法務委員会 第20号
- 発言数
- 207 件
- 登壇者
- 25 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 2003/07/08
会議録
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨七日、浜四津敏子君が委員を辞任され、その補欠として加藤修一君が選任されました。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案を一括して議題といたします。 本日は、三案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、三名の参考人から御意見を伺います。 御出席いただいております参考人は、駿河台大学学長・前法制審議会会長竹下守夫君、日本弁護士連合会副会長藤井克已君及び弁護士・自由法曹団事務局長中野直樹君でございます。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。 参考人の皆様方から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。 議事の進め方でございますが、まず竹下参考人、藤井参考人、中野参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。 なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。 なお、参考人の方の意見陳述及び答弁とも、着席のままで結構でございます。 それでは、竹下参考人からお願いいたします。竹下参考人。
○参考人(竹下守夫君) それでは、座ったままで意見を述べさせていただきます。 ただいま御紹介いただきましたとおり、駿河台大学学長をしております竹下守夫でございます。 本委員会で現在御審議中の三法案はいずれも司法制度改革関連のものと承知いたしておりますが、私は、かつて司法制度改革審議会の会長代理としてその意見書の取りまとめに当たり、また三法案のうち民事訴訟法等の一部改正法案、人事訴訟法案につきましては、法制審議会会長として、森山法務大臣より諮問をいただき、その審議にも関与してまいりました。 この三法案は、いずれも国民の期待にこたえる司法制度の実現という司法制度改革の基本理念に基づき、とりわけ裁判の充実、促進の課題にこたえようとするものでございます。そこで、司法制度改革審議会以来この課題にかかわってきた立場から、三つの法案につき意見を申し上げたいと思います。 まず第一は、裁判の迅速化に関する法律案についてでございますが、三点に絞って意見を申し上げたいと思います。 第一は、本法律案の趣旨及びその必要性でございますが、本法律案は、第一審の裁判を原則として二年以内のできるだけ早い時期に終了させることを目標とし、最高裁判所による検証を通じて充実した手続の実施及びこれを支える制度的基盤の整備を図る趣旨のものと認識いたしております。 我が国の民事及び刑事訴訟の現状は、既に御案内のとおり、民事通常訴訟全体の平均審理期間は八・五か月、人証調べ実施事件で十九・二か月、刑事通常訴訟では全体の平均審理期間が三・三か月、否認事件では九・七か月となっております。これだけを見ますと、国際的に見ましても特に我が国の訴訟が遅延していると申すことはできないと思います。 しかし、審理期間が二年を超える事件は、民事訴訟では大規模訴訟事件、医療訴訟などの専門的訴訟事件を中心に七・二%に及びます。刑事訴訟では〇・四%ではあるものの、社会的重要性、したがってまた社会的関心の高い事件が多く、刑罰権の適時適切な行使による社会秩序の維持の目的に沿い得ているか疑問を呈されているところであります。 このような現状を見ますと、国民の期待にこたえる司法と言い得るにはなお本法律案の趣旨とする裁判の充実・迅速化が求められると申すことができると思います。刑事訴訟につきましては、とりわけ裁判員制度の導入が予定されている点にも十分配慮すべきだろうと思います。 第二に、迅速化の数値目標の評価でございますが、この法律案第二条は、迅速化の意義といたしまして、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させることを目標としてと述べております。この文言からも分かりますように、ここで言う二年は目標値でありまして、各関係者がそれに向けて訴訟手続、司法の基盤整備を行うための指標であると理解されます。そして、そのような目標としては、二年以内というのはおおむね妥当と思われるところであります。 そこで、この二年という目標と審理の充実、裁判の適正との関係が問題となるかと思います。 私は、二年という目標が設定されました以上、長くとも二年で終局できるよう、裁判所及び当事者が協力し最大限の努力をすべきであると思うものでありますが、二年では充実した審理に基づく適正な裁判を行い得ない場合がないとは言い切れません。この目標設定は、そのような場合にも、充実、適正を犠牲にして何が何でも二年で訴訟を終結することを求める趣旨ではないというふうに理解されます。 このことは、第二条一項自体が、裁判の迅速化は充実した手続の実施と制度、体制の整備を図ることによって行われると定めていることからも明らかであると思います。さらに、第二条第三項の規定もあることに留意したいと思います。 第三に、最高裁判所による検証の在り方について申し上げます。 本法律案第八条所定の検証は、迅速化の推進に必要な事項を客観的データに基づいて明らかにするものであり、本法律案の構築する迅速化の仕組みのかなめを成すものだと考えております。 まず、その検証を実施する主体は、第八条の定めるとおり、最高裁判所であるべきものと考えます。 なぜならば、第一に、この検証は裁判の長期化の原因、その他迅速化を推進するために改革を必要とする事項につき調査、分析し、それを公表して国民に説明するものであります。かかる調査、分析、説明の責任は国の機関が負うべきものであり、その作業の性質上、それは立法府、行政府ではなく司法府であるべきものと思います。しかも、その最高の機関である最高裁判所が最もこの責任を負うにふさわしいものと考えるわけでございます。 また、第二に、この検証は裁判官の独立を保障する上からも最高裁判所が責任を持つべきものと考えます。特に、係属中の訴訟をも対象とする場合にはそのことは明らかでありますが、既に終結した事件であっても同様であると考えるものであります。また、当事者等の関係人のプライバシー等も、それが裁判所に対して提供された以上、その保護の責任は裁判所にあると考えられるのであります。 しかし、このことは現実に検証作業を実施する体制に裁判所以外の者を加えることを排除するものではありません。むしろ、検証を総合的、客観的、多角的に行うには、内部者だけではなく、法曹三者はもちろん、専門的知識を有する学識経験者、また一般有識者などを加えることが望ましいといいますか、必要であろうと考えております。 検証につきまして、最後に念のため、現在進行中の司法制度改革との関係に触れておきたいと思います。 現在進行中の司法制度改革のうちには、今回の民事訴訟法の一部改正法を始めといたしまして、裁判の充実・迅速化を目的とし、あるいは司法の基盤整備の意義を有するものが少なくありません。しかし、これらの改革がその成果を現すには一定の時間を要するものでございます。当然のことながら、検証の結果を評価するに当たりましてはこのことに十分御留意をいただきたいと考えているところであります。 結論といたしまして、私は、この法案は、我が国の司法制度が国民の信頼を得、ますます国民の期待にこたえるに適するものと考え、賛成いたす次第でございます。 次に、民事訴訟法等の一部改正法律案について意見を申し上げます。 本法律案は、司法制度改革の理念に従い、第一に、民事裁判の充実・迅速化、第二に、特に専門的知見を要する事件への対応強化、第三に、簡易裁判所の機能の充実という三つの方策により、民事司法制度を国民により利用しやすくするため、民事訴訟法等の一部を改正するものであります。 御承知のとおり、現在の民事訴訟法は、民事訴訟を国民に分かりやすく利用しやすいものとすることを目的として平成八年に新たに制定され、平成十年一月一日より施行されたものであります。ここでも、民事訴訟の充実・迅速化が図られたのでありますが、複雑困難な事件、特に専門的知見を要する事件に対する特別の手当てをする余裕がございませんでした。その意味では、今回の一部改正法律案は、新民事訴訟法による改革を補充する意味を持つものと申すことができると思います。 この法律案が民事司法を利用しやすくする方策として定める第一は、民事裁判の充実・迅速化であります。そのための主な改正点は、計画審理の原則の導入と訴え提起前における証拠収集手段の拡充であります。 訴え提起前における証拠収集手段の拡充は、元来は、訴訟の早い段階において審理計画を定めることを可能とするために導入したものでありますが、しかし一般に、証拠保全の必要というような要件を求めずに裁判予告通知をした当事者及びそれに対する返答をした当事者に訴えの提起前に一定の証拠収集をなし得る手段を認めることは、一般の訴訟の充実・迅速化に資するものであります。 この法律案の定める方策の第二は、専門訴訟への対応強化であります。 科学技術の専門化に応じ、社会も専門化し、適正迅速な裁判に専門的知見を要する事件が増加しておりますが、まさしくこれらの訴訟が審理の長期化を招いていると申すことができます。これらの事件の充実・迅速化には、訴訟の早い段階から専門家による裁判所の補助、裁判所の専門的事件処理体制の整備等が必要とされます。 そこで、本法律案では、専門委員制度の創設、鑑定制度の改善及び特許権等に関する訴えの管轄の専属化等の方策を定めているところでございます。 この法律案は、さらに簡易裁判所の機能の充実といたしまして、少額訴訟手続の適用事件の範囲を、訴訟の目的の価額が六十万円以下のものに拡張いたしております。 以上のように、この法律案により相当程度の民事訴訟の充実・迅速化が期待でき、また簡易裁判所の機能が強化を図られると考えますので、私としましてはこの法律案に賛成したいと思うものでございます。 最後に、人事訴訟法案についてでございますが、この法案の趣旨は、人事訴訟事件を家庭裁判所に移管し、人事訴訟の充実・迅速化を図り、また家庭関係事件の当事者の司法へのアクセスを容易にする、あわせて国民の司法参加を家庭裁判所において拡充するというものでございます。 主な改正点は、第一に、人事訴訟の家庭裁判所への移管でございます。このことは、家庭関係事件の当事者の司法へのアクセスの容易化、人事訴訟事件への家庭裁判所調査官の関与による審理の充実・迅速化に資するものであります。 第二に、参与員制度の人事訴訟への導入による国民参加の拡充がこの法案のいま一つの重要な内容でございます。 さらに、人事訴訟手続全般の見直しを図っているものと認識いたしております。 以上によりまして、この人事訴訟法案も司法制度改革の理念を実現するものとして私は賛成いたしたいと思います。 以上のとおり、三法案いずれも司法制度改革の趣旨に沿い、これを実現するものでございまして、慎重御審議の上、可決していただければ幸いと考えております。 以上で私の意見陳述を終わります。 どうもありがとうございました。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。 次に、藤井参考人にお願いいたします。藤井参考人。
○参考人(藤井克已君) 日本弁護士連合会副会長の藤井克已でございます。 本日、裁判迅速化法案外二法案につきまして意見陳述の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。日弁連としての意見を中心に意見を述べさせていただきたいと思います。 まず、裁判迅速化法案についてでございますが、この裁判迅速化法案の理念は、公正かつ適正で充実した手続の下で裁判が迅速になされることを目的にしているものだと考えております。つまり、迅速化が先にあるのではなくて、司法という、あるいは裁判という目的、それを行うための法案であるというふうに考えるべきではなかろうかと思います。 ところで、その充実かつ迅速な裁判というものは、事案の真相を明らかにして、法に基づく適正な判断を下すことになります。この適正な判断こそが国民が納得する司法システムとしての裁判制度になるのではないかと思います。このことを実現することこそ、我が国が真に法治主義の実現たる民主的な国家になることを意味するものだと考えております。このような理念が実現できる迅速化法案にしていただきたいと強く要望申し上げます。 ところで、裁判の現状につきましては、既にそれぞれ議論がなされており、ほぼ現状について御認識はできているかと思います。既に審理期間は二年を大幅に下回っておりますし、しかも現場にいる法曹三者の努力によって年々短縮化に向かっております。ただ、裁判の中にはどうしても時間の掛かる事件がございます。 例えば、医療過誤訴訟、建築紛争、知的財産訴訟、あるいは公害、薬害、原発、行政事件、さらには、刑事事件でいいますと訴因が非常に多い事件などであります。これらの、いわゆる争点が多く、法的価値判断が分かれる重たい事件が存在していること、これらの事件が市民、マスコミの関心を集め、その判決は社会を変革する契機となるものであること、こういう点に御留意をしていただきたいと思っております。これらの事件をいかに迅速に行うかについては、まず十分な人的、物的、そして法制度の整備、改革が必要とされております。現場の運用にだけ任せる迅速化ではこの目的は達成できないというふうに考えているところであります。 このような観点から、衆議院におかれましては迅速化法案の修正が三点なされました。まず、第一点でありますが、「公正かつ適正で充実した手続」と修正をされました。正に、充実こそ裁判の基本であろうかと考えるところであります。 例えば、裁判所の人的・物的体制、検察庁での人的・物的体制、これは地方にいる弁護士としては実に貧困であると考えざるを得ないところが多々ございます。地方の支部に裁判所がありながら裁判官がいない、あるいは地方の検察庁の支部がありながらそこには副検事しかいない、そのような状況があるわけであります。刑事裁判でいえば、このような人的・物的体制を拡充することがまず必要であろうかと思います。さらに、検察官の手持ち証拠の事前開示による争点整理の充実、あるいは捜査の可視化によって捜査機関の作成する供述調書に関する争いを透明化すること、そのようなことが不可欠であります。日弁連としてはこの「充実」という修正を高く評価いたしております。 次に、法案の第七条第二項として、前項の規定は、当事者の正当な権利の行使を妨げるものと解してはならないという条文が付加されました。日弁連としましては、第七条にある当事者の責務の規定の削除を求めておりましたが、この文言そのものは残りましたけれども、権利保障規定が明定されたことは日弁連として評価し得るものだと考えております。 ただ、この条項につきましては、刑訴法規則第一条二項と民訴法第二条の当事者の信義誠実義務に関する新たな要件規定を加えることにならないかということで心配をいたしておりますし、そのための実務的な手当てが必要ではないかと考えているところであります。 いずれにしても、この当事者等の責務規定は、証拠が一方の当事者に握られている様々な証拠偏在の事件の当事者や、死刑判決も考えられる重罪事件で無罪を主張している被告人などに対して極めて酷な裁判の審理を強いることになりかねない危険があります。参議院におかれましては、これらの問題点につきまして、当事者の実体法上並びに手続法上の権利が十分保障されなければならない旨の附帯決議を是非採択していただきたく、お願い申し上げる次第であります。 次に、検証の問題に触れさせていただきます。 法案の第八条の中で、「総合的かつ多角的な検証」とされていた点を「総合的、客観的かつ多角的な検証」と修正されました。これは検証が国民の要請、期待に応じる制度実現のための客観的に実施されなければならないということを明定したものでありまして、日弁連はこの修正を高く評価しております。そして、重要なことは、検証は最高裁判所だけで行うのではなく、私たち弁護士や検察官など裁判関係者や市民団体、マスコミなどの学識経験者を入れた検証組織を作って実施する必要があろうかと思います。 また、裁判の独立の確保が必要であります。最高裁判所が検証を行うこと、これが裁判の独立のために必要であるというがごとき説明がなされておりますけれども、裁判官の人事権を握っているのは最高裁判所ではないかという点がございます。検証が個々の裁判官に対する人事評価や個々の検察官、弁護士に対する評定に使われてはならないと思うわけであります。つまり、客観性の担保された法曹三者と外部有識者による検証方法が求められていると考えております。 ところで、私は福岡県弁護士会に所属する弁護士であります。福岡における実験を少し御紹介したいと思います。 平成二年、福岡県弁護士会は福岡地方裁判所と協同して、民事訴訟手続の審理充実・促進のための方策を協議し、いわゆる福岡方式を策定、実行するとともに、平成五年には、福岡方式の実践状況とその効果及び問題点並びに改善点を把握するために、生きている事件を検証し、その検証結果の公表を行った経験を有しております。客観的、多角的検証としては戦後唯一のものだと考えております。この検証方式は別に配付しました資料のとおりでありますので、是非ともこの法案の検証の参考例としていただきたいと思います。 ここで特徴的なことは、生きている事件を素材としていることであります。裁判官と原告、被告双方の各代理人が、統一されたそれぞれの進行メモとそれぞれの総括表をそれぞれが作成し、裁判確定後、これらを検証のための合同委員会へ提出して検証を行うというものでありました。検証を行う中で、福岡での証人調べの充実あるいは審理期間の短縮ということが現実になされていると評価されているところであります。 ところで、これらの検証について、今後どういうポイントがあるだろうかということをお話ししたいと思います。 第一は、裁判の独立及び裁判官の独立、弁護活動及び当事者の独立の確保であります。これなくして裁判はあり得ないと考えるからであります。第二に、裁判官、検察官、弁護士、代理人でありますが、これらの共同作業と相互理解の中で行うべきものであります。進行中のメモ等の作成をしなければ、確定後に幾ら検証事項を考えようと思ってもそれは出てこないもので、そのために、三番目でありますが、生きている事件を素材として迅速な審理をどのようにして実現したか、これをプラス思考として評価すべきであります。 裁判官、検察官、弁護士の各事件についてのそれぞれの総括アンケートも必要であろうかと思います。これを全国各ブロック、担当庁・会が実施しまして、各地で総括の上、更に最高裁判所に集積して、法曹三者と市民、マスコミなどの外部有識者が関与した検証組織による評価を行うべきであろうと考えております。検証そのものにそのような迅速的な効果を生じさせるもの、これこそが検証方式の中になければならないと思います。 留意していただきたい、特に注意していただきたい点は、二年以上経過した事件をピックアップして、その原因並びに欠陥を探るというマイナス調査を行うことだけはやめていただきたいということであります。欠点を探す方法は不十分であり、裁判官を萎縮させるだけのものであります。迅速を実現し、充実した審理に学ぶ、この姿勢こそ大切であろうかと思います。 このためには法曹三者の協同が是非とも必要であります。今回の民訴・人訴法の改正事項などにつき、その効果及び問題点並びに改善点を把握することが可能になるわけであります。刑事訴訟事件についても、法曹三者によるそれぞれの立場からの検証こそが改善点を見いだすことができるものだと思います。日本弁護士連合会は検証への協力を積極的に実行したいと思います。 最高裁判所が検証の大部分を行うこと及び現在構想されている検証方式には反対をいたします。参議院におかれましては、検証についての指針を是非、附帯決議等をもって示していただきたいと考えております。検証の結果に基づいて運用改善を行い、更に制度改善を行います。この法改正といったものに立法府たる国会に対する多大な期待を抱いております。 なお、注意すべきは、裁判所、検察庁などの人的・物的充実は、検証の結果を待つのではなく、検証にかかわらず、今から直ちに積極的に推進していただきたく、強く申し上げる次第であります。 次に、民事訴訟法改正案についてでありますが、基本的に賛成であります。ただ、計画審理の名の下で裁判の進行のみを守るために、当事者の言い分を制限あるいは断ち切る事態が生ずることは厳に慎まなければならないと思います。 ここで、知的財産関係の審理について一言申し上げます。 我が国全体の知的財産分野を育成するという国家戦略という面から考えますと、地方にいる私としては、特許権等に関する訴訟について東京、大阪、あるいは控訴地については東京高裁でありますけれども、専属管轄とされた点については大きな疑問を持っております。できましたら、会社更生法等の法律と同じように、地方でも裁判可能とする競合管轄化を検討していただければと思っております。 ところで、知的紛争もまた社会的紛争の一つであります。法的基礎が必要で、その担い手には法曹としての資格、経験が必須の条件だと考えます。近時、技術系裁判官という言葉を見ますが、技術系裁判官というのは概念的に不十分であり、このような裁判官をイメージすることはできません。物理化学系裁判官あるいは理科学系裁判官、生物学系裁判官、それでも不十分であります。技術の特定は不可能と考えざるを得ません。また、知的分野の一つに著作権がありますが、これは芸術の問題で芸術系裁判官をイメージすることもできません。 つまり、紛争を法的手段で解決するに当たっては、法曹が各分野の更に専門領域の知識を有する専門家からのアシストを受け、最終判断を行うというのが必要であります。この意味で、本法案は専門委員制度の導入と更なる充実を実現しようとするものであり、時機にかなったものであると考えております。裁判所の質的充実を専門委員の量的増大を図る中で実現すべきだと考えます。 人事訴訟法改正案については基本的に賛成をいたしております。とりわけ、管轄、事件が移ることから、書記官などの人的増員と強化が必要になると考えております。移管すべき訴訟の範囲も継続的に検討すべきでありますし、公的付添人制度の実現を視野に入れた少年事件関連の充実も必要かと思います。 尋問の公開停止、特に慎重な運用が必要でありましょう。また、審判手続における当事者に対する公開、透明化と手続保障は必要であります。 家庭裁判所は市民に最も身近な裁判所であります。この家庭裁判所の充実実現に向けて参議院としての力強い意思を表明していただきたく、お願い申し上げます。 以上で意見の陳述を終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。 次に、中野参考人にお願いいたします。中野参考人。
○参考人(中野直樹君) 弁護士の中野直樹です。現在、自由法曹団の事務局長をしております。本日は参考人として発言をする機会をいただき、どうもありがとうございます。 本日は、審議されております三法案のうち、裁判の迅速化に関する法律案に絞って意見を述べさせていただきます。 私個人としても、自由法曹団としても、この裁判迅速化法案を作ること自体に立法事実がないばかりか、憲法で保障された国民の裁判を受ける権利を不当に抑圧し、裁判官の独立を侵害するおそれがあると考え、衆議院で一定の修正はなされましたが、なお法律とすることには反対の立場であります。 私の自己紹介をひとつさせてください。 私は、一九八六年に弁護士登録し、この十七年間、東京多摩地域を中心に地域住民の権利救済に活動してきております。日常的に利用している主な裁判所は、東京地裁本庁と八王子支部、横浜地裁本庁と相模原支部、川崎支部、小田原支部であります。 自由法曹団は、戦前の一九二二年に創立された八十年の歴史を持つ法律家団体で、現在、全国で千六百名を超える弁護士が結集し、権力による人権侵害の救済、労働事件、公害・薬害・環境事件、差別事件、税金裁判、教育関係裁判、冤罪・再審などの困難な裁判闘争に果敢に取り組んできています。そこから多くの憲法判例も生まれてきております。 この裁判迅速化法案には立法事実がないという点から意見を述べさせてください。 私は、今年の春になって裁判迅速化法案が急に浮上したことに大きな戸惑いを感じました。私の実感として、殊更、迅速化に的を当てた特別法案を作らなければならないほどの裁判長期化の病理現象があるとは思えないからであります。我が国の民事・刑事裁判の平均審理期間が諸外国に比べても長くないこと、毎年短縮してきていることは統計資料で既に明らかであります。 この参考人に出頭するに当たり、私自身が担当してきた民事裁判の記録をひもといて、お手元に配付してあります資料の2と3のように整理をしてみました。資料の2は第一審で和解で終結したもの、資料の3は判決があったものであります。担当した裁判のうち、原告、被告が事実の全部ないし一部を争ったものに限定してあります。これらを期間を分けて整理したものが資料の1であります。総数百三十九、ここでは百四十件となっています。百三十九件のうち、一年以内に終結が約五〇%、二年以内に終結が約八〇%であります。私の担当した事件は、多くが住民間の事件であり、その大半が二年以内に終結している実情にあるのです。 もちろん、三年以上の年数を要した裁判もあります。それを資料1の方で抽出し、要因と思われることをコメントしてあります。 一つは、当事者間の感情の対立が激しいものであります。そのような事案のときに、裁判官が迅速の任務意識の下に二年以内のできるだけ短い期間内に終結させようとしても、火に油を注ぐような展開になってしまいます。強引に判決をしても当然、控訴ですし、紛争としこりが深く残ってしまいます。私が担当した事件では、裁判官が二代、三代とわたりましたが、裁判官も代理人も粘り強く当事者双方の話を聞く姿勢を続け、和解による紛争終結に導くことができました。裁判には当事者を納得させる機能も必要であり、そのためには時間が掛かることもあるのであります。 二つ目は、行政認定基準と判例が進展している過労死労災の事案であります。 企業賠償請求裁判でも行政裁判でも、原告が証拠収集、証人を探すのに期間を要しますし、鑑定意見を書いてくれる医師を探し、一件記録を検討の上、意見書を書いていただくだけでも三か月から五か月を要するのであります。突然、家族を失い、場合によっては収入の道をなくした遺族の方と弁護士が時間と労力を掛け、判例を生み出し、それが行政を動かしてきております。争われたこの事案で二年以内に終結することはおよそ不可能だと考えます。 三つ目は、行政を被告とする事件、私の経験では、特に警察の不法行為を理由とする国家賠償裁判であります。 私が弁護団の一員となった三つの事件はいずれも五年以上掛かりました。私のじかの経験は限られておりますが、他の弁護士も、国相手の事件が一番しんどく、長期化するとの意見を持っております。一審判決までが長引くだけでなく、一審が原告勝訴判決の場合でも、国が控訴し、解決までに気の遠くなるような長い年月を要するのであります。私が担当した事件でも、国、法務省は徹底して争い、必要な証拠の提出に協力しないという姿勢を貫くために、被害を受けた当事者はそのことでまた悔しい思いをさせられます。原告側は間接的な証拠の積み上げと証人尋問の積み重ねをするしかありません。 私は、法務省に言いたいのです。法務省は、このように一律に網を掛ける法案を提出する前に、まず国が当事者となった裁判の審理期間の実態を明らかにすべきだと思います。そして、恐らく審理期間は市民間の事件に比べ相当長期間になっているものと推察されますが、その要因について実証的な研究を行い、公表することを先行すべきではないかと主張します。 自由法曹団に属する弁護士は、社会の中にうずもれている人権侵害や社会問題に光を当て、時には原告を掘り起こし、権利救済のための数多くの裁判に挑戦してきました。昨年、創立八十周年を記念して、一九七五年以降の四半世紀の自由法曹団員の活動を四十を超えるテーマでつづった「自由法曹団物語」上下本を出版しました。資料の4は、この物語の中に登場する裁判から、労働、公害・薬害、人権、警察の責任追及をする裁判の一部を抽出し、提訴年月日と判決・和解日を記載したものでございます。いずれも自由法曹団に所属する弁護士が弁護団の中核として活動したものであります。個々にコメントする時間はございませんが、いずれも最終的には原告の方々の被害の一定の救済がなされ、あるいは行政の方針と姿勢が改められた成果をかち取ったものであります。 これらの裁判は、いずれも三年から十年を超える年月を要しております。しかも、裁判を起こす前の原告の掘り起こし、証拠収集、法律論の検討などにも相当な年月を掛けております。公害・薬害、そしてハンセン氏事件では、被害者が社会の偏見から身を隠し、提訴に踏み切ることすら萎縮しておられます。資力の面でも困難な方々ばかりです。弁護団員は、被害者の方々と話し込み、一人、二人と提訴の決意をする原告を増やしていきます。どの事件も最初は名もなき人々の立ち上がりから出発します。マスコミも取り上げません。大量の原告を組織し、地域や社会に自分たちの被害を伝え、支援を訴える運動を行わなければなりません。国会議員の先生方にも繰り返し支援のお願いをすることもあるでしょう。そのような運動を行いながらマスコミの報道に乗るようになるのに数年という年月を要するのであります。弁護団員は、裁判の判決、和解で賠償金を得るまで手弁当で被害者とともに苦労の年月を重ね、事実・法律論の厚い壁を乗り越え、ようやく裁判の展望を切り開いてきております。正に、憲法九十七条が、基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であると言っているとおりであります。 資料5は、既に委員の皆様のところにお届けしているものでございますが、薬害ヤコブ訴訟、緒方靖夫氏宅電話盗聴事件国家賠償裁判、住友生命既婚女性差別裁判、ハンセン病違憲国賠裁判について、弁護団員からその裁判で払った努力を報告してもらっております。いずれも、裁判迅速化法案が、これらの裁判を起こし、勝利的な解決をしていくために大きな障害となるのではないかと深刻な懸念が表明されております。 私や自由法曹団に所属する弁護士が取り組んできたこの種の事件は、充実した審理をするためには、およそ二年以内に終えることは著しく困難であります。不可能と言っても過言ではないでしょう。一律に二年以内のできるだけ短い期間内に終局させる責務を弁護士や当事者に課す法律ができますと、当事者や代理人弁護士は、最初から責務が果たせないことを自覚しながら裁判を起こすことになります。これは、今でさえ裁判を起こすことに様々な障害を持っている被害者の方々に、ますます裁判を受ける権利を行使することを萎縮させることになるのではないかと危惧いたします。 今までは民事事件を取り上げてきましたが、刑事事件の被告人は国家権力と対峙しながら裁判を受ける立場にあり、法律により国家が特定の目的のための訴訟上の責務を強制することは背理ではないかと考えております。衆議院の修正により、法案第七条二項に、「前項の規定は、当事者等の正当な権利の行使を妨げるものと解してはならない。」が設けられましたが、この法案全体の構造では、「当事者等の正当な権利の行使」とは、あくまで迅速化の責務を負わされた当事者等の権利であり、正当な権利の行使自体が既に迅速化の枠の範囲内での権利と制限付きで解される危険がないのでしょうか。 ちょっと話を変えます。 法案が物的設備の拡充を明記していないのは欠陥だという点であります。 法案第二条に、裁判の迅速化に係る制度及び体制の整備として、法曹人口の大幅な増加、裁判所及び検察庁の人的体制の充実が挙げられております。弁護士人口の増加はもとより、裁判官、検察官の大幅な増員は喫緊の課題であります。 私が利用することの多い東京地方裁判所八王子支部は、民事事件の数でも刑事事件の数でも、全国の本庁と支部を通して、東京、大阪、横浜、福岡、名古屋、札幌地裁本庁に次ぐ事件数があります。裁判官も書記官の数も足りず、東京地裁本庁から定員枠を借りているような状態であります。裁判官は二百件から三百件の事件を抱えていると聞きます。東京地方検察庁八王子支部の検察官の数も足りず、起訴前の身柄拘束の勾留延長が常態化し、裁判日が間近にならないと弁護人に開示される捜査記録の整理ができないという状況にもあります。今でさえも裁判官も検察官も疲弊しているのに、さらに二年以内のできるだけ短い期間内の終局の責務が課されるとするならば、裁判官も検察官も過労で健康を害することにならないか、大変心配であります。もちろん私たち弁護士もそうです。 加えて、東京地裁八王子支部は庁舎が狭く、これ以上裁判官、書記官などの人員を増やそうにも物的スペースがない状態であります。裁判を迅速に進めるためには、その場所である法廷の数が適切な数あることが不可欠です。ところが、八王子支部では、民事の一つの合議体は、隔週に一日、つまり一か月に二日しか法廷が割り当てられません。 私が担当した事件で、この開廷日の少なさに泣かされた経験があります。原告が、先祖代々の自宅などに金融機関から数億円単位の抵当権を付けられ、その無効を争う裁判を起こしました。金融機関は競売の申立てを行い、原告にはその停止を求める保証金の準備をすることができないことから、競売手続の進行を気にしながらの裁判となりました。代理人の私は、それこそ一日も早く裁判を進める一心でありましたが、何しろ法廷の関係で一か月に二日しか開廷可能性がないということから、それぞれの都合を調整すると、主張の整理の弁論段階で二か月に一回、証人調べとなると、何と三、四か月に一回しか裁判日を取れないというもどかしい状況となりました。その間に入札となり、物件の一部が落札され始めます。追い込まれた原告は裁判半ばでかなり譲歩を強いられた和解をせざるを得なくなりました。私は、このとき、裁判所の法廷の物理的な都合が国民の裁判を受ける権利行使を阻害してはならないと痛切に考えさせられました。 この経験から、法案第二条二項が裁判所及び検察庁の物的設備の拡充を明示していないのは承服できません。 最後に、検証について一言触れます。 検証につきましては、人事評価権を握る最高裁のみが検証主体となることには反対であります。法曹三者がそれぞれの立場から意見を述べ合うことが長期化事案の分析と評価を正確にし、拙速裁判の弊害が出ていないかどうかについても適切なチェックができます。また、特に現に係属中の事件につきましては、裁判官の独立を侵害しないことを保証する検証システムをどのように作るかについて、厳に慎重な配慮が必要です。この点でも、検証主体を人事権を握る最高裁に限定することは大変問題であると考えます。 以上で終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) ありがとうございました。 以上で参考人の意見陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○佐々木知子君 おはようございます。自民党の佐々木知子です。今日はお忙しい中、三人の参考人の先生方、どうもありがとうございました。 まず、裁判の迅速化法案について三人の参考人の方々にお尋ねしたいんですけれども、藤井参考人もおっしゃっておられましたように、裁判の迅速化に向けてこれまでも裁判官、検察官、弁護士が様々な努力を重ねてきまして、かなりスピードアップをされているというのはもう現実でございます。本法案が成立すれば、三者それぞれの果たすべき役割はますます重要になると思われます。殊に、竹下参考人もおっしゃっておられましたように、裁判員制度というのが導入される見込みになっている。どういう事件にどういう形で裁判員が参与することになるのかまだ決まってはおりませんけれども、素人の裁判員が入ってくることになれば、当然、裁判というのは迅速化がより要求されることになるかと思います。 さて、法曹三者は今後どのような姿勢で迅速化に取り組んでいくべきだとお考えか、これは竹下参考人にお伺いしたいと思います。 そして、弁護人の立場から、藤井参考人と中野参考人には、特に弁護士の体制整備についてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
○参考人(竹下守夫君) 法曹三者が裁判員制度の導入をも念頭に置いて、いかなる姿勢でこの迅速化に臨むべきかというのが御質問の趣旨かと思います。 一般的に申し上げれば、この迅速化法案に定められておりますように、裁判所といたしましては、現在の状態であれば、現在の訴訟手続、民事、刑事の訴訟手続を適切に運用し、あるいはまた新しい法律によって改正されたといたしますと、その改正法の趣旨に沿って充実した手続を運用するということをまず心掛けるべきであろうと思います。その上で、検証の結果といたしまして、裁判長期化の原因等が明らかにされた場合には、謙虚にそれを受け止め、更に運用に努めるということになると思います。 その際に、日本弁護士連合会を始めといたします弁護士の訴訟代理人あるいは弁護人としての協力は欠かせないものでございまして、日本弁護士連合会といたしましても、本法案五条にございますように、その職務の重要性を考えて、十分国民による弁護士の利用を容易にし、さらに裁判の迅速化に努めるべきであろうと思います。 また、法務省というのは政府の一部でございますので、立法の必要が生じてきた場合には適切に立案をし、国会に提案をすべき責務を負うというふうに考えております。 いずれにいたしましても、要は司法制度改革で指摘されてまいりましたように、司法制度を国民の期待にこたえるものにするという、そういう視点からこの迅速化の問題に取り組むべきであるというふうに考えております。 殊に、裁判員制度を意識してということになりますと、果たして一般的な、刑事事件でございますので、刑事訴訟法の改正を現在検討中と聞いておりますけれども、その一般的な刑事訴訟手続の枠内だけで済むのか、あるいは裁判員が参加をする訴訟について何らかの特則が必要かという問題は難しい問題だと思いますが、これは現在、司法制度改革推進本部事務局の方で検討会を開いて検討中でございますので、その成果を見守りたいというふうに思います。 以上でございます。
○参考人(藤井克已君) 日本弁護士連合会としましては、この法案第五条にありますとおり、弁護士の社会的、公共的な使命、そういったものをかんがみまして、裁判の迅速化に関しては、これに努力していくということは会内、大方の合意を得ているところであります。また、そのための基盤整備、そのために我々がどのようなことをしているかを少しお話ししたいと思います。 まず、裁判が非常に高度化し専門化している中で、知財の事件あるいは税務の事件、行政の事件、そういったいろんな専門的な事件が増えてきているところは御承知のとおりであります。この体制に対して日本弁護士連合会は、例えば七月に知財に関する集中的な研修を行って、その希望者は既に全国で千五百人を超えている状況でございます。また、八月の末には税務訴訟に関する集中的な研修を行いまして、これも現在、希望者を募っておりますが、千人程度にはなろうかというふうに思っております。このようなことで、各種の専門的な事件を担える弁護士を積極的に研修等により輩出していきたい、そしてその弁護士の体制を国民に分かりやすく、また利用しやすい形で提供をしていきたいと、このように努力しているところであります。例えば、福岡県弁護士会におきましても、小さな事件でありますが、サラ金、やみ金の専門的な事件を行う名簿を整備したり、あるいは刑事事件について否認訴訟その他を実績がある弁護士を御紹介する制度を作ったり、そのようなことを検討し、あるいは実践しているところであります。 このように専門的な知見を有する弁護士の輩出とともに、より一層、弁護士会として国民にどのようなシステムでどのようなお金でどのような期間が掛かりといった説明を行っていきたいというふうに思っております。 ところで、裁判員制度の導入に関しての御質問がありましたけれども、これにつきましては、私どもは裁判員制度そのものを全面的に日本に定着させていきたいという強い願望を持っております。これは、司法に国民が参加するということ、それこそ民主主義社会の非常に強い基礎的な制度になるのではないかという思いからであります。 ところで、この裁判員制度を導入したときには、従来の刑事訴訟法の手続とは全く違う手続をやはり一部導入しなければいけないと考えております。例えて言いますと、検察官手持ち証拠の全面開示でありますし、それから捜査過程における可視化の必要であります。可視化といいますのは、あのとき言ったことは脅迫で言ったのか拷問で言われたのか、それとも任意に言ったのか、これがすぐさま分かる、そのような形での法制度の改正がなされなければいけないと思います。このような捜査過程からの改善がなされてこそ、初めて裁判員制度における適正、妥当な判決を市民が下すことができるようになろうかと思います。 そのような意味で、刑事裁判における裁判員制度の導入は必至、必要でございますけれども、その基盤整備については単に法曹三者に求めるのではなく、制度的な改革が必要であります。 なお、最後に付け加えますが、裁判員制度に対する検証というものは別のものでありまして、今回の考えられている検証では裁判員制度における実質的な根拠にはなかなかなりにくいというふうに私は考えております。 以上でございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 簡潔にお願いいたします。
○参考人(中野直樹君) 自由法曹団は、裁判員制度を導入するに当たって、今、藤井参考人からも言われました捜査の可視化の問題、そして検察官の手持ち証拠の全面的な開示の問題、それから被告人側が準備するために被告人の身柄の早期の解放の問題、これを条件として裁判員制度を導入すべきだというふうに考えております。 以上です。
○佐々木知子君 ありがとうございました。 続きまして、民事訴訟法等一部改正法案について、これは竹下参考人にお伺いしたいと思います。 改正の一つとして特許権等に関する訴えの管轄が専属化されておりますけれども、これは藤井参考人が疑問があるということで、やはり地方在住者の利益も考えないといけない、競合管轄化をということでしたけれども、これについては竹下参考人、どのようにお答えになられますか。
○参考人(竹下守夫君) 特許権等に関する訴えの管轄を、今回、第一審は東京地方裁判所と大阪地方裁判所、第二審は東京高等裁判所に専属管轄化いたしました。これは既に委員御案内のとおり、知的財産権というものは国家戦略と言われるほど我が国の将来にとって重要な意味を持つものでございまして、この種の訴訟の迅速適正な解決をするためには専門的な裁判官あるいは代理人等の人的体制を整備する必要がございます。 しかしながら、その整備をいたすには当然、予算を必要といたしまして、資源は有限でございますので、すべての裁判所にそれに、あるいは東京、大阪以外の例えば高等裁判所所在地の地方裁判所というようなことも考えられるかもしれませんが、多くの裁判所にそれだけのスタッフをそろえておくということは国民の資源の有効な活用という点から問題でございます。それからまた、実際の現在の訴訟の状況から見ましても、事件の多くは東京及び大阪に集中いたしております。 そういう事実をも考慮いたしましてこの専属管轄化をいたしたわけでございますが、御質問の地方在住者はそれではどのように保護されるのかという点でございますが、その点につきましては、まず第一に、当事者が地方におりましても、知財関係訴訟については多くの場合、人的証拠の取調べというものは必要がない、そういう意味では争点を的確に整理し、必要となれば証拠調べも排除するわけではございませんが、それは新しい民事訴訟法で導入いたしました電話会議システムの利用、あるいはテレビ会議システムの利用によって賄うことが可能でございます。それがまず第一でございます。 それから第二に、当該事件が東京あるいは大阪の地方裁判所に提起されたといたしましても、それが専門技術的事項を欠く等の場合には著しい損害又は遅滞を避けるために他の裁判所に事件を移送するということを認めておりますので、そのような事件であれば常に東京、大阪だけで裁判をするということにはならないと思います。 また、訴額の小さいというのは、多くの場合には専門技術的な要素が少ないということになるかと思いますが、そういう事件につきましては始めから原則の簡易裁判所の管轄が認められておりますので、その地元の簡易裁判所を利用して、そこで訴訟をするということが可能でございます。もっとも、これは簡易裁判所の事物管轄の範囲に入らなければなりませんので、一般的に申せば訴訟の目的の価額が九十万円以下の事件ということになりますが、そのような三つの視点、一方ではこういう体制を取ることにとっての国家戦略的な重要性ということ、それから他方では地方在住者の利益の救済手段としては、地方にいたままで訴訟をすることができる手段が設けられているということ、それからさらに移送の制度があるということ、そして第三に、簡易裁判所の事件については別である。そういうことによりまして弊害を除去することができるのではないかと考えております。
○佐々木知子君 ありがとうございます。 聞きたいことはたくさんあったんですけれども、ちょうど時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○角田義一君 民主党・新緑風の角田義一と申します。 今日は三人の先生方にお越しいただきまして、御高説を拝聴する機会が得られまして、ありがとうございます。 藤井参考人にまずお尋ねをいたし、中野参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、私は立法府に身を置く者として、こういうことを言うのはいかがかと思いますが、腹の底からこの法律、まだすとんと落ちてないんですよ、はっきり申し上げて。衆議院で一部修正はされまして、原案よりは少しはましになったのかなという気もしますけれども、本質的にいろいろな私はまだ疑問が解けてない。今日のお三人の意見を聞きながら、恐らく理事さんの皆さんがそれなりの立派な附帯決議を付けていただけると思うんですけれども、また付けなきゃいかぬと思いますが。 要は、小泉総理が司法制度のしかるべきところで、何しろ第一審は二年以内にやってしまわにゃいかぬのだというような、えらい俗受けするような発言がきっかけになってこの法案ができたということは、当局もこの前のこの審議の中で認めているんですけれども、それはそれとして、例えばその裁判といったって、刑事裁判と民事裁判では私は本質は全く違うと思うんですね。また、機能も、社会的な機能も違うと思うんですよ。そういうものがつっくるみ、つっくるみというのはちょっと上州の方言で申し訳ないけれども、一括してということかな、このつっくるみで何しろ二年以内でやってしまえというのは誠に乱暴な話じゃないかなというのを、率直に私は感じを持っております。 そして、衆議院で「充実」という言葉はできましたけれども、例えば民事裁判を見てみますと、この日弁連に作っていただいた資料を見ますると、何しろ司法制度改革審議会が行った利用者調査によって、民事裁判に満足したという人は勝訴した人を含めて一八・六%しかいないと、こう書いてあるんですな。これは恐るべきことだと思うんですよ。いろいろの理由あると思いますけれども、結論的に言って、約五分の一の人しか満足してないということは、はっきり申し上げて、いろいろの関係者の御努力をいただいて裁判そのものが短縮化されて、立法事実はないとおっしゃっておるんだけれども、その短縮されたこと自体が、ちょっと言葉はきついんですけれども、手抜き工事じゃないけれども、手抜き裁判じゃないのかなと。本当に当事者は納得してないんじゃないかと、手抜き裁判じゃないかと。 これは、仮に「充実」という言葉をここに入れたからといって本当に充実した裁判になるのかどうか、逆に言うと、二年に縛られて一層手抜き裁判が進むんじゃないかというような気がしてしようがないんで、その辺については日弁連としてはどう考えておられるか、あるいはちょっとまた日弁連とは少しスタンスが違うかもしれぬが、中野先生はどう考えておられるか、ちょっと私、お尋ねしたいです、まず。
○参考人(藤井克已君) 角田先生が言われる点はごもっともな点、多々ございます。 私ども日本弁護士連合会としては、裁判の迅速化と言われたときに、充実、さらには適正な判断というものが失われて迅速のみに走られるのではないかということで非常に危惧感を持ちました。そして、そのために我々としてはその充実の、あるいは適正の実現のためにどうすればいいかということを常々検討しながら参ってきたところでございます。 それで、民事裁判において国民が納得していないというのは私どもの統計の中に出てくるわけですけれども、これは、やはり司法が国民から遠いところにあるというのが他方で一つの理由になっているのではないかと思います。国民から見れば裁判ざたをすることは非常に勇気の要ることであり、異常なことであります。しかも、その中で、自ら思っていることが正しいと考えて訴えを起こすわけですが、必ずしもその結果どおりにはならないことは多言を要しません。このようなことを生涯に一度、司法を知らない方が利用されたときに、意識の落差というものを地元にいる、あるいは現場にいる弁護士としてはよく感じるところがあります。 こういう意味で、司法により国民が近づくこと、あるいはさらに司法を国民が担って、司法というものはどのようなものか、裁判制度というのはどのようなものか、そういうことを理解していただくことが必要であろうかと思います。そのための裁判員制度でありますし、裁判員制度の実現でありますし、また日本弁護士連合会は国民に対して開かれた活動をやりたいと常に考えているところであります。 なお、この法案につきましては、確かに立法事実上疑問がありますけれども、私にとっては、この検証そのものが非常に重要な法案だと考えております。つまり、この法案の目玉は検証であります。そして、その検証が単に最高裁の一方的な検証に終わらず、真に国民基盤を持った検証を行うことによって初めて裁判あるいは裁判手続が有益な方向に変わっていく、その契機になり得るのだと、このようにプラスに考えて、この法案をできるだけ具体化していきたいと、このように実務家として考えるところであります。 以上です。
○参考人(中野直樹君) 角田先生の私、御指摘なさったところ、正に私の考えているところでありますし、同感でございます。 私自身は、どうしてここの一律に網をかぶせる法案を作らなければならないのかということについてやはり得心がいきません。この法案とともに出されております民事訴訟法の改正だとか、それから現在、司法制度改革推進本部で討議されております個々の制度の改革を果敢にやっていけばよいのでございまして、その上にこういう法案を作らなければならないという必要性はないというふうに私は考えております。 以上です。
○角田義一君 それから、私はちょっと実務からも大分遠ざかっちゃって、古き良き時代のことを言うと笑われるから余り言いたくないですけれども、やっぱり民事、例えば一つ一つには民事裁判でも時の効用というものもやっぱりあるわけで、何でもかんでも二年間でやってしまえばいいというんじゃなくて、やっぱり先ほど藤井先生もおっしゃるように、裁判を起こすには本当に大変な市民は決断をするわけで、一遍はかっとなるけれども、しかし時間を置いてみれば冷静になって和解もできるわけで、それは三年、四年、例えば掛かることもあると思いますけれども、要は当事者が納得して和解をするという、時の効用というか、ゆとりというか余裕というか、そういうものが今の裁判にはちょっとないような気がしてならないのです。これはいろいろな原因があると思いますけれども。そういうものを全部、そういうゆとりとか余裕とかというものを全部、捨象しちゃうような、そういう、こういう法案、私は余り感心できないなと今でも思っている。 もう一つ、刑事裁判だって、変な話ですけれども、例えば、ちょっと卑近な例で申し訳ないけれども、被告人が寒いときに刑務所に入りたくないという心情はあるわけですよ。これは裁判官、江田先生おられるけれども、寒いときに刑務所入りたくなきゃ、弁護人、私も経験があるけれども、仮病だって使って裁判少しサボるんですから、それはしようがないな、そのくらい余裕があったんですよ、昔。昔と言っては悪いけれども。それでも裁判官、分かったような顔していますよ、みんな。そういうように、やっぱり少しこう、何だかビジネスみたいになっちゃってやるというのはいかがなものかと思うんですな。 この法案ができて、そういうゆとりとか余裕とかというのは本当にどうなっちゃうんだろうかという心配があるんですけれども、それ、どう考えておられますか、お二人。
○参考人(藤井克已君) 今の角田先生の御下問につきましては、私ども実務家としてよく考えるところでございます。 ただ、やはり裁判というのは今の表現とは少し違いまして、当事者の納得、いわゆる自らが過去を振り返って、この結論はやむを得ない、あるいはそうせざるを得ない、私が正しかったんだ、このようなことを実感させる手続でもあろうかと思います。このような納得感がない限り、法治社会というものは保つことができないのではないかと思います。裁判の手続が迅速で、拙速で、何を言っているか分からない、おれは全く理解できないという結論をもたらされたときは、法に対する信頼感はなくなるわけでありますから、この迅速とか充実とかいう以前の問題として、納得感をどのように国民に示していけるのか、これが司法制度の根幹にあろうかと思います。 そういう意味で、裁判所が拙速に走る、迅速に走るということは危険でありますし、他方、弁護士が、言葉は悪いですが、疲れさせて和解をさせるというようなことも危険であります。あえて過激なことを言いますと、このような感覚を持ちながら実務的にやっていかなければいけないと思っております。
○参考人(中野直樹君) うまく答えられるかどうか分かりませんが、やはり、何だかんだ言って、紛争は人間の中で起こったことでございます。大企業同士の間の紛争はともかくとして、中小企業のレベルであっても、そこの経営者や社員が、相手との間で何らかの人間的なトラブルをはらみながら紛争状態になるということだと思います。その人間の間に起こった紛争を解決していくためには、やはり人間の心の部分のところも一定の期間を置いて整理をし、今、藤井参考人からも言われました納得という、ここの機能を大事にしながら紛争解決をしていくということが大事だと思います。 だから、二年以内のできるだけ早い期間内に判決をどれだけ出しても、社会の紛争は解決しないということになれば、これは本末転倒となるわけでございますので、一番大事なのは、本当の解決を導くためにはどうしたらいいのかということについてよく考えて裁判手続を進めることではないかというふうに思っております。 以上です。
○角田義一君 最後に、藤井参考人にお尋ねしますけれども、この法律の一つの大きな命というか生命は、言うところの検証制度にあるということで、御経験もあるようでございますが、当局の答弁聞きますと、ピックアップしてやるんじゃなくて、全裁判について調査をするというか、検証すると。私は、これは大変なエネルギーを費やすことになるのであって、必ずしも私は、やり方によっては百害あって一利なしということになりはしないかと。裁判官ももちろん萎縮するだろうし、それから当事者も大変な検証のためのいろいろの準備をやるのにエネルギーを費やさなきゃならぬということで、これはよほど工夫をしないと、せっかく作った検証制度というものは、かえって裁判官の萎縮をさせたり、あるいは当事者に必要以上の負担をさせるというような危険があるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はいかがでございますか。
○参考人(藤井克已君) 今の問題点は非常に大きな問題点だと考えております。だからこそ、私どもとしては下からの検証、イメージ的に言えば、下からの検証というものを考えていかなければいけない。そして、全件を検証するというのは、これは統計学的に出るものに絞るべきでありまして、本当の迅速化を図るための検証というものはやはり生の事件をやらなきゃいけない。 そうしますと、全事件をやるというのは無理でありましょうから、私は意見で申し上げておりますが、ピックアップしてモデル庁あるいは実施庁というものを決めて、そこの弁護士、検察官、これに賛成する人たちをできるだけ集めて、そして生きている事件でそれぞれがメモを取っていく。後で考えるのは無理でありますから、メモを取る。これは大した作業ではありません、これは自分の手控えと同じでありますから。そして、それを出させて、それは当事者は見ません。我々も見ません。合同の委員会、別の委員会がそれを見て、総括的に検証する。それを全国から東京に集めて、更に公表していく。こういうシステムを作るべきではないかというのがあらあらの今のイメージでございます。つまり、上からの統制的な検証では、これは国民にとって何らプラスにもなりませんし、かつ現場の弁護士、検察官、それ以上に裁判官に対する萎縮的な効果が発生するというふうに考えております。
○角田義一君 中野先生はどうですか、検証。
○参考人(中野直樹君) 私は、今回ここに出るに当たって、今の福岡での実験を伺いまして、非常に優れた実践をされているなというふうに思いました。 最高裁が全国の裁判所のすべての事件を検証に、対象とする必要が本当にあるのかということ自身は、私自身も疑問に感じております。 以上です。
○角田義一君 終わります、時間ですから。
○荒木清寛君 まず、竹下参考人と藤井参考人にお尋ねをいたします。 迅速な裁判の実現に対しての国民の期待は大きいと、このように思います。他方で、先ほどから論じられておりますように、裁判の拙速ということになってはいけないということはもちろんでございます。 そこで、迅速化を図りつつ充実した手続をどう実施するのか、あるいはどのような充実した手続を実施することによって迅速化を実現をしたらいいのか、この点は正に検証してみて初めてこれは分かってくることかもしれませんけれども、しかしお二人の参考人に、今の時点でそのために、今後の制度改正といいますか、インフラ整備として行うべきことがあるという、そうしたお考えがあればお聞かせを願いたいと思います。
○参考人(竹下守夫君) 裁判の迅速化が必要であるとともに充実した審理に基づく適正な裁判が必要であるということについては、まず大方の異論はないというふうに私も委員と同じように考えているところでございます。しかしながら、時としてこの両者はそごを来す、あるいは矛盾をするという場合がございますので、どういう方法を取るべきかというのが御質問の趣旨かと思います。 一般的に申しますと、実は、先ほど申しましたように、私どもは新しい民事訴訟法を作るときの最も中心的な改革の目標をこの点に置いたわけでございます。そのやり方といたしましては、両方の当事者の言い分を十分に裁判所が聞いて、どこが一体事件について真に争いのある点か、つまり争点はどこにあるかということを裁判所と両当事者ないしは代理人とで十分突き詰める。その過程で、場合によっては当事者本人にも同席してもらって、本人からもその言い分を聞く。その上で、この事件の核心的な争点はどこかということにつき、裁判所と両当事者並びに両代理人共通の認識を持って、その上で集中的な証拠調べをやる。そういう方法を考えようではないかということで、法律の中にそのことを規定したわけでございます。 現在、施行されて五年目に入っておりますけれども、徐々にその考え方が浸透してきていると。訴訟の審理期間が短縮化してきているというのは、ほかの要素もあるかもしれませんけれども、私どもとしましては、その効果が現れてきているのではないかというふうに考えております。これは一般的な事件についてでございます。 特に、専門的な知見を要する事件というものが長期化するわけでございますが、そこで、今回の民事訴訟法の一部改正法では、先ほども申しましたように、そういった専門的知見を要する訴訟の充実・迅速化ということに意を用いたわけでございまして、その点では、先ほどどなたかからも御指摘がございましたように、専門委員制度というものを設ける、それによって早くから裁判所は専門家の補助を受けられるようなシステムを作る、それによって迅速と同時に充実、審理の充実化を図るということをやっておりますし、それから、先ほど佐々木委員から御質問のございました知財訴訟についての管轄の集中化というのも、そういう面を持っていることは先ほど申し上げたとおりでございます。 私どもといたしましては、そのように一般事件については一応、新民事訴訟法で設けられたような方策を推進していくということが必要であろうし、専門的な訴訟については、今回、民事訴訟法の一部改正法案で定められているような方策を取ることが充実と迅速の両要請を調和させて実現できるものではないかというふうに考えております。
○参考人(藤井克已君) 充実と迅速、非常にバランスの取り方が難しい問題でもあります。しかし、充実なくして裁判はあり得ないというのが私どもの基本的な見解であります。 ただ、充実を図りながら迅速を行うために、制度的改革が必要であります。例えば、民事裁判でいいますと、一定の強制力を持った文書提出命令の創設あるいは実効的な証拠収集手続の強化でございます。私ども、弁護士法で認められた弁護士法二十三条照会というのを行っておりますが、近時、その回答率が変動しております。こういう証拠収集の方法についても意を尽くして立法化していただければ、更に充実して迅速な裁判ができるのではないかと思います。 刑事裁判でいえば、先ほど申し上げた検察官の全面的な事前開示、手持ち証拠の事前開示あるいは捜査の可視化、任意性の争いを防ぐ方法、そういったものを追求していくべきではないかと思います。 最後に、一点述べておきますと、迅速を図りながら国民の納得を得る、このためには、国民の言い分をよく聞く裁判所、事務的に行う手続ではなくて、その裁判官がいかによく聞くかという、その姿勢そのものを持った裁判官を輩出していくべきだと思います。そのためには、私は、究極的に法曹一元に基づく裁判官任用制度というものに行き着かなければいけないというふうに思っております。 以上でございます。
○荒木清寛君 次に、中野参考人にお尋ねいたします。 参考人の御意見は、迅速化法案に限りまして反対であるという明確なお立場での陳述でございました。ただ、この迅速化法案の立法事実がないと最初に断言をされましたが、これは国民の常識とは異なるのではないでしょうか。 といいますのは、確かに二年を超える民事裁判は七・二%、あるいは刑事裁判でいうと〇・四%ということですから、ほとんどは二年以内に第一審は終わっているんでしょうけれども、問題は、社会的に注目されるような事件について時間が掛かるということであります。 現に、さきのリクルート事件の判決についても、論調を見ましても、どうしてこんなに時間が掛かるのかというのは、マスコミのみならず一般国民もそう思っていると思うんですね。ですから、確かに難しいから時間が掛かるにせよ、もう少し何とかならないのかというのが国民の素朴な思いではないかと思います。また、当事者からしましても、余りにも時間が掛かる裁判というのは権利の救済にならないわけでありまして、そういう意味で、拙速化になってはいけないということはよく分かりますが、もう少し裁判を迅速化しなければいけないというこの社会的要請そのものは存在するんではないでしょうか。
○参考人(中野直樹君) 私も裁判が迅速に行われるということ自体の価値は否定しているわけではございません。ただし、一律にすべての刑事・民事事件についてこのような形で網をかぶせる法案を作るということについては、その必要性がないのではないかと申し上げているわけでございます。 先ほど、リクルートの事件のお話がございましたが、あの事件は、伺うところによりますと、百通を超える調書の信用性を争うために非常に長い年月を要したということがその原因となっていることは、どうも明らかなようでございます。その調書の問題は、結局、取調べの可視化の問題につながるわけでございまして、そのように、個々に原因が明らかなものについては個別な形で対処をしていくということで、より迅速な裁判ということを実現していくことになるのではなかろうか、しかもそれで足りるのではないかというふうに考えている次第でございます。 以上です。
○荒木清寛君 最後に、竹下参考人に人事訴訟法関係につきましてお尋ねをいたします。 今回の改正によりまして、人事訴訟における公開停止の規定が設けられます。このことによって、他の民事訴訟におきましても、民事訴訟法の改正というような形で本法案第二十二条と同様の規定が入ることになるのではないかという懸念をする声もあります。 裁判の公開というのはもちろん憲法上の要請でありまして、もちろんそういう一定の時代的背景の下にそうした規定が設けられたということはあるにせよ、やはり民事訴訟一般についてそういう公開停止という規定を入れていくことにつきましては慎重であるべきだと思いますが、参考人はどうお考えですか。
○参考人(竹下守夫君) 御指摘のように、人事訴訟法案の第二十二条は、人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人あるいは証人の尋問について一定の要件の下で公開停止を定めております。しかし、これは憲法の認める範囲で公開停止の要件、手続を定めたものでございます。 御承知のように、人の身分関係は個人の社会生活の基礎を成すものでございまして、社会構成員全体に一律に定める必要がございます。そのために、やや専門的になりますが、人事訴訟事件の判決の効力というのは、当事者だけではなくて、広く一般第三者にも及ぶということにされているわけでございます。人事訴訟は、人の身分関係を形成又は確認をする効果を有しますので、その裁判が適正に行われて、人の身分関係が実態的真実に合致して定められるということが、私どもは公の秩序の要請するところであるというふうに考えたわけでございます。 そこで、法案第二十二条では、このような人事訴訟の特質を考慮いたしまして、適正な裁判を行うに必要な場合に限り、一々読み上げることは省略させていただきたいと思いますが、大変厳格な要件の下で公開の停止を定めたわけでございます。 したがって、直ちにこれから、ほかの事件についても公開の停止が安易に行われるというようなことがあっては、この規定の趣旨にも反することになるわけでございます。もっとも、現在の我が国の裁判所に現れます事件は非常に多様でございますから、他の類型の事件で、憲法の認める枠内で公開停止を認める規定を設ける必要があるかどうかということは問題になり得るわけでございますけれども、それは、その事件の、その事件類型の性質に応じて個別に検討すべきことであるというふうに考えております。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 今日は三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。 最初に、竹下参考人にお伺いをいたします。 この迅速化法案は、推進本部の検討会も経ずに出された非常に異例な法案提出になりました。先ほども言われましたように、審議会意見書が、全体として裁判の迅速、充実ということを言っておりますし、具体的な方策も随分提起をしております。先生自身も、こうした課題が成果を現すには一定の時間を要すると先ほど陳述もされました。 そういたしますと、むしろそうした審議会意見書が提起をした課題の具体化、実践とその成果をまず求めるというのが順序ではないかと思いまして、検討会も経ずにこういう法案が出てきたという経緯は非常に私どもは奇異に感じておるんですけれども、その点について御意見をお願いいたします。
○参考人(竹下守夫君) 確かに、司法制度改革審議会の過程では、私ども、一般事件の充実・迅速化を図る方策といたしましては、計画審理というものを導入するということと、早期の審理計画の策定を可能にするような訴え提起前の証拠収集手段の拡充ということを提案いたしました。しかし、それは、また意見書の中にございますように、現在、長期化していると考えられている訴訟をおおむね半分の期間で済ませることを目標として提案をするということであったわけでございます。 当時、その長期化している訴訟といいますと、代表的なものは医療関係訴訟でございましたけれども、たしか記憶では、当時、平成十一年当時でございますけれども、概数で三十四か月ぐらい掛かっていたというふうに考えております。したがって、その半分といいますと二年弱ということになるわけで、一応それを目標にして、先ほど申しましたような具体的な充実・迅速化の方策を提案したわけでございます。 それからまた、刑事裁判につきましては、新しい準備手続を設ける、あるいは争点整理をする、あるいは証拠開示をルール化するというような方策を提案しており、審理期間については追って検討するということになっていたわけでございます。 したがいまして、確かに、司法制度改革審議会の意見書それ自体の中では、今回の迅速化法案のように、二年以内を目標としてというような数値目標は示されていなかったわけでございますけれども、決してそれは司法制度改革審議会の意図した充実・迅速化に矛盾するというものではございません。したがいまして、他方では国民一般の期待としてやはり裁判の迅速・充実化ということがある以上、推進本部の方でこのような法案をお出しになるということについては、私として十分理解をし、賛成をしたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 次に、中野参考人にお伺いをいたします。 自らのいろんな裁判の具体例も出していただきまして大変参考になったわけでありますが、その中で、やはり長期化している事件は国相手の裁判が少なくないということがございました。そして、その原因は、やはり国の応訴態度に大変問題があるということも言われておりました。 具体的にどういうようなことになっているのか、御自身の体験などで具体例がありましたら、是非お願いをいたしたいと思います。
○参考人(中野直樹君) 参議院議員でもございます緒方靖夫さんの御自宅の電話が盗聴された事件の裁判を私自身が担当することがありました。それは資料の中に書いて、入れてあります。 この事件の場合は、最初の訴状に、こちらの訴状に対する認否の、国側の認否の段階で、個人被告、個人警察官が神奈川県警の警備部公安第一課に所属するかどうかということについての認否をしなかったのでございます。認めるとも認めないとも、認否をしないという態度を取ったわけであります。 それから、この件は刑事手続としては不起訴処分になったわけでございますが、その不起訴処分をするに当たって神奈川県警から東京地検に、最高検から法務省に出された文書があります。二つの文書があります。その文書自体は大変重要な文書だというふうに私たちは考えまして、国側にその文書を提出するように求めましたが、任意に提出してくれない。その関係で文書提出命令を掛けて、その手続で最高裁まで行ってこなければならなかったということがありました。その手続に約一年を要しました。そして、結果として認められなかったんですが、記録が高裁に移ったり、最高裁に移ったりするために一審の手続自体がその間中断をしてしまうということを強いられました。 さらに、これは、まあ国というか、ここで言う警察ということになりますけれども、私たち原告側に立証責任がありますので、私たちとしてはどうしても犯人とされている警察官に裁判に出頭してもらう、ところが警察官は裁判所の呼び出しに一度ならず二度ならず出頭しないという態度を続けたと、そのことで半年以上裁判が空転してしまったという、こういうことがございました。 結局、そのことが原告側の立証のところで影響し、立証責任が尽くされていないという形で効果が表れるとするならば、まあ私たちにしては大変その辺りは、そういうことは許容できないことなので、粘り強く間接事実、間接証拠を積み上げて立証をしていくということを強いられたわけです。そのために五年という年月を要してしまったということがありました。 以上です。
○井上哲士君 次に、藤井参考人にお伺いをいたします。 検証の方式としての福岡方式というのを私もいろいろ勉強させていただきまして、生の事件を題材としつつ、裁判の独立に影響を及ぼさないように判決後にいろんな検証もしていく、大変工夫をされた方式かと思います。 先ほどの陳述の中で、結果としては証人調べも充実をしたというようなことも言われておりますが、その辺の具体的な経過と中身、そして一方で、参加をされた弁護士や、また直接この福岡方式に参加をされていないような方々の中には、この方式で結果としては少し拙速のようなことが起きたとか、そんなお声はなかったんでしょうか。その辺の全体の評価についてもう少し詳しくお伺いいたしたいと思います。
○参考人(藤井克已君) この福岡方式というのは、先ほど概略御説明しましたが、平成二年にこういう、進行を早めるための方式として、地元会、弁護士会と裁判所が合意したものであります。しかし、それが具体的にどのような効果を生じているのかというのが、何となく分かるんだけれども数値的に分からないという、そういう状況が続いたわけであります。 それで、じゃ検証を具体的にしようということになって、平成五年になって検証することになったということでありますから、まずその検証の目的が限定されていることは確かであろうと思います。 その結果、既に平成二年から五年まで福岡方式を行っていたことから、結果的に、審理の充実を行っていった方が結果的には当事者の納得は得られて早く終わるという、そういう実体験がかなり弁護士会と裁判所の中に醸成されていたんだと思います。いたずらに証人調べを拒否して空転させるよりも、まずは聞いてやるという、まずは言わせるという、この基本的な姿勢ですね、これが検証によって明らかにプラスに働いているということが言えたんだというふうに思っております。 それから、拙速という面では、いわゆる最初に主張を限定しまして、こういう主張でやっていくんだということでやり始めたところ、証人調べやっていたら変わってきてしまったという、時々そういう例がございます。その場合に、もう一度証人調べをやるのかというようなことが出てきまして、この点では少しマイナス面があったことも否めないと思います。つまり、現在の民訴法改正で言われる計画審理という、主張を先に出していくということがすべての事件で可能であるかどうか、そこの点が問題になろうかと思っています。 おおむね、確かに原被告、弁護士それぞれが合意した中で行っている検証でありますから、何も上からの統制で行っておりませんので、目的として充実して迅速にという、こういう共通意識を持った検証をやっていった。だから、検証そのものは更に迅速にプラスしていったというふうに思っております。
○井上哲士君 もう一度、中野参考人に、検証と裁判官の独立の問題についてお伺いをいたします。 この間の審議の中で、人事権を持つ最高裁が検証することによって裁判官の独立が侵されるのではないか、これが人事に使われるのではないかということを繰り返しただしましても、最高裁は、そういうことはございませんと、こう答弁をするだけなわけですが、現実のいろんな裁判の現場で、そうした言わば官僚手法といいましょうか、人事権などを持つことによるそういう裁判官の萎縮のようなことを実感をされるようなことがありましたら、是非お願いをしたいと思います。
○参考人(中野直樹君) ちょっと、時間を掛ければ思い出すかもしれませんけれども、申し訳ございませんが、ここで分かりやすくちょっと御説明できるような経験は、申し訳ございませんが、ちょっと披露できませんね。申し訳ございません。
○井上哲士君 もう一点、藤井参考人にお伺いをいたしますが、先ほどの福岡方式でありますけれども、主に民事でやられてきたかと思います。今回の全体の検証は刑事事件も含むわけでありますけれども、ああいう方式というのは刑事事件についてもいろんな応用、具体化ができるものなのか、もしその場合何か工夫が必要なのか、もしお考えがあったらお願いいたします。
○参考人(藤井克已君) まず、刑事事件の検証については、日弁連の内部でもまだ検討を始めたばかりですので、公式的な意見にはなりません。そこで、私個人の意見としてお聞きいただければと思います。 刑事事件の検証は非常に困難性を伴うものであると思います。特に、検察プラス裁判所対弁護人という、こういう図式になってくる可能性があります。また、検証すべき対象は否認事件を基本的に行っていかなければ意味ある検証はできないというふうに思っております。そうなりますと、この時々の裁判の進行そのものが、非常にドラマチックに言えば権力対反権力のシビアな闘いの場面を続けていくわけでありますから、両当事者が合意するような場面というのは非常に少ない。その中でルール化し迅速化していくというのはかなり際どい話になってこようかと思います。 それを更に客観的に検証する方法がどこにあるか。これは、やはり私の考えているところは、それぞれがその時々に思いのたけをメモしていくことしかありません。そして、検察から見た進行、裁判所から見た進行、そして弁護士から見た進行、それぞれが思いのたけをきちんとメモ化して、それを第三者が検証する、外に漏らさずそれを検討する、そのことしか検証の方法はないだろうと思います。 後で裁判官がメモを取ったことを前提に幾ら検証しても、それは被告人の立場からの検証でもありませんし、被告人の立場からの事項のリストアップでもありません。弁護人側からの闘いの歴史でもありません。そういう意味では、その刑事事件の検証というのは、民事以上に、裁判所だけが行う検証は非常に不十分なものになっていくというふうに思っております。
○井上哲士君 終わります。
○平野貞夫君 最初にお断りしておきますが、私、法曹界のことについては全くの素人で、ちょっと乱暴な質問をすると思いますので、お許しいただきたいと思います。 それから、私の所属しています政党は自由党でございまして、私、自由主義者でございますので、そういう前提でひとつお願いしたいと思いますが、私、はっきり言って、この裁判迅速法の立法動機というのがいま一つ理解できない。竹下参考人は、司法制度改革の趣旨に合うものだ、こういうお話でございましたが、素人が考えますと、裁判が充実かつ迅速に行われることは当たり前のことでありまして、こういうことを特に迅速面についてわざわざ法律を作らにゃいかぬということは、これ裁判官だけじゃなくて、法曹に関係する三者の世界がどうなっているんだろうかという、私ら外からはそう見えるわけなんです。 しっかりとした常識としっかりとした見識を持っておれば、本来、迅速化の問題なんかはその時代に本人個人個人が合わせていくべきであって、何でわざわざ迅速化の制度を作らなきゃならなくなったかということについて、竹下参考人、藤井参考人、中野参考人、どのようにお考えか教えていただけませんか。
○参考人(竹下守夫君) 今、なぜ殊更にこのような裁判迅速化法というような法律案を問題としなければいけないのか、提出がなぜ必要なのかという御指摘だと思います。 確かに、裁判は適正迅速に行われなければならないというのは、これは当然のことでございます。しかしながら、残念ながら、いろいろな原因に基づくと思いますけれども、現実的にはそのように行われておりません。先ほどからも数値が出ておりますように、二年を超える事件というものが決して無視していいものではないほどに出ております。それからまた、一般的な世論調査、これは司法制度改革の前にいろいろ行われましたけれども、そこでも国民が訴訟の利用を、この場合には主として民事訴訟でございますが、避ける最大の理由は、訴訟には時間と金が掛かるということでございます。やはり国民から見ますと、専門家から見るとこのぐらいは仕方がない、現在はかなり迅速化しているではないか、こう考えましても、一般の国民にはそのように受け取られていない面があるというところは、これは事実として認めないといけないであろうというふうに思います。 長期化する原因は、これからこの法案が法律になり、検証が行われることによって明らかになってくると思いますけれども、これまでも幾つか指摘されてきましたことは、直接的に見れば訴訟関係者あるいは両当事者の利害の対立というものが訴訟の場でございますので、一方の当事者は早く裁判を終えたいと思っても、他方は必ずしもそうではないというので、いわゆる引き延ばし等のことが行われるということもございますし、それからまた大きくとらえれば、現在の司法制度そのものの仕組みあるいは人的・物的基盤というものが必ずしも十分ではない、そのために訴訟の迅速化が損なわれているという面がございます。 そこで、今回の法案はそういった訴訟が長期化する原因はどこにあるのかということを検証によって明らかにし、これを国民の期待に沿えるようなものに改めていこうということでございますので、私としましては、先ほど申し上げたように、こういう法案の必要性を認めるということでございます。
○参考人(藤井克已君) 今、御質問があったとおり、日本弁護士連合会としても、当初この迅速化法案については多大な疑問を持っておりました。立法事実としてそのようなことがあるのかないのか、このようなことを非常に中心的にかなり議論したところであります。 ただ、私ども弁護士会としては、やはり迅速な裁判というのは、これは国民が求めているものでありますし、それを法律化しようがしまいが、先生が言われるとおり、実践しなければいけないところであります。したがって、この迅速化が単なる拙速にならないための充実した方策のためにどうしたらいいのかということをまず考えて行動していこう、これが日本弁護士連合会の基本的なスタンスだと思います。 それから、実は別の面でありますけれども、庶民の方は、訴えるというのは大変なことでありますから、訴えるまでの時間が非常に長いのであります。訴えるまでに一年、二年費やすわけです。そして、それから二年以内の裁判といっても、紛争が発生して四年掛かるわけであります。ということは、庶民から見れば非常に長い時間掛かっているという、誤解と言ったらなんですけれども、体感的にはそのように感じることが多かろうと思います。 そういう意味では、この迅速化とともに、司法がどこにいてもある、すぐに相談できる、そういう体制、日本弁護士連合会が全国的に展開している法律相談センターあるいは公設事務所、さらには国の援助を受ける法律扶助、そういったすぐ司法の場に駆け込むことができるという、そういう体制を作っていけば、更に国民の目から見たら司法判断、司法の役割が目に見えてくるのではないかというふうに思っております。
○参考人(中野直樹君) 私は、元々この法律は必要がないという立場でございますので、お答えはそういうことになりますが、この法律を作らなくても、例えば冒頭の陳述で申し上げました東京地裁八王子支部の人的な状況がどうであるか、物的な状況がどうであるか、調査できるわけであります。一人の裁判官が二百件から三百件の事件を抱えて、どのようにして二年以内のできるだけ早い期間内に全部の事件を片付けていくのかということは、およそ不可能なわけでありますので、まだこの法律を作らなくても、そういう人的、物的なところについての具体的な方策を先行して手だてを打っていただければなと思います。 以上です。
○平野貞夫君 藤井参考人がおっしゃったように、一般の人の裁判になじまない、あるいはそれを上手になじませる、それは言わば裁判というものの環境の整備が必要だと思うんです。それが全体的に迅速化させると。わざわざこの迅速、迅速という法律作らなくともいいような気がしますが。 私なんかは常識的に考えて、一般の人とは違って、裁判を長引かせているのはお金持ちなんですよ。お金持ちが、民事でも刑事でも有名な裁判官、位の高い人を弁護士にしたり、検察庁のかなりな幹部な人を一杯弁護士にして、いろいろ人的関係を使って、それからお金も使って、裁判をずっと長引かせているのが僕は実態じゃないかと思うんですよ。これは何ぼ制度を変えても、迅速、迅速といっても直らない、要するに司法試験受けて法曹人になる人間の哲学、思想、常識の問題だと思うんですよ。そういうのが問題で法律を作らにゃいかぬということになると、よほど法曹界は問題が多いかなという気がしますが、余り乱暴なことを言うとなんですから。 そこで、藤井参考人にお尋ねしますが、これ、検証の問題ですが、これ、憲法の七十六条の三項ですか、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と。良心に従い独立してその職権を行うということに対する干渉に下手したらなるんじゃないですか、検証は。
○参考人(藤井克已君) 私は憲法学者じゃないので憲法理論を展開することはできませんが、その憲法の趣旨は、いかなる勢力、いかなる権力、いかなるものにもとらわれず、法と正義に従って判決をせよということであろうかと思います。 しかし、その役割を担う裁判官、これもやはり国民の一人であります。国民から外れた、あるいは独自の世界の中で判決を下すことは許されるものではないと思っております。 そのようなことで、自己研さん、あるいは自らのことを振り向きながら検証を行い、どうであったかということを他の人々と議論していくことに、何ら、憲法が考えている民主主義の中での許容、何ら触れるものではないというふうに思っております。ただ、これが生きている事件について、途中途中でそのような圧力を掛かることは厳に戒めなければいけません。これは、裁判官の独立、裁判の独立を侵すことになろうかと思います。 したがって、福岡方式でもその点は十分考慮して、確定後あるいは和解後、つまり裁判手続がすべて終了した後、その検証を行う。しかも、その検証は、裁判官、担当した裁判官ではない全く別の人が行って、それは何も担当した裁判官に対してサジェスチョンをするとか指示をするとか、そういうこともない、こういう二重の意味の安全性を確保しながら行っているところであります。
○平野貞夫君 分かりました。 時間はありますけれども、ちょっと私、予算の理事懇が始まりますので、退席させていただきます。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。 今日はありがとうございます。 私も、この裁判の迅速化に関する法律案の立法趣旨がやっぱりよく分からない、妥当なのだろうかというふうに思っています。 ドミノピザ、宅配ピザが三十分以内に届けなければ代金はいただきませんというのをやっていました。アメリカでオートバイが非常に三十分以内に届けるために無理をして人身事故が起きて、結局、多額な損害賠償請求が会社に請求されたので、その有名なる宅配ピザ、私は大好きですが、結局、三十分以内に届けなければお金を払いますというのをやめました。だから、それ、やはりでも三十分以内に届けなければと思えば、あと三分、あと四分、あと二分と、こうなるわけです。 そうしますと、この二年という期限の付いた迅速化に関する法律案ができれば、現場の裁判官は、あと三か月で二年だというふうにやはり思ってしまうんじゃないか。つまり、スローガンとして、というか、今、だからドミノピザは、電話をすると、できるだけ早くお届けしますというふうに言います。それでいいと思うんですね。裁判も迅速な裁判は望ましい。裁判は迅速にするよう体制整備も含めて努力します、それでいいと思います。 ところが、三十分以内とか二年とか変に時間を区切ってしまうために、現場はもうそれであっぷあっぷ、あと二分という世界、あと二か月という世界で、とんでもないことが現場にしわ寄せが起きる、交通事故ならぬ、本当にスピード違反、スピード事故が現場の裁判の中で起きるんじゃないかということを大変危惧を持っています。 ところで、藤井裁判官がおっしゃる、裁判官じゃない、ごめんなさい、だんだん何か弁護士みたいになっちゃって、藤井参考人のおっしゃることは本当に全部分かるし、実はそのとおりだと思うのですが、先ほど佐々木委員の方から裁判員制度とこの迅速化のことがありました。先ほど捜査の可視化と証拠開示のことをおっしゃって、そのとおりだと思うんですが、私は、だから順番が違うだろうと。少なくとも捜査の可視化と証拠開示をやり、制度を整えた上での迅速あるいは裁判員制度の導入なら分かるんですが、順番が、出てくる法律の順番が違うだろうと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
○参考人(藤井克已君) 司法改革について日弁連は、政府が決めました司法改革推進計画に基づいて三か年という期限を切られた中で私ども最大限の努力をしているつもりでございます。そうなりますと、今、福島委員が言われたような、どれが先か後かということを議論することも必要かも分かりませんけれども、やはり出てきた法案、法案そのものがどのように展開され、どのように有意義になっていくかという、そういう現場的な発想で私どもは取り組ませていただいているというのが実情かと思います。法案の後先を議論するのではなく、その法案の内容が国民にとって使いやすいものになるか、司法制度の確立をより強くしていくものになるか、そういう点を検討させていただいているというのが実情でございます。 なお、刑事裁判については、これは検察官の事前開示、それから可視化といったものを入れなければとても裁判員制度による裁判はできないというのは、もうこれは自明の理でございます。そういう意味で、裁判員制度が導入をされたときには刑事裁判手続は抜本的に改正されていなければいけない、これは原理論的にも言えるかと思います。
○福島瑞穂君 しかし、例えば立法者としても、裁判員制度の、あっ、ごめんなさい、迅速化法案がもし通る、裁判員制度が導入される、しかし捜査の可視化と証拠開示が、全面的証拠開示が出てこないとなると、やはりこれは非常に困るというふうに思うのですが、その点について藤井参考人、いかがでしょうか。
○参考人(藤井克已君) それは、私ども、会内として今後検討していきます。そして、できるだけ理想的な裁判員制度ができるように努力をしていきたいし、また各方面にお訴えをしていきたいと思っております。
○福島瑞穂君 裁判員制度のこともそのとおりなんですが、証拠開示がない中での二年間という迅速化法案、捜査の可視化がない段階での二年というのが先に進むことによって現場は、さっきのドミノピザの三十分以内というよりも、もっとひどい状態が起きるのではないか。この点についてはいかがでしょうか。
○参考人(藤井克已君) それであるからこそ私の私見を申し上げたわけですが、この迅速化法案の最も重要な問題は検証にあると思います。つまり、裁判官のみが、それ行けそれ行け、早くしろという検証では困るわけであります。つまり、なぜそのスピードが出なかったのか、なぜ弁護人が闘ったのか、そういうことがきちんと後で検証で出てくるような検証、これをかち取らなければ、国民にとって本当の検証にはならないというふうに思うわけであります。そういう検証ができて、上で、どのような迅速化の方法があるのかというのが出てくるんだろうというふうに思っております。
○福島瑞穂君 この委員会で、平成十五年一月三十一日、最高裁判所事務総局刑事局長が出した各高等裁判所、地方裁判所あての「係属二年を超える刑事事件の調査について」という通達が出ました。個別ケースで二年を超えた件について、なぜなのかというチェックをさせるという細かい中身です、例えば裁判官忌避申立ての処理に時間を要したかどうかとか。 そうしますと、先ほど藤井参考人がおっしゃったとおり、マイナスの評価を個々的な事件についてやると、本当に夏休みの宿題が遅れたのはなぜかと裁判官、弁護人、検察官を責め立てるということになりかねませんので、こういうやり方は最悪の検証のやり方だろうというふうに思っているのですが、もうちょっと、検証はこうあるべきだということについてお聞かせください。
○参考人(藤井克已君) 私の意見の中にありましたとおり、最高裁判所が今考えておられる検証方法については反対であります。 実は、私の意見陳述の原稿を書いたときに反対だと書いたんですが、その後、今のアンケートを見まして愕然といたしました。つまり、マイナス評価で人間を縛るというのは最も私は忌み嫌うものであります。そのようなことで制度が良くなるはずがありません。 そうなりますと、やはり、これは私見でありますけれども、その時々のことをきちんと記録化していって、そして第三者的な機関においてそれを見て、ふたを開けて検証して、ああ、裁判官も、これは言い過ぎだったんだな、やり過ぎだな、あるいは検察官も、余りにもこれは証拠開示が遅過ぎたから弁護人が弁護するのはやむを得ないじゃないか、できなかったのはやむを得ないじゃないか、そういうことをきちんと明らかにするような検証をしなければいけないと思っております。
○福島瑞穂君 民事訴訟法等の一部改正案の中に審理の計画を定めることがあります。これは、確かに、きちっとされれば迅速化への効果、妥当性はあると思うのですが、計画はあくまでも計画なので、実際はずれてくる。あるいは、提訴をするときに計画とは違う、例えば原告が言っていなかったことが出てくるとか、それはもうかなりあると思うのですが、この審理の計画について、中野参考人、何か御意見あれば教えてください。
○参考人(中野直樹君) 私は、この裁判迅速化法案は立法事実がないと考えると同時に、この法案ができることによって、当事者の訴訟活動に縛りが掛かる具体的な方策が今後作られてくるのではなかろうかということを危惧するわけであります。 それが、今一つの、民事訴訟における計画審理、その計画審理のときに出さなかった攻撃防御方法を後になって出すことを封じていく仕組み。それから、今検討されております裁判員制度導入を前提とした争点明示手続、当事者に争点明示義務を課して、後にそれ以外の争点を出せないように弁護人の方に縛りを掛ける、こういうことに連なっていくことを大変危惧するわけでございます。 私が担当した緒方靖夫さんの事件でも、盗聴器を作っていた証人が現れたのは運動が広まった四年をたった後でございました。当初の段階では分からなかった人でございます。こういう重要な証人が後になって証人申請の対象にできないというような形での縛りが掛けられるおそれということを私たちは感じております。 以上です。
○福島瑞穂君 先ほど藤井参考人は、民事訴訟法等の一部改正案の中での管轄の問題をおっしゃいました。確かに、東京地裁、大阪地裁というふうに限りますと、飛行機代だけでもかなりお金が掛かってしまうんじゃないか。将来はこの点については検討すべき課題になっていくだろうと思いますが、この点についてもうちょっとお話しください。
○参考人(藤井克已君) 専門部を作る、あるいはプロフェッションを作るということは非常に重要なことであります。そこまで否定しているわけではありません。 ただ、国民は、地元における裁判というのはやはり基本ではないか。つまり、国の在り方としての基本は、すべての国土において法治主義が貫徹されることであります。お江戸に出てきて代官様にお願いするというのは、そういうシステムでは困るので、すべての地域において裁判ができる。そのためには、それぞれが利用する国民の側から、どこの裁判所に訴えるかという選択権を与えるのも一つの方法ではないかと思います。 そういう意味で、競合管轄化と申し上げておりますのは、利用する側が訴えることができる、その上で裁判所が移送すると考えれば別でありますけれども、そのようなシステムをまず作るべきではないかと思っているところであります。
○福島瑞穂君 人事訴訟法案で、審理の公開、非公開の問題に関して、日弁連は、公開の原則を定めた憲法の原則との関係ではどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
○参考人(藤井克已君) 現場で人訴、特にドメスティック・バイオレンス絡みの離婚その他をやっている弁護士の感覚としては、当事者を会わせない、できたら裁判官だけに聞いていただきたい、そういう気持ちを多く持つ、そのような事件もございます。 そういうことで、今回の改正法についてはぎりぎり、裁判の公開原則と憲法上の理念からいってぎりぎり許されるところではないか。やはり、これが更に一般的になるということは、これは厳に慎まなければいけないけれども、現に被害を受けている、離婚したがっている、そういう女性、子供、そういったものを見たときに、今回の改正は許されるのではないかというふうに思っております。
○福島瑞穂君 裁判迅速化法案にちょっと戻るのですが、こういう法律ができて良くなる面もあるかもしれませんが、みんなは、二年以内となっていますと、何か遅れた事件、事情があって、事案が複雑で、あるいは訴因がたくさんあって遅れた刑事事件などをメディアがたたくとかというような、そういうことも非常に、それだけの理由でたたくと。あるいは、裁判官に対する、ずっと今日も出ておりますが、人事考課の面でやはり反映してしまうんじゃないか。その点について藤井参考人はいかがお考えでしょうか。
○参考人(藤井克已君) マスコミの観点につきましては、私は、いろんな取り上げ方、いろんな報道の仕方がある、それが民主的な社会であると思いますので、我々法曹としては、そのような報道がなされたときも毅然としてきちんと我々の対応をすべきだというふうに個人的には思っております。 なお、人事考課に使われることについては、これはやめなければいけない。そのためにこそ、検証は上からの検証であってはならず、下からの、地域の、現場の弁護士、裁判官、検察官からの検証方法を導入しなければいけない。その中で実態が明らかになれば、マスコミもあるいは国民も、あるいはほかの人も理解していただけるのではないかというふうに思っております。
○福島瑞穂君 ちょっとまだ三法案が、動いていって申し訳ないんですが、人事訴訟法案に関して、今日、藤井参考人の方から、人員の充実、これは迅速化法案の中でも出てきましたが、それについて、例えば家裁の調査官の人的充実の必要性や様々な点がこれからもっと議論されるだろうと。基本的に家裁で離婚事件も全部やることになるわけですから、その点について教えてください。
○参考人(藤井克已君) 家庭裁判所は、従前、調停基本でありまして、事実調査能力についても、これは調査官が一方的に行っていたところがあります。しかし、調査官そのものの体制が、在野である弁護士から見ますと余りにも貧弱であったように思います。 そういう意味で、家庭の問題を取り上げる家庭裁判所は体制的に現在非常に不備でありますし、地方の家庭裁判所はもう職員が少な過ぎるというふうに思っております。裁判官の数ももちろん少ないんですが、調査官、それから事務官、書記官の数が少ない。その中で、対審構造である人事訴訟の対審構造が入ってきますので、これは大変な事態になるのではないかというふうに思っております。 そういうことで、裁判官のみならず、むしろ書記官、調査官といった人たちの増員をできるだけ早く実現していただきたいと思っています。
○福島瑞穂君 今、裁判官の増員についておっしゃいましたけれども、裁判迅速化法案を実現する上でも裁判官の増員は、これは不可欠であろうと。日弁連としては、裁判官の増員についてどうお考えかを簡単に教えてください。
○参考人(藤井克已君) 今日、手持ち資料を持ってきておりませんが、裁判官マップというのを私ども作りましてお配りしているところでございます。意外と裁判官がいない庁がある。しかも、手持ち事件は、先ほど意見が出ましたとおり、一人二百件とか、甚だしいところは三百件近くも持っておるというふうに聞こえるところがございます。これではまともな裁判はできないわけでありますから、せめて一人一人の裁判官が適正な判断ができる手持ち件数に変えていただきたい。 また、地方においては、適正な手持ち件数より下だから減らしていいんだ、裁判官は要らないんだという話があります。しかし、国民から見れば、自らの事件は一件であります。その自らの事件をその地域の裁判所で裁いてもらわなければいけない。その裁判官こそ常駐すべきだというふうに思っております。
○福島瑞穂君 ありがとうございました。 以上です。
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。 午後零時十分休憩 ─────・───── 午後一時三十分開会
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案の審査のため、本日の委員会に内閣官房内閣参事官久貝卓君、司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、人事官小澤治文君、法務大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、経済産業大臣官房審議官岩田悟志君及び特許庁長官太田信一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 裁判の迅速化に関する法律案、民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案を一括して議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○鈴木寛君 民主党・新緑風会の鈴木寛でございます。私は、少し趣向を変えまして、民事訴訟法の方から御議論をさせていただきたいというふうに思っております。 今回の民事訴訟法の改正案でございますが、平成八年に大きな改正がなされまして、それに引き続いて今回の改正案が提出されたというふうに理解をいたしております。 今回の改正案の特徴の一つといたしまして、このいわゆる知的財産関係の訴訟についての改正というものがその重要な改正の内容の一つかというふうに理解をいたしているわけでございますが、午前中の参考人の御質疑の中でも多少御議論になりましたが、今回、特許権等に関する訴えの管轄についての変更といいますか改正が行われているわけでございます。その点について、もう一度、今回の民訴法改正の知的財産関係の改正の内容とその理由について少し詳細にお教えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘の特許権等のいわゆる知的財産権でございますが、これは今社会の中で非常に重要性が増しております。企業活動にとっても、特許権等をめぐる紛争、これを迅速かつ的確に解決するということが非常に重要性を増してきている、そういうことから、今回、民事訴訟法の改正に当たりまして、特許権等についての特別の扱いをするということにいたしたわけでございます。 内容といたしましては、まず特許権あるいは実用新案権をめぐる訴訟につきまして、専門的な処理体制の整っております東京地裁及び大阪地裁に専属管轄化するということが第一点でございます。 この理由といたしましては、特許権あるいは実用新案権というのは非常に技術的な専門性の高い分野でございます。これをめぐる紛争を的確に解決するためには、どうしても裁判所としてもそういったことに詳しい裁判官あるいは技術的な知識を持っている調査官を配置した専門部で処理をする必要があるだろうと。現在のところ、そういう専門部の体制が整っておりますのは、地裁の中ではやはり東京地裁の特許部、それから大阪地裁の特許部というところが最も充実した体制が整えられておりますので、やはりその特許をめぐる紛争についてはそういった充実した審理のできるところで迅速的確に解決を図るということが全体的な利益につながるだろうと、こういうことから専属管轄化をいたしたわけでございます。
○鈴木寛君 私も、この知的財産、とりわけ特許などに関する訴訟が、非常に専門家も多くてそしてそういう処理体制も整っている大阪ないし東京に集約をされていくという方向性については、私はいいことだというふうには思っているんですけれども、私が是非少し議論をさせていただきたいと思っておりますのが、そのことが、専属管轄になるというところがどう接合していくのかというところについて御議論をさせていただきたいと思っているんです。 それで、私の理解では、平成八年の改正の民事訴訟法の第六条で、正に大阪と東京に競合管轄ができるようなことになったことによって、いわゆる特許権についての案件の件数というのは八割から九割が正に集中して取り扱われるようになって、そしてそこに集中的に、非常にその知見と洞察を有した方々及び、もちろん調査官の方も含めて、そうした体制で行われている、これ非常に平成八年改正でいい方向に一歩進んだというふうに理解をしているわけであります。 それで、加えまして、私がもう一つこの議論の中で是非重要だと思っておりますのでそのことを指摘させていただきたいのは、知的財産の訴訟といいますか、知的財産関係に関する事件といいますのは必ずしも特許権をめぐるものだけではない。もちろん、今回の法律でも特許実用新案、それから回路配置利用権、それからプログラム著作権ということを特許権等ということで集約をしていただいているわけでありますけれども、実は、この特許権等のみならず、これは六条の二の方できちっと理解をしていただいてそういうふうに書いていただいているので問題意識はそんなに変わっていないと思いますが、正にその六条の二の方で提起をしていただいている意匠権とか商標とか、あるいはプログラム以外の著作権とか、それから私は、その知的財産訴訟といった場合には、そういう物権的な構成による法律関係の処理に加えて、やはり債権的構成ということも広くとらえた、いわゆる広義の意味の知的財産というふうに一括してとらえることが私は望ましいというふうに思っておりまして、そういう意味で六条の二が正に平成八年の特許権と同じように競合管轄化するという手当てをされたということは非常にいいことだというふうに評価をしているわけでありますが、六条の本体の方ですね、なぜあえて競合管轄ではなくて更にもう一歩進んで専属管轄にしたのかなというところが私の疑問点でございまして、その点について更にお答えをいただければと思います。
○政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、現行民事訴訟法におきましては、特許権等の訴訟につきまして競合管轄を認めております。そして、実際の数としても東京、大阪に大体八五%近くの事件が集中しております。 ただ、残る一五%についてはそれ以外のところで裁判をしているわけでございますが、これは、特許裁判というのは非常に特殊性が高くて、やはりそういう特許に経験のない裁判官がこれを担当する、そして身近に調査官もいないということになりますと負担が非常に重い、かつ時間も掛かってしまう。そして、これはもちろん適正な結論を得るために非常に努力をされるとは思いますが、やはりなかなか難しい問題がある。 これは実際に特許事件に関与してみますと非常によく分かる。実は私自身も東京地裁の特許部に何年かおりましたので、その特許事件の難しさというのは身を持って味わったわけでございますが、これはなかなかこういう専門的体制が整ってないところで的確にしかも迅速に処理しようと思うと非常に難しいということでございます。やはり国全体としてこういう特許に関する紛争を適正迅速に解決するということが求められている時代だろうと思います。 そういう意味で、多少地方の方に負担になる可能性はあるわけでございますが、やはり国の方針として特許裁判全体をより適正迅速に行うというためには、専門部の体制の整っているところに事件を集中するということが必要だろうという具合に考えたわけでございます。 ただ、もちろん特許事件といってもそれほど専門性の高くないものもございますし、また、東京、大阪に集められることによって非常に事件が遅れたり、あるいは当事者に損害が生ずるという場合もございますので、そういう場合には移送ができるようにそういう移送の規定も整備をいたしまして、当事者に過度な負担を掛けないようにと、こういう配慮はいたしましたが、先ほどのように、やはり現代社会における特許等の重要性にかんがみますと、国の方針としてやはりそういう適正迅速な処理体制を整えるということが必要ではないか、こう考えているわけでございます。
○鈴木寛君 地方の、何といいますか、不便というものについては移送とかあるいはテレビ会議というもので十分御手当てをいただくということでございますので、是非そこは遺漏なきようにやっていただきたいんですが、私のもう一つの関心点は、いわゆる具体的な事件をかんがみますときに、例えばプログラム特許でいくのかあるいはプログラム著作権でいくのか、はたまた不正競争防止法でいくのか。これ合わせ技でいろいろなアプローチを考えながら事件を解決していくというのが極めて、何といいますか、合理的といいますか、より権利の実現といいますか、当事者の納得のいく知的財産事件の解決という観点から資すると思うんですが、六条と六条の二でこうやって書き分けてしまいますと、いわゆる不正競争防止法といわゆる特許権型のものを一括してといいますか、うまく連携して取り扱うというところが大丈夫かなと、そういう分断されてしまうことについて少し懸念を持っているわけでありますが、その点についていかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 実質的に同一の紛争について特許権構成でいくかあるいは不正競争でいくかというような構成の違いということかと思いますが、それを例えば一つの訴えで幾つかの請求をするというそういう場合には、併合請求ということで、例えば特許がその中に入っていれば特許権を管轄する東京あるいは大阪にその他の請求についても併せて提起することができますので、それを使えば、御指摘のような場合には目指している裁判所において一括して審理を受けられるということになるわけでございます。
○鈴木寛君 済みません。ちょっと細かい話で申し訳ないんですけれども、その場合は、例えば今回想定している東京地裁なり高裁のいわゆる専門部のところに事件が取り扱われて、加えて併合請求をすると、こういう実務処理になるんでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) そういう場合には、特許で例えば東京、大阪に持っていきたいということであれば、特許権を理由とする請求と併せて、例えば不正競争防止法を予備的に付けるとか、そういう形になると思いますので、その特許権が入っていればその管轄でいき、かつ配てんとしてもそこの部に行くということになろうかと思います。
○鈴木寛君 よく分かりました。 それでは次に、今回の民訴法の改正の中で、これもまず知的財産の事件に関してそうした充実した体制が取れるということで、まず管轄の問題を整理をしたといいますか、改善をしたということでございましたが、加えまして、今回の改正の中で専門委員制度というのが新設をされております。これを最大限活用するということは正に知的財産関係訴訟をより円滑に進めていくという観点では非常に有意義だろうというふうに思っております。 具体的に、この専門委員制度というのは、特に技術裁判官とかいうような議論も出ているようでございますが、それを裁判官と呼ぶかどうかは別として、要するに技術の専門家あるいは法律の専門家、あるいはその双方の結合についてよく分かっている方、そういう方々がチームとしてより的確な裁判を進めていくという観点、非常に重要だと思っておりますが、この専門委員、どういう方々が、登録をされて、そして個別に任命をされていくということになりますが、プールをするときのイメージとしてどんな方々が想定をされていて、具体的に、そしてその専門委員、特に知財関係の専門委員というのが実質的にきちっと確保されるのかどうかという点について御答弁をいただければと思います。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) それでは、知的財産権訴訟に関する専門委員の今準備している運用の構想について御説明をしたいと思います。 知的財産権訴訟は、専門的技術に関する知識の補充が最も必要な分野の一つだという認識でおりますので、ほかの分野に先駆けまして専門委員の任命の準備的な作業を進めておるところでございます。 今回の民事訴訟法の改正が実現しました場合には、現在の構想では、この施行と同時に東京高裁に百人程度の規模で専門委員を任命するということを目指して準備作業を進めているところでございます。 なぜ百人程度という大量の専門委員を一度に任命するのかといいますと、最近の先端技術は分野が細分化されてきておりまして、十人、二十人という専門委員を任命しても、事件に応じた適切な人選が難しいということになりますので、百人という規模の人材をあらかじめ確保するのが適当であるというように考えておるところでございます。 専門技術の分野といたしましては、例えばバイオ、ヒトゲノムなどの最先端の分野も対象でございますが、それにとどまらず、機械、化学、電気というような伝統的な分野におきましても、この分野も先端技術が細分化しておりますので、相当数の技術者を専門委員として任命をするということを検討しておるところでございます。 このように準備しておきますと、先端分野の技術に関する知的財産権訴訟が提起された場合に、直ちにあらかじめ用意されたリストの中から専門委員を選任することが可能になるというように考えておるところでございます。
○鈴木寛君 その中で具体的にどういう方が任命をされるのかというイメージをお聞かせいただきたいわけでありますが、恐らく大学の研究者とか弁理士さんとかということになろうかと思いますが、その点について。
○最高裁判所長官代理者(園尾隆司君) 御指摘のとおりでございまして、大学での研究者あるいは政府、民間の研究機関における研究者、それから専門的な業務に携わっておられる弁理士の方々、そういうような方々について広く人材を求めようと考えております。
○鈴木寛君 ありがとうございます。 それで、今日折しも、私、是非、知的財産関係訴訟というものがより充実されるということが大変に望ましいという観点で今日は御質問させていただいているわけでありますが、知財本部がこの知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画というのを今日のこの後ですかね、おやりになって、計画が恐らく承認をされるんだと思いますが、その案を私いただきましていろいろ勉強をさせていただいております。 この案を読みますと、正に知的財産立国を作らなければいけない、あるいは知的創造サイクルというものを活性化していかなければいけないと。その中で、この計画の表題にもございますが、創造と保護と活用と、この三つが重要だという趣旨におきましては、大変に重要だし、そのとおりだというふうに思っているわけでありますが、少しちょっと整理をさせていただきたいんですが、司法制度改革推進本部でもこの知的財産訴訟の検討をされていらっしゃるというふうに聞いておりまして、この知財本部が今日お出しになる計画と、それから今、司法制度改革推進本部も知的財産訴訟の検討を行っておられる。この関係と、恐らく司法制度改革推進本部の検討会はまだ続行中だというふうに思いますので、これがどういうスケジュールで御審議が、御検討が進められているのかということについて、司法制度改革推進本部の方と知財本部と両方からお答えをいただければと思います。
○政府参考人(山崎潮君) ただいまの御指摘の点につきまして、私ども、昨年十月に知的財産訴訟検討会、十一番目の検討会を設けまして検討を進めております。 これは、テーマは知的財産関係の推進本部ができる前の準備的な段階でいろいろ御議論があったもの、これが司法制度あるいは裁判手続に関連があるということから、私どもの方で検討を行うということで始めさせていただいたという経緯でございます。 その後、知的財産戦略本部ができまして、今、様々な点について御議論がされておりますし、また司法制度に関係する新たな問題も提起がされているという状況でございます。私どもも、いろいろ御議論があったもので司法制度に関するものは私どもの検討会でも行うということで、言わば政府の中に二つ本部がございまして、双方が連携してやっていくということでございます。ただ、具体的に法案をどうするかという問題になれば、これは私どもが今、本部で検討しておりますし、手続法の関係は、特許法とかそれのみならず、場合によってはその発想というのは民事訴訟法とか、そのすべてに影響する可能性もあるわけでございますので、その関係は具体的には私どもの方でやらせていただくということを考えているところでございます。 今、私ども順次、検討を進めておりますけれども、一応の大ざっぱな第一ラウンドの議論を終わりまして、今後更に細部を詰めまして、可能であるものは来年の通常国会には成案として御承認を得たいという、こういう予定で今進めているということでございます。
○政府参考人(久貝卓君) 知財本部の検討状況でございますけれども、本日の夕刻の第五回の会合におきまして、今、委員御指摘の計画が決定されます。 その中には司法関係のものも相当数ございます。これを受けまして、関係省庁においてこれを実施すると。その中には司法、今、事務局長の方からもお話ありました、司法本部の方での更なるこの計画を受けた検討というのも進められるということでございます。それから、知財本部の方におきましても、もし今日、御了解いただければ、知財の保護を進めるということで専門調査会を開くということで、こちらの方でも司法関係も含めて更に検討するという方向で進むものと思われます。 いずれにいたしましても、司法本部と知財本部で連携を取りながら進めていきたいということでございます。
○鈴木寛君 司法本部にお尋ねをさせていただきたいと思うんですが、知的財産訴訟検討会と、こういうふうに名前を言っておりますが、この知的財産訴訟というのはどういう範囲を含むと理解をしていたらいいんでしょうかというのが私の質問でございます。 更に申し上げますと、今日の質問の冒頭に申し上げましたけれども、知的財産訴訟というのは非常に広くとらえて総合的に考えていくべきではないかというのが私の考え方でございますので、今日、民事訴訟法の六条あるいは六条の二の御議論を冒頭させていただきましたけれども、不正競争防止法なども含む、場合によれば種苗法とか意匠法とか、そういうことも、あるいは更にその周辺も含んだ問題をこの知的財産訴訟検討会の検討事項というふうに考えていいのかどうかという点についてお答えをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 基本的には特許を中心にするものを考えておるわけでございますが、最終的なその外縁については、まずどういうものをやるということを決めて、その上でそれがどこの範囲に必要であるかという議論をしてまいりたいというふうに考えております。中心的なものをまず議論をするということでございます。 ただ、一般的に言われます特許権、実用新案権、意匠、商標でございますか、それから著作権、それと不正競争防止法とか、この辺のところは通常は含み得るということで議論を進めております。ただ、その中で、それぞれの権利に応じてどのような手続を構築していくか、これはまた別問題だと、こういうふうに理解をしております。
○鈴木寛君 ありがとうございます。 それでは、本日の夕刻に決定されるであろう知財の創造、保護、活用に関する推進計画について少し掘り下げさせていただきたいと思っておりますが、この報告書といいますか、この計画案、実は一番計画の最後に非常に重要なことが書いてあります。 これは、計画を読ませていただきまして、漏らしてはいけない論点についてはきちっと含まれているなということだと思うんですが、そのことをきちっとやっぱり今日の審議も通じて確認をもう少しやっていかなきゃいけないなという意味で私は今日御質問させていただいておりますが、この計画の一番最後のところに、「知的財産法は情報を対象としており、所有権法とは異なった情報独自の法体系が必要となりつつある。」という、こういう一文があるんですね。この一文は極めて重要な一文でありますし、正に日本の知的財産立国というものを考えていく上で、あるいは知的立国というものを考えていく上で、これは正に革新的な一文だというふうに思っておりますので、あえて私は取り上げさせていただきたいと思っておるのでございますが。 私も、実は情報あるいは情報の価値というものを少し勉強をしてきた者からいたしますと、正に情報独自の価値とか情報独自の法体系というのは本当に難しいわけであります。通常の物でありましたならば、正に物の希少性というものの関数として物の価値というものは決まっていくわけでありますが、しかし情報の場合は、したがいまして、今から百年ほど前に工業所有権概念が導入されたときは、正にその無体財産なるものに、ある意味で法的な枠組みとしてあえて排他的処分性を有する所有権というものを設定をして、そしていわゆる有体物と同様の取扱いを法的にできるようにしようと。当時としては非常に画期的なといいますか、そういう知恵が一番いい知恵だったんだろうというふうに思います。 しかし、正に時代は二十一世紀になりまして、いわゆる情報財とそれからいわゆる物的な有体財というものが、経済社会の中で場合によれば情報財の方がより価値が大きくなる、正にそれは情報社会というのはそういうことだろうというふうに思いますが、そうなったときに、結局有体財についての様々な法的ルールをそのまま借りてきたということでは、なかなかいろんなところで難しくなってきたということがこの一文に非常に象徴的に反映をされているんだというふうに思います。 更に申し上げますと、この報告書の中でも、計画の中でも、いわゆる知財の価値付けというものについてこれからいろいろな手法を確立していかなきゃいけない、これも大変な問題でありまして、正に経済学、大体、大学の一年生とか二年生になりますと、価格というのは限界費用に設定したときに利潤が最大化するということを正に経済学のイロハのロぐらいで教わるわけでありますが、この情報社会、デジタル社会の本質というのは何かといいますと、いわゆる限界費用がゼロだということでありますから、そうしますと価格というのはゼロになってしまうというところで、情報財の値付けという問題が非常に難しくなってくるわけでありますね。そういうふうな極めて次なる社会の根っこにもなるようなことを規定をしていかなければいけない。そのことが「情報独自の法体系が必要となりつつある。」と、こういうふうに表現されているんだろうと思います。 この重要性について明確にここに論じていただいているということは、私は大変に重要なことだし、大変にいいことだというふうに思っております。 かつ、では、情報独自の法体系とは何かと問うたときに、いや、ここはまだなかなか明確なお答えがいけないということも私も十分承知をしておりますので、今日はそういう非常に、正に二十一世紀の根幹を決める、そういう問題がこの議論の中に内包されているということを、この国会の各委員、そして今日お集まりの政府の関係の方とも共有をするということで私は結構でありますが。 しかし、申し上げたいことは、この後に、表題にもなっております、知的財産権、産業財産権への用語を統一するという記述がございまして、そして知的所有権という言葉があったのを知的財産権というふうにちゃんと全部書き換える、それから今までの工業所有権に替えて産業財産権という言葉に換えましょうと、用語統一をしましょうと、こういうことが出ているわけであります。もちろん所有権という言葉を財産権に換えるという、その裏の意味がいわゆる従来の所有権的構成を情報というものに当てはめることについてやっぱりいろいろ無理がある、あるいはもっと言えば、もっとポジティブにいわゆる情報に伴う財産権の構成というものについてきちっと意識していこうという姿勢については評価をいたしますが、これ法律の用語であります。しかも、権という新しい概念を広めていこうということでありますので、是非この知的所有権、知的財産権、工業所有権、産業財産権、この用語についてこの計画を策定をされました責任者であります知財本部から、今、有権解釈とは言いませんが、用語の御説明をいただければ有り難いと思いますが、よろしくお願いいたします。
○政府参考人(久貝卓君) 昨年十一月に成立いたしました知的財産基本法では、知的財産権を「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利」と定義しております。他方、今御指摘の知的所有権という言葉につきましては、これまで条約あるいは国際協定の訳文ということで用いられるといった経緯もございまして、国内では知的財産権及び知的所有権という言葉が、用語が必ずしも統一されておりませんでした。 で、御指摘のように、情報を対象とした知的財産法というのは物を対象とした所有権法とは異なる側面を有するということで、昨年七月に決定されました知的財産戦略大綱におきましても、知的所有権という言葉を可能な限り知的財産権に統一するということがうたわれております。また、御指摘の今回決定、予定されております推進計画におきましても同様の提案が盛り込まれておるということでございまして、私ども事務局としては、この計画案が決定されましたら、知的所有権という言葉を知的財産権という言葉に統一するよう関係省庁に働き掛けてまいるというふうに考えてございます。 また、併せて御指摘がございました工業所有権という言葉ですけれども、これも従来、特許、実用新案、意匠、商標というものを指すものということでございましたけれども、知財権の一部でございますこれらの権利についても、物を対象とした所有権法とは異なると。加えまして、農業、鉱業、商業と、こういった工業以外の産業に関する知的財産も対象となるということで、これも昨年の大綱以来、工業所有権という言葉に替えて産業財産権という用語を使用することということが決定されております。 したがいまして、これにつきましても、この今回の推進計画に、決定されましたら、それに即して工業所有権を産業財産権に統一するという方向で関係省庁に働き掛けてまいりたいと考えております。
○鈴木寛君 この定義というのは、これから恐らく不断にいろいろな、学会も含めて関係者の御努力でより精緻なものを作っていく途上、それが正に始まるんだろうというふうに思いますので、そういう意味で、引き続きこの点についての問題関心をきちっと持っていただいて、より国民の皆様方に的確な理解に努めていただきますことをお願いを申し上げたいと思います。 それで、冒頭、私がこのことからお話をしておりますのは、今回の知的財産本部あるいは戦略会議の御議論、これ計画をきちっと読みますとちゃんと書いてあるんですね、私がこう言わんとすることは。 例えば、しかしなかなか報道だけ見ているとそういうふうにまあ映らないものですから、あえて国会でこういうふうな問題提起をさせていただいているんですが、いわゆる例えば一九七〇年とか一九八〇年代のアメリカのプロパテント政策をただ単に日本に二十年後れで持ってくるということをやってはいけないんだと思うんです、私は。 今、少し問題提起をさせていただきましたいわゆる有体財と情報財と、この情報財をどういうふうに取り扱っていくのかという問題は、これはもちろん日本も直面している課題でありますと同時に、アメリカもヨーロッパも世界じゅうが全部が直面している課題でございます。 私は、もちろん知的創造活動というものが最大限尊重されるということについては、これは私は最も恐らく推進をしてきた者の一人だというふうに自負をしておりますし、そして、そうした創作意欲がどんどんかき立てられて、そして創作をした人たちがきちっと社会的にも経済的にも報われる社会を構築するべきだと。この理念、趣旨、哲学においては私はどんどんやっていただきたいと思いますし、私も世の中にそういう意識喚起を努めていく一人として頑張っていきたいという思いは変わらないわけでありますが、私が問題としたいのは、いわゆる、いわゆる八〇年代のプロパテントということを言ったときに、何でもかんでもがちがちの所有権的構成にして、そしていわゆる物権設定をして、排他的処分性を与えて、そしてそれをがちがちに守りながら、いわゆる何といいますか、創作者のためのではなくてローヤーのためのプロパテント政策が日本に導入されたならば、これは私は将来に大変に禍根を残すというようなことを思います。という質問をしようと思って、よく読んでいたら、計画の中でも単に米国の制度をそのまま導入すればよいということを意味するものではないと書いてあるので、ちょっと舌鋒が弱くなってしまうわけでありますが。 だから、そういう意味で本当にこの創作意欲をきちっと駆り立てていく、そしていろいろな人たちのエネルギーが更なる知的活動に向いていく、その一つの社会システムとして、私はその創作物に対して従来のようにこの物権的な構成を与えていくということを、私はそれは一つの引き続き重要な柱の一つだと思います。 しかし、それだけではなくて、やはりプラスアルファ、様々な法的な枠組みを設計をしていくという、やはりこの創意工夫というものをやっていくというのが、恐らく今日この二十世紀から二十一世紀、工業社会から情報社会の橋渡しを担っていく我々の非常に重要な使命だと。そのときに、今回行われている司法改革あるいは知的財産戦略というものが、そうした新しいフロンティアを作るときに足かせにならないように、足かせにならないようにするということは相当注意をしておかなければいけないんではないかと。携わっている当事者がそのことを十二分に御意識をされているということは、計画を詳細に読めば分かるわけでありますけれども、しかしそのことをより広く、単にプロパテントをそのまま入れてくるわけではないよということについては是非何度でも強調をさせていただきたいなというふうに思っているということでございます。 そして、そういう中で私が知的財産訴訟関係の件で御議論をさせていただきたいのは、知的財産高等裁判所構想についてでございます。計画の中で、知的財産高等裁判所創設構想というものがうたわれております。 私は、冒頭申し上げましたように、知的財産関係訴訟についてより充実した体制で、あるいはそうした人材がいい体制を作って、そしてそこにいろんな知見が集積をされて、で、しかもある意味では特に知的財産分野における司法の立法機能というのは大変に特に重要だと思っております。この知的財産のこの枠組みの中では。 なぜならば、今のような正に二十一世紀型の情報独自の法体系というものを、もちろんその立法府が条文という形で様々な関係諸法令を改正をし、あるいは新法を作って打ち出していくという努力ももちろん必要でありましょうが、しかし具体的な事件を解決する中で、訴訟を解決する中で正に判例、そしてそこににじみ出すいろいろなリーガルエンジニアリングといいますか、法的な創意工夫を積み重ねるというそういう意味でのこの裁判所の役割というのは私は非常に重要だと思いますし、アメリカの例なんかも見てもアメリカの司法当局が、裁判所がそういう意味で非常に御努力をされているということを見るに、この点は非常に重要だと思いますが、そういう中で、そういう趣旨において知的財産高等裁判所構想というのは、私は検討に値する構想だというふうに思いますが、しかし一方、司法制度改革の観点からこの問題を考えてみますに、少なくとも日本国憲法制定以来、この憲法七十六条では、いわゆる普通裁判所というものを中心に据えるんだという、そして下級裁判所は法律で決めるということで、高裁と地裁と家裁と簡裁、この四つが下級裁判所だ、こういう方針で来たわけであります。 そこに今回、知的財産という特定分野の裁判所を作ろうというのは、正に戦後、日本国憲法が、別に私は、これは憲法七十六条の二項で言う特別裁判所だと言うつもりは全くありません、その御議論をしてもそれはしようがないので、と言うつもりはありませんが、しかし憲法のいわゆる立法の趣旨といいますか、憲法の精神というのは、日本の司法というのは普通裁判所で多くのものを取り扱っていくんだという司法組織論の基本的な考え方があったということはお認めをいただけると思います。その代替機能として、例えば労働委員会を作るとか、しかしそれはあくまで裁判所の司法組織のフレームワークではないという整理をしてこられました。 その観点から見ますと、今回の知的財産高等裁判所を作るというのは、そうした、戦後五十年、六十年のそうした司法組織論に対して新しい哲学というものを導入するか否かという論点を含んでいるというふうに思うわけでありますが、司法改革の御議論の中で、正にこの裁判所の司法組織論といいますかについて、どういう考え方でこの問題に臨んでおられるのかという基本スタンスについて御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま委員が御指摘の点、大変重要な問題でございます。私どもの検討会でも当然この問題をきちっと議論しなければならないということでございますが、現状でまだそこまできちっと議論が行っていないという段階でございます。 その点で、きちっとしたことを言えないということはちょっとお許しを願いたいと思いますけれども、この知的財産高等裁判所の件に関しまして私どもで第一ラウンドの大ざっぱな議論をしたときに二つ考えがございまして、一つはやっぱり判断の高裁レベルでの早期統一、こういうことを図りたいということと、それから判決の予測可能性を向上させる必要がある。特に高等裁判所を作るについては、我が国の技術立国、知財立国としての姿勢を形として示すことが必要である、大切である、こういう考え方によるものでございます。 一方、消極、慎重意見もございまして、現在御審議をいただいております民事訴訟法等の一部を改正する法律案におきまして、実質上の意味の知的高等裁判所、これが御承認いただければでき上がってくる、こういうようなものを少し運用してみて、その上でどういう問題点があり得るかということをチェックしながら将来考えていくべきじゃないか、こういう議論に分かれているわけでございます。そういう状況で、まだそれ以上には進んでいないわけでございます。 確かに、我が国の裁判体系、大きく分けて下級審のレベル、四つに分かれておるわけでございまして、これに新たなものを加えるということになるわけでございます。そういう意味で、どうしてそれが一つ独立するのかということがきちっと説明できなければならないだろう、それはかなり専門技術性が強いということ、それからやっぱり早期の判断の統一、この二つがキーワードになるのかなというふうに思われるわけでございます。 ただ、今の議論では、じゃ、ほかの分野についてこういう問題があるのかということでございますけれども、私ども、今聞いている範囲では、お聞きしている範囲では、ほかの分野についてこうすべきだという議論はほとんど耳にしておりません。この知的財産権に限られているということでございます。 ただいま御指摘のような基本的な議論、こういうものを経まして、どうしていくかということを今後検討させていただきたいというふうに思っております。
○鈴木寛君 何度も繰り返しますが、私は、方向として非常に専門能力の高い方が集中的にそうした知的財産訴訟をやる事実上の体制をどんどん整備することについては一二〇%賛成をしております。しかし、今日、冒頭から御議論させていただいておりますように、独立した特定分野の高等裁判所を作るということになりますと、正にそれはイコール専属的にそこにある種の事件を集中するということになります。そうすると、そこをどこで切るのか、知的財産訴訟の外縁という議論をやっぱりこれはせざるを得ないという問題があるということと、それからこの議論、今回は裁判の迅速化ということで議論が始まっているという側面も非常に重要なことだと思っております。 要するに、ただ単に迅速にやればいいという話ではなくて、正に訴訟関係当事者の納得といいますか、要するに事件が具体的に満足度の高い形で解決をされるということが我々の本旨である。その中で、もちろん専門性の高い人材による専門の機関がそのことに主として携わるという方向については、これはいいわけでありますけれども、しかしその議論を進めてまいりますと、この裁判迅速化の質疑の中でも、例えば医療関係とか建築関係というのは非常に技術と関係が複雑だ、それについては専門技術性が必要だ、こういうことになりますと、そのロジックを延長してきますと、じゃ知的財産高等裁判所を作りました、じゃ次は医療高等裁判所を作りますかと、こういう話に、それを、私は議論として、構想として十分に検討に値すると思いますが、内閣総理大臣が本部長の本部ができるたびに一つ一つ高等裁判所ができる、それもあるべき国の姿としては私は非常に検討に値する議論だと思いますので、私は決してノーと言っているわけじゃないんです。 ただ、それは正にこの国の形をどうするのかと。そもそも司法改革というのは、正に事前規制型の、そしてそこに行政が過度に事前に介入するという社会から、正に事後救済、事後調整型の社会にしていこうじゃないかという中で司法の持っている役割というのはより高くなるんだ、その中で専門性を追求する、この理屈までは分かるわけでありますが、しかしやはり普通裁判所を中心としてきた大きな大原則に、そういう特定分野の、特別裁判所という言葉はあえて使いませんけれども、というものを入れるのであれば、理念と整理というものをやはりきちっとしていただきたい。 こういうことを是非問題点として、もう詰めていただいているという話でありますが、そういう論点も、こういう話というのはなかなか大事だと思うんですけれども、とりあえず目の前のいろいろな課題を解決しなきゃいけないという現場の方になってしまいますとどうしても後回しということになりますので、それをまたきちっと基本に戻させていただくというのも国会の一つの役割かと思いますので、あえてこういう議論を提起させていただいておりますので、是非引き続きの検討の中で御留意をしていただきたいと思います。 もう一つ、私が知的財産関係で、しかし知的財産にかかわらず、これがこれ以外の裁判の在り方にも影響を与えるということで注目をいたしておりますのが、正にADR、裁判外紛争処理の問題であります。これも広い意味で言えば裁判の迅速化、裁判といいますと裁判でありますから。しかし、国民の権利実現、権利救済の迅速化、充実という満足感の高いという観点からいいますと、正にこのADRというものも司法改革の中で重要な要素を占めるというふうに思います。 このことは、平成十四年三月十九日の閣議決定、司法制度改革推進計画の中でも、ADRの重要性というものが位置付けられております。その中で、知的財産調整センターや、あるいは弁理士会などがおやりになるADRというものの重要性ということが十四年の閣議決定でも、そして恐らく今日の夕刻に取りまとめられるであろう知的財産の計画でも、この両方で重要性が指摘されているわけでありますが、一年この司法制度改革推進計画が取りまとめられてからはたつわけでありまして、この知的財産調整センターなどのADRというのはどれぐらいこれワークしているでしょうか。 まず、現状についてお教えをいただきたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答えいたします。 日本知的財産仲裁センター、平成十年三月に設立されました。当時は工業所有権仲裁センターと呼んでおりましたが、平成十三年四月から日本知的財産仲裁センターと名称を変えました。十年の設立以後、今年の七月現在で三十八件の調停、仲裁の申立て、内訳は調停が三十六件、仲裁が二件でございます。それから、二十一件のJPドメイン名紛争処理申立てを取り扱ってきております。 このセンターにおきましては、専門知識や経験を有する弁理士、弁護士が、それぞれの紛争について詳細な検討を行った上で、公平中立な判断の下に紛争の実情に応じて最善の解決案を提示しております。 この結果として、利用者としては、一つには、非公開手続でございますので当事者の秘密が守られると。二つ目には、集中的審理によって短期間での紛争解決ができると、大体四、五か月、平均ですね。それから、裁判より低廉に紛争を解決することができる等のメリットがあるというふうに考えているところでございます。これらのメリットや、知的財産紛争の今後また増加も予想されますが、そういうことを踏まえて、今後の同センターのより一層の利用の拡大を期待しております。 委員御指摘のように、本日取りまとめられる推進計画の中でも更なる拡充、活用ということが指摘されるかと思います。そういうことを踏まえて、政府としてもしっかり取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
○鈴木寛君 ありがとうございます。 是非、この手のADRというものは、今は知的財産のことについて特許庁長官から御答弁いただきましたが、のみならず、このADR制度というものを充実をしていっていただきたいと私は思うわけでありますが。 司法改革本部にお尋ねをいたしますが、この点についてはどのような今後の取組を考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(山崎潮君) 委員も御案内のとおり、司法制度改革につきましてはその範囲がどこかということが前提になるわけですけれども、司法のみならず裁判外紛争処理、その手前のいろいろな処理ということも含んで計画をしているということでございます。このADRに関しましては、今、この参議院にこれから御承認をいただくべくお願いをしたいわけでございますけれども、仲裁法、これ正にADRの最たるものでございます。これが一つの成果ということでございます。 それと、それ以外のものについて、一般的なADR、ただいま知財関係のADRが御紹介されましたけれども、これ以外にも多々ございます。これについて、個々のものについて全部私どもの方でやるというのはなかなか難しいわけでございますけれども、それに共通する制度的基盤や共通なルール、こういうものをどうしていくか、あるいは裁判との関係をどうしていくかとか、例えばADRのところに申立てをした事件について時効の中断がするのかしないのかとか、それが終わった後、不調に終わった後、例えば裁判に訴えて出たと、そういうときにどういうふうにつなぐかとか、様々な問題がございまして、今鋭意検討中でございますけれども、可能であるならば、共通の法律といいますか措置、こういうものを定めていきたいなということで今準備をしておりまして、うまくまとまれば来年の通常国会には御承認を得たいというふうに考えております。
○鈴木寛君 今日の主たるテーマは正に裁判の迅速化といいますか、国民の権利の実現をどういうふうに迅速、充足させるかということだと思いますが、その中でADR、非常に重要だと、おっしゃるとおりだと思います。これは知財計画の中にも書いてあるわけでありますが、特許審査の迅速について少しお伺いをしたいと思います。 これはまず、その中身についてお伺いをしたいと思うんですが、そのお伺いをする趣旨は、正に、例えば特許侵害あるいは特許関連の紛争を抱えた当人からいたしますと、正に行政庁ではありますけれども、行政審判があって、そしてそれが不服の場合はその次に正に裁判所と、こういうふうに行くわけで、これはトータルで、正に紛争が生じてから、それが解決されるまでということで見れば、その主体からすれば、これは行政庁だとか、これはADRだとか、これはセンターだとか、これは裁判所だとかというふうなことは、プロの目からすれば非常に、まあそれぞれに分けて考えていかなきゃいけないことかもしれません。正に国民オリエンティッドといいますか国民本位の立場からしますと、正にそういったものが有機的に結合をして連携をして、正に権利の救済というものが早期に、かつ納得のいく形で図られるということだと私は思っています。 その一つとしてこの知的財産訴訟について今日はずっと御議論をさせていただいているわけでありますが、その大前提として、計画でも取り上げられております特許審査迅速化法の検討状況についてお話をいただきたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) 特許の審査については、御案内のように、現在、審査請求をした後の待ち期間が大体二十二か月から二十四か月になっております。これではなかなか本当に知財でもって国を立てる、競争力を強化するということはままならない状況でございます。ただ一方で、大変な滞貨が積み重なっているのも事実でございます。ということで、昨年の知財戦略大綱、それから知財基本法、今回の知財推進計画で特許の迅速かつ的確な審査をどういうふうに実現するかということで、かんかんがくがく議論が行われ、かつ議論を進めただけではなくて、私ども、先行技術調査のアウトソーシングの徹底あるいは審査補助職員の更なる活用、さらには今国会でお通しいただきましたけれども、特許法を改正して、料金体系の変更等もさせていただいたところでございます。 ただ、世界最高水準の迅速的確な審査ということが我々の目標でございます。そうだとすれば、今後、恐らく八十万件ぐらいに及ぶであろう滞貨をいかに削減するかということがやはり喫緊の課題になるかと思います。そういうことで、例えば恒久的ではない任期付きの審査官を確保してそういう削減に当たらせることも含めて、現在、政府の中で議論をしているところでございます。 いずれにしても、今のままではなかなか知財立国と標榜するには十分じゃないということは十分承知の上で、これからの努力を更に強めていきたいというふうに考えているところでございます。
○鈴木寛君 今、長官から御決意のほどは聞いたわけでありますが、特に特許審査員の大幅増員というのは大変に強い社会的要請だと思いますが、この点について是非取り組んでいただきたいと思うんですが、その点について改めて御答弁をお願い申し上げます。
○政府参考人(太田信一郎君) 現在、特許庁には特許実用新案で約千百名の審査官がおります。アメリカのUSPTO、ヨーロッパのEPOですと、大体三千名ぐらいおられると承知しております。ただ、私どもの特許庁の審査官、一人当たり毎年百八十件ぐらいの案件を審査しておりまして、アメリカ、ヨーロッパの二倍から三倍の効率を上げております。 ただ、委員御指摘のように、それから先ほど私御答弁申し上げましたように、大変滞貨がたまっておるということで、当然のことながら着実に審査官の増員を図ると同時に、その滞貨についてやはり緊急的に、仮に任期付きの審査官であっても、そういう審査官を確保して滞貨の削減を図ることが私どもとしては大変重要な課題であると、そういう方向に向かって関係各省の御理解も得ながら進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
○鈴木寛君 司法改革本部にお尋ねをいたしたいと思いますが、正にこうした行政庁の審判、それから今回の例えば人事訴訟法、民事訴訟法で流れている精神というのは、正に事実上、先ほどの特別裁判所の大きな議論は別といたしまして、実態上として正に、裁判所に来た訴訟については、知財は知財として非常に効率良く、あるいは人事訴訟なら人事訴訟もきちっと対応していくと、こういう整備を手当てをしていこうということだと思います。 その裁判所の中の整備については、これは方向性としてこの方向、それをきちっと進めていただきたいと、こういうことになるわけでありますが、是非、司法改革の中で御議論をしていただきたいのは、正に国民の側からしますと、正に紛争が起こってから解決されるまでの時間を短縮していただきたいというのが、これが本来のニーズだったわけでありまして、そういう意味でいいますと、例えば行政庁の審判との有機的結合、あるいはADR、こうしたものをトータルにやはりきちっとマクロで見て、そこまで、それを司法改革と呼ぶのかどうかは別といたしまして、御検討をどこかはしていただかなきゃいけないというふうに思っておりますが、正に国民の権利救済を充実かつ迅速化をしていくという観点で御答弁、あるいはどういう御検討をこれから、今までされており、これからされていくということなのか、お答えをいただければというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘がございました、言わば準司法的機能ですか、これを営みます行政審判と裁判の連携強化の問題だろうと思いますけれども、これは、一定の限界はあるにせよ、最終的な紛争解決を担う裁判の充実・迅速化を図る趣旨からも大変重要な問題であると我々、自戒はしております。 この司法制度改革全体の中で、今、行政訴訟、これの関係の改正について検討を加えておりますけれども、これは現在のところ、残念ながら、行政訴訟の段階の手続について検討を加えておりまして、じゃ、その前にあります不服審査等、これは相当なものが、分量が種類も含めましてあるわけでございますが、ここのところは行政プロパーの問題だということで、今、私どもの方では着手はしていない、残念ながらしておりません。そういう状況でございます。 ただ、今、委員が御指摘の中で、知的財産との関係では、これは、御案内のとおり、侵害訴訟の中で、そもそも特許権が無効だという、そういう抗弁が出てくるわけでございまして、現在、判例の中でごく狭い、狭いというか、かなり強い要件を付けまして、その要件をクリアするものについては判断をするということが行われておりますけれども、これについてはいろいろな御議論がございまして、現在、私どもの方でこのテーマを取り上げてございます。その要件を今の判例のような要件にするのか、もう少し緩めるのか、そういう主張が出たときに、同時に行政庁の方に無効審判の申立てが行われている場合もございますので、そちらとの関係をどのように訴訟と連携させていくかということです。このような方法についても現在検討中でございます。 そういう意味で、非常に狭い範囲で恐縮でございますけれども、双方の連携、これは国民にとっては、どちらでやられようが早くいい結論を出してほしいという願いの表れでございますので、その点は現在検討しておりまして、これについては成案をなるべく得て、来年御承認を得られればと、こういうことでございます。
○鈴木寛君 是非、今の方針で更なる御検討をいただきたいというふうに思います。 もう少し知的財産の話、あるいは計画にまつわることについて御議論をさせていただきたいんですが、どうもやっぱり最近のいろいろな議論を見ていますと、どうしても効率化とかあるいは経済的価値優位とか、そういうことの中でいろいろな検討なり改革が行われていくということについてやや違和感があるのかなというのが世論の動向かというふうに思いますが、その中の一つで、先ほどの知財計画の中でも、そうやっていろいろ言おうかなと思って読んでみますと、計画にはまた入っているんですね。 例えば、私は、一九八〇年代のアメリカのプロパテントをそのまま入れることについては反対だと、こういう話を申し上げました。それは正に、計画でいいますと九ページなんでありますが、そこでは正に、権利の強化はもちろん重要なんだけれども、その弊害というものもきちっと考えていかなきゃいけない。 すなわち、競争上の弊害と表現の自由、さらにはこの下の方に、学問、研究の自由。私は、これはもちろんプロパテントも重要でありますが、しかしアメリカは、それと同時に非常に厳格な独禁法の運用、適用、運用というのがなされている。この車の両輪でもってアメリカのプロパテント政策というのはそれなりにフェアネスを確保して、公正さを確保して根付いているんだというふうに思います。 でありますから、その意味では、正に競争上の弊害の除去、独禁法をどういうふうに適用していくのか。しかしこれ、日米の独禁法の適用状況、あるいはそれを実施する当局の体制というものを、これを比べますと、本当にこれ雲泥の差があるわけでありまして、そういう中で、お触れはいただいておりますけれども、競争政策上の配慮といったもの、あるいは表現の自由の確保、それから、実は今日同日で文教科学委員会では国立大学法人法の議論がなされておりますが、正に学問、研究の自由とか、これは正に経済的な価値、利益以上にといいますか、あるいはそれと相まって極めて重要な経済社会を構成する要素の一つだと思います。 もちろん、経済的な繁栄を達成するためにも、やはり学問、研究の自由とか独占禁止法の競争政策上の弊害の除去とか、こういう問題というのは中長期的な日本経済の発展に私は不可欠だというふうに思っておりまして、こういう点について、知財本部は、正にバランスの取れた適切な対応とおっしゃっておられますが、具体的にどういうことを考えて、どういうふうに取り組んでいかれるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(久貝卓君) 御指摘の、競争政策と知財政策のバランスの点でございますけれども、まず一点申し上げたいことは、現在、知財本部でこういう知財の推進計画の決定に向けた検討を行っている背景でございますけれども、それはやはり、低廉な労働コストを背景としましたアジアの追い上げという状況で、我が国の、そういう状況に直面して我が国の産業の競争力というものを強化する、それを通じて我が国経済社会の再活性化を図っていくというためには、やはり知財活動の成果を知的財産として保護する、これを経済成長の基盤に据えるという、こういう認識が根底にあるということでございます。 このため、この推進計画におきましても、知財を国富の源泉と見て集中的、計画的に実施すべき施策をこの計画の中に盛り込んでおりますけれども、その中の柱は、知財創造のインセンティブを向上させるために知財の保護を十分なものとするということでございまして、この点は、先ほどの御指摘の有体物たる物とは異なり、情報が極めて容易に模倣されるというその特性からも正当化されるというふうに考えてございます。 他方、御指摘のとおり、今後、我が国が知財立国を実現するに当たっては、やはり知財強化の一方で、競争政策、表現の自由に配慮ということも不可欠でございまして、その点につきまして、この計画においても、正に知的財産の強化と競争政策、表現の自由のバランスを取るという旨を推進計画の中に明記してございます。 この点にも配慮して知財立国を目指すと考えておりまして、具体的なことというのは、各論の方でも少し触れてございますけれども、例えば特許の標準化におきまして、むしろパテントプールを形成するときに独禁法とのバランスを図るとか、あるいは先ほど、研究の、学問の自由との関係で非常に重要な、汎用性の高い重要なリサーチツールというものを特許で過剰に保護しないように、その点について自由にそういうツールが使えるような工夫を検討するとか、そういったことにつきましてもこの計画の方では触れておりまして、正にバランスを取ってそういう知財立国を進めていこうという考えに立っております。
○鈴木寛君 それでは、少し、もうちょっと具体的に聞いていきたいと思うんですが、これは、今、大学関係者の中でもちろんこのプロパテント、TLOというのが出てきた、これはいいことだと思ってはいますが、一方で、ある意味での混乱があることも否めないと思います。 例えば、今まで研究者というのは、余り特許のことを気にせずに本当にいい研究をしようということで、学内でいろんな自由な意見交換をし、そして自由に論文を書き、そしてそれを発表するということをやってきたわけであります。しかし、自由に意見を発表し、そして自由に論文を書くということは発明の新規性を喪失するという可能性といいますか、おそれがあるということを研究者たちは最近突然聞かされて、自由に論文書けないのか、自由にいろんなところで学会発表できないのかと、こういう混乱が一部に生じていることも事実であります。正に、公然に知られた発明とかそういう難しい特許法上の用語がいろいろ出てきて、過剰に防衛しているというのが、特に理工系の研究者の中ではそういう傾向がやや心配をされるわけでありますが、正に学問、研究の自由、そしてそういうことが迷わないように判断基準をきちっと作っていくんだというようなことが方針として示しておられますが、その点どういうふうな具体的な取組をされているのかについてお教えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(太田信一郎君) 幾つかの点についてお答えをさせていただきたいと思います。 大学に限りませんが、民間の企業の研究者等でも、自分が発明した特許が、発明したものが本当に特許になるかどうかということで、なかなか判断基準が分からないで迷っておるということがあるかと思います。 今度の推進計画においても盛り込まれると思いますが、一つは、特許を受けることができない公然知られた発明という概念がございます。これは特許法二十九条で、特許を受けることのできない発明として、特許出願前に公然実施された発明、これはもう実施されていますので、その後だれかが特許を取ろうとしてもできません。それから、頒布された刊行物に記載された発明等と並んで、これも、刊行物に記載された発明は特許を取ることはできません。もう一つ、特許出願前に公然知られた発明ということが三つ目の特許を受けることのできない発明として言われているわけでございます。 ここで言う公然知られた発明の解釈としては、私ども特許庁としては、不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られた発明を意味するものとして、審査基準を定めて公表しているところでございます。 したがいまして、観念的には、一般的な守秘義務を負う者の間で意見交換が行われた場合のような、そういう発明が秘密を保ったままである場合は、公然知られた発明とは解釈されません。逆に言えば、秘密でなくなった場合は、公然知られた発明とされて新規性を失います。新規性を失えば特許は受けられないことになります。 ただ、先生御指摘のように、特に大学の関係者の間では、一体どういう場合に公然と知られたものか、そうでなくなるのかということが必ずしも周知がされていないというふうに我々理解しているところでございます。 したがいまして、私ども、文部科学省さん等と一緒になって、特許法上どういう運用になっているか、これは、別に日本の特許法だけじゃなくて各国共通の、基本的には共通のルールでございますので、そういうルールの周知徹底と、要すれば、そういうことを踏まえた上で、大学等においてどんどん特許を取っていただきたいということが我々の思いでございますので、そういう努力を続けていきたいと思っております。
○鈴木寛君 グレースピリオドの見直しについてもお話をいただきたいと思いますが、今の長官のお話はこういうふうにざくっと言ってしまっていいでしょうか。今までどおりどんどん自由に研究をしてください、あとはTLOの関係の専門家の方にきちっと、何か心配があればちょっと聞いていただければいいわけであって、プロパテントになるからならないからということで、従来やっていた研究活動自体そのものが何らかの影響を及ぼされるというわけでは常識的にはないというふうに、やっぱり安心をしてもらわなきゃいけないと思いますし、もちろん、そのための体制としてTLOが学内にできて、そうしたことについて何か心配があった場合にはきちっとその対応をしていくと、こういうことだというふうに思いますので。 今ちょっと質問が二つになりましたが、一つは、いわゆる新規性の問題に絡んで、新規性喪失の例外のグレースピリオドの期間の見直しが、議論がどうなっているかということを特許庁長官からお答えをいただいて、そして、いわゆる大学と、そして大学の研究活動と特許を取っていくという、これのうまい整合性といいますか有機的連携というものを促進する上でのTLOの連携強化といったことについて、この二つの御質問をさせていただきたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) それでは、グレースピリオドの御質問について私からお答えして、大学におけるそういう運用というか事の運び方については岩田審議官から御答弁をさせていただきます。 グレースピリオドでございますが、一般に特許出願に係る発明がその出願より前に公にされた場合は、先ほど申しましたように、発明の特許性がないとされて特許を受けることができなくなるのが大原則でございます。特許法では、ただしこの新規性喪失に例外規定を設けております。論文発表等特定の理由により公となった場合に限り、その後一定の猶予期間内に、現在日本は六か月でございますが、特許出願をした場合は当該発明の新規性が喪失しないこととしております。この猶予期間がいわゆるグレースピリオドと呼ばれております。 現在、アメリカ、欧州及び日本の間では、グレースピリオドの要件、期間が異なっているということで、国際的な制度調和に向けた議論がなされております。他方、大学あるいは産業界からはこの期間の延長等についての要望も寄せられております。 特許庁といたしましては、このグレースピリオドを含む期間の問題、それから対象を広げるか広げないかということで、その新規性喪失の例外規定の在り方について、国際的な議論の動向もきちんと踏まえながら検討していきたいというふうに考えているところでございます。
○政府参考人(岩田悟志君) 大学とTLOとの連携の強化という観点についてお答えをさせていただきたいと思います。 TLOにつきましては、委員も御案内のとおり、大学の研究成果、これを産業界へ移転する、こういった事業を促進する観点から整備を進めてきておりますけれども、既に、TLO法に基づきまして三十三、全国に三十三の機関、これを承認をいたしてございます。これまでいろいろな活動をしてきておりまして、その中で、研究成果の市場性の判断あるいはマーケティング、いろいろ技術移転にかかわるノウハウ、こういったものが蓄積されてきてございます。 今後、大学との関係でございますけれども、大学がいろいろな研究成果の特許化の判断を行うという際には、こういったTLOの蓄積、経験、こういうものを十分に生かすということが非常に重要ではないかと考えておりまして、そういう意味で、大学とTLOとの間の連携体制、これをしっかりしたものにしていくということが重要であると考えてございます。 具体的には、現在、産業構造審議会の産学連携推進小委員会という場で大学とTLO、具体的には知的財産本部とTLOでございますけれども、連携の在り方につきまして、言わばそのモデル、これを御議論いただいておりますほか、これまでに、既に当省といたしまして、TLOに対する技術移転事業への補助あるいは特許料の減免、いろんな支援措置を講じてきておりますけれども、これらの措置を更に拡充をしていく、あるいは、推進計画の中に別途記述がございますけれども、TLO協議会というのがございまして、これに更に大学も入っていただくということで、TLOと大学、相互の情報交換、意見調整、こういったものを実施していくと、こういった形で大学とTLOとの連携強化ということに努めてまいりたいと考えております。
○鈴木寛君 ありがとうございました。 プロパテントに対して違和感がある勢力の一つとして、そういう、違和感じゃないんですけれども、よりきちっと理解をしてもらいたい勢力としての大学人ということで、今御答弁をいただいたわけでありますが、やはり日米のこのプロパテントに対する世論の盛り上がりの違いというのはどこにあるかといいますと、やはり、宝の持ち腐れとかあるいはそういったものが死蔵されているとか、要するに未利用特許の問題は非常に大きいと思うんです。恐らく未利用特許の問題が解消されて、特許権がどんどんどんどん、今回の計画でも保護及び活用と書いてあるわけでありますから、日本の場合は実態上活用がやっぱりなかなか促進をされていないと。よって、保護ばかり強めてしまうと、より知というものが使いづらい方向に、本来特許権を設定するということは知を使いやすくするということであるにもかかわらず、日本の現状の実態を前提に考えてしまうと何かそのところが違和感がある人たちが多いなというふうに思います。 そういう意味で、このプロパテント政策を進めていただく大前提として、先ほどの独禁法をきちっと運用をしていくとか、表現の自由とか、あるいは研究教育の自由を確保していくということと同時に、特許運用の本体の議論としては、やっぱり未利用特許をいかに利用を促進をしていくかということについて様々な方策が講じられなければいけないと思いますが、これ、いろいろ考えておられることを全部包括的にお話をいただければというふうに思います。
○政府参考人(太田信一郎君) 未利用特許についての御質問でございますが、現在、我が国では約百万件を超える特許権が存在しております。その三分の二は大企業などが有する未利用の特許というふうに承知しております。そのうち三分の二の二分の一でございますが、全体の約三分の一、約三十四万件につきましては他者への開放の意思がある特許でございまして、我が国の産業競争力の強化のためにはこのような未利用特許をベンチャー、中小企業などが有効に活用できるような環境整備、特に特許流通市場の整備が必要であると考えております。 こういうことで、特許庁では、独立行政法人工業所有権総合情報館を通じて特許流通アドバイザーを派遣したり、あるいは開放可能な特許を登録した特許流通データベースを整備する等々、特許流通促進事業を実施しておりまして、これまで過去六年間に二千八百六十四件のライセンス等の契約の実績を上げております。利用者の皆様から高い評価をいただいているところでございます。今後とも、そういう努力を着実に実施していきたいと思っております。 もう一つ、これ日本にはまだそういう制度はございませんが、ライセンス・オブ・ライトと、これは実施許諾の意思を登録する制度で、ヨーロッパの幾つかの国ではございます。英国、イギリス、フランス、ドイツ等では、特許権者が実施許諾の用意があると公に意思表示した場合、第三者からライセンスの申入れがあれば、一定の手続に従って実施許諾をする義務を負う代わりに特許料の減額を受ける制度が採用されております。このような制度が、今申しましたようにライセンス・オブ・ライトと呼ばれておりますが、特許権者が独占的実施を希望しない特許発明を広く実施させることにより、その実施を公衆に開放して特許発明の利用を促進するとともに、特許権者は特許料低減の利益を享受できるということで、両方とも得するという目的で導入されていると理解しております。 ただ、本当にこれが広く活用されているかというのは必ずしも自信を持って私もお答えできないんですが、いずれにしても、こういう制度を参考にしながら、かつ、そういうことを先行的に実施している国の状況はどうかというのをしっかり調べながら、このような制度の導入の是非について議論をしていきたいと。当然のことながら、未利用特許をいかに流通を促進するかという目的の下に、考えられることはしっかりやっていきたいというふうに考えているところでございます。
○鈴木寛君 今日は知的財産訴訟というものを例に取りまして、具体的に国民の皆さんの中で起こった権利をめぐるいろいろな問題、あるいはその前提として、権利をきちっとまず創造をして確定をさせていくと、そしてその活用をしていくということ。で、要は、そのことにより、ただ単に迅速化をするということではなくて、専門の人材を、専門の体制をなるべく集積をして、そして更に言えば、もちろん裁判には、具体的な事件をより納得いく形で解決をしていくという目的と、そして将来の法的予測可能性を作っていくという、この二つの目的があろうかと思いますが、しかし日本の、結局今の裁判の抱える問題は、この二つでいえば、どちらかといえば、やはり個別具体の訴訟関係当事者の納得感というものをより、いかに正にカスタマーサティスファクションを改善をさせていくかと、こういうことだったと思います。 その観点から、もちろん裁判官の方が、より専門な方が集まっていくと、というとともにこの専門委員という制度で非裁判官の方々がそういうチームをお手伝いをしていくということかなというふうに、そういう方向に進み出したということだというふうに理解をいたしておりますが、そういう中で、私は、専門委員、あるいは人事問題については参与員ということだと思いますが、より多くの、かつ優秀な方々にどんどんやっぱり専門委員、参与員として御協力をいただかなきゃいけないというふうに思っております。そのことが正に今回の改革の趣旨に適合すると思いますが。 一点だけお伺いをしたいのは、もちろんお気持ちとしては、専門委員、参与員として世の中の正義の実現のために貢献をしたいと思っておられる方は大勢いらっしゃると思います。しかし、これを受けるとどういう不利益があるのかということをもきちっと分かった上で御協力を、安心してお引受けをいただくということが必要だと思いますので、専門委員になったときの何かこういう義務が生ずるとか、こういう不利益が生ずるとか、そういうことがどういうことがあるのかということについて御説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 専門委員に任命をされ、あるいは具体的事件について指定を受けて関与した場合ですが、これは当然、その職務上知り得た秘密についての守秘義務と、こういうものは負うことになりますが、それ以上に、特に専門委員であるからこういう不利益があるというようなものは今回の法案では考えておりません。
○鈴木寛君 特に不利益がないということでございますので、その点は安心をいたしました。 それでは最後に、少し、ちょっと時間が余りましたので、今日は知的財産の問題で、それが正に二十一世紀の時代、中心となる、そのための権利実現の話を御議論させていただいたわけでありますが、今日は特許庁長官お見えでございますので、特許庁長官は正に日本の知的立国のために様々な御努力をされてこられまして、今もなおその任にあるわけでありますが、今後、正に日本を知的創造立国にするためにどういう点に留意をしながらやっていかなければいけないのかということについての思いのたけを御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(太田信一郎君) いや、突然の御質問をいただきましてあれですが、我が国の場合、昨年二月に小泉総理が施政方針演説で知財立国を国の、国家目標とするということを言われて、知財推進大綱が七月にできました。その後、国会で、臨時国会で知財基本法を成立させていただいて、今年の三月から小泉総理を本部長とする推進本部が立ち上がりまして、現在推進計画を策定中で、正に本日、推進計画がまとまると。 私としては、先ほど鈴木先生からお話があったように、別に、アメリカがプロパテント、確かに十年、二十年進んでいるかと思いますが、要は日本の産業の競争力、企業の競争力を知財でもっていかに強くしていくかということで、やはり関係者、特許庁はもちろんその一翼を担うつもりでございますが、政府全体、あらゆる省庁関係しているかと思います。それから、大学、企業、それぞれの関係者が持てる力と知恵を本当に振り絞って、国を立てられるかどうかというぐらいの重い課題ではないかと思います。 まだまだ関係者は努力が不十分だと思います。私どもも決して十分だと思っていません。特許庁を挙げて今後ともしっかり取り組んでいきたいと思っておりますので、よろしく御支援のほどお願いしたいと思います。
○鈴木寛君 初代特許庁長官は高橋是清だということで、明治十七年に特許庁ができて、第七十二代目が太田長官とお伺いをしておりますが、正に国づくりの根幹というものがいかにこの知的なるものを確立をしていくかということで、引き続き、この二十一世紀、日本を支える基盤として知的財産立国のために院を挙げても、私もその一員として頑張っていきたいというふうに思いますので、そのためのその的確な権利の創造、そして保護、そして活用、そしてその実現ということが今後の司法の現場でも行われることを強く望みまして、私の質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。
○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。 法案に入ります前に、京都拘置所に拘置中でHIV、エイズウイルスに感染している男性被告が、差別処遇とプライバシー侵害を受けたとして京都弁護士会に人権救済を申し立てたと、この問題についてお聞きをいたします。 これ、七月五日付けの各紙で報道されておりますけれども、この男性は、HIV用と書かれた洗面器を人目に触れる場で使用させられたり、それから食器についても、この男性だけは回収されずに自分の部屋で保管を指示をされてきたと、こういうことを訴えておられます。 こういう取扱いが行われてきたというのは事実でしょうか。
○政府参考人(横田尤孝君) お答え申し上げます。 お尋ねの点につきまして、詳細を申し上げますことは、プライバシー等の問題もございますので差し控えさせていただきますけれども、差し支えのない範囲内でこの事実関係について申し上げます。 まず、HIVと書かれた洗面器の問題ですけれども、これは散髪時、当該被告人の散髪時にHIVと書かれた専用の洗面器を使用させられたという報道でございました。 これについて調査いたしましたところ、京都拘置所では、職員一名の立会いの下、理髪係の受刑者が被収容者の散髪を行っているわけですが、その際に使用したかみそりを水をくんだ洗面器で洗浄しているところ、当該被告人の散髪に際し、その側面にHIVとマジックで記入した洗面器を使用したという報告を受けております。 なお、この散髪はほかから区画された拘置所内の理髪室で行われておりまして、この洗面器は本年三月中に二回行われた当該被告人の散髪時以外は理髪室内のロッカー、これは扉付きのロッカーですけれども、に収容しまして、不必要に他人の目に触れるようなことはなかったということであります。つまり、散髪時だけその洗面器をロッカーから取り出して、そしてその当該被告人の散髪のときにだけ使ったということであります。 なお、本年三月末ころ、本人から、洗面器にHIVと書かれていることについて苦情の申出がございまして、そこで、京都拘置所では直ちにその洗面器の使用を取りやめまして、これを廃棄したというふうに聞いております。 それから、食器の点でございますが、これは食事の際に専用の食器を使用させられ、使用後も回収されずに、この当該被告人自身に管理させていたという報道でございました。 これも取り急ぎ調査いたしましたところ、この京都拘置所におきましては、この当該被告人が幾つかの病気を患っているということがございましたので、炊事場から送られてきた食事を本人の居房内に備え付けた食器に本人の面前で移し替えて給与、与えたと、そして食べた後もその食器を回収せずに本人に洗浄させていたということであります。 しかしながら、これにつきましても、本人の心情も考慮し、本年七月一日以降、その取扱いを改めまして、本人の専用食器を施設において管理することとし、食事をあらかじめ本人の専用食器に盛り付けた上で本人に配食することにしているという報告でございます。 以上です。
○井上哲士君 この男性は、地元紙の取材に、何度も改善を申し入れても聞き入れられなかった、最大のプライバシーである病歴が他人に知られ本当に悔しいと、こういうふうに語っておられまして、これ重大な人権侵害だと言わざるを得ません。 平成七年に労働省は、労働基準局長と職業安定局長の連名で、職場におけるエイズ問題に関するガイドラインというのを出しております。この中で、HIVが日常の職場生活では感染しないことを周知徹底し、誤解、偏見による差別や混乱が生じることを防止することが必要だとして、事業者に対して、エイズ教育、それからHIVの感染の有無に関する労働者の健康情報の秘密の保持の徹底、HIVに感染しても健康状態が良好である労働者については他の健康な労働者と同様に扱うことなどを提起をしております。 もちろん、職場と矯正施設では違いはありますけれども、このHIVが日常生活でも感染しないというのはもう社会的な常識のわけですね。なぜそれが拘置所内では通用しないのかと、こういうことが問われております。 今日的な水準でのしっかりとした通達なども出すなど対応すべきだと思いますけれども、その点、どうでしょうか。
○政府参考人(横田尤孝君) 当局におきましては、これまでも文書による指示や通知を発出いたしまして、また各種の協議会で協議するなどいたしましてHIVにかかわる感染防止等に努めてまいりましたけれども、今回の事案にかんがみますと、現状においてはHIVの二次感染防止や職員に対する啓蒙、指導の実施について必ずしも十分に施設に浸透していなかったおそれがありますことから、改めてHIV感染、HIVを含めました感染症対策と、それから患者の人権への配慮につきまして指示の徹底を図りたいと考えております。 以上です。
○井上哲士君 平成三年度に行われた連絡事項、エイズ対策についてというのを見させてもらいましたけれども、ここにありますのは感染防止対策なんですね、あくまでも。先ほど読み上げた労働省のものは、それと同時に、いかに感染者の人権を守るかという水準なんです。全然水準が違うわけですね。 それで、人事院に来ていただいておりますけれども、先日、警視庁に採用された男性が無断でHIVの抗体検査をされまして、感染を理由に辞職を強要されたという問題で損害賠償の訴訟を起こしまして、東京地裁は警視庁に対し、違法性を認めて賠償命令を出しております。これに次いで今回のこういう法務省の問題が起きているわけですね。公の機関の中でなぜこの通常の常識が通用しないのかと、こういう声が今上がっているわけですね。 人事院としても、労働省がかつてガイドラインを出しているわけですから、今日的な水準での対応が必要かと思いますけれども、その点、どうでしょうか。
○政府参考人(小澤治文君) 京都拘置所の問題、これについては詳細については承知していないわけですが、一般論として申し上げれば、HIV感染を理由として差別的な取扱いを行うということはあってはならないことだろうというふうに思っております。 この問題の重要な点というのは、やはり御指摘のとおり、正確な知識の普及というのが一番大事な点でありまして、人事院といたしましては、各府省の健康管理担当者に対する説明会等で、様々な機会を通しまして知識の普及に努めておるわけですけれども、今後ともHIV感染を理由とした差別的な取扱いが行われないように徹底して行っていきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 大臣に伺いますが、この間、刑務所や拘置所内での人権侵害というものがずっとこの委員会でも議論になっていました。それに次いでこの問題が起きているわけであります。一般社会で当たり前のこの人権感覚というものがこういう施設の中でない、人権保障がされてきていないと、こういう問題について改めて大臣の認識と対応について答弁をお願いします。
○国務大臣(森山眞弓君) 京都におきます事案につきましては、今、矯正局長から御説明したとおりでございまして、確かに適切さを欠いていたというふうに私も思います。事実をよく調査いたしまして、今後は当該被収容者の置かれた立場や心情にも十分配慮いたしますよう、また知識も十分に徹底いたしますように、もちろん人権意識の向上にも努めますように、矯正局を通じて指導してまいりたいと考えます。
○井上哲士君 この間の刑務所内での一連の事件も通じまして、また法務省の施設かと、こういう大変厳しいまなざしが国民からあるわけでありますから、この点、本当にしっかりとした対応をしていただきたいということを改めて申し上げておきます。 次に、裁判の迅速化法案について質問をいたします。 午前中の参考人質疑でも、世間の注目を集めた重大事件の中で長期化しているものは、国賠訴訟や行政訴訟における証拠の偏在、国や自治体の応訴態度に問題があると、こういう参考人の陳述もありました。 そこでも出ましたけれども、我が党の緒方参議院議員の自宅が神奈川県警により盗聴されていたと。この事件の国賠訴訟で、東京地裁は国、神奈川県、個人警察官、すべての賠償責任を認めましたけれども、これ、判決までに六年を要しております。 最大の理由は、この関係の警察官全部が不起訴処分にされまして、民事裁判に利用できる刑事事件の証拠が極めて限定をされました。それから、警察は組織を挙げて徹底して否認をしまして、例えば実行警察官四人は尋問呼出しに二度にわたって出頭拒否を繰り返す、二人の警察官は呼出しを受けた尋問期日についても二回も不出頭と。さらに、国はこの被告警察官が神奈川県警に所属するかどうかについての認否すら拒んだ。また、国は、採取した指紋の写真の提出はしたけれども指紋鑑定書の提出は拒んだと、こういういろんなことが出されておりました。 迅速化と言うならばこういう国の応訴態度こそまず改めるべきだと、こういうことかと思いますが、今日は訟務の担当の方に来ていただいておりますけれども、この法案が成立すればこうした応訴態度がどのように変わるのか、その点いかがでしょうか。
○政府参考人(都築弘君) 迅速な裁判の実現というものは国民的な要請と承知しております。 国の訴訟を担当いたします訟務組織といたしましては、体制を十分に整備いたしまして、また審理の充実を損なうことなく、二年以内の判決という目標の実現に向けて誠実に対処してまいりたいと、かように考えております。
○井上哲士君 今指摘をされましたように、例えば、被告警察官が神奈川県警に所属するかどうかについての認否すら拒んだとか、それからなかなか証拠を出してこないとか、そういう言わば国の応訴態度が今の裁判の長期化をさせている、この部分についてきちっと検証し、点検をして改められるのかどうかと、このことを聞いているんですけれども、再度お願いいたします。
○政府参考人(都築弘君) 個別事件の具体的な対応についてここで申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、一般的に申し上げますと、国の事件というものは複雑、困難なものが多く、あるいは多数当事者、さらには専門的知見を要するものが多いわけでございますので、その原因等を十分に検証しながら、今回の迅速化法案の中にも検証制度というものが予定されておりますので、それを踏まえながら慎重な対応をしてまいりたいと、かように思っております。
○井上哲士君 慎重な対応ということがございました。これでは一体この法案ができたからといって何が変わるのかという疑問を持たざるを得ません。 検証するまでもなく明らかな様々な問題についての解決の手が具体的に打たれていないということが、様々な指摘がありましたけれども、長期化が言われるこの国にかかわる裁判についても、今のような答弁でいいますと、結局、実効性がないばかりか、二年以内のできるだけ早くという目標だけが独り歩きをしていくと、こういうことを感じざるを得ないということを指摘をしておきます。 次に、民事訴訟法にかかわってお聞きをいたしますが、今回、提訴前の証拠収集手続が新設をされました。これで証拠の偏在が問題となっているような裁判についてどこまで解決をするのか。これまで出なかったような証拠が出てくるようになるんでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 今回、訴え提起前においても証拠を収集できるようにということで、提訴予告通知をすることによりまして当事者照会が可能となっております。また、裁判所に申立てをして、送付嘱託であるとか調査嘱託をするということも可能になりましたので、従前、訴え提起後でなければ取り得なかった手段が取れるようになったという意味で、今回の措置によりまして訴え提起前に手に入る証拠も増えるということは言えるのではないかと思っております。
○井上哲士君 証拠収集でやはり最大の問題は文書提出命令の範囲が狭いことですが、この点、今回手が付けられておりません。 例えば銀行の貸手責任を問うた変額保険の裁判がありますけれども、焦点は銀行がどういう意図を持って貸出しを行ったのか、これを証明する最大の証拠が稟議書でありますけれども、下級審では文書提出命令が認められたところもありますが、上告審でこれは自己使用文書だということで却下をされているという事態もありますし、雇用における女性の差別裁判でいいますと、立証に必要な人事考課の資料が出されないというのが大問題であります。 原告の分の人事考課資料すら内部文書扱いになっておりまして、会社側はほかの人と比べて著しく劣っているから昇進しないと言うと。裁判所は原告が他の人と比べて優れていることを立証しろと言いますけれども、この比較対象者の人事考課についてはプライバシー、今後の労務管理に支障があるということで提出をされない。原告側にとっては立証不可能な悪魔の証明ということになっていくわけですね。 九八年改正の際に参考にしましたアメリカのディスカバリー制度では、そもそも自己使用文書であるか否かで開示義務が左右されることはないわけです。国対個人とか、大企業対個人というような事件のように、攻撃防御方法が極端に偏っている、こういう当事者間で実質的な公平平等を確保するために文書開示義務の拡大こそ図るべきだと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 現在、法制審議会の民事訴訟・民事執行法部会におきまして民事訴訟法及び民事執行法の見直しに関する議論をしているところでございますが、その部会の議論の中で、御指摘の文書提出命令、特に自己利用文書等に関する文書提出命令の在り方と、こういったものも現在議論が行われているところでございます。 文書提出義務の範囲を更に拡大することが必要であるかどうかということにつきましては、これらの議論の結果を踏まえて検討する必要があると考えております。
○井上哲士君 前回改正のときの同じような議論をして結局広げなかったということになりますと、これは本当に公正で迅速な裁判という国民の期待とは全く反するわけでありますから、この点はやはり思い切った踏み込みが必要だということを改めて申し上げておきます。 それから最後に、人事訴訟の法案についてお聞きをいたします。 これまで地裁で行われていました人事訴訟の裁判が家裁に移管をするということであります。一万件ぐらい増えるんじゃないかというふうに言われておりまして、人的、物的な体制の整備を早急に行うことが必要だと思います。 まず物的体制でありますが、これまでの家裁には審判廷はありますけれども、いわゆる原告、被告側が向き合う法廷はないということでありますが、各家裁に法廷を作ることが必要かと思います。全国調査を実施をしているとお聞きをしておりますけれども、その状況、どういう結果を出して、この点でどういう対策を講じる予定なのか、まずお願いいたします。
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 人事訴訟事件の家裁への移管に伴いまして、現在、家庭裁判所には成人刑事事件を扱う法廷がどこでも最低一つは整備されておりますので、この既存の法廷、審判廷等を有効に活用するための方策を検討いたしますとともに、必要な庁におきまして法廷の改修等の整備を図るために、現在、必要な整備に関する調査及び検討を行っております。今後、秋ごろには恐らく予算の示達等を行うなどして、人事訴訟法の施行までの間に必要な整備を行いたいと考えております。
○井上哲士君 現場でいろいろお話を聞きますと、例えば東京家裁では、交通事故を起こした少年を対象とした交通講習室、これを転用するんではないかとか、それから家事事件に比べて少年事件用が減っているということで、こういうスペースをつぶすんではないか、こういう懸念の声も随分お聞きをいたします。 家裁における少年事件の重要性ということを考えますと、こういうスペースの安易な転用は行うべきでない、新設などもして対応すべきかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 物的体制の整備につきましては、さきに述べましたような調査を行った上で必要な設備を準備したいと思いますが、その際には、やはり現在行われております少年事件や家庭事件の処理に支障を起こさないような形での整備を行うことが必要だと、そういう方向で考えていきたいと思っております。
○井上哲士君 安易な転用は絶対行わないということを強く求めておきます。 人的問題でいいますと、移管に伴って一定の増強はされるようでありますけれども、一体どれだけ増えるんだろうかということが明確でないという下で、例えば年度途中であっても追加的な人的配置などが必要という場面も出てこようかと思いますけれども、こういうときの機動的な対応というものも当然検討されているかと思いますが、その点いかがでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 人的体制の整備につきましては、まず今回の人事訴訟法により、新たに家庭裁判所で人事訴訟事件を扱うということでいろいろな整備が必要になるかと思います。そのうち、家庭裁判所調査官につきましては、家裁への人事訴訟の移管によって新たに関与するということになる点も踏まえまして、今国会において三十人の増員を家庭事件の処理の充実強化ということでお認めいただいたところでございます。 また、裁判官及び裁判所書記官につきましても、これまで人事訴訟事件というのは地裁で行っておりましたので、この際、地裁から家裁へ機動的にシフトすることで基本的には体制整備を組めるのではないかと考えております。 また、年度途中で事件数が急増した場合にどうするかということでございますが、年度当初に認めていただいた増員分に加えまして、既存の人的体制の中で内部努力も含めて機動的に対応していくことになると思いますが、いずれにしましても、地家裁における事件処理状況等も踏まえまして、家裁において適切に人事訴訟の審理に対応できる人的体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 調査官の三十人増員というお話がありました。この家裁調査官は、裁判所の中でも家裁にだけ配置をされている職種で、人間関係諸科学の専門的知識を背景に幅広い職務を行っておられます。 私もこの現職の調査官が書かれた、「わたしは家裁調査官」、それから、「「非行は」語る」家裁調査官の事件ファイルという、二冊ほど勉強させていただきましたけれども、この様々な生い立ちを持った少年たち、そしてその家族への長期の継続的な人間的交わりを通した調査で、少年事件の、起こした少年にとって最善の処遇を考える、非常に高度に専門的な仕事だということは非常によく分かりました。話を聞くにも本当に子供の目線までに下がる、一緒にお絵かきをしたり、何が訴えたいかというのを時間を掛けて向き合って尋ねていく、非常に専門性と同時に骨の折れる仕事かと思います。いろんなエピソードに非常に胸が打たれたわけでありますが、この調査官の専門性という点についてはどのように認識をされているんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 委員、今御指摘いただきましたように、家庭裁判所調査官、家裁におきまして家事事件、少年事件の両方に関与して、少年の更生を図るためにどのような処遇が適切か、あるいは家事事件の紛争解決のためにどのような援助、調整が必要かということを考えて調査等に当たっているわけでございます。 そして、そういう家裁調査官になるためには、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等を専攻して人間関係諸科学の専門家としての研さんを積んだ者がなっておりますので、その活躍というものは家裁にとってなくてはならないものでございますので、いろいろな事件においてその専門性を生かした働きができるように働いていただいていると認識しております。
○井上哲士君 今回の改正案では、この中で家庭裁判所調査官による事実の調査ということが新設で盛り込まれまして、財産分与に関する処分も調査を行うということになります。ただ、こういう事案の特質から見ますと、今申し上げましたような家裁調査官の職種、専門性職種とは異質なものとならざるを得ないんではないかと思うんですね。増員するとはいえ、非常に多忙が問題になっているわけでありますから、こういう専門性とは外れるような新たな職務を行わせるということは問題ではないかと思うんですね。 家裁調査官については、やはり子の監護ということに関する調査を基本にされるべきだと思うわけですけれども、立法に当たっての法務省の見解、そして運用に当たっての最高裁の見解、それぞれお願いをいたします。
○政府参考人(房村精一君) 今回、人事訴訟を家庭裁判所に移管することに伴いまして、人事訴訟に付随いたします附帯の処分、それから親権者の指定と、こういったものについて事実の調査、これを家庭裁判所調査官に命ずることができるようにいたしたわけでございますが、財産分与につきましても、現在においても審判事項でございますので、財産分与の申立てが単独で家庭裁判所の方に参りますと、審判事項としてそれに関する事実の調査は家庭裁判所の調査官の職務の範囲に入っておりますので、今回特に新たに加えたということではございません。 どの程度活用するかということは当該裁判体の判断なさることではありますが、それなりに家庭に関する知識、識見、そういうものを非常に高いものを持っている調査官でございますので、財産分与に関しても当然有効に活用できる道はあるのではないかと、こう考えて調査官の調査の対象としたわけでございます。
○最高裁判所長官代理者(山崎恒君) 今、法務当局から御説明がありましたように、現在も財産分与及び子の監護に関する処分等両方に家裁調査官関与をしているわけでございますが、やはり調査官の専門性が一番発揮できる分野というのは、委員御指摘のとおり、財産分与というような財産的な問題よりも、子の監護等の、子の福祉に関する事項だと思います。今後とも、人訴移管に伴いましての家裁調査官の関与もその方が中心になって運用されていくものと考えております。
○井上哲士君 家裁調査官の本当の専門性に沿った運用がされますことを強く求めておきますし、この人事訴訟が家裁でも行われることによりまして、調停が拙速に打ち切られて家裁の特質が失われるのではないか、こういう懸念の声も聞きますけれども、こういうことがないようにこの特性を生かした運用がされることを改めて強く求めまして、質問を終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。 午前中、参考人質疑のときにもちょっと申し上げたのですが、この裁判迅速化法案について、立法目的が本当に妥当なのかどうかという根本的な疑問があります。ちょっとこれは午前中にも言ったので、二度言うのもちょっとなんですが、宅配ピザ、ドミノピザは三十分以内に届けなければ代金を払わなくてもよいというふうにしていました。そうすると、三十分以内に届けなければならないために、オートバイで無理な走り方をして、人身事故が起き、多額の損害賠償請求が認められて、結局ドミノピザは三十分以内に届けるということをやめました。 私は、宅配ピザも好きですが、連絡をしますと、できるだけ早くお届けしますと言って配達をしてくれます。裁判も実は似た面があるんじゃないでしょうか。迅速な裁判は望ましいことです。しかし、三十分以内にピザを届けるということが場合によっては現場に無理を強いるように、二年以内という努力目標を掲げることで現場に物すごいしわ寄せが来るんじゃないか。裁判官はあと二年まであと二か月、三か月、いや一か月を切った、そこで非常に無理をすると。あと半年以内にこの事件を上げなくちゃなんていう心理状態に本当になってしまうのではないか。つまり、ピザを三十分以内にお届けします、あるいは二年以内に裁判を終わりますというスローガンは大変美しく、格好いいんですけれども、それが現場に適用するとむちゃくちゃなことが起きてしまうと。 ピザの宅配三十分の場合は交通事故になったわけですが、裁判の場合、一件一件重要で、現場へのしわ寄せたるやすごいものが起きるのではないかというふうに思いますが、改めてその立法目的についてどうなのか、現場のしわ寄せは起きないのかという点について、改めてお聞きをします。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘の点、そういう懸念がないのかという点については、この法案の中でも二条一項で充実した手続を実施することと。要するに、やることはやった上でということをはっきりうたっております。また、裁判所の責務といたしましても、六条で充実した手続を実施することにより、可能な限り目標を実現するように努めるものとするということを言っておりまして、宅配便の三十分、これが二年でございますけれども、二年来ちゃったらそこで終わりよということは言っておりません。また、衆議院における議員修正によりまして、第一条のところで充実した手続、これが盛り込まれているわけでございまして、この法案は二年という目標、それを目標として裁判をやっていきますけれども、それはやることをやった上で、その上で二年ということを実現していきなさいということでございまして、また可能な限りと言っておりますので、可能でないものはできないということになろうかと思います。そのできない原因はどうしてかということをよく調べて、その原因を取り除くような施策に結び付ける、そういうような迅速化のシステムを作り上げていこう、こういうことでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○福島瑞穂君 ちょっと不勉強で申し訳ないんですが、やっぱりこの法律、非常に変だと思うのは、やっぱり二年という期限が付いていることに違和感を持つと思うんですが、諸外国でこのような期限を切って裁判を終わることが望ましいという同種の法律案、法律を持っている国は果たしてあるんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ちょっと突然のお尋ねでございますので、今データを持っておりませんけれども、裁判によってはこの期間内に第一回の期日を入れなきゃいかぬとか、あるいはこの期間内に判決をしなければならない、個別に置いているものはございます。今ちょっとデータがございませんので申し上げられませんけれども、日本でも百日裁判、正に個別に置いているわけでございます。そういったたぐいのものは世界でも幾つかあるということでございますが、全体として、裁判を全体に二年以内とか何年以内にという、そういうような法律は耳にはしておりません。
○福島瑞穂君 実は、私も全部調べたわけではないんですが、同種の一般的にこういうふうに期限を切って、特に二年とするような立法例を聞いたことも見たことも全然ないんですね。やはり変じゃないかというふうに思います。個別のケースで努力目標を掲げることは理解ができます。しかし、これは民事も刑事もいわゆる行政裁判も全部二年ということで、他に立法例がないというのは何かの理由があるのではないかというふうに思います。 次に、先日、鶏、卵ということで、卵が出てくるかどうかということが非常に重要なわけです。 迅速な裁判を実現するには、今朝も藤井参考人がおっしゃったんですが、証拠の全面的事前開示と捜査の可視化が不可欠であると。裁判の迅速化をするために何が必要か、またちょっと論点がずれますが、裁判員制度を導入するのにその二つが不可欠であるということははっきりしていて、なぜ今の段階ではっきり打ち出せないのでしょうか。 今日、裁判迅速化法案を議論するに当たり、証拠開示の全面開示化と捜査の可視化についてもっと踏み込んだ答弁をお願いします。
○政府参考人(山崎潮君) 証拠開示につきましては前回御質問がございまして、私、答弁させていただいておると思いますが、現在、大きく分けて二つの考え方をたたき台として、その二つ以外の議論を封じる意味ではございませんけれども、今鋭意検討中ということでございます。これ、検討会を経てやっておるわけでございますので、今、私ども事務局の方がこうする、ああすると言ったら事務局主導ということになって、また御批判も受けるわけでございますので、今日の段階ではそういう答弁は差し控えさせていただきたいということでございます。 それから、可視化の点についての問題でございますけれども、これは計画にも載っているところでございますけれども、例えば被疑者の取調べ状況について、取調べの都度書面による記録を義務付ける制度、こういうものについては今関係省庁等で検討を行っておりまして、そう遠くない時期にはある種の結論が出てくるであろうというふうに期待しております。 それからもう一つ、多分、可視化の中では、その取調べ状況の録音、録画等のことも言われているんだろうというふうに思いますけれども、この点につきましてはもう御案内、議員御案内と思いますけれども、改革審議会においても議論がされておりまして、そこの取りまとめでございますけれども、刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から、現段階でそのような方策の導入の是非について結論を得るのは困難であり、将来的な検討課題ととらえるべきであるというふうにされております。 私どもは、この点を踏まえまして、現在、この可視化のいわゆる録音とかそれから録画でございますけれども、この点については私ども本部の検討事項には入っていないということで、検討会では議論の対象にはしていないという状況でございます。ただ、これは将来の検討課題ということでございますので、政府全体としては将来の検討課題、こういう認識でございます。
○福島瑞穂君 裁判員制度は導入されるだろうというふうに言われていますが、もちろん今検討中です。裁判迅速化法案が先に出てきていると。捜査の可視化については、録音テープやビデオテープなどについては今は入っていないと。というと、実際裁判員制度を導入し、裁判は迅速に終われと言われながら、捜査の段階で任意に発言がなされたのか、脅迫によってなされたのかをすぐさま検証することができないわけですよね。 そうしますと、やはり裁判員制度あるいは裁判の迅速化の前提要件が欠けているというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) そういう御意見もあることは、私も承知しているつもりでございます。ただ、これにつきましては、いろいろなまた逆のマイナス面もあるということも言われておりますので、その点はよく検討しなければならないということでございます。 確かに、裁判員制度につきまして、これを導入することになれば、とにかく短時間で裁判員の方に理解してもらえる、こういうような法廷、これを作り上げていかなければならないということになります。その点につきまして、現在私どもの検討会でどういう方法が可能であるか、鋭意検討中でございます。今、第二ラウンドの第一巡目の議論をしております。これが秋になれば、その第二弾の二回目の議論を経て、もう少し詰めたたたき台、これをお示しして更に議論を深めていきたいということを考えております。もうしばらくすればある種の方向が見えてくるということで、今日の段階ではこれで御勘弁をいただきたいと思います。
○福島瑞穂君 捜査の可視化をしないまま迅速化法案、そして裁判員制度の導入がされることには本当に反対です。今までの冤罪事件は、ほとんどすべて自白調書の任意性を弁護士が警察官などを呼び、非常にねちねちというか長時間尋問し、物的証拠と供述、自白調書の不一致を暴いていくとか、物すごく時間を掛けなければ証拠能力を争うことが本当にできません。そういうことなくしてあっという間に裁判員制度で分かりやすくとなれば、迅速な有罪判決になってしまうと、そのことについていかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) これにつきましては、どういう方法を導入していくかということ、様々な方法があろうかと思います。供述調書に頼るということではなくて、あるいはもう法廷における供述ですね、これを中心にやっていくとか、そういうようないろいろな方法があろうかと思います。 いずれにしましても、私どもは、裁判がスムーズにいくような方法、特に裁判員制度を導入するということになればそれなりに御協力をいただくわけでございます、国民の方にですね、ですから、そこで時間が掛からず分かりやすいような方法を考えていくと。 例えば、今議論で一つ挙がっているのは、証人に当たるような方、そういう方について起訴の前に裁判所に証人尋問をお願いしまして、客観的にそこで供述をしておいていただくとか、そういうようないろんな方法を今検討中でございます。ですから、必ずしも今、議員がおっしゃっているような方法だけではない、いろんな方法があり得るということでございます。
○福島瑞穂君 是非、前提要件ということでそれは必要なことだと思いますので、よろしくお願いします。また、裁判員制度、迅速な裁判の前提要件としてだけではなく、B規約からも勧告を受けている、証拠開示と捜査の可視化は言われていることなので、その点についてもお願いします。 次に、検証のことについてお聞きをいたします。 午前中の参考人質疑の中で、藤井参考人が迅速化、裁判迅速化法案のポイントは検証だということを力説をされました。どういう検証がなされるのか。非常に印象的だったのは、マイナスという評価をやめると、どうしてこの裁判が迅速にできたのかというプラスの体験を重ねていくことが、分析が必要ではないかということ、それから第三者機関、ごめんなさい、第三者機関というのはちょっとカットで、そのためには法曹三者の協同に基づくようなものというものが検証で必要ではないかという意見がありましたが、いかがでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) 確かに、検証についてまずかった点を浮き彫りにさせるという検証もございますし、良かった面、これを取り上げて将来の施策に結び付けると、これ両面私は必要だろうというふうに思っております。そういう意味では、いい面、これを浮き彫りにさせるような点も私も必要だというふうに思っております。 それから、もう一点の御指摘でございますけれども、検証について三者で云々と、これ多分福岡方式のことを念頭に置かれて言われているんだろうと思いますが、それはそれとして私、評価をしたいというふうに思っております。 ただ、これは当事者の合意がある場合に可能になるものでございまして、これは、これ民事事件ですね、民事事件で両当事者、裁判所全部合意の下でやっているわけでございますので、全部の事件を対象にしているわけではないわけで、限られた事件。今回の調査、その検証につきましては全事件が対象になっていくわけでございますので、あの方式をそのまま導入することはなかなか難しいというふうに私ども考えておりまして、あのようなやり方、これは運用の努力でそれはそれとしてやっていただきたいと思いますけれども、私どもが考えている調査はそういうわけにはまいらないということを御理解賜りたいと思います。
○福島瑞穂君 条文八条は最高裁判所による検証を規定をしています。でも、もう御存じのとおり最高裁は人事権を、裁判官に対する人事権を持っているところなので大変やはり危惧があります。現場の裁判官の統制に本当になってしまうのではないか。最高裁としては、この検証制度が現場の裁判官の統制にならないためにどのような措置を考えていらっしゃるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 裁判所、今までこういう形で統制をしてきているんじゃないかというふうによく御指摘受けるんですけれども、最近弁護士任官された方も、裁判所ほど自由で濶達なところはないというふうにいろんなものに発表されているところでありますから、そういった統制というような観点で臨んだことはございません。 ただ、今回、先ほど来の御議論を拝聴しておりましても、あくまでも迅速化法は努力目標といいますか、努力規定というふうに考えております。また、その迅速化を過度に意識する余り、先ほどのドミノピザではありませんが、生焼きの状態で判決するというようなことになるとこれは大問題だろうと思っております。 先般の長官・所長会同でも、先日お話し申し上げましたとおり、この機会に改めて裁判の適正というものが言わば裁判の生命線である、これをないがしろにすることがあってはならない、この機会に裁判官それぞれ各自がそこの部分を十分自戒していくいい機会にしなければならない、こういうことで大多数の皆さんが御発言があったというところでございます。 また、裁判所としてこの後どういうふうにその辺りを考えていくかということになりますけれども、まず、検証の仕方というものについて、できる限りその外形的な事実というものに着目し、かつまた事件を類型化するということで個々の事件について細かにそれを分析するというような形のものはできる限り避けたいというふうに思っております。 また、迅速化が成りましても、例えば控訴率が上昇した、あるいは控訴取消し、控訴審における取消し率、破棄率というものが上昇してきているということになりますれば、正に議員が御懸念されているような病理現象が現れたということにもなりかねませんので、その辺りもきちんと見ながら対応してまいりたいと考えているところであります。
○福島瑞穂君 鶏と卵の関係にもなるんですが、この最高裁判所が検証をやって、じゃやっぱり証拠の事前全面開示が必要である、捜査の可視化が必要である、根本的な大きな制度の中での提言になるのではなくて、むしろやはり個々の事件についてのせめて一般化にとどまってしまうんではないか、つまり検証の射程距離がもっと広範囲なところに行くのではなく、狭くなってしまって、裁判の迅速化のために対策が矮小化されてしまうんじゃないか、そういうふうにも思いますが、この検証を行った結果、いやもっと証拠の全面開示が必要である、捜査の可視化が必要である、そもそも日本のこの捜査の在り方がおかしいんじゃないか、射程距離は広がっていくんでしょうか。
○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘の事項について、そうなるかどうかはちょっと別としまして、ただ、個々の事件で運用でその解決できるものはやっていただきますけれども、そうでなくてやはり手続が必要だというものについてはもう手続を変えざるを得ないだろうと思う、そういうことを全面に浮き彫りにしてほしいというのがこの八条の趣旨でございます。 これに基づきまして、政府等の責務がございますので、そうなりますと政府として、法案として改正をしていかなければならない責務が生じるわけで、これが手続じゃなくて人だと、あとは人に伴う例えば物的施設だということになれば、その面の手当てもしていかなければならない、これも責務ということでございますので、そういう形で実現をされていく、また運用をやってみる、また問題があるかどうかをやっていくということで、徐々に徐々に目標に向かってやっていくと、こういうシステムでございます。
○福島瑞穂君 なぜこういう質問をするかといいますと、前回も言いましたけれども、通達、今年の一月三十一日、最高裁判所事務総局刑事局長が出した「係属二年を超える刑事事件の調査について」という通達があります。 これは非常に細かい中身で、しかもチェックをしていく。釈明要求をめぐる紛議の解決に時間を要した、裁判官忌避申立ての処理に時間を要したという細かい中身が書いてあって、何が問題なのか、これは本当に何か夏休みの宿題をなぜできなかったか細かく書くみたいな、本当に細かく、個別的な、具体的な事件についての細かいチェック項目が入っています。これは司法権の独立からいってもおかしいですし、それから憲法上の権利以前の問題として細かに、細かく細かく具体的な事件について現場の裁判官が二年を超えたらこのアンケートに答えなくちゃいけないということは、やはりさっきのドミノピザじゃありませんけれども、とっても超えられないという状況になってしまうんじゃないでしょうか。 こんなことが、将来またアンケートが取られるんでしょうか。どういうことがされるかについて教えてください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 先日、井上先生の方からもその点、御指摘いただきましたけれども、今回のその一月の刑事局長の調査は単発的なものでございまして、またその目的も今回の迅速化法とは全く関連しないものであります。 先ほど来出ておりますけれども、裁判員制になりますれば、例えば非常に二年というような形で審理期間がそのままいくということはとても考えられません。せいぜいが二週間とかそのぐらいのことにしなければいけないだろうと。そういうところを考えたときに一体どこを見ていかなければならないのか、そういったときの実証的データというものを国会の方にも提出しなければならないということでそういうものを取ったという次第でございます。その辺り、御理解いただきたいと思います。
○福島瑞穂君 単発的なものだというのは前回も御答弁いただいたんですが、実は、でも同じような状況が起きてしまうのではないか。国会に報告をするわけですから、二年以上掛かった事件が何件ありというふうになるわけですね。現場の裁判官にしてみれば、二年以上掛かった事件というのはもう分かるわけですから、自分が担当したのかだれが担当したのか。その中で、現場がとても二年以上は掛かってはいけないということで、事件がゆがめられてしまうのではないか。その点についてはいかがですか。あるいは、そうならないためにどういう工夫を具体的にされるのか、検証のやり方等について工夫をするということがあればお答えください。
○最高裁判所長官代理者(中山隆夫君) 今後、その辺り、よう検討してまいりたいと思っておりますけれども、基本的に裁判官の独立というものは、これは司法にとっての一番最も大事なことでありますから、そこをないがしろにする、あるいはそこに危ない目に遭わせるというようなことのないように、他の法曹二者の知恵もおかりしながら検討してまいりたいと思っております。
○福島瑞穂君 是非、具体的にどうというのはなかなか難しいかもしれませんが、一番しわ寄せが来るのは現場だと思いますし、司法権の独立が侵されれば被害を受けるのはまた現場の当事者ですし、国民ですから、その点についてはくれぐれも、二年以上超えた事件を異端視したりせずに、その点はお願いをします。 ちょっと細かくなるんですが、済みません、人事訴訟手続法の見直し等に関する要綱中間試案に対する意見書が日本女性法律家協会から出ておりますが、ちょっとこれは質問通告をしていないので、今、もう今日が最後になってしまったので、質問させてください。 参与員のことについて、参与員を和解に立ち会わせること及び参与員に直接の発問権を認めることに女性法律家協会は反対をしています。これは、不用意に参与員が発言することでむしろ不信感が出るのではないかという理由から反対をしているのですが、参与員の位置付けについてちょっと教えてください。
○政府参考人(房村精一君) 今回、人事訴訟において参与員の関与を認めるというのは、国民の良識を人事訴訟に反映するという観点からでございます。したがいまして、審理に立ち会って事件について裁判官に意見を述べるということでございますが、同時に、和解の場にも立ち会って意見を述べていただくということも参与員の職務の範囲に入っております。 ただ、具体的にどういう形の関与の仕方がいいのかというのは、それぞれの個々の事件の状況にもよりますでしょうから、そこは裁判官の訴訟指揮の範囲内で必要な関与をしていただくということになるのではないかと、こう思っております。
○福島瑞穂君 民事訴訟法等の一部改正案では専門委員が、そして人事訴訟法では参与員という新しい人たちが加わるわけですが、研修等も非常に必要ではないか。つまり、参与員がドメスティック・バイオレンスについて理解なく例えばそこで発言をしたりすれば非常に問題なわけですので、参与員あるいは専門委員の人たちの啓発、教育、訓練、そのことなどについてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 基本的に参与員にどのような、あるいは教育等をするかということは裁判所において御検討いただけるのではないかと思っておりますが、参与員の方に関与を認めます一つの理由は国民の良識を裁判に反映させるということですから、逆に参与員の考え方によって裁判官が、国民がこういう事件についてこういうことを考えているということを知るというのも今回の参与員の制度の一つの眼目でございますので、そういう点を含めて裁判所において御検討いただけるのではないかと思っております。
○福島瑞穂君 でも、しかし、研修等を是非よろしくお願いします。調停委員の人たちに対する研修なども活発になっていますが、理解がないと、夫もああ言っているからあなたも我慢しなさいとか、浮気ぐらい我慢しなさいというような人も本当にいるわけで、そうしますととんでもないわけですから、是非、参与員の方の教育、研修、啓発なども是非よろしくお願いします。 民事訴訟法等の一部改正案の審理の計画化なんですが、審理の計画を定めることは非常にいいとも思いますが、あくまでも計画ですので予想外のことが起きる、あるいは原告、被告が言わなかった新しい事実が出てくる、あるいは新しいことが別の調査によって明らかになるということは起こり得るわけです。この辺の審理の計画を定めることの妥当性、問題点についてどうお考えでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) やはり、事件を的確に訴訟運営しようと思いますと、当事者と十分協議をして計画を立てて、それに従って進めていくということが必要になろうかと思います。 ただ、おっしゃるように、事件というのは生き物ですから、当初予想しなかったような状態が出てくるということも十分あり得るわけでございます。それに備えて、今回の計画につきましては、「裁判所は、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方と協議をし、その結果を踏まえて第一項の審理の計画を変更することができる。」ということで、柔軟に対応できるように法律では配慮しておりますので、これを活用して適切に計画を変更して運営をしていただけるのではないかと、こう考えております。
○福島瑞穂君 東京地裁又は大阪地裁の管轄地域以外での当事者が訴訟を追行する上での負担が特許等で出てくるのではないかという意見が参考人から出ました。地方でも、要するに東京高等裁判所の専属管轄みたいになりますと、地方から来るのに大変不便であると。地方でも裁判を可能とする競合管轄化とすべきではないかという意見が午前中、参考人から出ましたが、いかがでしょうか。
○政府参考人(房村精一君) 今回、特許権等の訴訟につきましては、専門的な処理体制の整っております東京と大阪の専属管轄にいたしましたが、これは現代社会における特許等の重要性にかんがみますと、やはり専門的な体制の整ったところで適正迅速に結論を出すということが極めて重要であると、こういうことから専属管轄にしたものでございます。 ただ、地方在住の方がそれによって不当な不利益を被りませんように、損害又は遅滞を避けるために必要がある場合には移送を認めておりますし、またテレビ会議システムあるいは電話会議システム等を用いまして地方の方が東京、大阪に出頭しなくても期日に参加できると、こういう道も現行民事訴訟法でも用意されておりますので、そういうものを活用することによって過大な負担を掛けることは避けられるのではないかと、こう思っております。
○委員長(魚住裕一郎君) 時間ですが。
○福島瑞穂君 是非、将来、是非検討もお願いします。 時間ですので終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御発言もないようですから、三案に対する質疑は終局したものと認めます。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、青木幹雄君が委員を辞任され、その補欠として小泉顕雄君が選任されました。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) これより三案について討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○井上哲士君 日本共産党を代表して、裁判迅速化法案、民事訴訟法等改正案に反対、人事訴訟法案に賛成の討論を行います。 まず、裁判迅速化法案についてです。 反対理由の第一は、裁判の長期化の克服のための具体的な方策を取ることなく裁判の審理期間の具体的数字目標を設定することになれば、迅速化の名の下に拙速な裁判を国民に押し付けることになり、裁判の命である真実の発見がないがしろにされ、裁判の公正、公平、適正を犠牲にしかねないからであります。これでは、刑事事件にあっては冤罪のおそれ、民事事件にあっては正当な権利の救済が害されるおそれが生じることになり、認められるものではありません。 今求められていることは、裁判の人的・物的充実や証拠が偏在している事件の問題を解決するための挙証責任の転換、証拠収集手続の抜本的改善、検察官手持ち証拠の全面開示、取調べ過程の可視化などを進めることであります。 反対理由の第二は、迅速化法案によって予定されている最高裁判所による検証が、憲法で保障されている裁判官の独立を侵害する危険があることです。現に、最高裁が、二年を超える刑事未済事件について、個々の裁判官、裁判体の認識にまで踏み込んだ調査を行っていることが審議の中で明らかになりました。これは、外形的、客観的な事実の調査にとどめるとしていた最高裁の説明を明らかに逸脱した調査であります。人事権を握っている最高裁事務総局が未済事件を対象としてこういった調査を行うことは、裁判官の独立を侵害するのみならず、個々の裁判官が萎縮してしまい、裁判迅速化のために必要な証拠調べを行わないなど、裁判の拙速化、粗雑化が進むことは明白であります。 なお、衆議院において修正をされましたが、本案のこれらの問題を本質的に解決するものではありません。 次に、民事訴訟法等改正案についてです。 反対の理由の第一は、審理計画、攻撃防御方法の提出期間、時機に後れた攻撃防御方法の却下の制度を創設することで、迅速化ばかりが強調されてしまい、裁判の拙速化、粗雑化が進み、裁判の公平性、真実発見の要請を害するおそれがあることです。遅延している民事訴訟の多くは、労働事件、公害事件、薬害事件など、国や大企業などを被告とし、証拠が偏在をしている訴訟であります。この問題の根本的解決のためには、証拠収集手続の抜本的改善や挙証責任の転換などが必要です。 反対の理由の第二は、本法案で創設される専門委員の中立公平性が保障されていないことであります。また、当事者が専門委員の意見を直接弾劾できないことも問題です。さらに、専門委員の選任をもって裁判所が鑑定の採用に消極的になるおそれも指摘されております。 以上、反対の理由を申し述べまして、討論を終わります。
○委員長(魚住裕一郎君) 他に御意見もないようですから、三案に対する討論は終局したものと認めます。 これより採決に入ります。 まず、裁判の迅速化に関する法律案の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、千葉君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました裁判の迅速化に関する法律案に対し、自由民主党・保守新党、民主党・新緑風会、公明党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 裁判の迅速化に関する法律案に対する附帯決議(案) 政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。 一 裁判所における手続の迅速化については、その手続において当事者の正当な権利が保障され、また、当事者の納得の得られる適正・充実した審理が行われることが前提であり、二年以内の終局目標のみにとらわれた拙速な審理とならないよう、十分留意すること。 二 裁判所における手続の充実と迅速化を一体として実現するため、民事裁判における証拠収集手続の一層の拡充並びに刑事裁判における証人尋問中心の公判手続の実施、検察官手持証拠の事前開示の拡充に努めるとともに、取調べ状況の客観的信用性担保のための可視化等を含めた制度・運用について検討を進めること。 三 最高裁判所による検証については、裁判の独立及び関係者のプライバシーを十分尊重するとともに、総合的、客観的かつ多角的な検証を確保するため、法曹三者の協力による裁判手続の実状を踏まえた検証手続や外部有識者の関与した検証を実施するなど、必要な措置を講ずること。また、検証に当たっては、裁判官に対する人事評価等、検証の目的以外に流用されることのないよう、適正な配慮をすること。 四 裁判の迅速化に資するため、裁判官、検察官及び関係職員の増員並びに裁判所施設の拡充など、人的・物的体制の整備を図ること。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 多数と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、森山法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森山法務大臣。
○国務大臣(森山眞弓君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと思います。
○委員長(魚住裕一郎君) 次に、民事訴訟法等の一部を改正する法律案の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 次に、人事訴訟法案の採決を行います。 本案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、千葉君から発言を求められておりますので、これを許します。千葉景子君。
○千葉景子君 私は、ただいま可決されました民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案に対し、自由民主党・保守新党、民主党・新緑風会、公明党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び人事訴訟法案に対する附帯決議(案) 政府及び最高裁判所は、両法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。 一 審理の計画については、当事者との協議により、当事者双方が納得した上で実施されるよう努めるとともに、適正な審理の計画を定めることにより迅速かつ充実した裁判が行われるよう、その趣旨並びに要件及び手続について周知徹底を図ること。 二 専門委員制度の導入については、専門委員の中立性・公平性の確保及び専門委員が関与する場合の手続の透明性の確保について十分配慮するとともに、その趣旨及び手続について周知徹底し、その適正な運用が図られるよう留意すること。 三 民事訴訟法改正後の鑑定人に対する質問については、当事者の鑑定人に対する質問権を制約するものではないことを周知徹底すること。 四 特許権等に関する訴えの専属管轄化については、専属管轄化に伴い地方在住者の裁判を受ける権利が不当に害されることがないよう十分配慮するとともに、今後知的財産訴訟への体制強化等の状況を踏まえ、必要な場合には見直しを行うこと。 五 人事訴訟における当事者等の尋問の公開停止については、憲法の裁判公開原則の例外であることにかんがみ、適正な運用が図られるよう留意すること。 六 離婚訴訟等における家庭裁判所調査官による調査結果については、透明性の確保及び当事者の権利の保障のため、当事者に開示されることが原則であり、閲覧等を制限することができる場合が限定されていることについて適正な運用が行われるよう、その趣旨を周知徹底すること。 七 人事訴訟の家庭裁判所への移管に伴い、その審理の充実に資するため、家庭裁判所の裁判官及び職員の増員など、人的・物的体制の拡充を図るとともに、家庭裁判所に移管する訴訟の範囲については、今後の法の運用の状況を見つつ、必要に応じ検討を行うこと。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) ただいま千葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(魚住裕一郎君) 全会一致と認めます。よって、千葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、森山法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森山法務大臣。
○国務大臣(森山眞弓君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。 また、最高裁判所にも本附帯決議の趣旨を伝えたいと存じます。
○委員長(魚住裕一郎君) なお、三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。 政府から趣旨説明を聴取いたします。森山法務大臣。
○国務大臣(森山眞弓君) 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。 近時、交通の発達により国際的な人の移動が日常化し、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増え、特に、殺人や誘拐、強盗等の重大な犯罪の被害に遭うことも少なくありません。 刑法は、明治四十年の制定当時におきましては、日本国外で日本国民に対して一定の罪を犯した外国人についても刑法の適用を認める旨の規定を有しておりましたが、昭和二十二年の刑法改正の際に、当時の諸外国の立法例等を踏まえてこの規定は削除され、現在に至っております。 もとより、日本国民が被害者となった場合であっても、日本国外において行われた犯罪については、犯罪地国にその犯人の処罰を含めその対応をゆだねることが相当である場合が多いものと思われますが、日本国外において日本国民が犯罪の被害に遭う機会が増加している今日、生命・身体等に重大な侵害をもたらすような犯罪の被害を受けた場合においても、我が国の刑法をおよそ適用できないとすることは、国外にいる日本国民の保護の見地からも妥当であるとは言い難く、また、現在では、一定の場合に、自国民に対して犯罪を行った自国民以外の者の国外犯を処罰することは、諸外国の立法例においても認められるところとなっております。 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、日本国民の保護の観点から、日本国民が殺人等の生命・身体等に対する一定の重大な犯罪の被害を受けた場合における国外犯処罰規定の整備を行おうとするものです。 この法律案の内容は、日本国外において日本国民に対して強制わいせつ及び強姦の罪、殺人の罪、傷害の罪、逮捕及び監禁の罪、略取及び誘拐の罪並びに強盗の罪を犯した日本国民以外の者に刑法を適用することとするとともに、その他所要の規定の整備を行うものです。 以上がこの法律案の趣旨でございます。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 ─────────────
○委員長(魚住裕一郎君) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 政府から趣旨説明を聴取いたします。森山法務大臣。
○国務大臣(森山眞弓君) 司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 我が国においては、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法を国民に身近なものとし、国民の多様かつ広範な要請にこたえること等を目指した司法制度の改革が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、司法制度改革の一環として、簡易裁判所の管轄の拡大及び民事訴訟等の費用に関する制度の整備、民事調停官及び家事調停官の制度の創設並びに弁護士及び外国法事務弁護士の制度の整備を行うことを目的とするものであります。 以下、法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。 第一に、簡易裁判所の取り扱う民事訴訟事件の訴訟の目的の価額の上限を百四十万円に引き上げるとともに、訴えの提起の手数料の額の見直し及び民事訴訟等の費用の額の算出方法の簡素化を行うこととしております。 第二に、弁護士から任命される民事調停官及び家事調停官が裁判官の権限と同等の権限をもって調停手続を主宰する制度を創設することとし、民事調停官及び家事調停官の任命、権限、手当等について所要の規定を置いております。 第三に、企業法務の担当者及び公務員等であって司法試験合格後に所定の法律関係事務に従事し、かつ、所定の研修を修了した者に対して弁護士資格を付与するなどの弁護士となる資格の特例を拡充するとともに、弁護士について、弁護士法上の公務就任の制限の撤廃及び営利業務従事の制限の緩和、弁護士の報酬規定の会則記載事項からの削除、日本弁護士連合会に綱紀審査会を創設するなどの綱紀・懲戒制度の整備を行うこととしております。 第四に、外国法事務弁護士による弁護士の雇用並びに外国法事務弁護士と弁護士等との共同事業及び収益分配に関する規制を緩和するとともに、それに伴う弊害を防止するための所要の規定を置いております。 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。 以上がこの法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
○委員長(魚住裕一郎君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員漆原良夫君から説明を聴取いたします。衆議院議員漆原良夫君。
○衆議院議員(漆原良夫君) ただいま議題となりました法律案に対する衆議院における修正部分について、提出者を代表して、その概要を御説明いたします。 弁護士資格の特例に関して、原案では、司法試験合格後、衆議院議員又は参議院議員の職にあった期間が通算して五年以上になる者、又は、検察庁法第十八条第三項の考試を経た後いわゆる特任検事の職にあった期間が通算して五年以上になる者、いずれについても弁護士資格取得に研修を要件としておりませんが、修正案では、いずれの場合も、司法試験合格後、いわゆる企業法務や公務員の職務に従事した期間が通算して七年以上になる者と同様、所定の研修を修了することを要件としようとするものであります。 また、それに併せ、その他所要の規定の整備をしようとするものであります。 以上が本法律案に対する衆議院における修正部分の概要であります。 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。 以上でございます。
○委員長(魚住裕一郎君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時十九分散会