社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会 第2号
- 発言数
- 121 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 8
- 開催日
- 2012/08/07
会議録
○委員長(高橋千秋君) ただいまから社会保障と税の一体改革に関する特別委員会公聴会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 本日までに、吉田忠智君、大久保潔重君、鈴木寛君、亀井亜紀子君、紙智子君及び赤石清美君が委員を辞任され、その補欠として山内徳信君、安井美沙子君、難波奨二君、行田邦子君、田村智子君及び礒崎陽輔君が選任されました。 ─────────────
○委員長(高橋千秋君) 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、社会保障制度改革推進法案、子ども・子育て支援法案、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案、以上八案を一括して議題といたします。 本日は、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案及び社会保障制度改革推進法案につきまして、五名の公述人の方々から御意見を伺います。 御出席をいただいております公述人は、公益社団法人経済同友会常務理事伊藤清彦君、早稲田大学法学学術院教授菊池馨実君、明治大学公共政策大学院教授田中秀明君、一橋大学経済研究所准教授小黒一正君及び社会保障担当官庁国際研究機構(ISSA)準会員・国際年金比較研究所理事長渡部記安君でございます。 この際、公述人の方々に一言御挨拶申し上げます。 皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。 皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じております。よろしくお願い申し上げます。 次に、会議の進め方について申し上げます。 まず、公述人の方々からお一人十二分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。 なお、御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いを申し上げます。 それでは、まず伊藤公述人にお願いいたします。伊藤公述人。
○公述人(伊藤清彦君) 本日は、参議院の中央公聴会にお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。私は、公益社団法人経済同友会の伊藤でございます。 本日は、まず冒頭で、経済同友会と経済同友会の社会保障などに関する議論の経緯を簡単に御説明いたします。 まず、私ども経済同友会は、企業経営者が個人の資格で参加し、一企業や業界の利益を超えて、国民経済的な視点から様々な課題について議論し、提言するとともに、その実現に向けて活動を行っております。 さて、日本経済をめぐっては、失われた二十年とも言われておりますが、この間、経済の長期低迷による税収の減少、景気刺激のための財政出動、本格的な高齢化に伴う社会保障給付の膨脹などにより、我が国の財政は先進国の中でも最悪の状況にあります。 こうした状況下で、経済同友会としては、経済成長と歳出削減、そして歳入増を三位一体で実現しなければならないと考えております。特に、経済成長につきましては、先日、日本再生戦略が取りまとめられましたので、これを我々経済界も含めてきちんと実行していかなければなりません。さらに、社会保障制度を持続的で安心できるものへと抜本改革することによって、多くの国民が抱いている将来不安を払拭することが極めて重要と考えております。こうすることによって消費拡大も期待でき、更なる経済の活性化につながるのではないかと考えております。 では、その社会保障制度をいかに持続可能で安心できるものにするかでございますが、経済同友会のこれまでの議論では、抜本的な問題として、急速な少子高齢化に進む我が国において現役世代が高齢世代を支えるいわゆる賦課方式を今後も維持していくことは極めて難しいという立場で抜本的な改革提言をさせていただいております。 本日は、経済同友会が昨年取りまとめて発表いたしました十年後のビジョン、二〇二〇年の日本創生と、先月の夏季セミナーで採択しました東北アピールをベースに、配付資料に沿って年金制度について特に御説明をいたします。 それでは、まず経済同友会の年金制度改革における基本的な考えについてお話しします。 配付資料の二ページを御覧ください。 ①ナショナルミニマムを保障する公的制度と、それを超えて、自己責任や自助努力を基本に、民間の力を活用する制度とに分けます。②賦課方式を廃止し、公的年金制度で必要な財源は国民で広く負担することにより、制度の持続性を高めます。③給付と負担における世代間・世代内の格差を縮小します。④簡素で分かりやすく、個人が年金受給の見通しを立てやすい制度にします。 (2)経済同友会の提言する制度改革は、①公的年金の役割は老後の必要最低限の生活保障に限定するという観点から、新基礎年金制度を創設します。②必要最低限の生活保障を超える部分は、民間でも提供可能な積立方式による新拠出建て年金制度を創設します。③社会保障における給付と負担の個人ベースの管理と所得捕捉の強化を図るために、社会保障・税番号制度を導入します。 もう少し詳しく御説明いたしますと、新基礎年金制度につきましては、これは三ページですが、老後における最低限の生活を保障するため創設をし、六十五歳以上の全国民に一人月額七万円、物価スライドを適用し、給付します。財源は全額年金目的消費税とし、基礎年金部分における個人の保険料負担は廃止します。高額所得者にも給付をしますが、公的年金等控除を縮小し、将来的には総合所得課税の下で同控除を廃止します。 新拠出建て年金制度、二階部分につきましては、最低限の生活保障を超える新たな二階部分として、民間金融機関等が運営する新拠出建て年金制度を創設します。同制度は、収入のある国民は誰でも加入可能とします。新制度の導入に当たり、現在の厚生年金報酬比例部分は約五十年を掛けて積立方式に移行し、最終的に廃止します。現行の基礎年金、厚生年金において企業が負担しております保険料相当分は、過去期間に係る年金純債務の処理に充てるとともに、新たな二階部分となる新拠出建て年金に拠出します。 続きまして、一体改革の評価、社会保障制度改革国民会議で期待する結論についてですが、まず、社会保障・税一体改革の評価として、参議院本会議でも速やかに関連法案の審議を進めていただき、早期成立を図ることを強く望みます。本法案の成立は、逼迫する社会保障財源の確保のみならず、国家として財政再建への具体的な意思表示としても極めて重要です。 一方、社会保障諸制度の改革を通じた給付の抑制、世代間・世代内格差の是正などにつきましては、結果的に社会保障制度改革国民会議に先送りされました。現行の制度は、少子高齢化の進行はもとより、雇用の多様化等、経済社会の変化に対応しておらず、安定財源の確保のみでは持続可能な制度は実現できません。 そこで、社会保障制度改革国民会議で期待する結論ですが、真に持続可能な社会保障制度の確立に向け、以下の点について結論を求めます。 目的消費税による新しい基礎年金制度の創設、税七割と原則自己負担三割による七十五歳以上対象の高齢者医療制度への改革、マイナンバーと社会保障制度の連携による給付の効率化、経済成長率や高齢者人口の増加を踏まえたマクロキャップによる社会保障給付費の抑制です。 続きまして、年金機能強化法案についてですが、まず、基礎年金国庫負担割合二分の一の恒久化につきましては、二〇〇四年の年金制度改正で示された国庫負担割合二分の一への引上げを実現するための安定的財源を消費税で確保する点は評価できますが、二〇〇九年度までに税制抜本改革により安定的財源を確保するとされながらもそれが実現できず、毎年度、財源手当ての議論が繰り返されてきたことは極めて残念です。 基礎年金は、持続可能で、老後の最低限の生活を保障する制度に移行することが必要です。保険料と税が二分の一ずつで構成することを恒久化しますと、基礎年金の給付に対する負担の仕組みが複雑な制度のままで、持続性の高い制度にするには、全額を独自の安定財源で賄うことが望ましいと考えます。 次に、低所得高齢者等への福祉的給付についてですが、低所得高齢者に対する支援を年金制度と切り離す方向は評価できます。この方向性をより明確に打ち出すために、年金の受給権や加入期間とも切り離した制度にすべきと考えます。 低所得高齢者への対応は、消費税引上げによる逆進性緩和策、給付付き税額控除を主張しておりますが、や生活保護制度との関係も含めて、包括的な整理が必要です。低所得者対策は必要ではありますが、政策を重層的に行うことは非効率と考えております。 次に、被用者年金一元化法案についてです。 二階部分の統一、職域部分の廃止につきましては、職業により異なる年金制度を統合することは評価できます。年金制度は、職業選択に対し中立的であることが望ましいと考えます。また、雇用の流動化の観点からも、制度の統合を進めることは必要と考えます。統合により、転職、転業に伴う所要手続の簡素化や複数の制度運営に掛かっていたコストの削減が期待されます。 最後に、社会保障制度改革推進法案についてです。 社会保障制度改革国民会議の設置についてですが、社会保障改革について超党派の議員も含めて議論する会議体の設置は評価できます。社会保障は政権交代等に影響されない中長期的に安定した制度運営が必要でありますので、同会議で超党派の議員を含めた議論を早急に開始していただきたいと思います。会議の結論を改革につなげることに政治が責任を持つために、委員については、国会議員を兼ねることも妨げないとするのではなく、国会議員の参加を必須とすべきと考えます。 会議体の設置時期を早め、速やかに結論を出すことを求めたいと思います。それは、団塊世代への社会保障給付が本格化する前に抜本改革の実現が必要だからです。 推進法案の基本的な考えについてですが、負担増の抑制と持続可能な制度構築の両立を求めます。若年・現役世代への過大な負担は経済社会の活力をそぐことになりますし、企業にはグローバルな競争力の維持、向上が不可欠であり、社会保険料負担を含めた総人件費の増大は雇用への影響を及ぼすことになります。 税と保険料の役割分担を明確にした制度改革を期待します。保険料負担の適正化のために税財源を充てると、給付水準に対して本来必要な保険料負担の水準が正しく認識されない可能性がございます。国民から見て、受益と負担が分かりにくい制度になるからです。 以上、経済同友会の考えを述べさせていただきました。御清聴ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。 次に、菊池公述人にお願いいたします。菊池公述人。
○公述人(菊池馨実君) 早稲田大学の菊池と申します。法学部ロースクールで社会保障法という科目を担当しております。 本日は貴重な発言の場を与えていただき、ありがとうございます。社会保障を専門とする立場から発言させていただきます。 今回の一体改革は、それ以前の社会保障制度改革をめぐる議論の延長線上に位置付けられます。つまり、今回の与野党修正協議の前提となった関連七法案は昨年六月にまとめられた社会保障・税一体改革成案に基盤を置くものであり、さらに、この成案の基盤となる考え方は一昨年十二月に出された社会保障制度改革に関する有識者検討会報告書に示されています。そして、この報告書の内容は、前自公政権の下でまとめられた同様の報告書と多くの共通点を持っています。したがって、公的年金の制度設計や高齢者医療制度の枠組みなどを除けば、今回、三党による修正協議を経て法案審議がなされるに至ったことは、言わば必然的な流れであると考えます。 私は、社会保障が抱える課題を、持続可能性と公平という二つの側面から述べたいと思います。 まず、社会保障の持続可能性は、一般には財政面における持続可能性という面でとらえられます。今回の一体改革も、将来にわたる社会保障の財政的な持続可能性の確保を主眼としています。私は税の専門家ではありませんが、政権交代の後、増税しなくても財源を捻出できるという言説が現実とならなかったことは既に国民の知るところであります。また、景気動向を顧みない消費増税は経済に悪影響を及ぼすので避けるべきであるという議論は、経済成長を前提とした社会保障の充実を求める議論であると思われます。しかし、この論理は、避け難い人口高齢化の中で、経済財政上の制約ゆえに社会保障の給付内容や給付水準を抑制する議論へとつながる可能性があります。社会保障の充実と給付の重点化、運営の効率化を同時に行うという今回の制度改革の趣旨を十分踏まえながら、まずあるべき給付を構想し、その上で必要な財源や拠出の在り方を論じるという発想が必要と考えます。 さて、社会保障の持続可能性は、財政面のみならず、社会保障を支える国民の意識、つまり支え合いや連帯感、制度に対する信頼感といった面からも維持される必要があります。このことは、ある意味で、財政面の持続可能性以上に重要です。なぜなら、社会保障を支えようという人々の意識や制度への信頼感があれば、万一財政面での不安が生じたとしても、負担の引上げや給付の引下げを伴う制度改正に対する社会的合意が得られるからです。私が危惧するのは、この意味での持続可能性、つまり社会保障制度を支えようという社会的な基盤が揺らぎつつあり、このことが我が国に危機的な状況をもたらす危険性があるということです。 このことを公平という観点から考えてみたいと思います。 ここで問題になるのは世代間の公平です。我が国の社会保障給付費は、その七割が高齢者に向けられており、児童・家族関係は四%にすぎません。圧倒的に多くの部分が高齢者向けの給付です。そして、高齢者人口の増加につれ、この割合は更に増えていく可能性があります。例えば、公的年金は財政的にほぼ賦課方式化しており、現役世代の保険料で高齢者への年金給付が賄われています。 最近、若い学生と議論するのですが、彼らの多くは、自分たちは将来まともな年金をもらえないのではないかと非常に懐疑的です。将来的には更なる改正が課題となるマクロ経済スライドなど財政的な持続可能性が制度上インプットされていても、支え合いの感覚や制度への信頼感が揺らいでいるのです。私は、学生たちによく、欧米の若者や四、五十年前の日本の若者だったらデモをやるかもしれないよと言うんですが、今の若者はおとなしくて、そんなことは多分しないと思います。諦めているという方が近いかもしれません。 もちろん年金教育も必要ですが、もっと大切なことは、今の若者世代、子供世代、そしてこれから生まれてくる将来世代に負担の先送りはしない、今の大人世代で極力賄うのだという明確なメッセージを制度改革という形で行うことです。その点、今回の制度改革で子ども・子育てに一定の配慮をしているのは積極的に評価できます。 公的年金における高所得者の給付減額は、社会保険の仕組みを維持する以上問題があり、今回、修正で削除されたことは適切であったと思いますが、年金課税で調整することは十分考えられますし、今回見送られた高齢者の窓口負担の引上げや保険給付の範囲の見直しなど、社会保障制度全体を視野に入れ、所得のある高齢者に対する負担、給付の見直しを通じて将来の社会保障を支える世代、とりわけまだ一票を投じる権利を持たず選挙権すらない世代に配慮することは、現在に生きる大人世代の責務ではないでしょうか。今回改革は、その意味で積極的に評価したいと思います。 ただし、社会保障制度においては、世代間公平と並んで世代内の公平にも目を向ける必要があります。特に高齢者は所得、資産格差が大きく、今後の高齢者数の大幅な増加が多くの低所得、低年金の高齢者を生み出し、既に戦後最高となっている生活保護受給者数の更なる増大につながる可能性があります。他の社会保障制度の充実を通じて、生活保護受給に至ることを極力防ぐための取組が求められます。この点で、公的年金に税財源を用いて低所得者加算を設けた当初の法案の趣旨は理解できます。 ただし、拠出に基づく給付という社会保険の考え方からすればやや無理があり、年金生活者支援給付金という形で独立した制度に組み替えたのは積極的に評価したいと思います。 世代内の公平を考えるに当たってもう一つ重要な点は、日本型雇用慣行が崩れ、非正規雇用が三分を一を超える現在の日本において、雇用面の格差がそのまま社会保険適用の格差につながり、それがひいては高齢者の年金格差、所得格差につながるということです。 厚生年金も健康保険も、正規従業員の四分の三に満たない非正規従業員を適用対象外としています。事業主のみならず労働者も保険料負担を負うことから適用を望まない場合があると言われますが、長期的には、高齢になったときの低所得、貧困の回避につながり得るのですから、適用拡大は労働者にとってメリットがあります。短時間労働者への社会保険の適用拡大に向け第一歩を踏み出した今回の改正案は評価できますが、まだ第一段階にすぎず、更なる取組を期待したいと思います。 なお、年金、保険においては職種別に保険者を組むより保険者単位を大きくする方が保険財政上望ましく、また、職種のいかんにかかわらず負担と給付の平等を図ることが望ましいことから、被用者年金を一元化する方向性には賛成であります。 最後に、社会保障制度改革推進法案についてですが、今回のロンドン・オリンピックの開会式でイギリスの医療制度、NHS、ナショナル・ヘルス・サービスを称賛するパフォーマンスが行われました。イギリスは医療サービスを税方式で提供しています。医療も介護も年金も税方式で行うことは理論的には可能です。しかし、我が国の社会保障制度は戦後一貫して社会保険の仕組みを中心に構築されてきました。雇用慣行の変化や格差、貧困の拡大といった社会経済状況の変化への対応は必要ですが、我が国では、拠出に基づく給付という一対一の対応関係が権利性に結び付きやすいことや加入者相互の連帯が見えやすい制度であることなど、社会保険が根付いており、今後とも堅持すべきです。その意味で、推進法案において年金、医療及び介護において社会保険制度を基本とするとうたった点は高く評価したいと思います。 推進法案では、医療保険における療養の範囲や介護サービスの範囲の適正化をうたっています。本格的な高齢社会への対応という面で、負担の引上げの一方で、給付範囲の適正化の議論は避けられません。 また、附則で生活保護制度の見直しについて規定していますが、保護基準の見直しのほか、貧困の連鎖を断ち切るための自立支援策や生活保護受給に至る前の第二のセーフティーネットの構築など、社会保険中心とはいえ、その外にある社会保障制度全体の見直し、充実も重要な課題であります。 ただ、一つ懸念されますのは、今回の一体改革の議論の中で障害者施策についてほとんど触れられていないことです。推進法案も同様です。中長期的な観点から見た場合、社会保険中心の日本の社会保障制度の中で、税中心の障害サービスに今後どれほどの財源を振り向ける余地があるのか、障害者施策が孤立していくのではないかという強い危惧があります。 最後に、私は、今後の少子高齢化社会を乗り切る上で、経済成長がそれほど望めない中でも国民が応分の痛みを負うことで子育て支援、介護、医療などの新しい雇用の場を創出し、地域経済に活力をもたらすだけでなく、さらに社会保障の財政的な持続可能性を図ることを通じて人々の安心感が高まり、労働者の能力開発が進み、それが経済と財政の安定につながるという面があると考えます。そうした考えが今回の一体改革のそもそものバックボーンになっていたはずです。その突破口を切り開く改革として、私は、法案の早期成立を望みたいと思います。 御清聴ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。 次に、田中公述人にお願いいたします。田中公述人。
○公述人(田中秀明君) 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。 今般の社会保障・税一体改革につきまして、特に年金と医療に焦点を絞りましてお話をさせていただきます。 お手元にパワーポイントと拙稿の一枚資料が配付されていると思いますが、パワーポイントに沿って御説明させていただきます。 最初に、これから申し上げる意見のポイントを申し上げます。 第一に、今般の社会保障・税一体改革では、現在の年金、医療や税などの各制度の問題点がデータに基づき十分に検証されていると思えません。構造的な問題を明らかにした上で、それを解決するための手段や選択肢を示し、具体化の工程表を作るべきですが、必要な改革の検討は先送りされ、全体像がよく分かりません。 社会保障等の歳出の見直しが不十分なため、幾ら増税しても財源は足りないと思います。また、投入を増やしても、基本的な問題は解決されていないので、貧困や不平等は十分に是正されないと考えます。 基本的な問題は、保険にもかかわらず大量の一般財源が投入されているため保険のガバナンスが働かない一方で、セーフティーネットが不十分であることです。保険原理と再分配原理を区分し、公私の役割分担を明確にすることが改革の基本戦略だと思います。 役所は、社会保険というのは給付と負担がリンクするというふうに説明しています。私もすばらしい制度だと思います。でも、実態はそうなっていないということをまず認識するべきではないかと思います。 最初に、年金につきまして、データに基づきお話をさせていただきます。 一―一を御覧ください。日本の年金支出は既にOECD諸国の中で非常に高い水準に達しております。 それから、一―二、各制度別の社会保障給付費の推移を見てみますと、ここ二十年弱の間に年金の支出が一番増えているわけです。 この増えていること自体は決して問題であるわけではないのですが、次の一―三を御覧いただきたいと思います。これは、社会保障制度には大なり小なり一般財源が投入されています。各制度に投入されている一般財源が一般財源全体のうちどれだけのシェアを示しているかというものを表しているものなんですが、一番一般財源が投入されているのは厚生年金なんです。 厚生年金というのは比較的豊かな人たちが入っている制度ですね。その人たちに一般財源が一番投入されているということで、どうしてこういうふうな制度になっているかです。これは基礎年金を通じて一般財源が投入されているからです。 例えて申し上げれば、年収百五十万円あるいは二百万円の非正規雇用者がコンビニで買ったおにぎり、消費税を払いますね。その消費税が大会社のOBの基礎年金に充当されているわけです。他方、非正規雇用者は納付期間が短いわけで、年金がもらえないかもしれないということで、これが非常に公正かと。保険料を納めていないから自業自得だというのであれば、それも一つの私は公正だと思いますが、そうとは言えないわけですね。 それから、年金制度への資源の投入を御説明しましたが、問題はその成果ですね。資源が投入されて貧困が小さいとかということでその成果を測るべきだと思うんですが、一―四を御覧いただきますと、日本の高齢者の貧困率は、これも皆様御承知だと思うんですが、非常に高いわけですね。誤解のないように申し上げれば、日本の高齢者の平均的な所得水準は、現役世代と比べてですが、OECD諸国の平均を超えております。つまり、平均は非常に高いわけです。それからさらに、年金支出への投入も非常に高いわけです。ただし、貧困率は高いわけですね。 なぜこういうことになっているかということで、関連するデータを申し上げたいと思います。 一―五、生活保護の受給者です。受給者のうち半分以上は高齢者なんですが、これを言いたいわけではなくて、年金をもらっている人の数が減っているということなんです。つまり、国民年金は昭和三十六年に導入されまして、もう既に成熟しているわけですね。既に成熟しているのに年金をもらっている人が少なくなっている、あるいは金額も増えていない。端的に言って、基礎年金はセーフティーネットになっていないわけですね。 なぜそうなっているのかということを見ますと、次の一―六、これも皆様御承知だと思うんですが、国民年金の保険料を払っている人が半分ぐらいしかいないわけですね。 なぜそうかと申し上げると、一―七を御覧ください。これは私が計算した図なんですが、一号、二号被保険者の総所得のうち年金保険料の割合を示したものです。一号を見ていただければ非常に逆進的だというのがお分かりだと思います。それから、二号も、サラリーマンですね、九百万円を過ぎると逆進的になっているわけですね。 それから、一―八を御覧ください。高齢者に対する税と保険料の負担がどうなっているかと。これは、生産労働者の平均賃金の二倍、非常に高い所得を持っている高齢者、年金受給者と勤労者を比べた図ですが、日本は非常に高齢者の負担が低いわけです。私の試算では、所得税、住民税、消費税、それから年金、医療、介護、雇用の四保険料の合計は、高齢者の負担率は所得水準によっても違いますが、平均すると現役と比べて一人当たり約五%ぐらい低い、しかも、所得が高いほど高齢者の負担率は現役と比べて低いと、こういうのが実態なわけです。 年金に関する幾つかのデータをお示ししましたが、一言で言うと、日本の年金制度は資源をたくさん投入している一方で、貧困の予防という意味ではパフォーマンスが低いわけです。どうしてこうなっているのかということについてお話しします。 二―一の年金制度の実態の資料を御覧ください。これは日本の年金制度の実態を表しているものです。役所が出している資料は一階建て、二階建てという資料を出していると思いますが、それは実態を表していません。日本の年金制度というのは国民年金、厚生年金、共済年金が別々に分立しているものです。基礎年金というのは年金制度ではなくて、財源を調整するための制度なんですね。これは単に図のかき方ではなくて、日本の年金制度の極めて根本的な問題であって、こういう現状になっていることを初めて認識してこの基礎年金制度の矛盾を理解できるというふうに思っています。この財政調整自体を私は否定しているわけではありません。問題はその財源調整の方法なわけです。 二―二を御覧ください。これは、簡単に言うと、サラリーマンが基礎年金の負担において割を食っていると。御承知のように、国民年金は空洞化して保険料を払っていない人が多いので、彼らがもし、本来払うべき人が払っていたとすればサラリーマンの負担は二割ぐらい少なくなるということなんですね。 問題は、この基礎年金に係る財源をどうやって調整しているかと。思い出していただくと、一号の被保険者は、原則として、一人、所得にかかわらず一・五万円。二号は基礎年金の負担額は分かりません、報酬比例と一体として取っていますから。三号はゼロなわけですね。もし基礎年金が国民全体でみんなで支えるという制度であれば、同じルールに基づいて負担すべきではないでしょうか。 これまでの説明を踏まえて年金制度の問題を整理したのが二―三でございます。 第一に、職業別に年金制度が分立していて、主婦の年金の問題とか年金記録の問題も出ていますが、根本的にはこの分立した制度にあるということなわけです。 それから二番目は、国民皆年金になっていないということで、特に非正規雇用の増大によって貧困は増える見込みなわけです。それから、ポイントは、国民皆年金は社会保険という制度では達成できないということなんです。これは私は国民皆年金の良しあしを議論しているわけではなくて、論理的な結論として社会保険では実現できない。公的年金を大きく分けると、社会保険か国民皆年金。国民皆年金は、その財源は論理的に一般財源でしかあり得ないんですね。 それから三番目は、一般財源の投入と負担の不公平ということで、先ほど非正規雇用の話をしましたけれども、現実にはそういう状況になっているわけです。 次の二―四、今回の一体改革の年金部分の問題ですが、まず年金財政のマクロ的な分析、検討がないと。元々二〇〇四年の年金改正の予測からも大きく乖離しているわけで、どのように、何で乖離したのか、それを分析した上で、どうやって年金財政を是正、改善するのかと、そういう議論が必要だと思うんですが、そうした議論は行われておりません。 それから二番目に、ますます曖昧になる基礎年金の位置付けということで、そもそも二分の一にして何が改善するのか私は今まで聞いたことがございません。税だろうが社会保険料だろうが、国民が負担するものは同じなはずです。 それから、低所得者への加算がございますけれども、これは、低所得者を救うこと自体、私は何ら否定しておりませんけれども、ますます曖昧になると。これまで真面目に保険料を納めた人は、まさに正直者がばかを見ると、そういう可能性があるだろうと思います。他方で、最低保障を含めセーフティーネットの検討が不十分ではないかと思います。 それから三番目に、雇用や税などの他の制度との連携が不十分ということで、まさに社会保障と税が別々の改革で議論されているんではないかなと。保険である以上、保険給付はきちっと払い、他方、課税で何で給付を取り戻そうとしないのか、そういう設計が行われていないと思います。 それから、少し時間がなくなりましたが、医療についてお話ししたいと思います。 三―一を御覧ください。医療も、基本的には日本の医療支出はOECD諸国とそれほど遜色はございません。これ以外にも含まれていない支出もありますので、それほど遜色はありません。 問題は、医療は年金より複雑で、三―二にございますが、投入した結果、アウトカムが改善しているかどうかということなんですが、三―三を御覧いただくと、これももう既に御議論されていると思いますが、日本では、ベッド数だとかMRIといった機器、それから歯医者とか薬剤師、それから医師一人当たりの診療回数などはOECDのトップクラスなわけですね。確かに日本人の平均寿命は高いですけれども、本当に医療サービスの結果からいうと実はそうではなくて、OECDは、日本では医療資源が非常に無駄に使われているということを指摘しております。 それから、医療も年金と同じように保険料を払えない人が増えておりまして、三―四は滞納世帯の割合、それから、三―五は軽減世帯の割合を示しています。 これは何でこうなっているかというと、三―六、医療保険の負担率を見てみますと、医療についてはサラリーマンも非常に逆進的、所得が増えるほど負担が低くなると。それから、次の三―七、介護保険料の負担率を見ると、これはもう相当逆進的だということが分かります。 医療制度の基本的な問題をまとめますと、四―一ですが、まず費用対効果を考えない非効率な資源配分にあると。規制、市場メカニズム、共に弱い統制になっている。それから二番目として、制度の分立と負担の不公平にあります。 それでは、今回の一体改革によって医療部分の問題点がどの程度改善されるかということですが、四―二を御覧ください。まず、問題が解決されるかよく分からないんですね。それは、医療の問題が分析、整理されていませんので、提案されている施策によってそうした問題が解決されるのかよく分からないと。それは、提案されている施策の多くは、既存の施策の延長や微修正にすぎないため、本質的な問題解決につながらないというふうに考えております。 最後に、結論をまとめたいと思います。五―一を御覧ください。もはや日本の社会保障支出は、OECD諸国の中で、中から高の規模に達しております。他方、社会保険といいながら大量の一般財源が投入されていまして、保険のガバナンスが効かない。この結果、非効率な資源配分をもたらしている。他方、社会保険料の負担が逆進的であって、セーフティーネットの機能が弱いということです。今般の一体改革により、増税によって赤字の拡大は一時的に抑制されると思います。そうだとしても、社会保障費の増大を抑制することはできない。よって、また本質的な問題も解決されないというふうに思っています。 最後に、方向ですが、五―二、年金・医療改革の基本戦略は、保険原理と再分配原理を区分して公私の役割を明確にすると。簡単に言えば、恵まれた人は我慢してもらうと、そういう改革を目指すべきだろうと思います。 最後に、一点だけ補足になりますが、五―三、改革のプロセスでございます。
○委員長(高橋千秋君) そろそろおまとめください。
○公述人(田中秀明君) はい。 社会保障・税の議論は利害の対立になりやすいんです。だからこそ、まず各制度について徹底した問題点を洗い出し、その上で改革の費用対効果を議論すべきだと思います。 最後に、オーストラリアも実は政権交代によって社会保障・税の一体改革を始めました。結論からいえば、残念ながら日本と雲泥の差がございます。 以上、ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。 次に、小黒公述人にお願いいたします。小黒公述人。
○公述人(小黒一正君) 本日は、この貴重な公聴会にお呼びいただきましてありがとうございます。一橋大学経済研究所准教授の小黒と申します。 先ほど三人の公述人の方々から細かい論点等についてお話がございましたが、私はもうちょっと大きな話についてお話しさせていただきたいと思います。お手元の方にプレゼン資料と、あと週刊エコノミストの記事が三枚ございますけれども、そちらを御覧いただきながら説明させていただきたいと思います。 まず、お手元の資料の三ページ目でございますけれども、御承知のとおり、今、社会保障・税の一体改革を進めてございまして、二〇一四年四月に八%、それから二〇一五年十月に一〇%という形で段階的に引き上げるということをしているということでございます。 私、基本的にはこの消費増税についてやるべきだというふうに思っておりますけれども、ただ、どうしても、今お話がございましたように、まだ不十分である面が否めないという点があるように思います。 一つは、三ページ目の下側にございますけれども、これは内閣府の経済財政中長期試算というものがございますけれども、二〇二〇年度に向けて、じゃ、これからその消費税増を行った後にどうなるかということでございますが、またプライマリーバランスが赤字になるということでございます。大体この赤字、十七兆から十八兆ぐらいと言われていますけれども、ここをまた結局、消費税一%で二・五兆円入るとした場合に、更に増税するとなりますと、六%から七%ぐらい更に増税しなければならないということになります。したがいまして、最大一〇%上げたとしても、更にまたその上で一六パー、一七パーの消費税率になるということになります。 では、これで消費税率が、上げるのは最大一六パー、一七パーで終わりになるかということでございますが、実はそうではないと。お手元の資料の四ページにございますが、これはいろんな、海外も含めた、国内の経済学者の試算をちょっと簡略に載せてございます。 例えば、アトランタ連銀という、FRBの下にある連銀ですけれども、そこのブラウンさんという方と、あと南カリフォルニア大学のジョーンズ先生という方がおりますけれども、結局、じゃ、どれぐらい消費税率を社会保障等を抑制しなかった場合に必要なのかということを推計してございます。ここでは、二〇一二年に消費税を五%から一〇%にするということで、日本のシナリオとはちょっと三年間ぐらい違うわけですけれども、その場合、二〇一七年に増税した場合、消費税率換算で大体三三%まで増税しなければいけないということになるということでございます。 重要なのは、このベースラインと先送りケースと呼ばれているものを比較するということでございまして、一七年ではなくて五年後の二二年に一度に増税する場合に、じゃ、最終的にその財政が安定化するために必要な消費税率は幾つかということを計算してございます。これを見ますと、三七・五%という形になりますので、どういうことかと申しますと、一七年に増税すれば三三%ですが、五年遅らせると四・五%消費税率が上がるということになります。 もうちょっと分かりやすく言いますと、一年間増税が遅れるたびに、大体〇・九若しくは一%ずつ引き上げなければいけない消費税率が上がっていく。若しくは、税率を上げるのでなければ、社会保障を大体二・五兆円ぐらいカットするということが必要になるということになります。 下側の方には、慶応大学の櫻川先生と学習院大学の細野先生の試算でありますとか、私と、あと同じ一橋大学経済研究所教授の小林慶一郎先生等の試算を載せてございますが、御覧いただければと思います。 今のような状況で改革を少しでも早くやった方がいいわけですけれども、なかなかその抜本改革が進まないという状況で、結局、何が起こっているかということでございますが、五ページ目のスライドを見ていただければ、これは内閣府が平成十七年度に出しました年次経済財政報告に載っております世代ごとの受益と負担の構造になってございます。六十歳以上の方々では、将来に受け取る年金、医療等の受益の合計とそれから生涯に支払う税、保険料の合計、その差額が大体四千八百七十五万円得するという形になってございますけれども、世代が若くなるに従いまして、結局、将来世代では四千五百八十五万円も損すると。もう少し言いますと、孫と祖父母では一億円損をするという話がございますけれども、大体一億円程度の世代間格差が発生しているという状態になっているということでございます。 この状態が引き起こされているそもそもの原因としましては私二つあると思ってございまして、一つは、財政赤字で先送りしている。野田総理の言葉を使いますれば、将来世代の懐に手を突っ込んでお金を引っ張ってきているということになると。それからもう一つは、年金それから医療、介護が特徴的だと思いますけれども、現役世代から取ってきた財源をそのまま右から左に、引退世代にお金を流す賦課方式と呼ばれている制度が引き起こしているということになっているということでございます。 では、これを解決するためにはどうすればいいかということなんですけれども、いろいろ細かい論点はあると思いますが、私は二つ解決策があると思います。 一つは、国民から見まして分かりやすいシステムにするという意味で、ここのスライドの六ページに書いてありますように、社会保障予算をきちんと区分経理する、ハード化するという、経済学ではハード化というふうなワードを使いますけれども、年金、医療、介護を一般会計等から完全に切り離しまして、財源、引っ張ってきた財源と給付する中身をきちんとその中で閉じるということをする、そういうことによって透明化を図るということがやはり重要ではないかと思っております。 じゃ、今、年金とか医療とか、特別会計があるのではないかという話がございますけれども、実はそこはちょっと不十分なところがあるということになると思います。どういうことかと申しますと、今、大体社会保障給付が百兆円ぐらいあったときに、入ってくる保険料があるわけですけれども、この間を公費で埋めているという形を取っているということでございます。この公費は基本的には国の国庫負担という形で一般会計から流れるわけですけれども、そこが大体毎年一兆円以上のスピードで伸びていっているということになると。 そうしますと、ほかの成長に回す財源、特に教育でありますとか研究開発でありますとか、あと公共事業についても、場合によっては、地方にばらまくというような議論もありますが、そうではなくて、都市部に集中投下すればもう少し日本経済全体を活性化させるような公共投資もあると思いますけれども、そういった財源を圧迫してしまうと。そうしますと、将来の潜在成長率が落ちますので、年金、医療、介護等の賦課方式でまず世代間格差を発生させると同時に、財政赤字まで先送りすると。しかも、その上で、ほかの成長が必要な予算を圧迫することで将来の潜在成長を落とすという形で、これもまた将来世代に負担を残すというような仕組みになっているということでございます。 では、それを廃止するためにはどうすればいいかといいますと、非常に簡単でございまして、ありていに言えば国庫負担、一般会計から年金とか医療とかの特別会計に流れているリンクを遮断して、きちっと年金、医療、介護等の財源はそっちの財源できちんと調達するということをすると。ありていに言えば、独立採算の形を取るという形を取れば、受益と負担の構造が年金、医療、介護で分かりやすくなるということになると思います。 その状態の下で、今度は高齢化が進みますとだんだん給付が増えていくわけですけれども、そこでどんどんその財源を、若しくは消費税、若しくは保険料を引き上げるということを行いますとどういうことが行われるかということですけれども、現役世代の負担が賦課方式のままでは高まっていってしまうということになります。 そういった状況を防ぐためには、お手元の資料のスライド七ページ目になりますけれども、私としては、こういう事前積立てというものを導入することによって負担を抑制することができるのではないかというふうに考えております。 これはどういうものかと申しますと、例えば給付水準、年金が毎年一人当たり三百万円と一定だった場合に、今は三人で一人の高齢者を支えているわけです。そうしますと、大体一人百万円ずつ拠出するという形になります。ですけれども、これから高齢化をしていきまして、肩車型と呼ばれますけれども、一人で一人の高齢者を支えるという形になりますと三百万円を拠出しなければいけない、若しくは三百万円の負担が重たければ高齢者の給付をカットしなければいけないという形で世代間対立が発生するわけですけれども、そうすることはせずに、最初から負担が上がっていくんだとすると、最初は一人当たり百万円拠出する、それから二〇五〇年ぐらいになりますと三百万円拠出するわけですけれども、三百万円と百万円の間ぐらいですね、例えば二百万円ぐらい、最初から少し保険料を多めに取っておいて、その保険料が取っておくと何が起こるかといいますと、最初入ってくる収入の方が高齢者の方々に支払う給付よりも多くなりますので、このスライドの右側のようになりますが、だんだん積立金が増えていって、高齢化がもっと進んだ段階ではその積立金を取り崩して将来の保険料の上昇を抑制するというようなことができるということになります。そうしますと、負担の水準も大体一定に、それから給付の水準も一定にするということができるということでございます。 実は、この事前積立てと呼ばれているものは、お手元の、週刊エコノミストの記事をちょっとお配りしているんですけれども、よく国会等で賦課方式が駄目だったら積立方式にすればいいというような議論があります。実はこれ余り生産的な議論ではございませんで、このエコノミストの記事の五十五ページになりますけれども、五十五ページの図一と図二、図一の方は実は積立方式に移行するような方式でございまして、それから図表二というのは現行制度に実はなるんですけれども、実は現行制度の枠内であっても、先ほど言ったように、今公的年金というのは現役世代から高齢者にトランスファーする賦課方式の部分と、また、別途積立金と呼ばれている、百四十兆円であったり百三十兆円であったり、最近積立金の規模が変わっておりますけれども、この積立金を将来の高齢化が進んでいくときの保険料の上昇を抑制するためのバッファーとして利用することによって給付と負担のところをきちんとある程度平準化するというものとして使用できると。 これは私の推計ではございませんが、学習院大学の鈴木亘先生等の推計によりますと、実は積立方式にすると何か五百兆円とか七百兆円ぐらいのすごい膨大なお金をためなければいけないという話がございますが、実は、事前積立てではピーク時でも二百兆円ぐらいにすぎないというような推計もございます。 したがいまして、いろいろ議論がございますけれども、最後まとめさせていただきますが、いろいろ細かい年金、医療等、介護での問題点はあるということは承知しております。しかしながら、少なくとも世代間の問題について解決する際には、先ほど申し上げましたように、社会保障予算のハード化、それから、若しくは事前積立てというもの、これは将来の高齢化に備えた保険料上昇を抑制するためのバッファーでございますけれども、そういったものを利用することによりまして改善することができるのではないかというふうに考えてございます。そういったものをつくった上で、あと世代内の格差ですね、低所得の方々、それから中所得の方々、高所得の方々の中で予算を配分していくような形で改善していくということができるのでないかということに考えております。 以上でございます。ありがとうございました。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。 続きまして、渡部公述人にお願いいたします。渡部公述人。
○公述人(渡部記安君) 本日は、お招きいただきましてありがとうございます。私は、渡部記安と申しまして、ジュネーブに本部のあるILO、国際労働機構やISSA、社会保障担当官庁国際研究機構などと密接に連携して社会保障制度、特に公私年金制度の国際比較研究を行っている者でございます。 ところで、国際比較研究の視点から見ますと、最近の日本人は上から下まで、何事においても、とかく枝葉末節的な事項だけに強くこだわり、しかもそれを不必要に複雑かつ煩雑に論じて、最も重要な根本的事項を忘却する傾向が非常に強いと私は危惧しています。 このため、私は本日、主要問題点だけに焦点を絞り、その本質に関する私の見解を順次簡潔に分かりやすく申し上げます。 一、消費税の社会保障目的税化の国際動向。 まず、逆進性の強い消費税を社会保障目的税化している先進国は、果たしてどの程度存在するのか。アメリカ連邦政府は消費税に相当する付加価値税を導入していないため、先進諸国動向把握のためにEUの動向を概観したい。 最近のEUにおける社会保障財源は、社会保険料五九%、税財源三八%、その他三%である。この税財源三八%の内訳を検討すると、一般税三四%で、目的税が僅か四%である。次に、この目的税を検討すると、付加価値税を社会保障目的税としている国は皆無である事実が容易に判明する。我々は、この単純明快な事実を厳粛かつ明確に認識すべきである。 すなわち、税制の公平性原則から見ても付加価値税は逆進性が非常に厳しく、さらにILOやISSAが強調する社会的連帯性と所得再分配の機能に基づく社会保障制度の本質に付加価値税が全く適合しない実態を、我が国とは異なりEU各国が明確に認識しているのである。 要するに、消費増税を社会保障目的税化とする本法案は、税制と社会保障制度に関する世界の基本原則に明確に違反する異常な法案である事実が容易に判明した。 二、軽減税率導入の有無。 次に、付加価値税に軽減税率を導入していない先進諸国は多数存在するのか。 最新のEU資料によれば、加盟二十七か国の標準税率は一五%から二五%まで分布しているが、主要日常生活用品に対してゼロ%を含む何段階かの複数軽減税率を全てのEU加盟国が導入し、逆進性緩和のために誠実に対応している立法、行政の実態が容易に判明する。 もちろん、多数の主要生活用品の中には、軽減税率の適用範囲や事業者事務負担などで議論があるものも一部には存在するが、税制の実質的公平性確保のため全体としては全てのEU加盟国が逆進性軽減策として複数税率を導入している。二〇一一年に付加価値税を引き上げた英国でも、主要日常生活用品の税率ゼロ%を堅持している。 三、抜本的行政改革などの緊急不可欠性。 我が国の国家・地方財政の急速な悪化に鑑みれば、将来的には一定の増税も必要だが、増税には、主権者である国民に対する一定の手順が必要不可欠である。 すなわち、政府はまず立法・司法府とも強力に連携しながら、行政・立法・司法府の抜本的合理化と経費節減策を実現することが緊急不可欠であり、その実績を国民に具体的に提示して初めて増税の議論を開始すべきである。消えた年金、消された年金に象徴されるように、我が国の行政は世界的にも非常に不透明、非効率、経費高である。 四、増税の優先的対象は、消費税ではなく、所得税、相続税など。 前述の抜本的行政改革などの達成に基づく大幅経費削減を実現した後においても、財源不足が深刻な場合に初めて、政府は国民に対して増税案を提起すべきである。その場合においても、実質的租税負担率などで非常に問題の多い、国際的にも問題が多い所得税、相続税などをまず増税対象として、超少子超高齢の二十一世紀日本社会における納税者間の公平性や世代間の公平性などを実質的に確立しながら財政健全化を図るべきである。 しかし、本法案は、これら所得税、相続税などの増税策を全く放棄したまま、逆進性が顕著だが税収が安定した消費税を直ちに増税するものであり、社会保障制度を口実とした非常に安易かつ無責任な増税策だと評価せざるを得ない。 五、逆進性対策と番号制度。 政府は、消費税の逆進性緩和策として給付付き税額控除制度導入も計画している。しかし、この制度は事後的救済策にすぎず、ILOやISSAが伝統的に提唱する社会的連帯性と所得再分配の機能を基盤とする社会保障制度の本質と基本的に矛盾する。さらに、給付付き税額控除制度の導入には正確な所得把握のための番号制度が必要不可欠であるが、このため政府は社会保障・税共通番号法案も提出しているが、これは本質的に全く不十分である。 法案の前提となった大綱においても、全ての取引や所得を把握し、不正申告や不正受給を完全になくすことは困難である、事業所得や海外資産、取引情報の把握には限界があると率直に認め、さらに六千億円超の導入費用を容認しながら、政府は給付付き税額控除制度導入は最も早くても二〇一七年までは不可能と明言したではないか。 六、ILOやISSAの基本原則を無視した日本の社会保障制度。 社会保障・税一体改革法案と標榜しながらも、当初から確固とした明確な理念は見られず、批判されるたびに社会保障制度への投入財源内容は二転三転しており、社会保障に名を借りた増税策にすぎない実態が容易に判明し、信頼不可能である。 さらに、世界各国が誠実に遵守するILOやISSAの基本原則を我が国政府や社会保障学者たちは伝統的に無視、軽視してきたため、我が国の社会保障制度は急速に崩壊しつつある。すなわち、我が国では、社会保障制度における社会的連帯性、所得再分配の機能充実とポリティカルリスクの排除、すなわち政治家、官僚リスクの排除、制度設計面における公平性、透明性、効率性の確立のみならず、制度運営管理面における公平性、透明性、効率性の確立、すなわち社会保障ガバナンスの確立が発展途上諸国と比較してさえも全く不十分である。所得保障の年金制度や生活保護制度はその象徴的存在であり、被用者年金一元化法案も厳しい成熟率を無視して共済年金の既得権維持を大前提とする。最低保障年金案も保険料徴収厳格化を放棄して、国家財政逼迫下での税金による安易な給付ばらまき策にすぎない。 なお、ポリティカルリスクとは、政治家、官僚リスク。ポリティカルリスクとは、本来、発展途上諸国の問題である。しかし、負担増、給付減を繰り返しながら年金責任準備金を給付五年分以上にまで累増させて、金融市場で非効率、不透明な資金運用を繰り返す我が国の年金政策は、僅か二、三か月分の責任準備金で健全な年金財政を堅持しているドイツ代表からポリティカルリスクの典型と正式なISSA会議でも厳しく批判されたではないか。 このため、超少子超高齢の二十一世紀日本社会において、国家・地方財政深刻化に対応した社会保障制度全体の公平化、透明化、効率化に基づく具体的な経費節減策も緊急不可欠であるが、本法案においては、これらに関連する法案も含めてこれは実質的に皆無である。私が研究発表を要請されている八月末のISSAウランバートル専門家会議の主要課題の一つもここにある。 七、社会保障、地方自治の抜本的改革策が実質的に皆無。 国家とは人口と領土で構成されるため、国家の持続的で健全な発展のためには人口構成ピラミッド化が緊急不可欠である。 このため、社会保障などの政策も、年金、介護、医療などの高齢者中心から人口増への出産、育児、男女共同参画や非正規雇用対策などへの重点移行、官民格差撤廃のための年金、医療などの制度一元化、社会保障庁創設による年金、医療などの運営管理の統合に基づくガバナンス確立、スウェーデンや米国を参考に保険料徴収の国税庁統合による徴収効率化、英国年金数理庁などを参考とした客観性と中立性を強く要求される調査研究機関の人事、財政の政策当局からの独立性確保、例えば、毎回人口予測が著しく狂い国際的にも批判の強い社会保障・人口問題研究所の廃止と新機構創設等などが国家的緊急課題であるが、その抜本改革策が全く皆無に近く、政府の危機感が大変欠落している。 次に、我が国の審議会・調査会制度、特に年金関連は、国民の利益を忘却し、完全に官僚の隠れみの的存在に堕落している。厚生年金基金資産のAIJ投資顧問による消失事件に関する有識者会議もその典型である。高額の委員報酬などに左右され、国際比較研究の視点に立脚して政府から独立した見解を提示不可能な学者は、国民にとり全く有害無益な存在である。先進諸国のみならず、発展途上諸国の社会保障学者たちは、真摯に国際比較研究に邁進し、政府の不十分な政策を国民利益の観点から厳しく批判し、良き改善策の積極的提言を本来の使命とし、大きな誇りともしているが、我が国の実態は全く異なる。 次に、二十一世紀日本社会は、世界的に異常な二元代表制の抜本改革と、地方自治ガバナンスの確立、すなわち公平で効率的で透明性高き地方分権の確立に基づく社会保障制度との連携なくしては発展不可能であるが、政府、国会、地方自治体にはその抜本改革策が皆無である。 リーマン・ショックも加わり住民所得は長期的に減少しているため、地方自治と財政の健全化は地方自治ガバナンスの確立なくしては不可能である。私は、橋下前大阪府知事の要請で大阪府特別職報酬等審議会の会長代理に就任し、報酬の大幅削減に従事しているため痛切に実感することであるが、松井府議、現知事などの一部を除けば、府議会議員、府幹部職員の問題意識の低さを痛感した。強力なリーダーによる、地方議会の夜間・休日開催を含む地方自治体の抜本改革が国家的緊急課題だ。 なお、全地方自治体の全議員に対する地方議会議員年金制度は全く世界の非常識であるが、それを形式上廃止した直後の現在、全地方自治体の全議員の地方公務員共済年金制度への加入運動が全国的に急展開している。この世界的超特権的運動は、首都構想を標榜する大阪から率先して徹底排除すべきだ。 国、地方自治体も、社会保障制度も不公平、不透明、非効率で大変コスト高であるが、その抜本的改革策は……
○委員長(高橋千秋君) そろそろおまとめください。
○公述人(渡部記安君) 全く皆無である。このため、本法案が成立すれば、国民の貴重な消費税が不公平、不透明、非効率な制度に投入され、実質的に浪費されるだけの結果となろう。 八、結論。 以上、要するに本法案は、長期デフレ下で主権者国民が長期的な所得低下に苦しんでいる現時点において、社会保障制度を口実に、逆進性が顕著だが税収が安定した消費税を安易かつ無責任に増税し、国民生活を更に一段と不安定化させるもので、私は全く賛成できず、直ちに否決すべきであると判断する。 新世紀、国民不在の法案で日本国家よどこへ行く。 以上。
○委員長(高橋千秋君) ありがとうございました。 以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。 これより公述人に対する質疑を行います。 なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう、御協力をよろしくお願い申し上げます。 それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
○川上義博君 貴重な御意見を各公述人からいただきました。民主党の川上でございます。 社会保障制度の今の改革の議論をしておりますけれども、この議論の中で、今後の具体化は国民会議に委ねるんだという、法案の中にあるわけでありますが、一方で、先ほども同友会の伊藤常務が、議員の参加が不可欠なんだという話がありました。ところが、政府は、国民会議の中に政治家は入れないというような意向があるわけでありまして、国会が責任を負っているんだから、全ての政党、会派の議員も参加をして議論をすべきであるという意見があるんですね。 そのことについて、全く民間人に制度のスキームを委ねてしまうことについて、あるいは国会議員を排除することについて各公述人はどのようにお考えか。特に菊池先生、田中先生、小黒先生ですね、お三方に、伊藤常務は先ほどおっしゃいましたから、お三方にちょっとお伺いをいたしたいと思います。
○公述人(菊池馨実君) お答えさせていただきます。 私も、社会保障を議論するための会議体を設けることには、かねてからそのような主張をさせていただきました。ただ、私が念頭に置いていたのは、二〇〇一年に廃止された社会保障制度審議会のような法律に根拠のある常設の会議体、社保制審には各議員の先生方も入っていらっしゃいました。そういったものを想定しておりましたので、もちろん議員の先生方が入った上で常設の会議体で社会保障の将来的な在り方について議論していく、それは必要だと思っております。 ただ、今回につきましては、一年で結論を出すという仕切りになっておるようでございますので、その点が、一年でどこまで決められるのかという、様々な議論があると思いますので、やや懸念されるところであります。 基本的には議員の先生方も含めての議論というのは賛成でございますが、今回は、そういう仕切りには、私の考えていた常設の会議体と、一年というところがやや残念であるということでございます。 以上です。
○公述人(田中秀明君) 私は、外部有識者と国会議員が一緒になって議論して何らかの方向を出すことについては基本的には賛成しません。 まずあくまでも専門的見地から議論し、その上で、それを踏まえてまさに国民から選ばれた国会議員が議論して決めればいいと思います。あるいは、別に組織をつくって、専門家の見地から出た提案、勧告を踏まえて国民から選ばれた政治家が責任を持って検討し決定する、そういう役割分担をすべきでありますし、ほかの諸外国も政治家と専門家が一緒になって答案を出すということは私は聞いたことがございません。傍聴することは別にそれは何ら妨げませんけれども、一緒になって提案するということは、私は先進国では聞いたことがございません。 以上でございます。
○公述人(小黒一正君) 私も基本的には田中先生と同じでございます。全く同じ意見でございます。
○川上義博君 田中先生に、今の基礎年金についての言及もありましたし、年金財政の抜本的な検討が行われていない、セーフティーネットの議論も不十分だという話がありまして、読売新聞の「論点」で四月の十一日に、政府原案の段階で社会保障制度の見直しが不十分だと言われているんですね。 その後、今、三党合意で修正された現在の案があるんですけれども、この辺のことについてどのように評価されているでしょうか。
○公述人(田中秀明君) 基本的にはまだ不十分だと思います。それは、今の問題がどの程度改善されるのかということがよく分からないということなんですね。改革というのは今の状態が改善するのが改革だと思いますので、それがどのように改善されるのか、残念ながら政府の資料あるいは法律では直ちには理解することができないというふうに考えております。
○川上義博君 実は今日の新聞に、皆さんよくお読みになったと思うんですけれども、例えば日経新聞で、見出しで「政局優先 改革どこへ」と、こういう見出しがあるんですね。ほかの新聞もそうなんですが、先ほど菊池公述人は法案の早期成立を望むんだとおっしゃいました。渡部公述人は、日本人はとかく根本的な事項を忘れる癖があると、今回は異常な安易な法案だと、政治家に地方も含めて能力が余りないんじゃないかというような発言がありまして、今、この社会保障制度改革の議論が進まなくて、解散の確約がなければ採決に応じられないというような姿勢もあるわけなんですね。 だから、政局と政策がごちゃごちゃになっておる、ごちゃ混ぜになっている今の現状について、同友会の伊藤公述人、そして先ほどの早期成立を望むとおっしゃった菊池先生、そして渡部公述人に御意見をお伺いしたいと思います。
○公述人(伊藤清彦君) 経済同友会の基本的な考えは、この法案を是非早期に採決をしていただいて、次に進んでいただきたいということでございます。
○公述人(菊池馨実君) 私は今回の改革は第一歩だと思っています。これがパーフェクトだということではないんですが、重要な第一歩だと思っています。 推進法案をよく読むと、かなりこれから一年の間にやるべきことが具体的に、医療保険、介護保険、生活保護と書いていますので、これをきちんと議論して更に改正をしていただければ、またかなりの第二弾の改革になると思っております。
○公述人(渡部記安君) 私は国会議員の方々が能力がないとは思っておりません。危機感がないと申し上げたわけであります。 そして、この法案の一番の問題点は、先ほど発表しましたように、消費税、付加価値税を社会保障目的税とするというようなところは存在しないということを、逆進性の強い消費税、付加価値税を目的税とするということはこれは世界的非常識であります。 そして、社会保障をいろんな分野でちまちまと議論するのが日本は大好きなんですが、先ほども申しましたように、ILOとかISSA、世界の社会保障制度、労働問題なんかを議論する、そういう世界的機関がしっかりと伝統的に提唱して発展途上国も先進諸国もきちんと遵守しておる基本原則、すなわち社会的連帯性や所得再分配機能とかポリティカルリスクの排除とか、そういうことを忘れて単純な技術論だけに終始しておるから、日本の国家は非常に不安定化し、急速に社会保障制度も崩壊しつつあると私は申し述べたわけであります。
○川上義博君 時間がありませんから、最後に伊藤公述人に。 同友会の考え方は先ほど説明がありましたね。民営化するということは、二階部分を運用する、公的な運営では何か問題があるでしょうか。やはりこれは民間でやった方が、先ほど物価スライドの導入も検討すると、公的な部分というのは物価スライドを導入してですね。だから、公的な運営では具体的に何が問題であるのかということをお伺いしたいと思います。
○公述人(伊藤清彦君) 基本的に同友会の考え方は、民間でできることは民間でできる方が効率的でよいと。私どもは、税とか社会保障につきましては公正、中立、簡素ということで考えておりまして、民間でできることはできるだけ民間ですればいいのではないかというのが基本的な考えでございます。
○川上義博君 まだ時間がちょっとあります。 菊池先生、積立方式、今やろうとして、同友会は積立方式だと。これはインフレに弱いという意見があるんですね。積立方式はインフレに弱いという意見が言われている、そういう考え方があるんですが、そのことについてどう思われますか。
○公述人(菊池馨実君) 教科書的にはそういう説明がされると思います。ただ、これから制度を何十年か掛けて変えるかどうかという議論はまた別であると思います。
○川上義博君 終わります。ありがとうございました。
○高階恵美子君 自由民主党の高階恵美子です。 本日は、暑い中をお運びいただきまして、また貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。 本日、お話を伺いました五人の先生方にそれぞれお伺いしたいんですけれども、私ども、この国、国民皆保険の制度を持っております。今回の推進法の中では、療養の範囲を適正化すると、こういうふうなことで、言わば切り込むんだということを宣言しているわけなんですけれども、大方針としてはこの皆保険制度を堅持するという姿勢を貫いていこうという考え方です。 この国、これから先の人口構成の変化、それから経済活動の変化、こういう情勢を考えまして、堅持をしていくということの是非、どんなふうにお考えになるかということと、それから、堅持していくとするならば、その前提になる条件を随分整えなければいけない、そこが実は改革の大事な柱になるんじゃないかなと、こういうふうに思います。 各々の先生方から是非そういった点について御意見を賜ればと思いますので、お願いいたします。
○委員長(高橋千秋君) 全員ですね。
○高階恵美子君 はい。
○公述人(伊藤清彦君) 基本的に皆保険は維持すべきだと思います。 ただ、財源としては、先ほども申しましたように、年金につきましては、公正、中立、簡素ということで、安定的な財源を確保するという観点から目的消費税で充てることを考えるのが望ましいと思っております。
○公述人(菊池馨実君) 私も世界に冠たるこの皆保険制度は維持すべきだと思っております。 ただ、皆保険ができた昭和三十年代と今日では医療技術の進展、その他大きく周辺の環境が変わっておりますので、そこにはどうしてもやはり保険給付の範囲の問題その他にどこかの時点で切り込んでいかないといけない時期が来るのではないかと思っております。
○公述人(田中秀明君) 私も基本は保険原理を維持すべきだと思います。 ただし、今の日本の社会保障制度は、実態はそうなっていないということをやはり直視して考えなければいけない。それは保険制度と再分配が混ざった制度になってしまってセーフティーネット機能が弱いということで、これはどこの国も保険だけでやっているわけではなくて、保険と一般財源にセーフティーネットをどう組み合わせるかと、それを十分考える必要があるのではないかと考えております。
○公述人(小黒一正君) 私も基本的には堅持すべきだと思います。 教科書的な話になりますけれども、理由としましては、経済学的なバックグラウンドとしましては、逆選択と呼ばれているものと、あと、民間保険会社に任せた場合にはリスク選択と呼ばれるものが発生するというようなこともございますので、そういったものをなるべく抑制するという意味で皆保険を維持すべきだというふうに思っております。 ただ、条件としまして、人口動態等の変化があるということで、そこについて社会保障制度の綻びが出ていく可能性が当然これからございますけれども、その辺については、先ほど御説明させていただきました社会保障予算のハード化でありますとか事前積立て、将来の保険料の上昇を抑制するためのバッファーとして事前積立てを利用することである程度回避できるのではないかと考えてございます。
○公述人(渡部記安君) 先生御指摘のように、皆保険制度はやはりすばらしい制度であって、堅持すべきだと私も思います。 しかし、それにはまず大前提がありまして、やはり皆保険といっても、形式的に皆保険だけれども、そこから漏れているたくさんの人がいるわけですね。ですから、実質的な皆保険制度を達成するためには、やはり一元化、全国ベースで、地域別、職域別を全部廃した全国ベースの制度にして皆保険化すべきだと思います。 そして、更に前提がありまして、社会保障庁というものをつくりまして運営管理の一元化、つまり、日本人は制度をつくることが大好きでありまして、制度をつくって運営管理も制度ごとにやるわけですが、これは非常に非効率、不透明、不公平でありまして、世界的にも非常に異常であります。やはり社会保障庁をつくって、そこで年金も医療も介護もやると。そうすると年金の不正受給とかそんなことも全部消えていくわけですよね。 そして、保険料の徴収も、これも大きな問題です。先ほども申しましたように、保険料徴収以外の運営管理業務は社会保障庁でやる、保険料徴収業務だけは国税庁に移管してそしてやれば非常に効率的でコストも安いと。スウェーデンやアメリカが現実にやっておることを、なぜすばらしい国、日本がそれができないのかということであります。 以上であります。
○高階恵美子君 ありがとうございます。 今徴収のことについても触れていただきましたけれども、都道府県別に見ると、一人当たりの医療費、大体一・五倍の開きがありますね。それから、世代間というか、年齢階級別に見ますと、大体私たちの年代というのは一人当たり十万円そこそこです、年間の使う経費が。だけれども、七十五歳以上になりますと、一年間に今、直近で八十五万六千円だと思いますね。 年齢によっていや応なく医療が必要になるということもありますし、障害によって働けないとか、何らかの介護が必要な状況になる、そうしたときの保障というのはこれ欠かせませんで、人口が大きく構成が変わってくるときに、入ってくるお金が増えるわけではありませんから、これをどうやって確保していくか、とっても大切な課題でありまして、そのためにはどういう社会保障の像をこれから描いていくのかということをやっぱり時間を掛けて、腰を据えた議論も必要なんじゃないかと。そういう点では、何人かの先生方からは、中長期的な議論をする場を置くべきだと、それから十分なデータが示されていないというお話も出たところであります。 例えば、医療保険、これの保険料、都道府県別に、こういう使い方の違いがあるということを何か反映させる仕組みが必要だとか、そういうことをお考えになったことがおありでしょうか。田中先生に是非お伺いしたいと思います。
○公述人(田中秀明君) 今の老人医療制度の基本的な問題は、お年寄りが使った医療の医療費が全体こう掛かりましたと、それを後で事後的に負担を配分しているということなんですね。そうではなくて事前に、もちろん保険者によって高齢者の割合であるとか年齢が違いますので、それはリスク構造調整と言っていますが、それで調整はします。ただし、事前に調整をして、その後努力して病気にならないようにしたと、その場合はその分は保険料が安くなると。そういう制度を実はオランダであるとか導入しておりまして、つまり、事後ではなくて事前に調整して、努力をその後の保険料率等に反映させると、そういう仕組みが必要だろうと思っております。
○高階恵美子君 ありがとうございます。 しばしば、総額を決めて、そしてキャップをはめて、その中でお金を配分したらどうだという、こういう議論もされるんですけれども、これはちょっと命をはかりに掛けるような議論で正しくないんじゃないかなというふうに思います。そういう点では、菊池先生がお話の中でなさいましたけれども、やっぱり何が必要なのか、どうあるべきかということをしっかり議論をした上で、それに掛かる費用を検討していく、こういう順番で私たちの議論は進めなければいけないんだろうと、そういうふうに思います。 それと、掛かる部分だけ考えるのではなくて、どうやったらその健康を獲得していけるだろうかということも私たち考えなきゃいけないんじゃないかなというふうに思います。 推進法の第六条の中には、医療保険制度の改革の一環として健康増進といったようなところが書かれているんですけれども、ちょっとお金が目に見えないものですから、地域保健とか公衆衛生の分野、社会保障の柱の一つなんですけれども、ちょっと忘れられがちなところがありましてね、こういったようなところ、社会資源としての健康づくりとか公衆衛生、こういったところへの何か取組について、経済学者の立場から、小黒先生、何か御意見ございますでしょうか。
○公述人(小黒一正君) こういう場で話すのはちょっと適切ではないのかもしれませんけれども、実は、医療の方で健康増進が図られて寿命が延びるということは、今の現行の年金システムの下では寿命が延びることに相当しますので、それは年金財政を圧迫するという形になると思います。したがいまして、医療について、基本的には健康増進等を図って、なるべく長く働ける、若しくは健康でいられて、そういうようなことというのは非常に重要でございますけれども、それと同時に、やはり年金制度の方を寿命が延びてもその制度が持続可能な方に持っていけるようなシステムにすることが必要であるということになると思います。 それから、各個人の方のインセンティブ、健康に対するインセンティブを高めるという意味では、現行の医療システムの中には、保険料の中に、ある程度健康になった場合に保険料が安くなる等のそういったインセンティブ構造は埋め込まれておりませんが、そういったものを制度設計上埋め込んでいくということも重要ではないかと。もしそれをする場合には、本来は医療保険の報酬体系若しくはその分配の仕方を一元的に全部今中医協等で決めているんですけれども、そこをもう少し分権化するというようなことも必要になってくるんではないかと。それは、先ほど田中先生が申し上げていましたオランダの制度、これは管理競争と呼ばれているものですけれども、そういったものを入れていくようなことも考えるべきではないかというふうに考えております。
○高階恵美子君 日本は世界に類例を見ない成熟社会を迎えるということになりますので、高齢者が多くて経済成長しない国ではなくて、一人一人が人を思いやり、そして働いていて楽しいと思い、未来に希望が持てる、その下支えになる大事なものが社会保障の制度ですので、こういうものをこれからどういうふうにつくり変えていくのか、とっても大切なことだというふうに思いますし、健康的に生活をするということが結局はその経済活性にもつながっていくということになりますので、最後まで働き続けるという点でいいますと、我々医療、介護に従事する職種の一人一人が働き続けられるような環境づくりも併せてしていきたいなというふうに思っております。 これから幅広い議論が必要というふうに思いますけれども、今後ともお力添えをお願いいたします。 ありがとうございました。
○荒木清寛君 公明党の荒木です。 各公述人、ありがとうございます。 まず、伊藤公述人にお尋ねをいたします。 経済同友会が提言をする新たな年金制度設計でございますが、現在も四十年間保険料を納付すれば六万六千円の国民年金、基礎年金が受給できるわけであります。確かに七万円ということは少し、四千円ぐらい高いわけですが、現在もそういう皆年金制度がきちんと整備されているのに、なぜこういう大掛かりな制度改正をしなければいけないという提案をされるのか、お尋ねします。
○公述人(伊藤清彦君) 基本的に、一つは財源の安定的な確保と、それから世代内、世代間の格差を是正するという意味で、基本的な財源を消費税にして国民の皆さんに広く負担していただくということが私どもの考え方でございます。
○荒木清寛君 仮にその新制度、全額消費税方式ということになった場合の事業主負担というのは、今と比べてどのように変わってくるでしょうか。
○公述人(伊藤清彦君) 今まで事業負担の方は、現行の基礎年金と厚生年金に企業が負担しておりますその保険料相当分ですけれども、それは過去期間に係る年金純債務の処理に充てるとともに、新たな二階部分になる新拠出建て年金の方に拠出するということで、企業の負担は基本的には変わらないということでございます。
○荒木清寛君 今のお話で、過去債務の負担の清算というようなことですので、約五十年掛けて新方式になった場合には現在のレベルよりも事業負担は減るということですか。
○公述人(伊藤清彦君) 新基礎年金制度が始まった時点で二階部分もそれに移行しますので、基本的に企業が今まで負担している額はほぼ変わらないということでございます。五十年後にそうなるというわけではございません。
○荒木清寛君 次に、菊池公述人にお尋ねをいたします。 公述人は、現在の提案されております社会保障制度改革推進法案二条三号の社会保険中心主義の堅持ということは評価されていると思います。一方で、与党・民主党も含めて、年金を税方式に転換するという主張ももちろん強いわけでありますけど、これについてはどういう見解をお持ちでしょうか。
○公述人(菊池馨実君) 年金保険というのは長期保険でございますので、理論的にはあり得るとは思いますけれども、現実問題として、制度というのは白地のキャンバスに一から絵をかくわけにはいきませんので、四十年、五十年掛けて移行する、その間に更に様々な状況変化があり得るかもしれない。それよりは、現在の制度がベスト、ベストというか問題がないわけではありませんが、それを問題点を直しながらやっていった方がいいというのが私の考えでございます。
○荒木清寛君 田中公述人にお尋ねをいたします。 公述人のレジュメの中に、先ほど発言は省略されたようですけど、この十五ページで、高額所得者の年金給付を削減する問題という記述があります。具体的には公述人はどういう対策を、改善をすべきだというふうにお考えなんですか。
○公述人(田中秀明君) その問題は、例えば今、在職老齢年金という制度がございます。高齢者で年金をもらいながら働いている人、こういう方々については、その金額によって、報酬によって年金をカットするという今在職老齢年金というのがあるわけですね。これはまさに働くのは損だという制度なわけですね。これについてはほとんど議論がなくて、むしろこの基準を上げようという議論になっているわけです。そうではなくて、ちゃんと働いてもらって税金を納めてもらったらいいわけです。 したがって、保険である以上、年金給付はきちっとルールに基づいて給付しますと、他方、年金課税を強化して、そういう所得の高い人にはほかの社会保障に必要なお金を是非納めてくださいと、そういう制度にすべきだということを申し上げております。
○荒木清寛君 加えて、これは年金制度の話ではありませんが、私は相続税の強化でありますとか、そうしたこともこの世代内格差の問題としては取り上げるべきだと思っております。 それで、先ほど分かりやすい例えで、コンビニでおにぎりを買っている非正規の人が高額所得の方の年金も支えていると。確かにそれはおかしいと思うんですけど、しかし、今公述人がおっしゃったような対策をきちんとやればそういう不合理というのはかなり是正できるのではないですか。
○公述人(田中秀明君) 残念ながら、皆年金と社会保険は両立しない制度でございますので、それが一緒に混ざっている限り非常に大きな矛盾があると思います。 例えば、今保険料を満額納めると一もらえるわけですね、基礎年金は。じゃ、もし全く払わなかったらどうかというと、今までは三分の一給付、一般財源が入っていますから三分の一もらえた。それでは年金保険料を半分納めた人はどうなるかというと、全額納めた人と全く納めていない人とのバランスを取るために三分の二の給付がもらえるわけですね。これが今度、一般財源が二分の一になりますと、全く納めていなくても二分の一もらえる、全部納めると一もらえる、半額納めたら四分の三もらえるということで、つまり保険料を半額納めれば給付は四分の三もらえると。これは非常に私は矛盾でおかしな制度だと思います。 それは、保険と一般財源が混ざっている制度なわけで、私はこれはきちっと分離して、セーフティーネットはセーフティーネットで最低保障として用意する、他方、所得のある人は保険原理に基づいて年金給付をもらうと、そういう仕組みをつくるべきだと申し上げております。
○荒木清寛君 小黒公述人にお尋ねいたします。 公述人のこの年金についての事前積立制度というのは傾聴に値するというか興味を持ちますが、ただ、諸外国の標準的な年金制度というのはやはり賦課方式が多いのではないかと、こういう感じがします。公的年金を最初に導入したドイツを含め、大半の国は最初は積立方式でいったんですが、先ほどもありましたようなインフレもあり、賦課方式の方に変わってきているということからすると、ちょっと国際的な標準の制度からすると異なるのではないかと考えますが、何かそういうものを日本で採用しなきゃいけないという特段の理由があるんでしょうか。
○公述人(小黒一正君) お答え申し上げます。 まず一つ目に、日本の高齢化のスピードが先進国の中で一番、最も速いということが挙げられると思います。賦課方式であった場合に、それは現役が老齢世代の方々を支えるわけですけれども、その一番厳しい局面に最も早く突入するのが日本であるということになります。 あと、積立金を持った場合に、かなり難しいんではないか、インフレリスクがあるんじゃないかという御質問等よくあるんですけれども、実は、先ほどもちょっと口頭で申し上げましたけれども、完全積立方式と呼ばれているものと、あと今の賦課方式に若干ちょっと積立金がくっついているもの、これは、私はこちらの方を事前積立てというふうに呼んでいるんですけれども、すなわち現行制度そのものに近い状態のものです。ただ、その積立金がうまく活用されていないというふうに思っていまして。 その事前積立ての場合に、ピーク時でどれぐらいその積立金がたまるかということを学習院大学の鈴木亘先生とかが推計されているんですけれども、年金であれば今百四十兆とか百三十兆ぐらい積立金がありますけれども、ピーク時でも二百兆円ちょっとぐらいだという話がございます。したがいまして、今のその年金の積立金にちょっと八十兆円ぐらいとかオンする形で実は負担が平準化できるというところが大きなみそではないかと思います。 あともう一つ、ここはちょっと複雑な話になりますけれども、例えば全額積立金五百兆円があった場合に、それを運用していてインフレーションが起こったという場合は、実は財政当局からしますと、ちょっとここは荒唐な話になりますけれども、財政当局として、インフレーションが起こった場合に債務が二百五十兆円になった、半分になったというときには、実はインフレ税で課税して得している部分が二百五十兆円あるんですね。その積立金で五百兆円運用して二百五十兆円減ったとすると、実はその分補填しても本当は構わないというふうな考え方もできます。ただ、これは経済学的な発想でございまして、現実の政治でそういう処理ができるかどうかはまた分かりませんが、そのようなことも考えられるということでございます。
○荒木清寛君 渡部公述人にお尋ねします。 公明党も、この消費税については軽減税率を導入すべきであると考えております。政府はこの点について、中小零細事業者の負担が大きいというようなことも言うわけなんですけど、この点は公述人はどのようにお考えですか。
○公述人(渡部記安君) 私も一応、主要国家は全部調べましたですけれども、やはり消費税、付加価値税の逆進性というものをどの国も実に真剣に検討して、そして、じゃどうすべきかと、それで軽減税率を導入しておるわけですね。それは確かにおっしゃるとおり、一部の商品に付いたり、また中小零細企業者にとっては問題がある場合もあって、これはもうどの国でも議論はございます。しかし、その全体としての消費税をきちんと導入して実施する場合は、やはり逆進性として軽減税率、問題はあるけれども軽減税率を導入すると。大原則はきちんと貫いて、あと問題があるところは個別に対応しておるわけですね。日本のように、一部に問題がある、だから全部軽減税率は駄目というような国は存在いたしません。
○荒木清寛君 終わります。ありがとうございました。
○中村哲治君 国民の生活が第一の中村哲治です。 公述人の皆さん、本当に今日はどうもありがとうございます。 まず、菊池公述人と小黒公述人、お二人の公述人に伺います。 先ほど田中公述人の話の中で、結論のところで、社会保険システムに大量の一般財源が投入され、保険のガバナンスが働かず非効率な資源配分をもたらしているという、そういう記述がございます。私は、やはりここの社会保険方式というのと一般財源を投入する方式という福祉の話と、はっきり峻別していくことってすごく大事だと思うんです。日本の場合、社会保険方式といいながら大量の一般財源が投入されていますから、それを果たして本当に社会保険と呼んでいいのだろうかという考え方というのはあると思うんですよ。 しかし、菊池公述人のペーパーでも、社会保険中心主義の堅持ということで社会保障制度改革推進法案については高く評価をされています。ここの社会保険というのは税は入るのか入らないのかとか、そういうところが厳密に定義されていかないと、なかなかここの議論というのは進まないんじゃないかなと思うんですけれども。 菊池先生とすれば、この社会保険というのは税も大量に入ると、一般財源から今大量に入れていますけれども、こういうふうな方式として考えるべきなのかどうなのか。また、同じ点について、小黒先生にもその点についてのコメントをいただきたいと思います。
○公述人(菊池馨実君) 私が言う社会保険というのは、税が投入された制度という意味でございます。というか、逆に、戦後日本が社会保険制度を導入して以来、基本的には日本の社会保険は一般財源を投入した形での社会保険であるという理解で関係者はずっと進んできていますので、逆にここ数年来ですか、保険と税を分けるという発想が出てきたのは最近の発想だと私は理解しています。 私は、なぜ税も入れるかという、今日的意義は何かと申しますと、やはり社会保険、私保険ではない、民間保険ではない社会保険の意義は、そこで再分配効果が発生するという、そこに意義があると思っています。それがごちゃごちゃになるという見方もあるかもしれませんが、社会保障というのはやはり、特に社会保険は連帯の仕組みですので、そこでの助け合い、それを制度に組み込むというその再分配の機能を税が果たしますので、それを社会保険の中でやることに私は何も問題はないと思っています。ただ、じゃ、九九%税で一%保険料、それでも社会保険かという議論はあるかもしれませんが、それはやはり限界はあると思いますけれども。 ということで、税も含めた社会保険ということでございます。
○公述人(小黒一正君) 済みません、お手元の資料、私が配りましたプレゼン資料の三十二ページを見ていただきたいんですけれども、結論を申し上げますと、見かけ上税であるから、見かけ上保険料であるから、税方式なんだ、保険料方式だというのは短絡的な発想になるということでございます。基本的には受益と負担がマッチングしているものが保険方式に近いもので、マッチングしていないものが再分配をしているという意味で税方式になるということでございます。 この三十二ページに書いてありますのは、例えば消費税率二五%で、生涯賃金を稼いできた人たちに、消費をするわけですね、その方々に課税した場合、実はその一・二五というのは、両辺で割りますと下側みたいな式になります。これは、実は比例賃金税率、若しくは保険料二〇%を課税しているのと同じような状態になってございますので、実は見かけ上消費税だから、保険料だからというのは余り意味がないと。 むしろ、お手元の資料で配っております九ページ目ですかね、生涯で稼いだ賃金のうちどれぐらい負担したのか、それから生涯でどれぐらい返ってくるのかというところで、負担と受益の差額、これは純負担と申しますけれども、この純負担がどちらかというと、生涯賃金で割った場合は、生涯純税率という言葉がございますが、生涯で負担している税率に相当するというものになります。したがって、この純税率がゼロであればどちらかというと保険方式に近いと。それは消費税で取ってこようが保険料で取ってこようが余り関係ないということでございまして、むしろ、税で取ってきた場合、保険料で取ってきた場合、その受益と負担をマッチングさせる場合に重要なのは、裏側でどれぐらいこの人が本当に納めたのかということが把握できるようなシステムがあるかということになると思います。 したがいまして、今回のこの委員会での審議の対象ではないと思いますけれども、マイナンバー法案みたいなものをきちんと整備していくというところがやっぱり重要ではないかというふうに考えてございます。
○中村哲治君 次に、それでは田中先生に伺いますけれども、このように、社会保険方式という言葉一つでも、それぞれ専門家の皆さん、解釈が違うといいますか、定義が違うということなんですけれども、もう一度お伺いしたいんですけれども、社会保険方式とそれ以外の税の投入の部分と分けた方が概念的に整理されると御主張ですよね。じゃ、そのときの社会保険方式というのはどういうメリットがあるのかということをもう一度確認させていただきたい。よろしいでしょうか。
○公述人(田中秀明君) 私は税と保険料が何か混じっていることが気持ち悪いからおかしいと申し上げているわけではなくて、しょせん手段ですから、結果が良ければいいわけですね。つまり、貧困が低いとか、結果が良ければいいわけです。 ところが、例えば国民年金、昭和三十六年から始めて、貧困の予防になっていないわけですね。まさにパフォーマンスが悪いわけです。その原因が税と保険料が混じっているからと申し上げているわけで、具体的に例を申し上げると非常に分かりやすいと思うんですが、カナダと日本を比較すると、年金の構造はほとんど同じです。しかし、カナダの高齢者の貧困率は日本よりはるかに低い、あるいはカナダの貧困率はスウェーデンより実は低いんですね。 何でそうなっているかと申し上げると、基礎年金、大体一人一月四万五千円ぐらいの基礎年金がございます。しかし、四万五千円だけで暮らせるとは限りませんので、ほかに所得のない人は、日本でいえば生活保護が上に乗ります。他方、中高所得者は、日本でいえば厚生年金と企業年金、あるいは個人年金が上乗せされます。さらに、所得の高い高齢者は、基礎年金は事実上課税によって削られる仕組みになっています。 何を申し上げたいかというと、低所得者はまさに国がセーフティーネットとして基礎年金あるいは生活保護で対応し、中高所得者はまさに保険原理に基づいて自立をすると、そういう役割分担をしているということで、日本とカナダの年金、公私の年金支出はほとんど同じ。あるいは、日本は生活保護を入れていませんので、端的に言えばカナダの年金支出は少ない。でも、パフォーマンスは高いんですね。そうするためには保険と税をきちっと分けるべきだということを申し上げております。
○中村哲治君 田中先生にまた質問させていただきたいんですけれども、国民会議の議論のところで、専門家がまずきちっと議論すべきで、その後に政治家がかかわるならかかわればいいというお話なんですけれども、この専門家がどのように議論を進めていくのかという進め方が非常に重要なんじゃないかなと思っております。 社会保険の定義なり意味合いそのものを先に実は定義をしていかないとかみ合わないということは結構あるわけですよ。しかし、今まで専門家が出てきた国の審議会、運営どうだったかというと、結局、先生も霞が関にいらっしゃったから御存じのとおり、最初に官僚がシナリオを書いて、それに沿うような形で議論できる先生方が専門家として選ばれて議論をしていると。これじゃ今までの抜本的な改革なんということは全くできないわけですよ。 しかし、今の先生の御主張そのままであれば、今までの審議会と変わらないわけですから、政治的な意思も余り反映されないし、国民的な理解というのも今までの延長線上だからなかなか難しいんじゃないかなと、そういうふうに思うわけですけれども。 そこで、先生が最後におっしゃっていた、時間がなくて説明できていない豪州のパターン、オーストラリアでは、政権交代の後、そういうところがしっかりとできたということをおっしゃっていたんですけれども、日本の審議会方式に陥らずにこの大改革ができるような方法というのは、この豪州の例を引いて、どのように考えていったらいいのか、お答えいただけますでしょうか。
○公述人(田中秀明君) まさに今委員おっしゃられたとおりの問題だと思います。日本の問題は、問題点がデータに基づいて検証されていないと。これは、役所はデータを出しておりませんので分からないわけですね。 とかく社会保障というのは、最後は何が公平、効率かという価値判断によるわけです。だからこそ対立が起きるわけですけれども、その前に、データに基づいて一体何が問題なのか、そしてその問題を解決するための選択肢はどういうものがあるか、その費用対効果ですね。それを冷静に議論し、その選択をまさに国民から選ばれた政治家が行うということで、まさにオーストラリアの例はそういう手続に乗っていると。 ただし、日本とオーストラリアで違うのは、そのオーストラリアの検討委員会には役所の次官が入っています。それは、オーストラリアとかイギリスの公務員は極めて政治的中立性を求められていまして、まさに専門家として、その加わられた人たちは博士として、専門家として入って検討し、最後の選択肢、何を選択するかは政治家が選んでいるんですね。したがって、専門家が提案したことをそのまま焼き直しているわけではなくて、あくまでも選択するのは国民から選ばれた政治家がやると、そういう役割分担ができているということだと思います。
○中村哲治君 そうすると、やはりオーストラリア、豪州のケースは、日本の霞が関文化からすれば、それまで適合することはできないんじゃないですか。いかがですか。
○公述人(田中秀明君) ですから、それは検討会で専門家の皆様にデータに基づいて分析するように、そういう指示はまさに政治家の皆さんが、あるいは内閣としてそういう指示をすると、その会議のアジェンダですね。それを、今までの審議会と違う会議の役割を定義して、まずは検討してもらうと、データに基づいて。そういうことを提案しない限りは、御指摘の懸念はおっしゃるとおりだと思います。
○中村哲治君 なかなか霞が関主導で来た日本の意思決定の在り方というのを簡単に変えるのは難しいということなんだろうなと思います。そういった意味では、政治家と専門家がどういう役割分担したらいいのかはちょっとまだ分かりませんけれども、適切な役割分担をしながら議論を進めていくということが必要だということが改めて確認できたと思います。 時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。 本日は、公述人の皆様、お忙しい中、また暑い中、大変参考になる御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。 まず、伊藤公述人にお尋ねいたします。 同友会としての新しい年金制度の改革の方向性について提言をされております。大変有意義な提言だと思いますが、一つお尋ねしたいのが、新基礎年金制度として一階部分、六十五歳以上に給付、一人月額七万円、年金目的消費税で賄うというふうな制度の提案がなされておりますけれども、これは民主党さんの中で検討されておりました最低保障年金と非常に近いものじゃないかなというふうにお見受けするわけですけれども、これ、民主党の方の試算でもありますように、大変金額が大きくなるんじゃないのかと。民主党の試算ですと、消費税率でいいまして七%程度ですとか、あるいは十五兆円、十六兆円と、そういった数字も聞こえてきております。それをどうやって賄うのかということもありますし、また、年金目的消費税というのは、見栄えは美しいようにも思うんですけれども、これは二つ目の質問ですけれども、やはり逆進性というのが消費税どうしても付きまとってくる税収ですので、こういった新基礎年金といいますか最低保障年金的なものというのは、やはりセーフティーネットといいますか、こういったものなわけですけれども、所得再分配機能に劣る消費税をこうやって年金目的消費税に充てるというその根拠、正当性について、この二点お尋ねいたします、金額と根拠を。
○公述人(伊藤清彦君) 経済同友会としましては、一人月額七万円ということで、これを段階的に五年ぐらいを掛けて、全体で消費税は一〇%、一五%、一七%まで引き上げて、年金の方は三%、八%、一〇%ということで段階的に上げていくということになっております。 それをどう、財源のことでございますけれども、安定的な財源をやはり得るためには、消費税が一番安定的な財源としては良いと思いますし、景気の変動とかとかかわりなくそれは得られるものでありますので、増税だけではなくて、同友会としては、経済成長もし、それから歳出削減も行って歳入増ということで考えておりますので、全体の中での考え方として、私どもは、消費税、目的税として基礎年金部分を一〇%というふうに考えております。 それから、逆進性の問題につきましては、私どもは基本的に、給付付き税額控除をその逆進性を訂正するというか修正するというか、低所得者層に向けての逆進性の緩和措置として考えております。 以上です。
○桜内文城君 ありがとうございます。 次の質問に移ります。 田中公述人にお尋ねいたします。 基礎年金、御指摘のとおり、大変問題が大きいと感じております。何しろ、御指摘のとおり、保険料の負担額自体が人によってばらばらかつ不明であるという、これが本当に社会保険という保険の名に値するのかとも言えるような制度かと思います。ただ、今取り上げましたように、社会保障的な、社会保障といいますか、セーフティーネット的な意味で福祉的な給付としての一定程度の給付というのは何かしら必要かとも思うんですけれども、この基礎年金の今後の在り方ですね。 もうこれは別のものとして、別のものというのは社会保障の在り方として、例えば所得税の枠内で給付付き税額控除制度に生活保護も含めて一本化していくべきと考えるのがすっきりするのか、あるいは今後とも基礎年金制度というのは維持していくべきなのか、年金制度の枠内で、保険制度の枠内に残しておくのか、この辺、お考えをお聞かせください。
○公述人(田中秀明君) 私は基本的には基礎年金の考え方を維持すべきだと。当初は、まさに国民でみんなで負担し分かち合うという制度の理念があったわけですね。ところが、その理念はどこかへ行ってしまって、非常に複雑な制度になっている。改めて基礎年金の役割を定義し、セーフティーネットを提供するという役割として基礎年金を私は維持すべきです。 ただし、セーフティーネットとし続ける限りはその財源は論理必然的に一般財源にならざるを得ないということで、これは国民皆年金を求めるのかそうでないのかという哲学の判断になるわけで、繰り返しますが、アメリカとかドイツとか、社会保険を重視する国は国民皆年金ということは言っていません。それはできないということが分かっていますから。年金ではなくて、これらの国では日本でいえば生活保護で対応するという制度になっていまして、これはまさに国民がどちらを選ぶかということで、私は、基礎年金というのは国民、まさにセーフティーネットとしてみんなで分かち合うと、そういう制度に、本来考えていた制度を目指すべきだと思っております。
○桜内文城君 ありがとうございます。 次に、小黒公述人にお尋ねします。 主に二点ありまして、一つ目が、小黒公述人の資料にもありますような年金の積立方式への移行というのは、私自身、実際可能であると考えておりますし、世代間格差の是正という観点からも、これは実際に行っていくべきだというふうに考えております。我が党としても、そういった法案を今取りまとめておるところでございますけれども。この委員会での質疑を通じて、よく年金の積立方式への移行について聞きますのは、本当に実現可能なのかということをよく政府側の答弁からも聞きます。私の方からは、実際、資金繰りですとか数字の面からも十分可能だと、その二重の負担の解消方法ですとか、そういったことも申し上げておるところでもあります。また、運用に関しても、インフレに対してどう対応すべきなのかですとか、これは例えば物価連動債で運用するですとか、あるいは郵貯ですら以前は三百兆円超えて運用を行っていた実績もありますので、金額が大きいから無理だという話じゃないとも思います。 一つ目の小黒公述人への質問は、積立方式への移行が私は可能と思うんですけれども、小黒公述人のその御意見をお聞きしたいというのが一つでございます。 そして、もう一つは、今ほども田中公述人にお尋ねしましたが、基礎年金といいますか、一階建て部分についてどう考えるべきなのか。 この積立方式へ移行する場合、あくまでも積立方式、要は社会保険制度としての枠内ではやはり積立方式にその部分も含めて、一階建て部分を含めて移行すべきだと私は思います。それで、どうしても保険料を十分払っていなくて低年金に苦しむ人がもしいるのであれば、それは別途、給付付き税額控除制度であるとか別の社会保障の仕組みで手当てすべきじゃないかと私は考えるんですけれども、その辺について、基礎年金の在り方についてどうお考えになるか、この二点、お尋ねします。
○公述人(小黒一正君) 結論を申し上げますと、移行はすぐに可能であるということです。それから、基礎年金の方につきましても全く、田中先生もそうですけれども、桜内先生の方と同意見でございます。 移行がなぜ無理ではないのかということですけれども、ちょっと先ほど説明を割愛させていただいたんですが、私の配りました資料の二十九ページから若しくは三十一ページを見ていただきたいんですけれども、一番いいのは、多分最初は三十ページを見ていただくのがいいと思います。 積立方式に移行する場合に何が起こるかということなんですけれども、現役世代は自分の将来の積立てのために、この下側の青いところになりますけれども、積立てをしていくということになると。他方で、今の高齢者の方々は給付が受け取れなくなりますので、その給付をどうするかという話になるわけですけれども、大体今の年金給付、総額で五十兆円弱ぐらいありますので、五十兆円ぐらいをどうにかしていかなければいけないという話になります。その場合に、その積立方式に移行していく世代がだんだん増えていきますと、大体四十年間ぐらい掛けますと、最初出ていくこの五十兆円というのは高齢化に従って若干増えますが、その後、最終的にはゼロになるという形になります。 そうしますと、その金額をじゃどうやって調達するかという話が一番重要になるわけですけれども、これはいろんな割引価値でありますとか将来のその予測によってかなり違ってございまして、八田先生、GRIPSにいらっしゃる、今は学習院の方に移られている八田先生とかが推計されたときには、GDP比一五〇%ぐらい、要するに七百五十兆円ぐらいという話がございますし、厚生省の資料ですと、厚生年金で八百三十兆ぐらい過去債務があるというような話になってございます。 ただ、いずれにしろ、その八百兆でありましょうが七百兆でありましょうが、これは直ちに顕在化するわけではございませんで、薄く償却していけばいいと。そうしますと、百年間ぐらいで償却しますと、七百五十兆円の場合、大体年間七・五兆円という形になりますので、消費税換算でいいますと、大体三%ぐらいの財源を取ってきてそれを入れてあげれば償却できるという話でございます。 ただ、じゃ五十兆円ぐらい毎年国債を発行しなければいけないんじゃないかという話がございますが、実はそうではございませんで、例えばその積立方式の勘定の青い方に、①で保険料・税がございますけれども、これは六十兆円ぐらい毎年積み立てていきますと、これ運用しなければいけないわけですよね。こちらは国債等で仮に全部運用するとしますと、六十兆円国債欲しいという形になります。 他方で、赤い方の勘定は、国債を毎年五十兆円ぐらい発行したいというニーズがございますので、実はこことここで帳じりが合う形になると。政府内で見れば、実は国債を発行しなくてもよくて、①というところの税・保険料の六十兆円のうち五十兆円を③という形で渡して、最後、年金給付という形をすると。実はこれ、現行の賦課方式に相当します。それから、残り十兆円を国債で運用するという形になるんですけれども、それは実は次のページにございまして、三十一ページの現行制度と同じでございます。 これは何を言っているかといいますと、①保険料・税のところの六十兆円のうち五十兆円、現行のように右から左に渡すと、それから残り十兆円を運用するという形でございまして、何が言いたいかと申しますと、最大の問題は、現役世代等が支払う保険料・税と、その受益と負担がマッチングしていないというところが問題でございまして、あとは、その償却財源が入っていないとか、この辺がきちんとすれば、実は現行制度をマイナーチューニングするだけですぐに移行可能であるということでございます。
○桜内文城君 ありがとうございました。 終わります。
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。本日はありがとうございます。 伊藤公述人にお聞きをいたします。 先ほどの質疑の中で、経団連が提案をしている年金の新しいプランでも企業の負担分は変わらないということだったんですけれども、ちょっと確認をしたいんですが、基礎年金部分は保険料負担分が全部消費税に置き換わるので企業負担分なくなる、二階建ての分は労使折半で保険料負担は企業側にもあると。じゃ、基礎年金分でなくなった分は、ここの説明によれば、過去期間に係る年金純債務の処理に充てると、これがあるので企業の負担分は減らないという御説明だったかと思うんです。しかし、過去の債務分というのは当然年々減少していきますので、これやっぱりこの制度設計では企業の負担分は今よりも減らすという設計としか思えないんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(伊藤清彦君) 過去期間に係る年金純債務の処理に充てることと二階部分になる新拠出建て年金に拠出しますので、基本的に私どもは企業の負担は変わらないと思っております。 結局、これまで積み立てたお金と今後支払うお金がありますので、そういう意味で、大きく変えるということであればそうでしょうけれども、負担分は基本的に私どもは変わらないと思っておりますし、基礎年金部分については個人の保険料負担はなくなるということですので、個人にとっても更なる負担にはならないということで考えております。
○田村智子君 個人の保険料分は消費税分で、やっぱり消費税を労働者側は払うわけですから、負担がゼロになるということではないというふうに思うんですね。今の御説明でもやっぱり納得がいかないんですが、ここで論戦しても仕方がないので、企業負担分はやっぱり軽くなるという設計だとしか思えないので、そのことをちょっと指摘をしたいというふうに思うんです。 それで、どのような制度設計にしても、やはり国内経済が縮小している下では、運用などがうまくいかなくなれば、これはやっぱり年金制度って破綻をしていく、うまくいかなくなるということになると思うんですね。 これも伊藤公述人にお聞きをしたいんですけれども、消費税は、一〇%だけでなく、経済同友会としては一七%まで引き上げるということを提言をしているということを前提でこの年金の制度設計が提案されていますけれども、それでは、一〇%、そこから段階的に一七%と、そういう下でも国内経済を成長させることができるのかどうか、少なくとも国内経済を縮小はしないと言えるような政策がどのように取り得るのかということをお答えいただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(伊藤清彦君) 私どもは、経済成長と歳出削減と歳入増という三位一体の取組姿勢で臨むべきであると考えておりまして、例えば経済成長につきましては、再生戦略の今方針が出ておりますので、もしそれを着実に実行していただければできると思いますし、私どもとしても、今実質二%、名目三%の成長をするに当たって、先日提言も出させていただいておるんですけれども、GDP成長率に対する外需の寄与度を現行の〇・五%から一%から一・五%超で維持するということで、国家全体によるそのバックアップ体制を整備してパッケージ型のインフラの輸出増を図るとか、日本国内のみで通用するガラパゴス商品ではなくて、新興国の需要に合致した安価でシンプルで堅牢な商品や高級食材などを輸出するとか、環太平洋パートナーシップ、TPPへの参加を促進するとか、メディカルツーリズムや観光客の来日を増やして旅行収入を上げるとか、代替エネルギーの開発とか、そういう意味で、レアメタルなどの輸入を削減するとか、そういったことも考えておりますし、GDP成長率に対する内需の寄与度を一%を上回る水準で維持するということで、例えば、生前贈与税の三年間の凍結、削減による子や孫による、耐久財消費や住宅投資への増加を図るということとか、イノベーションを体化した設備投資への加速度償却適用を拡大して設備投資の増加を図るとか、合併、買収などによって売上高三兆円から五兆円規模の競争力の強い企業に再編するとか、高速道路、今後拠点となっていく空港、港湾など社会資本維持管理・更新投資を増加するとか、高齢者向け住宅供給促進税制適用の延長などによって住宅投資のかさ上げを図るというようなことで経済成長が達成できるのではないかということで提言もいたしております。
○田村智子君 今まで政府の出している成長分野ということだと思うんですけれども、国内全体の経済が消費税一七%の下でも成長するというふうにお考えなのかどうか、菊池公述人にもちょっとお聞きをしたいと思うんですけれども。 同じ質問です。消費税が経団連の言うように一七%ということになっても、年金制度が大丈夫と言えるような経済成長が図れるのかどうか、御見解をお聞かせください。
○公述人(菊池馨実君) 私、経済財政の専門家ではございませんけれども、いずれにしても、将来的には国家財政それから社会保障財政を支えるために相当な負担増を行っていかなければならないのは事実ですので、そうでなければ大幅に給付を削減するという選択肢しかないわけですから、その中で消費税でどれだけやるのか、あるいは所得税、相続税、贈与税等も含めて、そのバランスということもあると思いますので、私は今回は消費税引上げ賛成という意見を述べさせていただきましたが、それから……(発言する者あり)直ちにですか……(発言する者あり)将来的にですか。それは何とも言えませんが、ただ、これ以上引き上げるということになりますと、軽減税率等の適用と併せて考える必要があると思っております。
○田村智子君 違った角度でお聞きをします。 今、大規模な電機リストラなどが続いていまして、四十代後半、五十代の方でも早期退職を求められるという事態が全国で広がってきています。これは、社会保障と税の一番の担い手となる世代が職を失うという事態なんですね。再就職につながらなければ非正規雇用に移行せざるを得ないと、こういう労働者も増えてくると思います。 実際、今、二十歳から五十九歳の方を見てみますと、その方々の国民年金に加入している方を見てみますと、四分の一強が非正規雇用の労働者になってきています。二十代前半で見ますと、国民年金加入者の三割以上が非正規雇用の労働者ということになっています。 これは、今の社会保障制度を支えるという上でも大変重大な課題になってしまっていると思いますし、二十代で非正規で国民年金加入と、恐らく保険料を納められていない方が大半ではないかなというふうにも思えるんですね。そうすると、先々の年金の受給もできない、無年金、低年金世代を非常に急増させかねないという問題があると思います。 このように雇用の破壊がどんどん進んでいたら社会保障制度の基盤が崩れていくのではないかということを私は大変危惧をいたしますけれども、経済界としてはどのような認識をお持ちなのか、伊藤公述人にこの認識と、それから解決すべきと考えるような点がありましたら、その点について御発言いただきたいと思います。
○公述人(伊藤清彦君) 経済同友会の伊藤です。
○田村智子君 済みません。
○公述人(伊藤清彦君) 非正規の問題というのは私どもも検討しておりますし、パート労働者の年金をどうするかとかというのも、正式な見解は出しておりませんが、重要な課題と認識しております。 先ほど御指摘のあった無年金になるということからすると、税で賄えば、六十五歳になれば、皆様、お一人で七万円というのはどうか知りませんけれども、少なくとも七万円、御夫婦であれば十四万円の年金が受け取れるということで、私どもは、それで消費税が充てられることについて、年金としては維持できるのではないかと思っております。 非正規の問題につきましては、引き続き検討をしてまいりたいと思います。 以上です。
○田村智子君 大変失礼いたしました。経済同友会の伊藤さん、ありがとうございました。 渡部公述人にお聞きをいたします。 私も、社会的連帯と所得再分配機能の充実、これが本当に日本の中で欠如をしていると思います。先ほどの、無年金、低年金になっても消費税分での最低保障年金があるというのは、本来企業が払うべき給料や保険料の分を消費税に付け替えるというようにも聞こえるわけですね。 この社会的連帯と所得再分配、これは所得税の最高税率の問題などの改善が先だということで御発言ありましたけれども、企業の負担の在り方についてということでも御見解をお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○公述人(渡部記安君) 非常に適切な御質問をいただきまして、ありがとうございます。 やはり、とにかく物を考える場合、私は三月末まで大学院の教授だったんですが、世界動向を見ましても、とにかく社会保障の制度というのを先生方はもう非常に複雑怪奇に考えられておるように思うんですが、ILOやISSAなんかに行きますと非常に単純なんですよね。今言いましたように、社会保障、連帯性、所得再分配機能、ポリティカルリスクの排除、こういうことから物を考えたら非常に単純明快なんですね。今、年金でも医療でも介護でも、地域別、職域別、ばらばらじゃないですか。そうしたら、そこに社会的連帯性も所得再分配機能もほとんど機能しないんですね。 ですから、こういうものは、全部社会保険でするということは、大数の法則というんですが、ルール・オブ・ラージ・ナンバーズというんです、一つの保険集団にまとめてやると。そうすると、企業の負担も個人の負担も非常に平準化していくと、そういう利点があるわけですね。ただ、その場合に、一生懸命努力する加入者とそうじゃない人、やはりそういうインセンティブを付けるということは必要になります。
○田村智子君 ありがとうございました。 終わります。
○山内徳信君 私は社民党・護憲連合の山内徳信でございます。 まず最初に、公述人の五名の先生方、今日は大変御苦労さまでございます。 最初に渡部公述人にお伺いしたいと思います。 かねて渡部さんは社会保障ガバナンスの確立の重要性をずっと強調されてこられました。そこで、社会保障ガバナンス論から見て、同時に人間の安全保障論から見て、今回の社会保障と税の一体改革の国会論議をどのように見ておられるのか、率直に問題点がありましたら御指摘をしていただきたいと思います。
○公述人(渡部記安君) 根源的な質問をしていただきまして、ありがとうございます。 やはり、ガバナンスというのをもう一遍言いますと、社会保障の制度設計だけじゃなくて、社会保障制度の運営管理における公平性、透明性、効率性の確立です。これが我が国では制度ごとにばらばらばらに運営管理されているわけですね。他の先進諸国では、先ほども言いましたように、社会保障庁というところで年金も医療もその他も一括して運営管理すれば、転職でも何でも一つの通知で全部行き渡り、そして、退職すれば一つの通知で給付も入ってくると。非常に効率的であると同時にコストが低減するわけであります。 もう我が国の社会保障制度、これは高度成長があったからほとんどガバナンス不足が見えなかったんですね。デフレ経済下になってそれがどっと出てきてさあ大変というのが現在の状況でありまして、制度設計も重要ですが、ガバナンス、運営管理における公平性、透明性、効率性の確立は残念ながら発展途上国諸国よりも非常に劣るのではないかと危惧しております。世界的に見ても非常に低い水準であると思います。
○山内徳信君 消費税増税を社会保障目的税化する法案は、税制と社会保障制度に関する世界の基本原則に違反する異常な法案であると、こういう御指摘を渡部公述人はされておりますが、それをもう少し分かりやすく、広く国民に分かりやすく、しかも簡潔にひとつ説明をしてください。
○公述人(渡部記安君) 消費税、付加価値税は、他の公述人も言っていますように、また先生方も御承知のように、逆進性が非常に強いわけですね、逆進性が強い。だから、それを財源として社会的連帯性や所得再分配機能が基本になっている社会保障制度に使う、これは全く基本的に矛盾しておるということであります。 ですから、EUではどの国も目的税として使っていないと。そして、消費税、付加価値税を社会保障目的税として使わなくても、ほかの場合に使う場合は必ず軽減税率をきちんと設定して使っておると。とにかく、国際比較研究の視点から見ましても、よその国は難しいことよりも分かりやすい原理原則、基本的な二つ、三つの原則を大事にして、それを踏まえて制度を設計し運営管理しておるということであります。
○山内徳信君 次に、社会保障と消費税増税という全ての国民生活と深い関係のある法案でございます。それを民自公三党のみで大連合的に協議を進めてきたわけでございます。そういうやり方は、少なくとも民主主義の今日、議会運営としても望ましいとは私は考えないわけであります。 大きい政党も小さい政党も全て国民を代表する政党でございますから、こういう全ての政党が一体になって最初から論議を深めていくべき、そして具体的に社会保障制度の論議をすべきだと思っておりますが、この件についてどうぞ同友会の皆さんから五名の御意見、こういうやり方は正しいのか、望ましくないのかという、そういう簡単なお答えをいただきたいと思います。どうぞ。
○公述人(伊藤清彦君) 民主主義という政治体制というのは次善の策だということですけれども、ここまで成熟化する社会ですと多様な意見がございます。議論ばかりしていても、結局、私どもも提言ばかりしていて、同友会は言うだけだということではなくて、より目的に向かって実際にステップごとで実現をしていくということですので、議論も重要ですが、これをこれ以上先延ばしすることは私どもとしては賛成できないということが同友会の基本的な考え方でございます。
○公述人(菊池馨実君) 私から見ますと、何が民主主義かというのはこれは大問題ですけれども、随分この社会保障改革をめぐる議論はずっとなされてきて、私が申し上げましたとおり、議論は比較的収れんしてきているのではないかと考えています。どこかで決断をして改革をしていかないといけない時期に至っているということであります。 私は、先ほど申し上げましたが、先生方が入っての場として、二〇〇一年に廃止された社会保障制度審議会をもう一度復活して、各党それから様々な業界の方も含めて専門家と一緒に話をする、そういう場を設けていけばいいのではないかと思っております。
○公述人(田中秀明君) この審議の過程において、繰り返しになりますが、データに基づく検討が十分ではない、あるいは、三党合意でコンクリートも人もにもうなってしまったという問題点は指摘できますが、民主主義である以上、最後は多数決で決するというのがルールだと思います。
○公述人(小黒一正君) 民主主義でございますので、議会で選ばれた、党の中で、その多数決で決定されたということで、私も田中先生と同じ意見でございます。
○公述人(渡部記安君) お答えします。 私は、もう単純な社会保障学者、年金学者でございますから余り政局のことはよく分かりませんし言いたくもありませんが、御参考までにスウェーデンのことをお話ししましょう。 スウェーデンは、先ほども話が出ていましたが、政治家が超党派で団体をつくりまして、そして十年、十五年にわたって社会保障制度は、年金制度はどうあるべきかを議論したわけですね。そのときに、もうその時々の政局には一切関係しない、きちんと独立性を確保して、二十年後、三十年後、百年後のスウェーデンはどうあるべきかということを踏まえて議論していく、そしてすばらしい年金制度改革をしたという実績を申し上げます。
○山内徳信君 やはりこれから福祉社会、そして社会保障をきちっとやっていくには、既に世界にはそういう学ぶべき国が幾つかあるわけです。そういうところをきちっと学んで、そして五十年、百年先を見据えてこういう制度設計をやるべきだと思います。もう既に議論は進めてきたからここら辺で多数決でというのは暴論だと思います。それは豊かな人々の発想であって、持てる者の発想であって、こういう消費税増税問題で、どういうふうに多くの国民が反対をして、苦しい生活を余儀なくされていくかを考えていなければいかぬのです。 日本の最近の政治の動きは、排除の論理がまかり通っております。そういう排除の論理は、この福祉の問題だけ、社会保障の問題だけではなくて、沖縄における基地問題、オスプレイの問題等々、あらゆるところに排除の論理が、あるいは昔の育英会が、今のその機構ではそういう良さが失われておるわけです。そういうふうに考えてみたときに、改めて、私たちは世界から学びながら、そしてきちっとした制度設計をすべきだと、これが私の意見でございます。
○委員長(高橋千秋君) よろしいでしょうか。
○山内徳信君 もう時間でございますから、今日は一分残して、いつも長うございましてお叱りを受けておりますが、今日は終わりたいと思います。 ありがとうございました。
○行田邦子君 みどりの風の行田邦子です。よろしくお願いいたします。 社会保障と税の一体改革のこの議論の中で、とかく財源の方の消費税増税の方がクローズアップされていますけれども、そうした中で、今日は社会保障の使い道の方、特に年金制度について公述人の先生方から御意見をいただきました。こうした機会をいただきましたこと、御礼を申し上げたいと思います。 とりわけ、社会保障給付の半分を占める年金制度、これが将来的にどのようになっていくのか。抜本改革でいくのか、それとも現行制度の一部改善でいくのかといったことが国民の皆様の大変関心が高いところとなっております。今回の法案では、こうした年金制度の改革については国民会議で議論するという、言ってみれば先送り、棚上げされてしまったわけでありますけれども、年金制度を考えるときの一つのテーマとして、保険方式でいくのかどうかといったことがあるかと思います。 ちょっとこれまでの質問と重複してしまうかもしれませんけれども、この保険方式の限界といったものを私自身は今感じております。そもそも、保険方式というのは受益と負担の関係がはっきりしていて、それで成り立っていたわけであります。ところが、無年金者といったものが増えてきて、そして国民皆年金になっていないというところで税財源を投入せざるを得なくなったと。それがどんどんどんどん増えていったと。今となっては、保険方式といいながらも、どんどんどんどん税財源、一般財源を投入せざるを得なくて、そして国民からすると、社会保険料を納めていながらも税金も増えていくという非常に分かりにくい構造になっているということが大きな問題としてあるかと思います。 私自身の考えとしては、年金制度のセーフティーネットの部分というのは、これは税財源で賄うべきではないかというふうに思っております。その上で、それ以外の年金制度の部分は保険方式で賄うという、ここをはっきり整理をした方がいいのかなと考えております。 そこで、まず菊池公述人に伺います。 菊池公述人は、社会保険中心主義の堅持ということで今回の法案を評価されているかと思いますけれども、そのときの税投入の在り方ということについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(菊池馨実君) 年金につきましては基礎年金部分に投入するということで、そういう意味では現在のを前提としていますが、今回切り離されましたけれども、低年金者に対する税を使っての付加的な給付というものはあり得べきだろうと思っております。 その他の社会保険、医療、介護については、どちらかといえば、やはり保険料負担能力のない方あるいは一部負担金の負担能力のない方に重点的に投入していくということでよろしいのではないかと考えております。
○行田邦子君 同じ質問なんですけれども、小黒公述人にお聞きしたいと思います。 今日のお話では、事前積立方式といった御提案が、具体的なものがありました。そのことによって世代間格差を解消するといったことだと思いますけれども、小黒公述人としてはこの保険方式についてどのようにお考えでしょうか。
○公述人(小黒一正君) 先ほど、私は受益と負担をマッチングさせるという意味で、これは、受益と負担というのは生涯の受益と負担をマッチングさせるということで世代間格差の是正をすると、そのために事前積立て若しくは社会保障のハード化というものを強調させていただいたんですけれども、まず順番が重要だと思ってございまして、どういうことかと申しますと、異時点間といいますか、時間を通じて、今かなり世代ごとに違う、格差が一億円も違うという状態が発生してしまって、これは、今喫緊になっています財政の問題でありますとか、あと社会保障の問題であるということになります。 したがいまして、平均レベル、各世代の平均レベルでまず受益と負担をマッチングさせるということをしますと、実は超長期で見た、中期でもいいんですけれども、十年間ぐらいのマクロ予算のフレームが決まると。そのマクロ予算のフレームとは何かと申しますと、年金とか医療とか介護の大体年間これぐらい使えるというふうなお金が決まります。その財源を、基本的には、もし受益と負担をマッチングするのであれば保険料でやった方がいいわけですけれども、ただ、世代内に格差があるという場合について、それは公平性の観点から是正する必要があるということになりますと、当然、税を一部入れた方がいいということになると。その場合、各世代の予算若しくは各時間軸を通じた予算のフレームの枠内で再分配を議論するということをすることによって、保険方式でも一部どうしても公平性の観点も必要になりますから、その辺を調整していくというようなステップで議論をしていくべきではないかというふうに考えてございます。
○行田邦子君 ありがとうございます。 それでは、渡部公述人に伺いたいと思います。 渡部公述人は、消費税は非常に逆進性が強いものであって、所得の再分配機能である社会保障給付にはなじまないのではないかといった御意見かと思います。ただ一方で、確かに消費税は逆進性は強いけれども、低所得者対策、また逆進性の対策をした上でであれば、これは社会保障の財源として適しているといった意見も一方であります。 その点について、渡部公述人からもし反論の御意見等ありましたらお願いいたします。
○公述人(渡部記安君) 非常に適切な御質問、ありがとうございます。 やはり、私がどう思うかということではなくて、先ほど申しましたように、EU全ての国が、付加価値税、消費税は逆進性が高い、そのために社会保障の目的税にはしないとはっきり、言うだけでなくて政策を実行しておるという、この世界の実態に注目していただきたいと思います。 そして、社会保険料、社会保険制度で行うということは、これはすばらしいことなんですが、単に財源だけじゃなくて、制度の設計が、先ほど申しましたように、厚生年金、共済年金、国民年金とばらばらにあるのをたった一つの所得比例年金にしてしまう。例えば、スウェーデンでもアメリカでもそうしておるんですよ。そして、それでもって足らないその末端の方について公的資金をどうするかということが問題になると思います。
○行田邦子君 それでは、田中公述人に伺いたいと思います。 田中公述人は、日本の社会保障制度には逆進性があるといったことを言われているかと思いますけれども、そうした日本の社会保障制度の状態の中で、今回、逆進性が強いと言われている消費税を社会保障制度の財源として持ってくると。そうすると、より一層逆進性が税と社会保障の中で強まるのではないかという懸念がありますけれども、その点どうお考えか、また解決策があれば教えていただきたいと思います。
○公述人(田中秀明君) 逆進性という意味では、消費税よりはるかに今の社会保険料の方が逆進的だと思います。したがって、まずその保険料の問題をきちっと考えて、せめて、その元々の考え方でいえば、定率で取るという原則を貫くべきだと思います。 それから、私は、増税そのものに反対しているというよりは、増税するとしてもまだあと二年あるわけで、その前に社会保険制度、社会保障制度そのもののやっぱりきちっとした見直しをしないと幾ら増税しても足りなくなると、そういうことを申し上げております。
○行田邦子君 社会保障制度全体をしっかり見直していかないと幾ら増税しても足りなくなるということでしたけれども、そこで関連して田中公述人に伺いたいと思います。 今回の社会保障と税の一体改革の目的として、社会保障制度を維持、安定させる、そのための財源として消費税増税といったことと、あともう一つ、財政の健全化を同時に達成するといったことかと思います。 この財政の健全化ということを考えるときに、確かに、一つは歳入を増やす、つまり、今回でいうと消費税を増税するといったこと、歳入増というのが一つあります。 また一方で、むしろこちらの方が私は大切かと思っているんですけれども、歳出の方もしっかり見直していく、歳出削減あるいは歳出改革といったことを政府として強い意志を示してやっていかなければいけないと思っております。 残念ながら、ここ、自公政権、それから民主党政権の中でも、機構的に組織的に歳出改革をしっかりとやっていくといった体制ができない状態でいると私自身は思っておりますが、この歳出改革をしっかりと行うためにはどのような行政府としての組織、機構が必要なのか、また、立法府での役割があればお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(田中秀明君) 御指摘のとおり、政治的には増税より歳出削減の方が難しいわけですね。はるかに歳出削減すること、あるいは効率化することが難しいと。効率化するためには、やはり内閣が責任を持ってそこで集権的に決めていくと。全体の予算制約の中で、何を削減し、あるいは必要なところに予算を振り向けていく。まさにめり張りを付けるその決断を内閣が責任を持ってやらない限り、歳出の効率化は難しいと思います。
○行田邦子君 もう少し具体的に、例えばどういった組織改革をすればいいのかということも教えていただけますでしょうか。
○公述人(田中秀明君) そうですね、組織改革というよりは、内閣、なかんずく総理大臣を中心とする閣内の重要メンバーが不退転の決意を持って、歳出削減で損をする人たちあるいは不利益を被る人たちを粘り強く説得すると、そのことに尽きると思います。
○行田邦子君 つまりは、政治の強い意思が必要ということかと思います。 それでは、最後の質問になります。伊藤公述人に伺いたいと思います。 経済同友会としても、社会保障の制度の将来的なしっかりとした絵姿を描くときに、今回、国民会議で議論して、その議論を踏まえた上で必要な措置を講じるとなっておりますけれども、ここで国会議員の参加も可能とするといった法案になっていますけれども、私自身は、やはり国民会議は国民会議で必要かと思いますが、やはり国会の中でしっかりと超党派で合意形成をすることが持続可能な社会保障制度をつくっていくために必要と思いますが、御意見、いかがでしょうか。
○委員長(高橋千秋君) 伊藤公述人。簡潔にお願いします。
○公述人(伊藤清彦君) はい。 国会でも十分にやっていただいて結構ですけれども、国民会議でも超党派の議員の方々が参加して真摯な議論を尽くしていただきたいと思います。
○行田邦子君 ありがとうございます。
○委員長(高橋千秋君) 以上をもちまして公述人に対する質疑は終了いたしました。 公述人の方々に一言御礼申し上げます。 皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) これをもって公聴会を散会いたします。 午後零時四十二分散会