法務委員会 第15号
- 発言数
- 95 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 2000/04/25
会議録
○武部委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。 この際、お諮りいたします。 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長細川清君、労働省職業安定局長渡邊信君、労働省労政局長澤田陽太郎君、労働省職業能力開発局長日比徹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 —————————————
○武部委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。
○与謝野委員 まず、政務次官に伺いたいのでありますが、今回の商法改正は、日本の経済にとって大変重要だと言われております。政務次官は、この商法改正をどのような趣旨のものだと理解され、説明されているのか、その点からまずお伺いしたいと思います。
○山本(有)政務次官 商法改正法案は、会社がその営業の全部または一部を他の会社に承継させる会社分割の制度を創設することを内容とするものでございます。 企業間の国際的な競争が激化した現代の社会経済情勢のもとでは、金融機関を初めとする企業がその経営の効率性や企業統治の実効性等を高めるため、企業組織の再編成を行うことによってその競争力を強化する必要がございます。政府は、この要請にこたえるため、企業の組織の再編成のための法制度の整備を行うことを目的として、会社の組織に関する基本法でございます商法の見直しを行ってきておりまして、平成九年には合併法制の合理化を、平成十一年には持ち株会社の創設のための株式交換・移転制度の導入をそれぞれ内容とする商法改正を行った次第でございます。 今回の商法改正案は、会社がその組織の再編成を行うことを容易にするため、その営業の全部または一部を他の会社に承継させる会社分割の制度を創設するものでございまして、上記のような企業の組織再編のための法整備の一環としてとらえているところでございます。
○与謝野委員 そこで、民事局長に伺いたいのですが、この商法改正を閣議決定して国会に提出したその経緯について御説明をいただきたいと思います。
○細川政府参考人 今回の改正法案で目指しております会社分割法制の創設につきましては、平成十一年三月三十日に閣議決定された規制緩和推進三カ年計画におきましては、平成十二年度を目途として結論を得ることとされておりましたが、総理の主宰する産業競争力会議等において、企業の競争力の回復のために組織再編のための法整備を急ぐべきであるとの要望が経済界を中心として大変強くなってきましたことから、法務大臣の諮問機関であります法制審議会商法部会では、平成十一年四月から会社分割法制の創設のための改正要綱案の審議を開始し、昨年の七月には中間試案を取りまとめて関係各界に意見照会を行った上で、さらにその意見照会の結果を踏まえて審議を行い、本年一月に要綱案の取りまとめに至ったものでございます。 今回の商法改正法案は、この商法部会の作成した要綱案をもとに法制審議会の総会が答申した法律案要綱に基づくものでございます。
○与謝野委員 そこで、この商法改正はこれからの日本の経済にとって大変大事だ、早く成立させろという声が方々から聞こえてくるわけでございますが、民事局長は、成立を急ぐ事情をどういうふうに認識されているのか、御説明をいただきたい。
○細川政府参考人 現在の国際的な企業間の競争が激化した社会情勢のもとにおきましては、金融機関を初めとする企業がその組織を再編成し、経営の効率性や企業統治の実効性を高めることによって競争力を強化する必要があるわけでございます。この企業の組織の再編成を容易にするための会社分割の制度は、こういった社会経済的な要請にこたえるために不可欠な制度でございまして、その成立が急がれるものでございます。 とりわけ、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等の先進諸国は、いずれも会社分割法制を既に有しており、これを利用した企業の再編成も行われておりますので、我が国においても、早急に会社分割制度を創設し、諸外国におくれをとらないようにする必要があるわけでございます。 さらに、金融界等におきましては、現実にこの商法改正法の早期の成立及び施行を前提とした上でその企業再編のスケジュールを立てている企業が存在することは新聞等で広く知られているところでございます。商法の改正の成立が万が一にもおくれることになった場合には、我が国の金融再編成が大幅におくれ、ひいては我が国の経済再生に対しても悪影響を及ぼしかねない、このように考えておるところでございます。
○与謝野委員 人によっては、現在の商法で会社分割ができるんではないのか、こういう意見を言われる方がいるんですが、その辺は民事局長は、現行商法と会社分割の関係をどういうふうにとらえておられるのか。
○細川政府参考人 いわゆる分社化、この商法改正案では物的分割に当たるわけですが、これは従来の法律ですと、営業を承継する他の会社が分割に際して発行する株式を分割した会社自体に割り当てる形態の分割と同様の効果は、現行商法におきましても、営業の現物出資という方法によって行うことができるわけでございます。しかし、営業を承継する他の会社が分割に際して発行する株式を分割をした会社の株主に割り当てるいわゆる人的分割は、現行商法上の制度では行うことができません。 繰り返して申しますと、要するに物的分割は現行商法上でも営業の現物出資等で可能ではありますが、人的分割はできないということでございます。
○与謝野委員 重複するんですが、それでは現物出資等による分社にはどのような問題があると認識をされているのか。
○細川政府参考人 営業を承継する他の会社が分割に際して発行する株式を分割した会社自体に割り当てる形態の会社分割は、先ほど申し上げましたように、現行商法におきましても、営業の現物出資等によって行うことができるわけでございます。 しかしながら、この方法による場合には、種々の隘路がございます。まず第一に、営業の現物出資の履行後、会社設立の手続が完了するまでの間、営業を停止しなければならないことになるわけでございます。第二点として、裁判所が選任する検査役の調査が完了する時期が場合によって異なるため、会社の設立等の時期の確実な予測が困難であるということがございます。第三点として、免責的な債務の引き受けについては債権者の個別の承諾を得なければならないことになりますが、多数の債権者がいる企業におきましてはこれが非常に困難であるというような問題がございます。 本改正案による会社分割においては、検査役の調査が要求されていないため、先ほどの第一点、第二点の問題がなく、また、分割の効果として、債務を含めた権利義務が包括的に承継されるため、免責的債務引き受けであっても債権者の個別の承諾が不要であるということで、第三番目の問題もないということになるわけでございます。
○与謝野委員 そこで、商法改正法案が認める会社分割、いろいろな形になると思うわけでございますが、その類型について御説明をいただきたい。
○細川政府参考人 御審議いただいております商法改正法案におきましては、会社分割の類型として、これは講学上の用語となりますが、新設分割と吸収分割、人的分割と物的分割とをそれぞれ認めているわけでございます。 まず、新設分割と吸収分割とは、分割をする会社から営業を承継する他の会社が、分割に際して新たに設立された会社であるのか、既に存在する他の会社であるのか、こういった観点からの分類でございます。新たに営業を承継する会社を設立するのが新設分割、既存の会社に承継させるのが吸収分割でございます。 それから、人的分割と物的分割とは、分割によって設立する会社、これは新設分割の場合でございますが、または分割によって営業を承継する会社、これは吸収分割の場合でございますが、こういった会社が分割に際して発行する株式の割り当てを受ける者がだれであるのかという観点からの分類でございます。分割をする会社自体が株式の割り当てを受ける類型が物的分割、分割する会社の株主が割り当てを受ける類型を人的分割、こう言っているわけでございます。
○与謝野委員 今、類型が幾つかあるということでございますが、どのような場合に利用されるのかという点は民事局長はどういうふうに考えておられますか。
○細川政府参考人 新設分割は、複数の営業部門を有する会社が、各営業部門を独立した会社とすることによって経営の効率性や企業統治の実効性を向上させるためなどに用いられると考えております。それから、吸収分割は、持ち株会社の下にある複数の子会社の重複する営業部分を各子会社ごとに集中させることによって組織の再編成を実現するためなどに利用されるものと考えられます。 物的分割は、これまで営業の現物出資によって行われていたいわゆる分社の手続を効率的に行うために用いられると思われますし、また、人的分割は、持ち株会社のもとにある子会社を営業部門別に再編成したり、複数の事業部門を独立した会社にするためや、中小企業の株主間の紛争を解決するためなどに利用されることが見込まれると考えております。
○与謝野委員 会社分割は企業の組織の再編成にどのような形で利用されるのか。また、日本の経済にとりまして大変重要な法制でございますが、民事局長は、こういう新しい法制が経済社会の中でどのような形で利用されていくのか、どういうふうに予想されているのかということをお伺いしたい。
○細川政府参考人 御提案しております商法改正における会社分割は、単なる事業部門の分社化に用いられるだけのものではありません。先ほど申し上げましたように、持ち株会社の下にある子会社を事業別に再編成するなど、複数の会社が企業経営の効率性、企業統治の実効性を高めるためにグループ化による組織の再編成を行う場合に利用され得るものでございます。 具体的に、例えば、最近新聞をにぎわせておりますような例として、複数の既存の銀行がグループ化することを想定しまして、その手順として考えてみますとどういうことになるかということを御説明いたしたいと思います。 設例としては、A銀行、B銀行、C銀行という、既存の三つの銀行がそれぞれ別個の独立の銀行として存在して、三つの銀行いずれもが法人部門、個人部門、投資部門を有している、このように考えていただきたいと思います。 組織の再編成の第一段階としては、これらの銀行が共同して株式移転を行うことによりまして、A銀行、B銀行、C銀行の共通の完全親会社が設立されます。先ほどの三つの銀行は、それぞれその共通の持ち株会社の一〇〇%の子会社ということになるわけでございます。ここまでは現行の商法でできるわけでございますが、問題は、このようにいたしましても各銀行の営業部門は重複したままになっているということになります。 二番目の段階として、例えばA銀行が法人部門の銀行に特化する、それからB銀行が個人部門の銀行に特化する、C銀行が投資銀行に特化する、こういうことをするためには、これらの銀行が共同して人的分割型の吸収分割を行うことになります。B及びC銀行の法人部門をA銀行に、それからA及びC銀行の個人部門をB銀行に、A及びB銀行の投資部門をC銀行に承継させる、こういった形での会社分割をいたしますと、それぞれの銀行が発行する株式はすべて株主である持ち株会社、完全親会社に割り当てられることになります。これによって営業部門の重複も解消され、グループ化による組織の再編成が完成するということになるわけでございます。
○与謝野委員 そこで、会社分割法制、会社が合併したり、それがさらに分割されたりというときには、株主がそこにいるわけですが、その株主の権利というのはどのように保護されていくのかという問題があります。これは、今回の商法改正との関連においてどのように考えておられるのか。
○細川政府参考人 会社分割が行われますと、分割をする会社の営業の全部または一部が新設会社または既存の会社に承継されるわけでございますが、さらに、人的分割の場合には、分割会社の株主が分割によって設立する会社の、あるいは承継する会社の株主となるというふうに、株主に対して相当大きな影響があるわけでございます。 そこで、商法改正法案におきましては、まず、分割計画書または分割契約書について、株主総会の特別決議による承認を要することとしております。その上で、分割に反対の株主に対しては、投下資本の回収という経済的救済を与えるため、原則として、自己の有する株式を分割の承認決議がなければ有したであろう公正な価格で買い取るべき旨を請求することができる権利を与えることとしております。これは、いわゆる反対株主の株式買い取り請求権でございます。さらに、事後的な株主の利益の救済方法といたしましては、特定の場合には、株主は分割無効の訴えを提起することができることといたしておるわけでございます。 また、株主がこれらの権利を行使するに際しての判断資料を提供することが大事でございますが、このために、取締役は、分割計画書等を株主総会の会日の二週間前から会社分割の後六カ月を経過する日まで、また、分割に関する事項を記載した書面を分割の日から六カ月を経過する日まで、それぞれ本店に備え置いて株主の閲覧に供すべきものとしているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、また、会社には債権者が存在するわけですが、今回の会社分割法制において会社の債権者の保護というのはどのようになされているのか。
○細川政府参考人 会社分割は、分割の当事会社の資産に変動を生じさせるものでございます。したがって、その責任財産の減少をもたらし得るものであるということでございますが、さらに、分割会社の債務については、債権者の個別の承諾を得ずに、分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社に免責的に承継されることが可能となります。したがいまして、これは会社の債権者を保護する必要があるわけでございます。 そこで、会社分割の内容を事前に開示した上で、債権者に異議を述べる機会を与え、異議を述べた債権者に対しては分割する会社等が弁済あるいは担保の提供等を行うべきものといたしまして、さらに、事後的な救済方法として、分割を承認しなかった債権者には分割無効の訴えを提起することができる地位を与えているわけでございまして、こういった方法で債権者の保護を図っているわけでございます。 なお、合併におきましては、官報及び定款に定めた日刊新聞紙による公告を行ったときは債権者に対する個別の催告が不要とされておりますが、合併と異なり、資産と負債が分割する会社と分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社に分割される会社分割におきましては、債権者に与える影響が大きいと考えられることから、吸収分割における分割によって営業を承継する会社を除いて、会社に判明している債権者に対して個別の催告を省略することができないことといたしているわけでございます。
○与謝野委員 特殊なケースとして、債務超過会社というものが存在しているとして、その会社は分割することができるのかできないのか、その点について御回答願いたいと思います。
○細川政府参考人 改正法案では、分割する会社が、あるいは分割によって設立される会社が債務の履行の見込みがあることを要件としているわけでございます。したがいまして、既に債務超過となっている会社が分割する会社となる場合には、分割の結果、分割する会社の債務超過の状態が一層悪化することになります。したがって、こういう場合には、基本的には、債務の履行の見込みがないとして、分割は許されないということになるわけでございます。 なお、債務超過にまで至っていない場合であっても、当該営業部分の収益状況によっては、債務の履行の見込みがない場合に当たることもあり得るわけでございます。
○与謝野委員 そこで、今回の会社分割法というのは、商法としてはそれなりの一貫性と合理性を持っているわけですけれども、一体、その会社で働いている労働者、働く方々の立場はどうなるのか。そういう意味では、今回の商法改正法案中に労働者保護に関する規定を設けるべきではないかという意見がありますが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
○細川政府参考人 会社分割法制の創設に伴いまして、分割の対象となる営業に従事した労働者の保護を図ることは、これは非常に大切な問題でございます。 ただ、我が国の法体系におきましては、商法と労働法とはその規律の対象を異にいたしまして、商法は会社組織のあり方等についての基本的な事項を定める法律でございますし、労働者の保護については、組織の変更に伴う場合を含め、社会政策的理念に基づく労働関係法規によって手当てがされるべきものだと私どもは考えているわけでございます。 したがいまして、商法改正法案でも、商法の原理に基づく限りにおいては労働者の保護に欠けることのないように配慮しておりますが、一般的に、商法に社会政策的理念に基づく労働者保護規定を置くことは我が国の現行の法体系に整合せず、したがって、商法改正法案とは別に、労働関係法規によって労働者の保護が図られるべきものと考えております。 このような観点から、労働関係法規を所管する労働省において、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案が立案され、今国会に提出されたわけでございます。政府が提出したこの労働者保護法案と商法改正法案とは、一体となって会社分割に伴う労働者の保護を適切に規律するもの、このように考えておる次第でございます。
○与謝野委員 しかし、会社分割に伴って労働者の権利が不当に侵害されないように、商法改正法案上どのような手当てをしているのかという疑問がございますが、その点を明確にお答えいただきたいと思います。
○細川政府参考人 先ほど申し上げましたように、商法中においても、商法の原理原則に沿うものにつきましては、労働者保護という観点からの規定を置いているわけでございます。 まず第一として、会社分割の対象を営業といたしております。対象を営業単位とすることによりまして、会社の財産の個々別々の切り売りによって会社が解体されるということがないようにしておるわけでございます。 それから、分割の対象を営業といたしまして、分割計画書等に分割により承継される労働契約上の使用者の地位を記載することによりまして、営業に従事する労働者に対する契約上の地位が、分割によって営業を承継する会社に営業とともに承継されることとなるわけでございます。 それから、先ほど申し上げましたように、各分割する会社あるいは営業を承継する会社が、分割によって債務の履行の見込みがなくなるような場合には、分割を認めないこととしております。 それから、債権者保護手続を設けることとしておりまして、労働契約から生じた未払い賃金債権、社内預金債権、既に勤務した期間に対応する退職金債権等を有する労働者については、この債権者保護手続により保護を受けることができるわけでございます。そして、この債権者保護手続の対象である債権者として、労働者は分割に対する異議を述べる機会を与えられますし、異議を述べた場合には、弁済、担保の提供等を受けることができることといたしておるわけでございます。 それから、分割に伴う労働契約の承継につきましては、「別に法律で定める。」ということを附則の上で明らかにして、両者の法律関係の一体関係を明らかにしているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、会社分割によって労働契約上の使用者の地位が承継される場合、民法第六百二十五条は適用されるのかという問題と、もう一つは、今、分割計画書という話がありましたが、その中で書かれていることに雇用契約というのは当然のこととして入っていると考えておられるのか、入っていないと考えているのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
○細川政府参考人 まず、後の方の問題からお答え申し上げます。 分割計画書または分割契約書に記載すべき事項として、承継すべき権利義務という規定となっておりますが、雇用関係も当然に権利義務でございますので、これはその中に、労働雇用関係の契約上の地位も入っているということでございます。 それから、労働者の同意を要することを必要とすべきかどうかという点でございますが、この点につきましては、会社分割法制においては、会社の組織の再編成を円滑にするため、営業を単位として権利義務が法律上当然に承継されることとしております。諸外国と同様、分割による権利義務の承継はいわゆる包括承継の性質を有するものと位置づけているわけでございます。そのため、合併や相続の場合と同様に、これらは包括承継でございますが、使用者は労働者の承諾がなければその権利を第三者に譲渡することはできないとする民法第六百二十五条第一項の適用はなく、労働契約は、分割計画書等の記載に従い、労働者の同意なくして承継されることになるわけでございます。 会社分割によって労働契約が一方的に解除されたり契約条件が変更されたりすることはございません。従来どおりそのまま承継されるわけでございます。また、会社分割は営業を単位として行われるため、ほとんどの場合には労働者は分割前と同じ職務につくものと想定されるために、労働者の保護は実質的に図られているというふうに考えているわけでございます。
○与謝野委員 そうすると、分割計画書の中に雇用契約という文字がないのは、それは当然のことだから書いていないのか、あるいは法務省が労働省に遠慮したのか、一体どちらなんですか。
○細川政府参考人 承継すべき権利義務と書けば、当然労働雇用関係に基づく権利義務も入るというのが我々の解釈でございまして、解釈といいますか、当然そうなるわけでございまして、商法は基本的な法律でございます、片仮名の法律でございますので、できるだけ短く書くというような原則がございます。そういう意味で書いていないわけでございまして、他の省庁等に遠慮したということはございません。
○与謝野委員 そこで、会社分割により承継される営業に従事していた労働者に係る労働契約については、法律によってすべて当然に承継されるものとすべきではないかという意見がありますが、その点についてはどのようにお考えですか。
○細川政府参考人 会社分割は、先ほど申し上げましたように、営業を単位として行われるものでございますから、承継される営業に従事する労働者に係る労働契約は、通常の場合には当然承継されるものと考えられますが、当該営業に従事するすべての労働者につき例外なくその労働契約が当然に承継されるものとすると、分割のときの配置状況に形式的に従った画一的で硬直的な処理となりかねず、分割をする会社も労働者本人も承継を望まないような労働契約までが分割により承継されることとなり、企業の組織の円滑な再編成を阻害するおそれがあります。 そのため、政府といたしましては、まず、商法改正法案においては、分割により承継される権利義務の範囲は分割当事会社の意思により決定できるものとした上で、承継されるべき営業に従事する労働者の意思に反してその労働契約が承継されないこととされるおそれがあるということにかんがみまして、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律案におきましては、このような労働者に対しては異議の申し出を認め、異議の申し出があったときは、その労働者に係る労働契約が承継されるものとしたわけでございます。 したがいまして、これによって承継する営業に従事した労働者は、原則としてそれに承継されることとなるわけでございます。
○与謝野委員 そこで、会社分割の対象を営業に限定しているわけですが、限定した理由というのは一体何かということを御説明願いたい。
○細川政府参考人 昨年の七月に公開いたしました商法改正案の中間試案では、この点は営業に限定していなかったわけですが、その後検討の結果、最終的には分割の対象を営業に限定したわけでございます。 その理由でございますが、会社分割は、合併や株式交換、株式移転と並ぶ企業再編成のための組織法上の行為として位置づけられたものであって、これによる権利義務の承継は包括的承継の性質を有するものであります。このような会社分割の特質にかんがみ、かつ、個々の権利義務をその承継の対象とすることは相当ではない、また、現物出資の制度の潜脱にもなりかねない、こういうことを考えまして、営業ということにいたしたわけでございます。 さらには、営業という概念は、商法上既に存在するものでございまして、裁判例等によってその意義も明確にされているものでありますから、会社分割の対象が明確になり、ひいては会社分割に伴う法律関係の安定にも資する、こういったことを考慮して会社分割の対象を営業に限定したわけでございます。 なお、分割の対象を営業とすることによって、分割により営業を解体することなく他の会社に承継させることができますので、そこで働く労働者の雇用や職場を確保するということもできるというふうに考えているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、商法第三百七十四条は、分割計画書の作成、株主総会による承認等について規定をしているわけでございますが、この商法第三百七十四条の趣旨をお伺いしたい。
○細川政府参考人 御提案中の改正案でございます商法第三百七十四条は、分割計画書の作成、株主総会による承認等について規定しているものでございます。 第一項は、新設分割を行うためには、分割計画書を作成し、株主総会の承認を得ることを要することとしたものでございます。分割計画書の作成は、分割によって設立される会社が分割をする会社から承継する権利義務の範囲等を明確にするために必要なものであり、これについて株主総会の承認を要することとしたのは、新設分割によって、分割する会社の営業の全部または一部が分割によって設立される会社に承継され、また、人的分割の場合には、分割する会社の株主が分割によって設立される会社の株主となるなど、株主の地位に大きな影響を及ぼすからでございます。 第二項は、分割計画書の記載事項を定めるものでございます。その主要な記載事項は、分割によって設立される会社の定款や資本金等、株式の割り当てに関する事項、分割交付金、承継される権利義務などでございます。 第三項は、新設分割が株主の地位や権利に重大な影響を与えることから、その承認決議のための株主総会の招集通知に分割計画書の要領を記載させることといたしたものでございます。 第四項は、新設分割が株主の地位に大きな変更を与え得るものであることから、分割計画書の承認決議は、普通決議ではなくて特別決議、すなわち、発行済み株式総数の過半数に当たる株式を有する株主が出席し、その三分の二以上が賛成する、そういう意味での特別決議による必要があることといたしたものでございます。 第五項は、株式の譲渡制限の定めのない会社が分割をする会社となって人的分割をする場合に関して、分割によって設立する会社につき譲渡制限の定めを設けるときは、実質的に株主の地位の譲渡につき制限を設けることになるため、分割計画書の承認決議は、譲渡制限の定めを設けるための定款変更の場合の決議要件、すなわち特別の特別決議によることといたしたものでございます。 その例外がございまして、物的分割では、分割をする会社の個々の株主は譲渡制限を受ける株式の割り当てを受けないので、通常の特別決議で足りることといたしているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、分割により設立される会社または分割により営業を承継する会社の発行する株式または新株を分割する会社またはその株主のいずれにも割り当てることができることとしているわけですが、その理由をお伺いしたい。
○細川政府参考人 分割により設立される会社または分割により営業を承継する会社の発行する株式を分割した会社に割り当てる物的分割は、これまでも分社と称され、現行の商法のもとでは営業の現物出資等の方法により行われてきたものでございますが、この会社分割の制度によって分社化を効率的に行うことができるようにしたわけでございます。 他方、分割により設立する会社または分割により営業を承継する会社の発行する株式を分割する会社の株主に割り当てる人的分割は、現行の商法のもとではできないことでございますので、持ち株会社のもとにある子会社を営業部門別に再編成したり、複数の事業部門を独立した会社にするためや、中小企業の株主間の紛争を解決する場合等に利用できる制度として経済界などから大変要望があり、また、諸外国で認められている制度であるため、これを新しく設けることといたしたわけでございます。
○与謝野委員 そこで、分割計画書及び分割契約書における「承継スル権利義務ニ関スル事項」の具体的な記載方法というのは一体どうなのかという疑問がございますが、それについて御説明をいただきたい。
○細川政府参考人 今回の改正におきましては、分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社に承継される権利義務に関する事項を分割計画書または分割契約書の記載事項としているわけでございます。この規定の趣旨は、分割の当事会社の株主や債権者にとっては、分割をする会社から分割によって営業を承継する会社に承継する権利義務の内容や、自己の債権の帰属先が重要な事柄でありますので、これらを明らかにするためでございます。 したがって、その記載方法としては、必ずしも個々の権利義務を個別的に特定してその帰属先を明らかにする必要はないわけですが、特定の権利義務が分割後にいずれの会社に帰属するのかが明らかになる程度の記載は要求されているということでございます。
○与謝野委員 そこで、ちょっと繰り返しになるんですが、「承継スル権利義務」という言葉を使ったときには、理の当然として雇用契約もその中に入っているというふうに考えておられますか。
○細川政府参考人 雇用契約は権利義務の体系でございます。雇用というのは、民法上の典型契約でございまして、使用者となる人と被用者となる人との間の契約でございますから、お互いに就労請求権あるいは賃金の請求権があるわけでございます。そういう権利義務はまさに権利義務でございますので、そこに分割計画書に記載される「承継スル権利義務」と書けば、その中には当然入り得るというふうに考えているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、商法第三百七十四条ノ三には反対株主の株式買い取り請求権が規定されておりますが、三百七十四条ノ三の趣旨をお伺いしたい。
○細川政府参考人 御指摘の商法第三百七十四条ノ三でございますが、これは、新設分割が株主の地位に大きな影響を及ぼし得るものであることから、重要な財産の営業譲渡の場合と同様に、新設分割に反対した少数株主を保護して、投下資本の回収という経済的救済を与えるために、分割計画書の承認を行う株主総会に先立って反対の意思を会社に対して書面で通知し、かつ当該株主総会において反対した株主は、会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買い取るべきことを請求することができることといたしたものでございます。 なお、吸収分割においても、この三百七十四条ノ三の規定が三百七十四条ノ三十一の第五項において準用されているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、三百七十四条ノ四及び三百七十四条ノ二十においては債権者保護の手続が書いてあるわけでございますが、これをどういう考え方で書かれたのかということを御説明いただきたい。
○細川政府参考人 会社分割におきましては、分割をする会社の資産が、分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社に移転するわけでございます。そして、分割をする会社の責任財産が減少することになりますし、また、分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社についても、承継する権利義務の内容によってはその支払い能力に影響を及ぼすおそれがあるわけでございます。 一方、分割をする会社の債務が、分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社に免責的に承継されることについては、民法の一般原則に従って債権者の個別の承諾を要するとすることは、実際上困難なばかりか、手続が煩雑になって、円滑な会社分割を困難にするおそれがあります。 そこで、先ほど御指摘の二カ条は、会社分割の内容について開示した上で、債権者に異議を述べる機会を与え、異議を述べた債権者に対しては原則として弁済あるいは担保の提供等をするものとすることによって、債権者の保護を図るとともに、債権者の個別の同意がなくても免責的な債務の承継を認めることに合理的な根拠を与え、もって分割手続が円滑に行われることを図ったものでございます。 なお、物的分割の場合には、分割をする会社の財産状況には変動はなく、その責任財産は従前のままでございますので、分割後もなお分割する会社に対して債権の全額を請求し得る債権者に対しては債権者保護手続をとる必要はないことといたしているわけでございます。 また、合併におきましても、官報及び定款に定めた日刊新聞紙による公告を行ったときは個別の催告が不要とされておりますが、資産及び負債の一切が承継される合併と異なり、資産と負債が分割する会社と分割によって設立する会社または分割によって営業を承継する会社に分割される会社分割におきましては、債権者に影響を与えることが大きいことから、知れたる債権者に対する個別の催告を省略することができないことといたしております。 もっとも、吸収分割によって営業を承継する会社については、必ず純資産が増加することから、吸収合併の場合における存続会社の債権者と同様に考えることができますので、商法第四百十二条第一項ただし書きの規定と平仄を合わせて、個別催告を不要としているわけでございます。
○与謝野委員 そこで、労働者も債権者保護手続の対象となるのかという疑問が出てきますが、その点についてはどういうふうにお考えですか。
○細川政府参考人 分割の当事会社と労働契約を締結している労働者のうち、労働契約から生じた未払いの賃金債権や社内預金債権、それから既に勤務した期間に対応する退職金債権等を有する労働者につきましては、商法の第三百七十四条ノ四または三百七十四条ノ二十によって保護を受けるべき債権者に当たりますので、分割に対する異議を述べる機会を与えられているわけでございます。
○与謝野委員 さらに、商法第三百七十四条ノ六及び三百七十四条ノ二十二、すなわち分割をする会社における簡易の分割手続が規定されておりますが、この立法趣旨をお伺いしたい。
○細川政府参考人 御指摘の二カ条は、分割する会社から新設会社または営業を承継する会社に承継される財産が分割をする会社の有する総資産額に比較して著しく小さい場合、法案では分割をする会社の最終の貸借対照表に計上した資産の合計額の二十分の一を超えない場合と言っておりますが、このように総資産の額に比較して著しく小さい場合には、株主に与える影響が軽微であることや、現行法でも営業の重要でない一部の譲渡については株主総会の特別決議が不要とされていること等を考えまして、会社分割の手続を簡素合理化する観点から、株主総会の承認決議を得ないで分割を行うことを認めたものでございます。 もっとも、人的分割の場合には、分割をする会社の株主が分割によって設立される会社または分割によって営業を承継する会社の株主となり、その地位に重大な変更が生じることから、この場合には株主総会の承認決議を省略することができないことといたしております。 分割をする会社から分割によって設立する会社または分割によって営業を承継する会社に承継される積極財産の額を基準といたしましたのは、承継される財産の価額から債務の額を控除した純資産額を基準といたしますと、承継される財産の価額が大きくても、承継させる負債の額を大きくすれば要件を満たすことになって、規模の大きな会社分割であっても簡易の分割手続を利用し得ることになりますので、その点は不合理であるということから、先ほど申し上げましたように積極財産の額を基準といたしたわけでございます。 また、反対株主に対して株式買い取り請求権を認めなかったのは、簡易合併または簡易株式交換の場合と異なり、各本条が予定する物的分割の場合は分割をする会社の株主の持ち株比率に影響するものではないこと、それから重要でない営業の一部の譲渡の場合にも株式買い取り請求権が認められていないこと等を考慮したものでございます。
○与謝野委員 次は、三百七十四条ノ二十三、すなわち営業を承継する会社における簡易の吸収分割手続が書いてあるわけでございますが、この規定はどういう考え方で書かれているのかということを御説明いただきたい。
○細川政府参考人 御指摘の三百七十四条ノ二十三は、吸収分割によって営業を承継する会社について、分割手続の簡素合理化の見地から、簡易の分割手続を認めたものでございます。 第一項は、簡易の手続によるための要件を、分割によって営業を承継する会社の株主に与える影響が小さい場合に限ることとしまして、株主の持ち株比率の低下の度合いと各会社の規模の比較の観点から、分割新株の総数がその会社の発行済み株式の総数の二十分の一以下である場合に簡易の吸収分割手続によることができるものといたしたわけでございます。 ただし、営業を承継する会社が多額の分割交付金を支払って分割新株の数を少なくする等の脱法的な行為を防止するため、分割交付金の額が分割によって営業を承継する会社の純資産額の一定割合を超えるときは、簡易の吸収分割を認めないことといたしております。この割合としては、分割交付金が新株の割り当て比率の端数調整のためのものであることにかんがみまして、そのために必要な最小限の金額に限るとの観点から、五十分の一といたしているわけでございます。 第二項は、分割新株の発行にかえて自己株式を移転する場合には、各会社の規模の比較の観点から、この自己株式の数を分割新株の総数に含めて、簡易手続の基準を満たしているかどうかを判断することといたしたものでございます。 第三項は、株主の保護のため、分割契約書に総会決議を経ずに吸収分割する旨を記載しなければならないこととし、また、定款変更及び取締役、監査役の選任は総会の決議事項でございますので、簡易の吸収分割の場合には株主総会が開催されませんから、これらに関する事項を分割契約書に記載することができないことといたしたものでございます。 第四項から第八項までは、簡易の吸収分割の要件を満たす場合であっても、新株の割り当て比率が著しく不公正な場合などには、分割によって営業を承継する会社の株主が不利益を受ける場合もあり得るため、会社に対して吸収分割に反対する意思を事前に通知した株主に対して株式買い取り請求権を付与することとし、その機会を保障するため、営業を承継する会社が総会決議を経ずに吸収分割する旨等の公告または株主への通知を行うべきものといたしたものでございます。 ただし、反対株主の有する株式の総数が分割によって営業を承継する会社の発行済み株式総数の六分の一以上であるときは、承認総会を開催しても特別決議を得られない可能性がありますので、この場合には承認総会を経ずに吸収分割を行うことができないことといたしたわけでございます。
○与謝野委員 同じ三百七十四条ノ十一では、分割事項記載書面の事後の備え置きという規定がございますが、これについての立法の趣旨をお伺いしたい。
○細川政府参考人 御指摘の三百七十四条ノ十一でございますが、これは、新設分割の手続が適正に行われたことを間接的に担保するとともに、株主及び債権者に新設分割無効の訴えを提起するかどうかの判断資料を提供するために、取締役は、債権者保護手続の経過、分割の日、分割によって設立される会社が承継した権利義務並びに財産の価額及び債務の額、その他分割に関する事項を記載した書面を、六カ月間本店に備え置くことを要することといたしたものでございます。さらに、その閲覧等を認めることといたしました。 また、例えば根抵当権者である会社が分割される場合の根抵当権設定者に対しては、当該根抵当権が分割する会社または分割によって設立する会社のいずれに帰属することになったのかを開示する必要があることから、このような利害関係人も閲覧ができることといたしたものでございます。 分割の当事会社において働いている労働者や取引先である下請業者なども、分割によって自分に対する契約関係が承継されたものかどうかに関して利害関係を有しますので、本条に言う利害関係人に当たるものと考えております。 なお、三百七十四条ノ三十一の第五項におきまして、吸収分割につきましても本条の規定が準用されておるところでございます。
○与謝野委員 そこで、純粋に法律的な関心だけの話でございますが、会社分割による権利義務の承継というのは一体どういう法的性質を持っているのか、これをお伺いしたい。
○細川政府参考人 会社分割による権利義務の承継は、合併の場合と同様、分割の登記を行うことによって法律上当然に生ずるいわゆる包括承継に当たるものでございます。営業譲渡が契約による個々の財産の移転というものとは違う、それとは違うわけでございます。
○与謝野委員 同じ三百七十四条ノ十二、三百七十四条ノ二十八、ここには分割無効の訴えという規定がございますが、この分割無効の訴えの規定の趣旨を御説明願いたい。
○細川政府参考人 会社分割の手続に瑕疵があった場合には、その分割を事後的に無効としなければなりません。しかし、会社分割がされた後は、それが有効であることを前提として、分割をする会社、分割によって設立した会社、または分割によって営業を承継する会社のそれぞれについて新たな法律関係が形成され、その利害関係人も多数に上るのが通常でございます。したがいまして、分割を無効とすると、これらの法律関係が極めて複雑なものとなるおそれがございます。このため、御指摘の二カ条におきましては、分割無効の訴えの制度を設けて、分割の日から六カ月以内に訴えをもってのみ無効を主張することができることとし、法律関係の画一的確定の要請に対応しようといたしているわけでございます。 また、無効主張の可及的制限の要請から、提訴権者を株主、取締役、監査役、清算人、破産管財人または分割を承認しない債権者に限ることといたしました。 さらに、無効原因の存否を画一的に確定するため、複数の訴えについては弁論を併合して行うこととし、その前提として、専属管轄裁判所を定めました。もっとも、分割をする会社と分割によって設立する会社の本店所在地が異なる場合や、いわゆる共同新設分割で分割をした各会社の本店所在地が異なる場合におきましては、その各所在地が複数の地方裁判所の土地管轄にまたがるときは専属管轄裁判所が複数存在することになりますが、このような場合には、最初に訴えが提起された裁判所の専属管轄とした上で、著しい損害または遅滞を避けるために必要がある場合は、第三項で定める他の裁判所に裁量で移送することができることといたしております。 その他、百五条の第二項から第四項まで等を準用しております。百五条第二項から第四項は合併無効の訴えの手続を規定いたしたもの、第百六条は債権者の担保提供義務を規定いたしたもの、第百九条は無効判決の第三者に対する効力を規定いたしたもの、第百十条は無効判決の効力の不遡及を定めたもの、第二百四十九条は株主の担保提供義務の規定を定めたものでございますが、これらを分割無効の訴えに準用することといたしております。
○与謝野委員 そこで、仮にこの法律案が衆議院を通過し、参議院で可決、成立した場合、一体いつから施行されるおつもりなのか。それは多分政令事項だと思いますが、その基本的な考え方はどういうふうに考えておられますか。
○細川政府参考人 本改正法の附則第一条では、改正法の施行日について「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」と定めております。 この改正法の施行の諸準備等に要する期間を確実に見通すことは困難でございますし、確定的に日を定めておくのも難しいために、その施行期日を政令に委任しているわけでございます。 なお、会社分割法制に伴う税制の手当てが大変大事でございますが、これについては、まだ相当の期間を要することが予想されるため、公布の日から一年を超えない範囲内といたしておるわけでございます。
○与謝野委員 実際は、世の中はどんどん動いてしまっていて、ことしの、多分五月を中心に行われる株主総会では、会社の合併、またそれに伴って将来の分割ということが恐らく株主総会の議題に上がると思うわけでございますが、やはり株主総会において会社が根拠のある提案をできないと物事が進まないという状況ですから、政令による施行日というのは、やはりそういう社会情勢の進展に伴って考慮されるべきものと考えておりますが、そういう実際の社会で起きていることと施行日ということはどういうふうにお考えですか。
○細川政府参考人 この法案が成立した場合には、私どもとしては、施行に向けての諸準備を最大限の努力をもってしなければならないということでございますし、また御指摘のような社会経済情勢というものも十分考慮しなければならないと思っているわけでございます。 ただ、今度の六月の株主総会等で、例えば株式移転を行って共通の持ち株会社をするという会社がある場合に、将来のスケジュールを示すことが必要でございます。ですから、その場合には、既に国会で法律が御承認され、成立いたして公布されているということになっておれば、それは一年以内に必ず施行されるわけですから、そうなっておれば、今回の六月の株主総会でも、経営陣は十分この法律でこういうふうにする、会社分割を行うというような説明をすることはできるものと考えているわけでございます。
○与謝野委員 今回の附則第五条では、労働契約の取り扱いに関する別の法律による措置というのが書いてあるんですが、商法にこういうことが書いてあるのは余り例のないことでございますが、わざわざこれをここに書いたのはどういう趣旨なのかということについてお伺いしたい。
○細川政府参考人 これは、御指摘のとおり、珍しい規定でございます。その趣旨は、商法等の一部改正法律案による改正後の商法、有限会社法の規定に基づく会社分割に伴う労働契約の承継に関連して必要となる労働者の保護に関しては別に定める、こういうことを明らかにいたしたいということでございます。 商法の一部を改正する法律案では、分割による承継の対象となる営業に従事した労働者に係る労働契約は、他の権利義務と同様に、分割計画書等に記載されることによって、分割によって設立する会社に承継されることになるわけです。 しかしながら、会社分割法制が導入され、現実に運用される場面においては、会社分割に伴う労働契約の承継について、個々の労働者が不利益をこうむることも予想されないことではないわけでございます。そこで、附則第五条において、このような労働者を保護するために別の法律による措置が必要である旨の認識を表明し、当該法律と商法が一体となって、会社分割に伴う労働契約の承継に関する取り扱いが規律されるべきことを明らかにしたものでございます。 労働省において立案し、今国会に提出されております会社の分割における労働契約の承継等に関する法律は、この特別の立法措置に当たるわけでございます。
○与謝野委員 この商法改正に伴って他の法律がいろいろ影響を受けるわけでございます。それは整備法案として出ているわけですが、その整備法案の概要について御説明をいただきたい。
○細川政府参考人 会社分割法制の創設に伴う商法等の一部を改正する法律の施行に伴い、関連する法律を、百五十の法律について規定を整備する必要がありますので、これらを一括して改正するのが整備法案でございます。 その概要でございますが、大きく分けますと四項目ぐらいに分かれます。 第一は、会社分割制度の創設に伴う私法関係の法律の規定の整備でございまして、民法、非訟事件手続法、商業登記法、会社更生法等の法律の規定を整備するものでございます。 二番目の類型は、会社分割制度の創設に伴う行政上の許認可関係の法律の規定の整備でございます。分割制度の創設に伴い、銀行法、ガス事業法、電気事業法等の許認可関係がどうなるかといったことについて、その関係の法律の規定を整備するものでございます。 第三の類型は、この商法改正施行法では、子会社の計算において株主に対して利益供与をすることを新たに禁止することに、刑罰上の罰則をかけることといたしておりますが、そういったことに伴いまして、保険業法等に同様の規定を整備することといたしているわけでございます。 それから四番目の類型として、ストックオプションに関する規定の整備があります。今回の改正法案では、自己株式方式と新株引受権方式のストックオプションの併用を認めることにいたしましたので、これに伴い、特定通信・放送開発事業実施円滑化法等の関係法律の規定を整備いたしたものでございます。 以上が整備法の概要でございます。
○与謝野委員 そこで、日本はおくればせながらということで、今回の会社分割法が国会で議論されているわけですが、諸外国では一体どういう法制度をとっているのかということについて御質問をしたい。
○細川政府参考人 まず、アメリカについてでございます。これは、それぞれの州法で決まっているものですが、一般的な制度としては、まずスプリットオフ、スピンオフとスプリットアップという三つの類型があります。 スプリットオフは、会社財産を現物出資して譲り受け会社の株式を取得し、譲り渡し会社は自社株買い戻しの対価として株主に譲り受け会社株式を分配するというものでございます。スピンオフは、会社財産を現物出資して譲り受け会社の株式を取得し、譲り渡し会社はこれを自分の株主に対して現物配当として分配するというものでございます。また、スプリットアップは、複数の会社に会社財産を現物出資して譲り受け会社の株式を取得し、譲り渡し会社は清算することによって株主に譲り受け会社の株式を分配するということでございます。 次に、ドイツでございますが、ドイツには、直訳いたしますと、存続分割、分離独立及び消滅分割の三種類の制度が設けられております。 存続分割は、譲渡会社が譲り受け会社から譲り渡し会社の株主に対して発行された株式と交換に会社財産を譲渡するものでございます。分離独立は、譲渡会社が譲り受け会社に会社財産を譲渡し、譲り受け会社の株式を取得するものであります。また消滅分割は、存続分割と同様に、譲り渡し会社が譲り受け会社から譲り渡し会社の株主に対して発行された株式と交換に会社財産を譲渡いたしますが、その際に譲り渡し会社が清算することなく解散するというものでございます。 フランスとかEUの指令におきましても、ドイツにおける制度とほぼ同様の手続が可能となる制度が設けられております。 イギリスにおきましては、譲り渡し会社が資産の一部を譲り受け会社に移転し、その対価として株式を取得し、これを株主に分配する制度と、譲り渡し会社が事業の一部門を譲り受け会社に移転して株式を取得し、これを株主に配当として分配する制度のほか、破産法上の制度として、譲り渡し会社が解散して二つ以上の譲り受け会社に資産を移転し、株主には譲り受け会社の株式を分配するという制度が設けられているところでございます。
○与謝野委員 労働省が別の法律を出しているわけでありますけれども、当然のこととして、この商法改正を出す前に法務省と労働省との間でいろいろな打ち合わせ、話し合い、協議等が行われたと思います。労働省は熱意を持ってこの法律に当たっていると私は信じているのですが、なかなか現象としてはそういうことが見られないというのは大変残念でありますけれども、労働省との協議の過程で、局長がなかなか難しい問題だということを感じられた点は一体何だったんでしょう。
○細川政府参考人 会社分割法制を審議いたします法制審議会の商法部会におきましては、学者の先生方の意見も一致いたしまして、この分割法制が円滑に施行されるためには労働者の保護ということを十分考えなければならないという議論が出ていたわけです。そういうことですので、労働省の担当課長に常に審議会に出席していただいておりましたし、また、連合の鷲尾会長は法制審議会の委員でございますけれども、部会にも連合の担当局長の方にお見えいただきまして、さまざまな御意見をいただいたところでございます。私どもは、その間、労働省ともさまざまな打ち合わせをいたしまして、私自身が労働省の担当局長にお会いしてお話しするということもいたしたわけでございます。 結論として、なかなか難しかった点は、もちろん、労働界からの御要望は労働省も私どもも知っているわけですが、今回の会社分割は、まさに会社分割に限られているわけなんですが、それ以外の営業譲渡とか合併について広げることができるかどうかというところが、なかなか御要望とは一致しないところがあったというところが難しい点だったと思っています。その点については、特に労働省と法務省とで意見が違っているということはなかったように私どもは考えております。
○与謝野委員 最後に、法務大臣にお伺いしたいんですが、私どもは、この商法改正は大変重要な法案だと思っております。日本の経済構造の改革ということも一歩ずつ進んでいるわけですが、法務大臣は、この商法改正をどのように位置づけられているのか、その重要性をどのように思っておられるのか、日本の経済構造改革に対してどのような影響を持っているのか、その辺のお考えを伺って、質問を終わります。
○臼井国務大臣 きょうは、参議院の会議がございまして、失礼いたしました。 御承知のとおり、現在の企業社会において、その活動というのはグローバル化してきている。こうした中で、金融機関を初めとする我が国の企業も体質の改善というものを猶予なく行っていかなければいけない、こうしたことが求められておりまして、経営の効率化や企業統治の実効性を高めるために、まさにこうした企業の合併あるいは企業の分割、こういった制度が必要となってきているわけでございます。企業の分割法制をつくり上げることによって、私どもの目指してまいりました企業のグローバル化に対する対応というものが一応完成するというふうに考えておりまして、一日も早い成立のためのお力添えをいただきたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。
○与謝野委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
○武部委員長 倉田栄喜君。
○倉田委員 今ほどの質問に既に出ていることでもありますけれども、改めて法務大臣にお尋ねをしたいと思います。 今回の商法等の一部を改正する法律案、いわゆる会社分割法案でありますけれども、これは、先ほど政務次官の方のお答えにもあったなとも思っておりますけれども、いわゆる国際経済におけるメガコンペティションというか大競争というか、それに対応しようとしてつくられたものである、そういうふうに御認識をされておられるのかどうか。これは確認の意味で法務大臣にお聞きをしたいと思います。
○臼井国務大臣 今委員が御指摘をいただきました、いわゆるメガコンペティションというのは、私どもとしては、東西冷戦の終結後、各国は軍備増強の重圧から解放され、経済成長を争った結果、世界規模での経済競争が激化することとなった現下の経済情勢を言っているもの、このように理解をいたしております。 企業間の国際的な競争が激化した今日におきましては、企業は、経営の効率性や企業統治の実効性等を高めるために、企業組織の再編成を行うことによりましてその競争力を強化する必要があるわけでございますが、企業組織の再編成を容易にするための企業分割法制を導入する今回の法案というものが、まさにこのような要請に対応しようとするものでございまして、委員御指摘のとおりでございます。
○倉田委員 今回の法案もそうでありますけれども、商法改正、商法等の一部を改正する法律ということで近時ずっと続いてきております。それぞれ、世界経済、国際経済の中で、時代への対応の中で、それに合わせていこうということで商法の改正が続いているんだと思います。 今回の法案のあれと少し離れますけれども、いわゆるこの大競争時代、グローバルな国際経済競争時代に現行商法自体がもう相当対応できなくなっている部分があるのではないのかという認識をいたしております。それに合わせて、いろいろな審議会でずっと商法改正については審議をされてこられて法改正ができてきていると思うんですけれども、今後、いわゆる現行商法の抜本的な見直し、改正、そういうことはお考えになっているのかどうか。この点について、まず法務大臣のお考えをお聞かせください。
○臼井国務大臣 私ども政府は、昭和五十年以来、段階的に会社法の全面的な改正作業を行ってきたわけでございますが、今回の会社分割法制の創設によりまして、重要な事項についての一応の見直しを終えることになるのでございます。 しかしながら、商取引の基本原則、あるいは会社の基本的なあり方を定める商事基本法である商法については、社会経済情勢の変化に応じて多くの検討課題というものが提起をされているのでございます。 私ども政府といたしましては、これら多くの課題に的確かつ迅速に対応いたしまして、現行会社法制というものが新しい時代の要請に対応したものになるよう、積極的に検討を進めてまいる所存でございます。 このような観点から、現在、法制審議会商法部会におきまして、今後の商法の改正検討事項につきまして審議を開始していただいているところでございます。
○倉田委員 さて、少し理屈というか理念的なお尋ねをさせていただきたいと思いますが、今回の法案は、いわゆる大競争時代に対応しようとするものだ、そういうことでお尋ねをさせていただきたいと思っております。 いわゆる二十一世紀の一つの考え方として、市場原理、競争原理ということが盛んに言われるわけです。市場原理、競争原理ということで、自己責任ということが言われる。今回の法案は、そういう意味で、大競争時代の中の競争原理に対応しようとするものである、そういうふうに思うわけでありますが、この大競争に日本経済が対応できるシステムをともかくつくらなければならない、これは急務であると私も思いますし、この点での異論は多くはないと思うわけであります。 しかし、新しいシステムや体制の整備というものが、いわゆる市場原理、競争原理ということだけで、その原理のみでつくっていくということでいいのかどうかということについては、私は問題意識を持っております。 私たちは、二十世紀から二十一世紀に向かって、ともに生きるという共生の理念というのは大きな理念として掲げていかなければならないものと思うわけでありますけれども、そうだとすると、ともに生きるという共生の理念から考えを導くとすれば、市場原理、競争原理というのが一つの柱であるとすれば、もう一つ、こういう言葉が一般的になっているかどうかわかりませんけれども、共同原理、あるいは競争原理に対して協力原理、これも一つの他方の柱として、これからの制度あるいはシステムの中に組み込まれなくてはならない、私はこういうふうに考えるわけであります。 非常に漠たるお尋ねで恐縮でございますが、この点は、法務大臣御自身の御所見、どうお考えになられますか。
○臼井国務大臣 今委員は、従来から考え方が導かれておりますいわゆる競争原理あるいは市場原理に対して、共生理念のもとにおける共同原理というものを取り入れるべきじゃないだろうかというふうなお話だったように思います。 私ども政府におきましては、昭和五十年以来、特に会社に関する規定を中心に商法の改正というものを行ってまいったわけでございますが、その改正に当たりましては、会社の効率的な経営を実現するということによりましてその競争力を向上させるという、いわゆる競争原理の観点だけではなく、今委員御指摘をいただいておりました、会社の社会的責任というものを明確にして、取引先等、関係者との利害関係を適切に調節する、まさにともに生きる、あるいは共同してともに当たる、こうした理念というもの、視点というものも大切にして見直しを行ってきたものでございます。 今後の商法の見直しに際しましても、御指摘のような点というものに十分配慮をいたしてまいりたいと考えております。
○倉田委員 ともすれば、市場原理、競争原理が、弱肉強食あるいは優勝劣敗、もっと極端に言えば、自分だけがよければいい、自分が勝ち残ればいいというふうに走りがちであります。 今大臣から、会社の社会的責務ということをお答えいただきました。同時に、私が申し上げました共同原理あるいは協力原理ということも考えなくてはならないというふうにお答えいただきました。その面での具体的なお話もいただいたわけであります。ここからそのまま、今から私が申し上げることに直接的につながるかどうかは議論があると思いますけれども、私は、会社の共同あるいは協力ということで、会社が生き残っていかなければならないことは当然だとしても、同時に、会社が社会的に果たさなければならない責務もある。 それはどういうことかというと、だれでも働ける場所がある、だれでも働くことができる、これは能力に応じて働ける場所がきちっとあるということだと思いますけれども、能力というところにこだわらなくてもだれでも働ける場所があるということは、社会の安定、あるいは安心できる社会のために大変大切なことかと思います。 そういう視点から考えた場合に、今回の商法等の一部を改正する法律案、いわゆる会社分割法案、これはいわゆる働く場所という視点から考えた場合に、いろいろ議論があって、働く場所が奪われるのではないのか等々の視点から、どういう手当てがなされているのだろうということを気にいたしておりました。先ほどの質問で、法務省の方からは、法務省として現時点でお考えになっている具体的な対策はお答えをいただいたと思います。 そこで、きょうは労働省の方にもお見えをいただいておりますけれども、今回の会社分割法案、そしてこの会社分割法案と一体としてという御答弁がありましたけれども、いわゆる労働契約の承継に関する法律案、これらの法案の中で、いわゆる労働者、働く人を守るという視点からはどのような対策がとられているのか、それを個別具体的に簡潔にお示しをいただければと思います。
○澤田政府参考人 今先生御指摘の、だれでも働く場所があって安心して働けるということは私どもも大変大事なことだと思っておりまして、今回の商法等の改正案と一体のものとして御提出いたしておりますいわゆる労働契約承継法につきまして、以下のような労働者保護、とりわけ雇用の観点での措置を講じております。 一つは、今回、会社分割によりまして分割される部門で主として働く労働者を新会社に承継させる場合は、これは丸ごと当然に新会社へ移るということで、雇用がそのまま移るという点が一つ。 それから二つ目は、分割される部門で主として働いている労働者をもとのところへ残すという場合、それから分割される部門以外のところで現在主に働いている、そういう方を分割して新しいところへ承継させる、この二つのケースにつきましては、それぞれ労働者に異議の申し立てを認める、そして異議を申し立てた場合にはその労働者の意思に従って、残るなり移るなり、労働者の意思を実現させるという措置を講じております。 こうした規定で労働者の保護は十分に図られるものと考えております。
○倉田委員 今回の二つの法案が審議が終わって成立をした場合、我が国判例が今まで積み重ねてきた労働者を守る法理がございます。営業譲渡だとか整理解雇だとか、あるいは転籍等々、いろいろさまざま判例が積み重ねてきたものがあるわけでありますけれども、今回のこの法案は、今まで積み重ねてきた労働者を守る法理の上に立つものなのかどうか。今回のこの法案の成立によって、今までの判例が変更を余儀なくされるということがあり得るのかどうか、この点についてはいかがでしょう。
○澤田政府参考人 営業譲渡等にかかわりまして、現在の法律あるいは判例法理で明らかになっている点が三点ほどございます。 一つは、労働契約の譲渡に関しましては、現在、民法六百二十五条で法律があり、それに絡んだ判例法理もはっきり確立しておるという点が一点でありますし、解雇あるいは整理解雇につきましては、判例におきまして一定の要件が明らかになっています。 それから三つ目に、労働契約の不利益変更の問題が議論になると思いますが、この点につきましては、まさに民法の基本法理として一方的な不利益変更はできないということがはっきりしております。 こうしたこれまである法律あるいは積み上げられました判例法理につきましては、今回の会社分割関係の法制、労働契約承継法等々におきましても何ら変わることはなく引き続き維持され、機能するものと考えております。
○倉田委員 今回のこれらの法案の成立によって、いわゆる雇用整理あるいは労働者の意思に反した解雇が行われることになるのではないのか、こういう心配をされる方がおられると思います。この点についてはいかがですか。
○澤田政府参考人 会社分割制度におきましては、まず第一点でありますが、一体としてお出ししております労働契約承継法案におきまして必要な労働者保護を図ることとしておりますのは、御説明いたしたとおりであります。 それからもう一点、労働者を解雇する場合につきましては、合理的な理由を必要とする。特に整理解雇につきましては、整理解雇の四要件を満たすことが必要であることが裁判例において確立しております。したがいまして、今回、会社分割のみを理由にして解雇することは、こうした判例法理から許されることではないということは明らかでございまして、整理解雇やその他の労働者の意に反した解雇が行われるということはないと考えております。
○倉田委員 先ほど法務大臣に、今我が国の産業構造ということで、最後の方でお答えいただきました。この法案に直接はかかわらないかと思いますが、背景にある大きな問題でありますので、我が国の産業構造というものをどうとらえておられるのかということについて労働省の方にお聞きをしたいと思います。つまり、大競争に耐え得るために我が国の産業構造の改革が求められている、これは共通の問題意識であろうかと思います。 もう大分前の話ですけれども、ある経済学者の方がこういう指摘をされました。言葉で申し上げるとなかなか御理解をいただけるかどうかちょっと不安なわけでありますけれども、縦軸X軸、横軸Y軸、こういう平面図をちょっと想定をしていただいて、縦軸のX軸に会社がどれくらいもうかっているかという企業収益率、ゼロから、五%もうかっている、一〇%もうかっている、一五%もうかっている、あるいは二五%もうかっている。そういう縦軸に企業の収益率をとって、横軸Y軸に国際競争力、国際競争力を円の価格、ゼロから、今日本の円が百四円とか百五円とかありますけれども、九十円、百円、百十円、百二十円、あるいは百八十円、二百円、二百五十円、こういうY軸に円高から円安の方に国際競争力をとった平面図を考えた場合に、我が国の企業分布がどういうふうに位置するかということになると、その学者の方の御指摘は、それも現時点で当てはまっているかどうか、前の統計でつくられた図だと思いますけれども、つまり、国際競争力、円の価格が百円で勝負できるあるいは九十円台で勝負できる企業というのは、収益率が五%か一〇%というか、いわゆる原点に近い方に分布をしておる。国際競争力がない、もう二百円ぐらいでないとこの大競争時代に生き残っていけないという企業が、収益率のところを見ると結構一五%か二〇%か、そういうところに分布をしている。その指摘が正確かどうかということはまた論証をしなければいけないと思いますが、我が国の会社の分布というのはいわば右肩上がりの分布になっている。 そうすると、この指摘が正しいとすれば、二つの点で問題があります。一つは国際競争力、先ほどの大競争時代に耐えていけない会社が相当ありますということが一つ。と同時にもう一つ、この耐えていけない会社が高い利益を上げている、こういう二つの問題があると思うのですね。 それはどういうことなのかというと、高い利益を上げていて、いわば働く場所をある意味では守っている、雇用を確保している。過剰雇用という言葉があるのかもしれませんけれども、いっぱい雇用をしているという話があると思うのですね。そうすると、この大競争時代に日本が二十一世紀に残っていくためにどうしたらいいのかというと、それは理屈だけで言えば、いわば国際競争力がある会社が収益率もある、そうすると、右肩上がりの企業分布が右肩下がりというか左肩上がりになっていかなければならないということに理屈の上ではなるわけであります。 そうだとすれば、そこに実は、今、失業率四・九%というのがこの間の二月末の統計でありますけれども、理屈の問題としては大きな問題を抱えている。つまり、今の平面図だけの問題でも、過剰に雇用を抱えている企業が二十一世紀に生き残っていけるかどうかという問題と同時に、これは理屈の問題ですよ、現実はそうなったら大変だなと本当に思うわけでありますけれども、いわゆる雇用シフトというのか、あるいは人員整理というのが行われてこなければならない。同時に、二十世紀型産業が二十一世紀型産業に、もうちょっと新しい企業に移らなければいけない。そのときにミスマッチなく雇用シフトができるかどうかということが今恐らく労働省に課されている問題なのではないのかなと思うわけであります。 この雇用シフトの問題、少し長々と申し上げましたけれども、私が今申し上げたことも含めて、労働省としてはどういう問題意識をお持ちですか。
○渡邊政府参考人 ただいま御指摘になりましたが、これからの産業、どういったところが伸びていくかというようなことがございますけれども、大変厳しいグローバル経済の中で、やはり実力のある、力のある、将来伸びていくもの、こういったものが伸展をしていくだろうというふうに見ておりまして、御案内のように、今製造業とかあるいは金融業を中心にしまして大変厳しいいわゆるリストラというものが行われているわけでありまして、企業の体質の強化という努力が行われているかというふうに思っております。 私どもは、就業者数の将来の伸びというようなことで産業の変化というものを推計しておりますけれども、大変大ざっぱに言いますと、製造業とか建設業というのは将来さらに雇用が減じ、三次産業の中でも運輸、通信とかあるいはサービス業、こういったところにおいて雇用が増大するだろうというふうに見ております。 最近の安定所に寄せられます新規の求人の動向を見ていますと、まだこの数カ月の傾向なのですが、四十万ぐらい新規求人が安定所に毎月寄せられますけれども、そのうちの四分の一ぐらいを占めますのがハード、ソフトを含む情報通信業、それから介護福祉、こういった分野でございます。こういったところでは、前年同期に比べますと三割ぐらい求人がふえているというふうなことがありまして、やはり日本の産業の動向というものをそういったところは反映しているのではないかというふうに思っています。 ただ、就職の方はなかなかそういったところに結びついていませんので、こういった厳しい雇用状況の中でやはりこういう成長産業で雇用を吸収していくということが肝心なことと思っておりまして、そういったところへ向けての重点的な能力開発あるいは情報の提供、こういったことが大きな課題ではないかというふうに考えております。
○倉田委員 雇用がシフトしなければならないという問題がどの程度のものなのか、あるいはそれは乗り越えなければならない問題なのかどうかということは、いろいろ各方面から議論があるのだと思うのです。しかし、どういうふうに解決するにしても、そういう問題に直面をしていることは間違いないのではないのか、私はこう思っております。 そこで、そのときに、ではその問題をどう解決をするか。企業として生き残るために、今回、商法等の一部を改正する法律案として会社分割法案が出てきたのだと思うのです。一方で、働く労働者、働く場所というのをどう守っていくかということも、先ほど申し上げましたように、共生の理念、共同、協力という原理から必要なことだ。そうすると、新規二十一世紀型成長産業に、今お答えになった情報関連産業も含めて、ミスマッチなく間髪を入れずに雇用シフトができる。それは、ある意味では今までの会社から新しい会社に移るわけであります。その間の期間が短ければそれほど問題ありません。しかし、そういうことは起こっていないと私は思いますけれども、この期間が長ければ働く人の生活はなかなか大変です、一家の収入がなくなってしまうわけですから。 そうすると、現行の雇用保険、いわゆる失業保険、これは新しく法案を準備されながら今議論もされているんだと思いますけれども、先ほどのどれくらい雇用シフトしなければならないかという問題にこの雇用保険はどう対応しようとしているのか。そして、今お考えになっている内容で果たして間に合うのかという問題意識を一つ持っております。本当にどうしても新しい職を探さなければいけない、しかし、新しい二十一世紀型の受け皿としての会社がなかなか全部の人を受け入れられる余裕がないとしたら、そこはいわゆるセーフティーネットとして対応策を十分考えていただかなければならないことが一つ。この点について労働省のお考えをお聞かせいただきたい。 同時にもう一つ。いわゆる会社そのものが、会社は会社としてそのままありながら、働く人はそのままであって会社の名前もそのままであっても、そこで行う仕事が二十一世紀型産業にシフトできるような、そういう会社になればいい。そのためには、私はいろいろお話を聞きましたら、労働省の方として、能力開発する給付金であるとかいろいろ準備をなされているみたいであります。したがって、この点の手当ても十分していただきたいと思いますし、融資の面もちょっとお聞きをしましたけれども、職業訓練とか、訓練についての融資項目としてはあるみたいであります。会社そのものにはいわゆる給付金、直接助成みたいな形でやっていますけれども、融資の項目まではまだちょっとどうなのかな、もっと頑張っていただいていいんではないのかなという気はするわけであります。 この二点、労働省、今のお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○渡邊政府参考人 まず、雇用保険についてでありますが、雇用保険につきましては、大変財政も厳しくなっておりまして、改正案が衆議院で可決をいただきまして、現在参議院で審議中ということでございます。 この内容は、負担については五割のアップ、それから給付については二割の削減ということで、大変厳しい内容になっておりますが、基本的な考え方は、給付の重点化を図ろうということでございまして、自分の意思で転職する方のように、あらかじめ離職の時期というものを自分で選択できる、あるいは定年で退職される方のように、もう何年も前から決まっているというような方については、再就職の準備期間も十分とれるわけでありますから、そういった方については従来より給付を削減し、解雇、倒産等で、特に中高年のいわゆる非自発的離職者、この方たちについては従来よりも給付を手厚くするということで、セーフティーネットとしての役割を十分果たしたいと思っておるところであります。 また、この雇用保険の制度の中には、このままではなかなか就職が難しいという方につきましては、公共職業安定所長が指示をいたしますと訓練を受けることができまして、その間は雇用保険の給付は延長されるということになっております。こういった仕組みを活用しながら雇用保険の実効性を高めていきたいというふうに考えているところであります。 それからまた、企業がそのままで転換をするというときに、私どもとしては、融資の制度はなかなか持ちにくい。これは通産行政の分野かと思いますけれども、労働行政の分野では、ある企業が異業種に進出をするというときには、その際新しく労働者を雇い入れられる、あるいは中心的な労働者を雇うというときには、賃金の助成を一部するというふうなことによって、企業は異業種への転換に対応できる、こういったことを助成しておる、こういった施策を今とっております。
○倉田委員 先ほどちょっとわかりにくかったかもしれませんけれども、X軸、Y軸の平面図の中で、我が国の企業分布が、いわば右肩上がりの企業分布になっている。それが、国際競争力があるところが収益率もあるということで、左肩上がり、右肩下がりにならなければならないとすれば、ここに起こってくる雇用シフト、これが何百万人になるのかあるいは何十万人なのかちょっと私も正確にはわかりません。しかし、これがもし何百万人単位だとすれば、今お答えいただいたいわゆる雇用保険も、それに果たして耐え得るものになっているのかどうかちょっとわかりませんけれども、その問題意識は十分持っていただきたい。また、そういう事態にも対応し得るものにしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○武部委員長 次回は、明二十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後六時四十四分散会