本会議 第19号
- 発言数
- 7 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1999/05/10
会議録
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。 日程第一 司法制度改革審議会設置法案(趣旨説明) 本案について提出者の趣旨説明を求めます。陣内法務大臣。 〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(陣内孝雄君) 司法制度改革審議会設置法案について、その趣旨を御説明いたします。 二十一世紀の我が国社会においては、社会の複雑・多様化、国際化等に加え、規制緩和等の改革により、社会が事前規制型から事後チェック型に移行するなど社会のさまざまな変化に伴い、司法の役割はより一層重要なものになると考えられ、司法の機能を社会のニーズにこたえ得るように改革するとともに、その充実強化を図っていくことが不可欠であると考えられます。 そこで、政府といたしましては、このような観点から、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関を内閣に置く必要があると考え、この法律案を提出することとしたものであります。 その要点は、次のとおりであります。 第一に、内閣に、司法制度改革審議会を置くこととし、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するとともに、調査審議した結果に基づき、内閣に意見を述べることをその所掌事務とすることとしております。 第二に、審議会は、委員十三人以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命することとしております。 第三に、審議会の事務を処理させるため、審議会に事務局を置き、事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置くこととしております。 なお、この法律は、政令で定める施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うこととしております。 以上が、この法律案の趣旨であります。 なお、司法制度改革審議会設置法案は、衆議院におきまして、審議会の所掌事務について、次のとおり修正が行われております。 審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹のあり方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するものとすること。 以上であります。(拍手) ─────────────
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。海野徹君。 〔海野徹君登壇、拍手〕
○海野徹君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました司法制度改革審議会設置法案に対し、小渕総理並びに陣内法務大臣に質問いたします。 二十一世紀を目前とした今日、司法のあり方が問われ、政治改革、行政改革に続く第三の改革として、戦後五十年間ほとんど手を加えられなかった司法制度について改革を求める国民の声が高まっています。 小渕総理は、去る一月十九日の施政方針演説で、「すべての人々の人権が最大限に尊重される社会の実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築に取り組んでまいります。」と宣言し、司法制度改革を実現する強い決意を表明されました。 今日の我が国の司法制度に対しては、国民からさまざまな不満や批判が出されています。それらの概要は次の三点に集約されると思います。 第一は、三権分立を基本原理とする日本国憲法のもとで、司法には立法や行政に対する監視と抑制の機能を通して、国民の権利と自由を守り、法の支配を実現するという役割が期待されていますが、この憲法の理念はほとんど機能していないという指摘であります。立法裁量や行政裁量が絡む事件については司法は過度に自己抑制的となっており、大きな行政と小さな司法という旧体制が温存され、これが国民の司法に対する信頼を揺るがしていることであります。 第二は、我が国の司法は二割司法とやゆされるように、紛争解決手段として果たす役割は小さく、二割しか機能していないという指摘です。裁判は時間がかかり過ぎ、その結果として費用も高額になることが多く、国民が安心して利用できるシステムとはなっておりません。また、行政訴訟においては、行政当局の主張が優先される傾向にあり、国民は泣き寝入りを余儀なくされています。さらに、我が国の法曹人口は諸外国と比べて格段に少ないことも指摘されています。 第三は、総理みずからが国民に身近な司法の構築と言われたように、裁判所は国民にとって身近なものではなく、国民が必要とするとき利用することができる制度としては定着していないということであります。 さて、ただいまの趣旨説明においては、二十一世紀の我が国社会は、社会の複雑・多様化、国際化等に加え、規制緩和等により、事前規制型社会から事後チェック型社会に移行するなどの社会のさまざまな変化に伴い、司法の役割はより一層重要になるとの認識のもとで、司法の機能を社会のニーズにこたえ得るよう改革し、その充実強化を図っていくと説明されました。これは、今日の司法はその機能を十分果たしているという視点からの発想であります。 確かに、規制緩和等により、自己責任の原則に貫かれた社会へと転換することにより、司法の役割が増大し、その機能の充実強化は喫緊の課題であります。このこと自体、否定するものではありません。しかし、政府案の視点は、今日の我が国の司法の現状についての認識が不十分であります。今日の我が国の司法制度はほとんど機能不全に陥っており、まずこのことを前提とした上での改革でないと、抜本的な司法改革は到底実現することはできません。 そこで、小渕総理にお伺いします。 総理は、我が国の司法制度の実情をどのように認識されているのでしょうか。総理が改革の実現に強い意欲を表明された今日の司法制度にはどのような問題があるとお考えなのでしょうか。私がただいま指摘しました三点に対する総理の見解をお尋ねします。 次に、ただいまの趣旨説明から明らかなように、政府提出案は、事後監視・救済型社会における司法が果たすべき役割を明らかにしようとするものであります。それは、紛争解決手段としての司法を充実強化し、利用しやすい司法を目指すものです。この方向に反対するものではありません。ただ、これによって粗雑な司法に陥らないように注意しなければなりません。 と申しますのは、司法の機能は紛争解決の手段だけではありません。刑罰法令の厳格な適用、人権の擁護と社会正義の実現、立法、行政に対する監視と抑制という役割もあります。規制緩和と経済的合理性だけが強調され、二十一世紀を競争原理が支配して社会的弱者が切り捨てられる弱肉強食の社会にしてはならないのです。司法改革が目指す方向は、紛争解決手段としての機能を充実強化するとともに、国民の権利、自由を守るために、立法や特に行政に対する監視と抑制の機能をも充実させることにより法の支配を拡充発展することであると考えます。 ところで、本法律案は、衆議院において、政府原案に対し、調査、審議する事項として、「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備」という内容を加える修正が行われましたが、この修正によっても、やはり基本的には規制緩和後の社会の秩序維持を目的とするものとしか理解できません。 そこで、小渕総理にお伺いします。今回の司法制度改革の目的は何かということです。 二十一世紀の規制緩和後の自己責任の原則に基づく社会の秩序維持を目的とするのか、それとも戦後五十年を経過して行政が市民活動や経済活動の隅々まで介入する行政国家のもとで機能不全を余儀なくされている国民の権利、自由を司法が確保するという法の支配の原理の拡充発展が目的なのか、総理の見解をお尋ねします。 本法律案では、内閣に設置される審議会の存続期間は二年間とされています。機能不全に陥っている我が国の司法を再生するための課題は山積しており、じっくりと腰を据えて調査、審議すべきであり、二年間では余りにも短過ぎます。二年間と限定することで、審議会事務局を構成する司法官僚から審議促進を迫られ、小手先だけの改革に終わらせてしまうなど、この審議会を司法官僚の隠れみのとすることは断じてあってはなりません。小渕総理、審議会の存続期間を延長するお考えはありませんか。 また、十三名の審議会の委員の選任に当たっては、司法制度の実情を把握するとともに、国民各層の意見が十分に反映される必要がありますが、どのような基準で委員の選任を行うのか、総理のお考えをお伺いします。 さらに、審議会が国民的視点に立った司法改革を調査、審議するのであれば、審議会委員だけで結論を出すのではなく、審議会の審議状況を逐次公表して国民に情報提供するとともに、広く国民の意見を審議に反映させるべきであると考えますが、この点について総理はどのような見解をお持ちなのでしょうか。 さらに、司法制度改革への取り組みは、今回で戦後三回目となります。第一回目は、昭和二十年十一月、司法省内に設置された司法制度改革審議会により、また、第二回目は、昭和三十七年、内閣に設置された臨時司法制度調査会によりそれぞれ調査、審議が行われました。この二度の司法制度改革への取り組みにおいていずれの検討項目としても取り上げられながら実現しなかった事項に法曹一元制度の採用があります。 法曹一元制度は、裁判官を弁護士の中から任命するものであり、現行のキャリアシステムによる限界を克服するものとして期待されております。 私たちの社会は、正と不正、善と悪が複雑に絡み合った社会です。画家が影を濃く描くことによって光の強さをあらわすように、私たちは悪をはっきりと認識したとき、初めて人間の偉大な善を想起することができるのです。人を裁く人間には成熟さが求められます。それには、清流の中にしか身を置かないのではなく、濁流にもまれることが必要であり、自分はいつも強いと自信を持つのではなく、自分の弱さも認識できる勇気を持つことが大切なのです。今日のような裁判官の養成システムのもとでは、司法の活性化や法の支配の実現を期待することはできません。 臨時司法制度調査会の意見書は、「法曹一元の制度は、これが円滑に実現されるならば、我が国においても一つの望ましい制度である。 しかし、この制度が実現されるための基盤となる諸条件は、いまだに整備されていない。」として、法曹一元制度の採用を見送っています。以来三十七年が経過いたしましたが、今日においては、法曹一元制度を実現するための諸条件は整備されているのか、いまだに整備されていないのか、政府は整備に向けて努力してきたのか、陣内法務大臣の認識をお伺いします。また、法曹一元制度の採用についてどのような見解をお持ちになっているのか、あわせてお伺いします。 さらに、より国民に身近な司法制度の構築のためには、司法判断に国民の声を反映させることが必要です。また、国民が司法に参加することにより多くの国民が法と裁判の仕組みや捜査のあり方に触れることになり、現行制度の欠陥が浮かび上がり、これを改善しようとする動きにつなげれば民主的な司法制度を築くことも可能となります。特に、最高裁判所を頂点とする司法官僚体制の弊害を是正する有効な手段となります。 そこで、司法における国民主権の実現を目指して、市民が裁判で事実関係を認定する陪審制度や市民が裁判官とともに評議をして裁判の結論を出す参審制度の導入を検討すべきであると考えますが、国民の司法参加の意義について陣内法務大臣の見解をお伺いします。 最後に、「国としての品格は、自分たちは偉大なる民族に属するという感情から、その支持と力を得るものである。先祖の偉大さを受け継ぎ、先祖の遂げた栄光を永続させるべきだという風土が、その国に出来上がったときに、国家としての品格が高まる。」とサミュエル・スマイルズは「品性論」で述べています。 今回の司法制度改革論議が我が国の品格を高める上で意義ある論議であることを期待して、私の質問を終わります。 ありがとうございました。(拍手) 〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
○国務大臣(小渕恵三君) 海野徹議員にお答え申し上げます。 司法制度の実情について、まずお尋ねがありました。 我が国の司法制度につきましては、三権分立の趣旨を踏まえて、その機能を十分果たし、国民に利用しやすい適切な紛争解決の手段を提供すべく、司法関係者におきまして最善の努力がされているものと認識いたしておりますし、政府としても努力をいたしてまいったところであります。 しかしながら、なお司法が国民に身近なものになっていない。例えば民事法律扶助制度につきましても一層の充実強化を図るべきなど御指摘もあり、政府といたしまして、一層国民のニーズにこたえ、国民に身近な司法の構築に取り組んでおるところであります。 今回の司法制度改革の目的についてお尋ねがありましたが、二十一世紀の我が国社会におけるさまざまな変化に伴い、司法の機能を国民のニーズにより一層こたえ得るように改革するとともに、その充実強化を図ることが今回の司法制度改革の目的であり、社会においてルールが適正に守られるよう司法がその役割を十分果たすことによりまして、法の支配による国民の権利、自由の確保も図られるものと考えております。 審議期間の延長についてお尋ねがありました。 司法制度の改革は我が国の喫緊の課題でありまして、司法制度改革審議会におきましては、二十一世紀の司法のあり方を審議するという本法案の趣旨及びその審議期間を念頭に置かれつつ、重要と考えられる審議事項について必要な調査、審議を行っていただき、審議期間内にぜひ御意見をいただけるものと考えておるところでございます。 審議会の委員の選任に関する基準についてお尋ねでありましたが、審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について国民的見地から調査、審議することを目的とするものでありまして、このような視点のもとで調査、審議するのにふさわしい有識者を国民各層から委員として選任する必要があると考えております。 審議会の審議状況の公表についてでありますが、審議会の公開は従来から政府の基本的方針でありまして、本審議会におきましても、その趣旨を踏まえ、具体的な公開の方策も含め適切に対応されるとともに、国民の意見が反映した審議をされるものと考えております。 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手) 〔国務大臣陣内孝雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(陣内孝雄君) 海野議員にお答えを申し上げます。 まず、法曹一元の制度についてのお尋ねがありました。 法曹一元の前提条件としては、法曹人口の飛躍的増加、弁護士の地域的分布の平均化等の多くの事項が指摘されております。 政府においては、これらの事項に関し、司法試験合格者の増加を図るなどの施策を講じてまいりましたが、現状においては、これらの諸条件が整備されているとは言いがたいと考えております。 しかしながら、司法制度の改革に関する各界の提言中にもこの制度につき言及するものが少なくなく、司法制度のあり方についての一つの考え方として、広く国民の意見を踏まえて議論される必要があると考えております。 次に、国民の司法参加の意義についてお尋ねがありました。 御指摘の陪審・参審制度の導入等国民の司法参加の問題につきましては、司法をより国民に身近なものにしていくという観点からも意義があるといった提言がなされていることは承知しております。この問題につきましては、我が国の司法の基本にかかわる問題でありますので、種々の観点から慎重に議論される必要があるものと考えております。(拍手)
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十一分散会 ─────・─────