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145回国会参議院1999/05/25

法務委員会 第13号

発言数
71
登壇者
11
会派数
6
開催日
1999/05/25

会議録

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る二十日、久野恒一君、佐々木知子君及び山内俊夫君が委員を辞任され、その補欠として阿部正俊君、有馬朗人君及び竹山裕君が選任されました。  また、去る二十一日、藤井俊男君が委員を辞任され、その補欠として藁科滿治君が選任されました。     ─────────────

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) 司法制度改革審議会設置法案を議題といたします。  本日は、本案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、四名の参考人から御意見を伺います。  本日御出席をいただいております参考人は、専修大学法学部教授小田中聰樹君、日本労働組合総連合会労働対策局次長熊谷謙一君、21世紀政策研究所理事長田中直毅君及び日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長宮本康昭君でございます。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお聞かせいただきまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、小田中参考人、熊谷参考人、田中参考人、宮本参考人の順に、お一人十五分程度ずつ御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し添えますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  なお、参考人の意見陳述、各委員からの質疑並びにこれに対する答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、小田中参考人からお願いをいたします。小田中参考人。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 小田中でございます。  私が本日述べたいと思ってまいりましたのは、三点でございます。  第一点は、司法制度改革論議を行うに当たって最低限共有されるべき基本的な視点及び方法論についてでございます。第二点は、この基本的な視点及び方法論に基づいた場合に本法案に対して生ずる疑問でございます。第三点としては、憲法的司法制度充実強化に向けての課題でございます。  まず第一点から申し上げたいと思います。  司法制度改革論議を行うに当たって最小限度共有されるべき基本的視点とは何か。これは改めて申すまでもないかもしれないのでありますけれども、司法及び司法制度の基本的な任務、理念、原則を憲法に則しながら徹底的に論議して、そしてその認識を共有するということでございます。この作業がなぜ重要であるのかということについてですが、それは司法という国家作用の持っている特殊な本質から来るものと考えます。  司法の本質については改めて説くまでもないかと思いますが、立憲民主国家のもとにあっては、まず基本的人権の保障という基本的任務を持っているわけであります。そして、その任務に基づいて行政及び立法権から独立してその権力作用を抑制するとともに、法及び適正な手続に基づいて公正な裁判を実現するということであります。この任務というものは極めて規範的、普遍的な性格を持っております。  したがって、それは時として党派的なあるいは部分的なあるいは現実的な利益の実現を追求する政治的な作用とは全く本質を異にしますし、また効率性とか経済性とかあるいは利潤性を追求する経済活動とも全くその本質を異にするわけであります。  この司法の本質というものを担う司法制度でありますけれども、これもまた今申したような本質に由来する次のような諸原則、諸理念を持っているように思います。  まず制度理念としては、これまた再度繰り返すようですが、基本的人権の保障であります。そして制度的原則としては、司法権の独立。これは単に裁判規範だけではなくて、弁護士の自治というものも含んだ概念だと理解されます、そういう独立・自治。さらには、手続的な原則として、公正な裁判を受ける権利の保障であります。  以上の点を確認した上で、さらにこれを論ずる方法論についても一言申しておきたいと思います。  以上のような司法及び司法制度の基本理念及び原則に立脚しながら、司法制度改革の必要性についての認識を正確な現状分析に基づいて共有することが必要だというふうに思います。まず現状分析を入念に、多面的に、多角的に行う必要があるように思います。  そして、その現状分析というものもまた、単に大量的な分析だけではなくて、さまざまなケースを分析する必要があるように思います。そのケースには、もちろん成功しなかったケースだけではなくて成功したケース、この両ケースを比較しながら分析を施すことも必要であるように思います。  また、上からのデータだけではなくて、下の、現場からのデータを丹念に集めて、これにはもちろん第一線の司法関係者、これは単に裁判官、検察官、弁護士だけではなくて、さまざまな職員が働いておられるわけですが、そういう方々も含めた司法関係者の意見、データ、またもちろん当事者の意見、データ、さらには当事者の背後にあるさまざまな関係者、この中にはさまざまな市民運動的な救援活動などもあるわけでありますし、また一般市民の声、データもあるわけであります。  それらを総合して分析することが必要であり、しかもその現状分析というものは、歴史的な推移を踏まえて正確に分析される必要があると思います。そして、その分析結果に基づいて司法の機能阻害要因を析出する。しかもその阻害要因も、単に制度面だけではなくて、政策面、運用面、意識面、さまざまなレベルで行う必要があると思います。  その結果として出てくる対策でありますけれども、この対策もまた総合的な対策、個別的な対策、抜本的な対策、対応的な対策、長期的な対策、緊急的な対策などに区分しながら、きめ細かに策定する必要があるように思います。しかも、その対策の最も重要なことは、憲法理念、原則との整合性、適合性を厳密に検討すること、現実的な効果、影響やあるいは弊害などについて丹念に分析を施しながら政策を策定していくという作業が必要であろうと思います。  恐らくこのような作業の中から、以下は私の全くの私見でありますけれども、例えば裁判官不足の問題であるとか、あるいは裁判所の中に根強く存在している裁判官に対する統制の問題であるとか、あるいは被疑者国公選弁護制度の欠如の問題でありますとか、法律扶助制度の貧弱さの問題だとかが、緊急に解決を要求する問題、しかも個別的に解決することの可能な問題として意識されていくことになるだろうというふうに思われます。そして、この制度的な解決に伴う形で、さらには法曹一元の問題とか陪・参審の問題、さらには法曹人口の問題、偏在の問題などが具体的な問題性を持つ解決課題として浮かび上がってくるように思います。  これまで述べてきたことは余りにも当然過ぎる自明のことであって、今さらここで述べるまでもないような事柄のようにも思えます。しかし、今この法案が参議院にかかっているという、ある意味ではかなり最終的な段階に来ているこの時点で、あえてこれらのことを改めて述べるにはやはり一つの問題意識があるわけであります。  それは何かといいますと、今まで述べてきたような自明とも思われるような基本的視点や方法論を踏まえたとは必ずしも言えないような思考方法が、司法制度改革に積極的に関心を持つ層の間にかなり根強くあるように思うからであります。  例えば次のような考え方があるようです。  司法制度改革は個人の自律性の確立を目指すものであって、自律的個人を中心とする自由で公正な社会を形成するために必要だというのであります。ここで示されているのは、自律的な個人が対等な立場で争い、相互に調整を図る場としての司法を形成するための改革というイメージであり、そのイメージからさまざまな改革提案を考えるという思考であります。  確かにそれも一つの考え方ではありましょう。しかも、この考え方が仮に憲法十三条を根拠とする形で主張されているとするならば、それはあたかも憲法的原理原則に基づいているかのような印象を与える、これも否定できないと思います。  しかしながら、憲法は、これまで述べてきたところによれば、個人の自律性の育成ではなくて基本的人権の擁護というより具体的で明確な任務を司法に与えているのであります。そして、その任務に即して制度論というものが組み立てられなければならない、これを要求しているというふうに思います。自律的個人の確立という観点はそのこととの整合性が弱いのではないか。なぜかといえば、自律的個人の確立というものは、およそ多義的であり、しかも一般的に過ぎるわけであります。  それだけではなくて、この考え方では、個人と国家との対抗的な関係における司法の役割や権力抑制における司法の役割というものが正しくとらえ切れないという弱さを持っているように思います。そして、この弱さは司法制度改革の構想自体を基本的人権擁護、司法権の独立、そして公正な裁判を受ける権利の実現、充実強化という観点に基づく具体的な改革構想を展開する場合とは違って、司法制度改革の方向を極めて恣意性の強いものとする危険を持っているように思います。これと類似の問題性が本法案に付着しているように思われるのであります。  そこで、以下、第二点の本法案についての問題点を述べてみたいと思います。  この法案が前提としている司法制度改革の必要性の認識と改革の方向づけは何か。それはこの法案の第二条に示されております。それによりますと、まず、「二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する。」と言っております。  注目すべきは、二十一世紀の我が国社会なるものをまず設定し、そこからその社会に適合的な司法の役割を導き出しているということであります。そして、そこから司法制度改革の構想を導き出すこと、策定することを改革審議会に要求しているわけであります。  ここでは、司法制度改革の論議がまず踏まえなければならない先ほど申したような基本的視点、そして方法論というものが必ずしも十分に踏まえられているとは見えないのであります。それどころか、憲法論抜きの生の二十一世紀社会論、社会像なるものを出発点として司法改革を行うという方向性が明示されているのであります。  しかし、これには次の点で疑問があるように思います。  まず、その社会論なるものが憲法論抜きであることであります。これは司法というものの持っている前述のような本質から見ますと大変に疑問があるところであります。しかも、この二十一世紀社会像なるものをよく考えてみますと、それはそもそも所与のものとしてあるわけではないわけであります。それは単なる予測、客観性を必ずしも持ち得ないような、したがってコンセンサスもなかなか生じがたいような、そういう予測の形でしか構成し得ないものであります。したがって、主観性、恣意性の強いという性格を本来的に持たざるを得ないものであります。それはあたかも日本人論と同じであります。したがって、司法制度改革審議会としては、この二十一世紀社会像、社会論なるものについて理性的、科学的に、あるいは法律的なレベルで論ずる、合意を形成することはかなり難しいのではないだろうかという印象を持ちます。  そうだといたしますと、恐らくこの強大な勢力を持つ二十一世紀社会論なるものが改革審議会に持ち込まれ、最終的には合意が形成されがたい場合には数である種の解決を図るという形にならざるを得ないかもしれません。  そして、現に本法案の提出者側は、ある具体的な二十一世紀社会論とこれに適合的な司法の役割論というものを既に用意しているように見えます。すなわち、提案理由及び与党、経済団体の司法制度改革関連の文書によれば、規制緩和により事前規制型社会が事後チェック型社会に変わり、司法が国家の基本的なインフラとなったと言うのであります。  周知のように、この規制緩和なるものは市場原理、自己責任、透明なルールによる事後チェックというものと三位一体的な形で構成されております。このことを考えますと、二十一世紀社会論なるものは、規制緩和のもたらす社会的変化の動きを市場原理、自己責任、透明なルールによる事後チェックというコンセプトで構成し、それを社会論の中心に据えようとするわけであります。  その実態についてはさまざまな批判があります。一般に指摘されているところで拾ってみましても、例えばそれは大企業優位の市場原理による生き残り競争の激烈化とこれに伴う弱肉強食的な結果をもたらすのではないかとか、さらにはその結果として社会連帯とかあるいは共同性というものを破壊するのではないかとか、あるいは国家、行政の公共性の後退をもたらすのではないかとか、あるいは社会的な矛盾の激化をもたらしその結果として抑圧体制強化の必要性というものを生み出すのではないかとか、そのような批判がかなり強く広く加えられているのであります。  ところで、このような規制緩和のつくり出す社会に適合的な司法とはいかなるものか。これもまた与党や経済団体等の関連文書などによりますと、その主なものは次のようなもののようであります。  司法への市場原理の導入であります。具体的には、例えば弁護士間への競争原理の持ち込み、その条件づくりとしての弁護士人口の急増、あるいは法曹資格の緩和、あるいは弁護士自治に対する制限といったようなものなどであります。あるいは司法による事後的な監視と予防法務活動の促進であります。透明なルールによる自己責任の追及のシステムとしてであります。また、準司法的な解決システムの発展、活用であります。  このような構想に対して、その中身に立ち入って議論する前に、このような問題の立て方、課題の立て方が果たして正しいかということに私は疑問を抱くわけであります。  第一に、確かに規制緩和は現在政治、行政、経済社会の各分野で着々と実行に移されております。そして急激な社会変化をもたらしているわけであります。しかし、これに対しては強い批判があり、規制緩和の生み出す社会が、果たしてその規制緩和政策の想定するような二十一世紀社会として確立し、定着していくかは決して予断を許さないものがあるように思います。また、自己責任とかあるいは自律的な個人なるものを強調する考え方に対しても、前述のような批判が考えられるだけではなくて、むしろ逆に社会的な連帯性、共同性をいかにして回復させるべきかという営みが各方面で始まっているわけであります。  言ってみればこのようなカオス的な状況があるわけでありまして、それにもかかわらず二十一世紀社会論あるいは社会像なるものを自明であるかのごとく、あるいは所与のものであるかのごとく制度改革の出発点にすることには深い疑問を私は抱くわけであります。  さらに第二に、規制緩和社会に適合的な司法の構築のために、司法制度に市場原理、競争原理を導入することについての疑問であります。  なぜならば、司法制度というものは、そもそも市場原理、競争原理とは全く異質の理念、原則に立脚しております。このことは冒頭に確認したとおりです。したがって、競争原理の導入というものにはおのずと大きな制限があらざるを得ないのであります。  このように考えてきますと、二十一世紀社会なるものを設定して、これに適合的な司法制度改革案の策定を行うことには根本的な疑問があり、その点で私は本法案には深い疑問を覚えるのであります。  第三点について簡単に述べておきたいと思います。  今まで私はさまざま述べてまいりましたが、とはいえこの司法の現状の中に深刻な問題がある、しかもそれは憲法的な司法理念、司法制度諸原則に照らして深刻な問題状況が存在することは深く認識しております。  例えば、裁判官の独立の観点に立つときに、裁判所における官僚的な人事統制、裁判統制というものが独立に対する深刻な侵害状況を生み出していることとか、あるいは行政権、立法権に対する権力抑制の観点に立つときに、行政訴訟の非活性的な状況とか、あるいは違憲立法審査権の不活性状態とか、それも重大な状況だと思います。  さらに、ある意味ではもっと重大かもしれないのですが、公正な裁判を受ける権利の実現という観点から見ましても、例えば法律扶助制度の貧弱さ、被疑者国公選弁護制度の欠如などに代表されるような権利保障の弱さというものは致命的であります。このような現状は、国民の基本的人権に対する重大な侵害状態を生ぜしめており、その放置は許されないと思われます。したがって、その充実強化の方策が早急に講ぜられる必要があると私は思います。  そして、これらの課題は、二十一世紀における司法のあり方論から切り離して、憲法の司法的な理念、司法原則の充実強化という観点から早急に取り組まれる必要があるように思います。このような改革こそが二十一世紀の課題というべきでありまして、今回の司法制度改革への動きがこの方向に向かうように、参議院が高い識見を持ってオリエンテーリングされることを強く期待したいと思います。  以上です。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) ありがとうございました。  次に、熊谷参考人にお願いいたします。熊谷参考人。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 連合で司法、法務を担当しております熊谷と申します。  司法制度改革審議会設置法案並びに同法案に関連いたしまして現在の司法制度に関する問題点についての意見を、お手元にお配りいたしましたレジュメの順に従いまして申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一点は、基本的な考え方でございます。  連合は、司法制度について、国民、勤労者の参加のもと、その抜本的な改革を行う必要があると考えておりまして、その立場から今回の法律案の基本的な目的には賛同できるものと判断をしております。  現在我が国は、二十一世紀に向けまして活力ある公正な社会を築くために社会の基本的な制度を改革することが強く求められております。その基本は、国家の制度の根幹をなす立法、行政、司法の三権について、真に国民的な立場から検討が行われ、必要な改革が実行されることだと思います。  このうち、立法と行政につきましては、不十分ではあるものの、少なくとも国民参加による改革の検討、あるいは一定の試みが行われてきております。今国会では中央省庁の再編法案なども審議中であります。  しかしながら、司法に関しましては、明治初期の近代司法制度の創設以来、基本的な改革と言えるものは第二次世界大戦後の制度改正のみであり、それ以降は抜本的な制度の改正は行われておりません。この間、司法をめぐる環境は大きく変化をしております。現行制度が確立した戦後期から今日までの間に我が国社会の民主化は大きく進展し、国民、勤労者の権利意識は強まるとともに、労働組合が社会の主要な構成員としての地位を得ております。  また、さらに男性社会からの脱却による男女共同参画社会の実現、国家の諸制度への国民、勤労者の積極的な参加と情報公開が強く求められるに至っております。また、今日経済社会の国際化の中で、企業や労働組合におきまして国際的なルールが日常業務に直結するようになってきており、我が国社会の的確な対応が求められております。  このような大きな変化の中で、しかし司法改革の歩みは遅く、多くの国民、勤労者は現在の司法について改革のための論議すら避けており、閉鎖的、密室的な世界が継続しているものと感じております。このような状況は、司法のみならず我が国の三権分立の危機であり、今こそ来世紀に向けて司法の抜本的な改革を論議し、実行すべき時期を迎えている、このように考えております。  二番目は、現在の司法への信頼感の欠如の問題でございます。  まず申し上げたいことでありますが、現在の司法制度につきましては、民主国家の根幹をなす三権の一つにふさわしい信頼を得るに至っていない、こう考えられることであります。現在の裁判制度について、国民や勤労者はその権威を重く受けとめ、恐れすら感じていることが少なくありません。しかしながら、国民の多くは司法の権威の中に民主主義とは異質な部分を感じ取っております。  また、司法の権威は独立性に裏打ちされてこそ敬意を受けることができるものでありますが、実際には行政訴訟はやるだけむだではないのかとの関係者の嘆きに見られるように、現在の司法が行政等に過度な配慮を行い、真に独立したものとして機能していないのではないかという懸念をもたらしていると思います。  今日の司法制度の最も基本的な課題を挙げるとするならば、二十一世紀においてそれが民主国家の三権にふさわしい制度と内容を備えることであり、それは同時に司法の組織自体が国民に開かれた民主的なものとなることでありましょう。  なお、その意味で、衆議院での審議において本法案に規定される司法改革を検討する審議会が内閣に設置されることの当否が厳しく論議され、政府に対し司法の独立を侵害しないように配慮をすることを求める旨の附帯決議が行われたことは、十分に理解できるものであります。  三番目は、司法の閉鎖性とそこにおけるキャリア形成の問題でございます。それはすなわち、我が国の司法制度の著しい閉鎖性と、国民参加の欠落の問題でございます。  明治初期の司法制度の創設以来、我が国の社会の最も大きな変化は国民主権の民主主義社会が実現したことにあり、国家のシステムは国民に開かれた透明度の高いものであることが要請され、今日では国民の参加と情報の公開が大きな課題となっております。  しかしながら、我が国の裁判制度は、諸外国と比較してその閉鎖性が際立っております。先進諸国では、裁判官は国民に開かれた法律家、弁護士の中から登用される制度とするところが多く、また弁護士や法律専門家が企業や労働組合のスタッフとして自由に活躍している例も少なくありません。  最近の労働裁判では、雇用をめぐる複雑な事例が増加しており、適切な判断を行うためには司法判断をする人々が一定の社会経験をする必要があると考えます。多くの国民、勤労者は、職業的裁判官の権威を認めつつも、現在のいわゆる純粋培養型のキャリア形成には不安を感じております。  例えば、最近の労働判例等では、家族への配慮に乏しい単身赴任の命令や、あるいは職場での喫煙をめぐる健康問題について被害者あるいは原告に厳しい内容が多くなっております。これについて専門家の間では、幾つかの分野での厳しい判断は裁判官の生活の反映ではなかろうかなどの見方も出ている次第であります。  このような中で、司法試験の試験科目から労働法が排除されたことについて、各界、有識者から厳しい批判が寄せられていることは当然であります。早急に試験科目としての回復を図るべきであり、当面、司法修習の中での労働法の扱いを高める措置などを求めたいと思っております。  法律家が実際の社会でしばらく業務を経験するシステムは、先進国に限るものではありません。例えば、私自身の経験では、隣国のフィリピンでは、労働組合のスタッフ業務も法律家や弁護士の卵といえる人々が実社会を経験するチャンネルとなっている例を知っております。彼らあるいは彼女たちは、地域の労組リーダーとともに現実の労働問題の処理を行いながら本格的な司法の世界に入っていくわけであります。  いずれにいたしましても、多様化する現代社会の中で、司法の信頼を得るためには、法曹一元の実現を初め、司法と現実の社会との交流を強めるべきものと思っております。  四番目は、司法への国民参加の欠落の問題でございます。  我が国の司法制度では、国民の参加が大きく欠落しております。御案内のとおり、アメリカ、イギリスでは、陪審等により裁判制度は多くの国民の参加を得るものとなっております。ドイツやフランスでは、国民の参審制度が制度化されているほか、労働に関する裁判制度が整備されており、国民の過半を占める勤労者の労働関係の紛争については労働裁判所がこれを専門的に扱う体制を確立しております。ドイツでは、三審制の労働裁判でいずれも労使から選ばれた労働裁判官が関与しており、最上級審の連邦労働裁判所では、労働者、使用者各二名の労働裁判官が関与しております。フランスでは、労働裁判所の労働側判事について労働者の投票で選ばれる制度となっております。  連合は、労働団体の国際連携を進めておりますが、途上国を含め司法における国民や勤労者の参加が行われている国の労働団体より、日本での労働者参加の現状と課題を問われ、返答に窮することがあるわけでございます。  五番目は、裁判へのアクセスの困難性でございます。  法律と裁判による救済は、労働者、労働組合、社会的弱者、差別された少数者には最後のよりどころであります。しかしながら、現実の司法システムはそのような人々から最も距離のあるものとなっております。その理由は、裁判に要する費用と時間が過大な負担となること、そして法曹人口が少ないことから身近に法律サービスを受けられないことなどにあります。  裁判にかかる時間の問題は、俗に十年裁判などと言われ、あるいは判決は忘れたころにやってくるなどと言われております。法の適用に関する遅過ぎる判断は、それ自体が重大な不利益を国民にもたらすものであります。特に、労働に関する訴訟、例えば、解雇、倒産、過労死といった問題は家族を含めた日常生活に直結するものであり、速やかな判決が得られなければ勤労者は人生設計の変更を余儀なくされることが少なくありません。  富山県で昭和六十年七月に発生したある過労死事件では、最高裁での判決確定は平成九年十一月であり、司法判断の確定まで実に十二年四カ月を要しました。本人の死亡当時、大学生から小学生まで三男一女のあった家庭は、激務の父親との十分な触れ合いもないまま、その死亡後、生活の困窮の中で司法救済を求めて十二年を過ごし闘いましたが、しかし最終的に、上告棄却、費用は上告人負担の主文を言い渡されております。  裁判費用の問題も大きな問題であります。生活の不安を持ちつつ権利の確保を求める人々に大きな壁となっております。法律扶助制度が設けられておりますが、その活用等は極めて不十分であり、諸外国と比較してみても国民の権利確保のための基本的な制度改善が必要と考えられます。  六番目は、少な過ぎる法曹人口と不十分な法律サービスの問題であります。  我が国の司法に機能不全をもたらしている最大の要因の一つとして、法曹人口の不足が指摘されて久しいものがあります。きょうの資料の三枚目には裁判官の数、あるいは一人当たりの諸外国との比較が掲げておりますが、きょうは特にドイツの例を御紹介申し上げたいと思います。  裁判官の数あるいは一人当たりの国民の数、これらをとりましても十倍近い開きがあるわけであります。さらにドイツでは、約千名の弁護士の方がドイツの連合に相当するドイツ労働総同盟、あるいは産業別組織の法律スタッフとして雇用・労働問題に関する日常法律サービスを展開しておりまして、地域的にも大変手厚い法律サービスが国民に向けて展開されているわけでございます。  いずれにいたしましても、現在の司法をめぐる問題の根本に法曹人口の不足があることは確実であり、その大幅な増加を図ることは、今回検討される改革の主要な課題であることは明らかであります。  同時に、資料の三枚目の下にお示し申し上げておりますような、司法書士を初めとするさまざまな法律サービスを担うスタッフが現在いるわけでございまして、これらの地位を高めて総合的な法律経済事務所の設立を認めるなど、法律サービスの強化のために制度改善が必要である、このように感じております。  また、労働の分野に関しまして世界に目を転じますと、現代の最大の課題の一つは、多国籍企業と言われる巨大企業群の労働問題であります。我々は海外の友好労組と連携をしながら対策を進めておりますけれども、これらを通じて感じておりますことは、世界的規模の企業活動に対応する国際的かつ良質の法律サービスの必要性でございます。  結びに二点を申し上げたいと思います。  まず第一点は、今回の司法制度改革は既にスタートしているということでございます。現在、司法制度に深くかかわる幾つかの主要な制度の検討が進められておりますが、それらにつきましては、今回の衆参両院での審議以降はその審議の御確認や方向を踏まえて二十一世紀を目指す検討とすべきであろうと思います。  例えば、現在は倒産法制の大きな見直しが進められているということでございますけれども、これは司法制度に深くかかわる問題でございます。このような検討につきましてことしの秋にこの委員会などでの審議が予定されるかもしれないということでございますけれども、これにつきましては、今回の司法改革の御議論、これらを踏まえた二十一世紀を展望したものになるように法務当局を含めて要請をしておきたいと思います。  また、最後に、今回の司法改革の意義について再度触れておきたいと思います。  司法をめぐる論議に必ず伴ってきたものとして、我が国の司法の権威主義的なあり方は裁判などを好まない国民性と国民の法律意識に基づくものとする見解がございます。私は、我が国の社会は二十一世紀に向けてこのような見解から完全に脱却、決別すべき時期を迎えていると思うわけでございます。  労働の分野では、激増する個別の労働問題の処理がし切れず、良質な法律サービスの提供が間に合わない事態が続いております。本日の資料の二枚目には各地の労働相談が年間十万件に達しようかという実態をお示ししております。また、連合は現在新しいワークルール確立のための取り組みを続けておりますが、その労働相談にも連日法律上の相談が押し寄せております。それらを通じて感じておりますことは、我が国の社会がそのルールのあり方をめぐって大きな岐路に立っているのではないかということでございます。  一つは、社会のルールが閉鎖的で私的なルールの方向に移ることによって社会的な公正が次第に萎縮する社会になる道であります。もう一つは、良質な法律サービスが日常的に提供されて、国際基準にも通じる公正なルールが確保される道であります。いずれの道が本来の三権分立に基づく民主主義の確立、高度な社会的合意と企業の活力、そして世界からの尊敬を我が国にもたらすものであるのかは明らかであると思うわけでございます。  国会におかれましてこれらの情勢と問題点を踏まえられて、本法案が十分に審議されますようお願い申し上げまして、私の意見といたします。  どうもありがとうございました。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) ありがとうございました。  次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 当法務委員会において発言の機会を与えられましたことを大変光栄に存じております。私は、司法制度改革審議会設置法案が提出され、それが審議されている状況は全体としては国民の意思に沿ったものだと思っております。  お手元のメモに従って発言させていただきます。  まず、実態に即した司法制度の確立が必要なのではないか、そのためには基礎的な調査が必要だと思われます。今回、司法制度改革審議会をつくったらどうかという提案が行われたのは、現在の司法制度が国民の意向あるいは期待に十分沿えていないという現実から発するものと思われます。  幾つかございますが、私が大変気になっておりますのは、例えば住専処理の問題でございます。住宅金融専門会社に対してどういう対応をするかというテーマがございました、一九九三年ごろから九五年にかけてでございます。実際上破綻した住専を法的な処理に基づいて破産処理するというのが大きな流れであったといいますか、それが本来の筋だったと思います。住専各社は預金者から預金を受け取っているわけではありませんから、これを破綻、破産させたとしてもシステミックリスク、決済機能の不全に陥る可能性はもともとなかったわけです。しかし、これが通常の事業会社のような法的な破綻処理に向かわなかったのは、当時もしそういう形で裁判所に判断を求めるということになると、この住専処理に膨大な時間がかかる、結果として住専に貸し込んでいる金融機関の問題の処理ができないと。これは仮説であり、当時極めて有力であった見解なんですが、こういうことから住専処理が法的な処理に任されませんでした。  このため、住専に対して貸し込んでいた系統金融機関の救済を主な目的として六千八百五十億円の財政支出が提案されたわけですが、このことが国会の審議を長く中断させる結果になり、結果として、金融問題、特に不良債権処理の問題について大変禍根を残すことになりました。  最終的には、ことしの三月に大規模な資本注入が金融機関に対して行われることによってシステミックリスク問題は回避されましたけれども、この間日本経済がこうむった被害は、御存じのように大変甚大なものでございました。  昨年は、このシステミックリスクが高ずることによって、ただ単に金融機関のみならず事業会社もみずから流動性を積み増して一たん緩急ある場合に備えざるを得ない。流動性を積み増すためには、設備投資も在庫投資も抑える、新しい仕事の発注も抑える、そういう形を通じて流動性の積み増しに大わらわになるという状況が生まれたわけであります。  これもどこに発するかということになりますと、多くの人は、少なくとも私どもの友人で議論している分には、我が国の司法制度がもっと国民にとって使いやすいものであればここまでのことはなかったのではないかという意見が非常に強いわけであります。  現在、いろんな紛争が起きているわけですが、この紛争処理に当たって裁判所が使いにくいのではないか、そういう意味で裁判を回避するという動きがございます。この裁判回避が我が国の意思決定過程なり紛争処理に大きなゆがみをもたらしているという現状について明確な調査が必要である。  したがいまして、この審議会がもし設置されるということになりましたら、私は現状調査が必要なのではないか、紛争処理に当たって現在の裁判、司法制度はどの程度の機能をどの形で果たしているのか、これを明らかにする必要があるだろうと思います。  そして、司法制度について幾つか国民の間に不満がございます。現在の裁判にルール形成機能が乏しくなっているのではないか。個々の判例を見ても、結論に至る過程が十分読んでみてわかりにくい、判例が十分書き込んでいない、したがってルール形成機能を判決が持ち得なくなっているというような現状についても、恐らく調査を行えばわかるかと思います。  一年間に二十八万件の判決が出ているということですが、これをどのような形で判決についての調査を行うのかということはなかなか重要な問題です。しかし、索引等、検索もしにくいという現状を考えてみますと、この現状、現在の司法制度がどのような入力に従って、そしてその裁判制度を通じて過程がございますが、結果としてアウトプットとして外に出てくるときまで、そして出てきたものがどの程度ルール形成機能を持ち得ているかという全般的な調査が必要ではないかというふうに思います。  それから、そもそもこの裁判のスケジュールが大変長期にわたっているという問題があるわけですが、なぜスケジュールをもっと短くできないのか、我々が早く判決を得られないのかという問題点であります。  すなわち、入力、インプットとアウトプットとの間にある司法の意思決定過程の現状についても分析が必要かと思われます。そこで恐らく、裁判所の問題も、それからこれに関与されている弁護士さんの体制についても問題点が明らかになるのではないかというふうに思います。  そして、そういう現状が明らかになれば、例えば裁判を迅速化させるためにどういう分野ならばアウトソーシングが可能なのか。裁判の過程において、ある種分業でございますが、現在の人的資源を前提として、しかも国民は早い的確な判断を求めているということになりましたら、それを支援するためのシステムとしていかなるものがあり得るのかということについての現状調査の必要もあろうかと思っております。こうした司法の基盤の全体にわたる調査が不可欠であるというふうに私は認識いたしております。  それから二番目に、司法制度改革を掲げて幾つかの提案がなされているわけですが、こうしたシステムの部分についての改善提案が全体として果たして国民が望むようなパフォーマンス、成果というものを得られるかどうかについては、これもかなり詳細な分析が要るのではないかというふうに思います。  一般的には法曹人口が不足だからふやせという意見が多いわけです。この結論は多分間違いではないと思います。しかし、例えば法曹資格者を急激にふやした場合にその影響がどのように及ぶのかという、ダイナミックというふうにシステム分析では呼ぶわけですが、異時点間にかかわる分析も不可欠だろうと思います。もしある時点において過大に供給がなされたということになりますと、団塊ではありませんが、この法曹人口が固まりとして、あるところでふえたということになりますと、その影響は長く残るわけであります。  例えば、米国において弁護士さんの数が多い、これに絡まる病理病弊があるわけです。笑い話のような話ですが、交通事故が起きると最初に飛んでくるのは弁護士さんだ、訴訟は自分が引き受けるとか紛争処理は自分が引き受けるというのですぐ名刺を出すと。本当かうそかわかりませんけれども、警察が来る前に弁護士さんが飛んでくるというふうに言われているのは、非常に戯画化した絵でございますが、そういう議論さえも紹介される現状であります。  したがいまして、幾つかの部分的な提案が、ある部分における改善提案が全体としてどのような成果につながるのかは、法曹人口とかロースクールを使って法曹の養成を図るべきだというテーマについても、これは少し長期的なその影響についても議論が行われるべきではないかというふうに思われます。  そして、陪審制度等についても幾つかの提案が行われ審議が行われる可能性が高いようでございますが、これについても国民の意思あるいは期待というものがどこにあるのか、そして陪審制度というものが導入されたときにどういうことが期待できるのかについてもう少し本格的な分析と調査が要るのではないか。これについての国民の意見の分布も、あるいはそうした新しい制度が導入されることによって司法制度にどのような効果が期待できるかについての広範な検討も必ずしも調査分析的にはなされていないというふうに感じております。  そういう意味では、国の司法制度が極めて重要な我々にとってのインフラストラクチャーであり、そして司法制度にもし揺るぎが生ずるようなことがあれば、我々にとって大問題ですから、この制度改革、幾つかの改善案については社会科学上の諸手法を通じて研究、調査が行われるべきではないかというふうに思っております。  国民にとっていかなる司法制度であるべきかについて、私が現在所属しております21世紀政策研究所で昨年暮れに「民事司法の活性化に向けて」という提案をまとめました。これについて若干述べまして、私どもの考えていることを申し上げたいと思います。  裁判制度は極めて重要なものでございますが、裁判外の紛争処理手続もまた我々にとって極めて重要なものではないかというふうに思っております。我々が日常的に抱えるに至っています紛争をいかなる手段を用いて解決、納得のいくものを生み出すかということは、もちろん最終的には裁判があるわけですが、裁判と並んで裁判外の紛争処理手続を充実させるということが重要ではないかというふうに思います。外国にもこの裁判外の紛争処理手続について幾つかの充実した仕組みが生まれてきているのに対して、我が国では、いろいろ努力はなされておりますが、我々が抱えています紛争件数に対して裁判外の紛争処理手続を得るものは極めて少ないというのが現状でございます。これについての提言をまとめております。  それから、裁判所機能の純化というものもこうした視点からは必要なのではないか。すなわち、裁判外紛争処理手続が充実するならば裁判所の機能はさらに純化される、そういうことが期待されるわけであります。この裁判所機能の純化については、専門的な能力を身につける、あるいは人材の上でも専門家を調達できる仕組みを幾つか工夫する必要があるということで提言をつけております。  ADRと呼ばれる裁判外の紛争処理手続の活性化については、海外でもいろんな事例がございますので、これについても提言をいたしております。  現在、裁判回避という問題がビジネスの先端分野で起きております。それは、例えば知的所有権のような分野において当事者間で紛争が起きた場合に裁判制度を通じて公開していくのにはなじまない、研究開発型のものについてはそれになじまないものがあるわけですが、これは仲裁人を指定しまして仲裁制度に移行するという形で、日本の裁判あるいは日本という場所における仲裁が回避されて、ほかの例えば米国に移るというようなことが起きております。これは、全体として我が国における非常に高度な複雑な問題で生じています紛争処理手続に残念ながら問題がある。したがって、我が国のインフラストラクチャー、基盤というものを使わずに他に完備した制度があれば他でこれに代替するということが現実に起きているわけでして、このことについての危機感もかなり高じているというのが現状かと思います。  我が国において判例が細るという事態が起きているように思われます。すなわち、最も現代性を抱えている重要な問題が裁判を回避することによって判例に組むべきものが少なくなっている、判例がやせ細り始めているのではないかという懸念を私は持っておりますけれども、それは我が国の司法制度が現実の持っています複雑なあるいは非常に革新的な動きに対して対応し切れていないせいではないかというふうに思っております。  そして、前に述べました現状調査をすればわかることかと思いますが、弁護士法七十二条によって弁護士に法律事務の独占が与えられておるわけですが、実際には、例えば司法書士とか弁理士とか、いろんな専門家の方々の支援を通じて紛争処理手続に入っておられる方が多いわけですので、この弁護士法七十二条の改正問題というのは国会においても議論されるべきではないかと私は思っております。  いずれにしろ、現在極めて不十分と言われています司法の現状を、それぞれの役割をきわめることを通じて国民にとって選択のできるベストミックスというものを今後見出さなければならないのではないかというふうに思っております。  最後に、司法制度改革審議会のあり方について若干の要望をしたいと思います。  メンバーの選出に当たっては、総合的な視点の確保が重要ではないかというふうに思います。とりわけ、現在の司法制度が抱えている問題点をシステム的に分析する、あるいは情報技術を使って分析するということが極めて重要ではないかと思っておりますので、そういう方面の専門家の方も委員として参加されることが望ましいのではないか、あるいはそれが不可能な場合にはこの審議会にそういうタスクフォースを設けて、専門家の御助力を得て、問題点がどこにあってどこの改善をすればどういう成果につながるのかについて広く議論を呼び起こすことが重要ではないかというふうに思います。  そして、この審議会は二年で役割を終えるというふうに書いてあるわけですが、司法制度改革について言えば、継続的な課題として、ごく短期間に何か一つ制度をつくればそれで済むという問題ではなくて、事後的なチェックも必要かというふうに思います。そういう意味では、国会における審議と並んで、この審議会においても改革の継続性、持続的な評価システムの確立ということが重要になるのではないかというふうに思っております。  ありがとうございました。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) ありがとうございました。  次に、宮本参考人にお願いいたします。宮本参考人。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 日本弁護士連合会は、このたびの司法制度改革審議会の設置の動きに積極的に対応し、司法改革を実現していく立場から、本年四月、会長を本部長とする司法改革実現本部を設置しました。私はその事務局長に指名されているものであります。  司法のあり方や司法改革のあり方についての理念的あるいは理論的な問題点については、既に五月十八日の当委員会の審議も含めてこれまで相当議論がなされておりますので、私は日本弁護士連合会、以下日弁連と言いますが、日弁連がどのような司法改革を目指しているかについて若干の具体的な指摘をして御理解を得たいと考えております。  日弁連は、周知のように、一九九〇年五月以来三回にわたって総会決議として司法改革宣言を行う傍ら、一九九五年五月の司法改革推進本部による司法改革の全体構想、さらに一九九八年十一月の司法改革ビジョンと、司法改革に取り組むべき課題を示してまいりました。  特に、司法改革ビジョンは、司法制度改革が国政レベルで取り上げられるに当たって、日弁連理事会の全会一致の決議をもって日弁連の総意として公にしたものであります。したがって、司法改革ビジョンは日弁連が考える司法改革の全体像を示したものであり、これらはすべて司法改革として必要なものではありますが、相当広い範囲にわたり、項目も各論として二十九項目と多いので、これらをすべて例えば二年間に司法制度改革審議会で審議するというのは困難かもしれません。  そこで、日弁連としてこれだけはぜひ検討して実現していただきたいと考える課題の中から、裁判制度の基本にかかわる問題について二つ、今差し迫って必要な問題について五つ、合わせて七つに分けて申し上げることにいたします。  まず、司法制度改革の大きな柱として二点申し上げます。いずれも、司法を国民にもっと近づけ、国民に身近なものとし、かつ司法の人権擁護機能を確保するために必要なもので、その一つがいわゆる法曹一元、もう一つが陪・参審制度であります。  第一に、大変重要な課題として、裁判官の任用制度を改めて、弁護士その他の一定の社会的経験を有する国民の中から裁判官を選任することとすること、いわゆる法曹一元であります。  現在、ほとんどすべての裁判官は、司法研修所を出てすぐに裁判官に採用されます。いわゆるキャリアシステムです。このように、社会的経験が全くないままに任用された裁判官が、今の社会の速い動きについていけない、社会の常識とずれた判決をするといった批判が絶えません。これは、弁護士や事件の当事者だけでなく、企業や労働団体からも共通に聞くところでありますし、経済同友会の提言、経団連の意見もこのような危惧を表明しております。  私自身も裁判官であったことがありますが、二十五歳になったばかりで任官し、学校を出ただけで世の中のことを何も知らないのでは世間に納得してもらえるだけの裁判ができるはずがないことを身をもって実感しておりました。  いわゆる法曹一元制度は戦前からしばしば実現化しようとしたことがあり、戦前、二回にわたって衆議院を通過したことがあります。ぜひもう一度検討していただきたい制度であります。  裁判官の任用制度が変わり、市民に身近な周りにいる人が裁判官となっていくことによって、裁判官と裁判そのものが国民に身近なものとなり、国民の目に見える存在となります。裁判官制度の透明化は司法改革にとって極めて大切なことであります。  大きな柱の第二として、裁判を国民に身近なものにするもう一つの方法として、司法への市民参加を挙げます。  国民の中から選ばれた者が事実の認定をする陪審を軸に、特に少年事件のように専門的知識が必要なものについては参審を取り入れていくことを検討する必要があります。裁判官は法律については専門家ですが、事実の認定について特に才能を持っているわけではありません。ここはよく誤解されているところであります。むしろ、市民の健全な目と良識によって事実を判断することが、裁判を国民全体で担っていくものとして、裁判の結果について納得を得やすくなると思われます。  この法曹一元と陪・参審制の二つを中心に据えることにより、司法は国民に身近なもの、国民自身が担うものに大きく変わり、人権擁護の機能も十分に発揮して、国民の司法への信頼を取り戻すことができると考えます。  次に、国民の要求に司法がこたえ切れていない部分を解消するため、当面、ぜひとも急いで実現しなければならない課題について五点述べます。  第一に、裁判その他で必要な費用を負担できない人たちにその経済的負担を援助するいわゆる法律扶助、リーガルエード、これを飛躍的に充実させることが必要です。  我が国の法律扶助の水準が世界でも類を見ないほどに低いことは既に周知のところで、よく言われることですが、イギリスの法律扶助への国庫支出が年間二千億円、正確には一千九百六十七億円、これに対して日本は、本年度の概算要求でも六億一千万円、比較にもなりません。お隣韓国に比べても二分の一にも足りません。例えば、消費者関係の事件については、事実上、現在生活保護世帯にしか援助を行い得ない状態に至っております。これをごく早い時期に国民の二〇%層までは扶助が受けられるようにし、さらにこれを広げられるように法律扶助法をつくることが必要だと考えます。  第二に、裁判にかけられた人々に対する国選弁護人制度、これは地裁段階で七〇%、簡裁では八三%をカバーするに至っておりますが、起訴される前の被疑者段階で国費で弁護人を付する制度はありません。事実上、被疑者は無権利状態です。  国費で弁護人を付するという憲法三十七条の精神に反するような状態をなくすために、日弁連は当番弁護士制度をつくって、弁護士たちが金を出し合って当番弁護士の日当を払うという変則的な形で何とかしのいでいます。しかし、被疑者弁護はやはり被告人の場合と同じく国費で賄う制度をつくることが必要であると考えます。  第三に、どんな地域に住んでいる人たちにもひとしく必要な法的サービスを保障するために、全国至るところで法律相談センターを設立するとともに、公設の法律事務所の設置も目指すべきであります。  弁護士の偏在を解消し、全国の弁護士ゼロワン地域、つまり弁護士がゼロあるいは弁護士が一人くらいしかいない地域をなくすために、日弁連は自助努力として、法律相談センターを全国に広げる運動を行うとともに、公設事務所の具体的な設置も検討を始めました。弁護士の偏在地域に法律相談センターや公設法律事務所をつくり、そこには弁護士が常駐して、少なくとも住民の法律相談と当番弁護士、国選弁護、法律扶助などの公益的活動をいつでもやれるような、総合的な法律センターとして地域住民の需要に応ずるようにしたいと考えます。しかし、これを十分やるためには制度と予算の裏づけが必要です。  第四に、一方で裁判所の体制も、国民の紛争の解決あるいは予防の要求に十分こたえられるようなものになっていないという実情を改める必要があります。裁判官その他のスタッフや法廷その他の物的設備が圧倒的に不足しています。そのために、今の司法は国民の需要の二割しか満たしていない、二割司法だなどと言われております。裁判に時間がかかり過ぎる、裁判所で解決してくれないとかの理由で、多くの事件が暴力団、顔役のところで解決されたり、泣き寝入りで済まされたりしております。こうした事態をなくし、迅速で適正な法律的解決を図るために、裁判所や検察庁に十分な予算を回し、司法の容量の強化を図るべきであります。  それとともに、質的な強化、つまり裁判官が今よりもっと謙虚に国民の訴えを聞く姿勢を持つようにすること、そのためにはまた、裁判官たち自身がもっと自由濶達に行動し発言できるようにし、裁判所の中にも透明性を持ち込むことが必要であります。  五番目に、国民の不満は、国や自治体を相手にした訴訟で裁判所から満足のいく救済が受けられないということにも向けられております。実際、国や自治体を相手にした訴訟で原告側が勝つ割合は一般の事件に比べて圧倒的に低くなっております。これは、国民が国に対して裁判を起こし過ぎるというようなことではもちろんありません。裁判の仕組み、つまり行政事件訴訟制度が余りに国民側に厳し過ぎるからであります。少なくとも行政事件訴訟法を改正して、行政裁判の門をもう少しでも広げて、国民の行政への不満を裁判所がきちんと受けとめるようにしないと、裁判所の行政に対するチェック機能について国民は信頼を持つことができなくなります。  以上、私は、日弁連が司法改革の重要課題とするものの中から七点について申し上げましたが、こうした改革を進めるに当たって、弁護士あるいは弁護士会のやるべき課題について日弁連が率先して取り組むというのは、これは当然のことであります。当面、二つだけ挙げておきます。  まず、今、当面の改革として挙げた法律扶助の充実、国費による被疑者弁護、公設法律事務所の設置など、身近な司法を実現していくために国民が必要とするだけの数の弁護士、この弁護士数は必ず確保していくつもりであります。  二つ目に、法曹一元を展望した場合に、実務法律家の養成制度は大きく変わります。弁護士会主導の新しい法曹養成制度が必要となります。日弁連は、よりよき法曹養成制度づくりに全力を傾けるつもりであります。  日本弁護士連合会の二月理事会は、司法制度改革審議会が設置された場合にこれに積極的に対応していくことを決議いたしました。日弁連自身に向けられている国民の要望と期待にも積極的に前向きに取り組んで、司法改革の実現を期するものであることを表明して、意見陳述を終わります。  ありがとうございました。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) ありがとうございました。  以上で参考人の意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。

千葉景子民主党・新緑風会

○千葉景子君 本日は、四名の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。  私も、この司法改革というものにこれぞという回答を持つ者でもございませんし、これからぜひ真剣に取り組ませていただきたいと考えているところでございます。そこで、それぞれの参考人に、限られた時間でございますので十分にお尋ねできない部分もございますけれども、何点か御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  さて、この司法改革の問題が、全体として見ますと、ある意味では経済の大きな動向の中で語られ始めたということが言えるのではないかというふうに思っております。これは決して否定すべきことでもございませんし、そこから司法の重要性というのが改めて問い直されるということは当然必要なことであろうというふうに思っております。  ただ、かといって、司法というのは経済そのものではございませんので、そのあたりの司法の本来負うべき基本的な役割、理念、そういうものとこの大きな経済やあるいは国際的な動向の変化、こういうものと調和させながら、あるいは整合性を考えながら司法改革というのも取り組んでいかなければならないのかな、こんな気がいたします。  そこで、まず小田中先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  先生の、司法という問題は経済の効率性などとは本質を異にする、基本的な人権保障というのがやはり司法の理念であるということは私も十分理解するところでございます。ただ、今、私が感じておりますように、そう言いながらもやはり社会の状況というのが大きく変化をしてきている。例えば、国際化が進み、あるいは情報化も進み、そういう中で基本的人権を尊重していく、そのためにどういう形で司法のありようというものを考えていくべきか。ちょっと抽象的な漠然たる質問で大変恐縮でございますが、経済の動きとの兼ね合いというのを先生はどのように整理されておられるでしょうか。何か御示唆がございましたらよろしくお願いをしたいと思います。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 今の御発言、私も問題意識は全く同じなんです。  一方において社会的な変化の要請が司法に対してあり、それがかなり今動いてきているという事実があるわけですが、他方において、もう絶対にこれは動かすことができないと私は思うんですが、司法には司法の固有の任務といいますか特殊な任務というものがあって、それは私が先ほど申しましたように、基本的人権の擁護、例えば裁判の利用という問題について、公正な裁判を受ける国民の権利という問題、決してそれは単に制度の問題ではなくて権利の問題だという観点から、それのアクセスの問題にせよ裁判手続の改善にせよ取り組まなくちゃいかぬというふうに思うんです。いずれにしても、一方における社会の要求と他方における司法の原則というものとどう調和させていくか、これが大変に重要な課題になってきていると私は思うんです。  問題なのは、私がきょう言いたかったのは、それをあたかも経済的な要求がすべてであるかのような枠組みを設定しながら、つまり逆に言えば、司法の固有の任務というものについて限りなく相対化し軟化させながらそれにフィットさせていくという議論の仕方、これはやはりいかがなものかというふうに思っているわけです。  ですから、例えば司法制度改革審議会という名前のものが仮にできたとしても、そういう問題について、先ほど田中さんの方から調査の重要性というものを随分強調されて、私もその点同感なんですが、きちんと議論をして、そして十分な合意を得てそれを制度改革案につなげていくというオーソドックスなやり方がとられるべきであって、例えば、大変言いにくいことではありますけれども、二年なら二年という時限を区切ってばたばたばたと議論していくという問題ではなかろうと言っているわけであります。  今の千葉先生の御質問に十分には答え切れていないとは思いますが、私の言いたかったこともある意味では千葉先生の問題意識と同じでありまして、そういうことをじっくり議論する場をやはりきちんと確保すべきだ。私は、法案の第二条には基本的な問題がある。ああいう枠組みの設定ではなくて、一方に社会の変化があるとすれば、他方において憲法の、司法の固有の原則、理念、任務というものがあるので、それとの関係において十分に審議せよ、調査せよというのが課題でなければならないというように思うわけです。

千葉景子民主党・新緑風会

○千葉景子君 ありがとうございます。  もう一点お聞きいたします。  この議論は経済との関連がかなり強いという背景と関連をいたしまして、司法というのは、必ずしも民事あるいは経済分野にかかわるばかりではなくて、刑事あるいは家事あるいは今非常にいろいろ問題になっております少年、こういう部分にも大変重要な役割を帯びているわけですね。このあたりについて、もし何か先生が、こういう問題点についてぜひ論議せい、あるいは忘れてはならじということがございましたら御指摘をいただければと思います。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 刑事、民事や少年の問題について改善すべきことは本当にたくさんあると思います。例えば刑事の問題一つとってみても、代用監獄の問題とかあるいは取り調べの問題であるとか、あるいは証拠の扱い方の問題ですね、伝聞法則などというものがありますけれども、その例外が非常に広く現在運用されているわけですが、そういう運用も含めた問題が多々刑事にはあります。  もう一つつけ加えさせていただければ、誤判の問題もあるわけであります。再審制度を通じて十分には救済され切れていないという問題があって、再審法の改正なども今まで何度も緊急の課題であるとして私たちは主張してきたところです。  それらも含めて、刑事にもたくさん問題があり、また少年については少年法改正の問題が今起きておりますけれども、やはり改善すべき点があるわけであります。例えば、少年に対する国選の付添人の整理整とんを初めとしてたくさんあります。これらはいずれも公正な裁判を受ける権利の問題でありまして、私はそういう権利の問題として改善すべき点を本当に日本の司法制度はたくさん抱えているというふうに思います。  問題なのは、それとはまた逆のコンセプトから来る改革要求もあるわけですね。例えば、社会的矛盾の増大に応じてさまざまな刑罰機構というものを整備しなくちゃいけない、そういう観点からの改革要求も社会的には存在しておりますし、また有力に法曹内部でも一部主張されているところであるわけです。  しかし、そういう問題があるわけですが、私自身は、先ほど申したような公正な裁判を受ける権利の保障を充実強化していくという観点で問題を取り上げ、そしてそれに適切な解決策を用意していくということが今急務だというふうに思います。  いずれにしても、その際に問題なのは、やはり憲法的な観点から見てその問題をどう取り上げていくか、そういう取り上げ方なんだろうと思うんです。ですから、そういう点で、私先ほど冒頭に述べたこととまた関連いたしますけれども、基本的人権の擁護という司法固有の任務に即しながら問題を取り上げ、整理し、対策を講じていく、そういう姿勢をやはり国会においても法曹内部においてもとるべきである。司法制度改革審議会というものもその観点で問題を取り上げていくべきだというふうに考えております。

千葉景子民主党・新緑風会

○千葉景子君 それでは、熊谷参考人にお尋ねをいたします。  やはり経済的な側面というのは、労働組合、働く者にとっても今大きな課題であろうというふうに思うんです。どうもこの改革問題を考えるときに、よくグローバルスタンダードといいますか国際的な流れにきちっと日本の社会も対応していく、そういう意味での司法というとらえ方もされるんですが、グローバルスタンダードと考えましても、決して市場原則だけがグローバルスタンダードではなくて、先ほど参考人がおっしゃいましたように、例えば多国籍企業、そういう中での働く者の位置づけとか、あるいはまた世界的にも男女共同参画の社会とか、働いている者、あるいはそこの人間にとっても今非常に問題点が多くなってきているというふうに思うんです。  そういう意味で、司法改革の中でいわば国際的な課題、あるいはグローバルな視点、こういうことについてどんなふうに改革論議の中で取り上げていくべきか、そんな観点について御意見があればお尋ねしたいと思います。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 今、先生の御指摘になったお話について二点申し上げたいと思うんです。  一つは、特に司法をめぐる国際的な制度改正というのが一九七〇年代、八〇年代、特に欧州では大変活発に続けられておりました。したがいまして、いい意味でのグローバルスタンダードとしての司法から見ると、先ほどいろいろ議論がありました扶助制度の問題についても、あるいは倒産法制の問題についても、人権擁護のいろいろな仕組みの問題についても、大変今までおくれていたものがさらにおくれているというのが日本の司法制度の現状、これがグローバルスタンダードとの比較においてあるのではないかというふうに思っております。  それから、我々の中でよく議論になりますグローバルスタンダードの問題としては、特に働く者、国民の過半数を占める勤労者の権利等につきましては、立法については国際労働機構、ILOの三者構成原則が世界的に受け入れられておりまして、我が国でも立法に関しては審議会の三者検討を経てという形が慣行となっております。しかし、これが一たび司法の場に移りますと、三者も何も、何の参加の保障もない。ILOができたのが今世紀の初めですから、いわば前世紀の世界に戻ってきているような感じがしているわけであります。そういう意味からも、司法がグローバルスタンダードのいい面から大変おくれているのではないかという印象を持っております。  ただし、私はグローバルスタンダードというものはすべて善とは思っておりません。特に、激しい市場経済というものが果てしなく続けば、それは必ず国際的な紛争を生むというのが今までの流れでございますので、これについては社会的な合意とかあるいは南北問題だとか、そういうようないろいろな手だてで改善をしていかなくてはいけない、あるいは対抗していかなくてはいけない面を含むものであると思っております。

千葉景子民主党・新緑風会

○千葉景子君 ありがとうございます。  田中先生、宮本先生にもお尋ねしたいんですが、時間でございますので、またほかの委員の皆さんにゆだねたいというふうに思います。  ありがとうございました。

大森礼子公明党

○大森礼子君 公明党の大森礼子です。本日は大変にありがとうございます。  まず、田中参考人にお尋ねいたします。  先ほど、司法改革をどうやってするかについては、まず現状調査が必要であるというふうな御意見をおっしゃいました。何が問題かをまず確定させてから、それから何をどうするかというのが決まるのだろうと私も思います。したがって、現状がどうなっているか、この調査分析が不可欠なわけですが、それを考えたときに、この審議会の委員の数が十三名以下で、二年間というのは短い期間であると思います。  それで、いろんな考えるべき論点といいますか、問題点がいっぱいある、そして現状調査も必要である、それから提言、結論に至らなくてはいけないと。そうなったときに、果たしてこの十三人以下の委員という規模、それから二年間という期限で本当に何ができるのか、非常に私はそこを疑問に思っているわけです。  だから、そういう現状調査等をきちっとやるためには、この規模の中でどのように工夫したらそれが可能になるか。例えば、十三名それぞれを小委員会の小委員長にして、それぞれ各分野を担当して現状調査してその意見を吸い上げる、こういう方法もあると思うのですが、ここら辺が非常に我々は具体的な形として頭に浮かんでこないわけです。それで、どんなものができるのでしょうかと聞いたら、それも審議会で決めますという形になってしまうので、なかなか審議会の器としてどれだけのことができるのかということがちょっとよくわからないところがございます。  そこで、今先生がおっしゃったような現状調査、本当にここからスタートすべきだと思うんですが、そういうことをやり切るために審議会ではこのような工夫をすればいいのではないかという、参考になる御意見がありましたらぜひお聞かせいただきたいと思います。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 私も、審議会の機能については、本当の話なかなか期待しにくいものがあると思っております。  これまで私は、実は日本の審議会はほとんど役割を果たしていないと書いてきたんですが、行政改革委員会という審議会の委員を引き受けまして、矛盾しているんじゃないかと人にも言われたんですが、やってみて幾つかのことがわかったんです。もともと書いていたことを改めて時間を使って立証したという面も多いんですが、きょうの先生方と違いまして、国民から選ばれていないわけです、いかなる意味においても審議会の委員は。したがいまして、我々は背景に国民の信託を得ているわけではなくて、たまたまの事情で審議会の委員を引き受けた、こういうことでありますので、ぎりぎりのところへいくと、たすきをかけたわけでもなくて握手して回ったわけでもないわけですから、国民の何かを直接感ずる、あるいはそういうことを背景として強く出るということは非常にしにくいもので、多少この分野は勉強していましたぐらいの話で発言することになるわけです。  ですから、私は本来は当委員会のような国会の常設委員会のもとに調査分析を行うコミッティーをつくるべきだと。ここには皆様方が選ばれた調査分析をする人、例えば大学の先生にお願いしてそこでチームを組むというようなことがあっていいというふうに思います。審議会は、やっぱり私の若干かかわった経験でいうと難しい。ぎりぎりのところ、だれに対してもみずからの代表性を主張することができないという面があろうと思います。  それで、委員長の人選は極めて重要であって、委員長はまだそれでも、例えばこういう場に出て委員長の名前でやれるといいますか、疑似信託ですか、委員がそういう役回りを果たすというのは私の経験では非常に難しいなというふうに思いますので、審議会の限界は私はあると思います。それでもいろんな工夫の余地はあるので、できないできないと言っていて済む問題ではないと思います。

大森礼子公明党

○大森礼子君 ですから、中身が具体的に浮かんできませんし、まだ我々は人選を知らないまま審議しておりまして、どういう形なのかもわからない。それで、もちろんちゃんとした役割を果たしていただきたいと思うのですが、ないよりあった方がいいだろう、こう言うとしかられそうなんですけれども、ただその審議会にすべてお任せして我々は何もしないでいいはずはないわけです。  そこで、今、田中参考人が少しおっしゃってくださったのですが、国会がどのように関与すべきであるか、審議会と並行してまた何か特別委員会を開くという方法もありますし、あるいはその審議会の審議と連動させるような形もあると思うのですが、国会がどのように関与すべきかということについてまず田中参考人にお尋ねをいたします。それから、その後に同じ質問をまた宮本参考人にもお尋ねしたいと思います。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 一言で言えば、私は競争原理だというふうに思います。審議会の効用は、もし審議会を通じていい調査研究が行われ問題点の指摘が行われるということになりますと、物の言い方でひょっとして礼を失することになるかもしれませんが、例えば当法務委員会はどういう仕事をしているのか、有権者に対して先生方がどう応対されるのか、何か審議会でやっている仕事の方がいいと有権者が言った場合に、役割を果たせなくてごめんなさいと先生方が言われるかどうかという問題がある。  ですから、多分審議会にいい人を得ていい議論が行われれば、国会はそれとの間にある種競合関係に立ちますので、国会活性化の手法として使う余地があるのかもしれない。ちょっと不届きではありますが、そんなことを思っております。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 二点ほどあります。  まず、審議会が内閣に設けられるということになってもこれは審議会がアンタッチャブルになるということではもちろんありませんで、国会が国政調査権を十分に発揮される、これは可能であるし、かつ必要であると思います。したがって、司法制度改革に関する、あるいは実情に関するいろんな資料をとられる、あるいは現実に調査なさるということはもう常時必要であろうと思います。私は、この二年間はそのように常に見守って監視していくという役割をぜひ国会に期待したいと思っています。  それから二つ目に、これは衆議院の修正の中には入らなかったかと思いますが、審議の内容について国会が報告を求められるということ、これも法律に書かれる書かれないにかかわりなくやるべきであろうと思います。  ついでに言いますと、審議会の審議は公開を維持する、なるべく風通しがよく、かつガラス張りにするということが必要で、これは国民に対しても掲示的に明らかにされるべきですが、国会に対しても明らかにされるべきだと思います。そのような形でのかかわり方はぜひ必要だと思います。  今のところ、以上です。

大森礼子公明党

○大森礼子君 次に、熊谷参考人にお尋ねします。  企業の倒産件数の増加に伴いまして、労働者にとっては未払い賃金の労働債権の処理とか酷な問題があります。それから、倒産に至らないまでも雇用関係上での賃金や退職金、それからリストラ等の労働条件をめぐる事件が増加傾向にありますし、これからもふえていくと思います。そうした場合に、この法的処理がうまくいかないということは、ほとんど多くの人は労働して対価を得てそれで生活しているわけですから、大きな社会不安を巻き起こすことになると思うわけです。  先ほどドイツ、フランスの例で、労働裁判所ということを伺いました。日本は大変おくれていると思います。それを前提にしまして、連合としては今回の審議会のメンバー構成に対して、おのずから絶対これだけは、こういう人はという要請があると思うのですが、これをお聞かせいただければと思います。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 今、先生の御指摘になった点については、特に司法制度について、企業の変動、これからも特に大きないろいろな変動が予想されますので、その場合に、勤労者の権利あるいは生活を守る立場から司法はどうあるべきだ、そういうような立場から発言できる、全国の勤労者のいろいろな悩みとか、今まで司法制度の改革に何回もいろいろお願いをしてきて一向に実現しなかった、今度こそという思いもございます。そういう意味で、これからの大きな経済変動期の中で雇用を守る、あるいは今までの我々としての司法制度改革についての勤労者の要望、そういうものを的確に反映できる委員がこの十三名の中に必ず含まれてほしい、それが私どものお願いであります。

大森礼子公明党

○大森礼子君 続いて熊谷参考人にお尋ねするんですが、先ほど、勤労者の実態をなかなかわかってもらえないということで、裁判官が純粋培養型であるとおっしゃいました。確かに裁判官は若いほど優秀とされているみたいでございまして、早く受かった人を採る、純粋培養で。そうすると、勤労者でもあるのかもしれませんが、実際の職場で働いた経験のない方がほとんどだろうと思います。ちなみに、私はOLから司法試験を始めたんですけれども。そうした場合に、先ほど実態とかけ離れた判決も裁判官の生活の反映ではないかというふうにおっしゃいました。このことはまた時間があったらお尋ねするんですが、小田中参考人も法律時報七十巻二号で「裁判官の市民的自由」という論文を書かれておられまして、共通することがあるのかと思うのです。裁判官は純粋培養型で多分そういう傾向があるんだろうなと私は思っております。  それは多分ほかの方がまた聞かれると思うので、では弁護士の方はいかがでございましょうか。労働事件とかこういう訴訟について十分要請にこたえておられるのかどうか、そこら辺はいかがでございましょうか。もしかしたらもう全員、弁護士も裁判官も含めて、労働事件について考えなくてはいけないのかなと思うので、お尋ねする次第です。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 今の先生のお話は、特に労働組合の全国的な団体のスタッフという立場になっている人間も同時に常に戒めている点でございまして、今の企業の変化、職場の変化は大変激しいものがございまして、十年前に一年いたからといって今の職場がわかるとは限らないわけであります。特に、企業の譲渡だとかあるいは買収というようなことが活発になってきますと、その中での労働問題を今行ってすぐ扱えるか、そういうことが我々にも問われているわけであります。  ですから、我々が先ほど申し上げた内容というのは、何も始める前に実社会を経験すればあとはすべてよろしいということではないというふうに思います。それは、それぞれの法律の専門家がいかに地に足がついたものになるといいますか、現場とのチャンネルを持って、そこで実際の現場と遊離しない判断をしていけるかということになっていると思います。純粋培養というのは一つの例として申し上げたのでありまして、スタートが現場を経験しているから、あとはすべて実態に合った判断を法律家の方がしているということではない。この点は法律家全体に通じる問題ではないか、このように思っております。

大森礼子公明党

○大森礼子君 終わります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 きょうは、参考人の皆さんありがとうございます。  時間の関係で、宮本参考人に二、三点お伺いをしたいと思うんです。  日弁連が司法改革にこれまでいろいろと御尽力いただいたことは私もよく知っております。今度の司法改革ということが国民的に論議になっているという中で、法曹一元ということを前から主張されておりまして、ぜひその論議をということは私も最も大事なことの一つとして理解しておりますが、この問題について、時期尚早であるとか、あるいはその点について十分議論が国民的に尽くされていないとか、今までいろいろな意見がございました。  そういった中で、ぜひこの法曹一元を今度の審議会で議論して実現に向けて成果あらしめていきたいという御希望を実際に進める上で、日弁連として、何か今後御尽力いただく方策とかあるいは御努力いただく道とかお考えになっていらっしゃるかどうか。その点はどうなんでしょうか。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 日弁連は、御承知かと思いますが、昨年の秋に司法シンポジウムのテーマに法曹一元を取り上げました。ここで全会的な討議をいたしました。それに基づいて、ことしになって法曹一元推進本部、これを日弁連の司法改革推進センターの中に設けました。この推進本部を中心にして、これから日弁連の会内の論議を深めるとともに、国民各層に法曹一元の理解を得たいというふうに考えております。  具体的にもうかなり広い範囲で踏み出しておりまして、国民に向けたいろんな集会、それから出版その他の企画とともに、会内での論議をより深める。これはかなり以前に日弁連が法曹一元要綱をつくっておりますが、これの内容についてもそれから法曹一元の考え方についても若干考え直しを要求されるというところがありますので、これの改定作業にもかかる、そういう手順を今踏みつつあるところであります。  ちょっとついでに申し上げておきますが、日弁連がこの間法曹一元にこのような形で取り組むに至ったのは、今の司法の一番の問題が、今も議員の中からお話がありましたが、やはり裁判官が子飼いの裁判官である、いわゆるキャリアシステムが徹底している。そのことからくるヒエラルキー、階層秩序が動かしがたくできて、これが壊せない。これを壊すには、弁護士が主となると思いますけれども、やはりいろんな経験を持った者が裁判官になっていく、こういうシステムをとる以外ないだろうというふうな結論に達したということからくるわけです。  以上であります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 次の問題として、司法への市民参加ということでは御指摘のように陪審・参審制の実現ということが一つの重要な課題になると思いますが、せっかく陪審法ができて、我が国では戦時中にこれが停止をされる、こういった事態になったわけですが、日本の国民に果たしてそれがなじむのかどうかという意見も一方にあるんですね。  私は、これも先生が今おっしゃったように、国民的なコンセンサスあるいは合意を進める上でかなり日弁連としても御尽力いただいておりますが、さらに審議会に任せるんじゃなくて、運動的にも国民に理解を求める必要がまだまだあるのではないかと思っておりますが、その点はいかがでしょうか。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 私は、陪審制度あるいは参審も含めて、これが日本人の国民性に相入れないという意見は俗説だと考えております。要するに今問題なのは、お上の裁判ということで満足するのか、それとも隣人、自分たちと同じ国民によって判断を受けるということがいいのかという、これについては国民性にかかわりのないものだと思います。一見国民性というふうに見られるのは、かなり長い間日本の裁判がキャリアシステムの裁判官による裁判にならされてきているからということであります。  この点をもう一度裁判というものの本質、裁判のあり方から考え直す、審議会の機会はいい機会であります。そのことから国民の納得が得られてくるということになると思います。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 前の参考人のお話の中でも、陪審制ということで、実際に無罪率が高いとか、あるいは国民に親しめる、理解できるそういう裁判が実際に行われているとか、そういった実例を踏まえた御意見もございまして、私もそういった観点も大事だな、こう思っておるんですが、実際に陪審制と参審制とどちらをとるか、あるいは併用するのか、具体的に選択的にやるのか、そこらあたりの構想がございましたらお話しいただけますか。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 日弁連の中では、陪審の意見と参審の意見が両方行われております。そこで、なかなか今のところ意見をまとめるに至っていないんですが、方向としてこのようなことを次第にまとめてきております。  まず、審議会の議論の中で刑事事件に関する陪審制、これを採用していただくということを中心に据えて運動を進めていこうということであります。それが固まっていく段階で、そのほかの事件についても陪審を広げる。例えば、起訴陪審、それから民事陪審、行政事件の陪審、こういったものに広げていくとともに、陪審になじみにくい問題、専門的観点が必要である場合とか、それから陪審員が並んでいるところで審理が行いにくい問題、少年事件なんかそうですけれども、こういうところについては参審を併用していく、そういうことを打ち出していくべきではなかろうか、そういう方向での議論を今しているところであります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 次に、先ほどお述べになりました全国至るところで法律相談を含めて国民に身近な司法を実現するというお話で、弁護士会としても弁護士のいない地域をなくそうというお話もございましたが、実際にそういう地域で制度的にそういった公設的法律事務所を設置する構想というものを具体的にやっていくためには、場所、それから施設、人員、これも含めて予算の裏づけが要るというお話がございましたが、そういったことについて具体的なプランメークというのはこれからですか。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) おっしゃるとおりであります。公設事務所について日弁連の中でプロジェクトチームをつくって検討を開始しておりますが、現実に例えば特定の場所にどのような事務所をつくるとか、人員配置をどうするとか、そういったプランについてはまだこれからのところであります。しかし、公設事務所を推進していくという立場で日弁連が議論していくことは、これは事実であります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 それから、先ほど国選弁護制度の充実というお話がございまして、日弁連が実際現に当番弁護士制度で御尽力いただいていることもよく知っているんです。かなりの要請があり、各地でかなり当番弁護士制度が被疑者の段階から生かされておるというように思っておりますが、そういった実績といいますか現状といいますか、そういうものをおまとめいただいている資料が日弁連にはもう用意されているわけですか。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 今私の手元に持っておりませんけれども、日弁連でそのようなデータをまとめております。主として弁護士が少ない地域といいますか、ここで当番弁護士はかなり進んでおります。ところが、東京あるいは大阪というような大都市の方でむしろなかなか進まないという現状でありまして、大都市を中心にこれは精力的に取り組んで広げなければならない、そういう課題に直面しているところであります。財源の問題もあります。  先ほども申し上げましたけれども、結局弁護士会の予算が足りなくなって、弁護士一人一人が寄附をする、その寄附を当番弁護士に当たった人に日当としてお分けするという、例えは悪いですけれどもタコが自分の足を食っているという状態で今進めている、そういう現状であります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 そういった問題は、やっぱり法律扶助制度の国の立場での充実ということが一つ大きく議論されて解決される展望を開かなくちゃならぬ、こう思うんです。  最後の質問として、先ほど行政訴訟関係のお話がございました。司法が行政をチェックするというのは国民の立場から大事な機能なんですが、実際にはおっしゃったように行政訴訟というのは国の側が勝訴する率が高い。こういったことで、国民のその点に対する不満もまた多くあるんですが、そのためには行政事件訴訟法の改正も必要だというお話がございました。  これを打開していくためには、一つは裁判官自身が法と良心に基づいて裁判するということではあるけれども、もっと国民的立場に立って行政をチェックするという意識が大事でしょうし、おっしゃるような行政事件訴訟法の改正もまた必要だという論議もあるんですが、特に行政事件訴訟法のどこを改正するのがよいか、そういう点の御意見がございましたら、最後に伺っておきたいと思います。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 行政事件訴訟法について欠陥と考えているところはかなり数多くありますけれども、特にどこをということを言いますと、まず思い浮かぶのは行政事件訴訟を提起する当事者の適格の問題、行政訴訟を受けられる資格そのもの、これがなかなか難しいし、しかも狭められているということがあります。  それから二つ目に、行政処分の処分性といいますが、何が国民に不利益を与えている行政行為なのかということを確定することがなかなか難しい。大変専門的な枠組みと捜査が行われているものですから、弁護士でも間違えるということがしばしばありまして、その点が難しい問題です。  よく言われていることですけれども、例えばドイツの場合ですと手紙を一本、はがきを一枚書けばそれでも裁判として受け付けられるというような、そういう大変門戸が広くなっているということであります。そこまでとは言いませんけれども、国民に対して意地悪をしているようなそういう法律のつくり方はやめてもらいたいということであります。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 ありがとうございました。  終わります。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。きょうは本当にいろいろ教えていただいてありがとうございます。  私自身がこの法案はどうもやっぱり変だと思うのは、内閣にこの司法改革の審議会を置く、内閣が司法改革を担当することそのものが司法の独立に対する信頼をますます低下させないか。衆議院の代表質問で民主党の枝野さんが、まないたの上のコイがまないたや包丁をかえろと言う権限を持つのはおかしいというふうに発言されていらして、そのとおりだと思うんですね。附帯決議で司法権の独立ということに留意することは書いてあるんですが、個々の事件の独立性ではなく制度として果たしてどうか。  百歩譲って、では国会はどうか。私は内閣よりも国会の方がふさわしいというふうに思うんですが、一方で国会が担当することにも若干危険性があります。国会は政治的な選挙を通じて出てきておりますから、必ずしも公共の事柄のすべてについて民意が反映されているわけではない。少数者の人権問題は多数決とぶつかれば負ける。だからこそ違憲立法審査権が司法権にあるわけです。ですから、内閣は問題ではないか。百歩譲って国会、国会の審議プラスもう少し市民の側でそれをチェックするようなことをしない限り、変な形の司法改革になるのではないかと非常に思っているんですが、その点について、時間が余りないので小田中参考人と田中参考人にお願いいたします。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 大変難しい問題で、そういう質問を受けては大変だなと思っていた、そういう問題だと思います。  私自身も福島先生と非常によく似た問題意識を持っていて、きょうは述べなかったんですが、司法改革という、しかもそれがかなり抜本的な改革をする場合にどういう機関で審議するのが妥当かということについては、それ自体がもう少し議論されていいんじゃないかというふうに思っています。  内閣ではなくて、内閣からも独立した形でこの審議会というものが構成されるということも一つの工夫ではないかと思うんですが、特に内閣が全面的な委員の任命権を持ったり、それからその報告、意見を受けて、今度はその中のどれを改革するかについても全くの自由な選択権を持つというような、それらも含めて問題がかなりあるように思っています。  ですから、私は先ほど司法権の独立とかさまざまな憲法的原則に従って司法制度改革論議をせよと言ったわけですが、その一つの延長としてといいますか重要な問題として、今の福島先生の御指摘のような問題があるということ、そしてまた、それ自体が実は余り日本では議論されてこなかったというところにも、司法というものをどう我々市民の側から、そして憲法の角度からとらえていくかということについての論議が成熟していないという問題があるんじゃないかというふうに思います。確かにそのことについては大きな問題があるということを思います。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 司法制度の見直しに関しましては法曹三者の合意が必要とされてきました。その皮切りといいますかきっかけが一九七〇年参議院法務委員会における国会附帯決議だったわけです。法曹三者が司法制度改革やれよという話で、もう国会はそれには直接は議論しない、三者でやってくれというようなことなんですから、国会でやっていただくためには、一九七〇年五月の参議院法務委員会における国会附帯決議が今の時点に立ってみれば極めておかしい、あれはおかしかったと一度言っていただかないと、国会でやると言われても何か話が違うんじゃないかと。  したがって、現在の司法制度について何か問題があると思っている人が内閣に言う以外にないなと。国会はみずからの手を縛っておられるわけで、我々の代表者はすべてタブーなし、あらゆることが議論できるはずなのに、法曹三者にお任せというのは、そこのところを一度議論していただいて、その皮切りとなったこの委員会の場で議論をしていただくのが一番いいんじゃないか、そうすれば呪縛は外れるんではないかというふうに思っております。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 では熊谷参考人、お聞かせください。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 私も先ほど申し上げた点でこの三権分立が非常に基本だ、こういうふうに申し上げましたので、衆議院で大変な議論が行われたということについて、先ほどの質問された先生のお話も含めて、確かにそのとおりであるというふうに受けとめまして、それでこの附帯決議が大変重い意味を持つのではないかと申し上げたわけであります。  したがって、これは附帯決議にはいろいろなものがあるのかもしれませんけれども、この第一項は、もしこれに何らかの懸念が生ずるのであれば、この審議そのものについてこの委員会から重大な判断をしていただく、そういう問題ではないかと思っております。  ただし、先ほどお話がありましたように、法曹三者の問題が同時にこの委員会で附帯決議が生まれているということはあるわけでありまして、私どもは法曹三者の間で議論すべきことというのもあると思うんです。しかし、制度自体についてはやはりもっと大きな舞台で議論いたしませんと、我々が長年いろいろな意味で苦しんできた問題についての声が届かないのではないか。その点ではやはり基本的に国会の委員会が判断すべき問題である。そこに案を用意するのが今回の審議会であって、それについての方向性を附帯決議が定めている、そういうふうに読ませていただいております。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 ありがとうございます。  先ほど、田中参考人が御自身が審議会に入られた経験などもちらっとおっしゃったんですが、今回この法案に基づけば、内閣のもとに置かれ、そして対政府質問の中で委員や事務局がどうなるかということをお聞きしているんですが、なかなか明確には出てきておりません。事務局はどうも各役所からかき集めるのではないかという感じもするんですけれども、そういうことについてはいかがでしょうか。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) これはもう単に憶測する以外ありませんが、ただこの審議会が少なくとも備えてほしいのは、現在の司法の実態について調査する意思と能力のある人がやっぱり委員になってほしいということだと思います。毎年二十八万件近くの判決が出ても、それが実際に例えば専門雑誌に判決の評釈というような形で出るのは千五百程度だそうですから、判例のうち〇・五%だけが広く人の目に触れる。あとは全く検索もできませんし、ルール形成機能が二十八万件の判決にあるとは思えないわけですね。  したがって、例えば私はここは情報技術者あるいはそういう分野で仕事を重ねてこられた人たちが、裁判官の皆さん、あるいはそれに至る弁護士を含めて法曹人の汗の結晶である二十八万件からルール形成機能を読み出すような形で、それはユーザーがまた裁判というものについてより身近に接することができる、情報に接近できることですから、例えばそういうことをやるためにどのくらいの費用が必要であって、どういうシステムを整備すべきかというようなことが議論できるような人が入ってほしい。  そうすると多分、これは年齢で言うのも少しなんですが、私はやっぱり若い方にやってもらった方が、情報技術等について見識がある人、もちろん年輩の方にはないとは言いませんが、一般的にはこれはある種のセンスですので、できるだけ若い方に委員になっていただいて、国民にとって例えば情報検索が極めてしやすいようなシステムを整備するための条件とか、法の上において何をパスしなければいけないのかという検討がなされれば、そういうことを通じて国民に裁判そのものが身近になる、あるいはいざという場合に裁判というのはこういう形で頼ることができるということですから、そういう議論のできる人をぜひ入れてほしい、入ってほしいなと思っております。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 先ほど、千葉委員の方からも出たんですが、公平な裁判の実現について小田中参考人に質問がありました。私も本当にそう思っておりまして、武器対等の原則、証拠開示、令状主義が今のままでいいのか。今回の改革はどうも捜査の強化、厳罰化に向かう、そうすると出てくる証拠が変わらなければ、幾ら陪審・参審制を導入してもひどい結果にしかならないのではないかというふうにも思っておりますが、こういう点についてはいかがでしょうか。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 今の御質問のように、特に刑事手続、行政手続も同じような問題を伏在していると思いますが、刑事手続の場合には特に国民の基本的人権という観点から物すごくたくさん大きな問題があります。捜査から始まって起訴提起、それから公判、そして判決の確定、再審という各レベルに大変大きな問題が山積みされておりまして、そういう問題が緊急の解決を要求されて、この何十年間というもの、主張されてきておるわけですね。その主張が今回この司法制度改革の全体の動きの中で実を結ぶということを私は期待したいわけです。  しかし、現実には逆の動きも相当強くなってきているように思います。現に、この審議会の設置に関連してある参考人の方が、むしろ捜査権限強化という方向での、あるいはまたさらには検察権限強化という方向での、あるいはまた有罪実証を非常に容易にするというような方向でのさまざまな意見を開陳されて参考に供したようですが、そういう動きも非常に強い。  私の見るところでは、現在、司法改革をめぐって非常にさまざまな複雑な潮流があるわけですが、そうであればこそ、私は現時点において司法改革というものを憲法的な視点からきちんとオリエンテーリングすることが重要である。ですから、私は改革審議会というものをもしも、私自身は何らかの改革を審議する場が必要だというふうに思っておりますけれども、その改革を審議する場において、その方向づけとしてはぜひ憲法の理念なり原則なりに従ってやるんだという明確なオリエンテーリングが必要ではないか。それがあれば、先ほど申したような現在刑事司法が抱えているさまざまな問題をむしろ手をつけないで、そうして逆に捜査権限なりあるいは検察権限なりを強化するという方向に向けての改革論議について適切な対応ができるのではないかというふうに思います。  私としては、ぜひ憲法的な原則に従うんだ、理念に従って司法制度を改革するんだということを、これは当然自明の理なんですが、余りにも自明の理過ぎるのでかえってそういう点がおろそかになっているのかもしれないのでありますけれども、ぜひそこのところを明らかにしていただきたいというふうに思います。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 宮本参考人にお聞きします。  裁判官の再任拒否などの問題も非常にあるわけで、裁判官統制がその後より強まっているのではないかというふうに思っております。どうすればこれを変えることができるのかということについて御意見をお聞かせください。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) きょうの意見陳述の中で中心的に意識していたのはその点であります。これはいろんな方がいろんな提言をこの間、もうここ二十年ぐらいにわたって行っておられまして、例えば裁判官会議をもっときちんと実質的にやるようにしたらどうかとか、あるいはさらに裁判官の上下関係をなくすような何か方策はないかとか、いろんなことをおっしゃっておられます。私はそういう点はもちろん必要だと思います。  例えば、これは「日独裁判官物語」というのをごらんいただければ、一番最初のところに、日本の最高裁判所判事が黒塗りのセダンの車に乗って登庁するところ、続いてドイツの憲法裁判所の裁判官がオートバイに乗って登庁するところが出てきますけれども、そういうことに典型的に見られるように、そういった裁判官の彼我のあり方、これが非常に問題だと思います。  ただ、それを基本的に変えるということになる場合に、私は法曹一元制の導入、それから陪・参審というものによる国民の空気、国民の自分自身の声というものを入れていく必要がある。それを中心に据えなければ、今現在のキャリアシステムをそのままにした上では、福島議員が今おっしゃったようなそういった現在の裁判官制度の改善はなかなか困難であろうと思っているわけです。  以上でございます。

福島瑞穂社会民主党・護憲連合

○福島瑞穂君 どうもありがとうございました。

平野貞夫自由党

○平野貞夫君 四人の参考人の方々には、司法制度改革のあり方とか具体的な問題点についてけさからいろいろ御意見をいただき、大変勉強になりました。  そこで、二、三お尋ねをいたしたいんですが、まず、この司法制度改革審議会設置法案は、衆議院でその職務といいますか所管が修正されまして、原案よりかなり重いものになっておると思います。いずれにせよ、二十一世紀において司法が果たすべき役割を明らかにするという当面の問題の解決だけではなくて、恐らく司法制度の抜本的な改革のありようのようなものも検討されると思いますが、四人の参考人の方々がイメージする、理想と言ったらちょっとオーバーかもわかりませんが、一応の司法制度に直すために、今の憲法のシステム、枠の中でできるのか、あるいは憲法の見直しもある程度必要ではないか。  私が申し上げたいのは、誤解のないようにしていただきたいのは、基本的人権とか国民主権を変えるという意味ではございません。例えば司法権の独立の場合、最高裁長官とか裁判官を内閣が任命するということでいいのかとか、あるいは立法、行政をチェックするために今の違憲立法審査機能でいいのかという問題もあると思いますが、一言ずつで結構でございますから、御意見いただければありがたいんです。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 私は、現在の憲法を充実強化していくということが先決の課題だというふうに思っています。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 私は、申し上げましたように、今回の改革というのは明治の創設それから戦争直後の改革に続く大改革だということであると思います。したがって、そこで議論をする内容というのが、それは議論の結果だと思いますけれども、現行憲法の中で十分な改革ができるということもあると思いますし、あるいは憲法について、ここをこうすればさらによい司法があり得るということが意見として出てくるということもあり得るのではないかというふうに思っております。  ただ、憲法自体については、その基本的理念を堅持すべきだというふうに思っております。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 最高裁長官とかあるいは日銀総裁という職があります。これは国民から選ばれているわけではないし、国民に選ばれるような仕組みでもないわけですから、内閣総理大臣との関係においてどういう関係に立つのかというのは非常に難しい問題だと思います。  私は、こういう問題についてたとえ憲法でいかなる規定を置いたとしても、パブリックフィギュアズ、公人としての自負心を背景とした人がならない限り、どのような憲法規定においても裁判の独立性とかあるいは中央銀行の独立性というのは維持できないんだというふうに思います。したがって、幾ら憲法的といいますか法律的に詰めても詰め切れないところに公人としての自負心というものによって支えられる何かがある。それを公人で埋めなければいけない幾つかのシートがありまして、毀誉褒貶いろいろあっても、どこかで頑張っていたやつがいたなとだれかは思ってくれるだろうというその最後の一点だけでみずからの職業を支える人というのは私はいるんだと思います。ですから、私は多分、超憲法的な存在ではないかというふうに思っております。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 今回の司法改革は、憲法の諸規定の枠の中でこれをさらに徹底していくという形で行われるというのが本筋だと思います。この枠の中での改革でも相当大きな改革が可能であります。その上で、さらにこの二年間の審議による新しい制度を展望しつつそれを実行していく上で、憲法論議が場合によったら出てくるかもしれませんが、それはその先のことだというふうに考えていいかと思います。  例えば具体的に、日弁連では法曹一元のほかに、弁護士が非常勤で裁判官になっていくという制度を提案し、審議会でも意見として申し上げようと思っていますけれども、これが最高裁などのお話によると憲法抵触の問題があり得るということであります。我々は非常勤裁判官制度の実現を推進しますが、だから憲法のこの辺をいじってくれということは今のところ言うつもりはありません。

平野貞夫自由党

○平野貞夫君 きょう先生方からお聞きしたお話について率直な私の感想を申し上げますと、本来は一九八〇年代あたりに取り上げて改革すべきであった問題、ほとんどがそういう問題ではなかったかと思います。これはむしろ我々政治、国会側の責任だと思っております。  そこで、田中参考人にお尋ねしたいんですが、21世紀政策研究所でつくられました「民事司法の活性化に向けて」の提言を勉強させていただきまして、大変詳細に具体的に問題を整理されて提言されている。私は、基本的にはこの提言の内容については賛成でございます。  ただ、私の悪い癖かもわかりませんが、一つちょっとひっかかっておりますのは、なぜ今、司法制度の改革をやるかという理念といいますか歴史観の点で、日本を取り巻く内外の環境が大きく変化する中で云々と。その説明として、最近の景気の話とか、あるいは政治リーダーの話とか、政治の不安定化だとか、あるいはグローバル化に基づく、こういう書き出しでございます。それはそれでよくわかるんですが、どんなに司法制度を改革しても、基本的にはやはり国民といいますか、指導者も含めて広い意味の国民の意識がしっかりしていないとこれは機能はしないと思うわけでございます。  私は、今回の司法制度の、司法だけじゃございませんが、特に司法が迫られている、特に21世紀政策研究所が提言した意図は、世界資本主義の変質というところに根本的な原因、それで我が国の司法制度が、行政もそうですが、どうにもならなくなっているんだというところにあると思っております。これは私の勝手な議論なんですが、そうしますと、私は、現在の司法機関の中で苦労されている法曹人の方、人数が足りぬとかいろいろ言われています、あるいは勉強の仕方がどうのこうのと言われていますが、全体的に法曹関係の人たちへの責任がちょっと目立ち過ぎる。  むしろ政治もそうでありますし、特に最近の経済事件、経済問題なんかを見ますと、企業の倫理といいますか、果たして日本は健全な資本主義の、市場経済の国かどうか、ちょっと私自身わけがわからぬようなことが最近も起きておるんですが、そういう意味で企業側、特に大きな企業の団体である経団連の中で、そういう意味の反省といいますか、あるいは今後そういう企業倫理をどう確立すべきかというような御議論をなさっていると思うんですが、この提言をつくられる際にそういう御議論がありましたら、ちょっと御紹介していただきたいと思います。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) 21世紀政策研究所は、企業からのお金、昨年度で言いますと四億円弱をいただいていまして、そういう意味では経団連のメンバーを中心に企業からお金をいただいております。これは明確であります。しかし、経団連が議論されていることと私どもが研究所で議論していることとは全く別でございまして、私どもは私どもの独自の視点で議論、そして調査報告をやっております。  お尋ねの件でありますが、コーポレートガバナンス、企業統治というテーマがございまして、これは株主持ち分として株主資本を持っている人たちが企業に対していかなる形で統制といいますかみずからの意思を伝えるのか、ここが現在の日本の企業制度において最もあいまいな点でありまして、企業法制をめぐる、あるいは現実の幾つかの紛争の多くはここから発しているのではないかというふうに思います。したがいまして、これは司法制度の問題というよりは、これまでのコーポレートガバナンス、企業統治にかかわる今までの日本の慣習のところで切り分け切れないでいた問題というものがここに来て噴出していると思います。  とりわけ、不良債権の問題を抱えて、この処理を先送り先送りしてきたということはこのコーポレートガバナンスにかかわる問題でありまして、ここがもし機能を果たしているということならばこれだけの対応のおくれは出なかったんだというふうに思います。そういう意味では、やわらかい腹が、最も脆弱なところが一体どこにあったのかについては、ビジネスの内部においても今後は相当の検討が始まるものと思われます。  現在の経済の状況からいきますと、企業分割とか企業の買収等を通じて供給サイドにおける再編を図らねばなりませんので、ここは最後寄りつくといいますか、よって立つものがコーポレートガバナンス、株主持ち分というもので仕切る世界に入らざるを得ないわけであります。そういう意味ではアングロアメリカンで、アングロアメリカンというのは、あのアメリカを中心として最も自由な仕組みのもとにおいて幾つかの実務が積み重ねられる中で成立した原則というものが、結局MアンドAとか企業分割とかいうテーマをこなすときに、あれ以外に実務上こなし得る原則はないという形で我が国にも今入ろうとしているということだと思います。アメリカがいいからではなくて、アメリカで積み重ねられた経験を超えるものが市場経済のもとにおいてないという認定からこれが起きるんだというふうに思います。  そういう意味では、御指摘のように企業をめぐる幾つかの不祥事が起きたのは、ガバナンスがきかない、企業統治がきかない仕組みのもとだという意識が個々の経営者の間に非常に強くなっておりまして、現在株主総会を控えて決算がございますが、代表取締役になる人たちは、ガバナンスがきかない仕組みにおいて代表取締役になるなんぞは恐ろしくて引き受けられないという人が出てきているくらいでして、企業内における統治、統制をどのように組み込むのか、それがあって初めて責任がとれるということであります。もしそれがきかないところなら、活火山の上で昼寝をしているという危ない話ですから、もうそんなことはとても引き受けられないというリズムといいますか、それが今入ろうとしております。  したがいまして、私は、二十一世紀初頭には明確にこのコーポレートガバナンスの仕組みをこなした日本のビジネスというものが立ち上がってくると。ですから、企業不信と言われたことの多くは、この間、根底のところでは私は解消するのではないかというふうに思っております。

平野貞夫自由党

○平野貞夫君 最後でございますが、皆さんから大変不評の法曹三者で司法改革をやれという両院の附帯決議の話でございます。  私の理解ですと、この法案は衆議院で可決されているわけですが、参議院で可決することによってあの附帯決議は消滅する、附帯決議というものを消滅する決議をまたやるということはちょっとシステム的に国会の手続にないようでございまして、新しい委員会の意思がそこで出されればその意思が当面の意思になる、そういうふうに私は理解しておりますので、誤解のないようにひとつよろしくお願いします。

中村敦夫各派に属しない議員

○中村敦夫君 中村敦夫です。  四人の参考人の方々に、それぞれ二つの問題についてお一人三分ぐらいでまとめて御感想をお聞きしたいと思います。  ほかの国々と比べますと、日本では司法と国民の乖離というものがかなり甚だしいという特徴があるように思えるんです。これは制度面の問題というのはたくさんあると思いますけれども、意外と軽視されがちなポイントがあると思うんです。  一つは、法律の文体という問題です。これは、御承知のように非常に非近代的な日本語で構成されていまして、私も本を読んだり物を書いたりするということの多い人間ですが、法律は素人ですから、三回、四回読んだだけではわからないというものがあるんです。弁護士さんなんかに解説してもらうと、くだらないほど単純なことが書いてあったというようなケースが非常に多いと思うんです。だから、法曹三者というのは単なる暗号解読者ではないのかというような気すらするわけです。やはりこんなことではまず国民に法律はなじまない、その入り口のところがおかしい。ですから、どうしてもこれは現代語へ転換すべきじゃないかというふうに考えるんです。  もう一つは、法案をつくるときの構成のルールというのはどうなっているのかということなんです。つまり、一つの法案の中に異質なテーマが二つ混在して出されてくるケースが非常に多いんです。表決で困るんですよ。最近でも、国立大学の改革に関する改正案みたいなものが出ましたけれども、優秀な青年は三年で卒業していいというような話で、それはいいかもしれないんですが、その後をずらずら読んでいくと、大学の中での教授たちの自治権を著しく制限するみたいなものもくっついているわけです。これは全然違うテーマなんです。そうすると、表決で賛否どっちを押していいかわからなくなるということが起こるわけです。これはかなり多いんです。ですから、法案構成のルールというものをもうちょっと透明にした方がいいのではないかというふうに考えているんです。  この二つの問題について、お一人ずつ御感想をお聞きしたいんです。

小田中聰樹専修大学法学部教授

○参考人(小田中聰樹君) 法律用語といいますか法律家の使う言葉が非常に難しいという指摘は、確かにそのとおりだと思います。  実は、きのう、あるシンポジウムがありまして、やはり新聞社の方から本当にわかりにくいという発言がありまして、私も本当に共鳴したんです。もっとも、私自身も知らず知らずのうちにそういう言葉遣いをしているようにも思うんですが。  法律用語の難しさというのは、一面では正確性を期するという要請、それからまた法的な概念というものが何百年、何千年かの歴史を経てきているわけですので、おのずとなかなか別の言葉に変えることの難しいものがあるといったような、そういうさまざまな要素を抱えているわけです。しかし、今御指摘のように、一般の市民の方が読んでも全くわからないような用語を使うのはやはりいけないことだというふうに思いますし、その意味で全く同感であります。そういうことも我々学者も含めた今後の研究課題、つまり正確な概念、乱用の危険のないような概念をいかに易しい言葉で表現するかということは大きな課題だというふうに思います。  それからもう一つ、法案構成の複雑さということ、これも私は確かに御指摘の点が特に最近多いのではないかというふうに思います。本当の意図を巧みな構成の中に隠してそして埋めていくという技術、それは立法技術といえば立法技術なんですが、そういうものがあって、それが争点を不明確にし、議論を混乱させるということが私は確かにあるというふうに思います。御指摘のとおりだと思います。

熊谷謙一日本労働組合総連合会労働対策局次長

○参考人(熊谷謙一君) 私も、中村先生の御指摘はおっしゃるとおりではないかと思っております。特に法案の文体につきましては、私どもの方からもぜひお願いを申し上げたいと思っております。  といいますのは、特に法律関係、法務関係の法案では、和議法を今いろいろ検討しておりますが、旧仮名遣いの法案がまだかなり残っておりまして、これは何か一括して変えるというようなことはお願いできないのだろうかというようなことも内部で検討しております。あるいは法律の文体自体についても、大変にわかりにくい上にさらにわかりにくいというような、法律のこことここを引用するという条文が並んでいるようなところで、これはわかる方が不思議だというような法律もございます。これは、やはり何とか国会の方でお願いをできたらと思っております。  また以前、たしかこれはアメリカの政府だったと思いますけれども、難しい文体を一掃してプレーンイングリッシュにすべきだということが大統領の方針で決まって、大統領府からの文書はそれ以降わかりやすくなったというような話を聞いたことがございますけれども、そういういろいろのレベルで、ぜひ諸先生のお力でこれを変えていただければ、私どもとしてもいろいろな御相談あるいは勉強がしやすくなる。ぜひお願いを申し上げたいと思います。  また、法案にいろいろなテーマがあるという点についても、これはいろいろ我々が勉強して、組織の中で検討するときにも一番苦労する点でありますので、各委員会での御審議の一番最初に、こことここが論点である、こういう点を明確にし、あるいはそれぞれ関心のあるところは、この論点は何であるかということを直ちに問うていただければこちらとしてもいろいろ勉強したいと思っております。なお、いろいろなものが混在することについての対応が困るという点は、全くおっしゃるとおりだと思います。

田中直毅21世紀政策研究所理事長

○参考人(田中直毅君) もし我が国において判例がルール形成機能を持っていれば、立法において、神ならぬ身の人間があらゆることを想定しながら法案を書くということから解放されると思うんです。実際には、我が国で必ずしも判例がそうした機能を持ち得なかったためか、法律をつくるときに、将来いろんな事態があり得るわけですから、何か非常にあいまいといいますか、非常に限定的に書けば、起きるであろういろんなことが含めないというようなところからこういう文体が出てきているんじゃないかというふうに思います。  そういう意味では、もし裁判を通じて、一つ一つの判例に意味があり、それが社会に定着するという仕組みがあれば、法案はもう極めて簡単なごく原則を書いたものだけで済むわけで、あとは司法を通じて、裁判を通じての結論を一つ一つ得ていくということに大きな流れからいけばなるのではないか。そういう意味では、私は、そういう今まさに司法改革が要請されていることと我が国における法文が極めてあいまいなものになっていることと関係があるように思っております。  それから、法案構成でございますが、アメリカの場合ですと、例えば自由貿易に踏み出す、あるいはガット、WTOについて明確なコミットメントを政府がする場合に、議会で、クリスマスツリーのようにいろんなものがつかなくて、議員はイエスかノーかの表示しかできないというようなものを用意しているわけです。少なくとも日本でも、先生方は国民代表ですから背景にいろんな意思や利害を持った方々がいるのは当然ですが、時には問題を集約して、これは明確な意思、そのときの立法府の意思を多数決を通じて明確に出すというような法案作成の手法もどんどん試みていただければ、そういう非常に複雑になっているものを整とんする実務的な知恵が身につくのではないかというふうにちょっと考えたりしております。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) いわゆる法三章と言いますが、世の中が複雑になってきて、いろんな社会的な利害とか利益が錯綜してきますと、なかなかそのような簡単な法律というわけにもいかないということにはなるかもしれませんが、ただ考えなければならないのは、概念を明確にするということと表現を易しくするということとは別なんですね。概念をきちんとしながらその表現を易しくすることは、これは可能だと思います。これはぜひやるべきことだと思います。  朝、散歩をしておりますと、道路幅員狭しという立て看板が立っています。あれは道幅が狭いと書けばいいわけですね。ですから、昔の人が表現が難しいとか、文語体を口語体にだんだん書きかえていくという努力もさることながら、やたらと難しくしていくという風潮もある。そういった社会的風潮にも風穴をあけるということがこれから先必要だと思います。  あとの点については、お三人の方がおっしゃるとおりのことを感じていまして、一括処理法案というふうなものが多用されることになった場合に特に私はそういった弊害を強く感じます。  今の中村議員のお尋ねについては以上ですが、もしこれで終わりでしたら、ちょっと先ほどの橋本議員の当番弁護士についてのお尋ねに追加して述べたいことがあるんですけれども。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) 中村委員はもう質疑は終わりですか。

中村敦夫各派に属しない議員

○中村敦夫君 はい。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) では、どうぞ。

宮本康昭日本弁護士連合会司法改革実現本部事務局長

○参考人(宮本康昭君) 当番弁護士についてのデータがあるかというお話でしたが、今ここにありますのは、平成十年、昨年の五月段階での日弁連での当番弁護士の登録数ですが、これは全会員の四三%だということであります。この中で、中規模、小規模の弁護士会の場合には七〇%から八〇%台に達しているということであります。  以上、つけ加えます。

橋本敦日本共産党

○橋本敦君 ありがとうございました。

荒木清寛公明党

○委員長(荒木清寛君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところを大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時三十八分散会

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