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145回国会衆議院1999/07/22

青少年問題に関する特別委員会 第6号

発言数
87
登壇者
10
会派数
5
開催日
1999/07/22

会議録

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 これより会議を開きます。  青少年問題に関する件について調査を進めます。  本日は、児童虐待問題等について、参考人として東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長平湯真人君、大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長津崎哲郎君、子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表祖父江文宏君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、児童虐待問題等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず平湯参考人、津崎参考人、祖父江参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  念のため申し上げますが、発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず平湯参考人にお願いをいたします。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 おはようございます。弁護士の平湯でございます。  初めにお話しさせていただくことになりましたが、児童相談所における先進的な取り組みをなさってこられた津崎さん、それから、児童養護施設ですぐれた実践を開いてこられました祖父江さんに比べますと、法律家は、この問題への取り組み、すなわち保護者による子供虐待の問題への取り組みに関しては後発部隊であります。  この問題が社会的に注目を受けるようになりましたのは、御存じのように、今からわずか十年足らずのことであります。それまでは医療や福祉など個別分野の専門家が関心を持っている程度でございました。平成二年に大阪で虐待防止協会が、平成三年に東京で虐待防止センターが発足しまして、専門家と市民がNGOという形で連携し、社会に対して問題提起と実践を始めたわけであります。  親に対する電話相談、それから児童相談所へのサポート、講演会などによる啓蒙活動などが行われるようになりました。マスコミもこれを報道するようになって、この問題の存在が次第に広く知られるようになり、社会がこれに介入すべき場合があるということもまた次第に理解されるようになりました。  言うまでもなく、虐待の親子への介入は、基本的には強制を伴わない、いわばケースワーク的なものであります。しかし補充的には、子供を守るために親と子を強制的に分離しなければならない場合もあるのだということも次第に感じられるようになりました。  このような状況の中で、子供の人権に関心のある多数の弁護士がこのようなNGOに参加し、子供を守るために行動するようになったわけであります。私もその一人でありますが、後発部隊というのはそういう意味であります。  では、弁護士は、それまで保護者による子供の虐待の問題をどう考えていたのかと申しますと、従来から少年非行での付添人活動の中で、保護者による虐待、かつては必ずしも虐待という概念が明確に用いられていたわけではありませんけれども、実質的には虐待に当たるような行為が子供の心情や行動に影響しているということは感じておりました。  いわゆる身体的虐待や性的虐待だけではなく、子供のプライドを傷つけたり、劣等感を持たせたり、生きる力をそぐような心理的虐待あるいはネグレクトなどがほとんどの非行の背景にあると言っても過言ではないと思っております。また、学校での教師による同じような仕打ちが多くの非行の背景にあるということも感じておりました。  しかしながら、虐待を受けている子供は、たとえ中学生、高校生であっても、自分で助けは求められません。このこと自体が一つの問題でありますが、そのことは後ほど申し述べたいと思います。  弁護士は、法的な援助を求める人、人権侵害の被害者の依頼を受けて行動するのが原則ですので、保護者による子供虐待については、私たちがすぐ何かできるということは、少数の弁護士を除いては考えておりませんでした。児童相談所を含む大人たちが動き出し、弁護士に連携を求めてきて初めて現実にこの問題に取り組むようになったわけです。  以上を前提にしまして、弁護士としての立場から、この問題について感ずることを申し上げたいと思います。  それは、虐待を防止するために、また虐待された子供を救出してケアし、また親をケアするために、日本の法制度は多くの不備があるということです。法制度そのものだけではなく、その運用のあり方についても多くの問題があるということは、昨今報道されている児童相談所の取り組み方などで指摘されているところですが、その点については後ほどお二方がお述べになると思います。  現在、厚生省は、現行法令を積極的に活用すれば足りるという基本姿勢を示しており、二年前の児童福祉法の改正のときにも、衆院、参院の厚生委員会で多くの議員の方々からいろいろなこれに関しての問題の指摘もございましたけれども、そういうような答弁で一貫しておりました。  現行法令の積極的活用ということは、それ自体非常に大事なことでありますし、また厚生省がその後そのような取り組みをされていることは評価いたしておりますけれども、現行法令の活用だけでは足りない部分が多いということは否定できないと思います。  第一には、通報制度であります。教師や医師など、職業として子供に接して虐待を発見しやすい立場の人たちが、後難を恐れて通報をちゅうちょするという事態は絶対に変えなければなりません。  第二に、介入のための立入調査権の整備が必要であります。現在はかぎをあけても立ち入れるかどうかあいまいですが、場合を限定して可能とすべきであると思います。  第三に、緊急分離としての一時保護に期限を設け、事後的に家庭裁判所の許可を必要とすべきであろうと思います。現在は、児童相談所の行政権限だけで無期限に一時保護ができるわけですが、強力過ぎてかえって親の納得が得られないからであります。これを親の権利の保護のためという考えもありますが、私としては、家族一緒に生活する権利の保護というふうに考えております。  第四に、長期分離としての施設入所や里親委託についても期限を設け、家庭裁判所の判断で更新するようにすべきであろうと思います。また、親権の喪失制度とは別に、親権の停止の制度が必要であろうと思います。現在は必要以上に重装備の制度になっており、かえって親の納得が得られず、家族一緒に生活する権利の保障としてそのような仕組みが必要であろうと思います。  第五に、親へのカウンセリングや治療を促すための制度を工夫すべきです。日弁連では、カウンセリングの受講と施設入所の期限の更新を組み合わせた制度、すなわち、運転免許の停止期間を受講によって短縮する制度と同様のものを提案しております。親子分離前の段階でも、やはり親へのカウンセリングや治療を促すための工夫もまた必要であろうと思います。  第六に、これらを実行するためのケースワーカーやカウンセラーの養成、資格の整備が必要と思います。  第七として、親権の喪失や停止について、あるいは親へのカウンセリングや治療について、子供自身にも家庭裁判所への申し立て権を認め、あるいは弁護士会会長に申し立て権を認めるべきと思います。これは、お配りしました児童福祉法改正に当たっての日弁連意見書の中に触れているところであります。このような制度は、児童相談所が十分機能しない場合に、あるいは十八歳を超えた未成年の子供の保護のためにも必要なものであると思います。  以上は、いわば子供と家族を守るためのシステムとして必要な法改正ですが、それとは別に、基本理念を明確にするべき法改正があると思います。  日本では、子供は親権に服するものとされ、その親権の制約原理は明確にされておりません。虐待は子供の健全な成長をゆがめる犯罪であって、許されないということ、親といえども子供を思うままに支配する権利があるわけではないということを社会的に明らかにする改正が不可欠と思います。ドイツやスウェーデンあるいはフランスやイギリスなどの立法が参考になると思います。  例えばドイツの家族法は、親権という言葉をやめ、屈辱的な教育手段は許されないと規定しました。イギリスでも親権という言葉をやめ、親責任、ペアレンタル・リスポンシビリティーという言葉にしました。スウェーデンでは家族法の中に、子供は、体罰を受けたり、危害を加えられたり、屈辱的な扱いを受ける対象となるべきものではないと規定しております。また、刑法の中に、子供や弱者あるいは保護下にある者への殺人や傷害の刑を通常よりも重くしている立法例もございます。  このような改正なしには社会の意識も変わりませんし、通報や介入に対する親の反発も変わらない。また親への指導、ケースワークやカウンセリングも非常に困難なことになります。現在、日本の児童相談所が十分機能できていないのは、ケースワーカーの資質や水準、人数や体制の問題もありますが、親の親権者万能という意識にきちんと反論しにくいためでもあります。  このような改正は、決して親を敵視するわけではありません。日弁連も、児童福祉法改正の際の意見書で述べましたが、親を敵視しない子供の救済システムというのが大事であると考えております。子どもの権利条約にあるように、親子、家族が共同で生活する権利を前提として、その中で親の養育責任と子供の成長発達権を尊重すること、そのために、社会が親の養育を一定の場合に批判し、介入できることを明確にするためのものであることを強調しておきたいと思います。  以上でございます。(拍手)

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 どうもありがとうございました。  次に、津崎参考人にお願いいたします。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 私は、児童相談所の実務を長年やっておりますので、児童相談所の実務の立場に立ちまして、児童虐待、援助の実情なり課題につきまして御報告を申し上げたいと思います。  児童虐待の件数は年々確実に増加してきております。ただし、数字にあらわれているものは多分氷山の一角にすぎないだろうというふうに思われます。  背景ですが、やはり家族の孤立あるいは未熟な親の増加あるいは家庭内のストレスの増加等が要因にあろうかというふうに考えております。一方で、この問題に対する認識の高まりの中で、発見の増加あるいはネット構築によるつなぎがうまく機能してき出した、そういう条件もあろうかと思います。  御承知のように、虐待には、身体的な虐待それから保護の怠慢ないし拒否、いわゆるネグレクトというものですが、そのほかにも心理的虐待、性的虐待のタイプ分けがなされております。数的には身体的な虐待と保護の怠慢ないし拒否が多いわけですが、心理的虐待の中にも、場合によっては、愛情拒否の中で全く成長がストップしてしまうというふうな深刻なケースとか、性的虐待の中には、継父とか実父から何年にもわたって性関係を強要されるというふうな悲惨な事例も多々出てきております。  ちなみに、児童福祉法三十四条の中に、子供に対する禁止行為としまして、子供に淫行をさせる行為というのがありますけれども、親が我が子に性的虐待をする行為につきましては、その行為の非該当ということになっておりまして、日本では性的虐待をする親に対する有効な法的手だてがないというのが現状でございます。  児童相談所の援助でございますが、在宅の指導と分離保護による施設の入所等の援助に大きくは分かれます。  在宅の援助の場合は、虐待家族というのは多問題家庭が多いですから、機関連携による家族のサポートをどう有効にするのかということが一つのポイントになります。あるいはまた、保護者に子供を二十四時間ケアさせることにつきましては非常に危険性も高いわけですから、例えば幼児であれば保育所とか幼稚園等、デイケア、日常のケアができる、そういう資源を活用して、子供の心情に起こることをチェックできる体制をとる、そういうことも重要な援助のポイントになっております。あるいはまた、親族を活用しまして、親族のサポートの中で家族を支えるというふうなことも実務の中では重視されております。  そういう在宅の援助でうまくいかないケースにつきましては、児童相談所の中に併設されております一時保護所に子供を緊急保護するという対応を行います。御承知のとおり、一時保護の権限は、児童相談所長の権限が親権よりは優位であるというふうにされていますが、実務の中では、保護者の同意をとる作業が一応は努力されて行われるということが実情になっております。  さらに、長期的に子供を家庭から分離しなければいけない場合は、保護者の同意を得た上で施設に入所させるという方法をとります。ただ、この際に、保護者が了解しない場合、家庭裁判所にいわゆる児童福祉法二十八条の申し立てをして、家庭裁判所の審判を得て施設に入所させるという方法をとります。  これは、ケースワーク的な援助からいきますと、保護者との摩擦が生じるということもありまして従来は余り活用されていなかったわけですが、最近は、そういう法的申し立ても積極的にするようにというふうな厚生省の指導等もありまして、平成九年には四十九件ほどの申し立て件数があったというふうな実情でございます。  そしてさらには、施設に入所しましても保護者が強引に引き取りに来る、あるいはその後のいろいろな妨害行為をするというふうなことに関しましては、親権の喪失の申し立てをするというふうな方法もございます。  現在、児童相談所では、啓発あるいは関係機関の職員の研修、あるいはネットワークづくり、そして介入型援助のノウハウの蓄積、そういうことに努力がされているのが実情かというふうに思います。  それから、児童虐待は援助が非常にしにくい、難しい、そういうことの要因ですが、幾つかありますので御説明を申し上げたいと思います。  こういう児童虐待の家庭の場合、親から、自分からは相談に来ないというふうなことが一つの課題であります。地域には、現在、電話相談を初めとして相談機関がかなり拡充はしてきているわけですが、受け身的な相談体制の中にはなかなかそういう人たちのケースが引っかかってこないということが課題でございます。そういう意味では、今後、受け身ではない、出前型のサービスをどういうふうに充実させていくのかということが一つの課題になろうかというふうに思います。  それと、第二点目の困難でございますが、日本の場合は、基本的には家庭問題に対して法や公権が介入しない、いわゆる民事不介入が余りにも徹底し過ぎているという問題がございます。このために、一般市民あるいはまた行政機関あるいは司法機関等も、介入に対してどちらかというと慎重になり過ぎる、そういうことの課題が出てきております。これは、単に児童虐待の問題だけじゃなくて、高齢者の虐待、あるいは夫から妻に対する暴力、ドメスチックバイオレンス、こういう問題もすべて同じような側面を持っておりまして、家庭内の暴力事件、いわゆる家庭内紛争に対する社会的な調整なり援助の仕方というのが非常に今は課題になってきているという実情がございます。  それから、児童相談所の援助の仕方にもいろいろ課題があります。従来、児童相談所の援助は、基本的にはケースワークを重視した援助をするようにということで来ているわけです。  御存じのように、ケースワークとかカウンセリングとかいいますいわゆる対人関係の援助の基本は、相手と対立をしない、相手といい関係を持って援助していくということが原則になっていますから、こういう介入型の、最初から相手と摩擦を起こすような援助ということに、なかなかそういう援助の仕方になれていないといいますか、そういうところで今現場ではかなり戸惑いがあるということが実情かと思います。  それと同時に、日本の場合は、介入援助も児童相談所がし、そして後の保護者の指導援助もまた児童相談所がしなければいけない、そういう相矛盾する役割を一つの機関が担わなければならないという矛盾もございます。  例えば、アメリカなんかの制度に精通している人に聞きますと、向こうの行政の児童相談所に相当する機関は、介入、保護を専門にする、そしてそのケースはすぐに裁判所に上がる、そして裁判所の監督下でもって、親権の制限あるいは保護者への改善命令、治療命令が出る、それを受けて初めて、他の機関が具体的な援助なりカウンセリングの援助をする、そういう手続になっておりますが、日本の児童相談所の場合は、介入、保護をし、裁判所に上げたとしましても、施設に入れるかどうかの承認を裁判所がするだけでして、入れた後の保護者とのかかわり、その辺の指導もさらにまた児童相談所なり施設なりが任意で行わなければいけない、そういう矛盾を抱えているわけです。  したがって、後のことを考えましたときに、最初に余り摩擦が起きますと援助がうまくいかないというふうな配慮が働きますので、介入、保護の判断が非常に鈍ってしまうというふうな矛盾が生じているところです。  それと、さらには、課題としましては、児童相談所の現場スタッフの数が余りにも不足しているという状況がございます。現在、全国では、児童福祉司は千三百名程度の数でございます。ところが、児童相談所の相談件数は、最近は増加傾向にありまして、年間三十万件を超えているというふうな状況にございます。  これを単純に割り算しますと、一人年間二百三十件ということになります。これは、月に平均しますと約二十件ぐらいの相談を受け持つ。それも新規の相談ですから、すべての相談は一月では終了しないですから累積をしていく。加えて、施設に入所しているケースを各ワーカーは百件程度持っている。その対応に日々追われるわけですから、なかなかきめの細かい対応ができないというふうな実情がございます。  そういうことで、受け皿の体制の整備ということも非常に重要な課題だろうというふうに思います。  以上のような状況の中で、改善策につきまして多少意見を述べさせていただきますと、一つには、自発的には相談に来ないわけですから、発見、通告の強化ということが非常に重要な作業だろうというふうに思います。  それと同時に、その発見、通告を受ける受け皿の児童相談所の体制の強化。これは、今言いました児童福祉司、ケースワーカーの増員だけじゃなくて、できれば児童相談所の中に、行政権限を発動するような、そういう動きを強化するものであれば、例えば弁護士とのタイアップ、場合によったら顧問弁護士を各児童相談所が抱えられるような体制、そういうものも必要です。  さらに、児童相談所の専門性の強化。今は、全国の状況を見ますと、少なくとも半数ぐらいの児童相談所は、一般行政職の職員が異動でたまたま児童福祉司になる。そして三年ぐらいで異動してしまう。そうすると、専門性の積み上げができないというところで周りの機関の期待にこたえるような対応ができないというふうな実情もございます。そういう、専門性の強化ということも非常に重要な課題だろうというふうに思います。  あと、地域ごとにネットワークをうまくつくり上げて、法的に言いますと、児童相談所がすべての役割を担っているわけですが、そういうすべての役割をうまく遂行するということは難しいわけですから、役割の分化というふうなこともいろいろ考えていかないといけないと思います。  それと、介入型支援の拡充をどうしていくのか。これは、すべて行政介入というわけにいきませんので、任意の介入、そしてそれがうまくいかないときに行政介入、そしてそれもうまくいかないときに司法介入という、ケースに応じた介入のシステムをうまく整備していく体制が今後必要になろうかというふうに思います。児童虐待につきましては、発見、通告、介入、保護、指導、治療という一連の援助の流れがありますから、その一連の援助の流れを視野に入れた形での体制の整備を図っていくことが非常に肝要かと思います。  そして、今弁護士さんの方から司法体制の問題も指摘されましたけれども、基本的には、家庭内の暴力の問題に対する対応につきましては、できれば独立立法が要るのではないかというふうに考えております。お隣の韓国では、二年ほど前に、そういう家庭内暴力に対する独立の立法、そしてその被害者に対する保護の立法をつくって対応しているということがありますが、基本的には、効果的な対応をしようと思いますと、そういう独立した立法の制定が必要ではないかというふうに考えております。  さらには、一番ひどい虐待の場合は、家庭から分離しまして施設に行くわけですが、今の施設の現状ではその子たちの心のいやしをできる体制にはなっていないということで、その辺、施設が子供たちの傷ついた心を十分いやせるだけの受け皿になっていく、そういう必要があろうかと思います。  現状で申しますと、そのいやしの機能が十分機能していないために、結局はその子供たちが社会に出て、また大人になって、今度は虐待の加害者になるという、世代を超えた連鎖が起こり得る可能性が非常に高いというふうな実情をお伝えしまして、とりあえずの意見陳述にさせていただきたいと思います。(拍手)

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 どうもありがとうございました。  次に、祖父江参考人にお願いいたします。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 祖父江でございます。  私は、市民団体であるCAPNA(キャプナ)、子どもの虐待防止ネットワーク・あいちからやってまいりました。私たちは、市民団体であることをいわば私たちの基本の理念にしております。  現在、私たちのやっておりますことは、虐待防止のためのホットライン、育児相談、育児不安を解消させること、虐待というものは、育児とそれから虐待の境がほとんどないのが実情であります。したがって、子供の虐待防止のためのホットラインを、平日午前十時から午後四時まで、我々が養成してきた八十人の電話の相談員、カウンセラーを擁して行っております。  それから、二番目の柱として、虐待から子供を救出するためのネットワーク、そのネットワークのコーディネートをしていく。  現在の行政としては児童相談所中心に、ほとんどが児童相談所が丸抱えの形で行ってきておりました。このことによる弊害が、つまり児童相談所そのものが、既に物理的に虐待に対応していくことが非常に難しいような状況が生まれている。それは、一人のワーカーの持つ人口比から見ても、それから先ほど津崎さんがおっしゃったような専門性の問題、そういうさまざまな事柄を重ねていきますと、やはりどうしても我々のような民間のネットワークが必要になるだろうというふうに考えます。  ですから、そのときに一人が抱え込むような形、一つの行政の中で抱え込んでしまうような形では非常にまずいということがあります。これまでの虐待死の積み重ねは、恐らくそういうところで生まれてきたという反省があるかと思います。  したがって、私どもがやっておりますのは、いわゆるネットワークのコーディネート。そして、先ほども津崎さんから御意見がありましたように、現在の児童相談所が顧問弁護士をほとんど持たない。ですから最終の、司法に頼っての危機介入がほとんど不可能な形があります。現在私どものCAPNAでは、五十一人の専属の弁護団を擁して、その人たちを、初動のときから最悪の事態を想定しながら、つまり親権剥奪までを想定しながら一気に動いていく、現場に駆けつけて、その現場でネットワークを組んでいくというやり方をとっております。しかし、これは私どもだけが独走しているわけではなくて、児童相談所を機能させるためにやっているのだというふうに御理解いただきたいと思います。  それから次に、救出された子供それから保護者の支援、この分野でも、私たちは積み残したままに来ている分野だというふうに考えております。つまり、子供を虐待から救出して環境を変えればそれですべてが済むという発想は、これは私どもからするともう全くナンセンスなものだというふうに思います。  虐待を受けたために受けてきた心の傷をいやしていくこと、それからもう一つは、虐待をしなければならなくなった保護者の心境、そこをどういやしていくかということが抜きにされたら、恐らく非常に高い率で、言われております世代間連鎖というものを断ち切ることはできないだろうというふうに考えます。したがって、救出された子供、保護者の支援のための活動ということは絶対に必要だというふうに思います。  それから次に、子供の虐待防止のための啓蒙活動、虐待の問題というのは今世紀後半に入って世界的な問題になってきております。したがいまして、まだ私たちにとっては非常に新しい課題である。そのためには、この中で行われている実態というもの、これは、あえて言いますと、大人の暴力による犯罪です。その犯罪であるという認識も、やはりまだ市民社会の中では認知されていないだろうということを考えますと、どうしても虐待というものを一般市民に知らせていく必要がある、そのことのために啓蒙活動がどうしても必要になるだろうというふうに考えます。  したがって、CAPNAでは、公開講座、あるいはそれぞれの分野にかかわる、いわゆる小さい人たちの分野にかかわっている人たち、ドクターであるとかあるいはワーカーであるとか保育士であるとか、そういう人たちに対する専門分野のセミナーも計画しながらやり続けております。  そして最後に、調査研究活動、皆様のお手元にお配りしてありますデータブック「見えなかった死」、これによって、日本で初めて虐待死の実態が明らかにされてきたというふうに思います。  現在、私どものCAPNAは、会員数四百五十人、それから電話相談員八十人、五十一人のCAPNAの弁護団、それから、医療、福祉、研究者等のいわゆるそれぞれの分野での専門集団だというふうに考えます。  児童を虐待から救い出していくときには、一人が抱え込んだのでは不可能です。一つの行政機関がやるのも不可能です。となったら、私どものような市民団体がそれぞれの必要に応じてそれぞれの専門家を派遣するというような形が、これから先、この虐待問題だけではなくて、行政というものをもう一度考え直していくときの大きなキーになるだろうというふうに思っています。したがって、私たちのCAPNAは、これから先も市民団体としての活動を続けていくというふうに考えます。  殊に、福祉というものを考えるとき、公の福祉の限界ということを私たちは考えます。つまり、これまでの国家型の福祉というのは、救済を与える行政側の条件が常に優先します。このことは、例えば生活保護法をめぐっての幾つかの地方で起きておりますさまざまな問題から幾つもそれは拾えるだろうというふうに思います。  それから、もうこの今の時代においては、かつての縦割りの、そして現在も行われている縦割りの行政の管轄の中では、人間のトータルな生き方というものが常にその枠を超えてあるという実態があります。ですから、例えば家庭内の暴力を考えるときに、小さい人たちのことだけを考えるのではなくて、その背景に、殴られる女性の問題もあるかもしれないし、家族間の病理の問題があるかもしれない。ということになってくると、今までのような輪切りの対応の仕方ではとても対応し切れないというのが現状です。  その中で、行政の枠を超えていくような部分、つまり、行政の縦割りのその間に落ちこぼれて、結局はそこで弱者がつらい思いをしなければならないような社会の仕組みを根底から変えていく必要があるだろうというふうに考えます。そのためには、我々のような市民団体が確実にできることをしていく、そして、現在ある行政を機能させていくということが基本的に必要だろうというふうに考えます。  それから、皆様方のお手元にお配りしました「見えなかった死」について少し話させていただきます。  なぜ私たちがこの本を出版したのか。一番基本的なところなんですが、これまで日本には虐待死という概念がありませんでした。これは、私どもがいろいろな行政機関に尋ねて、虐待死というものはどれほどの数がありますかと。例えばアメリカやイギリスではその集計がなされています。そして、大人による暴力、大人の暴力によって命を失っていく小さい人たちの数が、決して交通事故や病気にまさるとも劣らない数があるという実績があるわけです。その中で、日本には虐待死という概念がないために、その集計すらできていなかったというのが実情でした。  その中で、私たちは、虐待死の概念がない、それをはっきりさせる、そうしないと実態が見えない、実態が見えなきゃ、虐待が、どんなとき、なぜ起こるかが解明されてこない、そうすると、予防のための手だてがはっきりしてこないというふうに考えました。これが、出版を私どもが意図したところです。  それをやってみて何が見えてきたか。それは、いわゆる死に至る前の、つまり死に至るような事件の場合には、幾つも、何回も救い出すためのチャンスがあったわけですね。しかし、そのたびに行政がそれを見落としてしまうようなことが幾つもあった。あるいは、これは行政だけじゃなくて、実際にかかわった人たち、医療機関の人たちあるいは福祉の人たち、そういう人たちが虐待を、死に至るまでの間には何回かチャンスがありながら、それを見過ごしてしまってきたということがあります。  そうすると、そのことが一体どういう意味を持ってきたのか、どういうときにどういう手だてをすべきなのかということがこの分析の中から幾らかは見えてきたというふうに思います。  それから、虐待をした人たちの育児と虐待の境目がないということ、それから、孤立した家庭であるということ、それから、孤立させている地域社会であること。これは、通報のことを思っても、通報義務が国民全体に課せられながら、実際には、その通告のなされた数を見てみると非常に少ない。すべての国民に義務を課したということは、ひょっとすると、だれもしないということになるということだと思います。  それから、私たちの文化の中に、たたいてでも子供は育てなければいけないという子育ての文化の問題があるということ、そのこともあります。  それから、いわゆる救出といやし。私たちが考えるのは、かつては救出すればそれですべては済むと言った。しかし、救出をしても、それぞれの人たちの中に非常に大きな傷跡が残る。その傷をいやしていくためには、相当の専門的な療育の部分が入り込んでくる。それを今まで私たちは何一つしないままに来たし、機関がそれに対して全く無力であったという事実があったと思います。これは児童相談所という機関だけではなくて、先ほども話がありましたように、施設そのものが無力であったということも言えるかと思います。  この反響は非常に大きく、殊に心中を親による子殺し、そういう犯罪だというふうに私たちは位置づけました。このことによって、外国からも幾つかの問い合わせがございました。それに対しては、明らかに親の暴力による殺人であるというふうに私どもはお答えしました。  それから、これからのことです。  私たちが民間にこだわり続けるのは、行政の今の機関をとにかく最大限機能させるため、そのことがまず一つの目的だというふうに思います。それから、地域社会の中に本当に人間の救済のネットワークを張り続けていく、これは市民の責任だというふうに考えます。  そこで、私どもがまず救済のネットワークを組む、そのことをまず最初に私どもはやってまいりました。しかし、ただそれだけでは済まなかったということがあります。  児童福祉法の第四十一条には、たった一つ、虐待を受けている児童を目当てとした施設があります。それが児童養護施設です。しかし、この養護施設も、昭和二十二年の児童福祉法制定以来、長年最低基準として言われてきたことの貧しさは、虐待というもので心の傷を受けた人たち、その人たちをいやすことが大切な問題だという視点はついに持ち得ないまま今に来ています。  このことは先生方にあえて私申し上げたいのですけれども、あのバブルの時代を経、あれだけの経済成長の時代を経てきた日本が、昭和二十二年以来の最低基準をほとんどそのままの形で継承している事実、このことに対しては、先生方にも大きな責任を感じていただきたいというふうに思っております。  つまり、虐待を受けてきた人たちが施設に入ったとき、守られていると感じられること、それから、安心できる場所であると感じること、そのことが絶対に心のいやしには必要になります。けれども、果たしてそれにこたえられるだけの条件を養護施設が持ち得てきたろうか。また、養護施設をそういう状況のまま置き続けてきた責任はだれにあるのか。このことを国民の一員として先生方に、政治をつかさどる皆様方にあえて言いたいというふうに思います。  例えばその住環境をとらえてみると、現在でも一室十五人以下という規定です。これで果たして心に傷を受けた人たちのいやしの場となり得るだろうか、これをじっくりと考えていただきたいと思います。  一人当たりの面積、三・三平米といいます。しかし、これにはマジックがあります。三・三平米掛ける定員が補助率の基本になります。養護施設の大部分は民間の施設です。民間の施設が施設を建てかえていくときには、どうしてもさまざまな補助を受けなければできません。しかし現状は、四分の三の補助に対して四分の一を用意することすらできないのが現状です。そういう環境の中で、最低基準の上では一人当たり三・三平米、それに定員を掛けてください。しかし、そこから引き算をしなければならない仕組みです。それはなぜかといったら、例えば静養室、医務室、玄関、廊下、トイレ、さまざまなものはこの建築補助の平米数には入っていません。  そうしますと、具体的にどういうことになるか。三・三平米、一室十五人以下という規定がありながら、一人一人の占める占有面積というのはそこから引き算していきますから、養護施設の大部分がいまだに二段ベッドに頼っているのは、決しておしゃれでやっているわけじゃないのです。それしか空間がとれないからだとわかります。  このことを昭和二十二年以来、少しずつではあるけれども、改善されたというけれども、基本的にはこのことを残してきました。これは、小さい人たちに対する、私たち先に生まれた者がきちっと責任を果たしてこなかった結果だと思います。  あえて申しますと、虐待の問題は今起きたのではないのです。虐待をめぐるさまざまな問題は、これまで大人が何もしてこなかったために起きていることです。その救済に無力であったということは、今無力であるということは、これまで私たちがその責任を何も果たしてこなかったということです。このことを十分にお考えいただきたいと思います。  最低基準では、三歳以下二対一、三歳以上四対一、少年六人に一人の職員を配置するとあります。しかし、二十四時間の収容施設の養護施設でありながら、職員配置は、夜勤体制をとっていませんから二十四時間分ないのですね。このことを考えられますでしょうか。つまり、この養護施設をつくったときの基本は、養護施設に入る人たち、虐待を受けている人たちも施設に入れればそれで済む、こう考えてきたのだと思います。そのため、セラピーのため、治療のための職員の、専門職の配置はいまだにないということが現状としてあります。  ですから、どうかこれから先、養護施設の環境もきっちりと整えていくことをぜひおやりいただきたい。これが、私たちが二十二年以来積み残してきたことだというふうに思います。  最後に、もう一言だけ言います。虐待の問題というのは、決して新しい問題ではありません。それは、この事態に対応し切れなくなっている原因は、実は私どもが果たしてこなかった責任の累積だというふうにお考えいただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     —————————————

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 自由民主党の河村建夫でございます。  きょうは、三先生には早朝からお出かけをいただきました。ありがとうございます。  また今、それぞれのお立場から貴重な御意見をいただきまして、我々も非常に勉強になりましたし、また厳しい御叱正もいただいたと受けとめまして、この問題についてこれから本格的に取り組んでいかなければいけないと思いを新たにいたしたわけであります。  限られた時間でありましたから、まだ意見をお述べになりたいこともあったのではないか、こう思います。これからの時間、十分ではございませんが、私を含め各委員の方からいろいろお伺いをしながら、さらに突っ込んだ御意見を拝聴できたら、こう思うわけでございます。  今御指摘のように、幼児虐待、児童虐待というものが決して新しいものではなかった、しかし、こういうふうに大きな問題になったというのは、我々政治にも責任があるんだという御指摘もございました。  まず、いろいろな角度から、今お述べになった中で一部触れてもおられましたけれども、この児童虐待の背景といいますか、私どもも、確かにこの児童虐待というものがこういう大きな問題になっているということに気づいたのは最近のことでありまして、本来ならば最も親から愛されなければいけない子供が最も厳しいいじめに遭うといいますか、そして死に至るまでの現状が起きているということ、これは大変なことであります。  そして、これをいろいろ聞いてみますと、今の親が子供にそういうふうにやっている。しかし、その親が子供であったときにもそういうことがあったというケースが非常に多いというような報告もあるわけでございまして、これはこのままほっておきますと、どんどんどんどん大きくなっていく問題だというふうな受けとめ方もしておるわけでございます。  そこで、それぞれのお立場からこの問題に取り組まれて、まず、こうした事件、こうしたことが起きておる背景といいますか発生要因といいますか、いろいろな角度から感じておられると思いますが、それぞれの先生方、いま一度、事ここに至っている背景といいますか、そういうことについてお述べをいただけたら、こういうふうに思います。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 発生要因についてということでございますが、いろいろな考え方がありますが、確かに昔から虐待はあったという見方もございます。  特に、日本は戦前に児童虐待防止法がありまして、それが実は今の児童福祉法の第三十四条に一部残っているわけですね。戦前の虐待、イメージされている虐待、そこに何が書いてあるかと申しますと、軽わざをさせない、こじきをさせない、あるいは障害児を見せ物にしないとか、そういうことをいろいろ書いてあります。また、経済的に貧困であった時代には、子供を使って経済的搾取をするというふうな虐待が児童虐待だということを主流に考えられていたのではないかなというふうに思います。  一方で、家庭内での養育上のトラブルもいろいろあったのだろうと思うのですが、以前は、やはり家族制度の強い影響がありまして、いろいろ家長のすること、親のすることについては、皆がある程度それはやむを得ないものだと容認をするような雰囲気もあったのではないかというふうに思います。  特に近年、その問題がふえてきているというふうに映りますのは、一つには、やはり家族の孤立が大きいのではないか。調査をしましても、やはり都市部でたくさん発生をしております。家族が孤立していなければ、例えば親が不適切な対応をしましても、そこに対しておじいちゃん、おばあちゃんがとめに入るとか、隣近所の人がそこまでしなくてもというような形で予防できるものがあるのですが、家族が孤立しておりますと、その予防の機能が働かない。だから、とことん最終の極端な状況にまでいってしまうというふうな家族環境の問題が大きいように思います。  そういう意味では、家族の孤立、そしてそれを構成する親の未熟さ、そして家庭の中のストレスに親だけで対応しなければいけない、そういう要因の中で現代型の児童虐待が多々出てきているのではないかというふうに考えております。  以上でございます。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 今、津崎さんがお答えになったこととちょっと重なってまいりますけれども、私どもがCAPNAでやっております電話相談の中に多分その回答が出てくるのだろうというふうに考えます。  先ほど議員が御心配いただきました世代間の連鎖というのは、これははかりようがありませんから正確な数字ではもちろんありませんが、ただ、実感としては、ざっと見て、それでも三〇%くらいはあるだろう、あるいはそれを超える数値が出てくるかなというふうに考えます。それは、かつて子供時代に虐待を受けた人が虐待をする親になる、そういう率があるのだということです。  その背景を探っていきますと、やはり密室化した家庭であるということ。社会に向かって開かれていない、地域社会に向かって開かれていない、いわゆる孤立型の家庭の中で事が起きる。そしてその中で、閉鎖的な家族関係の中で暴力というものが一つの家族の論理になってしまうということが起きます。そうしますと、その暴力化が要するに外へ出ない形になる。このときに、例えば電話であるとか地域社会のサポートであるとか、そういうものが必ず必要になってくるだろうというふうに考えます。ですから、やはり密室化した家庭が非常にその問題を抱えておる。  それともう一つは、若年の、若い母親、十代の母親たち、そういう人たちをサポートする仕組みが今ないということが現実にあります。例えばシングルマザーの家だとか、そういう形の未婚の女性のための支援だとか、あるいは高校生が出産したときに、その高校生ぐるみケアしていくような制度というものを私たちはまだ持っていない、地域社会にもそれがないということだと思います。  ですから、やはり虐待が起きるのは地域社会で孤立した形が非常に多い。防止するためには、その地域社会を活性化して、それぞれの閉鎖的な家庭に社会からの空気が送り込まれるようなシステムをつくっていくことだろうというふうに考えます。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 一、二さらに追加して申し上げるとすれば、子供をめぐる状況というのは、実は社会の家庭に迫ってくる状況というふうに言ってもよろしいかと思いますが、私たちが弁護士として、子供の人権というものがいろいろな場面で侵害されている実態を見るにつけ考えますのは、一つは、やはり最近、家族に対する経済的、社会的なストレスが非常に大きくなっているということは感じます。家族の中で、働いている大人たちが、親たちが、そのストレスを子供に向けるという場面が実際にもふえているというふうに感じます。  それともう一つは、これも社会的な影響というのはあると思いますけれども、親の子供に対する教育要求が過度にやはり強化されている。学歴尊重というふうな時代はもう過ぎたようなことが言われていた時期があったと思いますけれども、いろいろな場面で見ますと決してそうでなくて、親が子供の安定した将来を希望して、進学で、その進学も年々下がって、どこの幼稚園に入れるか、どこの小学校に入れるかというところまで含めていろいろな要求が出てきている。  死亡事例なんかを見ますと、小さい子供に九九を、三歳、四歳の子供に九九を覚えさせる、あるいは英語を言わせる、ABCを言わせる、できなくて、たたいてしかるというふうなことまでまじっていると思います。  そういうふうな社会の変化というのが、ふえる要因の一つになっているようにも感じます。  以上です。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  それでは個々の先生方に、今御発言をいただいたことに関連してお聞きをしたいと思うのであります。  弁護士の平湯先生にまずお尋ねをいたしますけれども、いわゆる親権との絡みで、子供をとにかく家族と一緒に守っていくのが本来のあり方だ、こうおっしゃっておるわけでありますが、そのことと、親権を停止する、いわゆる親権を喪失させる、その一つ前に親権停止ということもあるではないかという御指摘がございました。  一般的に言われるのは、幼児虐待は、端的に言えば、その時点で親と子をどうやってうまく引き離すかということがまず問われるわけですね。そこのところが非常に親権との兼ね合いで難しいのだと。さっき児童相談所副所長さんからお話がありましたように、これまでは親子とうまく話し合いをつけながら上手に保護していくということであったわけでありますが、それがとても許されない状況にあるわけですね。  そうすると、引き離しをしなければいかぬということになっていくわけでありますが、いわゆる親権停止あるいは親権喪失をしなければいかぬ、しかし一方では、家族全体を守っていかなければ、保護していかなければいけないのだという考え方、その辺の矛盾といいますか、その辺については法的にどういうふうに処理をしていけばいいとお考えでしょうか。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 現在の法制度は、今の指摘された二つの要請、家族を維持させ充実させるということと、子供の安全のために分離しなければいけない場合もあるという二つの要請が非常に極端な形で規定されていて、その途中の中間の柔軟な解決というのが不足しているというふうに思います。  停止というのもそうですが、例えば今一時分離する。しかし、そのことが親自身にとっても考える機会をつくり、結局それが家族の再統合につながるということがあるわけですが、一時的なもので済む。しかもその後、再統合に向けて例えば親がカウンセリングを受けるとか、そういう形で考え直していくという機会がほとんどない、分離してしまったらそれっきりだというふうなところがあって、かえってそれが子供のためにも親のためにもなっていないというふうな面があろうかと思います。その辺の中間の柔軟な制度をもっと考えていく必要があるというふうに思います。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 先ほどお話しの中で、例えば運転免許停止が来る、講習を受けると半分になるというようなことがありました。そうすると、完全分離の一歩前にして、一応子供は保護するんだけれども、カウンセリング期間を法的に例えば半年にするとか、緩和、分離しますよとか、あるいは一年間子供を預かります、その間にちゃんとカウンセリングをしてください、親の方がきちっとしたら短縮してお返ししましょう、こういうお考えでお話しになったのでしょうか。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 さようでございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  我々立法府にある者としては、この幼児虐待、児童虐待の問題が、さらに法的欠陥があれば今の児童福祉法の改正を含めて正していかなければいかぬし、的確に適用できるようなものにしていきたい、こう思っておりますので、個々についていろいろまた御指導賜りたいというふうに思います。  次に、津崎参考人に、児童相談所がいかに早く虐待の状況をキャッチするか、これにかかっておるわけでありますが、御指摘のように親の方から、今こういう虐待をしているからどうしたらいいだろうかというようなことはまず相談に来ないんだ、したがって、相談所の側から出前型のサービスをしていかざるを得ないと。  これが実際問題としてはなかなか大変で、さきの大阪のケースのように、それをキャッチして、相談といいますか、サービスにかかったら親が転居してしまってわからなくなった。次の時点で、これは医師とか幼稚園とかでわかりますから、またそれをキャッチして、そして、それに入ったらまた親が逃げる、そうすると、どこに行ったか全然わからなくなるという問題があるわけですね。  そこで、ネットワークづくりのお話もございましたが、児童相談所がかかわったようなケースは、途中でそういうこともありますから、ネットワークを張っていて、転居したというような場合にはすぐ、どこかわかりませんが、こういうケースがあったと情報を出せば、それがさっと全国に網が張れる、こういう状況になっておるのかどうかということ。  それから、民生委員、児童委員というのがいわゆる当て職的に一緒に入っていますね。それで、私がいただいた報告によると、こういう虐待の状況をキャッチした例では、むしろ児童委員よりもその地域の方の情報の方が多いという結果が出ておるわけですね。ということは、児童委員が十分機能していないのじゃないかという感じもするのであります。  この児童委員、民生委員は当て職でいいのかという問題も出てくると思うのでありますが、児童相談所との、児童委員との関係あたりは現実にはどうなんでしょうか。その点について。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 まず、ネットワークづくり、特に対象者が転居したときなんかにうまく引き継ぎができて、そこのネットワーク同士のつながりがあるのかどうなのかというふうなことですが、転居しますときに、住民票を移して転居先が確認できるということであれば、転居した先の児童相談所にそういうケースが行ったということを情報提供し、指導をお願いするというふうなことは実務の中ではなされているのですが、住民票を動かさずに、行き先も告げずにどこかに行ってしまったという場合の追跡はかなり難しいというのが現状でございます。  したがって、それぞれの地域の中で、よそから転居してきた、そして、どうも家族が孤立していて、その中での子育てがおかしいということであれば、それぞれの地域での発見機能というものをやはり高めないといけないのではないかというふうに考えております。  それと、民生・児童委員さんの活用の仕方でございますけれども、これは地域にかなりたくさん配置されているということで、基本的には、地域の中の実情も割と知っておられる立場にありますので、その人たちが子供のいる家族に対して常に関心を払い、発見の機能を高めていただくということは非常に重要な作業かというふうに思います。  ただし、民生・児童委員という、普通は兼務になっているのですが、どちらかといいますと、児童委員の役割に対する意識よりも民生委員としての役割、生活保護主体のかかわりの方が強くて、児童に対する関心が一般に言うと多少薄いのかなと。  その意味で、主任児童委員という新たな制度ができたわけですけれども、これも実情を見てみますと、どうも既存の民生委員さんが地域を担当しておられる、主任児童委員というのは特に地域を担当していないというふうなことがありまして、そこの既存の民生委員さんとの絡みの中で、実際の動き方が難しくて、なかなか有効に機能できていないというふうな面があるのではないか。  そういう意味では、主任児童委員さんが地域の中で有効に活動できるように具体的な役割を規定するなり、動き方についてもう少し活動しやすいような指針を出すなり、そういう形の中で有効性を高めていくという作業が今後必要ではないかなというふうに考えております。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 それから、立入調査のお話もされました。これがなかなか難しいわけでありまして、強制立入調査もできることにはなっておるわけでありますが、ケースとしては非常に少ない、こう思うのですね。  この点について、もうちょっと法的な整備といいますか、強制立ち入りを具体的にできるような権限を与えるとか、そういうような整備の必要性を感じておられるかどうか。むしろ児童相談所側にそういう権限がないということでなかなか入れないというようなことが現実に起きておるのではないか、こう思うのです。非常に緊急を要するようなケースであってもなかなかうまく入れない。児童相談所内部で、今後、法整備の必要性については考えておられることはありませんでしょうか。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 今の立入調査権の実施の問題ですが、これは全国的には今までほとんど活用されてこなかった。ところが、平成九年に厚生省の方が通知をお出しになって、積極的に立入調査を活用するようにというふうな指導がなされまして、それを契機に、全国でぼつぼつと活用され出したというのが実情でございます。  ただ、この立入調査の活用について非常に難しいのは、最初から権限介入のような形でいきますと親との摩擦が生じます。一方、児童相談所は、親といい関係の中で、あと修復ということも頭にありますから、余り最初から摩擦が大き過ぎると後の援助が難しくなるのではないかという危惧が働いてしまうために、なかなか英断がしにくいという点が一つにはあろうかと思います。  それと、立入調査が法制化された戦後の当時ですと、まだ役所に対する一般の住民の感覚があって、そういう権限発動をすればそれに応じるものだというふうなものがあったと思うのですが、今は、権限発動で立入調査をしますよと言いましても、相手が応じないということもあり得るわけですね。かぎを閉めて、相手がかぎを開かなければ強制的に入っていく手だてがないというのが実情でございますので、この辺も何らかの形で、拒否をすれば、場合によっては、権限で立ち入れるんだというふうな法律整備というものがないと、有効に活用できないのかなというふうな気もいたしております。  それと、すべてが児童相談所が前面に立ってするのではなくて、できれば警察とかそういうところも、立入調査権に基づいてそういう危険性があれば入れる、そしてその権限で子供を児童相談所に通告できるという、そういう一極に集中した形での権限付与ではなくて、もう少し広い形での子供の保護というものの権限付与ということも一つには必要ではないかなというふうに感じております。  以上でございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  今の、警察との連携、あるいは幼稚園以上であれば、幼稚園、学校、教育現場との連携、そういうことも当然必要になってくる。その辺がまだまだ不十分な点があるのではないかと思いますし、今後当委員会でも、また、文部省あるいは警察、そういうところにもおいでをいただいて、その辺の連携についてもただしていきたいというふうに思っております。  それから、児童相談所の体制なんでありますが、いろいろ大変御苦労をなさっておるお話を今伺ったわけでございます。  これは話が前後するかもしれませんが、さっきネットワークの話をいたしましたが、現実に現場として、虐待が行われている、あるいは行われているかもしれない、実際その情報収集は具体的にはどういうふうに、対病院、保育所、幼稚園、学校等々との連携といいますか、どうしても児童相談所はそれをキャッチするのがおくれるのではないか、さっき児童委員の話もいたしましたが、現実にその情報収集を具体的にどういうふうに行っておられるのか。また、その時点でもっとこういうことがあればやりやすいのにということでもあればお聞かせをいただきたいと思うのであります。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 今の、情報収集というのは初期のアプローチにおける非常に重要な作業でございます。第三者等から通報がありましたときに、その家庭にいきなり、通報があったから来たというわけにはいきませんで、普通は周辺部から情報を収集するというのが大体の作業の手順でございます。  役所でございますので、戸籍であるとか住民票であるとか戸籍の付票であるとか、そういう帳票関係でまずはその家族の概略なり構成なりあるいは身分関係なりを調べるというような方法も通常はとりますし、その家族に何らかの形でかかわっている機関がなかったかどうかということも重要な調査のテーマでございます。  例えば、子供にどこそこの保育所がかかわっているとか、過去にかかりつけの病院があるとか、あるいは保健所が今までに健診でかかわっているとかいうふうなことがありましたら、普通はその機関と連携といいますか、私たちの職員が出向いてその情報を収集するという作業をいたします。そして、虐待の状況であるとかその家族の特徴を踏まえて、次にアプローチ、具体的にどういうふうな形でその家族に接触するのかという戦略を立てるのが実務のあり方です。  情報収集に対しては普通は割と協力していただけるところが多いかと思いますが、ただ、一つには守秘義務との絡みもありまして、なかなか個人情報は出しにくいというふうなことで対処される機関もないわけではありません。そういう意味では、児童虐待等の緊急性の調査に対しては、その情報収集についても積極的に各機関が協力するようにという形の何らかの通知等があればもっとやりやすくなるかなというふうに考えております。  以上でございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 イギリスあたりには、教育相談的なチャイルドラインなんという二十四時間体制のものがありますが、こういう虐待等が行われて、隣の家が、何かあっちのうちはおかしいのではないかという場合、大体夜に起きるわけですね。すると通報していくところがない、こう言われておりますが、そういう二十四時間体制的な相談所がこれからとれるかどうかというような問題もあると思うんですね。  それから、児童相談所間の連携、それから、行政としては市町村と県との関係とか、あるいはさっき申し上げたネットワーク、今インターネットの時代でありますから、全国を全部そういうことで結ぶということも可能だと思うんですが、そういう研究はされておるんでしょうか。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 二十四時間体制の問題ですが、これはもう御指摘のとおり、夜間等に生じたときにどのように対応するのかということは重要な課題でございます。児童相談所のいわゆる事務部門は夜間の対応が難しいわけですけれども、すべて一応保護所を併設している。保護所の場合は、二十四時間子供をケアする、そういう施設でございますので、夜間は一時保護所で緊急の電話を受け答えするとか、場合によっては警察と連携をとって、そういうケースが生じたときに警察の協力を求めるとか、場合によっては、児童養護施設も二十四時間施設でございますので、そういうところで夜間の電話を受けるというふうな形で、各自治体によっていろいろ工夫をしているところでございます。  児相間の連携につきましては、先ほどの事例でも、転々とする事例なんかにつきましてやはり連携を密にする形で、それぞれが対応にそごがないようにしないといけませんので、そういう県を越えた児相間でのうまく機能がスムーズにいくような連携のあり方というのは今後必要だと思いますが、指導の依頼をする、あるいは調査の依頼をする、そういうことは日常業務の中に組み込まれておりますが、それを超えた形での連携のあり方というのは、今のところ実際上の問題としてはまだ検討はされていない実情でございます。  以上でございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 本件の問題、児童虐待の問題は、児童相談所に対する期待といいますか、どうしてもそういうものが大きくなっておるわけでありますが、ほかの調査統計等によっても、全国、まだ不十分だと思うのであります。  児童相談所が幼稚園であるとか学校に出向いて、さっきおっしゃった出前型のサービス、必ずしも家庭をぐるぐる回るだけではなくて、その情報をとって歩く、それをやる児童相談所があるのか。毎月必ず一回はずっと回っているところ、あるいは二カ月に一回とか、場合によっては全然行かない、年間ほとんど行っていない児童相談所もあるんだ、こういう指摘もありますが、津崎さんが実際に大阪の中央児童相談所に勤務されて、その出前型の情報収集というのは現実にはどういうペースでやっておられるんですか。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 この出前型のサービスをどう具体的に展開していくかというのは、まだ十分やはりできてないというのが現状だと思います。ただ、地域の機関との連携というのは日常業務の中で非常に重要です。例えば私たちの実例で言いますと、中学校なんかとは、校区、各区別にそういう連絡会等がありまして、そういう連絡会の中で地域の方々と私たちの職員が定期的に情報を交換するというふうなことはやっております。  ただ、今後は、各区レベルにあります家庭児童相談室、場合によってはその主任児童委員さん、あるいはまた学校、保健所等の子供にかかわる機関が、地域レベルでもっと定期的に出会える場、そういうことをやはりつくり上げていく作業が必要だという認識はありまして、そういうことをどういう形でつくっていこうかという問題意識と、具体的な方法について今検討をされている、そういうレベルの状態でございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  大変御苦労が多いと思うわけでありますが、ぜひ全国の児童相談所との連携も深めていただいて、特に大阪は、全国の児童虐待の件数の約一割を占めると言われておりますだけにいろいろ問題点も多々あろうと思いますが、ネットワークづくり等々を中心になってお進めいただきたいなというふうに感じております。  それから祖父江さんの、子どもの虐待防止ネットワーク・あいちでございますが、私は、さっき祖父江さんのお話を伺いながら、これは行政だけでは対応し切れない状況があることは間違いないわけでありまして、どうしてもNPOの活躍にまつことが非常に大きいと思うんですね。  いち早くこうしたネットワークをおつくりになったということは非常に意義があると思うのでありますが、せっかくの機会でございますから、この子どもの虐待防止ネットワーク・あいちができていった過程といいますか、その設立の経緯、何がきっかけでこれをつくっていこうとされたのか、まずその辺からお伺いしたいと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 子どもの虐待防止ネットワーク・あいち、正式にはこの十月でまだ四年目なんですね。しかし、それ以前に、どうしてもこれをつくっていかなければならないというふうに考え始めたのは、ほぼそれよりも一年半前です。なぜかといいますと、一つの具体的な性的虐待のケースにぶつかったということです。このケースに関しては既に弁護士会それから報道等でも紹介されていますし、本人もそのことを話しておりますのでもう多分守秘義務はないだろうというふうに思います。ですから、少し詳しくお話をしたいと思います。  児童福祉法の中には、児童相談所長が申立人となって親権を剥奪することができるとあります。もちろん親族というのも含まれますけれども。この児童相談所長が申立人になってというのは、私の記憶の中では、昭和三十年代だったと思いますが、ただ一件だけ、多分、東京都武蔵野だったと思います、そちらの家裁の分室で行われたのが初めてにして最後でした。  私どもが一人の少女と出会ったことによって、その少女の救出をしていくために——セクシュアルアビューズというものは非常に執着をします。ですから、どうしてもその人を守っていくためには親権の剥奪という形をとらざるを得ないだろうというふうに考えました。そして、それは実は一人ではできない。たまたまその少女にかかわって、児童相談所を中心にして幾つかのそれぞれの人間が集まった。その中に、後に後見人になる私、あるいは司法の方に、代理人として申立人となっていった弁護士のグループ、それから児童相談所、そういうさまざまな人たち、そして、裁判の資料をつくっていくためには当然医療の現場のドクターの発言、そういう人たちが一人の少女を救うためにいや応なしにネットワークを組んでしまったということです。このことがほかの、相続いて二つ、三つの事件が起きてきますけれども、そのときの救済の仕方にすべてこのネットワークの方式が機能したということがあります。  それと同時に、私たちが幾つか周りから聞き取ってきたことの中に、やはり家庭の中で育児に悩んでいる母親たちがいるのではないかという事実です。そのことに対して私たちはどういう手だてがとれるだろうかということで電話のサービスを試験的にやってみようということで、三日間の試験運用をやってみました。  ところが、ここに寄せられたものは膨大な数になります。そしてその中に幾つも、これは危機だと思えるような重度のものがあった。通告という形でもありましたし、それから、本人が、思わず首を絞めてしまいます、もうどうしていいかわからない、とめられないというふうな形でおっしゃるものもありました。  このことがやはり契機になって、私たちにできることをまずやっていこうというのが現在のCAPNAの前身になって、それも、一人の力ではだめだということです。一つのケースを一人が抱え込むのはもうできない。例えば、その人の家庭の中でなぜ虐待が起きてくるかということは、ひょっとすると二代、三代にわたる子育ての問題、育児の問題、そういうものもある、それから地域社会の問題もあるということになると、何代にもわたる人生を一人の人間、ワーカーが背負い込むということは、これはとても不可能です。  そのときにやはりいろいろな側面から、人間を救済していくためにはさまざまな側面からやっていく必要があるし、それから、ネットワークの必要なことというのは、それぞれの自分の限界がはっきりとわかるということです。何ができるかがわかるということよりも何ができないかがわかる。この形が一番健全なネットワークの張り方だというふうに僕は考えます。  CAPNAは、いや応なしに一つ一つのケースを積み重ねていく中で現在のネットワークの方法をつくり上げてきたというふうに考えます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  CAPNAでおやりになっておる虐待についての情報収集というのは、やはり電話等の相談を受ける中でそういうものを得ておられるようにお話を聞きましたが、実際のその情報をキャッチするケースというのはやはり電話等が一番多いわけですか。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 当事者からの通報というはセクシュアルアビューズが最も多いですね。これは直接本人からの電話です。それから周りの、いわゆる目撃者通報と私たちは言いますけれども、虐待の事実に気づいた方々が、近所の方たちが情報を下さるというものがあります。それと、やはり最も危機感のあふれているものが、医療現場からの通報があります。  これは先ほどもちょっと話が出ましたけれども、現在の公の機関は金曜日の夜から日曜日いっぱいはお休みになります。緊急の通報というのは実はこの期間が一番多いんですね。つまり、行政が対応し切れない時間が非常に多い。これはまだ分析されているわけではありませんけれども、家庭の生活の営みの中でそういうことが起きるのだろうというふうに思います。  そのときの対応の仕方というのは、私どもが通報を受けると同時に現場に弁護士を派遣する、それから、会員であるワーカーを児童相談所長の許可をとって緊急にそこに派遣する、そしてそこで救出をしていくというやり方をとります。  大体現在の愛知県のやり方は、私どももなれていませんでしたし、それから行政の側もなれていませんでした。だから、民間と行政がタイアップしながら一人の人間の救済に向かうということが非常に難しかった。けれどもそれは、考えてみると、非常に多くのケースの実績を重ねてきたわけですね。その中でお互いの連携がこのところはうまくいっているというふうに考えています。  ですから、必ずしも児童相談所に通報があるという形ではなくて、我々のところに通報のあるものもかなりの数あります。それは我々が責任を持って児童相談所とタイアップしながら情報収集、児童相談所でなければできない情報の収集がありますので、そのことは児相にお願いし、ほぼ四時間ぐらいの間に大体、児童相談所からこういうふうであったという結果の報告を受けるようなシステムになっています。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  今お話をお聞きいたしまして、行政の対応はいかがであろうかとか、あるいは行政との連携はうまくいっているかなということを感じておったわけでありますが、そういう実績の中で行政側も信頼を高めていって、連携がうまくいっているようなお話を聞きました。  立ち入ったことをお聞きするわけでありますが、NPO法案も一応法律としては認められたわけでありますが、これは税制の問題等々もありますが、現実の会の運営についての御苦労があるんじゃないかと思うのであります。今、NPO法との関連も含めて、これからもこういうNPOが全国にどんどんできていってこの中に入っていくということがこの問題の解決といいますか、対応の上で非常に大きな意義があると私は思いますので、会の運営上の御苦労があれば、立ち入ったことでありますが、ちょっとお聞かせをいただければと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 ひところ私はお金のことはさておいてと言い続けてきましたけれども、このごろは、お金のことが真っ先だと言うようになりました。それは、やはりこれだけのことを行っていきます。五十一人の弁護士が即現場に派遣される、あるいはそこで弁護活動を行ってもほとんど収入にはなりません。それから、ワーカーをそれぞれの養護施設に派遣するといっても、これもペイのできる話ではありません。  それだけはなくて、やはり会そのものの運営ということにも非常に大きな経済的な負担というのは伴っております。現在のところは、会員の収入あるいは補助金、これは一つ一つの事業に対する補助金をとりながらやっていく、あるいは、我々、賞金稼ぎと言っていますけれども、いろいろな賞をいただくという形で補ってきています。  しかし、これから先のことを考えますと、実はこの十月、設立総会を機に、いわゆるNPOとしての立ち上げをしようというふうに思っています。ただ、この法律が先生方の御努力によってここまで来たんだというふうには思いますけれども、行政の枠の中でこのNPO法の審査が行われているというと、どうしても今までの行政のあり方、指導監査、指導監督という部分が非常に強い。ですから、せっかく民間のものをつくりたいと言いながら、やはり行政の枠の中で審査を受け、注文も受けということが非常に強いんですね。ですから、このあたりももっと自由になったらというふうには今実務を進めながら思っております。  それから、これから先のことを言います。そうすると、やはり日本にもボランティアのNPOがきっちりとした収入の道を得ていくということは絶対に大切なことだというふうに考えます。今まで行政のお金を私たちがもらうのを極力避けてきたのは、そのことによって必ず注文が来る、むしろ注文の方が大きいという実感を常に持ち続けてきました、恐怖心に至るまで、それが実体があるものかどうかというのは別にしまして。ですから、極力それを避けてまいりましたけれども。  このNPO法の立ち上げ、そしてそれ以降私どもが期待しますのは、やはりこういう仕事をしていくときに、一つ一つのケースに対する注文をしてみても始まらないわけですね。すごくリアリスティックなことだと思います。ですから、まずはこれまでやってきた実績をきっちりと踏んまえて、そこに会が自由に動けるようなお金の打ち方をしていただけると非常にありがたいというふうに考えています。  ですから私どもは、それと同時にこれから先も、企業それから会員の皆さん方から会費や寄附金をいただいていくということを、私どもの仕事の実績をきっちりと皆さんに提示しながらやっていきたいというふうに考えています。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 ありがとうございました。  NPO法については、認可といいますか、NPOとして法人格をおとりになる、その査定は一応行いますけれども、極力行政の介入はなくしてあるはずでございますので。ただ、税制上の問題が、まだその優位性が残っておりますので、これも早急に解決をして、極力法人格をおとりいただいて活躍をしていただきたいというふうに考えております。  今CAPNAが顧問弁護士を五十人も抱えておられるということは、いろいろな問題を抱えておられる点もありましょうが、非常に大きな力だというふうに思っておるわけであります。  平湯先生のもとでは、東京弁護士会が、子どもの虐待防止センターを今一応おつくりになっていますね。そういうふうに聞いておるんですが、その対応と、今のそうしたNPOとか、あるいは児童相談所は弁護士との連携は十分でないんじゃないかというふうに思うのでありますが、その辺、特に親権剥奪というような問題が起きた場合には、これは手続上もなかなか大変じゃないかと思うんですね。それがあるだけになかなかそこまで行かないということもあるのではないかと思いますが。  こういう問題に対して、弁護士会として、児童相談所あるいはNPOとの連携等々は研究をされておるんでしょうか。それから、児童相談所側は、こういうケースを想定して、その場合には弁護士会なり弁護士、そことの連携ということについてはこれまでも現実に行ってきておるんでしょうか。その辺、どうなんでしょう。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 弁護士側の対応についてちょっと申し上げます。  弁護士としては、この虐待の問題は、子供の人権に関心を持つ弁護士、それまでほかのいろいろな分野、その中でもいろいろな分野はございましたけれども、その一つとして虐待の問題についても関心を持ち始めたという時期から、全国的に有志がいろいろ連絡をとり合って研究をするようになりました。それで、日弁連、日本弁護士会の中に子どもの権利委員会という全国的なものがございまして、その中に福祉小委員会というものをつくりまして、そこで弁護士としての実務的なマニュアルをつくったこともございます。  そういう弁護士が各地各地でどういう形でこの問題に取り組むか、その各地の児童相談所なりNGOとどういうふうに連携していくかという問題についても経験交流しておりますが、幾つかのパターンがございます。大阪では、児童相談所と早くから児童相談所の顧問のような形で活動をしております。それから、名古屋は今のようなお話で、むしろCAPNAの弁護団というふうな形でCAPNAと直接接触をしているようなことがございます。東京の場合は、虐待防止センターに東京弁護士会の委員会としてかかわったということではございませんが、その実質メンバーが早い時期からその防止センターのいわば顧問的に、やや愛知と似たような動き方をしております。  それを通じて一つの問題というのは、時間で活動している弁護士としては全くこれは収入にならない仕事でございまして、そういう形で活動している弁護士だけでは全国のこれからふえ続ける虐待の問題に対応し切れない。ある程度の、最低限度、例えば交通費であるとかいうことぐらいは保障されながらでないとなかなか大勢の弁護士が介入できないということで、これはひとつ法律扶助の中にこういうケースも入れていただきたいというふうに思っております。子供の事件というのは、いわゆる依頼者というのが無資力に決まっておりますので、そういう意味では扶助の問題として弁護士は一つ考えておるということがございます。  その上で、私たちとしては、どこの県にも、児童相談所やNGOから要請があれば必ず何人かの弁護士は駆けつけるという状態を早くつくりたいということでいろいろ研さんを重ねております。  以上でございます。

河村建夫自由民主党

○河村(建)委員 三先生、長時間ありがとうございました。まだまだお聞きしたいこともあるわけでありますが、時間が参りました。  今いろいろ御指摘をいただいたこと、御答弁いただいたことの中で、今後の児童虐待を防止する一つの手だてといいますか方策というものもお示しをいただいたように思います。我々としても、さらに行政側等の対応あるいは立法措置等をとりながらこの問題に取り組んでいきたい。  特に今、五千三百五十二件、昨年までですか、そういう相談があった。ということは、もっともっとその根は深いんだ、こう言われておりますし、表に出ただけでそれだけでありますから、そうすると何倍ものそういうことが行われているだろう。そういうものを早くキャッチし対応していくということが求められておると思いますので、そういう方向でさらに努力をさせていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。  終わります。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 次に、肥田美代子君。

肥田美代子民主党

○肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私、先ほどから参考人の皆様の御意見を伺っておりまして、子供の虐待防止法の立法作業を進めるに当たりましては子どもの権利条約の基本理念に照らして検討しなければならない、そういうことをしみじみと実感させていただきました。虐待の概念というのもその一つであろうと思っております。  祖父江さんにまずお尋ねいたしますが、虐待された子供を引き取られ、カウンセリングをされていらっしゃる祖父江さんでいらっしゃいますけれども、恐らくたくさんの虐待の事例に出会っていらっしゃると思います。その立場から、子供の虐待の概念について御意見を述べていただきたいと思います。  昨年の秋でしたけれども、毎日新聞が「殺さないで 児童虐待という犯罪」というのを連載いたしました。この記事を読みまして、私は本当に胸が痛くなりました。六歳の子供が裸のまま雪に埋められて死なされた例でありますとか、体を踏みつけられて目を開いたまま絶命した例など、本当に胸を刺されるような記事が続きまして、今なお、思い出しましても、やはり読むのがつらかったという印象を持ちます。この記事を読みながら、実は、これまでの虐待の概念で十分だろうか、そういう疑問が出てまいりました。  虐待のタイプは、これまでは身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトの四つに分類されております。だから、子供が虐待のおそれや危険を感じる場合などはこの四つのタイプの中に入らないわけですね。例えば、諸外国のマルトリートメントという概念は、子供に対する危険が予想される場合も虐待として見るというふうになっております。  これは、非常に重要な問題だと思うのです。つまり、不安や苦痛を子供が感じているのかどうかを含めまして、虐待を子供の側から判断する、そういうことが私は必要だと思うのです。親の意図でありますとか親の行為のみで判断してはいけないというのがこの虐待ではないかと思うのですけれども、祖父江さんの体験を交えての御意見を伺いたいと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 おっしゃるとおりだと思います。  私たちは、長い歴史の中で、子育てということの中に一つの文化を持ってまいりました。それは、ある時代には、やはり優秀な子を、兵士をつくるという概念がずうっとあったと思いますね。ですから、その中から生まれてきた男らしさ、女らしさというものがやはりどこかにある。  ですから、虐待のさまざまな事柄を洗っていくと、いつも大人の暴力という形であらわれてきます。それは、暴力というのは強い者の正当性ということ、親の側からは幾つかの言い方ができるだろうと思います。それを正当化する論理というのは幾つもあると思いますね。しつけだとか、これをやらなければこの子は育たないとか、親の志向が非常に高過ぎたり、でも、この子のためということがあります。そういう概念を一度取り払った方がいいと僕は思っています。それは、おっしゃるように、小さい人たちの側、つまり虐待を受けている人たちの側からその事実を見ていくことが必要だろう、そういう視点がまず必要だというふうに考えます。  基本的にいいますと、虐待が起こしてくるさまざまな小さい人への影響の中で最も顕著にあらわれてくるのは、生きる力を奪われるということです。例えば、これはゼロ歳の人たちにとって、その虐待というものが、直接的な暴力的なもの、身体的な虐待だけではなくて、この子とは合わないとか、この子に授乳するのが嫌だとか、おしめをかえるのが嫌だとか、女性の中には子どもと合う、合わないということにこだわる方たちもいらっしゃいますから。  そういうふうに、受けてきた人たちの中に、本来彼らが持っている力を失ってしまうということがあります。非常に簡単に感染症にかかるような事例も出てきます。ここの時代を生き延びた、いわばサバイバーとして生き残った人たちが次の暴力現場に行ったとき、例えば身長や体重の伸びが全くないとか、小さいんですね、それから、生きていくときのエネルギーを全く持っていないとか、そういう形で生きる力を奪われるということが大人の暴力の最も強いことだというふうに考えます。  その奪われるということの中にさまざまな曲折がありまして、小さい人たちは、どんなことをされてもやはり親に愛されたと思いたいんですね。そうしますと、親に愛されたと思いたいというものを突き抜けて、実際に受けている暴力というものを見きわめていくような目が必要になる。このときに決定的なことは何かといったら、生きる力を奪われている、その実態にどれほど目が向けられるかということだと思います。  ですから、虐待の概念というのは、大人の暴力によって小さい人が生きる力を奪われる、奪われてしまった。奪われてしまうと、必ず現在の生き方が非常にしんどいものになってきます。それから、そのことによって、過去の虐待体験によって、現在やっていることが、一つ一つが納得のいかないという形になります。多くの非行や触法という行為の中にそういうものは散見しているというふうに考えます。  やはり、彼らが本当に人間として生きていく力、それを奪われてしまうというのが、エネルギーの源泉を奪われてしまうという概念が私は必要だというふうに思います。

肥田美代子民主党

○肥田委員 次に、平湯さんにお尋ねしたいと思います。  我が国では、法は家庭に入らずという社会意識や民事不介入という原則がございますけれども、警察は家庭内の暴力に介入しないことになっておりますけれども、この刑事的介入は、虐待を犯罪として見るかどうか、そういったことにかかわっていると思います。もし介入すれば、やはり子供を含めた家族への重大な侵害をもたらすというもろ刃の剣であることに変わりないと思うのですが、我が国で子供虐待防止法をつくろうと思うときに、この家庭内への公権力の介入をどう扱うべきなのか、この辺をお伺いしたいと思うのです。  それからもう一つ、先ほど先生が親権の概念ということをおっしゃいましたが、先生は、この親権の概念をどういうふうに定義づけようと思っていらっしゃるか、その二つをお尋ねしたいと思います。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 公権力の介入ということでありますけれども、基本的には、家庭に対する社会からの介入というふうに考えるべきだろうと思いますが、その社会的な介入の中に、例えば児童相談所の立ち入りであるとか、それから裁判所の判断によって親子を分離するとかということも入ってくる。その中で権力的な部分をどれだけ、どういう形で整備していくかというのは、これは、各国の社会、文化を踏まえながら慎重にされるべきであるとは思いますけれども、そこの部分を含めた社会全体が、まず、子の育児、子育て、養育というものに関心を持っていいんだという考えを一つきちんとつくるべきではないだろうかというふうに思います。  あたかも、今の日本の法制度では、いきなり公権力そのものがプライベートな部分に介入してくるようなイメージがありますけれども、それ自体が一つの問題で、もっと広い社会的な関心と介入というものを育てていく必要があるのではないかと思っております。  それから、親権の定義の仕方ということでございますけれども、これについて私もまだ定見はございません。親権という言葉自体をなくすべきではないかというふうにも思いますし、あるいは、その言葉自体は今の日本の実情の中では残さざるを得ないのかなとも思います。  ただ、その中で、日本の民法の中に懲戒権、懲戒という言葉があって、これが特に親権者意識を誤解させている大きな原因にもなっている。少なくとも懲戒権の規定というのは、これはなくすべきではないか。それから、親権に服するという表現も民法の中にございます。これはやはり変えるべきではないかというふうに思っております。  その上で、先ほど申し上げたような、スウェーデンやドイツの家族法にあるような、積極的な意味で、子供に対する屈辱的あるいは支配的なそういうことまでは含まないというような規定の仕方にするのがよろしいのではないかと思っております。  以上でございます。

肥田美代子民主党

○肥田委員 最後に、津崎さんにお尋ねしたいと思います。  子どもの権利条約との関係で改正児童福祉法の実効性と役割についてお尋ねしたいのですが、虐待防止法を制定する場合も、予防、発見、介入、保護という各段階における法的対応が考察されなければならないと思います。その中でもやはり予防、発見は法律の主眼になると思います。  改正児童福祉法は、津崎さんから見て、予防、発見に十分な機能を果たしているとお考えでしょうか。機能していないとすれば、どこに問題があるか、そのことをお尋ねしたいと思います。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 今回、児童福祉法が改正されました中身についてはいろいろな側面があるわけですが、残念ながら、児童虐待という問題に対してどう取り組みを強化するのか、あるいはその体制整備をどう進めるのかという観点からの児童福祉法改正というのはかなり弱いのではないかというふうに私自身は思っております。  予防、発見につきましては、児童福祉法の二十五条の中で、要保護児童の発見者は児童相談所ないしは福祉事務所に通報しなければならないという項目がありますので、厚生省的にいいますと、その項目をどう具体的に実効性を持たせて強化していくのかという部分ですが、私、個人的に思っておりますのは、国民全般に課せられた課題というのではやはり各自が問題意識が薄いですから、特にやはり子供にかかわる立場の人、例えば先生であるとか保育士さんであるとかお医者さんであるとか、そういう立場の人に対しては、そういう職種を明示した上で特にこの義務を果たさなければいけないというふうな形での強調といいますか、そういうものが要るのではないかなというふうに個人的には思っております。  ただ、アメリカのように、現時点でそれに罰則規定を伴って何らかの罰則を与える、通報しなかった者に対しては与えるというふうなことについては、その受け皿との体制の一体性の問題等もいろいろありまして、なかなか現状ではそこまでいくのは難しいかなというふうに今私自身は考えております。  以上でございます。

肥田美代子民主党

○肥田委員 ありがとうございました。  日本は子どもの権利条約を批准しているわけですから、やはり私たちは、きょう先生方のお話を伺いまして、子供虐待防止法という名前になるかどうかわかりませんけれども、やはり超党派でぜひつくり上げてまいりたいという思いを切実にいたしました。  皆さんと一緒に努力してまいりたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 次に、石毛えい子君。

石毛えい子民主党

○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  本日は、貴重な問題提起を本当にありがとうございました。CAPNAで出されておりますデータを拝見しまして、一九九八年の子供の虐待死が二百名を超えているというような事実に改めて私どもの認識の弱さといいましょうか、そういうことを痛感させていただきました時間でした。  それで、何点か質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、祖父江参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。  私などが幼いときに育ちました農村を思い浮かべますと、農業が中心の時代でしたから、生産と消費が家族に一体化していた時代ですし、それから家族も、おじいちゃんがいたりおばあちゃんがいたり、おじさん、おばさん、親戚も近所にたくさんいてというような、そういう共同体としての暮らしと子供たちが存在していた時代と今は全く違ってきています。申し上げるまでもないことですけれども、そういう時代を迎えている。  思い起こしますと、宗教と暮らしの絡みというのはいろいろと判断の仕方があるかと思いますけれども、私などの経験ですと、祖父ですとか母が講というような、若妻講ですとかそういうようなところに出かけていって、それこそ今でいえばグループカウンセリングのような機能を持つ、そういう社会装置があった時代と今は全く違ってしまっている。家族の孤立、親の孤立、そしてその結果として子供の孤独、孤立というような時代になっている。  ただ、ここから先、ぜひお考えをお伺いしたい、あるいは評価をお伺いしたいと思いますけれども、この五年ぐらいでしょうか、例えば児童館で親子教室という、赤ちゃん、乳児を連れて一緒に話したり活動しましょうというようなことですとか、今は子供家庭支援センターになっているんでしょうか、児童相談所だけではないそういう仕組み、それから、保育政策の方では、子育て支援センターを保育所に併設するようにということで、育児不安、家庭の不安状況ということには、幾つかの対応策はとられてきているというふうには思います。  そうした幾つかの施策が、虐待という極限状況があらわれてきたそこの時点から見てどのように機能しているのか。足りないところは何なのか、全くだめなのか、あるいは方向性としてはこういうふうに持っていったらどうだろうかという、現代の社会の生活ネットワークといいますか、子育てネットワークというのがどういうふうにあったらいいかという、日常生活の中でそれがどういうふうに機能したらもう少しゆとりを持った、安心した日常の暮らしが、子育てが可能になるのではないかというような、そういうところでのお考えをお伺いできればと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 確かに時代が変わってきておりますし、それぞれの家庭を営んでいく基盤というのが大きく変わってきたということはあります。  私は、確かに非常に虐待のケースの数がはっきりしてきたというふうには思います。けれども、それでは、農村のいわゆる生産性とそれから消費が結びついているような時代、村が共同体としてあった時代、そのころに虐待はなかったのかというと、必ずあったはずです。ですから、多分これはこれから先も、減らすことはできてもなくすことはできない問題だろうというふうに思います。  それはなぜかといいますと、やはり人間が生きていくということに由来することだからというふうに考えます。つまり、人間が次の世代を育てていくということの中にともすると暴力性というものが潜んでくるというふうにとらえるからです。ただ、それを少なくしていくことというのは、私たちの努力としてやらなければならないことだというふうに考えます。  そのために、例えばCAPNAでやっておりますのは、世代間の連鎖をどう防いでいくかということで、かつて虐待を受けた人たちの、そして今その人たちが親になっている、そういう世代の方々の自助グループを運営しておりますし、それから、最も新しい、母親になりたてのお母さんたちのためのいわゆるグループもあわせてやっております。こういう形が僕は一つの回答だろうというふうに思います。  それは、子育ての情報を密室化しない。密室化していると、情報がいっぱいあるように見えながら、実は選んでいる人間は好きな情報だけ選んでいるんですね。ですから、その好きな情報には必ずと言っていいぐらい自分の意図するかわいらしい、いい子供を思い描きますよね。そのことと自分の目の前の子供とのギャップにいつも悩みながら、そこを暴力で埋めていくという形が生まれます。  そうすると、やはり私たちは、現在行われているような親子教室というのも大切なことだというふうに思います。どう大切かというのは、それが防止のために役立つという確証はありませんけれども、例えば、虐待が起きている家庭にその親子教室を通して社会の風を入れるということはできます。そういう形で私どもは使わせてもらっています。  それから、いわゆる子育て支援センター、これがいわゆる少子化政策ということの中から多分発想は生まれてきているのだろうというふうに思いますけれども、センター化すればそこで問題が解決するだろうというふうには私は思っていません。  実際の問題は何かというと、やはり地域社会の中で虐待をきちっと見分けていくようなシステムをつくっていくこと、それには、センターをつくって、そこで待ちの体制をとってみたってほとんど上がってこないだろうというふうに思います。ですから、それは生き生きとした例えば親子教室だったりあるいは自助グループだったり、そういうところが働きかけていくことが必要になっていくのじゃないか。つまり、そういうネットワークを地域社会の中に組んでいく必要があるというふうに考えます。  ですから、子育てのネットワークのあるべき姿というふうに考えると、私は、やはり地域社会の中に、それぞれが自分の人生を生きてきたことがきちっと言えるようなそういうグループをつくっていくべきだろう、それは、必ずしも公が音頭をとってできることだというふうには考えていません。

石毛えい子民主党

○石毛委員 セルフヘルプグループですとか、それから、みずから力をつけていく、アサーションができるとか、そういう新しい共同性の社会システムが地域の中に生き生きと息づいていくということの大切さを私も考えるところでございます。  時間がもうなくなってきてしまいましたので、平湯参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほどのお話の中で、たしか厚生省は現在の施策を活用していけば対応できるのではないかというお考えもあるというようなことを、津崎参考人がおっしゃいましたでしょうか、伺った記憶がございますけれども、新しい法律をつくっていくということが、例えば今の家庭裁判所の親子分離に対する審判というのでしょうか、そのシステムの機能の仕方と、それから、私はよく存じないのですけれども、アメリカでは児童保護局が別にあって、そして親子分離ができる。津崎参考人が、介入とそれから援助を分けて考えないとこれからは無理じゃないかというような御指摘をしてくださいましたけれども、例えば、アメリカの児童保護局というようなところを参考にして新しいシステムを考えていくというようなことを考えますと、現行法の活用ということではなくて、虐待の定義づけも含めました新法の制定が必要というふうにお考えになられますか、そこのあたりをお伺いできればと存じます。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 おっしゃるように考えます。  児童福祉法改正の国会は、石毛先生も大分厚生委員会で関与されたと思いますけれども、厚生省のスタンスは申し上げたようなことであったことは明らかで、その後の二年間というのは現行法の中でいろいろな機能を積極的に活用しようということで、厚生省も全国の児相をいわば叱咤激励しながら来た二年間だったと思いますが、それでもやはり致死事件というものが避けられない。ここの中には活用だけでは足りないものがあるということはもう明確になってきていると思います。  その具体的な中身は、いろいろまだ提言もございますし、検討の余地はあると思いますが、結論的に申し上げれば、恐らく民法の一部の改正とか児童福祉法の改正ではない、先日成立した児童買春・ポルノと連携するような新法が必要なのではないかと私は思っております。  以上です。

石毛えい子民主党

○石毛委員 ありがとうございました。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 次に、池坊保子君。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 明改の池坊保子でございます。  私は、この世に生を受けた子供を守るのは大人や社会の責任と思っておりますので、この児童虐待については二年前の児童福祉法改正のときにも厚生省に質問いたしましたし、また、予算委員会の分科会でもずうっと言い続けております。  平湯先生にはいろいろな資料もいただきましたし、また、祖父江さんが代表をしていらっしゃるネットワークからの資料も随分使わせていただいております。  平湯参考人にちょっとお伺いしたいのですけれども、先ほど、外国の刑法の中には弱者への殺人や傷害の刑を重くしている国があるというお話でございました。簡単でいいのですけれども、どういう国で、そしてどういうふうになっているのかを、私もこれから勉強させていただきたいと思っているのです。  と申しますのは、私は、無抵抗な幼児を殺してしまったならば、これは過失致死ではなくて明らかに殺人ではないかというふうに思っているのです。にもかかわらず、日本にはかつて尊属殺人というのがございました。子供が親を殺したら刑が重くなるという意識がまだ私は残っているのじゃないか。つまり、親が子供を殺すこと、本来は殺しているにもかかわらず、それは親の勝手と言ってはいけないのですが、親の持ち物みたいな意識があるのではないかというのを私は大変残念に思っておりまして、これは殺人なんだという罪の意識を親自身が持たなければ児童虐待も減らないのではないかというふうに思いますので、ちょっとその辺、刑が軽いのではないかということも含めて簡潔にお願いいたします。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 刑法の関係で申し上げますと、私の承知しておりますのは、ドイツの刑法が、一般の傷害のほかに、尊属に対して加重しているという規定とあわせて、保護下にある者に対する虐待、これは具体的には、保護のもとにある者に対して責め苦を与え、または著しく虐待した者、または健康を害した者はということで加重している規定がございます。  それから、つい最近、これは別の議員の方に指摘していただいて私も承知したところでございますが、フランス刑法が、十五歳未満の未成年者ということだけでやはり殺人や傷害の加重規定を設けているというところもあるようでございます。  とりあえず以上でございます。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 私は、日本でもぜひこのような、児童虐待防止法のようなきちんとしたものをつくらなければいけないというふうに思っております。  児童福祉法の中では、児童虐待については、先ほどおっしゃった通告の義務の二十五条、あの辺だけで、きちんと防止の策がなされていないのではないかと思います。  津崎参考人並びに祖父江参考人にお伺いいたしたいのは、先ほどもございました、すべての人間に通告の義務があるということは、みんなにないのと同じことだということで、私は通告の義務というのを少しでも多くの人に知らせてほしいということを言い続けておりまして、厚生省もパンフレットを児童相談所とかにつくりましたけれども、どういうふうな方法があるかを私は伺いたいと思うのです。  私は、一つには、何かみんなに、町内会のパンフレットとか町内新聞、京都でしたら市民新聞というのがありますが、そういうところに出したりするのも一つの方法かなと思っておりますけれども、それについてちょっとお伺いしたいと思います。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 通告の義務があることにつきまして、一般住民等に周知をするということは厚生省もかなり力を入れておりまして、各地方自治体に対してそのような取り組みをするように強く勧めているところです。各関係機関に対してそういう通知が流されたりしておりますし、各自治体の児童相談所も、その辺を受けまして、いろいろな啓発パンフレットをつくったり、あるいは、地域の会合がありましたときにそういうことを広く啓蒙したりというふうな活動はされているところです。  ただ、一般の方は、通報するということに対しては、場合によっては自分がその加害者から何らかのとばっちりを受けるのではないかとか、どうしてもやはりいろいろな思いも働きまして、なかなか見聞きしたことをすぐに通報するということに対してちゅうちょも働くところです。  そういう意味で、匿名性をどういうふうに保持できるかということの一方での配慮も十分しないといけないとともに、先ほどちょっと申し上げましたように、本来は、やはり子供にかかわる人々がもっとその役割意識を持って、この子どもたちを救済するんだというふうな意識でしかるべき行動を起こさないといけない。そういう意味では、医療従事者であるとか保育従事者であるとか学校の教員であるとかが、一番身近に子供に接していてそういうことを発見しやすい立場にありますので、そういう人たちに、やはり職種を具体的に明示した形でそれぞれの職種の人たちの自覚を促すような通告の内容にすべきではないかなというふうに私自身は思っております。  以上でございます。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 通告の義務に関しては、津崎さんが今おっしゃったように、私は、小さい人たちにかかわる、その人たちの人権にかかわる職種の人たちには必ずその通告の義務を義務づけるということが一つは必要だというふうに考えます。  それから現行の、いわゆる現在の形の通告の義務というのは実はほとんど守られていません。これは、幾つかの虐待死を調べていくときに、多くの方たちが、例えばテレビやマスコミの人たちが周りを固めていくときに、知っていましたかと聞くと、ほとんどが知っていたと答えるわけですよね。逆に言えば、日本の地域社会というのはそれだけ分断されている、孤立化が進んでいるというふうに言えると思います。  それでは、そのことを——これまで県やいわゆる行政の側からのPRというのは非常にできる限りのことをなさってきているというふうに思います。また、それはそれで幾つかの効果があるいはあったのかもしれないというふうに思いますけれども、基本的には、やはり通告の義務というものがすべてに課せられているということはだれもしないということに近い、そういう性格を持っているというふうに思います。  それで、私どもの市民団体としてのCAPNAは、CAPNAからそのことを発信しながら、やはりマスメディアの方々の力をかりる必要もあるだろうというふうに思います。私どもは、広報の部分では多くのマスメディアの方々と提携しながら、この通告の義務だけではなくて、虐待そのものをなくしていくためのタイアップをして意見を発信していくということをやっております。これも私たち市民の団体としては大切なことだというふうに考えています。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 日本人の中には、先ほどもございましたように、家族の問題に介入してはいけないという意識が強いんだと思います。特に、子供は親のものだという意識があるんだと思いますけれども、私は、少子化対策の一環として、子供は母親が産んで、でもそれは、もうすべての地域社会が、すべての社会が一人の子供を育てるのだという意識にならなければいけないし、そういう意識になったときに初めて、もし泣いていたら、それはおかしいんじゃないかとみんなが心配するのではないかと思うんですね。今祖父江参考人がおっしゃったように、未然に防げる死亡率というのが大変多くなってきているのを思うときに、私は、やはり国民全体の意識というのが大切と思っております。  次に、では親に対して何ができるのかということなんですけれども、先ほどもお話がございましたように、児童虐待に走る親は、かつてそういう思いをしたということもございますが、ストレスだとか未熟な親がいる。私のところも今二カ月の赤ちゃんがおりますけれども、本当にもう年がら年じゅう泣いております。狭い部屋でほかに助けてくれる人がいない、だっこしても泣く、もうどうしようもなくて、だれでも母親は、産むときには多少の夢や希望を持っていると思いますけれども、もうストレスの発散ができなくてどうしていいかわからないうちに一度たたいちゃう、そうすると、それが何か習慣的になってエスカレートしていくということになるんだと思います。  私は、親への救済というのはどういうことがあるのかなというふうに考えております。子供ですと、このごろ子供一一〇番という丸いマークの、何と言えばよろしいんでしょうか、いろいろな家にそういうのがございまして、何かあったときに子供が駆け込みますと、それに対して相談したりしてくれるそういうマークがございます。私は、七歳の子にも、何かあったらそこに行きなさいよと。あれが精神的な随分安心感を与えるのではないかというふうに思っております。  私は、お母さん駆け込み一一〇番みたいなのが民間の中に、民生委員だとかいろいろなところに——先ほどもお話がありました、児童相談所だけに任せる時代ではもうないと思うんです。民間を活用しなければならないと思います。そういうのを活用したらどうかとか、あるいは子供を一時預かってあげる。一日に二時間預かるだけでお母様はふっと心がくつろげる、それでまた赤ちゃんをかわいいなと思うことができる。あるいは一週間に五時間預けるだけで、もう一度リフレッシュできて子供へのいとおしさが戻ってくると思うんですね。  私いろいろなことを思ったりしておりますけれども、祖父江参考人、実地にそういうことを体験してどういうふうにお考えかを、何かいい具体案があったらお聞かせいただきたいと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 家族の支援、殊に親に対しての支援ということの基本に、やはり、すべての子供に対して私たち今の時代の大人たちが責任を負うという、これが真っ先に必要だと思います。  しかし、この意識が具体的になっていくためには、いわゆる政治を含めての分野でのさまざまな施策が要るだろうというふうに考えます。ですから、ただ精神的にその責任だけを負わせるということはほとんど不可能だろう。つまり、小さい人たちを受け入れていくそれぞれの施設なりそれから制度なりが整備されていること、殊に、次代を担っていく小さい人たち、いわばそれは次の時代にかける私たちの夢です。その夢を大切にしていくことは、具体的には、やはり彼らを遇することです。その遇し方がやはりこれまで中途半端だったというふうに私は思います。そのことが、実は国民の中に小さい人たちをみんなの力で育てていくという雰囲気をなくしてきたんじゃないかというふうに思います。  したがって、親に対しての救済というのはどうしても必要になります。このときに、一つは、政治の部分できっちりと先生方にお仕事をしていただきたいというふうに考えます。  それと同時に、私たちの民間でやっております電話相談、これは、密室化した家庭の中にたった一本の回線で社会の風が通ります。そして、その中で多くの方々は、継続の電話を下さる方々は、子供を殴りそうになったから電話をしたというふうに変わっていきます。やがてその人たちは、電話を卒業しましたというふうにおっしゃっていただきます。そうすると、一人一人の母親が育っていくのが見えます。このことは非常に大事なことだというふうに思います。社会の風を入れていく、そのための電話相談の有効なあり方というのはあります。  ただこれが、その件数を調べてみますと、公の電話相談と私どもの民間の電話相談を比べてみますと、圧倒的に私どもが多いんですね。このことは一体何を意味するのか、お考えいただきたいというふうに思います。  それから、せっぱ詰まって目の前の子供に対して暴力を振るいそうになってしまった人、そういう人たちに新しい風を入れて、一時期それじゃかわって私たちが見てあげましょうという、そういう形の一時保護、あるいはショートステイ、こういう充実が絶対に必要だろうと思います。そのためには、現行のあらゆる児童福祉施設がそれに対応できるような、今までの目的のかせを全部外してみて、そしてそれぞれのところでできることをやっていく、それが認められていくようなもっと柔軟な制度をつくるべきだというふうに考えます。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 先ほど祖父江参考人から、養護施設の施設が大変お粗末だというお話を伺いまして、これは私もちょっと不勉強だったな、これからちょっとこれも勉強しようというふうに思っておりますけれども、私は、これも縦割りの行政だけじゃだめなんで、民間の力をかりたらどうかというふうに思うんですね。  今あいている場所、もちろん教室を使うわけにはいきませんけれども、知恵を絞ったら、ああ、こういう民間の力がかりられたんだとか、あるいは民間の人でも、本当は孫の世話をしたい、まだ今のおじいちゃま、おばあちゃまは大変若いです。私も、自分の子供がと言っておりますが、本当は孫ではございますが、自分の子供と同じような意識で育てております。手元にいるならば育てられるけれども、離れているから育てたくても育てられない、だけれどもエネルギーはあるわよという、まだ五十代、六十代の方がたくさんいらっしゃると思うんですね。そういう方のお力もフルに利用したらいいんだというふうに私は思っております。  養護施設などでも私は民間の力をかりたいと思いますけれども、何かかりる方法というのがあるか、祖父江参考人、何かお考えがあるでしょうか。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 私どもの養護施設で、これは児童福祉法に規定されている施設でございますが、そこの施設で私どもが今やっておりますことは、家庭でいわゆる介護を受けていらっしゃる老人の問題をデイケアの形でやっております。これは、しかし、今までの行政の中からは再三注意を受けております。ということは、目的外の施設の利用であると。つまり、こういうところに幾つかのかせがはまってきます。  人間をトータルに見て、小さい人からお年寄りまでの生き死にの問題を考えるというのが社会福祉の基本だというふうに私は思います。やはり種別、症状別、年齢別、そういうふうに縦横に切り取られる行政のあり方が今まで続いてきていると思います。これをもっと柔軟な形にしていく必要が絶対にあると思います。ですから養護施設の中で、私は、老人の問題も語れて、子育ての問題も語れて、そういうことが必要になるだろう。  そして、そうなっていくための最も具体的な壁の取り外し方は、僕は、人がどんどん入ってくることだというふうに考えます。そうすると、今までのいわゆる張りつけられた職員配置だけではなくて、そこに当然さまざまなボランティアの方たちが入ってくる。そして、施設というものが、いつもそのボランティアの方たちを片一方で育てていきながらコーディネートしていくという機能を持つべきだろうというふうに思います。  そうすれば、一つは、行政のところの今までの縦割り、横割りの症状別、年齢別の福祉行政のあり方をもう一度考えていただくことと、それからそれぞれの施設がもっと壁を取り外す努力、それはもう人においてしかありません。ですから、ボランティアの養成、それからコーディネートをきっちりとしていくことが必要だろうというふうに考えます。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 虐待は今も続けられ、そして今も命を落としている子供がいるかもしれない、そういう意味では、待ったなしの大変大事な問題というふうに私は思っております。  最後に、お三方に、今一番何をなすべきかということを一言ずつお伺いしたいと思います。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 一言というのは大変難しいわけでございますけれども、子供というのが健やかに成長し発達する権利を持っているということ、それを保障するのが、援助するのが社会のすべての大人の役割であるということ、こういう観点が国の施策、それから社会の意識の中にしみ渡り確立されることが一番希望しているところでございます。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 すべきことはたくさんあろうかと思うんですが、今一番何をなすべきかということを問われましたときには、それぞれの立場で使命感を持って、自分は何をできるのかという部分で一歩行動を起こすことだというふうに考えております。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 私は救済をするシステムというのは情熱でできるというふうに思っています。しかし、情熱でできないことがあります。それは、受けてきた傷をどういやしていくか、その受け皿である養護施設をどう充実するかということが抜かれたまま来ております。  この部分を、きっちりとした、彼らに本当にこたえられるような環境をつくっていくこと、人的、物的な環境をつくること。殊に、民間が大部分の養護施設にとっては、その管理費あるいは彼らが生活している場のこの空間の少なさ、それは、手を触れれば壁を破ることになります。そうすると、修繕費も膨大なものになっていきます。ガラスが割れます。しかし、老人ホームのガラスの割れ方と養護施設の割れ方、一枚の単価が圧倒的に違います。それは、老人の施設の方がはるかに安い。それから、私どもにとっては、それは膨大なものになっていく。  一枚のガラスですらそれだけの格差があるということを、将来の、この日本の未来を考えて、私たちの夢を結んでいくという視点から、受け皿としての施設の充実をぜひやっていくべきだろうというふうに考えます。それが待ったなしの大切なことだと考えます。

池坊保子公明党・改革クラブ

○池坊委員 皆様方と力を合わせて、私は行政ですべきことをしっかりとやっていけるよう頑張っていくつもりでございます。本日はありがとうございました。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 次に、大森猛君。

大森猛日本共産党

○大森委員 きょうは、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。日本共産党の大森猛でございます。  時間が十五分と限られておりますので、端的に何点か質問をさせていただきたいと思います。  最初に、平湯参考人にお聞きをしたいのですが、きょうの陳述の中でも、またお書きになったものを拝見しましても、親を敵視しない救出とケアのシステムということを冒頭に述べておられるわけなんですが、親を敵視しない救出とケアのシステム、その具体的なイメージといいますか、そこの点をもう一度お聞きしたいのと、あわせて、きょうの御答弁の中でも、民法あるいは児童福祉法等の改正についても言及をされました。親を敵視しない救出とケアのシステム、このこととの関係で、これらの法律改正が必要な部分があるとすればどういうような点か、この点をお聞きしたいと思います。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 敵視しないということは、言葉をかえますと、親もまた救済を必要としている人であるということを法の中でも明らかにするということはございます。  例えば、親権の喪失宣告というのが非常に重装備の規定としてございますけれども、これは剥奪という言葉で一般的に言われておりますように、ペナルティーとして親権を失わせるというふうに考えております。それがために、家庭裁判所でも、親権の喪失を認めるべきかどうか、非常にちゅうちょするという現実がございます。  しかしこれは、先ほどの停止ということともあわせて申し上げるわけですが、現在、子供を救出するために、現在の親の子供へのかかわりが客観的に不適切である。それを例えばそのままの指導というケースワークの形では変えられないので、喪失させることによって一つ新しいステップをつくり出すというためにやはり不可欠な制度でありますが、そのためにも、民法の親権喪失の要件を、もっとその表現を変えるということが一つございます。  それから、例えば虐待を犯罪として明記するということについても、犯罪であるから、したがって即厳重に処罰するということの発想にいきそうなわけでありますけれども、これはやはり違うわけでして、犯罪は犯罪としてはっきりさせた上で、事の本質をはっきりさせた上で、そういう犯罪を犯さざるを得なかった親というものに対するケアもきちんとしていくということが必要であろうかと思います。  これは、アメリカのすべての州ということではないようですけれども、刑事裁判で宣告をするときに、やはりその中でカウンセリングの受講というのを命じ、それが例えば可能になれば、その刑のあり方を別に検討するというふうなこともあるようですが、そういうことの総体を含めまして申し上げているわけでございます。  以上です。

大森猛日本共産党

○大森委員 きょうの質疑の中でもかなり強調されたわけなんですが、防止あるいは救出という点で、発見とか通報制度、通報が非常に重要だということは改めて私もよくわかったわけです。  その点で、たまたま最近読んだ本の中で、これはかなり有名な話らしいのですが、アメリカのフロリダ州で、一九七〇年ですか、十七件の通報が翌年には一万九千件の通報になったと。急増の原因として、連邦資金の投入とか州法の強化、通報受理システムの整備、二十四時間対応のホットラインの設置とかいろいろ、メディアのキャンペーンの成功とか何かも挙げられているようであります。  きょうの幾つかの質問でもありましたけれども、もし本当に氷山の一角ということであれば、通報の制度が充実していけば飛躍的に通報の件数はふえるということになると思うんですが、そういう点で、繰り返しになる部分もありますけれども、これは三人の参考人の方から、通報機能のアップのために今すぐできること、あるいは根本的にこういうことが必要ではないかという点で、それぞれお示しをいただけたらと思います。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 既にお二方から出ていると思いますが、今の通告の規定というのがすべての国民の義務になっている、義務でありながら何らのペナルティーがないという義務、これは義務でないに等しいということで、専門的な立場の方のみの義務として明確にして、その反面、ほかの一般市民は通報することができるというふうにすべきでないかと思います。  それから、その専門化された方々の義務に伴う誤った通告についての免責規定、それから、その義務を尽くさない場合のペナルティーというのが考えられると思います。ペナルティーとして刑事処罰というのは行き過ぎではないか。ただ、その資格に伴う何らかのペナルティー的なこと、例えば医師の資格の一定の停止であるとか、そういうことも検討されるべきではないかと思います。  以上です。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 通報等に関して今すぐできることにつきましては、やはりそのことをどうPRし、一般の住民であるとかあるいは関係者に周知するかということになろうかと思いますけれども、さらにそれを徹底するためには、特定の職種に対してこういう義務がある、こういう法律があってこういう義務があるんだということを職種ごとに、何らかの通知等によってさらにその部分を十分認識するように要請するということが必要かと思います。  ただ、通報が上がって、その受け皿が、法律的にいいますと福祉事務所と児童相談所なんですが、実際上は、福祉事務所がその問題に十分対応できるかとなると難しくて、ほとんどは児童相談所に回されてくる。そうすると、児童相談所一局でその通報を全部受けて処理するだけの力があるかといいますと、なかなか難しい実情があろうかと思いますので、そういう通報の強化とともに、その受け皿となる体制の整備を図っていかないと実質的な援助に結びついていかないということが懸念されますので、そういうことが肝要かというふうに考えております。  以上です。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 通報の義務がありながらその件数が非常に少ないということの中に、現実に虐待の現場に立ち会いながら、例えばドクターたちの通告がないというものも幾つかあります。それは多分、守秘義務と公開性の問題ということに押さえられるというふうに思います。そういう意味では、通告の方が優先するのだということをやはり周知徹底していくことが必要だろうというふうに思います。そのための手だてをそれぞれのところで研修を通じながらやっていく、専門家のための研修というのが必要だろうと思います。  それからもう一つは、先ほど電話のところでも申し上げましたように、どうしても官主体のものというのには説得力がありません。これはやはり我々の民間の団体が背負っていくべきことの非常に大きな部分だというふうに考えます。欧米では、それぞれの国で、しかもゴールデンタイムに虐待防止のためのコマーシャルが流れております。日本でもやはりそういう形がとられることが必要だろう。多分、それは安室さんのポスターよりも効き目はあるというふうに考えております。

大森猛日本共産党

○大森委員 今の津崎さんの御答弁の中にも受け皿の方のお話がありました。児童相談所におけるケースワーカーの確保、現状について冒頭お話が若干ありましたけれども、もう少しその点、受け皿の問題、ケースワーカーの確保という点、あるいはその資質の向上のための日常的な研修といいますか養成といいますか、そういう点がどうなっているか。数量的にも圧倒的にまだ少ない現状もお話ありましたけれども、そこのあたり、もう少しリアルにお話をいただけたらと思うのです。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 冒頭でも少しお話し申し上げましたけれども、全国で児童福祉司、いわゆるケースワーカーですが、これは千三百ちょっとぐらいしかいない。もともと厚生省の設置の中で、大体人口十万から十三万に一名というふうな配置基準が示されていたということがありまして、各自治体はそれに伴った配置をしてきたというふうなことがあるわけです。  千三百名ということであれば、おおむね約十万に一人ぐらいの配置ということになるわけですが、要は、十万の人口に対して一人のケースワーカーでどの程度こういう、例えば通報を強化してこれが急増したときに、実質的な調査であるとか介入であるとか保護ができるのかとなったときには、到底やはり難しいと言わざるを得ないと思います。  そういう意味では、通報の強化をし、それを実質的な援助に結びつけていくためには、少なくとも大幅な職員のアップがないと実際上はできにくいだろうというふうに考えています。  それと、児童相談所の資質の問題なんですが、これは冒頭に申し上げましたように、全国百七十四カ所児童相談所がありますが、少なくとも半数ぐらいは一般行政事務の方が単なる配置転換で他の部署からかわってくる。そうすると、児童問題についての知識が十分ないわけですね。それが三年ぐらいの周期でかわるということになりますと、いわゆる初心のままでこういう重篤な、あるいは非常に難しいケースに対応していかなければいけないということになりますと、的確な判断とかができないというふうなことになってきます。  そういう意味で、私の経験をもとにして言いましても、少なくともケースワーカーがそこそこの動きができるには、最低五年ぐらいは実務経験なりいろいろな研修なりを積み重ねないとやはりできない。ところが、三年周期なんというと初心のままでかわってしまう、いつまでも初心のままの体制だというふうなことになるわけですから、中身を高めていくためには、研修も重要なんですが、より異動のサイクルをもっと長期にして、この業務に対してもっと根を据えて業務を遂行できるような、そういう職員の配置ということを各自治体がもっと真剣に取り組まないとむしろ難しいのではないかなというふうに考えております。  以上でございます。

大森猛日本共産党

○大森委員 よくわかりました。  最後ですが、先ほどの質問の繰り返しになるかもわかりませんが、この問題、これは大変複雑で困難な問題でもあるわけなんですが、今日の社会状況の中でもう避けがたい問題なのか、それともこれは根絶できるのか、こういう点を一言ずつ。私は、やはり根絶しなくてはならないし、根絶できるんじゃないかと思っているわけなんですが、その点、根絶のために何が必要か、一言ずつになるかもわかりませんけれどもお聞かせをいただきたいと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 私は、虐待の問題は、一つは、それぞれの親たちが子供を育てていく上で起きているわけですから、これは多分、親子関係が続く限り永久になくならない課題だというふうに思っています。  しかし、その避けがたい問題であるというふうに考えたときに、実は幾つかの方途が浮かぶだろう。つまり、避けがたい問題であるからこそ私たちはそれに真剣に取り組まなければならないだろうというのがまずスタンスの問題だというふうに考えます。  そのときに、私たちはもう一つ、避けがたい問題であるからこそ、この問題の当事者である被虐、虐待を受けた小さい人たち、それから、そこに暴力の形でしかメッセージを届けられない親たち、そこへの救済がやはり必要なんだというふうに思います。  したがって、そのための施策、もうはっきり言えばそれは罪である、明らかにこれは犯罪であるという視点と同時に、その人たちがしなければならなくなったことへの理解、そのためには、再びそれを繰り返さないための治療という部分に目を開くべきだろうというふうに考えます。  したがって、これからは、介入そして分離だけとは思いません。しかし、分離した後にやはり次の問題としてセラピーの問題が出てくるだろう、それに対応していくことが大変重要なことだというふうに思います。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 根絶できるかという問いかけに関しましては非常に難しい答えになろうかと思うのですが、アメリカとかイギリスが相当取り組んでいるにもかかわらずそれが減ってきているという報告は聞きませんので、そういう意味で考えたときには、なかなか根絶できるというふうには即答はしがたい状況があるのかというふうに考えています。  ただし、放置すればより深刻なケースが出てくるだろうというふうには思いますので、多様な子育て体制、そして何回も申し上げておりますが、そういう子育て体制の中に、なかなか網にかかってこない人たちに対して、どうきめ細かく出前型の援助を展開できるのかというふうなことだと思います。  ただ、基本的には、私自身は、子育てとかお年寄りの介護とかいうのが、昔は家庭の中でおさまっていた、いわば家庭の業務だったものが、もう家庭では支え切れずに社会として支えないといけない、そういう状況になってきておりますが、いわゆる家庭内の紛争も全く同じでして、家庭の中だけでその処理を求めようとしてもそれは時代に合わなくなってきている。だから、その紛争に対して社会が有効な援助の体制というものを構築しない限りますます困難は増幅していくだろうというふうに考えております。  以上でございます。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 私は、虐待の発生要因というのはいろいろな社会条件によって変化すると思いますし、現在その発生そのものが減るということはなかなか確信を持てませんが、しかしそれをできるだけ減らすことができるし、またその被害者を少しでもより救済することができる、それは行政、政治と社会の役割であろうと思います。  以上です。

大森猛日本共産党

○大森委員 どうもありがとうございました。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 次に、保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私は長いこと子供を対象として、特に小学校五、六年の子供から中学生、高校生の学校生活やいじめ、あるいは家庭の中のさまざまな問題を、子供自身が読むという分野で本を書いてまいりました。そういう中でいろいろな体験をしています。  もう随分前になりますけれども、ある暴力施設、これは親がお金を積んで連れ込まれる、鉄のおりの中に子供は入れられるのですね。こういう中でまさに監禁をされる施設なんですが、そこから命からがら逃げ出してきたという女の子がいました。事情があって、さあどうしようという話になりました。  通常ですと、親のところに連絡しなさいということになるわけですけれども、親に連絡したらその施設に直ちに送り込まれてしまう。そうすると、リンチを受けるかもしれない、殴られる、怖い。到底その親のもとには戻せない。けれども、そうこうして、その施設からいなくなってどこに行ったのかわからないということになれば、捜索願が出て、じゃ私も誘拐の一味かということになってもこれはまた困る。弁護士といろいろ相談をしました。女の子だったこともあって、とりあえず修道院に身を潜めていただいて、親の方には、無事でいる、あの施設には決して戻らないというようなことがあったのですね。  実際に、法の整備はなされていない。国会はこの問題を放置してきたじゃないかと言われたらまさにそのとおり、責任を感じるわけです。そして、いち早くこれは対処しなければならないのですが、現行法の仕組みはまだあるわけです。  今この時点で、ビール瓶でお父さんにきょうも殴られて頭が割れちゃった、そういう子供がいるわけです。そういうことを見ている、悲鳴も聞いた、さあどうしよう、なかなか事態が変わらないで、またこの調査の数字がふえていくわけですね。そういうときに、じゃ、とりあえず安全なところにその子供を、いわばシェルターというか、そういうところに連れていこうじゃないかというふうに考える人が出てくるのもこれは無理はないですね。  ところが、そうなると、愛のむちじゃないか、親が子供にしつけをやっているのに何なんだということで、逆にその親から追われる身になるというようなことがいろいろ虐待にかかわっている方に起きていると聞いています。  率直に、祖父江参考人に、そういう体験など、具体的に言えない部分もあるとは思いますけれども、実際ここらのことをどう考えておられるのか、お願いしたいと思います。

祖父江文宏子どもの虐待防止ネットワーク・あいち代表

○祖父江参考人 現実には幾つもありまして、介入し、それから分離をするときに、基本的に日本のシステムの中では、既に分離をする時点から親子関係の調整ということを考えているわけですね。しかし、虐待というのは、そういう意味では親と決定的に対立するということを覚悟しないと解決できません。  したがって、親の問題が出てくるのは、私はそれから後のことだというふうに考えた方がいいと思います。だから、真っ先に命を救うこと、そのことにはちゅうちょなく、真っ先にやるべきことだというふうに思います。  虐待死をしていった小さい人たちのその以前を探ってみると、救出するためのチャンスというのが何回もあるわけですね。それを見過ごしてきたということがあります。これはもうまさに周りの大人たちの責任です。そのときに見過ごした理由が、多くは親との関係をどうするかということにとらわれていたようです。ですから、これはもう僕は後の問題だ。まず、真っ先に小さい人の命を救う。それから後、親との間の問題はすればいいというふうに考えます。そのことが絶対に必要だろうというふうに思います。  それから、施設内の暴力ということを冒頭に言及されましたけれども、このことは十分に起こり得ます。それは、親がどうしても手に余ってという形のものだけではなくて、虐待を受けた人たちが暴力を引き出すということがあります。ですから、それに乗ってしまう職員たちのあり方というのもございます。  ですから、よほど施設そのものが外に開いていないと、密室化した家庭の中で起きた暴力を密室化した施設の中でということは、また暴力の積み重ねになりかねません。したがって、施設そのもののあり方も外に向かって開いている必要があります。そんなふうに考えます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 やや説明が不足していたかもしれませんが、施設と申しますのは、まさに暴力で子供を預かりますよということをうたい文句にしている施設なんです。要するに、容赦なく殴るよと。例えば風の子学園という、コンテナの中で子供が死んだという事件がありました。あれは教育委員会が子供を紹介していた、そういう関係にあったわけで、そういう施設があること自体も問題だし、そこに入れられたときに子供は大変な目に遭遇するということで紹介をいたしました。  次に、津崎さんに伺いたいのですが、世田谷の方で子どもの虐待防止センターというところがありまして、私もそこに何度か行って、出てくる親の言葉が、例えば、子供って案外死なないものですねとか、あるいは、きょうも洗濯機に入れて回してしまいましたとか、あるいは、殴っても殴っても憎らしい目をしてにらんでくるんですとか、ちょっとぞっとするような……。しかし、その中で苦悩もしているという親たちの声が届くわけなんですが。  この長い歴史の中で虐待はあった。かなり古代からあったと思うのですが、この十年、十五年という範囲で見て、何か大きな変化は起きているでしょうか。

津崎哲郎大阪市民生局児童心理等担当部長兼大阪市中央児童相談所副所長

○津崎参考人 これも冒頭に多少申し上げましたけれども、旧来の、もっと時代がさかのぼったときの虐待は、どちらかといいますと、経済的搾取の道具として子供を使うという虐待がメーンではなかったろうかというふうに感じています。今でも後進国では子供の労働酷使であるとか、あるいは性的な売春行為をさせて親がその金を取るとか、そういうことがいろいろあるみたいですから、そういう経済的な要因が一つの大きな要素になっているだろうというふうに思っています。  ただ、私たちが現在対応しております虐待のほとんどは、そういう経済的な要因ではなくて、やはり親子関係のトラブル、家庭内の子供の養育をめぐるトラブルのように思います。この養育をめぐるトラブルは、これもやはり過去からはあったのだろうと思うのですが、やはりそれが大きな家族であったり、地域に開かれた家族であったりすると、うまくその部分で防止をされる、予防される側面があったのではないか。  今の特徴は、再々ほかの参考人の方々の意見からも出ておりますように、非常に孤立した家族である。何らかの形で育児に困難を感じたときに支えがない。そして何か一方では、自分から援助を求めない。そういう状況の中で子育てがますますぎくしゃくしてきて、そのことに歯どめがかからない。したがって、とことんの状況までいってしまう。そういうやはり密室化した家族の病理性というものを非常に強く感じておりまして、家族をやはり孤立させない援助というものをどう社会的に整備していくのかということが非常に重要な課題だろうというふうに感じております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、最後に平湯参考人に伺います。  先ほど冒頭の質問で祖父江参考人が、子供の命を救う、そこにもう徹するのだ、親がどうした、いろいろ周辺がということはその後考えればいいことだと、大変そのとおりというふうに思います。また、国会がこの問題を放置してきたというようなことに今後ならないように、これはきょう一回だけやって、後はしばらく忘れていましたというようなことになっては本当に大変恥ずかしいことだと思います。  平湯参考人に伺いますけれども、今、日本社会自体、子殺しということに対してやや軽く扱う傾向、つまり、祖父江さんの方の愛知県の資料を見ても、やはり我々議員の印象は、こんなにあったのかという印象ですよね。子供が親を殺したら社会面トップ、親殺しということで大変な騒ぎになるけれども、親が少年を殺すと、大体理由がある。むしろ、親の側に減軽嘆願運動などが起こって、署名がわんさか集まってみたいなケースもあるのですね。せっかん死なんという言葉もちょっと軽いですよね。せっかん死、非常に小さい、大体このぐらいの記事ですね、最近ちょっと注目されて大きくなりましたけれども。  そういう社会の中で我々も育っているし、また国会での議論も風土とは無縁ではない。とするならば、まず虐待を受けた体験を持った、その傷を持ちながら闘ってきた体験者の方、あるいは虐待をしてしまった側の親、あるいはその問題に取り組んできた祖父江さんらのような民間の方、あるいは津崎さんのような関係機関の方、さまざまの方に議員がもっとよく話を聞いて、やはり緊急の課題として議員立法でこういうものを成案させるべきなのかなというふうに思いますが、その点について一言、時間がちょっとオーバーしていますが、よろしくお願いします。

平湯真人東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する特別委員会副委員長

○平湯参考人 御指摘のように、日本の風土というのは、子供が何かやらかすと、それで初めてそこが関心の対象になる。家庭内暴力というのは、親が子供を虐待する場合には使われずに、子供が親に対して暴力を使ったときに家庭内暴力。つまり、それ以前には、それ以外のものは暴力としてはなかったという前提の表現になっていると思います。校内暴力も同じでして、生徒が教師に暴力を加えるとそれが校内暴力であって、教師の子供に対する暴力は暴力ではないという前提。  そういういわば見て見ぬふりするという中で、ここまでこの問題がようやく社会の関心を受けるようになったということは、私も最初に申し上げましたけれども、この十年来のことであって、それ以前の一部の先進的な児童相談所あるいは養護施設、福祉の関係者あるいは医療の関係者の方々の非常な努力があったというふうに思うわけです。  それで、今本当に必要なことは、この虐待について、単に死亡した、そのこと自体の衝撃でもって関心を寄せるのでなくて、それの発生原因、あるいは死亡に至らない根深い暴力肯定というふうな、弱い者に対する暴力を肯定するような、そこの意識やからくりまで含めたさまざまな専門知識をお持ちの方々の知見を動員して、ぜひ総合的な立法を検討していただきたいと思う次第であります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ありがとうございました。大変参考になりました。

石田勝之公明党・改革クラブ

○石田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、来る二十九日木曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十分散会

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