法務委員会 第6号
- 発言数
- 151 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 2000/11/14
会議録
○委員長(日笠勝之君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 少年法等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に警察庁生活安全局長黒澤正和君、法務省刑事局長古田佑紀君及び法務省矯正局長鶴田六郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(日笠勝之君) 少年法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。 この少年法につきまして、民主党は衆議院の方で修正案を出させていただきました。参議院におきましても審議の終了段階で修正案を提出するという考えでおりますが、その点を踏まえまして、私どもが修正を申し入れている点をポイントとしましてきょうは質問させていただきたいと思っております。 まず、十六歳未満の少年につきましてこれまで刑事処分ができなかったことについて、新たに刑事処分ができるというふうに今度の改正案ではなっておりますが、私が統計を調べましたところ、これまでの十六歳以上の少年につきまして検察官送致が実際どのくらいあるんだろうというふうに数えましたところ、ほとんどが年長少年でございまして、一番低い十六歳の少年に限りますと、検察官送致になるのは年に数件しかないというような状況でございました。 そういう例を考えますと、その十六歳よりもさらに年少である十四歳、十五歳の少年につきまして仮に刑事処分の枠を広げても、実際に刑事処分が相当ということで検察官に逆送になるというケースは相当少ないんじゃないかというふうに予想されるんですが、そういう相当少ないケースという場合に、提案者としては実際にどのようなケースに当たる少年が十四歳、十五歳で検察官送致になるんだろうというお考えなのか、お聞かせいただきたいんです。
○衆議院議員(杉浦正健君) 先生おっしゃいますとおり、予測は極めて難しいわけですけれども、実際問題としてそんなに多くはないだろうというふうに考えるのが常識だろうと思います。 ただ、具体的な事件の例を言ってはいけないかもしれませんが、例えばこの間の大分における一家殺傷事件、三人を殺害して何人か傷害したという事件、あの少年は十五歳でございますが、どのように審理を急いでも十五歳のうちに処理しなきゃいけないようなんですね。となりますと、刑事処分は現行法のもとでできないことになりますが、事案の内容はよくはわからないんですけれども、仮にあの事件を成人がやったとしたら、これも個人的意見ですが、恐らく死刑は免れないだろうと外形上から思われる事件でございまして、もし改正がもっと早く実現していればあの少年は刑事処分の対象となり得たわけであります。 そのほかにも、十四歳、十五歳の少年で先日十ばかり例を挙げましたが、二、三あるわけでございまして、そういう凶悪犯をやったら刑事処分になるんだぞということを明示することは、生命に対するとうとさを子供に教えたり、悪いことをやったら社会から罰せられるよという原則を確立することで、少年たちがそういう非行に走るのをいささかなりとも抑止する効果があるのではないかと私どもは思っている次第であります。
○小川敏夫君 非常に凶悪な犯罪というふうにお伺いしたいと思いますが、犯罪の凶悪さということと同時に、少年の更生の可能性ということも相当考慮しなければならないと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
○衆議院議員(杉浦正健君) それはもとより当然のことでございまして、ケースに応じて家庭裁判所が適切に判断されるというふうに思っている次第であります。
○小川敏夫君 そうしますと、実際に十四歳、十五歳の少年に刑事処分の適用の可能性を開いたとしましても、実際にそうなるというのは非常に凶悪な重罪で、しかも少年に更生の可能性が低いというケースに限られるようなニュアンスに受けとめたんですが、であれば、むしろ十四歳、十五歳に刑事処分の枠を広げるとしても、これを非常に重要な犯罪、重罪でかつその少年について更生の可能性が特に低いというような場合に限定してはいかがかと思うんですが、そのような考えについてはいかがでしょうか。
○衆議院議員(杉浦正健君) いろんな考え方があると思うんですが、私どもは、十四歳、十五歳の少年について故意の犯罪行為によって人を死に至らしめた場合、いわゆる原則逆送という制度は適用しない、十六歳からというふうにそこのところは区別したのも多少はそういう趣旨を踏まえてのことでございます。今でも逆送はできるわけでありますから、ケースに応じて家庭裁判所が適切な判断をされる。十六歳を超えたら原則は刑事処分、保護処分が例外という原則と例外を逆転させるわけであります、凶悪犯罪については。十四歳、十五歳については従来どおり逆送できるということとしたわけでございます。
○小川敏夫君 どうも趣旨として、十六歳未満の少年につきまして実際に刑事処分相当というのは重罪で、なおかつ少年の更生の可能性が著しく低い場合に限るような運用がなされるだろうという御意見をお伺いしたんですが、であれば、端的にそのように法律上限定してはどうか、裁判官により慎重な判断を促すということも含めて法律上そのように限定したらどうかという質問を行ったわけでございますが、今の御意見、そういう必要はないというふうな御意見だというふうにお伺いしますが、より明確にした方がいいんじゃないかと私は考えております。 今、話が出ました十六歳以上のいわゆる原則逆送と言われている点について次にお尋ねしますが、まず基本的な構造として、十六歳以上の少年につきまして、いわゆる故意犯によって死の結果をもたらした犯罪につきまして、これは裁判官が刑事処分にするか保護処分にするか、裁判官の裁量というものは確保されておるんでしょうか、それとも裁判官に裁量の余地はないか、あるいは制限されて原則的に逆送しなくちゃいけないのか、この点はいかがでしょうか。
○衆議院議員(杉浦正健君) 十六歳以上の少年による故意の犯罪行為によりまして被害者が亡くなった、死亡させたという事件でございましても、個々の事案におきまして、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、行状及び環境等の事情を家庭裁判所がきめ細かく検討しまして、保護処分が適当と考えられる場合には逆送せずに保護手続を選択することも可能といたしております。 ただ、今までの現行法のような家庭裁判所の裁量は当然のことながら縮められているというふうに考えるのが法の解釈として自然だろうと思います。
○小川敏夫君 要するに、裁判官の裁量は確保されておるわけですね。ですから、裁判官が保護処分相当と判断すれば、これは逆送でなくて保護処分でよろしいと、そういうことでございますね。
○衆議院議員(杉浦正健君) そのとおりでございます。
○小川敏夫君 そうすると、どうも原則逆送という言葉ばかりがひとり歩きしているようで、別にある一定の要件があった場合に裁判官の裁量の余地がないという意味なら原則逆送という言葉もいいと思うんですが、裁判官の裁量が確保されておれば、これは逆送するか保護処分にするかは裁判官の判断になるわけですから、原則逆送という言葉にはなじまないように思うんです。 それは言葉の問題ですけれども、ただいまの答弁では現行法と今回の改正案では当然裁判官の判断に違いが出るということですが、現行法でも改正案でもどちらも裁判官の裁量が確保されていれば、法文上の表現は違っても実際上の運用は同じなんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか、そこのところは。
○衆議院議員(杉浦正健君) そのあたりは私ども一番議論したテーマの一つなんですが、現行法上では、検察官への送致、逆送は二十条で「死刑、懲役又は禁錮にあたる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、」検察庁に送致しなければならないとある、これは御案内のとおりであります。 しかし、この五十年の家庭裁判所の運用を見ておりますと、例えば殺人事件の逆送率が二割から三割という数字を見ても明らかでございますが、裁判の結果、裁判官が保護処分を相当と認めるときは移送できるという五十五条の規定がほとんど全く働いていない。例が皆無とは言いませんが、ほとんどないという実情にかんがみますと、この「刑事処分を相当と認めるとき」という要件は、今の家庭裁判所は相当厳格に解釈しまして、実刑を相当とするときぐらいに解しておられるのではないかというふうにその結果をずっと見てみますと見られるわけでございます。 刑事処分というのは、もちろん執行猶予、罰金その他の処分があり得るわけでありまして、こういう家庭裁判所の運用そのものに問題があるし、また、ここから先は個人的な意見に相なりますが、刑事裁判所の処分にしても家庭裁判所の処分にしても、保護に偏り過ぎている嫌いがあるのではないか。もうちょっと厳しくしてもいいのではないかという議員間の議論も相当ございましてこの原則を逆転した。 つまり、刑事処分以外の処分が相当と認められる場合は原則逆送しなくてもいいけれども、それ以外は原則として送るべきだというふうに原則と例外を逆転する。そうすれば、検察官に送致されて起訴される件数はふえるであろうし、そこで公開の法廷で厳密な証拠に基づいて事実が確定できるし、被害者は公開の法廷ですから傍聴できるし、場合によっては証人として意見も申し立てられるし、少年が人を死に至らしめたという事実について公の場で検察官から訴追を受ける、厳格な対審構造による弁護人もつきますから審理は遂げられる、その方がいいのではないかというのが私どもの判断であります。 その結果、ケースによっていろいろあると思いますが、例えば保護処分にした方がいいというふうに刑事裁判所の裁判官が判断されれば、決定で保護処分相当ということで家庭裁判所へ戻して適切な保護処分をしたらいい、そういう道もあるわけでありますから、私どもとしては、この際、原則と例外を逆転して家庭裁判所の運用を改めていただくことが被害者に対する保護とかあるいは少年に対する規範意識の醸成とかもろもろの意味において大事なことではないかというふうに考えた次第であります。
○小川敏夫君 私の質問の趣旨は、逆送を原則にしろというのではなくて、その反対の趣旨で質問しているわけですが、要するに今回の改正案によりましても、裁判官が保護処分がふさわしいと思えば保護処分にできるという意味で裁判官の裁量は確保されているということを確認したかったわけですが、それはそれでよろしいわけですね。結論だけ。
○衆議院議員(杉浦正健君) そのとおりでございます。
○小川敏夫君 あと、この改正案なんですが、条文を読むと、故意によって人を死亡させた犯罪については裁判所が調査をしないで刑事処分に送るように、調査が不要というふうにもちょっと読めるような文にもなっているんですが、これは刑事処分、いわゆる逆送する前に裁判所が必ず調査をする、調査をした上で刑事処分相当とするか保護処分にするかを決めるということでこれはよろしいわけですね、確認でございますが。
○衆議院議員(杉浦正健君) 再三御答弁申し上げているとおり、そのとおりであります。八条の調査をしなければならないことになっております。
○小川敏夫君 あと、二、三前に御答弁いただいた中で、これまでの逆送がほとんど実刑が相当であったと、これからは執行猶予や罰金が予想される件についても逆送するんだという御意見を伺いましたけれども、執行猶予になるような可能性がある場合ですと、これまでの法案提出者の御答弁を聞いていますと、例えば被害者感情とかいうことが非常に強く御主張されておったんですが、刑事裁判を受けたけれども、しかし執行猶予ですぐ出てきちゃったというのと、保護処分で少年院でしっかり矯正を受けているといって、ある程度長期間そこで施設に収容されて教育を受けているという場合と、これは被害者感情から見ても保護処分の方がいいんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
○衆議院議員(杉浦正健君) 実刑にするか執行猶予を付すべきかという問題は個々のケースにおいて裁判官が判断されることであります。一概に何とも申せないわけでありまして、原則逆送で、逆送の結果審理を遂げられて、それで裁判官が最終的に個々の事件について実刑相当とか執行猶予相当とか、ここは執行猶予をつけるなら保護処分にした方がいいから五十五条へ戻すとか、そういう判断は個々の裁判官が個々のケースに応じて判断されるべきことだというふうに思います。
○小川敏夫君 いろいろ議論をしたいところですが、時間の関係もありますので次の点に行かせていただきます。 いわゆる検察官関与の問題ですが、まずその基本的な前提として、現行少年法の規定では事実認定に対応できない場合があるという御意見でございます。それについては私も必ずしも反対しないんですが、ただ家裁の審判に検察官を関与させるという方法だけがその問題に対処する方法なのかと考えると、まだいろいろほかにやるべきこともあるのではないか、あるいは導入するにしても考慮すべき点もあるのではないかというふうにも考えておるわけです。 それで、これまでの答弁の中で山形のマット死事件というものを一つの例として御紹介いただきました。 私もその事実認定に思うのは、そもそも家庭裁判所に事実認定のすべての責任を負わせることは根本的に無理があるのではないかと。むしろ、家裁に送ってくる前に警察の捜査機関、警察というのはいざとなれば五十人、百人ぐらいの捜査官を導入して、さまざまな物的設備もある、それから捜査権という非常に強力な権限も持っている。そういう中の警察が捜査して事実を確定できないものを裁判所の審判廷において審判官がそこで事実を確定しろというのはある意味では無理があると思うんです。ですから、家裁に事実認定が送られてくるよりも前に、そもそも警察の方が事実の有無についてしかるべく適正な捜査をして送致してくるべきではないかと。 この山形のマット死事件についても、家裁が事実認定できなかったというよりも、そもそも家裁が事実認定ができるというような状態にはない、もっと捜査をきちんとやった上で非行事実があるかないかを的確に捜査を遂げた上で判断して家裁に送ってくるというような方法も考えた方がいいのではないか。家裁だけの責任ではなくて、むしろ捜査の問題もあるのではないかと思うんですが、そういった私の考えについてはどうでしょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) いわゆる山形マット死事件で、委員のおっしゃることは、もう少し事前の段階の捜査がきちっと行われていればああいう混乱は起きなかったのではないか、こういう御趣旨だと思います。 事実関係の詳細は承知しておりませんが、高裁の判断にかんがみますと、捜査の問題というよりも、むしろこの事件をきっかけとして少年審判に合議制がないこと、あるいは検察官が出席できないこと、あるいは検察官に抗告権がなくて、少年に非行なしとの決定がなされた場合は上級審における是正の機会がないではないか、こういうことが問題点として指摘されたというふうに理解しております。 委員がおっしゃるように、捜査が適正であるということはもちろんなければならないと思います。しかし同時に、少年審判も、これは保護ではあるのでありますが、同時に不利益処分を科すという面もあるわけでございますから、全部捜査面の問題として解決をせよというのはやはり無理があるので、裁判所に相応の職責を担ってもらわなければならないということではないかなと思っております。
○小川敏夫君 それで、検察官関与ですが、基本的には事実認定を争うケースということになると思うんです。そうすると、成人であればまさに有罪、無罪、そもそも犯罪を行っているのかということを争うケースになるわけですが、少年の場合も同じように非行事実を争う、まさに有罪、無罪を争うというようなケースであれば、これは今の少年法の審判の中で捜査記録が、すべていわゆる証拠の原則とは関係なしに一件記録として裁判所に送られ裁判官があらかじめもう読んでおるという状態で、まさに少年の、有罪、無罪という言葉は少年にはふさわしくありませんけれども、便宜使わせていただきますが、その有罪、無罪を判定するというのでは、これは少し少年に対して不利益ではないかと思うわけでございます。 それで、まず一つは、そうした非行事実を判定する前にもう捜査記録をすべて読んでしまうと、そうすると成人の裁判であれば予断排除の原則というものがあるのに、少年の審判の場合は非行事実を認定するに当たってはそれがないということになりますが、これについてはそうした予断排除をするような何らかの策を講じる必要があるのではないかと私は思うんですが、その点はいかがでございましょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) どうやったら適正な事実認定が行われるかというのは、これはやはり少年の保護という点から考えてもそれを抜きにしてやることはできないと思いますから、どういう事実認定が一番適切なのかという努力は我々も十分しなきゃいかぬと思うんです。 ただ、今、小川委員がおっしゃったことは、刑事訴訟のような予断排除の原則を取り入れたらどうか、そういうことによってもっと適正な事実認定を図れるのではないかという御示唆だと思いますが、予断排除の原則をとるということになりますと、どうしてもその手続を刑事訴訟のような当事者主義的な構造に切りかえていくということにならざるを得ないんだろうと思うんです。 刑事裁判のように、少年法の場合は適切ではありませんけれども、その被疑事実といいますか公訴事実というものを審判の土俵で設定して、それに対して主張と立証をしていくという構造にならざるを得ないんですが、もう委員には釈迦に説法ですけれども、そもそも少年法がそういう手続をとらずに、いわば職権主義的な構造で事前に裁判官が一件記録を全部読んで審判に臨むようにしようとしたというのは、少年審判の特質としてできるだけ早期に問題を解決していこう、それで十分に一件記録も読んで審判計画も立てて審判期日に臨んで迅速に処理ができるようにせよと、そのためには職権主義的な柔軟な構造が必要だということだったのだろうと思うんですね。 今回の我々の案は、そういう基本的な職権主義的な構造というものが、早期の審判という意味からも、あるいは審判の教育的機能という面から見ても基本的に維持されるべきであるという考え方に立っているわけでございまして、委員のおっしゃるような主張を取り入れますとどうしてもその根本が変わってきてしまうのではないか、こんなふうに考えているわけでございます。
○小川敏夫君 早期に判断をしなければならない、審判を進めなければならないというのはまことにごもっともだと思うんですが、ただ、早期にするという理由によって、少年に不利益な形でどんどん進めてしまえばいいということにもならないと思うんです。 ですから、例えば少年の方が有罪、無罪を争うというのであれば、きちんとした手続で多少それなりに時間がかかってもきちんとした判断をいただきたいというケースも十分あると思うんですね。ですから、やはり今の予断排除原則が全くないままでそこでその裁判官に事実の判定をしていただくというのは、相当少年に私は不利益じゃないかと思うんです。 もう一つ、予断排除のほかに、いわゆる証拠について、伝聞法則の排除とかそうした原則も、今の審判の中に検察官が関与ということになりますと全然取り入れられないまま事実の認定がされるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) 事前に裁判官が一件記録を十分読んでそれで審判計画を立てて臨むという基本構造からしますと、刑事訴訟におけるような伝聞証拠というものは外していくというのを原則とするということはなかなかとり得ないんだろうと思うんですね。 ただ、もちろんそのことが伝聞証拠は何でも自由に使えるということを意味するわけではないのだろうと思います。やはりその反対尋問権等、適宜に確保していくということは少年審判でも、それは裁判官のもちろん裁量でございますけれども、そういうことを考えて使って証拠を採用していただかなきゃいけない、こういうことではないかと思います。
○小川敏夫君 答弁者の御意見はわかるんですが、ただ法律の規定にそうしたことが入っていないと、実際の運用ではやはり事実認定の根拠となって心証形成に相当な影響を与えてしまうんではないかと思うわけです。 民主党の方はそこのところを、事実認定については予断排除原則や証拠の原則を生かした手続を新たに設けて、少年が非行事実を争う場合に関してはそうした手続でやるべきだということで、衆議院では修正案を提出して、きょうも理事会で私どもの修正案の原稿をお配りしたようでございますが、別に手続を設けると。少なくとも少年の方がそうした手続で進めたいという意向があれば、多少時間がかかるということを承知の上で少年がなおかつ求めてきているような場合についてそういう道を開いておくというのも一つの方法だと思うんですが、そうした私の考えについてはいかがでしょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) 民主党のお考えも一つのお考え方だと我々は思いますが、ただ私どもは、先ほど述べたように、やはり職権主義的な構造でやっているこの少年法の基本というのは意味のあることだというふうに思っておりまして、そういう観点からすると、別個の当事者主義的な構造の事実認定手続を設けるというのはやはりそれとやや相矛盾するのではないかという感じがいたしております。 そこで、これは杉浦提案者に御答弁をいただいた方がいいのかもしれませんが、逆送等の関係も事件によってはそういうものを使っていただけば当事者主義的な構造の中で裁判ができるという面もありますから、幾つかメニューはそろっているのではないかと思っております。
○衆議院議員(杉浦正健君) 民主党のおっしゃるような構造を家裁の審判に取り入れますと、一方で刑事手続になる普通の裁判の構造を、いわば国親思想で少年を保護するんだ、家裁で守ってやるんだというと、これは接ぎ木するような格好で矛盾が生じるんじゃないか。 個人的な意見なんですが、例えば山形マット死事件のような、一部の少年が無罪を争っているとかその事実関係が判然としないとかいうような場合、民主党がまさに提起されているようなケースの場合にはもう逆送したらいい。今でもできるんですから、検察官に送り返してもう一回徹底的に捜査して、刑事裁判で起訴状一本主義で、家裁と刑事裁判所は遮断されていますから、そこで検察側が訴追して、十分に捜査をして徹底的に事実を解明したらいいと私は思うんですね。 民主党さんの御提案の趣旨のようなケースは、ちゃんと二十三条ですか、原則逆送でない規定でもこれに当たれば逆送できるんですから、例えば窃盗罪でも恐喝でも何でも、少年が徹底的に争って審判の構造で手に負えないという場合にはむしろ家裁の裁判官は逆送してほしいと思うんですね。要するに、家庭裁判所は子供を保護してやる、親がだめだから家庭裁判所できちっと処分して、保護してまともな立派な子供に育てようというのが国としての考え方なんですから、これはどうも手に負えないというのは、私はどんどん刑事裁判の場へ出して事実を確定して、そしてきちっとした処分をしていく、保護処分が必要ならまた戻ってくればいいわけですから。そういう構造になっているのに、今までその民主党のおっしゃるようなケースについて逆送しなかったからこんなふうな問題になってきたんじゃないかという感じすらいたすわけなんです。 個人的な見解であります。
○小川敏夫君 何か私が答弁者になったような気もするんですが、逆送というのは刑事処分相当ということに限定しなければならないので、そうでないケースの事実認定ですとやはり刑事処分というのは難しいんじゃないか。 それから、谷垣議員の答弁に対して私がまた答弁する形になりますが、今の少年法は職権主義といってもそれはあくまでも保護処分をする上での職権主義でございまして、その保護処分の起訴事実があるかないかということ、まさにそれが少年法で欠けているんじゃないかという点で議論になっているわけですので、どうも職権主義と保護主義ということとはまた次元が違う、まさに非行事実があるかないかを確定する手続だから、職権主義の構造だからいいというのとはちょっと違うのではないかという私は考えを持っております。 さらに、では私の方の質問ですが、そうした民主党の提案する、別の手続ということではなくても、例えば現行法で検察官が関与するという内容でございますが、そうした中でも、例えば事実認定に当たっては刑事訴訟法に定めるような証拠、いわゆる適正証拠でない証拠については事実認定の基礎としないとか、そういう工夫をすることも可能ではないかと思うんです。 今、提案されている改正案の中で、検察官が関与するということだけで証拠排除原則やその証拠能力のことについて全く触れられていないんですが、その点について、例えばそれを配慮するような規定、宣言規定と言うとおかしいですけれども、あるいは多少なりとも実効性があるようなそういう規定を盛り込むようなことはどうでしょうか。御答弁を伺っていますと、少なくとも予断排除原則や証拠について何らかの考慮をする必要があるということはお認めいただいていると思いますので、ぜひそうした配慮をしていただければと思うんですが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) 小川委員がおっしゃっていることは、実際の審理の上でそういう問題を考慮していくということは私は十分あるべきことだろうと思っております。 職権主義的な構造の中で裁判官の裁量権を認めているわけですが、その運用は適切でなければならない。私どもの今度の案ですと、そこのところの適切さを確保するためにも、合議制であるとか、あるいは検察官が関与して、そしてその場合には国選付添人をつけるとか、こういうのは委員が今おっしゃった証拠認定の適切性を確保する上でも意味があるのではないかな、こう思っております。
○小川敏夫君 この点もさらに議論をしたいんですが、時間がございますので次の点について……
○衆議院議員(杉浦正健君) 委員長、いいですか、今のことについて。
○小川敏夫君 もうあと時間が数分しかないものですから、結構でございます。 あと単発的にお尋ねしますが、前回の民主党の竹村議員の質問について、たしか麻生先生でしたか、アメリカと韓国におきまして少年法が厳罰化になったにもかかわらず少年犯罪が増加しているという点の指摘につきまして、いや厳罰化になったからさらに本来ふえているものが少しは緩和されたんだというような御意見を伺いました。 その意見につきまして、麻生先生が言われたような見解が成り立つような社会状況なり、それを裏づける事実はございませんでしょうか。
○衆議院議員(麻生太郎君) この少年犯罪というものが、これは小川先生があれでしょうけれども、実にさまざまな要件からこの種のことがありますので、一定の施策、政策をとったことによって突如がたっと下がったとか上がったとかということはなかなか言えぬのではないかと、基本的にはそう思います。 ただ、アメリカの場合は、ジュリアーニというニューヨークの市長になった人が、千九百何年でしたか、九十何年からだったと思いますが、これはタフポリシーという猛烈な勢いで激しい政策をしていったことになるんですが、統計上からはこれは間違いなく一九九〇年代以降の少年犯罪が鎮静化したことは数字の上で出ております。 それから、検挙率の話も、多分これはそのときに申し上げたところも御指摘をいただいたところだと思うんですが、これは犯罪白書というものの数字の上では、少なくともピークと言われた昭和三十九年、それから昭和五十八年、いずれもこの当時の検挙率というのは六三・九%、六〇・三%だったんですが、それ以後ずっと下がり始めて、最近では三八%、三三%というのが検挙率の実態と、少なくともこの犯罪白書にはそう記しておりますので、これに基づいてこの間の数字を申し上げたという成果なんです。 それで、韓国の場合、あそこは検事先審制、そういうことになっておりますので、あそこは家裁に送る前にまず検事に行って、それから逆に振り分けていくというシステムになっておりますので、そういった意味では、私どもは、この厳罰化によって急に上がったとか下がったとかいうことはないのかもしれませんけれども、少なくとも厳罰化されたから逆にふえていったというのは私どもの持っている数字の上では出てこないということになっております。というのが私の思っております背景です。
○小川敏夫君 あと、検挙率の点が出ましたけれども、今回の少年法の改正は故意によって人を死亡させたというような重罪に限っております。 重罪について検挙率が下がっていればこうした少年法の議論に資すると思うんですが、今この少年法の改正案に盛り込まれている、そうした重罪ではない空き巣とか自転車泥棒とか、そういったものの数を含めた検挙率が下がっているというのであればこれは適切な検討材料じゃないんだというふうに思いますが、その点はもう時間が来ましたので答弁は結構でございます。 最後に一点でございますが、これもやはり麻生議員でしたか、少年が懲役五年なら五年、それだけの罪を犯したんだからしようがないじゃないかというような御意見も賜りました。 なるほど確かにわかりやすい話ではあるんですが、例えばそうした重罪を起こした少年が刑に服する、しかし刑に服した後、矯正されないでまた再び同じような重罪を起こすということで新たな被害を生むことよりも、そうした少年がきちんと矯正教育を受けて、再び犯罪を起こさないということによって社会を犯罪被害から守るということも大事なのではないかと私は思っておりますが、その私の考えについて麻生議員はいかがでございましょうか。
○衆議院議員(麻生太郎君) 基本的に同じ考えであります。
○小川敏夫君 終わります。
○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。 きょうは、具体的な制度につきまして若干御質問をさせていただきたいと思います。 新聞、マスコミ等で厳罰化というような見出しになりますが、私、前回も、本当に厳罰化になっているのかなということもございますが、ただ今回、処分等の見直し、特に減刑の見直しにつきまして改正になったところが特にそうなのかなというふうに理解をしております。 今まで、十八歳未満の少年につきまして、死刑で処すべき者は無期にするということで、その場合には七年で仮出獄可能であったものが無期とされても十年のままにしますというような改正になっております。また、無期刑に処断すべきときは、今までは十年以上十五年以下の有期刑という形になっておりましたが、その場合でも軽減せずに無期刑を科すということができるようになった、選択的になったわけでありまして、内容的にはその無期でいった場合は七年で仮出獄、有期刑の場合は三年で仮出獄が可能だという形になるわけであります。 そうすると、無期の中で、死刑が軽減されて無期になる場合と無期がもともと無期だといいますか、二種類の無期がいるというようなことになるんですが、仮出獄の可能期間につきましても改正をされているところでございますが、その趣旨並びに二種類の無期といいますか、その辺につきまして御説明をいただきたいと思います。
○衆議院議員(高木陽介君) 今、魚住委員御指摘のように、現行の少年法五十一条で、犯行時十八歳未満の者が死刑をもって処断すべきときは無期刑を科することとしています。また、五十八条によれば、少年が罪を犯して無期刑に処せられた場合は七年で仮出獄が可能とされており、成人の場合の十年よりも緩和されております。 このような場合に、死刑を軽減して無期刑とした上で仮に出獄期間についても緩和することになると、いわば二重の緩和をすることになります。本来、死刑に処すべき者であっても無期相当の者と同じ期間で社会復帰をする可能性を法的に認めることになって、罪と刑のバランス、また被害者感情、さらに国民感情、そういう点から問題があると考えられますので、死刑を緩和して無期刑を科した場合については仮出獄期間の特則は適用しないことといたしました。 また、この七年または十年という期間は仮釈放が許されない最低の期間を定めたものであって、個々の事案においては関係機関において適切な仮釈放の運用を行うことと考えております。
○魚住裕一郎君 今、実際上は個別の少年の状況を見ながら仮出獄を考えるわけでございますが、現実として延びるわけでございます。 法務御当局で結構ですが、仮出獄期間が延びることによって少年刑務所のカリキュラムというんですか、どういうような影響があるのか、また逆にかなり長期収容をするわけですから少年に与える影響というのも大きいのではないかというふうに思うわけでございますが、その辺について御答弁をお願いいたします。
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。 無期刑を科せられました少年受刑者、数は余り多くありません、少ないわけですけれども、その処遇につきましてはいわゆる分類処遇制度というものがございますので、その制度のもとでいわゆる科学的な分類調査を行って、収容施設をどこにするとか、あるいは処遇の重点を定めておるというのが受刑者の運用の実情であります。 その判断に当たりましては、もちろん刑期とかあるいは性別とか年齢等、そういう点も考慮しますが、そのほかに犯罪傾向の程度、深度あるいは心身の状況、生育歴、教育の程度、生活環境等々のもろもろの事情を考慮しておりまして、仮釈放が可能となる日がいつかといった点は必ずしも決定的な要因にはなっておりません。 また、仮釈放ということになりますと、その申請は刑務所長が行うわけですけれども、その場合の申請の当否というようなことに関しましてもそれぞれケース・バイ・ケースで考えていくということになっておりまして、そういった実情にございます。 今申し上げたような実情に照らしますと、仮に御指摘のような改正がなされたとしても実務上は現在の処遇内容が大きく変わるものではないだろうというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、仮釈放の申請や少年受刑者の処遇等に当たっては、個々の事情や個々の少年受刑者の特質等に十分配慮しながら適切な運用に努めてまいりたい、かように考えております。
○魚住裕一郎君 今、御答弁の中で、現在はそんなに少年受刑者はいないということでございますが、今回原則逆送というような形になるわけで、刑事処分がふえるんだろうなというふうに想像できますが、どの程度少年受刑者がふえるというふうに予測されているんでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) ただいまのお尋ねは、いわゆる原則逆送との関係を中心のお尋ねだと思うわけでございます。 ところで、この対象であります故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を犯した者の数、これは統計上必ずしも明確に把握できてはおりません。しかしながら、それらの罪として代表的なものは殺人、強盗殺人、傷害致死でございますが、この数から大体の、どの程度大枠があるのかということを申し上げますと、平成十一年におきましては、これらの罪で検挙された十六歳から十九歳までの少年の数は合計百七十七人でございます。ただ、これには殺人未遂などの人が実際に死亡していない未遂犯も含んでいるわけでございます。 したがいまして、平成十一年度でいえばこの百七十七というのが未遂も含んで大枠の数字ということになるわけですけれども、実際にそのうちどれだけが逆送になるか、あるいは起訴された結果実刑判決を受けることになるかということになりますと、これは個々の事案でそれぞれ変わってまいりますので、具体的にこの程度という増加の数字を申し上げるということは大変難しいと思っております。
○魚住裕一郎君 そんなに数は多くないだろうなとは思うところでございまして、処遇ということを私どもも与党内あるいは党内で議論するときに大変議論をさせていただいたところであります。 そんな中で、特に逆送可能年齢を十四歳までに下げるに際して、実際この十四歳、十五歳でどう処遇するのかということで、刑務所なのかあるいは少年院なのかと。本来、受刑者なんだから刑務所で刑事処分としてきちっとやるべきだという議論ももちろんあったわけでありまして、ただ教育上少年院の方が適切ではないかという形、そういう議論もございました。 先般も議論になったところでございますが、法務省の方針として、十四歳、十五歳の受刑者については少年院で個室に収容し、教室も他の少年と分離して個別に独自プログラムで教育するというようなことが新聞に載っていたわけでありますが、法務大臣、これはどういうような理念といいますかお考えでこのような方針を固められたのか、また具体的にどのようなプログラム、独自プログラムというふうになっておりますが、そういうものを考えておられるのか、お教えいただきたいと思います。
○政務次官(上田勇君) 今、魚住委員から御指摘がありましたように、十四歳、十五歳の少年院収容受刑者については今回の改正案で少年院で処遇することができるというふうになっているわけでありますけれども、その処遇のあり方というのは、やはり少年の特性に応じて個別的に判断されるべきものであるというふうには考えております。 ただ、少年院収容の受刑者が十四、十五歳ということで若年であって心身ともに未熟であるということや、そもそも重大な犯罪を犯したがゆえに刑事裁判を受けた者であるということなどや、また逃走罪の適用があることなどを考慮すると、具体的にはこれから矯正の関係者とも協議していくことになる、検討していくことになりますけれども、現在のところ、居室については原則として他の収容者とは分離して個室を用いる方が適当なのではないかというふうに考えられているところであります。 それで、この処遇の内容についてでありますけれども、もちろん十四歳、十五歳の受刑者というのが義務教育の対象年齢であるということから、義務教育等の教科教育が対象者については中心になってくるだろうというふうに思われますけれども、その教科教育についても、少年の必要性に応じたものを授ける必要があるということから、やはり個別に行うケースが多くなるのではないかというふうに考えております。 ただし、例えば行事とか運動への参加等については、教育上有益と認められる場合には他の在院者との集団で一緒に行わせるというようなことも考えていかなければいけないというふうに思っておりますし、それもこうしたプログラム、それぞれの少年の特性に応じて個別的にきめ細かく判断してやっていきたいというふうに考えております。 ただ、少年院に収容されている受刑者は十六歳に達した後少年院から少年刑務所の方に移送されることになりますので、やはり少年院に収容されているときから、教科教育、義務教育の課程だけではなくて、例えば犯した犯罪の重大性を認識させるというようなことであるとか、また命の大切さを認識させるというようなことであるとか、豊かな人間性を涵養することに重点を置いた処遇プログラムを策定し、少年刑務所移送後もこれを引き継ぐことによりまして一貫性のある処遇を行うことが重要であるというふうに考えております。
○魚住裕一郎君 それとの関連だと思いますが、今度法務省では少年処遇専従班というものを各刑務所に設置をしようと、そういうことが検討されているというふうに新聞記事に記載があったわけでございますが、これはどういうようなものなんでしょうか。
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。 現段階で確定的に局の方針として決めたわけではございませんけれども、原則逆送制度等が導入されますと、人数等は不明ではございますけれども、少年受刑者が増加することが予想されます。そのため、我が国で代表的な少年刑務所である川越少年刑務所においては、かねてからこの点について対応策を検討してきているところでございます。 現時点では、例えばその内容と申しますと、やや技術的になって恐縮ですが、ロールレタリング、あるいは個別カウンセリング、日記指導等の各種技法による個別処遇の充実を図る必要がある、そういうふうに考えているほか、将来少年受刑者が増加しまして少年受刑者だけの集団を編成できるようになったときには、少年集会等による集団討議、ロールプレーイング等を用いまして人間関係の再学習をさせ規範意識を高めるための集団処遇を行うこと等、そういったことを考えておるわけです。 そういった処遇を効果的に実施するためには刑務官だけではだめだろう、そのほか、作業を指示する作業技官とか教官あるいは分類技官等で構成される少年処遇専従班、そういったものを編成して主に少年受刑者の処遇に当たらせる方がいいだろう、そういった考えから、その点について今検討を進めているところでございます。
○魚住裕一郎君 それでは次に、事実認定に関連してお聞きしたいと思いますが、今回、裁定合議制という形をとる形に改正するわけでございますが、従来の一人でやっている審判とどういうふうに変わっていくのか、そしてその裁定合議制導入に当たって裁判所側の体制の整備というものはどのようになるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。 裁定合議制度が導入された場合におきましては、単独裁判官に配てんされた事件について、当該裁判官が合議相当と考えた場合にはこれを合議体に諮って、その決定を受けて合議決定がされるわけでございます。 その場合におきましては、まず主任裁判官が定められることになるわけでして、この主任裁判官がまず記録を精査いたしまして問題点等を検討する、さらにこの主任裁判官の検討を参考にしながら他の裁判官が記録に当たり同じような検討を加える、こういったまず記録の検討を行うわけでございます。そして、審判の席におきましては、三人の裁判官が審判に臨む、そこで直接三人の裁判官が少年から事情等を聞いたり話をする、こういう形になるわけでございます。こういうことで、審理と合議とを繰り返しながら徐々にその心証を固めていきまして最終判断をする、こういう流れになるものと考えております。 このような裁定合議制度が導入された場合には、これまで一人でやっていたときに比べましてより主観性が捨象されることになると思いますし、また裁判官の異なった分野の経験というものを踏まえて、その議論について客観的多角的な観点からの検討が行われるであろう、こういったことが期待されるように思います。その結果、三人の裁判官による裁判については少年にとってより説得力を持つものになるだろうと思いますし、ひいては国民の理解を得ることが容易になるだろう、このように考えているわけでございます。 そういった意味合いにおいて、裁定合議制度が導入された場合にはいろんな面における判断の的確性がより充実するものと考えておるわけでございますが、今お尋ねの体制の整備の関係でございますけれども、法律が成立した場合におきましてはその運用に支障がないよう対処してまいりたいと考えているわけでございます。 どの支部において合議事件を取り扱うか、これは地裁においても同様の問題があるわけでございますけれども、これにつきましては具体的な職員の、配置の人員でございますとか、その管内の人口、交通状況あるいは事件の動向、こういったものなどを総合的に判断をして決めていくことになると思いますけれども、いずれにいたしましても運用に支障がないように体制を整備してまいりたいと考えている次第でございます。 以上でございます。
○魚住裕一郎君 次に、観護措置期間なんでございますが、旧閣法では最長十二週間だったと思うんですが、今回最長八週間となったところでございます。提案されているわけでございますが、これはどうして八週間なのか、御説明をお願いいたします。
○衆議院議員(漆原良夫君) 委員御指摘のとおり、最初は、廃案となった政府提案の改正案では十二週間ということでございましたが、これでは現行の四週間を一挙に三倍にすることになります。学生であればこの三倍は一学期中にも相当して余りにも一挙に長過ぎるのではないか、こういうふうな議論が、批判がありました。そこで、今回の改正案では最長八週間までの延長を認めることにしている、そしてまたさらに運用の状況を見て検討していくということにしたわけでございます。
○魚住裕一郎君 今の御答弁の中で、現行の四週間では足りないという認識でもあるわけですか。
○衆議院議員(漆原良夫君) 多くの証拠調べをする必要がある事件だとか、あるいは関係者がたくさんいるというふうな事件では、やっぱり事実関係の適正化を図るという観点では現在の四週間では少な過ぎる、こういうことはそのとおりでございます。
○魚住裕一郎君 それで、具体的な観護措置期間なんでございますが、どういう基準で決定をするのか。また、その際には少年の教育あるいは仕事の面でのいろんな不都合も生じることがあるわけでございまして、その辺の配慮はどうお考えになるんでしょうか。最高裁、お願いします。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 観護措置を決定する必要性として一般的に言われておりますところは、身柄確保の要請でありますとか少年の心身鑑別等が必要であるとか、あるいは緊急保護の必要性ということが言われているわけでございまして、こういった要素をどのように当該事案について考えていくかということによって決まってくるものと考えております。 従来の運用を見てみますと、事実関係に争いのない事案におきましては、まずは心身鑑別、社会調査のための期間となるわけでございますが、大方の運用としては三、四週間で審理を終える、観護措置もその期間に終わっているというのが実情であろうかと思います。 さらに、事実が激しく争われる場合におきましては、そのために要する証拠調べの時間をどう見るかということによってその期間が決まってくるものと考えておりまして、今回八週間まで延長ができるとなった場合にはそういった点を考慮しながら所定の要件をよく吟味した上で考えていくことになろうかと考えております。 なお、今お尋ねの観護措置をとることによって少年自身の教育や仕事の上の支障をどう考えるかという点でございますけれども、もとより裁判所におきまして観護措置をとるかどうか決めるに当たりましては、それによって教育上あるいは仕事上どういう影響を与えるかを十分考えた上で判断をしているのが実情でございます。 しかしながら、そういった事情を考慮するにいたしましても、やはり身柄を確保する必要があるといったことで観護措置をとる場合があるわけでございますが、そういった場合におきましては、もとよりその措置をとったり更新をした場合において、家庭裁判所といたしましては学校あるいは雇用主といったものとの関係で連絡をとりながら、学校教育や仕事に与える影響ができるだけ少なくなるような配慮をしていくということになろうかと考えている次第でございます。 以上でございます。
○魚住裕一郎君 だんだん時間がなくなってきたんですが、最後に一点だけ、検察官の関与、審判協力者という形ではございますが、審判でも一定の凶悪なあるいは重大事犯については検察官が積極的に関与、出席するといいますか、そういうことも考え得るところだと思いますが、今回の改正案ではそれはもう裁判所の判断によらしめているところでございまして、その趣旨をちょっと御説明をいただけますか。
○衆議院議員(高木陽介君) 廃案となりました改正案、閣法ですけれども、そのときその罪が被害者の死亡の結果を含む場合は、明らかに検察官関与が必要でないと認められる場合を除いて家庭裁判所は検察官の関与を決定するものとしていました。これは、被害者の死亡という極めて重大な結果が生じたそういう事件にあっては、まず審判の帰趨に対する被害者の遺族を初めとする国民の関心がかなり高いと思うんです。的確な事実認定を求める要請は他の事件に比べても特に高いと考えられるということで、こういう形になったと思います。 しかしながら、必ずしも一般的にこのような制度を導入しなくても、まず検察官の申し出があれば裁判所においてもこのような観点を含めてその必要性を十分に検討して適切な判断をするものと考えられることから、今回こういう形でこの制度で足りるといたしました。
○魚住裕一郎君 時間も参りましたので、続きは次回によろしくお願いいたします。
○橋本敦君 きょうは時間が短いものですから、私はいわゆる原則逆送の問題に絞って質問をいたします。 この問題は、現行少年法二十条の規定の根本的なあり方にかかわる問題で、少年法本来の教育主義、保護優先あるいは福祉措置優先といった大事な理念を後退させる、そういうおそれのある重大な問題であるというように私は考えております。 まず最初に、最高裁に伺いますが、現行少年法におきまして一般保護事件における検察官への送致、最近五年間でどのような運用状況になっているか、お示しいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 御説明申し上げます。 今お尋ねのございました一般保護事件における検察官送致で年齢超過を除くものということでございますが、平成七年には千三百二十一件で〇・七%、平成八年は千百八十二件で〇・六%、平成九年は千五十五件で〇・五%、平成十年は千四十件で〇・五%、平成十一年は九百十七件で〇・五%、平均比率は〇・五六%でございます。 以上でございます。
○橋本敦君 そのうち、特に殺人事件についてはどうなっておりますか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 平成十一年におきましては二三・四%であると承知しております。
○橋本敦君 約二割ということですね。一般的にはここ五年は大体〇・六%台というのが検察官送致への状況だということであります。 こういう数字にあるということはどういう理由かということですが、それはまさに家庭裁判所における少年事件の判断に当たって、裁判所が具体的な個別の事件について慎重な判断を少年法の理念に基づいて行われている、こういうように私は理解しますが、最高裁はどう考えておられますか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所におきましては、個々の事案につきまして、非行の重大性であるとか動機、態様、こういった要素のほかに、少年自身につきましての資質であるとかあるいは生育史であるとか親子関係のありようであるとか、さらには生活態度、友人関係等、非行に至った事情を総合的に判断して処遇選択を行っているものでございます。 以上でございます。
○橋本敦君 そういう総合判断というのは非常に大事でありますが、その場合に、現行少年法の第二十条でいわゆる調査の結果ということが要件としてありますね。調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって検察官に送致をすると。この調査の結果というのは少年問題の家庭裁判所の調査官を中心とした調査であると思いますが、間違いありませんか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) この調査という中にはいろいろな多義的な要素があるわけでございますけれども、要保護性、少年を保護する必要があるかどうかといった要保護性について行ういわゆる社会調査ということにつきましては、家庭裁判所調査官が主に担当しているのが現状でございます。
○橋本敦君 非常に重要な役割を果たしている大事な調査であるわけですね。だから、したがって法二十条でもはっきり調査の結果ということで、まさに判断の法的要件として家裁の調査官を含む調査を重視しているわけですね。 そういう調査に基づく慎重な個別判断によって逆送するということが限られた数で出てくるわけですが、その結果として、少年院の退院者の再犯率それから一般刑務所での収容者の再犯率との間に大きな違いがあると思いますが、最高裁、その点はどうですか。
○政府参考人(鶴田六郎君) お答えいたします。 平成十一年版犯罪白書によりますと、平成五年に満期、仮釈放の別なく出所した少年受刑者を含む全受刑者について、五年以内に刑務所に再入したいわゆる再入率というのはおおむね四〇%でございます。これに対しまして、少年院の場合、そこから仮退院し平成十年に保護観察が終了した者のうち同年中に再犯を犯した者の比率、いわゆる再犯率でございますが、これがおおむね二〇%という数字になっております。
○橋本敦君 だから、今の数字から見ても、少年法による処遇というものが更生に大いに役立ち、また犯罪の減少という社会防衛上も有効な機能を果たしているということが言えると思うんですね。 この問題について、今、最高裁からお話がありましたけれども、現在の法二十条のもとにおいて、家庭裁判所は少年の年齢、性格、成熟度、非行歴あるいは環境、事案の軽重、さらには検送後の終局裁判における量刑の見通しなど、諸般の事情を考慮して判断されているという非常に大事な問題でございます。 この問題が原則逆送となるということは非常に重大な問題なんですね。例えば岡山の金属バット事件、山口の母親殺害事件、これでも裁判所は少年を逆送しないで、その立ち直りを期待して、また立ち直り得るという判断のもとに、この問題については少年院の方に送るという判断をして措置をしたわけですね。まさに少年院の教育の有効性を理解した上での裁判所の判断と、こう言えると思います。こういう運用について最高裁は、これは妥当であると私は思いますが、特に御意見はありますか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 裁判所といたしましては、個々の事案につきまして先ほど申し上げたような要素を十分しんしゃくしながら判断をしているということを申し上げているところでございまして、この数字自身についてこれが妥当かどうかということについては、個々の裁判の集積の結果が今の数字であるということである関係から、コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
○橋本敦君 もちろん個々の裁判について個々に具体的にあれこれ言うのは困難でしょうし、裁判の独立性の問題があるでしょう。しかし、こういった状況について最高裁自身がこれは問題だというようにお考えになっておる、そういう状況はないと、こう判断してよろしいんじゃないですか。総括的な判断を聞いているんです。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) ただいま申し上げたとおり、この運用についての当否というものは個々の裁判についてのコメントにつながることでもございますので、控えさせていただきたいと考えております。
○橋本敦君 それでは、政治家である法務大臣にお伺いしましょう。 今数字で示されたような教育的、保護主義的あるいは福祉措置的判断のもとで現に行われている少年事件の扱いについて逆送率が低いということ、そして再犯率も低いということ、こういうことがまさに少年法の機能が実際に守られているという状況だということについて、私は、これは少年院に送るという教育的、福祉的措置が十分機能しているというように見ていいのではないか、当然のことだと思うんですが、大臣としてはどうお考えですか。最高裁は個々の判断に介入する答弁はできないと、こう言うわけですね。
○国務大臣(保岡興治君) 確かに逆送率が非常に低い、あるいは少年院その他保護処分をした場合の再犯率などを見るまでもなく、非常にすぐれた処遇方法等で教育改善に資する結果を出しているということは、これはもう大方の方が認めているところだと思います。 ただ、近時の年少犯罪とか、あるいはその中でも、またそういう年齢にない少年でも、重大犯罪というものの中には、愉快犯というんですか、おもしろ半分とか、あるいは少年法が適用になるから自分たちは簡単な処分で済むという確信犯、こういったものが最近の少年非行、犯罪の一つの特徴であることも大方の認めるところであって、そういうものについては、特にこういった今度の少年法に見る厳罰化とよく言われる一連の改正措置は私は有効に犯罪防止に役立つものだ、そういう一助たり得るものだと、そういうふうに考えております。
○橋本敦君 少年法が有効な保護的、教育的機能を持って運用されているという実態を認めながら、最近の事案について厳罰化ということを法務大臣は検討する必要があるという御意見ですが、後の問題は私はまだまだ教育的、保護的措置を中心とした少年法の理念を大事にしながら慎重に検討すべきだと思いますから、にわかに私は後半の部分については賛成することはできませんね。 国学院大学の澤登俊雄教授がこう述べられています。「刑事裁判による刑事責任の追及と応報としての刑の宣告、そして刑の執行という一連の働きかけが改善のために必要な少年に対しては、現行法のもとでも検察官送致という決定がなされています。しかし多くの犯罪少年には、刑罰以外の手段がむしろ有効と考えられているわけです。家裁の終局決定における各処分の比率が、現行法施行以来ほとんど変わっていないのは、特に変える必要がなかったからだと考えることができます。そしてその背景には、わが国の各処遇機関の処遇能力の高さと、水準向上への継続的な努力があることを忘れてはなりません。」と。これは五十年の歴史に照らして、家裁の機能、調査官及び調査処遇関係者の努力というのは私は高く評価するべきだと思うんですね。 だから、したがって大臣は今厳罰化ということを言われたけれども、「厳罰化だけをめざす政策は、法律を変えるだけですぐに実現できます。しかし、法律をどのように変えようと、非行少年と向き合い、改善へ向けての働きかけを続ける少年院の教官や保護観察官・保護司をはじめとする数多くのワーカーの活躍がなければ、非行は防止されないのです。ケースワークの活動を広範囲に引き出すことのできる制度が、少年法制として優れていると考えます。」と、こう述べられています。 私はこの所見は非常に重要な耳を傾けるべき大事な所見だと、こう思います。大臣の御意見に対する反論として紹介をしておきます。 さてそこで、原則逆送という問題ですが、法務省に伺いますが、これまで法制審で少年法制の審議の中で原則逆送ということが提起をされ議論された経過はありますか。
○政府参考人(古田佑紀君) 承知しております限りでは、いわゆる原則逆送ということで議論がされたことはないと思っております。
○橋本敦君 私は前回の質問でもこの重要な法案を法制審にかけないで出すという拙速は許されないということを指摘したんですが、この大事な原則逆送については法制審で論議されたことも提起されたこともないんですよ。提案者の方がいきなりこういう問題を出してきた。まさに重大な問題ですよ。 そこで、今度の原則逆送とする法二十条の改正で、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」、これは一体どういう罪がどれくらいあるんですか。一遍お示しいただきたいと思います。
○衆議院議員(杉浦正健君) 殺人事件、強盗致死、強姦致死、傷害致死等、多数ございます。 お許しいただければ、一覧表をつくっておるので、相当の数ございますので、一覧表を配付させていただきたいと思いますが。
○橋本敦君 委員長のお許しを得て配付をしていただきたいと思います。
○委員長(日笠勝之君) はい、了解です。どうぞ配付してください。 〔資料配付〕
○橋本敦君 提案者の方でお調べいただいてありがとうございました。実に広い範囲にわたっての罪がこれに該当するんですよね。 その場合に、原則逆送ですから問題なんですよ。これがもともとの二十条の、家庭裁判所の調査官の調査をもとにした慎重な判断ということならば、二十条のもとではそれなりに今私が指摘したように機能してきたんですが、今度はこういう多数の罪に関して原則逆送、つまり刑事処分を求めることが優先されると、こうなってくるわけですね。ですから、これだけの広範な罪について原則逆送ということは、まさに厳罰化、重罰化の方向と言わざるを得ないじゃありませんか。 そこで伺いますが、この原則逆送ということで一体どういうような法的効果を提案者としては期待しているんですか。
○衆議院議員(杉浦正健君) 先ほど来、橋本先生がいろいろ申されておったことに戻る形になりますが、私どもこの原則逆送を入れるについては大変な議論をいたしました。 その出発点は、自民党の中でも三党協議でもそうでございましたが、一つは、基本的なことでありますけれども、現在の少年法の規定においても、少年の健全育成という理念のもとでありますが、刑事処分を科すということが逆送の規定によって明確になっております。刑事処分を加えることが健全育成、少年法の理念に反するというふうには考えないということを前提といたしております。 そして、先生が具体的な事件に触れられましたので私も触れさせていただきますが、近時の年少の非行少年の犯す世間の耳目を聳動させる凶悪犯罪に対する家庭裁判所の対応に端を発しておるわけでありますけれども、戦後五十年の家庭裁判所の営々とした営みを全部が全部だめだというわけでは毛頭ありませんが、このところの家庭裁判所の対応がおかしいんではないかと。つまり、逆送すべきものをしていないんじゃないかとか、当然刑事処分に付すべきものを付していないんじゃないかとか、甘過ぎるんじゃないかとか言う議員、多数の議員でありますが、そういう思いから議論が始まったわけでございます。 衆議院でも例に挙げて大分おしかりを受けたんですが、例えばこの間の佐賀の十七歳のバスジャック少年の処分は医療少年院送致でありました。地元へ戻りましても、普通の方々が、何であの事件が責任能力を認めながら少年院送致なんですか、裁判にかけてきちっと刑事処分すべきじゃないんですかという批判が強いわけであります。先生の挙げられた事件についてもそうであります。 つまり、家庭裁判所は親にかわって、国が親になって青少年を健全育成しようというのに目的があるわけでありますが、一家に例えてみますと……
○橋本敦君 短くしてください、もう時間がないですから。
○衆議院議員(杉浦正健君) 親の手に負えなくなった子供を警察に突き出すというのもやっぱり子供を健全育成する一つの方法じゃないか。原則逆送というのも、ともかく人を死に至らしめたという重大な結果を子供が犯した場合に、保護も必要でありますが、それを殺人ですら二割というような逆送ではそもそもおかしいんじゃないですか、むしろ逆送をして刑事法廷できちっと事実も調べて、そして適切な刑事処分なり、あるいは保護処分でよければまた移送するとか、そういうことをしてもいいのではないか。少年法の理念にもとるものではないし、また少年の資質の変化、社会情勢の変化が背景にありますが、こういう事態のもとではやはりそういうふうにきちっと家庭裁判所に対応してもらうことが大切なことではないかという考え方から、三党でも一致して原則逆送を取り入れようということになったわけであります。
○橋本敦君 もう反論の時間ありませんが、現在の少年法の運用、家裁の審判に対するそういう批判的意見、そういう批判からこういう提案をしたというのは、私はまさに政治、国会と裁判所との、裁判の独立との関係から見て大問題だと思います。もっと実証的検証を国民的立場でやらにゃならぬ、そして法制審にもかけにゃならぬ。 それでは最後に伺いますが、これで殺人事件の逆送事件は、現在二割程度とさっきありましたが、これはどのくらいふえるとお思いですか。杉浦さんは衆議院で、結果として逆送されるケースがふえることを提案者は期待しておる、こうおっしゃっていますが、どれくらいふえると思いますか。新聞では五割、七割になるだろうという予測もあります。簡単に、これは結論だけ。
○委員長(日笠勝之君) では、簡潔に。
○衆議院議員(杉浦正健君) 予想は困難でありますが、ふえるものと期待し、そういうようになることを願っております。
○橋本敦君 まさに厳罰を期待し、重罰を期待する、そして少年法の基本理念を法制審にもかけず関係者の意見も十分聞かずに、そういう一般的な世論の動向にこたえてこういうことを法案として強行することは私は納得できません。 以上で終わります。
○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。 まず、裁判所にお聞きをいたします。 私も家庭裁判所にお世話になり、調査官、裁判官に大変お世話になりました。先ほど橋本委員からもありましたように、少年と成人では再犯率が違っております。少年審判あるいは少年院に問題が全くないとは思いませんが、根気強く一つ一つのケースに向き合ってやってこられたというふうに思っております。 再犯率の少年事件の低さについて最高裁判所はどう総括をしていらっしゃるでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 再犯率をどう評価するか、いろいろ見方があろうかと思います。 もろもろの関係者、例えば家裁であれば家裁調査官であり裁判官であり、また執行機関の関係者の方々のいろいろな努力の結果が再犯率にあらわれているものと理解しているわけでございます。 私ども家庭裁判所の側から申しますと、家庭裁判所としては個々の事件につきまして、先ほど来御議論いただいているとおり、その事件の内容といったものに加えまして、少年の特質等についても調査を加えた上で処遇選択を行い、またその過程においては、人間関係諸科学の専門家であります家裁調査官が調査に当たるのみならず、その少年や保護者に対する種々の働きかけを行ってきているところでございます。 しかしながら、昨今、非常に難しい事件がふえてきているところでもありますので、今後も家庭裁判所といたしましては事案に適した処遇選択を行うよう努力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
○福島瑞穂君 家裁の調査官などから、あるいは全司法、組合の側から、今の少年法改正について現場から反対の意見が出てくることをどうお考えでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) この改正の問題について種々意見があることは承知しているところでございまして、これは一つの意見として意見が出ていることも具体的に承知しているところでございます。
○福島瑞穂君 この少年法が改正されれば現場は非常に混乱するでしょうし、今までの五十年間の少年審判も本当に変わるだろうというふうに大変危惧を持っております。 ところで、次に法務省、政府にお聞きいたします。 一九九六年、国連子どもの権利委員会に関して政府は報告書を出していらっしゃいます。その中身を申し上げます。パラグラフ二百五十六。 この二つの機能を十分に生かすためには、検察官が被告人を弾劾し、その刑事責任を追及するという刑事手続のような対立構造は好ましくなく、関係者の協力を得て、裁判官が直接少年に対し語りかけ、教育的な働きかけを行うことのできる非形式的な審問構造がふさわしいことから、少年審判手続では家庭裁判所が自ら事件を調査し、審問を行い、少年にとって最も適切、妥当な措置をとり又は処遇を決定する職権主義的審問構造を採用している。 十四歳以上が刑事裁判に付されることについても問題点を指摘しております。 十六歳未満の者については、刑事手続に移行できないこととし、低年齢の少年に対して特に配慮がされている。 これは日本政府の国連子どもの権利委員会に対する報告書ですが、これは非常に正しいと思いますが、なぜ急に変わっているのでしょうか。
○政府参考人(古田佑紀君) 児童の権利条約に基づくレポートに現在の少年法の考え方、どのようなポリシーで今の少年法というのがつくられているのかということを説明したものでございます。
○福島瑞穂君 いや、現行法がそうであり、かつこのことを肯定的に、こうであるからこういうふうに処遇していると書いていらっしゃるのではないんですか。
○政府参考人(古田佑紀君) 日本の少年法がどのような考えでできているか、そしてまたそれがどういうふうに受けとめられているかということを書いた、それを説明したというものでございます。
○福島瑞穂君 子どもの権利に関する条約に、なぜ家庭裁判所で今のような審判構造をとっているのか、あるいは十六歳未満の者が刑事手続に移行できないことはなぜかということをきちっと報告されながら、今、国会で急にこんな議論をすることには大変問題があると思います。 法務省矯正局にお聞きをいたします。 平成十年十一月三十日の「現代の少年非行を考える 少年院・少年鑑別所の現場から」というのも非常にすばらしい本だと思いました。現在起きている少年非行について、例えば次のように書かれております。「社会の変化を背景として、少年非行は確かに変化しつつある。しかし、それは、性格のゆがみの著しい、われわれにとって了解不可能な子どもたちが生まれつつあるのでは決してなく、年齢相応の共感性や対人関係の結び方が身に付いていない、端的に言えば「精神発達の未熟」な少年たちが増えている」と。 そういう子供たちに対して地道な取り組みをすることであるというふうに結んでいらっしゃいますが、この法務省矯正局の考え方と今回の少年法改正の立法目的、立法趣旨は異なると考えますが、いかがですか。
○政府参考人(鶴田六郎君) ただいま「現代の少年非行を考える」というところに記載されておる少年非行の現状とその特質等は、当時、現場からの調査等も踏まえて書かれたもので、そのとおりであると思います。 今回の改正とそれが矛盾するかどうかということですけれども、今回の法案につきましては、提案者の方から、十六歳以下の少年につきましても罪を犯せば罰せられるということを明示することによって規範意識を高め責任感を持たせる、そういったことを通じて犯罪の予防を図っていく、そういう一つの方向と、それからまた今申し上げた矯正教育によるいわば特別予防的な措置、それが双方相まって犯罪の抑止に働くべきものではないかというふうに考えております。
○福島瑞穂君 今、立法目的のことをおっしゃったんですが、この間の質問でも申し上げましたように、犯罪抑止については立法目的から脱落をしております。 ではなぜやるのかと聞きますと、規範意識というのが出てきます。でも、規範意識というのはよくわからない。杉浦さんが、おばあちゃんに悪いことをしたら地獄に落ちるということを言われたので規範意識が大事だとおっしゃるような形での社会のルールを教えることは、みんな小さいときから、悪いことをしてはいけない、当たり前ですが、言われて育つ面があるわけで、それと今回の少年法改正は全然結びつかないんですね。 それから、規範意識ということでまた言いますと、それが何となく怪しげになってくると、突然世論が、先ほど杉浦先生は世論が、地元の人がということをおっしゃいましたし、この間も立法目的で、国民が納得しない、あるいは衆議院選挙を戦ってきた人間と参議院議員は熱が違うから、参議院議員も選挙を経れば考えが変わるんじゃないかという意見が出ました。それはひどいと思うんですね。 つまり、犯罪抑止が目的、いやそれは違うんじゃないかとなると、いや規範意識、でも規範意識というのは、悪いことをしたら罰せられる、悪いことをしちゃいけないんだということを教えるのとこの少年法改正がどうしても結びつかない。それも怪しくなってくると突然世論がとなってしまう。しかし、私たちは立法者ですから、実証的にやっていく必要があると思います。 今も規範意識というのが矯正局長から出てきてちょっとぎょっとなったんですが、例えば神戸の少年は、自分はつるされることを覚悟しているというふうに声明文に書いていました。先ほど法務大臣は、愉快犯、確信犯がふえているとおっしゃいましたが、どのケースが愉快犯、どのケースが確信犯なんでしょうか。
○国務大臣(保岡興治君) 具体的な事件の例を挙げろということですか。
○福島瑞穂君 はい。
○国務大臣(保岡興治君) それはちょっと私もそういう具体的な事件まで承知しておりませんので、一般的な傾向として、例えば類型的には言えます。 例えば愉快犯であるのは、おもしろ半分にやる、おやじ狩りみたいなものとか。それからまた、確信犯というのは、例えば自分は少年であるから刑罰の免罪符を持っている、したがって軽い処分で済むというような錯覚ですね、これは逆送もあるわけですから。錯覚に基づいて安易に犯罪を犯すようなことを私は言っているわけです。 そういうものについてはやはり刑罰が科せられる厳罰化の選択の幅を広げて対応するということは、私としては犯罪抑止の一助たり得ると考えておりますし、また別な類型、例えば最近はテレビばかり見てなかなか友達と遊ばない、親もどちらかというと子供の世話というか、自分の視界の中、日常の中に子供を置かないというような傾向があって、そういうことが他人との希薄性というんでしょうか、そういったものを呼んで、あるいはバーチャル世界というものの中で人の命を軽んずるような、そういう意識が育ったり、そういったものを最近の犯罪の一つの原因と見る考え方も非常に強くあるわけです。 そういうことからすると、やはり人をあやめるなど取り返しのつかないことへの重大性を認識させるとか、そういったことを一つの基準にして、刑罰を科する余地、そういった処分の選択の幅を広げて対応することは一助たり得ると私は考えております。 その上にさらに、少年の刑事司法というものであれ、やはり一般予防の見地は必要であり、そしてまた被害者の気持ちに立った、被害者の気持ちを鎮静化させる機能というものも一つは全く否定さるべきものではない、そういったことにも今度の厳罰化の一つの改正は資するものであると、そう考えております。
○衆議院議員(杉浦正健君) 名前が出ましたので。
○福島瑞穂君 時間がもったいないのでいいですが、ではどうぞ。
○衆議院議員(杉浦正健君) 客観的な数字について申し上げさせていただきます。 少年法が報道されるようになりまして各種世論調査が行われております。たくさんなされております。いずれも賛成率が六〇%を切ったものはありませんし、高いものは九〇%近い、今回の改正については賛成だという世論がございます。 数字だけ申し上げさせていただきます。
○福島瑞穂君 ありがとうございます。 ただ、世論調査もきちっと見ると、やはり少年犯罪にみんな心を痛めているけれども、厳罰化に必ずしも、中身について十分理解して判断しているのだろうかという面もあると私は思います。でも、御答弁ありがとうございました。 それで、愉快犯、確信犯ということなんですが、私はその愉快犯、確信犯があるということと今回の少年法改正とどう結びつくのかがやはりちょっとわからないんですね。 例えば神戸の少年はつるされることを覚悟しているというふうに言っているわけですから、確信犯の少年たちはもっと違うところで大きな問題を抱えているわけで、一般予防的に厳罰化したからということで解決するとは思えませんし、確かに大臣がおっしゃるように、バーチャルリアリティー的な面でどんどん妄想が広がって犯罪を犯す子供たちがいるのも何となく理解はできます。しかし、そういう子供たちに厳罰化をしたことで果たして届くのかどうかというふうに思っています。 それともう一つは、少年院に入った少年たちにアンケートをとって、あなたは少年法が軽いということを知って犯罪を犯したかということに関しては、違うというふうに、アンケート結果は、ちょっと不正確で済みません、八割、衆議院の審議でもありましたが、八割はそうではないと答えていて、例えば少年法があるから犯罪を犯したと言ったというふうなことで、ばっと、やっぱり少年犯罪は少年法を厳罰化しなくちゃいけないという議論が起きているというふうにも思っております。 次に、検察官関与についてお聞きをいたします。 検察官が関与するということは、少年法の一条そのものを変えてしまうのではないかというふうに思います。起訴状一本主義ではなく、全記録が来た上で検察官が入ると。公益の代表者という言い方をされますが、少年は二人の、裁判官と、糾弾するといいますか、検察官と両方相手にしなければいけないわけで、少年法一条と整合性はないと考えますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(高木陽介君) 検察官の関与のことについて今までもいろいろと論議、質疑があったと思いますけれども、まず前提として、検察官は裁判の協力者という、こういうふうな認識で入るという形になります。 特に事実認定、これが山形マット死事件でも論議となりましたけれども、事実認定を正確にしていくということがやはり大切だということで、そういった観点の中から、裁判の審判の協力者、あくまでも家庭裁判所の手続主宰権に服しつつやるということで、検察官が関与するということで問題はないと考えております。
○福島瑞穂君 先ほど小川委員の方から捜査の問題が指摘をされました。 御存じのとおり、少年はやはり誘導されやすい、あるいは代用監獄のもとで自白をしやすい、あるいは虚偽の自白をしやすい、どの大人を信用していいかわからないといったいろんな問題、あるいは物証の問題など、たくさんの少年事件における冤罪事件が示しているものです。 例えば、草加事件という有名な事件があることは御存じだと思うんですが、少年審判、そして刑事裁判では有罪となりました。しかし、民事の中で物証が全然合わない。つまり、残された体液はAB型だけれども、少年だれ一人AB型がいないということが明らかになって、やっていないということが明らかになりました。 そのケースなどはむしろ審判の構造が問題ということではないと思うんですね。草加事件は少年審判に事実上検察官が関与していたというふうに聞いております。少年審判に検察官が関与したからこそじゃないとは思うんですが、むしろ無罪を見抜くことができない、刑事裁判をやって裁定合議制的にやっても無罪を認定できない。むしろ物証と現実の間にずれがあるということがはっきりしたケースなんですが、こういう草加事件をどう総括していらっしゃるでしょうか。
○衆議院議員(高木陽介君) 誤審の問題ということだと思うんですけれども、実は私も議員になる前に新聞記者で島田事件という死刑囚の再審事件の取材をずっとしたことがございました。 やはり人間の行う裁判、裁判官が完璧に絶対的に正しくてということであれば何ら問題はないと思うんですけれども、やはりいろんな状況、例えば証拠の問題だとかさらにはその人の自供、いわゆる供述の問題だとか、いろんな要素が絡んでくると思います。 今御指摘のあったように、捜査段階での調べのあり方だとか、そういうところでの御指摘もあると思いますけれども、ただ、一つそういう例があったからといってすべての事件に関してそれが当てはまるかどうか、こうは言えないと思うんです。 今回の場合は、私たちがなぜこういうような改正をしたかというと、委員今御指摘のように、あくまでも事実認定というものをしっかりとさせない限りやっぱり間違った判断をしてしまう、そういうことがあったので、今回、検察官の関与、さらに付添人ということで弁護士の関与も認めて正確な形にしていこうと。 ただ、少年の場合、誘導されやすいというふうに御指摘がございました。これは少年だけではなくて、やはり人間はいろんな状況に置かれた場合にそういうふうになる可能性もあると思います。だからこそ、そういうことも含めて審判の場でしっかりと事実認定をさせていかなければいけないということで、今回の改正案にした次第であります。
○福島瑞穂君 ちょっとよくわからないのは、検察官はあるときは公益の代表者であると言われ、あるときは協力者だと言われる。しかし、事実認定をきちっとやる必要があるとも言われる。でも、結局は付添人と検察官でほとんど刑事裁判の手続を家庭裁判所の審判でやることになるんじゃないですか。どこが検察官は協力者であり公益の代表者でしょうか。
○衆議院議員(漆原良夫君) 検察官が入るということは、今まで裁判官が全部一人でやってきたわけなんですが、事案によっては激しく少年と事実関係が争われる場合があるわけですね。事実関係を争う場合に、裁判官が積極的にその少年に対して事実を確認していくという作業が必ず要るわけです。そうなると、少年としては、この裁判官は自分と対立するんじゃないか、自分の方を向いていないんじゃないかというふうな気持ちになって心を閉めてしまう、こういうことも十分考えられますね。 したがって、そういうこともなくして、裁判官と少年が対立するような構造がないことが少年にとって望ましいわけですから、裁判官が審判しても、この裁判官は自分に予断を持って、こんなことをやったんじゃないかというふうに思われたのでは、これは少年の更生に役立たない。そういう意味で、やっぱり少年と裁判官の対立関係をなくする、こういう必要性もある、そんなことから検察官を協力者として関与させる、したがって独自の抗告権もない、こういうことでございます。
○福島瑞穂君 裁判官が少年に厳しく言うと少年が心を閉ざしてしまうので問題だとおっしゃいました。しかし、検察官が入ってがんがん刑事裁判のように尋問するのであれば、少年は絶対に家庭裁判所で心を開かないというふうに思います。その意味では、今うんとうなずかれたような、公明党の提案議員はうんとうなずかれたような気もしましたが、要するに心を開かないというふうに思いますが、でも時間がちょっと来てしまったんですが、どうしますか。いいですか。では、それについてお願いします。
○衆議院議員(漆原良夫君) うなずいたのは言っている意味がわかったという意味でございまして、理解したという意味じゃございませんので。 審判を和やかに行うという条文はそのまま維持しております。したがって、やっぱり和やかなうちに行わなきゃならないという大前提があるわけですから、そこは裁判官の指揮に基づいて、できるだけ和やかにやって、しかも事実を確認していくという、こういう裁判官の大きな訴訟指揮というんでしょうか、審判の主宰権というのがこれから要請されるだろう、こう思っております。
○福島瑞穂君 検察官を入れてがんがん事実認定をやり、対審構造がその場合とられるわけですから、そこで和やかにというのは私は無理で、少年は刑事裁判と全く同じように心を閉ざすだろうというふうには思います。 きょう立法目的について世論ということが非常に強調されたことは非常に問題だと私は考えております。やはり子供のための重要な法律ですから、世論ということに関係なく立法者としては議論をしていく必要があるのではないかと思います。 きょうはありがとうございました。
○衆議院議員(高木陽介君) 先ほどから立法者の意見ということで、なぜこの法律を変えていくのかと。これは前回のときにも申し上げたと思うんですけれども、今までの御質問を受けると、この少年法改正だけですべての犯罪がなくなるか、なくならないかみたいな、ゼロか一〇〇かみたいな論議になっていると思うんです。 そうではなくて、私たちもこの少年法を改正しただけですべての少年非行がなくなるとはとらえていない。少年の健全育成、これが大前提です。その上で、まずは犯罪を犯さないような教育、いわゆる前段階、それでも犯してしまった場合の処分のあり方、処分をした後今後どうやって社会に復帰するかという更生のあり方、こういう三段階の考え方がある。その中で、今回の少年法改正はその第一歩としての、二番目の、事件を犯した場合、非行を犯した場合にどうしていくのかという、ここのところでの論議だということで、そこは御承知いただきたいなというふうに思います。
○平野貞夫君 きょうは九時半から熱心な質疑が行われておるんですが、前の四人の先生方は法律の専門家でございますが、私は全く素人でございますので、そういう立場からお尋ねしたいと思います。 まず、法務大臣にお尋ねしますが、少年法は二十歳に満たない者を対象にしていると書かれておるんですが、下の方は何歳を対象にされていますか、上の方は二十歳未満と書いてありますが。
○国務大臣(保岡興治君) 法律上、下に制限は設けていないと承知しております。
○平野貞夫君 そうしますと、民法上はおなかにいる子供も人格があるわけですが、これは犯罪を犯すわけがありませんから、やっぱり出生したら少年法の対象になる、理論的にはそういうことでございましょうか。
○国務大臣(保岡興治君) 余り実益のないところだと思いますけれども、理論的にといってもそういう想定できない場合を法が予定しているとは思いません。 ただ、いつから人として扱うか、これは民法、刑法、それぞれ違うわけでございますけれども、それはいろいろ説のあるところで、そういう説によっていつから刑事法として人と扱うかということからいうと、一部露出説というのは刑事の一つの大原則だったように思うのでございます。
○平野貞夫君 大臣は無益なことだというふうにおっしゃったけれども、私は決して愉快犯的に言っているわけじゃないんですよ。 それでは、大臣、少年法の目的というのはどうお考えなんですか、なぜ少年法があるか。
○国務大臣(保岡興治君) 刑事司法というのはそれなりの社会的な使命、役割というのがあると思いますが、やはり少年は可塑性に富むまだ未熟な発展段階にある人格形成、こういった少年の特性をとらえて、健全育成というような少年法の目的にも記されているところの目的を、そういった刑事司法の少年に対して特別な配慮を求めている、それが少年法の存在理由だと思います。
○平野貞夫君 その点はよくわかります。 むしろ、犯罪抑止的な意味より少年の健全育成、保護といいますか、そういうところにウエートが置かれているんじゃないかと、私は素人でございますが、そう思います。 となると、少年の教育というものは何か。要するに、少年が犯罪を犯すのはさまざまな要因がありましょうけれども、その大きな要因というのは大人社会の反映であり、教育を受けていない者の、一つの物事を知らない要因もあると思います。したがいまして、私は、少年法というのは教育、これは学校教育だけじゃなくて社会教育、家庭教育含めて非常に教育の問題と直結していると思うんです。 そこで、今回の改正というのは、私は推進論者でございますので、きょうお三人の先生方の反対論者とはちょうど中間的な立場でとらえておるわけですが、非常に画期的というか、全部が全部画期的とは思いませんが、問題点もあると思いますが、いずれにせよ歴史的な改正だと思います、この今回の少年法の改正は。となると、発議者の先生方の思想、信条、そういうものがこの改正案に入っていくわけでございます。したがって、かなり歴史的に先生方の発案の業績というのは残るんですが、そこで、なぜ少年に、特に二十までの人間になぜ教育が必要かという、そういうことがこの改正の動機の一つのポイントじゃないかと思います。 そこで、谷垣先生にお尋ねしますが、先生は大臣としても要職につかれて、非常にバランスのある考え方を持たれている方だと思いますが、先生、なぜ少年に教育というのが必要かという、そこの原論をお聞かせいただきたいんですが。
○衆議院議員(谷垣禎一君) 大変原理的な御質問で上手に御答弁ができるかどうかわかりませんが、私も今二人の子供の父親でございますけれども、今の先生の御質問にお答えするのに、どういうふうに自分の子供に育っていってほしいか、そしてそのためには何が必要かということを考えてみますと、やっぱり私は自分の子供に幸せに育っていってもらいたいと、こう思っているわけです。幸せに育っていくためには自分の持っているよいものも出していく必要がありますが、同時に他人を思いやる気持ちというものがなきゃいけないだろう。そういうものをどうやって自分の子供に育てていけるかというようなことを、うまくできているかどうかわかりませんけれども、私は考えているわけでございます。 それで、そういうことを育てていくためには、やっぱり自分も人間でございますから自分の欲望もあり、自分の欲望のために周りが見えないということもございますから、そういうことを善導していかなきゃいけないなと、こんな気持を持っているわけでございます。 十分なお答えになったかどうかわかりません。
○平野貞夫君 前回、麻生先生がこの改正の目的の第一番に少年の健全な育成にあるということをおっしゃられて、それから前回、谷垣先生は少年の審判を通じて少年を教育するというところに今回の改正のウエートがあるんだということ、そのとおりだと思います。 実は今、谷垣先生がおっしゃった教育論について、私自身、なぜ少年に特別な教育あるいは特別な刑法上の法体系が要るかということについて、なぜ人間は教育が要るかということにも通じますが、それが少年法の改正の是非、改正された少年法が今後適正に運営される一つの基本になると思いますので申し上げます。この論は私がつくった論ではなくて、私が四年間お務めした前尾繁三郎元衆議院議長の教育論なんですが、谷垣先生は私らに言わせれば前尾先生の後継者だと思っていますので申し上げます。 前尾先生の論は、人間が四つ足から二本足になったときに脳は発達するようになったが、その結果、脳は発達して大変な技術とか文明をつくったが、極めて難産になった。普通の四つ足の動物というのは比較的に安産ですからかなり成長して母親のおなかから出る。したがって、かなり自立できる。それは肉体的に自立できるだけではなくて神経的にも自立できる。ところが、人間は、宿命的に難産で生まれる、しかも未熟児で生まれるというのが人間の宿命だと。だから、肉体的にも一年たたなきゃ歩けないし、また言語も何年かたたなきゃ発せられない。そして、脳神経の発育もやっぱり十年とか十五年とかという年数がたたなければ健全には発育しないんだと。したがって、人間には特別のしつけというものが要るんだ、それも社会的に要るんだと。そのしつけというものは、これはある意味で、悪い意味じゃなくていい意味で矯正が要るんだと、そういう論です。 したがって、僕は前尾先生の教育論を知ったときに、やっぱり大人の姿勢といいますか、未熟な子供が、少年が育っていくプロセスで大人の態度がいかに大きな影響を与えるかという、そこが非常に僕はポイントだと思います。 したがいまして、犯罪を犯す前の少年の教育と犯罪を犯した後の少年の教育というのは僕は質的に違うものがあると思うんです。その点、この法律改正案で厳罰化を強化して果たして、それは効果のある部分もあると思う、私は否定しませんが、しかしかなりデメリットの部分もあるという感じを持っておるんです。私はある意味では法律論をする能力を持っていませんからこういう常識論でしか議論できないんですが、その辺について谷垣先生はどんなお考えでございましょうか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) この法律の議論とうまくかみ合うかどうかわからないんですが、私は、今、前尾先生の御議論を平野委員に御紹介いただいて、最近、前尾先生の遺稿集が出ましたが、そこに平野委員が前尾学についていろいろお書きになっているものも拝見したわけでございますが、郷土の先輩について触れていただいて大変ありがたいと思っております。 今、平野委員のおっしゃったことですが、私は、さっき申しましたように、自分の子供とみんな同じに扱っていいかどうかわかりませんけれども、よいところを伸ばすという温かい教育も必要だともちろん思います。しかし、私は、ある意味でルールを逸脱したような場合には厳しくしかるということもなければ、温情だけではやっぱりうまくいかない面があるのではないかなと、こう思っておりまして、今度は厳罰化と言われますが、社会のルール、規範に直面させるというようなこともやっぱり必要なのではないかなと思います。 あらゆる法律にそれが妥当するかどうかわかりませんが、過去にいろんな犯罪現象がありましたときに、それに対して重罰化と言われるような法律をつくると、多分その直後、あらゆるものについて言えるかどうかわかりませんが、効果はあらわれてくるんだろうと思います。そういう意味ではとん服薬的な効果があるんだろうと思いますが、漢方薬的に長く体質を変えていくためには、そういう厳罰化だけで十分対応できるとは私は思っておりません。ですから、そういうとん服薬的なものと体質を変えていくようなものと両方が用意されなければいけないんだろうと思います。
○平野貞夫君 人間の発育というのは私は個人によって違うと思います。ですから、しつけとかそういう環境も違いますし、教育の環境も違いますので、それぞれ何歳で成人になるとか何歳で刑事処分の対象にしたらいいとかということは本当は哲学的には年齢では切れないと思うんです。 そこで裁判官の最終的には裁量という論が出てくると思うんですが、それにしても、十六歳から十四歳に刑事処分の枠を広げると、私は現実にかなりいろんな問題が出てくると思います。その際に一切裁判官の裁量だけに任せていていいものか。何か国会の、国家の意思として、裁量に当たっての基準になるもの、そういったものが法律の中に本来はあるべきではないかという思いを持つんですが、どんなお考えでしょうか、これは。
○衆議院議員(谷垣禎一君) 先ほどから御議論がありますように、厳罰化と言われておりますけれども、十四歳、十六歳の間の年少少年も刑事司法の対象になってきた、それをどういう基準で送るのかというのは、私は先ほどからの御議論のように数は多分余り多くないんだろうと思うんですね。 それで、ではそれを何らかの基準を設けるかということになりますと、言葉の上では、例えば犯情が非常に残虐なものであるとか結果が極めて重大なものであるとか、言葉の上で言えないことはないんですけれども、これはなかなか、実は我々今考えてみましても、それを全部法律の上に表現するような言語的に類型化できることが今の時点で可能かといいますと、私はまだそれだけの十分な準備は正直言ってないと思います。やはりそのときそのときの事案に当たって、担当した裁判官の個別の事案をきちっと見ての良識にゆだねるというしか今のところはないのではないかなと、こんなふうに思います。
○平野貞夫君 そうすると、これから司法改革の抜本的なことが行われようとしておりますので、やっぱり裁判官の見識、教養、そういったものに期待するしかないということでしょうか。 そこで、ちょっと角度を変えた質問をしますが、インターネット社会、森政権はIT基本法案を出して盛んにIT、ITとおっしゃっているんですが、実はテレビゲームを初め、そういうインターネット社会、情報過多社会といいますか情報過剰社会、情報技術が非常に発達した社会というのは、ある意味で少年の犯罪の凶悪化を促進していると私は思います。特に、私は、情報の過剰というのは人間の神経を、皮膚の中にある神経を皮膚の外に出すような行為と同じだと思います。物すごい混乱が生ずると思います。そして、これが新しい倫理といいますか、新しい道徳といいますか、新しい教育といってもいいんですが、そういうものへの対応がぜひ必要だと思います。既に平成七年以降起こっている、平成七年といいましたが、平成になって起こっている少年犯罪の凶悪化の現象にそういうテレビゲームとかインターネットのようなものがあるようでございます。 そこで、これは法務大臣と谷垣先生にお尋ねしますが、まず谷垣先生は今の森政権が進めているインターネット社会化の中で、そういった私が今申し上げたことに対する防御といいますか、あるいは国家的な新しい倫理づくり、道徳づくりというような政策を、私はないと思うんですが、それをどう感じられておりますか、あるいはその必要性についてどのようなお考えか。
○衆議院議員(谷垣禎一君) いわゆるIT化に関しましては、私は、やはりやるべきことはやっていかないと、国際社会の中で立ちおくれたということになりますと、それは全体の立ちおくれにつながっていくと思いますから、きちっと対応できるようにしていかなきゃいけないと基本的に思っているんです。 ただ、それと同時に、IT革命と言われるように大きな社会変動を引き起こす可能性がありますから、社会変動というのはプラスの面もあればマイナスの面もある、そこのところの全体的なこれからの予測、調査というようなものは、まだわかっていない面が多々あるわけですから、これからそこにはきちっと注意して対応していかないといけないことだと私は思っています。
○平野貞夫君 もうちょっと聞きたいんですけれども、時間の関係で。 法務大臣、私は、法務大臣の立場で、IT社会化運動、そういう政策が広がっている中で、やはり犯罪、特に少年の犯罪を防止する意味でも非常に強い関心を持つべきだと思いますし、またそういうことを法務行政の中でも一つ入れておくべきじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(保岡興治君) ITやコンピューターネットワーク、こういった技術が非常に進展することは、これは社会を大きく変える要素で、政治家もこの変化はよく読まなきゃいけないと思います。 私は、これはあくまでも人間が豊かに人生を送り、楽しく、また意義のある生活をしていくための道具でございますから、やっぱり本当に人間らしい生き方をする、意義ある人生を送るという中身の方が非常に重要なんだと。したがって、小刀も凶器にもなれば子供さんたちの工作の道具にもなるというようなものであって、今、谷垣先生が言われたように、その有用な点もあるし、それが問題を引き起こす部分もあると。 そういった意味で、コンピューター、ITというような情報手段が非常に大量に利用されるようになる、大量というのか大きく利用される社会では、わいせつ物みたいなものをパソコンでいつでも見られるというようなこととか、いろんなことがあると思うんです。したがって、先生が言われるように、いろんなケースを想定して、影の部分、そういったものについては十分注意して、少年の健全育成という観点からもいろいろ工夫をし努力をしていかなきゃいけないと思っております。
○中村敦夫君 五つの質問をさせていただきますが、最初の三つの方は警察庁と法務省にお伺いします。残りの二つは発議者どなたか代表してお答えください。 最初の質問ですけれども、少年法四十一条、四十二条によりますと、少年事件について警察官や検察官は捜査を遂げた後に家裁に送致しなければならないというふうに決まっていますね。しかし、現実には補充捜査という名のもとにしばしば送致後も捜査が継続されるということが起こっていると聞いておりますけれども、この事実関係はいかがでしょうか、簡単にお答えください。
○政府参考人(古田佑紀君) もちろん、今御指摘のとおり、家庭裁判所に事件送致をするに際しましてはできる限り十分な捜査を尽くす、これはまた当然のことでございます。そこで、捜査機関におきましては、少年の情操保護とか事件の送付処理あるいは教育的な問題等に配慮しながら、合理的な期間内で可能な限りの捜査をして家庭裁判所に事件を送致してきているわけでございます。 ただ、これは御理解いただきたい点でございますけれども、これは刑事裁判でもよくあることでございますが、ある事件というものはその捜査が終わった段階ですべてのことが確定するわけではなくて、さらにいろんな発展をしていく流動的な要素が多いわけでございます。 そこで、例えばで申し上げますと、共犯者がいて、その共犯者が後で出てきた、あるいはそれまで判明していなかった参考人の所在がわかった、そういうふうな問題もありますし、あるいは少年の主張がその後に変化する、そういうふうな点もあるわけでございます。そういうような場合には、それに応じまして捜査機関の判断として、あるいは家庭裁判所の御依頼により補充的に捜査を行う、こういうこともどうしても必要になってくるわけでございます。
○政府参考人(黒澤正和君) 警察におきましては、少年事件につきまして事件を送致いたしました後におきましても、ただいま法務省の方から具体的な事例、例えばということでお話がございましたが、そういった場合などのように送致後に新たな事情が生じるなどしまして補充捜査を行う必要が生ずる場合がございまして、実際の捜査におきましても補充捜査を行う場合があるものと承知をいたしております。
○中村敦夫君 家裁というのは、検察官が出席しないかわりに捜査当局が集めたすべての証拠が自動的に家裁の証拠として採用されますね。それが裁判官の判断にとって非常に重要な決定的な資料になるわけですね。ですから、少年法四十一条、四十二条によって非常に厳格にそれを要求しているわけですよ。特に、事実認定ということに関してはこれが唯一の頼りということになりますね。 私が聞いているのは、その後に何かたまたま判明したとか、例外として仕方なく補充捜査ということが必要なんだという話ではなくて、本当に今の状況の中で十分に家裁へ送る前の捜査ができているのかどうかと。しかし、そういうことは実は難しいんだ、仕方がないんだと考えているのか、それとももう少し捜査というものを充実したい、是正したい、あるいは何らかの新しい捜査方法をとりたいというような意思があるのかどうかということについて警察庁、法務省にお伺いしたいんです。
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほど申し上げましたとおり、やはり事件はそれぞれの段階でいろいろ主張が変わったりすることもひっくるめて流動的な要素がございます。刑事裁判におきましても起訴した後も補充捜査ということが必要になる場合もあるわけで、そういう点につきましてはどうしても一定限度でやむを得ない場合というのがあることは御理解いただきたいと思うわけです。 ただ、御指摘のとおり、捜査機関としてはそれはできる限り捜査を尽くすということが必要でございまして、これまでも可能な限りそういうふうに努めてきたと思っておりますし、今後一層そういうことに留意して捜査の充実といいますか、必要な捜査をできるだけ尽くすということは徹底していかなければならないと考えております。
○政府参考人(黒澤正和君) ただいま法務省から答弁がございましたが、警察におきましては、家庭裁判所への事件送致までに可能な限りの捜査を遂げても、なお事案によっては補充捜査が必要なものがあると考えておるところでございます。
○中村敦夫君 一生懸命最大の努力をして、それでも仕方がないんだというようなニュアンスのお答えだと思うんですけれども、実際問題としては、そういう答えが簡単に受け取れないような事例が多いわけです。例えば平野議員が前回説明しましたような岡崎事件とかあるいは草加事件、これは冤罪というケースと、またその逆というケースですけれども、これは捜査をまともにやっていたとは思えないような警察現場の話です。 それから、逆にまともにやったんじゃなくて何か思惑があったんじゃないかというような形のケースなんです。栃木のリンチ事件というのもございました。あの警察の対応などを見ていますと、やはり常識では考えられない、完全なサボタージュということがわかります。 また、少年で名古屋の五千万円恐喝事件というのがありました。これはかなりの長い間、こういうのは一種の町の不良少年で目立つ子供たちです。これが恐喝をやって、ついに五千万円まで来てしまったというのは、最初から五千万円要求していたというふうには思えないわけです。例えば千円、二千円から始まっても、だれも要するにそれに関与しない。親たちも親たちですけれども、やはりそういう青年が派手に動き回っている、そして問題も起こしているでしょう。警察というのはそういうものをチェックしていかなきゃいけないけれども、千円が今度は一万円になって、十万円になって、百万円になる、だれも何とも言わないということになれば、これは何億でも行ってしまうわけですね。本当に小さな事件が実は大きな金額の事件へ発展してしまう、こういうものが見逃されているという、そういう警察の現場があるのではないかと思うんです。 それで、前回の法務委員会でも、発議者の杉浦議員でさえ警察の現場というのは怠慢だというニュアンスの発言をされておりますし、やはり幾つかの報道で警察のサボタージュといいますか、整合性のない捜査の状況というものが報道されているところから見ると、これは一事が万事であって、全体的に警察の捜査現場というのが成人の事件に対してではなくて少年事件に対しても手抜きというものがあるのではないかとだれでも思うわけです。 このような状況が起きているその理由あるいは原因というのはどこにあるのかということを警察庁、そして法務省はどう判断しているのかということをお聞きしたいんです。
○政府参考人(黒澤正和君) 一般論として申し上げますと、警察といたしましては、少年事件につきましても基礎捜査を徹底いたしまして広範な証拠の収集に努めるなど、緻密かつ適正な捜査を推進することが肝要であると認識をいたしておるところでございます。
○政府参考人(古田佑紀君) 先ほどから何度か申し上げておりますとおり、少年の事件でありましても捜査を尽くすべきことは当然であるわけでございます。一般的にはそういうふうにやっておることも間違いないわけでございます。 ただ、一点御理解をいただいておきたいことがございます。それは、少年事件の場合には、先ほど申し上げました事件の早期処理その他の要請ということがいろいろございまして、なかなか成人と同じように捜査を進めることが難しい場合もないわけではない。ただ、それを口実に捜査を何か手抜きをするというようなことがあってはならないのは当然で、そういうふうな制約の中で最大限の努力をしていかなければならないと考えている次第です。
○中村敦夫君 私が聞いているのは、現実にいろんなことが起こっていて、警察のサボタージュあるいはだらしなさというものは実際にあるんだという、そういう情況証拠に関してやはり警察あるいは法務省というものが対処しなきゃいけないじゃないかという話をしているんですが、お答えは、とにかく極力頑張っていますという標語みたいな答えなんですよね。それではその現実というものにふたをしているという態度ではないかと私は思うんですが、何度聞いてもきっとそういう答えしか出てこないのがこの法務委員会ですから、私はそういう態度ではまずいんだということを再三抗議しなければならないと思っております。 さて、改正案発議者の杉浦衆議院議員は、前回のここの法務委員会で、凶悪犯罪の容疑少年を原則逆送することで警察も検察も公判を考えてきっちりと捜査するはずだというふうに答えられましたね。これは今私が警察庁、法務省にした質問に関連することです。要するに、警察が今だらしない、捜査がだらしない。この法律が通れば一生懸命やるだろうという話なんですが、これは本末転倒ではないかなということであって、だから少年法を改正するという話ではないんじゃないか。やっぱり捜査をきちんとやっていくという、法律の趣旨が徹底されるように捜査現場を充実させるということが実は大事なんではないか、そっちが先だというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○衆議院議員(杉浦正健君) 中村先生は私どもよりは刑事処分の現場を御存じないからそういうお話になると思うんですが、どういうふうに御説明をしたら御理解いただけるか。 漆原先生も弁護士なんですが、司法試験を通って研修所に入ります。私どものころは検察修習というのが四カ月ありました。裁判が民事、刑事、弁護士修習それぞれ四カ月、それで検察修習四カ月。私は本当に好きでというか、興味を持ってやったんです。 重大事件というと大体逮捕されるのが普通です。身柄になって逮捕期間七十二時間でしたか、警察が調べて送ってきます、身柄と一緒に書類が来ます。大体私どもは、ベテラン、十年以上捜査経験のある検事について四カ月、起案もさせられたんですが、検事の人たちは物すごいなと思ったんです。送られてきた書類を見て、それまでの捜査の記録を見て勘を働かせて、これは公判請求だ、これは不起訴だと、第六感でぴっと結論まで見通すんです。すごいものです。おまえ、これは不起訴になるかどうするか、公判請求かと意見を聞かれる。最初はそれなりに一生懸命やったんですが、四カ月やってくると、ああこれは公判請求ですぐらいのことは大体わかるようになったんです。 少年事件もそうです。凶悪犯罪の場合は同じようなケースだと思うんですが、公判請求が必至だという事件については、警察にあれ調べろ、これ調べろと検事が指示します。どんどん捜査させまして、あれが足りない、これが足りない、まさに検事が全責任を持って公判を前提として証拠の収集をやるわけであります。これは不起訴だということがはっきりしたような事件ですと、本人を呼んで大きな声で怒ったりしますが、そういった怒ったりする事件は大体不起訴ですね。公判請求する事件は丁重に調べて言い分を十分聞いて、本人は不起訴だと思ったら公判請求されるというのが多いんですが、これは不起訴だということになると、もう時間も限られていますからある程度の捜査で打ち切るということをやっておるわけであります。 この少年事件の運用が、例えば殺人でも逆送率二割から三割という事実はみんな知っていますから、検察官も。山形マット事件でも岡崎さんの事件でも、死んで、しかし岡崎さんの場合はけんかじゃないかと最初予断を持って推測したらしいんですが、山形マット事件でも何らかの間違いだというような予断があったんじゃないかと。これも推測でありますが、その初動捜査において、私に言わせればもっと検察官が真剣に、子供が死んでいるんですから、もう十分にこれは公判請求あり得るぞということで徹底的な捜査を仮にしていたとしたら、岡崎さんの場合あのような悲惨な結果にならなくても済んだんじゃないかと思いますし、山形マット事件でも家裁の事実認定と高裁と食い違うようなことはなかったんではないか、こう思っておるわけであります。 公式答弁だと、もう検察庁も警察庁も、捜査を遂げて、遂げた上で処分しておりますということにならざるを得ないと思うんです。あそこに佐々木先生、検事をやった人がおるけれども、やっぱり時間が限られていますし、処理する事件は山ほどあるから、それぞれのつかさ、つかさはやはりその置かれた立場で全力を挙げて社会の要請にこたえるということですから、これはもう家裁へ送って、家裁も調査権がありますから、どうせ戻ってこないよ、過去の例に照らしてというふうになれば、そこそこ調べて、どうぞ家裁でやってくださいと、こういうふうになるのは当たり前のことであって、私は、だから原則逆送ということになれば、被害者が死んでいる、ひょっとすると返ってくるかもしれぬぞ、原則逆送なら返ってくるぞというふうになれば、検察官もその気になって十分な捜査をするという可能性が大きくなるという一般論を申し上げているわけであります。捜査の現場はぴりっとするだろうと。今まで以上にぴりっとして、きちっとした捜査をやるに違いないというふうに思っている次第であります。そういう意味で申し上げたわけであります。
○中村敦夫君 しかし、少年法の精神からいったら、やっぱり家裁というものが一番決定権を持つということが基本だと思うんですよね。ですから、そちらの要するに能力というものを軽視して、とにかく捜査させるために逆送だという話になると、私は理屈が逆転してしまうんじゃないかなと思いますね。 そして、その話の続きでいえば、原則逆送ということになりますと、やっぱり家裁というもの自体の存在が非常に薄くなってくるわけですね。結局、意欲だとか能力というものがどんどん減退していくんじゃないか。要するに、逆送しちゃった方が楽だというようなことは実際起こるし、特にお役人の世界というのはそういうものであって、家裁そのものが非常に弱くなっていく。そうすると、少年法の本来の理念というものがおかしくなってくるということが実際起きるんではないかと思うんですが、その点についていかがですか。
○衆議院議員(杉浦正健君) それも私に言わせれば誤解であります。家裁に送られてくるのは二十数万件毎年あるわけでございまして、そのうち、いわゆる凶悪犯罪と言われているものは二千何百件、三千件弱であります。そのうち、死に至った事件になると殺人が大体百件前後、それよりももっと少ないわけでございます。 保護を要する、要するに私は子供を育てるのは親の責任だと、一人前にするのは、と思っていますが、親が手に負えなくなって社会に迷惑をかける、犯罪を犯すというようになった場合に、国がかわって子供を保護育成しようというのが少年法の趣旨だと思っていますが、そういう凶悪な事件はほんの一握りです。それ以外にもう本当に二十何万件あるわけなんですね。そのうち半分ぐらいは簡易送致で、もう書類だけで不処分になっちゃうんですが、それにしても、家裁が有効に機能している部分というのはもう十万件を超えると思います。そういう本当に保護を要する事件について私どもは原則逆送なんて言ってはおりません。ごく一部の、被害者が死に至った重大な事件の子供が犯した犯罪、故意の犯罪、ごく一部の犯罪について、これは原則逆送とした方がいいんじゃないかと。 被害者の方が怒っておられるのも子供が死んだ場合がほとんどです、命を返せという話になるわけですから。その事実を公判廷でしっかり調べてもらう、そういう趣旨で申し上げているわけで、先生の御指摘のような、家裁の機能が落ちるとかそんなことは考えておりません。そうでない少年をきちっと健全育成する家裁の使命というのは衰えることはないし、なくなることはないし、重大な使命を担って、これ仕事もいっぱいあって、むしろ凶悪な事件を通常裁判に預けることで、その原則逆送の分だけ審判とかやる業務が減るわけですから、その分だけまたそうでない事件の調査とか保護処分に家裁の労力が割けるという意味で、私は機能が減衰するとか減退するとかというふうには毛頭考えておらないところであります。
○中村敦夫君 今のお答えは家裁の権限の分割というような話であると私は考えておりますが、時間が参りましたので、質問を終わります。
○委員長(日笠勝之君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。 ─────────────
○委員長(日笠勝之君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 少年法等の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認めます。 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(日笠勝之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時七分散会