法務委員会 第20号
- 発言数
- 55 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2006/05/25
会議録
○委員長(弘友和夫君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 去る二十三日、小斉平敏文君が委員を辞任され、その補欠として沓掛哲男君が選任されました。 ─────────────
○委員長(弘友和夫君) 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 本日は、本案の審査のため、四名の参考人から御意見を伺います。 御出席いただいております参考人は、中央大学法科大学院・法学部教授椎橋隆幸君、一橋大学大学院法学研究科教授後藤昭君、前財団法人全国篤志面接委員連盟理事長中間敬夫君及び日本弁護士連合会刑事拘禁制度改革実現本部事務局長小池振一郎君でございます。 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、御多用中のところ委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 議事の進め方について申し上げます。まず、椎橋参考人、後藤参考人、中間参考人、小池参考人の順に、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますけれども、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。 それでは、椎橋参考人からお願いいたします。椎橋参考人。
○参考人(椎橋隆幸君) おはようございます。中央大学の椎橋でございます。御意見を申し上げます。 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案、以下、法律案とか本法律案とか申し上げさせていただきますが、この法律案について御意見を申し上げます。 まず最初に、この法律案の意義でございますけれども、昨年に刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律が成立いたしました。そこで受刑者の地位の向上あるいは受刑者の権利義務関係というものが明確にされました。そして、未決拘禁者の処遇等についてはまだ整備がされていないと、残された問題だということで、この法整備をするということが本法律案の内容でございます。 これは、明治四十一年に制定されました監獄法が昨年相当な部分が改正されて、そして今申しましたようにまだ残っている部分があるということで、これが整備されますと、非常に古い法律で以前から不備が指摘されておりました監獄法の改正が完結するということで、これ自体非常に大きな意義があるというふうに考えております。 そして、その中身は、一番大きな問題、問題といいますか意義としてございますのは、法整備された受刑者の処遇と、それから未整備の未決拘禁者それから死刑確定者等の処遇格差がございましたので、これを解消するというところにまず第一の意義があるだろうというふうに考えております。 次に、拘置所と代用刑事施設の位置付けについて申し上げます。 代用刑事施設における取調べ、これが四六時中管理されていて、そのためにいつでも取調べができる、夜間でも取調べができるということで、そういった取調べ、長時間あるいは夜間の取調べが強制的な自白を取るという契機になる、それが冤罪の温床になっているというような批判がございます。ですから、この拘置所と代用刑事施設、この位置付けというものが一番大きな改正のポイントではないかというふうに思います。 ですから、場所がある意味では特化されて問題になっているというところがございますけれども、被疑者の勾留場所について考えてみますと、これは法律の上でも、それから裁判実務上も拘置所が原則で、代用刑事施設、いわゆる昨年までは旧代用監獄と言われていたものですけれども、これが、ですから、代用という言葉がある意味では先行したというところがあって、拘置所が原則で、そして代用刑事施設が例外と。例外であれば早晩なくなる方がいい、あるいは減らす方がいいというような、そういう考え方に結び付いてきたという面がないわけではなかったと思いますが、これは法律を見てみましても、そういうような位置付けにはなってございません。もちろん説は二つに分かれておりますけれども、法律の上ではそういうような形で規定されているというわけではありません。 刑事訴訟法上の規定を見ますと、勾留場所というのは裁判官が個別の事案ごとに諸般の事情を勘案して適切な裁量によって決定するということになっております。ですから、勾留場所を決めるのは裁判官でございます。そして、もしこの裁判官の決定に不服があれば当事者は準抗告ができるということで、その場所の変更ということも可能であります。あるいはさらに、一度ある場所に留置されてもそれを移管するということも可能でございます。 それから、実務上、裁判実務の上でも、ほとんどの被疑者が代用刑事施設に勾留されているというのが現実でございます。ちなみに、拘置所への勾留というのは、昭和四十六年の一八・五%から平成十六年には一・七%という状態であるというふうに聞いております。 第三に、代用刑事施設制度の意義について申し上げます。 もちろん、警察署であれ、代用刑事施設であれ、拘置所であれ、違法、不当な捜査というものは許されないわけでございますが、場所をもちろん含みますけれども、場所を含めていかに取調べ環境を適正にするかというものがこの問題の本質であろうというふうに思います。 それでは、何で取調べが必要なのかということをまず申し上げますと、まず諸外国との比較ということが書いてございます。アメリカでは取調べの場所というものは問題になりませんで、未決、既決、軽い既決について同じところで収容されているということもございますし、やっぱり問題の本質は取調べの適正化だということで、いかにその条件を確保するかということで、ミランダ判決という有名な判決がございますけれども、これをいかに徹底するか。これをどのような位置付けなのか、憲法上の権利なのかどうかというようなことが一番の問題になっているわけでございます。 それから、ドイツやフランス等では、ヨーロッパ大陸法の国々におきましては、警察での取調べ期間というのは少ないんですけれども、起訴されて予審判事による、あるいは捜査係判事による取調べというものが行われて、これが三か月、四か月、五か月、六か月というような期間にわたるということは全く珍しくございませんで、更に延長が許されるということで、身柄を長く拘束した状態に置いて取り調べるというようなことがされております。 翻って、我が国の捜査、裁判の特徴を考えてみますと、私はこれは前期短期集中型の捜査だというふうに特徴付けております。すなわち、起訴前の身柄拘束は最大限二十三日間ということでありますので、その間に捜査を終了して起訴するか不起訴にするかという決定をしなければいけないということでございます。これは、我が国が日本国憲法を制定したその趣旨に沿って予審制度を廃止したということで、ヨーロッパ大陸諸国のようなやり方は取らないんだというようなことを構想したわけであります。 しかもその中で、一方では、捜査において言わば警察に与えられた武器といいますか、それについて考えますと、非常に、刑事免責や司法取引というものはございませんし、それから通信傍受やおとり捜査というものも極めて限定されているということで、真実の解明のためには被疑者を取り調べて供述を得る必要性が高いということがございます。 それから、他方では、非常に日本の刑事司法というものは精密な司法と言われておりますように、的確な事実認定、そのための証拠資料の収集というものが求められております。そのためには短い期間内に取調べというものを綿密に十分にしなければならない。そのためには、身柄拘束場所が捜査機関と近接していると、それから取調室の施設が十分に整備されているというところでなければならないという必要がございます。 それから、取調べはいい面ももちろんございまして、取調べを緻密にすることによって不当な起訴を避けると。我が国は起訴猶予率が高いというところにも特徴がありますけれども、言わば究極的なディバイジョンと言われますように、早い段階で、刑事手続に乗せる必要のない者はそこで解放すると。そうであれば社会に戻りやすいということになります。そういうような利点もございます。 次に、本法律案において取調べを適切にするための方策としてどういうものがあるのかということですけれども、これは、昭和五十年代中盤から捜査と留置の分離ということが運用上行われてきたと言われておりますけれども、本法案の十六条三項でこれを法律上明文化するということによって、留置が捜査に利用されないということを制度的に保障したものであるということで、これも大きな意義があるというふうに考えます。 それから、このことを考える上で、代用刑事施設が例外かそうでないかということと関連して、昭和五十五年、法制審でいわゆる漸減条項というものがあって、それの意味をめぐっていろいろ意見がありますけれども、私は、これは法律の運用に当たって配慮することを求めた事項であって、その意味するところは、例えば裁判官が個別の事案ごとに勾留場所を決定するわけでありますけれども、勾留場所として刑事施設を指定しようというふうに考えても、最寄りの地に存在しないといったような理由で、留置施設を勾留場所として指定せざるを得ないというような例を徐々に少なくしていくようにするために刑事施設を増設していく、こういうことを要請したものと解するのが妥当ではないかと。それから、何といっても拘置所を増やしていくということには予算的にも無理があるということ、現実的でないということが言えると思います。 それから、最後に、この法律案の改善点の意義として、前に述べたこと以外のことを申し上げますと、留置施設視察委員会というものが設けられるということになっておりますけれども、これは、留置施設の運営の透明化が図られて、被留置者の適正な処遇が外部の者によって監視され、担保されるということで大きな意義があるというふうに考えております。 それからもう一つは、不服申立て制度を整備して、今まで以上に被留置者の権利救済に手厚い保護が与えられるということになるということでも意義があるというふうに考えております。 以上でございます。
○委員長(弘友和夫君) ありがとうございました。 次に、後藤参考人にお願いいたします。後藤参考人。
○参考人(後藤昭君) 後藤でございます。 今回は意見を申し上げる機会を与えていただきましてありがとうございます。私は、刑事訴訟法の研究者として、一九七〇年代以降の監獄法改正、とりわけ未決拘禁に関する議論に関心を向けてまいりました。そのような立場から今回の法案について思うところを申し上げます。時間も限られておりますので、最も重要と考える点、すなわち留置施設の位置付けを中心に意見を述べたいと思います。 一言で申しますと、今回の法案は、未決拘禁は刑事施設で行うべきものであるという従来の原則を大きく変更して、未決拘禁を警察にゆだねるという方向に踏み出そうとしているように見えます。その意味で大きな問題を含んでいるのではないかというふうに考えております。今後、この問題は更に二つの部分に分けて考えることができます。第一は、いわゆる代用刑事施設ないし代用監獄の問題でございます。第二は、逮捕後、勾留前の拘束、すなわちいわゆる逮捕留置の場所に関する問題であります。 御承知のとおり、代用刑事施設とは、勾留された者を刑事施設に拘禁することに代えて警察の留置場に拘禁する制度です。これまで監獄法及びそれを引き継いだ刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律によって認められてきたものであります。この代用監獄制度の扱いが未決拘禁法改正について最大の対立点となってきたということは御案内のとおりでございます。 歴史をさかのぼりますと、元々代用監獄の制度は、明治時代に監獄の不足という事情を背景にやむを得ない暫定措置として認められたという経緯がございました。そのために、監獄法全面改正の際には、これを廃止すべきものであるというふうに理解されておりました。そのような理解が共有されなくなったのは、実は一九七〇年代の監獄法改正議論の中です。そこでは、代用監獄は、捜査のために有効な仕組みであるから存置すべきであるという積極的な擁護論が登場いたしまして、廃止論と鋭く対立するようになりました。その対立が現在まで至っているわけでございます。 代用監獄が元々暫定的な措置として考えられていたことには理由があります。それは、警察というのは本来犯罪捜査あるいは治安の維持を役割とする機関でありまして、未決拘禁という裁判の執行を担当する機関ではないと考えられていたためです。これを更に実質的な観点から申しますと、犯罪捜査を担当する警察に未決拘禁の執行をゆだねることは、犯罪捜査の目的のために未決拘禁の内容がゆがめられるおそれがあるというふうに考えられていたためだと私は考えます。代用監獄では自白の強要が起こりやすいとしばしば言われるのは、正にこのことを指しているわけです。このような代用監獄の危険性は、代用監獄に収容されていた中で行われた自白が後に裁判で虚偽の自白であったとされた多くの事例の存在によって実証されていると考えます。 私は、日本の警察官が特に悪いとか信頼できないということを申し上げたいのではありません。このような代用監獄の危険性というのは、多くの警察官が職務遂行に熱心であるからこそかえって生ずる危険であります。このような危険の一つの原因は、被疑者の身柄が警察の内部に置かれることによって取調べの行き過ぎが抑制されにくくなるということであります。これに加えて、身体を拘束された被疑者が生活全体を警察の支配下に置かれることから生じる心理的な圧迫という問題がございます。このような状況に置かれることによって、警察官の側が特に圧迫を加えようというふうに意図しなくても、被疑者は孤立感を感じ、自分の意思を貫くことが困難になります。そのことが黙秘権の行使を難しくし、ひいては虚偽の自白を誘引する原因となるのだと考えます。 一九八〇年以降、警察では捜査と留置の担当を分離されました。また留置場の施設自体は近年相当改善されているものと承知しております。しかし、それらの事情は代用監獄制度が持っている本質的な危険を解消するものではないと思います。そのことは、近年に至っても裁判で代用監獄収容中の自白の任意性又は信用性が否定される例が見られることにも示唆されております。また、国連の規約人権委員会も捜査と留置の分離が十分な対策であると評価しておりません。 今回の法案十六条三項において留置と捜査の担当者の分離がうたわれておりますが、これも十分な対策とは思えません。警察署においては、署長が留置と捜査の両方の責任を兼ねることになります。また、留置の担当官は、被留置者の処遇について捜査官に優越する権限を与えられておりません。例えば、取調べが深夜に及んだ場合でも留置担当官はそれを停止する権限を持たず、結局捜査官の判断が優先するという構造が維持されております。 更に言えば、もし拘禁と捜査の機能を分離するのであれば、拘禁されている者にとって取調べは外部の人との面会にほかなりません。それは外部交通の一種として扱われるべきものです。しかし、法案はそのような考え方を採用してはおりません。結局、法案における捜査と留置の分離は不徹底なものにとどまると考えざるを得ません。法案の審議の過程では、代用刑事施設への収容は代替手段ではあるが例外ではないという説明がされております。椎橋先生の御見解もそのように今述べられました。 また、一九八〇年に法制審議会が答申した監獄法改正要綱の中のいわゆる代用監獄の漸減の提案について、これは刑事施設に収容することが望ましい者が施設の不足のために代用監獄に収容される例を減らすことを求めたにとどまるものであるという限定的な理解が説かれておりまして、椎橋先生もそのような御見解かと思います。 しかし、刑事訴訟法の六十四条一項は、勾留状に勾留すべき刑事施設を書くということを定めております。したがって、刑事訴訟法自身は、勾留の場所は本来刑事施設であるという立場に立っていることは明らかであると私は考えます。そうであれば、代替収容は例外とならなければなりません。 法制審議会の監獄法部会の部会長としてこの要綱をまとめる中心になったのは平野龍一先生でありました。その平野先生は、要綱案を解説した論文の中で、本来はすべての勾留が刑事施設で行われるべきであり、代用刑事施設はあくまで例外として許容されるにとどまるという法律の建前を再確認しておられます。 今回の法案の十四条一項が、監獄法及び刑事被告人収容法における警察官署に附属する留置場という表現を踏襲せず、都道府県警察に留置施設を設置すると定めようとしていることも重要な問題であると考えます。この点については、元々警察官署とは、場所としての警察署ではなく警察組織の意味であったのであるから、実質的な変更ではないという説明があります。しかし、元々留置場が代用監獄として認められたのは、警察署には被逮捕者などを留め置くための場所があるということを前提として、それを監獄に代用することを認めたものでした。それは警察の庁舎から独立した拘禁施設を設けることを認めた趣旨ではありませんでした。いわゆる、費用償還法も警察署内の留置場という表現によって明確にこれを表しております。 また、逮捕状の記載事項を定める刑事訴訟法二百条一項は、被疑者を引致すべき官公署その他の場所を記載することを求めています。ここでは官公署とは正に場所としての警察署などを意味していることが明らかです。監獄法における警察官署がこれとは異なる意味であると考えるべき理由は不明です。 今回の法案は、都道府県警察が留置施設という独自な拘禁施設を持つことを要求する内容となっておりまして、留置場の性格を大きく変更する含意を持つと考えます。これは未決拘禁の執行を警察の役割の一部として認知し、代用刑事施設の例外性をますますあいまいにする結果となるおそれがあると私は考えます。 もう一つの、逮捕後、勾留前の留置場所の点も大きな問題でございますが、時間の関係でごく簡潔に申し上げます。もし御関心があれば、添付した拙稿をごらんください。 刑事訴訟法には、逮捕された者をどこに留置すべきかについて明確な規定がございません。ただ、必要があるときは刑事施設に留置することができるという七十五条が準用されているのみです。そのために、被逮捕者を本来どこに留置すべきであるのかということは解釈上の論争点となりました。私自身は、刑事訴訟法を素直に読めば、被逮捕者は逮捕の効果として引致される場所に留め置かれるのが原則であるという立場を示していると考えます。これは、逮捕に引き続く留置というものが、勾留のような本格的な拘禁ではなく、速やかに釈放又は勾留に移行すべき仮の拘束として位置付けられていることを意味しております。 今回の法案は、警察官が逮捕した被疑者は留置施設という刑事収容施設に留置するとうたっております。これは一見当たり前のことを定めているように見えます。しかし、このような定め方は、逮捕の仮の拘束という性格を変え、言わば期間の短い勾留に近づけるということを含意していると思います。それは、逮捕後、勾留請求までの制限時間を取調べのための当然の持ち時間として利用するという運用を促進する結果となるおそれがあります。現行法では、被逮捕者の権利義務が不明確であるという問題は確かにございます。しかし、それを留置施設の設置法によって定めるという方法は適切ではないと考えます。 以上二つの観点から、法案が未決拘禁を警察の本来的役割であるとする方向に向かっているのではないかという危惧を申し上げました。 法務大臣は、法案審議の過程で、代用刑事施設は将来的には廃止するべきであるという理想を述べられました。これは、大臣というお立場にあってこのように法律家としての見識を示されたことに、私は感銘を受けました。しかし、理想は法律の中に刻み込まなければ前進しません。 一九八〇年以降も、法務省におかれては拘置所の増設に苦労を重ねてこられました。しかし、未決勾留の実態はこの間ますます代用監獄中心となり、法制審議会の答申とは逆の方向に向かっております。単純にそれを追認する内容の法律を作るならば、今後、法務省としては拘置所増設のための予算を獲得されることがますます難しくなるのではないかと恐れるものであります。代用監獄問題がこの間前進しなかったことにつきましては、私ども刑事訴訟法の研究者にも責任の一端はあったと考えております。すなわち、代用監獄を廃止した後の刑事司法の運用がどのような姿になるべきかについて明確な像を示すという作業が十分ではなかったと考えます。 そもそも、この問題の背景には、刑事訴訟法は逃亡防止と証拠隠滅の防止のために被疑者の身体拘束を認めているのに、実際においては身体拘束が取調べのために活用されているという、建前と現実の違いがございます。これは非常に根深い問題であって、容易に解決できるものではありません。捜査における取調べの比重を減らした、公判中心の刑事手続の運用というものを探求すべきであると考えます。 確かに、代用監獄には捜査の効率性のために便利であるという面があるのだと思います。しかし、そのために人権侵害の危険に目をつぶるということは、非常に深いところで法の道徳的な権威を傷付けていると私は考えます。警察に拘禁をゆだねないという明治以来の努力の方向に逆行するような立法をすることだけは避けていただきたいというのが私のお願いであります。 以上でございます。
○委員長(弘友和夫君) ありがとうございました。 次に、中間参考人にお願いいたします。中間参考人。
○参考人(中間敬夫君) 中間でございます。まず、本委員会において意見を述べる機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。 監獄法の改正は刑務所や拘置所に勤務する者にとって長年の懸案事項であり、昨年の受刑者の処遇に関する法律に引き続き、未決拘禁者の処遇に関する部分についても法案を御審議いただける状況に至ったことは、現場施設にとっても誠に喜ばしいことと思います。 最初に、私の経歴についてごく簡単に御紹介させていただきたいと思います。 私は、昭和三十三年から法務省のいわゆる刑事施設で専ら勤務をしてまいりました。三十八年の法務省勤務のうちで、実に二十五年間刑事施設の現場で勤務をしてまいりました。その中でもとりわけ未決拘禁にかかわりましたのは、東京拘置所の部長として四年間、それから所長として二年間、通算六年東京拘置所で勤務した経験がございます。この間におきましては、日々新しい問題が生起してまいりまして、毎日毎日法律と首っ引きでいろいろ、さて右するか左するか、大いに頭を悩ませた記憶がございます。 昨年、皆様の御審議をいただきまして、めでたく新しい刑事施設受刑者処遇法ができまして、監獄法が一歩前進したわけでございますけれども、これは私ども元法務省の現場職員といたしましても大変喜ばしいことであるというふうに考えております。職員の職務権限を明確にしたということ、また被収容者の権利義務関係を明確にしたということ、とりわけ矯正処遇の充実、それから改善指導の徹底ということを盛り込んだこの新刑事施設受刑者処遇法が成立したということで、ようやく矯正職員あるいは矯正施設に勤務する者ということを誇りを持って言えるようになったんではないかということを今しみじみ考えるわけでございます。 さて、以下、この今回の一部改正の法案で対象とされております未決拘禁者や死刑確定者の処遇について、今までの実務経験から感じるところを述べさせていただきます。 まずは、未決拘禁者及び死刑確定者について処遇の原則を定めた規定が置かれたことについてですが、法律上こうした原則が明らかにされることは、その処遇に当たる上で大変意味があるものと考えます。私どもは実務家として、もちろん、未決拘禁者を処遇する際には、逃走や自殺などにより身柄の確保を阻害しないことに留意するとともに、刑事司法手続が適正に行われる上で不可欠なものとして罪証隠滅の防止と防御権行使への最大限の配慮に努めてまいりましたが、こうした事柄が処遇の指針としてはっきりと法律の条文に示されることは適切であると思いますし、現場施設にとっても有り難いものと思います。 また、死刑確定者の処遇についても、実務上、いつ訪れるかもしれない死刑の執行を待つ者であることからくる心情の不安定さをいかにして和らげ、最後の瞬間まで人間らしく生活させていくかについて並々ならぬ苦労をしてまいりました。法案では、死刑確定者の処遇に当たっては心情の安定を得られるようにすることに留意するという原則規定を置いております。これは、心情の安定というのは、個々の死刑確定者の内心の問題であって、強制したりするものではありませんけれども、個々の死刑確定者自身が心情の安定を得られるように配慮するということであり、これを原則として定めるとともに、必要に応じて民間の篤志家の協力を求め、心情の安定に資すると認められる助言、講話その他の措置をとり得るものとするものであります。 私は、一昨日まで全国篤志面接委員連盟という篤志面接委員の全国組織の理事長を務めておりましたが、ちょうど七十を機に、二期四年務めてまいりました理事長を一昨日退任したところでございます。刑事施設や少年院などに出向いて協力活動を行って、面接指導あるいはその他趣味活動の指導等を行っておりますボランティアである篤志面接委員が果たすべき役割が明確に示されている点でも大いに意味があるものと考えます。 次に、今回の法案による未決拘禁者や死刑確定者の処遇に関する規定の多くの部分について、昨年成立した受刑者の処遇に関する法律で受刑者に保障された事項を未決拘禁者や死刑確定者にも同様に及ぼすものとされている点についてですが、これは当然のことであり、未決拘禁者や死刑確定者を取り残された状態にしておくことが適当でないのは申し上げるまでもありません。 なお、この改正点に関して、未決拘禁者は無罪推定を受ける立場の者なのであるから、受刑者とは異なり、毎日の生活のあらゆる場面で一般市民と同様の自由を保障すべきであるといった意見を述べる方もおられますが、確かに未決拘禁者は有罪であることが確定したものではなく、受刑者と法的に立場が違うことは言うまでもないことでありますが、多数の人間を拘禁しているという刑事施設の性質を考えるならば、未決拘禁者であるとはいえ、一般社会と同様に自由な行動を許していたのでは、刑事施設内における安全で平穏な生活環境すら確保できない事態になってしまうことは火を見るより明らかであります。未決拘禁者であるからといって施設内で好き勝手なことをすることが許されるとすれば、規律、秩序は到底維持できませんから、他の被収容者の平穏で安全な生活を確保し、規律、秩序を維持するために必要な事項は遵守させる必要があり、それに違反した場合には懲罰を科したり、また大声を出すなどして平穏を乱すような者に対しては保護室に収容するなどの措置が必要となることもあります。したがって、受刑者であっても未決拘禁者であっても、一般社会におけるのとは異なった生活や行動に対する制約を設けざるを得ない側面があるのであります。 未決拘禁者は一般市民と同様の自由を保障されるべきであると主張される方も、まさか未決拘禁者が施設内で好き勝手が許されるべきであると考えているわけではないと思いますが、要は未決拘禁者の生活や行動に対する制約が合理的かどうかということであります。そういう観点からすると、この法案では、未決拘禁者に、受刑者と違い、改善更生させるという目的からの制約は排除されておりますし、外部交通についても、その地位に配慮した規定が設けられており、適切なものと考えております。 未決拘禁者の外部交通について申し上げますと、現在の実務でも、接見禁止決定がない限り、未決拘禁者は外部交通の相手方に制限はありません。法案でもこの点は当然のことながら踏襲されております。また、未決拘禁者については、防御権を実質的に保障するため、弁護人との面会や信書の発受が円滑に行われるように最大限に配慮しなければなりません。 私が東京拘置所所長のころにいわゆる週休二日制が始まりまして、休日における弁護人接見の取扱いが問題になりました。拘置所における弁護人の面会は、原則として平日の執務時間内で行うこととしていたわけでありますけれども、毎週土日が休みになり、それに祝日が加わりますと、三連休はしばしば生じることから、法務省と日弁連とが協議をいたしまして、休日における弁護人接見の取扱いを定め、一定の場合には、休日であっても、つまり土曜日曜であっても、弁護人接見を実施する運用を開始したわけでございます。拘置所にとっては、休日に面会のための職員配置をすることはなかなか容易なことではないのでありますけれども、それでも防御権行使への最大限の配慮をするために、休日接見のための体制づくりをしたことが記憶に残っております。 今回の法案では、この点を更に進め、弁護人と未決拘禁者との面会について、平日の執務時間内を原則としつつ、休日や夜間に弁護人から面会の申出があった場合には、刑事施設の管理運営上支障があるときを除き、これを許す旨が定められております。過剰収容下においてこのような義務を課されることは、拘禁施設としては、刑事施設としてはなかなかつらいものがあると思いますが、防御権行使への最大限の配慮ということに思いを致すならば、こうした規定が設けられたことも理解できますし、職員の配置を工夫するなどして、施設としてもできる限りの努力をしなければならないものと考えます。 また、未決拘禁者の面会について、監獄法の下では、施設の規律、秩序の維持に支障が及ぶような行為がなされるなどしても、面会を一時停止できるという明文の規定がなかったことから、職員が面会を中断させようとしてトラブルになるといった場面もあり得たわけでありますが、法案では、面会を中止できる要件を明確に示し、職員は面会を一時中止することができると規定されたことにより、現場における対応が円滑に行えるようになるものと考えます。 なお、衆議院における御審議では、このような規定を設けることは未決拘禁者と弁護人との面会を監視することにつながるおそれがあるという御指摘がなされたというふうに伺っておりますが、拘置所の職員は、弁護人との面会の重要性を十分に認識しておりますので、規律、秩序を維持するため放置できないよほどの事態が生じない限り一時停止等の措置をとるということはないと思いまして、まして弁護人との面会を監視しようということには決してならないものと考えます。 次に、死刑確定者の外部交通についてでありますが、法案は、親族や重要な用務について外部交通を必要とする者など、今の実務でも面会を許しているであろう相手方に加え、友人、その他面会や信書の発受が必要な者ともこれを許すことができる旨を定めております。 さきにも述べましたが、死刑確定者はささいな刺激で心情が千々に乱れることもあり、外部交通の許可、不許可については実はとても気を遣う問題であります。死刑確定者は、面会や信書の発受をしたがっている相手だからその人と外部交通を許せばよいのかというと、必ずしもそうとばかりは言えず、ちょっとしたことからその相手の関係が疎遠になったりしますと、極めて死刑確定者は絶望感にさいなまれ、不安な状態に陥ることがよくございます。そのときに外部交通を許さなかった方がむしろよかったんではないかと真剣な反省を求められる、そんなことを促されることも間々あるかと思われます。特に、友人などとの外部交通の許可、不許可を決することはなかなか悩ましい判断になろうかと思います。 ただ、その一方で、死刑確定者の面会を限定的にすることによって余りに死刑確定者を孤立させてしまうことも処遇上適当ではないという面もあると思われます。この法案は、そうしたことを顧慮したものと思われますが、今後こうしたことを踏まえ、適正な運用に努める必要があるものと考えます。 以上、法案の内容について感じるところを述べてまいりました。 最初に申し上げたとおり、この法案により現場施設の職員の業務がやりやすくなることは間違いないと思いますし、被収容者の人権保障にも十分配慮した適切な処遇を行うこともできるものと思います。是非とも、この法案を御審議の上、早期に成立させていただければと考える次第でございます。 最後になりますが、現在、我が国の刑事施設はいずこも過剰収容の状態にあり、ほぼ一二〇%超という刑事施設が多いというふうに聞いております。その一方では、十分な数の職員がおらず、職員一人当たりの被収容者の数は、今から十年前の二・五のほぼもう倍近い、一人当たりの負担率約四・五から施設によってはもう五・〇に近い、そのような非常に過剰勤務、非常に厳しい勤務を強いられている状態にございます。現場施設の中では、多くの職員が疲弊しながら懸命に毎日の業務に励んでいる姿が見られます。 この法案は、現場の仕事をやりやすくし、長期的に見て現場施設の職員のためになるものと思いますが、この法案を効果的に実施するための要員の確保等の体制整備も不可欠であると思われ、法案を御審議いただいている先生方には是非とも、我が国の治安の再生のためにも、現場施設で黙々と勤務をしている職員の待遇改善にも意を用いていただくことをお願いして、私の意見陳述を終わります。 以上でございます。
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。 次に、小池参考人にお願いいたします。小池参考人。
○参考人(小池振一郎君) 小池でございます。 まず、発言の機会を与えていただきましたことに心から御礼申し上げます。 受刑者処遇法が昨年成立しましたけれども、私たちはこの法律については一定の改善がなされたものとして評価しております。しかしながら、今回の未決拘禁法案については、率直に言いまして、未決拘禁制度の抜本的改革と言うにはほど遠く、極めて不満であるということを言わざるを得ません。戦後、日弁連は一貫して代用監獄の廃止と監獄法改正を求めてきました。それがこのような形で収束することは絶対に許されないことでありますし、またあり得ないことであります。これから代用監獄廃止、漸減に向けた新たな段階に入るのであって、今回の立法がその第一段階にすぎないことをまずもって表明しておきたいと思います。 代用監獄制度というのは、捜査当局が被疑者の身体を拘束し管理する制度でございまして、日本独特のものでございます。警察の意に沿う被疑者には便宜を与え、否認している者には、いつ食事にあり付けるか分からない、いつ房に戻って眠れるか分からないという不安な状況に追いやりながら、長時間、朝から晩まで取り調べる。取調室には時計がありません。今一体何時なのか、何時に自分は房に戻れるのか分からない、こういう状況で肉体も精神もぼろぼろに疲れ果てさせ、人格が傷付けられ、破壊されんまでして自白を強要する、こういうシステムであります。つまり、二十四時間取調べをする警察の手元に身柄が拘束され、それが二十三日間もあるいはそれ以上も続くような状況の中で取り調べられている、この制度上の問題でございます。捜査と拘禁を分離しなければならないというのは国際人権基準でございまして、これに代用監獄制度は明らかに違反するものであります。 約百年前の監獄法制定のときに、国会では、なるべく留置場は将来におきましても監獄として用いない方針を取るつもりでありますとの政府答弁がありました。戦後の監獄法改正作業では、代用監獄の廃止が当然の前提とされていました。一九六八年、法務省矯正局法規室で作成された刑事施設法案構想は、東京、大阪は十年間、その他の地域では二十年間に限って代用監獄の使用を認めるというものでありました。これが立法化されていれば、もう既に前世紀中に代用監獄は廃止されていたことになります。 法務省が代用監獄廃止を言わなくなったのはそれ以降でございます。ちょうどこの時期は司法の反動化と言われる時代と重なります。しかしながら、司法の反動化と言われた時代はもはや過去のことでございます。今や司法改革の時代です。その目玉となる裁判員制度が三年後に実施されます。時代はもう変わっているんです。そろそろ法務省も元に戻って、代用監獄の廃止を前提とする改革案を提示してもよいはずでございます。 一九八〇年、法制審議会が、拘置所を増やして代用監獄に収容する例を漸次少なくするようにとの漸減条項を全会一致で採択しました。そもそも、これを出発点として拘置所が増設するはずでありました。ところが、その後の展開は、拘置所の増設は遅々として進まず、警察留置場の収容例がますます増え、被疑者の九八%もが警察留置場に収容され、拘置所には一・七%しかいないという事態になっています。その上、大規模独立留置場が全国に設置されつつあります。これは法制審議会答申に反する事態ではないでしょうか。 どうしてこういう事態を招いてしまったのでしょうか。その背後に、法務省よりも警察庁の方が勾留業務に熱心に取り組んでいる実態があるのではないかとさえ思える状況がございます。冷暖房設備も、警察留置場にはあっても拘置所にはないか、あるいは名古屋拘置所のように、あっても作動していないというところがたくさんあります。 本来、勾留業務は拘置所が行うべきものです。百年前からそのはずでした。ところが、刑務官の人員不足が原因の一つとも思われますが、法務省は余り熱心ではないように感じられるんです。むしろ、逮捕後間もない処遇の困難な被疑者の拘禁を警察に押し付けているのではないかと思わざるを得ないような実態もあるやに思います。法務省が今回の立法に当たって、これほどまでに代用監獄存続の意義を堂々と述べ、警察と歩調を合わせる姿勢を見せた背景にはこのような実態が反映しているのではないかと思われます。 警察が留置業務に熱心に取り組んでいることを実はしかし評価しているわけではございません。警察は留置業務よりも捜査に力を注ぐべきです。留置業務をやりたくて警察官になった人がいるでしょうか。警察官は、捜査をやりたい、あの刑事に、足で稼ぐ刑事になりたいと、こういうことでなったはずです。その捜査の中心を、足で稼いで証拠を集める、そういうことではなくて、被疑者を取り調べ、自白を取ること、これに中心的なエネルギーを置く、そしてそのために代用監獄という拘禁制度を利用する、ここに問題があるわけです。他方、刑務官は被拘禁者の処遇を本来の職務とする、そのために刑務官になっているわけです。どうも本来の在り方が逆転しているのではないでしょうか。 警察庁は、一九八〇年に警察内部で捜査部門と留置部門を分離する通達を出しました。それ以降、代用監獄の弊害が基本的にはなくなったと言っているんですけれども、就寝時間を超えても取調べをする、そして留置係がそれに対してやめさせることができないというこの実態一つとっても、捜査が留置に優先していることを示していると思います。 イギリスでは、法律で、拘禁のオフィサーという人が警察拘禁されている被疑者が取調べに耐えられる健康状況であるかどうかをチェックする責任を負っています。休憩時間や就寝時間などの取り方についても緻密な規則が定められています。 それと比べて日本ではこのような状況になっておりません。一九八〇年に捜査と勾留が分離されたといっても、しょせん警察の内部でのことでありまして、代用監獄の弊害が本質的に変わってはいないのであります。その証拠に、現在に至るまで冤罪や人権侵害が、警察留置場における、代用監獄における冤罪や人権侵害が今日まで続いているのです。 国際人権規約委員会は日本政府に対して、この代用監獄を廃止するように二度にわたって勧告しました。それは、一九八〇年に通達が出された後の一九九三年、九八年のことです。そして、警察内部での分離は不十分であるということも指摘しております。日本政府の次の報告書を出す期限はもうとっくに過ぎているんですが、政府はまだ出していません。 では、どうして国際的にも非難されながら是正されないのでしょうか。その理由は、代用監獄制度が日本の調書裁判、自白偏重主義と切り離し難く結び付いているからだと思われます。代用監獄で自白を取る、その調書を詳細に作成する、それが公判廷で証拠として採用される、そして有罪の根拠とされる、このシステムです。これでは公判廷は調書を追認する形式的な場にすぎないではないかとも言われています。 私は、一九九二年に日弁連の代表団の一員として国際人権規約委員会を訪問し、当時のポカール委員長に直接お会いし、日本の刑事司法の問題点と代用監獄の廃止について直接訴えました。帰り際、委員長は、日本では弁護士は必要ないですねと一言言われました。それは、日本はこれはもう刑事裁判ではない、弁護人の活動は制約され、法廷は単なる儀式にすぎないという意味でございます。 裁判官は、公判廷で心証を取るというよりも、裁判官室で、あるいは夜間、休日には膨大な調書を自宅に持ち帰って、その調書を微に入り細に入り検討して、そこで心証を取るという実態がございます。しかし、しょせんはこの調書というのは捜査官が作成したものです。本人の供述とニュアンスが異なる供述調書が作成されるのはいかんともし難いことなんです。そのような調書を検討して、どれだけ真実に近づけると言えるでしょうか。公判廷で、表情からしぐさまで、言葉の微妙なニュアンスまで直接感じ取って心証を形成する方がどれほど真実に近づけるでしょうか。これが公判中心主義、直接主義、近代刑事司法の基本原則でございます。 先ほど申しましたように、三年後には裁判員制度が始まります。裁判員に膨大な調書を読ませることはもうできません。となれば法廷で供述調書を朗読させるしかありませんが、従来のような要旨の告知では何も分かりません。しかし、法廷で調書を朗読するくらいなら、直接当の本人を尋問した方がいいに決まっています。主尋問、反対尋問ができるんです。その方がはるかに心証が取れます。 裁判員制度は、いやが応でもその方向に進みますし、またそうしなければなりません。そうすれば、供述調書の比重は大幅に低下します。捜査員が一生懸命調書を取っても、それが公判廷で証拠に採用されなければ余り意味がないことになります。となれば、代用監獄で調書を作成する意欲も低下するでしょう。そういう時代に、今ようやく目の前にそういう時代が到来しようとしているんです。代用監獄は警察にとっても余り必要ではなくなりますよと、この時代認識を警察庁は真剣に受け止めるべきだと思います。 未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議の提言が二月に取りまとめられました。その最後の会議で、代用監獄はまあとにかく存続するしかないんじゃないの、それが現実的でしょうと言う委員の人たちからも、今回のこの有識者会議の提言は代用監獄の永続化を認めたものではないと、代用監獄の存廃の問題は長い歴史的課題でもあり、この短い会議でそのいずれかに決着が付けられるものではないというのはもう共通の認識であるという発言が相次いだわけです。そして、今回の未決拘禁者の処遇等に関する法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提とするという提言がまとめられて、それを受けて今回の法案が国会に提出されました。 衆議院法務委員会では、先ほどの漸減条項の実現に向けて、関係当局は更なる努力をすること、怠らないことと、そして、次なる課題として、代用刑事施設の在り方についても、刑事手続全体との関連の中で検討すべきだとの附帯決議が全会一致で採択されました。この附帯決議は、法制審議会答申よりもはるかに重みのある国会の意思を表明したものであります。しかしながら、日弁連は、よりもっと明確に漸減条項の趣旨を法文上に盛り込むことを要求したいと思います。 附帯決議は、次なる課題として、代用監獄の存廃についても検討すべきと、この附帯決議を採択しましたが、これは代用監獄問題を先送りしたものとも言えます。しかし、この先送りは遠い先のことにしてはなりません。なぜなら、裁判員制度はもう三年後に控えています。刑事司法改革のトータルな改革が今求められているのです。もう既に法務省の内部でも、処遇の在り方、身柄拘束の在り方の検討を開始するプロジェクトチームが発足しておりますし、更生保護のあり方を考える有識者会議による提言も近々まとめられる予定と聞いております。刑事司法のトータルな改革に向けた検討がもう既に開始されています。今回の監獄法改正を第一段階とすれば、法改正後の第二段階はもう直ちに始まるのです。その中で、取調べの可視化、取調べの時間規制とともに、代用監獄の存廃についても真剣に検討しなければならない、そういう時期に来ている、附帯決議はそういう趣旨として重く受け止めるべきであります。 最後に、本法案によって、形の上では百年の計である監獄法改正が完結するように見えますけれども、真の意味での監獄法改正が完結するとは到底言えないということを改めて強調したいと思います。冒頭に述べましたように、今回の立法は第一段階です。日弁連は、直ちに次の段階での代用監獄の廃止、漸減に向けての取組を進めることを表明するとともに、法務省、警察当局においても真摯にこの問題に取り組まれることを強く要望して、私の発言を終わりたいと思います。 どうもありがとうございました。
○委員長(弘友和夫君) どうもありがとうございました。 以上で参考人の意見陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○谷川秀善君 おはようございます。自由民主党の谷川秀善でございます。 本日は、刑事施設及び受刑者の処遇に関する法律の一部を改正する法律案の審議におきまして、椎橋、後藤、中間、小池、それぞれの参考人、大変お忙しい中、本委員会に御出席を賜りまして、そしてただいまは大変貴重な意見をちょうだいをいたしました。審議の大変な参考になると思っております。本当にありがとうございます。 それで、ただいまそれぞれの参考人からのお話もございましたが、監獄法が制定されたのが明治四十一年ですから、ざっと百年近くがたってるわけです。その間いろんな、世の中も変わってまいりましたし、いろんな状況がございましたが、立法当時は、何か私が調べますと、大変世界でも非常に立派な法律であったと、こう言われておるわけですけれども、それ以後、社会情勢の変化等いろんなことで人権に対する考え方等も変わってまいりましたし、今の時代にそぐわないということも大変自明の理であるというふうに思います。 その間、いろいろ改正の動きはございましたが、結局は実現をせずに現在にまで至ったということでありますから、本当にこの法改正というのは大変重要なものであり、また国民の皆さん方も非常に関心を持っておられるのではないかというふうに思います。 やっと平成十七年に制定をされまして本年五月二十四日より施行されました刑事施設及び受刑者の処遇に関する法律は、受刑者の処遇等に関しては法整備がなされましたけれども、まだ今、未決勾留の方々の処遇等についてはその権利義務関係やら職員の権限が法律上明確にされておりません。また、受刑者の処遇との間では法律上の格差が生じているなど問題点が大変残っていると、こう言われておったわけです。また、都道府県警察及び海上保安庁の留置場につきましても、その設置根拠が法令上明文化されていないということ、また被留置者のうち被逮捕者についてはその処遇に関する規定がない等、いろいろ問題点も指摘をされてきたわけであります。 それを受けて今回の改正案が提出されたと思うわけでございますが、逮捕され勾留が決まった容疑者や被告は、全国にあります、百十四か所ある拘置所やまた拘置所の支所に収容されるのが原則でありますが、旧監獄法では、警察官署に附属する留置場、いわゆる代用監獄ですね、に留置がすることができると例外的に認められて現在に至っているわけです。 しかしながら、今、参考人の方々からもお話がございましたように、例外的に留置ができると、こういう代用監獄に、二〇〇四年の統計を見ますと、一日の収容人員は、拘置所に勾留されている人が九十六人、一・七%に対して、警察留置場は五千四百四十四人、九八・三%留置をされておる。そうすると、結局、原則と例外が完全に逆転して、完全に逆転して運営されているというのが現実であろうというふうに思います。そこで、これは非常に自白の温床になったり何か冤罪の温床になったりと、こういうことだというて非常に評判悪いわけですね。この代用監獄制度というのは評判悪いんですが、現実はそうなっているんですよ、現実は。ここをやっぱり我々としてはしっかり考えないかぬと思いますが、この現実がこうなっている。 それで、今度の改正でも、今度の改正でも代用監獄制度は認める、認めるというか残るということなんで、それぞれの皆さん方の御意見はあろうかと思います。それじゃ、現実、どうすればいいのか、ここなんですね、我々心配しているのは。だから、それは理想からいえば、いや、そんなの拘置所に全部勾留すりゃいいんだと言うけれども、現実の運営面では原則と例外が完全に逆転していると。その逆転も論外、我々常識で考えると考えられぬぐらいの逆転でしょう、九八%なんですから。これをいろいろ、法務省なり警察ともいろいろ検討しているんだろうと思いますし、今回の改正案も出したんだろうと思いますが、これをどうすりゃいいのか、具体的に。 例えば、やっぱりこういうことというのは現実性が帯びないといかぬと思いますから、具体的にどうすればいいのか。それは代用監獄制度をだんだんとやめていって拘置所にするんだと、それはそのとおりだと思いますよ。しかしですね、(発言する者あり)しかし、しかし、ただ、何年掛かると思いますか、これやろうとすりゃ。そこでしょう。 だから、これはどうあるべきかということをそれぞれ私は参考人の方々に、現実問題としてどう解決すべきなのか。将来はもう分かっているんですよ、そんなの。当たり前のことなんですよ、これ、将来は。しかし、現実、それじゃ国家予算どんとぶち込んで、ぶち込んでやりゃええと言うてみたらそれまででありますよ。しかし、それはなかなか現実問題としては非常に難しいということでありますので、どうあるべきかということをもう一度、それぞれ参考人の先生方にお伺いをいたしたいというふうに思います。
○委員長(弘友和夫君) それでは、椎橋参考人からお願いします。
○参考人(椎橋隆幸君) 私は、先ほど申し上げましたように、必ずしも拘置所原則、留置場例外というふうには考えておりませんけれども、ますますそのような逆転現象、まあ谷川先生の言葉で言われると逆転現象が起きていると。 これは、現実的な問題があると同時に、確かに一時、警察での取調べというのが批判されたことがございました。しかし、それを受けてその後、捜査と留置の分離でありますとか、接見交通権の保障の拡大でありますとか、あるいは調書の取り方の工夫でありますとか、いろいろな改善がなされまして、そして、要するに一番大事なのはいかに捜査が適正に行われるか、なかんずく身柄拘束下の取調べがいかに適正に行われるかということでありますから、その実態を備えるというためにどうするか。で、そのための努力がなされてきたと。それが法曹関係者の多くの方に受け入れられ、そしてそれが国民にも受け入れられたということによってこういう事態が起きてきているというふうに私は受け止めております。
○参考人(後藤昭君) 先生御指摘のように、この原則と例外の逆転というのは大変大きな問題であると思います。 そういうふうになっている原因はいろいろあると思いますけど、一つは、それは裁判官が自分の裁量で判断している結果なんだと、こう説明されるわけですが、現実に、じゃ裁判官が拘置所に入れたいと思ったときに入れるだけの条件があるのかどうかと。その物理的な条件は実はないからというところで、そういうところでもう既に裁量が制約されている中で起きている現象であるということを考えないといけないと思います。 もちろん、代用監獄をあしたからすべてやめようというのは、それは無理だろうと私も思います。 ですから、ここでまず必要なことは、まず立法者、すなわち国会の立場として、今委員御指摘のとおり、将来は廃止すべきものであるという方向をまずしっかり示すということ。それに向かって、現実的には、例えば一定の者については必ず拘置所に入れなければいけないというような、その者を、まあ具体的にはいろいろあり得ると思うんですが、そういったものを法律の中にしっかり盛り込むというようなことが立法の在り方としてはあると思います。 それからもう一つは、刑事手続の運用をかなり根本的に見直すということが必要になると思います。これは法曹関係者とか私ども研究者の役割になると思うんですけれども、正に椎橋先生の御見解の中によく表れていると思うんですけれども、捜査段階で綿密な取調べをして振り分けをして、起訴したものはほとんど有罪になるという、こういう起訴前の振り分けを中心にした刑事手続の運用というのがあるわけですけれども、それをやはり変えていかないといけない。公判中心に、起訴後の振り分けにむしろその重点を移していくという大きな方向転換をしなければ、この代用監獄問題は恐らく解決しないであろうと考えております。
○参考人(中間敬夫君) 警察留置をいかにして減少するか、つまり法務省の刑事施設でどうやってそれを受け入れていくか。これは、案を作るのは誠に簡単なんですけれども、現実問題としては、結局、財政的な問題、それから職員の手当ての問題、この両方がもうネックになりまして、過去何十年もそれを何とかしたいと言いながらも、現状、つまり約六万八千の定員のところへ七万八千ぐらい、つまり一二〇%の収容人員を入れなきゃならないような現状にとどまっておる現実がございます。これを例えば予算をもうそれこそ一兆円単位でもって増やし、また職員の増員を、それこそ今の約一万七千人刑務官がおりますけれども、この大体まあ二〇%ぐらい、つまり三千五百ぐらい、そのくらいの規模で増やしてやっていけばあるいは可能なのかなという気はいたしますけれども、今度は未決拘禁施設を造る場合にはやはり場所的な制限がございます。つまり、裁判所、検察庁等に近くて、その刑事訴訟に資するのに便利な場所でないと困ります。そうすると、まずその土地を確保するのがもうこれは一大問題であります。それとまた、裁判所近くの住民の方々の理解を得るのにも非常に難渋をしておる現状がございます。 そんなようなことからして、論を立てるのは簡単でございますけれども、予算面、職員の手当て面、それから土地の手当て、それから住民の方々の理解を得る方策、こういう難点がまだ多々あるということを申し上げておきたいと思います。 以上です。
○参考人(小池振一郎君) 私は日弁連の刑事拘禁制度改革実現本部の事務局長という立場で今回参考人として来ているわけでございますけれども、日弁連はこの代用監獄を廃止すべきだということを強く要求しておりますが、ただ、あしたもうすぐ代用監獄が廃止できるという認識でもございません。あした直ちに代用監獄を全部廃止してくださいと、それが現実的ではない、そういうことは十分認識しております。しかしながら、代用監獄廃止に向けてどのように道筋をつくっていくのか、どのように減らしていくのかと、これはもう今からすぐ具体的にすべきであるということを主張しております。 その現実的なやり方ですけれども、まず御指摘したいことは、先ほど申しました大規模独立留置場のことでございます。原宿には三百名規模の勾留専門の留置場が造られる。全国各地にこのような大規模独立留置場が造られているわけです。まず、これらを警察の管轄から法務省の管轄に変えると、これをやればいいわけです。これは極めて現実的です。土地を取得する必要ありません。確かにその所有権はどこにあるか、自治体ではないかと、国ではない、そういう問題あるかもしれません。それは、そうであれば国が借り上げるということも十分考えられるわけですね。そこを借りて、そこで法務省の管轄にして刑務官が勾留業務をやると、極めて現実的なことだろうと思います。 その人員の問題、予算の問題、これをどうするかは正に政治家が決断すべきことであるだろうというふうに思います。極めて現実的な提案を日弁連はしているつもりでございます。 以上です。
○谷川秀善君 ただいま本当にそれぞれのお立場で大変示唆に富んだ意見を賜りました。 今日は午後から現地視察もさせていただく予定でございますので、そういうところも十分踏んまえた上で、この法案の審議を進めたいというふうに思っております。いろいろお伺いいたしたいこともございますけれども、私の持ち時間十五分でございますので、非常に残念でございますが、私の質問はこれでとどめさせていただきます。 ありがとうございました、どうも。
○千葉景子君 今日は、四名の参考人の皆さん、ありがとうございます。大変貴重なお話を伺うことができまして、私たちも是非皆さんの御意見、これからの審議に生かしてまいりたいというふうに思っております。 今、お話を伺いながら私はこう思いました。谷川委員の御発言からも、そして今日の御参考人の皆さんの御意見から考えても、やっぱり私たちが将来理想とするのは、やっぱり代用監獄というものをなくして本来の勾留のあるべき姿をきちっと確立をすると、これがやっぱり、ほぼここの委員会でも、それから参考人の皆さんでも共通な認識ではないんだろうか。ただ、そこに至るまでにいろいろと知恵を絞らなきゃいけない。あるいは、どうやって具体化していくかということが、それぞれ違いはあろうとも、やっぱり大きく見れば共通の認識があるのではないかと、こんな気がいたします。 そういう意味では、まずは政治の場がその方向性を、政治はやっぱり理想を語らなければいけません。そういう意味では、まず将来へ向かっての理想をきちっと政治が指し示す、そしてそれを前提にしながら具体的な、行政的な、あるいは立法的な、あるいは財政的な様々な措置を一歩一歩前進をさせていく、こういうことが必要なのではないかなということを、今やり取りをお聞きしながら感じたところでもございます。そんな認識を持たせていただきながらそれぞれ御質問をさせていただきたいというふうに思っております。 まず、後藤参考人、よろしくお願いいたします。 先ほどのお話、学者の立場での反省の気持ちも込められてお話がございました。私も実は思うのですが、まずあるべき立法の姿とすれば、逮捕留置といいましょうか、被逮捕、逮捕というのはどういう性格のものか、それに継続して、今度は勾留というのは一体どういう性格のものか、そういうところをまずきちっと位置付けた上で、それに即した処遇の仕方あるいは施設のつくり方という順番なんではないかな、本来の立法のあるべきやり方はですね。 ところが、どうも今回は、まず施設の方の問題が先にあって、そこにどう何か当てはめていくかと。どうも何かそんな、逆転をしているような、そんな気がいたします。その辺について後藤参考人はどのようにお考えになられますでしょうか。学者の立場からも、先ほどちょっと何か反省というかそういうお話もございましたので、どういうお考え方をお持ちか、ちょっと聞かせていただきたいというふうに思っております。 そういう中で、今御指摘がありましたように、留置施設といいますか、警察として大規模な独立した留置場を持つようになってきたと。この辺りも非常に、何というんでしょうね、逮捕あるいは勾留、こういうものの性格をあいまいにし、そして施設の性格をあいまいにしているのではないかというふうに思うんですけれども、その辺、少し整理して分かりやすくお話しいただけると大変有り難いと思います。
○参考人(後藤昭君) 確かに、今回中心の問題は未決拘禁でございます。したがって、刑事訴訟法がいわゆる捜査や裁判の過程での拘禁というものをどのような目的でどのように定め、どのように位置付けているのかということが議論の出発点になるべきだと思います。それに合わせて、じゃ、その具体的な執行はどうあるべきかということが議論されるべきであって、確かに、施設をつくる法律という発想から出発するというのは、それは出発点が違っているだろうと考えます。 そのような観点からしますと、逮捕も勾留も裁判のために、主として逃亡を防いで被告人たるべき者の出頭を確保する、それから証拠の隠滅を防ぐという目的のためにされているものであります。これは刑事訴訟法が定める要件を見ればそれが読み取ることができます。そのうちで、逮捕というのは、これは言わば一方的な捜査官側の証拠だけに基づいて裁判官が令状を出すものでありますから、その意味で根拠はやや不確かなものであることは、これは避けられません。つまり、被疑者の言い分を全く聞かないでやるわけですから。ですから、それはなるべく速やかに勾留という本格的な裁判による身体拘束に移行すべきであるというのが刑事訴訟法の立場であると考えます。 したがって、逮捕も勾留も、その実体的な要件としましては、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があればよいわけですから、別に、逮捕してから取調べをして自白を積み増しして勾留請求しなければいけないということは全く本来は予定されていないわけでございます。 だからこそ、逮捕してすぐに勾留に移行するまでは警察署に置いておいてもよいというのが従来の考え方であって、それは別に留置施設に入れるということじゃなくて、警察の一室が留置場と呼ばれているというだけのことだったと思うんですね。それは、引致した場所の一室としているだけだったと思うんです。 でも、勾留になると、それは刑事施設に入れるんだと、それは本格的な期間の長い拘禁なので、それについてきちんと対処しなきゃいけないということで施設がきちんと設けられるという構造になっていたと思うんですが、それが今回の法案では、逮捕した者を留置施設に入れるんだというふうに位置付けられてしまうために、逮捕がそういう、あくまで仮の拘束であったと、すぐに勾留に移行すべきものであるという性格が非常に弱くなってしまうんではないかと。 しかも、警察という、都道府県警察という組織が留置施設という施設を持つべきであるというふうに位置付けるということは、やっぱり警察が拘禁を担当するという、少なくとも本来刑事訴訟法が予定していなかった姿を言わば立法が定めるということで、それは実質的な刑事訴訟法改正という意味を持っていると思うんですけど、その施設に関する法律によって訴訟法を改正するというやり方は適切ではないと私は考えております。
○千葉景子君 ありがとうございます。 次に、中間参考人にお尋ねさせていただきます。 大変これまでの御経験を踏まえてお話しをいただきました。大変そういう意味での説得力がおありだというふうに思います。 その中で、私は、今回、死刑確定者についての規定も設けられました。先ほどお話ありましたように、やっぱり死刑確定者が人間らしく生活ができる、大変そこが大事だというお話は、私は本当にそのとおりだというふうに思います。 それと併せて、確かにできるだけ、心情の安定といいましょうかね、が必要だということで、ただ、これは内心の問題でもあり、なかなか外からこうせいああせいという問題でもないだろうというふうに思いますものですから、余り死刑確定者について、その心情の安定ということが何か処遇の非常に厳格な要件になるというのには、私は若干危惧を感じたりするわけです。 特に、その心情の安定のために、この間、外部との交通が抑制されたりしてきた経過もあるように思われますので、その辺考えたときに、できるだけやっぱり外部との交通を十分に取っていく、人間らしく最後まで生活できるということ、大事だというふうに思いますけれども、その辺りについてもう一言ちょうだいできればと思います。
○参考人(中間敬夫君) 死刑確定者の心情安定につきましては、もう先ほども申し上げましたとおり、非常に神経を使うところでございます。 例えば、先ほども申し上げましたが、外部の友人が面会に来まして、そして非常にお互いに心を通じ合って、もうお互いに入籍して結婚しようかというところまで行った男女が現実にありました。ところが、ある時点に至りまして、その外部から面会に来ていた女性の方が、まあ心変わりをしたのか、あるいは余りのしつこさに辟易して、ちょっと間が遠くなるような、そんなような面会の動きなんかがございました。だんだんに面会に来る期間が間遠くなる。それから、手紙も、もう前は毎日来ていたのが、だんだん一週間に一回になり、二週間に一回になりということになったときに、もうそれこそ狂わんばかりに中の死刑確定者が心情が極めて不安定になって、これはもう下手をすると自殺を企図するんではないかというようなところまで落ち込んでしまったり、半狂乱になったりというような事態になったケースがございます。 そうなると、我々刑務官としましては、死刑確定者に自殺されるわけにはまいりませんので、それこそ対面戒護でもって、職員をそこへ立てて、それを見ながら、あるいは時には話し掛けたりしながらその心の安定を図る。そして、何とかそれ以上の半狂乱状態にならないようにしなきゃならないということで、大変に苦労をしたケースがございます。 今現在、全国で八十数名、九十名ぐらいいるそうですけれども、その中では、過去そういうことがありましたのを今も、あるいは現実に抱えておるのかもしれません。 先生方が午後視察に赴かれる東京拘置所に、実際に死刑確定者が何十名かいるわけですけれども、多分、その死刑確定者のいる廊下は多分案内しないんではないかと思いますけれども、外部の方がもう廊下を通るだけで、これはあした何かあるんじゃないかといって、もうそれだけで大変な不安定な状態になるのが死刑確定者の心理状態ですので、そういう外部からの面会者、手紙のやり取りだけでも乱れるし、またふだん通らない、つまり刑務官とそれから中で収容者の世話をする受刑者の足音以外の音が聞こえただけで、もう非常に落ち込んでみたり乱れたり、心配をしたり憶測をしてみたりというような心理状態になりますので、やはりその辺は午後行かれても十分に御理解をいただきたいというふうに思います。 そこで、今回、この心情安定に資するならということで、一体どこまで面会をさせるのか、あるいは手紙のやり取りをさせるのかということになりますけれども、従来、いわゆる矯正局長通達によりまして、その心情の安定を目標にしてというようなことで通達が出ておりましたけれども、それをむしろ制限的に従来取って運用してきたことは事実でございます。 今回、この法律案にこうやってはっきりと書かれますと、やはり極力それをプラス面に取って、そして心情安定に資するように解釈あるいは運用をやっていかなきゃならぬだろうなというふうに思います。相手の選び方、あるいは面会に来られるならばきちんと、何といいましょうかね、外部の方に我々が、刑務官がどうこうということは行き過ぎたことではございますけれども、やはりその辺の御配慮も得られるような方を選んでその運用をやっていかざるを得ないんではないかというふうに考えるところでございます。 以上です。
○千葉景子君 ありがとうございます。 時間がほとんどありませんが、小池参考人に一点お伺いいたします。 先ほどいろいろ日弁連としてのお考え、よく分かりました。今度、可視化にかかわって検察で一部試験的に録音、録画をやると。ただ、検察官の選択によって行うというようなことのようでございます。これから裁判員制度も行われると。そういう中で、それから、その取調べの任意性などを担保するという意味で、可視化について、特にこの試験的なやり方も含めて御意見を伺いたいと思います。
○参考人(小池振一郎君) 最高検の方で一部可視化に踏み切ったということについては一歩前進だというふうに評価しております。 ようやく日弁連も、可視化、可視化、何とか実現しようと。韓国でもう可視化は実現しておりますし、欧米諸国でも実現しているんですね。日本も今かなり後れているわけで、やはりどうしてもこれがないと裁判員制度はうまくいきませんよということで要求しましたのが、ようやく一歩実現することになったという点では評価しておりますが。 都合のいいところだけ可視化して、都合の悪いところを可視化しないということでは、これはいいとこ取りということになりますので、これは本来の趣旨には反するといいますか、不十分であると言わざるを得ません。可視化する以上は、取調べの最初から最後まですべてを可視化するということが、ビデオ録画するとかということは必要でありますし、一番重要な取調べの多い警察段階でやはり可視化をすべきであるというふうに考えております。
○千葉景子君 ありがとうございました。
○木庭健太郎君 四人の参考人の方、ありがとうございます。 それぞれ御意見の中にもう既にあったとは思うんですけれども、今回の法律の一番のポイントは、やはり代用刑事施設の位置付けの問題であり、先ほどから御指摘あっております漸減事項の問題含めて、これを今後どうするかというところが一番のポイントなんだろうと思っております。 その意味で、再度四人の参考人の方々から、その点だけに絞って、つまり代用刑事施設というのは今後も存置すべきなのか、漸減して廃止すべきなのか、それとも今回の法律の立て方自体がおかしいと、つまり、直ちに、ある意味ではこういう代用刑事施設そのものを否定する方向に行くべきなんだと、様々御意見あると思いますが、その点だけに絞って、それぞれ御意見を伺いたいと思います。
○参考人(椎橋隆幸君) この問題はどちらかというと、今までの議論でもやや軽視されているのではないかと思われますのは、捜査の必要性ということであります。 今国民の大きな関心として、治安の維持、回復ということが大きな関心になっておりますけれども、それを実現するためには犯罪の捜査、的確な捜査というものは欠かせません。これができるということと、それからその取調べが被疑者の防御権を十分に保障するという形で行われなければならない、この両方の要請というものを調整、調和的に実現するというためには、どういう施設の在り方でなければいけないかということがポイントになるだろうというふうに思います。 そういう意味では、今回のいろいろな捜査と留置の分離、あるいは外部からの視察、それからさらには、いろいろ接見交通権の保障といいますもの、電話の接見を認めようとか、あるいは最高検で今言われた一部録音、録画しようというようなことを含めて、両方の要請をなるべく実現しようということでありますから、それを十分に果たせるためには、私は物理的な条件としても、今のような代用刑事施設というのは必要であろうというふうに考えております。 これは言ってみれば、それぞれの代用刑事施設というのは都道府県にあります。ある意味では地方分権という流れですね。そういうようなものにも沿っているということであると思いますので、だからこそ何でも国がやればいいというものではありませんで、実際にそういう、やっているものはいかに評価されてきたかという、それでさらには、どのように改善しようかという点を考えますと、私は今回の改正案というのは十分に評価してよいのではないかと、こう考えております。
○参考人(後藤昭君) 現時点での立法の在り方としては、将来的には廃止すべきものである、そのためだんだん減らしていくんだという、まず方向をはっきりさせること、それから、それに向けて具体的な一歩を明らかに踏み出す、例えば代用監獄に入れてはいけない者を明示するというようなことが必要かと考えます。 警察の留置場が捜査のために必要だと言われますけれども、現実に今警察の留置場にはもう捜査が終わって起訴されている人たちもたくさん入っていて、まあ全体の二割ぐらいというような御答弁があったと思いますけれども、つまり警察としては引き受けたくない人までも引き受けているという現状があると思うんですね。なぜそうなってしまっているのかということを考えてみますと、結局これは、やや皮肉に聞こえるかもしれませんけれども、警察は留置場を造るための予算を獲得する力がある、しかし、法務省が拘置所を造るための予算を獲得する力はそれに比べて弱いという、この力関係が反映しているというように見ざるを得ないんではないかと思うんですね。 これは、お役所単位ではそれぞれ一生懸命役割を果たそうとするんで、そうなってしまうので、これを国全体の税金の使い方としてこれが正しいのかどうかということは、それは正に国会が大所高所から判断して方向を示していただくべき問題ではないのかなと考えております。今のままだと、ますます言わば予算の警察優位の構造が固定化され助長されるおそれがあるんではないかと考えております。
○参考人(中間敬夫君) まず、今回の法案につきましては、もう現実問題を考えれば、現状この法案でもってやむを得ざるものというふうに考えます。 百年、二百年先の将来設計を踏まえてじゃどうあるかということまで考えますと、それは本来国でもって法務省刑事収容施設として整備ができればもう理想ではありますけれども、現実問題は先ほど申し上げましたようなことでありますので、地方公共団体、地方自治体が持っている施設を簡単に所管替えして国が買うといっても、これもそれこそ何兆円という膨大な金が掛かることになりますし、また警察官をすぐさま地方自治体から法務省法務事務官に所管替えなどというようなわけにもとても簡単にはまいらないと思いますので、現実問題としてはやむを得ざるところというふうに考えます。
○参考人(小池振一郎君) 代用監獄を漸次減らしていくべきであるということの必要性は先ほど私も申しましたけれども、もう既に具体的に今すぐやるべきことだろうというふうに思います。百年、二百年先ではなくて、法務大臣は五十年、百年先には代用監獄廃止したいとおっしゃっていましたけれども、もうそういうレベルではなくて、もっともっと前倒しをして現実的なものにしていく必要があると思います。 まず、大規模独立留置場を法務省管轄にするというこのところからやはり始めていくことが現実的ではないだろうかと思いますが、それを実行するためには、やはり予算、人員の問題が必要になってくるのは後藤参考人が言われたとおりでございます。そうするためには、予算を付けるためには、やはり法律にこの漸減条項の趣旨を明記することがどうしても必要だろうと思いますので、是非国会議員の先生方の御努力をお願いしたいと思います。
○木庭健太郎君 椎橋参考人と小池参考人にお伺いをしたいと思います。 それは、法案の百十七条は拘置所、二百十九条は留置所における未決拘禁者の面会の一時停止及び終了を規定しておるわけでございますが、弁護人との面会においてというところでございますが、施設の規律及び秩序を害する行為がある場合は、その行為若しくは発言を制止し、又はその面会を一時停止させることができるという規定になっているわけでございます。 刑事訴訟法の三十九条を見ますと、未決拘禁者は立会人なくして弁護人と接見する権利が保障されているわけですね。ところが、今回のような規定を設けることで、この弁護人との秘密交通権の問題とのかかわりの問題なんですけれども、秘密交通権を侵害することになるんではないかという議論があると思いますが、この点についての見解を椎橋さん、小池さん、お二人に伺っておきたいと思います。
○参考人(椎橋隆幸君) お答えします。 私は、刑事訴訟法の弁護人と未決拘禁者との接見交通権、これは拡大すべきではあっても制限されるということがあってはならないというふうに考えております。 ただ、刑事訴訟法三十九条にもありますように、罪証隠滅等のおそれがあるという場合には一定の制限を受けます。今回の法案の中で制限を受けるというのは、例えばたまたま接見しているときに大きな声が聞こえてくるというような場合に、これは、あるいはそれによって遮へい板が壊されたりと、こういうことも現実にはあったそうですけれども、そういうようなことがあったというような場合にそれをやはり制止しなければいけないという必要がありますので、そういうことがたまたま分かったときにそれをしかし制約しなければいけないんですが、その根拠規定がいるということで設けられたものだというふうに理解しております。
○参考人(小池振一郎君) 私は、この制限規定というのは、施設の規律及び秩序を害する行為という極めて抽象的な概念、広い概念で制限されていることが極めてまず問題だというふうに思います。 この例として法務大臣は携帯電話のケースを挙げまして、しかし極めてまれなケースであるとおっしゃいました。極めてまれなケースを理由にこのような立法をする立法理由そのものがないと思いますし、先ほど大声を上げた場合のお話がありましたけれども、それで不適切だと思えばもう弁護人はそこから引き下がればいいだけの話なんですね。あえて看守に停止させる権限を与える必要はないわけで、看守が、こういう法律ができますと、やはり規律、秩序を害しないかどうかということを一々窓から見るようなことになってしまうわけですね。それがもう看守の職務ということになりますと、弁護人として面会している場合にもうちらちらちらちら見られますと、なかなか落ち着いて打合せもできないということになります。 先ほど委員御指摘の刑事訴訟法三十九条、秘密交通権ということを守られておりますが、この秘密交通権にこの法案は反することになるのではないかというふうに思います。
○木庭健太郎君 今度は後藤参考人に、この法案の三十一条ですね、未決の者としての地位の意味、この見解を。つまり、何をお聞きしたいかというと、未決の者としての地位の問題と無罪推定の原則の問題、この関係についての見解を後藤参考人から伺っておきたいと思います。
○参考人(後藤昭君) 未決被拘禁者の処遇について、無罪推定原則が適用されるかされないかということをこの間議論されているというふうに承知しております。 私が例えば法科大学院の授業で無罪推定について説明するときは、二つの意味があるというふうに説明します。一つは、これは検察官が挙証責任を負うという証拠法のルールとしての無罪推定。それともう一つは、被疑者や被告人はまだ犯人と決まっていないんだから無罪の人として扱われるべきである、できる限り。完全に同じには、完全に一般の、ある場合には自由を制約しなければならないわけですけれども、でも、それでもその自由の制約は最小限、必要最小限度にとどめなければいけないという意味もある。この二つの意味が無罪推定原則にはあるというふうに説明しております。 そのことは、例えばその後の方の、つまり言わば処遇の原則として無罪推定があるかどうかという問題につきましては、これは火曜日の質問にもあったと思うんですけれども、例えば国連の被拘禁者処遇最低基準規則の中では、明らかに未決被拘禁者に対する処遇の原則として無罪推定ということをうたっております。したがって、それは、そこは無罪推定の原則ではないんだということを、例えば私は国際的な会議でとても主張する勇気がございません。
○木庭健太郎君 終わります。
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。 今日は、四人の参考人の皆さん方、本当にありがとうございました。それぞれ重要な問題提起をいただいたと思っておりまして、私は今日の問題提起を受けまして、この委員会として本当に徹底した十分な審議が必要だということを改めて痛感をいたしました。 まず、違法な取調べと警察留置の関係についてお尋ねをしたいと思うんですけれども、中間参考人からお尋ねしたいと思うんです。一昨日ですか、御勇退といいますか引退をされたということで、本当に長年御苦労さまでございました。拘置所において拘束を、拘禁をされる被疑者が、長時間の、あるいは深夜にわたる、あるいは心身の健康状態に問題があるというような際の取調べを受けることがあり得るだろうかという点についてお尋ねをしたいと思うんです。 旭川日通所長殺害事件という事件がございまして、ここで代用監獄に勾留中の取調べの自白の任意性が、これは裁判所によって否定された事案がございます。 裁判所の認定した事実を、概要を申し上げますと、被告人の取調べ状況についての言い分をほぼ認めているんですね。そこでは、連日にわたって深夜零時過ぎ、あるいは長時間、午前九時ごろから午後八時ごろまでなどの取調べが続いて、その取調室の中でも暴行、脅迫等が行われているんですが、その中で、朝から吐き気を催してげえげえ上げるというような状態の中で、取調べをする警察官から留置場の監房から取調室に連行されて、取調べの中で、早く楽になりたいと、一応自白だけして裁判で話を聞いてもらおうということで自白をするに至ったというような事案なんですね。正確にはもっといろんな状況がありますけれども。 このときに、こういうような場合に、拘置所でいえば担当の方がその拘束されている人の様子を把握をしておられるだろうと思います。そのような状態の中で取調べが行われるということがあり得るでしょうか。
○参考人(中間敬夫君) ただいまのその旭川の事案については私はつまびらかにしませんが、東京拘置所での六年間の経験から申しまして、被収容者の身体的な不調状態がありますならば、担当職員は必ず医務部の方へ連絡を取りまして、それなりの診察あるいは治療等の措置を当然取ります。 そして、その状態の中で警察官あるいは検察官の取調官が来ましたならば、その現状をよく伝えた上で、それでなおかつ医者の判断も聞きながら、今日はちょっと取調べは無理じゃないですかというようなことを担当官から告げるということもございますし、あるいはまた、例えば勾留日数が、もう勾留期限が迫っておって、どうしてもこの点とこの点だけは確認しないと困るんだというようなことになれば、例えば医者の意見で何分間以内といったようなことを条件を付けて取調室へ連行すると。本人はどうしても行けないような状態なのに、それを引きずってまで、あるいは車いすに乗せて無理やり連行というような強制措置まではなかなか取り難いというのが現状でございました。
○仁比聡平君 ありがとうございます。 椎橋参考人にお尋ねをしたいと思うんですけれども、取調べそのものの必要性については私も当然あり得ることであると思うわけです。この取調べの必要性が警察拘禁、つまり代用監獄と論理的に結び付くものなのかどうかですね。先ほど来、そこの点が少しはっきりしないまま議論が進められているような気がしておりまして、現実の問題として捜査機関との近接性だとか、あるいは取調室の施設の整備の問題ですね。例えば、面通しの条件があるのかなどということが言われておりますけれども、そういう現状を踏まえての問題なのか、それとも身柄拘束を捜査機関が行って、その捜査機関による拘禁に基づく取調べというのが必要だということなのか、お伺いしたいと思うんですが。
○参考人(椎橋隆幸君) 現状も踏まえてということはございます。その上で、要するにその取調べが適正であるという条件が満たされればいいということですので、そういう意味ではだんだんだんだんそういうような努力が積み重ねられてきていると。現実的に今、警察の留置場で行われるような取調べが、全国的に毎日毎日たくさんある事件について、そういうような形での取調べというのが拘置所でできるようになるというのは、果たしてどのぐらい現実性があるのかなということを考えてしまうと、やはり現実的にはむしろ拘置所で行われるような取調べを留置場でも行うというような形にした方がこれは現実性があると、そういう現実的な配慮もございます。
○仁比聡平君 今参考人が最後おっしゃったくだりは、つまり留置場における取調べの適正化をすべきであるという意味でしょうか。
○参考人(椎橋隆幸君) ですから、もちろん拘置所が、国民の御理解が得られて国会でたくさん増設されるということであって、しかもそれが裁判所にも検察庁にも近い、警察にも近いというような形でたくさん増設されるということは、それは一つの在り方として私も反対するものでは決してございません。 ただ、現実を考えると、それに近いような形になりつつあるし、さらにそれに向けて努力を重ねていくということが必要ですけれども、それに向かう過程として、この法案はかなり以前に比べると重要な形でのそういう道筋を付けてきているという、そういうような理解の仕方でございます。
○仁比聡平君 今、椎橋参考人からお話を伺いましても、改めて、私たちは捜査と留置の分離で足るのか、それとも捜査と拘禁を完全に分離するということがやはり求められるのかというテーマが大事なのかという感じがするんです。 そこで小池参考人にお尋ねをしたいと思うんですけれども、人権規約委員会の最終見解の実現のためにという日弁連の皆さんのパンフレットも私も拝見をいたしまして、そこの四ページに、最終意見といいますか、二度目の勧告ですね、ここのときだと思うんですけれども、委員から、日本政府が前回の勧告について、代用監獄の改善を求めたものであり廃止を求めたものではないという態度を示したことなどについて、大変厳しい指摘がされていると思います。 日弁連としての態度は先ほどお伺いをしたわけですけれども、実際に規約委員会の中でどのような指摘が具体的にされているのか教えていただければと思うんですが。
○参考人(小池振一郎君) もう規約委員会は何回か重ねられておりますけれども、一九八八年のときに初めて規約委員会で代用監獄問題が取り上げられまして、かなりの委員からやはりこれは非常に問題であるという主張がなされていました。そして、その受けて九三年に代用監獄を廃止すべきであるという勧告がなされたわけですけれども。 国連というところは非常に回りくどい言い方をするものなんですね。日本政府の報告書に対する審査ですから、やはり政府の顔も一応立てなければならないということで、ちょっと分かりにくい表現はするんですけれども、しかし、審議の中では各委員から、代用監獄は捜査と勾留の分離に反すると、国際原則に反する人権侵害であるということは委員から相次いで出されております。 その結果まとめられた勧告の文章も、しかし捜査と勾留は別の機関にしなければならない、代用監獄を廃止すべきという表現ではなくて、別の機関にしなければならないと、こう言っているんですが、これはもう事実上は代用監獄を廃止すべきだということそのものでございます。その点については一点の疑問もありません。
○仁比聡平君 そこで後藤先生にお尋ねをしたいと思うんですけれども、先ほど冒頭の御意見をいただく中で、刑事訴訟法の規定やあるいは代用監獄をめぐる議論の歴史の関係で大変説得力のある御意見を伺わせていただきました。そのことが、我が国の憲法の上でこの拘禁の在り方についてどのような要請があるのかないのかという点についてがまず一つ。 恐らくそことかかわるのかもしれないと思って御一緒にお尋ねするんですが、裁判員制度を迎える下での先ほどお話のありました公判中心主義の探求、なかなか難しいことではあるんだけれどもという前提付きの公判中心主義の探求ですね、ここに向けての方向性というのをどんなふうにお考えかという、その二点でございます。
○参考人(後藤昭君) まず一つは憲法の問題ですけれども、憲法は御案内のとおり三十八条で黙秘権の保障をしております。不利益供述の強要を禁じているわけです。それはしたがって、もし身体拘束が自白獲得の目的で行われるということになれば、その黙秘権保障条項に反するであろうと私は考えます。だからこそ、刑事訴訟法は、取調べあるいは自白獲得のために身体拘束してよいというふうに建前は取っていないわけであります。 それから、三十四条は抑留と拘禁についての一定の保障をしておりますが、拘禁についてはいわゆる拘禁理由の開示の保障があるわけです。しかし、抑留についてはその部分はなくて、直ちに弁護人を依頼する権利というふうな保障になっているわけです。その抑留の部分が逮捕に相当し、拘禁の部分が勾留に相当すると今まで考えられてきたわけです。ということは、つまりそこでもやっぱり抑留というのは仮の拘束であって、本格的な拘禁になればそれは勾留理由開示のような保障が伴わなければいけないというふうに明確に区別されているんだと思います。そこに逮捕というのはあくまで仮の拘束であるということが含まれていると思います。 公判中心主義の話ですけれども、公判中心主義にもいろいろな意味がありまして、例えば小池参考人が言われたように、なるべく調書を使わないで口頭主義でする、それも公判中心主義ですけれども、私が申しましたのはもう少し広い意味で、つまり事件のふるい分けをどの段階でするかという問題なんですね。 現在は、綿密にふるい分けて、起訴した者は、いったん起訴したらすべて公判審理になって、それはほとんど有罪になるというような構造になっております。しかしそれは、考えてみれば、それをするために逮捕、勾留、起訴というふうにだんだん嫌疑が言わば積み増ししないといけないと考えているわけです。 ところが、そもそも勾留という身体拘束は裁判にかける者の身柄を確保するために行うわけですから、裁判にかけることができる、つまり起訴することができるという見通しのない者を身体拘束するということ自体に問題があるわけです。したがって、身体拘束した、つまり逮捕状が出たということは、もうほぼそのままでも起訴するだけの嫌疑があるということでなければおかしいと思います。 しかし、そう思って例えば起訴した、でも、そうしたら新たに何か無罪証拠が分かって間違いと分かりましたとなれば、それはそこで公訴の取消しをすればいいんだと思うんですね。それから、起訴猶予にすべき状況が後から分かりましたといったら、それも公訴の取消しをすればよいわけです。 そういうふうに、つまり身体拘束自体を慎重にする。で、身体拘束したらなるべく速やかに起訴する。でも、起訴したからといってすべて公判に持ち込むわけではないという、そういう振り分けの仕方にだんだん移行する必要があるんではないかと考えております。
○仁比聡平君 ありがとうございました。 後藤先生に警察の本音はそれならどこにあるのかということもお伺いしたいなと思ったんですけれども、時間が参りましたので終わります。 ありがとうございました。
○亀井郁夫君 国民新党の亀井でございますけれども、今日は四人の参考人の皆さん、ありがとうございました。大変貴重な話を聞かせていただきました。これからも検討したいと思っております。 あと時間わずかですけれども、何点かお尋ねしたいと思います。 特に問題になっているのは代用監獄の問題でございますけれども、それについてはこれまでお話が出ているように、実際には代用監獄では、例外だから少しでいいというのが、九八%が代用監獄でわずか二%弱が拘置所だという、どっちがどうか分からぬじゃないかということが問題なんですけれども、特にこの問題については、五十五年の法制審議会でも代用監獄を縮小すべきだということが決められておりますし、また五十四年のハンブルグでの国際刑法学会でも、これら代用監獄を廃止すべきということが決議されているというふうなことでございますけれども、お聞きしますと、どうも代用監獄というのは日本だけだと、よその国にはないんだというふうな話でございますけれども、どうも原則はやはり拘置所で例外が代用監獄だと、だから代用という言葉が付いたんだろうというふうに思うわけでございますが。 そのことで椎橋先生にお尋ねしたいのは、椎橋先生は、拘置所が原則で代用監獄が例外という関係ではないんだというふうなことを言われて、裁判官がこれは決めるんだし、それが嫌なら準抗告ができるじゃないかと、実際に九八%は代用監獄じゃないか、こう言われるわけですけれども、どうもちょっと法的にはやはり建前は拘置所で例外が代用監獄だと。実際には、施設がないから原則が代用監獄で例外が拘置所になっているんだろうと思うので、そういう意味で実態と法の建前とがどうなっているんだろうかと思うので、これについて椎橋参考人にお尋ねしたいと思います。
○参考人(椎橋隆幸君) 明治四十一年からさかのぼって、本当はその前にさかのぼると、代用ということになったのは、本当は明治の二十年代に監獄則ができて、そのときは警察の留置場も監獄の一種になっていたんです。ところが、明治三十八年に役所の所管替えがあったということがあって、それで明治四十一年に現行監獄法ができた。そのときに、警察の留置場を使うときは代用するという規定、今まであった、今の規定が置かれたということはあるんですね。 それから始まっているというわけなんですけれども、それはそれとして、何というんですかね、何で例外であるのに実際には多く使われて、ほとんどそれに使われてきているのかというやっぱり意味内容を考えないといけないと思うんです。私は、ただ単に、法務省が予算の取り方が下手だから、だから実現しなかったんだというだけの問題ではなくて、やはり迅速、緻密な捜査、それがあってこそ充実した公判というのもできるということがあるものですから。 それから、後藤先生がさっきちょっと言われましたけれども、私は公判になっての振り分けよりも、早い段階での事件の振り分けがあって、なるべく落とせるものは落とせる、刑事政策的な配慮も含めて起訴しない、起訴する必要性が乏しいという場合には起訴しないということによって刑事被告人にならないという利益が一般の国民にとっては大きいわけですから、そういう事件処理の仕方というのは重要で、そのための前提となる緻密な捜査というものがやはり現実には警察の留置場で行われてきたということが支持されてきたんじゃないかというふうに思っております。
○亀井郁夫君 ありがとうございました。 今のことに絡みますけれども、やはり警察の代用監獄がこういうふうにやられたということは、やはり自白が、問題は、強要されるということが一番みんな心配しているんで、それがなければいいわけですね。 しかし、自白は証拠の王様ということで、日本の刑事訴訟法上は自白しちゃ駄目だと、こう言われますけれども、自白は証拠の王様で、自白させるためになかなか難しい調査もやっているんだと思いますけれども、そういう中でこの問題を考えた場合に、やはり自白の強要が、むちゃくちゃな強要はいけないと思いますけれども、しかしこの法律は、今回の法律は、自民党が変われば別ですけれども、自民党が考え方が変わらない限り、数が多いんですからもう通ってしまいますよね、事実上。参議院に来ていますから、もう。 そうすると、今のいろいろ議論している問題を非常にむなしく感ずるんですけれども、しかし通った後でも、通った後でも、やはり自白の強要はいけないことだということで、このことを防いでいかなきゃいけないと思うんですけれども、そういう意味では、これ通った後どうしたらいいかということについて、四人の参考人にお話を聞かせていただければと思います。 さっき小池参考人からは可視化の問題やら取調べ時間の制限の問題等言われましたけれども、私は大事なことだと思うんですが、そういうことを含めて四人の参考人から、どうしたら自白が強要されないようになるのかという辺り、できないかもしれませんけれども、自白の強要の阻止の問題について御意見をお伺いできればと思います。 ちょっとごめんなさい、ちょっと声が、ちょっとおかしくて。
○参考人(椎橋隆幸君) 私は、自白の強要というのは絶対許されないことで、これは憲法、刑事訴訟法が禁止していることであります。 ですから、強要された自白をいかに的確に排除できるかということが問題で、そのためには、まずはやっぱり接見交通権保障の更なる拡大、それから調書の取り方、後からどういうような取調べをしたのか分かるというような調書の取り方を更に一層工夫すると。それから、今回の法案で書かれているような捜査と留置の分離、これを明確な根拠を与えて更に徹底すると。分離の効果として、一定の時間以降は取調べをしてはいけない、原則としてはもう取調べしてはいけない、やっている場合には注意をするというような形で、そしてそういう時間過ぎた場合に取調べを行ったんだということもはっきりと分かるような形にして、後からチェックできるようにすると。 執務時間内の取調べ、それから夜九時以降の取調べ、これはもう私の聞くところによると、八五%ぐらいは執務時間内に取調べは終わっていて、そして九九%が夜九時以前、睡眠の時間以内には終わっているというふうに聞いておりますけれども、それを更に徹底していくということが必要だと。そういうような工夫によって自白強要というものを防いでいく必要があるだろうと思います。
○参考人(後藤昭君) 委員の御質問の趣旨は、言わば、代替収容ということを前提にして、なおかつ自白の強要を防ぐ方策があるかということかと思うんですけれども、例えば法律の中に、今、椎橋先生が言われたような取調べの時間とか時限の制約を法律に明記するというようなことは、それなりの有効性はあろうかと思います。 ただ、それもできなかったと仮定しますと、やはり取調べをなるべく透明化するということが必要になると思います。そのために、小池参考人が言われたいわゆる録音、録画、いわゆる取調べの可視化というものは是非推進する必要があると思いますし、それからもう一つは、今年の十一月から始まります被疑者の国選弁護、これの活動を充実させる。そのためには、もちろん予算の問題など、いろんな政治的な配慮が必要と思いますので、そういうことをやった上で今度は裁判官、裁判所が自白の信用性、任意性について厳格な判断をする。 恐らく、裁判員は今までの裁判官よりも厳しい判断をされるんではないかなと思います。その意味で、いわゆる可視化をしておかないともたないんだ、つまり検察の方がもたなくなるんではないかと私は恐れますけれども。
○参考人(中間敬夫君) 実務家といたしましては、余り御意見を申し上げる立場にないわけでございますけれども、何かとおっしゃれば、もうただいま椎橋先生がおっしゃいましたような、ああいったような方策を取るしかないのかなという気がしております。また、一部可視化の問題につきましても、一部では試行的にそれを始めるという話もございますので、それも確かに一つのいい方策かというふうに思います。 以上です。
○参考人(小池振一郎君) 先ほど椎橋参考人が言われましたが、夜の九時以降の取調べは九九%ないということであれば、もうあと一%しかないということになりますね。もう、じゃ、これゼロにしたらどうですかと。もう夜の九時以降は一切禁止というふうに法律で明記すると。ただ、単に看守がもう夜九時過ぎましたよと言うだけでは、これは歯止めにならないというふうに思います。 そして、留置場の出入りをだれが、いつ、何時に、何時何分に取調室に入って何時何分に戻ったか、房に戻ったか、これをやはり本人に確認させて明記するということ、それから外部交通で電話、ファクスの利用、そして拘置所における夜間、休日体制も原則として認められるような体制を取ると、こういうことが大事だと思います。 最後に、留置施設視察委員会という、この透明性を図るものがあります。これは、非常に第三者機関としていいものにしていきたいという期待を持っております。弁護士会の推薦する弁護士や医師等々が委員になって、これは刑事施設視察委員会と横並びでできる組織ですので、刑事施設視察委員会は弁護士会推薦の委員がなっております。留置施設視察委員会も同様に、同じように弁護士会推薦の委員を含めた委員にして、第三者機関としての機能を発揮するようにしていただきたいというふうに思います。
○亀井郁夫君 ありがとうございました。これで終わります。
○委員長(弘友和夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。 午後零時十一分散会