農林水産委員会 第16号
- 発言数
- 109 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1998/05/07
会議録
○北村委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、種苗法案を議題といたします。 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋大吉君。
○石橋(大)委員 おはようございます。 きょうの法案の中身は、かなり専門的な、技術的な細部にわたる話でありますので、余り大臣にお出かけをいただくようなことは考えておりませんでしたが、せっかく大臣がお出かけになっていますから、最初に一言だけ大臣に質問をしておきたいと思うのです。 まず、この制度、昭和二十二年に農産種苗法が制定されまして、五十三年には種苗法と名実ともに充実されてから二十年の実績を持っているわけです。そういう意味で、この制度が種苗の流通の適正化、品質の育成等にどのような効果を上げ、また農林水産業の発展にどのように寄与してきたのか。また、今回の法改正において、UPOV条約の批准など国際的な情勢も踏まえて植物品種登録制度について抜本的な見直しを行い、国際的調和が図られる内容となるものとされていますが、今次改正は種苗業者、生産業者等にどのような面で効果が期待されているものか、大臣にお伺いします。
○島村国務大臣 お答え申し上げます。 今回の改正案は、植物の新品種の育成権の強化を主な内容とするものでありますが、これを通じて育種の振興が図られ、優良な新品種がこれまで以上に多数育成され、それによって農林水産業の発展に大きく寄与することを期待しているところであります。 すなわち、育成者にとりましては適正に権利が保護されることになりますし、それゆえに研究投資等が安心して行うことができ、かつ育種活動が一層活発に行われることになるだろう、こう予測されるところでありますし、また育種の振興によりまして、農業者にとっては優良な種苗が生産者に多数供給されるようになることから、農林水産業の発展に寄与すること、これまた大きく期待されるところであります。 また、国際的には、先進国においては既にこれらに対してのいろいろな配慮がなされているところでありまして、我が国もこれに伍していわば国際的な水準を確保していくという意味合いでもこれは大変に意義のあることだ、こう考えておるところであります。
○石橋(大)委員 これから後は細かい話になりまして、かなり多岐にわたりますので、できるだけ私も簡単に質問したいと思っていますが、答弁の方もひとつ簡単にお願いしたいと思うのです。 次に、保護対象植物の拡大について二、三伺いますが、現行法においては、品種登録制度の保護対象は「農産物、林産物及び水産物の生産のために栽培される植物で政令で定めるもの」とされており、平成九年現在、保護対象植物の数は四百六十七種類となっているようであります。これまで保護対象植物について政令で定めることとなっていたが、すべての農林水産物とせず限定していたのは何か合理的な理由があったのかどうか、これが一つ。 それから、今回、保護対象植物としてすべての植物が取り込まれることはどのようなメリットがあるのか。また、国際的な種苗の流通が一層増加することが見込まれる中で、対象が拡大されることはどのような効果をもたらすのか、これが二つ目。 三つ目に、今回の改正では農林水産物をかなり詳細に分類定義しているが、法文中「その他政令で定める植物」はどのようなものを想定しているか、また、それに限って政令にゆだねたのはどのような理由によるものか、これらの点についてお答えをいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 まず第一点の、これまでに政令で指定してきた理由はどういう理由かということでございますが、これは、従来我が国で育種、栽培される植物の範囲というものは余り変化していなかったわけでございます。したがいまして、限定列挙方式でも問題は生じないというふうに考えられたというのが第一点でございます。 それから、この現行種苗法の前身である農産種苗法におきましても、対象植物は農林水産大臣の指定するものに限定していたという経過があるということが第二点でございます。 それから三点目に、UPOV条約におきまして、七八年条約というものが現行種苗法のよりどころになった条約でございますが、この条約におきましては、保護対象植物は二十四種類以上の植物ということで、全植物を対象にするということが求められていなかったという三点の理由がございます。 そういうことから、対象となる植物の範囲を明確にする方式といたしまして、政令で指定する方式というものが適切であるというふうに考えられたというのが経過でございます。 次に、今回の改正ですべての植物を保護対象植物とするということのメリット、あるいは効果というものが何かというお尋ねでございます。 今回の対象植物の拡大によりまして、これまで保護の対象となっていなかった植物はもちろんでございますが、それに加えまして、種間の雑種あるいは属間の雑種というふうに、指定ということが技術的にも非常に難しいものにつきましても品種の育成が進む、指定ということを要せずに対象になるということで、品種の育成が進むということが期待されます。 それからもう一つは、海外で育成された植物品種で我が国では対象となっていなかったもの、これが保護の対象から外れていたわけですけれども、これが保護の対象になるということによりまして、海外からの植物新品種の導入が容易になるという効果が期待できるというふうに考えております。これが大きなお尋ねの二番目でございます。 それから、今回、シダ類、センタイ類、多細胞の藻類以外の植物については政令で指定するという法案になってございますが、どういうものか、こういうことでございますが、政令の指定を予定しておりますものは、栽培されるキノコを想定いたしております。 これを政令で定めるものに限って品種登録の対象にするという理由につきましては、植物の範囲につきまして実は諸説がありまして、限界のところになりますと、それが植物であるのかないのかということについて議論のあるものがございます。それにつきまして、その対象植物の外縁部といいますか、その範囲がどこかということを明確にしておきませんと、品種登録の対象になるのかならないのかという限界点では混乱を生じかねないという問題がございます。 それから、微生物が予定をしておるものでございますが、保護の対象とするか否かというものが九一年条約上、各国の裁量に任された事項になっております。 こういうことを総合的に勘案いたしまして、政令で指定をするということにした案をつくったわけでございます。
○石橋(大)委員 次に、重要な形質の取り扱い等についてちょっと伺いますが、まず一つは、審査に至る手順についてであります。 現行種苗法においては保護対象植物は政令で指定されていたが、改正種苗法ではすべての農林水産植物が保護対象とされると。これに伴いまして、形質の決定に当たっても新たな対応が求められることになるが、区分ごとの形質設定に当たっては基本的考え方はどうなるのか。それから、形質の設定に当たっては、従来、その重要性にかんがみまして農業資材審議会の意見を聞いて行われてきたようでありますが、現行制度下における農業資材審議会の構成と運営がどうなっており、それが新制度のもとにおいてはどういうふうに変わっていくのか、この点についてお伺いいたします。
○高木(賢)政府委員 まず第一点の、区分ごとの形質決定に当たっての基本的考え方でございます。 御指摘のありましたように、現行法におきましては、重要な形質につきまして、まず保護対象植物が政令で指定されるということでございますから、その後、その植物につきまして重要な形質を決定する、こういう順序で行われてまいりました。これに対しまして、改正種苗法では、すべての農林水産植物が保護対象となるということでございますから、事前指定という手順がなくなるわけでございます。 したがいまして、従来保護対象とされていなかった新規の植物種につきましては、食用植物とか果樹とか野菜とか、こういう十数種類の大ぐくりをいたしました植物のグループごとにいわば包括的な重要な形質を定めて、これに基づいて審査基準を作成することにしております。しかしながら、かかる方式では審査基準の策定並びに当該基準に基づく審査実施上に問題があると考えられる植物種のときには、審議会の意見を聞いて区分を分割して別途重要な形質を定めるということにいたしております。 その審議会が、実はお尋ねのありました農業資材審議会の種苗部会というものを予定してございます。この種苗部会は、現在、作物ごとの専門家、それから農業団体代表、種苗団体代表、さらには知的所有権に関する有識者など、品種登録に関する幅広い関係者から構成されております。それぞれのお立場から、重要な形質の設定を初めといたしまして、品種登録制度全般についての御意見をいただいております。この審議会につきましては、今回の改正後も基本的にその構成を変える考えはありませんし、その役割をむしろ適正に果たしていただきたいというふうに考えております。 しかしながら、今後、日本で栽培実績のない新規植物などについて重要な形質を定めるというような必要が出てまいります。今のメンバーでそれができるかどうかということになりますので、専門家の知見が必要な場合には、専門委員というものを任命できる制度がありますので、専門委員としてその知見を求めるということなどを活用いたしまして、より適切な審議会運営になるように努めてまいりたいと考えております。
○石橋(大)委員 続いて、新規植物に係る種類別審査基準の策定についてお尋ねをします。 今回、保護対象植物が拡大されることになることなどもありまして、出願される植物の種類は相当程度拡大することが考えられるわけです。従来の審査方式では出願されるすべての植物種に対応することは困難であると思いますが、迅速な審査のため、どのような審査基準作成の方式の採用を考えておられるのか、また、その方式によってどの程度の効率化が図られると考えておられるのか、この点をお伺いします。
○高木(賢)政府委員 御指摘のように、改正種苗法のもとにおきましては出願植物種類は相当拡大するというふうに見込まれます。その中には、我が国では栽培実績の極めて少ない種類であるとか、あるいは栽培条件とか特性についてのデータがほとんどない、こういったものも想定されるわけでございます。 したがいまして、審査基準の作成につきましては、これまでのところは、農林水産省から委託を受けました都道府県の試験研究機関が栽培試験を行いまして、その結果に基づいて、約二年をかけまして種類別の審査基準を策定してきているというのが実情でございます。 しかしながら、御指摘がありましたように、これまでの方式だけでは出願されるすべての植物種に対応することは困難というふうに考えられます。そこで、従来からの委託方式、これは活用するということでありますけれども、これに加えまして、国の機関であります種苗管理センター、これがより効率的な種類別の審査基準の策定をするという方式も採用いたしまして、審査の迅速化を図るということを考えております。 具体的に申し上げますと、種苗管理センターにおきまして、外国の審査機関の審査基準がどうなっているかという情報を集める、それから、出願者からの提供データを求める、さらには、各種の文献をもとにするということに加えまして、必要に応じて現地調査や栽培試験というものも取り入れまして、こういうことによって効率的に審査基準をつくっていきたいというふうに考えております。 なお、こういう方式を取り入れることにつきましては、去る一月に開催されました農業資材審議会におきましても、委員の方から御賛同をいただいておりまして、この方向でやれという旨の御指摘を得ているところでございます。
○石橋(大)委員 次に、品種育成者の権利の強化に関連をして幾つかお尋ねをしたいと思いますが、まず一つは、権利の明確化について。 今回の法改正によりまして、登録品種の育成者の権利を育成者権として他の知的所有権と同様に位置づけることになったわけであります。しかしながら、種苗法の場合、対象とするものは農林水産植物のすべてであり、それはまた農林水産業の振興と密接に関係しておるわけでありまして、育成者の権利と農林水産業者の利益の均衡を図ることが極めて重要になってくるわけであります。 このような観点から、以下の点についてどう考えておられるか、ただしておきたいと思いますが、一つは、新たに位置づけられた育成者権についての基本的な考え方。二つ目に、品種育成者と農業者の利益の調和をどのようにして図っていくのか。三つ目には、今回の法改正による育成者権と従来の品種登録の効力として認められている内容との違いはどこにあるか。また、従来と比べて育成者の権利はどの程度強化されるものか。 まず一つは、以上の点について伺っておきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 まず、第一点の育成者権についての基本的な考え方ということでございます。 育成者権は、品種という知的行為の成果物をつくり上げた育成者に一定の独占的な権利を与えまして、そのことによって育種者の育種意欲というものを喚起する、それを通じて育種を振興して、すぐれた農産物の生産などの農林漁業生産の発展を図ろうとするものでございます。 特に、近年、バイオテクノロジーの発展につきまして目覚ましいものがありますことは御案内のとおりでございます。種苗の大量増殖技術であるとか、育種技術であるとか、こういうものが大幅に進展をしております。加えて、種苗の国際流通の進展が見られる、こういう状況でございます。こういう状況の中で、育成者の権利をより適切に保護する必要性が高まっているというふうに認識しておりまして、これを受けまして、改正法案におきましては、育成者の権利を育成者権として明確化する、そして権利の強化を図るということをまず基本的な考え方の第一点にしてございます。 もう一点は、特許などの工業所有権における取り扱いと同様に専用利用権や質権の設定ができるということにすると同時に、権利侵害に対しましては、育成者権者がとり得る対抗措置の充実を図るということをしております。これが育成者権についての基本的な考え方でございます。 これにつきまして、育成者権者が強くなるのではないか、そうすると農業者との利益の調和がどのように図られるのかということでございますが、そもそも品種登録制度は、育成者の権利を保護して育種者の意欲を喚起するということによってすぐれた農産物の生産など農業生産の発展につなげよう、こういうものでございますから、基本的には、品種登録制度の充実ということは農業者の利益にもつながるというふうに考えております。 加えまして、育成者権の保護に当たりましても、これをやみくもに保護するということではなくて、我が国でこれまで行われてきた農業生産の実態に十分配慮いたしまして、まず一つには、農業者の自家増殖でございますが、一定の条件のもとで育成者権が及ばないということにいたしまして、育成者の許諾なしで自家増殖が行い得るということを明確化しているとともに、収穫物に権利が及ぶ場合につきましては種苗段階で権利行使する機会がなかった場合に限定しておりまして、権利者から適正に種苗を入手さえしていれば、生産段階で生産者に問題がないというようにしているところでございます。 こういうことで、農業生産面に混乱が生じないように、調和の措置をとっているところでございます。 それから今回、従来とどのように権利が変わるのかということでございます。 基本的には、先ほど申し上げましたように、従来、品種登録者の地位という形であったのに対して、今回は、はっきり育成者権ということで権利として明確化すると同時に、他の知的所有権に倣った規定の整備を行うということにいたしております。 具体的な権利内容について申し上げますと、現行種苗法におきましては、品種登録の効力が基本的に販売などの種苗の有償譲渡行為と有償譲渡目的の種苗の生産などに限られていたものを、今回は大幅に拡大をしております。 幾つかございますが、第一点が、種苗の有償譲渡のほか、生産、輸出入等にも権利が及ぶこととしていることでございます。 それから二番目には、種苗の段階で権利を行使する適当な機会がない場合には、収穫物に関する行為にも権利が及ぶとするというのが第二点でございます。 それから三点目は、登録品種のわずかな特性のみを変更させた品種、これを従属品種というふうに呼んでおりますが、この品種にも、もとの品種登録をした人の権利が及ぶということにしているというのが三点目でございます。 それから四点目は、育成者権の有効期間、現行十五年、永年性植物では十八年ということでございますが、これを二十年、永年性植物では二十五年というふうに延長することにしていることでございます。 それから五番目には、出願から登録までの間の品種の利用行為につきまして、登録後、補償金の請求ができるというようにする、いわゆる仮保護の制度を採用しているという点が権利の内容の拡大の主な点でございます。
○石橋(大)委員 次に、今育成者権の有効期間の延長についていろいろお答えがありましたが、この期間が延長されるということは、同時に、利用者である農林漁業者の利益、あるいは利用の機会を長期化する、こういうことにもなるわけですから、この辺の調和というか、均衡点をどこに求めるか、こういうことについて端的にお答えをいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 育成者権の存続期間、現行十五年を二十年、永年性植物について十八年を二十五年とする法案の内容になってございます。これは、各国における育成者権の存続期間が、大半の国におきまして二十年あるいは二十五年というものを採用しているという点が第一点でございます。それから、我が国におきますほかの知的所有権、例えば特許について見ますと、出願後二十年というふうになっております。こういういわゆる横並びが一つございます。 それから、何よりも関係者の意向ということでございまして、農業団体や育種業界の意向をいろいろ我々も聞いてみたわけでございますが、農業者サイドからは、今度の九一年条約では、最低期間二十年ということでございます。それでよろしいという意向であると同時に、育種業界の方も、もっと長くしろという御意見はございませんで、現在提出しております案の年数が関係者の合意であるというふうに思っております。
○石橋(大)委員 次に、育成者の許諾が必要な行為の範囲の拡大についてですが、種苗のほかに収穫物についても権利が及ぶものとしているが、この収穫物についての権利とは具体的にどのような行為を想定されているのか。また、権利侵害が行われた場合には、種苗や収穫物の廃棄や差しとめができることとなっているようでありますが、輸入農林水産植物の差しとめ請求は輸入時のみならず流適時にも可能かどうか、この点についてお尋ねをしておきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 収穫物に権利が及ぶのはどのような場合かということでございますが、基本的には、収穫物に権利が及ぶのは種苗の段階で権利を行使する適当な機会がなかった場合ということになっております。 では、どういう場合かというのを典型的な例を申し上げますと、登録品種の種苗が外国で権利者の許諾なしに用いられる。その収穫物が生産されまして、それが日本に輸入された場合というのが、いわば収穫物について権利が及ぶ場合の典型的な例でございます。 また、もう一つは、日本国内で、ひそかに登録品種の種苗が権利者の許諾なしに、いわば違法に生産されまして、それが販売された、そういう種苗を使って生産が行われ、収穫物が市場に出回ったという場合で、種苗の段階では権利侵害したということが不明確であった場合、こういう場合が収穫物について育成者権が及ぶ典型的な場合であるというふうに考えております。 それから、二番目のお尋ねの輸入農林水産植物の差しとめ請求が流適時にも可能であるかどうかということでございますが、権利者の許諾を受けずに輸入された登録品種の収穫物が国内で流通している場合、これは収穫物の譲渡という概念の中に入りますので、育成者権の効力が及びます。したがいまして、法案三十三条差しとめ請求というのがございますが、その三十三条の規定に基づきまして、権利者は流通段階におきましても差しとめの請求をすることができるというふうに考えております。
○石橋(大)委員 次に、これもちょっと説明がありましたが、仮保護制度の導入に関連をしてお伺いします。 今回の法改正によりまして、登録以降の育成者に対する権利保護だけでなくて、出願公表から品種登録までの間に仮保護を認めることとなっているが、それによってどのようなメリットを想定しているのか。また、仮保護制度導入の趣旨が十分生かされるためには、どのような品種が出願されているか、利用者に十分認識されていることが極めて重要であります。出願公表制度の運営に際し、出願品種の内容を周知するため、どのような手段、方法を講じようとされているのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 品種登録の出願から登録までというのは、現実にはかなりの時間を必要といたします。それは、栽培してみて、その植物に区別性とか均一性とか安定性という新品種登録の要件を備えているかどうかということを審査する必要があるからでございます。 この審査期間中に、特に出願品種などの種苗を育成者以外の人が大量に増殖して販売してしまう、こういうことも、現在の技術の発展の中からは十分可能になっております。特に、草花など商品サイクルの短い植物につきましては、出願後の短期間で種苗が大量に増殖されまして品種が普及してしまいますと、育成者は何ら権利を行使できない、育種コストの回収もできない、こういうことが懸念されるわけでございます。したがいまして、出願公表から登録までの間にも何らかの保護というものがあることが、品種を開発する人にとってのメリットというふうに考えられます。 そこで、今回、改正UPOV条約も踏まえまして、出願公表から登録までの間の出願品種などの種苗の増殖、こういった利用行為につきましては、書面による警告を要件とした上で、登録後に補償金を請求することができる、こういう仮保護の制度を導入しているわけでございます。これによりまして、出願から登録までの間につきましても、育成者の権利が適正に保護されるということでございますから、育種をする人の意欲の喚起、こういうものに資するのではないか、ひいては育種の振興に資するのではないかというふうに考えております。 そういった出願公表の制度はまことに重要でございますから、その内容が広く知れ渡らなければならないということは全く御指摘のとおりだと存じます。 それで、この出願公表と申しますのは官報に告示をいたします。中身は、出願者の氏名、住所、農林水産植物の種類、品種名などというものを告示するわけでございますが、単に官報任せということではなくて、それに加えまして、品種に関する情報につきましては、印刷物を作成いたしまして関係機関とか団体へ配布を行うほか、インターネットによっても提供いたしまして、利用者に広く周知を図る、こういうことが必要であると考えておりまして、これを実行していきたいと思っております。なお、出願品種の写真につきましても印刷物やインターネットで提供を行うという方向で検討しております。 こういったことで、出願品種に関する情報提供の充実に努めていきたいと考えております。
○石橋(大)委員 次に、農家の自家増殖等についてお尋ねをいたします。 現行法において農家の自家増殖については育成者の権利の効力が及ばない、こうなっていたわけですが、改正条約においては育成者権の効力が及ぶとされているわけであります。ただし、自己の経営地で栽培した収穫物を自己の経営地で繁殖の目的で使用することができるよう、育成者権の制限をしている。すなわち、各国は農家の自家増殖について特例規定を設けることができることとなっている。 本法案においては、これを受けて、「農業を営む者で政令で定めるもの」については育成者権を制限した。農家の自家増殖は従来から行われてきた慣行であることからすれば当然のことと考えますが、この「政令で定めるもの」の範囲は具体的にど ういうことになるのかということが一つ。 もう一つは、今回の法改正において、農林水産省令で定める栄養繁殖植物について育成者権の効力が及ぶこととされている。この場合、育成者権が及ぶとされる自家増殖とは具体的にどのようなものを指すのか、お伺いをいたします。
○高木(賢)政府委員 九一年の改正UPOV条約におきまして、農業者の自家増殖に関する特例が認められております。これは、御指摘ありましたように、農家を中心に、農業者が収穫物の一部を次期作付用の種子としてとっておくということが慣行として広く行われてきたことを踏まえて認められているものということでございます。 このような導入の趣旨とか育成者権の保護の観点を考えますと、自家増殖の特例が認められる農業者につきましては、我が国におきまして慣行として自家増殖が行われてきた範囲とするということが適当であろうと思います。 そこで、まず農業を営む者についての政令の指定でございますが、これは、農業者たる個人並びに自家増殖の前提となります農地を取得できる者としての農業生産法人、個人と農業生産法人、この二つを考えております。 それから、省令で定める栄養繁殖をする植物についてのお尋ねでございます。 省令で定める植物につきましては、我が国の現実の取り扱いにおきまして、契約などによりまして自家増殖の制限ということが慣行として定着しているものを定める考えでございます。これは、これらの植物につきましては、育成者と農業者の間に、自家増殖についても育成者の権利が及ぶという規範意識が形成されているものと考えられます。これが育種家と農家の間の接点であるというふうに考えておるわけでございます。 具体的にどうかということでございますが、これまで関係業界へのヒアリングなどの結果、草花、観賞樹の一部というものがこれに当たるというふうに考えております。具体的にはシンビジウムとかバラとかカーネーションなどでございますが、こういうものにつきましては、我が国では自家増殖の制限というものが関係者の間に定着しているというふうに認識をしております。 さらに、現在実施しております実態調査の結果を踏まえまして、最終的な具体的な植物を確定したいと考えております。
○石橋(大)委員 次に、育種素材の利用、さっきもちょっと触れられましたが、いわゆる従属品種の判断基準についてお伺いをしておきたいと思います。 今回の法改正によりまして、登録品種から変異体の選抜、戻し交雑、遺伝子組み換えなどの方法によって、登録品種とわずかな特性が異なる品種、いわゆる従属品種と言われているわけですが、これを育成した場合には原品種の育成者の許諾が必要だ、こういうふうになっているわけです。 このような品種の従属関係については、その判断が極めて難しい場合も想定されるのではないかと考えますが、どのような基準でその判断が行われるのか、この点をお伺いしたいと思います。
○高木(賢)政府委員 お尋ねがありましたように、近年、バイオテクノロジーを用いた育種技術が進展しておりまして、ある品種のわずかな特性を変化させただけの新品種を育成するということが容易になっております。その場合、多くの費用と時間をかけて育成したもとの品種からわずかな特性を変えて新品種がつくられるということになりまして、もとの品種の育成者の権利が全く認められないということになりますと、公平を欠くという事態も生じてきているわけでございます。 このために、改正条約におきましては、ある品種のわずかな特性を変化させて育成された品種で、変化した特性以外はもとの品種の特性をそのまま維持している、こういうものを従属品種といたしまして、もとの品種の育成者の権利が及ぶことにしております。 具体的には、例えば、専らもとになる品種を育種素材として利用して、その品種の耐病性のみを高めた品種、ナシでいいますれば二十世紀に対しましてゴールド二十世紀というようなものがこれに該当するというふうに考えております。 この従属品種に該当するものとしては、実は極めて多様なものが今後あらわれるのではないかということが想定されますし、その主となるというか、もとの品種と従たる品種の関係というものも、作目なりによりまして非常に個別性が強いという特徴を持っておるわけでございます。 したがいまして、従属品種ともとの品種の関係といいますか、従属品種の判定というものは、以上の原則にのっとった上で、もとの品種の育成者と従属品種の育成者との間で決定されるべきであるというのが加盟各国を初めUPOV条約の事務局の考え方でございます。 そうは申しましても、材料がないということではございません。当然、従属品種の出願がありまして公表する場合には、その品種の特性なりの資料につきましてはすべて公表するわけでございますから、それをもとにして関係者が判定するこ上は十分可能であるというふうに考えております。 なお、それを支援するために、農林水産省といたしましては、国外を含めまして、従属品種の事例を収集し、その情報を提供するということで、この判定、判断に資したいというふうに考えております。
○石橋(大)委員 次に、審査の効率化についてお伺いをいたします。 出願件数は年々増加の傾向にあるわけであります。これに対しまして、登録件数は年間五百件前後で推移しているわけですが、そういうことで、未処理件数が増加の一途をたどっている、こういう状況にあるようであります。平均審査期間も、栽培試験などもしなければいかぬということもありまして、大体四年という状況にあるようであります。 今後、出願件数の増大、品種登録の国際化が見込まれる中で、審査期間の短縮は、国内の利用者からのみでなくて国際的にも強く求められるであろう、こういうふうに思われるわけですが、この点に関連して、審査官の増員、その他、審査官の資質の向上、あるいはデータ処理の仕方、いろいろあると思いますが、審査体制全体の整備あるいは強化についてどのように考えておられるのか、承っておきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 出願件数の増加に対応いたしまして、審査の迅速化を図るということは極めて重要であると思っております。ただ、残念ながら、若干審査の件数がふえてまいったのに対しまして、体制の整備がおくれたということもございまして、一件当たりの審査につきまして時間を要しているというのが実態でございます。 そこで、これまでのところ、審査官の増員とか、担当作物の専業化の推進とか、登録品種に関します特性値のデータベースの構築など、審査体制の充実や審査の効率化を図ってきました。それらの効果があらわれまして、最近でございますが、平成九年度の審査登録件数は七百七十九件ということでございまして、前年に対しまして四四%処理数が増加をしております。その過程で取り下げた件数も含めますと九百件処理したということでございまして、若干の改善は見られたというところでございます。 しかしながら、これでは到底十分ではございませんし、今回の法改正によりまして、出願数の一層の増大というものが見込まれることは御指摘のとおりでございます。これまで以上に審査の迅速化、効率化に努めることが重要であるというふうに考えております。 そこで、具体的にどう対応するかということでございますが、まずはやはり人員体制ということで、審査官の増員なり、研修等による資質の向上ということが第一点でございます。 審査官につきましては、平成九年度に二名の増員をいたしましたが、平成十年度も三名の増員を予定をしております。これによりまして、副審査官を含め、合計十六名の体制に平成十年度にはなります。 それから二番目は、種苗管理センターにおきます栽培試験の実施体制の強化ということでございまして、栽培試験の業務担当職員を十年前に比べまして約倍増しておりまして、三十二名というふうに充実をしております。さらに、その栽培試験に必要な施設の整備充実につきまして取り組んでいるところでございます。 それから三番目には、新規植物への対応といたしまして、出願者や外国審査機関からのデータの提供を受けまして、それに基づいた、より簡便な審査基準の策定、並びに審査の実施ということにも取り組んでおります。 これらの措置を総合的に講じることによりまして、迅速で、かつ適切な審査ということに向けて、体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
○石橋(大)委員 次に、品種登録制度のあり方についてお伺いをいたします。 これまでUPOV条約は保護方式の単一規定、いわゆる二重保護の禁止が置かれていたが、今回のUPOV条約では、二重保護の取り扱いは各国にゆだねることとなった。これは特許と品種登録の関係のことでありますが、この点の変化に対応する我が国の今後の植物新品種保護規定の運営等についてどのように考えているのか、伺っておきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 植物新品種の保護に関しまして、種苗法で行うのか、あるいは特許制度で行うのかという問題につきましては、改正条約上は特に規定されておりません。各国にゆだねられております。 我が国におきますこの問題の整理につきましては、既に昭和五十三年の種苗法の改正の際に整理されておりまして、種苗法の保護対象が現実に存在する植物品種であるのに対しまして、特許法の保護対象は、自然法則を利用した技術的思想の創作であるということで、保護の対象と態様を異にしているということが第一点。それから、UPOV条約に対応する国内法は種苗法のみであるということ。それから、植物の特性から、植物の新品種それ自体を対象とする特許発明は事実上ほとんどないと考えられる、このように整理しているわけでございます。 今回の改正に際しましても、このような整理を変える特段の事情は生じておりませんので、この改正種苗法におきましても、基本的にこの整理は変わらない。したがって、UPOV条約を受けた植物新品種の育成者権の保護は種苗法のみにより行われるというふうに考えております。
○石橋(大)委員 一応、私が事前に通告をした質問は、大体以上ですね。大項目で八項目、中項目で十二、小項目で二十一ありまして、一時間ではとても消化し切れないんじゃないか、こう思っておりましたが、質問の仕方がよかったということと答弁の仕方がよかったということがありまして、非常に早く終わりました。 しかし、これから先、質問通告をしていないことで、現場の研究者たちが非常に心配していることを幾つか。きのう話はしましたけれども、これは、質問はちょっと時間がないだろうからというので外しておりましたので、答えられなければいいですが、答えられるのであれば答えてほしい、こういうことで二つ、三つ申し上げます。 まず一つは、今の最後の質問とも関係しますが、これからの品種登録等については、バイオテクノロジーだとか遺伝子組み換えなどの技術が大きく進展をすると、品種登録よりも特許の方がこれからは多くなるんじゃないか、こういうことを現場の研究者は、推定ですが、言っていました。これは私、農業試験場に行って、地元の農業試験場でいろいろ聞いてきたのですが、こういう見通しの問題がどうなるのか。 本当はそれに関連をして、特許庁でそういう体制が十分あるのかどうかということを聞きたかったのですが、きょうは特許庁、そういう意味で、初めの予定では、とてもじゃないが全部質問がこなし切れないだろうと思って呼んでいませんので、その辺の見通しなり考え方について、農林水産省としてどう考えているのか。もしあれでしたらお答えいただきたいのです。
○高木(賢)政府委員 ただいま御指摘ありましたように、遺伝子組み換えなどの高度なバイオ技術を利用してつくられた植物、つまり、それをつくる技術とともに、その形質転換植物に特許が認められる事例というのがあらわれていることは事実でございます。しかし、その場合でも、特許で申請されますのは、あえて特定の品種という狭い範囲ではなくて、植物を作出する技術とその形質転換植物と広い範囲でございまして、品種としての保護といいますか、開発した場合には、やはり種苗法に基づきます品種登録制度によって出てくるというふうに見ております。 実際にも、先ほど耐性のところでもお答え申し上げました、これから植物の範囲の拡大もありますし、種苗法に基づく品種登録の出願件数というものが相当ふえるというふうに見ております。 特許ということは、先ほど言いましたように、技術的思想の創作ということで整理してございますので、それによって種苗法の新品種の世界が何か狭くなるというようなものではないと考えております。
○石橋(大)委員 二つ目は、名称変更に関連をして、この点は現場の人がかなり心配をしておりますから念のために聞いておきますが、従来は出願をしてから名称変更はできなかった。出願をして名称変更ができないということは、そのまま登録をされるわけですから、最初に出願をした名称が全く名称変更できない、こういうことになるわけですね。 例えば米、稲だとか、特に酒米なんかがそのようですが、島根県なんかの場合ですと、島イ何号、高木局長は昔々の島根県の農政部長ですからよく御存じだと思いますが、そういう非常に学問的な名前をつけておるわけですね、ある意味で機械的な名前というか。それを実際に利用するときには、公募をして、名称を募集していろいろな名前をつける。米であればできるだけうまくて全国的に拡大をするような、例えばコシヒカリだとかササニシキだとか、いろいろな名前がありますが、そういう名前をつける。そういう名称変更が、一遍出してしまうとできないということで非常に困る、こういうようなことを言っていました。 きのう種苗担当官の話を聞きますと、今度の場合は、事前に一定の栽培もできるし、そういう意味では、多少の実績を踏まえて、出願後、名称変更するようなことは起こらない、こういうような話もちょっと聞いたのですが、現場の研究者はその辺を、従来の関係もあってかなり心配していますから、その辺について、念のために明らかにしていただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 御懸念の点でございますが、これまでは変更が事実上あったわけでございますが、今回、仮保護制度を導入するということになりますと、仮保護の効力が及ぶ品種につきまして、品種識別の重要な手段であります名称が変わったということになりますと、仮保護の対象が何なのかということがわからなくなってしまうということで、かえって種苗の流通なり生産の現場に混乱を生じかねないということで、出願された名称を自分の都合で変えるということは認めておりません。 しかし一方で、出願の要件を緩和しておりまして、今までは、出願前に譲渡しているとそれは登録は認められないということでございましたが、今回の案では、譲渡してはいけないという要件を緩和いたしまして、出願の一年前までは譲渡することが認められるということでございますから、その間に、いわば試験販売をするなり、試験的に見本品を供与するなりして名称を公募いたしまして、その名前をつけた上で出願をするということ、一年という猶予がございますので、これを御活用いただければ、仮保護制度ということと現場での御懸念ということが調和点があるのではないかというふうに考えております。
○石橋(大)委員 ちょっと早いですが、あともう一つぐらいありますが、これはちょっとややこし い話ですから、やめておきます。 大変多項目にわたりまして網羅的に適切な答弁をいただきまして、非常に後の審議の参考になろうかなと思っております。どうもありがとうございました。 以上で終わります。
○北村委員長 以上で、石橋大吉君の質疑は終わりました。 次に、木村太郎君。
○木村(太)委員 おはようございます。 石橋大先生が早く終わられましたけれども、三十分の与えられた時間で、大臣初め皆さんの方へ確認させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。 まず、今回の種苗法改正につきまして、先般の島村農林水産大臣の提案理由の中でも、種苗というのは農林水産物の生産に不可欠な基礎的な生産資材とし、また、その種苗法は、種苗流通の適正化と優良新品種の育成振興を図るため、こういうふうに大臣の提案理由でもありました。具体的にはどういう役割を果たしてきたと考えているのか、確認をさせていただきたいと思います。 また、農林水産業振興を図る上で、種苗あるいは種苗法というこの法律の位置づけというものを大臣はどのように認識されているのか、まずお答えをいただきたいと思います。
○島村国務大臣 良質あるいは多収あるいは耐病性等にすぐれた品種の開発は、農林漁業の発展を支える重要な基盤であります。したがいまして、育種の振興と育種の成果としての新品種の育成者の権利の強化を図ることは、今後の農政の重要な柱であると我々は認識いたしております。このため、我が国におきます育種振興の基盤を整備することを目的といたしまして、保護対象植物の拡大あるいは育成者権の強化等を内容とする種苗法の改正をお諮りしているところであります。 今回の改正によりまして、我が国における育種の振興が図られ、かつ、優良な新品種がこれまで以上に多数育成、提供されることを通じまして、我が国農林水産業の発展に大きく資するものと期待しているところであります。
○木村(太)委員 そうあってほしいと思いますし、またそのための今回の法改正、こう思っております。今回のこの改正は、UPOV条約の推進動向という諸外国の情勢にも対応するため、こういうふうにも私なりに理解しております。外務委員会の方でも既に議論されているようでありまして、我が国の育種振興の現状というものは世界的にどのようになっているのか、この点も確認させていただきたいと思います。 また聞けば、このUPOV締結国というものが、私の感想からいいますとまだ数的に少ないような印象を持っております。こういう国際情勢の中で、農林水産省は外務省とも連絡を密にしながら、国際的に我が国の育種振興というものをどのように図っていくつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。
○島村国務大臣 お答えいたします。 改正UPOV条約は、去る四月二十四日に、デンマークを初めとする六カ国の批准を得て発効いたしましたが、既に三十カ国で改正条約に対応した国内法の整備がされておるところであります。 我が国におきましても、今回の種苗法の改正案が成立すれば、国際的に調和のとれた形で新品種の育成者権が強化されることになるわけでありまして、我が国の育種につきましては、現在、作物育種推進基本計画にのっとりまして、計画的に推進しているところであります。今後、法案の成立を見ますれば、新しい制度の普及やその円滑な運用に努めますとともに、まず、国の試験研究機関による品種開発及び都道府県や民間機関による育種技術開発に対する支援や共同研究の推進、あるいはまたジーンバンク事業によります遺伝資源の収集、提供等によりまして、育種の一層の振興を図ることとしているところであります。 なお、UPOV条約の締結と、あるいは同条約適合法の制定状況がまだ世界的には極めて限られた数ではないか、こんな御指摘がございました。 改正UPOV条約の締結国につきましては、もう既に御存じかと思いますが、デンマーク、イスラエル、オランダ、スウェーデン、ブルガリア、ロシアでございますけれども、同条約適合法、要するに見込みですけれども、制定国といたしましては、ロシア、ボリビア、EU、エクアドル、オーストラリア、米国、ベラルーシ、ポーランド、デンマーク、スロバキア、イスラエル、南アフリカ、ペルー、オランダ、ブルガリア、モルドバ、モロッコ、スウェーデン、ドイツというような国々が、もう既にこれらへの対応をしているところでございまして、こういうことにおくれをとらないことが肝要であると我々は考えております。
○木村(太)委員 今大臣から詳しく御説明がありました。現実にはまだ少ないような印象がありましたが、日本と同じように予定しているというか、それに対応しようとしている世界の国々もかなりあるということでありますので、ただいまの御答弁の最後にあったとおり、乗りおくれない対応としても、また一層努力をお願いしたい、こう思っております。 そこで、今度、法案の中身について少し触れていきたいと思います。まず、今回の保護対象植物数というのが、これまでは四百六十七種類だということでありましたけれども、今回の改正によってその対象植物というものを、栽培される植物は広く対象とする、こう言っておりますが、その理由をお聞かせいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 御指摘のように、現在は政令で四百六十七種類の指定でございますが、こういう指定方式ではぐあいが悪くなったという点が出てまいったわけでございます。 一つには、栽培実績がないということから政令で指定しなかった植物、しかしながら現場ではいろいろと意欲的に品種開発に取り組んでおられる方がございまして、政令で指定していない植物でも新品種の育成に取り組んでおられる方がございます。そういった場合に、新品種の育成のスピードと政令指定のスピードが食い違う場合があり得る、迅速な対応ができない、こういう事態があるというのが第一点でございます。 それから二番目には、我が国で保護対象とはなっていない、しかし海外では育成された、品種がいいので導入したいという場合に、保護制度が我が国にありませんと海外の人が我が国に出したがらない、こういうことで支障になるという点が第二点でございます。 それから、種と種の間の雑種、属と属との間の雑種というものは政令で書きぶりが大変難しゅうございまして対応が困難である、こういった事態が生じてまいりました。 こういう事情を踏まえまして、改正種苗法案におきましては対象植物を拡大いたしまして、栽培される植物、農林水産植物を広く対象とする、こういう案にしたわけでございます。
○木村(太)委員 次に、今回の法案の中で、品種の育成者の権利強化ということを一つの柱にしておりますけれども、これまでは名称さえもなかったものを、育成者権としていわゆる知的所有権というものを位置づけているということであります。だとすれば、これまで何らかの被害的なもの、不利益的な問題があったのかどうか、具体的な答弁をいただければ、こう思います。
○高木(賢)政府委員 現在の育成者の地位というものは、品種登録者の地位という形でその保護が図られているわけでございますが、それだけでは十分でないという事態の変化があったというふうに私どもは考えております。 すなわち、どういうことかと申し上げますと、御案内のようなバイオテクノロジーの発展に伴いまして、種苗を大量かつ短期間に生産することとか類似の品種を創出するということが可能になりました。したがいまして、育成者の権利の侵害が大規模かつ広範囲に生ずるおそれというものが高まってきているというふうに考えております。こういう状況で権利の範囲が限定されておりますと、育成者の育種努力が十分保護されない、そういう懸念が生じてきたということから、世界的に もこれに何とか対処しようということでUPOV条約の改正が行われたわけでございます。 いわばそういったバイオテクノロジーの発展に伴う新しい事態に、今までの権利の保護のあり方では十分保護が図れない、こういう認識のもとに対応を図っているということでございます。
○木村(太)委員 ごもっともな御答弁だと思います。 そこで、今の御答弁に対してもう少し突っ込んで考えた場合にお尋ねしたいと思うのですけれども、もちろんその強化を図ろうとしていることは今御答弁にあったとおりだと思います。しかし、強化をする上で確認したいと思うのが、この品種育成者権者にとってはよいことになっても、一方では我が国の農業の姿あるいはまた生産活動という実態にマイナスがあってもならない、こういうふうにも考えます。そして、種苗を通じて利益を考えた場合に、品種育成者権者といわゆる農業者、生産者との整合性、バランスというものがある面では大事になってくると思いますが、この辺はどのように考えておられるでしょうか。
○高木(賢)政府委員 品種登録制度は基本的には育種の振興につながりまして、すぐれた農産物が生産できる、そういう種苗がふえるわけでございますので、農業生産の発展につながるということでありますから、大きな目で見れば、基本的には農業者等の利益につながっていくものというふうに考えております。ただ、現場の実態に合わないようなことが仮にありますと、これは問題であります。 そこで、今回の法案の中で、現実的に農業者との利益の調和といいますか、育成者と農業者との間の調和の問題で関係者の最大の論議になりましたのが、いわゆる自家増殖についての取り扱いでございます。この育成者権の保護に当たりましても、その自家増殖につきましては現場の実態に配慮いたしまして、農業者の自家増殖につきましては一定の条件のもとで育成者権が及ばないということにいたしまして、育成者の許諾なしで自家増殖を行い得る、例外的には省令で定める栄養繁殖植物ということでございますが、そういうところで農業者と育成者との間の接点を見出したということでございます。 それからもう一つ、収穫物についてもこの育成者権の権利が及ぶということになりますが、これは種苗段階で権利行使をする機会がなかった場合に限定をするということでございまして、農業者が適正に種苗を入手さえしていれば、生産段階で何ら問題にされることはないということでございます。 こういうことで、農業者との具体的な利益の調和といいますか、調整を図っているところでございます。
○木村(太)委員 ぜひそうしていただきたいと思います。 今の御答弁の中にも農家の自家増殖というものについてありましたので、これはその後聞こうと思っていたのですが、ちょっと今の御答弁があったのでここでお聞きします。農家の自家増殖については、先ほどあったとおり、一定の場合を除き権利の効力が及ばない、こういうふうにしておりますけれども、この表現、言い方を変えれば、育成者権の効力というのは原則として及ぶ、こういうふうにも言えると私は思います。我が国の農家の自家増殖というのがこれまでも慣行であったのはだれもが認めることだと思いますし、この一定の場合ということを農林水産省としては具体的にどういうことを考えておられるのか、ここでちょっと確認させていただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 この一定の場合というものは、我が国におきます農業者の自家増殖の実態を踏まえまして、現在のところで、契約による自家増殖の制限が定着しているというものの栄養繁殖植物を定めるということにしております。具体的には、草花とか観賞植物の一部、これがいわば慣行といいますか農業者と種苗業者との間で大体自家増殖の制限が行われている、一般化しているというものでございまして、そういう草花、観賞植物の一部を考えているところでございます。
○木村(太)委員 もう一つ確認したいのですけれども、登録品種のわずかな特性の一部を変化させて育成された、そして、その特性によって登録品種と明確に区分することをいわゆる従属関係、こういうふうに認識しているようでありますけれども、この判断というのはどのように行われていくんでしょうか、確認させてください。
○高木(賢)政府委員 従属品種の定義といいますか概念というものは、ある品種のわずかな特性を変化させて育成された品種で、変化した特性以外はもとの品種の特性をそのまま維持しているものというふうになっております。したがいまして、もとになる品種を育種素材として利用いたしまして、例えば耐病性のみを高めた品種、例えばササニシキにつきましてはササニシキBLというのがございますが、それは、ササニシキの中の形質は変化させないで、耐病性というところだけを高めたというものがこれに該当いたします。 概念としてはそういうことでございますが、これの判断に必要な、該当するか否かについての資料につきましては、従属品種につきまして、出願がありまして登録されるということになりますれば、登録された品種の育成に関する資料、特性、こういったものを公表いたします。したがいまして、こういった客観的資料をもとにすれば、ただいま申し上げた概念に該当するのか否か、あるいはどの程度もとの品種に依存しているのかということを、関係者はこれを判定し、確認することができるというふうに考えております。 ただ、それだけで十分かということもございますので、私どもとしては、国外の事例も含めまして、従属品種というものに当たるものの事例の収集をし、関係者に情報を提供していきたいと考えております。
○木村(太)委員 判断できるということでありますので、ぜひ適切な判断をする努力をお願いしたい、こう思います。 今の御答弁でも、従属品種という言葉でありますけれども、私たち、日常の生活の中でこの従属品種、従属品というような表現を使う機会が余りないというか、もう少し何かわかりやすいというか、一般的にも使えるような表現がないのかなというふうにも思っております。別にこれは答弁を求めるわけではないんですが、私の個人的な考え方ですけれども、こういった点もまたぜひ皆さん心していただければな、こう思います。 先ほど、育成者権者と、生産者つまり農業者との利益の整合性についてお尋ねしましたけれども、いま一つ整合性ということで確認したいんです。今回、育成者権の有効期間というものを十五年から二十年、果樹などの永年性植物というのは十八年から二十五年、どのように延長するというふうにしておりますが、これを単純に考えれば、利用者がその品種を自由に扱えない期間もまた長くなる、こういうふうにも思います。 そこで確認したいんですけれども、延長の幅をなぜ今回五年としたのか、果樹などを七年としたのか、お答えいただきたいと思います。時間という視点でとらえた場合に、この品種育成者権者と農業者、利用者との整合性というものをどのように考えておるのか、お答えをいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 存続期間についてでございますが、これはまず第一に、九一年のUPOV条約におきましては、育種に関するコストが増加してきているということから、投資の回収を適切に行えるようにするためには育成者の権利の存続期間を延長する必要があるという御議論が出されました。 それから、現実問題としては、欧州では大体こういう十五年以上の長い保護を与えてきているという実態がございまして、条約においても義務づけを現在より長くして、最低二十年、永年性植物については二十五年、こういったものにすべきであるということが議論の結果まとまったわけでございます。 そこで、我が国においてどうかということでご ざいますが、現実の条約を受けたヨーロッパなどにおいても二十年、二十五年というふうに、先ほどお尋ねがございましたが、この条約に合わせた改正を行った国では、大体二十年あるいは二十五年ということになっております。それから、我が国におきます知的所有権ということとのバランスを考えますと、特許につきましては出願後二十年、こういうことになっております。 加えてといいますか、一番大事な点でございますが、関係者がどういう御意向かということについてはいろいろ論議をいたしました。その結果、育種業界、農業団体とも、いわば農業者と育成者の調和の点としまして二十年、永年性植物については二十五年ということで、そういう御意向が示されたわけでございまして、それをもとに現在の法案を御提案申し上げたわけでございます。
○木村(太)委員 今、出願ということも御答弁がありました。もう一つ確認したいんですけれども、調べてみましたら、最近の出願件数というのが増加傾向にあるというふうに考えております。ただ、それと並行した形で未処理の件数というものも増加してきて、いわゆる審査の期間というものも長期化している。聞けば、平均すると四年間ぐらいを費やしているというふうにも聞いております。 そこで、品種登録制度の対象となる植物の範囲が拡大されるという先ほどの答弁もありましたし、また、出願件数が一層ふえてくるのではないかなという予想もされます。そこで、先ほど来幾つかお尋ねしてきた中で正しい判断がさらに求められてくる、こういうことも考えれば、この審査体制というものをさらに万全に整えておく必要があると思いますが、この点はどのように考えておられるでしょうか。
○高木(賢)政府委員 御指摘がありましたように、一件当たり平均で四年ぐらいかかっているというのが実態でございます。欧米でありますと、長いものが四年というのはございますが、もう少し短い時間で当然対処しているということでございまして、これにきちんと対処しなければならないということで、特に、平成九年度から審査官の大幅な増員を図ったり、担当作物の専業化を推進して迅速に審査ができるようにする体制をつくるとか、あるいは登録品種などの品種につきましての特性値のデータベースの構築をするというようなことで、審査の体制の充実と効率化を図ってきました。 平成九年度につきましては、その結果、前年に比べまして四四%増の処理件数の実績を上げたということでございますが、御指摘がありましたように、今回の法改正案が成りますれば、出願数のさらなる増大が見込まれます。したがいまして、これまで以上に審査の迅速化、効率化を図る必要があるというふうに考えております。 具体的には、審査官の大幅な増員を図るということでございまして、既に九年度に二名を増員いたしましたが、十年度も三名増員をするという予定にしておりまして、副審査官を含めますと十六名の審査官の体制になります。 それから、現地の栽培試験の実施体制も強化いたしまして、これも十年前より倍増いたしまして、平成九年度には三十二名という体制にしております。 それから、新たな植物につきまして出願が出てくる可能性がふえるわけでございますが、これにつきましては、出願者並びに外国の審査機関からデータの提供を受けまして、より簡便な審査の基準の策定なり審査の実施ということに取り組んでいきたいと思います。 こういうことを総合的に実施いたしまして、より迅速で適切な審査ということに努めてまいりたいと考えております。
○木村(太)委員 私も個人的には、行政改革イコールすべて小さくすればいいとか、一〇〇%そういう考え方は持っておりません。ですので、ただいま局長さんからお話があったとおり、必要に応じては適切に対応する、こういう考え方でぜひ今の答弁に即して対応していただきたいと思います。 時間がなくなってまいりましたので、聞こうと思ったんですが、いま一つ、答弁はいいですのでぜひお願いしたいんですけれども、今回のこの法改正を受けて、種苗産業に携わる方々、あるいはまた一般農業従事者の皆さんにも、今回のこの改正というものを周知徹底という面でも農林水産省の役割をぜひお願いしたい、こう思います。 最後にお尋ねしたいと思いますが、我が国の種苗の輸出入の現状というのはどのようになっているんでしょうか。
○高木(賢)政府委員 種苗の輸出入の動向でございますが、輸出金額といたしましては、おととし、平成八年に百二億円、我が国の農産物輸出の六%を占めております。十年前と比べますと一・三倍というふうになっております。 それから輸入金額は、平成八年に四百十一億円でございまして、農産物輸入に占めます割合は〇・九%、十年前の昭和六十一年と比べますと二・七倍に伸びておるという状況でございます。 輸入の内訳では、球根類が四割を占めておりまして百八十六億円、輸入先としては、欧州地域からの輸入が二百三十三億円ということで、全体の五割以上が欧州からということになっております。
○木村(太)委員 私は、今の御答弁の数字を考えれば、決して小さな数値ではないと判断しております。 今の御答弁に引き続いて、一つ認識というか御見解を確認したいんですけれども、農林水産物、農林水産業、この分野においての国際的な協力をするということはもちろん大切なことだと思います。また一方では、現実に競争、これも私は現実の姿としてあると思っております。 例として言えば、いつも私の地元の話をして、地元の場合、リンゴの話を取り上げて今までも幾つか大臣にも質問したことがあります。毎度このリンゴの話で恐縮でありますが、例えばリンゴの「ふじ」、実はこの「ふじ」という品種は、私の地元で藤崎町という大変小さな町で誕生したんです。しかし、このリンゴの「ふじ」が、現実には、今アメリカがある面では日本人向けの研究をしながらも、アメリカで生産して、今輸入解禁を求めている、こういう状況であります。もし、これが認められるとすれば、我が国国産のリンゴと競争が一層激化することが予想され、結果的には国内のリンゴ農家がさらに厳しい状況になるんではないかな、こう考えております。 もちろん、正反対に、我が国内においてこれまで生産されていなかった品種を今は積極的に生産しているということで頑張っているのもあるでしょうと、正反対の考え方、また利用というものもありますけれども、一方で競争、一方でまた国際的な協力、こういった中での我が国の種苗というものはどうあるべきと考えているのか、最後にお尋ねして終わります。
○高木(賢)政府委員 種苗につきましては、輸出されて、輸出先の国で我が国と同じ品種の生産が行われる機会も増大するということは御指摘のとおりでございます。一方では、輸入をして、それを活用して我が国の生産を豊かにするという側面もあるわけでございまして、種苗の国際流通は優良品種が積極的に導入できるという側面もありまして、デメリットだけでなくメリットもあるというふうに考えております。 それから、この改正案では、新品種の他国への輸出の許諾に当たりまして、我が国の農業生産あるいは種苗販売に悪影響を及ぼさないという観点から種々の条件を課する、例えば、許諾に係る種苗から生産された収穫物につきまして我が国へ逆輸出しないというような条件も課することができるわけであります。 したがいまして、こういうような法制度を踏まえた秩序ある優良品種の輸出と官民を通じた育種振興を図ることによりまして、我が国の品種面での国際優位性が確保されるように今後とも努力してまいりたいと考えております。
○木村(太)委員 ありがとうございました。
○北村委員長 以上で木村太郎君の質疑は終わりました。 次に、菅原喜重郎君。
○菅原委員 今回の種苗法改正は、基本的には、一九九一年のUPOV条約の改正を踏まえ、その改正条約を締結するために行うものであると聞いております。 我が国がこの新たな国際的統一規則により新品種の育成者の権利保護を強化することは、育成者の育種の意欲を高め、優良品種の生産を一層促すとともに、海外の優良品種の利用も容易になることなどから、我が国農業の発展にとって非常に重要なことであります。ただしこれも、各国と歩調を合わせて行って、初めて十分な効果が期待できるのであります。 かつて、昭和三十年の半ばごろでありましたか、岩手県日詰の橋本君が光り輝くようなサンセット色のコスモスの新品種を開発しました。これがアメリカの花の品評会で一等賞を獲得し、全米に報道されたわけですが、そのままで終わっております。このような法律があったら、国のためにも個人のためにも大変な利益になったと、当時を思い起こし今昔の感がひとしおであります。 そこで、質問しますが、世界においては、改正UPOV条約に基づいて現在幾つの国が育成者の権利を保護しているのでしょうか。条約の批准国がまだ六カ国と少ないなど、世界的に、条約が目指す育成者の権利保護の機運がいま一つではないかと聞いておりますが、今後のこの各国の対応の見込みについてまずお尋ねいたします。
○高木(賢)政府委員 九一年の改正UPOV条約の適合法を既に制定している国は、平成十年三月末現在で十九カ国、一地域、この一地域というのがEUでございまして、その中の国を数えますと三十カ国を包含する状況になっております。 その中で、デンマーク、オランダ、イスラエル、スウェーデン、ブルガリア、ロシア、この六カ国が条約を既に締結しておりまして、本年四月二十四日に条約が発効いたしました。 このほかに、イギリス、フランスで国内法整備の手続が進んでいるというふうに聞いております。 今回の条約発効をきっかけといたしまして、今後、改正UPOV条約の締結と国内法の整備が世界的に加速されるのではないかというふうに見ております。
○菅原委員 条約の批准国はまだ多くはありませんが、改正UPOV条約に適合した法律の制定国が既に三十カ国をカバーする状況であり、我が国も早急な対応をとる必要があることはよく理解できるところであります。むしろ、遅きに失したという感じもなくはありません。条約が改正されたのは七年も前の一九九一年でありますが、我が国の改正がなぜここまでおくれてしまったのか、あわせてお尋ねします。
○高木(賢)政府委員 九一年のUPOV条約の改正事項は、御案内のように大変広範囲にわたります。また、権利義務にも大きな影響を及ぼす内容になっております。したがいまして、我が国におきましても、この条約改正以来、関係各界で幅広い検討が行われてまいりました。その結果、いろいろと議論もありましたが、関係者の合意も形成されまして、法改正の条件が整ったということで今国会に改正案を提出したわけでございます。 関係者の理解を得るという点では各国もかなりの時間を要しておりまして、例えば、アメリカにおいても法改正ができたのが九四年十月、オランダで九六年、ドイツで九七年ということで、膨大な内容であることから、ある程度の時間が関係者の間で必要であったという事情は御理解賜りたいと存じます。
○菅原委員 現行法では、農業者の自家増殖、自分で生産した収穫物の一部を次期作の種苗として使用することについては育成者の許諾を受ける必要がありませんでしたが、新しい法律では一定の規制を受けることとなりました。本改正のもととなるUPOV条約では、農業者の自家増殖に対しては、各国の実情に照らし合理的な範囲内で育成者権を制限できることとされております。そこで、我が国はどのような考え方に立って農業者の自家増殖の取り扱いを定めているのか、新しい取り扱いについての基本的な考え方をお尋ねします。 なお、この自己増殖の取り扱いについては、育種者とその種苗のユーザーたる農業者との間では往々に利害が対立するものと推察されますが、これら関係者の意見を聞き、利害の調整等がきちんと反映されたのかどうか、あわせてお伺いします。
○高木(賢)政府委員 改正種苗法案におきましては、九一年のUPOV条約を受けまして、我が国におきます農業者の自家増殖並びに種苗の流通慣行の実態を踏まえまして、また一方では、育成者権の保護の観点ということも考慮しながら整理したところでございます。 その結果といたしましては、契約による自家増殖の制限というものが、現在、草花なり観賞樹の一部で行われているわけでございますが、そういったものが定着している栄養繁殖植物、これを農林水産省令で規定いたしまして、これだけをいわば農業者の自家増殖につきまして許諾が必要な行為とすることにするという点が一つでございます。それからなお、契約で別段の定めをしたということがあれば、それは当事者の意思でございますので育成者権者の許諾を必要とする、こういう整理をしてございます。 こういう措置は、我が国の自家増殖の現状、実態というものに即したものであるというふうに考えております。そのプロセスといたしましても、生産者団体などの関係者の意見を十分に聞いております。また、生産者団体あるいは育種の団体の方が参加しております農業資材審議会種苗部会の御意見も、このような取り扱いについて御賛同いただいておりますが、それは関係者が加わった審議会でございまして、関係者の合意プロセスは経ているというふうに考えております。
○菅原委員 御承知のように、日本の農業者、農家はまだ企業的経営の形態には十分に対応できるようになっておりませんので、この自家増殖の件につきましては、よほど農業者への啓蒙あるいはいろいろな指導が必要だと思いますので、この点は、よろしく今後対処をお願いいたしたい、こう思う次第でございます。 また、新法二十一条三項の、省令で定める栄養繁殖をする植物として、どのような考えに立って、どのような植物を指定するつもりか、お尋ねいたします。同時に、新法二十一条二項の、政令で定める農業者としてどのような対象を考えておるのかもお伺いいたします。
○高木(賢)政府委員 省令で定める植物につきましては、我が国の現実の取り扱いにおきまして、契約などにより自家増殖の制限が慣行として定着しているもの、これを定める考えでございます。これは、これら植物につきましては、育成者と農業者との間で、自家増殖についても育成者の権利が及ぶという規範意識が既に形成されているというふうに考えられまして、これが育成者と農業者の間の接点であるというふうに考えております。 具体的なものとしては、草花、観賞樹の一部、シンビジウムとかバラ、カーネーションなどが考えられるわけで、これらが我が国で自家増殖の制限が定着している植物というふうに考えておりますが、現在実施しております実態調査の結果を踏まえまして、最終的に具体的な植物を確定していきたいと考えております。 それからもう一つ、政令で定める農業者でございます。農業者の自家増殖でということでございますから、農家、あるいは自家増殖の前提となる農地を取得できる農業生産法人ということで、農業者たる個人並びに法人としては農業生産法人というものを考えております。
○菅原委員 先ほどの質問にも関連しますが、これまで農業者は育成者の許諾を一々求めることなく自由に自家増殖ができたのに対し、今回、例外的とはいえ、一定の規制が行われることとなると、農業現場では混乱も予想されます。政府とし ては、これに対してどのような対応を図っていかれるつもりですか。
○高木(賢)政府委員 今回の改正案におきます自家増殖の取り扱いにつきましては、我が国の自家増殖の現状あるいは実態に即したものというふうに考えておりまして、事柄としては農業生産現場へ特段の混乱をもたらすという性質のものではないというふうに考えております。 しかしながら、制度についての理解が行き届きませんと、いろいろと御心配も生ずるわけでございますので、やはりその周知徹底ということが制度の円滑な運営を担保するためには必要なことであろうと思います。したがいまして、法律が成立いたしましても、施行までの間に半年ぐらいは周知期間を設けなくてはならないのではないかと思います。その間に、改正内容につきまして説明会を開催するとか、その他関係者の求めに応じてお話し申し上げるとか、周知徹底に相努めるということが一つでございます。 それから、予算措置といたしましても、講習会の開催とか、権利侵害の未然防止などに関しましてマニュアルを作成する、こういう事業を平成十年度予算で計上してございます。この予算を早期適正に活用いたしまして、現場で混乱を生じないようにPRを適正に行っていくということに努めたいと考えております。 〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
○菅原委員 何しろ、今回の法律は知的権利と同様の保護をなしていこうとしているものでありまして、やはり日本の農家も、近代化社会、国際化社会に対応するには意識の改革も必要でございますので、ひとつよきPR、指導を再度お願いする次第でございます。 次に、優良な新品種の開発普及は、今後の農業生産、発展にとって不可欠と考えます。このためには、今回の種苗法改正などの環境整備を行うほか、国等が中心となって育種を積極的に進めるとともに、育種を進める上で不可欠な遺伝資源を確保していくことが極めて重要と考えます。 種子法改正の際にも質問しましたが、今回の種苗法審議に当たって、このことの一層の重要性、充実の必要性を痛感しますので、この農林水産ジーンバンクについて、どのような方策をその後検討されているのか、まず質問いたします。
○三輪政府委員 御指摘のように、遺伝資源を保全し、これを作物育種に活用することは重要であり、農林水産省としても、全国各地の試験研究機関、それに種苗管理センター等の行政機関を加えた全省的な体制のもとで、農林水産ジーンバンク事業を実施しております。現在、作物育種の基礎となります植物遺伝資源は約二十一万点を保有するに至っております。 これらの遺伝資源は、単に長期保存をして将来の育種に備えるということもありますが、何よりも現在の育種の現場に円滑に受け渡されることが重要と考えております。このため、こうした遺伝資源の配布体制を整備するとともに、個々の遺伝資源の持つ基礎的な特性に関する情報、こういったものをインターネット等を通じて広く提供しているところでございます。 このような遺伝資源確保の重要性にかんがみまして、今後とも農林水産ジーンバンク事業の充実を図ってまいりたいと考えております。
○菅原委員 ジーンバンクについては、何といいましてもお金のかかることでございますので、やはり予算の確保は、これは大臣によろしくとお願いしておくほかはないわけですので、ひとつこのことは重点的な政策の一つに入れて、促進していくように要望しておきます。 我が国では、地域地域で農民、個人育種家などにより多様な品種が育種されてまいりました。しかし、近年、このような地域品種は次第に減少してきていることが指摘されております。実際、私たちがかつて食してきた野性味のある野菜などを買おうとしても、どこにも売っておらないのも現状でございます。私の知っているハウス農家を経営している方が、かつての香りの高い、辛みのあるカラシナを今、昔あったのだからと思って探して探したのだけれども、ついに私たちの県南地方で見出しかねている、こういうことを痛切に私に訴えてもきました。 それで、国として、このような地域品種の保存、育種家への配布をもっと積極的に行うべきでないか。これはジーンバンクに関連することでございますが、これについてはどのようにお考えでありますか、お伺いします。
○三輪政府委員 御指摘のように、地域品種といいますか在来品種、こういった我が国固有の遺伝資源を確保すること、これは海外から導入するということに劣らず重要と考えております。在来品種につきましては、ただいまの御指摘もございましたように失われてしまうということがございますので、その前に収集することが大変重要でございます。 農林水産省としましては、国内の遺伝資源の探索、収集、これにつきまして、毎年度対象作物を定めて計画的に取り組んでおります。ちなみに、平成九年度は豆類を中心に約三百点を収集いたしました。こうして収集した在来品種につきましては、育種家等の要請に対応して配布できるような体制を整えております。
○菅原委員 滅びていく品種を保存するということは、これは近代国家の大きな使命でもございますので、本当にこの点には力を入れていっていただきたいと思うわけでございます。 次に、大臣にお伺いしますが、我が国は植物の遺伝子組み換え技術や遺伝資源の保存などの分野で、アメリカなどに相当おくれをとっていると思いますが、今後どのような育種振興施策をとっていかれるおつもりなのですか。
○島村国務大臣 お答えいたします。 作物育種は、農業の生産性の向上や農作物の品質向上に重要な役割を果たしているところであります。一方で、育種は、その成果を生み出すまでに長期間を要することから、計画的な取り組みが重要であります。 このため、農林水産省といたしましては、作物育種推進基本計画を策定しておるところでありまして、今回、この法改正を踏まえて、新しい種苗法の普及や円滑な運用に努めますとともに、同計画を踏まえつつ、まず、国の試験研究機関による品種開発及び都道府県や民間機関による育種技術開発に対する支援や共同研究の推進を行っていくこと、第二にはジーンバンク事業による遺伝資源の収集、提供等に意を注ぐこと、第三にイネゲノム研究等先端研究を通じた優良遺伝子の確保等により、育種の一層の振興を図り、米国などにも十分対抗できるようにしていきたい、こう考えておるところでございます。
○菅原委員 新品種登録制度の運用に当たって、育成者が丹精を込めて開発した新品種については、国として速やかに審査し、要件を満たすものを遅滞なく品種登録することが重要であることは言うまでもありません。 最近の品種登録の状況を見ると、ハイテク技術の進展等を背景として出願件数が増大し、平成八年度で千二十七件と、十年前の約三倍にも上っております。さらに、新法では保護植物が、栽培される植物のすべてが対象となることから、今までのテンポ以上に出願数がふえていくものと予想されます。 このような状況のもとで、審査体制の充実、審査の効率化などにより的確な審査を行っていくことが重要でありますので、行政手続法に基づく本品種登録制度の標準処理期間は三年と聞いておりますが、現在、実際にはどの程度の期間となっているのでしょうか。また、そのように審査期間が延びている要因は何ですか、お伺いします。
○高木(賢)政府委員 近年の審査期間でございますが、平成九年度には四・一年ということでございます。 その原因ですが、出願者が審査に必要な資料を長期間提出しないという、出願者側に原因がある場合も一部ありますけれども、主として言えば、草花を中心に出願件数が増大している、こういう事情であるということでございます。
○菅原委員 バブル崩壊前、一時、日本にやってくる外国人の数が急増いたしました。その際、出入国関係の手続で、全く日本の対応が人手不足でおくれたことがございます。これはもう国際的に恥ずかしいぐらいに思われたわけでございますが、それと同じように、今回もこの審査期間の延伸状況に対して本当に国がしっかり対応できていくのか、このことについて今後の対処いかんということで質問させていただきます。
○高木(賢)政府委員 審査の迅速化ということでやらなければならないと思います。したがいまして、審査体制を総合的に強化しなければいけないわけですが、まずその柱は、やはり何といっても審査官の増員ということであると思います。 それから、栽培試験がこの植物の新品種の保護制度の場合重要な核をなしておりますので、種苗管理センターの栽培試験の実施体制を強化するということが二番目の柱だと思います。 それから三番目に、新しいいろいろな植物に関する出願に対応いたしまして、出願者とか外国審査機関からデータの提供を受けて、より簡便な審査基準を策定し、これを実施するという審査の効率化ということが三番目のポイントかと思います。 こういったことを総合的に講じて、より迅速で適切な審査ということで対応してまいりたいと考えております。
○菅原委員 最後に大臣にお伺いしますが、今回の法改正により、出願件数の一層の増加が予想されますので、審査の効率化、促進を図っていく必要があると思います。他方、行政改革時期とはいえ、このように業務が増大している部門では、迅速かつ的確な審査のため、審査官の増員など審査体制の充実を図っていくことが大切であります。この件について大臣の所見をお伺いし、質問を終わりたいと思います。 〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○島村国務大臣 新品種の出願に対しましては、的確かつ迅速な審査を行うこと、これこそまさに品種登録制度の運営のかなめをなすものであると認識しております。 審査の迅速化につきましては、ただいま局長からも御答弁申し上げたとおり、審査官の増員などの最近の体制整備によりまして効果があらわれてきていると認識しております。また、法改正による出願数の増大が見込まれる状況のもとで、審査を適正かつ迅速に行うことは極めて重要な課題であると考えております。 したがいまして、今回の法改正を契機に、審査の効率化、合理化と必要な体制の整備充実につきまして、十分意を用いていく所存であります。
○菅原委員 以上で終わります。
○北村委員長 以上で菅原喜重郎君の質疑は終わりました。 次に、中林よし子さん。
○中林委員 今回の法改正は、植物品種育成者の権利を強化して育種振興の基盤強化を図るもので、必要かつ妥当なものだと考えております。 農水省の資料によれば、品種登録した育成者の内訳は、個人が三一・六%、企業五〇・〇%、農協二・四%、都道府県一〇・八%、国五・二%となっています。企業では、野菜でタキイ種苗、サカタのタネが代表的な会社で、市場流通のかなりの部分を占めていると言われております。 海外でも、農薬会社が種苗会社を買い占めるなどの企業の寡占化が目立っていると指摘されています。我が国でも、近年のバイオテクノロジー等先端技術の利用進展により、この傾向はますます強まるとも推測されます。 日本共産党は、権利が企業にあるからといってこれを否定するものではありません。その技術力を植物育成や農業生産に生かすという立場に立つものですが、同時に、寡占化が進展することによって、種苗法の目的である「品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与すること」、とりわけ流通の適正化が阻害されるような事態は避けなければならないと考えております。 個人の育成者が三一・六%と大変大きな役割を担っているわけです。私自身、島根で、白カブの登録を持っておられる方のお話を聞いたわけですけれども、この新種をつくり出すまでに三十年かかった、生活の大半は育成のために費やしていると、苦労話を語ってくださいました。企業の寡占化によってこうした個人の育成者の人たちの苦労が損なわれることがないようにすべきだと考えますが、大臣はこの点でどのようにお考えでしょうか。
○島村国務大臣 個人による育種につきましては、近年、年間の出願件数が二百件以上と、引き続き活発に取り組まれております。特に花あるいは野菜、果樹等の育種では、種苗会社の育成品種と比べて遜色のない、特色ある新品種が育成されております。 改正種苗法案は、このような個人の育成者の権利も他と全く平等に充実、保護するものでありまして、特に、みずから新品種を商品化する資力を持たない個人でも、種苗会社に利用権を設定することにより、育成者の成果を普及させることを可能とする制度を導入することとしております。このように、今回の改正案は、企業による育種の寡占化につながるものとは考えておりません。 また、我が国農業の多様性にかんがみれば、新品種の育成におきまして個人育種家の果たす役割は今後も変わらず重要であると考えております。このため、国、県等の試験研究機関等による育種技術の開発普及、あるいはジーンバンク事業を通じた育種素材の提供等の育種支援策を講じてまいる考えであります。
○中林委員 本法案では新たに従属品種という概念を導入されているわけですが、一部を変化させて育成された登録品種の育成者権の、そこにも効力が及ぶものになるわけですが、この一部の範囲をどうとるかというのが大変問題です。 この点で、従属品種の関係では、国際的にも議論になって、ガイドラインの設定の試みもされましたけれども、議論が煮詰まらなかったというふうに聞いています。結局、当事者同士の話し合いにゆだねることになったと聞いているわけですが、こうなると、力の強い企業が従属品種の範囲を大きく解釈して別の育成者の開発した品種に権利行使の圧力をかけるなど、権利の乱用が起こらないようにする、そういう歯どめのためのルールづくりが早急に求められていると思うのですけれども、この点について、どのようなスケジュールでガイドラインなりそういうものをおつくりになっていく考えなのか、お答えいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 従属品種というものの概念ははっきりしておりまして、ある品種のわずかな特性を変化させて育成された品種で、変化した特性以外はもとの品種の特性をそのまま維持しているものということでございます。 これにつきましては、従属品種になるものの出願がありましたときには、登録されるということになりますと、登録された品種の育成に関する資料とか特性を公表することになっております。したがいまして、これらの客観的資料をもとに、法で定める、ただいま申し上げた概念を充足するか、あるいは、どの程度もとの品種に依存しているかということは、当事者間で判定、確認できると思います。 ただ、そうはいっても、お話のように、まだ事例も少なく、あるいは、ガイドラインをつくるということではなくて、当事者間で決定されるべきである、こういうところが現段階でございます。 したがいまして、農林水産省といたしましては、そういった客観的資料で判定可能とは思っておりますが、なお国外を含めました事例を収集し、それを集積する、一種、判例を積み上げるようなものだと存じますけれども、そういうことで情報を提供し、関係者間の円満な関係の形成に努めてまいりたいと考えております。
○中林委員 さらに従属品種の問題でお聞きするわけですけれども、親と子といいましょうか、二者の育成者の権利、許諾料について、許諾料の分 配、これはどのようにして決めていくのか。親から生まれた新しい品種と、双方に許諾料を払うことによって価格がはね上がらないか、こういう心配があるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
○高木(賢)政府委員 一般的に申し上げまして、種苗の価格は売り手と買い手の間で決まるわけですけれども、販売価格がその効果に見合わないというごとであるとすれば、それは、その種苗は農業者に選択されない、別の種苗を用いる、こういうことになりますので、価格がその価値以上に上がるということは極めて考えにくいと存じます。これは、その品種が従属品種であっても全く同様の事情にあるというふうに考えられます。 種苗の利用によって得られる利益、許諾料の配分についてでありますけれども、その場合には、二人の権利者の間で、要するに、もとの品種の持っている特性の価値がどの程度かということで、それが高ければ、もとの品種の育成者の取り分が多くなるということで、これはなかなか一概に、七対三だとか六対四だとかということは、非常に個別性が強いものですから、言いがたいというふうに思っておりますが、いずれにしても、寄与割合といいますか、そういうもので分配されるというふうに考えております。
○中林委員 次に、仮保護制度の導入についてお伺いするわけですけれども、これは育成者からは大変喜ばれる制度だというふうに、直接お話も聞いているのですが、これに伴った具体的な悩みも出てきております。 一つは、出願内容の公表、周知徹底、これはどのようにされるのかという問題。 それから、先ほどの同僚議員の質問でも出ておりましたけれども、仮保護制度の導入によって、申請のときに、もう登録される名称をつけておかなければならないということになるわけです。今までは、県の試験場などは、特産にしたいときなどは、広く愛称になる名称を一般公募してきたということで、かなりよい名前をつけてきた経緯があるわけですけれども、これなどはどういうぐあいに対応していけばいいとなるのでしょうか。
○高木(賢)政府委員 まず、出願の公表でございますが、官報に出願者の氏名とか住所とか農林水産植物の種類、品種名などを告示して行う考えでございます。官報だけでは不親切でございますので、その情報につきましては、印刷物を作成して関係機関や団体へ配布する、さらにはインターネットによっても提供して、利用者に広く周知を図るというふうに考えております。 次に、仮保護制度との調和の問題でございます。 仮保護制度というものの趣旨を貫徹するということになりますと、その期間におきまして品種の名称が自由に変更されるということですと、これは保護の対象が何であるかということにつきまして、流通あるいは生産現場に混乱を生じかねない。したがって、出願された名称を自己の都合で変更するということは認めておらないわけであります。 しかしながら、改正種苗法案では、これまで譲渡していると認めないとしていた要件を緩和いたしまして、未譲渡性の要件を緩和いたしまして、出願の一年前までは譲渡したものも認められるということになっております。出願の一年前までの期間内に、試験販売するなり試験供与するなり、見ていただいた上で、名称の公募を行って、そして出願するということが可能でありまして、これが両者の調和点であるというふうに思いますので、関係の方々によく御理解を賜って御活用いただくということにしたいと思います。
○中林委員 条約で二重保護禁止規定が削除されて、各国の裁量に任せられることになって、育成者が特許取得できる可能性が非常に大きくなったわけです。今までは、特許の方は余りなかったというふうにお聞きしているわけですけれども、今後、バイオ技術の進展あるいは遺伝子組み換えで開発されたものについて、その技術とあわせて、当該技術を組み込んだ品種そのものも特許になる可能性もある、そういうふうに考えるわけです。その際、育成者がどちらの法律によって保護を求めるか、また両方の申請をするのか、特許と種苗法の品種登録双方が適用されることもなしとは言えないというふうに思うわけです。 その場合、特許権は農家の自家増殖にも及ぶことになると思うのですね。そうすると、農業生産への利用が不自由となって混乱が生じるおそれも否定できないというふうに思うわけですが、この点について特許庁はどのようにお考えなのか、それからまた、農水省はどのようにお考えなのか、それぞれ御見解をお聞きしたいと思います。
○山本説明員 お答え申し上げます。 特許権の効力の範囲につきましては、最終的には司法の場で判断される問題でございますけれども、今、特許権の効力が自家増殖に及ぶかどうかということにつきましては、特許権者の方で、種苗の販売に当たって特に自家増殖を制限するというような旨の特段の意思表示を行わない場合には、逆に許諾があったものとみなされる、こういう解釈が特許法の方では一般的に行われておるわけでございます。 すなわち、特許権は、論理的には自家増殖に及ぶということになりますけれども、実際には、自家増殖を行っておられるというような農家の伝統あるいは習慣が尊重されるというふうに考えておりまして、実際の場面において問題が生じることはないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
○高木(賢)政府委員 農家の自家増殖につきましては、特許権者が種苗の販売に当たって自家増殖を制限するという旨の特段の意思表示を行わなければ、許諾があったものとみなされるということが、特許法の解釈として一般的であると、ただいま特許庁の方の御答弁がありましたが、私どももそのように考えておりまして、実際の現場で問題は生じないものと考えております。
○中林委員 次に、今後バイオテクノロジーや遺伝子組み換えなどでさまざまな品種が生まれてくることが予想される件について、ちょっとお聞きしたいと思うのですが、特に遺伝子組み換えの安全面の懸念がいろいろな形で出されております。 そこで、種苗について、この点はどういうふうに表示をされるのかということが一点です。 それから、大臣にぜひお答えいただきたいのですけれども、実は、昨年、我が党の藤田スミ議員がこの委員会で、遺伝子組み換え食品の表示の問題を大臣に要求したところ、当時の藤本大臣が検討を約束されて、そして昨年五月三十日に、食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会が設置され、遺伝子組み換え食品の流通実態を踏まえた表示のあり方を検討することを開始されたわけです。それから約一年が経過しようとしているんですけれども、いまだ、動きが私たちのところに伝わってきません。 しかし、今マスコミでも、表示は急げ、こういう論調になってきておりますし、それから、全国の地方議会なんですけれども、これは五月六日時点で、表示をすべきという意見書が九百十三自治体、それから消費者団体の要望書が二百二十八団体、署名が五十万人。ちなみに、厚生省に対しても実は意見書が出ておりまして、全国の地方自治体から、千四十二自治体から出てきております。 これは、新しい法律をつくらなくてもできるということでございますので、大臣の判断でできるはずだというふうに思うんですが、表示は直ちにやるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○島村国務大臣 お答えいたします。 遺伝子組み換え食品につきましては、一昨年、厚生省により、大豆、菜種等の安全性が確認され、市場流通が現実のものとなったことから、消費者等から、遺伝子組み換え食品であることの表示を求める声が高まっていることは承知をいたしております。 一方、遺伝子組み換え農産物につきましては、従来の農産物と実質的に同じものである場合には区別が困難なことから、表示を行うためには、生 産から流通の各段階において区分する必要があること、また、加工食品におきましては、すべての原材料についてもとの農産物の素性にまでさかのぼることは極めて困難なことなどから、表示に関しては多くの問題が介在しているところであります。 このため、農林水産省といたしましては、昨年五月より食品表示問題懇談会を開催いたしまして、遺伝子組み換え食品の流通実態を踏まえた表示のあり方について検討を願っており、この検討結果を踏まえ適切に対処していくこととしております。 なお、これを大臣の権限で迅速に進めろ、こういう御要望でありますが、まず、本懇談会では、昨年五月から既に八回開催いたしておりまして、遺伝子組み換え食品の表示のあり方について、広く有識者、関係者からヒアリングを行うとともに、消費者の要望や生産、流通の実態、コーデックス委員会の検討状況、諸外国、すなわちEUなどの取り組み事例等を踏まえつつ議論を進めておるところであります。現在は、これまでの議論を踏まえて論点を整理しつつある段階でありまして、今後、一定の議論の集約が可能な段階で取りまとめを行っていただくこととしております。
○高木(賢)政府委員 種苗の場合につきましては、例えば種苗が除草剤耐性の機能を持っている、そういう遺伝子組み換え技術を用いた種苗である、こういう情報は、それを購入、利用しようとする農業者にとっては決定的に重要な要素であります。むしろ、販売する人の意識におきましては、セールスポイントだということで積極的に表示を行っているのが実態であると思います。この点、食品の表示の問題とは全く状況が異なっているというふうに考えておりまして、現段階におきましては、種苗について表示義務を課するというところまでの必要はないと考えております。
○中林委員 大臣の御答弁で、もう一年かかっているわけですね。これだけ煮詰まってもきておりますので、あえて、きょうはその話ではありませんので御要望しておきますけれども、早急に表示をしていただくように要求をしておきます。 最後の質問になりますけれども、品種登録出願件数が年々増加して、未処理の件数がかなりふえてきているということが先ほどから随分論議になっております。 私、農水省の方に聞きましたら、それを審査する審査官が現在十三人いらっしゃって、その内訳を聞いたら、分野別に見ますと、草花が十人、野菜が一人、果樹が一人、それから麦や米、大豆などが一人ということで、草花の十人はそれぞれ兼務もあるんだ、こういうお話でしたけれども、やはりいかにも少ないというふうに思いました。 しかも、年々品種登録件数がふえておりますから、一人の審査官の扱い件数ですけれども、これが膨大になっているということです。一九八八年、一人扱い件数が三十三件だったんですけれども、去年、九七年は六十四・九件になっている。確かにコンピューターの導入などで処理件数はふえたといっても、二倍近くになっているというのは、やはり労働強化になっているんじゃないかなというふうにも思えるわけです。 ですから、どうしても、ことし三人ふやすんだという答弁が先ほどからいろいろありましたけれども、やはりこれから登録件数がふえてくることにかんがみれば、もっともっと審査官はふやす必要があるのではないかというふうに思います。 最後に大臣にぜひ御答弁をいただきたいと思うんですけれども、育成者の方あるいは試験場の方から切実な声として、農業者や国民が求めていることに心を砕いて新種の開発に心がけても、申請から登録まで年数がかかり過ぎると時期を失することがある、開発までにかなりの年数をかけているので、ぜひ審査期間は短くしてほしい、こういう要望です。 本改正案の趣旨と重大な意義を踏まえて、検査官等の増員について抜本的な対策をとり、審査期間の短縮と未処理件数の一掃を図る必要があるというふうに思うのですけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。
○島村国務大臣 新品種の出願に対しまして的確かつ迅速な審査を行うことは、品種登録制度の運営のかなめである、こう認識しております。 そういう意味で、審査の迅速化につきましては、審査官の増員を図るなどいろいろ配慮しているところでございますし、最近それなりの効果が出ていると報告を受けておりますが、さらに、今後出願件数の増大等も予測されることから、これらに十分対応していけるような体制の整備に努めていきたい、こう考えます。
○中林委員 以上で終わります。
○北村委員長 以上で中林よし子さんの質疑は終わりました。 次に、前島秀行君。
○前島委員 二、三質問いたします。 今度の法改正が保護対象の拡大あるいは育成者の権利の強化ということでありますから、当然歓迎すべきことでありますが、同時に、このことが農林水産業の振興発展に結びつかなくてはいかぬということは、皆さんの御主張はそのとおりだろうと思うし、同時にまた、最近特に観賞草花の拡大あるいは人気ということを考えると、消費者という概念、消費者の側ということも非常に大切な視点ではないだろうかな、私はこういうふうに思います。 片っ方で、育成者あるいは専用利用権者等の保護、権利を拡大していきますと、いわゆる農業者との調整というのは、自家増殖を認めるという形で一定の調整ができますけれども、結果的に、最終的な消費者の側の不利益というものも心配されなくはない。特に流通段階におけるさまざまな行為といいましょうか、円滑に行われるのか、あるいは公平が確保されているのかということも大切なことだろうと私は思います。 そういう面で、今回の法改正、すなわち対象の拡大、育成者の権利の拡大が、農業者との調整もさることながら、消費者にとっても利益になるように、あるいは不利益をこうむらないように、とりわけ流通段階における公平という観点も重視しなくてはいかぬのではないだろうか、そんな心配をいたします。 そういう面で、その辺のところの受けとめ方と対応についてどうするのか、ひとつ考え方をお聞かせいただきたい。
○高木(賢)政府委員 今回の種苗法の改正案は、育種の振興を目的としたものでございまして、新たな品種が開発されますと、それが農業者の品種選択の自由度を増したり、また、その結果できます農産物の種類が多種多様になりまして、消費者の利益にもかなうというふうにつながっていくであろうというふうに思います。 その場合に、登録品種が農業者なり消費者に広く利用される、あるいは消費されていかなければ、これは意味がないわけでございまして、そういった方に活用されていくようにしていかなければならないというのは御指摘のとおりだと思います。ただ、現実の問題といたしまして、競争の状況にもよるわけでございますが、非登録品種を含めまして、ほかの代替品種が多数流通しているというのが我が国の状況でございますから、流通の段階で育成者権者が権利を不当に乱用して、新品種の利用を制限するとか、不当に高く値段をつり上げて利益を得るということは、我が国の実態からするとそうそうはないのではないかというふうには見ております。しかし、もちろんその可能性がないということを言えるわけではありません。そのおそれに対しては適切に対処しなければならないということは御指摘のとおりだと思います。 そこで、そういう仕組みとしましては、この種苗法案の二十八条に裁定制度というものがありまして、登録品種の利用を行わないでいる場合、あるいは、需要があるのにもかかわらず二年以上利用がされていない場合とか公益上必要な場合、こういう場合につきましては、裁定制度で、育成者権者の意思にかかわらず、裁定によって通常利用権を設定できる、こういう制度がございますので、これの積極的活用によりまして、何といいま すか、活用渋りというのがあるとすればそれに対処する。 それから、不当な取引制限なり不公正な取引方法ということでありますれば、これは独占禁止法に触れる問題でありますので、積極的にこの運用をして対処したい、このように考えております。
○前島委員 流通段階の公平ということは、ぜひいろいろ配慮していただきたいと思います。 それから次に、育成者の権限が侵害された場合の対応なんですが、三十三条で差しとめ請求ができる、あるいは予防請求ができるということになっているのでありますが、恐らくその辺のところの争いとなるのは、先ほどから議論になっている自家増殖だとか栄養繁殖だとか、あるいは従属関係等々の見方といいましょうか、判断の仕方だろうと。これは私なかなか正直言って、理屈では言うけれども、実態的には難しい側面があるのではないだろうかなと。それを裁判でとか、あるいは法律的に、こうなってくると、私は相当時間もかかるだろうし、あるいは経費的にもかかると。それで、結果として育成者が権利の侵害に対して十分な対抗ができないという事態が現実に想定されるような気がします。 そういうことを考えますと、やはり三十三条に基づいて、最終的にはそういう法的措置というのは保障されているのだが、日常的、現実的に、やはりそこのところをお互いに調整し合うといいましょうか、あるいは自主管理し合うとかというものがあることの方が、結果において、現実的には育成者の権利を保護していくような道になるのではないだろうかなというふうにも思ったりするわけであります。 そういう面で、三十三条の法的対応もありますけれども、日常的にといいましょうか、通常の利害の調整というふうなものをどう考えていくのか。何か機関的なもの、あるいは行政指導的なものを考えているのか、その辺のところの考え方をお聞かせいただきたいと思います。
○高木(賢)政府委員 育成者権行使にかかわる問題につきましては、御指摘のとおり、当事者間で調整がつかない場合には、最終的には司法の判断にゆだねる、こういうことになるわけでございます。 しかしながら、当事者間で話し合って何とか解決が可能であるという限りは、それによることが好ましいものと考えております。したがいまして、今年度予算に計上いたしまして、紛争の当事者によります円滑な解決の指針となるマニュアル、この作成を進めたいと思います。 どういう内容かといいますと、権利行使あるいは権利侵害の未然防止、あるいは権利侵害に対する解決方法というものに関しましてのマニュアルづくりでございます。いろいろ、本当に難しい問題が多々ありまして、どの程度の精度に上がるかというのはいろいろな事例を積み重ねなければならない部分もございますが、関係者の意見も十分聞いて、できるだけ精度を上げていきたいと考えております。
○前島委員 先ほどバイオテクノロジー、とりわけ遺伝子組み換えの安全性の問題について御議論がありました。時間がありませんから聞きませんけれども、私も、やはりここはいろいろ対応が求められているような気がいたします。今後のいろいろなことを想定しますと、このバイオの研究ということは必要でしょう。種苗の世界でも必要でしょうけれども、やはり国民の側から見ると、安全性について、まだ一定の不安があることは事実だろうと思います。それを単に表示というだけで対処するのではなくして、安全性そのものについて、やはりまだまだ議論が必要ではないだろうかな、そういう点もあろうと思いますので、その点について、ぜひ今後もやはり農林省としても検討を重ねてほしいなという要望を述べておきます。 最後に、大臣に伺います。やはりこの種苗産業の世界もなかなか厳しい側面があって、輸入の方が増加、輸出はどちらかというと横ばい、減少の傾向があるというふうな点も数字的に出ているようであります。また、種苗というのは農業にとっての基本的な資材でもあるし、非常に重要な産業と位置づけなければならぬだろうなとも思っています。そういう面で、この種苗産業を今後どういうふうにしていこうとするのか、この辺のところの考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○島村国務大臣 お答えいたします。 我が国の種苗産業は、その育種技術が高く評価されている野菜や花卉の分野を初めといたしまして活発な事業を展開しており、優良な種苗の供給を通じて農林水産業の発展にも大きく貢献しているところであります。 この種苗産業の振興を図ることは、農業生産の発展を図る上でも重要なことでありまして、このため、遺伝資源の収集、提供、あるいはまたバイオテクノロジー等先端技術を応用した産業技術開発に対する助成措置、そして国立試験研究機関における共同研究の推進等の施策を講じ、種苗産業の振興を図っているところであります。 我が国種苗産業が優良種苗の供給という役割を果たしていけるよう、今後も適切な支援措置を講じていく所存であります。 以上であります。
○前島委員 終わります。
○北村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○北村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○北村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
○北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二十八分散会