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174回国会衆議院2010/04/22

青少年問題に関する特別委員会 第4号

発言数
75
登壇者
10
会派数
5
開催日
2010/04/22

会議録

池坊保子公明党

○池坊委員長 これより会議を開きます。  青少年問題に関する件、特に児童虐待問題について調査を進めます。  本日は、参考人として、淑徳大学総合福祉学部教授柏女霊峰先生、明星大学教育学部教授高橋史朗先生、日本社会事業大学専門職大学院准教授宮島清先生、全国児童自立支援施設協議会会長須藤三千雄さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。  質疑に入ります前に、委員長として、四人の参考人の方々に心から成るお礼を申し上げたいと思います。  四人の皆様方には、早朝にもかかわりませずこの委員会のためにわざわざ御出席いただきましたこと、心よりお礼申し上げます。私たちは、四人のお話をしっかりと誠実に受けとめ、きょうを大切な意義あるときとして過ごしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。  それでは、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人の皆様からお一人二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと思います。  念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承ください。  それでは、まず柏女参考人にお願いいたします。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 皆さん、おはようございます。  こうした子どもたちの問題に積極的に取り組んでいただいている委員会にお声をかけていただいたことをとても光栄に思っております。ありがとうございます。  三年前にもこの特別委員会にお声をかけていただきまして、子ども虐待問題について意見陳述をさせていただきました。それから三年間を経て、少しずつ進んでいっている部分もあるなというふうにも思いますし、まだまだ変わっていない部分もあるというふうに思っています。この委員会での審議の中で積極的な虐待対策がとられていくことを心から願いたいと思います。  私の方からは、レジュメと資料を用意させていただいております。レジュメは、「児童虐待防止・社会的養護の課題」と題する三枚とじのもの、資料は、「子ども虐待の防止と社会的養護」と題するものです。  この「子ども虐待の防止と社会的養護」と題するペーパーは、子ども虐待問題、それに深くかかわる社会的養護の問題についての私の見解、あるいは対策の現状などについて述べさせていただいておりますので、後ほど御参考にしていただければ幸いに思います。  今回は、レジュメに沿ってお話をさせていただきたいと思います。時間も限られておりますので、私からは、四点に絞ってお話をさせていただきます。  一つは、子ども虐待防止です。二つ目は、次のページになりますが、社会的養護の問題。そして三つ目が、その社会的養護の下の方の四番にあります、子ども家庭福祉全体にわたる構造的な問題について。そして最後が、二ページの一番下でございます。この委員会でも取り上げられたというふうに伺っておりますけれども、熊本県慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」の検証に携わってまいりましたし、その問題は虐待防止の問題と深くかかわっておりますので。その四点について意見陳述をさせていただきたいと思います。  まず最初に、一番目ですが、児童虐待防止についてであります。  子どもの虐待問題に携わる援助者は、(一)にございますように、親の権利と子どもの生命、権利という谷の間の狭い尾根を歩く登山家に私は例えております。この尾根をどう整備していくのか、つまり、これが制度上の問題になるかと思います。  それから、登山家をどうふやしていくのか、登山家が登山技術をどう開発して磨いていくのか、そのための機会をどう保障していくのか、さらに、そのために世論が納得していただけるのか、この四つを総合的に支援していくということが大事ではないかというふうに思います。  それからもう一つ、この子ども虐待問題の根底には、つながり、いわゆるソーシャルキャピタルの弱体化ということがあるかと思います。それを制度としてどのように補っていくか、仕組みの導入によってつながりの再生を図る、そうした子育て支援の視点がどうしても必要になると思います。支援と介入、この二つの仕組みを用意していくことが大事ではないかと思います。  二番をごらんいただきたいと思います。  私は、政府の審議会の委員長として、虐待死亡事例の検証に携わってまいりました。四年半で四百三十七人の子どもの死に向き合ってまいりました。第一次報告から第四次報告をまとめて、そこにある「当委員会で指摘した虐待による死亡が生じ得るリスク要因」を整理させていただきました。  左側の「保護者の側面」をごらんいただきますと、上から二つ目の丸から五、六個下まで、すべてこれは妊娠中あるいは周産期の問題になるかと思います。こうしたことが早目に見つけられていれば虐待死は防げるということになるかと思います。後ほど申し上げますが、「こうのとりのゆりかご」問題は、ここの部分に対応をしようとする民間の積極的な試みということが言えるかと思います。  右側のところ、「子どもの側面」「生活環境等の側面」「援助過程の側面」、それぞれにリスクが生じ得ることがございます。特に、「援助過程の側面」をごらんいただきますと、上から二つ目の丸ですが、要保護児童対策地域協議会など、情報の突き合わせが一度も行われていない、これが大きなリスク要因になっております。  ついこの間、悲しい事件が江戸川区でも起こりました。江戸川区の問題は、学校と子ども家庭支援センターの情報の突き合わせが行われなかった、そのことが一番大きな問題ではないかというふうに、検証報告を読ませていただいて思いました。このことがとても大切になるのではないかと思います。  こうしたことを考えますと、今後の対策の視点として、そこに、大きく六つ挙げさせていただきました。  まずは、妊娠期からの子育て支援を考えていかなければならない。  児童福祉法は子どもが生まれてからの対応になっておりますが、そこでは限界があるということです。母子保健法と児童福祉法をしっかりとつないでいく、そうしたことが大事になるかと思います。  続いて、子育て支援サービスを広げていくこと。また、児童相談所の運営、体制の強化。市町村の体制、運営、それから要保護児童対策地域協議会の強化。これが大事ではないかと思います。  最後に、(六)で「社会的養護サービスの整備」というふうにしました。  社会的養護の場が整備されていない、だからこそ在宅でやらなければならない、在宅でやろうとして、そして遅きに失してしまって子どもが命を失ってしまう、こうしたことが特に都市部で起こっています。こうした社会的養護の整備問題にも光を当てていかなければならないのではないかと思います。  ページをおめくりください。二ページではそのことに触れています。  (一)として、「供給者中心システムからの脱却」というふうに書きました。  社会的養護の問題は、いまだ措置制度が続いています。待機児童問題の発生しない仕組みとなっています。供給者側の実情に左右されてしまっているところがございます。  社会的養護の中で、例えば施設養護の定員が多い地域では里親委託が少なくなっています。また、里親委託が盛んなところは、施設の定員が人口に比べて少ないところです。本来ならば、子どもにとって何が一番いいことなのか、それによって社会的養護の場が決められていかなければならないのに、施設の定員があいているから施設になってしまい、そして、施設が足りないから里親を開拓する、こうした供給者側の意向に左右されてしまっているのが現状の社会的養護の大きな問題ではないかというふうに考えております。  (二)です。小規模化、地域化を図っていかなければならないということです。  昨年の四月から、小規模住居型児童養育事業、ファミリーホームが制度化されております。全国で、予想を上回るスピードでこのファミリーホームの整備が進んでいます。政府は子ども・子育てビジョンで、四年後に百四十カ所を整備する目標を掲げておりますが、既に今年度末で百十カ所程度になろうかということが見込まれております。こうした小規模化を進めていくための施策をどんどん支援していかなければならないというふうに思っています。  小規模化を進めますと、(三)にありますように、施設の専門機能をあわせて強化していかなければなりません。小規模化を進めれば進めるほど治療的な機能を外部に求めなければならないということになりますので、施設の専門機能を強化して、バックアップシステムを用意していくということが大切になるかと思います。  その他、労働政策等他施策との連携強化も大事になります。ニート対策等もとても大切なことではないかと思います。  五番目に、社会的養護を地域に開くという観点が必要になるかと思います。  特に、社会的養護は都道府県が役割を負っておりますので、中心になっておりますので、市町村との結びつきが希薄になっております。これを改善していかなければならないのではないかと思います。  さらに、(六)です。「家庭支援の拡充・強化」、これも大事だと思います。  それから、特別養子縁組、これはもう制度が発足して二十年がたっていて、いろいろな幾つかの課題も見えているように感じます。この特別養子縁組制度について検証し直すということも大切なのではないかと思います。  例えばの例で申し上げますと、「こうのとりのゆりかご」に預け入れられた五十一人のお子さんは、いつ親が出てくるかわかりません。また、特別養子縁組に出すことを同意しているわけでもありません。そうすると、その子どもたちは特別養子縁組に出すことに慎重になってしまわざるを得ない、こうした問題が生じています。慈恵病院に相談をしてくだされば、その子たちは特別養子縁組に出すことが可能になります。  こうした問題もあるわけでありまして、民間の一部の意見では、一定程度親があらわれない場合に特別養子縁組を進める、同意がなくても進めるといったような仕組みが必要ではないかといったことも意見として挙げられております。  さらに、(七)です。「人材の確保と資質の向上」というところです。特に、保育士資格の再編成が必要ではないかと思います。  現在、幼保一体化が進められており、幼稚園資格と保育士資格の併有化が進められています。それを進めれば進めるほど、虐待問題に対応する専門性はないがしろにされてしまいます。  保育士は十八歳までが援助の対象ということになります。児童養護施設や、この後参考人として意見陳述をされます児童自立支援施設などでも、保育士がその援助の中心を担っております。そうした保育士の専門性が、幼保一体化を進めれば進めるほど就学前保育に特化されてしまう、こうしたことが、中学生、高校生への保育士の支援を手薄にしてしまうということが起こり得ます。  そういう意味では、もしも幼保一体化、両面の、幼稚園教諭免許と保育士資格の併有化を進めるとすれば、新たな資格の創設を考えていかなければならないだろうというふうに考えております。それを養育福祉士という形で提案させていただいております。また、何より待遇の向上を図っていくことが必要ではないかと思います。  さらに、自立支援の分野では、三つのスタートが必要だというふうに考えております。  公正なスタート、施設の子どもと一般の子どもたちが公正にスタートできるようにすること、それから、失敗した場合にもう一度スタートができるようにすること、あるいはデュアルスタート、学びながらスタートができるようにすること、こうしたことが大事ではないかと思います。  特に、もう一つ、高等教育進学時の支援ということも大事になるかと思います。  つづめて言えば、家庭的環境を奪われた子どもたちに当たり前の生活を用意していく、そうしたことが大事ではないかというふうに思います。  四番です。児童虐待防止、社会的養護の構造的な問題の解決を図っていかなければならないということです。  子ども家庭福祉の問題は、二元行政です。社会的養護は都道府県が担当しています。子育て支援や母子保健は市町村が担当しています。お金も、それぞれが出していて、それぞれに出さない仕組みになっています。  つまり、虐待の子どもは、一時保護された途端、市町村の責任はなくなります。そして、家庭に戻った途端、県の責任はなくなります。財政的にも負担をしなくなります。このことがトレードオフ関係をもたらしているということが言えるかと思います。市町村は早く一時保護してほしいと願い、都道府県はまだ在宅でやれるはずだというふうに願います。お互いにお互いの懐を当てにしているわけです。この結果、間に子どもが落ちてしまって、命を失うことになります。これらを改善していくことが大事ではないかと思います。  また、なかなか難しい問題ではありますけれども、教育委員会と首長部局の分断、ここも大きな課題になっております。江戸川区の死亡事例は、まさに、教育委員会所属の学校と首長部局の子ども家庭支援センター、ここの断絶ということが大きな原因になっております。こうしたことを改善していくことが大事ではないかというふうに思っております。  最後に、慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」の検証について、国に積極的に関与していただきたいということを願いたいと思います。  二年五カ月の間に五十一人の子どもが「こうのとりのゆりかご」に預け入れられました。それは、慈恵病院の方の、助かる命があるならば助けたい、そういう崇高なミッションに基づいて始められたものでありました。  しかしながら、その一方で、この「こうのとりのゆりかご」は、そこに預け入れることによって、虐待にも当たらない、あるいは保護責任者遺棄罪にも問われない、そうした仕組みとして機能をしています。  また、そこに預け入れた者がわからないというような場合には、子どもが出自をわからないままに成長していかなければならない、あるいは養育する者が、その後の養育の手だてがわからないままに、不安なままに養育をしていかなければならない、そうしたもろ刃の剣を持つ仕組みだというふうに考えております。  この「ゆりかご」をどのように評価していくのか。あるいは、この「ゆりかご」があることによって、「ゆりかご」を検証することによって、さまざまな課題が見えてきました。  先ほど申し上げました特別養子縁組の例はその一つですが、二十八の課題が見えています。  二十八の課題、細かくは六十五の課題に対して私たちは提言を行いました。ここに持ってまいりました。「「こうのとりのゆりかご」が問いかけるもの」ということで、報告書を冊子にさせていただいています。ぜひ、これをお読みいただいた上で、この国会で、あるいは国の方で、この「ゆりかご」が提起した問題について御議論をいただければというふうに思っています。  私たちは、この「ゆりかご」に対して、匿名で相談ができて、一時的に母子を匿名のまま緊急保護し、そして短期の入所も可能な設備を備えた施設が一定程度全国に整備される、それは医療機関に併設されることが望ましい、特に民間機関でそれが整備され、そしてそれを公が支援していく、そうしたことが望ましいという提言をさせていただきました。  これは、私たちの一つの案にすぎません。それを、ぜひさまざまなところで御議論いただければというふうに思っています。それが、虐待死に至る事例の大きなリスクである妊娠中から周産期の問題、そして出生直後の問題に光を当てていくことになるのではないかというふうに思っています。  先生方の積極的な御議論にぜひ期待をさせていただきたいというふうに思いますし、お願いをさせていただきたいと思います。  私からの報告は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

池坊保子公明党

○池坊委員長 柏女参考人、ありがとうございました。  それでは次に、高橋参考人にお願いしたいと思います。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 皆さん、おはようございます。  本日は、意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。  私は、平成十一年から旧自治省の青少年健全育成の研究会の座長をさせていただきまして、平成十三年に報告書を出させていただきました。その御縁で、ちょうど十年前の本委員会にも参考人として招致をされまして、池坊委員長もいらっしゃったと思いますけれども、特に青少年健全育成という観点から、児童虐待問題について意見を述べさせていただきました。  本日、再び意見を述べる機会をいただきましたので、十年前の意見陳述の要旨を踏まえながら、本日は、児童虐待防止は親育ち支援から、そういう視点に重点を置きまして、意見を申し上げたいと思います。  お手元にレジュメをお配りしております。そして、資料も配付しております。両方を参考にしながら発表させていただきます。  まず、平成十一年二月十一日付の朝日新聞、これは資料にございませんけれども、「幼児に学級崩壊の芽」という見出しで、保育士四百五十六人のアンケート調査の結果について報道しました。親の変化が学級崩壊の背景にあることを明らかにいたしました。  私は、「「学級崩壊」10の克服法。」という著書を出版しておりますが、NHKテレビの朝のニュース番組で五分間学級崩壊問題について解説をしましたところ、全国の小学校から、特に低学年の先生から、悩み相談が殺到いたしました。  そして、これはどこに問題があるかというと、今日は、小一プロブレムというふうに言われておりますけれども、小学校に入る前の教育と入ってからの教育の方針に断絶がある。  どういう断絶があるかといいますと、きょうお手元にお配りしている資料にこういうものがあると思いますけれども、左の下に、会津藩の藩校、日新館の「什の掟」を引用してございますが、「ならぬことはならぬものです」という、例えば「卑怯な振舞いをしてはなりませぬ」「虚言(うそ)を言う事はなりませぬ」、そういう「ならぬことはならぬものです」ということを教える愛情、それを義愛と申しておりますが、そういうものが欠落をしていた。  子どもの自由や権利というものを放任と履き違える誤った子ども中心主義が親子関係を破壊し、幾ら注意しても言うことを聞かない、そして平気で立ち歩く。そういう背景には、もう一つ、発達障害の問題があることを知りました。  ちなみに、平成十年四月の、次代を担う青少年について考える有識者会議の報告は、「地獄への道は「善意」で敷き詰められている。」という見出しで、次のように指摘をしております。  「子どもたちの間違いを教育的配慮という優しさから、あいまいに処理することにより、問題を放置し、取り返しのつかないレベルまで増幅させていることはないだろうか。まあまあで済ませてしまうのは、その時は楽である。子どものことを思い、悪いことは悪いということをはっきりさせ、真剣に叱り、厳しく罰し、子どもに課題を突きつける態度が、大人に、さらに社会に求められる。また、子どもにも、悪いことは悪いと自覚させるため、法律によって厳しく処分することも視野に入れる必要があろう。」  また、平成十一年七月の青少年問題審議会答申は、「「戦後」を超えて 青少年の自立と大人社会の責任」と題して、次のように述べております。  「最低限守らなければならない基本的なルールがあるということについて、認識が希薄になり、おろそかにされている」「子どもに対する基本的なしつけがおろそかになっている」「青少年の自由や権利を守るという観点ばかりが強調され、その行き過ぎに対しても、大人が自信をもって否定できない。また、大人が衝突やあつれきを回避しようとして、様々な行き過ぎにも許容的になり、断固とした態度をとらないため、子どもにとって偏った考え方を生活体験の中で修正する重要な機会が失われている」「子どもたちが幼いころから多様な人間関係を経験する機会が少なくなっている」。  ちなみに、平成十六年の一都九県の「子どもたちの体験活動等に関する調査研究」によりますと、生まれたばかりの赤ちゃんを見たことがない、四九・八%、赤ちゃんをだっこしたことがない、三四・五%、家族や他人の看病をしたことがない、四五・四%、お年寄りと話をしたりお世話をしたことがない、これが二七・六%を占めております。  このような状況を踏まえ、同有識者会議は、「中高生が幼稚園、保育所等において保育活動を手伝うことや乳幼児健診等の場で乳幼児と触れ合うことを通じて、命の大切さ、将来の子育ての楽しさを実感するようにすることも重要である。」として、親になるための学習、親としての学習機会の充実が必要と提言をしております。  十年前にも申し上げましたけれども、児童虐待の背景には、親が、親らしさ、すなわち親心というものを失いつつあるという根本的な問題があります。  イギリス生まれのマリー・ウィンは、「子ども時代を失った子どもたち」と題するエッセイにおきまして、子育ても大切な義務と考え、子どものために犠牲になる親はいなくなったと述べておりますが、児童虐待の背景に、このように、まさに子ども時代を失った子どもたちが親になって虐待を起こしているという背景がございます。  児童虐待の根因は、親の自然的保護の後退と衰弱にあります。児童の権利には保護と自律という二つの法観念が含まれており、前者は、十九世紀後半の産業化の中での親の保護能力の弱体化を背景にして生まれ、後者は、二十世紀後半の脱産業社会における家族の崩壊にその源を発しております。  このような歴史的な観点に立ったとき、本来、法以前の世界にその命を保っていた自然的保護という親子の人間関係が、法の支配によってますます崩壊に拍車がかかったという歴史の教訓に学ぶ必要があるのではないでしょうか。  さて、お手元に、児童虐待防止法の第四条、第五条をお配りしてございます。  その児童虐待防止法第四条第六項には「親権を行うに当たっては、できる限り児童の利益を尊重するよう努めなければならない。」と定めております。児童の成長発達権を保障することが、児童の利益を尊重することにつながります。そのためには、子どもの発達段階とそれに応じたかかわり方に関する科学的知見、情報を提供することが国及び地方公共団体の責務であります。  ちなみに、教育基本法第十条二項、これも同じ資料の右の下に張っておりますが、第十条第二項には、「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」と定めております。  産後うつ病が約一三・五%を占めると言われる今日、脳の爆発的な発達期に不可避な退行期、これは赤ちゃん返りのぐずり期のことでございますが、その時期は発達上意味のある時期であることを理解させる必要があります。  オランダの生態行動学者のプローイュ夫妻は、ハードルを飛び越えるという子育て支援プログラムを実施し、虐待された生い立ちを持つ母子を集めてそのことを教え、退行期後に必ず新しい発達があるから、決して自分を責めたり、慌てたりしないで、毎日子どもの様子をじっくり観察し記録しようと励まし、自信を持たせた結果、虐待はゼロになったと言います。  同夫妻の著書「0歳児の心の秘密がわかる本」、サブタイトルは「赤ちゃんて、どうして泣きやんでくれないの?」、これはPHP研究所から二〇〇四年に出ているものでございます。その本は、新生児から十二カ月までの赤ちゃんの心の成長のステップを明らかにし、泣いて扱いにくい時期をどう乗り切ればよいかを解説しており、必読文献と言えます。  児童虐待防止法第四条五項は、国及び地方公共団体は、児童虐待の予防及び早期発見のための方策、児童虐待を行った保護者の指導及び支援のあり方などのために必要な事項についての調査研究及び検証を行うものとすると定めております。また、同第四項は、国及び地方公共団体は、児童虐待が児童に及ぼす影響などについて必要な広報その他の啓発活動に努めなければならないと定め、同第二項は、国及び地方公共団体は、学校の教職員などが児童虐待を早期に発見し、児童虐待の防止に寄与することができるよう、研修など必要な措置を講ずるものとすると述べております。  さらに、第五条の三項をごらんいただきたいんですが、「学校及び児童福祉施設は、児童及び保護者に対して、児童虐待の防止のための教育又は啓発に努めなければならない。」と定めております。  そこで、私は、児童虐待の防止のためには、児童虐待と発達障害等との関係を明らかにし、発達障害と児童虐待の予防、早期発見に国を挙げて取り組み、子どもの発達段階とそれに応じたかかわり方に関する科学的知見、情報の提供などの親育ち支援による保護者の啓発及び保護者の指導、支援のあり方に関する、保育士を初めとする関係者の研修の徹底を図るよう提言をしたいと思います。  お手元に、四月十九日に私が産経新聞に書きました「解答乱麻」の拙稿のコピーがありますでしょうか。部分的に読ませていただきます。  さいたま市教育相談センターの金子保所長によれば、同市内の六つの幼稚園で、二歳で発語がないか言葉がふえない子が半数もいることが保護者への調査で判明をいたしました。  私は、以前、埼玉県の教育委員長をしておりましたが、埼玉県教育委員会が平成十七年に発表した調査によれば、通常学級に在籍する特別な教育的支援の必要な子どもは、小学校で一一・七%に及んでおります。  途中、省略いたします。下に参りまして、二段目の三段落目から。  脳科学に基づいて発達障害児を治療指導している澤口俊之氏は、発達障害児のカウンセリングも行っておられるようですが、発達障害は人間性知能障害症候群で、人間性知能、HQを伸ばす方法によって、注意欠陥多動性障害は確実に改善すると断言をしております。これは、澤口、金子、もう一人、片岡という小児科医、三人の共著でございますが、「発達障害を予防する子どもの育て方」という本に書いてございます。  玉川大学脳科学研究所の塚田稔教授によれば、自閉症は治らないとされてきましたが、早期発見による週三十時間から四十時間の集中治療で四十三人中二十人が治ったということが発表されました。週二十五時間では十五人中四人、週十時間以下では四十人中一人、こういうことが発表されております。  同じ三段目の一番最後の行から読ませていただきますけれども、あいち小児保健医療総合センター心療科の統計では、虐待を受けた子どもの五七%に発達障害が認められ、広汎性発達障害が約二五%、ADHDが二三%と報告されております。  これは何に基づいているかといいますと、文部科学省が脳科学に関する検討会を行いました、そのときの配付資料に基づいております。したがいまして、これはあくまでも、あいち小児保健医療総合センターのデータだということをお含みおきいただければと思います。  十年で六倍に急増している虐待が発達障害に与える影響の大きさに気づかせ、虐待を防止するための親育ち支援に国を挙げて取り組む必要があります。  もう一つ、こういう資料をお配りしております。脳の図が載っているものでございますが、これは、さまざまな虐待と子どもの反社会的行動との関係性についてさまざまなところが発表したものでございます。一々読み上げることはいたしませんけれども、さまざまな統計データがそのことを裏づけております。  例えば、「子ども虐待と反社会的行動」という、右の上から二つ目の四角を見ていただきますと、一番下のところに「虐待の種類と反社会的行動の関係」というのがございまして、身体的虐待を受けた子は暴力的犯罪に走る傾向が高いとか、あるいは、性的虐待を受けた子は、家出、性的逸脱行為、性犯罪に走る傾向が強いとか、あるいは、ネグレクト、無視をされた子は非行に走る傾向が強いとか、そういうことが指摘をされております。  あるいは、「虐待を受けると?」、左の上でございますが、大脳辺縁系、これは情動というものをつかさどっているところでございますが、一二%も萎縮する、このようなことが脳科学の研究会等で発表され、議論されているわけでございます。  さて、もとの産経新聞の方に戻らせていただきます。  日本保育協会の調査によって、発達障害児への対応方法を保護者に指導できる能力が重要であって、早期発見、早期支援、あるいは個々の子どもに対するケアのあり方についての研修が重要であるということが明らかになっております。  「逝きし世の面影」という本、鳩山総理もお買いになってお読みになったようでございますが、私は、ぜひ、きょうお見えの先生方にも「逝きし世の面影」という本をお読みいただきたいと思っております。これは、ここに表紙だけ載っておりますが、渡辺京二という人が書いた本で、平凡社から出ております。  この本は、特に江戸の後期に日本にやってきた外国の方たちが、日本の子どもたちの様子を見て、子どもの楽園と評しております。そして、日本の子どもは世界で最も礼儀正しいと書いております。それは、大昔のことではありません。江戸の後期の話であります。  世界一礼儀正しかった日本の子どもは今どうなったか。世界で最も礼儀が悪いとひんしゅくを買っているのは日本の子どもであります。あるいは、子どもの楽園と評された日本の子どもが、今はどうか。  これは、先ほどの脳の図の真ん中にちょっと張りつけておりますが、ユニセフのイノチェンティ研究所が行いました子どもの幸福度調査であります。二十七カ国に行いました。  十五歳に行いましたが、孤独を感じると答えた十五歳は、日本が二九・八%で断トツであります。アイスランドが一〇・三。以下は、一けたであります。それは何を物語っているかといえば、まさに心のきずなというものが失われているということを物語っていると私は感じております。  なぜこうなったのか、その背景に何があるのかということは十分に考えてみなければならないことだと思うんですが、この「逝きし世の面影」の著者は、そのような子どもがどこへ行ったのかということを問うのは、そのように育ててきた日本の親たちが、あるいは家庭教育がどこへ消えたのかと問うことと等しい、こういう問題提起をしております。  スイスの動物学者ポルトマンは、生理的早産ということを人間らしさの特徴として指摘をしました。それは、人間と動物の違いは、人間は脳が未熟なまま生まれてくる。それには理由があるわけであります。乳幼児とかかわることを通して、親の側からいえば親心が育ち、そして、親とかかわることによって人間性、知能が育っていくように人間はつくられたわけであります。  しかし、先天性表皮水疱症という、多分皆さん、きょう初めてお聞きになるものだと思いますが、これは全国に千人ほどしかいない難病の赤ちゃんの写真でございますが、生まれつき皮がむけて、水膨れができて、一生涯むけ続けるという難病でございます。  これを研究している方は大阪大学の玉井克人という先生でございますが、この子たちは例外なく、優しくて、成熟した心を持っていて、だれも難病になったことを恨んでいないといいます。それはなぜか。玉井先生によれば、スキンシップ遺伝子がある、こういうわけであります。  私は、そのスキンシップ遺伝子があるというお話を伺ったときに、マザー・テレサの講演を思い出しました。  これは資料にはございませんが、マザー・テレサは、かつて、こういう講演をして帰りました。  アフリカの国々が滅びるとしたら貧困が原因だろうが、日本は、心が原因で滅びるでしょう。日本人は、インドのことよりも日本の国内の心の貧しい人々への配慮を優先して考えるべきです。愛は、まず手近なところから始まります。愛の反対は憎しみではなく、無関心です。だれからも必要とされていないという貧しさこそ、一切れのパンの飢えよりももっとひどい貧しさと言えます。豊かな日本に心の貧しい人がたくさんいる。それに気づくことさえできない人もいる。愛は、家庭から始まります。まず、家庭の中から不幸な人を救いなさい。夫婦が愛し合い、母親が家庭の中心となりなさい。  中公新書から「福祉国家の闘い」という本が出ております。その本を読んでみますと、スウェーデンで百歳以上のお年寄りが七百人以上いらっしゃる。インタビューをしまして、一生で何が最も重要な変化でしたかと尋ねたら、家族の崩壊だという答えが返ってきた。そこで、ルンド大学のポールソンという女性教授は、福祉社会からの脱出のための議論が必要だと指摘をしております。あるいは、ヘンディ教授の報告書によれば、スウェーデンの女性は子どもに対する愛着が弱く、子どもは楽しい存在ではないとする指摘が出ております。  内閣府が男女共同参画に関する世論調査をしまして、十二月の六日に全国新聞に出ました。それによれば、子どもを持つ必要がないと答えたのが、二十代は六三%、三十代は五九%に及んでおります。  鳩山総理は、きずなのある社会をということを民主党のテレビコマーシャルで強調されました。自民党総裁の谷垣さんも、きずなということを強調されました。きずなというのは、馬をつなぎとめる道具のことであります。それは、縛られる中に実は喜びや幸せを発見する社会。  自由というのは、サルべーションという英語がありまして、おぼれている者を救い出すという意味であります。おぼれている者はだれかといえば、乳幼児と高齢者、つまり、絶対的な弱者であります。その乳幼児や高齢者とかかわることによって実は自由になる。そういう発想は、戦後教育では学んでこなかったものでございます。  もう時間が近づいてまいりましたので、最後の、結論に移らせていただきます。  これまで子育て支援は経済的支援に重きが置かれておりましたが、何よりも大切なのは、親育ち支援であります。  ミシガン大学が行った世界価値観調査によれば、二〇〇〇年の統計で、世界で最も幸せな国はナイジェリアでした。これについてアメリカのニューズウィークは、逆境というものが人間関係のきずな、つながりを深めているからではないかと指摘をしました。  親子のきずな、地域のきずなを取り戻すためには、大人の利便性、親の都合を優先した経済の物差しから、心のきずなのぬくもり、温かさを大事にする幸福の物差しを取り戻す必要があります。  中高生が保育園や幼稚園で乳幼児とかかわる体験を広げることによって、乳幼児とかかわることの楽しさ、喜びを発見することによって親になるという自覚を深める、親になるための学習、虐待を防止するための親としての学習に力を入れる必要があるのではないでしょうか。  以上で意見陳述を終わります。(拍手)

池坊保子公明党

○池坊委員長 高橋参考人、ありがとうございました。  それでは次に、宮島参考人、よろしくお願いいたします。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 どうぞよろしくお願いいたします。  きょう、このような機会を与えてくださいまして、心から感謝をいたします。  どうしても、今の体制、児童虐待に対応する体制を変えなければならないという危機感を持っています。先生方は、その力を持っている先生方でいらっしゃいますので、その先生方の前でお話をさせていただく本当にすばらしい機会を与えていただきまして、心から感謝をいたしております。  私は、今、大学で教員をしておりますけれども、実務者教員という位置づけで働いております。  二十四年間、埼玉県の福祉職として働いてまいりました。主な働きの場所は、児童相談所の児童福祉司を十四年間やりました。また、子どもたちを一時的に保護する一時保護所というところで三年間、児童指導員を行いました。また、知的障害児の施設で一年間、県本庁で児童相談所とか児童養護施設の仕事を三年間務めました。現場の人間です。  そして今、この専門職大学院という、現場の人間を育てる、あるいは再教育をするというところで働かせていただいております。私は、そのような立場ですので、現場に近い話をさせていただきたいというふうに思っております。  どのように現場に近いかということですけれども、今、高橋先生が、親育ち、親が育つための支援が必要だと。非常に長期的な取り組みが必要だというふうに私は受け取ります。本当にこれは大事なことだというふうに思います。しかし、現場の私としては、今、命を落としている子どもたちがたくさんいる、今、苦しみの中にいる子どもたちがたくさんいる、この子どもたちのことをしっかりやらなければならないと考えております。そして、この二つのことは矛盾しないと考えております。  ただ、気をつけなければいけないのは、長期的な視点が重要だということで、今やらなければならないことをおろそかにすることだと思います。両方をしっかり取り組むために考えていきたいというふうに思っております。  資料ですけれども、三つ用意をさせていただきました。一つは、長い資料ですが、パワーポイントの資料です。偶然ですけれども、高橋先生のスーツの色と同じ色になってしまいましたが、これを用意しました。  そして、この資料の次に用意しているのが、三月の半ばにNHKの「視点・論点」という番組で、約十分間ですけれども、児童虐待の対応について意見を述べさせていただきましたが、そのときにお話をさせていただいたことを原稿化したものをお配りさせていただきました。  もう一つが、これは私の友人が昨年スウェーデンに行ってきたときのレポートです。村田和木さんという方ですけれども、もと婦人公論の編集をやっていた方で、数年前、公明党の公明新聞に里親のことを長く連載されて、今、中公新書でその内容が新書版となっていますが、この方がスウェーデンに行ったときのお話です。  今、高橋先生がスウェーデンのことをちょっとお話しされましたが、村田さんが一年前に行ったときには、多くのおなかの大きい方がいた、小さい子どもを連れた親御さんがいた、むしろ出生もふえているというような内容。しかし、論点はそこにあるのではなくて、そこで行われている児童虐待と社会的養護の内容がレポートされておりますので、それをぜひ読んでいただきたいというふうに思いまして、用意をさせていただきました。  それでは、中身に入らせていただきたいと思いますが、パワーポイントの資料に沿ってお話をさせていただきたいと思います。非常に長い資料ですので、全体を取り扱うことはできません。主に一ページ目から六ページ目を使ってお話をさせていただきたいと思います。  それ以降は、事例が載っております。この事例は、本当は、むしろ一つ一つ吟味をしたいところですが、その時間は許されないと思います。しかし、一ページ目から六ページ目のお話をするこの根拠がそこの事例を検討する中であるので、根拠を持ってお話をしたいと思いまして、後でごらんいただくなり、また、もし可能であれば、御質問をいただく中で取り上げられたらと考えております。  この二十年間、児童虐待の対応はさまざまに進んでまいりました。平成二年に厚生労働省の方で児童相談所の受け付け対応件数の統計がとられるようになってから二十年がたちますけれども、非常に件数もふえたということです。そして、二〇〇〇年に児童虐待防止法ができましたけれども、その後、改正が重ねられてきました。本当にすばらしい前進がされたと思っております。しかし、相変わらず悲惨な事件が続いております。  また、大事なことだと思いますが、せっかく家庭から救い出されて施設や里親のもとで暮らす子どもたちがいるわけですけれども、そこの施設でもかなりの件数の悲惨な事件が起こっている。後でお話をされる須藤先生の児童自立支援施設がございますけれども、この児童自立支援施設の三割から四割は、児童養護施設や里親のもとでトラブルがあって、多くが性的なトラブル、性的な加害が発生して、その加害者である子どもをその場所に置くことができないで、児童自立支援施設に変更するというようなことが実際に起こっています。また、里親のもとでも虐待が生じるということが起こっています。本当に悲しい事件が起こっているというのが実際のところだと思います。  次のページに移ります。  この二十年間、児童虐待の対応を前進させたものは何だったのかというふうにいろいろ考えますけれども、何よりもこれは怒りであったろうというふうに私は考えます。  それまで無関心、無視されてきた児童虐待が、気づかれるようになった、またマスコミでも報道されるようになった。そして、こんなことがあってはならない、かわいそうな子どもをひどい親が虐待する、そして行政が動かない、何たることだという怒りによってこの制度が進められてきたと思います。そして、この怒りは必要だったというふうに考えております。  しかし、この怒りによって前進した児童虐待の対応については、そのためにゆがみが生じているのではないかというふうに思います。発見、通告、安全確認、調査、一時保護、分離、また在宅指導、これが、全体を怒りが覆っているというふうに感じております。そのために、虐待が発生する構造が平板な理解で終わっている。その平板な理解の上に対応が少しずれてしまっているのではないかというふうに感じております。  次のページをごらんいただきたいと思います。  虐待が発生する、なぜ起こるんだろう、どんな保護者が虐待を起こすのだろうということがしばしば話題になります。マスコミ等の取材がありますと、どのような親が虐待をするのかということをいつも聞かれます。世の中あるいはマスコミの論調ですと、大体このページの上の理解にとどまっているのではないかと思います。  大方の保護者の方は、子どもをちゃんと大事にして一生懸命育てている、子どもの利益を図れる保護者である、しかし、悪いやつがいる、特別なやつがいる、そして虐待をその人たちがしている、とんでもない悪いやつが虐待をするんだ、これがどんな親なのかということが話題になっているのだと思います。  このような理解に基づいておりますので、一生懸命子育てをする人たちに対しては子育て支援を充実させよう、そして、特別な親御さんに対しては、介入、分離、ケアだということになります。その結果、子育て支援には市民が参加しますけれども、虐待対応には市民が参加しない、市民は通告をする、そして行政に任せる、むしろ市民の参加が不活発になっているという構造が起こっていると考えております。  実際に虐待をしてしまう親御さんたちはどうなのか。これは、私の臨床経験もですし、また、昨年発表になりました全国の児童相談所所長調査というのがございました。そこで、三カ月のすべての事例を検討いたしました。その結果も裏づけておりますけれども、実際に子どもを虐待する親御さんは、下のスライドのような、この資料のような状態だと思います。  確かに、多くの親御さんは、子どもの利益を図れる保護者である。しかし、虐待が発生するのは、とんでもないひどい親だけが行っているわけではない。確かに、とんでもないひどい親はいます。悪意の虐待をする人がいます。自分の支配力を誇示するためにする人がいます。自分の性的な欲求を満たすために、自分の子どもに対して性の対象とする親がいます。確かに、その存在を認めなければなりません。  しかし、それだけではない。むしろ、多くは、自分の子どもの利益を図りたい、何とかしたい、そう思いながらできない親御さんが多いということが間違いなく言えると思います。  また、一見、子どもの利益に無関心だなというように感じる方がいます。しかし、その多くの方々は、その方自身が追い詰められているために、自分自身のことも大事にできない、自分の家族のことも大事にできない、パートナーのことも大事にできない、そして子どものことも大事にできない、そのような構造の中で実は虐待が起こっているということだと思います。  そして、大事なのは、このとんでもないひどい親のもとで起こる虐待だけが深刻な事態を引き起こすのではない。何とかしたいけれどもできない、そのような親御さんのところで、むしろ多くの子どもたちが命を失っている。子どもが命を失うのはゼロ歳が一番多い。そこで追い詰められた、ノイローゼ状態にあった、そういう中で命を落とす子どもが実に多い、むしろその方が多い。また、心中によって命を失う子どもたちが非常に多い。その親御さん、家族が追い詰められている状態にあることは間違いありません。  そして、このように、実際の状態に目を開くならば、確かに専門家だけが介入しなければならない特別な事例はありますけれども、むしろ、子どもの利益を望んでいるけれども適切に養育できない保護者、あるいは自分の利益に関心を寄せることができないように追い詰められている方、ここにも実は国民は参加できるんだ、市民は参加できるんだということに目を開かなければならないというふうに考えております。また、市民が参加するために、適切なコーディネーター、スーパーバイザーが必要だというふうに考えます。  次のページを見ていただきたいと思います。  児童虐待が起こる構造を別な面で考えてみたいと思います。  児童虐待は、子どもに対して保護者が、家族が虐待を起こす、この二者の間で生じるものが児童虐待だというふうに言われています。また、定義もそうなっています。そして、ここで強調されてきたのは、すべての家庭で虐待は起こるのだということが言われてきました。これは正しいことだったと思います。しかし、これゆえに見落とされてきてしまったものもあるということを忘れてはならないのではないかと思います。  下のスライドを見ていただきたいと思うんですが、子どもと家族の間で起こるのが虐待である。しかし、この子どもと家族だけでカプセルのようにそこにあるわけではない。むしろ、その子どもと家族は、地域社会の中で生きているわけです。そして、この世の中で生きているわけです。この時代の中で生きているわけです。そして、その子どもや家族はさまざまな問題を背負っているということが実際に見てとれます。  全国の児童相談所の所長調査を見ても、育児ノイローゼや、DVや、孤立や、不和や、離婚や、再婚家庭や、育児の経験不足や、病気や、障害や、薬物依存や、不安定な就労や、貧困や、住宅環境が非常に劣悪な状態だ、そのような中で起こっているということです。  子どもと家族、子どもと保護者の間に着目することは当然必要です。そこの問題を改善しなければならないことは当然です。しかし、冷静にこの状態を見るならば、それだけではだめだと思います。全体的にかかわっていく必要があると思います。  次のページを見ていただきたいと思います。  実際、この二十年間を見ると、確かに国民の関心は高まりました。通告件数はふえました。介入の仕組みは整いました。しかし、多くの国民は、虐待は自分の問題だというようなことを考えませんでした。  高齢者虐待が発生するときに多くの方は思います。大変だったんだろうな、追い詰められていたんだろうな、介護の社会的支援があったらば、親を殺したり、あるいはけがをさせたりすることはなかっただろうなと。しかし、子どもの虐待を見るときには、ひどい保護者がやっている、どんなに追い詰められていても、経済的にちゃんとしていても、まともなやつは虐待をしないよという論調でとらえられます。これは誤りだと思います。  国民は、自分の問題と考えることが必要だと思います。外注化するだけではだめだと思います。子育て支援と虐待対応、社会的対応、これを分断してはならないと思います。問題の社会的要因をちゃんと見ていかなければならないと思います。  また、通告ですけれども、これも、早さだけ、そして介入の強さだけが問題になりました。実際は、この通告の質ということをちゃんと考えていかなければならないと思います。  そして、総合的な支援が必要だ。在宅の支援も必要ですし、施設に入っている子どもたち、里親のもとで委託されている子どもたちのための支援も充実させることが必要だと思います。  この問題を解決するためには、特定の対策では効果は出ないというふうに考えます。  次のページですけれども、虐待の問題を解決するためには、子どもと子育てを社会全体で支えるという土台が必要であろうと思います。その上で、課題を持った親子、家族に丁寧にかかわるということが不可欠だと思います。そして、それを担うのは、子ども、子育てに国民が参加する、国民みんなが参加する、また国と地方公共団体が責務をきちんと果たす、セーフティーネットをきちんと機能させるということが必要だと思います。  それでは、具体的にどういうことかということですけれども、下のスライドです。  まず、広報や研修を今までもやってきたと思いますが、その中身、その質を少し変えていく必要があると思います。  通告というのが活発に行われるために、疑いでもいいんだよと、それは本当に必要だったと思います。国民の義務だということも周知することが大事だったと思います。しかし、実際に起こっている事例を見ますと、重いケース、命を落とすようなケースは通告されないわけです。それは、悪事を告発する通告だというイメージと認知があるからだと思うんです。むしろ、本当に親子を救い出すんだということをちゃんとイメージするような啓発が必要だと思います。そして、丁寧に情報提供することがとても重要なんだということが大事だと思います。通告を、外注ではなく、参加ということにすべきだと思います。  また、この二十年間、当事者からの相談がむしろ後退したのではないかと思います。確かに、放棄してはいけません。子育ての責任を親はきちんと担っていかなければなりません。しかし、できないときや困難に陥ったときには相談していいんだよということを、もっともっと広報を活発に行わなければならないと思います。  相談は、自分の問題を解決してほしい、助けてくださいということですけれども、虐待の問題が社会的な問題であるとすれば、そうであるがゆえに、相談をするというのは、自分がその社会の問題に参加するんだというような位置づけで、これは参加を促すべきですし、受けとめる方もそのような意識で受けるべきだと思います。  次の、地域、関係者の対応力を上げるということですけれども、実際に子育て支援を頑張っている方には、かなりの難しいケースが地域にいっぱいあるということがわかっています。その人たちを応援する必要があると思います。  民間の方が実際にこの問題にかかわると、難しい、こうしたときはどうしたらいいのか、こういった判断に迷うというときに、やはり、きちんと地域に専門家がいて、市民の参加をサポートして、相談に乗って助言をする、場合によっては、それは私どもがやりますよと肩がわりする、そういった体制がなければ市民の方は活発にこの問題に参加することはできないと思います。それを行うには、やはり市町村の職員の質を上げて、そこにきちんとした方を置くということが必要だと思います。  全国の市町村の児童相談担当の方ですけれども、社会福祉士、ソーシャルワーカー、このようなトレーニングを受けている方々は何と四%しかいないということです。さまざまな資格を持っていらっしゃいます。教員であったり、保育士であったり、看護師であったり、そのような立派な資格を持っていらっしゃる方はたくさんいます。しかし、実際に家族支援とかソーシャルワークをトレーニングされた方は四%しかいない。また、三割は、何の資格もない一般事務の方です。一般事務の方ができないというわけではない。その人たちにも有能な方はいますけれども、しかし、難しさはあるのではないでしょうか。やはり、ちゃんとトレーニングを受けた方が市町村に配置されるべきだというふうに思います。  また、学校というのはやはり重要なところだと思います。義務教育ですべての子どもたちが学校に行くわけですけれども、そこにいる学校の先生方に、ある程度の力をつけてもらわなければならない。これは研修では足りないと思います。保育士の養成課程には、児童福祉とか家族支援論ということが科目として位置づけられています。しかし、教員養成の課程にこのような科目はないのではないでしょうか。やはり、先生になる前の段階できちんとした教育を受けていくということがとても重要なのではないかと思います。  また、スクールソーシャルワーカーという職種の方を学校単位に配置するということがとても大事だと思います。このスクールソーシャルワーカーがすべてのものを担うということではありませんけれども、学校で起こっているさまざまなことに対してソーシャルワークの視点で見るとどうなのかという視点を与えることによって、防げる事例は多いと思います。江戸川の事件は、まさにそういった視点が学校の中に置かれていれば、これは救えたのではないかというふうに思います。  三つ目として、困難な子どもと困難な子育てをちゃんと支援していく。  保育や学童保育の充実は必要だと思います。経済的に困難な育児を支援すること。一人親家庭、再婚家庭、育児ノイローゼ。実は、双子、三つ子の子どもの虐待死は非常に多いわけです。また、いまだに、子どもの障害を苦にして子どもを殺してしまったり、心中をしてしまうという事例がたくさんあるのです。そういうことにちゃんと着目していかなければならないと思います。  そのために、市区町村の職員、児童相談所の職員の質と数をふやすということが必要です。後の資料の方にその実際の数字は載せておりますが、先ほど申し上げた状態です。  児童相談所の職員も、専門職採用されているのは実は半数です。そして、多くの職員が三年未満で入れかわるというような状態です。そのような中で、本当に、事例でそこで起こっていることがどういうことなのかということを見抜くことはとても難しい。実際、できない。  いつもいつも、虐待死の事件が起こりますと、何で動かなかったのかと。それは、勇気がなかったとか、そういう問題ではない。むしろ、起こっていることを読み解くことができなかったんだということだと思います。  江戸川の事件には三者がかかわっていたわけです。子ども家庭支援センターがかかわっていました。児童相談所もかかわっていました。また、学校もかかわっていました。しかし、あのお子さんが体験していることがどういうことなのかということがわからなかったわけです。  一番最初に歯科医の方が連絡をくださいました、ほっぺに傷があり、また太ももに傷があったと。ここだけで、本当にこれは大変なケースだというのはわかるんです。ほっぺのあざは、感情に任せてたたくことはあります。しかし、もものあざは、これは、正座をさせて上から相当な外力を加える、踏みつぶす、あるいはけり上げるということがなければ起こり得ないあざなわけです。電話を受けたところで、そこは既にわかっていたことなんです。そこでわからなかった。  また、これを通告された方は歯科医の方だった。むしろ、歯科医の方のところに聞きに行けばよかったわけです。実際に家庭に訪問しなくても、歯科医の方に丁寧に聞けば、これは大変な事例だというふうにそこでわかったわけです。その最低限の専門性さえなかったということです。  しかし、その人方がただ怠慢だったということではなく、先ほど申し上げたような体制があるから見抜けない。それが全国の状況だというふうに考えております。  最後のことですけれども、実際にまた子どもを引き揚げた場合、社会的養護の拡充をしなければなりません。柏女先生がおっしゃった児童養護施設、児童福祉施設の地域化と小規模化は絶対に進めなければなりません。  また、里親委託を本当にふやさなければなりませんけれども、里親の手当をふやしても、きちんとした丁寧なフォローがなければ、里親のもとで悲劇は起こります。実際どのようなフォローがなされているかというのは、このスウェーデンの資料を見るとわかると思います、今は見ませんけれども。  実際に、施設なんかで担当の保育士さんや児童指導員が子どもを見ます。一生懸命やっています。しかし、うまくいかないことはたくさんあります。そのときに課長さんや施設長さんが、どう、うまくいっているかい、こうしたらいいよ、ああしたらいいよと言うわけです。しかし、その体制が里親さんのもとでなければ、里親さんのところで虐待が生じるのは当たり前のことです。小規模化を進めれば進めるほど、きちんとそれをフォローする体制がなければ、家庭で起こったことと同じことが里親のもとでも行われるのだということを知っておかなければならないというふうに考えています。  上がってしまったので、時間がわからなくなってしまいました。ここで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

池坊保子公明党

○池坊委員長 宮島参考人、ありがとうございました。  それでは次に、須藤参考人、よろしくお願いいたします。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 おはようございます。全国児童自立支援施設協議会会長の須藤三千雄でございます。埼玉学園の園長もしております。  本日は、意見を述べる機会を与えていただき、本当にありがとうございます。  私は、昭和五十一年、国立の武蔵野学院附属児童自立支援専門員養成所を卒業した後、東京都立萩山実務学校で六年間、埼玉県立埼玉学園で十八年間、児童と生活をともにする寮舎の担当でございました。その後、児童相談所で六年間仕事をし、埼玉学園に戻り、副園長、園長として現在に至っております。  児童相談所で児童福祉司として勤務した平成十二年から十七年は、児童虐待防止法のできた年でもありますし、非常に激動の六年間ということでございましたが、児童相談所から改めて施設を見るいい機会も持ちましたし、児童相談所で、児童虐待の最前線で子どもと一緒に子どもの生活を見られたということは、非常に幸せでございました。  児童と生活をともにして三十六年、私の実感は、児童の問題は児童を取り巻く環境の問題であるというふうに思っています。また、現代の非行児童を理解するには、児童の被虐待体験に着目する必要があると思っています。自分はだれにもわかってもらえないという思いを長く持ち続けている少年の孤独な心をぜひ理解していただけると幸いでございます。  児童虐待は初期対応が非常に重要ですが、非行や問題行動を繰り返す児童への初期対応も非常に重要でございます。児童虐待を考える上で、非行問題に関係機関、学校、警察、児童相談所等が丁寧に対応することが重要と認識していますし、児童虐待を今後減らしていく重要なポイントの一つというふうに現場では思っております。  では、初めに児童自立支援施設について御説明させていただきまして、次に現状と課題、最後に公設民営化について危惧している点に触れたいと考えています。お手元に、埼玉学園の百周年記念誌、それから埼玉学園の要覧とレジュメをお届けさせていただきましたので、ごらんいただければ幸いでございます。  児童自立支援施設の概要についてでございます。  歴史的経緯から述べますと、明治三十三年、一九〇〇年の感化法では感化院、昭和八年、一九三三年の少年教護法では少年教護院に、昭和二十二年、一九四七年の児童福祉法では教護院に変遷、平成十年、一九九八年の児童福祉法改正で児童自立支援施設と改称された施設であります。  要覧をごらんください。  児童福祉法四十四条に規定された施設です。読みます。「不良行為をなし、またはなすおそれのある児童、及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童を入園させ、または保護者の下から通わせて、個々の児童の状況に応じて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的」としています。  平成十年の児童福祉法改正によって、施設の名称変更や対象児童の見直し、学校教育導入も施設長に義務づけられました。施設内の処遇だけではなく、退園後も社会的自立ができるように、長く支援するということでございます。  ちなみに、埼玉学園は創立百六年でございます。つい先ほど入った新入生は三千四百八十三番でございました。現在、小学校三年生から高校三年生まで九十名近い子どもが生活しております。全国児童自立支援施設協議会は、ことしの秋、百十周年の記念事業も予定しているところでございます。  こうした児童自立支援施設は、全国に五十八施設あります。国立二、社会福祉法人二、都道府県立五十、市立四施設でございます。全国で約二千人の子どもが生活しております。多くの施設が公立施設ですが、児童福祉法施行令第三十六条に「都道府県は、法第三十五条第二項の規定により、児童自立支援施設を設置しなければならない。」という設置義務が課せられているからでございます。社会福祉法人の二施設は、設立から百年を経過している伝統的な施設でございます。  児童自立支援施設の特徴は、開放処遇と施設内学校です。  全国の児童自立支援施設の入所児童は、二十二年三月現在でございますが、生徒さんの内訳は、小学生が二百十四人、中学生が千五百三十九人、高校生、中学卒業生が二百二十三人、その他でございます。中学生の割合が約八割を占めています。  また、最近の特徴としては、中学卒業生、高校生、就労している子どもでございますが、この割合が一割以上を占めております。年々その割合が高くなっております。そうした状況の背景には、被虐待児が施設入所の六割以上を占め、親子関係の関係改善が困難であるケースも多く、家庭復帰が難しい状況でもあると言えます。また、児童の抱えた問題が非常に複雑であり、社会的自立が中学卒業生の年齢では著しく困難であるというケースもあるためでございます。  児童の入所、退所についてでございます。  入所経路は、児童相談所の措置で入所する場合と、家庭裁判所の審判による入所、少年法の保護処分とする場合と、二通りあります。  児童相談所による入所では、児童の保護者の同意と、児童自身の、施設に入って立ち直ろう、頑張ろうという意思の確認が前提であります。児童の生活が家出、外泊等の生活、窃盗など問題行動を繰り返しているので近隣の住民や学校の先生方が心配して施設入所を働きかけても、保護者の同意がなければ入所には至ることはできません。  児童の保護者や親族を取り巻く問題性が深刻かつ複雑であり、児童相談所が保護者や児童自身を施設入所に向けてきちんと説得できないという状況もあります。児童相談所自体に、児童虐待に追われていて、問題行動を繰り返すケースに十分にゆとりを持って対応できていない状況もあるかと思われます。年度によって多少の変化がありますが、入所ケースの約八〇%から九〇%は児童相談所の措置によるケースであります。  もう一方、家庭裁判所の審判による入所では、保護者の同意は必要がないものの、家庭裁判所の調査官が、学校調査や面接等での判断、審判で本人自身や保護者から丁寧に意見を聞き、保護処分という決定が行われます。福祉的な面にも十分配慮がされ、児童自立支援施設入所という決定がなされます。こうした入所ケースは一〇から二〇%でございます。  保護処分による入所ケースでは、一度児童自立支援施設に入所すると、児童相談所の措置による入所と同様の解釈が適用されます。そのため、無断で外出を繰り返し、本人や保護者が家庭引き取りを要求すると、もちろん施設や関係機関は施設に戻るように粘り強く説得を繰り返しますが、施設に帰園しない児童も、ごく少数だが、います。児童自立支援施設が開放処遇を大切にしながらも、こうしたケースでは処遇の困難性を感じるところでもございます。  施設と関係機関連絡会議の場では、家庭裁判所の裁判官や調査官から、家庭崩壊やきちんとした家庭教育を受けてこなかった児童が多いので、今後も小舎制、一カ寮の児童定数が十五名以下の集団のことをいいますが、この維持、施設の入所枠をふやしてほしいという要望が寄せられています。  最近の特徴としては、先ほど宮島先生もおっしゃられましたけれども、児童養護施設からの措置変更ケースが急増していることでございます。  措置変更の理由は、ほかの児童や職員への暴力、他児への性的加害行為等での処遇困難であります。私の施設では、そうした児童は入所児童全体の三〇%から四〇%であります。そうした意味では、児童自立支援施設は、児童養護施設等が安定して運営できるようなバックアップ的な役目も果たしておるところでございます。  児童の入所理由は単一ではなく、さまざまな要因が重なり合っています。家庭裁判所や児童相談所の記録からは、多い順には、家出・外泊・放浪、万引き、不登校・怠学、持ち出し、不良交遊、反抗・乱暴等が挙げられています。背景には、親子関係が不十分であったり、先ほど言ったように、虐待であったり、周囲との関係で孤立している子どもがいるということがわかります。  気をつけなくちゃいけないのは、孤立している子どもがどういうふうに時間を過ごしているかというと、長時間ゲームをしていることがあります。私の知っているケースであれば、一日八時間とか十時間以上ゲームをして、一人で遊びをしている子もいるということでございます。  ほかに特徴的なことは、性に関係した児童が多いということでございます。小学生でも性的問題行動で入所するケースも最近は多くなってきております。  お手元の埼玉学園の要覧をごらんください。開いていただきまして、三ページの入所理由の九と十を見ていただきたいと思います。  虐待のことはお話ししましたけれども、ほかに特別なケアが必要とされる児童としてADHDやLDや知的障害も入っていますので、そのデータも掲載してありますので、ごらんください。保護者や寮担当やクラス担任らとすぐに良好な関係をつくれない児童が多くなっています。  開放処遇ゆえに無断外出があるというふうにお話ししましたけれども、埼玉学園では、昨年、年度末に九十名の児童が在籍しましたが、無断外出件数は三十三件でございました。一人の児童で、十八回も稼いだ子がいます。多くの子は無断外出をしませんが、多くても、一人で一、二回でとまるケースもありますが、長期で何回も無断外出をする子どもでも、現場では粘り強く取り組んでいます。  施設内での児童の生活についてお話をします。  児童自立支援施設で二十四時間生活している児童は、家庭にかわる寮舎で暮らしながら、施設内学校で学習やクラブ活動等に取り組んでいます。私の勤務する埼玉学園の平常日課については二ページの上の方に書いてありますので、目を通していただければ幸いです。  朝六時半に起床、グラウンドで体操、ランニングをして体をほぐし、清掃に取り組んで、その後、朝食、片づけをしてから施設内学校に登校します。  午前中は四時間の授業を受け、昼は、自分の寮に戻り食べています。  午後の日課は、授業を受け、運動クラブ、例えば、男子でいえば野球、卓球、陸上、女子はバレーボール、小学生はちびっ子クラブ、それから文化クラブでは、吹奏楽、器楽、美術、木工、農芸の活動を行っていますが、文武両道、一人の子どもがスポーツ系のクラブと文化系のクラブと両方に所属して、自分の能力を発揮できるようにしております。  夕食後は、自習、日記、自由時間、テレビ、読書、編み物、ギター、将棋等で過ごし、午後の九時に、一日を振り返りの会の後に就寝します。九時以降も、児童によっては自習をしたり、寮の職員に人間関係や進路のことで相談をしてくる児童もいます。  寮の担当職員は、生徒の日記に目を通したり、面接をしたり、生活記録を書いたり、就寝後の児童の様子を見回りながらの就寝となります。  このような日課については、規則正しい健康な生活が送れるように決められています。家出や外泊を繰り返し、昼夜逆転の生活を送っていた児童には、生活リズムを身につけることが大切であります。言葉だけの生活指導では全く効果はありません。生活に寄り添うこと、私たちはウイズの精神と名づけていますが、児童と適切な距離感を保ち、人間関係をつくりながらの働きかけが大切であります。  自分たちが生活する寮舎の内外を、分担を決めて清掃に取り組むなど、自分のことは自分でするという指導が行われています。下着や靴下など自分の洗濯物は、年齢に応じてですが、自分で洗うことになっています。  食事は、栄養士の献立に沿って調理担当職員によって調理され、各寮で食べています。食事の雰囲気は、全員がそろって和やかな雰囲気で食べています。楽しい会話や、好き嫌いをなくし、丈夫な体をつくることに効果があると思っています。職員は、公平な配ぜんや児童の食事量や表情についてきめ細かく配慮しております。  明治期に感化院の創設に尽力された留岡幸助氏は、北海道に家庭学校を創設されました。児童の感化教育には北の厳しい大地が必要であると考えて東京から移住した方でありますが、よく食べ、よく働き・よく学び、よく眠る、この大切さを三能主義と提唱されましたが、簡潔でわかりやすい提言と私も思っています。  施設の運営と課題でございます。  感化法の時代から、児童の指導は小舎夫婦制という形で多く運営されてきました。一組の夫婦が、寮長、寮母、副寮長という呼び方もありますが、自分たちの家族と一緒に施設で児童と同じ寮の中で生活するという形態でございます。  多くの児童は、家庭的環境に恵まれず、受容的に接してもらうことが少なく、自分自身の人生に自信を持つことができないでいました。こうした児童にとって小舎夫婦制は安定した指導が期待できると関係機関からも高い評価を受けていますが、非常に残念ですが、種々の事情、労働環境、社会的状況から、現在では、全国の五十八施設の中で十九施設というふうになっております。  ほかの勤務形態では、小舎交代制もあります。この形態は、寮舎担当職員が五人から八人程度でチームを組み、運営するシステムでありますが、どのシステムも児童の社会的自立を目指しておりますし、効果を上げているというふうに思っております。  児童自立支援施設に入所する児童の生育歴は、家庭的な問題、両親の不仲や離婚や、受容的な家庭的雰囲気の経験等の不足が多く介在しています。  施設の多くは自然環境が豊かであり、農業地、山林、海等の自然との触れ合いで、児童は徐々に落ちつきを取り戻していきます。家庭や地域、学校で居場所を見つけることができなかった児童が、施設の生活を通して安らぎの場所を見つけていく。入所時に、こんなところに来たくなかったと涙を流していた児童が、さまざまな試し行動の後で、信じられる大人がいつでもそばにいてくれると実感すると、いつの間にか、自分の家にいるように伸び伸びと生活をしています。大人への不信感やつらい体験が自然に取り除かれているからでしょう。  試し行動とは、無断外出や自傷行為、乱暴な言動や反抗、強がり、指示に従わなかったりで、さまざまでございますが、自信がなく、不安ゆえに大人を試すのだと私は思っています。また、周囲にモデルとなる大人がいなかった児童も大変多いというふうに実感しています。  創立時から児童自立支援施設が効果を上げてきた一定の刺激遮断、枠のある生活、生活リズムのある集団生活は、発達障害児や被虐待児の指導については十分な指導ができていないという一面もあります。近年、入所理由の多くを占める性的問題行動を主訴とする児童の対応にも複数施設での取り組みが始まりましたが、まだまだ手探り状態であります。こうした課題に対して、全国の施設職員や研究者が総力を挙げて取り組んでいるところでございます。  児童の平均在園期間は一年半から二年でございますが、家庭の事情等によっては、もう少し長く在園する児童もおります。  施設の中で、子どもは確実に成長します。予後が、退園後のことですね、比較的よい児童は、もちろん本人の努力もありますが、在園中に、保護者や、児童が入所前に通っていた小学校、中学校の先生方、児童相談所のケースワーカーさん等の面会の多かったケースでございます。いかに児童が愛情を求めているか、施設に入ってからの継続的な関係機関の支援が大切かは、この事実が証明していると思います。  また、退園した後も継続的な支援が必要です。おおむね十八歳から二十ぐらいまで、その時々の状況に応じて支援していくことが大切でございます。施設の担当者ももちろん相談に乗っていきますが、退園後に通所指導等で効果を上げている施設もありますし、ケースによってはきめ細やかな社会的支援体制が必要です。例えば、要保護児童対策協議会の活用も、児童自立支援施設を退園した子どもにも必要かなと思っているところでございますが、医療機関を含めた関係機関、地域との連携が重要と思います。  公設民営化についてでございます。  地方分権改革推進委員会第三次勧告において、児童福祉法三十五条二項に基づき都道府県が設置している児童福祉施設、児童自立支援施設の職員資格について、廃止または条例委任とする方向が打ち出され、これは二十一年の十月七日ですが、その後、厚生労働省が「地方分権改革推進委員会第三次勧告(地方要望分)に対する厚生労働省の対応方針について」を発表、これは二十一年十一月四日でした。そして、二十一年十二月十五日には「地方分権改革推進計画について」が閣議決定され、「児童自立支援施設の職員に関する規定は、廃止する。」とされたところにより、戦後長く維持されてきた児童自立支援施設の公設民営化も可能となる転換を迫られることになりました。  児童自立支援施設協議会としては、施設の民営化がなされた場合においても、引き続き真に安定した施設運営が担保されるかということについて、深い憂慮の念を抱いております。  児童にとって権利保障など、児童の最善の利益を確保、提供できる施設として今後も児童自立支援施設が維持存続できるという保証なしに、受け入れることはできないと考えています。仮に、安易に民営化の道をたどることがあれば、我が国の入所型福祉施設の中で最後の人権保障の場として役割を長く担ってきた歴史ある施設が事実上変質せざるを得なくなり、極めて遺憾な状況を派生させる懸念があります。  児童自立支援施設のあり方に関する研究会報告、平成十八年二月にもあるとおり、児童自立支援施設の運営について、民営化の検討を視野に入れる場合には、少年非行へのスタンス、公としての責任、対応、児童自立支援施設の役割、民営化する場合に施設機能を維持強化する仕組みがあるのか、民間と協働する場合にはどのような仕組みがあるかなどを検討する必要があると思います。  特に、財政的基盤のあり方、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援・連携のシステム、とりわけ、運営に支障が生じた場合の設置者としての責任を持った立ち直りの方策、サポート体制、事件事故があった場合の対応システム、学校教育導入、実施、サービス水準を確保するための評価システムなど、さまざまな課題を克服できるか否かが検証にとって不可欠というふうに考えています。  委員の先生方にお願いがあります。大変お忙しいと思いますが、ぜひ児童自立支援施設にも足を運んでいただきまして、児童の明るい笑顔に接していただきたいとお願いして、私の意見陳述を終わりにします。  御清聴ありがとうございました。(拍手)

池坊保子公明党

○池坊委員長 ありがとうございました。  四人の参考人の方々の意見陳述は終了させていただきます。     —————————————

池坊保子公明党

○池坊委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義さん。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 民主党の柚木道義と申します。  きょうは、参考人の皆様、本当に貴重な意見陳述、お話をいただきまして、児童虐待に関するセーフティーネットの全体の拡充、あるいはその網の目をよりきめ細やかなものにしていくことの必要性を改めて認識させていただきました。いただいたお話に関係する形で、それぞれの皆様に時間の許す限り御質問をさせていただきたいと思います。  まず、柏女参考人のお話に関連して、実は私も、きょうこの質疑に立たせていただく関係で、地元の岡山県倉敷市で、倉敷の児童相談所、あるいは前回法改正で各市町村に努力義務化されました一次的な窓口の拡充ということで、子育て支援課というものが新設をされ、またその体制も増員されております。また、私の倉敷市には十カ所、子育て支援センターという形で、ほぼ保育園内の併設とかそういう形が多いんですが、さらには、町の中に子どもの親御さんの集まる場所、商店街の中だったり児童館の近くだったり、そういった形のスペースも今設置が少しずつ進んでいる、そういう状況をお聞きしてきたわけでございます。  そういった中で、柏女参考人にぜひお尋ねを申し上げたいのは、要保護協議会がこういった形のそれぞれの連携をとり行っていく、その中で当然、市町村の役割といいますか主導性、リーダーシップが求められると思うんですが、課題として挙げられた部分、情報の共有化であったり、あるいは全体としての、倉敷市の要保護協の場合、三十一のそれぞれの団体がいろいろなことで対応するということで、その情報共有化自体が課題であることは私も認識しているんですが、では、その課題をクリアするための具体的な施策です。  例えば、実は倉敷市の場合、こういうことをやっています。この四月、新年度から、こんにちは赤ちゃん事業、全戸訪問、会えるまでということで二巡、三巡されるわけですが、そこで訪問されたことの報告書が、オンラインで各市庁舎、市役所以外の支所が三カ所ありますが、そういったところのそれぞれの関係の方は閲覧をすることができて、それぞれの対応、場合によっては児相さんにも連絡をするようなことも含めて共有化できるんです。ただ、それ以外の方々は、それは個人情報であるということもありまして、アクセスできなかったりします。ですから、まさにその情報の共有化自体が、個人情報との兼ね合い等もあって、なかなか困難な部分というのも一つ課題として伺っております。  情報共有化を実現するためのもう少し具体的な施策があれば、ぜひお話をいただければと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 今の委員の御質問に対して、私は二点の方策があるかと思います。  一つは、ケースの検討にめり張りをつけるということが大事だろうというふうに思います。これは、虐待の重症度チェックをしっかりして、どの事例はしっかりと見なければいけないのか、どの事例はしばらく置いても大丈夫なのか、そうしたことを要対協でしっかりと確認をするということが一点、大事だろうというふうに思います。  二点目は、月に一回、定例の実務者会議をしっかりと持っていく、そこに専門家も入って、そして進行管理が必要な事例は必ず実務者がチェックをしていく、そういうシステムも定例化していくということが必要ではないかと思います。個別の援助会議はかなり開かれているのですけれども、その一歩上の段階の、実務者がしっかりとその進行管理をする、それを定例的にやるというところが今まだ十分行われていないところが多いと思いますので、こうした仕組みを導入していくことが大事ではないかというふうに思っております。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 ありがとうございます。  確かに、私の地元でも、実際のレベルのチェック、確認を、自治体でそういうフォーマットをつくって取り組みがスタートしたということでございますから、まさに今参考人がお答えいただいた部分が重要という部分と、実際の実務者会議の開催がまだ、そういう意味では地域格差といいますかばらつきがあるということだと思いますので、そこはまさに厚労省としても、全体のそういう進捗のチェックも必要なんであろうという認識をさせていただきました。  続けて、柏女参考人にお伺いさせていただきます。  先ほどのお話の中で、母子保健法から児福法への移行の部分でのちゃんとした切れ目なき受け皿体制が必要かというお話があったと思うんです。その部分は、私も非常に認識をさせていただきました。  そういう中で、まさに保育園に入って、あるいは幼稚園、小学校、あるいは子育て支援のところに来ていただける方々は、ある意味では先ほどのお話のような対応も可能になると思うんですが、実際にそこに来られない方々、あるいは就学前の方々への対応が非常に重要であるとともに、なかなか困難である、そういったお話も現場ではお伺いしておりまして、そのあたりの対応についてお話しいただければと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 私は石川県の職員をしておりまして、私のレジュメの一枚目の下から七行目のところに、「かかりつけ保育園と子育てプラン作成の可能性」ということを書かせていただいております。  この中で、石川県では今、こんにちは赤ちゃん事業で、保健師等が家庭訪問をし、そして必要と認められればかかりつけ保育園を御紹介し、そこで保育士と一緒になって子育て支援のプランをつくっていく。高齢者が介護が必要になればケアプランがあるわけですので、同じように、赤ちゃんが生まれたら子育て支援プランを一緒につくっていく、そして月間プランや中長期プランを立てながら一緒に歩んでいく、そうした試みをしていくことが大切なのではないか。つまり、母子保健の対策と児童福祉の対策を結びつけていく、そうした試みが大事なのではないかというふうに思っております。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 ありがとうございます。  まさに、保育園内の、併設の子育て支援センター等と連携してという意味ですよね。わかりました。そういった形をそれぞれの受け皿で拡充していくということで承知をいたしました。  それでは、それぞれの先生の時間がありますので、柏女先生にもう一つ、「こうのとりのゆりかご」について、最後にお尋ねをさせていただきたいと思います。  この委員会でも視察にお伺いをさせていただき、私は残念ながらちょっとお伺いすることができなかったのですが、これは本当にデリケートな部分もあろうかと思います。  私自身の認識では、先ほどのお話にもあったと思うんですが、改めて少し確認をさせていただきたいのは、こういった匿名的な形での受け皿といいますか、そういったことがあることによって、お子さんの命を救い得る部分があるわけです。  その一方で、児童の権利保護といいますか、最大の権利保護は命なわけですが、その後の成育の中での、親御さんたちがなかなか匿名のままで見つからないというふうな課題も一方で指摘をされている中で、その両立というのは非常にまた言葉としてどうかというのはあるんですが、その「ゆりかご」、受け皿としての、命を守ることと児童のその後の成育の権利保護、どういう形で工夫が可能なのか、報告書の中にもおありだったかもしれませんが、改めて最後にお伺いできればと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 実は、慈恵病院は本当に実名化に向けての努力を行っておりまして、五十一人預け入れられておりますけれども、そのうちの三十九人は、その後の病院のソーシャルワーカー、看護師等々の尽力によって、実名化になっております。そのことも、最初は匿名で相談を受けながら、丁寧な寄り添いをすることによって実名化を図っていく、そうしたことがとても大事なのではないかというふうに思っています。  委員がおっしゃるように、匿名性というのは、親にとっての相談しやすさという利益と、子どもにとって出自が不明になる不利益の二面性を持っているわけでありまして、それをそれぞれ可能な限り保障していくという試みが大切なのではないかと思います。  つまり、親が身近な者に知られずに相談ができ、かつ、子どもの育ちや将来に必要な情報は確実に収集できる仕組み、それが私どもが提言した母子のシェルターということでございますけれども、そうした仕組みを工夫していくことが大切なのではないかというふうに考えております。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 ありがとうございます。  まさにそういった御努力を続けていかれる中で、命をとにかく守っていくための仕組み、そして最終的にはそういった、まさに「こうのとりのゆりかご」のような形に至らない形での取り組みが、きょうのお話の中で重要だという視点だったと思っております。  それでは、続きまして、高橋参考人の方にお尋ねを申し上げたいと思います。  親業支援であったり、あるいは発達障害といいますか精神疾患等の支援体制が非常に重要であるというお話があったかと思いますが、まず、発達障害、精神疾患等、普通の形で育って、その後、成人して生活を営む、社会生活を伴う、そういったことが困難な状況が現実にあると思うんですね。そのときに、先ほどちょうど母子保健法から児福法のはざまが大事という話があったんですが、普通の形でなかなか生活が困難な方々への、そういう意味では育ちの段階での支援、これは非常に重要だと思います。  その後、今、そういう方々が成人をされてお子さんを持たれる。もちろん、これは人としての権利ではありますが、ちょっと前に、埼玉県でしたか、そういう御両親の、定住されていない、公園で住まわれていらっしゃるような形でお子さんが生まれ、そして虐待によって、当初は施設に保護されるんですが、帰ってきて、結果的に虐待で亡くなってしまう。そういう非常に痛ましいケースが現実に起こっている中で、そういう皆様も当然お子さんを生み育てる権利がおありであると同時に、生まれてくる子どものことを考えたときに、発育段階、発達段階から成人をされて以降の支援の仕組みというものが、例えば成年後見人制度というのがありますが、また、そこに至るまでの仕組みというものも場合によっては必要ではないかと思うんですね。例えば、未成年後見人制度とかいう言い方もあるかと思います。  そういう発達障害等をお持ちの方々の支援スキームを、どういった形で、例えば具体的な制度で必要な部分、もしサジェスチョンがあれば、まず教えていただければと思います。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 きょう私は、教育という観点、あるいは親学、親育ち支援という観点からお話をさせていただきましたので、今の御質問に対しては、根本的な話しかなかなかできないというのが私の立場でございますけれども。  例えば、自分自身が親から愛されていない、そういう世代間伝達と言われる、親の虐待の連鎖と言われる問題が、三割から四割いるとよく言われます。では、そういう問題に対して何もできないかといえば、そうではありませんで、虐待の連鎖を断ち切るきずなというものが影響を持ち得る。  そして、逆にまた子どもの側からいいますと、きょう私は、発達障害の予防ということにかなり大きな、重きを置いたわけでございますが、それはなぜかといえば、これまで、発達障害というものは先天的要因と環境的要因が複雑に絡み合って発症する、こういうふうに脳科学の立場からは言われてまいりました。そして、きょう私が申し上げた予防という観点は、根本的な、先天的要因が完治するという意味合いではありませんで、症状を緩和することができる、そういう意味で申し上げたわけでございます。  文部科学省の脳科学の研究会が、臨界期という存在がある、脳には発達のタイミングがあるということと同時に、脳は生涯発達するということを、これはセットで言っているわけであります。  臨界期のことだけを言いますと、皆さん、落ち込む方がたくさんいらっしゃいまして、もう間に合わないと。例えば、きょう申し上げたことでいいますと、自己抑制力というものの中枢は、これはUCLA、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究グループが発表したことによれば、眼窩前頭皮質というところと関係があって、その臨界期は三歳までだと。あるいは、文部科学省の徳育に関する懇談会の報告によれば、恥とかあるいは共感性とか、そういうものが育ってくるのは二歳の終わりだ、善悪を獲得するのは三歳だ、こういうことを言っているわけです。  そこで、私は、とりわけ一番大事な、ゼロ歳、一歳、二歳という乳幼児期のかかわり方に最大の努力を発していくことが大事だと。もちろん、ある意味で、火事が今燃え盛っているわけでございますから、その火事に対症療法で火消しをするということは当然求められるわけで、私が申し上げているのは、その根元をどうやって絶っていくかという根本的なお話をさせていただいていますので、その観点から、成人後の問題に関しましては、さまざまなかかわりができるんじゃないかというふうに思っております。  例えば、これは発達障害ではございませんが、横浜に仏教慈徳学園というのがございまして、親の愛情には全く恵まれないんですけれども、私がゼミの学生を連れていきましたら、ちょうど前の日に四十五年前に卒園した人からの電話があったと。先生の話を忘れたことがない、こう言いました。  つまり、親にかわる愛情を注ぐことによって大きく立ち直ることが可能でございますので、そういう支援を社会全体で、総がかりでやっていく必要があるということでございます。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 ありがとうございます。  もとからの対処が必要なのと、その後の工夫というのがそれぞれおありということがわかりました。  もう一つだけ、ちょっとごめんなさい、短くお願いをさせていただきますが、虐待と犯罪との相関といいますか、そういう話、私も非常に重要かつ重大だと思っています。もし御存じだったら、宮島さんも関連して、それぞれ短くお願いをしたいのです。  宮島さんの方も、このペーパーの中に、「関心を持たれ 注目され 社会的に認知された」、要は虐待に至るまでのエネルギーの移動を書かれていて、それぞれ私がこれを見て共通して感じたのは、児童虐待と犯罪、非常に大きな事件だったあの秋葉原の無差別殺人、ああいった部分も、ある意味では、まさに同じような心理的な背景があって起こっている部分もあろうかと思うんですね。  そこで、実際に、犯罪後の更生過程、あるいはまさに児童の虐待に至った部分でのその後のケアの部分で、同じような、そういう意味では更生といいますか、そのためのプロセスというのが大変重要だと思っていまして、そこはある程度ちゃんと分析をされた上で、相関を分析された上で対処がなされているのかどうなのか、済みません、それぞれの参考人から、ちょっと手短にお願いいたします。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 今、秋葉原の事件の話が出ましたけれども、私が注目しておりますのは、事件の供述の中で、だれでもいいから構ってほしかった、こういう供述がございました。彼が幼稚園時代にはやっていた歌は、「かまっておんど」という大竹しのぶが歌っている歌で、「かまってかまって かまってくれなきゃグレちゃうぞ」、こういう歌でございますが、いかに幼いころに愛着を受けていなかったかということがやはり根本にある問題であると私は思っておりまして、それを二十七歳になっても引きずっているということをこの事件は物語っていると私は感じております。  それを後にどう変えていくかということは、例えば、同じ年齢で起こした、神戸の児童連続殺傷事件、酒鬼薔薇聖斗と名乗った、彼の場合は、七年かかって赤ちゃんからの育て直しをやりました。お母さん役、お父さん役ですね。あるいは、佐世保の小学六年生が同級生を殺害しましたが、この子の場合も赤ちゃんからの育て直しをしました。そういう親にかわる愛情を注ぐことによって立ち直っていったということを踏まえますと、根本的な、親にかわる親心の、私は慈愛と義愛と申しますが、それをどう注いでいくかということがケアになるのではないかと思っております。

池坊保子公明党

○池坊委員長 宮島参考人、終了時間が参りましたので、申しわけございません、簡潔によろしくお願いいたします。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 ありがとうございます。  私は、支援はすべて同じだと思っておりますが、個別に、オーダーメードでしなければいけないというふうに思います。一般論では支援できません。その親子がどのような課題を抱えているのかを丁寧に見る、これはアセスメントといいますけれども、そして一人一人違うというところをきちんと見て、できるだけのことをして支えるということが必要だと思います。あの手この手を使って支える。しかしまた、それができない場合には毅然として預かるということが必要です。命を失っては元も子もありません。その両方をやらなければならないと考えています。蕨の事件もそうだったというふうに思います。

柚木道義民主党・無所属クラブ

○柚木委員 もう時間が来ましたので終わらせていただきます。  最後の方にも本当はお伺いさせていただきたかったんですが、セーフティーネットの、そういう意味ではいろいろな段階が必要だということを、須藤参考人のお話から、まさに幅広く、そして多様な形態が必要だということに問題意識を持たせていただきましたが、時間が来ましたので、ごめんなさい、お聞きできませんでした。  これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊保子公明党

○池坊委員長 次に、菅原一秀さん。

菅原一秀自由民主党・改革クラブ

○菅原委員 自民党の菅原一秀でございます。  四人の参考人の先生方には、とてもとても二十分じゃお話しし切れない、一日聞いていても本当に時間がなくて困るのではないかというくらい重要なお話を賜っておりまして、本当にありがたく思っております。  虐待防止法が制定されてちょうど十年たって、児童相談所の数も約倍になっている。ところが、虐待そのものは十年で六倍近くに及んでいる。これは、虐待という事象自体が、世間が目を向け、関係者がいわば発見をすることに心を砕き、一つの前進ではありますが、なかなかこの予防やらあるいはその対策が、これだけ関係者がさまざまな努力をしていながら、年間で今、百二十人前後の虐待死。また、これは親子心中が半分ぐらいだそうで、そう考えると、年間五十人から六十人の親あるいは近親者が子の命を奪うという本当に痛ましい現実があるわけであります。その問題に関して、四人の先生方はそれぞれエキスパートでありまして、今後ともさらに深掘りをしていただきたい、こう思うんです。  まず、柏女参考人、実は、この委員会が始まる前に理事会で、児童虐待防止法のワーキングチームをつくって、来年三月、見直しの時期に来るものですから、約一年近くかけて議論をしよう、こんなお話になったわけなんですね。  実は、児童相談所の虐待の相談件数というのは、年間で大体四万件を超えていると言われているんですが、強制立ち入りをした件数は、二〇〇八年度、たった二件だった。いわば、こうした改正をしていながら、四万件、そしてまた年間百二十人前後が亡くなっているにもかかわらず、強制立ち入りは二件。  これは、この制度にいろいろな課題があって、例えば、強制立ち入りの前に立入調査があって、再出頭要請があって、裁判所の許可、こういうプロセスを経ないとその許可がおりないということが現実的にあるのではないか。これは、児童相談所、市町村あるいは地域社会等々が幾ら努力をしても越えられない壁であって、この点、今後、改正に向けてどのようなお考えがあるか、これをまずお聞かせいただきたいと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 つまびらかにその二件の実情を把握しているわけではございませんが、仄聞するところによりますと、その二件以外に多く、臨検、捜索を持ち出すことによって立入調査が有効になったといったような事例もあったということを伺っています。そういう意味では、後ろの伝家の宝刀があることによって、その前の段階のものが進んでいったということは一つ言えるのではないかと思います。  ただ、もう一点、現在、親権制度の見直しが考えられておりますけれども、やはり親権の一部・一時停止等々の問題については、最終的に子どもの命や最善の利益を図るために考えていかなければならない課題ではないかというふうに思っています。そうしたこととセットで、この臨検、捜索の問題も機能してくるのではないかというふうに思います。

菅原一秀自由民主党・改革クラブ

○菅原委員 次に、同じく柏女参考人と宮島参考人にお尋ねをしたい。  社会養護施設、とりわけ里親の数がだんだん減ってきて、児童養護施設はふえたというものの、今、全国で五百六十九カ所。しかしながら、その状況に対応し切れない、相談所の職員の数もなかなかままならない。こうした状況の中で、地域化、小規模化、ファミリーホーム等々のお話がございました。この問題につきまして、先ほどお話し足りなかったと思いますので、ぜひ、描いていらっしゃるイメージについて、柏女参考人と宮島参考人からお話をいただきたい、こう思っております。よろしくお願いいたします。     〔委員長退席、園田(康)委員長代理着席〕

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 私どもも参加をして、二〇〇三年に、社会的養護専門委員会が一定の方向性を出しております。その方向性は、里親あるいは小規模化された施設、それが地域に点在をし、そして基幹となる施設、児童養護施設に心理職あるいはソーシャルワーカーや医師を重装備して、そしてそこがバックアップ施設に回る。基本は、地域の中に、地域小規模、それからファミリーホーム、そして里親を点在させていく、こうしたイメージがいいのではないか。もちろん、地域の中だけでやれる、小規模な形態だけでやれる子どもたちだけではありませんので、そこは、施設でもユニットケア化されたところでフォローしていく。それが、大体、例えば三分の一が施設、そして三分の二が小規模化されて点在化された施設あるいはファミリーホーム、里親でフォローされるべきだというふうに私は考えております。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 ありがとうございます。  児童養護施設、ファミリーホーム、里親ですけれども、小規模化、また地域化というこのキーワードは、そのとおりだというふうに思います。それを現実に進めるためには、中身を見ていかなければならない。  児童養護施設の分園という形で、地域小規模児童養護施設というのがございます。この職員体制は、二・五人で回すという形になっています。常勤二人に〇・五人の非常勤です。そこに六人の子どもたちを生活させる。多いように思いますけれども、二十四時間、三百六十五日を二・五人で回すということは、ほとんど一人の勤務で回しています。これができたときには、ベテランと若手を組ませて始めた。しかし、困難のためにやめていった。二、三年目の職員と新採の二人で回している。そのために、地域でこの地域小規模児童養護施設が浮遊しているような状態も起こっています。最低三人は必要であろうと思います。そして、地域担当の職員を地域小規模児童養護施設に置かなければ、かえって問題も生じるだろう。これを進めることは間違いなく必要だと思います。  次のファミリーホームですけれども、私は、全国社会福祉協議会に設置されました福祉サービスの第三者評価基準作成のファミリーホーム版の委員を務めました。そして、ここで吟味、検討に参加させていただきましたが、本当にこれは可能性のある制度だと思います。  しかし、先ほど申し上げた地域小規模児童養護施設同様、非常に内容的には貧困なものです。養育者三人と書かれていますが、中身的には、主たる養育者が一人、施設管理者が〇・五人、養育補助者が〇・五人という仕組みです。実際の運営で多いのは、奥様が養育の主たる養育者になっている、御主人が管理者である、そこにお手伝いさんが来ているという状態です。これは非常に貧しい状態です。ベテランの里親さんが営むには本当にすばらしいかもしれません。それは地域のネットワークがあるからです。しかし、一般事業者がここに入ってくるならば、危険なことも生じ得るものだと思います。この中身を、やはり最低三人のものにする、そして安定的な運用ができるようなものにしなければならないと思います。  里親についても同様ですが、とにかく月一回の訪問をせめて実現するような体制でフォローできなければ、里親さんのもとで虐待が生じることはあり得ると思います。昨年、実際に、北海道の里親さんが針を刺してしまった。宮崎の里親さんがかみついてしまった、小学校の元先生ですが。大阪では、性的な、かなりひどい虐待を里親さんがしてしまったということが起こります。二重に子どもたちに不幸を味わわせるわけにはいきません。ここを根本的に解決しなければならないと思います。  本園の最低基準も見直しが必要だというふうに考えております。

菅原一秀自由民主党・改革クラブ

○菅原委員 現場の貴重な声をありがとうございます。  実は、先般、児童養護施設にこの委員会で視察に行ってきました。そこに入所している子どもたち、乳幼児の子が多かったんですが、非常に表情が不安といいましょうか、不安定な表情をしていて、我々が行くとすごくおののいているといいますか。また、そこで感じたのは、それをだっこしている職員の方も、やはり発達障害等も含めて、虐待によってその子が受けているトラウマ、あるいはいろいろな心の傷を負っている、そのことに対して、例えば普通の保育園だとか幼稚園であれば、健常児といいましょうか、普通の家庭で健やかに育った子と違って非常にデリケートな部分があって、それに対する対応がし切れていない、それによって疲れてしまっている、こういうことを現場で感じてまいりました。  今、子ども手当やら保育所の整備やら、いろいろと子どもに対する、少子化対策含めて、支援を国が行っております。しかしながら、この分野というのは、あくまでも特異な分野だといってある意味では隔離されて、国全体の目が向けられてこなかったという現実があるんだと思います。したがって、私は、こうした社会養護施設における、そこで子どもたちに接している方々のマンパワーの確保はもとより、この分野の確立支援というものをやっていかなければいけないなということを改めて感じた次第であります。  高橋参考人にお尋ねをしたいと思います。  今、先ほどの「解答乱麻」の中でお話がありました発達障害、特に脳障害にかかわる発達障害のお話がございました。今もこの分野はまだまだ発達途上であるということですから、例えば、先生が御指摘のように、虐待を受けた子どもの五七%に発達障害が認められて、広汎性の発達障害が二五%、ADHDが二三%。この分野において、国の予算といいましょうか、研究分野においては先生方がさまざまな御努力をされておりますけれども、国の取り組みということが非常におくれてしまっているのではないかと思いますが、この点、構想がありますればお聞かせをいただきたい。  あわせて、今、親権の問題で、これからまた議論になっていきますけれども、一時停止。親権を喪失してしまうということは、仮に親子が再統合ができる環境になったときに、そのチャンスをみすみす失わせてしまうという意味においては、この一時停止ということは非常に重要な議論だと思うんですが、この点について、先ほど時間がなくてお触れになりませんでしたけれども、お聞かせをいただきたいと思います。     〔園田(康)委員長代理退席、委員長着席〕

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 まず、国の予算ということに関連してでございますが、先ほどおっしゃいましたように、脳科学の研究というのはまだこれから本格的な段階に入るものでございますけれども、既に、国レベルでいいますと、文部科学省が平成十七年の十月に情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会の報告を出しております。例えば、そういう中で、情動というものは原型が五歳ぐらいまでに形成されるというようなことも指摘をしております。あるいは、平成十九年の五月、文部科学省の研究振興局脳科学研究の推進に関する懇談会の「脳科学研究ルネッサンス 新たな発展に向けた推進戦略の提言」、このようなものにかなりの予算が投じられております。  しかし、現在の段階では、まだこれをどう実践に生かしていくかというところにはなかなかいかない、基礎研究といいますか、しかも、安易に脳科学を実践につなげていくということの危険性も一方にはあるわけでございますので、慎重な議論が必要なのでございます。  私はこう考えております。「発達障害を予防する子どもの育て方」という本をお書きになったのはさいたま市の教育相談の金子保という方でございますが、この方は、四十年以上発達障害の子どもにかかわってきた実践を持っておられます。あるいは、澤口俊之さんは脳科学の専門家でございますが、現実に発達障害の子どもに対するカウンセリングをやっておられる。そして、HQ、人間性知能を伸ばす方法によって具体的にADHDが改善されたというような実践が出ております。  もちろん、その実践を余り過大評価することは危険ではございますが、ただ、実際に成果が上がったものについては、もっとこれを広げる努力が必要ではないか。そういう意味で、こうした実践についての予算といいますか、そういうものをもっと組んでいく必要があるんじゃないか。ただ基礎研究だけじゃなくて、実践に向けた具体的な事例研究のようなものですね。  例えば、私の属しておりました埼玉県教育委員会の中では、白鳥幼稚園というのがございまして、ここは体操と音楽と言葉のリズムを体験する前と後の尿を測定して、これは文部科学省の研究指定でございますが、その言葉と音楽と体操のリズムがセロトニンという脳内物質と関係があるということを研究報告で述べております。  こうしたものは実践の成果として注目すべきものでございますから、ぜひそういったことに対するもっと予算を、国を挙げてしていただく必要があるんじゃないか、実践に向けた研究に。基礎研究のみならず、これはなかなか難しい、もっと先の段階かもしれませんが、そういうことにも力を入れていただくことが、予防という観点からいいますと大変大きな意味を持っております。  例えば、小学校の特別支援の費用は一人百万かかります。五人配置されたら五百万かかるわけでございます。それ以上に、さまざまな施設や人の予算、これは膨大なものでございまして、予防に全力を投球することは国家として大事なことだと私は思っております。  それから、親権の停止につきましては、これは実は十年前のこの委員会で私は発言させていただいているんですが、そのときに三点、問題点というか課題を指摘させていただきました。その三点というのは、虐待以外にも濫用されるおそれがあるのではないかということ、二番目は、一時の期間をどう設定するかは非常に難しい面があるんじゃないかということ、三点目は、停止期間後、親に変化がない場合にどうするかという手続の問題があるんじゃないか、その三点を今は確認させていただきます。

菅原一秀自由民主党・改革クラブ

○菅原委員 高橋参考人のお話の中に、親としての心構えといいますか、人間としての当たり前のことを今なかなか学ぶ機会が喪失をされてしまって今日に至っているという御指摘もあります。しっかり抱いておろして歩かせるということは、まさに子どもへの愛着をしっかりつくり、そしてそこから分離して自立をさせていくということは、本当に、今日本が失っていることの大変大事な指摘であると思っております。  PTAの会合なんかに行きましてそういう話をして、子どものこと以上に親を学ばせなきゃいけないなんて言うと、おまえ何言っているんだとおしかりを受けるような、今時代なんですね。やはりこれだけの虐待の問題があり、その一つの要因が、今、親の育ってきた環境やらあるいは現状ということを指摘するとすれば、今後、親学というのは非常に大事なことだと思っておりますので、頑張っていただきたい。  最後に、須藤参考人には申しわけないんですけれども、柏女参考人に。  「こうのとりのゆりかご」、先般私ども行ってきました。これはこれからずっと議論を深めていくんですけれども、やはり現実問題、子どもの命を守るということにおいては、一つの非常に大切な役割を果たしている。しかしながら、子どもを遺棄することを助長してしまう。これはバーサスで、後でまた拝見をしたいと思いますが、先ほどの、DVDにもあると思うんですけれども、この検証、よく吟味して、取り組まれていた。つまり、「こうのとりのゆりかご」を即全国につくれという話じゃなくて、この検証したものを、厚生労働省はどうも及び腰なんですよ。  そういう意味では、子どもの命を守るためのシェルターは、これから当然必要になってきます。その内容や制度設計についてはこれからだと思います。この点、何かあれば最後にお願いいたします。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 私が座長をした検証、県の検証は昨年の十一月で終わりましたが、またこの四月から熊本市を中心とした検証が始まろうとしております。「ゆりかご」に預けられた五十一人の方で熊本県内の方は、三十九人がわかっておりますけれども、ゼロでございます。つまり、全国の方が利用している。一熊本市で検証できる問題ではないというふうに思っています。そういう意味では、国の関与が、ぜひ検証の立場に参加していただくということがとても大事なことではないかというふうに思っております。

菅原一秀自由民主党・改革クラブ

○菅原委員 終わります。ありがとうございました。

池坊保子公明党

○池坊委員長 次に、高木美智代さん。

高木美智代公明党

○高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。  本日は、四人の先生方に大変貴重な御意見を賜りまして、心より感謝申し上げます。  先ほど来、長期的な視点で、親育てまた子育て支援等々を、インフラの整備も含めまして、どのようにしていくのか。また、社会的養護のあり方等々、社会を挙げてどのように支えていくか。また一方で、今をどうしていくか。先ほど宮島先生から指摘がありましたとおりだと思っております。  我が党も児童虐待の防止に向けまして、池坊座長を中心に、検討会そしてまた視察等を重ねてまいりました。その中から、何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、私も、子どもと子育てを社会全体で支える、この理念で取り組ませていただいております。そこには、一つは経済的支援、また、もう一つは相談を含む基盤の整備ということが当然あるかと思います。この両輪がなくてはなりません。先般も、あの「こうのとりのゆりかご」を視察に行かせていただきまして、その中から、現在の出産、子育てをめぐるさまざまな課題を突きつけられた思いでございます。取り組んでいらっしゃる慈恵病院の先生方にも、私は胸を打たれながら、お話を聞かせていただきました。こうした課題に適切に対応することが虐待防止にもなりますし、また、そうした社会のはざまに落ちていく子どもたちをすくい上げ、支えることにつながると考えております。  そこで、まず妊娠期からの子育て支援という御指摘がありました。母子保健法と児童福祉法をつなげてはどうだという柏女先生の御指摘でございます。私どもも、妊婦健診から始まり、そして相談支援、また子ども家庭支援センターの設置など、本当に数え切れない政策に取り組んでまいりました。  ただ、一方で、もう一つおくれていると思っているのが、性をめぐる、これは本来命と健康を守るための教育であるわけですが、こうした部分はまだまだ取り組まなければいけないと思っております。こうしたことが妊娠期からの子育て支援に総合的に求められると思っております。  まず、柏女先生にお伺いしたいのですが、母子保健法と児童福祉法をどのようにつなげていくか、ここに対するもう一歩踏み込んだ御意見をいただきたい。  それから、私は慈恵病院でシェルターを各地に配備してはどうかという報告書の概要版も読ませていただきまして、このことにつきましては、例えば東で一つ、西で一つとか、こうして順次進めていくことが必要なのではないか。  しかし、その前に、今、慈恵病院で取り組んでいらっしゃる二十四時間の電話相談、これはすばらしいなと私は思いました。若い女性の方たちが、特に中学生、高校生が、思いもかけない妊娠を告げられた、また自分でわかった、そのときにどこに相談するかといいますと、センターなんか恐らく行けません、夜中、自分一人になって不安になったときに、電話相談というのが最も有効ではないかということを改めて病院で教えていただいたという思いがございます。  こうしたことを総合的に含めまして、妊娠期からの子育て支援につきまして柏女先生に教えていただきたい。また、このテーマにつきまして御提言いただけるようでしたら、宮島先生、高橋先生、須藤先生に御意見を順次賜りたいと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 二点の御質問をちょうだいいたしました。  一点目は、母子保健法と児童福祉法の根本的な理念の違いにあると思います。母子保健法は、妊娠、出産を基本的には喜ぶ人たち、その方のための仕組みということになるかと思います。やはり世の中には、妊娠そのものを素直に喜べないという方がいらっしゃいます。そういう方々に対しては、児童福祉法は、子どもが虐待されていれば介入する仕組みがありますけれども、妊娠中の方に対して介入し支援するという仕組みはつくられておりません。  そこで、私たちはこの乖離を埋めなければならないということで、ハイリスク家庭や特定妊婦の通告制度、あるいは医療機関から市町村への妊娠、出産の届け出制度、それらを導入していく、そしてそれをこんにちは赤ちゃん事業などに結びつけていく必要があるのではないか、そうしたことを提案させていただいています。それが一点目として、この思いがけない妊娠への相談対応ということが大事ではないかというふうに思っています。  それは、委員御質問の二点目のところにもつながってくることになるわけですけれども、実は国の方の施策でも、この思いがけない妊娠等についての相談事業は行われております。「ゆりかご」検証会議でも全国調査をさせていただきましたけれども、かなりのところで行われているわけですが、慈恵病院が行っていることの特徴というのは、病院が行っているというところです。単に電話相談だけではなく、そこで緊急対応ができるということが大きな違いではないかというふうに思っています。この「ゆりかご」を設置することによって、慈恵病院の電話相談が一挙に二十数倍に膨れ上がっています。全国からの相談が寄せられています。それは、まさにこうした危機対応を伴っているからこそ、相談が寄せられているんだというふうに思っています。  以上でございます。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 妊娠時からの子育て支援ということに関連して、産経新聞に「なぜわが子を傷つけるのか」という連載が五日続きましたが、私はそれを読んでおりまして、一カ月の長女に対して、「おぎゃーという泣き声がめちゃめちゃむかついた。「こんなに世話しているのに、どうしてあんたばっかり要求してるの」という気持ちになっていた」というようなことがずっと書いてございました。  きょう私が申し上げた退行期ですね。二十カ月までに、赤ちゃん返りという、むずかる時期がある。それは脳の発達上意味があることであって、親に原因があってそうなっているわけではないんだ、つまり、子どもの発達段階についての科学的知見。そして、その発達段階に応じてどうかかわったらいいかということについての科学的知見。  例えば、これは教育再生会議の第二次報告でございますが、なぜ二歳までにテレビとかテレビゲームを見過ぎたらいけないか。それは、コミュニケーション能力とか、あるいは対人関係能力とか、言葉のおくれというものにつながるんだという根拠が示されております。  そういうことをできるだけ早い時期に、つまり、妊娠中の母親からそういう科学的な知見をお伝えしていくことが、例えば乳幼児健診時とかさまざまな中で行っていくことが大事ではないかと思っております。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 ありがとうございます。  相談というのは本当に大事なものだと思います。電話の相談はアクセスのしやすさとして本当に大事だと思います。実際、これに対応する仕組みとして、さまざまな民間団体が各都道府県、自治体でも活動しておりまして、そこで、二十四時間の相談事業等を行っている例もかなりあります。また、それをネットワークで結ぼうというような動きもありますし、全国の児童相談所が共通の電話番号を設けまして、近くの児童相談所に連絡が入るという仕組みがとられています。こういったものを充実することはとても重要だと思います。  虐待をする親はSOSを出さないという固定観念がありますけれども、深刻な虐待をしている、命に危ない虐待をしている三割の方がSOSを求めているという調査結果が出ております。  あと、もう一つ大事なことは、きちんとした相談の形がとれないけれども、何らかの形でSOSを出している人たちを、例えば、文句をつける、クレームをつけるということの中に、実はSOSとして受け取るべきものがあったりします。それを受けとめることがとても重要だと、ちょっと余計になってしまいましたけれども、一方で考えております。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 私も多くの退園生を送り出しているんですけれども、子どもたちの特徴を言いますと、まず、相談できないですね。電話をもらって、いろいろ相談できるところがあるんだよというふうに言っても、寮長先生に相談したいんだ、寮母さんいないのと。だれでも相談できる、そこまで育っていないですね。また、子どもたちは、幼児期に受け入れてもらった経験がないものですから、何が一番怖いかというと、人に聞いて拒否されることというふうに言います。  と同時に、子どももそうですけれども、保護者の方も非常に社会的に孤立している方が多いので、親子ともどもきちんと向き合っていくような体制が必要かと思います。幾ら情報を流しても耳に入れない方もいるということも私たちは受けとめなくちゃいけないというふうに現場では思っております。

高木美智代公明党

○高木(美)委員 ありがとうございます。  続きまして、特別養子縁組につきまして柏女先生にお伺いをさせていただきます。  この特別養子縁組につきましては、先般、赤ちゃんポストを伺いましたときも、インターホンを押せばこちらの道が開ける、ポストに預けてしまえば、「ゆりかご」の方に赤ちゃんを預けてしまえば施設の方の道になってしまうという、これは熊本から始まって、また、国としてもしっかりと応援している事業ではありませんので、さまざまな、そういう宙に浮いた形で、もうやむを得ない、折り合いをつけながら進めている、そうして取り組んできてくださった事業と私は認識しております。大変感謝をしております。  ただ、特別養子縁組につきましても、既に要件として、父母の同意ということにつきましても、原則として同意が必要であるけれども、行方不明、心神喪失など、父母がその意思を表示することができない場合、また、父母による虐待、遺棄など、子の利益を著しく害する事由がある場合はこの同意は不要であるというのが民法の八百十七条の六に書かれていると思います。  あるにもかかわらず、恐らく現場の運用がこのような形になっていないのかどうか、その点も含めまして教えていただきたいと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 運用の問題と、それから制度的な問題と、二点あろうかと思います。  まず、制度的な問題としては、今委員御発言の行方不明の期間が一体どのくらいあればいいのかといったようなところが、余りしっかりと判例が積み重ねられていないのではないか。これも運用といえば運用かもしれませんけれども、それが一つあるかと思います。  したがって、公的機関である児童相談所としては、いつあらわれて、また親たちはメッセージを「ゆりかご」に残しているわけで、それらを考えますと、いつ出てくるかわからないというようなことがあるとヘジテートしてしまうということはあろうかと思います。  もう一点は、今の児童相談所の、全国的な動向にも近いかもしれませんけれども、やはり乳児院等で一定の養育をした上で里親委託あるいは特別養子縁組をするということがかなり行われているということがあると思います。  先駆的には、愛知県がいわば新生児里親委託の実践を行い、そして、新生児から、つまり、愛着関係を里親や養子縁組を前提とする方と最初の段階でつくっていこう、早目にそれをつくっていこうということを実践して成果を挙げています。そうした先駆的な実践にも学びながら研究を重ねていくことが大切なのかなというふうに思っています。

高木美智代公明党

○高木(美)委員 ありがとうございます。  続きまして、里親支援につきまして伺わせていただきます。  宮島先生はスウェーデンの例を書類でおつけいただきました。先ほどずっと読ませていただきました。スウェーデンのバリシューですね。この訪問の例なんですが、ここと日本を比較いたしまして、なかなか進まないこの里親制度、あと残り、どういうところが必要か、その点につきまして御指摘をいただければと思います。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 日本で里親委託が進まない根本的な理由の一つとして、里親制度が養子縁組の準備の期間である、あるいは里親制度と養子縁組が混同されてきたというところがあると思います。  里親制度は、もともと施設と同じように、親御さんとパートナーシップを結んで一緒に子育てをするという制度です。それがそう理解されていない。ですから、熊本のこの例でも、親にかわって養育する。親と一緒でいいんですね。発見されても、親と一緒に育ててもいいはずです。そういった運用がされていない。  スウェーデンのこの記事を読みますと、まさに実親とともに子育てをするという制度だという位置づけがされています。ここに根本的な違いがあるというふうに思います。親と対立するのではなくて、実親とパートナーシップを結んでいくという前提の中で里親制度を組み立てていかなければ前進はない。  里親委託されている子どもの七〇%以上は、実親との面会、交流が全くない子どもです。日本では、親と縁が切れた子どもしか里親委託をしていない、そこに現状の問題点があると考えております。

高木美智代公明党

○高木(美)委員 ありがとうございます。また、もう少し勉強をさせていただきたいと思います。  時間が迫ってまいりまして、最後の質問になるかと思いますが、御存じのとおり、児童相談所の機能につきましては、もうパニックを超えているという状況です。先ほど来、宮島先生からも、社会福祉士等の専門家をしっかりと配置すべきというお話もあり、先般、私もこの委員会におきまして、スクールソーシャルワーカー等も含めまして提案をさせていただいたところです。  例えば、二〇〇七年の法改正におきましても、虐待する親の面会とか、また通信も制限できるというふうにさせていただいておりますが、一方で、児童相談所は親子関係の修復に努めるという姿勢があります。当然これを進めなければいけない。しかし、また一方で、親と対立をしながら、要するに親子関係を、一時期その親権停止をしながら引き取っていくというようなことも両方しなければいけない。そもそもそこに大きな無理があるのではないか。  先ほど来御指摘がありますように、虐待の対応で、本来であれば虐待を受けた子どものその先であるとか、また須藤先生からも、本来であれば児童自立支援施設に入っているお子さんたちをこれからどうしていくか、そういうことがなかなかできていないという御指摘があります。ここはもう少し地域でネットワークをつくりながら、支えながら、機能をある程度特化していくということも必要ではないかと思います。  千葉の、六カ所、七カ所だったでしょうか、いわゆる権利擁護センターのような形で、NPOが委託を受けて、そしていろいろな家庭を総合的に見ていく。例えば高齢者、またそこにいらっしゃる御両親が精神的な障害を持っていらしたり、そこのお兄さんは働いていないとか、また下のお子さんが虐待を受けているとか、要するに、よく家庭を見ていかなければいけないというところを常時やっているというようなところもあります。  こうした地域の力をどうかみ合わせながら進めていくか。先ほどもこのように分断されているという御指摘もありましたけれども、そうした総合的な児童相談所を支えるシステムというのをどのように今後考えていけばいいのか。大変大きなテーマが最後に、短いお時間の御回答で大変恐縮でございますけれども、何か御指摘をいただければと思いますので、もしよろしければ、順次一言ずつお願いできますでしょうか。

池坊保子公明党

○池坊委員長 それでは、時間も限られてございますので、簡潔にお願いしたいと思います。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 今委員御指摘のように、児童相談所がすべてを担っている、あめとむちの両方の体制をすべて担っているという問題点があるかと思います。児童相談所はケアマネジメントを中心にし、そして具体的なプログラムを遂行するのはNPOでやったりするということが大事だろうというふうに思います。  また、司法との役割分担も大事ではないかというふうに思っております。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 私は、人づくりというものが一番大事だと思っておりまして、その人づくりをどう進めていくか、研修をどう進めるか、その辺に重点を置いた取り組みが必要だと思っております。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 柏女先生と同じように、児相だけではだめだと思います。さまざまな機関が共同してやらなければならない。そのためには、ケアマネジメントに児相は特化すべきだ。ケアマネジメントの一番重要なところはアセスメントと言われています。その親子、家族がどういう状態なのかをきちんとつかまえる力がなければだめだと思います。市町村も要対協等の調整機関になっていますが、この二カ所にきちんとアセスメントができる状態をつくらなければならない。  ネットワークは大事ですが、情報を共有するそのもともとの情報が間違っていればみんなが間違えます。ちゃんと見立てができる職員を置くということが結果的には全体の力量アップになりますし、軽減になると思います。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 私は先ほどお話しさせていただきましたけれども、非行と虐待は両輪である。虐待をきちんと初期対応しないと非行につながるケースもありますし、非行の対応をきちんとしないと、十代で母親になる、父親になる方も多いですので、両輪であるという認識が必要と思います。  それから、退園した後の児童のアフターケアについては、先ほど言ったように、要保護児童対策地域協議会をぜひ活用して、必要な支援をみんなで見ていく、非行は社会的な責任である、そういう認識が必要かと思います。

高木美智代公明党

○高木(美)委員 ありがとうございました。  最後に、須藤先生からお話がありました公設民営化につきましても、しっかりと勉強をさせていただきたいと思っております。  本日は、大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。今後の審議に必ず私も反映をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

池坊保子公明党

○池坊委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。  本日は、四人の参考人の先生方、貴重な御意見を伺わせていただきまして、本当にありがとうございました。  まず、私どもの委員会は「こうのとりのゆりかご」の視察にも行かせていただいて、そして、御紹介のあった検証会議の最終報告についても私は読ませていただきました。結論のところで、「ゆりかご事例から見えるのは、社会のありようの一面であり、現代社会の子育てにおいて個人や個々の家庭だけでは背負いきれないものが形として噴出している状況である。」と指摘されていることを本当に重く受けとめましたし、その点では、きょうお話にあったように、やはり一人一人の親にとってもきめ細やかな対応が求められていると思うんですね。この報告書の中でも、実は「妊娠・出産・子どもの養育をめぐって、相談体制の充実や緊急時の一時保護など「トータルな支援体制の整備」が十分でない」という指摘もされております。  それから、先ほど宮島先生のお話の中でも、市区町村と児童相談所の現状というのは決して十分ではないというお話が資料の中にもついておりました。  私は、ここを本当に強めることが大事だと思っておりまして、実は欧米の事例を、こういう相談体制がどうなっているかと国立国会図書館に調べていただいたんです。  そうしたら、イギリスの例でありますけれども、国家資格を持つソーシャルワーカーが配置をされております。イギリスでは、一人当たりの平均的な相談件数というものは、児童虐待チームでは十件から十五件、あるいは家族委託チームでは十五件から二十件、なぜそういう数なのかと聞けば、専門実務を行うことが可能である範囲にすることを原則にしている、これが国立国会図書館の御回答でありました。  日本は、いかにも、五万人から八万人という人口基準で児童福祉司を配置するという基準のまま、ずっと変わっていないんですね。  そこで、柏女参考人と宮島先生にお伺いするんですが、こういう基準をしっかり見直して、もっときちっと充実させるという点についてのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

柏女霊峰淑徳大学総合福祉学部教授

○柏女参考人 児童相談所の児童福祉司をふやしていくということについて、現状は少な過ぎますので異論はないのですけれども、果たして都道府県の職員をふやしていくことに意義があるのだろうかという思いも一方ではいたします。  分断されているのは、市町村と都道府県が分断されていて、市町村は母子保健や子育て支援を行っているわけですので、市町村にそうした専門職をふやしていくということをやはり考えていかないと、県のレベルを強化するだけではうまくいかないのではないか、そんなふうに思っております。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 恐縮ですけれども、お配りしました私のパワーポイントの資料の後ろから八ページ目を見ていただければありがたいと思います。  これは、最近亡くなった岸本瑠奈ちゃんという子どもさんの事件です。一歳の子どもさんがかなりひどい状態にあって、シェークンで、頭を揺らされて死んでしまった。この記事は産経新聞の記事からとったものなんですが、十三回も訪問していたというふうに書かれています。十三回もとありますけれども、これは月一回にも満たないというペースです。非常に頑張って行っているとは思いますけれども、月一回である。この事例であるとすれば、週一回から週二回は訪問しなければ、何が起こっているかわかりません。また、玄関先の対応ではだめです。中に入って話を聞かなければわかりません。  全くこれに近いような事例を私は担当したことがあります。しかし、このときには、二回行きましたけれども、かなり大変だったです。しかし、それを実現するためには、今の人員体制では全く足りません。当然、今の現状は低過ぎますので、柏女先生がおっしゃるとおり、児童相談所の職員をまずふやさなければいけないと思います。  また、これも柏女先生と全く同意見ですけれども、市区町村の職員をふやさなければ、しかもきちんとした職員を置かなければだめです。要保護児童対策地域協議会ということができましたけれども、そのコーディネートをしている職員が、この方が全く何も見えていなければ、せっかく何十人もの人が集まっても、そこで行われている議論は無意味だというふうに思います。  私は今実際に何カ所かの市区町村に、事例検討に伺っていますけれども、大変なケースだと思うということで協議を受けます。時間がないので、ではこれで終わりましょう、一件残っていますがという話があります。その事件、気になるから聞かせてくださいと話します。その事例が一番重かったりするんですね。実際に見えていないということが起こっているわけです。それを見える職員を置かなければならない。必ず市区町村にその職員を置かなければだめだと思います。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 ありがとうございます。  やはり体制の整備をしっかり進める、そして、もちろん都道府県も市区町村も双方しっかりしていく必要があると思うんですね。  それで、どうしても順々にお聞きしていきますと、四人目の須藤先生に余り質問を前の方々もされておられないようですので、私、ちょっと須藤先生の方に質問をさせていただきたいと思っております。  それで、先日の委員会でも取り上げたわけですけれども、この間、政府から地方分権改革推進計画というものが出されて、そして、児童自立支援施設というものの職員に対する規定を、施行令を変えて、都道府県の職員でなくてもよろしいというふうに変えるという方向が打ち出されたわけです。  それで、お話を聞いておりまして、児童自立支援施設というものが相当専門的なお仕事だということもよくわかりますし、私も現場をぜひとも見せていただきたいというふうに思っておりますけれども、まず、都道府県の職員でやるべきだというこの中身について、須藤参考人の方からお考えがあればお聞かせいただきたいと思っております。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 先ほどのお話のように、二十一年十二月十五日の閣議決定により、児童自立支援施設職員の身分規定が廃止されることになりました。今後、各自治体の判断に基づき運用されるというふうに理解していますが、公設民営化については、先ほど後半の部分で忙しくお話をさせていただきましたけれども、児童自立支援施設が抱える課題や解決すべき問題が多岐にわたっています。慎重な検証や検討がなされた上で総合的に判断されて、決定されるものであると思います。公としての責任を安易に放棄すべきものではないと思っています。  また、各自治体が有する民間資源も、置かれている状況も異なることから、もし、よしんば他県で児童自立支援施設が民営化されたからといって、安易に導入すべきものではないというふうに思っていますし、原点に戻りまして、公設民営化の問題は、児童の最善の利益とは何かを原点に据えて、長期的視点を持って考えるべき問題だ、そういうふうに私は思っております。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 ちょっと事実関係を須藤先生に教えていただきたいんですが、既に民間で運営されている二施設というものがございます。今度その施設をひとつ見せていただこうかという議論にも当委員会でなっているんです。  民間で既にやっているところもあるではないかというような御議論もあるやに聞いているんですけれども、これについてはどのように考えればよろしいんでしょうか。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 地域で児童自立支援施設を民間で運営しているというところが実際にあります。あるかないかといったら、あるんですけれども。  児童自立支援施設の民営化は、各自治体の選択の機会を広げることであり、各自治体がそれぞれの事情をしんしゃくして適正に判断すべきであるというふうに言われているかもしれないですけれども、百年を超える長い歴史を公設民営で運営してきた児童自立支援施設にとっては、ほかの児童福祉施設や少年院などと役割を分担して、期待される役割を担ってきました。  ただ、民間の私たちの児童自立施設も百年を超える施設というふうに先ほど御紹介しましたけれども、施設長さんともよくお話をさせていただきますが、運営は非常に御苦労があると思っています。これは個人の情熱とか、そういうことだけに頼る事業ではありません。やはり公として子どもの社会的な自立を守る、そういう厚い支援が必要というふうに思っています。民間の二施設は非常に御苦労がある、見ていても非常に大変さがわかる、そういうことでございます。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 おっしゃるとおりで、本当に長い歴史を持つ施設だというふうに伺っているんですね。  それで、そもそも児童福祉法ができるはるか前から、この民間施設はもう民間でやっておられた。ですから、これを口実に、民間で十分やっているじゃないかという議論は全く当たらないのであって、今お話があったように、この専門的な、そして子どもたちにとって本当に大事な児童自立支援施設を安易に民営化するということがあってはならないというふうに思っているんです。  既に、厚生労働省はこれについて研究する研究会を設置して、研究会報告書というものが出ております。これもこの前の委員会の質疑で厚生労働省や福島担当大臣にもお伺いをしたところですけれども、この研究会の報告書では、民営化を視野に入れる場合には、少年非行対策へのスタンス、公としての責任や対応、民営化する場合の施設機能の維持、強化などの検討がきちっとされる必要がある、安易にしてはならないということがはっきり定められているわけですよね。  にもかかわらず、今回、そういう方向が出たので、私も驚いているんですけれども、聞くところによると、全国児童自立支援施設協議会として、ここに私が持ってきたのは佐藤前会長のときの意見書でありますけれども、しっかりこの点の検討がなされていないということでいろいろ御意見を上げていただいているようであります。このあたりのところも、ぜひ須藤参考人からお伺いしたいと思っております。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 全児協からすると、先ほど話した少年非行対策へのスタンス、公としての責任、対応、児童自立支援施設の役割、民営化する場合に施設機能を維持、強化する仕組み、民間と協働する場合にはどのような仕組みがあるかなどを検討することが必要であるというふうに思っていますが、検討されたというふうに認識してはおらないですね。  特に、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援、連携のシステム、先ほど委員さんがおっしゃってくれたとおり、専門性の非常に高い施設でございますので、もし民間で受けてくれる施設ということがあれば、同時期に新しい職員と今の現場の職員とが複数年数一緒に仕事をして、私たちの専門性をぜひ理解する形でなければ、なかなか御理解は難しいというふうに思いますし、入所している子どもの人権を守る、そういうことを最優先にした検討会が必要でありますし、そういう支援者が今後も必要かというふうに考えているところでございます。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 前回の質問で、私の問いに対して、厚生労働省は明確に、この研究会の報告書は尊重する、このとおり進めますということであるんですけれども、今お話があったように、その検討や検証をやった形跡は私もないと思うんです。  なぜ、ないのに、この地方分権改革推進計画はもう閣議決定されたんですか、おかしいじゃないですかという議論になったんですが、それは個々の施設を民営化するときに検討すればよいんだというような答弁が出まして、それは研究会の述べていることと随分違うじゃないか、研究会は、民営化を視野に入れる場合にも、そういう検討をきちっと検討会を置いてやるべきであるということを言うているわけであって、その検討をされないまま見切り発車するというのは余りにもひどいということを私からも申し上げた次第であります。  それで、昨年お出しになった意見書というものを見せていただくと、「本年二月」、つまり昨年ですから昨年二月に、「本協議会の役員会に貴省の担当官が出席しこの問題についての検討会を設置する旨の説明をしたにもかかわらず、こうした検討や検証を一切捨象して、公設民営化への道を開くことについては、極めて遺憾でありとても容認できるものではないと考える。」こう述べておられまして、大分詳しいいきさつまで協議会として出された意見書には触れられております。  このあたりのいきさつについても、もしおわかりであれば、お話しいただければありがたいと思っております。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 その辺については、残念ながら存じておりません。

宮本岳志日本共産党

○宮本委員 いずれにせよ、何度もお話があったように、児童自立支援施設というものは高度の専門性を持つものでありますし、そして厚労省も、この質疑の中でも、ケアの質を絶対に下げてはならない、やはり子どもたちに本当に最高の教育と生活を保障するということが何よりも求められるということは認めておられるわけですね。その点で、私どもも、しっかりと児童自立支援施設というものの意義について学んでいきたいと思いますし、安易にこれが民間委託されることのないように委員会としても力を尽くしていきたいと思っております。  本日は、四名の参考人の方々には大変ありがとうございました。皆様方の御意見を今後とも委員会の審議に役立てるということを私もお誓い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

池坊保子公明党

○池坊委員長 次に、吉泉秀男さん。

吉泉秀男社会民主党・市民連合

○吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。  先生方から大変貴重な御指導、さらには御意見をいただきましたこと、本当に心から感謝を申し上げさせていただきたい、こういうふうに思います。  だれでもが、命を授かる、赤ちゃんが誕生する、よかったなと祝う、そしてその命がすくすくと育っていく、それを願う。しかし、ある事件、さらにはある障害等々も含む中で、そのことが途絶えてしまう。そういう状況が今多くの部分であるというふうに思っています。  非行と虐待、以前、自分自身が生まれた、さらには育った段階では、余り虐待という言葉はなじみがなかったというふうに思っています。非行という部分については相当問題視されてきた、こういうふうに思っています。  そんな中で、今、児童虐待、子どもたちに目線を入れたとらえ方、さらには親に対する、保護者に対する視点のとらえ方、いろいろな部分があるというふうに思っています。この十年間の中で、さらにふえている、相当多くの虐待の現状、こういうところが明らかになっているわけでございますけれども、そういう面の中で、それぞれの理由があるというふうに思っています。  そんな面で、百年という歴史を刻んできて、子どもたち、その御両親、保護者を見てきた須藤先生の方から、現状というものについて、確かに子どもたちが、非常に目を輝かせて施設を出ていく、そういう状況の苦労、そして一方、この親の現状というものについて、この間、虐待がふえてきている中で、親の感情、さらには親の考え方、そういうものがどういうふうに変わってきているのか、そういった部分を含めながら、ちょっと御意見をお伺いしたいなというふうに思います。  須藤先生、よろしくお願いします。

須藤三千雄全国児童自立支援施設協議会会長

○須藤参考人 御質問ありがとうございます。  子どもたちもそうですけれども、親も社会的に孤立感を持っている方が非常に多いと思っています。  それから、児童自立支援施設の保護者の割合を見ていただきますと、実父母の割合が私どもの施設では一割でございます。実父母の両方そろっている御家庭が一割という非常に少ない数字でございます。お父さんだけでもお母さんだけでも頑張っている方はたくさんいらっしゃいますけれども、保護者とお話をさせていただくと、仕事の面でも子育ての面でも非常に御苦労があると同時に、子どももそうですけれども、親御さんも社会的に孤立している中で、なかなか仲間がいない、相談できる相手がいないということは、私はずっとこの仕事をやってきましたけれども、三十年以上かかわってきましたけれども、変わっていないと思いますね。  と同時に、今度は子どもたちが、虐待という環境の中で親に反発していく。親とすると、何とかしたいという気持ちがあるからこそ、ほかの委員さんも、虐待する親はごく普通の親なんだというお話がありましたけれども、孤立感を感じていて、児童自立支援施設での面会のときに担当の寮長、寮母から、お父さん大変だったですね、御苦労だったですねという中で、積もっている思いがどっと出てくる、そういうことで職員と親御さんの関係を結べるということですが、私は、子どもに対してなかなか処遇がわからなくて困っている親というのはここずっと変わっていないと思っています。  そういう意味では、現場から見ると、親子関係は同じなんだなというふうに思っていますね。つらさは変わっていないと思っていますし、孤立感はますます募っているように感じています。

吉泉秀男社会民主党・市民連合

○吉泉委員 ありがとうございます。  私どもも、こういう政治の立場でそれぞれかかわってくる、さらには相談を受ける部分は非常にあるんです。涙をやはり流します。何とかしたい、しかし力がない。そういう状況の中で、対応がなかなかでき得ない。そういうつらさも実質体験をしてきているわけでございます。  そんな中で、社会福祉士という、一つの大きな専門性を持って、大学に上がってこの資格を取って、そして福祉、さらには子ども、児童、この部分にかかわりたい、こういう一つの分野があるわけでございますけれども、今現状については、非常に多くの部分がそこに活躍をされる、そしてそういう状況があるにもかかわらず、それが対応でき得ない。やはりそういう状況というものが、一つの行政、政治の貧困さ、その部分があるというふうに思っております。  しかし、子どもが生まれてから十八歳になるまでに、一つ一つのサインを出す、そういった部分については多くの部分があるというふうに思っています。  まず一つは、零歳児健診、一歳児健診とか、そういった中で、毎回来ないなというふうになれば何かあるのではないかな、そういうふうに察するのが保健師さんの方の考え方、さらにはお医者さんの中でも、そこでシグナルが送られてくるんだろうというふうに思っております。そして、そういう面では、保健師さんの、虐待への対応というチームワーク、そういった部分はないわけですけれども、ただ、子どもの健診になぜ来なかったんだろうな、そういう一つの疑問を持つ、そういう部分があるんだろうというふうに思っています。  そして、大きくなってまた児童館なり保育所、幼稚園、そういうふうになっていったときに、保育士さんなりさらには幼稚園教諭がまたそこで一つのシグナルを受けとめる、さらにはそこを見つける、そういう部分があるというふうに思っています。  そして、学校に行った場合に、特に養護教諭についての一つのとらえ方、さらには接し方、そういった部分がまず私はあるんだろうというふうに思っています。  そしてまた、非行の部分からいった場合に弁護士、そういった部分の中に、弁護士における、一つ一つの子どもの接し方の問題についての専門性。そういった部分からいうと、社会福祉士という一つの大きな活動分野というものがある、そういうふうに思っております。  ただ単に、児童相談所、さらには行政の枠、こういうような部分で、一つの、今の専門を生かしていくというふうになっていった場合に、若干対応し切れない部分があるんだろうな、そういうふうに思っております。  そんな面で、社会福祉士、いわゆるソーシャルワーカーの領域、分野も含めて、これからの社会の中に一つの仕組みとしてその専門性が発揮でき得る、そういったところをどうとらえていけばいいのかなという部分を自分自身も悩んでいるわけでございますけれども、宮島先生の方からひとつよろしくお願いしたいと思います。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 ありがとうございます。この点は質問してほしかったんです。  社会福祉士ですけれども、全国でもう十万人以上、ちょっと正確な数字をきょうは持ってまいりませんでしたが、十二万人以上いたと思います。しかし、それに対して、全国の市区町村の児童相談窓口には二百七十一人しかいない。国やさまざまな人がお金をかけて社会福祉士を養成しているにもかかわらず、活用されていないというふうに言うこともできると思います。  高齢者の分野では地域包括支援センターがありますけれども、そこでは保健師さんと社会福祉士は必ずいなければならない、それで市区町村にあるわけです。大きな市区町村であれば複数の地域包括支援センターがあるわけです。児童のところになぜないのかというふうに疑問さえ抱きます。  私は、ある市の保健センターで保健師さんと事例検討を定期的にやっています。彼らは本当にすばらしい力を持っています。彼らの専門性を生かすためにも、社会福祉士とセットで、市区町村で活躍できるような体制が必要だというふうに考えています。

吉泉秀男社会民主党・市民連合

○吉泉委員 ありがとうございます。  ただ、児童の場合、お年寄りの介護の問題とは少しはまた違う部分もあるんじゃないかなと。  私はそういう面で、いわゆるコーディネーター、今言いましたように、保健師さんなり保育士さんなり学校の養護教諭なりそういったところを、トータル的な部分を含めて見た一つの活躍の場、さらには、そこで全体的に行政に上げていく、そういう仕組みを考えていった場合、一つの施設の中にいなければならない、それはそういうふうなことも言えるんだろうと思うんですけれども、今これだけ社会が核家族化、さらにはきずな、そういうものが壊れていく際に、やはり一つのところに置くのではなくて、トータル的な部分でそこを全体的に考えていく、さらには問題提起をしていく、そういう部分を私は社会福祉士に望みたいなというふうに思うんですけれども、その辺はどうなんですか。

宮島清日本社会事業大学専門職大学院准教授

○宮島参考人 社会福祉士はソーシャルワーカーの国家資格ですけれども、ソーシャルワークの専門の力としては、先ほどのアセスメント能力もありますけれども、コーディネートをする力、さまざまな機関を結び合わせていく、また、自分の方からSOSを出せない方、そのSOSを酌み取って、その方を人々や制度に結びつけていくという役割が担わされています。その役割が本当に必要で、この活躍の場は、さまざまなところで活用できるだろうと思います。  今、更生保護の分野でも社会福祉士を置くという動きがございます。また、学校にスクールソーシャルワーカーを置くということになった場合、ぜひ社会福祉士を充てていただきたいというふうに思います。せっかく学び、トレーニングをした人をそういったところに充てなければ、それこそ損失であろうと考えております。

吉泉秀男社会民主党・市民連合

○吉泉委員 自分自身、地方出身なものですから、東京、さらには都市近郊のところの住まい、さらには親子関係、非常に違う部分がいっぱいあるというふうに思っています。  まだ私の方の、地方の段階については、それぞれ地域の中できちっとした自治組織、さらにはPTA、そういう父母の会なり子供会、こういったものはきちっとできている。しかし、こちらの方に、東京あたりで生活をしている友達なり、さらには身内の方にお話をしますと、ほとんどない、隣が何をしているのかわからない。子供会はあるでしょうと言っても、さっぱりそういった部分については参加し得ない。こういう状況の中から、まさしく地域のきずな、そういった部分がどんどんエスカレートすると、まさに親子のきずなも崩れてしまう、こういう状況があるというふうに思っています。  きょう、高橋先生の方から、きずなという言葉について非常に強調された、そういうふうに思っています。そんな点なんかを含めて、もう一度そういう状況というものを、地方と中央、都市ですね。そういった中で、核家族化もどんどん地方の方も進んでいるわけですけれども、これからも東京の方と同じように地方もいったならば大変だなというふうに思うので、そのきずなというものの一つのとらえ方、そこのところを、先生、ひとつよろしくお願いします。

高橋史朗明星大学教育学部教授

○高橋参考人 きょうはきずなということを強調させていただいたわけでございますが、大阪大学等の研究グループが学力の要因について調査した結果が昨年の十二月七日の日本経済新聞と毎日新聞に大きく載っていたのでございます。これは大変注目すべきものでございまして、今まで、子どもの学力に影響しているのは、都会と田舎の、つまり都鄙の格差とか、あるいは親の経済力、つまり経済格差というものが影響しているというふうに言われてきて、もちろんそういう要素もあるんだと思うんですが、この新しい結果は、つながり格差という新しいことを言ったんですね。つまり、人間関係のつながり、あるいはきずな、その格差が学力に影響しているんだ、都会とか田舎にかかわらず。  それを私は大変大事な指摘じゃないかと思っておりまして、家族のきずな、地域のきずなをどう高めるか。これは、かつて明治時代には家庭心得という、学校が親に配っていたものがございまして、教育の道は、家庭の教えで芽を出し、学校の教えで花が咲き、世間の教えで実がなるということが書いてございました。  ところが、今、家庭の教えと世間の教えが衰退していまして、学校だけが批判にさらされております。私の教え子が小学校の教員になって、三人が一年でやめてしまいました。こんなことは私の教員生活始まって以来の出来事でございますが、原因は共通しておりまして、発達障害の子どもに対応できなかったという問題、それから理不尽なことをわっと言ってくる親に対応できなかったというこの二点が共通しておりました。  かつて、私は「逝きし世の面影」を読んでいただきたいということを申し上げましたが、なぜ江戸時代は日本の子どもが世界一幸せで、世界一礼儀正しかったか。それは、まず親が手本を示して、まさに江戸講、江戸寺子屋、街角で、地域一体となって手本を示してきた、こういうものがあったわけでございますね。ですから、そういう江戸しぐさにかわる今しぐさ、昔の家訓にかわる我が家のルールとか、そういう、ある意味でつながりというものが今一番大事な、まさにきずな、心のきずなというものがポイントでございますから、それを家族、地域総ぐるみでどうつくっていくかということが大事な課題ではないかと思っております。

吉泉秀男社会民主党・市民連合

○吉泉委員 どうもありがとうございます。  私どもも、虐待で涙を流す、さらには仏様に手を合わす、こういうことを一件でも少なくするように、児童虐待、全力で頑張らせていただきたいというふうに思っておりますし、ぜひ先生方からも力強い、さらには適切な御指導、アドバイスをお願い申し上げながら、時間でございますので、終わらせていただきます。  ありがとうございました。

池坊保子公明党

○池坊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  委員会を代表いたしまして、四人の参考人の方々には、当委員会に長時間お力をいただき、また、有意義かつ重要な御意見並びに御指摘をいただきましたこと、心より感謝の思いでございます。  私たち委員は、しっかりと参考人の方々の御意見を胸に受けとめ、政策にこれから反映してまいるつもりでございます。  ありがとうございました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十一分散会

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