経済産業委員会 第7号
- 発言数
- 146 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 2002/11/21
会議録
○委員長(田浦直君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをします。 知的財産基本法案の審査のため、本日の委員会に内閣官房内閣審議官平井敏文君、司法制度改革推進本部事務局次長松川忠晴君、内閣府政策統括官大熊健司君、法務大臣官房審議官原田晃治君、法務省刑事局長樋渡利秋君、財務大臣官房審議官藤原啓司君、文部科学省科学技術・学術政策局長山元孝二君、文部科学省研究振興局長石川明君、文化庁次長銭谷眞美君、農林水産大臣官房審議官坂野雅敏君、経済産業大臣官房審議官桑田始君、経済産業省産業技術環境局長中村薫君及び特許庁長官太田信一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田浦直君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(田浦直君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りします。 知的財産基本法案の審査のため、来る二十六日午前十時、本委員会に東京大学名誉教授小柴昌俊君、三菱電機株式会社代表取締役社長野間口有君及び弁護士・弁理士・知的財産戦略会議委員松尾和子君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(田浦直君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。 ─────────────
○委員長(田浦直君) 知的財産基本法案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言をお願いします。
○近藤剛君 おはようございます。自由民主党の近藤剛でございます。 ここ十年間、世界のパラダイムは大きく変化をしてまいりました。その一方で、日本経済は長期低迷にあえいでいるわけであります。日本は、民もそして官もかつての成功体験を払拭できないでいるということが言えようかと思います。かつての制度はもう古い、そして十分に機能をしていないと、そのように考えております。 その結果として、日本経済の不振があるわけでありますが、要するにその根本原因は、民間需要だけでは経済をフル稼働できない、そしてGDP比で八%を超える公共投資なくしては景気が崩壊をする、そのような経済構造、そして一方で、その規模の公共投資をもはや維持できない財政危機にあるということが言えようかと思います。公的債務の残高は、GDPの一四〇%に達しております。これは、先進国中最悪の状況であります。 したがって、構造改革の目的は、民間需要を創出しながら公的支出を削減をするということによりまして、経済自律成長と財政再建の双方を達成をすることであろうかと考えております。構造改革の基本が官から民へと言われる真の意味はそこにあるわけであります。民間需要創出の条件は企業の経済活動の場としての我が国の競争力回復であろうかと思います。強靱な国際競争力を持った新たな産業構造を構築していくことが我が国にとりまして不可欠であります。 そのためには、過去の成功を支えた従来型の生産システムから脱却をして、創造的な人材を育成をする、そして付加価値の高い独創的な知的財産を生み出す、そしてそれを社会全体で活用をして国民の富を増大をさせる、そのような知的財産立国を実現する必要があろうかと思います。これは言うまでもありませんが、これまでの物つくりだけではなくて情報つくりをも重視する経済体制へと我が国を変革することを意味すると思います。 本年は我が国から小柴博士、そして田中耕一さんというお二人がノーベル賞を受賞されるという快挙がございました。誠に知財立国元年にふさわしい年となったと思います。 我が国にとりまして、知的財産立国を実現するための知的財産政策に国を挙げて取り組むことは喫緊の課題であります。世界に通用するような知的財産を創造をして、それをしっかりと保護、活用して、世界の進歩と繁栄に貢献することが重要であると確信をいたします。このような考え方を実現をするためには知的財産政策はこのための大きなかぎであろうかと思います。知的財産基本法の策定を契機といたしまして、この認識を国民広く共有をして、官民を挙げて知的財産を取り巻く諸課題に取り組んでいくことが不可欠であろうかと思います。 一方で、知的財産制度の改革にはスピードが最も重要でございます。我が自由民主党の、私も参加しております経済産業部会の知的財産小委員会におきまして、本年五月に知財立国宣言を取りまとめたところでございます。また、政府においても本年三月に知的財産戦略会議を設置をいたしました。そして、七月には知的財産戦略大綱をまとめて、それから三か月余りの今次国会に知的財産基本法案を提出をするという極めてスピーディーな対応を取られたわけでありまして、これは非常に高く評価すべきだと思っております。知的財産基本法案は、こうした政府、そして我が自由民主党の知的財産への積極的な取組の中で生まれてきたものであると認識をいたしております。 そこで、本日はそのような認識と問題意識を踏まえながら、知的財産基本法案及び知的財産政策に関連して、経済産業大臣及び関連する政府機関の皆様方の見解を伺ってまいりたいと思います。 まず初めに、本法案に関する大臣の基本認識、経済産業大臣の認識をお伺いをしたいと思います。 十一月十五日の参議院本会議の席上におきましても、福田官房長官から、小泉総理が所信表明演説で知的財産戦略を我が国の国家戦略とすることを表明したことにつきまして、その真意及び決意に関連して、知的財産を戦略的に保護、活用する、我が国産業の国際競争力を強化することを我が国の国家目標とすることは小泉総理の一貫した意思であると力強く答弁をされました。法案の担当大臣でございます平沼経済産業大臣の決意を改めてここでお伺いをいたしたいと思います。 そしてあわせて、政府が知的財産政策に取り組むために制定をいたします知的財産基本法の意義につきまして、大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) おはようございます。近藤先生にお答えをさせていただきます。 近藤先生が知的財産の重要性に関してお述べになられたとおりだと私は思っております。近年、アジア諸国を中心とした急速な追い上げを受けている我が日本の経済、従来型では、先ほど先生のお話にもございましたように、生産を中心として効率を上げて世界が瞠目するような急成長を遂げた日本は実績を持っております。 しかし、今置かれた社会の中では非常に知的な財産というものが、アメリカの過去の経験から照らしても非常に重要なことに相なってきておりまして、知的財産をいかに創造をして、そしてそれをいかに保護して、それをいかにうまく活用するか、こういうことが二十一世紀の日本の戦略にとって、小泉総理も言われておりますけれども、非常に喫緊の課題として重要なことでございます。 そういう中で、今お話の中にもございましたように、今年の三月に、知的財産、これが大切だと、こういうことで知的財産の戦略会議が各界各層の、そして有識者にも入っていただきまして、私どもも参画をさせていただいて、そしてその中でいろいろかんかんがくがく議論をして、七月にその大綱が取りまとめられました。そして、その大綱の中のイの一番に、やはり基本法を一日も早く制定することだと、こういうことで、今この国会にこの基本法をそういう観点からお願いをしております。したがいまして、この基本法の意義というのは非常に私は大きいものがあると思っておりまして、この国会で議員各位の御賛同を得て成立をさせていただきますと、直ちにこの知的戦略の本部が本部長内閣総理大臣の下に立ち上がって、そしていよいよ始動をするわけでございます。 そういう中で、私も担当の大臣として非常に大きな責任を感じておりますし、また日本の国のためにとってもこのことは是非やり上げていかなければいけない、そういう形で、私、これからも全力を尽くして頑張っていきたいと思いますし、その戦略本部の中では関係省庁はもとより、国の関係する方々の総力を結集して、そして知的財産、この確立に邁進をしていかなければならない、このように思っているところでございます。
○近藤剛君 次に、特許庁長官にお伺いをしたいと思います。 知的財産戦略を国家戦略と位置付けて、我が国産業の国際競争力強化の観点から知的財産基本法を策定をすることとしているわけでありますが、我が国と同様に、諸外国において知的財産に関する基本法あるいは憲法などの法形式を有している国はどのくらいあるんでしょうか。もしあるのであれば、それぞれそのねらいと効果につきましてどのように評価をされておられるのか、また我が国としてそのような経験から学ぶことがあるのかどうか、教えていただきたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答えいたします。 知的財産に関する諸外国の基本法あるいは憲法等に関しましては、私ども知る限りにおきまして、ロシア、韓国、アメリカ、ドイツ、中国など、幾つかの国において知的財産の保護等を定めた憲法があると承知しております。これらの憲法に基づき、知的財産に関する国際条約の枠組みの中で、各国においてそれぞれ知的財産に関する基本的方針が採用されているところでございます。 一方、我が国の知的財産基本法でございますが、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念、責務、基本的施策、さらには推進計画、さらには戦略本部の設置について定めています。このような立法は主要国において例がなく、我が国独自のものと考えております。 私も九月にジュネーブのWIPOの会議に参加いたしました。我が国ではこういう基本法案を考えているということを説明したところ、各国とも非常に高い関心と評価をいただいているというところでございます。
○近藤剛君 続けて特許庁長官にお伺いしたいと存じますが、本年七月にまとめられました知的財産戦略大綱のうちで、多くの項目について特許庁に対して宿題が与えられているわけであります。 中でも、具体的行動計画のうちに、保護強化の第一に、迅速、的確な特許審査の実現がうたわれております。そのためには審査官の大幅な増員あるいは審査に関連する業務の合理化あるいは民間人材の積極的な活用など、抜本的な対策が必要であると思います。また同時に、出願人の経済的負担を増大させない努力も必要ではないかと思います。 特許庁としては今申し上げたこれらの点につきましてどのような対策を講じるのか、お尋ねをいたします。
○政府参考人(太田信一郎君) お答え申し上げます。 知的財産立国、国の目標に、国家目標になっているわけでございますが、その実現には、優れた技術を事業化のタイミングを、これは逃してはなりません、逃さずに適正に権利化して、これを保護、活用する、いわゆるプロパテント政策が不可欠だと思っております。このため、御審議いただいている法案第十四条におきましても、「所要の手続の迅速かつ的確な実施を可能とする審査体制の整備その他必要な施策を講ずるもの」と明確に規定しておるところでございます。 実情、現状を申し上げますと、今後、出願内容がますます高度化、複雑化していくと思います。あわせて、審査請求期間、これまで七年だったものを三年にした、そういう短縮に伴う審査請求件数の急増が予想されております。そういう中で、私ども、特許審査期間、現在二十二か月ですが、この長期化を懸念しているところでございます。 こうした状況の下、国際的に遜色のない迅速かつ的確な審査の実現に向けて、正に制度の中核を担う審査官を確保するとともに、審査における特許性判断のための先行技術調査のアウトソーシング、さらには、私ども、OBを、動員というのはちょっと失礼な言い方ですが、審査補助職員として活用する等々、審査体制の整備等に全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。 その中で、審査請求構造、そういうものの改革のために、料金体系の見直し等も併せて現在議論しているところでございます。
○近藤剛君 その検討の過程に当たりましては、出願人の経済的な負担を増大させない努力という点も重要かと思いますので、引き続き、御検討を賜りたいと、そのように思います。 続きまして、経済産業副大臣へお伺いをさせていただきたいと思います。 知的財産戦略を国家戦略として位置付けて、我が国産業の国際的競争力を強化するために知財基本法を制定するからには、我が国の知的財産を侵害する国及び地域に対しては政府の毅然とした外交的な対応が必要だろうと思っております。この点に関しまして、具体的にどのような対応を取られようとされておられるのか、経済産業副大臣の答弁を求めます。
○副大臣(高市早苗君) 非常に大きな被害が出ているのが模造品、海賊版の流通でございますが、模造品の製造国、断トツが中国で、中国が三三%、韓国一八%、台湾一七%ということで、この三国で七割弱でございます。 こういった問題に対応すべく、知的財産基本法案におきましては、国が講ずべき基本施策の中にこの模造品、海賊版対策を位置付けております。政府としては、これまでもWTOですとか、それから二国間の通商交渉の場で、中国を始めとする侵害国に対して抗議を行ってまいりました。特に、権利保護強化の働き掛けをしてまいりました。 具体的には、九月のWTOのレビューの場で、中国の知的財産制度、そして運用の問題点を指摘しております。それから、先月、十月は、中国の石広生対外貿易経済合作部長の来日がございましたが、このときには、平沼大臣の方から知的財産権保護強化を要請いたしております。また、同じ十月ですが、APECの閣僚会合がメキシコでございました。これは、私が参加をしたんですが、これも閣僚会合全体の席の中でこの問題を取り上げ、日本からの改善案を提案いたしておりますし、また先週のWTOのシドニーでも、場外で石大臣にさんざん文句を申し上げたところでございます。 十二月一日から七日までの予定で、これは民間の反模倣品団体であります国際知的財産保護フォーラムが、中国の中央政府とそれから特に日本企業の被害が大きい地方の政府にミッションを派遣いたしまして、この模倣品問題の解決に向けた制度面、それから運用上の改善を要請する予定となっております。このミッションのフォーラムの座長であります森下松下電器産業株式会社の代表取締役会長を始め、本田技研、資生堂、マイクロソフトなど、幅広い業種の役員が参加すると承知いたしておりますし、経済産業省といたしましても、もしも国会など関係方面の御理解が得られればですが、ハイレベルの者が参加いたしまして、模倣品、海賊版問題の解決に向けて、政府、産業界一体となった対応を、断固たる姿勢を示してまいりたいと考えているようなところでございます。
○近藤剛君 今の御答弁に関連をいたしまして、今度は財務省にお伺いをしたいと思います。 海外における模造品、海賊版被害の対策については、侵害が行われている国・地域に対する官民を挙げての取組が念頭に置かれているというお話でございました。総合的な対策という点からは、我が国に輸入される侵害品についての対策、具体的には税関における水際での取組も併せて重要となってくると思います。 この点に関する取組につきまして、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(藤原啓司君) お答え申し上げます。 商標権等の知的財産権を侵害する物品は、関税定率法によりまして、輸入してはならない輸入禁制品とされているわけでございます。税関といたしましては、権利者の方々から提供いただいております、どういう知的財産権が設定されているか、その内容、それから真正品と偽物との見分け方等々につきまして情報をいただいておりますけれども、その情報等によりまして、侵害物品の水際での取締りを実施しているところでございます。 税関といたしましては、権利者の方々に対しまして、輸入差止め申立てあるいは輸入差止め情報提供といった制度がございますので、その制度の活用をしていただきますよう呼び掛けますとともに、税関職員に対する研修、それから情報のデータベース化等の充実を図りまして、知的財産権侵害物品の効率的、効果的な水際での取締りに努めているところでございます。 さらに、先般の知的財産戦略大綱、それから現在審議中の知的財産基本法案の趣旨を踏まえまして、知的財産権侵害物品の国境措置の在り方につきまして、経済産業省等の関係省庁とともに制度面の検討を行っているところでございます。 今後とも、権利者の方々との連携の下に、知的財産権侵害物品の水際取締りに努めてまいりたいと考えております。
○近藤剛君 関連をいたしまして、次に農水省にお伺いをいたしたいと思います。 我が国知的財産に関する具体的な権利侵害分野は非常に多岐にわたっているわけであります。これまでの審議の中では、特許権、意匠権、著作権などの典型的な知的財産権については議論をされてまいりましたが、我が国が被害を受けている知的財産はそれだけではないわけであります。 具体的には、バイオテクノロジー等の発展の中で、今後重要と考えられる知的財産としての植物の新品種の保護が考えられると思います。 最近、我が国で育成されましたインゲンマメあるいはイチゴなどの新品種が不法に海外に持ち出される、そして海外で生産された収穫物が逆に我が国に輸入されるという問題もあったように報道がなされております。 植物の新品種についての権利侵害の現状と、今後の取組を農林水産省としてはどのように考え、また実施されておられるのか、御説明をお願いしたいと思います。
○政府参考人(坂野雅敏君) お答え申し上げます。 ただいま委員から御指摘のように、我が国のインゲンマメやイチゴの新品種が海外に持ち出され、その収穫物が我が国に輸入されているという事案につきましては、当省としても非常に重大な関心を持っているところでございます。 我が国の新しい植物の新品種が不正に海外に流出し、その収穫物が輸入されることによりまして、新品種を開発した育成者権が侵害されることは、我が国の農業、また関連産業の国際競争力の維持強化の観点からも極めて重大な問題と認識しております。 そのため、農林水産省といたしましては、まず第一に学識経験者から成る研究会を設置しまして、権利侵害対策の具体化を図るための対策、国境措置の改善、それから罰則の強化といったような制度を含めた検討を行うのが一点であります。 第二点目としまして、品種を選別するといいますか、その技術として、DNAの品種識別技術の確立など、侵害の判断を容易にするための支援を行うというのが二つ目であります。 三つ目には、農業者、流通業者に対する品種保護制度の普及啓発を行うということを実施しておりまして、関係省とも連携しまして、所要の措置を講じてまいりたいと考えております。 また、民間におきまして、育成者権などのいろんな関係者が協力しまして権利侵害の対策を行うということで、植物品種保護戦略フォーラムというのを本年の十月に立ち上げました。当省としても、フォーラムと連携して官民一体となった育成者権の侵害対策を推進したいというふうに考えております。 以上でございます。
○近藤剛君 さてここで、再度恐縮でございますが、経済産業副大臣にお伺いをいたしたいと思います。 知的財産立国実現を図るためには、あらゆる場面での官民挙げての取組が必要となると思います。また、先ほど副大臣御答弁されたとおりであります。言うまでもなく、知的財産の活用はその一つ、重要な一つであります。企業による特許の取得、管理の戦略的対応をそのためには更に促していくことが必要であります。 また、人材の流動化や事業のグローバル化を背景といたしまして、営業秘密が競合他社に漏えいをしたり、技術が海外に意図せずに流出をしております。それらを活用した事業展開の妨げとなっているという事実があるわけであります。企業による営業秘密や技術の管理強化を促す必要があると思いますが、このため参考とすべき指針あるいはその他の施策が必要と考えておりますが、その点につきまして、経済産業省としての考え方をお答えいただきたいと思います。
○副大臣(高市早苗君) 七月に出ました知的財産戦略大綱におきまして、企業が営業秘密に関する管理強化のための戦略的なプログラムを策定できますように、参考となるべき指針を二〇〇二年度中に策定することとされております。近藤先生は国際的な、本当に国際的なビジネスの第一線で御活躍でいらっしゃいましたので、今御指摘ありましたような、意図せずして営業秘密が外に出てしまうようなトラブル、これが企業の競争力を損ねているというところは実態であろうと考えます。 このような現状に対応するために、先生がおっしゃいました営業秘密の管理指針、これを作成すべく、今、産業構造審議会の中の知的財産政策部会経営・市場整備小委員会で検討しているところです。この営業秘密の管理指針の具体的な内容としましては、自社の営業秘密だけではなくて、他社から受領した営業秘密の取扱い方、それから過去の営業秘密関連の判例を踏まえた最低限の管理水準だけじゃなくて、国際的な秘密管理の動向を踏まえた望ましい管理水準といったものを提示すべく検討しているところと聞いております。また、人材流動化に対する影響、御指摘がございましたが、これについても考慮することとしております。 ですから、この当該指針ができましたら、これを企業が活用することで各企業が明確な営業秘密管理体制を作っていける、秘密の漏えいの防止に努めるようになるものということを期待しておりますし、この指針に基づく自主的な取組を促進していただくための方策についても検討中ということでございます。
○近藤剛君 それでは、同じ観点から法務省にお伺いをしたいと思います。 情報窃盗に関しましても適切な刑事罰を科する立法の必要があると私は思っておりますが、この点に関しまして法務省の現在の考え方、またこの点について今後どのように立法措置を図っていくと考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(樋渡利秋君) お答え申し上げます。 情報化社会と言われます今日、IT革命の進展等の中にありまして、情報の重要性はますます増大しつつあるというふうに思います。しかしながら、情報の中には秘密情報、プライバシーにかかわる情報あるいは財産的価値ある情報等様々なものがございまして、これらに対し一律に刑法で対応するということには困難があるだろうというふうに思います。むしろ、情報の不正入手に対する処罰の在り方につきましては、それぞれの情報の特質、すなわち秘密の内容や権利の性質等に応じた法的保護の検討が行われるべきものであろうと思います。 そして、このような個別の検討につきましては、法務省においても重要なことであると認識しておりまして、現在、経済産業省において不正競争防止法の改正により営業秘密の侵害行為の刑罰化を検討しているというふうに承知しておりますが、法務省としましても、このような立場から全面的に協力してまいる所存でございます。
○近藤剛君 引き続きまして、法務省にお伺いをいたします。 知的財産立国の実現には、創造、保護及び活用のための政策だけではなくて、それらを支える人的基盤としての知的財産に関する専門的人材の育成も急務であると思っております。官民の知的財産専門家育成をねらいといたしました知的戦略のための専門職大学院構想の具体化があるわけでありますが、それを急ぐ必要があろうかと思っております。 また同時に、知的財産に強い法律専門家の育成に関して法科大学院における教育内容について、知的財産関連の科目の導入あるいは当該分野に強い大学院の開設など、各法科大学院が創意工夫によって専門性を生かした人材を輩出することができるような制度設計とすべきと考えております。 さらに、司法試験の科目、内容の検討に当たっては、法科大学院の教育内容を十分に踏まえたものとして、知的財産関連法を選択科目とするということも必要だろうと思います。この点につきまして、法務省の考え方を御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(松川忠晴君) お答え申し上げます。 今後、多様かつ広範な国民の要請にこたえることができる法曹を養成するためには、法曹養成のための中核的な教育機関としての法科大学院におきまして、御指摘のありました知的財産権の分野を含めまして、高度の専門的な分野についての教育が行われることが大変重要になるものと考えております。 法科大学院の設立に向けまして、各大学におかれましても、それぞれの創意工夫によりまして、知的財産権を始めとする様々な専門分野に強い人材を育成するため、知的財産権に関するカリキュラム編成や外国文献、資料などを用いた授業など、教育内容の充実について積極的な検討がなされているものと承知しております。 また、新たな司法試験につきましては、法曹の専門性を高める観点から、社会におけるニーズや法科大学院における科目開設状況などを踏まえまして選択科目を定めることといたしておりまして、御指摘の知的財産権法などの先端科目につきましても、法科大学院における科目開設の状況に応じ、選択科目とすることについて検討されるものと考えておるところでございます。
○近藤剛君 知的財産立国の実現のために最も重要なことは知的財産の創造でございますが、それに関連して大学の果たす役割は大変大きいものがあると思います。 そのためには、自由民主党といたしましても、TLO等の大学の知的財産事務処理体制の整備あるいは特許流通アドバイザーや産学連携コーディネーター等の活用を引き続き推進をするとともに、知的財産管理体制の強化を図る必要があるということで、本年度より予算化された知的財産管理アドバイザー制度の効果的な運用を目指すべきであると訴えてまいったところであります。 これらの政策の実施の現状に関しまして、経済産業省の答弁を求めたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答え申し上げます。 我が国経済の活性化を図るため、先生言われましたように、大学で生まれた技術シーズをできる限り民間へ円滑に移転して、新しい産業の創出につなげることが重要だと思っております。そのためには、大学が戦略的に特許を取得して活用することが何よりも重要だというふうに考えております。 このために、特許庁といたしましては、大学が組織的に特許出願あるいはその知的財産管理ができる体制を整備することを支援するため、おっしゃられたように、本年度から企業の知的財産部OBなど知的財産管理の専門家、私ども知的財産管理アドバイザーというふうに呼んでおりますが、を大学へ派遣する事業を開始したところであり、全国五大学へこれまで派遣しております。 また、大学からの技術移転を支援するため、TLOへ特許流通アドバイザー、現在十月末で三十六名おりますが、を派遣する等々の特許流通促進事業を展開してきております。現在の成果でございますが、累計約二千件を超える移転が、流通が行われているというふうに思っております。 特許庁といたしましては、こうした支援策を通じまして、大学における戦略的な特許取得、活用のための体制の整備に今後とも努めていきたいというふうに考えているところでございます。
○近藤剛君 さて、もう最後になりますが、平沼大臣に幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。 平成十四年の弁理士法の改正で、弁理士に付与されました限定付きの訴訟代理権は、その範囲において著作権や発明者の権利等には及ばない、しかも弁護士が受任をする事件に限られているわけであります。したがいまして、その訴訟代理権は実質的に従来の訴訟補佐の看板の書換えにとどまっていると言えようかと思います。弁理士の訴訟代理権の限定は、国際的整合性及び何よりも我が国の国際競争力の観点から、至急見直す必要があろうかと私は考えております。 例えば、アメリカのパテントアトーニーとは我が国の弁理士は国際的に必ずしも平等に取り扱われない制度になっているわけであります。弁理士制度の更なる改革を目指しました平成十四年度弁理士改正法に付けられました附帯決議がございます。その趣旨を実現をする観点からも、そしてまた先ほど申し上げましたように、国際的整合性の視点からも、この見直しは絶対に必要であると考えております。 知財立国の世界的視野に立った推進のための専門家で我が国の弁理士はなければならないと、そう思っております。その我が国弁理士の制度を国際的に競争力のあるものにするために、訴訟代理権の二つの限定を速やかに解除すべきと思いますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 知的財産を戦略的に創造いたしまして、それを保護して活用することで富を生み出す知的財産立国となることが非常に求められているところでございます。 このための方策といたしましては、知的財産の事業化や取引活動、さらには紛争解決を支援する知的財産専門サービスの質的、量的な拡充を図ることが必要であると認識しているところでございますけれども、その中核的な担い手として、御指摘の知的財産に関する専門的、技術的な知見を有する弁理士の更なる育成、活用を図る必要が私はあると、このように考えております。 平成十四年の改正弁理士法成立時の附帯決議におきまして、御指摘のように、今後の弁理士制度の在り方について、多様化、複雑化及び総合化する知的財産権をめぐる内外の動向及び利用者からの要請等を踏まえて、訴訟受任の在り方や訴訟代理業務の範囲などについて引き続き検討する、こういう決議がなされているわけでございまして、経済産業省といたしましては、この本決議の趣旨を踏まえまして、平成十六年度以降、弁理士が特許権侵害訴訟業務を開始した後に弁理士の侵害訴訟への関与の実績を見極めつつ、知的財産関連訴訟をめぐる環境及び利用者からの要請等も勘案をして、必要に応じまして各省庁ともこの制度の在り方に私どもは前向きにきちっとやっていかなけりゃいけない、そういうやっぱり体制を整えていかなければならない。 そういう形で、私どもは、この点は附帯決議の意思を尊重してしっかりとやっていかなきゃいかぬと、こういうふうに思っています。
○近藤剛君 続きまして、訴訟手続の充実と迅速化につきまして、大臣のお考えを伺いたいと思います。 知的財産に関する訴訟につきまして、裁判の専属管轄化を進めて訴訟手続の充実及び迅速化の方向が検討されていると、そのように私は承知をしております。加えて、仲裁というADR手続も迅速な問題解決のために有効な方法であります。しかしながら、さきの質問と同趣旨ではございますが、弁理士の仲裁代理権から著作権が除外をされております。また、弁理士の仲裁代理権を行使できる機関は日本知的財産仲裁センターと国際商事仲裁センターに限定をされていると。そのために、知的財産の専門家であります弁理士のADR活動に大きな制肘があると言われております。また、国際的仲裁についての弁理士の仲裁代理権が明確でないということもありまして、我が国の知的財産権の国際的な保護強化のネックとなっていると思います。 これは至急改善すべきだと考えておりますが、この点について、大臣のお考えを確認させていただきたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 御指摘の平成十二年法で弁理士の業務範囲となりました仲裁手続の代理業務に関しましては、弁理士が従来、産業財産権に関する諸業務を専門としている中、先端技術分野で産業財産権の創成に関する弁理士の不足が強く指摘されていたことから、当面、産業財産権の専門家である弁理士の量的拡大を図ることといたし、産業財産権分野を中心に弁理士の業務の拡大を図るとの趣旨から、著作権等産業財産権以外の事件に関しては対象外と、こういうふうにしておりました。 弁理士の行う仲裁代理業務の対象に著作権を含めること等業務を拡大することにつきましては、今後、弁理士の仲裁代理業務での実績を見極めつつ、知的財産権関連の事件をめぐる環境及び利用者からの要請等も勘案をいたしまして、必要に応じて関係省庁とも制度の在り方も含めて検討を進めていかなければならない、このように思っているところでございます。
○近藤剛君 次に、これから設置されます知的財産戦略本部につきまして、大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。 以上、今までの、論点いろいろございましたが、知的財産を取り巻く様々な課題にこれから取り組んでいくためには知的財産戦略を推進する本部を設置をする、そのようなことも含んだ知的財産基本法案は極めて重要であると思っております。 しかし、その体制、その本部の体制が本当に実効性を持つためには、その本部を支える強力な事務局が必要であろうかと思います。民間の登用が本当に思い切った形でできるのかどうか、また民間も含めた必要な人材をその本部で確保できるのかどうか、そして十分な予算措置を講じていけるのかどうかなども含めまして、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。 また、知的財産戦略をこれから迅速に進めてまいりますためには、知的財産戦略本部は各省の話を聞いてそのまま計画をまとめるだけでは十分ではないと、そのように考えております。その実現に向けました諸施策を政府として一体的かつ集中的に推進できる体制を整備することが極めて重要だと、そのように思います。 同時に、民間でできることは民間に任せる姿勢も必要であろうかと思います。民間の知的財産関連産業の健全な発展を図るための育成振興策も同時に必要ではないかと思います。 これら幾つかの点に関連いたしまして、大臣のお考えを確認させていただきたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 我が国の産業の国際競争力というのを強化をいたしまして活力ある経済社会というものを実現するためには、今、議員が御指摘のように、しっかりとした本部とそれをサポートする事務局体制、これを万全にすることが一番重要だと思っております。 そこで、この法案におきましては、本部を総理大臣を含むすべての国務大臣が責任を持って就任することと同時に、知的財産に優れた識見、経験を持つ有識者の方々に御参画をいただくと、こういうことで強力な布陣を構成をする。そして、御指摘の事務局体制についても、これは民間からもしかるべき方々に積極的に参画をしていただいて、内閣官房に所要の人員を配置をしてしっかりとした体制を整備することとしております。 なお、本部というのは、本法の第二十五条の規定に基づきまして、重要な知的財産政策に関する調査審議、その施策の実施の推進及びそのための総合調整を行うこととしておりまして、この点についても事務局体制の能力の充実により、十分に実効性を確保しながら知的財産戦略を進めていかなければならないと思っておりますし、さらに、御指摘がございましたやっぱりスピードというものが非常に必要でございますので、そのこともこの事務局体制の中でしっかりとした意識を持って迅速化に図ると。 それから、民間にできることはもう民間に極力やって、そこから活力を生み出すということは当然のことでございますから、事務局も迅速化とそして民の活力をいかに引き出すかと、こういうことに力点を置いて、本部、事務局が一体となってこの知的財産の戦略を推進をしていかなければならないと、こういうふうに思っております。
○近藤剛君 大臣、大変ありがとうございました。 繰り返しになりますが、知的財産政策は我が国の産業競争力を強化するための大きなかぎであります。本基本法の策定を契機といたしまして、この認識を広く国民で共有をして、今後設置される知的財産戦略本部のリーダーシップの下で強力に政府各省の施策を推進をする、そしてまた官民を挙げて知的財産を取り巻く諸課題に取り組んでいくことができることを強く希望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○簗瀬進君 おはようございます。簗瀬進でございます。 この問題については既に先日の本会議でも質問をさせていただきました。振り返ってみますと、随分平沼大臣とのやり取りも思い出されてくるところでございまして、一番先には、小渕総理に予算委員会でこの問題について知財の必要性、重要性について質問をさせていただき、また、たしか森総理のときの通産大臣でございましたですね。そのときにも、たまたま民主党、ここに持ってまいりましたけれども、「はばたけ 知的冒険者たち」というものを一年間掛けて二〇〇〇年の六月にまとめさせていただきまして、これを大臣に手渡しをさせていただいた。そして、知財についての国家戦略を早急に立ち上げていただきたいと、こういうふうに申し上げもいたしました。 既にこの私どもの二〇〇〇年六月にまとめた「知的冒険者たち」の中には、行政あるいは立法、司法すべてを巻き込んで取り組む、そういう大きな取組をしていかなければならないというようなことも提言させていただきましたし、その中心にまず法律的には知財基本法、さらにそれを実施するものとして知財戦略会議、さらにそれを具体的な手足としてやる具体的な役所として知財庁と、こういうようなものを体系的に提案をさせていただいたと記憶をいたしております。 その中で、今回、知財基本法がこうして与党提案ということではありますけれども、私どもの先鞭を着けた方向性に従って出されてきたということについては評価をさせていただきたいと思います。 ただ、本会議でも質問をさせていただきましたが、どうもこれは我が国の、いつもよく指摘されるところでありまして、戦略なき国家というようなことを言われるわけでございます。この点の認識が不十分であるならば、また再びかつての誤りを犯してしまうんではないのかなということを感じておるわけでございまして、冒頭にそんな質問を若干させていただければと思っております。 まず、この知財戦略というようなものが、ここに本院の調査室が作りました資料の中で、アメリカの取組として紹介をされているのがございます。この資料の二十三ページに「米国の知的財産政策の流れ」ということで、一九八五年にいわゆるヤング・レポートというようなものが頂点としてよく取り上げられるわけでありますけれども、どうもこの分だけ取り上げられて、知財戦略というようなものは正に産業政策であると、というようにある意味での一種矮小化したとらえ方がされてしまう。私は、その辺にまず最初の懸念を覚えるわけであります。なぜアメリカでこの知財政策が出てきたのか、そういう時代背景をまずしっかりと我々は認識すべきであろうと。 まず一番目には、当時、アメリカは大変日本の集中豪雨的な輸出攻勢に恐怖におののくような状況でございました。このまま行けばアメリカの産業は全部つぶれてしまうと。それが発端になりましていろいろなアメリカなりの模索をしたわけでございますけれども、私は、アメリカが戦略的に優れていたというふうなことを、どうも調べてみるとそうではないような感じもいたします。たまたま当たったのかなというところもあります。しかしそれは、アメリカの英知をこういうふうに集めて、コンピューターが作り出す新しい経済や新しい社会の在り方、新しい文化の在り方あるいは科学技術に対する大変な影響、こういうようなものを一本こちらで置き、そして、それで生まれてくる様々な知的成果物があるわけであります。これは学術においても、学術の世界においてもしかり、また経済の世界においてもしかりと。こういう、言うならばコンピューターの作り出す新しい革命的な社会、それを経済に置いたときには、コンピューターが作り出す成果物というようなものが飛躍的に、今まで考えも付かなかったようなことがどんどん出てくる、これを戦略的に押さえていこうという。 こういう二つの、言うならば、コンピューターの作り出す新しい経済社会と、それを経済戦略としてまとめる知財戦略と、こういう一つの大きな車の両輪のごとくこれが絡まっているということについての認識は極めて私は優れていたのではないのかなと、こういうふうな考え方を持つわけでありますけれども、大臣は、まずその点、どうお考えになりますか。
○国務大臣(平沼赳夫君) 簗瀬先生から、森内閣で私が通産大臣を拝命し、そして、もうその時点から大変なこの問題に対する造詣が深いし、そしてまた「はばたけ 知的冒険者たち」、これは二〇〇〇年におまとめになった。今御指摘になられたように、正にこの知的戦略会議から知的戦略本部をこれから作る、その中に大綱を作って基本法を作るというのは、ここで正に問題点として御指摘になったとおりのことが進んでいると、こういうことで、私どもとしてはその先見性に改めて敬意を表さなければなりません。この中には知財庁というところまでうたってあるわけでありまして、本会議の中でもそういう御指摘をいただいたこと、私も心に留めさせていただいているところでございます。 それから、アメリカのプロパテント政策ということに関しても私は認識を一つにしておりまして、やっぱり七〇年代から八〇年代にかけては日本が独り勝ちでございまして、あのときジャパン・アズ・ナンバーワンだとか、あるいは二十一世紀は日本の世紀なんということで日本人は少し有頂天になっていた。しかし、そのアメリカ人は、自分たちは戦争に負かした日本の後塵をなぜ拝しているのか、そしてアポロ計画で月にまでロケットを飛ばして月の石を持ってきた、そういうポテンシャリティーあるじゃないかと。そういう形の、先生やっぱりそういう、ある意味じゃ危機感とおっしゃいましたけれども、そういう危機感が非常にばねとなって、そして一連のそういう、いかに経済を回復させるか、また力を取り戻すかと。こういうことが、その表現の中にも多少僥幸もあったというような御認識もあったと思いますが、私もそういう面もあったと思うんですけれども、しかし一貫してそういうことを追求してきたということが、今回の非常に大きな成果、九〇年代の繁栄に結び付いていったと思っているわけでありまして、私どもとしてはやはり、冒頭簗瀬先生が、日本というものは戦略性が欠けていると、こういうことで、特にコンピューターと、そしていわゆるそういう新しい一つの仕組みを作っていくと、こういうことに関しての御指摘もありましたけれども、そういう面で日本は若干、この八〇年代から九〇年代、そして現在において戦略的な後れを取っているということは私は事実だと、こういう認識でございまして、その辺は簗瀬先生と認識を軌を一にさせていただいているところだと、このような感想を持っております。
○簗瀬進君 戦略の意味を矮小化するということになってしまいますと、パワーはその時点から私は失われてくるんではないのかなと思うんです。 知財基本法、これは所管は事実上は経産省的な取扱いで出てきておりますけれども、私は、もっとそれを幅広にとらえていかないと、これもまたいわゆる政策的な失敗、気が付いたら、ああ、あのころ、はやりであれ言っていたなみたいなことになってしまう。その辺を非常に恐れるんですね。 例えば、具体的に例を挙げさせていただきますと、森総理のときにIT政策というようなものが大変華々しく打ち上げられました。所信表明でも予算委員会でもIT、ITという言葉がもう耳にたこができるぐらいに連発をされた。しかし、あっという間にそれはITバブルということで、今、むしろ反省の対象のように思われている。正にそれは、ある意味で政策の本質的な意味というようなものを分からずにIT政策を推進をしたということの一つの反省点なのではないのかなと思います。 それというのも、ITというようなものはやっぱりインタラクティブなコミュニケーションなんですよ。だから情報の送り手と受け手が必ず存在をするはずでありまして、送り手の側、すなわち経済的に言えば情報の発信側という位置付けになる、例えば情報機器を製造しているところとか情報のコンテンツを作り出しているところとか。そういうところにどうも力点が置きがちになってしまいまして、情報が更に受け手の側でどれだけ有用性を持つのかという取組が後追いで付いてくる。そういう一種バランスを欠いた取組をしたので、あっという間にIT政策は何となくもう後れた政策のようなイメージになってしまう。 正にそれは、情報の本質が先ほど申し上げたインタラクティブなコミュニケーション、送り手もあれば受け手もあるんだというふうな本質をきちんとやっぱり踏まえた形での政策展開をしていかなかった、それの結果なんではないのかなと思うんですけれども、この点についての御認識はどうでしょうか。
○国務大臣(平沼赳夫君) 私も、森内閣のときにIT戦略本部というのができまして、そこのメンバーとして、そして戦略会議というのは、簗瀬先生も御承知のように非常にインタラクティブな発想を持っているソニーの出井会長が議長になってずっと進めてきたわけであります。 確かに最初の目標に掲げたところの幾つかは、例えば二〇〇五年までにアメリカを追い越すようなIT社会を実現しよう、そしてそれの具体的なあれとしては、一つの目標としては、いわゆるブロードバンド、いわゆる高速のインターネット網を、例えば日本でADSLで三千万世帯、そして光ファイバーで一千万世帯、そういうインフラのところに目標の重点が非常にあったことは事実だと思います。 それからさらに、当時、たしか接続料というのが一万二千円もしていたわけでありますけれども、それをとにかく低廉化しようと、こういう形で非常に官民一体となってそれに取り組んで、実績としては、今ADSLというのも、昨年の一月ぐらいには一万八千であったものが、現時点は五百万になんなんとする形で整備されてきました。光ファイバーも、まだドア・ツー・ドアまでいきませんけれども、幹線の敷設率というのも、これは世界の中で非常に大きな、上位に属する、そういうところまでなりました。 しかし、その中で、やはり双方向でございますから、そちらの方も努力していただくことは事実ですけれども、例えばの例としては、インターネットによる行政手続の二十四時間受付ですとか、それからそれに付随したワンストップサービス、そういうことも同時にやってきました。それから、やっぱり習熟する人が必要だから受け手の方の能力向上をしようという形でIT講習というものをやって、経済産業省もやりまして、私もその幾つかに行きましたけれども、国民は非常に関心が高くて、実際、募集の何倍の人が来てやる、こういう形で相当整備はされてきた。 しかし、本当に御指摘のところの、これから本当にそれを生かして総合的に結び付けて、そこから複合的ないろいろなものが出てくる、こういうところが非常にいま一歩。それは御指摘のとおりで、今IT戦略会議でもその反省に立って、そういった企業を含めて、そこから複合的な副産物みたいなものが生み出してきて全体の活力が上がるような、そういったやっぱりインセンティブを与えることをしなきゃいかぬ、こういう今力点が移ってきました。 今、確かに残念なことは、ITというのが何か夢も希望もないように言われているんですね。私は、それは誤りだと。やっぱり第一ステージが終わって、これから今申し上げたようなところで第二ステージに向かって大きなやっぱり未来が期待できる、そういった未来を開いていくためには今おっしゃったそこのところが私は一番大事なところだと思っておりまして、そこのところをしっかりやっていかなきゃいかぬ、こんなふうに思っております。
○簗瀬進君 今、大臣とやり取りをさせていただいていることにもう一つ別の光の当て方をさせていただきますと、日本の法律やらあるいは政策に一般的に見られるような供給者優位の発想というようなものが背景にあるのかなと。それで我々は最近随分痛い思いをさせられていると思います。 例えば、狂牛病の問題。狂牛病の問題をとらえるときに、あれは畜産というようなものを、やっぱり供給者の畜産業者あるいは畜産業界というふうな立場の中でいろいろと政策を展開をしてきた。一方で、牛肉を消費している消費者の側の論理というようなものが欠けていたんではないのかな、あるいは欠けていないにしてもその辺の取組が非常に弱かったのかなと。 どうもやっぱり、例えば経産省にしても、日本のすべての行政庁が関連業界を抱えています。その関連業界を抱えているものの中でいろいろなニーズが寄せられて、そしてそれが法律化をしてくるということになる。そうすると、それぞれの役所が出してくる法律というようなものは、言うならばまずその業界のためというようなものが第一義として出てきてしまう。だから、日本の政策というのは一般的に供給者サイドに立った、いろいろな取組を法案化したものが非常に多いような感じがいたします。 私は、知財基本法についてもそういうことになったらちょっと大変なことになるぞという、そういう懸念を実は今持っておりまして、この法律が縦割り行政と、それから、それぞれの役所が後ろに控えている業界というようなものにシフトした形で知財の取組をしてくるというふうな形になると、例えば簡単に知財基本法という名前なんだけれども、これはもう経産省のやっている業界法の一つなんだよというようなことに、もし、矮小化といいますか、そういうものに堕してしまいますと、本当の意味での国家戦略にはなり得ないで終わってしまうのではないのかなというふうな感じがいたします。 そこで、ちょっと前提が長くなってしまったんですけれども、正にその供給者優位の発想が、この知財に置き換えて見てみますと、権利の創造、それから保護、活用、こういうふうになってくるんですけれども、保護、活用というふうな部分についてはかなり業界的な取組もばっと出てくるだろうと思うんですよ。私のある同僚が、知財がもっともうかるということを分かってもらわなくちゃねと、こういうふうな言い方をしました。確かにそういう側面はあると思います。 しかし、もっともっと重要なのは、一番スタートにあるのは、我が国の持っている知的創造力というようなものを学校教育においても企業においても社会においてもいろいろな形で活性化をさせていくという、そのサイクルがあるとして、一番スタートに立っている創造のメカニズムといいますか創造のサイクルというようなものに相当力点を掛けないと、あっという間に業界法で終わってしまうということになりかねないんですね。これはもうある意味で学校やら企業やらあるいは社会全体と絡む話になってくるんで、経済産業省というものを更に超えた取組、発想がないと、あっという間にこの知財基本法のパワーというようなものもなくなってしまうんではないのかなという懸念を持つんですよ。その辺について大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 大変重要な私御指摘だと思っております。 知財の戦略会議の中でも各界各層の方々でいろいろ議論をし、御指摘の点もその議論の中に十分出てまいりました。したがって、今御指摘の、そういう何といいますか供給者サイドのものであっては、これは御指摘のように仏作って魂入れずに相なると思います。 ですから、経済産業省としましても、やっぱりこういう発明だとか創意工夫というのは非常に大切だという形で、私どももそういう視点の中でこれまで、例えば文部科学省と協力をして、そして、こういう発明だとかそういうものの大切さというようなパンフレットを作ってそれを配布させていただくとか、それから文部科学省といろいろ協力をしながら、そこの創造の部分という根っこの部分をやっぱりしっかりと育てていって、そして単なる業界法で終わるというようなことじゃなくて、総合的にこれを伸ばして、そして日本が、私はさっきの御答弁で申し上げたように、日本の場合にはこれから知的財産というものを一つの中心に据えて、そして競争力のある豊かな社会を作っていこう、こういうことでございますから、そこの一番大切な視点というのは、根っこの部分をしっかりさせないと幾らやってもこれは絵にかいたもちになりますので、その御指摘というのは私どもは十分踏まえてやっていかなきゃいけない、そういうふうに思っているところでございます。
○簗瀬進君 そういうことで、創造の活力をどんどんどんどん増進をしていくということが非常に大切だというふうな御答弁もいただいたわけでありますが、私は、そういう意味では、今、特許審査料の改定についての議論が出ているようでありますけれども、そこの点はちょっとやっぱり今の御答弁と違うんじゃないのかなという感じがするわけでございます。 若干質問の予告してある順番が異なってまいりますけれども、お許しいただいた上で、特許審査料の、今、改定方針、どうも結論からいえば、私から見ますと、それは創造力を高めていくということではむしろ逆行してしまうんではないのかなという懸念を持つんですね。 既に報道でも出ておりますけれども、特許の場合は若干手続が何段階かに分かれておりますので若干御説明をいたしますと、出願から登録までの現行料金をちょっと紹介をさせていただきますと、出願手数料、一番最初出願する、二万一千円。それから、それが三年以内に審査請求しないと取下げとみなされてしまうわけでありますけれども、三年以内に審査請求をするという段階になりますと、特許審査料あるいは審査請求料というようなものが取られる。それは規定によりますと八万四千三百円と、それが基本料金であって、二千二百円に特許の請求項目というようなものがあるわけでありまして、その請求項目をNといたしますと、請求項目ごとに二千二百円掛けられまして、大体、特許庁が出されている資料だと、この請求項目平均八項ということで計算をなさっておるようでありまして、平均八項として計算をいたしますと八万四千三百円足す二万円弱というようなことで、大体、特許審査料約十万円になると。 それで、審査が始まりまして、いわゆるファーストアクションと、第一次審査というようなものがあるんですけれども、よく言われる審査期間が長いだ早いだというのはこのファーストアクションで、この部分が日本は二十二か月でアメリカは十四か月だと、この前の本会議で私は質問させていただいた。それがファーストアクションの部分でございます。だから、ファーストアクションに入る際に払わなければならないのが特許審査料と。出願手数料というのは、一応出しておいて押さえておけと、公開をさせておいてと、こういうのが出ているぞということを皆さんに告知をするという、そういう制度趣旨なわけであります。 だから、実際は審査を求めるそれぞれの立場、先ほど申し上げたように、様々な部分から、例えばパテントの請求が出てまいります。特に大学のパテント請求が若干日本は弱いんじゃないかということはずっと指摘をされておるところでありまして、大学がいろんなところからもっともっと知的創造力を上げてもらいたいところであります。 ということになってまいりますと、具体的なファーストアクションに入る際に、やっぱり相当皆さんの期待が込められてくるというようなことにもなりまして、正にそのファーストアクションというところの部分が一番の具体的な審査を求める実質的な大きなハードルになっているんではないのかなと。 聞くところによりますと、広く告知をしておこうということの出願手数料は値下げをするんだけれども、肝心のファーストアクションに入る際の審査請求料を、どうもこれを約十万円から、先ほど十万と申し上げました。Nイコール八と、請求項目八ということで計算をするとそういうことなんですけれども、この部分を二十万から二十五万円にと、こういうふうに値上げをするようなそういう体制がほぼ整っているということで、特許庁も非常に一生懸命説明等、御尽力なさっているようでございますけれども、先ほど大臣の御答弁にあったように、知的創造力を高めるということになりますと、ファーストアクションに入ってくる際の大きなハードルの部分をぐんと上げる、その手前の部分は下げるからこっちの部分は上げさせてくれと、こういうふうなお話のようでございますけれども、それは結果として、ファーストアクションに入ろうとする人たちの勢いをかなり大幅にそぐことになる。それは結果として、知的創造力を増強をしよう、活性化をしようという動きに相当さおを差すんではないのかな。プロパテントというよりアンチパテントなんではないのかなと私は考えるわけでありますけれども。 御答弁を二ついただければと思うんですが、これ特許庁長官の方には、具体的に先ほど言った基本料金プラス云々の話がありましたけれども、今考えていらっしゃるところは具体的にどんなことを考えているのか。若干、内容が細かくても、結構気になるところなんで、それを御説明いただいた上で、大臣の方に、これはプロパテントというよりもアンチパテントなんじゃないのかなと、こういうふうな私の質問に対しての御答弁をいただきたいと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答え申し上げます。 まず、知財立国、私ども正にプロパテントの基本的な考え方で進めなくてはいかぬと思っております。そのためには、優れた技術を事業化のタイミングを逃さず権利化して、これを保護、活用する、正にそういう政策が不可欠だというふうに考えております。基本法案第十四条でもその趣旨が規定されております。 それから、七月の三日に取りまとめられた知的財産戦略大綱におきまして、特許審査の迅速化等のための具体的な行動計画として、審査官の確保、アウトソーシングの積極的な活用、さらには我が国の出願請求構造の改革、さらには早期審査制度の活用等々総合的な施策を講ずることが必要だというふうに指摘されているところでございます。 これらを踏まえまして、経済産業省、特許庁といたしましては、今も述べました諸施策につきまして、今年の九月から産業構造審議会の知的財産政策部会特許制度小委員会において総合的な視点に立って鋭意検討を進めているところでございます。 簗瀬先生御指摘の特許関連料金の見直しにつきましても、我が国の出願・審査請求構造の改革のための施策の一環として議論をしていただいているところでございます。具体的に検討状況を御説明させていただきたいと思います。 まだ決まったわけではございませんけれども、検討しておるところでございますが、まず私どもがいただいている料金は三つございます。先生言われましたように、出願のときの出願料、それから審査請求をされるときの審査請求料、それから特許を査定されたときの年金といいますか維持料をいただいております。 まず、出願を行われるとき支払っていただく出願料につきましては、出願奨励の観点から引下げを行うことを検討しております。現在、出願は年間大体四十四万件ございます。このうち、五割強の二十五万件ぐらいが審査請求をされます。私ども特許庁の審査官、約千百人おります。それで毎年一人当たり百八十八件の審査をしております。アメリカの二倍、ヨーロッパの三倍以上の審査件数をこなしております。もちろん、アウトソーシングも徹底的に活用して大車輪で仕事をしているところでございます。ただ、それだけ頑張っても約二十万件の件数をこなしているところでございます。そういう意味で、二十五万件の請求があるところを二十万件でございますので、それが滞貨として積み重なっていくという状況に現在のところはあるわけでございます。 そういうものをどうするかということで、先ほど申しましたように、総合的な対策を検討しているところでございますが、その二十万件の審査請求のうち、私ども、やや問題があると思っておりますのは、請求される出願のうち約二割、これについては審査官が同じ手間暇が掛かるわけでございますが、審査をいたしますと先行事例がある、同じような発明がもう既に前にあると、あるいはなくても、全く進歩性がないということで拒絶の通知を出させていただきます。そうすると、全く応答がないという状況にあります。もちろん、拒絶通知を出したものの中では、ほかのものについていろいろと補正等をやるものもあるわけでございますが、二十万件の二割でございますので、四万件については何らの応答もないと。これはやっぱり特許性が大変低いものを審査請求されていると言わざるを得ないと思っております。 現在の審査請求料、平均的なケースで先生言われましたのは約十万円でございます。私ども、監査法人に特許庁のすべてのデータを出して調査をさせまして、コストは約二十五万円前後掛かっておると。そうすると、特許を取得する率の高い出願の方とその他の出願人の間でコスト負担の不均衡も出ているという問題もあるかと思います。 こういうことで、私ども、審査請求料につきましては、審査請求を行う際により慎重な検討を促すことができ、かつ、先生言われましたように、特許性の見込まれる出願、高いものまでも抑制されることはあってはならないと思います。角を矯めて牛を殺すようなことがあってはならないと思っておりまして、そういう水準にまで引上げを行って、最後の維持費、特許料についてはその分下げる方向で検討をしたいと思っておりまして、正に審議会でそういう議論を行っているところでございます。 こうした審査請求料と特許料のバランスの見直しによりまして、特許性の低い出願の審査請求が出願人の判断により回避されるとともに、出願人間のコスト負担の不公平を是正することができ、ほかの施策もいろいろやらなければなりません、そういうものと相まって、我が国全体として最適な出願・審査請求構造への改革につながることが期待できると考えております。 いずれにいたしましても、私ども、我が国の知的財産の創造、保護、活用を更に推進するプロパテントを是非とも推進したいと思っております。そういう観点から、今申しましたような特許関連料金の在り方を含めた総合的な施策を講ずるべく、更に十分な議論を深めて、なるべく早く結論を得たいというふうに考えているところでございます。
○簗瀬進君 ちょっと大臣の答弁の前に。 大臣の答弁、これから求めさせていただきますが、その前に、大臣の答弁の前提として一つ説明付け加えさせていただきたいと思うんですけれども、アメリカの状況でございます。 現行でいいますと、日本の場合は、登録した後の権利維持のための年金の部分はちょっと一応のけて、登録前の手数料で比較いたしますと、先ほど言ったように、出願のときに二万一千円、それから特許審査料として約十万円、合わせて十二万円というような状況ですよね。平均です、これは。八項目として。アメリカの状況を見てみますと、アメリカは一律、これ間違っていたら御指摘もいただければと思うんですが、出願時に七百四十ドルです。アメリカは日本のような、制度的な違いが若干ありますので、直ちにどうのというようなことは申し上げませんけれども、アメリカの場合は日本のように出願手数料と審査料を分けるという体制を取っておりませんで、一括で七百四十ドルで始まっていくと。七百四十ドルといえば、今のあれでいうと九万円ですね。現時点でもアメリカは九万円だけれども日本は三十何万なんですよ。やっぱりそれだけアメリカの方が敷居は低いということでしょう。 それともう一つ、アメリカもそういう意味で、今年の七月に、ごめんなさい、アメリカは、アメリカの手数料七百四十ドルというようなものの値上げの動きが今年ありました。アメリカの特許庁が法案を提出してまいりまして、この出願の料金というようなものを値上げをしたいという法案がアメリカの議会で提案をされたんですよ。ところが、今年の七月にアメリカの下院で公聴会をやりまして、圧倒的に反対の声が強かったということで、そこで、結果としてアメリカの特許庁のこの値上げの動きというようなものは完全にストップをしてしまいまして、十月十七日にアメリカの議会は閉会になり、閉会と同時にこの値上げ法案というようなものは葬り去られたと、こういうような状況なんですね。 一方で、アメリカはそういうような状況で、公聴会をやると、やっぱりこれはプロパテントに反するからということで、もう値上げはやめてほしい、行政の努力の中で何とかやってほしいというようなことになって、結果として現行のままと。ところが、一方で日本は更に、これもし特許庁の方針どおりにいきますと、更に日米の格差というようなものは広がってきて、正に日本の方は特許申請者に対しては非常に更に敷居がかなり高くなるという、そういう格差、拡大するんですよ。 これは、ちょっと私は政策的に、この知財基本法が出ているにもかかわらず、どうもやっぱり一般の人は、これは厳選主義は結構なんだけれども、やっぱり広く多くの皆さんに門戸を広げて、その中にはやっぱり当たらないのも出てくるだろうと思いますよ。だけれども、最初から厳選主義でやれというふうにいったときに、私自身も経験がありますけれども、数撃ちゃ当たる方が元気なんですよ。絞ってやれといった勝負は余り元気出ないんですよ。 ここら辺で、やっぱり私は大臣の、せっかく知財基本法ができるんだから、その御祝儀に今年は値上げはしないと、こういうふうな方向を出されたらいいんじゃないかなと。これは、特許庁長官が手が挙がっていますけれども、大臣の政治判断を私は聞きたいので、大臣に御答弁いただければと思います。
○委員長(田浦直君) まず特許庁長官に、今の説明について、質問について何か御意見あったら述べて。
○政府参考人(太田信一郎君) アメリカのお話出ました。アメリカでも、いろんな諸問題に対応するために、審査請求制度を設ける、あるいは料金を値上げする等々いろんな案が出されておりまして議会等で議論をされております。確かに一とんざした感じもありますが、私、ちょっと衆議院の審議のために出られなかったわけですが、先々週、三極の、アメリカと日本とヨーロッパの特許庁長官会合があって、私が出られませんでしたので私の下の技監が出まして、アメリカも引き続き料金改定について努力したいというお話があったということは御紹介をさせていただきたいと思います。 それで、先ほども申しましたように、私ども、角を矯めて牛を殺すようなことは全くするつもりはありません。ただ、やはり、審査官が本当に粉骨砕身仕事をしているときに、やはり四万件のものについて先行事例もある、あるいは先行事例がなくても全く進歩性がないという案件について四万件あると。この部分について、仮にその半分でも特許になり得る可能性のあるものについて労力を回すことができれば、その部分について権利化が早くなって、それこそ日本の競争力の強化につながっていくと。 そういう意味で、私ども特許庁の審査システムというのは正に公的なシステムだと思っております。それを効率的に利用していただくために、企業のもちろん御理解、御協力もいただきたいと思いますが、料金についてもそういう形で変更させていただいて、維持費等については下げると。それから、大学とか一部中小企業についてはディスカウントの制度が今でもございます。(「長い」と呼ぶ者あり)はい。 そういうものを含めてきちんとやっていきたいと思っておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 私がちょっと答弁申し上げようと思ったのを特許庁長官が言ってしまって。 私は、簗瀬先生の言われている、本当にインセンティブを与えて、基本法を作って、そういう形で門戸を開くということは、私はおっしゃる意味はよく分かるわけです。しかし、るる御説明させていただいた、日本の二割もそういう実効性のない、そういうものが混じっていてそれが現在の審査というものを非常に大きく阻害をしているという、そういう面があります。 その中で、今、特許庁長官の答弁にもありましたけれども、やはり例えば企業の中でもそういういいものに対して、いいものがどんどんやればそこにインセンティブを与えるように制度的に料金も、実績主義みたいな形を盛り込むということもいいことだと思いますし、また、いわゆる特許料が高いという形でなかなか払えないような零細あるいは中小企業に対しては、これもう既にやっていますけれども、そういうところを強化するとか、あるいは個人の特許もあるわけですから、そういったところをしっかりとやりながら、今現状の問題点、これもいわゆる知的財産の戦略会議の中でもここのところは非常に議論があったというふうに承知しております。 そして、そういう中で、今こういう形でお願いをしているわけでございまして、簗瀬先生の言われることも我々今後の検討の中にしっかり入れて、そして総合的に私はやっていかなきゃいけないと、こういうふうに思います。
○簗瀬進君 大臣から、記念の年だからと、お祝いにというふうな前向きな答弁があると期待をいたしておったんですけれども、どうもかなり固いようでございますけれども。 私は、どうもお二人のお話、理解できないんですね。二割、ある意味でははしにも棒にも掛からないようなものがあるからと。それはそうでしょう。しかし、知的創造に取り組もうという人間にとってみれば、特許の専門家から見ればそうかもしらぬけれども、私は一生懸命取り組んでいるというふうな気持ちをみんな持ちながら創造のプロセスの中に入っていくんですよ。それを金を上げることによってカットしていこうという基本的な発想は私は間違いだと思います。もしやられるんだったら、先ほど言ったように二割の無駄、これをどういうふうに省いたらいいのかという制度的な工夫をすればいいじゃないですか、料金的な値上げじゃなくて。 私は、そういう意味では、いろいろな意見も承っております。ヨーロッパの流れというようなものも違うというふうなお話も聞いておりますけれども、弁理士会の皆さんが提案をしている、言うならばいわゆる調査前置制度、これはある意味で制度的な努力を示すものとしてもう一回真剣に検討なさった方がいいんではないのかなと、こういうふうに思うんです。 先ほど特許庁長官、二割ぐらいは簡単に無駄が分かるようなものがあるというふうにおっしゃった。その二割というのは一体何だというと、これはかなり専門的なお話で恐縮でありますけれども、特許の審査というようなものは実質上二段階に分けて行われるということの表れなんですよ。第一段階では先行技術調査というのをやるんです。第二段階では実体審査というようなものをやると。 第一番目の先行技術調査というのは、正に先行している技術があるかどうかの調査なんですよ。これは、特許でいう新規性のものかどうかということをチェックするんですね。今は随分科学技術あるいはコンピューターも進んでいますから、検索システムは簡単なんですよね。大体ふるいに掛ければ、簡単に先行技術があるかどうか、逆からいえば、新規があるかどうかということはふるいに掛けられるはずなんです。その上で、ふるいに掛けた上で、その実体、これは進歩性の審査というのをよく言われるんですけれども、新しいんだけれども余り意味がないようなやつはやっぱり取りましょうというのは、この二段階でのある意味での評価の話になってくるわけです。 だから、第一段階の先行技術調査の方はかなり機械的にソートを掛けるのは簡単なんですよ。ある意味では、アウトソーシングもその部分で可能なんですね。だから、そういう具体的な手続があるんだから、この先行技術調査というようなものを分けて、一定期間内に調査請求がない場合は出願取下げとみなすなんという制度がこの部分についてむしろ有効的に機能できるんではないのかなと。ある意味で、料金を上げるんではなくて、そういう制度的な工夫というようなものの余地というようなものは十分にあるんではないのかな、私はこう思うんです。 後ろでちょっと苦笑いなさっている方がいらっしゃって、恐らくその趣旨は、そんなに完全に分けられるものじゃないよというふうにおっしゃりたいんでしょう。確かにそういう側面はあるかもしれない、両方フィードバックしながらやっていくのかもしらぬけれども。 私は、それはそれとして、やっぱり先行技術とそれから実体審査というふうなことについての区分けというようなものが事実上どうも行われて、そういう流れの中で審査手続やっている、ファーストアクションをやっているというんだったら、その実態をもっときちっと踏まえた上で、先ほど言ったように、そんなに手間掛けないでソートできるものについてはそこで処理をするというふうな、料金でそれをやるというんじゃない、そういう工夫というのはできないのかなと、こういうふうにちょっと聞かせていただきたいんですけれども、これは特許庁長官に。
○政府参考人(太田信一郎君) お答えいたします。 審査請求に先立って、簗瀬先生がおっしゃられたように、調査請求を行うといういわゆる調査前置制度というものというのは、考えられないことはないかと思いますが、これは出願人にそういうことをまず義務化することの是非というものがあるかと思います。 それから、先ほどそれこそ御説明ありましたけれども、私ども、先行技術調査については指定法人、IPCC、工業所有権協力センターに正にアウトソーシングして、特許庁の審査官と一体となってやっておると。そうした場合に、今それで大わらわでやっているわけでございますが、新たに前置主義という形で負担が生じた場合に、今やっているものがかえって遅れる可能性もございます。そういう効率化への影響等もございます。 そういうことで、やはり私どもとしては慎重に検討することが必要じゃないかと考えておりますが、産業構造審議会、今議論をしております。そういう総合的な施策の検討の中で、出願人の適切な先行技術調査をどういう形で実現したらいいかという方策についても十分な議論を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
○簗瀬進君 この議論はこの辺でとどめたいと思いますけれども、大臣、まだ最終決断までの時間があるだろうと思うんです。 やっぱりこれはアナウンスメント効果というのはあるだろうと思うんですよ。知財基本法を出しました、だけれども料金がばっと値上げしましたというふうなことが一般の国民にどういうふうに受け取られるのか、それは考えていただきたい。それから、アメリカと日本との比較の中で、この料金格差が更にこれによって広まっていくよと。それはアメリカも値上げの努力はしますというのは、それは役所はそういうふうなお話は三極会議でされるでしょう。だけれども、公聴会で反対になったらそれは議会は通らないんですから、その結果として格差広がるんです。これ、一般的にどういうふうな受け取られ方されるかはもうお分かりだろうと思いますね。 でありますから、是非この値上げについては相当慎重に構えていただきたい、場合によっては撤回をするのが賢明なんではないのかなということを申し添えさせていただきまして、次の質問に行かせていただきたいと思います。 先ほど自民党の近藤議員さんからもいろいろな御質問がありました。私も、正に国家戦略という意味は、これ日本の国全体として知財紛争処理能力をいかにレベルアップしていくのかというふうなことが大変重要だと思っております。 そのために、若干、質問で予告はないんですけれども、これは前にも大臣にぶつけたことがあるので、ちょっとまず前提の質問なので、答えづらいかもしれませんが、質問させていただければと思うんですが。 私は、昨今の日本の士業界のいろんな業法整備が改正でなされておりますけれども、その中に欠けているのは、トータルで日本の広い意味でのリーガルサービスのレベルをいかに上げていくのかという、そういう視点がどうも欠けているんではないのかな。それぞれがやっぱりタコつぼ的な、自分の業界だけを考えて、例えば弁護士さんは弁護士さん、弁理士さんは弁理士さん、司法書士さんは司法書士さん、こういうふうな方向になってきてしまって、ユーザーの観点が私は非常に欠落をしている。正にこの点でも、先ほど日本の政策で、一般的に持っている供給者優位の発想というようなものがあるんだけれども、サービスを供給している業界のサイドに立ったそういう法改正がどんどんどんどん行われているような感じがする。 しかし、実際はユーザーからとってみればどうかなというと、私は使いづらい方向性にどうもなっているんじゃないのかなと。その例が、私自身ももう余り実務やっていませんけれども、弁護士です。 例えば、友人の話を聞きますと、東京で大変活躍をしている友人の弁護士がいるけれども、その弁護士の事務所には税理士がいます。だから、例えば相続の話になると、もうそこであちこち行かずに、たらい回しされずに税の相談と、それから遺言状とか遺産分割の話が一括してできる。正にそういう意味では、リーガルサービスのワンストップサービスが以前は簡単にできていた。しかし、弁護士は弁護士法を改正いたしまして弁護士法人を作る、それから税理士は税理士法を改正して税理士法人を作る。ところが、法人と法人との間のお互いの連携というものについての考慮がそれぞれの法律ではありません。でありますから、今まではパートナー的にうまい具合に税の申告なんかもやっていたそうなんですけれども、法人ということできちっと分けられてしまうという形になると、法人化はしたのはいいんだけれども、かえって、むしろ業態を分けなきゃならないようなそういう事態が生まれる。 私は、例えば弁護士と弁理士の問題もやっぱりそういう問題が出てくる。弁護士法人も弁理士法人も結構ですけれども、作ったらいいんだけれども、それぞれの相互乗り入れ、相互の連携の中でユーザーにとってどうしたら便利がいいのかという、そういう工夫がどうもないんですね。私は、これは非常に残念な傾向だと思っております。 これ一言で言いますと、知財においてのワンストップサービス、先ほどワンストップサービスというのは別のお話で出ていましたけれども、知財におけるワンストップサービスの必要性ということを、これしっかりと考えていくべきだと。個々的な、弁理士さんがどうの弁護士さんがどうののお話はこれから午後の質問に回したいと思いますけれども、ユーザーに立ってみれば、この部分は弁護士に聞かなきゃ駄目だ、この部分は税理士に聞かなきゃ駄目だということでたらい回しにされるというのは本当に厄介なんですよ。一つのところに行って大体もうトータルですっと流れるように相談が終われるというようなものが一番有り難いことなんで、そういう意味では知財を一つの大きなテーマにして、知財におけるワンストップサービスというようなものを考えていくべきなんではないのかな、そのためのそれぞれの各資格を持った人たちの相互連携というようなものを更に進めていけるような法律を作っていく必要があるんではないのかなと私は考えておるんですけれども、この件についての大臣の御答弁を求めます。
○国務大臣(平沼赳夫君) 当然、ユーザー本位でシステムを構築するということは私は大切な視点だと思います。 特許の紛争に関しましても、やっぱり弁護士さんの中ではこういう例えば工業所有権だとかそういう専門的な形でそういう知識が持っておられない方があるという形で、紛争裁判の中に弁理士さんも入っていただくようなそういうことは第一歩として進んできています。ですから、そういったことをやっぱりもっと推し進めてやれるようにしていかなきゃいかぬと思いますけれども、私も地元に弁護士会の皆様方、税理士会の皆様方がおられまして、これは日本のあれとしてそれぞれお立場があると、こういうなかなか難しい問題も一つあることは事実ですけれども、やはりこれからの検討の中でそういうそれぞれの団体の皆様方の御理解もむしろ我々が働き掛けてユーザー本位のことをやっていくということは私は必要なことだと、それが今回の基本法の精神も生かすことにつながると、こういうことで、その努力はしていかなきゃいけないと、こういう基本認識は持っております。
○簗瀬進君 午前中はこれで結構です。
○委員長(田浦直君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。 午前十一時五十二分休憩 ─────・───── 午後一時開会
○委員長(田浦直君) ただいまから経済産業委員会を再開します。 休憩前に引き続き、知的財産基本法案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言を願います。
○簗瀬進君 午前に引き続きまして、後半の質問をさせていただきたいと思います。 午前の部の最後に知財ワンストップサービスの必要性ということについて質問させていただきましたが、とにかくこの問題、私はライバルはやっぱりアメリカなんだろうかと、こういうふうに思います。特許の申請件数でもアメリカ一位、日本が二位と、随分後れて英独仏が来ると、こういうふうな状況でございます。そういう意味では、アメリカというのは大変なある意味でのパートナーでもありライバルでもあると、こういう状況は二十一世紀も続くであろうと思います。 そうした中にあってやっぱり、アメリカの体制と日本の体制を比較しながら、我が国の体制の弱さというようなものを補っていく、こういう観点が是非とも望まれるところだろうと。そういうことで、知財紛争処理能力、特に司法レベルでのということで三点ほど質問をさせていただきたいと思います。いろんなパターンはありますけれども、主に特許侵害訴訟、随分これアメリカの方に逃げていっているというような例を、これはもう先輩、同僚、皆さんもよく御存じのところだろうと思うんですが、三点ほど質問させていただきたいと思うんです。 訴訟当事者という形になってまいりますと、よく専門的な言葉では攻撃防御方法と、こういうことを言うわけですね。攻撃をしつつ防御をするというのは、これが訴訟の原告でも被告でも双方ともにそういう考慮に立って審理を進めていかなければならない。そうしますと、日米の彼我の攻撃防御方法の格差というようなものが結構目に付くところがございまして、三点の質問も背景にはそのような共通の認識があるわけでございます。 第一点は、これ非常に、特許侵害訴訟という形になりますと、御案内のとおりの大変な先進的な科学技術が焦点になっての大変厳しい争いでありますけれども、非常にそういう意味では証拠方法を集めるのが両当事者ともに苦労するわけであります、原告になろうと被告になろうと同じことなんですけれども。そういう中で、例えば侵害者の側からいってもあるいは被告にされた会社の側からいっても、科学技術の証拠方法が相手の随分奥深くに潜んでいる場合にどういうふうにそれを引っ張り出してくるのかということがやっぱりポイントになってくるわけでございまして、そこで証拠収集という観点で力を発揮しなければならないのは、私は特許法百五条の文書提出命令なんだろうなと、このように思っておるわけであります。 ところが、この特許法百五条の文書提出命令、どうも文言からいうと簡単に拒める、正当な理由というようなことを申し立てればそれ以上奥に入っていけない、証拠集められないと。というふうなことになりかねないわけでございまして、そこで、この特許法百五条の文書提出命令を拒める正当な理由ということの中身というのは一体何なんだろうかと。 これは広過ぎても狭過ぎてもいけないわけでございます。当然、それぞれが正当な努力の結果得た科学技術に基づく営業の秘密、これは守ってやらなければならないし、また逆に、攻撃をする方も、自分のそういう自助努力の中でできた科学技術の成果物を侵された場合は、それは積極的に相手に対して攻撃に出られるようにしておかなければならない。 そこで、この文書提出命令にいう拒否理由としての正当な理由というのは一体どういうふうに解釈をすればいいのか、その内容がちょっと、正当な理由という言葉だけを法律がぽんと投げているわけでございまして、判例の集積も今のところ少ないような感じでございますので、この正当な理由の内容について、現在分かり得る範囲での公権的な解釈といいますか、これをお示しいただければなと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) 御指摘の特許法第百五条のいわゆる文書提出命令でございますが、その文書提出命令を拒み得る正当な理由について、簗瀬先生おっしゃられたように、具体的な判例は限られておりますが、典型的には、火事などがあって不可抗力の事故で文書が焼失している場合など、提出すべき文書を相手方が所持していない場合が正当な理由に当たると考えられます。また、技術的なノウハウ、それから顧客の名簿のような秘密事項が記載されているなど、提出すべき書類に営業秘密が含まれていることも正当な理由に当たるとされております。 ただし、判例、東京高裁の平成九年五月二十日の判例にも示されておりますが、営業秘密であれば直ちに正当な理由と認められるわけではございませんで、個別具体的事案に応じて、営業秘密を開示することにより書類の所持者が受ける不利益と書類が提出されないことにより訴訟当事者が受ける不利益とを比較考量し、裁判所が判断することとなります。 なお、民事訴訟法改正に伴い、平成十一年の特許法改正によりまして、文書提出を拒む正当な理由があるか否かについては、裁判官のみが文書を見ることによってその妥当性を判断する手続、いわゆるインカメラ手続が設けられました。その後、この手続の下で、営業秘密の保護に十分留意しつつ、訴訟上必要な証拠が提出されることが期待されております。この制度は、運用が始められて間もないものであり、正当な理由が不明確な事態が生じているか、今後の判例の動向をきちんと注視していきたいと、かように考えております。
○簗瀬進君 今御答弁の中で、インカメラと、こういう言葉が出ました。カメラというのは、いわゆる写真を撮るカメラではなくて、イタリア語で室内というふうな意味でございまして、密室の中でそれを見るというようなことでございます。 実は質問の第二点は、そのインカメラ手続の日米の比較というようなことでございます。 アメリカでは、実は、インカメラ、カメラ、室内、秘密の部屋の中に入ることができるのは実は代理人も入れるんですよ。日本は、今の御答弁にあったように、民訴法百五条で文書提出命令の必要性を判断する際にインカメラという手続が新しくこれ入ったわけでありますけれども、実は、秘密の場所で見ることができるのは裁判官だけなんです。ここに意外に日米の差というようなものが出るんじゃないのかなと私は心配をいたしておりまして、日本は裁判官だけが見ることができる。 しかし、もちろん裁判官も、最近にあっては知財の専門的な知識を一生懸命勉強なさっている方もいらっしゃるだろうと思います。しかし、もう日進月歩どころか分進秒歩の科学技術の発展の中で、どうしても裁判所の知見が及びも付かないような新しい発明や発見が生まれてくる。それが当然相当大きな紛争に発展をしていくというような形になってくるわけでありまして、そのときにこの民訴法百五条のインカメラが、部屋に入れるのが裁判官だけという日本と、代理人も入って、もちろん代理人は入る際はそこで見たことについては外には漏らさないという、そういう大変厳しい守秘義務が課された上でアメリカの場合入れるわけでありますけれども、いずれにしても、代理人が入っていくという形になれば、科学的知見の最新のものを持った方がその部屋に入って、自分の意見をしっかりと述べることができると、こういうふうな日米の差というのがあるわけですよ。 ということになりますと、ここも、日本のインカメラじゃやっぱり不十分だと思う当事者はアメリカへ行っちゃいます。やっぱりここの部分も裁判所として、民訴法百五条の適用については、裁判官だけとしているのが今の日本の民訴法の現状なんですけれども、これを代理人にやっぱり広めていく必要があるんじゃないのかなと。ただし、それは当然そこで見たことというのはもう最新の秘密でございますから、絶対にそれは外に漏らしてはならないと、大変厳しい、秘密を守るという守秘義務を課した上でのことでありますけれども、そういう意味の方向性を出すのが最も望ましいのではないのかなと思いますけれども、今日法務省の方がお見えになっているだろうと思いますので、それについての、私の意見を踏まえた上で御見解、聞かせていただければと思います。
○政府参考人(原田晃治君) 委員御指摘のように、現在、特許法、また民事訴訟法におきまして一般的な文書の提出命令、特許法におきましては侵害行為の立証のために必要な文書の提出命令の制度がございます。 ただ、このような文書というのは、これも御指摘のとおりでございまして、営業の秘密が記載されることが多いために、しかも民事訴訟法におきましては証拠調べが公開の法廷で行われる、これは取りも直さず営業秘密が暴露されてしまうと、こういう問題点があるところから、いわゆるインカメラ、裁判官だけが文書提出命令を発するかどうかを判断するについて文書を見るための手続が整備されたというのが民事訴訟法のインカメラであり、特許法で同じように採用されているインカメラだと、このように理解しております。 問題は、今も御指摘ありましたとおり、非常に技術的な内容を含む文書でございますので、裁判官が見るだけで本当にそれが判断できるのかというのは、正にこれまでもいろいろ指摘があったところでございます。問題は、代理人を立ち会わせるという一つの方法がございますが、代理人が立ち会ったときに、そこで当然代理人が営業秘密に触れることがございます。これが後に漏せつされるというようなことをどうしても止めないといけない。問題はそれをどのように担保するかと、ここが検討の一番難しいところであろうと思います。 もちろん、罰則規定、守秘義務を課した上で罰則規定を置くというのが一つの方法でございますが、いったん罰則規定を置きますと、当然刑事罰になります。そうしますと、刑事罰というのはまたこれ公開の法廷でやらざるを得ない。公開の法廷でそれが本当に営業秘密を漏せつしたことになるかどうかを審理する。そこで、本当に営業秘密かどうかがまた刑事の公開の法廷で審理されなければならないと。非常にそういう意味で難しい問題が一つあるというふうに考えております。 さらにもう一つ、今後考えていかないといけないのは、来年の通常国会に我々は民事訴訟法の改正法案を提出する予定でございますが、そこで専門委員という制度、これ創設しようと思っております。専門委員の方にいろんな形で裁判官を補助していただくというようなことが検討の対象となっております。このような点も含めて、今後、民事訴訟法における営業秘密の在り方について検討をしてまいりたいと、このように考えております。
○簗瀬進君 今、ある程度積極的な方向で御検討をしているというふうな御答弁であったと思います。しっかりとやっぱりアメリカの法廷でどのような取扱いがされているのかということをよく検討して御研究をしていただいて、この部分で、日本の裁判所よりもやっぱりアメリカの裁判所の方がいいんだぞというふうなそういうことが今後とも続かないように、日本の司法も相当頑張っているんだと、ここではちゃんと自分の立場も守りながら攻めることもできると、こういうふうな十分な科学技術についての攻撃、防御ができるような、そういう体制というようなものをやっぱり早急に整えていただきたいなと思います。 それから三点目で、これもやっぱりアメリカの法廷と日本の法廷の比較でございますけれども、これは攻撃、防御、原告も被告も必死になって争うわけでございます。争う過程で、攻めている方も自分の秘密を守りながら攻めなければならないというふうなことに当然なってくる。 そうしたときに、アメリカなんかの場合はアトーニー・クライアント・プリビレッジという制度がございまして、パテントアトーニーに関しては、自ら攻めつつも、自分の持っている情報の中でこれは営業の秘密に当たるから相手の求めに対してそれをガードすることができる、こういうアトーニー・クライアント・プリビレッジと。プリビレッジというのは特権という意味でしょうか、自分の依頼者の利益を守るために敢然と守られている部分があるわけです。 日本の場合は、弁護士にはこのようなアトーニー・クライアント・プリビレッジというのは当然あるわけですよ、依頼者の秘密を守ると。ところが、先ほど近藤議員もお触れになっていることに関連をいたしますけれども、弁理士法改正によって日本の弁理士も弁護士と一緒に共同訴訟代理ができるようにはなったと。ただ、弁理士には、弁護士であるならばアメリカでも当然認められる特権というようなものがまだまだ日本の弁理士の場合は与えられていないわけです。 という形になりますと、やっぱり双方の比較をいたしますと、日本の弁理士さんの国際的な攻撃防御方法がまだまだ全面的には確保されていないんですね。 でありますから、確かに弁理士法改正というようなものは一つの大きな一歩だったと思います、共同でやる限り弁理士も訴訟上の代理権を認められると。ただ、それが通用するのは実は日本の法廷だけでありまして、ほかの国に行きますとそれは通用しないと、こういうふうな形になっておるわけでございます。こういうふうな一部は認めつつもほかの部分で手足を縛っているということになりますと、やっぱりクライアント、依頼者の立場からいってみますと、これは、日本の弁理士よりもアメリカのパテントアトーニーの方がそれはいいやというようなことにやっぱりなりかねない。こういう実情があるわけであります。 でありますから、弁理士も国際的な活動をする場合にはこのアトーニー・クライアント・プリビレッジ等のものを認めるべきなんではないのかなと、そういう意味での早急な法改正が必要なのではないのかなと思うのでありますが、御見解ちょっと聞かせていただければなと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答えいたします。 アメリカでは、簗瀬先生おっしゃられたように、民事訴訟での証拠開示、ディスカバリーにおきまして、弁護士等の代理人、アトーニーと、依頼者、クライアントの間の通信文書の開示を依頼者側が拒絶できるといういわゆる守秘特権が判例法上認められております。その趣旨は、依頼者が不利な事実も含めてすべての事実を代理人に明らかにすることによって不利益が生じないようにする点にあります。 しかし、アメリカにおきましては、依頼者である日本企業が日本の弁理士と通信した文書についてはこの守秘特権が認められなかった判例が過去にあり、そのため、日本企業の利益を害するという指摘がなされていたことは私どもも承知しております。しかしながら、最近、これ二〇〇〇年の五月三十一日でございますが、マサチューセッツ州の連邦地方裁判所におきまして、弁護士と同等の守秘義務を弁理士に認めている日本の改正民事訴訟法の規定及び弁理士法上の守秘義務を理由といたしまして、日本の弁理士と依頼者間の通信に守秘特権が認められる決定がなされ、判例が変更されております。 基本的にこの問題はアメリカの裁判所の判例法に関する問題であり、先般の弁理士法改正によって、御指摘のように、弁理士に訴訟代理権が付与されたことは、アメリカの裁判所において上記の判例を定着させるために今後大きく役立つものと考えております。
○簗瀬進君 以上三点ほど御質問させていただきましたが、通告はないんですけれども、大臣に、先ほどの同僚議員からの御質問もございましたけれども、今の答弁にあるように、既にアメリカの判例の方が日本の方の改正状況よりも一歩先んじているわけですよ。ある意味では、日本の法律でこれからやらなければならないようなことを先付けでアメリカの判例法が認めてくれたと、こういうふうなことでございますので、これはやっぱり更に力を得た形で、極めて限定的なこれは今までの流れがありますので、今度の一歩というのは、それはやむを得なかったかもしれないけれども、もうアメリカの方が更に進んじゃっているんだよということで、国際的なそういう戦いの場面で日本の攻撃防御方法が限定的であるというんだったらこれは早急に直そうじゃないかと、こういうふうにお考えになられて、アメリカの方が先に進んでいるから日本の法律を改正するのもこれはもう早急にやっていいんではないのかなと思いますんで、大臣の御見解と決意を、弁理士の訴訟上の権利を更に拡大をしていくということについての御見解、御決意を求めたいと思います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 先ほど法務省からの答弁の中でも、相当今後いろいろな面で、先ほど簗瀬先生も若干評価されていましたけれども、そういう方向に進んでおりますし、またアメリカの例もございます。 そういうふうなことで、これからますます国際化をして、そしてこういう特許紛争、知的財産のそういう訴訟というものも国境をまたぐというようなことに相なってきますと、日本の方もやっぱりそういう形で体制整備をしていくということは私は将来において必要なことだと、このように思います。
○簗瀬進君 次に、職務発明について伺いたいと思います。 本院の来週に予定をされております本委員会での参考人質問の中で、ノーベル物理学賞を受賞なさった小柴さんが出ていただけると、これはすばらしいことだと思います。もう一人の、大変いやし系で人気の田中先生、一生懸命お願いをしたようでございますが、諸般の事情で実現できなかったわけでございますけれども、田中さんは言うならば島津製作所というようなところで職務発明をしていただいた方だと思うんですね。それについてノーベル化学賞が決定をしたと。これは、恐らく日本でも、企業で働く多くの研究者に対しては大変な励みになるんではないのかなと思います。 ということで、田中さんの場合は会社との関係は良好であるようでございますけれども、それ以前に、ここでも私取り上げたことがありますけれども、言うならば青色発光ダイオードで発明をなさいました中村先生に関しては、会社をお辞めになって、そして会社と訴訟をしておりまして、先ごろの中間判決では中村先生の御主張は通らなかったと、こういうふうな話でございます。 このように、良好な方もいれば、なかなかぶつかり合っている方もいらっしゃるというようなことで、やっぱりそれは、日本の特許法三十五条等の職務発明についての法のある意味での不備といいますか、更にもう一層改正をするというようなことを必要としているような、そういうふうに私どもに感じさせていただいているわけです。 ということで、この職務発明を更に活発にさせていくというふうな形でのこの特許法三十五条について、今御検討していらっしゃるというような話も聞いておりますけれども、今後の改正等のお考えあるいはタイムスケジュール等があればお示しをいただければ有り難いと思います。
○政府参考人(太田信一郎君) お答えいたします。 特許法三十五条の職務発明規定は、発明は発明者の財産であるという原則の下、発明者を保護し、発明意欲を刺激するとともに、一方で、その給与その他の資金的援助をなした使用者との間の利益を調整するための規定であると理解しております。 平成十三年五月に出されました、光ピックアップ装置事件では、使用者が支払った対価が相当額に満たない場合には、従業者は事後的に相当な対価を請求し得るとの最高裁判決が出たことをきっかけに、産業界から、一度定めた対価の額の安定性を損なう可能性があるとして、現行の職務発明規定の見直しの議論が提起されました。一方で、現行の規定を改定すると、発明者である従業者に不利に働くとの議論も提起されております。 私ども特許庁といたしましては、今年九月に産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会で議論を始めました。 まず、今年度中に企業における実態、従業者層の意識、各国いろんな制度があります、その制度、実態等の調査を行うことにしております。その結果を踏まえて、発明者の研究開発へのインセンティブをいかに確保するか、一方で、企業の特許管理コスト、リスクの軽減、さらには我が国産業競争力の強化等の観点から、様々な社会環境の変化を踏まえつつ、改正の是非、仮に改正する場合にはその方向性について十分な検討を行い、二〇〇三年度中に結論を得ることとしたいと思っております。
○簗瀬進君 いずれにしても、前向きの方向で積極的に進めていただければと思います。 若干質問の順番は変更させていただきますが、私はそういう意味で産学の連携というようなものがこの分野では非常に重要であると思います。 ところが、大学の研究者と民間企業の研究者の交流というようなものはどうもまだまだいまいちだなという感じがするわけでございまして、調査室が作成をいたしました資料の四十ページに出ておりますけれども、「産学連携促進に必要な方策」ということで、民間企業の研究者と大学等の研究者のそれぞれにアンケートを取っております。 それで、まず民間企業の研究者からどんな必要な方策がありますかというアンケートで一番高かった二九・七%というのが、そういう回答が寄せられたのが民間企業の研究者の大学等への受入れの拡大と。これが寄せられたということは、当然、民間研究者から言わせれば、大学の受入れ体制が極めて狭いと、こういうふうな印象を持たれているのかなということがこの調査結果の意味付けだと思うんですね。それからもう一つ、大学等の研究者からいってみますと、二六%という一番高かったのが大学等の研究者の勤務形態の多様化、柔軟化ということで、大学の研究者から言わせるとどうも大学が窮屈だと、こういうふうに思われているようでございます。 そこで、産学の連携を進めていくというふうな観点においては、今この二つのアンケートの結果をお示しさせていただきましたけれども、大学の体制というようなものをもうちょっとしっかりとしないと駄目なんじゃないのかな。民間企業者から見れば大学受入れはどうも不十分だ、また大学にいる人からとってみれば勤務形態の多様化、柔軟化がどうも足りないと、こういうふうな印象を持っているというのは、これは文部省の調べたアンケートの中でも見事に出ているわけです。 そういう意味では、大学の研究体制というようなものがまだまだ日本は窮屈なんだなということが表れていると思うんですけれども、それを改革をするためには何をしたらいいのか、文部省のちょっと御見解を聞かせていただきたい。
○政府参考人(石川明君) 産学連携との観点からの大学の研究体制についてのお尋ねでございます。 産学連携を進めていくということは、もちろん我が国経済の活性化を図る観点からも重要でございますし、また大学等における研究活動の活性化あるいは若手研究者の育成といったような観点からも私ども非常に大きな意義を持つものだというふうに理解をしておりますし、そのために、今、先生から御指摘のありました大学における研究体制というものを整えていくということも必要だというふうに考えております。 そのような観点から少しく申し上げるといたしますと、例えば大学教員につきましては、平成九年の教員等の任期に関する法律というようなものが制定をされまして、それ以来、任期付任用といったようなことが非常に進んでおりまして、そういった観点で、大学における人材の、研究者あるいは教員の流動化がかなり進んできております。 そのほか、例えば、私どもとしては、国立大学における産学連携の拠点として共同研究センターを積極的に設置いたしますとか、あるいは国立大学の教官等が自己の研究成果を活用する企業等において兼業しやすくするための兼業規制の緩和を進めますとか、それからTLO等の整備促進を通じまして技術移転を進めると、様々な取組を進めてきておるわけでございます。 さらに、今後、現在検討中でございますけれども、国立大学について法人化を進めていく、図るということによりまして、大学の自主性、自律性を拡大をいたしまして、産学官連携など、多様な事業を大学の戦略的判断で実施できるようにするというような方向で今進めておるところでございます。
○簗瀬進君 午前中の質問で、この問題では知的創造の部分にまず最大限の力を注いでほしいと、こういうふうな私の考えを申し上げたところでありますけれども、大学はそういう意味で非常に重要な役割を果たさなければならないんですね。 ところが、先ごろの本会議でも私質問をさせていただきましたけれども、私もお会いして話を聞き、なるほどなと思ったのは、これ東京大学の生命研の所長をしております新井賢一さんという学者がおります。彼はゲノム研究では恐らく日本では有数の方だろうと思うんですが、その方が、これは本会議でも質問させていただきましたけれども、我が国の大学の研究体制、垂直的で終身雇用の階層型と、ヒエラルキーが非常にはっきりとしている。まあ言うならば、大学の中に言うならば教授という、大変なヒエラルキーの頂点にボスが存在をしていまして、全部そこで牛耳られていくと。だから一種の徒弟制度といいますか、研究者が、助手から、最初は講師なんでしょうかね、大学院を出て講師、助手、それから助教授、教授と、こういうふうに上がっていくための相当長い塗炭の苦しみを経なければならないと。正にそういうところから日本の優秀な頭脳が海外に流出をしていくという、こういう現状に結び付いていくわけでございます。 そこで、この任期制の採用状況について若干お触れになりましたけれども、任期制度、任期を決めて、そういうヒエラルキーの範囲外のそういう学者をどんどんどんどん登用すべきだと、こういうふうな方向に移りつつあると。それはそれで評価したいところなんですけれども。 実は、やっぱり先ほどのこの調査室の資料の三十一ページに、平成十三年度の科学技術の振興に関する年次報告、その中で任期付研究員の採用等についての導入状況の資料が出されております。これを見ますと、まだまだ、まあ始まったばかりということもあるんですけれども、ちょっと盛んになっているというふうな答弁にはほど遠いような数字ですよね。苦笑いしていらっしゃるので、そのとおりかなというふうに思っていらっしゃるのかもしれないんですけれども。 ちょっと挙げてみますと、国立大学で、大学が五十五あって任期制を採用している適用者数が千六百六十六、平均すると三十名。それから、公立大学では百六十九人、大学が十一あって適用者が百六十九人ですから、平均十五名。私立、私立も相当頑張っている、大学の数も多いというんですけれども、大学数は八十一で、この任期制が適用者数が千四十九人、平均すると十二名と。 そうしますと、国立、公立、私立となるにつれて任期制の方が下がってくるんですね。私も非常に意外だと。だけれども、よく考えてみるとそうかなと思うのは、私立大学が、八十八の大学の中で、大学が八十八もあって適用者数が各大学一番少ないと。だから、任期制採用については私立大学が一番後れていると、こういうふうな数字も出ているんですよ。 ですから、私は、これは任期制が直ちにすべていいとは思わないし、大変良好な研究環境の中ですばらしい成果を上げていらっしゃる皆さんもたくさんいらっしゃるだろうと思うんです。ただ、一つの指標として、この各大学平均、国立大学で三十名というのは、やっぱり私はもうごく一部のスター教授だけを採用して任期制をやっているよというふうな、言うならばアリバイ作りのための数字なんじゃないのという、こういう意地悪な見方ももしかしたらできるかもしれない。実態はどうなんですか。
○政府参考人(石川明君) ただいま先生の方から、進んでいるとは言いながらも大変その実際の数字等を見れば極めてまだ少ないのではないかという御指摘いただきました。正にそういった面はあろうかと思います。私が先ほど大いに進んでいると申し上げたのも、ここ数年、この四、五年前に比べると本当にその点は加速度的に進んできていると思っております。 そういった意味では、私ども、この任期制というものが持つ意味、そういった意味での教員、研究者の流動性の促進ということの重要性を今後とも各大学には訴えてまいりたいと思いますし、この任期制の積極的な採用、お取組については今後とも促してまいりたいと、こんなふうに考えております。
○簗瀬進君 大学については、随分予算的な手当ても手厚くされてきてはいるようでございます。この資料の八十八ページ以下に、平成十五年度の「知的財産関連政策に関する概算要求の概要」というようなものがございまして、「知的財産の創造の推進」というところに七千六百九十五億円、「保護の強化」に三百二億円、「活用の促進」に三百十八億円と、それぞれの概算要求の数字が出ております。 その中で、一番目の「創造の推進」のところで、「大学等における知的財産創造の推進」というところに、いろいろなお金は入っておるだろうと思うんですが、概算要求では七千十五億円という大変多くのお金が出ております。これ、大変いいように見えるんですけれども、お金の実際の配分がだれが決めているのかなとか、だれに行っているんだろうというところについて、しっかりとやっぱりチェックをしなければならないんだろうなと。国民の大切なお金でございますから、だから無駄なものに行ってはならない。だけれども、先ほどの審査料の値上げの話じゃありませんけれども、ある程度厳選をしようとするとかえって駄目にしてしまうという部分もあるので、これは難しい話だと思います。 この先ほどの新井さんが書いた「東京ゲノム・ベイ計画」という、こういう本があるんですけれども、この中でアメリカの例がちょっと出されておりまして、先ほどの任期制の問題は大学の創造力を高める上での人事の問題だと思うんですね。人事体制といいますか、研究体制の中の人事についての問題。 それと同時に、重要なのはお金の問題なんですよ。アメリカが大変知的創造力を活性化されているというふうなものにはお金の問題も非常に大きい。そのアメリカの例が紹介されてありますけれども、新井さんはゲノムでございますので、当然生命医科学研究ということになるわけです。その個人助成金についてまずアメリカでどうなっているかといいますと、独立機関であるアメリカ国立衛生研究所が、これが配分をするわけです。このいわゆるNIHと言われているところは、アメリカ東部のメリーランド州というところにあって、百十億ドルを超す連邦政府予算を使って医科学分野の研究者養成に携わっていると。その場合に大切なのは、この研究費用、最終的には研究者個人に行くようなそういうシステムをシステム設計の一番基本に置いていると。講座に行くとか研究機関に配分するとか大学に配分するとかという、そういうまとめの大きいところにどかんと出すんじゃなくて、一人一人の研究者のところに直接行くように制度設計をしているというんですよ。 だから、そういう点で、先ほど大変なお金がというふうなお話をさせていただきましたけれども、我が国の研究費助成の中で、最終的に研究者個人ということで個人あてに、例えば講座とかそういうのじゃなくて、何々研究活動とかじゃなくて、個人の研究者だれだれにという個人のあて先になっているようなお金というのは何割ぐらいあると見たらいいんですか。
○政府参考人(山元孝二君) 先生の御質問に直に答えられるかどうか分かりませんが、今の資料の八十八ページ目に、平成十五年度の概算要求で大学等における知的財産創造の推進、約七千十五億円、これの最初の①に競争的研究資金の拡充というのがございます。これは全省庁のものでございまして、正にこういう競争的資金、いわゆる公募いたしまして、それぞれの研究者が提案いたしまして、そういう提案された中から優秀なテーマを選んでその方に研究費を出していくと、そういう競争的資金でございます。 これは、科学技術基本計画におきましても、正にこの制度をこれからできるだけ伸ばしていこうじゃないかという状況にございまして、この関係の予算が各省とも力を入れているところでございます。 その中で、私ども文部科学省におきましても、平成十五年度、このこういう性格の資金の増に力を入れてございまして、その中でも、特に研究者個人という意識した数字といたしましては、約二千五百億円のお金を計上しているところでございます。
○簗瀬進君 二千五百億円とおっしゃいましたけれども、対象人数は何人ぐらいですか。
○政府参考人(山元孝二君) そういう数字でつかんだものはございませんけれども、例えば、この競争的資金制度の中で一番私ども力を入れておるものの一つといたしまして、大学の研究者たちが自らの発想で行うような研究に出していく制度として、科学研究費補助金というのがございます。その中にもいろんな各種の制度がございますが、例えばその中の一番大きなものといたしまして基盤研究という制度がございます。その中では、約、トータルの申請件数、数万のあれに対して、採択数が約八千とか九千とか、そのようなテーマが選ばれておりますので、それ相応の研究者にお金が行っているわけでございます。 ただ、これは単なる科研費のうちのほんの一部のものでございますので、そのほかのいろんな各種の制度におきましていろんな研究者がそういうお金を使われておるというふうに思います。 申し訳ございませんが、トータルの、全体の数字というものは、今ちょっと把握してございません。
○簗瀬進君 更に私も研究を深めさせていただきたいと思いますけれども。 やはり先ほどの機構改革、研究体制の改革と、それから助成をする場合のお金を流すシステムというのは、もっともっとちょっと精緻に考えられた方がよろしいんじゃないのかなと思うんですね。大づかみの金をどんと下ろして、後は、例えばプロジェクトごとでも、グループとしての研究ごとでも。だけれども、その中で、例えば先ほど言った本当の意味で個人の自由な活動が行われるような体制が確保されていればいいんですけれども、一種のヒエラルキーの中で一つのプロジェクトが出てきて、そこにまとまったお金を落とすというふうなそういう体制になってしまいますと、逆に垂直的、階層的なヒエラルキー型研究体制を強化することにつながっちゃうだろうと思うんですよ。 だから、そこら辺についての懸念をやっぱり今の答弁でもちょっと持たざるを得ないんだけれども、更に何か説明できますか。
○政府参考人(山元孝二君) 御説明いたします。 競争的資金、今、私はほんの一部の制度の御説明をいたしました。各省におきましてこういう性格の制度を持った競争的資金制度はもういろいろございます。 それで、私どもの方でも、今、科学研究費補助金、こういう大学の研究者が本当に欲している研究に対する制度がございます。あるいは逆に、日本全体として本当に戦略的にやっていくべきような研究テーマ、そういう戦略性を持った公募をいたしまして、それに研究者の方々に応募していただく、そういう戦略的な研究推進制度を別の制度としてやっていくとか、あるいは民間における研究あるいは技術的な課題に対しても出すような制度とか、いろんな形で諸制度がございます。したがいまして、その諸制度の中で、皆さん方いろんな形でお金が使われていっておるわけでございます。 そういう流れの中におきまして、私ども、単に研究費を増やすというだけじゃございませんで、審査の過程におきまして、どういうふうな形で本当にいいテーマを選んでいくかとか、あるいはその後のフォローをきちっとどうやっていくかとか、そういうふうな制度の改革そのものにも意を尽くしてやっておるところでございます。
○簗瀬進君 先日も新聞で、先ほどのその競争的な研究のコンテストの結果が出されておったと思います。各大学ごとに配分をされ、配分というか、大学ごとに新聞の記事は整理をされておりまして、東京大学がこういう、東工大がどうの、北大がどうのと、こういうふうな整理がされておりました。それは何かのコンテストだったと思うんですけれども、ちょっと不正確な質問かもしれません。 ただ、その選ばれたプロジェクトの数を見ながら、ある人がぽつんと、何といいますか、審査員の所属をしている大学のところはちゃんと数は出ているんだよねなんというような話をしていたんですよ。やっぱりコンテストをするにしても、非常に公平かつ適正な判定がされていればいいんですけれども、何となく今までの力関係の中でそれぞれバランスを取ってという、言うならば日本的な、研究の良しあしというよりも、何となくそういう世間のバランスの中で配分をされるようなことになったりすると、これは全く意味がないと思うんですけれども。 あのプロジェクト、あれは文部省がやっていたやつだろうと思うんですが、各大学からいろんなプロジェクトを募集して、それで判定をして、これを先ほどのお金を出す対象にしていくという、これについてちょっと質問させていただきたいんですが、審査体制みたいなのはどんなような具合になっているんですか。
○政府参考人(山元孝二君) 御説明いたします。 今の先生おっしゃったのは、今年度から始まった二十一世紀COEという制度だと思います。あの制度につきましては、日本学術振興会の方で正にその審査の機関を設けまして、厳正、公平に行われたと、こう承知しております。 先生の御懸念のところについて、もう少し具体的な形で御説明させてください。 一番よく言われますのが、科学研究費補助金におきますボス支配だとか、そういういろんな御指摘がございますが、これについてのもう少し審査の流れを少し御説明いたしますと、今言ったいろんな諸課題も含めまして、もう多数の申請がございますが、その審査に当たりましては、いわゆるピアレビューという、その分野の第一線の研究者の方々に、いろんなもう分野も広がりがございますので、幾つかにずっと分かれまして、その方々に書面審査をきっちりとやっていただくと、これが一つの基本になってございます。さらに、そういう第一次審査での評価を踏まえながら、それをさらに委員会形式で、もちろん委員会形式でございますが複数のいろんな方々が入りまして、その中で最終的に審査課題が選ばれていくと、そういうことになってまいります。 さらに、今の小さい研究制度だけじゃなくて、大型の高額の研究費を要するような制度もございます。こういうことになりますと、その審査過程におきましては、具体的に御本人を呼んでのヒアリングもその審査過程の中において行うと、そういうことがなされております。 したがいまして、そしてまた審査員の中にはそういう利害関係というところについても十分事務的にも注意しながらやられておると、そういう制度になっておりますので、私自身、いろんな各制度の中を見ております。私自身が直接、別な制度でございますが、審査の中を私、入って傍聴したりいろんなことをやってございますが、その辺りの公平性とか、その辺りは私は自信を持って大丈夫、なされておると、こう言い切りたいと思ってございます。すべてをもちろん把握しているわけじゃございませんので言い過ぎかもしれませんけれども、そういう自信は持っているつもりでございます。
○簗瀬進君 言い過ぎぐらいでいいんですよ。本当にそれだけ熱心にやっていらっしゃるという、そういうお考えが伝わってまいります。 今のお話の中にあったピアレビューシステム、これは新井さんもアメリカの中で大変いい制度であると、こういうふうなことを言って、是非とも日本にというようなことなんですが、日本ではもう既にピアレビューのシステムは入っているよと、こういうふうな御答弁だったと思います。 ただ、やっぱり科学技術というようなものは本当に日進月歩でありまして、牽引車が、もうあっという間に牽引車から次の牽引車に移っていくといった、そういう状況が日々続くだろうと思うんですね。だから、そこら辺の日々の移り変わりというようなものをどういうふうに作っていくのかということが非常に大切だろうと思うんです。 その審査を役所じゃなくて研究者に任せるという、これは絶対の、研究者助成のシステムの私は根幹に来るだろうと思うんですけれども、どうかそういう意味で、この日進月歩、分進秒歩の科学技術の進歩に後れないような研究者助成の体制を作っていただきたいなと思っております。 私は、最後に、用意した質問の中で、既に近藤さんが御質問をしたりして、はしょったものもございました。ということで、質問にはないことを最後に大臣に申し上げたいと思っております。これは産業政策の部分に入ってくるかもしれません。 まず、知的財産基本法については、産業法の小さな間口だけでとどめてほしくないと、もう日本の文化全体にかかわっていることだという大きな取組をしていただきたいと、これは冒頭申し上げたところなんですけれども。それはそれとして、今度は産業政策として考えてみたときに、もっとやっぱりめり張りの付いた、そういう戦略というようなものを今度は経済産業省のリーダーシップの中で打ち出してもいいのではないのかなと。 ただ、それは大変もう間口は広くなっておりますから、例えば、私は非常に面白いなと思ったのは、新井さんの名前再三出しますけれども、東京ゲノムベイ計画というようなものを出しております。 東京湾の周りをずっと眺めてみますと、いろいろなゲノム関連の研究、大学が非常に取り巻いていると。例えば、白金台には東京大学の医科学研究所、それから遺伝子多型研究センターとか先端治療開発機構とか、いろんなものが白金台に集まっている。それから、お台場には産業技術総合研究所、これは経産省ですよね、あるわけでありますし、それから生命情報科学研究センター。それから、かずさアカデミアパーク、今度は千葉の方に行きますけれども、そこにはかずさDNA研究所、ヘリックス研究所。それから、横浜には横浜サイエンスフロンティアということで、理化学研究所あるいはゲノム科学総合研究センター等のゲノム関連の研究機関がずっとあるわけです。 それから、そのほかにゲノムの関連大学もたくさんもちろんあるわけです。さらには、ゲノム関連企業で名立たる企業がこの周辺に集まっていると。 今、ゲノムの分野ではシンガポールが随分頑張っております。あそこにはもう、世界的な学者をシンガポールはもう二十年前から呼んできて、着々とこの分野では努力をしておるわけでありますけれども、確かにゲノムの研究については日本は若干後れていると、こういうふうな評価もあるようでございますけれども、いや、それぞれの研究集積は大変あるというふうで、私は、東京湾に集まっているゲノムの研究センターをまとめてゲノムの湾と、そういう意味で東京ゲノムベイという、そういう大きな取組をやられたらどうかと、こういうふうな提案もございます。 さらには、今アメリカがある意味では日本に取り残されないようにということで必死になって追い掛けているのは、これはナノテクノロジーの分野であります。 ナノテクについても、日本はこの分野ではかなりまだ先行している立場があると。という形になりますと、ナノテクもいろいろな間口の広さを持っているわけでありますけれども、やっぱりナノはナノで一つのきちんとした、やっぱり皆さんにインセンティブを高めるようなそういう大きなプロジェクトというようなものをやっぱり作った方がいいのではないのかなと、こういうふうに思っております。 これは、科学技術はもういろんな分野がありますから、だからどれもこれもというふうなことですと、絶対これはみんな同じように目立たなくなってしまう。だから、私はそういう意味では東京ゲノムベイとか、かつての言うならばシリコンバレーではありませんけれども、そういう一つの大きなシンボルになるようなビッグプロジェクトというようなものを考えて、産業インセンティブを付けながら引っ張っていくと、こういう取組が必要なんではないのかなと思います。それを大臣に聞かせていただきまして、私の締めくくりとさせていただきたいと思います。 以上です。
○国務大臣(平沼赳夫君) 特にゲノムとナノと、こういう形で御指摘をいただきました。 ゲノムベイ東京という具体的な名前も出していただきましたけれども、これは今年の七月二日の都市再生本部決定の都市再生プロジェクトにおいて、東京圏におけるゲノム科学の国際拠点形成としてゲノムベイ東京というのはもう位置付けられております。そしてさらに、アクアラインで行けば上総のアカデミアパークというのがあって、そこにはこのゲノムの集積もございますし、御指摘の横浜もございますし、さらには東葛地域にもそういうものが展開しておりますから、総合的にやっていく、そのことは私どもとしては重点的にやっていきたいと思います。 それから、ナノに関しましては、これは十のマイナス九乗メートルと、こういう非常に微小で、日本は物を細かくするのが非常に得意な分野でございますし、四つの、これから日本が産業競争力を強化するに当たって四つの重点部門を作りました。その中の一つの大きな柱がナノと、それから材料と、こういうくくりでやらしていただいておりまして、これもアメリカが御指摘のようにとにかくすごい力で頑張ってきておりますので、それに負けないように日本もこのナノ、一生懸命頑張っていかなければならない。四つの重点の中に両方とも加えてやっておりますので、更にいろんな意味での御示唆、そしてまた御助言をいただければと、こういうふうに思っております。
○簗瀬進君 残り、若干時間がございます。今日は、特に経済産業大臣あるいは特許庁長官といろんなやり取りをさせていただきました。 本当にこの知財基本法ができたということは、私は、大変すばらしい、歴史的な法律が誕生したなと、このように思います。 ただ、先ほども申し上げたように、IT戦略とIP戦略は車の両輪であると。正にそういう意味で私は、コンピューターというようなものが生まれて、それによってもう社会全体が変わろうとしている、そういう大きな認識の中でこの知財の問題が生まれてくる、この部分はやっぱり一つ押さえておいていただきたいことなのかなと。だから、この知財だけで考えて狭苦しくやってしまいますと、もう本当に効果は出ないと思うんです。だから、そういう意味では非常に広い視野を常に持っていただければと思います。 それと同時に、やっぱり間口が広いと必ず日本は駄目になっていくというのは、やっぱり縦割りの割拠主義の中でいかにそれをまとめて統合的なリーダーシップを発揮していくかという、その部分だろうと思うんです。その点では、知財戦略本部、既に質問にも何度も出ておりますけれども、本当に実効性あるような総合調整力を発揮できるんだろうかと、もうそこにすべてが絡んでいるんだろうなと思っておりますので、どうかそういう意味で、大変力強い推進体制を組み上げていただきたい。そして、そのためには、いつもトップに立たれる人がこの問題についての大変深い認識を持ち続けていただきたいと。特に小泉さんにそのことをしっかりと伝えていただけるようお願いを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。 どうもありがとうございました。
○松あきら君 公明党の松あきらでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。 今、大手の音楽レコード会社が軒並みその業績を悪化させております。これはもちろん、今は不況でございますから買い控えあるいはヒット作に恵まれない、こういった要因もあると思います。しかし、やはり私は、パソコンやあるいは高速インターネットの普及によりまして高い音質を保ったままCDのコピーが簡単にできるようになったと、ここに大きな原因があるのではないかなというふうに思うわけでございます。 例えば、業界最大手のエイベックスの直近の中間決算、これを見ましても、売上高は浜崎あゆみさんのコンサートの収入などに支えられまして前年同期比は七%増となったものの、コピーCDの広がりで三年間に一千億円の市場を失ったということなんですね。営業利益は前年同期よりも二十三億円悪化して十六億円の赤字になっちゃったということなんです。 コピーCDを放置をすれば音楽市場の先細りが懸念されることから、レコード各社はパソコンのハードディスクドライブに複製できないCDを発売するなど、そのコピー対策を進めておりますけれども、コピー対策とあるいはコピーとのイタチごっこが繰り返される、これが予想されまして、各企業の努力だけではもういかんともし難いというふうに思うわけでございます。このままでは音楽業界に多大の影響を生じるだけではなくて、文化の普及発展という観点からも、私は看過できない問題となるのではないかというふうに思います。 政府といたしましても、デジタル化時代の音楽著作権保護にどのような対策を講じていくおつもりなのか、文化庁にお伺いをいたしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) デジタル化時代の音楽著作権の問題についてお尋ねがございました。 お話にございましたように、デジタル技術の発達は音楽を始めとして様々なコンテンツの流通、活用の範囲を大きく拡大する一方で、違法な利用の蔓延といった問題を引き起こしているわけでございます。こうした問題に対処するためには、権利者自身が対策を講じることを前提としつつ、政府としてもそのような権利者の努力を支援するための法整備を行うことが重要であると考えております。 そのような法整備の一つとして、我が国は権利者自身が用いるいわゆるコピープロテクションの解除を禁止するための法整備を既に行っているところでございます。これは、先進国の中では日本とアメリカとオーストラリアのみが実施をしている、整備をしている制度でございます。これを受けまして、レコード業界などにおきましてはコピープロテクションの活用が図られつつあるわけでございますが、まだその普及が十分ではないということがございまして、更にその普及を図る必要があると考えております。 また、音楽CDが現在採用しておりますプロテクション技術は必ずしも十分ではないということも言われておりまして、DVDで採用されているような強力なプロテクション技術を早急に導入するということも併せて検討していると承知をいたしております。 また、我が国の著作権法では、国際条約上の義務を超えまして、CDなどがデジタル方式で私的利用のために録音されることによって生ずる損害を賠償するための、補償するための補償金制度というものも採用しております。これは、デジタル録音に用いられますMDとか音楽用のCD―Rなどの記録媒体や録音機器の販売価格に補償金を上乗せして、利用者から補償金を徴収をして権利者に配分をするという制度でございます。この制度の運用改善等についても更に検討する必要があると思っております。 加えまして、長くなって恐縮でございますが、多くの人々が優れたデジタルコンテンツを活用できるようにするためには、違法な利用を防止するだけではなくて、安全で円滑な流通を促進をするということも文化の側面から大変大事だと思っております。 例えば、日本発の新しいビジネスとして国際的に注目をされております着メロのような契約システム、セキュリティー技術、自動課金システムなどを組み合わせた新しいビジネスモデル、流通システムの開発、普及が重要でございまして、我が省といたしましてもこうしたビジネスモデル等の開発を積極的に支援してまいりたいと考えております。 最後に、何といってもやっぱり国民の間に著作権というものに対する認識を深めていくことが大事でございますので、著作権教育の充実により一層努めてまいりたいと考えているところでございます。
○松あきら君 東アジアにおいて海賊版CD、これが広く流通するなど、著作権侵害が顕著になっております。先ほど午前中の質疑で高市副大臣が、中国の模倣品には手を焼いているというふうなお話もございましたけれども、とりわけ中国における海賊版被害はもう深刻なんですね。中国ではレコード、CDの市場規模が約一千億円ありますけれども、その正規品の市場はわずか一〇%、一割なんです。九〇%、九割が海賊版で占められているわけでございます。 海賊版を具体的に見ますと、例えば宇多田ヒカルさんとかあるいは浜崎あゆみさんとか、所属会社の異なる有名な歌手のヒット曲を集めたベストアルバムなんかが二百円ぐらいで売られているんですね。もうたまったもんじゃありませんけれども、こうした侵害行為を放置することは、やはり広大な市場を失うばかりでなく、我が国音楽関係者の創意工夫をも減退をさせかねません。 海外における海賊版被害に対してどのような対策を講じてきたのか、今、先ほど種々お話ありましたけれども、やはりこの海賊版被害対策の実効性を高めるために今後どのような対策に力を入れていくおつもりなのか、これは文化庁と経産省、両方にお伺いをしたいと思います。
○政府参考人(銭谷眞美君) 海賊版対策につきまして文化庁の方からまずお答えをさせていただきます。 お話にございましたように、アジア地域におきまして、ゲームソフト、アニメ、音楽など我が国の著作物に対する関心が高まる中で、それらの海賊版が多数流通しているということは、文化的な創造活動を保護し、良質のコンテンツの交流を促進するための著作権制度を所管をいたします我が省といたしましても、大変深刻な問題であるという認識を持っております。 この海外における海賊版の流通、製造を防ぐためには、我が国の権利者が自ら侵害発生地における民事、刑事のシステムを活用いたしまして、迅速に対抗措置を講ずるための環境整備を行うということがまず不可欠であろうと思います。加えて、政府といたしましても、多国間や二国間の枠組みを活用いたしまして、当該国に対して権利保護、取締り強化の働き掛けをしていくということが重要だと存じております。 このため、我が省といたしましてはこれまで、まずアジア諸国における民事、刑事上の手続をより効果的に活用するための手引書を作って民間の方に御利用いただくとか、あるいは世界知的所有権機関、いわゆるWIPOとの共同によりまして、アジア地域を対象とした著作権法及び管理体制の整備を支援するためのシンポジウムの開催等々の事業を実施をしてまいったところでございます。 今後は、実は先般、権利者や企業が共同して、民間の組織としてコンテンツ海外流通促進機構というものを作っていただきました。これは文部科学省、経済産業省がその活動を支援しようということで作っていただいたわけでございますが、このコンテンツ海外流通促進機構と連携協力をいたしまして海外における侵害実態の監視や訴訟の提起を行う、さらには当該民間組織からの侵害情報を得て、二国間あるいは多国間の協議において相手国政府に取締り強化を強く求めていくということが重要と思っております。 我が省といたしましても、著作権関係団体等との連携をより密にいたしまして、海賊版対策を積極的に講じてまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
○政府参考人(太田信一郎君) 経済産業省としての取組でございますが、従来から文部科学省さんと連携を取りまして、WTOあるいは二国間協議等の各種機会を利用しまして、中国を始めとする侵害国政府に対して権利保護、取締り強化の働き掛け等を行ってまいりました。 さらに、来月初旬には、民間の反模倣品・海賊版対策団体であります国際知的財産保護フォーラム、松下電器の森下会長が座長をされておりますが、が政府関係者とともに中国に模倣品・海賊版対策ミッションを派遣する予定でございます。このミッションの中には、ゲーム産業やあるいはソフトウエア産業の代表者も含まれる予定であると聞いております。このミッションにおきましては、我が省としても、文部科学省さんあるいはほかの省庁さんとも連携を取りながら、官民一体となって、中国の中央政府、地方政府に対して知的財産の制度あるいは運用の改善、侵害品取締りの強化などについて申し入れる予定でございます。 さらに、国全体の課題として、国境措置、水際措置についても今後大きな課題として取り組んでいかなければならないと思っています。これは現在、財務省さん等とも相談しているところでございます。
○松あきら君 自らが対策を講じるための環境整備ということもおっしゃいましたけれども、やはりこれは文化と産業を守るという点で、是非国を挙げて対策を取っていただきたいということをお願いいたします。 次に参ります。 研究開発やあるいは産学連携などの知的財産の育成、発掘、活用のための制度に関しましては、例えば科学技術基本法に基づく科学技術基本計画の策定、大学等技術移転促進法によるTLOの整備など、様々な施策が講じられて、制度としてはおおむね整ってきたのかなというふうに思います。今後はこれらの制度をどのように活用していくのかが重要になっていくというふうに思います。とりわけ、研究開発にかかわる人材の確保がポイントになるというふうに思います。 先ほど簗瀬さんも、いらっしゃいませんね、お触れになりましたけれども、大学や研究開発機関では、研究開発の成果を上げるために、五年程度を一区切りとした任期制雇用制度が導入されているわけでございます。そのまず導入制度、状況はどうなっているのか伺わせてください。
○政府参考人(山元孝二君) 御説明いたします。 我が国の研究環境、個々に柔軟で競争的な研究環境を作っていくために一つの研究者の流動性、これは非常に大きな課題だと思ってございます。これは御本人自身が視野の広いものを持つというだけじゃございませんで、研究機関そのものの、いろんな多様な人たちが集まってくるということで、その活性化にもつながっていくということで重要なことだと思います。そのためにも、研究者の流動性のためにも任期制の導入ということは科学技術基本計画においても指摘されておるところでございます。 本件につきましては、特に平成九年に国立の試験研究機関とか大学において任期付任用を可能とする法律が成立いたしました。それ以来、この関係の人数が増えてきたわけでございます。現在、国立試験研究機関及び独立行政法人になった研究機関、ここにおきましては平成十三年の四月現在で十八機関、約三百十四名の方々が任期付きということになってございます。それから大学、これは国公私立合わせてでございます、それと大学の共同利用機関、ここにおきまして、平成十三年八月現在で百五十四機関、二千九百十三名の方が任期付きになっておると、そういう数字を把握しておるところでございます。
○松あきら君 任期制導入は、活性化あるいは流動性ということもおっしゃいましたけれども、やはり研究者に競争的で多様な研究環境の中で能力を発揮できる機会を与える、創造性、独創性豊かで広い視野を有する研究者を養成する、こういう点では私は確かに有益であるというふうに思っております。 しかし、研究開発をする学生から、一方、博士課程に進むことによって就職先が限定されちゃって、かつ任期制雇用の対象となり、将来に見通しが立たないから修士課程でやめておこう、こんな話も出てきているわけでありまして、やはりそういう現実もあるわけでございまして、マイナスの影響も無視できないかなと。やはり任期制のプラス面、マイナス面を総合的に評価して、研究開発を促進する上でどのような研究者の雇用形態が最もふさわしいのか検討、研究する必要があると思いますけれども、これについてはいかがでございましょうか。
○政府参考人(山元孝二君) 先ほどの簗瀬先生の御質問のときに私どもの研究振興局長の方から説明がございましたように、競争的な環境、これを支えていきます任期付任用制度というのはまだまだ制度的には成熟してきてございません。先ほどの数字も、全体の中のほんの数%の状況だと思ってございます。したがいまして、基本的にはまだまだ、この制度の定着を図っていく、その努力を進めていきたいと思ってございます。 そのためにも、いろんなそれぞれの機関におきまして、任期制についての適用方針を明示したような計画を是非それぞれの機関で作ってくれというふうなことでお願いをしてございます。あるいはこの任期付教員を始めとしたいろんな評価の中で、きちっと処遇にもつながったようなきちっとした処遇を、評価をしてやると、これも重要な話かと思います。また、いろんな研究者がいろんな経験を積むためにも流動性を高めるためにも、産学官の交流とか国際交流、こういう面での施策を充実していく、こういうものも重要かと思います。 それから、今のちょっと就職というお話しされました。正に今の企業におきまして、修士課程の方々を採るというのがどうしても多い状況というふうに私どもも認識してございます。もう少し博士課程修了者が企業等においても本当に活躍していただける、そういう状況を更に広めていく、こういう必要性もあろうかと思ってございます。 私ども、科学技術・学術審議会の人材委員会におきましてもそういう人材面での、今、先生の御指摘になったところも含めましていろんな、本当により具体的な課題としてはどういうものがあるか、更にこういうものを広めていくためにはどうしていったらいいか、それを更に検討その他を進めてまいりたい、こう思っておるところでございます。
○松あきら君 ありがとうございました。 やはりこの任期制ということも大事であると、プラス面が多いというふうに今のお話で伺いました。 やはり日本はまだまだ博士課程あるいは修士もそうですけれども、外国に比べて非常に人数的にいいますと少ないわけですね。やはりこれも是非皆さんが修士あるいは博士課程を取れるような状況に持っていっていただきたいというふうに思います。 また、近年、女性の社会進出、これは目覚ましいものがございますけれども、研究の分野もやはりこれは例外でないわけでございまして、特に理科系の修士課程、若しくは博士課程に進学する女性も増加しつつあるというふうに聞いております。修士課程、博士課程への女性の進学の推移と今後の見通しについてお伺いをいたします。それから、また併せまして、研究職への進出の状況はどうなっているのか、お聞かせください。
○政府参考人(山元孝二君) 御説明いたします。 私ども文部科学省の方で学校基本調査というものをしてございます。そのデータを見ますと、理科系、これは理学、工学、農学、保健、こういう分野でございますが、ここの修士課程への入学者に占める女性の割合、これが平成三年度が七・四%に対しまして、平成十三年度が一七・一%と非常に大きく伸びてございます。うれしゅうございます。それから、博士課程への入学者に占める女性の割合、これも平成三年度一二・〇%が、平成十三年度二一・五%と、こういう状況でございます。 それから、我が国全体の研究者、これは人文社会科学も含めてでございますけれども、それに占める女性の割合、これは総務省統計でございます、これによりますと、平成三年度が全体の七・六%、約四・四万人でございますが、それに比べまして平成十三年度は七・四万人、一〇・八%というふうに、近年着実に増加しておると、こういう状況でございます。
○松あきら君 私もその数字を伺って大変うれしゅうございます。そうした女性の研究者の数はもうどんどん増えてきて、しかも理工系も多いということで、非常に私は心強いというふうに思っております。 しかし、女性が研究職であるいは研究分野で大成していくためには、男性にはないやはりいろいろな障害といいましょうか困難もやはりあるわけでございます。例えば実験に取り掛かって徹夜になることもあり、また例えば研究成果を上げるためには連日忙しくして育児休暇などもなかなか取れない、そういった家庭と研究という、これはもう今に始まったことではないわけで、これからももちろん続くというふうに思いますけれども、やはりこの両立ということはやはり大きなハードルかなと。その中で女性の研究者が増え、あるいは活躍していただくことが私は非常に大きな喜びであり、是非そうなっていただきたいというふうに思っておりますけれども。 例えば、研究機関の立地を見ますと、やはり首都圏に近い神奈川、埼玉、千葉、茨城など、そういうところに点在をしているというふうに思うんですね。各々の研究機関にお勤めなさる、通われる方々は、仮に御結婚して子供さんもいる方であれば御近所の託児所に預けるとかそういうことで行っていらっしゃるんだと思いますけれども、例えば、私はこれは特区を利用してもいいと思っていますけれども、正に、中関村の話ではありませんけれども、研究機関をある程度集積して集める、筑波の、第二の筑波ですね、こういうような構想もあってもいいんじゃないかなと。そうすると、そういうところに保育園や幼稚園あるいは託児所なんかも設けられる。そういうことになると、やはり女性の研究者の研究開発整備、非常に進むというふうに私は思いまして、託児所の問題だけではなく、全般的な女性の研究者の研究環境整備、それから研究施設の立地、この両方をお伺いしたいというふうに思います。
○政府参考人(山元孝二君) 御説明いたします。 女性研究者の活躍の促進、これは私ども単なる男女共同参画の促進、この視点だけじゃないと思ってございます。研究者、非常に多様な研究者が研究環境で切磋琢磨してやっていくと。そういう中で、女性もいれば外国人もいる、あるいは若い研究者もいる、そういう多様性という観点からもこの女性研究者の活躍を望んでいるところでございます。 そのためにいろんな形が考えられるわけでございますが、正直言いまして、私ども、女性ということを今まで意識して施策等を講じたことは余り私自身もございませんでした。これはやはり、正に教育におきましても、男女を問わず、やはり科学技術教育、そういうものに頑張っていただきたいと思ってございますし、研究環境におきましても正に男女同権そのものだと思ってございます。 ただ、大学等におきましては、既に保育施設の整備など女性の教職員が働きやすい環境の整備を自発的に取り組んでいるというところも承知してございますし、そういう動きは当然のことながら促していく必要があろうかと思っております。 さらに、実は私ども文部科学省におきまして女性の多様なキャリアを支援するための懇談会というものを発足いたしました。ちょうど今日の午後、その第一回目の会議を開くところでございます。この関係につきましても、テーマの中ではもちろん、女性のキャリア設計と生涯学習とかあるいは女性が働いたり学習したりしやすい環境とか、そういうものと併せまして、今、先生御指摘の大学研究所等の女性研究者への支援の在り方、これが研究テーマに入ってございます。これ、この懇談会において議論していただきたいと思ってございますし、私ども、既に科学技術・学術審議会におきましても人材問題という切り口で広く議論してございますが、その中でも当然に女性の研究者の問題が入ってまいります。これはこれからの本当に我々意識して議論していくべきテーマだと、こう思っているところでございます。
○松あきら君 何かタイムリーな御答弁いただいて、非常に私も心強く感じました。是非その会議も進めていただけますように、私どもも是非、どこかの端っこでもいいですから参加をさせていただきたいな、女性議員も、なんというような意見も私の意見として聞いておいてください。 やはり近年のグローバル化の進展等によりまして、生産拠点、研究拠点の空洞化のみならず、頭脳流出、いわゆる人材の空洞化、これも実は懸念をされているところでございます。 例えば、さっきシンガポールの話もちょっと出ましたけれども、京都大学のウイルス研究所の伊藤元教授、この方は白血病や胃がんの発症に関係する遺伝子研究の権威でございまして、世界的に有名な方なんですけれども、助手、院生も含めて研究室ごと丸ごとシンガポール大学の分子細胞生物学研究所に移籍して、これは一時、いっときすごく話題になりましたけれども、丸ごと出ていっちゃったわけですね。また、外務省の海外在留邦人数調査統計によりますと、海外への長期滞在者のうち、留学生、研究者、教師の数が北米を中心に大きく近年増加している傾向を示しておりまして、これらの出国者の中から今後海外で正職員の職を得る者も増加するというふうに考えられます。 また、アメリカで博士号を取得した外国人に対する、その後米国に、アメリカに残留する予定者の割合の調査でも、日本はインド、中国などと比べてその割合はまだ低いものの、特に自然科学系については一九九四年を境に増加傾向にあります。このような海外での研究活動希望が増加している背景には、やはりより満足できる研究環境を求める研究者の姿、これが想像できるわけでございます。 先ほどNIHの話もございました。私も実はNIHには何年か前に夫の友達がおりまして参りましたけれども、本当にすばらしいんですよ。事実、日米の国立研究所等における研究者の満足度を比較した調査によりますと、我が国研究者は研究支援体制に対する満足度が低いわけですね。 我が国の研究環境をより魅力的にすることが頭脳の空洞化を防ぐ上でも極めて重要であるというふうに思いますけれども、今後どのような取組を行っていくおつもりか、お伺いしたい。ちょっと手短にお願いいたします。
○政府参考人(山元孝二君) 我が国の研究環境、これを内外の研究者にとって魅力ある研究環境にしていく、これはもう非常に大事な課題と認識してございます。そのためにも、まず先端的研究に不可欠な世界一流の研究設備、こういうものを整備していくとか、あるいは施設もそうでございます。さらには、研究者にとってやはりきっちりと評価される、これが非常に大事なことだと思ってございます。そういう資源配分とか処遇にまで反映されるきちっとした評価システムが確立していくこと、これも大事でございます。 それから、先ほどから出ております資金につきましても、競争的な資金の拡充あるいはその制度の改革、これを引き続き進めていきたいと思ってございます。 さらに、若い研究者、こういう方々が本当に自立的に活躍できる、そういう研究環境、こういう、本当に総合的な施策の成果として魅力ある研究環境が日本に作っていけるんじゃなかろうかと、こう思ってその分野のこういう取組にも今後とも積極的に取り組んでいきたい、こう思ってございます。
○松あきら君 ちょっと時間が押してまいりましたので、少し間引いて質問をさせていただきます。せっかく内閣府から来ていただいているので、ちょっと飛ばさせていただきますけれども。 平成七年に施行されました科学技術基本法に基づきまして、平成八年七月に第一期科学技術基本計画が閣議決定をされたわけでございます。その当時、科学技術をめぐる課題といたしましては、長引く不況の影響によって我が国の研究開発投資が平成五年度、六年度と二年連続して減少していたこと、また研究開発投資が対GDP比において欧米主要国の水準を下回っていたこと、ちょっとこれ付け加えて言いますと、対GDP比、高等教育、日本はOECD中最下位なんです。ちょっとこれも覚えておいていただきたいんです。それから、研究開発システムにおきましても、柔軟性、競争性が低いこと等が指摘をされておりました。 そこで、科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために、平成八年度から十二年度までの五年間の科学技術政策を具体化するものとして第一期科学技術基本計画が策定をされました。この計画は既に実施期間が終了しておりますけれども、その効果についてどのような、十七兆円ですね、評価を行っているのか、まず手短によろしくお願いいたします。
○政府参考人(大熊健司君) 御説明をいたします。 先生今おっしゃられました第一期の科学技術基本計画でございますけれども、平成八年度からの五か年間の計画でございまして、この中で十七兆円という意欲的な目標も策定しておったところでございますけれども、これにつきましては、期間中の科学技術関係経費、目標を上回る十七・六兆円、これを達成させていただきました。これ以外にも、ポストドクター等一万人支援計画の実現、これは若手研究者の層を厚くするといったような点から非常に大事な制度だったと思っております。また、先ほど来ちょっと御議論のございました任期付任用につきましてもこの計画中の目標でございまして、任期付任用制度に関する法律、平成九年にこれも作成したというところがございます。またもう一つ、各省で行われている研究評価、これをきちっと評価をしてもらおうということで、各省で進めるべき研究評価の基準ともなる大綱的指針、これの制定ということもこの期間中にしておるところでございます。 こうしたようなことで、我が国の研究開発環境水準に着実に改善を見たと、こういうふうに評価をしております。 以上でございます。
○松あきら君 第二期の科学技術基本計画が二十一世紀の科学技術の在り方を視野に置きまして、科学技術と社会との新しい関係の構築を重視しつつ、政府の科学技術政策を総合的に推進するための計画として策定されたものであります。具体的にはライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー、材料など、各分野に研究開発投資の重点化を図る。また、平成十三年度から十七年度までの政府研究開発投資の総額を、今度は約二十四兆円と増えました。 第二期科学技術基本計画において多大の成果を上げるためには、五年間の期間の間に絶えずこれは進捗状況を評価し、問題点を分析し、計画を修正していくことが必要だと考えますけれども、どのように実施する予定なのか、お伺いをしたいと思います。
○政府参考人(大熊健司君) 御説明をいたします。 第二期の科学技術基本計画につきましては、第一期で先ほど申し上げましたような人の流動性、評価等のいろんな問題につきまして改めて評価をし直しまして、目標を出しております。そのうちの一つが、先ほど先生がおっしゃられました政府研究開発投資の二十四兆円、これがやはり大きな目標を達成する上での重要な指標になります。現在、十三年度、十四年度の政府研究開発投資につきましては補正予算などを含めまして八兆六千三百五十六億円、こういうことで、進捗率三六%、こういうふうになっております。十五年度の概算要求につきましては現在要求中でございますけれども、これにつきましても対前年度比一一・七%増の三兆九千五百三十五億円、こういう状況でございます。 現在、総合科学技術会議としましては、第二期の基本計画につきましてきちっとそのフォローをしながら、特にこの予算の問題も非常に大事でございますので、政府予算案作成に際しまして、実は優先順位付けも行って、この予算の問題について達成すべく努力をしているところでございます。S、A、B、Cの四段階の評価をいたしまして、総合科学技術会議の中の大臣と有識者の先生方、有識者の先生方は七人おりますが、そのうちのお二人は女性の議員でございまして、現役の早稲田と東大の先生でございますが、こういう先生方を含めて総合的に評価をしているところでございます。 また、十一月十一日に総理出席の下に総合科学技術会議、これが開かれておりますけれども、この優先順位付けを踏まえためり張りのある科学技術関係予算とするとともに、基本計画の三年度目として、科学技術創造立国実現のための科学技術関係予算の充実に努めようということの意見を取りまとめたということでございまして、それ以外の課題につきましても現在総合科学技術会議で総合的に今取り上げて検討しております。フォローをきちんとしていきたいと思っております。 以上でございます。
○松あきら君 急がせて済みません。 これまで政府は、科学技術分野におきまして様々な計画が作成されまして実行されてきております。ところが、その中には、例えば対がん十か年総合戦略あるいはがん克服新十か年戦略のように、検査・治療成績の向上に向けた積極的な取組がなされてきているものの、やはりいまだにがん患者が減少しないといった、なかなかその計画の成果が見えにくいものもあるわけでございます。 こうした計画は、なかなかもちろん思いどおりに取組が進めにくい、そうした困難な課題を有していることはこれは理解をいたしますけれども、それでもやはり絶えずフォローアップして計画を見直しつつ最適な目標設定を行っていかないと、計画そのものが意味をなさなくなるのではないかというふうに思います。 今回、知的財産戦略本部によって知的財産推進計画が策定をされまして実施をされますが、我が国の知的財産戦略が大きな成果を上げますように絶えずフォローアップを行い、達成度をチェックして見直すことが重要だと考えます。この点につきまして、大臣より御答弁をお願いいたします。
○国務大臣(平沼赳夫君) 今お願いをしておりますこの基本法、これが成立をさせていただきますと、今おっしゃいましたように知的財産本部、これが結成をされ、そして知的財産の創造、保護、活用、さらには人材の育成等々、あらゆる関連のことを盛り込んで知的財産推進計画が策定されるわけです。 やっぱり計画だけでは駄目で、しっかりとそれをフォローアップしろと、こういうことで、それは当然でございまして、スピードをもって旨としなければなりませんけれども、私どもといたしましては、まず原則として、この推進計画に具体的な目標と、それからがんのことで十年とおっしゃいましたけれども、しっかりとした達成時期を定めることにいたしております。その本部は、不断に各省庁の個々の知的財産に関する施策の達成状況というものを調査しまして、その達成状況も、ただ調査するだけじゃなくてやっぱり公表をしていく、こういう基本方針を取らせていただきます。 また、知的財産を取り巻く状況の変化を勘案いたしまして、計画を立てっ放しということじゃなくて、少なくとも毎年一回、推進計画に検討を加える、こういうことをやって、やはりきめ細かく対応していく、そしてしっかりとフォローアップをして、私どもは知的財産施策の実効性の確保とそしてその迅速な達成、これを図っていかなければならない、このように思っております。
○松あきら君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いをいたします。 若者よ、特許を目指せということで、文科省と特許庁は高校生と大学生を対象に、独創的な発明を手掛けて、その特許を取るコンテストを来年度からスタートさせるそうでございます。子供たちの理科離れを食い止めて、そして創造力と新しい発想を持った人材育成にもつながる私はすばらしい試みであるというふうに思うわけでございます。 このプレコンテストというのが、十四年度、行われたそうでございますけれども、今年十月十日に締め切られているんですか、この応募状況、その状況と今後の取組につきましてお聞かせいただきたいと思います。
○副大臣(高市早苗君) このパテントコンテストにお目を付けていただきまして、本当にありがとうございます。 これは来年度の事業で文部科学省との連携なんですが、学生が自らの研究成果を利用して特許出願から権利取得までの過程を体験して、実践的に知的財産制度を学ぶものでございます。ちなみに、これはお金は参加者に負担が掛からなくて、出願費用、審査請求料、特許料については文部科学省が負担してくださる予定ですので、私ども経済産業省の方も精一杯その手続等、実務的な部分で頑張っているところです。 プレコンテストでございますが、ただいま実施中の過程でございます。広島市立広島工業高校十七件、参加校と応募してくださった件数ですね。それから、長崎県立大村工業高校が五件、国立徳山高等専門学校が十九件、東海大学四十四件と、非常に多く皆さん挑戦をしてくださっているような状況でございます。 ありがとうございます。
○松あきら君 やはり副大臣がおっしゃったように、知的財産あるいは知的財産権というものを実感できる正に私は夢のある非常にすばらしい試みであるというふうに思います。 国際競争の中で日本が生き残るのは、何遍も言いますけれども、たくみの技を含めた、私は知的財産であることは間違いないというふうに思います。もう国策として、国を挙げて万全な知的財産立国を目指して取り組んでいただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。
○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。 まず最初に、この知的財産基本法という基本法でございますので、今日はちょっと条文に沿ってお伺いをしていきたいと思います。 まず、この基本法の目的についてお聞きしたいと思います。基本法ですから、知的財産をどのように使い、またどういう社会の発展に貢献するか、どのような社会の構築を目指すのかということ、とりわけ国民生活に何がもたらされるのかというようなことが私はきちっと盛り込まれる必要があるというふうに思っております。 ところが、「目的」のところを見ますと、第一条、のっけから、「この法律は、」、全部読みませんけれども、「我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、」云々とこうありまして、最後に「知的財産戦略本部を設置」するんだと。そして、「知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的」にした基本法だと、こういうふうになっておりまして、何度読みましても、基本法がどのような社会、また国民にどのようなものをもたらすのかということが明確に述べられていない。その点について、大臣。
○国務大臣(平沼赳夫君) 西山先生にお答えさせていただきます。 本法案の第一条には、今この法律が必要とされる直接的な理由でございます我が国を取り巻く近年の社会経済情勢について規定をしているところでございます。そして、この基本法案によりどのような社会を作るべきか、国民生活をどのようにすべきか、こういった点につきましては、本法の基本理念として第三条に規定をさせていただいております。すなわち、本法による知的財産に関する施策の推進を通じて、広く国民が知的財産の恵沢を享受できる社会を実現をしまして、国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造に寄与すべきであり、これに向けて努力をしてまいる、こういう形で、確かに第一条ということは、今申し上げたそういう今のこの法律が必要とされる直接的な理由を書かせていただいて、そして三条においてそういう国民、そして文化に触れさせていただいている、こういうことでございます。
○西山登紀子君 三条で少し触れてあるということなんですけれども、私、ちょっと思いますのは、この法案の提案理由説明をもう一度見てみますと、やはりこういうふうに書いてありますね。かつてない、我が国はこれまでかつてない経済的繁栄とともに豊かで文化的な生活を享受できる社会を実現してきましたが、近年は低廉な労働コストや生産技術の向上等を背景にしたアジア諸国の急速な追い上げを受けて厳しい経済状況にある、だからこの知的財産を戦略的に創造、保護及び活用することにより、産業の国際競争力を強化し、活力ある経済社会の実現を図る、いわゆる知的財産立国を目指していくと。 言わば、これが今度の基本法の目的なんですが、私、今、調査会、国民生活・経済調査会に属しているんですけれども、そこのテーマは真に豊かな社会とは何かということを三年間の大きなテーマにしているんです。これは与党の方からもこういうテーマにしようという問題提起がありまして、つまり日本は経済大国になったんだけれども、国民が本当の豊かさを実感できていないじゃないか、これは私どもが思っている思いなんですが、与党の皆さんもそう思っていらっしゃって、この三年間、それをテーマに研究してみましょうね、こういうことになっております。 ですから、単に経済的に非常にぐんぐんいっているという大国といいますか、そういうことが本当に即国民の幸せに直結するのかといえば、そのことが大きな疑問符となって、今、日本の社会が取り組んでいかなければならない大きな問題になっているんではないかと思います。 ですから、あえてこういうことをお聞きしたわけですけれども、確かに三条では「国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造」ということで触れられております。国民の文化の創造という点が触れられております。しかし、私はもう少し突っ込んで申し上げますと、文化や芸術、学問の発展というのは、確かに豊かな人間性をはぐくんで、社会の発展あるいは人間社会あるいは社会の進歩に欠かせないものでございまして、だからこそ日本国憲法には国民の権利としての文化や芸術、それから学問の発展についてのいろんな規定がございます。 例えば、第十三条では幸福追求権というものがあります。十九条、二十一条では思想・表現の自由というものが盛り込まれ、二十三条では学問の自由がきちっと保障され、二十五条では文化的に生活する最低限度のというものですけれども権利が保障されております。これは侵してはならない永久の権利として国民に付与されたものでございます。 基本法である以上、こういった国民の権利についてもきちっと明記をする必要があるんじゃないかと思います。 なぜ日本国憲法がこのようにいろんな権利を国民に付与しているかといえば、私はやっぱり戦前の富国強兵だと、あるいは海外に膨脹政策を取っていったと、あるいは軍国主義の下で本当に自由がなかった、こういう反省の下にやっぱり文化や芸術や学問の発展にはこういう国民の権利としての明記が必要だというふうになったんじゃないかと思います。 ですから、今回の場合も三条に確かに知的財産の恵沢を享受できる社会の実現というのをうたっているんですけれども、よく見ますと、前の方にはやっぱり知的財産を経済活動に積極的に活用して必要な環境の整備を行うという、その結果としてこういうものだというふうなことになっていて、なかなか国民の権利としてそれをどう使うかということが明記されていないじゃないかと思って問題を感じております。 この知的財産、せっかく知的財産基本法を作るわけですけれども、国民の権利としてのこの知的財産、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○国務大臣(平沼赳夫君) 豊かな、そういう豊かさを真に実感できる、そういうことを追求するということは私は非常に大切なことだと思っております。そして、戦後、日本は一生懸命努力をして、そして世界が瞠目する発展を遂げ経済的繁栄を享受したことは事実であります。 その中で、更に真の豊かさはどうかと、こういうことでありますけれども、近年、特にアジア圏の追い上げ等によって日本の経済というのは非常に厳しい状況になってきている。そういう中で、やはり日本の大きな潜在力である知的財産を活用して、この経済を活性化をし、そして国民経済生活というのを活発化して、更に海外に向かっても貢献をする。こういう中で、知的財産というものが非常に大切だと、それで基本法を作ろうと、こういう形に相なりました。 そういう背景の中で、先ほど来、私、述べさせていただいておりますけれども、第一条ではそういうことをうたわせていただき、そして繰り返しになりますけれども、国民の文化だとかあるいは創造だとか、そういうものに関しては第三条に規定をさせていただきました。 今御指摘の国民の権利としての文化の享受でございますとか、あるいは創作活動の保護等、これも非常に重要なことで御指摘のとおりだと思います。しかし、これはより普遍的な私どもは価値だと思っておりまして、より高次の目的だと思っておりますので、本法に定めるその施策のいかんにもかかわらず憲法上で規定されていることでございますので、その実現に向けた努力は当然のこととしてやっていかなきゃいけない、こういう私どもは考え方でございます。
○西山登紀子君 もう少し進んで、四条で、よりこの法律の動機が率直に語られているように思いますので、進みたいと思います。 四条を見ますと、これも基本理念の一つだということなんですけれども、「我が国産業の国際競争力の強化及び持続的な発展」ということで四条があるわけです。この四条を読んでいきますと、「知的財産の創造、保護及び活用に関する施策の推進は、創造性のある研究及び開発の成果の円滑な企業化を図り、」と書かれています。非常に私は率直だと思いますね。企業化を図るんだと。それから、「知的財産を基軸とする新たな事業分野の開拓並びに経営の革新及び創業を促進することにより、我が国産業の技術力の強化及び活力の再生、地域における経済の活性化、並びに就業機会の増大をもたらし、もって我が国産業の国際競争力の強化及び内外の経済的環境の変化に的確に対応した我が国産業の持続的な発展に寄与するものとなることを旨として、行われなければならない。」。 非常に、今読み上げましたけれども、私の印象に残りますのはこの企業化という言葉と国際競争力の強化、この二つが非常に印象的に目に飛び込んでまいります。ですから、この基本法の制定の動機というのは、正に非常に直接的な動機というのは、この四条に示されているのが直接の目的ではないかと思いますが、どうでしょうか。
○国務大臣(平沼赳夫君) お答えさせていただきます。 知的財産の戦略的な活用によりまして、我が国産業の国際競争力の強化と持続的な発展というのは、この法律の、御指摘のように、重要な目的の一つだと私思っております。したがって、そういう形で規定をさせていただいていることでございます。 知的財産の保護・活用政策というのは、大企業だけではなくて、個人企業でございますとかあるいは中小企業を助けることにも相なりますし、個人企業家に対しても大変大きな意味がありまして、これはひいていえば雇用の増大にも私はつながることだと思っております。 この法律というのは、知的財産の企業化のみを目的とするものでもございませんし、御指摘のいわゆる国際競争力を付ける、そのためのみでもございませんで、第四条に規定する研究及び開発の成果の円滑な企業化、すなわち知的創造サイクルの確立がもたらす利益というのは、知的財産の創造者はもちろんのこととして、知的財産による我が国経済の活力の再生と豊かな文化の創造を通じまして、これはひいては広く国民一般が享受するものであると思っております。 このことは、本法のもう一つの理念規定であります、先ほど述べさせていただきました第三条にも規定している、こういうことでございまして、やっぱり私は、経済社会の中で、今、日本は自由主義経済政策を選択しております。そうすると、やっぱり企業というもの、それは中小企業、零細企業であっても、個人の企業家であっても、そういったところに競争力を付けさせる、そういったことがひいては経済の基盤を拡大をして、そしてそれは日本だけではなくて世界にも貢献することにつながる、こういうことでございまして、私どもとしては、特定の企業を優遇する、そういうようなことでこの基本法を作っているわけではないということは御理解をいただければと思っております。
○西山登紀子君 今の大臣の御答弁は典型的なトリクルダウン論といいますか、大企業栄えれば民栄えるということなので、これは全然違うんですね。関係はございません。むしろ、大企業栄えて今、日本の民は滅びるみたいなことになっていっているわけですから、それは違うということを申し上げておきたいと思うんですが。 結局、第四条というのは、もちろん私たちも研究開発が不必要なものだと言っているわけでもありませんし、それの企業化が必要でないと言っているわけではありません。適切なルールの下でそういうことが行われるというのは必要だと思っておりますけれども、この理念の中に、四条の中に入っているものというのは、どう読んでも産業競争力の強化と目先の企業の利潤のために、知的財産、特に特許などのそういったものを活用、強化、集中的に行うんだよというふうな非常に狭い、基本法というけれども産業政策のような、そういうように思えてなりません。基本法、そういう意味では基本法の名に値するのかなというような思いもいたします。 この基本法の実は制定を切に要望している団体がございますよね。日本経済団体連合会です。二〇〇二年の九月十七日に、「産業競争力の強化に向け、知的財産基本法(仮称)の早期成立を望む」ということで、要望書を出していらっしゃる。その中身を見れば、非常にこの動機が率直に語られていると思います。こういうふうに書かれていますね。 知的財産戦略大綱は、その政策が具体的に実施に移されてこそ、産業競争力の強化につながるものである。経済界としては、技術革新や知的財産権を巡る国際競争に打ち勝っていくために、全力を挙げていく所存であるが、わが国産業の国際競争力を強化していくためには、大綱に盛り込まれた事項について、企業の研究開発への投資意欲を最大限に引き出す魅力ある施策を一日も早く具体化していくことが不可欠である。 そのために、知的財産戦略大綱に示された通り、「知的財産戦略本部」の設置、「知的財産戦略計画」の策定等を内容とする「知的財産基本法」を、最も早い国会において成立させることを強く求めるものである。 というように、日本経済団体連合会自身がこういう要望書を出していらっしゃるわけですけれども、正にこの基本法というのはこの趣旨に沿った、この中身がきちっと盛り込まれた、言わば財界のための財界による、丸投げ基本法と言ったら申し訳ないけれども、正にそのものじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(平沼赳夫君) それは大変私は誤解だと思っておりまして、私もそのメンバーの一人でございましたけれども、知的財産基本法というのは、関係閣僚が全部入りまして、それから民間有識者も参画をしていただきました。これは知的財産戦略会議、こういうことでございまして、そのメンバーの中にはもちろん産業界の方にも入っていただきましたし、大学あるいは教育関係者、弁護士の代表の方々あるいは知財専門家、そういった多様な方々に参画をしていただいて、私も休みなしで毎回出させていただきました。 かんかんがくがく、三月から七月までの間議論をいたしました。そして、その議論というものもマスコミや国民に公開をして作成をしたものでございます。また、本法案に関しましては、インターネットを通じてでございますけれども、パブリックコメントも募集をさせていただきまして、いただいた数々の意見を参考にさせていただいた、その上でこの知的財産基本法は作られたものでございまして、特定の産業界の要望のみにこたえて作ったのではない、こういうことは是非御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
○西山登紀子君 そうは言われるんですけれども、例えば戦略大綱の起草委員長の中山先生は、知的財産戦略というのは知的財産を経済活性の手段として有効に用いるための産業的色合いのものだというようなことも語っていらっしゃるわけですよね。 ですから、私は、ちょっと言葉は言い過ぎたかもしれませんが、財界の財界による財界のための丸投げ基本法だと申し上げましたのは、正に私は言い得て妙じゃないかというふうに思っております。 それで、二条のところの定義についてお伺いしたいんですけれども、この知的財産という定義がございますけれども、これは従来よりもこの定義、広がったんでしょうか。
○政府参考人(平井敏文君) 定義のお尋ねでございます。 従来から、いわゆる知的財産という言葉は法律にも用例は極めて少のうございます。私ども調べた限りでは一件しかございませんで、定義も規定されておりませんでした。ただ、一般的には、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物、商標、商号、営業秘密などを含む比較的広い概念でございましたが、明確な定義はございませんでした。 したがいまして、どの範囲を含むかという具体的な事例はなかなか御説明しにくいのでございますが、本法案におきましては、知的財産戦略会議等の議論を踏まえまして、国富を増大させる可能性のあるものを幅広く知的財産としてとらえて、その創造、活用を推進するという趣旨から、広く定義いたしております。 したがいまして、本法案に規定しているとおりでございます。包括的な表現として極めて多くのものを読み込めるようにしている所存でございます。これによりまして、例えば生命科学あるいは先端分野における研究成果でありますとか研究の試料、あるいは中小企業が持っている熟練技術でありますとかノウハウ等が知的財産に含まれることになると思います。
○西山登紀子君 広がったということなんですけれども、これが非常に無限的に広がった結果、経済活動にあらゆる研究や学術、文化、教育などの成果が従属させられていかないかなという、そういう懸念をお持ちになる方がいらっしゃるので、その点はどうですか。
○政府参考人(平井敏文君) あくまでも、これは基本法で、知的財産で具体的な実体的な義務、権利等をこれによって生ずることを考えている大きな枠組みでございまして、様々ないろんな施策との重複関係がございますが、あくまでもこの基本法の理念に従った範囲内での法律の効果を期待している次第でございます。
○西山登紀子君 この広がった知的財産あるいは知的財産権というものについて、それを生み出した研究者や発明者、著作者といいますか創造者の権利というのはどのように処遇をされ、改善されていくのでしょうか。
○政府参考人(平井敏文君) 創造者、発明者等の権利でございます。御指摘のとおり、知的財産の創造には、最終的には創造力豊かな個人の力に負うところが大きいことはこの法律の理念に規定しているとおりでございますが、その知的財産の個人の力による創造が重要であることにかんがみまして、本法案の七条二項におきまして、また八条二項におきましても、研究者や発明者、技術者の適切な処遇の確保に努めるという責務規定を置かせていただいております。 したがいまして、研究者、発明者側から見ますと、自分の所属している大学、企業等に対して適切な処遇を求めることができるということでもございますので、御指摘の趣旨は担保されているというふうに考えております。
○西山登紀子君 労使間の関係にゆだねてしまうということについては、やっぱり立場上、十分なものにはならないだろうという私は問題意識を持っておりますので、その点は申し上げておきたいと思います。 時間がせいております。先に移りますけれども、五条の「国の責務」というのがございます。ここの基本理念の中には当然、三条も四条も含まれておりますね。
○政府参考人(平井敏文君) 御指摘のとおりでございます。
○西山登紀子君 次に、六条、「地方公共団体の責務」というところがございます。ここのところにも「地方公共団体は、基本理念にのっとり、」というのがございますが、これにも三条、四条、両方含まれているのかどうか。さらには、自主的な施策というのはどのようなものを想定されていらっしゃるのか。また、国との適切な役割分担とは何なのか。御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(平井敏文君) 何点か御質問ございました。 初めに、具体的な施策の想定でございますが、具体例といたしましては、基本的施策として、研究開発や大学等から事業者への知的財産の移転など創造に関する施策、あるいは特許等の権利化の促進、裁判等の司法あるいは税関等の水際、海外における知的財産保護強化の施策、あるいは活用施策、あるいは専門的人材の育成、養成等の具体的な施策を考えております。 また、地方公共団体との関係でございますが、「理念にのっとり」というのは、御指摘のとおり理念にのっとり地方公共団体も施策を講ずる責務を規定させていただきまして、具体的な国と地方公共団体の分担関係につきましては、国が総合的な観点から計画を作ります。国全体の総合的な観点から推進する。地方公共団体は、それぞれの住民に密着した観点から、個性ある地域の発展を図るために、国の策定する計画、戦略に基づきまして、地域の特性を加味した政策を推進するものでありまして、具体的にも様々な、例えば北陸ものづくりプロジェクトでありますとか、あるいは小中学校等におきます更なる啓蒙普及活動等々が期待されているところでございます。
○西山登紀子君 私は、基本理念の三条、四条、わざわざ二つ入っているのかというふうにお聞きしました理由は、先ほど大臣が御説明になりましたが、少しニュアンスが違う、三条と四条と。四条の方がより直截的にこの基本法の目的をきちっと書いてあるように思いますけれども、ですから、三条、四条、きちっと入っていますねというのを確認をさせていただいたわけでございます。 そして、それならばなぜ、第七条、大学等の責務の中に「基本理念にのっとり」という文言がありません。これはなぜなんでしょうか。入っていないけれども、意図としては三条、四条にのっとりだということなのでしょうか。その点の御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(平井敏文君) 御指摘のとおり、本法案におきましては、我が国産業の国際競争力の強化、活力ある経済社会の実現を図るため、研究開発の主たる担い手でもあります大学等、あるいはその活用に関する主たる担い手でもあります事業者、企業等々でございますが、つきまして、国、地方公共団体と並び責務規定を置かせていただいております。 ただし、御指摘のとおり、大学等の責務を規定しております第七条でございますが、御承知のように、憲法で学問の自由が保障されているという、あるいはそこでの研究を本法案に基本理念にそのままのっとるという形で規定しますことは、本来自主的であるべき大学の研究活動が阻害されるのではないか等々の観点もございます。また、法文の規定の仕方でも、人材の育成等々、広く大学に期待することを書いてございますので、ここには、この「基本理念にのっとり」という文言を置かないことといたしたわけでございます。
○西山登紀子君 私、今非常に重要なことを言われたと思うんですね。おっしゃるとおりですよ。憲法というのは学問の自由もきちっと明記をしているわけですから、それをこんなところにずっと国の責務、第五条、基本理念、地方公共団体、基本理念にのっとり、大学、じゃ基本理念にのっとりというふうなことで基本理念をここに入れた場合には、重要なこれは憲法上の問題が起こってくると、だから外したんじゃないですか。これは非常に大事な問題だと思うんです。 もう一度お伺いします。やっぱりこれは意図的に除いたんですか。
○政府参考人(平井敏文君) 日本に基本法と称する、あるいはそれに準ずる法律が二十数本、今現在ございます。それぞれ理念を規定しておる規定が様々な用例がございまして、国、地方公共団体、あるいは大学、事業者、個人、国民一般等々、責務を書いているのでございますが、それぞれ基本理念にのっとりという規定をすべてに書いているものがあれば、書き分けているものも等々ございます。 本法におきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、大学等におきましては、学問の自由という、憲法の学問の自由、保障等の規定の観点も加味いたしまして、できるだけ自主性を尊重する上でも、しかしながらこの基本法の精神で努力をしていただきたい旨を規定した次第でございます。
○西山登紀子君 当然のことながら、憲法は基本法に従属するものではございませんよね。ですから、この基本法というのは非常に問題のある、憲法上の重要な、抵触するような中身になっていると私は思いますよ。 しかも、この点は非常に問題だというふうに思うので、とりわけ、更にお伺いしたいんですけれども、七条に三項というものがございます。この作りぶりも非常に私は問題だと思うんですね。大学の責務というのが第七条でずっと書かれております、一項、二項。ところが三項になりますと、急に、「国及び地方公共団体は、」ということで、主語は国及び地方公共団体になっております。「知的財産の創造、保護及び活用に関する施策であって、大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関に係るものを策定し、」、そして、「これを実施するに当たっては、研究者の自主性の尊重その他大学及び高等専門学校並びに大学共同利用機関における研究の特性に配慮しなければならない。」というふうになっています。 これは、正に大学の自由、学問の自由に対して、国及び地方公共団体というものが介入をしていくというふうに、この法律そのものがもう介入しているというふうに思うんですけれども、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(石川明君) ただいま第七条三項についてのお尋ねでございますけれども、ただ、大学等におきます学術研究というのは真理の探求を目指して行われるものでございまして、研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として行われるということで初めて優れた成果が期待できるというような性格でもございます。また、今し方もお話に出ておりますように、憲法二十三条の学問の自由というような観点からも、大学等におきます研究というのは外部からの干渉を受けることなく自由かつ自主的に行われるということが必要であると考えております。 本法案の第七条第三項の規定につきましては、このような大学等におきます研究の特性にかんがみまして、国及び地方公共団体が大学等に係る施策を策定し、実施するに当たりましては、研究者の自主性の尊重などの配慮をしなければならないというようなことを定めたものであるというふうに理解をしているところでございます。 私ども文部科学省といたしましては、従来より研究者の自主性を尊重してこれを支援するというようなことを学術政策の基本としてきたところでございまして、今後ともこれを旨として大学等における学術研究振興のための施策の充実に努めてまいりたいと、このように考えております。
○西山登紀子君 この基本法をずっと見ていると、三条、四条、基本理念がありまして、そしてその四条のところには研究開発を企業化すると、我が国産業の国際競争力の強化を図るというふうなことで、目的は非常にはっきりしているわけですね。財界の要望にもこたえたものです。それに大学の責務を従属させるわけにはいかないという憲法上の抵触する問題があるので、第七条では基本理念をそっくりと抜いている。私は正にこれは隠し玉だと思いますよ。実際は三条、四条の基本理念に沿ってこの基本法を作っておきながら、大学もその基本理念の下で責務をあるんだというふうに全体をカバー、かぶせながら、露骨には書けないので基本理念を外しておくと。そして、三項のところに「国及び地方公共団体は、」ということで、正に法律上も介入をしてきているわけですけれども、策定をし、それを実施するに当たっては、こういう配慮をしなければならないというような規定を置かなければならないようなそういう問題を持った基本法だということで、これはもう私は問題の基本法じゃないかなというふうに思います。 さらに、次に行きたいんですけれども、こういうふうに、結局、国及び地方公共団体が、先ほど言いましたように、この基本理念にのっとり作成したその方向、それを実施をしなきゃいけないというのが大学の責務になってくるとなれば、これはもう大学の、日本の今の大学の基礎研究、今でさえ脆弱な基礎研究がうんとまたないがしろにされていくんじゃないかという懸念を持ちます。 二〇〇二年度版の科学技術白書を見ましても、日本の大学の基礎研究の割合というのは五二・二%しかなくて、ドイツでは七三・五%、フランスが八六・五%、アメリカは六八・五%。主要国の中でも少ないんですけれども、今、第七条というような大学の責務が加わりますと、今でも低い基礎的な研究が更にないがしろにされるんじゃないか、地位が低くならないか、予算が下がるんじゃないかと心配を持つんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(石川明君) 大学の基礎研究についての御心配でございますけれども、大学におきましては、基礎研究から応用研究まで幅広い分野にわたりまして、先ほど申し上げましたように、研究者の自由な発想に基づく研究が行われているところでございます。特に、大学に対しましては質の高い基礎研究を行うということが強く期待をされているというふうに私どもも認識しております。 科学技術基本計画におきましても、基礎研究の重視とその幅広く着実な推進というようなものが強調されているところでございますし、我が省といたしましても、科学研究費補助金等の競争的資金の拡充あるいは大学の研究施設設備の整備等、基礎研究推進のための施策を積極的に講じているところでございます。 また、知的財産、この知的財産基本法におきましても、大学等における研究開発の推進に必要な施策を講ずるというようなことが基本的な施策の一つとされておりますし、また大学等に係る施策の実施に当たりましては、先ほど来お話しありますように、研究者の自主性の尊重、その他大学等における研究の特性に配慮しなければならないというようなことも明記されているところでございまして、本法の成立によりまして大学の基礎研究がないがしろにされるというようなことは私どもはないと思っておりますし、先ほども申し上げましたけれども、私ども文部科学省としましては、今後とも科学技術基本計画等を踏まえまして、独創的な知的財産をどんどん創出していくための糧として大学の基礎研究の充実に努めてまいりたいと、このように考えております。
○西山登紀子君 この基本法の全体を今までずっと、目的から基本理念からずっと見てまいりましたけれども、やっぱりその方向をきちっと見るならば、私が問題にしているような心配というのは起こるし、現にまた起こっているんですね。 九五年に科学技術基本法というのが議員立法で制定されましたけれども、それでこの五年間のいろんな基本計画、二期目の五年間の計画ということで、一期目は十七兆、二期目は二十四兆という形で予算を付けていこうという、予算じゃない、そういう取組をしていこうということになってきているんですけれども、結局、その中でどんな変化が起こっているかと見てみますと、例えば七四年から二〇〇〇年、じゃ日本の研究、大学の基礎研究の率がどれぐらい減っているかというと、七四年は七五・四%あったのが、二〇〇〇年は三割減って五二・二%、比率ですが。応用研究はどれぐらいになっているかというと、七四年は一八・五%だったのが、二〇〇〇年には倍増、三八・五%という形で倍増をしているわけです。 言わば大学が、この基本法の最初からずっと見てみますと、やはり産業技術に直結する、とりわけ商品として、あるいは製品化して、うまく国際競争力を使ってうまくいけいけどんどんでもうかっていくというか、そういうところに、目先の利益というか、そういうところに特化して、日本の大学などの予算などが付けられていくんじゃないか。 そうなりますと、国民生活に必要な基礎的な学術研究の費用なり、その位置付けというものに対して非常に大きな格差が生まれるんじゃないかという心配を持っているんですけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(石川明君) 予算面におきます基礎研究との関連での御心配の御質問というふうに受け止めておりますけれども、先ほども申し上げましたように、大学における研究につきましては、基礎研究の推進ということが特に大きく期待されているということは私どもも強く意識をしておりますし、大学における研究につきましては、実用化や応用化研究というようなもののみにとらわれることなく、研究者の自由な発想に基づく創造的な基礎研究にまずしっかりと力点を置きながら、基礎研究と応用研究のバランスの取れた推進を図っていくということが重要であると私ども考えております。 こういった観点をしっかり踏まえまして、研究費助成を始めとする各種の予算的な面も含めました施策の充実にこれからも努めてまいりたいと、このように考えております。
○西山登紀子君 最後に、大臣にお伺いしたいと思います。 第八条で「事業者の責務」ということが規定をされているわけですが、非常に、ずっと読んでみますと、ここでも基本理念にのっとって活力ある事業活動を通じた生産性の向上、事業基盤の強化を図ることができるよう努めなきゃいけないとか、それから当該事業者若しくは他の事業者が創造した知的財産又は大学等で創造された知的財産の積極的な活用を図ると。当該事業者が有する知的財産の適切な管理に努めるものとするというようなことで、ほかの事業者の創造的な知的財産も活用しなさいよと。大学で創造された知的財産も活用しなさいよと。そして、自分の持っている知的財産は適切に管理しなさいよというようなことで、この「事業者の責務」を見ますと、本当に、正に、さっき言いましたけれども、財界の財界によるというか、そういう、ここまで事業者の責務を書くのかなという思いもあるんですが、私は、むしろここに事業者の責務というのを書くのであれば、むしろ事業者という人々は社会の発展に寄与していく方向で、むしろ自分たちの事業活動の成果を国民に返すということを事業者の責務にするべきだ、そういうふうにここは書くべきじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういうことも含めまして、非常にこの「事業者の責務」、第八条というのは含みのある条文であると思いますが、御説明をいただきたいと思います。
○委員長(田浦直君) 簡潔に答弁してください。
○副大臣(高市早苗君) 日本の企業の場合は、知的財産を自社の競争力の源泉として事業活動に組み入れているという企業が少ない、それから営業秘密の管理が不十分であったり、ノウハウを始めとした技術の海外への意図せざる移転が発生しております。 これを、結局、こういう知的財産をきちっと守って企業も自主的な努力をすることによって新しい産業が生まれ、そしてまた、今ある企業の競争力が確保されるということも、私は、またこれは雇用を守ったり、それによって生み出される製品を国民が使えるといった意味ではかなり広く国民にメリットをもたらすものではないかと考えております。 ですから、これは今後、今年度まず知的財産の取得管理とか、それからノウハウなどの営業秘密の管理、それから海外への意図せざる技術進出の防止という三つの指針の策定と普及策について検討を進めておりまして、来年度中に知的財産に関する情報開示の指針を策定するべく検討を開始すると。 あと、また企業が自分の技術、知的財産をもって資金調達もできますように、また今と違った形で資金調達もできますように、特許などの証券化などのモデル事業の立ち上げですとか、それから情報開示の指針を策定するような検討を開始するということをいたすつもりでございます。
○西山登紀子君 終わります。
○広野ただし君 国会改革連絡会(自由党・無所属の会)の広野ただしです。 今日もしんがりになりまして、重要な基本法ですので、また各省にまたがることでございますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。 先ほども、午前中の議論でもありましたが、日本は資源も何もない国で、正に人間が財産、こういう国であります。そういう中で、今まで製造業等が非常に頑張ってまいりましたけれども、この重要性は変わりませんけれども、ますます知的活動といいますか、そういうことで日本が立国をしていくということがやはり非常に大切なことだと、このように思っております。 私はちょうど、昔、技術者の端くれだったものですから、無から有を生み出す、無有会というのがあります。無と有、無有会のメンバーの一人なんですが、やはりそういう知的活動によって日本は立国をしていくんだ、こういう、みんな心意気を持っている人たちの集まりなわけですが、今、西山委員からも鋭い指摘がありましたが、私はやはりライフサイエンスですとか命の問題というのはこれからも非常に大切ですし、二十一世紀、環境の世紀ということでありますから、環境という問題も非常に大切だ。 しかし、これも知的活動でまたそれを、また文化活動も正にそういうことでありまして、それで知的活動を大いにやっていかないと駄目なんだ、こういうことからこの基本法には基本的に賛成であります。 そういう中で、今日は命の問題、生命科学、バイオテクノロジー、こういうところのことをまず取り上げさせていただきたいと思います。 ボストンコンサルティングが指摘しているんですけれども、日本のこの五十年で寿命が二十数年延びたということであります。この二十数年寿命が延びたそのおおよそ半分は薬によるものであるという指摘を、薬のおかげであるんだという指摘をしております。 私は、やはり今、高齢化社会でありますけれども、この高齢化社会の中でいろんな障害関係の病が、疾病があります。それを克服をしていくということでは、患者が新しい薬を待っているというところがあると思うんですね。そういうときに的確にやはり審査を速く、迅速にして、そして患者が使える、そういうことにしていかないと、審査がだらだらだらだら長引いておっては、これはどうにもならないんじゃないかと。特に日本の場合は、審査があって、FDA、アメリカの方で審査をしてもらって、それでこちらへ持ってくるというようなことまで言われているわけで、厚生労働省さん、少し改善はされました。昔は審査三十数か月だったものが十五か月ないし十八か月に縮まってきたということであります。しかし、アメリカは十二か月、十二、三か月で、しかも場合によっては七、八か月で審査が終わるということもあります。 ただ、確かに根っこのところの臨床試験のところは非常に大切な話で、ここのところは今日新聞にも発表されたようでありますけれども、五年ないし七年の臨床試験期間を二年ぐらい短縮するんだと、こういう話がありますけれども、そのことについて厚生労働省政務官からお願いします。
○大臣政務官(渡辺具能君) 薬の有用性につきまして大変御理解をいただきまして、有り難く存ずるところであります。無から有を生ずるというお話ありましたけれども、正に無から命を生ずるわけでございまして、大変重要な問題だと認識をいたしております。 そういう中で、新薬の審査期間が長過ぎるんではないか、あるいは審査期間の以前の問題も含めて、開発から審査までが長過ぎるんではないか、こういう御指摘だったと思います。確かに、従来はそういうことが言えたというふうに思いますが、近年は大変日本におきましても改善をされております。 医薬品のまず承認審査につきましては、平成九年度から審査官等を計画的に増員いただきまして、承認審査体制の強化を図りました。平成十二年四月以降に申請されました新薬につきましては、それまでは、委員御指摘だった三十何か月とおっしゃったのはいつのことかよく分かりませんが、直前ですと十八か月ぐらい掛かっておったわけでございますけれども、審査体制の強化を図りまして、昨今、昨年あるいは一昨年では欧米並みの十二か月、標準的な審査で欧米並みの十二か月に短縮いたしたところであります。 また、あわせまして、承認申請前の研究開発段階におきます治験相談体制も整備いたしておりまして、また日米あるいはEU間で承認審査に関するデータの相互受入れを積極的に推進するとか、そういうことを行いまして、開発から承認申請までの期間も今可能な限り短縮いたしておるところでございます。
○広野ただし君 命の関係の話は非常に長時間を要します。成功率、普通、千に三つとかいう話がありますけれども、薬の場合は一万分の一です。もう一つけたが違うくらいに大変であります。しかも十五、六年掛かることであります。そして、しかし今、二〇一〇年ごろに、ヒトゲノムだとかなんかの解析が終わりましたから、ゲノム創薬ということで新薬の黄金時代が来るであろう、こう言われているわけです。 しかし、そのところで、日本の薬メーカー、トップメーカーの武田でも世界からいいますと十五位ぐらいなんですね。研究開発にいきますと、アメリカの大体一企業を取りましても五分の一ぐらいだと。これで一万分の一、千に三つよりももっとひどい研究開発の中で成功していくためには、なかなかこれは大変なことをやっていかなきゃいけない。そのことを政府としてもよく考えて、これはまた寿命にかかわることですし、また命を助けることにもなるわけですから、この点、ひとつ見解を伺いたいと思います。
○大臣政務官(渡辺具能君) おっしゃるとおり、新薬の開発は大変厳しいわけでありますけれども、それだけにこれを進めていかなければならないわけでありまして、そのことに対しまして国が助成をする、あるいは支援できるものを探して支援するということが大切だというふうに思っております。画期的な、独創的な医薬品の開発を推進するためには、具体的には、まず企業が中心になりまして医薬品の研究開発を行うわけでありますけれども、国としても研究開発の環境を整備してあげるとか、いろんな積極的な支援に取り組む必要があると考えております。 そこで、厚生労働省といたしましては、メディカル・フロンティア戦略と称しまして、そういう戦略の下に、特に高齢者に多い病気でありますがん、心筋梗塞、脳卒中、痴呆等の画期的な新薬の開発に協力をしているところであります。共同研究をするとか研究者を派遣するとか、そういうことを行っております。また、先端技術を活用した民間におきます医薬品の研究開発に対しまして出資をする、あるいは融資をするなどの支援を行ってきたところであります。 また、その重要性について更に私どもも認識いたしまして、今年の八月でございますけれども、医薬品産業ビジョンというものをまとめまして、この中で新薬の研究開発の支援策を今後強化することにいたしております。その強化の内容としては、新薬開発につながる重要な疾患関連のたんぱく質の解析の研究をやろうということであります。また、新薬の開発から認可までの一つの障害として、いわゆる治験をどうやっていくかということが大変問題になっておりますので、大規模な治験ネットワークを国が中心になりまして皆さんに問い掛けまして、そういう環境整備もしております。 あるいは、企業のインセンティブにつながるような、いわゆるバイ・ドール方式による委託研究をやるとか、もう委員御承知のとおりでありますが、それとか、国で開発した成果を民間に移転する機関を設置するとか、そういうことを踏まえまして、今後とも一生懸命に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
○広野ただし君 それともう一つ、新薬開発と薬価制度、この問題があって、今の日本の算定方式は類似品比較算定方式というものになっているんですね。新薬なのに類似品というのは、これはありようがないわけで、やはり新しいものを開発する意欲を作るために、新薬についての算定方式を是非見直しをしてもらいたいと思います。簡単にお願いします。
○大臣政務官(渡辺具能君) 委員御指摘のとおりでございまして、インセンティブになるような薬価方式を昨今取り入れております。 これまでは、薬価算定に当たっての加算を、従来までの方式はもう説明いたしませんけれども、その加算を、従来は最高で四〇%であったわけですけれども、新薬の画期性だとか有用性のレベルに合わせて四〇%から一〇〇%に引き上げるなど、一層の充実を図ったところでございます。
○広野ただし君 今までも画期加算方式というのはあったんですが、十年の間にわずか二件しか適用になったことがないということでありますから、それを大いに拡大をしていただきたい、このように思います。 ところで、やっぱり特許法関係の審査のことは非常に大切で、発明を促すということも非常に大切ですが、発明ができたらそれを権利を確定して早く使えるようにする、そういうことでは審査の迅速化、今日午前中も出ましたけれども、ここのところが非常に大切なことだと思っております。 審査体制充実の問題が重要なわけですが、なぜか知らないけれども、先ほども出ましたけれども、すぐ料金の問題になってきていると。経済原則でもっていろいろとやるというのは分からぬではないですけれども、やはりまず審査制度の充実をどうやってやっていくかと。今までも確かにアウトソーシングをやるということでいろいろと充実を図ってきておられる、これはもう評価をいたしますけれども、私は、更に大事なのは審査官の補助といいますか、審査官を正に契約社員のように、言葉は悪いですけれども、契約審査官という形で大いに弁理士等を活用して、そして充実を図る、こういうことがやはり非常に大切だと思います。 そうしませんと、何か料金値上げで、下げていく、受け付けないという、ハードルを高くするという考え方より、まず審査体制充実を何かやることがないのかということで求めることの方が重要だと思いますが、その点いかがでしょうか。
○副大臣(西川太一郎君) 今、先生のお言葉どおり特許は大変重要なことでございまして、マンパワーを必要といたしております。特に、その背景は、近時、出願内容の高度化と複雑化、あわせて、審査請求期間を七年から三年に短縮する、これがオーバーラップする時期が今来ておりまして、非常に審査請求件数が増えております。そして、そういう中で、審査期間の長期化ということはいろんな意味でまずいことでございますから、これを効率的に短縮をしていくという意味では、ただいま先生が評価をしていただきましたアウトソーシング方式を私ども取り入れていきたい、こう思っております。 そういう中で、弁理士の先生方にお力を拝借する、こういう問題でございますけれども、弁理士の方々は、今更私が申し上げるまでもなく、明細書でございますとか翻訳文でありますとか補正書という、そういうものの作成、それから特許を求める際の先行技術との対比、審査官、審判官との面接時における技術説明、また企業の知的財産戦略に向けた助言など、大変重要なお仕事をしていただいていると承知をいたしておりまして、今後もこうした弁理士の先生方の一層の貢献を私どもとしてはお願いをしたい、こう思っているわけでございますが。 経済産業省といたしましては、こうした弁理士の皆様の積極的な御貢献を得ながら、国際的に遜色のない、迅速かつ的確な審査を確保してまいりたい。先生御指摘のように、特許審査体制の整備に努めていきたい、こう思っております。
○広野ただし君 今日午前中も出ましたけれども、調査請求を前もってやる制度ですね、審査期間中に。いきなり審査請求をするんじゃなくて、その前に調査請求をして、そして報告書をもらって、それで審査をするかどうかということを出願者が決める、こういう制度をしっかりと入れるということを検討してもらいたいと思うんですね。それによって、何と言うんですかね、先ほど二割は出てこないんだ、何の音さたもないんだと、こう言うんですけれども、そういう調査請求によってかなり防げるということがあろうと思いますが、その点、いかがでしょうか。
○政府参考人(太田信一郎君) 調査を前置する制度というのは考え方としてないことはないと思っております。ただ、義務付けをすることの是非、それから、私ども、正に大車輪で審査官とアウトソーシングの検索者、サーチャーが一緒になってやっております。その上で調査を前置したときに、かえって審査の方が全体のマンパワーの関係で遅れかねないという問題もあります。 ただ、いずれにしても、午前中にもお答えいたしましたけれども、産構審で全体の姿を現在議論をしているところです。そういう中で、出願者の先行技術調査の実現のための方策という観点からきちんと議論を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
○広野ただし君 それと、特許特会というのがあるわけですけれども、特許特会、八百億円ぐらいの剰余金があるということですから、今すぐ何か審査料を値上げをすると。こういう非常に大切なときに、先ほど御祝儀相場だからという話がありましたけれども、やはり基本法でスタートしているときに何か値上げをしていくというのは、やはりエンジンをやりながらまたアクセルを吹かすという、何かそういう感じになりますから、やはりここは大臣、プロパテント政策をかっちりとやるんだということで是非再検討をお願いしたいと思いますし、また、よく関係者と議論をしていただいて、何かアンチパテント政策になるようなことではないようにしっかりした制度を作っていただきたいと思いますので、大臣の見解を伺います。
○国務大臣(平沼赳夫君) 午前中でもこの問題が出まして、特許庁長官等から御答弁をさせていただき、私からも答弁をさせていただきました。 いずれにしても、いろいろな問題点もありますし、あるいは制度的なアプローチもありますし、総合的にいろいろ検討しなければならないと、このように思っているところでございます。
○広野ただし君 終わります。 ありがとうございます。
○委員長(田浦直君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。 午後三時四十三分散会