法務委員会 第9号
- 発言数
- 111 件
- 登壇者
- 21 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1998/04/07
会議録
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る二日、泉信也君及び萱野茂君が委員を辞任され、その補欠として平野貞夫君及び千葉景子君がそれぞれ選任されました。 —————————————
○委員長(武田節子君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に平野貞夫君を指名いたします。 —————————————
○委員長(武田節子君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。 平成十年度海難審判庁業務概況及び関係予算について政府から説明を聴取いたします。江口運輸政務次官。
○政府委員(江口一雄君) 運輸政務次官の江口でございます。 海難審判業務について御説明いたします。 海難審判の目的は、海難の原因を審判によって明らかにし、その発生の防止に寄与することにあります。 審判では、人の所為または労働条件、船体、機関の構造、航海補助施設、港湾、水路の状況などが海難にどのようにかかわり、いかなる事由によって海難が発生したかどうかを専門の知識と経験を有する審判官の合議体によって審理し、裁決をもってその原因を明らかにしております。また、その海難が海技従事者または水先人の職務上の故意または過失によって発生したときにはこれらの者を懲戒することになっており、海技従事者等以外の者で原因に関係がある場合にはその業務や設備などの改善、改良等を勧告することができます。 近年、幸いなことに海難の発生件数は漸減傾向を示しておりますが、我が国の海上輸送は船舶等の技術革新を背景に大きく変化し、加えて海上交通はふくそうの度合いも高まっているところから、海難の態様は多様化、複雑化しており、例えば昨年七月に東京湾で油流出を起こしたダイヤモンドグレース号の事故を初めとする社会的な影響の大きい海難が依然として後を絶たない状況にあります。 このような中で、今後とも、海上交通をめぐる国際的、国内的諸情勢の変化に対応しながら、海難原因究明体制の一層の強化充実を図り、より的確な海難原因の究明に努めるとともに、その成果を海難防止施策に反映させていくことにしております。 引き続き、平成十年度海難審判庁予算について御説明申し上げます。 平成十年度海難審判庁予算額は二十五億八千五百万円でありまして、これを前年度当初予算額二十五億四千七百万円に比較いたしますと、差し引き三千八百万円の増加となっております。これは人件費において三千五百万円、海難審判行政事務を行うために必要な庁費等において三百万円が増加した結果であります。 次に、平成十年度海難審判庁予算のうち、主な事項について説明申し上げます。 まず、定員の関係でありますが、平成九年度末の海難審判庁定員は二百四十八人であり、海灘調査の国際協力の実施体制の強化を図るため、海難調査国際協力担当官一人の増員をすることとしております。 他方、定員削減として一般職員二人が減員されることになりますので、差し引き一人の定員減となるわけであります。 次は、海難の審判及び調査体制の強化に必要な経費であります。 行政情報ネットワークシステム経費として五百万円、審判合理化システム導入等経費として六百万円、調査業務体制の強化を図るため四千百万円を計上しております。 以上が平成十年度海難審判庁予算の概要であります。 以上で説明を終わります。
○委員長(武田節子君) 以上で平成十年度海難審判庁業務概況及び関係予算の説明聴取は終わりました。 —————————————
○委員長(武田節子君) 去る四月三日、予算委員会から、今四月七日から八日正午までの間、平成十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管、法務省所管及び運輸省所管のうちの海難審判庁について審査の委嘱がありました。 この際、本件を議題といたします。 本件に関する説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○長尾立子君 平成十年度の法務省所管の予算に関連をいたしまして御質問をさせていただきたいと思います。 まず最初に、オウム真理教集団の現状について質問をさせていただきたいと思います。 平成七年三月に地下鉄サリン事件が発生をいたしました。我が国の犯罪史上かつてない影響の大きな、また性格としても特殊な事件であったように思うわけでございます。国民生活に与えました影響も大変大きいものがあったように思うわけでございます。それから三年が経過をしているわけでございますが、オウム関係の被害と伝えられておりますことの影響はさまざまな分野で実に深刻なものがあるように承知をしているわけでございますが、オウム真理教教団の現状について今どのような状況を把握しておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(豊嶋秀直君) お答え申し上げます。 オウム真理教は昨年一月末の公安審査委員会の棄却決定以後どういう動きを示すか、私ども大変注目して調査をしてまいりましたが、組織は着実に拡充強化を図っておりまして、従来、日常業務の意思決定を行う長老部という中央の最高意思決定機関があったわけですが、それを頂点として、従来は中央の部署が四部署であったものをその後十四部署に強化いたしまして、教団関連の施設も、中央部署の施設を含め、支部、道場を次々に増設し、現在はこれら教団関連施設が十八都道府県、二十八カ所の多きに及んでおります。 また、活動の面におきましても、五百人以上の出家信徒のほか多数の在家信徒も活発な動きを見せておりまして、パソコン販売などを目的とする関連会社における営業も極めて積極的に行われておりまして、昨年一年間の売上高は少なく見積もっても四十億円を超えるものというふうに推計されております。 また、教団は、かつて教団の武装化や在家信徒を出家させるための口実としておりましたハルマケドン、これは世界最終戦争が起きるんだということでございますが、そのハルマケドンが再び起きるということを強調し始めておりまして、説法会におきましても、依然として殺人をも肯定するタントラバジラヤーナという危険な教義、これは麻原の教えでございますが、その教義の正当性や麻原への絶対的帰依を強調いたしております。 さらには、脱会信徒に対する復帰工作や新たな信徒獲得策にも活発に取り組んでおります。平成七年三月に敢行された地下鉄サリン事件以降、約四百三十人の信徒が逮捕、送検されておりまして、現在までに約三百五十人が釈放ないし服役をして社会に戻ってきておりますけれども、その三百五十人のうち百五十五人が教団施設にもう既に出入りするなどして教団に確実に復帰している事実が確認されております。したがいまして、サリン事件以降、逮捕され、三百五十人が釈放されておりますけれども、そのうちの三分の一以上が教団に復帰しているという現状でございます。 以上でございます。
○長尾立子君 大変憂慮すべき状況であるようにお伺いをしているわけでございますが、今の御説明の中で、逮捕された信者のうちの三分の一強の方が復帰をしているということにつきましては大変憂慮すべきことではないかというふうに思うわけでございます。 本来、法務省の行政の中で矯正局なり保護局なりの仕事というのは、犯罪を犯した方々について、二度とこのようなことのないように善良な市民として社会に復帰していただくということを目標として事業を行っておられるわけでございますし、全国の矯正施設の職員の皆様、また保護司を初めとする保護矯正活動に御協力をいただいているボランティアの方々の大変な御努力を承知しておりますがゆえに、もとへ戻ったというお話を伺いますと大変残念な思いがいたすわけでございます。非常に考えさせられる深刻な事態だと思うわけでございます。 この点に関連をいたしまして、保護、矯正、こういったいわば犯罪者のその後の立ち直りといった問題につきまして焦点を当てて質問をさせていただきたいと思っております。 まず第一に、矯正施設についてでございますが、矯正施設につきましては、それぞれの施設におきまして個々の入所者の状況、犯罪歴等を勘案した矯正計画というものを一人一人についてお考えいただくというような非常にきめ細やかな対応もしていらっしゃるというふうに承知をしているわけでございますが、そのための具体的措置の概要、今までどのように対応をしてこられたのか。また、現在審査の対象となっております平成十年度の法務省関係予算の中ではどのような人員措置、経費面で対応が行われているのか、これを伺いたいと思います。
○政府委員(坂井一郎君) 今、先生お尋ねの件で、オウムの関係と直接関係するかどうか、ちょっとオウムの関係になりますと宗教の問題も絡んでまいりますので直接にお答えはできないかと思いますけれども、一般的に矯正局としてどういう教育をしているかということについて若干お話し申し上げさせていただきたいと思います。 まず第一番目に知識面ということで考えますと、いわゆる教科教育、これは義務教育の未修了者というのも結構矯正施設にはございますのでそういう人たちだとか、あるいは学力の低い人たちにいわゆる国語、算数、理科、社会というようなことを教えるということをやっておりますし、それから高等学校の通信教育というのも奈良、松本というような少年刑務所でやっておりますし、また大学入学資格認定試験の準備みたいなこともやっております。これが一つでございます。 もう一つは通信教育ということでございまして、これは学科とは直接は関係ございませんけれども、一般教養であるとか職業的知識、技量等の向上を図ることを目的として、簿記だとか書道だとかペン習字だとか英語だとか電気、無線等々のいわゆる世間で言われる通信教育というようなも、のも実施いたしております。これがある意味では知識的な面の教育でございます。 そのほか、心情面ということもございます。心情面ということになりますとなかなか職員だけでは難しい面もございまして、これは篤志面接委員という方が全国に二千人ぐらいおられます。この方たちは、もちろんいろんな法律家の方もおられますし宗教家の方もおられますしカウンセリングの方もおられます。そういう方たちにいろいろお世話になりながら精神的な悩みであるとか家庭、職業、将来の生活計画等について相談に乗っていただくということをやっておりまして、これも非常に大きい教育のやり方であろうと思います。 それからもう一つは、宗教教誨というのがございまして、これは国が直接宗教に関与することはできませんけれども、やはり宗教的な講話なりを受けたいという方はたくさんおられますので、そういう人たちにはいわゆる教誨師さんにお願いして宗教教誨をしていただくというようなこともやっております。 次に、行動面でございますけれども、これは我々の言葉では生活指導というふうに呼んでおりますけれども、規則正しい生活習慣及び勤労の精神を培って共同生活を営む態度や習慣等をつけさせるということを考えているわけでございます。ここでいわゆる生活指導について申し上げたいのは、行刑施設におきましては、要するに同種の犯罪を繰り返して改善更生が非常に困難な収容者というのがかなりございます。そういう人たちにつきましては、処遇類型別指導ということでその犯罪の行動、要因面に着目した処遇をやるということでございまして、その一つが、例えば覚せい剤の事犯者に対しましては、薬物乱用防止教育として、指導カリキュラムに基づきまして医師の講話であるとかビデオ教材による視聴であるとか体験談に基づく集団討議等もやっております。それから、暴力団関係被収容者につきましては、暴力団離脱指導として、個別面接による離脱指導、外部講師による講話、警察への離脱援助依頼というようなこともやっているわけでございます。 そのほか、交通事犯によって収容されている人については適性検査、安全教育等々をやっておりますし、あるいはアルコール中毒者については断酒の教育をやる、こういうふうにいろんな項目を設けまして教育をやっているところでございます。 ただ、先ほど申しましたとおり、オウムというようなことになりますと若干宗教の問題も絡んでまいりまして、いわゆる暴力団離脱のような形で果たしてできるかという問題もございます。しかしながら、向こうの方からカウンセリングを受けたいということを言ってくる人も間々ございますので、それは鑑別技官といいまして心理技官がございますので、そういう人がチームを組んで対応しているところでございます。 いずれにしましても、我々としては、そのほかに職業補導であるとか職業指導等もやっておりますけれども、こういう刑務作業自体も我々としては広い意味での教育の一環だというふうに考えていることもぜひ御理解いただきたいと思います。 次に、定員の関係でございますけれども、昨年度の本予算では、矯正施設の職員定員は行刑施設で百十一人の増員が認められましたけれども、計画削減を考慮いたしますと八人の純増ということで、この厳しい折柄で増員を認めていただいたのは大変ありがたいというふうに思っております。 それから、予算の関係でございますけれども、これも先ほど申しましたとおり、教育というのがいろんなところにわたっております関係から、一義的になかなか申し上げにくいところがあるんですけれども、いわゆる矯正教育の充実強化経費ということで申し上げますと、先ほど申し上げたような図書であるとかビデオ等の視聴覚機器を利用した教化活動や薬物乱用防止教育をするための教育備品整備経費として五億五百万、それから民間協力者である教講師や篤志面接委員による面接等の充実を図るための経費として一億四千七百万、それから少年院における職業補導の充実を図るために賞与金を出しておりますけれども、そういうものであるとか、あるいは職業補導のためにブルドーザー等の建設機械の運転訓練をやっておりますけれども、そういう機器の整備経費として二億七千万等々、合わせて九億二千二百万円の予算をいただいてやっているということでございます。 以上でございます。
○長尾立子君 矯正施設の全体、少年院とか少年鑑別所を入れまして大体三百ぐらいの数と承知しておりますけれども、大変に施設の老朽度が進んでおりまして、新しい近代的な形の矯正施設に生まれ変わったところもございますけれども、矯正局とされましては、やはりこの施設整備を何とか急がなければならないというのが局長さんの偽らざる御心境ではないかなという気はいたします。 この必要性はもちろん私も十分に承知をしているわけでございます。私が法務省におりましたときに小菅刑務所からの集団脱走事件というのがありまして、これは一つは施設面の改善があればこのような事態もなかったのではないかということをそのとき痛感したわけでございます。ぜひ矯正施設の整備、物的な整備ということにも力を入れていただきたいと思いますが、それに加えまして、矯正局長から今御説明がありましたいわばソフト面、施設の方での配置の問題でございます。 少年院等で伺いますと、少年院の場合には、心理ですとか非常に専門的な教育を受けられた専門職の方が多く配置されておりますし、また一時少年犯罪がやや少なくなったという傾向があったかと思いますが、職員が不足しているというふうには私も承知をしていないわけでございますが、問題は一般の刑務所であろうかと思います。 先ほどオウムのお話が出まして、かつてオウムの信者だった方が復帰をしたということについてはもちろんいろいろな要因が考えられると思いますし、個々の方々の状況を見ませんと一概にそういう断定をすること自体はもちろん問題であると思うのでございますけれども、矯正施設全体としましても、累犯といいますか、何回も矯正施設にお入りになるという方が現実にはおられます。もちろんその中にはいろんな御事情のある方があるとは思うのでございますけれども、やはり我々からしますと、いつもお得意さんというのはいかがかという気もいたします。 犯罪を繰り返さないような対策ということがやはり矯正局の大きな課題ではないかというふうに思っておりますが、繰り返さないためにはいろんな手を打っていかなければならない。暴力団のような問題、これもおっしゃるとおりだと思うのでございますけれども、最近の犯罪傾向の中で、犯罪者の性格的なもの、それから置かれたいわば生活歴、そういったものによることかと思いますが、精神面の矯正ということの重要性が最近の複雑化しました社会状況の中では重視されていかなければならないのではないかと思います。 今、局長の御説明の中で、民間のボランティアの方から御協力をいただいているというお答えがございまして、私も民間のボランティアの皆様が御協力をいただいているということには本当に心から感謝を申し上げるわけでございます。特に宗教的な面では、国の施設でございますので矯正施設側が直接携わることはできないということはよくわかるのでございますけれども、そのほかの部分では、社会から隔離するのではなくて、もう少し矯正という部分に重点を置いた対策ということを考えていただく必要があるのではないかというふうに思っているわけでございます。 矯正局関係の職員の配置等を拝見いたしますと、いわば医療職的な方の配置がこれで果たして十分なのであろうか。医療職の中には、医療刑務所等がありますから、通常の医者、看護婦さんといったような方も当然いると思うのでございますが、先ほどちょっと局長のお答えにもありました心理療法士的な精神面での教育、カウンセラー自体が今我が国ではある意味では資格もまだ明確でなく、それから技術面でもいろんな意味で議論がある分野であると思うのでございます。こういった部分の技官の配置ということについてはややおくれているといいますか、予算が厳しいので御事情もよくわかるのでございますが、ちょっとまだ手がついてないのではないかというような問題意識も持っているわけでございますが、その点についてお答えをいただければと思います。
○政府委員(坂井一郎君) 先生御指摘の点は我々も常々考えているところでございまして、その充実を図りたいと考えておりますが、行刑施設で申しますと、現在の行刑のやり方からしますと、入所者が入りますと必ず分類というのをやります。その人の問題性をまず把握しまして、それで一体どこの刑務所で受刑させるのがいいのか、その場合に、例えばある刑務所を決めたとしてもどういう処遇をすればいいのかというふうなことは、そういう体制は整っておりまして、そういう意味では、各行刑施設には、いわゆる分類技官と言っておりますけれども、心理技官が必ず配置されております。 果たしてそれだけで足りるかという問題はございますけれども、一応そこで分類をいたしまして、本当に精神疾患等々がある場合におきましては、先ほど先生もお触れになりました医療刑務所が全国に四カ所ございますので、まずそちらの方に収容して治療なりあるいは教育なりをするということ、ここまでは間違いなくやっているということでございます。 問題は、先生が先ほど御指摘になりましたとおり、境界事例のようないわゆる性格異常であるとかそういう場合どうするか。これは精神病院、いわゆる医療刑務所に収容しても果たしてどうかという問題もございまして、こういう人につきましては、やはり先ほど申し上げました刑務作業をさせながら規則正しい生活をさせ、もちろん分類技官がございますので、カウンセリングが必要であればそちらの分類技官がカウンセリングもする。同時に、先ほど申し上げました篤志面接委員の先生方にも御協力をいただいて、そういう意味でのカウンセリングなりあるいは将来の相談にも乗っていただくという体制をとっているわけでございます。 ただし、この面が十分かと言われると、教育という形がなかなか見えないものでございますので、評価はなかなか難しいところではあろうかと思いますけれども、先生が御指摘のところは十分承知しておりますので、今後ともその方向で努力してまいりたいと考えております。
○長尾立子君 矯正施設の職員の方は、法務省としても教育訓練機関を整備されまして、非常に力を入れていただいているということは十分承知をいたしております。この精神面の矯正というのは、口で言うのは易しいんですけれども、現実的にはなかなか難しい面が多いと思われますが、ぜひそういった面に御配慮を今後ともいただきたい。それから、矯正関係の職員の研修の中でこういったものも十分配慮していただきたいというふうに思うわけでございます。 また、こういった矯正施設から社会へ復帰していくという過程も実は非常に重要な問題が私はあると思います。いわば病院から一般社会に出て普通の生活をしていくというのは、いわばリハビリテーションといいますか、そういう部分が極めて重要になってくるわけでございます。法務省の行政の中では、ここの分野は更生保護の体系の中で対応をしてこられているというふうに思います。私は、福祉の関係の仕事を少しかかわってまいりましたので、福祉の関係の方々の御苦労も十分承知をしておりますし、更生という仕事自体、非常にそういう意味ではかかわりが深い、お互いに連携をしながらやっていかなければならない問題であろうということは十分承知をいたしているわけでございます。 法務省におかれましても、これは一昨年でございましたか、更生保護事業法を制定をされまして、更生保護という重要な事業について新しい制度を設けられて法人としての基礎をかためるといったような面に御配慮をいただき、そういう意味ではお力を入れていただいている。また、前委員会で御提案がありました全国の保護司の皆さんについても、これを法律的にきちんと整備をしていくというような法改正も準備をしておられるということで、大変御留意をいただいているということは十分に承知をしているわけでございますが、この更生保護の問題について若干質問させていただきたいと思います。 現在の更生保護の体系というのはどういうふうになっているのか。また今委嘱を受けました平成十年の予算案の中でどういうような措置がとられているのか、御説明いただきたいと思います。
○政府委員(本江威憙君) ただいま委員がおっしゃったとおり、矯正施設から出てきた後、社会の中で通常の生活をさせながら改善更生の道を歩ませ、指導し社会に復帰させるという仕事は私ども保護局の所管でございます。 我が国の更生保護制度は、官民協働を基調として行っている点に特徴がございまして、多くの民間篤志家の協力を得て実施されております。その中でも中核的な役割を果たしておりますのが、ただいま委員がおっしゃったとおり、保護司と更生保護施設でございます。 保護司には無報酬で犯罪者や非行少年の改善更生を援助するとともに、犯罪や非行のない明るい地域社会を構築するために日夜大変な御尽力をいただいているわけでございます。全国に約五万人の保護司の方々がおられます。 この保護司の仕事は、犯罪を犯した者、非行した者に改善更生の道を歩ませるということで、保護観察という形で関与していただいておりますが、考えてみれば一面の危険もございます。中には殺人を犯して無期懲役になって仮釈放で出てきた者等もございまして、危険な面もございますが、保護司の皆さん方は社会奉仕の精神にあふれ、高い使命感を持ってやっていただいているわけございます。 更生保護制度の中心となります保護観察について申し上げますと、私ども傘下の保護観察所の人的制限の中で約六百人の保護観察官が常時約六万人余の対象者を担当しているという状況にございまして、この五万人の保護司の御協力がなければ有効な保護観察が実行し得ないという実情にございます。 ただしかし、近時の経済社会情勢の変化、地域社会の連帯感の喪失、あるいはまた人間関係の希薄化等によりまして保護司の活動が著しく困難になってきておりますし、保護司の後継者の確保もなかなか難しい状況になってきております。そういったことから、保護司制度の充実強化を図るために、今国会に保護司法の一部改正案を上程して御審議をお願いしているところでございます。 また予算面では、この保護司の皆さんは無報酬ではありますが、実費弁償という形で若干のものをお支払いしているわけですが、処遇困難な保護観察対象者が増加している状況等にかんがみまして、保護司実費弁償金について、平成十年度予算におきましては前年度比四千九百万円増の三十三億六千万円をお願いしているところでございます。 次に、更正保議施設につきましては、保護観察対象者や刑執行終了者などのうち、頼るべき家族、縁故者がなくて、更生のために保護を必要としている者を保護してる施設でございまして、職員が厳しい労働条件の中で被収容者と起居をともにしながら懸命に処遇に取り組んでくれているのであります。更生保護施設は全国に九十九施設ございまして、これはもうすべて民間団体によって運営されております。ただ、その経営基盤は脆弱でございまして、また施設が老朽化しておりまして、いろいろ困難が生じております。 委員おっしゃったとおり、平成七年五月に更生保護事業法が制定されまして、更生保護法人という新たな制度が設けられました。それと同時に、税制面での優遇措置等も社会福祉法人や学校法人と同等の優遇を受けられることになりまして、経営基盤を少しずつ強化するためにいろいろな施策を打つで尽力をしているところでございます。 この更生保護施設は、もしこれがなければ社会に身寄りのない者を放置することになるのでありまして、また再犯の道を歩む危険が高いことにかんがみますと、極めて重要な機能を営んでいるのでございます。この更生保護施設に国の方から依頼する委託費というのをお支払いして運営していただいているわけですが、平成十年度におきましては、この委託費について前年度比六千七百万円増の二十六億円をお願いしているところでございます。 また、更生保護施設の施設整備につきましては、経営規模が脆弱なことから自己資金のみでは全面改築とか大規模な補修というのは困難な状況にございます。そのため、平成六年度に新たに更生保護施設整備費補助金というものを新設していただきまして、これにより施設改善の助長に努めているところでございます。
○長尾立子君 今、局長さんの御説明で出てきました更生保護施設の整備費の補助金でございますけれども、平成六年度からだということですが、平成十年度の予算額は一億七千万ほどというふうに理解してよろしゅうございますか。 この場合、今の局長さんのお話もございましたように、国庫補助額のあとの残りの自分の負担分、改築をする場合の費用負担、今一億七千万ということでございますと、この施設の数も、複数の施設というのは多分この金額では無理だろうと思いますので一つの施設だろうと思うのですが、それでも二分の一ということだと、この部分を法人が用意しなくてはいけないということであると思いますが、現実問題といたしまして全国の更生保護法人にそういった負担能力があるわけでしょうか。
○政府委員(本江威憙君) 先生おっしゃったとおり、この二分の一を更生保護施設自身で用意しなければならないということが大変なネックになっておりまして、現在全国で十五の施設が早急に全面改築、いわゆる建て直しをしなければいけないと考えておりますが、それがなかなか困難になっております。ただ、二分の一全部を自己資金ということでもございませんで、日本自転車振興会とかあるいは県、市などの地方公共団体からも応分の御負担をいただいておりまして改築に努めております。それでも残った分を自己資金で用意するということが非常に困難になっているところでございます。
○長尾立子君 もう一つの運営費といいますか、日々の費用でございますが、更生保護施設の場合には規模の大きな、収容定員の大きいものは余りないように思いますけれども、職員の方の配置状況、またその方々に対する対応について御説明をいただきたいと思います。
○政府委員(本江威憙君) 更生保護施設はおおむね各県に一カ所ございまして、二十人収容、あるいは大きいものは百人収容というのがごく例外的にございますが、大体それぐらいの規模でございます。 先生、先ほど一年に改築は一カ所ぐらいというお話がございましたが、大体一カ所建てかえるのに二億円から三億円という状況でございまして、補助金も一億七千万、八千万というところをいただいておりますので、最近ではおおむね年に二カ所ほど全面改築をやっている状況でございます。 この職員の方は、社会福祉施設とかなり差異がございまして、三人ないし四人ということになっております。この更生保護施設に入所する者は矯正施設を出てきた者の約二二%、五人に一人は身寄りのない者でこういう施設に収容しなければならない状況でございまして、今後とも更生保護委託費の増額とか更生保護施設職員の待遇改善に努めてまいりたいと考えております。 最近の更生保護施設の状況を見ますと、高齢者とか覚せい剤事犯者等の処遇困難な者が増加してきております。こうした特別な配慮や工夫を要する者の更生保護の実効性を高めるためには、職員の資質の向上、施設の居住環境の整備等を図らなければならないと考えているところでございますが、問題点として、若い職員を確保することがなかなか困難になっている、また老朽化した施設を整備していくのもなかなか困難になっている、あるいは高齢者を受け入れるのに対応した施設になっていないなどの問題がございまして、今後一層職員の待遇改善、施設の整備あるいは職員に対する研修の充実などに力を入れてまいりたいと考えております。
○長尾立子君 施設の場合の経費の払い方ということは、すべて福祉施設も共通でいろいろ問題があるわけですけれども、局長が今言われたような例えば二十人ぐらいの小さな規模の施設でありまして、伺うところによりますと、施設の責任者及び指導に当たる中核となる職員以外は賃金職員という形で雇用されている。私も訪問させていただいた更生保護施設の中で、女の職員で炊事を担当しておられる方ですけれども、非常に気配りを持って仕事をしておられて、大変偉いなと感謝してお仕事ぶりを拝見しましたけれども、そういった方も非常勤職員という形で雇用しておられるということも伺っております。 この二十人の方のうち、一人頭大体十五万ぐらいを一月お支払いになるとして、二十人の定員がいつも満たされていればよろしいのですけれども、満たされていないケースの場合には法人としては大変経営に図られるという実態があるんだろうと思うんです。こういう時世でございますので、寄附をいただいて人並みの人件費を払っていくというのが現実に非常に困難なのではないか。更生保護施設の皆様の御苦労というのが大変思いやられるわけでございます。 実は先ほど整備費の補助金のお話がございまして、施設も老朽化しておりまして、いわゆる炊事場等を拝見しますと、大変失礼な言い方でございますが、福祉施設の二十年前というような印象を受けたところもございます。もちろんきれいな新しくなったものもございます。こういった民間の施設の老朽化したものの場合、福祉施設では国からの二分の一の補助、四分の一の都道府県の補助、それから御本人負担の四分の一につきましては政策融資がありまして、この政策融資は老朽の場合は無利子になっております。こういうふうな形で民間の方が社会福祉事業をなさるについて支えをしているというのが現実でございます。 それから、福祉の方の保護施設の中でもいわば犯罪を犯した方をお引き受けしているケースがありまして、これは多く救護施設と言われるものだろうと思いますが、救護施設にどのくらいの職員及び経費が支払われているのかということを、これは厚生省の人間が来ておりませんので、私の方からちょっと申し上げたいと思いますが、例えば五十人以下の規模で職員は十八人おります。それで、かつ入所者の食事等の経費がありますので、一人当たりにかかっております経費は二十万を超えております。そういう意味ではこういった保護施設との間に相当な差が現実には出てきてしまったということが実態ではないかという気がいたします。 更生保護というお仕事は確かに福祉とお互い入りまじっている、それからお互いが協力し合うということが必要なものであるということは私も十分承知しておりますし、現実にそのためのさまざまな工夫が必要であると思うわけでございます。やはりその保護対策というのは法務行政の中では本当に重要な仕事であると私は思っております。いわば法秩序の維持、国民の権利を守る、生命、生活を守るということから考えますと、犯罪者がまた犯罪を犯すことのないような社会を目指していかなければならないと思っているわけでございますが、現在の保護行政はすぐれて民間の篤志家の善意に支えられている。例えばBBS活動などを拝見いたしますと、若い方がこういった分野に御協力をしていただけるということも我々の社会のすばらしいことであるというふうに思いますけれども、それにしても、現在の保護行政のあり方ということにつきましては、もう少しという気もいたすわけでございますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 先ほどからるる矯正保護関係につきまして長尾委員のすばらしい御意見を承ったわけでございます。矯正保護の分野は、犯罪や非行を犯した者を改善更生し、健全な社会人とすることを目的としておるわけでございまして、刑事政策上大変重要な問題だと思います。 片や、そういうふうな対象者は、例えば暴力団関係者が大変ふえているとか、あるいは薬物による関係者が三割ぐらいいるとか、最近はまた凶悪な事件等々を犯しました少年の処遇の問題だとかいろいろ複雑困難な要素が加わってきているというのは事実でございます。 片や、先生が今御指摘のそれを受ける体制の問題につきまして、私も必ずしも十分であろうとは思いません。矯正施設もさることながら、更生保護施設等々の面につきましても、今度青森県が御協力いただくことになりましたので、やっと各県に最低一つはできるようになりました。個々のそういうふうな保護施設の面につきましても、私も努めて足を運んでいるわけでございますが、皆さん家族ぐるみで御協力をなさっているところも大変多いわけでございます。 加えて、やはり周辺住民の方々の目が必ずしも温かくないわけですね。何かあそこの人が近所で悪いことをまたやるんじゃないかというふうな目も全くないわけじゃない。そういうふうな中で苦労しておやりいただいているわけでございますし、施設の面、処遇の面、必ずしも十分ではございません。委員御専門のいわゆる福祉施設関係と比べてみました際にも雲泥の差があるということは私も十分承知いたしておりまして、少なくとも税制上の面で何とか福祉と肩を並べられないだろうかというふうなことでいろいろ努力されて、やっと何とかその辺まできた。それは税制上だけの問題でございまして、まだいろいろな問題が山積していることは私も十分承知いたしております。 年間二億足らずの助成金でいいとは決して思いませんし、その辺のところに重点を置きまして今後とも一つ一つ問題解決のために善処してまいりたい、このように思います。
○長尾立子君 終わります。
○千葉景子君 きょうは、最初に、せっかくの機会でもございます、なかなかお聞きする機会がないものですから、海難審判庁にひとつ話を伺わせていただきたいと思っております。 私もちょうど横浜におりますので、横浜に横浜地方海難審判庁というのがございます。相当以前になりますが、見学というか視察をさせていただく機会があったんですけれども、それ以降はなかなか海難審判庁の問題について議論をさせていただくような機会もございませんでした。従前、「なだしお」の事件などがあった際には、この海難審判というものが大変注目をされたこともございます。また、事件としましては、きょうの御説明にも出ておりますように、ダイヤモンドグレースの事件などがございますが、人の命にかかわることではございますけれども、審判自体は一般市民がかかわるという部分が少ないので、なかなか内容がわかりにくいところがあろうかというふうに思います。 ただ、実際には、いろいろな複雑な社会の情勢、国際的、国内的な情勢、船舶の運航もふえ複雑になってきている、片方ではプレジャーボートの問題などもあり、レジャーというものを通じての海のさまざまな活動もふえている、こういうこともあろうかというふうに思いますし、やはり原因究明などにもいろいろな困難もつきまとっているのではないかと思います。 ただ、その予算を拝見いたしますと、余り増加していない。今回も前年度予算額に比較しても三千八百万ということでもございますので、大変慎み深いというか遠慮深いのかなという感じもいたします。ただ、これで本当に新たなさまざまな情勢に対応し切れるんだろうか、あるいはまたスピーディーな審判などにこれで十分対応し切れるんだろうかといろいろな疑問もわくところでもございます。 そういう意味で、海難審判庁として、今の社会情勢との対応において、審判庁の体制というものにどういう御認識を持っていらっしゃるか。庁としては最大限努力をなさっているということではあろうかと思いますけれども、それと、これからの見通しといいますか、こういう点でやはり充実強化を図っていく、あるいは検討を加えていくべき部分がある、どんなふうに考えておられるのか、その点について審判庁の方からお話を伺いたいと思います。
○説明員(鈴木孝君) ただいまの先生の御質問についてお答え申し上げます。 まず、海難審判庁の現状と今後の体制についてでございますが、海難審判庁は、御承知のとおり、第一審を担当する八カ所の地方海難審判庁、それから第二審を担当いたします高等海難審判庁、それに理事官の事務を統括する海難審判理事所によって構成されております。なお、その中で海難審判理事所は、その事務を分掌させるために八カ所の地方海難審判理事所を設置しております。 御承知のとおり、海難審判庁の十年度の予算は二十五億八千五百万円でございます。同年末の定員は二百四十七人。また、平成九年における海難事故の処理件数は八千二百九十二件、そのうち裁決件数は七百六十二件です。ちなみに平成八年における海難審判の処理件数は八千六百八十九件でございまして、漸減傾向にありまして、四百件ほど減っております。しかしながら、海難の態様が複雑化しますし、それから多様化しております。そこで非常に難しい問題もございます。そこで、今後とも、海上交通をめぐる諸情勢の変化に対応した原因究明体制の充実強化を図りまして、より的確な海難原因の究明に努める所存であります。 なお、我々が常に気にしているところは、迅速な審判ということを心がけております。また同時に、先生御指摘のとおり、社会情勢の変化も最近は急激でございまして、特に、従来は国内の海難だけ処理していれば大体足りたものですが、第二十回のIMO総会、昨年の暮れでございますが、ここで海難調査の国際協力をしましょうというコード案が決議されました。これに対して当方も対応しなきゃいかぬ、こういう情勢にあります。 したがいまして、今後、我が方としてどういう体制で臨むかということになりますと、こういう厳しい現実でありますから、より効率化、国際化を目指して、知恵を出し合って対処していきたい、こういうふうに思っております。 以上です。
○千葉景子君 細かい点でまだまだ整備をしなければいけない点もあろうかと思いますので、また今後引き続きいろいろな御説明もいただきたいというふうに考えております。きょうはこの程度にさせていただきたいと思います。 さて、私は、この法務委員会、そして国会自体は立法機関でもございますので、立法のあり方といいましょうか、とりわけ基本法と言われるような、これまでの日本の社会経済の秩序を支えてきた基本的な法律の整備のあり方というのに最近いささかいろいろ疑問やら、あるいはどうすべきかということを考えているところでございます。 というのは、社会経済がこれだけ急テンポで変化をしております。国際化が進み、あるいは情報化が進む、また少子・高齢化というような新たな事態が進んでいる。これから将来に向けて日本のあるべき社会経済構造システム、こういうものについてやはり抜本的にいろいろ検討を加えていかなければいけない、そういう時期にも差しかかっていようかというふうに思っております。 そうなりますと、それを支えてきた一番の基本である例えば民法であるとか刑法であるとか商法であるとか、やはり基本的な法律の構造も改めていろいろな検討が加えられる必要もあるのだろうというふうに思います。反面、こういう基本的なものはこれまでさまざまな深い議論のもとに、社会全体を総合的に秩序立てる、こういう意味も含めて非常に重い意味を持っていた、そういう側面もあろうかというふうに考えております。 ただ、このような大きな変化の中で、それだけ基本的なものだからゆっくりとそのまましばらく置いておいていいというものでもないだろう、逆に言えば、これだけ速いんだから経済動向などに合わせて基本的な法構造をどんどん変化させてしまっていいのだろうか、こういう問題もございます。 これまで、こういう基本的な法律のあり方あるいはその内容、それは法制審議会を通して大変いろいろな幅広い議論がされてまいりました。そして、その結論を得ながら私ども立法機関としてもそれにきちっと対応していく、こういう関係があったのではないかというふうに思っています。そういう意味では、国民的な議論の場を提供しながら、あるいはさまざまな分野の皆さんの意見も聴取しながら議論してきた法制審議会の重みというものを私も改めて考えているところでもございます。 ただ、このところちょっと気になるのは、これだけ経済動向も速いものですから、法制審議会の議論を待ち切れないというような形で経済動向を反映させた法案づくり、議員立法などの形でできるだけスピーディーにということも目についております。議員が立法活動をするということは決して否定されるべきものではございませんけれども、こういう基本的な法律が経済動向、短期間のそういうものだけに左右されて変更が加えられるということはいかがなものかという気も一方ではいたします。 そういうことを考えますと、基本的な法律の審議のあり方、そしてその中でも重要な役割を果たしてきた法制審議会の意味、こういうものも今改めて私たちは見詰め直しておかなければいけないだろうというふうに思います。 先般のときも、法制審議会のあり方、そして今後どういう見通しを法務省としては持っておられるかということを私もちょっとお話をさせていただき、一定のお答えはいただいたわけでございますけれども、今のこういう社会情勢、そして大きな変革の時期、こういうことを踏まえて法務大臣としてどんなふうに御認識をされ、お考えをお持ちであるのか、その点について改めて大臣にお尋ねをさせていただきたいと思います。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 今、千葉委員御指摘のお考え、るるお述べになりましたが、私も同じような考え方を持っているわけでございます。 御承知のとおりに、法制審の前身は明治二十六年にさかのぼっているわけでございまして、審議会の中では古い伝統と権威を持って今日まで来ているということは事実でございます。その時々の重要問題につきまして法務大臣が諮問いたしまして、そして諮問にこたえて御検討いただいた結論を法制化しているというふうな形でやってきているわけでございます。 御指摘のように、最近の社会経済動向の変化というのは目まぐるしいものがございまして、それに現在の法制が対応できているのかできていないのか、なかなか対応できないのじゃないかというふうなことで、それに対応できる法制の整備が急がれるということもまた事実だろうと思うのでございます。そういうふうな側面のあらわれといたしまして、先般も当委員会で御審議いただきました議員立法が二本あったということだろうと思いますし、ストックオプション等々の議員立法というものもあったんだろうと思うのでございます。 そこで、私どもの考え方を率直に申し上げますと、国の基本にかかわるような法制というものはその時々のニーズが仮に強いにしてもやはり法制審議会の場で基本的にじっくり御検討いただくべきではなかろうか、私はこのように思います、例えば刑法でございますとかあるいは民法でございますとか、そういうような基本法にかかわるようなものは。反面、法制審議会が現在の国民のニーズにこたえられるようなタイムリーな答申ができてきていたかどうか、これにつきましては法制審そのものも検討する必要があるのじゃなかろうかというふうなことでございまして、法制審のあり方について今部内で真剣に検討をしている最中でございます。 あらかたの私どもの方向を申し上げますと、まず法制審の会長が法務大臣でございます。これはよくない。諮問する人が諮問される会の会長であるというのはよくない。それから、法制審のもとに部会があり、部会のもとにまた小委員会がたくさんございます。これを何とか整理できないだろうかというふうに思います。少なくとも小委員会というのは原則として廃止して、部会の段階でいろいろ議論すべきじゃなかろうかと思います。 それから、基本法につきましては部会を厳然として置いて、そしてやるべきではなかろうか。しかし、その時々の問題につきましてはその都度部会をこしらえ、しかもだらだらいつまでもやるのじゃございませんで時限的に、諮問のテーマといつまでに諮問の結果をいただきたいというふうな形で諮問をお願いする。基本的なものとそういうふうなその時々のニーズに応じた問題についてお願いして、そしてそういうふうな形の中でやはり激動する経済社会情勢に対応して、厳然として変わらざる基本的なものは基本的なものとしながらも、その時々のニーズに対応できる法制の問題について御答申をいただくという方法でどうだろうかなというふうな考え方を基本にして今検討を続けているところでございます。
○千葉景子君 やはり時代にも適切に対応し得るまた新たな体制をぜひお考えいただきたいと思います。 さて、それにかかわりまして、今度は逆に大変不思議に思いますのは、それだけ重みのある、そしていろいろな幅広い論議を積み重ねている法制審でございますが、そこからもう既に大分時間も経過いたします民法の改正、いわゆる選択的夫婦別姓やあるいは子供の相続権の問題等を含めて民法の改正にかかわる答申がなされております。この法制審がそれだけ基本的な法律に対していろいろな論議を重ねて一定の方向性を出したわけでございますけれども、片方では経済動向などでどんどん新しいものはスピーディーに行われる、しかし、これだけの基本的なものが法制審の議論の中できちっとまとまりながらも今度は逆になかなか審議の場にのらない、これはどうしたものだろうかという気がいたします。法制審としても、片方では早いものは対応し切れないので置いてきぼりになり、せっかくしっかり議論したものはなかなか取り上げてもらえない。こうなりますと審議会自体も何か本当にやる気をだんだんなくしてしまうのではないか、これはちょっと余計なことではございますけれども。 この民法の改正問題、大変広範なもう既に議論も重ねられてまいりました。大臣は法制審議会の会長でもございますけれども、そろそろ御決断をなさって、やはり国会での新たな議論の場にお出しになるということをぜひ私はお進めいただくべきではないかというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘の選択的夫婦別姓等々を内容とする法制審の答申が出たということは私も承知いたしております。これを一つの側面から見ますと、法制審はそういうふうな専門家の方々が各方面からいろいろな問題を御検討なさった一つの意見の集約として私はこれは尊重すべきだと、基本的にそのように思います。 他面、もう一つの側面といたしましてありますのは、これは国民の一人一人に直接かかわり合いのある問題でございます。自分の名前がどうなるか、自分の家族がどういうふうになるのか、自分の子供の名前がどういうふうになるのか、やはり一人一人に直接関係のある問題でございます。法制審の答申というものを私は基本的に尊重すべきだと、これはもう申し上げましたが、それと同時に、やはり国民自身がどういうふうにお考えになっておるかという意向調査もやるべきだろうという形でやりましたのが平成八年六月に総理府が実施した世論調査でございます。 その結果は、御承知のとおりに、別姓賛成と別姓反対、これは大分前の別の調査に比べますと別姓賛成の方がふえておることも事実です。ですけれども、この調査によりますと、なおかつ別姓に反対される方々の方が別姓賛成の方々より多いというふうな事実もあるわけでございます。この辺のところも無視するわけにはいかないんじゃないだろうか、こういうふうな感じが実はいたしておるわけでございまして、今後世論の動向等も見きわめながら引き続き検討を進めてまいりたいというのが現在の私どもの考え方でございます。
○千葉景子君 既に、これは法制審の議論ばかりではなく、この問題が提起をされましてからまさに一人一人の人権やあるいは生活にもかかわるということで大変関心も深まり、いろいろな場所で市民の間でも議論が重ねられてきた、こういう経緯もあります。また、国際的な動向から見ても、いろいろな国際機関からの指摘などもこの間もなされてきた。そういう意味では、国会なり議論をすべき場、議会というのはやはり国民的な議論をさせていただく場でございますので、やはりそこにそろそろ出していただいて、その中で大臣が御懸念にもなる一人一人の国民の声なども積極的に聞かせていただきながら議論をすべきではないかというふうに私は考えておりますが、ぜひまた大臣も改めてお考えいただければと思いますので、結構でございます。 さて、法制審にかかわる部分でもう少しお聞きをさせていただきたいのですけれども、いわゆる定期借家権の論議がございます。私は、これも別に法律家ばかりを擁護するという意味ではないんですけれども、定期借家権の議論というのはやはりこれも出発は経済的な要請、こういうものが最初にスタートの原点ではなかったのかなという感じがいたしております。ただ、これも基本的には長きにわたる一人一人の居住の権利、こういうものを踏まえた借家権の上に立った問題でもございますので、今後これも慎重な議論が必要であろうというふうに思っております。 そこで、改めて定期借家権の議論の経緯、生じてきた背景や経緯についてお聞かせをいただき、そして法務省としては今どのような検討状況にあるのか、今後の見通し、こういう点についてお聞かせをいただきたいと思います。
○政府委員(森脇勝君) 定期借家制度につきましては、かねてから主として借家の供給を促進するという観点からその導入の提言がございました。また、政府の規制緩和推進計画におきましても、良好な借地借家の供給促進を図るためいわゆる定期借家権を含め検討するということとされまして、これを受けまして法務省民事局では平成七年六月に研究会を設置いたしまして、幅広い観点から良質な借家の供給を促進するための方策等について定期借家権の問題を中心として検討を行ってきたところでございます。そして、昨年の六月に中間的な検討状況を公表するとともに関係各界に意見照会を行いまして、その後はその結果を踏まえて引き続き検討を行ってきたところでございます。 また、昨年十一月の緊急経済対策においては、定期借家権の導入を促進するということとされておりますし、去る三月三十一日に閣議決定された平成十年度の規制緩和推進計画においても、定期借家権の導入を促進する観点から平成十年度中に結論を得て、速やかに所要の措置を講ずるものというふうにされておるところでございまして、法務省といたしましても、これらに沿って速やかに結論を得るべく現在鋭意検討を進めているところでございます。
○千葉景子君 この問題は私も全く否定的に考えるわけではないんですけれども、出発は今御説明がありましたようにやはり規制緩和の流れ、あるいは良好な住宅の供給、こういうことがスタートであろうかというふうに思うわけです。しかし、この借地借家というのは、定期借地権も既にスタートをされておりますけれども、特にこの借家の場合には、住まいをしている者の居住の権利をきちっと保護していこう、安定したものを保障していこう、そこがやはりこの法律の大きな基本になってきたというふうに思います。 片方の経済的な要請ということも、私も全くわからないわけではありません。特に、この法律も昭和十六年に正当事由の制度が導入をされて相当長い期間たっているわけですから、社会情勢、経済動向に応じたいろんな検討が加えられるということは、わからないではない部分です。ただしかし、一方で、とりわけ一般的な定期借家と言われている問題については、一たん正当事由などのところに風穴といいましょうか変更を加えますと、相当大きな抜本的な構造の変化ということになっていこうかというふうに思うんです、 そういう意味では、これからも情勢に適合しつつもやはり借家の権利というものをきちっと踏まえた慎重な議論もしていかなければいけないというふうに考えますけれども、改めてその辺の御認識をいただきたいと思います。
○政府委員(森脇勝君) 委員御指摘のとおり、この問題は、主として定期借家権を推進するという立場の意見が法律学者ではなくて経済学者から唱えられたという点に今までの基本法の改正とはちょっと異質な面があるということは私どもも感じておるところでございます。 ただ、これを無視して法律学者だけで決めればいいという問題ではございません。これは国民の非常に多くの方々の住まいにかかわる問題でございますので、現在私どもの研究会におきましては、経済学者及び法律学者その他都市工学者、こういった方々も加えまして多くの英知を集めて議論を進めているところでございます。ただ、この問題は多くの国民にかかわる、また一たん決めてしまうと社会がどう変わっていくかというような点も非常に難しい問題がございまして、研究会の中でもさまざまな意見が活発に出されておるという状況でございます。 私どもとしては、これをできるだけ研究会の中のコンセンサスという形で高めてまいりたいという努力をいたしておるところでございます。
○千葉景子君 次に、これも時代の要請と言ってもいいのでしょうか、成年後見制度の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。 ちょうど昨年の十二月に介護保険法が成立をいたしまして、二〇〇〇年には新たな介護システム、保険制度を活用しての新たな社会システムというものがスタートをすることになります。そういう意味では、身体的な介護、そういう部分ではまた新たな施策のスタートということが図られようと思います。 ただ、これからの高齢化の中で一人一人が本当に自立をした形で生活をする、そして自己決定といいましょうか、できる限り自分の生活を自分で成り立たせていく、こういうことも人間の基本でございますので、そういう意味からこの成年後見制度というのが非常に今多くの皆さんから制定の期待が高まっているところでもあろうかと思います。 既にいろいろな中間的な御報告なども私も拝見をしているところでございますけれども、この成年後見制度、検討の進捗状況は今どのようになっているのか、あるいはその中で一番のネックとかあるいは難しい問題点として存在しているものに何かあるかどうか、これは新たなことですからすべて難しい問題点ではあろうかと思うんです。 それから、これの背景にはやはり今の禁治産、準禁治産者制度、これが戸籍にもかかわるということでプライバシーの問題などがあるということが言われております。しかしながら、それに対して、成年後見ということになれば新たな公示制度のようなものも検討しなければいけないと言われておりますけれども、そんな点についてはどんな検討が加えられているのか、御説明をお願いしたいと思います。
○政府委員(森脇勝君) 御指摘の成年後見の問題につきましては、法務省におきまして平成七年七月に民事局内に成年後見問題研究会を設置いたしまして、そこで二年間にわたって基礎的な調査研究を行い、その結果を取りまとめまして報告書を作成いたしまして、昨年九月に公表したところでございます。 また、その公表と同時に、今度は法制審議会の民法部会に福祉関係の方々さらには一般有識者の参加を得た成年後見小委員会を新たに設置いたしまして、昨年十月以降、成年後見制度について本格的な検討を行っているところでございます。 さらに、今後の見通しを申し上げますと、この四月中旬ごろに要綱試案を作成、公表して、関係各界の意見をお聞きしたいということを考えておりまして、さらにスムーズにまいりますれば来年の通常国会に成年後見制度に関する民法の改正法案を提出いたしたい、こういうことで準備をさせていただいております。これは先ほど委員御指摘ございました介護保険法の施行ということもにらんだ上での日程ということでございます。 さらに、どういう観点からの改正かという点でございますが、これは先ほど委員御指摘になりました自己決定の理念と申しますか、残存能力の活用であるとかノーマライゼーションと言われているような最近の理念と、それから旧来の本人保護の理念、これをどううまく組み合わせていくかということに尽きるであろうというふうに思っておりまして、できるだけ柔軟な利用しやすい制度を設定すべきだということで鋭意努力をいたしておるところでございます。 それから、ネックになる点という御指摘でございましたが、委員御指摘のとおり、従来の禁治産、準禁治産制度というのは、これが宣告されますと戸籍に登載されるというところから国民の間に心理的な抵抗感があったということがあるようでございますので、何らかこれにかわるような登録制度を考えるべきではないかというのが現在検討されておるところでございます。 ただ、これは経済取引にかかわる問題でございますので、これをどう公示していくのか、プライバシーの問題はどうするのか、そういったような問題とどのように調整していくかという点に現在腐心いたしておるところでございます。さらに、従来の禁治産、準禁治産の宣告を受けますといろいろな面で資格制限を受ける場合がございます。これを何か減らしていく方法があるのかどうかという点についても議論がなされているところでございます。
○千葉景子君 今のお話ですと、四月中旬ごろには、もう間もなくということになりますが、要綱試案も御提供いただけるというお話でもございますので、今の問題点なども含めて、その試案を私もいろいろと見せていただいた上でまた議論を今後とも続けさせていただきたいというふうに思います。 さて、先ほど長尾委員の方からもオウムの問題がまた御議論されていらっしゃいましたけれども、私はちょっと違う観点なんですけれども、このところ犯罪による被害者の問題、いろいろと大変悲惨な状況もあろうかというふうに思います。 オウム問題のときなども、亡くなられた方もございますが、例えばサリン事件などで身体的あるいは精神的にも被害状況が継続している、こういうようなこれまでには余り見られなかったような被害実態もございます。あるいは少年犯罪などでも、これは犯罪を犯した少年についても本当に私たちもいろいろな悩ましい思いはいたしますが、反面、今度は被害を受けた少年あるいは被害者の側にも大変深いいろいろな被害を生ぜしめている、こういう面もあろうかというふうに思います。 精神的な部分というのはそう簡単に解決しようと思っても難しいところですけれども、例えばそれに対する財産的な補償、こういう面も大変難しいというのが実情ではないかというふうに思われます。例えば、改めて民事訴訟を起こすといいましても、財産的な能力やあるいは訴訟のいろいろな煩雑さということなどもございます。あるいは証拠の収集などの面でもなかなか問題が大きいのではないかというふうに思います。 そういう意味で、今後、犯罪の被害者に対してのさまざまな措置、あるいはまた例えば民事訴訟に持っていくにしても、それについてできるだけ対応しやすいような制度を含めて検討が必要なのではないかというふうに私も思うのですが、これは法務省だけの問題がどうかというのも一つございますが、法務省としては何らか検討されていらっしゃるか、あるいはどんな御認識でおいでなのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(原田明夫君) 御指摘の犯罪被害者に対するさまざまな配慮という観点は今後ますます重要になるということは、私どもとしても認識いたしておるところでございます。 御承知のとおり、犯罪の被害者につきましても、犯人が特定されないあるいは発覚しないという場合には、一定の被害者に対する給付金制度がございますが、それでは貯えない面がただいま委員の御指摘のとおりございます。すなわち、犯人が特定されまして、それについて一方では刑事裁判あるいは刑事訴訟の場でさまざまな対応がなされていくわけでございますが、財産的な補償という点では、まさに御指摘のとおり、犯人と申しますか加害者あるいはその家族等責任のある立場の者から被害回復が任意になされない場合には、民事訴訟手続によって被害回復が実現されなければならないという点はそのとおりでございます。 そういう場合に、御指摘のとおり被害者の側からの証拠資料の収集が困難である場合があるということなどのほかに、財産が散逸してしまうといった場合には、実態的にそのような補償が図られないというような問題もございまして、まさにそういう犯罪によって被害があった場合の迅速的確な回復には種々の問題があることは否定できないだろうと私どもも考えております。 そのため、私ども刑事局の立場では、以前からこの問題については重要なものであるという観点から、いわゆる刑事訴訟手続と申しますか、捜査手続との関係を含めまして、被害者の被害回復の実現を図るためのさまざまな方策について検討を行ってきたのでございますが、一方では債権者平等の原則とか、あるいは民事手続との関係では、従来から民事不介入の原則、つまり刑事事件に関する国家のいわば強制的な権限が民事的な私的な権利の実現に介入してくることについては、これは物の考え方といいますか、かなり峻別すべきだという考えが基本的にはあったろうと思うわけです。そこらあたりのことを今後どういうふうに考えていくかということもございます。 そういう意味で、現在、民事局を含めまして省内で関係の局とも今後の問題ということで真剣に議論をしているところでございまして、一部と申しますか、非公式には日弁連のこういう問題について関心を持たれている先生方の間の協議もなされている。そういうことで、今後とも御指摘の点を含めまして、関係各方面の御意見を十分お聞きかせいただきながら検討を続けてまいりたいと考えている次第でございます。
○千葉景子君 もう時間もあれなので、最後に一つだけお尋ねをいたしたいと思います。 社会経済、先ほどから大きな変化と申しました。金融ビッグバンがスタートし、そして規制緩和、自由化の波、こういう中で、公正な社会を担保する意味ではこれから改めて司法の役割というのは大変大きくなってくるだろう、あるいは公正な紛争処理というようなことも大変重要になってこようかというふうに思うんです。 その中でぜひ充実をしていただきたい一つに法律扶助事業、これはやはり私人がそういう紛争解決の場で適切に公正な解決を図れるということを担保する意味でも、法律扶助事業のより一層の充実というのが必要だというふうに思います。ぜひ今後とも補助金などを増額する、あるいは法律扶助事業についての基本的な法整備というようなことも含めて御検討あるいは積極的に対応いただきたいと思いますが、最後にこの点についてのお考えをお聞かせいただきまして、終わりにしたいと思います。
○政府委員(横山匡輝君) お答えいたします。 法律扶助制度は、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度でありまして、法務省としましては、本制度の果たす役割の重要性にかんがみ、財団法人法律扶助協会が行う民事に関する法律扶助事業に対しまして、昭和三十二年度から補助金の交付を開始し、特に近年では毎年補助金を増額するなど本制度の充実を図ってきたところでございます。 委員御指摘のとおり、規制緩和の進む社会では司法の役割はますます増大するものと考えられ、法律扶助制度は司法制度の重要な基盤をなすものでありますので、今後とも本制度の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。 また、法務省は、法律扶助制度の充実発展を図るため、最高裁、日弁連、法律扶助協会、学識経験者の参加を得て、我が国の司法制度に適合した法律扶助制度のあり方について調査研究することを目的とします法律扶助制度研究会を発足させまして、本年三月二十二日にその最終報告が取りまとめられたところでございます。 今後、法務省としましては、この研究成果をできる限り尊重しつつ、関係機関とも協議しながら本制度の充実発展に努めてまいりたい、そのように考えているところでございます。
○千葉景子君 終わります。
○大森礼子君 公明の大森礼子です。 まず最初に、海難審判の方について質問させていただきます。 先ほど海難審判業務について御説明いただいたわけですけれども、「海難審判の目的は、海難の原因を審判によって明らかにし、その発生の防止に寄与することにあります。」とございます。海難の原因を明らかにするのみでなく、それを将来の海難の発生防止策へとつなげていく仕組みなのだというふうに思います。 昨年七月、東京湾で座礁して原油約千五百キロリットルが流出しましたダイヤモンドグレース号事故についての海難審判の裁決が昨年十二月二十五日に出されましたけれども、この裁決によりますと、事故の原因として水先人のミスが認定されました。同時に、東京湾を往来する船舶の過密さが事故の背景にあるとも指摘しているわけであります。 この裁決の中では、再発防止のために国に求めている要求事項というのがございます。これは新聞記事で見ましたので、実際もっと詳しいものだと思うのですけれども、例えば航路標識の整備とか中ノ瀬のしゅんせつそれから水先人の技術向上、中身的には水先人訓練で、中ノ瀬付近の状況を再現できる操船シミュレーターの導入とか、こういうことも指摘されているようです。 それから、東京湾の中長期的な交通緩和策とか、こういうことが指摘されたり要求されているわけですけれども、この裁決で指摘されたことにつきまして国は、これは運輸省になると思うんですけれども、どのように対応していくつもりなのでしょうか。この海難審判の結果、どのような仕組みで発生防止策とい保つのが実現されているのか。この仕組みを大体説明していただいて、このダイヤモンドグレ−ス号事件の審判に対してどう対応していくのか、具体的なスケジュールといいますか、これを教えていただきたいと思います。
○説明員(鈴木孝君) お答え申し上げます。 まず、先生の御指摘になりましたダイヤモンドグレース号事件の裁決の内容について、ここで簡単に御説明申し上げます。 ダイヤモンドグレース号は、ペルシャ湾と本邦の間の原油輸送に従事しますタンカーでありまして、アラブ首長国連邦から川崎港京浜川崎バースに向けて航行中に、平成九年七月二日午前十時四分、東京湾内の中ノ瀬に乗り上げました。乗り上げの結果は、原油約千五百キロリットルを流出いたしました。 本件の審判は、本船の船長と水先人を関係者としまして横浜地方海難審判庁で七回の審判を経て、平成九年十二月二十五日裁決を言い渡したものであります。 裁決、では、先生御指摘のとおり、本件の原因を、本船が東京湾の中ノ瀬西側海域を北上する際、針路の選定が不適切で浅所に近寄る針路で進行したことによって発生した、こう判断いたしました。したがいまして、水先人に過失ありということを認めまして業務停止一カ月の懲戒処分を行ったところであります。 先生御指摘のとおり、航行環境整備のための施策等について要望いたしました。 その要望した事項につきましては、若干要点だけ申し上げますと、中ノ瀬の乗り上げ地点付近に北航船と南航船の流れを整えるための灯浮標を設置したらいかがかというふうな点、船長と水先人相互の意思疎通の強化を図ったらどうか、あるいは東京湾の海事関係者、これは漁業関係者とか水先人組合、そういうことです、相互理解のための協議の場の設置を求める、あるいは外国船等に通信手段、VHFの装備を励行すべきであるというようなことを要望事項として申し述べであります。 その要望事項が現在どういう形でどうなっているかというフォローアップの問題でございますが、当庁としましては、海運界等においで海難防止のために当庁の裁決の要望事項というものは参考にされているものと思料しております。 なお、要望事項がどの程度施策に反映されているかということにつきましては、海難審判法及びその関係法令には要望事項を受けていかなる措置がとられたかについて調べる規定はございません。したがいまして、具体的な措置状況については当庁としては承知していないところでございます。 以上であります。
○大森礼子君 今よくわからなかったんですが、審判で出た国に対する要望事項、これは運輸省が管轄になると思うんですが、どういうふうに対応していくか、ルールみたいなものはないのでしょうか。
○説明員(鈴木孝君) ただいま最後に述べましたとおり、我々は海難審判法に基づいて裁決を出しております。その海難審判法には要望事項を述べるとか、あるいは要望事項に対してどういう施策がとられたかをフォローアップしろというような規定がございません。 したがいまして、我々は主たる原因、直接の原因とその関係者に過失があるかどうかということはそのまま直接述べるわけでございますが、こういうダイヤモンドグレースみたいな社会的な影響の大きい事件につきましては、それのみにとどまらず、海難審判庁として学識経験者の意見等を聞きまして、こうしたことが望まれるということで、つまりそれが海難の再発防止に役立つという観点から海難審判庁の意見を述べたことでございます。 したがいまして、それがどう関係各方面に取り上げられて、どういうような経過でどのような進捗状況になっているかということについては、当方はうかがい知らないところでございます。
○大森礼子君 海難審判庁としてはということでございますね。 そうすると、運輸省の方は、今言ったように、海難審判の方としては要望事項として述べるだけである。ただ、これは国の機関で海難審判制度というのがありまして、業務の内容が海難の発生防止に寄与するわけですから、その審判を受けてどのように寄与するのか、その仕組みを教えていただきたい。 それから、具体的にこのダイヤモンドグレース号事故に対する審判の中の要望事項を受けてどのように対応していかれるのかをお尋ねいたします。
○政府委員(江口一雄君) 海難審判の結論に基づきまして、海上交通局が中心になりまして、その中にいろいろな部門がございます。その中でしっかりと海難防止ということで検討していっている最中でございます。
○大森礼子君 そうですか。通告の方も具体的なスケジュールとしたのですが、確かに去年の十二月二十五日ですからまだ四カ月、本当に迅速な対応をすれば何かそういう対応策が出ていてもいいのかもしれませんけれども、今まだ具体的には検討しておられないということでございましょうか。
○政府委員(江口一雄君) 具体的に検討を現在進めている最中、例えば航路標識とかいろいろかかわり合います問題点が数多くございますので、それらについてこれからどう整備をして、こういう事故が起きないようにしていくかということが現在の課題ということで進行中ということでございます。
○大森礼子君 わかりました。それではまた時を改めまして同じような質問をしたいと思います。 それから、こういう対応をするについては予算措置とか必要になると思うんですけれども、これは多分来年度予算の方に反映されるのかなと思いますので、そのときにまたお尋ねしたいというふうに思います。 海難審判関係についての質問は以上でございます。 次に、法務省、法務大臣の方にお尋ねいたします。 まず最初に、少年法の改正問題についてお尋ねしたいんですけれども、四月二日付の新聞報道によりますと、これは法務省はというふうになっていますが、少年法の規定の見直し作業に入ることを決定したが、これは改正を前提としたものではない、こういう記事が出ておりました。少年法の規定の見直し作業をするが改正を前提としたものではないと。何か白紙の状態で臨むとか、そういうふうな言い方をされてあったと思います。 これは言葉の問題かもしれませんけれども、それまでの法務大臣の御発言と何かちょっと方向性が違うのかなという気がしたので確認させていただきたいんです。 法務大臣も少年法の改正の必要性を何回か発言されております。例えば二月二十四日、衆議院の予算委員会でもこの点について質問を受けて、現状のままでいいとは決して思っていないと。それから二月二十六日の衆議院予算委員会でも、今の少年法というものが現下の厳しい情勢に対応できるかどうかを痛感している、こういう御発言がございました。 それから、三月三日の閣議後の記者会見で、刑事罰を科すことができる少年の年齢の下限を現在の十六歳から引き下げる方向での法改正の検討を事務当局に指示したと、このことを明らかにされた上で、可能な限り速やかに法改正したいと発言したとの記事に接しております。それから三月四日、私は番組そのものは見ていなかったんですけれども、テレビの対談番組の中でも、時代の変化に対応できるよう改正の議論を進めていきたい、こういう御発言があったというふうに理解しております。 議事録の方は確認しておりますけれども、新聞記事、テレビでの御発言についてはまだ訂正があればそれをお伺いしなくてはいけません。もしこのとおりであったとするならば、法改正への大臣の前向きな発言と、それから四月二日付の報道の、法務省の改正を前提としない見直し作業ということが何か多少違うのかなという気がするわけです。 そこで、法務省、法務大臣、それぞれのお考えをお尋ねしたいと思います。少年法の改正問題についてです。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 報道でいろいろなされていることは私も承知いたしております。それから、国会で御答弁したのは議事録がございますので、それはもう精査していただければそのとおりでございますから、間違いございません。 そこで、お尋ねでございますのでまとめて申し上げますと、かねがね申し上げているとおり現行少年法は昭和二十二年に制定されて今日まで来ているということです。そして、二十年前に少年の年齢の問題についてどうだろうかということで法制審で議論がされまして、結局、結論を得ませんでした。中間答申という形で出ているわけでございますが、それ以来、その年齢問題に触れることはタブー視されて今日まで来ていたわけでございます。 そういうような過程の中で、平成五年に山形県のマット事件等々が起きまして、いろいろ裁判が分かれたような結論になっているということ等もあり、加えて最近また少年の凶悪な事件というのが多発しているというふうな情勢になりました。 そういうふうな背景で、平成八年十一月に、法曹三者が少年問題について議論しようという場が設けられたわけでございます。大体月一遍ぐらいのペースでやってまいりました。そして、一応その議論が積み重ねられたのを背景といたしまして、少年法改正を視野に置いて議論が始まったわけでございます。現在も続いているわけでございます。 しかし、その少年法改正の議論というのは、審判手続においてそれが適切かどうかという議論でございます。 それを具体的に申し上げますと、今家庭裁判所で裁判官がお一人で審判なさっている。一般的な簡単な事件ならともかくとして、難しい事件を一人の裁判官で審判なさるのがいいかどうかという議論が法曹二者の中で出ております。 それからもう一つは、現行法では審判に検察官の立ち会いができません。少年、それから少年の付添人みたいな形で弁護士あるいは家族という方々は立ち会いできるわけですけれども、肝心な事件を送った検察官の立ち会いというのができません。一般的な簡単な事件ならともかくとして、難しい事件について立ち会いができないのがいいのかどうかという議論がございます。これが二点目です。 そして三点目は、非常に凶悪な難しい事件等々になりますと、普通の一般事件では何年もかかってやるんですけれども、四週間以内に結論を出さなくてはならないという今の規定、これがいいのかどうか。 それから、一応審判の決定が出ますと、審判に不服ならば子供の方は抗告ができるわけでございますけれども、審判にもともと検察官が立ち会っておりませんので検察官側は抗告ができません。そういうふうな点がいいのかどうか等々、審判手続について何とかひとつ議論をして少年法の改正の方向に進もうじゃないか、これが一つの流れでございます。 これも非常に真摯に熱心に議論を続けておりますので、そう遠くないうちにある程度の結論は出るんじゃなかろうか、こういうふうに思います。これが少年法改正についての一つの議論です。 それからもう一つは、年齢の問題でございます。 そこで私の答弁がいろいろ取りざたされておりますが、いろいろ質問がございます。質問の過程で、十四歳未満の人は罪にならずという刑法の規定がございますという説明はいたしております。それから、十三歳でも殺人とかなんとかというような事件等々がございまして聞かれたものですから、現在の刑法の規定は十四歳未満は罪とならない。 それで、十四歳、十五歳の人でも殺人事件を起こした事案が最近ございます。それについても聞かれております。それについては、今の少年法の規定では刑事処分をすることはできません、少年院送りなりなんなりの処分しかできないわけでございます。ですから、現在の少年法の建前はこうなっておりますというふうな御説明は丹念に申し上げております。 私は、だから十四歳以下に刑法を改正しようとかなんとかと言ったことは一言もございません。現在の法制の建前を御説明申し上げております。 そういうふうな中で、果たして少年法の年齢が現行法のままでいいのかどうか。これは法曹三者のみならず、教育関係者ですとか、児童福祉に関係のある方ですとか、あるいは警察の関係者ですとか、広く議論をしていただいて、その中で現行の少年法の年齢がいいのかどうかを議論して、結論を出していただきたいということを終始申し上げているわけでございます。 そういうような中で、それは年齢を下げればいいとか、あるいはもっと上げればいいとか、いろいろな議論が出るかもしれませんが、その辺の結論はやはりこれは重大な問題でございますので、私は先入観を持って申し上げているわけでもございません。そういうような形で御議論いただきたい。 ですから、少年法改正の問題は二つございまして、一つは手続の問題、これはどんどん進んでおります。それから、後者につきましてもいろいろ議論する場を、まず法務省の中でも関係部局がたくさんございますので、膨大な資料をもとにして今検討を始めているわけです。それが終わりましたら、今申し上げましたようなところにまた場を広げて議論していただく。私は最終的には法制審にかけて結論を出してもらわぬといかぬ、このように思っております。
○政府委員(原田明夫君) 最近のさまざまな機会における法務大臣の御発言と事務当局の受け取り方は全くそういう点でそごをいたしておりませんので、私からつけ加えることはないのでございますけれども、委員御指摘の四月二日の記事におきましても、法務大臣は年齢の規定が妥当かどうか事務当局に指示したというふうに書かれてございまして、私どもも全くそのように受けとめております。 もちろん、少年法の基本的な枠については過去さまざまな議論があったということは事実でございます。その中で、今の法制の建前が問題に十分対処していけるのかどうか、私どもの立場でも十分にこれから検討していかなきゃならないというふうに考えておりまして、その日程と申しますか今後の進め方については、今後、大臣の御指示をいただきながら、また関係方面とも十分打ち合わせをさせていただきながら進めてまいりたいと考えております。
○大森礼子君 わかりました、事実認定の部分と年齢の部分につきましてはちょっと性質が違うのかなと思います。非行と少年法改正と一緒にされるものですから、何かそごが生じるようにこちらとしては伝わってきたということは理解できました。 それから、凶悪な少年犯罪が起きたということで、同時に少年犯罪に対するマスコミの報道のあり方も大変な問題になりました。大臣が二月二十七日の衆議院予算委員会で御答弁されているわけですが、マスコミが報道される側の人権に配慮して自主規制の取り組みをしていくことが基本的に一番望ましいと述べられた上で、行き過ぎた報道による人権侵害の場合には勧告もしている、こう答弁されております。続きまして、しかし勧告だけでいいのかどうか、法的措置も必要ではないかとも思って検討していく、こういうような御発言があったと思います。それで、勧告につきましては既に少年の顔写真云々のときに出されたと聞いております。 ここで法的措置という言葉が出てくるのですが、こごで大臣がおっしゃった法的措置というのは具体的にいいますとどういうことになるでしょうか。こういう人権侵害が繰り返された場合にどういう法的措置が考えられるのか、この点をお尋ねいたします。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘のように、二月二十七日の衆議院の予算委員会で、行き過ぎた報道に対して勧告のみならず云々というふうに申し上げました。勧告それ自身も法的根拠はございません。 したがいまして、そういうふうなことでいいのかどうかというふうなことで、昨年三月に法務省に設置されました人権擁護推進審議会において審議されることになっているわけでございます。この審議会に対しましては二つ諮問いたしまして、一つは人権教育、啓発に関する施策の基本的事項ということでございまして、現在それを御検討いただいているわけでございます。諮問の第二号といたしまして、人権侵害による被害者の救済に関する施策の基本的事項ということをお願いいたしております。 最近のいろいろな事案にかんがみまして、人権侵害による被害者の救済に関する施策の基本的事項の検討も急いでもらおうというふうな考え方から、実は人権救済制度検討準備委員会というふうなものを既に設置していただきました。そこで、今申し上げましたような法的措置というものをやるとすればどういうふうな内容か等々も含めて検討していただこうというふうなことに相なっております。
○大森礼子君 少年犯罪に関するマスコミ報道のみならず、近時、マスコミによる人権侵害ということが非常に問題になっております。今、大臣言われました準備委員会の中でもこういうことも検討していただければと思います。 時間の関係で質問が細切れになって申しわけないんですけれども、裁判所の方にお尋ねいたします。 よく新聞あるいは週刊誌等、報道によりまして名誉が侵害されたとして民事裁判が起こる。そこで、損害賠償額というのが決まるわけなんですけれども、ずっと見ておりまして、どうも日本の場合、報道等による人権侵害、名誉毀損事案につきましては、賠償額が大体百万円前後が相場というふうになっているようであります。それから、名誉毀損ということで勝ちましても大体請求額の一割以下というケースが六割近くも占めている。これは一九九四年のジュリストの統計によるわけですけれども、こういう実態を見ますと、どうも日本というのは、今、心の教育云々と言われでおりますけれども、やっぱり心といいますか精神的な価値というものを軽視する傾向があるのではないか、それがこういう賠償額の算定にもあらわれているのではないかと常々思っております。 マスコミの場合に、マスコミと言っていいのか、週刊誌などの場合には、要するに人の好奇心に訴えて売れればもうかるわけでありまして、名誉毀損で訴えられても百万円そこそこ払えば必要経費としては安いものということになりまして、いつまでたってもこういう人権侵害というのはなくならないのではないかなという気がするわけです。 そこで、大体百万円とか、もっと低い額もあるわけですけれども、裁判所はどういうふうな感覚でこういう判決を下されるのか。現実に裁判しようと思えば弁護士さんの費用もかかるわけでありまして、先日も週刊新潮の記事に対して最高裁まで行って被害者側が勝訴した。これも三年半ぐらいかかったそうですけれども、百十万円認められたということがありました。赤字を覚悟で訴えをしなくではいけないというのは余りにむごい話ではないかなと思うわけです。この名誉毀損に対する損害賠償額につきまして、人権擁護という点、権利侵害という点から、裁判所の方は果たしてこういうことでいいと思っておられるのか。 それからもう一つよくわからないのは、確かに額をどうするかは裁判官の自由心証なんでしょうけれども、何か基準とか相場とかそういうものがあるのかどうか、この点についてお答えできる範囲でお答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 今、委員の御指摘の中にもございましたが、この慰謝料の額の算定につきましては、よく判例で言われておりますのは、事実審の口頭弁論終結時までに生じた諸般の事情をしんしゃくして裁判所が裁量によって算定する、こうなっております。個々の事件につきまして裁判官がまさにその事案に応じた判断をしているというのが実態でございまして、特に基準があるというわけではないというふうに理解をしております。今御指摘の慰謝料の額につきましていろいろ御論議があることは承知しております。 ただ、最近、先ほどのお話の中でありました百万前後というものばかりではなくて、例えば五百万とか、場合によっては六百万とか、そういう金額の判決も見られるようになっております。 なお、この金額がいいかどうかということにつきましては、私ども事務当局の立場としてはコメントは差し控えさせていただきたいということでございます。
○大森礼子君 もう時間が来ましたので終わりますが、申し上げたいことは、要するに認容額が少ない、それで裁判をずっと維持していくにはお金も時間もかかる、そういうことを考えますと、例えばそういう報道で何か人権侵害されましても泣き寝入りをする結果になるんじゃないかと思います。 そういうふうな裁判のあり方でしたら、結果だけ見ましたら、何でも書いて売れてもうけた方が得なんだという商業主義に支配されている週刊誌等に結局裁判所が間接的に荷担していくことになるのではないかなというふうに思います。 この名誉毀損に対する損害賠償額については改めてまた別の機会にお尋ねしたいと思います。 きょうの質問は以上です。
○委員長(武田節子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。 午後零時十分休憩 —————・————— 午後一時三分開会
○委員長(武田節子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き、平成十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管、法務省所管及び運輸省所管のうちの海難審判庁を議題とし、質疑を行います。 質疑のある方は順次御発言願います。
○照屋寛徳君 社会民主党・護憲連合の照屋寛徳でございます。質問を行いたいと思います。 まず私は、けさになっての通告で大変申しわけないと思っておりますが、甲山事件をめぐる控訴のあり方について一点だけ質問させていただきたいと思います。 甲山事件は、事件が発生してから二十四年、起訴されてからも既に二十年以上が経過をいたしております。知的障害児施設で園児が水死体で発見をされた、こういう事件でございますが、昨日、神戸地方検察庁は差し戻し審の神戸地方裁判所の無罪判決を不服として控訴をしたというニュースが伝わってまいりました。私にとっては大変衝撃的なニュースでございます。 もとより、個別の事件の量刑や個別の事件の控訴のあり方について云々するつもりはありませんけれども、この甲山事件については多くの国民が裁判のあり方をめぐってさまざまな議論が行われております。新聞の社説でも取り上げられましたし、また法律学者の間でもかなり論争になっておるようでございます。 検察側は一審と今回の差し戻し審の二度にわたって裁判官を説得することができなかった、すなわち無罪になったということでありますから、その上での昨日の控訴は、疑わしきは被告人の利益にという刑事訴訟の大原則に一体かなっておるのだろうかという批判がございます。 また、先ほど申し上げましたように、事件発生から二十四年以上が経過をしている、起訴後も二十年以上が経過をし、たしか求刑が懲役十三年でしたでしょうか、そういうことなどに照らして、この甲山事件というのは余りにも突出をした異常な裁判だというふうに言えるのではないか。憲法が保障する迅速な裁判を受ける権利、この理念にも反しておるのではないかと私は思うのであります。 社会民主党は、無罪判決が出た段階で控訴を断念すべきである、こういう党の声明を発したところでありますが、これ以上長期の裁判が続けられることは国民感情、市民感覚からも離れておるのではないか。結果的には裁判に対する国民の信頼を損ねることになるのではないかというふうに思っておりますが、大臣の所感をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) お尋ねの事件につきましては、議員が今御指摘のとおりに起訴からもう二十年もたっておるということでございますし、裁判というものはできるだけ速やかに結審すべきだというふうに私も思います。 そこで、具体的な事件の内容について大臣として所感を申し述べることはいかがかと思いますけれども、本件は御指摘のとおりに昭和四十九年の事件でございまして、起訴されましたのが昭和五十三年三月九日ということになっております。そして、一審の判決が六十年、それから平成二年に大阪高等裁判所において破棄・差し戻し判決がなされておるわけでございます。 それから、平成四年四月七日に最高裁判所において被告人の上告棄却が決定されておるという経緯がございまして、神戸地裁で審理が繰り返されたということでございまして、差し戻し審におきましては一審と同じような無罪の判決をしたという経緯になっておるわけでございます。 そこで、一般論として考えてみますと、控訴審において破棄、差し戻ししているわけでございますので、上級審の判断というふうなものがどの程度下級審に及ぼすのかどうかという議論の問題もありましょうし、それから片や事実認定の問題でどうだったかというふうな議論等々もあるやに聞いております。 ですから、私は、委員が今御指摘のとおりに、こういうふうに長く裁判が続くということは国民感情から見ましてもいかがなものかなというふうな感じがしないでもございません。 しかし、片や真実を追求していく、実際どうなのかというふうなことについて、やはりそういうふうな立場から見て、検察がいろいろ検討をしてみてなおかつ差し戻し審の判決についてこれはとてもおかしい、承服できないというふうなことで控訴したことだと思いますし、その辺のところは私の立場としてはやはりやむを得なかったんじゃないかなというふうな感じがいたします。 こんなに審理が長くなりますことは大変遺憾なことでございますので、今から始まる審理も速やかに進むように関係者に協力していただいて、検察としてももちろんそのような姿勢で進むことだと思いますが、そういうふうなことでやってまいるんじゃなかろうか、このように思います。
○照屋寛徳君 大臣がおっしゃる真実の発見、この重要性については私自身もよく承知をしているつもりでありますし、それを軽んじるようなことがあってはならないと考えております。 一方で、やっぱりこの二十年以上、そしてこれからもまた続くであろう裁判が長期化をいたしますと、いろんな証拠の評価の面でもますます真実発見が難しくなるということもあるわけであります。そのことを私は強く指摘しておきたい。とにかく、迅速な裁判を受ける権利という立場からすると、なかなか市民、国民の理解が得られないのではないか、こういうふうな感じを私は持っております。 さて、次に刑事被疑者国選弁護人制度についてお伺いをいたします。 被疑者段階の国選弁護人制度の問題でありますが、御承知のように我が国には逮捕・勾留された被疑者に国選弁護人を付する制度はございません。被告人段階で国選弁護人が選任されるケースがあるわけでありますが、いただいた資料によりますと、被告人段階ですが、弁護士が選任された人員は簡裁、地裁、高裁とも私選弁護人の選任が減って、逆に国選弁護人がふえているということが統計で明らかであります。平成八年度ですと、弁護人の選任率は九六・七五%、うち私選弁護人が二七・九一%、国選弁護人が七〇・〇九%であります。 公訴提起後、被告人段階での国選弁護人の選任率が私選弁護人の選任率をはるかに上回っているということなどに照らしても、私は、やはりこの被疑者段階の国選弁護人の必要性というのは極めて高いのではないか。また、それは憲法三十四条や三十七条の弁護人選任権を保障するという立場からもぜひ制度化されるべきだというふうに考えるものであります。 日本弁護士連合会が昨年十月に被疑者国選弁護人制度試案を策定いたしました。日弁連の案によりますと、身体拘束されたすべての被疑者を対象に平成十二年からの段階的な実施を目指しておるようでございます。 そこでお伺いをいたしますが、この刑事被疑者国選弁護人制度についてどのようなお考えを持っておられるのでしょうか、お伺いいたします。
○政府委員(原田明夫君) まず、技術的な点に関しまして、現在の検討状況につきましてお答えさせていただきたいと思います。 法務省といたしましても、日弁連の御提案する趣旨という点につきましては真剣に受けとめているわけでございます。ただ、さまざまな角度から研究をしなきゃならないということで、その実際的な導入につきましては、捜査手続への影響など刑事司法手続全体の構造との関係でございますとか、国民の理解、これは当然財政的な負担もあるわけでございますから、そういう観点から十分御納得いただけるような制度にしていけるだろうかというような問題、また、現在の弁護士の執務状況と申しますか全国的な展開という観点から、果たして十分にそのような制度にたえ得るだろうかというような点も含めまして、さまざまな角度からなお検討が必要であろうというふうに考えているわけでございます。 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、刑事訴訟の基本的な理念でございます真実発見にはる正義の実現と被疑者を含めました関係者の人権の尊重という大きなバランスの中で、国民の皆様方の期待にこたえていかなきゃならないという観点から検討すべき問題であるというふうに考えている次第でございます。
○照屋寛徳君 刑事局長、この被疑者段階の弁護人を付す制度、いわば公費による被疑者への公的弁護の保障でありますが、欧米諸国ではそれを採用している国もかなりあるやに聞いておりますが、その実態をもし御承知であれば現況をお教えいただきたいと思います。
○政府委員(原田明夫君) 諸外国の事情をすべて把握しているわけではございませんが、例えばアメリカでは、公判前も含めまして手続の重要局面とされる場合においては国公選による弁護士をつける制度を持っているというふうに理解しております。また、イギリスは、これはむしろ公判前も含めまして広い意味の法律扶助の中で経済的な余裕のない方には弁護士をつける制度があるやに承知しております。 そういうわけで、ヨーロッパ諸国におきましても、法律扶助め中で処理されている部分と、また国選的な弁護人が付されているという場合もあるようでございます。ただ、それらにつきましてはそれぞれの国の刑事司法全体のトータルな仕組みの中でそのような制度がなされているというふうに理解しておりますので、そこらあたりをどうとらえていくかということが課題であるというふうに考えております。
○照屋寛徳君 もっと議論をしたいのでありますが、通告している質問がございますので先に進みます。 私は当委員会で前にも質問をさせていただきましたが、人権のとりでとしての裁判所、社会的な弱者である障害者に開かれた庁舎の整備は一体どうなっているんだろうか。例えば車いす用のスロープあるいは二階以上の庁舎のエレベーターの設置、あるいはまた傍聴権を十分に確保するための手話通訳の配置などについてお伺いをいたします。
○最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) 身体障害者の方の裁判所利用の便のために私ども施設面でいろいろ配慮しておるわけでございますが、まずエレベーターの点でございますが、三階建て以上の庁舎は全国で百六十三庁ございますが、そのうちの約七五%に当たります百二十二庁につきましてはエレベーターを整備してまいっておるわけでございまして、平成十年度予算におきましても、三庁についてさらに増設をお願いしておるところでございます。 また、二階建ての庁舎につきましては、エレベーターで対応するというよりは、基本的に法廷等の配置を一階に移しまして、それで利用していただきやすいようにしたいというふうに考えておるわけでございます。二階建ての庁舎は全国で二百九十ございますが、これらはいずれも小規模の支部もしくは簡裁でございまして、先ほど申し上げましたようにその多くは一階に法廷等がございます。なお百庁程度が二階に法廷等があるという状況になっておりまして、これらにつきましては庁舎改修時等に室の配置等を見直すなどして利用の便を図っていきたいというように考えております。 それから、スロープの点でございますけれども、これはもう全国四百六十の庁舎のうちあと数片残すのみで、すべてスロープが設置されておるという状況になっております。 以上でございます。
○照屋寛徳君 法務省にお伺いをいたします。 先日、沖縄で地元の新聞を見ておりますと、八重山刑務支所で塀のない刑務所をつくったと、こういうニュースが大きく報道されておりました。かつて「塀の中の懲りない面々」という本もあったように記憶しておりますし、また最近はどうも悪い人が塀の上をうまく泳いでというか歩いて中におっこちない人もおるようでありますが、塀のない刑務所というのは私は非常に画期的じゃないかと。 そこで、今後の建築予定あるいはまた八重山での地元の反応などについてお教えをいただきたい。 また、委員長、全国的に画期的なことのようでございますから、塀のない刑務所の視察を委員会でぜひ取り組んでいただきたいということを御要望したいと思います。
○政府委員(坂井一郎君) 大変お褒めいただきましてありがとうございます。 先生御指摘の新聞は恐らく三月二十九日の沖縄タイムスであろうかと思いますけれども、ここにございますとおり、この刑務所につきましては、塀がない上に庁舎の真ん中に吹き抜けをつくりまして、それから高窓は暑いということでブラインド式にいたしまして風通しをよくして、さらには赤がわらで周辺の建物との調和を図ったということで、矯正としては画期的な建物だと考えております。 ただ、若干申し上げたいのでございますけれども、この八重山刑務支所は、名前は確かに刑務支所でございますけれども、主としていわゆる拘置、まだ裁判確定前の人を入れる施設として実際上は使っております。 塀のない刑務所というふうなことを申されましたけれども、刑務所はどうしても工場を建てる必要がございまして、こういうふうに建物だけで塀のかわりをするということがなかなか難しゅうございます。したがいまして、刑務所の場合はどうしても外堀を設けざるを得ないという実情にございます。 八重山刑務支所の場合は拘置所として使っております関係から、拘置所は矯正局におきましても従来から塀のない拘置所の建築を推進しておりまして、有名なところでは名古屋の拘置所もやはり塀のない拘置所でございますし、拘置支所につきましては、四十八カ所は塀のない拘置支所として既に建設しております。東京拘置所も現在改築中でございますけれども、これも塀のない拘置所として建設する予定でございますし、また今後予定していのは、岐阜の拘置支所もやはり塀のない拘置支所として建築する予定にしております。ということで、八重山の場合は刑務支所という名前になっておりますけれども、主として拘置支所として使われる場合が多いものですからこういう形ができましたけれども、すべての刑務所、いわゆる工場を持つ刑務所について果たして塀のない刑務所が可能かどうかということになりますと若干問題があろうかと思いますので、その点だけ御理解を賜りたいと思います。
○照屋寛徳君 終わります。
○橋本敦君 御多忙中、警察庁、お越しいただきましてありがとうございます。 最初にお伺いしたいんですが、私がこれは一体どういうことかということで注目したのが、日朝国交正常化の糸口としてよど号事件の問題が去る自民党訪朝団との関係で出てきたわけです。この問題についてよど号事件の容疑者たちは代表団に対して、帰国したいが帰国しても無罪であることを要求する、こういうことを言っているということが報道されたわけです。よど号事件ということについて、警察庁としてはこれらの容疑者たちが帰ってきた場合に一体法的にはどういう対処をするのか、まずその点をはっきりしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
○政府委員(伊達興治君) 昭和四十五年三月に発生しましたよど号ハイジャック事件の犯人グループについてでありますけれども、この人たちに対しましては、強盗致傷、国外移送略取、監禁等の容疑で逮捕状を取得し、ICPOを通じ国際手配を行っているところでございます。同人らが帰国した場合ということでありますが、そのときは法に基づき厳正に措置すべきものと考えております。この点につき、いささかのそごもないようにというふうに考えております。
○橋本敦君 私どももハイジャックとかテロとか法秩序をじゅうりんする行為は一切許すわけにいかないと思っていますので、今のお話のとおり政府として対処するということは間違いないと確信をいたします。 この問題について言うなら、ここでもたびたび議論になりましたけれども、日本の主権を侵し、日本国民の生命と安全を害した、いわゆる警察庁も全力を挙げて捜査をする、こう言って約束しております拉致事件の解明、これこそまさに国民が期待するものである、こう思うのでありますが、この拉致事件の徹底的な解明ということについて法務大臣もいささかもお考えがお変わりはないと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) これは厳正に処理すべきものだと、このように思います。
○橋本敦君 それでは、この問題は終わりますので、警察庁、ありがとうございました。 次の問題に移らせていただきます。 先ほども話があったのでありますが、甲山事件の控訴問題について、今回の検察庁の控訴はいわば国民及び世論から厳しい批判を受けているのは偽りのない事実だと思います。法務大臣からいろいろお話がございました。しかし、結論的に言いましても、迅速な裁判を受ける権利があるという憲法の建前やあるいは被告人の人権、そういった問題から考えて、余りにも長過ぎるということ自体はもうぬぐえない事実ではないかと思うんです。あるテレビのニュースキャスターは、こんなに裁判が長いと裁判自体に時効があってもいいのではないか、被告人、被疑者の権利のためにと、こういう意見も出たぐらいであります。 余りにも長い事件だということについては、法務大臣もその点は御心配になっていらっしゃると思うんですが、いかがですか。
○国務大臣(下稲葉耕吉君) 御指摘のとおりに本当に長過ぎると思います。さはさりながら、やはり真実追求のためにいろいろな角度から多角的に検討して検察はああいうふうな結論を出したものだと、私は検察を信頼いたしております。
○橋本敦君 おっしゃることは検察の立場であると思います。 弁護団の古高弁護士は、二度にわたる無罪判決で国民世論が一斉に控訴断念を求めていた中、今回の件は法と正義に対する重大な挑戦だという声明を発表しています。これもそのとおりでしょう。また、一審の無罪判決をし、現在退官されている角谷三千夫さん、一審の裁判長でありますが、この方も実は、あの時点で納得してほしかった、もはや新しい証拠を見出すのは困難な状況だ、刑事訴訟法上は控訴が認められても、事件、公判の経過から見てこれ以上被告の立場に置くのは憲法上も問題だと、こういう厳しい批判をされていることも報道されています。また、新聞論調を見ても、これだけ長い裁判になると、これはまさに判決なき牢獄生活だ、長過ぎる裁判は裁判の拒否に等しい、こういう論調もあります。 そして、それだけではありません。諸外国の例を見ましても、多くの先進諸国では上訴権は被告人の立場に立って制限を受けるという状況で、英米などでは一審無罪の場合、検察官控訴を認めていない。これも大臣も刑事局長もよく御存じのとおりであります。 こういった問題を総合的に考えましても、今度の件については私は検察庁は控訴をしないということを英断すべきであったのではないかという思いが今も去らないのであります。 まさに今の我が国の裁判制度の問題として、今後この問題について、憲法との関係で検察官の上訴権を制限するよう刑事訴訟法の改正もせざるを得ないのではないかという一部学者の意見もあり、諸般の状況に照らして慎重に検討するということが大事であると同時に、この件については速やかに控訴の取り下げを含めて再検討する余地はないのか。そしてまた、そうでないとしても速やかな裁判を行うために全力を挙げる責任が検察官側にあるのではないか。そして同時に、新しい証拠、新しい証人が出てくるわけはないという状況なのですから、その点も踏まえて検察庁としては被告人の人権を守る立場を貫いて、正しい処置をとるように全力を挙げる責任があるのではないか、こう考えているのですが、刑事局長の御見解を伺います。
○政府委員(原田明夫君) 今回の甲山事件における判決とその控訴に関しまして、委員御指摘の点、法務当局といたしましてもまことに深刻に受けとめさせていただいております。 具体的な個別の事案についての検察当局の判断でございますから、法務当局で所見ということは差し控えるのが適切と思いますが、検察当局におきましては本件の起訴後、長期間が経過していることを重く受けとめまして、しかしながら迅速な審理と適正な裁判の実現という二つの大きな要請を両立させることに苦慮いたしながらも、本件につきましては刑事手続の中で非常に特別な経緯をたどっております。 一たん検察官として不起訴にした事件につきまして、遺族等からの申し立てによりまして検察審査会が開かれ、いわば国民の代表の方々が本件については不起訴不相当だという結論を出されました。それを受けて当時の検察官は相当力を込めて捜査をいたしましてそれについて起訴いたしたのでございますが、最初の第一審は無罪の裁判でございました。これに対して控訴いたしまして、高等裁判所の結論はこれについて破棄、差し戻しをしたわけでございます。 そういう経過をたどった上でのことでございまして、今回の判決をこのまま確定させることについては、これまた正義に反し、これについて是正する必要があるという判断に立ったものと承知しているわけでございます。そういう意味で、委員御指摘のとおり、被告人の人権ということを考えますとまことに重大な点でございますが、また被害者の立場、その大きな正義の実現という観点から検察の下した結論というふうに考えますので、私どもといたしましてはそのように承知し、また本件につきましては検察当局といたしましてもできるだけ早く審理が行われるよう努力をするものと考えております。
○橋本敦君 無罪判決が破棄、差し戻しで、そして改めて検察官は全力を挙げて立証に努力をして、その結果無罪判決が出たということですから、謙虚にそれを受けとめるのが筋だという基本的な考え方、被告人の人権を守る立場で検察庁はそこのところを真剣に考えるべきだと、私はこう思います。 これ以上議論をしてもしようがありませんので、この点はこれで終わっておきます。 さて、次の問題は私は人権の問題について質問をしたいと思います。 これは私も前にも質問をしたのでありますが、関西電力のいわゆる思想差別事件の問題でございます。 この問題について最高裁は、関西電力の思想差別を明白に認めた判決を下しました。その点については重ねて言うまでもないのですが、平成七年九月五日、最高裁の第三小法廷の判決であります。人権擁護局長も御存じだと思いますが、この判決は明白にこう言っております。 「原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は、被上告人らにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは認められないにもかかわらず、被上告人らが共産党員又はその同調者であることのみを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外で被上告人らを継続的に監視する態勢を採った上、」「上告人の経営方針に非協力的な者であるなどとその思想を非難して、被上告人らとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、」「職場で孤立させるなどしたというのであり、」「これらの行為は、被上告人らの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、被上告人」「らに対する行為はそのプライバシーを侵害するものであって、同人らの人格的利益を侵害するものというべく、これら一連の行為が上告人の会社としての方針に基づいて行われたというのであるから、それらは、それぞれ上告人の各被上告人らに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。」、明白に最高裁はこう言っています。 これは人権擁護局長、御存じですね。
○政府委員(横山匡輝君) 今、委員御指摘のような最高裁判決があったということについては十分承知しております。
○橋本敦君 まさに憲法違反の思想差別であり、不法行為を会社がやっているという最高裁の断固たる判決が出たわけですね。ところが、会社はそのことを反省しない、いまだにそういった差別を続けているという実態があるわけです。 この問題については、関西電力以外の東京電力あるいは中部電力は原告団との賃金訴訟で和解して是正をして、一定の前向きの方向をとりましたが、関西電力は依然としてその処置をとろうとしていないのであります。 そこで、一体どういう思想差別を関西電力がやっていたのか、私は改めて人権問題としてこの場ではっきりしたいと思うものであります。人権擁護局長に見でいただきたい資料がありますので、委員長、お渡しさせていただいてよろしいですか。(橋本敦君資料を手渡す) まず、行動観察記録、マル秘文書というのを見てください。これは訴訟に提出され、会社は認めました。その中で、観察者、役職名が書かれて、観察者は職制がやるんですが、社内における状況として、職場離脱の有無、職場における意識的抵抗や扇動の有無、それから私用電話の受信状況、こういったことをプライベートまで含めて調査します。 Bの項を見てください。会社の労働者に対する支配の範囲をはるかに超える社外生活について、左翼行動参加の有無、学習会出席の有無、そして居住地における活動状況、寮内における活動状況、国会地方選挙の活動状況、こういうことまで調査の対象にしますと。 「C その他」として、読書の傾向、金銭の使い方、親兄弟の動向や思想度合い、こういったことまで調査をする。こういったことまで調査項目に関西電力は挙げている。これが今の最高裁判決の裁判の中で出された証拠なんです。 こういう調査は労使関係の正しいあり方を超えて、労働基準法三条違反ももちろんですが、まさに人権問題として、労働者に対する私的な関係も含めた思想調査をやるという明白に人権侵害そのものを示す資料だと私は思いますが、どういう感じをお持ちになりますか。
○政府委員(横山匡輝君) 確かに最高裁判決でも、昭和四十一年から四十五年ごろにかけての関西電力の従業員に対する違法な差別という事実を認定しておるところでございます。 今、委員からお示しいただきましたこの観察記録表自体、私といたしましては、これが先ほど来出ています事件の記録の一部を構成する、あるいは証拠として出されたものかどうかは承知しておりませんが、またこの文書自体どういう経緯でどういう目的のもとにつくられたのか私自身承知しておりませんけれども、内容的にはいろいろと問題のありそうな文書と、内容的に項目だけ見るといろいろと問題のある、そういうような文書というふうに見ることができます。
○橋本敦君 いろいろと問題があり過ぎるでしょう。 労使関係が正当な労使対等の関係で、職場における労働条件をめぐる関係でいろいろと考査するのはあり得ますよ。はるかに超えて思想調査を私的な状況にまでやるというのだから、いろいろ問題があるというような、そんな感覚で人権局長務まりますか。明白な人権侵害ですよ、こんなものは。 もう一通の書類を見てください。この書類は最近神戸の震災事件があった後で発見をされ、今賃金訴訟にも提起をされている書類です。これは最高裁判決があった以後の書類です。 これはどういう書類かというと、不当な賃金差別を受けた関君という人が裁判を起こしている、そのことについて職場で上司と語り合ったその記録を上司である三宮営業所技術係長の富平係長が作成した文書で、裁判所に甲第一〇三号証の一二として出されている文書の写してあります。 これによりますと、十月十五日に当事者の関君と係長が話し合いをしている。この話し合いの内容というのは、賃金差別について会社に対して苦情申し立てをして何回か話し合いの場を要求しているけれども、責任者がなかなか会わない、係長、あなたと会いましょうということで会った、その会合の記録を係長がまとめたものであります。 ここで、右側を見ていただきたい。この本人がなかなか昇格をしないんですが、その昇格問題に触れたときに、昨年申請し副技師に昇格している、なるほど他の人に比べて年齢を見ても資格が低いかもしれないが、過去の経緯からそうなっていると思うと係長は言っている。客観的に昇格がおくれていることを認めているんです。過去の経緯とは何か。今お話ししたような調査によって思想差別を受けてきている、そして裁判をやっているというそのことが経緯です。 その証拠に、番外としてどう書いていますか。裁判をやっている以上、関君と会社とは全く立場を異にする。どちらが正論か、我々の立場をなるかに超えておる。これは係長の言うことです。例えば、会社の方針と共産党の方針の対立てあると思う。富平個人がどうこうと判断し、担当業務等を動かせる問題ではない。係長としての自分を超えた会社と労働者との思想上の対立の問題だと、はっきりこう言っているんですよ。 その次にどう書いていますか。会社の方針に従って黙々と仕事をしている人と裁判で争っている人とはおのずと差が出てくる。家庭も同じで、はいはいと言うことを聞く子供はかわいい、反発ばかりする子供は憎たらしい。これと同じではないか。こんなことまで書いているんですよ。 まさに会社は、正当な思想、信条の自由に基づいて自分の主張をする者に対して、言うことを聞かない子供と同じだ、そんな者に平等な立場を与えられるか。平気でこう言っていることが裁判所に記録として出されている。この係長がこの文書を作成したことは裁判所で認めていますよ。まさにこれは人権問題として、人権擁護局としてはこの問題について厳しく適正な処置をとる、それに値する重大な事件じゃありませんか。 平成八年十二月十三日に大阪法務局下村法務局長あてに、関西電力人権侵害・賃金差別をなくす大阪の会から、こういった新しいマル秘賃料が発覚したことに関連をして、最高裁判決は一連の行為が関西電力の会社としての方針に基づいて行われたとしているように、今回発覚したこの新しいマル秘資料もすべでの職場で作成されている公算が非常に高いので、当局の、人権擁護局の速やかな調査の上、こういった人権侵害や賃金差別の是正を求めている従業員の処遇改善に努めてほしいという要望書を出している。この要望書は受け取っていますね。
○政府委員(横山匡輝君) 要望書として受け取っております。
○橋本敦君 この問題について人権擁護局としては積極的に人権侵害事件としてしかるべき調査なり対策なりをとるということを厳しく要求して、終わりたいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(横山匡輝君) まず、最高裁判決で過去の人権侵犯事実が認められている、それはそれとしまして、それは昭和四十一年から四十五年ごろの事実でございまして、委員が今御指摘の事実は現在もまだ続いているということでございますので、これにつきましては、また別個の人権侵犯があるとして被害者側から申告等がなされれば、新たな人権侵犯事件として調査をし、適切な対応をしてまいりたい、そのように考えております。
○橋本敦君 いや、申し立てを出しているじゃないですか。もう一遍見てください。さっき申し立てが出ていると認めたでしょう。
○政府委員(横山匡輝君) 先ほどの文書はあくまでも要望書でございまして、その趣旨も、最高裁判決で認められたということで……
○橋本敦君 違うがな。その後、出ていると書いている。
○政府委員(横山匡輝君) 指導等をすべきであるという要望でございます。具体的にどういう人権侵犯があるのか、そういう具体的な事実を指摘された上で申告があれば適切に対応してまいりたい、そのように考えているところでございます。
○橋本敦君 時間がありません。終わります。
○平野貞夫君 法務大臣が所信表明等で既に述べられていることでございますが、最近の犯罪の傾向といいますか特徴、特にその特徴的なものをどういうふうにとらえられているか、法務省、お聞かせいただきたい。
○政府委員(原田明夫君) これは既に大臣の所信表明でその要点が述べられているところでございますが、やはり殺人、強盗、誘拐等、国民生活の安全を直接に脅かすような凶悪重大事犯が後を絶たないという点、また金融機関等をめぐるさまざまな事犯、あるいは経済や行政の根幹にかかわるさまざまな特色等を含む事犯が摘発されている。また、国際的な密航あっせん組織を背景とした集団密航事犯が頻発するというような状況でございまして、従来の常識では考えられないような事犯もその中にはあるということで、その背景等を考えますと、今後の犯罪情勢についてはまさに予断を許さない状況というふうに考えております。
○平野貞夫君 犯罪の種類も非常に多くなっていますし、同時に犯罪の質も非常に凶悪化し、大変日本の社会が荒れているといいますか荒廃している、そういうことに対する御認識を十分持たれていると思いますが、私は、特に自分自身の仕事とかかわりのある経済、行政、政治の根幹にかかわる犯罪、この問題を若干取り上げてみたいと思います。 総会屋の行為から端を発したさまざまな問題、金融機関を中心とするさまざまな問題が一昨年あたりから出てきているわけです。こういう問題の背景といいますか背後関係、これがやはり日本の社会の暗部といいますか、そこら辺、日本における法と秩序というものはちょっと西洋の社会と違う特殊な部分があると思うんですが、そういったことに対して、法と秩序をつかさどる法務省としてはどういう認識を持ってそれに対応しておるでしょうか。
○政府委員(原田明夫君) 委員の御指摘のさまざまな事象は、確かに現在我が国が抱えている犯罪をめぐる事犯の中で重要な点であろうと考えております。 その中で一つ私どもで注目しておりますのは、その背後に組織的な動きがあるという点が一点。また、その組織を背景とした暴力の形といいますか、一見何でもない事件のように見えて、その背景に社会の不安の根源に触れるような暴力の影があるということです。 これはもう何度も取り上げられたことでございますが、例えば大企業のトップが射殺あるいは刺殺されるという中で、その事犯の全容が解明されないまま今日に至っているという事件が散見されます。このことは、委員がまさに御指摘の総会屋等をめぐるさまざまな事件の中でも一つの底流となって、いわば経済界のリーダー、また社会の重要な役割を果たしている方々に本音を聞けば、やはりそこに身辺の危険というものを感じざるを得ないということをさまざまな形でお聞きすることがあり、しかも、それがまさに組織的な影響力のもとで行われている兆しがあるということは重大なことであると考えております。
○平野貞夫君 非常に大事なところを今刑事局長は御指摘されたわけでございます。デモクラシーの社会というのはそういう社会の暗部がないことが一番いいわけでございますが、その社会の暗部をどういうふうに封じていくかということが私は法と秩序の根っこじゃないかと思います。 私のことを申し上げて大変恐縮でございますが、私は四月一日に参議院の予算委員会で質問をしました。これはNHKのテレビ中継で二十五分ぐらいの質疑でございましたが、実は四月四日に、四というのが二つ並ぶわけでございますが、ファクスが私のところに参りました。これは一見嫌がらせに見えますが、内容は脅迫でございます。 山縣周南という、荻生徂徠の弟子だそうですが、その漢詩を送られたわけでございます。それは「子和の参州に之くを送る」という題の詩なんですが、子和というのは人の名前の通称のようでございまして、江戸時代の宮城県の漢学者、平野金華のことでございます。「唄うるを休めよ」というので始まるわけです。「唄うるを休めよ 陽関三畳の詞」という、要するに国会で余りがあがあ質問するなという意味です。これは惜別の詩でございまして、要するに多摩川を歩きながら別れるところなんでございますが、その別れ際に柳の枝を折っていくわけですね。 詩の中身を検討しますと、明らかに私に対する嫌がらせという形をとった脅迫でございます。私はそう思っております。こういうことが平然と行われている。 私が取り上げた問題は、日興証券の問題、それから大蔵省幹部と山崎自民党政調会長の問題、それから橋本総理に対する政策の問題はこの対象じゃないと思いますが、一見平和に見えて秩序が保たれているようですけれども、そういう政治の議論、議会の議論の中にまでこういう一つの暴力の影がもう忍んできている。大変な事態になっているということを一つ御紹介して、これは答弁は要りませんが、法と秩序を保つということは容易なことでないということをひとつ大臣にも御認識をぜひしておいていただきたいと思います。 次に移ります。海難審判のことにつきましてお尋ねいたしたいと思います。 一九九三年二月二十一日に長崎県の五島列島沖合でまき網漁船第七蛭子丸が転覆して沈没、乗組員は二十人いたわけでございますが、一人は助かって十九人が船内に残されたままになっております。この事故の原因、海難審判の経過について簡単に御説明願います。
○説明員(鈴木孝君) お答え申し上げます。 委員御指摘のとおり蛭子丸でございます。平成五年二月二十一日に発生しました漁船第七蛭子丸転覆事件の経過と原因についてお答え申し上げます。 第七蛭子丸は、総トン数が八十トン、二十人が乗り組む大・中型まき網漁船団の鋼船でございます。長崎県五島列島西方沖合の漁場で操業を続けるうち、荒天となったのでこれを中止しまして長崎県舘浦漁港に附属の漁船四隻とともに帰港中、平成五年二月二十一日午前零時二十二分、高波を受けた船体が大傾斜し転覆し沈没したものであります。この際、二十人の乗組員のうち、委員御指摘のとおり、甲板員一人が僚船に救助され十九人が行方不明になっております。 この事件は平成六年三月二十九日、長崎地方海難審判庁において裁決が行われました。本件は、第七蛭子丸が満載喫水線の遵守が不十分で復元性能が低下していたことと、荒天模様となった漁場から帰港につく際、荒天準備が不十分で固縛されなかった漁具が右舷側に崩れて移動したことによって復元力が喪失し転覆した、これが原因でありますと。 なお、もう一つ、船舶所有者が満載喫水線の遵守について、第七蛭子丸の乗組員に指導監督が十分でなかったということも原因として指摘しております。 以上です。
○平野貞夫君 問題は、原因に船の建造に違法な部分、違法といいますか非常に問題の部分があったんじゃないかということが当時言われておりました。 そこで、本当の原因を解明するだけではなくて、やっぱり遺体を引き揚げるということが非常に大事なことでございまして、そのためには沈没した第七蛭子丸を引き揚げることが最も必要な行為だと、当時も言われていますし、今もそういう市民運動、住民運動も行われているわけですが、どうもこの船体の引き揚げについて、船主の金子漁業の方では第二次災害が起こる可能性があるからというので引き揚げは不可能だと言い、一方の主張ですと、いや可能だと、こういうふうに意見が対立しているように聞いておりますが、そこら辺は審判庁は把握されているでしょうか。
○説明員(鈴木孝君) 第七蛭子丸が沈没した付近の水深はかなり深いものだと聞いております。したがいまして、これを引き揚げることは可能か否かはあるいは船舶所有者の問題と思いますが、これを引き揚げることを意図しているのかどうかということについては当庁は承知しておりません。
○平野貞夫君 私は、この問題というのはいろんな角度から問題があると思いますが、きょうは人権問題という角度で指摘をしたいと思います。 一つは、やっぱり十九人の遺体が放置されているということは本当に大変な大きな意味で、亡くなられた方の人権というのは法律的にあるかどうかおかりませんが、少なくとも人間を大事にしよう、人間を尊重しようという意味では、放置されているということは大変問題だと思います。 私たちの調べによりますと、引き揚げにそんなに難しい技術は要しないという把握をしております。人道的な立場からいっても国際的にもこの問題は放置できないという動きがございまして、今後、船体を引き揚げる運動が盛んになると思いますし、同時に、私たちもその運動に参加しようと思っておりますが、ひとつ遺体を早く引き揚げて遺族に哀悼の意を表する、これが一つ人権問題としてはあるんではないかということです。 それと、十九人の方たちの暮らしていた島のやっぱり社会関係といいますか、この問題が非常に人権問題とかかわりがある、あるいは先ほど私が触れました日本の社会の非常に暗い一つの部分とつながりがあるということで御指摘をしておきたいんです。 全員がこの島の出身でございますが、この島は平戸の近くで、生月島なんですが、かつてキリシタン弾圧のあったところだそうですが、そういうものが現在も宿命的に残っておるんじゃないかというような気がするわけでございます。 遺族の大半はこの金子漁業に大変生活的にも世話になっておるわけですが、当時、東京から取材に行きましたあるジャーナリストから聞きましたのですが、その遺族の一人に、今ほかのサルベージ会社があの沈没船の引き揚げは可能だと言っているのだから、あなた方遺族が団結して、和解は和解として遺体だけでも返してほしいと金子漁業に嘆願したらどうですかと尋ねたところ、遺族の一人はしばらく沈黙してからこう言ったそうです。 これ、長崎弁ですからちょっとわかりにくいと思いますが、あんたら、この島の者じゃなか言えると、そりゃ息子の小指の先でも髪の毛一本でも欲しいとよ、あんたら東京の人にはわかるか、この島でこれから生活せんならぬし飯も食うていかんならぬ、そしてなあ、今もわしは金子の船に乗っとるんや、ばってんあきらめな、あきらめないけぬと自分に言い聞かせとるんですと、大きなため息をついたという話を私は聞かされまして、日本の社会にもこういうものが残っているかと。こういう村社会のある意味では悪い部分です。 法治国とはいえ、本来のやっぱり真相が究明されることなく、あきらめないと暮らしていけないという部分が我が国の社会には方々に残っておると思います。こういうことがある意味では大企業と暴力団とか総会屋との暗部と共通した一つの問題があるんじゃないかと私は思います。 時間が来ましたので御答弁は要りませんが、法の適用がされない問題、あるいはされにくい部分に秩序を維持できない一つの問題があって、それが社会不安なりさまざまな問題の一つの発火点になる可能性があるということを指摘して、人権問題というものをひとつ幅広く法務省として取り上げていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。
○山田俊昭君 幾つか質問通告してございますけれども、最初に、いわゆる盗聴社会と法の不備という観点から質問をさせていただきます。 この問題はもう大分前からいろいろと問題提起されて、何とかしなきゃいけないと言われつつ、現在に至るも何らの対応がなされていないという現状だろうと思います。 たまたま先週の金曜日でしたか、四月三日付の読売新町が「盗聴社会」ということで記事に大きく扱っているわけであります。浮気の調査だとか部下の発言を監視するとか企業スパイというようなことでいろんな形で盗聴がなされている、法的に野放し、摘発はあの手この手というような形です。そして、秋葉原の電気街でこの盗聴器具が堂々と売られているという読売新聞の記事でございます。 この盗聴問題は、今や民間人の私生活を侵食するというか大きく脅かしていると思われるのであります。しかるに、この盗聴という行為に対する取り締まり法規が何もない。警察はいろんな形でこれを何とかしなきゃいかぬという観点からでしょう、住居侵入罪だとか電波法違反だとか、商品販売法なんという今回初めてその法律を知って調べでみたんですが、そんな全く盗聴と無関係な法律を適用して摘発をしようとしている。事実上野放しな状態になって、盗聴そのものを処罰する法規、取り締まる法規が何もないという現状にあるわけであります。よって、盗聴行為そのものに対して何らかの形で取り締まる、いわゆる個人のプライバシーという大きな人権を侵害する行為でございますから、これが野放しであってはならないことは明らかであります。 法務省にこの盗聴に対する何らかの立法措置のお気持ちがあるのか、姿勢があるのか、これの対応策をお尋ねいたします。
○政府委員(原田明夫君) 御指摘のような問題につきましては、法務当局といたしましても重要な問題と認識いたしております。 現在、電気通信の傍受につきましては、電気通信事業法、有線電気通信法の通信の秘密の侵害罪により処罰することとなっているのでございますが、まさに御指摘のとおり、室内会話等につきましては、これはいわば口頭の会話一般でございますけれども、それを例えば立ち聞きするとかあるいは特別の機器を用いて聞くというような行為につきましては、これは装置を使わない場合はますます問題でございますけれども、装置を使う場合には、それを設置するために人の住居に入るというような場合には、まさに御指摘のように住居侵入罪等によって処罰されるということになっておりますが、一般にプライバシーとの関係で、会話、通常会話、室内会話も含めて、それの秘密裏における傍受といいますか盗聴というようなことについてどのように考えるべきかという点につきましてはいまだ十分な論議がなされていない状況です。 しかし、御指摘のとおり、そういうものについては、いわば野放しになっていることから生ずるさまざまな問題があるということは法制審議会等におきましても議論になりました。しかし、その点についてはいまだどういう態様で措置すべきかという点については十分な論議がなされていないということで、しかしながら、これは重要な問題であるという指摘もあるので、引き続き検討すべき課題という形で提起されている問題でございます。 法務当局におきましても、この問題につきましては、さまざまな観点から論議の上、適切な措置をとるべきということがコンセンサスを得られるような状況になりますれば、そのための手当てをしていかなければならないと考えております。
○山田俊昭君 重要ではあるけれども十分な論議はまだなされていない。この問題が提起されて、大きな社会問題、個人のプライバシー侵害だと叫ばれてもう相当年数がたっていると思うんです。 これまで盗聴に対する捜査もしにくい、いろんな被害者もすぐにわからないという大きな捜査上の問題があると思うんですけれども、例えば去年一年間で盗聴に伴う捜査の件数がわずか十六件だというんですね。これもおかしな話のような気がするんですが、これまで盗聴に伴う実態調査といいますか、被害状況、あるいは取り締まりの実態、実情をわかったら教えていただきたいと思うんです。
○政府委員(原田明夫君) 法務当局におきましてはそのような実態調査をするにまだ至っておりません。 実は、まさに委員御指摘のとおり、いわゆる通常会話がどういう形で聞かれたか、そしてまたどういう点で問題になったかということは必ずしも申告がなされるわけでございませんし、そういう場合があったとしても、それが公になるということがなかなかないという実情にもございます。 そういう意味で、私どもといたしましては、その問題について議論を始めるためにはある程度の実態についての認識がなければならないわけでございますけれども、まだ総体的にそのような認識を深める段階に至っていないというのが実情でございます。しかし、議員御指摘のような報道がなされているということも私どもも承知しておりますし、今後における重要な課題の一つであるという点では認識をともにしたいと考えております。
○山田俊昭君 こんな状況であるとは思っていなかったんですが、私も弁護士をしておりますが、いわゆる妻からの夫の浮気調査の証拠を私どものところへ持ってくるんです。調査の民間会社ですけれども、盗聴した電話の、いわゆる夫が愛人とかけている電話の全部会話状況が書かれたものを依頼者本人が持ってくるんです。これが証拠としての価値があるかどうかは別として、それで浮気の立証は十分になるわけなんですが、これが民間において調査業務をしている人たちにおいては日常茶飯事の業務の一態様として入っているということに対して、それは弁護士としてはありがたい証拠ですけれども、私はいささか問題があるのではなかろうかと常に考え続けているわけであります。 今、刑事局長のお話で重要な問題であると認識をお持ちになったなら、直ちにこの実態調査と盗聴防止のために法務省は何らかの立法措置を速やかにおとりいただくべきことを強く要望いたしまして、この質問を終わりまして、次の質問に入ります。 法律扶助制度について、午前中に千葉先生がお聞きになりましたけれども、重複しない程度で尋ねるわけですけれども、もちろん日本の憲法三十二条は裁判を受ける権利ということで人権として権利をうたっているわけであります。金のない人だとか弱者が事実上裁判が受けられない、弁護士を依頼することもできないということがあってはならないわけであって、この法律扶助の制度こそ早く確立されなければならない制度だと思うのです。 先進諸国を眺めてみますと、ほとんどの国と申しますか、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、韓国、すべからく法律扶助の根拠条文を持っておりまして、国家は相当多額な補助金を出してこの法律扶助に対する予算をとっております。しかるに日本は、根拠法文は一切ないのでありまして、いわゆる国の負担金はゼロなのであります。こういう恐るべき現状を思うとき、法律扶助制度の法的な確立こそ急務であると私は考えますが、法務省の御見解をお伺い申し上げます。
○政府委員(横山匡輝君) 法律扶助制度は、ただいま委員も御指摘されましたように、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度でありまして、法務省といたしましては、本制度の果たす役割の重要性にかんがみ、財団法人法律扶助協会が行う民事に関する法律扶助事業に関して昭和三十三年度から補助金の交付を開始し、特に近年では毎年補助金を増額するなど、本制度の充実を図ってきたところであります。今後とも本制度の一層の充実に努めてまいりたいと考えているところであります。 また、法務省としましては、法律扶助制度の充実発展を図るために、委員も御承知のことかと思いますけれども、最高裁、日弁連、法律扶助協会、学識経験者の参加を得まして、我が国の司法制度に適合した法律扶助制度のあり方等について調査研究をすることを目的とする法律扶助制度研究会を発足させまして、本年三月二十三日にその最終報告が取りまとめられたところでございます。 今後、法務省としましては、この研究成果を十分に勉強させていただいた上、これをできる限り尊重しつつ、関係機関とも協議しながら本制度の充実発展に努めてまいりたい、そのように考えておるところでございます。
○山田俊昭君 三月二十三日に報告がなされて、私もそれを読ませていただいて、いわゆる法律扶助制度の具体像などを見ることができるんですが、一刻も早いこの具体化というか、法化されることを希望するものであります。 要するに、この法律扶助のいわゆる研究会が法務省にも設けられていろいろ出ているんですが、とどのつまり、財政基盤の不安定、いわゆる財政基盤が安定すれば法律扶助というのは円滑に運用されるんだというところに落ちつくんだと思うんです。弁護士会が年間の法律扶助を必要とする人の試算をいたしましたところ、ほとんどすべて扶助の必要、弁護士を頼まなきゃやっていけない人の額が大体百四十四億円の費用があれば大丈夫なわけであります。これは英国の補助金の一千百四十六億と比較いたしますと、わずか一二・五七%にすぎないんです。この程度の予算がなぜ組めないのか私は不思議でしょうがないのであります。どうか法務省、大蔵省は憲法三十二条を軽視することなく、一刻も早い法整備をお願い申し上げます。 次に、学校におけるいじめの問題をちょっとお尋ねいたします。 先日、千葉県の楽市で中学生がいじめが理由で自殺、いわゆるいじめをめぐる悲劇が後を絶たないわけであります。これまで子供たちが自殺するとかいじめの問題があるとすべて文部省、教育委員会の問題として扱われてきているんですが、私はやっぱり子供の人権という観点から子供の保護といいますか、考えてやっていただきたいと思うわけであります。 私ははしょって質問をするわけですけれども、教育委員会、文部省、総務庁に任せることなく法務省独自の何らかの子供の人権救済の組織を設けてはいかがかという提案をしたいわけであります。例えばいじめ一一〇番、子供たちは相談するところがなくて困っているわけであります。どうすればいいのかわからない状況の中で、幼い心を痛めて死を選択していくという現実を眺めるときに、子供たちが安易に気楽に相談できる場を設けてやる、これはやっぱり子供の人権という観点から法務省が放置してはならないような気がいたしますが、いかがでしょうか。
○政府委員(横山匡輝君) 法務省の人権擁護機関といたしましても、いじめ等の子供の人権問題は非常に重大なものと受けとめておりまして、従来からこの問題に積極的に取り組んできたところでございます。 その取り組みの一つとしまして、子どもの人権専門委員、これは人権擁護委員の中から指名するんですけれども、子どもの人権専門委員、子ども人権オンブズマン、この委員を中心として全国的な人権啓発活動を展開し、また具体的ないじめ等の事案については人権相談あるいは人権侵犯事件として対処しているところでございます。 今後とも、子どもの人権専門委員制度の周知、定着を図りますとともに、子どもの人権専門委員と法務局の連携を密にしながら、地域社会や関係機関とも協力しつつ、いじめなどの子供の人権問題の解決に積極的に取り組んでまいりたい、そのように考えております。
○山田俊昭君 よろしくお願いします。 次に、聞きにくい質問ですけれども、いわゆる裁判官の健康管理ということをちょっとお尋ねしたいんです。 憲法七十八条を見ますと、裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除くほか、弾劾裁判以外は職を失わないという非常に強い身分保障があるわけでありますけれども、心身の心の方の問題がどのような形でチェックされているのか、裁判所の内部の健康管理問題としての心の問題をチェックする場合、どんな形でやっていらっしゃるのかお尋ねをいたします。
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官の心身の健康の管理についての御質問でございますが、まず、裁判官に対しましては毎年二回、定期的に一般健康診断を実施しております。また、特に四十歳以上の者につきましては肺、循環器、糖尿病、肝臓機能、それから胃及び大腸の検査も行い、また女性の裁判官のうち受検を希望する人に対しましては子宮がん等の検査も行っております。 健康診断の結果、健康に異常があると認められる者に対しましては、医師の指導区分に基づきまして適正な事後措置を行い、疾病の早期回復に努力しているところでございます。そのほか、適宜担当事件を減少させたりするなどの考慮をし、また早期に療養に専念し得るように病気休暇についても配慮をしております。 次に、精神面の管理につきましては、裁判官の職務は独立して行われるため、その精神の管理は極めて重要であるというふうに私ども認識しているところでございます。レクリェーションを実施して精神管理の向上を図ったり、健康相談等に対して常に必要な措置を講じ得るように努めることによって予防措置を講じてもおります。また、事情によりましては裁判所に勤務している医師をカウンセラーとして活用して早期発見に努める等もしておるところでございます。 そして、本人、家族の訴えであるとか同僚職員等の道知によって病気が明らかになった場合には、負担事務の軽減、より適当な部署への配置がえ等を行い、さらに職務遂行にたえないと判断されたときは家族とも緊密な連絡をとりながら病気休暇を促し、療養に専念し得るように配慮をしているところでございます。 しかし、何よりも全裁判官が互いに啓発しながら健全な精神を養うということこそ重要と考えられますので、そのような雰囲気づくりに努力するとともに、公私両面にわたる接触の過程においで何らかの措置が必要であると認められる場合には、家族の理解を得た上で家族と一体となって適切な措置をとって早期発見、早期治療に努めていきたいと考えているところでございます。
○山田俊昭君 もう時間がありませんので、終わります。
○委員長(武田節子君) 以上をもちまして、平成十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管、法務省所管及び運輸省所管のうちの海難審判庁についての委嘱審査は終了いたしました。 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(武田節子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時二十七分散会 —————・—————