンタルヘルスサポートへ行ってくださいよといっても、守秘義務がかかっているわけですよね。ですから、恐らく、裁判員をやった方の立場に立つと、もう全部洗いざらい、自分が思っていること、心理的負担の内容とか事件のこととか話したいと思っても、そもそもサポートの窓口で相談を受ける人がどう思うか、また、その話を誰かに裁判所内で言わないのか、そういう不安というものがあるんじゃないかなと思っております。 ですから、何が言いたいかというと、守秘義務がかかっている相談者が相談する相手の守秘義務をしっかりして、逆に言うと、そこで相談する相手には本当に何を言ってもいい、そのかわり、言った内容は全部絶対に外に漏れないという仕組みを整えることで、もう少し心理的負担を緩和できるのではないかと私は思っております。 ですから、必ずしも裁判員をやった方の守秘義務を大幅に緩和しなくてもいいんじゃないかとちょっと思うんですが、済みません、時間の関係で簡潔にお考えを伺いたいと思います。
○柴山委員長代理 では、大城参考人、短くお願いします。
○大城参考人 心のケアという意味でいえば、今おっしゃるように、例えば相談をする精神科医とかそういうところが、今でも守秘義務は職業上の守秘義務があるところには解除されますので、まずは一つそこを明確に伝えるということが今できていないと思いますので、そこをすることが大事だと思います。 一方で、守秘義務の緩和そのものは、そもそも裁判員を経験したということを社会に伝えられるかどうかという側面もありますので、そこは、守秘義務の問題は心のケアというだけではないというふうに思っております。
○遠山委員 ありがとうございます。 終わります。
○柴山委員長代理 次に、階猛君。
○階委員 民主党の階猛です。 本日は、三人の参考人の方々、本当にありがとうございました。 私からも、荻野参考人のお嬢様のことに関して、心からお悔やみを申し上げます。 また、きょう、お三方の御意見を聞いていて、この裁判員法の改正というのは非常に重い問題を含んでいるということを改めて感じた次第です。 特に対象事件の範囲をどうするかということについて、この法改正の検討過程でも、性犯罪あるいは死刑に相当する事件、こういったものを除外すべきかどうかということが議論されたと伺っています。先ほどの荻野さんのお嬢さんの件に関して言えば、性犯罪であり、かつ死刑に相当する事件である、最も悪質な事件であると私は考えます。 望月参考人からは、性犯罪については除外すべきだという御意見がありましたけれども、議論の前提として望月参考人に伺いたいんですが、こういった性犯罪であり、なおかつ死刑に相当するような重大事件、こういったものについては、先ほどの御趣旨から敷衍すれば、被害者のプライバシーを重視して対象犯罪から除外すべきか、それとも一般市民の感覚を裁判に反映するために裁判員裁判の対象とすべきか、どちらの方向性がいいというふうにお考えになりますでしょうか。 〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕
○望月参考人 私の個人的な意見としては、性犯罪は対象犯罪から外すべきではないかというふうに考えております。 ただ、先ほどの荻野さんのお話を伺っていて、やはり裁判員裁判の意味というのは非常にあるのだなというふうに思いました。 先ほど、私の意見の中でも、外す、ないしは選択制にしていただきたいというふうに申し上げました。外すのか選択制なのかというところについては私もまだ意見が定まっていなくて、といいますのは、やはり選択制というのが、美しい理想の選択制ができるのであれば望ましいとは思うんですけれども、実際に枠組みを考えていったときに、では、被害者がいつまでに決めなければいけないのかとか、被害者が選択できるとなったら被告人の方はどうなのかといった全体の枠組みを考えますと、どうしても私の中でまだ選択制というものについて詰め切れていないので、もしそこでよい枠組みができるのであれば、選択制ということになって、被害者ないし遺族はそういったことが選べるのであれば、それが理想的なのかもしれません。そういうふうに今は思っています。
○階委員 荻野参考人にも同じようなことをお聞きしますが、お話の御趣旨からすると対象事件に含めるべきだというお立場だと思いますが、今、望月参考人からあったように選択制という考え方もありますが、選択制か全部対象にするか、この二つで比べた場合はどういうふうにお考えになりますか。
○荻野参考人 多分、被害に遭われた方の心の選択というのはとても難しいと思います。 私の場合は、選択制も何も、裁判員裁判ですよと言われて、それで参加して受けて、結果的には、第一審の場合はよかったと思いましたが、こうなってしまったら、物すごく後味の悪いというか、つらいものになりました。 それで、そのとき、私たちと一緒に、強姦された女性も三名、若い女性が一緒に、もちろん遮蔽されて、来られたんですね。その方たちはとても勇気があったなと思います。物すごく悔しかったと。 だから、先ほど望月弁護士がおっしゃった選択制というのは、性犯罪に関して、その本人さんが生きておられて、そういう場合は選択制というのもいいのかなと思います。性犯罪プラスもっとひどいことをしたことに対しては、やはり裁判員裁判がいいのではないかと私は思います。
○階委員 私も、その考え方に非常に親和性を覚えるんですけれども、やはり、同じ性犯罪でも、被害者自身が殺されてしまったような超悪質なケースと、被害者は御存命だけれども魂の殺人で心に傷を負っているケースとで、対象外にするか対象内にするかを分けるというのも私はいいのではないかなと思った次第であります。 そこで、まず、荻野さんのお話の中で、一審では裁判員裁判があるおかげで正義が通ったというふうに考えられたんだけれども、二審それから最高裁で覆されて、大変失望したということでありました。 私も、前回、この委員会で質問したときに、せっかく裁判員裁判で、皆さん本当に苦しい思いをしながら、みずからの経験や常識に照らして、これが正しいということで死刑判断を下すわけです。しかも、その判断に際しては、一般の人だけではなくて、職業裁判官もちゃんと加わった上で、最低一人はその結論に賛成した上で死刑判断というのは下っているわけですから、何も上級審で、プロだけの目で覆す必要はないのではないかということを大臣に申し上げました。 仮に覆すにしてもよっぽどの事情がなければいけないということで、例えば、一審でかかわった裁判員の意見を聞いた上で上級審で判断するとか、あるいは、またちょっと次元が変わる話なんですが、今の刑法というのは、殺人にしても、死刑または無期もしくは五年以上の懲役ということで、法定刑の幅が広過ぎるんですね。私は、例えば、先ほどの荻野さんのお嬢さんのケースのような場合では法定刑の範囲として死刑とかいうのを確定してしまうとか、そういうような立法政策というのもあり得るんじゃないかと思っています。 きょう、大城参考人の方からは、御意見の中で、裁判員裁判と上級審との関係等も見直し規定の中には盛り込むべきだという趣旨の記述がペーパーの中にありました。 そこで、大城参考人として、今のような問題意識を踏まえて、上級審のあり方、裁判員裁判で特に死刑判決が出されたような場合にどのようにお考えになるか、もしアイデアとかがあればお答えいただけますか。
○大城参考人 今、最高裁も、基本的には裁判員裁判の判決を重視するというふうには言っている。これは実は非常に大事なことで、第一審と控訴審は刑事裁判のやり方が違いますから、第一審で証拠を見て、例えば荻野さんのお話を直接聞いている裁判官と裁判員が判断をしたものと、そうではなくて、それを控訴審でチェックだけをするということはあり方がやはり違いますので、原則として第一審を尊重するというのは、裁判員制度が始まって、見て聞いてわかる裁判になったというのは、別の言い方をすれば、証拠をしっかりと法廷で見て判断をしているわけですから、そこに重きを置いて上級審のあり方を決めなければいけないというふうに思います。 その上で、今、一審の裁判員の意見を聞くというお話もありましたけれども、例えば、私は専門ではないから余り詳しくはわからないですが、フランスでは、重罪については控訴審にも市民が参加をする、それはまた別の形で、裁判員というか陪審員として呼ばれて判断に加わる。 つまり、今、日本では、控訴審は職業裁判官だけでやるというふうになっていますけれども、場合によっては、控訴審についても市民参加のあり方というのは検討してしかるべきだというふうに思っております。 以上です。
○階委員 ありがとうございました。 私も、きょうお話を聞いて、改めて、そうした制度設計も含めて今回見直し規定を入れるべきだと考えておりますけれども、これから見直しの際には、上級審のあり方についても考えていくべきだと思った次第です。 さはさりとて、今、国会で議論されている法案の内容についても、我々として、どう考えるかというのを検証していかなくてはいけないということで、望月参考人にお伺いします。 先ほど遠山委員からの質問への答弁にもありましたけれども、今回の法改正の中で、正当な理由がない限り、被害者特定事項を裁判員候補者に伝えてはならないという規定が設けられたけれども、実際上は正当な理由というのは歯どめにはならないのではないかということで、これを外してくださいという御意見でした。その理由の一つとして、被害者側の方でチェックできるということで、わざわざ裁判員候補者に知らせる理由はないんだということを言っていました。 私の考えでは、確かに、被害者側で裁判員候補者の名前を見ただけでこの人は知り合いだから外してほしいと言える場合もあると思うんですが、必ずしも名前を見ただけでは、結婚して姓が変わっていたりとか、あるいは名前と顔が一致しないとかあると思うんですよ。 だから、被害者側が裁判員候補者の名前なりを見ただけでちゃんと排除し切れるのかなということをちょっと疑問に思ったんですけれども、もしそういったことについて被害者側だけでチェックできる有効なやり方とかがあれば、教えていただければと思います。
○望月参考人 おっしゃるとおり、候補者名簿を見ただけでは、確かに厳密に排除することは、一〇〇%は困難だと思います。ただ、不適格事由自体が極めて限定されていますので、おおよそ可能ではないか。 ただ、一〇〇%ではないということで、一つには、候補者名簿を私も一度拝見したんですけれども、本当にただただ名前が列挙されているだけですので、もう少し詳しい候補者名簿にする。例えば、年齢とか住所、職歴、そういったものを記載した候補者名簿にしていただく。 ないしは、ちょっと難しいだろうなとは思いますけれども、マジックミラーのような形式をつくって、お部屋をつくって、被害者が候補者の方の顔を一つ一つ確認できる、そういうふうにすれば一〇〇%排除できると思います。
○階委員 確かに、今のお話、マジックミラーで被害者がじかに候補者のお顔を見るなりすれば、ほとんど一〇〇%、問題がある人はその段階で排除できますから、あえて、裁判員候補者の方で被害者を特定するような事項を知って、それでチェックする必要はないわけですね。だから、今のような工夫をすることによって、実質上、正当な理由はもうないんだということになって、特定事項を知らしめないようなことができるのではないかと思いました。 ここについては、私も、引き続き、被害者特定事項がなるべく裁判員候補者に伝わらないような方策を検討していきたいと思います。 それから、ジェンダーバランスのお話もありました。 確かに、私たち国会もそうですけれども、男性が圧倒的に多くて、きょうも、性犯罪の深刻さ、その卑劣さなども、望月参考人や荻野参考人のお話を聞いて、改めて感じた次第です。 こういうジェンダーバランスについて参考人の皆さんにお伺いしたいんですけれども、大城参考人におかれては、今の点についてはどのようにお考えになりますか。
○大城参考人 今、ランダムに男女については選ぶことになっていて、私が傍聴した事件でも、全員女性の裁判員であった事件もあります。そういう意味では、必ずしもジェンダーバランスで分ける必要があるのかどうかというと、私は、今の無作為抽出で問題ないというふうに思っています。 そもそも、裁判官自体、男性が多いので、全体としては、恐らく判断権者の中に女性が入る割合というのは、裁判員制度によって飛躍的にふえているのではないかなというふうに思っております。
○階委員 それと、公判前整理手続について、被害者が参加すべきだというお話がありました。 きのう、別の参考人からお話を聞いている中で、裁判員裁判になって裁判がわかりやすくなった反面、裁判官が時間ばかり気にしている、公判前整理手続でかなり証拠が絞り込まれていると。だから、やはりその絞り込む過程に被害者が参加していないと、被害者の意に沿わないような、非常に事案の真相をないがしろにしたような単純な短い裁判に終わりかねないというふうに危惧をしたところです。 公判前整理手続について、参加する場合、これは被害者及び被害者支援弁護士、こうした方々が常に参加するという理解でよろしいのでしょうか。
○望月参考人 私の立場としては、原則として参加できるというふうにしていただくことをもちろん希望いたします。 ただ、公判前整理でも、争点整理、証拠開示、審理計画といったものがありますので、この全てに参加するのが難しいということであれば、例えば審理計画に参加するというようなやり方もなくはないのかなというふうに、どうしても、現場にいる弁護士としては思います。 ただ、やはり、被害者支援をしている立場としては、全ての手続に参加させていただきたいと思います。
○階委員 これも重要な論点だと思いますし、被害者の方にとっては、裁判の公判廷そのものじゃなくて、その前からかかわりたいという思いは強いのかなと思いますが、荻野参考人、いかがでしょうか。
○荻野参考人 被害者参加をするということは、事件の真相というか、勝手な犯人の自供も目を通さないといけなかったんですが、必ずしも、参加して、いいのか悪いのかというのは、よくわかりません。私たちはそういう機会を与えられませんでしたが、少なくとも、私たちを支援してくださる弁護士の先生をその中に入れていただきたいと思います。 検察官とか、何かいろいろ言われるんですが、言葉が難しくて、私たちが日常使っていない言葉をばんばん電話で言われたところで、どういうことなのか全然わからないんですよね。それはどういうことなんですかと。一々、裁判所やら、それから検察官の方からこうやっていきますからとかいって報告があったような気がしますが、また弁護士の先生に電話して、もちろん検察も、私たちに代理弁護士がいるということで、ではそちらと話をしますということだったので、お願いしていたんです。 だから、公判前整理手続に参加するかどうかというのは、その内容によるのかなと思います。何でもかんでも参加したら、多分、とてもじゃないけれども、精神的につらくなって、裁判に臨めなくなってしまうんじゃないかなと思います。
○階委員 あと悩ましいのが、証拠の提出の仕方ですね。 私も司法修習生をやっていたときに刑事裁判の記録をいろいろ見る機会があって、本当に、凄惨な事件というのは、我々ですら目を背けたくなるようなものがありました。一般の方々がいきなりそういうものを見たときのショックたるや想像に余るものがありますけれども、他方で、しっかりとそういう現実を見ないと、事件の本質が伝わらないというところがあると思います。 望月参考人は、性犯罪はイラストで可だけれども、殺人事件などはちゃんと記録を出すべきだというお立場でございましたけれども、その点、荻野参考人、最後にお願いします。
○荻野参考人 今言われたとおりだと思います。性犯罪の方は、本当におつらいです。裁判で一々その行状が明らかになっているのを聞いているだけで、すごくつらかったです。だから、イラスト化というのはあるんじゃないか、それの方がいいのかなと思います。 ただし、娘のような、その後、殺人を犯したり焼いたりした、そういう体は、きちんと裁判員の人たちにも見ていただかないといけないし、それから、今、公判前整理手続のことですか、そうじゃなくて……(階委員「公判廷でのことです」と呼ぶ)公判廷ですよね。裁判員の方にきちっと見ていただかないと、あの悲惨さは絵なんかではとても伝わらないと思います。そう思います。
○階委員 ありがとうございました。 時間が来たので終わりますけれども、私も、この職につく前は、弁護士として被害者支援の仕事に取り組んできました。きょういただいた御意見をしっかり受けとめて、法改正を待たずして、運用で直せるべきところは直していきたいという努力をしていくことをお誓い申し上げまして、質問を終わります。 ありがとうございました。
○奥野委員長 次に、井出庸生君。
○井出委員 維新の党の井出庸生と申します。よろしくお願いいたします。 本日は、大変お忙しいところを皆様にお越しいただきまして、そして大変貴重な御意見をいただきました。まず感謝を申し上げます。 三人のお話を伺っていて、率直に、裁判員制度を見直すもっと早い段階から三人のような御意見を伺っておけばな、そんな思いもあるんですが、きょうはしっかり議論を深めさせていただきたいと思います。 最初に望月参考人に伺いたいのですが、性犯罪を人に知られたくない、そのことは私も理解はしているつもりです。私は、そういう被害に遭われた方と接したことも直接お話をしたこともないので、それに対する理解というものがやはり欠けていると思うんですけれども、性犯罪の被害者が人に被害を知られたくないという思いはよくわかるんです。 ただ、被害に遭われた方に裁判所でしっかりそのことを言っていただく、こういう言い方がいいのかわからないんですけれども、苦しい思いをして言っていただいている、そういうお姿を見て、例えば裁判員の方が、この人は本当に大変な思いをされたんだなという、真実に迫るといいますか、被害者の思いを感じることもあるのではないかと思うんですね。 裁判員裁判から性犯罪を除くべきだと。あともう一つ、性犯罪の被害に遭われた方を支えられている皆さんからは、これから議論になる取り調べの録音、録画についても、やはりそういうものを記録されたくないというふうな声があると聞いておるんですが、性犯罪の被害の状況をできるだけ人に知らせたくないという考え方というのは、ほかの犯罪とは全然種類が違って、もう別で考えていくべきだとお考えかどうか、そのところを教えていただきたいと思います。
○望月参考人 強姦罪というのは、警察が認知しているだけで年に千件以上起きています。内閣府の調査によれば、異性から無理やり性交されて警察に相談した女性というのは、三%程度にすぎません。先ほど、誰にも相談していない人が六七・五%と申し上げましたけれども、ですから、どれほどの人が強姦ないし無理やり性交されて、黙っているのかということです。 今、実態を御存じないというふうにおっしゃっていただきまして、それはもうほとんどの方がそうなんだと思います。ですので、一つ参考のために、私のレジュメの中に、二ページ目の上のところに、性犯罪被害者の方が御自身の体験を、本当にわかりやすく、赤裸々に書かれた御本の一部を紹介しておきましたので、ぜひ、この本については、被害の実態を知っていただくために皆さんに読んでいただければと思います。 今おっしゃっていただいた、被害者が話してこそ裁判員に伝わるのではないかということですけれども、確かに、先ほど荻野さんがお話ししてくださったように、被害者の方の生の声というのが一番響きますし、伝わります。ですが、例えば荻野さんのケースでは、一番つらい思いをしたお嬢さん自体が亡くなっていて、声を上げられない。性犯罪でも、どんな被害者でも話せるわけではなくて、本当に、もう家から一歩も出られない、入院してしまう、一番ひどい被害者というのは話せないんです。 さらに、被害者が話すことが伝わるということを被害者に言ってしまうと、私が裁判所に行かなければいけないのか、私が自分の身を挺さなければいけないのかという激しいプレッシャーを与えることになります。 ですので、おっしゃることは確かにごもっともではあるんですけれども、そういうことは被害者には伝えるべきではないと私は思って、ふだん支援活動を行っています。被害者の方が自分で伝えたいという積極的な元気や勇気を回復してきた時点ではぜひ話していただきたいとは思いますけれども、あなたが話すことが伝わるんだよというのは、被害者に対してプレッシャーをかけてしまうので、するべきことではないと思います。 ですので、そういうふうに、被害者が出てきて、裁判員の方が性犯罪を審理することによって伝わるのではないかという御趣旨だと思うんですけれども、私が思うのは、個々の事件を見て、個々の被害者を見て学ぶというのはもちろんありますけれども、そうするということは、やはり個々の事件の被害者をさらに犠牲にしているわけですよ。そうではなくて、性犯罪がいかに悲惨でひどいものなのかということは、学校教育や社会の中の啓蒙活動で一般に広く行っていくべきことであって、個々の被害者を犠牲にするべきことではないと思います。 取り調べの録音、録画についてですけれども、これについては、被害者の中でもいろいろな意見があります。ただ、自分の取り調べが録画されるということにそこまで激しい抵抗を感じているという被害者の方には私はそれほどお会いしたことがないので、取り調べの可視化という点ではこれは不可避ではないかと思っております。
○井出委員 ありがとうございます。 今言っていただいた、いただいたレジュメの最後にも書いてありますけれども、性犯罪の理解を、個々の事件ではなくて、もっとふだんの教育の場などでというところは、私も本当にそのとおりだなと思います。 もう一つ伺いたいのが、裁判員制度が始まったときに、対象事件をどうするか、全ての事件を裁判員の対象にはできない、だから、国民の関心が高い、社会への影響が重大な、そういう事件を取り扱うべきだということで、今の一定の対象事件が決まっているんですけれども、私は、性犯罪が、国民の関心ですとか社会的に重大な影響とか、対象事件としてふさわしいかどうかというところをもう少し一般論としてお聞かせいただければと思います。
○望月参考人 裁判員裁判の対象事件をどうするかということについては、裁判員裁判の枠組みをつくるときにいろいろな議論があったんだろうとは思います。 私もそんなにきちんとフォローはしていないんですが、やはりどこかで対象を区切らなければいけないということで、今言っていただいたような重大犯罪、それは、先ほどもありましたように、例えば死刑を除くというような組み立て方もあるでしょうし、そうではなくて、今回の裁判員裁判で一定の重大犯罪としたわけですけれども、そのことについて、特に犯罪の性質ですとか個々の犯罪の詳しい中身についてまでの検討はしていなくて、量刑というか、本当にそこだけで区切ってしまっているわけですよね。 そういう意味では、全く細やかさがないといいますか、先ほど来申し上げておりますように、やはり性犯罪というのは、ほかの事件とは被害者の受けている影響が違い過ぎる。そういったことについての検討が全くなされないままに刑罰だけで決めてしまっているというところは、ちょっと、乱暴と言ってはなんですけれども、もう少し細やかな検討をしていただいて考えていただければ、こういうふうにはなっていなかったのではないかと思うんです。 ですので、これからぜひ見直しをしていただきたいというふうに思います。
○井出委員 ありがとうございます。 次に、大城参考人に伺いたいんですが、裁判員経験者の声というものは、裁判所の方で裁判が終わった後にアンケートをされて、そのアンケートがかなり積み重なって、一定の傾向は出てきているんです。 そのアンケートを見ますと、特に裁判所が一番裁判員と接しますので、裁判所の方も非常によくやっていただいているのかと思うんです。ですから、アンケートもおおむね、経験してよかったですとか、説明がわかりやすかったとか、そういう前向きなアンケートが多いんですけれども、実際に経験者と交流された活動の中とそのアンケートとの違いを明確に教えていただきたいなというのがあって、新聞とかを見ますと、例えば、仕事を、最初は休みをもらって参加していたんだけれども、だんだん気まずくなってきて、自分の方からちょっと仕事を、身を引くことにしたというような記事も見たことがあって、本当はもう少しいろいろなことを思っているんだけれども、なかなか表に出ていない部分があるんじゃないかなと思うんです。 そのあたり、特にこういう実態があるみたいなものがあれば、ここが一番違うというものがあれば教えてください。
○大城参考人 裁判員経験者の方のお話を聞いていて一番違うと思う点は、アンケートを行うのが、裁判員を務め終わった直後に裁判所で行うので、仕事をやり遂げたという気持ちが非常に強い中で行っている。御自身もそれを振り返って、そのときは確かに、十分に議論を尽くして、みんなで一生懸命考えて判決を出したので、そういうふうによかったと思ったと。ただ、そこから時間がたっていくと、自分の出したものが間違えていたとは決して言わないけれども、こういうことも聞けばよかったとか、ではこういう点はどうなんだろうということをいろいろと考えるようになる。だから、必ずしも裁判員を務め終わった直後の気持ちのままでいるわけではないんだということが非常に大きいです。 時間がたつ中で、先ほど少しお話ししましたけれども、被告人が控訴をしたというようなこと、上告をしたということを知って、改めて自分が参加をする意味は何なんだろうということを考えるとか、場合によっては、少し時間がたってから心理的負担が体にあらわれてくるという方もいらっしゃるので、裁判員を務め終わった後だけではなくて、裁判所は裁判員の情報を全部持っていますし、逆に裁判所しか今は持っていないですから、きちっと中長期的に、裁判員を務めたことによってどういう変化が起こっているのかとか、どういうことがあるのかということは追っていただきたいなというふうに思っています。
○井出委員 もう一点伺いたいんですが、対象事件の決め方の話なんですけれども、先ほど望月参考人にも伺って、やはり一定の罪の重い犯罪に限定してスタートして、その犯罪の、質という言い方がいいのかはあれですけれども、そういう細やかな設計にはなっていないと私も思うんですね。 本来であれば、この委員会で大臣もおっしゃっていたんですが、国民が参加する裁判というのは何がふさわしいのか、上から限定するんじゃなくて、何がふさわしいのかを議論しなきゃいけないということは大臣からも言っていただいたんですけれども、裁判員の方と接していて、対象事件というものを、これだと結論を出すのは難しいと思うんですけれども、特に今、重大事件に限っていることについて、裁判員の方の声を聞いていて何かお感じになることというのはございますでしょうか。
○大城参考人 裁判員経験者の方は、逆に御自分が担当した事件しか体験がないので、その事件がよかったのか悪かったのかということは、なかなかうまくやりとりができないので、直接的なところではないんですが、やはり一つは、重大な事件で、かつ刑事事件ですから、こういう問題が起こっているんだ、でも、今まで自分は世の中で同時並行で生きていたけれども、そういうものが実際にどういうふうに行われているのかということは裁判員になって初めて知ったと。そういう意味では、重大な事件、関心がある事件についてやる意味というのは、裁判員経験者のお話を聞いても、私は意義があることだというふうに思っています。 性犯罪について、女性の裁判員経験者の方が、その方はお子さんもいらっしゃるんですけれども、自分の子供がそういう被害に遭ったらと思って一生懸命意見を述べましたと。意見の内容については守秘義務があるから私も聞いていないんですけれども、そういうふうに意見を述べられて、私はやってよかったと思いますというお話も聞いています。 関心があることについて、やはり全部の裁判に国民がかかわることはできないですから、そういうふうにすると、例えば刑事事件でも、今は再審をしたものとかというのは全く対象外ですけれども、再審したものについても対象にならないのかとか、行政が関係するような事件、刑事事件だけに必ずしも限定するかどうかという問題はありますので、行政事件も含めて、国民が司法に参加をするということがどういう意味があってどういう可能性があるのかというのは、やはりその根本のところから、今、裁判員制度がスタートして六年ですから、実際に司法に国民が参加をしているという現状を踏まえながら、対象事件について、私は広げていく方向でしっかりと考える時期なのではないかなというふうに思っています。
○井出委員 ありがとうございます。 次に、荻野参考人に伺いたいと思います。 最初、冒頭の十五分のお話、本当に私も、何と申し上げていいかわからないぐらいの思いで聞かせていただきました。 裁判員の判決が高裁や最高裁で変わってくる、では何のために裁判員が参加したのかということは、荻野さんも思っていらっしゃいますし、また、大城参考人の接せられた裁判員経験者の方もそういう思いがあると思うんですけれども、一つ、お話の中で、高裁が、二十五年の六月四日にたった一回、これといった審議もなかった、そして十月には内容の変わる判決が出たというところがあったと思うんです。例えば、そこでもう少し関係者、証人を呼んで審理をするとか、審理が尽くされれば、本当に仮定の話で思いに踏み込んで恐縮なんですけれども、そうすればまた今の心境と違うものがあったかどうかというところをちょっとお聞かせください。
○荻野参考人 今おっしゃられたように、高裁が、地裁で第一審の判決が終わった時点から高裁になるまでの約二年間、一年八カ月ですが、その間、慎重にしていたのか、それとも何をしていたのかわかりませんけれども、長引かせれば慎重にできているということは決してないと痛感しました。だから、その間とか、それから高裁の裁判がとり行われた第一回から判決までの間に、もう一回、被告人もですけれども、私たち被害者、参加した者からも聞いてほしいと思います。そうしたら変わってきたんじゃないかなと思います。 やはりその場に裁判員の方もいらっしゃった方がいいのかな、高裁も裁判員制度でとり行った方が、より公平、緻密な、正確なというか、そういう判決が出るんじゃないかなと思います。
○井出委員 ありがとうございます。 恐らく、裁判員制度の目的である国民の司法に対する理解や信頼を深めていくということは、必ずしも裁判員裁判の一審だけじゃなくて、二審や最高裁の対応、そういうところも考えていかなければいけないのかなと思うんです。 一点だけ、ちょっとつらい質問になってしまうかもしれないんですが、裁判の三審制といいますか、結論を得る機会が三回あるということについてはどのようにお考えになりますか。
○荻野参考人 率直に申し上げますと、私のところの事件に関しては一審だけで十分だったと思います。 冤罪とか、あとは、何かもっと、証拠とかいろいろなことが、被告人がどんな罪を犯したのか、どんなふうにしたのかというのがはっきりわからないような、情況証拠だけのような事件のときには二審、三審というのも必要かと思いますが、それは多分、冤罪とかをしないためだと思います。 だけれども、うちのような、はっきりした、別に、上に行って行って行っても何も変わらない、証拠も情況もある場合は、私は、一審の裁判員裁判だけで十分やと思います。
○井出委員 終わります。貴重な御意見を本当にありがとうございました。
○奥野委員長 次に、畑野君枝君。
○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。 望月晶子参考人、大城聡参考人、荻野美奈子参考人、本日は、貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。 荻野参考人には娘さんの話を伺わせていただきまして、胸が詰まる思いでございます。心からお悔やみを申し上げます。 まず、三人の参考人の皆さんにお伺いしたいんですけれども、裁判員裁判が始まりまして、国民の参加ということが大きく期待をされてまいりました。その国民参加の意義についてどのようにお考えになるのか、それぞれの立場からお話しいただけますでしょうか。
○望月参考人 私自身は、弁護士をしておりますので、司法界の中に身を置いているので、自分がそういう仕事をしていて、ほかの人にとってこんなに司法というのが縁遠いと感じられているとは思っていなかったといいますか、やはり弁護士に相談するのはなかなかハードルが高いですとか、えっ、裁判なんてと言われることはすごく多いですね。 そういう意味で、裁判員裁判が導入されて、一般の、通常であれば人生で裁判にかかわるような機会がないような方たちが、もしかしたら裁判にかかわるかもしれないという思いを持ってくださったり、裁判員裁判を経験されることで司法が身近になっていく、これは非常によいことだというふうに私は思っております。
○大城参考人 二つありまして、一つは、裁判所は非常によくしてくれているというのは経験者の方からもお話を聞くんですけれども、決してお客さんになってはいけないなと。主体的に参加をして、時には、裁判官と違う見方であっても、私はこう思うと、そこをちゃんと言うところまで含めてやはり参加の意味があると思うんですね。単に裁判所に呼ばれたから行きました、よくしてもらって、調査をしたら満足でしたということでは、それは司法に対する参加というふうにはならないので、主体的参加というのは極めて大事だと思っています。 もう一つ、経験者の方のお話を聞いていて思うのは、裁判員としての役割をしなければいけないというふうに非常に強く感じていらっしゃる。それは、裁判員になったので公平に判断をしなければいけないという形で、感情的になってはいけない、もちろん、しっかりとお話を聞いて、感情を受けとめた上で判断をしなきゃいけないんだけれども、自分自身が感情的になってはいけないので、裁判員としてしっかりと判断をしなければいけない。 そういう意味で、参加の中には、単に裁判所に行くという意味ではなくて、司法の役割を、その人自身も、国民も一人の人間として果たすんだ、そういう感想を言っている方が非常に多くて、それは、この裁判員制度をやった参加の意味というものが出てきているのではないかなというふうに感じております。
○荻野参考人 私は被害者側の立場でしか発言はできないんですが、被害者にとっては、裁判員裁判で、一般の方々が一緒に考えてくださっているということが伝わってくるんですね。自分が直接犯人に尋問をしたいときには、前もって裁判所の方から、犯人を直接攻撃するような質問は絶対したらいけないと言われるんです。そうしたら、どんな質問を私はしたらいいのと、弁護士の先生と考えて、私はこんな質問をしたいのに、なぜそれを言ったらいけないんですか。犯人にプレッシャーを与えるからやと言うんですよね。何か変な決まりやなと思いました。 ところが、裁判員の方は、私にかわって、私がこんなことを質問したいんじゃないかなと、そう思っておられるかどうかはわかりませんけれども、そんな質問をずばずばしてくださるんですね。だから、ああ、よかったなと思いました。 先ほど申し上げるのをちょっと忘れたんですが、裁判員裁判は二審、三審と持ち上げてもいいんじゃないかなということをもう一回申し上げます。
○畑野委員 次に、望月参考人に伺います。 参考人は、裁判員裁判の対象犯罪について先ほどから御意見を述べられました。それで、荻野参考人のお話も伺いながら、またそれを深めていらっしゃるということも伝わってまいりまして、こういう参考人の皆さんから私たちも本当に学ばせていただいて、また一緒に考えていかなくてはいけないというふうに思っているんです。 被害者のプライバシーを完全に守ることは困難だということもその理由として挙げられていらっしゃるんですが、そのあたりを含めて、もう少し詳しくお話しいただければと思います。対象犯罪の問題です。
○望月参考人 今おっしゃっていただいた被害者のプライバシーの問題、もしこれが一〇〇%保護されるのであれば、私は、対象犯罪であることもいいのかなというふうに思っています。 ただ、現在では、起訴状に被害者の氏名等を記載しない、匿名にするというようなことを検察庁の方で頑張ってやってくださっていますけれども、裁判所の方でこれを認めない、受け付けないというような、今、そういう問題が起きていまして、仮に起訴状が匿名にできたとしても、そこから先、証拠の中で被害者の名前を出さずにやれるのかとか、あと、先ほども申し上げましたように、被害場所が自宅であったような場合に、場所まで隠すということは恐らくほぼ困難だと思うんですね。 そういったいろいろな問題を全てクリアして、被害者の名前もわからない、住所もわからない、顔も出ないというようなことができれば、対象犯罪のまま残すということもあり得るんじゃないかというふうに思います。
○畑野委員 ありがとうございます。 次に、大城参考人に伺います。 「裁判員制度 市民からの提言 二〇一四」も、きょう皆さんいただいているんですけれども、市民が主体的に参加できる土壌をつくるためには裁判員の豊富な経験を共有することが不可欠だというふうに述べられています。その点について、なぜなのかということを少し皆さんの取り組みの中で伺いたいのと、冤罪の問題についてここで触れられていまして、刑事裁判の最大の使命は冤罪を防ぐことだというふうに言われております。 この点で、先ほど、著しく長期にわたる事件を裁判員裁判の対象事件から除外するという今回の法案の点について触れられまして、私、質問したんですが、除外するかどうかを判断する権限を持つのは地方裁判所ですということなんですね。ですから、外すかどうかの審理に国民が参加していないという問題があるんじゃないかということを私、質問の中でしたんですが、先ほどその点についても先生触れられておりましたので、その二つについてまとめて伺えますか。
○大城参考人 まず、二つ目の、対象事件、長期のものについてというのは、まさに裁判所だけで判断をするということで、恣意的にもしくは安易に裁判員対象事件が減ってしまうということは、それはやはり、一方で参加を求めておきながら、では対象事件から外しますということに安易になるのは非常によくないと思います。 その中で、ちょっと、どういう制度で国民の意見をそこに入れていくのかというのは、制度設計がなかなか難しいとは思いますけれども、もしそれが可能であれば、一つの方法として、特に、長期にわたるということについては、どのくらいが長期なのかというのは国民の意見がもちろんあると思いますので、それはやっていただくというのと、現実に今、百日を超える裁判では五、六百人候補者を呼び出しておりますので、候補者の呼び出しの数を多くすれば、その分、何とか御都合をつけて裁判員に従事できる方というのがいるので、ここの運営の仕方一つで全く変わってくると思いますから、ここは極めて運用が大事なところだと思っています。 もう一点、裁判員の経験の共有がなぜ必要なのかということなんですが、一つは、やはり裁判所というのが、非常に敷居が高く感じる方が多い。裁判所から通知が来ただけで、何だろう、訴えられたのかなと思ってしまうというような中で、では自分が裁判員になったらどういうことをやるのかということもなかなか伝わらないんですね。 例えば、お昼御飯はどうするのかとか、服装はどうかというようなことが、さっと経験者から聞けば、ああ、それだったら自分でできそうだというふうに思う面もありますし、先ほどお話ししたように、評議の中、もしこういうことが話せたら、今は感想ですけれども、それでも、そういうことが話せることによって、裁判員になったら自分がどういう役割を担うのかということをやった人から具体的に聞ける。次に裁判員になる人にとってこれほど心強いことはないというか、裁判員としてしっかりと職責を果たすための準備という意味でも、その経験を共有していくことというのは極めて大事だというふうに思っています。 〔委員長退席、柴山委員長代理着席〕
○畑野委員 大城参考人にもう少し聞きたいんですけれども、守秘義務の問題について、きのうもそんな議論になったんですが、どこが問題で、どのように変えていく必要があるのかということを、もう少し具体的に、裁判員になられている皆さんの立場でお話しいただければと思うのと、裁判員及び裁判員経験者の心理的負担はどんなものか、多分、最初に言った守秘義務の問題ともかかわってくるんですけれども、その点について少し伺えればと。それと、見直し規定の必要性をおっしゃっているので、この点についてもあわせて伺えますか。 〔柴山委員長代理退席、委員長着席〕
○大城参考人 守秘義務については、今、評議の秘密は守秘義務の対象というふうになっていますので、評議室で裁判官と裁判員が議論したことは全部守秘義務の対象なんですね。公判廷で見たことは、当然、公開の法廷ですから、そこについては守秘義務はないというふうになっていますけれども、裁判員として経験すること、傍聴する人と違うことというのはまさに評議室で経験をしたことですから、今の規定でいくと、実は、裁判員特有の経験というのは全く話せないと言ってもいいと思うんですね。 そういう形では、では何か自分の体験を伝えようと思ったときに、よかったですよという感想だけ伝えて、それで納得する人もいないでしょうし、伝える側も、やはりもうちょっと具体的に言えれば、これを例えば自分の子供に伝えるとか、もしくは学校でこれから裁判員になられるかもしれない人に自分の経験を地域で話すとか、いろいろなことがあると思うんですね。 そこの部分で、やはり、評議の中でどういう意見が出たのか、途中で意見がこういうふうに変わりましたと、「十二人の怒れる男たち」という映画がありますけれども、まさに、恐らく評議室でいろいろな議論がされて、議論を尽くした結果、一つの結論に至っていると思うんですけれども、今、私も含めてですけれども、評議室の中で裁判員が入ってどういうふうに議論をしているか全くわからない。そこに新たに裁判員として来てくださいというだけでは、やはりなかなか理解も深まらないでしょうし、行ってきちっと責任を持って自分ができるのか、人の運命を決めることを不安に思う方というのは、世論調査でも非常に多いです。そこの部分への不安を軽減するためには、やはり裁判員自身の経験をしっかり伝えていく。 そのために、守秘義務の範囲は、まさに裁判員の体験の中核部分の評議というのは、具体的に誰が何を言ったかということまで言うと、後であの人はああいう意見を言っていたというふうに言われて、自由に意見ができなくなるかもしれないので、そこは守秘義務の対象にすべきですし、例えば被害者の個人情報、プライバシーの問題というのもしっかりと守るべきですので、それは守秘義務の対象として当然残すべきだと思っております。 ただし、どういう意見が出たのかとか、例えば多数決だったのか全員一致なのか、そういう、意見が交わされた経過がわかるもので、どんな意見が出たのかという意見の中身については、話したとしても守秘義務の対象にはならないというふうにすべきだと思っています。 あとは、見直し規定と、もう一個は何でしたか。(畑野委員「心理的負担」と呼ぶ) 心理的負担については、いろいろな形で出てきているんですが、例えば、殺人事件で刃物が凶器になった事件を担当した方は、しばらくして、主婦の方なんですけれども、おうちで包丁を使って料理をしているときに、あっ、こういうものでも凶器になるんだと思って、その裁判の様子をフラッシュバックで思い出したと。そういう形でも心理的負担というのは出てくるんですね。 あとは、これは五十代の男性の話ですけれども、裁判からしばらくたって、ある夜、ふっと起きたときに、あの判決でよかったのかどうかということを考えましたと。 どこまでを負担というのか。御本人も、負担ではないというふうにおっしゃる場合もあるんですね。でも、それは恐らく、心理学的に見れば、負担を感じているからそういう反応が出ているんですよということもたくさんあるというふうに思っています。 本当にひどい方になると、それが原因になってお仕事をやめられている方もいます。それは、裁判の経験で不安定になったことによって仕事が続けられなくなってというような連鎖で大変な状況になっている方というのも、数は少ないですけれどもいらっしゃるので、そういう方へのケアというのはやはり手厚くする必要があると思っています。 見直し規定については、先ほども述べましたが、今言ったような守秘義務の点とか心理的負担の点というのは、今回は改善点の中には具体的には全く入っていないです。さらに今後、そういうものがどういうふうに影響してくるのかというのは時間がたたないとわからない部分もあると思いますので、それはやはり法律の中でしっかりと見直す。裁判所の運用だけではなくて、法改正も伴った見直しというのが必要になるものは、守秘義務も含めて必ずあると思いますので、そういう意味で、今回の見直しの中に、見直しをするという規定を入れていただきたいなというのは強くお願いをしたいところでございます。
○畑野委員 最後に、荻野参考人に伺います。 言い尽くせなかったことがまだまだあると思うので、お話しされなかったことがあれば伺いたいんですが、特に、裁判員裁判をされて、こういう点をもっと改善してほしいという具体的なことなどもありましたら、伺えますでしょうか。
○荻野参考人 先ほども少し触れさせていただいたんですが、被告人に対して面と向かっているんです。ちょうど私と、ブルーのネクタイの先生ぐらいのところに犯人が座っているんですね。私、どんなやつだったんだろうとちらっと見ますよね。にらみつけてはいけない。 それから、娘の遺影はA4で私は常に用意をしていたんです。それはもちろん、参加者の机の上には置けません。どんなちっちゃいものでも置けません。私たちの身内が傍聴席の一番前におりますが、その弟やら妹たちに託そうと思っても、大き過ぎてだめですと言われたんです。だから、このぐらいのちっちゃいもので、ましてや、犯人に見えないようにしてくださいと言われたんです。とにかく、犯人に、私の娘の、自分の殺した相手のことを、プレッシャーを与えないでくださいと言われるんですね。こんなに参加してつらかったことはないです。娘がここにいないから、一緒に参加したいと思ったのに、それが許されなかったというのは、一つ、すごく思います。それは、最高裁は残念ながら開かれなかったので、高裁でもそうでした。 あとは、質問ですが、やはり私は、犯人に対して面と向かって、びしっと、何で殺したんですかということを聞きたかったです。何で殺したんですか、殺す理由はないでしょうということは本当に聞きたかったんですね。でも、何で殺したんですかというのは、直接的過ぎるからだめやと言われました。 だから、そんなばかばかしいことを今の日本の裁判はやっているのかと、めちゃくちゃ腹が立ちました。
○畑野委員 ありがとうございました。 三人の参考人の皆さんから、いろいろな課題がまだまだあるということがわかりました。ありがとうございました。
○奥野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただき、我々も、国民的関心の高い裁判員制度の改良に向けていろいろと参考にさせていただきたいと思います。まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手) 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時一分散会