法務委員会 第27号
- 発言数
- 228 件
- 登壇者
- 24 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 2004/05/19
会議録
○柳本委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、参議院送付、破産法案及び破産法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 この際、お諮りいたします。 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官吉田英法君、金融庁総務企画局参事官西原政雄君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、厚生労働省大臣官房審議官大石明君及び厚生労働省年金局長吉武民樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○柳本委員長 次に、お諮りいたします。 本日、最高裁判所事務総局園尾民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内おさむ君。
○山内委員 民主党の山内おさむでございます。 昨日、参考人の三人の先生方に委員会に来ていただきまして、貴重な御意見をいただきました。まず、その関係で、私が当日お伺いをいたしました包括根保証等の問題について質問をさせていただきます。 企業が銀行からお金を借りるときに、代表者それから取締役、そういう方の連帯保証人を求めているケースがほとんどだと思います。昨日出られました東京ガスの参考人の方がお話ししておられましたけれども、東京ガスのような大きな会社では連帯保証人に役員さんがばんばん判こを押すというようなことはないようだと言っておられましたけれども、中小あるいは零細企業とか個人商店の場合には、例えば、そのほかに、身内以外の第三者まで判こを要求するということもございまして、一たん企業が倒産をした場合に、その連帯保証人は保証債務の履行にみんなが難渋するというような事例が数多く見られると思っています。 その中で、私は、こうやって破産法の整備をすることはもちろん大切なことなんですが、要は破産宣告を申し立てないような企業であり人間をつくらなければいけないと思っておりまして、一番最後に青山教授が、やはり消費者教育、そういう、借金をしてはいけない、するにしても計画をきちんと立てられる、そういう人間教育をすべきだ、それが一番大切なことなんだと言われて、多少我が意を得たりみたいなところもございました。 その中でも、通常の連帯保証、つまり一つの借り入れをしたことに伴ってそれに保証人が何人かつく、そういうケースはまあ考えられなくもない。しかし、私が例えば契約書を見させてもらったときに、その当該の、例えば一千万の借り入れをするときに判こを押すときに、それ以前に企業が負っていた借金についても保証します、一千万の判こを押して、一千万だけだと思っているのに、実はその判こを押した以降に企業が借りた分についても保証の責任を問いますよというような文言、これを包括根保証と一般的に言っているようなんですが、こういう保証の仕組みがございまして、企業が倒産したら、それに応じて、保証判を押した連帯保証人全員がまた個人破産せざるを得ないという状況も生まれているようです。 私は、この包括根保証制度というのは大変問題があるんじゃないかと思っているのですが、政府の御見解をお伺いしたいと思います。
○房村政府参考人 御指摘のように、中小企業等が資金調達のために融資を受ける場合には、一般的に保証契約が締結されるのが通常であるように聞いておりますし、また、保証契約の内容については、現在、法律上特段の制限がありませんので、御指摘のような保証期間や保証金額に定めのないいわゆる包括根保証、これが用いられることが多いということも聞いております。その結果、主たる債務者が破綻をいたしますと、保証した人が非常に過大な責任追及を受けて過酷な結果になる、こういうことが問題ではないかという指摘がございます。 このような包括根保証については、判例で個別の救済を図ったり、あるいは、関係省庁においても実務運用面での改善策等を検討して、それも実施されているところでございますが、企業倒産が多発しております現下の経済情勢を踏まえますと、保証契約の内容を適正化するためのより直接的な措置を講ずる必要があるのではないか、こう思われるわけでございます。 そこで、ことしの二月に、保証制度の見直しについて法制審議会に諮問いたしまして、現在、法制審議会の保証制度部会において、根保証契約、特に包括根保証について検討を進めているところです。検討の内容といたしましては、保証期間とか保証金額の限度を定めるというようなことを内容とする措置を中心として審議が行われているところでありまして、できるだけ早く、本年中には結論を得まして国会に関係法案を提出したい、こう考えているところでございます。
○山内委員 最高裁の民事局長も、この破産、倒産処理については最高裁の中の理論的な支柱の方だと聞いているのですが、こういう包括根保証によって、例えば、一件の倒産事件と五人の個人破産と合計六件ずつふえていくとか、そういうような事態は、破産事件の増加ということで、裁判所の書記官や裁判官の手当てもしっかりしなくちゃいけませんし、費用もかかるということで、やはり破産事件の申し立て件数については減少に努めなければいけないと思うんです。 日々そういう裁判実務に当たっておられたり、あるいは最高裁の重要な職におられまして、この包括根保証制度についての問題点、それから多少、地方裁判所等のレベルで、本当に酷な場合には制限して、つまり、包括根保証人でも保証しなくてもいい、限定的に責任を負ってもらえばいいというような判決も出ているようでございますけれども、しかし、それも裁判にかけて初めて、貸し手と借り手とが、裁判所がどういう判断を下すのかなというきちんとしたメルクマールもないままに裁判所で判断を受けてくださいというのも、またそれも、貸す側にとっても、いつ包括根保証契約が一部制限されるのかも不安定ですし、それから借りる側にとってもやはりそういう不安はつきまとうわけで、社会的に安定した生活を送るべきだという国家の政策からしても問題だと思うんですが、その辺の局長の御認識を聞きたいと思います。
○園尾最高裁判所長官代理者 包括根保証の事例は、倒産関係の実務をやっておりますと大変多く目にするものでございます。特に、包括根保証をした当時には、会社財産についてそのような大きな債務が生じるというように考えていなかったものが、倒産という事態になって急にその債務額などを知らされて、これについて、何とか破産をしたくないということで、いろいろと心労が重なるという人がたくさんいるわけでございます。 まず、破産をしたくないというのは当然の気持ちですので、これを平成十二年の四月から施行されました民事再生手続で何とか救済ができないものだろうかということで、民事再生手続の申し立てをした会社の関係者につきましては、これは負債額にかかわらず、二十五万円で再生の申し立てをすることを認めるということをやったわけでございます。その結果、破産に至らないで、債権者の理解を得ながら、再生計画を立てて弁済をするというような経営者も出てまいりました。 ただ、これは数が大変限られておるということで、多くのものは破産を選ばざるを得ないという状況になっております。特に、法人の申し立てがありますと、最近では、代表者個人あるいは取締役、役員の破産申し立ても当然に伴ってくるというくらいに多くなっておるわけでございます。 そのような役員について、少額管財手続といいまして、一件について、会社とともに申し立てをするならば、会社についての二十万円の予納金で保証人も一緒に破産宣告をして、破産手続を進めて、最終的には免責を得てもらうというような、より苦痛の少ない手続も考案しておるような状況でございますが、さらに何らかの法律的な手が加えられまして、このような問題点について適切な解決が図られればなおいいというように思いながら、日々、たくさんの事件について工夫を重ねておるという状況でございます。
○山内委員 最高裁判所から見ても破産事件の処理については随分苦労をしているということなんですが、法制審議会での議論に任せるというのももちろん大切なことでありますけれども、政府の方針として、例えば保証を、包括ではなくて、例えば五年間なら五年間しか、包括根保証契約を締結した場合でも五年間しか責任を負わせませんとか、あるいは、一回判こを押した金額が一千万なら、包括根保証契約を締結させる場合でも、例えばその五倍とか十倍の金額以内に限定していくというような法案をつくる。つまり、限度額も期間も定めない包括根保証については無効とするというような方針が政府として出せないものなんですか。
○房村政府参考人 まさに今御指摘のような点を法制審議会で御議論いただいているところでございます。 どんな点が議論されているかを簡単に御紹介いたしますと、まず、限度額の点については、根保証契約を結ぶ場合には必ず限度額を定めなければいけないということが検討の対象となっております。したがいまして、単に浮動的に包括的な債権を保証するということでは無効になる、具体的な限度額を定めなければいけない、こういうことを規制の内容とするかどうかが一つの論点でございます。 それからもう一つは、保証期間。御指摘のように、五年程度までの範囲で保証期間を定めなければならない、そういうようなことは考えられないかということが議論になっておりますし、また逆に、期間を定めない場合には、三年程度を経過したときには確定請求ができる、その時点で保証される債権の範囲が確定する、そういうようなことも考えられないか。そういうような幾つかの意見が出て、まさにその議論をしているところでございまして、間もなくそういった議論を取りまとめまして、中間試案として公表して、パブリックコメントにかけるということの段階でございます。
○山内委員 私も、この法制化については、例えば代表取締役が個人保証をするときには、代表取締役は経営計画も全般的に見られて、いつ、どれくらいの金額を借り入れしようかしまいかということも全般的に決定する権限があるわけですから、普通の平取締役や名目取締役と比べてもやはり個人責任は重くすべきだとか、そういう議論があるというのはよくわかるんですけれども、やはり大きく見て、破産事件がふえるということは社会的にはやはり問題だと思いますので、政府としても、しっかりと自分の見解を持って取り組んでいただきたいと思います。 金融庁に来ていただいておりますが、民主党はマニフェストの中で、連帯保証人については、特に政府系の金融機関から外していって、そして、それを民間の金融機関にも、連帯保証人、個人保証をとらないような仕組みに、社会にしていこうということを主張しているのですが、金融庁の現状の認識と、それから、包括根保証については各金融機関にどういう指導をしているのか、まずお伺いしたいと思います。
○西原政府参考人 お答え申し上げます。 今御指摘の包括根保証の問題、これにつきましては、やはり、包括根保証契約を締結いたしますと、保証契約の内容につきましては法律上の特段の制限が設けられていないということもございまして、どうしても、主たる債務者が破綻いたしますとその保証人に過大な責任追及が行く、その結果として非常に過酷な結果となりがちであるということは、我々も十分、そういう御指摘があるということを承知しております。 したがいまして、私どもといたしましても、金融機関の融資のあり方の問題になるわけですが、これにつきましては、保証ですとかあるいは担保、こういったことに過度に依存してはいけないというふうに思っておりまして、やはり、融資をする際には相手方をよく見て、その際には、相手先の事業計画がどうなっているか、あるいは財務の状況はどうなっているか、あるいは返済財源はどうなのか、いろいろな、成長性も含めて、相手をよく的確に把握した上で、健全な借り手に対しましてはその信用リスクに応じた金利の設定をする、我々、プライシングと呼んでおりますけれども、そのような形で適切な融資を行っていくことが重要であるというふうに認識をしております。 そういう観点から、我々の取り組みといたしましては、金融機関に対して、担保あるいは保証の過度な依存はしてはいけない、そうじゃない新たな融資制度への取り組み、これを繰り返し要請をしてきているところです。 例えば、昨年の三月二十八日には、リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム、こういうものを策定いたしまして、その中におきまして、融資に当たって、事業からのキャッシュフローを重視し、担保、保証に過度に依存しない融資や、第三者保証が過度なものとならないようにするというような内容をその中に盛り込んでございます。それを実施するようにという要請を十五年の三月三十一日に全金融機関にさせていただいております。 そのほか、金融庁の中に、昨年、新しい中小企業金融の法務に関する研究会というのを設けまして、七月の十六日にはその研究会の報告書が出てございます。その中では、やはりいろいろな指摘がございまして、それを踏まえて、金融機関に対しまして、個人保証の必要性の見直し等について検討するように要請をさせていただいております。 そのほか、年末の中小企業金融の円滑化に関する意見交換会、これは大臣が主宰して、民間金融機関の代表者、あるいは政府系金融機関の代表者も入っておりますが、そういった集まりにおきましては、やはり事業からのキャッシュフローを重視して、担保、保証に過度に依存しない融資の促進を図るようにというようなことで、個人保証の利用に当たっては過度なものとならないように要請をさせていただいております。 そのような形で各種の要請をさせていただいておりますが、当方といたしましても、今後とも、この担保、保証に過度に依存しない新たな融資制度に対する金融機関の取り組み、これをぜひ促していきたいというふうに考えております。
○山内委員 言われていることは、それは当然なことだと思うんです。ですから、ただ実際、包括根保証、つまり期間も限度額も定めないで、過去の借金から将来の借金までも背負いますというような不動文字が印刷をされている、そういうことについて、例えばどう指導するのかということを聞きたいんですけれどもね。
○西原政府参考人 おっしゃられましたとおり、包括根保証の場合には、今御指摘のようないろいろな問題を抱えてございます。 したがいまして、私どもは、先ほどの研究会、その報告にもいろいろな指摘がございました。それを踏まえまして、さらに我々としては、いわゆる事務ガイドラインと称しておりますが、監督に際しての指針というのを設けてございまして、その中では、やはり何といってもしっかりと説明をするということが大事であるという観点から、個人保証契約については、最悪のシナリオ、すなわち実際に保証債務を履行する事態、それを想定した説明をなされているかどうか、それから、実際に、特に第三者との包括根保証契約につきましては、保証人の要請があれば債務者の借入残高等の情報提供を行うというようなことを含めて、それをしっかりとやるようにというような指導を行っております。そのような形で徹底を図っているという状況にございます。
○山内委員 形式的に保証人をとるんだったら、そんな保証人はとらなくていいと思うし、もし、実質的に一人一人の保証人の資産内容をがちがちに調査してその融資の実行について判断、検討を加えようとするんだったら、それが下手をすれば貸し渋りにつながるかもしれませんのでね。 やはりさっきから最高裁や政府の見解を聞いておられてわかると思いますけれども、根保証の中でも包括根保証というのは、私はもう違法行為だというぐらいに思っています。だから、銀行の契約約款あるいは信販系の契約約款とかに書いてある、そういう不動文字について、私としては、今からでも、法制審議会の結論が出る前でも、そういう契約はとらないようにというような指導を私としては金融庁に求めたいと思っています。 次に行きますけれども、これも昨年九月から佐賀県で問題となっています佐賀商工共済協同組合の破産の関係でございますが、この債権者の組合員が五千人もおられるそうですが、管財人弁護士が一人で管財人業務を行っているということでございます。これによってどういう問題が生じていると思われるか、また、実際どういうことが債権者あるいは裁判所にとって不満な点なのか、答えていただきたいと思います。
○房村政府参考人 具体的な破産事件の処理につきましては、法務省としては直接関与していないものですから、ちょっと御質問にはお答えしかねるんですけれども。
○山内委員 そうですか。わかりました。 最高裁は、何か、現地の佐賀の裁判所でいろいろな混乱が生じているということを把握していませんか。
○園尾最高裁判所長官代理者 具体的な事件の処理に関して、具体的な問題点についてまでは把握していないということ、今、現状ではそういうところでございます。
○山内委員 債権者が五千人もいるというと債権者集会の準備なども相当大変なことだと思うんですが、裁判所では、例えば債権者数あるいは負債の額あるいは破産財団を形成する財産の調査、そういうものが大変そうな場合には、例えば管財人を一人ではなくて複数にするとかそういうようなことを実際に研究されたりしていませんか。
○園尾最高裁判所長官代理者 最近、債権者数が極めて多いという事件がふえておりまして、五千人、六千人という事件や、あるいは数万人という事件も相当数に上っております。 これについては、さまざまな問題点がどの事件でも出てまいるというわけでございまして、管財人の労力も極めて大きいということから、例えばそれに関与する弁護士ということになると、一人では到底足りないというような状況が出てくることが間々あるわけでございます。これに関しましては、現状では、常置代理人の弁護士を管財人が指定をしまして、その常置代理人という形で補佐をしてもらうというようなことで、複数の者が職務を分担し合いながらやっていくということが実情としては一般的になっております。 これは法的に、複数の管財人を選びますと、その管財人間の意見の食い違いが生じた場合、あるいは、職務分担をどうするかというところで問題が生じるということから、常置代理人ということで、指揮関係のはっきりした手続を選ぶということで、複数の者が関与するということでございます。 ただ、問題は、そのような複数の者が関与するということで手当てができるということで一般的にはされているんですが、その人材自体がどれほど得られるかという、その人材の豊富さという問題もありまして、大規模な事件に関しましてはいろいろと心を痛めているところでございますが、全国に多数の事件を抱えておるということから、一件一件について検討するという状況にはなっていないという実情でございます。
○山内委員 政府としては、そういう実情を把握して、破産管財人弁護士を複数にする場合の何らかの基準を定めるようなことは考えていませんか。
○房村政府参考人 御指摘のように、非常に債権者数が多いような事件については、おっしゃるように、一人の管財人だけで処理するのはなかなか大変だろうと思います。 法律的には、ただいま最高裁判所の方からも御説明がありましたが、今回の法案でも、「破産管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の破産管財人代理を選任することができる。」こういう形で複数の管財人代理を選任いたしまして、その方々と事務を分担しながら処理をするということが可能になっておりますし、おっしゃるように、破産管財人そのものも、数人、あるいは場合によれば法人を破産管財人にすることも可能になっておりますので、そのようなものを活用していただければ対応はできるのではないか。また、その場合、どういう基準で複数の破産管財人を選任するか、あるいは管財人代理を選任するかというのは、具体的事件にもよりますし、まさにそこは裁判所あるいは破産管財人の事件に応じた適切な処理をお願いしたいと思っているところでございます。 また、今回の法案におきましては、御指摘のように、非常に債権者数の多い場合、こういう場合に備えまして、管轄についても特例を認めて、債権者が千人を超すような場合には、そういう大規模事件の処理の体制が整っております東京あるいは大阪に全国どこからでも申し立てができるようにいたしましたし、また、五百人を超す場合には、高裁所在地の地方裁判所に申し立てができる、こういうような管轄での手当てをするとか、あるいは、例えば債権者集会について、今までは必須のものとしておりましたけれども、例えば余りにも人数が多過ぎて到底集会が開けないという場合もあり得ますので、そこは柔軟に対応できるような任意的なものにしております。また、債権調査についても、期日によらずに書面によって調査ができる。 こういうような手続を柔軟化することによりまして、債権者が非常にふえたものについても裁判所あるいは管財人の方で適切な対応ができるように、そういう工夫はしているところでございます。
○山内委員 私も、もう随分昔ですけれども、熊本にいたときに天下一家の会という日本のネズミ講の一番のはしりの事件がありましたが、その債権者集会に、あれはどこでしたか、どこかの大きな体育館か会館かそういうところを借りて債権者集会に出席したことがあるなということを今思ったんですけれども。 破産会社にひっかかった債権者が、何が一番魅力かというと配当率だと思うんですね。ところが、今配当率というのは本当に数%、下手すると、何か管財人の費用とそれから、後で少しお聞きしますけれども、労働債権と税金と社会保険料等を払ったらもう配当がないというケースがたくさんあるというふうに聞いておりますので、だから、そういうことからすると、もっと早く、特に配当がないような事件はもう本当に短時間で終わってほしいし、そうしないと、ひっかかった企業、倒産した企業に債権を持っていたとか、売掛金がずっと帳簿で残って処理もできないというようなこともあって、税金をずっとひっかかった会社は払っていかなければいけないわけですね、資産ですから。 だから、そういう問題もございますので、本当に適宜柔軟な対応をして、管財人の数についても運用をしっかりとしてもらいたいなと思っています。 昨日の参考人の質疑で引き続き質問させていただきますけれども、三人の参考人とも、今回の法改正については、考え得るベストの法案だということを言っておられましたが、一点だけちょっと問題があるなという論点があったんですね。それが、日弁連の人が言っていましたが、給与所得者等再生の場合に、まじめに払っていったのに、例えば七年間は申し立てもできないということで、それは自分たちの勉強会では削除すべきじゃないかという議論があった、この一点だけが特に青山教授と日弁連の方との相違点だったかなと思っています。 そこでお伺いしたいんですが、この今のケースのような場合、私は、七年の間免責の申し立てができないというのは不当ではないかと私自身も思っているのですが、政府はどのように考えますか。
○房村政府参考人 御指摘のように、今回の法案では、給与所得者再生における再生計画を行った場合、その再生計画の認可決定の確定の日から七年間は免責を与えないということになっております。 これは、やはり給与所得者再生における再生計画を遂行した人というのは債権者の多数の同意なしに免責を受けている、そういう点では破産免責を受けたものと共通である、こういう考え方が基本にあるわけでございます。それと、現在の再生法におきまして、給与所得者再生そのものの利用できない事由として、免責許可の決定が確定した場合と並んで、給与所得者等再生における再生計画が遂行された場合が挙げられております。 したがいまして、基本的な考え方としては、破産法に今回入れたのは、いわば民事再生法における考え方を踏襲してこの破産法に入れたということになっているわけでございます。 ただ、御指摘のように、破産の免責の場合と比較いたしましても、給与所得者の再生計画を遂行した場合は、それなりに努力をいたしまして、三年間きちんと約束に従った債務の弁済をしているわけでございますので、免責の場合と全く同じように考えていいのかという考え方はそれはあろうかと思います。その点は再生法の改正の際にもいろいろ議論されたところでございますが、やはり債権者多数の同意を得ないで免責を得ているという点において共通性が高い。やはり、余り免責を容易に認めるとモラルハザードを招くおそれもある、そういうようなことから現在の扱いになったものということでございますので、まだ再生法が改正されてからそう期間も経過していないということから、今回は再生法の考えを踏襲するということになったものでございます。 ただ、もちろん、もともとそういう違いもございますし、さらに再度の破綻に至った原因というのもいろいろあろうかと思います。今回の破産法の改正案におきましては、免責不許可事由がある場合でも、裁量によって免責ができるということを明文の規定を置きましたので、そこは裁判所において、再度の破綻に至った状況を十分審査した上で、そういう裁量免責というものも適切に行使していただければ、過酷な結果は避けられるのではないか。 それからもう一つ、同じ七年間と申しましても、破産免責の場合にはまさに免責があったときから七年間でございますが、この給与所得者再生の場合には、再生計画の遂行に三年かかっておりますので、いわば弁済が終わってから考えますと四年、延長されている場合は二年ということで、再度のいわば再生をして活動を始めてからの期間でいえば、いわゆる破産免責の場合に比べれば比較的短い期間内でも再度申し立てが可能になるという違いはございますので、そういった裁量免責の活用と期間の違いを考えますと何とか御理解をいただけるのではないか、こう思っているところでございます。
○山内委員 私は、親しい経営者が、本当に米子市という十四万ぐらいの小さな地方都市ですけれども、洋品店を経営していたのと、建設業をやっていたのが、私の身近でも二人自殺しまして、結局、生命保険で、残された奥さんと子供が、借金をして、私も一緒に債権者の皆さんのところに行って、一緒に頭を下げながら、お金を持って歩いてあげたというか、そういうような経験もしているものですから、そういう、一万人近い経済苦で亡くなる方を何とか少なくしないといけないと。だから、非常に、破産ということを選択するということだけでも、借金を踏み倒すというか、それだけでも心理的な抵抗が多いところを、法律がまたまた何か使いにくいものであっては、そういう夜逃げとか自殺者というのはなかなか減らないと思うんです。 七年間免責は認めませんよという法律を見ると、やはり、三年間まじめに借金を、減額してもらって借金を払って、給与所得者再生としては立派に履行した、だけれども、七年間はそういう手続は使えませんよという法律をまず見てしまうと、それだけで、もう自分は七年間は裁判所から救ってもらえない存在なんだという、抵抗感というか、拒否をされているような感じになるんじゃないか。それは国家の政策としてやはりマイナスじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
○房村政府参考人 御指摘のように、経済的破綻が原因で自殺とか非常に悲惨な状況に追い込まれる人がいらっしゃるのは、そのとおりであると思っています。 そういう意味で、私どもとしては、できるだけ、こういった破産法なり再生法なり法的な手続で再起を図っていただきたい、そのためにできるだけ使いやすい手続にしたい、こう思っておりますが、しかし同時に、債権者の立場も考慮しないわけにはいかない。 先ほど御指摘のように、例えば配当率が一%とか、そういう極めて低いような事件も多くなっているわけでございます。また、再生計画で払うといっても、決して全額を払っているわけではなくて、相当の額がカットされてしまっている。そういう債権者の立場からしますと、再生のために、更生のために協力をするという趣旨で納得をしていただいているんだろうと思いますが、同じ人が再び同じようにカットを求めてくるということになると、やはりなかなか債権者としても納得しがたい面があるのではないか。そうなりますと、やはり一定期間はそういうことのないように注意をしてくださいということを法律で定めざるを得ないのではないか。 ただ、個々の事情によって、それでは余りに酷な場合が当然あるわけでございますので、そういう場合にはその裁量免責を適切に活用していただく。制度の仕組みとしてはそうせざるを得ないのではないかというのが私どもの考え方でございます。
○山内委員 しかし、給与所得者等再生を使って減額を頼んで、三年間以内で返済をし終わったときの債権者と、その三年が経過した後に新たに借り入れをする債権者とは、業者が違うわけですよね。ですから、その新たな、三年経過後に新たに借り入れをした債権者は、もちろん七年前と同じ業者がいるかもしれませんが、そういうところは余り貸さないように、やはり私は、会社内で学習効果があっていると思うんですよ。ですから、同じ業者に迷惑をかけるというならわからないでもないですけれども、やはり違う業者だと思いますので、今言われた指摘はどうかなと思うんです。 もう一つ、今の現在の経済状況の中で、三年間は給料を減らされてもボーナスがなくなってもまじめに払っていた、だけれども、その会社が四年目に倒産したり、あるいは家族全員が例えば高速道路で交通事故に遭った、そういうような場合をやはり考えておかなければ法の整備としては不十分じゃないかと思うんですが、そういう考慮はどうですか。
○房村政府参考人 ですから、まさに今御指摘のような突発的な事態とか、本人の責任のない事情によって再度の破綻に陥った、こういう場合には、まさに、今回の法案でも明文で規定いたしました、裁量による免責というものが利用されるべき場面ではないか、こう思っております。
○山内委員 裁量による免責が認められる場合があるということの前に、だから、ハードシップの場合でも今の給与所得再生の場合でも七年以内はだめだよという法律がまず書いてあるから、そこに心理的な抑制が働くんじゃないかということを指摘させていただいているわけなんです。 最高裁にお伺いしますけれども、法務省は、ちょっと簡単に、今までも、十年以内でも、免責不許可があっても認めてあげていましたよとか、それから、七年という年限は一応書いているけれども、裁量免責はどんどんやったらどうですかみたいな話になると、それはまた法の建前ともちろん違う運用になるし、そもそも免責不許可期間内の免責申し立てというのをそんなに簡単に裁判所が認めるとも思えないんですが、ちょっと裁判所の考えを教えてもらえますか。
○園尾最高裁判所長官代理者 十年間再度の免責ができないというこれまでの破産法のもとで、再度の免責の申し立てがあるということは、長い間、実務の中で、現実問題として考えてこなかったところでございまして、これまで、破産法施行以来六十年間、破産事件というのは二、三千件にすぎなかった。しかも、破産者にお金を新たにたくさん貸すというような債権者がいないという前提で六十年間は少なくとも過ぎてきました。 ところが、最近の二十年間になってまいりますと、破産者の数が大変ふえてくる。しかも、これは特に最近の傾向でございますが、破産者に対してなお金融をするというような者も出てまいったということで、最近では、免責の決定が確定した後に、十年内に再度の免責があった場合にどのような要件で認めていくのかということを真剣に考えなければいけないということになっておりまして、研究は不十分なのですが、研究が始められておるというような段階だと認識をしております。 特に、最近、やみ金融というようなものがあえて破産者にお金を貸し込むというような事態で、再度の免責をしなければそれが救えないのじゃないかというような事例も出てまいりまして、現実に、私が地裁で担当をしておった当時でも、免責許可決定の確定後、十年までは経過していない、七、八年にすぎないという事例について、管財人の意見を聞いて、これはもう救済としては再度の免責を与えるほかない、それが一番適切だということで、再度の免責を認めたという事例もございます。 そのようなことで、実務上検討が重ねられておりますので、新しい破産法ができました場合にも、やはり、管財人の意見を聞く、この事案について再度の免責を認めるというのが最も適切というように考えられるかどうかというのを一つ一つの事案で検討していくというような時期に至っておるという認識をしておるわけでございます。 ただいま御指摘のように、余り一般的にそのようなことが広がってまいりますと、これはモラルハザードが広がっていくということで、それがまた大変懸念されるわけですが、しかし、物事には必ず例外的なものがあるということで、そのものについては、裁判官も考えていくし、管財人も研究をしていただくということで、今後、そのような研究を続けていって、特別な事案については適切な対処をしていけるような研究が続けられるべきものというように考えております。
○山内委員 毎年の申し立て件数の中から、この二十年間の間に、十年以内の再度の免責許可事例というものについて問い合わせをしたら、そういう件数の統計はとっていないということをお聞きしたものですから、しかし、もしモラルハザードのことを考えるにしても、私のように七年の年数というのは撤廃すべきだというのがモラルハザードの面からモラルがないと言われるのなら、それが六年でもいいし五年でもいいと私は思うんですよ。 そういう検討も私自身したいと思いますので、平成十六年からでもいいですから、例えば一般の破産事件で免責不許可期間中に申し立てた場合、それから、給与所得再生で七年で、しかし七年以内で申し立て件数とそれを認めた件数、そういうものはこれからちょっと小まめに統計をとってもらうということはできますか。
○園尾最高裁判所長官代理者 これまで、そのような再度の免責という事案については、余りに少ないということで、むしろ裁判統計の対象というようには考えてこなかったんですが、ただいま申し上げましたような状況で、再度の免責をどうするのかということも最近問題になり始めております。 これは、さまざまな裁判所の裁判官の研究を発表してもらうとか、あるいは弁護士会との間で研究をするというようなことをやっていって、それで検討すべきものというふうに思っておりますので、そのような中で検討される一つの対象になっていくという可能性は十分にあるというように考えております。
○山内委員 その点はよろしくお願いしたいと思います。 なぜならば、法務省の方が、私が質問した最後の場面では、再度の免責許可についても裁量免責を裁判所には認めていただくであろうというような言い方をされるものですから、最高裁にお聞きしたら、やはりそれはまだまだ、ごくごくケースとしては全くまれなケースでということで、その辺が法務省としてちょっと私はまだ認識が不十分だと思います。見直しについて検討するためにもぜひそういう統計を今年度からとっていただきたいと思っていますし、逐次一般質疑等でこの問題については最高裁当局や法務省とも協議をしたいと思っています。 さて、今度は最高裁に伺いますが、最高裁がどうも申し立てを狭めているんじゃないかというような訴えがあったものですから、お聞きしたいと思います。 東京地裁の本庁で、自己破産の申し立てを申立人本人が個人で行った場合に、弁護士に頼んで申し立て書を書いてもらいなさいという指導を受けて、受け付けてもらえないという訴えがあります。特に少額管財の事件の場合にそれが顕著で、都内にあるそういう相談センターみたいなところを紹介するので、そういうところにまず行ってくれというような窓口指導を受けたという訴えがあるのですが、これについては、それはそういうことなんでしょうかということと、それから、もしそうだとしたら、どうしてこういうことをされているのかを伺いたいと思います。
○園尾最高裁判所長官代理者 受け取り方に少し誤解があるようですので、御説明を申し上げたいと思います。 これは東京地裁の事例ということで承知をしておりますが、私は、東京地裁の破産担当部の裁判官をしていた関係上、東京地裁の破産の運用について承知をしておりますもので、東京地裁の代理人申し立てと本人申し立ての実情についてお話をしますと、東京地裁では、平成十年当時は破産事件の代理人選任率がおよそ八六%でしたが、平成十五年には九九%程度に増加をしております。もともと東京では他の地方に比べて代理人選任率が高かったわけでございますが、最近それが顕著に高くなっておるという理由といたしましては、基本的には、弁護士会が平成十年の秋及び平成十一年の秋に四谷と神田の二カ所に多重債務者専門の法律相談センターを開設いたしまして、多重債務者の救済に積極的に取り組んでこられた成果であるというように考えております。 東京では、三つの弁護士会が合同でこれらの法律相談センターを運営しておりまして、しかも弁護士費用の分割払いを認めるという体制をとっていただいております。そのために、資力のない債務者も弁護士の援助を受けるということができる状況になっております。 裁判所といたしましては、本人がみずから申し立てをしてきた事例について、法的に問題があるという場合には、受付窓口で法律相談センターに関する説明をいたしまして、そこに相談をしてみてはどうかということもお勧めをすることがございますが、多くの場合に、本人は弁護士費用も分割払いができるという仕組みがあることを聞いて、弁護士会の法律相談を受けておるという状況にございます。 ただし、そのような勧めにもかかわらず、本人がみずから申し立てをしたいということである場合には本人の申し立てを受け付けておりまして、本人の申し立てを受理していないということではございません。 ただいま御指摘のございました少額管財手続についてでございますが、これは現在、代理人申し立て事件について限っておるということでございます。 これは東京地裁の運用でそのようにやっておるわけでございますが、東京地裁でどのようにしてそのようなことになったかといいますと、当初は本人申し立て事件についても少額管財人を付するというような事件処理の類型を設けて検討してまいりましたが、やはり管財人の御意見によって、御本人の申し立てである場合には、さまざまな法律相談などが管財人に整理されないで持ち込まれるということで、大変負担が大きくて、この二十万円でもって管財手続をやっていくというのは難しいというような御意見がありまして、弁護士会と協議をいたしました結果、代理人申し立て事件について少額管財手続を実施するというような方針にしたという状況でございます。 ただし、この場合にも、弁護士会の法律相談センターを通じて弁護士費用の分割払いというような措置もとっていただくということによって、その代理人と管財人とが連携をして簡素な手続で手続を進めていくというようなことを考えて運用してきておるわけでございます。 東京地裁ではこのような実情でございますので、ぜひ御理解をいただきたいというように思います。
○山内委員 これから司法ネットができるわけですけれども、そういう司法ネットの利用について窓口で指導されるというようなことも今後はあるんでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 具体的にはまだもう少し先の検討ということになると思いますが、そのような体制が整備されれば、それにふさわしいと思われる事案について、一つの選択肢としてお勧めをするということもあり得るものというように考えております。
○山内委員 どうもありがとうございました。 破産法の改正法案の中身についてもいろいろと御準備をいただいていたと思いますけれども、時間が来ましたので、同僚の議員に後を譲りたいと思います。どうもありがとうございました。
○柳本委員長 御苦労さま。 午前十一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午前九時五十九分休憩 ————◇————— 午前十一時開議
○柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。小林千代美さん。
○小林(千)委員 民主党の小林千代美です。引き続きまして、破産法案に関しまして質問させていただきます。 特に私は、労働債権のところについて、ちょっと詳しい質問になるかもしれませんけれども、お尋ねしたいと思います。 といいますのも、私も、前にも申し上げましたけれども、民間の企業で前職は働いておりまして、製造メーカーでした。そんな経験の中で、実は、近くにあった同業他社さんが破産をするという事件が起こりました。同業他社ですから、知り合いの労働者の方もそこにいたわけなんですね。 それで、労働債権が回収できないということになりまして、食品メーカーだったものですから、労働債権を少しでも、労働者の方々に給料を支払えるようにということで、倉庫の中に残っていた在庫の商品を、私たちも一個千円で和菓子を買う、みんなで何か集会があって集まるたびに千円の和菓子をこういうふうに買って、少しでもその千円が労働債権に回るんだったらというような思いで千円を払っていた、そういう記憶を思い出しました。少しでも労働者の方々にとって優しい法律であってほしいなというのが、私の偽らざる気持ちのところでございます。 そんな中で、今回のこの破産法の一部改正を私は大変評価をしているところもございます。特に、この優先順位の見直しの中で、労働債権の一部が引き上げられたことに対してと、そして、破産手続の途中でも随時弁済をされる、救済できる制度となったということに対して、特にそこで働いていた労働者の方々の、特に給料ということに関しましては、あした、何を食べるか、食べるものを買うかということにも大変密接な関係があると思いますし、給料が払われてこないということになりますと、これは生きるか死ぬかの問題にもなってくると思いますから、私は、今まで泣き寝入りをしていた、千円お菓子を買っていた、そういった労働者の方々が一人でも救済をできるんだったらということで、大変この法案を評価しているところでもございます。 国際条約のILO百七十三号条約というものがございます。これは、労働者債権の保護に関する国際条約なんですけれども、残念ながら日本は未批准です。この中の第八条というところに、国及び社会保障の債権よりも労働者の、この場合は三カ月の賃金なんですけれども、それは高い順位の特権を与えられるといった国際的な水準というものがあります。 今回の一部改正により、やっと日本も国際水準に並んだのかなというような感も持つところでございますけれども、こういった国際条約に照らし合わせてみると、まだ、労働者の生活確保の観点というところから考えますと、租税債権よりも上位に順序を置くべきではなかったのかなという思いもあるんですけれども、大臣、この点について、この法案改正につきまして、どのような視点を持っていらっしゃいますでしょうか。
○野沢国務大臣 今回の破産法の改正につきましては、いわゆる立ち直りの可能な社会をつくっていく、そういう意味で、各般にわたって見直しをしておるわけでございますが、今委員御指摘のような、この労働債権の一部を優先順位を上げるという点も、今回改正の一つの目玉になっているところでございます。 御指摘のとおり、労働債権の支払いが確保されるということが労働者及びその家族の生計維持のために重要な意味を有していることについては同じ認識でございますが、しかしながら、他方で、租税債権は国家の財政の基盤でもありまして、公平かつ確実に徴収される必要性が高いことからいたしましても、実体法上、原則として労働債権を含む私法上の債権より優先することとされておるところでございます。 このように、実体法において規定されている各種債権の優先順位は、破産の場合のように、債務者の財産で債権の全額を弁済することができない場合にこそ尊重されるべきであると考えられます。したがって、このような現行法の趣旨から見ますと、租税債権と労働債権の優先順位の枠組みを見直して、破産手続において労働債権を租税債権よりも優先させることは困難であると考えておりまして、今回の改正はその意味では大きな前進でございますので、その点を御評価いただきたいと考えております。
○小林(千)委員 大臣のおっしゃることも大変よくわかります。租税債権、公共の利益にくみするものと、いわば個人の利益ですね。ただ、そこには、家族の生活を含めて、命からがらかかっている。そこのバランスをどのようにとるかというのは、本当にこれは難しい問題だと思いますけれども、今回、この労働債権の一部を格上げした、租税債権の一部を格下げした。この一部の内容が、労働債権の一部の場合は、給料三カ月分プラス退職金分として給料三カ月分と、合わせて六カ月分が労働債権の一部。そして、租税債権の一部というものは、取りっぱぐれの期間がない一年間分といいますか、そういうふうに期間は限定をされたわけなんですけれども、この期間を設定した、三カ月、三カ月と一年になった理由を教えていただきたいと思います。
○房村政府参考人 それでは、まず最初に、労働債権を財団債権とした、その範囲を、未払い分三カ月それから退職金三カ月、こうした理由でございますが、これは、何といっても労働者の生活の基本になるのが給与債権ですので、これの保護を厚くしたい、現在、優先破産債権でございますので、財団債権に優先されてしまっている、それを保護するためでございます。 期間を三カ月、三カ月といたしましたのは、一つには、破産の場合には、労働者は基本的にすべて清算されて職を失うということになりますので、その保護の範囲を退職金まで含めますと相当大きな額になります。一見いたしますと、多くの額の給与債権、退職金債権を財団債権にするということは、保護が厚くなるようにも思えますが、しかし、財団債権が非常にふえますと、基本的に、破産手続というのは、手続費用を賄うに足りるだけの財団が形成されませんと手続がそこで廃止されてしまうわけでございます。財団債権がふえるということは、廃止になる事件も当然ふえてしまう。 ところが、破産の実態から申し上げますと、破産宣告をした時点で、会社にある財産だけで配当するということは非常に少なくて、やはり破産管財人の人が、先ほどもちょっと話題に出ましたような、在庫商品を一生懸命処分するとか、あるいは売掛金を回収するとか、役員の責任を追及するとか、否認権を行使して不当に安く処分されたものを取り戻す、こういうような努力をして破産財団をふやしまして、それをもとに財団債権者あるいは破産債権者に配当していく、弁済をしていくということになるわけでございます。 ところが、財団債権が余りにもふえてしまいますと、破産廃止がふえてしまって、結局、もう少し手続を継続して努力をすれば配当ができた、そういうものができなくなってしまう。そういうこともありますので、やはり余り財団債権がふえるとかえって利益にならない、そういうことが一つございます。 それからもう一つは、理論的な面で申し上げますと、会社更生法では六カ月分について共益債権として財団債権に匹敵する優先的地位を与えておりますが、これは、会社更生の場合には、会社を再建する、こういう目的がございますので、何よりも労働者の協力が必要である。労働者の方々に協力してもらうのに、賃金をちゃんと払わないで協力しろといっても、これは難しいわけですので、できる限り給与債権を優遇してあげる必要がある。また、その結果、労働者の方々が協力をしてくれて、会社が再建されれば、ほかの債権者にとっても結局は利益になる。そういう意味で、会社更生法において、労働債権を優遇するということについては共益性が高いわけでございます。 ところが、破産の場合には、そういう点に比べますと、先ほども申し上げましたように、結局は全部を清算してしまうということで、会社更生と同じような共益性を認めるのはなかなか難しいだろう、そういう実際上の配慮と理論的な面と両方考えまして、三カ月、退職金についても三カ月、こういうことにしたわけでございます。 それから次に、租税債権について、納期限から一年を経過していないものを財団債権として、経過したものについては優先破産債権とした、この一年の理由でございますが、御承知のように、租税債権というのは自力徴収権がございますので、財団債権として保護する期間が余りに短期間になりますと、租税債権の主体としては、そういう優先破産債権の地位に落ちてしまう前に租税債権の確保を図るというのは、これは国民に対する義務でもありますので、例えばこれを半年にしてしまいますと、半年経過する前に徴収に着手する、差し押さえを受けてしまえば、現実には倒産が早期化してしまう、こういうおそれがあるわけでございます。 それから、現在の納税の扱いといたしまして、納税の猶予を行う場合には、猶予期間は原則として一年以内の期間とされておりますので、それを、今申し上げたようなことで短期間にするのはよろしくないだろう。逆にまた、一年を経過すれば、原則として滞納処分に着手するということが法律上も予定されているわけですから、それに着手しないで一年を経過したものについては、優先破産債権として一ランク下にされてもやむを得ないのではないか。このような配慮から、一年という期間を押さえたものでございます。
○小林(千)委員 今、会社更生法の場合の例も出していただいたわけなんですけれども、会社更生法の場合ですと、これは給料は六カ月分、あと退職金については、給料の六カ月分または退職金の三分の一、いずれか多い方ということになっているんですね。破産の場合と会社更生の場合だと、会社更生法の場合は、まだ会社が存続して働ける、公共の利益にくみするものであるから、社員の、従業員のモチベーションを高めるためにということで、払うものを払わないと働いてくれないだろうという、そういう理論もわかるわけなんです。 一方、破産をするということは、職場がなくなるわけでございます。例えば、賃金が三カ月なり一カ月でも、未払いですとかあるいは遅払いといった状態は、かなり会社的にはもう末期的な症状になっているわけでございまして、従業員とすれば、そこまでの段階である程度、この会社には見切りをつけなきゃいけないだろうなということは薄々感じていると思うんですね。その中で、もう沈む船からはネズミも逃げ出すわけでございまして、そんな会社は危なそうだぞということを従業員が判断をすれば、やめられる人は既にもうやめていると思うんですね。 破産する会社に最後まで残る方というのは、やめられない方なんですよ。この経済の御時世ですから、再就職先を探そうと思っても、それはなかなかないでしょうし、再就職先が見つけられない世代というのは、いわば五十代以降ぐらいの、なかなか就職が見つけられない世代でもあります。えてしてそういう世代の方は、住宅ローンも残っている、子供も、今、高校生、大学生ぐらいで一番金がかかるときで、そうそう会社も次が見つけられないのにやめられないという、いわばとてもまじめな世代だと思うんですよ。そういった方々こそ、私は、優遇をするべきではないかなというような気持ちも片方ではあるんですけれども、どうお考えでしょうか。
○房村政府参考人 確かに、御指摘のように、破産に至った会社に勤務して、しかも最後までずっと従業員として残っておられるという方々にとっては、非常に酷な結果になる場合があるというのは御指摘のとおりだろうと思います。 私どもとしても、そこを考えて、破産手続の中でできるだけの可能な保護を図りたいということで、今回、財団債権化をしたわけでございますが、確かに、ではこれで労働者の方々は完全にいいのかといえば、それはまだまだいろいろな意味で不足はあろうかと思います。 ただ、先ほども申し上げましたように、やはり破産手続全体を考えますと、余り財団債権をふやすということは、かえって、結局において配当ができなくなってしまうということにもなりますし、そういう意味で、今回、非常にぎりぎりの努力はしたつもりでございますが、そういう直面した労働債権を持っておられる方から見ればまだまだとおっしゃりたいのもよくわかりますが、何とかぎりぎりまで努力をしたということを御理解していただいて、今後も、そういう意味での検討は続けたい、こう思っております。
○小林(千)委員 続きまして、破産財団について伺いたいと思います。 そのように、財団債権が大きくなれば大きくなるほど、廃止となることもあるというふうにおっしゃいましたけれども、財源不足となった際は、この同列の順位の中で配分はどのようにされるのでしょうか。
○房村政府参考人 財団債権の総額を払うのに足りない、こういう場合には、財団債権の中でまず二つに分かれます。第一の種類の財団債権は、破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権、それから、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権、これはいわば破産関係者すべての者のための費用ということでございますので、最優先で払われます。それを払った後のものについては、他の財団債権はすべて平等で、債権額の割合によって案分して弁済される、こういうことになります。
○小林(千)委員 最優先の部分を除いて案分的に配分をされるというお答えだったんですけれども、租税債権というものは、これはもちろんケース・バイ・ケースにもなるんでしょうけれども、公租公課の債権額というのは、多分、労働債権よりも大きくなる場合というのもあるんだと思います。その中で、破産廃止となるケースも少なくないと思います。こういうことから考えますと、少なくとも、租税債権の弁済される期間と労働債権の弁済をされる期間というのは同じであってほしいと思うんですが、どうでしょうか。
○房村政府参考人 額の多寡は、状況によるわけでございますが、ただ、労働債権にしましても、退職金まで含めますとかなりの額になる場合もあるのではないか、そういう意味で、案分比例でも、それなりに労働者のもとに回るのではないかとは思っております。 いずれにしても、現在の考え方といたしましては、租税債権と労働債権は同順位で案分ということにしております。労働債権の取り分を多くしたければ、やはり租税債権の財団債権になる期間を短縮するか、順位に差をつけるかということになりますが、財団債権になる期間を短縮するということにつきましては、先ほど申し上げたように、かえって倒産を早めてしまうのではないか、こういうおそれがまずございます。それから、実体法上は、労働債権よりも租税債権が優先するという規定は変わっていないわけでございます。いわば破産手続独自の考え方で、破産手続の中で工夫をしているということで、余り実体法とかけ離れた扱いをするというのは、やはり法秩序の面から見ますと難しい。 そういう意味で、担保権つきのものは別ですが、担保権のないすべての私債権に優先する地位にある租税債権につきまして、そういう優先的な地位である財団債権を与える期間を余りに短縮するのは、法秩序全体から見ると難しいということと、それから、順番といたしましても、逆転するのはやはり幾ら何でも難しいのではないか、せめて同順位まで上げるというのがぎりぎりではないか、そういうことから今回のような改正内容になっております。
○小林(千)委員 これは、例のILOの条約にもかかわってくることなんですけれども、労働関係のことですから厚生労働委員会で質問しなければいけないことなんでしょうけれども、日本はまだ未批准というところもありますので、これもやはり、批准の方向をつくり上げていきながら、ぜひ労働者保護といった観点からも進めていっていただきたい、これは一言申し添えておきます。 続きまして、もう一点、破産手続の途中でも随時弁済できるようになった、この制度について質問をいたします。 これは、法案の百一条のところに規定をされているんですけれども、生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれのあるときに弁済を許可するというふうに法案では書いてあります。これは、生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれがあるということを証明しなきゃいけないわけでしょうか。これは、労働者個人が証明をするのでしょうか。また、どのように証明をするのでしょうか。
○房村政府参考人 この百一条で、本来は配当手続まで進まないと支払いができないわけでございますが、早目に払わないと生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれがある、こういうような労働債権を持っている方については支払いを早目に行おうということがこの趣旨でございます。 これは、裁判所の許可を得て行うということになっておりますので、裁判所が生活の維持を図るのに困難を生ずるおそれがあるときに当たると認めていただく必要がございます。この申し立ては破産管財人が行いますので、まずは破産管財人がそう思って裁判所に許可を申し立てて、裁判所もそう思って許可を与える、そうすると払ってもらえるということになりますが、その前提としては、まず破産管財人にそう思ってもらわなきゃいけませんので、その場合には、やはり労働者の方々は破産管財人に対して、例えば今自分が無収入で、この労働債権を早く払ってもらわないと生活に困る、こういうような事情を御説明して理解を得て、破産管財人が申し立てをする、こういうことになるのではないかと思っています。
○小林(千)委員 それを判断するのは、もともとは、破産管財人が個々の労働者をどのように判断するのかといった、破産管財人の一任といいますか、判断というところになるんでしょうか。 そうすると、生活の維持を図るのに困難かどうかというのを、私たち労働者はどのように、破産管財人、しかも、債権者が多いようなところで数少ない破産管財人に個々の労働者がどのように申し伝えればいいのか、全く具体的に見えてこないわけでございます。 収入もない、働く先も決まっていない、あるいは通帳の残高がこれだけですとか、個々の労働者によって事情が違ってくると思うんですよ、例えば、ダブルインカムで働いているですとか、いや、うちは子供がいないから比較的金がかからないですとか。そうすると、個々の労働者によって条件は違ってきてしまうんでしょうか。こんなことにもなりますので、ぜひ具体的にそこの手続は教えていただきたいと思います。
○房村政府参考人 ただいまも申し上げましたように、この支払いが認められておりますのは、本来は配当手続まで待って、その段階で配当率に従って弁済を受ける、そこまで待てない方について早目に払う、こういう措置でございますので、早目に払わなければならない人についてお支払いをする。ですから、まさに個別の事情によるわけです。 おっしゃるように、例えば家族の方が大勢いて収入も現在ないということであれば、それは早く受け取らなければ生活の維持に困難を生ずるでしょうし、家族の方も少ない、例えば結婚されている相手の方は定期的な収入があって何とかそれでできるということであれば、今直ちに受けなくても最後の配当手続の段階で配当を受ければ足りるということもあると思います。ですから、それはまさに個人の方によって違います。 ただ、大勢いる方をどの程度のことで判断していくかというのは、債権者の数にもよるでしょうし、全体的な処理の仕方によると思いますが、申し上げたように、収入の状況あるいは資産の状況、家族構成、そういったものを考慮して、これは早目に弁済をしないと生活に困る、生活の維持に困難を生ずる、そういうおそれがあるかどうかということを判断していくということになります。
○小林(千)委員 早くもらうか遅くもらうか、結局もらうことには変わりないんでしょうけれども、でも、当事者の身にしてみれば、それは早く欲しいに決まっていると思うんですよね、どんな世帯の状況であっても。 その中で、労働債権者同士がけんかするわけにいかないですし、その証明方法というのも個々の労働者によって千差万別だと思いますので、ぜひ、ここのところは要件緩和をしていただいて、ある程度一定の基準があれば、同じ労働債権者であれば皆同じ条件を適用してもらいたいなという気持ちはあるんですけれども、いかがでしょうか。
○房村政府参考人 破産の場合は、これは同じ法的地位にある方については平等に支払いをするということが手続の原則でございますので、債権を確定いたしまして、それぞれの優先順位を決めて、そして財団の額が幾らに換価できたか、それを踏まえて配当率を計算して、それに基づいて皆さんに平等に、できるだけ公平にお支払いをするわけでございます。 ところが、そういう配当の計算前に個々にお支払いをするということになりますと、手続的には非常に煩瑣になります。しかも、最後にはそれは調整をしなければならない。そういうことを余り多くやっておりますと、破産手続全体が遅くなってしまう。 ですから、これは、やはり本来、そういう一つの手続できちんと計算をするところまで待てないという事情がある方にはお支払いする、そういう意味ではあくまで例外的な制度でございますので……(小林(千)委員「例外的なんですか」と呼ぶ)原則は配当まで待っていただくわけですので、生活の維持に困難を生ずるような方については配当手続前にお支払いをする、そういうことでございますので。
○小林(千)委員 ちょっと、今聞いてびっくりしたんですけれども、随時弁済というのは例外的手続なんでしょうか、法には書かれているわけなんですけれども。そうすると、私が最初で喜んだ、破産手続が長くかかるかもしれない、その途中でも弁済されるということは、労働債権を持っている人にとってはこれはうれしい第一歩だったと思うんですが、これは例外なんですか。
○房村政府参考人 今回財団債権に繰り上がった分については、随時弁済でございます。したがいまして、未払い給与の三カ月分とそれから退職金の三カ月分、これについては財団債権ですので随時弁済ですが、それを超える分もあるわけですね。その超えた分については優先的破産債権になりますので、今申し上げたように、本来は配当手続でお支払いを受けていただくということになるわけですが、こういう特別な事情がある場合にはそれを早目にお支払いします、こういう趣旨でございますので。
○小林(千)委員 もう一度、最初に戻ります。一番上のランクの財団債権のところにある三カ月分プラス三カ月分、ここの部分につきましては、破産手続の途中でもこれは例外的ではなく随時弁済、しかも、その適用者は公平にということで間違いないんでしょうか。
○房村政府参考人 財団債権になったものについては、随時弁済でございますので、手続中いつでも払われる。財団債権全額を払えないという場合には、これは案分で払いますので、早い者勝ちということにならないように、管財人の方で気をつけて払っていただくということになります。
○小林(千)委員 わかりました。そこのところは間違いないように御説明いただきたいと思います。 時間がないので、最後に一つだけ質問します。情報提供努力義務なんですけれども、これが義務規定ではなくて努力義務になったことについて質問したいと思います。 といいますのも、労働者、債権者が自分の労働債権を確定するためには、就業規則ですとか賃金台帳ですとか退職金規程がどうなっているか、つぶれる会社ですと、小さい会社ですと、それこそ社長一人が鉛筆なめなめ、退職金もなめなめでやっていることが多いと思うんですけれども、そういったときに、自分の債権はどのように証明できるんでしょうか。最後にお尋ねいたします。
○房村政府参考人 御指摘のように、労働者の側で自分の給与債権を証明しようと思いますと、どうしても、会社側にある賃金台帳であるとか退職金規程であるとか、そういうものが必要になることが多いと思います。そのために、管財人にそういった情報を提供する義務を課しているわけでございますが、そういうものを利用して確定をしていただくということになりますが、中には、そういった十分な賃金台帳がない、退職金規程もないというような場合もあろうかと思います。これは、ある意味では管財人にとっても、何とか確定して払わなければいけないわけですので、悩みは同じでございまして、そこはともかく労働者の方々と協力をしながら実情をよく伺い、同業他社の扱い等も見ながら、賃金としてはこのくらいの額だったんだろう、あるいは退職金はこの程度ではないかというようなことを、何とか合理的な線を決めていくしかないんだろうと思います。
○小林(千)委員 どうもありがとうございました。安心いたしました。 時間になりましたので、終了いたします。
○柳本委員長 御苦労さん。 松野信夫君。
○松野(信)委員 民主党の松野信夫でございます。 破産法について質問をさせていただきたいと存じます。 近時、破産者が大変ふえている、昨年で二十五万人ぐらいになっているということで、大変な勢いで急増しているわけであります。大変深刻な社会的な問題も発生させておりまして、自殺者がいたり、中には一家心中までする、そして、借金のために一部の人は犯罪行為にまで走るということで、大変な社会的な問題にもなっているわけで、何でこんなふうに破産になってしまうのか、経済的な破綻に至ってしまうのか、この辺の背景事情について大臣の方はどのように認識をしておられますか。
○野沢国務大臣 御指摘のように、破産事件の申し立て件数は最近急増をいたしております。ちなみに、ちょっとさかのぼって調べてみると、平成六年に総数四万三千百六十一件、それが平成十五年では二十五万一千七百九十九件と、四倍というレベルに達しております。 このように破産事件が急増しております背景事情といたしましては、さまざまな要因があるとは思いますが、一概にこれだと言うわけにもいきませんけれども、何よりもやはり、バブル経済崩壊後の長引く不況の影響等によります企業倒産の増加、あるいは企業のリストラに伴う給料の減額等が要因になっているのではないかと思われます。また、個人の消費スタイルの変化がありまして、カードその他による債務の増加による個人破産、こういったこともあろうかと思いまして、そういったさまざまな社会要因が積もり積もった結果がこのような形にあらわれているものと考えております。
○松野(信)委員 私も長く弁護士をしておりまして、破産事件もたくさん取り扱ってきて、いろいろな点から見て、できるだけ破産に持ち込まないように、できるだけ多重債務者をつくらないようにということがまず大事なことではないかというふうに思うわけで、その点から見ますと、破産に至る背景事情にはさまざまなケースがあるなというふうに思うわけであります。 その中の一つ、高齢者とか障害者の方々に支給される年金、これを担保にとって貸し付けをするという業者が言うならばたくさんいるわけです。基本的には、各種年金法でこういうのは禁止されているはずなんですけれども、現実には、年金証書、印鑑、通帳、そういうのを全部取り上げて金を貸す。そうすると、お金を借りた人は年金もらえない、事実上もらえないというようなことになるものですから、別のサラ金や別の金融機関にお金をまた借りに行く、こういう実態があります。 この点について、年金の、これは主に所管をしているのは厚生労働省かと思いますが、この点について、やはり、しっかり防止策というのをとらなきゃいけないだろうと思うんですが、厚生労働省の方はどういうふうな対処をしておられますか。
○吉武政府参考人 お答え申し上げます。 今先生お尋ねのとおり、厚生年金保険法それから国民年金法では、年金受給権を保護するというために、これを担保に供する、あるいは譲渡する、あるいは差し押さえするということを禁じる規定が置かれております。このために、年金受給権に担保を設定することはできないということになっておりまして、年金が本人以外の口座に振り込まれることはないというのが基本的な形でございます。 一方、御指摘のとおり、貸金業者が年金受給者から年金証書あるいは預金通帳等を預かりまして、高金利で融資した後、年金受給者の預金口座に振り込まれる年金を引き出して返済に充てるという事例が発生していることは承知しておりますので、この場合、年金が振り込まれる口座の通帳を受給者から取り上げるといういわば事実上の行為でございまして、年金受給権を担保にとるのには、いわば、現実的には事実的に等しい行為というのは認められますが、年金自体は年金受給者の預金口座に振り込まれておりますために、厳密には年金受給権を担保に供しているというものではないというふうに考えられますので、このために、担保禁止規定に、例えば、これまでも御議論で、罰則規定を設けたらどうかという御議論がございますが、必ずしもそれだけでは有効に機能しないのではないかというふうに考えております。 それで、私どもといたしましては、年金受給者の方々がやむを得ない事情により融資を受ける必要がある場合には、公的な融資制度といたしまして、年金を担保といたしまして、独立行政法人福祉医療機構が融資を行っておりますので、そのPRに努めるということを行っております。そのほかにも、年金受給者の方々が悪質な貸金業者の手口、あるいは被害の事例、あるいは被害に遭わないための注意事項につきまして、政府広報あるいはポスター等により周知広報を行っております。 それからもう一つ、年金の振り込みは、通常で申し上げますと、年に六回振り込みをさせていただいております。二月、四月、六月、八月、十月、十二月という形でございますが、その振り込みを行う際に、年金受給者の方に年金振り込み通知書というものを送付させていただいておりますが、その通知書の中に、悪質な貸金業者に御注意いただくようということで、今申し上げたようなことが記載されたものをお送りしているという状態でございます。
○松野(信)委員 年金を担保というのは、確かに、今局長が言われたように、正式な担保権を設定したというわけでなくて、事実上、証書とか通帳とかを取り上げているという、事実上の担保ということかと思うんです。 それで、今局長のお話にもありましたように、例えば日弁連あたりは、こういう違法な、年金を担保にとっている業者に対しては一定の罰則を制定すべきだ、こういう意見も言っておられます。私も、もうこれだけ蔓延するならば、単に、今局長が言われたようなPRだけではいささか不十分ではないかなということで、罰則制定の方向をやはりこれは慎重に検討しなきゃならないんではないか、このように思っております。 そこで、警察庁の方で、こういうふうな不正あるいは不当な貸し付け、こういうようなものに対してはどういうふうな対処をしておられるのか。一定の取り締まりをしているということであれば、取り締まりの実績などはどのようになっていますか。
○吉田政府参考人 やみ金融事件の取り締まり状況についてのお尋ねにお答え申し上げます。 近年、高金利、過酷な取り立て等のいわゆるやみ金融の被害が拡大しております……(松野(信)委員「やみ金じゃなくて違法な年金のことなんですが。ちょっと交代した方がいい。やみ金融は次の質問」と呼ぶ)
○西原政府参考人 お答えさせていただきます。 ただいま御指摘のありました年金を担保にして貸し付けを行う、こういった行為につきましては、仮に、貸金業者が融資を行うに際して年金受給証、あるいは通帳ですとか印鑑、こういったものを徴求する、こういったことについて、私どもの方では、先ほど厚生労働省さんの方から国民年金法ですとか等々で禁止されているということがございましたが、それを前提に、我々といたしましても、金融庁の行政上の指針であります事務ガイドラインというのがございますが、そこの中で、年金受給証等の債務者の社会生活上必要な証明書等を徴求してはならないというふうに規定をいたしておりまして、この年金受給証等を徴求していることが判明した場合には、債務者に返還するよう指導しているところでございます。 これは従来からやっていることでございますが、さらに、昨年の七月に貸金業規制法の改正という形で、いわゆるやみ金対策法がこの一月から施行されたわけですが、この中におきまして、第十三条の二項におきまして、「貸金業者は、貸付け又は貸付けの契約に係る債権の管理若しくは取立ての業務を行うに当たり、偽りその他不正又は著しく不当な手段を用いてはならない。」こういう規定がございます。したがいまして、貸金業者が年金受給証を徴求することにつきましてはこの規定に該当するおそれが大きいというふうに我々は判断しておりますし、また事務ガイドラインでもそれを設けているということでございます。 私どもといたしましては、昨年成立したやみ金対策法に措置されたこの規定に基づきまして、厳正かつ適切に運用してまいりたい、こういうふうに考えております。
○松野(信)委員 そうすると、昨年の通常国会で成立したやみ金の規制の取締法ですね。当初、議論としては、いわゆるやみ金を取り締まろう、あるいは暴力団が関与するようなのを取り締まろう、こういうふうだったと思いますが、今の御指摘ですと、十三条を適用して、年金を事実上取り上げてやるような貸し付け、まさにこれは年金法に違反をしているということで、不正あるいは不当な貸し付けだということでの対処が可能だ、このように理解してよろしいですね。はい。 それで、次のやみ金の問題ですね。 本当にこのやみ金融、あるいは最近非常に多いのが架空請求、金を借りてもいない人に金を返せというような請求をする、あるいは、例えばアダルトビデオの代金請求というような形で、親あたりにそういう書類を送りつける。親は、わあ、うちの息子はアダルトビデオを借りてとんでもない料金がたまっているのかということでびっくりして指定された口座に払ってしまう、こういうような被害が本当に後を絶たないわけで、こういうやみ金などに対する対応、この点について警察庁の方ではどういうふうにしておられますか。
○吉田政府参考人 まず、やみ金融事件の取り締まり状況についてのお尋ねにお答えいたします。 近年、高金利、過酷な取り立てなどのいわゆるやみ金融の被害が拡大していることから、昨年七月にいわゆるやみ金融対策法が成立したことにより、貸金業規制法及び出資法の一部改正が行われ、無登録業者の広告禁止や違法高金利要求罪が新設されたほか、いわゆる暴力団排除条項の導入等の諸規定が整備されたところであります。 警察では、この法律改正を受けて、全国の都道府県警察に集中取り締まり本部を設置し、強力にやみ金融事犯の取り締まりを推進した結果、平成十五年中の検挙は五百五十六事件、千二百四十六人と、いずれも一昨年の二倍を上回り、金融事犯の統計を開始した平成二年以降、最多となっております。また、被害規模については、被害人員で約三十二万人、貸付総額で約三百二十二億円に上っており、これも統計開始以降、最多であります。 なお、法律改正で新設されました罰則規定の運用状況につきましては、法律が施行された昨年九月から本年四月末までに、無登録業者の広告禁止違反について十七事件、二十三人を、高金利要求罪について三事件、五人をそれぞれ検挙しております。 警察においては、引き続き強力な取り締まりを実施するとともに、相談に的確に対応するための現場の警察職員に対する教育や都道府県、弁護士会等の関係機関、団体との連携などを強化し、適切な被害者対策を推進してまいる所存であります。 次に、架空請求事件の取り締まり状況のお尋ねにお答えいたします。 インターネットの有料サイトの利用代金などと称して電子メール等によりその支払いを請求するいわゆる架空請求事犯は、このところ急増し、大きな社会問題となっているところであります。この種事犯は被害が広域、多数に及ぶことが懸念されますことから、警察庁においては、都道府県警察に対して、事犯を認知後速やかに厳正な取り締まりを行うよう指示しているところであり、平成十五年中は、大規模な請求事犯を詐欺罪を適用して六事件検挙し、本年は、昨日現在、同様に詐欺罪を適用して十事件を検挙しており、これら十六事件で架空請求を受けた人の数は、約七百三十万人以上に及んでおります。 また、被害防止の観点から、広報、啓発活動にも力を入れており、政府広報や警察庁、都道府県警察のホームページにおいてその手口等を紹介し、情報提供を行うことにより、国民に平素から注意するよう呼びかけるほか、架空請求の相談に応じる窓口を整備し、身に覚えのない請求を受けたという方に対しては、絶対に応じないよう指導助言しているところであります。さらに、事案発生時には金融機関に対し、料金を振り込むように指定された口座の凍結を要請するなど、被害の拡大防止に努めているところであります。 今後とも、この種事犯の捜査を徹底するとともに、広報活動を一層進めることにより、被害の未然防止、拡大防止のための対策を徹底してまいります。
○松野(信)委員 ありがとうございました。 ぜひこの貸金業規制法等を、せっかく昨年改正されましたので、これを徹底してやはり運用していただきたい。率直に言って、従前は、どうもなかなかやみ金に対する取り締まりというのが余り進まないなと思っていたんですが、最近ようやく本当に動き出したというふうに思いますので、ぜひこの調子でというか、取り締まりをお願いしたいと思います。 それから次に、借金を整理するというやり方には、法的な手続をとる場合もあれば、法的な手続をとらない任意整理というようなことで借金の整理を行うということがあるわけです。ところが、法的な整理ということであれば裁判所が一定コントロールするということになりますが、そうでない任意整理の場合は、ともすると業者の方が法律に従わないというようなことで、いろいろトラブることもあるわけでございます。任意整理も大変重要な債務整理の一環で、できるだけ借金をつくらないということで大変重要な社会的意義を持っている、このように理解をしております。 ちなみに、この任意整理の中で特にやはり問題になるのは、業者の方が取引のこれまでの経過をなかなか明らかにしないということで債務者をいじめる、こういうところが見受けられます。これについては、東京高裁が平成十四年の三月二十六日に判決を下しておりまして、こういう業者と債務者との間の取引経過の詳細をやはりしっかり開示しなきゃならない、業者の方は、自己の営業利益を不正な手段によってでもこれを追求する一方、自己の営業の結果として生じる国民全体の不利益はこれを無視しようとするということで、取引経過を明らかにしないのは反社会的な行為で違法だ、こういう指摘もあるぐらいでありますので、この点、ぜひとも行政の当局の方も任意整理というものの意義をしっかり認識していただいて、やはりこういう取引経過をちゃんと明らかにさせるということは大変重要なことではないか、このように理解していますが、この点はいかがでしょうか。
○房村政府参考人 御指摘のように、任意整理は、非常に柔軟な処理、迅速な処理、あるいは費用が低廉である、こういうような意味でもメリットは多々ございます。逆に、確かに、全く当事者に任されておりますので、透明性とか公平性に欠ける面があることも事実でございますが、そういう任意整理を適切に行うためには、ただいま御指摘のように、その中で、取引経過であるとかそういった必要な情報がお互いに開示されて適切な結論が得られるということが大事だろうと思います。 そういう意味では、御指摘のような判決例も相次いでいるようでございますので、そういったものを踏まえたより適切な形での任意整理が利用されるということを期待しておりますし、また、法的手続においても、そういった任意整理といわばすみ分けといいますか、きちんとした処理と同時に迅速な処理を心がけたい、こう思っています。
○松野(信)委員 それからもう一つ、やはり金利の問題があろうかと思います。 金利の点については、これは徐々に金利が下がってきているということはそれは確かにそのとおりなんですが、私は、今の社会情勢、そして世界各国との比較から見れば、日本の、例えば出資法あたりで定めている金利というのはまだまだ高い、こういうふうに言わざるを得ないと思います。 これは、平成十一年の臨時国会で貸金業の規制等に関する法律の一部が改正されまして、出資法での金利の上限が四〇・〇〇四%から二九・二%に引き下げられて、この法律が平成十二年六月一日から施行されているわけです。附則がありまして、この附則の第八条のところで、出資法の上限金利については、この法律の施行後三年を経過したときに見直す、こういうふうに規定されたわけです。 それで、この三年後ということで、昨年の平成十五年の通常国会で金利が下がるかと思っていたら、必ずしもそういうふうにはなっていない。金利の二九・二%というのはそのままの状態になってしまっております。同様に、昨年のこの法改正では、これは附則の十二条ですが、出資法の二九・二%というのは、またこの施行後三年をめどとして見直しをするということで、いわば、三年と言っていたのをまた三年引き延ばしたということで見送りになってしまったわけで、この点は少し残念だというふうに思っております。 やはり諸外国から見て、二九・二%まで取っても罰せられないというようなことになっていること、そして、いわゆる、例えば利息制限法上は違法だけれども、刑事処罰の点、出資法の点では違法ではないということでのグレーゾーンが現に存在をしている。この点は、法律の専門家ならすぐ理解はできますが、一般の人にとって、民事上は違法だけれども刑事上は違法ではないというようなことを言ったって、なかなかこれは理解されない。 私は、基本的には、もうグレーゾーンというようなものは言うなら取っ払って、金利の点についてはもっと引き下げるということが必要ではないかと思いますが、この点についてはどのように考えておられますか。
○樋渡政府参考人 ただいま委員の御指摘のとおりの経過を踏まえまして、議員立法によりこの出資法は改正されてきておりまして、昨年七月の議員立法によって成立しました改正の附則におきましても、御指摘のとおり三年間の見直し期間が設けられているところでございます。 法務省といたしましては、資金需給の状況その他の経済金融情勢や貸金業者の業務の実態等を直接に把握する立場にはございませんが、国会等におきます種々の御議論を含め、これらの点に関する状況の推移を見守っていきたいと考えております。
○松野(信)委員 確かに、これは議員立法というような形でなされましたけれども、政府の方も議員に任せるというのでなくて、やはり積極的に一つの政策として、できるだけ多重債務者はつくり出さない、破産者をつくり出さない、こういうような一つの政策的な点から見ても、グレーゾーン自体をなくしていく、あるいは出資法での金利を引き下げる、こういう方向でぜひ検討をお願いしたいというふうに思っております。 刑事局長は、もう答弁の方は結構でございます。ありがとうございました。 それからもう一つ、これまたなかなか難しい問題かと思いますが、民訴法の二百二十八条の四項という規定がございまして、これも時々国会の中で議論がなされている問題であります。要するにこの条項は、契約書面、金銭消費貸借の契約書面あたりに署名かあるいは押印がしてあるというと本人が承諾したものというふうに推定を働かせる、こういう規定なわけです。 推定が働くものですから、例えば、金融機関がろくな説明もしないで、とにかく判こだけ取り上げて判こだけつかせちゃうというようなことになったとしても、実際に裁判になると、現場の裁判官あたりは、やはりこの二百二十八条の四項という推定規定があるものですから、この反証がしっかりできないと、消費者、借り主の方が敗訴してしまう。承諾していたんだ、こういうふうになってしまって、これでまた残念ながら続々と借金の地獄の方に入ってしまう。 特に気の毒だと思うのは保証人です。ろくな保証人の説明も受けていないにもかかわらず、いつの間にか保証人として何か判こが押してある、確かにこれは私の判こだというようなことにでもなると、とんでもない保証債務をひっかぶるという実態がありまして、私は、この民訴法二百二十八条の四項というような推定規定はもうやめる、あるいは大幅な見直しをするということが必要ではないかと思いますが、この点はいかがですか。
○房村政府参考人 御指摘のように、民事訴訟法では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」こう定めております。 これは、一般に、日本で文書を作成する場合に、これを自分がつくったということを明らかにするために、その文書に署名をするかあるいは押印をするというのは一般の慣行でございます。それを踏まえまして、その人が署名をしたりあるいは判こを押している、こういう場合には、その人がその文書をつくったものだと推定するというか、これが常識的な慣行でございます。特に「推定」となっているのは、署名あるいは押印後に変造したような場合がありますので、そういう場合に備えて「推定」ということにしているわけでございます。ですから、ある意味では、この民事訴訟法の規定そのものはごく当たり前のことを規定しているにすぎないわけでございます。 問題になりますのは、判こが押されていると、その人が承諾したとなってしまうという点でございますが、これは、書類にその人の判が押されておりますと、そういう事実から、一般に判こというのはむやみやたらに人に貸したりしないということを前提として、その人の判が押されている場合には、その判はその人が押したんだろうということを事実上推定するという、これは最高裁の判例に従っているわけでございますが、そういう、事実上その人が押したんだろうと推定されて、そうなると、今度は初めて法律上の推定が働く。 その最初の段階については、それはいろいろあろうかと思います、知らない間に押されてしまう、持ち出されたとか、貸したら悪用されたとか。それは事実上の推定でございますので、現実にそれを破っている裁判例もかなりあるわけでございます。 ですから、そこは裁判所の認定ということになりますけれども、法律的に考える限り、この民事訴訟法の二百二十八条の四項というのは、ごく一般的な文書の作成の実態に応じた内容を規定しているということではないかと思っています。
○松野(信)委員 この点はもう少し議論をしたいところですけれども、午前中の時間、適当に切りがいいと思いますので、ここで終わりたいと思います。 ありがとうございました。
○柳本委員長 御苦労さま。 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。 午後零時一分休憩 ————◇————— 午後一時開議
○柳本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続行いたします。松野信夫君。
○松野(信)委員 民主党の松野信夫です。 午前中に引き続き、破産法案につきまして質問をさせていただきたいと思います。午前中は、なぜ破産者がふえるかという、破産に至る背景事情等についてお伺いいたしました。午後は、具体的な各論の方についてお伺いをしたいと思います。 まず初めに、破産の申し立てをするときに予納金というものを裁判所に納めなければならない、こういう規定になっているわけです。一般的な個人の破産ですと、予納金というのは一万円かせいぜいそれくらいということでありますので、そんなに多額な金額になるわけではありませんが、法人の破産で、負債の金額も多い、あるいは債権者の数も多いということになりますと、裁判所の方から、数百万円を予納しなさい、こういうような事案もあるわけでございます。そうした点から見て、従来、予納金については国の方で仮支弁、仮に支払ってくれるという規定がありまして、この点についても、今回の破産法案は従来と少し変えているところがございます。 そこで、旧法と、今回の国庫仮支弁、これは破産法、今度の法案でいうと二十二条、二十三条あたりになるかと思いますが、旧法とはどこが実際に違ってくるのか、また、その違いを設けた趣旨はどこにあるのか。この点、お答えいただきたいと思います。
○房村政府参考人 現行法の国庫仮支弁の制度は、債権者が破産の申し立てをする場合に費用の予納を命ずるということにいたしまして、債権者以外の者が破産の申し立てをする場合には仮に国庫から支弁をする、こういう定めになっておりました。しかし、費用の仮支弁は、あくまで国が一時的に立てかえるということでありまして、最終的には債務者の負担になる、こういうことから、今回の改正に当たりまして、債権者、債務者の申し立ての別を問わず、費用については予納をするのを原則といたしまして、ただ、例外的に、裁判所が「申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、」「費用を仮に国庫から支弁することができる。」こういうぐあいに変えたわけでございます。
○松野(信)委員 旧来のやり方ですと、実際としては、予納金、規定上は国庫仮支弁ができる。債務者が破産の申し立てをした、だけれども予納金を納めるだけの資力がない、そういう場合には国庫の仮支弁というのが、規定としてはあったんですが、これは恐らく実務家であれば大体皆さん御存じかと思いますが、現実には仮支弁というのがなされていないと言っていいと思います。お金がないから国庫仮支弁ということでやってもらえないかというような話をすると、何だかんだ言われて、結局、仮支弁の申し立ては取り下げろ、こういうことで、実際はそれでもう落ちついてしまうというのが実態だったと思います。 ちなみに、これまでこの仮支弁の実績がどの程度あったのか、これについてお答えください。
○園尾最高裁判所長官代理者 国庫仮支弁の件数は、過去五年間について調査をいたしましたところ、年間数件にとどまっておるということでございます。破産の申し立て件数が一年間に約二十五万件に上っているということからいたしますと、年数件の国庫仮支弁というのは、限りなくゼロ%に近い数値であるということが言えようかと思います。 どうしてこのように少ない件数なのかという点についてでございますが、国庫仮支弁の制度は、関係者の利益を保護するために特に必要であるという手続進行上の特別な必要性に基づいて使われているものであるというのが一般的な解釈でございまして、資力のない申立人の保護のために直接利用する制度であるとまでは解されていないということでございます。今回の破産法案でも、そのような趣旨で、「申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるとき」との要件が付されているというように考えております。 それでは、資力のない者の保護のためにどうしているかといいますと、そのためには、法律扶助の制度というのがまず用いられております。平成十四年度でいいますと、法律扶助協会において審査の上、破産申し立ての代理援助の決定をした件数は、年間二万三千件を上回っております。この件数は、破産申し立て件数全体の中でも相当な割合を占めているという実情にございます。 それから、ただいま御指摘の法人の破産の申し立てについて予納金が高いという点に関しましては、最近、少額管財手続ということで、二十万円の予納金で会社の破産手続についても実施しようということでいろいろ検討がされておりまして、東京地裁や大阪地裁では、かなり多数の事件について実施をしておりますが、既に少しずつ始めているという庁を含めますと、全国三十余りの庁にもう広がっておるということで、今後とも多面的な検討を通じまして、国庫仮支弁その他の諸制度について適切な運用がされていくように研究をしていきたいというように考えております。 〔委員長退席、漆原委員長代理着席〕
○松野(信)委員 今御答弁いただいたように、国庫仮支弁、破産する人が二十五万人もいる中でほんの数件、もうゼロ%だというようなことであります。 そうすると、恐らく、最高裁の方としても、このための予算というのはほとんどとっていないのかな、むしろ、その予算をとっていないから、事実上出せないということで、国庫仮支弁の申し立ては事実上もう取り下げてくれというような、こういう運用だったんではないかなと思うんですが、予算面ではどのようになっていたんでしょうか、あるいは今後どうなるんでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 予算上は、国庫仮支弁の実施のために必要な経費ということで、平成十六年度でいいますと五千百三十万円が計上されておるという状況でございますが、先ほど御説明いたしましたような国庫仮支弁の趣旨というところから、決定をする件数が、先ほど御説明をしましたような件数にとどまっておるという状況でございます。
○松野(信)委員 国庫仮支弁ですから、原則として貸し付けということで、いずれ返してもらわなきゃならない、これが恐らく建前だろうというふうに思います。 ただ、いわゆる法律扶助協会あたりですと、返済の能力があるか、返済をどのように行うかというのを一応チェックするようになっているわけですね。ところが、今度の新法の二十三条、これは費用の仮支弁の規定ですが、「裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、」必要なときには国庫仮支弁する、こうなっているわけで、申立人の返済能力とかあるいは返済計画とか、そういうものは特にこの条文には記載がありません。しかし、実際のところ、「その他の事情を考慮して、」という規定もあるものですから、もしかすると、その他の事情のところに、本当にこの破産申立人はまじめに返済してくれるかどうかという、返済能力あるいは返済計画、そういう点もこの二十三条では考慮するんだ、こういう趣旨なんでしょうか。
○房村政府参考人 国庫仮支弁をいたします費用は破産の手続費用ということになりますので、最終的には破産財団の負担になるものでございます。おっしゃっております返済資力というのは、結局、破産財団の財産の状況ということにこの条文上はなろうかと思いますので、当然、それを考えて、破産財団が手続費用も賄えなければ廃止事由でございますので、そういう面で考慮されるということになろうかと思います。
○松野(信)委員 この仮支弁、先ほど申し上げたように、いわゆる消費者破産のような形で予納金が一万円ぐらい、すぐ同時廃止で終結するというようなケースであれば、ほとんどこれを活用するという意味合いはないと思うんです。 だけれども、ケースによっては、それこそ個人の人でも二十万、三十万、ちょっと財産を持っているというような形であれば何十万か納めなきゃならないというようなケースもありますし、また、中には、例えば悪徳商法をやっている会社がいて、さんざん被害をあちこちに出している。昔でいうならば、例えば豊田商事という悪徳商事会社があったわけですね。被害者がたくさん出てきたので、これをとにかく断ち切らなきゃいけないということで、豊田商事の会社の場合は被害者の人たちが破産の申し立てをしかけたというケースでありまして、つまり債権者申し立てによる破産申し立てになったわけであります。 そういう場合は、特に旧法であるならば必ず予納金を納めなきゃいけない、もし予納金を納めなければ却下する、破産申し立て自体を却下されてしまうという仕組みになっているわけで、そうすると、債権者とはいえ被害者の人たちが予納金まで出さなければいけないという大変厳しい状況に置かれてしまうわけで、特にこういうような悪徳商法、悪徳商事会社あたりの破産申し立てをするというような場合には、ぜひこの国庫仮支弁あたりを積極的に活用するというのが、ある意味では被害者に対する一定の支援というか援助にもなるんではないかと思いますが、こうしたような活用というのは考えておられますか。
○園尾最高裁判所長官代理者 これは、国庫仮支弁を認める要件の解釈問題ということになりますので、それぞれの裁判体での判断ということになるわけですが、現実に、ただいま御指摘のような債権者申し立て事件についての予納金をどうするかということになりますと、まず一番最初に検討されるところは、財団がどのように集まるか、それから、その点についてどの程度の当初の費用がかかるかというような、厳密ないわば見積もりというところをしっかりやるというところが一番重要になってくるところでございまして、そのようなことも通じて、一般的には、これまで予納についてできる限り柔軟性のある解釈をやっていこうじゃないかということで最近では研究は進められているところなんですが、これを国庫仮支弁で一般的に賄えるかどうかということになりますと、少なくとも今までの裁判体の解釈としては、法律の制度も違いましたからそのような運用はされていないわけですが、今後も、この制度の趣旨の問題の解釈としての研究課題になるというように考えておりますが、一般的に、そのような形で広く国庫仮支弁の制度を使っていくということは、破産費用の準備の問題としては解釈上難しい問題も出てこようかというようには考えております。
○松野(信)委員 予納金の点について最後の質問ですが、従来の法律ですと、債権者申し立てによる破産申し立ての場合、これは予納金が納められないと申し立て自体が却下されてしまう、こういう仕組みになっていた。逆に、債務者破産申し立ての場合は、予納金を納めなくてもすぐに却下にはならない、ずっと残ってしまうという仕組みになっていたわけですね。これが今度の法律でどのように変わってくるのか、また変えた趣旨というのはどういうところにあるのか、御説明ください。
○房村政府参考人 御指摘のように、現行法におきましては、国庫仮支弁の制度につきましては、債権者の申し立てと債務者の申し立てとでそういう取り扱いの差があったわけでございますが、今回の法案の二十三条の費用の仮支弁におきましては、申立人が債権者であるか債務者であるかを問わず原則として費用を予納していただくということにいたしまして、そのいずれの場合であっても、この法律に書かれておりますような、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要があると認めるときには国庫仮支弁ができる、こういう形にしたわけでございます。これは、破産手続が債権者または債務者を初めさまざまな利害関係人の利益を調整するとともに公益的な要素をも含む手続である、こういうことに着目いたしまして、申立人が債権者の場合であれ債務者の場合であれ、そういう必要性の高い場合には国庫仮支弁の制度を活用できるようにしよう、こういうことでございます。
○松野(信)委員 ありがとうございました。 予納金の点はこれくらいにいたしまして、次に、実務的に言いますと、破産の申し立てをした、しかし、実際、債権者の方からやかましくいろいろと取り立てを受けるということで円滑な破産手続に支障を来すという場合もあり得るわけで、現にそういうケースが散見されております。 私自身の経験でも、破産申し立てして、代理人の方から破産申し立てをしましたのでもう直接取り立てはやめてくださいというような通知を債権者に出すわけですね。そうすると、大概の債権者は、そうかということで、後は裁判所の指示に従うというのが通例ですけれども、一部の悪質な債権者の中には、そういうようなのを無視して直接に債務者のところに出かけていって、破産なんか知らぬぞ、とにかくおれの分は払え、ほかの人はどうでもいいからとにかくおれの分だけ強制的に取り立てる、こういうようなことで、いろいろな形で圧力、本人に対する圧力、周辺、家族に対する圧力、中には暴言あるいは逮捕監禁に至るようなケースもあるわけで、そういうような悪質な債権者に対する対抗措置、これはやはりしっかり立てる必要がある。これは従来から言われていたわけですけれども、この点については、今度の新法はどういうような手当てをしているんでしょうか。
○房村政府参考人 御指摘のように、破産手続が開始いたしますと、破産裁判所あるいは破産管財人の監督のもとに破産債権者の権利の行使は制限をされまして、そういう人たちに対して公正、平等な弁済をするということになっているわけですが、にもかかわらず、おっしゃるように、実力をもって弁済を求めるというような行為があるわけです。こういう行為は、すべての破産債権者がみずからの権利の行使を拘束された状況のもとで実力をもって債権者間の平等を害しよう、そういう行為でありますし、また、この種の行為が個人である破産者の経済的再建を妨げる、こういう指摘もございますので、今回の法案におきましては、二百七十五条において、破産者等に対する面会強請等の罪という刑事罰則をもってこれに臨むということとしております。 要件といたしましては、「破産者又はその親族その他の者に破産債権を弁済させ、又は破産債権につき破産者の親族その他の者に保証をさせる目的で、破産者又はその親族その他の者に対し、面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と、相当重い刑罰をもって臨むということとしております。
○松野(信)委員 私も、この二百七十五条が新設をされるということで、この点は非常に評価できるというふうに考えております。 そこで、この要件について、少し確認をしておこうと思いますが、「破産者又はその親族その他の者」というのが入っております。破産者とかその親族というのはわかるんですが、「その他の者に」というふうになっているので、この「その他の者」というのは、具体的にはどの程度の人を考えておられるのか。 実際には、よくあるケースでは、破産者が勤務をしている勤務先に出かけていって、同僚とかあるいは上司とかそういうのに、わあわあ言って弁済を迫るとか、中には、それこそ友人、知人にまで行って弁済を迫るというようなケースも散見されるものですから、この二百七十五条で言う「その他の者」というのは、どの程度の範囲のことをお考えになっているのか、よろしくお願いします。
○房村政府参考人 この二百七十五条の「その他の者」には、ただいま例に挙げられました、例えば同僚であるとか友人、あるいは同居している人、そういうような人を広く含むということで考えております。 〔漆原委員長代理退席、委員長着席〕
○松野(信)委員 そうすると、「その他の者」というのは、割合幅広く解釈していいのかなという気がいたします。 それから、この二百七十五条の条文を見る限り、一定の目的というのが書いてあるわけですね。目的罪になっているわけで、弁済をさせる目的あるいは保証をさせる目的ということで、面会の強請とか強談威迫、こういうふうになっているわけです。 しかし、現実には、債権者の中には、弁済の目的とか保証をさせる目的とかいう場合ももちろんあるわけですけれども、それ以外にも、まさに腹立ち紛れというか、何だおまえ、破産しやがって、けしからぬということで、単なる嫌がらせとしか思われないようなケース、こういうのも現実にはあるわけです。まさに痛めつけてやれということで、それこそ無言電話をかけてくるとか、まさにつけ回すみたいな形でやってくる場合も現実にはあるんです。 そうすると、そういう場合は、弁済の目的もない、保証の目的もないということで、単なる嫌がらせみたいなケースは、ちょっとこの二百七十五条では助からないかな、そういう嫌がらせ的なのも、終局的には、やはり弁済をさせようという意図があるというふうに広く解釈して、これでいけるんだ、こういうふうになるのかどうなのか。この点はどうでしょうか。
○房村政府参考人 今回、この条文が置かれましたのは、まさに破産手続が進んでいる、あるいは免責がなされたにもかかわらず弁済を求める、あるいは保証をさせる、そういう目的のもとに、このような面会の強請とか強談威迫をするという場合が処罰に値するということでございますので、これはやはり、法律上の必要な要件でございます。 あと、具体的に、実際に債権者が行う場合には、それは腹立ち紛れの要素もあるでしょうから、これは、結局は事実認定の問題ということになりますが、やはりそういう目的がなければ、それはこの条文には該当しない。そのような場合には、別途また別の警察法規なり、そういったものの処罰の対象になることは別論として、目的はやはり必要ということになります。
○松野(信)委員 ありがとうございました。 それから、そういう不当な取り立てをするというようなケースとはまた別に、例えば同時廃止になる、その後、免責の手続に移行する、こういうときに、金融機関、債権者の中には、強制執行してくるというケースがあります。 具体的に、免責手続中に、例えば裁判所から任意弁済をしなさいということで、給料の中から積み立てをしたり、債権者に何%かでも配当しようということで一生懸命頑張っているときにも、強制執行で給料の四分の一あるいは二十一万円以上全部差し押さえるというようなことになってしまうと、思うような任意弁済もできない、それではもう生活も破綻してしまう、こういうケースもこれまでよく見られたわけであります。 新法では、こういうような、つまり免責手続中に強制執行してくるということに対してはどのような対処をしているんでしょうか。
○房村政府参考人 御指摘のように、現行法におきましては、破産手続中は個別的な権利行使は禁止されておりますが、破産手続が終了してしまいますと、免責手続が残っておりましても個別執行が可能になってしまう。その結果、強制執行等が行われて、債務者の経済生活の再生を妨げるという指摘がございました。 そのことから、今回の改正法案におきましては、破産手続が終了した場合であっても、免責許可の申し立てがあるときには、その免責許可の申し立てについての裁判が確定するまでの間、新たな強制執行等や国税滞納処分を行うことを禁止するということにいたしまして、債務者の再生を助けるということを考えております。 また、あわせて、破産の申し立てがあれば原則として免責の申し立てもあった、こういう扱いをすることにして、救済の幅を広げております。
○松野(信)委員 強制執行の禁止ということで、それは二百四十九条に新たに設けられているだろうと思います。これはこれで、従来になかった新しい制度ということで、この点も私は評価できるというふうに思います。 それで、具体的に、例えば破産裁判所とそれから強制執行の命令を出す裁判所、これは実際は別々の裁判所になっているわけですから、強制執行を命ずる裁判所が、当該債務者、実はこれはもう破産して今免責手続中だということは、言うならわからないというケースが実際のところは多いだろうと思うんですね。 そうすると、せっかく免責申し立てで、免責の審尋などを一方ではやっている。だけれども、その間に裁判所が強制執行命令を出して、例えば給料で差し押さえてくる、こういうことは十分予想できるわけで、そういうような場合に、実際、どういうふうに対処したらいいのか、この点はどうでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 現在も生じておる問題ということになりますが、現在は、少額管財手続などで管財人を選任して、管財人から書面を出していくということで対処するわけですが、新しく申立人側から停止ができるという規定ができましたその運用といたしましては、やはり申し立て代理人が停止の関係の書類を出していくというのが原則になっていこうというように思っているわけですが、これを本人でやる場合にどうするのかということに関しましては、よく手続教示をしていかないと、時期がおくれてしまいますと間に合わないということになりますので、この点については工夫をしていかなければいけないというように考えております。
○松野(信)委員 恐らく、破産申し立てについてちゃんと代理人がついているというようなケースですと、例えば免責審尋しているうちに給料で差し押さえを受けたということになれば、その旨を破産申し立ての代理人に告げれば、それは多分、代理人の人が、それはもう、新法によれば、そういう強制執行というのは効力がないというのがありますので、これは多分、この人は破産免責申し立て中だということで、例えば上申書あたりを強制執行した方の裁判所に出すということで、これはどうなんでしょうか、取り消しという格好になるのか、あるいは、もう当然に、出せば無効だというふうに取り扱ってくれるんでしょうか。その辺の実務上の取り扱いはどうなるんでしょうか。
○房村政府参考人 今回の改正によりまして、免責の申し立てがある場合にはその裁判の確定するまで執行は禁止されておりますので、執行障害事由ということになりますから、仮に執行裁判所がその事実がわからなくて行った場合にも、本来の効力は生じていないはずだろうと思います。 ただ、それを明らかにするために念のために取り消すかどうかというのは、またその裁判所のお考えではないかと思っております。
○松野(信)委員 その点は、やはり実務で考えると看過できない問題でありまして、給料の差し押さえというと、必ず第三債務者、つまり勤め先のところに通知が届くわけです。そうすると、勤め先としては、そういう通知が来れば、例えば四分の一は差し引いて残りの四分の三しか払わない、こういう措置をすることになるわけですから、少なくとも第三債務者のところに、やはりきちんとした形で、この差し押さえは新法の二百四十九条に反するものだった、実はおたくの会社に勤めている方は免責手続中であって、さきに出した給料の差し押さえの命令というものは実は無効ですから天引きしないでよろしい、例えばそういうような通知なり何なりをやはり出してもらわないと、第三債務者の、いわゆる勤務先の人は対応できないだろうと思うんで、その辺の整備というのをきちんとやってもらいたいと思いますが、この点はどうですか。
○園尾最高裁判所長官代理者 執行を停止するか、とめるべきかというようなことに応じて、例えば執行を取り消す、それ以降については執行を認めないという趣旨であれば、第三債務者に対しても通知をするというような運用をしていくことになろうかというように思っておりますが、今後の運用の検討課題として考えていきたいと思っております。
○松野(信)委員 この問題は債務者本人も、それから第三債務者の、つまり勤め先の実際の処理に当たっても、小さい問題といえば小さい問題かもしれませんが、実務的には非常に気を使ってあげなければいけない問題だろうと思うので、運用の面でスムーズにいくように、ぜひこの点はお願いしたいというふうに申し上げておきたいと思います。 それから、実務的には免責に関しては、法律上の手続ではありませんが、これまで、破産申し立てして審尋あたりを受けて、裁判官から、一定の配当を任意にやってください、正式に破産管財人をつけて破産管財人が換価処分をして配当手続をするというものではないけれども、例えば破産の債権額の一割ぐらい何とか給料の中から積み立てをして、半年間でも積み立てれば一割ぐらいは積み立てできるでしょう、そういうふうな積み立てをすれば、あなたの場合はスムーズに免責を認めてあげますよ。こういうような裁判実務が、恐らくこれは全国各地で、特に少し前まではなされていた。 これは、必ずしも法律上そういう規定はないんですけれども、実務的な運用というか慣行というか、任意弁済をすれば免責を認めてあげますよという方向でなされる。あるいは、あなたは破産申し立てして、債権者の方にはもう全然払わなくて済むようになったから、結構いい給料でももらっていると、その給料の中からしっかり積み立てをしなさい、債権者におわびの意味も兼ねて一割ぐらいは配当したらどうですかと。 現実に、裁判官の方からそういうふうに言われて、代理人の方も、はいわかりましたということで、積み立てをして任意弁済を行う。これが、法の規定はないけれども、実際よく行われてきたわけであります。 ただ、こういうやり方が本当にいいのかどうか、必ずしも法律上の要請ではないわけです。しかも、裁判所によって、また裁判官によっても、積み立ての金額をどの程度にするか、これは確固たる基準があるわけではないものですから、どうもその場その場の裁判官の判断で積立額が多かったり少なかったりというようなことも見受けられまして、余り適切なやり方ではないんではないかなと、私自身は日ごろからそう思っていたんですが、余り裁判官に逆らうのもいかがかと思って、そのまま従っていたわけです。 そういうような実務の慣行というものを新法後もやはり続けるのかどうなのか、その点、率直にいかがでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 大変重要な実務上の問題点について御指摘を受けました。 ただいま御指摘のような任意弁済の運用、あるいは免責積み立ての運用というものは、バブル経済の影響が色濃かった平成四、五年当時から始まったわけで、全国にかなり広がっておるということでございまして、これは免責について問題のある破産者について、これが非常に増加してきたので、それの対処策として広がっていったわけです。 御指摘のように、法律の定めがないのに裁量で実施しておるというところから、広がり過ぎはしないか、あるいは率についてばらつきがあり過ぎやしないかというような問題点、その他の問題点も指摘されておりましたが、最近では特に、余りにも不景気が長く続いたものですから、そもそもそのような金額すら払えないという債務者が大変ふえてきたということで、問題が大きくなってきておるということでございます。 私の経験から申しますと、東京地裁でも大変問題になりまして、平成十一年に少額管財手続を実施すると同時に、この問題について解消してはどうかという検討課題に弁護士会との間で取り組みまして、平成十二年ころまでにはすべて廃止するということにいたしました。 ただし、これは、廃止ができましたのは、少額管財手続が広がりまして、二十万円の予納金を準備すれば少額管財人を選んで免責をするかどうかの意見を出してもらえるというようなことがあったためでして、これを直ちに全国に推し広げていくということは難しいわけでございます。 しかし、全国でもただいま御指摘のような認識を持って問題点として取り組んでおりまして、少額管財手続も三十庁以上に広がっておるというようなこととかその他の状況を考えまして、また全国でそれぞれ研究課題にしていくということで、新法の施行を迎えていきたいというように考えておるところでございます。
○松野(信)委員 今御答弁いただいたように、東京、大阪、大都市は、少額管財事件ということで、安い、二十万程度の予納金で管財人をつけて、割合簡単に債権調査とか配当とかやって一件処理する、これがかなり進んでおりまして、したがって、今言ったような任意弁済というのはもうほとんどないに近いのかな、こう認識しております。しかし、田舎の方に行きますと、なかなか少額管財事件というのは必ずしもまだ浸透しているとは言えないと思います。まだまだ任意弁済の積立金を指導して、事実上の配当のような形をしている、こういう運用があると思います。 こういうような運用というのは、率直に言うと余り感心はしないなというのが率直なところでして、中には、それは明らかに免責不許可に該当する、例えば、これは浪費だな、明らかにもう浪費をしている、あるいはもうギャンブルがひどい、そういうことによって借金をつくった。ですから、まあまともにいけばちょっとこれは免責許可はもらえないだろうなというようなケースに、裁判所の方から、一割ぐらい頑張って積み立てしなさい、そうすれば免責を与える、債権者から異議がなければ免責する方向で考えますから、こういうように実務的にはよくなされているわけです。 しかし、明らかに浪費だというようなケースもあれば、それほどでもないんではないかな、そんなに浪費したとも思えないケースだけれども、しかし案外収入がいい、いいところにお勤めで収入がかなりあると、あなた、反省の意味も込めて積み立てをしなさいというふうに言われて積み立てしているケースも現実にはあるわけで、必ずしも免責不許可事由に当たらなくても積み立てをしているようなケースも現実にはあると思います。 特に、都市部と地方との格差もあって、この辺はやはり、最高裁の方も恐らく認識はしてはおられるのではないかなと思いますが、やはり、少し時間をかけてでも是正していく方向が望ましいと思いますが、この点どうでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 ただいま御説明しましたように、大変よく認識をしておるということでございますが、それぞれの地域の実情、特に管財人についてどのような体制をとっていくのかという問題とも絡んでまいりますので、それぞれの裁判所で、弁護士会との間で粘り強く協議をして、一歩一歩前進をしていくということが大切であるというように考えておりますので、今後も大事な検討課題ということで研究を進めていくようにしたいと考えております。
○松野(信)委員 ぜひ、その点、今後も重要課題で対応していただきたいと思います。 それから次に、自由財産の範囲が拡大した、これは新法で言うと三十四条以下にあるわけですけれども、これも、もう既に審議の中でも別の委員も取り上げていたと思いますが、これはこれで非常に結構なことだ、賛成をしたいと思います。 そこで、念のためにちょっと確認をしておきますが、民事執行法百三十一条の三号に規定する額に二分の三といいますか五割増しだ、こういうことになっているんですが、しかし、中には、どうも免責が不許可になりそうかあるいはそれに近いような、余り誠実とは思えないような破産者の方もおられる。そういうような場合の方にもやはりこの規定を適用して、自由財産の範囲というのは拡大をするのか。あるいはこれはもう言うならば最低額だということであるならば、じゃ、上限というのはどういうふうに考えておられるのか、この点はどうでしょうか。
○房村政府参考人 この自由財産の範囲でございますが、これは、強制執行の差し押さえ禁止財産は、破産法において自由財産ということにしておりましたので、強制執行の方が、昨年の改正に伴いまして、ことしの四月一日から二カ月分、具体的な額としては六十六万円ということになりました。 やはり、個別執行の場合に比べますと、包括執行である破産においては、全財産の管理処分権を失うということもありますので、やはり生活維持のために必要な額というのは個別執行よりも多いだろうということから、個別執行が二カ月であるのに対して破産においては三カ月分の九十九万円としたわけでございます。この額は、一律にそういうことを定めておりますので、個別的な破産者の状況によって変わるということはありません。 ただ、破産者の中には、例えば扶養家族が非常に多いとか、収入の道が当面なくて、通常の場合に比較してやはり自由財産がこの額では足りない、こういう場合もございますので、そういう場合には、裁判所がそういう個別的状況に応じまして自由財産の範囲を拡張することができるという、拡張の裁判を今回新たに設けました。これはまさに、個別事情に応じて裁判所の方で判断していただくということになりますので、特に法律の方で上限というものは定めておりません。
○松野(信)委員 そうすると、上限を定めていないとすると、ある意味では青天井みたいな形になるのかな。債権者から見ますと、それは本当に気の毒な破産者、債務者の場合もあるし、そういう場合で、例えば扶養家族も多くてこれは大変だ、そういうのがよくわかるようなケースであれば、恐らく債権者も納得するだろう。しかし、そうでもない、何か余り誠実とも思えない破産者、場合によっては、何だ、破産してからもしょっちゅうパチンコなんかに行っているじゃないか、そういうのが見られたりしますと、やはり債権者の方も快く思わない。 自由財産をふやすということについては、大変批判もあろうかと思うので、「財産の範囲を拡張することができる。」というふうに三十四条の四項でうたっておりまして、これはこれで私は適切だと思いますが、やはり債権者の方の態様、それから債務者の方にも多少問題のある人もある、こういう点も考慮して、一定のガイドラインのようなものを裁判所の方でも御検討されたらどうだろうか。個々の裁判官にもそれはもう任せ切りというようなことではどうかな。一定のガイドラインあたりを御検討するお考えはないのかどうか。 それからもう一つ。そういう、幾らにするのかということについて、債権者の方の意見というのは何らかの形で反映するのかしないのか。この点をお答えください。
○園尾最高裁判所長官代理者 自由財産の拡張の裁判の運用につきましては、これは申立人側の手続の進行の予測という面から見まして、予測可能性が一定程度ある手続にしていかなければいけないというように裁判所側としても認識をしておりまして、現在、この拡大の運用について、全国でおよそ、よそはこのようにしておって自分のところはこのようになっておるということで、確実に一つの線ということではありませんが、おおよそこのような方向で検討してはという、そのようなものをつくってみようということで、既に研究を始めております。 高等裁判所所在地の八地裁と大規模庁五庁を加えた十三地裁で既に研究を重ねておりまして、これについては、弁護士会にも情報を提供して御意見をいただいておるということでございまして、そのような研究を通じて、全国おおむね足並みのそろった運用ができていく、そのような研究をしていこうという機運が盛り上がっておるところでございます。 債権者の意見を反映するということは、これは適正な裁判をする上でぜひとも必要なことでございますが、幸い、どの事件にもこの拡張の裁判をする場合には管財人が選任されておりますので、この管財人が債権者の意見を把握するという立場にありますので、裁判所としては、管財人の意見を聞きながら、適切な運用をしていくという方向で検討をしておるということでございます。
○松野(信)委員 三十四条の五項を見ますと、「裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。」ということですから、確かに、これは破産管財人の意見は聴取される。しかし、破産管財人が確実に債権者の皆さん方の意見をしっかり聞いて、そういうのを踏まえて意見を言うかどうか、そこのところは、必ずしも私は担保されていないのではないかなというふうに思うので、この辺は実務上の運用ということにもなろうかと思いますが、やはり債権者としては、債務者のいろいろな態様にもよると思いますけれども、いろいろ意見を言いたい、何でこういうけしからぬ破産者に自由財産をそんなにたくさん与えるのか、こういう向きもないわけではないだろうと思うので、実務的には、しっかり債権者の意見も反映するような形でお願いをしたいと思います。 それから次に移りまして、賃貸借と破産、この問題について御質問したいと思います。 賃貸借と破産の問題については、賃貸人が破産する場合、それから賃借人が破産する場合、それぞれ二通り考えられるわけですけれども、まず、賃貸人、大家さんの方が破産あるいは民事再生あたりを申し立てる、こういうような場合、賃借人の保護をどのように図っていくか。これはまた、これはこれで重要な問題ですし、法的にも手当てをしなければいけないと思います。 それで、賃借人の保護という観点から見ると、確実に従前どおりそこに賃借できる、居住ができるかという問題が一つと、それから、預託をしている敷金、破産ないし民事再生している賃貸人に預託している敷金というものがしっかり保全されるかどうか、この二点が恐らく最も関心のあるところだろうと思います。この点は、新法ではどういうふうに手当てをしているんでしょうか。
○房村政府参考人 賃貸人が破産した場合の賃借人の保護でございますが、まず最初の、引き続き利用できるかどうかという点について御説明いたしますと、現行法では、賃貸人が破産した場合には、破産管財人は、破産法上、特別の解除権がありまして、解除をすることもできることとなっております。この点については、賃借人の保護に欠けるという指摘がございましたので、今回の改正案におきましては、そういう賃貸借の場合、例えば建物の引き渡しを受けているというような、第三者に対抗することができるという場合には、従前与えられておりました破産管財人の解除権は認めないということにいたしまして、引き続き利用できるようにという保護を図っております。 それから、敷金についてでございますが、これについては、従前は、敷金返還請求権は、停止条件つきの債権ということになりまして、停止条件が成就した場合に、破産債権として割合的な弁済を受けるというにとどまるということになっておりましたが、今回、敷金返還請求権について保護を厚くするという趣旨から、敷金返還請求権を有する賃借人が賃料を支払うときには、寄託を請求できるということにいたしました。そういたしますと、破産管財人は、それを直ちに配当原資に充てずに、寄託をして別に保管をしておく、条件が成就して敷金返還請求権を行使できるようになった場合には、その寄託をした額から優先的に弁済を受けるということで敷金返還請求権の保護が図られる、こういう新しい制度を設けることといたしております。
○松野(信)委員 寄託を請求することができるというのを七十条に新しく設けているわけで、これも旧法から比べれば前進だというふうに思います。 しかし、現実には、これは寄託を請求することができるという規定になっているわけで、例えば管財人が自動的に積み立てて準備しておくというわけではないわけで、つまり、賃借人の方がうっかりと、まじめに賃料をしっかり払っているけれども、寄託してください、将来のために寄託してくださいということをちゃんと言っておかないと、場合によって、賃貸借契約解約でもう出ますというときに、実は、寄託請求はなかったから寄託しておりませんでした、財団もありませんから残念でした、こうなっては大変気の毒だというふうに思いますので、この辺については、きちっとやはり周知徹底をさせるようなことをしないと、普通、賃借人の人は寄託請求できますと言われても、これはなかなかわからない。 むしろ実務的には、例えば半年後に出るということがはっきりしているならば、しかも、例えば半年間分、六カ月分の家賃相当額を敷金として出しているなら、むしろ、払わないで、六カ月間ただでいて、それで敷金と相殺してくれ。むしろそっちの方が現実的には手っ取り早いというふうに思いますので、こういう運用もよし、寄託を請求するなら請求するで、そういう法制度をやはりよく周知させる、これをお願いしたいと思います。 それから、逆に今度は、賃借人が破産する、あるいは民事再生をするという場合に、賃貸人、大家さんの方の保護がどうなるか、こういうケースです。 これも実務的には非常によくあるわけで、大家さんの賃貸人から見ますと、破産してどこかへ行っちゃった、がらくただけ残っている、こういうケースがよくあります。つまり、家賃は払ってもらえない、がらくたの荷物だけは放置されて残っている、しかし、一応破産者の財産らしきものだから、勝手に処分もなかなか難しいということで、えらく往生する。結局、破産財団も、ろくなものがなければ、家賃の回収もできない。こういうことで被害をこうむることもあり得るわけで、こういうような場合には、今度の新法は何か手当てをしているんでしょうか。
○房村政府参考人 賃借人が破産した場合、現在の扱いでは、民法の六百二十一条によりまして、賃貸人の方は、賃借人が破産宣告を受けた場合には解約申し入れができる、こういう定めになっております。 これは、破産をした賃借人が果たして賃料を払ってくれるかという、そういう不安を賃貸人が持つだろうということから、このような解約申し入れが認められたわけですが、この規定によりますと、破産宣告は受けたけれども賃料はきちんと払っている、そういう場合でも解約ができるということになりますので、そのような、確かに破産をいたしますと不安は抱くであろうけれども、きちんと賃料を払っている間は、それは現実化していないわけですから、その場合にまで解約の申し入れができるというのは、賃借人の保護に薄いのではないか、こういう指摘を受けまして、今回、この民法の規定を削除するということといたしました。 したがいまして、賃借人が破産宣告を受けたというだけでは解約の申し入れはできませんが、御指摘のように、現実に賃料を支払わない場合には、これは当然、債務不履行に当たりますので、その場合には解除をすることができますので、賃貸人の保護に欠けるということはないだろうと思っております。
○松野(信)委員 時間が余りありませんので、最後の質問をさせていただきます。 否認権の行使、管財人が否認権を行使するという場合もあるわけですが、百六十一条の条文が新たに新法ではつくられておりまして、相当の対価を得てした財産の処分というのは原則として否認できない、こうなって、これはこれで大変結構だと思います。 しかし、現実に考えてみますと、倒産しかかっている会社、かなり危なくなっている会社、債権者からいろいろと、債権を払えということで言われている。そうすると、例えば不動産あたりをとにかく早く換価したい、安くでもいいから処分して、お金にかえて、債権者に対する支払いをしたい、こう考えるのも当然であります。そういう中には、そうか、大変会社も苦しいね、それじゃ助けてあげようということで、多少市価よりも安く不動産を買ってあげる、非常に善意に不動産を買って、ある意味では、会社を助けてやろう、倒産しかかっているならという場合もあるわけですね。 そうすると、例えば、一億円の不動産を市価よりは少し安く買ってあげるよということで、七千万か八千万ぐらいで買ってあげるということで、本人とすれば応援してあげたつもりであっても、それが相当の対価ではないというようなふうに後から判定されると、土地は返せ、こうなってしまうし、場合によって、もうその時点では財団の方がないと、土地は取り上げられるわ、七千万、八千万出したお金は全額は返ってこないわということで、大変な目に遭ってしまうわけですね。 そうすると、やはりこういう問題については、相当の対価というのは大体こんなものですよ、これくらいでやれば御心配ありませんよというような何らかのやはりガイドラインを裁判所の方で御検討いただいて、こういう程度なら大丈夫です、問題ありませんというガイドラインをぜひ御検討いただいて、そういうのを示していただく。そうすることによって、経済界も安心してそういう取引ができることになるのではないかと思うので、ぜひこの点を、一定のガイドラインをわかりやすく示す、これをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
○園尾最高裁判所長官代理者 否認が成立するかどうかということに関しましては、最終的にはその件に関する裁判体の判断ということになりますので、その前に一般的な形でガイドラインというものをつくっていくというのはなかなか難しいというように思うわけですが、ただ、その点に関しましては、やはり管財人とそれから当事者との間でよく意見交換をするというような形で進めていくというのが差し当たっての方向であろうというように考えております。
○松野(信)委員 ただ、経済実務界では、やはり安心して、破産状態になりかかっているような会社でも取引できるというやはり安心感を与えるためにも、ぜひこのガイドライン、一定の、こういう場合は大丈夫です、こういう場合は否認されますというのをやはりおつくりいただいた方がいいのではないか、この点だけ御指摘させていただいて、質問を終わります。 ありがとうございました。
○柳本委員長 御苦労さま。 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。 ————◇—————
○柳本委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。 この際、お諮りいたします。 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官久保信保君、法務省民事局長房村精一君、法務省人権擁護局長吉戒修一君、法務省入国管理局長増田暢也君、財務省大臣官房審議官加藤治彦君、国税庁課税部長西江章君、厚生労働省大臣官房審議官金子順一君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長塩田幸雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○柳本委員長 次に、お諮りいたします。 本日、最高裁判所事務総局山崎家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○柳本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。泉房穂君。
○泉(房)委員 民主党の泉房穂です。今から三十分間質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 きょうのテーマも成年後見制度についての質問です。本国会になりましてからこれで四回目の質問となります。これまでの答弁を踏まえまして、その後の検討状況等の確認もさせていただきたいと思いますので、前向きな御答弁、ぜひともよろしくお願いいたします。 私もこのゴールデンウイークにも、自分が受け持っている成年被後見人のところ、特別養護老人ホームを三カ所回ってきて、お会いしてきました。また、新しく二件、成年後見の申し立てもいたしました。そういった中で、現場の生の声をいろいろ聞く中で、どうしてもこの成年後見制度については飛躍的な質量ともの充実化が必要であると、本当に改めて強く思いました。 これまでも既にお話しさせていただいていますが、この成年後見制度については、なかなか関係各省の努力が私から見ればまだまだ不十分で、これからだと思わざるを得ません。潜在的な利用者が四百五十四万人ほどいる、しかし、まだ四万人程度の利用だと。諸外国は一%、日本だと百数十万人利用してしかるべき制度がなかなかそうもいかないというまず現状認識から始めるべきであります。 そして、どうしてこれが必要かという認識が一番私は大事だと思います。具体的な場面を想定するべきなのであります。何度も申し上げます。この成年後見制度というものは、単なる何かサービスの一つというものではありません。まさに、当の本人がどういう生き方をしていくかということを当の本人が決めていくことの問題であるわけでありまして、ホームヘルプサービスなり金銭管理というような何かサービス的なものの横に位置づくものではなく、その前提となるものだと思います。 社会というものはできる限り、何か不幸にして障害を負った方とか、また、年をとって働けない方に対してできるだけ手厚い保護をしていくべきだろうと私は考えています。その一つが例えば年金でありまして、年をとって働けないときのお金が老齢年金、思わず事故に遭ってしまって、交通事故に遭ってしまって一生車いすのときに出るのが障害年金、そういったことを充実していくのはもちろんであります。また、福祉サービス、ホームヘルプサービスやもろもろの福祉サービスを充実していくのも当然であります。 しかしながら、大事なのは、幾ら年金をもらっても、そのお金をどこに使うのかということを当の本人が判断できなかったら、単に貯金がたまるだけであります。また、福祉サービスが幾ら充実しても、本当は地域で暮らしたいのに施設に入ったのでは本人の意思に反してしまいます。 そこのところ、お金の使い道や、自分が地域で暮らしたいのか、施設に入りたいのかということをきっちりと見きわめていく、それが最も重要であろうと私は考えております。それをするのがこの成年後見制度である、これは何度もお伝えしたいと思います。 具体的な場面を考えればいいわけでありまして、一番端的な例は、年をとってまだらぼけが始まって痴呆が進みかけた方に関して周りの方が、そのまま地域で暮らそうと本人が思っていても、御家族としてはやはり施設の方が安心だというふうに思います。そのときに、本人が地域で暮らしたいのであれば、家族を説得してでも、場合によっては家族の反対を押し切ってでも地域で暮らし続けるようにしていくシステムが必要であります。 また、知的障害をお持ちの方の場合、既に施設に入っている方の場合、親御さんとしては、自分が死んだ後の子供のことを考えると、幾ら子供が、仕事がしたい、地域で暮らしたい、その施設を出たいと言っても、親御さんとしては、気持ちはわかるけれども社会はそんなに甘くないんだからという形で、施設入所を継続するという選択をするのが実態であります。そのときに、親の反対を押し切ってでも、確かに大変な思いをするかもしれないけれども、社会に出ていく、地域に出ていくという選択肢を保障していく、それが必要だと思います。 また、今ホットな高齢者虐待の問題、これについても、家族が加害者になっている場合もあります。そういったときに、その当の本人の人権をどう守っていくのか、これもまさに成年後見の話であります。 財産の面についても、具体的には、自分の住みなれた家を離れて一たん入院とかした際に、御家族の方がその不動産を処分してしまったり賃貸契約を解約するケースがたくさん見られます。また、預貯金、実は二千万、三千万持っていて、それを有料のいろいろな福祉サービスを利用すればまだまだ地域で暮らせる場合であっても、なかなか家族としては、お金がどんどん減っていくことよりも、施設に入って年金の範囲の中でやっていくことを望むというケースは本当によくあるケースなわけです。 そういうときに、お金が減らなくて、その方が施設に入った場合、私も、私の後見業務もほとんどそうなんですが、三千万、五千万の預貯金がある、そのお金を活用すれば御本人の残りわずかな人生をもっと充実して生きられるかなと思います。しかしながら、御家族としては、そのお金を使うことについてはやはり抵抗感をお持ちの御家族が多いわけです。そういったときに、御本人のお持ちの預貯金を本人のために使うようなことを保障していく必要がある、そう思うわけであります。 私が言っている成年後見制度というのは、そういった場面において御本人の意思を優先していくシステムをつくるという趣旨で言っているつもりであります。そこはぜひとも、そのような趣旨でお受けとめいただきたいと思います。 それでは、具体的な質問に入らせていただきます。 まず、厚生労働省に関しまして、これまでの答弁におきまして、坂口厚生労働大臣みずから、本当に心を入れかえて頑張るとまで、本当にありがたいお言葉をいただきました。その後、一定期間もたっております。検討も進んでいると思いますので、具体的な対策、検討状況等をお述べいただきたいと思います。 〔委員長退席、塩崎委員長代理着席〕
○金子政府参考人 お答え申し上げます。 今先生から御指摘をいただきましたように、介護保険制度の中でも、必要なサービスを適切に御利用いただくためにはさまざまな前提条件というものがあるんだろうというふうに考えております。その中で、わけてもやはり大切なのは、権利擁護の仕組みということだろうと思っております。痴呆性の高齢者の方など判断能力が不十分な方々が、人間としての尊厳が損なわれたり財産侵害を受けたりということがないように、御案内のとおり、介護保険制度と時を同じくしまして成年後見制度がスタートしたわけでございます。 厚生労働省におきましても、これも何度も御答弁申し上げておりますが、成年後見制度利用支援事業というものを実施して、利用が促進されるように努めているところでございます。 その後の検討ということでございますが、高齢者のサービス利用選択の支援ということについて申し上げますと、成年後見制度などの諸制度とともに、やはり地域全体でそういった方を支えていくという視点が非常に大事じゃないかというようなことでございまして、私ども厚生労働省の方で、つい最近ですけれども、御報告もいただいたものなんですが、地域でのケア調整の拠点になっておりますいわゆる在宅介護支援センター、ここの機能のあり方を御検討いただいていたわけですが、この中で、今後のセンターのあり方として、大きな役割の一つとして、痴呆性高齢者がふえている、こういう中で権利擁護の機能を強化していくというような方向性の御提言もいただいているところでございます。 私どもといたしましては、介護保険制度の見直しに向けまして現在審議会で御議論いただいているわけでございますが、このようなことも踏まえまして、高齢者の方が適切なサービスを利用することを確保するために、成年後見制度の普及、定着の方策はもとよりでございますが、さらに幅広い検討も進めていきたい、こういうように考えております。
○泉(房)委員 今の御答弁を受けまして、再度お願いであります。 介護保険の見直し論議の中、成年後見というよりも広く権利擁護という観点だと思うんですが、御本人の意思、御本人の権利を社会としてどのようにサポートしていくかという見地から、ぜひとも見直し論議の中で抜本的な改革案をお示しいただきたいと思います。 続きまして、法務省につきましてですが、法務省については、登記所が一カ所から五十カ所という答弁はこれまでにいただいております。広報につきましても、広報物の内容の見直し、また配布先なども含めまして前向きな検討という御答弁をいただいておりますので、在宅介護支援センターなどに配布するのは当然だと思いますが、それのみならず、具体的にどういったところに広報物を配布していくのか、そして、その時期は、いつまでにそういったことを行うのか。 またあわせて、その内容面につきましても、これも繰り返し述べておりますが、内容については、それを見た方が利用したいと思うような広報であることが必要でありまして、法務省サイドから登記の説明をするのではなく、あくまでも利用者の側がそのパンフレットなり広報を見て、これは自分にとって使いたいなと思う制度なんだというように思っていただけるような内容にすべきだと思います。それに当たっては、こういうことに詳しい厚生労働省の管轄、また関係諸団体との連携も重要だと思いますが、この点、あわせてお答えください。
○房村政府参考人 この成年後見制度の周知方法でございますが、御指摘のように、従来から、法務局、市町村、司法書士会など司法関係者へのパンフレットの配布とか、ホームページへ掲載するというような方法をとってきたわけですが、委員から、障害者の施設など具体的な場所を挙げて配布先を検討すべきではないかという御指摘を受けましたので、本年の三月に配布をいたしましたが、その際には、従前の配布先に加えまして都道府県社会福祉協議会にもパンフレットを配布いたしました。 次に配布をする際には、関係機関とも協力をいたしまして、ただいま委員からも御指摘のありました在宅介護支援センターであるとか各障害者施設等にも配布するということで、配布先を拡大する方向で努力をしていきたいと考えております。 それから、パンフレットの内容につきまして、確かに、御指摘を受けて見ますと、成年後見登記制度の説明が多くて、成年後見制度そのものの趣旨に関する説明が比較すると少ないということを、私どもも見て改めて気がつきましたので、現在、まさに利用者の立場から見てわかりやすい成年後見制度の趣旨についての説明ということで内容を検討しているところでございますし、その内容の検討に当たりましては、関係団体、関係機関等と意見を交換して適切な内容にしたい、こう思っているところでございます。
○泉(房)委員 繰り返しですが、本当に広報も重要ですので、広報次第によってそのイメージというのはできます。今の成年後見制度のイメージというのは、決して利用者にとっていいイメージではないというのが率直なところです。そうではなくて、利用者にとって、これは自分たちにとって本当にいい制度なんだと思えるような周知徹底をぜひともお願いしたいと思います。 続きまして、裁判所に対してであります。 私自身もずっと弁護士をしておりますので、裁判所がたくさんの仕事量を抱えながら頑張っておられることについては、本当にその御苦労もよくわかっているつもりであります。また、いろいろな分野に拡大をする中、いろいろな勉強もしなきゃいけない、大変だということもわかっているつもりであります。しかしながら、特にこの成年後見については、狭い意味の法律というよりはかなり福祉的要素の要る分野でありまして、この点、今の裁判官、書記官、調査官といった方々がどの程度この分野についての知識を持っておられるのか、また、これらの分野に対する熱意を持っておられるのかについては、首をかしげざるを得ない面もあります。 具体的には、裁判所の中で最もこの分野にたけているはずの調査官の方の口から、例えば、施設に入れて、一生施設でよかったですね、そんなことが出てきてしまう。それは、本当に流れに逆行するようなお話です。それをあたかも当然のように言われます。支援費制度のことを話しても、支援費制度とは何ですかということを言われるくらいであります。そんな状況で、果たして適正な成年後見の現場の実務ができるのかというと、なかなか難しかろうと思います。 この点、具体的に、例えば、裁判所の職員の採用に当たって社会福祉士など社会福祉の資格を持った方々を優先的に採用する、採用の際に考慮するという工夫をするとか、また、研修に当たっては成年後見制度についての研修を組み込んでいくとか、そういったことも考えられてしかるべきであろうと思いますが、この点、どのようにお考えか、最高裁、お答えください。
○山崎最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、成年後見を初め家裁の事件処理におきましては、社会福祉に関する理解と知識も重要であるところでございますので、家庭裁判所のスタッフで、裁判官の命令を受けて本人の状況等を調査することの多い家裁調査官の採用には、心理学、社会学、社会福祉学等を専攻した者も多く採用されております。その上で、研修所における二年間の養成研修の中で、社会福祉学やソーシャルワークなどの専門的な講義が行われておりますので、家裁調査官に対するこのような研修を充実させることにより事件処理に遺漏のないように対応してまいりたいと思います。 また、家裁調査官以外の職員に対しましても、既にこれまでも研修を実施したり研究会を開催したりして、成年後見関係事件に関する十分な理解と知識を持つように努めておりますので、今後ともこのような研修を充実させていきたいと考えております。
○泉(房)委員 今答弁のあったように、これからの裁判所の役割としては福祉的な部分の要素が高まってくると思います。これは、成年後見だけではなく児童虐待の場面でもそうだと思いますので、ぜひとも、そういった方、そういった知識とそういった熱意のある方を採用し、また、研修において、そういった動機づけも含めまして、ぜひともお願いしたいと思います。 またもう一点、最高裁に対しまして、費用の軽減化について質問したいと思います。 知的障害者の施設にずっと私もかかわっておりまして、ほとんどの方が、成年後見制度を利用したいと親御さんなどはおっしゃいます。しかしながら、利用するにも、時間の問題等もありますが、やはりお金がかかる、どうしてそんな自分でお金を払わなきゃいけないのかという素朴な疑問をよく聞きます。 なぜお金がかかるかというと、別に何かどこかにかかるわけじゃなくて、実際はお医者さんに払うお金がほとんどであります。鑑定書とか診断書というお医者さんの書く書面のためにお金が要るわけであります。 鑑定書につきましては、運用上、もう要らないというような運用も実際なされておりますが、診断書につきましては、運用上、かなりの場面において診断書だけはせめて出してくださいというふうに裁判所は言う場面がほとんどです。 しかしながら、私がかかわった最近の事例でも、先天性の、生まれつきの重度の知的障害の方の場合、入所するに当たって、判定書もあります、医師の診断もあって、その方については、残念ながら一生その状況は変わりませんというような判定も下されているわけであります。 そういった方に対して、成年後見制度を利用するからといって、改めて医師の診断書が要るのだろうかと。必ずしも医師の診断書でなくても、その他公的な書面によって代用すれば、お金をかけずにこの成年後見制度が利用できるんだと私は本当に思うわけです。しかしながら、なかなか実務というものはかたくなでありまして、前例踏襲であるとか横に倣えのところがありまして、なかなか御理解いただけない場面があります。 この点、確認したいのは一点であります。 法的には、診断書というものは要求されておりません。慣行として診断書を利用する場面が多いということだと思います。ですので、診断書にかわるような何か、裁判官が審判するに当たってそれを審判し得るに足りる資料があれば、必ずしも診断書がなくてもそれは審判可能であると思いますが、その点、確認の答弁をお願いいたします。
○山崎最高裁判所長官代理者 後見開始の審判につきましては、もう委員御案内のとおり、本人を保護するものであると同時に本人の行為能力を制限するものでございますから、本人の精神状況についての判断を信頼性の高い資料に基づいてより慎重に行い、本人の利益を保護する必要があるわけでございます。この判断は、基本的には医学的な判断を基礎に行われるものでございますので、家事審判規則二十四条により、開始の審判をするには医師等の鑑定を実施することを原則にしているものでございます。 ただ、同条のただし書きでも、明らかにその必要がないと認められるときはこの限りでないとして、鑑定をせずに後見開始の審判をすることも可能とされておりますが、その判断は客観的に確実な資料に基づいて行われるべきことになりますので、通常は医師の診断書に基づいて行われることが多いと思われます。 もっとも、この客観的に確実な資料といたしましては、診断書に限られるわけではございません。どのような資料に基づいて判断するかは具体的な事案における裁判官の判断事項と考えられますので、事案によっては、御指摘のように、その他の資料、客観的に確実な資料等に基づいて判断されることもあり得ることであると考えております。
○泉(房)委員 必ずしも診断書を必要とするわけではないという答弁であったと理解します。 それから、診断書について一点だけ申し添えておきます。 これも、最近精神科のお医者さんから相談を受けたのですが、診断書、これは書式がありますが、これにチェックを入れるという作業を医師がするわけですが、これは非常にシンプルなところにチェックすることになっていまして、「自己の財産を管理・処分することができない」という欄と、「常に援助が必要である」という欄と、「援助が必要な場合がある」という欄と、単独でできるという四つの欄があって、チェックをつけなさいという形になっています。 ある意味、これは簡単でいいじゃないかという面はあります。しかしながら、例えば精神障害の方の場合、波があります。ある場面においては随分しっかりと判断できる、ある場面においてはかなり難しいといった場合に、ではどこにチェックをするのかというと、非常に難しい場面があります。 これは本当に実態をよく理解すべきであって、単純にどこかに当てはまるという類型ではなくて、本当に個々に丁寧に見ていく必要がある場面もあります。私が言いたいのは、丁寧に見ていくところは、もっと丁寧に見ていく必要があるでしょうと。そうではなくて、先天性で極めて重度の方の場合は、その方の状況を踏まえてその処理も分けていくというような丁寧さが要るのではないかということを申し添えたいのでありまして、その点、改めて、診断書なり鑑定書につきまして再度、そのあたりの類型化も含めての検討をお願いしたいと思います。 続いて、あとよく御相談を受けるのが選挙権の問題であります。これは本当に、私も各地で成年後見の講演とかをずっと回ってさせていただいておったんですが、一番たくさんある質問がこれです。どういうことかといいますと、自分の息子さんを成年後見手続をしようと思うのだけれども、それをしてしまうと息子が選挙権を行使できなくなるという問題であります。 知的障害者の施設の場合、五十人入所施設であれば、選挙のたびに皆さん楽しみにして、どの人に入れるかということを楽しみにして、選挙権を行使します。その選挙権を行使することによって自分も社会とつながっているという感覚を持たれたりして、非常にその点、重要な意味を持っています。親御さんとしても、そういった子供さんの姿を見ながら、ある意味、自分の息子も選挙権の行使を通して社会とつながっているというような実感を持つというお話もよく聞きます。 しかしながら、成年後見手続を利用してしまうと、その手続を申請した親御さんが自分のお子さんの権利を剥奪する、選挙権を剥奪してしまうということになってしまいます。ここは本当に皆さん悩んでおられます。 これにつきましては、そもそもこの成年後見制度のときの議論の中でも随分議論がありまして、形式的な答弁は総務省から随分されています。ただ、私が問題提起したいのは、判断能力のない方を一律にすべて選挙権行使をしないというのであれば、それは一つの価値判断かもしれません。しかしながら、今はそうではなく、成年後見制度を利用したまじめな方といいますか、ちゃんとしようとした方が権利制限され、それを利用していない方は、同じような客観的状況にある方であったとしても、選挙権を行使しているわけであります。これは法のもとの平等から見て問題ではなかろうかと私は思っております。 この点、厚労省や法務省に対しても問題を投げかけたいのですが、時間的な制約もありますので、直接の担当であります総務省の方から、この点、検討ぐらいは必要じゃないかと思いますので、お答えください。
○久保政府参考人 御指摘のように、公職選挙法第十一条で、成年被後見人の方々につきましては選挙権及び被選挙権を有しないというふうにされておりまして、これは平成十一年の民法改正のときに、従前の禁治産者から成年被後見人制度に変わったということに伴いまして行われた改正でそうなっておるわけでございまして、当時の議論、もう先生御承知かと思いますけれども、禁治産者とこの成年被後見人との範囲といいますか、対象は一致するものであるということ。 それから、現実の問題といたしまして、私ども、選挙のときに、個別に事理を認識するといいますか、そういった能力を有されておられるのかどうなのかという審査、判断をいたしますのが実務上なかなか大変であるということもございまして、従来の禁治産者と同様のそういう扱いになっているということでございまして、私どもといたしましては、成年被後見人の方々に選挙権を認めるということにつきましては、やはり検討するにしても慎重な検討が要るんじゃないかというふうに思っております。
○泉(房)委員 いきなり前向きな答弁も難しいテーマだろうということは理解しておりますが、今の答弁で私がどうしても気になるのは、成年後見制度と禁治産制度は違う制度であるにもかかわらず、そこが、やはり引き継いでしまったことの不幸をすごく感じます。 禁治産という制度は、私が改めて言うまでもありませんが、これは本人のための制度ではなくて、その本人が財産をむだ遣いしてしまうから、家の財産が食いつぶされてはかなわないということで、家の財産を保全するという意味で、ある意味ではそれによって当の本人の権利制限をしていくというような発想に基づく制度であります。 しかし、成年後見制度は全くそれとは違いまして、本人が自分でやっていくのがおぼつかない面もある、それをサポートして、あくまでも当の本人のためにしていこうという制度であって、成年後見制度は権利制限のための制度ではありません。結果的に権利が制限されるのは、逆に本人のためにその方が望ましいからという発想のもとに、本人でない方に代理権の行使なり取り消し権を認めるという制度であって、これは根本的に全く違う制度であります。 そして、今答弁がありましたが、客観的に一致すると言われますが、文言的には似たような形になっていますが、そうではないと思います。効果の面から考えてもそうですし、また、実際上、成年被後見人の方についても、日常的な買い物をするのは当然契約もできます。また、後見監督人をつけてくれとも言えます。 そういうふうに、成年被後見人になった方も法的行為ができることは当然の法律の前提となっております。その中に選挙権を含むか否かという問題でありますので、このあたりは解釈の分かれるところでありまして、法制定時において一たん価値判断がなされたとしても、近時の、やはりできる限り権利制限は少なくしよう、障害者、高齢者の社会参加を進めていこうという流れからしまして、改めて前向きな見直しをしていってもいいと思いますので、そのあたり、検討をよろしくお願いしたいと思います。 この点につきましては、私も弁護士ですので、本当は裁判でもしてこの選挙権の問題を問うべきかもしれませんが、そういう裁判をせずして法改正がなされた方がいいと思いますので、その点申し添えておきます。 最後に、契約の問題について質問させていただきます。 この点は悩ましい問題でありますが、これはもう前も私も指摘させていただきましたが、具体的な事例を申しますが、知的障害者の施設において、措置から契約ということで、契約書をつくることになりました。その際に、支援費制度の支給には契約が前提となっております。 ところが、判断能力がない方が契約をしたところで、判断能力がないわけでありますから、法的には無効と解さざるを得ません。この点、厚生労働省も非常に苦しい解釈といいますか、通知をしているようですが、私からすると、それはとても理解できないものであります。 どう言っているかといいますと、時間の関係がありますから手短に言いますが、判断能力が不十分で契約締結能力がない利用者については、成年後見制度を利用して法的に利用者を支援しなければならない。しかしながら、成年後見制度の十分な活用、普及が図られるまでの間は、利用者本人の意思を踏まえることを前提に、本人が信頼する者が本人にかわって契約を行うことも、サービスの円滑な利用を確保するためにやむを得ない場合があるものと考えている、こういうふうに通知を出しておるわけでありますが、これは法的には本当にむちゃくちゃでありまして、本人が契約締結能力がなければ、保護者がしたって、そんなものは無効だと思います。 この点、こういったケースの場合に、契約締結能力がない方がした契約が、保護者がしたからといって有効になるのか、それは無効と言わざるを得ないのか、明確にお答えください。
○塩田政府参考人 支援費制度というのが、障害者の自己決定権を尊重し、当事者として対等の立場で契約でサービスを選択するという意味で、画期的な制度であったと思います。その前提としては、知的障害者の場合、判断能力が不十分なケースが多々あるわけですから、自己決定権をサポートする仕組みというのが不可欠になると思います。その代表的な制度が成年後見制度ということであろうと思います。 実際の契約はいろいろなケースがあるんだと思いますが、先生おっしゃいましたように、判断能力が仮にないとすれば、法律論としては、契約は無効だろうと思います。しかしながら、いろいろなケースがありますので、一概にすべてが無効というのもなかなか難しい問題と思います。 いずれにしても、先生がおっしゃったような法律的な問題があるということも承知しておりますし、知的障害者の自己決定権を尊重するためのサポートシステムとして成年後見制度を生かし、それを伸ばしていくべきだということは全く正しい御指摘でありますので、関係の方の意見もよく聞いて、制度の発展に向けて努力をさせていただきたいと思います。
○泉(房)委員 結論的には無効であります。無効であれば、その無効な契約に基づく支援費の支給も、それは法的根拠に基づくものではありません。 ここまで言ってしまうと、本当に制度自体が非常にどうなるかという問題があります。私が言いたいのは、それを追及したいわけではありません、厚生労働省も成年後見制度の普及が図られるまでの間はと言っているわけです、であれば、もう速やかに成年後見制度を普及するようにすべきではないかと思いますが、この点、どのようにお考えでしょうか。
○塩田政府参考人 委員の御指摘があったように、成年後見制度を伸ばすべく最大限の努力をさせていただきます。
○泉(房)委員 最後に、この間質問を聞いておられまして、大臣に、感想でも結構ですが、成年後見制度に向けての決意のほどをお願いいたします。
○野沢国務大臣 成年後見制度につきまして、現場体験に基づきました一貫したお取り組みに、心から敬意を表するものでございます。 十二年四月にスタートした制度でございますが、まだ残念ながらよく知られていないというのが実態だろうと思いますが、これが広く社会の常識としてお年寄りを大切にするという風潮が世の中に普及することが一番大事だと思いますので、今後とも、関係機関と連携しながら、パンフレットの配布を初めとしまして、この普及に努めてまいりたいと思います。
○泉(房)委員 ぜひともよろしくお願いします。 質問を終わります。ありがとうございました。
○塩崎委員長代理 辻惠君。
○辻委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。 本日は、この金曜日以降、難民法について参議院から送付されてきた法案が、審議が始まるということでありますが、その法案の内容そのものには直接触れませんが、それに関連する問題として、在留特別許可制度の運用に関連して質疑をさせていただきたいと思います。 私は大阪が選挙区でありますが、友人の大阪の弁護士から、難民の認定しないことが違法である、取り消しをするという第一審の判決が出たのに、控訴審でそれが破棄された、そのような事案について、問題点なり何か対処する方法はないのかというような相談を受けたことがあります。 具体的には、アフガニスタンから来日して、反タリバンということで活動していたアブドル・バセルさんという方であります。九八年の八月二十四日に難民申請を行って、九九年六月二十日、不認定、異議申し立て。この異議申し立ては理由なしとして、九九年の十二月七日に収容になっております。その後、二〇〇〇年の二月十四日に第二次の難民認定申請を行っている。二月十七日に仮放免になって、二月二十八日付で取り消し訴訟を提訴した。 今御紹介申し上げましたように、二〇〇三年の三月二十七日の第一審判決では、難民認定しない旨の処分を取り消すという判決が出ておりましたが、二〇〇四年の二月十日、大阪高裁で原判決を取り消される。現在、上告中であります。退去強制令書が既に発付されていて、現在、同時に処分の見直しということで嘆願中であり、私は、個別の事案としては、これは在留特別許可がおりてしかるべき事案だろうというふうに考えております。 問題は幾つかありますが、最後のところで少し伺ってみたいと思いますが、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRが、これはアフガニスタンで迫害を受けるおそれがあるという意見を出しているにもかかわらず、控訴審で認定がひっくり返るというか、第一審判決が破棄されるという事態、その辺の基準をどのように考えていくのかというのは、運用に当たっても問題ではないか、問題にすべきではないかというふうに思います。 また、ビルマ人で反政府運動を行っていたキンマウンラさんという方が難民認定申請を行い、また、再難民認定申請を行っておりますが、いずれも認定されない、許可されない。そして、行政事件訴訟についても、地裁、高裁ともこれは請求が棄却されている。幸いなことに、二〇〇四年の三月五日に在留特別許可を受けているという事案もあります。これらは、ある意味で氷山の一角の事案であります。 要は、難民認定をどのような基準でどのように行っていくのかという国家の政策にもかかわることであります。統計的に見ますと、二〇〇三年の難民認定の処理の件数は三百二十七名。難民認定されたのはそのうちのわずか六名。異議申し出で理由ありと認めて難民認定に至ったのが四名。わずか十名であります。そして、それ以外に、人道的な理由を配慮し在留を認めた者十六名。合わせて二十六名が実質的に庇護されているということであります。 そういう意味で、実質的に庇護という観点に立ったときに、難民認定されるのは十名であり、人道的な理由を配慮し在留を認めた者は十六名ある。だから、双方の基準なり運用なりということをやはり具体的に論じていかなければいけないなというふうに私は思うわけであります。 そこで、本日は、在留特別許可について御質問させていただきたい。まず、最近五年間の件数は、推移はどのようになっておりますでしょうか。
○増田政府参考人 在留特別許可の件数でございますが、平成十一年以降、四千三百十八件、六千九百三十件、五千三百六件、六千九百九十五件と推移しまして、平成十五年は一万三百二十七件となっております。
○辻委員 今の在留特別許可をされた事例というのは、ある程度類型化したらどのような事例が多いのか、説明できる範囲でしていただきたいと思います。
○増田政府参考人 在留特別許可されました事例について、幾つか例を御紹介させていただきますと、一つは、入管法違反以外に法令違反がなくて、不法残留後、日本人男性と婚姻して、その日本人との間に子供をもうけて安定した婚姻生活を営んでいた事例。 あるいは、二番目として、不法入国した後で日本人男性と婚姻して日本国籍の子供をもうけたけれども、その後離婚した。しかし、離婚したものの、その子供を引き取って、長期間、監護養育していたような事例。 あるいは、三番目として、不法滞在者を母親として本邦で出生し、その後、母親が適法に在留している外国人と婚姻した。その場合の母親と子供、双方に在留特別許可が認められた事例。 さらに、本日取り上げられました難民でございますが、四番目の例としては、難民として認定された人が不法入国以外に法令違反のなかったような事例。 あるいは、もう一つ加えますと、不法入国してから約十年後に永住者と婚姻した人が、その後さらに約五年間、安定した婚姻生活を営んでいたような事例。 大体こういったような事例が挙げられます。
○辻委員 この在留特別許可の許可の基準について、どういう要素を判断材料とするのかということについて御説明いただきたいということと、それから、その基準について、何か文書化されたようなものというのはあるのでしょうか。あれば、それを御紹介いただきたいと思います。
○増田政府参考人 在留を特別に許可するかどうかにつきましては、個々の事案ごとに、在留を希望する理由であるとか、あるいは家族状況、生活状況、素行、それから内外の諸情勢その他諸般の事情を総合的に考慮した上で決定しておりまして、お尋ねのような一般的な基準はございません。 したがいまして、もちろん文書化されたようなものはございません。
○辻委員 難民認定の基準との比較ということもむだな作業ではないと思うのですが、難民認定の基準というのは、これはどのような要素を判断基準とするのか、また、それに当たって文書化されたようなものがあるのか、この点はいかがですか。
○増田政府参考人 難民認定につきましては、難民条約に定められている定義に当たるか、つまり、人種、国籍、宗教、あるいは特定の社会的集団に所属していること、さらに、政治的意見、これらによって迫害を受けたかあるいは受けるおそれがある人であるか、これが難民条約に定義として定められておりますから、この定義に当たる人かどうかを証拠に基づいて判断しているということでございますので、難民認定につきましても、別に認定の基準というものはございません。
○辻委員 今おっしゃったような迫害を受けるか否かという判断要素が別途あるわけですから、必ずしも同じレベルでの判断というわけではないと思うのですが、在留特別許可を許可するかどうか、難民認定を認定するかどうか、この認定の広狭、広い、狭い、これは比較すればどのような比較として説明することができるでしょうか。
○増田政府参考人 私どもは、難民認定の広さ、狭さと、在留特別許可を与えていることの広さ、狭さを意識して仕事に当たっているということはございません。 ただ、あるいはこういうことが言えるかと思うのは、難民として認定されなかった人について、難民ではないが、しかし人道上の配慮で在留特別許可を与えている例がございます。それは、先ほど委員の御紹介になったように、昨年でもおりました。そういう意味では、難民でない人に在留特別許可が与えられているということで言うならば、在留特別許可は広いと言えるのかもしれませんが、しかし、先ほど申しましたように、どちらも基準がある話ではございませんので、その両者を並べて、どちらが広い、狭いということは言えないと思います。
○辻委員 参議院の法務委員会で、これは百五十九回国会、平成十六年四月八日の質疑で、在留特別許可の要件について、法務大臣は、在留を希望する理由、家族の状況、生活状況、素行、あるいは内外の諸情勢その他諸般の事情を個々の事案ごとに総合的に考慮して決めるんだというふうに述べておられますが、これはこのとおりで間違いないということですか。
○増田政府参考人 そのとおりでございます。
○辻委員 そうすると、先ほど御紹介いただいた、平成十五年は一万三百二十七件、そして、大きく類別して五つぐらいに分けて御紹介いただきましたが、この参議院の質疑の中で、増田局長が述べておられる、日本人女性と結婚して子供をもうけて安定した結婚生活を営んでいる事例とか、日本人男性と結婚した女性で、日本国籍の子供をもうけ、その後離婚したが十年間監護養育していた事例とか、またあるいは、夫婦で不法入国して、三十年以上本邦に継続して居住して、その間に子供ももうけ、不法入国という犯罪は犯しているけれどもそれ以外の犯罪を犯していない、安定した生活基盤を築いているような事例とかいうことで御紹介されておりますが、これはもう少し、どう言うのでしょうか、これは極端な例として紹介されているように思うのですが、もう少し絞った形で、具体的な例を御紹介いただくことはできませんか。
○増田政府参考人 在留特別許可を与えた事案といいますのは、個人のプライバシーなどもかかわることでございますので、個別に具体的な事案を細かく紹介するというのはいかがなものかという考えで、参議院のときもそうでしたし、本日も、一般的に、大体代表的な例としてはこういう例でございますということで、先ほども五つの例を紹介させていただいたものでございますので、事案の代表的なものとしては、その程度の紹介の仕方ということで御容赦いただきたいと思います。
○辻委員 難民認定がされなかった事案で、在留特別許可に当たるかどうかということで、許可すべきかどうかということが問題になる事案があると思います。そのときに、難民認定するかどうかというのは、先ほど御回答されましたように、迫害を本国で受けたかとか、そういう基準で物を見るわけであります。 ですから、難民認定が認定されなかったからということと、在留許可が認められるか認められないかというのはまた別の問題なんですけれども、その在留許可を認めるかどうかのときに、難民認定、迫害かどうかというのは非常に微妙な要素があると思うのですね。判断が分かれている、先ほど御紹介したように、一審判決と二審判決で判断が違うような例がある。 つまり、そういう微妙な、迫害されているかどうかというような要素については、在留特別許可を与えるかどうかの判断において相当程度考慮すべきだと思いますが、この点はいかがですか。
○増田政府参考人 難民かどうかを判断するに際して、委員のおっしゃるとおり、迫害されているかどうかは、まさにそこが難民に当たるかどうかの決め手になるわけですから、証拠に基づいて判断いたします。 その上で、どうも迫害に当たるとは言えないな、迫害を受けるおそれがある人物とは言えないなという場合、難民性を否定することになるでしょう、しかし、それでも、ある程度迫害されるおそれも認めてもいいような事案もあるのではないか、その場合には在留特別許可で考慮すべきじゃないかというお尋ねだろうと思うのですが、それは、迫害されるおそれが微妙にあるなしにかかわらず、要は、難民ではないが、しかしその人物が例えば我が国にいる間に日本人の人物と婚姻して婚姻生活をかなり営んでいることなどを含めて、それこそありとあらゆる情状を踏まえて、在留特別許可を与えるのが適当かどうかを判断することになります。 〔塩崎委員長代理退席、下村委員長代理着席〕
○辻委員 先ほど紹介しましたけれども、在留特別許可を与えるか否かについて、結局、いろいろなことを含めたその他諸般の事情を個々の事案ごとに総合的に考慮して決めるということですよね。 ですから、難民認定は受けなかったけれども、要するに、法の要求する難民性というか、迫害を受けるかどうかということを厳密には認定されなかったけれども、本国に帰されてしまっては不都合な状態が生じるというような場合には、やはりこの諸般の事情を事案ごとに総合的に考慮するということの中の一要素としては当然考慮されるというのは、今の局長の御答弁でよろしいんですね。
○増田政府参考人 端的な答えにはならないかもしれませんが、迫害のおそれがどの程度あるかどうかにかかわらず、その人物、難民として認定されなかったが、そして不法滞在者なら本国に退去強制ということになりますが、退去強制させたときに本国でどのような生活が待ち受けているのか、本国との縁がどの程度今強いのか薄れているのか、本国で溶け込めるのか、そういったことは、先ほど申し上げている諸般の事情の中には考慮としてはすべて含まれると思います。
○辻委員 本国で迫害されるかどうか、難民認定を受けられなくてもやはりそれは考慮すべき要素であり、それを含めた総合的な判断で在留特別許可をするか否かを決めるという御回答をいただいたということとして理解いたします。 それで、退去強制令書が発付されている事案で、その後の状況の変化に照らして、やはり処分を見直すべき事案というのはあるのではないかと思います。現時点で在留特別許可の申請があったとすれば許可すべきと通常思われるような状態になれば、過去に退去強制令書が発付されていても、やはり処分としては見直すということは十分あり得ることとして理解してよろしいでしょうか。
○増田政府参考人 退去強制令書が発付された人については、速やかに本邦から送還することとされておりますから、原則としては、在留特別許可の可否についての見直しを行うということはございません。 しかしながら、退去強制令書が発付された外国人について、後日事情の変更が生じて退去強制令書を執行することが人道上相当とは認められないような場合、この場合には、その事情を踏まえて当該事案を慎重に検討することはございます。
○辻委員 当然、処分を見直して許可されるべき場合があるということだと思います。 そこで、先ほど冒頭で御紹介した二つの例はともに、難民認定が認定されなくて、異議申し立てについても、これは理由がないとされて収容されるわけですね。退去強制令書が発付されて収容される、一方で行政訴訟を起こしている、その間収容がずっと続くわけですが、仮放免をされるということが間々あるわけです。御紹介した二人の例も仮放免されたりしている。したがって、やはり仮放免の制度というのは非常に重要な意味を持っているし、その運用のあり方について、十分人道的な立場で配慮されなければいけないと思います。 出入国管理及び難民認定法の五十四条でしょうか、仮放免の規定がありますが、この運用状況及び許可の基準について御説明いただけますか。
○増田政府参考人 運用状況として、例えば人員で申しますと、平成十四年、新規に仮放免を受けた人員が四千八百二十四件、平成十五年が四千五百四十八件となっております。 この仮放免を許可するか否か、これも個々の事案ごとに事情を勘案して判断いたしますので、一般的な基準はございません。委員の引用されたとおり、入管法五十四条の規定によりまして、仮放免許可申請があった場合は、入国者収容所長あるいは主任審査官が、その人物の情状、請求の理由となる証拠、それからその人の性格、資産などを考慮して、総合的に判断した上で決定することとなります。
○辻委員 結局難民認定はされない、そして退去強制令書が発付されている、一方で在留特別許可はまだ得られていないという状態にあってもずっと収容し続けることが妥当かどうかということはやはり極めて問題であって、一方で、認定、不認定処分の取り消し訴訟なりが係属している場合には、訴訟を遂行する防御権、そういう訴訟活動の制約にならないような意味においても、拘束されないということが望ましいというふうに思います。 そういう意味において、一方で、訴訟を起こすということが明らかに濫用にわたるような場合、とにかく日本に在留を続けるということのために便宜的に明らかに訴訟を濫用的に起こしているというような場合以外は、基本的には訴訟を起こしているような場合については仮放免をするということが原則として考えられていいのではないかと思いますが、そういう御検討はされておられますでしょうか。 〔下村委員長代理退席、委員長着席〕
○増田政府参考人 退去強制事由に当たる外国人につきましては、原則として収容する、収容して、例えば不法入国とか不法残留などの退去強制に当たることが認められた場合は退去強制令書を速やかに発付する、発付したら速やかに送還する、これが法律の建前、原則になっておりますので、不法滞在等退去強制事由に当たる人について、原則として、裁判などが行われているときに仮放免をすることを原則とするというような検討はいたしておりませんし、それを法律で原則とするようなことは必ずしも好ましいことではないと思います。 ただ、実際問題の運用として、難民認定申請が行われた場合、これは、最終的な判断が出るまでの段階としてはその人は本当に難民かもしれない、そういう難民かもしれない人をいたずらに収容してよいのか、そういう配慮は当然必要ですので、現実の運用といたしましても、特に逃走されるようなおそれが具体的に認められないようなケースでは、例えば本人みずからが入管に出頭して難民として申請したような人については、現実の運用としても、ほぼ在宅のまま、収容せずに難民認定の審査を行っているのが実情でございます。
○辻委員 難民認定申請をしている場合については、難民と認定される可能性があるわけであるから、身柄の拘束については慎重に考えているんだという御趣旨の御答弁だというふうに思います。 そこで、時間の関係もありますので、またの機会に在留特別許可のもう少し詰めた議論はさせていただきたいというふうに思っております。 日本の難民認定というのは、ほかの外国に比べてやはりハードルが高いというふうにどうも指摘されておると思います。 例えば、あるビルマ人の方の例でありますが、一九九一年に来日して、九二年に難民申請をした。これは、アウン・サン・スー・チーさんなんかと一緒に反戦行動をやっていたということのようであります。そういう関係で、ミャンマーと言わずにビルマというふうに言わせていただいておりますが、九八年に在留特別許可を得た。しかし、この方が、難民認定は受けられない。そこで、二〇〇三年十一月にアメリカに渡った。そして、二〇〇四年二月にアメリカで難民申請をしたら、翌日、難民申請が認められた、難民として認定された、こういう例があります。 これは、私は、氷山の一角ではないか。この例に見られるように、日本の難民認定は他国よりかなりハードルが高い。そのことの当否について、もう少しきちっと論じるべきであろうというふうに思います。 この点に関連して、ルード・ルベルス国連難民高等弁務官が昨年来日されて、その時点で次のように述べておられます。人道大国として日本はもっと積極的に行動してほしい、窮地にある難民に力を与えれば、それは難民の受け入れ先である地域開発の力にも発展する、それが豊かな国にも大きな実利となって還元されるのではないかというような発言をされています。 このように発言された事実を、大臣、これは認識されていますか、あった事実については。
○野沢国務大臣 その事態については、私は存じておりません。
○辻委員 では、こういうことを、日本の難民認定のハードルが高いということで、もっと広く日本も難民を受け入れていけば、日本の活性化につながっていくんだという趣旨の発言を国連難民高等弁務官がされているという事実があります。このような発言を受けて、今後の難民認定の運用について、大臣としてのお考えと、そういう、国際的にもっと広くという指摘があることについて、それに関連した決意を最後にお述べいただきたいと思います。
○野沢国務大臣 難民の認定申請者につきましては、これまでも、在留特別許可を与えるとか、あるいは、申請者が難民条約上で定義されている難民には該当しないけれども、その者の本国の事情、経歴、家族状況などを個々に判断して、特に人道的な配慮が必要な場合につきましては、難民と認定できる者を不認定としたり、あるいは、それを在留特別許可でバランスをとったりということをしているわけではございませんが、いずれにしましても、難民の受け入れという点につきましては、日本としても、これからも、やはり前向きな取り組みを行いまして、国際的にもとにかく引けをとらないレベルでの活動はしていかなければならないと心得ておるところでございます。
○辻委員 昨年の実質的庇護率が、難民申請された方々について、二十六名であって、十名は難民として認定された、十六名は在留特別許可として認められた。つまり、難民認定の幅が狭いから、その分、在留特別許可で救うというように実質的には世間では見られる余地があると思うんですね。だから、そういう意味でいえば、逆に、難民認定の幅が狭いということも言えると思います。 今後、この問題についてまた質疑をさせていただきたいと思いますが、難民行政に当たっては、国際的なそういう意見があるということを踏まえて、十分に、もっと人権、人道の立場に立って考えていっていただきたいということを最後に申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○柳本委員長 御苦労さま。 永田寿康君。
○永田委員 民主党の永田寿康でございます。 大臣、長い時間、お疲れさまでございます。 まず、冒頭、五月二十二日に予定をされているというふうに報道されています総理の訪朝、北朝鮮にいらっしゃるということで、これに関しまして、当然、大きなニュースでありますから、政府の許可を得てマスコミの記者団が同行するという手はずになっているはずですが、きのうからの報道によりますと、この記者団から日本テレビだけが排除されているというニュースが流れておりまして、これは、私が常々この委員会でも議論をしております報道の自由という観点から見ると、ゆゆしき事態ではないかというふうに思っております。 もちろん、具体的事案については、法務大臣の管轄する法務行政とは離れたところにあるものですから、立場を考えますと、答弁できる範囲は限られているのかもしれません。しかし、やはり、知る権利あるいは報道の自由、言論の自由というものの大切さを考えますと、基本的人権の番人である法務大臣と、国民の代表たる国会議員がこうして議事録に残しながら議論をしていくということは、私は大切なことだと思っております。 加えて、もう二十二日に訪朝です。そうすると、それまでの間に、もう一回ちゃんと法務省の方々に準備をしていただいて、一般質疑の時間をとろうと思ってもなかなか難しいという時間的な制約もあります。ですから、多少無理をしてということは承知をいたしておりますが、ぜひ、法務大臣には、この部分について、法務大臣としての人権感覚というものをぜひ御披露いただきたいなと思っております。 加えて、法務省の職員の方々には、本当に、私から無理を申しながら、こうした質問をすると通告した際にお受けいただきましたことに感謝をいたしながら、質問に入りたいと思います。 大臣、いかがでしょう。報道の自由というものの大切さを考えますと、いかなる理由があれ、今回報道されているような、日テレだけが排除されるというようなことはあってはならないというふうに思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
○野沢国務大臣 総理の訪朝自身、大変突然のことでもございましたが、加えまして、今委員御指摘のとおり、日本テレビが排除というお話がございましたが、私自身、実は、その事実をまだ認識しておりませんものですから、御質問の趣旨を踏まえまして、どういうお答えをしたらいいか、まだ決しかねておるところでございますが、先ほど、私も、昼のテレビでちらっと見たところでは、官邸を含めて関係者間で調整中というふうに現状を伺っておりますので、その辺を見守りまして、私からのお答えは、今のところ差し控えさせていただきたいと思います。
○永田委員 しかし、事は急を要するのであって、私は実物を拝見いたしましたけれども、記者団のリスト、これは公開をされておりませんが、私の懇意にしている記者から見せていただきました。百十六人の記者が、実名とともに、あるいは所属をする報道機関の会社の名前とともに一覧表になっています。確かに、日本テレビだけが抜けているんです。ほかの大手のメディアは、大体、新聞もテレビも、皆さん四人から五人ぐらい、そこにリストアップされているんですが、大手中の大手である日本テレビだけが排除されている。 現在、調整中というお話ではありますが、今の時点で確定をしているのは日テレが排除されたリストなんです。今の時点ではそうなんですね。それで、細田官房長官が、ぶら下がりの記者会見かもしれません、善処する方針であるというようなことをおっしゃっていて、一部報道機関はそれを、この日テレ排除の措置は撤回をするんだというような趣旨の報道もなされておりますが、まだ政府の正式決定には至っておりません。 この事態の推移を見守って、この一般質疑の終わる時間まで待って、その後に、いやいや、やはりこれは撤回されませんでしたという事態になると、これは、法務委員会の歴史に汚点を残すんじゃないかと私は思うんですね。 ですから、百万に一つ、現在の決定が二十二日まで撤回されなかった場合に、これは大変な人権侵害が起こるんだ、つまり、報道の自由、知る自由、それから知る権利、それから取材の自由が侵されることになるんだというような、法務大臣としての見解を、本当に一つの仮定を置いての話になると思いますが、ここでお述べいただくわけにはいきませんでしょうか。
○野沢国務大臣 そのリストも、私、実はまだ全然見ておりませんし、私が拝見したのは、先ほどの昼の報道で、細田官房長官が、調整中でございますという、そういった会見の様子を一瞬拝見しただけでここへ飛び込んできた、こういう状況でございます。 どういう状況になるか、私は今ここで予測を申し上げるわけにはいかないということで御勘弁をいただきたいと思いますが、確かに、委員御指摘のとおり、北朝鮮では一般のメディアの方が普通に入れる状態でないということは確かでございますので、できるだけ多くの皆さんにチャンスが与えられることは望ましいと思っておりますが。
○永田委員 しかし、この問題は本当に各種のメディアでどんどん報道されていまして、報道ベース以上に事実関係を確認するのは本当に難しいんですけれども、ただ、各種の報道に共通をしているのは、飯島秘書官から日本テレビの方に苦情があったと。 それは、「バンキシャ!」という日本テレビのテレビ番組、そこで、拉致被害者への対応を北朝鮮が解決に向けて踏み出してくれるのと引きかえに米を、二十五万トンとも数十万トンとも言われております米支援を約束することで現在交渉中というような報道を問題視した飯島総理秘書官が、日本テレビに対して電話で苦情を申しつける。これを原因として、日本テレビは同行記者団から排除されるという措置をとるぞと恫喝をする。そして、実際に発表されたリストには日本テレビが載っていないわけですね。 加えて、どこから米支援のニュースをとったんだという情報源を明かしたらこの日テレ排除を解除してやるという条件までつけてくる。しかし、メディアにとってみれば、情報源を明かせというのは、それはもう自殺行為ですよ、完全に。大手メディアが情報源を軽々しく、しかも国家権力の中枢にいる人に渡すようなことがあったら、これはもうメディアとしての命は終わりですよね。 この報道ははっきり言って共通しているので、事実関係を争う価値はほとんどないと思います。こういうようなことが行われるということに対して、大臣、メディアは大変な危機にさらされているというふうにお感じになりませんでしょうか。
○野沢国務大臣 いずれにいたしましても、どういう事態が起こったかというその事実を私自身が確認できていない状況の中で御発言するのはどうかと思いまして、個々の報道機関に対する対応につきましては、それぞれいろいろなケースもございますから、事態、事情に応じた上で判断をしていかなきゃいかぬかなと思っておるところでございます。 特に、今回の北朝鮮の訪問につきましては、今委員御指摘のように、拉致の皆さんの御家族の帰趨もございますし、それから、これから始まる六カ国協議も控えておりますし、大変デリケートな時期であることは確かでございますので、どうかメディアの皆様方もその辺は節度ある報道に徹していただくことが大事ではないかな、こう思っております。
○永田委員 そのとおりなんですよ。メディアに一定の配慮が、自己規制といいましょうか、求められるのは私も同感なんです。しかし、二十五万トンなり数十万トンなりの米支援の報道が日朝交渉に、あるいは拉致された方々の家族の帰趨に悪影響を与える可能性があるというのは、確かにそれはあり得る話だと思うんですが、だからといって、訪朝の取材を規制する、拒否するというのはやり過ぎなんじゃないか、筋違いなんじゃないかと私は思うんですよ。大臣、どう思われますか。 だって、そういうようなまずい報道があった場合には、政府の対応としては、苦情を申し入れて、謝罪をかち取って、そして再発防止に努めるという、内部体制の見直しなりなんなりをさせるのが、これが正しい対応なんであって、二十二日の取材をできない状況に置くというのはちょっと筋が違うんじゃないのかなと思うんですよ。 だから、配慮が求められるのは大臣のおっしゃるとおりなんです。私もそれは賛成しているんです。しかし、そのことを原因として日テレの同行を排除するというのはちょっと筋違いなんじゃないかなと思うんですが、大臣、メディアに対する政府というか、正直言って秘書官一人の対応なんですけれども、正しいことだと思いますか。
○野沢国務大臣 いろいろなことがあったのか、状況があるのか、全く私それを存じないまま今こうしてお答えをしておるわけでございますが、責任ある立場として、官房長官がはっきりと記者団の前でこの問題については善処するとおっしゃっているわけですから、それに私どもは期待をいたしたいと思っております。
○永田委員 結果的に同行が実現すればいいというものじゃないんですよ、これは。ここで仮に撤回をしても、メディアは震え上がっているんです。だからこんなに関心が高いんです。カメラも来ているんです。仮に撤回をしても、こういうことをちらつかせるだけでメディアは震え上がっちゃうんですよ。 加えて、恐るべきことに、大臣よく考えてみてください、飯島秘書官ですよ、最初に言い出したのは。それで、その後に外務省が出したリストから日テレが排除されているんです。つまり、外務省が引っ張られたわけですよ。そんな日テレを排除するようなことを飯島秘書官がなし得るのか、そういう権限があるのかということもこれは大問題なんですよ。 ぜひメディアに対する対応の仕方として、大臣、報道の自由を見守るという言い方は変ですが、確保するための一つの番人としての役割を期待されているわけですから、官房長官の善処を期待するというだけではなくて、そういうような恫喝が二度と起こらないように大臣の見識を閣内において発揮していただくというわけにはいきませんでしょうか。
○野沢国務大臣 もちろん私も、報道のあり方、それから今度の北朝鮮訪朝の成功、これについては十分関心を持っておるところでございますが、何分まだその事実を確認していない段階で、現段階での私からの意見というのは差し控えさせていただきたいと思います。
○永田委員 確定していることだけでいいんです。 私はもう、けさ九時ではありますけれども通告をしましたから、六時間前に通告をしたんですよ。それで、何百人いる組織か知りませんけれども、法務省の方々が事実関係の確認には走っていただいたんだと思います。そして、事実が確認できなかったものについても、どうやらこういうような報道があったらしいということは当然大臣に報告されているでしょう。私が質問を通告するというのは、そういう準備をしてもらうために通告しているわけですから。当然、秘書官を初めとして、こういう経緯の報道がなされていますよということは大臣に上がっていると思うんですね。 そうであるならば、事実かどうかは別問題としても、どうやらこういうような報道がなされている、こういうことが問題視されているということは、大臣、頭の中に入っていると思うんですよ。 善処されるかどうかは、この際問いません。本当は問いたいんだけれども、今は問わないことにします。しかし、飯島秘書官がそういう恫喝をして、そして外務省がそれに引っ張られるというような内閣の中の権力構造、正しいものだと思いますか。そして、そんな中で、そんな権力者の前で、一体報道の自由というのはどうやって確保していけるんでしょうか。 大臣、もう少し内閣の中でうまく立ち回っていただくわけにはいきませんでしょうか。よろしくお願いします。
○野沢国務大臣 私も、公平公正な報道がなされること、これは我々にとっても大変重要なことであり、必要なことでございます。それで、もちろん、個別のメディアの方々がそれぞれ御努力されていることも十分評価をし、私どもも報道に対するできる限りのサービスもしているつもりでございますが、この案件につきましては、今申しましたとおり、仮定の状況の中での私の判断を言えといっても、ちょっとこれは控えさせていただきたいと思います。
○永田委員 こんなんだったら国会なんかない方がいいですね、本当、議論するだけむだですよ。 私が一つある意味御尊敬申し上げる政治家に後藤田正晴さんという方がいらっしゃいます。この方は中曽根内閣で官房長官をやったと記憶しておりますが、彼がしばらく前にテレビの特集で語っていたのにこういうのがありましたよ。つまり、総理がペルシャ湾に掃海艇を派遣しようとしているんですね。そこに対して、後藤田当時の官房長官は反対をするわけですよ。こう言います。総理、この決断はとても大事なことですから、閣議にかけていただけますね、閣議にかかったら私は反対をしますから、官房長官の首をとって、自分で官房長官を兼務して通してくださいと。 こういう官房長官の職をかけた反対、意見表明によって、中曽根当時の総理は翻意するわけですよ。これはまことに見識ある態度だと思います。内閣の中にあって、その権力の暴走をとめる一つの役回りというものを十分認識した立派な行動だというふうに思っています。 自分にはそれに対して発言をする権限がない、現在官房長官が調整中である、そんなことじゃ僕は済まないと思いますよ、大臣。ここで大臣が何もやらずに傍観していたことによって報道の自由が侵されるようなことがあったら、これは本当に法務大臣とは一体何だろう、法務委員会でここまで指摘を受けて自分は何もやらなかったら、一体何なのということになりますよ。大臣、これは腹を決めて、歴史に名を残す政治家になるチャンスですよ。もう十分立派な仕事をなさっているから、裁判員制度もおつくりになられたから十分名を残すんだろうけれども、だけれども、さらにさらに歴史から評価される政治家になるチャンスだと思いますよ。 これは、百万に一つ現在の決定がそのまま二十二日まで引き継がれたら、総理大臣あるいは秘書官に忠言を申し述べるという一言をいただけませんでしょうか。
○野沢国務大臣 言論の自由、あるいは報道の自由、これはまさに憲法で保障された大事な権限でありまして、私が何を言うか言わぬかで別に揺らぐような問題ではないと考えております。
○永田委員 それは違いますよ、大臣。憲法には手も口も足もないんです。だから、憲法に手や口や足をかしてあげて憲法の理念を実現するのが政府であり、国会であり、司法であるわけじゃないですか。憲法に書いてあるから世の中そのとおり回っていくなんて考えていたら、それこそおめでたい。憲法に魂を入れて肉体を与えるのは、実効たらしめるのは我々の仕事じゃないですか。今の発言は撤回してください。
○野沢国務大臣 確かに、憲法を具体的に実行していくのが我々公務員の役割であり、また議員の皆様のお仕事でもございますから、それについて、この今の事態が言論の自由云々ということに該当して問題になるということになるかどうか、これはまだ議論の余地があると思います。
○永田委員 憲法に定められた報道の自由を守る気がない大臣が法務省のトップに立っているということがよくわかりましたので、この問題はこれにて閉じたいと思います。 高額納税者番付の発表が人権侵害ではないかという通告をしてあると思いますので、そこに意見を移したいと思います。 先日発表されました高額納税者番付、住所と氏名と納税額を一覧表にして発表するという、現在の人権感覚からするとまことに不思議な制度が今でも維持されているわけですが、ここまで人権を侵害して、プライバシーを破ってまで追求しなければならない公益というのは一体どこにあるのか。これは財務省になるんでしょうか、御答弁いただきたいと思います。
○加藤政府参考人 お答え申し上げます。 所得税の公示制度につきましては、税額が一千万を超える納税者について、その納税額を公示することを通じまして、主として、第三者のチェックという牽制効果によって納税者がみずから正確な申告をすることを間接的に促進するということによって、申告納税制度全体の円滑な運営を図ることを趣旨としておるものでございます。
○永田委員 追求すべき公益は、第三者のチェックを通じて納税の適正化を確保するということだと思いますけれども、一方で、その裏にある今申しました各種情報の発表というものは、これは紛れもない人権侵害だと思うんですよ、その部分だけをとらまえたら。これは人権侵害だという認識は、それはお持ちですよね、政府当局としては。いかがでしょうか。
○加藤政府参考人 先生御指摘のように、公示制度の一面において個人のプライバシーへの配慮から問題が多いという指摘は政府税調でもなされておりまして、今後、そういう見地からは、制度の廃止を含めた検討の必要性の指摘もされております。 一方で、国民一般から見て申告納税制度の信頼度が低下するということは好ましくないため、資料情報制度の充実等、納税環境の整備についてあわせて検討する必要もあるということも指摘されておりまして、今後、こうした視点を踏まえて関係省庁とよく相談していくべき事項だと考えております。
○永田委員 済みません、ちょっと不思議なんですが、今関係省庁と相談してとおっしゃいましたが、関係省庁というのはどこですか。国税庁以外にあるんですか。
○加藤政府参考人 これは政府全体で、内閣のもとで決定するわけですが、実は、このプライバシーの問題とそれから納税の問題と整合性を調和するというのは、一省庁というよりは所管のいろいろな省庁。それから、これは実は、この資料自体がプライバシーの侵害を超えて、またほかの目的に利用されるおそれもあるという指摘もございます。そういった点も、その実態を踏まえて議論する必要があろうかと思っております。
○永田委員 では、保護すべき、本来ならば保護されてしかるべき個人情報だということは、多分間接的にお認めになったんだと思うんですけれども、そこまで、プライバシーを侵してまで追求した公益、追求する公益の種類は、先ほどおっしゃった第三者のチェックを通じての納税の適正化という部分だと思うんですけれども、それが実際に確保されているのかどうか、公益は実際に得られたのかどうかということはどのようにお考えなんでしょうか。
○西江政府参考人 お答えさせていただきます。 公示制度の効果ということであろうかというふうに思いますけれども、具体的に申し上げますと、公示を端緒として脱税等の有力な探聞情報が寄せられるという直接的な効果と、それから、第三者のチェックによって納税者がみずから正確な申告を行うことを間接的に促進するという、いわば心理的な効果であろうかと思います。
○永田委員 ですから、ねらっているのは直接的な情報提供、それから間接的な納税意識の高まりと申しましょうか、この二つの効果をねらっているんだという、そのねらっている公益の分類というのはよくわかったんですが、実際にそれが得られているという確証はどこにあるんですかと。要は、国民の側からしてみれば、自分の個人情報を公開されちゃいました、一方で、ほとんど公益にはつながっていませんということになったら、これは承服しかねるわけですね。 実際に確保されているというふうに確信をしているのであれば、どのような認識なのかということを教えてください。
○西江政府参考人 国税庁として、個別事案を全件具体的に把握をしておりませんし、また個別事案について、守秘義務の関係上、個別具体的に答弁することは差し控えさせていただきたいんですけれども、一般論で申し上げますと、事業活動から見て公示税額が低調であるとか、高額の財産購入あるいは売却があるにもかかわらず公示に反映されていないとか、いわゆる脱税関連情報を含めて情報が寄せられるケースがございます。探聞情報と呼んでおりますけれども、そうした探聞情報が何を端緒とするものであるかといった点については、集計、分析を行っておらないわけでございますし、また、先ほど申しました納税者がみずから正確な申告を行うことを間接的に促進する効果というのは、まさに心理的なものでございますので、そういう意味では計測することは非常に困難であります。したがって、定量的にどの程度あるかということを現実的に示すというのは非常に難しいと思っております。
○永田委員 いや、別に効果を定量的に示してくださいということを言っているわけじゃないんですよ。 きのうも財務省の方、国税庁の方にも御説明をしたとおり、例えば一年間に何件ぐらい直接的な情報提供があるか、あるいは、間接的な納税意識の高まり効果によってどれぐらい納税が適正化されているかということを数字で示せといったって、それは相当難しいことだろうということは僕もわかりますので、それはいいんですよ。 問題なのは、ちゃんと効果があったということを検証しているかどうかなんですね。検証された形で、これだけの公益はありましたということをやはりちゃんと説明していただかないと、公開される側としてみればたまったものじゃない。 検証する作業すらも行っていないのかなというふうに私はちょっと聞こえたものですから、ぜひそこは教えていただきたいんですけれども、検証された公益というのは、確保された公益ですね、どういうものがあるんでしょうか。
○西江政府参考人 お答えさせていただきます。 結局、国税の場合に、あらゆる機会をとらえて資料情報を集めて、それを納税者の申告書とを突き合わせをして、問題がある場合には税務調査を行って、適正、公平な課税を実現するということでございます。 公示を端緒にして寄せられた情報、必ずしも因果関係というのは全部分析しているわけでございませんけれども、内部告発を含めたそういう探聞情報というのが年間百万件以上件数がございますので、そういう中で税務調査を実施して、申告漏れがある場合には正していただくということをやっておりますので、そういう意味ではある程度効果があるというふうには感じております。
○永田委員 でも、プライバシーというのは非常に保護の度合いが強いというか、極力侵してはならない人権だというように思いますので、今おっしゃったような税務行政上の効果を得る上で、ほかに手段があるんだったら、僕はほかの手段に切りかえた方がいいんじゃないのかなというふうに思っているんですよ。 確かに効果はあるのかもしれません。僕もそれは否定しないんですよ。全く無力だというふうなことを私が主張するだけの論拠を持っているわけでもないんです。だけれども、何も個人情報を公開してまでやらなきゃいけないことなのかなという気もするんですよね。 これは、公開しなかったらそんなに困るんですか。税務行政に支障が出るほど困ることなんでしょうか。
○西江政府参考人 そこは先ほども申し上げましたけれども、資料情報の中には当然、法定資料とか、あるいは、国税当局の努力によって、納税者の方々の御協力を得ていろいろ情報をいただいているわけです。 そういう意味では、その法定資料をこれから充実していくとか、そういったこともございますし、また、先ほど財務省からも御答弁ございましたように、さまざまな問題が指摘されておりますので、そういう中で考えていくべき問題だとは認識しております。
○永田委員 しかし、これは政府税調ではもう二年も前から指摘されているじゃないですか。個人情報に関しては、これは最近環境が随分変わってきていまして、例えば、今普通の自動車についているカーナビゲーションシステムなんというのは、住所の枝番まで入れると一発で特定の家にピンポイントで行けちゃうんですね。昨日は、カーナビに表示される病院のマークを見て、そこにピンポイントで泥棒に入っていったという人たちまでいるわけですよ。どこにだれが住んでいるかというのは非常に重要な情報なんですね。 例えば、納税額の多い人の息子が誘拐される危険が高いとか、そういうようなことも推察されるわけで、公開せずに済めば公開しない方がいいんじゃないのかなと僕は思っているんですよ。できれば凍結をする。 だから、要は、なぜ僕はそういうことを言いたいかというと、今お話を伺っていると、公開することによって得られる公益というものの因果関係がはっきり僕にはどうしても納得できないんですよ。でも、公開することによって人権侵害が起こる因果関係は一〇〇%明白なわけですね。実際に嫌がっている人も、困った人もいるわけですよ。だから、因果関係がはっきりしている人権侵害と因果関係があいまいな公益とをてんびんにかけるというのは、僕はどうにも納得いかないんですね。 だから、とりあえず、これはちゃんと因果関係がはっきりする、検証できる、ちゃんと公益はこれぐらいあるんだということを国民に説明できるようになるまで、とりあえずこの公開制度というのは僕は凍結すべきじゃないのかなというふうに思っているんですけれども、そのようなお考えはありませんか。
○山本副大臣 政策判断でありまして、個人情報、プライバシー、これの侵害をしてしまうという、片方のてんびんにそういう被害があり、さらに右のてんびんには、公示によって牽制的効果があらわれ、申告納税制度がうまくワークしていくという、その利益衡量になろうというように考えております。先生のおっしゃるとおりだろうと思います。 そこで、検証しづらいこの牽制的効果、そういうものがあいまいであるという事実については、政府税調の席におきましても御指摘がございました。 その御指摘の具体的なことを申し上げますと、まず、犯罪や嫌がらせ誘発の要因になるとはっきりここに書いてあります。そしてまた、次に、個人のプライバシーへの配慮、すなわち侵害があるという問題、こういう御指摘が具体的にあるわけですから、そのことにおきましては、実際に個人情報の侵害及び犯罪にまで発展するという現下のこの情勢にありましては、先生の凍結というお考えに対しては十分検討の余地があるだろうというように考えるところでございます。
○永田委員 加えて、例えば選択制にする、自分は公開されてもいいよという了解をとれた人だけ公開するとか。実際に公開してほしい人もいるんですよ。自分はこれだけ税金払っているんだということを世に知らしめたいという人もいるらしいんですよ。一方で、嫌だという人もいるわけですね。 だから、嫌だという意思表示をした人は公開しないように配慮してあげるか、ないしは公開したいという意思表示をした人だけ公開してあげるというような選択制の導入とか、あるいは、先ほど凍結は十分検討に値するとおっしゃいましたけれども、例えば、次の公開を三カ月ずらしてみる。三カ月ずらしたら本当に納税意識が下がって、あるいは情報が減って税務行政に支障が出るということが、やってみれば確認できるわけですよ。いや、支障が出たからやはり公開しなきゃいかぬ、つまりこれは実験ができるんですよ、この制度というのは。 だけれども、一たん公開されたらプライバシーは取り返しがつかないんですね。税務行政は実験ができるんです、これは金銭的な問題なんですよ。ただ、一回公開されたらプライバシーは取り返しがきかないんですね。 だから、とりあえず公開しないという、つまり凍結という、あるいは選択的な公開制度に改めていく。改めてみてだめだったらもう一回公開するというようなやり方も十分合理性があると思うんですけれども、最後に副大臣、いかがでしょうか。
○山本副大臣 まず、公示制度の機能面から御指摘でありました牽制的効果、これが大きな効果であることはこの制度趣旨から明らかでありますが、さらに称賛的に意味もある。よく頑張ったね、大したものだという社会評価も一方ではあるわけでありまして、そういうものを考えたときに、一律に公示制度をすべてやめてしまうということが適切かどうか、政策判断として。それは先生のおっしゃるとおりであって、例えばそういう称賛的な観点だけから考えれば選択制ということもあり得るかもしれません。 しかしながら、この制度の一番目的とするところの牽制的効果、これからすれば、もし選択制をとった場合に、もし秘匿したい、不誠実な、何か情報を隠したいと思っている納税者がいた場合に、そういった人たちの第三者チェックというのは、これはもう不可能になってしまいます。そうすると、最初の目的の公示制度そのものの存在感が問われるわけでございまして、選択制ということは今のところ考えておらないところでございます。
○永田委員 質問を終わりますが、私、所得税よりも酒税の方が払っている額が多い人間だと言われておりますので、ぜひ酒税の高額納税も称賛的な意味合いで公開していただきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。 ————◇—————
○柳本委員長 次に、内閣提出、参議院送付、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案及び中村哲治君外一名提出、難民等の保護に関する法律案の両案を議題といたします。 順次趣旨の説明を聴取いたします。野沢法務大臣。 ————————————— 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○野沢国務大臣 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。 近年、外国人犯罪の深刻化に伴い、その温床とされる不法滞在者を大幅に減少させることが求められており、また、我が国に適法に在留している外国人の中にも不法就労活動を行ったり犯罪を犯す等公正な出入国管理を阻害する者も少なくなく、これらの者に適正かつ厳格に対処する必要性が生じてまいりました。 さらに、近時における国際情勢の変化等に伴い、我が国の難民認定制度を取り巻く状況が大きく変化したことにかんがみ、より公正な手続で難民の適切な庇護を図る観点から、難民認定制度の見直しを行うことが求められているほか、障害者の社会活動への参加を不当に阻むことのないよう、精神障害者に係る上陸拒否事由の見直しを行う必要もあるところです。 この法律案は、以上に述べた状況にかんがみ、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法の一部を改正するものであります。 次に、この法律案の主要点について御説明申し上げます。 第一は、罰則の強化を初めとする不法滞在者等対策であります。 不法滞在に係る罰金を大幅に引き上げ、悪質な不法滞在者に係る上陸拒否期間を伸長する一方で、みずから当局に出頭した者については簡易迅速に出国させるための出国命令制度の新設等を行うことにより不法滞在者の自主的な出頭を促す措置を講じるほか、偽りその他不正の手段により上陸許可を受けるなど本来我が国に入国、在留することのできない外国人等に対して、意見聴取を行う等の手続をとった上で、その在留資格を在留期間の途中で取り消すことができる制度を新設するものであります。 第二は、仮滞在許可制度の創設等を含む難民認定制度の見直しについてであります。 難民認定申請中の者及び難民と認定された者の法的地位の安定化を早期に図るため、不法滞在者である難民認定申請中の者について、仮滞在許可制度を創設することとし、同許可を受けた者については、退去強制手続を停止し、難民認定手続を退去強制手続に先行して行い、難民認定を迅速に行うとともに、難民として認定された者のうち一定の要件を満たす者には、一律に在留を認めることとするものであります。 なお、仮滞在許可制度の濫用防止を図るために、許可をする際には住居及び行動範囲の制限等の条件を付し、その条件に違反した場合は許可を取り消す規定及び許可期間中に逃亡する行為等に対する罰則を整備しております。 また、難民認定手続の中立性、公正性をより高める観点から、難民不認定処分等について異議の申し立てがなされた場合に、その申し立てに対する処分の決定に当たっては有識者等から成る難民審査参与員の意見を聞くことを義務づける制度も設けることとします。 第三は、精神障害者に係る上陸拒否事由の見直しについてであります。 現行の出入国管理及び難民認定法においては、精神上の障害のある外国人について一律に上陸拒否の対象としているところ、これを改めまして、精神上の障害により判断能力を欠く常況等にある外国人が本邦における活動を補助する者を随伴しない場合に限って上陸を拒否することとするものであります。 以上が、この法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○柳本委員長 今野東君。 ————————————— 難民等の保護に関する法律案 〔本号末尾に掲載〕 —————————————
○今野議員 ただいま議題となりました難民等の保護に関する法律案につき、民主党・無所属クラブの提出者を代表して、提案の趣旨と内容を説明します。 一九八一年、我が国は難民条約を批准しましたが、国際情勢のあらしの中で過酷な運命に遭遇し、難民としての救済を求める人々を積極的に迎え入れる姿勢をとってきませんでした。二〇〇三年の難民申請者数は三百三十六人、そのうち難民として認定された人はわずか十人にすぎません。 また、難民認定申請中の人や不認定となった人が収容されている入国管理センターの施設では、自殺や暴力事件、職員とのあつれきなどの問題が発生しております。 こうした事態を招いている現行の出入国管理及び難民認定法が欠陥法であることは明らかですが、政府改正案は、難民認定制度の根幹の抜本改革に至っていません。国際的動向を踏まえた難民認定、生活支援のための新しい法制度が必要と考え、本法案を提出いたしました。 以下、本法案の主な内容について説明いたします。 第一は、難民認定委員会の設置についてです。 本法案は、内閣府の外局に、専門家により構成される難民認定委員会を設置しまして、現在、法務省入国管理局が行っている難民認定業務を移管することといたしました。 入国管理局が出入国管理と難民認定の両方を行う現行の制度は、主権国家の厳正な規律が前面に出てくる手続と、庇護を求める難民申請者に国の温かい救済の手を差し伸べる手続を同じ組織が行うこととなっておりまして、根本的な矛盾をはらんでいることから、抜本的な組織の改正を行うものであります。 また、難民の認定には、調査に必要な専門知識や透明性、客観性、迅速性、公平性が求められることから、難民認定業務を法務省の入国管理業務から分離して、難民調査官が国際情勢や難民が発生している地域の情報などを十分に入手できる体制を整備しました。政府改正案は、難民不認定に対する異議申し立て段階における難民審査参与員制度を設けただけで、これでは従来の問題点は解消できません。 第二は、難民認定申請者の法的地位についてであります。 現行法では、申請者に法的地位を与えていないために、その多くが強制的に入管施設に収容されている実態を改善するために、本法案は、申請者に特別の在留許可を与えます。ただし、制度の濫用を防止するため、退去強制手続や刑事手続の対象になっている者や、難民認定再申請者の一部の者に対しては例外を設けます。 第三は、難民認定手続の透明化についてであります。 本法案では、難民認定委員会が難民認定基準を策定し公表するとともに、難民認定までの審査期間を原則六カ月と設定しております。調査の際に弁護士等が関与することを可能にし、不認定の場合、その理由を本人に通知することとしております。 第四は、異議申し立ての期間についてです。 本法案は、行政不服審査法による異議申し立てができることとした結果、申し立て期間は六十日以内となります。政府改正案では、同法の適用を認めながらも、申し立て期間を七日以内に限っております。 第五は、在留難民等に対する生活上の支援についてです。 難民申請に至る入り口から、難民と認定された者が定住して安定した生活を始めるという出口までを視野に入れるとともに、条約難民のほか、人道的見地から政策判断で受け入れたいわゆる条約外難民も生活支援が必要との観点から、これらの難民等に対して生活上の支援を行うため、生活相談、日本語の習得、保健及び医療の確保、居住の安定、職業訓練及びあっせん、就学などについて生活支援推進計画を策定しまして、NGOなどとの協力のもとにその支援を行うものとしております。 以上のとおり、我が国の難民認定と難民等生活支援につき、国際人権に対する深い理解に裏打ちされた新しい法体系を整備しようというのが、私たちの提案でございます。 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただけますようお願いいたします。
○柳本委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。 ————◇—————
○柳本委員長 次に、内閣提出、不動産登記法案及び不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 両案につきましては、去る十四日質疑を終了いたしております。 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 まず、内閣提出、不動産登記法案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 次に、内閣提出、不動産登記法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○柳本委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 —————————————
○柳本委員長 この際、ただいま議決いたしました不動産登記法案に対し、塩崎恭久君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山内おさむ君。
○山内委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。 不動産登記法案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。 一 本法については、オンライン申請手続が導入されることに鑑み、国民の不動産等に関する権利が一層保全されるよう適切な運用に努めること。 二 本法の施行に必要な政省令の制定及び施行に当たっては、専門資格者の団体から十分な意見聴取を行い、不動産の登記手続に関するこれまでの実務慣行を尊重し、本法の立法趣旨と適合するよう十分に配慮すること。 三 不動産取引及び代金決済については、登記手続と当事者間の代金決済が同時履行でき、関係者の電子署名・電子証明書の有効性検証が、資格者代理人において適切になされるよう、万全な基盤整備を行うこと。 四 オンライン申請に関する登記識別情報や電子署名などの情報が、個人のプライバシーに関する重要情報であることに鑑み、万全な情報管理体制を構築すること。 五 不動産の表示に関する登記申請については、利便性の向上と国民の負担軽減のため、資格者代理人が適切かつ効率的に活動できるよう、十分に配慮すること。 六 電子化による登記情報と地図情報の効果的な連携を実施するため、登記所備付地図等の一層の整備促進を図るとともに、十分な人的物的整備に努めること。 七 登記の真実性を確保するため、資格者代理人が作成した場合の登記原因証明情報には、その者の電子署名を付するなど、資格者代理人の権限と責任が明確化され、その専門的知見が充分活用されるよう検討すること。 八 不動産に関する国民の権利を保全し、取引の安全と円滑に資するという不動産登記制度の目的に照らし、本法の施行の状況について不断に検討を加え、改善の必要があるときは、速やかに所要の措置を講ずること。 以上であります。 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○柳本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 採決いたします。 塩崎恭久君外二名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○柳本委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野沢法務大臣。
○野沢国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。 —————————————
○柳本委員長 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○柳本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○柳本委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後三時五十三分散会