労働・社会政策委員会 第14号
- 発言数
- 196 件
- 登壇者
- 17 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 2000/05/23
会議録
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を開会いたします。 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案を一括して議題といたします。 本日は、両案の審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟参与成瀬健生君、弁護士奥川貴弥君、弁護士坂本修君及び中小労組政策ネットワーク常任運営委員小谷野毅君、以上四名の方々に御出席をいただいております。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。 本日の議事の進め方でございますが、成瀬参考人、奥川参考人、坂本参考人、小谷野参考人の順にお一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。 なお、御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたしたいと存じます。 なお、参考人からの意見陳述、各委員からの質疑及びこれに対する答弁とも着席のままで結構でございます。 それでは、まず成瀬参考人からお願いいたします。成瀬参考人。
○参考人(成瀬健生君) 日経連参与をいたしております成瀬でございます。 本日は、このような席で意見を述べる機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。 今回の法案につきましては、日経連といたしましては基本的に賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。 今回の分割法制でございますが、これは企業の機動的な組織改編、これを可能にするという意味で、これからの国際競争の熾烈化の時代、企業が生き残るためにぜひ必要だ、不可欠であると考えておりまして、早期の成立、施行を望んでおるところでございます。 最近、国際競争の激化の中で、スピード経営というふうなことが言われております。国際舞台でも、スピードフィッシュがスローフィッシュを食べる。昔はビッグフィッシュがスモールフィッシュを食べると言われておったのが、さま変わりになってきているというふうなことがございまして、企業の大小ではなくて、スピードを持った経営が大変大事だということが言われております。 さらに、企業の規模につきましても、大きければいいということから適正規模を模索するというふうな動きが出てまいりまして、実際に、分割しないまでもカンパニー制度というふうな擬似的な分割のような形をとって採算性を高める、そういうふうな動きが出てきておるのが現実でございます。しかも、総合的な経営体制から専門化した経営体制というふうな形も言われるところでございまして、こうしたことが的確に迅速に行われませんと、日本の企業が国際競争の中で、また国内競争の中でもそうでございますが、健全に存立をし続けることができない、こういうふうな状況になっているのではないかということを痛感しておるところでございます。 会社の分割につきましては、当然人間の移動を伴うわけでございまして、会社分割を真に実効あらしめる、うまくいく、こういうことのためには、財産その他、資産その他だけではございませんで、従業員をいかに新設会社へ迅速に円滑に移すか、こういうことが大変大事だというふうに思い、特に、日経連といたしましては、人間問題を専門に扱う団体としてこういう点には十分注意を払い、今までも、また今後も考えてまいりたいと思っているところでございます。 そこで、今回の労働契約の承継等に関する法律案でございますけれども、従業員の移行の面において、権利義務関係を明確にしつつ円滑、迅速な会社分割を可能にするものであると私どもは理解をしておりまして、法案の趣旨に基本的に賛成するという立場でございます。 また、その他の企業再編についてでございますけれども、合併につきましては包括承継でございまして、また営業譲渡につきましては当事者の合意を必要とする個別契約である、そのために立法の必要はないということが労働省の研究会の結果として報告書で述べられているところでございますが、これらにつきましてはそのとおりであると私どもは認識をいたしております。 法案につきましては、私どもは大変合理性のあるものというふうに判断をいたしておりまして、営業単位の部分的包括承継という考え方は、非常に合理的であり、また迅速な経営の再編を可能にするということで大変合理性があると思いますし、またその中で異議申し立てなど必要に応じて従業員に適切な配慮をしているという点、この点も大変合理性のあるものであるというふうに判断をいたしているところでございます。 ところで、戦後の日本の企業の発展でございますが、日経連の立場から申しますと、円滑な労使関係のもとで築かれてきた、初期においては大変波乱の時代もございましたけれども、それが成熟するとともに日本の経済成長も本格的なものになってきたというふうに考えておるわけでございまして、今後のグローバルな競争時代、また厳しい競争時代でございますけれども、企業が勝ち抜いていくためには、この円滑な労使関係というふうなものは不可欠だと考えております。今後もこれを何とか大切にし、育てていかなければならないと考えているわけでございます。 会社の分割のような企業の改編、再編に当たりましても、労使の自治に基づく話し合いは重要でございまして、特に法案の修正案にもございます「雇用する労働者の理解と協力を得るよう努める」、これは大変大事なことであるというふうに考えておる次第でございます。 つけ加えますと、労使の自治によるといいますか、労使が自主的に話し合って物事を解決するという戦後の日本の労使関係の伝統が、世界にいわば冠たると言うと言い過ぎかもしれませんが、成熟した労使関係をつくってきたというふうに考えているわけでございます。自主的に労使がお互いに話し合うことによって解決するというのがベストである、こんなふうに考えております。 実際に会社の分割が行われる場合でございますが、労働者への理解と協力を得るために労使協議は有効な方法であると思います。そして、実際に日本の企業の七割、八割について普及していると言われております労使協議制、こうしたものを活用する企業も多いと思います。 ただ、労働者の理解と協力を求める方法はさまざまでございまして、最近は電子メディア等も発達し、社内のそうしたネットワークなども完備しているところもたくさんあるわけでございます。また、それぞれの企業がいろいろな形で労使のコミュニケーションをとる方法を考えているわけでございますが、企業ごと、多種多様な方法をとる可能性があるわけでございまして、画一的にこれこれでなければならないというふうなことはなじまないのではないか。そうした意味で、労使協議というふうな形で義務づけというふうなことよりも、労使の自治に任せるということがベストであると私どもは考えておるところでございます。 最後になりますが、会社分割を契機としまして、リストラ、解雇、労働条件の不利益変更というふうなことが言われたり、また不採算部門の切り捨てのためにこうしたものを使うというふうな御意見がないわけでもございません。そうした危惧の声に対しましては、商法で、債務の履行の見通しがあること、これが会社分割の要件としてあるわけでございまして、これをきちんと理解いたしますと、不採算部門の切り捨て目的で会社分割、こういうことはできないように手当てがされているというふうに考えなければならない、そうであるというふうに思っております。 また、いろいろなケースの不当解雇でございますとか不当な労働条件の不利益変更、こういうものにつきましては、今まで日本は日本なりの判例法理が確立しておるわけでございまして、そういうふうなものが適用され、法的手段としてはそうした点から日本的な考え方の中で十分なものが成立している、法的手当てとしては十分であるというふうに考えているところでございます。 ただ、日経連といたしましては常々、不当な解雇、不当な不利益変更というふうなことは行われるべきではないということは会員企業に徹底して指導、啓発をしておりまして、そうしたものも日本の成熟した労使関係への一助になってきたのかなという自負心も多少は持っているところでございます。 どうもありがとうございました。
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。 次に、奥川参考人にお願いいたします。奥川参考人。
○参考人(奥川貴弥君) 本日は、こういう機会を設けていただきまして、まことにありがとうございました。 労働契約承継法について二、三意見を述べさせていただきます。 今回のこの法律は、労働者を保護するというふうに第一条に書いてあるにもかかわらず、実質的に労働者を保護する規定が何ら規定されていないということに問題があると思います。 そのことがどういう点で問題になるかといいますと、私は大きく分けて二つの問題が発生すると考えています。一つは、企業の再編の前後に予想されるリストラ解雇、整理解雇の問題、それから主として企業の再編後に行われる労働条件の切り下げを伴う不利益変更の問題、この二つの問題が恐らくこれから発生してくるであろうというふうに考えています。 まず、リストラの問題について意見を述べたいと思います。 今回の労働契約承継法は、いわば企業の部分的包括承継とそれから民法六百二十五条の労働者の同意の問題を実にテクニック的に解決したものであります。しかしながら、その法律が実際に企業の再編の中で使われるときに必ず行われるであろう整理解雇については何ら触れられておりません。 皆さんのお手元にあると思われます参議院労働・社会政策委員会調査室が作成された参考資料の四十九ページに、会社分割を用いた金融機関の再編成の例が挙げられております。 銀行が仮に三つが再編成される場合に、各銀行の中で、将来どのくらいの人員が必要でどのくらいが不要になるかということは当然話し合われるものだと思います。各銀行で、例えばA銀行は千人、B銀行は二千人、C銀行は三千人不要というふうにそれぞれ計画を立てて、再編の前にそれをリストラ解雇していく、もしくは整理していくということは当然行われるであろうし、話し合いの内容になってくると思われます。 一般的に今までの合併だとか営業譲渡の例を見ても、多くの場合に整理解雇、リストラ解雇を伴っている例が普通であります。したがって、今度の企業の分割においても当然それは予測されることだと言わねばなりません。 また、このような一般的な場合だけでなく、さらに、採算部門と不採算部門を分けて、不採算部門だけに好ましくない労働者もしくは整理予定の労働者を集約して、それで解雇をする、そういうようなことも絶対ないとは言い切れない。特に建設業界、ゼネコン等では、採算部門と不採算部門を二つに分けて、不採算部門を将来的には清算していくというような方法の一つの法律的な解決策としてこの法律が利用される可能性は十分あるものというふうに考えています。 もちろん私はあらゆる整理解雇、リストラ解雇がいけないと言っているわけではありません。もちろん必要な場合もあると思います。しかし、安易に企業の再編成に伴うリストラを認めることは、多くの社会的不安、社会的コストを必ず招くものです。つまり、リストラ解雇によって家庭や社会の安定が非常に損なわれる、家庭の崩壊も起こり得る、またそういうことによって多くの労働者がうつ病になったり自殺をするというようなことすら発生しております。 もちろん、国も失業が好ましいというふうには決して考えていないはずです。したがって、新たな雇用を創出するというようなことを再三明言しておりますし、今度の与党の共通公約の中にも五十万人の雇用を創出するというようなことが言われております。 しかし、企業の再編成を進めていく中で、リストラ解雇を放置する以上、有効な失業者の減少を図ることはできないというふうに考えています。新たな雇用を創出するよりも、現在の会社の中ででき得る限り雇用の安定を図って労働者を雇用させる、雇用を維持していくということの方がはるかにコストも方法としても簡便であることは明らかだと思います。 そういう観点から、民主党が企業の分割に伴っての労働者の解雇を禁止したことは一つの見識であろうかというふうに考えております。 衆議院の法務委員会で政府は、この分割法案によって特に解雇が行われることはないだろうと、つまり判例によっていわゆる整理解雇の法理、四つの要件を必要とする整理解雇の法理が確立しているので心配はないというような答弁をされております。 しかしながら、整理解雇の四要件、人員整理の必要性、解雇回避努力義務、整理解雇基準の合理性、解雇手続の妥当性、この四つの要件を満たさなければ整理解雇は適法ではない、違法であるという判例の法理について、最近、東京地方裁判所を初めとする幾つかの裁判例の中でこの考え方が揺らいでおります。 つまり、最高裁判所の解雇権乱用の法理をもとにしたこの整理解雇の四要件に関する判例法理が一部否定されつつある。具体的に言いますと、従来、整理解雇の四つの要件については解雇権乱用の法理が基準になっておりますが、もともとの発端になっておりますが、前提になっておりますが、企業側に解雇をする理由の主張と立証を実務裁判上は課しておりました。適切な釈明をする等によって課しておりました。しかしながら、最近の裁判例の中には、会社側は理由を述べることなく解雇の意思表示ができると。労働者の方において解雇の理由を主張して、かつ証明しなければならないというような判例があらわれてきております。また、整理解雇の四要件についても、一部その要件を不要とする判例も出ております。つまり、政府答弁で言う整理解雇の四つの基準というものは今後必ず維持されるものとは限らないわけであります。 こういう点から見ても、企業の再編成が多くのリストラを伴う以上、この際、労働者の雇用の安定を図るためにぜひとも整理解雇の基準を、民主党案のように禁止するのが一番好ましいかもわかりませんが、少なくとも最高裁判所の判例、それから今までの高裁判例などを集約した解雇法理に関する立法化、つまり労働者保護に関する裁判の後退化を防ぐための立法化をぜひとも私は必要とするというふうに考えております。 それからもう一点は、主として企業の再編成後に行われるであろう労働条件の切り下げの問題についてであります。 今までの裁判例を見ておりますと、多くの会社で、企業が合併、営業譲渡などによって幾つかの会社が一つになったような場合に、個々の会社の労働条件の食い違いを斉一化するために、労働条件の統一化を図るために労働条件の切り下げが行われております。これは裁判例を見ても明らかです。 この労働条件の切り下げ、つまり、主として就業規則の変更によって、賃金だとか退職金だとか定年、それらの労働条件を悪い会社の水準に引き下げるということがしばしば見受けられます。今回の企業の分割によってもそういうことが恐らく発生するであろう。いい基準の方に、例えば三つの銀行のうちの一番いい銀行の労働条件にほかの銀行の労働条件を切り上げるというふうなことはまず行われないであろう。恐らく切り下げの方向でやられるであろう。この点については、最高裁判所が大曲市農協事件などでかなり厳格な法律要件を示しております。 したがって、この点についてもぜひとも判例が後退化することのないように、この際、ぜひとも労働者保護法の中にこれらのことを組み入れて立法化していただきたいというふうに考えています。 最後に、主として僕が言いたい、まとめ的なことを言いたいんですが、日本の労働者は今まで働き過ぎと言われるぐらいに働いてきました。労働時間も名目上は短縮化されているかもわかりませんが、実質はサービス残業等によって労働時間も決して短くはなっていません。また、働き過ぎによる自殺だとかうつ病などもいろいろ報告されております。 企業の再編成、これがグローバルな企業の競争力をつけるために必要であるとしても、そのために今まで企業のために一生懸命働いた労働者を切り捨てたり、労働条件を切り下げることが当然のごとく許されるということには決してならないということだと思います。そのことが、もしそれを安易に行えば、それは、結局はいろんな意味で高い社会的コストを伴うことになり、日本全体を疲弊させるのではないかというふうに私は考えています。 以上であります。どうもありがとうございました。
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。 次に、坂本参考人にお願いいたします。坂本参考人。
○参考人(坂本修君) 参考人として大事な時間を与えられたことを本当に感謝する次第です。 私は一九五九年に弁護士になり、以来一貫して四十一年間労働者の解雇事件などの裁判に携わってきました。今も携わっております。そうした経験に基づいて、当委員会で審議されております二つの法案について意見を述べます。 完全失業者が三百五十万人に迫り、失業率が五%になろうとし、男性のリストラ性自殺が急速にふえています。私は、四十一年間経験したことのないリストラ合理化のあらしのもとで、朝日新聞が企業の生体解剖のメスだと報じた会社分割を認める以上、労働者を保護する特別の立法がどうしても必要であると深く考えます。この点については政府もまた認めるところであり、労働契約承継法はそのためのものだと言われております。 問題は、どのような法律が必要であり、そしてこの二法案がそのようなものとして有効なものであるかどうかということが審議されるべきだと思います。 労働契約承継法は、労働者を、会社分割の場合に対象を限定しております。現在盛んに行われておる営業譲渡などを使っての分社化などが外されております。これは同法案のそもそもの構造的な弱点であります。この点については、EUのいわゆる既得権指令と同じように、会社主体の再編の場合を広く対象としております労働者保護法の方が必要であり、かつ有効な法律だと私は考えます。 また、実はこの問題でほとんど議論されていませんけれども、短期雇用労働者、契約社員、派遣社員、パートなどの人たちがこの会社の分割に当たってどういう処遇をされるのか、大きな問題があります。 私は、そういうことを含めて、本当は本来の解雇規制法が必要だと考えるものであります。しかし、そのことをここで長く言っている時間がありませんので、会社分割にかかわって労働者の保護をどうするのかという問題に絞って以下申し上げます。 労働者保護のために第一に必要なことは、移籍に当たっての労働者の同意権または異議権を認めるということだと思います。労働者承継法にはこれがございません。 労働者保護法は、私たちは同意権と考えていますが、同意権ではありませんけれども、異議権を認め、異議申し立てによる労働契約は動かない、つまり前の会社に残ることを決め、異議申し立てに対する解雇など一切の不利益処遇を禁じております。実質上の同意権と言っていいと思います。 一方、労働契約承継法の方は、民法六百二十五条の労働者の同意なしに他会社への雇用の移籍は認めないという規定を排除しております。こうなりますと、実際には不採算部門を新設分割してそこに労働者を集中的に移籍させる場合、あるいは逆に優良部門を新設会社の方に分割ないし吸収分割して前の会社を泥船あるいは空船にして沈没させてしまう場合などなど、労働者の目に見えるような被害があり、また、労働条件などでも、例えば通勤の問題などで大きな問題が起きるというのがわかっていても労働者は同意なき移籍を強制されることになります。これでは非常に困ったことになるんだというふうに思います。 民法六百二十五条、明治以来のこの法律は、冷たい集中豪雨のような今のリストラに辛うじて労働者を守る役割をしていました。労働者保護のための法律だといいながら、このままの労働契約承継法では辛うじて身にまとっていたマントまで引きはがすような立法になってしまうのではないか。やはり同意権ないし異議権をきっちりと認めるべきだというふうに思うわけであります。 第二の問題として必要なことは、分割を理由とする解雇の原則禁止を明記することであります。 承継法は、主たる業務に従事する労働者を動かす場合に、残して連れていかないという場合には異議の申し立て権があって、その場合には契約が承継されるなどを規定しております。その限りでの一定の保護はあるわけです。 しかし、実際の問題としましては、これについて、例えば事前に社内配転をしておいて、切る労働者は別の部門に移しておくとか、さまざまな法の潜脱ということが十分に考えられます。これは勘ぐりではないか、杞憂ではないかとおっしゃられるならば、時間がありませんけれども、私たちは何十という現実に分社化などを通じてそういう処遇をされた裁判や紛争を抱えているのでありまして、それは私が指摘したのは現実の危険です。 一般に資本主義社会においてそういうことがしょっちゅう起きるんだということについては私の杞憂でないということについて、もう一つの例を挙げます。 それは、EU、ヨーロッパ連合は既に一九七七年に、以上のようなことが頻発するという事態を前にして、企業主体の変更を理由とする解雇を禁止するという明確な条項をつくっております。やはり外国でも私が言ったようなことが起きるからこういう法律がつくられているんです。 では、一九七七年、ヨーロッパにおいてこういう法律が必要であったけれども、今日の日本において必要はないのでしょうか。一々例を挙げるまでもなく、自殺者まで相次いでいるような今の過酷な合理化、人減らしは、こういう規定が今の日本においてこそ一九七七年のヨーロッパ以上に必要だということを証明しているものだと私は考えます。 しばしば企業の機動的再編成とかメガコンペティションとかグローバルスタンダードとかと言われ、政府の答弁にもそれに類する答弁がございます。この答弁の致命的な弱点、率直に言うと偽りは、外国はそういうことをやっていると言うけれども、全部労働者保護の法律をつくって規制しているではないか。グローバルスタンダードと言うなら、なぜそのことがグローバルスタンダードにこの国ではならないのか。そちらの方のスタンダードは外しておいて、会社はどういうふうに動かしてもいいというのは明らかに立法として間違っているということであります。 第三に、労働者及び労働組合に対して十分な事前情報を開示することです。 同意権を認める立場ではもちろんですが、一定の限定された異議権を認める立場であっても、情報がなければ同意権も異議権も十分に労働者は行使できません。労働者の生活と権利を守ることを本来の責務とする労働組合もまた、こういう事前情報を得なければその権利を行使することができません。憲法が保障しております団結権、団体交渉権、その主体である労働組合が、自分の組合員さらには職場の労働者がどういうふうに今移籍されようとしているかについて情報を与えられないなどという立法は考えられないのです。 この法律には、労働協約を結んでいる労働組合には事前情報を伝えるとなっています。これは重要なことです。しかし、なぜ労働協約を結んでいる労働組合に限定をするのでしょうか。何の合理性もないと私は考えます。労働組合はみずからの労働協約を守るためにのみ存在するのでありません。みずからの組合員及び組合に入っていない未組織の労働者を含めて、その人たちが人間らしく生き、働く権利を守る、これが憲法の保障し、労働組合法の保障している労働組合の本来の権利です。その組合に対してなぜ情報をこれだけ開示するのを嫌がるのか、なぜそのことがこの条文にないのか、私はこの法案の絶対に改めるべき問題だというふうに思っています。 その次の、保障しなければならない誠実な事前協議の問題です。 この法律の審議の中で二つの修正がされ、会社分割法の附則の方で労働者と事前協議することが義務づけられました。同じく労働契約承継法についても、分割会社は当該分割に当たり雇用する労働者の理解と協力を得るように努力するものとすることという努力義務が記載されました。よりましな修正だとは思っております。しかし、これでは私が言ったような同意権や異議権にかえるには余りにも力が弱いと思っています。しかし、力が弱いという批判をするだけで済まそうとは思っていません。力は弱いと思いますが、この協議を本当に一歩でも二歩でも実効のあるようなものにするために当院での審議を強く望むものであります。 そのためには、先ほど申し上げました労働者及び組合に対する事前の情報開示というのが極めて重要であります。その次には、協議をやはり誠実に尽くすためには、協議期間の問題その他について実効のある協議にするためにいろんなことを考えなければいけません。 例えば、日産村山の今回のリストラは約三千人の労働者を動かします。三千人の労働者に事前協議を本当にまじめにやろうと思うならば、相当の時間と手間暇をかけてやらなければなりません。事前協議は通知ではありません。そうだとすれば、この協議を尽くすために法的にどういう手段をとるかということをきっちりさせるべきであります。 ちなみに、この事前協議については労働組合の事前協議権が明示されておりません。先ほど申し上げました労働組合の本来の職責、責務、そして権利から照らして、労働者との事前協議と同時に、労働組合に対する事前協議権を明示すべきです。これにつきまして、それはそもそも団交権があるんだということで逃げようとしても、それは実際に現場で苦しんできた私たちは到底納得できません。 このような会社の組織変更に絡む問題に事前に労働組合が協議を申し入れた場合に、ほとんどの場合、それは経営権の問題であり人事権の問題であるということで団交は拒否されるのです。その団交拒否に対して不当労働行為として労働委員会に提訴しても、裁判所に提訴しても、およそ間に合わないのです。時間的には絶対間に合わない。しかも、その命令には強制権がありません。そうである以上、法律をもってリストラ、合理化の道具に使われかねないこの会社分割に当たって、労働組合に明確に団交権を保障するというのは最低限必要なことだというふうにかたく思うものであります。 最後に、政府は、先ほど申しましたように、各国でも分割法制があるということを強調しています。しかし、それならばなぜ私が言いましたように既得権指令的なきっちりした労働者保護の法律をつくらないのでしょうか。それは余りにも片手落ちではないでしょうか。メガコンペティションを闘うというのならば、まさにグローバルスタンダードで競争したらいいと思います。この点につきましては、私の言っていることは日本共産党の提案した労働者保護法には全部書かれていると思いますし、衆議院段階で上程されておりました民主党の法案も同じ中身だったと思います。連合も全労連も全労協も、すべて私は同じような考えを述べておられるんだというふうに思います。 それだけではありません。最後に一点だけつけ加えておきます。それは、EUの日本政府代表部で一九九五年から九八年に一等書記官として在任し活動されました濱口桂一郎さんという方が、あるシンポジウムで最近次のように語っております。 EU諸国はやはり雇用を大事にするという方向を努力しているんだ。それに対して日本の流れは全くすべて逆転しておる。これを、ビッグバンを断行することなんだ、それ以外に道はないという風潮がある。しかし、それは一方的に労働者ばかりが被害をこうむることであって、世界の流れに反する。 つい数年前までヨーロッパの日本政府代表部におられた一等書記官の方がそう言っておられるのです。労働者のナショナルセンターが求めていること、二つの政党が求めたこと、そして実は一等書記官が求めていることを私は述べているのです。 四十一年間の弁護士生活を通じ、そして今たくさんのリストラ、合理化で苦しんでいる人たちの事件を担当している弁護士として、当院において今私が言ったことをぜひ参考にされ、一歩でも二歩でも事態の改善に役に立つように努力をしていただきたい。良識の府とされる参議院が五千四百万の労働者とその家族のために責務を果たされることを心から望んでやみません。
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。 次に、小谷野参考人にお願いいたします。小谷野参考人。
○参考人(小谷野毅君) 陳述の機会を与えられました小谷野です。中小労組政策ネットワークという団体の常任運営委員をしております。 中小労組政策ネットワークというのは、昨年十二月に結成をされました、主に中小企業に働く労働者それからいわゆる非正規雇用の労働者、こういった労働者の雇用問題や権利問題などについて活動をしている十一の労働組合、約二万人が結成をした政策運動体であります。 日本の労働運動あるいは労働者の権利といった場合には、いわゆる正規に雇用されている、企業に正社員として雇われている労働者の問題を取り扱うのがこれまで通例であったし、それで十分事足りたのではないかと思いますけれども、後に述べるように、日本の産業は非常に大きな変貌を遂げておりますから、会社に正社員として雇われている人たちだけのことを論じて事足れりという時代ではないというふうに認識をします。 実際に日本の経済というのは物づくりについて下請化が非常な勢いで進展をしましたから、例えば会社分割といった企業の大きな組織変動を伴った措置が講じられた場合に、正社員だけではなくて非正規雇用の労働者や下請労働者たちがどのような影響をこうむるのか、こういった観点から今回の法案を見てみると、極めて不十分と言わざるを得ないというのが結論であります。 私どもの中小労組政策ネットワークに加盟をしている十一の労働組合の活動を、日常どんなことをしているかということをまず最初に御紹介したいですけれども、恐らく委員会に参集されておられる先生方のイメージでは、今日では日本は法治国家でありますから、労働者は労働組合に加入する権利を与えられ、職場の労働条件や雇用の問題について労働組合を通じて企業主と十分な団体交渉をする機会がある、まかり間違っても強行法規であるところの労働基準法などに違反するような労働条件が日常不断にまかり通る、こういったことはないというふうに恐らく思われているのではないかと思います。 ところが、私たちが日常活動している分野では、下請中小企業が年じゅう親会社の経営変更に伴って企業が倒産をしたり、あるいは事業縮小が不可避的に行われたり、こういった場面で労働者の雇用をどう守るかという四苦八苦した活動をせざるを得ない状況にあります。また、労働組合をつくった場合に、労働組合そのものを認知しない、親会社の指示によって下請会社が労働組合つぶしを行う、こういったことも日常不断に起こっているわけです。 そういった立場から、私は今回の労働契約承継法について二つの点で意見を申し上げたいと思います。 まず、この労働契約承継法には、対象となる労働者が企業に雇用されている労働者という限定つきがなされています。労働者保護といった場合に果たしてこれで十分なのであるだろうかということをまず疑問として呈さざるを得ません。これでは日本の今の産業構造を考えた場合に、いわば水面上に出ている氷山の上の部分だけを論じていて、水面下で氷山の本体をなしているところの実態に何ら迫るところがない。比喩的な言い方ではなくて実態的に言えば、日本の生産の直接的な担い手である下請中小企業やあるいは今日の職場では多く生産の実態を担っている非正規雇用労働者の問題、こういった労働者の雇用や権利について保護をなすという意味から見ると、極めて不十分なのではないかと考えるところであります。 私は今、日本の生産が下請化をしているという言い方をしましたが、例えば私が所属をしている労働組合は建設業での労働者の権利問題を主として取り扱っておりますけれども、御存じのように、建設業では大手のゼネコンの場合、例えば鹿島とか竹中といった大手の建設会社が看板を掲げている建設現場の工事の中で実際に三百人の労働者が働いているとしたらば、鹿島や竹中の正社員の労働者というのはごく一握り、わずか四、五人にすぎません。残りの二百九十五人、三百人近い人たちというのは、一次下請、二次下請、三次下請といったぐあいに重層的に下請雇用された労働者たちが実際には鹿島の名前であるいは竹中の名前で仕事をしているわけであります。会社分割においても、同じような側面から労働者に与える影響を考える必要があろうかと思います。 私は、意見陳述メモの二枚目に図を添付いたしました。これを参照していただきたいのでありますけれども、便宜的に分類をすると、私のまず問題提起の第一点は、労働契約承継法が直接の議論の対象とし立法措置を講じている分割会社に正規雇用された労働者の労働契約の保護だけを論じるのでは極めて不十分であって、生産の実態の担い手であるところの下請企業の労働者あるいはそれに先立つ下請企業の経営権そのもの、営業そのものの保護策を十分に講じない限り、分割に伴う労働者保護を議会が十分に議論し立法措置を講じたとは言えないのではないかという点にあります。 具体的に申し上げたいと思います。 例えば、先ほど坂本参考人も触れられましたが、最近の大企業のリストラの代表例と言われる日産自動車の例を見てみますと、日産自動車がカルロス・ゴーンのもとで発表したリバイバルプランは、三カ年のうちに五つの工場を閉鎖し、そして同時に二万一千人の正規雇用労働者を削減するということが大きな骨組みとなって報じられました。 リストラといった場合に、主として社会の耳目が集まるのは二万一千人の正規雇用労働者の雇用の問題ということになろうかと思いますが、もう一つ日産のリバイバルプランで大きく問題になっているのは下請業者の取り扱いであります。 日産自動車には、系列会社として営業に参加をしている企業が会社発表では約千百五十社あります。日産のリバイバルプランは、この千百五十社のうち五百五十社を三カ年の間に整理して六百社に集約化すると言っております。つまり半分に整理淘汰をするのだと言っているわけです。しかも、ただ単に半分にするといういす取りゲームではありません。日産が提示した条件というのは、これまでの取引単価を二割削減する、二割のコスト低減にたえられない会社とは取引をしないという前提条件つきのいす取りゲームなわけであります。このような過酷ないす取りゲームを強いられて、その企業が存続できる保障がどこにあるというのでしょうか。 下請企業の場合は、親会社のいわば言いなりで生産設備を更新したり、あるいは人員配置を行ったり、労働時間の決定などを行ってきているのは御承知のとおりであります。したがって、親会社からの仕事を一方的に取り上げられて、他の会社との取引を新たに開拓したり、あるいは十分な二次的な営業を開発して労働者の雇用を維持できる企業はほとんどないと言わざるを得ません。こうしたときに、下請労働者の雇用を守る措置は、残念ながら今の日本の法制度の中では全くないと言って過言ではないと思います。 あるいはセメントメーカーの例を引いて申し上げたいと思います。セメント産業は日本の代表的な基幹産業の一つでありますけれども、業界の今トップと言われる太平洋セメントが最近二つの工場の分社化を提起しました。会社分割法を利用した会社分割の一つの先鞭であろうかと思います。太平洋セメントというのは御存じのように秩父セメント、小野田セメント、日本セメントという日本の有数のセメントメーカーが合併をしてできたセメント会社でありますけれども、この会社の場合、関東圏の秩父工場、それから北九州の香春工場、この二つの工場を分社化して生産合理化をするのだという計画を発表しました。 当然のことながら、分社化をするので、その分社化をされる工場の労働者には労働条件切り下げが提起をされました。北九州の香春工場の場合、旧来の正社員の年収は七百万円前後でありましたが、分社化を機に五百万円程度に年収を切り下げるという提案がなされています。ここまでは正規雇用労働者の問題であります。 労働契約承継法が成立をすると、分社、つまり会社分割を理由にしてこのような労働条件の一方的な不利益変更はなされてはならないという立法府での議論がどこまで実効あるものとして生きてくるのか、ここに私は重大な関心を抱きますが、同時に、正社員のこうした労働条件の不利益変更が下請業者や下請運送会社などにはどのような影響を与えているのか、この点についてぜひとも注目していただきたいと思います。 北九州の香春工場には、系列のセメント輸送会社、つまり町中を走っているタンクローリー上のセメントの粉を取引先の生コン工場に運ぶ運送会社、これが多数出入りをしております。大手の運送会社で福岡トランスという百人規模の会社がありますが、ここでは最近香春工場の分社化に伴って五名の労働者への整理解雇が打ち出されました。しかも全員が労働組合員であります。会社が整理解雇の理由として持ち出したのは、仕事をもらっている親会社でさえ年収を二百万円前後切り下げるのだから、会社の取引条件も当然厳しくなってくる、親会社の年収を超えるような労働条件はましてまかりならない、よってもって人員合理化も労働条件の切り下げもやらせていただきます、それに承服していただけない労働者は指名解雇させていただきます、概略このような方針を打ち出して整理解雇を実行したわけであります。 恐らく会社分割が実際に運用されるようになると、今申し上げたような日産型のリストラ、あるいは太平洋セメント型のリストラが日本の主要な産業の各場面で多発するのではないかというふうに、私たち中小労組政策ネットワークは警戒をしているわけであります。 では、これに対する下請労働者の保護措置がどの程度あるのか。先ほど私は皆無であると申し上げました。衆議院の法務委員会や労働委員会の議論の中では、いや心配には及ばないんだという政府の答弁がありました。なぜならば、下請労働者の労働条件に影響を与えるような親会社の行為が使用者性に当たるものであるとなれば、それは旧来の判例法理の中で使用者概念の拡大の法理を用いて親会社との団体交渉を行って労働者の権利を確保することができるからだ、このような答弁がなされました。私は全くむなしい答弁だと思います。 現に会社分割に伴って、取引されている例えばA社という会社の下請業者が十社あったとして、そのうちの三社が会社分割に伴って取引を打ち切られた、この取引打ち切りについてその三社の労働者たちがどうやって自分たちの雇用を守る運動をすればよいのか。明らかに会社分割が原因で自分たちの雇用が失われるわけでありますから、その雇用の保護や労働条件の問題に関して、当然のことながら親会社と協議をしたい。つまり、分割する会社と協議をしたい。ところが、現行の法制度や経営側の対応の代表例は、直接の雇用関係がないのだから下請労働者と団交する義務はない、不服であれば裁判、労働委員会に申し立てをすべきである、このような反応が返ってきます。 そうした裁判、労働委員会を用いて権利救済をしようと思っても、会社分割はどんどん先に進んでいってしまいます。いつの間にか、もと雇われていた会社さえ親会社の契約打ち切りによって企業そのものがなくなってしまう。このような状態の中でどれほど耐えられる労働者がいるかとなれば、ほとんどいない。つまり、日本の下請の労働者がみずからの権利救済をする道がほとんどない、実効性のある措置がほとんど講じることができない。ここにどう光を当て、必要な保護措置を講ずるのか。この点についてぜひ委員会の今後の作業を期待したいところであります。 次に、議論をされていないもう一つの問題について申し上げたいと思います。 もう一つの問題は持ち株会社の団交権の問題であります。私は、意見陳述メモの二枚目の図に、分割会社の上に持ち株会社を書きました。法務委員会においても、あるいは衆議院の労働委員会においても、この会社分割制度というのは、日本の企業が持ち株会社制度を用いて企業グループを再編成するための重要な手段なのだという説明がなされました。 ところで、この持ち株会社は企業として活動する前提として、従業員を直接雇用しない、これを最大の特色としております。市中には今持ち株会社の設立の仕方とか運用の仕方といったマニュアル本がたくさん出回っています。これらの中で強調されているのは、雇用責任を負わないのだから利潤原理に基づいて最大限の利益追求ができるのだ、利益追求の手段として持ち株会社の傘下にある各子会社に柔軟な利益目標を、最大限の利益目標を提起してこれの実行を迫ることができるのだという趣旨のくだりが多数書かれております。その事業子会社に働いている労働者の雇用や労働条件に思いをいたさない純粋持ち株会社の活動を無制限に放置しておいてよいのかという疑問をぜひ委員会の先生方に受けとめていただきたいと思います。 労働省は昨年の十二月に、持ち株会社に対する例えば分割会社の従業員からする団交申し入れについて検討をした結果、中間報告を出しました。今後もし問題が生じたらば改めて検討を行うということで、持ち株会社との団交権問題については事実上結論を先送りしたという内容だと思いますけれども、これでは全く不十分だと思います。利益を追求する以上、労働者の雇用について責任を負わずして何の企業かという疑問を改めて提起しておきたいと思います。 以上、下請労働者の団交権の問題並びに保護措置、そして持ち株会社問題、二つの点を私は申し上げましたが、必要なところから具体的に調査活動なり立法作業を速やかに行っていただきたいということを申し添えて、意見陳述を終わります。
○委員長(吉岡吉典君) ありがとうございました。 以上で参考人の意見の陳述は終わりました。 これより参考人に対する質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○但馬久美君 公明党・改革クラブの但馬久美でございます。与党を代表いたしまして質問させていただきます。 きょう、参考人の四人の皆様方、当委員会にお忙しい中をおいでくださいまして、本当にありがとうございます。貴重な御意見を伺いまして、本来ならば全員の参考人の先生方に質問させていただきたいと思いますけれども、私は主に成瀬参考人を中心に質問させていただきたいと思っております。どうぞ御了解よろしくお願いいたします。 それでは初めに、成瀬参考人、社会経済情勢においては企業間の国際的な競争が激化しているために企業の競争力を強化する必要がある、合併や営業譲渡等の既存の企業組織の再編の方法に加えまして、会社分割制度を導入することになったわけです。この点につきまして経営者側としてはどのようにお考えなのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 先生の御認識のとおりでございまして、現在の社会経済情勢におきましては、企業間の先ほども申しました国際的な競争がますます激化する状況でございます。企業がその組織の再編成によって経営の効率性、適正単位、適正な専門能力の発揮というふうな、いわゆるコーポレートガバナンスも含めた実効性のある高度な経営をしていく。そのためには、経営者側にとってこの問題は喫緊の課題だというふうに考えておる次第でございます。 そうした経営側の要請と申しますか、経営側の必要性に御理解いただきまして、平成九年には合併法制の合理化、十一年には株式交換・移転制度、さらに最近では産業再生法など法整備が着々と進められてきていると認識をしているわけでございます。それに加えまして、今回、国際的な競争の中でさらに我が国の企業が生き残るためにも、経済環境の変化等に的確に対応した企業組織の再編成としてその分割の問題、これはぜひ必要であるというふうに考えておる次第でございます。 例えば、持ち株会社が下にある子会社を事業別にどういうメリットを生かしてそれぞれ特徴が生きるように再編成するか、こういうふうなことは大変重要でございますし、こういうものをいかに促進していくかということが可能になってまいると思います。それから、今までの例えば営業譲渡の場合でございますと、営業を停止する等のプロセスがありまして、大変時間がかかる、スピードが本当に重要になってくるということでございますと、営業を停止することなく行うことができるという法整備が本当に重要だというふうに考えているわけでございます。 そういう意味で、会社分割制度の導入、ぜひとも必要と考えておりますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。
○但馬久美君 ありがとうございました。 それで、成瀬参考人にお伺いするんですけれども、今回の労働契約承継法案につきましては、衆議院において修正され、また参議院に送られてきたわけですけれども、その修正点、「分割会社は、当該分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。」という一条が追加されております。 実際に会社分割を行う際に、労働者の不安、例えば会社分割の際は当然承継となっており異議申し立ての権利が付与されていないために、会社分割の際、雇用や労働条件の不利益変更が行われるんではないか、またあるいは、不採算部門の切り離しなど人員削減の手段に利用されるのではないかとの不安を解消するため、事前協議など徹底した労使の間のコミュニケーションをとることが大切ではないかと思います。先ほど坂本参考人からもお話がありましたように。特に日経連では、企業内に正しい人間関係の樹立、これを使命とされておりますね。この点について、経営者側としてはどのようにそれを認識されているのか、お伺いしたいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 日経連の考え方まで引用していただきまして、大変ありがとうございます。 企業の再編に当たりまして、やはり企業は人間が中心で仕事をしているものでございますから、労働者の理解と協力を得て実施することは最も重要だと考えております。これがうまくいかなければやっぱりうまくいかないだろうというふうに考えるわけでございます。 したがって、会社分割の実施に当たりましても、衆議院において追加されました条文、「労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるもの」、これを含めまして、さらにそれを労働省令や指針でいろいろと細かい点を規定していただくことになるのかと思いますけれども、そうした趣旨も十分に生かしまして、労使の間で本当によいコミュニケーションを成功させることが分割後の会社の経営の成功にもつながるという立場から、労働者の理解と協力を得るということにつきましては積極的な努力をしていくということがぜひ必要だと思いますし、日経連はその意を体しまして努力をしてまいりたい、企業の経営者の方々に徹底してまいりたいと考えております。
○但馬久美君 ありがとうございました。 次に、会社分割が安易なリストラや不採算部門の切り落としにつながるとの懸念がさきの委員会におきましても議論になりました。私もこの問題点を提起させていただいたんですけれども、これに対しまして政府は、会社分割による不採算部門の切り捨てはできないし、また安易なリストラにつながるものでもないと答弁しております。 労働者に対しては雇用不安を生じさせないように、可能な限りの雇用の確保を図りながら企業の再編が行われることが大原則ではないかと思います。 現在は、企業組織の再編成を行うに当たっては合併または企業譲渡という手法が行われておりますけれども、こうした企業再編成時においてどのように労働者の保護を確保していかれるのか、またその際、どうしても人員削減を行わなければならない事態が生じた場合には、一般的にはどのような対応をなされるのか、その点をお聞かせください。
○参考人(成瀬健生君) 会社分割についての今回の商法の改正案の中で、当事者である各会社のいずれについても債務の履行の見込みがあることを要件とするという条文が含まれていると理解をいたしております。したがって、経営者としても、不採算部門を切り離してそしてそれを処分するために会社分割をするというふうなことは考えられないということは十分認識をいたしておるところでございます。基本的には、できるだけ経営効率を高くし、そして企業の発展を期するために分割をするというのが基本である、こんなふうに考えているところでございます。 会社分割の場合も、合併、営業譲渡の場合も、従来の企業組織の再編の場合と同様でございますが、企業の効率化を図る、先ほど最初に申し上げました適正規模、それから企業の専門能力を発揮するような組織体につくりかえていく、こういうふうなことでございまして、安易なリストラというふうなことに使うべきものではないと考えております。 多くの経営者は、健全な企業の経営者はそういうふうに考え、その中で労働者の雇用の維持を第一に考えているところであると思います。 状況証拠と言ってはなんでございますけれども、このようなバブル崩壊以降十年来の不況の中で失業率が五%弱にとどまっているというのは、世界でもまれな労使の協調による雇用維持の成果だというふうに私どもは考えているところでございます。 もちろん、そういうことを可能にした労使の慣行というものがあるわけでございまして、経営者は、今発表されております人員削減というふうな、新聞記事に出ておりますけれども、そういうものを見ましても、これはきちんと計算をしてみますと、退職者不補充というふうな形で、いわゆる生首を飛ばすというふうなことをしないということがほとんどでございます。 これが基本でございまして、もし、人員を削減しなければならない、それ以上に削減しなければならないというふうな場合には、実際いろいろな活動を展開し、それは株主配当から役員賞与から、さらに管理職の給料から、場合によっては給与カット、それからワークシェアリングというふうなあらゆる方法を講じた上で、最終的な、どうしてもだめな場合には希望退職募集、それから最後には指名解雇ということも起こり得るわけでございますが。 そうした大変な努力の末に、これは労使の間でもってある意味では話し合われつつやられるところでございますが、そうしたものを活用することによって、できるだけ雇用を維持するという努力をしているということは御理解を広くいただいているところではないかと思っております。 ありがとうございました。
○但馬久美君 いろいろ対応がありますけれども、これからの問題にもたくさん提起されていくと思います。どうもありがとうございました。 次に、奥川参考人にお伺いしたいと思います。 現在、営業譲渡における労働契約の承継については、譲渡会社と譲り受け会社との合意と労働者個別の同意が必要とされております。 譲り受け会社へ移籍対象となる労働者の保護は図られていると思います。しかしその反面、この譲渡労働者の範囲は会社間の合意により決められるために、労働者によっては承継されない不利益が生ずる場合が想定されると思うんです。 そのため、この営業譲渡についても当然承継として労働者に拒否権を付与することが必要ではないかということも言われております。これは先ほど坂本参考人の方からもお話がありましたけれども。 そこで、EUの既得権指令によりますと、営業譲渡も含めて当然に承継されるというルールがつくられております。しかし、その結果、この営業譲渡を引き受ける会社が少なくなっているという声も聞くわけなんです。 ということは、EU指令においてこの営業譲渡が当然承継されていることは、一見労働者に手厚いルールに見えますけれども、長期的に見た場合、雇用確保という観点から見て、果たして労働者のためになるかという疑問も抱くわけです。 奥川参考人は、営業譲渡における労働者の保護のあり方についてどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
○参考人(奥川貴弥君) 今度の営業譲渡の問題についても、それから分割についても、いわゆる特定承継、包括承継、それから六百二十五条の関係で、いろんな組み合わせで解釈論がなされています。 そのこと自体が問題なのではなくて、僕の認識は、例えば営業譲渡をやる場合なんかも、まず譲渡する方の会社が例えば全員の労働者を解雇して、それで営業譲渡をして、譲渡先に好ましい人だけを採用するとか、そういうふうに、営業譲渡そのものの中で解決できる問題ではなくて、その前後に行われるリストラ、それがやっぱり一番問題なのではないかというのが僕の考え方なんです。 ですから、例えば今度の労働省の学者の先生たちがつくった、参考にありますね、あれを見ても、まさに概念法学というか法律の組み合わせばかり考えていて、実際の労働者の保護をどこまでしていけばいいかという、実際の社会の中で行われている営業譲渡とか会社の合併なんかに伴う事前事後のリストラに対する対処が全然なされていない。だから、そこの部分だけを幾ら解決しても果たして解決になるのだろうか、ならないというのが実は私の考え方なんです。
○但馬久美君 ありがとうございました。 これ、坂本参考人にも同じようにお伺いしていいでしょうか。
○参考人(坂本修君) ちょっと違うかもしれませんが、EUが営業譲渡につきましても会社合併などと同じように雇用契約はつながるんだ、承継するんだと決めたのが一九七七年です。それから今日まで長い時間がたっております。議員の質問されたような現象があるのかどうか、必ずしもヨーロッパ全部を知っているわけではありませんけれども、そのまま今日機能しているということは、やっぱりそれが労働者保護と経営の都合のバランスをとる上での今日の近代的なルールだというふうに思います。 一点付加しますと、営業譲渡に当たってその譲渡される営業に従事した労働者は原則全部承継されるんだということは、戦後の混乱期でそんなことはできないということで、首を切っていいんだということで大問題になったんです。そのときに、東京地裁のその当時の柳川コートという労働部がかなりの議論をして、営業というのは、社会的に見たら財産もある債権もある債務もあるが、同時にそこで働いている人があって営業なんだと。それを移すならば、人間だけ外すということは、全くできないわけではないけれども、特別に合理的な理由がなければできないんだということで判例が確立をしたのです。 ただし、最近は変なのがありまして、営業譲渡に当たって、特別にある労働組合員だけを排除するとか、そういう合意をして外してしまうケースがふえて、むしろ営業譲渡に当たっては労働者は原則承継されるというのは立法によって明確にすべきだというふうに私は考えております。
○但馬久美君 いろいろとありがとうございました。 それでは、私、時間も少ししかありませんので、あと聞いていなかった小谷野先生、よろしくお願いいたします。個別紛争への対応について伺いたいと思うんです。 先般の労働基準法の改正によりまして、労働条件に関する紛争については都道府県労働局長が助言します、指導することもできます。この紛争解決援助制度が設けられましたけれども、この運用状況を見ますと、労働基準法等関係法令違反が認められないものの、何らかの具体的な処理が求められている件数、制度開始平成十一年三月までの半年間と平成十一年四月から九月までの半年間を比較しますと五千五百三十七件から七千七百八十件、四一%の増加となっております。 このような個別の労使紛争については、最終的には裁判によって解決が図られるものと思いますけれども、現実的には、裁判となると先ほどからいろいろお話がありますように時間や費用がかかり、そしてまた個々の労働者が簡単に利用できるものになっておりません。したがって、今後ますます増加が予想される個別労使紛争、これを簡易にまた迅速に解決して労働者の救済を図るためには、現行の労働局長による紛争解決援助制度の活用に加えまして、この制度の拡充や強化することも検討すべきではないかと思いますけれども、この点についてどのように考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○参考人(小谷野毅君) 私は、行政が個別労使紛争処理のための適切なサービス網をきちんと確立していくということは当然ながら必要なことだと思います。多くの事案の場合に労働者が相談をしやすい、そして適切な解決につながりやすいようなサービスを行政が提供するということは十分に必要なことだと思いますが、同時に、私は個別労使紛争処理において労働組合の役割をもっと明確に位置づけるべきではないかと思います。 先ほど私の意見陳述の中でも、労働組合というと正規に雇用されている会社の従業員の人たちの組織というイメージが日本では強いですけれども、最近ではリストラされた労働者とか労働組合がない職場の労働者が、いわゆる片仮名ユニオンと言いますけれども、さまざまな個人加盟の労働相談を受け付けているいわば労働者の駆け込み寺のような運動組織が非常にふえているわけです。私どもの運動体もその一つでありますけれども。そうした労働運動体、ユニオン、これが本来、労働者に最も身近な相談機関であり紛争解決機関ではないかと自負をしています。こうしたユニオンなどの、いわば今風に言えばNPO型の運動といいましょうか、こういったものを行政府と対になった役割として奨励していく、そういうようなことが必要ではないかと思います。
○但馬久美君 ありがとうございました。 私、もう時間が参りましたので、四人の参考人の先生方、貴重な御意見をいろいろありがとうございました。 以上でございます。
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。本日は、四人の参考人の方々に大変貴重なお話を伺いましてありがとうございます。 四人の参考人の方々のお話ですけれども、成瀬参考人以外の三人の方々がどちらかといいますといわゆるグローバリゼーションの影の部分を非常に強く訴えられていらっしゃるという、そういう印象がございました。それに対しまして成瀬参考人は、世界は変わっている、経済社会は変化している、光の部分もあるんだというような感じの、そういうお話が大きかったような気がいたします。これは私の受けとめ方でございますが。 客観的に考えれば、グローバリゼーションというのは、いいとか悪いとかということを超えまして、好むと好まざるとにかかわらず進んでいく、引き返すことはできないんだなというのが私個人の感じでございますけれども、その中でやはり影の部分のデメリットの部分を何とかもうちょっと少なくして手当てしていけないものだろうか、こんな気持ちを私は持つわけでございます。 日本の企業は、これまでは終身雇用慣行というのはとても人間を大事にする、城は人なりということわざを引かれまして、終身雇用慣行というのは人を大事にする、人を育てるそういう雇用慣行だったんだと。外国から批判された場合にも、むしろこの中で能力開発が行われて雇用の安定が保たれるんだからということがつい四、五年前まで言われていたと思うのですけれども、このグローバリゼーションの中で今度はデメリットばかりが強調されているような気がいたしますけれども、まずその点について成瀬参考人にお話を伺いたいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 先生おっしゃるとおりでございまして、グローバリゼーションはまさにもう避けられない事態だと思います。もちろん、日本として日本発の情報を世界に発信していくことは大変重要だと思います。しかし、まだ日本はそれほど強大でないところもございます。アメリカあり、でき上がったEUがあり、大変大きな力があるわけでございまして、日本は多少違った労使慣行、人間関係などを持ちつつ、日本としての情報を発信していくことが必要ではないかということは常々感ずるところでございますが、当然限界がございます。そうした中で、グローバリゼーションをある意味で受け入れつつ、それに適応して、その中でさらに日本的なよさというふうなものを残してどういうふうな経営ができるか、どういうふうな労使関係ができるかということを模索していかなければならないのではないかと思います。 当然、雇用につきましても従来よりは流動化をしてくると思います。働く方の価値観の多様化もございまして、終身雇用で働きたいという人の数がどんどん新入社員の調査でも減ってきているということになっておりまして、ことしの私どもの調査では、新入社員訓練の中でアンケートをとりましたら、二割を切るというふうなところまで、この会社に一生いるという方の数が減ってくる、こんなことも出ております。 そうした中で一体何を考えるかと、大変難しい御質問なんでございますけれども、企業といたしましては、やはり自分の会社の従業員にどういう力をつけてもらうかということを本気で考えなければならないだろうと思います。国際的にもいわゆるエンプロイアビリティーというふうなことが言われておりまして、我が社でも当然だけれども、場合によってはよその企業でも雇用される能力というふうなことかと理解しておるわけでございまして、俗称といいますか、砕いた言葉で言えばつぶしのきく人間というふうなことだなんて言われておるわけでございますが、こうした新しい時代に対応しつつ、しかしトータルで社会または産業社会に役立つ人間というふうなものをいかにつくるかということが企業の課題でございます。そうした点につきましては、さらなる努力を続けてまいりたい、こんなふうに考えております。
○川橋幸子君 今のお話の続きで、重ねてお伺いしたいと思うのですけれども、以前、企業はむしろ色がつかない、無色の新卒に入ってきてもらって、自分の企業の中でそれはトレーニングするんだというようなお話だったんですが、今のお話ですと、まさに個人個人が技能を磨いて、エンプロイアビリティーがある、働く能力がある、職業につく能力がある、そういうふうにトレーニングを、自己啓発してくださいよというふうに、こう変わっているように私は思います。ある種そういう変化は私も望ましいというんでしょうか、寄らば大樹の陰よりは個人が大事にされる、そのためには個人が自己啓発をするということはいいことだとは思うのです。 ただ一方で、後で午後の質疑のときに大臣にも聞こうと思っているんですけれども、企業の雇用慣行がどうも再就職者の受け入れに対しては非常に門戸が狭い。特に年齢でもって、年齢を理由として再就職のチャンスをなかなか与えないというこの採用慣行というのは、今おっしゃったエンプロイアビリティーのある社会というものとちょっと反するのではないかというふうに思うのでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
○参考人(成瀬健生君) これも大変難しい、今本当に重要な問題になっているところでございまして、お答え申し上げるのは大変難しいわけでございますけれども、確かに再雇用についてのバリアというのはかつてよりは随分少なくなってまいったと思います。特に、いわゆる第二新卒とか中途採用でもある程度の年齢以下の方につきましてはかなり流動化も起こり、問題のない企業の間を人間が動くというふうなことも起こりつつあるわけでございますが、おっしゃるように高齢者につきましてはかなり難しい面がございます。 これは二つの点がございまして、一つは、従来、今ちょうど高齢者のような方々というのは、いわゆる今のエンプロイアビリティーといいますか、どこに行っても私はこれができますというふうな能力を企業として育てる、どうも時代が違ったものですからその点が不十分であるという面がどうしてもございます。何ができますかと言われて、そうですねと考えてしまうというふうな高齢者も少なくないということも言われるわけでございます。もちろん再訓練の機会はそれなりにつくらなきゃいけないという面はあるわけでございますが。もう一つは、今までのと申しますか、今でもそうでございますが、賃金体系がどうしても年功的なものがとれずにおりまして、年齢によって賃金水準が決まってくるということになってまいりますと、高齢者は賃金が比較的高い。企業としては雇用しにくい。この二つの、能力という面とそれから今まで成立していた賃金制度という面の二つが問題になっているかと思います。 徐々にこの点は変わってきていることは事実でございますが、少し時間がかかるかな、その中で、多様でございますので、個人の自覚、それから企業が本当にその人の能力を買うというふうなことで、それなりのきちんとした賃金を払うということも含め、いろいろ検討をしつつ、また相談をしつつ、話し合いをしつつということで徐々に進む以外にないのかな、こんなふうに考えております。
○川橋幸子君 成瀬参考人に、日本の産業界代表に私が注文するという、こういう図式の発言というのは余りよくないのかもわかりませんけれども、その昔、こんな女にだれがしたという流行歌、古い歌がございます。今の経済界ないしは労働界を見ていますと、こんな労働者にだれがしたと言いたくもなるような部分があるような気がいたしますので、やはりそこは経営責任という点でも御努力賜りたいと、要望でございます。 次は、奥川参考人にお伺いしたいと思います。 奥川参考人も、グローバリゼーションの中でリストラが避けられないと。リストラって、真の意味のリストラでございますよ。単に人減らしのためのことをリストラとは申しませんで、本当の意味は、企業が生産性の高い部分に特化していくという意味でのリストラクチャリングでございますけれども、それが避けられないということをおっしゃりながらも、二点お挙げになられたわけですね。 リストラというのは整理解雇を伴うのが普通なんだ、リストラというのは労働条件の不利益変更を伴っているのが普通なんだと。これが現実なんで、現実をよく国会議員も見てほしいという、こういうお話だったと思うんですけれども、何か非常に企業に対する不信感が強いような気がいたしますのでございますけれども、そのあたり、いかがなものでしょうか。理屈の上でそうじゃない企業もいるということはあるんじゃないかとは思うんですけれども、その辺の受けとめ方、お持ちになる印象を伺わせてください。
○参考人(奥川貴弥君) 実は私も労働事件を多く手がけてきております。不信感というよりもむしろ事実として、企業の再編成というのは、人員をそのままにして再編成なんというのは僕は今まで恐らくなかったんではないか。これは必ず人員の整理は伴っていますし、それから労働条件の切り下げの問題でも、幾つかの会社が一緒になって、いい方の労働条件に合わせたという例も実は僕はほとんど知らないわけでして、不信感というよりも、事実からして、私の経験からして、恐らく企業の再編成に伴ってリストラも行われるだろうし、労働条件の切り下げも行われるだろうというふうに申し上げたわけです。 それから、不信感という点から見ますと、それはこういう問題がありますね。一つは、例えば会社との、こういう企業の再編成の場合には労働組合としては労働者の処遇がどういうふうになるのかということは当然団体交渉で話し合われなければならないわけですが、そういう場合に会社が情報を公開しないという大問題があるわけです。つまり、例えば団体交渉で決算書等を当然示して説明しないといけないときに決算書を出さない。したがって、会社の財務内容だとか業務内容、業務内容というか営業状態というのは的確につかめないような面があります。そういう点から見れば、確かに経営者は、経営者代表の方がいらして申しわけないんですが、必ずしも労働者に公正な立場で常に説得したり説明をしているというふうには私は思っていません。 だから、せっかくの御質問があったのであれなんですが、不信感を僕が持っているようにもし聞こえるとすれば、ぜひそれをなくすような方策、例えば簡単に言えば企業の持っている情報の公開みたいなものをきちんとするような法律だって考えられるし、そうやってやっぱり労働者に不信感を持たせないような法制度だとか企業のあり方というものを再検討しなければいけないというふうに僕は思います。
○川橋幸子君 不信感を持っているように感じられるなんて申し上げたのは実は私自身の感情移入がございまして、私自身もどちらかというと今のグローバリゼーションの中で日本の企業の対応というのはどうも御都合主義に過ぎるところがあるのではないかと。ちょっと関係者の方がいたら恐縮ですけれども、私自身も思っているということでございます。 特に今回、奥川参考人には、衆議院の段階では共同修正ということでおろしましたけれども、民主党案を評価いただいたことをありがたいと思っております。 それで、リストラを理由とする整理解雇、これを禁止する、あるいはリストラを理由とする労働条件の不利益変更、これは許されないんだと。判例理論上がそうなんだからということで法律に盛られなかったわけですが、私どもの主張は、逆に判例の中で確立されているものなら法律に明記していいではないか、どうしてそれができないんだろうかという話だったのでございます。 先ほど、小谷野参考人の方からでしたでしょうか、あるいは坂本参考人でいらしたでしょうか、非常に冷たい法理論論争でもって今回の法律が練り上げられているという、そんな印象を伺ったわけでございますけれども、法理論でもここを何か論破するいい理屈というのがありましたら教えていただきたい、奥川参考人に伺いたいと思います。
○参考人(奥川貴弥君) 実は政府の答弁でも、整理解雇については判例が確立しているから大丈夫じゃないかというふうに坂上議員の質問に対して答えているわけですね。今も先生がおっしゃったとおり、であればなぜそれをはっきり法律で規定しないのか。 つまり、整理解雇なら整理解雇で四要件ありますが、この四つの要件はおおむね今までの裁判例もしくは学説によって支持されているわけですから、これをきちんと法律で制定する。こういうふうにすれば、今盛んに貿易障壁か何かの問題で、日本の法律は、解雇権乱用の法理で、ちっとも中身がわからないで裁判所に全部ゆだねてしまうような変な形になっているというような批判も避け得るし、また、僕はすごく心配しているのは、最近の若い裁判官の中に、社会全体の風潮が影響しているのか、今までの裁判所が積み重ねてきた解雇権乱用の法理もしくは整理解雇の要件の問題を非常に無視した、今までの判例の積み重ねを無視したような判決が現実に出ているんです。僕は東京地裁の十数件の判例、つい最近も見ましたけれども、先ほど私が意見で述べましたとおり、それらを無視した裁判例が出ています。これがもし高裁レベルに受け入れられることになれば大後退になるわけです。 これは、この判例を獲得するまでに労働弁護士がどれだけ努力してきたかというようなこともぜひお考えいただいて、ぜひとも裁判の後退を防ぐため、また基準の明確化をきちんとするためにも、できれば民主党案みたいに禁止するのがいいかもしれません、だけれども、それができないにしても最低限度そういう判例を立法化していくという作業はぜひお願いしたいというふうに思っております。
○川橋幸子君 ありがとうございました。 坂本参考人に一問お伺いさせていただきたいと思います。 今回の法律に対して、四十一年間とおっしゃいましたでしょうか、本当に熱血弁護士で御活躍していらっしゃるような御様子、承らせていただきました。先ほど但馬委員の御質問へのお答えの中に、営業譲渡についても個別契約ではなくて当然承継という形でもって権利が承継されるようにした方がよいという、私の聞き間違いでなければそのようなお答えだったと思うのでございますが、当然包括承継の持つデメリットというものも個人の同意権等から考えるとあるのかとは思いますが、そのあたりはどのように考えればよろしいのでしょうか。
○参考人(坂本修君) 労働者の権利を考える場合、二つあると思うんですよね。行きたくないのに連れていかれるというのと、それから当然そこに移っていくはずなのに仕事は移されて仕事がないということで解雇されていいのかと、二つの問題があると思います。 私は、労働者の働いていた営業が全部であれ一部であれ譲渡されるときは、原則として移るということが労働者の保護にもなるし、企業というものの社会的な責任や社会実態、それから戦後に確立した判例からいってもそちらの方がいいんだと思います。ただし、労働者には、当然のことながら、他企業に同意なしに行かねばならないということはありませんですから。民法の六百二十五条もございますし、それから、意に反する労働の禁止という憲法規定もございます。だから、そのときに労働者がノーと言ったら移らない。それは立法体系としても、法律の考え、実際から見ても、それでバランスがとれるんじゃないか。 そうなりますと、その労働者の働いている営業部分が移ってしまったのに残った労働者について働く場所があるのかという問題が起きてくるんだと思います。そこのところで私は労使の協議が要ると思いますし、それが将来的に整理解雇の要件に該当するかしないのかということはまた別の法的な判断に付される問題で、それで整合性がとれるんじゃないかというふうに私は思っています。
○川橋幸子君 ありがとうございました。 時間も参りましたので。小谷野参考人、お伺いできませんで残念でございました。
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。 きょうは四人の参考人の皆さんに貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。 今のお話を伺っていましても、本当に立法府の責任を感じるわけでございまして、私ども日本共産党はこの参議院にも、企業組織の再編に伴う解雇を禁止する明文化とか、企業組織の再編が行われたことを理由として労働条件を不利益変更にしてはならないという禁止なども含める労働者保護法や、また別途、今話題になっております解雇禁止法も提出をして、労働者保護がしっかりとできるようにということを国会内外の皆さんとも力を合わせて実現したいというふうに思っておりますが、そういう立場から、今話題になっておりました労働者の同意、異議申し立て権がないということで、まず坂本参考人に伺いたいと思います。 異議申し立て権のない労働者が転籍を拒否したとき、今回の法案審査の中で、結果として自己退職になる、労働者としては法的にそれ以上のことができないというような答弁があったわけなんですけれども、こういう立法上の説明というのはどういうふうにお考えになるのか、伺いたいと思います。
○参考人(坂本修君) 私もその質疑を拝見いたしましたけれども、労働省の答弁は、政府の答弁は三つの点でおかしい、訂正すべきだし、何か錯覚をしておられるのではないかというふうに思います。 第一点として、自己退職になると言いますが、労働者がみずから退職しない、移籍については同意しないけれども自分は行きたくない、働きたいと言っているときに、そのことが自己退職になるというのは法律解釈としてあり得ないというふうに思います。自己退職というのは自分でやめると言ってやめることですから、それは労働省の解釈は、答弁は無理だと。ただ、結果として自己退職になるという、この結果としてということを、実際にはそういうふうに追い込まれてしまうのではないでしょうかという、法理論じゃなくて言っておられるのだとすれば、そういうケースが多くなるかもしれないと思いますが、少なくとも自己退職というのはおかしいと思います。 同意はしないけれども、分割計画書に書いてしまえば、法律の構成としては労働契約は新しく分割によってできた会社に移るんだと思います。その会社に移ったけれども出社しない、働きたくないと言っている労働者をどうするのかという問題になると思います。そういうことが煩わしいということで分割する会社が分割計画書に載っけなければ、労働契約はもとの会社に残っているんですね。そして、行けと言っても行かなかった人間をどうするのかということになるのです。 したがって、法律論としてはそれは解雇の問題になる。結局、そういう労働者で働きたいというのと、いや働かせられないという会社との間で話が決まらなければ解雇の問題が起きてきて、その解雇について合理性があるのかどうなのか。例えば、女性の場合などで重い家庭責任を持って新設分割会社にどうしても行けないということで協議をしたけれども、会社の方がその協議を認めてくれなかった、話がまとまらなかった、そういう場合に、ではそのことで社内配転とかさまざまの方法で解決できないのか、それが単純に解雇の問題になるのかということについてのやっぱり交渉の問題であり、終局的には法的判断の問題になるんだというふうに思います。 労働省の答弁は、労働者の意向を尊重し理解と協力を得る努力を尽くさないで解雇をすればそれはやはり行政指導しなければならないという点も含めて、この答弁は是正されるべきだというふうに私は思います。
○八田ひろ子君 法律の専門家として奥川参考人の御意見も伺いたいと思うんですが。同じ質問です。
○参考人(奥川貴弥君) ほぼ同じなんですね、法律家としては同じになっちゃう。というのは、自己退職というのはまさに労働者が自分の意思表示によって退職するわけですね。みなされるという考え方はあり得ないわけです。 例えば、会社に一カ月も二カ月も無断で来なかった、これは確かにそういう意思表示が推定されるわけです。だけれども、あくまでも意思表示が推定されるもしくはあるから自己退職になるのであって、同意しなかったから自己退職になるという法理論というのは、これはちょっと僕には想像ができない。 ただ、その方がもとの会社に残っていてしまうとすれば、多分仕事がなくなるなりいろんな弊害が出てくるとすれば、やはりこれは会社の方としては状況によってはいわゆるリストラ解雇の問題になってくるのではないか。そうすると、それはもうまさに解雇の有効性の問題になってくる。また、そういうふうに扱わなければ、自己都合退職と会社都合による解雇で、会社都合でやめれば退職金の問題も変わってきますし、それから失業保険の支給の問題もかなり違いが出てくるわけですね。 ですから、いろんな意味で自己退職になるというその答えがどういう理論から出てきたのか、僕は非常に疑問というふうに思っています。
○八田ひろ子君 ありがとうございました。 私も一般常識、国民的な常識から考えて、なぜそういう答弁が出るのか理解に苦しんだわけなんですけれども、法律の専門家のお二方ともが同じ御意見だということで、午後からの審議でぜひ労働省の方に聞いてみたいというふうに思います。 二つ目なんですが、今もちょっとお話が出ました家族的責任を持つ労働者の権利その他ということですが、承継する労働契約の内容と不利益変更の禁止というのを専門家のお二方としてはどうお考えになるのか。じゃ今度は奥川弁護士の方からお願いします。
○参考人(奥川貴弥君) 先ほど述べましたように、幾つかの会社が一緒になったりする場合には、必ずA、B、C、もともとの会社の籍の違う労働者が混在するようになるわけですね。そうすると、当然労働条件を均一化しないといけない。これはせざるを得ないですよね。同じ会社に勤めていて、ある人だけ給料が高いとか、ある人だけ給料が安いなんというわけにいかないので。その場合に、今までの僕が見た事例で、高い方のレベルに労働条件を合わせることはまずないんですよ。みんなやっぱり低い方に合わせちゃうんですね。それがまた当然のごとく就業規則で行われる。今後も、今の状況を見ていると、そういうことが当然行われるだろうし、行われてもほとんどそれはもう社会的風潮として、言う方がおかしいとか、それを非常に抑圧されるような今社会的な風潮があるわけです、残念ながら。 そういう点を考えていけば、僕の主張としては、先ほども述べたように、就業規則の不利益変更に関しては、個別的な労働条件についての不利益変更に関してはかなりシビアな要件を定めた最高裁判所の判例があるわけですね。したがって、少なくともそのレベルまでは立法化によって阻止していただきたい、不利益変更を。つまり、最低限度それは守っていただきたい、守れるような体制をつくるべきだというふうに、それは立法の問題としてぜひとも考えなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。
○参考人(坂本修君) 問題が二つあるというふうに思っています。 一つは、今度の立法によりますと、労働契約を承継される労働者が出ます。この場合に、労働契約を承継するというのは今までの労働契約がそのまま移ることだというのが政府の答弁だというふうに思います。したがって、労働時間とか賃金などを下げることはできないというふうに、法解釈上そういうことだというふうに理解をします。 法律は一応そうなっているんですが、問題は二つあると言ったのは、一つは、その労働条件の範囲とは何ぞやということなんです。 例えば、一番端的な例を挙げますと、家庭責任を持っている女性の、男性も含めてですが、通勤の時間が非常に長時間かかるような異動の場合に、それは労働条件の変更なのかと。政府答弁では、どうやら労働契約そのものに転勤をさせないとかと書いてある場合は別ですというふうには言っておられるようですが、では書いていない場合にはどうなるのか。よく知られておりますように最高裁は、重い家族的責任を持っている女性について、都内ですが、遠隔地配転を拒否したことの解雇を有効だとしました。 そういう点で、この労働条件の範囲を労働省令に全部任せるのではなくて、基本的なことを法律の中に、あるいは労働省令が何と何を決めなきゃならないかを、今の勤務、生活条件の問題、家族的責任の問題なんかも含めて明記されるべきだというのが一つです。 それからもう一つは、不利益変更の問題です。 私、法律では承継される労働者に不利益変更はできないはずだと言いましたけれども、移行対象の労働者にする場合に、事前に労働条件を個別合意で切り下げてしまう場合、あるいはいわゆる不採算部門会社、あるいは先ほど奥川参考人の言われましたより低い労働条件で働いている会社に吸収分割をした場合、その場合に就業規則の変更という形をとって労働条件を短期間に切り下げるということが十分に可能だというふうに思います。 したがって、EUの既得権指令では、少なくとも最低一年間は企業主体の変更に伴う労働条件の不利益変更を禁じています。日本共産党の御提案になっておられます労働者保護法もそうだと思います。だから、一年ということは最低そう決めておくと。一年たったら切り下げというのではなくて、一年たったときに不利益変更が許されるか許されないかは、今までの労働条件の合理性のない不利益変更、一方的な不利益変更が許されるか許されないかという法理のもとで解決をすべきだと思っています。
○八田ひろ子君 ありがとうございました。 今、家族的責任を持つ労働者の権利というお話がありましたので、成瀬参考人に一言伺いたいんですが、先ほど来グローバリゼーションの中でということで、世界に共通するいろいろな基準というお話がありました。 この家族的責任は、ILO百五十六号条約、またそれに伴う勧告百六十五号、ここにも今お話がありました、「労働者を一の地方から他の地方へ移動させる場合には、家族的責任及び配偶者の就業場所、子を教育する可能性等の事項を考慮すべきである。」というのが、これは本文の中にあるわけなんですけれども、こういうものを企業側としても当然考慮されるのがグローバリゼーションの中での競争の基本として必要だというふうに思いますし、またこの商法の改正やこちらの労働法制の方でも、法務省にも伺いましたところ、事前に話し合うことが望ましいという答弁もいただいていますが、そういう配慮はどんなふうにお考えになっているんでしょうか。
○参考人(成瀬健生君) 家族的責任の問題につきましては、特に少子化の問題もございまして、企業としても重要に考えなきゃいかぬということはよく理解をしているところでございます。 ただ、それと経営の問題とをどこまでで妥協させるかということが経営サイドとしては考えなければならない問題だということでございますが、法律にどう規定するかというのは、私は実は法律の専門家ではないものでちょっと弱いのでございますけれども、今までの労使慣行の中で申しますと、従業員と企業といいますか上司といいますか、そうしたコミュニケーションをふだんから徹底している、ないしはそうした問題が起こった場合にそうしたルールを企業の中できちんと定めている、ないしは慣行を持っているというふうな、話し合いの中でもって合理的に解決してきているというのが日本の今までのパターンではないかと思うわけでございます。 法律でもう少し厳しくするのか、それとも労使の話し合いにどこまで任せるのかという点については、私どももどこまでということは今申し上げられるところではございませんけれども、できるだけコミュニケーションの中でもって合理的に解決するということの方が、日本的な考え方の中ではソフトで似合わしいのではないかなというふうな考え方を持っております。
○八田ひろ子君 私が知っているだけでも、この委員会でIBMにお勤めの家族的責任が大変重い女性が幕張に名古屋から転勤を強要されるとか、とりわけ女性に対するねらい撃ちのような解雇を目的とするそういった配転なども多々今までもありますし、またこういう法律が通りますと余計にそういう心配がされるというふうに強く思うものですから、企業側の御意見を伺ったわけで、企業としての御努力もぜひ今後もお願いをしたいと思いますし、私ども、立法、あるいは明示できるように立法府としても努力をしたいというふうに思っております。 小谷野参考人にお伺いをしたいんですけれども、先ほど、分割会社と正規の労働者には保護規定がある部分もあるかもしれないけれども、ほかには全くないではないかという御意見を伺って、現実に私も、持ち株会社からの要請で下請企業の労働者の首切りやまた退職金の額にまで親企業なりあるいは金融機関が介入をして非常に働く人が悲惨な思いをするというのを、労働争議だけでなくいろいろと体験をして、おっしゃるとおりだというふうに思っております。 先ほど団交権などの問題を含めて調査や立法をお求めになりましたけれども、どんな調査を今必要だというふうにお考えでしょうか。
○参考人(小谷野毅君) 私の認識は、日本の労働法制、特に労使関係については、企業内の雇用関係だけに軸足を置いて労働者保護を考えることがもう限界に来たんだという点にあるんです。 つまり、物づくりが下請化されるということは、重層的に雇用関係が事実上生じてくる。その一番末端にある労働者の保護を講ずるためには、従来のように直接の雇用関係だけに限定して団交権を認めるという労働法の考え方をもっと拡張する必要があるんだ、こういう意味のことを申し上げたいわけであります。 具体的に言いますと、例えば日経連の成瀬さんは先ほど、いわば人員削減といった場合でも生首は飛ばさないように日経連は考えているんだ、万が一そういうことがあったとしても希望退職などについていわば従業員を手厚く保護するんだとおっしゃられましたけれども、しかし下請労働者の場合は親会社の合理化の結果だけを押しつけられるわけですから、結果だけについて下請に雇用されている労働者が下請業者と議論をしてもそもそも出口があり得ない。やはりその問題については親会社ときちんと議論をできる、そういう制度が必要だと思うんです。 そこで、具体的にどういうふうに立法するかということですけれども、現在さまざまな大企業のリストラが行われていますが、その中で主要な、例えば株式を公開している企業の中で下請企業の整理がどの程度行われたか、そしてその下請企業の再編整理に伴ってどの程度の下請労働者の雇用の喪失が生じたのか、こんなことを労働省がまず調査することからでも可能ではないかと考えています。
○八田ひろ子君 労働者との事前協議あるいは労働組合との事前協議が非常に大きな問題になってくると思いますけれども、最後に坂本参考人に伺います。 今回の法案というのは、衆議院でも会社分割もそれから労働契約の承継法案も修正を受けてきましたけれども、労働者との事前協議、労働組合との事前協議の関係についてはどのように考えたらよろしいんでしょうか。
○参考人(坂本修君) 会社分割法の関係で労働者との事前協議を義務づけているということは、個別労働者に対する事前協議だというふうに思います。私は、それとともに当然のことながら労働組合との事前協議をきっちり法文化すべきだと思っています。 これについて、労働契約承継法で労働者の理解と協力を得るよう努力するという規定が修正されました。これについて大臣は、そのことについては労働組合との協議が含まれるという趣旨の答弁をしておられます。 私は、もっと明文で明快にすべきだと思いますし、先ほどの労働組合に対する団交拒否が相次いでいるわけですから明文で明確にすべきだと思いますが、仮に明文化されなくてもこの大臣答弁は重視されるべきだと思います。 ただ、誤解の余地のないようにしておく必要があるのは、個別労働者にかわって労働組合が協議して合意したから個別労働者の協議権はないなどという解釈は、この二つの法律の条文解釈上全くあり得ない。むしろ、労働組合が本当にすべきことは、個別労働者の同意、その意思を本当に大事にするような交渉を一緒にやることなのであって、こっちであっちを変えるということはできないんだと。 そこのところが大臣答弁がよくわからないんです、読んでいても。私は議員でなくて質問する権利がありませんので、ぜひあの趣旨は両方をやるんだということを明確にされる必要があるというふうに思います。
○八田ひろ子君 ありがとうございました。
○大脇雅子君 社会民主党の大脇でございます。 きょうは、参考人の方々に貴重な御意見をいただきまして、私どもの審議に多大の示唆をお与えいただきましたこと、ありがとうございました。 まず、小谷野参考人にお伺いをいたしたいと思います。 小谷野参考人は、この会社分割で行われる法規制というのはいわゆる正規労働者を対象にした氷山の一角であって、その下には重層的な下請中小企業の労働者の権利の問題というものがなおざりにされているのだという重大な指摘をなさいました。 下請労働者が会社分割などでこうむる影響、それからそういう現場で下請労働者が持っている権利の限界について、もし先ほど触れられました日産や太平洋セメント以外に事例がございましたら、そうした事例を挙げながら具体的にさらにお述べいただけるでしょうか。
○参考人(小谷野毅君) 二つの例を申し上げたいと思うんです。一つは、会社分割の例でも金融機関の会社分割、これが代表例として取り上げられましたので、それにちなんでということではないですが、金融機関の例を挙げたいと思うんです。 これは、具体名を挙げますが、三和銀行の例です。銀行の場合は、行員の食事のために行内に食堂を持っているわけです。三和銀行の場合は、この間のリストラで行員のための食堂、この調理部門をもとは正規雇用された労働者で調理をしていたのですが、最近になってこれを下請化しました。業務委託をして別会社化にしたということになります。そうすると、そこに働いている労働者は三和銀行に雇われている労働者ではなくて三和銀行が業務委託をした東興フーズという下請会社の従業員ということになります。 ところで、この東興フーズでは去年来労働条件の改悪提案がなされました。これは、銀行が合理化を進めるので給食調理部門も合理化をしたいということで、月給制を時間給制に移行させる、それから諸手当を廃止する、それから労働時間を従来は六時間だったのを七時間に延長する、こういったいわば労働条件の不利益変更が提案されたんです。 ところが、この不利益変更は明らかに三和銀行の業務体制の再編に伴って行われるものなのに、東興フーズはもちろん団体交渉を拒否しています。と同時に、三和銀行に対してもそこに働く労働者は団交申し入れをしていますが、直接の雇用関係がないからということで団交が拒否をされているんです。 この事例は端緒的なものだと思います。例えば、会社分割の代表例として説明をされている興銀と第一勧銀と富士銀行の三行統合でできるみずほフィナンシャルグループの場合を考えても、個人部門、法人部門、投資部門というふうに各部門ごとに事業子会社を再編してつくるんだと説明をされておりますが、具体的に言うと、同一の地域に重複をしている店舗を整理するということが真っ先に行われるんだと思うんです。 例えば、大手町などは各行の店舗が集中をしています。ターミナル駅には各銀行の店舗が集中をしています。これらが皆整理統合されると、例えば、富士銀行の店舗だけを残して一勧の店舗、興銀の店舗が廃止されるということになれば、そこの給食調理部門で働いていた業務委託会社の労働者は恐らく廃業のために職を失うということが生じるのだろうと思われます。 このことについて、現行の法制度の中では、残念ながら直接雇用関係のある使用者にしか団交権を応諾する義務を認めていませんから、幾らフィナンシャルグループに団交を申し入れても、それは直接のお雇いになっている会社と団交をおやりください、このように言われるのではないかと懸念をしているわけです。 したがって、冒頭述べましたように、実質的に雇用労働条件に影響を与えるもの、これについては団交権を認めるというふうに判例でも法理が確定をし始めていますから、会社分割というまさに雇用の問題に直接かかわる問題については、分割する会社が下請労働者からの団交権を認めるように措置すべきだろう、このように考えるわけです。 同じように、二つ目の例として派遣労働者の問題があります。 派遣法は昨年規制緩和をされました。しかし、例えば銀行とか商社といった恐らく会社分割を利用するであろうと思われる主要な産業の事務部門では、多数の派遣労働者が今日実質的に常用代替されて働いているわけですね。つまり、臨時的、スポット的に派遣されているのではなくて、ほぼ常用雇用労働者と同じように通年的に働いている派遣労働者が非常に多い。 昨年の派遣法の改正では、これらの派遣労働者が一年以上継続的に働く場合には正社員に道を開くんだという措置がなされましたが、もし派遣の途中で、つまり一年未満の期間のときに分割をされた、そしてその派遣契約は打ち切られたということになった場合は、派遣労働者は一年間を超えて働き、そして正社員になる道を、みずからの選択とは別に、分割の都合によって奪われるということになりかねません。 こういった点から考えてみても、正規雇用労働者だけではなくて、その業務の実態を担っている下請とか非正規雇用労働者の権利保護のための交渉権の確立が必要だと考えています。
○大脇雅子君 先ほど、持ち株会社は利潤追求の最良のツールだといってさまざまなマニュアル本が売られているという御指摘がありましたが、持ち株会社が利潤を追求していくということになりますと、今まで直用の中での労使関係というのを基本としていた日本の企業風土、企業の労使関係というものにどのような影響が生ずるとお考えでしょうか。そして、下請労働者の立場に立ちますと、どのような法制度を望まれるのか、述べていただきたいと思います。
○参考人(小谷野毅君) 企業風土というお尋ねなのですが、私は、戦後の経営者の代表的な人格の方々、例えばソニーの盛田さんであるとか松下電器の松下幸之助さんといった方々は、企業の社会的責任について非常に敏感であったというふうに考えています。 例えば、松下幸之助さんを私は別に弁護するつもりはありませんけれども、松下さんは非常な啓蒙家ですから、企業のあるべき姿についてさまざまなところで講演を重ねました。その中で、企業というのは公共の存在であるということを非常に力説して、二つのことに留意すべきだと。一つは、労働者に対する雇用責任を果たさなきゃいけないし、福利厚生を重視しなきゃいけない。もう一つは、国民の暮らしに役立つ行動をしなきゃいけない。こういうことを力説されていました。 残念ながら企業の多くは、私は企業性悪説をとるつもりはもともとないですけれども、労働者の雇用責任をないがしろにしたり、あるいは市民社会の利益に反するような行動をしばしばとるというのは、七〇年代の公害、最近の薬害エイズ、こういった事例を語るまでもなく、枚挙にいとまがないと思うんです。それを規制する最大の担保は何かといったら雇用責任だと思うんです。 ところが、こうした雇用責任をないがしろにした現実、どういうことが起きているか。例えば、昨年起こった山陽新幹線のトンネルの崩落事故の件を考えてみたいと思うんです。 建設産業というのは非常に下請化が既にもう他の産業に先んじて進んでいますから、七割、八割は下請化されている。つまり、ゼネコンというのは事実上の持ち株会社と同じような事業経営をしていて、下請の末端の労働者の雇用に責任を果たさずに利潤追求をしているわけですね。 そうすると、利益目標を一次下請会社に与える、一次下請会社は二次下請会社に利潤目標を与える。このようにしてくると、末端の下請会社は、与えられた予算の範囲の中で予算以上の工事をこなすために、手抜きをしたり労働者の雇用労働条件を切り下げたりするわけです。その結果、粗悪なコンクリートが使われたり、手抜き工事が横行するというのは、この間の欠陥工事の事例や品質問題が雄弁に物語っているのだと思います。山陽新幹線のトンネル事故はまさにそのようなことではないかと思います。 あるいは、昨年世間を騒がせたジェー・シー・オーのウランの事故にしても同じだと思います。立派なマニュアルがあっても、現場で実際に働いている人たちは平気でバケツの中でウランをかきまぜていて、あのような大事故を起こすのだと思います。 このように、雇用責任を免れるという、そしてその結果、企業の最大利益を追求するということは、国民生活にも大きな被害を与えかねないという懸念を強く持ちます。
○大脇雅子君 具体的なそうした状況が現出されようとする今、どのような法制度を求められるのかということについて、加えて御説明ください。
○参考人(小谷野毅君) 二つの点で意見を述べたいと思います。 一つは、先ほど八田委員のお尋ねにもありましたけれども、まず、日本の物づくりの仕組みがどのような雇用形態のもとで行われているかという点について、例えば主要な株式公開企業に限ってで構いませんから、現実に一つの物づくりの中にどのような労働者がどのような形でかかわっているのか、これについて立体的な調査をぜひとも労働省が率先してやっていただきたいと思います。 同時に、先ほども述べましたが、この間のリストラで大企業の労働者は希望退職とか早期退職勧奨制度などで一定のソフトランディング措置が講じられているわけですけれども、下請系列企業では雇用問題がどのように処理をされたのか、こういうこともぜひ調査をしてもらいたいと思います。 二つ目には、そうした調査の上に立って、立法の目標としては、やはり下請業者の経営を保護すること。それから、下請労働者が、会社分割に限ってで構いませんので、親会社と会社分割の問題、その影響するところについて労使協議ができる制度をつくってもらいたいと思います。 同時に、持ち株会社に対しても団体交渉ができるような、そのような立法の道を切り開いていただきたいと考えます。
○大脇雅子君 奥川参考人と坂本参考人にお尋ねしたいんです。 奥川参考人は、事前事後に行われるリストラが問題なのだという御指摘がありました。坂本参考人は、分割の事前に労働者を移すことによってその分割法制を潜脱するという危険性があるという御指摘がありました。 営業に従事する基準として主従の判断基準が用いられておりますが、例えば労働者の従事すべき営業への配置転換の時期とか研修、教育訓練を受ける時期等を利用した労働者への差別的な取り扱いや選別、あるいは複数組合併存下における不当労働行為など、労働法上違法とされる問題が分割をめぐって起きるのではないか。そういう場合に、いわゆる違法な配転によって主たる従事者あるいは従たる従事者の異動が行われて、労働者がその配転の結果、異議を申し出る機会が失われたりするという形で、やはり大きな問題を生じるのではないか。 先ほど、事後の不利益取り扱いについては詳細な法理論を伺いましたが、事前にそれを潜脱して行われる事象に対してどのような法規制が必要かということについてお尋ねをしたいと思います。
○参考人(奥川貴弥君) 今、大脇先生が御指摘のように、企業がとるかもわからない手段が非常に多岐なんですね、考えられるのが。能力の問題だとかいろいろ理屈をつけて、十分考えられる。ですから、僕今ちょっと聞かれて、この辺をこういうふうに立法化すれば大丈夫じゃないかというような案が即座には出てこないんですが、今回の承継営業を主たる職務とする労働者が、実質的にそうである人たちが本当に移れるように、少なくとも事例を幾らか挙げて、附帯決議か何かの中に今先生がおっしゃったような事例を挙げて、脱法行為が行われないように附帯決議をするというようなのが今の段階では一番適切ではないかなと。日ごろ僕らが不当労働行為事件をやっておって今の事件を扱っておると余りにも多岐過ぎるんですよね。ですから、それを全部網羅して立法化していくというのは非常に困難を伴うのじゃないかというふうに思っています。
○参考人(坂本修君) 同意権を認めるということが一つはそれを解決する非常に大事なことだとは思っています。 しかし、大脇先生の今の御質問に対して、少なくともこんなことは考えられないだろうか。主従の問題で、あらかじめ社内配転などをしておいて女性を排除したり、会社の気に入らない少数組合を排除するということを防ぐためには、あるいは高年齢者を排除するなどということを防ぐためには、主従というこの会社の認定基準をどうするかということを法律に客観性を持たすこと、それから、例えば一年前なら一年前までさかのぼっての認定になるのだということで、直前移行型を阻止するための規定を設けること、その辺が多少は役に立つだろうかということです。 最後に、今奥川参考人も言われましたが、附帯決議というのは法文に比べれば弱いのですけれども、整理解雇の四要件などの趣旨を徹底するという趣旨の附帯決議が衆議院でされております。それ自体はそれでいいことなんですが、それは単に判例上の基準だけではなくて、例えば労組法とか、雇用機会均等法とか、それからILOの国際条約とか、そういう公序をやはりきちっと周知徹底し、公序に違反にならないようにということを、あり得るケースですから、附帯決議に盛り込むことが必要なんじゃないかと。 一点だけつけ加えますと、その点で、やはり女性の議員がこれだけ多く質疑されているということについて時代の進歩というのをしみじみ思いますけれども、余り議論されていないのは、二千万の女性は男性に比べてはるかに劣悪な労働条件で無権利の中で働いているのです。そして、今までの分社化を使ってのリストラなどでは、私の取り扱ったものでも、著名な大商社で二千人の女性労働者を一気に派遣労働者にしようとしたり、防ぎましたけれども、さまざまな問題が起きています。ですから、家庭責任を持つ労働者、均等法上の配置の問題なども頭に置きながら、やはりそういう権利が損なわれないように周知徹底するのだという附帯決議をしておくことは必要だというふうに思います。 企業の個人の経営者の方に個人的な悪意や偏見があるのではありません。しかしながら、利潤を追っていく社会というのはルールがなければ無限定の暴走になるんですね。これは盛田さん自身が、ソニーだけでやるとナショナルに負けてほかに負けるから、やっぱりそういう規範をつくってくれというのが亡くなられた盛田さんの論文でした。 よく弱肉強食のジャングルのおきてだというふうに言いますけれども、ジャングルでトラやオオカミは自分の必要とする量を食べればもう食べません。ジャングルには自然のルールがあります。中野好夫先生がたしか、人はけものにしかずと言いましたけれども、経済の仕組みというのは最低のルールをつくっておかないとやはりだめだということだと思います。何もかもがんじがらめにしろと言っているのではなくて、解雇規制、EUの既得権指令、それからフランスやあちこちで始まりました週三十五時間規制、それからパート労働者の給与が平均労働者の時間給より下回ってはならないという規定、すべて文明社会はその方向に進んでいるのです。 だから、企業分割法あるいは承継法を考えるときに、やはり世界はそういうルールを求めている。ルールなき資本主義と言われる日本がこれ以上のルールを破壊しないように、附帯決議を含めて、ありとあらゆる方法で参議院が役割を果たしていただくことをお願いしたいと思います。
○大脇雅子君 ありがとうございました。 成瀬参考人に一点お尋ねをしたいのですが、会社分割が行われる場合に、労働者への理解と協力を得るということで労使協議というのは有効な方法だと言われました。しかし、画一的な規制になじまないので、いわゆる労使の自治に任せていただきたい、こういう御発言でございますが、労働者としては、そうした場合にどのように協議の情報開示がされるのか、あるいはどのような会社側の理解と協力を求めるための行為があるのか、どこまで信頼をしたらよいのかという不安に駆られていると思います。 したがって、日経連としては、そうした労働者への理解と協力を求めるために、各企業に何らかの指示あるいは何らかの文書、そうしたものでどういう方向づけをされようとしているのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 労使の協議につきましてはいろいろな形がございますが、労使コミュニケーション調査などによりますと、約七割ないし八割ぐらいの日本の労働者はこれにカバーされているという数字が出ておりますし、また労使協議の回数というふうなものの平均で見ましても月一回以上という程度の数字が出ていると私は記憶いたしております。実際、日本では労使協議制が、何も法律は実はないんですけれども、非常に普及して、しかも有効に機能しているというのが国際的に見ても注目されているというのが現実だと思うわけでございます。そういう一つの環境条件もございます。 そうした中で、日経連としましては、この理解と協力を得るように努めるということにつきましては徹底してキャンペーンを行い、傘下の企業の方々を含め、企業の理解を得るように努力をしてまいりたいと思っております。
○委員長(吉岡吉典君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。 本日は長時間にわたり、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。 午後零時十八分休憩 ─────・───── 午後一時二十分開会
○委員長(吉岡吉典君) ただいまから労働・社会政策委員会を再開いたします。 この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、直嶋正行君が委員を辞任され、その補欠として伊藤基隆君が選任されました。 ─────────────
○委員長(吉岡吉典君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案の審査のため、本日の委員会に法務大臣官房審議官小池信行君、厚生省年金局長矢野朝水君、労働省労政局長澤田陽太郎君、労働省労働基準局長野寺康幸君及び労働省職業安定局長渡邊信君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 ─────────────
○委員長(吉岡吉典君) 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案及び企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。 六十分の質問時間をちょうだいしておりますが、質問の数が多うございますので、効率的に質問させていただく関係から、恐縮ですけれども、大臣の方に初めに五問まとめまして確認の答弁をちょうだいしたいと思います。 まず第一問目は、私ども民主党の場合は分割のみならず合併、営業譲渡を含めまして企業組織再編の全般にわたりまして労働者の保護が図られるようにという、こういう対案を出してまいったわけでございます。それに関しまして、引き続きこの問題については研究を続けていくというようなことが既に何回か答弁をいただいているわけでございますけれども、確認的にいま一度させていただきます。 問い一、労働大臣は衆議院において、合併、営業譲渡を初めとする企業組織再編に係る労働者保護に関する諸問題について労働法、商法、企業組織論等の専門家である学識経験者で構成される研究会で検討を行うと答弁をされておりますが、この学識経験者を選ぶ際にはさまざまな考え方が反映されるようにするとともに、研究会の検討経過の論点を広く公開すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 御指摘のとおり対処してまいりたいと考えております。
○川橋幸子君 二問目は、同じく民主党案におきましては組織変更を理由といたします解雇の規制について案を出しておったわけでございますが、この点についても政府共同修正案ということで私どもは歩み寄らせていただきましたけれども、なお確認させていただきたいと思います。 企業組織の再編を理由とする解雇の規制に関して、法律事項並びに確立した判例について事業主並びに一般に周知すべきと思うが、いかがな方策をおとりくださいますでしょうか。具体的な方策についてお尋ねいたします。
○国務大臣(牧野隆守君) 企業組織の再編のみを理由として労働者を解雇することができないことは最高裁判例等で確立しており、これらの判例法理について、労働、法務行政の協力のもと、必要な資料やパンフレットを作成し一般への広報に努めるとともに、事業主団体、商工団体等への広報、啓発を通じて事業主への周知を図り、その状況を把握することとしたいと考えております。
○川橋幸子君 三問目は、労働者との協議の点についての質問でございます。 商法改正案並びに本法案に基づく労働者との協議等は新しい制度であることから、その周知徹底を図るため、その具体的手順について実務的な解説を作成し普及する等の対処を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 御指摘のとおり対処してまいりたいと、こう考えております。
○川橋幸子君 四問目は、労働者への通知という点でございます。 今回、私どもの主張した同意権はそのまま入ったわけではございませんが、異議申し立て等のさまざまな配慮はなされているところは評価されているわけでございますが、やはり労働者が考えるにつきましては通知の期間が必要ではないかということで主張してまいったところでございます。 そこでお尋ね申し上げます。 本法案に言う労働者への通知の時期については株主への通知に合わせるべきだと思いますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 分割会社から関係労働者への通知につきましては、分割計画書等の備え置きや株主総会招集通知とほぼ同時期に行われることを予定しております。 個々の企業における実際の取り扱いについては企業規模等それぞれの事情を反映してさまざまであると考えられますが、関係労働者に対する通知の重要性にかんがみ、分割計画書等の備え置き等を実施後、速やかに行われることが望ましいと考えております。 また、こうした趣旨を指針に織り込み、その周知徹底を図ってまいりたい、こう考えております。
○川橋幸子君 それでは最後、五番目の確認答弁をお尋ねさせていただきたいと思います。 本法第八条では、労働契約、労働協約の承継に関する措置として指針を定めるということが定められたわけでございます。 そこでお尋ねさせていただきます。 本法案第八条に基づき労働大臣が定める指針の内容について、その考え方と項目はいかがでしょうか。指針の項目といたしましては、承継される営業に主として従事する労働者を判断する客観的な基準を定めることを初めといたしまして、一、事業主は分割後の雇用の安定を図るよう努めること、二、労働条件の一方的な引き下げは認められないこと、三、退職金、年休等の勤続に伴う権利についても承継されること、四、安全衛生委員会等、従業員代表を構成員とする法律上の組織の継続に努めること、五、承継に関する異議申し立てを行ったこと等を理由に不利益な取り扱いをしないことなど、労働契約の適切な承継に必要な事項を盛り込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 先生御指摘のとおり対処してまいりたいと、こう考えております。
○川橋幸子君 大臣、どうもありがとうございました。 五問まとめてお尋ねさせていただきまして、それぞれ御答弁をちょうだいいたしました。そのとおり実施されるよう重ねて要望させていただきたいと思います。 さて、残りの時間を一般的な質問に当てさせていただきたいと思います。 第一問目は、ことし新規学卒のいわゆる就職浪人というものが非常に多く出てしまったというような新聞報道が出ているわけでございます。新規学卒等の就職状況によりましては失業率が五%台に上がるのではないかというようなことが懸念されておるところでございますが、まずその新規学卒の就職状況につきましてどのような状況になっておりますのか、お尋ねいたします。
○政府参考人(渡邊信君) この春の新規学卒者の就職状況でございますけれども、大卒について見ますと九一・一%で昨年の春に比べまして〇・九ポイントの減でございます。また、短大卒について見ますと八四・〇%で同じく四・四ポイントの減、それから高卒新卒者でございますが、九二・一%で同じく一・五ポイントの減、こういう状況になっております。
○川橋幸子君 社会人となって胸膨らませて出てくるであろう、卒業するであろう若者たちにとっては大変暗い春と、残念ながらそういう状況になったわけでございます。 昨年の春、やはり同じように失業率が高どまりしている、さらに高くなることが心配されまして、雇用対策が実施されたわけでございます。七十万人の雇用増というそういう目標で掲げられたわけでございますが、実績値を伺いますと七十万人の目標値の一%から二%程度、未達成というより、ほとんど達成されなかったというそういう言い方すらできるのではないかと思いますけれども、目標が達成されなかった理由はどのようなものにあったとお考えになるのでしょうか。
○政府参考人(渡邊信君) 昨年の緊急雇用対策の実績についてのお尋ねでございますけれども、この対策の中でも、例えば緊急地域雇用特別交付金事業のように地方自治体で雇用の場をつくっていただくという交付金につきましては、これは地方自治体のいろんな御要望等もあったということもあったと思いますが、ほぼ目標どおり実績が出ているところでございます。また、新規・成長分野における雇用の助成というふうに御指摘のようになかなか実績の上がっていない助成金もございます。これにつきまして私どもも随分と周知宣伝等に努めてまいりましたが、なかなかこの分野においても雇用の需要増というものは顕著に見られなかったというふうなこともあったと思います。 こういった点については私どもも反省いたしまして、今般、対象者をふやすとか、あるいは実施の仕方についても工夫するとか、抜本的な見直しをして新たに雇用の改善について取り組むというふうにしたところでございます。
○川橋幸子君 自治体に交付金を出すあのアイデアについては私も前回の労働委員会だったと思いますけれども評価するような質問をさせていただきまして、国がといいますか行政の責任において雇用創出を図るということは必要なことではないか、このように申し上げたところでございます。 ほかの助成金、奨励金等というのは、やはり企業が実際に雇用をするかどうか、その誘い水というそういう措置でございましたですよね。新聞記事を読んでおりましたら、もともとこの七十万人という目標数値そのものの掲げ方というのが、企業のニーズに沿って試算されているわけではなくて、むしろ総予算を一人当たりの給付金で割ればこのぐらいの何万人という金額になるとか、それから、これだけのお金を用意していますよということで安心感を与える心理的な効果というようなことが書かれているわけでございます。本会議場では私はちょっと意地悪く、見せ金を示してかけ声だけのポーズを示すことで終わってしまっているのではないか、やっぱり雇用政策はこういうことであってはいけないのではないかと思ったわけでございます。 そこで、今局長がおっしゃったように、新たな雇用対策を五月十六日でございましょうか閣議決定されたと言われているわけでございますが、その概要をお示しいただきまして、今度は達成できる、達成する見込みがあるというような自信のほどもお聞かせいただきたいと思います。
○政務次官(長勢甚遠君) 雇用対策といいますか、雇用創出対策につきましては累次やってきたわけでございますが、依然として厳しい状況にあることは御案内のとおりでございます。雇用失業情勢の状況とそれに対する景気対策等も考えながら、国民の方々に不安を与えないように、事態が急変した場合の対応策という政策を講じたこともございますし、また産業政策の進展にあわせて必要な労働力に求人が回るだろう、こういうことを前提にした政策を講じたこともございました。 しかし、大変深刻な状況が続いておるわけでございますが、そういう中で介護あるいは情報通信の分野で求人がそれなりに増加しつつあるにもかかわらず、なおかつ深刻な状況が続いておる。これはやっぱり制度的により具体的に求人と求職が結びつくような部分を含めて政策を講じていかないと国民の方々に安心を与えることができない、こういう観点から今回新たにミスマッチの解消を重点にした方策を講ずることとしたところでございます。 自信のほどはというお話でございますが、具体的な求人に合わせた、民間教育訓練機関も活用してそれに合わせた訓練を実施する、それに対する従来の給付金も十分活用できるように、先ほど安定局長から御報告いたしましたような制度改正もあわせて行っておりますので、三十五万人程度一年間で新たな雇用創出をするということについてはぜひやらなければならないと思っていますし、実績を上げることが可能である、このように考えております。
○川橋幸子君 先ほどの数字の御紹介ですと、いわゆる就職浪人、妙な言葉でございますけれども、報道機関が使っている言葉では三十二万、それに見合う三十五万人分ぜひしっかりお願いしたいと存じます。自信のほどがおありのように拝見いたしました。私どもも応援したいと思います。 さて、これも過日私どもの会派の直嶋委員から質問があったところですが、私からまた改めてお尋ねさせていただきたいと思います。 経済企画庁が「九〇年代の雇用政策が失業率に与えた効果について」というようなこんな研究報告をまとめまして発表しているところでございます。どんな内容であったか、ポイントをラフに私の方から申し上げさせていただきますと、雇用を維持する、失業を顕在化させないための雇用調整助成金等を使っての雇用維持、こういう政策と規制緩和ですね。ここで調査報告書が言っておりますのは派遣と有料職業紹介、この二点を挙げているようでございまして、そういう規制緩和によるいわゆるマッチング強化策、構造的失業が多い年齢、職種、そうした面での需給のマッチングがうまくいかない、そういうものに対するマッチング強化策として規制緩和を取り上げまして、この二つの政策を比較すると、後者の方が失業率低下の効果があった、このような報告が出されているわけでございます。 労働省ではこれをどのように考えておられますでしょうか。受けとめておられますでしょうか。
○政府参考人(渡邊信君) 経済企画庁のレポートを拝見いたしましたが、この中で今先生おっしゃいましたように二つの政策を比較してどちらに効果があったかということで、雇用維持策よりは派遣や有料職業紹介、こういったものについての規制緩和の方が効果が高いのではないかということを報告しているわけでありまして、この報告によりましても、雇用維持政策が意味がなかったというふうに言っているわけではございません。 いろいろな雇用対策の中でも、例えば中小企業労働力確保法のように、予算では例えば年間五万人ぐらいの雇用創出と見ていましたものが、実績からの推移をはかってみますと倍の十万人ぐらいはどうもいくだろうというようなことがありますし、それから、四月から実施をさせていただいております介護分野の労働力確保の賃金助成についても、年間一万人ぐらいかと想定しておりましたら、今の勢いでいけば三万人ぐらいの雇用創出がなるというふうなことでございまして、こういうのを雇用維持というのか雇用創出というのか、いずれにしましても賃金助成、こういったものの政策の効果も上がっているものももちろんあるということでございます。 派遣について見ましても、昨年の改正以後、例えば最近の新規の派遣の許可を見ますと、前年同期に比べて倍ぐらいの件数が新規に派遣会社が設立をされているというふうなことがございますから、こういった点の、いわば一種のミスマッチ解消の効果というのも大変あらわれているというふうに思います。 問題は、その時々の状況に応じて雇用維持政策と規制緩和等によるマッチング政策というものをどういうふうに組み合わせていくか、そういった効果的な組み合わせが必要ではないかというふうに私どもはこのレポートについて受けとめております。
○川橋幸子君 局長がお答えになったとおりなんだろうと私も思います。 このごろよく使われる言葉で、失われた十年、村上龍さんという作家の方が使い始めて、それが文学的な表現にとどまらず、日本の経済なり日本の社会というのが九〇年代に入ってから非常に失うものが多かった、失われた十年というような言葉が使われているわけです。 九〇年代に入ってからのこの失われた十年と言われるようなところを振り返ってみますと、この企画庁の報告でも、雇用維持のための調整金、助成金というのは前半には効果があったというようなことを言っているわけでございます。しかし、後半になってくると、それよりもむしろ派遣、有料職業紹介などのマッチング強化策の効果が上がっているというような、効果が上がったといってもこれだけの失業率でございますので、その引き下げ効果というのは〇・一ポイントであったり〇・二ポイントであったりというようなものが多いわけでございますけれども、そのような比較がされているわけでございます。 私は、やっぱり内部労働市場の中で雇用を維持する、失業を顕在化させない、こういう問題というのは、今ほどグローバリゼーションというものが強く言われない、今ほど競争力強化というものが大きな課題として、命題として浮かび上がってこない、かつてのオイルショックなどと同じようにいずれ循環型であってバブル崩壊の後も揺り戻すだろうと、その時期企業が内部労働市場、会社内でもって失業を顕在化させないようにした。これはそういうそれだけの効果、それだけのといいますか、やった方がよかったとは思いますけれども、そういう効果であって、それを九〇年代後半に望んでも、今度はグローバリゼーションの中で労働市場の構造そのものが変わってきてしまっている。こういう環境変化というんでしょうか、条件変化が非常に大きくなってきている。それだけに、労働省の中で行っていく労働政策のあり方というのは質的にも大きく変わってくるんじゃないか、このようなことを思うわけでございます。 私のつたない読み方、読み取り方でございます。どうでしょうか、労働政策というのは九〇年代前半、後半と比べたらかなり大きな変容を迫られている。これからは企業の内部でもって雇用を維持するよりも、それこそ先ほど企画庁の報告書が指摘しておりますようにマッチングを強化していくところに重点を置くべき時期に来ている、このように思うのですが、こうした認識についてはいかがでしょうか。間違っておりますか、それともまあ当たっているというふうに思われますか。どなたにお伺いしましょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) イエスかノーかでお答えすべき問題ではないとは思いますが、当然産業構造も変わってまいりましたし、また職種の形態も変わってまいりまして、働く方々の意識、ニーズも大いに変わってまいりましたから、雇用政策そのものもそれに合わせた形で拡充を図っていかなければならないという意味では御高説のとおりだろうと思います。 ただ、私は、企業内部で雇用を維持していくという努力をしていく、またそれが万全に行われることが一番働く方々にとって安心であるということは言うをまたないわけでございますから、雇用維持政策というものがやはり基本でなければならないのではないか、このように思っております。 しかし、先ほど申しましたようないろんな形態のことの中で、労働移動というものがこれから増加をせざるを得ない状況下にございますし、また働く方々もいろんな意味で変わってまいっておりますので、派遣法その他いろんな法的整備も図ってまいりましたが、いわゆる外部労働市場において再就職がきちんとできるような体制の整備にさらに格段の努力を図っていかなければならないという点はまさにそのとおりだろうと思って努力をしておるところであります。
○川橋幸子君 大変意を強くする御答弁をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。 特に、最後に総括政務次官がおっしゃったような再就職機会の確保というのがとてもこれから大事になるのではないかと思われるわけでございます。いい学校を出ていい会社に就職して、そこの会社の中で終身雇用機会が守られる、こういうことがそれぞれの個人に全うできるという可能性が低くなってくるわけですね。リスクが大きくなってくる社会の中で、一たんその会社で整理解雇に遭っても、あるいは不幸にしてその中で、自分が望むような仕事の機会がなくなっても、もう一回再挑戦できる、もう一回別の会社に、もう一回別の仕事に再挑戦できる、こういうことが大事になってくると私も思っているわけでございます。 それで、先ほどのマッチング強化策というのは、まさにこの再就職の需給が合うようにしていくことが大事だと思うわけでございますけれども、昨年の春政府の方でお決めになられました七十万人の雇用創出の達成率が一、二%だったということは、お金だけつければ、持参金をつければ企業が雇用をするわけではない。今のように過剰雇用が言われて、しかも企業の方も、どこまで事業の進展がこれから回復していくかの見込みがなかなかつかめないときには、持参金がついたからといって、ついた持参金のある時点はよろしいんでしょうけれども、お金の切れ目が縁の切れ目ではございませんけれども、そうした状況の中に人を雇い続けることを考えれば、その企業が求める労働力に見合った人材を雇う、つまりは需給の、再就職の機会のマッチングが必要なのではないかと思うわけでございます。 いささか私も自分のことばかり言いまして質問するのを忘れてしまいましたが、大臣、いかがでございましょうか。お金つきでもって、支度金をつけて、持参金をつけて雇ってもらうというこういう時代ではなくなった。むしろ、再就職機会を行政の側でも確保するようなそういう政策を強化していく、これが必要ではないかと思いますが、いかがでございましょうか。大臣にお尋ねします。
○国務大臣(牧野隆守君) 先生御指摘のとおりでございまして、現実にいろんな施策を考え、そして実施したわけでありますが、例えば雇用情勢、特にエレクトロニクス関係だとかこういう点では求人が非常に多いわけです。片方で、働きたいという方も非常に多い。前年同期比で毎月三割前後多いわけですが、じゃそれがきっちりマッチしているかということになりますと、大体三割前後ぐらいしか実は合っていないわけなんです。 だから、いろいろ調査いたしますと、特に新規産業関係で需要が多い、求職希望も多い。じゃ、そういうところの技術研修と申しますか、民間研修機関等の能力はどうかということになりますと、例えばコンピューター一つ入れても相当のお金がかかる。それだけの見込みがないと入れられない。したがって、現実にそれがマッチできるように技術研修を何とかできないかということで研修機関等とも話をさせていただきました。例えば夜間コースをふやす等のことによって現有施設で一万人以上の研修ができる、こういうような返事もいただいておりまして、それじゃそれが実施できるように私どもとしては何らかの助成措置を講じたい。 具体的に詰めてこのたびの緊急対策で実行可能と私どもは判断いたしまして決めさせていただいたところであります。 雇用調整助成金につきましても、実は御承知のとおり、今まで非自発的失業者を主として対象にいたしておりまして、そういう関係からどうしても企業関係でとりにくいというこういう実態も非常に明白になってまいりましたので、失業者が非常に多くなってまいりますし、じゃ、非自発的失業者でなくても、研修を受けてある程度の能力を持った人を採っていただけますか、あるいは新卒で今お困りになっているんですが、こういう方々もその対象にできませんかということで、助成の条件を大幅に改正いたしまして、今度はそれで各企業の方々にぜひ採用していただこう。これも見通しを持ちまして、対象人員あるいは補助金額等を決めさせていただいた。 こういうことでございまして、現実に合うようにきめ細かな対策を取り上げまして、ぜひとも私どもとしては、ここ緊急対策として一年間で少なくとも三十五万人の方々には就職戦線に入っていただこう、その見込みも大体できるんじゃないか、こういうことで決めさせていただいたと。先生の御指摘のとおりでございます。
○川橋幸子君 今回の緊急雇用対策には大変大臣が力を入れられていらっしゃる様子がよく私どもも理解できるわけでございます。 今、大臣の方からもおっしゃいましたように、持参金をつけるだけ、お金をつけるだけということではなくて、まず能力開発が必要だ、特に欠員率が高いような新規・成長分野の中でもIT関連と介護分野、的を絞られて、そして職業訓練とこの給付金とをドッキングさせておやりになられる、この工夫の跡は私どもも評価させていただきたいと思いますので、ぜひこれが真に再就職機会あるいは未就業者の就職機会に結びついていきますように御努力賜りたいと思うところでございます。 さて、今回の法案との関連では、私ども民主党は対案を出しまして、企業再編、組織再編が解雇の要件になるのはおかしいではないか、解雇を制限すべきではないか、このようなことを強く主張しておったわけでございますが、今も私自身もその考えは変わらないんですけれども、しばらく委員会審議を聞いていますと、どこかずれているような感じがしてならないのでございます。 どういう意味かといいますと、整理解雇というのは、使用者がその事業持ち直しのために努力をしたかとか、あるいは解雇の対象者を選ぶ合理性の問題とか、労使協議をやったかとか、さまざま努力をして、その努力をしたにもかかわらずどうしても経営がもたないので解雇するという、こういう要件になるわけでございますけれども、この整理解雇の四要件というのは、今の会社の内部労働市場の中の雇用を維持する、いたずらに解雇者を出さない、中を守るという意味のそういう雇用維持の解雇の制限であったような感じがいたします。しかし、これだけグローバリゼーションが進んでまいりまして、きょうは午前中の参考人の質疑でもさまざま貴重な意見を聞かせていただき、私どもの意見も申し上げたわけでございますが、やっぱりグローバリゼーションというのは、これはもう抑えようとも抑えようがない、好むと好まざるとにかかわらず進むわけでございます。 そうした場合に、日本の今の経済あるいは国民生活の中で考えなければいけないのは、内部労働市場を守るだけではどうも日本は立ち行かなくなってきているんじゃないか。そればっかりやっていると失われた十年の前半と同じような結果になってしまう。むしろ、外部労働市場における雇用を守るとか、雇用の安定を図るとか、労働条件を上げるとか、そういうことが必要な時期になっているような気がいたします。 そういう新たな雇用のルールが必要な時期に来ていると思いますが、これはどなたにお伺いすればいいでしょうか、労基局長ですか、お願いします。
○政府参考人(野寺康幸君) 労働市場の中で先生御指摘のような例えば労働移動が加速しているといったようなことも事実であろうとは思います。ただ、解雇という形であらわれます問題は、働いておられます労働者が期待しておりました権利を失う、労働契約が当然継続するであろうと思っていたその期待権をなくすということになりますので、そちらの面から見ますと、やはりこれはある程度の保護が必要であるということになると思うんです。 また、解雇の現実の姿というのは、その理由も、また態様もさまざまでございます。そういった解雇に対応するものとして、法律もございますけれども、御存じのような整理解雇の四要件を初めとする確立されました判例といったようなものを踏まえまして、なおかつそういった具体的な事情に応じて、労使間で十分な話し合いがなされて円満な解決がなされるということが確保される必要があるというふうに思っております。 そういう意味で、その面から見ますと、この整理解雇の四要件とも、現在のそういった労働市場にも依然として適用されるべきというふうに考えております。
○川橋幸子君 野寺局長がおっしゃったことに反対しているわけではないのです。それはもちろん必要だということでございまして、民主党案では、それならそれで解雇のルールを今回の法案の中に解雇してはならないという規制の規定を設けるべきだったというのが私どもの主張だったわけでございます。 これ繰り返しておりますと先に進みません。次の問いに移らせていただきたいと思います。 外部労働市場を含めての雇用を守るといいますか雇用秩序を守る、それに沿って一人一人の働く人々が挑戦したり自己努力したりする、生き生きとやっていける、そういう社会をつくっていくためには新たなルールがもっと必要なのではないか、こういうことを私は思うわけでございます。その場合は、解雇だけではなくて、採用面のルールというものをしっかりしていただきたいというのが私の要望でございます。 整理解雇の場合でも、その四要件を適用しましても、ある一定年齢以上の方を解雇の対象者に選定すること、これはこの四要件でも許されているわけです。年齢でもって、ちょっと言葉はきついかもわかりませんけれども、労働市場から排除される。だけれども、一方、採用の方は、これは昔はよく女性の場合は年齢制限がきついと言われましたけれども、よく見ますと男性もそうなんですよね。何歳以下の方という、こういう求人広告。今は男女別の求人は許されませんけれども、実質において年齢によって採用戦線からも排除されてしまう部分が多いわけでございます。 私は、募集、採用に当たりましては、年齢のみによって採用制限する、それに合理的な理由がないにもかかわらず応募できない、こういうような状況というものは、性を超えまして私は社会のルールとして修正すべきことではないかと思います。このような募集、採用の年齢の上限制限を禁止すること、一挙に法律でやることが難しいならば、雇用機会均等法のときにやりましたように、ある程度ガイドラインをつくって、徐々にでも結構ですから、年齢でもって労働市場から排除する、再就職の機会を失わせる、再挑戦しようとする生きがいをなくさせるようなこういうことを労働行政の中では私は是正すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) 年齢による差別といいますか、そういう不合理がないようにしていかなきゃならぬということはもうおっしゃるとおりでございまして、現実にも大変中高年齢者の方々、厳しい雇用失業情勢の中で、何で私じゃだめなのか、こういう御不満も多々あるところでございますし、現実に第三者的に見てもまあいいんじゃないのということも実際には多いんだろうと思っております。 そういうことでございますから、ハローワークにおきましても、個々の問題として年齢制限の問題について企業の方々にも御理解と御指導を申し上げておるわけでございます。 しかし、そうはいいましても、御本人の能力あるいはいろんな状況、また会社の状況等々いろんなことがございますから、これを民間職業紹介機関も含めて一定のルールにするということについてはもう少しコンセンサスを必要とするんではないかと思っております。そういう方向で、今窓口で大変な努力もさせておりますし、民間紹介機関にも御理解いただいて、今おっしゃったような方向での努力をさらに強化し、継続していくべきものと思っております。
○川橋幸子君 公共職業安定所のみならず、有料職業紹介の機会も通じてそのような秩序が実現できるように徐々に徐々に御努力いただく、ぜひその方向でお願いしたいと思いますが、徐々に徐々にの御努力を積み重ねて、目標としてはエージフリーといいましょうか、不合理な年齢だけによる差別というものをなくす、その方向でぜひ御努力いただきたいと思います。 以上、申し上げたのは、まず雇用のルールの中の募集、採用、入り口のところでございますが、今度やはり一方、出口の問題があるわけでございます。 先ほど午前中の参考人の質疑の件を申し上げましたけれども、参考人の方々、大勢は今回の企業の再編というのは、生産性の高いところに競争力を特化して新規に打って出ていこうとする、それは言葉じりではあるかもしれないけれども、現実にはリストラ、その暗い面の話がいろいろ強調されたわけでございます。そのとき、弁護士の方々がおられたものですから、現実に扱う事件としてはそういうものが事実として多いということを言われた上で、統計上も五十歳以上の男性の自殺者が一・五倍になったとか、それからかなり精神的な面でのストレスが大きくなるとか、過労死なんという話もこれは労働省の実際の統計として、あるいは労災の給付金の支給件数として数字として上がってくるわけですけれども、そういうものが出てくることがかなり紹介されていたわけでございます。 解雇のルールというのも、陰湿ないじめになったり、あるいは働く人々の中の間での過当競争というんでしょうか、そういう不信感を生ずるような状況が生じたり、そういう解雇というのはいかがなものだろうかというようなことを私は個人的には感覚的に思うところでございます。 こんなことを思っておりましたら、日経新聞の「経済教室」でございますけれども、解雇についても新たなルールが要るんじゃないだろうかと。例えばそこの中で挙げられておりましたのは、このようにグローバリゼーションの中で競争力強化が激化してまいりますと、解雇が非常に抑制的であればあるほど採用意欲がわかないというような、採用しにくくなってくるというのも企業の側の事情としてもあるというようなことがありました。 それから、個人の場合も、再就職の機会があり、そのための能力開発の機会があり、それに対する助成措置があった場合は、陰湿な職場の中でのいじめのような、そういう状況よりはむしろ個人の方の努力によってそこを脱出できる部分もあるんじゃないかと思います。 安易にいたずらに会社に、出ていけと、外に出すということを私申し上げているわけじゃなくて、もう一つその学者の方の主張を見ましても、何かルール、秩序としての解雇のルールがある、もちろん再就職機会があるということを条件にしてですが、そういうことを考えますと、解雇の問題については改めて今労働市場が激変している中で検討していかなければいけないことが多いのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) 今御紹介のあった話はどちらも正しいといいますか、あり得る、また現実化する事象だろうと思って聞いておりました。 当然、比較的経営側が自由に採用ができ、また働く方々もいろんな場面に次の機会がちゃんとあれば安心して働けるということは事実でございますから、そういうことをこれからも検討していかなければならぬと思いますけれども、しかし、雇用の問題は、現実に働く方々が働くわけでございますし、人間関係の問題でございますから、制度だけで片がつくというふうに考えるのはなかなか無理のあることなのではないかと思います。 そういう意味で、最小限のルールを決めるにしても、それが社会のいろいろな文化、伝統の中でうまく機能するようにするとなるとそれなりに難しい問題がたくさんある。そういう中で、今我々としては、個別の紛争事案について相談、援助といったような機能を強化して、個別にいろんな事情を踏まえた解決策を講ずるような体制を強化していくのが現時点では一番いいのではないか、このように考えて、今検討を進めさせていただいておるところでございます。
○川橋幸子君 今回民主党では、企業組織の再編を理由に解雇してはならない、その場合の企業組織の再編というのは、企業分割だけの話ではなくて、合併から営業譲渡から含めた全体の企業組織の再編を取り上げて、労働者の雇用が守られるように、労働条件が守られるように、そういう一項を入れてほしいという、こういう案を出しておったわけでございます。残念ながらそこの部分は共同修正の中では合意に至らず、むしろさまざま御答弁の中で、先ほども御質問させていただきましたが、合併、営業譲渡を含めて全体の企業再編の中での労働者保護の問題について立法上の措置を含めて御検討いただくということになっているわけでございます。 御検討いただくというのは、企業組織の再編に合わせての労働者保護問題について御検討いただくということでございますが、今まで私が述べましたような問題意識をそこに含めていただいて、やはり新しい二十一世紀に向けての雇用のルールということも考えていただきまして、この検討の際にはそうした新たな雇用ルールについても含めてあわせて検討すべきではないかと思いますけれども、そのようにしていただけますでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) このたびの法案の審議に際しまして、特に企業組織の再編に係る労働者保護の問題に関する研究会を設置して検討する、こういうように答弁させていただいておりますが、全体の雇用ルール、先生が御指摘のようにいろんなケースが考えられるわけでありまして、そのような雇用ルールというものを設定できればこれにこしたことはないなと第一義的には考えますが、じゃ果たして可能かどうかということになりますと、実はいろんな問題が起きてまいりまして、単純にそういうルールの確立ができるかどうか、こういうことになりますと、非常に問題が多うございますので、現在は、先生御承知のとおり、例えば裁判の四つの条件でどうだ、最終的には裁判に行かなきゃならない。こういうことになりますと、未組織の労働者の方々は行けない。何らか暫定的な措置ということになりますと、一応労働局で十二分に聞いて御相談させていただく。あるいは調停制度というようなものも今あるわけですが、これを強化するということも考えられるのではないかなと。 実はいろいろ思考をさせていただいている次第でございまして、こういうことを検討させながら、必要に応じましてまたふさわしい場所をつくりまして、先生がおっしゃるような新しい雇用ルールというものを設定できるかどうか、こういうことについては改めて検討が行われなきゃならないなと、このように考えております。
○川橋幸子君 今の大臣のお答えぶりですと、改めて別の場を設定して御検討くださる、そのようにお約束してくださったということで受けとめさせていただいてよろしゅうございますね。
○国務大臣(牧野隆守君) 先生おっしゃるような新たな雇用ルールのあり方につきましては、必要に応じまして、またそれにふさわしい場所というものはあるべきであって、こういう場所で検討が行われるべきではないかなと、こういうように考えております。
○川橋幸子君 聞きようによりましては大変力強い御答弁でございまして、ふさわしい場所も労働省の方でお考えいただきたいということもあわせて要望させていただきたいと思います。 それと、先ほど確認答弁の一問目で申し上げましたことも、ただ読み上げますとなかなかわかりにくいことかと思いますので、若干解説させていただきますと、初めに結論ありきで、いつも学者の顔ぶれも金太郎あめのように決まってしまうという、こういう批判もあるわけでございます。 それから、きょうは組合の方もたくさんお見えでございますけれども、一般国民の目から見ますと、労使間で、労使自治で物事を決めるといいましても、組織率がだんだん下がってくる、あるいはフルタイムの労働者の割合が下がって、派遣とかパートとか有期雇用の方々がふえてくる。こうなってきた場合に、働くということは雇用形態にかかわらず非常に人間にとっては基本的なことでございますので、一般国民の意見というのは労働関係の法律をつくる場合にはいつ意見が言えるんだろうか、こういう不満が出てきているわけでございます。 労使関係といいますと、今回の承継法もそうでございましたが、審議会がないので研究会でやられることが多うございます。ぜひ研究会の人選に当たりましては、さまざまな意見を代表する、労使の意見を代表する方々が人選されますとともに、広く一般の国民の意見を聞いてほしいといいますのが一番冒頭申し上げました確認答弁においての要望でございます。よろしくお願いしたいと思います。 ちょっと解説が長くなり過ぎまして、一つ飛ばしまして最後の問題に移らせていただきたいと思います。 先ほど来個別紛争の話が答弁の中に出てきているわけでございますけれども、最近、大変解雇とか賃金、退職金、労働条件をめぐる個別紛争が増加しております。その中での企業組織再編に基づく移籍がふえてくるわけでございますので、こうした個別紛争はさらに増していくことが予想されるわけでございます。こうした個別紛争の迅速な解決を図る、これは行政内部だけではなくて、ルールのあり方も含めまして、立法措置を含めて検討を行うべきではないかと思います。 それから、その場合、今申し上げましたように行政の内部ではなくてという意味は、若干関連がありますが、人権についての救済機関、人権についての紛争処理機関のあり方について国連の人権委員会の勧告にあるわけでございますが、パリでたまたま開かれた会議だったものでパリ原則と言われているものでございますけれども、行政、政府から独立した第三者機関である方が客観的でより信頼性が高まる、このようなことがあるわけでございます。 そうした問題は、私は労働関係の個別紛争には非常に親しむ条件ではないかと考えておりますので、簡易迅速な解決を図るためのそうした機関というものは第三者機関を設けるということを含めまして検討をすべきだと考えておりますが、この質問についてお伺いさせていただきます。
○政務次官(長勢甚遠君) 先ほども御答弁いたしましたように、個別紛争事案について相談、援助の体制を整備していかなければならぬという方針でおるわけでございまして、そのためにより簡易迅速に解決できるような制度の整備について立法措置も含めて鋭意検討を進めてまいりたい、こう思っております。 その際、都道府県労働局長による助言指導制度の拡充でございますとか、多様な内容の相談にワンストップサービスで対応するための労働基準監督署等の窓口体制の整備を図っていくとともに、中立公正な第三者機関である調停委員会による調停制度、こういうものの発展拡充ということも図っていきたい、これを検討してまいりたい、このように思っておるところでございます。
○川橋幸子君 こちらの要望を含めた質問に多分おこたえいただいた答弁をちょうだいしたのかなと思いますけれども、もう一回確認させていただきますと、行政から独立という意味は、例えば雇用機会均等法の調停委員会が現にございます。学識経験者で構成されておりまして、学識経験者だから当事者からは独立、インディペンデントで第三者と、このような言い方があるのですけれども、私が申し上げているのは、むしろ行政の外に置いてほしい、その方がより個人としては訴えやすいということですね。それを申し上げたのでございます。 調停委員会におきましては、均等法が改正されまして、双方同意でなくても片方が申し出れば調停を受けられることになりましたけれども、なかなか活用されていないと見るのが普通の見方のような気がいたします。一遍思い切って、行政の外の第三者機関というものを御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政務次官(長勢甚遠君) おっしゃっておられる意見も含めて検討させていただきたいと思いますが、今の時点でその方向であるとかないとかということは差し控えさせていただきたいと思います。よく研究させていただきます。
○川橋幸子君 含めて御検討をいただけるということで、ぜひよろしくお願いいたします。 時間が足りないと思いましたら、あと二分ございまして、やはりもう一問質問をやらせていただきたいと思います。 今回、会社分割に当たって労働契約が承継される人、されない人、ここの切り口が、主として従事するという方々と従としてその仕事に従事しているという、こういう基準が設けられまして、連れていかれる人、残留する人というんでしょうか、わかりやすく言いますとそういう判断、切り口が出てくるわけでございます。 この点につきましては省令及び指針の中で、特に労働者側から見れば企業の側の恣意的な判断で選別されるのではなくて、できる限り客観的な基準が欲しいというのが正直なところでございます。まず、客観的な基準を設けるべきではないかというのが一点でございます。 それからもう一点は、ただし、そうは言いましても、ゼネラリストといいましょうか、総務課関係の方とか人事の方とか、どの部門の営業に主として従事しているのか従として従事しているのか、その辺が判然としない方がいらっしゃるかと思います。そうした場合に、労使双方で満足が得られるようなそういう判断というのがどこにあるのだろうかと私は思うわけでございますが、そうした場合には過去の、今までのキャリアといいましょうか、従事していた仕事、直前の仕事だけではなくて、それまでの仕事などなどを客観的に考えることはもちろんでございますけれども、それに加えまして、やはり自分はどの仕事をやっているんだという帰属意識というんでしょうか、自分の仕事に対する職務意識というんでしょうか、そういう自己決定を尊重するということが付加的な要件として有効なのではないかと思いますが、この点についての御判断を、局長で結構ですので、伺わせていただいて、私の質問を終わります。
○政府参考人(澤田陽太郎君) まず、御質問の点、前段につきましては、労働省令におきましてできる限り客観的な基準を設け、かつ省令の基準の適用に当たりましては、指針でさらに具体的な方法などをできるだけ明確化したい、こう考えております。 それから、後段につきましては、いわゆるゼネラリストの問題についてでありますが、先生御指摘のように、その方のこれまでの職業経歴、こういうものを付加的な判断要素とすることも必要ではないかと私も思っております。 また、自己実現と先生おっしゃいましたか、そういう──自己決定ですね、自己決定のための会社への帰属意識だとか本人の意向、希望という問題につきましては、基準ないし省令で主か従かを詰めていきますが、非常に微妙なケースについて、どちらであるか微妙なケースについては、それによって労使紛争が起きるということを予防する観点から、会社において先生御指摘のような希望だとか帰属意識等を配慮するということがなされれば望ましいものだというふうに考えております。
○八田ひろ子君 日本共産党の八田ひろ子でございます。 二回目の質疑をさせていただきますが、衆議院段階で、分割会社は会社分割計画書の作成に当たり、労働者と協議する旨の修正が行われました。これは当然過ぎるほどの当たり前のことであります。午前中に行われました参考人質疑の中で、この労働者との事前協議の問題ということでぜひ確認をしてほしいという発言がありましたので、まず最初に伺います。 この事前協議でありますけれども、衆議院での答弁の中で、組合との協議が含まれる、こういう答弁がありました。これは当然のことでありまして、私どもも労働者を支援するためにも組合との協議というのは必要だというふうに思いますが、だからといって、これは労働者との協議はしなくてもいい、こういうふうに受け取れることはないでしょうねという確認でありましたので、これは当然のことながら労働組合との協議も含まれる、労働者と協議するのが当然である、こういうふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(小池信行君) これは議員修正にかかわる問題でございますので、法務省の立場といたしましては、その法律の客観的な解釈というところでお話をさせていただきます。 修正されましたその案は、これは事前に会社が労働者と協議するものとするという修正の条文でございまして、直接労働組合と協議するということを義務づけたものではございません。ただし、民法上、商法上の問題として申し上げれば、これは労働者がその協議につきまして代理人を選任するということは可能でございますし、その代理人の資格要件については特に制限がございませんので、個々の労働者の方が組合を代理人に選任した場合には、会社はその組合と協議すべきものになる、そういうふうに理解をしております。
○八田ひろ子君 参考人の御質疑は、そういう場合に労働者が事前協議をするという権利が消滅をする、なくなるということはないんですよねと。相まって、両方ともそういうふうに、無論労働者が指定すれば労働組合が代理人になることはできるんですけれども、あくまで労働者ですねと、そういう確認です。
○政府参考人(小池信行君) おっしゃるとおりでして、本人の協議をする権利が消滅するわけではございません。
○八田ひろ子君 はい、わかりました。 そこで、労働省に伺います。 この協議でありますけれども、いつ協議をするのか、協議の時期についてお示しをいただきたいと思うんです。商法並びに労働契約承継法案では、分割計画書を議決する株主総会の少なくとも二週間前に本店で閲覧させることになっています。先週それは法務省とも詰めさせていただいたんですけれども、そういうときに、あした公表をする、その前日に労働者へ、あなたは分割した会社のどこそこへ行ってもらいたい、こういう場合、事前協議と言えるんでしょうか。もしこれが事前協議と言うんでしたら、名ばかりの、形式だけになります。分割計画書はその会社自身が第三者の関与なくできるというのが確認されていますが、計画決定以前の作成過程の段階で労働者と協議すべきだと思いますが、その協議の時期、これをお示しください。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先生御質問の協議は、商法改正案附則第五条一項の労働者との協議のお話であろうと思いますので、その点について労働省の私が申し上げるのが適当かどうかわかりませんが、法務当局がおられるので改めて御答弁をいただく必要があろうかと思いますが、私の理解では、商法附則第五条の労働者との協議は、分割計画書が株主総会に向けて例えば株主に発出されるという前に協議なされることが通常だろうと、こう思っております。
○八田ひろ子君 先週聞きました法務省も、協議されるのが望ましいというふうにお答えをいただいております。協議するのは当然だというふうに私は、法務省であれ、労働省であれ、また労働者にとっては当然のことだと思うんです。 ところで、伺いたいのは、通知書を受け取ったときに、労働条件が違っていた、こういう場合は、会社に通知書の内容について正しく変更や訂正を求める権利というのは労働者にあると思うんですけれども、会社はこれに応じる義務もあると思いますが、それはいかがでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) まず大前提といたしまして、労働条件の変更を行うに当たりましては、例えば労働組合法による労使間の合意、あるいは民法の基本原則によります労働者当該個人の同意ということが必要とされております。したがいまして、会社分割のみを理由に使用者が一方的に労働条件の不利益変更を行うことはできません。 したがいまして、御指摘のケース、会社が例えば賃金、労働時間等の労働条件を一方的に切り下げて関係の労働者に通知したという場合につきましては、それはいわば誤った通知ということになりますので、労働者がその訂正を求めるという行為を行った場合には、使用者は速やかに訂正して再度通知することが必要になると考えております。
○八田ひろ子君 当然承継ですから、そうなると思います。 また、計画書作成段階で労働者は、先ほどの話ですけれども、協議を受けたとします。受けたとしても、会社が計画している設立会社に行けない場合がいろいろあると思います。午前中にも家族的責任というのでお話があったんですけれども、介護とか子供の保育とか、また遠隔地に行ける条件がないとか、こういうので断った場合ですね。ところが、計画書に載って通知が来た、これは主たる業務の労働者というふうに考えていただくんですけれども、こういう場合はどうなるんでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 承継される営業に主として従事している労働者につきましては、分割計画書に記載されれば、それは当然承継ということで、法律上は本人の意思にかかわらず当然に承継される、移るということになりますので、御本人がどうしても行きたくないと……
○八田ひろ子君 行けない。
○政府参考人(澤田陽太郎君) いろんな事情で行けないという御本人の意思により、その結果、行きたくないということを会社に意思表示した場合にどうなるかですが、いろいろな選択肢があろうと思います。 一つは、会社が、これは当然承継であるからといって分割計画書どおり分割計画書にその本人を承継対象者として載せるという場合が起きます。その場合には、本人がどう言おうと、分割の効力が発生した時点で設立会社等に雇用契約が移るということになります。 それから、会社がそうした措置をとらずに、御本人と事実上いろいろ話し合って、本人が移りたくないという意思を会社が例えば尊重して、それでは残留するというふうに会社が了解することもその労働者との協議の中であり得る話であります。 あるいは、話し合いがつかない場合に、御本人の選択として希望退職という形で退職することもあり得るだろうと、こう思っております。 あるいは、一番これは不幸なケースになると思いますが、どうしても本人と会社との話し合いがつかないという場合に、移りたくもない、配置転換も嫌だということになった場合には、会社としては解雇をするということもあり得ますが、その場合にはその解雇通告の合理性ということが争われる可能性がありますので、そうしたリスクを現実の場合に会社が負うかどうかはこれまたいろんな状況判断があろうかと思います。
○八田ひろ子君 話し合いがついて実際にもとの職場に戻るという場合は、これは全く問題がないわけです。その他の場合なんですけれども、附帯決議とか修正なんかでありまして、労働者の意向を尊重して理解と協力を得る努力という、両方の法律からそういうのがあるわけなんですけれども、それはどうなるんでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 繰り返しになりますが、商法附則第五条の協議は、法務当局からのこれまでの御答弁にありますように、協議でありまして、最終的な合意までを求めるものではないということになりますと、本人の意思は最終的には反映されないということがあるという点であります。 それから、私どもの承継法第七条の「労働者の理解と協力を得るよう努めるもの」ということにつきましては、これは会社分割に当たって理解と協力を得るということでありまして、商法附則第五条の「分割に伴う労働契約の承継に関して」という協議の中身よりは広いというふうに私ども考えておりまして、例えばこれは会社分割をする際に労使間でどういう話し合いをするか、どういうことを協議するか、そういうことをいわば労使間でそういう枠組みをつくる、そうした意味で十分な理解と協力を得るということがあろうかと思います。 したがいまして、七条の「理解と協力を得る」という範囲で考えますと、これまた個々の労働者の意向が完全に反映されないからといって、七条の法文の趣旨に反したということにはならないというふうに私どもは考えております。
○八田ひろ子君 午前中にも話がありましたけれども、ILO百五十六号条約の家庭責任とか、労働者が勝手に理由をつけて行けないという場合はともかくとして、そういったもの、あるいは国内法でも男女雇用機会均等法とかいろいろありますけれども、そういう配慮義務というのが一体こういう場合にどういうふうに配慮されるのか、それをお示しいただきたいんです。
○政府参考人(澤田陽太郎君) ILOの百五十六号条約につきましては我が国が批准をしておりますので、国内法制としては憲法、育児・介護休業法等によってそれは担保されているというところがまずございます。 本件の労働契約承継法案につきましては、この法案の趣旨、目的はあくまでも労働契約承継のルールを定めるというものでございまして、ILOの第百五十六号条約が要請しております家族的責任を有する者についての配慮という観点は承継法案とは直接的な関係は有していないというふうに私どもは考えております。 百五十六号条約の要請につきましては、ではどういう形で配慮するかという点を考えますと、承継法案の実際の運用に際しまして労使間で自主的に話し合う問題としてこの家庭責任を有する者についての配慮は考慮されるということが適当ではないかというふうに考えております。
○八田ひろ子君 私は、明文化をした方がいいとは思いますけれども、今ある法律が、大臣の趣旨説明の中でも労働者を保護するというふうに言われるんだから、どういうふうに担保されるのかを聞いたわけです。 今、最終的に何かもとに戻ったように、労使の協議に生かされるんだというふうにおっしゃるんですけれども、最初に私が質問をしたときには、いろいろあるけれども、最終的に本人は希望退職をするとか、あるいはどうしても移りたくないという場合は解雇通告になるとか、結局、本人の、話をするという中身ではなくて、やめさせられるということの方が多かったじゃないですか。さっき四つほどお示しになったんですけれども、協議がつかない場合は全部やめさせられるんじゃないでしょうか。 実は午前中の参考人質疑の中で、局長が衆議院で、自己の意思に反して断った場合、これは自己退職だというふうに再三答弁をされているものですから、そのことについて伺ったんですけれども、弁護士であります参考人がお二人とも、その答弁はおかしいんじゃないかと。自己の意思に反して自己退職ということは法律上あり得ない、正確な答弁が必要なんじゃないかと、お二人ともおっしゃっていました。 今も希望退職というふうに言われるんですけれども、私が伺っているのは、本人はやめたくない、だけど行けない、そういうときにどうしたらいいのかと。それなのに、自己退職とか希望退職。全然希望していないんですよ。だから、そういう答弁は衆議院も含めて正確にお答え直していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 本人が行きたくない、やめたくないという御意思の状況のもとで、労使が話し合ってどういう形で結論が出るかという点については、幾つかのパターンがあり得ると申し上げました。私は、そのうちのかなりの現実に行われる形として、例えば労働者側から見て退職するのは不本意である、しかしながら解雇という形で退職する、解雇という形で労働契約が切れた場合には、例えば再就職する場合に不利になるとか、いろいろあるわけです。ですから、現実の結果として、希望退職という形があるということを僕は衆議院でも申し上げたわけで、解雇という形が絶対ないとは申しません。解雇という形はそれはあり得ます。 ただ、その場合には、先ほど申しましたように、本人が客観的な事情で私は移れないんだということを主張するとすれば、使用者側が解雇した場合にその合理性を争うということが十分あり得ますので、そういう意味で明らかに解雇という形でこれはできるんだということは申し上げられませんので、私は衆議院段階ではあえて自己退職という形が結果としてあるという点を強調したところでございます。
○八田ひろ子君 そうしますと、先日雇用保険の審議もやってきたわけなんですけれども、それは、今希望退職とか自己都合退職と言われたんですが、会社都合ではなくて、雇用保険の権利が大変制限される自己都合退職しか、解雇か自己都合退職かその二つしか道がないというふうにおっしゃるんですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) そうではなくて、解雇ということを解雇を言い渡された当該労働者が認めれば、それは会社による解雇ということがあるかもしれません、そこはもう客観的に判断をするよりしようがないだろうというふうに私は考えております。
○八田ひろ子君 会社都合はないんですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) ですから、その解雇ということが会社都合によるものなのかどうかという争いが十分起き得るので、そこは個々具体的なケースに応じて判断される問題であるというふうに私は考えております。
○八田ひろ子君 実際に、私さっきILOの百五十六号条約を言いましたけれども、家庭的責任、例えば子供を保育する場合、三十分勤務時間がずれても実際には保育園に預けられなくなってしまうとか、二重保育で大変なお金がかかるとか、また通勤時間が長くなって介護ができないとかという切実な問題があるわけですよね。ところが、局長はさっき何とおっしゃったかというと、これは合意を求める協議ではないんだというふうにおっしゃるわけですよね。私は、これは成文化はされていませんけれども、合意を求める誠実な協議というのが必要だというふうに思うんです。だから、そこのところがどうなのか。 それから、家庭責任を持つ男女労働者に対する問題というのは本当に深刻なんですけれども、どうしてもだめだったら、それは会社が名前を向こうへ行くのに載せなければ別に今あるところで働けるんですから、そういう協議ができると思いますし、よしんばできなくたってそれは会社都合になるのに、なぜ自己都合になるのか私はわからないんですけれども。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今、先生御指摘の点は私もそういうことが望ましいし、例えば承継法第七条の労働省令におきまして、大臣からも過半数労働組合と協議することなどであると答弁しておりますように、労使間で協議をする際にそういう問題をどう配慮してやっていくかということは十分俎上に上げてやっていただきたいと思いますが、法律上ぎりぎりの話としては、誠意を尽くして協議をしてもなお合意に達しないという場合がありますので、そういう場合は承継法のまさに包括承継というルールでいくという選択を使用者がすることは、これは法律上できるという点を申し上げている点でございます。
○八田ひろ子君 いろいろとおっしゃるんですけれども、実際は労働者の都合を会社側が善意に考えてくれるかどうかわからない。善意に考えてくれない場合は結局は解雇に行ってしまうということになって、そうなれば私は解雇権の乱用という問題になってくるんじゃないかと思うんですが、そうですと言われてもそれでまた法廷で闘うなんていったらもうえらいことになるものですから、私は、こういう紛争を未然に防ぐには実際に会社が事前に本人の同意を得るという義務、これが必要だというふうに思います。 そこで、吉川春子議員においでいただいておりますので、吉川議員の提出している法案ではこれはどういうふうに整理されているのか、御説明ください。
○委員以外の議員(吉川春子君) 私たちの法案は、企業分割、営業譲渡、移転によって労働者を異動させる場合には、本人同意を原則といたしまして、労働条件も従前どおり移転することとしております。その際、本人同意を担保するために、分割計画書の作成、組合、当該労働者との事前協議、通知を義務づけ、承継、残留いずれの場合にも労働者の異議申し立て権を保障しております。 根拠は、民法の六百二十五条、そして憲法の生存権規定です。 民法六百二十五条一項は、「使用者ハ労務者ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス」としています。日本評論社のコンメンタール、玉置先生、北村先生の執筆による部分によりますと、本条の趣旨は、資本制経済機構のもとにおける雇用契約は、労働者本人の商品たる労働力の売買であるにしても、労働力は労働人格と切り離せないものであり、したがって、当事者の人間関係の濃厚な契約の一つであるから、契約当事者の地位ないし権利義務は一身専属的なものとして規定したものだと。そして、それでは一身専属性ということは何かということについて、本条一項は、使用者がかわればその権利の行使の仕方に差異を来し、したがって、労働者に不利益を与えるという理由で、労働者の承諾なしに使用者がその権利を第三者に譲渡するということを禁じたものであり、債権の譲渡性の例外の一つであると、このように説明されております。 政府案は、会社分割によって労働債権も当然に包括承継されるから労働者の承諾は必要ないとしていますけれども、私も再三質問いたしましたけれども、転籍について本人同意が必要というのがこれまで労働省の一貫した立場でした。また、憲法は生存権規定を設けまして、二十五条以下ですけれども、労基法等従来の民法よりさらに労働者の権利を手厚く保護する規定を制定しています。 こうした経緯から見ても、当然に労働者の同意権を保障すべきだと考えますし、また、八田議員の御指摘のように、本人同意を保障することによってトラブルを未然に防止するということができるものと考えております。 以上です。
○八田ひろ子君 ありがとうございました。 国民の常識から考えれば、今御説明の吉川議員の提案どおりではないかと私は思うわけなんです。企業再編に当たって労働者保護を明記するこういう法律やルールづくりというのはどうしても必要だと思うんです。 なぜこの閣法に民法六百二十五条の規定である労働者の本人同意の原則というのが没却されたのか、いま一度御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 労働契約承継法案におきましては、承継される営業に主として従事する労働者につきましては分割計画書等の記載に従って当然に承継されるということになっております。 これは、一つは、商法等改正案におきます会社の分割制度自身が合併と同じく包括承継であるという法律構成になっておりますので、当然分割計画書等に記載される権利義務の中に労働契約が入りますので、それとの整合性において当然承継ということが要請されます。 もう一つは、現実に承継される労働者について考えてみますと、合併と同様、雇用労働条件が維持されるということ、それからもう一つは、承継後もほとんどの場合、分割以前についていた職務と同じ職務に引き続きつくことが予想されるということで、実質的な不利益はほとんどないという点が労働承継法案においてこうした取り扱いをした第二の理由になります。 また、会社分割を円滑にかつ容易に行い、それとともに必要な労働者保護を図るというこちらの要請からも、こうした包括承継ということが必要であると判断した次第であります。
○八田ひろ子君 労働者の側からいきますと、今度の法律が想定しております分割というのはいろんな形の分割がありまして、全く違う会社に行くわけでありますので、当然どちらに分類をされようと同意が必要であるというふうに思いますし、本人同意が義務づけてあれば今の局長のような苦しい言いわけをしなくても済むわけですよね。 そこで伺いますが、提案されている法案の想定されている範囲でも、こういうトラブル、企業組織の再編のみを理由とした解雇の未然防止ということは労働省は対応されると思いますが、従来型でない担保というんですか、そういうのがあるんでしょうか。お示しください。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 従来型でない担保という点でお話を申しますと、現在、地方労働局長の紛争解決援助制度というもので、労働条件に係る個別の紛争につきましては指導、相談、援助という形のシステムを持っておりますが、本法案審議の中でいろいろ御指摘いただいた点も踏まえまして、大臣からもお答えしておりますように、その制度を拡充したいということで、例えば労働条件に関する個別紛争だけではなくて、まさに労働契約そのものに係る個別紛争につきましても紛争解決援助の対象にするということも含めて、できるだけ早い機会により充実した個別紛争解決援助制度を構築したいということで現在努力をしているところでございます。
○八田ひろ子君 現在努力中で中身はまだわからないと。それでは、不幸にしてこういうトラブルが発生して解雇に至った場合に、労働者からの訴えで労基法百五条の三に規定しておりますような紛争解決の援助というのはきちんとできるわけですね。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 現在の紛争解決援助制度は、労働条件に関する事項ということになっております。したがいまして、今回の労働契約の承継そのものについての紛争については、残念ながら現在の制度では対象になっておりません。したがいまして、そこを対象化するように制度の拡充を現在検討しているところでございます。
○八田ひろ子君 解雇をめぐる紛争の場合は百五条の三というので今でも受けられるかと思うんですけれども、それは新しく変えなければならないということなんですか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 解雇の問題も、労働条件としてとらえ得る解雇というアプローチがございまして、そうした観点で、例えば整理解雇された場合にどうか、あるいは個々の解雇について合理性があるかという点で、労働条件の一環として取り扱う限りにおいては現在もやっております。 ただ、今回の労働契約そのものの承継という話になりますと、労働条件そのものというところで読めるかどうか非常に微妙でありまして、私どもは、むしろそれは明らかに労働条件とは別な範疇として明確に紛争解決援助制度の対象にした方がはっきりするだろうというふうに考えているところであります。
○八田ひろ子君 今後それがはっきりと救済できるように変えていきたいというふうな御答弁で、この法案は伺えば伺うほど何か、実際には決まっていないこと、そして本当にそれが担保されるのかというのが不安になってきますし、これはそもそも労働者を守るというルールが、大きな穴があいているというふうに言わざるを得ないんです。 今は労働契約の問題を伺ってきたんですが、そのほかに労働契約にない問題についても残り時間で伺っていきたいと思います。 まず、法務省に伺いたいんですが、いわゆる財形貯蓄、勤労者財産形成促進法に基づくもの、これは当然承継でしょうか。分割計画書にはこういうものの記載があるのかどうか。こういう問題を労働省とはどういう協議がされたのか。お示しください。
○政府参考人(小池信行君) 会社分割によりまして分割をする会社から設立会社あるいは吸収会社に移転いたしますのは、その分割会社に属する権利義務でございます。したがいまして、分割する会社の権利義務に属しないものはこれは承継の対象にはならないということになるわけでございます。 今、先生が御指摘された財形貯蓄における持ち家転貸融資、これが承継の対象になるかどうかという問題は、これはその根拠法令の規定あるいはその解釈の問題でございまして、法務省の方からちょっと御答弁申し上げにくい問題でございます。
○八田ひろ子君 労働省とは論議がされていないようですが、労働省、財形貯蓄による今の持ち家転貸融資ですが、具体的に実際はどうなるんでしょうか。労働者の側からいいますと、ローンを組んでいてそして突然会社が分割されて新しい会社に行く、そこに財形貯蓄があるのかないのかはともかくとして、ローンを分割会社に全部返してからじゃないと行っちゃいかぬというわけにはいきませんし、当然設立会社で引き続き同じように取り扱いをされるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 分割会社において既に財形の持ち家転貸融資を受けている人に限っていえば、その方が設立会社に移った、承継された場合においても、設立会社に財形制度が導入されていようがいまいが、既に融資を受けているものについての返済行為、これは金融機関に返済をするという行為でありまして、これは当然ながら引き続きできるといいますか、するということになります。
○八田ひろ子君 貯蓄の方は。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 財形貯蓄制度は、財形法上の仕組みとしては金融機関と財形貯蓄をしようとする勤労者が契約を結ぶ、企業は天引きとかいう事務行為について援助をするという、こういう法律上の仕組みになっております。したがいまして、契約の当事者は金融機関と勤労者でありますので、この財形貯蓄制度そのものが会社分割による承継の対象にはならないというふうに考えております。
○八田ひろ子君 そうですか。それでは、健康保険組合や厚生年金基金というのは当然承継になるんでしょうか。健保組合の付加給付だとか年金基金ですね、これは当然承継の中に入るのか、法務省に伺います。
○政府参考人(矢野朝水君) 今御指摘のありました厚生年金基金あるいは健康保険組合でございますけれども、これは直接会社が当事者となって実施しているものではございませんで、会社とは別の法人組織でやっている事業でございます。したがいまして、会社が分割された場合には加入者資格というのは当然承継するということにはならないわけでございます。
○八田ひろ子君 今、健康保険組合とか厚生年金基金の適用事業所数とか適用労働者数は、その概要をお示しいただきたいですし、実際にはそれが承継されないとすると、例えば基金なんかではどんなふうな不利益になるのか、あわせてお示しください。
○政府参考人(矢野朝水君) 厚生年金基金ですと、今、約一千二百万人の方が加入されております。それから、承継されないということになりまして資格を失うということになりますと、これはちょっと面倒くさいんですけれども、厚生年金相当分につきましては、厚生年金基金連合会に原資を移管いたしまして厚生年金基金連合会の方から年金を支給する、こういうことになります。それから上乗せ部分につきましては、これは一時金で各加入員に分割するということになるわけでございます。 それから、私は今、資格は当然に承継されないと申し上げましたけれども、一定の場合には加入員資格を取得できる場合ももちろんあるわけでございます。 例えば、会社の分割によりまして新たに会社が設立される場合に、当該新設会社が引き続き基金とか健保組合を構成する事業所になる、こういった場合は資格は生じます。あるいは新設会社が新たに基金とか健保組合を設立する、こういった場合も当然加入員となるわけでございます。 それからまた、吸収分割の場合でございますけれども、これは他の会社に承継される場合に、その会社に基金とか健保組合が既にある、こういった場合には当該基金とか健保組合に加入することができるということでございます。
○八田ひろ子君 先ほど私は健康保険とか厚生年金基金のことを法務省に伺って御答弁がなかったんですけれども、実際の労働者にとっては非常に関係の深いものがあるんですけれども、そういうのは労働契約に含まれない、そういうふうなお考えがあるのか。それとも、そういうことは全く論外というか考えてはいない、議論とか論議の外にあったのかどうか。先ほどの御答弁では労働省ともそういうお話はないようでありますけれども、そこのところはどうなっているんでしょうか、商法の方で。
○政府参考人(小池信行君) 会社分割による包括承継という効果によりまして、従前の使用者と労働者の間の契約関係、これは労働契約上の地位を含めてすべて承継をされるということになるわけでございます。その労働契約上の地位に一体何が含まれることになるのかという解釈の問題ということになろうかと思います。 今御指摘のようなこういう事柄、事項につきましては、これは直接労働契約には含まれるものではないであろうというふうに考えるわけでございますが、ただこの点、会社分割という新しい法制をつくるといたしますと、これはほかの省庁の所管する法律やそれから法の運用にかなり大きな影響を与えるということが当然予想されたわけでございますので、私どもの方はこの法案の説明会というのを昨年の十二月半ばに開いて各省庁の担当官においでいただいて分割法制の中身を説明してございますし、さらに個別の問題につきまして各省庁からお問い合わせがあったり、あるいは書面で御回答申し上げたりというようなことはしているわけでございます。
○八田ひろ子君 そうしますと、当然労働省はそういうことも承知をしているというふうに受け取ってよろしいんでしょうか。
○政府参考人(小池信行君) 私の方からお答えするべきものではないかもしれませんが、少なくとも会社分割法制というのはこういうものだというその趣旨の説明はさせていただいておりますので、それがそれぞれの所管業務にどういう影響を及ぼすことになるのかという点については各省庁でお考えをいただいたものというふうに思っております。
○八田ひろ子君 厚生省にさっき中途半端にお伺いして悪かったんですけれども、そうしますと、先ほどの御答弁ですけれども、新しい会社に年金基金とか同じ健康保険組合ができればいいという、健保組合の付加給付ですけれども、実際には今後この分割法によって分割された企業というのは従来ある健康保険組合と同じものをつくるとかあるいは厚生年金基金そのものをつくるとか、そういうことが一般的には想定されるんでしょうか。
○政府参考人(矢野朝水君) まず、年金基金の場合で申し上げますと、近年非常に運営が厳しくなっております。それから、健保組合でも老人医療の拠出金とかそういうことがございまして、なかなかその新設というのは容易でないということを伺っているわけでございます。 こういった基金とか健保組合をつくるということは、その企業の労使の判断でお決めいただくことでございまして、私どもがとやかく言う問題ではないんですけれども、一般的に申し上げますと、最近は状況が非常に厳しいということは言えると思います。
○八田ひろ子君 労使で決めるとおっしゃいますけれども、労働者は通知書をもらった段階では新しい会社にまだ行っていないんですから、労使で決めようがない状況になるのじゃないかというふうに思うんです。労働省に伺いますが、それはあらかじめそういうことも相談をするんでしょうか。 それから、厚生省にさっき質問をしてお答えがなかったんですが、厚生年金基金が新しい職場になかった、今まではあった人がなかったといいますけれども、基金の分というのは大体今平均するとどれぐらい給付のときに上積みに月額なるんでしょうか。 両方に伺います。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 先生御指摘の、例えば健康保険組合の組合員資格とか厚生年金基金の受給権という問題は、それ自身労働契約の権利義務ではないにしても、労働者にとりましては大変利害関係のあることであります。 したがいまして、承継法の第七条で、国会で御修正いただきました、分割に当たって労働者の理解と協力を得るよう努めること、こういう中でそうした問題も労使間で十分どうしていくかということを話し合っていただくことを大いに期待し、またそれがなされることが望ましいと、こう思っております。
○政府参考人(矢野朝水君) 厚生年金基金の上乗せ給付につきましては、基金による格差というのは非常に大きいわけでございます。非常に上積みの厚い基金、それから非常に低い基金、いろいろございまして、単純に平均いたしますと月額三万円弱程度でございます。
○八田ひろ子君 月額平均して三万円もの上乗せ給付というのが、会社分割という企業の利益追求のための法律によって受け取ることができなくなる可能性があるというお答えでありました。 健康保険組合でいいますと、海の家とか山の家を利用するというのがありまして、これも家族で利用するときに、ホテルとか民間を使うよりは非常に割安ということでありまして、そういうものの問題も実際に働く人にとっては大変大きい問題ですね。先ほど局長はそういうことを事前に話をするのが望ましいというふうにおっしゃいましたけれども、実際にはこれ、先ほど厚生省はそれぞれ別だからというお答えもあったわけで、非常に心配なんです。 そこで、私の時間がもう終わるものですから、最後に大臣に一言ぜひ御決意をいただきたいと思うんですけれども、この法案というのは労働契約を当然承継するというふうにずっと言われ続けてきましたけれども、実際には労働者が今受けているいろんな労働条件あるいはその周辺的なもの、局長も労働条件に準ずるというふうにおっしゃった、そういうものを大きく、きょうは私はほんの一部しか時間もありませんので質問しておりませんでしたけれども、切り下げる危険性があるんですよね。 労働者や家族の健康を維持して、老後生活の安定のために、少なくとも健保組合だとか年金基金とかあるいは財形の貯蓄の方も引き継がれるようにするべきで、ぜひ大臣としても関係閣僚と協議をしていただいて、そういうものが引き継がれるような、安心できるような、そういう施策を講じていただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(牧野隆守君) 今、話を、討論を聞いておりましたら、法律の法域が違うんだとかあるいは所管が違うとか、そういう形で論議がなされておりましたが、私としましては、やっぱり労働者保護のためにこういう法律をつくるわけでありますから、会社分割に対して労働者に大きな不利益が生じないように、そのようなことが考えられる場合は、私としましては労働者保護の観点から厚生大臣と協議いたしたいと、こう考えております。
○八田ひろ子君 ありがとうございました。
○大脇雅子君 前回に引き続きましてさまざまな点を確認させていただきたいと思います。 会社分割にかかわって使用される営業の全部または一部の概念規定について、定義の定め方によって労働関係の一部を除外することがあってはならないという考えから前回質問させていただきました。 営業概念については、最高裁判所等の判例を参考にしながら、事業の組織的経済活動が有機的一体性を持って機能するための物的財産に限らず雇用されている労働者も含むという答弁として受けとめましたが、どうでしょうか。 本法三条によりますと、承継される営業に主として従事する労働者につきましては分割計画書等の記載で承継を認めているわけですが、では、分割計画書等への記載の仕方として、記載形式等については具体的にどのように考えていられるのでしょうか。
○政府参考人(小池信行君) 会社分割の対象となります営業には、物的財産だけでなくて、それが組織的、有機的に機能するための必要な労働者も含まれる、これは委員御指摘のとおりでございます。 これは分割計画書に記載することによりまして承継をされるということになるわけでありますが、その記載の方法でございます。これは抽象的に言えば、どういう労働関係が承継されることになるのか、それを特定できるように記載をするということになるわけでございます。 具体的にはその個人名を記載すればこれは最も明確になるわけでございますが、必ずしもその個人を記載しなければならないというふうには考えておりませんで、例えばある一つの工場や一つの支店がまとまった独立の営業としての単位を持っている、そういう機能を果たしているという場合には、例えば○○工場に勤務する労働者あるいは○○支店に勤務する労働者というような記載の仕方でも十分特定に足りるかなというふうに思っております。
○大脇雅子君 会社分割に関しては、債権者の権利として分割無効の訴えが定められております。 まず、通常の債権者の分割の無効を主張する場合というのは、具体的にはどのような無効原因を想定しているのでしょうか。 また、分割計画書等の情報の開示がなされた株主総会の二週間前から株主総会六カ月後の閲覧期間中で、どのような手続と分割及び設立会社の対応があるのでしょうか。 無効と判断された場合の対応はどのようになるのでしょうか。
○政府参考人(小池信行君) 御質問は三点あったというふうに理解をしております。 まず、債権者が分割無効を主張し得る場合はどういう場合かということでございますが、分割を承認しない債権者は、分割無効の事由があるときには訴えをもってその効力を争うことができる、つまり無効を主張することができるということになるわけでございますが。 考えられますのは、例えば会社が債権者に対して官報による告示をしなかった、そういう手続を怠ったというような場合。それから、債権者が分割について異議を述べた後に、会社がその債権者を害するおそれがあるにもかかわらずそのおそれがないとして弁済や担保の提供などの行為をしなかったという場合。さらには、事前開示が義務づけられております債務の履行の見込みがあること及びその理由を記載した書面、これに虚偽の記載がされている、つまりそこに表示された財産の評価額の判断を誤らせるようなそういう表示があった場合。これは債権者が分割無効の訴えをすることができるというふうに考えております。 二番目に、株主総会の二週間前、これはいわゆる事前備え置き書面が本店に備え置ける日でございますが、それから総会の六カ月後までに債権者がどのような手続をとるのか、会社がどう対応するかという御質問だったと思います。 これは幾つかございまして、まず、会社は株主総会の開催の日の二週間前から分割計画書等の書面を備え置かなければならない。債権者はいつでもこれを閲覧することができるということになります。 それから、会社は株主総会で会社分割の承認議決がされた日から二週間以内に債権者に対しまして、分割にもし異議があれば、一定の期間、これは一カ月を下ることができないとされておりますが、その期間内に異議を述べるべきと、そういう旨を官報をもって公告する、かつ、その知れている債権者については個別に催告をしなければならないということになっております。 債権者は、これを受けて、もし分割に異議があるならば異議を申述することができる。その場合には、その債権者を害するおそれがない限りは、その会社の方はその債権者に対して弁済をしたりあるいは担保を提供したりしなければならない、そういうような対応があるということになるわけでございます。 最後に、分割が無効になった場合でございますが、これは、その分割の無効の判決が確定するまでの間に形成された第三者との間の法律関係はこれは影響を受けない、つまり遡及効がないということになりまして、将来にわたって分割の効力が否定されるということになるわけでございます。 その場合、では、既存に生じた法律関係が一体、債権や債務がどうなるかということにつきましては、分割が新設の分割であるのかそれとも吸収型分割であるのかということによって変わってまいりまして、新設型の分割であります場合には、その分割無効の判決までに承継会社が取得いたしました財産はこれは分割した会社の方の所有に属するということになりますし、それから負担した債務もまたその分割した方の会社が負担をするということになります。それから、吸収分割であります場合には、これはその承継した会社が取得した財産は両方の会社の共有ということになりますし、負担した債務については双方の会社が連帯債務を負う、そういう関係になります。
○大脇雅子君 そうしますと、労働者は無効になったときにはどういう取り扱いを受けることになるのか。また、労働者が分割無効を主張できる場合にどのような場合があるんでしょうか。例えば未払い賃金の仮払いを求めて労働委員会に救済申し立てをした場合や、そしてバックペイを命ずる地労委の救済命令が出た場合など、無効を主張できるんでしょうか、債権者として。
○政府参考人(小池信行君) 労働者の未払い賃金債権であるとか、あるいは既に勤務した期間に対応する退職金債権であるとか、あるいは社内預金債権であるとか、そういう債権を持っている場合には、これは債権者として分割無効の訴えを提起することができるということになります。 無効の事由としては、分割手続の瑕疵が重大であるという場合にはこれは無効の訴えの提起が可能でございます。 それで、問題は、その訴えを提起する際に、そもそも労働者がその主張している債権を持っているかどうかということについて会社との間で争いがあるというケースがあり得るわけでございます。しかし、その場合でも訴えの提起をすることは可能でございます。しかし、最終的に分割無効の判決を得るためには、これはその訴訟の手続の中で債権の存在することが認定されなければならないということになります。ですから、例えば労働委員会に救済命令の申し立てをしている、これは現にその債権の存在に争いがあるという場合であろうと思いますが、その場合でも訴えの提起は可能でございます。しかし、今申しましたとおり、最終的には債権の認定が必要と。 それから、労働委員会から既にバックペイを命ずる救済命令が出ているというような場合には、その分割無効の訴訟の中で債権の存在が最終的に認められる蓋然性がかなり高いだろうというふうに思います。
○大脇雅子君 分割の効果が遡及効がないということになると、非常に複雑な労働関係が、労使の関係が出てくるのではないかというふうに思いますが、これはちょっとペダンティック過ぎる質問かもしれませんが、営業に主として従事しているとして設立会社等へ移る旨の事前通知を受けた場合に、労働者自身は分割による設立会社とか吸収会社へ行くことを希望しない、残留したい、したがって労働者の自分の判断では営業に従として従事しているんだというふうに考えた場合に、労働者が分割会社への残留を求めることができるでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 主として従としてという判断基準は省令及び指針で定め、運用上明らかにすると申し上げましたが、それを一義的には使用者が見てこの労働者はどちらに当たるか判断をします。その際に、労働者と使用者の見解が違ったという場合は、これはできるだけよく話し合っていただいて、話し合いを通じて決めてもらうことが一番いいわけですが、ぎりぎりの話になりますと、最終的には裁判所の判断を待つということになろうかと思います。
○大脇雅子君 営業に従事する基準として主従の判断基準というのが用いられるわけですが、例えば労働者の従事すべき営業への配置転換の時期とか、あるいは研修や教育訓練を受ける時期、そしてそれらを利用して労働者へ差別的な取り扱いと選別がされた場合、複数組合併存下における不当労働行為など、労働法上違法あるいは意図的なそういう処遇が行われる可能性があります。どの点で判断をするのかというような点で、労働者が配転について異議を申し出る機会が主従のそうした移動の中で機会を失うことがあってはいけないのではないか。 先ほど、参考人のところでも、事前には多様な対応があって、計画書作成前の会社の行為について合理性のない配転とか不当な動機や著しい不利益を伴うようなそういう配転によって問題が起きるので、例えばEUの指令などでは一年前というような規制があるんだよという御意見がありましたが、この点はどのように解釈、運用されるおつもりでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今御指摘の、例えば不当労働行為に当たるような配転があったというケースになりますれば、例えば労働委員会に救済を申し出たり裁判所に訴えたりということになって、そうしたケースでは労働組合法に照らし、あるいは配転に関する判例法理に照らして労働委員会あるいは裁判所において無効という決定がなされることも十分あるわけです。そうした場合には、無効の決定を受け、使用者が労働省令、指針等をよくよく見て労働者について改めて主従の判断をするということになります。 この点につきましては、先生御指摘のようにEU指令では一年間といういわば保護規定があるわけですが、今回の承継法案の策定に当たっては、今申しましたように従来の仕組みで処理をしていくことが当面適当ではないかということで、特段の措置は講じなかったところであります。
○大脇雅子君 そうしますと、ともかく今言われたとおり、省令とか指針をしっかりつくっていただくことによって、紛争が起きないように、そして労働者の権利が侵害されないようにということが重要であろうと思われますので、この点を十分留意しておつくりいただきたいというふうに思います。 次は、会社分割によって包括承継される労働契約の労働条件は、新規設立会社の場合には分割会社の就業規則が新たに作成されても労働条件がそのまま維持されなければならないのではないかと考えますが、どうでしょうか。新たに作成された就業規則の内容が不利益変更された場合が生じるとすれば、労働契約が包括承継されるという意味がなくなってしまうのではないかというふうに思います。この点についても、一年以内に不利益変更をすることが許されないというEU指令もあるわけですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 今回、労働契約承継法案の性格として会社分割制度そのものと同じように包括承継ということをたびたび御説明いたしておりますが、それから当然の帰結として、分割会社から設立会社等に承継された労働契約については会社分割の効力発生時においてその内容を維持したまま承継されるということになります。そうした意味では、分割会社における就業規則が分割時点においてそのまま設立会社等に承継されるということになりますが、一方、就業規則によります労働条件の不利益変更という問題がございまして、それにつきましてはこれまで最高裁で判例が幾つか出され、それの考えに従って判断されていくことになろうかと思います。 具体的に申しますと、最高裁判例におきましては、就業規則の変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されないということがまずはっきりしております。そうした大枠の中ではありますが、当該変更された就業規則が合理的なものであるということが客観的に言える場合には、客観的にと申しますには、当該事業場のいろんな事情を総合判断して合理的であるというものである限りについて、個々の労働者がその変更された就業規則に同意できないということを理由にその就業規則の適用を拒否することはできないという判例がございますので、そうした考え方に従ってこの就業規則の不利益変更の問題は判断し取り扱われるものと考えます。 したがいまして、この不利益変更の問題は、会社分割におきます包括承継の効力の問題とは別の問題として考えていくことが現実的に必要であり、またそうでなければならない、こう思っております。
○大脇雅子君 今御説明がありました最高裁の判例の秋北バスの原則であろうかと思いますが、しかし包括承継して限りなく密接した時期にその就業規則の変更ということが行われれば、現場においては労働者の権利の擁護といいますか、不利益変更に対する保護がなかなか難しい場合も十分あるかと思いますので、これもまた指針とか省令で、判例に任せるのではなく、むしろそのことを明記していっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。 それから、株主総会の決議に基づく会社分割の決定通知は二週間前に告知し、総会の六カ月後まで閲覧が可能になっていますが、債権者の財産的な損害については債権を担保する措置を講ずるということ等で閲覧期間内に対応できるというふうに考えられるわけですが、労働者の雇用とか労働条件の変動、しかも非常に激変の可能性に対処しなければならない労働者とか労働組合にとっては、分割決定に至るまでにできるだけ早い時期に会社と協議する重要性はどんなに強調しても強調し過ぎることはないと考えるわけです。 とりわけ純粋持ち株会社の場合の意思決定についてはどのようにかかわるか重要な問題であります。二週間前というのが非常に短過ぎる、そして、労働者の事前協議を効果的に行おうとすれば、協議の実効性を確保するための事前の一定の合理的な期間について、ガイドラインなど設置が必要だと考えるわけですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 私どもが労働者等への通知義務を株主総会の開催される二週間前までといたしましたのは、まさに株主が分割計画を知る時期との均衡を考慮したものであります。したがいまして、法制的にそれより早くということは非常に困難だろうというふうに考えておりますが、これまで議会におきまして修正されました商法の改正、承継法の改正の条項におきましてかなり柔軟な労使の話し合いがなされることをいわば期待し担保する措置がとられておりますので、この中で、先生御指摘のような点については、労使合意のもとでできるだけ労働者の身分の変更等についての本人に対する情報の伝達あるいは協議についての十分な期間がとれるような措置がなされることを期待しているところでございます。
○大脇雅子君 できるだけその点についても、将来的にはガイドラインなどをきちんと、労使自治というふうに先ほどの参考人は言われたんですけれども、周知徹底していただく必要があるのではないかというふうに思います。 次は、団体交渉と労働協約についてちょっと確認をしたいんですが、債務的部分とか制度的な部分については、その分割会社と労働組合との合意に基づいて分割計画書等に記載をすればそれは除かれる、そして合意に達しなかった部分は同一内容の労働協約が締結されたものとみなすという構造になっていますが、合意に達しなかった場合の取り扱いはどうなるのでしょうか。また、そもそも第六条一項の場合で、分割会社が分割計画書等に記載しなかった場合に労働組合がとり得る措置というのはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
○政府参考人(澤田陽太郎君) まず前段の、労働協約のいわゆる規範的部分以外の部分について、労使間で話し合ったけれども合意がなされなかった場合ということにつきましては、この第六条の第二項が適用されませんので、六条三項の基本的な条項に戻って、分割会社と設立会社において同一の内容の労働協約が締結されたものとみなすというところに行き着きます。 それから、そもそも分割会社が労働協約そのものを分割計画書等に記載しなかった場合、これは同じく六条三項のまさにみなすという条項が働くことになります。
○大脇雅子君 会社分割に伴う労働契約及び労働協約の承継のシステムについて第二条で、当該分割会社が雇用する労働者とされています。そうしますと、派遣労働者の取り扱いがまず問題になります。 すなわち、先般の改正で認められた臨時、一時的業務に関する派遣労働者が、派遣期間中に会社分割が行われたときは、一年を超えて正社員になることを希望する場合に、その派遣労働者にとっては当然の期待権を失うということになり、分割の前後の期間は当然通算すべきであると考えますが、これについてはどのような保障があるというふうに解釈したらよろしいのでしょうか。
○政府参考人(渡邊信君) 派遣労働者の派遣中に会社分割が行われて、設立会社がその派遣契約を承継したというときには、設立会社が派遣先の地位を承継するということになります。そこで、今御指摘の一年の期間についても、設立会社について条文に基づくいろいろな指導、勧告等を行うということになろうかと思います。
○大脇雅子君 雇用の多様化、流動化が進む中で、パートとか臨時的形態で働く労働者がありますが、この場合、主たる業務に従事している労働者は非常に多いということになります。本法案はそのような労働者の雇用労働条件の保障はぜひとも必要であり、保護に欠けることは許されないと考えますが、大臣の明確なお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(牧野隆守君) ただいま御審議いただいております法案は、会社分割に際して必要な労働者保護を図るものでございまして、本案の労働者にはパートタイム労働者や臨時労働者も当然に含まれ、いわゆる正規労働者と同様の保護が図られるものであります。
○大脇雅子君 十分その旨を徹底していただきたいと思います。パートや臨時的な形態で働く労働者が会社分割において正社員と異なって差別的取り扱いが行われないように、通達など明快に書いていただきたいと思います。 ちょっと時間もありますので、もう一問追加させていただきます。 これまで労働事件において、親会社、子会社の支配従属関係とか、企業合併、営業譲渡などの場合に、労働者の代表や労働組合の代表が親会社に団体交渉を申し入れても実効ある解決に至るのが非常に困難な場合が多く見られてきました。例えば純粋持ち株会社である場合とか、あるいは、直接の労使関係がないことを理由に当該分割会社の労働者や労働組合、下請中小零細企業の労働者や労働組合が団体交渉を拒否されるようなことは十分予想されるわけです。これまでの判例の蓄積からどのように考えているのか。 私は、直面する権利や労働条件の変動に対処するために、交渉、協議を実現する手だてを早急に講ずるべきだと考えるものでありますけれども、その点について御意見を伺いたいと思います。
○政府参考人(澤田陽太郎君) 労働組合が団体交渉を行うその相手方は使用者、一般的には労働契約上の雇用主、これが必要であるということが基本でございます。したがいまして、一般的に申しますと、たとえ親子会社という関係でありましても、それぞれが法人格を認められておりますので、親会社に子会社の労働者に対する使用者責任を認めることは困難であると考えます。 ただし、雇用主以外の事業主が基本的な労働条件等につきまして雇用主と同じ程度に現実的に支配、決定することができる地位にある、こういう場合にはその雇用主以外の事業者であっても使用者性が認められて、団体交渉応諾義務が生じる場合があるということが最高裁判例で出されております。ただ、その認定につきましては、個別の事案ごとにそれぞれの事実関係を総合的に勘案して判断されておりまして、一般的に適用し得る基準を定式化することは現時点では困難であるというふうに考えておりますし、また現実の親子会社の関係もさまざまでございますので、現行規定におきます使用者の解釈で柔軟に対応を図っていくことが当面妥当ではないか、こう考えております。 この点につきましては、純粋持ち株会社解禁を図るために独禁法改正がなされた際に、純粋持ち株会社解禁に伴う労使関係の問題について専門的な学識経験者で研究をするようにという国会の附帯決議をいただきました。 それを受けて、私ども二年間ほどこの使用者性の問題も含めて学識経験者だけではなくて労使も入れて議論してまいりましたが、昨年の秋に一応の報告が出されました。そこも結局、現在の今申しました判例における考え方を現実に適用して妥当な解決を図っていくことが当面必要ではないか、もうしばらく純粋持ち株会社だとか企業組織再編等の中でこうした親子関係における団体交渉の問題が実質的になされるような状態を確保するにはどうしたことが必要か、これは少し様子を見ようという結論になっておりまして、私どももそういう立場で今おるところでございます。 ただ、今法案の審議を通じまして、企業再編に伴う労働者保護の問題については学識経験者を中心とする検討の場を設けるということを私ども再三申し上げておりますので、そうした中でも検討メンバーの御意見も伺いながら、こうした問題も俎上にのせて議論をしていくことになるのではないかというふうに考えております。
○大脇雅子君 今のお答えというのは非常に大きな意義を含めていると思います。企業営業譲渡を初め、企業組織の再編に伴う労働者の保護の諸問題については、これから審議会、研究会等、立法上の措置を含めて進むわけですが、ぜひこの団交の応諾義務の問題についても含めて御検討をいただきたい。最後にその点について労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(牧野隆守君) 先ほども局長が答弁いたしましたとおり、先生の御趣旨を十二分に尊重して検討してまいりたい、こう考えております。
○大脇雅子君 終わります。 ─────────────
○委員長(吉岡吉典君) この際、委員の異動について御報告いたします。 本日、清水嘉与子君が委員を辞任され、その補欠として佐藤昭郎君が選任されました。 ─────────────
○委員長(吉岡吉典君) 他に御発言もなければ、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。 それでは、これより討論に入ります。 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
○八田ひろ子君 私は、日本共産党を代表して、我が党提出の企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案に賛成をし、政府提出の労働契約承継法案に対し反対の討論を行います。 政府案に反対する理由の第一は、商法改正による会社分割法制の導入によって、分割して設立される会社がこれまでとは違う別会社であるにもかかわらず、そこに労働者を移籍することについて、この法案ではその労働者本人の同意を求めないこととされているからであります。 基本法である民法第六百二十五条第一項では「使用者ハ労務者ノ承諾アルニ非サレハ其権利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス」と明文で規定しており、また最高裁も「労働契約の一身専属性にかんがみ、労働者の承諾があって初めて転属が効力を生ずる」と判示し、判例法理としても転籍には本人同意が原則であることは既に確立されております。 ところが、この法案は、労働省が設置した企業組織変更に係る労働関係法制等研究会の報告で明らかなように、リストラを促進し大企業本意の会社分割を容易にするためにはこの本人同意の原則が類推適用される可能性があると指摘した上で、これが邪魔であるとして没却したのであります。 第二の理由は、会社が分割計画書を策定するに当たって、労働組合への事前協議を義務づけていないこと、また労働組合と労働協約を結んでいなければ組合には通知さえしなくてもよいこととしていることであります。 今、現実に進められている子会社化でも、人減らしや賃金、退職金の不利益変更などが行われています。会社分割によってこれまでの労働者の配置や労働条件に変化が起きるのは必然であり、したがって労働組合との事前協議を義務づけることは当然であります。労働協約を結んでいないというだけで労働組合に会社分割の計画を通知さえしないというのは、労働組合の存在さえ否認するものであり、到底認めることはできません。 また、会社が分割計画書の作成過程で、労働者とは形だけの協議しか行わず、一方で、労働組合員であることなどを理由として、あらかじめ移籍する労働者、残留させる労働者へと恣意的に配転や出向を行い、事前にふるい分けをすることが十分にあり得ます。このことに対して何らの規制もありません。 第三の理由は、本法案は会社分割する場合だけの不十分な対応策であり、その他の企業組織の再編は一切その対象にしていないことであります。 法案の名称こそ労働契約の承継等に関する法律案となっていますが、労働契約や労働協約が全面的に承継される保証もない上に、合併や営業譲渡を対象にしていないのでは、今日のリストラのもとでの労働者の雇用安定や権利の保護は到底望めません。 以上が反対の主な理由であります。 衆議院段階で若干の修正が行われましたが、労働者の理解と協力を得るように努めることは余りにも当然のことであり、この修正条項に基づく協議も本人同意の原則抜きでは労働者への法的安定性は担保されません。 最後に、我が党が提出しております企業組織の再編を行う事業主に雇用される労働者の保護に関する法律案のように、会社分割だけでなく合併、営業譲渡など企業組織の再編全体を対象にし、労働者本人の同意を基礎に労働契約や協約が全面的に保証される制度の確立を求め、討論を終わります。
○大脇雅子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、内閣提出の本委員会審議に係る会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案について、反対の立場で討論を行います。 バブルがはじけた後、長引く不況は多くの中小零細企業の倒産と整理、淘汰をもたらし、あるいは中高年労働者に対するリストラが強行され、この三月期の最悪の完全失業率四・九%で、完全失業者は三百四十九万人に及んでおり、この四月期は新規学卒者で未就職者も加えて完全失業率の更新、完全失業者数の増加は必至と予想されています。 本法案は、その提案理由にありますように、会社分割制度を創設するため、今国会に提案されています商法改正法案にあわせ、これと一体のものとして、労働者の保護を図ることを目的としております。 この会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案提出の意義については私もよく理解できるところであります。しかしながら、本法律案は次の点でいまだ不十分であり、課題を抱えているという意味で私は反対するものであります。 第一に、商法上の営業概念の規定、及びその営業に主として従事するあるいは従として従事するかによる労働者の振り分けが行われる構造となっていることが、この間の審議で、主従の基準を労働省令、指針でできるだけ客観的に明示することが明らかになっていますけれども、会社の分割に伴って意図的な労働者の選別を通じた差別的取り扱いが生じる可能性が払拭し切れていないことであります。 第二に、労働契約締結の当事者を変更する場合の原則である民法第六百二十五条一項の特別規定として本法が制定されております。 しかし、民法第六百二十五条一項は強行規定であり、この強行規定を除外するということの意味は、形成権として異議申し立て権を認めていますものの、憲法二十二条の職業選択の自由、労働者の不利に強行規定を変更することができないという労働法の基本原理との間に疑義があるからであります。事前の協議と情報開示が明確でない場合、異議権の実効性ある権利行使が可能かどうか、にわかに評価することが困難であります。 第三に、労働協約の承継に関する手だては講じられていますが、長い間の労使関係の中で構築された労使慣行の重要性にかんがみた配慮に欠けていることであります。 また、分割会社に移った個別の労働条件変更については、就業規則変更の判例法理に従うということのみで、一九七七年のECの事業移転の指令のように一年以下は不利益変更してはならないという規制がありません。また、このことにより紛争の未然防止に手抜かりがあるのではないかということを危惧いたします。 第四に、例えば会社分割を決定するのが純粋持ち株会社である場合には、直接の労使関係がないことを理由に、当該分割会社の労働者、労働組合や下請中小零細企業の労働者や労働組合が団体交渉を拒否されることは十分予想できることです。 それは、直接の労使関係がないことを理由に団体交渉や協議を拒否され、結果として、雇用が奪われたり労働条件の切り下げが行われたりし、あるいは長い裁判闘争を余儀なくされる労働者や労働組合の苦難を見過ごしにできないからであります。 第五に、会社分割に伴って雇用不安や労働条件の劣悪化がもたらされるおそれがあるのは、分割会社の正規雇用労働者だけではありません。分割会社で現に働いているパート労働者、派遣労働者、臨時雇用の労働者等の雇用が確保されるための万全の対策が講じられるべきであることも指摘しておきたいと思います。 以上で討論を終わります。
○委員長(吉岡吉典君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。 これより採決に入ります。 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(吉岡吉典君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。 この際、川橋幸子君から発言を求められておりますので、これを許します。川橋君。
○川橋幸子君 私は、ただいま可決されました会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に対し、自由民主党・保守党、民主党・新緑風会、公明党・改革クラブ、社会民主党・護憲連合及び参議院クラブの各派並びに各派に属しない議員魚住汎英さんの共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。 一、合併・営業譲渡をはじめ企業組織の再編に伴う労働者の保護に関する諸問題については、学識経験者を中心とする検討の場を設け、速やかに結論を得た後、立法上の措置を含めその対応の在り方について十分に検討を加え適切な措置を講ずること。 二、企業組織の再編のみを理由として労働者を解雇することができないとする確立した判例法理の周知徹底を図ること。 三、企業組織の再編のみを理由とした解雇の未然防止に努めるとともに、解雇及び労働条件をめぐる個別の紛争が生じた場合において、その迅速な解決を促進するための新たな立法措置の検討を含め制度の整備及び施策の充実を図ること。 四、会社の分割に当たり、事業主が本法律の趣旨と内容を踏まえ、労働者の理解と協力を得るための協議を行うよう必要な施策を講ずること。 五、会社の分割に伴い企業を移籍する労働者については、本人の意思が十分に尊重されるよう、民法等の趣旨を踏まえ、その周知徹底を図ること。 六、会社の分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更はできないことを指針に明記するとともに、その周知徹底を図ること。 七、本法第八条の指針は、労働者保護に必要な事項を適切に規定するものとし、策定に当たっては、労使を含む検討の場を設け、その意見を踏まえて策定すること。 八、承継される営業に主として従事する労働者と従として従事する労働者の範囲については、省令及び指針により、できる限り客観的な基準を設けること。 九、営業譲渡・合併等に際して、労働契約の承継等に関して適用される現行法令や判例の周知徹底を図り、営業譲渡等の際の労使紛争の予防に努めること。 十、債務の履行の見込みのない会社分割ができないとする分割制度の趣旨につき周知徹底を図ること。 十一、会社の分割に当たり、当該分割の対象となる労働者等へ書面により通知する際には、移籍する会社の業務や移籍後当該労働者が従事すべき業務等労働条件に関する事項について、具体的に書面に記載されるよう十分な措置を講ずること。 十二、会社分割に伴い、関連中小企業の営業及び労働者の雇用に不安が生じることのないよう、会社分割法制及び本法の趣旨につき周知徹底を図ること。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願いいたします。
○委員長(吉岡吉典君) ただいま川橋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(吉岡吉典君) 全会一致と認めます。よって、川橋君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 ただいまの決議に対し、牧野労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。牧野労働大臣。
○国務大臣(牧野隆守君) ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存であります。
○委員長(吉岡吉典君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十九分散会