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142回国会衆議院1998/05/19

法務委員会 第16号

発言数
264
登壇者
15
会派数
6
開催日
1998/05/19

会議録

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所堀籠人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 内閣提出、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村哲男君。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  大変な法案をこれから審議するというか、質問させていただくのですけれども、余りに膨大ですので、私はきょうは組織的な犯罪の処罰、加重の問題についてだけ聞いてみたいと思っております。  最初に、大臣に御質問いたします。  この組対法を急いで立法する必要性はあるのかというふうな設問になるのです。その一つは、組織的犯罪を加重するというのが今回の趣旨ですが、特に国際的な協調の必要性というか、外務大臣のお言葉だったと思うのですけれども、外国に行っていろいろな犯罪の話をしているときに我が国の犯罪の法体系がおくれているのが恥ずかしいよという話もありました。確かにそういうこともあるかもしれませんが、我が国の最近の犯罪情勢が他の主要国に比べて特に悪化しているとは言いがたいという見解もあります。平成八年の犯罪白書を見ますと、犯罪情勢全般については、近年急速に悪化しているということにはないというふうな結論になっておるようです。  したがって、今急いで緊急に立法する必要性はないのではないかという考えもあるのですけれども、大臣はその辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  ついせんだってのサミットにおきましても国際組織犯罪の問題については触れられているわけでございます。  御指摘のように、全般的に見ますと日本は平和で安全な国だというふうに今でも言われていると私は思います。しかし、個々に検討いたしてみますと、そういうふうな中で、国際犯罪はもちろんでございますが、凶悪な事案、特に組織を背景とする凶悪な、薬物でございますとかの事案等々がふえているわけでございますし、さらにまた、最近いろいろ見られましたように、一連の総会屋の動向、さらにはまた組織的な暴力団等々による銃器犯罪、さらには薬物、そういうふうな状態を眺めてみますと、決して楽観すべき状態ではない。やはり厳しく受けとめなければならない。  また、一たんそういうふうな社会になってしまいますとそれを取り戻すということはなかなか難しい状態があるわけでございますし、私どもは、そういうふうな犯罪の動向に厳しい関心を持って見詰めつつ、平和で安全な社会を実現するためにやはり法整備を図る必要があるのではなかろうか、そしてそれによって私ども対応してまいりたい、このように考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 いわゆる刑の加重その他の総合的な三法についてはさまざまな観点からこれから検討が加えられていくと思うのですけれども、私は、きょうは組織的犯罪に対する加重の問題あたりをお聞きしていくわけです。  本案に挙げられている加重すべき犯罪、これは三条の一項に幾つか挙げられているわけですけれども、これらを見ますと、現実の刑の言い渡しが法定刑の上限に集中しておって、刑罰そのものが軽過ぎて裁判の機能が働かないというふうな事情にはないというふうに考えます。  というのは、本当にそれが軽過ぎるのだったら、上限が十年しかない、しかし十年ぎりぎりの犯罪が集中している、そうしたらそれは確かに加重しなければいけないけれども、実態は、十年以下の懲役の場合でも数年、二、三年のところに固まっているというのが今の犯罪の状況だと思うのです。ですから、今の刑法の体系で、十分その範囲内で機能できる形になっていると思うし、その傾向はこの十年間は変化がないと言われております。  それで、それが現行の法定刑で不都合とされるというのはどういう理由なのかという点について、まず大臣の方からそのあたり、詳しい、細かい点はいいのですけれども、一般的な意味でそういう点をお答え願いたいと思います。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 本法におきます刑の加重の問題は三条あるいは六条、七条等々にも規定されているわけでございますが、加重いたしました目的は二つあると私は思います。  なるほど御指摘のように、法定刑の上限に近い量刑がしばしば行われているということも現実でございますが、この法律に基づく刑の加重というものは、これらの犯罪の類型的な違法性の高さに着目して、その違法の評価を明示しようということがありまして、要するに組織的な犯罪に対して厳格な姿勢を明らかにするということが一つ。それからもう一つは、適切な量刑をなしつつ、やはり犯罪の抑止力という機能もあるのではないか。そういうふうな二つの面から刑の加重、この意義は大きいというように思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 今のお話は、第一点も第二点も、二番目は抑止力、最初は厳格に対応するという姿勢、同じような観点だと思うのですけれども、その姿勢が法の改正にどうしてつながらなくてはいけないかという点については、まだ私は十分に納得できない気持ちがあります。しかし、それは後に各論に入っていくと思いますので、そういう意見だけ表明して、次に移っていきたいと思います。  その各論に移る前に最高裁にお聞きしたいのですけれども、この組対法及びいわゆる通信傍受法の反対集会に仙台の裁判官、寺西さんという裁判官が出席したことについて、裁判所が懲戒申し立てをしたということが新聞に載っておりました。通常、新しい法律ができるときに裁判官あるいは学者なんかの専門家が雑誌なんかに自分の意見を表明するのは表現の自由として普通だと思うのです、あるいは書くだけではなくてそれこそ研究会に行って自己の意見を発表することもできると思うのです。しかもこの四月十八日の反対集会に出席したということ、確かに反対集会と言われれば一方的だという感じもするのですが、一体、どういう理由で、どういう経過になっているのかについて御説明を願いたいと思います。

堀籠幸男最高裁判所事務総局人事局長

○堀籠最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  今月の一日に寺西判事補に対する裁判官分限法に基づく懲戒の申し立てが仙台地方裁判所から仙台高等裁判所に対して行われました。裁判官分限法に基づく手続は非公開であり、現在仙台高等裁判所に事件が係属しておりますので、事務当局からその詳細について御説明申し上げることは差し控えさせていただきますが、委員お尋ねの点につきまして、申し立ての概略を御説明申し上げます。  仙台地裁からの報告を受けたところによりますと、国会に提出されております組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案ほか二法案の対応について、政党間において意見が分かれている中で、これら三法案に反対し、その廃案を目指している政治団体が、同法案の廃案を目指す継続的政治行動の一環として平成十年四月十八日に集会を開催したところ、寺西判事補は、この集会を開催した団体のこれら三法案に対する主張を支持する目的で、裁判官という職名の影響力を利用し、集会において右主張を支持する趣旨の発言をしたというものでありまして、本件の裁判官分限法の申し立ては、この寺西判事補の行為が裁判所法五十二条一号により裁判官の在職中禁止されている「積極的に政治運動をすること。」に該当し、裁判所法四十九条の懲戒事由に当たるというものでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 事実関係も随分違う点もあると思うのですね。  寺西さんはそこに行って自分の意見を表明していないし、むしろ、裁判所からそういう忠告を受けたので、壇上に登らなくて普通の席にいたということなんですね。私も実はあそこに行っていたので、そういう話があってざわざわしていましたから経験しました。事実関係、事実誤認はどうでもいいです、これからの問題ですけれども。  しかし、今の御説明だと、それに該当するようなことは普通の裁判官であっても一般の市民としてあるいは法律の専門家として大いにあり得ることだと思うのです。新聞紙上で、雑誌社とかそういう専門誌上で発表しても、同じような立場、初めから反対して、私はこうこうこういう理由で反対するということだってあり得るわけですよ。それをもって懲戒理由にされたんだったら、裁判官の裁判以外の社会における自由な活動が制限されるような気がするのですけれども、そのあたりについてはどのように考えておられますか。

堀籠幸男最高裁判所事務総局人事局長

○堀籠最高裁判所長官代理者 私どもも裁判官についても市民的な自由はあるという考えでございます。  問題は、裁判官の行為であっても、その行為が裁判所法が禁止しております積極的な政治運動に当たる場合は懲戒の事由になるという考えでやっておりまして、本件、具体的な寺西裁判官の行為がそれに当たるかどうかというのは、現に司法権の行使としての裁判体に係属していることでございますので、司法行政をつかさどる事務当局としては、意見あるいは説明を差し控えさせていただきたいと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 もう一点ですけれども、この寺西さんという裁判官は、去年、平成九年十月二日の朝日に投稿をしておられます。私も読んでみたのですが、「信頼できない盗聴令状審査」という表題で意見を表明しておられるのです。それに対して裁判所は何らかの措置をとられたというふうに聞いておるのですけれども、それはどうなっているのですか。

堀籠幸男最高裁判所事務総局人事局長

○堀籠最高裁判所長官代理者 寺西判事補は、委員御指摘のように、朝日新聞の朝刊に裁判官の肩書で「信頼できない盗聴令状審査」と題する投書を行いまして、裁判官の令状、裁判事務の実態に反して、令状に関してはほとんど検察官、警察官の言いなりに捜査機関に発付されているというのが現実だという投書を行いました。  この言いなりという点は、国語辞典によりますと、主体性がないまま相手から言われるとおりに行動するというようなことも出ておりますので、この部分は読者に対し、裁判官の令状事務が憲法及び法律に従わないで行われているとの誤解を与えるものでありまして、国民の裁判官、ひいては裁判所に対する信頼を損なわせるおそれが大きいことが明らかであるということでございまして、現職の裁判官がこのような内容の投書を行うことは著しく妥当を欠き、裁判官としてふさわしくない行為である。そこで、寺西判事補に対しましては、旭川の地方裁判所長から厳重書面注意がなされたものでございます。  この点、もう一言つけ加えさせていただきますと、この注意は投書をしたこと自体を注意したわけではありませんで、その中で言いなりといった部分が著しく妥当性を欠いたということでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 これが本当だったら大変ですよね。しかも、現場の人が事実を伝えているということになりますと、これは大変なことですから、事実かどうかということもあるし、恐らく寺西さんは別のところでも意見表明されると思いますが。私どもはそういうことをしばしば聞いておるし、この令状交付については、それこそれ九%、それ以上の発付率といいますか、却下がほとんどないという実態、これがやはりいろいろなところで問題にされているという点もあると思うのです。  しかし、それにしても、この法案が、審議の始まりから波乱含みということを予想させるような事件、事案であって、現場の裁判官のそういうふうな意見が最初から問題にされ始めた、そして裁判所も放置できないということで懲戒処分。そういうことが先走りして、なかなか中身に入っていくのも大変だという気がします。そういう意味で私も聞いたので、これはなかなか大変な法律だなというふうな感じでございます。  そして私は、この法案に入る前に、私の意見を一つ一般的な意見として言ってみたいのです。  刑法は、一般の国民に対する規範であることは当たり前であって、やって悪いことあるいはいいことの区別が明確でなければならないというのは当たり前のことであります。これは私どもが最初から学ぶ罪刑法定主義の要諦であって、自分のやっていることがどういう罪に該当するものか、あるいは、一般の人が見て明確でなければ刑法の意味をなさないし、それが社会規範ともなりにくいと思います。  その意味で、今回の法案は、今までの犯罪の概念を随分変更して、国民の刑法の意識に変革をもたらすものであろうと思います。私自身、はっきり言って、何がどう変わっていくのか、法案を読んでみてもすぐにはわかりにくいのです。  これからの新しい社会は、いろいろな場面での価値の変更をもたらします。そして、各種規制緩和によって、ある場面では弱肉強食の社会あるいは複雑な社会をつくっていきます。それに対応した社会、そしてアングラ社会から健全な市民社会を守るために、今までの刑法体系では御し切れない面も多くあると思っております。  そのためには新しい規範が模索されなければならないことは十分理解できますし、その意味で、今回の法案が果たしてその新しい規範として国民に受け入れられるかどうかという検討が必要であろうと思っております。国民の理解を得るために、いわゆる説明義務、今法案を審議している者の、そして法律をつくろうとする者の説明義務も、これは随分と多く必要とされていると思います。  確かに、アングラ社会の犯罪組織が市民社会を脅かしているということ、それに捜査当局が必ずしも対応できていないということは理解できます。しかし、その高い処罰の必要性から、一定の犯罪について解釈を広げたり、あるいは新たな立法を行う場合に、その問題だけを解決するように見えて実は他の問題に波及してしまうということを忘れてはいけないと思います。法律はひとり歩きをするわけです。  処罰範囲は、いわば池に投じた石が描く同心円のようなもので、一点を取り込もうとしてその部分だけの処罰を広げたつもりでも、実際は全方面に広がってしまう、意外な局面で処罰範囲が拡大してしまうということで、刑法の解釈あるいは立法に当たっては、慎重過ぎるぐらい慎重にしなければならないと思っております。  今言った同心円というのは、私が刑法の原点に戻ってみようと思って、前田さんどいう都立大の先生の教科書の一番最初のページを開いたら、それがぴったり当てはまるというので、私は、この精神に戻ってこの法案についての考え方をこれから考えていこうと思っているわけです。  そこで、今回の法案は、組織犯罪の重罰化という点で刑法全域にわたって刑法典の原則を変更しようとするものということで、全体像を理解するのは容易ではない。私自身まだ容易ではないのですけれども。  そこで、まず一番最初に開いてみて、この団体という定義とか、それから団体の活動の定義、あるいは組織的に行われたという定義。そして、三条の二項で不正権益という新しい問題が起こっておりますので、まずその点について考えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  それで、この第二条の「定義」がありまずけれども、およそ個人以外の責任主体は、今の社会でも、法人とか権利能力なき社団とかあるいはNPOなど、現行法で認められているものはすべて、団体としては当然その定義の範囲内にあるのですけれども、それにとどまらず、この団体というのは、一定目的を有する集団、すなわち暴力団とか組織的なすり集団とか、あるいはスネークヘッドのような特定の犯罪集団という、従来の社会的に有用であるという団体以外の、外れた集団のようなものが入るというふうな意味で、統率力のあるものの集団というふうに考えていいのでしょうか。  細かい定義は確かに多くの解説で読みましたけれども、どういうものをイメージすればいいかについて、わかりやすく御説明を願いたいと思います。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 ただいまお尋ねの団体の意味につきましては、要するに、共同の目的を持った継続的な多数人の結合体ということでございまして、例えば今委員御指摘がありましたような適法な目的ということよりも、むしろ、目的のいかんを問わず多数人が継続的に結合したものと。したがいまして、また御指摘がありましたようないろいろな犯罪目的の集団、そういうようなものも当然これは念頭に置いて考えているものでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 まず、簡単に答えていただきたいのですが、この二条の団体の定義は、普通の株式会社とか、あるいは普通の、株式会社でもない団体、NPOの団体とかあるいは労働組合の団体とか、これはこの二条の定義から見ると当然当てはまると思いますけれども、それはイエスかノーか、当てはまるかどうかだけ答えてください。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 この内容につきましてはただいま申し上げたとおりで、そういう実体を持つ集団ということにございますので、それに当たるものはすべて含むことになります。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 ですから、その後の絞りはありますけれども、団体という定義だけを見ると、いわゆる普通の世間的にある団体プラス、それに外れるけれども一定の統率力のあるものも含むという、範囲が広がっているというふうに理解していいと思います。いいんですね。そういうふうに理解して進んでいいと思いますので、次に進みます。  というのは、各論の、一般論じゃない方がわかりやすいと思うのですが、例えば会社も入るという意味では、過去に例えば詐欺商法で有名になった豊田商事とか、あるいは抵当証券関係の会社とか、あるいはネズミ講を目的とした会社とか、これはれつきとした商法上の会社なんですよ。こういうものが、集団で詐欺行為を行ってきたというふうなものがあったとして、これは二条の団体に入ると見ていいのですか、あるいは入らないのですか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 今委員御指摘のような詐欺会社、これはここで言う団体に含まれます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 そうすると、こういうふうな詐欺会社が団体の活動として組織的に継続的に詐欺行為を行ったときは、その行った人に対してはその次の三条一項が該当するというふうに見てよろしいですか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 三条一項の刑の加重の対象になりますのは、そういうふうな団体と言えるものが犯罪実行のための組織、これをいわば用意いたしまして、それによって犯罪に当たる行為を実行した、そういう場合に刑の加重の対象になるということでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 そういうふうに答えられると若干わかりにくいのです。私は、会社というのは当たり前で、上司が命令をして、これを売ってこいと。社長以下、取締役会でこういう詐欺商品を売ろうと決めて、セールスマンに対して売ってこいという命令を下しますよね。それで売ってきて被害がいろいろなところで起こるのですけれども。そうなると、当然この三条一項の団体の活動として組織によって行われたということになっていくんじゃないですか、これは仮の話ですけれども。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 犯罪の実行をするための組織と言える実体を備えているということが必要なわけでございます。ですから、典型的な専ら詐欺商法目的の会社、こういうふうなものになりますと、その会社組織そのものが犯罪を実行するための組織と言える場面が多かろうと思われますので、そういうときには三条一項の刑の加重の対象になるということでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 わかりやすいように聞きたいのは、現在も、例えば和牛商法とかさまざまな一般的に言う、本当に詐欺かどうかは調べてみなくちゃわかりませんけれども、詐欺商法とか新しい商法がどんどんできてくる、多くの人を対象とする集団的な商法。それは、大体大くくりに見てこの法律でくくっていける対象になるかどうかということなんですよ。それとも、やってみなくちゃわからないというふうな言い方だと、そのあたりをイメージとして、一体これから新しい犯罪、どういう種類の犯罪が、犯罪というかがここにあらわれて、そしてそれが適切に対処されていくだろうかという、そのあたりのわかりやすい説明をしていただきたいのです。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 ただいま委員御指摘の、このような質疑を通じていわば法案の中身が固まっていくと申しますか、解釈が固まっていく一環としてお答えさせていただきたいと思うのでございますが、一般的に、ただいま御答弁申し上げておりますとおり、団体の目的あるいは意思を実現する行為の全部または一部が組織体として行われているというときに、これについてはこの法律で対象としょうとしているということになります。  したがいまして、いわゆる今委員御指摘のような詐欺商法を行うこと、そのことを目的としてつくられた会社というのは現実にあるわけでございまして、そういうような会社の活動の形態で実際に詐欺を行っている、それを構成する組織が一つの組織体としてそのような詐欺行為を行っているという場合には、これはこの法律の対象とする加重の問題に当たるというふうに考えられるだろうと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 それほどはっきりしたところは最初からわかるわけではないのですけれども……。  そうすると、今のお話の続きとして、次に三条の二項に、団体に不正権益を得させるという、これは非常に新しい概念が出てくるのですけれども、今のような詐欺会社が、サラリーマンがお金をどこかで人をだまして持ってきて会社に入れますよね。そうすると、その会社はそれで力を持ってくる。そうすると、この第二項で「団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきもの」というのですけれども、暴力団を頭に置くとすごいわかりやすいのです。一般の会社の場合でもやはりそれなりの地域または分野における支配力を強めていくためにこういうことをやっていくと思うのですけれども、それもやはり団体に不正権益を得させるということになるのですか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 この法律で取り上げようとしております不正権益と申しますのは、ただいま委員まさに御指摘いただいておりましたように、典型的には暴力団のいわゆる縄張りをとらえようという考え方でございます。  若干細かくなってしまいますが、それは団体の構成員による犯罪その他の不正な行為によりましてその団体またはその構成員が継続的に利益を得ることを容易にするような団体の威力に基づく支配力、すなわち不正な利益を獲得することの源といいますか源泉といいますか、その温床となっている団体の支配力そのものをとらえようというわけでございます。  ここで申します団体の威力に基づく支配力といいますのは、人の意思を制圧するようなある種の勢力で、団体の力を背景として一定の範囲の地域または分野におきまして他人の意思や行動を左右することができるある種の優越的な影響力を言うと解されます。  また、不正な行為と申しますのは、実質的に法秩序に反すると認められる行為を言い、犯罪はその典型でございます。例えば、いわゆる暴対法に定める暴力的な要求行為に該当する行為や、利息制限法に違反するような高金利の取り立て行為などは、直ちに犯罪とは言えない場合もあると思いますが、不正な行為には該当すると考えられます。  したがいまして、お尋ねの点に即して申し上げますと、会社などのある団体の構成員が単に当該団体に利益を得させるためにたまたま犯罪に及んだというだけでは、不正な権益を得させる目的があると言えませんので、第三条第二項には該当しないと考えられます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 御説明よくわかりましたけれども、今の御説明だと、暴力団はわかります、暴力団は処罰の対象にされても構わないと思うのですけれども、暴力団以外のどういう団体にどういうふうにいくかということについては、全く適用ないみたいな感じになるのです。しかし、不正権益という非常に抽象的な言葉がある以上、私は労働組合の例を出すのは余り好きではないのだけれども、労働組合だって相当団体の威力を用いて一定地域を支配することは幾らでもあるのですよ。それは、一種の政治的な団体だって同じですよ。それは、今の民主党がどうこうというのではなくて、もっと、いわゆる新左翼集団といって、そういう事件を起こす団体なんかもやはり同じようなことがあると思うのです。  だから、暴力団はわかるのだけれども、そのほかは一体どういうふうなものが当たるだろう。その場合、暴力団以外は余り考えなくてもいいということですか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 お答えとしてはそのとおりになるのだろうと思います。  しかし、ただいま委員は大変微妙な点に触れられておられるわけですが、世の中には、暴力団と称して行う行為もあれば、そうでない行為もございます。一見正当な会社の様相を呈していますが、実際にその内実を見てまいりますと犯罪集団ということもあり得るわけでございます。  それから、労働運動あるいは市民運動という点については、これはもっと微妙になろうかと思いますが、一般のと申しますか、正当な、いわば政治的な目的を含めたそのような団体の行為は、正当な運動として評価されるべきもので、犯罪集団としてはとても私は考えられない。その点は明確に申し上げてよろしいのではないかと思います。  しかし、事柄が労働運動行為だということを言えばすべての行為がそこで許されてしまうというものではないのではなかろうかという点は、やはり均衡の観点から申し上げなきゃならないと思います。しかし、そのようなことは通常は考えられないというふうに私どもとしては考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 例えば稲川、いわゆる暴力団なんかの問題ばかり言いますが、一定の統率力のある暴走族集団とか、これは余り適切かどうかわかりませんけれども、しょっちゅう傷害事件なんかを起こしている学生による番長組織とかそういうもの、これは確かに威力を行っているのはわかるのですけれども、麻薬組織とか密輸団とか、あるいは賭博組織とかいう、今、威力が余りわからない、ひそかに行われているような犯罪集団がありますね、こういう場合にもその団体の不正権益ということは当てはまることがありますか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 具体的な個別の団体に、ぎりぎりにこういう場合はこうだと言うことはなかなか難しい面があろうかと思います。  先ほどのようないわゆる詐欺会社、犯罪を行うためにいわば会社組織を利用してつくったような集団であるとか、いわゆる広域暴力団であって、まさにその組織によって犯罪行為が行われている場合は、通常、ここで言う団体に当たると考えられますが、他方、御指摘の例えば暴走族とか番長組織とかすり集団というようなものを考えてみますと、やはりその態様は相当程度さまざまあると思いますので、結局はその実態によって見ていくしかない。  それで、その見方は、やはり団体として多数人が継続的に結合している、そして、その団体としての目的あるいは意思を実現するためにある種の組織を使って犯罪行為を行っていると認められる場合にはこの法律の対象となるというふうに考えているわけでございまして、最終的にはやはり実態による。ある種のレッテルを張って、これはもうそれに当たるんだという形ではなかなか言いづらい面があるのではなかろうかと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 この三条一項は、団体によって組織的に行われた場合ですね。二項は、団体に不正権益を得させた問題ですね。  今まで出た例からいいますと、ほとんどが一致する。すなわち、団体に不正権益を得させる目的で、あるいは恐喝行為を行った、あるいは詐欺行為を行ったという場合、これは一項で罰するのか、二項で罰するのか。  それから、これは私はかなりの部分重複すると思うのですけれども、この法的競合関係、いわゆる併合罪のような形になるのか、あるいは、何ですか、吸収じゃなくて、法条競合ですか、というふうな難しい言葉ですけれども、片方やったら片方がなくなるのかという、犯罪は消えてしまうのか。そういう関係はどうなるのでしょうか。  私は、これを見ていて非常に重なる部分が多いような気がするので、あえて聞きます。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 第三条第一項及び第二項でとらえようとしております罪は、それぞれ要件が異なっておりますので、必ずしも両者の要件をいずれも完全に満たすという場合が多いとは思われないのでございますけれども、しかし、第一項各号に掲げた罪に当たる行為が、ある団体にまさに不正権益を得させる目的で、かつ団体の行為として、その罪に当たる行為を実行するための組織によって行われたという場合も想定できると思います。  そのような事案におきましては、一つの行為によりまして同条一項と二項の罪に当たる場合でございますので、両罪は成立いたしまして、その関係は、講学上の言葉で恐縮でございますが、いわゆる観念的競合ということになるのでなかろうかと考えております。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 これは私の勘違いがあるかもしれませんが、教えていただきたいのです。  この不正権益罪に、三条の一号、二号、九号を除いてあるのですけれども、この一号、二号は賭博罪とか賭博開張図利罪ですよね、それから九号は詐欺罪なのですが、これこそまさに不正権益を得させる典型的な犯罪であると思うのに、これが除いてあるのはなぜなのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 若干そこはわかりづらくなったかもしれませんが、常習賭博あるいは賭博場開張等図利につきましては、その罪がいわゆる暴力団などの賭博開張をやるという、これは、縄張りがあると仮定いたしますと、その縄張りという不正権益を現実に持っていて、それが実現されているという形で起こされるもの、つまり縄張りを持っていることの結果と申しますか、その力といいますか、そのいわば結果としてそういう犯罪が行われるということになろうかと思います。  常習賭博等自体が、賭博をやること自体が暴力団等の団体に縄張りを得させる目的で行わせるというものではない。つまり、縄張りを現に持っていて、その縄張りを持っている権益の結果として、そのような賭博開張図利が図られたり、常習賭博が行われるということなので、このように外させていただいている。  詐欺につきましても同様に、それは、ある団体に不正権益を得させるなど、直接の目的で起こされるというものではなかろうということで外しているということでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 私、わかりませんね。質問してよかったと思います。私の勘違いかと思ったけれども。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 ここで権益という言葉を使いましたのは、これは利益という意味ではなくて、おっしゃるような趣旨でございますと、確かに常習賭博で利益を与えることは事実なわけですが、そういう行為によって利益を得ることができるような支配力、地位を権益という言葉で表現しているわけです。  したがいまして、常習賭博というのは、ただいま局長の方からも御説明申し上げましたように、まさにそういう地位、支配力を利用して、その結果として得た利益を目的とするもので、縄張りとかそういう支配力を得ようとするものではないということでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 はっきり言って、私、この問題についてまだ納得できないというか、理解不足なのか、あるいは、そうじゃない場合だって幾らでもあると思うんですよ。一つの団体の中の一部の者が常習賭博をしたり、賭博をしたりすることは幾らでもあるので、それが何で、そのほかの、威力業務妨害とか建造物損壊とか、あるいは殺人、強要と別扱いにされるのかというのがちょっとまだ理解しづらいんですが、次の質問にちょっと幾つか行ってみたいので、これくらいにしておきたいと思います。  私は、この数日というか、二、三日の新聞を見ました。幾つかの事案がありまして、これは本当に二、三日中の新聞ですから、皆さんもごらんになった人はわかると思うんですけれども、幾つかの新聞があったので、これが一体、新法の場合だったらこれに当たるかどうかということを概括的に御説明願いたいと思うんです。  まず、五月十七日の新聞で各社は、福島の帝京安積高校教諭脅迫事件で、学校本部長で理事であった宮内という人を逮捕しました。彼は、労使対立て、暴力団と共謀した疑いである。しかも、もう一つ、銃撃事件というのもあって、ピストルで撃ったということもどうも関連があるらしいということも見出しである。  それで、今回の事件では、元暴力団組員ら三人は既に逮捕されております。一緒だと思うんです。それで、宮内の逮捕で学校側の関与も明らかになった。ですから、学校と暴力団との関係で、異常な事態に発展しているんです。  それで、質問してみたいのは、この元暴力団組長ら三人が関与しているということは、三条一項の、団体の活動として当該罪に当たる行為を実行する組織により行われたとして、三人は三条一項に該当すると見ることができるのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 現に捜査中の事件について、具体的にお答えするというのは大変難しいことでございますが、一般論ということで申し上げますと、単に、暴力団の組長を含む数名の者が関与していたというだけでは、犯罪を実行するための組織というまでには必ずしも至らないということになろうかと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 この宮内という人は、学校の幹部ですよね。しかも、本部長、理事という形です。しかも、この人にお金を渡している。  そうすると、宮内の行為は、一つは、宮内さんという人は学校の組織を利用して、組織でもって、しかもこれは労使対立ですから、組合員をそういうふうに、恐らく三条の一項なり各項に当たるような行為を、脅迫は入っていませんけれども、銃撃事件なんかやっているんですけれども、学校側はどうなんですか、その団体に当てはまっていくんじゃないですか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、実態として、定義されております団体に当たる要件を備えているものであれば、これはもちろん団体に当たるわけでございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 結局そういうことになりますね。学校だって、それは当てはまる場合だってあるわけです。  学校側は、幹部が関与したことで、しかも不正な行為によって、邪魔になる教諭を退職させようとしてこういう行為を行ったということですけれども、学校であっても、不正権益の問題も起こってくるんじゃないかと思うのですね。  学校を一つの威力団体のようにして、一定の地域あるいは教育分野における支配力を強めるということで、このような行為も、いわゆる宮内の行った行為は不正権益罪にも当たるのではないかと思うのです。一定の分野、すなわち教育分野における支配力を強めるために、団体の構成員、学校の構成員が犯罪または不正な行為をして、継続的な利益を得ることを容易にする行為に当てはまるんじゃないかというふうにも思うのですけれども、それはどうでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 ただいまの不正の権益の点に触れる前に、先ほどの、団体に該当するかどうかという点について若干補足して説明させていただきます。  ある学校を経営する法人組織が団体に該当することはもちろんあり得ないことではございませんけれども、その場合でありましても、その学校の活動、法人の活動として、しかも、犯罪に当たる行為を実行するための組織によって行為を敢行するような極めて悪質、例外的な場合が問題になるということでございまして、団体に当たるから直ちに本法の対象になるという定義じゃない。これは委員御理解の点でございますが、補足させていただきたいと思います。  そこで、教育分野における支配力ということの意義は必ずしも明らかでないのでございますが、教育の分野における何らかの支配力が、犯罪その他の不正な行為により団体またはその構成員が継続的に利益を得ることを容易にするような性質を有しているということは、通常は考えにくいというふうに思われます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 ですから、本件はまさに、不要な、抵抗する、邪魔な労組幹部を暴力によって放逐しようとする、そして、学校経営を容易にしょうとする。継続的な利益を得られますね。だから、外形的に言ったら当たるような気がするのですけれども。  まさに、学校が組織ぐるみ、個人ぐるみじゃなくて組織ぐるみで、大幹部が中心になって、そして自分の配下を使って、労務対策として暴力行為、暴力団と結託してやった、こういうのは不正権益にならないのですか。不正権益罪というふうにならないでしょうか。それから、三条一項の方の、団体活動により組織的に行われたことにならないのか。  その両方について聞きたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 具体的な事件でございますので、直ちにそれがなるという形で御説明申し上げることは難しいと思いますが、やはり本罪でとらえようとしている行為は、まさに継続的ないわば犯罪行為を行うための組織を使って、団体の本来の目的のためにそのことを行っているということが立証されないと適用されないというふうに考えられますので、その点についてはやはり、具体的な事犯の当てはめの問題はあろうかと思いますが、御指摘のようなケースで、直ちにこれが当たるというふうにはなかなか申し上げられないだろうと思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 犯罪の捜査を始めるについて、一応捜査の前提として、どういう罪に当たるのかということが頭にあって捜査は始まると思うのですよ。  本件は、暴力団関係者は、まずこの組対法関係だというふうにわかりますよ、それだけで。しかし、たった三人でやったから関係ないというふうに除かれる。しかし、学校が、学校ぐるみでかなり悪質にやろうとしている。もうこんなのは前代未聞ですよ。  そうすると、これは、暴力団じゃなくて、学校そのものがこの対象になっていくことは大いにあり得るのじゃないですか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 犯罪を捜査していく場合に、あらかじめ法条を考えて、それに当てはめて物を考えるかどうかという点につきましては、やはり実態を一つ一つの証拠に基づいて確定した上で、そして法条を、犯罪構成要件に当たるかどうか考えていくという順番に恐らくなるのだろうと思います。しかし、一般的に、現行法といいますか、法律の体系として、ある行為が犯罪に当たるということができ上がっている場合には、そのあらゆることを想定して証拠を集めていく、証拠を吟味していくということは当然あろうかと思います。  まさに委員が御指摘のような、学校が、いわば組織を使って、その目的を達するために、犯罪行為を行うことを目的としてその行為を継続的にやっているというようなことが証拠上確定されれば、本法の適用についてはもちろん考えられる場合もあろう、こう思います。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 そういうことでしょうね。わかりました。  私は幾つか事案を、この二、三日、いっぱいあります。暴走族の乱闘殺人事件というのがありました。三番目に、稲川会組員の偽装交通事故による保険金詐欺事件、千三百万円を詐欺した事件です。それから、東大阪市長厚生年金不正取得事件、これも組織ぐるみで取っているようなんです。それから、カジノクラブの経営者がバカラ賭博で開張図利事件。それから、中国人女性二名身の代金目的略取誘拐事件、これは五月十四日。こういうふうにただずらずらと見ただけでみんな該当、全然該当しないのもあります。警官が発砲して死んでしまったという事件があるのです。これは除外しましょう。  二番目の、暴走族が乱闘した結果、ある十八歳の少年を殺してしまったというのが五月十六日にあったのですけれども、暴走族というのは、一定の統率のもとに集まって、一定の地域を支配して、それで団体の活動として、対抗団体があったら、よし、やってしまおうというので、チェーンを持ったりナイフを持ったりして集まりますね。その結果、中の人間が刺したということになると、この暴走族集団はこの団体に当たって、この三条一項の団体の活動として組織的に行われたというふうな形になっていくのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 ただいま委員御指摘の報道されたような事案が、まさしく現代の社会においていわゆる個人的な犯罪としてとらえ得るのかどうかという点が問題になる一連の事例になると思います。  そういうものについて、まさにどのような角度から、どのように取り上げていったらいいのかということが議論されなければならないという点で、一つ一つについてできるだけ吟味していく必要は私はあろうかと思います。  そこで、まず暴走族乱闘殺人事件についての三条一項の成立という点でございますが、団体に該当する複数の集団の間で乱闘事件が発生してその中で殺人が犯されたといたしましても、それだけで団体の活動として殺人に当たる行為を実行するための組織により行われたというふうに認められるとは限らない。そういう場合も恐らく事案によってはあるかもしれませんが、殺人が行われたというだけで本法三条一項の罪が成立するという形には恐らくならないのではないだろうか。その具体的な態様、殺人行為のあり方、暴走族同士の対立抗争関係ということを吟味してまいる必要があるのではなかろうかと考えます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 確かにおっしゃるとおりですが、もう常時、犯罪を内包しているというか、犯罪を犯すのを内包しているような集団というのはありますよね、やはりそれはいいでしょう。  それからもう一つ。幾つか聞いてみたいと思うのです、時間もありませんが。  稲川会の組員が偽装交通事故、すなわち、けがしている人を車に乗せて、ほかの車にぶつけて、それでけがしたといって千三百万の保険金を取った、三人が共謀して。これは稲川会という巨大な組織の中のわずか三人の人間が、まさに上納金を得るためか何か知りませんが、そういうふうなことをやった。そういう場合は、団体は稲川会なんですけれども、特にこの三条一項あるいは三条二項との関係はどういうふうになりましょう。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 これもまた一般論ということで、その御指摘の事案を念頭に置くわけでございますけれども、暴力団員が複数名共謀して犯行に及んだ場合であり、仮にそれらの者が所属する暴力団がこの法律の第二条第一項の団体に該当するといたしましても、あくまでもその暴力団の団体の活動としてなされたということが立証できませんと適用はできないということになるのじゃなかろうかと思います。  なお、暴力団員がその所属する暴力団へのいわゆる上納金を獲得するために犯罪に及んだという場合もあろうかと思います。しかし、それだけでは第三条二項の要件に該当するわけではございませんが、例えば縄張り内の飲食店からのみかじめ料と申しますか、そういう上納金的なものを獲得するために、そういう利益の獲得に係る不正権益を有する暴力団の構成員が、獲得したみかじめ料を上納金に充てようと考えまして、飲食店の経営者にみかじめ料支払いを要求したところ、その人がその支払いを拒んだために、まさにそのみかじめ料徴収の確保と申しますか、その縄張りをと申しますか、不正権益の確保を目的として威力業務妨害に及んだということが立証されれば二項の罪に該当する場合も考えられる。直ちに詐欺という点では、先ほど申しましたような観点から、対象にはならないと考えられます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 時間が終わりましたから、そろそろ終わりますけれども、今みたいに言われますと、暴力団の組員が三人ずつぐらいばらばらにやった場合は、裏の共謀は余りわからないわけですから、何か当てはまらない感じになってしまうような気がするのですね。  みかじめ料の問題だって同じで、それは詐欺であろうと暴力であろうと、それから威力でおどしてみかじめ料を取ろうと、これはみんな組織として組長以下が全部行くわけじゃなくて、ばらばらに分担してやるわけですから、何千人の組織の中の三人とか四人がやったら当てはまらないというふうになってしまうような気がするのです。ちょっとその辺あたりも余り明快じゃないような気がしたのですが。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 あるいはそのように聞こえたかもしれませんが、あくまでも、この法律ができますと、組織を使って犯罪行為をいわばビジネスとして行っていく団体があるといたしました場合に、そのような場合には一段と重い法定刑をもって臨むということをこれは宣明するわけでございますので、その場合には、ただいま委員御指摘の共謀のあり方も含めて、そういう観点から事案を確定していくというための努力が行われる。通常の個人犯罪としてとらえられる犯罪の捜査とは、そこはおのずから違ってくる角度からの捜査の遂行と、それに基づきまして証拠を確定して、そして事実を認定していくということが可能になる、そういうふうに考える次第でございます。

北村哲男民主党

○北村(哲)委員 本当に入り口で終わりましたけれども、これからもいろいろと審議があると思いますが、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 漆原君。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 平和・改革の漆原でございます。  本日は、通信の現場を預かる郵政省に来てもらっておりますので、お尋ねしたいと思います。  まず、原則論を聞きますが、憲法二十一条二項は通信の秘密の不可侵を保障しておりますが、これは思想の自由だとか表現の自由、プライバシーの自由を保障するという意味の保護規定であると私は考えております。これは健全な民主主義社会の形成に欠くことのできない権利であると思います。国家からのぞき見されないというこの権利というのは、この情報化社会には最も大事な権利であると思いますが、郵政省はこの点につきどのような認識を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 お答えいたします。  本法案、通信傍受法案につきましてですが、これは一定の要件を満たす場合に裁判官の発する令状によりまして捜査機関が通信傍受をすることができるものとすることを内容とするものでございます。  郵政省としましては、通信傍受というものにつきましては、先生御指摘になりましたように、憲法第二十一条二項で保障されました通信の秘密、これを侵害するものでございますが、この通信の秘密の保護というものも公共の福祉の観点から一定の制約を受けることもやむを得ないところでございまして、従来の判例や学説におきましても、重大な犯罪手段の方法として通信が利用されている場合に、事案の真相を究明するために、厳格な要件のもとで必要最小限の通信傍受を行う手続を設けることは憲法に違反するとは言えないとされております。  今回提出された法案につきましても、通信傍受の手続につきまして、要件の厳格性、実施内容の必要最小限性といった観点から通信の秘密保護に必要な配慮がなされているというふうに考えてございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 別に本件と関連して聞いたわけではなくて、一般論として聞いたところ、もう本件の答えまで出してしまったということで、まことに郵政省の態度はどうなのかなという感じを受けるのですが。  電気通信事業法は、憲法の二十一条の精神を受けて、三条では検閲の禁止を規定し、四条で通信の秘密を保護しております。これらの規定にかんがみるとき、本法案では通信事業者に対して、十一条では通信傍受についての協力義務を課しております、そして十六条二項では逆探知に対する協力義務を課している、また十二条では傍受の立ち会いについての規定をしておる、こういう現実的に通信事業者に対するいろいろな義務が課されている。  この観点からもう一度郵政省のお考えをお尋ねしたいと思います。結論は同じかもしれませんが、おっしゃってください。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、通信傍受と申しますのは、憲法第二十一条第二項後段で保障された通信の秘密を侵害するものでございますが、通信の秘密の保護も公共の福祉の観点から一定の制約を受けることはやむを得ないということは先ほど申し上げたところでございます。今回の法案のように、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づきまして必要最小限の範囲でこれを行うことは許されるもの、これは基本的考えでございます。  こうした捜査機関によります通信傍受が許されます場合に、これに付随してなされます通信事業者等によります協力の行為あるいは立ち会いの行為につきましても当然適用になるものと理解しております。  なお、通信事業者等が令状執行に当たりまして機器の接続に協力したり、あるいは立会人として令状執行の外形的な事柄と申しますか——いずれにしましても、通信の秘密の保護にも資するものと考えてございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 まず、十一条で協力義務を規定しておるわけですけれども、正当な理由がないのに拒んではならない、こう規定がありますが、協力を拒み得る正当な理由というのは一体どのような事由というふうに郵政省では理解しておられるのか。  それから、十六条、これも逆探知の義務を課されておるわけですけれども、これも正当な理由があればこれを拒めるという、この正当理由とは一体どのような場合、協力義務を拒み得る正当理由はどのような理由というふうに郵政省はお考えになっているでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 お尋ねの通信傍受法案の第十一条及び第十六条第二項の正当な理由につきましてでございますが、郵政省としましては、両条項に言います正当な理由というのは、例えば通信事業者等におきまして他の利用者に対する役務の提供に少なからぬ支障を与えるような場合、あるいは通信事業者等が有する設備あるいは技術によりまして可能な範囲を超えた協力を求められたような場合、こういった場合がこれに該当する、そういった判断をなされた場合が考えられると考えており  ます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 ちょっとわからなかったのですが、もうちょっと具体的に述べていただけないでしょ  うか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 つけ加えて申し上げます。  まず、利用者に対する役務の提供に少なからぬ支障を生ずる、例えば傍受によりまして当事者以外にほかの利用者の方にも通信が途絶してしまう、とまってしまう、あるいは非常に大きな雑音が入って事実上通信ができないような実情になってしまう、こういった場合もあろうかと思います。  あるいは通信事業者等が有する交換機とかそれからいろいろな内部的な設備がございます、あるいは通信事業者が使っております技術がございますが、例えば警察当局あるいは司法当局からその範囲を超えた協力を求められる。通信事業者、NTTが代表でございますが、現実に通信事業を行っているわけでございます。この通信事業本体の業務に差しさわりがあるような形で協力を求められる。例えば小さな電話局で大勢の人間が来て、あれもやれ、これもやれと非常に膨大な要求がなされたというような場合には、これはやはり正当な理由に当たるのではないか。かみ砕いて申し上げますと、そういった場合が考えられると思います。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 大変な雑音が入って聞こえないというようであれば傍受もできないのではないかと思うのだけれども、これは法務省に聞こうかと思ったのですが、結構です。  もう一つ、十二条の立ち会いについて聞きたいのですが、原則としてこれは管理者または代行者、これらの者を立ち会わせることができない場合は地方公共団体の職員でよろしい、こういう条文になっておりますが、原則的に管理者、代理人を立ち会わせることができない場合というのは一体どういう場合なのか、いかがでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 お尋ねの、例えばこれは通信事業者の、先ほど電話局の例を申しました。電話局も非常に規模によりましてさまざまでございます、あるいは支局、支所の、それから業務運営上の事情もございます。責任者と申しましても、例えば小さいところで申しますと、責任者あるいは代理の者が病気あるいは出張等でいない場合、それから人員的に非常に窮屈なところもあろうかと存じます。それから非常にローカルな場合では特にそういった例が挙げられるのではないか。そういったさまざまな通信事業者としての、事業体としての運営上に差しさわりがあるような場合が考えられるのではないかということでございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 端的に嫌だと言った場合はどうでしょう。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 これは法務省の方にお尋ねいただくのが筋かもしれませんが、郵政省の理解を申し上げます。  この立ち会いあるいは協力義務、両方でございますが、やはりこういった手続のためには適正な手続を確保するために立ち会いといったものが求められているというのがベースであろうかと存じます。そのためには、やはり通信事業者としては、自分の交換機設備あるいは通信事業が適正に行われるために、その設備の保全の趣旨もございますゆそういった通信事業に支障を生じないような形での立ち会いというものも当然権利としてもあるというふうに理解してございます。そういう意味で、当然、今回のような法案ができました暁には、通信事業者におきましても立ち会いを求められた場合には必要に応じて協力していくのが、まず基本ではないか。  先生御指摘の端的に嫌だと言った場合があったらどうかと。こういった場合には、そういうことがあり得ないということではないのではないか。ただ、基本的には、立ち会いを求められた場合は、みずからの通信事業の適正を確保するためにはやはり立ち会いをするのがまず基本ではないかというふうに考えてございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 そうですが。立ち会いをするのが基本だというのが郵政省のお考えなわけですね。  これは法務省に聞きたいのですが、立ち会いについては、立ち会い義務を課さなかったわけですね。この立ち会い義務を課さなかった理由は何でしょうか。またもう一つ、立ち会い拒絶権を認める趣旨なのでしょうか。この二つ。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 今回の法案の、御指摘のとおり十二条において、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者を立ち会わせなければならないとしておりますのは、その者及び通信の当事者、双方の権利の保護を図るとともに、傍受の実施手続の公正を担保するためというふうに考えられたものでございます。この点は、これまでの各種の強制処分における管理者等の立ち会いと同様の趣旨でございますので、主として傍受の実施のために必要な技術事項を中心とする協力事項の中には含めていない。  ですから、この点は、当然、先ほども郵政当局から答弁ございましたけれども、通信手段を管理する者の立場、それから通信の当事者の権利保護と、その業務の公正さを担保していくという観点と、それから、犯罪の捜査という点の公共的な立場からの一いわば調和の問題ということを考えますと、通常の場合、これは他の強制処分における立ち会いの場合と同じでございますから、御協力はしていただけるのではないだろうかということを基本的な考え方としているものですから、そのこと自体を義務ととらえるということはしなかったということでございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 いや、どうもよくわからないのですが、検証令状の際も、通信の傍受の実施に関してはNTTの職員は協力したわけですよね。ところが、立ち会いは拒んだわけでしょう。拒んだケースが結構ありましたですね。そうだとすると、むしろ今までのケースからいえば、傍受の実施については協力していただいているんだから、これを義務とした以上は、立ち会いを拒否した例がいっぱいあるわけですから、むしろ立ち会いこそ協力義務、立ち会い義務を課すべきではなかったのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 実際のその傍受の手段につく技術的な点については御協力いただかなければならないわけですね。勝手に捜査官とかがいじくって、これは重大な障害を生ずるという場合があるわけでございますから、その点は、やはり協力していただくことは義務としてお願いしたい。  ただ、立ち会いについては、御指摘の点は、具体的なケースとして、立ち会うまではやりたくないという場合も実際の問題としてあろうかと思います。特に従来の検証令状の中での立ち会いということになりますと、薬物、特に覚せい剤の取引の専用手段として行われているわけですから、そういう電話が傍受されるわけですので、中身としては比較的簡単になってまいります。そういう面から、立会人がそれを実際に聞いているということをある程度想定している場合があるわけです。そうした場合には立ち会うことについて、いわば捜査に関して、そういう面から協力しているという面がより端的にあらわれてしまうという面があるいはあるのではないかと思います。  その点では、今回の法案では、立ち会いというのは、いわば、先ほど申し上げましたような、通信手段を管理している方の権利保護と申しますか業務の保護と、通信する当事者の権利保護という観点から、公正に行われていることを外形的に保証するために立ち会っていただくということを主眼にしております。ですから、中身そのものについて立会人の方に監視していただくということまでを中身にしていないという点について、ぜひ御理解いただきたいと思います。  そういう面では、立ち会いということは、いわば公正な立場から通信傍受の具体的な手段を技術的に補完していただく、それについて外形的に立ち会っていただくという点で、通信手段を管理する側としてもその点は御理解いただけるということを前提にしたものでございますので、その点では、従来の検証令状の場で実務として行われていた立ち会いとは若干ニュアンスを異にする面があるいはあろうかと思います。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 法務省とはまた後日、改めて。  郵政省に聞きます。  検証令状による通信傍受が行われた事例は五件報告されておるわけですけれども、今までNTTの職員が傍受を拒否した事例は何例あるか。そして、その立ち会いの拒否をした理由は一体何だったのか、どのようにお考えでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 お答えいたします。  五件、いずれにつきましてもへNTTは、求められた場合には、通信内容にかかわる形での立ち会いというものはお断りしてございます。これはNTTから受けた報告でございます。つまり、通信の秘密を守るべき事業者としての立場から、より慎重な対応をしなければならない、そういう趣旨からこういった立ち会い要請に応じなかったというふうに聞いております。  ただし、令状の執行に当たりまして、消防署職員あるいは県職員といった地方公共団体の職員の方々が立ち会いをしておるわけでございますが、これとは別に、先ほど申し上げましたように、NTTの施設の保全の目的、そういった目的からの立ち会いはNTT職員が行っております。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 今おっしゃった、機材を管理するという立場からの立ち会いというのは、これは検証令状で言っているところの立ち会いではないのですね。性格上は、NTTは、勝手に変なところをさわられては困るから事実上立ち会っているだけで、その立ち会いは検証令状で言うところの立ち会いではない。そうですね。ここはちょっと確認したいと思います。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 そのとおりだと存じます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 やはりこの立ち会いを拒んだということは、今室長がおっしゃったように、通信の秘密を守る立場にある者が積極的に傍受に関与することを潔しとしないという、そのNTTの職員の現場の声ではなかったのかなというふうに考えるわけなんですが、本法案で、傍受に対する協力義務とか逆探知の義務とか課されているんですけれども、このことに関して、現場の職員の声を郵政省としては確認されたことがあるでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 NTTの方に、今回の傍受法案が成立した場合の対応について照会したところでございます。これにつきましては、こういった法案が成立した場合には、これが一定のルールということで運営されていくわけでございますので、NTTとしても当然これに従った対応をとっていくというふうに聞いております。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 今回の法案が成立した場合は、これは当たり前のことだと思うのですね。問題は、こういうNTTの職員なり通信事業に関与する者が積極的に通信傍受に携わる、そういうお手伝いをするということ、これに対して、この法案ができる前に郵政省としては現場の声を聞いたのかどうかという質問をしているのです。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 平成八年から法制審議会におきまして、今回の通信傍受を含めました組織犯罪の法案につきまして審議がなされております。この過程におきまして、郵政省も関係機関として関係職員がオブザーバーとして参加しておるわけでございますが、その過程におきまして、NTTを初め通信事業者の方からも意見を聴取しております。その際には、一部にそういった懸念もあるという意見もありましたし、また逆に、先ほど申し上げましたような通信事業者としてのかかわり、あるいは設備保全、あるいは通信事業者本来の業務の運営、そういった問題から、さまざまな意見が出ておりました。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 NTTの職員全体に対して、どんな調査をされたかわかりませんけれども、この法案について、こういうことになるんだよということで、職員全体について意見を聴取したことがあるのですか、ないのですか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 私どもとしましては、やはりNTTという大きな組織でございます、この本社を通しまして、NTTとしての意見を集約していただいたということでございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 どんなふうな方法で意見を集約したかということは、御確認されましたか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 当方から、法制審議会におきまして審議されております過程のこの通信傍受の法案あるいは要綱、たたき台といったものを、NTTの責任部署がございます、今法務考査部と言っておりますが、こちらの方を窓口にしまして、NTTとしての意見をまとめていただいたというふうに理解しております。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 賛成もあれば反対もあったというふうに先ほどお答えいただいたと思うのですが、NTTの職員は、電気通信事業法で秘密の保護をしなさいという義務を一方では負っているわけですね。もう一方では、今回この法律で積極的な傍受の実施に関する協力義務を課せられる。ある意味では義務による板挟みになるということが一つと、それから、やはり通信事業に携わる者として、通信の秘密を侵害しかねない、そういうことに協力することは潔しとしないのじゃないか、そういう空気の方が私は強いのじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 議論の本当の最初の段階でいろいろな意見があったという趣旨で先ほどお答えいたしましたが、やはり、この電気通信事業法、検閲の禁止あるいは通信の秘密の侵害の禁止といったものが法律で定められております。NTTも通信事業者としてこの義務を課せられておるわけでございますが、現在におきましてのこの通信の秘密あるいは検閲の禁止ということにつきましては、正当行為等の例外を許さない趣旨ではない、まずこれが基本にあろうかと思います。例えば、刑事訴訟法の規定に基づきまして、裁判官の発する令状によりまして通信に関する書類を押収すること、これも既に、現在の時点でも許されているところでございます。  これとの関係でいきますと、今回の法案、これは言ってみれば、この検閲の禁止あるいは通信の秘密の侵害といったものを、違反となる行為に対して、これを適法とする法律根拠といったふうなものになると理解しております。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 どうも私の質問していることに直接お答えになっていないような、私は、この法案ができる前にNTTの職員の現場の声はどうなんだということをお聞きしているのであって、できた後どうかという問題ではないのですね。それは結構ですが。  私の友人のある弁護士が、この点に触れて、ロー・ジャーナルという雑誌にこんなことを書いているのですね。ちょっと読んでみますが、「NTT職員は、」彼は盗聴法と言っていますが、「盗聴法案が成立した後には、「正当な理由」なく拒否することはできなくなるから、」「この結果、警察や検察が、通信事業者を自分たちの手足として利用することを認めることになる。アメリカでは、盗聴する場合には、別に部屋を借りて、そこに通信線を引いて行うのが通常であるとされ、盗聴の実施には莫大な費用がかかると言われているが、日本では、原則として通信事業者の施設内で行うことを前提にしている。つまり、盗聴法案は、通信事業者の協力義務を法定することにより、安上がりな盗聴を認めようとしているのである。」こんなふうなことを書いているのです。  私も、この前段の、こういう義務が課せられることによって、結果として、NTTの職員が警察や検察の捜査の手足として使われるのじゃないかという考えを持っておるのですが、これは私、NTTの職員の立場から見れば、警察官の手足となってある意味で意に沿わない通信の傍受をさせられるということは、通信事業者としての誇りを失うことになるのじゃないかな、そんなふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 本法案によります傍受につきましては、重大な犯罪あるいは社会的に危険な犯罪の実行に関連する通信が行われると疑うに足りる状況、これが前提でございまして、かつ、ほかの方法では事案を解明することが著しく困難な場合、こういうふうに法案の方に大前提がございます。  そういった重要な犯罪、事案を解明するために、ほかの方法では困難な場合には裁判官の発する令状に従いまして適法に行われるものである、こういうものでありますことから、先生御指摘のような御懸念はないのじゃないかというふうに考えてございます。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 法務省の答弁を聞いているような感じがしますが、今後、この法案が適用されますとへ相当広範囲にわたる犯罪に通信傍受が適用になるわけなんですが、その結果、今後はNTT等に警察官が頻繁に出入りをすることになる、それから通信の傍受や逆探知の協力を求められることになる、こう思うのですね。少なくとも、これは国民の目から見ますと、今まではNTTは通信の秘密を守って通信を取り扱ってきたところだと見ていたのですが、今後は、あのやかたで通信傍受が、あるいは逆探知が行われているということで、警察を見る目と同じような目でNTTを見るのではないか。  こうなってくると、今までの通信の秘密の守り手から、むしろ通信の秘密を侵す者、秘密を奪う者という、そんなことで、NTTが今後国民の信頼を失うことになるのではないかという心配を持っているのですが、先ほどもあなたおっしゃったように、法務省的な立場ではなくてへ通信の秘密を守るという郵政省の立場で何かお答えできないものでしょうかね。いかがでしょう。

千葉吉弘郵政省電気通信局電気通信事業部業務課電気通信利用環境整備室長

○千葉説明員 先生お尋ねの趣旨に合うかどうかでございますが、やはり公共の福祉というものが憲法の方にうたわれてございます。公共の福祉の中には、重大な犯罪、これは社会、市民の生活を守るためということが、やはり一つの大きな公共の福祉の要素ではないか。そのためには、こういった重大な犯罪が実際に行われている、それが手段として通信が使われているということが確実な場合、犯罪捜査のためにこういった手続を、厳格なものを定めるということは、やはり公共の福祉という観点からは非常に重要な視点ではないかというふうに考えてございます。  そういう意味では、逆にそういったものが公共の福祉というものに寄与するのだということがあるのじゃないかというふうに理解しております。

漆原良夫平和・改革

○漆原委員 私は、この通信傍受に関する法案というのは、法務省の立場からして、いっぱい犯罪があるから、犯罪捜査という点で非常に力点を置かれている法案だと思っているのです。ただ、郵政省は、国民の通信の秘密を守るという立場から、私は法務省とまた違った観点から議論がされているのじゃないか、こういうふうに期待をしておったのですが、残念ながら全く法務省と同じ観点での御答弁で、非常に残念に思っておるのですね。  同じ内閣の中にいても、法案ができるまでの議論としては、法務省は積極的な立場で、犯罪捜査という立場で、ぜひこの盗聴というか通信傍受をやりたい、しかし郵政省は、国民の基本的人権という、通信の秘密を守る観点からそれはいけないんだ、こういう議論が内閣の中にあってしかるべきではないか。まことに残念だなという意見を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 上田勇君。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 平和・改革の上田でございます。  今回議題となっております三つの法案が、御承知のとおり、日弁連初め多数の市民団体が、法制定の必要性や法案の内容についてもいろいろな疑義が示されております。これらの法案は刑事法制の根幹にかかわる内容も含まれておりますし、とりわけ通信傍受などは社会的にも大きな影響がある内容であります。そうした性格から、やはりこの法案につきまして、これから当委員会におきまして慎重な審議を行っていかなければいけないというふうに考えているところであります。  きょう、私たちにとりましては最初の質疑の日でもありますので、まず、概括的なところがら何点かお伺いをしたいというふうに思っております。  先日、法務大臣から三法案についての提案理由の説明が行われました。ちょっと例示の部分は省略いたしますけれども、その提案理由説明の中では、近年、組織的な犯罪が少なからず発生しており、我が国の平穏な市民生活を脅かすとともに、健全な社会の維持、発展に悪影響を及ぼす状況にあると。この言い方が三法案とも冒頭でほぼ同じ表現でなされております。  これから見ますと、三法案の最大の目的というのが組織的な犯罪の対処にあるのは明らかだと思うのですが、それでは、この組織的犯罪とは何かということを、法案を見てみますと、もう一つ判然としないところがございます。  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案、この法案の中の第三条では、「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」というような規定がありますが、一方、同じ法案の第九条以降の犯罪収益等に関するものについては、この団体の活動として行われたときという要件は特に付されておりません。また、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案ではこういう書き方になっております。「数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき」というふうになっております。  そうすると、これらを共通して見ますと、では、この組織的な犯罪というイメージ、どういうものを想定されているのか、それぞれの事項によってかなり違いがあるような気もいたしまして、その辺が判然としないわけであります。  そこで、初めに、この組織的な犯罪、これは、例えば暴力団組織による犯罪であるとか、そういったものは明らかなんだと思うのですが、そこから先の部分、境界線の部分も含めて、この組織的な犯罪の定義というのがもう一つはっきりいたしませんので、その辺をちょっと確認させていただきたいというふうに思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 委員御指摘の、提案理由説明等で組織的な犯罪ということについて申し上げさせていただいております。  この組織的な犯罪とは、犯罪行為自体が組織化された形態で行われ、または組織化された犯罪組織の活動に関して行われるということなど、種々の形態をとって行われるわけでございますが、組織的な犯罪を広く総称する概念というふうに御理解をいただければと思います。  現在御審議願っております三法案は、このような犯罪に対処していくために、当面、緊急に必要な幾つかの事項について法整備を行わせていただきたいというものでございまして、それぞれの法制度の対象とする犯罪の範囲は、それぞれの目的、効果等に照らして、必要かつ合理的な範囲内でやらせていただくということを主眼にしております。ですから、法案によってそのとらえ方、手段との関係でのとらえ方が若干広い場合と狭い場合があろうかというふうに御理解いただければと思います。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 冒頭、日弁連や多くの団体がいろいろな疑義を言っているというふうな話をしたのですが一それは、まさに今私が申し上げたように組織的な犯罪というのは何ぞやというところがもう一つわからない。ひょっとしたら、ここまで適用されるのではないか、あるいは解釈、適用が非常に拡大されてしまうのではないかという懸念がどうしても払拭できないという点に最大のところがあるのではないかというふうに思います。  今ちょっと御説明を聞いた中でも、総称であるというふうなことだったのですが、これはもっと限定的な形で考えないと、これは検察や警察が市民社会の中に働きかけることでありますので、その不安というのはなかなか払拭できないのではないかというふうに思うわけであります。  組織的犯罪の処罰法案の中に、第二条第一項で、先ほどもちょっと引用いたしましたが、団体という言葉が出てまいります。団体についても定義が書いてあるのですが、この団体という用語と、それから、総称とおっしゃいましたけれども、組織的な犯罪という中での組織、これがこの法案の中でも説明はされているのですけれども、私もそういう意味で法律の専門家ではないので、この組織それから団体、この辺の意味をちょっとわかりやすく御説明いただければというふうに思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 先ほど申し上げましたように、組織的な犯罪という概念自体は、種々の形態で行われる犯罪を広く総称する概念でございますけれども、委員ただいま御指摘のへ組織的な犯罪処罰法第二条一項において定義されております団体は、これは刑の加重が必要と考えられる場合の要件の一つを定めるものでございまして、その面では、かなり厳格な、いわば限定された概念として使われているわけでございまして、一般的に、先ほど申し上げました組織的な犯罪という場合の組織よりは、より限定された概念というふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。  そこで、先ほどもちょっとお触れになりました、通信傍受についてそれがどういうふうに考えられるか、あるいはマネーロンダリング対策についてはどうかという点で、それぞれのいわば制度と申しますか法制度について、必要な限りで組織的な犯罪対策に対応していくためのいわば制度としてどうとらえていくのがいいのかという形で、そういう考え方で整理されているわけでございます。  なお、非常に広くと申しますか、一般的に御理解賜りたい点は、いわば加重要件という犯罪構成要件としてとらえる場合には、これを極めて厳格に、いわゆる実体法上の要件としてはとらえていくという点が一つあるほか、犯罪の捜査という観点になりますと、初めからいわば組織的な犯罪というような形で明確になってくる場合というのはかえって少ない場合があります。そういう背景があるということは予想されましても、捜査の過程においては、徐々にそういう事態が証拠によって積み上げられていくわけでございますので、ある程度、そういう組織的な犯罪によって行われる事態に対応する捜査のあり方としては、若干広目にそれをとらえて対応策を考えていくという考え方がその背景にあるということを御理解いただきたいと思います。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 今、答弁で、団体は限定的、組織は、あるいはその団体によるものなのか、または、それには必ずしも帰着しない場合もあり得るというような話であったと思うのですけれども、今団体についても、その定義が余りにも広いのではないかという疑問もあります。  今の答弁では、限定的にというふうに言われておりましたけれども、この団体の定義についても各方面から、この団体にはいわゆる暴力団等の犯罪組織が含まれるのは当然といたしましても、会社や労働組合、宗教団体、政治団体、公益法人、NPOなど、そもそも犯罪の実行とは関係ない団体、組織まで対象となり得るのではないかという懸念も示されております。  これは、先ほど北村委員からも、この点については言及がありましたけれども、さらに、この法案の中では、刑の加重規定の対象犯罪には、信用毀損及び業務妨害であるとか、威力業務妨害、建造物等損壊など、通常考えれば適用の対象が比較的広いかもしれないと言われるような犯罪も含まれていることから、法の適用によっては、本来、犯罪組織ではない団体にも重罰が科されるというようなことが懸念されるのではないか。それが結果的に、特定の団体の圧迫や迫害につながるのではないか、そういうような懸念も耳にするわけであります。そこで、この団体、組織の定義について、目的、性格、規模など、限定的な条件をもっと加えるべきではないかというふうに私は考えるわけであります。  そこで、これら三法案がすべて組織的な犯罪の対策を目的としているものであれば、今ちょっと答弁でもあったのですが、やはりそれは、共通して団体の活動として行われたとき、あるいは行われる疑いがあるときというような制限を、条件を加えるべきではないかというふうに考えるのが一つ。  もう一つは、これが同じ組織的な犯罪対策ということでとられたものであれば、この通信傍受に関する規定も、マネーロンダリングに関する規定と同様に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案を軸に一本の法案でまとめられたら、その目的がもっと明確になったのではないかというふうに思うのですけれども、その辺は、私が伺うところでは、法制審の中でも議論があったというふうに聞いておりますけれども、そうした意見についてはどのようにお考えでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 お尋ねは二つの点ございます。  まず第一点の、組織犯罪対策ということが目的であるならば、マネーロンダリングあるいは通信傍受につきましても、団体の活動を通してというふうな要件をつけ加えるのが相当ではないかという点でございます。  この点につきましては、いわゆる組織的な犯罪は、その形態が組織的に行われるものに限らず、暴力団等の組織犯罪等の関連で行われるものの、実行形態としてはごく少数の共犯あるいは単独犯であるというふうなことも少なくないわけでございまして、そういう意味で、さまざまな形態のものを含むものだということをまず御理解いただきたいと考える次第です。  ところで、いわゆるマネーロンダリングにつきましては、多くの組織的な犯罪が、犯罪による不正な利益を上げることを目的として行われ、その利益を用いて健全な経済活動に侵入したり、あるいは犯罪の再投資に使うというふうなことから、こういうことを規制することが組織的な犯罪の対策のために有効な方法というふうに認識されているわけでございます。  そういうことからいたしますと、例えば前提犯罪に御指摘のような要件を加えますと、組織的な犯罪といいますか、犯罪組織等に関連して行われる犯罪というのは大変幅が広いものですから、そういうものを全部取り込むことが一方では困難でありますとともに、組織的な犯罪対策としての実効性の面からどうしても問題が出てくるということになるわけでございます。  現実に、外国におきましても、マネーロンダリングにつきまして、その前提犯罪を組織的な形態で行われる犯罪に限定しているという例は、私どもとしては、現時点では承知しておらず、国際的な協調の観点からも、前提犯罪についてそういうふうな限定をするということは適当ではないと考えている次第です。  次に、通信の傍受につきましては、例えば団体の組織によるものではありませんが、多数人が計画的に役割の分担等を定めて組織的な形態で実行する犯罪もございますし、あるいは、先ほども申し上げましたように、暴力団等の犯罪活動あるいはその他の不正な活動に関連して、少数の者が実行する犯罪なども多いわけでございます。  そして、これから事案を解明するという捜査の過程におきましては、共犯関係や背後関係が必ずしも明らかとなっていないということもございまして、そのような場合に通信の傍受を許さないということにいたしますと、組織的な犯罪に対処するための有効な手段としてはやはり問題があるというふうに考えられたわけです。  そういうことで、通信の傍受につきましては、犯人間の相互連絡が現実に想定されるような場面ということも踏まえまして、「数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況」ということを要件とすることとされたものでございます。  諸外国におきましても、通信の傍受が、例えばテロ犯罪でありますとか組織犯罪に対処するための方策として導入されている場合もあるように承知しておりますが、そういうふうな犯罪の組織性等、立法の動機となる事情が必ずしも要件とはされていないというふうに承知しております。  次に、第二点の問題として、これを一本の法案にまとめることはできなかったのかということでございますけれども、何と申しましても、一本の法案にまとめることになりますと、まず法案自体が非常に膨大なものになって、しかも、その中にいわば実体法関係の部分が主な部分と、それから通信の傍受というある特定の手続的な場面というものが混在するというふうな問題がございまして、立法技術的にやはり通信の傍受という特定の手続に関する、しかも詳細な規定を持つ部分というものは、別な法律で定めることが適当というふうに判断をしたということでございます。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 今、日弁連初め各種団体が、この通信傍受の問題に最も関心また懸念を表明しているのですが、それは、私がただいま申し上げたように、この通信傍受が、組織的な犯罪対策と言われながらも、法律の体系として、組織性という意味では数人の共謀という限定があるだけだし、今は一括して審議されているので、組織的な犯罪対策の中でというふうなイメージでとらわれているけれども、実際に、それを独立して見たときには、必ずしもそれがいわゆる暴力団等の組織的な犯罪を対象にしたものを超えて、もっと拡大して適用されてしまうのではないかという懸念があるためだというふうに思います。  その意味で、その辺をもっとわかりやすくするためには、この組織的な犯罪対策一本の法案にした方が、具体的な条文等において、書けるところの限界があるのかもしれませんが、その辺の目的はもっと明確にわかりやすくなったのではないかなというふうに考えたので、今ちょっとそういうお話をさせていただいたわけであります。  次に、そもそも今回この法案を提出するに当たって、先日の委員会の審議からずっと言われているのが、犯罪白書等では、必ずしも最近いわゆる犯罪の動向が顕著に増加しているというわけではない、比較的安定しているのが現状であるということは報告されているところであります。確かに、最近、薬物事件が急増している、また暴力団犯罪の脅威、とりわけ不良債権回収などそういった経済事件にも関与が増大しているといったことは、このことは私も当委員会で取り上げさせていただいたとおり、かなり深刻な問題であるというのは認識しております。しかし、これを見ますと、薬物については麻薬特例法という法律がございます、暴力団は暴力団対策法といった、それぞれの特別法が既に制定され、また、近年の状況に対応するために強化もされているわけであります。  要は、どうも私、考えるのに、これらの法制度がもう既に整備されているのに、それが本当に適切に活用され、対処されているのだろうかというところに問題があるのではないかというふうに考えます。その上で、より一般化して組織といったもの、先ほどのやりとりの中でも、定義といったものが非常に難しい、境界線を引くことが非常に難しいという感じを持ちましたけれども、組織という一般化したものを対象とした法律制定の必要性が果たしてあるのだろうか。  また、現行法が近年、制定また改正強化されておりますけれども、この現行法でいまだに不十分な点が仮にあったとしても、それはそれぞれ麻薬特例法や暴力団対策法などの改正で対処すべきであって、もっと一般化した法律の制定は必ずしも必要ではないのではないかというふうに思いますけれども、その辺について御見解をお願いいたします。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 暴力団等による薬物あるいは銃器に関する犯罪は、それ自体が密行的に行われて、その全容を解明して犯人を検挙するということは極めて困難な状況になってきております。そういった点で新たな捜査手法の導入が必要でございます。また、その薬物あるいは銃器の不正取引につきましても、その不正収益を規制していく必要が別途あるというふうに考えます。  御指摘の暴力団対策法自体は、行政的な手法で暴力団の活動を抑止しようとする制度を中心としたものでございまして、犯罪行為そのものに対応するものではないわけで、また外国の犯罪組織に適用することは困難という面がございます。実体法といたしましても刑事手続法の分野にいたしましても、これらの犯罪行為に対して厳格に対応していくということがやはり必要ではないだろうかと考えられたわけでございます。  そういうような意味で、犯罪対策という観点から、この三法案の必要性は高いものと考えているわけでございます。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 今新たな捜査手法の導入というふうな話もあったのですが、またマネーロンダリングについての話もあったのですが、これは、麻薬特例法では、条件つきながらもう既に認められておりますし、マネーロンダリングの対策なんというのは含まれています。ほぼこの法案と同様の規定であるというふうに思います。  ですから、薬物の問題については、そういう意味では新たな、多分追加措置というのは要らないというふうにお考えなんだと思うのです、そうすると、いわゆる暴力団対策ということに新たな捜査手法の導入、あるいはマネーロンダリングを防止するために今回の法律が、当面はそれが目的なんだというふうに理解されたんですけれども、それにしてはちょっと何か法律が余りにも、各種の定義が一般化し過ぎているような気も、ちょっとその点は否めないのではないかというふうに率直に感じたところであります。  細かい点はまた後日の委員会の質疑の方で、この点についてはお聞きしていきたいというふうに思います。  もう一つ、今回一番話題を集めております通信傍受についてお聞きしたいのですが、欧米諸国では既に特定の犯罪捜査のために盗聴が行われております。特に米国で多用されているというふうに聞いておりますが、近年、米国においてもその有効性についてはいろいろな意見があるというふうに承知しております。  米国の事情に詳しい、これはカリフォルニア大学バークレー校の客員教授を務めております、マスコミ出身の方でありますが高濱賛氏の資料によりますと、米国において捜査当局から裁判所に出された盗聴許可の申請件数が一九九六年は千百五十件であった。一件につき傍受した会話は千九百六十九回なんですが、そのうち公判に役立ったのはその二割、四百二十二回であったというようなことが米国の司法省からも発表されているようであります。  この通信の傍受には、米国内においても、膨大な費用と人員がかかるという認識がされており、その割には本当にそういう犯罪の防止あるいは摘発に役立っているのだろうか、その有効性について疑問視する声があります。この辺について、米国におけるその有効性等について法務省としてはどのようにお考えか、その辺の御認識を伺いたいというふうに思います。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 外国の通信傍受の運用効果について必ずしも断定的なことは申し上げられないところもございますけれども、恐らく先進国の中で傍受を一番活用しているのはフランス、それからドイツ。アメリカは比較的厳格な運用をされていると考えております。  この通信傍受につきましては、やはり現実にこの制度を採用して運用している国では、もはや捜査手段としては欠くべからざるものになってきているという認識であるというふうに私どもとしては承知しており、薬物犯罪などを中心といたしまして相応の効果を上げているというふうに認識しております。  ただいま費用の点とかそういうふうなことについても御指摘がございましたけれども、これは、ほかの捜査でも、例えば警察官を数百人動員して何日かの聞き込みをかけるとかそういうふうなことになりますと、やはり人件費というのは相当多額に上るわけで、捜査費用というのは、通信傍受について特にそれだけが問題になるというふうな性質のものではないのではないかと考えているわけでございます。  二二%という有罪を指し示す方向の会話、これが多いのか少ないのかということについては、あるいは評価は分かれるかもしれませんけれども、やはり捜索、差し押さえとかそういうような現実のことから考えますと、百件のうち二十件強の犯罪の解明のために役立つ通話がキャッチできるということは、犯罪の解明という面では非常に大きな意義があると私どもとしては考えております。

上田勇平和・改革

○上田(勇)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、これは、かなり疑うに足るというふうな相当な理由があった上での二〇%ということでありますので、私は、必ずしも本当にその疑うに足る理由というのが、我が国でもし適用する場合にはやはりしっかり考えなければいけないというふうに思いますし、同時に、どうもこの費用の問題ももちろん、これはアメリカでありますけれども年間五十億円以上かかっているというような司法省の資料もあります、費用対効果などにつきましても、今後委員会の中ではそういったことについても議論をしていきたいというふうに思いますので、きょうは以上で終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 この際・暫時休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時五十七分開議

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。達増拓也君。

達増拓也自由党

○達増委員 自由党の達増拓也でございます。  組織的な犯罪関連法案、いよいよ法務委員会で審議ということで、国民の安全、国民の自由に関する非常に重要な法案であると思いますけれども、重要であるだけに、まずはその提出の経緯について二、三質問をしてから本題に入りたいと思います。  この三つの法案でありますけれども、内閣から提出されたわけでありますが、聞くところによると、与党の方で与党内調整未了のままで内閣が法案を提出した。与党内で賛否両論あってその決着を見ないで内閣が法案を出してくるというのはほかに例がないわけではないのですけれども、そのたびに私も、議院内閣制の趣旨からいって、そのように内閣を支えている与党がはっきり法案に賛成していない状態で内閣が法案を提出するというのは異常なことではないかと思っていたのですけれども、この法案についてもまさにそういう状態なわけです。  この点、法案を提出した内閣としてどう考えているかを伺いたいと思います。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  組織的犯罪対策三法案につきましては、昨年の十月、与党政策調整会議の決定によりまして与党組織的犯罪対策法協議会が設置されました。同協議会における綿密な協議、検討が行われました後、引き続き与党政策調整会議等で与党間の協議が行われました。それで御指摘のような結果になったわけでございますけれども、私どもは、そのような与党間の協議の結果を踏まえまして、政府の判断と責任においてこの三法案を提出することといたしたわけでございまして、議院内閣制の趣旨に反するものとは考えておりません。

達増拓也自由党

○達増委員 戦後日本は、一部連立というのもあったのですけれども、基本的には自民党の単独政権がずっと続いてきて、ごく最近になって連立政権というのが出てきて、そのあり方についてはまだまだきちっとしたあり方というのは定まっていないところだと思うのですけれども、そういう意味で、今の連立政権のあり方というのはよくわからないところが多いわけであります。  そうしますと、今の答弁を聞いていますと、与党三党が協力して、審議して、議論をしてこういう法案を出したということで、社民党については閣外協力という言葉が用いられているわけですけれども、この法律についても社民党はちゃんと閣外協力をしている、内閣としてはそういう認識なのでしょうか。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 閣外協力という問題は、これは政党間の協力関係の問題でございますので、私、政府の一員として答弁するのはいかがなものかな、差し控えさせていただきます。

達増拓也自由党

○達増委員 戦前、軍部独裁体制が成立する中で、政党の束縛を離れた超然内閣というものがいいのだということで、超然内閣なるものがあったわけでありますけれども、今の答弁を聞いていますと、政党というものにきちっと裏づけされないで、内閣が、いわば内閣として勝手に法案を提出したりする、そういう状態になってきているのではないか。これは、当然、非民主的な傾向だと思うのですけれども、この点、いかがでしょう。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 旧憲法、大日本帝国憲法における内閣というものは、天皇に対して輔弼の責めに任じていたわけでございます。しかし、議院内閣制をとります日本国憲法のもとにおきましては、内閣は国会の信任を基礎といたしまして成立するわけでございますし、国会に対して責任を負うということでございますから、当然のこととして、政党を基盤として組織されるものである、このように考えます。  このような意味におきまして、現内閣は、議院内閣制のもとでのいわゆる政党内閣でございますし、委員御指摘のような超然内閣、そういうふうなものでは全くございません。

達増拓也自由党

○達増委員 今回の法案の提出、内閣からの閣法としての法案提出というのは法形式的には不備がないわけで、それで、国会の方でも審議しましょうということで今やっているわけでありますが、非常に大きい問題なので、これは、今後も機会をとらえて考えていかなければならない話だと思うのです。  やはり、議院内閣制のもとで、内閣というのは、与党にきちっと支えられてやっていかなければならない、多数党あるいは連立てあればその多数を形成する連立、その中から総理が出て、内閣を組織して、そして国会に対して連帯して責任を負う、そういうきちっとした議院内閣制のあり方というのがないがしろにされますと、これは、じわじわと日本の民主主義の体質が侵されていくわけであります。今、日本の連立政権というもののあり方を含め、政治のあり方が、一種手探り状態で、試行錯誤状態にあるわけなのでしょうけれども、私個人としては、やはり今の連立政権のあり方は非常に異常であって、与党三党がきちっと合意をしないで法案を出すということは、これは異常だ、内閣としてそういうやり方をするのも非常に異常であるという指摘をさせていただきたいと思います。  次に、やはりこれも経緯の話なのですけれども、この法案が出るに当たって法制審議会での議論があったわけですけれども、法制審議会での議論について、これはかなり短かったという指摘、あるいは法制審議会で議論されていなかった内容が盛り込まれているという指摘があります。  ここで一つ確認したいのは、法制審議会というのがいかなる権限を有しているか、重要法案を内閣が提出するに当たっては、必ず法制審議会がその内容について完全に精査、合意した上で出さなければならないのか、その辺は一体どうなっているのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  法制審議会は、法務省組織令によって定められているものでございますが、法務大臣の諮問に応じまして、民事法及び刑事法その他法務に関する基本的な事項につきまして調査審議を行うこととされております。  法務当局といたしましては、基本的な法律の改正でございますれば、法制審議会の審議を経てその作業を行うのが原則であると考えている次第でございます。  しかしながら、すべての改正について必ず法制審議会の審議を経なければならないのかという点につきましては、個々の場合に、具体的なその中身の問題、程度、具体的な法改正の必要性、緊急性等諸般の事情を勘案いたしまして、実際に諮問するかどうか、その必要性の有無等を判断いたしまして、最終的に法制審議会の審議を経るか否かを決していくことになるだろうと思います。  委員御指摘の中に、今回の法案に触れましての、法制審議会の答申に含まれていないことが一部入っているのではないかという御指摘がございました。確かに、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案の中に、いわゆる疑わしい取引、金融機関におけるものでございますが、疑わしい取引の届け出制度等につきましては、マネーロンダリングに対する対策の一つとして、主として金融機関等の監督を所掌事務としている大蔵省等の所管にかかわる事項であったということから、法制審議会はもともと、先ほど申し上げましたように、民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項でないことから、直接その諮問の対象にはされなかったという経緯がございます。  ただ、法制審議会の意見の中にも、やはりマネーロンダリングにきちんと対応していくには、諸外国の例にございますとおり、金融機関において、一定の条件のもとに、疑わしい取引についてはやはり集中してそれを見ていく機関が必要ではないかという意見もございました。そのことを踏まえまして、最終的な法案の中には、関係当局と協議の上、入れさせていただいたというものでございます。

達増拓也自由党

○達増委員 行政改革の議論の中で、審議会のあり方というのも議論されておりまして、そういう意味で、余り審議会が強力な権限を持つのはよくないと思うわけであります。  今回の法案についても、いわく拙速であったとか、法制審議会に差し戻してから法案を提出すべきだとかという議論もあるのですが、そもそも、法律をつくる、決めるのは立法府、国会の仕事でありまして、基本は国会の議論であると思うわけであります。そういう意味で、法制審議会、その出てきた法案の中身によって、余り活用されていなかったとかいい仕事をしていなかったとかいう批判はあるのもしれませんけれども、それは中身を見てからの話であって、いたずらに、拙速とか一部内容が審議されていなかったということで国会で審議できないという話ではないと思うわけであります。  さて、そういうわけで、だんだん中身に入ってまいりますけれども、まず、きょうは最初でもありますので、立法事実について幾つか質問をしたいと思います。  きょうの質問でも、午前中同僚議員から関連した質問が出ていたのですけれども、今この日本で組織的な犯罪というのがどのくらい問題になっているのか。犯罪白書の、今日本の犯罪は全体として顕著な変動はないということを引用して、今性急にこういう法案をつくる必要はないのじゃないかという考え方、そういう議論があります。  また、政府が法案提出した際の提案理由説明の中では、「組織的な犯罪が少なからず発生しており、」と書いているわけでありますね。この「少なからず」という、何か遠慮したような遠回しな表現というものが、実は大したことないんじゃないかとかそういう議論が出る理由になっているとも思うわけでありますけれども、ここで「少なからず」と、これはまあ警察の方に遠慮してこういう表現を使ったのかもしれませんが、もう少し具体的に、現状、数の上で組織的な犯罪、どのくらい深刻な問題になっているのか、説明いただきたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 組織的な犯罪についてはさまざまな種類と申しますか態様がございまして、その点に着目した統計というのはあるわけでございませんが、暴力団や外国人犯罪グループによります薬物事犯、銃器関連事犯、集団密航事犯などが多発していますほか、例えば、暴力団山口組の最高幹部射殺事件等の暴力団組織にかかわる犯罪、いわゆるオウム真理教事件のような大規模な組織的形態による凶悪事犯、またいわゆるKKC事件や和牛商法事件のような会社等の法人組織を利用した詐欺商法等の大型経済事犯、暴力団の周辺で活動する総会屋への有名企業からの極めて多額な利益供与事犯等が絶えず相当数発生している状況にございます。  確かに数的に目立った極端な動きというのはないわけでございますが、その中身を詳細に見てまいりますと、従来ではとらえられなかったような組織的な背景を持った事犯が多分に含まれている、背景には組織的な不正取引が存在すると認められる銃器を用いた重大事犯もしばしば発生しているわけでございまして、我が国の治安情勢を考え、また将来を見通す上で、極めて重大な事態が含まれているというふうに考える次第でございます。

達増拓也自由党

○達増委員 この組織的犯罪については、数もさることながら、やはり中身が問題なんだと思います。  法案の提案理由説明の中では、今の「組織的な犯罪が少なからず発生しており、」という後に、それが「我が国の平穏な市民生活を脅かすとともに、健全な社会、経済の維持、発展に悪影響を及ぼす状況にあります。」と書いてある。これもちょっと抽象的なので、もう少し具体的に、いかに経済、社会にとって危機的状況なのかというところを説明していただきたいのです。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 組織的な犯罪は、被害が大変多いということ、それから莫大な不正の利益が生じる、例えば麻薬等につきましては、物によりましては、密輸で日本に入ってくる価格と末端で使われる価格では数十倍、場合によっては百倍ぐらい、そういうようなことで不当な利益を得られるようなもの等もあるわけでございまして、個人による犯罪とは異なった悪影響を社会に与えるものだと思います。  例えて申し上げますと、薬物だとか銃器等の組織的な犯罪、これは主として国際的な関係で多いわけでございますが、このような薬物が、今申し上げましたように社会に浸透するのみならず、少年も含む広範囲な社会にまで拡大している、また、銃器を用いた事犯によりまして一般市民が死傷する事案が多数発生いたしております。  さらにまた、オウム真理教による一連の事件では、通勤時間帯の複数の地下鉄車内におけるサリンの散布や、駅構内における青酸ガスの散布など、一般市民を標的とした無差別な大量殺人事件等々の発生を見ました。  このような犯罪の発生は、我が国の治安に対する信頼そのものを根底から揺るがすような事態になっております。  さらに、相次ぐ企業幹部等に対するテロ行為、背景には暴力団等々も介在すると思われるわけでありますが、健全な経済活動への不当な圧迫となり、また多額の収益を目的とした大規模な詐欺商法事犯、多数の有名企業に総会屋が深くかかわって多額の利益を得ているという実態等々も次々に判明しているわけでございまして、我が国の健全な社会、経済の秩序発展をむしばむものであると思われまして、私どもは、このような組織的な犯罪への対応はまさに緊急の事態である、このように考えております。

達増拓也自由党

○達増委員 立法事実、立法目的の関係では、もう一つ、国際的にも協調した対応が求められるという点が法案提案理由説明の中で指摘されております。  確かに、バーミンガム・サミットでも、麻薬、国際犯罪ということで、マネーロンダリング対策における取り組み強化ですとか、人の密輸、法執行機関間協力、銃器規制、環境犯罪への取り組み、ハイテク犯罪に関する原則、行動計画を迅速に実施、また、国連を舞台にした国際的な犯罪に関する協力等々、組織的な犯罪を含むそういう犯罪に対して、国際協力について訴えられている。一 最近のサミットでは、ほぼ毎年繰り返し、G7、G8諸国が国際的な協力と協調について指摘している。  確かに、ポスト冷戦の時代におきまして、資本主義、自由市場経済というものが、ロシアも含め、中国も含め、地球大に広がっていく中で、いかにして自由市場経済を守るのか、自由市場経済に基づく社会の健全性を維持するのかという観点から、そういう国際的な協力が必要というその趣旨はわかるわけであります。  では、現状、そうした組織的な犯罪が特に国境を越えて行われるケース、これが一体どういう状況になっているのかについて伺いたいと思います。  まずは、日本を舞台に、日本以外の国をベースにするような国際的な組織犯罪が行われている状況について、説明をいただきたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 例えば、集団密航事犯におきましては、しばしば、いわゆるスネークヘッド、蛇頭と呼ばれる外国の犯罪組織の関与が明らかになっております。また、外国人のグループによる大量の薬物の密輸あるいは密売事犯が明らかになっております。さらに、外国人の集団による連続的な窃盗事犯が相当数摘発されております。最近では、新聞等でも報道されておりますが、けん銃を使用した強盗事犯に外国人が関与しているという状況も出てきているわけでございます。それらの各種の外国人が関与している犯罪の中に、やはり国際的なある種のグループが我が国において活発な活動を行っているのではないかと推測させる事態が生じているというふうに考えるわけでございます。  しかし、この点につきましては、その実態の解明についても、まだまだ十分な努力をこれから傾注していかなければならないというふうに考えられます。  この点は、地政学的に考えてまいりますならば、例えばヨーロッパ諸国であるとかアメリカ大陸であるとかというような状況を見ますと、陸続きの中でいわば人が自由に出入りできるという点では、我が国は若干、置かれた立場といたしましては、比較的そういう側面からは自由な面があったと考えられますが、近年の航空機等の大量な人の自由な出入りということを考えてまいりますと、また、そのことが今後ますます自由に行われていくということを考えますと、国際的な潮流の中で我が国だけがそういう国際的な、組織的な犯罪から比較的免れているという事態は徐々に、許されないと申しますか、一様にはいかないかもしれませんが、かなり深刻な事態をこれから招きつつあるというふうに考える次第でございます。

達増拓也自由党

○達増委員 やはり人や物やお金の移動がどんどんやりやすくなってくる世の中にあって、日本だけが組織的な犯罪についてその体制が甘いということになれば、いわば日本がカモにされて、日本に行けばもうかる、稼げるということで、一層事態が深刻になる危険性があるし、また、それが国際的に行われる場合、そういう組織はほかの国にも迷惑をかけているわけで、そういうほかの国に対する迷惑を日本が助長することになるというのは、日本のためのみならず世界のためにもよくないことだと思うのですね。  そういう意味でへ日本の中の状態が外国に迷惑をかけている例としては、今度は日本の団体、組織等が外国に行って組織的な犯罪を行っている、こういうのは非常に問題だと思うのですけれども、現状、どういうふうになっているのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 アメリカ合衆国では、司法省が組織犯罪へのナショナル戦略という報告書を定期的に出しているわけでございますが、その報告書によりますと、我が国のいわゆる暴力団が、薬物取引、銃器の日本への密輸あるいは犯罪収益の投資等を行っていることが報告されております。また、我が国の暴力団が、外国の犯罪にかかわる組織と協力するなどして、薬物、銃器の密輸あるいは集団密航等の事案を敢行した例が相当数摘発されていることが報告されております。  また、組織的な大型詐欺商法事件等、これは例えばいわゆる投資ジャーナル事件あるいは茨城カントリー事件等では、犯罪収益が外国に持ち出されまして、外国の企業の買収あるいは投資に用いられた例も発生しております。  これらにつきましては、外国の捜査機関との間に、警察当局等とも連携をとりながら緊密な対応をとろう、そのための努力はしておりますけれども、そのような傾向は今後ともふえてまいると考えなければならないと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 国際的な組織的な犯罪というときに、北朝鮮による拉致事件というのが問題になっているわけでありますが、そういう国家、まあ北朝鮮については我が国はきちっと国家として認めているわけではないのですけれども、そういう国家のようなものの政府機関が組織的に行う殺人ですとか誘拐ですとか、あるいはにせ札を刷ったり、麻薬を取引したりということも、実際今、世界で行われているし、日本周辺でも行われている。  こういういわば国家が行うような、政府が行うような組織的な犯罪というものも、今回の三法案の対象に入ってくるのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 外国の政府機関が政府機関として犯罪を行うということはなかなか想定しがたいことであるのでございますが、一般論ということで申し上げることをお許しいただければ、外国の政府機関の職員が我が国で行った個別の犯罪行為につきましても、国際法の許容する範囲で我が国の法律が適用されるのは当然であると考えております。

達増拓也自由党

○達増委員 次に、この三つの法案に共通して組織的な犯罪というものに対処するために今回提出されているわけでありますけれども、組織的な犯罪という言葉の意味について質問をしたいと思います。これについては同僚議員から午前中もいろいろ質問があったわけでありますが、組織的な犯罪というのがどういう意味で使われているか。  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案では、団体の活動として行われて、その団体の中の組織によって行われた犯罪のことを組織的な犯罪と言っているようなんですが、通信傍受に関する法律案の方では、そういう団体の活動として行われなかったようなものについても対象にしている。刑訴法改正案の証人の保護についても、団体の活動として行われたもの以外についても対象になっていると思うのですが、法律によって組織的な犯罪というものの範囲を異なる範囲でやっているということなんでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 組織的な犯罪にはさまざまな形態のものがございます。御指摘の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案における要件とされております、団体の活動として当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたということも一つの典型的な形態でございますが、これは刑の加重を必要とする範囲という観点から、特に高度の危険性があるものを定めたものでございます。  それ以外にも例えば、団体の組織によるものとは必ずしも言えませんが、多数人が計画的に役割分担を定めて組織的な形態で実行する犯罪や、あるいは少数の者が暴力団等の不正な活動に関連して実行する犯罪なども多いわけでございます。  また、実際に、これらの事犯を具体的に解明してまいる捜査の一つ一つの過程におきましては、最初から共犯関係や背後関係が必ずしも明らかとはなっていない場合もあるわけでございまして、通信傍受という観点からするためには、先ほど述べた刑の加重を必要とするための厳格な要件ということを頭から考えますと、そのような犯罪に対処するための有効な手段にはなり得ないことも考えられるわけでございます。そこで、通信の傍受につきましては、団体の活動として組織により行われたことそれ自体は要件とせず、犯人間の相互連絡が想定されるある一定の要件、例えば数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況を要件とすることとしたものでございます。  また、刑事訴訟法の一部を改正する法律案に盛り込まれております証人の保護という観点について見ますと、証人等の安全に配慮する必要が生ずる事件の多くは組織的な背景を有する事案であると考えられますことから、証人等の保護につきましても今回の法整備の一環として対応することが必要かつ適当であると考えられたのでございます。  しかしながら、例えば現実に証人等に危害が加えられるおそれがあるのに、組織的な背景を有しない事件であるからといって今回法整備を行う新たな措置の対象としないというのは、逆に適当ではないのではないかという議論がございまして、そのこと自体を要件とするには至っていないというふうに御理解いただければと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 この辺、かなり世の中で行われている議論もちょっと混乱していると思うのですが、要は、この三法案を通じて組織的な犯罪というものをきちっと定義は別にしていないわけですね。  組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案の第三条で、団体の活動として当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われた、そういう行為を列挙しているわけですが、第二章「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等」とあるので、これが組織的な犯罪の定義かと読めてしまうんですけれども、これは別に、組織的な犯罪とはこういうものだと定義しているわけではなく、刑の加重に値するものの説明として使われている、組織的な犯罪という概念はもっと広いもの、そういうことなんでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 いわゆる組織的な犯罪につきましては、その形態が組織的に行われるものに限らない。いわば犯罪集団と申しますか、犯罪をビジネスとして行う組織がある、あるいは団体があるということは、これは経験的にも認められているところでございますが、そのような団体がいわば犯罪行為に走ってくる場合にはさまざまな形態をとってくるということはぜひ御理解賜りたいところなのでございます。そのような集団、団体にとってみますると、ある特定の行為を行うということで限定してくるというのでないわけでございまして、あらゆる機会をとらえてその組織目的から必要と考える犯罪をいわばビジネスとして行っているという実態があるわけでございます。  そういう点から、諸外国におきましても、いわば実態的にそれぞれの法制度を組み上げる中では必ずしも、例えばマネーロンダリング罪の前提犯罪につきましては、組織的な形態で行われる犯罪に限定している例はむしろ見当たらない。国際的な協調の観点からも幅広く前提犯罪を広げるべきだというのが現在では国際社会のある種の要請になっている、そういう国際的な流れに対応してまいりたいという点からそのような規定の仕方がとられているというふうに御理解をいただきたいと思うんです。  それから、通信の傍受につきましては、先ほど述べましたように、やはり捜査の初期の段階では、単独犯ではない、数人共謀して行われた背景のある事件だとわかりましても、そのことが、厳格な意味における一例えば犯罪の法定刑を重くするというときにとられたような厳格な意味での組織的な犯罪というわけにはいきませんけれども、やはりそのような背景があるということが理解される、それに対する対応として、いわば捜査手段の一つとして効果的に行うために、ある種の幅を持たせて、そして対応していくということが必要になるわけで、この点も、諸外国においても同じようなアプローチがなされているというふうに御理解していただければと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 そうしますと、アプローチの仕方としては、狭い意味での厳格な組織的な犯罪のみを対象にいろいろな、マネーロンダリングの処罰ですとか通信傍受ですとかをやるとその対象とすべき組織的犯罪全体をカバーできない、対象とすべき組織的な犯罪をカバーするには、マネーロンダリングや通信傍受に対応する段階ではある程度広目に、組織的な犯罪の可能性があるところまで含めたアプローチをしていかなければならない、そういう構造になっていると理解すればいいんでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 そのとおり御理解をいただければと考える次第でございます。

達増拓也自由党

○達増委員 この点、組織的な犯罪に対処するための立法が求められているのに、それ以外のものについても適用される法律でいいのかという議論があるわけですけれども、それに対して、今の説明でかなりわかりやすくなってきたと思います。  さて次に、組織的な犯罪の定義に関連するんですが、団体の問題です。組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案の中で、刑を加重するケースの中に出てくる、第三条で言う団体の活動の団体、これについて、労働組合ですとか市民団体ですとかそういったものも入るのか、入るのであれば、そういった団体を規制することになるのではないかという議論があるわけであります。  ここを確認すると、そういった団体でも、組織的に重大な犯罪を犯せばそれは対象になるけれども、本来そういう団体というのはそういうための団体ではないわけであって、組織的に重大な犯罪、第三条に挙げられているような犯罪を犯さない限りは本法案の対象にはならない、そういうことなんでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 まさに御指摘のとおり、正当な目的で行われます労働組合や市民団体などの団体の活動に適用されることは考えられないというふうに私ども考えております。  若干敷衍さしていただきますと、本法律案における、例えば刑の加重は、団体に対する規制そのものを目的とするものではございません。団体との関連を刑の加重等の要件とした趣旨は、一定の犯罪行為がへ継続性、組織性の強い集団自体の活動として、それを実行するための組織によって行われる場合等につきましてはその結果が重大になるということなどから、一般に違法性が高いと考えられるからでございまして、この規定は、そのような場合に限って刑の加重を行うものでございます。  したがいまして、正当な目的で行われる労働組合や市民団体などの団体の活動はこれに該当することは考えられません。仮に、一部の者による逸脱行動や偶発的な逸脱行動がございましても、これが犯罪の構成要件に該当するような場合であっても、この法律案による刑の加重等の対象となるものではございません。逆に言えば、そのような逸脱行動あるいはある種の突発的なものについての犯罪性については、この法案によって何らの差を設けると申しますかつけ加えるというのでなくて、それは、従来から犯罪とされるものであればやはり犯罪とされるわけでございますが、それが団体の行為として、そのための組織によって行われたものでないという場合には本法案による加重の対象にはならないということをぜひとも御理解を賜ればと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 次に、刑の加重という考え方について質問をいたします。  刑の加重については、法案第三条に挙げられているような刑について、現在特に刑の上限の方に集中していないんだから加重する意義があるのかという議論があり、それに対して、これは違法性の高さという観点から加重するのだという説明がなされているわけでありますけれども、このような組織的な犯罪について、その違法性の高さという観点から刑を加重していく、そういう考え方、これは、組織的な犯罪、日本では注目され、あるいは問題になるのが最近のことだったわけですけれども、国によっては早くからこういう組織的な犯罪が問題になっていて、それに対応する法整備がされていたと思うわけです。  そういった諸外国での刑の加重という例、こういうものについて説明していただきたいんです。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 すべての国について把握しているわけではございませんが、例えばアメリカ合衆国におきましては、一九七〇年に、これは薬物犯罪に関してでございますが、継続的な犯罪的エンタープライズ、コンティニュアス・クリミナル・エンタープライズという一つの形態を考え、組織的な形態を取り出しまして、そういう場合に加重規定を設けておりますほか、連邦法におきまして、犯罪組織と一定の関連を持って行われる殺人等につきまして、その刑を通常の場合よりも重くするというふうな規定があると承知しております。  また、ドイツにおきましては、以前から一定の類型の組織的な窃盗などについての加重処罰規定はございましたが、一九九二年の法改正により、同じような加重を、例えば盗品の譲り受けなどについても拡張するという改正がなされております。また、引き続き、恐喝についても同様の措置がとられていると承知しております。  さらに、フランスにおきましては、これは以前から、窃盗とか放火等について、組織的な形態による犯行の加重処罰規定がありましたけれども、やはり一九九二年に制定された新しい刑法典におきましては、麻薬の違法製造でありますとか、強盗、詐欺等の罪につきまして、犯罪の組織集団による場合を加重するというふうな措置をとっているものと承知しております。

達増拓也自由党

○達増委員 確認しますが、そういう外国の場合も、組織的な犯罪というものが、同じ殺人なら殺人を個人でやったときに比べて違法性が高い、そういう考え方に基づいて行われているわけでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 必ずしも、外国において理論的にどういうふうに整理をされたかということは、これは正確にはわからないところもございますが、いずれにいたしましても、そういう行為が大変危険なものである、社会的に非常に大きな害悪になるということに着目したものだということは間違いないと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 次に、通信傍受法案について何点か質問をしたいと思います。  通信傍受法案では、通信事業者の協力、また管理者等の立ち会いについて定められているわけであります。いろいろな論点がこれにはあるのですけれども、余り議論されていないポイントなんですが、実際、通信傍受法案が成立し、通信傍受が行われるようになってきますと、例えば、東京を舞台にNTTに協力や立ち会いを求めることが何度も出てくることが考えられるわけですね。そうしますと、恐らく、会社側の論理としては、何度もあることについては、総務課かどこかわかりませんけれども、通信傍受担当のような部署を設けて、同じ人が何度も通信傍受の立ち会いをやるような、そういうことになってくるのではないかと思うわけであります。  午前中は、そういう立ち会いについて、秘密を守る通信事業者の立場から嫌がるケースが出てくるのじゃないかという観点からの質問があったわけですが、逆に、何度も何度もそういう立ち会いをすることで、通信傍受捜査のテクニックですとかあるいはその関連の情報を民間人がどんどん知っていく、そういうことが起こってくると思うのですけれども、これについては問題ないのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 本法案によりますいわゆる通信傍受の場面における協力あるいは立ち会いは、通信の秘密や捜査の秘密の保持を十分期待することができる通信事業者あるいは地方公共団体の職員を充てることとしておりますので、御指摘のような問題はむしろ起こらないというふうに考えます。  なお、本法案におきまして、捜査の対象となっている事件については、むしろ、細部にわたって把握していない立会人の立場からいたしますと、実際問題として、関連性の判断が困難であるということ、また、かえって、細部に、中身について知るということになりますと、関係者のプライバシーの保護上問題があるということを考えまして、基本的には立会人は通信内容には触れないという建前の上で手続を進めさせていただくということにさせていただきます。  この点は、従来、法律に明記されない形で、刑事訴訟法上の検証令状の実施ということで行われてまいりました例外的な通信傍受の中では、立会人に裁判所が、通信内容の中身にまで関与しなければできないようなある種の行為を、例えば通信の傍受の切断とかそういう面を期待するような向きもあったわけでございますが、この点につきましては、立会人の立場等を考えてみますと、先ほど御指摘のような、捜査機関に協力するという点では、一般的な面でのお願いをするわけでございますが、中身にわたってある種の会話が犯罪に関連しているかどうかということをわかるような形で、いわば捜査官の補佐というような形で関与するというよりは、むしろ、通信傍受自体の公正を担保するために立ち会っていただくということを強調させていただきたいと思うわけでございまして、その面から法律の手続は定められているというふうに御理解賜りたいと思います。  この点は、私ども、NTTの職員を含めましていろいろな形で意見を集約していただきましたが、実際にその場に立ち会う方々の気持ちとしても、従来のように、実際に裁判所の令状によるわけでございますが、法律の定めがないよりは、法律の定めをきちんとして、その手続を明確にして、そして問題点がある場合にはそれぞれの対処ができるような形でやっていただく方がありがたいという声を現実に耳にしているところでございまして、そういった点からの配慮がこの背景にあるということを御理解いただきたいと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 民間人といえども社会の正義や秩序を守っていくことは、これは市民としての一種の義務でもあるわけですし、捜査やそういったものへの協力というのは、この通信事業者のケースに限らず、一般的に市民に期待されるところではあるのでしょうが、その負担が過剰になってはいけないし、また、公務員と違って、きちっと守秘義務等のそういう縛りがかかっていない、そういう市民、民間人が捜査の中核的なところに過剰にかかわってくることも、また問題だと思うわけであります。  重ねて質問をしますけれども、公務員の守秘義務との関係のような、この通信傍受の立ち会いによって得た、中身には基本的に入らないということだったわけですけれども、何らかの秘密を知ってしまった場合、それを外に出さないようにすることについては、何らかの担保があるのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 通信傍受につきまして、ただいま御指摘のような御意見も、確かに考えられるとは思います。ただ、刑事訴訟法はこれまで強制処分につきましてすべて立会人を要件としておりますが、これについては、御指摘のような措置はとられていないわけでございます。  それと、先ほども申し上げましたとおり、通信傍受に関して立ち会いになっていただくのは、通信の秘密の保持義務が課されている通信事業者の職員の方、あるいは通常いろいろな職務上の守秘義務ということを十分意識して仕事をされる地方公務員の方とか、そういうような方にお願いするということを考えているわけでございまして、これまでの例に照らしましてもそういう秘密の保持については十分期待できる、そういう方々にお願いするということになると考えております。  それにつけ加えまして、この法案の上では、通信の秘密の侵害あるいは捜査上の妨げにならないということに特に注意願いたいというようなことも明記いたしまして、いろいろな秘密保持に御配慮いただくという措置をとっているところでございます。

達増拓也自由党

○達増委員 では、次に、コンピューターネットワークを利用した通信について質問をしたいと思います。  確認ですけれども、今回のこの通信傍受法案の方ですけれども、ここでの通信には、インターネットですとかパソコン通信ですとか、コンピューターネットワークを使ったいわゆる電子メール、これも含まれるということでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 電気通信を利用した通信でございますので、含まれるというふうに解していただければと思います。

達増拓也自由党

○達増委員 スパイ映画なんかでは、実際にコンピューターで電子メールをやりとりしながら組織的に犯罪をやっているのが最近あるわけでありますけれども、実際に最近、そういう組織的な犯罪が実行されるに際して電子メールのやりとりがあったとか、そういう例はあるのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 実際にパソコンのネットワークの掲示板に広告を出しまして、その広告を見た者との間で電子メールにより覚せい剤の代金、取引方法等についてやりとりをして注文を受け、覚せい剤の取引をしていた事案がございますほか、同様の方法でいわゆる向精神剤を販売していた事例が把握されております。  そのような状況を踏まえまして、最近、インターネット等のいわゆるコンピューター通信の一般化が大変な勢いで進展しておりまして、将来も、これが今後犯罪の実行に関するさまざまな連絡、犯罪行為そのものにある場合もございましょうし、またそれの準備あるいはその後始末等も含めて、さまざまな形で用いられてくる可能性は大変多いと予想できます。

達増拓也自由党

○達増委員 このコンピューターネットワークを利用したものもこの通信に入るということで、その通信を傍受する場合、また立ち会い等の協力の問題なのですけれども、インターネットのプロバイダーやパソコン通信の会社、大きいところは本当に企業としてしっかりやっていて、こういう捜査への対応もできるのでしょうけれども、事業者によっては、もうほとんど一人でやっているような、機械一つでやっているようなところもあると承知しておりまして、そうしたところによってはなかなか協力とか立ち会いとか対応できない。報道されているところによると、そういう小さい事業者は、今回の法案には電子メールは入れないでほしい、そういう要望をしている事業者もあるというふうに聞いているのですけれども、そのような協力とか立ち会いとかをする能力のない小さい事業者についてどのように対応することになるのでしょう。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 傍受の実施につきましては、まさに御指摘のとおり、当事者の規模、能力に応じて可能な範囲で御協力願うことになるわけでございますが、コンピューター通信の場合、傍受対象のいわゆるID、識別番号等でございますが、IDのメールをより分けて表示するための機器の操作、接続など最も基本的な点については、適当な準備期間を置くことにより、通常、協力を得られるものと考えております。また、立ち会いにつきましては、通信事業者の職員のみでは不可能な場合には地方公共団体の職員にお願いするということも考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、このようなパソコンを通じたネットワークがさまざまな商取引に使われているということを考えますと、現在、欧米諸国では、むしろそのネットワークの信頼性を確保するために、これが悪用された場合に、被害者と申しますか不測の損害を受けた方にきちんとした対応ができ、また、犯罪が行われた場合には、それに明白に対応できることをもってそのネットワーク自体の信頼性を確保するという考え方が急速に出つつあるわけでございます。  そういう面からいたしますと、信頼性があり、そして多数の方に加入してもらうということをいわば目的とするような信頼の置けるネットワークについては、そのような違法行為が行われた場合に、被害者を守るといいますか、それからそのネットワーク自体の信用性を確保するという点からも、むしろ法執行には協力しなければならないという考え方が今後は私は出てくるのではないだろうかと考えます。

達増拓也自由党

○達増委員 産業としての通信という分野、今答弁の中にもありましたように、アメリカにおいては一歩日本の先を行って、そういう状況にある。我が国においても、通信という産業の分野、規制緩和や自由化が進んで、これからもどんどん新しい形で発達し、新規参入とかもいろいろあると思うのですね。コンピューター等そういう技術の発展によってそれは加速されていくでしょうし、産業ということのみならず、家庭内とか社会の隅々にまでそういう新しい形の通信が入っていく。  そういうところにあって、この通信傍受というのをうまくやっていくということは、そういう時代の変化に的確に対応しながらやっていかなければならないという点でかなり大変なことになるとは思うのですけれども、他方、市民として、社会の安全や秩序を守っていくことにそういう事業者側もまた意を砕いていかなければならないということもあると思うので、この辺については、事業者側も自己研さんといいますかへ自主努力といいますか、やっていかなければならない分野でありますが、行政の側も的確に、いろいろ意見交換の場を持ったり、必要に応じて指導できるような体制をつくっていかなければならないのだというふうに思います。  ということで、きょうはまず初日ということで入門的な質問で終わったわけでありますけれども、また今後、我が党の方でも中身について質問をさらにやっていきたいと思います。  きょうは、私の質問はこれで終わります。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 木島日出夫君。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  三法案が一括して係属しているわけですが、きょうは、私は、そのりち刑事訴訟法の一部改正と犯罪捜査のための通信傍受に関する法律についてお聞きをしたいと思うのです。  特に、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、これは、犯罪捜査のために捜査官憲に対して、裁判所の発する令状を得た上で、市民間の電話等の傍受、いわゆる盗聴を認めようとするものであります。  それで、日本国憲法は二十一条で、明文をもって「通信の秘密は、これを侵してはならない。」こう規定しておりますから、他の条文とも相まって、まず、この法律、この仕組みが現行日本国憲法に適合しているかどうかがこれはやはり厳密に審査されなければならぬと思うわけであります。  関連する憲法の条文といえば、今私が読み上げました直接通信の秘密を規定した二十一条、またこれの根拠法条とも言われる第十三条、幸福追求権、プライバシーの権利の基本条文だとも最近言われておりますこの十三条、それから、犯罪捜査のために捜査を行うわけでありますから、その基本法である憲法三十一条、法定手続の保障、そしてさらに、具体的には、この三十一条を具体化した三十五条、これは令状なしに捜索、押収をしてはならぬ、令状なしに捜索、押収を受けることのない基本的人権と言われるわけですが、これらの法条にこの法案が適合しているかどうかがこれは厳しく徹底して審査されなければいかぬと思うわけであります。  学説にもいろいろありますが、きょうは最初でありますから、観念的、抽象的な学説論争をするつもりは私は全くございませんで、一点だけ法務当局の基本的な認識について伺いたいんです。  今言った我が国戦後の法体系は、憲法二十一条、十三条、三十一条、三十五条等々を受けまして、刑事訴訟法百九十七条は、捜査について「強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。」とはっきりとうたい込まれているわけであります。学説にいろいろありますが、市民間の電話を同意なしに傍受、盗聴することが強制の処分である。任意の処分でなくて、強制の処分であるというのはもう圧倒的多数説でこれは間違いない、法務省もそういう考えだろうと思うんです。  戦後五十年たちます。我が国憲法、刑事訴訟法体系で電話の傍受、盗聴を刑事訴訟法の百九十七条に規定されておりますが、これを認めてこなかったへ電話盗聴、傍受ができるという刑事訴訟法の規定を置いてこずにこれまでやってきた、その立法趣旨は何であったと法務当局は理解しているのか、法解釈論争はきょうはその点だけお伺いしておきたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 刑事訴訟法その他、ただいま委員御指摘の点については認識を共通にいたします。そして、刑事訴訟法その他のいわゆる犯罪捜査に関するいわば手続規定の中で正面から通信傍受の手続を定めてこなかったというにはいろいろな考え方があるかと思います。さまざまな犯罪の状況、そして犯罪が犯されている社会的な背景、その実情等考えてそこまではということでこれまでは正面からこれを取り上げた法律がなかったのであろう、これは基本的には私もそのように思います。  ただ、現実問題として、ごく例外的と申しますか一定の場合に通信傍受が事実上の必要性という観点から提起されまして、裁判所のいわば検証令状の実施という形で行われたということも委員御承知のとおりでございまして、そのような背景の中で今日に至っているというふうに考えます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 きょうは初回の質問ですから深入りはしたくありませんが、私は、憲法が「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と明定する、そしてまた戦前のいろんな反省も踏まえて戦後の刑事訴訟法体系がつくられたんだろうと思うんですね。  そうすると、やはり通信の秘密はこれは守ろう、その上で、戦前行き過ぎた捜査があって人権問題があったわけでありますから、やはり捜査についても、差し押さえ、捜索はきちっと令状でできるようになっているわけでありますが、市民の電話盗聴だけはやめておこう、やはり基本的人権をきっちり守るという立場があって刑事訴訟法が立法化され、それが今答弁にありますように、一部例外的に警察当局によって令状をとってなされた例がまた最近あるわけであります。しかし、そういう基本的な立場からやはり刑事訴訟法が制定され運用されてきたんじゃないかと私は思うので、これはやはり大事な立法事実だ、日本の社会における基本的人権保障法制の大事な基本だ、やはり今回審議するに当たってその基本を踏まえて論議することが大事だと思いますので指摘をしておきました。  次に、もう一つ指摘しておきたいんですが、最近、今答弁にもありましたが、事実上刑事訴訟法の明文の規定がない状況のもとで警察官憲が裁判官の令状を得て特に覚せい剤の捜査について盗聴をやる、通信傍受をやるという例が出てきました。有名なのは、甲府の例であり、北海道の旭川の例であります。それが憲法違反かどうか、これが大変激しく法廷で争われまして、有名な判例が蓄積されてきたわけであります。  一つは、甲府の件では一審の甲府地裁の判決と、それと同じ時期の共犯の判決でありますが、平成四年十月十五日の東京高裁の判決、それから旭川の例では一審旭川地裁の判決とこれを受けた高裁判決で平成九年五月十五日の札幌高裁判決というのがあるわけですね、御案内のとおりであります。きょうは初回でありますから、私はこの中に立ち入って論議をするつもりはありません。  この幾つかの判決に対して、刑事法学者、憲法学者からいろんな論説があります。賛成、反対あります、問題点の指摘も大量に出ているわけであります。この法律を制定して提出してきた法務省、そしてこれから国会で審議するわけでありますが、やはりこれらの判決の中で担当裁判官が、全部合憲判決ではあるわけでありますが、現行憲法、刑事訴訟法のもとでこれらを、辛うじてといいますか、合憲判決を下したについてはかなり厳しい要件をくっつけてきた。これとこれとこれとこれとこれの要件がきっちりあるから憲法に違反しない、そういう論立て、論理の組み立て、非常に精緻にやっているわけであります、特に東京高裁判決などはそうだと思うのです。わずかでありますが、しかも平成になってからの話でありますが、裁判所が合憲、違憲を判断するに当たって辛うじて許されるとした盗聴の前提、条件、そういうものはやはり基本的人権の保障の観点から、これはまた最大限酌み取っていかなければいかぬだろうと私は思うのです。  そういう点で、そういう立場に法務当局は立たれたのか、また、本法を審議する法制審議会はそういう立場に立って審議が、論議が続けられてきたのか、その点についてお伺いしておきたいと思うのです。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 法務当局といたしましても、ただいま委員御指摘の二つの高裁判決についてはもちろんよく承知しているところでございますし、そこで展開された論理、そしてこれをめぐるさまざまな学者、実務家の御意見というものを十分に理解した上で、そしてこれは委員のお言葉にもございますけれども、酌み取るべきところは酌み取った上で、そして論議していただきたいということで、法制審議会に至る過程、法制審議会における議論の中、その後におきましてもそういう観点からお願いしてまいったところでございます。  そして、その中で一つ基本的にあるのは、こういう問題については判例の積み重ねももちろん必要であるけれども、やはり法律でもってきちんとした要件を定めて、そしてそのガイドラインをつくってそれに従ってやるということが大切だという声が相当多くの方々から指摘されているということが私どもの考えの根底にございます。  詳しい中身につきましてはいずれまたお尋ねだと思いますが、私ども基本的な考え方は、委員の御指摘のとおり、この両判決の物の考え方から酌み取るべきものは最大限酌み取らせていただきたいということでやらせていただきました。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 この二つの事件の各地裁、高裁の判決は、何しろ明文の規定がない中での通信傍受が行われて、それに対する憲法判断が迫られた、そういう状況の中で非常に苦労された上で出されたと思うので、制約なんかもあると思うのですが、今御答弁ではございますが、残念ながら酌み取っていない部分が多々あると私は思わざるを得ないわけでありまして、それはおいおい質問の中で明らかにしていきたいと思うのです。  そこで、委員長にお願いしたいんですが、法制審の長い論議があるやに聞いております。今私が質問したこの憲法論も含め、判決の趣旨、どの程度どういう形で酌み取っているのかも含めまして、法制審の審議録は全部当委員会に出していただきたい。その経過を踏まえて、国会は立法機関でありますからしっかり論議をしたいと思うのですが、まず法務大臣にお聞きしますか。法制審の審議、全部国会に、当委員会に出していただけるでしょうか。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 議事録の要旨があるそうでございますから、それを出させていただきます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 憲法論争もあるわけでありまして、また刑事手続法制ですから、非常に一つ一つの言葉、厳密なのですね、厳格な論議がされているはずなのです。ですから、要旨じゃだめなんで、審議録を出してもらいたいのですが、法務大臣、これは別に秘密じゃないと思うので、そういう情報公開の流れの中での話ですから、ぜひ実りある法律論争ができるためにもお願いしたい。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 実際に法制審議会の議論に関与をいたしまして、その議事の状況に関与をいたしました事務当局としてお答えさせていただきますが、ただいま大臣が申し上げましたのは、法制審議会における議事の要旨を記録したものでございまして、いわば一語一語そのものを記録したということではなくて、議事について、そして参考になるべき事項は、ただいま委員御指摘の用語の厳密な使い方も含めて、きちっと整理されたものでございますので、それについてごらんいただければ、法制審議会の議論がどのようなものであったかということは十分御理解できるものとなっていると思いますので、それで御理解賜ればと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 要旨とおっしゃられましたが、その要旨というのは、個々の委員の個々の発言についてすべてフォローされているのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 議事の要旨と申しましても、各委員あるいは幹事の発言の中で、つなぎとかそういうことで入ってきた問答みたいなものは省略してございますが、それ以外の重要なポイントを網羅的に書き出したものでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 これは表へ出ている事実でありますが、法制審は全会一致じゃないわけであります。特に、日弁連から選ばれた弁護士出身の委員などがかなり激しい論議を展開しているはずなんです。ですから、個々の、それに対して学者委員や第三者委員等がどういう論議をしていたのか、法務当局はどういう論議をしていたのか、やはりきちっと踏まえた上で、立法機関は立法に当たって参考にすべきだと思うのですね。  どうも今の質問に答えてないのですわ。すべての委員の意見が全部、簡単でもいいけれども、要旨が載っているのかということ。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 委員の御関心の、例えば日弁連から推薦された委員がどのような議論を展開し、それについて他の委員がどういう反応をし、法務当局もどう答えたかということは十分わかる資料になっていると考えます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それでは私、改めて委員長に……

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 木島委員、それでは、今委員長にそういう御要望がありましたが、とりあえず法務当局から出していただいたのをお読みいただいて、それでもどうしてもということになったら、改めて委員会で委員長に要請していただいて、そのときには理事会にお諮りをしたい。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私だけが読みたいのではなくて、恐らく委員全員が読みたいのでしょうから、委員長の方に要望します。まずは要旨を委員会にきちっと出していただく。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 これは、法制審議会の各委員の方々の意思でもって、その議事の要旨そのものが秘扱いということになっております。しかし、国会の御論議にそのことを提供させていただくことは私は必要だと思うので、そのようにさせていただきたいと思います。そういうことを前提に、ぜひお読みいただければと思います。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 ちょっと行ったり来たりして申しわけございませんが、正確に申し上げますと、法制審の議事の速記録、これはすべての委員が固有名詞つきで、だれがどう言ったかを速記にしたものです。これはまことに恐縮でございますが、従来から非公開にさせていただいているわけでございます。  ただいま申し上げております議事要旨と申しますのは、その速記録を前提といたしまして、審議会の中でのいろいろな御意見、それを取りまとめたものでございまして、先ほど委員御指摘の、それぞれの委員がどういうふうな意見を述べたかという点については、すべて私どもとしては網羅的に要旨を取りまとめさせていただいたものでございます。これにつきましては公開してございますので、その議事要旨をまずごらんいただきたい、こういうことでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それでは、まずは議事要旨を当委員会に提出されますよう、委員長において取り計らいをお願いしたい。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 そのように取り計らいます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 きょう、時間の許す限り、具体的な中身の問題点について幾つかお聞きしたいと思います。  その大前提として、違憲性を論議するためにも、やはり通信傍受、いわゆる盗聴というものの本質的特徴は何か、ブツの差し押さえなどと違う本質的特徴は何かということをきちんと踏まえることがやはり大事だということを私は考えます。  そこで、その問題について、いろいろ読んでおる中で、一番的確に指摘した文書を私、これから御披露しますので、こういう問題について法務当局の認識についてお伺いしたいと思います。  これは昨年の十月の段階だと思うのですが、本法案に関する全国の刑事法学者の皆さんの連名による「「組織的な犯罪に対処するための刑事法整備要綱骨子」についての意見書」なるものの一部分でございます。ちょっと長いかもしれませんが、非常に大事な、論議の基本だと思うので、聞いておいていただいて、これに対する法務当局の認識をお聞きしたい。  「盗聴の本質的特性について」という見出しの  一文であります。   盗聴は、秘密処分性を本質としている。この  点は処分の執行段階では密行性が解除される捜  索や差押等の通常の処分との本質的相違であ  る。しかも、盗聴の対象はこれから行われる会  話であるために、その対象を特定の当事者間の  通信や特定の通信事項にあらかじめ限定するこ  とは不可能である。のみならず、通信による会  話は当事者間でその内容が不断に変化する性格  をもっているとともに、手紙の場合のような内  容の事前整序の過程を経ることがない。そのた  めに、盗聴は通信当事者の内心への侵入の度合  いが強度であり、プライバシー侵害の範囲も無  差別・無限定とならざるをえない。ここにも、  通常の捜索・差押との本質的相違がある。こういう非常に簡潔な、本質をついた一文であります。  要するに、普通の差し押さえ、捜索は、確かにそこまでは密行性で、本人、被疑者や第三者が知らないうちに裁判所は令状を出すわけでありますが、それが執行段階で全部明らかにされるわけですね。しかし、盗聴はそういう性格ではない、そういう本質的な秘密処分性、それから対象が会話だということであるための限定が非常に不可能、プライバシー侵害の範囲も無限定になっていく、こういう本質的な特徴を踏まえて、違憲問題、制度をつくるのであれば憲法違反かどうかをやはり厳密に論議しなければいかぬ、そういう指摘なんですね、これは全国の刑事法学者が集団での指摘であります。  まず、この盗聴というものの本質的特徴についてのこうした見解について、法務当局、どういうふうに考えるのでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 電話その他の通信に関する基本的な物の考え方として、今委員が御指摘になったような観点から、通信というものがいかに大切かということについての理解は私どもとしても十分理解できるところだろうと思います。その点では、そういうところも十分認識した上で、制度としてきちんとした対応ができるものをつくりたいというのが私どもの基本的なあり方というふうに御理解いただければと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 この全国の刑事法学者はもう一点本質的特徴について指摘しております。これも大事な部分で、こちらは余り細かい法律よりも基本的な問題ですから、これは法務大臣、聞いておいていただいて認識をお聞きしたいと思います。  この文章を言います。   さらに、通信手段が高度に発展し日常生活に  浸透した現代社会においては、通信の秘密と自  由の保障がいっそう重要なものとなっている  が、それにとどまらず、この保障は、思想・良  心の自由や表現の自由にとって不可欠のものと  なっている。そのような通信を盗聴することが  許されることとなれば、とくにその秘密処分性  のために、これらの自由につき強度の萎縮効果  が生じる。通常の捜索や差押にはない盗聴のこ  のような本質的危険性を考慮するならば、盗聴  の立法化については、とりわけ慎重な態度が必  要である。  要を得て簡潔だと思うのですが、この指摘に対して、法務大臣として、法案提案者としての見解、受けとめをお聞きしたいと思います。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 今その文章、手元にありますので、刑法学者有志の意見書、こういうような内容だろうと思うのですが、通信の秘密を初めとする憲法上の権利というのは、これはもう尊重しなければならないことは当然のことでございます。それと、やはり社会、公共の安全を図るという、これも憲法上の問題でございますが、これとの調整をどこで図るかということが一番問題であろう。  私、ちょっとこの表現が気になるのですが、盗聴、盗聴と書いてありまずけれども、私どもは盗聴とは考えておりません。これはもう通信の傍受でございまして、令状をもらい、もう大変な制約のもとで、しかも立会人も得ながらやるような、御承知のような行為でございまして、ですから、「盗聴の本質的特性」なんて書いてございますけれども、私どもは、盗聴と考えておらないで、正当な行為である、このように考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それは、言葉の問題はいいですよ。私も本会議代表質問で盗聴という言葉を使ったら、橋本総理から盗聴ではなくて通信傍受についてお答えしますとあったので、今の大臣のお答え、気持ちはそうだと思うのですが、そんな言葉はどうでもいいのですよ。  こういう指摘をされている、萎縮する、これからの日本社会の自由について強度の萎縮効果が生まれる、そういうものを本質的に、この電話の通信傍受、いわゆる盗聴というのは持つのではないかと。だから、この立法化についてはとりわけ慎重な態度が必要だという学者たちの指摘なのですが、これをどう受けとめるかだけ答えてください。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 それは素直に受けとめるべきだと思います。そういうような中でいかにあるべきかという議論になろうかと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 それでは次に、時間の許す限り、幾つかの点について具体的にお聞きします。  今、刑事法学者が指摘しておりますように、やはり特定、限定というのが非常に難しい性質だと。文章なら特定できまずからね。そういう問題なので、まず一つ私聞きたいのは、傍受対象通信手段の限定の問題です。  法案第三条によりますと、傍受対象通信手段は二種類に分けられております。一つは、「被疑者が通信事業者等との間の契約に基づいて使用しているもの」、要するに被疑者が使用しているもの、これが第一の類型。もう一つは、法三条は、「又は犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるもの」。こういう二種類ですね。被疑者が所有とか使用権を持って事業者との契約のもとで使っている被疑者のもの、あとは被疑者と関係ないもの、こういう二種類の対象通信手段を書いているわけであります。要するに全部ということですね、これは。特に、この被疑者のものでないもの、「犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるもの」、非常に広い、余りにも広いと思うのです。  そこで聞くのですが、例えば、通信傍受対象犯罪の中には爆発物の使用があります。例えば、誘拐もあります。そうすると、これはどうなるかというと、誘拐とか爆発物の使用が行われた、ある犯人集団がやった。その被害者の企業、被害者の個人には当然脅迫電話がかかってきましょう。お金を要求するわけです。昔ありましたね、三菱ですか、誘拐なんかみんなそうですが、企業犯罪もありました。そういう誘拐、爆発物使用などの犯行が行われた後、犯人グループが脅迫電話をかけてくる。そうすると、そういうかかってくるおそれのある被害者、被害企業、被害団体等の電話が、もろにこの三条の、私の二つ目の類型、「犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるもの」にもろにかかってくるわけでありますので、被害者の側の電話が丸ごと被害者の知らない間に盗聴されるということに仕組みの上でならざるを得ません。こういう理解でいいのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 通常の場合を想定いたしますと、例えば身代金誘拐の電話等で被害者のところにかかってきた電話、こういうものについては、被害者の方の方からむしろそういう電話の録音をするなりあるいは傍受をすることについての同意があるのが一般的なケースだろうと考える次第です。またもう一つ、この傍受の要件の上では、先ほど、法案にもありますように、他の方法によっては捜査が著しく困難という、いわば最後の手段というふうな要件が入っておりますことから、今御指摘のような被害者との関係があって被害者の電話を傍受しなければならないというような事態というのは、ただいま申し上げました、他に適切な捜査方法がないという要件のところで、まず考えられることはないというふうに考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 どうも納得できないです。  ある大手企業、金融機関でもいいでしょう、いろいろな不祥事があるというので国民の批判が集中しているような金融機関、そこに、ある犯行グループが爆弾を一つ落とす。大した爆弾じゃなくてもいいです、まず爆弾を落とす。そして脅迫電話をかけまくる。ある政党本部に小さな爆弾を一つ落とす。そして脅迫電話をかけまくる。犯人はわからぬわけですよ、犯人グループはわからぬわけですよ。犯行声明だけが新聞に躍る。  それで、この法律が成立したら、犯人を見つけ出すためには、被害者のところにかかってくる脅迫電話を徹底して逆探知するということになるわけでしょう。今までも、誘拐なんかはそれをやっているわけでしょう。それで、今の答弁のように、誘拐なんかは、できるだけマスコミに知らせない段階で、被害者側の了解をとって、同意を得て電話を傍受していると思うのです。それは当然です。そして、逆探知して加害者を割り出す。当然ですよ。そうすると、そういうことになるのじゃないですか。  ところが、この法案を読むと、爆弾を仕掛けられた大企業なり政党本部の了解なしに無断で盗聴令状とれる。裁判所は盗聴令状を出すのじゃないでしょうか。徹底して十日でも二十日でも盗聴を続けるということになるのじゃないでしょうか、仕組みの上で。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 仮に、もしその被害者の方の同意を得る手続、こういうものを一切しないで令状請求をするというふうな事態があったといたしますと、これはまず、捜査機関としてはやるべきことをやっていないことは間違いないわけでございます。  したがいまして、その段階で、他の方法によっては犯行状況等を明らかにすることが著しく困難という要件がまず欠けることになってしまって、そういう意味で、令状が出ることは考えられないということを申し上げた次第です。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 どうも私はそうも思えないのですよ。これはもう、犯人がわからない、そして爆弾が仕掛けられたというので、重大だというので、恐らく令状はすぐ出ますよ、こんな場合は。それで私は言うのですよ。この三条では、被害者の承諾、同意なしにできる。それはやはりよくないだろうと。  それで、私の質問ですが、この三条の、被疑者の所有、使用している通信機器に対する傍受じゃなくて、そうでない、犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるものについて被害者側の通信機器を傍受する場合には、やはり傍受される被害者の方の、被害者なんですから、同意が必要じゃないかと。なぜこの法律で被害者側の承諾、同意を要件にしなかったのか、その理由をお聞かせ願いたい。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 ただいまの御論議を聞いておりまして、ちょっと私誤解をしているかもしれませんが、私どもの基本的な考えについて申し上げさせていただきますと、委員御指摘のような、例えばある企業等に爆弾が仕掛けられた、そして被害者の立場からそのことが捜査機関に申告されるという場合が普通だと思います。そうした場合に、あるそのような事態を背景に、例えば脅迫電話とかさまざまなその後における電話がかかってまいるという場合は、通常、被害者の立場としては、捜査当局等にそのことを申告して、むしろ、犯人を捜してください、そういうことで、実際これは、通信を傍受するというよりも、むしろ被害者の電話、そして可能性のあるところにすべて捜査官の派遣を求めて、そして事態の解明を図るというのが通常の場合ではなかろうかと思うわけでございます。  そして、今御指摘の、いわば被疑者の電話以外のものについて捜査上必要とされる場合というのは、例えば、いろいろな情報等から、犯罪に関与した者がある特定の電話を使っている、そしてそこでさまざまな連絡をすることになっているということがわかってきたといたします。そのわかり方については、関係者からの申告によることもございましょうし、さまざまな情報からわかってまいるということもあるかもしれません。そうした場合に、そこで行われている会話は既に起こった重大犯罪の解明にどうしても必要だと考えられるということが疎明できる場合には、裁判官から、それを傍受していいという許可状が出るわけでございます。そうした場合には、そこで行われることを、むしろ被害者というよりは、その犯罪の遂行、今後の経過、その処理等についての会話が交わされるという蓋然性があるということでございますので、それにつきまして許可を得て傍受するというのが、この法案で考えられている事態だろうと思うわけです。  ですから、被害者があって、そしてそれが捜査当局と協力していくという場合には、通常、傍受ということではなくて、被害者の協力を得て電話の内容を聞かせていただくということになるんだろうと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 もちろん私は、すべての要件が整った上で裁判官から令状が出た場合を想定しているのですよ。しかし、それは論議の対象じゃないから外しているのです。  例えば、朝日新聞の記者が殺されました。いまだに犯人はわからない。犯行声明は出ています。マスコミ、新聞社というのは情報を非常に大事にします。恐らく、警察、検察と連携してでも、あの記者を殺害した犯人を割り出すには朝日新聞のすべての電話を明らかにして傍受してもらいたいぐらいの気持ちもあるでしょう。しかし、新聞社というのは基本的にそれはできません。情報源秘匿という基本的な社の命運にかかわることがありますね。政党本部だってそうでしょう。傍受なんかされたらたまらぬわけですよ。政治家だってそうでしょう。たまたま対象犯罪に贈収賄がないからいいけれども。  だから、いろいろ理屈を言っておるけれども、被害者の協力を得てその被害者の電話を傍受するんなら、当然、それならその承諾をとりなさいよというのですよ。この法律の仕組みは、承諾なしに、同意なしに、被害者の知らぬところで、裁判所の令状がとれる条件があれば、令状をとって、何日間でも、十日でも二十日でも傍受を続けることができる仕組みになっているじゃないですか。何でそういう場合には被害者の同意というのを基本に書き込まなかったのかということを言っているのですよ。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 私どもは、この市民社会にあって、被害者がある犯罪行為の被害を受ける、そのことについての解明が必要だと考えられる場合には、捜査機関等に対して一定の協力がなされるものということを恐らく前提にしていると考えます。もし被害を受けても、そのことは、いわば当事者として自分たちで解決できるということで、捜査には協力できないという立場であった場合には、恐らく捜査当局としてはそれ以上の介入はできないだろう。ただ、事柄にはいろいろな形態があろうと思います。そういう状態が連続的に起こってきたという場合には、被害者がそのことを秘匿するというような場合もあるいはあるのかもしれません。しかし、そのような状況は、通常の捜査手段としてはおよそ考えにくいと私どもは考えるわけでございます。  被害者の協力が得られないときに、その被害者の拒否の態度と申しますか、そのような一定の物の考え方を無視してまで通信傍受をやるということは考えられないことではないだろうか。しかし、そのことについては、あるではないか、そのことも可能にできるのではないかという御指摘に対しては、私はそういうことはないと思いますが、もしそのような御心配があるということであるならば、この法案の立法の過程で、そういうことには心配がないということを何らかの形で明確にする必要もあるいはあるかもしれません。  私は、委員の御指摘の点について、一般的に全くないとは申せないと思いますけれども、通常の場合、この市民社会を守るために、被害者は、一定の被害を受けた、しかもそのことが社会的な影響を持つという場合には、捜査機関に御協力いただけるのではないかというふうに考えます。  なお、この法律でとらえようとしておる対象犯罪の重大性、公共の安全に関する、その問題点からいたしますと、そのように考えられるのではないかと思うわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私が言うのは、捜査には協力するけれども、知らぬところで勝手に自分の電話が徹底的に盗聴されたらたまらぬ、それに対する歯どめをつくってないとおかしいじゃないかということですよ。我々日本共産党は、そうじゃなくたって、違法に盗聴され続けてきたんですから。でしょう。そうすると、そういう歯どめをかける。歯どめがないから、この法律は。まさか、そういうのは前提になっているから、令状を発付するときに裁判官が考えるだろうなんというのは、考えだけであって、歯どめがないわけですから、法律上。歯どめをつくるんですね、つくってくれるんですね。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 若干補足的に申し上げますと、まず、被害者側の同意があった場合、これに基づいてその通信を傍受させていただく……(木島委員「そんなんじゃなくて、同意を要件とすべきだと言っているんです」と呼ぶ)  同意を要件とした場合は、同意があることになりますので、もはや強制処分とは言えなくなるわけでございます。それは、ごく普通の今までの捜査手段。先ほど申し上げましたことは、被害者がいる場合に、その被害者の方の同意を得て傍受をさせていただく、あるいは録音していただいて、それを入手する、そういう方法をとらないままでこの傍受の手続に乗せようといたしましても、他に犯行の状況を明らかにすることが困難だという要件が欠けてくるので、令状が出ることは考えられないということを申し上げたわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 私は、要するに、この対象の通信施設が余りにも無限定だという一つの例証として、極端かもしらぬけれども、それはあり得る話です、指摘したのですよ。ですから、それならやはり被害者の関係している電話通信施設について勝手に傍受するというのは、やはりこれは筋がおかしいですよ。さっき刑事局長は修正するような答弁だったのですが、それでいいのですか、そう聞いて。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 私は、そういうことが法技術的に可能なのかどうか考えてはみたいと思いますが、先ほど古田審議官が申し上げましたが、被害者として、たくさん電話がある、そういう場合に、恐らく捜査機関に協力して聞いてもらっていい、あるいは相手方からかかってくる可能性がある電話ということならば、それは御協力していただけるという場合が普通だろうと思うわけです。  それ以外の場合、まさに協力して同意を得ている場合は、通信傍受、この法律の対象にならないわけでございますから、それは別論といたしまして、それ以外のものがあって、いわば判明していない電話がある、これについては協力できないものだという場合には、それについてさらにこの法律に基づく要件があるからといって請求するというふうなことはまず考えられないのじゃないかと思うわけですね。  しかし、委員せっかくの御指摘でございますので、私もそれはそれとして受けとめさせていただきます。しかし、そういうことを法律に書くことがどういうことになるのかという点についてとっさに思い浮かばないので、その点については考えさせていただきたいと思います。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 では、考えていただいて、私の方も引き続き考えていきますので、この問題はもうこれできようは打ち上げます、もう時間も迫ってきているので。きようで終わるわけでは全然、始まったばかりですからね。  では次に、いろいろ聞きたいのですが、立ち会いの問題をちょっとさっき同僚議員が聞いておりまずから聞きたいと思うのです。  法文によると、十二条、立ち会わせなければならぬ。これらの者を立ち会わせることができないやむを得ない事情があるときはその限りにあらずというのですね。「常時立ち会わせることができないやむを得ない事情」というのは、どんな場合を法務省は想定しているのでしょうか。なぜ常時立ち会いを要件にしなかったのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 まず、立会人は常時立ち会わせるのが原則ということは変わらないわけでございます。ただ、この傍受につきましてはある程度の長期間にわたることがあるわけで、その間に突発的に何かの、立会人をお願いしている方の用務の都合ができて、どうしてもある時間帯、実際の立ち会いを得られないという場面が起こり得ることは想定せざるを得ないというところがあるわけです。そういうことから、そういう突発的な場合などでどうしても現に立ち会いが得られないような場合に、その突発的な理由によりましてどうしても立ち会っていることができない時間の間と認められる限度では傍受の処分を続けることができるということにしたものでございます。  具体的な例というのはさまざまな場面があると思いますけれども、例えば事故等が起こってお願いしていた方が急速そちらに行かなければならないというふうな場面もありますでしょうし、いろいろな場面が想定されるということでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 基本的にこの法律が想定している立会人の職責というのは何なんでしょうか。特に私が質問したいのは、立会人というのは、司法警察職員または検察官が実際に電話を傍受している——傍受の仕方を私は知らないのです。聞こえないで、ヘッドホンを当てるということもあるのでしょう。そういう場合等、立会人というものは傍受するのでしょうか、しないのでしょうか。できるのでしょうか、してはならぬのでしょうか。この法律はどう想定しているのでしょうか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 立会人がどういうことをするかということでございますが、まず傍受対象となる通話の内容に触れるかどうかという問題についてお答えいたしますと、この法案では立会人がその通信の内容には触れないということを前提として考えております。  そういうことといたしました理由は、第一点は、まず犯罪の実行に関連する通信であるかどうかということは、その犯罪の状況等についていろいろな情報、資料というのを相当詳細に把握していないとその判断が極めて困難な場合があるということが第一点でございます。  そしてもう一つは、やはり通信の内容自体に立会人が直接触れるということになりますと、その通信当事者のプライバシーの保護の点でかえって適切を欠くのではないかということが考えられるということでございます。  したがいまして、これまで検証令状でやったような場合には、立会人も聞いていて、立会人自身が切断とかそういうことをするというふうな仕組みになっていたわけでございますが、これまでの例とは違いまして、覚せい剤の注文とそれに対する指示というような単純なものではない場面が多いということと、いろいろな会話が入り得るというその二点からただいまのような考え方にしたというものでございます。  次に、では立会人は現にどういうことを職務としてするのかということになるわけですが、これは当然ながら、まず機器等が、いわば傍受に必要な限度のものが適正に設置されているかどうかというふうな問題、あるいは、外形的なことになりますけれども、該当性の判断のために聞いている場合に適切な時間を置いてスイッチのオン、オフ等をやっているかというふうな点、あるいはテープなどの記録媒体を交換する際にその交換したテープの媒体の封印、こういうふうなことが立会人に主にお願いする仕事といえば仕事ということになると考えております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 法十三条に「該当性判断のための傍受」というのがあります。今、答弁で、該当性判断が適切になされているか、スイッチのオンやオフが適切にやられているか、それを見るのが立会人だというのですが、立会人が通信の内容に触れない、ならば適切にオン、オフかけられるかどうかわからないじゃないですか。該当性判断なんというのは捜査官だって難しい話ですよ。この会話が令状に記載された通信関連の言葉に当たるかどうかなんというのは、そんな、捜査官だってわからないですよ。全部聞いてみなければわからないですよ。ましてや立会人は傍受できないのでしょう。傍受しないことを想定している。オン、オフなんか、意見なんか言えるわけないじゃないですか。おかしいじゃないですか。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 言葉が足りなかったかもしれませんけれども、要するに、該当性判断のための傍受をするやり方にはいろいろなやり方があるわけで、例えば、一定期間、一分なら一分という期間を区切って聞いて、それから一たんスイッチを切って、さらにまた通話が継続しているというふうな場合にはさらにまた一分間なら一分間聞くというふうなやり方というのが、例えばアメリカ等では典型と承知しているわけです。  それで、日本でそういうスポットモニタリングをそのような方法でやる場合に、立会人としては捜査官が傍受をしている場合にそういうことに従ってやっているかどうか、すべての会話についてずっと全部犯罪の実行に関連するというふうなことは、これはむしろまれでしょうから、かなり多くの会話についてはただいま申し上げたような措置をとることが普通であるわけでございまして、そういうことは捜査官の行動からすぐに判断がつくわけでございます。  ですから、非常に多くの会話で一切そういう措置をとらないでやっているとか、そういうふうな問題が起こるとすれば、それは、当然ながら、立会人としては、該当性の判断について問題があるという認識を持てるということになるわけでございますし、また、捜査官としても、立会人がいるところでそういうようなことは恐らく、立会人がいようといまいとしないわけですけれども、立会人がいるような場面でそんなような行動をとるということは到底考えられない。そういうふうな外形的なチェックということも、それで十分意味があると考えているわけです。  なお、その問題については、立会人だけではなくて、傍受した通信はすべて記録をしなければならないということにしておりまして、それ自身は、立会人が封印した上で裁判所に保管を願うわけで、それとの照合によって、どういう傍受を実際にやったかということは事後的にチェックが可能になるように考えておりまして、そういう点からも、ただいまの御指摘のような該当性判断のための傍受の必要最小化と申しますか、そういうことが適正に行われるように考えているわけでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 ようわからぬですね。この法律は、第九条「傍受令状の提示」で、「傍受令状は、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者又はこれに代わるべき者に示さなければならない。ただし、被疑事実の要旨については、この限りでない。」被疑事実は教えられないのですね、通信手段の傍受を実施する部分を管理する者ですら。どういう犯罪のために傍受しているのか教えられないのがこの法律の基本です。しかも、これは立会人の規定ではないですから、立会人は傍受令状を示されるべきなのかどうなのか法律に書いてないです。どうなのですか、それは。

古田佑紀法務大臣官房審議官

○古田(佑)政府委員 被疑事実の要旨につきましては、これは、現行の捜索差押令状等でも添付が要件とされていないものでありますが、通信の傍受につきましては、意味内容が問題になる会話ということから、被疑事実の添付ということをすることにしたものでございます。  ただ、被疑事実自身を常に見せなければならないということにいたしますと、やはり、プライバシーの問題とか捜査上の秘密の問題にもかかわることが起こり得ますので、義務的に見せる必要はないということとしたというものでございます。  立会人につきましても、これも、現行刑事訴訟法上、強制処分について、特に立会人についての提示という規定はございませんけれども、どういう目的で強制処分をするのか、どういう令状に基づいてやるのかということは、これは、立会人は当然承知をする、すべきものという考えになっていると理解しております。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 「傍受令状の記載事項」というのが第六条にあって、被疑者の氏名とか被疑事実の要旨、罪名、罰条、通信、傍受の実施の対象とすべき通信手段、場所、方法、期間、傍受の実施に関する条件、有効期間その他ですね。そんなところに、一分単位に傍受しろなどという具体的なことは書かれるはずないのですね。さっき答弁で、そういう一分単位にスイッチオン、スイッチオフというような、何か立会人が監視するような答弁をしたけれども、そんなこと想定しているはずないのですよ。それで、立会人は、基本的には傍受内容も聞けない。今の答弁でもはっきりせぬですね。傍受令状を示されるのかどうかもはっきりせぬ。そんな程度でしょう。傍受が始まったときと、終わったときに封印するだけの話、そんな程度の立会人の職責ではないのでしょうか。  最初に私、東京高裁や札幌高裁の判例の趣旨をどのくらいきちっと踏まえるのかと質問して、答弁をいただきました。東京高裁の判決などというのは、立会人に切断権があるから、出過ぎた傍受をやったら、そこでやめなさいという権限が立会人にある、切断権がある、だから、それを大きな要素として合憲、憲法に合うということの理由に使っているのですよ。  こんな立会人の機能、場合によってはいなくてもいい、そんな立会人では、いてもいなくても同じだ。これでは、令状どおりに正しく傍受がされているのか、もう令状を逸脱して、関係ないものまで全部聞きおいているのかわからないではないですか。やはりこういう無限定性、だから、法律そのものの持っている無限定性はあるのではないですか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 冒頭で委員が御指摘いただきました、従来の検証令状に関する高裁判決との関連でもお尋ねでございますので、この立会人の問題をどうとらえるのかというのは、確かに一つの要点であろうと思います。  従来の検証令状、非常に限られた、いわば覚せい剤の売買、取引そのものに限定されたような会話の場合は、立会人としては、場合によって、これは関連するものであるかそうでないのかということはある程度わかり得ると思います。  しかしながら、今度御審議をお願いしております、犯罪についてのその背景、またその共謀関係、そのさまざまな犯罪の中身に関する事柄になってまいりますと、そこで交わされる会話については、捜査官として事実を相当緻密にわかっていないと、それが犯罪に関連するものかどうかというのはわからないということが前提になってきます。  そういう面からいたしますと、立会人というものを、いわばある面で捜査官の手足として使うことになってはいかがかという御指摘もございましょうし、また逆に言えば立会人を、裁判所の立場から、監査的に、その適正な手続を守るためにいわばチェック機能としての側面を重視するという考え方もございましょう。しかし、そういった点を強調してまいればまいるほど、この立会人の職責と申しますかその立場は非常に微妙になってまいります。  そこで、墓星高裁の判例との関連でいえば、その点で重視された判例は十分わかるわけでございますが、現実に行われる立会人の作用、その役割ということを考えますと、それにかわるものとして、例えば、先ほど答弁の中にございましたように、聞いた会話はすべてそのまま記録させていただく、そして、そのことがどうだったかというふうなことを後にチェックできるようにするということが基本的なチェックと考えているわけです。  それと、先ほどのスポット的に聞くということは、例えばアメリカ等はそのようなやり方をとっているわけですが、基本的なアプローチとして、一たん設置したら、最初から終わりまで継続してずっと全部聞いていく、また録音していくというやり方もあるいはあるのかもしれません。しかし、現在、アメリカで行われているのは、それだとやはり無限定になり過ぎてしまう。やはり、スポット的に聞いていって、不必要なものはやめよう、そして、その都度チェックしながらやっていくということを捜査官に義務づけたわけでございます。  それと同じような手続をこの法案はとらせていただこうという観点から、いわば無限定的に関係のないものを聞くということについては、聞いたものは必ず録音する、そして後からチェックできるということプラス、無限定には聞かない、そしてその都度判断していくという責務を課すということでいわば担保しようとしたということで、ぜひ御理解をいただきたいと思うのです。  ですから、立会人のあり方という点について、私、冒頭に委員にお答えしました、検証令状の中で言われている立会人の役割と若干ニュアンスが違うかもしれませんと申し上げたのは、そういうことについて述べたつもりでございます。

木島日出夫日本共産党

○木島委員 時間が来ましたから終わりますが、二つの点しか質問できませんでした。立ち会いと被害者の通信機器に対する傍受、それら二つの点だけでしたが、大変な問題があるということが明らかになったと思うので、これはもう廃案しかないという意見を申し述べまして、終わります。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  組織的犯罪対策関連三法の事実上の審議に先立って、三月十一日に当法務委員会で、この問題の前提となる議論をさせていただいています。そこから、きょうは警察の方にもおいでいただきまして一いろいろ確認をしていきたいと思います。  まず、法務大臣は、十一日のやりとりのときに、実は、日本共産党幹部宅の盗聴事件について、この法案とは関係がないとしながら、この事件そのものは神奈川県警の警備部警察官による盗聴事件だというふうにはっきりと明言をされたわけです。そして、原田刑事局長は、警察当局はそれなりの努力をして、二度とああいう事件を組織の中では起こさないということを明言しというふうに触れておられます。そして、それでは警察はどうかということで、その場には奥村さんがおいでになって答弁をされているのです。これはそのときの答弁なんですが、「本件事案への警察官個人の関与につきましては、当時の神奈川県警における内部調査では確認できなかったという報告を受けているところであります。 しかしながら、昭和六十二年当時、東京地検の捜査の結果、神奈川県警の警察官二名につきまして起訴猶予処分がなされ、警察活動の一部に疑惑を持たれるところとなったことは、警察といたしましても厳粛に受けとめておるところでございます。」この答弁は現在お変わりありませんか。変わらなければ一言で変わらないと。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 お答えいたします。  基本的に変わってございません。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ということは、いろいろと疑問点があるのですが、警察活動の一部に疑惑を持たれるところになったことは、警察としても厳粛に受けとめている。きょうは広辞苑を持ってきまして、その厳粛というのは何だろうということをいろいろ調べてみると、これは「厳として動かしがたいこと。」という意味もあるのですね。そういう意味も込められておりますか。いかがでしょう。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 社会通念上そのように考えております。社会通念上、一般的な用語というふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ですから、その意味ですね。辞書を見ると、これはもう動かしがたいんだという意味もあるわけですね。ですから、そういう意味も込めて使っているかどうか。そうではないならそうではないというふうにお答えいただきたい。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 広辞苑等のそれはそのとおりだと思いますし、私ども、厳粛に、厳かに、謙虚に受けとめた、こういう趣旨でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 その委員会で、人事異動が行われたこと、これは定期的な人事異動に伴う人心一新という非常に微妙な表現なんですね。そのとき、内実はどうだったのかということをわかりやすい日本語でお願いしますということに対して、答弁は、「御指摘の、」「人事異動につきましては、昭和六十二年当時、現職の警察官が検察庁の事情聴取を受けるという遺憾な事態を招いたことを踏まえまして、警察の行う情報収集活動につきまして、国民からいささかの疑惑も招いてはならないという立場に立ちまして、人心を一新して国民の期待にこたえる警察活動を展開すべく、定期異動におきまして必要な人事の刷新が行われたものであると理解をしております。」これも変化ないでしょうか。もう少し補足して言うことありますか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 委員御指摘のとおり、基本的にはその考えでおります。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それでは伺いますが、「遺憾な事態」、その遺憾という言葉をどういう意味で使っておられるのでしょうか。その遺憾という言葉をまたこれ辞書で引きますと、余り反省という意味はないのですね、これは。その辺も踏まえて、ちょっとどういう理解で遺憾という言葉を使われたのか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 警察活動においては、国民からいささかの疑惑も招いてはならないということでございますし、私どももそういった面で、本件事案については非常に警察の信頼というようなことで疑惑を招く結果となったというところを考えたわけでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 そういう場合は、普通は反省という言葉を使うのじゃないかと思うのですが、遺憾という言葉は、また辞書を引きますと、「思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒。」という意味なんですね。それだけでいいんでしょうか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 辞書に、いろいろな辞典によって違うと思いますが、基本的には委員御指摘のようなことかと思います。  私どもも、そういったことにいささかの疑惑も招いてはならないという観点から、あくまでそれについては遺憾の意ということでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これは子供たちに希望を持っていただくためにも、遺憾て何ですかと言ったら遺憾ですなんというのは、これはもう話にならないわけで、やはり国会は言葉のやりとりですから、きちっと言葉を尽くして答えていただきたいと思います。  先ほどの、今私が早口で朗読したところに、もう一回リピートしますと、「現職の警察官が検察庁の事情聴取を受けるという遺憾な事態を招いたことを踏まえまして、警察の行う情報収集活動につきまして、」というふうにつながっていくわけですね。あの事件というのは警察の行った情報収集活動だというふうに読み取れるのですが、いかがですか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 東京地検の捜査において警察官二名の関与が疑われたということでありまして、警察活動ということについて、そこの組織性の問題があるわけでございますが、基本的には、東京地検の起訴猶予処分というのは警察官二名の行為ということで承知しております。  今委員言われた、警察活動の一部にという……(保坂委員「警察の行う情報収集活動と議事録では」と呼ぶ)広い意味でそういう表現を使った、このように考えます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 じゃ、わかりやすく、こういうことは二度と起きてはならないということを法務大臣も法務省刑事局長も言っておられるわけです。警察としても、こういうことは二度と起きてはならないという決意でございますか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 たびたび繰り返して恐縮ですが、東京地検の捜査を受けて起訴猶予処分になった、国民の疑惑を招くところとなったということについて、二度とこういつた、いささかも警察活動に疑惑を招くようなところとなってはならない、こういう趣旨でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 疑惑を招いてはならないわけですけれども、二通りあるわけですね。要するに、何もしていないのに嫌疑をかけられて、そしてそれが遺憾であるという事態と、実際には相応の事実があって、嫌疑もあって、起訴猶予にはなったけれども疑惑を招いて遺憾だった。前者ですか、後者ですか、それもはっきり答えてください。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 これもたびたび繰り返して恐縮ですが、当時の神奈川県警察においては、職務命令を発したこともなげれば、組織的に関与をしたこともないという報告を受けておる、それから、警察官個人については判然としなかったということでございます。  しかしながら、私ども、本件の捜査については、東京地検が捜査するところとなったわけでございまして、私どもが実際に捜査したわけではございませんし、その結果、警察官二名の関与が疑われたということでございます。そういったことについては、厳粛に受けとめ、まことに遺憾である、こういうことでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これで一時間費やしそうな、同じパターンのお答えしかしていただけないので、それでは簡潔にお尋ねしますけれども、これは判決が確定したわけですね。国民の中には、いわば被害を受けた当該の方もいらっしゃるわけですね。盗聴されたと言われる方もいらっしゃる。謝罪はされたんでしょうか。

小林武仁警察庁警備局警備企画課長

○小林説明員 遺憾の意を、今の場もそうでございますが、これまでも国会等でしばしば表明させていただいてきております。緒方氏個人については、法の定めるところに従い、賠償金の支払いも終わっておりますということで御理解願います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 何度も辞書を読み上げる必要はないと思いますが、遺憾ということは、必ずしも謝罪ということを意味しておりません。ですから、残念だった、思うとおりにいかなかったということがその遺憾の内容で、それ以外の意味があるというのなら、後で、警察としてはこういう意味で、特別に遺憾という意味に謝罪を込めているのであれば、そういうふうに言っていただきたいんですが。  大きな事件、そしてまた、決定的なタイミングで、しょせん人間が多数集まって動いている組織ですから、警察といえどもミスはある。それは、私たち自身も同様に、だれもがミスを犯すことだろうというふうに思います。  松本サリン事件がありましたね。この松本サリン事件で、当初犯人扱いをされて、新聞等に大々的に出た、そして自宅を家宅捜索された河野さんに対して、これはどうでしょう、警察としては公式に謝罪されたんでしょうか。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 御質問の件につきましては、平成七年十一月二十八日の参議院宗教法人特別委員会で、当時の深谷国家公安委員会委員長が、この件に関しまして、御迷惑をおかけしたことは事実であるから、国家公安委員長としての立場から申しわけないと申し上げる旨の発言をしております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私、ちょっと新聞のファイルを探してみたんですけれども、たしか当時、一年後でしょうか、野中国家公安委員長が河野さんに直接議員会館でお会いになった、そして、捜査の内容については立ち入れないとしながらも、政治家として、人間として苦しみは十分理解できる、そして、心からおわびを申し上げたいというふうに明.言したという記事があります。  しかしこれは、政治家として、人間としてというふうに置いてあるわけで、組織全体として謝罪をしたということだったのかどうか。このあたりの関係はどうでしょうか。政治家として、組織はなかなか謝罪できないけれども、政治家が組織にかわって、河野さんの受けた苦しみに対してきっちりわびたというふうに世間は受けとめたと思いますが、警察としてはいかがでしょうか。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 今御質問のとおり、当時の野中国家公安委員会委員長が河野さんに対しまして、捜査についてとやかく申し上げる立場にはないが、御心労のほどは大変であり、一政治家として、こういう事態を振り返ると、心から申しわけなく、おわびをしなければならないという旨の発言をしたことは承知しております。  また、警察といたしましても、捜査一課長等が他の委員会で同旨の答弁をしております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私は、国会で答弁をして明らかにするということも、行政としての立場の表明であるとは思いますけれども、何より大事なのは、被害を受けた、あるいは、それこそ社会的な非難の的となった、ひどいやつだということで犯人として扱われた当事者に対して、例えば長野県警がどういうふうに遇したか、あるいは、きちっと最後のところまで誠意を尽くしたのかどうかというところが一番気にしているところなわけです。  長野県警の刑事部長がこの一年後に記者会見をされくここも遺憾の意なんですね。そして、河野さんは事件に無関係というふうに述べたことで、河野さんは、非常に無罪をから取ったような気持ちだというふうに表明をしたんです。しかし、もう一点、一度も犯人扱いはしていないんだという意思表明もあるんですね、この時点で警察の側から。とすれば、河野さんがこのときおっしゃっているのは、もし一度も犯人扱いをしていないのなら、自分が報道で犯人扱いされて困っているときに、どうして警察は助けてくれなかったんだというふうに言っておられる。  河野さん本人に対しては、この点はどういうふうにその後進んだんでしょうか。最終的に謝罪ということが行われたのかどうか。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 特に、そういう形での謝罪が行われたということは承知しておりません。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 この事件に関連して、「もっと気軽に謝罪できぬか」という投書が朝日新聞の「声」欄に載っているわけなんです。これは九五年六月二十九日付ですけれども、千葉県の当時六十二歳の投書をちょっと御紹介いたしますと、   最近、新聞紙上をにぎわせた謝罪の問題として、戦後五十年の国会決議とへ松本サリン事件での河野義行さんに対する警察の問題があるだろう。両方とも明確な表現での謝罪とはならなくて、何か言い訳のような内容になったように思う。しかし、松本サリン事件では野中国家公安委員長が河野さんに謝罪をされ、それにより、河野さんも非常にすっきりしたと会見で述べておられた。   ぜひここのところを法務大臣に伺いたいのですけれども、要するに、謝罪をされて、河野さん自身が非常にすっきりされた。   謝罪する方からすると、謝罪する以上、明確に過ちがある場合であり、へたに謝罪をすると、今度はだれかが責任を取らねばならず、それを避ける意味で明確な謝罪ができないのだろう。   しかし、河野さんの例や、国会決議でのアジア諸国の反応をみるまでもなく、もっと明確に謝罪することが、その後の当事者間の関係をスムーズにし、また謝罪する方に対する尊敬も生まれてくることは明らかである。その意味で、松本サリン事件について、野中委員長の謝罪は非常にすがすがしい印象を全国民に与えたものと思う。   組織の長が謝罪することは、その人にとっては勲章と思い、もっともっと気軽に謝罪をし、めりはりのきいた人間関係を作ってゆきたいものである。  こういうふうに投書されているんですけれども、法務大臣は警察の場に長くおられて、今の松本サリン事件のやりとりを踏まえて、組織にミスがあったときに、被害を受けた本人にきっちり謝罪をするかどうかということについて、見解を伺いたいと思います。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 私、松本サリン事件のときには既に退官いたしておりましたので、具体的な捜査の内容については承知いたしておりません。報道で知っている限りでございます。  それを前提として申し上げますと、事実関係がはっきりし、しかも、それについて警察に責任があるのなら、それははっきり謝ればいいことでございますし、今の捜査一課長の話を聞いておりますと、その辺のところがちょっとすっきりしないんですけれども。だから、そこが問題だと思いますし、その辺がはっきりすれば、それなりに対応すればいいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、今の法務大臣のお話を聞いてどうでしょうか。  まだなされていないのであれば、遅くても、政治家の手によって謝罪は行われたけれども、警察という組織によっては、遺憾、思うとおりにいかなくて残念であったという表明があっただけで、犯人扱いはしていないという見解も修正されていないのですね。  この点について、きちっと改めるという決意はありませんか。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 私どもといたしましては、捜査自体は適正な捜査をしておったと考えておりますし、また、その過程において第一当事者の方に多大な心労、迷惑をおかけしたということで、いろいろな場で意思表示をしておりますので、そういった形で対応しておるところでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 いろいろな場でした意思表示が、きちっと、これについては全くあらぬ疑いだったということで、もう完全に謝罪をしたというふうに御本人は受けとめていないというふうにこの段階では言っておられるわけですね。その次に、あるいは最近何かが行われたのであれば、その心情も変化しているはずなんですが、されていないのであれば、このままに放置しておいて捜査機関に対する国民の信頼が確保できるのかどうか。そういう自覚があっての答弁でしょうか、もう一度お願いします。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 今申し上げましたとおり、捜査については適正に行われておりますし、また、いろいろな場において申しわけない旨の対応をしておりますので、そういった形で今後も対応していきたいというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それではもう一回聞きますが、犯人扱いをしていないとこの時点で言っていたのは記者会見での勢いにすぎず、そういったことも含めて迷惑をかけたという認識、つまり、犯人扱いをしかけたということも迷惑をかけた理由の一つとして受けとめてよろしいですか。それとも、犯人扱いは一回もしていないのでしょうか。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 警察といたしましては、捜査は適正に行われたというふうに考えております。(保坂委員「犯人扱いはしなかったのですか」と呼ぶ)特にしたというふうには承知しておりません。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私たちは、組織的な犯罪あるいは薬物、銃器、社会を不安に陥れるような、そういった犯罪について強い態度で、あるいは、多々いろいろな手段を検討して議論に入ることに何ら疑問はありません。しかし、今のような、国民すべてが知っている、河野さんを犯人扱いしたことがないなんということを、これはどうでしょう、法務委員長、このまま国会の場で何らチェックなく通過させていっていいものでしょうか。委員長、どのように思われますか。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 委員長は答弁する資格がございませんので答弁できませんが、警察庁、この前御答弁いただいたのは、たしか奥村審議官がおいでになって御答弁いただいたと思うのですが、きょうは上級の人をお呼びしたのかどうか、私は委員部に聞いていないのでわかりませんが、警察庁の仕組みの中で、審議官は課長さんより上席ですわな。そのことだけは申し上げておきます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、もう一度確認します。河野さんを一回も警察は犯人扱いしていないということを、本日の法務委員会で警察の見解として確認してよろしいですか。これは大変なことですよ、こんなことを今言ったら。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 全くなかったかどうか、当時、私、捜査の現場に行った者ではございませんので承知しておりませんけれども、少なくとも捜査は適正に行われて対応してきたというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これは、物すごい、人の命と、それこそその後オウム真理教の悪夢のような事件につながっていった大事な事件なんで、はっきり答えてください。つまり、警察は一度なりとも河野さんを犯人扱いしたことがないというふうに言えるか言えないか。そういうふうに断言できる状況ではないと思いますから、そうならそうと率直に認めていただきたいと思います。そのことにきちっと答えてください。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 先ほど申しましたように、私、当時その現場に行った者でもございませんので、細部までは承知しておりませんけれども、捜査というものは適正に行われていったというふうに考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 そうすると、仮に犯人扱いをしたことがあったにしても、適正な捜査の範囲内だったということで理解してよろしいですね。

深草雅利警察庁刑事局捜査第一課長

○深草説明員 犯人扱いしたかどうかということは承知しておりませんけれども、何度も申しますように、捜査は適正に行われていたというふうに承知しております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 これは、本当に子供たちにも国会見学に来てほしいのですけれども、これは見せられませんよね。ちゃんと誠実に答えてほしいのですけれども、恐らくこういうことがこの問題をより複雑にさせて、この通信傍受、盗聴との違い、これは厳密には定義しづらいわけですね。  しかし、この大前提の議論は、捜査機関を我々は信用したい。信用したいわけです。本当に、多くの警察官が大変な状況の中で日々国民の暮らしを守っているという現実はよく存じています。しかし、そのトップあるいは組織の上部の方たちが明らかに犯したミスについて、これを認められない体質というのは、これは私どもからすれば物すごく怖いわけです。  刑事局長にお聞きします。  前回の法務委員会の議事録に残されているのですけれども、つまり、警察当局はあの事件以後それなりの努力をして二度とああいう事件を組織の中で起こさないということを明言しというふうに議事録にあるのですね。いつどこで明言されたのでしょうか。私どもは、その明言を聞きたいと思ってずっと質問をさせていただいているのですが、刑事局長はどこかで聞いておられるわけでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 いつ具体的にだれがというところではないのですが、私は前回、御指摘の委員とのやりとりの中で、警察当局はさまざまな機会に警察当局としてそれなりの努力をされて、二度とあのようなことは組織の中で起こさないということを明言して、そのことをいろいろな角度で実施してこられたと信じ、かつ信頼してまいりたいと思いますということを申し上げました。それは、いろいろな場面で警察当局が開陳しておられる意見また発言の中で、そのように私は感じたということを申し上げたかったわけでございます。  それで、そういうことについての私の感じ方でございましたので、いつどの言葉でどう言ったということについて、この場でつまびらかにすることができないことをお許しいただきたいのですけれども、この法案の作成、審議を用意していたさまざまな中で発言されたことから、私はそのように理解させていただきました。また、そういうことを信じ、捜査当局というものは、これからそういうことでやっていきたいということで気持ちを共有しているものと私は考えるのでございます。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 保坂委員に申し上げますが、これ以上、のれんに腕押しの形になるので、理事会で改めて協議をしたいと思いますので、そのことを踏まえて御質問ください。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それでは、理事会ということで委員長からお答えがあったので譲りますけれども、いろいろな場面で警察がそのことを明言されたのならば、ぜひその情報を、刑事局長、お示しいただいて、なるほどと、これならということで共有させていただきたいのですね。全く共有できないのですね、今の答弁では。ですから、ぜひそこをお願いしたいということを、後日、より一歩を踏み出していただきたいと思います。  伊藤検事総長が回想録を書かれて、有名な本ですけれども、おとぎ話という例え話に例えて、こんな文章があるのですね。   その国の警察は、清潔かつ能率的であるが、  指導者が若いせいか、大義のためには小事にこ  だわらぬといった空気がある。そんなことか  ら、警察の一部門で、治安維持の完全を期する  ために、法律に触れる手段を継続的にとってき  たが、ある日、これが検察に見付かり、検察は  捜査を開始した。   やがて、警察の末端実行部隊が判明した。こ  こで、この国の検察トップは考えた。末端部隊  による実行の裏には、警察のトップ以下の指示  ないし許可があるものと思われる。末端の者だ  けを処罰したのでは、正義に反する。さりと  て、これから指揮系統を次第に遡って、次々と  検挙してトップにまで至ろうとすれば、問題の  部門だけでなく、警察全体が抵抗するだろう。  その場合、検察は、警察に勝てるか。どうも必  ず勝てるとはいえなさそうだ。勝てたとして  も、双方に大きなしこりが残り、治安維持上  困った事態になるおそれがある。   それでは、警察のトップに説いてみよう。目  的のいかんを問わず、警察活動に違法な手段を  とることは、すべきでないと思わないか。どう  してもそういう手段をとる必要があるのなら、  それを可能にする法律をつくったらよかろう、  と。   結局、この国では、警察が、違法な手段は今  後一切とらないことを誓い、その保障手段も示  したところがら、事件は、一人の起訴者も出さ  ないで終わってしまった。検察のトップは、こ  れが国民のためにベストな別れであったといっ  ていたそうである。こういうおとぎ話。という記述があるのですが、法務大臣はどのようにお感じになりますか。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 伊藤栄樹さんは、私も昔からよう知っておる方でございましたけれども、亡くなられました。おやめになってからそういうようなことを書かれたことについて、それは現職の法務大臣がコメントする立場にございません。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 確かにおとぎ話というくくり方で書かれているのですが、その次に、おとぎ話を終えた後、   わが国でも、かりに警察や自衛隊というよう  な大きな実力部隊を持つ組織が組織的な犯罪を  犯したような場合に、検察は、これと対決し  て、犯罪処罰の目的を果たすことができるかど  うか、怪しいとしなければならない。そんなと  きにも、検察の力の限界が見えるであろう。という記述もあるのですが、じゃ、これは原田さんに伺いましょうか。どういうふうにお感じになりますでしょうか。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 伊藤元検事総長は、私のよく存じ上げている先輩でございますし、職を退かれてから、一つのまさにおとぎ話という形で、御本人の心境をそういう形で語られたということは、私も知っております。  しかし、現実に私どもが法務・検察の立場で警察当局と協力していく関係というものは、そのような考えを持つものではないと私は思います。警察当局も、これは私ども、検察も同じでございますが、やはり力及ばずして、あるいは場合によっては間違えることは、私はあると思います。しかし、そのことを乗り越えて、新しい時代に向けて協力し合う、そして、国民の皆様方の信頼を得るように努力したいというのが、私の偽らざる心境でございます。  今回、さまざまな紆余曲折を経て審議をお願いしております法案は、そういう形でも御批判に耐え得るものというふうに考えておりますが、しかしながら、やはり最終的に国民の皆様方の批判をいただきながら、そして、その十分なチェックをしていかなければならない内容である。また、仮に、この法案について御審議の結果、法律としていただきましても、その実施の段階での法執行に当たっては、常にそのような気持ちで私どもは努力してまいりたいと思いますし、関係する機関との間でもお互いに切磋琢磨して、努力してまいりたいというのが、私の偽らざる心境でございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 それでは、ちょっと周辺についてお聞きしますけれども、先日サミットがありましたね。そのサミットの中で、組織犯罪対策がテーマになったということでございますけれども、二点ほどこの件に関して伺いたいのですが、今回の通信傍受も含んだ三法案について、盗聴による捜査が必要であると各国から、例えば励まされたというようなことが、橋本総理に対してあったのかどうか。  もう一点は、その組織犯罪対策の議論の中で、サミット参加国の中には死刑廃止国が多いわけですね。日本は、死刑が必要であり、通常殺人刑の最高刑である死刑を組織犯罪対策のために新しい法案の中に盛り込んだというふうにしっかりこの場で説明をされたかどうか。  二点、ちょっと長くなりましたけれども、お答えいただきたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 今回のサミットにおきまして、ただいま御審議をいただいております三法案について具体的な説明までには至っていないと存じておりますが、これまでの数次のサミットと同様、今回のサミットにおきましても、国際犯罪対策が大変重要な課題として取り上げられて、この種の犯罪が市民及び社会に対する脅威となっているのみならず、さまざまな形での不法資金の投資、腐敗、制度の弱体化及び法の支配に対する信頼の喪失を通じて、社会の民主的、経済的な基盤を損ないかねない世界的な脅威になっているということ、そして、それらの脅威と闘うためには、国際的な協力が不可欠であるということが確認されたと聞いております。  その中で、犯罪収益の規制の強化や通信傍受等の電子的監視の活用に関するこれまでの合意を踏まえて、さらなる対策をとっていくことが基本的に合意される。そして、その中に、いわゆるFATFにおけるマネーロンダリング対策の活動も歓迎し、これを支持することとされたと承知しております。  なお、委員お尋ねの、死刑を最高刑とする法案を提出したことについても述べた上でのことであるかという点でございますが、この点につきましての殊さらな言及はなされていないと思います。  ただ、これは、今回の法案について、大変口幅ったいようで申しわけないのですけれども、今回の法案によって新たに死刑を科すこととした犯罪を盛り込んだということではない点、これはいわば死刑を法定刑として持っている犯罪につきましても、その下限についてそれなりの対応をしていただきたいということが盛り込まれているということですので、その点についての御理解をいただきたいと存じます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 先ほどから、どんな組織も過ちを犯す、そして、過ちを犯したときにこれを率直に認めて謝罪をすることが大切だと。本当に、言うはやすし行うは大変難しいことであるということは私自身よくわかります。謝った瞬間に次の責任問題が出てくる。そして、次から次へ問われる。そのことについて自分が担当者でいるうちはいわばやり過ごして、そして時を稼いでおこうということは多くの人が、あるいは役所の組織の中でも、多くの方がそういうパターンにはまるんだと思うのですね。  しかし、先ほどの松本サリン事件のやりとりの話、あるいは緒方宅の話もそうですけれども、裁判所が判決を出したり、あるいは河野さんが犯人扱いされたかどうか、世間の一般の常識になっていることすらもなかなかお認めいただけないという中で、これは本当にゆゆしい問題と思います。  そして、組織犯罪対策がまさに法秩序の維持、社会的に安心して暮らせて、そして平穏に過ごせる社会をいわば防衛するためにこれは立法しようとされている、言われている説明の趣旨はそういうことでありますから。  そうであるとすれば、ちょっと問題を離れるように思えるかもしれませんけれども、先般、この委員会で触れさせていただいた東京・世田谷区の八歳の小学生が、学校に向かう道路を横断するときにダンプカーに巻き込まれて、左後輪で頭部をひかれてほぼ即死状態で、悲惨な形で亡くなった。被害者の親は、とてももう二度と直視できない、顔は見えなかった、こういう悲惨な事故がございました。そして、十二月十八日本起訴処分になったわけです。  前回の委員会で確認させていただいたところ、刑事局長もそして法務大臣も、この問題、幾つかの問題がありますけれども、実は簡単な入り口の問題として、一月二十三日に、この被害者のお父さんが検察庁を訪れて、どうなっていますかというふうに尋ねたところに今ちょっと絞って議論をさせていただきたいと思います。  尋ねたところです。尋ねましたら、この案件を引き継いだ検事の方が、事前の準備というのはさほどされていなかったようだと。いろいろ申しますのは、私、被害者のお宅を訪ねて、一時間半ほどいろいろお話を聞いてきました。そこで聞いたのですが、引き継いだ方はよく知らないようだったと。そして、別のところに案内をされて、出てこられた方、これは不起訴ですよという結果はいただいた。しかし、いろいろ説明を求めたいわけです。どうして不起訴なのですか、何がどのように判断されたのですか。教える義務というのはないのですよということの一点張りだった。大部屋だったので、周りにいろいろな人がいたけれども、だれも助けてくれなかった。そして、では、私たちはどうすればいいのですかと。息子を亡くして、真相はわからない。お母さんは、悪い人はだれもいないと言うんですと、涙ぐんでおられますけれども、どうずればいいのですかというときに、検察審査会のパンフレットのコピーをぱっと渡された、こういう経過。  この窓口対応はやはり適切ではなかったというふうに、私の記憶によれば、刑事局長も大臣も恐らくお答えになったのだと思いますけれども、それでは、どういう窓口対応があるべきだったのか。こうした事案の場合に、どのように対応するのが正しいあり方だったのかということについて、刑事局長にお答えをいただきたいと思います。

原田明夫法務省刑事局長

○原田(明)政府委員 私は、前回と申しますか、御指摘のように、委員のお尋ねに対しまして、結論的に申し上げまして、御遺族の方にそのようなお気持ちをさせたということに対しては、大変申しわけなかったという気持ちを持ってお答え申し上げたことを今も覚えております。  そして、現実問題といたしまして、検察官が不起訴処分をした事件について、被害者あるいはその遺族の方々を含めて、関係者にどういう説明をし、どういう通知をしていったらいいのかということについては、これもその際お答え申し上げましたように、広い意味での被害者一般に対する対策ということで、真剣に現在検討されている中での一つの重要な柱と考えられているところでございます。  この問題につきましては、私は、最終的に検察官が事件について捜査を遂げて起訴にするか不起訴にするかということを決めるわけでございますから、それについて関心のある方に、できるだけの誠意を持って説明することが求められているというふうな場面が多かろうと思います。そういうときに、どういう手続でもって、そしてどういう形でやった方がいいかということについて、既に検察においてもある程度制度化してやっているところもあるようでございます。  そういう経験を踏まえて、できるだけ早期に、いわばマニュアル的にできるものならば、最低こういうことをやった上で御理解を得るための努力をするということがいいという、一つのガイドライン的なものが何らかの形でできればいいのではないかというふうに考えているわけでございます。  私自身も、犯罪捜査に携わったことがございますが、やはり被害に遭った方、その関係の方々がどういう気持ちを持っているかということを常に考えていくというのが、刑事司法に携わる者、特に捜査に携わる者の基本的な心構えの重要な部分というふうに考えておりますので、それをどのようにあらわしていくかという問題であろうと考えます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 この件についても、ちょっと警察の方にも伺いたいのですが、現場では極めて一生懸命調べが行われた。そして、御両親もあの手この手で手を尽くして、目撃者、証人等を捜したというふうに聞きました。  そこでなのですが、十二月十八日に不起訴になったという連絡は、この事件は東京・世田谷ですから成城署だと思うのですが、その警察の方に、不起訴処分になったという連絡はきょう現在入っているのでしょうか。いかがですか。

渡邉晃警察庁交通局交通指導課長

○渡邉説明員 不起訴処分になった旨の連絡を受けております。(保坂委員「いつでしょうか」と呼ぶ)時期につきましては、現在調査中ということでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 もう一つ伺います。  捜査、個別具体的なことについて答弁できないということをよく言われまずけれども、基本的、原則的なことで、一点、お話を伺っていて、あれというふうに思ったことがあるのです。  ダンプカー、大きな車体でございますね。これが小学生をひいてしまったときに、運転手が気がつかないわけがないというプロドライバーの指摘もあるわけです。これは、現場でいわばダミーをつくって、これにどの程度のショックがあるのか、あるいは体感できるのかどうかという一種のテスト、これを行ったというふうに聞いております。  問題は、警察がそういった見分というかテストをするときに、例えば、子供をひいてしまったダンプカーの運転手を雇用していた事業主がテストドライバーになるなんというケースはあるのでしょうか。第三者的な、客観的公平な人が体感したのかどうか。子供をひいてしまったかどうかということの感触があるのかどうかを確かめるのが相当だと思いますけれども、加害者の側の雇用主というのは直接利害関係を濃厚に持つ方だと思うのですが、そういう場合は一般的に言ってあるのかどうか、あるいは原則的にはないのか、その辺をちょっとお伺いします。

渡邉晃警察庁交通局交通指導課長

○渡邉説明員 一般的に申し上げまして、実況見分の立会人につきましては、当該実況見分の目的であるとか、あるいは見分の方法、そういった個別具体的な事情を考慮して判断をしているというふうに私どもは承知をいたしております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 ちょっと、もう少し言葉をいただきたいのですけれども。適切にということは、具体的に言うと、これは個別具体的な事件ではなくて、いっぱいありますよね、こういう交通事故のケースというときに、例えば貨物自動車あるいはダンプカーの運転手が加害者だという場合に、その会社の社長がハンドルを握ってショックがあったとかなかったとかという証言をするということは、客観的公平たり得ないと指摘できるわけですよね。そういうことは原則的にやらないようにしているのか。しかし、場合によってはそういうことも起こり得るのか、そこを聞いているのです。そこをきちっと答えてください。

渡邉晃警察庁交通局交通指導課長

○渡邉説明員 これは、あくまでも個別具体的な事件の事情に応じて警察が判断をしている、こういうことでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、法務大臣に、大変長い質疑でお疲れだと思います。もうきょうの部はそろそろ最後に近づきましたけれども、今の交通事故の件、確かに、事件全体をたどっていくといろいろ難しいこともあるのだと思います。現在進行形で、検察審査会というところに移っているという問題もありましょう。  しかし、大臣にぜひ受けとめていただきたいのは、私も体験者でありますけれども、交通事故の被害に遭って、大変な入院生活を過ごしたり、あるいは障害を負ったり、そして愛する子供や妻を亡くしたりという方はもう身近に、恐らく大臣の身近にもいらっしゃるのではないでしょうか。私の身近にもおります。そういう皆さんが、この事件について非常に怒りを感じているのですね。もしこんな事態を放置したら、もう道路を歩けなくなる。つまり、人一人の命というのはこんなに軽くていいのかということの一つの問題を絞りますと、窓口対応だというふうに思うのですね。  要するに、遺族がどうなりましたかというふうに来たときに、教える必要はないですよというふうに言われ、そして検察審査会のコピーを渡されるというような対応について、やはり大臣として、これは一般的なガイドライン、それから全国的にこういうことがこれからないようにという指示をされたことを大変ありがたく私は受けとめました。本当にスピーディーに取り組まれたと思います。  しかし、この方たち自身に対して、そこの不適切な点の部分を大臣みずからが、やはり政治家としてきちっと対応していただくということをぜひお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 前のこの委員会でも御質問がございまして、私の気持ちは申し上げたつもりでございますが、整理して申し上げますと、本件につきましては問題は二つあると申し上げました。  一つは、交通事故の事実関係の解明という問題。実際、本当のところどうだったのだろうかというふうなことで、それで、検察庁が不起訴処分にして、検察審査会にかかっている。だから、この問題はそちらの方で整理されるものだと思いますし、このこと自身についても私は大変な関心を持っておる一人でございます。  それから、具体的な事件の、それに関連する御遺族の方々に対する対応の問題ですね。これは、正直申し上げまして大変よくなかったなということをつくづく思うわけでございます。  御承知のとおりに、年間、交通事故で亡くなる方が今一万人になるかならぬかということで、警察を初め関係者が一生懸命努力しておりますし、負傷なさる方はその何十倍です。本当に一瞬のりちに自分の肉親、特に愛する子供を亡くされた方の御心情のことを思いますと、本当にこれはもう筆舌に尽くせぬものがあるだろうということもよくわかります。  私どもも、私どもの対応もそういうふうな被害者の方々の目線でというようなことをこの前申し上げましたが、やはりそういうふうな立場で、それは検察行政に限らずいろいろな行政をやっていくというのが私は基本でなければならないと思いますし、今お話しのような処遇であったということは、それはまことに申しわけない、我々としては大変遺憾だという気持ちがいたします。  だから、亡くなられた方の御冥福を祈りたいのですが、そういうふうなことを単なる一つの事件とするのではなくて、ひとつこういうふうな事件を契機にして、全国的に我々の対応なりなんなりというものをこの際もう一遍再確認して是正しようではないかというふうな立場から、先般、事務的にも指示したようなことでございますし、具体的にそういうようなものが進むわけでございます。  このような我々の対応というものは、本当に是正しなくてはならぬところがたくさんあるのではないか、こういうような感じがいたします。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 極めて明快な御答弁で本当にいらいらすることがないので、前半の、紙を読まれるような役所に対して、やはり政治家として大臣が今、被害者感情、被害者の目線で率直にいろいろミスがあったということをお認めになったのは、大変明快な答弁だと思います。そして、全国にそういう指示を出されたということも、これは極めてよいことだと思います。  ただ、この署名の集まり方というのが物すごい量なんですね。これは、何か、私鉄のある駅で一日やっていたら一万人近く集まった。これはちょっと異常な集まり方です。それは、やはり国民の多くの方が、その事故処理、あるいはその後の起訴、不起訴の経緯について同様の体験あるいは疑念、あるいはいろいろな固有の言い尽くせぬ思いを持っておられる方が多数いるというふうに推測できるわけです。  したがって、大臣がもし、今のお気持ちを率直に、御遺族の方にお会いする機会があればお伝えいただくことができるかどうか、その点はいかがでしょうか。そのことが大きく、交通事故の減少とドライバーのマナーの問題も含めてもう一回日本の交通行政、これだけふえ続ける死者に対して、その一人一人の命の尊厳を大切にするという大事な折り返し点になるというふうに思うのですが、いかがでしょう。  質問の趣旨は、一般的に今、委員会でもう大臣のお気持ちはよくわかるわけなんですね。けれども、被害者の御遺族に直接、もし機会があればそのお気持ちを伝えていただくことができるかどうかというふうにお聞きしたわけなんです。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 先ほど二つ申し上げましたが、私としては、前の段階の事実関係の解明、この辺がちょっとすっきりしないところがあると思うのです。その辺のところも踏まえまして、今委員御指摘のような面も踏まえて考えさせていただきたい、このように思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 もちろんこの事実関係、事実認定にまつわるところはもう御存じだと思いますけれども、いろいろ検証するのが大変だと思います。前回の答弁でもそこを、そこはともかくとは言えませんけれども、そこも問題は大きくあるのです、あるのですけれども、まず入り口として、こういう対応はもうしませんよということを端的に示していただく意味で、そういう被害者の方にもしそういう機会があればその意思を表明していただきたいという意味なんです。ちょっとしつこいようですが、もう一度お願いします。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 十分検討させていただきます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 きょうは組織的犯罪対策について、私の論旨としては、まず信頼できる捜査機関、これがきっちり国民の間に信頼を確立されなければならない。その確立が前提となってこの法案の審議があるわけです。  しかし残念ながら、私はきょう、松本サリン事件について、河野さんの犯人扱い云々についてはもう当然これは謝罪の言葉があってしかるべきものというふうに思っていました。盗聴事件については、なかなか、前回のやりとりから、往復が続くなという覚悟はしておりましたけれども、どうも一回も間違いは踏んでいないという体質が強過ぎるのではないか。もっと率直に、タイムリーに謝罪をしてこそ尊敬の念、信頼もから得るというふうに総括して、そういう趣旨でずっとお聞きしてきましたが、その全体を振り返って、大臣にもう一言お願いしたいと思います。

下稲葉耕吉自由民主党法務大臣

○下稲葉国務大臣 これは、回答になるかどうかわかりませんが、私もかつて現場の捜査一課長をやり、警察庁の捜査一課長をやったこともございます。  当たらないかもしれませんけれども、重大事件の捜査につきましては、大勢の人を投入しましていろいろ捜査をやるわけですね。そうすると、何十人、何百人の中から犯人に到達すべく捜査を続けていって、一日に何十人になるときもありますし、ふるいをかけていく。そしてだんだん絞られてくる。そして最後の段階で真犯人に到達するというのが、これが通常の捜査方式でございます。最初から証拠でぴしっとか、あるいは指紋でぴしっとかいく場合もありますけれども、一般的に言うとそういうような段階だと思います。  そういうふうな過程の中で、それは、河野さんでございますか、今問題の方の名前も出てきていたのではなかろうかなと。ということは、それは周辺にもおられますし、いろいろなことも、当時私はマスコミしか知りませんけれども、というようなことであった。しかし、結論的には逮捕状を請求するところまでいかなかったということは事実だろうと思います。  そして、そのような過程の中で、これは大変人権に配慮しなければならないことも重要でございますし、片や、報道は報道で、事柄が重大であればあるだけに、いろいろな角度から独自の取材をされ、また報道されるというふうなこともあると思うんです。  ですから、そういうふうな中で、片や今警察庁の御主張を聞いておりますと、それはその辺の説明は全然なかったわけですから、私どもの常識からいいますと、そういうようなことで。それで、最終的にそれは犯人だとわかれば、当然逮捕状をとって、そして後で誤認逮捕だ何だかんだ言われたことだって、事件にすれば、かってないわけじゃないんですから、そういうふうなものもある。しかし、そこまでいかなくて、逮捕状の請求までいかない過程の中でサリン事件というふうなものが出てきたんじゃないかなというふうな感じもいたしますし、というふうなことで、一本筋ですっと捜査がいけば非常に簡単なんですけれども、そういうふうな側面も私はあるんじゃなかろうかと。しかし、それはそれとして、やはりそれは国民に信頼される警察でなければ、本当の国民の協力も得られないわけですし、それは実績も上がるはずはないんです。  ですから、いつも申し上げますとおりに、それはやはり国民の方々の御協力をいただけねば聞き込み一つできないわけですから、そういうふうな信頼のない警察ではこれはだめなので、ですから、今いろいろ委員御指摘されておりますが、神奈川の問題にいたしましても、それから長野の問題にいたしましても、やはり警察としては厳粛に受けとめてやっていることだと私は確信いたしますし、そして、なおかつ厳しい犯罪情勢の中でございますので、私どもとしては、どうしてもこの法案をひとつお願いしたいというのが偽らざる本当の気持ちでございます。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私の質疑の合間に委員長は、この点についてはもう往復、繰り返しになってしまうので、理事会でというふうに御助言いただいたことを非常にありがたく思います。そして、ぜひ、時間をいたずらに費やすのではなくて、率直に事実は認めて、認めたことから、わびるべき点があれば、それは早く率直に出していただいてということを求めて、私のきょうの質疑をおしまいにいたします。

笹川堯自由民主党

○笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会

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