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151回国会参議院2001/03/15

予算委員会公聴会 第1号

発言数
241
登壇者
24
会派数
8
開催日
2001/03/15

会議録

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算につきまして、六人の公述人の方々から順次項目別に御意見をお伺いすることといたします。  初めに、公述人の両先生にごあいさつを申し上げます。  両先生には、さぞや御多忙でありましょうところを本委員会に御出席を賜りまして、本当にありがとうございました。委員会を代表してごあいさつを申し上げた次第でございます。  きょうは、平成十三年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を聴取し、今後の審査の参考にいたしたいと、かように存じておりますので、よろしく何分お願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一方二十分程度で御意見をお述べいただいたその後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それではまず、財政・税制についてであります。公述人文京女子大学経営学部教授菊池英博さんの御意見を伺います。菊池公述人、どうぞ。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 皆さんおはようございます。御紹介いただきました菊池でございます。本日は、こういう大変貴重な席にお招きをいただきまして、私の意見を申させていただくことを大変光栄に思っております。  私は、大学の教員でございますので、政治的には中立の立場で現在の財政・金融、そういった問題につきまして所見を述べさせていただきたいと思います。  それから、途中で数字を使いますものですから、パネルを使わせていただきます。  それから、お手元に大変やや欲張りまして資料を多く配付させていただいたかと思います。それで、横長の私の説明のレジュメがございます。それに基づきまして御説明申し上げ、あとの資料は関連で御質問等があればそれにお答えさせていただくというふうに考えております。  それでは、まず第一に私の主な公述内容を申させていただきます。  本日、私が申し上げたいことは次の三点でございます。まず第一に平成十三年度予算についての所見、二番目が日本の債務問題について、純債務で見れば日本の財政は決して危機的ではない、これが実は私きょう申し上げたい一つのポイントで、かねがね私の考え方でございます。純債務で見た日本の財政状況と特徴というのをお話しさせていただきます。それから三番目には、現下の金融システム安定化と株価対策といたしまして、銀行の株式所有の禁止を法制化し、早急に政府に銀行保有株式買い上げ機構の設置が必要ではないかというふうに考えておりますので、その私の意見を申させていただきます。  また、金融再生法と早期健全化法の五年間の延長、それからBIS規制、これは後ほど御説明申し上げますが、国際決済銀行で申し合わされました銀行の自己資本比率に関する規制でございます、このBIS規制を地域金融機関には適用すべきではないという考えを持っております。この点につきましても後ほど申し上げたいと思います。  それではまず第一に、平成十三年度予算についての所見でございます。  基本的には、私は現在御審議中の予算案に賛成であり、早く成立させていただきたいと思います。しかし、現在、日本国民の多くは日本経済の将来に対して不安感を抱いており、この根底には長期にわたる経済の低迷とデフレ現象、及び過度の悲観論があると考えます。  九八年七月に就任されました小渕前総理は、財政再建策を凍結し、九九年三月に銀行に公的資金、これは政府保証資金で資本を注入いたしました。それによりまして金融危機を乗り切り、積極財政をとって恐慌的不況の克服に尽力されました。特に、九九年秋の補正予算では真水で九兆円の支出を決め、これでようやく日本経済はマイナス成長からはい上がったのです。平成十二年度予算も積極型で、日本経済は成長路線に乗ることが期待されました。  ところが、昨年四月十二日に日銀総裁がゼロ金利の解除、これは金利の引き上げでございます、〇・二五%の金利の引き上げを示唆したことから、この日から株価が下落し始め、八月十一日にはゼロ金利の解除が決定され、その後、マネーサプライ、通貨供給量の前年度比伸び率が低下いたしまして、金融は実質的に引き締め政策をとっていると考えざるを得ません。もちろん公には緩和策をとっているということでございますが、金利の引き上げがまだ残っておりますし、それからマネーサプライは前年同期に比べますとまだまだ二%前後でございます。かつてバブルのころは一〇%以上でございましたし、私はこれは一〇%ぐらいのマネーサプライの増加は必要だと考えております。  また、昨年の夏ごろから、一部の識者が政府の総債務だけ、借り入れだけで日本の財政をとらえ、日本の財政は危機的で今にも破綻寸前であるかのように誇張し、マスコミもこの論調に乗って危機感をあおってきました。  こうした中で、昨年秋の補正予算は真水で四兆円の増加にとどまったために、前年の九兆円に比べまして五兆円の減額となり、また、現在御審議中の平成十三年度予算は六年ぶりの緊縮予算、前年度に比べて二・七%減、二・三兆円の減となっているために、平成十三年の予算支出は前年に比べまして八兆円の減額ということになると思います。これが市場にデフレ懸念を強め、加えて、銀行が収益対策、時価会計対策のために持ち株を市場で売却しているために株価が急落してきたわけでございます。  現在の日本では、昨年から現在までのところを考えますと、金融もデフレ的な政策をとっている、それから財政もデフレぎみに緊縮財政をとっている、こういうデフレ懸念が市場に非常に強まっており、これが株価の一番の低下の原因ではないかと思います。平成十三年度は、このまま放置いたしますと日本経済はマイナス成長に陥るのではないかと懸念いたしております。四月以降の景気動向を注視し、景気が失速しそうになれば早目に補正予算を御検討いただくのがよいかと考えます。真水で十兆円支出いたしましても、平成十三年の純支出はわずか二、三兆円にすぎません。  現在、日本のとるべき経済政策は、あらゆる手段を総合してデフレ経済からの脱却を図ることと考えます。金融の一段の量的緩和、財政支出の増加、セーフガードの発動や円安誘導、徹底した景気回復優先策によって物価の下落を防止し、名目GDP、国内総生産を引き上げることであろうと私は考えております。  二番目に、日本の債務問題についてです。  現在の日本では、私の考えといたしまして、この問題ほど誤解され、あるいは誇張されているという問題はないのではないかというふうに考えています。総債務から金融資産を控除いたしました純債務で見ますと、日本の財政は決して危機的というほどではございません。現在は、財政支出を継続して景気振興策を最優先すべきではないかと考えております。  そこで、この席上をかりまして、純債務で見た日本の財政事情はどんな状況かということを説明させていただきたいと思います。  それでは、そのペーパーの二ページ目をごらんください。二ページ目に左と右に図表がございます。それをちょっと御説明いたします。(図表掲示)  まず、日本の財政でございますけれども、日本の財政は決して債務超過ではございません。これは九九年末の資金循環を中心にして図表化してみたものです。資料は昨年十二月に出ました経済企画庁の国民経済計算からとっております。  家計と企業と政府、海外、この四つの部門に分けて考えてみますと、まず家計では金融資産が千四百八兆円ございます。括弧内は一年前、九八年度でございます、九八年、暦年でございます。それで千四百八兆ございます。それで、それがそのほか金融機関の余剰というのがございまして、一方、家計で負債として使っている、つまり金融資産を持ちながら一方では住宅ローンを借りている、消費者ローンを使っているというのは家計の負債になります。これを引きますと、家計として部門では千二十四兆、つまり千兆円の余剰があるわけです。これがあとのほかの部門に回っているわけです。それは企業部門にどうかといいますと、七百四十九兆円回っております。それから、政府部門では負債が六百十八兆円と、こう言われておりますけれども、実は金融資産を三百九十兆円持っております。したがって、純債務としては二百二十八兆にすぎません。そこに回っております。それから、海外部門で八十五兆円回っていまして、そういう意味では対外的には債権国ということが言えるわけでございます。  それでは次に、右側の表でございます。図表二でございます。日本政府の貸借対照表というところでございます。  昨年十月に大蔵省が日本政府の貸借対照表を発表いたしました。そのときの新聞の見出しは政府も大幅な債務超過ということでございましたが、しかし実際、国民経済統計、経済計算から見ますと、決して債務超過ではございません。正味資産がはっきりと計上されております。その内訳は、八百七十七兆円の総資産がございます。そのうち金融資産は三百九十兆円、四五%、固定資産は三百三十二兆円で三八%、土地は一七%に相当する百五十五兆円ということで、土地には若干含みがございます。一方、負債は六百十八兆、これが国債とか地方債の総負債に当たります。残り正味資産は二百五十九兆円ございます。したがって、日本国は資産超過でございます。  しかし、昨年大蔵省が発表いたしましたのは、その右に書きました負債をここに計上したわけですね。この負債の内容は、公的年金、それから公務員の賞与、退職給与の引当金、これは現在おられます公務員の方がずっと今後勤められる、退職するまでの賞与とか退職給与の引当金、それから一方、公的年金は、既に公的年金に加盟して支払いを開始している人が年金受給期に来てその年金をもらう、そこまで、ずっと先へ行ってもらう年金、それを全部負債に計上しています。  しかし、ここで果たしてこの負債というのはここに入れるべきなのか。私はこれは考え方としてもおかしいのではないかと思います。といいますのは、公務員の方に対しましては、その原資は財政資金でございまして、それは税金で賄われております。それで、政府には徴税権がございますから、将来にわたって政府がつぶれない限りは徴税権は存在します。そうであれば、これに対するはっきりとした債権が、資産があるはずですね。それから一方、年金につきましても、今加盟している以上は、年金というのは賦課方式をとっておりますから、政府には徴収権がございます。ですから、それははっきりとした資産、権利ではないかと思います。ですから、ここに大蔵省が計上いたしました負債部分というのは私はちょっとかなり疑問を持っております。  こういったいかにも国も破産しそうだというようなことを国民に示すのはいかがなものか。昨年あたり新聞を見ますと、新聞の見出しには国も債務超過と出ますね。そうすると、皆さん細かいことを余り読みませんから、へえ大変だな、国もそうなのか。当時私はタクシーに乗りましたら、タクシーの運転手さんが、日本の国も債務超過なんですね、この国はどうなるんですか、年金も何ももらえないんですかというようなことを言います。しかし、実際には決してそうではないわけですね。ですから、こういう面についても国のプレゼンテーションも十分考えて、国民に必要以上の不安感を醸し出させないような対策が必要ではないかと考えます。  それでは次に、右上の三ページに行ってください。日本の債務問題を考えまして、総債務と純債務。純債務といいますのは総債務から金融資産を引いたもの、こういうふうに考えております。そういたしますと、はっきり申しまして、純債務は意外に少ないということになります。  九九年度、平成十一年度をとってみたいと思います。これは暦年でございますから、九九年暦年の、九九年末の数字をとってみたいと思います。  国のGDPは五百十四兆円、総債務が六百十八兆。ですから、総債務のGDP比率を見ますと一二〇・三%。実はこれがひとり歩きしているんですね、大変だ大変だと。  しかし、金融資産というのがその下にあります。実に三百九十兆、四百兆の金融資産があります。それを総債務から引いた純債務は、その下の五番目の二百二十八兆。これが実は政府が実際に市場で調達している、国民からあるいは海外の投資家から調達しておる資金、債務でございます。  それを今度はGDP比率で見ますと四四・三%。ですから、これはこの後申しますけれども、大体欧米の平均並みです。一番悪い、最悪では決してございません。最悪は実はドイツなんです。  そこで、その下の金融資産、これは一体どういうものがあるのかといいますと、実は二つ大きく分けられまして、一つは社会保障基金と、もう一つは外貨準備、貸付金、出資金等、こういうふうに二つに分けられます。  そうすると、まず社会保障基金の中身は、国民健康保険とそれから年金基金でございます。それを見ていきますと、現在かなりプラスでございます。しかも年々、九五年から見ていきますと十兆円ずつぐらいこの基金の残高はふえております。ですから、九九年を見ますと、三百九十兆全体で資産があるうち、社会保障基金は二百三十五兆ございます。前年に比べて九兆ふえている。今の予想では大体今後十兆ぐらいふえていくのじゃないか。  確かに、今社会保障基金の中身というものは非常に問題になっております。政府の方でも、あるいは議会の方でもいろいろ御検討いただいていると思います。それは、このままほっておくと、人員構成とか、あるいは高齢者の負担がふえるということによってこの残高がどんどん減っていってしまう。この残高をこのまま放置しますと、二〇二〇年から二五年でゼロになるだろう、こう言われています。  これは困りますから、給付の見直しとか、それから徴収率の引き上げということをこれから検討していこうということでございます。それはもう大変結構なことです。しかし、マクロ的に考えたときには、これだけの金融資産があるということを我々は十分念頭に置いて債務問題を考えるべきではないかと思います。  それから、その左側、外貨準備、貸付金。これは、日本は債権国でございますし、いろいろ対外的に貸し付けもございます。これを見ていきますと、九九年の末では百五十六兆円ございます。それで、現在外貨準備も三千六百億ドルを超した、史上最高、世界最高と言われていますが、外貨準備だけで四十三兆円ぐらいのものがあるわけで、これは純然たる資産でございます。  それから、その次にこれを海外とちょっと比べてみたいと思います。  まず、主要国の経済・財政事情と特徴ということで、アメリカ、ドイツ、イギリス、日本、この四カ国をちょっと比較してみました。これによりまして、日本の財政事情はどうなっているのかという特徴を見てみたいということでございます。  まず、その下をごらんください。図表の六は総債務残高の対GDP比率でございますね。これを見ていきますと、一番右側、九九年末では日本は確かに一二〇・四%で一番悪い。それからドイツ、アメリカ、イギリスという形になっております。これがですから新聞なんかではひとり歩きしています。  しかし、本当に金融資産等を含めた日本の実力で見ますと、その下でございます。純債務残高のGDP比率は九九年度で日本は四四・三%です。一番この比率が高いのは四七・一%、ドイツの方が比率は悪いわけですね。ドイツは、西ドイツ、東ドイツの統合後もかなり財政支出も出ておりまして、現在も経済的にもかなりずっと赤字が続いているというような状況がこういうところに出ております。それから、日本はといいますと四四・三%、このあとアメリカ、イギリスの平均が大体四四・五%ぐらいになりますから、大体日本は欧米並みの平均であると。  これは、先日、昨年の十二月でございましたか、就任されました麻生太郎先生が、国会ですか、どちらかでお話しになって、新聞で、純債務で見れば日本は平均並みだと、日本の純債務で見ますと債務というのはGDP比率で平均並みなんだ、だから決して、今に政府が破綻しそうだ、国が破綻しそうだということはありませんということをおっしゃいましたが、まさにそのとおりでございます。  そこで、ちょっとその下を見てください、九六年度。九六年度に日本は財政再建を決意いたしまして、九七年度から増税政策をとりました。じゃ、その決意したときに、純債務残高、GDPに占める純債務残高というのはどのぐらいであったかといいますと、二一・三%なんですね。これはほかに比べて半分以下の、半分ぐらいの数字ですね。これははっきり言って健全財政です。  ですから、九九年三月だったと思いますけれども、アメリカのゴア副大統領が来日されまして、日本は財政再建をやるには時期尚早じゃないか、随分金融資産もあるじゃないかということをおっしゃったということは新聞に出ておりました。これではっきり裏づけられます。ですから、この時点で、純債務で国の債務状況を見るんだという考え方がもっと強くあれば、決してあの時期に財政再建をとるということはなかったのではないかと。これは私の推測でございますが、こういう数字からそう考えられます。  それで、その上の数字を見てください。上の数字を見ていただきますと、経常収支、それから国内の投資と貯蓄、財政支出、それからその下が対外的に債務国か債権国か、それから総債務のGDP比率と純債務のGDP比率と、こう数字がございます。  一番右を見ていただきます。日本を見てみますと、これは経常収支は全部黒字、輸出の方が超過しています。ほかの国はといいますと、アメリカは全部赤字で、ドイツは黒字ですけれども、イギリスは黒だったり赤だったり。  それから、一方、二番目の国内の投資と貯蓄を見てみますと、これは全部貯蓄の方がずっと多い。投資よりも多いわけですね。ですから、いわゆるここには投資ギャップといいますか、民間部門での大きな投資不足があります。実はそれを政府の公共投資で賄っているわけです。これをほかの国も見てみますと、アメリカは貯蓄率がマイナスの国ですからずっと投資の方が多い。ドイツも投資の方が多い。イギリスはというと、九八年までは貯蓄の方が多かったんですね。そこで財政赤字をやっていたんです。そうしたら今度は民需が拡大いたしまして、九九年度には投資の方がふえたという結果が見られます。  それから、財政支出を見ますと、日本は全部赤字でございますが、アメリカの場合は九八年から黒字になりました。しかし、アメリカの場合は、その前にずっと赤字財政をとりまして、景気対策として景気を刺激する、いつも景気刺激策をとってきたんですね。ですから、景気抑制的な財政政策をとったことはほとんどないと思います。ここら辺が非常に大きなポイントです。  それから、あとの数字はその下に書いたとおりで、日本は対外的には債権国でございます。これが特徴でございます。  そこで、日本の財政特徴というのはどういうものかということをちょっと右の下に書いておきましたのでごらんください。  日本は今申し上げましたような特徴がございますから、日本の債務問題というのは純債務で見ないと実態がわからないわけですね。つまり、先ほど左の数字で見ていただきましたとおり、問題は、この純債務比率、純債務のGDP比率と総債務のGDP比率の差額を見ていただきますと、大体ほかの三国は一五%ポイントぐらいなんですね。それで、日本の場合は七六とか、八〇%近くもある。ですから、ここに特徴がありますから、日本の場合には全般に見まして他国にない非常に特徴的なモデルを示しております。常に輸出が超過しておりますから、当然国内では貯蓄が投資を上回る状況です。ですから、ほかの国以上に政府が公共投資を支出していかなきゃいけないということになります。それから、国民負担率はその左の表の下にございますが、日本は一番最低でございます。  そこで、私はちょっと一つの希望として申し上げたいことは、財務省が今後、総債務と純債務を国民に出していただきたいと思います。  それでは、もう時間が参りましたので、最後に一言申し上げたいと思いますが、最後のページをごらんください。六ページでございます。これは、現在の証券問題、株価問題でございます。  現在、私は証券恐慌的な状態に来ているのではないか。かつて一九六五年、証券恐慌が日本にございましたけれども、ある意味ではそれよりももっと非常に規模が大きい。といいますのは、あのときは証券、しかも投資信託だけが中心だったわけですから。現在は銀行が株式を持っておるために、金融システムそのものに大きく影響しております。決算が全部赤字になるのじゃないかというぐらい言われております。それから、生保とか損保、株の機関投資家もかなり大きな損失をこうむるのではないかと言われております。  そこで、こういった問題に対しましては、現在の金融不安と資本市場の機能を回復するための決め手として、民間任せではなく、市場任せ、民間任せではもはや機能いたしません。つまり、構造的な面でもう非常にゆがみが生じてしまう、いわゆる市場の失敗というような形になっている。そこで、政府自身が株式買い取り機構というようなものをつくりまして、金融システムの安定化と資本市場の機能の回復ということに努力をしていただきたいと思います。  これは、資金枠を四十兆つくりまして、全額政府保証債で発行して、全部これは民間に発行いたしますから、資金は民間です。ですから、税金は一切使いません。保証をしていただくわけです。今、国債は市場では飛ぶように売れておりますから、消化能力は十分あり得ると思います。それから、あとは銀行が保有しております株式を全額時価で強制的に買い上げる、株は機構が所有いたしまして、買い上げた株は原則五年間凍結する、こういう考え方をとっていただきたい。凍結後の株式は、原則として市場での売却は禁止します。売却は、企業の自社株買い、金庫株買い、投資信託の買い取りとか安定株主への売却、こういうことに限定する。銀行法を改正いたしまして、銀行本体での株式保有というのはこれはもう永遠に禁止していただく。無制限に認められているのは日本だけでございます。その右の方にちょっと書いてございますから、これを後ほど御参考にしください。  それで、機構の採算としても現在十分順ざやで回ると思いますし、機構のリスクとしては、保有株を五年間売却せずに維持いたしますから、そのリスクはございます。しかし、株価にいろいろな銘柄がございますから、利益が出るものが多ければ当然収益的にはプラスでございます。  それで、最後に申し上げたいことは、こういった機構に対しましては、御存じと思いますが、既に九八年の十月に民主党の岩國哲人代議士先生が提案もされておられます。これは株式転換国債という形で出ております。ですから、超党派的にぜひ進めていただきたい。  私は、現在の証券・株価問題、これに対しては大変危機感を持っております。本当に何か金融システムが陥没しそうな印象が非常に強いと思いますので、これは政治の先生方の御指導でぜひ救済策を早急にお願いしたいと思います。  以上でございます。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 菊池先生、どうもありがとうございました。  それでは次に、景気・経済について、公述人日本労働組合総連合会事務局長笹森清さん、御意見をお伺いいたします。笹森公述人、どうぞ。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 今、御指名いただきました連合事務局長の笹森でございます。  院が違いますので、片方の院でちょっと物議を醸しておりますが、参議院の方でお呼びをいただきまして発言の機会を与えていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。  時間が押しておりますが、これから二十分の陳述でよろしゅうございますか。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) どうぞ。よろしくどうぞ。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) はい。ありがとうございます。  まず冒頭、私の方からは、二〇〇一年度の政府予算案に対する基本的な考え方、評価について明らかにさせていただきたいと思うんですが、連合の立場できょうは発言をさせてもらうというのは、一億二千五百万人の日本国民の中で給与生計世帯、言いかえればサラリーマン世帯、全体の八二・七%おります。したがって、この八割を超すサラリーマン層のもう一つの側面は、給料が一〇〇%捕捉をされていて源泉徴収で完全に納税をしている団体ということになるわけで、その働く人たち全体をまだカバーはしておりませんが、約八百万人を組織している世界で三番目のナショナルセンター、言ってみればタックスペイヤーの立場からの部分も含めて御意見を申し上げさせていただきたいというふうに思っております。  そういう内容から申し上げますと、今、八割を超す勤労国民、これが直面をしております生活の不安、これをどう打開しようとするのかというものにこたえる内容になっていないのではないかというのが率直な評価でございます。したがって、これからの勤労国民の生活の安定を図って政策を抜本的に強化するためには二〇〇一年度の政府予算案を修正していただきたいというのが私の基本的な考え方でございます。  まず、国民が今一番求めている課題について申し上げたいと思いますが、私は一昨年来、日本は言葉の一番最初にイニシアル、アルファベットの頭文字がKで始まる課題、これが七つ取りつかれておって、この七つのKの課題をいかに除去するかということが極めて重要だということをずっと訴えさせていただきました。国会の中でも幾つか申し上げたことがございますが、この七つのKを解決することが経済を好転させ、雇用状況を改善させ、ひいてはそれにリーダーシップを発揮する政治がいかに重要かということを国民全体が認識するということにつながるのではないかというふうに思っておりましたが、この七つの不安は一年を超えても解決をされておらず、言ってみれば七が十四にふえ、そして今や三倍の二十一にもなるというような極めて深刻な状況になっています。  まず冒頭申し上げた七つのKの課題というのは何かということを申し上げると、一つは、きょうの主題のテーマになりますが、景気の回復のK、二つ目が雇用の改善のK。そして、次の三つが社会保障に関係をする三点セットになりますけれども、国民年金、健康保険、介護保険システム。そして、国民のだれもが何とかしなければいけないけれどもどうにも何にもできないというもどかしさを今感じている教育のK、さらには地球的規模の環境の改善。  一年間、これを直さなければ日本も世界もよくならない、こう申し上げてきたし、どんなアンケート調査をとっても、国民の最大の関心事は冒頭申し上げた景気と雇用、この二つに尽きていたわけですが、残念ながらこれが全く改善をされず、したがって国民はこの恐怖におびえ、そして先行き不安を極めて深刻に受けとめて消費を手控え、したがって社会活力が落ちる、そしてそのことによって景気の低迷がずっと続いているという悪循環をつなげているわけです。  そこに二倍、三倍のKがふえた。一つは、直接経済には関係をいたしませんが、警察不祥事の続発のK。そして、金融不安が再発をもうしているのではないかという金融不安のK。さらに、六百六十六兆円という極めて巨額な国債、地方債を抱えるという国債の増発問題。加えて、今年度の予算の中の、これは後ほど指摘をさせていただきますが、公共事業のあり方という公共事業のK。そして、経済問題には直接関係をいたしませんが、KSD事件、機密費の問題あるいは原子力潜水艦のえひめ丸の事故に象徴されるような危機管理の問題等々で、これまでで十四のKになるわけです。  ここに加えて、きわめつけに景気や雇用に影響し始めましたのが株価のK、そして金利のK。加えて、少年法の改正等に伴う刑法、これからの日本の進路を決める憲法、そういった問題をいかに国会の中でビジョンを出してもらうかという国策、国のビジョンに対するK。加えて、国会がこういう問題についてしっかりと政策論議をし、国民の方を向いた政策を立案していただいているのかということに対する国会機能のKというようなものを加えていきますと二十を超えてしまうというような今の状況になっているわけです。  この問題を特に国会の中で早急に解決していただきたい。そのために本年度の予算はどうなっているのかという問題二点について次に指摘をさせていただきたいと思います。  御承知のように、二〇〇一年度の政府予算案は一般会計が約八十三兆円、当初に比べまして二・七%の減額になっております。そして、この中の一般歳出は約四十九兆円、この部分については前年比で一・二%増加をしております。言ってみれば、三年連続の大型予算を組んだということにはなっておりますが、しかしその内容は、今Kの課題の方でも触れましたように、史上最悪の雇用、失業の状況について、あるいは生活の先行き不安を解消するという積極対策が入っているかということについては、これは欠けているというふうに言わざるを得ないというふうに思っております。  働く側の立場からすると、雇用の改善は、これが実際に解決をされれば景気回復に必ずつながる、だから経済と景気の回復は雇用の対策が最大の決め手である、こういうふうに思っておりますけれども、先月末発表されました数字からいいますと、四・九%、三百十七万人という失業者の数になっております。毎年の統計の実態から申し上げれば、三月末、通常の数値に〇・二%失業の状況は悪い数字が足されます。そうなると、日本では今まで経験したことのない五%という失業率を初めて目の当たりにするという状況に直面しかねない。気持ちとしてはそうなってほしくはないと思っておりますが、今の状況からいうと、そのことが必ずなりそうだという状況になっておりまして、これは四%台高どまり、三百万人という失業者の数にこの一年間我々自身も含めて麻痺をしてしまっておりましたけれども、五%という数字をのぞいた途端に極めてムードは一変するんではないかというふうに思っております。  特に、このことがサラリーマンの人たちに与えるプレッシャーははかり知れなくなるだろうというふうに感じておりまして、そういう意味では、けさ八時から厚生労働大臣の呼びかけで厚生労働大臣と労使の代表が緊急的な雇用改善の連絡会議を持ちました。ここの中では具体的な話が解決するというような状況にはなっておりませんが、共通的に一致した認識は、今申し上げた五%を超えるような失業率の状況になったときに今のような手だてでとても間に合わないということは共通認識になっておりまして、そういう意味では、今年度の政府予算がこの中で失業対策予算として入れてありますが、全体の金額の中から見ればわずか四千二百九十八億円にしかすぎないという部分について、最悪の雇用状況を打開しようとする意欲が全く感じられないということを指摘しておきたいと思います。  そして二つ目は、景気対策として公共事業費が前年度並みに九兆四千億円計上されておりますけれども、新たな特別枠の施策が七千億円にすぎませんで、言ってみれば、従来型の事業の継続が中心となっております。この五年間に六十兆円を上回る公共事業が行われたにもかかわらず、景気回復が進まないで雇用がさらに悪化をしているということを反省するならば、このような従来のやり方を継続する公共事業は国債発行のみを増大させかねないものだというふうに批判をせざるを得ないというふうに思っております。  国債を含めて六百六十六兆円の赤字、日本人が借金を負っているという部分について、これは額が大き過ぎてどの程度の金額か全くイメージがわきません。しかし、単純に計算をしてみますと、これを一日百万円ずつ返済したとして一体一兆円返すのに何年かかるのかと。一日百万円、一年三百六十五日、三億六千五百万円、一日百万円返せば年間で出ます。千年かかって三千六百五十億円であります。一兆円返すのに約二千七百年かかるんです。  これの六百六十六倍という極めて想像もつかない気の遠くなるような借財を今抱えている部分について、これが国民生活や景気回復のために使われたならまだしも、先ほどのKの課題で申し上げたように、全然逆な方向に機能させているという部分について、予算の中でいかにこのことを改善させるかということを真剣に受けとめていただきたいというふうに思っております。  それから、もう一つの要因は、国民の先行き不安感をどう除去できるかということでありますが、社会保障の三点セットのKでも申し上げたように、年金、医療の部分について、政府の施策がどちらかといえば収支悪化で財源問題を重点的に宣伝するということになっていきますので、その宣伝は必要なのかもしれませんが、じゃ、しからば改善策をどうするのかということについては全く触れていかないという部分について不安感がますます増大をする、その中で自己負担増や給付の切り下げというものが強行されてくるということが大きく響いておりまして、これが国民が消費マインドを喚起しないという最大の理由になっているのではないか。  私自身は、六百六十六兆円という借財に対して国民の預貯金が千三百五十兆円、約倍もあるわけですので、経済のファンダメンタルズはそんなに悪いというふうには思っておりませんし、潜在的な能力が高いとは思うんですが、しかしこれが動かないという部分が、そこに最大の欠点があるということをぜひ考えた予算運営をさせていただかなければいけないのではないかというふうに思っております。  そして、今雇用の問題、五%の危機感を申し上げました。これは私自身は、労働団体の事務局長という立場から申し上げれば、危機感どころか恐怖感すら覚えております。  ならないように祈ってはおりますけれども、このことに対して、連合は昨年、組合員二万五千人に対するアンケート調査を行いました。この中では、回答者のうちの二一%が自分の家計の消費支出を減らしたというふうに回答を寄せております。その主な理由としては、収入が減ったからというのが最大の原因でありまして、これが五割。それから、ローンなどの返済がふえたり、失業したら収入が減るという不安があるからリストラに備えるんだというようなことの回答が三割で、かなり働く人たちは家計の緊縮財政を余儀なくされているということでありまして、これが今申し上げた千三百五十兆円が全く動かないということにつながっているわけで、消費抑制の大きな原因になっております。  このことについては、悪化がとまらないで五%台に乗っていく、特に新卒の就職率が極めてまだまだ悪い、状況が改善をしないということに対していかに予算を張りつけるかということが今、緊急対策として求められているのではないかというふうに思っておりまして、今の申し上げた中からいえば、二十万人に達する大学、高卒の未就職者、この人たちに対する改善と、今一番雇用のミスマッチが発生をしている部分の中では、職業訓練に対する対策費、これは政府の予算の中では十一万人弱しか予算が計上されておりませんけれども、三百万人を上回る自発的な失業者と非自発的な失業者、やむを得ずというふうに失業させられた人たちがこのうちの三分の一、百万人を超すというような数から見れば、職業訓練等も含めた予算の充実を早急に手だてとして行わなければいけないのではないか。言ってみれば、先ほど申し上げたように、雇用対策の強化は最大の景気対策の強化になるということをぜひ御理解いただいておきたいと思います。  それからその次に、九日の日に発表されました与党三党の緊急経済対策の部分について、これは予算との関係もありますので評価について触れたいと思いますが、緊急対策の内容は、金庫株の解禁とかあるいは新しい金融緩和や物価安定目標などの的確な金融政策あるいは新市場の開拓による雇用創出につながるんだと、こういうことを打ち出してはおります。  しかし、現在の経済状態が危機的になったという現状認識については、この部分では共有ができるにいたしましても、そうであるならば、なぜこの緊急経済対策を二〇〇一年度の経済予算の中に、本年度の予算の中に組み込まないのかということを御指摘しておきたいと思います。  その上で、金庫株の解禁だとかあるいは株式の買い上げ機構の創設などの新たなる制度の改革は、我が国の企業制度のあり方を踏まえて、本来的であれば労使のいろいろな協議も含めながら中期的な視点に立った対策が講じられるべきではないかと思っておりますが、今言われていることは、目先の株式市場対策として何か安易にそのことに対するだけの導入を図りたい、こういうような感じが私どもとしては受けとめられております。この部分については、安易に導入すべき課題ではないということを指摘しておきたいと思います。  加えて、ITだとか医療、福祉、環境、こういった分野での開発事業、これについては、内容的なものからいえば、私どももきょうお配りをしてある資料の中でもいろいろと触れさせていただいておりますので、早急に実現をするという手だてをこの中では講ずるべきではないかというふうに思っております。  今申し上げたような視点に立ちまして、政府予算を抜本修正すべきであるという項目について幾つか申し上げたいと思いますが、まず修正をしていただきたい項目の第一は、雇用創出対策の抜本強化の問題です。  雇用対策の問題につきましては、ヨーロッパ諸国と比較をしますと、日本の場合には規模がかなり小さい。OECDの雇用レポート、九三年あるいは二〇〇〇年の数字から見ましても、これは極めて小さいということが指摘をされます。具体的な数字については羅列をいたしませんが、日本は〇・六一%にすぎないということだけ申し上げておきたいと思います。  それから、二〇〇一年度の予算案の雇用対策費、先ほども申し上げましたけれども、雇用保険の特別会計を含めても四兆円弱なんですね。これはGDP比で〇・八%程度にしかなりません。失業率は四・九、先ほど申し上げたように、五%という危機的なラインもさらに超えそうだという状況の中の戦後最悪の失業状況を打開するためには、この雇用対策費の大幅増に組み替えていただく必要が、これはもう何が何でも必要だということを申し上げておきたいと思います。  さらに、若者向けの雇用創出、あるいは先ほども申し上げましたが、職業訓練、能力開発、これについても諸外国に比べて極めて小さいという特色があるということで抜本強化をしていただきたいというふうに思います。  今、お手元にお配りをしております連合の政策の重点課題の中では、ここの部分については雇用対策として百四十万人の雇用創出をしていただきたいという対策を出しました。ここについては追加費用として二兆円で実施していただきたいということを私どもとしては求めておりますが、費用の部分からいえば、公共事業の定義を拡充すれば、現行の公共事業の予算を組み替えることで実現ができるのではないかというふうに考えております。  そして二つ目は、社会保障基盤の改善策の問題でありまして、これについては、まず何よりも第一の優先課題としては、基礎年金の国庫負担の部分を現行の三分の一から二分の一へ引き上げていただくことを二〇〇一年度の予算に計上していただきたい。これが国民が将来の先行き不安を解消する一番のネックになっている部分の手だてになるのではないかというふうに考えております。  それから、老人保健や診療保険体制、こういったものについても、あるいは高齢者医療制度の創設なども含めて、二〇〇一年度から実施する予算に修正をしていただきたいということであります。  そして、介護の部分あるいは保育の部分、これについては、でき得れば男女がともに家庭と仕事が安心して営めるという仕事と家庭の両立支援につながるような法改正、そのことを含めて育児・介護休業制度、あるいはパート労働者、派遣労働者を含めたすべての労働者に対して安心して家庭と仕事が営めるという施策についての予算を重点的に組み替えていただきたいということを二つ目に申し上げたいと思います。  それから三つ目は、公共事業の問題でありまして、これについてはすべての公共事業が悪いというふうには申し上げませんけれども、何回もいろいろなところで、もう既にマスコミ等でも明らかにされておりますように、いい公共事業と悪い公共事業、これを完全に峻別をした中での予算の配分の見直し、これは徹底的に行っていただかねばいけないのではないかというふうに思っております。  それから、機密費の問題につきましては、予算項目からは減額修正をされて当然だというふうに申し上げておきたいと思います。  それから、財政構造改革の問題でありますけれども、先ほどから申し上げているように、六百六十六兆円に達する見込みとなっている部分について、現在の予算の歳出構造を生活重視型に改めて、その上で財政の質を改革するということをまず第一段階としては明確にしていただきたいと、このことをきょうは申し上げておきたいと思います。  以上、五つの観点からの予算修正項目ということで、時間の関係もありますので、あとは御質問等があればお答えをする中で補足をさせていただきたいと思いますが、いずれにしても、繰り返しますけれども、雇用の改善が最大の景気・経済対策であるということをぜひ御理解いただいた予算の中身にしていただきたいことを申し上げて、陳述を終わらせていただきます。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 笹森先生、どうもありがとうございました。  以上で公述人両先生の御意見の陳述、これは終わりました。  それでは、これから公述人両先生に対する質疑に入ります。  質疑のある向きは順次御発言を願います。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 自由民主党の木村仁でございます。  菊池公述人、笹森公述人におかれましては、極めて示唆に富む公述をいただきまして、まことにありがとうございます。  時間に限りがございますので、要点について若干お尋ねをいたしたいと思います。  まず、菊池公述人に幾つかの御質問をいたしたいと思います。  六百六十六兆円、十三年度の終わりに借入金残高が残るということが国民にとって非常に大きなインパクトを与える。地元に帰りましても、だれからも六百六十六兆円どうしてくれるんだということが言われます。そういう面からすれば、本日、先生が六百六十六兆円恐るるに足らず、それは形式的な債務を言うからそうなのであって、純債務で見れば英米あるいはヨーロッパ諸国と比べて何ら悪いところはない、そういう分析をしていただきますことは、非常に勇気づけられる思いでございます。  そういう議論をいたしますときに恐らく出てまいります一般の人々の議論は、政府に三百九十兆円の金融資産があるといっても、その大きな部分が社会保障基金であろうと。そうすると、これはどうせそれをつぶして借金を返すわけにはいかないんだから、理屈ではそういうことは言えても、実際にはやっぱり厳しいんじゃないだろうか。  そして、政府自身が、日本国としては外国からお金は借りていない、六百六十六兆円を後で返すときには、こっちから税金を取ってこっちの日本人に返すんだから、後代にツケを残したという心配もする必要はないんではないかという議論もありますが、とはいえ六百六十六兆円という借金を現に政府が負っており、その重要な部分は返していかなければいけないとすれば、やっぱりもう既に政府には新しい財政投資をする余力は残っていないのではないか、そういう議論があり得ると思いますが、この点について、先生はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) それでは、ただいまの木村先生の御質問に対して答えさせていただきます。(図表掲示)  現在、債務というものが六百六十六兆円になるんじゃないかということで、この債務は確かにひとり歩きしていることはあります。しかし、先ほど申し上げましたとおり、その内訳といたしましては十分こういう金融資産があるわけでございます。今、先生御指摘のとおり、その六割に占めるものは社会保障基金じゃないか、これで借金を返せないんじゃないかということは、おっしゃるとおりです。確かに借金の原資にはこれはならないわけです。  しかし問題は、じゃ、六百六十六兆円借金があるじゃないかといっても、片や金融資産としてあることは事実ですね。マクロ的に回っておることは先ほどちょっと御説明申したとおりでございます。ですから、これをそういうマクロ的な視点から無視すると、今まで全然これは別物だよというふうな考え方が一部に強かったように聞いておりますけれども、その考え方は私はいかがなものかと思います。これはマクロ的に見た場合には、私に言わせていただければ、むしろ財政学とか金融の資金の流れからいきますと、ちょっと間違いじゃないのかなと、こういうふうに考えます。ですから、確かにその中身がこういうふうな形で、社会保障基金というものが国民のいずれ負担になって、同時に国民に戻るものだから、借金の原資にならないことは事実でございます。  しかし、日本の財政構造というものがこういう形になっている。先ほど申し上げましたとおり、純債務と総債務で見ますと、その八〇%ポイントぐらいあるわけでございますね。ということは、五百兆として四百兆ですね、ざっとそういう資産があるわけです。これはほかの国にない特徴でございます。ほかの国はこれが一五%しかございません。ですから、その差額である六五%というのは、実は日本はこういう金融資産を持っておる。これは債権国であるということも言えるんですけれども。ですから、これははっきりと国民に示して、それで現在の純債務はそんなに多くないんだということをはっきり国民に示して、むしろ過度の不安感に陥れることを回避すべきじゃないか。私は本当にそう思います。  これは、マスコミの方なんかに強く言いたいんですが、出てくる数字は六百六十六兆ばっかりです。私に言わせますと、これははっきり言いまして間違いです。このことをはっきりこの場で、マスコミの方々にも、そちらにいらっしゃるかもしれません、これははっきり申し上げておきます。はっきり申し上げておきます。論調をはっきり訂正してください。理論的には、私は書きましたこのとおりでございますし、資料にも配ってございますから。  ですから、そういう面でもう一度見直す必要がある。ただし、社会保障基金の中身は、先ほど御案内のとおり、これからいろいろ考えていかなきゃいけないということでございます。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 よくわかりました。  そういうことで、また、実は麻生経済担当大臣も、日本の表面的な借金は多いけれども、日本には国有財産がたっぷりあるんだから大丈夫だということを記者会見で、議論の中で言っておられます。国有財産というのはこの国会議事堂も国有財産でありますが、まさかこれをたたき売って金を返すわけにはいきませんから、金融資産という言葉が正確なんだろうと思いますけれども、割合に閣僚の皆様も、今、菊池先生が御指摘になったこの視点を答弁等の中でおっしゃらないんですね。ですから、きょうの記録は非常に貴重なものではないかと私は考えております。  そこで、平成十三年度予算について一つだけお伺いしておきたいと思いますが、平成十三年度予算において政府は、一方では民需不足の部分を積極的な財政出動で補うんだ、そういう中で民需主導の景気回復へことしは移っていけると、事情が今大変変わってまいりましたけれども、同時に、この財政構造をよくするために効率的な予算編成に努めたというようなことを言っております。そうすると、政府は、いわゆる小渕総理が言っておられました二兎を追ってはいけない、一兎を追うべきだということから、少し財政構造改革の指針をにじませながら二兎を追うような姿になったのかなという気もいたしますが、ただ、よくよく考えてみますと、それは財政の構造を改善しようということであって、財政再建を今しなければいけないということではないのではないかなという感じを私は持ったのでございますが、先生の御認識はいかがでございましょうか。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) それでは、今の木村先生の御質問に対して答えさせていただきます。  確かに、本年度予算でやはり財政の構造改革ということを一つの題目にされておられまして、総債務が多いじゃないか、これも段階的に落とす方向も視野に入れながらやっていかなきゃいけないというニュアンスが出ていることは事実だと思います。このニュアンスがやはり政府の方から出されましたのは、恐らく昨年の夏ぐらいからではないか。端的に言いますと、そういう財政を、それが本年度の、本年度は緊縮財政、つまり六年ぶりの緊縮財政であることは事実でございます、その伏線を去年の六月ぐらいから始められたんじゃないかと思います。それから、一部のマスコミとか学者先生方からもそういう意見が出ておりました。  しかしながら、私は、現在、まだ財政の再建といいますか、それをする時期ではないと思います。今、確かに先生がおっしゃられましたとおり、この財政構造改革というものは二つにはっきり分けて考えるべきだ。一つは財政の構造改革、それからもう一つは財政の再建でございますね、債務問題とか財政赤字の問題。  前者の財政構造改革というものにつきましては、支出をできるだけ効率的にやる、あるいはある程度不用なものは削減する、これはもう既にやっておられると思いますし、これは一段と強めていく必要がある。それからもう一つは、徴収でございますね。取れるところから取るといいますか、ある意味では税収の改善ということも視野に入れながら、増税ではないにしても、そういうことも必要だと思います。これは徐々にやっていく、これはもう不断の努力で、毎年やっていくべきことだと思います。  それから、二番目の財政再建につきましては、私は、現在取りかかるべきは、時期尚早だと思います。それは、先ほど申し上げましたような純債務で見た場合には、まだまだ十分余裕があるということです。それからもう一つは、過去の財政再建をしてきた国の実例をとりましても、不況期にこれをやろうと思って成功した例はどこにもございません。アメリカが一番いい例ですね。何とか好況にしよう、好況にしよう、借金をしてもやろうと思いながら、ついに好況期で、好況になって九八年から黒字になってきた。それから、そのほかの国でも、カナダでもニュージーランドでも、実は共通点はそこでございます。  したがって、日本もまず景気回復に最優先の力を入れて、そして回復してきて、私の考え方としましては、やはり三%成長というのを念頭に置いて、これはできると思います。かつて、九六年度には三%行ったわけですから、これはできると思います。これをやりまして、そして三%成長が二、三年続いてから、そこでやはり徐々に債務を落としていく。  それから、経済成長率というものと債務のコスト、これはドーマーの定理とこのメモにも書きまして、国債等のコストよりも経済成長率が高いと債務残高は自然に落ちていく、こういう経験則がございまして、これはドーマーの定理なんて難しいような言い方をしていますが、決して難しいことじゃございません。したがって、景気がよくなって税収が上がってくれば当然、自然と債務は落ちてきます。それから、先ほど笹森先生もおっしゃったような、雇用も当然回復してくると思います。ですから、そこに現在は注力すべきだと私は考えます。  それから、日本の財政構造からいいまして、先ほど申し上げましたとおり、四百兆ぐらいは常に借りっ放してもいいと思います。これはよい財政赤字であって、子孫にその赤字を繰り延べてもいい。日本の場合には、社会資本がまだ充実しておりませんから、まだまだやることがたくさんあるわけですね。それから、職業訓練所なんかもそうです。そちらに支出してもいい。ですから、将来にわたって圧縮すべき、しなければならない金額はせいぜい二百五、六十兆だと、そういうふうに私は考えております。  以上でございます。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 そこで、先生の御公述の中で、一昨年の補正予算と十二年度予算、昨年の補正予算と十三年度予算案、これを比べると真水にして七兆円ばかりの歳出不足だ、したがってこれは補正予算を組むべきではないかということがあったと思います。  実は財務大臣は、昨年は大蔵大臣でございますが、昨年の春ごろ、もう財政出動はこれで終わりだ、民需主導の景気回復が始まるからことしは補正予算は要りませんと宣言されたと思うんです。これは、経済でありますから、どんどん動いていきますから、結局秋に組んだ。ことしも財務大臣は補正予算を組むとはもちろん言っておられません。しかし、今先生の御指摘のように、まだ投資余力、政府にあるぞということであれば、この七兆円の真水分になるのか、それよりも多いのか少ないのか知りませんが、やがて補正予算を組むようになるのかなと。  というのは、とはいいながら、金融政策等は、もう何分にも〇・二五%の公定歩合の中で利子が高いの安いの言ったって余り景気にきいてこないんではないかという心配がありますので、財政出動をもう一遍思い切ってやるのかやらないのか、そこあたりについてひとつ先生のお考えをお示ししていただきたいと思います。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 木村先生の御質問に対しまして私の考え方を申させていただきます。    〔委員長退席、理事吉村剛太郎君着席〕  確かに、昨年度の予算を組みまして、四月以降順調に来れば景気が回復し成長軌道に乗るのかなということはあったと思います。ということは、昨年度の予算は積極型でございましたし、支出も増加しておりました。それから、その一昨年の真水の九兆円というのがございましたから、これがかなりきいてマイナス成長からプラス成長になってきたと思います。  しかしながら、残念なことに、やっぱり、四月十二日に日銀総裁がゼロ金利解除というようなことを示唆された、あの日からまさに株価が下がり始めました。ということは、市場ではまだ経済体質がそんなに、成長路線に乗るぐらい体力がついていない、まだよたよた歩きだと。微熱か何かでよたよた歩いているのに、そういう着ていたオーバーか何か脱がされちゃうんじゃこれはたまらないということで株がどんどん下がり始めた。  それから、実際には金融政策が、その後金利は実際に上がりました。しかし、物価が下がってまいりましたから実質的な金利は二%以上、もう三%近く上がっているということも言えるかと思います。ですから、そういうような状況になりますと、やっぱり財政支出というのは当然必要だと。  ですから、はっきり申して、金融政策をもっと成長型といいますか緩和型に持っていくべきで、ゼロ金利に早く戻すこと、それから量的にももっとふやすこと、年率一〇%のマネーサプライができるようにしていかなきゃいけませんと私は考えます。  そのためには、今銀行貸し出しというのは減っていますから、実際には日銀が供給いたしますベースマネーというのは一二、三%出さなきゃいけないんですね。これは過去の、一九三〇年代の後半のアメリカだとか日本の昭和恐慌後の、一九三二年以降の高橋是清さんの財政政策、積極財政というのはそういうふうにやってきたわけです。ですから、こういう過去の経験も踏まえて、まず金融をもっともっと緩和しなきゃいけない。  それで、しかしながら、現在いろんな角度から、やはりアメリカの影響等もありまして景気も悪うございますので、私の意見としては、やはり本年度、早い時期に真水で十兆円ぐらいの補正を組んでいただかざるを得ないんじゃないかな。といいますのは、先へ延びれば景気が悪くなりますから、せっかくここまで上がってきている、これが失速しない前にぜひともそういうエネルギーを供給していただければいいんじゃないかなと私は思います。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 私どもは現在、現在の予算案の通過に全力を挙げておりますので、補正予算のことを発言するのは不謹慎かと思いましたけれども、お尋ねをいたしました。  実は時間がございませんので、もう一つ、政府・与党三党が出しました緊急経済対策の中で、日本銀行に対する要望として、一層政府の経済政策との整合性を確保してほしいという前提で、金融緩和をさらに進めるとともに、日銀は物価安定の目標を明らかにすべきであると、こういう表現がございます。この部分について、必ずしもまだ三党が明確に説明をしていないように思いますが、これはインフレターゲティングを求めているのでございましょうか。先生の御解釈をお聞きしたいと思います。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) まず、政府との整合性をとっていただきたいということを出されました。これはまさにそのとおりだと思います。  海外から見ましても、昨年のようなゼロ金利解除のときに、政府は反対しているけれども中央銀行だけが強行をした、その結果ははっきりしてきたというようなことになりますと、いかにも両方の政策、つまり財政、金融の一元的な政策がとられていないんじゃないかという疑念を持ちます。これは国家の政策に対する不信感にもなりますので、その点は一段と関係先生方あるいは日銀さんにも御協力をいただきたいと思います。  それから、まさにインフレターゲティングと言いますが、これはインフレターゲット、インフレという言葉を使うからいけないのであって、まず我々は過去の常識から見まして、経済成長をするときには必ず物価は二、三%上がっています。過去の高度成長がそうですね。五%成長、六%成長、物価は一、二%上がっていました。それから、アメリカのつい最近までの状況を見ましても、実質成長率が例えば五パー行った、七パー行ったといっても、実際には物価は二%とか二・五%上がっております。  それから、私が聞いておりますところでは、アメリカのグリーンスパン連邦準備銀行総裁といいますか理事長は、大体市場の物価が一%を、上昇率が一%を割ってくるとむしろ金を緩めるんですね、それで物価を上げていくと。それによって三パー以上になるとこれはまず抑える。このぐらい操作をしていまして、結局、物価というのはやはり正常な経済成長の中で一、二%、まあ二%前後というのは正常な物価の上昇で、これがないと結局は投資を呼ばないと思います。  そういう意味でのターゲットをつくっていただいて、これははっきりつくった方がいいと思います。つくって、先ほど申したようなマネーサプライをしっかりやる。それから同時に、日本銀行では通貨の徴収手段をもっと多様化していただきたいなと思います。  以上でございます。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 笹森公述人には時間がございませんで大変失礼をいたしましたが、一つだけお尋ねしておきたいと思います。  よく景気回復、企業先行、家計遅行と申しますか、企業の収益が上がっているのにそれがいわゆる勤労者に対しての給与アップという形ではね返ってこない、それだから家計の支出がおくれているのではないかということを常々私ども考えております。ことしの春闘でIMF—JCが最初に、新聞の見出しは昨年よりも上回ったということでございましたが、ここしばらく見るとまた、しかしもう消費拡大には影響しないと。  政府の政策の問題を労働組合に押しつけるのは大変いけないのでございますけれども、長年の低成長の過程で、労働組合は時短とか周辺の政策理論は大変よくやっておられると思いますけれども、肝心かなめの賃金獲得能力が衰えてきたのではないかなと、ここをひとつがんと頑張っていただいて、企業が少しその配分を変えるようなことを考えていくのがいいのではないかなという気がするのでございますが、組合の立場からいかがでございましょうか。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 労働組合の運動能力あるいは交渉能力に対する御激励、心から感謝を申し上げたいと思いますが、ここ数年、経済界と労働界の、特に総人件費の問題については、今、先生御指摘のとおり対立をしておりますね。  私どもが今経営側に求めておりますのは、やっぱり経済と雇用、そして景気の関係についてデフレスパイラルを極力解除させなきゃいけないんじゃないか。そのために何が必要なんだということになると、もう働く人たちが安心して財布のひもを緩めてもいいよという気持ちにさせるかさせないか。その中では、極めて賃金抑制をしてきた経営側のその姿勢に対して、打ち破れなかった労働側の力不足もあることは事実なんだけれども、そのことによって日本経済と企業業績が本当にどうなったのかというのを経営側が検証してみた場合、我々の検証では景気や雇用に極めて悪い影響を与えたという検証になっているんです。ところが、経営側はそういう反省をしておらない。これをどう打ち破るかということなんです。  その中では、私どもは三つありまして、一つは賃金の格差が、今新聞に出ているような第一段階で春闘相場に影響のあるところについては、平均ベースは極めて高い位置取りにあります。ところが、これから後続部隊で続いていく地場産業を含めると、賃金格差が二十万円以上開いているんです。だから、経営側が言っているように、一律すべて外国に比べて日本の賃金は高いという部分については間違いだということをまず否定をしたい。その低いところについてどう上げるかというのはこれからは労働運動の力だろうと、そういうふうに思った。  それから二つ目。従業員重視から株主重視にシフトがえをして、経営側は本当に日本経済が立ち直ると思っているのか、これは全く違うんですね。日本が一番資産のない、何にも資産のない、資本もない国で、最大の資産は何だったのか、資源は何だったのか。これは戦前も戦後もそうですが、極めて勤勉な国民性だった。これを大事にするかしないかということを労働側は猛烈に打ち出したい。  そういう意味では、今までちょっと押し込まれている部分については大反転をする年にしたいなと、こう思っております。

木村仁自由民主党・保守党

○木村仁君 終わります。  ありがとうございました。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 民主党・新緑風会の高嶋良充でございます。  両公述人には、先ほど大変貴重な御提言と御意見を拝聴いたしました。この参議院の予算の公聴会というのは衆議院と若干異なっておりまして、衆議院の公聴会というのはもう予算を上げるための出口のように考えられておりますけれども、参議院の場合は公述人の皆さん方の意見を参考にさせていただいて、さらに十分な審議をしてよりよい予算をつくり上げるというのが趣旨でございますから、ぜひお二人の御提言等を参考にさせていただいて、これからも十分な審議に反映をさせていきたいというふうに思っております。  そこで、まず株価の問題について、先ほどは菊池公述人の方から、まさに証券恐慌、その改善策というか対策は保有株の買い上げ機構を設立すべきだということでお話を伺いましたので、お二人にお聞きをしようと思ったんですが、菊池公述人については既にもう意見表明をされておりますので、笹森公述人にお伺いいたしますけれども、いずれにしても株価の下落が一向にとまらないという状況のもとで、最近の株価動向についてどのように考えておられるのか。さらに、その原因と見通し、そして株価対策等についてもおわかりをいただければお伺いをしたいというように思いますので、ひとつよろしくお願いします。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) ただいまの先生の御質問にお答えしたいと思いますが、御承知のように、私は経済の専門家でもありませんし、どちらかといえば現場の皮膚感覚、現場の実感、体験の方でこういう問題について発言をしたり政策をまとめておりますので、的確なお答えになるかどうかはちょっとありますが、今の質問について所見を申し上げたいと思います。  まず一つは、急速な株価の落ち込み、極めて憂慮せざるを得ないという状態、これはみんな同じだと思うんですが、株価欄の各銘柄を全部見てみますと、これだけ急落しているにもかかわらず、安定的な部分についてはほとんど値が動いていないんです。一体どこでこんなに急降下しているのか、全体的には一万二千円を切ってしまうような数字になったのかということなんですね。部分的なところなんです。特に、IT関連だとか、それからベンチャービジネスとして出てきた部分の中で一部上場、二部上場になったところが乱高下している部分、ここが非常に大きい。    〔理事吉村剛太郎君退席、理事須藤良太郎君着席〕  例えば、基幹産業の電力の銘柄だとか鉄鋼の銘柄だとか、ここについてはほとんど上下幅がないという奇妙な株価の操作がある。ここのところについては、そうはいっても日経平均が、バブル崩壊後、いろんな言い方からすれば今の一万一千円台はプラス三千円から三千八百円ぐらいまであって、銘柄変更しなけりゃもうちょっと実力は上じゃないかとか言われているけれども、現実的な問題として下がったことは間違いないし、下落を続けていることについては間違いない。  じゃ、この要因は一体何かというと、私は三つあるんじゃないかというふうに思っておりまして、一つはアメリカの経済。アメリカのバブルの破裂というのか破綻というのか、そういう中で株価下落をしていると。このアメリカの影響をまともに受けているということがまず一番目ではないか。  それから二つ目が、ここが一番変えていただかなきゃならないことなんでしょうが、日本政府の経済運営が不適切だと。言ってみれば、策がないということに対する株評価、市場の評価ですね、これが一番大きいというふうに二つ目には思っています。  それから三つ目が、先ほどいろいろ陳述させていただいた中でも触れましたけれども、日本経済、それから、これからのいろんな生活に対する先行きの問題として極めて不安であり、その運営に対する不透明感が強まっているということに対して市場の反応がどうしても好転をしていかないという、この三つの絡まり合いではないかというふうに思っておりまして、したがって、そういうことから申し上げると、今の株価を立て直すためには小手先の株価対策ではどうにもなりませんよということでありまして、基本対策を本気で打ち出せるかどうかということにつながると思うんです。  今の政府三党がおやりになっている今度の政府予算も含めて私は修正を求めましたし、衆議院段階では鷲尾会長が意見陳述でお話しいただいたときに組み替えも求めたという経過から申し上げると、今の政府案を出している体制ではもうだめだから、国民が一番株価に反応するという、好転させるためにはもう政府そのものをどう取りかえるかということにつなげていった方が一番手っ取り早いかなと、そんなような気もしております。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 ありがとうございました。  先ほども木村委員の方からも質問がございましたけれども、与党の緊急経済対策で日銀にさらなる金融緩和を求めると、こういうことで先ほど菊池公述人の方からは若干御回答がございました。  私は、日銀が今とっている低金利政策ですね、二月の九日には公定歩合を〇・五%から〇・三五%に引き下げましたし、さらにこの一日には〇・一%引き下げて現在〇・二五%と、こういうことになっているわけですけれども、この低金利政策について両公述人にそれぞれ御意見をいただきたいと思います。  菊池公述人からどうぞ。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 確かに、ここのところ、日銀さんもかなり意識をされまして、公定歩合を下げたり、それから市場金利を下げたりしておられると思います。ただ、この種のものは余り小出しにちょこちょこやるよりは、やはりゼロ金利に早く戻すと。  それから、先ほど申し上げましたとおり、通貨供給量をもう少しマクロ的に把握していただくことと、それから、やや口幅ったいですけれども、過去の歴史的な経験というものをもっと徴していただいて、そういったものを考えた上で金融政策をとっていただけないものかと、こういうふうに思います。これは、アメリカの学者とか何かが来ますと、なぜ緩めないんだとかなんとかよく言いますけれども、これはまさに一九三〇年代のアメリカの大恐慌のときにとった政策というようなものが頭にあって、アメリカの金融政策なんかですと、一度失敗したことは二度と失敗しないようにしようという考えが強いと思いますね。  ですから、やはりそういうものをもっと参考にして早くゼロ金利にしていただくことと、それからもう一つはやはり通貨供給量を多様化していただく、それからふやしていただくと。それと、先ほど申し上げたとおり、いろいろなデフレ解消の総合策というものをあわせてやっていく必要はあると思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 高嶋先生御指摘のように、金利の問題、極めて重要視をしておりまして、二月、三月、たった一カ月の間で日銀が引き下げを二回やりましたね。私は、二回目のときに、日銀のメッセージが明確に伝わらないということを連合事務局長の立場でコメントを出させてもらいました。これはどういうことかというと、今、菊池先生もちょっと触れられておりましたが、あの二回目のときにはゼロ金利にするならすると明確なメッセージを発表するべきだったんじゃないか。言ってみれば、もう毎回のことなんだけれども、常にツーリトルでありツーレートであるというところが最大の問題だろうというふうに思っております。  ただし、連合の働く側の立場からすると二面あるんですね。一つは、この低金利がもう五年半続いているんですよ、ほとんどゼロに近いという状況で。これは家計部門に極めて大きな影響を与えるということになりますし、特に高齢者の年金生活者の方々に直撃をしている部分なんというのは、これはもう非常に悲惨な状況になりかかっている。だから、本来的には適正金利に戻してほしいというのが我々の基本的な考え方なんです。  ただし、今の状況の中でこれをやると、あれだけ公的資金を注入し、貸し渋りを直そうとしているにもかかわらず、貸し渋りがとまらずに、逆にはがしまで始まっているような中小企業に対しての金利が影響するということになりますので、このどちらにウエートを置くかということになると極めて痛いなという部分があるんですが、できれば公的資金をこの中小企業に対する貸出金利の方に政策的に持っていけば、金利の適正な水準に戻すということはできるんじゃないか。そうなると千三百兆円を超す預貯金が動き出すと。この金利のところで一%変われば、もう十三兆円ぱっと出てくるわけで、減税するよりはるかな効果ということになるわけだから、そういう政策を低金利の場合にはやると。それから、メッセージを明確に送るということだと思います。  それから二つ目は、これは菊池先生と全く同じなんですが、デフレ的な傾向を解決するためには金利の問題だけではだめだということで、金利依存によるデフレ解決政策というのは私は難しいと思っています。したがって、ここの部分については総合的な施策、これをいかに早くまとめていただくかということに尽きるんではないかというふうに思っております。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 先ほど笹森公述人は、雇用の改善が最大の景気対策だというふうに述べられました。  そこで、現在の失業率四・九%、失業者は三百二十万人という戦後最悪の数字になっているわけですけれども、今日のこの雇用状況を働く者の立場でどう見ておられるのかということと、雇用を改善するための方策で何が一番重要なのかということについてお尋ねをしたいと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 先ほど数字で申し上げましたし、今、高嶋先生の方からも数字がありました。四・九%、約三百二十万人の失業者、これはちょっと時間で割り戻しをさせていただきますと、一年三百六十五日、二十四時間で割り戻すと、六十七秒に一人失業しているという計算なんです。約一分間に一人です。  これともう一つの数字をちょっと合わせていただきますと、その中でじゃどんな社会現象が起きているかというと、十年ぐらい前は年間自殺者が一万七千人でした。今は約倍の三万四千近くが自殺をするという数になっていて、ここがリストラをされた中堅サラリーマンと貸し渋りに遭って資金ショートした中小企業の経営者が非常にふえているという数になるんですね。この三万四千人の自殺者の数も、時間で割り戻しをさせてもらいますと、約十六分に一人自殺をしているという計算になるんですよ。  だから、六百六十六兆円大変だと、菊池先生、確かにそれほどでもないという部分と、それからもっと明るさも出さなきゃいけない、これもわかります。だから、悪い悪いばかり言っていてもしようがないんだけれども、一九九七年からの三年間で約百五十兆円ふえたんです。にもかかわらず、数字的にはそういうところに行っているというのは何なのかということになれば、これはもう雇用をいかに改善をして国民に安心感を与えさせることができるかどうかというところにもう尽きちゃうだろうと。  その中で、今までの、先ほども申し上げた予算からいいますと、旧労働省がやってきたそういう部分と、そのほかの旧通産省がやってきた政策の部分なんかを申し上げると、雇用維持と雇用保障について、給付保障についての予算は組まれている、しかし新たにつくり出す雇用創出の部分についての予算が極めて薄い。だから、ここにどういうふうに配分をし直すかというのが雇用対策の最大のポイントになるのではないかというふうに思っております。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 そういう意味では、雇用創出という観点からいくと、先ほどの笹森公述人のところで公共事業の見直しという部分が言われました。  私ども民主党のいろんな調査でも、この十年間で土木事業に毎年三十兆円から四十兆円を投資して、雇用はわずか四十六万人しか創出をされていない。しかし、社会保障の関係では投資が六分の一程度で約三十万人の雇用の創出ができるという、こういう調査結果も出ておるわけですけれども、先ほど、この連合が出されている重点政策要求の一ページ目に百四十万人の雇用創出と、こう出されました。これをずっと見せていただくと、新しい産業分野というか生活関連の分野で雇用創出を図るということが必要だという、そういうメッセージとして受け取れるんですけれども、その辺の公共事業と雇用創出の関係についてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 全体的には、今の予算を大幅にふやすことによって社会保障だとか雇用創出をつくるということはしてはいけないと思っています。だから、総予算の中では今のまま。    〔理事須藤良太郎君退席、委員長着席〕  そこで、だったら財源をどういうふうに寄せるかということになると、公共事業の部分の中で不要不急の部分についてどう削減をするか、それから残す公共事業の中でも優先順位を明確にさせてほしい、これで相当な幅寄せができます。これは数字的には、資料はもし提出する必要があれば後ほど提出をさせていただきたいと思います。  その上で、生活関連部分ということになりますと、私どもが今一番重要視をしていますのは、省庁再編が行われた中で、厚生労働省が今まで特に労働の部分の中では雇用問題をやっていたわけですね。ここが厚生労働省という一省の管轄になりますと、生まれる前から亡くなった後まで全部面倒を見るという、もう生涯を通り越した部分の政策ができるわけですよ。そこに生活関連と雇用問題がすべて予算的には含まれているということになって、その中でも特にやらなきゃならないのが、新しい、これからの少子高齢社会に到達をした場合の介護とか福祉の部分とか、あるいは保育の部分とか、そういう部分について抜本的に予算を入れてくださいと。これが、金額的には雇用創出策の抜本強化で八千億円弱投入をすれば、十分なそこの生活関連の雇用創出が生まれるという数字を私どもは算出しております。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 先ほども申し上げましたけれども、与党三党の緊急経済対策の中でも、この不良債権処理を急ぐと、こういうことで言われています。不良債権の直接償却という問題も含めて、やっぱりかなりの痛みを伴うということに当然なってくるのではないかというふうに思うんですが、とりわけ不良債権処理によって貸出先企業を当然選別する、こういうことになりますし、不採算部門についてはこれは切り捨てるという、そういうことになっていくのではないかというふうに思うんです。  そうなると、企業倒産や失業というのは当然痛みの部分としてかなり顕著になってくるのではないかというふうに思っているんですが、笹森公述人、この不良債権処理策と雇用の安定化策というか雇用のセーフティーネットをどうつくり上げるかという、そこの部分が非常に重要だと思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 時間との闘いだと思うんですけどね。  今度の与党三党案でいうと、「迅速な処理」という表現を使われていますよね。これは極めて痛みが大き過ぎます。  だから、出血大サービスをするという部分はある程度覚悟しなきゃいけないけど、出血大サービスしてもうそこでもって命絶えるというような状況はつくり出しちゃいけないということなので、少なくとも、これから倒産の増大をどうカバーするか、あるいは失業をどのくらい抑制ができるかということをきっちりとシミュレーションした上で直接償却について踏み込むかどうかということになっていくわけで、私どもとしてはある部分、政府と経営側と労働側の三者が痛みの分かち合いをしなきゃならないという部分については理解をするけれども、今の状況からいうと働く側に対する痛みの分かち合いの押しつけが極めて大きいから、そういう中では社会不安を発生させないように、失業に対する部分については再雇用をまずどう促進させるかという施策と生活の安定策に対するカバーをどういうふうにするか、このことをあわせてやってもらわないと、直接の償却だけで押しつけられるということについては、短期的な拙速は避けていただきたいというふうに思っています。

高嶋良充民主党・新緑風会

○高嶋良充君 いろいろとありがとうございました。  時間が参りましたのでこれで終わります。

浜田卓二郎公明党

○浜田卓二郎君 浜田卓二郎です。  きょうは菊池公述人、笹森公述人、大変ありがとうございます。御両者から貴重な御意見を拝聴いたしました。  与えられた時間が十分なものですから、笹森公述人には申しわけありませんけれども、きょうは菊池さんの方にちょっと集中して幾つか伺わせていただきたいと思います。  まず、財政政策の必要性というのは私も同感でありまして、昨年の補正予算を政府が組む前に、当委員会ではありませんけれども、財政・金融委員会で、九兆円の追加策が真水で行われた後の補正ですから、これを基準に考えないと落ち込むぞという話をした記憶がございまして、きょうの御意見、我が意を得たりというふうに思っております。  この部分については、今予算審議中でありますから、この当初予算が成立した後の課題になりますけれども、補正というような具体的な表現は別にいたしましても、政府の経済政策のスタンスというものを、日銀のゼロ金利政策離脱も含めてマクロ政策では抑制型になっている、これを拡大基調に転ずると、そういうマクロ政策のスタンスの変更というのを私は今大きく打ち出すべきときだろうと、そういうふうに考えているわけでありまして、大変御意見参考になりましたし、我が意を得たりというふうに思っております。  それから、これは意見だけでありますけれども、その場合に国債の発行の余地はどうかという議論にすぐなるわけでありまして、これも私は菊池公述人と同じような見解をずっと持ってまいりました。ですから、基本的には賛成なんですけれども。  ちょっと純資産の考え方でありますが、あっ、純債務ですか、日本の場合には総債務というのが急激に拡大してきておって、対GDP比で一二〇%まで来ておると。これを純債務ベースで、先生の計算によりますと一気に四〇%ぐらいまで落ちるわけですね。  そうすると、その大きな変化というのは諸外国に比して何が違うのかということで、これはきょう初めて中身を見せていただきまして、金融資産のカウントなんですね。その金融資産の中身は、これでいきますと年金の基金とそれからその他と、外貨準備等と書いてありますけれども、諸外国も年金の資産というのは、年金の基金というのは、それぞれの制度にもよりますけれども、基本的には持っているだろうと思うんですね。  そうすると、純債務と総債務で見て、これだけ日本が大きく純債務ベースで見ると落ち込むという理由というのは、先生どういうふうに見ていらっしゃいますか。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 今の先生の御質問に対してでございますけれども、まず社会保障基金、年金関係でございますが、この点につきましては、先生十分御案内のとおり、欧米諸国では大体もう一般予算の中に組み込んでいる場合が多いわけでございますね。ですから、こういう基金の考え方なんかもそこに組み込まれていると思います。  日本の場合には、一般予算ではもちろん先ほどのように一部負担がございますけれども、基金という別勘定を置いて、それは一応総債務というふうに、債務考えるときはちょっと別だよというような考えをとっているわけですね。しかし、マクロ的に見ると、それはもう当然入れて、年金基金も国債買っているわけですから、純で回っていると。  それで、それじゃどこがどういうふうに違うかといいますと、もし日本が一般会計で実際に年金も賄っていくということになりますと、まさに先ほどちょっと申し上げました表でございますね、金融資産の内訳の表がございますね。(図表掲示)この金融資産の内訳の表がございまして、ここに例えば社会保障基金がプラス十兆と、前年に比べて十兆とかずっとふえておりますね。これはつまり財政の黒字要因なんですよ。ですから、ここにございます金融資産が、ここに随分ふえていますね、二十一兆と。これは実はマクロ的に見ると、その分だけは財政の黒字要因なんですね。総合的な財政。  ですから、そういう意味では総債務はこういうふうに、さっきのようにきゅうっとこう上がっていっても、純債務はこの黒字要因のために、こう上がり方が寝ているということになります。ですから、そこが欧米と比べる場合に非常に違いじゃないかと思います。ですから、総債務だけで比較いたしますと、欧米に比べて片っ方は一二〇%も行っていると。ところが、ほかの国は何かもっと低いよといいましても、そこの中身がちょっと構造が違うことは事実です。  したがって、日本の場合にはやっぱり純債務で見ないとほかとの対等な比較ができないんだということが、こういうところの中身からも言えるんじゃないかと私は考えております。

浜田卓二郎公明党

○浜田卓二郎君 今の項目のことで、もう一つ外貨準備があるんだろうと思うんですね。日本は先ほど先生おっしゃる、四十兆円ぐらい現在あるんでしょうか。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 三千六百億。

浜田卓二郎公明党

○浜田卓二郎君 はい、ドルですね。  で、外貨準備というのは、その仕組みからいいますと、あれは短期証券、外為証券を発行して、そしていわば、外為会計だと資産と負債がバランスしているわけであって、かつこれは円の相場の上下、言い直せば貿易収支の増減によって常時減ったりふえたりしていくわけですね。日本は今経常収支は大幅黒字ですから、勢い外貨準備はそれだけ蓄積してくるわけですけれども、しかし、最近の貿易動向を見ても、少しずつ経常収支はその黒字幅は減少してきていますし、外貨準備があるから、つまりそれが資産だよという話とはちょっと違うような、制度的にというか性質的に見て、と思うんですけれども、どうでしょうか。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 確かに御案内のとおり、内訳を見まして、ここに外貨準備とかその他出資金でございますね、こう見てきますと、九六年からずっとふえて、九七、九八年、こうやって日本の金融危機のときです、これはやっぱり確かに減っているんですね。それから、その後、九九年からはずっとふえてきて、外貨準備がもう既に三千六百億ドル、四十二兆円にふえている。  それで、その外貨準備がやっぱりちょっと性格が違うんじゃないかということでございますが、これはマクロ的、総合的に見た場合には、そこの原資とか、それからそれを最終的な国の債務とか債権とかということで見れば、あくまでその外貨準備というものは確かに国の資産ですけれども、それの見合っているものが、もし国が債務の方が多い、純債務といっても債務の方が多いのであれば当然それに結びついているわけですね。ですから、マクロ的に見るときにはやっぱり入れて考えるべきだと思います、その方がいいんじゃないかと。ただし、先生がおっしゃいましたとおり、ちょっと中身が違うんじゃないかと、この点はございます。  ですから、実態的に運営していくときに、確かに今はこういうふうに黒字で外貨準備も多いけれどもいずれ減っていくかもしれないという、その弾力的な意味での、一種のバッファーでしょうか、その辺のお考えは必要だと思います。

浜田卓二郎公明党

○浜田卓二郎君 時間がありませんので、この問題はちょっと私なりの考えだけ申し上げておきたいと思うんですが、先ほど年金基金についての御質問もありましたよね。要するに、将来の支出に充てられる、いわば預り金ですから、ですからこれが資産というふうな、性格上どうだという問題と、それから今の外貨準備もそうですね。では外貨準備があるから崩して使おうという話にはならないわけで、それは短期国債が対応で発行されているわけですからちょっと性格が違うなという気はいたしております。  それよりも、むしろ日本の国債というのはあくまで民間の家計が所有している、国内で所有されている。だから、なぜ家計は豊かで国は貧しくてこうなんだと、手足を縛られるんだと。それはまさに政治の問題であって、もちろん歳出を削減するというのは先に来なきゃいけませんけれども、借金じゃなくてそれは税金でやればおのずからある程度は解決をしていくわけで、それを含めた政治のリーダーシップというのは大事だなというふうに先生の話を伺っていて感じたわけであります。  最後に、時価評価になりますからこの株の問題は大変な問題なんですね。それで、先生は銀行の保有株を四十兆円と見ておられる。これを時価評価に変えた場合に、今推測でどのくらいの評価損が出るんでしょうか。それはもう銀行経営を直撃しますから、その辺もし数字を持っていらしたら教えていただきたいと思いますけれども。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 今ちょっとはっきりした数字は持ち合わせておりませんけれども、日経平均、これも途中で銘柄変更等で変わっておりますけれども、たしか先ほど申し上げました四十兆といいますのは、簿価で見ました場合の金額でございます、銀行全体で資産として株式を持っている、その簿価の合計が四十兆というふうに私は了解しております。  それで、ではこれがどのぐらい下がっているかということでございますけれども、TOPIX等で見ましてもかなり下がってきておりまして、九八年の十月ぐらいの水準に来ているだろうとTOPIXも言われておりますね。そういたしますと、どうでしょうか、二割ぐらいは全体で落ちているんじゃないかと。銀行によってはもっと落ちているところもあるし、あるいは若干ぎりぎりぐらいのところもあるんじゃないかと。これは私の推測でございますが、そういうふうに私は了解しております。だからこそ、先ほど申し上げたように、もう金融、かなり危機的だと。  それから同時に、生命保険なんかもうかなりそういう問題が出ておりまして、中小生命さんなんか相当御苦労ではないかという声も聞こえてきますので、やっぱりぜひ証券の問題を御検討いただきたい。  それで、最後にちょっと一言恐縮なんですが、この証券のことにつきましてグラフを書いてきましたので、これをちょっとごらんください。これは実は先生方の資料に入っております。(図表掲示)  これが実は九〇年代の株価と経済政策のことが書いてあるんですね。九二年からずっと書いてあります。現在はここら辺のところですね、二〇〇一年に入りまして。そうしますと、現在の株価水準は、実は九八年のちょうど九月、十月、つまり先生方の御努力で六十兆円のセーフティーネットをつくっていただきまして、そのときの水準まで来ているんですね。ということは、株価は何を要求しているかというと、そういうものが必要なんだよと。  そこで、私は証券について、先ほど申し上げたとおり、政府主導でといいますか、政治主導でぜひ先生方の御発案をいただきたい。ですから、ここで六十兆円のセーフティーネットをつくっていただきましてから一挙に、実を言いますと日経平均で八千円上がっているんですね。それから、またここへ来てまさにここらでうろうろしているということは、何かこういうものを、もうこうじゃないと、もうこれ以上はいけませんよということをまさに示唆していると私は了解しております。どうぞよろしくお願いいたします。

浜田卓二郎公明党

○浜田卓二郎君 どうもありがとうございました。

西山登紀子日本共産党

○西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  公述人の皆さんには本当にありがとうございます。まず笹森公述人の方に先に御質問をさせていただきまして、後ほど菊池公述人にも御質問をさせていただきたいと思います。  まず笹森公述人にお伺いしたいんですけれども、先ほど今年度の予算案についていろんな御提案がございました。私たちも四野党共同の組み替え要求というものを、日本共産党も参加をいたしまして、二〇〇一年度の予算に対して提出をさせていただいているところでございます。七〇年代に行って以来、久々の四野党共同組み替え要求ができまして、私たちも大変喜んでいるところでございます。  先ほど景気対策の、最大の景気対策は雇用だというふうにおっしゃいました。まさに私もそのとおりだと思います。そして、その対策をとる場合に、まず今大企業のリストラというのがすさまじいばかりに進んでいるわけでございます。  私、経済・産業委員をしておりまして、平成十一年の八月にいわゆる産業再生特別措置法案に反対討論を行いました。そのときも連合の皆さんがたくさん傍聴に来てくださっておりまして、大変励まされたことを今思い出しているわけでございます。その産業再生法が成立いたしまして一年半たった。じゃ、現状はどうなっているかといいますと、私たちの調査で判明いたしましたところ、一年半の間に二万四千人がリストラされておりまして、それが政府によって応援をされている。当時、与謝野大臣は、合成の誤謬が起こるんだということを答弁でもされたわけでございます。まさにそれが起こっておりまして、各企業がリストラをやって、それが全体として今大きな首切りの大合唱ということで労働者を苦しめていると思います。  一方で、大企業は内部留保を非常にためておりまして、春闘で大変不満足な回答がされているわけですが、一方で内部留保もたくさんためているということでございます。労働者は、首は切られるわ、賃上げは本当にスズメの涙程度という、そして一方の雇用対策も非常に不十分だと。これではやはり景気の対策にもならないと思うわけでございます。懐が暖まらないわけでございますから、当然経済が失速状態ということになります。  そこでお伺いいたしますけれども、笹森公述人の方で、いわゆるリストラを規制していく、首切りを規制していくということについてどのようなお取り組みをなさっているか、お考えがあるか、お伺いをさせていただきたいと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) まず、前提条件として、おっしゃられた三つのことについて考え方を申し上げておきたいと思うんですが、一つは、今回の私の方から冒頭申し上げました政府予算に対する修正の考え方です。初めての試みというふうに今、西山先生の方からおっしゃられましたが、事実、四党による共同修正、組み替え要求、これについては連合の立場からも、四党の組み替え要求案に対して、私どもも組み込んでほしいという要請をさせていただきました。  基本的には二つありまして、大きく言って二つありまして、一つは、冒頭申し上げたように、国民の生活と雇用不安を打開するという対策を最優先にしたものにしてほしい。このことをまず基本にしながら雇用創出、能力開発の対策、社会保障制度の安定化に抜本強化をすべき内容に組み替えろと。それから、その財源については、不要不急の公共事業の削減、歳出の見直しで調達をしてほしい。それから、建設国債と赤字国債の区別は廃止をして対応すべきではないか。加えて、予算総額については、八十二兆円という限度をそのままにしながら、組み替えることによって雇用創出、経済活況政策につながるよと、こういうお願いを個別にはさせてもらっています。だから、基本的には同じだと思っているんですが。  二つ目に言われた産業再生特別措置法案の部分について、これはいろんな商法改正とかの部分も含めて、連合は極めて問題視をしております。これはどちらかといえばサプライサイド側からの理念に基づいた法案の中身になっておりまして、デマンドサイド側からの観点がほとんど含まれていない。したがって、労働者切り捨て法案になりかねない、別名リストラ行け行け法案だと、こんなような名前もつきかねないほどの内容になっているということを指摘してきたんですが、ここの部分については労働者保護法というのをどう設定するかということとセットでぜひやってもらいたいと思っています。  そういう中で、労働組合の雇用維持の政策なんですが、私どもは、今の大手の中で行われている数字の問題については、きょう言われてあしたいきなり生首が飛ぶというような状況にはなっておらないんですね。したがって、ソフトランディング路線だから、これについては交渉の範囲の中でぎりぎりカバーができるだろうというふうに思っています。  ただし、配転の問題について条件をどうするかということについては極めてシビアな交渉をしなければいけないので、何でもかんでも反対で、外に対して旗を立ててというような運動でこの問題を対応するんじゃなくて、中身的な充実策をどうするかということを重点にやってほしいと。ただし、労働組合の最大の使命は、働いているメンバーに対する雇用維持と保障が最大の使命でありますので、その部分について今までの労働運動がもし忘れてしまったことがあるとすれば取り返しのつかないことになるから、そういった対応について、もう一度原点に戻った労働運動を展開してほしいと、これが連合の基本的な通達の指示になっております。

西山登紀子日本共産党

○西山登紀子君 ありがとうございます。  続いて、笹森公述人に少子化問題についてお伺いをしたいと思います。  こういうパンフレットを見せていただきました。「仕事と家庭の両立支援法の制定」ということで、大変熱心に取り組んでいらっしゃるということで、私も大変力づけられたと思います。今、私は国民生活・経済調査会の委員もしているんですけれども、そのテーマは少子化でございます。  大体、ずっと議論をしてまいりまして、共通のコンセンサスになってまいりましたのは、やはり男女ともに子育ても仕事も両立できる社会をつくらなきゃいけないねというところまでは全会派で一致をしております。それでは具体的に何が必要かということなんですが、私は、やっぱり日本の今の労働者の働き方、働かせ方、この点を抜本的に変える必要があると思っています。  国際的に見ましても異常な点、二つある。一つは、女性にとってはM字カーブというこの働き方、これが一つです。それから、男性労働者はどうかといいますと、一日育児に携わる時間は十七分、それから家事に携わる時間はわずか二十三分。こういうふうな女性労働者にとっても男性労働者にとっても国際的に見ましても非常に異常な働かされ方があるということですので、この点を是正していくことがどうしても必要だと。そして、お互いに男性も女性も仕事も家庭も大事にできる、こういうふうな労働のあり方というものを私たちは目指していかなきゃいけないなと思っております。  それにはやっぱり一つのルールが必要で、企業にお願いする、あるいは企業に努力をと言うだけではなかなかいかないんじゃないかというふうに思います。その点での連合さんのお取り組みの方向、努力をしていらっしゃるところなど御披露いただけたら大変うれしいと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 一番、今二十一世紀の社会の中で私どもが重要視しているのは、先生御指摘の少子高齢社会にどう対応するか、その中で女性の労働力の活用と高齢者の労働力をどう活用するか、この部分に行くんですが、特にこれから少子高齢化が進んでいきますと、女性のウエートが物すごく膨らみます。現状でも六十五歳以上の男女比で見ますと、男性一に対して女性は一・四五というふうに圧倒的な数になってきていますから、この女性労働力をどう活用するかと。  この中では、指摘のように仕事も家庭も男と女が両方で一緒に持てるという部分のベーシックな部分を整備させなきゃいけないですね。これは法律の問題が一つなんですが、社会環境の方で、今御指摘があったように、労働運動、労働組合の立場から貢献できるというものがないかと。私どもは、本来労働団体というのは経営や政府、行政に対して要求を出す団体、そのことに対して答えをもらうという運動が主だった。しかし、みずからが救い上げるという、自救する団体の性格を持ちたい。その中では、これからは一つは失業の問題について連合は、これはみずからワークネットというハローワークの連合版をつくりました。ここから先は保育の問題、介護の問題、これに対しても人的供与も含めて地域との共生ができるという部分の運動展開を広げていきたいというふうに思っております。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 西山先生、時計が。

西山登紀子日本共産党

○西山登紀子君 もう時間ですね。  済みません、時間が参りましたので失礼いたします。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 社民党の清水澄子です。  まず、笹森公述人にお伺いしたいと思います。  今、前の方も聞きましたけれども、雇用の改善が最大の景気対策であると。その雇用改善との関係において、一つは、やはり非常に最近不安定雇用が大変多くなってきています。特に、女性は二千万人働いているんですけれども、その半数以上が正社員から臨時、パート、派遣労働、委託、それから有期雇用、こういうふうに非常に不安定な雇用の方が拡大している。ですから、そういうふうな多様な働き方がふえる中での勤労者の経済的な自立といいますか、不安というものが非常にふえております。  そのことについてはどのような政策をお持ちかということと、もう一点は、やはりワークシェアリングですね。  そういう意味で仕事と家庭の両立を挙げておられるわけですけれども、やはりそれらが、労働時間をもっと短くして、そしてやっぱりある程度の賃金は保障がないと、それはなかなか両立というのは難しいと思うんですが、さらにそこに保育とか育児ですね、育児とか介護のシステムを入れていくと。  それはやはり非常に政策的に政治が相当これを支援しないとできないと思うんですけれども、連合がお考えになっておられるそういう仕事と家庭の両立支援政策というのはどのような政策を描いておられるか、二十一世紀のこれからの男女の働き方、暮らし方という点においてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 中身的には三つあったと思いますが、まず最初の雇用の問題の不安定雇用の考え方ですね。  これは御指摘のように、今、雇用労働者が五千三百万人、そのうちパート、アルバイトの方が千三百万人になります。それから派遣労働者が約百万人と言われています。統計上よく出てこないんですが、フリーターという働き方をしている人が百万から三百万ぐらいという変動がありますので、言ってみれば、これを百万と押さえて、五千三百万雇用労働者の中の千五百万人が不安定雇用につながるパートあるいはショートのタイマーで、非正規型の社員という働き方をさせられている人たちですね、そのうちの八割を超えているんじゃないかと思いますが、女性なんですよ。  ここの部分については、私どもは、少なくともこれからの労働を考えた場合に、時間当たり賃金は均等待遇をまず保障するということが必要と。その上で、就労の日数、時間にかかわりなく社会保障制度が適用できるかどうかというシステムを張りめぐらさなければいけないのではないかというふうに思っております。  そのことを基本にしていきますと、ワークシェアリングにこのことがつながります。ワークシェアリングの場合も、今の経営がやろうとしているのは、安い賃金で使い捨て自由だというような働き方をする人たちの数をふやしたい、これは経営の発想としてある部分は当たり前なんだけれども、これでやりますともう物すごく格差ができ過ぎます。少なくともこの中では、時間当たり賃金と社会保障の部分を保障させるという部分以外に、今の税制上の部分の扶養家族とか基礎控除の部分についてどうするかというものの政策的なものとセットにさせなきゃいけない、この兼ね合いをとっていくと。  そして、働く人の選択肢の中で、フルタイマーで働く場合の賃金収入と、余儀なくというかあるいは自分も選択するという部分も含めて、短時間就労の場合の賃金、これは時間による差別、年齢による差別、それから性別による差別、このことは一切排除するという世の中にしなければいけないのではないかというふうに思っています。  それから、両立支援の関係ですが、具体的な内容は今お配りをしてあります資料の中に入れてありますので時間の関係もありますので省略をいたしますが、私どもが今求めておりますのは、この内容については、できれば国会の衆参の与野党を問わず、両院におられる女性の議員の方々の超党派による議員立法で成立をさせていただきたいというお願いをしておりまして、これはもうそこのところが本気でできるかどうか、数は少ないけれども、超党派の女性議員に期待を申し上げたいというふうに思っております。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 それでは、菊池公述人にお伺いいたします。  菊池公述人は、銀行の株の保有が問題だ、現在のデフレスパイラルの引き金だと述べておられるわけですけれども、そしてこれに関連して、政府が九八年に銀行に資金注入したとき、これが実は銀行の株式含み益の目減りを補うためだったと、そのことをいまだに公表していないと政府のうそを責めておられるわけですけれども、この点について少し詳しく御説明ください。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 九八年の十月に確かに六十兆円のセーフティーネットができまして、九九年三月に資本注入がございました。大手行を中心に七・五兆円ございました。このときに、早期健全化法の金額は二十五兆円という枠が設定されたと思います。その中身でございますが、これは議員立法で、先生方のおかげでできた法律でございますけれども、その二十五兆円の中には、株式の含み損を四兆円、これを償却するという形で数字が盛り込まれておったと思います。  ところが、九九年三月に資本注入をされましたときには、その株式問題については一切触れずに、そのまま、言うならば先送りされたという事実があったことは事実でございます。したがって、私はあるところにそういう問題提起をしたことがございますけれども、今考えますと、まさにその問題が顕現化しておるというふうに考えます。  ですから、銀行本体で株を持つということは、結果的に株価の変動が直接自己資本に影響します。それで、御案内のとおりBIS規制というのがございますから、八%を維持するということは、一兆円の自己資本が減額しますとその十二・五倍積まなきゃいかぬ。四兆だったら五十兆。まさにそういう信用収縮、それがもろに特に弱い中小企業さんとか、そういうところに影響が来て信用収縮が起きている。実体経済がマイナス成長といいますか、成長がとまってきている理由はここに僕は大きくあると。そこで、銀行本体から株式を切り離すべきだ、それをどうするか。  それで、現在のところは民間で考えたらどうだということを提案されておられます。しかし、民間ではとても無理だと思います。そこで、先ほど申し上げたとおり、政府が主導して、この際ぜひそういう政府機構をつくって、四十兆円の政府保証債を出すと。そうすれば必ずこれは株式市場もよみがえりますし、それから金融システムの安定化につながります。同時に、資産デフレの解消の道を開くんじゃないかと。  私は一石三鳥だと思っておりますので、どうぞ先生方、よろしくお願いいたします。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 長時間御苦労さまでございます。無所属の会の松岡滿壽男です。  財政を六、七年担当しておられた宮澤財務大臣が、この席で財政は破局に近いということを言われまして、訂正はされたんですけれども、小渕内閣から私もこの予算委員会で同様なやりとりをしているんですが、そういうニュアンスになっているんですね、今既に。先ほど菊池公述人のおっしゃった、従来型のやり方で、人口はどんどん減っていきますし、経済構造は大きく変わっているし、対応できるのかなという疑問があります。それについてお答えをいただきたいということ。  それから、笹森さんがおっしゃった十三年度予算に対する考え方、それから十四ですか十七ですか、Kは。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 二十Kです。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 二十K。大体同感でございますが、やはりことしの初めごろの世論調査で政治に対する不満というのが九〇%をもう超しちゃっているんですね。まあサラリーマンが八割ですから、サラリーマンの方々もみんなそういうやりきれない思いでいると思うんですよ。  ある面では、戦後つくったソフトがうまく機能したことも事実と思うんです、十年ぐらい前まで。失われた十年ということが言われているわけですけれども、やはり政治が劣化したといいましょうか機能していない部分が随分ある、それが今の二十Kとかいうものにずっと出てきていると私は思うんですね。そういう働く人たちの不満を解消するためには政治というものが一体どうあるべきなのかと。政界再編がうまくいっていないわけですよ、実は、いろんな面で。加藤さんの挫折もあったし。そういう点についての連合の皆さん方のお考え方を伺ってみたいなと思います。  四分しかございませんので、よろしくひとつ。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) それでは、先生が今おっしゃいました、こういう財政構造といいますか支出内容とかいろいろ考えまして、人口の変化等をどういうふうに長期的に考えるか、考慮すべきかということでございますが、確かに御案内のとおり、急速な少子化とかそれから人口減少ということは日本は考えなきゃいけないと思います。ただ、私の考えでは、現在二つに分けて大きくきちっと考えるべきだろうと思うんです。  といいますのは、当面やはり景気対策、何とかしてこのデフレ現象から解消する道を全力を尽くさなきゃいかぬ。そういう意味では、財政支出というのはまだ余地がございますし、十分考えていかなきゃいけないんだと。純債務で見れば十分問題はないんだと。  それから、御案内と思いますが、スタンダード・アンド・プアーズが日本の国債を二月二十三日に格下げいたしました。ここで言っていることは、日本の資金循環とか国債は安定的に調達されている、しかしデフレ懸念が出てきているんで、そうするとGDPが減っていくだろう、減っていくと国債の純債務の比率が上がるだろう、そうすると悪い方向になるから警鐘を発する意味で落としておくよと、こう言っているんですね。ですから、S&Pはあくまで純債務で見ているんです。ムーディーズは総債務中心です。ですから、ちょっと今まで分かれていました。ですから、現状はまさに御案内のとおりの、短期的にですね、そういう意味で財政支出はまだ十分余地があると私は考えておりますから、景気対策を考えるべきだと。  それからもう一つ、人口構成の問題。  これはもうもろにやはり社会保障基金とかああいうものに問題が出てまいります。ですから、今真剣にいろいろ政府とか先生方も御検討と思いますので、これは鋭意やっていかなきゃいけません。  ただし、問題はやっぱり国民に対して説明をするときに、今そんなに、財政とか社会保障基金もこんなにあるんだから心配ないんだ、暗い面での心配ないんだ、ただし、こういう人口構成になっていくから、景気をよくしてそれで所得が上がっていけばそういう自己負担もふやさなきゃいけないんだと、こういうプレゼンテーションをされた方がより一層わかりやすいのではないかというふうに私は思っているんです。余り暗い面だけ出しますと、どうも消費も伸びませんし。だから、とにかく明るいプレゼンテーションで、日本の中身はそんなに悪くないと思います。  そういう面で、特に長期的に見た場合に先生御案内の人口減の問題、十分考えなきゃいけないと思いますが、その辺のところも前向きにこれから対策を打っていけばいいんだというふうに考えていけば国民は十分了解するんじゃないかと思います。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 時間も切れていますので、一言で申し上げたいと思います。  連合の指導というよりは、もうサラリーマン、限界が来ている、だから恐らく、このまま政治に対する不信が増幅をしていきますと、もう限界点を超えていますのでサラリーマンの反乱が起きます。  これはもう自立をせざるを得ないという意識。というのはなぜか。企業の中、組織の中は完結編だったんです、今まで。三種の神器、終身雇用、年功賃金、企業別労働組合、これで守られていた。ところが、すべてそこが崩されようとしている中で初めて、企業や組織の中が政治の場であり経済の場であり家庭生活全部の場であったのが、一人一人がそのことに対して直接関与せざるを得なくなってきた、したがって政治不信に対してサラリーマンの反乱が起きる。  私どもは、その怒りを今一身に受けた運動をしなきゃいけない、こう思っております。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

高橋令則自由党

○高橋令則君 自由党の高橋でございます。  公述人のお二方、大変御苦労さまでございます。  私は、第一点ですけれども、菊池公述人にお聞きしたいんですけれども、今のデフレスパイラルの危機だと思っているわけですけれども、しかも今、今のことだと思うんですね、にもかかわらず、今の予算そしてまた金融ともに少ないし、それからスピードも遅いと思っておるんですけれども、端的にどうなすべきか、それをお聞かせいただきたいと思います。対策ですね。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 申し上げます。  現在、御審議中の平成十三年度予算は、編成されましたときと今とかなりやっぱり客観情勢が変わったということがあると思います。確かに、昨年十二月二十日でございますか、案ができましたとき、実を言いますとそのときから株が下がっていることもちょっと事実なんですね。ということは、やはりデフレ型というふうに、マーケットといいますか、みんなが受け取ったんじゃないかなと思います。  しかし、ですからそれはそれで、マーケットの受け取り方は先ほどのとおりですので、私は今回早く、ぜひ早目に通していただきたいけれども、しかしそういう問題認識を含めて、僣越ながら補正予算が当然必要になってくるんじゃないかということを申し上げたわけです。  それから、その後やっぱりニューヨークの株、それからアメリカの経済の急速な減速、これがやはり大きく響いてまいりましたので、やはりその辺のところの影響が株価に出ているし、実体経済にも出てきていると思いますから、この辺の対策は、やはりこの予算を通していただいた後、その四月以降の減速状況といいますか、景気の状況を考えまして、やはり弾力的に手を打っていく必要があろうかと。これはやっぱり客観情勢に対する的確な対応だと思いますので、この辺のところはこれまた先生方の御指導でお願いいたしたいと、こう考えております。

高橋令則自由党

○高橋令則君 笹森公述人にお聞きしたいんですけれども、賃金とそしてまた雇用というのはどっちも両方とも大事だと思うんですね。だけれども、今まではもう賃金中心ということなんですかね、そういう行き方が強かったように思っておるんですけれども、雇用に対する、守るというために、それなりにもっと強くやっていくべきではないかなと思っておるんですけれども、お考え方はどうですか。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) 経営側と労働側の最大の違いは、賃金、雇用、両方とも掲げていて、間につく言葉が、賃金も雇用もというのと、賃金か雇用かという、もかかの違いなんですけれども、ここが最大の違い、一番問題。  私どもは、今御指摘の中では、本来的に労働運動がやらなければならないことを、極めて高度経済成長時代、右肩上がりの中で少し忘れてしまったのではないかという反省をしております。これは争議を起こせばいいということじゃなくて、本来的に守らなければならない権利とか義務の問題について、組合側がどこでカバーをするかということを忘れた場合には労働組合や労働運動じゃなくなりますから、このことについては戦術とかあるいは体制、理念をもう一度組み直したいと。  そういう意味では、連合は一月五日の日に二十一世紀ビジョンというのを発表させてもらいまして、新たなる運動展開を明確に世の中に示させてもらいました。若干、経営や政府、行政に対する当たりがこれからは変わっていくというふうに思っております。

高橋令則自由党

○高橋令則君 終わります。  ありがとうございました。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 まだ一分残っていると思って向こうにおりまして、大変失礼をいたしました。  私は、菊池先生の御高説を聞いておりまして、こんな方が大蔵大臣になられたら日本はよくなるのかもわからぬなと、一瞬そう思ったわけであります。  と申しますのは、先般、この場から私は宮澤財務大臣に対しまして、今日の状態を招いた元凶はあなたであるということを決めつけたわけでございまして、その理由は、一九八五年のプラザ合意以来ほぼ十五年のうちの半分にわたって総理または財務大臣としてとられてきた政策が間違いであると、そういうことを指摘いたしました。  今はそれについて語っておる暇がございませんが、私は、菊池先生の言われた、純債務を見ればそんなに日本は悪くないという中で、アメリカの国債についてどの程度の数字をつかんでおっしゃっておられるのか、我が国が持っている米国債。例えば、あなたのここに書いてある中で、具体的な数字で、家計でも企業でもいいですから、あなたの持っておられる認識を示していただきたい。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 残念ながらちょっと正確な数字は持っておりませんが……

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 数字だけでいいです。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) ただ、外貨準備は、日本の場合はほとんど外貨で運用しておりますから、そういう意味では三千六百億ドルございますね。ですから四十二兆から四十三兆、これはほとんどアメリカのトレジャリービルの国債で運用していると考えていいと思います。それから、そのほか、政府が外貨で運用したりあるいは一時的に預かったりしているお金も、ドルであれば全部アメリカの国債を中心に買っておると思います。  ですから、はっきりとした、幾らと言われますとはっきりわかりませんが、ここの資産の中で見ますと、九九年には百五十六兆円の金融資産を持っております。ですから、この部分の、ドル建ての部分はほとんどアメリカの国債を持っているということでございます。ちょっとはっきり数字がわからずに申しわけございません。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 大学者である先生がその数字をはっきりつかんでおられないということは、私は非常に不思議と思うんですね。

菊池英博文京女子大学経営学部教授

○公述人(菊池英博君) 申しわけございません。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 しかも、二百二十円ぐらいで買った十年、二十年、三十年物の国債が為替差損という面で日本に大きな被害を及ぼしておると。この辺、私が持っている数字は三十三ないし五兆円ですけれども、一度またお調べいただいて、あなたの格式高い論文の格調をさらに上げていただきたい、そのように思います。  笹森さんにお伺いいたしますけれども、組合の使命の一つは雇用の維持が最大のターゲットであると。これは正しいと思います、組合の立場で。私は、あなたがおっしゃった二十になんなんとするKの中で組合のKが出てこないというのが、自己反省ゼロというのはおかしいと思うんです。  と申しますのは、IT化が進み、ゲノム化が進む中で、労働者の方がそういったものにフィットするように十分な自助努力をなされておるかどうか。また、リストラ規制に対しても、反リストラ規制ですが、日産のゴーン規制に見られるように若干流れとしてしようがない場合もあるわけですから、私は、ぜひ組合のKも自己反省を含めて今後一つ足していただくという謙虚さが必要じゃないかと思います。  御所見があれば、一点。

笹森清日本労働組合総連合会事務局長

○公述人(笹森清君) そのまま受けさせていただきたいと思いますが、ことしの一月五日に発表した連合の二十一世紀ビジョンの中にはその辺が全部入れてあります。二十世紀の残滓を引きずらず、新しい労働運動の展開に向けて調整をどう図るか、これはすべて今言われたようなことを含めてやりたいと思っておりますので、二十でとめましたのは、もう一つ入れると七の三倍になりますので、そういう意味合いも込められております。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 終わります。  ありがとうございました。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 以上で午前中の公述人に対する質疑はこれを終了いたしました。  ここで、公述人菊池、笹森両先生にお礼を申し上げます。  きょうは、大変有意義な御意見をお述べいただき、かつは御丁重にお答えを賜って、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼申し上げます。ありがとう存じました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩をいたします。    午後零時十八分休憩      ─────・─────    午後一時六分開会

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  冒頭、委員長から委員諸君に申し上げます。  出席委員の数不足のため、公述人両先生には大変長くお待たせを申し上げる結果と相なりました。まことに遺憾であります。今後、各会派それぞれ十分御配意をお願いいたします。  休憩前に引き続き、平成十三年度総予算三案につきまして、公述人の両先生から御意見を伺います。  初めに、公述人の両先生にごあいさつを申し上げます。  ただいま冒頭お話をいたしましたように、きょうは大変失礼をいたしまして申しわけございません。  両先生には、さぞや御多忙中でありましょうところを、ようこそ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。  本日は、平成十三年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたい、かように存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、先生お一方二十分程度で御意見をお述べいただきたいと存じます。委員の質疑にその後お答えをいただきたい、かように存じます。  それではまず、外交・防衛について、公述人沖縄大学教授新崎盛暉さんから御意見を伺います。新崎公述人、どうぞ。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 新崎です。  ことしはちょうどいわゆる安保条約が締結されて、五一年の九月ですけれども、五十周年になります。その安保条約に基づいて沖縄には多くの米軍基地があるということは、皆さん御存じだろうと思います。もっとも、最初から沖縄の基地というのは安保条約に基づいて置かれたのではなくて、安保条約と一緒に締結された対日平和条約の第三条によって米軍政下に長らく置かれ続けて、一九七二年の五月十五日以降、安保条約に基づく基地というぐあいにその根拠を変えられたわけです。そして、その沖縄が日本に返還される一九七二年の五月に、国会では、政府が沖縄基地は余りにも過密なので基地の削減に努力する必要があるという決議をされています。  しかし、御承知のように、沖縄の基地は当時からほとんど削減されておらず、現在も在日米軍基地の七五%が沖縄に集中しているという状況になっています。特に、この五十周年に当たることしに入ってから、毎日のように沖縄、地元の新聞紙上は米軍基地関連のニュースでにぎわっています。  きょうは、特に、とりわけ頻発している米兵、米軍属、米軍人家族の犯罪事件や事故と、安保条約や地位協定として表現されている日米同盟の問題性について見解を述べさせていただきたいと思います。  なぜ今このような問題が五十年という現在の段階で続出しているのか。皆さん既に新聞報道等でいろいろ御存じかとは思いますが、もう一度簡単に、どんな事件が起きているのか、あるいはどういうことが問題になっているのかということを大急ぎでおさらいをしておきたいと思います。  まず一番最初、ことしになって起こったのは女子高生に対する強制わいせつ事件です。これに対して、沖縄県議会等が初めてアメリカ海兵隊の削減を要求する、そういう要求を含んだ決議をしております。これに対して、沖縄にいる四軍、空軍、陸軍、海軍、海兵隊の四軍の調整官という立場にある最高司令官が、部下にあてたEメールの中で、知事や議員とか町長をばかで腰抜けだというようなことを言ったということが大きく話題になって、そのことは皆さんも御存じかと思います。  そういうことが起こっているさなかに、米兵による連続放火事件が明らかになり、それの容疑者の身柄引き渡しをアメリカ側が拒否したということでまた問題になりました。  そうこうしているうちに、今度は過去三十年にわたって、米軍基地から民間人や軍属などを含む人たちや米兵が、これは軍事演習というよりはむしろレジャーのために、クレー射撃といいますか、何か目標を打ち上げて撃ち落とすというような、そういうことをやってさまざまな海洋汚染等が生じているらしく、アメリカ側は急いでこの弾薬、薬きょうの回収や海洋汚染の調査などを始めているという問題が起こっています。  そうかと思うと、今度は米軍人家族、少年グループが連続した車両放火事件をやっているとか、十数件にわたる窃盗事件の容疑が表面化しましたけれども、その主犯格の少年は既にアメリカに帰っているというような問題が起こっています。  こういうことが次から次へと今なぜ表面化してきているのか。そのことについて、これは恐らく例のハワイ沖におけるアメリカの原子力潜水艦による水産高校の実習船えひめ丸を沈没させた事故とその背景において共通するものがあるのではないかというふうに私は理解をしています。  それはどういう点かといいますと、御承知のように、世界の情勢といいますか、東アジアの情勢は、ある意味では非常に、特に去年の朝鮮半島における南北の首脳会談以降、ある種の軍事的緊張が緩和されつつあるという動きが出てきています。  その中で、沖縄に例えば海兵隊がいることの正当性とか、そういうことを組織の人間それ自体が確信できなくなってきている。そこがいわば規律の緩み、弛緩ということが生じているので、これはハワイ沖の事件が報道される、繰り返されるたびにそういう問題が表面化してきていることとある意味では共通しているのではないかと思います。  平和への流れが強まる中で、必要度を低下させつつある体制とか制度を維持しようとする者の焦りといら立ちというものがいろいろな形で表面化している。例えば、軍事大国としてのアメリカ、その象徴がある意味では巨大な攻撃型原子力潜水艦であったり、米軍駐留を当然の前提としている日米同盟の象徴としての海兵隊の問題があるというぐあいに私は思っています。  よく話題になった、大きく話題になったその四軍調整官のEメールの問題がありますけれども、これはばかだとか腰抜けだとか言ったという言葉の問題だけがやたらに過剰に取り上げられ過ぎていると私は思っています。  ここの本質にあるところは、この軍隊を維持していかなければいけない司令官のいら立ちがあらわれているわけです。それで、その一つは、部下のふがいなさに対するいら立ち。このメールの中の前半部分はそうです。そして二番目が、友人であるはずの、彼らは沖縄にいることでよき隣人たろうとしていると言っていますけれども、そのよき隣人であるはずの友人たちの裏切り、つまり知事とか町長、名前を挙げられている人たちは、ある意味では基地を容認している立場ですけれども、そういう人たちが海兵隊の削減を要求するような決議が県議会や町議会で成立するのを阻止し得なかった。これは何だということで先ほど言ったような文句をつけているわけですね。  ここに彼らの非常にいら立ちがあると思いますけれども、もう一つ、意外に問題にされていないのは、なぜこういうメールが漏れてきたかということです。これは別に新聞社が探ってきた特だね記事ではありません。沖縄タイムス、琉球新報という両社にメールの文章がファクスで流されてきたわけですね。送られてきたわけです。これを見て翻訳して、それが報道されて大きな問題になったということです。  つまり、今や、現在は内部告発がやみに隠されていた事実に光を当てて、制度疲労とか腐敗の問題を表面化させている時代ですけれども、軍隊のような、アメリカ軍のような、ある意味では規律、組織の機密性を維持していると称しているところからこういうものが漏れ出てきているという事実が、先ほど言った統制力の緩み、弛緩と非常に結びついているというふうに言っていいだろうと思います。  これをもう少し大きな世界の動きの中でとらえ直してみますと、私たちは、特に三月七日に行われた米韓首脳会談を象徴的なものとしてとらえることができると思います。あそこにおける金大中韓国大統領とブッシュ・アメリカ大統領との間の見解の食い違い、露骨なまでのずれということです。  昨年六月の朝鮮半島における南北首脳会談というのは、当事者たちが主体的に地域紛争の火種を消し平和をつくろうとしたところに大きな意味があると私は考えています。  しかし、平和の流れが強まると困る人たちもいるわけです。それは簡単に言えば軍隊と軍需産業です。そして、その軍隊と軍需産業を背景にしているのがある意味ではブッシュ政権と言っても言い過ぎではないような気がします。特に、ブッシュ政権の国務省首脳というのは、ペンタゴンというか国防省からある意味ではほとんど横滑りしてきたような形で構成されていると言ってもいいわけで、そういうところでここの大きな食い違いが出てきているわけですけれども、南北和平を推進しようとする金大中政権と北朝鮮に対する不信感を強調して危機感をあおっているブッシュ政権という図式がここから非常に浮かび出されてくるわけです。  これが今度は日本とどのような関連になってくるかという問題です。  御承知のように、金大中大統領は、いろいろ韓国民の批判を浴びながらも、そして政権基盤が非常に弱いという状況の中でも、一歩後退二歩前進という形で平和を追求しているというところがありますし、特に日本と共通している問題で言えば、韓米行政協定、いわゆるSOFAの改定というものにとりあえず持続的に取り組んできて、決裂寸前まで行ったりしながら、とりあえずは改定を成功させています。その改定の中身については極めて不十分であるということは韓国国民が批判しているようなところが当然ありますけれども、逆に日米地位協定の場合はどうなのか。在日米軍の地位を規定している日米地位協定の場合はどうなのかというと、この地位協定を改定してほしいという要求は沖縄から二度具体的に上がっています。一度は九五年の大田県知事からです。二度目は昨年八月、稲嶺知事からです。  稲嶺知事と大田知事は御承知のように基地に対するスタンスが違います。しかし、その両者が沖縄における基地の米兵の問題等を処理するためには地位協定の改定以外にはあり得ないということで、米兵犯罪の問題とか環境問題等を含む具体的な事項を指摘して、日米地位協定の改定を提起しています。これは韓米行政協定の改定とも共通する部分があるわけですけれども、にもかかわらず、韓国政府は不十分ながらも非常に弱い立場に置かれていながら改定の努力をした。日本政府はそれをやっていない。  じゃ、この差がどこから出てきているのか、日韓両政府のこの外交スタンスの差というのはどこから出てきているのかというと、恐らく二つぐらい大きな理由があると思います。  一つは、韓国では在韓米軍基地は全国に散在していて、したがって直ちに全国的な問題になります。しかし、日本では在日米軍基地の約七五%は先ほども言いましたように沖縄に集中しておりますし、海兵隊を中心とする兵員の六割以上が沖縄に押し込められています。したがって、米軍基地の問題は沖縄問題としてしかなり得ない、こういうところがあります。  それともう一つは、沖縄問題というのはアメリカによって常に安保全体の問題との取引材料にされてきた、そういう側面があります。具体的に言えば、沖縄を日本に返還する、沖縄返還ということと日本の軍事的、経済的役割の強化ということはセットになっています。あるいは、最近の例で言えば、老朽化した普天間飛行場の返還とコンパクトな最新鋭基地の建設や新ガイドラインの策定、これがある意味ではセットになっています。  つまり、沖縄の民衆が自分たちの現状を変えようとして問題を提起し、これが日米双方の交渉のレベルに上がると、結局はアメリカ主導で、転んでもただでは起きない、何かより大きなものを獲得する手段に使われてきている。そして、これに対して日本政府の側は、ある意味では非常に対米追随的というか、事なかれ主義的な対応しかしていないし、この事なかれ主義的対応の背景にあるのは、安保を全国的な問題にしたくはない、できるだけ沖縄に閉じ込めておきたい、だからそのためには特別なお金を出すとか、そういうことでできるだけ不満を解消したい、そういう形の政策が一貫して、五十年間とは言いませんけれども、少なくとも七二年の沖縄返還以降三十年近く継続されてきている。つまり、日本にとって、沖縄にある米軍基地とは日本の安全保障にとってどういう意味があるのかという問い返しは根本的になされてこなかった。ここのところに非常に大きな問題があると私は考えています。  そういう中で、今回、ブッシュ政権が登場してきて、このブッシュ新政権はどのような取引をある意味では意図しているのか。  新しく国務副長官になったアーミテージ、彼はいわゆる知日派というか、安全保障問題に最も詳しい人間だと言われていますけれども、彼などを中心にしてブッシュ政権成立以前に共和党系あるいは民主党系、中立系の研究者たちが共同でまとめた「日米関係 成熟したパートナーシップに向けて」という論文があります。この中で、彼らは、日本政府よりも積極的に沖縄住民の過重な負担、これを軽減しなければならない、これは大きな問題になるであろうということを指摘しております。それと同時に、これとじゃ何がセットになっているかといえば、集団的自衛権を解禁することを含めて、これは日本の問題だけれども、自分たちがやるというわけじゃないけれども、そういう積極的な軍事協力等の体制がとれれば沖縄の基地を軽減することができるということを明確に断言しています。そして、その行き着く先に何があるのかというと、その成熟した同盟関係のモデルは米英関係であると言っています。そういうことを彼らは既に言っているわけです。  そういう中で、私たちは何をなすべきなのか。あと二分でやめなさいということですので結論だけ大急ぎで申し上げますと、今、朝鮮半島で起こっているような動き、これを支え、加速させるような方向で、我々は、沖縄の基地問題を含めて日米同盟の本質を見きわめる。本当に沖縄に海兵隊の基地を含む米軍基地が必要なのか。少なくとも、最低限海兵隊の基地は必要ない、これはアメリカ側の戦略的観点からいってもそういうことが言えるのだろうと思います。そういう方向に向かって積極的に日本の外交を展開していく必要があるのではないか、私はそのように考えます。  以上、時間ですので、ここでとりあえず終わりにしたいと思います。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 先生、ありがとうございました。  次に、社会保障について、公述人東京大学社会科学研究所教授大沢真理さんの御意見を伺います。大沢公述人、どうぞ。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 大沢でございます。  本日はこのような場で意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。  皆様のお手元にA4の一枚の紙でこのような私が申し上げることの要旨が配られているかと思います。「危機の打開はセーフティ・ネットの張替えから」と、何かスローガンのようなことが書いてございますけれども、これに基づいて意見を申し上げさせていただきます。  ただ、私ごとにはなりますけれども、きょうは税金の申告の最終日でございまして、きょう午前中、私は、時間がなかったこともありましてタクシーに乗って税務署に行ったと。何と愛国心のあることよと、我ながら涙が出そうになりましたけれども、このような税金を払う、払いがいのある政府であり予算であるかという観点から来年度予算を眺めますと、残念ながら必ずしもそうではない。ぜひ国民の皆さんが税金を払いがいのある政府であり政策であるというふうになっていただきたいと思っております。  最初に、最近の社会経済状況をどう見るかということでございますけれども、本日も株式市場も円相場も大変惨たんたる状況でございます。現在、不安と不景気が悪循環をするという、本当の意味でのデフレスパイラルの状況に落ち込みつつあると思われます。この国民が持っている不安のあらわれとして、中高年の男性を中心とする自殺が大変たくさん起こっているという問題がございます。  御承知のように、九八年、九九年と年間の自殺者総数は三万人を超えております。特に九九年は三万三千人ということで史上最悪の数値を記しまして、そのうち約一万人が四十代、五十代の男性でございます。一万人と一口に申しますけれども、年間交通事故で亡くなる死者の数は一万人弱でございます。今や交通事故死を優に超える数の中高年男性がみずから命を絶たなければならないという状況に陥っているわけでございます。  この背景に景気の低迷と雇用不安があるということは、既に有力な経済学者や、また財界人からですら指摘をされているところでございます。例えば、日経連の会長でもあるトヨタ自動車の会長の奥田さんの発言によりますと、景気の低迷の原因は雇用不安と老後不安を背景とするところの消費不況にあると。つまり、過剰貯蓄であるということを奥田会長は指摘をしているわけでございます。  しかしながら、このような指摘を聞きますと、連結キャッシュフロー経営の導入といった企業の環境の変化に備えて殊さらに日本の企業がこの間雇用リストラに走ってきた、そしてこの春闘も大変冷え込んだ春闘になっているということを考えますと、この日経連会長の発言というのは無責任にも聞こえてくるわけでございます。  この連結キャッシュフロー経営の導入ということで、企業は雇用リストラを通じて現金収支の黒字をためてきたわけでございますけれども、最近の数字では、上場企業の合計で、ただしこの場合、銀行、証券及び生命保険会社を除きますけれども、上場企業の合計では現金収支の黒字というのは三十兆円に上っていると。これだけのお金をため込みながら雇用リストラに走ってきたということが現在の厳しい雇用不安の背景にあるわけでございます。  もちろん、首を切られなければいいというわけではございませんで、雇用の非正規化、つまり正社員としては雇ってもらえないと。派遣、パートタイム、嘱託、契約社員といった不安定な働き方が急速に、特に女性の間で広がっております。  女性の側にも、例えば当面の社会保険料負担などを回避したいという意識も働きまして、社会保険に加入の義務がない、あるいは義務はあっても加入をしないというようなことを事業主との間で了解をして働くというようなことが広まってきているわけでございますけれども、このようにして公租公課、公的負担を回避するという傾向が強まっていけば、日本の社会保険というものは空洞化をしてしまうというわけでございます。  報告要旨には合成の誤謬という言葉を書かせていただきましたけれども、一人一人の人間にとっては、あるいは一つ一つの企業にとっては、人件費を削減するあるいは消費を切り詰めて貯蓄をするということは合理的な行動であるわけですけれども、これが社会全体合成されていったときに、合計されていったときには、不況の中で貯蓄がふえる、あるいは雇用リストラをして企業はその現金収支をため込んでいくという大変不合理なことが起こっているわけでございまして、経済学ではこのようなことを、ミクロの主体にとっては合理的なことが一国全体にとっては非常に不合理になる、合成の誤謬というような言葉であらわすことがございます。  このような悪循環は雇用と景気の間だけではなく、少子高齢化といった中長期的な日本が抱える問題においても悪循環というものが見てとれるように思われます。  若い人たちは、当面生活が不安である、また老後が不安であるといったことから、結婚や子育ての負担を回避しようとしております。特に日本では、男性の長時間過密労働あるいは固定的な性別役割分担意識のために、いまだに家事、育児、介護といった負担は圧倒的に妻の側に集中しているという状況があるために、若い女性にとっては子供を産むより何よりも前に、まず結婚そのものが負担と感じられてしまうという大変悲しむべき状況があるわけでございます。  これも、個人個人にとっては生活を守るということから来る合理的な行動であるとしても、その結果は、合成されますと、日本の少子高齢化を一層加速させる、そして年金財政や将来の介護負担の見通しを一層悪化させるわけでございまして、これもまた典型的な悪循環に入っていると言わざるを得ないと思われます。私はこのような悪循環を少子高齢化スパイラルというふうに呼んでおりますけれども、そのようなスパイラルにはまっているのではないかと思われます。  このような中で、政府は一体どのような政策をとってきたかということでございますけれども、もちろん、御案内のように、政府は九八年の夏以来、景気回復を最優先課題として鋭意取り組んでこられたわけでございます。この間、景気対策のためにふえた国債の残高というのは百兆円を超えているわけでございますけれども、しかし二兎を追う者は一兎をも得ずといってそれを追求してきた結果というのが今日の株式市場の状況であり、また円相場であり、それから依然として史上最悪の水準に張りついている失業率ということでございます。しかも、対策が有効でなかったばかりでなく、他方で政府は九〇年代において雇用の規制緩和を進めてこられました。これは、景気がよいとき、労働市場がむしろ売り手市場であるようなときの規制緩和は別といたしまして、現在のように労働市場が大変緩んでいる、このような状況の中での雇用の規制緩和は少なくとも雇用不安を和らげる役割は果たしてこなかったと思われます。  また、当面の生活あるいは老後については、政府はこの間、必要な社会保障改革を先送りしてまいりました。九〇年代に行われた社会保障改革で唯一言及に値するものと言えば、御案内の介護保険制度が制定され、実施されたことでございますけれども、これも実施直前にさまざまな改変が制度に加えられまして、制度の根幹、理念の根幹を傷つけられた形で現在実施をされているところでございます。  この際、国民の生活や老後の不安を解消し、不安を安心に変える、ポイント切りかえをし、なおかつその安心に基づいてチャレンジをしていく、リスクをとるというような状況へと向け変えていくためには、社会的セーフティーネットの張りかえが必要だというのが私の意見でございます。  現在の日本の社会的セーフティーネットはどのような特徴を持っているかというのが要旨の二というところに書いてございますけれども、日本の社会政策システムは、従来の家族福祉や企業福祉も含めて考えてみますと、大変強い男性稼ぎ主モデル、男性が外で働いて収入を稼いでくる、そして妻子を養うといったモデルに立脚をしております。と同時に、大企業本意の仕組みを持っていたと考えられます。  大企業本意と申しますのは、社会保険料の負担においても給付においても、これは中小企業あるいは自営業に比べて大企業の労使というのが有利な立場を持っているということを指しております。  このような男性稼ぎ主モデルにとっては大きな前提がございました。  その一つは、大企業は経営破綻することはない、会社は永遠ですという前提がまずございました。それから、男性の正社員は年功的に昇給していって妻子を優に養うことができる、子供を四年制の大学まで優に送ることができると、こういう前提もございました。  それから、妻は、家事や育児そして介護を一手に引き受けて、男性がその心配なく、何の後顧の憂いもなく会社で仕事に邁進できるようにするというような前提がございまして、最後に、そのようにして内助の功に励んだ妻は、自分がうんと言わなければ決して離婚されることはないという意味で、配偶者の座は終身指定席だったわけでございます。  しかしながら、これらの前提はいずれも今日リアリティーを持たなくなっております。大企業、超有名企業があっけなく破綻をする。それから、年功制というものは既に過去のものになっております。妻は、家事を引き受けているだけでは家計の収支を合わせることができないので、パートであろうが何であろうが働きにいかなければならない。  しかも、配偶者の座というものは終身指定席ではなくなってしまいまして、今日これは最高裁の判決が変わったために、今や、結婚が壊れる原因をつくった側の配偶者が離婚請求をしても、これを裁判所は一定の期間の別居の後には認めるというような状況になってきております。この一定の期間というのが、最初の判例変更のときには三十年を超えておりましたが、今や五年、七年程度の別居で責任のある配偶者の側からの離婚請求も認められるという状況になっておりますから、配偶者の座というのは今やいかなる意味でも終身指定席ではないということになっておりまして、このように前提が崩れた中で日本の社会政策が旧態依然たるままでは、中高年男性はますます扶養責任や住宅ローンの重圧に押しつぶされざるを得ないし、女性にとっては生存そのものの困難に突き当たらざるを得ないわけでございます。  どのようなシステムが必要かと申しますと、これはお話をいたしますと長くなりますが、今や男性稼ぎ主モデルから個人モデルに。これは、もうみんな離婚してひとりになってしまえということを言っているのではなくて、むしろ男性に一極集中していた稼ぐということ、それから社会保障のあり方というのを分散する、そういう意味ではリスク分散型というふうに申し上げた方がより真意が通じるかもしれません。そのことによって、男女双方あるいは家族のメンバーの自己決定権を保障していくような社会的セーフティーネットが必要だと考えております。  その中身については、「三つの福祉政府体系」と書きましたのは、これは現物・サービス給付については地方政府が基本的に責任を持ち、それから中央政府はナショナルミニマムの保障ということに責任を持ち、そして三番目の政府として社会保障の財政というものを中央政府から切り離して独立の政府とする、まあ社会保障基金政府というふうに呼べばよろしいかと思いますけれども、このようなことを考えております。  そういう中で、例えば年金はいかにあるべきかと申しますと、これは現在の保険料を社会保障税というようなものに名前を変えて、今の社会保険料というのも一種の目的税でございます、それを社会保障税というふうに変えた上で全国民が個人単位で加入をする所得比例の年金制度に改めてはどうか。  それから、介護の保障。これはサービス給付でございますから地方政府の責任でございますけれども、より地方分権を進めて、行く行くは税方式で見ていくということにしてはいかがか。  三番目に、医療保険につきましては、これもさまざまに制度が縦割りで分立をしておるものを一元的な制度として個人単位で加入をする、そのような意味で一人一保険証の医療保険というものを考えるべきではないか。  また、このように失業率が高どまりをしている中では所得保障のあり方を新たに考えなければなりませんけれども、雇用保険につきましては、先年の改正によりましてこの四月一日から大方の場合において給付が削減されることになっておりますけれども、このように雇用不安が深まっている時期に雇用保険の給付を削減するというのは果たして賢明な選択であったかどうかということがもう一度反省されるべきではないかと思います。  あるいは、公的扶助にいたしましても、今、不況の中で貧困がふえ、じりじりと公的扶助の受給もふえておりますけれども、大変使いにくい制度になっております。  宇都宮市に住んでおりますある母子世帯で、二歳の女の子が、母親が生活に困窮したがために食べ物はおろか水すら与えることができずに衰弱死をしたというのが去年の二月のことでございます。これは日本の生活保護制度というものの根本的な問題を改めて余すところなく表に出した事件だったのではないかと考えております。  それから、税制なんですけれども、これは児童手当との関係で改革が必要であるというふうに考えております。現在の児童手当制度、今回若干拡充をされるわけでございますけれども、まだまだ不十分でございます。  ところで、所得税制を顧みますと、ここには扶養控除といったもので、多額の財政支出というよりは税額の免除が行われているわけでございまして、これは必ずしも低所得者にとっては利益にならない。つまり、低所得者に効果的に支援をするという意味では、所得控除というやり方での配分というのは大変非効率なものであるので、考え直して、児童手当と一本化するような方向が望ましいのではないかというふうに考えております。  地方分権を進めるためには、税源の移譲も必要ですから、地方税につきましては、これは所得税の一〇%比例税の部分を地方に移譲してはいかがかということを考えております。  以上のようなことを考えておりますけれども、こんなふうにリスク分散型あるいは個人モデルにすることによって例えば少子高齢化の問題というのは解決に向かうのかどうか。より離婚がふえたり女性が子供を産まなくなるのではないかと心配される向きもあろうかと存じますが、しかしながらデータが示すところは、少なくとも先進国と言われるような国では女性の就業率が高いほど出生率も高く、それから男女の賃金格差が小さい国ほど出生率も高いのでございます。日本もそういった明るい方向での均衡にこの際向かうべきではないかというふうに考えておりまして、意見を述べさせていただいた次第でございます。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 先生、どうもありがとうございました。  以上で公述人両先生の御意見の陳述は終わりました。  これから公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 お二人の公述人の先生、大変ありがとうございました。  まず、大沢公述人から御意見をお伺いしたいと思います。    〔委員長退席、理事須藤良太郎君着席〕  社会保障制度、なかんずく年金制度を勉強していますと、例の働く女性と専業主婦の負担の不公平の問題等すぐにぶち当たるわけでございます。そういう中で、個人モデルにより自己決定権を保障する社会的セーフティーネット、これは非常に魅力的な、私は十分に考えるに値する御意見じゃないかと思っております。  ただ、このためには、現在一生懸命になって内閣を中心に進めている男女共同参画社会基本法に基づく諸施策が実施されなくちゃいけない。しかし、なかなかこの男女共同参画基本計画を見ても中身が抽象的で、一体だれがどういうふうに役割分担するかというのは必ずしも十分認識されていないような現状にあると私は思っています。  そこで、まず大沢先生は、男女共同参画社会の実現のために、一つは学校教育の面でどのように改善工夫がなされてしかるべきか。例えば北関東などは今でも、私もそうだったんですけれども、男女別なんですね。公立学校でも男子高等学校と女子高等学校が分かれている。学校においても、小学校は女の先生が多いですけれども、高等学校になりますと非常に女子の教員が少なくなっている。この学校教育の面でどのような改善工夫がなされるべきか。  それから、社会保障制度ですね。これは年金の制度がございましたけれども、今はまた一人一保険証の医療保険をということで提唱されていましたけれども、社会保障制度の面でどのように改善工夫がなされるべきか。  それから、労働関係の法規ですね。特にパートの賃金の上限を百三十万とか何か区切っていますね。これらは労働関係の法規、それから年金関係の法規を十分に直さなければならないんですけれども、労働関係の法規の面でどんな改善工夫がなされるべきか。  そして、トータルとして家庭と職場における人間関係、男女関係をどのように改善していったらよいか。  この四つの面からアプローチして、もし御意見があったらお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) どうも御質問ありがとうございます。  御質問は多岐にわたっておりまして簡単にお答えすることはなかなか難しいのでございますけれども、学校教育に関しましては、実は私、群馬県の出身でございまして、県立高校の男女別学率というのが非常に高いところでございます。私自身は男子生徒と席を並べて勉強したいというふうに考えましたので、県立高校に進学することはあきらめて、高校から東京に出てまいりました。そのようなことをしなければならない女子生徒というのがなくなってほしいという願いを持っております。そういう意味で、公立高校の男女共学というのは、これはもうぜひとも進めるべきことではなかろうかというふうに思っております。  と同時に、学校教育の中身につきましても、学校は男女平等の場だというふうに思われておりますが、これは表に出た教科書の書きぶりなどのことばかりではなくて、むしろ隠れたカリキュラム、裏のカリキュラムというものを見ますと、むしろ管理的な教員というのは男性である、あるいは上級の学校に行けば行くほど女性教員の比率が少なくなる。それから、理数科は男性教員であり文科系は女性教員であるといった性別の役割分担が随所に学校においては見られまして、このようなものを通じて、子供たちが、男であり女であるというのはそういうことなのかというふうに学んでいってしまうという意味では、決して学校は男女平等の場ではないということを肝に銘じてもっと意識的に平等化というものに取り組んでいかないと、新しい世代が男女平等という理念を骨肉にしみたものとして学んでいくということにはならないのではないかと思っております。  社会保障につきましては、意見を申し述べた中で一通りは申し上げたつもりでございますけれども、やはり全国民が、自分の職種やそれから勤め先の企業規模、あるいは失業している、していない、自営なのか雇われているのかといったことに、あるいは年齢等にかかわりなく大きな単一の制度に入るということが、これを私は究極のポータビリティーを保障する道だというふうに考えておりまして、ついせんだっての新聞にも、どうしても、健康保険などでもサラリーマンから自営業者への所得移転というんでしょうか、利益移転が起こっているという指摘があったんですが、このように高失業の社会になってきますと、だれもいつ失業するかわからないし、リストラをされて自営業にならないとも限らないわけですから、そういった利害は今や超えて、大きな一元的な制度を考えるということが男女平等にも資する、男女共同参画の前進にも資するものというふうに考えております。  それから、労働法規でございますけれども、これだけ非正規の雇用がふえてまいりますと、男性にとっても雇用形態、採用区分によって差別をされないということは大変重要な問題になってまいります。  ですから、単に女性の経済的自立というような理由だけではなく、今や国民全員に安心感を与えるためにも雇用形態による差別を禁止すると。具体的に言えば、賃金というのは働いた労働の価値に応じて支払われる同一価値労働同一賃金といったことを今こそ日本の労働法規の中にきちんと組み込んでいくべきではないかというふうに思っております。  最後に、家庭と職場の人間関係ですが、家庭というのは言うまでもなくプライベートな場であり、くつろぐ場でございますから、そのあり方について他人がとやかく言えるというものではないと思います。しかし、家庭を取り巻く環境というものをできるだけ男女に対して中立的な、これは男女共同参画社会基本法の中にも書かれてございますけれども、男女の社会における活動の選択に対してできる限り中立的なものとしていくことによって、より自由な家庭生活を選択していくことができるというふうに考えております。  職場につきましては、日本の企業は八〇年代、大変国際競争力も強く、世界一の労使関係であり経営であるというふうに言われた時期がございました。そのときに、強さの秘密として、日本の職場では情報があいまいな形で暗黙のうちに職場で共有されていることが日本企業の強みの一つの原因であるといった理論がございまして、これは通産省の研究所の所長もお務めになっている青木昌彦先生などが理論化して発表されていることでございますけれども。  しかし、このようなあり方というのは、恵まれた環境、特別な環境の中では強みを発揮したわけでございますが、今後ともそうと言うことは、もうこの九〇年代、十年不況を経てみればとても言えないわけでございまして、日本の職場の情報というのはもっと透明で客観的な情報が明確に共有をされると。早い話が、人事評価制度というようなものがもっと客観的で公平なものにならないと、これも女性だけでなく働く男女のすべてにとって非常に大事なことであるというふうに考えております。  以上でございます。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 どうもありがとうございました。  私も、群馬県の渋川高校なものですから、男子校で育ったものですから非常に関心が高いわけでございます。  二つ目の大きな問題は、先ほどから社会保障の財源について陳述がございましたけれども、税の世界で所得の再配分機能を進めるべくいろんな工夫がなされております。応能課税と応益課税の区別がございますが、応益課税の典型が消費税、これは逆進的な性格を持っていますので、これは私は基本的には社会保障制度に優先的に配分することによって逆進性の持っているデメリットを薄めることができるんじゃないかと思っているんです。  その上で、社会保障制度の中の例えば介護、高齢者医療、年金につきましても、いろんな所得に応じた負担対策がなされているわけですね。要するに、税の世界で大きく所得配分機能を発揮させて、社会保障制度の中でもさらに所得に応じた所得再配分機能というのをダブルスタンダードで維持しているのが我が国の制度じゃないかと思うんです。  その中で一つ、先生の論文を読みながら気になりましたのは、実は税方式の逆進性というのは今申しましたようにあるんだけれども、社会保険料についても逆進的な性格を持っているんじゃないかと。例えば、厚生年金月額六十二万円以上幾らもらっていても保険料は今は要らないというふうなことを例示として挙げておりますけれども、これは社会保険料制度、社会保険料における逆進性について、もし詳しく説明していただけたらありがたい。それが一点。  もう一つは、介護、高齢者医療、年金につきまして、所得再配分機能を持たせるように所得によって負担関係を変えておりますけれども、これについて先生がもしお考えがありましたら教えていただきたい。と申しますのは、制度によってみんな所得制限のラインが違うんですね。これは私は矛盾しているんじゃないかというふうに感じていますので、もしそうでなかったらそうでないというふうにお答え願いたいと思います。よろしく。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  社会保険料につきましては、御指摘の逆進性が確かにございます。標準報酬最高限というものがございまして、特にこれが年金保険料については低目に標準報酬最高限が設定されているために、それ以上の所得のある人は幾ら所得があってもそこには保険料がかからないという逆進性がございます。  それから、企業でも総労働費用の中で現金給与というところに社会保険料は連動しておりますから、現金給与でないフリンジベネフィット的な部分で従業員に報いるということをしますと、これはその分は社会保険料負担をしなくて済む。このようなフリンジベネフィットの余裕のあるのは大企業でございますから、大企業が総労働費用に比べると社会保険料負担が低いというのは逆進性、つまり労使双方での逆進性がございます。  加入者の側、個人の側の逆進性は、近々、総報酬制というふうに保険料がなりまして解消される見込みでございます。これはよいことだというふうに考えておりますが、企業の方の逆進性というのはどう考えたらいいのか。  これはこのままでいきますと、なるべく人を雇わない、あるいは給与という形では支出をしないで、むしろ業務請負契約みたいな形で、物件費的な形で人を使うということで社会保険料負担を免れるということが出てきて大変不公平なことになりますから、企業につきましては外形標準、総売上高に対して社会保障税を課すというような外形標準を考えるべきときに来ているのではないかと思っております。  それから、さまざまな給付に所得制限があり、その限度額というのがまちまちであるという御指摘も全くそのとおりでございます。私は、所得制限のついた制度というのは、実は運営事務費というのがかかるという意味でコストパフォーマンスの悪い制度だというふうに思っております。むしろ、所得制限というのは外して児童手当のようなものに、もう所得制限を外して、そして高所得の人にも児童手当を払うのはばらまきではないかというような意見に対しては、むしろ総合課税というところを強めて払い過ぎたものは取り返すというふうにすることが効率性の観点から望ましいと思っております。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 もう一つ、先ほど非常にセンシブルだなと、あるいはすばらしいなと思ったのは少子高齢化スパイラルという言葉なんですけれども、少子化対策の一環として保育園等の充実強化策が指摘されて、いろんな政策がなされておりますけれども、私は思い切って、何度も指摘しているんですが、幼稚園と保育園の区別、それぞれが縄張りを争っているけれども、私は就学前の子供たちの教育については、もういろんな学者がいろんな角度から現場体験を踏まえて研究し尽くしているので、例えば幼稚園の経営者が保育園もできる、保育園の経営者が幼稚園も経営できる、幼保一元化ということを本格的に進めるべきじゃないか、縄張りを全部取っ払って進めるべきじゃないかというふうに思っているんですが、先生の提言の中にはそこまではまだ入っていなかったんですが、この幼保一元化についてはどのようにお考えですか。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) ありがとうございます。私の書いたものの中で従来社会サービスの部分が薄くなっておりまして、そこのところを御質問いただいてありがとうございます。  私も幼保一元化というのはもう今や当然であるというふうに思っております。その上で、ただ必要な保育サービスの量を必要な場所に的確に供給していくということのためにはやっぱり民間活力だけでは足りないというふうに思っておりまして、保育サービスというのは、ビジネスとしてやろうと思えば劣悪なサービスにしない限りペイをしないという部分が残念ながらございます。したがいまして、質の規制なりあるいは補助金なりといったことは絶対に必要だというのを申し上げた上で、民間活力をしかるべく生かして、必要なときに必要なところに保育サービスが確保されるということが必要ではないかというふうに思っております。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 大沢先生に対する最後の質問ですが、個人モデルによる自己決定権を保障する社会的セーフティーネット、これはつまるところ、どうも戸籍法の改正で夫婦別姓まで行くんじゃないかという感じがしているんです。  実は今、国籍の問題で与党三党で帰化条件の緩和の議論を進めていますけれども、その中で最後にぶち当たるのが戸籍法なんですね。特に、韓国のように夫側の姓とそれから妻側の姓とが全然別だと。この人たちに違和感なく日本の社会に溶け込んでもらうためには、日本の民法を前提とする戸籍を遵守してもらうか、あるいは新しく通称的なものとして従来韓国の社会で使われてきた氏、姓ですね、氏名を通用するようにするか、仕組みとして。しかし、いっそのこと、全部共通にするためには日本の民法を改正して夫婦別姓にしたらどうかという議論もあるわけですね。現にそういうふうに主張している先生方もたくさんいるわけでございますけれども、この夫婦別姓については先生はどうお考えでしょうか。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  私は、夫婦で同じ名字を名乗りたい人にはそれをする自由があり、それから自分が独身のときの名字を維持したいという場合にはそれを選ぶ自由があるという意味での選択的夫婦別姓ということが最も望ましいと考えております。  ありがとうございます。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 次に、新崎公述人にお伺いしたいと思います。  若干、世界の軍事状況について私とも意見がちょっと違うんです。例えば、平和の流れを要するに妨げているのは軍隊と軍事産業で、またそれの背景にブッシュ政権があってというようなくだりとか、ここら辺がどうも納得いかないのでございますけれども、ただ一つだけ、世界情勢の認識としまして、中国も毎年毎年軍事費を増強しております。北朝鮮も非常に、正確な数字はなかなか出てきませんが、しかし我々が知っているところによりますと、ノドンの配備の状況とか、あるいは韓国と対話政策を進めながらも非武装地帯に相当の兵力を漸進的に配置しているとか、いろんなことが言われております。それから、世界各国を見ましても、例えばイランとロシアの武器援助の約束、それから最近におけるイスラム原理主義のいろんな紛争、民族と宗教の紛争ですね、こういうふうなものが多発しているわけであります。世界的に見て、冷戦構造は崩壊したけれども、必ずしも平和への道をまっしぐらに歩んでいるわけじゃないというのは、これはだれもが認めるところだと思うんです。  特に、沖縄の基地の問題に関して言えば、やっぱりアジアにおける中国の軍事、軍備の状況の問題、それから北朝鮮の軍事力、それからある種の危険性、こういうものについての認識があると思うんですけれども、中国と北朝鮮の軍事状況についてはどのようにお考えになっていますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 軍備の問題というのはやっぱり相対的な関係だと思います。一方だけでどうということではなくて、例えば仮想敵国とみなされている側はそれに対抗するために軍備を強化せざるを得ないというのは米ソの関係以来そのとおりだと思いますが、そのときにどちらがどういう形でどういう状況をつくり出そうとしているのか。例えば、今アメリカと中国との軍事力の関係あるいは軍事的対応関係の中で、中国が軍事力を強化している背景に何があるのかという認識が必要だと思います。  例えば中国が、私が先ほどから言っているのは、日本に対する侵略とかそういうことのためにやっているのか、それとも、ある意味ではアメリカの軍事的圧力に対抗するために軍事力に力を注いでいるのか、そういう見方をしていく必要がありますし、特に北朝鮮に至っては、何といいますかね、戦争をする能力があるとは到底思えない今の状況だと思います。つまり、日本が例えば外国から攻められるのかどうなのかというときに、日本を攻める理由と能力がなければなりません。そのときに、例えば北朝鮮の軍事力というものをどのようにとらえるのか。じゃ、例えば韓国の政府、三十八度線、停戦ラインを境にしてにらみ合っている、そこが今変わろうとしているのは何なのか。  そういう観点から私たちも考えていかなければいけないわけで、北朝鮮がハリネズミのような形で構えているのは、外へ打って出るというよりは攻撃されることへの恐怖心であろうと私は思っています。そういう恐怖心を取り除いていくにはどうすればいいのか、そこからが安全保障の問題の出発点ではないか、そのように思っております。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 それも一つの考え方だということを私は否定するわけではありません。しかし、これはいろんな角度からやっぱりバランスよくアプローチしなくちゃいけない問題でありまして、一つの立場だけで私は正邪を云々しちゃいけないというふうに思っていますので、質問は、それはやめたいと思います。  ただ、もう一つ最後に聞きたいのは、簡単で結構なんですけれども、冷戦終結後における、現在における国連の役割、これはいろんな理想型とかなり違ってきているわけですね。その国連の役割についてどのようにお考えでしょうか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 国連の役割、具体的にはどういう御質問でしょうか。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 国連軍を派遣するわけにいかない、安全保障理事会の構成の問題もありますし、それから国連の決議抜きで多国籍軍を派遣するとかいう、いろんな問題があるわけですね。それから、大きな国も小さな国も一票だとか。  国際連盟時代の反省に基づいて国連が十分機能しているかどうか、それについてちょっと聞きたかったわけでございます。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 国連の役割が国連が設立された当時と、随分理想としたことと変わってきているのは事実ですけれども、特に大国、例えばアメリカにおける国連無視とか、例えば拒否権の問題にしても、当初はソ連側が多かった、しかし後半になるとアメリカ側が多くなってくる、そういう状況があります。  それで、特に大国が恣意的に軍事力を行使するようなことについて、やはり国連が歯どめをかけていく必要というのは十分あるのではないかと思います。  あと時間がありませんので、十分に詳しい話ができませんけれども。

入澤肇自由民主党・保守党

○入澤肇君 どうもありがとうございました。  終わります。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 民主党の柳田でございます。  ちょっと質問始まる前にお伺いしたいことがあるんですが、お二人に。  この参議院、つい先日、問責を否決しました。一週間前には衆議院で不信任案が否決されまして、報道では表面と水面下ですかね、表と裏が違うといういろんな報道がありましたけれども、この森内閣に対する不信任案の国会の中における行動に対して、お二人はどういうふうにお感じになりましたか。では、新崎さん、大沢公述人、よろしくお願いします。

須藤良太郎自由民主党・保守党

○理事(須藤良太郎君) どうしましょうかね。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 新崎さん、大沢さん。

須藤良太郎自由民主党・保守党

○理事(須藤良太郎君) これは、御承知のように、外交・防衛、社会保障でございますので、ちょっと不適当と考えますので……。(発言する者あり)  速記をとめてください。    〔速記中止〕

須藤良太郎自由民主党・保守党

○理事(須藤良太郎君) 速記を起こしてください。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) もう一度言っていただけますか。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 今週、当院におきまして問責決議が否決されましたよね、否決。先週は、衆議院において不信任案が否決されました。報道ではいろいろと言われていますけれども、公述人のお二方、この国会の中における行動を見てどういう御感想をお持ちになりましたか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 一言で言えば、あきれています。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) これでまた株価が下がるなと思いまして、そのとおりになりました。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 多分こういう状況というのは安全保障の問題も経済も社会保障の問題もいろんな面に波及するんだろうなと。つまり、政治がどれほど責任を持ってどれほどの行動力をするかということがいろんな面にかかわってくるんだろうと思って、最初お聞きさせてもらいました。  公述された順番に、まず新崎先生にお伺いしたいんですけれども、政治の責任、いろいろありますけれども、私は、一番大きな責任の一つは国民の生命、財産を守る、これは政治が行うべき一番大きな責任の一つだと思うんですけれども、先生、どう思われますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) まさにそのとおりだと思います。ですから、例えば安全保障の問題も、国家の立場と国家を構成する国民自身、例えば基地と同居させられている沖縄の民衆の安全を抜きにして国家の安全というのはあり得ないというように私は考えています。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 そこで、後ほど集団的自衛権についても質問しようとは思っているんですが、個別的自衛権というのがありますよね。これは、先生、当然あってしかるべきだというふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。要するに、日本が軍事力を持って国民の自衛、守ることは当然行われるべきであると。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 抽象的レベルではそうだと思います。ただ、抽象的レベル、つまり集団的自衛権とか個別的自衛権とか言う前に、先ほどの質問とも関連しますけれども、前の方の質問とも関連しますけれども、具体的に国が自衛するとはどういうことなのか、そのことの具体的な確認を抜きにして、私は個別的自衛権だとか集団的自衛権だとか抽象的法律論議はやらない方がいいだろう、私はそう思っています。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 なかなか難しい返事でちょっと戸惑っているんですけれども、ちょっと話題を変えますね、今度。  今、EU、ヨーロッパですね、EUが経済や政治、さらには安全保障の面まで一体化といいますか一本化といいますか、まとまってやろうということでもう既に始まっていますね。多分、軍事力ももう一本化しようということが発表されましたし、その方向で動いているんですけれども、先生、このEUのこういう行動、特に安全保障の面ですけれども、どういう評価をお持ちでしょうか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 共通の利益を国境を越えて見出しながら国境を低くしていくというのは、やはり我々が共通して目指すべき問題だろうと思います。ですから、EUの問題を今挙げられましたけれども、私たちとしては、一番身近なところでは南北朝鮮、朝鮮半島と例えば日本の関係をどのようにつくっていくのか、共存していく立場からそういうことを一つ一つ積み重ねていく、そのことが必要だろうと私は思っています。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 そこで、EUが国境を越えて各国に対して、あなたはこれが得意だろうからこの辺とか、こっちはこうだろうからと、いろいろと考えながら一つの軍隊をつくったと思うんですね、つくろうとしているんだろうと思うんですよ、EUの中の。それは、そこに加盟している国々の安全保障をどう守るかということがあるからそういった軍隊というのをつくったわけですよね。既につくろうということでもう始まっていますものね。  こういう動きについては、それはいいことだと。それとも、そんなEUが軍隊なんか持つ必要ないじゃないか、国連に任せればいいじゃないかと。国連の第何条かちょっと忘れましたけれども、国連軍と規定があるんだし、そっちに任すべきで、EUといえどもそういった軍隊、力を持つ必要はないんじゃないかと。この辺はどう思われますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) そういう問題についていえば、それは軍隊を持つかどうかということよりは、私は、やはりその前提としてある、共通の利益を追求する、そのことによってその地域の紛争の種をなくしていくという努力をしているという意味で評価ができると思います。  国連に確かに国連軍という規定がありますけれども、じゃいきなり飛躍して国連軍が創設できる状況にあるかといえば、これは何十年先のことかわからない、現在の世界情勢を考えれば。その場合に、一つ一つ国家の軍隊とかそういうものを超えた存在にしていくということは、それはむしろそちらの方が国家主義的な利益を国家の軍隊が防衛するというような形でせめぎ合うよりはよりベターだとは思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 こういうEUの動きというのは、集団的自衛権の行使なんですよね、我々が言う。つまり、集団で自分たちの安全を守ろう、そのために必要なものは出しましょう、共通の利益を守るためにみんなで力を合わせましょうと。これが集団的自衛権だと私は認識しているんです。  そうしたときに、日米関係、利益は共通なんですよね。もうここまでアメリカの経済、日本の経済、二つ考えたときに、これが違う利益かなと、もうどちらかというと共通の利益になりつつあるのではないか。昨今の経済を見ますと、アメリカがきょうも、きのうもそうでしたけれども、株価が落ちてくると日本も引きずられて落ちるし、最近ちょっとアメリカが上がっても日本が上がらなくなった不思議な現象はあるんですけれども、アメリカや日本というのはもう既に共通の利益というものがあるのではないのかなと私は思うんですけれども、この利益という面について、先生、日米関係をどう思われますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 今、EUの問題からいきなり日米関係に飛んでいますけれども、これは質的に全然違う問題だと思っています。EUのように一緒にやるのが集団自衛権だと、だからアメリカと日本との関係でも集団自衛権だという話にはならない。それほどアメリカの経済の仕組みと日本の経済と、連動はしていますけれども、共通の利益を持っているでしょうか。  私たちが地域的な平和とかそういうことを考えていく場合には、私たちがまず第一に考えなければ、朝鮮半島の例えば韓国であったり朝鮮民主主義人民共和国であったり、そういう地域から広がっていく、先ほどのEUの論理でいえば、そういう中で国境の高さを減らし共通の利益を追求するという話を私はしていたのであって、アメリカと日本というのは、相互の利用関係はありますけれども、戦後の歴史をずっとたどってみればわかりますけれども、決してそもそも出発点から共通の利益を持っていたとは思えません。  例えば、あの敗戦直後からの歴史、それを今引きずっているところがあります。例えば、アメリカを中心とする連合国軍、日本の占領軍が日米安保条約によってそのまま安保条約に基づく在日米軍と姿を変えました。沖縄では、沖縄を実力で占拠した米軍がそのまま軍政をしき、それが安保条約に基づく軍隊になっています。彼らが日本とアメリカの共通の利益を守るために沖縄にいるとお思いでしょうか。私は、そういう意識がないからこそこういう問題が起こっている。ここに共通の利益というものはあり得ない。  私たちが追求すべき共通の利益は、朝鮮半島や中国やフィリピンや台湾、そういうところとどのように共通の利益を私たち自身がつくり出していくか、そういう中でできるだけ軍事力に依存しない平和をつくるにはどうすればいいか、そういうことが追求されていかなければいけない。  それがいわば、もしヨーロッパに起きている地域的、広域的な統合の動きを参考にするとするならば、私たちは文化的な背景とかそういうのはヨーロッパと大分違いますけれども、そういうものをしんしゃくしつつ目指すべきなのはそちらであって、いきなりアメリカとの関係、共通の利益とか、例えば先ほどの私が紹介した論文の中で成熟した日米関係のモデルは米英関係であると言っていますけれども、米英と日米では根本的に文化も経済的利益も歴史的背景も違っていると思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 安全保障の条約の中に文字どおり安全を守ろうという条文もあるんです。経済の分も書いてあるんですよ。そういう意味では、私は共通の利益を目指しているのかなと思っているんです。  日米協定というのは私はおかしいと思っているんです、実は、対等じゃないから、基本的に。アメリカと日本でありながら、アメリカの方が余りにも強過ぎる、日本は弱過ぎる、だからこれを対等にすべきじゃないのと思うんですね、私は。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 地位協定の話ですか。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 はい、すべてを。地位協定じゃなくて、安全保障の問題で余りにもアメリカが強過ぎる、全般にわたってですけれども。日本は余りにも弱過ぎる。その一つのあらわれが地位協定にも出ているんだろうと私は思っているんです。これを対等に持っていけば日本の言いたいことも言える。その裏づけをどうつくるかといったときに、私は、日本もそれなりのことをしなきゃならない。すると言ったときに必要なことは、日本の憲法を守るということと、もう一つは世界共通の集団的自衛権の行使ができると、日本もやりますと、ただし制限は憲法がありますよというふうに持っていって初めてアメリカと対等に話し合いができて、地位協定も変わるし、沖縄の軍事施設もいなくなっちゃうんじゃないか、全部がいなくなるとは思いませんけれども。アメリカの軍事の主力というのは、今はもう空母を中心とした海兵隊ですからね、ほとんど。いろんな地域に行って、ほとんど空母を中心にして何そうか行って、そこから飛行機飛んでやっていますからね。  というふうに持っていければなと思っているんですが、そう言うと、アメリカの今のブッシュさんと同じ考えじゃないかと言われるかもしれませんけれども、その辺は先生どう思われますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 質問の御趣旨をきちんと僕は理解しているかどうかわかりませんけれども、アメリカの世界における地位あるいは力というのは、経済的にも軍事的にも非常に大きいものがありますから、アメリカを無視して何かということはできないと思いますが、今の御質問の趣旨では、常に世界にまずアメリカありきというふうに受け取れます。  つまり、我々が考えなきゃいけないのは日本の立場であり、その日本の中にあるアメリカ軍基地が集中している沖縄の民衆の安全をどう保障するかという問題だと思います。そのときに、今おっしゃったように、空母云々とか話がありましたけれども、なぜ海兵隊なのか、海兵隊がなぜ日本にこれだけいなければいけないのか、そしてそれが沖縄に集中しなければいけないのか、そういう問題を解決して初めて次の議論ができるのであって、それを抜きにして一遍に集団自衛権でアメリカと対等だとか。  ですから、安保条約のどこをどう変えたら対等になるのか。例えば安保条約の第六条にアメリカは日本に基地を置くことができると書いてある。じゃ、対等にするから、アメリカに日本の基地を置くことができるとすれば対等なのか。つまり、対等とか平等不平等などと言うときに、やっぱり具体的に、じゃ条文のどこが、安保条約のどこが不平等であり、どうすれば対等になるのか。明らかに不平等なのは、日本にだけ基地を置く権利をアメリカが持っているところであります。そういうことをやっぱり踏まえないと議論は先に進まないだろうと思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 ちょっと説明が悪かったかもしれませんけれども、今はアメリカ主導で日本は追随だと、いろんな面で。これを日本は対等にすべきだと。物が言えるようにしたいと。しかし、言うためにはその裏づけが要るわけですね。その裏づけを我々がしさえすれば沖縄の問題も解決できるんじゃないかと。  なぜ沖縄にあるか。アメリカは今、空母を中心としたのが主力なんですよ。そうすると、沖縄になくてもいいんです、実は。でも、沖縄を、日本を守る力を日本がまだまだ持っていないから、じゃアメリカが出てきてやってやろうじゃないかということも現実的にはあるわけなので、時間がちょっとなくなりましたからもうやめますけれども、要するに僕は対等にしたい、対等にして日本の権利、言いたいことを全部言いたいというふうに思っているんです。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 対等にする、つまり何を対等にするのかが一番問題なんですね。  それで、安保条約でアメリカが対等でないのは、なぜ沖縄にそうなっているかといえば、日本にまだまだ日本を守る力がないからだとおっしゃいました。本当にないですか、日本には。どこから攻められることを想定して日本には守る力がないとおっしゃっているんでしょうか。それから、アメリカがいることによって日本が守られているでしょうか。どこから守られているんでしょうか。例えば、沖縄にいる米軍がこの過去五十年間、日本を守ったり、あるいは沖縄を守るために行動したことが一度でもあったでしょうか。それはないんですね。  むしろ、例えば沖縄における自衛隊と米軍の役割でいえば、沖縄の米軍基地も防衛するのは自衛隊の役割とされています。そして、アメリカがやっているのは攻撃力、例えばどこかへ出かけていって攻撃をするということです。決して日本を守るためではありません。日本を守る力が弱いからアメリカが日本を守ってくれているわけではありません。アメリカの基地を自衛隊が守っていて、アメリカは安心して外を攻撃するという、そういう形になっている。これがやっぱり具体的現実です。そのことによって沖縄の民衆が被害をこうむっている。これをどうするかが我々の課題なんです。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 要するに、沖縄をどうしたいかというのも一つあるわけですよね。なぜ沖縄に米軍基地がある必要があるのか、なくたっていいじゃないか、ないためにはどうすればいいんだと、日本が、ということを少し言いたかったのでありますけれども。  ただ、最初の、私に対する質問がありましたからお答えしますと、例えば与党を含めて民主党の中でも有事法制という議論を実はやっているわけです。まあ国名を挙げることはしませんけれども、ある国のテロリストが日本に入ってきて何かしでかしたときに果たして自衛隊は動けるのといったら、ほとんど動けないんですよね、存在するだけで。  だから、よく考えてみると、今、先生がおっしゃったように、米軍を日本の自衛隊が守っているから米軍は気持ちよく外へ出られるとおっしゃいましたけれども、その自衛隊が米軍を守れるだけの法律が実は日本にないんですよ。本当に守るんだったら、これはもう全部超法規的処置ですよ。法律はありませんけれどもすべて超法規的でやりますと。それしかないんです、今。  だから、そういう意味でもいろんな体制を整えていく必要が私はあるんだなと、そういうふうに思っているんです。  二分しか、あっ一分しかなかった。最後、済みません、大沢先生にちょっと聞きたいのは老人医療のことなんです。さっき男性稼ぎモデルと言われたけれども、僕は化石のこと、昔から生きている化石と思って、ああ私のことかなと思ったりしたんですが、これは冗談ですけれども。  老人医療費について、先生、何か御意見があったら教えてください。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 老人医療費は、御承知のように、現在、総額三十兆円の国民医療費の三分の一を占めておりまして、今後にわたってふえていくというふうに予測をされております大問題であることは間違いないわけでございまして、この問題をどう解決するかについては、いわゆる独立型とそれから突き抜け型という二種類の提案がなされているということも御案内のとおりかと思います。  私の考えは、その独立型でも突き抜け型でもなくて、むしろ医療保険というものを全国民が個人単位で加入する大きな制度にしてしまうことでございます。  このような制度にしますと、しかしどうやってこの乱脈な医療といいますか、過剰な診療が行われることをどうやってチェックしていったらいいのかという問題は当然起こります。そのことについては地方公共団体やそれから民間のNGOなどが第三者機関として医療費のチェックをしていくというような、下からのチェックの体制というのが必要ではなかろうかと思っております。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 ありがとうございました。

益田洋介公明党

○益田洋介君 両公述人におかれましては、お忙しい中、本当にきょうはありがとうございます。  まず最初に、新崎公述人にお伺いしたいと思います。  先生の今回の公聴会に先立ちましてさまざまな論文を読ませていただきました。中で私が一番感動しましたのは、ちょっと古くなりますが、一九九二年の五月十九日のエコノミストでございますが、その中で先生は、天皇を中心とする大和の歴史観に北と南から風穴をあけたいという、これはNHKの大河ドラマを当時手がけた吉村芳之さんという演出家が意見を述べられています。そこで、復元された首里城を舞台として、当時十七世紀の琉球を主題にした「琉球の風」という、これは陳舜臣さんの原作でございますが、を放送すると。これは、南から風穴をあける、歴史観にですね、という観点から立っている。  ですから、もう一つやはり、これは仮題でございましたが、「奥州藤原四代」というのを数カ月後に放送して、これをタイアップさせて、北と南からこの歴史観に風穴をあけるんだということで、単一民族とか単一文化という偏狭な歴史観を破るために琉球と蝦夷を位置づけてこそ日本の歴史が豊かになるんだと、こういう発想でこの二つのドラマをつくられたと。  先生、この考え方、どういうふうにお感じになりますか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 私がもう忘れているような古い文章を読んでいただいてありがとうございます。  ただ、そこに、おっしゃったのはそのテレビドラマの制作者の意図を引用しているんだと思いますけれども、私自身もやはり先ほどの質問にも国境を低くしてという話を何回も出していますが……

益田洋介公明党

○益田洋介君 国境の垣根。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) はい、垣根を。  それで、特に日本というのも多様な文化圏から成り立っている、その一つが例えば沖縄、琉球であったり、例えばアイヌの文化であったりすると。それの存在の上に多様性が認められることが日本というものの文化を豊かにするのだという点では、そこに今引用された発言と基本的には私も認識を同じくしています。  あと、何か質問の趣旨がそこにとどまるのか、その先を求められているのかよくわかりませんので、とりあえずそれだけお答えしておきます。

益田洋介公明党

○益田洋介君 ありがとうございます。  沖縄は何回か訪ねさせていただきましたが、そのたびごとに新しい文化的な発見、それから日本本土と共通しているところ、また独立的な、あるいは異質性というものを見つけて非常に日本という国の文化の縦断的な豊かさというのを感じていつも感銘しております。    〔理事須藤良太郎君退席、委員長着席〕  先ほど先生はリチャード・アーミテージとナイのリポート、これ二〇〇〇年の十月にたしか発表されたものを引用されました。そこで興味深いのは、英米同盟は日米同盟のモデルであるということを論文の中で二人が述べていると引用されました。私は、この二つの同盟の中には共通点もあるでしょうけれども、大変に違った点も幾つか列挙することができると思います。  例えば、日本は非核保有国でございますし、永遠にそういう立場を貫こうとしている点が違うこと、それから英米同盟というのは第二次世界大戦の勝者同士の同盟であると、それに対して日米同盟というのは勝者と敗者の同盟であって、言ってみれば復讐のサイクルを阻止するため、抑止するために出発した同盟であるという立場もございますし、さらには日本は国連安保理の常任理事国ではないし、将来的にもこれはいつになるかわからないというような立場の違いもある。さらに加えて言うならば、政策の表現の貧困さが日本の防衛庁、きょうは防衛庁の人は来ていらっしゃいますね、特に制服組の中に、言語の貧困さを含めて、政府の政策の決定とか政策の方針を伝えるということに非常に不得意であるというようなことが挙げられますが、本質的にはこのリポートの中で、同盟同士の本質とばねを、英米同盟のそうした本質とばねを日米同盟の中に根づかせるべきだという提言があります。  この点、先生、いかがお考えでしょうか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 私が先ほど引用して、それとアーミテージ等が成熟した日米関係というもののモデルを英米同盟に求めていると言いましたのは、まさに今いろいろ御指摘になりましたように、本質的に違うものを、例えば英米の文化的な差とか、そういうものと日米の、英米と日米との差などというのを完全に無視して、軍事的あるいは政治的利益だけを強調することによってそういうことを組み立てていくことの危険性を指摘したつもりでありまして、今のようにいろいろな形の違いがある。  私たちは、やっぱり一番、先ほどからの繰り返しになりますけれども、近隣諸国との関係をどうしていくか、そこがやっぱり常に日米関係と一緒に視野の中に入れておかなければいけない部分であろうと思います。  例えば、最近では教科書の問題をめぐって過去の清算云々で、また韓国とか北朝鮮、中国などと歴史認識が共有できない問題が近隣との間にも根強くあるわけですね。こういうものをどう克服していくかということがある意味では安全保障というものの根本にあるものであって、そういうことを無視して日米関係とか、それが英米関係をモデルにすべきなどという議論というのは極めて観念的に過ぎると私は考えています。

益田洋介公明党

○益田洋介君 大沢先生にお伺いしたいんですが、先ほどの公述の中にもありました社会的セーフティーネット、これは二〇〇〇年の二月に先生がエコノミストに発表された論文の中にあります。そこで、特に児童手当、まずセーフティーネットの中で第一に高齢者と障害者に年金の保障をするミニマム年金を導入すべきである、第二に児童に義務教育期間中、食、衣を賄える額の児童手当を親の所得による資格差別なしに支給するという御提案、所得税の年少扶養控除とか母子世帯への児童扶養手当、さらに第三では一人一保険証、これは先ほども先生論及されておりました。  私、この中では、第二の児童手当を厚くせよというこの御主張に対して、若干の敷衍をお願いいたします。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) はい、ありがとうございます。  現行の児童手当というのは、御承知のように所得制限がついているということと、支給の年数が短いということで、かなり子供を持つ世帯に対する経済的負担の緩和措置としては限界があるということは御承知のとおりだと思います。  私は、児童手当につきましては所得制限を取り払って、少なくとも義務教育期間中、あるいは望むらくは全日制の教育を受けている期間中は少なくとも衣、食を保障できるぐらいの、子供の分の食べることと着ることというのを保障できる程度の額の児童手当が支給さるべきであるというふうに考えておりまして、その財源の一つとしては所得税の扶養控除というのが考えられますし、それからオーバーラップする制度として母子世帯等に対する児童扶養手当などの制度もありますから、こういったものを統廃合して充実をしていくことが必要だと考えております。そのときの考え方としましては、これは親に対する経済的負担の軽減ではなくて子供が育つことに対する支援というふうに改めるべきだと考えております。そうであってこそ所得制限というのは意味がないというふうになると思います。  このような児童手当制度については、もちろん所得制限を外すことはばらまきであるという批判がございます。と同時に、他方で児童手当を払ったからといって出生率が上がるというような効果が見込めるのかという疑問の声もあるんですけれども、諸外国で児童支援の措置というのが発達をしている、充実をしている国はそのまま出生率が高いという相関関係よりも、むしろ八〇年代、九〇年代において出生率が高まった国、これは充実した児童支援の政策パッケージを持っている国ということと一致をいたします。日本は全然充実していないので出生率は下がったと、こういう関係になっているわけでございまして、効果の点においても言われるほど薄いというふうには思っておりません。  いずれにしましても、これは産ませるための政策ということではなくて、子供が育つことを社会が全体として保障をし支援をする、そして次の世代の社会の担い手になってもらうということにふさわしい制度なのではないかと思っております。

益田洋介公明党

○益田洋介君 ありがとうございました。  イギリスとかスウェーデンで行われているかかりつけ医、医療費の問題でございますが、伺いたかったんですが、時間が参りました。  ありがとうございました。

宮本岳志日本共産党

○宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志です。両公述人の御出席に感謝を申し上げます。  我が党は、日米安保条約をなくして基地のない平和な日本をつくるということを掲げておるわけですけれども、同時に沖縄の苦痛の解決、これは安保条約の終了以前にも、今直ちに行うべきことだと考えております。  そこで、新崎公述人にお伺いしたいんですけれども、在日米軍基地の問題について、米軍駐留は日米安保条約を結んでいる以上、同盟国の義務であるという意見がありますけれども、先生はどのようにお考えになりますでしょうか。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) アメリカが戦後、現在でもそうですけれども、同盟関係にある国というのは恐らく世界で五十を超えているだろうと思います。しかし、米軍が少なくとも一万人以上大規模な形で駐留をしている国というのは幾つもありません。アジアでいえば日本と韓国だけです。ヨーロッパでも、たしかドイツ、イタリア、そして先ほどから話題に上がってきているイギリス、それぐらいでしょう。アジアでいえば、フィリピンとの間にもアメリカは現在でも相互防衛条約を締結しています。オーストラリア、ニュージーランドとアメリカとの三国の間の条約もまだ生きています。しかし、ここにはほとんどアメリカ軍というのは存在しません。百人単位じゃないでしょうか。  そういうことからいえば、同盟の内容が問題なのであって、相互防衛条約を結んでいても何ら米軍を駐屯させるのが義務であるなどということは、これはあり得ない、それが現実として示されております。

宮本岳志日本共産党

○宮本岳志君 そういう点で、沖縄の現実、本当に沖縄の苦痛というものを取り除くことは国民的な課題だというふうに私どもは思っております。  ところが、政府が今推し進めているSACO報告というものは、多くが米軍基地の機能強化につながる基地の沖縄県内のたらい回しになっていると思うんですね。基地の被害もなくならず、沖縄の豊かな自然も破壊し、沖縄の基地問題の解決策にもならないと。また、米軍のために支出している思いやり予算は、海兵隊を含め米軍が沖縄、日本に居続ける理由にもなっていると思います。  こういった問題について新崎先生のお考えをお聞きしたいと思います。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) これは、沖縄における北谷町というところの議会が決議しているアメリカ海兵隊の撤退を要求する決議がありますけれども、少なくとも、例えば安保条約が現在存在している中ででも、アメリカの世界戦略の中からも、その立場に立っても必要性をほとんどもう失っているのが海兵隊です。その海兵隊をなくすだけでこの基地の再編統合の問題とか、それから米兵の犯罪の問題というのはかなりの程度に解決できるということは間違いありません。  じゃ、なぜそういう余り必要もない軍隊がいるのかといえば、今のお話の中に出てきた思いやり予算というのが非常に大きな役割を占めています。これはアメリカの議会でアメリカ政府の役人がもう繰り返し述べていることですけれども、思いやり予算というのがあるおかげで米軍の駐留経費の七十数%は日本が賄っている、したがってアメリカ国内に米軍を置いておくよりも日本に置いておく方がある意味では安上がりだ、そういうことが基本的にあって、彼らがぎりぎり軍事的に必要だと判断する以上の軍隊が日本に存在し、それが過去の経緯の上で沖縄に居続けているということです。  それで、かつてこの海兵隊というのは日本にいたということを思い出していただきたいと思います。旧安保条約のころ、つまり日本が独立した直後には日本にいたわけです。ところが、海兵隊の犯罪その他から日本において反米感情を非常に高めるということから、アイゼンハワー・岸共同声明の中で日本から地上戦闘部隊を撤退させるという合意が成立しました。そして、そのとき日本ではなかった沖縄に日本から米海兵隊は移駐したのです。そして、今、北部にある基地というのは、ほとんど海兵隊の基地というのはその段階でつくられています。そして、それが今そのまま惰性的に居残っている。それが今の問題をつくり出している。もともとはここにいたんだ、ここから追い出されたんだ、民衆によって。そして、日本ではない沖縄に行って居座り続けているんだ。その沖縄が日本になってもなおかつ居座り続けているのだ。この現実を認識していただきたいと思います。

宮本岳志日本共産党

○宮本岳志君 先生が公述でもお触れになりましたけれども、一月のヘイルストン在沖縄米軍四軍調整官の発言というのが大問題になりました。この司令官は罷免要求すべきですが、政府は罷免の要求すらしておりません。さらに、米軍人の放火をきっかけに起きた地位協定の改定の問題についても、政府は運用の改善で対処しようとしております。  こうした日本政府の外交姿勢は極めて卑屈で自主性を欠く、沖縄県民、日本国民の立場からは対処していないということを示していると私どもは思うんですけれども、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 一言で言えばそのとおりですということになりますけれども、別に四軍調整官を罷免しろとかやれとかいう問題よりも、やっぱり私は重要なのは地位協定の改定だと思います。  地位協定というのは余りにも時代に合わない。特に環境破壊の問題とか環境汚染の問題とかについて、韓国が今努力している程度も内容を持っていない。ですから、先ほどいろんな同盟国があると言いましたけれども、例えば地位協定で、米軍を駐屯させているドイツと日本の地位協定の間には大きな差があります。特に環境問題において国内法が適用できないという点では格段の差があります。これは九〇年代に入ってドイツが地位協定の改定をやったからです。  ドイツでできることがどうして日本でできないのか、こういうことを、それがやっぱり一番大きな問題である、屈辱的云々ということで言えば。一人の司令官を別に罷免要求するかどうかという話よりは、むしろ協定そのものをきちんと、少なくとも例えばドイツ並みに変えるというのが当たり前のことだと思います。

宮本岳志日本共産党

○宮本岳志君 まさに先生おっしゃるとおり、植民地的とも言える状況だと思いますし、私どもも地位協定の改定ということが本当に切実に求められているというふうに思っております。  ありがとうございました。  次に、大沢公述人にお伺いをいたします。  朝日新聞の三月四日付などによりますと、介護保険の給付について「市町村七割、予算下回る」というふうに報道されておりまして、それで在宅サービスが低調だと。その原因は、「介護保険担当者が挙げた理由で最も多かったのが「自己負担を気にして利用が抑制された」」というふうに報じられております。その後、日経なども「在宅利用七割どまり」というふうに報道しておりますけれども、私どもは、やはりこの問題の大もとには低所得者層への手当てが不十分だからではないかと考えるんですけれども、大沢公述人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 御質問ありがとうございます。  実は私自身、一月下旬の朝日新聞夕刊に介護保険の実施状況について短い文章を寄せておりますけれども、その中では、今、議員御指摘の調査は朝日新聞社の全国調査でございますけれども、私の記事の中では、厚生省自身が行った七月時点での調査に基づいて、利用率が四割を切っていると。利用率と申しますのは利用限度額に対する実際の利用料、利用額の割合でございますけれども、四割を切っているということが厚生省自身の調査によっても出ております。その後、若干利用率は上昇しているようではありますけれども、やはり期待されたほどの利用率にはなっていない。  この問題について、有識者の中には、利用限度額というのはかなり潤沢であるということをおっしゃる方もいらっしゃるんですが、それは非常におかしい見方なのではないか。つまり、あり余るようなサービスをふんだんにつけて利用限度額が決められたというのだったらそれ自体が大問題ですが、そうではなくて、必要にして不可欠のサービスの量から利用限度額は算出されているはずでございますから、その利用率が四割を切るというような事態はもうゆゆしきことと考えなければいけないのですけれども、この問題について厚生省の関係者や有識者の問題意識というのは少し弱過ぎるのではないかというようなことを書かせていただいたんですけれども、その理由として、この朝日新聞社の調査では、自己負担が気になっているのだろうというのもほぼ予想していたことでございましたが、そのとおりに出てきたわけでございます。  今後は、例えば所得階層で保険料の額を変えておるわけです。低所得者には低い保険料というふうに設定しているんですけれども、その所得階層によって利用率がどのように異なっているのかというような実態調査が進めばさらにこの問題の原因が明らかになるのではないか。  いずれにしましても、現行の介護保険制度はいわゆる低いレベルでの均衡ということにとどまっていまして、このままですと家族の介護の負担というのは解消することはおぼつかないわけですから、これを何とかして高いレベルの均衡に持っていくためにさまざまな努力が必要かと思われます。

宮本岳志日本共産党

○宮本岳志君 ありがとうございました。  終わります。

照屋寛徳社会民主党・護憲連合

○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。  本日は、新崎、大沢両公述人には貴重な御意見を拝聴させていただきまして、感謝を申し上げたいと思います。  先に新崎公述人にお伺いをいたします。  私も基地の島沖縄に五十五年生きておりまして、公述人がおっしゃった問題点、よくわかるものがございます。一点、日米地位協定の改正問題について公述人の意見を聞かせていただきたいのでありますが、御承知のように、日米安保条約第六条に基づいて日米地位協定が締結をされておるわけであります。私はかねてから、日米地位協定というのは、一つは独立国家の主権の視点で全面的に見直しをすべきである、もう一つはやっぱり国民の人権の視点で地位協定を見直すべきである、さらに公述人もおっしゃっておりました、環境の視点からの日米地位協定の改正ということがぜひ必要だろうというふうに思っております。  連続する米兵犯罪で、ややもすると地位協定十七条五項の米兵の身柄の引き渡し問題というのが大きく論じられるところでありますが、それ以外にもさまざまな問題点をはらんでおります。  公述人もおっしゃいましたように、大田県政、稲嶺県政になって二度にわたって具体的な体系的な改正要求をしておるわけでありますが、なかなか政府は日米間で交渉して地位協定を変えようという決意をなさらないんですね。運用の改善で事を済まそうと、こういうふうなところがございます。  それで、公述人は、日米地位協定の改正、どのような点を特に改正した方がいいというふうにお考えなのか、改正を求めるときの視点などについても意見をお聞かせいただきたいと思います。  もう一つは、海兵隊の削減問題でありますが、公述人が紹介いたしました県議会の決議、これは海兵隊の削減等を含んでございます。それから、北谷町や読谷村議会の決議は海兵隊の撤退まで踏み込んだ決議をしているわけでございまして、今や海兵隊削減というのは私は県民の総意ではなかろうかと、こういうふうに思っておるところであります。ところが、これについても、外務省の考え方というのは、海兵隊の削減を求めるなんというのは感情論だ、感情的過ぎると、こういうふうなことを外務大臣がおっしゃっているわけですね。  それで、その海兵隊の削減を求めるいわば県民世論、県民の総意というのはそういう感情論だというふうに考えている今の外務省の考え方について公述人はどういうふうに思っておられるか、お聞かせください。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 前段が大沢公述人で、後段が新崎公述人ですか。

照屋寛徳社会民主党・護憲連合

○照屋寛徳君 両方、新崎公述人です。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 最初は地位協定の改定の問題ですけれども、具体的に、今手元に資料を持っていませんから、どのような点をということでいえば、基本的には沖縄県が提起した、約十項目だと思いますけれども、その点に尽きると思っています。  それで、九五年の大田知事の段階と今度の稲嶺知事の段階で変わっているのは環境の問題がつけ加わったことである。それで、この基地による環境汚染というのはその間で非常に大きくクローズアップされていますので、韓国でもそれが大きな問題になっているのは御承知のとおりです。  どういう視点からかというのは、なぜその改定を日本政府自身がやろうとしないのか、積極的にならないのかということでいえば、先ほど言ったように、それを持ち出すといわばほかの条件を取引材料として出されることを懸念しているというのが一つあると思います。それから、アメリカ側にとってみれば、この日米地位協定の改定は直ちに韓米行政協定の改定につながりますので向こうでも大きな声になっている、そこへ反映していくのを恐れているということだろうと思います。したがって、私たちはなぜそこに差がなければならないのかということをまず問題にする必要があると思います。  したがって、この改定の可能性とかそういう問題を探るときにも、ドイツ、韓国、日本、この具体的な検討などもほとんど、例えば沖縄県などは結構やっていますけれども、政府としてどこまでやられていて、そして日米地位協定の改定が難しいと、運用改善しかできないというのか、その辺が具体的に究明されなければならない点であろうと思います。  それから、二番目の海兵隊の問題ですけれども、これはもう感情論も何もないわけで、アメリカの海兵隊そのものをこのままではいけないという議論はアメリカ軍部からも出てきているわけですから、そもそも、先ほどからの繰り返しになりますけれども、海兵隊のようなものを沖縄に置いておく必然性というのは、アメリカ側の世界戦略から見ても、必要性というのはないか、あるいは最も低いし、そういう議論がアメリカの内部からも起きているのに、そこに手をつけないで感情論だなんと言うのは、とにかくこれに手をつけたくないと、それだけが先走っているからではないかと私は思っています。

照屋寛徳社会民主党・護憲連合

○照屋寛徳君 大沢公述人にお伺いいたします。  失業率四・九%、沖縄では八・三%であります。完全失業者が三百十七万人とも言われておりますが、私はこの雇用対策こそ極めて有効な景気対策になるんではないかというふうに考えますが、保育や教育、介護、環境の現場での公的な関与による雇用創出の必要性、あるいは具体的にどういう手だてがあるのか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) ありがとうございます。  いろいろな方策はあろうかと思いますけれども、今現在の非常に大きな要請でありますIT化への対応ということでいえば、成人の、大人のリカレント教育が非常に重要なのではないか。例えば、スウェーデンのような国では毎年何十万人という大人を大学に送り返すというか、帰ってもらって、そこで最新のITやその他の教育を受けてもらうということで、人材を絶えず高度化をする努力が払われております。  日本でもそういったことをすれば、ITの必要性とそれから失業率の軽減ということに一挙両得や三得になっていくのではないかと思っております。

照屋寛徳社会民主党・護憲連合

○照屋寛徳君 ありがとうございました。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 両先生、御苦労さまでございます。無所属の会の松岡滿壽男です。  全体で四分しかございませんので、本当は新崎公述人にも思いやり予算等で伺いたいんですけれども、お許しいただきたいと思います。  大沢公述人に二つほどお伺いしたいと思うんです。  宮澤財務大臣が財政は破局に近いという発言をされまして、いろいろそういう厳しい状況の中にあるんですが、先ほどのお話ですと、いわゆる社会保障税についてのお話がございました。恐らく参議院選挙が済んだら財政再建一色になって、消費税率の問題とかいろいろな議論が出てくると思うんですね。  先生おっしゃるように、保険料であれするよりは福祉目的税できちっとしていくということがやっぱり私は正解だろうと思うんですね。そのためには、かなりスリムで効率的な仕組みに日本全体をやり変えていかなきゃいかぬ、むだな経費は落としていく、これが前提でありますけれども、先生の考えておられる社会保障税というのは内容的にどの範囲のものを対象にしておられるのか、どのぐらいの税率構想でおられるのか、そしてその場合は国と地方との比率というのはどういうふうに考えておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 社会保障税という形は、現在徴収している社会保険料を総報酬制にした上で、これを社会保障税と呼んでも保険料と呼んでも性質は大して変わりませんので、そのようなものとしてはどうかという提案なんでございますが、それと同時に、所得税の比例税率部分というのは大胆に地方に税源を移譲して、その上で地方自治体がもっと責任を持ってサービス給付をできるようにしていくことが必要だと思います。  それから、中央の社会保障基金、ファンドですけれども、この管理運営については一般の政府から切り離して自立性を持たせる、その上でその管理運営に当たる人というのも選挙で選ぶというようなことをして、独立の政府としてはいかがかというのが私の考えですが、その理由は、社会保障の給付費総額というのは今や八十兆円でございまして、これはもう一般会計の総額に匹敵する額であるわけです。この額というのを、社会保険料という形で徴収され、そして給付をされているというものですけれども、これを一般の財政から切り離して独立性を持たせるということで将来への見通しをより確かなものにすることができるのではないかと考えております。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 九九年は確かに三万三千人の自殺者が出ていると。これはほとんど男性だと。だから、男女の平均寿命が、六年だったのが七年に開きましたですね。これはやっぱり不安と不況のスパイラルだけで理由づけができるんでしょうかね。この辺、ちょっとどういうふうに分析をしておられるのか、お教えをいただきたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 自殺の原因というのを調べることは大変難しくて、警視庁などの調査によれば、自殺の原因は病苦、病気で苦しいというのが原因だと言われておりますが、それはまた残された家族や他人が最も納得しやすい理由ということで表面化している可能性がございますので、必ずしも病気のために自殺をしたとは言い切れない部分があるのではないかというふうに思っております。  他方で、不況や雇用不安がどういうふうに原因になっているかについては、これは完全失業率のグラフと自殺率のグラフというのがもう怖いくらいに一致をしており、並行しているということから指摘をされているところです。  いずれにしましても、私はこれだけの人数の人が自殺をしているということについて調査研究が決定的に不足をしているというふうに思っております。  最近、厚生労働省ではその調査をしなければならないというふうに動き始めたようでございますが、かなり遅きに失しておりますし、十分な調査が行われるのかどうか、懸念をしているところでございます。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 ありがとうございました。  終わります。

高橋令則自由党

○高橋令則君 両公述人の方々には大変御苦労さまでございます。  最初に大沢先生からお尋ねしたいんですけれども、私ども自由党、私は高橋ですけれども、相当前から年金、医療、介護については保険方式では無理ではないか、やっぱり税方式でやらないとだめではないかなと思っておりました。介護になりますとますますそう思っております。  そうはいっても、これを全部トータルとして税金でやっていくというのは、やっぱりそうなると議論があるのかなと。私どもの考え方は、年金については基本的な部分だけ、それからまた医療についてはまず高齢者というふうな感覚で今取り組んでいるわけですけれども、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 基礎年金部分について、これを消費税などを財源とする税方式にし、その上で所得比例部分は民営化してはどうかという提案があることは私も存じております。  実際、それに近い改革が行われたのが、八〇年代半ばのイギリスにおいてそのような改革が行われたのでありますけれども、その結果、十年以上たって明らかになってきていることはどういうことかといいますと、恵まれたホワイトカラーのサラリーマン、男性ですね、こういう人たちはより有利な職域年金や個人年金に移っていって国家の年金は外れていったと。私的な年金とはいいましてもかなり多額の税制上の優遇措置が行われているという意味では金食い虫の制度ですが、そういうところには有利な人が移っていき、より不利な国家の年金制度に残されたのは恵まれないブルーカラーの労働者や女性であったというふうなことを考えますと、国民の中にそういう分断というのを持ち込むことがよろしいのかどうか。私は所得比例部分も含めて全国民が加入する一元的な年金制度が望ましいと考えております。

高橋令則自由党

○高橋令則君 そうしますと、それは基礎的な年金をずっとフラットにある程度、何というんですかね、全員に適用すると、二段階というんですか、そういう考え方ではなくて、それをばらばらというふうな意味ですか。  私の感覚は、二段階方式でいいのではないかという気持ちがあるんですけれどもね。それなりに基礎的な部分についてはそれだけに充実をしてやることもできるんじゃないか、こういう二段階方式でできるんではないかと。その下の分だけは、基礎的な分だけは税金でいいのではないかなと思っているわけです。そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) 私の考えております制度も、ある意味では二段階になっている部分がございますけれども、基本的には総報酬に応じた保険料ないし社会保障税を支払い、支払った社会保障税総額に等しいものを将来年金として受け取ると、物価変動分は除きますけれども、というようなことを考えていまして、その意味では応能的なシステムの年金制度を考えております。  ただ、これだけでやりますと、低所得の人あるいは就業していない期間が長かった人は大変低年金になってしまうので、そこのところはミニマム年金というような形で別財源から、例えば累進的な所得税での一般財源からそこは補うことが望ましいのではないかと考えております。  その意味で、ある意味では二階なのですけれども、議員がお考えの制度とは大分違うような気がいたします。

高橋令則自由党

○高橋令則君 わかりました。申しわけありません。  ありがとうございました。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 自由連合の石井一二でございます。  大沢先生にお伺いしますが、議論はホットな方がおもしろいと、私はそう思っておりますが、先生はいかがですか。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) はい、同感でございます。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 という御了解を得た上で申し上げるんですが、私、あなたがおっしゃっていることは空理空論で、非常に非現実的なことが多いように思うんですね。  例えば、あなたが得意とされます一人一保険証の医療保険ですが、こういう状態のもとで保険料を払わない人がたくさん出る、そしてそういう人たちが病気になった場合にどうするかということに対して具体的な提案がない。例えばまた、従来型の健康保険証の場合の被保険者本人と家族、国民健康保険の場合の世帯主と世帯員と、こういうことによる識別というものの欠陥ということに対して、なぜそれがいけないかということがはっきりされていないと思うんですね。  もっとも、あなた方の外郭論というのは、ここの「世界」にも出ていますが、四人共著で「世界」の二〇〇一年の一月号の論文、四人で書いておられますからすべてあなたの論理とは言いませんけれども、先ほども答弁でありましたけれども、医療保険の過剰診療の審査について、NGOでそれを審査するなんて言われましたけれども、十数億というような数のそういったペーパーを、具体的にNGOみたいなものが、みたいなものというのは今ちょっと消しますけれども、というような組織で、住民の代表というのはだれがどうやって決めるんですか。非常に非現実的な私は提案だと思いますよ。その辺、御意見があれば。  それから、ついでに、時間がなくなりますので、新崎先生に聞いておきます、先に質問を。  思いやり予算について、私はこれはけしからぬ、カットすべきだということをかねて申しておる一人でございます。一九七八年、六十二億円から始まって、一九八七年、例の労務費特別協定で上乗せをしたと。それで、去年は、二〇〇一年はちょっと減りましたよね、六・四%。ただ、我々が言うべきことは、具体的にどういう方法で減らすかという具体的な提案が必要だと思うんです。そういう中で、この上乗せされた労務特別協定をのけるとか、その中でいろんな分類がありますからね、種類が、これを減らすべきだということとか、一律に何ぼカットしてくれとか、具体的な提案が要ると思うんですけれども、御所見があればお伺いしたいと思います。  以上で私の質問を終わります。

大沢真理東京大学社会科学研究所教授

○公述人(大沢真理君) どうも大変厳しく、また温かい御指摘をありがとうございます。  短い文章の中ではすべてのことは書けませんので、不十分な点があったかと存じますけれども、一人一保険証の医療保険制度、これは、例えばお隣の韓国では、昨年の七月の段階で健康保険制度はすべて統合、一本化をされたということがございまして、政治にその決断力がありさえすれば決してできない夢、幻のような改革ではないということを申し上げたいと思います。  私どもが提案している改革というのは、制度的な実現可能性、フィージビリティーというのは大変高いというふうに自負しておりまして、ただし政治的な実現可能性、一体どの政党が、どういった政治家がそのことを責任を持って実行してくれるのかということになりますと、私も絶望的な気分になることが多々ございます。  そして、御指摘の、例えば下からのチェックということですけれども、これは上から一元的にチェックをしようといたしますと、大変にこれはまた費用と、それから手間のかかることになりますので、これは下からの草の根のチェック、そしてそれは場合によっては不十分であってもそういったものが育つということを、これは例えば保育所の第三者評価や認証制度、それから医療についても、下からのことをやることによってむしろ、例えば高齢者が病院を次々にホッピングしているというような、みずから自分の健康を守り、そして必要にして不可欠の医療を受けるというような下からのイニシアチブがなければとても制度はもたないと思いますので、そういった国民の姿勢を育てていくためにも、私はNGO等の組織を利用した第三者評価、認証システムというのは非常に重要だと思っております。

新崎盛暉沖縄大学教授

○公述人(新崎盛暉君) 簡単にお答えしますけれども、そもそも地位協定の二十四条か何かではアメリカ側が負担すべき経費を思いやり予算で持っているわけですね。例えば基地労働者の人件費は全額現在では日本政府が持っているはずです。こういうのが果たして必要なのかどうなのかという問題と、それからその思いやり予算の中には、どこから減らしていくかということでいえば、例えば沖縄にいる海兵隊が日出生台とか王城寺原とか、ああいうところで演習するときの移動経費が全部思いやり予算に含まれています。なぜ米軍の演習に係るそういう経費まで持たなければいけないのか。そういうことをむしろ海兵隊の撤退の問題と結びつけていくべきではないかと私は思っています。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 ありがとうございました。  終わります。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 以上で公述人両先生に対する質疑は終了いたしました。  この際、新崎、大沢両先生にお礼を申し上げます。  きょうは、大変有益な御意見をお述べいただき、かつは質問にお答えを賜りまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 速記を起こしてください。     ─────────────

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) それでは、引き続き公述人の両先生から御意見を伺います。  この際、公述人冲永、クラーク両先生にごあいさつを申し上げます。  両先生には、さぞや御多忙でありましょうところをようこそ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。時間が経過をいたしておりまして、遅くなりまして申しわけございません。  本日は、平成十三年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、先生お一人二十分程度で御意見をお述べいただきます。それから委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、教育について、公述人帝京大学理事長・総長冲永荘一君及び多摩大学学長グレゴリー・クラーク君から順次御意見を伺います。  最初に、冲永公述人から御意見を伺います。冲永公述人、どうぞ。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 本日は、かかる席で私の言を述べさせていただくということを大変光栄に存じております。  まず、ここは予算会議のようでございますので、学校会計におきまして一番今問題になろうとしている、あるいは今後問題になるであろうということは、消費税の問題であります。  御承知のとおり、学生の納付金から消費税を取ることはできないということになっておるわけでございまして、学校法人が最終の消費税の受け手ということになるわけでございまして、学生に転嫁することができない、こういうわけでございます。したがいまして、例えば私の大学を例にとりますと、経常費助成金よりも払っている消費税の方が大きい、こういうわけでございまして、これが今五%でございますが、三倍になれば大変なことになる。ヨーロッパ並みの一五%になれば、これは大変なことになるだろうということが非常に簡単に想像できるわけでございます。これは医療費についても相当程度当てはまるということでございます。  しかしながら、一般企業、いわゆる消費税を他に転嫁できる企業におきましては、消費税を他に転嫁できない場合、例えば仕入れより損して売った場合には消費税の税金が還付されるというわけでございますし、あるいは輸出業などにおきましては外国に対しての消費税は取れないということでございまして、輸出業者が最終の消費税の受け手になるわけでございますが、この場合には政府から税金が還付されるというわけで、消費税相当分が還付される、こういうわけでございます。あるいは一般企業におきましては、建物を建てるとか大きな設備をつくるとかというような場合に消費税をたくさん払うと、それが入ってくる消費税よりも多い場合には還付されるというわけでございまして、学校は学生にかわって納めているわけであるのでありますが、還付されない。非常に矛盾を感ずるということでございます。  今、法人税は年々下がる方向にあるわけでございます。あるいは利益がないところは法人税がかからないというわけでございます。我々は、消費税はコンスタントに剰余金が出ようが出まいが納めなければならないというわけでございまして、一般企業と学校法人と比較した場合には、大変不利な状況にあるということをまず申し上げたいと存じますし、将来にわたってひとつよろしく改善のほどをお願い申し上げたいと思うわけであります。それがまず第一番であります。  日本の教育という問題でございます。  日本の教育は、徳川家康が一六一五年に大阪夏の陣に勝って武家諸法度というものをつくった。そのときに、文武に武士は大いに励まなければならないということであったわけでありますが、文の方が武より先に出ているというわけでありまして、これから平和な日本をつくっていくのに、武士は武よりも文を大事にしなければいかぬというわけでありまして、藩校がたくさんできたと。同時に、民間でも塾がたくさんできていく、あるいは寺子屋が全国に津々浦々に至るまで広がっていくというわけでありまして、庶民教育が非常に盛んになったと。そして、幕末のころ、江戸の末期には日本の識字率、文盲の少なさというのが世界ナンバーワンであった。当時の最先進国のイギリスよりも日本の方が字の読める人間がずっと多かったというようなことで、大変高い文化を擁していたというのが日本の現状であったわけでありますが、一八四〇年のアヘン戦争あるいは一八五三年のペリー来航というようなことを通じまして、一八六八年に日本が明治維新に到達する。日本が中央集権国家として成り立っていくというわけでございまして、当時列強は帝国主義時代でありまして、欧州列強は植民地獲得というところに非常に血眼を上げていたという時代の中で、日本は何とか独立を保って、富国強兵、殖産興業というのが明治のスローガンでありますが、それをなし遂げ得たというわけでありまして、これは日本の文化の高さ、教育水準の高さがそれをさせしめたんだということが言えると思うわけであります。  明治十九年ですか、文部大臣森有礼が大学令ほかいろんな制度をつくりまして、日本の学校制度をつくっていくというわけでございます。それは現在のような六三三四制での単線のものではありませんで、いろいろな組み合わせの複線のシステムであったわけでございますし、そして、初等中等教育においてはいわゆる忠君愛国を徹底的に教え込む。しかしながら、大学においては、これは先進国に追いついていかなきゃならないということで、比較的自由にいろんな制度あるいは科学というようなものを学ばせたというようなことであったわけでございます。  しかし、一九二五年に普通選挙法が施行される、それに対するものとして治安維持法が置かれるというわけでございまして、一九三一年から三三年の満州事変であるとか、昭和十二年の日華事変が起こるとかというようなことで、滝川事件、京大の滝川教授が追放されるとか、東大の矢内原教授とか、あるいは河合栄治郎教授とかというのが教壇から追放されるというようなことが起こったわけでございます。そうしまして、一九四五年に日本は太平洋戦争で負けるということで、日本の教育制度は非常に大きく転換した、変わったというわけであります。  大学は、いわゆる大学の自治、学問の自由というようなものが非常に強調されるというわけでありますし、もう一つの方は、いわゆる道徳教育というようなものはもうだめだというようなことになったということでございまして、そして大学におきましては助手、要するに教職にある者全員の投票によって学長が選ばれる、あるいはその学部における全員の投票によって学部長が選ばれる。あるいは教員として採用する者については、やはりこれも教授会であるとか拡大教授会であるとかの投票によって行われる。あるいは教授の任命も、そういった教授会あるいは拡大教授会の投票で行われるというのが国立大学に行われていったというわけでございますし、それがまた私立大学にもそのような方向というものがどんどん行われていった。  これは文部省がそういった方向で進めてきたということであるわけで、行政指導によって行われてきたというわけでございますけれども、その結果どうなったかといいますと、いわゆるもたれ合い、かばい合いというような事柄が非常になりやすくなった。そして、ひどいところでは、一たん教員になりますと、投票権もありますし、首にもできないということでありまして、殊に文系においてひどいわけでありますけれども、週に二日しか来ない、そして三こましか教えない。大学というのは大体半分近く休みがあるわけでありまして、かつまた一週間に二日しか来ない、そして自分の講義が終わったら非常勤講師と同じようにいなくなっちゃうというようなことをするような先生が相当出てきたというのが事実であります。  そして、しかも給料はたくさんもらっているということでございまして、しかもまた日本の大学というのはいわゆる投票制度ということでございますので、自分の大学の出身者しか、あるいは自分の大学の出身者を多く自分の大学の教授にするということが非常にはやっておるわけでございます。  これをちなみに申し上げますと、日本で一番学生の多い大学は日本大学であり、二番目に多いのが早稲田大学でございますけれども、いずれもその教員、スタッフを見ますと、教授、スタッフは自分の卒業生が非常に多く占めておるということでございます。いわゆる閉じられた大学ということになったわけであります。  そして、その結果として何が起こっておるかといいますと、今から十三年ぐらい前に、アメリカの有名な教育学者であるゴーマンという人がゴーマン・リポートというものを書いております。これは大学を評価して世界の大学の順位を出したわけでございますが、日本の大学、東京大学はアメリカを除いて六十七番目、そしてその前には日本の大学は何もない。そして、七十番目ぐらいまでしか書いてないんですけれども、その後ろにも日本の大学は一つも入っていなかった。そしてアメリカを入れますと、日本の東京大学が百二十位であった。そして、日本の東京大学よりも前には何もどこの日本の大学も入っていない。全部で百二、三十位しか書いてなかったんですが、その後にも入っていないというような状況になったわけであります。  すなわち、非常に能率が悪い、非能率な大学ということになったということでございますし、それから昨年、スイスのローザンヌにあります大変有名なビジネススクールでありますIMDが、これは世界の競争力の順位を評価するわけでありますが、その評価の中に、日本は日本国全体として世界の十七位だったか八位だったかというようなところにランクされているわけであります。前はもっとよかったんですけれども、どんどん下がってきたということでございます。  そして、教育、大学についての競争力というものに関して、質じゃありません、競争力ということについては、その調査した国が四十七カ国あるわけでありますが、その中で最下位である、一番下であるというのが日本の大学の評価というふうに出たわけであります。まさに、私はそれを見てショックであったわけでございますけれども、ともかくそういったレポートが出たということでございます。  日本におきましては、アメリカは外国から最高の頭脳を幾らでも買ってこれる、あるいは上級の技術者あるいは中級の技術者も幾らでも欲しいと思えば買ってこれる、またそれを引きつけるだけの魅力があるということでございますけれども、日本の場合にはそれはできないわけでありまして、むしろ頭脳は流出しても、外から買ってくることは、まず最高の頭脳を買ってくるというようなことはできないというわけでございまして、自分のところで養成をしなければならないというわけであります。  日本は御承知のように地下資源は全くない、老齢者がどんどんふえていくという中で、知識労働力というものは、最も我々が今後生きていくために、あるいは豊かに生きていくために必要不可欠なことでございます。そういう中で、日本の大学の学生で理科を好きな者というもののパーセンテージは先進国の中で一番低いとかというようなことが言われているようなことでございますし、あるいは英語教育におきまして、TOEFL、外国人の英語の力を試すテストでありますが、その中で日本はアジアで北朝鮮に並んで一番びりだったということのようでございます。  そんなことでございまして、そういう中で日本で今度いわゆる教育改革、改革と申しましょうか、中等教育、初等教育におきましてカリキュラムの内容が三割減少される、新指導要領でありますね。二〇〇二年から適用されるわけでありますが、三割削減される、あるいは二割授業が削減されるというようなことでございまして、しかも国際教育到達度評価学会というので二十三の国の初中の調査をした。そして、それが、いわゆる学校外でどれだけ勉強しているかという時間でありますが、日本はその中で最低であった。もちろん塾の授業も含んでいるということでございまして、日本人の小中の学生、これは勉強しなくなったというわけでございます。その中で、授業内容が三割削減され、授業時間が二割削減されるということで、我々の将来はどうなるんだろうかというふうに大変危惧を抱かざるを得ないというわけでございます。  もちろん、なかなか理解の進まない子供については、ある程度の量を達成するためには、これは普通の人よりも余計勉強させなきゃならぬというわけでありますし、理解の早い人たちについては、その理解度をどんどん増してやるというのが、これが一つの平等の精神にかなうものであるというふうに私は考えております。  それは、アマルティア・センといいまして、昨年度の経済のノーベル賞をもらったインド人でありますが、「不平等の再検討」という本の中で、一つの平等を主張するならば、世の中にはたくさんの要素がある、一つの平等を追求すると他の要素が不平等になる、したがって、平等というのはどこの点で平等かということを明記しなければならないというようなことを述べております。  まさにそのとおりだと、こういうふうに思うわけでありまして、やはり勉強というものは自己に耐えて一生懸命やらなきゃいけない、ただ放縦にしておけば創造性豊かな人間ができるなんというのは大間違いであって、かつてのエジソンも、九九%までは汗であって一%がインスピレーションだと、こういうふうに申しておるわけでございます。  そんなわけで、自己啓発、それでみずからに耐えて勉強していくという態度、それも繰り返し繰り返しやらなければ、基礎的知識がなくて創造的発想なんというのは全くできないということでございますし、また体験実習と申しましても、やはり理論を伴わない体験実習というのはあり得ないと思います。  殊に、物理でも化学でもそうでありますが、生物はちょっと要素が違うと思いますけれども、これはやはり相当抽象的なものを理解できなければ理解できないということでありますので、私は、新指導要領がまさに最低の線であって、それに到達するのには、できない人には大いに勉強するように学校の中で引き上げなきゃいけない、こういうふうに思うわけでございます。  以上でございます。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 冲永先生、どうもありがとうございました。  次に、クラーク先生にお願いをいたします。クラーク公述人、どうぞ。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 本日、公述人として呼ばれて本当に光栄と思っています。  私、日本は長くて、上智大学に二十年間、多摩大学は六年間。しかし、私の日本語はちょっと、独学です。習い始めたのは、もう三十歳超えて。言葉の使い方の中で間違いがあるとすれば勘弁してください。  私、日本に来る前に、ほかの外国人と同じように日本の教育制度を高く評価していたんです。これは日本の目覚ましい経済発展の大きな原因ではないかと思っていたんです。今でも、外国で日本の基礎教育、特に小学校、中学校、ある程度評価されています。けれども、さっき冲永さんがおっしゃったように、大学になると評価は激減なんです。  それで、かえって大学教育の貧しさ、貧困、今の日本の経済、特に情報革命の中で大きな足かせではないかということ、プラス、最近の理科系離れ、顕著になって、これは日本の将来にとって好ましくないという評価となったんです。  もう一つ、外国と比べれば国家の影響、国家のコントロール、指導とか管理はちょっと強過ぎるんではないかと思います。結果は、膠着状態になりやすいんです。例えば、どうして飛び入学が許されていないか。法律の上で禁止されているんです。結果は、優秀な学生、有能な学生は、特に理科系、数学、早く大学へ入らないんですよ。これは日本のノーベル賞の受賞者の少なさの一つの原因ではないかと時々言われています。教育制度の中で官僚的のニュアンスはちょっと強過ぎるんではないかと言われている。  しかし、諸問題は、前の文部省、国の管理が原因であるとはちょっと言えないんではないかと思います。制度自体いろいろ間違っているんではないか。これはお金の問題よりも制度の問題なんです。そして、制度の改革をやろうと思えば簡単にできるんではないか。  私、一年間ぐらい国民会議の中で頑張らせていただきました。こういう膠着状態を変えようと思えばそんなに難しくないです。ただ、適当のところで圧力をかければいろいろ改善できるんではないかと、そういう印象を強く受けました。まず大学改革。外国人の目から見たって、諸問題の根源は、諸悪の根源ははっきりしていますよ。十八歳で一つの試験、入学試験で自分の将来は全部決められちゃうんです。どうしてこういうふうになってしまったか。  私、おととしは財界の委員会によく出席し、経団連、日経連、同友会、みんな教育問題を心配しているんです。最近、日本では、委員会つくれば、必ず女性一人と外人一人入れなくちゃいけない。全部出席させていただきまして、通産省も委員会つくったんですよ。びっくりしました。  私、財界人に申し上げようとしたんですよ。問題あるとすれば、あなたたちの責任ではないか。学生の成績見ないで、もう三年生として青田買いをやって、卒業しても成績を見ないです。いわゆる学歴社会、学名社会。学名で大分決められております。確かに学生の性格も見ていますけど、一流大学へ入れば性格も確かによくなるんではないか。昔はこの言葉は使っていました、駅弁大学。入れば駅弁のようになってしまうんです。この弊害をなくすための努力は、むしろ財界の責任ではないかと申し上げていたんです。まあ全然反響はなかったわけです。今のまま長く続くんではないかと思います。  しかし、制度の中で小さな改善しようと思えば幾つかの可能性はある。私、一番期待しているのは、国民会議でもう通りました、最後の報告書にも出ましたように、暫定入学です。合格ラインの下、ちょっと下であっても入学させて、入学金もらわなくて、一年後でもう一回試験を受ければ、受かれば、そうすると正規となるんです。  問題、御存じでしょう。入学金をもらえば、これは一種の契約です。途中で、学校をやめなさいと、成績の悪い学生を落とすのは不可能なんです。契約違反になっちゃうんです。結果は留年しかないです。これは制度としては最悪ですよ。  だから、暫定入学、特に地方の子供にとっては非常に大きなプラスになるんではないか。地方は有能の子供が多いんですけれども、入学試験の要領は余りよくなくて、塾も余りないし。だから、うちの大学は、中小企業の経営者の息子さんは多摩大学へどうしても入りたいんです。暫定としてでもいいんです。やっと、いろいろ教授会に働きかけて通りました。しかし名前は変えて、暫定入学ではなくて、暫定入学はちょっと寂しいと言われちゃってチャレンジ入学になったんですけれども。それで人数はまだ少ないです。  しかし、外国ではほとんどみんな暫定入学ですよ。特に私の国オーストラリアとアメリカ。私立もありますけれども、メーンは州立大学、国立、州立。国民のお金だから、子供たちが大学へ入りたければ、高校をちゃんと卒業したら断りにくいんです。だから、はいどうぞ、入ってもいいですけれども、一年終わって、悪い言葉なんですけれども、足切り試験をやるんですよ。それで、人気学部だったら、人気大学だったら四〇%、五〇%落とすんです。もちろんリピートできますよ。  私、目の前で見ていたんですよ。千人ぐらい大きな講堂に入って、ざわめき、私語、一つもないんですよ。先生はノートの棒読みであっても、みんな一生懸命メモをとっていますよ。日本の大学はどうですか。もう私語だらけですよ。というのは、落とされたくないんです。二年生も一〇%落とすんです、大体。もちろん卒業試験も受けなくちゃいけない、エリート大学であっても。私、たまたまイギリスの大学だった、四十年前。もちろんみんな卒業させますけれども、エリートだから。しかし、卒業試験は厳しくて、五月、それで自分の成績表を持って企業とか官庁を回って見せなくちゃいけないんです。オックスフォード大学を卒業しても、成績はCとかDだったら評価されないんです。地方の大学へ入って成績よければ評価されるんです。どうして日本は同じようにできないか。それは別の問題なんですけれども。  いずれにしても、暫定入学の制度が導入されればかなり改善できるんではないかと思います、学生を、全部ではないけれども、ある程度。一生懸命勉強すればほかの学生にいい影響を与えるんではないかと非常に期待しております。  もう一つ。よく考えれば、やっぱり学部教育を改善するのは無理ですね。ますます欧米と同じようになって、進学率は高くて学力低下、ますます大学院とかビジネススクールに期待すべきではないか。そうすると、学部教育は必要なんですけれども、これ一種の予備校として、一流大学に入りたければ学部の成績よくなければ入れないことにする。それで、一流ビジネススクールとか大学院に入れないと一流の会社にも入れないことにする。つまり、試験は一発勝負ではなくて、十八歳ではなくて、四発ですよ。入学試験、卒業試験、学部、あとは大学院の入学試験、あとは卒業試験。よく勉強します。アメリカのウォートンビジネススクール、有名なビジネススクール、あれは倍率三十六です。コロンビア大学の大学院、私、サッチー・ミッチー戦争でわかったんですけれども、倍率は九ですよ。入りにくいんです。これから日本はああいうふうに移行すれば、大学の教育問題は随分改善できるんではないかと思います。  そのために大学院教育を強化すべきなんです。きのう、国民会議の第三分科会でそういう提案があったんですけれども、飛び入学、十七歳で入って学部三年間だけだったら大学院二年、二十二歳で卒業できるんですよ。そうすると、日本の場合はオーバードクター問題とかいろいろありますけれども、二十二歳卒業だったら別に問題はないと思います。そのために大学院教育の強化、今は弱いんですけれども、国立大学はもともと学部教育よりも大学院教育に集中して、そうすると自分の学校の出身者だけではなくてあらゆる全国的な一流な成績のいい学部の卒業生を入れる、必要であれば法律の上で強制的にさせれば日本の教育制度は改善できるんではないかと思います。  いずれにしても、外国ではますます学部教育よりも大学院教育を重視するようになってきまして、そこにビジネススクールも含まれています。  大学に対しての評価制度は、日本で盛んにそういう必要があると言われています。たしか、アクレディテーション制度、アメリカとか、さっき言われたゴーマン・リポートがあれば大学側は自分の教育制度を改善するインセンティブになる。よく耳にしますのは、そういうノートの棒読みの先生たち、能率の低い先生たちをみんな首にすべきではないかということ。  しかし、皆さんもっと深く考えていただきたいんですよ。なぜそういう能率の低い先生がまだ存在しているか。一生懸命教えようとしない先生はまだいると思います。目の前に座っている学生は一生懸命勉強しないんです。前に座っている学生が一生懸命勉強しないのに、自分も一生懸命教えるインセンティブがありますか。それで、なぜ学生は一生懸命勉強したくないかは、例の学歴社会ですよ。自分の大学の名前で就職、将来は全部決められちゃうんです。学生の唯一のインセンティブは単位稼ぎです。楽勝科目をよく選んで、全然勉強しなくても無事卒業するんですよ。多摩大学はそうではないですけれども、いろいろ小テストとかいろいろやっていますけれども、いずれにしても、この弊害をなくすのは非常に難しいんです。  それで、能率の低い先生とかを首にするのは外国でも、アメリカの社会でも、首切り社会でも慎重にやっています。しかし、何か改善すべきではないかと思いますけれども、昇進昇格をもうちょっときめ細かく設定して、そうすると能率の低い先生たちは首切りではなくて昇進しないんです。そうすると本人は反省させられるんではないかと思います。しかし、制度を全部改革しないとこの問題は簡単に解決はできないのではないかと思います。  私、国民会議で暫定入学、飛び入学、ほかの先生たちと提案してもう一つ通りましたのは学年の九月スタートという、私と木村孟先生の提案なんですけれども、目的は二つ。一つは北半球、アメリカとか欧米とかの留学がやりやすくなるんです。けれども、それよりも高校を三月に卒業して、二月三月終わって、九月大学に入れば、六カ月ぐらいのギャップ、空間は、自由の時間を与えて、その間は奉仕活動とか世界旅行とかできるようになるのではないかと思います。  奉仕活動について、国民会議の中で盛んに議論されておりましたが、ちょっとイデオロギー的な面があったんです、国に対して義務意識を養成させるために。徴兵制ではないかとも言われた。いや、私、奉仕活動、もちろんアメリカだったら賛成なんです。アメリカだったら一流大学に入りたければ奉仕活動に参加しないと評価されないんです。しかし、強制的よりもある程度は本人の意思の上で、それで奉仕活動だけではなくてほかの社会活動も必要ではないか。イギリスでギャップ制度、非常にはやってきまして、高校を卒業して入学も決まっていて、一年間の休みをとって世界旅行とか、イギリスのウィリアム王子は今南米でどこかの奉仕活動のキャンプに入りまして、一年間ぐらい頑張っている。いずれにしても、六カ月でも結構ではないかと思っています。  いずれにしても、問題は日本の子供を見て、学生を見て、魅力は多いんです。ただ、大人になっていないです。大学に入っても大人ではないです。まだ子供ですよ。社会とのつき合いは非常に少ないんですが、これは道徳問題とは非常に関係があるのではないか。欧米だったら道徳問題ではなく、これは宗教の影響ではないかとよく言われていますが、そうではなくて、アメリカは確かにある程度そうなんですけれども、それよりも若いとき、社会の中で、ボーイスカウトとかロータリーとかライオンズとか、いろいろのコミュニティースポーツに参加して優秀な社会人と若いときからつき合えるんです。日本の子供は、父親、お父さんとかお母さんと学校の先生だけなんです。それで、お父さんは余りいなくて、いても欠陥パパが多くて。非常にそういう意味で狭い。皆さん、電車に乗って新聞を読んでいる学生を見たことありますか。ゼロですよ。それだけでいろいろ物語っていますよ。外の社会に対して興味がないんです。私、そういう意味では、六カ月ぐらいの余裕の時間を与えればいいのではないかと思っております。  余り時間がないですけれども、最後は英語教育問題なんです。  なぜ北朝鮮と同じようにびりになったか。理由ははっきりしています。六年間、中学校、高等学校で間違った英語教育を受ければ、入学試験の英語を受ければ一生上手に英語をしゃべられない人間になってしまう。もう決まっているんですよ。無理しないでください。日本は島国です。我々アングロサクソンと同じなんですよ。イギリスだったら中学校、高校で日本語を教えますか。中国語を教えますか。無理ですよ。隣の国、フランス語の言葉だけなんですよ。それで、ちょっとだけフランス語をしゃべられればブレア首相のように、ああ天才だ、偉いと。実際、フランス語は方言ぐらいの違いだけですよ。  難しい言葉は、母国語と全く違う言葉は、当然のこと大学でやるべきなんです。十八歳、頭はまだ柔軟。それだけではなくて、自分の選択の上で意欲的に勉強する。何よりもモチベーションが必要なんです。動機づけがないと難しい言葉は習得するのはほとんど不可能なんです。  みんなは六年間ぐらい読み書きとか教科書とか文法とか、ある程度いいんじゃないかと思っている。頭の中で基礎をつくる、後で口と耳。でもこれはだめです。私、ちょっと語学の問題は経験あります。中国語、ロシア語、日本語を全部勉強しなくちゃいけなかったんです。スタートの時点で口と耳の訓練がないと、一生被害者の形になってしまうのです。  だから、私の提案は、小学校スタート。できるだけ韓国のように、最近、韓国はよくなりまして、理由は小学校スタート。文部省も意識しています。英会話とか歌とかビデオとかゲームとか。中学校を同じ調子で続けて簡単な英語、英語は国際言葉だから仕方がないです。  高校はやめてください。やりたければ五%程度でいいんです。日本の将来にとっては大事である理科系とか数学をもっと集中して、それで大学に入ってダブル専攻制度の中でやる。今オーストラリアではやっているのは経済学と日本語とかあるいは中国語と法学です。文学部の中で日本語だけ勉強すれば、あるいは中国語をすれば、日本と同じように就職が難しいんですけれども、ダブル専攻だったら就職抜群ですよ。  今、ビートたけしの番組を見て、もう本当に驚きまして、上手に日本語をしゃべられる若い外国人がどんどん出ています。みんな大学でスタートなんですよ。ちょっと考えていただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 先生、ありがとうございました。  以上で公述人両先生の御意見の陳述は終わりました。  これから公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 自由民主党の南野でございます。  お二人の先生、本当に楽しく聞かせていただきました。もう御質問申し上げることもないくらいではございますが、まず質問させていただきたいと思っております。  教育基本法の見直しということでございますが、我が党では七つの重点政策というものの一つに、「二十一世紀を担う立派な日本人を育てるための教育改革」の一環として「教育と文化に対する安心」というようなものを挙げております。その中で、国家百年の計というものを立てるように、日本人としてのアイデンティティー、国際感覚、それをあわせ持つ人づくりというものを今柱としているわけでございますが、教育基本法の積極的な見直しというものを行うこととしておりますので、新世紀を迎えた今、新たな日本の教育の基礎というものを確立するために、教育基本法に盛り込まれるのはどういうものがなければいけないのかというようなところの御示唆をお二人の先生に一言ずつお答えいただきたいと思います。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 教育基本法は今からもう既に五十年前ぐらいに、終戦直後にでき上がった法律でございますので、読んでみますと非常に何といいますか、日本人のアイデンティティーが全くないということであるわけでございますので、私としては、やはり教育基本法というのはそういった面のところをひとつ変えなきゃならない。いいことを言っている場所もあります。ただし、時代に合わないというところがたくさんありますので、殊に日本人のアイデンティティーというのをもうちょっと確立した内容にお変えになられた方が私はいいのではないか、こういうふうに思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 御存じのように、アングロサクソンの国々は教育基本法はございません。アイデンティティー、民族のアイデンティティーはむしろ社会活動の中で自然に形成されます。しかし、たまたま日本は法律にあって、フランスも法律あります、共産主義国家も法律あります。  確かに、五十年前の状況は今と大きく違っている。特に若者の、国に対しての愛国心というよりもアイデンティティーがちょっと弱いのではないかと思います。私、一番悩んでおるのは字が書けない学生、きれいに書かない学生が多くて、明らかに自分の文化に対してプライドを余り持っていないんです。だから、何らかの形でアイデンティティーが強制できれば、法律でもいいし社会活動でもいいし、好ましいのではないかと思っております。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 ありがとうございます。  冲永先生が思っておられる御自分のアイデンティティーは何だと、何でお示しというようなことをお考えでございますでしょうか。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) いわゆる教育基本法におけるアイデンティティーとは何かと、こういうことでございますか。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 いや、先生が日本人という御自分のアイデンティティーは何か。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) これは、我々は日本に住み、日本で共同生活を営んでいくわけでございますので、やはり日本人の誇りとか日本人の過去の歴史に対する見方とか、そういうものにきちんとした方向性がなければならない、方向性といいますか、事実をきちんと知らなければならない、こういうことでございます。一方的な宣伝ではなくてと、こういうことでございます。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 ありがとうございました。  さすがに、最初の段階でいろいろと歴史をお教えいただきました。我が国の歩む姿を見せていただきましたし、その中で、変化する日本の現状というものも理解させていただきまして大変参考になりました。ありがとうございました。  クラーク先生の御自分のアイデンティティー、よその国でお生まれになられて、そして今ここにいる。私は満州で生まれましたが、イギリスにも行ったことがあります。自分のアイデンティティーというものは、やはり日本に住む、我が国におるものであり、国旗・国歌というものに自分の愛着を感じる、日本の国が好きだというのが私の日本人であることのアイデンティティーであると思いますが、クラーク先生のアイデンティティー、よろしく教えてくださいませ。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 私、イギリス生まれ、オーストラリア育ちなんです。大学もイギリス。しかし、むしろオーストラリア人のアイデンティティーなんですね。  理由は簡単です。長い間オーストラリアにいまして、いろいろ経験があって、社会の中で行動してアイデンティティーは強くなったんです。ちなみに、日本はもう長くて私も半分ぐらい日本人のアイデンティティーになりましたけれども、これは自然な現象ではないかと、強制的にしなくてもいいんではないかと思います。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 本当にありがとうございました。  クラーク先生はもう本当に日本語が母国語のような感じでございまして、大変よく拝聴させていただきました。  次は、教育現場の荒廃ということでございます。  我が国にも大変そのようなことが押し寄せてきております。特に小中学校、小学校、中学校においていじめ、不登校、校内暴力、学校崩壊、そのような深刻な状況にあります。永田町でもいろいろないじめが起こっておりますが、そのことはちょっとおきまして、このような教育現場の荒廃ということにつきましては、親だとか教員、地域社会があるべき姿、そのような教育というものを自信を失っているといったことが原因として挙げられるのではないかというふうに思いますが、二十一世紀を担う立派な日本人を育てるためには親、教員、地域社会が自信を持って子供を育てるということが重要であろうかと思います。  先ほど、クラーク先生のお言葉の中には、まだ父親、母親は子供であるというようなこともございましたが、その親となるべき親がどのような形で成熟したらいいのかも含めながら、小中学校の荒廃したあり方について、何か一言サジェスチョンをいただきたいと思っております。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 外から見て、私、内政干渉は余りやりたくないけれども、子供はまるで箱の中で育てられちゃうんです。鶏を飼おうとすれば、同じ現象なんです。小さな小屋の中で閉じ込めれば必ずお互いにいじめるんです。外に出せば弱い人は無事に逃げられます。  いじめという現象は非常に世界的な現象なんです。日本だけではなくて、最近韓国も非常に問題になりました。しかし、外国だったら日本ほど深刻な問題になって陰湿的な問題にならないとしたら、子供は、学校だけではなくて社会、例えばスポーツは部活動よりもコミュニティースポーツが多いんです。あとは、さっき申し上げたような奉仕活動とか、特にボーイスカウト、私の国でボーイスカウトの影響が非常に強い。  もう一つは、ポリス・クラブ。貧しい子供は、学校が終わったら警察がやっているように柔道とか剣道とか、全部日本から導入したんですけれども、警察、自分の時間で子供に教える。そのように、ほかの逃げられる場所があるから。日本は本当に逃げにくいんです。  私、子供二人なんですけれども、日本の学校に入れまして、近くの麹町中学校。子供は半分私の国籍、半分ワイフの国籍なんですけれども、ひどくいじめられるんではないかと思っていたんですけれども、実際はそんなに深刻ではなかったんです。だから、ある程度両親たち、私もちろん細かく監視しまして、何か問題があればすぐ先生に申し上げたんですけれども、両親たちもある程度責任があるんではないかと思っています。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 ありがとうございました。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 日本の場合、私思いますのは、家庭で、悪い言葉で言えばママゴンに教えられると。幼稚園に行ってもまた女性の先生ばかりだ。小学校へ行っても女性の先生ばかり、中学校でも女性ばかりということなんで、ここで私は相当曲がってくるんじゃないか。やはり成績ばかりで採ると小学校の先生、全部女になっちゃうということになるようですけれども、これはやはり半数ぐらいは男を採るような形にしてやらないと非常に、何といいますか、そういうことを言うと女性の先生に怒られるんではないかと思いますが、非常に感覚が女性的になってしまってということが大いにあるんじゃないかというのが一つです。    〔委員長退席、理事須藤良太郎君着席〕  それから、女性の方は大変、先生も医療関係をおやりになっていらっしゃるようでございますので、私の経験を申しますと、未婚のときの人は特によく働くんですね。ところが、結婚しますとうちへ早く帰ることばかり考えて戦力にならなくなるという経験を私相当持っておりますので、病院の中で、ですからやはり男と女とをまぜなきゃいけないんじゃないか。そして、小学校や中学校の中で、荒れた学校で、悪いのは二、三人だと思いますので、それを排除して、排除しただけじゃだめなんで、そこの、私はアメリカのメイソンシティーという地域のところをちょっと知っているんですけれども、そこでは排除した生徒に対して、もう一番悪いときは施設に入れると。その次は、そういった人たちを集める学校をつくって、そこで教育をして、それで卒業させるなり、非常によくなったらまた戻してやるとか、そんなようなことをやっておりますので、ただほうり出すということはこれはだめなんで、それをよくカバーしてやるということが必要かなと、こういうふうに思います。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 ありがとうございます。  そういう関連で、クラーク先生の論文の中にもございます、子供たちは家庭と学校だけという真空の中、箱の中で育てられてしまう、その結果、子供は視野が狭くて社会性が身につかない、これからの時代はベンチャービジネス中心の情報やサービス産業を盛んにしなければならないが、そのようなためにも子供の視野を広げる必要があると。この視野を広げる必要がある、視野を広げさせる人は、やっぱり家庭の中の父親、母親であり、兄弟であろうかというふうに思います。さらに、そこから発展する学校の中においてやはり先生と学生たちが、子供たちがしっかり学び合える、コミュニケーションを取り合える環境というのが必要になってくるだろうと思いますが、私などの体験であれば、学校の中でいじめを一番最初に発見するのはだれなんだろうか。担任の先生であると同時に、学校にある養護教諭の役割でもあろうかなと。そういうような中で、子供と密着できる人がやはりいい思いやりを持たなければならないのではないかな、そのようなことを思っております。  次の質問をさせていただきたいと思いますが、そういう意味での親のあり方、教師のあり方、そしてそこら辺をつなぐお互いのコミュニケーション、連絡をとりながら一人の子供を大切に育てるということが我々の急務ではないかな、そのように思っております。  最後にお二人の、あと九分ございますが、将来のあるべき大学像ということを教えていただきたいと思っております。  厚生労働省の調査におきましては、昨年十二月現在で大卒女性の就職内定者は七一%、大卒男性のそれは七八%というふうになっております。厳しい採用状況にあるわけですが、このような状況では学生の側も社会に出て役に立つ実践的な教育を大学により求めるようになるというふうに思われております。  一方、企業側でも、厳しい経済状況の中でございますので、採用した学生の能力開発を企業内で時間をかけて行うことが大変困難であると。採用してすぐ実践力を持った学生を求めているというようなところであります。  このような時代の変化の中で、社会状況に対応するために、大学で学んだ知識を社会で生かすというような実践的な大学教育をすべきではないかというふうに思われておりますし、またそのような意見が出ております。そのようなことについて、即戦力を大学でというようなことについての御意見をお二方の先生からいただきたいと思います。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 先ほど私は話の中で申しましたが、日本の大学の人事管理システムはまさに国と同じシステムでございます。国と同じということは、これは企業には、ある目的を持った組織団体には通用しないというわけでございまして、例えばの話で、日立製作所が、あるいはトヨタが、あるいはソニーが大学と同じようなシステムで採用、昇進、社長を決めるなんという、工場長を決める、すべての選挙で、重要な選挙で決めるというようなことになれば、すぐに競争力がなくなってだめになっちゃう、こういうことが言えると思うわけであります。  したがいまして、まず将来のあれといたしましては、やはり日本の大学も構造改革をして、能率のいい、ですから日本の大学の研究費に対しての論文の量というのは先進国の中で最低だというふうに言われています。これは能率が悪いからです。ですから、大学のガバナンスシステムそのものが悪いからなので、これをやはりもっと能率よく、今はどんなにサボっても、授業をちゃんと週に二日出て三こまやれば、ボーナスも同じ、昇進、昇級も同じ、ベースアップも同じということでは、私は将来日本の大学は成り立たないんじゃないか、こういうふうに思います。  将来像としましては、それは日本の大学も、やはり世界を見まして、日本というのは一番の特徴は私立学校がすごく多いんです。それで、ヨーロッパは、先生のオーストラリアもそうだと思いますが、ほとんどが国立で私学というものはないといってもいいぐらいだと思います。アメリカと日本と韓国とにあるんですが、あと台湾ですね、には私立学校が多くあるんですけれども、アメリカの場合は州立大学の方が私立大学よりも多いんです。したがいまして、日本と韓国と台湾がちょっと特殊な形にあるわけでございますので、これはいわゆる私学というのは建学の精神があって、そこでお金が出資されてでき上がった大学であるというわけで、建学の精神に基づいてそれを伸ばしていくという使命を負っているわけでございますので、やはりガバナンスシステムの改善。  それから、今後企業が能率化をどんどん図っていくということになると、終身雇用によって就職させた者を生涯にわたって教育させながら社内教育によって持っていくということは、これなかなか難しくなろうかと思います。  私がイギリスのクラーク大学というところに行きまして学長さんと話をしたことがあるんですが、そのときに、日本の場合には終身雇用だそうですが、新しいことをやるときにはどうするんですか、ジョブディスクリプションに書いてないじゃないですか、新しいことをどんなことをやるかと。そうすると、自分たちの感覚ではジョブディスクリプションに書いてあることをきちんとやればそれでいいんだと。だけれども、日本はそれをどういうふうにするんですかという質問を受けたことがあります。  大変、外国人の目から見て日本のシステムはちょっとおもしろい形をとっているんじゃないかなという気もしたわけですけれども、ともかく即戦力のある学生をもちろん育てなきゃいけないということでございますし、そういう使命を負っておりますし、あるいはリカレントシステムで一たん外へ出た者が帰ってくる、帰ってきてマスターディグリーを取る、それもいわゆるアメリカ式のMBAのような実践的な教育をしてやるということも大いに必要だと思います。  もう一つは、ダブルスクールでもいいと。今の学生は大学を卒業して、また資格を取るためにその資格の学校へ行くというのが非常に多くなっております。私どものところにもいろいろ医療の専門学校関係のがありますけれども、大学を出て入り直す、あるいはダブルスクールで夜間のそういった専門学校に通いながら昼間大学を卒業するというような方も結構ふえておりますので、それも一つの方向だと思います。  そしてまたもう一つは、やはり大学というのは教育と研究、この二本立てでございますので、この二つをいかにして伸ばしていくか。世界に冠たる大学をつくるということが日本の、やはり日本人の知識の向上あるいは生活程度の向上ということにつながっていくんじゃないかな、こういうふうに思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) たまたま私の大学は新しい大学なんですけれども、目的は実践的な教育を行うということです。経営情報なんです。そして、就職率は一〇〇%なんですけれども、みんなはそれで自慢していますけれども、私は、いや就職率はゼロじゃないとだめなんです。なぜか、みんな会社へ入りたいんです。自分の会社、つくりたくないです。ベンチャービジネス精神を養成するためにできた大学なのに、調べてみると、直接アメリカのように大学を終わってすぐ自分の会社を起こす人、ほとんどいないです。残念なことなんです。まあ、文化が一つの原因なんです。終身雇用制度が一つの原因ではないか。もう一つは銀行の態度、余りお金を貸し出したくない。あとは日本のバツ一文化なんです、一回失敗すれば自分の将来はないとか。あとは、さっき申し上げたように、大学を卒業してもまだ大人ではない、自信がなくて、自分の会社をつくる自信がないです。非常に残念なことなんです。  私、このごろ台湾の教育をちょっと調べてみまして、優秀な学生は卒業すると、まあ理科系が多いんです、アメリカの大学院に入って、終わって、シリコンバレーに勤めて、国に戻って三十歳の博士号持ちとして自分の会社、主にコンピューター関係の会社を起こして、それで台湾は強くなったんです。日本は早く同じようにならないと、ちょっと本当に日本の将来に関して心配しております。

南野知惠子自由民主党・保守党

○南野知惠子君 先生方お二人から大変いいお答えといいますか、ユニークな発想もお聞かせいただけました。特に、クラーク先生は学名社会であると。その学名社会から我々二十一世紀に向けて実力社会に向かっていかなければいけないんじゃないかなと、そのように思いました。  本日はお二人、どうもありがとうございました。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 きょうはどうもありがとうございます。  お二人の先生のお話を聞きながら若干思ったことがありました。先ほど冲永先生が明治維新の話をされましたので、明治維新ができた後、日本の使節団がアメリカ、ヨーロッパへ行きましたね、武士が。先生を武士に例えて、クラーク先生が欧米の人と。日本の伝統は冲永先生にあり、アメリカの伝統はクラークさんにありと、何かそんな感じで聞かせてもらいました。イギリスも、オーストラリアも。  そこで、質問をしようかといろいろ考えたんですが、ちょっと隣同士でいろいろ話しましたら、クラーク先生の話をもっと聞いてほしいということがありましたので、私の持ち時間はまだ二十分近くありますから、先生、この二十分の中でもっとお話ししたいことがございましたら、どうぞお好きにお話ししていただきたいと思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) ぜひもう一つつけ加えたいことがあったんです。留学生問題。  今、優秀なアジアの学生は日本へ行かないんです。日本を飛び越えてアメリカへ行きます。オーストラリアへもかなり入っています。中曽根元総理大臣の目標は十万人の留学生。今五万だけです。文部省、一生懸命お金ばらまいています、奨学金とか奨励金を。にもかかわらず、人数が余りふえていない。それで、質、抜群とはちょっと言えないんです。  日本は、特にこれからの日本と中国の関係を考えれば、中国の一流学生はほとんどアメリカへ留学しているんですよ。昔は、オーストラリアの場合は、マレーシアからよくオーストラリアへ留学して、インドネシアの場合はドイツ。トップの人たちは随分そういう経験を持っている。マレーシアとオーストラリアはよくけんかしていますけれども、個人の次元ですごく仲よくしています。  これから日本はどうやっていくか、まあ確かに日本の場合は問題が二つある。まあ二つ、三つ。  一つは、もちろん言葉の問題。優秀な学生はみんな英語を勉強しています、アジアでは。もう一つ、お金の問題。学費が高い。もう一つ、ちょっと言いにくい問題なんですけれども、大学の教育、余り外国で評価されていないです。  しかし、にもかかわらず優秀な人は、チャンスがあれば日本で勉強したいんです。だけではなくて、少子化問題を考えればもっとふやすべきです。あとは文化の問題、日本の文化の中で、この言葉は余り使ってはよくないかもしらぬが、物づくり文化なんですよ。これから優秀なインド人とか中国人、情報革命を本当に起こしたければ、彼たちの才能も必要ではないかと思います。  私、法務省の入国問題を考える委員会のメンバーになって、私あそこで提案したんですけれども、まだ十分協力を得ていないですけれども、入学準備ビザ制度を導入すればどうですか。今ワーキングホリデービザあります。大成功です。ただ、ほとんど白人ばかりです。二年間自由に、二十六歳以下、自由に日本で行動できる、お金稼ぐとか。優秀なアジアの学生も同じようなチャンスを与えられれば、日本語学校じゃなくて自由に二年間ぐらい日本で行動できれば、もちろん優秀じゃないと困ります。それで、暫定入学制度を使って向こうの方から推薦されれば、どうですか。日本の大学、特に私立大学、定員割れの心配があれば暫定入学許可出しやすいんです。それで法務省はビザも出しやすいんです。大学はある程度スポンサーになる。それで、二年終わって大学入って、一年入学試験の問題はなくて、弊害はなくて、一年終わって試験を受けて、特に中国の学生は一生懸命勉強します。いろいろな意味で日本にとってプラスになる。  私、外大の中嶋学長と最近話し、あそこは留学生が多くて、授業を英語でやっているんです。日本人は普通できれば怠けたいですけれども、隣に一生懸命勉強している中国の学生あるいは台湾の学生が座っていればインセンティブになりますよ。だから、留学生はぜひ何らかの形でふやして、日本のためにふやすべきではないかと思います。  以上です。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 まだ時間があったのでもっと聞きたかったんですけれども。  私も学生時代に一緒に机を並べた中に韓国の人、台湾の人がいまして、ほとんど日本人なんですけれども、一番一生懸命勉強されるのは実は留学生で、我々日本人学生は昼ごろ集まったら何か出かけていって学校にいないと。それが繰り返しというパターンだったので、なかなかそうかなと思ったりもしましたし、学歴社会、そうじゃない、学名社会、そのとおりだなと、本当につくづく思いました。  実は就職のときに、私もいろいろ苦労したんですけれども、いろいろ聞いたんです、人事の人に、なぜあなたはこの人を採用しないでこの人を採用するんだと。聞きましたら、会社の人事の方なんですけれども、それは、この人を選んだ理由は、この人がもし会社に入って間違いを起こしても私は言い逃れができます、この人は東大生ですもの、問題起こすわけないじゃないですかと。ところが、ほかの大学、もしこの人が問題起こしたら私の責任になるんです、採用する人の、だから無難に選ぶんですと。無難に選んだ人はその後部長になったり、上に行くわけですよ。途中でバッテンがつきますと、この人どこかへ飛ばされるわけですよね。我々、よく言うんですけれども、保身なんです、自分をいかに守るか。これが強いのかなといって実は人事の方と酒を酌み交わしながら話したことがありまして、はあ、クラーク先生のおっしゃるとおりだなと実は思ったりしておるんです。  それで、冲永先生、クラーク先生、いろいろとおっしゃいましたですね、改革案、こうしたらどうか、ああだと。現実にああいうことをもし大学で実行しようとしたときに、法律が悪いのかそれとも学校の姿勢が悪いのか、まだほかの問題もあるかもしれませんが、どの辺に問題があると先生お考えでしょうか。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 御承知のとおり、日本の大学というのは教授会のコンセンサスあるいは拡大教授会のコンセンサスが得られないと実行されない、こういうことがありますので、大変時間がかかります。いわゆるそれだけの、ほとんどの人のコンセンサスを得なきゃならない、こういうことになりますので、非常に難しい面がたくさん出てくると思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 ということは、法律とか文部省という以上にやっぱり学校の中の体質、これが一番大きな問題だということになるんでしょうか。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) はい。そういうようなことにしなさいということを文部省は行政指導でずっと長くやってきたんですね。それが大きな一つの問題ではあろうかと思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 どちらかというと法律事項じゃなくて文部省の指導、それを受けて学校の教授の先生方がどうしようかああしようかといって相談された結果が今の状況なんだろうなと。  実は私、冲永先生の後輩に当たって、大分後輩なんですが、十八で一応入ったんです。途中で、勉強するよりも腕に職をつけた方がいいと思いまして、すし屋に修業に入ったんです。それも住み込みの修業。四、五年たったら、すし屋で食べていくのも大変だなと、学校に戻りたいと、まあ勝手なんですけれどもね。それで、もといた学校の先生にお願いしましたらば、それは難しいと最初言われたんです。でも、一生懸命言ったら、さっき冲永先生がおっしゃいましたように教授会が実は認めてくれたんですよ。普通、再入学というときは試験を受けなさいと言うんです、先生方は。だけれども、そうじゃなくて延長でいいと、前やめたあとでいいから学校に戻してあげましょうと。ただし、条件がつけられたんです。あなたはふまじめで学校をやめたんだから半年間暫定的に学校に通えと。ただし、欠席率は一%か二%しか認めないと、だから、ほとんど出席しろと。  約半年授業をずっと受けまして、私よりも当時五つか若い子と一緒だったんですけれども、半年たったら再入学が認められて、足かけ入学から卒業まで十年かかりまして卒業しまして、東京大学始まって以来の最長時間を記録したと言われましたけれども、私は教授の皆様がやる気になればできるんだなとそのとき実は実感したんですよ。退学するときは成績悪かったんですけれども、再入学して卒業するときはいい成績だったんですけれども、やる気が入っていますから、今度は。だから、そういうことはやろうと思えばできるので、やってほしいなと。  再度質問したいのは、もし法律事項でこの辺が悪いんじゃないかとか、文部省のこの辺が悪いんじゃないかとか、もし具体的なところがあれば教えてもらえればと思うんですが、いかがでしょうか。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) なかなか難しい問題での御質問でございますが、法律事項といいましょうか、最近文部省もそのかたくなな姿勢が大分ほぐれてきたようでございまして、殊にレインボープランという、最近、二十一世紀教育新生プランというんでしょうか、レインボープランというのを文部省が出しておりまして、その中を見ますと、私が日ごろ、ずっと前から主張してきたことが相当程度盛り込まれてきておると見ています。  したがいまして、今までよりも大分そのかたくなな姿勢が少しずつ変わってきているのかな、もしこれが完全に実行されるとするならば、大変いいことだと、こういうふうに思っています。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 余りはっきり言うと後でいろいろあるからという心配もあるかもわかりませんが、大分国会の中も空気が変わってきていますし、比例して役所の方も少しずつ変わりつつあるのかなと思いますので、言いたいことはやっぱり言った方がいいかなという気はせぬでもないんですが。  クラーク先生、今の日本の文部省、今、文部科学省と言っていますけれども、文部省に対して、この辺をもっとこう変えたらいいんじゃないかとかいう御意見がありましたらお願いします。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 冲永先生がおっしゃったように、前と比べれば文部省の態度、随分、大分よくなりまして、ちょっといろいろな意味で反省させられたんですけれども、ただ大学の次元でもうちょっと自由にできるように変えて、さっき話を伺って、社会人、もう大人になって、社会人教育をもっと強調すべきではないか。文部省は一〇〇%バックアップしています。  ちなみに、うちの大学の大学院は全部社会人しか入れないんです。学部から直接入れないんです。それで、みんな同じことをおっしゃっているんです。学部で四年教育を受けたのにほとんど役に立たなくて、三十歳、二十八歳になって反省して、もう一度大学に戻らなくちゃいけない。そういう意味では、そういう大学院をつくるのは文部省の方から全然規制もなくて、かえって奨励されまして、ただカリキュラムの次元では、前は一般教養二年とか専門学習二年とか、あの規定も余り成功しなくて、完全に崩れてしまっている。  私、もう一つ、申しわけない、出席した委員会が多くて、英語教育を改善する文部省の委員会に出席したんですよ。これから高校の英語教育は、今まで建前として選択だったんですけれども、これからは必修になるんです。これは、私、中曽根前文部大臣に申し上げたんです。国として国家は若い子供に間違った教育を強制的に受けさせる権限はないですと。みんな白けちゃったんですけれども。けれども、妥協しないです。この間違った英語教育の深刻さは、もうちょっと文部省だけではなくて先生たちにも理解してほしいんです。いずれにしても、これは規定として全然好ましくないと思います。外してほしいと思います。  ちなみに、多摩大学は、私が学長になってすぐ教授会に提案したんです。入学試験から英語を全部外す。それで、文部省がちょっと介入して、結局は選択にしたんですけれども、いずれにしても、こういう英語教育、これからもっと大学に集中しないと、日本人はますます国際社会の中で落ちこぼれ存在になるんではないかと思っています。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 クラーク先生にお伺いしますけれども、日本の教育というのは画一教育とよく言われるんです。特に義務教育はそうなんですが、どんなに頑張って努力してできた人、一生懸命頑張って努力している人、いろんな事情もあって及ばない人、みんな一緒にするんですね。どこに合わすかというと、大体下の方に合わすような教育が今行われておりまして、これを画一教育と、僕たちは同じ教育と呼んでいるんですけれども、私は違うんじゃないかと思うんですが、クラーク先生、どうでしょうか。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 金太郎あめ教育とかいろいろ言われていますけれども、明らかに好ましくないです。今までの日本にとってはそんなに悪くなかったんですけれども、これからの日本、特に先端技術とか情報技術の改善のためにある程度英才教育が必要なんです。才能のある子供をどんどん伸ばさないと。  ある程度日本はそういう可能性はあるんです。外国にはなくて日本にあるのは塾制度。塾に対して文部省はいろいろ批判的な態度をとっていますけれども、才能のある子供は学校で御存じのようにほかの子供と平等主義、画一的な教育を受けているけれども、学校が終わって、塾でもっと高いレベルの教育を受けられるんです。これは一つの救い手なんですけれども、しかし、これからはもっと欧米と、外国の学校と同じように、能力別のクラス編制制度導入が必要ではないかと思います。  これは、子供にとって非常に大きなインセンティブになります。もっと高いレベルのクラスに入りたいんです。そのために一生懸命勉強する。確かに落ちこぼれ、その反面は落ちこぼれ精神の問題がありますけれども、しかし、プラスとマイナスを考えればプラスの方が多いんではないかと思います。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 横に亀井先生がいらっしゃるので、一言広島県のことも言いたかったんですが、時間がありませんけれども。  今、卒業シーズンなんですよ、小学校からずっと。それで、私が聞きたいのは日の丸と君が代なんですが、私は、日の丸はきれいな国旗だし、君が代のメロディーはすばらしいなと思っている一員なんですが、クラーク先生、この日の丸、日章旗というか、さらに君が代のメロディー、外人の皆さんから聞いていて、どんな感想をお持ちでしょうか。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) ちょっと寂しいですね。  日本はオーストラリアのようにすればどうですか。  オーストラリアは、ゴッド・セーブ・ザ・クイーンという国歌なんですけれども、ちょっと重苦しい面があるんです。それで、オーストラリアはもう一つ、たしかフォーマルの場面はゴッド・セーブ・ザ・クイーン。しかしそれ以外、スポーツ大会だったらオーストラリアはもう一つの国歌があるんですよ。アドバンス・オーストラリア・フェア、タラッタラッタッタッタッタ……、もうちょっと元気のいいリズムなんですけれども。  私は、まじめに一つ提案したいんですよ。君が代はもちろん保存すべきなんですけれども、同時にもうちょっと元気のいい国歌はどうですか。それで、候補が一つあるんですよ。NHKの六時半のラジオ体操、あれは非常に、もちろん言葉は変えて、しかしもう一つの国歌としてはいかがでしょう。  内政干渉はやめましょう。

柳田稔民主党・新緑風会

○柳田稔君 ありがとうございました。

山下栄一公明党

○山下栄一君 きょうはありがとうございます。  時間がございませんので、端的にお伺いしていきます。  クラーク先生にお伺いしますが、英語教育です。  先ほど貴重なお話をいただいたんですけれども、入試科目に英語を入れるということが非常にまずいのではないかというふうにも私はお聞きいたしました。語学としての英語教育は大学に集中したらどうだという、私もなるほどなというふうに思ったんですけれども、読み書きそろばんというような言葉があるんですけれども、日本語もそうなんですけれども、読み書きそろばんプラス話す、話すということですね。  言葉は、特に口と耳が大事だというお話がありましたが、私は、この話すということを日本はちょっと軽視してきたのではないか、軽んじてきたのではないかというように思うんですね。自己表現するコミュニケーションが、今コミュニケーション不全という言葉がありますけれども、非常に対話が成り立たないような社会になりつつあるということから、もう一度日本語も含めて語学の、きちっとした語学を学ぶ、教える重要性がますます高まってきているのではないかというように思うわけですけれども、先生の御提言は私ももうなるほどなと思いまして、英語は非常に楽しくない、おもしろくない、そういう英語になってしまっていると。それは、やっぱり入試という試験科目にそれを取り入れたからではないかというようなことをお話を聞きながら感じました。  話すことを、また話す楽しさを、また言葉で通じることの楽しさを味わわせるために、小学校から英語をやるとしても、それは会話中心、話すこと、聞くことというようなことの方がいいのではないか。入試に英語を入れるということ、なるほどよくないなということを感じたわけですけれども、読み書きそろばん、話すと、私申し上げましたけれども、この語学教育における話すことの重みと言いますか、それについてちょっと先生の所感ございましたらと思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 口と耳の英語の意味は、楽しくさせるよりも、これは根本的な問題なんです。言葉の能力、私、長年の経験でだんだんわかってきました。これは人間の本能的な能力なんですよ。学問的な能力ではないです。自転車乗りとかボール投げと同じなんです。教科書でボール投げを覚えるのは不可能でしょう。だから、意味はないです。自転車乗りも同じです。経験でやりながら自然に身に、体につけるんです。偉い学問だったら赤ちゃん、そんなに早く覚えられるはずはないです。これが問題なんです。  スタートの時点で読み書きばかりだったら、自分の頭の中で間違った場所で能力をつくるんです。つまり、本能的、無意識ではなくて意識でつくるんです。そうすると、後で直すのは非常に難しいんですよ。  よく日本人の方から聞いて耳にするんですけれども、考えてしゃべるんです。もともと考えて自転車に乗ることはないです。自然にしなくちゃならない。だから、スタートの時点で頭の中のコンピューター、言葉はコンピューターと同じなんですよ。正しい場所に入れるために、口と耳の英語も必要なんです。もちろん同時に読み書きとか大いにやってもいいですよ、全部。  しかし、もう一つ、皆さん、入学試験の英語ごらんになったことありますか。もう信じられないぐらい難しいんですよ。うちの英語教育改善委員会では、だれか早稲田大学の入学試験を、英語試験を持ち出したんですよ。長文があるでしょう。あの長文の千二百ワードの半分、つまり六百ワード、一つのセンテンスだったんです。つまり、六百ワードの中でピリオド一つもないです。私、三回読んでも私も意味わからなかったんですよ。結果は、いや、これは英語試験ではなくて、英語先生のエゴ試験ですよ。自分の試験は東大より難しくて自分は東大より偉いんですよ。  それで、そのために一生懸命準備しなくちゃなりません。だから、口と耳の訓練をしようとしても時間がなくて、いろいろの意味では読み書きへの偏重が弊害ばかり与えるんです。私、全く先生と同感です。

山下栄一公明党

○山下栄一君 入学試験に英語を取り入れることによって国際化を図ろうというその根本的姿勢がおかしい、かえってそれは国際社会から落ちこぼれるんだという非常に大事な指摘であるというふうに感じました。  それと、ちょっともう余り時間がないんですけれども、もう一点お聞きしたいんです。  国家と教育のかかわりなんですけれども、私は教育を受ける権利というのは社会権的、基本権的な教育のとらえ方だと思いますけれども、教育を受ける権利と同時に教育の自由というか自由権的基本権としての教育活動、事業というとらえ方が大事なんではないかと、同じ比重だと私は感じているんです。  冲永先生とも、両方の公述人にお聞きしたいんですけれども、要するに日本が明治に入ってから国家主導型で教育というのを行ってきたと。義務教育もそういう一つの形かもわかりません。ただ、明治以前は、もう教育は私というか、政府とか、そういう国が主導してきたのではなかったと思うんですね。わずか百年ちょっとの中で国家主導で教育を行ってきたのではないかというとらえ方をしているわけですけれども、本来、教育というのはそういう思想、良心の自由にかかわる、人格にかかわる営みなわけですから、やはりこの自由権的な基本権としての教育の自由というとらえ方が大変大事なんではないかというふうに思っているんです。ともすれば国家のための教育になりがちな今の青少年問題の中で、もう一度国家と教育のあり方というのを問い直す必要があるのではないかと、こう感じておりますけれども、それぞれ所感をお伺いしたいと思います。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 江戸時代には寺子屋制度があったというわけでございますし、それは全く私人が行っていた、自分の教養を上げるために、あるいは自分の事業、商売を円滑にするために、町民はそうだったと思います。武士は藩校があったわけですから、藩で、あるいは藩校に行かないというとちょっと問題があるいはあったかもしれません。でも、塾があって、そこのところに、塾に通う人もあったわけでありますし、殊に蘭学塾なんというのも非常に盛んになったと、こういうわけであります。新しい知識を得ようと、こういう当時の鎖国の中でそういう方もたくさんいたというわけでございまして、日本人というのはなかなか向上心の大きい国民であるということは言えると思います。  明治の最初のころは、これはむしろフランスとかアメリカとかイギリスとかの教科内容であったと。ところが、大学令ができた後からいわゆるドイツ主流になり、国家主義的なもののことが始まると。国家主義的な内容にして、いわゆる道徳教育というんでしょうか、当時の国粋教育というんでしょうか、当時の観念での忠君愛国ですね、を道徳として教え込んだ、こういうことになるわけですけれども、戦後それは非常に大きく変わったわけでして、日本人全員がある程度の強制力を持って読み書きそろばんだけは全員がわかるということをまず最低基準として持たないと、やはり国際社会の中で落ちこぼれになるんじゃないかなという気はいたします。  それから、あとはその国で決められたいわゆる指導要領ですか、というのがあるわけで、これを余りかたくなに守る必要は私は全くないんじゃないかと。これはあくまでも最低基準であって、それよりも余計にやった人、子供に対してはやはり何か褒美を与えてやらないとインセンティブはわかないわけで、何かの形で褒美を与えてやってその最低基準より上のものを目指すということはもう大いにやってしかるべきと、そこにまた私立学校の存在があるんじゃないかと、こういうふうに思っています。  それからもう一つは、その最低基準に達するように殊に公立の先生は大いにひとつ努力してほしいということでありまして、授業が終わりましてもそういった生徒を集めて一生懸命勉強させるという情熱のある、教育は情熱ですので、そういう情熱のある先生が多けりゃ多いほどいいなと、こういうふうに思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 時間がないですけれども、正直申し上げれば、外国だったらアメリカ、オーストラリア、ある程度イギリス、は国の教育に対しての介入は日本よりも多いんです。というのは、さっきおっしゃられたように、私立大学が、特にオーストラリアは非常に少ないんです。ただ、制度は柔軟であって、一生懸命勉強させる、インセンティブもいっぱいあるし。  国が指導的な役割を果たすのはそれは別に悪くないけれども、一つだけ、日本の場合は義務教育を十二歳でやめればどうですか。その後で本人の意思の上でやればいいのではないかと。

山下栄一公明党

○山下栄一君 ありがとうございました。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 日本共産党の阿部幸代です。  今、教育現場に学力の危機とか学びからの逃避とか、こういう事態が広がっていることを大変心配しています。このこととかかわって質問をしたいと思います。  最初に、冲永公述人にお願いしたいんですが、先生の「二十一世紀の大学像」のまとめたものを読んでまいりました。その中に、大学生の基礎能力の低下や基本的な訓練の欠如が問題になっている、小中高の教育課程と関連しているのではないかという説があるがという問いに対して、先生は、一流大学、一流企業に入る範疇にいる生徒は、ただ偏差値を上げるためだけの勉強に疲労こんぱいしている。受験に合格するための勉強で、将来を見据えた個性を磨くための勉強ではない。一方、大部分の生徒は将来に夢が持てない。何のために勉強するのか生徒自身理解できないまま、自発的な姿勢なしに、大卒の資格を取るために、入試のための受験勉強をしている。こういう指摘をなさっていて、私もこの部分、大変重なる部分があるのだと思うんですが、それではどうするかということで、大学改革とか入学試験制度の改革とかとあわせて義務教育段階をどうするのかということで述べておられると思うんですけれども、その辺どのようにお考えになるかお聞かせいただきたいと思います。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 義務教育でございますけれども、これは先ほど申しましたように、指導要項は最低基準であると。ですから、そこに合わせるように、それより理解力の悪い子供については大いに勉強をさせてそこへまで持っていくとか、それ以上のものの人についてはあるいは学習度別のクラスをつくるとか、そういうことにして勉強のインセンティブを与えて、できる子はどんどん伸ばしてやるということは私は必要ではないかなと、こういうふうに思います。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 私は、教育内容とそれから教育条件と、二つの方面から掘り下げていかなければいけないような気がしているんですが、教育内容については、先生おっしゃるとおり、私も、学習指導要領の中身を機械的に三割削減すればいいという、そういう立場はとりません。むしろ、何をもって基礎、基本というのか、何をもって基礎、基本の学力というのか、このことを学者やあるいは現場の先生たちも含めてもっと研究も進められなければいけないし、実践的な検証も必要なんだと思うんです。  それからもう一つ、教育条件整備があると思うんですが、その辺のお考え、もうちょっとお聞かせいただけますか。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 要するに、今きめ細かな教育ということが盛んに言われているわけでございまして、二十人学級であるとかというようなことが盛んに言われておるわけです。これも、私は二十人学級というのも一つの大変いい考え方だとは思います。それぞれの生徒の個性に従って勉強を進めていく、それにはやはり習熟度別の学級も必要でありましょうし、あるいは小さいときからキーボードになれさせることも必要かとも思います。私なんかは、幼稚園からパソコンのお絵かきぐらいできるようにということも必要かなと、こういうふうに思っております。それが設備的な問題かなと、こういうふうに思います。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 この「二十一世紀の大学像」の中では、現在の義務教育の場では、「中間層の児童・生徒に視点をおいた授業だと、できる生徒は退屈するし、その授業にもついていけない生徒にとっては勉強そのものが苦痛になってくる。」ということで、先生の考え方、すみ分けですよね。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) そうです。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 できる子、中くらいの子、できない子。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) はい、そんなすみ分けというようなことを一つ考えております。  ですから、みんなが学校へ行ったらおもしろい、楽しいという、要するに勉強を楽しいという形に持っていかないとこれはいけないわけで、できるようになればおもしろみがわくんですよね。ですから、最初はどうしても努力が必要なんで、ある程度のところまで行きますと、できるようになると大変おもしろくなると。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 私などは、すみ分けというのが、子供の立場に立ち、子供の心を思い描くととてもつらいことになるんですね。やっぱりわかるまで教える、教師は。それから、子供はわかるまで勉強することができる、しかもいろんな子供たちと一緒に切磋琢磨できる、いろんな考えの子がいる、そういう学びの場を保障していきたいなというふうに私などは思うんです。  そのことともかかわって、グレゴリー・クラーク公述人に伺いますが、先生、公開シンポジウムの「二十一世紀の教育を考える」の中で、私、事前に資料を読んできたんですね。「小・中学校の四十人学級は改善すべきです。日本人が自己主張ができず創造性がないのは、大集団で一方的な教育を受けるからです。これから少子化で児童生徒が減るのに二十人や三十人学級にしないというのは、世界から見れば不思議といわざるをえません。」とおっしゃっていて、この「世界から見れば不思議」というあたりの実情をぜひお話ししていただきたいと思うんですが。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 当然、少人数学級、早く導入すべきですね。  しかし、それだけではなくて、一方通行ではなくて討論的な形で、アメリカの学校は、入ればすぐわかりますけれども、本当に活発に先生と学生の間、意見の交換とかアイデアの交換が行われています。日本はそうではないです。非常に寂しいのではないかと思います。  私、一つだけ、授業を楽しくするとかおもしろくするという、例の日本語であめとむちの問題なんですけれども、あめばかり考えて、僕は、むち使ってもいいですよ。よく勉強しないと落とすとか、そういう圧力でも結構ではないかと思います。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 四十人学級というのは、私など、群れになってしまうんではないかと思うんですね、人間関係が。そのように考えていいんでしょうか。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 私、五、六年前、大分県に行きまして、あそこで少子化、特に地方で激しくなって、にもかかわらず、文部省の規定の上で四十人学級編制。結果は、その間は、先生になりたい人、二〇%、三〇%だけを採用するとか、資格を持っている人たちを、本当にもったいないです。どんどんどんどん先生の人数をふやして、子供、学級の人数を減らして。  東京にある国際学校があります。もしチャンスがあればぜひ見てください。二十人、二十五人を超えるのはもう禁じられていますよ、学級の人数なんですけれども。それで、先生たちのやり方とかは本当に開放的です。日本は、ある程度まねすれば結構ではないかと思います。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 時間が少ないんですけれども、クラーク先生にもう一つお聞きしたいのは、いわゆるボランティア活動、社会活動ですか、子供たち、学生の社会性が乏しいということを先ほど指摘になって、やっぱりそういう経験が乏しいからではないかということをおっしゃったと思うんですが、イギリスにおける社会活動、ボランティア活動の具体的な例など、お話ししていただけますか。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) イギリスは、いわゆるギャップ年、英語でギャップイヤー、つまり高校を終わって大学に入る前にそういう奉仕活動をやっています。アメリカだったら小学校からスタートなんです。なぜか。進学のためにそういう経験は必要であるんです。日本は、もちろんそういうチャンスは余りないですけれども。  私、特に自分自身の教育の中でボーイスカウトの影響が非常に強かった。日本に来て、ボーイスカウトが弱くて、なぜか。いろいろ原因はありますけれども、まずお金がない。私、ボーイスカウトの理事になって、普通は委員会に出席すれば小さな謝礼を受けるんですけれども、逆です、寄附金を払いなさいと言われちゃったんです。そこまでお金が足りなくて。国民会議、この問題を取り上げて、ゆめ基金をつくる、これ一つ大きな進歩ではないか。  もう一つ、しかし一番大きな問題は、日本は過保護社会。万一問題があれば、けがになれば大変なことなんです。  国民会議、習志野の中学校を見に行きました。そこで体験教育をやっているんです、有名になって。行ってみれば、一日だけですよ、体験教育。その準備のために何カ月間先生たちはいろいろ委員会をつくって、それで無事終わりました。  特に、ボーイスカウトの場合は子供を冒険させなくちゃならないんです。山の中で野宿とか、我々外国では常識なんです。日本はできないんです。万一けがになれば責任問題になる。私、国民会議で提案したのに全く反応がなかった。がっかりしました。  国は、本当に子供に奉仕活動とか社会活動をやらせたければ、これから国が補償する。万一けがになれば、これ国家の責任なんです。予算として大したお金ではないですよ。農道空港一つだけで十分カバーできる。皆さん、お願いします。

阿部幸代日本共産党

○阿部幸代君 どうもありがとうございました。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 きょうはどうもいろいろ御意見ありがとうございました。社民党の清水です。  まず、お二人から、今いろいろお話はありましたけれども、日本の子供たちの現状を、やっぱり一番問題はどこだというふうに見ておられるでしょうか。そして、義務教育の中で、今当面すぐ変えなきゃならない制度といいますか、そこのところをお一人ずつお答えください。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 私は、画一的な教育というのは非常に無理だと思います。ですから、やはりその人の理解する能力と申しましょうか、そういうことを言ったら大変あれなんですが、理解する能力に従って教育をするということで、もし一定水準までを教育するというのであれば、そこまでは伸ばしてやって、それ以上伸びる人はどんどん先へ進めないと、これはやはり能力に対しての平等性が失われるというふうに思います。  ですから、平等ということを、いろいろな意味に平等を使うわけですが、その平等の概念をいろいろな意味に考えて、いろんなファクターをとって考えますと、やはり能力に従ってその人たちの能力の平等性というものも大いに考えなきゃならない。それで、その人たちの能力を引き出してやると。  教育というのは、子供が持っている能力を最大限引き出してやるのが、これが教育であろうかと、こういうふうに私は理解しておりますので、そこのところを、すべての人間が同じ、学生が同じことしかできないようにするという教育では、ちょっと日本の将来が危ういと思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) これは永遠のジレンマなんです、平等主義か能力主義でいくか。外国でも結論はまだ出ておらない。だから、日本でまだ盛んに議論するのは当然のことなんです。両方プラスとマイナスあります。日本はもうちょっと能力を重視すればいいなと思いますけれども、ただ、今までの平等主義は一〇〇%マイナスだと言えないと思います。日本の経済発展の一つの原因なんです。会社に入ってから適時必要な教育を受けるとかいろいろ言われています。  一つ、具体的なアイデアを提案させていただきたいのですけれども、日本は明らかに進学率が高過ぎます。中学校から高校、高校から大学。学問的な能力のない子供は大体物づくりの能力を持っているとかね。アメリカ、特にドイツの場合は専門学校に入って一つの技術を身につけて、無理に大学とか入ろうとしないんです。日本の場合は、これをなくすというのは非常に難しいんです。自分の愛子はどうしても大学へ入れておきたいんです。それだけではなくて、子供たちは、十八歳は就職、働きたくないんですよ。大学へ入って四年間ぐらいのレジャーランド生活が欲しいんですよ。これも進学率が高い大きな原因なんです。  暫定入学制度、全部みんな暫定にすれば、オーストラリアも高いんです、日本と同じなんですけれども。一年終わって試験落ちて反省するんです。自分はやっぱり大学教育に向いていないです。それで、大学を出て、仕事をやって、それで後で、二十五歳になってとか三十歳、さっきの先生の話と同じなんです、もう一回大学に戻れる、あるいは十八歳になって就職して夜間大学に入る、授業を受けるんです。  私は日本をあちこち回っているんです。私にとって一番しっかりしている青年たちは郵便局で勤めている若者なんです。本当にしっかりやっている。難しい仕事をぱきぱきとやっている。調べてみると、ほとんど高校卒、大学行かなくて十八歳で郵便局へ入って、それで現場でいろいろ実践的な教育を受けて、それで後で夜間大学に入ることがよくあるらしいんです。大いに勧めさせていただきたいんですね。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 次は、教育、大変大事なところだと思いますが、教育の制度だけじゃなくて、社会がそれを受け入れられるようなシステムにしないとだめですよね。    〔理事須藤良太郎君退席、委員長着席〕  時間が少ないので、さっき私、冲永公述人がおっしゃったこと、ちょっと理解できなかったところがあるんです。それは、子供の社会性とか自主性が非常に弱いという問題をお話しなさっているときに、家庭教育の問題は確かにあると思うんですけれども、何か義務教育のところに女性の先生が多過ぎる、それで子供たちが女性的になるとおっしゃったんですけれども、その女性的になるというのはどういう意味を指してお話しなさったんでしょうか、その辺ちょっとお聞かせください。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 私は医者でございまして、専門は産婦人科でございます。それで、女性と接する機会が非常に多いものでございますので、はっきり申せと言われるとちょっと困るんですが、男性と女性との差は感情的にも身体的にもいろいろたくさんあるわけでございますので、女性の中だけでいきますとちょっと問題があろうかなと、こういうふうに申し上げただけでございます。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 クラーク先生もその点はどのようにお考えになりますか。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 日本の文化はもともと女性的な面があるんです、感性的な文化の一つの原因なんです。もう一つは、学校の中の女性の先生が多いというよりも、家庭の中でお父さんがいないんです。それで、例の立教大学の先生の言葉なんですが、母子カプセルになりやすいんです。これは明らかに好ましくないです。  けれども、外国でも同じ問題あります。でも、外国で簡単に克服されています。子供は、学校と家庭だけではなくて、例えばボーイスカウトだったら優秀な男たちとつき合えるんですよ、冒険させられる、男のように育てられるんです。だから、そういうバランスをとれる。私、女性の影響はすごくいいことだと思います、ちなみに。特に、平和的な日本をつくるために必要ではないかと思います。

清水澄子社会民主党・護憲連合

○清水澄子君 終わります。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 両先生、長時間御苦労さまでございます。  無所属の会の松岡滿壽男です。  まず、冲永先生にお伺いしますけれども、先ほど来、柳田委員とのやりとりの中で官僚の問題について随分変わってきたということをおっしゃっておられますけれども、実は、「誰がために何を学ぶか」という本の中で「二十一世紀の大学像」というところをちょっと読ませていただきまして、有馬先生はいらっしゃるからその部分は除きますけれども。  堺屋太一さんがなぜ経済企画庁長官になったのか不思議に思うんです。彼はあくまで評論家としての、いわゆる批判する立場でやっていくのが一番適していると思うんです。官僚をうまく引っ張っていけるかどうかという点で、全くそのとおりだと私も思います。官僚組織など全く変わらない。アメリカの場合、大統領がかわると課長クラス以上は全員首ですからね。新しいガバメントをこしらえていくわけですから、大統領の意向は上から下まで浸透する。大臣がかわっても、官僚の方はそのままというシステムがおかしいですね。だから改革が進まないという指摘をしておられます。そのとおりだと私は思うんですね。  今、国民から見ると永田町は別の船に乗っていると、国民と。また、我々から見てもある面では官僚はまた別の船だと。その方向性が一致していないというところに日本の改革が進まない大きな原因があると思うんです。それと、いろいろな政官業の癒着の中で非常に緊張感がなくなってきている、政権交代がないので。  そういう中で、今最後にそういうアメリカの例をとられましたけれども、どうやったら官僚が変わっていくというふうに思っておられますか。御示唆いただきたいと思うんですけれども。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) これはなかなか差しさわりのある問題でございまして、例えばアメリカのグリーンスパンさんとか、ああいう人とか、あるいはそういう何といいますか、ビジネス界の非常な、アメリカという社会は職を変わることによってどんどんどんどんサラリーが上がっていく。こっちの会社から引っこ抜かれて、こっちの会社へ行くとまた上がる。こっちの会社へ行って上がる。非常に厳しい競争の中で生き残った人がトップになって采配を振るう。ですから、非常に実務にも詳しいというあれがあるんですが、大統領任命制ですから。  ところが、日本の場合は、例えば三菱銀行の頭取はと、こうなりますと、三十年前に三菱銀行に入って、それで大蔵省との折衝で覚えがよかったから頭取になるというようなことでございますので、真の実力は全くないんじゃないか、こういうふうに思います。したがって、これをどう変えていくか、なかなか非常に根深いものがございますので、それをどう変えていくか大変な問題だと、こういうふうに思っています。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 あと一分しか残っていませんが、クラーク先生にもお伺いしないと大変失礼になりますので、申しわけありませんが、このレジュメのところで、要するに、外国では国家と地方自治体の教育への介入は日本に比べれば少ない、教育に対する国家の指導と管理が非常に厳しい、それから地方自治体も同じだというふうに書いておられますが、具体的にどういう点を直していけばそういう管理が排除できる、具体的にどういうところの介入が激しいのかという点についてお答えいただきたいと思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) さっき申し上げたように、大学だったら割合と自由になってきましたんですけれども、中学、高校は教科書の問題があるでしょう。あとは、カリキュラムもみんな同じペースで進めなくちゃいけないし、これ全部学習指導ですね、文部省の厳しい指導なんですよ。最近、英語教育も英語教育改善委員会の中で全部決められていますよ、文部省の中で。  国民会議で、チャータースクール、江崎玲於奈先生がアメリカで経験なさって、チャータースクールのよさを随分強調されまして、これもちろんアメリカ、文部省は非常に弱いんです、かなり成功しているし、いろいろアメリカとかオーストラリアはバラエティーがあるんです。日本はバラエティーが非常に少ない。私立であってもほとんど国公立、公立と同じように同じペースで進めなければなりません。これはちょっと問題ではないかと思っております。

松岡滿壽男無所属の会

○松岡滿壽男君 ありがとうございました。

高橋令則自由党

○高橋令則君 自由党の高橋でございます。  私は一点だけ質問させていただきたいと思います。  私も実は教育行政にちょっと入ったことがあるんですけれども、大変心配していることは、先生お二人ともに大学関係の先生方でございますけれども、私は教育の基本は、基礎的な部分ですけれども、幼児教育というんですか、小さい子供、私が言えばしつけということになりますかね、これが我が国はもう完全に壊れてしまっているんではないかと、ほとんど。そういうことがやっぱり教育の基礎的な部分をきちんとしない理由ではないかなと私は思っています。  家庭教育については、文部省もそれから厚生労働省も、それは家庭の問題だと言うんですよ。私も、今から二十年ぐらい前から当時の指導主事連中なんかを呼んで議論しまして、専門の先生と議論をして、そして何とかならないかと言ったんですよ。そうしたら、文部省の指導によって家庭教育学級というようなシステムがあるんですよ。それで一生懸命やった、やりましたと言うんですよ。ほとんど改善されないんですね。今でも恐らく文部省はやっているんだろうと、その前の文部省ですが、やっているんだろうと思うんですよ。ところが、全然それが見えないと私は思っているんです。実質的に文部省が考えている家庭教育学級などというふうなやり方は、もう不十分ではないか。  そしてまた、家庭がどうかというと、今のお若い父母は家庭教育能力がないと思うんですよ、私は。それをどうやってやっていくか。この介護、介護というのは変ですけれどもね、保護してやっていくわけだから。私は見えないんですね、それが。保育園それから幼稚園もありますけれども、これも足りないですね。それなりにやったと言っているんですよ。ところが、みんな不十分なんですね。  私は、宗教教育も一つあるなと。宗教ですね、これも必要かなと思っているんですけれども、悩んでいるんですけれども、お二人の先生方にそれぞれお願いしたいんですけれども。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 若い夫婦の教育ということでございますけれども、私はちょっとシンガポールへ行っておもしろい話を聞いたんですが、シンガポールの家庭というのは今はどんどん生活水準が上がっていまして、共稼ぎが非常に多いと。そして、子供はだれによって育てられるかというと、フィリピン人かインド人かだというような話を聞きました。それで、その中で育てられて、大学へ行って、後何年間かは軍隊に入るか警察に行くかというような制度になっていまして、そこでシンガポーリアンのアイデンティティーが鍛えられるというようなことを聞いておりまして、そういった若い層のお父さん、お母さんができていく、こういうことなのでございますが、あとはボランティアとかというようなものがあるようですけれども、そのボランティアもちょっとやはり公共的な何か非常に色彩の強いものを言っておりました。  お父さんお母さん教育というのも、やはりどこかできっちりと、あるいは大学でやるか、そういった社会へ出てから一定期間やらせるかというようなこともあるいは必要かなというような気もしないわけではありません。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 先生の悩みはよくわかっています。私も子供二人なんですね。しっかりとしようとしたんですけれども、ワイフの言葉は耳、記憶に深く入りまして、どんなにしっかりしようとしても、ばかげているテレビ番組と、有害なある番組と競争するのは非常に難しいんです。子供はそれで非常に影響されているのではないか。これは学級崩壊の一つの大きな原因なんです。  テレビの電波が入るのを禁止するのはできないですけれども、ちょっと繰り返しなんですけれども、子供は社会の中でもっと行動すればわかってくると思います。社会の中にはそういうばかげている面もあれば、しっかりしている面もあるんです。  両親たちの教育は、文部省一生懸命やっていますけれども、仕方がないですよ、家庭は家庭なんです。それで、たまたま日本の場合は案外と弱いんです。これは少子化と非常に関係あると思います。特に、アメリカの家庭を見ると、みんなプライドを持って自分の子供とか見せたいんです。子供一人だけだったら、これ恥なんです、アメリカの社会は。日本はそうではないです。これは深い文化的な原因がある、直すのは無理と思います。  しつけの問題とか道徳の問題は、やっぱりむしろ社会の責任ではないかと思っております。

高橋令則自由党

○高橋令則君 ありがとうございました。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 両先生、御苦労さんでございます。ラストバッターでございまして、予定の時間も過ぎておりますので、両先生に一問ずつ質問をさせていただいて、私の質疑を終わりたいと思います。  まず、冲永先生でございますが、好むと好まざるとにかかわらず、我が国は少子化時代に相なっております。多くの高等教育で定員割れということで、特に、そう有名でない、あるいはまた地方の大学あるいは短大ほどそういった傾向は多いわけでありますが、こういったことがどんどん生徒獲得合戦という面で入学の門戸をより易しいものにして、教育レベルのダウンということになるのではないか、ひいては人的資源の低レベル化ということにつながるのではないかと、そういう気がいたしますが、後ほどちょっと御所見を賜りたいと思います。  それから、クラーク先生ですが、英語教育の御持論は、余り若年のときに英語を教えずに、大学で集中的にやればよいというようなお話であったと思いますが、それは失礼ですが、全く私が考えているのとは逆なんですけれどもね、日本の大学生は勉強しないことで有名ですから、それでなくても日本人は語学音痴で語学に弱いと言われておりますので、とんでもない間違いを犯すことになろうと思いますので、ぜひ近く御訂正の論文を発表していただきたいと、そう思います。  以上、御所見を賜って、私の質問を終わりたいと思います。

冲永荘一帝京大学理事長・総長

○公述人(冲永荘一君) 今、確かに十八歳人口がどんどん減っておりまして、第二次ベビーブームのピークは二百五万で、それから下まで行きますと、もう百二十万ぐらい、あるいは百二十万を割るというような状況が出てくるわけでございます。その間に大学の進学率が相当上がってはおりますんですが、ただし、そういう状況の中で現在まだ減少の途中にあると。まだそのボトムの百十五万まで達していないということになっております。  その段階においても短大は、今現在、定員割れの短大が六割以上、あるいは七割近いと。あるいは大学も、三〇%ぐらいは入学定員割れを起こしておると、こういうわけでございまして、受験生の獲得競争というのが私立大学の、あるいは私立短大の命運を制する、存続がそれによって決まるというような状況になってはきております。したがって、どんどん入学試験が易しくなるんではないか、そして日本の将来がだめになるんではないかというのが先生の御趣旨かなというふうに理解するんでございますが、やはりそれでも浪人生は相当おります。  それで、自分の目指す大学へ行こうという学生もたくさんおるわけでございますし、あるいは日本の場合は社会も、卒業しますとどんな人でも、例えば公務員に合格すれば全員どこの大学を出ても同じ給与、サラリーと。何番で卒業しようと同じというわけでございます。それから会社も同じです。例えば、日立に就職すればみんな同じサラリーからスタートする、どこの大学を何番で出ようと関係なしというわけですが、アメリカなんかの場合には、どこの大学を何番で卒業したら初任給幾らと、こういうふうに決まってきております。それが毎年相場が違うということで、社会に出てどれだけ役に立つかということを尺度にしてそういうのをどんどん決めているようでございまして、日本もそういうふうになれば大分変わっていくんじゃないかなと、こういうふうに思います。

グレゴリー・クラーク多摩大学学長

○公述人(グレゴリー・クラーク君) 英語教育の問題なんですけど、いや、小学校、中学校です、六年間、若いとき大いに勉強してほしいんですけど、一億人の日本人がみんな完璧な英語をしゃべられる、読めるとか必要はないです。もっと高いレベルの英語をやりたければ、高校ではなくて大学で集中して。  それで、おっしゃった問題はよくわかっております。多摩大学でこの問題、簡単に解決できたんです。英語はほとんどテープ中心です。試験は全部テープです。テープを聞いて書き取れなければ、それで、必修です、単位取れないんです。繰り返してやらなくちゃいけないんです。そうすると、仕方がなくて勉強、これはあめではなくてむちですけれども、勉強するしかないんです。それで、ある程度うちの英語教育、ちょっと改善できたんではないかと思います。

石井一二二院クラブ・自由連合

○石井一二君 ありがとうございました。

岡野裕自由民主党・保守党

○委員長(岡野裕君) 以上で公述人に対する質疑は終了をいたしました。  この際、公述人冲永、クラーク両先生に一言お礼を申し上げます。  きょうは、長時間にわたりまして有意義な御意見をお述べいただき、かつは委員の質問にお答えを賜りまして、本当にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げる次第でございます。お疲れさまでございました。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後五時三十一分散会

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