法務委員会 第12号
- 発言数
- 159 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 2006/03/31
会議録
○石原委員長 これより会議を開きます。 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。 この際、お諮りいたします。 各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長縄田修君、防衛施設庁建設部長山内正和君、法務省大臣官房長小津博司君、法務省民事局長寺田逸郎君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、法務省入国管理局長三浦正晴君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○石原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
○枝野委員 民主党の枝野でございます。 大臣の参議院での発言をやろうかなと思っていたんですが、それ以上に急ぐ事案として、福島県立大野病院の産婦人科のお医者さんが業務上過失致死罪で逮捕され、起訴されたという事件があります。これに対して、産婦人科関連のお医者さんたち、産科の関係者に限らず医療関係者の方から相当な抗議あるいは危惧、不信、さまざまな声が上がっております。この問題を取り上げたいというふうに思っています。 この件では、出産、分娩に当たってお母さんが亡くなられております。まず、そのことには心より御冥福をお祈り申し上げたいというふうに思います。 それから、私ごとですが、あえて申し上げますと、私も今、妻が妊娠五カ月でありまして、しかも、少しリスクがあると医者から言われておりまして、本当に、この亡くなられた患者さんあるいはその御家族の思いというものを、私も今非常に不安でおりますので非常に理解をするところであります。 また、さらに申し上げれば、かつて薬害エイズ事件というところで私は、むしろ医者の刑事責任をちゃんと問うべきではないかということをかなり厳しく厚生委員会でやった、その基本的な立場、認識は私は変わっておりません。ただ、本件については、かなり広範に、それも具体的な利害関係があるとはとても思えないところからも、こんなことでいいのかという声が上がっているという現実、それが日本の医療、特に僻地医療や産科医療などに対して本当に大きな影響を与えるのではないかという状況になっておりますので、個別案件についてですが、あえてお尋ねをしたいと思います。 お答えになれればお答えいただきたいんですが、この事件は、患者さんが亡くなるという事故が起こってから一年ぐらいたつまで、警察の捜査はありませんでした。それなのに、あえて捜査が急に動き出した。何らかの捜査の端緒があるのではないかというふうに普通は受けとめるんですけれども、それは何かあったんでしょうか。
○河野副大臣 御指摘の事件は、警察から送致があったと承知しております。
○枝野委員 では、検察を所管する法務省で把握、確認できる話として伺いますが、それでは、これは亡くなられた方の遺族から被害届あるいは告訴、告発などというものが先行してあった事件なんでしょうか。
○杉浦国務大臣 答弁に入る前に、先生、おめでた、おめでとうございます。 お尋ねの件は、現在公判係属中の事件の具体的な証拠関係にかかわる事柄でございますので、法務大臣としてお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○枝野委員 そういう一般的な御答弁だろうなとは思います。である以上は、私も、この事件が具体的にどういう事件であるのか、つまり、逮捕、起訴し、刑事処分に処すべき事件であるのか、それともそうではないのかということについての事実関係を把握している立場ではありませんし、ここでお答えいただけないという話ですから、そのことについて具体的にやろうとは思いません。 もちろん、医療ミスと言われるものの中には、本当に専門的に、これを犯罪として問うのがいいのかどうか、そのことをお尋ねしていくわけですが、そういう事案もあれば、それこそおなかの中にガーゼとかはさみとかを置いてきてしまったというような、これはもう素人が見たって、そんなミスはないだろう、それはお医者さんの責任を問わざるを得ないじゃないかという事案まで、こんなに幅があります。これが、本件がどこに位置するのかということは私も理解をしておりません、把握をしておりませんし、そのことを問うつもりはありません。 ただ、いろいろと背景になっている状況や、そのことの行政的に影響を及ぼす、社会的影響の部分のところは、これはその範囲のどこにあるにしても問える話だと思いますので、問わせていただきます。 まず、厚生労働省、政務官に来ていただいておりますが、この大野病院というのは産科のお医者さんがたった一人で対応していたというふうに報道その他されておりますが、これは間違いありませんか。
○西川大臣政務官 どうも枝野先生、御質問ありがとうございます。 私も、このたびのこの事件の患者さんに対して、厚生労働政務官という立場で心からお悔やみ申し上げたいと思います。まず最初にそのことを申し上げたいと思います。 御質問に関しましては、確かに産婦人科医は一名でございました。ただ、当該手術に当たっては、助手として外科医師がついていたという現状でございます。
○枝野委員 この大野病院、これは福島ですか、過疎地という言い方がいいんでしょうか、ということで、特に、本件は帝王切開だったそうですが、こうした帝王切開のような手術ができる産科のお医者さん、病院は周辺になかった、非常に遠隔地までなかったというふうな報道がされていますが、これも事実関係を厚生労働省は把握しておられるでしょうか。
○西川大臣政務官 実は、帝王切開という手術は産科の中ではそう難しいことではないという認識が通常あります。ですから、そういう中で、県や国に対しての報告義務というのはないんですね。 そういう中で、実施の状況の詳しい実数みたいなものは把握できていないんですが、このたび、やはり産科医療、周産期医療の大変危機的な状況に対して危機感を持ちまして、産婦人科の常勤体制の調査というのが厚生労働科学研究費において調査がされまして、そういう中では、大体二名以上の産婦人科医師が勤務する病院ということでは、県立大野病院の属する福島県の浜通り地区という沿岸部の地域がありますが、そこに四カ所ございます。そして、周産期の高度母子医療センターということであれば、一カ所ございます。
○枝野委員 具体的に通告しておりませんでしたので、お答えになれなければあれなんですが、その浜通りの四つの病院とかというのは、この大野病院のある地域からどれぐらい離れているんでしょうか。福島の方だったら地理的にわかるのかもしれませんが、わかる範囲でお答えください。
○西川大臣政務官 このいわき市市内に、実は、いわき市と、その大野病院があるのは隣の郡でございますので、常識的に見てそうかからないあれだと、一時間以内ではあると思いますけれども。
○枝野委員 最近は変わったようですけれども、かつて私が学校で地理を習っていたときには、いわき市というのは多分日本で一番大きな市と言われていたところでありますから、隣の郡ということは、それはかなりの距離があるのではないかと逆に思います。そこは具体的なところまで通告しておりませんので、それはそれで結構ですが。 今回も、結局は、その大野病院の今回逮捕されたお医者さん、その地域では、もともと若干のリスクがあるのではないかという患者さんだったようですから、そうした医療をやるところが近くにはない、少なくとも車で相当行かないといけないところにしかないという中で、まさに地域の、拠点という言い方をすると、厚生省も病院にいろいろな名前のつけ方をしますから正確ではないかもしれませんが、そして、しかもたった一人でお産をやっていた。 最近、自然分娩でも、いろいろな医学のあれで、休みの日とか夜には出産しないで済むようにという、いろいろあるそうではありますけれども、基本的には、出産、お産というのはいつお医者さんが必要な状況になるかわからないという状況の中でたった一人でやっているということは、逆に言うと、二十四時間いつ仕事になるかわからないという状況でずっとやっているわけですね。こういう地域が実は日本じゅうに相当あるということが、今度の事件を機に声が上がっています。このあたりのところを厚生労働省はどういう把握をしているんでしょうか。
○西川大臣政務官 先生も奥様が妊娠五カ月ということで、大変この問題には、きっと多分、人ごとではない、そういう思いもおありだということは十分承知しております。 厚生労働省の方でも、本当に産婦人科医の確保の厳しさという、特に大きな大都市はともかく、地方においてはそういう声をたくさん聞いているのは事実でございまして、そういう危機感のもとに、一応、日本産婦人科学会が調査した結果でございます、その中では、大学関連分娩取り扱い病院が全国九百二十七カ所のうち産科医一人体制の病院が百三十二カ所、全体で一四%ぐらいがそういうところがあるということを把握しております。 やはり、正直申し上げまして、今回の産科なり小児科、救急医療、あるいは外科も少々このごろは厳しいという話もありますが、そういう中で、厚労省としても全国的に専門の医師がどのくらいかというのを把握していない面がございます。そういう意味で、これから一つの課題として、しっかりその危機を感じながら対応していきたいと思います。
○枝野委員 今回の事件は癒着胎盤という事例であって、しかも前置胎盤に癒着胎盤が合併したケースであるというふうに伝えられております。この癒着胎盤というのは、医学の世界の中での統計といいますか、全分娩の中でどれぐらいの比率を占めているのか。まして前置胎盤に癒着胎盤が合併するというようなケースはどれぐらいあるのか。相当低いと報道されておりますが、厚生労働省はどういうふうに把握しているでしょうか。
○西川大臣政務官 今御指摘の癒着胎盤の発生頻度、これは、実は正確に全部が把握されているわけではございません。そういう中で帝王切開歴とかそういうのを検証した結果として、最近では、ちょっと幅があります。二千五百から一万分娩に一例、約〇・〇四%から〇・〇一%、十万人生まれる中で十から三十、四十例だということ、その中の前置胎盤のうち癒着胎盤を合併する頻度というのはさらに低くなって、そのうちの三から五%というふうに把握しております。 ただ、癒着胎盤というのを事前に予見できるかどうかというと、かなりMRI等で発見できる可能性はなくはないんですが、大変確実に診断できるということはまだ可能ではないという状況にあるのは事実です。
○枝野委員 もう一問厚生労働省に。 そうした前置胎盤で癒着胎盤で、そうすると帝王切開で手術をしても、胎盤を剥離させるというんですか、切り離すというんですか、その部分のところが今回の事故にもつながっているということらしいんですが、こういう場合にはこうするんだというような、我々でもわかるのは風邪だったらPLという薬を出せとか、これぐらいのことは我々もわかるわけですけれども、要するに医学界のスタンダードというか、別に厚生省が決めていなくてもいいんですけれども、例えば産科学会とかのところで、こういうケースではこういうふうに対応するべきだなんというスタンダードな指針とかそういったものはあるんでしょうか。あるんでしたらば御紹介をいただきたいと思うんですが。
○西川大臣政務官 確かに厚労省として出しているわけではございませんが、日本産科婦人科学会による学術雑誌に癒着胎盤が疑われる妊婦の一般的な治療について、例はまれであるが一つの知識として「産婦人科研修の必修知識二〇〇四」というのに指針が載ってはおります。
○枝野委員 そこで、今度は起訴をした検察、法務省の話に入っていきたいんですけれども、医療過誤と称されるケース、つまり、お医者さんが診療に当たって過失があって業務上過失致死傷に問われるというようなケースの、この過失の有無の判断ということについては、一定の確立された判例などがあるんでしょうか。例えば、この後、村井同僚議員がお尋ねする富山の尊厳死の話については、尊厳死などの要件とか、あるいはそもそも死の要件とか三徴候説とか、一定の確立された判例の世界というのがあるわけですけれども、この医療ミスにおける過失の判断基準についての判例というのが一定のものがあれば御紹介をいただきたい。
○杉浦国務大臣 判例でございますが、最高裁判所が民事事件におきまして、注意義務の基準となるべきものは診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準であると述べておられます。平成七年の判例でございますが。 また、文献によりますと、予見義務の基礎となる予見可能性を判断するに当たっては、医療行為が行われた当時の一般の医師が有している医学的知識、能力が基準とされると述べられております。
○枝野委員 今回は特に刑事だから問題なので、本件の場合も、報道によると民事的な病院としての責任といいますか、そこのところは、もう警察などが動き出す前にいろいろ整理をされているというふうにも聞いておりますので、あくまでも民事と刑事は基準が違いますから、刑事の方の問題だと思いますが、今御紹介のとおり、一般の医師の能力、知識を基準とするというのが一般的である、私もそう思います。 そうすると、一般の医師の能力、知識というのがどの程度であるのかということがわからなければ、そもそも過失の有無は判断できないというふうに思いますが、これは法務省に一般論と本件と両方について聞きたいと思います。 一般的に、起訴をするに当たって検察官は、まさに医学、一般的な医師の能力や知識を知らなければ、つまり一般の医師と同じ知識を持たなければ逆に言うと判断できないということになるわけですが、当然、検察官にそんなトレーニングをしているわけじゃありませんから、本人にはそういう能力はないはずです。そうすると、それをどういう形で検察庁は必要に応じてその知識を得ているのか、本件の場合はどういう調査をして起訴に至ったのか、この二点、お答えください。
○杉浦国務大臣 もちろん、あくまで一般論でございますが、検察官は医師じゃございませんから、担当した個々の具体的事件の捜査に当たりましては、専門家から教えていただいたり文献を読むなどして必要となる専門知識を得るようにしておりますし、また研修等を通じてもこのような知識の習得に努めているというふうに承知をいたしております。
○枝野委員 本当にそれで大丈夫なんですかという話なんですよね。 例えば、これは福島で起きました。福島でお医者さんが医療ミスで起訴をされたなんというケースは、恐らくないんじゃないでしょうか。つまり、担当の検事にとっては、自分自身もあるいは周辺の同僚その他も含めて、同じようなケースに当たったことがないのではないだろうかと思います。 例えば、東京地検であればいろいろな医療過誤事件の蓄積なども一定程度あるでしょうし、そうした経験のある仲間、先輩の検事がいたりということもあるんだろうと思いますが、本件の場合、福島という、ここに検察官が何人いるか。私も二十年ぐらい前の記憶ですから正確じゃありませんが、そんなに数はいなかったと思います。そういうところで、この〇・〇四から〇・〇一のさらに三%から五%しかないようなレアケースにおいてお医者さんが持つ一般的な能力や知識というのがどういうものかというのは相当な専門知識だと思うんですが、どういうふうに把握をして起訴に至ったんですか。
○杉浦国務大臣 福島という地域のことについては私もつまびらかには存じておりませんが、一般論としては先ほど申し上げたとおりだろうと思うんです。 先生も弁護士でいらっしゃるし、私も弁護士で、医療過誤の相談、事件の担当もしたことがございますが、私、医学のことはわかりませんから、できるだけいろいろなことを勉強して相談に乗ったりし、どうにも手に負えないときは、医療過誤専門の弁護士がおりますから、そういう人に依頼をして担当するというふうにしておったんですが、検察庁も、これは同一体の原則で、応援、専門家の紹介等、福島にとどまらず、いろいろとして、もちろん起訴ということは非常に重要なことでございますので、万遺漏なきを期しているものと承知をしております。
○枝野委員 これは、後のことを考えると大事なことなんです。つまり、今回のことが福島県警や福島地検が単独で、もちろん権限としては単独でやれる権限があるわけですから、やったのか、それとも、今何となくふわっとおっしゃっていますけれども、例えば警察庁を通じて最先端の情報その他を把握したり、あるいは検察庁全体を通してこれが本当に起訴に値するのかということをしっかりとやったのか、それとも単独で現場でやったのか、これは大きな違い、後々のことを考えると違いますが、どっちなんですか。
○杉浦国務大臣 お尋ねの件は、個別の事件における捜査機関の活動についてのお尋ねでございますのでお答えを差し控えさせていただきますが、万遺漏なく検察庁として対応しているものと承知しております。
○枝野委員 では、もう一点だけ。 お答えはなかなかないんだろうと思いますが、今回の逮捕されたお医者さん、患者さんが亡くなるという残念な事故があって以来、そしてそのことが、院内でしょうか、ちゃんと事故調査委員会みたいなものを開いて、そこで一定の責任を、倫理的、民事的責任を認めてということが明らかになりながらも、まさに地域でたった一人の産科のお医者さんとして地域医療に携わっていたところを突然逮捕されたという事案であります。 こうしたケース、本当に逮捕の要件である、あるいは、検察、法務省に聞くには勾留ということだと思いますが、勾留の要件である逃亡や証拠隠滅のおそれというのはあるんでしょうか。そもそも、事故調査を病院の方でちゃんとやって、それも公表しているという状況です。そして、そのことを前提としながらも、地域医療をしっかりとたった一人で支えるという状況をやってきているところを突然逮捕して、本当に勾留の要件があるんですか、こういうケースは。
○杉浦国務大臣 本件については、裁判所において、刑事訴訟法六十条第一項第二号の被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき及び第三号の被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときに該当するとして勾留状が発せられたものと承知をしております。また、勾留理由開示公判も行われておると承知しております。 当否についての御質問は、個別の事案に関する裁判所の判断にかかわる事柄でございますので、法務大臣としてはお答えを差し控えさせていただきます。
○枝野委員 大臣もよく御存じのとおり、裁判所の逮捕、勾留の要件のチェックがどれぐらい実質的にできているのかというのは、それはもう制度的にもなかなか困難で、証拠をしっかり全部把握して、だからこれは逮捕、勾留しないと逃亡とか証拠隠滅のおそれがあるとかというのは、基本的には、実態はやはり検察庁の判断にゆだねられているし、裁判所としてはそれが明らかに違うよねというときでなければ、しかも、それも証拠がほとんど手元にない中でやるわけですから、なかなか現実には不可能で、むしろ検察庁として勾留を請求したことの当否が、本当に要るのかということが問われるべきだと思うんですが、個別ですから答えられないということが続くと思いますので、時間がもったいないので先へ行きます。 さあ、ここからが大事なところです。先ほど申しましたとおり、今回の逮捕、起訴に対しては、大変多くのお医者さんから声が上がっています。産婦人科学会等という形でも正式にありますし、それから、実はこの問題を厚生労働委員会で我が党の仙谷議員が取り上げたところ、全国のお医者さんたちから、明らかに利害関係がないと思われる産科以外のお医者さんからも、こんなことで逮捕されて個人の刑事責任を問われるんじゃ、産科のお医者さんを志す人がいなくなる、現に、ことし、ちょうど新年度になるところで産科を希望する医学生、研修医が激減をしているとか、実際に産科からほかの科の専門に変えるというお医者さんが出てきているというような声が多数上がってきております。 こうした声、厚生労働省に寄せられている、あるいは、実際に具体的な陳情等も上がっていると思いますが、どういうふうな声が寄せられているのか、そのことについて厚生労働省としてどういうふうに受けとめているのか、お答えください。
○西川大臣政務官 確かに、私もこの事件に関しては、テレビ、新聞等で大変大きく取り扱われておりまして、全国的に大きな国民の関心事になったことは事実だと思います。 そういう中で、今回の、このことに関しての反論の主なものを三点ほどにまとめてみました。 やはり、今回これは、業務上過失致死として医師を逮捕、勾留したことへの批判、異議が多いかなと思います。普通の在宅起訴でいい、せめて在宅起訴でよかったのではないかと。あるいは、これは大変厚労省としても鋭意努力してはきておりますけれども、確かに、産科医療の僻地において一人で大変厳しい勤務状況の中で働いていらっしゃるというような、いわゆるシステム的な問題にもかかわらず医師個人の責任を問われたことへの異議、それから、このことによって、今でさえ産婦人科医が不足している現実が、さらにみんなが萎縮してしまって、さらにその状況を悪くするのではないか、そういうことが主に寄せられてきたことだと思います。 その中で、もちろん、お医者様個人がそれぞれ与えられた状況の中で最善を尽くすというのは、お医者様の使命ではあるわけですけれども、そういうことに関しまして、もちろん、私たちはこういうことを少しでもなくすための努力として、今回、産科の周産期医療の、要するに非常に厳しい状況のお産に対応するには、きちんとした中央集中をして安全な体制をつくる、そういう一つの開業医の先生方との連携、そういうことを今、今回も模索して、一つの案として今回の医療制度改革でも出しております。 そういう中で、医師法の二十一条違反に問われたことが関係者の間で問題とされているということも認識しております。そういう中で、今後、医師個人の単なるミスであるのか、それとも、そういう環境による、過酷な状況の中での医療提供体制のやや不足な状況があるのか、その辺のところはしっかりこれから検証、対応していきたいと思っております。
○枝野委員 法務大臣にも同じような趣旨のことを伺います。 先ほど私が申し上げたような、本当に産科のお医者さんのなり手がいなくなるどころか、こういうことで、少なくともお医者さんたちは、私はかなりの人たちだと思いますが、このレベルのことで、つまり、おなかの中にメスを忘れてきちゃったとかそういうレベルとはちょっと違う事案だという前提のようですが、こういうケースでまで個人の刑事責任を問われて逮捕されるようなことでは、とてもじゃないけれどもメスを持つような医療なんか危なくてできないわということで、外科すら減っていくぞというような声まで上がっているんです。 こういった声がたくさん上がっているということを法務大臣は認識されているのか、それに対してどういう思いを持っておられるのか、お答えください。
○杉浦国務大臣 所見を述べることは差し控えさせていただきますが、さまざまな御意見が表明されていることは承知しております。 法務省に文書で参った一通、その他意見はさまざま寄せられておりますが、文書を御紹介いたしますと、これは全国周産期医療連絡協議会代表末原則幸さんとおっしゃる方でございますが、この連絡協議会の意見として寄せられたものが文書でございますが、これによりますと、 全国各地域において周産期医療をささえる責務のある高次周産期医療施設の集まりである本会としても、 たくさんの方が示しておられますが、 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の共同声明ならびに、新生児医療連絡協議会の声明を強く支持せざるを得ません。 世界に誇れる日本の周産期医療において最善を尽くし診療に当たったとしても、ある一定の頻度で不幸な出来事が起こることを避けることはできません。このことは、一般の産科医療施設のみならず、三次あるいは二次施設としての総合・地域周産期母子医療センターにおいても同様です。今回の不幸な出来事が一人の医師個人の責任として問われたこと、また逮捕・起訴にまで至ったことには疑問を抱かざるを得ません。 さらに今回のことが、近年問題となっている産科を志す医学生の減少、全国的な産科医不足、産科医療施設の閉鎖に一層拍車をかけ、地域の周産期医療が崩壊し、安全で安心なお産ができる地域が激減してしまうのではないかとたいへん危惧しております。 という御意見が文書で寄せられております。 そのほか、口頭でも同種類の御意見はさまざま寄せられております。 事件につきましては、検察当局において所要の捜査を遂げて、法と証拠に基づいて適正に対処したものと承知しておりますが、こういう意見はさまざま寄せられております。
○枝野委員 コメントしていただけないんでしょうか。つまり、この個別の事件が罪に問われるべきであるのかどうかということは、それはもちろん法務大臣にはお答えになれない世界だし、お答えになっちゃいけない世界だというふうに思います。 しかし、現実に法務省のもとの検察庁が起訴をした。そのことによって、今のような日本の産科医療、産婦人科医療、特に僻地医療の部分のところについて相当なマイナスが生じるかもしれないというかなり切実な声が寄せられているのは間違いないわけで、そのことに対して、法務大臣として、あるいは国務大臣として、何のコメントもないんですか。コメントのしようは何かないですか。
○杉浦国務大臣 個別の事件についてのコメントは申し上げられませんけれども、私の地域でもそうですし、全国そうだと思いますが、産婦人科医不足、小児科医不足は大きな問題になっております。この事件とかかわりなく大変深刻な問題で、これは国としてもあるいは政治としても対処しなきゃいけないんだなという認識は持っております。
○枝野委員 お答えをいただけないのでこちらから誘導していきますけれども、まず、そもそも今回、業務上過失致死罪で逮捕、起訴されています。業務上過失致死罪で最も件数の多いのは、大臣も御存じだと思いますが、交通事故ですよね。交通事故で間違って人をはねて殺しちゃったという話と同じ罪名、同じ業務上過失で認定をされるんですよ。 私も、もちろん法律家ですから、その理屈はわかっています。業務の定義はどうで、過失の定義はどうでということはわかっていますが、一般常識から考えたら、今や車の運転をするというのは特殊な専門技術でもないです。一応免許制度ではありますけれども、ほとんどの人がちょっと訓練をすれば運転免許を持って車を運転する。そこでミスをしてしまったというミスについての判断と、まさに専門的な、まして医療は日々高度化をしていく、その最先端の専門的な技術、知識を要する場面においてミスをしてしまったという話とが同じ業務上過失ということで、それ以上の基準、例えば交通事故ならばこういう場合が過失なんですよ、医療ミスならばこういう場合が過失なんですよ、抽象的に先ほどおっしゃられたとおり、一般の医師の能力、知識を前提に、交通事故の場合も一般的なドライバーの知識、能力を前提に、一緒なんですよ。 その法制度自体、少なくとも、例えばお医者さんから見れば、おれたちのやっていることは車の運転と一緒かという受けとめられ方をするんじゃないでしょうか。どう思います、大臣。
○杉浦国務大臣 医療過誤の事案につきまして、医師に対する刑事責任の追及を控えるべきであるとする御意見があることは承知しております。しかし、医療過誤事案について、医師の過失により人を死傷させたと認められるのにその刑事責任を一切不問にするということは、被害者を初めとする国民の理解を得ることは困難であると思いますし、先生もそこまではおっしゃらないと思います。 医師のように専門的知識に基づいて人の生死にかかわる業種であっても、事案はあくまでも個別ですが、個別の事案において医師として尽くすべき注意義務というものは必ず存在し、それを尽くさずに過失により人を死傷させたと認められる場合について刑事責任を一切不問にすることは、これは被害者を初めとする国民の理解を得ることは困難であると私は思います。
○枝野委員 大臣も御理解いただいているとおり、一部には医師の個人の刑事責任は問わない、各国ともそうなんだというような声があるのを知っています。私は、それは違うだろうと思います。私自身が、薬害エイズ問題では、逆にちゃんと刑事訴追をしろということを委員会などの場で求めた立場です。 ただ、先ほど申し上げましたのは、まさに業務上の過失と言っても千差万別、いろいろある。高度な専門的な技術に基づく場合もあるし、ある意味では、五十年前はどうだったかは別としても、今や、まさに日常的にみんなが暮らしている中でのミスという話もある。それが一つの業務上過失致死罪ということだけで、あとは基本的には現場の司法の世界の判断に任されているということ自体が、もう時代に合わなくなっているのではないのか。 今回のケースを機に、例えばお医者さんも、ちゃんと普通にやっていれば刑事責任に問われることはないんだという安心感を持っていただける、そして、ただし、本当に先ほど来、これくらいの例しか出てきませんが、おなかの中にはさみを忘れてきちゃったみたいな、これはひどいじゃないかという話はちゃんと処分をする、刑事処分をするというような線がはっきりわかるような、これは法律まで変える必要があるのかどうかは、いろいろ議論があるかもしれません。 しかし、そうしたことの基準づくりというのを法務省と厚生労働省で協力して進めていかないと、実際に今危惧されているように、いや、今既に、現に僻地における医療、高度な医療を担ってくれる人が少なくて困っているという中で、あるいは、今現に、大都市部はともかくとして、産科のお医者さんが少なくて、なり手が少なくて困っているという現状の中でこれを深刻化させるということは、大臣は法務大臣であると同時に国務大臣なんですから、この国の国政全般に責任を持っているんですから、そこについて何らかのメッセージ、何らかの今後の改善策ということのメッセージが出なければ、これは今まさにお医者さんたちの世界から上がっている声が本当に加速をしていったら、これはまた別のところでたくさんの命を失わせることになるんです。大臣の見解を求めます。
○杉浦国務大臣 医療過誤事件と申しますか、医師の過失が刑事上問われている事件は、医師の方々が全国で日々業務に従事されているわけですが、それに比べたら本当に微々たる、正確に数字を挙げるまでもなく、ほんの一部だと思うんですね。大部分の医療行為は正当に行われ、患者さんが治療を受けて、満足しておられると思っております。 その中で、業務上過失致死傷として問われる医療行為も、もちろん少ないけれどもあるわけですけれども、それが犯罪を構成するかどうかということは、あくまでも個別の事案において収集された証拠に基づいて判断されるべき事柄であることは申し上げるまでもございませんし、医療過誤におきましては、私も数少ないですけれども事件をやったことからわかるんですけれども、さまざまな場面で要求される注意義務の内容はまさに千差万別でございまして、一般的にどのような場合に刑事責任を問われるのかを明らかにすることは困難である。先ほど、判例、学説を御紹介いたしましたが、非常に困難であるということは先生ならば御理解いただけると思います。
○枝野委員 大臣、繰り返しますが、大臣は法務大臣であると同時に国務大臣なんですからね。法と証拠に基づいて刑事訴訟が行われなきゃいけない、それはもうよくわかっています。と同時に、だけれども、大臣、なぜ法務大臣には検察庁に対する指揮権があるんですか。政治家を免責させるために指揮権があるんじゃないですよね。法務大臣には指揮権がある、検察に対する指揮権があるということの意味、御理解されていますか。
○杉浦国務大臣 承知いたしております。
○枝野委員 私、本件をそうしろと言いたいわけではありません。ただ、本件の逮捕、起訴を受けて、少なくとも多くの全国のお医者さんたちが、こんなことで逮捕されるのではとてもリスクの高い手術には対応できませんよという声が上がっているわけですよ。まして産科医療というのは、まさに常にリスクを伴っている医療だというふうに聞いています。とてもじゃないけれども、そんなところ、怖くてできない、どこで自分が刑事被告人にされるかわからないという声が上がっているんですよ。 そういったことを放置しておくということは、これは政府、行政府として許されることではないと僕は思うんです。解決策は、まさに今回のケースがどういうケースであったのか。先ほど来繰り返し申し上げているような、つまり、これじゃ確かに個人の刑事責任を問われても仕方がないですねと心あるお医者さんだったら理解をされるような、極端なことを言えば、おなかの中にはさみを置いてきちゃったみたいな話のようなケースで、だから、こういうケースだから逮捕、起訴されたんですよと。普通にまじめにやっていて、一生懸命やったけれども、そして普通のお医者さんの能力、知識で最善を尽くして、それでも死に至るケースというのは、まさにリスクの高い高度医療ほどあるわけですから、そういうときに逮捕されたり起訴されたりというわけではないんですよということならば、そのことをちゃんと調べて、そのことをしかるべく公表して、したがって安心してくださいということをする責任が少なくとも政府にはあるんだと私は思います。 そして、そういったことについて、さあ、検察庁の持っている証拠関係で、本当にこれがそういうケースなのか、それとも、お医者さんたちの一部あるいは多くの人たちが言っているように、こんなケースまで起訴されたらとても医療なんかやっていられないとお医者さんたちが思うような、もしかするとケースを単純に、まさに業務上過失致死罪という構成要件に該当するから、だから、それに気がついたから逮捕しました、起訴しましたという話なのか。そのことをちゃんと、できるだけ早く政府として、その責任者は法務大臣だと思います。そのことを把握して、どちらなのかを判断して、そしてそれに応じたメッセージを発信しないと、日本の医療はだめになるんじゃないですか。大臣、どうですか。
○杉浦国務大臣 御指摘になられた事件につきましては、現在、福島地方裁判所に公判係属中でございまして、福島地方裁判所において適切に審理されるものと考えております。
○枝野委員 大臣、日本の検察は起訴便宜主義ですよね。構成要件に該当して、違法性があって、責任があっても、起訴するか起訴しないかというのは検察官の裁量に任されている。違いますか。
○杉浦国務大臣 承知をしておりますが、本件については、福島地方裁判所に公訴を提起し、公判が開始されておりますので、そこで適切に審理されるものと承知をしております。
○枝野委員 日本の刑事訴訟法には、公訴の取り下げという手続はないんですか。
○杉浦国務大臣 そういうことは考えておりません。
○枝野委員 私は、そうしろと言っているんじゃない。そういう手続はあるんですよね。あるんですから。起訴しちゃったんだから、あとは裁判所の判断ですで本当に日本の医療はいいんですかと言っているんですよ。 いや、確かにそういうケースなのかもしれない。それはわからないんです。わからないことを調べられるのは法務大臣なんですよ。検察庁に対する指揮権を持っていて。今検察庁が持っている証拠関係、しっかりと精査をして、別の視点で精査をして、起訴したんだから、確かに構成要件該当性と違法性と責任は法形式的にはあるんでしょう、さすがに。あるんだろうけれども、しかし、このケースまで起訴をしていたら、日本の産科医療とか僻地医療とかということに大きな影響を及ぼすケースなのか、それとも、いや、それは危惧ですよ、お医者さんたちの心配のし過ぎですよ、そういうケースなのか。 そのことをちゃんときちっともう一つの目で分析をして、そのことに対してメッセージを発信しないと、これはもし裁判で争われればどれぐらいかかるかわかりませんよね。まさに医療のミスについての刑事裁判だなんというのは。その間、判断が出てこない、結論が出てこない。その間に日本の産科医療はどうなっていくんですか。 私は、今ここで結論を出してくれとは言っていないんです。法務大臣として、そういう危機感を共有していただいて、結論としてどういう選択肢をとるかは別として、少なくとも、今お医者さんたちからたくさん声が上がっている、もう産科のお医者さんなんかやれないわ、やめちゃえ、もっとリスクの低い医療でいいわというようなことに向かっている声に対して何らかの対応をするという、そのことのメッセージだけでもいただけませんか、大臣。
○杉浦国務大臣 先ほど申し上げましたが、日本の医療の世界で産科医不足、小児科医不足、深刻な事態があることは認識しております。これは厚生労働省が中心となって、文科省も関係しますか、対応していくべき問題だと思います。 本件は、検察当局が法と証拠に基づいて既に公訴を提起し、福島地方裁判所で審理が始まっておるわけでございますから、法務大臣の立場ではコメントすべきではない、こう思っております。
○河野副大臣 国務大臣でもございませんが、一言申し上げさせていただきたいと思います。 私は、ずっと臓器移植法の問題を追いかけておりました。似たような問題がやはりあるんですね。 それで、今ずっと枝野さんがおっしゃっていたような、どの時点で医師の罪が問われるのかというような問題、日本で何でこういう事態になるか。これは私の全くの私見でございますが、今の日本のお医者様、プロフェッショナルであり、国家試験を通って医師の免許を持った人たちが、弁護士さんと違って自己統治をするシステムがございません。医師会というのはございますが、これはあくまで任意に入る団体であります。本来ならば、プロフェッショナルであるお医者様が自己統治をするシステムというのがあって、そこがきちっと判断をする、そういう仕組みにしていかなければならないんだろうと思います。今問われなければいけないのは、そういうシステムの問題ではないかと思います。
○枝野委員 時間になりました。同僚議員が、もう一つ、尊厳死の問題で、やはりお医者さんの責任がどこまでどうあるのかということを問いますが、西川政務官、お忙しい中来ていただきましたが、ぜひ厚生労働大臣によくお伝えください。そして、これは厚生労働大臣と法務大臣とでしっかりと話し合っていただいて、どっちのケースなのかはっきりさせてもらえばいいんですよ、法務大臣。これが本当に、お医者さんたちの危惧は危惧で、それは杞憂だとわかるようにしてくれるんだったら、それはそれでいいんですよ。ああ、こういう事案だったらしようがないなとお医者さんたちがみんな思ってくれれば、それはそれでいいんです。そう思っているんだったら、そうしてくださいよ。そうでないんだったら、お医者さんたちの危惧に対してどうこたえられるのかということをちゃんとやる。その責任は内閣にあるし、そのことは厚生労働大臣から法務大臣に強く求めていただいて、そこで協議をして、実態を明らかにさせていただきたいと強くお願いして、質問を終わります。 ありがとうございました。
○石原委員長 次に、村井宗明君。
○村井委員 民主党の村井宗明です。 きょうは、非常にタブーな質問をしたいと思います。 私の地元、富山県で、射水市民病院における尊厳死問題が発生しました。これは一地方の問題では済みません。なぜかといえば、今、全国の医療で同じように、この尊厳死の問題をどう解釈したらいいかについて問いかけがたくさんあるからです。地元の北日本新聞、そして富山新聞で、連日のように、この問題が尊厳死なのか、それとも殺人罪なのか、自殺幇助罪なのか、それが問われています。地元の新聞やテレビだけじゃないんです。今や、もうこの問題は全国ニュースになっています。 なぜこの問題が起こったんでしょうか。そうです、日本には尊厳死に関する法律がないからです。諸外国にはあるんです。しかし、日本は、横浜地裁で出した判例だけが唯一の法解釈のガイドラインになっていて、その判例の解釈についても非常に抽象的で、医療現場は全国で今混乱しています。 そこで、我々は、このタブーをもう避けて通れないんです。大臣に、この判例をまずどう支持するのか、そしてそれをどう解釈するのか、それについて聞きたいと思います。 まず、この問題でさんざん議論されているのは、本人の意思です。呼吸器を外される本人、それから延命治療を中止する本人の意思、これがあったかなかったかについて問われていますが、私がお配りした資料の二ページ目、「主観的要件についての論点」ということで「本人の意思」というところ、四点挙げさせていただきました。 まず一問目が、その本人の意思というのは、書面が必要なんでしょうか。 二点目は、繰り返しの意思確認が必要なんでしょうか。 そして三点目が、何歳以上の人が安楽死の意思を所有し得るんでしょうか。オランダでは十二歳以上、ベルギーでは十八歳以上、オレゴン州では十八歳以上、それより下の年齢の人が延命行為の中止を言ったところで、その意思を持っていないというふうに認識されます。日本では、一体何歳以上なんでしょうか。 四点目が、自己決定できる環境のチェックをどうするのかということです。家族の経済的負担、物理的負担などで、本人の意思と違う判断、本人の意思と違う本人の意思が出るのではないかということについて問いかけたいと思います。 まず、その四点、本人の意思についてどう解釈したらよろしいでしょうか。大臣、お答えください。
○杉浦国務大臣 尊厳死の問題は、非常に難しい問題だと思います。臓器移植法、これは議員立法でやったことで、ここにかかわった先生もいらっしゃいますが、自民党では中山太郎先生が非常に御熱心にお取り組みになって、あそこまでいったわけです。中山太郎先生は尊厳死の問題も御検討なさっておられると伺っておるところでございますが、これは人間の倫理観に深くかかわる問題であって、非常に難しい問題だと思います。諸外国にいろいろ例があることも先生御承知のとおりで、さまざま例がございます。 立法論として日本で尊厳死の問題を取り上げるべきかどうか。これは、議会、国会でお決めいただくことでございますが、政府としても無関心でいるわけではございませんが、これは非常に難しい問題でございますので、先生非常に関心をお持ちと伺いましたので、ひとつ国会の中で大いに御議論賜って、できることであれば立法されるのがいいと私は思っております。 横浜地裁の判例は、先生御案内のとおり、治癒不可能な病気に侵され、回復の見込みがなく死が避けられない末期状態であることと、治療中止の時点において、治療中止を求める本人の意思が存在すること、この二点を挙げておるわけです。ここも非常に難しいわけでして、先生が御指摘になっておられます、どういう形で意思表示がされるのか。 実は、私の姉は、五十三歳で脳卒中で道路上で倒れました。即死状態でした。病院に担ぎ込まれましたが、意識は全くありません。人工呼吸器を装着しないと死ぬというので、つけました。外すと呼吸がとまります。そういう状態で三年生きていました。全く脳死状態で、生命は維持されているだけという状態でございました。私の選挙の直前に倒れて、その後三年間、家族は大変でございました。私の母、娘が三人いまして、交代でつくということで、もう反応も全くありませんし。 ただ、あの姉の場合ですと、本人の意思は確認できませんね。物も言えない、意識もない、幾らたたいても反応がないんですから。そういう場合もありますでしょうし、意思表示できる場合にも、いろいろ難しい、何を言っているかわからないというようなものもあるわけですね。こういうところは諸外国の法令でも、非常に難しく、検討しているところだと承知しております。 法律で書くとなると、このあたりは大変難しくなるんじゃないか。例えば、文書による意思表示も、御本人が書けない場合がありますね。ここのところをどう確認するかというのは、非常に難しい問題だと思います。
○村井委員 大臣がおっしゃるとおり、非常に難しい問題なのはそのとおりです。そして、今まで我々がタブーとしていたことは事実だと思うんです。 しかし、今回の射水市民病院の問題で、難しいからといって判断を避けることはできなくて、結局、裁判をせざるを得ないんです。裁判で判決を出す以上、この本人の意思というものはどういうものなのか、どういう条件で本人の意思があったとみなすのかは、我々はどこかで出さなければなりません。 そして、次の質問に入りますが、大臣のお姉さんと同じように、現在は意識のない本人の意思をどうやって確認するのか、そこについても問いかけます。 この二点目で書かせていただいたように、事前に書面で意思確認が必要なのかどうなのか。そして、書面が必要な場合、その必要条件は何なのか。そして何年前の書面までの日付だったら有効なのか。十年以上、二十年以上前で、自分が意識がなくなったときには延命行為を中止してくれという書面があればそれでオーケーなのか。その辺は大臣はどのように考えられますでしょうか。
○杉浦国務大臣 今回の事件がどのようなことになるのか、あるいは公訴が提起されるかどうか、まだ不明の状態だと思います、捜査当局が調べておるようでございますが。そうした要件に該当する事実が存在するか否かについては、あくまでも個々の事案において、それぞれの事実関係に基づいて、裁判になった場合、裁判所が適切に判断すべき問題でございます。 法律論としてどうかと言われると、先ほど申し上げましたように、書きぶりが非常に難しい問題になると思います。一般論としてお答えすることは非常に困難だということだけは申し上げられます。
○村井委員 さらに、地元紙、北日本新聞、富山新聞で、ずっとこの間、家族の意思というものについて問われています。もちろん、全国ニュースでも家族の意思があったかないかについて問われているんですが、その家族の意思について、まず我々が考えなければならない点があると思うんです。 どう考えたって、殺人罪、それから自殺幇助罪の構成要件には該当してしまうんです、今法律がない以上。構成要件に該当するけれども、家族の意思があれば違法性阻却になって無罪となるんじゃないのか、そういう議論があるんですが、では、何で家族の意思があればそうなるんでしょうか。法的性質は何なのかについてお答えいただきたいんです。一案が、本人の意思の代理になるのか、それとも、二案目、本人の意思の推測なのか、三点目、家族固有の意思決定権があるのか、その三点のいずれがこの家族の意思の法的性質なんでしょうか。 そして、家族の意思というものは、今回、口頭で言ったということが問題になっていますが、書面が必要なんでしょうか。それとも、口頭でも違法性が阻却されるんでしょうか。 さらに突っ込んだ質問をしたいと思うんです。 家族の意思というものを七人の部分で問われていますが、この家族というのは同居が条件なんでしょうか、それとも同居が条件じゃないんでしょうか。扶養は条件でしょうか、条件じゃないんでしょうか。親族が複数だった場合、一人でも反対したらだめなのか、それとも多数決なのか。さらに、内縁の妻の合意は違法性阻却事由に該当するのかしないのか。大臣、そういった家族の意思についてお答えください。
○杉浦国務大臣 先ほどの横浜地裁の二要件も違法性阻却事由として言われていることなんですけれども、前の問いで申し上げましたが、きちっとした法律で決めるというのは非常に難しいでしょう。先生がいろいろ細々おっしゃったことを仮にうまく法律で書き分けて、国会を通過して法律になった場合は、その適用が問題になると思いますが、そういうことがない今におきましては、そういう要件に該当する事実が存在するかどうかは、あくまでも個々の事件において、それぞれの事実関係に基づいて、最終的には裁判所が判断されるべき問題でございます。一般論としてお答え申し上げることはできない性質の問題だと思います。
○村井委員 裁判所に任せるというわけにはいかないんです。裁判所、司法は、あくまで我々が立法したものの解釈をするところなんです。ところが、その法律をまだつくっていない。今まで我々立法府がタブーとして避けていた。だから、これでどうやって裁判所が判断するのかについて問われてしまうと思うんです。 さらに考えます。 本人が延命治療の中止を求めて家族が反対した場合は、違法性阻却になるのかならないのか、大臣、どのように考えられますでしょうか。
○杉浦国務大臣 一般論としては申し上げられないと思うんですけれども、横浜地裁の判例によれば、本人の同意というのが違法性阻却の要件になっておりますので、仮に、一般論として言えば、本人が同意しないのに家族が同意したということは、違法性阻却の理由にならないと一般論としては思います。あくまでも、具体的な事件、それぞれについて事実関係を明らかにした上で、違法性阻却事由に該当するかどうかは、これは裁判所が御判断されるべきことでございます。
○村井委員 さらに、三ページ目の客観的要件についての論点に入ります。 もし横浜地裁の判例がこのまま法的拘束力を持つものだとしたらの前提の話なんですが、この判例では、耐えがたい肉体的苦痛があるというのを条件に挙げていますが、肉体的苦痛のみなのか、精神的苦痛も含むのかどうなのか。 それから、患者の死が避けられず死期が迫っていることを違法性阻却の条件に挙げていますが、この患者の死が避けられず死期が迫っているというのをだれがどう判断するのか。例えば、判断権を持つ医師、新聞でもずっとやっていましたが、一人の医者だけの判断でオーケーなのか、それとも複数の医者の判断が必要なのか。脳死の場合は複数の医者の判断が要りますよね、それから、六時間後に繰り返しの判断が必要ですよね。そういったセカンドオピニオン的なものが必要なのかどうなのか。 大臣は先ほどから、難しい、わからない、個々の事案でと言っていますが、何だかんだ言っても、この今回の七件分、事件について、我々は判断を下さなければならないんです。国として判断を下さなければならない以上、大臣、今の点について、客観的要件についての論点、書いた分何点か、お答えいただければと思います。
○杉浦国務大臣 先ほど来申し上げておりますとおり、委員がいろいろと御指摘になった点も含めまして、違法性の阻却が認められるための要件としてはどのようなことが考えられるのか、あるいは、そうした要件に該当する事実があるのかどうかなどについては、個々の事案において、それぞれの事実関係に基づいて裁判所が適切に判断すべき問題でございます。ここで一般的にお答えするのは、もう何回も申し上げているとおり、困難でございます。
○村井委員 さらに、その他の論点に入りたいと思うんです。 今回は、射水市民病院という、一応公立の病院でした。公立の病院だけじゃなくて私立の病院でも同じようなことが言えると思うんですが、公立の病院の場合、特に行政の責任なども追及され得る可能性があります。 そんな中で、アメリカにはテリーズローという法律があるんです。これは何かというと、本人が延命中止、家族も延命中止を言った場合でも、行政や司法はその延命中止を阻止する権限を持っている、そういう法律があるんですが、日本の行政にはそういった延命の中止を阻止する権限があるんでしょうか、ないんでしょうか。今回の射水市民病院のような公立の場合と私立の場合とで分けて答えていただければと思います。
○杉浦国務大臣 委員御指摘のテリー法では、州知事は、患者に栄養及び水分が差しとめられることを防ぐため一回限りの延期を命令する権限を有することなどを定めたものだと理解しておりますが、我が国においてはこれに相当する法制度はないものと承知しております。
○村井委員 法制度がないということは、もともと差しとめられなかった、だとすると行政の責任はなかったというふうになるのかならないのかも難しいんですが、時間が切れたのでこれ以上は質問しませんが、今後、論点をずっと我々はタブー視してほうっていくわけにいかないんです。どこかの時点で議論していかなければならないということを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○石原委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時三分休憩 ————◇————— 午後一時四分開議
○石原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。細川律夫君。
○細川委員 私の方からは、まず、ちょっと質問通告と順序が逆になりますけれども、一昨日、東京地方裁判所で判決が出た国籍法の問題についてお伺いをいたします。 昨日の新聞等では、各紙、国籍法再び違憲判決というようなタイトルで報道もされております。まず、この事件の簡単な概略をちょっと教えていただけますでしょうか。
○寺田政府参考人 この事件の概略でございますが、もともとフィリピンの国籍を持っておられるお母さんと日本国籍の父親との間に出生して、現実には日本でお育ちになられた方のようでございますけれども、それぞれ原告が出生後に父から認知を受けたということを理由に国籍の取得届を出されたというわけでございますけれども、これが国籍法三条一項の要件を備えていないわけでございますので、日本国籍の取得は認めないという扱いをそれぞれ戸籍当局の方でいたしましたところ、父母の婚姻と嫡出子であることを国籍取得の要件とするこの三条一項の規定は憲法の十四条に違反するということで御主張になられまして、日本国籍を有するということの確認を裁判所に求められた、そういう事案でございます。原告は、複数のそういうお子さんでおられます。 その争点は、結局のところ、この三条一項の規定が憲法に違反しないかどうかということでございます。認知によって国民と法律上の親子関係が認められることのほかに、父母の婚姻という、これを法律上は準正と言っておりますけれども、その準正という要件を加えて、それでようやく日本国籍を与えるということの規定によって、ある種の差別ができるということでございまして、こういう差別的な扱いというのは果たして合理的かどうかということが争点になったわけでございます。 そこで、裁判所はこの点を御判断になられまして、一昨日でございますけれども判決をお出しになって、この規定のうち、準正を要求している部分については憲法に適合しないということで、結局のところ、結論としては、日本国籍を有することを確認する、そういう御判断をなされたわけでございます。
○細川委員 昨年の四月にも、東京地方裁判所で同じような事例で憲法違反だというような判断がされました。もちろん、部も違いますし、裁判官も異なるわけなんですけれども、そのときはどんな理由で違憲というふうになったんでしょうか。
○寺田政府参考人 昨年の東京地裁の判決は、これは単独の原告で、事案そのものは同じような事案でございまして、やはりフィリピンの母親の方と日本人の父親の方のケースでございました。 この地方裁判所の判決、これは後に、控訴されまして、ことし、高裁で覆ったわけでございますけれども、同様に違憲の主張を前提に判断をされたわけでございますけれども、判決の内容としては、基本的に、正式な婚姻をする、これが準正の要件になるわけでございますけれども、そういったことと実態上ほとんど同視できるような内縁関係とで区別があるのは合理的な区別ではないということで、その事件の場合には、婚姻と同視できる内縁関係があるということで、結局のところ、結論としては、この三条一項に当てはめる、そういう法の適用が正当である、そういう御判断をなさったわけでございます。
○細川委員 そうしますと、昨年の場合の判決というのは、これは違憲ではないのですか。今回の判決とそれから昨年の判決の違いを、理由の違いといいますか、もう一回教えてくれますか。
○寺田政府参考人 一昨日の東京地裁の判決は、基本的に、その婚姻の実態のいかんを問わず、認知があることによって、婚姻がないケースとあるケースとで区別をすること自体が憲法上適当でないという御判断で、規定自体が、その部分、つまり準正の部分は憲法に違反する、こういう規定のあり方自体についての御判断でございました。 これに対しまして、昨年の東京地方裁判所の判決は、基本的に、婚姻の実態、婚姻といいますか男女関係の実態というものに着目されまして、その実態が法律上規定している婚姻と同視できる場合と同視できない場合とで差を設けるのは合理的ではないということで、その事件の場合の実態に即して判断されたわけでございますので、当然、背後にはそういうことが合理的な差別ではないという憲法上の判断を含んではおりますけれども、直接的には今回のように規定自体を違憲とするものではない、そういう判断の違いはあるわけでございます。
○細川委員 この国籍法三条一項につきましては、最高裁判所の方でも、二〇〇二年の十一月ですか、判断がされているようでございますけれども、最高裁判所での判断はどういうふうになっておりますか。
○寺田政府参考人 最高裁自体は、これも類似のケースでございますけれども、基本的にこのような区別を設けること、つまり、婚姻ということを要件とした準正の条件に当てはまる者については日本国籍を認め、そうでない者については認めない、あるいは、胎児認知の段階で条件に当てはまるようになった者については日本国籍を認め、生まれた後にただの認知があった者についてはそうじゃない、こういう三条一項の区別あるいは二条との関係については、それ自体としては合理的な区別であるので憲法違反ではないというのが最高裁の結論でございましたが、ただし、最高裁にも一部少数意見はございました。
○細川委員 その最高裁判所の判断は、小法廷で五人の裁判官だと思いますが、そのうち、先ほどのお話では、一応合憲という判断だけれども、二人の裁判官からは、異論というか補充といいますかそういう意見が、補足意見ですか、出たようでございますけれども、その二人の裁判官は、国籍法三条の一項についてどのような意見を言われたんでしょうか。
○寺田政府参考人 これは結論としては多数意見にはならないわけでございますけれども、その中の御意見としては、こういうことについては、立法政策上当然別の考えがあり得るということで、適当ではない、そういう御判断もその意見の中には見られたわけでございます。
○細川委員 二人の補足意見については、極めて違憲の疑いが濃いのではないかというような御判断だと思いますが、その理由はどういうふうな、その補足意見の最も強く主張されておるところの、最高裁判所の二人の、違憲の疑いが非常に濃いという理由は何でしょうか。
○寺田政府参考人 私どもの理解では、この最高裁で示された少数の方の御意見というのは、基本的に、こういう国籍について、日本国籍を与える場合と日本国籍を与えない場合ということで、その条件に違いがあるわけですけれども、その条件については少しく厳しく見るべきであるということで、ここにある、嫡出である場合、ない場合、あるいは、認知がなされる場合がその出生の前の場合と後の場合というのが、それほど大きな差として、国籍の有無を分け隔つほどのものではないのではないかというおそれが十分にあるのではないか、そういうお考えだというふうに理解をいたしております。
○細川委員 先ほどお尋ねしました昨年の四月の東京地方裁判所は、この事件は控訴いたしまして、控訴した東京高等裁判所ではその東京地方裁判所の判断が覆されたところでございますけれども、その高等裁判所の判断は、最高裁と同じような考えで覆したのでしょうか。
○寺田政府参考人 この東京高裁の二月の判決でございますけれども、これは真っ正面から憲法に違反するかどうかということを問題にしているのではなくて、三条一項の規定の適用上、先ほど申し上げましたように、地方裁判所の判決が、婚姻に準じた関係の場合にはこの適用上それを積極に解するという要件として認めて差し支えない、こういう扱いをしたのに対して、そういうことは適当でない、類推解釈としてはそういう扱いを許すべきではないというお考えでありまして、さらにつけ加えて、仮にこの国籍法の三条一項というものが、許されない、合理的でない規定で憲法違反であるとしても、国籍を積極に認めるべき根拠規定というのが失われるだけなので、したがって、原告の訴えというのはいずれにしても許されない、許されないと申しますか、認めるという根拠はないということで判断をなさったものと理解をいたしております。
○細川委員 このように、同じようなケース、父親が日本人で母親が外国人、そして出生後に認知をしている場合に、その者が日本国籍を取得するかどうかということについて、最高裁あるいは最高裁と下級裁判所でまちまちの判断がなされているというところでございます。 したがって、今度の東京地裁の一昨日の判決につきましては、これも最高裁判所の判例とは全く異なるといいますか、違う形での憲法違反という形で判断されておりますから、上訴して、上へ行って覆されたとしても、また同じような裁判が起こって、地裁で、下級裁判所で憲法違反だというような判断が下されるのが今後も続くんじゃないか。日本国籍を取得するかどうかという問題でこのように判断が違うということは大変ゆゆしき問題であり、国民にとっては重大な問題だというふうに私は思います。 そもそも、人が生まれて、その人が国籍を取得するかどうかということについてのいろいろな立法例といいますか考え方には、例えば、生まれた土地によって国籍を取得する出生地主義というものと、それから、血のつながりといいますか、そういうようなことで決めていく血統主義ですか、そういう生地主義と血統主義という二つの考え方があります。 生地主義について典型的なのはアメリカなわけでありますけれども、日本は血統主義をとっております。日本が血統主義をとっている理由について、ちょっと教えていただけますか。
○寺田政府参考人 これは、今委員も御指摘のとおり、世界的に見ますと、生地主義的な考え方をとっている国、血統主義的な考え方をとっている国、それぞれあるわけでございます。 我が国は明治以来、血統主義的な考え方を基本にいたしているわけでございまして、部分的な改正、修正はございますけれども、今日まで至っているわけでございます。これは、基本的には、国民の間にどういう者を自分たちの同胞、同じ国民として認めるかという考え方がまずございまして、そういう考え方の上で、やはり血統主義的なところがずっと伝統的になじんできたというのが本当のところであろうかというように考えております。 もっとも、先ほどおっしゃられましたように、世界的に見ますといろいろな考え方の国があるわけでございますので、私どもも、これについていろいろ世界的な動向は見ております。しかし、必ずしも世界的に見て血統主義がどちらかというと例外的だというようなことは全くございませんし、国民的な考え方も十分にいろいろ見てみなければなりませんが、現在のところは、多くの国民の方にこの血統主義的な考え方が支持されているものというように理解をしているところでございます。
○細川委員 日本では、国民のいわば伝統的な考えもこれあり、血統主義がとられている、こういうことでございますが、そうしますと、日本人から、この場合は父親というふうに申し上げますが、父親とその子供との間で実子関係というか親子関係があれば日本国籍を取得する、こういうことになるわけですね。 そうしますと、では、血統主義でいきますと、日本国籍を取得するのは、親が正当な婚姻をしていてそこから生まれたということで嫡出子の推定を受ける場合と、それから父親がその子供を認知することによって親子関係が生じる場合、この二つの場合にその子供に国籍を与えるというのが本来の考え方になるわけですね。 うなずいておられますから、それでは、認知の方だけに限って言えば、出生前の胎児のときに認知をすれば国籍を取得して、出生した後で認知をした場合には原則として国籍を取得しないというのは理論的にどうもおかしいのではないかというふうに思いますけれども、いかがですか。
○寺田政府参考人 今おっしゃられましたように、基本的に、血統主義をとります場合に、父親関係、母親関係、それぞれについて国籍の源流というものが生ずるわけでございます。ただ、この問題が生じましたのが男女平等の見地から国籍法の見直しをした以後のことであるからおわかりになりますとおり、一方では、国籍が違う者同士の母親、父親というのがあるわけでございますので、他方のこともまた別途考慮しなければいけないわけでございます。 したがいまして、日本人の父親と日本人の母親から生まれた子供については、文句なく、今おっしゃられましたように、日本人、日本国籍を持つ者ということについては全く異論のつけようもないところでございますけれども、しかし、国籍を異にする婚姻によって生まれた子についてどういう国籍を与えるかということについては、いろいろな他の要素も考慮しなきゃならないわけでございます。 その中で、特に、この場合は、今問題になっているケースの場合は母親が外国の方なわけでございますけれども、そのことによって、子供が生まれたときに一体どういう国籍を持つのかということをまず考えてみなければならないわけでございまして、今委員が御指摘の出生後に認知がなされたケースについては、出生時において何らかの国籍関係が生じて、出生後に認知をすることによって国籍が変わるということをやはり考えてみなければならないわけでございます。 もともと、出生前の胎児認知の場合には、出生時に父親関係も母親関係も確定しておりますから、それは私どもにとって何ら支障がないというところで、国籍法でもそれを日本の国籍の取得原因というふうにいたしておりますけれども、胎児認知でない出生後の認知の場合には、出生時における法律関係というものをもう一度転換させてしまうという要素を、これを国籍を与える上でどう考えるかということで、私どもは、この法律が前回改正されましたときに、やはりその子供の国籍の関係の安定というものも別途配慮しなきゃならない、その上で、出生後に認知された子供については、その認知そのものによって自動的に日本国籍を与えるというのは適当でないという判断をいたしているわけでございます。
○細川委員 正当な、法律上の結婚をしていない場合に、法律上の親子関係が生じるためには、自分の子供だということを認知すれば、これで親子関係が生じますよね、今の日本の民法でいきますと。これは、民法の七百八十四条で、認知をすれば、認知したときから親子関係が生じるのではないですよね。局長、そうですね。うなずかれました。遡及効といって、生まれたときまでさかのぼって親子関係が生じるというのが日本の民法になっているわけですね。 だから、日本の民法では、認知したときから親子関係が生じるというふうにはなっていないんですよ。出生にさかのぼるわけですよ。そうしますと、この国籍の問題でも、認知をしたら、当然出生のときまでさかのぼり、そこで日本国籍を取得する、こういうのが通常考えられるというふうに思います。 先ほどちょっと、出生のときまでさかのぼると、既に別の国籍を取得していたり、いろいろ不都合なこともあるようなことを言われましたけれども、では、日本の民法でも、出生時までさかのぼったときには、いろいろな第三者の権利を害することがある場合も考えられるので、そういう場合には第三者の権利を害してはいけないということまで、民法では、遡及をさせたときの不都合を救済するようにちゃんと遡及効を認めているわけですから。 そういう考えでいきますと、父親が認知をして、それで国籍を与えるということは、これは私は不都合はないんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○寺田政府参考人 おっしゃるように、認知の効力というのは、親子関係の発生という意味では、これをさかのぼって効力を生ずるということは、確かに民法上そういう規定があるわけでございます。 しかし、これを国籍に当てはめてみますと、国籍の場合に、さかのぼって国籍を与えることが適当かどうかということは、これは別の判断になるわけでございまして、親子関係が異動したからといって国籍関係が異動するかどうかというのは、それは、別の国籍も持っている、そういう国籍の世界の中で一体どうあるのが適当かという別の判断にならざるを得ないわけでございまして、委員のおっしゃるのも、一つの議論としてはもちろんあり得ることは私も否定できないところでございますけれども、しかし、どちらが適切かという判断で、やはり国籍関係は、一たん生じたものを簡単には動かさない、動かすのは、帰化その他のことで動かし得ることはあり得るわけでございますけれども、単純な親子関係の発生という事実だけで国籍を動かさないのが適当ではないかという判断をしているわけでございます。
○細川委員 その言い分も理解できないわけではないんですけれども、しかし、そもそも、原則として血統主義というのをとるんですから、そういう親子関係が生じたならば、これは国籍取得というのを認めるのが素直な考え方ではないかというふうに私は思います。そこに国籍上不都合があれば、その不都合をできるだけ少なくするような何らかの立法的な手当てをすればいいのではないかというふうに私は思っております。 そこで、出生後に認知をしても例外的に国籍を取得する場合があるわけですね。これが三条の一項ですか。それは、出生後に認知をして、そして父母が婚姻をした場合、あるいは婚姻をしてから認知をした場合、この二つによって、先ほど出ました準正ということで日本国籍を取得する、こういう例外的な規定をここに規定しているわけなんです。 しかし、それによって、それでは、準正にならない者と準正で国籍を取得する者との間で不平等になるのではないか、憲法十四条で言う社会的身分、出生による、そういうことによって差別を受ける、こういうことになるのではないかと思いますけれども、この点についていかがですか。
○寺田政府参考人 その点がまさに裁判で争われているケースがあるわけでございます。この事件の場合もその一つでございます。 私どもは、裁判所の御判断は御判断としてもちろん受けとめてまいりたいとは思っておりますけれども、しかし、それは、私どもの立場から申しますと、出生後に国籍が異動するということが、まず非常に例外的な場合だというふうに理解しておりますので、その例外を認めるためにどのぐらいの要件が必要なのかということで、婚姻までされているのであれば、それは一つの完全な共同体として成り立っておられるので、そういう方にあえて日本国籍を与えないという判断はおかしいのではないかという判断をしているわけでございます。 おっしゃるとおり、そうでない判断があり得ないかとおっしゃられれば、それはもちろん政策判断の問題だということにはなろうかと思いますけれども、私どもの判断としては、現在、このような非常に例外的な要件として認めるものの位置づけとしてはこれが適当だろう、こう考えているところでございます。
○細川委員 父母が婚姻をした場合に初めて準正ということで国籍を与える、そういう例外的なものということで御説明がありましたけれども、しかし、今、婚姻というものの形態が非常にいろいろと変わってきているのも御承知のとおりでございます。 法律上のきちんとした、戸籍上正式な形の婚姻だけではなくて、実態は婚姻生活をしているけれども、しかし届け出をしていないという例もたくさんあるわけでございまして、そういう観点からいきますと、結婚をしている、婚姻をしているから、そのときだけは国籍を認めるというのは、これはちょっとまた理屈に合わなくなってきているのではないか。そこのところなんかが、去年の四月の東京地裁の判断と、そしてまた一昨日判断が下されたものとはまた全然質の違うところもあるのではないかというふうに思います。 いずれにしましても、こういうことで、大事な、基本的な、日本人からの子供が日本国籍を取得するのかしないのかというところであいまいであっては、これは大変重大な問題でありますし、しかも、裁判で司法の統一をしなきゃいかぬ、国としての判断も統一しなければいけない司法の場でそういう判断のいろいろな違いがあるということは、これは立法的にきちっと解決をすべき時期に来ているのではないかというふうに思います。 どうでしょうか、法務大臣。今、私と民事局長との間での話をお聞きいただいたと思いますけれども、基本的に日本は血統主義をとっている、その日本人と子供に親子の関係が法律的に認められれば、これは国籍を認めるのが自然な成り行きじゃないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
○杉浦国務大臣 国籍法は、我が国の国民の範囲を定める法律でございます。国民の範囲をどのように定めるかは、国家の根幹にかかわる重要な問題でございます。我が国のこの国籍法についての解釈、運用は、民事局長がるる御説明したとおりでございます。この国の立場を覆す下級審判決が出ている、高裁の判断が分かれているというのも、御説明があったとおり、事実でございます。 立法論として、国籍法改正を検討すべきではないかという御主張だと拝聴いたしましたが、ことしの高裁判決については上告がなされております、最高裁の判断が示されることになると思いますので、当面は最高裁の御判断を見守りたい、こう思っております。
○細川委員 この後の最高裁判所の判断を待ちたいということもわかりますが、ただ、最高裁判所のさきの判決の中でも、五人のうち二人の裁判官が、違憲の疑いが濃い、こういう補足意見を述べておられて、そして、その最高裁判所のいわば判例というものに従うべき下級裁判所で、あえてそれに反逆するというか反抗するというか、反対の判決が出て違憲の判断がされているということは、これはもう立法的に解決をしなければいけない時期に来ている。 そうでないと、早くこれをやらないと、そういう国籍問題の決着がつかないまま非常に困っておられる子供たちがたくさんいるようでございますから、ぜひ大臣にはここでしっかりひとつ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。もう一回お願いします。
○杉浦国務大臣 先生の御卓見はしっかり伺いましたが、先ほど申しましたとおり、最高裁に係属しておりますので、差し当たっては最高裁の御判断、少数意見があるかどうかも含めまして、御判断を見守りたいと思っております。
○細川委員 ありがとうございました。 ほかにも大変質問を用意して、通告もしておりましたが、刑事局長、矯正局長、皆さんには失礼をしましたが、これで私の質問を終わります。ありがとうございました。
○石原委員長 次に、保坂展人君。
○保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。 きのう、東京地裁で、村岡元内閣官房長官に対して、政治資金規正法違反事件ですが、検察側の主張を全面的に退けた無罪判決が出されました。自白の信用性ということに大変疑問を投げかける内容だったと思います。また、裁判長は、長い間御苦労さまでした、今晩くらいは平穏な気持ちで桜を楽しまれては、こう声をかけたと伝えられています。 法務大臣が判決内容について直接コメントできないのは十分承知しておりますが、国民が政治と金の問題について大変不信をいまだに持っている。信頼回復に向けた決意を伺いたい。
○杉浦国務大臣 政治とお金の問題は、大変大事な問題であります。我々政治家が常に心して、国民から指弾されることのないよう、襟を正さなきゃならない問題だと思っております。
○保坂(展)委員 この件で私どもが気になるのは、やはり検察審査会、この検察審査会が起訴相当ないしは不起訴不当の議決をしている。これは市民の声であり、また世論でもあったと思いますが、このことは無視をされてしまった。恐らく、今回の判決で村岡さんの無罪というのが出ても、関係する方々の証言は全部食い違っていて、これはもう全然かみ合わない。 こういった検察審査会がしっかり声を出すことについて、大臣はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
○杉浦国務大臣 検察審査会は、法律によって、不起訴相当とされた事件について、大陪審的ですね、起訴陪審のような形で国が設置している機関でございます。今までの運用を見ますと、おおむね適正に運用されているように拝聴しておりまして、我が国の制度として定着もしてまいりましたし、なくてはならない制度だと思っております。
○保坂(展)委員 次に、防衛施設庁に来ていただいていますが、今回かなり大がかりな談合事件が摘発をされて、その後にまた談合情報があったという報道がありますが、簡潔に、どういう事態になっているのか、お答えください。
○山内政府参考人 御質問の事実関係についてお答えいたします。 本件岩国飛行場の埋立工事につきましては、去る三月二十七日午前九時四十分に、報道機関から広島防衛施設局に対しまして談合に関する情報が電話で寄せられたところでございます。この情報がもたらされましたのは開札実施の約一時間前であったことから、広島防衛施設局では、入札の開札を保留し、建設工事公正入札調査委員会を開催、審議した結果、情報に信憑性があると判断し、入札参加者全社からの事情聴取を実施いたしました。 事情聴取の結果からは談合の事実は確認されなかったことから、翌二十八日午後二時に当該工事の開札を行ったところ、開札において、情報にあった企業が最低札となっている状況を踏まえ、改めて手続を一時保留し、建設工事公正入札調査委員会で審議した結果、談合のあった可能性を否定できないと判断し、本件工事の入札手続の取りやめを決定したところでございます。 なお、本件情報及び広島防衛施設局の対応につきましては、公正取引委員会に通報を行ったところでございます。
○保坂(展)委員 刑事局長、やはりこれだけ大がかりな談合事件の施設庁関係の捜査があって、かなり徹底的にやるというふうに聞いていましたけれども、今の話を聞いて、捜査の限界というのを感じますか。事件を立件して、これが一罰百戒になって、そういうことがなくなるというのが望ましい姿だと思いますが、いかがですか。
○大林政府参考人 具体的な事件になりますので、一般論として申し上げれば、捜査機関として、犯罪が成立するものならば、それは証拠収集に当たり、厳正に処理すべきだというふうに思います。 おっしゃられるように、犯罪撲滅のためにそれは努力しなきゃならないということはそのとおりだと思います。
○保坂(展)委員 法務省の工事で談合情報というような記事があり、また、数字をとってみると、防衛施設庁関係の数字より高いものもあったではないか。杉浦法務大臣は、この点については解明しますという答弁をいただいております。 これは官房長に伺いたいんですが、考えてみると、今、年度末でございます。年度末というのは、入札が行われて、大きな工事が決定されるシーズンでございます。 そこで、昨日、ちょっとお願いをして、一体、この三月、この一カ月、こういった議論が始まってから、法務省で一般競争入札は何件あったのか。そのうち、ここが大事なんです、落札率が九五%以上に上った工事について何件あったのか、それはどこだったのか、答えていただけますか。
○小津政府参考人 お答えいたします。 平成十八年三月に法務本省が実施いたしました一般競争入札の件数は七件でございます。ちなみにその平均落札率は九三・五%でございますけれども、そのうち落札率が九五%を超えたものを申しますと、大阪入国管理局新営建設工事、大阪入国管理局新営電気設備工事、網走刑務所収容棟等新営建設第二期工事、それから網走刑務所収容棟等新営電気設備第二期工事でございます。(保坂(展)委員「落札率についてもお願いします」と呼ぶ)それぞれの落札率でございますね。 最初の大阪入管新営の建設は九五・六八%、それから大阪入管の電気設備九五・三九%、網走の建設、これが九九・五〇%、網走の電気設備九六・三六%でございます。
○保坂(展)委員 防衛施設庁のこの間の、まずは成田から発端がありますが、まず空調工事ですね。そして、こう見ていくと、落札率が九六%を平均で超えているではないかということがしきりと報道されています。 我々、こういう議論をしていても、これは大きな工事なんですね。網走は二十七億ですよ。これが九九・五%、ほとんど一〇〇に近い数字で落ちるということは、本当にこれはしっかりやられているのか、新たに疑問を持ったところであります。 官房長に伺いますけれども、国会でのこういった議論を踏まえて、直ちにこういった入札などに対して厳格化しているのかどうか、今までと全く変わらないでやっているのか、これについて答えてください。
○小津政府参考人 お答え申し上げます。 法務省におきましては、これまでに談合防止策といたしまして、既にこちらでも御説明申し上げました、談合情報に接した場合のいろいろな取り扱い、あるいは談合等の不正行為があった場合に違約金を支払わせる条項を設置する、あるいは指名業者相互の連絡行為をできるだけ回避するために、指名業者名の公表を事後にするということ、あるいは現場説明会を原則として廃止する、あるいは電子入札の試行の導入などをしてまいりました。さらに、入札価格の積算内容を確認いたしますために、工事費の内訳書の提出の義務づけなどを行ってまいりました。 さらに、平成十八年度から、一般競争方式の工事を、これまで七億三千万円でございましたので、これを二億円以上の工事に拡大する。また、これを……(保坂(展)委員「もういいです」と呼ぶ)はい。等々、新たに平成十八年度から談合防止策を講じることにしているところでございます。
○保坂(展)委員 法務大臣に伺いますが、我々が議論している、入管の議論もしましたけれども、大阪入管の工事は建築とそれから電気、合わせて三十二億、これが九五%台、それから網走刑務所は九九・五%。いろいろな数字がたまたまぴたりと当たることもありますが、やはりこれは高いですよ。この点についてもっとしっかり精査していただきたい。 厳格化ということを今一般論で、法務省でやっていることを言われましたけれども、直ちに指示をされているのかどうか、一点の疑念もないようなことをやっていただきたいという要望をしているわけですから、お答えいただきたいと思います。
○杉浦国務大臣 私なりに関係者から実情を聞いておりますが、今官房長が申し上げたとおり、きちっとやっているというふうに私は認識しております。 談合情報があった場合には、直ちに調査会を立ち上げて調査する、事情聴取もする、そして業者からも、そういう事実がないと認められた場合であっても一札をとる、公取には通知するということをきちっとやっておりますし、法令等に従って適正にやっておるという認識を持っております。 たまたま落札率が高い低い、九九・何%もあれば八〇%も、いろいろあるわけです、この一覧表をごらんになればわかりますように。その率の高低だけをもってしては、談合が、高いものはあるということは必ずしも言えないんじゃないだろうかというふうに私は思っております。
○保坂(展)委員 法務省の工事は本省分と地方分があるというふうに聞きました。例えば、地方分の大変大きな工事額、十六年度の十億円以上の工事、これを出していただきましたが、例えば札幌刑務所の工事、これは九七・二四%、札幌刑務所支所の工事九七・三八%、同機械設備工事九八・三八%、大分刑務所の建築九九・〇九%、大分刑務所建築九三・九一%、名古屋刑務所九九・六一%、きれいにそろっているんですね。 これは、地方の工事分も含めて、どうなっているのか、しっかり出していただきたい。十億円以上という非常に大ざっぱな資料ですから。いかがですか、官房長。資料を出していただきたい。
○小津政府参考人 ただいま委員から御紹介いただきました資料につきましては、お求めに応じて私どもから提供させていただいた内容でございますので、今後どのようにして保坂委員に提供させていただくか、よく御説明の上、御相談させていただきたいと思います。
○保坂(展)委員 入管の法律は、我々は反対しましたが、通りました。その際に、レガシーシステムでどうなっているのか、契約内容を紙で出してもらいました。私は委員会で指摘しましたけれども、これは、レガシーというのは一社しかできない、ベンダーしかできないんですよね。それで一般競争入札になっているのはおかしいじゃないかとただしましたが、きのう、やはり違っていた、これは入札じゃありませんでした、不落随契だったというのが来たんですね。 一般競争入札とされていたものの三つは不落随契、つまり入札ではなかったということです。一カ所だけ一般競争入札が平成十六年度にされたというんですが、これは、ベンダーをかえられないのに、どんな入札なんだろうと思って聞いてみたら、入札参加者は一社だと。 法務省では、一体、一般公開競争入札と不落随契の区別もつかないのか。この間の議論がありましたので、こういう資料を平気で出してくるというのは、やはりちょっとおかしいんじゃないか。まして、入札で別の社に決まったらかえられるのかという問題。かえられないんじゃないかと指摘しているわけですね。その点どうですか、入管局長。
○三浦政府参考人 お答え申し上げます。 今委員御指摘ございました資料の件でございますが、先日お出ししました資料の中の契約形態の欄の記載のことだと思います。 確かに、御指摘のとおり、先般提出いたしましたものには一般入札という形で書いておりましたが、これは入札の実施の有無という点に着目して一般という記載をさせていただいたものでございますけれども、今回お出ししました資料につきましては、入札の実施の有無に加えまして、現実の契約の実態に即して、不落随契という項目もあわせて記載させていただいたものでございます。 これは、入札手続は実施はしておるのでございますが、応札した業者が一社だけだということでありまして、なおかつ予定価格を上回る入札ということで、結局は落札ということになりませんので、ただし、契約はせざるを得ないので随意契約を行った、こういう次第でございます。
○保坂(展)委員 二回目の質問に答えていないんですが、まず、不落随契というものが、一般公開競争入札という一覧表の中に、施設の方のいわば一般競争入札という項目にあったのは実は不落随契でしたという委員会のやりとりがあったんですよ。今回、またそういう記載だということを指摘しましたが、二つ目の質問として、実際にほかの社が応札してとることができるのかということも聞いているんですね。一個は入札と書いていますけれども、それはどうなんですか。
○三浦政府参考人 委員の御指摘の点は、恐らく、特定の業者しか入札できないようなシステムをとっているということの問題点の御指摘だろうというふうに思っております。 確かに、前回もちょっとお答え申し上げましたが、いわゆるレガシーシステム的なものになっておりますので、従来から関与している業者以外の業者が応札しにくい状況があることは間違いないものでございますので、そういう点については改善をしていかなければならないと思っております。
○保坂(展)委員 入管局長、そういうのを随意契約と言うんじゃないですか。他の業者ができないものを形だけ入札しましたと言ったって、ほかの社は実際できないわけですから。これは随意だということを認めてくださいよ。
○三浦政府参考人 手続といたしましては、どのような業者も参加できるような機会を付与するという意味で一般競争入札の手続をしているわけでございます。また、実態として先ほど申し上げたような実態があるということでございます。
○保坂(展)委員 河野副大臣、どう聞かれましたか。これはやはりしっかりやりましょうよ。
○河野副大臣 この件につきましては、全く保坂委員御指摘のとおりで、これがレガシーシステムというものでありまして、今回のシステムの変更からこうした事態にならないようにしっかりやってまいりたいと思います。 これまでの投資額のうち戦略的にIT投資できた分は、IT予算のうちの一割に満たないわけでございまして、これではどうにもならないというのが現状だったと思いますので、本当にいい機会をお与えいただきましたので、この次のシステム構成のところからきちっとオープンシステムに移行をして、ハード、ソフトを分けて適切にやりたいということで、今、省内、一生懸命検討しているところでございます。よろしくお願いいたします。
○保坂(展)委員 時間になったので、終わります。 ————◇—————
○石原委員長 次に、内閣提出、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。 趣旨の説明を聴取いたします。杉浦法務大臣。 ————————————— 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○杉浦国務大臣 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。 明治四十一年に制定された監獄法は、被収容者の権利義務関係や職員の権限が法律上明確にされていないなど、今日では極めて不十分なものとなっておりましたが、同法が規定する事項のうち、刑事施設の基本及びその管理運営に関する事項並びに受刑者の処遇に関する事項につきましては、平成十七年、昨年五月、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律が制定され、法整備が行われたところでございます。 他方、被逮捕者、被勾留者等の未決拘禁者、死刑確定者等の処遇につきましては、監獄法の題名を改めました刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律により規定され、依然として、その内容は極めて不十分であり、また、受刑者の処遇との間で不合理な法律上の格差が生じることとなっているため、早期にこれに関する法整備を行う必要がございます。 さらに、都道府県警察の留置場及び海上保安庁の留置場については、その設置根拠が法令上明文で存しないこと、これらに留置される者のうち、被逮捕者は、その処遇に関する規定がなく、また、刑事施設に代用される警察留置場に留置される被勾留者等は、これに対する法律の適用関係が不明確であることなどの問題点があり、所要の法整備を行う必要がございます。 この法律案は、このような状況を踏まえ、刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正し、同法において、刑事施設、留置施設及び海上保安留置施設に収容されている未決拘禁者等について、その人権を尊重しつつ、適切な処遇を行うため、その処遇に関する事項について定めるほか、留置施設及び海上保安留置施設について所要の法整備を行おうとするものでございます。 この法律案の要点を申し上げます。 第一は、未決拘禁者等の処遇について定めるものであり、その権利及び義務の範囲を明らかにするとともに、その生活及び行動に制限を加える必要がある場合につき、その根拠及び限界を定めること、適正な生活条件の保障を図るとともに、医療、運動等その健康の維持のために適切な措置を講ずること、外部交通についての規定を整備すること、刑事施設の長等の一定の措置についての審査の申請、身体に対する違法な有形力の行使等についての事実の申告等の不服申し立て制度を整備することなどを内容とするものであります。 第二は、留置施設及び海上保安留置施設の基本及びその管理運営に関する事項を定めるものであり、これらの施設の設置根拠を設けること、刑事施設の収容対象者について、一部の者を除き、刑事施設に収容することにかえて留置施設に留置することができることとすることなどに加え、留置施設の運営の透明性を確保するために、留置施設視察委員会の設置、組織及び権限についても定めることとしております。 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。 以上が、この法律案の趣旨でございます。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
○石原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 —————————————
○石原委員長 この際、お諮りいたします。 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長安藤隆春君、法務省刑事局長大林宏君、法務省矯正局長小貫芳信君、海上保安庁次長平田憲一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○石原委員長 次に、お諮りいたします。 本日、最高裁判所事務総局大谷刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○石原委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。
○柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。 長年大きな論争を巻き起こしていた未決拘禁者の処遇につき、今回抜本的な法改正がなされるということは非常に高く評価されるべきでありまして、一刻も早い本法案の成立、施行がなされることを強く期待しております。 ただ、若干疑問がございますので、以下、質問をさせていただきます。 まず最初に、警察署に付設された留置場を拘置所のかわりにするいわゆる代用刑事施設、この制度につきまして、本法案はこれを認めております。今後、これをふやしていくのか、現状維持をしていくのか、減らしていくのか、基本的な政策の方向性をぜひ法務大臣にお伺いしたいと思います。
○杉浦国務大臣 柴山委員におかれましては、弁護士としての長い経験を踏まえられまして政治の道に参加いただいて、本当にありがたく思っております。法務行政、これからますます大事になりますので、今後とも、この面においても大いにお力をおかしいただき、御活躍いただきますよう、まずもってお願い申し上げる次第でございます。 先生は長年にわたると申されましたが、個人的には、実に万感こもるものがございます。昭和五十七年、拘禁二法が提案された際、私は第一東京弁護士会の副会長でございました。そして、反対運動の先頭に立ったわけであります、代監制度を廃止しろと。私ども一弁はどちらかというと伝統的に保守的な会派でございまして、東京では、東弁、二弁は、一弁よりは革新的と申しますか、傾向の強い団体であったわけですが、私ども一弁は自民党を担当いたしまして、議員の先生方と説得活動に当たったわけであります。 あのころの留置場はひどいものでした。施設もよくありませんし、捜査と留置の区別がつかなかった。代用監獄は自白の温床であるという指摘も無理からないものであった、正直言ってそう思います。 反対運動、長く続きました。四半世紀、紆余曲折ございましたが、ここに、日弁連も加えた検討会議の議を経て正式に成案を得た、国会で御審議いただくまでになったということでございまして、まことに感無量のものがございます。 留置施設も変わってまいりました。当時、我々が猛反対したものですから、警察庁は留置場の大改修を始めました。昭和何年でしたか、警視庁が建てかえられたときに、今の警視庁の留置場が当時一番いい留置場だと。そして、捜査と留置の区別もきちっとする初めての施設として、東京警視庁に留置施設が誕生したわけであります。 今回法務大臣に就任して、実は、東京の留置場のうち一番新しいものと一番古いものを見せてくれというふうに頼みまして、視察に参りました。一番新しいのは池上警察署でした。一番古いのは警視庁の留置場でございました。本質的に差はございませんが、池上の方は施設も立派で、警視庁の留置場よりもいろいろな面ですぐれているという印象を持ちましたが、基本的にそんなに変わっておりませんでした。 全国で、私の地元でも、留置場をどんどん改造しております。一々見たわけじゃありませんけれども、相当程度改善され、当時私どもが指摘した、捜査と留置の分離がなされていない、施設も劣悪である、警察官の思惑次第で差し入れも自由、自白誘導が可能なような運営が行われている、そういった問題点はかなりというかほぼ解消されているような印象を今度の視察で受けた次第でございます。 したがって、このたび、今度の法案で、代替刑事施設を維持する、それが現実的な方法でもあるということで、代用刑事施設制度の存続を前提とした上で制度的改善を加えることとしておるわけでございます。 我が国の刑事司法制度のもとでは、最大二十三日間という限られた身柄拘束の期間の中で、被疑者の取り調べその他の捜査を円滑かつ効率的に実施しなければなりません。被疑者と家族、弁護人等々の接見の便にも資するためには、津々浦々にきめ細かくいわば設置されている、つまり警察署に併設されているわけですから、そういう留置施設に被疑者を勾留することが現実的であるということも言えると思うわけでございます。 ちなみに、私が弁護士になったころ、当時、巣鴨の刑務所から今の東京拘置所へ移転するということになりました。先輩が猛反対運動をいたしました。私が弁護士になったときにはもう移転しておりましたが、その反対の理由は、何であんな田舎へ持っていくんだ、不便になると。まあ、巣鴨は、電車の便もいいし、タクシーで行っても近い。あの当時はまだ小菅はかなり田舎でございまして、高速道路もない、鉄道も不便という状況で、猛反対運動があったそうでありますが、それに次ぐこの私どもの反対運動は盛り上がったわけであります。 弁護士の本音としては、近いところにあった方がいい。だから、名古屋や広島とかであるように、裁判所、検察庁の近くに置けと。今弁護士会館が建っているぐらいのところへつくりなさいというのが、当時の我々の主張だったと思います。全国を私は歩きまして、地域によっては裁判所と検察庁と拘置所が、名古屋もそうですけれども、すぐ近くにある。これは非常に便利ですね。来られる人も、交通も便利だと。 それが理想的ではあると思うんですが、ただ、現実問題として、地域によっては恵まれていない地域もあるわけでございまして、理想は理想としながら、現実的な面にも配慮されなければならない。東京にいる弁護士さんの本音は、近くに留置施設があった方が便利だという本音ではほぼ一致していると思うんです、ほぼ。そうじゃない先生もいらっしゃいますが、多くの先生はそう言っていると思います。 代用収容制度にしても、これで永久に存続するとしているわけではございませんで、法律には、今後の検討としておりまして、今後の刑事司法制度のあり方を検討するに際しては、取り調べを含む捜査のあり方のほかに、刑事施設のあり方についても、留置施設のあり方についても、刑事手続全体との関係の中で検討を怠ってはならないと考えております。
○柴山委員 ありがとうございます。 今大臣の方から、捜査と留置の人の分離ということが言われたわけですけれども、この点について、法案の十六条三項に、留置担当官は当該被留置者の犯罪の捜査に従事してはならないという規定がございます。この規定はもちろん、逆に捜査官が留置業務に関与するということも禁じた規定であると理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。
○安藤政府参考人 ただいま委員の御指摘のとおりでございます。 ここで言います留置担当官とは、留置管理係に所属する者のみならず、現に留置業務に従事する者をいいまして、この第十六条三項は、この留置担当官がその被留置者の捜査に従事してはならないことを定めたものでございます。 したがいまして、現に被留置者の捜査を行っている捜査官が当該被留置者の処遇を行いますと、その捜査官は、この十六条三項で言います留置担当官に該当することとなるため、この規定に違反することになるということでございます。
○柴山委員 とすれば、今度の法案の百八十四条に、留置業務管理者は食事あるいは就寝の時間帯を定めるということが書いてあるわけですけれども、捜査担当者はこうした時間帯をしっかりと守らなければいけないということになろうかと思いますが、そうしたことが担保されているということでよろしいでしょうか。
○安藤政府参考人 新しい法律、新法の百八十四条の規定に基づきまして、留置業務管理者は、日課時限、これはすなわち、被留置者の起床とか就寝時間、食事の時間、運動の時間等をあらかじめ定めることとしているところであります。もちろん、被留置者の処遇というのは原則としてこれらの時限に従って行われることとなりますが、他方、被留置者は刑事手続の対象でもあり、勾留質問、取り調べ、公判出廷、弁護人等との面会等を実施すべき公益上の必要性もあるところでございます。 したがいまして、具体的事案に応じて、やむを得ず、定められた時間に実施できないこともやはりあり得るところではございますので、そういう場合も、定められた時間に運動が実施できない場合には別の時間に運動を実施する等の補完措置を現在講じている状況でございます。
○柴山委員 続きまして、不服申し立ての制度についてお伺いしたいと思います。 留置施設の処遇に関する不服申し立てはどのようになっているんでしょうか。従前は情願という非常に不十分な制度しかなくて、また、施設内でこうした不服が握りつぶされていたのではないかという指摘もございました。お聞かせいただきたいと思います。
○安藤政府参考人 お答えいたします。 今回の法案におきます留置施設における不服申し立て制度というのは三本柱で成り立っておりまして、一つは、処分性のある措置についての警察本部長に対します審査の申請、二つ目は、警察職員による違法な有形力の行使等についての警察本部長に対する事実の申告、それから三つ目が、処遇全般に関します苦情の申し出、この三つの制度を設けておりまして、審査の申請と事実の申告につきましては、これはさらに公安委員会への不服申し立てができる、こういう組み立てを行いまして、刑事施設における不服申し立て制度との均衡を図っているわけでございます。 これらの不服申し立てにつきましては、例えば、警察本部長による裁決等に不服がある場合につきましては、第三者機関であります都道府県公安委員会が不服申し立ての審査を行うこととか、あるいは不服申し立ての処理状況は留置施設視察委員会に報告されること、さらには留置施設を実地監査します監査官、こういう制度を新しく設けるわけですが、この監査官にも直接苦情を申し出ることができる、こういうことなどを定めまして、被留置者の不服申し立てを適正に処理することが法的に担保されていると考えております。
○柴山委員 今、刑事施設と横並びというお話もありました。公安委員会が警察署に対してどれだけ独立性を持っているかということも、議論のあるところだと思います。留置施設におきましても、公安委員会と独立した第三者機関による審査ということが弁護士会の方からも提言されていると思いますので、御検討いただければと思います。 さて、いろいろと質問があるんですが、今後の課題として、この後、倉田理事の方からも言及があるいはあるかもしれませんけれども、取り調べの適正化をどのようにして図っていくかということが大変大きなテーマとなってくるかと思います。 今、取り調べの可視化、いわゆる録画、録音等について大変大きな議論がなされているわけですけれども、これにつきまして、大臣、どのような御見解をお持ちでしょうか。
○杉浦国務大臣 これはかねてから大変問題になっている件でございますが、被疑者の取り締まり状況を録音ないし録画すれば、捜査段階の供述を事後的に正確に確認することが容易になる。特に、自白の任意性が争われた場合には非常に有効であるという意見があることは承知しております。他方におきまして、取り調べ状況の録音、録画を義務づけた場合、取り調べ状況のすべてが記録されますので、関係者のプライバシーにかかわることを話題とすることが難しくなることもあり得るし、被疑者に供述をためらわせる要因となって、その結果、真相を十分解明し得なくなるといった問題がございます。 いずれにしましても、取り調べ状況の録音、録画等可視化につきましては、司法制度改革審議会意見においても、刑事手続全体における被疑者の取り調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であることなどの理由から、将来的検討課題とされているところでございます。法務省としても、慎重な検討が必要であると考えております。
○柴山委員 今の御指摘の中で、テープの取り扱いがプライバシーの関係で問題ではないかということがあったんですが、当然のことながら、今の刑事司法手続の中では、インカメラの手続とかも工夫できるわけですし、また、被疑者が供述をためらうであろうというようなお話もあったんですが、私はむしろ、被疑者にはカメラが見えないようにすることができるわけですから、捜査官側がためらうんじゃないかということで危惧をされているんだと思っています。 私は、何も、カメラを入れることによって捜査が萎縮をするという事態は望んでいるわけではありません。取り調べというのは、自由な社会で対等な、例えば契約者が交渉するというような社会とは違うわけですから、時には大声を出したり、場合によっては机をたたいたりするようなこともあるんだと思います。ただ、状況に応じた一定の節度というものはあるわけでして、それを超えたかどうかをチェックすることは必要ではないかと考えております。 また、捜査の側にとってみても、私も杉浦大臣ほどではありませんが若干弁護士の経験がございますけれども、被疑者というものは、本当に不合理な弁解を時としてするものでありまして、こういうような取り扱いを受けたと言うわけですが、それを客観的に示す、あるいはそれがうそだよというものがなければ、我々弁護人としては、その被疑者の不合理な主張によって動かざるを得ないわけですね。そのことが公判を紛糾させたり、検察官との信頼関係を損なったりする一つの大きな原因になっていることは、私は否めないと思っております。こうした不要なフリクション、あつれきというものを解消するためにも、私はこれはぜひ前向きに検討していただけたらというように思っております。 もう一度、御意見をお伺いしたいと思います。
○杉浦国務大臣 検討を進めておるところでございます。 最高裁、法務省及び日弁連による刑事手続の在り方等に関する協議会や、そのもとに置かれた三者による研究会でも取り調べの録音、録画制度に関する研究を行っておりますし、法務省としても、こういう制度を導入している国ではどんな手段でやっているかということを調査研究もいたしております。さまざまな方法で検討はいたしております。
○柴山委員 よろしくお願いいたします。 もう時間が過ぎますので、一点、さらに追加してお伺いします。 今回、海上保安留置施設の処遇についても規定が整備をされたんですけれども、これは他の留置施設と一体どのような理由で、どういう違いが定められているのでしょうか。お聞かせいただきたいと思います。
○平田政府参考人 お答え申し上げます。 海上保安留置施設につきましては、長期にわたり被収容者を収容する刑事施設でございますとか警察の留置施設とは異なりまして、被逮捕者の送致までの四十八時間以内の短期の留置を前提として運営され、代用刑事施設としての運営を行わない施設としている点が特徴でございます。したがいまして、本法案におきます規定ぶりも、刑事施設でございますとか警察の留置施設と一部異なったものとなってございます。 具体的に申し上げますと、まず、施設関係におきましては、海上保安留置施設につきましては、被逮捕者を留置するものでございまして、被勾留者の代替収容は行わないこと、施設の視察委員会を設置しないことでございます。さらに、処遇関係におきましては、海上保安留置施設は、ただいま申し上げましたように四十八時間以内の短期留置であるために、留置期間中の捜査、食事、就寝などの時間配分から余暇活動は不可能であるため、余暇活動に対する援助は行わないこと、定期の健康診断は行わない、処罰の規定は置かないというようなことになっているところでございます。
○柴山委員 今御指摘のあった被留置者に対する処罰の点等々、まだ質問事項はございますけれども、質疑時間が終了いたしましたので、以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
○石原委員長 次に、倉田雅年君。
○倉田委員 自由民主党の倉田雅年でございます。 今回の未決拘禁者の処遇改善を含む本法案につきましては、与党の理事でもございます、基本的に賛成をいたしますけれども、ただいま柴山委員からもありました、やはり代用監獄の存続ということについては私もこだわるものでございます。 大臣が自白なさいましたので私も自白しますけれども、昭和五十七年、ちょうど私も静岡弁護士会の副会長でございまして、多くの弁護士を連れて東京へと反対に来たものであります。 そんなこともございますけれども、御承知のとおり、五十五年十一月に法制審議会が代用監獄の漸減方針というものを出しました。と同時に、現状を踏まえて、現状の警察における留置施設の改善と、それから、捜査部門と留置部門との分離ということを審議会が申しまして、大臣が今お答えのとおり、その後随分と改善をされてきた、そして、捜査部門と留置部門との分離ということも事実上かなり進展をしてきた、こういうことは認めざるを得ないところだと思っております。 しかし、私思いますのには、ただ、そういうことによって、いわゆる代用監獄の弊害と言われるところの警察留置場における自白の強要事案が果たして本当に本質的な意味で減っているのかということに、やや疑問をいまだに持っているものでございます。 捜査当局は、そのような分離ということによって十分に人権も尊重され、かつ、自白強要事案は減ったと言われておりますけれども、一方、日弁連によりますと、ことしの一月二十三日付の日弁連刑事拘禁制度改革実現本部の「代用監獄問題の要点」、この中にあるわけですけれども、これによりますと、平成六年以降、日弁連が把握しているだけでも虚偽自白の強要事例が四十二例ある、うち無罪となったのが二十件ある、こういうことも言われているわけでございます。 そうした中で、最近の例で、平成十七年の三月にいわゆる宇都宮事件というのがございました。知的障害のある男性が、二人の中学生を路上で暴行したということで逮捕されたわけですが、拘禁中に強盗事件二件を他に犯しているという自白をしたわけでございます。結果として、第一審の裁判中に真犯人があらわれました。そこで、強盗事件二件については自白が間違いであった、こういうことで、強盗事件の方は無罪、そして暴行事件については罰金二十万円、こんなことが判決されたんですが、どうですか、今私の言ったこの宇都宮事件、これで正しいんでしょうか。簡単にお答えください。
○大林政府参考人 お答え申し上げます。 今委員御指摘のとおり、強盗事件二件について起訴されたものの、その後真犯人が判明し、誤認起訴であったことが明らかになったという事案でございます。 誤認起訴された方は、捜査段階で各事実を自白し、公判でもこれを認め、一たん結審しましたけれども、その後否認に転じ、弁論が再開された後、各強盗事件の真犯人と思われる者があらわれ、捜査の結果、この者が真犯人であると判明したことから、検察官において無罪の論告を行い、強盗二件については無罪判決が言い渡され、あわせて起訴されていた暴行罪についてのみ二十万円の罰金に処せられたものと承知しております。
○倉田委員 わかりました。そのように、現在でも虚偽の自白ということが起こっておる現状があるわけでございます。 私は、この宇都宮事件を聞きまして、昔のことを少し思い出しました。いわゆる赤堀政夫の島田事件でございます。久子ちゃん殺しという名前でも呼ばれております。昭和二十九年三月発生でございますけれども、島田市で女児の幼稚園児が、六歳でしたか、久子ちゃん、誘拐されて、大井川の西側の土手で暴行された遺体となって発見された、こういう事件でございました。この事件で、当時二十五歳であった赤堀政夫が逮捕されて、自白をした、こういう事件でございます。 正直言いまして、私の聞いているところでは、私がこの再審事件にも関与いたしまして無罪判決を静岡地裁でとっているわけでございますが、他にも二人自白していたということも実は聞いているわけです。相当な自白強要が行われたのであろう、こう思います。 なぜこの事件を思い出すかといいますと、この赤堀というのは、知的障害者とまでは言えませんけれども、放浪癖のある人間でした。島田市に住んでおりましたけれども、東京へと仕事を探しに行った。東京から歩いて帰ってきたわけです。たしか藤沢あたりだったと思いますけれども、夜、神社かなんかに寝ようとしているところを交番へと寝かしてもらうことになりました。その日を起点にして、この人がいろいろ絵をかいたんです。私ども、絵をかかせました。絵の才能があったんですね。山下画伯のようなものですね。毎晩のことを正確に絵をかくわけです、数十枚。結局のところ岐阜で逮捕されたんですが、岐阜に至るまでずっと絵をかいてもらいました。その絵によりますと、犯行当日、どう考えても島田にいない。これが傍証になったわけでございます。 それで、静岡地裁で無罪判決を得ましたけれども、赤堀被告は無罪で釈放されるまで三十四年間、青春はもとより人生を無にした、こういう事案でございます。 このような事件があるわけでございますけれども、私が問いたいのは、再審判決の結果無罪となった事件がこれまでどれくらいあるのか、そして、その再審判決、再審で無罪になった判決の中で、自白があったけれども結果的に無罪だったというのは何件あるのか、これについてお答え願えればと思います。
○大谷最高裁判所長官代理者 いわゆる白鳥決定の出された昭和五十年から平成十六年までの間に、再審で無罪になった人員は四百八十三人ございますが、そのうち四百五十一人につきましては専ら検察官から再審請求があったものでありまして、そのほとんどは道路交通法違反の身がわり等によるものでございます。 そこで、委員の御関心からいたしますと、再審で無罪になった事案のうち、残りの、言いかえますと、本人から再審請求のあった三十二人はどうかということになろうかと思われるわけですが、捜査段階で自白していたかどうかにつきましては統計をとっておりませんので、取り急ぎ判例雑誌等で調査可能な再審無罪事件十件について調査しました結果を申し上げますと、七人が自白をし、三人が否認であったと承知しております。 なお、捜査段階で自白していた七人という方々については、青森老女殺し事件、財田川事件、免田事件、松山事件、徳島ラジオ商事件、梅田事件、そして、先ほど委員も言及されました島田事件の七件でございます。
○倉田委員 今のは再審無罪事件ですけれども、これまで、再審ではなくても無罪になった事件のうち自白があったものはどれくらいあるのか、これはなかなか難しいかもしれぬ、この点、もしおわかりになれば、概略でもいいですからお答えください。
○大谷最高裁判所長官代理者 昭和五十年から平成十六年までの間に全国の地裁、簡裁で無罪を受けた人員というのが、合計しますと三千九百六十人でございます。捜査段階で自白をしていたかどうかという点については、これは統計をとっておりませんので、その自白のあったものの割合というのは申し上げることができないのですが、実務感覚から申しますと、この中に相当数含まれているということは間違いないところであろうかと思われます。
○倉田委員 以上のように、警察の留置施設への未決拘禁者の収容管理下に捜査を行う、それによって虚偽の自白がなされたという前例はたくさんあるわけでございます。そうしたことから、とにかく代用監獄はどうしてもやめなくちゃいかぬだろうという意見が日弁連を中心に強くあるわけでございます。 私は、そうしたことの理由のほかに、もう一つ、これからの司法がどうなるんだろうかと。裁判員制度というものがあります。公判はどう考えても当事者主義というものが強く出てくるでしょう。そうした中で、捜査段階はどうなっていくんだろうか、こういうことにこれからの展望ということが重要なのではないか、こんなことを考えているわけでございますけれども、そういうことを歴史的に少し考えてみるために、日本の刑事司法の来し方を少し振り返りつつ、今後を展望してみたいな、こんなことを考えるわけでございます。 そこで、私がまず考えなきゃいかぬと思うのは、そもそも自白というものは何ゆえに求められるのか。捜査官が執拗に自白を求めると言われるわけですが、この理由は何だろうか。これに対する私の考え方は、その理由は、日本の刑事司法にはまだ昔の糾問主義的な要素が濃厚に残っているのではないか、こう思うわけでございます。 刑事司法、歴史をひもときますと、御承知のとおり、古代の民会というのがあります。大衆組織でみんなでやったんですね。被害者が訴えて、加害者が引っ張り出されて、みんなで裁判をする。これが裁判と言われたわけですが、初期当事者主義なんということも言われているわけです。 そうした時代から、いつ糾問主義と言われるのが発展したんだろうか。言われるところは、ヨーロッパにおいて国王の権力が非常に強くなった時代、中世の末期だと思いますが、そこらで起こった。有名なのは一五三三年のカロリーナ法典でございますけれども、その中では、結局のところ、糾問主義というのは、一人で、一人というか一部署で取り調べて、なおかつ自分で判決をするんですね。取り調べに当たるのが糾問官、こういうことでございます。カロリーナ法典では証拠が法定主義といいまして限定されておりまして、有罪にするのには必ず自白がなければならないとされた、こういう時代でございました。 これを見るときに、私は、ちょうど日本の江戸時代の奉行の制度、奉行所に符合するんじゃないかと考えているわけです。奉行の下役は、今の言葉で言いますと、捜査から判決書まで全部やるわけですね。お白州で奉行が判決言い渡しをすることになるんですけれども、まさしく糾問官ということになるんですね。しかし、お白州へと引き出されるまでには激しい、厳しい取り調べが行われるわけでございます。もちろん、拷問も行われて自白がとられていたわけでございます。 テレビ番組の「遠山の金さん」というのがありますが、あれがなぜ人気があるかと私考えたことがあるんですが、遠山の金さんはまさしく糾問官でありますから、自分で取り調べて判決をするわけです。しかし同時に、単なる糾問官としてではなく、調べられる方の立場にも立って、いわゆる弁護人的な役割もしている、それが人気を博しているのではないかな、こんなぐあいに考えるわけです。 話が余談になりましたけれども、洋の東西を問わず、糾問主義というものは、要するに一つの部署が取り調べと判決を同時にやる、つまり捜査部門イコール判決部門であるというところにあると思うんですね。 では、なぜそこで自白が求められるのかですが、結局のところ、捜査官が悪人だというのではない。人を陥れるという考え方ではない。一生懸命調べます。そして、調べた結果が、取り調べの結果が正しいんだろうなということを自白によって確認をしようとする、正当性を求める、こういうことではないかと考えているわけでございます。したがって、糾問主義においては自白がなければならないというような法制になってしまうということだと思います。 それで、西洋のことにちょっと戻りますけれども、イギリスでは大きな強い王権が出なかったと言われておりますものですから、糾問主義は発達せず、古代のいわゆる民会から発達した形で、民衆にかわって数人の陪審員が置かれた。この陪審制が発達しているわけでございます。 一方、大陸法の方でも、啓蒙主義思想というのがありましたから、ナポレオンなどを中心にしまして、人権を重んじた裁判をやろう、こんなことになったわけでございます。そこで、糾問主義については、捜査というものに裁判官を、裁判とそれから取り調べ官をまず分けていこう、取り調べは裁判官が関与する予審制にしましょう、こんなことになったそうでございます。 果たして、日本には、明治時代になってこの予審制を含むヨーロッパの法律が入ってまいったそうでございます。いろいろと言われますけれども、治罪法、それから旧々刑事訴訟法、旧刑事訴訟法というものを経てきたわけでございます。 予審制というのが日本にはありました。予審は裁判官がやるわけですけれども、強い捜査権、強制捜査権を持っておったわけでございます。その強制捜査権ということですが、裁判官が確かに持って捜査する。しかし、その実態は、実際の取り調べに当たっていただくのは警察であった。次第に警察が取り調べにおける力を持ってきた、こう言われ、戦前は特に、おいこら警察などという言葉が残されているようなぐあいでございます。 随分とちょっと講学的なことばかり言って申しわけないんですけれども、そんな中で、GHQのもとで、アメリカのいわゆる当事者主義訴訟というものが日本にももたらされたわけでございます。三者が行う。アメリカでは、イギリスと違って、陪審制のほかに検察官という、訴追官という制度もできておりました。これも入ってまいりまして、裁判官とそれから捜査する部門、そのトップは検察官でありますが、それと被告人、この三者が完全に対等な関係になるんだ、こういうことになったわけでございます。 当事者主義の本質は何かと言われるんですけれども、要するに、被告人、被疑者が取り調べの対象としての客体ではなくて主体になったんだ、こう言われるわけでございます。 そこで、長くなってしまっているんですけれども、私は、この新しい刑事訴訟法の導入に当たって、予審制が、戦前の予審判事が調べるというのが廃止されたんですけれども、この予審判事の持っていた強制捜査権というものがどこへ行ってしまったんだろうかと。ここに日本の戦後の立法の過誤がちょっとあったような気がするんです。 と申しますのは、現行の刑事訴訟法百九十八条でございます。これが代表的なわけでございますけれども、予審判事の持っていた強制捜査権、これが、一応は裁判官が許可状で勾留をするという前提があるんですけれども、勾留をされた後、捜査官の方がいつでも強制的に呼び出す、自分のところへと呼び出して捜査をするという権限を持っている。ここらのところがちょっと、予審制の廃止に当たってもう少し注意しなきゃいけなかったのかな、こんなことも考えております。 結果として、表面上のいろいろなパラダイムの転換にもかかわらず、日本では、非常に戦前に強かった捜査権というものも含めて、捜査が司法の中心になってしまい、裁判官はそれを、いろいろな証拠を法廷で受け取って自宅へと持ち帰って、捜査官の行ったことが正しいのかどうか、こういうことを確認するというような役割に堕してしまっているのではないか、こんなことを思うわけでございます。 明治、大正、昭和、平成の一部という時代を超えて、なおかつ糾問主義的な色彩が日本の刑事司法に残っているのではないか。この、私だけではない考え方でございますが、大臣いかがでしょう、こういった見方につきましては。
○杉浦国務大臣 先生の大変該博な御解説をいただきまして、私も戦前以前のことはよくわかりませんものですから、少なくとも、戦後の司法制度の中では、先生のおっしゃるとおり、糾問主義というのは、どこへ消えたのかとおっしゃるわけですが、ない。ただ、先生が前段でいろいろおっしゃっていました、自白の強要ということが留置場で起こりやすい、この点は、私は、今の法律、もちろん反対ではない、賛成なんですけれども、しかし、代用監獄制度が残る以上、そういう可能性は払拭できないわけでありまして、今後の検討として続けていかなきゃいけないと思っております。 これは、地域地域によって異なるんですね。私、全国を回ってみて、恐らく名古屋、広島もそうですね、高知もそうです、要するに、裁判所があって、検察庁があって、拘置所があって、弁護士会もあるんですね。しかも、町の真ん中にあります。みんな通ってきやすい、家族の人も会いにも来やすい。警察は分散していますけれども、恐らく警察からだって本庁に通いやすいでしょう。だから、それらの地域、ほかにもあると思います。昔の大体お城にありますから、そういうところは。そういうところは比較的、拘置所は捜査に被疑者段階でも利用されている可能性は大きいんじゃないかという感じがするんですね。 実際、司法の経済上からいっても、例えば、公判に行く人の移送ですね、小菅から東京地裁へ運ぶというのは大変です。これは、朝、夕、混雑しますし、時間もかかるし、人も要る。だけれども、名古屋みたいなところは、すっと運べばいいわけですから、移送も楽ですし、経済的にも、訴訟経済上、大変プラスだと思うんですね。 だから、そういうことを考えますと、将来、これは長きにわたって日本の司法が社会の支持を得て進展していくわけですけれども、願わくば、小菅を今度廃止する場合には、裁判所と検察庁と弁護士が一緒になる、この一画ですね、つくって、そしたら代用監獄はなくてもいいというふうになるんじゃないでしょうか。 先生のおっしゃった趣旨は、私なりに理解をさせていただきましたが、今回の代用監獄制度で、その現実的な面に着目して存続するということを前提にして法律を設定いたしましたが、しかし、将来の課題として検討するというふうにされていますのも、そういう趣旨が含まれていると思います。 いずれにしても、自白の強要、それによって、罪なき人が強要されたことによって、先ほどお話の島田事件もそうですし、人生をそれこそ棒に振るような、そういうことがないようにしなきゃならないのは、これは司法にかかわる者すべてが心がけなきゃいけないことですし、国民も望んでいるんじゃないかと思います。
○倉田委員 大臣から、将来検討すべき課題として残っておる、つまり、今回の法案によって代用監獄を恒久化するものではないという御趣旨をお聞きして安心をいたしました。 と同時に、確かに、若い弁護士さんたちの意見などを聞きますと、近くにあるということ、利便性ということも非常に重要だと思います。ただ、やはり問題は、警察の管理下に置くことがいいのかどうかということは、依然問題として起こるわけで、先ほどの刑訴百九十八条ということも同時に検討の対象にならなければならないのかなと考えておるわけでございます。 平野龍一教授、先年亡くなられましたが、この人がいろいろなことをこれについて書いておられます。自白というものは、取り調べる者と取り調べられる者との間に一種の心の通い合いができたときに初めてなされるものであって、そのためにはある期間の継続した接触が必要と言われる、しかし、この人間関係は対等なものではない、そういうことを言われた上で、監獄法の改正によって被疑者の勾留場所を留置場から拘置所へと移すというようなことになれば、狭い意味での人権問題ではなくて、取り調べのやり方自身が変更されるであろう、警察官が拘置所へと行って取り調べることになるであろうからだと。つまり、百九十八条の改正も平野教授は頭の中に必要と考えておられた。そうしますと人間関係としての対等性が保たれるのではないか、こういうことを言っておられるわけです。そして、平野教授は、代用監獄の廃止は、我が国刑事司法改革の突破口になり得るであろう、こういうことを言っております。 一方、戦後の刑事訴訟法の条文をつくられた団藤教授でありますけれども、平野教授の今の言を引用されつつ、被疑者の取り調べの問題の禍根をなす代用監獄としての留置場の問題、私は、時限立法の形であるにせよ、早期にこれを廃止しなければならないと思うと断言もされていることでございます。 平野先生は、亡くなられまして、まさか陪審制が、いや参審制が実現されるとは思っていなかったと思います。しかし、二十一年の五月からは参審制ができるわけです。私は、先ほど言いましたように、この参審制においては、いや応なく公判廷というものが大いに意味を持ってくる、裁判官が自宅で調書を調べて判決を下すという形は変わってくると思います。 問題は、捜査段階へと、果たしてその当事者主義が本当に捜査段階にまで及ぼせるかどうかだと思うんですが、考え方の問題があります。素人がたくさん裁判に参加するんだから、逆に捜査は緻密でなければならないという考え方もあると思いますし、いや、しかし、やはり人権尊重という立場から、あくまで当事者主義というのが、ただ真実発見のためだけじゃなくて、国家が、果たしてその取り調べられる人間を客体としてでなく主体として扱えるか否かという国家の品格にもかかわる問題だと私は思いますので、そんなことも含めて、参審制の行方、これはだれにもまだよくわかりませんけれども、公判廷重視主義とともに、捜査にも人権重視の思想がより進展していくのではないかと考えるところでございます。 一つだけ質問を最後にさせていただきますけれども、アメリカでは、既に先ほど柴山委員が申し上げた可視化の問題を通り越えて、一九六六年のミランダ判決によって、弁護人の立ち会いが保障されていると聞いております。このミランダ判決について、簡単にその内容を、結果だけでいいです、結論だけ。
○大林政府参考人 御指摘のミランダ判決とは、ミランダという人を被告人とする刑事事件において、アメリカ合衆国の連邦最高裁判所が言い渡した判決のことであり、身柄拘束中の被疑者を尋問する場合、尋問に先立って、黙秘権があること、供述すれば裁判で不利益な証拠となり得ること、弁護人の立ち会いを求める権利があること、資力がなければ弁護人を付してもらえること、この四点を告知しなければならない、それから、被疑者が弁護人立ち会い等を求めたときは、直ちに尋問を中止しなければならない。これらの手続に反する自白その他の供述は、証拠として使用することはできない旨の指摘がなされたと承知しております。
○倉田委員 ミランダ判決は、要するに、弁護人の立ち会いを被疑者が求めたときには、立ち会わせないでつくった調書等は証拠にできませんよ、こういうことでございますね。 もう時間がなくなりましたが、あと一点だけちょっと聞かせてもらいたい。 留置場の監視委員会というのができるということに条文上はなっておりますけれども、これは警察内部の者が委員になったのでは意味がないんですね。例えば弁護士とか外部の人間もその委員にするという考え方はありますか否か、これだけお聞きして終わりたいと思います。
○安藤政府参考人 留置施設視察委員会の委員は、これはあくまで都道府県公安委員会がそれぞれの判断によりまして任命するものであるわけであります。 ただ、この制度は、御案内のとおり、留置施設の運営状況につきまして、部外者の視点から御意見をいただいて、その透明性を確保することを趣旨としておりますから、各都道府県におきましても、当然にその趣旨を踏まえた人選がなされるものと我々は考えております。 具体的には、委員会の性質にかんがみまして、例えば弁護士等の法律関係者とか医師とか地域住民の代表等が任命されることが予想されるのではないかというふうに考えております。
○倉田委員 ありがとうございました。終わります。 —————————————
○石原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○石原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 次回は、来る四月四日火曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時一分散会