文教科学委員会 第10号
- 発言数
- 88 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 2007/04/19
会議録
○委員長(狩野安君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日までに、野村哲郎君及び鈴木寛君が委員を辞任され、その補欠として中曽根弘文君及び神本美恵子君が選任されました。 ─────────────
○委員長(狩野安君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、外務大臣官房広報文化交流部長山本忠通君外二名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(狩野安君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(狩野安君) 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律案を議題といたします。 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○蓮舫君 民主党・新緑風会の蓮舫でございます。 今日審議させていただく法案、文化財というのは、言うまでもなく今の時代だけ守るとか、文化財のある国や地域に住んでいる人々だけのために守るものではなくて、過去から現在まで引き継がれて、現在から未来に引き継いでいく人類共通の財産だと思っています。その部分で国際条約を積極的に推進していく方針には賛成をさせていただくんですが、ただ、今日審議される法案が、果たして中身がどこまで現実的かというのを今日は確認をさせていただきたいと考えております。 まず、日本には国家として文化財を守るために文化財保護法があるんですね。この目的は、「文化財を保存し、」「その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献する」とある。その上で、今回の法律案は、武力紛争時にも文化財を保護していこうというものです。 まず最初にお伺いをします。基本的に、本法案で言う文化財は条約の定義に基づくものなんですが、これまで日本であった文化財保護法で規定する文化財の対象と違いがあるんですが、どこが違うんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) お答え申し上げます。 先生の御指摘のように、我が国の文化財保護の一般法でございます文化財保護法では、広く有形文化財、これは建造物とか絵画でございます。それから、いわゆる演劇や音楽などの無形文化財、さらにはいわゆる人々の生活や衣食住、民俗芸能などの民俗文化財、さらに貝塚や古墳、城跡等の史跡、さらには庭園などの名勝、それから動植物などの天然記念物、さらには近年、文化的な景観、伝統的建造物群等を、大まかに分けまして六種類のものを文化財保護法で保護しているということでございます。 本条約、この武力紛争の際の文化財の保護に関する条約では、第一条に文化財の定義がございまして、各人民にとりましてその文化遺産として極めて重要な動産又は不動産というふうに定められておりまして、具体的には、いわゆる記念工作物や考古学的な遺跡、またいわゆる建造物群、芸術品、それから文書、書籍等、さらにはその動産を保存いたします博物館や図書館、さらには武力紛争時に動産を収容するための避難施設、それから文化財が多数所在する記念工作物地区ということでございまして、文化財保護法よりは限定的にいわゆるハーグ条約では文化財の定義を行っているということでございます。
○蓮舫君 ありがとうございます。 つまり、ハーグ条約の文化財の定義は、動産又は不動産であるがために、文化財保護法で日本が保護する対象としている名勝、天然記念物のうちで自然と生物が対象外になるんですね。 平成十九年三月現在で、文化財保護法で名勝と指定されるものが三百八件、天然記念物として指定されるのが九百三十四件あるんですが、このうち本法律案で紛争時に保護対象となる名勝と天然記念物はどれぐらいになるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘のように、指定物件につきましては、名勝が三百八件、また天然記念物が九百三十四件あるわけでございますけれども、このハーグ条約を受けました本案の対象となるものにつきましては、名勝のうち、いわゆる人工物、庭園や橋梁などでございますけれども、三百八件のうち百七十九件、天然記念物につきましては、学術上の収集品、書籍又は記録文書の重要な収集品等に該当しますいわゆる動物の標本、鉱物標本ということになりまして、九百三十四件のうち三件がその対象になるというふうに考えております。
○蓮舫君 名勝の三分の二だけ、天然記念物でいうと九百三十四件のうちわずか三件だけが紛争時に守られる本法律案の対象なんですね。 天然記念物の中には、世界的に又は国家的に価値が特に高いものを国が特別天然記念物と指定をするものがある。例えば阿寒湖とマリモとか、屋久島と屋久島杉の原始林、あるいは鍾乳洞の秋吉台なんですが、ところが、本法律案ではこうした国が指定する特別天然記念物は紛争時に保護する文化財の対象から外れると。これは条約に基づく法律だから外れても仕方がないと文化庁はお考えなんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今回御提案申し上げています今回の法案につきましては、武力紛争の際の文化財保護に関する条約を実施するための法案でございまして、その範囲内で法案を作成したということでございます。
○蓮舫君 日本は国内的にも世界的にも特に価値が高いものを、そして重要なものを文化財保護法で守ってきたんですが、その文化財として大切に日本が守ってきたものが、本法案を立法化することによって守るものと守らないとの線引きが明らかにされてしまうと。しかも、紛争時ということは、平時よりも壊される、損壊される可能性が極めて高いときに、当たり前にひとしく守ってきたものが、紛争時になると、ここから先は守るけれどもここから先は守らないでもいいんだということは、これ、大臣、どうお考えでしょうか。
○国務大臣(伊吹文明君) これは、先生、むしろ私にお聞きになるよりも外務大臣にお聞きになるべきことだと思うんですよ。 おっしゃっているように、矛盾があることは分かります。しかし、国際的な約束事として結んだ条約を国会の批准をしていただいて、その国会の批准の範囲の中でそれを国内的に担保するための法律を出しているわけですね。ですから、交渉の途中で、おっしゃっているような配慮をして、文化財の定義の中に自然物という、今先生のお言葉をかりれば、自然物というものを入れる交渉がされて、協定、条約上そういうことになっていれば、それに従って当然国内法は整備しなければなりません。 しかし、条約を超えて、国内法だけ条約とは全く違う、国際的な義務を諸外国に課するという国内法は作れないんじゃないですか、国際法上。ですから、私たちの日本の国内においては、先ほど来お話があったように文化財保護法というものがありますから、日本の主権の中では自然物は当然保護をしていくという今までの姿勢は変わりませんし、戦争という各々の主権と主権のぶつかり合いの中で日本の主権以外の主権が日本のものを壊そうとしたような場合は、本来の国際法からいうと、戦争が終わったときに当然賠償責任その他のことが生ずるというのは、これは国際法の体系上のことなんですね。 ですから、私は、先生の御指摘はよく理解できます。しかし、私の立場としては、やはり国民から預かっているものを国内法を厳密に適用することによってきちっと守っていくし、他の国の主権と日本の主権がぶつかり合うような事態を政治家として避けていくし、そんな事態が生じたら困るんだけれども、困った場合は日本の主権が必ずオーバーライド、他の主権をオーバーライドできるように頑張って、そして当然、日本の大切なものが壊されたら、その後当然の賠償請求をするということしか今の条約の下ではお答えはできないんじゃないでしょうか。
○蓮舫君 さすが伊吹大臣は外務大臣としても遜色のない答弁を今いただきましたけれども、同じ内閣でございますから、是非、伊吹大臣から麻生大臣にお伝えをいただけるように、今日の審議ではもう幾つか矛盾点を大臣に知っていただきたいという観点から質問を続けさせていただきます。 日本には世界遺産として十三件が指定されています。これ、原爆ドームとか姫路城なんですけれども、この十三件は文化財保護法で保護されていますか。
○政府参考人(高塩至君) 世界遺産のうち、文化遺産につきましては現在十件ございますけれども、その文化遺産の中には国の重要文化財、また国の史跡等がございまして、文化財保護法で適切に保護しているところでございます。 しかしながら、自然遺産につきましては、広い意味の文化財保護法と加えまして、いわゆる自然公園法や環境保全の関係の法律で保護していると、こういう国内法の体系になっているというふうに承知しております。
○蓮舫君 では、この十三件は本法案では文化財として保護の対象になっていますか。
○政府参考人(高塩至君) ただいま申し上げましたように、世界文化遺産として登録されているというより、文化財につきましてはその大部分が国指定の重要文化財や史跡名勝天然記念物の人工物であるというふうに指定されておりまして、この本法律案の対象となりますいわゆる国内文化財に該当するというふうに考えております。 しかしながら、条約第一条で定義されている文化財にはいわゆる自然物は含まれませんので、いわゆる自然遺産については本法案の対象外になるものというふうに考えております。
○蓮舫君 屋久島、白神山地と知床、この世界遺産の自然で区分されたものは対象にならないと。 世界遺産条約の目的を教えていただけますか。
○政府参考人(高塩至君) 世界遺産条約につきましては、いわゆる文化遺産や自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護、保存することをその目的にしているというふうに承知しております。
○蓮舫君 破壊等の脅威から保護し保存することが重要であるという観点から、国際的な協力援助の体制を確立するのが世界遺産の目的なんですけれども、そうなると本法案の紛争時に文化財を守るという目的と合致すると思うんですよね。ただ、世界遺産で自然で区分された三か所は本法案が通った後は保護の対象にならない。 ここも大臣にはよく知っていただきたいと思うんですけれども、これはもう外務大臣に御答弁をお願いするところかもしれませんけれども、改めてここもよく御理解をいただきたいと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(伊吹文明君) まあ、麻生さんが外務大臣になる前に結んでおって、延々と批准せずに続いている部分がありますから、よく先生の御意向は伝えますが、同時に、その条約の中でも、同時に世界遺産条約というのがあるわけでしょう。その中には今御指摘になったような各国が世界遺産に対して果たすべき規範というものは書かれておりますよね。 ですから、ある意味じゃ、なぜ今度の条約で世界遺産条約に含まれているものがこのたびの協定の第一条に含まれていないのかなという疑問は私も同じように持っております。しかし、日本の主権の及ぶ国内の問題については、我々政治家は、全力を挙げてやっぱり立派なものを後世に残すという気持ちを持って行政を行い、法律を運用していくということだと思います。
○蓮舫君 ありがとうございます。 じゃ、国内法をちょっと見てみたいんですが、国内で、仮にですよ、これ起こしてはいけないんですが、武力攻撃事態というのが起きた場合に国民保護法制があるんですね。この国民保護法制の中では文化財保護の特例という文化財を守る条文があるんですが、これ、どういう内容でしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘のございました武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法でございますけれども、その第百二十五条に文化財の保護の特例の規定がございます。 主なものを紹介いたしますと、その内容につきましては、いわゆる文化財保護法におきます重要文化財、それから重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物につきまして、武力攻撃災害による当該文化財の滅失、毀損その他の被害の防止をするために特に必要があると認めるときは、文化庁長官はその所有者等に対しまして、当該文化財保護に関しまして必要な措置を講ずべきことについての命令、勧告ができることとなっております。 また、国宝や特別史跡名勝天然記念物につきましては、所有者等が文化庁長官の命令に従わないとき、又はその所有者等が被害の防止の措置を講じさせることが適当ではないと認めるときには、文化庁長官が自ら滅失、毀損その他の被害を防止するための必要な措置を講ずることができるなどの内容となっておるところでございます。
○蓮舫君 国民保護法では、文化庁長官が武力紛争時に所有者あるいは管理団体に対して文化財を保護するように命じたり、あるいはその所有者、管理団体から必要な措置の援助を文化庁長官にお願いすることができる、これが今の法律です。 じゃ、本法律案が通ったときに、対象となる文化財は武力紛争時にどうやって保護されるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) この法律につきましては武力紛争時におきましてその文化財を広く守るということでございまして、先生御指摘のように、今申し上げましたように、いわゆる重要文化財や重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物につきましては、自然物を含みまして、この国民保護法の方によりまして守られるというふうに考えております。
○蓮舫君 いや、違います。本法案で国内文化財は武力紛争時にどうやって守られるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) この法律では、先ほど来御答弁申し上げましたように、自然物は除かれますので、いわゆる史跡名勝天然記念物のうちのいわゆる自然物につきましては、この本法案ではなくて、この国民保護法等の法律によって守られるということでございます。
○蓮舫君 本法案で国内文化財は武力紛争時にどうやって守られるんですかと、手段を聞いているんです。罰則とかありますでしょう。
○政府参考人(高塩至君) この法律につきましては、今回、この法律は正に武力紛争時に文化財を守りまして国際的な文化財の保護に資するということでございまして、具体的には、武力紛争時における締約国の文化財の保護のための必要な措置を講ずるということを求めておりまして、具体的には、一つには、武力紛争時におきまして、他国に占領された地域、いわゆる被占領地域から輸出されました文化財をいわゆる被占領地域流出文化財として指定いたしまして、当該文化財を輸入する際に輸入に関しますその承認の義務を課すということがございます。この輸入規制に反した場合には、先生おっしゃられたように罰則がございます。 さらには、この武力紛争時におきましては、その文化財を保護するための特殊標章の使用ができるということを決めております。 また、さらに、武力紛争時に正当な理由なくして戦闘行為によりまして文化財を損壊する行為につきましては処罰を行うという、主な三点をこの法律では定めているところでございます。
○蓮舫君 つまり、本法案で対象となる文化財は、紛争時に特殊標章で損壊されるのを抑止する、あるいは損壊した者は罰則が科せられるんですけれども、本法案で対象外のものは国民保護法制でしか守れないので、それは文化庁長官が所有者や管理団体に守ってくださいって命じたり、その方たちから、いや、何か必要な支援をくださいって文化庁にお願いをするしかない。つまり、罰則が随分違うんですよね、同じ保護する文化財であっても。これも仕方ないとのお立場なんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 文化財のいわゆる毀損等につきましては、国民保護法ではなくて、いわゆる文化財保護の一般法でございます文化財保護法の方にいわゆる史跡名勝天然記念物を滅失、毀損した場合には罰則規定がございます。
○蓮舫君 史跡名勝天然記念物を損壊させるなどの行為を行った者は、文化財保護法では百七条の二の一、五年以下の懲役、三十万円以下の罰金が科せられます。ところが、今回の法案が通って自然、生物ではない史跡がハーグの第二議定書にあるように強化保護で認められた場合、本法案にある罰則規定にあるように、強化保護の史跡を損壊した者は七年以下の懲役になります。ところが、強化保護が認められない史跡においては、この法律が通っても文化財保護法でしか罰せられないがために五年以下の懲役。つまり、五年と七年で差が生じるんですね。これに対してはどのような見解をお持ちですか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘ございました強化保護の文化財をどういうものにするかにつきましては、今ユネスコの武力紛争に関する委員会の方でその基準や手続等が定めておりまして、これからいわゆるこの本条約で対象となります文化財のうちどういうものを指定するかということの検討を行っていくということでございます。 御指摘のように、強化保護になりました、仮に史跡名勝天然記念物がなれば、それについてのいわゆる損壊については七年以下の懲役ということになります。しかしながら、この除かれる自然物につきましてはこの法律の対象でございませんので、文化財保護法により五年以下の懲役となると、こういうふうな取扱いになると考えております。
○蓮舫君 外務省にお伺いしますが、本法案が成立しますと、条約を守るという部分では当然日本の義務を果たすということになるんですけれども、ただ、今るる質疑があったように、これまで日本がひとしく文化財として守ってきたものが線引きをされてしまうと、あるいは罰則においても強化保護になるかならないかでそこにも差が明確に生じるんですね。これはやはり外務省の御努力になってくると思うんですが、ユネスコにおいてハーグ条約で対象とする文化財の対象範囲を広げる御努力はこれまでされてきていて、これからもされていくんでしょうか。
○政府参考人(山本忠通君) お答えいたします。 特に自然遺産のことをお考えだろうと思います。実は努力をしたことがございます。そもそもの条約交渉の段階で、これは我が国からでございますけれども、やはり今先生の御指摘、そしてまた大臣がお話しされたのと同じような問題意識から、名勝及び景観を、これを保護の対象にしてはどうかというような話を我が方からいたしました。しかし、これは多国間の交渉でございますので、賛成を得られず、そういうふうにならなかったという経緯がございます。 それで、また一九九九年にハーグ条約を発足するための第二議定書というものを、今回御審議いただいて、これも関連した国内法ということで御審議していただいておりますけれども、を作成するための検討が行われましたときも、文化財の定義の中にやっぱり自然遺産は含まれませんでした。したがって、努力はしたんでございますが、今の状況を率直に申しますと、このハーグ条約に関していえばなかなか難しいのではないかという認識を有しております。 他方、既にこれまでもいろいろ御指摘ございますけれども、自然遺産につきましては、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約という、いわゆる世界遺産条約によって保護されているというのが実態でございます。
○蓮舫君 日本はこれまで本当に、提案をしてそして自然を守ろうという極めて日本独自のアイデアを、御努力をされてきておられるわけですけれども、もしユネスコのハーグ条約でその対象にするのが難しいというのであれば、是非英知を絞って、世界遺産条約もありますし、どこかでそれを補てんするような、国内法において、国内法の整備をするときに、守るべき文化財の対象に差が出るようなことがあってはならないんだという意識で国際的御努力を引き続きお願いしたいと思います。 本法案の罰則について更にお伺いしたいんですが、武力紛争事態において、戦闘行為として文化財を損壊させた者には五年あるいは七年以下の懲役が科せられるんですが、戦時においてだれが文化財を破壊させたとどうやって特定されるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 紛争時におきまして文化財を破壊した者をどのように特定していくかということにつきましては、それぞれの事案におきまして、証拠に基づきまして個別に判断されるものになるというふうに考えております。
○蓮舫君 個別の判断。個人行為であれば特定は比較的簡単だと思うんですね、Aさんが壊した。だけど、これ、戦時の場合には軍の一個師団とかが来るわけですよ。そうすると、これ、損壊させた者はこの一個師団全部でしょうか、それとも命令した者でしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 実際、どのような者が処罰されるかにつきましては、なかなか一般論としてお答えすることは難しいわけでございまして、先ほど申し上げましたように、証拠に基づきまして個別に判断をされるというふうに考えております。 この法律におきましては、正当な理由なくして文化財を損壊した場合につきましては、その損壊の行為を実際に行った者、いわゆる戦闘員のほかに、その戦闘行為を行うことを命令した者、いわゆる指揮官につきましてもいわゆる共同正犯として処罰されることはあり得るというふうに考えてございます。
○蓮舫君 例えば、日本が劣勢な戦いといいますか、負けそうといいますか、占領されるかもしれないという事態に、私、守るべきはまず人命だと思うんですよ。何よりも人を守る、人の命を守る、これは政治家にも課せられている大きな仕事ではございますが、そのときに、文化財を損壊させた者の罪を問うて裁判にかけて、そして罰則を科すということは、これ現実的に可能だと本気でお考えですか。
○政府参考人(高塩至君) 条約に基づきますこの本法の実施ということになれば、そういうことが実際に行われるものというふうに考えております。
○蓮舫君 次に伺います。 本法案では、文化財を保護するために特殊標章、ブルーシールドを使用することが定められているんですが、六条ですね、これは、不動産の文化財を識別させるために特殊標章を使う場合、文科大臣の許可を受けなければならない。これはいつ受けるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘のように、不動産につきまして特殊標章を付ける場合には文部科学大臣の許可が要るということでございます。 これにつきましては、条約に、締約国の権限のある当局が、その不動産につきましては、当局が正当に日付を記入し、かつ、署名した許可書が同時に表示されてない限り、いかなる不動産の文化財にも付することができないという、この条約の十七条第四項に基づいてそのような規定を設けたわけでございます。したがいまして、我が国といたしましては、この不動産につきましての不動産の国内文化財に特殊標章を使用する際には文部科学大臣の許可を受けることとしております。 その時期につきましては、具体的に国内文化財を管理いたします者がその使用に先立ちまして申請時期を考えるということになろうと思います。したがいまして、具体的にいつということではなく、正にそういった事態を予想し、予想される事態になれば、それぞれのいわゆる管理者において適切に判断をされるというふうに考えております。
○蓮舫君 武力紛争事態が予想されるときに、所有者あるいは管理団体が、あっ、戦争が起こるかもしれないとして申請書に記入をして、文科大臣に許可をいただけるということでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) この特殊標章につきましては、先生御存じのとおり、これは特殊標章をその文化財に付けるか付けないかということも任意である、管理者の判断ということでございます。しかしながら、御指摘のように、武力紛争というのはいつ起こるか分からないというものでございますので、当然のこととして様々な準備を平時から行っておくということは重要だというふうに考えておる次第でございます。
○蓮舫君 このブルーシールドの効力というのは、私は武力紛争が起きたときに壊されないために張っておくものだと思うんですね。つまり、平時から張っておいて幅広く認知していただかなければいけないと思うんですよ。それも、国内だけじゃなくて国際的にも。そうすると、今おっしゃっていた手続とか、極めてちょっと私、非現実的だと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) この法律が制定した後に、この不動産である国内文化財に特殊標章を付ける際のいわゆる文部科学大臣の具体的な許可手続につきまして、私どもの省令で定めるということを考えておるところでございます。 その後に、私どもといたしましては、文化財の所有者に対しましてこの特殊標章というものの制度の周知を図りまして、いわゆる文化財を管理し所有する方々たちの認識を深めていくということを考えている次第でございます。
○蓮舫君 先ほどおっしゃったように、武力紛争はいつ起きるか分からないと。ならば、この法律が施行したその日から省令も出すためにすべて準備をしておくべきだと私は考えています。 次にお伺いしたいんですけれども、私は戦争を経験したことがないんで分からないんですけれども、書物や映画や知識として、戦争というのは長く地上戦だと思って育ってきました。でも、アメリカのイラク湾岸戦争、そして二回目のイラク攻撃を見て、もう地上戦ではなくて極めてハイテクな空爆戦、ミサイル攻撃というのが戦争の主力なものになってきたのかなという印象を、衝撃をすごく覚えたことがあるんですけれども。 防衛省にお伺いします。 日本の安全保障を実際に脅かしたのが北朝鮮のテポドンとかノドンミサイルなんですけれども、こうしたミサイルというのは、ピンポイント攻撃できるものなんでしょうか。
○政府参考人(金澤博範君) 北朝鮮が持っておりますミサイルといいますと、今先生御指摘のテポドンとかノドンというものが挙げられますけど、実はテポドンはまだ開発中でございまして、実戦配備されておるとは見ておりません。 日本に飛んでくる可能性があるのはノドンというミサイルで、大体射程千三百キロぐらいでございます。このミサイルの性能、まあ細かいことは分からないわけでございますけれども、特定の施設をピンポイントに当てるという能力はあるというふうには見られておりません。
○蓮舫君 つまり、その射程距離が日本をすっぽりと覆っていて、そしてピンポイントで攻撃できる能力がないと見られているということなんですが、例えば首都圏をねらって皇居だけ外すということ、あるいは広島をねらって原爆ドームだけを外す、こういう能力がないということですね。
○政府参考人(金澤博範君) 外すというのと当てるというのはほとんど同じだと思いますけど、皇居と今おっしゃいましたけど、皇居は相当大きいです、ですから可能性あると思いますけど、原爆ドームというのは相当難しいと思います。
○蓮舫君 つまり、ミサイルを撃つ側からして、特殊標章が張られている対象物を外す、見ることができないですし、それでその特殊標章を張ってある文化財を外して北朝鮮のノドンはミサイルを被弾させる、着弾させることができないというときに、文化庁にお伺いしますが、この特殊標章の張られた文化財が攻撃をされない抑止力につながるというのが極めて私は非現実的だと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 特殊標章のお尋ねでございますけれども、特殊標章の態様につきましては、この条約及び条約の施行規則につきまして、いわゆる輸送車両に付けるなどが一つの大きな例になっておりますけれども、その際には上空及び地上から視認、いわゆる見て分かると、認められるようなものとする、ものの大きさ等にするという規定が置かれている以外は締約国の裁量にゆだねられておりまして、必要に応じて、その必要に応じてそれが使用されるということになると思います。 今お尋ねのミサイル攻撃につきましては、いわゆる視認、見て攻撃するものではないということでございまして、やはりこの特殊標章のみで攻撃を回避するということはなかなか困難であるというふうに考えておりまして、やはり平時から保護すべき文化財のリストというものを作成いたしまして、いわゆる諸外国と交換をいたしまして、保護の対象とする自国の文化財の情報というものを分かりやすい形で外国に提示していくというなどの方法が有効であるというふうに考えております。
○蓮舫君 前段の部分はよく分かりませんが、後段の部分はよく分かります。とにかく国際的に日本で守るべき文化財はリストを作って広く周知徹底していくという作業は、これも、外務省もそうでしょうけれども、大事なことだと思うんです。 確認します。ハーグ条約の締約国でなければ条約上の義務は生じないんでしょうか。
○政府参考人(山本忠通君) おっしゃるとおり、条約の締約国でなければ条約によって拘束されることはございません。
○蓮舫君 北朝鮮は条約締約国ですか。
○政府参考人(山本忠通君) 締約国ではございません。
○蓮舫君 仮に北朝鮮が攻めてきた場合、日本が戦地になった場合、条約を締約していない北朝鮮はこのハーグ条約で守られた文化財を守るべき義務が生じないんですけれども、やっぱり私、これ機会あるごとに北朝鮮にももっと積極的に、いろいろ働き掛けなければいけない部分があの国にはあるとは思うんですけれども、今公式に日本が北朝鮮と協議を持てる場というのは六か国協議だと思いますが、拉致以外にもこういう文化財、幅広く日本の外務省としては発信はされているんでしょうか。
○政府参考人(山本忠通君) ハーグ条約について働き掛けているということはございません。
○蓮舫君 伊吹大臣、やはりこれは、済みません、こういうところで振っても困るという顔をされても困るんですが、やはり外務省ももっと積極的にならないと、文化財より人命だというのはあります、それは共通認識です。そして、何よりも紛争を起こしてはいけないというのもあります。ただ、歴史というのは、今までの過去を見てみましても、我々が求めているものと意に反した事態というのが起きてきたこともありますので、何かあったときのために文化財を保護するという、文科大臣としてその部分はもう少し積極的に働き掛けていただきたいと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(伊吹文明君) 心情としては私はもう全く先生と一緒なんですよ。しかし、優しい心だけでは国際社会は生きていけないということも、これは現実なんですね。北朝鮮だけじゃないんですよ。アメリカだってハーグ条約には入っていないんですよ。なぜ、先ほど外務省の参考人が、るる努力をしたけれどもうまくいかなかったということを言った国際の情勢の現実というものをやっぱり我々はしっかりと見た中で、政治家としてあるいは日本の国として、文化に対する思いをしっかり貫いていくということなんです。 この条約は二つの側面からの義務というか、規範意識みたいなことを述べておるわけですよ。一つは、国内に日本の主権が存する中で、日本の文化財を日本人が国際紛争の中でどう守っていくのか。 具体的に言うと、なぜアメリカや諸外国、イギリスが入っていないかというと、多分、分かりませんよ、彼らからの交渉に私は携わっていないから分かりませんが、彼らの思いとしては、例えばこのブルーシールドを張ったり、あるいは国際的に守るべき文化財というものの中に、例えば戦いのときのヘッドクオーターを置いたらどうなるんだというようなことはやっぱり考えているわけですよ。すぐそばに、皇居ほどの大きさではないそばに軍事基地だとか戦いの戦略的な頭脳になるコンピューターセンターを置いちゃったらどうなるんだとか、そういうことをいろいろ諸外国は考えるから、つまり文化財を隠れみのにして戦いに有利な状況をつくられるというのは困るという思いがあるからなかなか入ってこないんですね。ですから、国内では、少なくとも日本はそういう文化財のそばに、防衛庁には悪いけれども、文部科学省としてはそういうものは造らせないという、これも一つの政治なんですね。 それと同時に、外国が今先生がおっしゃったように攻撃してくることについて、攻撃をしないようにという規範をもう一つ置いているわけです。そこはピンポイントとかどうだとかという議論をし始めたら、これは確かに古いですよ、この条約、ハーグ条約ってずっと前の条約だもの。それだったら、同じ論理でいえば、レッドクロスの赤十字を付けておくということは意味があるのかねということになっちゃうんですね。だけど、やはり赤十字を付けているものについては攻撃をしないという規範を持ちながら諸外国もやってもらわないと困るし、私、京都なんですけれども、あのころはやっぱり、アメリカは最後にどう考えていたか分からないけれども、やはり日本のだけではなくて世界の文化財の集積地である京都と奈良は爆撃をしないという当時は規範意識を持っていたわけですね。 ですから、そういう優しい部分をある程度国際的に確認しておこうというのがこの条約であって、いよいよ本当に戦闘状態になった場合は、これは先生がおっしゃるように命を守るのが最善ですからね、国家としては。そのときには、多分この条約や何かをすべて否定してでも命を守るような法律をあるいは国会へお願いしなくちゃいけないという事態だって生じかねない、それがやっぱり戦争であり、国際情勢の現実というものだと私は思うんですね。その中で最善を日本としてはやっぱり尽くしていく。 ちょうど温暖化の京都議定書に対して、もう好き勝手な振る舞いをしている大国がたくさんあるじゃないですか。それと同じことが国際的な現実なんだけれども、日本はそうだからといってそういうものに引っ張られずにきちっと国際的義務を果たしたいというんで今回批准をお願いして、そしてその国内法の整備を、先生の目から見ると不十分かも分からないけれどもお願いしているという心根を是非御理解をしてください。
○蓮舫君 心根は全く共有させていただいております。 ただ、現実的にという点、ブルーシールドの点は細かい重箱の隅をつつくかもしれませんけれども、ただ現実的にどうなのかという確認だけをさせていただくと、大臣今おっしゃったように、ハーグ条約は昭和二十九年なんですね。相当古いときに結ばれて、その間に随分と世界も変わって、紛争という形式も随分変わってきて、実は本法案で言う武力紛争事態、ハーグ条約で言う武力紛争事態にテロって含まれていないんですよ。これは、極めて私は大きな瑕疵があると思うんです。 例えば、大臣の御地元の京都の祇園新橋ですか、ここは国でいえば重要伝統的建造物群保存地区、大切にしましょうと、本法律案でも文部大臣が指定をする特定文化財の対象になると思うんですが、ここを本法律案では守っていきましょう、武力紛争時には。でも、テロは対象外だから守らないでいいと。 だけど、こういうふうに特定文化財に指定されたところは、人がたくさんやってくるところなんですよ。観光客がたくさんやってくる、文化財を楽しみに、堪能しにやってくる。そこというのは、テロリストにとったらやはり一番ねらいやすい場所なんです、人が集まる、価値がある、国家に痛手。だから、そういう部分の文化財を守るというのであれば、武力紛争時にテロというものを今後も考えていく法律整備は日本は怠っていくべきではないということを最後に御指摘を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。 ─────────────
○委員長(狩野安君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、山本香苗君及び小泉顕雄君が委員を辞任され、その補欠として渡辺孝男君及び二之湯智君が選任されました。 ─────────────
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 本案は、人類共通の財産である文化遺産を守って次世代に継承していく、その上で有効な手段の一つにもなりますし、現実に武力紛争が起きている下での文化財保護分野における国際協力になりますから、賛成であります。 ただ、私からも一点、問題ではないかという点を指摘をさせていただきたいんですが、我が国は、このハーグ条約の議定書の3の規定に定める文化財の返還義務について留保をしております。そうなりますと、この文化財の返還については、民法の規定によりまして、原則、盗難又は遺失のときよりも二年間、善意取得者に対して被害者等がその回復を請求できるのみということになります。 一方、日本は、二〇〇二年に文化財不法輸出入等禁止条約、いわゆるユネスコ条約を批准をしまして、その際に、これに対応いたしまして文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律というのを制定をしております。この法律では、この文化財の返還の義務についてはどのように定めたでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘の平成十四年に締結されました文化財の不法輸出入等の禁止条約につきましては、その第七条の(b)項(Ⅱ)号におきまして、いわゆる博物館等から盗取されました文化財であって、不法に輸出された、輸入された文化財の回復及び返還のために適当な措置をとるということを求めております。 このため、同条約を実施するための文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律におきましては、その第六条におきまして、締約国の盗難文化財を被害者への返還を容易にするための措置といたしまして、外務大臣からの通知を受けまして、文部科学大臣が指定しましたいわゆる特定外国文化財の盗難の被害者につきましては、代価弁償を条件といたしまして、民法百九十三条で規定されております善意取得に対する回復請求期間を二年から十年に延長した措置をとったところでございます。
○井上哲士君 このユネスコ条約では、回復請求期間については統一的な定めをしておりません。にもかかわらず、日本がこの期間を十年間に延長したその理由は何だったんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御指摘の条約を実施するための文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律におきましては、締約国の盗難文化財を被害者への返還を容易にするための措置といたしまして措置を行ったわけでございますけれども、その理由といたしましては、一つには、いわゆる国外から不法に輸入されました文化財につきましては発見されるまでにかなりの期間を要するということ、また、これは民法百六十二条のいわゆる取得時効期間の規定でございますけれども、いわゆる善意無過失である占有を始めた者のいわゆる取得時効期間というものは十年であるという民法の規定との調和をして図ることがあることを勘案いたしまして、先ほど申し上げましたように、代価弁償を条件といたしまして、百九十三条で規定しております善意取得者に対する回復措置の請求期間を二年から十年に延長したということでございます。
○井上哲士君 当時の質疑を見ておりましても、あくまでこの原産国への返還を容易にするための期間としてはどの程度がふさわしいのか、こういう観点で検討したと、こう言われているんですね。そして、今ありましたように、発見するまで期間を要するとか、民法の特例があるとか、こういうことを言われているんです。そうであるならば、私は、この観点というのは今回の条約の締結に当たっても非常に重要なものだと思うんですね。 あえてそのユネスコ条約とこのハーグ条約との国内法で差を付ける理由が一体どこにあるのか私には分からないんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 今御審議をいただいておりますいわゆるハーグ条約は、条約そのものがいわゆる武力紛争時における文化財の保護に関する国家間の取決めを定めるものでございまして、このハーグ条約のいわゆる議定書におきまして、締約国がいわゆる占領地域から自国の領域内に輸入されました文化財を管理し、敵対行為終了の際にその管理する文化財を従前に占領されていた地域の権限のある当局に返還する義務というものを負っているものでございます。したがいまして、同議定書におきましては、被占領地域流出文化財に関しますいわゆる私法上の権利を制限するものでないというふうに解されておりまして、締約国自体が返還の義務を負うということを求めているのがこのハーグ条約の体系でございます。 一方、先生御指摘のございました文化財の不法な輸出入の禁止条約につきましては、いわゆる博物館から盗取されました文化財の返還につきまして、現在の所有者が返還の義務を負うという制度を措置するということが求められているところでございまして、文化財の不法輸出入等の規制法におきまして、いわゆる現在の占有者といわゆる原権利者との間の交渉によりまして民事上の解決を図られるということを前提に善意取得の特則を設けたということでございまして、双方の条約の間ではそれぞれの要請が異なりますことから、この本法律案につきましては文化財不法輸出入規制等の措置とは異なるという差が出ているというふうに考えております。
○井上哲士君 両方の条約の対象になるような不法に輸入された文化財があった場合は、どういう取扱いになるんでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 本法律案が対象といたしておりますのは、いわゆる被占領地域から流出した文化財でございます。文化財の不法輸出入等の条約並びに法律が予定しておりますのは、博物館から盗難、盗取されました文化財ということで、その範囲が違っておりますけれども、現実にはやはり被占領地域の博物館から盗まれた、盗取されたということがあり得るわけでございまして、どちらの法律をその場合に適用するかにつきましては、被占領国がどちらの条約の枠組みによりまして要請をするかということによりまして決定されるというふうに考えております。
○井上哲士君 衆議院の議論を聞いておりますと、全体の法体系のバランスも考えなければならないというようなことが外務省からの答弁もあるんですが、私は同じように不法に入ってきたその外国の文化財が、片方は二年まで、片方は十年までというこの返還請求権に差があることの方が非常にバランスが崩れるなという気がするんですね。 それで、これは、我が国はこのハーグ条約署名後五十年以上経過してようやく締約国になるわけですから、この文化財保護の面で国際的に貢献をしていく、盗難文化財等の不法な輸入、流入は許さないという日本の姿勢をしっかり国際的にも示していくという大きなチャンスでもあると思います。 貴重な人類の財産である文化財を盗取から守って、盗難の被害者への回復を容易にする、先ほどありましたように原産国への返還を容易にするという観点から、やはり最低でもユネスコ条約と同等、回復請求期間を十年間に延長するというような、我が国としてのこの積極姿勢を示すという点でやったらいいんじゃないかと私は思うんですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
○国務大臣(伊吹文明君) これは条約の内容にかかわることだと思いますけれども、この今回お願いしております法案の前提になっている条約、ハーグ条約及びその議定書は、締約国自体にその被占領地域から流出し輸入された文化財を返還する義務を課してはいるわけですけれども、しかし、このことは正当な取引によってその文化財を取得した人にその所有権を消滅させて返還させるということまでを要求しているというわけでは私はないと思いますよ。だから、日本が、先ほど先生がおっしゃったように、その権利を、そこの部分を留保しているというのは私は当然のことだと思いますので、善意の所有者の財産権を侵害するということはやっぱり民法の特例になるので、これは日本の国内法の在り方からして余り適当なことではないと。しかし、不法、全く不法に、おっしゃったように、どちらの法体系であろうと不法に取得したものについては、私は、それなりのやはり日本が今おっしゃったような国際的な姿勢は見せるべきだと思います。
○井上哲士君 繰り返しになるわけですが、議定書3で求めていることをすべて今の日本の国内法体系の中でやるのは困難かもしれませんが、私は、だからといって民法の基本原則だけに立ち戻るんじゃなくて、ユネスコ条約でやった程度まではやるべきではないかという思いを持っておりまして、繰り返しこれは是非今後の御検討も含めて求めておきたいと思います。 さて、その上で、これは武力紛争時の文化財の保護でありますが、災害時の文化財の保護についてもちょっと関連をしてお聞きをしたいと思います。 先日の能登半島の地震で、国の重要文化財である時国家住宅の壁の一部にひびが入るとか、様々被害がございました。あの地域は歴史のある古い土地ですので、国や県指定の文化財などが少なくありません。その被害の状況というのはどうなっているでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 能登半島地震におきます国指定の文化財の被害状況につきましては、これまで十六件の報告を受けてございます。その内容につきましては、今先生御紹介ございましたような時国家の住宅の壁の一部毀損等々でございます。そのうち、十六件のうち二件、富山県高岡市の重要文化財二件につきましては既に所有者におきまして壁の補修等が済んでおるというふうに承知しております。さらに、県指定文化財につきましては、これまでに十三件につきまして被害があったという報告を受けているところでございます。
○井上哲士君 それ以外にも、市指定などを含めますと、輪島市で二十四件、七尾市で十七件、志賀町で八件、計四十九件ということで、今後も地盤が緩んだところに雨など降りますと大変心配をしておるんですが、例えば輪島市の門前町にある曹洞宗の大本山の総持寺というところは、築約百年の建物で、山門や観音像の転倒などで、全体の被害額が数十億に上るという報道がされてございます。御住職も、位牌が落ち、灯籠が崩れ、壁が落ち、石組みが崩れ、回廊のつなぎも落ちて危ない、何とか国を始め広く協力を修復にお願いをしたいと、こういうことを言われております。 四月十日に輪島市長など七市町長が国に対して要望書を出されておりますが、こういう指定文化財等の保全、修理に対する支援につきまして、過疎自治体であり、高齢者率は高く、復旧活動や生活再建に困難をもたらしているし、財政力が極端に低い自治体が多くて厳しい財政運営を強いられている中で、これ以上の財政需要は自治体の財政破綻につながると、こういうふうに言わば悲鳴を上げていらっしゃるわけですね。 私は、やっぱりこういう文化財の問題でも従来の枠にとらわれない支援が必要かと思うんですが、まず国の指定の文化財についてお聞きをするんですが、阪神・淡路大震災のときには、こういう国指定文化財の補助率、所有者の費用負担について通常より原則二〇%のかさ上げが行われましたし、中越大震災のときにも一定の支援が行われているわけですが、今回はどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 国指定の文化財におきます災害復旧事業につきましては、文化庁におきまして国庫補助事業を行っております。先生御指摘のように、通常の修理状況に基づきまして算定しました補助率、これは通常、地方公共団体や法人の所有物、所有者につきましては五〇%でございますけれども、それに二〇%を加算した率で補助することができるということになっております。また、先生御指摘のように、所有者の財政状況によりまして現在も補助率は五〇%を更に最高八五%まで上げる加算というものも可能にしているところでございます。 私どもといたしましては、今回の被害を受けました国指定の文化財の災害復旧事業につきましても、都道府県の教育委員会や文化財の所有者たちと協議をいたしまして適切に対応してまいる考えでございます。
○井上哲士君 個々の協議になるけれども、そこまでの引上げが今回も可能であるということで確認してよろしいですか。
○政府参考人(高塩至君) 被害の状況が軽微であるという件数も多いわけでございますけれども、要望があれば今申し上げた線に沿いまして対応してまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 是非積極的に要望にこたえていただきたいと思います。 それから、国指定でなくても地元の人たちに親しまれてきた大変重要な文化財もあります。門前町の専徳寺というところがありますが、これは市指定文化財の釣鐘が下敷きになっております。で、門徒の方に被災者が多いわけですから、とても浄財を門徒に頼むことはできないというお声もあるわけですね。これは地元住民にとっても大変なじみの深いところで、ふだんなら門徒は約二百七十人だそうでありますが、約八割が年金生活、うち四十人は避難所生活という状況があります。せめて例えば撤去費用だけでも補助してもらえないかということも御住職言われているわけでありますが、私は、市や地方自治体の指定文化財なども、先ほど言ったような地方自治体の状況ということを考えますと、やはり国として財政問題も含めた何らかの特別な支援ができないかと思うわけでありますが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 御指摘のような地方公共団体指定のいわゆる県指定、市指定文化財の修復につきましては、現在、国庫補助の対象外となっているところでございます。 私ども文化庁といたしましては、地方公共団体や文化財の所有者からの要請に基づきまして、被害文化財の修理指針等におきます技術的な指導、助言につきましては適切に対応してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 技術はもちろんでありますが、是非財政的な支援も御検討いただきたいと思うんです。 さらに、指定を受けていない文化財があるわけですね。この地域というのは非常に古い地域でありまして、この百年以上風雪に耐えてきた民家や土蔵がありますが、その中に大切にしまわれていた古文書とか民芸品とか美術品などが被害に遭っているわけですね。県などは古いそういうものを安易に捨てないでくださいという異例の呼び掛けも行っているわけでありますが、土蔵自身を再建するのが非常に大変だし、中に入って壊れるんじゃないかということもあって、このままいきますと、実は貴重な価値があるけれどもそれが知られていないようなものも含めて、こういう学術的にも重要なものが散逸してしまうんじゃないか、捨てられてしまうんじゃないかという私は危惧を持っておるんですが、こういう散逸を防いだり修理、修復のためにも支援が必要かと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○政府参考人(高塩至君) 御指摘の国及び地方公共団体指定以外のいわゆる文化財の散逸防止それから修理、修復につきましては、やはり原則としては所有者がそれを実施するというふうに考えておりますけれども、私どもとして、必要に応じまして地方公共団体等が未指定の文化財について支援をしているという例もあるというふうに承知をいたしております。 私ども文化庁といたしましては、先ほど申し上げましたけれども、修理、修復に当たりましての技術的指導、助言を行うとともに、必要に応じまして、これは阪神・淡路大震災のときに行ったわけでございますけれども、被災地の近隣地方公共団体やNPO法人、大学等におきましてその一時保管についての協力要請を行っておりますけれども、そういった支援を行ってまいりたいと思っております。
○井上哲士君 昨日の北国新聞見ますと、近隣の専門家、大学の関係者などがネットワークをつくってそういう家宝が守られるようにいろんな現地にも入ってやるということが行われるようでありますけれども、是非、こういう民間の力も生かしつつ、国として一定の更に支援を行っていただきたいと思います。 最後に大臣に、国として「地震災害から文化遺産と地域をまもる対策のあり方」というのが平成十六年七月に出されておりますが、ここではそういう指定文化財以外の文化財というものが非常に地域にとって重要であって、これをいかに守るのかという対策があるわけですね。 同じ考え方をやっぱり災害からの復旧というところにも私は生かすべきだと思いまして、今後、やはりこうした地震のこの間の経験を踏まえて、指定文化財以外の重要なものについてもしっかり復旧などにも支援ができるような様々な枠組みも考えるべきだと思うんですが、この点、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(伊吹文明君) まず、井上先生、国が指定をする、あるいは地方自治体が指定をするということによって文化財の所有者にも一定のやはり義務が掛かってくるんですよ。文化財といえどもこれは私有財産ですからね、売却をしたりすると多額のお金が入ってくるという面もあるわけですね。ですから、ある程度の義務を課すことによって、大切なものとして売買が制限されるとか公開の義務が生ずるとかということで初めて国費を入れる意味があるわけです。ですから、なかなか発見できなかったから指定できていないという部分もありますけれども、所有者も、こういう立派なものだから、私どもは義務を課されてもいいから国の文化財あるいは地方指定の文化財にしてほしいということも一つ私は必要だと思います。 それと同時に、今回、先ほど参考人が申しましたように、国のものについてはいろいろな、要するに当然それは国が指定するわけですから義務が出てきます。しかし、地方自治体や指定されていないものについても、やはりこれは地方自治体が何かをやる費用というのは当然要るわけですから、ですから、国は指定していなくても交付税の、特例交付税の配分において配慮するとか、そういうことは当然なされるべきことであって、これは総務省でも十分考えていることだと思います。 ですから、所有者も、私有権の行使について制限を受けてもいいけれども、大きな、何というか、後世に伝えていくものだからというお気持ちを積極的に持っていただいて、平時においても指定の願い出をしていただくということと相まって、今先生がおっしゃったことは考えていくべきことだと思います。
○井上哲士君 終わります。
○委員長(狩野安君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。 武力紛争の際の文化財の保護に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(狩野安君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(狩野安君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時三分散会