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142回国会衆議院1998/05/18

労働委員会 第16号

発言数
83
登壇者
13
会派数
6
開催日
1998/05/18

会議録

田中慶秋民主党

○田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、日本経営者団体連盟労務法制部長荒川春君、日本労働組合総連合会総合労働局長松浦清春君、全国労働安全衛生センター連絡協議会議長井上浩君、愛知学院大学法学部教授桑原昌宏君、全国労働組合総連合事務局長熊谷金道君、中央大学法学部教授山田省三君、以上六名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見は、荒川参考人、松浦参考人、井上参考人、桑原参考人、熊谷参考人、山田参考人の順序で、お一人十分程度お述べいただき、その後、委員の質問に対しお答えをいただきたいと存じます。  念のため申し上げます。発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。  それでは、荒川参考人からお願いいたします。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 ただいま委員長から御紹介いただきました日本経営者団体連盟常務理事・労務法制部長の荒川でございます。  本日は、労働基準法の一部を改正する法律案の審議に際しまして、参考人として意見を述べさせていただく機会をいただき、感謝を申し上げる次第であります。  早速でございますが、今回の労働基準法改正、見直しにつきましては、経済社会の状況や働く者の意識変化に大きくかかわる問題としてとらえ、中央労働基準審議会において検討され、政府案として今国会に上程されたものであります。その視点は、経済活動のグローバル化、世界的競争の激化の中で、構造変化を遂げ、その中で雇用を維持、創出し、豊かで安心できる社会、健全で活力ある経済を実現するためには、産業、企業が積極的に事業展開ができるよう、そのような環境を整備することと、働く者にとって創造的な能力を発揮し、自己実現ができるようにしていくことが重要であるという視点にあったと思うわけでございます。  経営する側から見ますと、これまでの労働基準法が、生産労働者の就業形態を中心に、画一的、定型的、他律的な規制をしてきたところでありますが、一方でホワイトカラーが増大する中で、自律的、創造的、あるいは弾力的で多様な労働によって、より高い付加価値を生み出し、産業、企業の構造転換や拡大、発展を図り、もって雇用の拡大あるいは労働条件の改善に資するものということを行うために、労働基準のあり方を見直していかなければならない潮流に我々も責務を負っているのではないか、こういう認識をしているところでございます。  これまで我が国の企業は、主に現場サイドの活躍と、その工夫改善により、世界で注目される存在になったところであります。この働く現場サイドの貢献というのは引き続き行われなければならないところでありますが、それをさらに適正に評価していくということも加えていかなければならないと思います。  それとともに、今やどうしても大切なのが、日本の知恵集団となってほしいというホワイトカラーの活用、活躍でございます。ホワイトカラーには、このような努力と活躍によりまして、引き続き、我が国の企業、産業が、今大変な状況に置かれておりますが、じり貧状態に陥ることなく、さらに発展、成長を期待する担い手となってほしいというのが経営側の切なる希望であるわけでございます。  企業は、このようなホワイトカラーにその十分な活躍の場の道を開き、その活躍に応じて適切な処遇を実現するために、今日の人事面での最重要 な課題の一つとして、ホワイトカラーの活性化を掲げているわけであります。実際にそういう方向で処遇制度がさまざまに工夫されていることは御案内のとおりであります。  しかじながら、これを支える、あるいは可能にする労働基準法等におきましては、規定あるいは制度を十分に構築できるかというと、なかなかそのような形になっていないというのが一方で現状であります。今こそホワイトカラーに適したシステムを早急に、十分に構築していくときではないかと存ずる次第です。  法律の土台ができておりませんと、それに基づきまして個別企業が工夫をする、こういう状況が生まれてこないわけでございます。法律が変わって、個別企業の選択の余地ができる、多様化した従業員の意識やニーズに合わせて最適かつ多様な形でその制度を構築していくということが可能になると思います。そのためにはどうしても、法規定の弾力化を図ると同時に、特に増大するホワイトカラーに適した制度の改正が必要であろうと思うところでございます。こうした点をぜひ御勘案いただきたく、ぜひとも今回の政府案に御検討をいただき、成立をお願いできればと思う次第でございます。  今回の労働基準法改正案では、労働時間の面においては裁量労働制の拡充、また労働契約の面においては有期労働契約の契約期間の延長の点が含まれております。社会状況、就労意識の変化に応じて望ましい方向が打ち出されてきていると思うところでございます。ぜひともこれらの点を実現していただきたいと思います。  言うまでもなく、ホワイトカラー労働者の仕事内容は、不定型でかつ裁量的な側面を持っております。さらには、今後その傾向が一層強まることが予想されるところであります。ホワイトカラーについて、その働き方は裁量的であるということでありますが、これらの労働者に適した制度として、この裁量労働制の定着を我が国にさせていくべきであろうと存じます。  新たな裁量制には、その適正な運用を図るため、従業員の代表が半数加わった労使委員会の設置要件が課されることとなっております。このために、労使合意の上の制度づくりがなされるところから問題は生じないと確信しております。実際に、改正法案では、労使委員会に関する幾多の規定が設けられることが明らかになっているとおりであります。  有期契約期間の延長につきましては、専門的な知識、技能を有する人たちにとり、労働契約のチョイスが拡大するという点で、一つの朗報であると思います。かなり限定された範囲の適用でもあって、問題はないと思われます。  次に申し上げたいのは、ただいまの点と関連しますが、労働基準あるいは最低基準のあり方につきましてです。  昨年四月、現行法の規定に基づいて、いわゆる週四十時間労働制が中小企業を含めて全面的に適用されました。この週四十時間労働制については、個別労使の大変な努力により、これを採用する企業がふえております。それは労働省の調査でも明らかなとおりでございます。  この週四十時間労働制を労使が苦心せずに実現したか。そうではございません。  中小企業での一年単位の変形制の採用は、週四十時間制が時短となって時間外労働コストの増加が予想されるために、それを極力コントロールして、同時に、業務の繁閑に応じて適正な労働時間制度を構築する上で必要性があったわけでございます。いわば、求められた週四十時間労働制を経営に無理なくする上で考えられた工夫というものと言えると思います。労働条件を切り下げるためではないかという、また労働者保護をないがしろにするものであるとの御意見もいただいているところでありますが、決してそうではありません。  一年単位の変形労働時間制を引き続き週四十時間労働制のもとで定着させていくためにも、その要件の緩和は大切なところであります。今回の改正の中でお願いしたとおりであります。  また、今回の改正では、その活用要件の緩和のほかに新たな規制も数多く含まれております。こうした点を考えますと、さまざまな御心配される状況にはならないと私どもは考えているところでございます。  一年単位の変形労働時間制の見直しについても、ぜひお願いするところであります。  我が国の労働基準の水準は、既に全般的には各国と比べて遜色ないほどのレベルに達しております。これ以上労働条件を引き上げることは、原則として、労使が、その全体的な状況の中で、従業員のニーズに基づき、生産性向上の範囲を十分考慮して適切に決定していくべきではないかと思います。この点では、今後の時間外労働、深夜労働を初め、年休の付与日数、さらには労働契約面における使用者への新たな義務づけ等については、経営への影響を十分考慮していただきたいと思うところであります。  特に、時間外労働、深夜労働については、これまでの労働慣行、労使の意識等を踏まえた場合には、法律上で上限数字を設定すること等について、社会的に極めて大きな影響を与え、また経営の混乱をもたらすために、我々としては受け入れることはなかなかできないと考えております。  三番目ですが、家庭生活と職業生活の調和についてであります。  昨年の国会で、男女雇用機会均等法の改正とともに、いわゆる時間外労働等に関する女性保護規定の解消が行われました。これにより、来年四月から女性労働者にも等しく労働時間の分配があるわけでございます。  今回の改正案では、いわゆる家庭責任を有する女性に対する激変緩和措置が含まれておりますが、この本人の請求による暫定的な形での激変緩和措置については、事家庭責任という点で十分理解し得る面があるのではないかと考えております。  しかし、実は、家庭生活と職業生活の調和につきましては、既に、育児休業法の制定以来、我が国においてはかなりのレベルで法的整備が進展していると考えるところであります。  育児休業法が施行され、その後も介護休業法の新たな制定があり、さらに、昨年の国会では、育児・介護休業法の中に、新たに家族的責任を有する男女労働者に対するいわゆる深夜業の制限規定が設けられたわけであります。そして、また別途、指針において、子の養育中の労働者には所定労働時間を超えて労働をさせない制度を設ける必要性に留意することが触れられております。今回の改正案の中で、家庭責任を有する女性への激変緩和が講じられることも大変なことであると思われます。  これらを全体に考えますと、家庭生活と職業生活の調和に関する法的整備は十分されるものであります。家庭生活と職業生活の調和の点が法的に整備された以上、一般の男女労働者の時間外労働の現行規定については維持されるべきではないかと思う次第であります。  以上を踏まえまして、最後に、今回政府が提出されました改正法案全体に対する私の意見を申し上げます。この改正法案は、ぜひとも可決成立をされることをお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 ありがとうございました。  次に、松浦参考人にお願いいたします。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 御紹介いただきました連合の松浦でございます。  まず冒頭、当労働委員会におきまして、今回の労働基準法の改正に対する真摯な、しかもしっかりと視点、問題点を掘り下げた議論がされているということに対しまして、心から御礼を申し上げる次第であります。あわせまして、そうした真摯な議論がされておりますこの労働委員会に、参考人として発言の機会を得ましたことにつきましても御礼を申し上げたい、このように思うわけであります。私は、まず連合とはどういうことかということ について一言触れておきたいと思うわけであります。  ある大臣は、わずか八百万の組織しかないというような発言もされていますけれども、確かに連合の構成組織人員は七百八十数万人でございます。しかしながら、これだけの組合員を擁するナショナルセンターは世界でも三番目でございますし、私どもは、労働組合の数にいたしまして約一万五千単組で構成をいたしております。その中では、千人以下の中小労組の関係については六五%、組合員数でいいますと四五%ぐらいにしかなりませんけれども。しかも、特徴的なのは、それぞれの労働組合が、ホワイトカラーも現業ブルーカラーも一緒にした組織でございます。  私どもがこれまで申し上げてきた意見につきましては、そういう意味で、ホワイトカラー、ブルーカラーの区別なしに、そして、特に最近の運動の実態といたしましては、未組織の労働者、中小の労働者のための労働基準づくり、労働条件の改善という問題について極めて精力的な取り組みをしているということを申し上げておきたい。  その背景の関係につきましては、申し上げるまでもなく、現在は経済社会がグローバル化をいたしまして、日本の産業構造、企業構造も大きく変化をする。あわせまして、国際競争に打ちかつためにということで規制緩和等も非常に急速に進められているわけでありまして、企業はそれぞれの自前の競争力でもって生き残るという取り組みを一生懸命されているわけでありますし、私どももこれを否定するものではございませんが、その陰で、組合員、従業員が極めて強烈な犠牲を強いられている、こういう実情にあるわけでございます。  したがって、特に、労働組合のないところ、あるいは親企業からしっかりとコスト削減を押しつけられる、そういった中小企業の労働者にそのしわ寄せが極めて大きくあらわれているという実態を踏まえて、未組織の労働者そして中小企業の労働者の労働基準、労働条件の改善ということについて極めて精力を大きく注いでいるという実情について、まず申し上げておきたいと思うわけであります。  今回の労働基準法の改正に関する問題について、幾つかの意見を申し上げます。  まず一つは、今回の労働基準法の改正の意義と目的は、言うまでもなく、経済社会がグローバル化する中で、あるいは規制緩和が進む中で、そうした変化に対応する労働基準をつくるということと、さらに、二十一世紀に向けて少子・高齢化が進む、そうした中で、男女共生社会がこれから求められるという、そういった実態を十分に考慮した改正でなければならないということであったわけでございます。  そういう意味で、今回の労働基準法の改正の中には、労働契約を締結をする際には、文書で賃金以外の労働条件をも明示する、提示するよう改正するという点であるとか、あるいは未組織の労働者の代表を選ぶ方法であるとか、あるいは解約時にその理由を労働者から求められれば文書で提示をするなど、極めて現在の事情に沿った適切な改正がされるということについて、私どもは大きく評価をしているわけでありますし、ぜひこの労働基準法の改正についてやっていただきたいと思うわけであります。  しかしながら、幾つかの点で私どもは問題視をして改正をしてもらわなければならないという主張を持っているわけでございます。  その一つが、男女共同参画社会における働き方のルールの基本とも言えます、労働時間の問題であります。  労働時間は、昨年の四月から、特例の事業場を除いて週四十時間制ということになりましたけれども、せっかくこの四十時間制が施行されたにもかかわらず、中小企業ではまだ二〇%を超える部分でこの四十時間制が完全に実施し切れていないという実情にあります。また、ホワイトカラーや管理職等につきましては、裁量労働制あるいはみなし労働制等によりまして、この時間管理から外されているという、そういった部分もかなり多くあるわけでございます。  そういった状況のもとで、今回、裁量労働制を新しい制度として導入をして労働時間管理から外すという、こういった措置がされているということであります。  これらのニーズがあるということについては我々も承知をいたしておりますけれども、今回制定されました制度は、審議会の中でも相当の時間をかけて議論をいたしましたけれども、その枠組み、その規定の方法について不十分さが残っているという指摘をせざるを得ないわけでございます。  どういう点で不十分さがあるかといいますと、それは、この法案のままでは使用者の裁量権にその範囲や対象がゆだねられてしまって、非常に拡大をされる、こういう危険性を危惧するところでありまして、ぜひひとつ、この裁量労働問題の関係につきましては、もう少しきっちりと特定をされるように、その規定の方法等について、中央労働基準審議会に差し戻して継続審議をさせていただきたいということをお願いしたいわけでございます。  二つ目が、過勤務時間、深夜労働時間の上限規制の問題についてでございます。  現在、時間外労働、過勤務時間の関係につきましては、法の三十六条の中で目安として規定をされているわけでございますけれども、この目安がなかなか守られない、もともとそれの対象除外の産業分野がある、こうした実情にあるわけでございまして、私どもは、来年の四月から、昨年の国会で議論して法案として改正をいただきました男女雇用機会均等法が施行されますと、女子保護規定が、母性保護と女子保護とを分離して、廃止をされるということになるわけであります。これまでのままの働き方では、今まで同様、過剰な労働を強いられる男性労働者の中に女性がほうり込まれるということでございまして、男性も女性も対等に働いていくために、それでは家族生活、家庭責任はだれが担うのかという心配をしているわけであります。  したがいまして、二十一世紀に向けて、男女共同参画社会における、男性も女性もともに家庭生活と仕事を両立できるという、そういった基準の根幹をなします時間外労働や深夜労働の上限について明確な定めをしていただきたい、こういった問題でございます。  三点目が、変形労働時間の問題について少しだけ触れさせていただきたい。  変形労働時間につきましては、所定労働時間、いわゆる法定労働時間を短縮するときに経営の側に一方的な負担が強いられるという問題を解消するために、仕事が忙しい時期、忙しくない時期に区分けをして、忙しい時期には所定労働時間を延長することによって、本来、過勤務手当で払い、忙しくないときには従業員をいかに有効に使うかという、経営者の負担を軽くするための制度として導入されたものであります。したがって、今回の規制の見直し、緩和につきましては、私ども労働者の立場からいいますと、一週間に十二時間の時間外労働を無償でするのと同じ、そういった効果、家庭生活にも社会生活にも影響をもたらすということになります。  したがいまして、そういった特定の職場におきまして変形労働時間を導入する場合には、忙しくない時期に、一年の間で忙しい時期と忙しくない時期が反対月になった場合に、必ずしもそこで疲れがあるいは家庭生活が取り戻せるとは思いませんけれども、計画的に家庭生活や健康維持ということが考えられるように、他の職場よりも所定の労働時間を短縮することによってトータルとしての労働条件を維持するという措置をお願いしたいということを申し上げているわけであります。  大変乱雑な意見ということになりましたけれども、以上、こうした今回の労働基準法の改正にかかわる、極めて重要であり、かつ問題視しなければならない点についての改善についてお願いを申し上げます。ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 ありがとうございました。  次に、井上参考人にお願いいたします。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 井上でございます。先ほどは立っておじぎをするところをうっかりしまして、失礼いたしました。その分、もう一回ここでおじぎをしておきます。  大変短い時間ですから、早速本題に入らせていただきたいと思います。  いろいろな問題点がございますけれども、それについてはもう討議済みですから、私の監督官時代の経験並びに退官後の二十年間にわたる民間の労使の方とのつき合いを通じまして感じたことを申し上げたいと思います。  もちろん私も、規制を緩和して、労働生産性を上げてパイを大きくするということについては大賛成でございます。しかし、それが労働者の犠牲だとか中小企業者の犠牲によって実現できるのだったら大変問題だと考えるわけです。そういうような観点から、三点申し上げたいと思います。  まず一番最初は、裁量労働制について。  これについては社会経済生産性本部が調査をやっておりまして、裁量労働を現在やっている対象労働者、その方たちの七七・三%の方が目標達成とその評価について大変関心があるということを申しております。このことはどういうことを意味しているかといいますと、結局、裁量労働をする人は目標達成を考えて仕事に夢中になるということなんですね。それはやがて、皆さんもおっしゃっているように、長時間労働を招くし、それから家庭が崩壊するということなんですね。もちろん過労死だとか自殺も多くなるでしょう、現在、自殺の裁判もありますが。そういうことになるということなんですね。  それでは、企業の方から見た場合には一体どうなのか。労働者は大変な長時間労働をやるのだけれども、企業の側から見たらそれでもメリットがあるかということについては余り議論がないから、私の感じていることを申し上げたいと思うのです。  この裁量労働制を導入して、本当に、何といいますか、メリットがあるのは大企業だけですね。中小零細企業では、恐らくないです。いわゆる高度の企画とか立案とか調査及び分析を専業にするような事務員さんというのは、中小零細企業にはいないですよ。もしいるとすれば、そういう人は企業の課長とか部長だから、現在でも労働基準法の四十一条によって労働時間の規制は外れているわけです。何も裁量労働制を中小零細企業が導入しなくてもいいわけなのです。  だから、まさに企業の方から見ても余りメリットはない。一部の大企業ではあるかわからないけれども、しかし大企業の場合でも、考えてみた場合、個人、個人、一人でやる研究とかそういうことは恐らく指示、命令を受けなくても一人でできるのだけれども、例えば企画、立案、調査でもグループでやることがたくさんあると思うのです。グループでやる場合には、必ずそこにはグループのリーダーができるわけです。だから、本当に厳密に考えた場合には、今度の改正案に言うそういう裁量労働、それに該当する人は多分大企業でもたくさんはいないのではなかろうか。  これについては、労働省が三和総合研究所に委託をしまして調べております。この調査の対象は大企業だけ千二百五十五社を対象にして、大企業だけを対象にしてやっております。これで見ても、創造的に仕事ができる人というのは、研究開発なんかの創造的部門でも三二%、経営企画なんかの定型的な部門では二三%にすぎないということなのです。だから、大企業すらも一部の労働者に適用があるのではなかろうか。  さらに三和総合研究所が言っているのは、こういうことを導入する場合には人事管理は複線型を導入せぬといけないと言うわけです。複線型の人事管理というのは、現在の中央官庁のキャリアとノンキャリア制度なのです。だから、今度裁量労働の範囲に入った人は、将来の幹部候補生として、キャリアとして企業でも待遇されるというおそれがあるわけです。これが果たしてその企業全体のモラルにどう影響するのかということを考えれば、やはり決していいことだけではないのだと考えるわけです。  だから、対象労働者にとっては大変だ、それから企業側でも、中小零細企業ではほとんどこういう規定は不要であろう、大企業の一部であろうと私は考えます。したがって、これを早急に導入するのは大変問題だから、もう少しやはり検討をしていかぬといけないのではなかろうかということなのです。  それから次に、一年変形の労働時間制。  これは労働省の調査を見ますと、一年変形というのは少ないです。一カ月変形が二二・四%、一年変形は一五%です。どうしてかというと、一年変形は結局企業にとって長い期間の予定がつけにくいということがあるわけです。一カ月ならいい。それから、一月変形の場合には労働時間とか休日なんかに上限がないということです。だから圧倒的に一月変形の方が魅力があるわけです。それで、一年変形をもっと導入しようということで、今までは一年変形の場合でも三カ月、三月間の労働日の労働時間を特定するのだというのを今度は一カ月に短縮をしまして、一月変形とほとんど変わらない形にしよう、そしてその導入を図ろうということなのです。  そういうものがもし一年で入ってきますと、これはやはり労働者としては長期間の生活設計ができなくなります。今度の夏は家族で旅行に行こうというようなことがなかなか、生活設計ができにくくなる。それから、特に繁忙期の特定期間というのは、今度は労働日数しか上限がないのだから、特定期間には大変長時間労働をやらされるかもわからないという危険があるわけなのです。  やはり労働者も人間ですから、朝はゆっくり朝食をとって、そして今度は仕事が終わって夕食は自宅で食べる、そして夜はぐっすり眠るというのが人間の生活だろうと思うのです。だから、そういうことを実現するためには、労働時間、休日、深夜業、そういうものにもきちんとやはり罰則つきの基準を設けぬといけない。罰則があってさえも守っていない人が多いわけなのですから、罰則がなかったら全然話にならぬということなのです。  実は、この変形労働時間制についても中小零細企業ではその利用が少ないわけです。労働省の調査でいきますと、千人以上の企業は三四・三%で実行している、ところが三十名から九十九名のところでは二一・九%だ。やはりこれも大企業は活用しやすいけれども、というのは大企業は自分で仕事の量を加減できる力が強いから、市場の支配力が強いから、長期間の計画でもできるから。中小零細企業では、結局お得意さんだとか、それからお客さんの方の圧力があるからなかなか長い期間の特定ができない。だから、中小企業ではやはり今度の変形制の労働時間でもなかなか活用できないという状況があるということなのです。  それから、三年契約のことです。十四条。  これは新商品の開発だとか事業の開発なんかの場合でその人材が不足をしている場合には新しく採用してもよいということなのです。これは結局どんなふうに使用されるか。もし私が会社の社長であったらこうします。即戦力になる専門家を中途採用します。そしてその人を三年間使ってみて、優秀であればまた継続してずっと使う、だめな場合にはそこで打ち切りというふうに私だったら使います。大変これは、そういう点では使う側では都合がいいです。  では企業側にとってはこれは大変いいでしょうか。そこのところの自覚がないと思うのです。いいですか、もしもそういう専門的な人間を新しく採用して三年で来て、やめてもらいます。その場合に競争企業がそれをほっておくでしょうか。私だったらすぐその人を使います。その場合に企業秘密は法律的にも実際的にも恐らく守り切れないです。私ならすぐにその人を採用します。そしてその人から企業の秘密を聞きます。新商品とか事業の開発なんか、それこそ情報が獲得できるわけです。だから、そういう点からいっても企業に とっても必ずしも問題がなくはない。  特に、中小零細企業の場合にはこれはなかなか、中小企業こそ専門家がいないから最も欲しいのだけれども、恐らく中小企業ではなかなかそういう人を三年採用で採るといっても来る人がいないのではないでしょうか。しかも、そういう人は専門家だから相当高い給料を払わぬと来ないですよ、そんな人。  だから、もしもどうしても導入するというのであれば、そういう中小零細企業がそういう専門家を採用しやすいように現在の雇用保険三事業なんかをもっと活用して、いろいろな補助金とかそういうことも考えていかなければいけないです。したがって、やはりこれについてはもっと検討する必要があるのではなかろうかということなのです。  ほかのことについては言えませんでしたけれども、最後に申し上げたいことがあります。  今一部の方々に、もう労働者は強くなったのだから、だから従来の労働者を保護する労働法は必要ないという意見が学者にもあるようです。しかしそれは、私は実態を見て間違いと思います。  労働基準法の第二条の第一項に規定されているように、労働条件というのは労働者と使用者が対等の立場で決定するのが大原則です。しかし、会社側と対等に労働条件を決められる労働者は、日本の五千四百万人の労働者の中で恐らく五千万人は決められないのではないでしょうかと思います。  だから、そういう点では、確かに規制緩和が必要なのだけれども、やはり規制の必要な分野があるのだということを私は申し上げたいのです。  大半の基準法に決まっている権利は過半数労働者との協定によって破ってもよくなっているわけです。どだいおかしいですよ。労働組合があって、労働協約を結んでおって、そういうところでも、多数の労働者の協約が少数に強制的に適用になるのは、労働組合法の十七条によって、四分の三の労働者で組織した組合がある場合に初めて残りの四分の一に対して拡張適用されるわけですね。それを、労働組合もない、何もないところで、過半数で、一人でも多かったら、その意向によって全部決まるというのは、これは明らかにおかしいですね。  それからもう一つ、最後。このまま改正案がもし成立した場合には、やはりこの改正案でもきちんと守らせていく必要があるわけですね。これを強制的に守らせていくのが、結局、労働基準監督官だということになりますね。ところが、労働基準監督官が違反を捕まえて挙げる場合には、きちんと構成要件に該当していなければいけない。これが今度の改正案では大変難しい。  例えば裁量労働の場合でも、もしもそれに違反があった場合に、労使委員会も企業側と共同正犯になるのでしょうかね。共謀共同正犯になるのだろうか。非常に難しい問題があります。だから、やはりその辺のところも考えてひとつ改正をしていただきたい、そう思うわけなんです。以上でおしまいです。

田中慶秋民主党

○田中委員長 ありがとうございました。  次に、桑原参考人にお願いいたします。

桑原昌宏愛知学院大学法学部教授

○桑原参考人 おはようございます。どうぞよろしくお願いします。  今回、参考人として金曜日の午前中に突然決まりまして、光栄と同時に驚いておりますが、この機会を与えていただきまして、ありがとうございました。きょうは労働法学者としての、研究者としての発言をさせていただきます。そのつもりで私はおります。  労働基準法の講義をしておるときに、あるいはまた講演を依頼されたときに、私最初に言うのですけれども、家を出るときに、今晩労災病院で会うからなと女房に言う男の労働者はおりません。焼き場で今晩会いますからと言う労働者はいないわけであります。つまり、働く人の基本的な経営者との約束事を労働契約といいますけれども、それは、健康とか生活を守るために、契約があっても、それを法律で規制をするという仕組みになっていると思うのですね。  したがいまして、きょうお話しさしあげます労働基準法というものは、実は経営者側と労働者側が合意で、こういう条件で働いてもらいましょう、裁量労働も含め、深夜業も含め働いてもらいましょう、よろしいかと、了解の上で、いわゆる契約の自由で成立するわけですけれども、それは自由に任せておくわけにはいかぬ、これを規制するという観点から労働基準法がある、こういうように私も考え、一般にそう理解されております。  それで、きょう、最初総論的なことをお話しさしあげて、後、各論として、私がここがと思うところについて逐次意見を陳述させていただきたいと思います。  総論的なことなんですけれども、今回、労働基準法を改正するという点につきまして、三つの大きな時代的な背景があると考えております。  まず最初は、国際経済大競争の時代と思うのですけれども、企業が経済競争力を持っために労働者を活用したい、これは結構なことでありますけれども、他方、労働者にとりましては、健康と生活を法律で守ってもらいたいという条件があると思います。国際経済大競争の中に、もう一つは、国際貿易が広くなったために、実は労働基準法が、日本に外国から投資をしてもらうための誘因としての条件整備という役割も果たしております。しかし、それにもかかわらず、労働基準法には最低限度の保障が定められることになろうかと思うわけであります。  二番目でありますが、規制緩和が言われております。しかし、規制緩和は市場の自由を考えるわけですから、契約を自由に当事者間でやっていただいたらいいという考え方が基礎ですけれども、実は労働法というのは、残念ながら規制の体系なんですね。労働契約を規制する体系として労働基準法があるという原点を思い出すわけであります。  もう一点、三つ目に、行政の腐敗というものが、これは労働省ではないのですけれども、一部報道されております。後ほど述べますが、行政指導に依拠する、柱にする法律改正であっていいかというように私は思っておりまして、より専門家、経験者、学識者を活用する制度、あるいはまた労働者の権利保護も考えた制度であってほしいと思うわけであります。  四つ目、情報公開と透明性が必要となっている時代になっていると思います。後ほど申し上げますように、労働者にとって知りたいことはやはり知らせてほしい。退職の理由の問題がありますけれども、これは、こういう情報公開、透明性の時代の要請と思います。  最後に、五つ目に、参加の時代と思います。労使対等に向けて、労働者の参加を、労使協定を通してという具体的な、より新しいアイデアが今回の改正には入っておりますが、評価したいと考えております。  それでは、各論に入っていきたいと思うのです。どうもちょっと抽象的な話で申しわけございませんが、お許し願いたいと思います。  まず第一に、改正案に出ております、主体的な働き方のルールの第一点は、労働契約期間の上限延長というわけであります。私は、いろいろ文書を読みまして、条件つきに賛成をしたいと考えております。中基審が言っておりますように、専門的能力を有し、柔軟、多様な働き方を志向する労働者が、その労働能力を発揮するためということでありまして、実態でも、一年の労働契約の更新でトラブルが起こっている問題もあることは知られているところであります。しかし、条件つきというところにいきますと、この三年契約自体が、さらに、この法律で規定している特別の業種以外に一般的に拡大するということに将来なるといたしますと、短期労働者がふえるということであります。短期日の、三年ぐらいの契約の労働者がふえる。そうすると、終身雇用の労働者は相対的に場所を失うわけであります。  いろいろ議論はありますが、私は、終身雇用制度は、それなりに日本の社会に定着している面が あるとか、さらにまた、各企業には必要な技術や経験者を残し、それを育成するために役割を果たしているとか、いろいろいい意味もあるわけでありますから、短期労働契約の労働者がふえることによって、こういった終身雇用への必要な部分について悪影響が及ぶことを恐れている点で、私は条件つき賛成であります。  第二番目、裁量労働制でありますが、これにつきましても、条件つき賛成ではあります。実際、今回の法律で出ましたのは、従来から許されておるものに、新しい二種類のものをつけ加えたというように理解もできるわけでありますけれども、そういう意味では、従来の路線を拡大したというように理解ができる面がございます。しかし、やはりこれも条件つき賛成なんですね。すなわち、条件つきとはどういうことかということであります。つまり、裁量労働がこれまた一般に、ホワイトカラー全体に将来及ぶ、そのための一歩として今回の改正を考えるとするならば、私は非常に心配であります。  理由を申し上げます。  第一は、裁量労働といっても、どれが裁量といっているか、限界が不明確。第二番目に、裁量労働ですと時間外勤務手当が払われないわけでありますから、この点につきましては、労働者にとっては、非常に重要な判断を与える条件が要ると思います。三番目、この制度が拡充しますと、労働者間に過当な競争を生む危険があります。四番目、この裁量労働というのは、仕事の成果によって給料をたくさん上げるということですから、それを判定する業務評価、業績評価をだれがするかという問題がありまして、その基準がはっきりしないと、これまた過当な労働者間の競争を生むと思うわけであります。  しかし、非常に重要なことは、裁量労働というのは、実は労働基準法の大きな根幹にかかわっていると私は思うのですね。というのは、労働基準法は、普通、労働時間で計算をして給料を払うというシステムですよね。それが今回、裁量労働というのは時間の枠を外す、仕事の結果だけでお金を払うというシステムでありますから、労働基準法のかなり基本的な部分にタッチするものであります。  したがいまして、この裁量労働につきましては、私は十分に慎重な方法で今回の改正案を検討すべきではないかと思っております。性急に今回の法案を、そのまま施行に結びつけていいかどうか、私は疑問を持っているわけであります。  次に、この裁量労働との関係で、労使委員会というシステムが今回書かれております。これはなかなか、私たち研究者にとっては研究の材料を提供してくれるものであります。ドイツなどであると言われております労使協議制、日本でも別の意味での協議制が定着しているわけでありますが、これを法制化するという一歩ではなかろうかなどと私は理解しておりますので、これはこれとして評価したい、賛成したいと思っております。  ただ、この労使委員会は、全員で決議をするというアイデアで法律で決まっておりますけれども、この場が団体交渉の場に変化するということもあり得ると思うのですね。今回、これを法律で禁止してはおりませんが、そういう動態的な労使関係の流れの中で物事を見て、施行していく必要があると思います。  次に、時間外労働の規制の問題でありますけれども、私は賛成であります。特に、労働大臣が時間外労働の上限の基準を決めると今回決めておりますが、これは私、賛成であります。  理由は、この際、参考になるのは国際比較なんですけれども、実は、ILOの一号条約、ですから、一九二八年当時の一号条約を日本に適用する項目がありまして、その一番終わり、九条bにはっきり書いてあります。一週間の単位であるけれども、最高の労働時間は、この時代では五十七時間と決めているのですけれども、一週の最高の労働時間は決めなさいとILOは言っております。日本は批准しておりませんけれども、この制度は非常に関心があって、日本には参考になると思います。今回も、残業をしてもらう、それで割り増し賃金をもらってもらう、しかし、その時間の上限を、結局、基準であるけれども、労働大臣が決めるように法律で定めたことは結構なことだと私は思います。  しかし、この制度を守らない経営者をどうするか、違反に対してどうするかという問題がありまして、これにつきましては、今回、この制度によりますと、結局、罰則はない、違反をした経営者に対して処罰をする制度はございません。この点について私は疑問を持っているわけであります。  もう時間がございませんけれども、最近労働省が出した申告事例に対する違反率を見ておりますと、大体五割ぐらい、臨検をした五割ぐらいに違反が発見されているという数字が出ておりますから、労働基準法違反の事実が多いということはどうも統計でも明らかなようであります。そういうときにこの新しい制度をつくるわけでありまして、それに違反をした経営者に対して、どのように法律の趣旨を生かして守ってもらうようにするのか。私はやはり、処罰規定が入っていないという点について、この部分について非常に残念に思うわけであります。  次は、女子労働時間に関するものがありますが、ごく簡単でございますけれども、実は、ILO、国際労働機関が、男女平等の一環として、女の人も男と同じように深夜業を許す法制度については認める方向というわけであります。私は、それは理念的には賛成であります。しかし、日本の現実は、お母さんが子供の世話をするという実態が残っている部分もあるわけであります。したがいまして、深夜業の辞退を希望する女子については特別扱いをするとこの法律に書いてありますけれども、それを求めた、つまり、休ませていただきたい、深夜業をお断りするという権利を行使した人を、残業を割り当てないとか差別をするという危険がなきにしもあらずでありますから、これから守るための法制度があってもよかったのではないかと考えております。つまり、深夜業をお断りするということが権利として保障される制度が不十分であろうと思います。  もう一点でありますが、施行するときに、実際申し出る人の子供の年齢であります。中学卒業ぐらいのところまで、これは中学生がキレるという話があるのですけれども、お子さんをお持ちの人についてはやはり深夜業の拒否を認めるというように考えた方がいいのではないかと思っております。  退職の事由の明示については、私は賛成であります。  最後に、もう一、二点だけです。  労働条件紛争解決システムという項目が今回ございますが、私は異論がございます。労働基準監督署に個別労使紛争は頼むというのですけれども、私は、労働委員会にお願いした方がいいと従来考えておりますし、今回も考えております。この点につきましては、時間がございませんので、もし御質問があったら述べたいと思っております。  労働者の最低年齢の延長につきましては、国際的基準からいって結構ですし、先ほど言いましたように、日本が外国からの投資を受け入れる条件としての労働法というように考えた場合には、今回の改正は結構なことかと考えております。  最後に、今回の法改正につきまして、見直し規定が入っていないということについて、若干疑問を持つわけであります。  男女雇用均等法や労働者派遣法には、でき上がった法律を何年間か置いて、三年とか五年置いて、その間見て、再検討するという条項があって、それに従って法改正が実際行われているわけであります。今回の法律につきましても、一部につきましては、やはり数年後再検討した方がいいという項目があると私は思います。それは、労働契約期間の上限設定、変形労働時間制、時間外労働の上限の設定、裁量労働制、紛争解決の援助それから労働者への法令周知義務、こういった項目につきましては、数年後は再検討するという見直 し規定を附則の中に入れられてはいかがかと私は考えております。  学者のたわ言、御清聴どうもありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 どうもありがとうございました。  次に、熊谷参考人にお願いいたします。

熊谷金道全国労働組合総連合事務局長

○熊谷参考人 御紹介いただきました全労連の熊谷です。  こういう機会をいただきましたので、私は、政府が提案している法案について、大きく言って四点について、意見を申し上げたいと思います。  その一つは、今回の政府案に対する基本的な評価の問題であります。  労働基準法は、一九四七年、昭和二十二年四月に公布、九月に施行されて以来、昨年までに二十七次に及ぶ手直しがされてきています。とりわけ、これまでの法律の改定、見直しによって、一九八七年には変形労働時間制が導入されていますし、それ以降、その規制緩和だとか裁量労働制の導入あるいはその対象のなし崩し的な拡大が行われてきました。  それでも、これまでの法律改定、見直しは、それらが例外的な規定であるとして、対象労働者なども限定された措置であったというぐあいに思います。しかし同時に、私たちは、それらがいずれ例外から一般化をして、すべての労働者に拡大をされていくのではないか、そういった危険性を予見しながら、これまでの労働基準法の見直しなどについても、その基本的な部分について反対をしてきました。  とりわけ、今国会で審議をされている労働基準法の一部改正案は、ホワイトカラーへの裁量労働制の導入あるいは変形労働時間制の規制緩和に見られるように、これまで例外的な規定であったものを拡大、一般化することによって、労働基準法の第三十二条が定める、一週四十時間あるいは一日八時間労働を超えてはならないという実労働時間規制を事実上空洞化させる、労働基準法の基本的な大改悪と言わなければならないと思っています。  また、法律による対象業務や対象労働者などについての具体的な規定や規制もなく、労使委員会に新裁量労働制の導入あるいはその具体化をゆだねているということ自身も、労働基準法の基本的な性格を根本から変えていくものではないか。そういう点で、私たちは反対であります。  二つ目に、とりわけ政府案についての内容にかかわってでありますが、さまざまな意見がありますが、特に四点について意見を申し上げたいと思います。  その一つは、裁量労働の拡大あるいは新裁量労働制の導入にかかわってであります。この委員会での審議を通じても明らかになっていますように、現在ですら、ホワイトカラー職場を含めて、サービス残業が蔓延をしている、深刻な実態がさまざまな形で指摘をされてきています。しかも、この新裁量労働制、裁量労働の拡大は、今も参考人からも意見がありましたように、現場においては、能力主義、成果主義の賃金や人事管理制度と深く結びついて、労働者をただ働きの長時間過密労働に追い込んでいく。あるいは、年間一万件を超えていると言われているような過労死、その認定すら困難にするようなものである。したがって、私たちはこの裁量労働の拡大には絶対に反対である、これが第一点であります。  二つ目には、変形労働時間制の規制緩和についてであります。これも同様に、一週四十時間、一日八時間労働制を突きまして、企業都合で労働時間を伸び縮みさせる。そして、労働者の健康や生活、雇用を脅かしていく、そういった点で、私たちはこの変形労働時間制の規制緩和にも反対であります。  三つ目に、有期雇用契約の三年への延長については、先ほどの参考人の意見にもありましたように、文字どおり、労働力のジャスト・イン・タイムに道を開きかねない、雇用不安を拡大して、若年定年制の合法化に道を切り開きかねない、こういうものとして、私たちはこれについても反対であります。  四つ目には、他方で、私たち労働者の強い要求として、またすべての労働者の切実な要求として、女子保護規定を廃止をしたこの国会での論戦を通じても多くの会派の議員からも主張され、附帯決議にも盛り込まれた、男女共通の労働時間の規制を、実効性の伴わない大臣告知による努力義務規定として過ごそうとしている。私たちは、これはやはり罰則を伴う法的規制として明文化すべきである、このことを強く要求をしてきています。また、この合意ができるまでの間は、女子保護規定撤廃の施行は延期すべきである、こういう要求で私たちは要請を繰り返してきているところであります。  今申し上げた基本的な点については、先ほど松浦参考人が述べた連合の見解とも共通のものでありますし、その実現は多くの労働者、労働組合の共通で切実な要求でもあるというぐあいに思っています。  三点目に、政府、労働省は、今回の法改正、見直しが、言うなら、労働者のニーズあるいは国際化への対応に呼応したものだということを主張しています。  しかし私たちは、労働者が多様な要求、ニーズを持っているということを全面的に否定するものではありませんけれども、今回の法改正にかかわる中央基準審議会においてすべての労働者側委員が反対をしたにもかかわらず、政府、労働省はこれを無視して、しかも、大臣に言わせると五千数百万のうちの八百万というぐあいに言われましたけれども、千二百万組織労働者のうちの八百万を占めている連合あるいは私どもを含め、千二百数十万の組織労働者の圧倒的多数の労働団体がすべて政府案に反対をしている。そして、その成立阻止の態度を明らかにして、この十五日にも国会周辺での行動など、さまざまな行動を展開をしてきていること。  さらには、日弁連あるいは日本労働弁護団、自由法曹団並びに各地の弁護士会やその会長が反対声明を出している。労働法学者や弁護士が連名で共同のアピールなども各地で出されている。また、二十二日に予定されている日弁連の総会では、改めて反対決議が採択をされる予定だということも聞いています。さまざまな形で、法曹界も挙げてこの法案に反対の態度を明らかにしています。  また、労働界、法曹界だけではなくて、さまざまな市民団体、とりわけ女性、婦人団体も、この政府案に反対をしてさまざまな要求行動を行ってきています。国際婦人年日本連絡会、五十一団体が結集をしていますが、ここには全労連や連合の女性組織だけではなくて、所属組織の違いや立場の違いを超えて広範な女性組織が参加をしています。この団体を含めて多くの諸団体が、この政府案に対して反対という態度を明らかにしながら、切実な要求に基づく要請行動を繰り返してきています。  また、地方議会においても、限られた時間でありましたけれども、大阪府議会、大阪市議会を初め二百七十を超える地方議会が、今度の政府案が労働基準法の重大な危機をもたらすものであること、そして男女共通の時間外労働の法的規制が必要であるということを中心にしながら、決議を採択をしてきている。  このように見たときに、すべての労働団体、多くの団体が政府案を厳しく批判をし、その成立の阻止を要求をしていますむ政府や労働省が本当に労働者のニーズを大切にするというのであれば、政府案を撤回すべきだというぐあいに思っています。また、国際化への対応というのであれば、労働時間関係について何一つ批准をしていないILO条約の批准や、ILOの調査によっても、調査をした百数十カ国のうちの六十カ国近くが時間外労働の法的規制を行っているというような国際的なそういう到達点へ、どう日本の水準を合わせていくのか、あるいは国際公約である千八百時間の実現を具体的にどう進めるのか。これこそ優先させるべきだというぐあいに思っています。  最後に、この間の各会派の議員の皆さんの国会の場での質疑を通じて、政府案の問題点も一層明らかになってきています。したがって、私たちは、国会が、労働者、労働組合の切実な要求にこたえて、さらに徹底審議を尽くしてほしいというぐあいに思っています。できれば、日弁連や法曹界の皆さん、あるいは女性団体の意見を聞く場もぜひつくってほしいと思っています。  また、政府や労働省が、私たちの要求、とりわけ直接この労働基準法の適用を受け、こういう労働を強いられようとしている私たちの要求を受け入れないというのであれば、すべての労働団体、さらには日弁連や広範な法曹界などが政府案に反対しているということを各党各会派の皆さんが受けとめられて、国権の最高機関としての国会の権威にかけても、政府案をぜひ廃案にしてほしいと思っています。  国会の審議の中で、伊吹労働大臣は、時間外労働の法的規制を言うならば、アメリカ型の、不況になると直ちにレイオフ、そういう社会になってしまうではないか、あるいは派遣労働に置きかえられてしまうではないか、そういう形で労働者を恫喝してきています。しかし、その派遣労働の業種の拡大、原則自由化を進めようとしているのも、この雇用不安の中でやろうとしているのが労働省であります。  そうした派遣事業の拡大あるいは現実の労働実態の実情、そういう点についても十分に考慮をされながら、この委員会での徹底審議を重ねて要請をいたしまして、私の意見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 ありがとうございました。  次に、山田参考人にお願いいたします。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 御紹介にあずかりました、中央大学の山田でございます。  本日は、この委員会で意見を述べさせていただきまして、本当にありがとうございます。  まず最初に、私の労働法学者としての総論的な考え方をお話ししたいと申しますか、当然今、労働法学はある意味では大きなチャレンジを受けている時代に来ているわけです。  それは、先ほどありましたように、国際化あるいは激しい企業間競争に企業がどう立ち向かっていくかという問題と労働法が無関係ではないという状況に置かれているわけです。その場合、ただ言えることは、日本の企業は効率性を非常に強くやってきたわけですけれども、反面、公正性が非常に欠けている。したがって、もちろん雇用の場における公正性をどう確保するかということが今後の労働立法に求められている。その場合、効率と公正が二つが並ぶのではなくて、効率を推進する方法も、手段自体も公正でなければならない、そういった視点が必要ではないかと考えております。  現在規制緩和が問題になっておりますけれども、ある意味で、労働法も市場のサポートと見るという見解も出てきているのですけれども、その前に、労働力を商品と見た場合でも、それは生身の肉体を持った人間である。長時間労働をすれば過労死するような肉体を持った人間である。また、差別を受けたりいじめを受ければ悔しいと思う感情を持った人間である。かつ、それは、高齢の親御さんや病気の家族や子供を育てる具体的な人間ということが忘れられてはならないと思います。  その意味で、これからの規制については、先ほどありましたように、労働者が自律しているという意見が最近言われているのですけれども、自律しているというのは、きょう首になっても何ら痛痒を感じない、そして仕事をしたくなったらすぐ仕事が見つかる、それが自律した労働者と思いますけれども、そういう人がいたら見せていただきたいという気もするのですけれども、その意味で、これからの雇用について公正さをどう確保するかということが問われてくるのではないかと思います。  次に、今回の労基法改正の中身の、期間の定めのことについて述べさせていただきたいと思います。  まず、ここで期間を定めることの意味を法的に検討させていただきたいと思います。期間を決めることの意味ですけれども、例えば解雇が非常に自由で、フリーな場合については、期間を決めるということは労働者の保護に、雇用の安定につながるということになります。これは明治の民法の時代、解雇権の規制、解雇に対する規制がなかった時代には、五年契約というのは五年間の雇用を保障することを意味していたわけです。しかし、これが反対に、解雇が非常に厳しくて、かつ労働者の退職の自由が法的に保障されている場合、この場合、期間を定めるということは、むしろ雇用の安定につながらないという意味を持ってくるということになると思います。  したがって、今回の改正の目的が、労働者の意識も多様化していて、特定の企業に縛られることなく専門的な能力を発揮できるために、労働者がそういう状態になるようにするのだと言われているのですけれども、私は、個人的には、労働者というのは、条件がよかったらいますし悪かったらやめるというのが労働者であって、三年の契約を設けることが労働者の価値観の多様化を充足させるものとは、ちょっと考えられないと思っております。  その意味で、この規定はある面で、使用者の方が、企業が三年間は有能な人材を確保しておきたいという法律の趣旨ではないかと考えられます。それは、現在の労働基準法十四条、一年の有効期間についても、例えば現行法でも、三年契約を決めても、三年間は雇用保障期間であって使用者を拘束する、しかし労働者は一年たったら自由に退職できるという解釈が有力になされているわけです。その意味でも、この現行法の規定は、労働者のそういった多様な生き方を保障するというより、むしろ企業の、先ほど井上参考人からありましたように、三年間の試用期間になったり、あるいは企業からすると有能な人材を三年間確保するための手段として意味を持ってくるのではないかと思います。  その意味で、労働基準法の変容と言うこともできるのではないかと思います。従来、当然労働基準法は最低労働条件を設定することによって労働者の労働条件を維持することにあったわけですけれども、ここで企業の効率的な運営を図るためのものに労働基準法の目的が変わってきているのではないかという気がいたします。その意味で、現在の労働者の保護という観点からすれば、現行法でも十分対応できるのではないかと考えております。  次に、裁量労働制につきまして、いろいろな各参考人の御意見がありましたけれども、裁量労働の本質というのは、当然これは労働者が労働の方法や時間配分について本当に裁量性を持っているかどうかということに、それが自己決定できるということに尽きるのではないかと思います。  その意味で危惧されますのは、十分な裁量権を有しないような労働者に対して時間外や深夜労働を強制するような手段として利用されることがやはり一番危惧されることになります。もちろん、現行法でも御承知のように裁量労働制はあるわけです。しかし、現実には、この法律の規定があっても脱法的な裁量労働制というのも少なからず存在するというのは事実だと思います。だから、ある意味で、有効な監督が現行法でもなされていないということが言えると思います。  また、現在、特に前提で問題になりますのは、やはりサービス残業ですね。昔はふろしき残業、現在はフロッピー残業と言うようですけれども、こういったサービス残業が野放しにされている現状で変形労働時間制が適用されることの中で、現実がどういうふうに、新しい裁量労働制がどういった機能を持つかという一つの心配があるのではないかと思います。現に、社会経済生産性本部の調査でも、五二・九%が、裁量労働制が導入されれば逆に導入前より労働時間が長くなるというアンケートが出ております。その意味で、特に対象業務が非常に不明確というところの中でこれを 導入するということは、乱用される可能性が非常に大きいという指摘もなされているんだと思います。  しかし、これについては、労使委員会による決議があるからいいんだという、担保されているという指摘もあるのです。もちろん労使自治というのは非常に大切な原理だと思います。すべて法律で守ってもらうというのは、それは労働組合にとってもよくないことですし、足腰を弱めることになると思います。  ただ、問題は、組織率二二・六%の中での未組織労働者です。多数組合が労使委員会のメンバーになればいいわけですけれども、この数字を見ますと、未組織労働者が労使委員会の委員になることが多くなると思います。その場合、労使自治というのはあくまで労働組合と使用者ですね。団体交渉や不当労働行為制度に担保されたものについて、むしろそれについては労使自治の名にふさわしいわけですけれども、そういったものを持てない、与えられていない労働者代表についてそういった労使委員会にゆだねることは、まさに労使自治の名に合わない制度ではないかと思います。  その意味で、今後さまざまな論点を検討して、裁量労働制については施行を延期していただきたいと考えております。  次に、時間外労働の規制につきましては、過労死が発生するような我が国の労働時間を規制するためには、効果的な時間外労働、労働時間の規制が不可欠ですし、また女性の深夜業が平成十一年四月から解禁されますので、時間外労働に対する十分な規制が求められているということになります。  しかし、改正案によりますと、労働大臣が時間外労働に関する基準を設定する、現在の目安を基準として、法律で明文化することは非常に大きな前進だと思います。ただ、これには罰則もありませんし、またここでは、労働基準監督署は協定当事者に助言、指導をできるにすぎないということ、監督ではなくて助言、指導にとどまるということ。それから労使が時間外労働の限度について労働大臣の定める基準に適合したものとなるようにしなければならない。労働基準法で労働者が義務を課された初めての規定だと思います。  先ほど井上参考人の方から、例えば四百時間という時間外協定を結んだ場合共謀共同正犯になるかとあったのですけれども、もしそういった場合、四百時間とか基準を超える時間外労働などをして労働者が過労死した場合、それはむしろ、今までは当然労災民事訴訟の被告は使用者であったわけですけれども、この協定を結んだ労使、労働者代表もその共同被告になるという議論も成り立ち得るということも言われているわけです。  その意味で、問題はこの労働大臣の定める基準がどういった効力を持つかは必ずしも明らかではない。私法的その基準、労働大臣の設定する例えば三百六十時間という基準設定がそれを上回る労使協定の効力を否定するのかどうかが非常に不明確でもあるということが言えるのではないかと思います。そういう意味で、これからはより効果的な時間外規制を求めたいと思います。  それから最後に、女性に対するいわゆる激変緩和措置について述べさせていただきます。  これに対しては、三年程度の期間について女性の時間外労働の上限を百五十時間とすることを明文化することが望ましいですし、それだけではなくて、一年だけではなくて一週間あるいは一カ月当たりの時間外労働、激変緩和の女性の上限設定も不可欠であると考えられます。さらに、女性労働者の休日労働の配慮がまだなされておりませんので、そういう点に対する配慮も必要ではないかと思います。  最後に、御承知のように、二十一世紀の日本は高齢化・少子化社会になることは明白なわけです。その場合、労働時間の規制の不十分さというのは、労働者の健康を害するだけではなくて、高齢者の介護あるいは子供の育児に大きな影響を与えることになると思います。現在でも、長時間労働のために父親不在の家庭が多くあります。先ほどもありましたように、キレる中学生が問題となっておりますけれども、そこで一つ父親の家庭不在ということが指摘されているわけです。それに対して、さらに来年以降は、平成十一年四月一日以降は女性も深夜業あるいは時間外労働に従事することになると、母親もまた不在になる、そういった家庭になってしまう。  この意味で、これからの労働のあり方は、労働者が安心して仕事と家庭の両立が可能となるような労働時間制度をつくることが求められています。その場合、もちろん労使によって基本的には考えられるべきでしょうけれども、日本の企業別組合という特殊性からすれば、すべて労使自治で決めることはかなり難しいと思います。労働時間について、欧米的な産業別組合でしたら割と用意ドンでスタートできるのですけれども、日本の場合、企業別組合ですので、労働時間についてはなかなか、用意ドンといってもみんな横を向いて少しもスタートしないということが考えられます。その意味で、労使自治を基本としながらもきちっと立法による規制が不可欠になるものと考えております。  以上、私の意見を述べさせていただきました。どうもありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————

田中慶秋民主党

○田中委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者は、質疑の前に、御意見をお伺いする参考人の方の御指名を願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。棚橋泰文君。

棚橋泰文自由民主党

○棚橋委員 自由民主党の棚橋泰文でございます。  まずもって、参考人の皆様方には、本日は、大変お忙しい中お時間をいただきまして、そしてまた貴重な御意見を賜りましたことを、心より御礼申し上げます。  ただいままでの参考人の皆様方の御意見を拝聴いたしまして、また本委員会でこの労働基準法の改正につきまして長時間議論をしていった中で、今回の労働基準法の改正におきます問題点についてはおおよその整理ができてきたような気がいたします。  私も、去る五月八日に本委員会で、特に裁量労働制の導入について、この点を中心に幾つかの質問をさせていただきました。大変難しいのは、きょう御列席の参考人の皆様方、今までの御意見を伺う中で、基本的な認識としては同一だと思いますが、国際的な環境の変化、いわゆる大競争時代の中で裁量労働制等の導入のニーズが強まっているという点については、多分御異論はないと思いますし、また後ほど申し上げますように、ホワイトカラーの現場の中で、先ほど桑原参考人のお話にもございましたが、あるいは山田参考人のお話にもございましたが、公平性の追求というものも必要になっておるような気がいたします。  ただ、松浦参考人の御意見を伺っておりましても私も感じましたし、日ごろ感じますのは、この裁量労働制の導入が、働く立場の者にとっては実質的な賃金の切り下げになるんではないか、そしてまた、この適用範囲が無限定に広がるんではないかという御心配があること自体は、私ももっともだと思っております。  去る委員会審議の中でも、できる限り今回の裁量労働制の適用範囲の拡大に当たっては具体的な業務を明確にしなければいけないという観点から質問をさせていただきまして、労働省の方からも御回答いただいたところでございますが、大変難しいのは、大競争時代の中で我が国の雇用を確保しながらも働く者の立場を守るという難しい調和が求められているわけでございまして、そういう認識のもとに幾つかの御質問をさせていただきたいと思っております。  せっかく参考人の皆様方が御列席ですので、幅広い御意見をいただきたいと思いますが、まずもって最初に、荒川参考人に御意見をいただきた いと思っております。  五月八日の労働委員会、本委員会の審議の際にも私も質問をさせていただきましたし、先ほど御意見を伺っておりましたら桑原参考人の御意見の中にもございましたが、裁量労働制の導入というのは、働く者にとっては、自由な自分の裁量で、そしてまた仕事の成果で評価されるという非常に積極的な側面がある反面、どうしても不安がありますのは、その仕事の成果をどのようにして客観的、具体的に評価するかということではないかと思っております。またそのことが、裁量労働制の導入に当たって実質的な長時間労働を強いたり、あるいは賃金の切り下げになるのではないかという一部の方の御不安にもつながっておるような気がいたします。  私なりの理解でおりますと、特に専門分野、弁護士などの分野もそうでございますし、最近は金融やらそういう分野でもそうでございますが、転職がふえるに当たりまして、その方その方の仕事の評価に対して、経済界の中である程度の基準が固まってきたような気がいたしますが、荒川参考人御承知の範囲の中で、いわゆるホワイトカラー、特に本社等で高度な企画や立案をするような今労働基準法の改正の対象となるような業務の方々が、例えば転職したときでも結構でございますが、その方の仕事の評価をするような基準が、今経済界の中で、ある程度の分野において実質的に確立しているのかどうか、また、確立しているならば、どういう観点からできつつあるのかということを、まず参考までにお教えをいただければありがとうございます。よろしくお願いいたします。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 御質問の点でございますが、社会的にきちっとした基準、評価があって、それに基づいて、移転等につきまして遜色ない扱いがされ得るものが現在できておるかということであろうと思いますが、正直申し上げまして、我が国におきましては、職種概念というのが非常に希薄というんでしょうか、まだまだ形成されていないという点がございまして、労働移動にかかわりまして、社会的な基準というものがなかなかつけにくいということが実態でございます。  その中から、各社とも、これまでの経験、実績、あるいは例えば公的な資格等さまざまな客観基準を抽出しようと今さまざまに模索をしているところでございまして、その中では、労働省が行いますホワイトカラー向けの能力基準づけといったようなことも一つ脚光を浴びてきている。その中から整理がされてくるものではないかと思います。  裁量制におきます転職者の判断、裁量労働者としての転職者の判断につきましても、会社独自の評価制度といえども、だれが見ても一定の理解がされないものについては、なかなか適用がしかねるといったものがこれからの状況になるんではないかなと思います。

棚橋泰文自由民主党

○棚橋委員 ありがとうございました。最近は、いわゆるヘッドハンティング、転職も珍しいことではございませんし、大企業の中では年俸制を導入されていらっしゃる企業も多いような気がいたしまして、ホワイトカラーの能力の評価についても、私は徐々に世の中で通用するような客観的基準ができつつあるような気がいたします。  ただ、先ほども申しましたが、この裁量労働制の導入に当たって、やはり働く現場にとって一番の不安というのは、それが本当に社会全体に通用するような常識までなっているかということが私は一つあるような気がいたします。先般の本委員会の質疑におきます私の質問のときにも、実はそういう観点から労働省の方に、労働省が特に、客観的、具体的基準が世間的に十分認知されるようなものができるまで基本的な旗振り役となって、労使の意見を聞きながら、ホワイトカラー、特に本社の中枢部門で企画やらあるいは立案をするような今改正法の裁量労働制の対象とされているようなホワイトカラーについて、その仕事の成果をはかる具体的、客観的な基準づくりの旗振りをするのが適当なのではないかということを申し上げた次第でございます。  もちろん、行政改革の流れの中で官庁が過大にこういうことに介入することは、私は本質的には妥当ではないと思っておりますが、まだまだこの部分において十分に世間の皆様方に認知されるような基準がない部分には、むしろ労働者側と使用者側の意見を十分に聞くような場を労働省がセットして、その中で労使の合意ができるような基準が形成される、そういうお手伝いをするのはむしろ当然の必要があるのではないかという観点から、私は質問をさせていただいた次第でございます。  そこで、改めて荒川参考人、さらには、大変恐縮ですが、松浦参考人、井上参考人にも御意見をいただきたいと思います。そういった観点から、本改正法の対象とされているような、例えば企業の本社の中枢部門で企画、立案をするような裁量性の高い労働者の仕事の成果、これに対して、特に賃金についてでございますが、具体的な客観的基準あるいは評価項目、こういうものを、労働省が場を設けて、使用者側と労働者側が十分に話し合いができるようなそういう機会をどんどんつくっていくべきだと私は考えておりますが、その点について、それぞれの参考人の御意見をいただければありがたいと思います。お願いいたします。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 裁量労働制につきましては、各企業におきます企画、立案、調査、分析の業務の範囲から、あるいはそこにおきます労働条件、評価の仕方まで、それぞれお会社とそれから対象になろう従業員との間にいろいろな思いがあろうかと思います。法律は、原理原則の部分におきまして律する範囲にとどめていただきまして、その具体的な決めにつきましては、今回の労使委員会におきまして、今先生のおっしゃる内容を全員一致の形で決め、運営をずっとウォッチするというものを育てていくことによって裁量労働制の真の運用がされるものと思われるところでございまして、改めまして労働省で労使の範囲におきまして何か別途の機会を設けるということにつきましては、私といたしましては賛成はしかねるところであります。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 私は、御指摘のように、客観的な評価基準をつくっていただきたい。そしてまた、それができるのであれば、それができてからこれを施行するということにしていただければ、これにこしたことはないと思うわけであります。  御案内のとおり、日本の戦後の経済成長を支えてきたのは、大量生産システムによる社内における社員教育、そして社内の評価システム、社員の人事制度というものに守られて日本のそれぞれの企業は大きな成果を上げ、成長してきたわけであります。したがいまして、それぞれの企業では評価基準を持っているわけであります。しかしながら、社内の評価システムと人事制度に基づくものでございますから、これを社外に公開をする必要がなかったわけであります。  私どもは、今労働移動が非常に急激に大きく、たくさんの人が労働移動をするということから、既に三年前から新しい社会的な評価システムというのをつくってくれというふうに労働省に提案をしているわけでございますし、そうした動きが出てきております。そういったことを早急に実現するためには、それぞれの会社が持っております評価基準を、うちの係長は、うちのマネジャーはこういう評価基準によって定められた管理者です、マネジャーです、役員です、こういうふうに公開をして、情報を交換し合うことによって短期間の間にそうした客観的な評価基準というものはできる、私はこういうふうに考えておりますので、ぜひそうしたシステムを考えていただきたいということであります。  以上であります。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 私は、年をとりまして語音明瞭度が落ちましたから、とんちんかんなお答えをすると思うのですが、ひとつ御了承いただきたいと思います。  私も基本的に今度の立法の形式が少し納得でき ないのですね。裁量労働制については三十八条の三にあって、そこに大臣が命令で列挙している業務があるわけですね。今回の三十八条の四の中のことも本来そこに列挙をできるはずなのですよ。列挙できますよ、労使協議会によって決めた業務と書けばいいわけですから。それを列挙しないで条文を別につくったというのは、これはひょっとしたら大変大きな意味があるかわからない。そこはやはり少し心配する面があるわけなのです。  裁量労働は、もしも本当にこのとおり動けば大変いい制度だと思います。それはやる気を持って働けるようになるわけでしょうから。私でもやはりやる気を持っておったときには、日曜でも、トイレに入っても仕事のことを考えておりました。本当に裁量労働制もうまく進めばそんなふうになるのだろうと思うのですね。  しかし、やはりこれをうまく進めるためにはまず最初に目標を与えぬといけない。目標を指示してその達成状況を評価せぬといけないということがあるわけですね。目標を与える過程においてどうしてもやはり指揮命令、指示が入ってくるおそれがある。本当に自由ということはなかなか難しい。  次に、今度は仕事を達成した評価。今、日本賃金研究センターで楠田丘さんなんかが職能資格給と絡めてやっておりますけれども、なかなか仕事の評価というのは難しいですね。これをどんなふうにやるかということがあるわけで、これについては労働省の指針なんかは将来詳しいものを出してもらえばいいわけでしょうけれども、しかし、客観的な評価というのは私は恐らくできないのではないかと思うのですよ。どうしても人間の評価に対しては主観が入ります。だから客観的な評価は多分できないだろうと思いますね。だから、そういうことも前提にして目標の指示、それからその評価ということを、うまく労働者の方にしわが寄らないように、そういうことを決める場合には労働者も参画をして決めていくということにしていけば弊害も少なくなるのではないかという気がいたします。以上です。

棚橋泰文自由民主党

○棚橋委員 ありがとうございました。  ちょっと質問が不十分だったようなところもございまして、先般、実はこの件についても私が労働省の方に質問をさせていただきましたときに、労使委員会を中心にこの点については議論をしていくという御回答をいただいておりますし、やはりこれは労使委員会で議論をしていかなければいけないのではないかと当然考えております。  ただ、これは私の個人的な考えですが、まさに今の井上参考人のお話にもございましたように、非常に主観的な要素が入るということはもっともだと思うのです。しかし一方で、大変複雑そして高度な、裁量労働制が適用されるようなホワイトカラーの方々の仕事を評価する基準というようなものが、社会の中でコンセンサスができない限り、私はやはり十分な理解が得られないのではないかと思っておりまして、例えばですが、労働省が労使の意見を聞きながら評価基準の項目のようなものを細密にわたって定めるというようなことも、これがガイドラインという形になるのか基本指針という形になるのか、そういうようなことを念頭に実は質問をさせていただいた次第でございます。  それで、質問の仕方が少し不十分でございますので大変恐縮でございますが、今言った観点から荒川参考人と、それと大学の方で大変この点について御研究されていらっしゃいます桑原参考人、山田参考人からも、そういったような基準を労働省が設けたり、あるいはその点についてどういう形で今後社会のコンセンサスを得ていくべきか、御意見があればいただきたいと思います。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 裁量労働制の評価基準につきまして社会的な基準づくりをという御指摘でございますが、企業別におきまして、あるいは産業別におきましても、事業場内におきます企画、立案、調査、分析の業務の中における最も裁量労働制対象らしい方たちの業務範囲から始まりまして、評価につきましては、やはり相当その事業場内でのあるいは会社内での実態の中で当然客観的な評価というものが生まれるのが自然であろうと思います。また、そういう労使による構築をしなければその事業場における真の裁量労働制というのはできないということになります。ですから、私どもの考え方といたしましては、できるだけ当該事業場の労使にその判断をあるいは制度づくりの研究を任せるべきである。  ただ、そうはいっても、何もないということであればどのような形でスタートができるかという不安もいろいろあろうかと思いますので、今回の法の中では、具体的な、労使委員会で取り決める内容の事柄につきまして指針を提起する、こういうことでありますので、その指針づくりにつきましては、当然ながら中央労働基準審議会の場で議論がされて、今先生のおっしゃるような御指摘の部分というものが十分達成できるのではないかなと私は考えております。

桑原昌宏愛知学院大学法学部教授

○桑原参考人 どうも御質問ありがとうございました。ですけれども、具体的な基準のアイデアを出すことができないのです。不当労働行為事件の審決例が参考になるかもわからないですね。  私は地労委の公益委員をかつてやっていたことがあるのですけれども、比較的労働組合活動をしている人が経営者側から差別されているというように労働委員会に救済を申し立ててこられるときに、経営者側が組合活動をしている人については業績評価について差別しているのではないか、しかしその基準について経営者側は、当然正当であるという御主張になる。その場合、判断基準を考えて事実認定をするわけですけれども、そこに出てくるその判断基準、つまり、組合員であれ非組合員であれ、こういう基準で評価をしたところ平等にしたとかしなかったということであります。そういう意味で、不当労働行為事件の地方労働委員会や中央労働委員会での審査の命令集をひもとけば、ひょっとして参考になる項目が出てくるのではないかと思います。  もう一点は、おっしゃいましたように、労働省の方がガイドラインを出すなりするための手続を踏んだらどうかという点についてですけれども、私は賛成ですね。ぜひしていただきたいと思っております。  以上です。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 公平な査定をどうするかという御質問、非常に難しい問題だと思います。  一つには、やはり目標管理の成果を評価する場合にはなるべく数量化して行う、どうしても主観的な基準が入りますので目標管理を数量化するということと、基本の公正さというのはやはり情報公開、基準の公開と、それから、どういう基準がまずあって、そしてどういうふうにあなたに適用したからこういう結果があった、それに対する苦情処理を認める、この三点だと思います。  実はちょっと卑近な話で申しわけないのですけれども、これは我々の大学の学生の答案の評価でも、今の学生は非常に成績を気にしますので、そういうものを評価するときに、この論点については何点であって、それについて基準を設定して、それによって評価していって、あなたの場合にはこれこれこういう基準でここが足りなかった、そしてこれを適用した場合にこういう評価になったのだという、その後の苦情処理においてきちっと、今年俸賃金なんかでも、結局赤ちょうちんで一杯で終わってしまう苦情処理が多いのかもしれませんけれども、オフィシャルな形でまず基準を公開するということが差別をなくす一番大きなポイントではないかと思います。  基準の公開と、それを個人に適用した場合の、どういう理由であなたにこういう評価ができたかというその公開と、それから後の苦情処理の三点をする。  それからまた、目標については、なるべく数量化した具体的な目標を設定するということが公平な評価ということにつながるのではないかと思います。

棚橋泰文自由民主党

○棚橋委員 ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 次に、近藤昭一君。

近藤昭一民主党

○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。  本日は、参考人の皆様におかれましては、本当にお忙しい中、多分大変に急な呼びかけの方もいらっしゃったと思いますが、こうしてお出かけいただきまして御意見をいただけたこと、まずもってお礼を申し上げます。ただ、それぞれの皆さんが大変に短い時間ということで、なかなか思いを述べることができない、そんなところも多分感じていらっしゃるのではないかと思います。  ところで、まず私は、ちょっと大きな話に、大きなというか概論的なことになるのかもしれませんけれども、荒川参考人、松浦参考人そして熊谷参考人にお伺いをしたいと思うのであります。  よく言われます、戦後の日本というのは大変な経済成長をしてきた、そして物質的には豊かになった。ところが、ふと立ちどまってみると、特に昨今景気が悪くなってきた状況の中で振り返ってみますと、どうだったのだろうか。物質的には豊かになったかもしれないけれども、大変に労働時間が長く、なかなか休みもとれない、いわゆるゆとりがない社会を自分たちの中でつくってしまったのではないか、そんな反省もあるのではないかと思います。  ところが、そんな反省をした途端といいますか、反省しているときに景気が悪くなってしまった。ですから、これからまさしく、ゆとりを持っていこう、ゆとりある社会、ゆとりある労働の形態といいますか働き方をしていこうと思ったときに、どうも右肩上がりの成長がとまってしまった。そこで、そういったゆとりある生活というものを見直すと同時期に非常に大きな課題を抱えてしまったのではないかと思います。つまり、景気が悪くなった、ではこれから景気をよくするためにどういう企業、そしてその企業の中における労働者の働き方、こういうものを求めていくかということではないかと思います。  ですから、先ほどお話を承っておりましたときに、荒川参考人におかれましては、経営者の団体の法制部長をされている、ですから、こういう時代なので、働く人の意識も変わってきた、そして景気の状況も変わってきたので、働く人がある意味でいかに働きがいを持ってやっていくか、こういう状況をつくるために今回の労働基準の改正があるのではないか、いわゆる裁量労働等も採用することによって、かえってこれが労働者の人たちにとったはいい状況ではないか、やりがいのある状況ではないかというような主張がちょっと強かったのかなというふうにも思うわけです。  それに比べまして、今ちょっと質問をさせてくださいと申し上げました松浦参考人また熊谷参考人におかれましては、そうではないのではないか。確かに景気が悪い、だからそういう中で、どちらかというと裁量労働というものを採用して企業が労働者を使いやすいようにする、ある意味では本当に酷使すると言うと言い過ぎになるかもしれませんが、企業に使いやすいようにする、企業に使いやすいようにして、企業はこれからも、世界の中でも会社の状況をよくしていく、そのために今回の労働基準法の改正があるのではないか、そんな御意見が強かったのではないかなと思うわけであります。  そんな中で、今ちょっと申し上げました荒川参考人、松浦参考人、熊谷参考人におかれましては、これからどんな労働形態、社会をつくっていくことが本当に我々一人一人にとってのゆとりある社会になっていくのか、それをどうお考えになっているかということをお聞きしたいと思います。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 私ども経営者団体といたしましても、今先生のおっしゃられたテーマにつきまして真剣に考えを構築するべく、日夜、団体運営、団体活動の中でもそのテーマが最大のものになっていると御理解をいただきたいと思います。  私は、働く方々が、働くことの喜びと、もう一つは家族あるいは御自身の生活を豊かなものにする、そういうものをして産業活動に参画していただき、その中から全体の経営活動、企業活動が興隆していく、発展していくという姿が一番のものであろうかと思います。そういう構図づくり、仕組みづくりを真剣に考えなければいけないということだろうと思います。  日経連は、昨年の一月にブルーバードプランという、構造改革の計画でございますが、立てました。その中の最大目標、究極の目標を二つ掲げました。それは雇用の維持拡大と国民生活の実質的向上であります。すべてのことに、二十一世紀に向けた日本社会のありようというものをそこに掲げて、構造改革あるいはさまざまな取り組みをしなければいけない、それを具体的にしていこうというふうにしたところであります。  働く豊かさもその中の最大のテーマでございます。そして、今回の労働基準法にかかわりますれば、働く方々がこれまでの非常に他律的な、あるいは定型的な、画一的な働きようというものから、みずからをして創造的で、かつさまざまなチョイスがある、そのチョイスの中から仕事と家庭、あるいは仕事と個人の生活、あるいは仕事と社会生活とのかかわり合いを持っていくようにしていくということになろうかと思います。  今回の基準法の中では、一方、さまざまにこれまでの形とは違ういわば規制を外した形になりますが、それは選択肢の拡大でありまして、その選択肢の拡大というのは、さまざまな創造性あるいは自律的な動きを可能にするものである。もちろんセーフティーネットがそこには必要なことは私ども十分わかっておりますが。まして、今回の法改正の最大の目玉、目的は、働く方々の自律的、創造的、弾力的な、多様な労働の環境をつくるということに資するものと思っております。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 私どもは、日本の子弟の高学歴化が進んだということ、したがって就労意識が非常に変化をして多様化をしている、あるいは価値観についても変化をしている、こういうふうに考えておりますし、もう一つは、現役世代におきましても、就労期間が、定年が五十五歳から六十歳になり、厚生年金の受給開始はやがて六十五歳になるということから、生涯における就労期間は四十三年あるいは四十七年というふうに非常に長くなっているわけであります。  したがいまして、これまで労働者は、自分の性格や仕事の向き、不向きを企業に合わせる、そしてその企業の中で生涯を安定的に過ごすといった意識、認識から、もう少し自分が生かせるような仕事につきたい、そういうふうに就労意識の方も変化をしている、こういうことでございます。  そうした状況のもとで、バブル経済がはじけまして以来、国際競争力の強化という視点で、経営側の方の雇用形態も非常に多様化をする、こういうことになっておりまして労働移動が流動化をするという、経営の事情で、これまで長い間勤めてきた人たちについても、新しい事業を起こす、新しい機械、設備を導入するから、それに即戦力として活躍できる人を採用するので長い間御苦労さんというふうに、経営の側が非常に雇用の不安定化を志向されている、こういうことでございます。  したがいまして、私どもは、基本的には、雇用の安定のために、それぞれの企業においてこれまでと同様に長期継続雇用、企業の中での配置転換についても、企業内教育をやって積極的に企業の中で雇用を保障する、そういった施策が求められると考えております。  もう一つは、労働移動が柔軟にできるような支援施策についてもぜひやっていただきたい。まず雇用の安定がなければゆとりの実現はできない、このように考えているわけでございまして、私どもは、これからは物財的な欲求を満たすということよりも、家族との生活、地域社会における生活、そういったものも同時に享受できるような、ゆとりと豊かさが同時に実感できる、そういった社会、労働生活というものを求めていきたいというふうに考えております。  以上であります。

熊谷金道全国労働組合総連合事務局長

○熊谷参考人 まず、大変大きな質問と両方あったというふうに思いますけれども、私も最近の経 済情勢を見たときに、従来型の右肩上がりあるいはパイを大きくしていく、そういう経済政策を引き続き続けていくということは、もはやそういう立場をとるべきではない、むしろ、この間のさまざまな経済政策の中でつくり上げられてきているゆがみや矛盾、これをどう是正をしていくのか、このことが大変重要になっているのではないかと思っています。  例えば今、地方、地域を見ても、農業が切り捨てられる、あるいは、大規模店舗法の言うならば今度廃止という方向になってきていますが、大規模店の進出により地域の商店街が軒並みシャッター通りというような状況がつくられているような日本のさまざまな社会的なゆがみ、そういうものをどう是正をしていくのか、このことが今大変大きく求められてきていると思います。  また、労働者にとってみても、時間がありませんので申し上げますけれども、今も、雇用の流動化だとか多様な雇用形態、あるいは労働力流動化の一層の進行が少子・高齢化社会の中で言われていますけれども、私はそれだけに、その中に貫かれていく最低労働基準なりナショナルミニマムというか、そういうものをもっとやはり重視をすべきだ。  とりわけ労働基準についていえば、組織率の低下ということももちろんありますし、一方で、日本の労働組合の組織形態が企業別労働組合ということで、欧米のように労働組合と経済団体あるいは企業との間の労働協約が労働者の中に波及をしない、組織率と労働協約の適用率がほぼ同じぐらいというような事態の中では、やはり下支えとしての最低基準を法的に規制をしていく、このことの重要性は引き続き変わらないのではないか、そのことがまた今逆に、さまざまなゆがみや多様化の中で求められているのではないかと思っています。

近藤昭一民主党

○近藤委員 本当に大変大きな質問になってしまったのかもしれませんが、それぞれの方の貴重な御意見をいただくことができまして、ありがとうございます。  その中で、私はちょっと感じたのですが、荒川参考人におかれましても松浦参考人におかれましてもだと思うのですが、大変に経済の状況がよくなくなってきた、そういう中でより経済を活性化していく、そしてまた一人一人が豊かに働いていくためには、多様な働き方があるだろう、選択肢があるだろうということではないかと思います。  ただ、そこにおいてちょっと観点が違うのかなと思いますのは、働くいろいろな選択肢が必要だ、ですから、今回の労働基準法の改正の中でも大変に裁量労働の部分が大きな論点になっていると感じるわけでありますが、この裁量労働について、今の三人の方から聞きました御意見を踏まえながらお聞きしたいと思います。松浦参考人と井上参考人にお聞きをしたいわけでありますが、今の多様化の問題の中で、一番今回クローズアップされております裁量労働についてであります。  裁量労働が一つは労働者の創造性を発揮する、やりがいがあるということの促進になるのかもしれないという御理解は、今三人の方、お聞きした中でもあったのではないかと思うのですが、ただ、労働基準法というものが、本日参考人の方からお話を伺っておりましても、やはり規制をするのだと。ある意味で歯どめだと思うのです。その歯どめの側面があるにもかかわらず、今回の裁量労働の改定ではどうもしっかりと歯どめになっていないのではないか、そういうところがあるのではないかなと思うわけです。  そういう意味で、サービス残業の実態、そしてまた過労死の実態にかかわってくる、つまり働き過ぎというか際限なく働いてしまう、いわゆる時間管理の問題だと思うのですが、こういったことで考えますと、今の一般の会社でも、管理職というのはある意味で裁量労働をしている。こういう裁量労働をしている人たちの中には、多分、今申し上げたサービス残業、過労死、そしてノイローゼみたいな問題も出てきているのではないかと思うのです。  そういった意味で、現在のそういった働く方々の実態について、松浦参考人、井上参考人にお話を伺いたいのであります。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 御指摘のとおり、今回対象となりました本社あるいは本社に準ずるようなところの重要な事案を決めるという、その分野における企画、立案、調査の業務というのは、現在非常に重要な役割を果たしているところでありまして、例えば、経営方針を決める、それからシーズンごとの販売計画を決める、あるいは資材の購入計画を決める、そういうような位置づけにあるところでございます。この職場につきましては、私どもの調査では、他の職場に比べまして一番サービス残業や就労時間が長いという、代表される職場の一つであるのは間違いないわけでございます。  まして、これにつきましては、期間が区切られる。例えば株主総会に向けて、それから年度末に新しい年度における経営方針を決めるという、これは、その時期が決まってくるわけでありまして、一年を通じてそういったものを立案をするということができないわけでありまして、足元の状況を見て次年度の方針を決めるということから、極めて短期決戦という、そういう職務分野になるというふうに私どもは判断をいたしております。  したがいまして、今定められているような職務区分では、経営者がそれぞれの職務明細の中に調査であるとか企画であるとかいうものを挿入することによって、ホワイトカラーの職務分担者の中すべてがその対象になり得る、こういうことが危惧されるわけでございます。  企業経営というのは、それぞれがおよそどういうような業務をやるかという職務明細というのが定められているわけであります。したがいまして、その職務明細の中に、それぞれの業務が非常に多様化しておりますから、その中に一つ調査とか企画あるいは立案というような項目を書き込むことによって、使用者の自由にどこの職場でもが対象となり得るというような現在のままのシステムではとても容認ができない、こういうふうにお答えしておきたいと思います。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 裁量労働の問題ですが、現在、裁量労働で非常に成果を上げているというのは、恐らく中央官庁のキャリア官僚だろうと思うのです。やる気になれば本当に時間構わずあんなふうに一生懸命やって、しかも賃金というのは、必ずしも超過勤務手当を一〇〇%もらっていないという、まさに裁量労働そのままですね。  現在の労働基準法の悪い点というのは何かといいますと、能率の上がらない人ほどたくさん給料をもらう面があるわけなんですね。優秀な人は八時間どころか七時間でやっちゃう。逆に、やる気がないとか、やる気があっても能力がない人が十時間かかってやっとやった場合には二時間の時間外労働割り増し賃金をもらう。これが、一番今の労働基準法の問題点であろうと思うわけなんですね。だから、そういう点は、いわゆる裁量労働的な考え方によって変えていかぬといけないと思うわけですが、しかし、現在の裁量労働の現状は、自殺とか過労死とかいうのがいっぱい出ているから大変問題である。  だから、これを将来変えるためにどうしたらいいのか。一つは、結局、今度のみなし時間の中では消化できないような目標を与えないような、指示しないようなやはり機構をつくらぬといけないでしょうね。どうしても一晩じゅう、うちに持って帰ってやらなければ消化できないというような目標を与えられたら、これは大変ですから。そういう目標を与える場合の何かブレーキを考えるというのが一つです。  それから、いろいろな指示をしないこととそこにありますけれども、しかし、それは実際には、グループで仕事をする場合には実行しにくいから、そういう裁量労働制を導入した部署については部長も課長も置かないということでもしないといけないだろうと思います。そうでない限りは、やはり無制限な労働に走る。現在がまさにそうで、その無制限な労働に走るところは、また労働時間の記録も全部ないというところなんですね。 そうなんですよ。だから、まことにそれはおかしい。  だから、もし裁量労働制を導入する場合でも、やはりその対象労働者には、自分で自分の時間は必ず記録してもらう。それを労使委員会で点検して、みなし労働時間をどのくらい超えたかということをそこで調べて迅速に対応するという制度的な保障をしておかないと、とてもとても導入しても労働者は大変な目に遭うというふうに感じます。

近藤昭一民主党

○近藤委員 ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 各参考人の皆さん、本当に本日は御苦労さまでございます。時間が限られておりますから、即質問に入りたいと思います。  最初に連合の松浦参考人にお伺いしたいと思うのですが、実は今回の労基法の改正、ずっとこの労働委員会でやっておるわけであります。やはり、今回の労働基準法の改正が社会経済の変化に対応した主体的な働き方の新しいルールをつくるんだというような観点でずっと議論をされておるわけでありますが、どうも流れからしますと、労働基準法はほぼ定着をした、基準行政は。したがって、これからは労使自治といいますか、そういう流れが——中には能動的自主参加型の労使自治というような話も出たりいたしまして、そんな議論もあるんです、私は必ずしもその議論に賛成ではないわけでありますが。  連合さんにお聞きしたいのは、今回まさに労使自治という部分が随分この基準法の改正の中で重きをなしているように思うのですが、そんな中で、特に、裁量労働制の労使委員会なるものは、今までの労働組合の運動とどういうふうに位置づけられるのかというのは大変私も当初疑問に思いました。組合の組織率も極めて低くなっているという議論もあり、伊吹大臣からは何度も、エールといいますか、連合に対して、本当に組織率がもっと高くなるような、多くの労働者を糾合できるような労働組合、労働団体に育ってもらいたいというようなことも伊吹大臣は、どういう心かは別にして、盛んに何回も言っておられます。そうした状況の中で今回基準法の改正をやっている。  この基準法の改正を通じて、労働組合のあり方としてどんなふうに今考えておられるのか、最初にお尋ねをしたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 私どもは、大きく変化をする雇用、労働環境のもとで、これに対応する新しいワークルールをつくるということと、そしてこうした厳しい条件下で未組織の労働者が極めて厳しい労働条件を押しつけられているという実態を踏まえて、一日も早く労働組合の組織率を上げて、連携をして、雇用と労働条件の安定、強化に努めてまいりたい。こういうような取り組みを今他方で進めているところでございますし、これからも極めて重要な課題だというふうに認識をいたしております。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 僕が聞きたかったのは、労使委員会なんというのはある意味では組合がしっかりしておれば必要ないかもしれない、そんな議論もあるわけでして、本当に、これほど組合の組織率が少なくなっている中で、これからの基準行政をどうしていくのかということを考えた場合に、労働組合側から見た今の厳しい状況あるいは変化の状況の中での思いというのがもっとおありじゃないかな、こう思ってお尋ねしたのですが、重ねて、何かありましたら簡単に。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 当然のことながら、どういうような雇用環境になりましても、労働基準法というのは雇用、労働条件の最低の基準を決めるものでございます。  したがいまして、一部経営者が、労働者の側にも新たなニーズが出てきた、いわゆる多様な働き方を求める声がある、また経営の方は、大競争時代において、それぞれの働かせ方について工夫をしながら生産性を上げていくということが必要だと言われておりますが、私は、そういった経営側のニーズや労働者のニーズにこたえて新しい労働基準をつくる場合にも、その基準については極めて客観的に明確な設定をしないと、使用者側が自由勝手に裁量でその適用の是非を決められるという、そういうような基準であってはならない。あくまでも、労働基準というものにつきましては、こういった状況、労働組合の組織率が例えば高くなりましても、やはりこれについてはもう不必要だということにはならない、そういうようなものだというふうに考えております。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 続きまして——その前に、おまえは話をする前に所属政党ぐらい言えというふうに理事から怒られましたので、平和・改革の桝屋敬悟でございます。よろしくお願いいたします。  次は裁量の問題でありますが、本日、裁量の問題を井上参考人それから松浦参考人に御意見をお伺いしたいのです。きょう井上参考人のお話を伺いまして、まさに裁量労働制は、今新しい裁量労働制度を導入してもほとんどは大企業だろう、大企業しかメリットはないし、中小企業についてはなかなかやれるようなものではないというような話を先ほどるるいただいたわけであります。  ただ、先ほどの井上参考人のお話では、三十八条の四、新しい項目を立てた今回のその立法の意義というのは大きなものがあるかもしれない、こんなお話もありましたし、あるいはまた、今回、本社機能だけではなくて、各事業所単位でも新しい裁量労働制は導入できるわけでありますから、本当にある意味では多くの労働者が心配されています。ホワイトカラー全体に今回制度を導入したら広がるのではないかという危惧もありますが、先ほど井上参考人がおっしゃったように、中小企業ではほとんど無理だろうというような状況にあるのかどうか、もう一度御意見をお伺いしたいと思います。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 お答えします。  中小零細企業、中小企業法でいいますと三百人以下の企業ということになりましょうか、そういうところでは、あの新しい三十八条の四に書いてある要件を充足するような労働者はいないというふうに、私は実際に見て回ってそういう感じがいたします。  もちろん中にそういう人がおりますけれども、そういう人は、労働基準法の第四十一条で言う監督管理者だから、八時間労働制とか週休制の適用は今でもないわけなのですね。何も裁量労働制というものを別に持ってこなくても、現在の中小企業のそういう管理監督者はすべてに時間のあれは適用はないのですから、だから、何でそれをやるのか。  だから、結局、従来の管理監督者のほかにまたもう一部の労働者をつくるわけですね。これは恐らくキャリア制度になるおそれがある。さっき言った、複線型の人事管理をやるのがいいということを三和総合研究所の研究の労働省に対する報告にも書いてあります。  そういう点で、中小企業、零細企業にはほとんどメリットはないと断言してもいいと私は思います。大企業でも、メリットはあってもそんなにたくさんは恐らくないだろうという感じを持っております。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 今回の新しい裁量労働制、先ほど……(発言する者あり)連合の松浦参考人には具体的にお尋ねしたいことがありますから、後ほどお尋ねいたします。恐縮です。  それで、先ほどの井上参考人の、それこそ中央官庁のキャリアはほとんど裁量労働制だという話を聞いて、思いも新たにしたわけでありますが、今回、我々この委員会でも随分裁量労働制、やはり私自身もそう思いますが、新しい裁量労働制については、導入に当たっては慎重にやらなきゃいかぬ、もっともっと検討することがあるだろうということで、対象業務であったり対象労働者は随分議論をしてきました。  とどのつまり、すべては労使委員会なるものにこの問題は帰着するわけでありまして、新しい裁量労働制が導入される場合は労使委員会がどう運営されるかということが極めて大事なような結論になっているわけでありまして、そういう意味では、先ほどのお話では、井上参考人からは労使委 員会は共同正犯だという、こういう厳しいお話もいただいたわけであります。  やはり新しい裁量労働制を導入するとすれば、本労使委員会が健全に機能するにはどういう条件が必要なのか。もちろん法案の中にもいろいろ検討はされておりますけれども、御意見がありましたら、井上参考人と松浦参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 労使協議会の場合は、これは過半数決定ではなくて、全員が全部賛成しなければいけないとなっておりますね。だから、その範囲では、いかにも過半数決定ではないから非常にいいという感じがしますけれども、しかし、労使協議会の労働側の委員を選ぶときに過半数で決めれば、やはり結果的には一緒なのです。  そうなると、いわゆる過半数に達しない労働者は常に不利益をこうむる。女性労働者、それから非正規のパートだとか臨時工というのは、これが過半数を占める事業所は余りないわけですから、ほとんどが正規労働者が選んだ委員が労使協議会に出てくるわけです。そこで全員協議で決めても、やはり過半数に達しない。一人でも少なければだめなのですから。だから、過半数に達しない労働者の意見はなかなか実現できないのではなかろうか。いわゆる会社側が提案することが多いでしょうから、こんなものどうだろうかと言えば、やはり正規労働者としては、それはいいですねということになりやすい、特に労働組合がないような場合は。  だから、私は、労使協議会というのをもしも導入してつくる場合には、やはり労使協議会の労働側の委員というのは過半数ではなくて、少なくとも、さっき言いました労働組合法の十七条の精神からいっても四分の三以上の労働者の代表でなければいけないというぐらいに厳しくすれば、幾らかブレーキとしての役割を果たせるのではないでしょうか。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 労使協議会とおっしゃったのは、労使委員会の御返事だろうと思うのですが。  それから、ごめんなさい、松浦参考人にお伺いしたいのは、もちろん連合の皆さんは今回のこの裁量労働制の部分については本当に真剣に検討されておられると思います。導入に対して大変に厳しい御意見もあるというのは伺っているわけでありますが、もしこの制度を導入するという前提に立った場合に、この労使委員会、これの性格といいますか、条件といいますか、これが健全に運営されるにはどういうふうなお考えがおありなのか、将来にわたっての御意見でも結構でございます、聞かせていただきたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 一番初めに出されました質問の関係についても触れさせていただきたいと思うわけであります。  一つは、現行の三十八条の二の四で規定されております裁量労働制については、極めて専門性の高い職種で、対象が限定をされております。今回新しい制度として導入されようとしておりますのは業務で特定をしようとしているという、職種と業務というところに極めて大きな差がある。しかもそれは、通常も会社機構の中にあります管理機構の中に入った、非常に多能工化した、いろいろな仕事を、一つだけ仕事をするということではなしに非常に広がりのある仕事をする、そういう形態になっている、そういう実情の中で業務を対象とする、こういうことでございます。  大企業でありますと人数が多うございますので、本社でも、多能工化は進んでおりますが、非常に専門性の高いそういった専門部、企画、立案、調査という部についてはそういった専門部があるところが多いわけでございます。しかしながら、中小企業では、そういった特性、専門的な分野が非常に特定をしにくいということがございます。したがいまして、今回この制度が導入されますと、中小企業に非常に使い勝手がよくなる。大企業では、もう特定をされておりますから、特定は比較的容易にできる。しかし、中小企業の方が、こういう制度を導入することによって非常に経営者側が使い勝手がよくなる、こういうふうに危惧をしております。  それから二つ目は、機能する条件でございます。  これは、極めて端的に申し上げまして、一つは労使委員会の労働者代表の委員の選出方法について明確にしてやらなければならない。いわゆる全従業員がその選出に関与できるシステムをつくるということであります。  それからもう一つは、委員の権利の明確化ということであります。現在、日本の労働組合では、ドイツの参審制の中での従業員委員会制度と同じように、経営の方針あるいは考え方が示されますと、労働組合が後ろを向いて、従業員、組合員に対して会社の経営方針を説明し、問題点はないかどうかということを明確にして、そして問題点について解決するための労使交渉、労使協議をやる、こういうことになっているわけなのです。  したがって、今回、労使委員会を機能させるために、その権限を明確にして、そして従業員に対してその是非について、実行した後の問題点の把握と、そしてその問題を解消するための権利を明確にしてやらなければとても機能はしない、このように考えております。  それから、もう二つございます。  もう一点は、委員の任期を明確にして、責任が果たせない場合には従業員がその任期が終了した時点で選任をし直すという権利を与えてやらなければならない、このようにも考えております。  もう一つ、当然のことながら、そうして従業員の意見を代表して、反映をするわけでございますので、会社の方針、意に沿わない場合には不利益取り扱いがされるということが危惧されるわけでございます。したがいまして、そうした委員の不利益扱いの禁止ということについても明確にする必要があるということをお答えしておきたいと思います。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 ありがとうございます。  それでは次に、井上参考人にもう一点お伺いしたいのですが、先ほどの御説明の中で、例の契約期間の問題、三年契約の話がありました。即戦力の人を採るだろうという話、よい人は継続し、そうでない場合はそこで打ち切り、本当に使い勝手のいい仕組みになってしまう、こういうおそれのお話もありました。  それから、大事なお話は、最も欲しいのは中小企業なんだけれども、中小企業はなかなか来る人もいないだろうし、難しい話があるのじゃないかということで、雇用助成制度もやはりあわせて検討する必要があるというような御見解がおありでございましたけれども、中小企業にどんどんこれが広がっていいとは私も思っていないのですが、しかし、新しいこれからの時代の形態として中小企業がもし取り組む場合は、具体的な雇用助成制度、どうしたことを考えればいいのか、御意見をいただきたいと思います。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 三年契約の関係のことですが、私は、この制度は中小零細企業こそ本当は必要だと思うのです。新しい事業を展開したり、事業を廃止したり、いろいろな場合、そんな専門家は中小企業こそいないですよ。大企業は逆に、その労働者がいない場合と書いてあるのだけれども、そんなことはまずあり得ないと思いますよ。いろいろな専門家がいますから。本当にそういう欲しい専門家がいないのはまさに中小企業、零細企業ですよ。しかも、日本の労働者の六〇%以上は中小企業で使っているわけですから、そこがつぶれたら大変ですよ。それをつぶさないためには、まさに三年契約は中小企業でこそ活用すべきだ。  しかし、中小企業に頼まれて三年契約で行こうという気にはなかなかならないと思いますね。中小企業は多産多死で、たくさん出てきてたくさん廃止されていますから、危ないですよ。果たして、行って給料さえももらえないかわからないですからね。  だから、やはりそれをきちんと機能させるためには、新しいそれを保障する制度をつくらなきゃいけないですね。中小企業の企業主側にも使いやすいように、例えば雇用保険三事業からいろいろ な補助金を出すとか、それから税法上のいろいろな特例を設けるとか、やらなければいかぬ。また、三年契約で行く労働者も、三年過ぎたら、いや過ぎる前だってっぶれるかわからぬですから、そういう場合に保障する制度をやはり雇用保険なり何なりでつくっておかないと、労働者も使用者も両方とも安心してこの制度を活用できないですね。  私は、中小零細企業にはぜひ必要だと思いますから、だから、やはり、これはもし導入されるのだったら、将来そういう中小零細企業が活用できるように、税制だとか金融だとか、それからいろいろな補助金を十分考えるというようにしてほしいと思います。

桝屋敬悟平和・改革

○桝屋委員 ありがとうございました。  以上で終わります。

田中慶秋民主党

○田中委員長 次に、青山丘君。

青山丘自由党

○青山(丘)委員 当労働委員会では相当な議論が既に進んでおりまして、大分各論にもう入っておりますが、余りにも原点、総論になるかもしれませんけれども、桑原参考人に、先生はカナダのアルバータ大学で日本の労働法について教鞭をとっておられると聞きましたが、日本の労働法制全体に対するカナダの評価、どんな見方で見ておられるか、受けとめておられる範囲で結構でございますが、お話しいただけませんか。

桑原昌宏愛知学院大学法学部教授

○桑原参考人 ちょっと答えられないのですけれども。つまり、私が向こうで教えているのは日本法でございまして、労働法はその一部にすぎません。  そうですね、思い出しました。学生諸君には、院生、まあ弁護士になる方々ですから、院生諸君が学期末に出すレポートを見た、七年間やっているわけですけれども、そのことを思い出して簡単に報告させていただきますと、日本的労使関係の安定が日本の経済の発展を支えてきた、こういう紹介の多くの本が出ておりまして、それを学んで、それについてカナダとの比較をして書くという趣旨のものが多いと私は思います。  カナダも州によって違いますけれども、例えばブリティッシュ・コロンビア州などですと、イギリスの労働運動の力の影響があるものですから、むしろ階級闘争的といいますか、労使対立をベースにした労使関係ができ上がっておりますので、そちらから来た院生諸君にとりましては、彼らから見れば、日本的な協調的な労使関係がいいという判断をしている人も少なくありません。  法律はそういう労使関係をつくる枠組みをつくっているものだというように私も話をし、理解をしているものですから、そういう意味では、どういう評価をしているかということになりますと、今申し上げました日本的労使関係を形づくる法的な枠組みとして評価ができるというふうに考えていると思います。  しかし、もう一点加えなければならないのは、実は「過労死」という本が、半分英文で半分日本語のものが出版されておりまして、それは図書館に入っております。したがいまして、日本的労使関係の一つの結果として過労死があるのかという質問をしたりレポートに書いてくる院生は間々あると私は記憶しておりますので、そういう側面からする、つまり過労死を許容する労基法という評価は、私としてはそれは短絡的過ぎると思いますけれども、それと関連づけて理解をしておる学生が出る余地がある、実際出ておるということでございます。  どうもありがとうございました。

青山丘自由党

○青山(丘)委員 先ほど先生が意見陳述された内容については、後で少し触れさせていただきたいと思います。  荒川参考人と松浦参考人に対してお尋ねをいたしたいのですが、日本は、一定の時間から一定の時間まで会社なり事業所なり作業場なりで働いていくという労働慣行がずっとありました。その中で、最近ホワイトカラーの労働者の中には、労働時間の配分については自分で決めていきたい、仕事の進め方についてもできることなら自分の判断で進めていきたい、余り上司の命令に従っていくという働き方を好まないで、自分としては、自分の判断をできるだけ職場が認めてくれて、そしてその職場で大きな成果を上げていきたい、それは必ずしも長時間労働を意味しておるものではなくて、時間を短縮できるものなら自分の努力で短くしていきたい、そういう考え方の方が最近出てきているというふうに私は受けとめておりますが、荒川参考人と松浦参考人、どのように受けとめておられますか。

荒川春日本経営者団体連盟労務法制部長・婦人少年問題審議会委員

○荒川参考人 ただいまの青山先生の御感想、まさしくそのとおりだと私は思っております。  働き方につきまして、たくさんの方のいろいろな思いが、今までとは違って、たくさん幅広く多様に出てきております。先生のおっしゃるとおりの働き方を求める方が出ていらっしゃいます。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 そういったニーズを持った人がふえているということについては、私も同感であります。  しかしながら、これにつきましては、外国とは違って日本の場合には、契約環境も違いますし、それから社内の人事制度というものについても非常に外国とは違いがありますので、なじまないというふうに判断をいたしております。

青山丘自由党

○青山(丘)委員 今回の裁量労働制の対象業務の拡大について井上参考人にお尋ねいたしたいのです。  労使委員会が適正に運用されることが労働者の声が一番きちっと反映されることになる。問題は、労働者の声がどのように労使委員会に反映していくのかということになりますと、労使委員会を構成する委員の選任のシステムが非常に重要になってくると思います。先般来、我々の議論の中には、過半数の労働者から代表がまず選ばれる、その代表が、労使委員会に出席をする労働者側の代表の選任といいますか決定というのですか、選ぶ、その選ばれた委員の候補者は労働者の過半数の投票を得る、支持を得るというシステムがよろしいというふうに思われておりますが、井上参考人はどのように受けとめておられますか。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 私は、その労使委員会がどのような構成になろうとも、余り評価しておりません、はっきり申し上げて。仮に五分の四の労働者の代表者が委員に出ていっても、何といいますか、協議する内容は非常に難しいです。これは、高度に労働基準法のあの新しい条文を理解しなければ判断できないと思うのですね。  実は、三日前に監督官の代表が私に会いに来まして、もし今度これが通ったら、どんなふうになったらいいのだろうかと。もしも労使委員会がこれは裁量労働者だといって決めてみなし労働でやった、ところが実際は法文の解釈上はそうでなかったどいった場合には、一体それはだれが違反なのだ、会社なのか、労使委員会なのか、それはさっき言った共犯なのか、その判断は実際上は監督官でもやりにくいというわけなのですよ。  だから、私は、労使委員会がどのような構成であっても、最高裁判所の裁判官みたいな人ばかりがみんな集まってくれば法律の解釈についても問題はないかもわからないけれども、最高裁の裁判官の判例さえも変わっていくわけですから、なかなか実際上は難しかろうと。だから、もしもこの裁量制を導入する場合には、労使委員会の委員に対する教育の徹底ということを国としても十分やらなければ、到底これはうまく動いていかないと私は考えております。

青山丘自由党

○青山(丘)委員 桑原参考人は労使紛争について十数年労働委員会で携わってこられたと聞いておりますが、そんなことを考えて、労使紛争の解決のシステムは労働委員会がいいであろうというふうに先ほど申されたわけですが、その点について触れていただいても構いませんが、その前に、今回の裁量労働制について、今各参考人の皆さん方から聞いてもなかなか意見がまだ一致しておりません。  それは、やはり裁量労働制なるものがどういう実態であるかという概念がまだどうも労使側に定着しておらないような気がいたします。一部には十分理解ができておるかもしれませんが、ほとん どはまだ十分ではないような、もう少し慎重に議論をすべきだというふうにお話になったような気がいたしますが、もう少し慎重にすべきだという点について、先ほど、まだ裁量労働制の範囲が不明確だとか、時間外勤務手当の支払いについての免除のイメージがこれで強くなっていくのかとか、その他について触れられましたが、いま少しそのあたりをお話しいただきたいと思います。

桑原昌宏愛知学院大学法学部教授

○桑原参考人 裁量労働制度を導入することに拙速であってはいけないと私考えておりまして、その理由等の一つとして、今議員が御指摘になったり、ほかの意見陳述の中でも既に見受けられるところであります。  裁量労働について、先ほどおっしゃいましたように、そういったホワイトカラーの労働者がふえてきたことは事実だということでありますけれども、そのことについて、社会的なコンセンサスは得られないにしても、多くの人がそれとしてわかるような事態になってきているかということになってきますと、私どもは疑問に思っております。こういうように法案が出てきましたのでマスコミも問題にし、新聞も書き、週刊誌も書きということで、国民の方々が、いわゆるホワイトカラーでない方々もそのことについて理解を深める、そういう時間がもう少し要るのではないかと私は考えております。  それからもう一点。それに関連して一点だけつけ加えたいのですけれども、別のある学者が指摘しているのですけれども、この裁量労働の考え方は、労働基準法が制定されたときに提案されたことがあるのだそうですね。しかし、そのときにこれは結局撤回されたという立法経過があるそうであります。  それで、その理由が幾つかあるのです。一つは、やはり裁量労働の範囲がはっきりしないので乱用の危険があるという主張も当時昭和二十年代にあったそうでありますが、それ以外に、労働基準法の労働時間の部分、具体的には当時は四十八時間ですけれども、その規定を裁量労働の人には適用しないということですね。割り増し賃金を払わなくていいということですから割り増し賃金の規定も適用しないということですね。そういうように労働基準法の根幹になる規定が適用されない労働者群が、当時多かったかどうかわかりませんけれども、できるということは、労働基準法というものはもともと労働者の働く基準を決めているのに、それから一部であれ適用されない労働者が出てくるということについてはいかがか、基準法は我々の基本である、そういう発想からだという指摘が当時あったのだそうですね。それが最近の雑誌で紹介されております。これはかなり重要な問題提起が出ていると思います。これも一つの議論の仕方です。つまり歴史を調べるという意味ですね。  ですから、裁量労働については、今回はまさしく適用対象、裁量労働は従来から、昭和六十二年からあるわけですから、それに一つ加えただけだという理解もできますけれども、まさしく井上先生がおっしゃられましたように、新しい条文をつくったことは、将来の展望を立法者も、立法者といいますか提案者も考えているかもわからずという意味も含めて、ホワイトカラー一般に広がる危険があるのかないのか自身も今後も少し議論をしたらいい、そういう意味で、時間をもう少しかけた方がいいのではないかと考えております。これが第一点。  第二点は、労使委員会の件でございますけれども、私ら、いわゆる学者ばかなのでしょう、制度改革があると、おもしろいといいますか、これはひとつ実験的にというふうに私などは考える、その成果を見たいなと思うわけであります。  労使委員会は、実は日本労働法学会で、ドイツの制度、私は余り詳しくないのですけれども、ドイツは余り研究しておりません、そういう比較法的な観点からも含めて、それから、日本の労使協議会が定着しつつあるということも関連して、日本にもドイツ式のものを立法として考えるべきなのか考えるべきでないのかということが大きな議論になったことがございます。  今回労使委員会の制度が、単に、裁量労働の規定にちょっと入っているわけなのですけれども、その読み方や今後の動きを見れば、ひょっとしてそういう新しい制度を導入する余地になりはしないかと私などは見るわけであります。  その重要な点は、若干ほかの参考人の方と意見が違ってぐるかもわかりませんけれども、組合がないところでの労働者の意見を経営者に反映させる、吸収、聞いてもらうというシステムが日本にはあるか。団体交渉は組合がなければならぬ、労使協議は労使協議会という制度が慣行上あるいは労働協約上なければならぬ。それがなければどういうふうにするか。これは、労働基準法などに決まっておる例の過半数労働者の代表による協定、賃金全額支払えとか時間外勤務の協定を結べとか、若干ありますよね、しかし、それ以外に、そういう組織されていない労働者の意見を反映させる場としての委員会があった方がいいのじゃないか。労働安全衛生法の中にも安全衛生委員会、労働委員会などがございます。  そういうふうに考えると、大きな流れからすれば、今回出てきた労使委員会なるものは、制度的には前進といいますか、そういう未組織労働者の意見をともかく経営者に伝えることをフォーマライズといいますか制度化するという意味で一歩前進ではないかと私などは思うわけであります。  しかし、ここで重要なことは、労使協議会というのが日本で団体交渉より定着していると言われる部分について、労働省も経営者側も労働組合もたくさん調査しておりますが、その実態からやはり今後の労使委員会の動きを推測することができると思うのですね。つまり、労使協議会では経営者側が経営の方針を説明する場にとどまっている、労働者は聞きおく、こういう実態も、全体ではないけれどもやはりあるわけですね。さらに、安全衛生委員会というのがありますけれども、これも設置率がどれだけなのか、一体、法律と同じように、しっかりと開かれておって、内容が労働者側の意見を反映させるような委員会として実際機能しているのかという問題がやはりあるわけですね。  したがいまして、そういう意味で、結論として、労使委員会の規定を、今回設置することを法律に入れられたことについては僕は比較的積極的に理解をしておりますが、それをどのような内容にしていくかにつきましては、行政の方からの指導もありましょうが、その制度を十分定着させて、労働者側、特に未組織労働者の側にその趣旨を理解してもらって、彼らの意向を述べさせ、使用者側がまたそれを吸収する雅量を持つ、そういう時間が必要であろうかと思っております。  最後に、余り時間をとって済みませんが、実は余りここで議論にならなかったのですけれども、労働条件紛争の解決システムという部分が今回の改正案の中に入っておりまして、割に僕は重要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。  これは、データは、数字はもう既に統計にたくさん出ておりますように、労働組合が関与した労使紛争もさることながら、それはむしろ数がぐっと減っておる。むしろ個別の、組合のない、組合があっても労災とか賃金未払いとか、いろいろな個別の労働者が使用者と対立する、解決してもらいたいというケースがぐんぐんふえておる、それをどこで処理しているかという問題であります。今回の法案は労働基準監督署でやればいいというのですけれども、私には異論があります。  その理由は、先ほど申しましたように、まず第一点として、相談なんですね、これは。条文にはっきり書いてありますわ。紛争の調整じゃないのですよね。いや、ないと言ったらまた怒られますが、それは調整を意図しておられますが、法律上は相談なんですわ。したがって、私はむしろ、あの法案ではあっせんはできることになっておりますが、さらに調停やあっせんまでできるようなシステムが日本では労働委員会にちゃんとあるわけですから、そちらの方で個別の労使紛争も扱うようにした方がいいと考えております。  ノウハウがあるというのが第二点。戦後ずっと労働委員会あったわけですから、集団的な紛争の処理をやってきたけれども、しかし個別のものもあっせん、調整やってきておりますからノウハウもある。それから、労働委員会は件数が減ってきておりますね、ここ十年来。委員が手持ちぶさただなどと言っているわけではないのですけれども、そういった方々にそういった仕事について勉強していただいて、されたらいい。  今度、あとは権利性なんですね。労働基準局で処理してしまった場合には審級制というのがないわけです。労働委員会で扱ったら、地労委でやって中労委に持っていきますよね。そういう二審制としてあるということが、あと、裁判所へ行けば三審、四審があるわけですけれども、解決案として提示されたものについて労働者が不満である場合には、異議の申し立て、さらに争うことができる手続が今回の法案の中にはないという意味で、労働委員会の方がすぐれていると思います。  最後に、私は思うのですけれども、将来はカナダ方式を私だったら考えるのですけれども、法的な権利救済をするような命令が出せる委員会としての労働委員会が現にある。ここに個別労使紛争についても処理を任せれば、その委員会が、単に相談に乗る、あっせんだけにとどめるのではなくて、第三者的に積極的に、今回の事件についてはこれだけの額が、あるいは原状回復してどういうことをした方がいいかということまで行政命令として出せる、そういう制度に発展すればいいなという希望を持って私はそう言っております。現に、イギリス、カナダでは、個別労使紛争について準司法的な行政委員会で処理しているわけですし、ドイツやフランスでも、裁判所という名前はついておりますけれども、事実上それに近い処理をしている面もあるやに聞いております。  御質問、どうもありがとうございました。

青山丘自由党

○青山(丘)委員 終わります。ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 次に、金子満広君。

金子満広日本共産党

○金子(満)委員 日本共産党の金子満広と申します。  参考人の皆さん、本当に御苦労さまです。時間が二十分ですので、六名の方の意見を全部伺うことは事実上不可能であることをあらかじめ御了承願いたいと思います。  労基法の一部改正ということで国会にかけられています。しかし、よく見れば、これは一部ではなくて労働基準法の根幹に触れるものだと思うのです。その内容は、一時的とかあるいは限定された分野ではなくて、労働基準法の根幹全体がこのままいったら骨抜きにされる、空文化する、こういう危険性を持ったものだと思うのですね。  したがって、労基法の改正という点でいえば、対象人口は労働者とその家族でありますから国民全体の四分の三に当たるところだ。これは、広く言えば全国民的な問題だと思うのですね。そういう中で、国会の審議を今やっているわけですけれども、既にもう御意見が述べられましたから、荒川参考人の方からの点でいえば、日経連、つまり使用者側とすれば、この改正というのは望ましいものだ、早く成立させてくれということに尽きますから、この点で、私からの質問はひとつ省略をさせていただきたいと思うのです。  ただ、言えることは、この答申が、もともとは労働者側委員の意見は全部言えなかったということなんです。これは重大なことだと思うのですよ。だって、労使間のことを決めるのに何で労の意見を言えないのか、そうしたら残るのは使だけの意見になるのじゃないですか。これが問題なんです。しかし、これも経過的にもう過去ですから、今の問題について伺いたいと思うのです。  まず、松浦さんにお伺いしたいと思うのです。確かに国会審議はまだ序の口ですね。労働時間の問題とか裁量労働、変形労働、そしてまた短期契約の問題、一つ一つとっても、やればやるほど新たな疑問が生まれてくるというのが実態だと思うのですね。これでもう大体済んだというものは一つも私はないと思うのです。  そこで、連合ですが、私は国会の委員会でも質問をしたのでありますけれども、四月三十日、メーデーの前日に新聞にこういう大きな広告を出しました。これはなかなか人々の関心を集めたのであります。連合要求実現応援団という形になっていますけれども、四つの点が挙げられております。第一は、「男女共通、罰則つきの上限基準を法律に明記。」すること。これが「時間外・休日及び深夜労働」についての広告。二番目が、「新たな裁量労働制」については「今回の法案から削除し、継続検討へ。」三番目が「一年単位の変形労働時間制」、それから「契約期間の上限」の問題で出ています。  これは、連合としても譲れぬ原則的な問題だとよく言われるのですが、私もそれはそうだと思うのですね。この法案が国会に出される直前に連合の笹森事務局長が週刊労働ニュースで言っていることは、これはなかなか核心を突いていると思うのですね。何と言っているかというと、「今期通常国会では法案審議を六月会期末まで引っ張りたい。」十分議論したい。「いまのような劣悪な内容であれば、今国会では流す覚悟をしてもよい。流れても労働側は別に困らない。野党や自民党の一部国会議員にも理解してもらうためには、世論を盛り上げられるかどうかにかかっている。」私はこのとおりだと思うのですね。  そういう意見が出ておりますので、当然、妥協できない線として、この四つの項目、時間外労働を法制化する、罰則つきということと、それから裁量労働は受け入れない、後で検討しろ、法案はだめです。こういう点については、今こういう重大な段階ですけれども、これを連合としても貫いていかれるのではないかと思いますが、まずこの点を伺いたいと思います。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 御指摘のとおり、私どもは、劣悪な部分が修正をされない限りは、これを容認しないという判断であります。

金子満広日本共産党

○金子(満)委員 私は、今の松浦さんのお答えというのは、全労働者だけでなくて、多くの人々を励ますものだと思うのです。まさにここに核心があると思うのですね。そういう意味で、今この国会で、実は、きょうのこの参考人の方々の意見を聞いたら採決してもいいのじゃないかという意見もあるようでありますけれども、私は、とんでもないことだ、意見、審議、これは大いに出していただき、続けていくということをしなければならない。こういう点で、大変妥協のないお答えをいただきました。  さて、今度は井上浩参考人にお伺いしたいと思うのです。  私も、先ほどの短い十分間でありますけれども、ずっと注意深く聞かせていただきました。その中でも、もっと審議をすべきだという意見が出されました。私は、そうだ、これが普通の物の考え方だと思うのですね。これは全く同感です。そして、井上参考人は、労働基準監督官の経験もおありなんですね。そういう点で、労働行政の第一線で大変な苦労をされてきた。  そういう点でまず一つ伺いたいと思いますが、裁量労働ということについて、いろいろきょうも御意見がありました。それは、意見がたくさんあるほど複雑なんですね、この問題は。単純にぱっと、これですなんということはとても言い切れない問題だと思うのです。労使委員会のこともありましたが、それは別として、仕事の成果など、客観的にはできない、難しいと。そのとおりだと思うのですよ。これがあたかもできるような話をするのは、一時しのぎとしかいいようがないのですね。  そういう点で、労働行政の現場でいろいろ経験をされてきたと思いますが、今のまま裁量労働をやったら、私は、監督行政もうんと混乱すると思うのです。まして、北海道から沖縄まで数百の事業所があるわけです。今の少ない労働基準監督官でいって、一々こんなことできないですよ。そうすると、一般的に情報を流す演説はしても、手が回らないのです。その結果は混乱が起きることは、やる前からわかっているんだと思います。こ の点が一つです。  それから、私は、それだけの内容を持った問題でありますから、参考人に国会においでになって質問に答えていただくのは今回で二時間で六人というのは、これはいかにも拙速過ぎると思うのですね。ですから、いろいろの専門家の意見、それから現場の意見も聞くとして、私は、参考人の審議とか地方公聴会などはやるべきだし、やり過ぎたということはないのですから、そういう点をどう思っていらっしゃるか、この点もお伺いしたいと思うのです。

井上浩全国労働安全衛生センター連絡協議会議長

○井上参考人 現在、労働基準法の適用事業場は約四百五十万ぐらいですね。しかし、一体何事業場あるかをつかまえたことはこの五十年間に一度もないですね。多分四百五十万ぐらいあるだろうということなんですね。それに対して、三千余名の監督官が一カ年間に大体十七万から十八万、それも定期的に行くというのは十二、三万ぐらいだから、たとえ今度の法案が通って、きちんと罰則がついても、その罰則を適用して厳格に守らせるということは恐らくこれはもう不可能だと考えます。  それでは、きちんと四百五十万を回れる監督官をふやすかどうか。実は、日本に工場監督官制度ができたのは大正五年です。大正五年に監督官制度ができて、一番当初は一つの工場に一年間に三回回るということで定員が決まったのですね。今は四百五十万で十三万ですよ。だから、とてもとてもそれはできない。それでは、一年間にせめて一回ぐらい回れるような監督官の人数はどうか。それを計算しますと、これまた何万人も監督官がいなければいけないですね。これは到底できることではないですね。  だから、やはりその辺は十分考えていかなければいけない。これはやはり法律の中身でもっといろいろと工夫をして、罰則で追い詰めるということだけではなくて、もっといろいろな補助金だとか金融だとか租税特別措置法だとか、いろいろなものを考えてやっていかぬといけないだろうと思うわけなんですね。だから、監督官も、この法案が通れば、恐らくなかなかつかまえられないだろう、違反の立証ができないだろう。監督官だって解釈が難しいぐらいですから、なおさら労使委員会なんかでは難しいということがありますけれども、それを全然よそにおいても、まずとてもとても今の能力ではすべての事業場に徹底するような力はないということなんです。

金子満広日本共産党

○金子(満)委員 体験された方の御意見ですから、これはっくり話でないことはもうはっきりしているのです。私も、数百の職場と言ったのは、正確に数えた数字がないから申し上げたのです。そこで、審議が尽くされなければならないし、罰則つきの法制化になってもそれだけでもまだ不十分だというのに、罰則の方はないわけですから、言ってみるだけという、実効性がないという指摘はもう常識的にもあっちからこっちからされています。  そこで、最後に熊谷参考人に伺いたいのですが、既に申し上げたように、これは一部改正というけれども基本に触れる問題だ、八時間労働制が崩壊されるというのはもう多くの労働組合が共通に指摘しているとおりです。なぜかという、これはもう申し上げません、専門家ですから皆さん御理解されているとおりだと思うのですね。  そういう中で、私は、労基法そのものを根本的につくりかえる、五十年間も続いたこの労基法が、例えば大阪の府議会の全会一致の決定によっても、制定以来最大の危機にあると、これは各党が全部賛成しているんですね。自由民主党もこの立場に立っておるわけです。ですから、そういう意味で、労基法の根幹にかかわる重大問題だと私も思いますが、まずこの点が一点。  第二点は、先ほど連合の方からもかたい決意が述べられましたけれども、これは全労連、そして連合その他の労働組合を含めて、改正促進運動なんというのは顕微鏡で見たってありはしないですよ、全国の労働者が反対なんですから。こういう点を考える。それから、日本の弁護士のすべてを結集している日弁連も反対ということ、去年から逐条的に検討し、ことし国会に提案された中でも具体的に反対だという意思表示を繰り返し行っています。  こういう点を考えて、今確かに国会審議で問題点ははっきりした、いろいろ疑問もあるけれども解明されたのじゃないか、もう採決してもいいのじゃないかという意見があるけれども、職場の労働者や、特に女子保護規定がなくなった後、女性労働者の、とんでもないことだという怒りの声は毎日国会に来るのですね。私も直接会いますし、これは連合とか全労連とかかかわりなくだれでも来るのですよ。こういう点でひとつ審議は継続していかなければならぬ、十分やらなくてはならぬ、私はこういう点を思いますが、この点が第二点です。  時間がありませんから要約しますが、第三点は、いろいろ確かに困難はあるのです、難しさはあるのです。しかし、昔から言われるように、難しかったら原点に戻ればいいのです。あれこれ空中論議をするから複雑になるので、これは議院手帳の中にもあるように、私は国会の委員会でもやりましたが、憲法二十七条では、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、」次なんです、「法律でこれを定める。」とあるのだから、法律のところへ戻ればいいのです。解釈してこういうふうに決めたら大臣がこういうふうにやって、それをこうやってああやってというから途中でわからなくなってしまうのです。我々が審議してなおわからなくなるのだから、労働組合のない事業所でわかったという人はいないと思うのです。  私は、そういう意味で、時間外労働その他についても法律でこれを定めるべきだと思う。既に外国はやっているのですから、外国でできたことを日本でできないということはないのですね。時間もかけてやっていますよ。フランスの国会はこの二月に週三十五時間労働、これを長い審議の上可決をして、今二月中旬から上院で審議しているのですから、駆け足審議なんか絶対やらないですよ。そのフランスは、時間外労働でいえば既に現在でも百三十時間なんですね。イタリアでも週三十五時間。これはもうことし二月に閣議決定をして、今これを実行に移そうとしている。時間外労働は一日二時間、週十二時間とやられている。ドイツは、年間の総労働時間が千五百時間台になっている。そして、そういう中で残業は一日二時間、六十日ということになっているのですね。日本は千八百時間にするというのを十年前に、一九八八年に閣議決定して国際的にもこれで国連に出しましたよ。

田中慶秋民主党

○田中委員長 結論を急いでください。

金子満広日本共産党

○金子(満)委員 はい。  今それが千九百をちょっと割ったところへ来ているけれども、サービス残業が入っているので少なくなっているのはだれが見てもわかっているわけですから、こういう点は、それぞれの国の政治の違い、体制の違い、いろいろあるけれども、政治の違いではなくてルールをつくっているのかつくっていないのかというかじ取りの違いだと思うのですね。外国でできたことを日本でできないはずはないので、この点もどのようにお考えになっているか、熊谷参考人にお伺いしたいと思います。  以上です。

熊谷金道全国労働組合総連合事務局長

○熊谷参考人 まず冒頭、今回の法の見直しが労働基準法の基本に触れるものだということは、私も最初に申し上げましたように、二つの側面からそういうぐあいに考えています。  その一つは、労働時間というものが、今、金子議員の指摘にもありましたように、労働条件の基本をなすものだ。しかも、現行の労働基準法の労働時間にかかわる、その骨になっているいわゆる八時間労働制というものが国際的にも積み重ねられる中で確立をされてきている一つの大きな柱になっている。そのことが変形や裁量労働制によって形骸化をしようとしている。そういう側面が一つ。  もう一つは、憲法に基づいて、労働基準法の第  一条にもあるように「人たるに値する」ということが明確になっている。その最低労働基準を法律によって決める。ところが、今度の裁量労働の拡大、新裁量労働制について言えば、これまでとは違って対象業務、先ほど松浦参考人も言いましたけれども、極めて漠として提起をして、その具体的なものは労使委員会にゆだねる。言うなら、労働基準法の中に手続法的な、最低労働基準を法律で定めるというのではなくて、そういうぐあいに労働基準法の性格を変えていこうとしているのではないか。そういった点で私たちは基本に触れるものだと思っています。  二点目は、もう言うまでもなく、恐らく最近の労働運動の中でこれだけ足並みがそろって労働団体、労働界が、政府が今進めようとしている法案に反対だ、何としてでも抜本的な手直し、私たちの要求を実現してほしいと大変な行動を国会周辺を含めて起こしてきているという事態、あるいは立場を超えた女性団体、婦人団体の動き、こういった点についてぜひ受けとめていただければと思っています。  また、私たちは今のような状況の中で、まさに二十四時間社会が常態化をして人間の生活リズムを含めて社会のゆがみが非常に大きな問題になっている中で、やはり労働者が本当に人間らしく生き、働くためのルールを確立する、そのことが非常に重要になっているというふうに思います。当然、労働時間の短縮あるいは上限規制というものがその大きな柱でありますし、最近で言えば、大量の人減らし、合理化、完全失業率が史上最悪と言われている中で企業の勝手な解雇を許さない、最高裁判例に基づくような解雇規制を含めてルール化をすべきだ、そういう要求を掲げてこれからも運動していきたいというふうに思っているところです。  以上です。

田中慶秋民主党

○田中委員長 次に、濱田健一君。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  六名の参考人の皆様方には、月曜日の早朝からこうして貴重な御意見の御開陳と私たちの質問に丁寧にお答えいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。あとわずかな時間、私の質問をさせていただきたいと思います。  山田参考人にお願いをしたいというふうに思うのです。  まず、契約労働ですけれども、新しく三年の期間を定める契約労働、これは将来的にどのような展開になっていくとお考えでしょうかということでございまして、労働者派遣法がネガティブリスト化されていくことで非常に世間ではさまざまな論議がこれから展開をされようとしておりますけれども、それと同じように私自身感じているものですから、御意見をいただきたいと思います。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 濱田先生御指摘のとおり、実は評価というのは当然のことながら一定の事実認識と深く結びついているわけでして、今回も、高齢者とそれから二つの専門職について三年契約をするということになっているわけです。高齢者については、先ほど濱田先生からお話がありましたように、これは労働者派遣事業法において、対象業務について、高齢者は再就職が困難であるという理由から対象業務を外していたということがあります。そして今、立法案として派遣事業すべてについてネガティブリストにしていくという動きが見られるわけです。  その意味で、これは先ほど桑原参考人もおっしゃったのですけれども、現在のこの三つの三年契約ということだけではなくて、これがきっかけとなって、ちょうど労働者派遣法と同じように将来的には全体の労働者に広がっていって、それで三年雇用が一般化することによって、例えば大卒の女性の三年の結婚退職制のかわりになるとか、あるいは従来裁判所が確立してきた解雇権乱用法理の脱法行為として使われる、あるいは三年間の長期にわたる試用期間という意味合いも出てくるという危惧を私は考えておりまして、この点で濱田先生と同じ見解を持っております。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 もう一点、これも山田先生ですが、新裁量労働制は、これまでの審議の過程の中でも、時間単位の賃金の低下や無定量の労働時間を誘発するのではないかという危惧感がいっぱい出てきたわけでございますけれども、新しい裁量労働制が適切に運用されるためには、いろいろな委員の皆さん方の御指摘、御提言が委員会の論議の中であるわけですけれども、先生はどのような条件が必要だろうというふうにお考えでしょうか。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 私は、裁量労働制イコール悪とは考えておりません。現に、先ほどの各参考人の先生の御意見がありましたように、こういった裁量労働によって働くということを望む労働者も存在するし、それにふさわしい仕事もあると思います。ただ、今回のこの改正案にあるようなものが果たしてその範囲に当たるかどうか、裁量労働制が適用される範囲がかなり限定されたものにならざるを得ないと思います。その意味で、その範囲をまず限定することが一つ大事な、大きなポイントに、どういったものが裁量労働制の範囲になるかというのを明確に、企業主の懇意が入らないような明確な基準を設定することがまず前提になるのではないかと思います。  その上で、もし典型的に裁量労働が適用できるような労働者については、先ほどの労使委員会方式をとるということの是非は、私が先ほど申しましたように、労使委員会というのは必ずしも組合代表ではない。裸の労働者が代表として出ていくということは非常に問題があると思いますけれども、そこでやはり、先ほど何人かの先生がおっしゃいましたけれども、そういった労使委員会を設定する場合については、そこでは議決や発言についての不利益取り扱いをしないということ、あるいは、その委員のメンバーの中にはやはりそれが適用を予定される労働者が入ることが必要ではないかと思います。  それからまた、もう一つは、労働者の個別同意、それは一つの働き方を選択するわけですから、労働者の個別同意が求められてくるのではないかと思います。  それからもう一つは、最後に、一たん決めて、もしそれが行われた場合、それが不適切な場合についての、全員一致で決めたことは全員一致でなければ修正できないかという問題。これは恐らくそういう考え方ですね。全員一致で決めたのだから全員一致で賛成でないとやめられないという意見と、いや、全員一致ということは、この制度の発足要件、スタート要件だけではなくて継続要件である、したがって、全会一致が崩れた時点で裁量労働制というのはその意味で修正されるのだという二つがあって、恐らく、要件からいえば後者の見解になるのではないかと私は思います。  その意味で、再検討のために一年なり、そういった決議の有効期間を定めるといったシステムをとることが、これはもちろん理想的な、先ほど申しました、前提として裁量労働の対象が極めて明確に限定されている場合の条件で、かつ現行法のもとで、現在提案されている中で行うという前提なのですけれども、そういった意味での条件設定をすることが必要ではないかと考えております。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 変形労働について、これも山田参考人にお伺いしたいのですが、使用者側から見ると、変形労働というのは、繁忙の度合いに応じて働いてもらう時間といいますか、これを一週間、一カ月、一年というふうに変えていくわけでございますが、労働者の立場からいうと、この変形労働制は、総労働時間の短縮という方向に向けていくというのが大きなねらいであるというふうに思っているわけですが、これは今後どのようになっていくだろうか、これを適用するにはどういうふうな対応が必要か、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 濱田先生御指摘のとおり、基本的には、先生おっしゃいましたように、変形労働時間制というのは労働時間短縮とのかかわりを深く 持った制度で、ある意味では労働時間短縮が円滑にいくための制度であるわけです。その意味で、基本的には、労働時間短縮と結びついた制度として考えられるというのが変形労働時間制の一つの前提ではないかと思います。その意味で、今後新たな変形労働時間制をとる場合には、基本的には労働時間の短縮ということが求められることになると思います。  今回の改正について余り細かく申し上げませんけれども、その意味では、今回の改正案では、変形労働時間制の弾力化を図りながら、有効な時間外労働時間の規制は、必ずしも十分ではないということは指摘できると思います。  したがって、変形労働時間制で一日十時間働いても、先生御指摘のように、繁忙期にはなお残業するということが可能な制度になっております。これはやはり、労働者の健康だけではなくて、生活、労働者は労働時間を弾力化できますけれども、人間の生活は弾力化できないわけです、育児や家事というのは弾力化できないわけですから、その意味で、ここでは大きな問題が生ずることになると思います。  その意味で、今回の中では、変形労働時間制のもとでは時間外労働が当然という前提、考え方があるわけですけれども、変形労働時間制のもとでは時間外労働禁止することができませんので、時間外労働の上限については、一般の水準より低いものにするということをしていただきたいと希望しております。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 時間外労働について、これも山田参考人にお伺いしたいのですが、改正法案では、時間外労働の基準の効力についてどのようにお考えかということでございます。  例えば、基準で、一年三百六十時間と上限が仮に設定されるとします。その場合に、例えば一年四百時間の労使協定が締結された場合に、労働者は基準を超え労働をする義務があると考えられるでしょうか。また、これを拒否した労働者を解雇あるいは懲戒処分に処することは可能だとお考えでしょうか。

山田省三中央大学法学部教授

○山田参考人 大変難しい質問ですけれども、これはかなり重要な御指摘ではないかと思います。御承知のように、今回の改正案では、労使は、労使協定の中で労働大臣が定める基準に適合するようにしなければならない、そういう規定になつております。これが、しなければならないですと私法的効果が出てきて、その基準を上回る労働時間を設定する労使協定は無効ということになると思いますけれども、その読み方は非常に難しい、一種の努力義務規定ということになると思います。そうすると、では、先生の御質問にありましたように労使が四百時間という時間外協定という時間を設定した場合、例えば基準が三百六十とした場合、その場合、労働者にその残業義務があるかどうか、そして、それを拒否した場合に懲戒あるいは解雇ができるかどうかということが問題になるのですけれども、聞くところによりますと、労働省の見解によりますと、私法的効力がないから、したがって四百時間という残業命令も法的に適法な業務命令である、したがって、業務命令によってそれを出すことはできるのだけれども、しかし、懲戒処分に付したり、これは懲戒の種類にもよると思いますけれども、懲戒処分あるいは解雇することは、懲戒権の乱用あるいは解雇権の乱用に当たり、無効である、そういう見解をとっておられるということを伺っております。一しかし、これは、技巧的な解釈なのですけれども、非常に無理があると思います。適法な業務命令に従わなかったらなぜ乱用になるのかというような、基準がはっきりしていないと思います。これは非常に難しい問題なので、実は、ちょっと長くなって申しわけありませんけれども、これは最高裁判所の判決によりますと、時間外協定を定める就業規則が合理的であれば、それが労働者の労働契約の内容となって残業義務が発生するのだという裁判例があります。私は、個人的には、労働者には個別同意なしに残業義務はないと考えておりますけれども、判例はそういう立場をとっております。その最高裁判決の中では、合理性基準として、三六協定の中に、一つには、その残業をさせる理由が明確であること、もう一つが、当時その会社は四十時間という一カ月の上限があった、これは、当時のいわゆる労働大臣の告知、目安の基準内、当時四十五時間だったと思いますけれども、基準の中である。実は、この二つの要件を挙げて、したがって、就業規則は合理性があるから労働者に残業義務が発生するのだという議論をしております。そうしますと、もちろん使用者の方は就業規則を通じて労働者に残業命令を課すわけです。そうしますと、最高裁によれば、その残業を課す就業規則の合理性として、労働大臣の策定する基準を超える時間外労働時間を定める就業規則は合理性を欠いて、労働者を拘束しない、したがって、基準を超える、上回る労働時間を設定する労使協定による残業義務を労働者は負わない、したがって、私は、解雇も懲戒もできない、そういうふうに……。そういった意味で、この基準に私法的効力はないのですけれども、現実の時間外労働を命ずる就業規則の効力を通じる中で実質的には私法的効力が認められて、残業義務がないということになって、懲戒や解雇もできないというふうに解釈しております。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 連合の松浦参考人にお伺いしたいのですが、きょうの委員会の中で最初に意見を開陳されました視点の中に、今回の労基法の改正案について、三点の連合案を中心に意見を述べられたと思うのですが、それを簡潔にもう一回教えていただければ幸いでございます。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 一つは、時間外労働並びに深夜労働の上限の法的規制の関係でございます。  これにつきましては、今、山田参考人からの意見もございましたが、未組織の労働者、そして交渉権を持たない労働者、労働組合がありましても十分に協議機能が発揮されていないところなどでは、やはり、そうした三百六十時間という定めがされましても、これを超える協定を無謀にも結ぶとかあるいはそれらが結ばれないという事態も生じるということから、私どもは、罰則つきで労働基準法の中にこれを明定して、それを超えるものについては初めから受け付けない、労働基準監督署が届け出を受け付けない、そういった強い取り締まり規定を盛ってもらいたい、こういうふうに実は考えているわけでございます。  具体的に時間外労働、深夜労働の上限を規制する必要性の関係につきましては、冒頭述べましたように、二十一世紀に向けて、男女共生社会ということも考慮しながら、男女がともに家庭責任と仕事を両立できる、そうした基本的な要件である、このように判断をしているということであります。  二つ目は、裁量労働の問題であります。  裁量労働の問題につきましては、現在の規定ではその対象範囲が明定をされていない、こういうことが一番の問題であります。それからもう一つは、途中の質問にもお答えをしましたように、労使委員会の機能と権限についてさらに明確にする必要がある。こういうことで、これにつきましては今回の法改正から外して、そういった部分についての基本的な協議ができるように、継続協議の方に切りかえていただきたいということであります。  それから三つ目が、変形労働時間制の問題についてであります。  変形労働時間の関係につきましては、私どもは、所定労働時間を短縮する際に、いわば新たな経営の負担ということになりますので、この労働時間の短縮というものについてできるだけスムーズに実現をしたいということから、特に、労働集約ができないといいますか、合理化、機械化ができにくいような第三次産業等におきましては、どうしても人手で作業をしなければならないというものが中心になるわけでございます、したがいまして、これらについて、その業務の繁閑に合わせ た所定労働時間を振りかえることによって経営側の負担を少しでも軽くする、そうした措置がスムーズな労働時間の短縮につながるからだというふうに指摘をしてきたわけでございます。  今、こうした制度をさらに拡大する、あるいは基準を緩和するということでありますと、四十時間制が実現をした後は、その四十時間制のもとでそういった変形労働時間を導入する場合には、その職場に限り他の職場よりも所定労働時間を短くしてもらいたいというのが私どもの基本的な主張であります。  以上であります。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 最後にもう一点、松浦参考人にお尋ねいたします。  十五日の全国から一万人の皆さん方が集合された集会を、私たちも大変力強く、そしてそれを成功されたことにお喜びを申し上げたいというふうに思うのですが、この十五日の集会を前に、今述べていただきました連合案に対する連合の態度というものを、私もうちの伊藤幹事長とともに、笹森事務局長、松浦総合労働局長からお伺いいたしました。修正の余地もうかがうことのできないほど、力強く、絶対に変更なしという御見解を伺いましたが、これは現在も、そしてこれからも変わらない強い決意でいらっしゃるというふうに思うわけでございますが、いかがでございましょうか。

松浦清春日本労働組合総連合会総合労働局長

○松浦参考人 金子委員からも同様の質問を受けましたときにお答えをしましたように、私どもは、今御指摘を申し上げました三つの点については極めて大きな問題点であるというふうに判断をいたしておりますし、そういうことを前提にして、これが何らかの形で修正をされなければ、今回の法改正の関係につきましては廃案になったとしてもやむを得ないという判断については、現在も変わっておりません。

濱田健一社会民主党・市民連合

○濱田(健)委員 ありがとうございました。

田中慶秋民主党

○田中委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人の皆さんに一言お礼申し上げます。  参考人の皆さんには、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して、厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせをすることとし、本日は、これにて散会いたします。   午後零時五十六分散会

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