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147回国会衆議院2000/05/09

法務委員会 第18号

発言数
223
登壇者
21
会派数
5
開催日
2000/05/09

会議録

武部勤自由民主党

○武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに与謝野馨君外四名提出の商法等の一部を改正する法律案に対する修正案を一括して議題といたします。  本日は、両案及び修正案審査のため、まず、午前の参考人として早稲田大学法学部教授上村達男君、名古屋大学大学院法学研究科教授和田肇君の両名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、上村参考人、和田参考人の順に、各二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず上村参考人にお願いいたします。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 早稲田大学の上村でございます。早稲田大学では商法、証券取引法を専攻しております。本日は、このような最も権威ある場所において意見を述べさせていただきますことを大変光栄に存じております。以下、本委員会において審議中の会社分割制度を中心とする商法、有限会社法改正法案につきまして、私の意見と感想を述べさせていただきます。  他の会社制度と比べた場合の株式会社制度の特徴は、最大級の証券市場にも使える仕組みを内包している点にありますが、戦後の日本の株式会社制度は、むしろ株式会社制度の最大の特徴を発揮させないシステムによって急速な経済発展を遂げてきたように思われます。銀行借り入れ中心のメーンバンク制、それから通産省の産業政策、大蔵省の護送船団的金融行政等々は、株式会社制度本来の能力を発揮させるというよりは、上からの一定の方向づけを履行する道具として株式会社制度を定着させてきたように思われます。  しかし、今日、日本は金融ビッグバンのもと、公正な証券市場の存在を前提に、まさに証券市場を最大に活用し得る会社形態としての株式会社制度を再構築すべき状況にあり、そうした株式会社制度の確立を通じた健全な経済社会の発展が期待されているように思われます。こうした目標を実現するためには、証券市場法制自体の大幅な改革、コーポレートガバナンスの充実、企業会計・監査制度の大幅な強化を中心とした公開株式会社法制の構築、紛争解決手段の多様化その他、日本が従来苦手としてまいりました法的な総合力の根本的な底上げが不可欠の条件であります。しかし他方で、こうした条件の整備を図りつつ、同時並行的に株式会社制度本来の機能を発揮し得るシステムを用意し、最も優良な部門にとってその活力を最大限に発揮できる条件を提供しておくこともまた必要なことと考えられます。  このところ、平成九年の合併法制の改正、純粋持ち株会社の解禁、平成十一年の株式交換制度の導入、そして今回の会社分割制度の確立というぐあいに、企業再編法制の整備が著しく進んできております。こうした企業再編法制の整備は、まさに最も優良なプレーヤーに対して、株式会社制度に本来備わっているはずの機動的な集合離散の可能性を増大させるものであり、それらの法制が諸外国において既に確立済みであることからも、合理的な対応としてこれを肯定的に評価すべきものと考えます。とりわけ、みずほ銀行において計画されておりますような、株式移転を使って持ち株会社を設立した後に、各子銀行に重複した業務を一個の銀行に集約する手段としての会社分割は、持ち株会社の利用を認めた以上、一体不可欠な制度と言えるように思われます。  しかし他方で、株式会社制度と証券市場をめぐる制度改革はいまだ十分な段階にあるとは言えず、また、会計・監査制度に対する信頼性が十分に確立したとは言えない状況で、とりわけ小規模で閉鎖的な株式会社や有限会社を利用することでこれら企業再編法制が不十分な使われ方をされないよう、特に慎重な監視が必要なように思われます。  このたび提案されております会社分割制度の特徴は、一個の営業のある部分を法の効力によって一括承継させるところにあります。商法で営業という場合には、これを主観的意義の営業すなわち営業活動をいい、したがって、営業活動に伴う事実関係を含む有機的、組織的な一体財産と表現されます。こうした営業活動の承継を伴う現象としては他に合併がございますが、合併は複数の営業が一個になる現象ですので、合併比率の問題は大事ですが承継の範囲は問題になりません。営業譲渡は営業の全部または一部の譲渡ですので、範囲の問題がありますが、包括承継ではありませんから、個々の財産ごとに移転手続を必要といたします。株式交換は営業の移転を伴いません。  会社分割は承継の範囲の問題が重要であり、かつ状況により分割比率も問題視される現象でありながら、かつ個々の財産の移転手続を必要としない点に特徴を有しますので、こうした相当に複雑な利害状況に対して適切な対策を講ずることが必要となります。もっとも承継の範囲の問題は、分割をする会社自身が切り離した営業に対して依然として支配権を有し続ける場合、分社の場合ですが、この場合には対株主関係においてはさほど複雑な問題ではありませんが、対債権者の関係では問題を生じます。合併の場合に比べても会社分割は、恐らく企業規模の縮小を招く場合が多いと思われるため、債権者に対する配慮が特に求められます。  他方で、分割比率の問題は、分割をする会社が単独で会社を設立して分割する場合、新設分割の場合には、分割会社が完全親会社となるため、これもさほど複雑とは言えません。結局、分割をする会社が既存の会社に営業の一部を分割し、かつ当該既存の会社が発行する新株を当該会社の株主に割り当てる場合にあっては、対株主関係、対債権者関係の双方にとって利害関係は先鋭化しますので、これに対する適切な対応が必要となります。  今回提案されております法案は、こうした状況に対しておおむね適正に対応しているものと考えます。  まず、会社分割においては、事実関係という目に見えない財産によって分かちがたく有機的、組織的に結合している一体としての活動体を一括して移転するがために、個々の財産ごとに個別の財産承継手続を要することなく承継することが認められるのであり、法律案が会社分割を、営業の全部または一部の承継との文言を採用し、要綱段階での権利義務の全部または一部との表現を改めたことは、理論上重要な修正であります。  合併において包括承継が認められるのは、営業活動と営業活動が一つになって新たな営業活動主体を形成するところに根拠がありますが、合併が一個の営業活動に集約する現象であるのに対して、会社分割は一個の営業を複数の営業に分ける現象でありますから、とかく安易に流れやすく、営業活動としての実質が存在すべきことを強調することが必要と思われます。承継財産の実質が個別財産の移転に近づくほどに、その移転につき民法的な同意を不要とする根拠が薄れてまいります。したがって、分割計画書ないし分割契約書の記載事項として、分割をなす会社より承継する権利義務に関する事項が挙げられていることの趣旨も、単に書く自由、書かない自由を認めたものではなく、営業としての一体性を前提にそうした営業を表現し、営業概念を画する具体的な内容を示すものと考えられます。会社分割が単なる財産の切り売りに利用される場合には、それは会社分割と言えるものではなく、したがって、会社分割の衣をかりた極端な会社解体については、解釈上これを会社分割不存在と評価し、会社分割無効の訴えによらず、いつまでも当該行為の無効を主張できるといった解釈上の工夫も今後は必要になってくるように思われます。  労働契約も基本的にはこうした文脈において理解されるべきと思われ、もともと営業活動を担っていた者については、これを自由に切り離すことはできないものと考えられます。逆に、営業とかかわりない者を承継の対象にすることもできないと思われます。ただし、承継した後に自由に解消できる法律関係については、分割時に解消できないとまで言うことはできないように思われます。  なお、私見によりますと、労働契約の問題には会社分割に伴う契約関係の処理の問題、すなわち一債権者としてあらわれる問題と社会政策的配慮に係る問題とがあり、前者に関する限り、仮にそれが法形式上労働契約承継法違反であっても、実質的な意義における商法違反として評価すべき場合もあり得るように思われます。  いずれにしましても、この点につきましては修正案が提出され、債権債務、労働契約が例示されることになったようでございますので、この点は評価し得る措置と考えます。  次に、会社分割にあっては、承継財産の評価が極めて重要な意義を有しております。第一に、承継財産よりも負債の方が大きく、分割したら債務超過になる場合には会社分割を行うことはできません。法律案は、各会社の負担すべき債務の履行の見込みがあることと、その理由を書いた書面を、株主総会の会日の二週間前より分割後六カ月までの間、本店に備え置くべき旨を定めておりますが、周到な措置と考えます。第二に、承継財産から負債等を控除した額は、新設分割の設立会社における資本及び吸収分割における資本増加額の限度額とされます。したがって、第三に、こうした限度額が資本を上回る分割差益が明らかとなり、資本準備金が示されます。第四に、承継財産は、共同新設分割ないし吸収分割における分割比率算定の基礎となります。  かかる重要性を有する承継財産の評価については、時価以下主義であることは当然として、公正な会計慣行にゆだねられることになります。会社分割制度が営業の現物出資において要求される検査役の調査なしに会社分割を行えることは、承継される財産の公正な評価を必要としないことを意味してはおりません。また、日本の会計・監査制度に対する信頼性が必ずしも十分でないこと、とりわけ合併会計のあり方につき問題がないと言い切れない状況もございます。  しかしながら、この問題は日本の企業法制全体に係る基本的なインフラ整備という本質的な問題であり、一会社分割制度自体の制度構築に責任を求めるべき問題ではないと考えます。平成九年の合併制度の改正に際して、合併評価人制度の導入を求める声が相当に強かったにもかかわらず、実現を見なかったことの理由の一つとして、そうした役割を担うにふさわしい人材に乏しいということが挙げられたことも記憶に新しいところでございます。会社分割制度の利点として、検査役の調査を必要としていないことが挙げられますが、そのことは現在の検査役以上に信頼性の高い真の評価人を求める声として受けとめるべきものと考えます。改正法案は、事前事後の情報開示の充実、合併よりも慎重な債権者保護手続、分割無効の訴え等の制度を用意しておりますが、これに並行して、会計・監査制度の一層の充実を期待しているものと考えております。  なお、合併無効の訴えの効果が会社分割の強制であり、後日もとに戻そうとしても極めて困難であるのとは異なり、会社分割無効の訴えは分割後の両会社の一体化を法効果とするものですから、既成秩序を害することが少なく、合併とは異なり、比較的容易に無効判決も下しやすいものと思われます。会社分割無効の訴えの原因も合併に比べて広範に認められるべきと思われますので、予想以上に不当な会社分割に対する是正機能を果たすのではないかと思われます。  次に、債権者保護手続でございますが、会社分割にありましては、分割会社の営業の全部または一部が新設会社ないし承継会社に移転しますが、移転した営業に相当する株式を分割会社自身が取得する場合には、分割会社の資産の中身が変化するものの、分割会社の資産、負債の関係に変化は生じませんので、債権者といたしましても、そうした分割会社に対して債権を有する限り、理論上その立場に変化は生じません。そこで、法律案は、分社型で分割後も分割会社に対して債権の弁済を請求できる債権者との関係では債権者保護手続を不要としており、妥当な措置と思われます。  他方、これ以外の場合、すなわち分割型の場合には、分割会社の営業の一部が分割会社の株主に提供され、分割会社の資産は減少しますので、債権者保護手続を必要といたします。そして、その際法律案は、合併よりも厳格な資本減少における債権者保護手続を採用し、債権者に対する個別催告を求めております。多くの場合、会社分割は企業規模の縮小をもたらし得る点で、合併よりも債権者の立場に配慮すべき状況と言えますので、妥当な対応と考えます。  個別催告を必要とする債権者の範囲につきましては、債権者が異議を述べた場合に会社として弁済ないし担保提供できる状況にある債権者と考えられているようであります。その上で、既に発生済みの債権が対象となり、将来債権などは含まれないとされているようであります。これは困難な問題ですが、会社分割は営業の全部または一部の承継がなされる現象であり、長年にわたって蓄積された事実関係を含む営業を対象にしておりますので、長年にわたって積み重ねられてきた債権者の期待に大幅に反するような会社分割がなされるような場合には、将来債権であっても意図的、乱用的な会社分割として違法視される可能性を全く排除すべきではないように思われます。  なお、吸収分割における承継会社の立場は、財産を承継し株式を発行する点で合併会社の場合と同様でございますので、合併における債権者保護手続が適用されるのも妥当と考えます。  次に、このたびの改正法案にあっては、事前事後の情報開示について配慮がなされており、この点は評価できるものと考えます。特に、事前の情報開示として、株式の割り当てに関する理由書のほかに、各会社が負担すべき債務の履行の見込みがあること等を記載した書面の備え置きが求められていることは、合併法制にもない制度であり、周到な対応と考えます。この書面には専門家の意見書を添付することが期待されておりますが、こうした対応を当然のこととする慣行を確立していくことが必要であります。  なお、情報開示につきましては、商法と並んで証券取引法による情報開示を充実させることが必要であります。将来的には、証券取引法の情報開示がどのようになるのかをもあわせて検討する体制を確立していくことが必要と存じます。  分割の効力は営業財産の包括承継でありますが、個別債権者の同意なしに免責的に債務の振り分けがなされる場合には、債権者の立場は極めて不利となります。そこで、債権者保護手続において各別の催告を受けなかった債権者の債務については、分割計画書ないし分割契約書の上でどちらの債務とされていても、債務を負担するとされなかった他方の会社も弁済責任を負うこととされております。その上で、この責任の上限を分割の日におけるそれぞれの会社が有する財産の価額、すなわち分割会社の資産総額とし、その意味における有限責任を定めております。分割の態様はさまざまでございますので、債権全額を両方の会社が全額負担するとするのはいささか乱暴であり、この点も考えられた対応と思われます。  改正法案では、営業譲渡について、簡易営業譲渡を認めることとしておりまして、その他の点については、営業譲渡については特に改正点はございませんが、株主総会の特別決議をしないでなされた営業譲渡、すなわち違法な営業譲渡の効力が絶対無効とされていることに対する措置もいずれは必要になると思われます。当面は解釈によって対応するほかはありませんが、営業概念を絞り込んだ上で、合併無効の訴えに似た制度を検討し、二十年もたってから営業譲渡の無効を主張するような事態に対する回答を明らかにしておくことも今後の課題と思われます。  ところで、近時は持ち株会社解禁、株式交換制度の新設、合併法制の改正、会社分割法制の確立というぐあいに、企業の集合離散に関する法制は相当に整備されつつあるように思われます。しかし、そうなればなるほどに企業結合状態に対する法制整備をさらに充実強化することが必要と思われます。この問題については、株式交換をめぐる議論の際に若干の法整備が実現し、さらに情報開示の点では連結会計制度の進展が見られておりますが、企業結合におけるガバナンスのあり方については、さらに議論の余地があるように思われます。  もともと法人とは人の活動を速やかに行わせるための法技術であり、法人が二つ重なっても人の関係には影響しないのが基本でございます。しかし、日本では企業結合関係に立つ前と後で法律関係の透明性に差が生じ、利害状況に変化が生じやすいことも否定しがたいところでございます。企業結合法制は、支配あるところに責任ありの観点から、子会社債権者、少数株主に対する親会社ないし親会社経営者の責任を明確にし、親会社株主による対子会社ガバナンスの充実を図るとするものであり、これらが整備されることで企業結合、分割法制の意義はより高まるものと考えます。  以上に述べましたように、今回の会社分割法案は、企業に対して、国際水準の手段を提供するものとしてこれを評価すべきものと考えますが、これと並行して、公開株式会社法制の確立、金融システム改革の一層の進展、会計・監査制度の改善、司法制度改革といった基本的な制度インフラをより充実させ、日本の法的な総合力を全体として底上げしていくことが必要であり、そうした条件の整備とともに、会社分割法制を含むさまざまな企業再編法制は真の機能を果たし、企業経営の効率性向上に資するものであることを最後に繰り返し強調させていただきたく存じます。  以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  次に、和田参考人にお願いいたします。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 ただいま御紹介いただきました和田と申します。私は、専門は労働法であります。  現在、国会において会社分割制度の導入のための商法等の改正が議論されておりますが、会社分割は、労働者の雇用関係や労働協約制度等にも大きな影響を与えます。そのために、商法等の一部を改正する法律案附則五条に基づきまして、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案が同時に国会に上程されております。本日は、労働法の観点から、この労働契約承継法案の意義と問題点について私見を述べさせていただきたいと思います。  同法案の内容につきましては時間の関係で省略させていただきますが、私は、この法案に対しては、賛成する部分とそれから疑問を持っている部分があります。時間の関係で、主に疑問あるいは注文について本日は述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、労働契約承継法案三条が、承継営業に主として従事する労働者について、分割計画書等の記載だけで労働契約の承継を認めている点であります。  法案に先立って出されました労働省の研究会報告では、会社分割における営業承継は部分的包括承継、つまり当然承継であり、分割会社の意思のみで承継営業の範囲を決めることができ、労働契約上の権利義務も、他の債権と同様に労働者の同意を得ることなく承継させることができるとしております。また、民法六百二十五条一項は、使用者がその権利を譲渡する場合には労働者の同意を要すると定めていますが、特別法をつくることによってその適用を排除できるし、そのことが望ましいとしております。個々の労働者の意向を一々そんたくしていたら会社分割はスムーズに進まないという考え方がそこにはあるのではないかと思われます。  民法六百二十五条一項は、個別の権利譲渡だけでなく、出向のような使用者としての地位の移転にも適用され、特に旧使用者が労働契約関係から完全に離脱する転籍につきましては、その都度の労働者の同意が必要であるというのが労働法の通説及び裁判例の考え方です。民法六百二十五条一項は強行規定と考えられているわけであります。  もし、労働契約承継法案のように労働者の意思を無視して労働契約の移転を認めてしまいますと、民法の強行規定を特別法によって労働者の不利に修正することはできないという法原則、あるいはベルサイユ条約四百二十七条二項で述べられた、労働は商品とみなされるべきものにあらずという労働法の基本原理、または憲法二十二条の職業選択の自由に反してしまう結果になるのではないかと思われます。  ちなみに、ドイツでは、民法典六百十三条aにおいて、特定承継か包括承継かを問わず、事業移転に伴い労働契約は当然に移転すると規定していますが、裁判所は、さきに述べたような趣旨から、労働者に形成権である異議申し立て権を認めており、これはEU裁判所でも是認されております。  企業分割を包括承継である合併と同じに扱うことはできないと思われます。確かに、合併の場合には民法六百二十五条一項の適用を否定する見解もありますが、それは労働者の辞職の自由で対応できるからであります。しかし、会社分割の場合には、分割会社は存続する可能性がありますから、やはりこの規定の適用が問題となります。労働契約承継法案の考え方では、例えば不採算部門分離型の会社分割のときの労働者の不利益が大き過ぎるのではないかと思われます。  なお、労働契約承継法案が、四条一項及び四項で、承継営業に主として従事する労働者で分割計画書等に承継の記載がない者について、また五条で、その他の労働者で分割計画書等に承継の記載がある者について、それぞれ形成権である異議申し立て権を認めていることについては、私も賛成であります。  第二に、労働契約承継法案は、承継営業に主として従事する労働者とその他の労働者を分け、前者の範囲については労働省令で定めることになっております。日本のように職種限定が例外で配転が一般的なところでは、この者をどの時点で判断するのかという問題が出てまいります。意図的な配転を防止するためにも、この点を省令の中で明確にしてほしいと思います。例えば、原則として承継営業に一年前より従事していることを要するといったような規制が考えられると思います。  第三に、労働契約が承継される場合、個々の労働条件もそのまま承継されることになりますが、特に吸収分割の場合に、承継先でのその変更の問題が出てくることが考えられます。  この点につきまして、皆様のお手元にEC指令の翻訳を配付しておりますけれども、この一九七七年のECの事業移転指令三条三項では、加盟国の法律でこの場合の労働条件の不利益変更ができない期間を一年以下とすることはできないというふうにしております。紛争の未然防止という観点からも、こうした規定の仕方を検討すべきではないかと思われます。  このことと関連しますけれども、三六協定など、労基法にさまざまな労使協定が規定されておりますけれども、この労使協定が会社分割によってどのようになるかということは、労働契約承継法案からは明らかではありません。新設合併のときには、直ちにこうした協定が締結されるとは限りませんから、そうしますと一定の空白期間が生ずることになります。恐らく分割計画書等に記載することになるのでしょうが、そうしますと、厳密に言えば各協定の締結要件を満たさなくなってしまうという問題が生じます。こうしたことを考慮して、労使協定の承継を認めながら、一定期間内、例えば一年以内に新たな労使協定の締結を義務づけるといったような方策を考えてもよいのではないかと思われます。  第四に、労働契約承継法案では、分割会社と労働組合等との協議に関する規制が十分ではないと思われます。  会社分割は高度の経営権事項でありますけれども、どの労働者が、あるいはどの協約部分が承継されるかは、労働者や労働組合にとっても重要な関心事項であります。同法案二条では、分割会社は株主総会の会日二週間前までに労働者あるいは労働組合に対して労働契約や労働協約の承継等に関する情報の提供を義務づけているにすぎず、分割計画書等の作成についてこれらの者との協議を義務づけてはおりません。ただし、労働協約の債務的部分につきましては、法案六条二項で労働組合との合意が必要とされております。  商法等の一部を改正する法律案附則五条に関する修正案で、新たに一項に労働者との協議が義務づけられました。規定上は労働者だけが対象とされておりますけれども、その団体である労働組合の登場ということを必ずしも否定するものではないというふうに解されます。また、労働契約承継法案では、労働者の異議申し立て権は株主総会の会日前の最低十三日間と短期ですが、今回の修正案での協議期間はこれよりも相当長くなっております。  私は、できれば株主総会への付議、あるいは簡易な分割手続の場合には取締役会への付議の前に協議を行わせることが望ましいと考えておりますけれども、いずれにしましても、労働契約承継法案に比べますと、修正案はこの点で格段の改善となっております。  会社分割に関しましては以上でありますけれども、最後に、その他の事業移転の問題についてもこの機会に触れさせていただきたいと思います。  労働省の研究会報告は、会社分割以外にも合併と営業譲渡の問題に触れております。合併の場合には、権利義務は包括承継されるから労働者の不利益が生ずることはほとんど予想されないために立法措置は必要でないとしております。また、営業譲渡の場合には、権利義務は特定承継であり、労働契約の承継についても民法六百二十五条一項が適用され、労働者の同意が必要であると同時に、特定労働者の労働契約の承継を排除することが可能であり、その点で労働者の不利益が生ずる場合があることは認めております。しかしながら、裁判例において、特定労働者の排除についても、事業の同一性の理論、黙示の合意の推認、法人格否認の法理等によってその救済が行われており、現時点では特に立法措置の必要はないとしております。こうした考え方から、会社分割の場合の労働契約承継等の問題に関してだけ法案が提出されております。  しかしながら、これにつきましても私には疑問があります。  まず第一に、法規制や手続から見ますと、確かに会社分割と営業譲渡とは異なっておりますけれども、営業の全部あるいは重要な一部譲渡と会社分割とは実体面で、とりわけ労働者の保護の必要性という点から見ますと、似た状況にあります。  第二に、従来の裁判例で形成されてきました法理は、営業の全部あるいはそれに準ずるような重要な一部譲渡で、ほとんどの労働者の労働契約が承継されている事例を前提としたものでした。もちろんこれは例外がありますけれども、多くの事例はそういうものでありました。  ところが最近は、営業の賃貸といったこれ以外の営業移転や、営業を全部移転しながら譲渡元会社で一たん全労働者を解雇し、譲渡先会社で新たに選別して一部労働者のみを採用するといったような事例がふえてきております。こうした事例に対して従来の裁判例では十分に対応することができないと思われます。  長年の裁判例の蓄積によりまして整理解雇法理が形成されており、経営上の理由による解雇は厳しく制限されております。例えば、一つの事業所を閉鎖するにしても、そこで勤務する労働者を当然には解雇できません。ところが、営業譲渡によって営業が継続されながら、整理解雇の四要件を満たさずに解雇ができるとしますと、解雇権乱用法理が潜脱されてしまうことになります。一九七七年のECの事業移転指令は、まさにこうした事態に対処しようとするものであります。ドイツ法などを見ますと、特に営業譲渡のような特定承継の場合にその重要な意義があると言えます。  同様の法規制を日本に導入することにつきましては、労働法学者の間にも議論があります。例えば、労働契約当事者の強制的変更の法理は、解雇無効の効果としまして雇用関係の存続ではなくて損害賠償だけを認めるようなタイプ、例えばフランスがそうでありますけれども、そのような国には妥当するけれども、日本のように、解雇無効の効果としまして雇用関係の存続を認めるような国には妥当しないといったような議論があります。  しかしながら、私は、解雇を伴わない労働移動という観点からいいまして、日本でも、包括承継、部分的包括承継、特定承継を問わず、企業の組織変動一般につきまして、EC指令のように労働契約の承継と解雇の禁止を中心とした法律が必要なのではないかと考えております。ぜひ、この点につきましても御検討をお願いいたします。  以上で私の意見陳述を終えさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

武部勤自由民主党

○武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉田栄喜君。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 倉田でございます。  きょうは、上村、和田両参考人には、大変貴重な御意見をお伺いできまして、ありがとうございます。  上村先生には、特に、株式会社制度が本来の能力をどう発揮できるかという視点からのお話をお伺いしました。また、和田先生からは、この会社分割、今回の商法改正に伴う労働者の立場、地位がどうなっていくのか、その視点からのお話をお伺いさせていただきました。  まず上村先生にお伺いをさせていただきたいと思いますが、先生は、大前提として、株式会社が、いわばこの国際経済化の中、大競争時代において本来の能力をどう発揮できるかということで、基本的には、市場原理に対応できるような株式会社制度でなければならないんではないのか、こういう視点からのお話であったと思います。  最後の方に先生もお話しになりましたけれども、いわゆる大競争時代に対応する、株式会社が本来持っている機能をどう発揮するかということと、同時に、会社に対する債権者あるいは一般投資家、そこの視点も含まなければならないということで、いわゆる情報公開制度、こういう話も最後の点でお話しをいただいたと思うんですけれども、今回の法案の中で、いわゆる会社の分割ということの中で、一般の市場から見た場合の情報公開あるいは分割の透明性というものについてはどのようにお考えになっておられるのか、まずこの点をお尋ねをしておきたいと思います。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、日本は、極端な言い方をしますと、本物の株式会社というのは知らなかったと言ってもよろしいかなという感じでございまして、やはり、株式会社というのは証券市場で最大級に能力を発揮する、そのかわり、証券市場というのは買おうとしている人も売ろうとしている人も対象にするわけです。ただ、今の株主だけではなくて、買おうとしている人、つまり、買おうとしている人というのは国民全部でございますから、その意味で国民全体に開かれた会社になるということでありますし、その上で運営、機構等が十分に機能していくといいましょうか、情報開示がきちっと行われる、そうした会社としての能力を最大限に発揮する、そういう時代に今は来ていると思います。  それで、分割の公開あるいは透明性、情報開示等の関係のお話だと思いますが、これは、最後にちょっと申しましたように、本来ですと、私が今申しましたような趣旨からしますと、つまり証取法の情報開示がどうなるのか、例えば、株式を発行したときにそれが募集に当たるのか当たらないのか、あるいは、それが有価証券報告書や臨時報告書あるいはタイムリーディスクロージャーの場でどう扱われるのかといったようなことも、今までは商法は商法、証取法はまた別、こういうことでやっていたわけですけれども、これからはそういうことも含めて見ていくべきだろうというふうに考えます。  ただ、今回の改正案は商法という立場に限定しておりますので、そういう意味では、情報開示については全体像は見えてきておりません。しかし、事前の書面の備え置き等については、商法としては相当な対応がなされているというふうに考えます。  分割の透明性というのは、ありのままに十二分な情報が開示される前に、やはり会計とか監査制度の透明性が先だというふうに思います。開示、会計、監査は一体でございますので、全体を底上げしていくことが必要だというふうに考えております。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 今先生から御指摘をいただきました点は、この商法改正のみならず、またほかの部分でも関連法案の中で検討をして、いわゆる市場原理に対応できるような情報開示あるいは透明性というのを高めていかなければならない、こういうふうに私も思います。  同時に、今先生が、株式会社本来の制度をどう発揮できるか、市場原理、競争原理の中で会社というのが債権者あるいは投資家に対してどう機能していくかということ。そうすると、そこにはどうしても、ある意味では市場が会社を淘汰する、そういう機能が出てくると思うのですね。そうしますと、先ほど和田先生の方からも御指摘になった、いわばそこで働く労働者の立場、働く場所、そこはどう考えていけばいいのかという問題も当然我々は考えなければならないわけであります。  先生の立場あるいは先生のお考えでは、株式会社制度の本来の能力を発揮するということと、雇用の場としての働く場、会社あるいは労働者の立場、地位、それをどうしていくのかということについては、先生はどうお考えでしょうか。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えいたします。  これは、つまり会社法というものをどういうイメージでとらえているかということによりましてお答えが違ってくるかなというふうに思います。  従来の伝統的な会社法の考え方というのは、出資者、つまり株主をあくまでも中心にして、そしてみんなが集まって団体をつくる、会社をつくる。そして、その経営目的というのは株主の利益の最大化である。監査の目的も株主のための監査である。経営者は株主の代理人である。代表訴訟は株主の利益を守るためのものである。そうした考え方からしますと、労働契約も会社を取り巻く単なる取引、契約、そういうことになりがちでございまして、労働者の保護は労働法という特別の政策的な法制において対応すべきだということになろうかと思います。  ただ、株式会社というのは、先ほど申しましたように、国民に対して開かれた会社であり、株主というよりは、証券市場というのを前提にしますと、投資家という観点の方が私は個人的には基本ではないかというふうに思っております。  そして、しかも株式会社という制度は、企業社会のさまざまなステークホルダーとかかわる、利害関係人とかかわる制度でございますので、消費者であるとか投資家であるとかそれから労働者であるとか、そういった者との関係も、会社法が一定の限度で、つまり、極端に政策的な問題というわけではなくて、会社を取り巻く利害関係人という限度で会社法の考え方の中に入ってくる余地はあろうかと思います。  ただ、余りそれが極端に入り過ぎますと、今度は、会社法の本来持っていた株式会社を取り巻くさまざまな利害関係人の間の利害調整といいましょうか、そうした観点よりは政策ばかりが前面に出てくるということになりますので、それも行き過ぎてはいけないと思います。ただ、余りにも株主、株主ですべて株式会社の理論を説明してきたために、会社を取り巻く、どの会社も持っている利害関係人である労働者といいましょうか、そういうものに対して、会社が例えば経営判断をするに際してそれに対して特定の配慮をする、しかし、その分株主は不利益をこうむるからその経営判断はおかしいとかということにはならないといいましょうか、そういう方向性はあろうかと思います。株式会社観が大きく今揺れておるというふうに申し上げられると思います。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 ちょっと時間がなくなってきましたので、二点だけ、上村参考人に簡潔にお答えいただければと思うのです。  今回の商法改正、会社分割のあり方が財産の切り売りであってはいけないというお話がありました。場合によっては乱用的な会社分割が違法であるというケースがあり得るのではないのかというふうなお話がありましたが、この点について、先生にもう少し簡潔に趣旨をお話しいただければと思います。  もう一点、コーポレートガバナンス、これから企業はどうなっていくかということで、いわゆる企業統治という考え方について、先生がお考えになっている必要な整備、時間がなくて申しわけないのですが、簡潔にお答えいただければと思います。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えします。  先ほど申しましたように、会社分割が包括承継になるという根拠は、やはり事実関係を中心とした有機的一体の財産だ、だからまとめて移転するんだというところにありますので、個別財産の切り売りという状況になれば、それは通常の民法の債権譲渡だとか、そういうのと変わらなくなりますから、個別の同意がなくていいという根拠が薄れてまいります。そういう意味では、そもそも会社分割ではないのじゃないかということで、違法性が問題になるということは当然私はあり得るのじゃないかと思います。  それから、簡潔にということですが、ガバナンスにつきましては、私は、先ほど申しましたように、株主というふうに固定して考えるよりは、投資家としての株主というふうに考えるべきだというふうに思っておりますので、そうなった場合には、投資家にとって大事なのは、総会であなたは偉いと言われることが大事なのではなくて、投資対象である株式の魅力といいましょうか、実質の豊かさといいましょうか、そういうところにありますので、運営機構だとか経営目的だとか経営責任だとか情報開示だとかマーケット規制だとか、そういう実質こそが基本であるというのがガバナンスの基本的な考え方になるべきではないかというふうに思っております。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 和田先生、時間が少なくなって申しわけありません。先生は、最後の方で、いわゆる営業譲渡に関して問題点をお話しいただいたと思います。  今上村先生からもお話がありましたけれども、いわば会社分割の中で営業譲渡ということがどうなっているかということが、今回のこの改正の中で一つの問題点でもありました。今上村先生は、いわゆる乱用的な会社分割というのがあり得るのではないのか、こういう話がありましたけれども、営業譲渡の関連の中で、この点、先生は、乱用的な会社分割あるいはやってはならない会社分割というのをどういう形態をお考えでしょうか。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 私は商法の専門家でありませんものですから、営業譲渡に非常に類似した会社分割ということがあるかと思いますけれども、一応法形式上違うものですから、会社分割の問題と営業譲渡の問題は分けて考えた方がいいのではないかというふうに考えております。  会社分割の場合には、一応包括承継という考え方で労働法の問題はかなり対応できますけれども、営業譲渡の場合には、特定承継なものですから、全く法律状況が違ってくるということを考えますと、両方をやはり分けて考えた方がいいのではないかというふうに私は思います。  会社分割がどういう形で乱用されるか、私にはちょっと想像がつきません。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 和田先生のお立場でありますけれども、今回の法案について、評価する部分と、そして疑問と注文をつける部分とがあるということでお話をいただいたわけであります。また、修正案については、格段の改善は認められるということでありましたけれども、なお問題点が労働法の専門の立場からはあるというお話でありました。お話の中で問題点は御指摘をいただいたと思いますけれども、それはある意味では商法と違う労働法の分野の中で解決をしなければならない問題なのかな、こうもお聞きをいたしました。  そこで、ちょっと一般論になってしまって恐縮なんですけれども、先生の御研究の立場でいきますと、我が国が、いつからかという問題がありますけれども、終身雇用制度ということを前提にしながら、労働者の立場、権利というのが判例法理のもとでずっと維持をされてきた。これが今後、二十一世紀、終身雇用制度という問題も含めて、会社と労働者の雇用契約のあり方は今までどおりでいいのかどうか。あるいは、これからどう変わっていくのか。変わっていくとした場合に、労働者の立場、権利というのはどう守られていかなければならないのか。非常に大要な質問で、短い時間の中で申しわけないなと思いながらお聞きしたのですけれども、先生の大要、御趣旨の御所見をお伺いできれば、こう思います。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 非常に難しい問題でありまして、今、恐らくこの十年くらいの間に、労働法学者も、それから労働経済の学者も労働社会学の学者も非常に大きな議論をしております。さまざまな議論が分かれております。  現実問題として、やはり終身雇用制は非常に大きく変わってきている。例えば、労働移動というようなものも、以前に比べたらかなりふえてきております。  しかしながら、すべての労働者が容易に労働移動ができるというわけではないと思います。それから、その会社にずっと長いこといるということによって、さまざまな熟練といいますかが形成されたり、企業にとって非常に大きな貢献をするということがありますから、すべての労働者が短期間で移動をすればいいということでもないと思います。  そこら辺をうまく見きわめながら、どういう新しいサポートシステムをつくっていくのかということが今早急に求められているのではないかというふうに思います。私自身は、現実に非常に大きく変わっていて、古い器だけではなかなか対応できないということは率直に感じております。

倉田栄喜公明党・改革クラブ

○倉田委員 以上で終わります。大変ありがとうございました。

武部勤自由民主党

○武部委員長 佐々木秀典君。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  きょうは、上村先生、和田先生、お忙しい中をお越しいただきまして、貴重な御意見をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございます。限られた時間ですけれども、幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず上村先生、これまで我が日本の株式会社に関する法制やシステムあるいは政策、これは金融・証券政策などとも関連しているけれども、本来の株式会社の機能を十全に発揮させるようなものにはなっていなかったのではないかという話がありました。  確かに、商法の規定の上で、企業の再編成の形態として、企業の合併それから営業の譲渡という概念はあった。ところが、分割という概念あるいは法規定というのは、これまで確かになかったんですね。諸外国には既にあるのに、なかった。それで、今回は経済界の強い要望などもあってこれを入れ込むことになったということであるわけですけれども、この企業の分割という制度がなかったということは、先生の最初にお話しになったような株式会社のあり方からすると、これはやはり足りなかったというか欠落していたということになるのかどうか。これによってどういう効果が期待をされるのか。確かに、片方で合併があるのに片方で分割がないということはいかがかなとも思うけれども、それを、わざわざ分割ということを考えなかった、あるいはとってこなかった理由というのは何だったのか。そもそも論になると思いますけれども、短くで結構でございます。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えします。  今までの日本の企業経営のあり方というのは、個々の取引の効率とか個々の取引の合理性というよりは、会社全体としてつじつまが合っていればいい、ここで物すごく損しても、こっちでもうかっていればいいとか、要するに、規模はなるべく大きければいい、そして、証券市場を活用するというよりは、メーンバンクとか、銀行の力に最後は頼るといいましょうか、そういう形でやってきておりましたので、そういう意味では非常にどんぶり勘定的な経営といいましょうか、そういうことだったと思います。  しかし、市場型になるということは、これは何でもかんでも市場にゆだねればいいということではなくて、その市場が成り立つための前提条件をきちっと提供するということが基本なんですけれども、そういう状態というのは、やはり個々の取引の合理性とか個々の取引の効率性とか、それで勝負していく、こういう時代に変わりつつありますので、そうなりますと、やはり分割の手段というものも中立的な手段としては与えてやることが、先ほど申しましたように、最も有力な、あるいは最も筋のいいプレーヤーにとって使える手段としてやはり提供しておく必要があるのではないか、そういう状況に今なってきたんじゃないかというふうに感じております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 実は日本の場合には、株式会社という形態をとっている企業形態は最も多いわけですね。ほかにはまだ有限会社などもありますけれども、合資会社だとか合名会社というのはほとんど使われなくなっている、ただ法制度上はまだあるわけです。  そして、日本の企業の恐らく九五%とも九七%とも言われるのがいわゆる中小企業。そういう中小企業、しかも極めて個人的な色彩の強い、言ってみれば個人事業じゃないかと思われるところも、会社形態をとることの税制上の有利さなどということから株式会社をとっている。実は、実際には同族会社というよりも、一人の主人が自由にすべてを牛耳るような会社というのは非常に多いわけですね。今度のこの分割というのは、そういう中小企業との関係はどうなんでしょう。大会社についてはその必要性だとか効用性というのは、私はあるかもしれないと思ったりする。  聞くところによると、横河電機などが、事業部門を独立させて新会社をつくることによって、その課長さんが社長さんになるというようなことで、また非常に企業意欲を燃やして成功しているというようなことが報じられていることもありますけれども、中小企業の場合に、この分割というのが事業の発展などということと関連して期待できるのかどうか、この辺はどうでしょうか。中小というよりも零細といった方がいいのかもしれませんが。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えします。  日本は、先ほど申しましたように、大企業の方は本格的な株式会社とは言えなかったんです。しかし、本当は、株式会社というのは、公開していない会社というのは、将来は公開するかもしれないという意欲があるから株式会社形態を選ぶというのが本来のあり方で、そうでなければ有限会社形態とかそういうのを使うはずなんです。しかし、日本の場合は、閉鎖的株式会社というのが先生御指摘のように乱立しております。ですから、大会社の方は株式会社本来の機能を発揮せず、小さい方は今度は同族会社であったという状況だったと思います。  ですけれども、これからは、公開していない会社というのは本当はベンチャーなんだ、そういう感覚で考えていきますと、ベンチャーにも需要があるというふうな意見も聞いておりますので、そういう場合は使えるかなと思います。  ただ、永久に同族的であって、株式は譲渡制限してという会社がそういう需要がないとは言い切れませんけれども、その場合には、検査役にかわる評価人みたいなものが、きちっとした客観的な会計的な評価といいましょうか、あるいは監査というものがないままにやっていますと、やはり不当な分割だとされる、そしてその後でその効力が争われる事例というのがあり得なくはないというふうに思います。これは、評価人制度みたいなものがきちっと確立し、そして問題があるものは後からその効力を争うということはあり得ると思います。  しかし、事前に一切のそういう需要がないと言い切っていいかというと、それはそうでもないかな、ベンチャーについてはあるかなと。しかし、本格的にはみずほみたいな、筋のいいとかという言葉を私は使っておりますけれども、そういう事例が典型的だというふうに思っております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 和田先生に労働関係の問題についてお尋ねをしたいと思います。  連合を初めとする労働組合団体あるいは労働者の皆さん方は、今度のこの会社分割に伴う労働関係がどうなるのかということについて、非常に大きな関心を持ってこれまでも取り組んでこられました。そうだと思うんですね。  そうでなくても、今、雇用不安が非常に高い。失業率は戦後最悪で、全国平均四・九%とも言われている。私の地元の北海道などは五%を超えていますし、もう一つ地元の旭川市などでは六%ではないかとさえ言われているぐらいです。  最近も地場産業など、木材関係あるいは木工家具関係の会社も倒産しておりまして、また失業する人がふえているという中で、たとえ健全な企業であっても、実際には、景気も一向に回復しませんから、リストラ、その中では最も人件費の節減ということを考えられているとすると、やはり雇用関係にこの会社再建がどうなるかということが非常に心配されているということになるわけですね。  私どもは、御承知のように、そうした御心配も受けて、これは商法だけ、この商法規定の中で全部を賄うことはできないわけですね。ですから、この商法改正については、一部私ども修正案を出させていただいて、これは両先生からも御評価をいただいているところですが、これでは全部賄えないということで、労働委員会の方で会社の分割に伴う労働契約の承継法案が出ておりますけれども、これだけでも足りなかろうというので、私どもは労働者保護法案を出しているわけですね。しかし、これが通るかどうかなかなかわかりませんけれども、何としてもそういう不安を解消したいと考えておるわけです。  私どもの党から出しているこの保護法案の方ですけれども、和田先生はごらんいただいておりますか。これについてはどんなふうにお考えになっているかを伺いたいと思います。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 今の御質問ですけれども、詳しくはまだ検討しておりませんけれども、ECの指令とか、あるいはヨーロッパの主要国の法律にかなり近い制度だろうというふうに考えております。  私自身も、専門としましてはドイツのことをずっとやっているわけですけれども、ヨーロッパのような、そういう企業組織の大きな変更に伴っても解雇が生じない法整備というのはやはり日本でも今御指摘になられたような状況の中では必要だろうというふうに考えております。  細かな点につきましては、まだまだ煮詰めなければいけない点があるかと存じますけれども、基本的には私も同じような意見を持っているということであります。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 今ドイツの法制のお話で、私どもも資料を見せていただいているのですが、これは企業再編に伴う労働契約の承継あるいは保護の問題ですね。これについては、分割だけではなくて、合併だとか営業譲渡だとか、そういう場合の処置も入れ込まれているのですか。これをちょっと確かめさせていただきたいと思います。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 若干その法律ができた経緯を申しますと、ヨーロッパのEC指令ができましたのは一九七七年であります。ドイツでは、それ以前の一九七二年にそういう法律ができておりまして、七七年のEC指令の後、若干修正したところがありますけれども、基本的にはドイツ法とかフランス法がECの指令に影響を与えていったというプロセスをたどっております。  もともとドイツは、主に営業の譲渡とか賃貸とかいったようなものについて、特定承継について念頭に置いた規制を設けて、その後、一九七〇年代になってきますと企業組織変更法等ができるものですから、その中に民法の規定がもう一回取り込まれていくというプロセスをたどっております。  基本的に、従来から包括承継につきましてはそれほど問題がないというふうに言われたのですけれども、ECのいろいろな事例を見てみましても、やはり企業の大きな組織変動に対して労働問題にどう対応するかという基本的な視点が必要なのではないかというふうに私は考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 和田先生にもう一点だけ。  労働協約がどうなるかという御指摘がございました。私もこれは重要な問題だろうと思うんですね。いわゆる残業に関する三六協定などですけれども、これは分割によって、いずれにしても契約の主体が変わってくるわけですね。そうすると、労働協約というのは、現在の日本は、大体企業別労働組合の形態になっているわけですから、企業と労働者の団体あるいは労働者の組合とが協定を結ぶということになると、分割によって労働者の地位あるいは権利義務が仮にそのまま承継されるにしても、労働協約は全く別ですね。これはそのまま承継ということにならない。やはり新たな締結の仕方をしなければならないのか。  さっき先生から義務づけというお話がありましたけれども、その場合に、例えば労働者は労働組合をまた別個につくって、それで新しい分割された会社、分割でつくられた会社と団体交渉など協定の交渉をしなければならないのか。その辺はどうお考えになりましょうか。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 今労働協約の話と労使協定の話をちょっと混同されているものですから、労働協約の承継につきましては労働契約承継法案の中に債務的部分と規範的部分とを分けて規定されておりますけれども、労働基準法等々では二十何種類のいわゆる労使協定という三六協定を中心にしたものがあるのですが、この協定がどうなるかということはどこにも触れていないのですね。  今御質問にありましたように、残業協定が直ちにそのまま適用されるかどうかということがこの法案からはわかりません。やはり何らかの措置というものを講じないと一定の空白期間が生ずると思います。そこについては、いろいろな方法があると思いますけれども、私は先ほど一案を申しただけで、ぜひまた後で御検討いただければというふうに思います。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 時間が参りました。両先生、ありがとうございました。

武部勤自由民主党

○武部委員長 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  両参考人、ありがとうございました。  最初に、上村先生にお伺いします。  先ほどの公述の中で、株式会社制度で今重視すべき一番大きな課題は投資家保護ではないかという趣旨のお話も承ったわけでありますが、私の方は、むしろ今日本の分割法制の制定を求めている大きな会社に求められているのはやはり社会的責任ということではないか。今お話があったように、三百四十九万という完全失業者であり、非自発的失業が百四万を超えているという数字も出てきております。また、こういう雇用に対する最大の責任はこういう大会社であろう。また、地域経済、日産のリストラの問題が大きな社会的問題になっておりますが、一つの大きな工場が丸ごとなくなってしまうような状況がつくられますと、その地域経済が、下請企業も含めて、地域全体が大きな影響を受けるというのは当然だと思うのです。私は、今何よりも求められているのはこういう大きな株式会社の社会的責任を、どうきちっと法律制度を果たさせるかということではないかと思うんですね。  そうすると、投資家保護が非常に重要だということを強調されますと、投資家にとって一番大事なのは、株が上がったか下がったかということになる。そうすると、結局目先の利益だけを会社が追い求めていくことになる。目先の株価を上げるためには労働者の首を切った方がいい、下請を切り捨てた方がいい、不採算部門は切った方がいいということになっていくわけでありまして、根本的にどうなのかなと疑問を持っているわけです。  そこで、改めて、根本問題ですが、大きな企業、株式会社の社会的責任をどう考えるのか、それを法律制度としてどう担保する必要があるのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えします。  証券取引法の理論の中では、従来から投資家保護が目的だという考え方が非常に強くて、それに対して、私はむしろ投資家保護ではなくて、証券市場といいましょうか、市場の機能を十分に発揮させる、公正な市場をつくっていく、その意味で、市場の構成員として株主というよりは投資家という概念が基本だろうということを申し上げたわけでございます。  そうなりますと、先ほど申しましたように、投資家というのは、これから買おうとするものも対象にするわけですから、買おうとするものも対象にするということはだれが買うかわからないわけでございますので、要するに国民全体に開かれた企業になる。そういう意味では、株主の利益、投資家の利益だけを目的とした会社観にならないというために、そういう構成をむしろしているわけでございます。  ですから、そういう意味では、先生がおっしゃったような社会的責任をさまざまなステークホルダーに配慮できるような、それが可能なような機関の仕組みとか、それから情報開示だとか、マーケットの規制であるとか、それが可能な仕組みを考えていくというのがコーポレートガバナンスだろうというふうに思っております。  ですから、リストラをして株価が上がれば株主がうれしいというのが投資家保護ではないし、会社法制の考えるべきことではないというふうに私は考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 わかりました。  しかし、私、手元に、都銀懇話会が「会社分割制度の研究 持ち株会社のメリットを生かした自由な組織再編を行うための有効な手段」ということで論文を書いているんですが、「会社分割制度導入の意義」という中で、「「分社化」では親子関係が存続するため、支配・被支配あるいは主・従の関係が生ずることにより子会社独自の戦略がとりにくい、親会社が子会社の経営リスクを直接負担し続けるという問題がある。」「親子会社における支配・被支配の問題やリスク遮断の問題は」会社分割制度なら「生じない。」要するに、そういう責任を切れるというのですね。  それで、この研究会では、不良債権の分離が最も法的にもスムーズにいく制度として会社分割というのは非常に意義があると。まさに銀行などの不良債権を切り離す、そのとき、親子会社では親会社が責任をしょわされるから、それを完全に法的にも切り離せる、それが分割制度の意義なんだというようなことを書いてあるのですね。  こういう見方について、先生の方からはどうでしょうか。どういう評価をされますか。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 先ほど、私の意見でも繰り返し申しましたように、基本的な制度インフラというものは、例えば会社の運営機構であるとか、情報開示であるとか、あるいは金融システム改革にしましてもまだ緒についたばかり、こういう状況でございます。  また、持ち株会社にするということに、恐らく世界じゅうで日本ぐらい一生懸命な国はないんじゃないかなという感じでございます。それは、アメリカですと公益事業と金融持ち株会社しかないわけでございますし、ヨーロッパでも、持ち株会社、持ち株会社と余り議論をしているわけではない。ただ、持ち株会社が良質なプレーヤーにとって効率的な、個々の取引の効率性といいましょうか、そういう観点から一定の役割を果たす、そういう手段を与えるという意味では有効だと思います。  しかし、今おっしゃられましたように、実は、切り離したって情報開示は全部出さなければいけない。切り離しても責任はついてくる。企業結合法制はどこまでもついてくる。切り離しても、例えば親会社の株主が子会社の経営者に対して代表訴訟が提起できてしまうとか、そういう、法人が幾つ重なっても実態の人間関係は何も変わりませんということになっているとしますと、本当の意味での効率性というのが浮き上がってくるというふうに思います。  しかし、日本の場合には、まだ制度が不備であることが有利に働くという面が必ずしもないとは言えないというふうに思います。そうはいいましても、では、そういう手段を与えないで、全部整備するまでは何もしてはいけないと言えるかというと、そうも言えないだろうということでございます。  ですから、日本の場合には、仮に先ほど先生がおっしゃったようなことが起こったとしても、規制が常についてきているからさほどの効果は働かない、本当の意味での経営効率のためにしか使えないんだ、こういう制度的なインフラをきちっと整備するということと今回のような手段が提供されるということとが、やはり両方相まっていることが必要だというふうに考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 今度の商法改正法案には、確かに先生おっしゃったように、債務超過の場合は分割できないということはあるわけであります。しかしそれは、分割するその時点での問題であって、企業はやはり長期的な視野で不採算部門を切り離していって、採算部門だけを生き残らせて、より超過利潤を上げていきたいということでこれを使うと思うのですね。そうすると、分割のときに、だれが見ても明らかなような債務超過の分割の仕方などというのはするはずがないわけでありまして、それはちゃんと債務超過にならぬような資産の手当てはするんだろうと思うのです。  しかし、企業というのはまさに営業ですから、営業というのは生き物でありまして、ストックよりもフローが問題になるわけであります。不採算部門であれば、一年、二年営業を続けていけばまず間違いなくその切り離された一部分は赤字となって、不採算になって破綻。そうなれば労働者の首切りも、恐らく、今の最高裁の解雇の四要件もこれはすり抜けることができるんじゃないか。この商法改正法案は、そういう分割時の債務超過はしてはいかぬよ、債務超過ではいかぬよということはあるけれども、その後の何年かにわたる企業がきちっと維持しなければならぬ、そういう意味での雇用責任とかいろいろな責任については何も触れられていないわけですね。その辺がやはり、これが悪用されるのじゃないかというふうに思うのですが、その辺、上村先生どうでしょうか。  それと同じ質問を労働法学者として和田先生、私、一番そういう心配を持っているのですが、その辺がまさに労働者の雇用が守れるかどうかの根本にかかわる問題であると思うのですが、その辺についての和田先生の御意見もあわせお聞きしたいと思います。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 お答えします。  確かに、債務超過をどう認定するかということ自体もなかなか難しいという点があろうかと思います。特に、承継した資産の評価が簿価だったり時価だったり、その辺のこともちょっとはっきりしない点もあるというふうに思います。ただ債務超過でないというだけですべて切れるかというと、そうも言えないだろうというふうに思いますのは、やはり債務超過の蓋然性が極めて高ければ、乱用目的の会社分割であるというふうな認定は可能ではないかと思います。  それから、会社分割無効という制度は、分割したものを一緒にするわけですから、利害関係人にとって複雑な問題は起きてきません。合併無効というのはこれは大変でして、長年やっていたものを分けるわけですから、昔はどうだったのかという話になりますので、これは大変なんです。そういう意味では、分割無効の訴えの事由というものは相当広範に見ていくということはあり得るかなというふうに思います。  それから、現に債権債務を問題にするだけではなくて、例えば先ほど意見で申しましたように、営業の一括承継ですから、営業というのは事実関係を含むということですから、事実関係というのは長年にわたって蓄積された事実関係ということでございますので、そこには将来にわたる期待権とかそういうものも当然あるだろうと思いますので、そういうものをなくすといいましょうか、そういうことを主目的とした分割というのもやはり本来の分割の目的ではないということでございます。  ですから、これはその後の判例の対応にまたなければならないかもしれませんけれども、分割無効というようなものは活用していける。そしてそれは、単にその時点で債務超過だけではなくて、債務超過の蓋然性が非常に高いとか、そういう見込みが高いとか、そういうものもやはり含めて考えていくべきだというふうに思います。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 会社分割の場合には、分割された新設会社等につきましては、後で例えば親子会社の法理等々が適用されることがあると思いますけれども、そうじゃない場合の救済は非常に難しいと思います。現実に裁判例などを見てみましても、一つの企業を分けて、不採算部門がなくなってしまって、そこの労働者が結局どこに雇用関係の存続を確認したらいいのか、非常にそれは難しい、法人格否認の法理などで対応できないような問題も出てきております。  そういう問題に対してどう対処するかというのは今後の課題だと思いますけれども、私は、そのもとであります会社の分割の際に、やはり組合とか労働者がどれだけ関与できるかという規制が労働法からいいますと非常に大切なのではないかということで、先ほど協議の問題とか労働者の意思の確認の重要性ということを指摘したわけであります。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私は、労働者、被雇用者から見ますと、自分が雇用契約を結んでいる一つの大きな企業体、会社が分割されること自体が利害関係を持つ、不利益を持つということは大いにあり得ると思うんですね。会社分割の場合は、不採算部門が分割されて別会社にいってしまう場合もあれば逆の場合だってあるので、優良部門だけを切り離して別会社に持っていって不採算部門だけが残されてしまう、いろいろこれからあり得ると思うんですね。  そうすると、今度の労働関係承継法を見ますと、その分割される営業に主として従事する労働者については、無条件で同意なき移籍が強行されますね。それ以外の一部の労働者についてのみ異議申し立て権がある、そういう構造になっているわけでありまして、異議申し立て権が付与される労働者はほんの一部という構造だと思うんですね。私は、分割されること自体が、いろいろな場面を想定しますと、労働者にとっては不利益が想定されるわけですから、どんな場面の労働者についても、残るか、新しい会社、企業体に行くか、すべての労働者にとって、残るかどうかも含めまして、やはり同意といいますかを求めてしかるべきじゃないか。ちょっと極端かもしらぬですが、そんなことも考えているんですが、労働法の立場からいきますとどうでしょうか。そこまで求めるのはちょっと強過ぎるのか。EUの考えなんかの基本についてもあわせお答えいただければ幸いです。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 ECの指令につきましては、その部分については何も言っておらないと思います。ECの国の中では、フランスのように、強制移転の法律が、制度ができたから労働者の異議の申し立て権はないというふうにしている国もありますけれども、例えばドイツでは異議申し立て権を認めております。これはEC裁判所も、国の問題としてそれは是認できるということを言っております。  私は、法律論からいきますと、やはり民法六百二十五条一項がどうして承継法案で排除できるのかというのがいまだもって疑問で、この点について説明がされていないというふうに考えております。つまり、先ほど意見の中で述べましたように、民法の規定が特別法によって労働者の不利に修正されるということは、私たちの今までの発想からは考えられないことです。営業が承継されて、そこに行けば職場は維持されるからいいというのが労働省の研究会の報告の中にあるんですけれども、私自身はそうではなくて、どこの職場で働くかとかいう問題についてもやはり、それは最近の法律学で非常に盛んになってきている議論でいきますと自己決定ということになるんですけれども、そういう自己決定の尊重というシステムが、今後の労働法の中では、いろいろなところで言われておりますけれどもやはり必要なのではないかというふうに思っています。  これは、ある意味で労働者にとって非常にリスクが大きいことなのかもしれませんけれども、情報の開示とか一定期間の協議とかというようなものを繰り返す中で、十分に労働者のそういう自己決定ができるシステムというものが企業の組織変更の際にはやはり必要なのではないかというふうに私は感じております。これは実際的にもそういうことでありますし、民法六百二十五条一項の解釈としてもそうなるのではないかというふうに私は考えております。これは、研究会報告ではそうじゃないということです。やはりどうもそこがずっと納得できないところであります。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 時間が来たので終わります。貴重な意見、ありがとうございました。

武部勤自由民主党

○武部委員長 保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。上村参考人にまず伺いたいと思います。  今回の会社分割の特徴は、営業単位である、つまり営業丸ごと行われるということで、心配される混乱、懸念がそれだけ減るんだ、これが法務省の説明でもあります。  そこで、いろいろ考えてみるんですが、例えば大手パンメーカーというのがあるとすれば、例えば、九州、関東、北海道とか、あるいは都道府県単位とか、地域によって分割されることも、これは営業単位と言えるのかなとか、あるいは、直接生産部門と販売流通部門、そういうふうにすっきり分かれればいいんですが、直接生産部門の中にパン工場もありますよ、お菓子工場もあります、ケーキ工場もあります、ジュース工場もあります、ペットフード工場もあります、これも営業単位、それぞれの工場で分けていけるのかどうか。営業単位という概念は明確なのかどうか、ちょっとわからないんですね。このあたり御説明いただきたいと思います。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 営業というのは、これも最高裁の判例もあるんですけれども、要するに、得意先とか取引先とか、あるいはのれんとか経営のノウハウとか、そういう事実関係を含む、そして土地とか建物とかいろいろな什器類だとかそういうものが、有機的一体財産というような言い方をしておりますけれども、そういう全体としての、要するに活動単位といいましょうか、そういうことで、単なる財産の移転だけではなくて、活動が丸ごと移転するという概念だと。だから、譲渡した後は競業避止義務を負う、そういう関係になっております。  ですから、今先生おっしゃった例というのが、今申し上げたような、要するに一定の活動単位というものがそこで形成されていれば、これは営業の承継の対象にはなるというふうに思いますが、単なる個別財産の集合体だということですと、これはならないというふうに思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 合併と分割の違いについてもおっしゃっていたんですが、今後考えられるのは、やはり企業再編の中で一たん合併をして、例えばパンメーカーならパンメーカーが合併をして、その上で分割をしていくというみずほフィナンシャルグループなどの形も容易に考えられるわけで、そうなると、やはりこれは直接人員削減、リストラ要求が企業側に非常に強くなるし、また、同一形態をとっているような工場を一つ閉鎖しようというようなことにもなってくるだろうし、それぞれの企業にいわば密接な関係を持っている下請部門もこれまたやはり影響を受ける、これは火を見るより明らかなのかなと私は思うんですが、その辺は先生いかがでしょうか。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 みずほの場合は、あれは株式移転という形で持ち株会社をつくって、それから分割という形になるんですが、まあ合併ということもあるかもしれません。  私も意見で申しましたように、合併のときの合併比率の計算とか、その辺について、必ずしも会計・監査制度が充実しているかどうか、あるいは分割についても言えると思いますけれども、その辺が、余り何度も頻繁にいろいろ行われることで非常に不透明性が増していくというようなことは心配しておりますけれども、しかし、それは基本的な制度の、インフラの問題でございますので、これは直していかなきゃいけないということだと思います。  労働契約の問題については、先ほど来お話がありますように承継法と今度の附則でもって対応するとか、その他、債権者一般については債権者保護策とか情報開示とか、あるいは株主については株主総会の特別決議であるとか反対株主の買い取り請求権であるとか、一応用意されておりますので、そしてもし不当な分割があれば分割無効、しかも、私申しておりますように、分割無効は相当広く認めてもさほど弊害が多くないということでもございますので、そういうことで対応していく。  ですから、確かに、弊害とか悪用というものを考えますと、それはいろいろなインフラが十分に整備されたとは言い切れない状況だと思いますので、心配はある。そして、それに対しては事後的に対応していかなきゃいけない。しかし、逆に今度は、こうした手段を一切与えない、外国にもあるような法律制度にして与えないということで、そのことによって、どんぶり勘定じゃなくて、個別の取引とか経営単位での、むしろ今度はその長所を発揮するような局面も逆に奪ってしまうというのも、それもどうかなということで、その辺は、確かにすべての条件が整ってからやれば安心だということかもしれませんが、やはり両方並行的にやっていかなきゃいけないというのが日本の状況であり、悩むところでもあるだろうというふうに思っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 コーポレートガバナンスというお話も出ていましたけれども、例えば簡易分割という形態がありますが、この簡易分割に対して回数制限は特に課されていませんよね。ですから、五%という範囲で何度もこういった制度を使うということは想定できるでしょうか。上村参考人、お願いします。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 簡易分割をした後の会社というのは相当小さいはずですから、そこでまた簡易分割をするということは、理論上あり得なくはないとは思いますけれども……(保坂委員「一社を何回も簡易分割、もともとの会社を」と呼ぶ)もともとの会社を何度も分割するということですか。分割して、残った会社をまた分割してということですか。ちょっと、どういう趣旨か……。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 要するに、A社という会社があります。簡易分割で、二十分の一の、五%ですか、その範囲の中であれば取締役会などを通さずにできるという簡易分割の制度がありますね。これは、世の中いろいろな会社があるわけで、それこそ企業が善良であるという前提に立てないので、こういうことを利用して、まさに労働者との同意だけではなくて、簡易分割ということを一つの会社が何度も繰り返す、こういうことがあり得るんではないかということなんですけれども。

上村達男早稲田大学法学部教授

○上村参考人 簡易分割をしますと分割する会社の規模はどんどん小さくなっていきますので、そこでまた分割するということは、あり得るとは思いますけれども、そういう実益というのは余りないのではないかなと。  それから、簡易分割する場合は、取締役会ではなくて株主総会の決議がなくなるわけでございますので、取締役会の承認は当然必要だと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ちょっと趣旨が伝わらなかったみたいなんですけれども。  会社分割をリストラなどの推進には使わないんだ、こういう趣旨の答弁がずっと続いているわけです。先ほど木島議員からも、私も、あれ、これはと思ったんですけれども、不良債権処理のためにこの会社分割を大いに活用すべしということが既に言われているわけで、やはりこの会社分割制度を大いに活用して、これまでだったら、例えば五百人の余剰人員をリストラしたいというときになかなか大変だったと思います。ところが、例えば大規模な会社の場合、ある支店に五百人なら五百人集めちゃう、それでそのA支店ならA支店というものを丸ごと閉鎖していくような計画のもとに分割がされるんじゃないか、こういう懸念があるわけですね。  そこで、和田参考人にお聞きしたいんですけれども、労働者との協議ということが修正案の中に入ってきたのは私たちも評価をしているんです。しかし、これは経営をしている側が提起するわけであって、働いている側が分割を提起することはないわけで、常に、そういう労働者との協議というときに、どこまで協議が調うのか。どう見てもこの会社は今のままではやっていけないという形態の会社であれば労働者も納得してということもあるかもしれませんが、いろいろ国際競争力の向上だとか、働いている現場から見れば仕事もうまくいっているし業績も上がっている、なのになぜ分割なのか、当然、分割に対する不満あるいは疑問が労使紛争の発火点になるということが考えられるんじゃないかと思うんですね。  そういう場合に、協議という意味内容、協議ということが一方的な会社側の通告あるいは形式的にこれを開催するということに終わる懸念はないのか、あるいは職場単位などで労働者を呼び出して、こういうことになりましたという説明、これが協議だというふうに解釈をしていくというようなことがあるんではないかという心配をしているわけなんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 協議の点でありますけれども、私自身は、協議が入ったということ自体は、前は全くなかったわけですから、その意味では改善だというふうに考えておりますけれども、協議をするということの内容につきましては、今までいろいろな労使協議というのがありましたから、例えば解雇協議約款なんかに基づく協議というようなところで判例法理ができておりますから、恐らくそれと同じような、誠実に合意に到達するように交渉しなさいという内容になってくるんだろうと思いますけれども、協議を誠実にしなかったり協議で合意に至らなかったら法的効果がどうなるのかということにつきましては、実は私は一つわからないんですね。この点が恐らく大きな問題になってくるだろう。  そこで、私は、例えばそれを協議した内容を株主総会とか取締役会に示すというような方法も一つ考えられるのではないかということを先ほどちょっと話をしましたけれども、ここら辺の点につきましてももう少しぜひ詰めていただきたいというふうに考えております。協議が調わなかったあるいは協議を十分尽くさなかったときにどういう法律効果が生ずるかということですね。  この点と、もう一つは、実体的な規制ということで、先ほどからずっと言っておりますけれども、一つはやはり労働者の意思の確認ということが必要なのではないかということと、もう一つは、先ほど集中させるという話が出てきましたけれども、そういう懸念がある場合の防止策で、例えば過去半年ぐらいの間に集中的にした場合にはこれは解雇禁止の規制を受けるんだという判例法理がECの中にはあります。そういうものを参考にしながら、恐らくこれは労働省令で規制することになると思いますけれども、そこら辺の細かな規制がやはり必要になってくるだろうというふうに私は考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 もう一つ和田参考人に伺いたいんですが、会社分割によって、子会社というか、幾つかの、今まで一つだった会社を分割して、持ち株会社が事実上その経営を支配するというふうになったときに、個々、例えば五つなら五つの、かつて一つだった労働組合が分割そのものに疑義がある、そして今、協議の問題ですけれども、協議が調わないけれども分割されてしまったというときに、それぞれの経営者と交渉してもらちが明かない、では、その持ち株会社自体に団交応諾義務があるのかどうか、これも大きな争点になると思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 今の点につきましては、持ち株会社のときにやはり労働省の研究会の報告が出ておりまして、最高裁の判例法理で十分対応できるから当面立法措置が要らない、たしかそういう報告が出ていたと思います。  私自身は、確かに判例法理があることはあるんですけれども、やはりなかなかわかりづらいものですから、そこら辺の問題に対してもできればきちっと立法措置が必要なのではないかということを従来からずっと考えておりました。これはほかの問題についてもそうなんですけれども、判例法理があるから対応できるというのにつきましては、これは法律家の非常に独特な議論でありまして、判例法理が何かというのは一部の法律家しかわかりません。例えば労働法の判例法理は民法の学者がわかるかといいますと、なかなかわかりません。それが法律になりますと、これはだれにもわかるようになって非常に明確でいいという利点があるものですから、判例法理のようなものができましたら、それはぜひ法律にする方が望ましいのではないかというふうに私は個人的には思っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、もう最後になりますが、和田参考人に伺います。  これは懸念が懸念に終わればいいんですけれども、やはり現在も企業再編は進んでいるわけで、これは分割ではなくて、会社を一たん清算して新会社を設立して給料は半分ですよというようなことがもう現実に起きているわけですね。それについて労使紛争も起こっているし、あるいは労使紛争も起こせないぐらいに弱い立場に労働者側は追い詰められているというのが現状だと私は思っているんですが、こういう分割法制がある一定の大きさ以上の企業ではなくてあらゆる企業に適用ということになることによって、今後これをきっかけとした労使紛争などが起こってくる懸念があるんじゃないかというふうに私は思うんですが、そのあたり御意見はいかがでしょうか。

和田肇名古屋大学大学院法学研究科教授

○和田参考人 それは私にはわかりません。今後起こるかどうかわかりませんけれども、企業の大きな組織変更ということが行われていることに対して、商法の立場からの十分な対応も必要でしょうけれども、労働法の立場からもきちっとした対応策というものをやはり整備していかなきゃいけないのではないかというふうに感じております。  以上です。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ありがとうございました。終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、両参考人に一言御礼を申し上げます。  両参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議

武部勤自由民主党

○武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに与謝野馨君外四名提出の商法等の一部を改正する法律案に対する修正案審査のため、午後の参考人として日本労働組合総連合会総合労働局長松浦清春君、東京商工会議所常任顧問・株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長鈴木良男君の両名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、松浦参考人、鈴木参考人の順に、各二十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず松浦参考人にお願いいたします。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 御紹介をいただきました日本労働組合総連合会の松浦でございます。  本日は、産業、企業基盤の整備と当該企業に働く労働者の雇用や労働条件などに大きなかかわりを持つ、企業分割についての商法改正を審議されていますこの法務委員会で発言をする機会を得ましたことにつきまして、まず御礼を申し上げる次第でございます。  そして、以下二点にわたって、この企業分割によって影響を受ける従業員、労働者の立場に立って意見を述べたいと思います。  まず第一点は、産業、企業の基盤整備にかかわる各種の支援施策に対する連合の考え方についてであります。  経済社会のグローバル化、あるいは東南アジアを中心とする新工業国の台頭などによりまして、日本の産業、企業は、品質あるいは価格競争が激化しているということから、今、それぞれの企業におけるリストラクチャリングを積極的に進めていますし、同時に、バブル経済の崩壊によって企業が背負いました負債等の解消を含めた企業基盤の整備や競争力強化施策が必要であり、また、これを積極的に実施しているということについても承知をいたしておりますし、労働組合の立場でこうした企業基盤の強化のための施策につきまして積極的に協力をしているということについても、御報告を申し上げておきたいと思います。  連合といたしましても、九七年に改正、施行されました独占禁止法による純粋持ち株会社の自由化、そして九九年に制定されました産業活力再生特別措置法、さらに民事再生法、いずれも企業のリストラを促進し、従業員の雇用や労働条件などに影響を及ぼすということが懸念されたものでございますけれども、私ども、従業員、働く者の立場で、企業基盤の整備を支援するこれらの施策は必要という判断から、これらの制定について反対をしなかったわけであります。むしろ、積極的に支持をする、そういう立場をとってきたわけでございます。  ただし、前提条件があるわけでございまして、これら企業基盤の整備を促進するという施策につきましては、そこに働く従業員の雇用や労働条件に大きな影響を与えるということから、こうした企業基盤の整備に関連をする労働者の雇用と労働条件の安定を規定をする法律を制定すべきであるという主張をしてきたわけでございます。  今回、企業のリストラ促進法の総仕上げとも言われる商法の改正による企業分割に際しまして、政府から労働契約の承継法なるものが提案されているわけでございますけれども、こうしたものとあわせまして、この商法の中に企業基盤の整備にかかわる労働者の取り扱い、保護についてもう少しきっちりと整備をしていただきたいということをまず私どもとしては期待をしているわけでございます。特に、九七年の独禁法改正以来進められてきました一連の施策とあわせまして、従来から認められておりますし、既に具体的な施策もとられています企業の合併、営業譲渡を含めた企業組織の再編にかかわる労働者の雇用や労働条件保護に対するセーフティーネットとしての法制化をしていただきたいということが私どもの基本的な考え方でございます。  もちろん、これまでの日本では、繊維革命と言われました化繊、いわゆる化学繊維の大量生産システムが、木綿、絹から変化をしたということ、それから石炭から石油にかわったエネルギー革命、あるいは製造業における生産設備の大型化、オートメーション化など、これまでも日本の産業、企業におきましては幾度かにわたって大きないわゆる企業革命というものが、あるいは企業の構造改善というものが行われたわけでございまして、これまでのところ、そうした企業の構造改革あるいは生産構造の改善等に伴うリストラクチャリングの関係につきましては、あるいはリストラクチャリングにおける雇用問題につきましては、新たな受け皿があったということと、そしてそれぞれの企業が新しい受け皿への職務対応力を、企業が雇用を保障しながらこれを実施する、そういうゆとりがあったということから、これらの産業革命、企業革命における大きな雇用問題というのは具体的に問題視されるということが少なかったわけでございます。  しかしながら、御案内のとおり、現在の日本の産業、企業は、経済社会のグローバル化によって、品質、価格両面で激しい競争条件に置かれているということから、こうした従業員、労働者に新しい職場への再配置のための教育を行うとか、あるいは再配置のための、あるいは再就職のための具体的な支援を行うということが非常に難しくなっているという状況だけに、こうした施策を労働者保護法なしに実施することについて大きな危惧を持っているということであります。  二つ目は、商法等の一部を改正する法律案並びに与野党五党から共同提案されました修正案についてであります。  改正法律案には、分割をするには分割計画書を作成すること、そしてその分割計画書の中に「承継スル権利義務ニ関スル事項」が挿入をされたことによりまして、企業の分割に伴って直ちにといいますか、ストレートに雇用不安が生じるということは回避できたというふうに判断をするわけでございますし、評価できるというふうに考えております。  また、「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」などを備え置くということについても具備条件というふうになっております。  これにつきましても、それぞれの企業におきまして、これから展望の開ける部門についてはさらに拡大発展のために独立化をしていく、そして陳腐化をした設備や事業所を中心にして清算会社としてこれを取り残していく、そういった、企業の再生のために一部をジャンプさせ、一部を切り捨てるというような措置については許さない、今回の企業分割法はそういった手だてがつけられているということについても私たちは大きく評価をしているわけでございます。このことは、企業の清算処理会社づくりを防止する、そしてそれが雇用の不安定化を助長しない、そういう意味で評価をしているということを申し上げておきたいと思います。  一方、この商法にはなじまないという判断から全く規定がされていなかった労使協議についてであります。  これにつきましては、私どもは、労働組合と協議をするということを明記していただきたいというお願いをたびたびにわたって法制審議会の小委員会の段階からしてきたわけでございますけれども、これについて入れてもらえないということで、今回五党で提案をされました修正案の中に「労働者と協議をする」ということが明記されたことにつきまして一定の評価をしたいというふうに考えておりますけれども、この機会に、労働組合の役員をさせていただいておりますので、日本の多くの民間企業において、この種の経営方針にかかわる施策を行う場合に労使がどういうような取り組みをしているかということについて、少し具体的に報告をすることによって参考にしていただければ、このように思うわけでございます。  日本の労働組合というのは、アメリカ、ヨーロッパと特に違う点は、企業内労働組合でございます。企業内労働組合の持つ長所も欠点もあるわけでございますが、特に日本の場合には、ドイツ、ヨーロッパなどにおける従業員代表制と労働組合とを兼ね備えた機能を持っているわけでございまして、多くの民間企業では、ほとんどのと言った方がいいと思いますが、企業経営にかかわる方針、いわゆる設備の新設であるとか休止であるとか廃棄であるとか、そういうような計画を立てたときには、その計画の段階で労働組合にこれを説明をする。労働組合はその説明を受けて、職場の組合員にきめ細かく報告、説明をします。職場の組合員からその施策にかかわってどんな問題、課題があるのかということを労働組合が集めて、それをもって経営と再度交渉をするわけであります。そして、それらの問題、課題について幾つか解消策、改善策を打って、またさらに職場にその対策をもって報告し、職場討議をやって、そして新たに出てきた職場からの問題や課題などについてまた経営と交渉する。  こういうふうに、経営との交渉を職場に報告し、職場討議を行って、職場で提起された具体的な問題や課題などを解決する手段を労使で折衝、交渉して、問題、課題を可能な限り少なくする。そして、従業員の積極的な協力もありますし、やむなしという協力も状況によってはあるわけでございますけれども、労使が一定の方向を明確に定めた上で協力して力を合わせるということが、そうした会社の経営施策、方針を転換する、改善するということの成功に結びついているわけでございます。  私どもとしては、商法の中には労使協議という言葉がなじまないということであったとしても、これに関連します労働契約の承継法の中にはぜひ労使協議を具体的に挿入して、しかも労働組合が結成されておらずに従業員代表制を持っているところなどについても、これを報告して、その従業員の代表の方が職場に説明することによって、問題、課題を事前に解決、解消して、そして経営の方針が極めてスムーズに、あるいは効果的に施行されるということにならなければならないというふうに考えていますし、そうなることを期待しているわけでございます。  いずれにいたしましても、今回の商法改正につきましては、独占禁止法の改正による持ち株会社の自由化という問題、幾つかの金融、損保関係では、既に持ち株会社を頭につくって、この経営基盤を統一、強化する、そういった方針が具体的に提案をされているわけでございますし、また、産業活力再生特別措置法を使った、あるいは民事再生法を使った企業の基盤の強化という問題も具体的に出てきております。  そうした問題は、労使の事前協議、そして労働者の雇用の安定なしには考えられないということでございます。私どもは、これらの企業基盤を強化するという施策に対して反対をするのではなしに、それが労働者の一方的な犠牲の上になされるということについて、不安と危惧を持つものでございます。  ぜひひとつ、この商法改正がそうした点に十分留意をされて、労働者の保護についての視点が大きく見開かれるといいますか、開花されるように取り扱いをお願い申し上げまして、意見開陳を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 鈴木でございます。  本日は、会社分割制度の導入を目的とする商法等の一部を改正する法律案の御審議に当たって、私の意見を申し述べる機会を与えられましたことに対して、まずお礼を申し上げます。  さて、我が国経済が自律的に発展するためには、経済の需要面と供給面の双方が安定的に成長する必要があります。これまで政府が、一昨年十一月に緊急経済対策を、昨年十一月には経済新生対策を策定するなど積極的な需要喚起策を展開するとともに、金融システムの安定化に取り組んできたことは評価できるものがあると思います。しかしながら、長期的な経済の成長トレンドを決めるものは供給面での潜在GDPの成長であって、潜在GDPの成長のためには、資本及び労働の投入量を増大することと、それから資本及び労働の使用効率を向上し、または技術革新を通じた生産性の向上を図ることが必要であります。  ところで、今後我が国では、人口の高齢化によって労働投入量の伸びが低下することが確実となる一方、貯蓄資産の取り崩し等による資本投入量の低下が予想されます。このような条件のもとで我が国の経済が引き続き活力のあるものとして発展していくためには、個々の生産要素の生産性を向上させるしかほかに道はありません。  しかし、近年、我が国経済の生産性の上昇率は大きく低下しているのが実情であります。経済企画庁によりますと、生産性成長率は九〇年の二・五%程度をピークに低下し続け、九五年から九七年にかけましては〇・五%を割り込むという状況であります。また、スイスの国際経営開発研究所の各国の競争力総合ランキングによりますと、九二年までは日本が第一位であったわけですけれども、九三年には米国に一位の座を奪われて、以降、地位の低下は甚だしく、二〇〇〇年、本年においては実に十七位に呻吟しているのが実情でございます。  こういった状態にありましては、仮に需要面の対策の効果が一時的に生じたとしましても、最終的には、供給面における生産性の上昇率の低下が我が国の経済の自律的発展を妨げることとなります。したがって、高齢社会を迎える我が国において経済が自律的な発展軌道に乗るためには、供給面における生産性の向上に向けた取り組みが本格的にかつ抜本的に展開される必要があるものと認識しております。  我が国経済の生産性が低下している最大の要因は、バブル期に行った過大な投資の後遺症であり、言いかえれば、我が国企業の多くが過大な負債、設備等を抱えて収益性が低下していること、また、バブル崩壊後の景気低迷の長期化に伴って資本や労働などの経営資源が有効に活用されていないということにあると言えます。  こうした状況のもとで、我が国経済の生産性を向上させて自律的な発展軌道に乗せるためには、各事業主体が、その営んでいる事業の中で生産性の低い分野からの撤退、縮小を進めて、より生産性の高い分野に経営資源を重点的に投入することがまずもって必要であります。それと同時に、経営資源の有効活用が十分に図られていないものや、あるいは中小企業者も新たな事業分野を開拓していくことが重要であると考えます。  さらに、昨年から来年三月にかけて、連結決算中心主義への移行、時価会計の導入、企業年金の積み立て不足のオンバランス化など、会計ルールの国際基準への調和が進み、あるがままの企業財務の姿が資本市場や金融機関に開示されるようになります。こういう状況下におきましては、売上高、シェア重視の経営から収益性、効率性重視の経営への転換圧力が高まってまいります。それは、とりもなおさず、経営資源の再配置が企業にとって死命を制する急務となっているということを意味するものであります。  このような社会経済環境を踏まえますと、企業が創造性だとか革新性を発揮して生産性の向上に取り組むためには、資金調達の多様性の確保だとか人材の適材適所における活用といった経営資源そのものにかかわるシステムを見直すことが必要であることは言うまでもありませんが、それに加えて、それら経営資源を迅速かつ適切に配分するために、企業組織にかかわるシステムを見直すことが重要な課題となるわけであります。このように、企業が自主的に柔軟でダイナミックな事業運営を行おうとした場合には、法制度がそれを阻害するものであってはならないことは言うまでもないところであります。  以上の意味で、企業が選択できる組織形態を多様なものとするとともに、新しい組織形態への転換が円滑に行えるような法制度の整備を進めていただくことが極めて重要なこととなっていると言えます。  このような観点から、これまで既に、例えば平成九年の商法改正によって合併にかかわる手続の簡素化が図られたほか、昨年の通常国会における商法改正によって、持ち株会社の設立を容易にするための株式移転制度と、既存会社の一〇〇%子会社化を容易にし、企業の戦略的MアンドAに利用できる株式交換制度が創設されたこと、及び同国会において、産業活力再生特別措置法によって自主的に経営資源の選択と集中を進めようとする企業に対して各種の政策支援措置が設けられたことは評価に値するものがあると考えております。  今回の会社分割についても、欧米諸国の企業が選択と集中という観点から事業再構築を進める上で、従来から主要な手法として活用しておるものであり、我が国企業が事業再構築を進めていく上でも不可欠な制度であると考えております。  このため、昨年の産業競争力会議において、同制度の導入のために商法改正法案を一年間前倒しにして今国会に提出するという議論がされ、これに基づき今国会に法案が提出された経緯があると認識しております。このような企業のニーズを受けとめて迅速な対応がとられることに対して、高く評価する次第であります。どうかぜひとも早期に法案を成立させていただきますよう、強く期待するものであります。  企業の中には、既に、みずほフィナンシャルグループを初めとして、数多くの企業がこの制度の導入を前提として事業再構築や会社再編の計画を進めております。  例えば、みずほフィナンシャルグループでは、ことし九月または十月には、各銀行が先ほど申し上げた株式移転制度を用いて、共同持ち株会社であるみずほホールディングスを設立する予定になっておると聞いております。そして、来年の株主総会を経て、再来年の春をめどに、みずほホールディングス傘下の各銀行が会社分割制度を用いて、投資銀行部門や法人営業部門や個人営業部門を機能別に再編成することが検討されているというふうに聞いております。  また、新日本製鉄株式会社とその子会社である新日鉄情報通信システム株式会社は、来年四月をめどに、会社分割制度を用いて、新日本製鉄株式会社のエレクトロニクス・情報通信事業部と新日鉄情報通信システムの事業統合を図ることを予定していると聞いております。  このような事業再構築や事業再編を行いたい、そういうニーズは、これは何も大企業に限った話ではありません。具体的に報道発表されているような事例にまでは至っておりませんが、少なからぬ中小企業から、みずからの中核的事業を拡大するため、また不採算部門の整理も図るため、会社分割制度が利用可能となった暁にはこの制度をぜひ利用したいという声が出ておるわけであります。  このように、企業がこの制度の導入を前提としてさまざまな企業再編を計画しているところですが、これらの計画が挫折しないためにも、ぜひとも早期に法案が成立するよう、重ねてお願いをさせていただきます。  法案自体を拝見いたしますと、分割制度の仕組みにつきましては、各種の形態、方式及び労働関係を含む必要な配慮が網羅されておりまして、かつ、この制度がなかった時代に遭遇したもろもろのふぐあいが解消できるものだというふうに評価いたしております。  最後に、この法案成立後の課題として、三点ほどを申し上げておきたいと思います。  第一は、税制上の措置であります。  企業がこの制度を十分に活用するためには、商法で会社分割制度を整備することにあわせて、税制上の措置を講じていくことが不可欠であります。具体的には、分割会社の資産を新設会社または吸収会社に帳簿価格で承継させることを認めることによって資産譲渡益課税を繰り延べすること、それから、分割会社の引当金、準備金を新設会社または吸収会社に承継させること、登録免許税、不動産取得税等を減免すること、新設会社または吸収会社の株式を交付された分割会社株主に対する株式譲渡益課税を繰り延べすることなどの税制上の措置があわせて講じられるよう期待しているところであります。  第二番目は、許認可等の承継であります。  分割された営業にかかわるすべての許認可を自動的に承継させることができないケースが仮にあり得るとしても、それは明確で合理的な理由のあるものに限定して、本則、本来は当然承継として扱って、名義の書きかえ等が必要な場合でも簡易な方法によることとして、企業に負担をかけないことをお願いしたいというふうに思います。  第三点は、制度の磨き上げ、ブラッシュアップであります。  日本で初めての制度であるだけに、使い勝手のよいものになるかどうかは、現実に使ってみた上で発見されることでもあろうかと考えます。商法は基本法の一つとされていることもあって、現実に即した改正を機敏に行うという点で、これまで、ややもすれば遅いまたはしないという批判が多く聞かれました。経済活動は生き物であります。しかも国境を越えております。世界で当たり前なことが、日本では法制度、つまり商法のゆえにできないというのは、本末を取り違えたものと言わなければならないと思います。  以上の三点を注文事項といたしまして、この法案に対しては全面的な賛意を表明し、その一刻も早い成立を希望して、私の陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

武部勤自由民主党

○武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。  両参考人におかれましては、御多忙のところおいでいただきまして、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、本当にありがとうございました。  順次お伺いしてまいりますが、まず松浦参考人にお伺いいたします。  お話をお伺いしておりまして、今度の修正を含めたこの委員会を通過しようとしている案について、御賛成なのか反対なのかちょっとはっきりしなかったところがあるんですが、その点、もう少し明確にお述べいただければありがたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 ありがとうございます。  私ども、この商法の修正案を含めましたものにつきましては、基本的には賛成をしていきたいというふうに考えております。  ただ、申し上げましたように、お願いとしては、関連法ということで、労働契約の承継法における、新しい法律の枠組みを規定する、規制するというような責任を商法が持っているということでございますので、ぜひひとつ、労働者保護法に関する、労働契約の承継法にそうした必要以上の規制をかけないように、この点については御配慮をいただきたい。そういった御配慮をいただくということを前提に賛成をしたいというふうに考えております。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 よくわかりました。おっしゃられた点、あるいは鈴木参考人の申された条件等については、これから我々しっかりやっていかなければならないことでございます。  余り機会がございませんので、ちょっと本題から離れるかもしれませんが、松浦参考人に、一、二、問答をさせていただきたいと思います。なかなか連合の方と話せる機会がございませんので、脱線するかもしれませんが。  今度の法案に対する連合さんの対応は、最初は反対だということが聞こえてまいりまして、スタートしたわけなんですが、この間の年金法等の対応のときも若干感じたんですね、デモもなさって、いろいろ座り込みもなさっておられたんですが。連合が発足されて、総評の時代が終わって連合の時代になられてから大分長くなるわけなんですけれども、正直言って、もう少し、一回り大きく大人に脱皮していただけないかなという印象を強く持っておるわけなんでございます、これは私の希望でございますが。  自民党との関係でも、非常に協調的な関係になられた時代もあるけれども、反自民になられたり非自民になられたり、今度の選挙はどういう対応をされるかわかりませんが、自民党の方が変わっているのかもしれませんけれども、相互の関係が必ずしも円滑にはいっていない、御要望の向きもストレートには承る場所もないという状況であります。  何年か前でしたか、政治綱領を発表された際に、私は浪人していましたかね、それを見まして、あの政治綱領ならば我が自由民主党の綱領とも矛盾しないと。だから、地元の連合の幹部の方々と個人的なつき合いがあるものですから、個人と、連合、地域との間で政策協定を結ぼうよ、地域の問題なんか全く同じ目標を持っているわけですから、という御提案をしたことがあるんです。個人的には前向きだったんですが、それらの方々が、上に諮らなきゃいけないということで、そうなったまま今日に至っておるわけなんですね。  きょう持ってくればよかったんですが、あの連合の政治綱領でしたら、我々国民政党たる自民党の綱領とそんなに違うところはない。我々は働いている方々の立場も守ろうという、国民あらゆる各界各層の意見を吸い上げて政治に反映させようという政党でございますので、私はそういうつもりでおるわけなんですが、連合の本部の御方針が、私の感じからすると少し揺れておられるという感じがするわけなんですね。  御指摘があったんですが、国際社会は大競争時代になって激動しておるわけですね。労働者と一言で言いますけれども、それに対する見方はいろいろあると思うのです。今の時代、かつてのソ連とアメリカが対立するような時代の労働者階級対資本者階級、そういうような面でとらえる労働者というとらえ方ではもう時代おくれだと思うんです。こういった激動の大競争時代の中で、それぞれ立場は違うけれども、やはりある面では協力し合いながら、ある面ではチェックし合いながら、国際競争の面からいえば勝ち抜いていかなきゃいけないということもあり、企業という点から見れば生き抜いていかなきゃいかぬわけですね。雇用の確保といったって、企業がつぶれたら何にもならないわけですね。金融機関の破綻にいたしましても、いろいろな面で、ほかの業界についてもそうだと思うんです。  そういう将来を見詰めて考えると、連合というお立場だと、そういう基本をしっかり見詰めて、例えばこの法案だったら、基本的にはよろしい、判例法で労働者保護の判例は確定しているわけですね。私も弁護士をやっていますから、その程度のことはわかるんですよ。何もそんな反対されなくてもいいんじゃないかと思う。最初、反対と言われたのでびっくりしたんです。そういう印象を受けるんですが、御意見があれば承りたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 いろいろ御配慮いただきましてありがとうございます。  私ども、率直に申し上げまして、商法の改正という問題につきましては、法制審議会における企業分割に関する小委員会というのがスタートして具体的な審議に入りました。私どもの同僚がこの小委員会の委員をいたしておりますが、この中に、私どもが幾つかの点で、特に先ほど評価点として申し上げましたように、企業を分割することによって清算会社とジャンプ会社、飛躍会社とを区別していくというような、そういった目的のためにこれをつくるということではない、債権債務の返済計画や、その背景、理由等についても明確にするということを入れていただいたということが一つ。それから、労使協議の関係について、これは何としても入れていただきたい、こういうふうにずっとお願いをしてきたわけでございますが、法案要綱の注書きのところで、関連する労働者保護に関する法律をつくることが必要であるという注書きを入れていただいたということで、この商法改正につきましては、三つの修正要求を明確に掲げましたけれども、反対はしていない、これが事実でございますので、そういうふうに御理解をいただきたい、このように思います。  それから、自民党と連合との関係につきましては、私も六年ほど連合の役員として活動させていただいておりますけれども、どちらが悪かったのかということは、それぞれの立場ですから、私が言えば、おたくの方が悪かったんじゃないですかと言わざるを得ませんから、どちらが悪いということは言いませんけれども、途中からお互いの考え方が変わってきて、例えば、連合との政策協議はもうきょうを限りに打ち切りたいというふうに申し入れをされたのは自民党でございまして、私どもとしては、政権政党でございますので、ぜひ政策協議については続けていきたいというのは今も変わらない考え方だというふうに確認をしてございます。そのために何回か官邸にも政労会見を申し入れをしてきているというのが事実だというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、方針については、そういう意味では揺れていません。小選挙区制になって、一つの選挙区で複数の方と政策協定を結ぶというのは、これは選挙の実態の中で非常に難しいということで、そうした具体的な取り組みをするというのは困難だというふうに考えておりますが、私どもの方針は、組織労働者の雇用と労働条件の安定化を図るということを超えて、全雇用労働者五千七百万人、失業している人も含めて五千七百万人の雇用労働者の雇用と労働条件そして生活の安定を図りたい、そういう方針を一貫して明確にいたしておりますので、ひとつ引き続きよろしくお願いしたいと思います。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 私は幹部ではございませんので、下っ端でございますが、何とも申し上げられませんが、よくわかりました。  では、鈴木参考人に一点だけお伺いしたいのですが、みずほグループとか日立さんとか、大企業がこの法律ができたらいろいろ利用しようというふうに考えておられるらしいのですが、いわゆる中小企業も利用される可能性はあるのでしょうか、どうでしょうか。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 先ほども御説明申し上げましたが、これは必ずしも大企業だけの武器ではない。中小企業も、やはりこれから幾つかの問題において、生きていくために、その事業というものを新しい目で眺めていかなくちゃいけない。そういうことになりますと、中小企業においても、例えば自分の持っておるところのある部分というものは、これは他のところと統合した方がいいとかいうような判断というのは当然あるわけでございまして、中小企業もこのような法制というものを活用して、先ほど申しましたが、選択と集中というのは私、今後のキーワードではないかと。  これまでは、要するに多角経営というものが善だというふうに日本の企業というのは思ってやってきたわけです。しかし、もうそれでは国際競争というのはとても勝ち抜けませんから、ですからそういうような方向に行く。これは中小企業も同様だし、またそういうことが考えられる中小企業でないと今後の競争の中を生き抜いていく中小企業ではないということで、日本商工会議所の傘下の中においても関心を持っているということは事実でございますので、これを報告させていただいて、その面からもこの法制を早く成立させていただきたいとお願いをするわけでございます。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 あと二分あるそうですから、では、松浦参考人に希望だけ申させていただいて終わらせていただきます。  あの金融危機のときに私は財政部会長をやっておって痛感したのですけれども、経営者もだらしないのですけれども、労働組合も。銀行関係ですね。こういう危機なんだから、会社が立ち直るために給料を下げてでもこの危機を突破しようやという気持ちになかなかなってまいらない。それで、経営者に聞くと、組合があるからなかなか給料は下げられない、こう言うんですね。  片一方では公的資金を注入するわけです。ああいう組合も本当に、世間から見ますと銀行員というのは給料は高い、中小企業の労働者からすると高いですね。あんな高給をもらっておって、公的資金の注入を受けて、何だという批判がちまたにあふれているわけですね。銀行は恨まれていますよ。だから、そういう意味で、銀行の場合は公共性に目覚めて、もう少し組合もしっかりしてほしい、危機なんだから協調してやってほしい、そういうふうになってほしいのですね。  それから、例えば私の地元にはトヨタというのがあります。トヨタさんはすごいです。片や、日産さんがありますね。私の親戚はトヨタで、親戚がみんなお世話になっておるのですが、トヨタさんは、ともかく昭和三十年代のころは日産さんに断然にリードされていまして、給料なんか二割ぐらい違うんですよ。それで、両方ともストライキをやったのですが、トヨタの場合は日産に追いつかなければいかぬというので、二十年か三十年、歯を食いしばって我慢したのですね。日産さんは、そう言っちゃ悪いけれども、括弧つきの労働組合が強かったものだから、徐々に追いつかれて、今は抜かれてしまって、しかもルノーの傘下に入ったみたいな感じになったわけですね。  ですから、そういう働いている人たちも企業を伸ばすということがあって、それで企業が伸びて、それでまた、今はもうトヨタさんの方が給料がいいです。それで今は締めておられる、これからまた日産になっちゃいかぬからと頑張っておられるけれども、そういうことを連合にしても組合員の方々もしっかり意識して、これからの時代に立ち向かっていただきたいということを申させていただいて、終わらせていただきます。

武部勤自由民主党

○武部委員長 日野市朗君。

日野市朗民主党

○日野委員 きょうは、お二人の参考人には本当に貴重な御意見をありがとうございました。非常に勉強になりました。厚く御礼を申し上げます。  特に、まず松浦参考人からは職場における労使関係の実態というものを、私は実は労働者の生活をしたことがないものでございますから、ちょっとわからないで今まで来たのですが、非常にその実態も語っていただいたということで、私は、ああ、そういうものかなというふうに思いました。  よく日本型経営の特色として、こういう点が日本の経済成長に役に立ったという中には、労働組合が企業内であって、労使の協調関係もうまくいっているというようなことがかつてはもてはやされたわけでございますね。企業に対する忠誠度であるとか企業における労働者の仕事ぶり、そういったものからいえば、やはりこれはメリットなのかなというふうに私なんかも時々はそういう感想も持つわけでございます。     〔委員長退席、杉浦委員長代理着席〕  それで、松浦参考人にお伺いをさせていただきます。  大体、こういう企業の再編成が行われるときというのは、やはり労働組合と使用者が協議をするという話でございましたね。いろいろな協議があってスムーズに企業の再編なんかも進んでいくのだというお話がございました。私は、それはそのとおりだろうというふうに思うんですね。  今度の商法の一部改正案の修正案の中には、労働者との協議というようなことも書いてあるわけでありますが、私なんか考えてみて、やはり労働者というものは弱い立場にある。それゆえに、当然労働三権というものが憲法上も保障されてくるわけでありますが、そういう弱い立場というものは、やはり会社が大きければ大きいほど弱い立場でのデメリットというのは非常に強いのだろうと思うんです。  こういう会社の分割というような事態になった場合、こういう弱い立場の労働者というものが、その弱さが際立つといいますか、ここは特に注意しなければならない部分であろうというふうに私は思うんですね。労働者と企業とが協議をするということはいいです。そして、そこにいろいろな代理とか、何かの形で労働組合も関与をしていくことも、これは当然考えられることであるということもよくわかるのですが、やはり根本的に弱い立場の労働者が、会社からの強い働きかけ、圧力、そういったものの中に埋没してしまって、不利な立場に立つということはやはりかなり危険があるのじゃないか、こう思うんですが、どのようにお考えになりますか。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 ありがとうございます。  二つ問題はあると思います。  一点は、直面する問題として、例えば労働者の立場でこうした経営計画や分割後の新しい事業展開を考えた方がより効果が上がる、企業の基盤や業績を拡大できる、こういうような従業員、労働者としての本当の意見が出てこないということが、経営にとってはマイナスになると思います。  それからもう一つは、中長期的な問題で、企業が、企業の基盤強化のためには従業員、労働者を安易に切り捨てるということが労使関係上のいわゆるノーマルな関係になってきますと、従業員が企業に対する忠誠心を失う。そういうことは、日常の業務にも大きな影響を及ぼして生産性を引き下げる、そういった危険性を持っているというふうに思います。

日野市朗民主党

○日野委員 松浦参考人は、先ほどから労使関係の安定の必要性、それが企業の経営にとってもプラスになるんだ、こういう御主張というふうに私は伺いました。私もそうだと思うんですね。  スウェーデンの例なんかを見てみますと、スウェーデンの労働者の企業に対する忠誠度というのは非常に高いんですね。私は、日本の方が高いかと思っていたんですが、どうもそうじゃないようですな。スウェーデンあたりは日本よりももっとはるかに忠誠度が高い。そして、あそこは今経済的な成長も非常に目覚ましいものがある。そういうものを見まして、やはり企業と労働者の関係というもの、ややもすれば労働を売るんだ、そしてそれに対して賃金を支払う、この基本的な構造は変わらないにしても、やはりそれだけでは説明できない企業と労働者の関係というものはあるんだろう、私はこう思います。  それで、私も、今度の商法で問題になっている企業の分割というようなことについては、そういったところをきちんと見ておかないと、企業の分割というのは経済的な面で成功をしていくのかどうかという点にはかなり問題があるであろうというふうに思うんです。  そこで、鈴木参考人にもこの点をお伺いしたいと思うんです。先ほど、これは経済学的な立場から見れば、資本とかそういった、人間まで含めて、資源の適正な配置、配分、そしてその有効利用ということをおっしゃるわけですが、その中で、経営的な感覚からして、今私と松浦参考人との間で話に出たような企業と労働者との関係というものはどのようにとらえられるべきとお考えになっておられるか。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 企業とその働く人とが円満な関係を持って、一つの企業の成長はイコール働く人の報酬ということに結びつくわけですから、また達成度という問題に結びつくわけですから、円満な関係を持ってやっていくというのが必要であるというのは言うまでもない話でありまして、我が国の戦後経済の著しい復興というのは、このシステムのおかげで成り立ってきた部分が相当に強いということは当然のことだと思います。  ただ、今後がどういうふうになっていくのか、こういう問題の視点というのも、やはり例のバブルの崩壊以降、日本経済というのは大きな変化を経て、それを経る過程の中で、まだ消化不足といいますか、それを完全に経切っていないということから十年にわたるこの低成長の中で呻吟しておるわけですけれども、ここで、今後はどうなっていくのかという点も改めて考えてみなくちゃいけない、こういう側面があると思うんですね。  一つの問題としては、企業は、先ほど申しましたように、グローバルな競争の中で、合従連衡というものを繰り返しながら、やはり生き延びていくという努力をせざるを得ないということでございます。その場合に、昔でしたら企業が子会社を売ってしまうとか、あるいはある部分というのを切って捨てるだなんというのはとんでもない話だということで、考えられなかったわけですけれども、今後はそういうことが一般化していくというのは、生き延びるためにはやはり必要な問題、そのときに円滑な関係が労働者との間にぜひとも保たれなければいけない、こういう問題だと思うんですね。そのことになりますと、やはりこれからの労使関係というのは一体どうなっていくのかというところは、企業の側もそうですが、労働の側もやはりその変化点というものに来ておるんではないかというふうには思うわけです。  これまでは、そういうことから、企業というものは、要するに労働の側としても、選ぶのはこの企業しかない、この企業を途中で出たらほかに行くところはないという、閉鎖的なといいますか、そういう労働市場しかなかったわけですけれども、今後の問題といたしましては、やはりそうではなくて、労働者がその技能だとかいうようなものをベースとして他の企業を選択できるような形のマーケットといいますか、そういう労働市場が次第次第に形成されていくということが必要ではないかということを私は思いますし、また、必要を超えて、必要があるがゆえにそういう方向が実現されていくのではないかというふうに思うわけでございます。  しかし、そういうようなことは一朝一夕に成るわけではないわけでありまして、やはりその段階段階に応じてそういう時点がやってくるわけでございますが、企業の側も、今言いましたような幾つかの、リストラをやらなくちゃならないというニーズ、それから労働者の側も、そのリストラによって犠牲者になるということが決してないように、労働市場というものがもう少し横断的に流通できるようなものにしていく。こういうように世の中が進展する中で、先ほど言われたような問題というのは今後は解決されていくべき問題だし、またいかざるを得ない問題だ、こういうふうに私は思っております。

日野市朗民主党

○日野委員 鈴木参考人に伺いたいんですが、それは経済の流れとして将来までずっと、経済学的な観点に立って見ていけば確かにおっしゃるとおりになるんだろう、こう思うんですが、企業の社会的責任というのは、その時点その時点でやはりいろいろ出てきていると思うんですね。  現在、企業の社会的責任、一つはできるだけ雇用をきちんとしておくこと、これも一つの責任であろうというふうに私は思います。それで、我々も、労働者というのは企業でできるだけきちんと雇用を吸収していくということが必要なことだろうと思っているんでございますが、その点について、企業側としては現在の時点の社会的な責任という形で労働者をきちんと、自分のところの雇用、できるだけ首は切らないでいくという方向ですね、そういう方向を現在の企業に、これはあるんだろうと私は思います。いろいろ企業にもよりますよ。うちじゃ絶対生首は飛ばさぬというような松下幸之助流の企業もあるし、場合によってはそこはドライな企業もある。しかし、そういう責任を果たすべきだと私は思いますが、その点いかがでしょう。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 企業が、雇用契約というものに入って長い間関係し、雇い、仕事して一緒に会社をつくってきた、その従業員に対して、その末よかれというふうに思って努めるというのは、これは企業のABCというのか、スタートラインだというふうに私は思います。  また、日本の企業というのはこれまでもその努力をしてまいりましたし、この十年間いろいろ言われておりますのは、要するに、日本の企業というのは潜在失業者というものを抱えたままやっておるからなかなか立ち上がらないんだと言われる程度にまでそれはやってきておるというのは事実であって、そのこと自体は企業の一つの大きな責任だというふうに当然通常の企業ならば考えて行動しておるのが日本の実態だというふうに私は思います。  ただ、先ほども申し上げましたけれども、それだけに頼り切って、そして今までと同じ、キャッチアップ時代というのか成長時代というものと同じロジックで将来もやっていってグローバルな競争の中で日本は勝っていけるよ、こう言い切れるのか、この問題に今まさに直面しておるわけですね。  そういう問題でありますから、したがって、今までの企業の論理それから労働の論理というものに対して、やはりこういうような会社分割だとか総合的な一つのリストラのためのあれが持ち株会社の解禁以来いろいろやられてきた。なぜそんなことがやられてきたのかといったら、経済、社会がそれをその時点時点で必要としておるからなのですね。そうせざるを得ない、そうでないと世界の中で勝てない。  そういう問題はぜひ御理解いただいて、今言った、基本としての働く人と、働く人も社長も同じなんですね、要するに一緒に会社に入った者なんですから。その間がお互いに協力してやっていくというその精神は保ちつつも、しかし理解と温かみの中で、必要なリストラというものに対しては、これは働く側の人、対象になった人も拒まない、しかしその処置に対しては、企業は最大限の配慮をして手順を尽くす、このルールだけはやはり維持した上で必要なことはやるということをしていかないとちょっと競争に勝てない時代がやってきたというふうに私は思っております。

日野市朗民主党

○日野委員 時間が参ったようですから終わりますが、一言だけ申し上げておきたい。  やはり社会的責任もそうですし、それから余りおんぶにだっこでもいかぬと思いますよ。今のうちから税法上の優遇措置をやってくれなんということはおっしゃらない方がよろしいのじゃないか、こう一言つけ加えまして、終わります。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  二人の参考人の皆さんには大変ありがとうございました。  最初に、松浦参考人にお伺いをいたします。  先ほどの公述の中で、企業基盤の強化そのものには連合としては反対しない、しかし労働者の雇用と労働条件を守ること、これを基本的にきちっと据えることを主張しているんだ。おっしゃる意味はよくわかるのですが、現下の日本の経済や企業と労働をめぐる状況というのは、この二つが両立しがたい形で企業によって推し進められているのじゃないか、そこがまさに今の根本問題ではないかと私は見ているわけであります。  例えば、ここに本年一月十二日に日経連の労働問題研究委員会が出した労働問題研究委員会報告というのがありまして、いろいろ書いてありますが、基本的には、この競争社会の中でグローバルな競争に勝ち抜くために高コスト体制を是正しなきゃいかぬ。  その中心の一つに「雇用構造の是正」というところがありまして、「第一に、多様な雇用形態を最適に組み合わせ、経営効率の向上と雇用コストの軽減をめざすべきである。」雇用ポートフォリオの考え方を強く押し出しているわけですが、そういう中に、「実際には、企業内のさまざまな事業分野ごとに、その収益性・特殊性に応じた柔軟な雇用管理、労務管理が求められている企業が多い。雇用ポートフォリオの考え方も、そうした企業の実態に即して徹底される必要がある。」今回打ち出されてきた企業再編のための企業分割法制、会社分割法制の創設というのは、まさにそういう目的を中心に据えて日本の企業が求めてきているのじゃないかと思うのです。  そうすると、先ほど、企業基盤の強化は反対しないけれども、労働者の雇用と労働条件を守ることが前提なんだとおっしゃるのはわかるのですが、その二つがやはりもう両立しがたい、両立させないということを前提に今回の会社分割法制度が持ち込まれようとしているのじゃなかろうかと思うのですが、どうなんでしょうか。労問研報告に対する連合としてあるいは松浦参考人としての基本認識をお伺いしたいと思うのです。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 労問研報告に出されております雇用構造の是正、雇用のポートフォリオの関係につきましては、九五年に日経連が新しい時代における雇用構造のあり方という提言をした中に、それ以来出てきているわけでございます。  既に、日本の雇用の実情につきましては、例えば失業者を除いて五千四百万人雇用労働者のうち、その二〇%を超える千二百万人を超える労働者が非正規社員で、パートや派遣労働者あるいはアルバイト、そういった非定型労働者に変わっているという事実からも、そうした施策が進められてきたということについて私どもは承知をいたしておりますし、それについて積極的に防止をするという取り組みも、具体的には実は労働側は対処いたしておりません。  それは、技術革新のテンポの速さ、あるいは国民の消費ニーズというものが大きく変化をしているということと、それからもう一つは、グローバル化の中で国際競争力の確保という点ではどうしても避けられない部分があったというふうにそれぞれの労働組合が判断をしたのではないか、こういうふうに考えているわけであります。  しかしながら、私どもは、全労働者の立場で考えてみますと、正規社員の雇用や労働条件が安定をして、増加し続ける非正規社員の雇用や労働条件が不安定である、低いということについては、全労働者の立場で大きな問題があるというふうに考えております。むしろ、雇用のポートフォリオということを容認するということではなしに、必要な部分に必要な措置を、そういう形で、人の雇用の形態は多様化をしていく、国民のニーズも変わっておりますから、変わっていくということについてきっちり歯どめをするのではなしに、多様な働き方をしている、どういう働き方をしている者にも最低の労働条件そして雇用の安定の施策というものをつくる、そういう考え方でこれから対処していきたいというふうに考えています。  私どもは既に、新しい時代におけるワークルールを制定する、こういう考え方を提起しているということについてお答えをしておきたい。そのワークルールの基本は、雇用形態による労働条件の差別を禁止する新しい法律であるとか、あるいは従来の企業における職務経験や能力というものが社会的に評価されて、企業を変わってもその能力、経験が評価される新しい職務評価システムというものをつくるということであるとか、あるいは労働者がそうした移動を希望する場合に、新しい希望する職務に対応する能力をみずから養うためにこれを支援する制度であるとか、そういうようなものを総合して新しいワークルールというものを確立するべきであるという提起をしているし、またそういう取り組みをしたいというふうに考えているということをお答えしておきたいと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私は、この商法改正なりに一番心配しているのは、今回企業が最終段階としての企業再編のための分割法制定を求めてきている一番のねらいが、要するに過剰労働、よく言いますね、バブル時代からの過剰労働、過剰設備、超過債務、不良債権の過剰、これを切り捨てていかないとスリムになって国際競争に勝てないという論理から、過剰雇用を切り捨てる、一番切り捨てやすい形を目的にして持ち込まれようとしているのじゃないかということで、雇用を守るということとこの再編を認めるということはなかなか両立しがたいのじゃないか、そういう認識が今必要じゃないかというふうに思っているので、そう提起したわけなんです。  法律案について、先ほど、今回の商法改正法案は、一部修正も含めまして、要するにそういう企業のリストラ、首切りの部分ですね、一部不採算部門をジャンプさせるというようなことが食いとめられたというふうな認識のようですが、私、率直に言ってそういう認識は甘いのじゃないかと思うのです。  二つ指摘したいのですが、一つは、主たる業務に従事する労働者は、労働者の同意なしで新しい組織に移管されますね。いわゆる民法六百二十五条の適用が排除されて、同意なき移籍が合法化される。これは、民法百年、明治天皇制の時代にも確立をしておった、労働者が違う企業体に移されるときにはあくまでもその労働者の同意が必要なんだという確立したルール、この基本のところが取り外されるという意味で、これは、これから企業が労働者をリストラ、解雇するのに当たって猛威を振るうんじゃないかという点が一点。  それから、分割時には確かに超過債務のようなやり方は法律ではできなくなりました。しかし、不採算部門を分割するときには超過債務なんかするはずないので、そういう形でプラスマイナス・マイナスにならないような形で分割はすれども、不採算部門だけを切り離していったときには、遠からずその企業は赤字会社となって、それは解体、破綻していく。そのときに、そのところにほうり出された、ほうり込まれた労働者の地位というのは恐らく守れないだろう。この商法改正法案は、分割時の超過債務は確かに禁じましたけれども、将来についてまで保障がないわけなんで、その二つの点からいって、やはりこの商法改正は、このままでは、労働者の雇用、労働条件の維持には非常に大きな穴があいておるんじゃないかと思わざるを得ないんですが、その辺、いかがでしょうか。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 御指摘のように、私どもも、不採算部門の切り捨て、清算処理会社化という問題について一番大きく懸念をしたところでございます。  しかしながら、今回は、そういった負債を持っていても、それが単にそれを処理する会社であってはならない、それをどういうふうに処理する裏づけを持っているかということをきっちりと計画書の中で明確にするということになっていますから、先生が御指摘のように、将来ということが、今のような経済情勢のもとで、十年先なのか、五年先なのか、あるいは三、四年先にもう既にこれはだめだよという見通しがあるのであれば、そういった理由はむしろ絵そらごとの、事実無根の根拠をでっち上げて計画書がつくられるということにほかならないと思っていますし、これは一定の期間雇用が保障されれば、あるいは事業が安定すればいいということではないんですけれども、今のような不透明な時代におきまして、どれだけの将来の保障ということもどの企業にもできないというふうに私どもは実は判断をいたしておりまして、それが計画的にやられるということが防止できたという意味では私どもは評価をしたい、こういうふうに考えております。  それから、民法六百二十五条の労働者の一身専属の問題でございます。  確かに大きな問題でございますが、今回、私どもが軸足を置きましたのが、企業分割によって当該分割される部門に雇用されていた者の雇用を継続的に保障するというところに大きな力点を置いたということでございました。これが部分包括承継ということで保障されるということについて、むしろ企業分割を理由とした安易な解雇が防止できたという点で一定の評価をしています。  したがいまして、労働者の移動に伴う、企業の移動に伴う同意権の問題については、これは労働契約承継法の中で今明確になっております、当該部門から移動せずに残る人、それから別部門から移動するという指名を受けた人に対する不同意権が担保されている範囲にとどまっていますので、これにつきましては、むしろ承継法の方で明確にさせていかなければならない問題だ、こういうふうに考えています。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 時間も迫っておりますので、鈴木参考人に一問だけお聞きしたいと思うんです。  国際的規模での競争に負けない企業再編、組織再編の法制が必要だと。最後に参考人は、世界で当たり前のことが日本でやれないとおっしゃられましたが、ヨーロッパなんかの企業分割、営業譲渡等の法制度では、労働者の雇用と労働条件については基本的には守る、維持するというきちっとした法制があるんですね。だから、私は、世界で当たり前のことを、むしろヨーロッパの方が当たり前じゃないか、それをやって日本の企業が成り立たないというんじゃ、日本の企業のどこかがおかしいんじゃないかと感じておりますので、そのことをどう見るかということ。  もう一つついでに言いますと、先ほど、バブル期の過大ないろいろな設備投資、過剰設備等が今日の生産性が長々低まってしまった根本にあった、それを取り除くんだとおっしゃる意味はよくわかるんですが、それをかりそめにも、労働者とか労働条件とかあるいは下請企業とか、不採算部門で働くそういう分野を切り捨てていって、バブル時代につくられた過剰な設備、過剰雇用その他を切り捨てて生き抜こうとするのであれば、それは余りにも企業が身勝手過ぎやしないかと私は思うんです。まさに今大事なのは、日本の企業の社会的責任をしっかり果たしながら、やはりみんなで生き抜くということじゃなかろうかと思うんですが、参考人の御意見をお伺いして、終わりにしたいと思います。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 おっしゃるとおりに、みんなで生き抜くための手法だと私は思っております。盾の二つの側面で、裏表があるという事柄であって、一つの問題を見ますというと、後ろから見ると、これは労働者切り捨てをねらっておるんじゃないかというふうに考えられ、また、そういうふうに利用する人がいないとも限らないということは、それはそうかもしれません。しかし、やはりこの問題というのは、要するに、前向きに問題を考えて、そして本当の意味の労働者との間の意思の疎通のあるリストラクチャリングというものを円滑にやっていくための手法だ、こういうところで私は評価したいと思っておるわけです。  もちろん、それに伴って、今言ったように、例えば計画的に倒産するつもりでなんというような事柄があるのかもしれません。人間のやることですから、絶対ないとは言えない。それに対しては、それはしかるべき措置というものがとられていけばいい問題である、しかし、そうはいうけれども結果的にそうなったときに、その分離せられたところの会社が時世あらずしてどうしようもならなくなっていくときにはこれはどう考えるのか、こういう問題であって、私は、暗い側面だけではなくて、この法制度が持つ将来に向かっての本当の新しい方向というものをやはり評価していきたいな、こういうふうに考えておるわけであります。  ヨーロッパの件に関しましては、そういう意味合いで、日本においての、労働者に対して適切な配慮をするということはこれは当然の前提であるというふうに私は考えておりますから、そういう制度自体がないということを先ほどから申し上げて、当たり前の制度だと言っておるわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 終わります。ありがとうございました。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、松浦参考人に伺いたいと思います。  一連の企業再編に至る法整備、このリストラ推進法の総仕上げとして商法改正があるんではないか、これは御発言の中で、また個々の労働現場でそういう声がしきりと上がっているんですが、リストラ推進法の総仕上げというのは具体的にどういう意味なのかということについて簡潔にお述べいただきたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 いわゆる経済社会のグローバル化に関連をするという問題と、それから東南アジアを中心とする新工業国の台頭というような問題の中で、品質と価格競争というものでございます。日本の場合には、これまで大量生産システムというものを産業の基本的な構造にしてきたわけでございまして、この過程では、専門分業化ということで、下請協力会社体制をつくることによってよりいいものを安くつくる、そういった構造が維持されてきたわけであります。したがいまして、例えば一つの部品をつくる、製品をつくるのに、複数の企業が競合してより安いものを、いいものをつくるという形であったわけですが、これからは、そういうような複数のところに競わせてということではなしに、より専門性を高めていくという意味で、今までよりも構造的により簡潔な生産構造というものがつくられていくという、それを支援する、そういった産業構造の体制を整備することを支援する施策だというふうに私どもはとらえておりまして、今までもリストラクチャリングという、リストラそのものは悪者ではないのですけれども、今進められていますリストラについては、先ほども委員の方から出ましたけれども、労働者を一方的に犠牲にするという形のリストラというものについては私どもは許せない、こういうふうに言っているわけであります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 今のお答えに関連して、松浦参考人にさらに伺いたいんですが、今お話もあったように、日本の製造業は、たくさんの系列の下請工場である中小企業などが支えてきた長年の体制があるわけです。それで、今回の会社分割が、この下請中小企業、そしてそこで働く労働者に大きな影響を与えるのではないか。事実、これは与えないわけがないだろうという観点で、これらに対して、本当に政策的にも保護されていないし、極めて懸念があるということを私どもは指摘をし続けたんですが、この点についてお考えはいかがでしょうか、松浦さん。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 この法律そのものが直接的に下請や中小企業に悪影響を与えるというふうには考えておりません。  しかし、この法律を使う側の、しかも資本力の大きい企業が自分の利益を拡大するためにということで使えば、これは悪法になる。悪法になるかどうかというのは、幾つもの法律の中で、使い方によって悪法になるものだというふうに考えておりまして、この法律の制定の根拠や趣旨そのものが初めから悪法であるというふうに判断はいたしておりません。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 例えば自動車製造の会社で、それぞれが系列を持ってきた。しかし、これでは国際競争力が弱いということで、幾つかの会社が合併をした上でそれぞれの下請を整理していく、そしてまた価格をさらに安くしていく。これまでも大変な経済危機を日本の中小企業は乗り切ってきたわけですね。大変な苦労で、ある意味で身を捨てて親企業を支えてきたという経過もあったと思うんですけれども、さらなる再編の中で、この商法ができて、その瞬間に下請企業に影響が出るとは私も思いませんけれども、長いスパンで見ると中小企業に対する影響ということはやはりあるのではないかという意味だったんですね。そのあたりで、もう一問お願いしたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 日本の金属産業を中心とした、いわゆる輸出関連産業を中心とした経済基盤の中で中小企業が果たしてきた役割というのは極めて大きかった、またこれからも同様の役割を担っていくというふうに考えます。  しかしながら、私どもは、中小企業が一つの商品、製品をつくるのに複数社で競わされて、そしてみずからの手足を食いちぎるような非常に無理な企業業態というのは好ましくないと思っています。したがいまして、仮にこの企業の分割法制を利用して、同一商品をつくるところが統合されていって中小零細の企業が中堅化をしていく、専門分業化をより明確にしていくというように活用されるならば、私どもは、中小企業と大企業とにおける労働条件格差がさらに拡大をしてきている、そういった問題なども解消できるというふうに思います。  したがいまして、この法律については、従業員の福祉の向上や産業基盤の強化、そういう視点でうまく使われなければ凶器になる、そういう判断をしているということであります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私は、例えば中小企業の労働争議などを幾つか、訴えを聞いたり、またその現場を見たりしていく中で、ここ三十年ぐらいなかったような、かなり荒っぽい手段の計画倒産であるとか、労働組合を結成すると、その結成した全員が解雇されるというような事柄を見てきているのです。今回、商法改正では、中小企業にもちろん影響はありますけれども、寄らば大樹の陰と言われてきた大企業に働く労働者、サラリーマンの皆さんも同様に例外ではないわけですから、むしろ企業規模が大きい会社に働いている人たちが、ある日、分割計画を企業側から指し示されるというときに、まさにこの修正案の中に労働者との協議ということが入ったことは、私ども、積極的に評価をしたいと思うのですが、しかし、まさにこの企業分割が発火点になって労働争議が起きるということも十分考え得るのではないか。  その場合に、この協議の範囲、つまり企業の一方的な、通告的な説明だとか、形式的に開催しましたよ、形式的に説明義務を果たしましたと。いわゆる一方的な伝達でしかなかったではないか、後になって労働組合の方で、これは納得できないよという話になっても、もうこの協議は終わっていますというようなことが行われてはならない、こう思うわけですけれども、懸念があるわけです。この点について、松浦参考人としてはいかがでしょうか。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 これから法案を決定されるまでの間に、例えば今回修正提案がされております、労働者との協議とはいかなるものなのか、それから、本店に備え置くべき日までに、こういうことになっていますので、それは明らかに、今の民間の労使がやっている、経営方針を決定する前段階における労使の話し合いを含むということについてぜひ確認をしていただくことによってそうした問題が防げる、このように考えます。  昨年の十二月に、この法務委員会で審議をして決定をいただきました民事再生法にも関連をいたしますけれども、この民事再生法の今後の展開も含めて、例えば鉄鋼のある企業が民事再生法の適用の第一号申請をした、こういうような新聞報道が過日されておりますが、これに際しましては、株式の証券取引法上の問題で、インサイダー取引ということに関連をして労使の事前協議ができない。労働組合の役員にはその伝達をしたけれども、その役員が職場に向かって、こういうような計画がある、これについて問題、課題はないか、そして、どう対処すれば問題が解消できるのかというような職場議論ができないというような問題も発生をいたしておりますので、有価証券取引法に関連するインサイダー取引との関係も含めて、いわゆる労働者との協議という問題については、計画段階でちゃんと責任を持ってやれるということについて、ぜひ明確にしていただきたいということをお願いしたいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それでは、時間が残り少ないですが、鈴木参考人に今の同じ点を伺いたいのです。  つまり、事前の協議ということが私たちも必要だというふうに思っているわけですが、これは、一方で企業が再編のメカニズムを働かせる中で、労働者一人一人の同意を、あるいは労働組合を通して得るというのはなかなか高いハードルだという感想もあるのかなということを予想するわけなんです。このあたり、先ほど聞いたことと同じことなんですけれども、協議ということの内容なんですが、労働者に対してこういう計画ですよ、わかりましたという、本当にいろいろ情報開示も全部されて合意が成立するという以外の、一方的な説明会が持たれる、あるいは紙が一枚配られる、それで協議が終わったというようなことで労使紛争が起きてはならないという懸念を我々は持っているわけですけれども、このあたりはどのようにお考えでしょうか。

鈴木良男東京商工会議所常任顧問/株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長

○鈴木参考人 さっきも申し上げましたけれども、幾つかの存在の中にはそうでない人がいるというのは世の中のもう仕方がない事実でございまして、そういう極端な例は、それはまた別途の問題だというふうに私は思います。  けれども、ノーマルな、常識的な普通の会社というものは、協議というものをやるときに、誠意を尽くして、労働者のその行く末というものを考えて、そしてその賛同を得ていくという事柄に全力を尽くしていくということであり、また労働者の方もそれを聞いて納得していくというような過程というのが、これは合意とかなんとかという問題じゃなくて、やはりやっていくのが普通の会社であって、要するに近代化というものとかあるいは経営の転換、選択と集中という問題に対して裨益するためのものである、これを期待しておるわけでございます。  私は、さっきも申し上げましたけれども、もしこれをやってみて、これが非常に悪用される、商法がこれで悪用されるとは思いませんが、もしそういうことがあったのだったらぜひ直していただきたいのですよ。商法ほど変わらなくて、要するに全く実態に即していないものはないというのが実際でございますので、まずそこら辺の、過ちと思ったら改むるにはばかることなかれというのを特に商法については強くお願いしておきたいというふうに思いますので、やってからの問題だということで、先生方によく監視していただき、その場合にあれしていただきたいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 以上をもって終わります。ありがとうございました。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、両参考人に委員長にかわりまして一言御礼を申し上げます。  両参考人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  速記をとめてください。     〔速記中止〕

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 速記を起こしてください。     —————————————

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案並びに与謝野馨君外四名提出の商法等の一部を改正する法律案に対する修正案の審査を続行いたします。  この際、お諮りいたします。  両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長林則清君、法務省民事局長細川清君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、労働省労政局長澤田陽太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所中山総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。

横内正明自由民主党

○横内委員 自民党の横内でございます。今回の商法改正について、大臣以下、政務次官、局長に幾つか御質問をさせていただきます。  まず一点は、税制の関係なんですけれども、今回、商法の法改正、会社分割の制度の整備が行われるわけでありますけれども、法律の整備だけではなくて、税制があわせて整備をされないと実態上会社の分割というのは動かぬわけでございます。それは当然のことであって、会社の分割で営業が移転をしたあるいは株式が移転した、それが譲渡所得とみなされて課税されるようなことがあると、これは動くわけがないわけでありまして、税制の整備があわせて行われることが極めて重要だというふうに思います。このことは、先ほど東京商工会議所の鈴木参考人も、要望の第一に税制を早く整備してもらいたいということを強く言っておりましたね。  そういう税制の整備について、法務省としては、この法改正を企画した立場としてどのように考えているのか。とりわけ、法案を協議する過程で当然大蔵省とも協議をしたわけでありますから、常識的には大蔵省主税局とある程度話があったのではないかというふうに思うわけでございます。大蔵省の主税局とある程度の話がついているのかいないのか、そういうことを含めて御質問したいと思います。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 会社分割に関連いたしまして、経済界から税制上の要望が寄せられております。その主なものは、先ほどの鈴木参考人が言われたとおりでございまして、まず分割会社の資産を承継させる際の譲渡益課税の問題でございまして、それを避けるために簿価による承継を認めてほしいというのが第一点。第二点は、分割会社の引当金につき税法上の承継を認めてほしい、そうしないと引当金を取り崩したときに益金に算入されてしまうという問題があるということ。それから三番目といたしましては、分割会社の株主が新たに発行する株式の割り当てを受けた際に、いわゆる繰り延べ課税をしてほしいということ。それから四番目が、会社分割の際の登録免許税、不動産取得税等の減免ということでございます。  これらにつきましては、こういった会社分割に伴う税制上の手当てにつきましては、私どもが直接所管するものではありませんが、私どもは、こういった法案作成の過程におきまして、会社分割制度の制度趣旨と具体的内容につきまして大蔵省主税局に対して随時説明してまいったわけでございます。また、与党の自由民主党の税制調査会や政府の税制調査会においても検討が進められているわけでございまして、私どもとしては、大蔵省において会社分割法制の趣旨を踏まえて適切に対応されるものと考えております。

横内正明自由民主党

○横内委員 次に、営業の許認可の承継ということについてなんですけれども、会社の分割で営業が承継をされたときに、営業について行政庁の許認可を受けて行われているような場合に、許認可を受けた地位も同時に承継をされるということでないと営業ができないわけであります。そのことについて今回の改正ではどのような取り扱いをしているのか。  それは、この商法改正法とあわせて提出をされている関係法律の整備に関する法律をずっと見ておりましたが、それぞれの個別の事業法ごとにずっと細かく一つ一つ手当てがされておりますね。それを見ていると、それぞれの法律でみんな規定の仕方が違っておるようでして、ある事業法においては、会社が分割をされて営業が承継されればもう自動的に許認可を受けたその地位も承継されるという書き方をしているものもあったり、それから、会社の分割そのものを主務大臣の許可とか承認に係らせて、許可とか承認を受けたらその地位が承継されるというふうにしているものもあったり、また届け出をさせて届け出をしたらその許認可の地位は承継しますよと言っているものもあったり、ばらばらなんですけれども、やはり法務省として何かある基準を設けて各省と調整をしてああいう関係法律の整備の法律をつくったのでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 ただいま御指摘のとおり、整備法の中身は、会社分割に伴う司法上の手当てとして、民法あるいは非訟事件手続法、商業登記法等の改正がございますが、多くの部分は許認可の承継にかかわる部分でございます。これは、もともとの根拠規定が多岐にわたりますが、それをどう扱うかということは関係省庁とも協議しながら定めたわけでございます。  それで、一般的な方針でございますが、まず、事業が高度の公益性を有する等の理由から、当該事業を営む法人の合併の効力発生につき主務大臣の許認可等を要するとしている法律につきましては、当該事業を営む法人の分割についても、合併と同様、許認可等がなければその効力を生じないものといたしました。そして、許認可等を受けて分割が行われた場合には、事業を承継した会社は原則として分割会社の許認可を承継することといたしたわけでございます。  その例といたしましては、ガス事業法、石油業法、電気事業法、電気通信事業法、鉄道事業法等がございます。  次に、事業の譲渡や合併があった場合には、事業の実体がそのまま移転する蓋然性が高く、再度、許可、登録、届け出等をさせることが煩雑である等の理由から、当該事業の許可、登録、届け出に係る地位が当然に承継されると規定する法律では、当該事業を承継させる分割につきましても、許可、登録、届け出に係る地位が当然に承継されるものといたしたわけでございます。  例といたしましては、工業標準化法、建築基準法、割賦販売法、大気汚染防止法、消費生活用製品安全法、大規模小売店舗立地法等でございます。

横内正明自由民主党

○横内委員 要するに、合併の例に倣ったということですね。  次に、ストックオプションについてなんですけれども、今回の商法の改正で、会社分割とは全く関係なく、ストックオプションについての改正が行われているということでございます。  ストックオプションというのは二つのやり方があって、一つは自社株を取締役あるいは使用人にやる方法と、それから新株引受権を与える方法と、二つあるわけですけれども、従来の商法の規定の仕方ではその併用が認められなかった。だから、自社株方式をとった場合には新株引受権方式はその会社は使えません、新株引受権方式をとった場合には自社株を割り当てる方式は使えません、そういうような規定の仕方だったのです。  今回の改正でその併用が認められることになったということなんですけれども、どういう理由でそういうふうに改正をしたのか、これは政務次官にひとつ。

山本有二自由民主党法務政務次官

○山本(有)政務次官 現行法におきましては、自己株型とワラント型のストックオプションの併用を認めていないわけでございますが、自己株型のストックオプションは主として発行済み株式総数の多い大規模の会社が利用することを想定し、一方、ワラント型のストックオプションは主として発行済み株式総数の少ない中小規模の会社が利用することを想定したこと等によるものでございます。  しかしながら、本法案が創設する吸収分割に際して、当事会社がそれぞれ別のタイプのストックオプションを利用している場合には、その併用を認めないとストックオプションの引き継ぎができないことになり、吸収分割をすることが困難になること、経済界からも両者を併用する必要性がある旨の強い要望が出てきていること等から、本法案においてはこれらの併用を認めることとしたものでございます。  もっとも、これによる弊害を防止するため、付与できる限度を、両者を合わせて発行済み株式総数の十分の一としております。  以上です。

横内正明自由民主党

○横内委員 このストックオプション制度については経済界からいろいろな要望が出されているようですけれども、どんなような要望がなされているのか、そして、これについて法務省としてこれからどういうふうに検討をされるのか、その点もあわせてお聞きをしたいと思います。

山本有二自由民主党法務政務次官

○山本(有)政務次官 ストックオプション制度につきまして、経済界等から見直しの要望が出されている事項は、第一に、付与対象者が会社の取締役及び従業員に限定されていること、第二に、新株引受権型のストックオプションにつきまして株主総会の特別決議が必要とされていること、第三に、株主の株式買い取り請求権の行使等により会社が取得した自己株式を付与の対象とすることができないこと、第四に、ストックオプションの付与を決議する株主総会において付与対象者の氏名及び付与数までも決議しなければならないこと、などでございます。  ストックオプション制度は、会社にとりまして有能な人材の確保に資するとともに、取締役等にインセンティブを与えることにより会社の業績向上を図るという有益な制度でございますが、その一方で、既存の株主の利害に与える影響が大きいこと、会社の自己株式の取得及び保有に伴う弊害を防止する必要があること等の問題点も指摘されているところでございます。  法務省といたしましては、これらの問題点に配慮しつつ、ストックオプション制度の公正かつ円滑な運用を実現する観点から、制度の改善を検討してまいりたいと考えている次第でございます。

横内正明自由民主党

○横内委員 次に、今回の法律で、会社分割の際に一定の情報開示が必要であるという規定がされておりまして、分割計画書を初めとする幾つかの書類を本店に備え置いて、関係者の閲覧に供しなければならないということになっております。その書類の中で、いわゆる債務超過にならない証拠書類ですね、「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」というのを挙げておりますけれども、この規定の意味を聞きたいわけであります。  今までの法務省の答弁では、分割によって従前の会社または新しくできる会社が債務超過になってしまうと債権者を害するおそれがあるんだ、したがって、そういう債務超過になるような場合にはそもそも会社分割は認めないんだ、そういう趣旨の規定なんだということを答弁しておられましたけれども、そういうことでいいのかどうか。  それともう一つは、そういうことであれば、債務超過になるような場合は分割は認めませんと商法にはっきり書いた方が早いのじゃないかという気もしますけれども、そういう規定をしなかった理由。  その二点をお伺いいたします。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト」等を記載した書面を事前開示書面としているわけでございますが、これは、会社の債権者にとりましては、自己の債権について確実な弁済を受けられるか否かが関心事でございますが、分割が行われる場合には、自己の債権の引き当てとなる責任財産が少なくなるという可能性があるわけでございます。そういったことから、各会社の支払い能力に関する意見書を取締役に作成させて、それを備え置かせることとしたものでございます。  単に「履行ノ見込」としないで「履行ノ見込アルコト」といたしましたのは、債務の履行の見込みのない会社の会社分割を認めないということを明らかにしたものでございます。  例えば、一例でございますが、会社が債務超過に至っているような場合はもとより履行の見込みはないわけですから、そういう場合には会社分割は許されないというわけでございます。また、債務超過に至っていない場合であっても、当該営業部門の収益の状況によっては債務の履行の見込みがない場合があるわけですから、そういう場合も分割はできないということにしているわけです。  それでは、債務超過はだめだということを直接的に規定すべきではないかという御指摘でございますが、これは、債務の履行の見込みがなくなるような会社分割が許されないということを当然に前提といたしまして、手続的にこれを担保するために、事前備え置き書面として「見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」というものを要求したわけです。  本規定が、分割後の各会社が債務超過になるかどうかではなくて、債務の履行の見込みがあることを基準といたしましたのは、分割会社の債権者として最も重要なのは、自己の債権の弁済が確保されるかどうかであることに加えて、分割の時点で債務超過の状態でなくても、各会社の将来における収益の予測等から将来の債務の履行の見込みがあると認められないことがありますものですから、履行の見込みがあることというものが適切な要件であろうというふうに考えたわけでございます。

横内正明自由民主党

○横内委員 この書面の記載内容の正確性を担保するということが非常に大事なんですけれども、やはり履行の見込みがあるということの証明というのは非常に難しくて、これは正確な記載内容でなければならないと思うんですけれども、そのために第三者的な、例えば公認会計士とか、そういう人たちの意見書みたいなものは添付されるということになるんでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 債務の履行の見込みがあることの理由といたしましては、要するに会社にある財産の価額、債務の額の比較により、債務超過状態にないことなどを記載すべきでございます。また、その財産の価額につきましては、時価によったのか簿価によったのか、時価によった場合にはどのような算定基準によったのか等も記載すべきものだと考えております。  したがいまして、ある程度大きな会社では公認会計士などの専門的な意見がつけられるのは当然予測されますし、それが期待されるわけですが、商法はすべての会社に適用される、中小企業、零細企業にも適用されるものですから、法律上の要件とはいたさなかったわけでございます。

横内正明自由民主党

○横内委員 最後に大臣に伺いたいのですけれども、商法というのは、商取引という資本主義社会の最も活発に動いている分野を規制する法律でありますから、その対象となる実態が常にどんどん変わっていくわけです。  したがって、そういう経済社会情勢の変化に対応して、敏速に、機動的に法改正をやっていかなければならない。その点は、先ほど鈴木参考人も商法を改正しなさ過ぎるということを言っておりましたけれども、全くそのとおりだと思うんです。  とりわけ、一番変化する最先端の部分を規制している法律であるにもかかわらず、まだ片仮名の法律だというのは、いかにもこれはおかしいのじゃないかという感じがするわけでございまして、やはり現代語化、口語化というのか、そういうことを含めて早急に改正をすべきではないかというふうに思います。  あわせて、今我々の党でも検討しておりますが、コーポレートガバナンスの問題とか企業の情報の開示の問題とか、いろいろ改正の課題があるわけでありまして、そういう改正も急ぎ行う必要があるというふうに思います。  そこで大臣に、今後の商法改正の課題とかテーマというものをどう考えているか、それからスケジュールをどういうふうに考えているのか、それから三点目として、法務省の民事局の商法担当は、そこにいる原田参事官と、あと検事が二人ばかりいるだけで三人ぐらいで、四人ですか、四人でやっているわけです。これは私どもの自民党の法務部会の部会長初めみんながよく言うんですけれども、もっと機動的に十人やら二十人一挙に集めて、そこで集中的に人材配置をして、一年ぐらいで徹底的に議論をしてやるべきじゃないか、そういうふうに社会から要請されているんだ、我が党としてはよく法務省にもそういう話はするんですけれども、そこで、その三点について大臣の御意見を伺いたいと思います。

臼井日出男自由民主党法務大臣

○臼井国務大臣 喫緊の課題でございました会社の組織再編のための法整備につきましては、今国会に会社分割法制の創設を内容とする商法改正法案を提出いたしたところでございまして、この成立によりまして、この分野での立法作業は一応区切りがつけられた、こう考えてよろしいと思います。  商法の改正につきましては、経済界を初め各界から、なお多様な御要望が多数寄せられているという状況にございまして、委員御指摘の商法の現代語化、コーポレートガバナンスに関する問題あるいは情報に関する問題、こういった問題に関しましての改正要望もその中に含まれているものと承知をいたしております。  法制審議会商法部会におきましては、今後の改正を検討すべき具体的な事項やそのスケジュールにつき審議を開始したところでございますが、法務省といたしましても、今後とも現代の社会経済情勢の急激な変化に迅速かつ的確に対応すべく、商法について所要の見直しを行うための体制を整え対応してまいりたい、このように考えております。

横内正明自由民主党

○横内委員 終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 坂上富男君。

坂上富男民主党

○坂上委員 坂上富男でございますが、質問時間が二十分しかありませんので、あらかじめ会社分割について質問事項を、文書で御回答をいただきました。十問まで御回答をいただきました。ありがとうございました。これはこれで記録にとどめておいていただければ結構でございます。  そこで、私の質問事項として、政府当局には二項目質問が出ておったのでございますが、一項目めは大体いろいろと御答弁がありましたし、文書上の回答もございましたので省略をいたしまして、労働省がお見えでございますので、労働省に御質問をいたしたいと思います。  この会社分割によりまして、使用者が、いわゆる不当労働行為に当たるような、会社分割ということにして、いわゆる不採算部門というようなものを分離独立されて、好ましくない労働者をそれにつけてやって、あるいはまた、もっとリストラをしなければならぬということで、そういう独立した会社の方につけてやって、よってもってこれを排除するというようなことが、それは一体どれとどれとどういうことで歯どめになるかということをまず御答弁いただきたいのです。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 先生御指摘のように、使用者側から見て好ましくない労働者という例がございましたが、そうしたケースで労働者を解雇するということになりますと、判例法理によりまして、御承知のように労働者を解雇するに当たっては合理的な理由を必要とする、とりわけ整理解雇ということになりますと、整理解雇の四要件というものが裁判例におきまして確立しております。したがいまして、こうした判例法理に照らして、今回、会社分割のみを理由に労働者を解雇することはできない、許されないというふうに考えております。  歯どめということでございますが、そうした判例法理について使用者あるいは労働者がよく周知し、特に使用者側でありますが、遵法精神にのっとった行動をとっていただくということで、労働省としては、そうした判例法理の周知徹底に努めておりますし、今後ともそうした努力をしていきたい、かように考えております。

坂上富男民主党

○坂上委員 余り議論したくないのでございますが、やはり好ましくない労働者の排除、これは本当にこれを悪用されるなという感じを今の御答弁でも感じました。また、これをとめる歯どめがどういうふうに保障されているのだろうか、こう聞いてみましたけれども、余りはっきりした答弁がないわけでございまして、結局、一たん分割した会社に移されちゃう、あるいは反対に残されておる、その残したところをつぶす、移したところをつぶす、どっちかをつぶすということによってその不当労働行為を成立させよう、こういうことが簡単にできるんじゃなかろうか、私はこのことが一番危惧されることでございますので、一応問題の指摘だけしておきたいと思います。  そこで、修正案でございますが、これと絡まってくるのだろうと思うんですが、三つ一緒に質問いたします。  修正案の、「労働者と協議」の意味についてでございます。  一つは、協議が調わない場合、これはどうなるのか。それから、労働者の協議と労働組合との関係がどうなるのか。それから、複数労働組合がある場合は一体これはどうなるのか。特に、多数組合と少数組合の関係がどうなるのか、これらをひとつ固めてどうぞ。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 修正案の提出者の北村でございますが、ただいま三つの御質問でございました。  まず最初の、労働者との協議が調わなかった場合どうなるかということですが、修正案の附則の第五条第一項のいわゆる協議は、会社分割に伴う労働契約の承継に関して、会社に労働者との間で誠実に協議をすることを義務づけるものであって、協議の成立までも要求するものではありません。したがって、労働者との協議が調わない場合であっても、法文上は会社を分割することができるという形になります。  次に、では、労働組合との関係はどうなるんだという問題でありますが、これは会社に会社分割に伴う労働契約の承継に関して労働者との協議を義務づけるものであって、労働組合との協議を義務づけるものでない。すなわち、労働者との協議が法文上義務づけられます。労働組合との協議は特に義務づけてありません。  しかしながら、一つは、会社が自発的に労働組合との間で協議を行うことは別に妨げているわけではありません。もう一つ、民法上、商法上は、個々の労働者が会社との協議の代理権を労働組合に与えることもできる。だれに与えてもいいわけですから、一人一人の労働者が労働組合に、私の労働条件の承継に関しては労働組合に委任すると言えば、会社側は労働組合と交渉しなければならない義務が当然生じてくるということになります。  そうなりますと、今度は、過半数とかなんとかいろいろ問題がありますけれども、複数の労働組合がある場合どのように扱われるかということになりますと、これは個々の労働者が、修正案附則五条一項の規定によって、会社との協議について労働組合に代理権を与えることは可能と言った以上、複数の労働組合があるときは、労働者は、通常自己の属する労働組合に協議の代理権を付与することができるわけですから、会社側は、個々の、複数であれば複数の労働組合との交渉義務が生ずるということになると存じます。  以上でございます。

坂上富男民主党

○坂上委員 もう一点でございます。  労働者個人個人と協議をする、こういうことでございますが、例えば、一千名いる労働者だったら、その一人一人と、会社のいわゆる使用者、経営者という立場の諸君と協議ということになるんでございますか。これは全員ですか。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 法文中は全員でございます。ですから、一人一人の労働者が協議をしてほしいと言えば、全員としなければならないという義務は当然生ずると思います。

坂上富男民主党

○坂上委員 はい、結構でした。ありがとうございます。  次に、慶応大学の差別事件について御質問をさせていただきたいと思っております。  これも質問が多岐にわたっておるものでございまするから、文書で質問をいたしました。四問質問をいたしまして回答をいただきました。あわせまして、少し補充をして質問をさせていただきます。  この事件は本当に大変な問題でございまして、加害者が、報復したい相手の名前をかたって同和団体関係者あてに同和差別を内容とする脅迫状を送りつけ、多額の現金を要求するなどして、いわゆる部落差別の落書き等をし、脅迫等の文書を送るというような極めて悪質な事案であるわけでございます。これは、中央の新聞に一ページにわたりまして詳細に報道をされておる問題です。でありまして、この点について御回答を四問いただきました。特に重要と思われる点二点を御質問いたします。  警察庁への質問でございますが、こういう事件はまさに脅迫、強要罪でもございますので、綾瀬署に告訴いたそうとして告訴状を持参したそうでございますが、犯人が特定されていないので受理するわけにはいかない、しかしながら被害届は受理いたしますということになっているそうでございます。  これはやはり、私は当然、被害者があるわけでございまするから、その告訴は受理されてしかるべきだったんでございますが、この点についてどのように対応をされておったのか、その真相について御回答をいただきたいと思っておるわけでございます。  また、あわせまして法務省東京法務局に質問をいたしたいのでございます。  これも同様でございまして、人権侵害であるからということで、調査、侵害排除の要請をいたしたわけでございます。人権侵犯問題として取り扱っていただけると思ったんでございますが、やはり、犯人が特定できない限り任意捜査しか権限がないのでというようなことで、大変不満のある対応をされてしまった、こういう指摘があるのでございます。この点について、人権擁護局としてはどのように所見を持っておられるのか、御回答をいただきたいと思います。

横山匡輝法務省人権擁護局長

○横山政府参考人 法務省の人権擁護機関におきましても、委員御指摘の事案を把握しておりまして、人権擁護上極めて悪質な事案であるとの認識のもとに、所管の東京法務局において鋭意調査をするなどの対応をしているところでございます。  東京法務局における対応の具体的内容につきましては、現在事案について調査している最中でもありますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、鋭意調査を遂げまして、その調査の結果に基づき適切に対応してまいりたい、このように考えております。

林則清警察庁刑事局長

○林政府参考人 お尋ねの事案につきましては、平成十年の五月に綾瀬署へ御相談にお越しになりまして、六月九日に脅迫罪で被害届の方を受理して捜査に着手しております。同日及び六月二十九日に被害者の調書を作成しておるほか、郵送された文書、いわゆる脅迫文書でございますが、これから指紋採取を行うなどの捜査を実施しておるところであります。  しかし、調べてみますと、同年以降、本件の捜査は進捗していない、加害者も特定できていない状況にあったという意味では十分な捜査は遂げておりませんが、今御指摘あった当初の相談の際の経緯につきましては、当時被害者の方と応対に当たった者が昨年九月に病没しておりますために、お尋ねのような言動があったかどうか、告訴ではなくて被害届をというような、そういった言動があったかどうかにつきましては、警察側からは確認はちょっとできない状況であります。本件は親告罪ではありませんので、告訴であろうが被害届であろうがこれは捜査を遂げるということでありますが、今申し上げましたように、捜査がそんなに進んでいない。  ところが、御指摘にもありましたように、今般報道がされました。これとの関連が非常に強く認められるということでありますので、その報道内容も十分踏まえまして、綾瀬警察署におきましては、早急に本件の捜査を進めて厳正に対処をしてまいるということといたしておるものと承知しております。

坂上富男民主党

○坂上委員 これは、慶応大学内で起きた問題でございます。慶応大学においては、人権上の問題といたしまして大変厳格に、かつ迅速に調査をなさいまして、犯人を大体把握されたようでございます。学生だったそうでございますが、これについて退学処分をするというような報道が出ておりますが、非常に慶応大学には私は敬意を表したいと思っております。  しかしながら、本来の任務であります警察庁それから人権擁護局、これらについての動きが非常によくなかったんじゃなかろうかと私は思っておるわけであります。特に、部落差別の問題というのは大変深刻な問題でもあるだけに、私は、この問題は重視して対応すべきだろうと思っておるわけであります。中央の一流紙も本当に一ページ割いて、私もびっくりするぐらいの記事になって載っておるわけでございますから、ぜひともひとつ、警察当局並びに人権擁護局もきちっとした対応を期待したいと思います。  大臣、そんなようなことで、人権擁護局やあるいは捜査当局のかなえの軽重が問われるようでは私はいかぬと思っておりますが、これに対する所感をまずいただきたいと思っております。

臼井日出男自由民主党法務大臣

○臼井国務大臣 部落差別を内容とする差別落書き等の事案は、差別を助長しかねないなど人権擁護上看過できない事象であると考えておりまして、事案に応じて行為者の特定に努め、行為者が判明した場合にはその啓発を行うなどの適切な対応に努めております。  もっとも、この種事案につきましては、行為者の特定が困難である場合も多いところでございまして、平素から国民一人一人の人権意識の向上を図ることによって対処することが肝要であるとの観点から、あらゆる機会を通じて人権尊重思想の啓発に努めてまいりたいと考えております。  なお、この問題も含め、人権が侵害されました場合の救済のあり方につきましては、現在、人権擁護推進審議会におきまして調査、審議が行われているところでございまして、その審議の結果も踏まえ、この種事案に対する取り組みの一層の充実を図ってまいりたいと考えております。

坂上富男民主党

○坂上委員 ぜひ期待をいたします。特に、推進審議会におきまして、私たちは法的措置を要求しておるわけでございますから、私は人権擁護推進の上においては法的な措置がどうしても必要だというふうに確信をしておるわけでございますから、ぜひ法務省の方もきちっとこれに対応していただきたいことを期待いたしたいと思います。  五月三日の新聞報道によりますと、山口最高裁長官は記者会見において次のような意見を述べられたそうでございます。読みますと、「少年審判の改革を盛り込んだ少年法改正案が、国会で実質的な審議に入っていない現状については、「第一線の裁判官の要望におおむね沿った内容と思っており、一日も早い成立を望んでいる」と語った。」こういうふうに記者会見で言われた。私、これを読んでびっくりしました。  と申し上げますのは、盗聴法の審議中にも議論があったわけでございますが、寺西裁判官でございましたか、この方が盗聴法の反対集会に傍聴者として出席をされておりまして、何か紹介があった際、発言は辞退をするという趣旨のことを述べられたそうでございます。そこで、「言外に同法案反対の意思を表明する発言をし、もって、同法案の廃案を目指している前記団体等の政治運動に積極的に加担した。」ということをもって戒告処分になったわけでございます。  これと比べてみて、積極的な加担をしたと言ったのでございますが、これを読んでみると積極どころの騒ぎではありません。まず、一日も早く成立させてくれ、こう言っているわけでございます。それから、この改正内容について裁判官は、おおむねよろしい、これを期待する、望む、こういうふうに言っているそうでございます。  とんでもないことでございまして、いずれこれから少年法の審議に入って議論になると思いますが、裁判所は一体こういう、積極的な、まさに政治的発言でございます。こんなことが許されていいのか。しかも最高裁長官。きょうは出頭要請をしたのでございますが、三権分立の上からいっていかがかと思いまして、私は強硬にはしませんでした。その代理として総務局長がお見えのようでございますが、これは大変な発言なんじゃないかと思います。  まず、最高裁判所、これは取り消すべきだと思いますが、いかがですか。それから、この第一線の裁判官の要望というのは一体何が要望なんですか、この改正事項の中の。それから、一日も早い成立というのは一体どういうことなんですか。これは、反対の言葉で廃案を望みますと言った場合はどうなるんですか。これは許されますか。どうもちょっと、考えてみても、裁判所は踏み越えて、少しぐらい政治活動よろしいと態度が変わったんでしょうか。その辺もあわせて一括して答弁をいただきます。  これは、今度少年法の審議に何か入りそうな感じでございますから、そのとき激しい議論になると思いますから、私は予告としてきちっと指摘だけをしておきたいと思いますが、御答弁を。

中山隆夫最高裁判所事務総局総務局長

○中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  ただいまの記事につきましては、まず記者の方から、少年法の改正案については現在継続審議中となっており、具体的な審議はまだ一回も開かれていないけれども、どういうふうにお考えかという質問があったわけでございます。これに対する最高裁長官の具体的な発言内容を正確に再現させていただきますと次のとおりでございまして、新聞記事とは異なっているということを御理解いただきたいと思います。  長官は、少年法改正案については、家庭裁判所の実務の第一線にあられる裁判官方の御要望におおむね沿った内容が取り込まれているように承知しています、もちろん、その当否について種々の御議論があり、改正の動きがあるということも承知しておりますけれども、おおむね実務の裁判官の意見にかなったものが盛り込まれているように承知しています、それだけに一日も早い成立を待ち望んでいたわけでございます、国会におかれましてはまた種々の御事情等もあろうかと思いますので、法案の処理につきましては私からのコメントは控えるのが適当ではないかと思いますというものでありました。  以上のところからも御理解いただけるかと思いますが、御指摘の点については、最高裁長官において、実際に少年事件を担当している裁判官の多数が非行事実認定手続の適正化という観点から早急な立法的手当てを望んでいるという事実認識について言及されたものであり、国会における少年法改正案の処理についてはコメントを控えるのが適当であると明確に発言されているのであって、政治的な発言をされたわけではないというふうに考えております。  なお、裁判官の意見につきましては、これまでも協議会、研究会における議論や法制審の審議の過程で聴取した各庁の意見等から、今回の改正案がおおむね実務の裁判官の要望にかなったものと認識しているものでございます。  以上です。

坂上富男民主党

○坂上委員 ちょっと整理だけ……

武部勤自由民主党

○武部委員長 時間です。もう四分オーバーしておりますので、次の機会に。

坂上富男民主党

○坂上委員 私の質問で、要領よく答えていただきたいと言っているんですよ。

武部勤自由民主党

○武部委員長 いや、もう答弁の時点で時間が来ておりますので、次回にしてください。

坂上富男民主党

○坂上委員 はい、わかりました。

武部勤自由民主党

○武部委員長 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  商法改正法案について修正が出てまいりましたので、まず修正案の提案者にお聞きしたいと思います。  修正要綱の第一は、分割計画書及び分割契約書の記載事項ですが、ここに「雇傭契約を例示するものとする」ということであります。この問題は既に、この委員会でも法務省民事局長から再三答弁がありますが、改正法案の権利義務という、債権債務の中には雇用契約も入ると明言されております。それが文書に書かれるというのは、明示するというので一歩前進かもしれませんが、そういう答弁があります。  そこでお聞きしますが、この雇用契約を分割契約書等に明示させることによって政府原案とどう変わるのか、まず御答弁願いたい。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 お答えいたします。  承継する権利義務に雇用契約が入るということは、しばしば政府答弁でもあったとおりでございます。したがって、このことを法文上明示することは雇用契約の承継に関する取り扱いを変えるものではありませんが、雇用契約が明示されることによる経営者側の誤解とか労働者の不安を解消するとともに、会社分割法制においても労働者の保護の配慮がなされているということをより明らかにするという意味で、これを修正させていただいたわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 この問題について、分割計画書等にどこまで記載するのかという質疑がこの委員会でもありました。たしか法務省民事局長の答弁は、移籍させられるべき労働者の氏名までは明示する必要はないという答弁だったと思うんです。  今回、こういう修正を出したことによってそこが一歩前進すればなかなか立派なものだなと思うんですが、承継すべき労働者の個々の氏名まで明示すべきだというようなお考えを修正案提案者は持っておられるのか、そこまでは持っておらぬのか、その辺、ちょっと明らかにしていただきたいと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 この質問は私も政府に対してちょうど質問したところで、政府側は、たしかお答えにならなかった、特定するに足りる事項というふうなお答えだったと思うので、質問した当時は、私もやはり同じような考えで、せめて氏名ぐらいは明らかにして特定したらどうだろうかという趣旨があったんです。  まだ私ども実際に、特定にはやはり氏名が欠かせないのだろうとは思いますけれども、現実にどう扱われるかについては、私どもの、修正案提案者の希望として、せめて特定の一つの証憑として氏名を出したらどうかなという気はしますが、どうもそのあたりまで、修正協議の中で具体的には詰めておりません。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それでは、これに関連して、労働省にお聞きしたいんです。  会社分割に伴う労働契約の承継法の「労働者等への通知」の中に、通知すべき対象として、「当該会社が雇用する労働者であって、設立会社等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの」、要するに、承継される営業に主として従事する労働者なのか、主として従事する労働者以外の労働者なのか、この振り分けが決定的に労働者の運命にとって重大だ。それが労働省令に任せられちゃっているんですが、どんな労働省令をつくろうとしているのか、明らかにしていただきたい。  また、主として従事する労働者、それ以外の労働者、この区分けの基準、労働省はどんなところを考えているのか。これは決定的に労働者にとって大事な部分ですから、答弁をお願いします。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 御質問の点でありますが、労働省令で定めるというふうに今回、法案の中で定めておりますが、基準につきまして、労働省令で今、私どもが考えておりますことを申し上げますと、一つは、分割計画書等の作成時点におきまして当該労働者が従事している業務が何であるか、分割される営業との関係で、主として従事している業務が分割される営業とどういう関係にあるかという点。  もう一つは、作成時点だけでは判断しがたい面がございますので、分割計画書等の作成時点以前の一定期間、この一定期間をどれぐらいとるかは、今後、国会の御審議あるいはいろいろな関係方面の御意見を踏まえて詰めていきたいと思いますが、計画書作成時点以前の一定期間の間に当該労働者が従事した業務が何であったか、この二つをまずは総合勘案することが必要であろうと考えております。  そのほか、いろいろ基準を考え、できる限り客観的な基準を設けるということで考えていきたいと思いますが、省令で書き切れる性格のものというのは限られておりますので、省令では書き切れないさらなる具体的な判断方法だとかそういうものは、今回、承継法案第七条で、労働大臣が指針を定めるということになっておりますので、その指針の中でさらに明確になるようにしていきたい、こう思っております。  それから、主として従としてというところでありますが、ここは、今の私どもの考えでは、できるだけ定量的なもので明確にできればいいと思っておりまして、努力をしたい、こう思っております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 今回の商法改正法案で、そこで雇用されている労働者にとって一番大問題なのは、分割される営業に主として従事している労働者は同意なしに、要するに、有無を言わさず新会社なり受け手の会社に身分を移籍させられるという問題なんですね。これが明治以来の民法六百二十五条の大原則、雇われている会社が変わるときには、少なくともその労働者の同意が必要だ、戦前の日本社会をも律してきたこの根本原則が崩されるという、ここなんですね。  今回の商法改正は、要するに、会社分割法制をつくれと要求している財界や大企業の一番のねらいは、リストラ、合理化のための会社分割法制の創設の要求なんですね。もっと簡単に言えば、不採算部門をいかに労働者の反対なしに首を切っていけるかということに尽きるんじゃないか。そうすると、それを防ぐ歯どめが今回の商法にあるのか、あるいは雇用承継法にあるのかというのは、決定的に重要なものになるだろう。そうすると、まさに承継される営業に主として従事する労働者なのかそうでないのかというものの振り分けが一番大事な勘どころと思うんですね。  ところが、今の答弁ですと、今なおはっきりしていない。二つのメルクマールで、分割契約書等が作成される際、当該労働者が従事している業務がその営業にどういう関係があるのかということと、それ以前一定の期間に当該労働者がそこに従事したかどうかだと。  そうすると、私は、かつての国鉄分割なんかのことを思い出さざるを得ないんです。人活センターというんですか、首を切りたい労働者を一定のところにほうり込んでしまって仕事をさせないで、そこをJRに継承しない、そういう勝手なことができちゃうんじゃないですかね。  分割の一定前に、ほうり出したい労働者をその分割すべきところに全部ほうり込んで、これは配転でできるわけですよね。独占体でしょうか、大きな会社の中の配置転換でできるわけですね、分割前なら。一定のところに集中しちゃって、そこに労働者をほうり込んでおいて、一年ぐらいたって会社分割を計画をした、それでその部門だけを新会社に移管する。そうすると、主たる業務に主として従事するというような概念に当てはまるということになるんでしょう。そうすると、全員解雇が最終的には待ち構えているということになるんじゃないんでしょうかね。  そんなあいまいで労働者の身分は守れるんでしょうか。さらに労働省にお聞きしたいと思います。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 今の御指摘でございますが、私どもの承継法案の中で、分割される営業に主として従事している労働者であって、いわば分割会社に残される者につきましては、異議申し立て権をつけております。異議申し立てをした場合には自分が従事していた営業と一緒に承継されるという形で整理をしておりまして、その点については問題ないと思いますが、今先生が御指摘の、一定期間をどうとるかは別にして、その基準で決めた一定期間よりさらに前に配置転換してしまうというケースにつきましては、これは通常企業内の配置転換のルールに従って行われるものでございまして、今回の承継法案の中でそこについて、どういう仕組みといいますか措置をとるかということはちょっと別の問題だろう、こういうふうに私どもは理解しております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 別の問題だということは、そういう事由が会社側に与えられているということになるんじゃないですか。  要するに、こういうことだってあるんですね。超優良部門をつくり出して、そこへ一定の労働者だけを集める、そしてその部門のみを分割していく、残ったところはなかなか採算が厳しいところばかりというような分割の仕方だって、やりようによってはやれるわけですね。そうすると、まさに将来の会社分割を想定した配置転換が行われる。それは労働者には見えないわけですね、分割の前ですから。知らないうちにずっと配置転換されて、労働者が振り分けられて、気がついてみたら、雇用を守ろうと考えている労働者群と、もう切っていこう、雇用を守る必要がないと企業が考えている労働者群とが物の見事に営業ごとに分けられて、それが分割法制によって分割させられて、同意もなしにほとんど企業からほうり出される。私、目に見えてくるんですよね。  それを防ぐ歯どめをかけなければ、幾ら現在日本には最高裁判例による解雇四条件があるなどと言ってみたって、そんなことは簡単に潜脱されるんじゃないでしょうか。そういう心配を、労働省なり法務省、提案者、お持ちにならないんでしょうか。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 今の点につきまして労働省としてお答えするのが適当かどうか、ありますが、先生の御指摘のケースを考えますと、今回の会社分割法制によって先生の御指摘のような会社分割が想定されているのか、あるいは許されるのかという問題にかなり深くかかわっているのではないかという気がいたしておりまして、その点につきましては法務当局から御答弁いただく方が適当ではないか、かように思っております。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 会社分割をいたす場合には、その要件といたしまして、分割する会社も、分割によって設立する会社あるいは承継する会社におきましても、いずれも債務の履行の見込みがあることを必要としているわけでございます。  これにつきましては、単に債務超過に陥っていないということだけではなくて、将来にわたって個々の債権を履行期に弁済できるということが、債務の履行の見込みがあるということでございます。したがいまして、出発の時点で当然に整理をしなければならないというようなものは予定されていないわけでございまして、この点につきましては、先ほど、連合の総合労働局長でいらっしゃいます松浦局長から、そういう債務整理型の、債務処理型の分割法制にならなかったことについて連合としても高く評価しているというふうに御発言があったところでございます。  それからもう一つ、承継について労働者の同意が要るかどうかという問題につきましては、これは昨年の民事再生法の御議論のときに、営業譲渡のときには労働者が承継されないから問題だという御指摘があった。その理由は、職場が移るのに労働者が承継されないということは問題だということであったように思います。  本件におきましては、営業として有機的一体として機能するものが分割によって承継されるわけですから、いわば労働者にとっては職場が移転するということでございますから、そこに同時に承継されることが、従来の職務と変わることがなく、より労働者の福祉に合致するであろう、労働者の雇用の安定に合致するであろうという考えによったものであります。  そして、外国の法制におきましても、EUの指令におきましては、特に異議権というものは規定しておりません。それから、フランスやイギリスにおいても包括承継とされており、特に異議権としては規定されていないわけでございまして、外国法制におきましてもそのような例があるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、今回の法制におきまして御懸念のような事態を生じさせることを目的としているものでないということはぜひとも御理解いただきたいと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 そうじゃないから、私はそこを細かく掘り下げて質問しているわけです。  さきの参考人質疑のときにも、私、引用したんですが、都銀懇話会というのが会社分割制度の研究というのをやっておりまして、「持株会社のメリット生かした自由な組織再編を行うための有効な手段」ということで文章を書いていて、何のために会社分割制度が必要かということで、会社分割制度導入の意義ということを堂々と書いているんですよ。それがまさに会社の責任を免れるための法制度なんだと言うんですね。  ちょっと読んでみましょうか。   ある事業部門を別法人として独立させる場合、これまで利用されてきた「分社化」を活用することも考えられるが、「分社化」では親子関係が存続するため、支配・被支配あるいは主・従の関係が生ずることにより子会社独自の戦略がとりにくい、親会社が子会社の経営リスクを直接負担し続けるという問題がある。 これまでの分社じゃやはり親子関係があって、労働者を分断したつもりでも、親会社は支配関係があるというと、子会社の労働者から雇用関係を追及される、不当労働行為を追及される、それを分断していきたいということですよ。   これに対し、「会社分割」の場合には、被分割会社の株主が分割会社の株式を併せ持つのみであり被分割会社と分割会社の間には資本関係がない。 ある分割の仕方もありますが、資本関係を断ち切る分割の仕方も今回つくったわけですね、四種類の中で。  そのため、親子会社における支配・被支配の問題やリスク遮断の問題は生じない。とくに、銀行における「企業分割」のニーズの一つである不良債権の分離については、リスクを遮断することが本来の目的であり、親子関係の残る「分社化」では、その目的を達成することができない。 まさに、不良債権を分離するんだ、そのためにこそ分社化じゃだめなんだ、企業分割法、会社分割法が必要なんだ、それが一番の会社分割制度導入の意義だと、堂々とこれは述べているんですよ。衆議院調査局法務調査室が、こういう資料を我々に提示してくれているんですよ。  だから、そんなことを想定しない、そんなひどい会社はないはずだなんて再三皆さんおっしゃるけれども、そんなものじゃない。それが一番のねらいで、今回の会社分割法制度が急がれたんじゃないんですか。法務省が準備しているよりも一年早く前倒しでやれと、総理の諮問機関によって財界から急がれたんじゃないんでしょうか。  では、そこでお聞きします。  民事局長は、前回の私の質問に対しても、商法三百七十四条ノ二の第三号を挙げましたね。「各会社ノ負担スベキ債務ノ履行ノ見込アルコト及其ノ理由ヲ記載シタル書面」、要するに、債務超過のような会社は分割が認められないんですよということを、前回私の質問に対して答弁しました。それで、きょうの今の答弁はさらに、「見込アルコト」というのは、分割時だけじゃなくて将来にわたって債務超過にならないことが想定されるという大変な答弁をいたしました。  そんなふうに読み取るのですか、「見込アルコト」というのは。じゃ、将来どのくらいにわたって債務超過になっちゃいかぬということなんですか。大事なところですから、答弁してください。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 債務の履行と申しますのは、当該会社が負担している個々の債務の履行期において弁済する見込みということでございます。履行期が将来であれば、その履行期に弁済することができるという見込みのことを言っているわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本の会社分割をやろうとしている大企業が、一部門、ある営業部門を分割するときに、現在ある債務を弁済するに足る資産をくっつけて分割するなんというのは当たり前であって、そんなことは難しい話じゃないわけですよ。長銀とか日債銀のように、既にもう債務超過に陥っちゃっている金融機関はともかくとして。ですから、今言った答弁では、全然労働者の地位は守れないんじゃないかと私は思いますよ。  まさに不採算部門というのは、分割された企業が、労働者も一緒になって、そこに移籍させられて一生懸命やっても、なかなか利益が出てこないという状況が経済社会の中で生まれる。それで、数カ月、数年やってみたら、もう債務超過になる。さあ、それじゃ会社破綻、全員解雇だという道筋になっていくわけですから、そういうのを会社分割時に見通して、そんなことは認めないんだなんということがあり得るんでしょうか。どうですか。わからないでしょう、そんなのは。そういう場合に、会社分割が無効だと断罪できるのですか、法務省。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 債務の履行の見込みがあることの意味は先ほど申し上げたとおりでございまして、その要件が満たされているかどうかが、要するに、分割できるかどうかにかかわるわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 やはりこれでは、残留する労働者、新しい会社に移籍をさせられる労働者、いずれにとっても今の答弁では不安は解消できない。  それで、その労働者の同意がなくて持っていかれる、あるいはその労働者の同意がなくて残留させられるということにこの仕組みは雇用承継法も含めてなるわけですから、労働者の地位を守ることにはならぬのじゃないかなというふうに私は思うのです。  では、そこで労働省にもう一回。  さっき、主、従、できるだけ定量的なものとおっしゃいました。しかし、現実には定量的なものでははかれないでしょう。例えば、ある運送会社、運輸会社のある一部門、バス会社ならある路線部門だけを切り離して別のバス会社に分割してくっつけようという場合に、そこの路線で運転しているバス運転手なら、まあいいでしょう。しかし、営業に携わっている者とか事務系統にいる者とか、企業体というのはいろいろな関係で一つの企業体として成り立っているわけですから、定量的なものでは全然、主、従などはかれるものじゃないと思いますが、どうでしょうか。そういうものを、何で主と従に切り分けるのですか。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 今御質問のケースについてお答えいたしますと、バス会社について、特定の路線を承継される営業という形で分割をするというケースについてでありますが、その場合に、主として従事する労働者というものは、その承継されるバス路線の運行に主として従事している者ということでありまして、ほかの路線とは関係ない。分割されるバス路線にどういう形でその人が主としてかかわっていたか、従としてかかわっていたかという形で判断をいたします。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 そうすると、会社を、言ってみればちょうど財産的にも真っ二つに割ってしまうような場合で、その会社の営業や事務系統にいる労働者はどうなるのでしょうか。  NTTを東日本と西日本にぶった切ったときに、そのNTTに、営業とか開発とかいろいろ、東か西かわからないようなところで現にNTTを支えているたくさんの労働者が雇用されていますが、そういう場合どうするんですか。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 NTTの例が出されましたが、ちょっとそこは別にして考えますと、例えば今のバス部門で申し上げますと、バス部門のある特定路線を一固まりの営業として分割するという場合に、そこの分割されるバス路線に従事している運転手は当然明白でありますが、そのバス路線を運行するに当たっては、運行管理をする、いわば総務部門とか、それから切符を売ったりという営業部門で特定のバス路線の運行に深くかかわっている方がいるわけです。そういう方は、その分割される特定路線と、総務部門なり営業部門にいる自分の仕事がどれだけの密度でかかわっていたかということで判断をするということでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私に与えられた時間は非常に短いので、本当は具体的な微妙な場合というのは幾らでも世の中にあるわけなんで、それを聞きたいのですが、きょうはやめます。  提案者に聞きます。  もう一つの修正として、労働契約の承継に関しては労働者と協議するものとするとありました。先ほども同僚委員から質問がありましたが、まず、協議する対象の労働者の範囲はどこまでなのか、明確な答弁をお願いします。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 修正案附則の五条一項は、「会社の分割に伴う労働契約の承継に関しては」云々、会社は「労働者と協議をするものとする。」としておりますが、これは、分割が営業単位で行われるということにかんがみて、会社に対して、会社分割により承継される営業に従事する労働者に係る労働契約について、承継会社に承継させるか分割会社との間で継続させるかについて労働者と協議すべきことを義務づける趣旨のものであります。  したがって、協議の対象となる労働者は、分割の対象となる営業に従事している労働者全員というふうに理解していただきたいと存じます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 では、さらに念のため確認しますが、そうすると、この協議の対象の労働者は、分割さるべき営業に従事している、いわゆる主として従事している労働者と、主として従事している労働者以外の労働者、簡単に言うと従としてしか携わっていない労働者、概念上二種類に分けられるわけですね、その主として従事している労働者以外の労働者にも協議しなきゃならぬということは間違いないですね。いいですね。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 主としてだけではなくて、従として従事している人も当然対象になります。だから、一つの営業の中に主としてと従としてがあります。それ以外の全然関係ない人も一つの会社の中にありますね。それは関係ないということです。協議対象外。主と従は対象。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 そうすると、ではもう一つ確認します。  雇用承継法によりますと、どの労働者に事前に通知しなきゃならぬかで、一つは、「当該会社が雇用する労働者であって、設立会社等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの」にのみ通知義務があるんですよ。主として従事する以外の労働者、これは残留するんだからという理屈でしょうか、通知義務がないんですよ。  そうすると、今回の皆さんが出してきた修正案は、労働省が出してきた、労働委員会で審議されている承継法の通知対象よりもはるかに広いんだ、分割対象の営業に何らかの形で従事している労働者は全員協議の対象なんだ、それで確認していいですか。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 修正案附則五条一項の協議の対象となる労働者は分割の対象となる営業に従事している労働者全員であることから、承継される営業に主として従事している労働者以外の労働者、すなわち承継される営業に従として従事している労働者であっても、その協議の対象となるということを確認してよろしいと思います。  ですから、若干労働委員会の問題とは範囲が違うかもしれません。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 かなり広いと。要するに、分割の対象である営業に何らかの形でかかわっている労働者はみんな協議の対象とされるんだという話ですね。そうするとおもしろい現象が起きまして、通知もないのに協議するということになるんですね。  ちょうどこの修正案によりますと、いつまでに協議しなきゃならぬのかの日ですね、それは通知と同じじゃないですか。「分割計画書又は分割契約書を本店に備え置くべき日」までに協議するとありますから、ちょうど二週間前だと思うんですよ。二週間前までに協議しなさいというのが修正案。しかし一方、労働関係承継法によっても二週間前までに通知しろというわけです。  そうすると、二つの点を私指摘したいのは、一つは、通知もないのに協議をするという労働者が出てくる、それはどうなんですかということと、通知があってその労働者が会社と協議するんでしょうが、その熟慮期間というのは全然なくなっちゃうんですね、同じ二週間前までですから。それで果たしてまともな協議というのができるのかというこの二つの疑問を私持つんですが、どうなんでしょう。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 通知の問題と協議の問題はちょっと違うという、まず一致はしていないと思います。  株主総会の二週間前までに労働者との間の協議を終了すべきことを要求する趣旨でありますから、会社は必要な協議期間を見越して協議を開始するものと考えなければならないと思います。  実際にも、通常の場合は、会社は、分割の手続として分割計画書などの作成とかあるいは株主総会の招集通知の作成、発送等の手続を踏まなければならないために、株主総会の二週間前よりも相当以前の段階で労働者との協議を開始するものと考えられます。  しかし、株式会社の中には株主の少ない中小会社などもあることから、法律上の期限としては「分割計画書又は分割契約書を本店に備え置くべき日まで」というふうにして株主総会の二週間前までとしたんですが、熟慮期間は当然相当期間置かなくちゃならないから、それまでにすればいいというぎりぎりではその間の協議はできないと思います。ですから、相当前という意味ですが、しかし、最低二週間前というふうにした、そういう意味でございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 だから、通知をする最低ぎりぎりは二週間前まで、協議も二週間前までというのは法律ですから、そうすると、大体企業というのはそういうのは余り早目にやりたくないですから、余り早く会社分割について知らせちゃうと、インサイダー取引とかなんとかそういう逆の立場から株主からクレームがつくというので、ぎりぎり最後まで分割については表へ出したくないというのが別の配慮からあるので、やはり二週間前ぎりぎりのところで通知をし、二週間前ぎりぎりのところで協議をするとなると、本当の意味での熟慮期間がないんじゃないかなというふうな感じがしますが、この辺でやめておきます。  労働省にお聞きしますが、午前中、参考人からこういう指摘がなされました。労働契約承継法によって承継さるべき労働協約についてはきちっと法律案にある、債務的効力についても規範的効力についても法律はある、しかし、労働協約でない労使協定というのが日本社会にはたくさんあるんだ、それが全然雇用承継法からは見えてこない、大変な指摘がありました。私もびっくりしました。それで労働省にお聞きします。  労働協約には至っていない、そこまで行っていない労使協定というのをどのくらい法律上つくる義務があるのか。全部挙げろとは言いませんが、どんな状況なのか。そして、その労働協約にまで至っていない労使協定についてはこの承継はどうなるのか。あわせ答弁願います。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 労働法、とりわけ労働基準法におきまして労使協定というものが法律上出てまいります。これは、例えば、いわゆる時間外労働の協定、三六協定、あるいは変形労働時間制に関する協定、それから最近では、裁量労働制におきますみなし労働時間に関する協定、こういうものがございます。これは、性格的に申しますと、そうした協定を労使で結ぶことによって、その協定の範囲内でする行為は基準法上の罰則がかからない、免罰の効果をもたらす協定でございます。  それから、もう一つ大きなものとして、雇用保険法上各種助成金を支給しておりますが、助成金を支給するという行政処分をする際の前置措置手続、前置手続として労使協定を結んでいただく。例えば雇用調整助成金を出す場合には、当該事業場で出向に関する労使協定があること、あるいは教育訓練に関する協定があることということであります。  この基準法上あるいは雇用保険法上に出てまいります労使協定は、物によっては、それを労働協約という形で労使協定の要件を満たしているものもございますが、先生御指摘のように、労働協約ではなくて、基準法、雇用保険法上の純然たる労使協定としてできているものもございます。  今回、労働契約承継法におきまして労働協約について承継に関する規定を設けましたのは、今申し上げました労働協約ではない労使協定につきましては、私法上、民事上の契約ではなくて、まさに免罰効をもたらすかどうかとか、行政処分の前置手続であるかという点での別途の観点からこの協定を理解すべきでございまして、そうした意味で、この協定の中身が労働協約としてできているものは当然、商法上、今回の企業分割制度上の権利義務として明確でございますが、それ以外のものにつきましては、一概に権利義務であるかどうかという観点ではなくて、まさに基準法の罰則が科せられないか、各種助成金が支給し得るかという観点からのものとして私どもは理解をしております。  それで、そうしたものを会社分割に当たって設立会社に適用するかという問題がございますが、基準法上の協定は、労使が結ぶというだけではなくて、例えば、当該事業場の労働者の過半数を組織する労働組合と使用者が結ぶ協定、こういう組織要件がかかっております。分割会社の労働者の一部が設立会社に移った場合に、その組織要件が設立会社において満たされるかどうかという問題が別途かかってまいりますので、そこを考える必要がまたございます。  そういうことで、承継されるかどうかという点だけでは処理できない協定ということで、私どもは、労使間の任意の話し合いによってその協定の取り扱いを決めていただきたい、こう思っておるところでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 時間が来たから終わりますが、重大な問題が出てきたと思うのですね。労働基準法三六協定、これは長時間過密労働を抑えるかどうかの決定的に大事な協定ですよ、そういう問題。それから、裁量労働、変形労働、労働者の身分にとって非常に決定的な重要な部分を支配している労使間の協定が、労働協約に高められていない場合は承継されるかどうか全くわからない、承継する保障が全然この労働契約承継法から脱落しているということを今労働省はお認めになりました。それは別途やるべきだというようなことをおっしゃいました。しかし、それが本当に承継されなければ、まさに労働者の地位にとって重大な変更が勝手にやられるということが出てくるんじゃないかというふうに思います。  この問題は非常に重要なので、次回の質疑で詰めたいと思います。もう時間だというので私は終わりますが、労働省が何か言いたそうですが、言うと、委員長、時間じゃないですか。いいですか。

武部勤自由民主党

○武部委員長 簡潔にお願いします。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 誤解のないように申し上げておきますが、例えば、労働者の労働時間管理等につきましては、就業規則だとか労働時間管理規則において、まさに権利義務として明確に決められるものでございます。これが、私が申しました協定という形で、協定そのものが労働者の労働時間管理を権利義務として確定しているかという問題がありますことを、十分御理解といいますか、念のために申し上げたいと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 そうすると、やはり、承継されるべき権利義務に該当するかしないか、どういう協定が権利義務の関係を律した協定なのか、どういう協定は権利義務の対象外なのか、そのふるい分けが決定的に労働者にとって重要。しかも、それは労働時間であり、変形労働であり、みなし労働である。非常に大事な部分が空白域に置かれているということだけきょうは指摘をして、終わりにしたいと思います。

武部勤自由民主党

○武部委員長 保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、大事な法案審議なので、なるべく簡潔に答弁を願いたいのですが、一件、本法案に先立って、警察庁の林刑事局長に来ていただいていますので。  といいますのは、五月七日の読売新聞を見て、犯歴漏えいの大井署元巡査部長が数百万円の収賄の疑いで、警視庁が強制捜査を用意しているという記事なんですが、これを見て、私は、法務委員会で昨年二度にわたってこの問題をたしか指摘したなと振り返ってみたら、やはり指摘をしていました。  この件について、林局長は、通信傍受法との関連で、昨年の国会の中で、絶対この法は守るんだ、間違ってもこういうプライバシーを他に漏らしたり、漏らすどころか売ったりなんということはないということをおっしゃり、そしてまた、こういうことが出てくることで針のむしろだというようなことまでおっしゃいました。万が一重大な違反があった場合は厳正に対処したいということを言われました。その結果、いろいろ明らかになった事実があろうかと思います。  具体的に伺いますが、数百万円というのはおおよそ幾らなんでしょうか。簡潔にお願いします。

林則清警察庁刑事局長

○林政府参考人 今御指摘の事案につきましては、先生御指摘のころからずっと捜査を徹底して続けようということで続けておりまして、今令状が出たという報告を受けましたので、おっつけ逮捕に至るだろうというふうに思います。  これにつきましては、逮捕事実として、平成九年から十一年にかけてでありますけれども、前後十数回にわたり約二百万円というのが逮捕事実でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これは警察内部に厳重に管理されていなければならない犯歴データが二十件、NTTの顧客データが二十件、計四十件というふうにあるのですね。これは、データとして漏えいをされてしまった被害者は四十人と考えていいのか。それとも、犯歴、NTT、つまり二十人が両方出たということなのか。そのあたりはいかがでしょうか。何人ぐらいの被害者がいるのか。

林則清警察庁刑事局長

○林政府参考人 漏えいした犯歴と携帯電話の契約内容等の情報なんですけれども、前からそうでありますけれども、これが具体的にどれくらい出たかというのがなかなか特定がいかないということで捜査が非常に長引いておりまして、報道にはそうなっておりますけれども、捜査の具体的な詳細についてはまだ把握しておりません。具体的に何件というのがなかなか把握できないという状況でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 この点、大変重大なので、これは不祥事と言わずにやはり犯罪と呼んだ方がいいと思います。この犯罪が明らかになりながら、諭旨免職、つまり金品等の見返りはなかったと警察庁は答弁されてきたと思うのですね。これはこの段階で、事実として、残念ながら誤りであったというふうに確認してよろしいですか。

林則清警察庁刑事局長

○林政府参考人 私が昨年十一月の当委員会で先生にお答えいたしましたのは、一定の処分、判断をしたんだけれども、十分な証拠を得られた上でのことでないので、もう一度十分な証拠を得る必要があるので、さらに徹底した調査を進めたいと、当時、人事当局の担当者が答えておりましたのを、かわって私が答えて、捜査ということになったわけでございます。  そういうことで、それ以来捜査を進めてきた結果、今日のこのような状態に至りましたので、結果として言えば、当時の調査が十分ではなかったと言わざるを得ないというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 最後に、こういう件についても、これまでは、明らかに誤っていても、誤っていなかったということをいろいろ言われてきた。しかし、今の局長答弁ははっきりと認められたので、これは一歩前進だと思います。  そこで、大事な問題があるのですが、情報漏えい先というのは、興信所、調査会社ですね。犯歴データ、そしてNTT携帯電話の顧客データですか、これが漏えいされた被害者の方がいます。この事実が最終的に確認されたら、これは普通の犯罪と違うわけですから、捜査機関の中でしか知り得ない情報がなぜか出てしまった、この被害者の方に対して誠意を持って向き合い、やはり謝罪をされる必要がある、こう思います。いかがでしょうか。そういう決意も含めて、こういう問題はきちっとけじめをつけていただきたいと思います。

林則清警察庁刑事局長

○林政府参考人 今御指摘の個人データの当事者への対応につきましては、当事者が本当にきちっと特定できるかどうか、それから、データの性格、漏えいの態様等、個別の事案で十分検討して判断すべきものと考えております。  例えて言えば、前にも御指摘ありました奈良県警の件につきましては、捜査過程で当事者の方に、今御指摘ありましたように、大変御迷惑をかけて申しわけない旨告げるということをしております。  そういった意味で、今回の件につきましても、事案をよく見きわめて、さっき申し上げましたような点を見きわめた上、警察としてとるべき措置があれば十分とるというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ということは、再度答弁を求める必要はないと思いますけれども、今回も、特定された場合には誠意を示して謝罪も行う、こう解してよろしいですか。——では、うなずいておられるので、これで終わります。  それでは、本法案に入っていきたいと思いますが、法務省の民事局長にまたお願いをいたします。  午前中の参考人の質疑でこれも話題になったのですけれども、営業単位の分割であるということが雇用環境に激変を生まないんだということで私どもは説明を受けてきましたし、また、なるほどなとうなずきかける部分もあるわけなんです。  ただ、営業を丸ごと移転するので大丈夫、この営業の概念が、これはたびたび民事局長も、割かし営業というのは鮮明にはっきり確定できる概念だからということをおっしゃっているのですが、この営業の概念について、では一体営業というのは何なのか、営業とは何ですかと言われると、どういうことになりましょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 商法中の営業の意義につきましては、最高裁の大法廷の判決がございます。  そこで言っておりますことは、営業とは、営業用財産である物及び権利だけでなく、これに得意先関係、仕入れ先関係、販売の機会、営業上の秘訣、経営の組織等の経済的価値のある事実関係を加えて、一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産ということを言っています。  要するに、物というような個別具体的な権利だけではなくて、その物を使って事業をするという有機的な一体としての組織に含んでいるものすべてを言うんだ、事実関係も含むんだ、こういうふうに言っているわけでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ということだそうなんですけれども、そうなると、例えば営業単位での営業を地域ごとというふうに切り取る、かなり大手の製造業の会社などで、例えば北海道ブロックとか九州ブロックとか関東とか、そこで営業の単位というふうに切ることも可能でしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 先ほど申し上げましたような営業の定義でございます。ですから、一定の地域についての業務が先ほど申し上げましたような有機的一体として機能し得るものであれば、そういうときは営業になる、この法案で言う営業だというふうに評価できるということになるわけでございます。  なお、実は、試案を公表いたしましたときは、分割による承継の対象は会社に属する権利義務としていたわけですが、そうなりますと財産が個別に切り売りされてしまうという心配があるという御指摘もありまして、やはり営業というのがいいだろうということで、最終的にこうなったわけでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 営業ということにしていった経過も以前に伺ったわけですけれども、今、地域のことを伺いました。午前中も例を出したのですが、大手パン製造業者というのが仮にあるとします。その場合、例えば営業単位ということになると、直接生産部門と販売流通部門とか、割とだれの目から見てもここで切るのは一つの営業単位だなというふうに思える大枠の分け方と、さらに、直接生産部門の中でも、例えば、パン製造会社が、パン工場も持っているし、お菓子工場もあります、ケーキ工場もあるし、ジュースなど飲料の工場もあります、ペットフードもつくっています、そういうふうにかなり多角的にやっている。それぞれの工場ごとに営業単位というふうにこれも解釈できるのかどうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 これは具体的事実関係によるものですから一概に申せませんが、要するに一つの営業として機能し得るか、もっと簡単に申しますと、一つの独立した会社になった場合にそれで機能できるか、こういう問題でございます。  ですから、ただいまの例で、一つの工場が、ある一つのケーキならケーキだけをつくって、そこが独立完結的に他の機能も持ち合わせていて機能することができるということであれば、それは営業として評価することはできますが、例えば一つの工場でいろいろなものをつくっているというような場合、一つの種類だけを取り上げたら、そういう場合には営業としては形成することができないだろうというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これはなかなかボーダーがくっきりと引きにくいというケースもあろうかと思いますよね。物事は、パンとジュースというふうにはっきり分かれるような形態の会社ばかりではありませんから。  こうすると、例えば営業の単位の解釈について、これが営業単位だという解釈については取締役会が決定するというか提示をすることになろうかと思いますけれども、ただ、労働者や労働組合が、取締役会が提示した営業単位は違うのではないか、営業単位というけれどもこれはちょっと切り過ぎですよという異論を申し立てる場合があろうかと思うのですが、このことについてはどうお考えでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 ある会社が複数の営業を持っている場合に、どの営業を分割するかというのは、経営者であり、株主総会が判断することになりますが、ある事業部門がここで言っている営業であるかどうかは客観的に決せられる問題でございます。ですから、取締役が勝手にこれだけでも営業だと思っても、それが事実、客観的に判断して営業でなければ、それは分割としてはそういうことはできないんだということになります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 客観的な基準というのが、今一番最初に聞いた質問で、営業は判例等でもう確定した概念だというふうにおっしゃるのだけれども、個々具体的、現実的に考えてみると、例えば先ほど出した例で、ケーキ工場ならケーキ工場でもいいですけれども、このケーキ工場が、それ自体、もちろん企業が経営をしているケーキ会社というのもあるわけですから、それで十分独立可能かなという判断もあるだろうし、ケーキの中でもまた、そのケーキを輸送する部門なり、あるいは販売、流通の部分なり、切り方はかなり多岐に及ぶんじゃないのかなと私どもは予想するのですが、それは何か客観的な基準ということで、だれもがうなずくような基準というのは指し示せるのでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 世の中には極めてさまざまな仕事というか営業があるものですから、基本法たる商法といたしましては、客観的に従来使われている営業という概念を用いて決めざるを得ないということになって、したがって、個別具体的な場面においてその適用が問題になるということは御指摘のとおりだと思います。  しかし、いずれにいたしましても、一番初めの御質問に対してお答え申し上げたような定義に該当するかどうかが最終的な決め手になるわけでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 民事局長にもう一度別の角度から質問しますけれども、取締役会が、営業単位で、例えば五つなら五つに分割をしますよという案を労働者側に提示をしたときに、労働者及び労働組合から、これは営業単位という概念を逸脱しているのではないかという異議が上がった場合、これは立場の違いによって、つまり、会社分割を最後まで進めることで経営効率化を図ろうという立場と、それから雇用の安定を確保しようという立場との相反する利害の衝突があるわけですね。このあたりは、営業はここですよという決定権は取締役会にあるというふうには断言できない、やはりこれは客観的、公平に見て、営業はこのあたりですねということを決していく、確認的な話になるかもしれませんが、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 ですから、一番シビアな場面で、分割無効の訴えが起こされたという場合には、分割の対象と現実にされたものが営業を構成するに足るものであったかどうかということは裁判所が判断するわけですから、取締役会で決めたことは、それに拘束されるわけではないわけであります。したがって、あくまでも客観的に決められるということでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それで、大変恐縮なんですが、予告していないんですけれども、提案者、一問だけよろしいでしょうか。  いわゆる労働者との協議というところなんですが、この協議は、先ほど参考人質疑でもやりましたけれども、協議が調わないというケースがあろう。協議が調わなくて終わった、国会でも与野党協議が調う場合も調わない場合もありますが、協議が調わない場合に、法文上は会社を分割することができるというふうに先ほどおっしゃったと思いますが、そうすると、この場合、労働者との協議の実効性というのはどのようにお考えになっているんでしょうか。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 確かに、法文上は協議をすることは義務づけられていますけれども、協議が成立しなくても会社分割はできます。  しかし、労働者とのいわゆる協議と、それから、労働者が例えば労働組合に委任した場合、労働組合との誠実協議義務というものが生じますので、むちゃくちゃなことをして、協議しますといいながら何もしなかったとなると、例えば、それだったら、その次に行ったときに、就業拒否をしたときに処分ができなくなったり、あるいは、場合によっては分割無効にまで発展することもあると思います。誠実な協議をしなかった、したふりをして何もしなかったという場合、そういうさまざまな別の法律効果、あるいは損害賠償義務が生ずるとか、そういうことがあり得ると思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、関連してもう一問なんですが、そうすると、法文上は分割はできるんだが、そういうむちゃくちゃをやってしまうと後がないですよというお答えだったと思うんですね。  それでは、例えば労働者との協議という解釈、労働組合がありながら、会社の決める職場単位で労働組合の組織を無視して個別に話をしました、もう説明は終わりました、こういうようないわゆる不当労働行為に相当するような行為はしてはならないという、この趣旨を明文化する必要はやはりあるのではないかと私ども思うんですが、どのようにお考えですか。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 労働組合との協議義務を明文化する必要があるんじゃないかということですね。  この問題はまさにこの修正協議の中の最初からの焦点で、最終的には五党で合意した修正案でありますけれども、最初の提案の場面では、私は民主党でございますけれども、民主党は、個々の労働者というよりも労働組合との事前協議をすべきであるという主張をしました。しかしながら、結局、最終的に労働者というふうになったのは、商法ののりを越えてはならないというか、商法はやはり組織法であり、個人との関係を規律するものである、労働組合の場合ということとするには労働組合法の分野ですべきであるということになりました。  しかしながら、労働者と協議をするというふうに決めても、その労働者がだれに委任するかは自由である。自分はたった一人だと力は弱い、無理を言われる、防ぎ切れない。ならば、労働組合に自分の労働条件なんかを交渉してくれという委任をすれば、その労働組合が前面に立って会社との協議をする。そうすると、対等な労使関係が生まれるわけですから、そこでまた会社がもしむちゃくちゃなことをすると、不当労働行為の問題が起こったり、団交拒否の問題が起こったり、形式的にやって、やらなければ団交拒否の問題も起こってくる、そっちへ発展していくということになると思いますので、そこで労働者との協議をするということで、通常の場面は労働組合と協議をするのと同じような現象になるんではないかというふうに考えている次第です。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 法務省に今この分野についての見解をもう一度求めたいのですけれども、つまり、労働者との協議で、やはり労働組合というのは商法になじまないというお考えは十分わかったわけなんですが、労働者が協議権を所属する労働組合に委任をしているのに、会社が労働組合と誠実な協議を行わないというようなことも考えられるし、現に、分割ではないさまざまな労使紛争の間であるわけですけれども、これについてどのような見解をお持ちなのか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 これは修正案の解釈の問題ですから、修正案の提案者のお言葉が起草者としてのお考えだと思いますが、私も客観的に条文等から見ますと、労働者が労働組合に協議の代理権を与えることができることは民法、商法上は当然でございますし、またそういうことがあれば、会社が誠実に協議すべきことだというのも当然の事理ではないかというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これはきのうもちょっと遅くまで法務省とやりとりをしていまして、どうも提案議員がいらっしゃるのに法務省が答弁するのは越権行為じゃないかというふうに遠慮されているので、政府案の段階からこの問題は大問題になっていたから修正の話も出てきたわけで、私どももずっとここに関心を持ってきたわけなんで、これはもう政府案を立案した立場で堂々と答えていただきたいのです。  では、民事局長にもう一回お聞きをしますけれども、会社分割は経営事項であり、同時にやはり労働者の労働条件に重大影響を及ぼす事項であることが明らかなので、労働組合からの団交申し入れは応諾すべきである。しかし、原案では、会社分割の是非や労働者の人員配置のあり方、転籍条件など、なかなか団体交渉の機会、権利を担保するというふうにはなっていない。仮に、事業主が団交に応じたとしても、株主総会直前に団交が行われれば、労使協議によって分割のあり方を修正するなどの団交の実効が担保、確保できないのではないか。そうすると、この分割法制によって、労働組合の団交権の水準をこの体系が低下させることになってしまうんじゃないかという懸念は当初から私も申し上げていたのですが、御見解はいかがでしょうか。  では、両者に、法務省と労働省に伺いたいと思います。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 これは労働組合法の解釈の問題でございまして、実は私どもの所管でございません。ですから、一番正しいお答えができるのは、今労政局長がおられますから、労政局長だと思いますが、私どもが承知している限りでお答え申し上げますと、労働組合が団体交渉を行うためには、相手方は使用者であることが必要であるというのが一般原則ですから、一般的には使用者とは労働契約上の雇用主をいうために、基本的には分割前には分割会社、分割後は組合員が労働契約を締結している相手方、そういうことになろうと思います。  ただ、前回、たしか他の委員会での御答弁等も伺っておりましたらば、現実の支配力ということが問題になることがあるんだということで労働省から御答弁があったように記憶しておりますので、労働省にお聞きになるならば、そちらからお聞きいただきたいと思います。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 お答えいたします。  商法の改正案の中の労働者との協議、この条文を受けて、組合が労働者の委任を受けて使用者と協議をする、その協議が労働組合法上の団体交渉とイコールかどうかという問題がございます。なる場合と、ならない場合がございます。  労働組合法上の団体交渉は、御存じのように、労働者の労働条件その他ということで、いわば経営管理事項は原則的には入らないということになっております。したがいまして、労働者の委任を受けて組合が行う協議が、実態判断において労組法上の団体交渉となるという場合であれば、それは協議と団交との優劣といいますか、強弱の話は起きないと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 そうすると、どうでしょうか。国際的な競争も企業を激しく直撃している、そして消費の低迷もある。今、日本企業は苦しいわけですよね。そういう中で分割をして何とか生き残りを図りたい。一方で、勤続十年、十五年、二十年とそこに勤めてきた労働者の皆さん、会社というのは、一つの会社に入ったら一応終身雇用でいくのかと思ってきた、しかし会社が分割されて割れていくんですよというときに、営業丸ごとなので心配ない、こういう国会のやりとりがあるんだけれども、私たちが回されていくのは、どうもこれは清算を将来見越しているんじゃないのかなというような不安が出てきたり、そしてまた実際に条件も悪くなるんじゃないかというような話が出てきたりして、これは経営の判断であるけれども、まさに経営の判断によってその労働条件に影響が出てくるという場合には団交応諾義務はあるんですか。労働省にお願いします。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 そこのところは個々具体的に判断しないと一概に申し上げることはできないということになります。  団体交渉の応諾義務は、いわば労働者の労働条件、雇用、身分等に直接かかわる事項が対象でございまして、そこに今おっしゃる企業組織変更がどういう形でかかわるか、このかかわり方の問題の程度にもかなりよりまして、いわば労働条件の問題から経営管理事項に外延的にどこまで広がっていけるのか、そこの範囲の話になりますので、一概にこの場で私が一般論を申し上げることは難しいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 労働省はぜひ労働者の声を聞いていただきたいと思うのです。例えば、千人規模の会社の中で、一部の部門で一年、二年にわたって労使紛争が続いている、その部分も分割する、そしてほかの部分も分割する、あるいは紛争がある部分だけ分割するでもいいんですけれども、労使紛争が既にあって、それをめぐる団交などもある場合に、分割は決定ですよ、これは経営の専権事項ですよということは許されるのですか。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 現に争いが起きていて、それが例えば労働委員会等に申し立てという形で係属しているというケースであれば、企業組織再編の途中に一方的にやったということになりますと、それはまさに団交問題そのものとして、労働組合としての交渉の保護が図られるということでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これは明快な答弁だったと思います。つまり、労使紛争が起きている、そして紛争が起きている部門だけはさみで切り取って分割ですよといった場合には、団交応諾義務は生じるというのが労働省の見解だったと思います。  では法務省の民事局長、今労働省のそういう見解があったわけですけれども、つまり、そういう、紛争が起きている部門だけはさみで切り取りますよみたいな分割は、当然この商法改正で認められないですね。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 会社分割制度が不当な目的で利用されていることが明らかだ、そういう場合には、分割無効の訴えの原因となり得るものと考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 労働省に伺いますけれども、また別の例もあるのです。人員を移動させる、そして例えば東京、神奈川、千葉、この一都二県にまたがる企業であれば、神奈川の方に労働組合の活動家あるいは会社に強く不満を持っている人たちを全部集めてしまってそこを分割するみたいなことも含めて、いろいろ労使紛争が起きている場合に分割そのものを認めないという法制をつくるべきではないかと私は思うのですが、それについてはいかがですか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 商法は、一般法規、基本法規でございますから、あらゆる問題が起こり得るわけですが、すべての問題についてのルールを示すということはできないわけです。したがいまして、問題がある場合には分割無効の訴えという制度を設けている、それによって対処をすべきものとしているわけです。  そのほかに、いろいろな問題が起きたときは、債権者保護の手続で債権者の意見が聞かれますし、また株主総会等では株主の意見が聞かれるということで、あるいは事前事後のさまざまな関係書類の開示といったことで、全体的に不当な目的による会社分割は行われないようにしているところでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、労働省に伺いますが、分割以前に労使紛争が起きていた場合の例を先ほど挙げましたけれども、まさに企業分割をもって労使紛争が勃発してしまう場合もあります。こういう場合には、労使紛争が企業分割の方針そのものをめぐって始まっている、そして団交等を求めても、これは経営の専権事項だということで突っぱねる、こういうことが起きてくる危険性がやはりあるわけですね。  それから、労働者を保護する、雇用を安定させるという観点で、そもそも、こういう不当労働行為をはらむような、不当労働行為を介しながら進むような分割については明確に禁止しておくべきではないかと思うのですが、労働省の立場ではいかがでしょう。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 先ほど民事局長がお答えする際の、いわば組合つぶしを目的に人を移してしまうなようなあのケースは、組合つぶしを目的にしたそうした行動は不当労働行為になる可能性が高いわけですね。そうした場合には、まさに不当労働行為として使用者はしかるべき労働委員会の命令を受けるということになりますので、それをもって企業分割を労働者保護の観点から差しとめる、認めないとかいうところに直結するというのは、不当労働行為の観点からはなかなか申し上げにくいのかなという気がいたします。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ちょっと何か最後はよくわからないんですが、つまり、組合つぶしを目的とした企業分割でも、一応これは商法上の問題なのでどうぞやってください、あとは労働委員会がありますからそちらの制度で担保できます、これが労働省の見解ですか。

澤田陽太郎労働省労政局長

○澤田政府参考人 どうぞやってくださいということでは決してありません。不当労働行為の問題は不当労働行為の問題として適正に処理がされるということが私が申し上げた点でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、民事局長に伺います。  これは不良債権処理のために、都銀懇話会の話を前回私も出しましたけれども、要するに、会社を清算していくため、企業の一定部分をいわば整理してなくしていくための清算型分割、そういうふうに呼ぶとすれば清算型分割というものを特に禁止はしていないわけですね。ここの点について、やはり本来そういうものがないんだとすれば、はっきりそれはできないというふうにやっておくべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、今回の改正法案におきましては、分割する会社あるいは設立する会社、いずれにつきましても債務の履行の見込みがあることを要件としているわけでございまして、分割した途端に倒産するような事態が予想される場合には分割することはできないこととされているわけでございまして、商法上はその限度が限界でございます。  商法上は、あえて申し上げますれば、どんなに隆盛に繁栄している会社であっても、これは株主が解散の決議をすれば清算になるわけでして、それは一種の職業選択の自由みたいなもので、要するに、ある一定の事業の継続を強制することはできないということが現在の法制になっておるものですから、そこは問題は変えられないということでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 簡易分割について伺いたいんですが、この簡易分割は恐らく会社分割同様あらゆる会社で可能というふうに思いますけれども、簡易分割を繰り返していくことで、これは考えにくいというふうにおっしゃるかもしれないんですが、債権者から何ら規制を受けずに会社分割と同等の効果を生み出すということが可能なんですね、禁止はされていないですね。ただ、そういう会社は許されないだろうというようなお話かとも思うんですが、やはりここは規制をしておくべきなんじゃないかというふうに思うんです。民事局長、いかがでしょう。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 この改正案では、簡易分割におきましても、これは会社の分割であることには変わりません。通常の分割と違うところは、株主総会の特別決議が要らないというところだけでして、他の規制はすべて簡易分割についても同様に適用されるわけでございます。  したがいまして、まず簡易分割においても債権者保護手続を経る必要はありますから、何回簡易分割をしても毎回債権者保護手続をしなければならないということになっております。しかも、この会社分割における債権者保護手続は合併の場合よりも慎重な手続になっておりまして、個別の催告が必要だということになっておりますから、そういうことが必要になってくるわけでございます。  それから、簡易分割でありましても、分割の対象は営業に限られているわけでございまして、分割できる営業はどの程度あるかということにも係るわけで、ですから、先ほど参考人の上村教授も言っておられましたけれども、実際上はそれは想定しにくい事態であるし、そのようなことをしても経営者等に余り利益がないであろうというふうに考えているところでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ちょっと済みません、一問だけ。  では確認ですが、要するに、簡易分割を何回もしていくような会社はあり得ないんだと。でも、あり得ないんだとしたら、そこはきちっと規制をしておいてもよかったんじゃないか。簡易分割であっても分割そのものと同じ厳密な手続があるとおっしゃいましたから、そうであれば、そこを規制しておくことはむだではないと思うんですが、それはいかがですか。これで終わりますから。

細川清法務省民事局長

○細川政府参考人 初めから株主総会の特別決議を潜脱する目的で簡易分割が繰り返されたということが明らかであれば、そういう場合にはその簡易分割の無効の原因等にもなり得るものと考えますが、ただ、じゃ一体、何年以内に何回やったのが乱用なのかというのは、一般論としてつくるのは非常に難しい、規範として提示するのは難しい。だから、やはり会社分割の無効という一般的な制度で対応するのが適当であるというふうに考えたわけでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会

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