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147回国会衆議院2000/03/28

法務委員会 第7号

発言数
64
登壇者
8
会派数
4
開催日
2000/03/28

会議録

武部勤自由民主党

○武部委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、民事法律扶助法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学法学部教授長谷部由起子君、法律扶助協会専務理事永盛敦郎君、日本放送協会解説主幹若林誠一君、以上三名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、長谷部参考人、永盛参考人、若林参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず長谷部参考人にお願いいたします。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 私は、民事訴訟法を専門としておりまして、民事法律扶助制度につきましても、イギリスの法律扶助制度との比較研究などを行ってまいりました。そのような研究者としての立場から、民事法律扶助法案の意義及び検討すべき課題について意見を述べさせていただきます。  まず、民事法律扶助制度の憲法上の意義から申し上げたいと思います。  民事法律扶助法案提案理由説明の冒頭で指摘されておりますように、民事法律扶助制度は憲法三十二条の定める裁判を受ける権利を実質的に保障する意義を持っております。学界におきましては、民事法律扶助制度の充実は裁判を受ける権利を実質的に保障するものであり、国はその財政支出をもってこれを達成すべきであるということがかねてより主張され続けてまいりました。  諸外国も、イギリスが一九四九年に法律扶助法を制定したのを初めとしまして、法律扶助に関する基本法を制定し、膨大な予算を投じて法律扶助制度の拡充に努めてきたわけでございます。そこには、無資力者に対して裁判による救済を保障することは、慈善団体や弁護士の無償奉仕に期待されるべきではなく、福祉国家の引き受けるべき国家的責務であるという理念が明確に打ち出されております。  このたび、民事法律扶助法案が国会に提出され、その第三条におきまして民事法律扶助事業に関する国の責務が明示されたことは、諸外国の情勢を考えれば遅きに失する感を否めませんが、学界や関係者の方々の長年にわたる主張が実った結果であり、まことに意義深いことと思っております。  次に、民事法律扶助制度の実際の機能について申し上げます。  民事法律扶助制度を充実させることは、司法制度の利用を促進し、司法機能の強化に資するわけですが、それは二つのことを意味しております。  第一は、資力の十分でない一般市民も訴訟を通じて紛争を法的に解決することができるようになるということです。  紛争の解決に訴訟以外の方法が用いられる場合には、紛争当事者間の経済力の不均衡が結果に反映されやすく、経済的弱者に不利な内容の解決が強要される傾向があります。民事法律扶助制度によって訴訟の利用が可能になれば、従来は法律的には不当であると思われる解決が行われていた領域にも、法による紛争の解決をもたらすことができます。このことは、経済的な理由から裁判による権利の実現を否定されることがあってはならないという法律扶助の理念からの直接の帰結であります。  もっとも、法による紛争の解決を可能にするのは訴訟が唯一の方法であるというわけではありません。和解、仲裁、調停などの裁判外の紛争解決、すなわちADRによっても紛争の法的な解決はある程度は達成することができます。しかし、これから申し上げる民事法律扶助制度の第二の機能は、訴訟を援助することによって初めて達せられる効用に関するものです。  すなわち、訴訟の利用が促進されれば、判決において未解決の法律問題に関する裁判所の判断が示される機会が増加するということです。判決において裁判所が法律問題に関する判断を明らかにすれば、紛争の解決に要するコストを社会全体として減少させることができます。  なぜならば、法律の解釈が明確でない問題がある場合には、各人が異なる解釈に基づいて行動するために紛争が生ずることを避けられないのに対して、一たび裁判所の判断が示されれば、人々はそれを前提として行動するようになりますから、紛争の発生を防止することができるからです。また、仮に紛争が生じたとしても、判決によって明らかになった裁判所の判断に従って和解による解決を行うことができますから、訴訟によって裁判所の判断を求める必要はなくなります。  このように、訴訟の判決は、紛争の当事者のみならず、一般の人々にとっても有用な行動の指針を提供するものであるという意味において、社会全体に便益をもたらす公共財であると言えます。  民事法律扶助事業に対してこれまで国が十分な財政措置をとってこなかったことの一因は、民事法律扶助制度が公共財としての判決の形成に寄与していることの認識が十分ではなかった点にあると私は考えております。判決において未解決の法律問題に関する裁判所の判断が明らかにされることは、紛争解決のコストを削減して、より生産的な用途に資源を向けることができるという経済的な効果を有しております。また、人々が自律的な行動選択を行う上で、みずからの行動が法的にはどのような評価を受けるかを判断する基準が明らかになっているということは、極めて重要でもあります。  民事法律扶助制度に関する基本法を制定するに当たっては、以上の点に留意することが必要であると思います。  関連する論点を二点だけ申し上げます。  第一は、償還制の問題です。  法案では、第二条が民事法律扶助事業の内容を定めておりますが、その第一号、第二号において、「報酬及び」中略いたしますが、「実費の立替え」という表現が用いられております。また、業務規程に関する規定である第七条の第二項には、「第二条に規定する立替えに係る報酬及び実費の基準並びにそれらの償還に関する事項」という表現がございます。これらの規定からわかりますように、法案は、現行の法律扶助制度と同様に、弁護士費用等について償還制を採用しております。  弁護士費用をだれの負担とするかについて、諸外国の多くは弁護士費用の敗訴者負担原則を採用しておりますが、我が国においては弁護士費用は当事者の各自が負担すべきものとされていますので、民事法律扶助の受給者は、たとえ勝訴しても相手方から弁護士費用を回収することができません。勝訴した結果、金銭その他の経済的利益が得られる場合であれば、弁護士費用を償還することも可能かもしれませんが、経済的利益が得られない場合には、償還制は過酷な結果をもたらします。また、一般市民の受けとめ方としては、弁護士費用を立てかえてもらうだけであれば、民事法律扶助制度を利用するメリットは余りないと感じられるかもしれません。  しかし、償還制にかえて給付制を採用した場合には、民事法律扶助事業の支出が増加することになりますので、補助金が増額されない限り、扶助件数を減少させるか、一件当たりの扶助金額を制限するなどの措置が必要になります。  したがいまして、全面的な償還制も給付制も適切ではなく、原則として償還制を採用しつつ、事情に応じて償還免除を行うことによって対処するべきではないかと思います。先ほどの第七条二項の定める償還に関する事項の中には償還免除の基準も含まれると思いますので、以上述べましたような事情を考慮した償還免除の規定を設けることにより、民事法律扶助制度の利用が阻害されないようにすべきであると考えます。  第二の論点は、事業の運営主体が指定法人とされていることです。  法案第五条によれば、民事法律扶助事業を行う者は、民法第三十四条の規定により設立された法人、すなわち公益法人であって、民事法律扶助事業を行うにふさわしい一定の要件を備える者として法務大臣によって指定された者ということになっております。そして、法案第七条によれば、指定法人は、業務規程を定めて、法務大臣の認可を受けることになっておりまして、この業務規程には、先ほど述べました償還に関する事項のほか、援助の申し込み及びその審査方法、報酬等の基準など、民事法律扶助事業の基本的枠組みに関する事項が記載されることになっております。したがいまして、民事法律扶助事業がどのような内容のものになるかは、どの程度の予算が補助金として交付されるかに加えて、どのような業務規程が法務大臣によって認可されるかにかかっていると言うことができます。  比較のために、イギリスの扶助制度について申し上げますと、法律扶助事業を運営するのは法律の規定に基づいて設立された委員会であり、その委員は、我が国の法務大臣に相当する大法官によって任命されます。また、扶助の受給資格、報酬の基準、償還の要件などは、大法官の定める規則において規定されております。これに対して、我が国の場合は、事業を運営するのは民間の公益法人ですし、法務大臣による監督も、規則によって明示されたルールに従って行われるのではなく、業務規程の認可または変更のプロセスを通じてインフォーマルに行われると言うことができます。  どちらの方式がより適切であるかということを単純に比較することはできませんが、インフォーマルな方式は、弾力的な運用が可能である反面、基準の透明性の点では問題が残ると言わざるを得ません。公共性の高い民事法律扶助事業が公平に運営されるようにするには、受給資格、報酬の基準、償還及び償還免除の基準などを公表し、一定の期間ごとに基準の見直しを行うなどの工夫が必要であるように思われます。  私の意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  次に、永盛参考人にお願いいたします。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 初めに、法律扶助協会の立場から、今国会に提出され、審議されております民事法律扶助法案に対する意見を申し上げる機会を与えていただいたことに感謝申し上げたいと思います。  私の意見は、要約いたしますと、民事法律扶助法案は、不十分な点は多々あるものの、著しく立ちおくれている我が国の法律扶助事業を充実発展させようとする積極的なものであり、ぜひ速やかに成立をさせていただきたいということ、同時に、この改革は出発点であり、司法制度改革審議会を初めとする国民的な議論によって、民事法律扶助のさらなる充実拡大、刑事被疑者弁護や少年事件付き添い活動に対する公的援助を第二段階の改革として実現をしていただきたいということであります。  お手元に私のつくりましたレジュメをお配りしておりますので、それに基づいて意見を申し上げたいと思います。  まず、民事法律扶助法の意義ということでございますけれども、今回の法案の最大の意義は、民事法律扶助を国民の裁判を受ける権利に由来する制度と位置づけ、これに対する国及び弁護士、弁護士会の責務を規定したところにあるというふうに考えます。  言うまでもなく、法律扶助は、弁護士のための制度ではなく、国民のための制度であります。法律扶助協会は、一九五二年の設立以来約五十年近くにわたって、この基本理念に立脚して事業を展開してまいりました。しかし、これまでは扶助制度を公的に位置づける法律がなく、一民間財団法人の公益的事業と言うにとどまり、したがって、一般国民の関心も極めて低い、扶助制度は知られていないという状況であったわけであります。また、国の補助も極めて貧弱であって、そのために慢性的な資金不足に悩まされ続けてまいりました。  このような状況の中で、我が国の法律扶助事業は、独自の事務所を持つことが困難なため、その事務を物的にも、また人的にも弁護士会に依存をし、本部、支部の役員や審査委員などの大多数は弁護士が占め、管理運営費などの事業の遂行に欠かせない資金もかなりの部分を弁護士会の補助金に依存せざるを得なかったわけでございます。そればかりではなく、一つ一つの扶助事件の処理も、担当弁護士の犠牲的な努力によって担われてまいりました。扶助事業の実務は、全国の協会の五十支部によって行われておりますけれども、これが各単位弁護士会に依存をしているため、支部間の力量の差というのはかなりばらつきがあったということを率直に認めざるを得ないわけでございます。  今回の民事法律扶助法の制定とそれに基づく新制度の発足は、初めて扶助制度の構築、整備を国の責務とするとともに、弁護士、弁護士会には扶助事業の適正な運用の確保並びに扶助事業の実施のために必要な協力を行うべきことを規定いたしました。これは、以上のような我が国の法律扶助の問題点を克服しようとする積極的な意義を持つものであるというふうに考えております。  法律扶助が発展をするためには、それが国や弁護士、弁護士会の協力を求めつつ、自主性を保ち、変動する社会情勢の中から生じる国民の新たなニーズにこたえて事業を拡大するということが不可欠であります。  振り返れば、我が国の法律扶助事業は、当初、国庫補助の裏づけのない自主事業として始まり、そして実績を積むに従って国庫補助金が支出されるという道をたどっております。現在の法律扶助協会の主力事業である民事の裁判援助もそうでありました。それから、法律相談の援助も、近年になって補助金対象となっております。さらに、長い間自主事業として続けられてまいりました刑事被疑者弁護援助あるいは少年事件付き添い扶助も、同様の経過をたどって、今、国庫補助の必要性が共通の認識になってきております。  民事法律扶助法のもとでは、いまだ全体の理解を得るに至っていない自主事業も、運営主体において行い得るとされております。これは指定法人構想をとったためであるというふうに言われております。この点も、扶助事業のさらなる発展の基盤を認めたものとして評価できるところであります。  諸外国の法律扶助法の制定は、イギリス一九四九年、フランス一九七二年、ドイツ一九八〇年、スウェーデン一九七二年、アメリカ一九七四年、韓国一九八六年でありまして、これはレジュメの最後についております資料にも書いてありますが、ほぼ一九七〇年代には法整備を完了し、以後着実な発展を遂げております。その結果、法律扶助のために国民が一人当たり幾ら負担をするかという点でも大きな差が生じております。レジュメの最後の「民事法律扶助国際比較」という表がございますけれども、その下から三番目の欄、イギリスでは一人当たりの国庫負担額が二千二百二十七円、フランス、ドイツでは三百十二円、四百四十三円、スウェーデン五百九円、アメリカ百七十三円、韓国三十二円となっておりますのに、日本ではわずか二円という大きな格差が生ずるわけであります。  これは一九九六年のころの資料ですけれども、このような現状を克服するということは極めて重要であるというふうに思います。我が国にも一刻も早く法律扶助法を制定していただきたいというのは、すべての扶助関係者の悲願であります。  既に、来年度予算については、各方面の多大の御尽力により、二十一億七千五百万円の補助金が盛り込まれました。これは、今までの規模から見れば、まさに私たちにとっても夢のような数字でありますけれども、ただ、これで十分でないことはこれまた事実であります。今後、民事法律扶助法を基礎として、国庫補助の拡大にさらなる御理解をいただきたいというふうに考えております。  三番目に、新制度発足に向けての協会の改革について申し上げます。  このような新しい条件のもとで、法律扶助協会は、名実ともに国民のための扶助事業の担い手にふさわしい組織とするべく、組織改革を進めております。  第一に、昨年度実施いたしました理事会、評議員会の改革であります。  従来の理事会、評議員会とも定数が百名、しかもその大部分は弁護士という状況を改め、理事、評議員とも定数を二十五に削減し、しかもその半数は弁護士以外の学者、ジャーナリスト、法務大臣経験者、消費者団体や経済界の代表者をもって充てることにいたしました。さらに、協会では今月中に司法書士会から理事及び評議員各一名を追加選任する予定であり、これが実現すれば、理事、評議員中の弁護士の数は半数を下回るということになります。  第二に、扶助の現場を担っております支部組織の改革であります。  従来の支部は独自の規約及び理事会、評議員会を持ち、あたかも支部が独立の法人であるかのごとき運営を行っておりました。これは、利用者に直接接する支部が地域のニーズにこたえ、事業を展開するためには有用でありましたけれども、法律扶助が公的位置づけを与えられ、全国的に均質なサービスを提供することが求められる状況のもとでは改善が必要となります。そのため、ことし四月から支部理事会、評議員会を廃止いたしました。また、これに先立ちまして、国民のニーズを本部運営に反映するとともに、事業運営における全国的均質性を確保するため、本部に各支部長が参加をする事業運営会議を新設しております。  このような改革の結果、広く国民の声が反映し、しかも扶助事業を全国的規模において推し進めることができる運営体制を構築することができたものと考えております。  四番目に、法律扶助改革の今後の課題について申し上げます。  先ほど申し上げましたように、法律扶助の改革は、今回の民事法律扶助法の制定によって終了するのではなく、引き続いて第二段階の改革が不可欠であるということであります。  まず、大きな第一点としては、民事法律扶助に関するさらなる抜本的な改革であります。  我が国の民事法律扶助が深刻な財政的困難の中で続けられたことについては既にお話をいたしましたが、このような歴史は、我が国の民事法律扶助の援助内容にも大きな影を落としてまいりました。このマイナスの遺産を克服する課題は、今回の立法に基づく第一次改革の実行に引き続いて、司法制度改革審議会の論議等を通じて速やかに実行されるべきであるものと考えております。  まず、現行の原則全額償還制を見直し、利用者の負担の改善を図るべきであります。  これまで、厳しい資金的制約のもとでできる限り多くの人々を援助するために、我が国の法律扶助は、裁判費用の立てかえ、すなわちその全額を利用者から返還させることを原則としてまいりました。現在の法律扶助の対象者の中には、高齢、また重い病気を抱えている、再就職困難、それから単身というような、極貧層ともいうべき人々が多く含まれております。この人々は償還能力を全く欠いているわけで、しかも法律扶助が最も必要とされる人々でもあります。原則全額償還制を扶助制度の根本に据えることは、最も援助を要する人々に利用上の困難を与えることになり、大きな矛盾であります。事件の結果、経済的利益を手にした場合を除き、このような人々には負担を求めないということを原則にすべきであろうと考えております。  次に、対象層をさらに拡大するべきであるというふうに思います。  現行制度は国民所得層の下から二割層を対象としておりますけれども、原則全額償還制をとりながら対象層をこのような狭い範囲に限定をしている例は、欧米諸国には存在をいたしません。訴訟に要する経済的負担のために司法の利用を妨げられる層はこれに限られるものではないわけでございまして、したがって、漸次、対象層を四割程度まで引き上げ、これらの場合には資力に応じて負担金を課するなど、制度の整備を図るべきであると考えております。  大きな二番目は、刑事被疑者の弁護活動に対する公費による援助実現の課題であります。  この事業は、現在、法律扶助協会が弁護士会の援助も得て行っておりますけれども、大きな社会的評価を得て事業は拡大をしている一方、弁護士会と協会の財政的負担は既に限界に達しております。  捜査機関に身柄を拘束され、刑事問題の専門家である警察官や検察官の取り調べの対象となっている市民は、弁護士の援助を受ける必要性が極めて高いわけでありまして、経済的余裕のある者は援助が受けられる、そうでない者は受けられないというのは、著しく社会正義に反するものであります。刑事弁護が時として捜査当局と厳しく対立しながら国家の刑罰権の行使をチェックするという機能を持つことからも、これに関する監督のあり方も含めて、公費による制度運営の実現が緊急に検討されるべきであると考えます。  大きな三番目は、少年保護事件の付添人としての弁護活動に対する公費による援助実現の課題であります。  少年審判事件は、少年の保護と健全な育成を目指すものではありますけれども、本人の意思にかかわらない強制的な処分を命ずるものであり、成人における刑事公判手続に相当いたします。  この制度も現在は弁護士会と扶助協会の負担で実施をされておりますけれども、刑事公判事件には国選弁護人制度が存在をするのに対して、少年審判事件にはこれを欠いているというのは著しく不合理であり、また、一般に少年は成人と比較して自己の意思を表現する能力が低いということを考えると、弁護士である付添人が少年を援助する公的制度は、適正な手続の保障という点からもぜひ実現させるべきものと考えております。  以上、今後の課題についても触れさせていただきました。  最後に、重ねて民事法律扶助法の早期成立をお願いして、私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  次に、若林参考人にお願いいたします。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 おはようございます。若林です。  私は、NHKの解説委員という立場ですけれども、本日は、一個人、司法問題を担当しているジャーナリストとして、日ごろ感じていることを個人の立場から率直に申し上げたいというふうに思っています。  骨子をお配りしておりますので、それに沿ってお話ししていきたいと思います。  まず、この法案自体についてでありますが、従来の、現行の体制から比べれば大変な進歩であろうというふうに思います。とりわけ、法律扶助に法的な根拠を与えた点、あるいは国の責務を明記した点、さらに自治体の関与に道を開いた点、弁護士会の責務を明記した点、指定法人制をとって、同時に現在行われている事業の継続にも道を開いている点などについては評価できるということであります。しかし、この中身を見ますと、大変言葉は悪いんですけれども、どうもちまちました制度だなというのが率直な印象であります。  かつて、当法務委員会で申し合わせをされました。既に七年が経過をしております。七年たってここに来たのかなという気がするわけです。確かに以前の、七年前ぐらいの常識で比べますと、ここまで来たというのは大変な進歩なんですけれども、しかし、司法制度に対して大変関心が高まり、法の支配というものの実現に向けて今抜本的な制度改革が必要だという、そういうある意味でいうと社会の常識自体が変わってきた現時点から見ますと、いかにも不満足なもの、不十分なものと言わざるを得ないわけであります。  研究会が開かれまして、そこでどのような制度にするか、さまざまな議論が行われました。立場の違いから意見の衝突がいろいろあったようでありますけれども、あの研究会の報告をもう一度読み返してみますと、どこか欠けているなという気がいたしました。それは何かというと、どうも提供する側、供給する側の視点でしか物を考えていないということではないかという気がするわけです。法曹三者とそれから学者の方が中心になって検討されてきたわけですけれども、そのそれぞれのお立場の尾っぽを引きずりながら議論がなされていて、そして、いろいろな対立点を物によっては両論併記という形でおさめた結果が今の法案に結びついているわけですけれども、現時点から見ると、やはり提供する側の発想から抜け出していないということです。  現在、司法制度改革審議会で、今度は利用者の立場から今の司法制度を変えようという議論が始まっております。将来的にはそちらの方の議論にゆだねるということが当然だろうと思いますけれども、そうした将来的な抜本改革に向けての第一歩、緊急に行わなければならない対策としてこの法案をつくるという意味でいえば、それなりの意義があるということだろうと思います。その意味で、私はこの法案に賛成をしたいというふうに思っています。  今、いかなる問題がこの制度にあるか。先ほどの御意見と若干重複する部分はあるかと思いますけれども、まず第一に言わなければならないのは、やはり刑事被疑者の弁護と少年事件の付き添い活動についての扶助、保護というものがすっぽり抜け落ちているということです。  この法律扶助の研究会のスタート時点のことをもう一度ちょっと振り返ってみますと、刑事を入れるか入れないかということで、法務省と弁護士会の間で大変な議論がありました。大変違う制度ですので、これを同時にやるということは余り得策ではないということはよくわかりますけれども、しかし、当時の法務省の発想からいえば、刑事被疑者段階での公的な弁護活動というものはできればもう少し先送りしたいというのが本音ではなかったかなという気がしています。そこで、民事だけに限ってということで検討が始まったわけですけれども、今や刑事被疑者の弁護活動を公的に援助する仕組みをつくるというのは、私は、人権にもグローバルスタンダードがあると思いますけれども、人権のグローバルスタンダードではないかというふうに思っています。これはもはや時代の趨勢だろうというふうに思います。  もう一つ、やはり少年の付き添いというものも、これも当然やらなければいけないことだというふうに思います。  先般、草加事件について最高裁判所の判決がありました。民事事件の判決ですけれども、あの事件の経過をつぶさに見ておりますと、少年たちが逮捕されてから付添人がついたのが三十八日後だったわけですね。三十八日後、付添人がついて資料を見てみますと、被害者に男性の体液などが残っているという、そういったことを資料の中から見つけて、それが少年たちの血液型と違うということに気づいたわけです。これに気づいたけれども、しかし、少年審判の結果は保護処分ということになりました。  もしも、もっと早い段階で付添人がついていたらどうか。この極めて重要な証拠が全件送致の原則に反して家庭裁判所に捜査機関から送られていなかったわけですが、それはもっと早い段階でそうしたものに対して気づいているはずなんですね。捜査の方向が誤っているということをチェックできたはずですし、それによって、長い間被害者の方も苦しまなくて済んだということではないかというふうに思います。  あの事件一つとりましても、少年という、非常にまだ自立していない、しかも迎合しやすいという特殊性を持っている子供たちに対しての付添人というのが原則としてまだついていないということは、ある意味でいうと大変異常な事態だろうということだと思います。  二番目の問題は、中間層が対象になっていないということです。この研究会の議論の中でもありましたのは、福祉的な発想というのがやはり先に立っていると思うのです。低所得者が裁判を受ける権利を実現するという目的のためにこの制度が設計されていますけれども、実は、低所得者だけが裁判の利用ができないのかというと、決してそうではないというふうに思うわけです。  現場での話を間接的に聞いてみますと、例えば生活保護を受けていらっしゃる方たちというのは、市役所、区役所、町村役場のケースワーカーなどとのいろいろな接点を持っていて、さまざまな援助制度に接触する機会に恵まれているというのですね。ところが、生活保護を受けていないという世帯、一生懸命働いているけれどもそれほど豊かではないという世帯が国民の大多数だと思いますけれども、その人たちにとってみますと、どのような法的な紛争解決手段があるのか、権利の実現をするための仕組みが用意されているのかというその制度自体がよくわからない、あるいは、そのもともとになっている法律自体もよくわからないということで、悩んだり苦しんだりしているのが実情ではないか。そういった者に対して援助の道が開かれていないというのは、やはりこれは欠陥と言わざるを得ないわけです。  三番目の問題は、償還制の原則の問題。先ほど永盛さんがおっしゃいましたとおりですので、ここは重複を避けます。  四番目の問題としては、扶助の実施体制の整備が必ずしも十分ではないのではないかというふうに思われます。確かに、今度の指定法人、新たな体制がとられるということになりますけれども、全国的に見渡してみますと、それを提供する側、サービスを提供する側の弁護士さんたちの体制が、整備が相当立ちおくれているというふうに言わざるを得ないわけです。これは、体制ができて、後、この制度を発足させるということにはなかなかならない。もちろん、制度をスタートさせながら、そこから仕組みをつくっていくということであろうかと思いますけれども、そのためのプログラムが必ずしも十分ではないというふうな感想を私は持っています。  そこで、今後の運営に当たっての、どういったところが重要なのかなということで幾つか申し上げたいと思いますけれども、まず第一は、法律扶助といいましてもやはり裁判ということですから、裁判の独立ということもあります。やはり指定法人の運営に当たっては、必要な監督は当然必要だとしましても、国などの余分な介入があってはならないだろうというふうに思います。一方、従来は弁護士会の自前の組織といった形で運営されておりましたけれども、弁護士会からもやはりこれは独立した機関ということで、その自立性、自主性というものが尊重されるべきであろうというふうに思っています。  それを前提といたしまして幾つかのことを、私なりに感じていることを申し上げたいと思います。  まず第一は、原則償還制であっても、できるだけ免除などの規定を柔軟に運用していただきたいということです。法律の中に細かなところまで書かれておりませんから、今度、省令ですとか、あるいは業務規程などでその辺のところはカバーされるのだろうと思いますけれども、法律の枠が比較的弾力性があるということがこれはむしろよかったのかなという気がいたしますけれども、そこのところは今後の弾力運用に道を開いていただきたい、これが第一点であります。  二つ目としましては、今、さまざまなところでいろいろなトラブルが起きていると思います。私は労働問題も担当しておりますので、例えば都道府県などの労政事務所あるいは労働基準監督署などに行ってみますと、個別の労使紛争、例えば賃金が不払いであるとか、あるいは突然首切りされたとか、あるいは解雇予告手当もないといったようなことが横行している、横行とまで言うのは少し言い過ぎかもしれないけれども、非常にたくさんあります。東京都内の労基署だけでも十万件、二十万件といった相談が来ているというふうに言われます。どれぐらいあるのかよくわかりませんが、例えばそうした相談というものが法律相談という形で扶助の仕組みに入ってこないものだろうか。消費者被害というものも大変横行しているように思います。  またもう一つは、犯罪被害者の問題、今大変注目をされております。それをどのようにバックアップしていくかということの中にこの扶助制度というものを位置づけることができるのではないか、リンクさせていくことができるのではないかというふうに思っているわけですが、具体的にどのような手法が可能なのかは今後ぜひ検討していただきたいなというふうに思います。  さらに、現在、自己破産についての扶助件数が約半数というふうにデータの上はなっていますけれども、現実問題、予備軍と言われる人たちが百万人とも百五十万人とも言われているわけです。その人たちがわらをもすがる気持ちでたどり着いたところが整理屋であったり提携弁護士ということ、最近事件が示しているとおりなのですね。これをきちっとバックアップする、それを受けとめる仕組みがないために、こうしたわけのわからない連中がばっこしているというわけだと思うのですね。  その意味でも、この扶助制度、法律相談などの体制を整備して、そこの中から、こういう人たちがきちんと自分である程度お金が払えるというのであれば任意整理などができるような仕組みをつくっていく必要があるのかなという気がします。  四点目といたしましては、やはり地域の問題、弁護士偏在の問題をどうしても指摘しておかなければならないわけです。全国均質のサービスを提供できるようにしろというふうに法律には書かれております。これをいかに実現していくかというのは大変重い課題だろうというふうに思うわけです。  最近、弁護士会の中でも、そうした弁護士過疎地域に法律相談センターをつくる、あるいは日弁連版の公設弁護士事務所をつくるといった計画がスタートしております。来週の月曜日には対馬に第一号の弁護士事務所が開設されるようですけれども、しかし、そこに至るまでの弁護士会内部の検討の経過、議論の経過などを見ていますと、やはり縄張り意識というのが表に出てきているというふうに思わざるを得ないわけです。非常に体制がおくれているところ、年間扶助件数が十件にも満たないようなところを放置することはもはや許されないわけですから、弁護士会は垣根を取っ払って、広域的な実行体制をとる義務があるのではないかというふうに思っています。  もう一つは、自治体の関与というものを積極的にぜひやっていただきたいなと思います。  北海道が来年度の予算に百万円の弁護士過疎対策予算というのをつけています。これは、弁護士会の方から、公設事務所に対して自治体の援助が欲しいというふうに申し入れましたところ、北海道側が、堀知事さんが、いや、そんなちまちました制度ではなくて、弁護士がいないがゆえに法的なサービスを受けられない住民のために自治体として何ができるか、少し一から検討してみようではないかということで、百万円の調査費をつけられたそうです。大変注目すべき動きだと思いますけれども、将来の法律扶助は、住民サービスというところがどれだけできるのか、自治体の関与がどこまでできるのかが一つのポイントではないかというふうに感じています。  将来の課題ということでありますけれども、憲法三十二条の裁判を受ける権利を保障するということでこの制度がつくられています。資力がないがゆえに裁判という機会を逃してしまうことがあってはならないということでありますけれども、この裁判を受ける権利をもう少し拡大をしてみますと、資力がないために裁判が利用できないというだけではなくて、さまざまな障害のために司法的な救済あるいは司法的な紛争処理システムにアクセスできない人たちに対するアクセスの機会を広げていく、それが実質的な裁判を受ける権利につながるのではないかという気がするわけです。  現在は、貧困であるがゆえに権利の実現ができない人たちに対する福祉対策という色彩が大変強いわけですけれども、もっと目を開いていくと、貧困だけではなくて、さまざまな障害のために司法にアクセスできない、そうした国民の広い層に対して司法への接点を提供していく仕組みへと変えていく、こういう展望が必要ではないかというふうに思います。イギリスが法律扶助法を司法アクセス法へと衣がえをしたそうですけれども、これは増大する扶助に音を上げたという面もありますが、もう少し前向きにこの改革などもとらえていく必要があるのかなという気がします。  そして、最後にぜひ申し上げておきたいのは、刑事事件の被疑者弁護の国選もしくは公選、公的な弁護制度の創設、そして、少年事件については、もはやこれはやるという前提で早急に検討すべき時期に来ているというふうに思います。ぜひ国会のお立場でもそうした方向性を確認していただければというふうに思います。  私の意見は以上です。(拍手)

武部勤自由民主党

○武部委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

武部勤自由民主党

○武部委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 三人の参考人におかれましては、貴重な御意見をありがとうございました。自由民主党の杉浦正健でございます。  まず、いろいろ前向きの御意見でありながら、しかもいろいろな問題点、将来の課題の御指摘があったわけですが、それにつきましては、今、司法制度改革審議会というのが内閣にできておって、そこで多方面にわたって審議が進められておるということ、そして、自由民主党としても、その審議会をつくれと言ったのは我が党ですから、そういう立場で、審議会の論点整理に基づきまして五つの小委員会を立ち上げまして、この法律扶助制度の改革を含む国民の争訟支援に関する小委員会というのがあるわけでありますが、私が小委員長を務めさせていただきまして、既に素案ができ上がっておるところでございます。  私どもの考えておる素案では、御指摘のございましたさまざまな点については、抜本的な改革を加えるという方向性を打ち出しておるところでございます。  まず、民事のみならず刑事について、少年事件も含みますが、扶助を実施すべきだ。そして、国選弁護人制度もこっちに取り込もう。起訴前、起訴後、全体について統一的な扶助の制度を構築すべきだという考えでありますし、それから、民事の方では、法人に対する支援が入っておりません。中小企業、小規模企業の法的ニーズに対して法的支援が必要だろうということで、素案を作成いたしております。  また、実施体制につきましても、この際、特殊法人というのは、行政改革で特殊法人を減らせという時代ですからちょっといかがなものかということで、特殊法人に近い、指定法人ではない認可法人という形で大規模な組織を立ち上げ、国、地方自治体に協力義務を負わせ、弁護士会もそうでございますが、国民の目から見て、例えば窓口とすれば、市町村役場へ行っても窓口がある、国の法務省とか裁判所、検察庁等々にも相談窓口があるという、国民がアクセスしやすい、セーフティーネットとしての組織を立ち上げなければいかぬのではないかというような考え方で素案をまとめたところでございます。  御指摘のあったいろいろの問題点、将来については、私どもの案がまだ党の正式な了承を得ておりませんが、得られ次第、審議会の方にも提出いたします。所得層も二割から四割ぐらいまで広げるとか、いろいろ考えておりますので、実現していけばほぼカバーされるのではないかと思っておる次第でありますことをまず申させていただきます。  私は、ここに永盛先生お見えなのですが、永盛先生に対してどうこう申し上げるつもりはありません。今まで、法律扶助事業が、永盛先生のような誠実で正義感にあふれた多くの弁護士の方々の尽力で本当に維持されてきたことは一二〇%認めております。  私も、弁護士時代に扶助事件を幾つか担当いたしましたし、第一東京弁護士会の副会長のときには扶助協会担当でございまして、扶助協会の実態についてはよく知っておりまして、当時からいろいろこれはおかしいということを言っておった一人でございますが、あえて言わせていただくと、我が国の法律扶助事業の不幸は、弁護士会が主体になってスタートしたという点にあると思うんです。  長谷部先生の御指摘のイギリスは、国がやっているのと同じなんですね。日本流に言えば独立行政法人というか、そういう国の実施であって、予算は青天井、権利性が認められておりますから。もう国の事業に等しい。それから、扶助事業は裁判所がやっている国もあるんですね、ドイツ、フランス。大体、扶助事業をきちっとやっている国、予算も多くしている国は、国ないし特殊法人といった国家事業としてやっている国がほとんどでございます。我が国では、スタートは昭和二十七年ですけれども、弁護士会が担ったという点に私は大いに不幸があったと今でも思っております。  なぜかといいますと、日本の弁護士会、日弁連は、強制加入団体でありながら、政治的偏向といいますか、傾向が強かったわけですね。最近は、非常に地に足がついてこられたということは評価しております。サービサー法の制定で、私主任で、日弁連の方ともいろいろ協議して、おととし成立させていただいたんですが、非常に現実的になり地に足がついてきたことは認めます。しかし、いまだ非常に政治的偏向の傾向はあると言わざるを得ない。かつてはひどかった。  法曹三者協議というのがあるわけですけれども、私が理事者のころはことごとく対立して、最高裁判所の言われること、法務当局の言われることには日弁連は反対だ、対決姿勢でございました。その傾向がずっと続いておりまして、最近は非常に緊密で、今度の場合は研究会を立ち上げてやられたんですから、随分協調的になられたな、時代の変化もあるかなと思うんです。しかしながら、最高裁判所と、この間、法曹一元化で私、そっちの小委員長になりましてあれしましたら、相当な激論をなさるという状況でございます。  したがって、最高裁判所にしても、法務当局、その後ろには政治があるわけですが、日弁連イコール法律扶助ということになりますと、非常にアレルギーが強くて予算をふやすどころの話ではなかったわけであります。  今度の予算がふえたふえたといって喜んでおられますが、中身を見ますと、要するに個人破産事件が物すごくふえたんです。だから、裁判所が手をやいて困ってしまった、破産部が。破産部が破産する。弁護士さんの協力がなければ、管財人がつかないとえらい手間がかかるわけですね。それで、そういうことがあって裁判所も腰を上げ、我々も協力して予算をふやしたわけであって、実態は、通常の扶助事件はほとんど変わっていないです。まだまだ腰が引けていると言っていいと思うんです。  例えば、扶助協会も、永盛さん御説明なさいましたが、本部と東京支部だけ一応独立した事務所がありますが、そのほかの五十ぐらいの支部はみんな弁護士会の中にあるというか、弁護士会がやっているんですね。職員も弁護士会の職員が扶助事業を窓口としてやっているだけです。東京都本部にしたって、法曹会館の中で七、八十坪の部屋を提供を受けていますけれども、賃料も払っていないんですよ。電気代、ガス代、水道代ぐらいは払っておられるようだけれども。しかし、東京三会の中にも担当者がいるわけですよ。そうでないと回らない、日弁連もそうですけれども。要するに弁護士会の子会社というか、一部と言っていいですね。事業は弁護士さんが主としてやっているわけです。ノウハウも蓄積されています。弁護士会の事業だと言っていい状況ですね。これがある。したがって、ほかの最高裁や法務省あるいは政治の世界でも、それに対するアレルギーというのは相当あるということは認識しなきゃいけないと思うんですね。  それから、若林参考人が指摘されていましたが、国民からのアクセスという面から見ても、裁判所の場所ですら知らない国民が多いわけですから、弁護士会がどこにあるか大多数の国民は知らないですよ。だから、扶助制度のPRも足りない。制度そのものを知らない国民も多い。ひとしく国民に均てんされるべき制度といいながら、そういう不幸なために、国民のサイドから見てもアクセスがほとんど不可能というか著しく困難な現実の体制だと言っていいと思うんですね。永盛参考人、後で御意見があったらおっしゃっていただきたいのですが。  したがって、私は、この事業を再構築するに当たっては、やはり弁護士会は大政奉還をすべきだ。つまり、国に、裁判所の一部を提供してやってくださいと言うぐらいの改革する姿勢がないと、うまくいかないという気がするんです。  今度、新しい認可法人になれば刑事も入ってきますから、刑事事件というのはこれは国の刑罰権の行使に対して弁護士さんが闘うという制度ですから、そういうのを取り入れた法人になれば、弁護士会がいなくなっちゃ困りますから、最高裁、法務省、弁護士会から等距離のところに事務所を設けないといかぬということにならざるを得ないと思うんですが、この制度のスタートのときから大政奉還されたらどうかというぐらいに私は思っておる次第であります。  その私の意見に対しまして、時間が少なくなって済みませんが、三人の方から御意見を承れればありがたいと思います。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 事業主体を弁護士会ではなくて国が行うべきであるという御意見は全く私も賛成でございます。  意見陳述の中でも述べましたけれども、民事法律扶助制度の最も重要な意義の一つは、私は、公共財としての判決を形成するということにあると思いますので、民事訴訟事件に対して援助をすることによって大変有用な判決が出てくる、そういうことというのは非常に公共性が高いというふうに考えておりますので、これは、弁護士会とは独立にまた公平に行われるべきであるというふうに思います。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 先生の御意見は、法律扶助を発展させようという非常に積極的なものでありまして、その点では私たちも全く同じ考えです。ただ、先生の小委員会プロジェクトチームの案については、なおいろいろと検討しなければならないところがあるのではないかというふうに思っております。  まず、指定法人ではなく認可法人ということですけれども、認可法人の場合には、指定法人と比べて極めて監督が強くなっております。例えば役員なども、指定法人の場合には、指定法人側でこの人でいいんじゃないかということでその役員を大臣が認可をするという、主導権は指定法人側にあるわけですけれども、認可法人の場合には、その役員は法人側の意向ではなくて直接法務大臣の任命というふうにトップはされておりまして、そういった点で、先ほど私が申し上げましたような法律扶助の自主性などについて、特に刑事を行うということになりますと、この点についてやはりいろいろな議論があり得ることではないかというふうに思っております。  それから、認可法人の場合には、原則として法律で規定されている事業以外の事業はできないんだというふうに言われておりまして、ここで自主事業ができるかどうか。例えば犯罪被害者の問題、私たちも検討しておりますが、対象層が二割であるというけれども、犯罪を受けた人たちが損害賠償を求めるのに、あなたは二割以下でないからだめですよというふうに言えるかどうかというと、やはり、少なくとも四割ぐらいまでは対象にすべきではないかと考えております。しかし、今の制度のもとでは、二割層以下が対象だということですので、この人たちは国庫補助対象事業は受けられないわけですね。したがって、当面自主事業から始めて、実績ができてから次第に国庫補助がつくように努力をするというような、そういう運営も含めて、これが認可法人のもとでできるのかということなどについてはなお検討が必要であろうかというふうに考えております。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 今自民党で検討なさっている、大変前向きな姿勢であるというふうに評価というか受けとめております。ただ、幾つか気になる点が正直なところないではない。  一つは、弁護士会から自立しなければいけないという点、それは私もそうだと思うんですね。やはり、弁護士会という尾っぽを引きずっている限り、既得権なり利害関係といったものがどうしてもそこに色濃く出てしまうという意味で言えば、これは自立性は高めなければいけないと思いますが、その一方で、国の監督というものが、どのような形にせよストレートに及ぶということは、とりわけ刑事の場合にはやはり相当慎重でなければいけないというふうに思っています。どのような仕組みが最も望ましいのか、なかなか今結論は出ませんけれども、それは慎重でなければいけないというふうに思います。  それともう一つ、ガイドラインといったことも何か入っているようですけれども、弁護の中身については、一定のガイドラインといったものがあり得るのかどうかということについても、私は、詳しく検討したわけではないのですが、ここについてもやはり慎重でなければいけないのではないかと思います。  ただ、この制度をつくっていかなければならないその時期に来ているということはもう間違いないことでありますし、それについて積極的な一つの提言を出されるという点については、大変前向きな姿勢であるというふうに思っています。  以上です。

杉浦正健自由民主党

○杉浦委員 残念ですけれども、時間がありませんので、終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 北村哲男君。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  きょうは、お三人の先生方、どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。  私は、幾つか先生方にお伺いしたいと思うのですけれども、まず最初に、長谷部参考人にお伺いします。  イギリスのことをよく御存じというか、お調べになっているようで、先生の論文も拝見いたしました。今日本の法律扶助は出発したばかりなのですけれども、イギリスはほとんど定着していて、非常に多くの人々がやっておられると思うのですけれども、いわゆる刑事事件あるいは少年事件、そういうものも大体法律扶助の中に含まれてお考えなのでしょうか。というのは、先ほどから、後の永盛先生、若林先生から、刑事の被疑者弁護あるいは少年保護事件なんかも含めるべきであるというふうなことを言っておられますけれども、イギリスのような例は、大体そういうものも含めてやっておられるかどうか、御存じでしょうか。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 イギリスの場合には、法律扶助法のカバーする領域は、刑事及び少年事件も含んでおります。ただ、歴史的ないろいろな沿革がございまして、従来は国がつくっているところの委員会が担当しているのは民事のみということでありまして、刑事事件については裁判所の管轄ということになっておりましたが、現時点におきましては、すべて国が設立した委員会の管轄ということになっております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 要するに、国民の立場、使う方の立場からいえば、私は資力がないという場合は、法律扶助で、民事であろうと刑事であろうと、これは自由に利用できるのだという感覚でやっているというふうに伺ってよろしいわけですね。——それはそれで結構です。  それで、もう一つ長谷部先生、日本の法律扶助の場合は、今まで弁護士会が担ってきて、それから今回は指定法人がやるということで民間でやりますね。日本では国選弁護は国がやっておるということでありますが、そこで少年事件とか被疑者弁護というのは外れているのですけれども、これはやはり民間か国家かということによって違うというふうな考えになるのでしょうか。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 イギリスのことを申し上げますと非常に長くなりますけれども、例えば、イギリスにおける当番弁護士制度というのは、八八年の法律ができる以前に、弁護士の団体であるところのローソサエティー、日本の日弁連に相当するとお考えになっていただいてよいと思いますが、そこが法律扶助制度を運営しておりましたときに、新たなスキームとして開拓したものでございます。したがいまして、弁護士サイドで、例えば、実務上こういった問題について扶助が必要である、そういう認識から始まったものということが言えます。したがいまして、弁護士会がイニシアチブをとっていたことがプラスに影響したのかなという気がいたします。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 もう一点ですけれども、今回は法律扶助制度ができました。国が二十一億円の予算をつけました。永盛先生のお話だと夢のような数字だというお話でしたけれども、ところが、外国との比較表を見ると、片や負担額が国民一人二円、片や三百何十円という、百倍以上の規模でやっています。先生の目から日本の出発したばかりの法律扶助制度をごらんになって、何だつまらないものだというか、あるいは、これはすばらしい出発だというふうなお考えでしょうか。感想を言ってください。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 私は、意見陳述の中でも申しましたけれども、これから民事法律扶助制度がどのような規模でどのような内容で行われるかということは、法案を見ただけではまだわからないというふうに思っております。  補助金として二十一億円とおっしゃいましたけれども、それがもっと拡大されたものが補助金として今後継続的に交付されるということであるならば、これは出発点としては悪くないというふうに思っておりますけれども、それが一体どういう使い道になるのかというようなことも考え合わせませんと、全体の評価は難しいというふうに思っております。  そうであるからこそ、運営について、基準の透明性の確保であるとか、あるいは、国民から弁護士会のための、弁護士さんのための扶助ではないかというような誤解が生じないような運用が必要であるというふうに考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 どうもありがとうございました。  永盛参考人、私も同じような考えというか、刑事被疑者弁護とか少年事件、どうにかできないだろうかと思って、この審議の中でも法務省当局にそういう質問をしたりしています。  そうすると、片や国家のもとに強制的に拘束された人間を弁護する場合の保障は、憲法上も条文は分かれておる、三十二条とそれから三十七条ですね。ですから、刑事被疑者弁護とか少年保護事件はそちらの方でやるべきであって、民間がやる法律扶助の対象ではないということで峻別している考えなのですね。  しかし、大まかに言うと、使う方の人間から言えば、あそこに行けば助けてもらえるのだという意味では同じだと思うのです。そのあたりは、先生方の当初の考えは一緒にやるべきだという議論をしておられたと思うのですけれども、どこかで分けられた。しかし、それはそれとして今回は民事だけで行くというふうな方向をつくられた、それを承認されたというか了解をされてきておるのですけれども、そのあたりはどうなのですか。将来的には、この民間の事業がそういうものを含めてやっていくべきだというお考えか、あるいは、法務省が言っておるような、全然別体系だからそちらで考えるべきだというふうにお考えなのでしょうか。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 研究会の中でも、私たちも総合的法律扶助ということを主張しまして、今、刑事国選も広く言えば法律扶助、リーガルエードだと思いますけれども、全体の、被疑者、少年なども含めて総合的な法律扶助政策を確立すべきだということを主張してまいりました。  これは、必ずしもそれを同じ主体でやれということではありませんで、主体はそれぞれの性格によっていろいろ選択のあれがあり得るだろうというふうに思っております。  今、刑事、少年に対して国庫補助を実現するとすればどういう形がいいのかということがいろいろ研究されておりますが、私たちとしては、方向性が決まって、例えば法律扶助協会で同じように指定法人としてやれということであれば、それは私たちはやる用意がありますし、その準備もまた進めております。現在、自主事業として行っているのは私たちの法律扶助協会の支部ですので、これが移行するということであれば、それは十分に可能であろうというふうに思います。  先ほどもおっしゃいましたように、刑事の問題というのは、監督との関係で非常に微妙な問題、デリケートな問題がございまして、諸外国でも、捜査側が刑事弁護を監督するという制度というのは、どうも見たところ余りないようでして、その点も含めて、法務大臣の監督の強い形で刑事弁護を傘下にするというのは果たしてどうなのかということも議論されなければいけないだろうというふうに考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 確かに、刑事弁護費用というのは今裁判所が払っているわけですけれども、これがまた、制度はあるというものの本当にまさに弁護士の犠牲のもとに、安いし、幾ら言っても値上げをしない。だから、本当にボランティア活動としてやってきているわけですね。それでもって、扶助とは全然別で、その周辺のものについてもそれと同じように考えるべきであるとなれば、これはまた刑事弁護そのものが実質を伴わない。  私も、これは私どもが修習のころです。けしからぬことだけれども、ある裁判官が、国選弁護人がついた場合と私選弁護人がついた場合は量刑が違うと言うんですよ。なぜか。国選弁護人はおざなりにやる、しかし、私選弁護人は自分の身銭を切って弁護士を頼んでいるからそれだけのことはしてあげるんだというふうな、そんなばかな考えを私たちの修習生のころは言われた。  僕は、本当にそういう意味では、弁護士会のときも国選弁護担当をやりまして、必死で国会に来て値上げを求めているんだけれども、一年に二%から三%ぐらい、人勧と同じぐらいの、よその委員さんも少ししか上げないからそれぐらいしかできない、それぐらいのものなんですよ。  ところで、余計なことをしゃべりましたけれども、法律扶助についてもやはり同じようなことで、まさに弁護士のボランティアとして今までやってまいりました。それで、今後、ことし二十一億円の予算がついた、その対象が二割ぐらいの低所得層の人たちを対象にしている、そういう中で法律扶助活動をやる中で、また国選弁護人のような犠牲というか、弁護士そのものの責務かもしれませんけれども、そういうことが続けて行われるのではないだろうか、そうすると、そういうことの処理がまた安かろう悪かろうみたいな形になっていってしまうのではないだろうかという気持ちがあるのです。  そのあたりは、私が国選弁護で苦労している点と、法律扶助協会での御苦労の点は、いかがなものでしょう。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 先ほども申しましたように、法律扶助協会は国民のためということでやっております。したがって、そういう立場から見て弁護士費用をどう見るかということなんですが、これは安ければ安いほどいいじゃないかというふうにはやはりいかない問題であろうというふうに思います。  弁護士の犠牲的な精神の上にしか成り立たないということは、多様な人たちがこの扶助事業に参加をするということを妨げる要素でありまして、一般の弁護士費用と同じだとは申しませんけれども、やはりできる限りそれに近いものが支払われる方が、いろいろな弁護士さんのサービスを求める上では必要ではないかというふうに考えております。  国選弁護の費用が安いことは、これはもう本当に事実でありまして、その点も、今申し上げたようなことから、もっと改善が必要だというふうに考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 法律扶助協会の場合、現状は、弁護士会が規定している弁護士規定からいうと、国選弁護ははるかに低い、それよりもかなり、普通の弁護士さんの普通の事件処理に近いような額を支払われておるのでしょうか。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 民事の方ですが、法律扶助の費用基準というのは、弁護士会の規定と比べますと明らかに安くなっております。そういった点では、担当弁護士さんの犠牲のもとに現在の扶助事業は成り立っている。  これは、できれば弁護士会になるべく、基準どおりとは私も申し上げませんが、そんなに弁護士個人の負担にならないような額にしたいとは思っておりますけれども、これまではとにかく資金不足でございまして、少ない資金を有効に使うために、かなり担当弁護士にも犠牲をお願いしてきたということであります。明らかに低いというのが現状です。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 明らかに低いと。  私は国選のことしか知らないので、法律扶助の場合はそれと同じくらいひどいのか、あるいはそれよりはましかということはどうなんですか。一言で結構ですが。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 その質問は非常に難しい質問であります。  というのは、やる仕事の中身がかなり違うのですね。民事の法律扶助の場合には、事件そのものの難しさもありますけれども、依頼者との信頼関係の確保ということに非常に気を使うということがあります。刑事の国選の場合にはいや応なしに弁護人となるわけですけれども、民事の場合には本人から委任状をもらってその事件を担当するわけですから、信頼関係が非常に大事なんですけれども、やはり貧困層という人たちというのは、それまでにもいろいろな社会的なマイナスの影響を受けておりまして、社会から差別されていたり、ばかにされたりという経験を持っている人たちが多い。そういう人たちと信頼関係を築くというのに、これは金銭面で評価できるわけじゃないですけれども、非常に苦労しているということを考えると、刑事弁護とどちらが安いかと言われると、ちょっと難しいなというふうに思っております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 どうも失礼しました。  若林参考人にもお伺いしますけれども、先ほど、刑事被疑者の弁護とか少年事件の付き添いが対象になっていないということを心配しておられました。そのあたりも一言御意見をいただきたいと思います。  償還制の原則が維持されたこと、これは柔軟に運用すべきであるというお話ですが、私はこれは、その前にやはり問題点として挙げておられる、中間所得層が対象となっていないことと関連するような気がするのです。  というのは、ある程度お金があっても訴訟のためのお金がないという場合は、それによって権利救済できるわけですから、そういう場合は償還してもらってもいいような人たちなんですが、今はまさに低所得層だけを対象にしておるものですから、これは本来は償還制であっても免除する対象の人だと思うのですね。だから、償還制か原則給付制かというのは余り問題ではなくて、むしろ、対象を広げることによって解決する問題ではないかと思うのです。  両方ともそういう問題提起をされておりますので、そのあたりについても御意見がありましたら、どうぞお願いします。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 恐らく、オール・オア・ナッシングで物事を考えるからこういうところで行き詰まるのではないかと思うのですね。  例えば、法律相談というのがあったとして、扶助だとただ、そうじゃないと全額払うというふうになりますけれども、三十分五千円のところを本人負担を例えば二千円とか三千円にして、残りを扶助の予算で入れる、あるいは自治体の予算をそこに入れるというようなことであれば、それなら、三十分で二千円なり三千円なりで相談できるのであれば自分も行ってみようとか。  やはり、自分でお金を負担する、出すということが本当に真剣に相談をするときにとっても重要だというふうに言われておりますから、ある程度の負担はしてもらう、しかしそれを補助するというような仕組みもあり得るのかなと。ゼロかすべてかという議論をするから、償還制か免除制かというややこしい法律論の世界に迷い込むので、その辺はまさに知恵が使えるのではないかというふうに私は考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 若林さんは、二年前に日弁連の「自由と正義」に「司法界変革への歩みを」という論文をお書きになって、大変感銘を受けて読みました。  三人の先生方、どうもありがとうございました。終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三人の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見、ありがとうございました。  おおむね、今回の民事法律扶助法は裁判を受ける権利の実質的な保障だということで大きな意義がある、しかしそれは第一歩であって、もっともっと充実拡大していただきたいという御意見だったかと思います。私も全くそのとおりでありまして、刑事被疑者に対する扶助、少年保護事件に対する扶助等々のため、私どもも努力をしていきたいと思っております。  最初に長谷部参考人からお聞きいたしますが、法律扶助の実際の機能が公共財であるというのは私も大変同感であります。それだけに、今回、民事法律扶助という形でつくられましたから、これが最大限機能するように法の解釈運用がなされなければならぬと思うのです。  そこでお聞きしたいのですが、私も前回この委員会の質疑で、民事法律扶助の対象を法務大臣、法務省に詰めたのですが、あくまでも対象は民事、家事、行政事件の裁判手続が基本であって、その準備、追行の中には、民事裁判等の和解の交渉で特に必要と認められるものは含むと、法案に書いてあるとおりなのですが、それ以外、本当に大事なのは、行政裁判などでは、異議申し立て、行政不服審査請求、これに対してもきちっと扶助が行われなければ実際には使われないということで、この準備、追行もこの対象に含めるべきだ、そう解釈すべきだと私詰めたのですが、法務省の答弁は、行政事件の前置としての異議申し立てや不服審査請求は援助の対象外であるという明確な答弁が出てきました。そしてもう一つ、先ほど先生もおっしゃられたADRについては、これは含みを持たせていきたいという答弁なのですね。  これは私は、せめて民事、家事、行政事件について、裁判の前置たるいろいろな、ADRも含む不服審査請求、異議申し立て、これも含めてやはりこの法の援助の対象にすべきだ、そう解釈してもいいのではないかと思っているのですが、その辺についての長谷部参考人の御意見をまずお伺いしたいと思うのです。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 行政不服審査につきましては、二つの方向性があると思います。一つは、先生がおっしゃるように、民事法律扶助の対象とする、そういう形で援助するという方法も考えられるかと思いますが、もう一つの方向性は、行政不服審査の手続を本人でもできるような形に簡略化する、あるいはアクセス可能なものにする、そういう方法もあり得ると思います。  イギリスの法制度というのは、行政不服審査に対応するような手続というのは非常に簡便であって、弁護士がつかなくても本人でできるという、そういう建前のもとに、原則、民事法律扶助の対象からは外されております。現在の行政不服審査が極めて複雑であるということであるとするならば、どちらの方向をとるかというのは決断の問題だと思いますけれども、扶助の方向だけではなくて、手続を本人でも使えるようなものにする、そういう方向性もあり得ると思っております。  ADRのことでございますけれども、私は公共財としての判決を生み出すのは訴訟に限るというふうに考えておりまして、ADRも広くとれば、訴訟手続中、係属中の和解というようなことも含めてADRと考えるのであれば、それも含まれるのかなという気はいたしますけれども、原則、ADRにおいて公共財の提供というのは期待できないわけでございますので、そういう意味ではプライオリティーは下がるかなという気はしております。  ただし、ADRによって例えば何らかのルールができてくるというような保証があるとするならば検討する余地がないわけでもないと思いますけれども、現時点においては、我が国においては判例がないというふうに言われているわけですから、まず訴訟援助を第一義に考えるべきであるというふうに思っております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私の質問の意図が誤解されたかと思うのです。  裁判が公共財だというのは当然なのですが、それに行き着くためには、日本の行政法体系の中では異議申し立てや行政不服審査を通過していかなければ訴訟そのものになかなか到達しないわけですね。それからADRもそうなのですね。公害紛争にしろ住宅建築に対する紛争にしろ、まずそこを通過して、そして最後のとりでとしての訴訟というのが大体通例でありますから。ですから、本当に法律扶助で裁判を受ける権利を全うせしめるためには、その前段階としての行政不服審査や異議申し立てにも扶助を与えなければいかぬのではないか、ADRについても扶助を与えなければいかぬのではないかということで質問したわけなのですが、なかなか国がそういう立場に立ってもらえていないということなのです。  では、これは永盛参考人に。  実際の運用はどうなのでしょうか。それから前段階での紛争解決機能にもこの法的扶助を付与すべきでないかと考えておるのですが、いかがでしょうか。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 これは研究会でもいろいろ議論になったところでありまして、私たち扶助協会は、そういった行政手続についても民事法律扶助を適用すべきだということを主張いたしました。それは研究会の中ではまとまらなかったわけでありますけれども、少なくとも、争訟性の高い行政手続については扶助をすべきだということを主張していたわけです。  したがって、今先生が言われたような点については、これは法律扶助の対象とすべきだというふうに私は考えておりますけれども、例えば争訟性の高いということ一つをとってみても、どういうようなものが争訟性が高いのかということなどについて、実はまだ余りそういう点の議論は研究会でもなされなかったわけでありまして、至急その点を詰めながら、前向きの方向で積極的に取り組むべきではないかというふうに考えております。  それから、あと、ADR等の手続について現状どうなっているのかということですけれども、これは裁判の前の援助として和解交渉事件というのはいろいろ扶助をしておりますけれども、そういう裁判前の和解交渉の一つの、交渉が行われる場としてADRが使われる場合があるわけですね。例えば弁護士会の仲裁手続とか、そういうようなケースについては、これはADRそのものとしてではないのですけれども、現状で、その和解交渉の一つの手段ということで扶助をした例がございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 次の問題として、七条の報酬と実費の基準の問題なのです。  先ほども同僚委員からの質問にもありましたが、法律扶助の対象になった事件だから、いささかも手抜きをしていいということは絶対許されないと思うのですね。安かろう悪かろうというのは絶対許されない性格の問題だと思うのです。私、先日、扶助協会の皆さんから聞いたら、現実に、弁護士会が持っている報酬基準と法律扶助で支給される費用とは、大体半分くらいではないかとお聞きしたのですね。それで、その問題をどう考えるのか。これから指定法人が指定され、それが業務規程をつくり、その業務規程の中で報酬と実費の基準がつくられて、それが大臣認可を受けるわけですが、現在ある弁護士会の報酬基準とこれからつくられるであろう報酬と実費の基準、その格差をどう考えているのか、これも永盛参考人からお聞きしたいということ。  もう一つついでに、現状では予算が足りませんから、同じ破産者の法律扶助申請があっても、年末近くに来たものは、もうお金がなくて切り捨ててしまうということが現状のようです。法律ができた以上、そんなことは許されないわけですね。しかし、予算が少ない場合にはそういうこともあり得ると。そういうことは解消しなくちゃならぬと思うんですが、その辺も含めて、永盛参考人からの御意見をお聞きしたい。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 格差については、いろいろ事件の種類によってかなり違いがあろうと思います。  例えば金銭請求事件、損害賠償とか、そういう場合で、現実に金銭が入ったという場合には、弁護士会の規定の最低限、標準よりも三割マイナス、それとそんなには差がないというふうに言われております。  ただ、扶助事件の中でも非常に件数が多いわけですけれども、例えば離婚事件など、特に扶助の離婚事件は、依頼者も資力がないけれども、相手も資力がないという場合が多いわけですね。籍だけ抜いてくれれば結構というような事件が多いんですが、そういう場合の着手金あるいは報酬というのは、明らかに半分以下であろうというふうに思っております。  そういった点で、この格差については、きめ細かな検討を経た上で、少なくとも弁護士会規定の最低限、三割程度ぐらいまでには早期に近づけたいというふうに考えております。  それから、現在、資金的制約のために、例えば自己破産事件などについて、非常に事件が殺到しているにもかかわらず、これが十分対応していないということは御指摘のとおりでありまして、例えば、今の自己破産事件の扶助では、一般の基準よりももっと厳しくしているわけですね。原則として生活保護を受けているということで、一般の扶助基準よりもむしろ対象を絞っているわけです。  それは、昨年度で十万件ですか、裁判所に対する破産申し立て事件のうち、本当は二割から三割ぐらいは扶助しなければいけないんだろうと思いますけれども、それをやっていると到底お金がないということで、そういうふうに絞って、昨年度で破産が大体五千件程度ですか、そういった実態については、資金的な制約がそういう扶助に手を差し伸べてくる人たちに対する救済を拒んでいるということになっているわけで、何とか改善したいと思います。  今年度については、自己破産事件が急増したという状況のもとで、補正が三億程度つきましたので、これで私たち非常に助かっております。次年度以降も、一つの大きな、扶助に関する情勢がどうなるかということを見て、補正等については積極的に運用していただければというふうに、この機会をかりてお願いを申したいと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 若林参考人にお尋ねします。  参考人から、法律扶助制度に利用者の側の視点が必要だと。本当に私も共感します。  そんな立場から、参考人が、日弁連の機関紙である「自由と正義」の九八年一月号に「司法界変革への歩みを」という論文をお書きになって、読ませていただきましたが、大変共感するところがたくさんあったわけです。  きょうもお述べになっておりましたが、日本社会で紛争や相談は物すごい数がある、しかし、現実に裁判所に持ち込まれる訴訟件数はわずかな数字であると。その論文で、参考人は、自治体や労基署の窓口に殺到する数十万件の相談と裁判所に持ち込まれる件数の落差、九六年で二千二百十一件にすぎない、本案訴訟は千五百二十五件しかないのであるという数字まで挙げられて、この数十万件と一千、二千件というものの落差、これをどのように理解したらよいのだろうか、こういう根本的な問題提起をされております。そのとおりだと思うんです。  そこで、お聞きしたいんですが、この法律扶助法ができることによって、この落差がどのくらい埋まると考えておられるのか。あるいは、この落差を埋めるには日本社会の風土から司法全体を変えなきゃならぬとは思うんですが、これをどのように理解したらよいのであろうか。そのさわりのところを、ちょっと御披露いただきたいと思うんです。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 この法律で新しくつくられる制度で劇的に落差が埋まるとは思えないんですね。将来的には、やはり、どこかに行けば必ず法的な解決のアドバイスなり、もっと突っ込んだ相談なり、あるいは援助なりしてもらえるという場所、国民だれもが知っているような場所というのがなくてはいけないというふうに思うんです。  いざ、大変苦しんだり、悩んだりしたときに、弁護士さんに頼もうと思っても、私も随分、弁護士さんをいろいろ知っていますけれども、だれに頼んだら本当に誠実にやってくれるかな、こういうふうに思うと、よくわからなかったりなんか、正直なところあります。  普通、国民は、お医者さんには一生一度も顔を合わさずに死ぬ人はいませんけれども、弁護士さんに合わさずに済む人は相当多いと思うわけですね。でも、現実にはいっぱい、いろいろなトラブル、紛争が起きている、これは実態だろうと思うんです。ですから、私は、アクセス促進法をというふうに言ったのは、自分で勝手に名前をつけたわけですけれども、そうした体制をきちっとつくらない限り、やはり無理だろうというふうに思います。  ただ、今回の法案は、それのためのステップの第一段階というふうに位置づければ、それはそれなりに評価できますし、これから重要なのは、各地の扶助協会なり、あるいはその窓口というものがどういうふうに整備をされて、そこが広く知られるようになって、そこがどれだけ受け入れてくれるのかという、まさに運用のところにかかっているのかなというふうに思っています。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 その意味で、日本の国民なり在留する外国人が困ったときに、一番最初に駆けつける相談窓口というのは、現在では、やはり自治体ではないかなというふうに思うんですね。若林参考人から、この法案の運用上の留意点として、住民サービスとして自治体も積極的に援助することという指摘がありますし、自治体も関与した窓口の整備というのを非常に重視されておる。私も、本当に大事な勘どころだと思うんです。  それで、永盛参考人にお聞きしたいんですが、現在の法律扶助協会の相談の窓口としての自治体の位置づけ、あるいは自治体と現在の法律扶助協会との提携の状況、それと将来の展望、これが仮に指定法人に指定されたときに、本当に、自治体と連携をどれだけ強めていくか。  そうしますと、法律扶助協会の支部は全国で五十カ所でしょう、全国三千三百の自治体があるわけなんですが、そういう点についてどんな考えをお持ちであるか、現状と将来展望をお聞かせ願いたい。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 現状でも、自治体と扶助協会の各支部と非常に緊密な連絡があるところがございまして、自治体の方の窓口に来た方で、自治体の方が、この人はどうも扶助要件に当てはまるんじゃないかという方については、支部に紹介をしていただいて、それで、件数が非常にふえているというところもございます。  しかし、今までは、先ほど私が申し上げましたように、支部ごとの力量にかなりばらつきがあったということで、不十分なところもありまして、余りそういうことをやっていないところもあるということで、今後は、全国的に均質な運営の確保ということのために、扶助協会といたしましても、自治体との連携の強化ということを全支部に徹底していきたいというふうに考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 本法案で、私もいいのか不満なのか判断しかねているものが、ほとんど大事な部分が業務規程にゆだねられてしまって、法定事項になっていないというところなんですね。これが、長谷部参考人のおっしゃるように、インフォーマルな方式で、弾力的でいい面と、基準が不透明で疑問が残る、やはりそのとおりだと思うんですね。  それで、先ほど言ったように、せっかくいい法律ができても、運用基準が非常に不透明で、国民から見ておかしいというようなことがあってはいかぬと思うんですよ。さっきの破産の問題もそうですよ。お金がないから扶助してあげませんなんということがあったら、これはちょっと国民の信頼を失ってしまうということで、そうならないようにお願いをしたいのです。  最後に一点だけ。先ほど若林参考人から、余り画一的に考えないで、この金額は扶助をもらってこの金額は自己負担というので、それで裁判やったらどうかということを指摘されたのですが、現状ではそういう運用になっているのですか。認められているのですか、そういうことを。それだけお聞きして、終わりにしたいと思います。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 現状ではそういうことは認められておりません。したがって、扶助からお金をもらって依頼者からも少しお金をもらうというのは、これは許されないことになっているわけです。  ですから、私も冒頭の意見の中で申し上げました負担金制度をやはり採用するべきだということは、それこそオール・オア・ナッシングではなくて、本人にも、この人ならばこのぐらい負担できるという場合にはそれだけ負担していただいて、あとは扶助が負担するというような制度をやらないと、特に境目では、例えば、それ以下の人は全部免除をされる、あるいはちょっと上だと、これは免除はされなくて全額返さなきゃならない、さらにその上の境目には、ここまでは扶助するけれども、それ以上、ちょっとのことであなたは全く援助しませんというような、その境目が非常に今大きな段差になっているわけですね。  ですから、負担金制度をとることによってこの差を非常になだらかにしていくということ、そのことも含めて負担金制度というのは検討されるべきではないかという、それで扶助制度の依頼者の負担の合理化を図る、整備を図るということが必要ではないかというふうに思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 ありがとうございます。終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 まず、長谷部参考人に伺います。社民党の保坂展人です。  世界各国の趨勢に大変おくれをとってきたわけですけれども、今回、いろいろな問題点を残しながらも一定の前進という、私もそういうふうに評価するのですけれども、なぜこれだけおくれてしまったのかということについてお考えをちょっといただきたいと思います。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 恐らくいろいろな要因が複雑に絡み合っておりまして、一言で申し上げるのは難しいかと思いますが、一つは、訴訟に対する認識というのが、特に政府の、国の認識というのが余り十分でなかったということがあったかと思います。  日本人は伝統的に訴訟を嫌うというようなことが言われ続けてまいりましたけれども、ただ単なる国民性の問題ではなくて、訴訟制度が使いやすいものになっていない、あるいは訴訟制度を使えるような扶助のシステムというのが確立されていないということがあったかと思います。やはりそういった認識の欠如ということが一番大きかったというふうに私は考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 続けてお願いしたいのですが、残った問題点の中で、私もそういうふうに思うのですけれども、償還制、原則償還の問題ですね。これは、現在法律扶助協会の扱いにしても、扶助を決める場合の要件よりも、免除ということを最終的に決めていく要件の方がはるかに厳しいというふうになっていると思いますけれども、このあたりのところで、これから新しい指定法人が、むしろ免除についても、いわゆる原則は持ちながらももっと柔軟に、自発的に判断をするようにするべきではないかというふうに思うのですが、その点についていかがでしょうか。

長谷部由起子学習院大学法学部教授

○長谷部参考人 私も、免除の基準を弾力的に運用すべきであるということは全く賛成でございます。  従来の扶助協会の方のお話を伺いますと、原則償還制であるために、償還のための努力が非常に大変なものである、無理に回収しなければいけない、そういったところにエネルギーを費やさざるを得ないというのが非常に問題があるというふうに思います。むしろ、免除の基準をある程度弾力的にした上で、民事法律扶助というのは使いやすいものなのだという認識を広めていくということの方が大事だと思っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 続いて、永盛参考人に伺いたいのですけれども、今回、国の責務あるいは弁護士会の責務ということで明示をされたことによって、国が一定程度の予算を組んで、これまでに比べて多くの予算をそこにつけていく、それは諸外国と比べればまだ少ないという問題もありますけれども。  一方で、ずばりこのあたりどういうふうに予想されるのかなんですけれども、今まで大変な御努力で財源を立ち上げてこられた、そこの部分は、やはりこれは必要なことだからということでさまざまな努力が蓄積されたのだろうと思うのです。国の責務が登場した途端にちょっと気が緩んで、財源の方がむしろ難しくなる、こういう心配がないのかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 今まで乏しい補助金の中で、従来協会の財源というのは、弁護士会からの補助金、受任された弁護士からの寄附、さらには一般民間からの寄附、それから贖罪寄附と申しまして、刑事被疑者、被告人の方から反省のしるしとして受ける寄附、こういったものによって成り立っていたわけです。  その中でも、いろいろ考えなきゃいけないと思うのですが、受任弁護士、事件を行った弁護士からも今は、支部によって違いますけれども、大体一〇%ぐらいの寄附をもらったりしております。扶助の弁護士費用の中からその一割ぐらいもらっているわけですけれども、これは低い弁護士費用をさらに引き下げる結果になっているわけで、できればこういうものはやはり改善しなきゃならぬだろうというふうに思っています。今までは財源がないものですからやむを得ずそういうことをやってきたということで、これを何とか早く是正したいというふうに考えております。  同時に、そのほかの贖罪寄附あるいは篤志家からの寄附などについては、今の時点でほかの国のように全額国庫補助金で賄える状況ではありませんので、引き続いてこの点については気を緩めないで、寄附をお願いしたいということを弁護士会側にも呼びかけていくつもりでおります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 続けて永盛参考人にお願いしますが、指定法人となったことで、これまで協会が自主事業として続けてこられた、特に、刑事事件や少年事件はもちろんですけれども、中国残留孤児の国籍取得活動、あるいは難民認定手続に対する援助、大変地味だけれども重要な、ほかにやるところのない活動でございますね、こういう部分は今後、先ほどの財源の問題とも絡むのですけれども、しっかり、むしろもっともっと強化していただきたいと私ども思うわけですけれども、そのあたりの見通しはいかがでしょうか。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 この法案で指定法人制度が採用されたきっかけというのは、やはり直接的には自主事業ができるかどうかということでありまして、当初認可法人なども検討されたのですけれども、認可法人では自主事業はできないということから、それではこういうような、刑事、少年を初めとする多くの自主事業が新しい運営主体から抜け落ちてしまうのかということを非常に心配いたしまして、いろいろ検討した結果、法務省の方でも指定法人構想を採用されたということで、それは私たちも非常に高く評価しております。  そういうことですから、今後も自主事業については、幸いそういうことを一緒にやっていける見通しが立ちましたので、引き続いて、先ほどの犯罪被害者の問題などもこれからあり得ることですけれども、ニーズにこたえる努力を続けていきたいというふうに思っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、もう一問だけ永盛さんにお願いします。  いわゆるクレ・サラ関係の自己破産事件というのが急増しているということで、その中には、大変生活苦というか、いわゆる遊び型、遊興型の借金ではなくて、どうしようもない状態の中で借金に縛られて身動きできない、こういう方たちが多数存在するという、永盛さんの「世界」のインタビューにもありましたけれども。  そういう方たち、つまり通常よりもさらに時間的にも精神的にもゆとりがないという方たちがこの扶助の制度を申請する際に、破産手続そのものを司法書士や弁護士さんなりにお願いするときに一定の費用がかかってくる、二十万円とか三十万円。そういう費用を捻出することができないので、場合によってはまたサラ金から借りてくるなどの悲劇も起こっているというふうに聞くんですね。そういう部分も含めた扶助ということは、どうにかできないのかなというふうに私も思うんですけれども、そのあたり、実際のところはどんなぐあいになっているのか、ちょっとお願いしたいと思うんです。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 済みません。質問の趣旨が、私ちょっと読み取れなかったんですが、もう一度わかりやすくお話しいただけますでしょうか。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 裁判所に納める個人破産の預託金そのものは、一万五千円なり二万円という金額だと聞いているんですね。だから、これは個人で負担できる方が多いと思うんです、相当困っている方でも。ただ、破産申請者が自分でその手続をするというのは通常考えられなくて、やはり司法書士や弁護士なりに手続をしていただくという費用が発生してくる。それが二十万円から三十万円などと言われていますが、それがなかなか払えないということでサラ金に手を出すような方もいらっしゃるというような、そこの部分は何とか補助するというか扶助するということも、これだけ破産者がふえているという中で困窮者が多いということにかんがみれば考えてもよいのではないか。あるいは、実際の運用がどうなっているのかというあたりのことです。

永盛敦郎法律扶助協会専務理事

○永盛参考人 まず、弁護士費用については、これは法律扶助協会で全額援助をしております。  予納金については、現在の取り扱いでは、資金が不足のために本人負担ということになっておりまして、そういう状況の方ですので、予納金についてもできれば扶助できるようにしたいというふうには思いますが、現状ではそういうふうになっております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それでは、次に若林参考人に伺いたいんです。  大変ちまちまとした印象を受けるというお話、率直な御感想だと思うんです。間もなく提案される犯罪被害者関連の法案についても、私どもは基本法ということでしっかり整備すべきだと思っていたところ、何か幾つかあわせて、この程度でどうかというぐらいの感じで、大変共通点も感じるわけなんです。  若林参考人から見て、七年前の状況とかなり世論としても違ってきていると御意見の中で言われましたけれども、残された問題点の中で何を優先的に改革を急ぐべきかという点について伺いたいと思うんです。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 まず、刑事それから少年については、こういう制度をつくるということを確認を現時点でするというのが第一に重要かなというふうに思います。  民事の問題についていいますと、身の丈に合った制度としてスタートさせなければならないということはよくわかりますけれども、結局は、サービスを提供する側の体制がどういうふうにとれるかということだと思うんですね。これは、法曹人口の大幅増というものが当然なければいけないとは思いますけれども。  一つ、今、東京弁護士会がやっていらっしゃいます仕組みというのは参考になると思うんです。それは、たしか、月四十五万円という費用を出して、月四回ぐらいでしたか、大体週一回、一日法律相談をする、そして、破産事件二件など、ある一定の数の扶助事件を受けると、定額としてお金を弁護士さんに渡すという仕組みだそうです。  これで、弁護士さんは年収五百万余りの固定収入が入って、その扶助にかける仕事は、法律相談一日プラスアルファの扶助事件を受ければいい。これは、弁護士さんにとってみても、事務所費用のベースになるようなお金、収入が入って、六人の募集に対して八十人の応募があったそうですけれども。そうやってみますと、今の扶助の条件の中でも十分ペイする仕事ができると思うんですね。そして、そこに来られる弁護士さんの仕事ぶりを委託する側がきちっと見ていて、ちゃんと誠実にやっているかどうかということをやれば、一件一件で高いか安いかというのを議論するから、どうも安いんじゃないかということですけれども、例えばそういうふうにやれば回っていくだろうと思うんです。  都会ではだんだん弁護士さんのお仕事も少なくなっているということのようですけれども、実は、眠っているそういう法的な需要に対してきちっとマッチングするための仕組みがないために、多分そういうことになっているのかなという気がするんです。  知恵の使い方はいろいろあると思うんですね。そういう制度を東京で今試行的にやっているのが非常にうまくいっているとすれば、それを今度は地方にもどんどん拡大していく、それから、弁護士さんが広域的に業務ができるような、弁護士会の垣根を取っ払っていくというようなことを積極的に、指定法人がリーダーシップをとってやっていくというようなことをやれば、相当実のある仕組みとしてスタートするんではないかというふうに思います。  そうしますと、眠っていた需要もふえてきて、当然、予算二十億そこそこでは足りないということははっきりしてくるでしょうから、それはまた予算をきちっとつけていただくということでその制度が地についたものになって、国民みんながそういう仕組みが利用できるんだということがわかってくれば、また眠っていた、泣き寝入りしていたものが掘り起こされてくる。そういういい循環になっていくスタートラインにしていければというふうに思っております。  しかし、最終的には、やはり自治体なども絡んだ、きちっとした窓口を整備して、どこに行けばどういうサービスを受けられるかということがわかるような仕組みを将来的には設計していく必要があると思います。  以上です。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 最後に一点だけなんですが、若林参考人に。  犯罪被害者にとっての法律扶助、こういう仕組みについて、例えば身近な方を殺されたとか、あるいは交通事故でも重大な結果になって今危篤状態にあるとか、その事件や起こったことを受けとめるだけでも精いっぱい、何がどうなっているのかなかなか判断がつかないときに、また、その時期が割かし長く続く場合もあり得ると思うんですね、報道被害などもあるでしょうし。犯罪被害者にとっての法律扶助という点に限って、どういう工夫や努力が必要なのか、その点について伺いたいと思います。

若林誠一日本放送協会解説主幹

○若林参考人 被害者のバックアップというのは、いろいろな場面があると思うんですが、そのうちの一つは、やはり公的な支援体制ということだろうと思うんですね。  それで、これは私どもマスコミの問題にも直接はね返ってくるわけですけれども、大きな事件が起きますと、マスコミが被害者のもとに殺到して、被害者が、それでなくても苦しんでいるのに、二次被害、三次被害に遭うという状況があるということも、これは率直に認めざるを得ない状況があります。しかし、そういう被害者の方のところに弁護士さんがちゃんとつきますと、やはり、報道と被害者がじかに接触するという、そこにワンクッションが入って、取材活動なり報道に対する歯どめがきいてくるという例も実は多く見ているんですね。  その意味でいいますと、やはり、加害者にも当然つかなければいけないけれども、同時に、まず何よりも人権が侵害された被害者に対してそういうバックアップをする仕組みがつくられなければならない。それは、法的な体制も必要でしょうし、あるいは精神的なケアとか、あるいは身の回りの世話をする人も必要かもしれません。それはボランティアの方がふさわしいかもしれませんけれども、そういう弁護士さんがその仕組みをつくる。弁護士会には、被害者当番弁護士制度をスタートさせたらどうかというふうに前からしきりに言っているわけですけれども、そういう制度を弁護士会がつくっていくのならば、それを財政的にバックアップするものが扶助制度でできないかというふうに思っています。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 大変貴重な意見、ありがとうございました。  終わります。

武部勤自由民主党

○武部委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、明二十九日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     正午散会

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