法務委員会 第2号
- 発言数
- 123 件
- 登壇者
- 16 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 2000/10/10
会議録
○長勢委員長 これより会議を開きます。 開会に先立ち、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席されておりません。 再度出席を要請いたしますので、しばらくお待ちをいただきたいと思います。 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○長勢委員長 それでは、速記を起こしてください。 先ほど来、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席されておりません。やむを得ず議事を進めます。 麻生太郎君外五名提出、少年法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 お諮りいたします。 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び法務省保護局長馬場義宣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○長勢委員長 次に、お諮りいたします。 本日、最高裁判所安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○長勢委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
○河村(建)委員 おはようございます。自由民主党の河村建夫でございます。 それでは、質疑に入らせていただきたいと思います。 どうにかならぬのか少年法は、少年法はいつになったら改正されるのですか、さきの総選挙におきましても、有権者の多くの皆さんから質問攻めに遭いました。平成九年五月のあの神戸市の須磨区における中学三年生の児童連続殺傷事件、いわゆる少年A事件と言われるものでありますが、あれから、ことしの八月にありました、大分県における高校一年生による知人一家の殺傷事件まで、いわゆる世間の耳目を引くような、新聞の一面に載るような大事件といいますか、こうしたものが、この三年間で十件起きておるわけでございます。少年によるものでございますが、このうちの六件、愛知のあの主婦殺し、殺人を経験してみたかった、あるいはバスジャック事件等々、十七歳の少年による凶悪事件でございますが、ことしだけでももう六件起きておるような状況下にございます。 少年法の第一条にあります「少年の健全な育成」、これがうたわれておる少年法の理念でございますが、これが生かされておるのだろうか。あるいは犯罪の抑止力ということから考えたときに、少年法というのはこれでいいのか、こういう少年法に対する国民の関心の高まりに対して、我々立法府にある者としても、これにどうやってこたえていくか、もはや看過できない状況に至っておることは事実でございます。 さきの国会におきましても、この国民の声に押されるように、政府提出の法案の審議が行われたのでありますが、解散になりまして、残念ながら廃案となっておったわけでございます。 今回、与党三党におきまして早速プロジェクトチームを組んで、国民の声にこたえるべく鋭意この問題に取り組まれて、早期に成案を得て議員立法として改正案の提出に踏み切った。私は、この意義は非常に大きいものがあるし、これを評価し、プロジェクトチームの皆さんにも心から敬意を表したい、こういうふうに思っております。 私も、さきに提案理由説明をお聞きいたしながら、私自身、自民党の法務部会の少年法小委員長といたしまして、平成九年、あの少年A事件以来取り組んでおりましただけに、感慨深いものがあります。 それにつけても、これだけの国民に関心の高い重要法案、残念ながら野党諸君の姿が見えないということでございまして、立法府としての責任をどういうふうに果たしていくんだろうか、非常に遺憾であり、残念に思っておるところでございます。 この問題につきましては、少年の健全育成という理念を共有しながらも、その方法論あるいは法的な仕組みのあり方についてはさまざまな意見があるわけでございまして、三党でこの法案を取りまとめるためのいろいろな御努力、御苦労というものは、私は並大抵なものではなかったろうと拝察をするものでございます。提案者の皆さん方に、その御苦労を伺いながら、今回の改正案、議員立法として提出に至った経緯といいますか、そして基本的な考え方について、まずお伺いをしたいと存じます。
○杉浦議員 提案者の杉浦でございます。 お答えに入る前に、まずもって河村委員の、これまでの少年法改正についての我が党、国会の取り組みの中で、大変熱心にお取り組みをいただき重要な役割を果たしてこられましたその御努力に対しまして、心から敬意を表する次第でございます。 本を持ってきたのですが、私は法務委員長をやって、河村先生のところの小委員会の委員でもあったのですが、先生のお名前で、土師さんの「淳」が配付されました。この本の配付を契機にして、自民党の中の議論も非常に活発になったように記憶しております。党内にもさまざまな議論がございましたが、そういった議論を集約されまして、政府提案の少年法改正案について、年齢問題に触れられていないことについて、やんわりと注意を喚起されながらおまとめいただいたあの案が基礎になって、今日の三党共同による議員提案になっておるわけであります。重ねて敬意と感謝を申し上げる次第であります。 今度改正案が出るに至った経緯については、もう先生が申されたとおりでございます。 基本的な考え方としては、三点ほどあるわけでありますが、少年及びその保護者に対しまして、その責任について一層の自覚を促して、少年の健全育成を図るというのが一番の眼目であります。 健全育成という柱はもちろん変えませんが、ともすれば、今までの少年法の運用、家裁を中心にして五十年大変な御努力をなさってきた、この成果は認めるわけでありますが、その少年法運用のあり方が時代にそぐわなくなったといいますか、少し少年を甘やかし過ぎてはいないかという反省から、この第一の柱を立てた次第であります。 二番目は、少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図ることであります。検察官関与ですとか、裁定合議制の導入とか。 この少年法は戦後占領下に生まれたわけでありますけれども、少年法が成立して以来、すぐから改正論議が始まっている。長い間、いろいろな改正案も出ております。論議がなされてきておるわけでありますが、その重要な点がこの検察官関与といいますか、事実認定を家裁の職権主義的なものだけに任せてはいけないのではないかという点があったわけでありまして、その五十年の間の議論がある意味では実ったと言えると思っております。 三番目は、これは新しい、最近の国民からの御指摘から出たわけでありますが、被害者に対する配慮を一層強くするということであります。 この淳君の本で、土師守さん、お父さんが具体的にいろいろ言っておられますが、まさにこの点はまだまだいろいろ御議論のあるところでありますが、これからの刑事手続全体の中で、とりわけ少年事件については十分な配慮をしなきゃいかぬということで柱立てをした次第であります。
○河村(建)委員 ありがとうございました。 ただいま杉浦提案者から説明いただきましたように、今回の改正法案には、少年事件の処分のあり方の見直しと、それから少年審判の事実認定の適正化、そして被害者への配慮の充実というこの三点が大きな柱になっておるように思われます。 このうち、少年事件の処分のあり方の見直しは、さきの政府提案の法案ではなかった部分でありまして、少年法に関する国民的な関心の高まりというのも、この年齢問題にかなり焦点が当たっておった、このように思うわけでございます。 この改正案は、この国民の声を受ける形で、刑事処分を可能とする年齢、いわゆる逆送可能な年齢を現行の十六歳から十四歳に引き下げることになっておるわけでございます。現行少年法施行以来半世紀を超える変更でございますが、この年齢区分に変更を加えて、刑法とのダブルスタンダードの解消を図ることになるわけであります。年少少年に対する処遇の幅を広げていくというこの基本的な考え方、改めてその意味するところをお伺いしたいと思います。
○杉浦議員 年齢引き下げの問題が今回の少年法改正の主要な眼目の一つであることは委員御指摘のとおりでございますし、国民の皆さんの中にある少年法を変えてほしいという御指摘の中でも中心的な部分であろうと私も理解しておりますし、ここにお見えの委員の方々、皆さん同じ御意見ではなかろうかと思います。 十四歳、十五歳の少年は、現行法のもとでは、殺人等いかなる凶悪な犯行を犯そうとも、刑事処罰の対象にでき得ないことになっております。今現在の、近年のと申し上げるべきでしょうか、ごくごく一握りの少数の少年によって起こされてまいりました事件について、刑事処罰を含めて家裁を初め関係機関が対応できるようにするということが、この現下の少年問題にこたえる最も大事なことであり、そのことが少年を凶悪な犯行に走らせることの抑止力になると期待もしておる次第であります。
○河村(建)委員 ただいま御説明をいただきましたように、十六歳から十四歳に刑事処分年齢を引き下げるということになりますと、いわゆる十四歳、十五歳の年少少年が刑事処分を受ける可能性が出てくるわけでございます。今、杉浦委員御指摘のように、一連のこうした重大事件の発生を見ますと、そうした厳しい処分も必要になってくる、世論調査の結果もそれを支持している状況下にもございます。先ほど申し上げました重大事件、この三年間のうち十件ございますが、その中の四件も十四歳、十五歳が起こしているということでもございます。 そのようなことを考えますと、少年非行の低年齢化ということも非常に問題になってきておる状況下にあるわけでございますが、年少少年の非行の動向について、この際、法務当局の説明を求めたいと思います。
○古田政府参考人 年少少年の非行の動向についてのお尋ねでございますが、昭和四十六年以来、十四歳、十五歳の年少少年が少年刑法犯検挙人員、これは交通関係の、交通事故を除く部分でございますが、その中で最も多数を占めております。平成十一年におきましては、約五万九千人となっております。もっとも、その八〇%余りは万引きや自転車の乗り逃げなどの窃盗あるいは遺失物横領が占めているわけでございますが、その一方で、強盗などの凶悪犯の検挙件数も近年増加傾向にございますし、殺人事件の検挙人員が、平成七年以降十人台を維持し、平成十一年には十六人を数えるなど、この年代の少年によります悪質、重大な事犯も続発しているところでございます。 そのような状況で、憂慮すべき事態であると考えております。
○河村(建)委員 今御指摘のように、少年非行の低年齢化が非常に進んでおりますし、全体の比率からいっても半分以上を占めている状況下にあるわけでございまして、この総合的な対策は対策として別途また考えなきゃいけない重要な問題だと思いますが、今回の改正も、抑止力という点からも、我々はやらざるを得ない改正であろうというふうに感じておるわけでございます。 ところで、視点を変えまして、逆送可能年齢が十四歳まで引き下がるということによって、この十四歳、十五歳というのは中学生でありますから、いわゆる義務教育年齢になるわけでございます。こういうことを考えますと、義務教育を、刑を受けた状況の中で果たしてちゃんとできるだろうかという心配も一方であるわけでございまして、学校教育でありますから、中学校をきちっと卒業させる、これは国の義務があるわけでございます。では、どの学校から卒業証書をもらうのかというような問題もあろうかと思いますが、このようなことについては、今回の改正案ではどのような配慮がなされておるか、お伺いしたいと思います。
○杉浦議員 お答えいたします。 今回の少年法改正案におきましては、十四歳、十五歳で懲役または禁錮の刑の言い渡しを受けた場合には、少年に対しましては、十六歳に達するまで少年院において刑を執行して矯正教育を行うということができるようにいたしております。 少年院は、最近は関係者の御努力で非常に充実してまいっておるというふうに評価されておりまして、少年院においては、もう御案内のとおり、小学校、中学校で必要とする教科に関する教育を行っておりますし、また、少年を社会生活に適応させるために、職業訓練とか補導とかいうようなこともきちっとやっております。 そういった意味で、大変成果を上げておられるというふうに承知しておるところでございますので、新少年法の運用においては、恐らく刑事裁判官は、これは刑の執行になるわけですが、処分で言い渡すのかな、よくわかりませんが、少年院における矯正教育を選択されることになるんじゃないかというふうに思っております。
○河村(建)委員 少年院における矯正教育の充実ということはかねてから言われていることでございます。特に今回、義務教育年齢が入るということでありますから、その配慮というのは十分必要であろう、こう思っておりますし、また、この問題については文部省あるいは文教関係をもっときちっと押さえていく必要があろうというふうに感じておるところでございます。 こうした一連の少年非行事件が増大しておるその背景には、やはり家庭の問題が大きいということが指摘されておるところでございます。 今、日本の教育改革が問われ、教育の荒廃について国民的関心も非常に高まっておりますが、これはいわゆる家庭の教育力、それから社会の教育力、学校の教育力、この低下にあるという指摘がございます。その中でも特に家庭の教育力、すなわち親の責任といいますか、これを問う声が非常に大きいわけでございます。いわゆる無関心あるいは過干渉、こう言われておりますが、そうした一連の家庭の親の責任の問題、これは我々の自民党内の少年法小委員会でも非常に大きな課題として取り上げたわけでございまして、少年の非行の原因、背景としては、親の教育、しつけのあり方に問題がある、少年非行を防止する上で親の役割は非常に大きいと考える、そのことから、親の責任を理念的に明らかにする必要がある、こういう指摘もしてきたところでございます。この点については、この改正法がどのような手だてを講じておるか伺いたいと思います。
○杉浦議員 少年非行に関しましては、家庭とか学校教育あるいは社会、地域コミュニティーの取り組みですとか、そういったさまざまな要因が関連しているということはもう委員御指摘のとおりでございます。 家庭に問題があるということは、かつては非行少年の場合には家庭に問題がある少年が多かったんですが、あるいは貧しい家庭の少年が比較的多かったんですが、最近は豊かな、中流以上の家庭の子弟、問題のない子弟も犯行に及ぶ場合がある。淳君の加害者の家庭なんかそうなんですが、いわゆる一般化ということが指摘されております。淳君の、A少年ですか、両親なんかは、この本を読んでおって、ともかく常識では考えられないですね。一回も謝りに来ていない。自分の子供が人様の子供をあやめているにもかかわらず、申しわけないと言ってもこない。民事訴訟を起こされたらしいんですが、処分が決まるころ、付添人が指導したとおぼしき紋切り型のわび状が来ただけだということでございまして、中流家庭の方のようなんですが、親として一体何を考え、お感じになっているのか、人間として、自分の子供が人の子をあやめたことについてどう思われているのか、実に何とも申し上げようがない家庭だと思うんです。 そういった家庭は、恐らくほかの事件でも、いろいろ非行を犯す少年の家庭についてはあるんだろうと思いますが、そういう両親あるいは保護者の人に対して、家裁は今までも口頭で訓告とか戒告とかをなさっておられたようでありますが、今回の法改正におきましては一条を設けまして、保護者に対しまして、家裁または調査官が訓戒、指導その他の適当な措置をとることができるというふうにいたしました。 具体的な中身については、一条ができますと最高裁、家裁の方で具体的に御検討いただくということに相なると思うんですけれども、自民党内でもさまざまな議論がありました、三党協議でもございました、ペナルティーを科すべきであると。先進国に先例があるのですけれども、一種の労役を科するとか、あるいは社会保障等の権利を制限するとか、そういうこともやっている国もあるようであります。 そういう議論もあったのですけれども、とりあえずは保護者の責任をきちっとした形で家庭裁判所の方で対応措置がとれる、強制にまではわたりませんけれども、法的根拠に基づいてとれるというふうにした次第でございます。将来の問題についてはいろいろ検討すべき問題もあろうかと思われますが、とりあえずはそういたした次第であります。
○河村(建)委員 次に進みます。 今回の改正案、既に一部のマスコミあるいは法律の専門家等からも、厳罰化に向かう改正であって、少年法の精神に反するのではないか、あるいは今回の改正によってすぐに少年犯罪が減少するわけでもないから反対であるという意見も見られるわけでございます。 私もこれを改正したから即少年犯罪が目に見えて減少するとも思わないわけでございますが、しかし真に少年を保護するというのは、やはり自分のやったことをありのままに認識させて、責任と被害者への心情を正しく自覚させる、そこからスタートしなければいかぬ、こう思っておるわけでございますので、罪を犯したら罰せられるということを明示していかなければいかぬ、これは意義あることだと思っておるわけでございますが、提案者の方の所見をあわせてお伺いしたいと思います。
○杉浦議員 先生のおっしゃるとおりであります。淳くんのお父さんも少年法に対する所見を述べておられますが、その中で、非行を犯した少年が反省することを促すことが出発点ではないかということをたしか申されておったと記憶いたしております。 厳罰化ではないかという議論がございますが、確かに、凶悪犯罪を犯す少年に対しては厳罰化と言ってよろしいかと思いますが、もともとそういう少年の数はごくごく一部でありまして、その少年たちに対してきちっと、ルールを犯したら罰するよということをやることによって、その周りにいる、いわば予備軍と申しますか、そういう少年たちあるいは少年全体に対して警告を発するということが大変意味のあるところじゃないだろうかというふうに思っておる次第でございます。 実際の家庭裁判所全体の運用が軽微な事件に至るまで厳罰化するというふうに私は思ってはおりません。
○河村(建)委員 最近の事件では、もう少年法で守られておる、死刑にならない、要するに少年法を認識した上での確信犯ということもふえておりますから、これはやむを得ない処置だろうと私は思いますし、厳罰か保護かという二者択一の単純化したような問題でもございません。今、杉浦提案者が説明されましたように、これは事件の内容によるんだということでありますから、私は、これは許容されるべき改正だ、このように感じております。 次に、本改正のもう一つの大きな柱、今あの土師さんのところの淳君の本を取り上げて御指摘をいただきましたが、被害者に対する配慮の充実の問題でございます。 これは非常に意義のあることだと私は思っておりますし、我が党の少年法小委員会でもこの点についていろいろ議論をした、被害者の権利保護の問題であります。もちろん、加害少年の更生を図っていかなければいかぬ、当然のことであります。しかし、一方では、罪を犯した者は罰せられる、この社会的規範をゆるがせにしてはならぬわけでございます。現行法では、加害少年の保護を重視する、これが余りに行き過ぎて被害者側への無神経な対応が目立つ。特に、マスコミの問題もございます。 さきに、少年犯罪被害当事者の会の代表であります武るり子さんの御意見も拝聴したことがございますが、少年法が非公開であるということもあって、警察も少年法を盾にとって何ら内容を説明しない、そのために、何が起こって一人の人間がこの世から消えたのか全くわからないということ、あるいは少年審判で何が審理をされているのか皆目見当がつかない、蚊帳の外に置かれているのが非常に悔しい、腹立たしい、こういう御意見もあったわけでございます。 こうしたものに対して、政府案でも、少年審判の結果を被害者に通知する制度が盛り込まれていたのでありますが、さらに改正案では、被害者の申し出による意見の聴取の制度とか、被害者等による記録の閲覧、謄写も可能にする制度が設けられておるわけであります。こうした制度を設けられた趣旨を改めて提案者にお伺いしたいと思います。
○杉浦議員 被害者の気持ちをもっと尊重すべきだという考えはずっと近年の流れだと思いますが、少年法においても、この改正案で、廃案になった案にございました結果通知制度以外に、閲覧、謄写あるいは意見の聴取を申し出があった場合はしなければならないという制度を設けたのは、まさに委員のおっしゃったような趣旨でございます。
○河村(建)委員 我が党の議論の中には、本来被害者を傍聴席に入れたらどうかとか、あるいはモニター制度を使ってやったらどうか、こういう意見もあったわけでございますが、これはいわゆる加害少年に非常にプレッシャーを与えるだろうという配慮から今回入っていないわけでございます。このことも含めてとも思うわけでございますが、時間の関係で指摘をするにとどめます。 最後に、保岡大臣におかれましても、御就任前から、この少年法改正については、私も御指導をいただきながら、この問題に取り組み、非常に力を入れてこられました。日ごろからこの問題に努力をされた、私も敬意を表しているところでございます。今回、いよいよ与党三党の少年法改正案が提出されました。法務大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
○保岡国務大臣 河村委員が先ほど御自身でもお述べになられましたとおり、この三年来、少年非行あるいは少年犯罪に対するお取り組みを一生懸命されて、党の中心になって努力されてまいりまして、私も、そのもとで一委員として一緒に頑張ってきた立場で、本当に先生の御努力に敬意を表しているところでございます。 今お話しのように、与党が提案していただいた今回の少年法改正案というのは、提案理由の説明にもありましたとおり、社会を非常に震撼させるような、耳目を集めるような凶悪重大事件というものが相次いで起こったわけでございます。国民もこれに対しては非常に心配をし、その原因やいろいろな背景というものに対して非常に不安を感ぜられた。先ほどお述べになったように、総選挙における有権者の反応もまさにそういうことが非常に強く出ていたように思っているところでございます。 こういった課題にこたえるために、与党において今度の改正案を当委員会に御提出いただいたわけでございますが、これはこの委員会で立法措置を含む幅広い視野から真剣な検討をすべきとの少年非行問題に関する決議がございました。また、最近の年少少年の犯罪動向等を踏まえて、さまざまな角度から精力的な検討がされたと伺っております。 特に、私としては、さきの通常国会で提出いたしました少年法改正、政府提案になるものの内容を適切に取り入れていただいて、事実認定の適正化ということについて、いい改正内容をまとめていただいたと感謝を申し上げておりますし、加えて、やはり人をあやめる、取り返しのつかないこういった重大、凶悪な事件に対してはやはり厳しく処罰をする可能性について整えていただいたと思いますし、また一方、少年の可塑性に富む教育改善という点についても、具体的な事案に応じてはきちっと対処できる幅をしっかりと確保していただいたというふうに承知しております。 特に、今、杉浦提案者といろいろやりとりをされているのを伺っておりまして、被害者に対する配慮というものは、さきの政府提案においても審判の結果を被害者にお伝えするという内容があったのですが、それに加えて、被害者の気持ちや考え方というものを審判に出せる措置を工夫して改正案の中身にまとめていただいた、このことは非常に意味があると思っておりますし、また、事件の一連の記録の謄写、閲覧などの可能性をつくり出していただいたことも大切な改正の内容だと承知しております。処遇においても、実際の審判の過程でも、被害者の気持ちというものを、結果の重大性というものを少年に伝えるということは非常に重要な要素だと私も考えております。 そういったことで、ささいなことで、何か簡単なことで重大な結果を起こして、そして本人も周辺も愕然とするというようなことが最近の少年事件の一つの大きな特徴であると思っておりますので、本当にこういった内容の改正に私は高い敬意を表しているところでございます。 ただ、私は、少年法だけでこういった一連の少年非行事件、犯罪が解消するものということでもない。これは非常に重要な柱でありますが、やはり私は、戦後の日本社会の鏡がこの少年事件にあらわれている。したがって、社会全体の気質、あるいは免疫力、蘇生力、こういった全体の社会のありようというものを、やはり憲法改正を含め、あるいは教育基本法の見直しを含め、新しい二十一世紀の日本に向かって、私は、社会全体の規範意識、けじめをつけるところはきちっとつける、責任や義務、個と全体との関係、こういったことを社会全体できちっと新しい日本のあり方として求めていくことが我々政治家としては非常に重要だというふうに思っておるところでございます。
○河村(建)委員 大臣、ありがとうございました。 最後に、野党諸君に、今からでも遅くありませんからこの重要法案に早く参加されますように切に要請をいたしまして、終わりたいと思います。
○長勢委員長 横内正明君。
○横内委員 自由民主党の横内正明でございます。 河村委員に引き続きまして、河村委員との重複を避けながら、幾つかの点についてお伺いをしたいと思います。 去る六月の衆議院選挙でも、有権者の皆さんとお会いをしておりましても、少年の問題に対する国民の関心が非常に高いものがありまして、何とかしなきゃいかぬ、少年法もきちっと改正をしなきゃいかぬ、それが世論の大勢だったというふうに思います。そういった世論を踏まえて、今回与党において議員提案としてこういう少年法をまとめたわけでございまして、国民世論の大勢の賛同は得られる内容だというふうに思っております。 しかしながら、一部の法曹関係者とか学者とか、そういう人たちの間には、今回の改正案に対するかなり強い反対があるわけでございます。その反対の議論を聞いておりますと、事実認識の違いが非常に大きいなということを改めて感じ、驚かされるわけでございます。 今回の改正案は、大きなねらいとして、認識として、少年犯罪が近年急増して凶悪化をしている、そういう認識に立って、刑罰強化をすることによってその犯罪の発生を抑止するんだというのが大きなねらいの一つだというふうに思います。しかしながら、反対する人たちは、そもそも少年犯罪は凶悪化していないんだ、こういう認識に立つのですね。そしてもう一つは、刑罰強化をしても犯罪の抑止にはならないんだという認識に立つのですね。随分認識が違うなということを私は感ずるわけでございます。 具体的には、例えば、これは日弁連の少年司法改革対策本部というところがビラを出しておりますけれども、凶悪事件は一九六六年当時から見ると最近十年間は非常に低いレベルにあって、少年犯罪が凶悪化しているというのは少年非行の実態を誤解させるものであるというような言い方をしておりまして、昔に比べれば今は減っているんだ、ただしかし、非常に特異な、異常な事件が起こっているためにセンセーショナルに報じられているけれども、それは非常にレアケースなんだ、だから心配する必要はないんだ、そういう認識に立っているのですね。それが一点。 それからもう一点。反対をする皆さんは、刑罰を強化しても犯罪を減らすという効果はない、それは、我が国の少年法の範となったアメリカにおいて厳罰化、刑罰強化をしたけれども少年犯罪は減らなかったということを言っているわけであります。これは毎日新聞の社説でございますが、米国の多くの州では八〇年代半ばに相次いで法制を厳しくしたのに、激増する少年犯罪に歯どめをかけることができなかった、失敗に終わった他国の施策を慌ててまねするのは賢明でないということまで言っているわけでございます。では、本当にアメリカで厳罰化が犯罪抑止に結びつかなかったのかどうかということですね。 その二点が非常に認識の違いがあるものですから、ここのところは、事実認識の問題として法務政務次官にお考えを伺いたいと思います。
○上田政務次官 横内先生からの御質問、初めの、最近の少年の凶悪事件の動向についての御質問でございますけれども、最近の少年による凶悪犯の、これは殺人、強盗、放火、強姦という類型で統計を調べさせていただきましたが、その検挙人員は、平成七年を境に増加の傾向に転じております。現在二千人を大きく超えているという状況でございます。特に、平成十一年の少年刑法犯全体の検挙人員が平成十年に比べ減少しているにもかかわらず、凶悪犯の検挙人員は増加しており、対人口比を見ても、平成二年以降増加の傾向にございます。 また、近時少年による凶悪重大事犯が相次いでいることは憂慮すべき事態であるというふうに考えており、確かに、昭和三十年代、四十年代初頭にかけての時期よりも凶悪犯の発生件数が少ないのは事実でございますけれども、今申し上げましたような最近の動向を考えるときに、その対策を怠ることはできないというふうに認識をしているところでございます。 また、今委員の方からアメリカの事例を挙げての御質問がございました。犯罪発生件数というのは、これはもう実にさまざまな要素によって増減するものでありますので一概に申し上げるわけにもいきませんが、この犯罪発生件数の特定の原因を挙げることというのは非常に難しいというふうに考えております。 御指摘のアメリカにおきましては、一九七〇年代以降、少年裁判手続における適正手続保障を強化するとともに、処分の刑罰的性格を強化する、いわゆる少年司法の刑事司法化が進みました。殊に、さらにその後の近年におきましては、ワシントンDCを含め四十一州において、少年の刑事訴追を容易にする法律が制定されたものというふうに承知しております。 近時の主要な少年犯罪の動向は、これもこうした司法手続の改正との因果関係というのだけを取り出して論ずることは先ほど申し上げたように困難であると思いますが、一九九四年をピークといたしまして現在は減少の傾向にあるというふうに承知しているところでございます。 以上でございます。
○横内委員 確かにアメリカもずっと厳罰化の傾向をたどり、特に一九九四年ごろにかなりそういう刑罰強化の方向で改正が行われた、ちょうどそのころから少年犯罪というのが、特に凶悪犯が減ってきたというのは統計上はっきり出ているわけでありまして、どうも反対者の言うことが、その点について、どういう統計に基づいているのか私にはよくわからないのでございます。 二点目でございますけれども、今回のこの改正の大きな柱の一つが、刑事処分可能年齢、現在十六歳以上としておりますけれども、これを十四歳以上に引き下げるというのがこの目玉、柱の一つとなっております。 ただ、この点は、ことしの春に提案された政府提案の中には入っていなかったわけでございます。したがって、言いようによれば、法務省は当時において、この点については必要と考えていなかったんじゃないかということになるわけでございます。そういうものが今回、この改正で刑事処分可能年齢の引き下げを行うことが入っているわけでありますけれども、法務省としてどう考えておられるのか。特に、こういった基本的な問題についての改正を行うのであれば、法制審議会の審議を経るべきものではないかという意見がありますけれども、この点について法務大臣の御意見を承りたいと思います。
○保岡国務大臣 刑事処分可能年齢をどのように設定するかという問題は、刑事司法全般において人格形成途上にある若年者をいかに取り扱うべきかという基本的な考え方にかかわるものでありますが、与党三党においては、最近の年少少年の犯罪動向などを踏まえて精力的に御議論をいただいたと承知しております。そして、これを十六歳から十四歳までに引き下げるべきであるとの結論を得られた、刑事処分可能年齢というものの見直しの結論を得られたものと承知しております。 十四歳、十五歳の少年に対しても社会生活における責任を自覚させ、その健全育成を図るため、処分の選択の幅を広げて、刑事処分可能年齢を刑法における刑事責任年齢に一致させて十四歳まで引き下げることは、意義のあることだと考えております。 また、年齢問題につきましては法制審議会における審議を得るべきではないかという御意見もあろうとは存じますが、この問題については、与党三党におかれて、最近の少年非行の情勢にかんがみ、それまでの各党における御議論や、先ごろ行われた衆議院総選挙を通じて知り得た国民の意見なども踏まえて、立法府に属する議員としてこの法律を提出されるに至ったものであり、最近の少年非行の情勢に対処するための緊急の対応と承知しております。その内容においても、私、個人的にも従来この問題にずっと携わってまいりましたが、いろいろな御議論にもまれにもまれて、いい内容の案にしていただいたもの、そういうふうに承知いたしております。 いずれにしても、早期に成立が図られるよう、法務省としても審議に御協力を申し上げてまいりたいと考えております。
○横内委員 次に、いわゆる原則逆送の制度についてでございます。 今回の改正案では、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪については原則として検察官に逆送するという制度が盛り込まれているわけでございますけれども、この対象となる罪の範囲が、故意の行為により被害者を死亡させた罪ということになっているわけでございます。かなりの凶悪犯罪ということであります。これは相当限られた範囲ということだろうというふうに思いまして、どうしてこういうような範囲の犯罪に限ったのか。人を死亡させるに至らなくても、例えば強盗とか強姦とか、そういうものの特に悪性の高いようなもの、そういうものについては原則逆送の対象にしてもいいのではないかという感じもいたしますけれども、その辺について提案者にお伺いしたいと思います。
○杉浦議員 お答え申し上げます。 原則逆送という制度は、御承知のとおり、廃案になりました少年法改正案にはなかった重要な部分でございます。これが自民党内で取り上げられ、成案になり、三党協議で現在のような形になったわけであります。 さまざまな経緯がございましたが、故意の犯罪行為によって死に至らしめた、例えば殺人、強盗殺人、強姦致死、傷害致死、監禁致死、まだほかにもあるかもしれませんが、そういう凶悪な犯罪に結果として絞り込みましたが、原則逆送をきちっとやれば、そのほかの罪の類型においてもきちっと移送してくれるようになるのではないかという考え方が一つございます。 最初、自民党案では恐喝も入っていました。名古屋で五千万円恐喝なんという事件が出まして、恐喝も入れるべきだという議論があったのですが、恐喝まで入れると、窃盗はどうかと、同じあれとしていろいろありまして、自民党案では恐喝も入っておりましたが、三党協議で絞り込もうということになったわけです。しかし、あのような五千万、凶悪ですから、ああいうような事件も、故意の犯罪行為によって被害者を死に至らしめた事件を原則的に逆送することによって、それにはない類型の凶悪事件については移送されるようになるのではないかというふうに期待しております。 そもそも、なぜこういうことを持ち出したかといいますと、この五十年、家庭裁判所が中心になって運用してこられた少年法、私は実に立派な成績を上げてきておられるとは思っております。評価はいたしておりますが、現在の少年法の中にある逆送、現実にある制度が、果たして十分に国民の期待にこたえる形でなされてきたかどうか。時代の変化とともにきちっとやるべきところを怠ってきたのではないかという批判が国民各界各層にある。殺人事件にしても、逆送された例というのは、刑事局長に答弁させればわかりますが、少ないはずです。人を殺しておきながら刑事裁判にかけられない、おかしいじゃないかということがございます。 今度の佐賀のバスジャック事件、十七歳の少年ですが、逆送しませんでした。新法であれば当然、原則逆送ですから刑事裁判になったはずであります。審決の主文を取り寄せまして読みましたところ、新聞報道もありましたが、裁判官は少年の責任能力を認めておるんですね。責任能力を認めながら逆送しない。非常に詳細に審理をした節があります。家系の遺伝因子を調べて、精神病の因子はないとか、精神病の可能性はあるけれども現実には発病に至っていないとか、詳細に認定しておりながら逆送していない。 我々国民は、その審判に対して抗告できないんですね。審判がおかしいからといって高裁へは言っていけない。検察官関与制度というものもそういうところからきておるわけです。私の地元でも多くの方から何ですかという御質問を受けるようなそういう扱いを、極悪な、凶悪な事件について現実に家裁がずっとやってきた。それではいけない、家裁の運用を変えてもらおうというのが大きな理由でございました。 それから、被害者に対する配慮もあります。 先ほど、河村委員の質問に答えさせてもらいたかったのですが、家裁の審理に立ち会いたいという被害者の御要望、被害者の会とかいろいろ、淳君のお父さんも言っておられるのですが、それはもう重大な犯罪なんですね。特に、少年犯罪によって殺された方、被害者からは強い要望があります。 原則逆送によって、要するに公開の裁判になる。普通の裁判になれば公開法廷です。被害者は証人として呼ばれるかもしれない。傍聴もできる、呼ばれるかもしれない。現行法でも記録の閲覧、謄写等、可能性がないわけじゃない。原則逆送によって、そういうごくごく一部の凶悪事件を公開法廷に持ち出すということは、被害者を救済する、被害者感情に沿うという意味もあると思っております。罪を絞り込みましたが、それによって家庭裁判所を中心とする司法システムの事件への対応が、今よりはもっともっと逆送をふやして、公開の法廷で凶悪事件が裁かれるようになるということを期待しております。 なお一言付言いたしますと、少年法五十五条で、刑事裁判の結果、保護処分が相当と認める場合は、刑事裁判所は、家裁へ移送してもいいという規定がございます。この規定をいろいろ聞いてみますと、ほとんどワークしていないんですね。ごくごく少数しか戻っていない。審理した結果、実刑を科するよりも保護処分の方がいいというのも随分あるに違いない。そういう事件は、そもそも家裁は刑事裁判所へ送らない。家裁の中だけで処理してしまう。家裁はいわば密室の世界ですから、さまざまな事実認定の問題とか被害者の問題とかが起こるわけでありまして、これを契機にして、少年事件がより広く公開の法廷で裁かれる、そしてより適正な処分が行われることを期待しておる次第であります。
○横内委員 もう一点提案者にお伺いをしたいのですけれども、これは以前からあることでありますけれども、少年法の適用年齢を引き下げるべきではないかという議論がございます。言うまでもなく、現在少年法の適用年齢は二十歳未満ということになっているわけでありますけれども、これを十八歳未満ぐらいに引き下げるべきではないか。 その論拠として、諸外国の例を見ますと、アメリカは州によってみんな違いますけれども、どこの州でも大体十六歳未満あるいは十七歳未満、十八歳未満というようなことになっておりますし、イギリス、ドイツ、フランスも大体すべて十八歳未満を少年とする。だから、十九歳から上はもう成人だ、一般の成人として一般の刑法を適用するという形になっているわけであります。 そういうことからすると、どうも我が国はグローバルスタンダードではないのではないか、二十歳未満というのはちょっと高過ぎるのではないかということが議論としてあるわけであります。そんなことも当然この提案者の間で議論があったと思いますけれども、その点、そうなっていないことについて御意見を伺いたいと思います。
○杉浦議員 委員御指摘のとおりでございます。実に自民党内でもさまざまあったのは御案内のとおりでございますし、三党協議でもございました。 主要な国ですけれども、一覧表をつくりました。アメリカは州によって違いますが、十六歳、十七歳、十八歳。十八歳未満が三十七州、十七歳未満が十州、十六歳未満が三州ということになっております。イギリス十八歳、カナダ、ドイツ、フランス、イタリアといずれも十八歳であります。韓国と日本、韓国は二十歳なのですが、韓国は日本に右へ倣えのようなのですが、突出してグローバルスタンダードから離れておるということであります。 党内の議論については御紹介するまでもないと思うのですが、自民党はほぼ真っ二つだったと思います。三党協議でもこの問題が議論されまして、引き下げるべきではないかという、私は個人的には引き下げるべきだという意見を前々から持っておりましたのですが、三党協議におきましては、諸外国の状況、歴史的経緯等々を踏まえて今後とも議論していこうという結論に相なっております。この問題について結論を出すにはちょっと時間が足りな過ぎたというところであります。
○横内委員 時間の関係がございまして、あらかじめ通告している質問を幾つかはしょって続けさせていただきます。 今回の改正の中で、これは政府案にもあったことでありますけれども、事実認定を適切に行うために検察官の立ち会いというものを少年審判に導入をするという制度が導入される、これは山形マット死事件の教訓を踏まえて、いずれにしても事実関係をしっかり確認しなければいかぬのじゃないかということからこういう改正に至ったわけでありまして、大変適切なことだというふうに思っております。 ただ、この検察官立ち会いについては、一部の法曹関係者からいろいろな反対が寄せられております。例えば、通常の刑事裁判の場合には、裁判官というのは白紙の状態で臨んで、原告と被告の議論を聞いて判定を下すわけでありますが、少年審判の場合には、裁判官があらかじめ証拠書類は全部読みますから、一定の心証を持って審判に臨む。そこのところへ検察官が出てくる、そしてその少年に対して追及するわけですね。そうすると、結局その少年に対して非常に不利になるのではないかということを言ったり、それから、検察官というのは、そもそもが無罪になるということに対して自分の失点とか敗北としてとらえるものだから、やはり少年を徹底的に追及、弾劾をするということに一生懸命になる、その結果として冤罪が起こる可能性があるというようなことを指摘するわけでありますけれども、局長にその点についてどうかということを伺いたい。 それからもう一点、それは私はそうではないと思っているのですけれども、ただ、やはり少年は精神的に未熟であるがゆえに、捜査については十分慎重にやらなければいかぬだろうということは思うわけでございます。少年が警察官とか検察官に尋問を受ける、あるいは、場合によっては留置場か何かに入れられたりということもあるわけです。そうすると、相当な精神的なプレッシャーであることは確かでありますし、誘導尋問的な質問に対してそのままそれに乗っていってしまうというようなこともあって、冤罪のおそれというのは確かに一般の成人に比べれば高いわけです。 したがって、きょうは警察庁は来ていないのですけれども、捜査機関の代表として局長に答えていただきたいのですが、やはり十分慎重な上にも慎重な捜査が必要だというふうに思います。そういうことで、例えば法務省あたりでは、少年捜査についてのマニュアルとかそういうものをつくっているのかどうなのか。それから、少年に対する捜査に当たって、どういうふうな具体的な配慮をしているのか。今の二点をお伺いしたいと思います。
○古田政府参考人 まず、家庭裁判所における現在の審判のあり方からして、検察官が出席した場合には少年側に不当に不利になるのではないかという点でございますけれども、確かに現在、少年事件につきましては、事件の記録というのはすべて家庭裁判所に送致されることになっております。しかしながら、もちろん家庭裁判所におきましては、裁判官はその記録を点検いたしまして、どのような事件であるのか、どの辺に問題点があるのかということをそこから自分でよく検討していくというシステムでございます。 したがいまして、家庭裁判所の裁判官におきましては、それによって心証を形成するというよりも、やはり少年の言い分なりそういうものをきちっと確かめた上で最後の判断をするというのが当然でございまして、実際の運用もそうなっていると考えているわけでございます。そういう意味では、あらかじめ何か偏った心証を持つとか、そういうふうなことではないというふうに考えております。 また、検察官が関与するようになりましても、その立場はいわば普通の刑事事件で起訴をした原告という意味ではございません。あくまで家庭裁判所におきます事実認定が適正になりますように、いろいろな角度からの証拠調べを求めたり、あるいは発言をするということが主でございます。したがいまして、その目的というのは、あくまでそこでいろいろな証拠関係等についてもきちっとした検討が行われるということのために出席するものでございます。 しかも、今回の政府案にもあったわけでございますけれども、検察官が出席する場合には、もし弁護士である付添人がいないときには必ず国選で付添人を付するということにしておりまして、その辺のバランスということも十分配慮しているわけでございます。そういう意味から、決して少年にとって一方的に不利になるというような事態というのは考えられないと思っております。 それから次に、捜査についてのお尋ねでございます。 確かにおっしゃるとおり、少年の場合には、成人よりもいろいろ慎重に配慮をしなければならない部分が少なくございません。これはおっしゃるとおり、いわば誘導によってほぼ認めるというようなことと、また逆の場合もあるわけでございまして、実に少年の場合にはまだ人格がしっかり形成されておりませんから、その供述を得るには細心の注意が必要でございます。特にマニュアルというほどのものではございませんけれども、そういう点につきましては十分配慮いたしまして、少年につきましてはできるだけ話しやすいような検察官でありますとか、そういうようなことを考慮してやっておりますし、また、大きな事件になりますれば、それなりの捜査態勢というのもやはり慎重に考えてやっているわけでございます。 また、そういう点につきましては、これは警察においても同様の配慮をしており、事件が送致された場合などにつきましては、検察官においても、警察等の捜査機関でその辺、十分配慮が行き届くような指導なり助言なりというのをしているところでございます。
○杉浦議員 この少年事件についての検察官関与というのは、先ほども申し上げましたが、少年法が戦後改正されて以来、一貫して議論された中身の一つであったわけであります。それは、事実認定の問題もあります。それからもう一つは、家裁の決定に対して少年側は抗告できるけれども、国民の側は抗告できないんですね。例えば佐賀の十七歳の事件、医療少年院送致ですが、だれもおかしいと言って訴える手段がないんです。それが一つの大きな論点になっておりました。 今回、重大事件、これはちょっと広げておりますが、死刑、無期、短期二年以上ですか、かなり幅広いですが、検察官に審理に参加できるようにいたしました。これは逆送の審理もやりますから、十七歳の少年でしたら、あの決定に対して検察官は抗告受理の申し立てができるようになります。適正かどうかを高裁に判断してもらうということができるようになりますから、私は、家裁の審理も検察官が関与するだけでより慎重になるし、より被害者とか国民感情に配慮するようになるんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。 こういうふうに司法システムが変わりますと、私は警察の対応が大事になると思います。一次的には警察ですから。現在の警察は人数も少ないし、少年の場合、児童心理学とかそういう特別な能力が要求されるわけでありますので、検察、警察の対応が質的にも量的にもきちっとしたものにならないと、改正された場合、新しい少年法を適正に運用していくことは難しいんじゃないか、こう思っておりますので、法務当局、警察はおりませんけれども、新法成立の暁には十分な対応ができるように御尽力を賜ることを期待しておる次第であります。
○横内委員 時間が終了しているようですので、ごく簡単に御質問しますから、答えも簡単にお願いしたいと思います。 一つは最高裁に伺いたいんですが、今回の改正で、審判は懇切を旨として和やかに行うということと同時に、少年に対して自己の非行について内省を促すというふうにしてやらにゃいかぬ、こういうことになるわけですが、このことによって具体的に少年審判というのはどう変わるんだ、あるいは最高裁として何か家裁に対してある種のそういう指導的なことをするつもりかどうか、そのことを伺いたい。 それからもう一つは、これは法務省に、局長で結構ですから伺いたいんですが、きのうの新聞に、これは地方紙ですから恐らく共同通信あるいは時事通信の配信ですけれども、法務省は、今回の少年法の改正の動きを踏まえて、少年院教育において被害者の気持ちを理解させ、尊重させるような、そういう教育を強化するというようなことが出ておりました。そのことを少年院長の会議で要請したというようなことが書いてありますが、少年院の教育のあり方をどう変えていくのか、そういうことを伺いたいと思います。 以上二点について、かいつまんでお答えいただきたいと思います。
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。 ただいま委員から御指摘のございました少年法二十二条第一項の趣旨といたしましては、少年審判の保護、教育的な目的に照らしまして、少年の年齢や性格に応じてわかりやすく手続を進めることと、さらに、少年、保護者が立ち直ろうとする真摯な気持ちになれるような雰囲気で行うといったことの重要性をうたったものと理解されているわけでございます。 しかしながら、そうであるからといって、審判において少年の言うことをすべて真実として受容するとか、あるいは少年の納得を前提とした審理を行うというわけではなく、現在におきましても、反省が深まっていないと思われる少年につきましては、裁判官から厳しく諭したり、内省の深まりを図っているところでございます。 今回の改正が実現した暁におきましては、少年自身に自分の頭で考えさせ、また自分の言葉で語らせるなどいたしまして、被害者の気持ちを十分考え、また非行についての反社会性の大きさ、少年自身の責任の大きさを自覚させるような方向で、一層配慮した審判が行われるものと考えておりますし、その趣旨について十分徹底を図りたいと考えている次第でございます。 以上でございます。
○鶴田政府参考人 少年院における被害者の視点に立った矯正教育についてお尋ねですので、それについてお答え申し上げます。 委員御指摘のとおり、被害者の視点に立ったと申しますか、被害者の気持ちを配慮した矯正教育を行うということは大変必要である、そういった認識から、本年の九月二十七日及び二十八日に行われました全国の少年院会同で、大臣の方からもその旨の訓示をいただいた上、局からも必要な指示をしておるところでございます。 具体的に申しますと、これまで被害者の悲しみや痛みに真摯に向き合わせる教育、そういうことで、いわゆる贖罪教育、生命尊重教育といったものを行ってまいりましたけれども、今後ともその充実を図っていくということが一点。さらに、関係機関と連携して、在院中の少年から被害者あてに手紙等の方法で慰謝の気持ちを伝達する、そういったシステムを導入するなどしまして、在院期間の全期間を貫くプログラムとして、被害者の視点に立った教育内容、方法を構築することに努めていくということでございます。
○横内委員 質問を終わります。
○長勢委員長 丸谷佳織君。
○丸谷委員 公明党の丸谷佳織です。どうぞよろしくお願い申し上げます。 二十一世紀を担います子供たちに関する重要な法案の審議に当たりまして質疑に立たせていただけましたこと、大変光栄に思います。しかし、委員会内を見回してみますと、野党席にはだれも座っていない。国会対策上の審議拒否かとは思うんですけれども、このような重要な法案の審議に当たって、また反対の意見を持っている党もあるように聞いておりますが、その賛成、反対の意見を堂々と本委員会で闘わせることができない、こういったことはどう考えてもおかしいと思いますし、非常に残念で仕方がありません。まず気持ちを申し上げて、質問に入らせていただきたいというふうに思います。 最近、非常に凶悪な少年犯罪がふえてまいりまして、社会不安が高まっていく中、特に、被害者のために何かできないか、またこの少年犯罪をどう防いでいくか、こういったことで世論が高まっているように思うわけなんです。そこで今、議員立法で少年法の改正という形になったと思いますが、この少年法という法律を改正しただけでは当然、増加する少年犯罪を食いとめることはできないということをまず申し上げておきたいと思います。 また、少年犯罪に関して重要なことは三点あるように思います。第一に、どのように少年犯罪を防止していくか。そして第二に、犯罪を犯した少年にどのように対処していくか。そして第三に、犯罪を犯した少年をどう更生させていくか。この三点を包括的に考えていかなければいけないというふうに思います。 では、公明党は今申し上げた視点でどのように少年犯罪に対して取り組んでいくか、考えを述べさせていただきたいんですけれども、党内の政策審議会内に青少年健全育成プロジェクトというのを設置しまして、そこで今考えをまとめています。 まず、青少年の育成は大人たちに大きな責任があるのは当然です。加えて、国そして地方自治体が決して傍観者とならないよう、青少年健全育成基本法を作成し、そこに大人たちの責務を明記すべきだというふうに考えます。 また、学校や家庭裁判所の調査官、そして少年鑑別所や少年院、保護観察所、警察などから専門家の方たちが少年犯罪についてそれぞれの立場で議論ができるような場所、例えば少年問題協議会という設置が必要になってくるのではないでしょうか。 そして、犯罪を犯した少年に対しては、少年院と家庭のちょうど中間に当たるようなグループホームを設置、また、短期の拘束刑にかわるような社会奉仕命令制度を導入するなど、党内で検討を重ねておりますが、まず、この提案について提案者の考えをお伺いします。
○漆原議員 今委員から、少年法改正の視点、それから委員が取り組んでおられるいろいろな提言をいただいたわけでございますが、殊に少年問題は、少年法を改正すればすべて終わる、解決する問題じゃないんだということ、私どもも同じような考えを持っております。まさに、少年の犯罪をどう防止し、更生させ、社会復帰させるか、こういう総合的な観点からの取り組みが必要だ、こう考えておるところでございます。先ほど河村委員の質問に対して大臣が答えておられましたが、まさに同じ趣旨の答えであったと思います。 また、平成十二年五月二十三日に決議されました本委員会における少年非行対策に関する件という決議があるわけなんですが、この決議内容も基本的に同じ内容でございます。 また、今回、与党三党による与党政策責任者会議における少年問題に関するプロジェクトチームで与党三党が青少年健全育成・非行防止策、社会復帰・更生策について引き続いて検討するというふうに三党合意でも明記されているところでございます。 基本的には、今委員のおっしゃったこと、全く同感でございます。
○丸谷委員 次に、法務大臣にお伺いをさせていただきます。 ことしに入ってからも、豊川市の主婦殺人事件、また西鉄のバスジャック事件等、少年による凶悪な事件が相次いでいます。私はことし三十五歳なんですけれども、私が中学生、また高校生だったころから、校内暴力ですとか家庭内暴力といったことが新聞の紙上を躍るようになりまして、また、ドラマなんかでも積み木崩しといった言葉がちょうど生まれてきた時期なんです。そのころと今とでは、犯罪の凶悪化、また低年齢化などで違いもあるように思われるのですが、最近の少年非行の情勢について、法務大臣にお伺いをします。
○保岡国務大臣 お答えいたします。 少年刑法犯全体の検挙人員は、昭和五十八年以降、次第に減少していましたが、平成七年を境に増加の傾向に転じております。平成九年には二十万人の大台を突破し、平成十一年には約二十万人余りとなっています。 少年による殺人、強盗、放火及び強姦という凶悪犯の検挙人員も、平成七年を境に増加の傾向に転じて、二千人を大きく超えています。特に、平成十一年の少年刑法犯全体の検挙人員が平成十年に比べれば減少しているにもかかわらず、凶悪犯の検挙人員は増加しておりまして、対人口比を見ても、平成二年以降、一貫して増加の傾向にあります。 少年による凶悪犯を罪名別に見ますと、特に強盗犯の増加は著しいものがありまして、平成十年からは千人台後半に及んでおり、平成十一年には千六百四十人余りとなっているほか、殺人犯も、平成十年からは百人を超えまして、平成十一年には百十一人を数えるなど、凶悪化の傾向が認められ、憂慮すべき状況にあります。 また、少年犯罪の低年齢化についてでございますが、平成七年を境に、年少少年による交通関係業過事件を除く刑法犯の検挙人員も増加傾向にある上、年少少年による殺人事件の検挙人員が、平成七年以降十人台を維持し、平成十一年には十六人を数えているところでございます。
○丸谷委員 ありがとうございました。法務大臣、退席してくださって結構です。 提案理由によりますと、少年法改正の要点というのは、第一に、少年事件の処分等のあり方の見直し、第二に、少年審判における事実認定手続の適正化、そして第三は、被害者等に対する配慮の充実というふうにされていますが、まず、少年による最近の重大事件について法務当局に説明を求め、あわせて、少年審判における事実認定が問題となった事例についてお聞かせください。
○古田政府参考人 少年による重大事件はここのところ相次いでおりまして、その全部を御紹介するとちょっと時間が足りなくなりますけれども、主なものを申し上げます。 一つは、十七歳の少年が、平成十二年五月一日、愛知県豊川市におきまして主婦を包丁で殺害するという殺人事件がございます。 また、同じく十七歳の少年が、平成十二年五月三日、これは自己顕示欲を満足させるためということのようでございますが、走行中の高速バス内において、牛刀を突きつけて、バスを強取し、広島まで走行させて、その間に、乗客一名を殺害、四名に傷害を負わせたという事件がございます。 さらにまた、十七歳の少年でございますが、これはいろいろなからかいあるいは嫌がらせを受けたというようなことから、岡山県におきまして、高校の後輩四人を金属製バットで殴打して負傷を負わせ、さらに自宅で母親をバットで殴打して殺害したという事件がございます。 また、十五歳の少年が、大分におきまして、知人方一家六名をサバイバルナイフで刺し、三人を殺害し、三人については未遂にとどまったというふうな事件がございます。 それから、少年審判における事実認定が問題になった事例、これもいろいろあるわけでございますが、そのうちの幾つかを申し上げます。 一つは、いわゆる山形マット死事件でございます。この事件は、平成五年の一月に、中学一年生の被害者が体育館内のマットに押し込まれて窒息死したという事件でございます。 この事件につきまして、山形家庭裁判所におきましては、傷害致死により家裁送致された六名の少年のうち三人について、捜査段階での自白の信用性を否定するとともに、アリバイの成立を認め、非行なしとして不処分の決定をしたわけでございますが、その他の三名につきましては、非行事実を認め、少年院送致等の保護処分決定を行ったわけでございます。 この保護処分決定を受けた三名の少年がこれを不服として高等裁判所に抗告いたしましたところ、高等裁判所は、家庭裁判所において非行なしとされた三名を含めた共犯者全員について、捜査段階における自白の信用性を認め、さらに、少年らが主張するアリバイは認められないとして、抗告棄却の決定をしたわけでございます。それからさらに、最高裁判所に対しても再抗告が行われましたが、最高裁においても再抗告が棄却されているわけでございます。 もう一つ申し上げますと、いわゆる草加事件と呼ばれている事件がございます。これは、昭和六十年七月、草加市内などにおいて、少年五名らが共謀の上、当時十五歳の女子中学生を強姦するなどし、その後殺害をしたという事案でございます。 少年三名につきまして強姦殺人、少年一名につき強姦、少年一名につき強制わいせつにより浦和家庭裁判所に送致されましたところ、同家裁におきまして、少年らは犯行を否認したものの、上記五名についてはいずれも中等または初等少年院送致決定がなされ、同決定に対して少年側からそれぞれ高等裁判所に抗告が行われ、それが棄却されたわけでございます。また、それに対しまして、やはり少年側から最高裁に再抗告が行われましたが、これも棄却されたわけでございます。その後も、少年らから三回にわたり保護処分の取り消しが申し立てられましたが、これもいずれも却下されております。 しかしながら、その一方で、同事件の被害者の遺族が損害賠償請求訴訟を民事訴訟として提起いたしましたところ、一審においては、少年らが殺害を行ったとは認められないということで請求は棄却になりました。これにつきましては原告の方が控訴いたしまして、控訴審においては、同判決が取り消されて、非行事実を認めた上で請求が一部認容されたわけでございます。 しかし、その後、上告審におきまして、本件請求が認容されるかどうか、これは少年らの自白の信用性にかかっているということで、その点についてはなお慎重に検討すべきであるというふうな理由から、再び高等裁判所に差し戻しされまして、現在東京高等裁判所で係属中、こういう状況でございます。
○丸谷委員 今挙げていただいたような事実認定における問題点が起こらないようにということで、改正案の方では、事実認定手続の適正化という観点で、少年審判における検察官の関与と、また検察官による抗告受理の申し立てを認めています。 そこで、二点あわせてお伺いしたいのですけれども、少年審判における検察官関与の導入によってどのような効果が期待されるとお考えになるのか。そして二点目、検察官による抗告受理申し立ての導入によってどのような効果が期待できるとお考えになっているのか、お聞かせください。
○古田政府参考人 まず第一点の検察官関与の点でございますが、御存じのとおり、少年審判、これも裁判でございまして、その中でいろいろな、少年審判であれば少年の主張その他も展開されるわけでございます。したがいまして、その手続というのは種々状況が変化していくわけでございますが、その過程でやはりさまざまな証拠調べなども必要になってまいるわけでございます。一方また、既に集められた証拠等につきましても、その証拠についてどういうふうに判断するのかにつきましては、やはりいろいろな見方があり得るところでございます。 そのような場合に、検察官が関与することによりまして、少年の主張の真偽等を明らかにするためにどのような証拠調べをすべきか、あるいは証拠の評価についてどういうふうな見方をすべきかということについて、いわば多角的な視点を確保するということが可能になるわけでございます。 また、もう一つ、審判のやり方の問題でございますけれども、少年がいろいろな主張をする場合に、その真偽を明らかにする必要があることは当然でございます。現在でありますと、その役割は家庭裁判所の裁判官がしなければならないわけでございまして、そうすると少年に対してその真偽を明らかにするために、例えば厳しく質問をするというようなことをいたしますと、どうしても少年との間で対立してしまうような状況が生まれてしまう。そのこと自体、審判の雰囲気を害しますとともに、それを恐れてきちっとした質問というのをすることがためらわれるという場面もあり得ないわけではないだろうと考えられるわけです。 そういう点につきまして検察官が質問等を行うことによりまして、家庭裁判所の裁判官と少年がいわば対立するような状況になるのを避ける、一方、その主張の真偽等について十分な吟味をすることができるようになるというふうに考えているわけでございます。 次に、抗告受理申し立ての件でございますが、もちろん家庭裁判所におきましても適切な判断をするよう最大限努力をしておられるわけでございますが、中にはもちろん、その判断が誤っている場合ということもあり得ないわけではございません。 このような場合に、現行少年法では少年側しか抗告ができないこととなっておりますことから、仮に、誤って非行事実が認められないという判断をしたのではないかという疑いが極めて強いような場合なども、これを是正する手段がございません。そうなりますと、少年にとりましてもその健全な育成がかえって妨げられることがあり得るばかりではありませんし、被害者やその遺族の納得という面から見ると到底これは納得が得られるような状態ではないと思うわけでございます。 そういうことから、検察官が高等裁判所にいわばその事件の再審査を申し立てて、高等裁判所がそれが適当だと考えたときには再審査をするという道を開くということによりまして、家庭裁判所の事実認定の一層の適正化、それから被害者や遺族の方を初めとする国民の少年審判に対する信頼の確保ができるものと考えております。
○丸谷委員 次に、年齢の引き下げについて提案者にお伺いをします。 刑事処分が可能になる年齢を引き下げるということ自体、マスコミですとかまたいろいろな反対の声もあるわけなんです。保護主義というのを優先させていく少年法の法の精神に反するのではないか、こういった批判があるのですが、まず大前提としまして、刑事処分可能年齢十六歳を十四歳に引き下げることになった理由と、またあわせて提案者の方に、こういった少年法の保護主義に反するのではないかといった批判についてどうお考えになるか、この二点をあわせてお伺いします。
○漆原議員 十四歳、十五歳の年少少年における凶悪重大事件がたくさん起きているということは大変憂慮すべき事態にあると思っております。 現行法のもとでは十六歳未満の少年は、刑法では十四歳以上が刑事責任年齢になっておりますが、その刑法の刑事責任年齢の規定にかかわらず、どんなに凶悪、重大な事件を犯そうとも刑事処分に付されないというふうなことになっております。この年齢層の少年であっても罪を犯せば処罰されることがあるということを明示することによって規範意識を育てていこう、そういう必要性があると思います。また、社会生活における責任も自覚させる必要があります。こういうことから、少年の健全育成を図ることになるものと思って、刑事処分可能年齢を、刑法における刑事責任年齢と一致させて、十四歳まで下げることにしたということでございます。 もう一点、少年法の保護主義に反するのではないかというふうな御指摘をいただいたわけですが、少年法は「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」等を目的としております。これは一条でございます。 少年の健全育成という立場は、今後とも私どもも堅持すべきであると考えております。しかし、少年法は、個々の事案、当該少年の特性等に応じ、刑事処分を含めていろいろな処分を用意しているところでございまして、少年に対し、事案に応じて、より適切な厳しい処分によりその責任の自覚を促したとしても、私は、少年の健全育成という目的に反するものではないというふうに考えております。 刑事処分可能年齢を引き下げることによって、十四歳、十五歳の少年については処分の選択の幅が広がることとなるわけでございますけれども、個々の事案に応じて、少年の性格、心身の発達状況のほか、犯行の動機、態様、犯行後の状況等の事情を家庭裁判所がきめ細かく検討し、刑事処分を相当と認める場合に送致することになるのでありまして、裁判所において最も適切な処分が選択されることになるものと考えております。 以上でございます。
○丸谷委員 実際に刑事処分が可能な年齢を十四歳まで引き下げるということは、従来刑事処分に当たらなかった十四歳または十五歳の少年が刑に服するということになります。特に、十四歳、十五歳というのは義務教育が適用される年齢でもありますし、こういった子供たちが教育を受ける権利を奪われることになるのではないかという危惧もありますが、この点についてはいかがでしょうか。
○漆原議員 その点もよく御指摘されるところでございますが、懲役または禁錮の言い渡しを受けた少年に対し、十六歳に達するまでは少年院において刑を執行し矯正教育を受けることができるようにすることと今回の改正法案ではしておるところでございます。したがって、委員御指摘の御心配は回避できるものと考えております。 少年院においては、小学校、中学校で必要とする教科に関する教科教育は無論のこと、少年を社会生活に適応させるため職業補導や訓練を行っておるところでありまして、従来から義務教育年齢における年少少年を収容して成果を上げてきているところでございます。懲役または禁錮の言い渡しを受けた少年に対しても、年齢に相応した十分な教育を施すことが可能であると考えております。
○丸谷委員 時間がなくなってまいりましたので、最後に、原則逆送についてお伺いをしたいと思います。 逆送可能年齢を十四歳以上とする一方で、原則逆送を十六歳以上となさっているのは、この定義に一つ矛盾があるのではないかというふうに思うのですが、なぜ両者を区別するのか、まず一点お伺いします。 そして、年齢の引き下げと同様に、罪を犯した少年を家庭裁判所から成人と同じ刑事裁判にかけることになる原則逆送制度については、保護主義を優先させていく少年法の法の精神に反するのではないか、この点でもまた批判の声も聞かれるのですが、この点について提案者はどうお考えになっているのか。原則逆送を設けた理由とともにお聞かせください。
○漆原議員 三点を一遍にお尋ねされて、どれから答えようかと思っておりますが、まず、いわゆる原則逆送という制度を設けた理由についてお答え申し上げます。 故意の行為によって人を死亡させるという重大な罪を犯した場合には、たとえ少年であっても刑事処分の対象となるというこの原則をきちっと示すことによって、何物にもかえがたい生命を尊重するという基本的な考え方をまず明確にする必要があると思います。そして、少年に対して自覚と自制を求める必要がある、こういうことから、罪を犯したとき十六歳以上の少年が殺人、傷害致死、強盗致死等故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた場合には、原則として検察官送致決定、いわゆる逆送をするという制度を導入したわけでございます。 もっとも、個々の事案においては、犯行の動機、態様、犯行後の状況、少年の性格、行状、情状及び環境等の事情を家庭裁判所がきめ細かく検討し、保護処分が適当であると認める場合には逆送しないで保護手続を選択することになっているものでありまして、裁判所において最も適切な処分が選択されると考えております。 さらに、逆送可能年齢を十四歳にした上でさらに原則逆送を十六歳にすることは矛盾ではないのかという御指摘なんですが、この刑事処分可能年齢を十四歳にするというのは、およそ逆送が可能な年齢の範囲を定めることでございます。一方、原則逆送というのは、逆送が可能なものの中でどの範囲で原則逆送にするかということでございまして、これは次元の異なる問題であると思っております。 そして、原則逆送については、十四歳、十五歳の少年は、精神の発達も十分ではない上、おっしゃるとおり義務教育の対象年齢でもあることでありますから、いかに人の貴重な生命を奪うという重大な犯罪を犯したとしても、なお保護処分をとることが相当と認められる場合が多いと考えられるものでありますから、原則逆送年齢を十六歳以上ということにしたわけでございます。 最後に、保護処分優先主義をとる少年法の理念に反するのではないかという御指摘があったわけですが、先ほど申しましたように、少年法は「少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行う」、これを目的としておるものであります。 少年の健全育成という立場を今後とも私ども堅持していくべきものと考えておりますが、少年法は、個々の事案、当該少年の特性等に応じ刑事処分を含む多様な処分を用意しておるところでありまして、人を死に至らしめるような特に凶悪、重大な事件に限って原則としてこれを逆送するということにしても、少年の健全育成という目的には反しないというふうに考えているものでございます。 以上でございます。
○丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○長勢委員長 斉藤鉄夫君。
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。 先ほど丸谷委員からも話がございました、この少年法改正の論議にあわせまして、私ども公明党内で青少年健全育成プロジェクトを設置いたしました。この目的は、少年法の目的である保護、教育、その保護、教育のためにはやはり少年法の周辺にあるいろいろな制度やシステム、施設、こういうものについてもきちんと目を配っていかなくてはならないのだろうか、こういう目的でございます。 このプロジェクトで、私も、少年鑑別所、少年院、それから少年刑務所、ボランティアで社会に復帰した少年を見てくださっている保護司の皆様、また家庭裁判所等を視察させていただいたところでございます。その視察の結果いろいろな疑問点が私自身も生じてまいりましたので、その疑問点についてきょうお伺いをさせていただきたいと思います。 まず最初に、最高裁判所の方にお伺いいたします。 私も、先日東京家裁を見させていただきました。審判法廷というのでしょうか、普通の裁判所と違いまして、同じフラットな平面に裁判官、そして少年、まさに目線を同じくしてやるというその姿がほうふつとしてくるような部屋を見させていただきました。 この家庭裁判所についてちょっとお伺いをするわけですが、現実問題として、裁判官と少年、そしてその付添人ということでございますが、事実認定に困難を生じるのではないかなというふうに私自身その場を見て思ったわけです。その点について、何かあればお答え願いたいと思います。
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。 今委員から御指摘のありましたとおり、事実認定には困難を生ずる場面があり、いろいろ苦労しておるのが現状でございます。 家裁といたしましては、これまでも運用上の工夫改善を行いまして、少年事件を適正、迅速に処理してきているところでございますけれども、非行事実が激しく争われるような重大事件におきましては事実認定に困難を感じる場面があるというのが少年を担当している大多数の裁判官の認識であると承知しているところでございます。 例えて申しますと、記録が膨大であるとか、さらに取り調べを要する証人が多数ある、そしてその上で供述内容が多岐に分かれている、こういった場合におきましては、多角的な角度からの証拠の吟味が必要となるわけでございますが、現在、一人の裁判官で、しかもその裁判官が少年と対峙しなければならない関係のもとにおきまして、現行の観護措置期間四週間以内に的確な事実の審理を行うべく努力しているわけでございますけれども、これについては極めて困難な状況にあることでございます。 特に、少年事件におきましては共犯事件が多く、共犯少年の間であらかじめ供述内容についての口裏合わせなどの打ち合わせが行われることも多いわけでございますが、こういった場合や、さらに、捜査段階では事実を認めていた少年が家裁に事件が送致されてからアリバイを主張する、こういった場合にはとりわけ事実を確定するのに困難を感じる場面が少なくないと聞いておるところでございます。 以上でございます。
○斉藤(鉄)委員 私も、あの審判法廷の部屋を見させていただいて、今の御答弁、なるほどなというのを率直に感じたところでございます。 今回、改正案では裁定合議制が導入されております。今までの一対一から裁定合議制ということになるわけですが、この採用は事実認定の適正化に資することになるのかどうか、お考えをお伺いします。
○安倍最高裁判所長官代理者 合議体で事件を取り扱うことになりますと、異なった知識や経験を持った複数の裁判官の目によりまして多角的な証拠の吟味が行われる、そしてその上で、合議の過程を通じまして、各裁判官の主観性がより捨象されて判断がより客観性を備えるということが言えるように思いますし、さらに、一人の裁判官による裁判よりも三人の裁判官による裁判の方が、国民がごらんになった場合に信頼を得ることが容易であるという面もあろうかと考えております。 民事、刑事の裁判におきましても、重大な事件、難しい事件におきましては合議体で裁判をされているわけでございますが、これもこういった事情によるものでございまして、少年審判におきましても、合議制を採用すれば一層的確な事実認定に資するものと考えている次第でございます。 以上でございます。 〔委員長退席、横内委員長代理着席〕
○斉藤(鉄)委員 次に、少年審判の傍聴の問題ですが、傍聴をさせるべきだ、特に被害者の心情等を考えたときに傍聴させるべきだという強い意見がございます。 これは仮の話ですが、もし少年審判を傍聴させた場合についてはどのような支障があるんでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘のとおり、被害者による少年審判の傍聴を認めるべきであるという声があることは十分承知しているところでございます。 しかしながら、少年審判におきましては、少年の処遇を適切に選択するためには、事実関係のみならず、その非行の背景となっている親子関係でありますとか、少年の内面に相当踏み込んだ審理が不可欠であると言えるように思います。そういった意味において、被害者の方が審判を傍聴できることにした場合には、少年や保護者等がそういった内面に関する、あるいはプライバシーに関する事項について発言することをためらって、その結果、家庭裁判所が必要とする情報を得られなくなり、ひいては適切な処遇選択をすることが困難になるおそれがあるように思われるところでございます。 また、少年審判は事件発生から比較的短期間のうちに行われるところでございますし、また今委員から御指摘のあったように、その行われる場は法廷と違いまして比較的狭い審判廷であるわけでございまして、ここに被害者の方が同席する場合には、少年の情操の安定や内省の深化が妨げられるおそれもあるように思うわけでございまして、その意味では少年審判の持つ基本的な機能に支障を生ずることがあるんだろうと考えている次第でございます。 以上でございます。
○斉藤(鉄)委員 先日、東京家裁を視察させていただいて、私は決してこういうふうには思わなかったのですが、一般に、家庭裁判所には優秀な人材がいない、こういう声も聞かれます。私は決してそうは思いませんが、こういう声もございます。この点についてどのようにお考えになっているか、お伺いします。
○安倍最高裁判所長官代理者 近年、家庭裁判所の事件といたしましては、家事事件が一般的には増加傾向にあり、遺産分割を初めとして事件が複雑化する傾向がありますし、さらに本年四月には成年後見制度が導入されたところでございます。一方、少年事件におきましては、御承知のとおり、最近深刻な事件が増加しているという傾向にあるわけでございます。 このように、家庭裁判所が取り扱う事件は、数の面において増加するとともに、事案も複雑困難化しているという状況にあるわけでございまして、裁判所といたしましては、このような状況を踏まえて必要な体制整備に努めているところでございます。 今後とも、家庭裁判所の人的体制の整備や研修の充実等、その適切な運営については遺漏なきように対処してまいりたいと考えている次第でございます。
○斉藤(鉄)委員 先ほど質問させていただきました裁定合議制の導入、そして優秀な家庭裁判所裁判官の確保、こういう問題につきまして、増員と優秀な人材の確保についての御決意をお伺いします。
○安倍最高裁判所長官代理者 昨今、重大かつ深刻な少年事件が頻発している、こういったところから今回の法改正の御議論があるわけでございますが、そのような情勢に適切に対応するということが必要であると私ども認識しているところでございます。その意味におきましては、この改正法が成立した暁には、事実認定手続の適正化など、その趣旨を十分に踏まえて、適正な事件処理が可能となるように必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
○斉藤(鉄)委員 その点、家裁には優秀な人材がいないというふうな声が出ないように、また、今のこの少年法に対する国民の皆様の関心の高まりも踏まえて、ぜひ対処をお願いしたいと思います。 次に、少年法第二十二条第一項に「審判は、懇切を旨として、なごやかに、これを行わなければならない。」と規定しております。今回、この少年審判に検察官関与ということになったわけですけれども、これは、懇切を旨とし、和やかに行うという審判の教育的機能を失うのではないか。私もあの部屋を見て率直にそう思ったのですが、この点についてはいかがでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 検察官を審判に関与させる制度を導入するという趣旨は、法律家として犯罪行為を適正に処理すべき職責を担い、しかも公益の代表者という地位を与えられている検察官を非行事実の認定手続に関与をさせることによって、事実認定手続の一層の適正化を図るということにあるものと考えております。 法案成立の後にはこのような立法趣旨を十分に踏まえた運用がなされるものと思われるわけでございますけれども、他方で、検察官は、あくまでも審判の協力者として、家庭裁判所の手続主宰権のもとにおいて審判の手続に関与をするものでございまして、その活動は、刑事訴訟手続において被告人の処罰を求める訴追官、原告官としての検察官の活動とはおのずと異なったものとなるものと考えているところでございます。 そういった意味合いにおきまして、検察官が関与することになったといたしましても、審判が教育的機能を失うといった懸念はないと思いますし、その教育的機能を失うことがないように私どもとしては周知を図ってまいりたいと考えている次第でございます。
○斉藤(鉄)委員 次に、観護措置期間についてお伺いいたします。 現行法では最長で四週間ということになっておりますが、実際に少年審判を行う立場から、この四週間ではいかにも短いという声を時々耳にいたしますけれども、実情はどうなっておりますでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 少年審判におきましては、御承知のとおり、まず事実関係を確定する、その上で少年の処遇を選択するということでございます。観護措置をとった場合には、その四週間の現在の期間内にこれらの審理をして決定を言い渡すよう努力しているところでございますが、非行事実が激しく争われる事件などでは現行の観護措置期間中に十分な証拠調べを行うなどして審理を遂げることが著しく困難な場合があるというのが少年審判に携わっている大多数の裁判官の認識であると承知しているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 それでは、実際にどのような場合に観護措置期間の延長が必要と考えられるのか、その点についてお伺いします。
○安倍最高裁判所長官代理者 観護措置をとる必要がある場合でございまして非行事実の存否が激しく争われて非行事実の認定に困難を来す事件におきましては、証拠関係が多岐にわたる、あるいは多数の証人尋問を行う必要がある、こういったことから、事実認定の部分につきまして相当程度の審理期間、審理期日を要するものと思われます。また、その結果、非行事実がありという判断に至った場合には、引き続いて少年の処遇を決定するために社会調査でございますとか心身鑑別を行うわけでございますけれども、このためにも相当の期間を要するわけでございます。 特に、少年事件におきましては、先ほども申し上げましたが、共犯事件が多くて、この場合は証拠関係が多岐にわたり、ふくそうすることが多いように思われますし、また、捜査段階では事実を認めていたものが、家裁に事件が送致されてからアリバイを主張するようになるケースもまれではないようでございます。 しかも、中には、観護措置をとってから相当期間が経過した後にこのように主張が変わることがあるようでございます。このような場合には、証拠調べを始めるまでに相当の日数が経過しており、裁判所あるいは関係者がいかに審判運営上の工夫を凝らしましても、残された観護措置期間内で十分な証拠調べを行って全体の審理を四週間以内に終えることは極めて困難だと思われるところでございます。 以上でございます。
○斉藤(鉄)委員 もしこの観護措置の期間内に審理が終わらないといいましょうか遂げられないという場合は、どのような措置になるのでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 現在は四週間というマキシマムがございますので、この期間内に審理を遂げられずにさらに審理を必要とするという場合には、やむなく観護措置を取り消して身柄を釈放し、在宅の状態で審理を続けることになるわけでございます。
○斉藤(鉄)委員 在宅で審理を続けた場合、これは支障が生ずるんじゃないかな、私、素人ですが、そのように思いますが、いかがでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 ただいま委員御指摘のとおり、観護措置を取り消して在宅で審理を続けることが適当でない事案も少なくないように思われるところでございます。 例えば、少年に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合でありますとか、あるいは少年自身が自殺をするあるいは自傷行為を行う危険がある、こういった場合もあるように思われます。 また、最近の重大事件を見ましても想像されるところでございますけれども、重大事件を犯したのではないだろうか、そういったことで審判に付されている少年が地域社会に戻ることになった場合に、社会に大きな不安を与えることも考えられるところでございます。 このように、身柄を釈放することが、的確な事実の確定に支障を来したり、少年の健全育成に支障を来したり、あるいは社会の安全の見地から問題となることが懸念されるところでございます。
○斉藤(鉄)委員 私も、先日、家裁の関係者から聞いて、四週間ではいかにも短いというのを実感してきたところです。逆に、反対する方からは、四週間で済む審理も逆に延ばしてしまうのではないかというふうな懸念も出されているところでございますが、この点についてお伺いいたします。
○安倍最高裁判所長官代理者 今回の改正法案におきましては、ただいま委員から御指摘のような懸念がないような制度設計がされていると私ども理解しているところでございます。 それは、具体的に申し上げますと、観護措置期間の延長につきまして、要件でございますが、ただ単に審理が必要である、こういった一般的な要件ではなくして、現実に事実認定のための証拠調べを行ったかあるいは行う旨の決定をした事件という、いわば客観的な要件が付されているわけでございまして、こういった事件において、少年を収容しなければ審判に著しい支障がある場合に限って認められるものとされているところでございます。 しかも、この延長につきましては、一括して四週間とかいう決め方をするわけではございませんで、二週間ごとに判断をしていこう、こういう仕組みでございますし、さらに、この二週間ごとの決定についても少年側から異議の申し立てができる、この場合にはその延長の相当性が吟味される、こういったシステムとなっているものと理解しているところでございます。 その意味においては、この改正が実現した場合には、規定の内容に照らしまして、現在四週間で審理ができる事件について安易に八週間に延長するような運用はないものと考えておりますし、また、その立法趣旨については十分に周知を図ってまいりたいと考えている次第でございます。 以上でございます。
○斉藤(鉄)委員 誤解の生じないように、ぜひ対処をお願いしたいと思います。 次に、提案者にお聞きをいたします。 現行法では、少年審判に検察官の関与を認めておりません。改正案では、この検察官の関与を認めようとするものでございます。この基本的な理由をお伺いいたします。
○高木(陽)議員 斉藤委員の御質問にお答えしたいと思います。 ただいまの御質問は、現在の少年法について少年審判に検察官を関与させていないのに、検察官を関与させるその理由ということなんですけれども、まず、少年審判において家庭裁判所が事件の真相を解明して非行事実を的確に認定すること、まさにこれが少年審判における事実認定手続に対する国民、とりわけ事件の被害者の信頼を確保するためには不可欠であると考えております。この点、今の審判制度に全く検察官が関与していない、そのことについて家庭裁判所は少年側の言い分だけを聞いて審判を行っているのではないか、そういう疑念を被害者等が強く抱いているところであります。したがって、少年審判に、被害者の立場をよりよく理解し、また公益の代表者でもある検察官を関与させることが必要であり、適当であると考えております。 もとより、非行のない少年を誤って処分することがないようにするという観点及び非行のある少年に対して適切な保護を施し、その健全な育成を図るという観点から、少年審判において事件の真相を解明して非行事実を的確に認定することは最も基本的で重要な事柄であります。その上で、非行事実の認定上問題がある一定の事件については、証拠の収集、また吟味における多角的視点の確保や裁判官と少年側との対峙状況を回避させる措置が必要という意味からも、少年審判には検察官を関与させる必要があると考えております。 〔横内委員長代理退席、委員長着席〕
○斉藤(鉄)委員 この検察官の関与といい、また裁定合議制といい、少年の心を開いて審判をするという少年法の理念に反するのではないかという意見がございます。私も、この間家裁の部屋を見せていただきまして、机の配置、いすの色、家具といいましょうか、いろいろなものの配置の仕方、もうまさしく同じ目線で少年の心を開いて審判をする、教育をするというのを感じるようなものでございました。今回のこの裁定合議制や検察官の関与がその根本精神に反するのではないかという意見もございますが、この点についてはどうでしょうか。
○高木(陽)議員 今、斉藤委員の御質問の中で、これはいろいろな方々が反対というか意見を述べられておりまして、例えば九月の十八日の朝日新聞に元最高裁判事の団藤重光先生のインタビュー記事がございまして、それには、ある意味ではいかにも審判を丁寧にするかのような感じがあるが、実は少年審判の命を奪うものである、こういう御批判がございました。 しかし、今回私どもが提案させていただいたこの改正少年法の場合には、裁定合議制度は、判断の客観性を高め、各裁判官の知識経験を活用することができるように、事案に応じて三人の裁判官により合議体で審判を行うことができるようにすることを可能にするものであります。 検察官の関与は、少年審判における証拠の吟味等に関して多角的な視点を確保してその事実認定の適正に対する、先ほども申し上げました、国民の信頼を確保するとともに、争われる事件において裁判官と少年が対立するような状況に陥ることを逆に回避し、円滑適正な審判の実現を図ることを目的としております。 このような裁定合議制度また検察官関与を導入することは、的確な非行事実を認定する、ひいては事実認定手続を一層適正化するものである上、このような審理や検察官の関与がなされた場合においても、少年法の趣旨また目的を踏まえ、それぞれの事件にふさわしい審判が行われるものであり、これらの制度が少年審判の性格を変えるものではないと私たちは考えております。
○斉藤(鉄)委員 次に、抗告受理制度についてお伺いをいたします。 今回、検察官に抗告受理の申し立て権を認めるということになりました。その理由をお伺いします。
○高木(陽)議員 家庭裁判所が誤った審判をした場合、少年側が抗告しなければ上級審による見直しの機会が全くないのでは、到底被害者、その遺族の納得が得られるところではありません。抗告受理の申し立てとは、検察官に権利としての抗告権を認めるものではなく、高等裁判所において適切にその申し立ての適否を判断して、相当であると認めた場合に抗告を受理することを決定することとするものであります。これにより、重大な事実誤認等による誤った審判については上級審における見直しの機会を確保する、こういう目的であります。
○斉藤(鉄)委員 先ほどの御答弁に含まれているのかもしれませんが、抗告受理の申し立てということと抗告権、どのように違うのでしょうか。
○高木(陽)議員 抗告権であれば、高等裁判所は常に抗告審として事件の審理を行い、判断をすることになります。これに対して、抗告受理の申し立てでは、検察官に権利としての抗告権を認めるものではなくて、高等裁判所が相当と認めた場合に限りその申し立てを受理し、抗告審としての事件審理をすることになります。したがって、高等裁判所が不相当と認めた場合は抗告審は継続せず、少年は早期に手続から解放される、こういうことになっております。
○斉藤(鉄)委員 この抗告受理制度は、実質的に検察官の上訴権を認めて、審理の長期化、ひいては少年法の保護、教育という理念に反するのではないか、こういう指摘がありますが、この点についてはいかがでしょうか。
○高木(陽)議員 高等裁判所がどの程度の事件を受理するか予想することは不可能でありますけれども、抗告受理の申し立てに当たって、高等裁判所において適切にその申し立ての適否を判断して、必要があると認めた場合に限って抗告を受理することを決定するものであります。また、検察官においても、少年事件の早期処理、早期保護の趣旨を踏まえて、事件を十分に絞って抗告受理の申し立てを行うこととなりますので、そういった御指摘はない、そのように考えております。
○斉藤(鉄)委員 質問は以上で終わりますが、先日、多摩少年院に視察に行きましたときに、院長が次のようにおっしゃっておりました。少年たちみんな、社会に出てしっかり頑張るぞと更生を決意してこの少年院を出ていく、しかし、そのうちの四人ないし五人に一人が、この多摩少年院か別の少年院かわかりませんけれども、再び帰っていくというのが現実である、その大きな理由は、一つは、社会に帰ってきたときにその少年たちを、自分はこれから一生懸命頑張って生きていくぞと決意した少年たちを受け入れてくれる家庭も、人たちも、制度もない、温かく受け入れてくれるのは暴力団だけだ、そういう中で再び犯罪に走ってしまう、そういうところをしっかり社会が考えて制度をつくっていかなければならないのではないか、このようにおっしゃっておりました。非常に重大な、重要な視点かと思います。 今回、この少年法の議論にあわせて、そのような周辺部分につきましても、我々国会議員として決意をし、制度充実に努めていかなくてはならないのではないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。
○長勢委員長 上川陽子君。
○上川委員 21世紀クラブの上川陽子でございます。 質問に先立ちまして一言申し上げます。 本国会は、冒頭から参議院比例代表制への非拘束名簿式導入問題に端を発し、野党不在のまま重要法案の審議が始まるという異常事態となりました。国民生活に深くかかわりのある少年法の改正の審議がこのような変則的な形で進められることは、国民にとって理解しにくいものであり、また、国民の政治不信をますます強めるものと考えます。また、政治をわかりやすいものにと訴えて選出されてきました私たち国会議員にとりましても、極めて遺憾であると言わざるを得ません。一刻も早い国会の正常化を強くお願いし、本題に入らせていただきます。 今回提出の少年法の一部を改正する法律案につき、大きく三つの観点から質問をさせていただきます。 第一に、凶悪犯罪を犯した少年の処分規定について、とりわけ原則逆送についての趣旨確認と刑事処分後の矯正についての考え方です。第二に、少年の更生に対する親の責任のあり方です。そして第三に、被害者の立場に配慮した規定に係る基本的な考え方ということでお願いいたします。 まず、改正案における原則逆送の趣旨、意義の確認ということでございますが、今回の改正案では、十六歳以上の刑法犯で、故意の犯罪行為により被害者を死亡させるという罪を犯した場合、原則逆送の対象となることが規定されています。今回の改正案によって原則逆送の対象となる少年の数は、平成十一年度をとりまして何人ぐらいでございましょうか。
○古田政府参考人 統計的な数字の問題ですので、私から答えさせていただきます。 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、これは殺人とか傷害致死とかそういうものを言うわけでございます。そのすべてについて統計上明確にブレークダウンされているわけではございませんので、全体をお答えすることはできません。ただ、代表的なものはやはり殺人、傷害致死あるいは強盗殺人、大体このあたりでほとんどのものがカバーされることになろうと思います。 これらの数字について申しますと、平成十一年におきましてこれらの罪により検挙された十六歳から十九歳までの少年の数は、合計百七十七ということになるわけでございます。したがいまして、この百七十七の数というのが、一応大きな枠としてはターゲットになるわけですけれども、実際はその中で保護処分が適当だと判断されたものについては保護処分になるわけでございます。 したがいまして、この枠の中でということで、実際の具体的な数字については、断定的なことをお答えするのは難しいと思います。
○上川委員 現行の少年法でも、死刑、懲役または禁錮に当たる罪の事件につきまして刑事処分を相当と認めるときに限定して逆送が規定されるということでありますが、現在の少年犯全体として、逆送率としてはどのくらいでしょうか。 また、そのうち、今おっしゃった殺人、強盗致死、強姦、放火といった凶悪犯の逆送率はどのくらいでしょうか。
○古田政府参考人 平成十一年におきます少年保護事件の終局決定人員総数に対します逆送決定の人員は三・五%程度でございます。これを凶悪犯について見ますと、逆送率は約四・四%ということになっております。
○上川委員 今の数字のことなんですけれども、三・五、凶悪犯でも四・四の逆送率ということで大変低い水準であるというふうに思うわけでございますが、では家庭裁判所ではどのような判断で逆送の決定をしているのか。殺人、傷害致死で逆送にしなかった理由として、どういうことが挙げられるのか。その実態についてお聞かせください。
○安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。 今委員御指摘の逆送率につきましては、殺人の逆送率としては二三・四%、傷害致死は四・五%となっている状況にございます。 どのような要素で逆送決定をするかということでございますけれども、二つの類型があろうかと思うわけでございます。一つの類型といたしましては、少年の非行性が相当深まっている関係から、保護処分によっては矯正される見込みがない、こういったケースが一つの類型でございますし、いま一つの類型といたしましては、保護処分による矯正ないし改善更生も可能ではあるけれども、事案の内容や社会に与える影響等を考慮して、むしろ刑事責任をきちんととってその罪責を明らかにするのが相当であると考えられる場合があると思われます。具体的には、個々の事件の非行の重大性でございますとか、動機、態様のほか、少年の抱えている資質上の問題、生育環境、家庭環境、生活態度等、非行に至った事情を総合的に判断して処分を決めているのが実情でございます。 そういった中で、今委員からお尋ねの、殺人でもなぜ検送されていないのか、こういうことでございますけれども、まず一つは、殺人であれあるいは傷害致死であれ、この統計は現在検送ができない十六歳未満の者も入っておりますので、まずそれは除かれることになるわけでございますが、殺人について申し上げますと、未遂に終わったものも相当程度含まれているのがまずございます。そして、その上で、さらに既遂に達したものにつきましても、嬰児殺でありますとか、親の虐待や学校でのいじめに起因するもの、あるいは精神上の問題があって医療少年院送致が相当なものなど、刑事処分になじまないと思われるものもあると思われるところでございます。 また、傷害致死につきましては、少年の場合ほとんどが共犯事件でございまして、実際の事件数はかなりの数になるわけでございますけれども、共犯少年の中には主犯的な者もあればついていった程度の者もある、役割には相当な開きがあるところから、そういった中で、必ずしも凶悪とは言えない者については検送されていないという状況にあろうかと考えているところでございます。 以上でございます。
○上川委員 ちょっと今数字がわからなくなったんですけれども、平成十一年の全体の逆送率は三・五%ですよね。それで、凶悪犯が四・四%、殺人の場合には今二三・四%とおっしゃって、傷害致死の場合には四・五%ということなんですが、間違いございませんでしょうか。殺人の場合は二三・四%で間違いありませんでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 ただいまの実情が平成十一年の数字でございまして、この数年においてもほぼ同様の状況にあると承知しているところでございます。
○上川委員 先ほど杉浦先生の方からの御指摘の中で、逆送の数が非常に少ないということについて、家庭裁判所の審判に何か甘いところがあるのじゃないかというような御指摘の評価がちょっとあったと思うんですけれども、これにつきましてどのような見解をお持ちでしょうか。
○安倍最高裁判所長官代理者 個々の事件について申し上げる立場でもありませんし、また事案に応じてそれぞれの個別の事情があるということではあると思いますけれども、私今申し上げたようないろいろな事情を捨象してみて、最終的に、殺人の場合に二三%余りの人について検察官送致がされているということでございます。 なお、付言いたしますと、検察官送致がされていない事件についても、殺人ですとか傷害致死の場合は相当数が少年院送致をされております。その意味においては、全体の事件のうちの八割方とざっと申し上げてよいかと思うのでございますが、殺人であれ傷害致死であれ、そのような収容処分がされているのが実情だというふうに承知しておるところでございます。
○上川委員 今回の改正案では、十六歳以上の刑法犯で故意に死亡に至らしめた罪の場合、原則逆送が適用されるということになるわけでありますが、今の現状も踏まえて、本改正案において原則逆送を規定化する趣旨ということにつきまして提案者の御意見を伺いたいと思います。
○松浪議員 お答えいたします。 原則逆送を規定化する趣旨はどこにあるのかというお尋ねでございますけれども、現行少年法では、保護処分とするか、刑事処分を相当として検察官に送致、逆送するかは家庭裁判所の裁量にゆだねられており、保護処分を優先して適用する考えがとられており、凶悪犯でも逆送になるのはかなり低い率となっております。 しかしながら、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させるという重大な罪を犯した場合には少年であっても刑事処分の対象となるという原則を示すことにより、何物にもかえがたい人命を尊重するという基本的な考え方を明らかにし、少年に対して自覚と自制を求める必要がございます。そこで、犯行時十六歳以上の少年が故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた場合には、原則として検察官送致決定、いわゆる逆送する制度を導入しようとするものでございます。 なお、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させる罪とは、殺人、傷害致死、強盗致死などが挙げられます。 もっとも、これらの事件は、すべて必ず逆送しなければならないわけではございません。個々の事案においては、犯行の動機及び態様、犯行後の状況、少年の性格、行状及び環境等の事情を家庭裁判所がきめ細かく検討し、保護処分が適当と考えられる場合には逆送せずに保護手続を選択することになるのであり、裁判所において最も適切な処分が選択されるものと考えられます。
○上川委員 今回の改正案では、死に至らないまでも、植物人間あるいは寝たきりになるなど、死に匹敵するようなケースについては特段の規定がございません。こうしたケースにつきましてはどのようにお扱いになりますでしょうか。
○松浪議員 被害者を死亡させた事件については逆送を原則とすることになるのであって、死亡に匹敵するような傷害を負わせた事件につきましても、裁判所としても、今後は、その改正の趣旨を踏まえ適切な処分を決定していただけるものと考えております。
○上川委員 今回の法改正案の中に原則逆送ということが盛り込まれたわけでございますが、考え方や意義ということにつきましては本当にいろいろな幅がございまして、やはり国民にとってわかりやすい形でもっともっと説明をしていただきたい、こんなふうに思っております。 そういう上で、次の質問に入らせていただきますが、刑事処分後の少年の矯正について二つほどお伺いさせていただきます。 改正法により原則逆送が規定されるということになりますと、少年刑務所送致が現状よりふえるということが予想されるわけでございます。少年刑務所の目的が、少年の矯正よりも刑の執行というところにより重点が置かれているというふうに理解されるわけでありますが、そうなりますと、少年の矯正の可能性を狭め、矯正不能な少年を生み出す危険性も一部に指摘されているところでございます。こうした指摘に対しまして、提案者としましてどのようにお考えでございましょうか。
○松浪議員 委員御指摘のとおり、この問題につきましては、与党のプロジェクトチームの中でも盛んに議論されたところでございます。 少年刑務所においては、刑の執行を通じて受刑者の改善更生及び社会復帰を図るため、教科教育、職業訓練等種々の矯正処遇を実施して、少年の矯正についても十分な配慮をしていると承知しております。少年を少年刑務所に収容したために少年が矯正不能になるということはないと私どもは理解いたしておるところでございます。
○上川委員 現在、少年刑務所においての矯正教育の実態ということで見た場合に、少年院の場合と比べましてどのように違いがあるのかあるいはないのか。また、再犯を未然に防ぐために、今後、少年を矯正していく観点からより内容を充実したものに改めていくということについて、少年院の場合にはそうしたプログラムが実行されるような計画があるということでございますけれども、少年刑務所の場合にはいかがでございましょうか。
○鶴田政府参考人 お答えいたします。 少年刑務所においては、少年刑務所は二十歳未満の少年受刑者を収容するということでつくられたものですけれども、現在のところ、十六歳以上の受刑者のほか、二十歳から二十六歳までの、いわば青年受刑者と申しますか、そういう受刑者を多く収容しております。 その処遇に当たりましては、先ほども出ておりましたように、あくまでも刑の執行ということですから、刑務作業を科していかなければなりませんけれども、個々の受刑者もいろいろ特性がございますし、二十歳未満という少年である関係から、先ほど提案者の方からお話がありましたが、例えば溶接とか電気工事あるいは自動車の整備といった職業訓練、それから低学力の受刑者に対しては補習授業とか地元高校の通信課程への編入とか、あるいは生活態度をしっかりさせるための生活指導、そういった教育的な処遇も取り入れて、現在、そういった青年受刑者も含めた少年受刑者に対する処遇を行っているというのが実情でございます。 それで、少年受刑者につきましては、やはり少年院の在院者と同様に、まだ心身の発達の面で十分なものがないというふうに思われますので、今後もし少年受刑者がふえるというような状況にあるとするならば、やはり個々の少年の特性に十分配意しまして、先ほど申し上げました、教科教育の面で充実させるプログラムとか、あるいは精神医学的な治療も充実させるようなプログラム、そういったようなものも取り入れた形でその処遇の充実を図っていきたい、そういうふうに考えております。
○上川委員 日本の少年院の矯正教育というのは大変評価が高いというふうに承っておりまして、そういう意味で、少年刑務所においても、再犯の防止という観点からも、その部分について厚いプログラムを今まで以上に実施していくということが大切ではないかというふうに考えておりますので、よろしく御検討をお願いいたしたいというふうに思います。 それでは、更生過程における保護者の責任のあり方ということで御質問を三点させていただきます。 今回の改正案の趣旨説明の中で、第一に、少年及びその保護者に対し、その責任について一層の自覚を促す点を強調されておりまして、少年法における保護者の責任の明確化がうたわれております。これは、少年が犯した罪に対する保護者の責任や少年の更生段階における親のかかわりを強く求めるということであると思いますけれども、改正案におきまして、保護者の位置づけと役割につきまして、どのような基本的な理念、考え方をお持ちでしょうか。
○松浪議員 更生過程における保護者の責任のあり方について、改正案における保護者の位置づけと役割についてお尋ねでございますけれども、この問題についても、プロジェクトチームではかなりな時間をかけて議論をさせていただいたところでございます。 少年非行の背景には、保護者の側に問題がある場合も少なくないと考えておりますし、少年の再非行を防止し、その健全な育成を図るためには、単に少年に対して保護処分をするだけではなく、少年の保護者にその責任を自覚させ、少年の改善更生に向けた努力をさせることが肝要であると考えております。 改正法案は、単に少年に対して保護処分をするだけではなく、少年の保護者にその責任を自覚させ、少年の再非行の防止を図るため、家庭裁判所や家庭裁判所調査官が保護者に対し、訓戒、指導その他の適当な措置をとることができることを明文で規定し、そのような保護者の位置づけと果たすべき役割について明確化を図ったものでございます。
○上川委員 少年法で今回初めて明文の規定を設けるわけでありますが、趣旨とか保護者の役割というのはこれまでも十分認識されていた点であると思いますけれども、現行の少年法においては、保護者の責任のあり方につきましてどのような規定がなされているのか。また、具体的に、保護者に対しこれまでどのような働きかけを行って、それに対して保護者はどのような責任意識というか、受けとめていらっしゃったのかということで、実態を伺いたいと思います。
○安倍最高裁判所長官代理者 現在の少年法におきましては、保護者に関する明文の規定はないのが現状でございます。 その実情というお尋ねでございますけれども、今御指摘のとおり、少年非行の原因あるいは背景には、親の養育態度でありますとかあるいは親子関係の葛藤の問題があることが少なくない状況でございます。 こういった関係から、家庭裁判所におきましては、現在におきましても、保護者である親に対しまして問題状況を認識させて、その改善のための動機づけを与えることに意を用いて工夫をしているところでございます。 例えば、調査官の調査面接に個別に保護者を呼びまして、保護者だけを取り上げて面接を行うといった運用もありますし、また、審判には保護者の出席を求めております。そういった調査、審判の中におきまして、これまでの養育態度の問題点を指摘したり、今後の改善のための接し方の指導などについても十分な手当てをしているところでございます。また、少年について、交通講習やシンナー講習を行う場合があるわけでございますが、こういった場合にも、保護者に出席をさせまして、少年同様の問題意識を深めるような工夫もしているところでございます。 このような運用をしているわけでございますけれども、今回の改正によりまして明文の規定が置かれることになった場合には、なお積極的な働きかけを有効に行うことが容易になるだろうと考えているところでございまして、私どもといたしましては、立法趣旨についての十分な周知を図ってまいりたいと考えている次第でございます。 以上でございます。
○上川委員 今、既に働きかけをしていらっしゃるということなんですが、それに対して保護者の側はどのような反応というか、していらっしゃるのかについてもお願いいたします。
○安倍最高裁判所長官代理者 私の一般的に承知しているところでは、保護者の方は、やはり審判の場に臨む、あるいは調査官の個別面接を受ける、こういった過程で相当問題意識の深化が見られるというふうに承知しております。審判の場で少年とともに涙を流して、これまでのあり方について反省をする保護者もあるのが実際のようでございます。 ただ、中には、まだまだ短期間には十分な問題意識の深まりが見られないという方もあるようでございまして、そういった方については、家庭裁判所としても、将来のあり方についての指導をして終えるということをしているところでございます。 以上でございます。
○上川委員 今御指摘のところは、家庭裁判所の手続上のところでのかかわりということなんですけれども、裁判所の決定がなされた後の少年の更生教育段階においては、保護者に対しましてどのような働きかけをしていらっしゃるのか。また、働きかけた後、実際に実行していらっしゃるかどうかというチェックをどこまでやっていらっしゃるのか。そういったことにつきまして、実態をお願いいたします。
○鶴田政府参考人 少年院における保護者への働きかけについて、まず御説明させていただきたいと思います。 少年院でも、少年の出院後の円滑な社会復帰を図るためには、保護者に対する働きかけは大変重要なものだと思っております。 そこで、少年院ではいろいろ工夫して働きかけをしているわけですが、具体的に申し上げますと、入院時の段階で保護者に入院通知を発しまして協力を求めるとともに、処遇の過程でも、近親者等との面会あるいは保護者会、これは少年院の場合におけるPTAの会合というふうに御理解いただければいいかと思いますが、そういった保護者会とか運動会、成人式あるいは文化祭、そういった行事がありますので、そういう機会に保護者の方に少年院に来院するように促しまして、その機会をとらえまして、少年院の実情等を説明して信頼感を醸成するとともに、少年の立ち直りのために必要な助言等を行っているという実情でございます。 その効果について定期的に何かチェックしているかということ、制度的にはそういうものはございませんけれども、少年院に入りますと、入ったときから保護司さんなり保護観察官というのが決まりますので、そういった保護関係機関から定期的に保護者の状況等を連絡を受けて知るという状況がありますので、またそういった情報に基づいて適切に対応している、こういうのが実情でございます。
○馬場政府参考人 ただいまの御質問につきまして、保護観察所が行っていることについて御説明をさせていただきます。 家庭裁判所で保護観察に付された少年に対する保護観察の場面では、通常、保護観察決定時の導入面接ということを行います。その際に、保護観察官が保護者と面接をし、保護観察実施について協力を求めるということを行っております。さらに、保護者の心情を受けとめて、親子の適切なかかわり方等について助言をいたしております。引き続きまして、保護観察期間中も必要に応じまして保護観察官または保護司が保護者の相談に個別に応じるほか、保護者会というようなことも開くなどいたしまして、保護者への働きかけを行っております。 少年院送致となりました少年につきましては、在院中については、ただいま矯正局長から御答弁申し上げましたけれども、保護の場面でも、保護観察官、保護司が保護者に対して定期的に面接をいたしまして、環境調整を図るということをいたしております。それから、少年院から仮退院した後の保護観察期間中におきましても、必要に応じて、保護観察官または保護司が保護者の相談に個別に応じるということをしているところでございます。 働きかけをしましたその後のチェックでございますけれども、保護観察の過程におきましては、保護観察官または保護司が定期的あるいは継続的に対象者と面接をするということをやっております。その過程におきまして、対象者の反応を見まして、保護者との関係がどうなっているか、必要に応じましては保護者にも直接面接をしてというようなことを行っている。そういう意味で、働きかけをしているということを御理解いただきたいと思います。 ただ、その重要性につきましては委員御指摘のとおりでございまして、引き続き充実してまいりたいというふうに考えております。 以上でございます。
○上川委員 最後の質問ですけれども、被害者への配慮の充実ということでございます。 前回提出されました政府案と比べまして、今回の場合には、被害者等の申し出によります意見聴取と被害者等に対します記録の閲覧及び謄写が加えられています。被害者及びその家族の立場により配慮した内容となっているわけでございますが、これらを加えた理由とその趣旨、背景について、簡単に御説明いただければと思います。 また、提案の中に傍聴というのが入っていなかったということで、これにつきましては先ほど御説明がありましたので割愛させていただきますが、より被害者及びその家族の立場に配慮した内容ということにつきましての基本的な考え方、理由等をお聞かせください。
○松浪議員 お答えいたします。 被害者への配慮の充実、遺族の皆さんも含まれるわけでございますけれども、とにかくこのテーマにつきましてもプロジェクトチームの中で激論が交わされました。私たちは、被害者感情または御遺族の感情、ひいては国民の感情を無視して法の改正はできない、こういうふうに真剣に考えて、議論に議論を重ねさせていただいたところでございます。 いずれにいたしましても、少年事件はその審判が刑事裁判とは異なりまして非公開とされていることなどから、被害者が審判の結果について十分な情報を得ることができないという強い指摘がなされております。 閣法では、このような要望にこたえるため、家庭裁判所による少年審判の結果等を通知する制度を導入することとしていたところでございますが、被害者の正当な要求に対してさらなる配慮をすることが適当であると考えられたことから、被害者等の申し出による意見聴取や被害者らによる記録の閲覧、謄写の制度を盛り込んだものでございます。 いずれにいたしましても、御遺族や被害者、国民感情、これを十分にしんしゃくし、そしてその期待にこたえていかなければならない改正にしようということで、力いっぱい取り組まさせていただいたところでございます。
○上川委員 少年法の改正に際しまして、立場によってさまざまな意見が出され、また、賛成、反対のそれぞれの立場からの議論が行われております。仮に、議論を通じて少年法のあるべき姿につきまして世論が形成され、それが社会規範の醸成に結びつくのであれば、こうした議論が大変有意義なものになるというふうに理解されます。そうした意味も十分に認識し、今後においても、非行少年を取り巻くあらゆる機関、あらゆる立場、例えば家裁調査官や保護観察官、あるいは少年犯罪に精通した専門家の皆さんの御意見を十分に吸い上げる機会をぜひとも積極的に設けていただきまして、本改正案につきましても幅広い視野からのチェックを可能な限り尽くしていくことをお願いしまして、質問を終わらせていただきます。 ありがとうございました。
○長勢委員長 この際、休憩いたします。 午後零時四十七分休憩 ————◇————— 午後五時三分開議
○長勢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 先ほど来、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合の各委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席されておりません。やむを得ず議事を進めます。 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 少年法等の一部を改正する法律案の審査のため、本案審査中、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○長勢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時四分散会