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162回国会参議院2005/04/20

憲法調査会 第7号

発言数
15
登壇者
6
会派数
5
開催日
2005/04/20

会議録

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) ただいまから憲法調査会を開会いたします。  この際、御報告をいたします。  これまでの調査を踏まえ、幹事会等において協議を行い、お手元に配付いたしました日本国憲法に関する調査報告書案を作成いたしました。  以下、その概要について御説明申し上げます。  憲法調査会においては、平成十二年一月二十日の設置以来、五年三か月余にわたり調査を行い、本日、調査報告書の議決を行うこととなりました。  本調査会は、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うこと」を目的として設置されました。設置時に、議案提出権は持たないことの確認及びおおむね五年程度を目途として調査を進める旨の申合せがなされております。特に参議院憲法調査会としましては、①国民とともに議論をする、②過去と現在を踏まえつつ、将来を見通して議論を行う、の二点を基本的な方針として調査を進めてまいりました。また、運営に際しましては、小数会派にも幹事会にオブザーバー出席を求める等、可能な限り全会一致を求めるという方針で進めてまいりました。  具体的な調査に際しましては、日本国憲法の三大原則である「国民主権と国の機構」「基本的人権」「平和主義と安全保障」そして「総論」の四つのテーマに従って、委員間討議、参考人質疑等を行い、さらに、四回にわたる中央公聴会の開催、四回の海外調査を実施いたしました。基本的には本調査会で調査を進めてまいりましたが、特に「二院制と参議院の在り方」については、参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきであり、弾力的かつ機動的に運営できる小委員会を設けることといたしました。なお、小委員会における調査内容の報告は、既に「二院制と参議院の在り方に関する小委員会調査報告書」として平成十七年三月九日に憲法調査会に提出をされております。  今回取りまとめました参議院憲法調査会の「日本国憲法に関する調査報告書」は、四部構成であり、第1部憲法調査会の組織概要、第2部経過の概要、第3部主な論点及びこれに関する各党・各議員の意見、第4部まとめから構成されております。第3部が本報告書の大半を占めておりますが、これは調査会で議論となった論点ごとに各委員の意見を整理したものであります。第4部は第3部の内容を受けて、調査会における共通の認識等が得られたものについて取りまとめております。  本報告書の特色は以下のとおりであります。  第一に、論点に関する意見の紹介の中で、報告書の取りまとめの時点において各党の意見として集約されたものについては、政党名を明記いたしました。第二に、できる限り多くの論点を取り上げ、報告書の取りまとめの時点において、各党において、「共通の認識が得られた」等の事項については、その旨を明記いたしました。さらに、第三に、「第4部 まとめ」におきまして、第3部の内容を①共通またはおおむね共通の認識が得られたもの、②意見が対立したものの一方がすう勢であると認められたもの、③意見が分かれた主要なもの、にそれぞれ取りまとめ、調査会における議論の状況が分かるように整理して記載いたしました。  以下、その総括とも言うべき「第4部 まとめ」について申し上げます。  憲法の各論点について、本調査会では、様々な意見が出されました。その結果、共通の認識が得られたものもあれば、見解が分かれたものもあります。したがって、この「まとめ」は最大公約数的なものにとどまることをまず一言お断りいたします。  なお、日本共産党及び社会民主党は、本調査会を憲法改正の足掛かりにすることは許されないとの前提の下、本調査会に参加し議論を行ってきており、殊更に論点を設定し意見をまとめ、方向付けすべきではないとのことでありました。しかしながら、本まとめにおいては、両党の意見を含んで整理しております。  第一に、主な論点のうち共通またはおおむね共通の認識が得られたものであります。  これは、五党、すなわち自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党の間で意見が一致した「共通の認識が得られたもの」、及び、党又は党内の一部に若干の異論があった「おおむね共通の認識が得られたもの」として、合わせて三十三項目について、共通又はおおむね共通の認識が得られました。詳細は報告書により御承知願いたいと存じますが、概要は以下のとおりであります。  まず、共通の認識が得られたものは、次のとおりであります。 (1)国民主権・基本的人権の尊重・平和主義の三大原則は、我が国に定着しており、これを今後も維持すべきであること、 (2)現行憲法は基本的に優れた憲法であり、戦後日本の平和と安定、経済発展に大きく寄与してきたと高く評価すること、 (3)「国民主権」の原則を今後も堅持し、さらに発展させていくべきであること、  次に平和主義と安全保障の関係では、 (4)平和主義の意義・理念の堅持、 (5)個別的自衛権について、我が国が独立国家としてこれを有することを認めること、 (6)日本が、国際社会の一員として、国際平和活動やODAを活用するなど国際協力に積極的に取り組んでいくこと、 (7)ODAなどの国際協力に関連し、世界の平和保障は、経済問題の解決をなくしては成り立たず、特に、南北問題や貧困などの解決が不可欠であること、  次に基本的人権の関係では、 (8)憲法三大原則の一つである基本的人権の重要性を評価し維持すること、 (9)国際人権法の尊重、 (10)女性や子供、障害者、マイノリティの人権の尊重、 (11)社会保障、教育、労働等の重要性は今後も変わらず、国はその保障に努力すべきこと、 (12)新しい人権については、原則として、憲法の保障を及ぼすべきこと、  統治機構の関係では、 (13)三権分立の重要性、必要性はこれからも変わらないということ、 (14)二院制と参議院の在り方の関係では、「二院制と参議院の在り方に関する小委員会報告書」で示された共通認識、すなわち、①二院制の堅持、②両院の違いの明確化のための、参議院改革の必要性及び選挙制度設計の重要性、③参議院議員の直接選挙制の維持、④参議院が自らの特性をいかし、長期的・基本的な政策課題への取組、決算審査及び行政監視・政策評価の充実など、衆議院とは異なる役割を果たすべきこと、⑤現行憲法の衆議院の優越規定はおおむね妥当であり、両院不一致の場合の再議決要件の緩和には慎重であるべきこと、 については確認されております。 (15)司法の迅速化、裁判の充実の必要性、 (16)私学助成の必要性、 (17)参議院の決算重視、  地方自治の関係では、 (18)地方財政について、国と地方の対等な関係を実現し、地方が真に自立するためには、健全な財政基盤が不可欠であること、 (19)住民自治の強化、 (20)基礎的自治体の強化、 (21)地方分権の推進、  憲法改正手続の関係では、 (22)憲法改正手続における国民投票制の維持、 の各項目であります。  次に、おおむね共通の認識を得られたものは、次のとおりであります。  天皇制の関係では、 (1)現在の象徴天皇制は定着し、今後も維持すべきこと、 (2)天皇の公的行為について、国事行為には該当しないが純粋な私的行為ともいえず、公的な意味がある行為、すなわち公的行為が存在すること、 (3)女性天皇を認めること、  次に、平和主義と安全保障の関係では、 (4)戦争の放棄を定める第九条一項の維持、 (5)自衛のための必要最小限度の組織の必要性、 (6)シビリアン・コントロールの重要性、 (7)国際連合を重視するが、安全保障理事会をはじめ改革が必要であること、  次に、基本的人権の関係では、 (8)外国人の人権を基本的には保障すべきこと、  次に、統治機構の関係では、 (9)議院内閣制について、衆参両院を基盤としたものであるべきこと、 (10)特別裁判所の設置の禁止の維持、  地方自治の関係では、 (11)国と地方の関係は、国が地方を支配監督するという従来の関係ではなく、対等な関係であるべきこと、 の各項目であります。  以上の三十三項目については共通又はおおむね共通の認識が得られたところであります。  次に、第二の「すう勢である意見」でありますが、これは自由民主党、民主党、公明党の三党がおおむね一致した意見でありまして、六項目でございます。  まず、(1)新しい人権について、憲法上の規定を設けるべきであり、特に、(2)プライバシー権、(3)環境権について、それぞれ憲法上の規定を設けるべきとする意見がすう勢となっております。  また、(4)内閣総理大臣・国務大臣の就任資格について、従来どおりとし、(5)予算単年度主義に関連し、複数年度予算の考え方を評価する意見がそれぞれすう勢となっております。(6)今後の憲法論議については、日本共産党及び社会民主党から強い反対が表明されましたが、憲法調査会において憲法改正手続の議論を続けるべきとする意見が、すう勢でありました。  第三は、「主な論点のうち意見が分かれた主要なもの」であります。これは、自由民主党、民主党、公明党の三党の間においても意見が一致しなかったもののうち、主要なものを取り上げております。二十項目でございますが、 (1)前文の理念・内容では、憲法前文に書かれるべき理念・内容について、 (2)天皇制の関係では、いわゆる元首と解すべきか、憲法に明記すべきかについて、意見が分かれました。  平和主義と安全保障の関係では、 (3)戦力及び交戦権の否認を定める第九条二項改正の要否について、 (4)集団的自衛権を認めることの是非について、①認める、②認めない、③制限的に認める、と立場が分かれました。さらに、認めるとする立場であっても、憲法で明記すべきか、憲法解釈により可能であるかについては、意見の対立がありました。 (5)自衛隊の憲法への明記についても意見が分かれました。  また、(6)国際貢献について憲法上明記するか否か、さらに、PKOや国連の決定に裏打ちされた多国籍軍等にも積極的に参加するかどうか等についても意見が分かれました。 (7)緊急・非常事態について新たに憲法上対処規定を置くか否かについても、意見が分かれております。  基本的人権の関係では、 (8)人権と公共の福祉の関係、(9)権利と義務の憲法上の取扱い、(10)外国人への地方参政権の付与について、意見が分かれました。 (11)表現の自由に関しては、メディアやIT技術の発達に即した規制の在り方について意見が分かれ、(12)政教分離については、国家と宗教との分離の度合いをいかに解するか、日本の歴史や伝統、文化との関係から、意見が分かれました。  統治機構の関係では、(13)内閣を強化すべきという意見、逆に国会を強化すべきであるという意見などが出されております。また、(14)首相公選制の導入の是非、(15)憲法裁判所制度の導入の是非について、さらに、(16)私学助成について憲法改正を要するか否か、(17)会計検査院を国会あるいは参議院に附属させるか否かについて、意見が分かれております。  地方自治の関係では、(18)住民投票制の法定化、(19)道州制導入の是非について、意見が分かれました。  さらに、(20)現在の憲法改正の要件については、変更を求めるべきか否かについて意見が分かれました。  これらの課題については、本報告書を契機として、国民各層の間においても更なる議論がなされることを望むものであります。  以上、御報告申し上げます。  本案について発言を求められておりますので、この際、順次これを許します。若林正俊君。

若林正俊自由民主党

○若林正俊君 自由民主党の若林正俊でございます。  参議院憲法調査会は、平成十二年一月二十日に設置され、日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行い、おおむね五年の審議期間を終え、ただいま関谷会長から報告されましたとおり、報告書を取りまとめ、これを議長に提出する運びとなりました。まずは、この間の歴代会長、会長代理、幹事の皆さん、そして委員各位の真剣な取組、御尽力に深く敬意を表したいと思います。  我が国は、昭和十六年十二月に第二次世界大戦に参戦し、昭和二十年八月にポツダム宣言を受諾して、連合軍に無条件降伏しました。そして、連合軍の占領政策として起草された案を基にして、政府は帝国憲法改正案を公表し、衆議院、貴族院の審議を経て、昭和二十一年十一月三日に日本国憲法が公布され、翌昭和二十二年五月三日に施行されました。  この日本国憲法が公布されたとき、私は、国民学校、今の小学校の六年生でした。悲惨な戦争、敗戦による屈辱と虚脱、政治、経済、社会の激変による苦難に直面していた親の世代がこの新しい憲法の理念を新鮮に受け止め、新しい国づくりに意欲を燃やし、生活再建と戦後復興に立ち上がっていった姿を鮮明に記憶しています。  私たちの世代は青少年期からこの現行憲法の下で学び、成長し、今日に及んでいます。そして、今日の日本の発展の基盤は、この現行憲法の三つの理念、人権の尊重、国民主権、再び侵略国家にならないという平和主義にあるとの認識を戦後生まれの世代とともに共有しています。  申し上げるまでもなく、憲法は国家のあるべき姿、形、国家目標や国家統治の仕組みなどを定める国家の最高法規ですから、当然のことながら、国家も国民も憲法を尊重し、これを守らなければなりません。  しかし、現行憲法が制定された当時と今日では、世界情勢も、我が国の政治、経済、社会も、人々の価値観も大きく変わっています。そのため、現行憲法の定める規範と現実との乖離を生じています。そのため、変化の激しい二十一世紀の今日、将来を展望して現行憲法を見直す必要があるのかどうか、この問題意識が憲法調査会を通じての課題であったと思います。  自由民主党は、昭和三十年の立党に際し、平和主義、民主主義、基本的人権の尊重の原則を独立後の国民の名の下に確認し、現行憲法の自主的改正を図ることを明らかにし、今日まで党内において現行憲法の改正に組織的、精力的に取り組んでまいりましたし、現在も新憲法制定推進本部を設け、十一月の結党五十周年を期して新憲法草案を提案できるよう起草委員会において検討中であります。このような自由民主党における検討の状況、検討の方向などについては、本調査会において私からも、また我が党委員からも説明をし、御紹介をさせていただきました。  詳細はこの報告書に譲りますが、主な論点のうち、自由民主党、民主党、公明党、日本共産党、社会民主党の五党で意見が一致し、共通の認識が得られたもの、及び、党又は党内の一部に若干の異論があった、おおむね共通の認識が得られたものが合わせて三十三項目、自由民主党、民主党、公明党の三党がおおむね一致した意見であったものをすう勢である意見と明らかにしたのが六項目、意見が分かれた主要な項目二十項目を明らかにすることができましたことは大変意義のある成果であり、参議院らしさを反映できたものと考えています。  特に、二院制の堅持と参議院の在り方について、会派を超えて共通の認識が得られたことは更に大きな成果と評価できると思います。  今後の憲法論議につきまして、現在の憲法調査会の骨組みを維持しながら憲法改正手続の論議を続けるべきとする意見がすう勢でありましたが、自由民主党は、さらに憲法改正手続、国民投票制度について早急に整備すべきであり、本調査会において引き続き調査検討を行い、法律案の立案、審議ができるようにすべきであると考えていることを申し述べ、この憲法調査会と衆議院における憲法調査会の調査結果の報告書が発射台、スタートとなって、国民の理解と支持の下に新しい憲法の制定にまで進むことを熱望し、本報告書の議長への提出に賛成の討論を終わります。

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 次に、簗瀬進君。

簗瀬進民主党・新緑風会

○簗瀬進君 民主党・新緑風会を代表して、参議院憲法調査会の調査報告書について賛成の立場で討論を行います。  まず、平成十二年一月二十日以来、五年余の長期間にわたって真剣な議論を積み重ねてこられたすべての会派及び所属議員に対し、心から敬意を申し上げたいと思います。  その結果として、六項目のすう勢意見、おおむねを含む三十三項目の共通認識、二十項目の分かれた意見に整理されましたが、その整理の仕方や内容についても賛成をいたします。  ちなみに、衆議院と参議院を比較をしてみれば、参議院は、政党のくくりの中で、三党が一致したことによるすう勢意見、そして五党が共通認識に立ったという意味での共通認識等の政党くくりで整理をしたのが特色だと思いますし、結果として自民党、民主党、公明党、共産党、社民党も含めて共通の認識に立てたものが三十三項目に上ったということは、大変参議院らしさを表しているのではないかと思う次第でございます。  戦後六十年、いよいよ我が国は歴史の新しい扉の前に立っていることを実感いたします。現行憲法は、軍国主義復活の防波堤になり、平和主義を我が国の国是とすることにおいて大変な功績を残しました。しかし、世界情勢の様々な変化の中で、我が国は現実的な対応に迫られた結果、かなり無理な憲法解釈を強いられてきたことも事実です。そして、そのことが憲法の形骸化をもたらし、民主主義の背骨ともいうべき法の支配の観念を著しく低下させているといった憲法体制の危機も事実として重く受け止めなければならないと考えます。これ以上無理を続ければ、やがて憲法秩序は崩壊し、例えば自衛隊をブラックボックスの中で無原則的に展開させるといった恐るべき無法体制をこの国に出現させかねません。正に、そんな状況の中で法の支配を真に実効あらしめるため、憲法改正を現実のものとして直視しなければならないと考えます。  いよいよ本日で憲法調査会の一応の締めくくりを迎えますが、節目に当たって何点か私自身の意見を申し述べたいと思います。  一つは、歴史の十字架ということでございます。この言葉は司馬遼太郎の述べた言葉でもあります。憲法改正と同時並行して行わなければならないのは、求められたからではなく、自主的に行う歴史の総括の真剣な取組であります。日中関係の現下の危機的な状況をもたらしている直接的な原因は、国内に平和的に存在する外国人の安全を積極的に守ろうとしない中国政府にあることは言うまでもありません。しかし、戦争の記憶を簡単に風化させ、経済関係ですべて処理できると考える我が国の安易な姿勢も問われなければなりません。憲法改正を契機にして、我が国がナショナリズムに席巻されるのではないかといった見方や懸念は、アジアだけではなく、欧米の国々にあることも忘れてはならないと思います。  二つ目は、憲法改正権は国会ではなく国民にあるという当たり前の原則でございます。  国会が国民から遊離して憲法改正を発議し、著しい低投票率で終わったとするならば、新たな憲法規定も、それどころか発議者としての国会自身も国民から否定されたことになってしまいます。そんなことのないよう、しっかりと国民の論議を巻き起こしていかなければならないと思います。  三つ目は、手続の重要性です。  実体法の議論と同じレベルで重要なのが手続法の議論です。デュー・プロセス・オブ・ローという言葉どおり、民主主義の本質は適正な手続によって担われているのです。このことを軽視してはならないと思います。  憲法調査会はむしろ手続法の調査をし、改正規定の本体と手続法の議論を国民レベルに広げていくといった第二ステージに進むべきであると願って、討論を終わります。

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 次に、山下栄一君。

山下栄一公明党

○山下栄一君 公明党を代表し、参議院憲法調査会の報告書議決に際し、意見を述べさせていただきます。  五年四か月に及ぶ参議院憲法調査会における憲法論議がこのたび報告書にまとめられ、ひとまず区切りが付けられたことに、私自身、感慨深いものがあります。戦後六十年を経た今日、戦後生まれの私が国会議員という立場を与えていただき、国の最高法典である憲法を広範かつ総合的に調査する役割の一端を微力ながら担わさせていただきましたことに感謝いたしたいと思います。  そもそも本憲法調査会は、基本方針として確認されたように、最初に改憲ありきとのねらいを持った調査会ではなく、各党各会派の立場の違いを乗り越えて広く国民的議論を喚起することが大目的だったと認識しております。  しかしながら、論点整理の仕方として、単なる意見の羅列で終わらせないで、立法府として一定の方向を持って意見を集約できたこと、さらに党の枠を超えて率直な考えを披瀝できたことを評価したい。具体的には、基準を設けて、一、共通の認識を得られたもの、二、すう勢が認められたものに分類し、さらに、三、主要な論点ごとに対立点を明らかにしたことは極めて妥当なまとめ方であると考えます。  さらに、二院制の在り方に関する小委員会を設置し、集中的かつ熱心な議論を行い、参議院の独自性を全会一致で確認できたことは参議院憲法調査会の責任を十分に果たしたものと考えております。  我が党は、現行の日本国憲法は優れた憲法であり、戦後の日本の平和と安定、発展に大きく寄与してきたと高く評価してまいりました。中でも、その根幹を成す国民主権主義、基本的人権の尊重、恒久平和主義の憲法三大原則は不変のものとしてこれを堅持すべきだとの公明党の強い主張が各党共通の認識に位置付けられたことは大いに意義があったと考えます。  我が党の憲法議論の方向性は二十一世紀の日本をどうするかとの未来志向に立ち、国民主権をより明確にする視点、国際平和協力を進めることによる安全保障、とりわけ人間の安全保障の視点、さらに、プライバシー権や環境権など、新たな人権を確立する視点から論議を深めております。  公明党は、現行憲法は維持しつつ、そこに新しい条文を書き加え、補強していく加憲という立場を打ち出してまいりました。真に憲法上の明文を書き込む必要があるものは何か、憲法をいじらずとも他の法律改正や行政の改革で対応できるものは何か、また、加憲するとすれば項目のプライオリティーをどう考えるべきか、公明党としては、今後、こうした観点から徹底した議論を積み重ねてまいりたいと考えております。  今後の国会における憲法論議については、拙速を避け、時間を掛けて次のステップを模索しなければなりません。憲法調査会の名前はどうあれ、その枠組みは維持して、引き続き憲法論議を行うべきであり、特に憲法改正手続法としての国民投票法案(仮称)を審議する場をつくるべきであると考えます。  公明党は、平成十一年の党大会において、三大原則を不変のものと確認した上で、タブーを設けず、憲法についての国民的議論を展開すべきとの論憲の立場を明らかにし、実質的な憲法論議をスタートさせました。そして、一昨年の党大会で加憲の立場を明確にし、今日に至っております。  衆参両院における報告書が出そろったところで、これからいよいよ国民的議論が本番を迎えるのだという認識に立っております。時あたかも我が国の歴史認識が問われる国際環境の中で、報告書の内容に縛られることなく、縦に過去、現在、そして将来の日本を見据え、横に全世界を見渡し、冷静な議論を積み上げていくことが真に国益にかなう道であると信じて、公明党らしい堅実な憲法論議に取り組んでまいりたいと決意を述べ、意見表明を終わります。  以上です。

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 次に、吉川春子君。

吉川春子日本共産党

○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、参議院憲法調査会報告書に反対の意見表明を行います。  憲法調査会は、二〇〇〇年一月、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うことを目的とし、議案提出権を持たない、調査に限定をした機関として設置されたものです。  日本共産党は、日本国憲法の歴史的、現代的意義を明らかにするとともに、憲法の諸原則に照らして現実政治を点検する調査こそが憲法調査会の目的、性格に沿うものであることを主張し、その立場で調査に臨んできました。  憲法調査会報告書は、規程どおりに、五年間の調査の経過及び結果を反映したものでなければなりません。ところが、本報告書は、恣意的な論点を設定し、共通の認識、すう勢などと改憲に向けた方向付けを行っています。これは本調査会の目的と性格を逸脱するものであり、認められません。  報告書は、憲法九条の条文改正の有無、自衛隊の憲法上の位置付けを置くことの是非、集団的自衛権を認めることの是非、集団的自衛権を憲法に書き込むことの是非、緊急・非常事態法制について憲法に規定を置くことの是非などの論点を掲げて整理し、正に九条改憲に向けた論点整理としています。しかも、こうした論点について、共通の認識、おおむねの認識が得られたもの、すう勢である意見などと強調していることは重大です。  例えば、九条一項の維持はおおむね共通の認識とし、九条二項について条文改正と維持で意見の対立があったと記述しています。憲法九条は一項、二項が不可分一体となり、前文と併せて恒久平和主義を構成しているものであり、殊更一項、二項を分けて評価することによって九条改憲を誘導していると言わざるを得ません。  さらには、国際貢献の姿勢、国際平和活動などについても共通認識があったとして、自衛隊の海外活動を憲法上に位置付けようとしている点も看過できません。  また、主な論点について政党間で共通の認識があったなどとしていますが、元々憲法調査会は政党間での改憲の論点や意見のすり合わせを行う場ではありません。実際、そうしたことを行っていないのにもかかわらず、報告書において、五党の意見の一致とか三党の意見の一致などとすることは事実経過に反しており、認められません。  なお、環境権などの新しい人権についていえば、憲法十三条、二十五条などに立脚した国民の闘いによって確立されてきたものであって、その実現を妨げている現実政治を変えることこそが必要です。このことは多くの参考人、公述人の意見でもありました。  重大なことは、憲法調査会において論議を続けるべきという項目に追加して、国民投票制度の改正手続の議論を続けるべきことがすう勢であると明記したことです。  本調査会は、報告書を提出することで任務を終了した以上、速やかに幕を閉じるべきです。  日本国憲法は、さかのぼればマグナカルタ、そしてフランス人権宣言やアメリカ独立宣言などを踏まえた近代立憲主義に立脚し、個人の尊厳を確保するための伝統的な自由権に加え生存権規定を置く、世界にも豊かな人権規定を持つ憲法です。  また、憲法は侵略戦争を反省し、二度と再び戦争をしないと世界に公約したもので、九条改定はその公約を破棄するに等しいと言わなくてはなりません。このことがアジア諸国の日本への信頼を大きく崩すことは、火を見るよりも明らかです。  日本がアジアにおいても世界においても信用される国になるためには何をなすべきか。過去の侵略戦争について、ドイツはナチの戦争犯罪を徹底的に反省し、EUでも世界でも一定の信頼を得ています。侵略戦争を真摯に反省し、それを行為に表すこと、憲法九条を守るということが日本の繁栄と国民を守る道です。  憲法九条は、第二次世界大戦でアジアの二千万人、日本の三百十万人の人々の命を始め、多くの犠牲の上に築かれたものであり、二十一世紀のアジアと世界で日本が生きていくためには、これを守り抜くことが不可欠です。九条は日本の宝であり、アジアの宝です。  日本共産党は国民とともに日本国憲法を守り抜く決意を申し上げて、意見表明といたします。

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 次に、近藤正道君。

近藤正道社会民主党・護憲連合

○近藤正道君 社民党の近藤正道です。調査報告書の議決に当たり、最後の意見表明をさせていただきます。  第一に指摘しておきたいことは、この報告書は憲法調査会当初の確認を逸脱しているということであります。  憲法調査会設置の際、各会派は、調査会の目的は改憲を目指すものではないことを確認いたしました。しかしながら、報告書には、憲法調査会において憲法改正手続の議論を続けるべきとする意見がすう勢であったと明記されてしまいました。これは、「日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行う」と調査目的を限定した調査会の趣旨に反しており、しかも改憲の方向付けをしないという確認に実質的にもとるものであります。  当初の確認に基づくなら、報告書はこの五年間の調査の経過と結果についてのみ記述すべきであり、一定の方向付けや今後の課題などの項目は盛り込むべきではありません。加えて、報告書を参議院議長に提出した後も、なお憲法調査会を存続させることなどあってはならないことだと考えます。  私は、今月五日と十二日、二度にわたって提出をいたしました意見書の中で、憲法調査会は報告書を議長に提出することをもって完全にその役割を終えるべきと主張いたしました。しかし、私の主張は入れられませんでした。  私は、憲法調査会を存続させる目的が憲法改正手続の議論をすることであることに強い危機感を抱いております。一部政党の最近の言動を見聞きしておりますと、私の危機感は単なる思い過ごしではないと感じております。  第二は、環境権やプライバシー権など、いわゆる新たな人権について憲法上の規定を設けるべきとする意見がすう勢であったと報告書に明記されたことであります。  私は、プライバシー権や環境権については憲法上の規定を設けなくとも現憲法で十分に対応できるし、解釈で十分読み込めると考えております。しかし、そのことについて調査会の中で意見の一致を見ることができなかったこと、これらの権利の憲法上の明記が調査会のすう勢であるとされたことは残念であります。  第三は、にもかかわらず、憲法第九条を改正する意見は憲法調査会において多数を占めるに至らなかったということであります。これは、良識の府参議院の存在を改めてしっかりと国民に示すものであり、二院制の良さが現れたものと思っております。国民の多数は第九条の改正を望んでおらず、衆議院と比べ参議院は国民の声を正しく反映していると思っております。  私は、第九条の平和理念の先見性と人類史上の意義を高く評価いたします。一方、第九条、とりわけ第二項の役割を否定し、この国を戦争を否定する国から戦争のできる国へと変質させていく方向があります。  私は、今こそ第九条の理念を国際社会の規範として生かし、広げていくことが重要だと強く感じております。中国や韓国などにおけるいわゆる反日デモの背景に、我が国の歴史認識の問題があることは紛れもない事実であります。こうしたとき、参議院憲法調査会が第九条改正の方向を示さなかったことは、当然とはいえ評価されるべきだと考えております。  第九条は、さきの大戦の多大な犠牲と反省の中から生まれた日本とアジアの国々との不戦の誓い、約束であります。それが相互信頼の基礎を成してきたという事実を決して忘れてはなりません。  私は、現憲法は全体として良くできており、現在の状況にも十分通用する普遍的価値を有し、基本的に改正の必要はないと考えております。にもかかわらず、調査会を存続させ、改正手続の議論の場を残し、一部であれ憲法改正の方向に誘導しようとする姿勢は納得できません。  よって、調査報告書の内容には反対であることを申し述べ、私と社会民主党の最後の意見表明とさせていただきます。  以上であります。

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 調査報告書についてお諮りいたします。  お手元に配付いたしました日本国憲法に関する調査報告書案を本調査会の報告書とすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 多数と認めます。よって、本案を本調査会の報告書とすることに決定いたしました。  本調査報告書は、私から議長に提出をいたします。     ─────────────

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) この際、お諮りいたします。  ただいま議決いたしました調査報告書につきまして、議院の会議におきましても報告の申出をすることに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) 多数と認めます。よって、本調査報告書につきまして、議院の会議におきましても報告の申出をすることに決定をいたしました。     ─────────────

関谷勝嗣自由民主党

○会長(関谷勝嗣君) この際、一言ごあいさつ申し上げます。  本調査会は、平成十二年一月、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うため設置されました。以来約五年間にわたり、憲法を「総論」、「国民主権と国の機構」、「基本的人権」及び「平和主義と安全保障」の四つのカテゴリーに分けて調査を行ってまいりました。  その間、百名を超える各方面の有識者の方々を参考人としてお招きし、貴重な意見を伺ったほか、国民とともに議論するという基本方針を踏まえ、四回にわたって公聴会を開催をいたしました。また、昨年二月には二院制と参議院の在り方に関する小委員会を設置し、参議院の在り方について集中的な議論を行うなど、様々な角度から調査を重ねてまいりました。  これら委員の皆様の真摯な議論を踏まえ、本日、調査報告書の議長提出に至りましたことは、大変意義深いことであると存じます。  最後に、設置以来、本調査会のために御尽力いただきました幹事及び委員の皆様方を始め、御協力をいただきました皆様方に対し心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十一分散会

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