国際問題に関する調査会 第2号
- 発言数
- 46 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1997/02/12
会議録
○会長(林田悠紀夫君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 去る七日、赤桐操君が委員を辞任され、その補欠として照屋寛徳君が選任されました。 ―――――――――――――
○会長(林田悠紀夫君) 理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○会長(林田悠紀夫君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に照屋寛徳君を指名いたします。 ―――――――――――――
○会長(林田悠紀夫君) 国際問題に関する調査を議題といたします。 本日は、本調査会のテーマである「アジア太平洋地域の安定と日本の役割」のうち、アジア太平洋地域における経済と経済協力の在り方について三名の参考人の方々から御意見をお伺いした後、質疑を行います。 本日は、参考人として、日本経済新聞アジア部長長谷川潔君、成蹊大学教授広野良吉君、慶應義塾大学教授竹中平蔵君に御出席をいただいております。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。 参考人におかれましては、御多用中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。 参考人の方々から忌憚のない御意見を伺い、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。 議事の進め方でございますが、長谷川参考人、広野参考人、竹中参考人の順序でそれぞれ三十分程度御意見をお伺いいたします。その後、二時間三十分程度質疑を行いますので、御協力をよろしくお願い申し上げます。 なお、意見、質疑及び答弁とも、御発言は着席のままで結構でございます。 それでは、まず長谷川参考人から御意見をお述べいただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。長谷川参考人。
○参考人(長谷川潔君) 御紹介いただきました日本経済新聞の長谷川でございます。 三十分ということですので、かなりはしょった御説明になるんではないかと存じますが、これからお手元にお配りしてあるレジュメに基づいて御説明いたします。 初めに、私は、もう随分前ですが、学生時代に伊東光晴教授のゼミで経済発展論というものを勉強しました。その当時の東南アジアを対象にいろいろ経済開発の政策を勉強しようと思ったわけなんですが、一九六〇年代後半でございまして、ベトナム戦争はまだ続いておりました。その当時読んだ本は、皆さんも御存じかもしれませんが、ヌルクセとかロストーとか、ビルマ人の経済学者であるミントとか、そういった方々の本を読みました。 結局、当時は経済政策を語るよりも政治の安定というものがまず第一で、国際政治に翻弄される東南アジアというような感じがございまして、まだまだ開発を論ずる段階ではないというような時代状況でございました。そして、突き詰めていきますと、経済開発を促すには教育のあたりからやっていかないとまずこの国々の発展を語ることは難しいのではないか、ある意味でそういった絶望感を覚えたのを記憶しております。 その後、私は一九八七年から九〇年にかけてタイのバンコクに特派員として駐在し、インドシナ諸国や今のミャンマー等を取材いたしましたけれども、学生時代に考えていたアジアとは全くさま変わりのアジアを見ることができました。 なぜそんなに変わったのかということをまず申し上げたいと思います。私の生の経済を見てきた目では、やはりこれは何といっても一九八五年九月のプラザ合意、ニューヨークのプラザホテルで開かれたG5、今はG7ですが、当時の五カ国蔵相・中央銀行総裁会議の場でドル高是正、したがってその反対の円高への誘導を目指す合意がなされた、そのことが今日のアジア経済の発展の引き金になっただろうと思います。 それで、どんなふうに円が動いたかというのは、お手元の資料の六ページの真ん中の表、為替レートの年平均の推移というのがございます。プラザ合意があった年がざっと二百四十円程度、それから八八年にかけて百二十円台に円が突入していきます。つまり、円の価値が倍になってしまう、ドルの価値が半分になってしまうという中で、日本の輸出産業を中心に、企業がこれでは日本からの生産輸出は難しいということで、タイ、マレーシア、インドネシアヘと出かけていくきっかけになった。 そのころ、日本企業だけではなく、アメリカは韓国や台湾にも通貨調整を迫りまして、結局、韓国はややおくれるんですが、台湾がみずからのチャイニーズコネクションといいますか、華僑人脈を伝ってタイやマレーシアといったところへまた投資をしていく。つまり、日本企業を先頭とする投資がアジア経済のかなり火つけ役になったと言えるかと思います。 そして、その後冷戦が終結し、中国を先頭にベトナムといったような、またミャンマーは少しいろんな問題を抱えながらですが、独自の社会主義から市場経済へと転換していく。冷戦終結前に動きは始まっておりますが、そういった東側の壁が崩れて、市場経済の世界へ流れ込んでいくというような動きも加わりまして、アジア経済全体は、よく雁の列に例えられますけれども、日本を先頭にその後にNIES四カ国・地域、韓国、台湾、香港、シンガポールが続く。その後にASEANが位置し、さらにその後に中国やベトナムあるいはミャンマーが並んできて、最近ではインドがその後に続く。雁の隊列は非常に大規模なものになってきています。 しかし、よく見ると、例えば繊維産業なんかを例にしますと、見事に分業が前の列から後ろの列へと受け渡され、資本や技術も後ろへ受け渡し、そして前の方の国々が市場を提供していくというような分業がなされていたんです。 最近では、半導体をとってみてもマレーシアは既に後工程から前工程の方へ、つまりより付加価値の高い先進国の技術レベルの方向へと進んできておりますし、自動車もタイあたりではもう世界の幾つかの輸出基地の一つになるだろうという方向へ動いております。という意味では、分業の姿というのは必ずしも繊維なんかを例にしたときのようなきれいさはありません。順番といえば、飛び級を後ろの方の国はやったりしておりますけれども、雁行隊列は非常に大規模な状態になってきている、これがアジアの一つの発展の姿と言えるかと思います。 具体的に、次のレジュメの一番というところを見ていただきたいんですが、アジアの経済のイメージというのは、アメリカへの輸出が大きくて日本がその次ぐらいだろう、そして地域内の輸出というのはさらにその後だろうというようなイメージがございますが、この十年間でさま変わりに貿易構造も変わりました。 そこに書いてありますように、これは九五年のIMFの統計をもとに私どもで生計算したものなのですが、例えば東アジア九カ国・地域、これは中国とNIES四つ、それからシンガポールはNIESでもありますのでシンガポールを除いて、ASEANのタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンの主要四カ国をとった九カ国・地域の統計です。域内への輸出の比率は三六・四%、アメリカ向けの輸出は二〇%ちょうど、対日輸出の規模は一三%強。既にアメリカと日本への輸出を合計したものよりも、自分たちの域内へ出す輸出の比率の方が高い状態になってきております。 これは輸入を加えた全貿易で見てもほぼ同じような傾向が言えます。そして、世界貿易シェアで見ますと、ここに書きましたように、東アジアのシェアが一八%ということでアメリカの一三%を上回り、日本の八%をも大きく上回る貿易シェアを持っております。 ちなみに、お手元の資料の五ページの一番上の表を見ていただくとおわかりになると思うんですが、一九八五年当時、これはプラザ合意の年でございますが、東アジア向けの輸出は二六%、それに対して北米向けが三〇%を超えております。日本向けが二八%。この北米と日本を足すと五割近い輸出比率になっていたんですが、九四年になりますと、ここに書いてあるように東アジアが三八・五%、日本が一二%、北米が二四%というシェアになってきております。 先ほど御紹介しました九五年の数字、実はこれ少し御説明しなければいけないんですが、台湾の統計入手がおくれました関係で、台湾の金額が第一・四半期しか九五年は入っておりません。したがって、第二・四半期から第四・四半期の数字も加えますと、今の九四年並みの三八%台の域内向け輸出比率になるかと思います。 次に、投資の方も、先ほど申し上げましたように最初は日本がまず主役だったわけですが、最近では日本と台湾、韓国といったNIES勢がほぼ肩を並べる投資元になってきております。 お手元の資料の三ページの右上の表を見ていただきますと、NIESと日本、それにアメリカの対ASEAN投資のプラザ合意後の推移が書いてございます。プラザ合意後しばらくは日本が断トツの投資規模を誇っていましたが、九〇年代に入ってからはNIESが日本を抜いたりあるいはときどき日本が上回ったり、そういった格好になってきております。 九五年は半年分しか書いてありませんが、実際には日本がやや上回りまして、ASEAN向けの日本の投資は百二十六億ドル、NIESのASEAN向け投資は百十一億ドルとなって、日本が若干盛り返しております。九〇年代前半、日本のバブルが破裂したというようなこともありましてやや日本が伸び悩みぎみの投資だったのに比べ、NIESの方が勢いがついていたということが言えるかと思います。 対中投資でも、香港と台湾で大体七割程度を占めるんですが、この場合は、香港の投資の中にはいろんな投資が入ってきております。例えば、タイの会社が香港に会社を設立して中国投資をする場合は香港を経由するというようなこともありますので、必ずしもそのまま香港と台湾の投資というふうには言えないかと思いますけれども、それにしても、統計だけを見ますと香港と台湾で大体毎年外国の対中投資の七、八割を占めるといった状態になってきております。 したがいまして、これも東工大の渡辺利夫教授が、最近、東アジア経済は自立の要素を極めて強く持ち出したということを言われておりますけれども、私どもの新聞がそういった動きを報じるのとほぼ同時期でございます。この渡辺先生の御主張にいろんな異議を挟む声もちらほらとは聞こえますが、基本的な動きとしては、先生のおっしゃっていることは間違いないだろうと、私どもも実際の生の経済を見ていて感じております。 そして、技術なんですが、技術はまだまだ日本に優位性があると思われますけれども、いろんなところでそうでない現象が出てきております。 例えば、アセンブリーの技術で言えば、必ずしも日本に全面的に依存しているわけではございません。マレーシアのプロトン社が最初に選んだのは三菱自動車でございました。三菱自動車の技術を導入することでプロトン・サガという車を生み出して現在大変な人気車になってきているわけなんですが、マレーシアが第二の国民車をつくるときに選んだ提携相手はフランスのシトロエンでした。 そして、例えばインドネシアの国民車問題というのは、現在日本政府もWTOに訴えて、非常に不公平な扱いをしているのではないか、WTOの内外無差別の原則に反するのではないかということでWTOで議論を始めておりますけれども、インドネシアが自分たちの国民車をつくろうとして選んだパートナーは、韓国の起亜でございます。 そして、インドの自動車、今、日本のスズキ自動車が大変なシェアを持っておりますが、どんどん出てきておりますのは韓国のメーカーであったり、アメリカのメーカーであったりしております。 ただ、技術的にも分散傾向が出始めたわけなんですが、部品の技術はやはり日本は大変な力強いものがございます。 例えば、マレーシアの人たちが今何をやっているかといいますと、ミッションを組んで大田区の蒲田へいらっしゃって、我々のところへ出てきてください、あるいは出てこられないのでしたら、部品の技術を出してくださいというようなことを一生懸命やっております。韓国や台湾の先例がありますので、アセンブリー技術だけでやっては、部品を日本に頼らざるを得ないのでは結局貿易赤字が残ってしまう、輸出は伸びても資本財あるいは部品、中間財の輸入がふえ、貿易の赤字構造がなかなか改善できていかないという学習効果もあると思うんです。 例えば、タイが今やっていることは、私はこちらのタイの公使でBOI、ボード・オブ・インベストメント、タイの政府の投資委員会の日本代表であるソンポンさんという方と親しいのですが、彼とこの前会って話しました。去年彼は二回目の日本駐在に来たわけなんですが、去年一年間でもって日本で五十四回のセミナーをやった、これは投資誘致セミナーです。主な誘致業種はどこに重点を置いているのかという話を聞きましたら、結局彼らは、部品産業、中でも自動車の部品産業を何とかタイに誘致してタイで育てたい、そして自立してすそ野から自動車産業をつくり上げていきたいということを語っておりました。 今、ここで申し上げたいことは、技術的にも部品では日本はまだ強みも発揮しておりますけれども、アセンブリー面ではいろんな選択、アジア側から見て選択は必ずしも日本だけではなくなってきたということを申し上げたいと思います。 そして、こういった貿易とか投資とかが、プラザ合意後さま変わりに構造的な変化を起こしてきた結果、経済規模は、ここで書きましたように、日本を含めたアジア、アメリカ、EU十五カ国、この三極がほぼ同じ経済規模の地域になってきております。そこに書きましたように、九五年のGDPで見ますとアジアと米国が七・二兆ドルということで、全く偶然ですがほぼ同じ規模になってきております。一年前の統計で恐縮ですが、EUがやや大きな規模で七・三兆ドル。 ただ、資料の三ページの左上の表を見ていただきますと、これはアジア開発銀行が十一月に出した昨年の見込み及び九七年の見通しの経済成長率ですが、ここで見ましても南アジアを含めても七・三%程度の成長をことしも続けるだろうと。 世界銀行も昨年の末ごろ、昨年はスローダウン、成長率が少し減速いたしましたが、九七年にはやや回復するんではないかという見通しを出しております。 いずれにしましても、七%台の成長を続けますと、御承知のとおり、大体十年間で経済規模は倍に膨らみます。そうしますと、東アジアは現在二・一兆ドルしかございませんが、これが今後十年たちますと日本の経済規模に近づいてくるだろうということを考えますと、今後、二十一世紀前半にかけてアジア地域が世界最大の経済地域になるということは間違いないだろうと思われます。 そして、東アジアがどんどん発展していく裏側で日本で何が起きているか。これは予想以上に空洞化が進んでいるということが言えると思います。 お手元にある資料七ページの下の表をごらんいただきたいんですが、これは私が数カ月前にシャープの副社長の桂さんという方とお話ししていて、こういった便利な表を彼御自身でおつくりになっている。公表されているデータを彼自身がまとめられているということでお借りしたんですが、海外事業をずっと長年おやりになってきていらっしゃるこの副社長の表によりますと、下の段は日本電子機械工業会とか通関統計から拾い出した表なんですが、左から二番目のBという日系海外生産の、その右端のB割るAプラスBというこの数字を見ていただきたいんですが、これは何を意味するかといいますと、日本の企業が海外で生産している台数、数量を国内生産と海外生産を足した合計で割ったものです。 これを海外生産比率と呼ぶとしますと、カラーテレビは一九九五年では八三%台です。これはある程度わかる、もう想像がついていたことですが、より付加価値の高いより部品の集積度が高いVTRでも、これはマレーシアが中心になっていると思いますが、六割を超している。電子レンジではもう七割。そして、多分日本の独壇場であろう、日本が供給ソースだろうと思われていました複写機でも既に四割を超える海外生産比率に達しているということになっております。こんなふうに日本の主力、リーディング産業の空洞化は大変な勢いで進んでいると言えるかと思われます。 そして、その上に、自動車あるいは鉄鋼なんかを含めました日本の国内生産台数がピーク時に比べて何%の水準に来ているか、一九九五年の時点で。一番右端の数字がピーク時に比べた生産の比率でございます。これを見ましても、これはバブル後の生産減というような要因もあります、必ずしも空洞化だけではありませんが、ピーク時への回復はなお距離があるなということが言えるかと思います。 ただ、東アジアは元気だけれども、日本はゼロ%成長が三、四年続き、しかも昨年は二%台の経済成長になったけれどもことしはまた一%台に落ちそうだという見方で、かなり日本自身は、閉塞感という言葉が新聞に出ない日はないほど暗い中に閉じ込められているような印象がございますけれども、私自身はこんなに元気な経済が隣の地域にあるということは日本にとって非常に幸いなことではないかというふうに考えております。分業の仕方とかいろんなことをうまくやっていけば、アジアという隣のところで安い土地があり、日本に比べればはるかに安い賃金の労働力があり、いろんな資源、原材料もあるという地域がすぐそばにあるということは日本経済にとってはプラスだろうと思います。 もはや日本の経済は、日本の産業界にとっては、プラザ合意後は輸出を目的とした進出でございましたけれども、現時点ではそれこそグローバルな視点から、何をどこでつくりどこへ売るか。これは後ほど申し上げますが、アジア自体が大きな市場になりつつあります。何をどこでつくりどこへ売るかという視点でグローバルな戦略を立てる時代に入ってきている。プラザ合意後十年でそんな時代に入っているなということを実感しております。 時間もなくなってきておりますので、最近のアジア経済の状態及び展望に触れたいと思います。 アジア経済は、昨年は成長率にしますと一ポイント程度、あるいは国によってまちまちでございますが〇・何ポイント、押しなべて成長率がやや下がりました。原因は国によってまちまなんですが、一つには、例えばマレーシアのような国でいえば、半導体不況、エレクトロニクス不況といったことが輸出に響きました。 韓国を例にとりますと、これは円安で日本の製品に競争力が出てきてしまったということが響いております。韓国の現時点での主な輸出商品というのはほとんど日本と同じものであります。自動車、半導体、造船、ほとんど日本の輸出主力商品と同じものをつくるようになった。実は日本は石油ショック以後、プラザ合意、そしていろんなバブル後のリストラということで、日本の競争力を高めようとする、コストダウンの努力は延々と続けてきております。 一方韓国は、私は今でも思い出すんですが、一九八八年のソウル・オリンピックのときに三星電子にお邪魔したことがございます。そのころ、三星電子の壁には「V700」というスローガンが張ってありました。これは何を意味するのでしょうと聞きましたら、たとえ一ドル七百ウォンになっても我々は採算がとれる、利益が出せる体質を目指すんだという標語ですという説明でした。 そのころ、一ドルで八百ウォンを若干切るような為替状況、先ほど申し上げましたように、八五年のプラザ合意後のアメリカの通貨調整を迫る圧力を受けて、若干ウォンが高くなっていく状況がございました。しかし、その後八百ウォン台に行きつ戻りつしまして、現時点では八百六、七十ウォンまで下がっております。ウォンはドルに対してそうした非常に楽な思いをその後してきております。 その結果、韓国の輸出産業の競争力が極めて弱いものになってきております。つまり、例えば円が八十円台、九十円台になってきているうちはまだ韓国の類似の商品に競争力がございましたが、円が百二十円ぐらいまで戻ってきますと、韓国の競争力は見事にはがれてしまい日本のブランドには全く太刀打ちできないという状態になってきております。 そういうわけで、韓国の競争力、まあ造船なんかを見ますと典型例ですが、造船では一時、九三、四年ごろ世界一になりましたけれども、日本が造船ではかなりリードする状態がまた再び出現するというような事態になってきております。 韓国の上場企業の利益率をグラフにとって、ウォンと円の関係をグラフにとりますと、見事に円安になると同時に韓国の上場企業の利益率が平行線をたどって落ちてきております。これがそういったことをある意味で裏づけているかなと。現在、三星電子の利益も昨年は十分の一ぐらいに減ってしまいました。現代自動車のストだとかいろんな要因もありますけれども、現代自動車も現時点でとればひょっとしたら赤字ではないかと言われております。韓国はそういった円安のマイナスが非常に大きいと言えるかと思います。 中国は、これは朱鎔基副首相を筆頭とするインフレに対する引き締め調整を二年間続けてきておりました。そして、南の方で特にシンセンとか広東で大きいのですが、不動産投機というバブルがありまして、それが破裂しております。 私、せんだってシンセンとか上海の方等を見に行ったんですが、特にシンセンはひどいですね。建ちかけた高層ビルが途中で工事が放棄され、ストップされて幽霊ビルのようになっている、そういったビルが何軒もあります。そして、田舎から出てきた出稼ぎ労働者は職もなく、路上にたむろし非常に危険な町になってきております。中国も南の方ではバブルがはじけております。そういった調整という減速要因もございました。 そして、例えばタイで言いますと産業構造の調整ということが現在行われております。昨年はタイの輸出がここ十数年来初めてだと思いますが、前年に対して〇・何%マイナスになりました。これは繊維産業、食品加工、雑貨、これは運動靴とかそんなたぐいなんですが、そういった上位の輸出産業、リーディング産業だとかそういう産業が中国やベトナムなどに追い上げられ、輸出競争力を失ってきた。そして、タイの人に一体これからどうなるのと聞きましたら、彼らが期待しているのは現在輸出の第二位の産業になってきておりますコンピューター部品、半導体、それから自動車産業にこれからの輸出を託したいと。 自動車は、この前、投資担当の首相府大臣が来ましたのでお話ししていましたら、トヨタがアジアカーを既に発表し輸出を始めます。三菱自動車は既に輸出を年間四、五万台の規模でやっております。フォード、マツダも輸出を目指して新たな工場をつくる。そして九八年だったかもしれませんが、GMがタイに量産工場をつくります。オペルをつくる。そして、アジア向けに輸出を考えているということで、現在タイの市場規模は六十万台弱なんですが、二〇〇〇年には生産力が百万台から百五十万台ぐらいにふえる。そのうち二十万台から三十万台は輸出に回せるだろうということで輸出構造が大きく変わる、いわば高度化されるという方向へと今、産業構造を調整している最中でございます。 今、非常にタイの人たちの所得がふえております。アジア全体でも、中国にしてもGDPの統計を見ますと一人当たりにしますと五百ドルぐらいの経済ですが、華南地方、上海を見てみますと、もう既に三千ドル程度の規模にはなっているだろう、一人当たり。上海の経済圏を見ますと、江蘇省、浙江省を合わせただけで一億数千万人の規模を持っております。広東省にしてもしかり。日本と同じような国が、中国の中の地域ですけれども結構高い所得を持つ経済としてどんどんあちこちにできていると言えると思います。 タイで言いますと、例えば現在、文科系の大卒で八千バーツぐらいとるでしょう。一バーツ五円と計算してください、そうすると四万円ぐらい。 あそこは共稼ぎの世帯がほとんどですから、一世帯にしますと八万円ぐらいの世帯収入にはなる。 私が会社に入った昭和四十六年といいますのは月給五万円でしたが、その当時既にモータリゼーションは起きていました。そして耐久消費財は買えました。そういう経済段階にもう来ているということが言えると思います。 私、昨年の十一月ごろインドの方にも行きまして、首相にもインタビューさせていただいたりしたんですが、あそこは今九億人ぐらいは確実にいるわけで、ひょっとしたら十億人いるかもしれません。統計ははっきりしておりません。しかし、あそこの中間層が一五%いるとしますと、それだけで日本を上回る人口規模になる。 あそこの中間層は今やスズキ・マルチという、日本ではアルトという軽自動車ですが、あれを買うことを目指して、そしてビデオテープレコーダー、VTRを買うことが中間層のシンボルだと言われております。そういった中間層の拡大というものが経済、消費を非常に牽引していけるだけの力をつけつつあるのが今の東アジアの経済だろうと思っております。 それともう一つ、これは両刃のやいばではあるんですが、経済成長に追いつかないインフラという問題があります。したがって、インフラ投資というのは非常に需要が大きいです。アジア開銀の調査では、九五年から二〇〇〇年までに一兆ドル、五年間で一兆ドル需要があると、年間二千億ドル。世界銀行の予測ですと九五年から二〇〇四年までの十年間で一兆四千億ドル前後のインフラ需要がある。インフラというのは港湾とか通信とか道路とかなんですが、そういった投資機会があるということであります。 しかし、これは日本のODAやそれぞれの国々の政府資金では賄い切れない膨大な金額であります。したがって、せんだって十一月に開かれたAPECでは、APECはビジネスである、APECは民間の参加をこれから進めていくんだという合意がなされましたけれども、民間の参加が必要な時代に入ってきていると。とりわけインフラを整備していかないと成長を続けることが難しい時代に入ってきているということだと思います。 したがいまして、投資機会はあるんだけれども、その投資機会をうまく官民の資金で満たしていかないと成長のボトルネックが生ずる可能性がある。港湾の能力が足りないとか通信、通信は比較的やさしい部分だと思います、それから電力が足らないとか、そういった事態が起きる可能性があります。したがって、これはプラス、マイナス両面を持っているということだと思います。 時間もややオーバーぎみですのでまとめに入りますけれども、私自身は、いろんな要素、いろんなマイナス点、今後を展望する上でマイナス点も考えなければいけないけれども、先ほど申し上げました、購買力が拡大している、投資機会が大きいというようなことを踏まえまして、私自身は長期的にはアジアの経済はやはり伸びていくだろうという、どちらかといえば楽観論の立場に立っております。 大変有名なアメリカのエコノミストで、今はMITに戻ったと思いますが、ポール・クルーグマンさんという、将来ノーベル賞を受けられるんではないかという有望な若手エコノミストの方が「幻のアジア経済」という論文をフォーリン・アフェアーズの九四年の最後の方の号で書きまして、アジアの成長というのは結局物量投入による成長である、資本や人員を物量で大量に動員して成長してきた成長であって、生産性の上昇による成長ではないと。したがって、こういった物量動員型の成長というのは、かつてのソ連のゴスプランにおける計画経済下の成長と同じようなものであって、長続きするものではないという悲観論を述べました。 今、このクルーグマン論に対する反論はいろんな格好でなされておりますが、私自身も、先ほど申し上げました理由とか、そしてクルーグマンさん自身アジア経済のミクロの実態を御存じないがゆえにいろんな誤りを犯しておられると思います。 一つだけ例を申し上げますと、生産性上昇への誘因、インセンティブが働くのは、やはり賃金がある程度上昇し、労働力が人手不足になってくるというような状態になってきたときに企業としていろいろ生産性上昇のための工夫をされる事態になる。私はインドのマルチの自動車工場を見ましたけれども、そこで鉄板を打ち抜いてプレスをして次の工程へ運ぶのは人手です。 普通、日本の工場ですとすべてトランスファーマシンという吸盤ロボットのような腕が出てきて横に移すだけなんですが、そういった投資をするよりも人手でやった方がまだ採算的には有利であるという状態のところがいろんなところにあります。そういったアジアの経済が民間主導で発展してきたという事実をなぜソ連の計画経済と比べられたのか、これがよくわかりません。そんなことを感じております。 少し長引きましたけれども、そんなところでとりあえず私の御説明は終わらせていただきます。
○会長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。 次に、広野参考人にお願いいたします。広野参考人。
○参考人(広野良吉君) ありがとうございます。 お手元に私のレジュメが入っておりますが、このレジュメに従ってお話をさせていただきたいと思います。 一九五〇年代からちょうど約四十年になりますけれども、その間にいろんな途上国をたくさん私自身研究対象にして回ってまいりました。最初は、当然日本に近いというところで韓国あるいは東南アジアということでしたが、その後やがて南アジアあるいはまたラ米、それからアフリカと、現在もサブサハラアフリカの問題にかなり傾注しております。そういうわけで、途上国全部で百四十四カ国回ったわけですけれども、そういう自分自身のいろんな広範にわたる途上国での経験、あるいはたくさんの大学で教えてきたり、あるいはまた国際機関に勤めましたので、いろんなところで仕事をしてまいりました。 そういう中で、特にアジア太平洋地域というのは、私は最初に一九六〇年、シンガポールに行きまして、ちょうどシンガポールの独立したときでございますけれども、そのときからアジアにかかわってまいりまた、そういうわけで、過去三十七年間のアジアとのかかわりの中で私が感じた事柄、見てきた事柄、こういうことを今まで私は大学の人間としていろいろ論文で書きましたけれども、きょうはできるだけきょうのテーマに沿った格好で申し上げたいと思っています。 まず第一に、アジア太平洋地域の経済発展ということですが、この点につきましては、もう既に長谷川さんの方からるる御説明がありましたので、私はできるだけこれは短く申し上げたいと思います。 高い経済成長は普遍的か、とんでもありません。 高い経済成長のあった国々もあるし、高い経済成長を持てなかった国々は現在でもアジアにはたくさん存在します。そういう意味で、私たちは東アジアの奇跡とかいろいろ言いますけれども、それはあくまでも高い成長をした国々のことを指しているわけであって、低い成長をした国々のことを指しているわけじゃありません。そういう意味で、決してこれは普遍的なものではない、ばらつきがあるということ、これは非常に重要だと思います。 特に、私たちがアジア太平洋と言うときに、アジアの中に何を入れるかということが重要なんですけれども、このアジアの中に特に南アジアを入れた場合に、過去においてはかなり低成長であったこともあったということです。 次に、高い経済成長は恒常的かというと、これもとんでもありません。皆さん方のお手元に差し上げておりますけれども、六〇年代から見ると、例えば東アジアというのを見ますと、かなり高い成長をしております。これは第一表にありますが、一九六〇年代の七・七%から一九九〇年代の七・二%ということで、かなり高い成長ですが、南アジアは、そこにありますように三・七%、それから一九九〇年代は約五・一%と見られております。こういうようなことで、当然この過程で高いときもあったし低いときもあったということであるわけです。 ただしかし、東アジアを見ると平均的にかなり高い成長を維持してきたのは六〇年代からで、約四十年間続いているということであって、そういう意味では非常に驚異的であるということは言えると思います。 それから三番目に、その経済成長の高低の決定的な要因は何であっただろうかということを考えるわけですけれども、これは一般に言われているのは次の六つの要因であると言ってよろしいと思います。 まず第一は、先ほど長谷川さんの方からお話がありましたけれども、当然政治的な安定ということが重要ですし、それから第二番目には有能な人材が豊富に存在する、それから三番目には旺盛な企業家精神、四番目には適切なマクロ経済政策、五番目にはある程度すぐれた官僚体制、それから六番目には高度経済成長に対する強い政治的な指導力、こういう六つの要因というものがあったところではかなり高い成長があった。 しかし、この六つの要因が存在しなかった、あるいは一つ、二つ、三つの欠けていたところではこういう成長が見られなかったということで、これらの六つの要因がかなり国内的な要因としては重要であったと言われております。 しかし同時に、国内的な要因だけでアジアの国が発展したんじゃなくて、やはり国際的ないろいろ要因もあったわけであって、これは皆さん方がよく御存じのように、特に六〇年代そのものから見られたところの、まさに日本自身の経済成長あるいは高度成長、あるいはまた欧米を中心としてかなり積極的に行われたいわゆる保護貿易から自由貿易への方向、特にガット体制の強化、やがてこれがWTOになるわけです。 こういう中で日本自身も貿易の自由化をしていったということ、これも彼らにとっての非常に大きな励みであったし、また同時にそういう中で、今お話がありましたとおり、日本の企業も直接投資によって、技術移転その他を通じてかなり高い成長に貢献したと言ってよろしいと思います。 しからば、その高い経済成長はあったんだけれども、その影はなかったのかというと、影は存在しました。特に、私、六〇年代からずっとアジアを回っておりまして、先ほどもちょっと長谷川さんに申し上げたんですが、ぜひ一九六〇年当時の日経新聞の論説を読んでくださいと。実は日経新聞の論説にはこういうことが書いてありました。 すなわち暗黒のアジア、アジアというのは発展しないものだという考え方。この考え方は日経だけでなくて朝日新聞その他すべてがそういう論調でした、当時は。そういう意味で、アジアは発展しない、そういう言い方をしておりました。しかし、御存じのように、アジアは発展したわけですね。だから、いかに新聞論調が間違っているかということの一つの非常にいい例だと思います。 これは、何もその当時の新聞記者が悪かったということじゃないと思います。やはりこれはかなりの皆さん方がそう信じ込んでいたということであって、私はそれを信じなかった人間の一人としてうちの大学で主張して、アジア経済論という講座を初めてつくりました。そういうわけで、私自身はかなり昔からアジアに夢を持ち、かつアジアにかけてきた、こういう人間であるわけです。 そういう中で、どういう影が存在するかということをちょっと簡単に申しますと、次の五つの点を申し上げたいと思います。 まず第一には、こういうような国においては、大変残念ながら所得の格差、富の格差が非常に拡大しております。これは非常に激しいものであって、これはアジア諸国をごらんになった皆さん方にとっては、もう既に御自分で確かめたことだと思います。 それから第二番目には、地域間の格差、これも非常に拡大しております。ここにちょうどタイからの先生も来ておられますけれども、タイの東北地方のあの貧しさというのは本当に恐ろしいものであって、こういう地域間の格差というものが拡大しているということ。 それから三番目には、都市化、都市の人口がどんどん肥大化しているということ。これは無計画な都市の人口の肥大化でございます。 それから四番目には、何といっても環境の破壊が行われているということ。これもひどいものであって、私はアジアの国へ行くたびに、過去三十数年前にシンガポールに行ったときに、当時リー・クアンユーがまだ総理大臣になったばかりですが、彼といろいろ議論しました。どうやってシンガポールを発展させたらよろしいかということを、リー・クアンユー並びに当時のホン・スイ・センとかゴー・ケンスウイ、当時大蔵大臣をやっていましたが、そういう連中と一緒に議論しました。 そういうときに、やはり私が彼らに強調したのは、ちょうど一九六〇年の日本が、私はたまたまその年にアメリカの大学で教えていたのが終わりまして日本に帰ってきたんですが、東京の公害問題が非常にひどい問題になりつつありました。まだ所得倍増計画がこれから始まるというときに、もう既に東京の公害問題はひどいわけであって、そんなわけで絶対にいわゆる目に涙が出るようなそういう経済開発はやってもらっては困るというのが、私のリー・クアンユーに対するたった一つのお願いであったわけです。環境と両立するような経済開発をやってほしいというのが私のリー・クアンユーに対するお願いでした。 さすがに彼は立派なもので、それをきちんと守りまして、その後シンガポールはかなり環境と両立する経済開発をやってきた非常に少ない一つの途上国である、例外であると言ってよろしいと思います。 それから、最後の第五番目の大きな影は何かというと民主化の抑制、あるいは民主的な勢力の抑制です。こういうことが東アジアではたくさんの国で行われました。もちろんお隣の韓国しかり、中国その他いろんなところでこういう民主勢力の抑制が行われまして、こういうような古い思想が私から見ると高度成長のもとにある大きな影かなというふうに感じます。時間がありませんので細かな点は省きます。 次に、アジア太平洋地域の経済発展、現在から将来を見た場合にどうなるかということ。 たまたま三十数年間のいろんな経験がありますので、どうしてもアジアの国へ参りますといろんな方々から、特に政治的な指導者あるいは産業界の方からよく聞かれます。一体我々の国は今後どうなると先生はお考えですかということがあるわけです。 これはまだ石油ショックの前でございますけれども一九七二年、ちょうどシンガポール・テレビでもって私いろいろお話をしたわけですけれども、そのときにシンガポールは一体将来どうなるだろうかという話がありました。その中で私は、すなわちその後十八年たってからですけれども、一九九〇のシンガポールはどうなるだろうかということで、実はシンガポールの一人当たりGDPは一万ドルを超すということをテレビで申し上げました。 そうしたらすごい反響で、とんでもないと。先生は余りにもプロ・シンガポールである、もうちょっと現実的になってほしい、そういうコメントをたくさんいただきました。しかし、御存じのように実際に一九九〇年にはシンガポールは一万ドルを超したわけですね。ですから、そういう意味で我々は非常に楽観的な予測をすることもできます。しかし、同時にまた悲観的な予測もできます。 特に、私がきょうここで強調したいのは、楽観的な予測をしているところの幾つかの研究機関、このアジアにはたくさんの研究機関があるわけですが、こういう研究機関がそろって集まったある会合が、これはシンガポール大学に附置してありますISEASという東南アジア研究所というところで会合があったわけです。私も出席しましたけれども、そこでいろいろやったときにかなり楽観的な予測が出ました。この楽観的な予測は皆さん方のお手元の統計表に出ておりますけれども、これは一九九二年から二〇二五年という推計値が出ております。 ここではかなり楽観的な評価をいろいろしているわけですが、大変残念ながらまだ日本の工業水準は低いとみえて、私がマーカーでやったところが消えちゃっております。これはマーカーでいろいろやってあって、そこを見ると一目瞭然にわかるように書いてあるんですが、大変残念ながらこのマーカーが消えちゃいましたのでちょっと見ることができませんが、少なくとも一九九二年から二〇二五年を見ますとおわかりのように、シンガポールは一九九二年の段階でUKの一人当たりGDPを超しております。 それから、ずっと下へまいりますと、シンガポールは、ここに書いてありますけれども、年数で申しますと二〇一〇年には日本の一人当たりGDPを超しますし、また同時にアメリカの一人当たりGDPを超します。そういうことでかなりシンガポールの発展は明らかです。イギリスを超し、日本を超し、アメリカを超す、こういうことですね。 それから、韓国についても当然早い段階でイギリスを超しておりますし、やがて最後にはアメリカに接近する、こう出ております。台湾についてはもう既に二〇二五年にはアメリカを追い越す、こういう形になっております。もちろんシンガポールはもう既に追い越しております。 こういうことで、いろんなアジアの国々がかなり今後も成長するというようなシナリオがここに出ております。そのときに使ったいわゆる成長率についてのパーセントはその下に書いてあります。 なお、こういう楽観的な予測をする背後にはどういう背景があるかというと、二つあります。 一つは、これらの国が政治的な安定を維持することができ、先ほど申しましたもろもろの要因が今後も支配する、こういうようなことが一つ予想されております。それから第二番目には、やはりWTOのもとでの開放的な経済体制が、世界の国際的な経済体制が維持される、こういうことが前提でございます。そういうことが維持されなくなれば、当然こういうような楽観的な予測は外れるということであります。 なおかつ、そこには書いてありませんが、ここにもう一つの大きな彼らの信念が、信念といいますか確信があるわけであって、それは何かというと、我々の国、我々というのは東アジアの国ですが、我々の国では外部の変化に対する対応能力がすばらしい、こういう考え方を彼らは持っているわけです。 これは、特に華僑の人たちを中心に、先ほど長谷川さんの方からお話がありましたとおり、特に東南アジアにおいての直接投資を見ても、確かに華僑系の直接投資が既に日本の直接投資を上回るという状況ですから、そういう意味で華僑系の企業がいかに外的な変化に対してうまく対応しているかということのあらわれである、そういうものが彼らにとっての大きな確信になっていると言ってよろしいと思います。 それから、悲観的な予測でございますが、今ちょうどお話がありましたのでこの点深く申し上げませんが、ポール・クルーグマンのようなああいう考え方はまさに悲観的なものであると。しかし、そういうポール・クルーグマンのような考え方というのは、私たちアジアのことを長く研究してきた者からすると子供のような考え方であって、余り価値のない考え方であると考えております。 それから次に、第三番目に、二十一世紀初頭の先進国と途上国、アジアの途上国でございますけれども、これは先ほどごらんになりましたとおり、二十一世紀の初頭における、特にここにあります西暦二〇一〇年から二〇二五年を見ますと、まさにこれは先進国入りしているところの途上国がかなりアジアでは多くなってくるということです。もう既に韓国は昨年十二月にOECDに加盟いたしましたけれども、やがていろんな国々が、まさにもしそういうような状況が来れば加盟できるような実質的な内容を持ってくる、こういうことではないかと思います。 そういうことを考えますと、後からちょっと申し上げますけれども、アジアの国の相当数がいわゆる先進国になってくるということになってまいりますと、私たちは当然今後アジアとの経済的なつき合いをどうするかということを考えなくちゃいけない。特にODAをどうするかということは、これは真剣に考えなくちゃいけない問題であると。これはまた後に申し上げたいと思います。 それから四番目に、こういうようなアジア諸国においては国内矛盾はどうかということですが、これはもちろん激化してまいると考えております。国内矛盾の激化は、先ほど申しましたとおりいろんな面に影があるわけですが、その影が今後も拡大する、こう見たらよろしいと思います。影が縮小するという方向を私たちはもちろん期待したいわけですけれども、大変残念ながら影が拡大するであろうと。 私は、たまたま中央環境審議会の委員として今環境問題を一生懸命やっているわけですが、アジアの国々を回って、実際あらゆる国を回ってまいりました。そして、彼らの国の環境政策をずっと検討してまいりましたけれども、どの国においても、環境庁とかそういうものをつくったりすることはしますけれども、あるいは国会の中に環境委員会をつくったり、国会議員の皆様方を前に大変失礼な言葉ですけれども、そういう言ってみれば上辺でやるということですね、そういうことはよくやりますけれども、しかし内容的に言うと本当に恐ろしいものがあります。 予算に占めるところの環境関係の予算も非常に少ないわけですし、また、大変失礼な言い方ですが、お隣の中国のように環境よりも開発だということをはっきりとおっしゃっている国もあるわけであって、特に我々ODAとの関係で中国をよく訪ねます。 例えば、酸性雨の問題にしましても、中国はまだ相変わらずああいう状況で、一つの例を申しますと、例えば一昨年の八月、中国は環境法を改正いたしました。環境法を改正したけれども、それがどうなっているかと申しますと、酸性雨が厳しいという地域については発電所に脱硫装置をつけなくちゃいけないというふうに変わったわけです。 ところが、そこに三つの大きな落とし穴があります。こんなことを言っては失礼ですけれども、ただこれは中国政府に私申し上げておりますから全然失礼だとは思いませんけれども、第一は、酸性雨が厳しいという地域はだれが指定するのか、これは中国政府が指定する。日本政府は指定できませんね。それから第二番目に、新しい発電所には脱硫装置をつけるということです。現在ある一千以上の発電所には脱硫装置をつけなくていいわけです。これが第二番目。 三番目は、脱硫装置をつけると書いてあるんですけれども、じゃどういう規模の脱硫装置をつけるのか、これが全然書いてありません。そういうわけで、もちろんいろんな施行細則が出てきて、そういうことでいろいろこれから中国もやっていくと思いますが、少なくとも私が見る限りはまだまだ真剣でない。 ただ、大変うれしいことには、中国も昨年あたりから、一昨年の環境法の改正を通じてかなりそれに対して前向きの姿をとり始めた。我々が聞いたところでは、環境を破壊しているような企業は閉鎖しつつあるというのを聞いております。この点についてはもっと実際に実地に調べてみたいと考えております。 それから、第五番目のアジア太平洋地域の経済発展のもとにおける対外摩擦の多様化と多角化ということです。 この点につきましては、以前から、特に七〇年代、輸出志向型の工業化政策を彼らがとり始めましてから、かなりアメリカを中心に貿易収支の赤字、こういうようなところから、例えばMFA、マルチ・ファイバー・アグリーメント、繊維の多国間取り決めに見るように、特定の商品に限定して、アメリカがかなりそういうことで、言ってみれば貿易上の摩擦を起こしたアジア諸国に対して、これは日本を含めてですけれども、いろんなことを言ってまいりました。これが七〇年代、八〇年代の摩擦だったんですが、これからの摩擦は非常に変わってまいります。もう既にその典型が出ております。 まず第一には、アジア諸国の域内でのお互いの摩擦がふえ始めたということ。これがまず第一。これは特にASEANとNIESの間ですね。 それから第二番目、これは対米、対EUとの摩擦の中で今まで考えられなかったような摩擦が起こってきている。それは何かというと、人権問題である、あるいは民主化の問題である、こういうこととの関連でいわゆる摩擦が生まれつつあるということです。 それから、三番目には対日摩擦です。日本との摩擦でございますが、これは今中国との関係で特に環境問題の摩擦があるわけです。そういう環境問題での摩擦だけでなくて、例えば特定商品について、やはり日本自身の高度成長がここまで鈍化し停滞してきている中で、日本自身もいろんな意味で産業構造の高度化を今後していかなくちゃいけない。しかし、いろんなところで問題があるわけであって、そういう特定商品に関する摩擦が対日摩擦の中でもこれから起こってくるであろう、こういうふうに考えます。そういう意味では、以前の摩擦とは違った大きな変化がこのアジア諸国の中で起こりつつあると言ってよろしいと思います。 第四番目に、じゃ一体このアジア太平洋地域における経済発展に、日本は経済協力を通じてどういうふうに貢献してきたのかということでございますが、この点につきましては、特に貿易と直接投資については、今長谷川さんの方からるるお話がありましたので、私はODAのことでちょっと申し上げたいと思います。 私自身は日本の対アジア、特に東アジアに対するODAの点では非常に高く評価しております。すなわち、途上国の開発能力、私たちはキャパシティービルディングと言っておりますけれども、その開発能力の向上に日本のODAは非常に貢献しました。これは私は世界に誇っていいと言っております。 たまたま離日、青年海外協力隊、これは若人で海外へ出ていく人々なんですが、その人々の特別講師を私は過去数十年やっておりまして、その中できのうも若人に申し上げたんですけれども、アメリカの援助、一九四五年以降のアメリカの援助にはプラスとマイナスがあった。マイナスは何かというと、冷戦体制のもとでのODAであると。冷戦体制のもとでのODAですから、そう言うと失礼な言い方ですけれども、たくさんの途上国を甘やかしてしまったということです。これがアメリカのODAの非常に大きなマイナス。 プラスは何だったかというと、アメリカにたくさんの留学生を入れてきた。その留学生たちが、それぞれアメリカで勉強し、やがて本国へ帰っていき、そこで政治、産業その他いろんな分野、科学、技術の分野で指導者になっていった。その人たちがアメリカに対して言ってみれば物すごく好感を持っているということですね。そういう意味で、アメリカに対して親米派を彼らはつくってきた、これがアメリカのODAの非常に大きな効果である、こういうふうに非常にはっきりと私は裏づけております。 それから、EU、ヨーロッパ諸国のODAがどういう点で失敗したかと申しますと、ほとんどのヨーロッパの諸国は、アフリカあるいはその他に植民地をかつて持っておりました。そういう植民地を持ったところは、何しろかつての植民地といい関係を維持したいということだけを彼らは考えてきた。全然哲学がない、これがヨーロッパのODAです、哲学なしのODA。そういうわけで、ヨーロッパのODAというのは、まさにかつての植民地と何とか関係を維持したいということだけですから、彼らがやってきたことは、本当に残念ながらほとんど効果がなかったというのが私のヨーロッパのODAに対する評価です。 これからすぐ本になって出ますけれども、私、世界からたくさんの学者に集まってもらって、過去三年間かけてEUとアメリカと日本のODAの比較研究をいたしました。その比較研究をいたしますと、いかにアメリカのODAのプラス・マイナス、それからヨーロッパのODAのマイナスが目につくかということです。ヨーロッパのODAのプラスはほとんどありませんとはっきり言ってよろしいと思います。 しかし、ヨーロッパといっても北欧は違います。 デンマーク、オランダ、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、これは大したものです。ですから、私が言ったヨーロッパというのは主に西欧、かつてのEC、そういうヨーロッパであって、その後EUに入ってくるであろうノルウェーと入ってきたスウェーデン、フィンランド、これはまた違います。 次に、そういうような意味で日本のODAは非常に大きな貢献をしたんですが、何を貢献したかということを申し上げたいと思います。 まず、何といっても、日本のODAの貢献はインフラの整備、これは大したものです。私、今まで長い間、ODAをいろいろ日本の政府との関係でやってまいりましたけれども、その自分自身の経験からしますと、よくこういうことを言われるわけですね。ODAというのは比較優位があっていいであろうと。すなわち、日本は日本の比較優位に基づいたODAを行う、ヨーロッパはヨーロッパ、アメリカはアメリカの比較優位に基づいたもので行うということを私は今まで主張してきたわけですが、事実、東南アジアのいろんな国々の指導者と話しますと、やっぱり日本のインフラ整備というのは本当に助かった、今後もお願いしたいということですね。 もちろん、日本のODAがだんだんと量的には拡大も難しい時代になってまいりましたので、インフラ整備にどれだけのODAを出せるかというような問題があるし、またアジア諸国ももっと経済成長してまいりまして、果たしてODAを受ける資格があるかどうかという問題も出てまいります。そういう中で民活方式というのが出てまいりましたので、先ほど長谷川さんも触れましたように、そういう方向が今後大いに期待されるんではないか。ODAと民活をうまく利用する、直結させるということではないかと思います。 それから同時に、日本のODAの大きな貢献は技術協力です。人づくりです。この人づくりでもって日本のODAは非常に大きな貢献をしてまいりました。特に現地に専門家が行っていろんな形でやってまいりました。研修もたくさん行ってまいりました。そういう意味で、日本のODAは非常にアジア諸国の経済発展に人づくりという面で貢献したと言ってよろしいと思います。 しかし、そういう面で貢献したことは事実だけれども、もっと貢献できたんじゃないかなと、そう思います。この点については最後のところで申し上げたいと思います。 それから、途上国の生活水準の向上云々というのも、先ほどもう長谷川さんの方からもお話がありましたので述べません。 四番目に、途上国の経済成長の影の拡大に警笛を鳴らしてきた先進国と途上国の良心と国際機関の先見性ということです。これはどういうことを申し上げたいかといいますと、やっぱり途上国の経済成長にこういう影があるということを、我々、特に先進国のいろんな学者あるいは政府の方々、あるいはNGOもいろいろ警笛を鳴らしてまいりました。 そういうような先進国の人々の警笛、特に環境問題、民主化の問題、あるいは所得の不均衡の問題、都市化の問題、こういうことでいろいろ警笛を鳴らしました。途上国の方にもそういうような警笛にこたえていろいろ考えてくださった良心があります。また国際機関も、私、たまたまUNDP、国連開発計画というところに昔おりましたけれども、ここでもいわゆるヒューマンディベロプメントというようなコンセプト、人間開発というコンセプトを出しまして、その方向で一生懸命やってきました。そういう意味で国際機関にも先見性があったと思います。 こういうような警笛に対して途上国がどういうようなことをやってきたかと申しますと、それに対して一部では努力が見られますけれども、必ずしも私は十分な努力ではない、これが非常に残念でございます。 それから最後に、経済協力の一層の効率化を阻止してきた既得権益集団ということを申し上げたいと思います。 何事もそうですけれども、何らかの資源の移転ということがありますと、特に私たち、皆さん方もそうですが、我々は納税者ですので、納税者として自分たちの税金が効率的に使われるということを最も期待したいわけです。そういう意味で、我々は効率化を物すごく期待するわけですが、しかしどんなところでも何かをやろうとすると、ODAも全くそうですが、制度化されてしまうわけです。制度化されることによって、どうしてももっと効率化したいんだけれどもなかなかそうは簡単にできないという点がいろいろあります。 それは、もちろん既得権益集団がいるからですが、この問題を私たちは現実的に考えなくちゃいけないわけであって、既得権益集団がいるからこそいろんな意味でODAに熱心な方々がいるわけですので、そういう意味で、既得権益集団そのものが悪いということではなくて、これをうまく利用する、そして効率化に持っていくということが重要ではないかと思います。 会長、時間はあと何分ぐらいいただけるんでしょうか。もしいただけるのだったらもう少し。 よろしいですか、二、三分。
○会長(林田悠紀夫君) それでは五分お願いいたします。
○参考人(広野良吉君) どうもありがとうございます。 そこで、第五番目に入りたいと思います。 アジア太平洋地域における日本の経済協力、現在から二十一世紀へという将来を見たことでございますが、まず第一に私が国会議員の皆さん方に訴えたいのは、小さな集団主義から地球大の利益という地球市民の視点を持つような、そういう日本の経済協力をこれから考えていただきたいということです。 あくまでも小さな集団主義、すなわち特定の、うちは大蔵省であるとか、うちは建設省であるとか、できるだけそういう縦割りということをもちろん認識した上で、しかし同時に地球大の利益ということを考えて、地球市民の視点を入れた形でもって、我々は、このODA、経済協力をもっと考えていただきたい、これが第一です。 それから第二番目には、市場の効率性。何といってもマーケットというのは非常に効率的なものであって、もちろん不完全競争というような言葉があるとおり、そういう非効率的なところはありますけれども、少なくとも法的整備その他をすれば、監視役をちゃんとやればかなり効率的になるわけであって、そういう市場の効率性をできるだけ公共支援の方に入れていく。そういう意味では競争原理の導入ということ、これをあらゆる分野で一層やる必要があるのではないか。もちろんこれは 一般入札の問題も当然です。 それから三番目には、公共政策の公正原則あるいは長期的視点、これを今度市場行動へと。 私はたまたま、経済同友会という日本の産業界のグループがありますが、そのメンバーです。学者で経済同友会のメンバーというのはたった二人しかおりませんけれども、少なくとも我々経済同友会の中でいろいろ議論していく中で何をやっているかというと、できるだけ民間企業の方々が、やはり市場の効率はいいけれども、同時に効率だけが唯一の基準ではありませんよと。やっぱり公正の問題あるいは長期的な視点というものをぜひ入れて、企業の社会的責任ということをはっきりやってほしいということを我々は経済同友会の中で訴えておりまして、経済同友会でもかなりその方向がはっきり毎年の声明の中にうたわれております。 そういう意味で、ぜひ市場の各主体の社会的責任ということを強化した、また強化するような方向をこれから出していただきたい。 それから四番目には、これはちょっと一つ言葉が抜けておりますので、後から訂正いたしますが、政府主導から国民参加へと。 今国会において市民活動法案が出るということで、私は非常に意を強くしております。私自身もこの市民活動法案を一生懸命やってきた人間として非常に意を強くしておるわけですが、その国民参加というのは、ここに書いてあるとおり自由と民主、これは自由と民主だけでは自由民主党のようになってしまいますので、そうじゃなくて、これは自由と民主と、その後に公正を入れてください。公正という言葉がちょっと抜けましたので。 それから、自由と民主と公正を基盤とした市民社会の形成、これを本当にしっかり考えていく。 そのためには、皆さん方にあっては市民活動法案をぜひ通過させていただきたい。そして、今までの我々の念願であったこれを法律化して、そして、日本もいわゆる欧米の市民社会と同じような方向で、市民社会として一歩を踏み出すということをぜひお願いしたいと思います。 それから第五番目には、既存の国際的な秩序・体制擁護から新興国・集団支援へということでございます。 すなわち、私たちはどうしても日米欧体制というような格好で日米欧、これが世界の経済の七八%を占めているというところから、日米欧というその経済体制を大切にしてG7とかG5とかいろいろ言ってきたわけです。そういう日米欧が大切なことはわかりますが、同時に、ぜひ皆さん方、六十年前を振り返ってほしい、日本の六十年前。 日本がまさに、いわゆる欧米列強諸国が国際経済をコントロールしているときに我々が入ってきたわけです。我々は、ある意味ではカルテルバスターになりまして国際経済に躍り出たわけですね。その日本を排撃しようとしたのが欧米諸国です。しかし、我々は断固として欧米諸国と戦って、戦ってというのはいい意味で戦ったんですけれども、我々はやってきたわけですね。 それで、常に権力を持った連中は自分たちの権力を保護しようとします。しかし新興勢力、かつての六十年前の日本はまさにそうであった。七十年前の日本はそうであったわけです。あるいは八十年前の日本はそうであったわけですけれども、そういう日本と同じような国が今どんどんアジアを中心に出てきているわけであって、ラテンアメリカでも御存じのようにブラジル、アルゼンチン、その他いろいろな国が出てきております。 そういう意味で、こういう国を私たちが側面から支援するというのはやっぱり日本の役割ではないか。日本というのはかつて欧米列強時代に戦ってきた国であって、私たちは今度戦うときに受け身になるのではなくて、そういうような新興国を助けていく、そういう形の中で、より自由と民主と平等というものに基づいた地球的な市民社会をつくっていくという方向で我々がやっていくことが日本のあるべき姿である。そのためには恒常的な改革が重要です。改革は一回限りではない。 常に改革をしていくということが重要であって、こういうことをぜひお願いしたいということです。 それから最後に、これはちょっと刺激的な言葉ですけれども、無防備なグローバリズムから現実的・建設的な域内協力の強化に基礎を置いた国際的連繋へということをお願いしたいということです。 何をもって私は無防備なグローバリズムと申しますかというと、それは今申しましたように、何しろ欧米の列強、今は列強という言葉は使いませんが、欧米諸国とくっついていけばいいんだと、欧米諸国にくっついていけば何とか日本もやっていけるんだという、これが私にとっての無防備なグローバリズムです。欧米諸国にくっついていこうとする日本を必ずや彼らは見放すときが来ます。だから、そういう意味で欧米諸国に単にくっついていくような形じゃいけないんです。そうじゃなくて、欧米諸国も刺激して、彼らをアクティベートして、今申しましたように、新興工業国あるいは途上国の味方になるような方向に日本が働きかけていくということ、こういうことが重要です。 このためには、私自身のこれは一つの信念のようなもの、一つの宗教のようなものですけれども、それは東アジアにおいても私たちは経済協力をもっともっと強化していく。マレーシアのマハティールさんのいわゆるEAECとは違いますけれども、オーストラリア、ニュージーランドを含めた格好ですが、私たちはこの東アジアに東アジア経済協力機構的なものをつくっていくということが重要です。 そういうような形でもって、我々が欧米とともに、あるいは欧米をアクティベートし、そして途上国あるいはより貧しい国々と一緒になって新しい国際的な経済秩序というものを考えていくという、それが日本の役割ではないかと思います。 以上でございます。ありがとうございました。
○会長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。 次に、竹中参考人にお願いいたします。竹中参考人。
○参考人(竹中平蔵君) 御紹介いただきました慶應大学の竹中です。きょうはこういう形で意見を述べる機会を与えていただきまして大変うれしく思っております。 今、両先生が既にもう大変たくさんのお話をされまして、私が用意していた話は、正直なところかなりオーバーラップしております。同じ話をしても恐らく皆さん眠くなるだけだと思いますので、ちょっとレジュメとは少し離れるかもしれませんけれども、お二人の先生方のお話を聞いて私なりにちょっとポイントを絞ったお話をぜひさせていただきたいというふうに思います。 本題に入ります前に、ここ最近、私が特に印象に残ったことを一点だけお話ししておきたいんです。 これは、もう皆さん御専門家でいらっしゃいますからしょっちゅういろんなところに行っておられるわけですが、先般ベトナムに行く機会がありまして、そこで例によって向こうの大臣の方にお目にかかったり、プロジェクトを見たりしてきたんです。今回、特別にお願いしまして、ベトナムの普通の人の暮らしを見せてくださいというお願いをいたしました。これはなかなか厚かましいお願いであります。普通の人の台所に上がっていってどういう生活をしているんだというふうに見るわけでありますから、向こうも困ったと思うのでありますけれども、ハノイに住む普通の公務員の社宅に連れていってくれました。 ベトナムは、御承知のように一人当たりの国民所得が二百六十ドルの国、大体二万七千円でありますから、円レートにもよりますけれども、日本の所得の百分の一の国であります。そこの公務員、農業国でありますから公務員ということになりますと決して普通の人ではない、中の上ぐらい、かといってとんでもないお金持ちということではありません。 その方のおうちに行きますと、まずカラーテレビがありました。電気冷蔵庫がありました。電気洗濯機がありました。電話がありました。CDつきのラジカセがありました。車はありませんけれども、オートバイが二台ありました。向こうの奥さんにCDつきのラジカセまであって次に何が欲しいですかというふうに聞きましたら、最近太ってきたのでフィットネスの器械が欲しいというふうに言われました。それで、じゃ今一番悩んでいることは何ですかというふうに聞きましたら、子供の塾をどこにやろうかというふうに言いました。 これは、幾つかのトリックがあることはあります。物価水準が違いますから購買力平価ではかったらどうなるかということも違いますし、アンダーグラウンドエコノミーのサイズもある程度考えなければいけない。しかし、それにしても、アジアの最後のフロンティアと言われるベトナムで既に中の上ぐらいの人がこういった消費生活をエンジョイしているということは、どうも日本で考えているのとはやはり違っている姿ではないかと思うわけであります。アジアの経済は、明らかに我々が考えている以上に物すごい速さで動いております。 その帰りにベトナムからタイのバンコクに寄る機会がありました。そこの地元の英字新聞に、たまたま着いた日に出ていた記事はこういう記事であります。タイではもう繊維産業は成り立たなくなってきた、今まで低賃金を武器にして縫製産業等いろいろやってきたけれども、最近はさらに賃金の安い中国やベトナムに追い上げられて、もうタイでは繊維産業は成り立たなくなってきた。同じ紙面にタイのタマサート大学の私の友人がたまたまコメントを載せておりまして、いやいやタイの繊維産業はまだまだやれると。なぜならば、賃金は少々高くなっても技術があるから大丈夫だと。 この話は、もう御承知のように今日本でされている話と同じであります。このアジア太平洋の経済、発展途上国全体の国際分業の話でありますが、かつてから雁行形態論という言葉がありました。 フライングギースの仮説というのがございました。経済の発展段階の高いアメリカ、日本と順番に発展段階をずらしながら、しかし全体は調和がとれて経済発展していくと。 この考え方は今でも生きているわけですけれども、この新しい経済の発展段階に調整していくための速度が、これはまた従来我々が考えていたのとは一けた、二けた違う速いものを求められているということではないかと思うわけです。その調整速度の速さというのを改めて痛感したわけであります。実は、アジア太平洋の経済と日本の外交を考える場合に、やはり日本が変化するということは重要なわけでありますけれども、速く変化するということが重要で、その速さを改めて問うているように思うわけであります。 話の本題を少し分けて御議論させていただきたいんですけれども、アジア太平洋の経済発展を考えるときに特に重要になっている幾つかのコンセプトという形で最初に三点ぐらい取りまとめてみたいと思います。 その上で、ちょっと今までの話では出ておりません、アメリカにとってのアジア太平洋の位置づけというのを私なりに整理させていただきたい。 なぜならば、アジア太平洋の国々にとってももちろん日本にとっても、アメリカがどのようなスタンスで考えているかということは実は極めて重要なわけで、ある意味で今でもアジアの多くの国々はアメリカにアダプトしょうとして各国の政策を立てているという面があるからであります。 三番目に、そのアジアの中で出てきている新しいリスクの面を少し考えてみたいと思います。両先生ともかなりアジアに対しての楽観的なお話をされました。私ももちろん楽観主義者の一人なんでありますけれども、もう一つやはり考えておかなければいけないリスクの面もあるというふうに思うわけであります。その上で最後に私なりの考えを整理してみたいというふうに思います。 アジア太平洋の経済のマクロメカニズムを考えるときに、私はやはり三つの点を今までとは少し違った形で考えておかなければいけないというふうに思っております。 一つは、今アジア太平洋で起こっている一つの現象というのは、総称すればポジティブ・サプライ・ショックであるということではないかと思います。ポジティブというのはプラスという意味でありますが、サプライショックというのは経済の供給側に一つの変化が起こっている、それはプラスの変化が起こっているということであります。 これは、我々の経済活動というのは常にそうでありますけれども、何かものをインプットすることによって初めてアウトプットが生まれます。インプットができなくなるとアウトプットは減るわけです。例えば石油ショックのときというのは、インプットの重要な要素であるエネルギーの価格が高くなってエネルギーというインプットを減らさざるを得なくなった、だからアウトプットが減った、不況になったということであります。 しかし、今アジアで起こっていることはこの逆だということです。アウトプットをふやせる要因が幾つかあるんだと。その要因としては、もちろん幾つか考えられますけれども、まず例えば技術進歩というのも考えられます。通信・情報革命に代表されるような新たな技術の導入、これは技術というインプットがふえることを意味します。さらに、冷戦が終わって今まで軍事に振り向けていた資源をもっと生産的な要素に振り向けられるようになった。つまり、平和の配当がこれに当たりますけれども、これもポジティブなサプライショック、つまりインプットをふやすことができるから、それによってアウトプットをふやすことができる。 もう一つは、まさにすさまじい勢いで生じている経済のグローバリゼーションです。これはどういうことかというと、今までは使えなかったような労働力とか海外の安い資源、部品等々を新たに調達できるようになった。したがって、安いものが調達できるということはインプットをふやすことができますから、それによってアウトプットをふやすことができる。まさにこういうことが起こっている。 実は、アジアのまだ所得水準の低い発展途上国がどうしてこれほど自由貿易にこだわって、むしろ日本よりも早い速度で自由貿易を推進しようとする、そういった力をAPECで発揮することができたのか。これは、まさに今がポジティブ・サプライ・ショックのチャンスであるという非常に大きな歴史的認識があるからだというふうに思います。 実は、ちょうど二十年前、一九七〇年代の半ばごろですと、地球上でマーケットエコノミーの中に暮らしている人間というのは二十七億人しかおりませんでした。それが今、マーケットエコノミーの中に暮らしている人間は地球上で五十四億人になりました。二十年間に一挙に二倍になった。それだけ、単にマーケットが広がったということだけではなくて、経済の供給側を考える場合でも利用可能な資源のチョイスが広がったということを意味する。このチョイスをいかに積極的に活用するかということになるわけであります。ポジティブ・サプライ・ショック、これが第一の重要なコンセプトだと思います。 第二に、最近よく使われる言葉としてファースト・ムーバーズ・アドバンテージという言葉があります。これは、最初に動いた人が得をするというまさにそういう意味であります。これは次のようにお考えいただければわかりやすいのではないでしょうか。 今、我々が直面している産業の多くというのはさまざまな形でRアンドD投資をたくさん使うようなハイテクの産業になってきました。RアンドD投資をたくさんするということは、その結果として、一個や二個の製品をつくって売ってもこれは当然のことながらペイしません。たくさんつくればつくるほど投下資本を回収することができて平均費用を下げることができる。したがって、まさにある意味でのスケールメリットが働くわけであります。したがって、どこよりも早く規制を取っ払って、ある産業を始めて生産設備をつくってしまって世界のマーケットを一〇〇%とってしまったら、後からどういうふうに入ってこようと思ってももう入ってこれない世界になってしまいます。 もう一つ、よくビジネスの世界で使われる言葉として、これに対応しますけれども、ウイナー・テイクス・オールという言葉があります。つまり勝者がすべてをとってしまう、そういったマーケットの構造になりつつある。これもやはり今のアジア太平洋を考える場合の大変重要なポイントではないかと思います。 繰り返しますけれども、だからこそいまだに経済発展がそれほど高くない国々が、むしろ日本よりも早く自由化に積極的な形で取り組みつつあるという現象に通じているわけであります。 第三番目、実は第三番目の話は一見少し矛盾するように聞こえるかもしれないのですけれども、アグロメレーションという言葉がこれに相当するのではないかと思います。このアグロメレーションというのは塊とか集積ということを意味する言葉であります。 これは何を意味するかというと、例えば先ほどから何回も話に出ておりますけれども、中国の広東省と香港のつながりを考えていただければいいと思います。香港はことし中国に返りますけれども、少なくとも今までは政治的には異なる主体でありました。しかし、この香港と広東省が明らかに完全に経済的にはもう一体化しているわけであります。広東省で今使われている通貨の四〇%以上は既に香港ドルであるという推計もなされています。 これは、国家や政治の枠組みを飛び越えて、この地域の経済だけがまさにマーケットのお化けのような形でつながってしまったものであります。 広東省には六千万を超える人口がいて、香港には六百万を超える人口がいる。これが一つの経済圏をつくっていて、そこの首都が香港シティーであるというふうに考えますと、この主体はGDPのサイズにおいても人口のサイズにおいても実はタイと同じぐらいの規模になってしまいます。それだけのものが既にある。 しかし、考えてみれば、今はグローバリゼーションの時代であります。広東省の人はどうして香港と結びついたんでしょうか。広東省はどうしてモスクワと結びつかなかったんでしょうか。広東省は東京と結びつくことだってできたはずです。つまり、グローバリゼーションというのは地球上のどことでも結びつけるはずだった。しかし、そうではないことが確実にこの地域で起こっているわけです。 つまり、言葉が通じるとか距離が近いとか気心が知れているとか親戚がたくさんいるとか、そういったある意味でグローバリゼーションと反するような極めて伝統的な要因が、むしろ経済の実態を支えているというのがこの地域ではっきりと見られることであります。 つまり、グローバリゼーションの中のローカリゼーション、経済の統合、ユニフィケーションの中の分断、フラグメンテーションという一見矛盾した事象が起こってきている。 これもしかし、あえて解釈すれば、経済がグローバル化していけばいくほど、実は結局気心が知れているとか言葉が通じるとかという要因が、最終的に見直されるということになるわけでありますから、決して矛盾はしないのでありますけれども、現象面としてはそういった複雑な要因が起きているということも実は大変重要な問題ではないかと思います。 例えばしかし、このアグロメレーションを一つとりましても、日本の外交にとっては大変重要なインプリケーションを示しています。我々の経済、社会はグローバル化しなければいけません。しかし同時に、地域とのつながり、ローカルな関係をますます強化していく中でグローバル化していかなければいけないということをも意味しているわけであります。 さて、ポジティブ・サプライ・ショック、ファースト・ムーバーズ・アドバンテージ、それとアグロメレーションという三つのキーワードで、今のアジア太平洋を考える場合のフレームワークを示させていただいたのでありますけれども、もう少し話を具体化させていただきまして、ちょっと迂遠な話になるかもしれませんが、アメリカにとってのアジア太平洋政策というのをちょっと私なりに整理させていただきたいというふうに思います。 アメリカという国は、一九八〇年に至るまで約五十年間をとりますと、非常にはっきりとした姿傾向が見られました。それは、毎年二%ずつ労働生産性が上昇し実質賃金が上がってきたという姿であります。二%実質賃金が上がる、つまり二%生活水準が上がるということになりますから、二%ずつ生活水準が上がっていきますと実は三十二年間で人々は生活水準を二倍にすることができます。これは複利計算のマジックなんですが、二%ですから、一・〇二の三十二乗は二になるという計算になります。ある意味でこれがアメリカの社会を安定させる、アメリカンドリームを実現することを可能にするようなマクロ的な背景であったということができる。 ところが、一九八〇年代に入りますとこの二%の生活水準の上昇が〇・八%になります。二%から〇・八%に変化するというだけではなかなかぴんとこないのでありますけれども、〇・八%しか毎年生活水準が上がりませんと生活水準を二倍にするのに百年かかるという計算になります。一・〇〇八の百乗は二ということになる。結局、こういった経済の低下から、クリントンが掲げる変化というのを国民が非常に強く求めたわけであります。 御承知のように、八〇年以降のさまざまな政策が奏功してアメリカ経済はかなりよくなっているわけでありまして、表面上この二%の生産性上昇は回復されつつあるように見えます。しかし、貧富の差がどんどん拡大しておりまして、結局のところ、所得水準が実質的に上がっているのは上位二〇%の所得の高い層だけで、下位の八〇%は決してそうではないということがこれまた最近になってわかってきたわけです。 結局のところ、アメリカの国民の根底にあるのは、いわゆるミドルクラス、普通の人たちの生活水準のサステーナビリティーである。生活水準が持続できるだろうか、生活水準を維持して私たちの子供の時代に自分よりも豊かな社会が築けているだろうかというところに帰します。 そうした関係で、実はアメリカでは財政赤字の削減というのが、日本で考えられている以上に大きなテーマになってしまったわけであります。財政赤字をこのまま拡大すると、間違いなく自分たちの子供の生活水準は低下する、したがって財政赤字を削減するということを、今やアメリカの国民の七割は政策のファーストプライオリティーに置けというふうに支持しております。 しかしながら、財政赤字を削減するというのは、これは世界経済の安定のためにも必要なわけですけれども、これは明らかにデフレ政策であります。財政赤字を削減するには増税を行うか財政支出を減らすか、その両方を組み合わせるしかないわけでありますから、これはデフレ政策をとるということを意味します。短期的には金利が下がる等々のいいメリットがあるわけですけれども、中期的にデフレ政策をとるというのはこれまた耐えられない。 したがって、アメリカとしてはもうとるべき方法は一つしかないということになります。デフレを相殺するための外需をふやすということしかないということになります。外需、輸出をふやすということがアメリカにとってやはり従来なかったような大きな位置づけを持ってきました。 アメリカという国は、例えば一九六〇年代をとってみますと、輸出依存度、GDPに占める輸出の比率というのは四・五%しかありませんでした。それが今や一一%から一二%に達した。アメリカはその意味でようやく通商国家としての要件を具備してきたという言い方もできます。しかし、これ以上さらに輸出をふやすということになると体どこにふやすのか。これはもう世界で最も活力ある地域に輸出をふやすしかない、それは日本を含むところのアジア太平洋だということになります。 アメリカは、一九九三年のAPECシアトル総会で、クリントン大統領がみずから出ていってAPECの基本的な性格づけの変更を行ったわけであります。それ以前は、APECというのはある意味では経済協力のためのサロンでありました。しかし、今や自由化を進めるための地域経済組織ということでAPECはかなり大きく性格を変えております。 そのきっかけになったのは一九九三年でありますけれども、実はたまたまこの一九九三年というのはアメリカにとっては大変大きな年であったというふうに思います。それは、ちょうど百年前の一八九三年に、アメリカの著名な歴史学者ターナーが実は大変有名な論文を書いておりまして、そこでアメリカ社会におけるフロンティアは消滅したということを宣言しております。実はそれからちょうど百年後、一九九三年、アメリカはもうアジア太平洋というのを新たなフロンティアとして位置づけた、そういう年になったというふうに考えられるわけであります。 いずれにしても、アメリカにとってアジア太平洋というのはフロンティアとして新たに位置づけられて、それからさまざまなAPECに対する関与が始まったということになります。 ただし、アメリカの通商政策を考える場合に、ここでもう一つ大きな基本的な性格の変化が起きているということも重要ではないかと思います。アメリカの通商政策というのは一体どういう政策であったか。これも非常にラフな議論ですけれども、一言で言うならば、これまでの政策というのはいわゆるマーケットスレットの政策であったということが言えると思います。つまり、世界で一番大きい自分のマーケットをおどしにかけるわけです。自分の言うことを聞かないとこの世界一のアメリカのマーケットから締め出すぞというふうに、例のスーパー三〇一等々で相手に圧力をかける。まさにマーケットでおどしをかけるという意味でマーケットスレットの政策であった。これをアメリカが当面続けていくことは間違いありません。 しかし、相対的にこのマーケットスレットの威力というのは明らかに低下していきます。なぜならば、日本にとってもヨーロッパにとっても対米貿易は重要でありますけれども、対米貿易の伸び率よりも明らかに対アジアの伸び率の方が大きいわけでありますから、その意味でアメリカのマーケットの重要性というのは低下していく。 そうした中で、これまたアメリカの新しい通商政策の枠組みとして新たに出てきたのが、私は二国間のマーケットスレットの政策を超えた、より広い意味での地域経済組織を使った法の論理、彼らが言うところの法の論理を前面に打ち出した政策であったというふうに思います。WTOでの紛争処理のルールづくり、APECでも同じようなことがなされていくでしょう。さらに、APECでは自由化を進めるというような一つの合意ですから、これは広い意味での法の論理に基づく枠組みづくりということになります。 もう一つここで申し上げておきたいのは、実は一九九五年ぐらいからこの地域経済組織のそれぞれのかかわり方が明らかに変化してきたという重要な問題があろうかと思います。 例えば、この年にヨーロッパのEUから、EUとNAFTAで将来大西洋の自由貿易圏をつくろうではないかという提案がなされました。これに対してアメリカは正式には答えなかったわけですけれども、アメリカの閣僚の一部は個人的な発言としてそれは悪い考えではないねという言い方をしました。そうするとEUとNAFTAが結びつくという可能性が出てくる。さらにNAFTAが南米の自由市場のメルコスールとの間で関係強化を深めるという動きが出てきています。EUはEuで地中海の諸国との間でさらにそういう自由貿易協定をつくる、これはもう原則合意しております。したがって、どういうことかというと、地域貿易組織そのものの協力が始まったということであります。 昨年、実はアジアも、アジアとEUとの初めてのサミットというのを行ったわけでありますから、そういった動きも出つつある。ASEANはASEANで、AFTAとヨーロッパ、ニュージーランドとさらに地域協力を進めようとしている。気がついてみますと、実はこういうことになります。今まで経済をブロック化するのではないかというふうに懸念していたさまざまな地域組織、EU、NAFTAそれぞれが将来結びつく方向でさまざまな協力を議論し始めた。 そこで、いろんな取り合わせを考えてみます。NAFTA・EU、NAFTA・メルコスール、APEC・EU、そういったさまざまなところを書き出してみますと、気がつくことは、この中に一番頻繁に顔を出す国はほかならぬアメリカだということであります。今申し上げたようなさまざまな地域のつながりがもし実現していくとするならば、先ほど世界のマーケット人口は五十四億人というふうに申し上げましたけれども、アメリカは近い将来、この五十四億人のうちの半分の二十七億人と何らかの地域的なつながりを持つ可能性が出てきているということではないかと思います。 しかし、考えてみると、日本がこういった意味での地域的なつながりとして今挙げることができるのはAPECだけであります。日本はそのAPECの中にしかそういった名前が出てこない。これは、先ほど申し上げたグローバリゼーションと、一方でのローカリゼーションを考える際の新たな外交の可能性といいますか、手段を持つことの必要性を意味しているというふうに思われます。 さて、アジア太平洋のプロパーの話に少し戻したいのでありますけれども、アジア太平洋の経済の発展のメカニズムというのは、その時々によって非常に巧みに変化してきております。アジア太平洋全体が、先ほどその地域は非常に多様であるというお話が広野先生からありましたけれども、全くそのとおりであります。 総じて、大体どこもかなりの速度で発展し出したかなというふうに思われるのが一九八〇年代に入ってからだと思いますけれども、実はそれ以降も経済の発展のメカニズムというのは決して一様ではありませんでした。ある時期にはアメリカが大変強いアブソーバーといいますか消費者としての役割を果たしました。 その後、八〇年代の後半になってからは、これも長谷川先生のお話にもありましたけれども、むしろアメリカや日本を上回って、アジアNIESの国々がこのアブソーバーとしての役割を果たすようになってきた。実は九〇年代に入ってくると、それとはまた違った形で、先ほどちょっと申し上げました広東省と香港の結びつき、福建省と台湾の結びつき、つまり局地的な経済圏、政治の枠組みを超えた経済圏の登場がこの経済を活性化しています。 しかし、この局地的な経済圏で象徴されているのはこういうことであります。アジア太平洋の国々は、これが非常に乱暴な言い方でありますけれども、これがなぜ発展したかというと、政策が、政治が何もしなかったから発展したんだという言い方ができます。つまり政治が足を引っ張らなかったからです。ほっておいてくれたからマーケットのお化けのようなものが出てきたんだということが言える。このしたたかさ、ファジーさこそがアジアの特徴であることは間違いありません。 EUでは、まずマーストリヒト条約を結んで、それで非常にかっちりとした法律的な枠組みをつくってからいろんなことを決めていく。NAFTAも同じであります。法律的な枠組みを先につくってから経済のいろいろの協力を進めていく。 しかし、アジアではそうではないわけです。そういうやり方はアジアになじまないというようなことをアジアの指導者は好んで口にしますし、現実に経済の発展段階も文化的なバックグラウンドも違いますから、ある意味でできるところからファジーにやってきたのがアジアの経済の発展のメカニズムであります。 しかしながら、はっきり申し上げて、それに伴うリスクも今やはっきりと認識しなければいけないということではないかと思います。これは、政治と経済の非常に重要な接点の問題になるのでありますけれども、政治が、政策が何も枠組みを持たないことによって一つ今アジアで生じている非常に大きな問題は、アジア各国の軍事拡大の問題であろうかというふうに思います。 冷戦後、各国が平和の配当をエンジョイしていると思っていたら、世界の中で一カ所だけとんでもなく軍事拡大を続けている地域があった、それがアジア太平洋であった。これも二年半ほど前にクレアという政治学者がフォーリン・アフェアーズに書いてからアメリカ等では大変よく話題になる問題であります。 実は、これは私たちのグループである計量的な分析をしてみたのでありますけれども、大変はっきりとした傾向が出てまいります。それは、まず中国が軍事支出を拡大すると、それによって台湾が軍事拡大をする。台湾が軍事拡大すると、南沙諸島の領有権の問題がありますから、フィリピンやベトナムが軍事拡大する。ベトナムが軍事拡大すると、これはインドシナの大国でありますから、インドシナの各国が軍事拡大する。これは例えばグレンジャー・シムズのやり方というのでありますけれども、統計的な因果関係をテストする計量的なチェックの方法があります。そういった方法でやってみますと、はっきりとしたこのドミノ現象というのが出てまいります。 アジア太平洋には、御承知のようにこういった安全保障問題を議論する包括的なフォーラムはありません。三年ぐらい前からASEAN地域フォーラムがこういった問題を扱えることにはなりましたけれども、北東アジアにはそういったものは何もない。北東アジアには御承知のとおり中国があり北朝鮮があり韓国があり日本があるわけであります。 気がついてみると、そういったフレームワークを持たないことのリスクというのもかなりはっきりと見えてきたというふうに思うわけであります。先ほどこれも広野先生から環境問題についての御指摘がありましたが、これもまさにフレームワークを持っていないということによって生じるものであります。 先ほどから何回もポール・クルーグマンの仮説が出てまいります。クルーグマンというのは、先ほど申し上げましたインプットとアウトプットの関係からいいますと、アジアで生産、アウトプットがふえてきたのは、これはインプットがふえてきたからにほかならない。このインプットの増加はとまると。インプットが少なくともアウトプットをふやす方法、これは技術を上げることなんだけれども、その技術の進歩率が低いからアジアの成長はとまるという言い方をした。これはちょうどソ連の経済と同じだという話をした。 実は、これは長谷川先生と広野先生と私とでは少しニュアンスが違うかもしれませんが、私はこの問題に関してクルーグマンと直接二度ほど議論したことがあります。 まず一つ言えることは、クルーグマンの指摘は正しい点と間違った点を両方含んでいるということだと思います。 正しい点をまず申し上げますと、実は我々専門家もアジアの専門家も気がつかなかったので意外と忘れていたことなんですけれども、アジアの発展途上国の技術進歩率は確かに低いということです。これは例えば日本と比べたり、これまでの先進各国の発展段階を比べた場合にはっきりとしています。 例えば、日本の場合、高度成長期に一〇%の経済成長をしましたけれども、大体そのうち五%から六%は技術進歩によって実現されました。大体半分ぐらいは技術進歩でした。欧米の国ではもう少し低かったですけれども、それでも三分の一ぐらいは技術進歩によってもたらされました。しかし、例えば韓国の例を挙げますけれども、韓国で例えば六%、七%成長しているという場合も、技術進歩率は、これは計測によりますけれども、一%いくかいかないかであります。その意味では、技術進歩率が低いという指摘は、これはクルーグマンが行った指摘の中では正しいと言わざるを得ないと思います。 ただ、やっぱり間違った点もあって、インプットがふえているのはどうしてかというと、これはかつてのソ連のように国家が大号令をかけて資源を動員したからではないわけです。これはもうかるから人々が自発的に資本を投下して、自発的に働いて労働を投入したということになります。その意味でいいますと、アジアの発展は間違いなく続くというふうに思われます。 しかし同時に、技術進歩を高めていくための政策がとられなければいけないという点も、これまた確かな点だというふうに思います。 時間が限られておりますので、あと残された時間でアジアの成長、アジアの経済発展とその中における日本の課題及び役割というものについて、これまた最後に三つの観点から整理をさせていただきたいというふうに思います。 まず第一点。日本が今後この地域に対して外交でいうところのインフルエンス、いい意味での影響力を与えるためには、やはりかなり大きな国内的な改革が必要であるというふうに思います。そのインフルエンスというのを一言で言えばソフトパワーということになるかと思います。 このソフトパワーという概念は、国際関係論の分野では以前から使われたことのある言葉なんですが、これはハードパワーに対する言葉であります。ハードパワーというのは何かというと、これは二つあります。一つは物をつくる力です。物をつくる力、つまり経済力です。もう一つのハードパワーは物を壊す力、つまり軍事力であります。言うまでもなく、アメリカはこの物をつくる経済力と、物を壊す軍事力に圧倒的な力を持つことによって戦後スーパーパワーとして君臨したわけであります。 日本は、ある意味で特殊な道を選びました。物を壊す力というのを建前上は少なくとも放棄して、物をつくる力に専念したということになります。これは、もちろん物をつくる力を日本は活性化して高めなければいけないんですが、同時にやはりそれ以外のソフトパワーというのが重要になってくるというふうに思います。 例えば、人的な貢献という言葉がよく使われます。日本は確かにその人的な貢献をしてきたわけでありますけれども、これもさっきの広野先生の言葉ですけれども、貢献はしてきたけれども、もっとできたはずだ、もっとやるべきだったというお話がありました。 例えば、日本の国際機関で働けるような日本人の人材というのは明らかに不足しています。WTOで今後いろんな紛争処理が行われるわけでありますけれども、WTOで働いている人は、アメリカの大学で法律学を勉強した人がやはり大部分を占めるというふうに言われている。日本人のスタッフでWTOで働く人というのは実はまだ数人しかいないわけであります。 世界の国際金融ないしは開発金融になっているⅠMFや世銀ではどうでしょうか。そこではアメリカの大学でPhDを取った人たちがその主流を占めて、アメリカ的な考え方でその開発金融が行われている。それに対してアジアは、そういうやり方はなじまないというふうに我々は主張するわけでありますけれども、どうも今のところではかなり遠ぼえ的になってしまっている。 彼らはよくワシントン・コンセンサスという言葉を使います。ワシントン・コンセンサスというのは、つまり開発金融を行うに当たってはフリートレードとサウンドマネー、この二つがあればすべてうまくいく、極めてある意味でアメリカのテキストブック的な考え方なわけであります。 結局のところ、こういったソフトパワー、これは要するに人材を育てることであり、ないしは留学生を受け入れるような組織をつくることである。留学生に関しても、アジアからの留学生はバブル後恐らく半減しているというふうに思います。これはもう明らかに、同じお金を使うのであれば、生活費も安いしさまざまな補助をしてくれるアメリカに行こうということで、どんどんアメリカへの留学生がふえているということになる。ソフトパワーを高めるための仕組みが日本にとって急がれるということだと思います。 二番目が、先ほどから申し上げたグローバリゼーションとローカリゼーションが同時に起こるアジア太平洋の中で、グローバル化を進めることは言うまでもありませんけれども、一方で地域への、つまりローカリゼーション、これがもちろんマハティール構想ではないにしても、東アジアの中での一つの地域経済組織の中に加わっていくという多様な選択肢、まさに多国間主義ということになると思いますけれども、そういった多国間主義の外交を進めていかなければいけないということが第二の問題点であろうかと思います。 第三点は、第二の点に絡みますけれども、私は基本的にはアジア太平洋政策というのは社会政策でなければいけないというふうに考えます。 これはどちらかというと、私自身経済学者でありますから、APECの議論をする場合も経済政策としてのAPEC政策を必ず考えるわけでありますけれども、つまるところ、こういった隣国に対する政策というのは社会政策である。これは、なぜこういうことを申し上げるかというと、結局EUで議論されていることもNAFTAで議論されていることも、経済の議論として出発して、つまるところ、彼らが落ち着いた結論は、これは社会政策であるという結論であったわけです。 つまり、例えばEUは、経済合理的に考えればあの地域は通貨統合なんかしなければいいんです。通貨統合しなければもっとうまくいくんだと。 これは、アメリカのマクロ経済学者が極めて以前から指摘しているところです。しかし、彼らは通貨を統合したいんだと、これは経済の論議を超えた一つのヨーロッパの歴史の産物であるという言い方をします。 例えば、NAFTAについてもそうです。どうしてアメリカとメキシコがあんな形で自由貿易をしなければいけないのか。これは経済の発展段階から考えるとやっぱり不自然だ。これについて、失業がふえるか減るか大論争があったわけでありますけれども、そこから出てきた一つの結論は、これは隣国に対する政策、つまり経済政策でなく社会政策だという結論だったと思います。 同じことがやはりアジア太平洋についても言えるのではないでしょうか。経済政策から出発して、しかし同時に、最後は隣人に対する政策であるという思いが必要になってくるというふうに思います。 以上です。
○会長(林田悠紀夫君) ありがとうございました。 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。 これより質疑を行います。 質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。 なお、参考人及び各委員にお願い申し上げます。 多くの委員が発言を希望されると思いますので、質疑、答弁とも簡潔に行うよう御協力願います。 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
○馳浩君 貴重な御意見をありがとうございました。 私は、たくさんの委員の先生方が御発言されると思いますので、お一人につき一点ずつ、教えていただきたいこと、御意見、見通し等々を質問いたします。 まず、長谷川参考人に対しては、このアジア地域の経済発展には一人一人のエネルギー消費量の増大というのはもう無視して通れない問題なわけです。そのエネルギー資源の安定的な調達とそれから大量輸送という問題は、これは安全保障の問題とも絡みまして経済発展には必要不可欠な問題であると思うんです。 その点において、環境問題とも絡んでまいりますが、石炭や石油などのCO2やNOx、SOx、そういう有害物質を排出するエネルギー資源に依存ばかりしてはいられないわけです。これは日本も含めてですけれども、この辺の今後の取り組みというものは、まさしく多国間の一つの了解のもとに技術と資金を投入して開発していかれなければいけない問題だと思います。この点についての御意見があればお聞きしたいと思います。 それから広野参考人には、私が非常に関心を持っておるNPO法案についての御意見を伺ったんですが、これに関して一点、行政の関与、この部分を、アメリカの法案を参考にしながらでもいいですから、日本としてどうあるべきかという点をお願いいたしたいと思います。 最後に竹中参考人には、アジア地域の経済発展といいましても、中国とインドとASEAN諸国、この三カ所の緊張関係というのは、これからの域内の発展の中で非常に無視してはいけない問題だと思うんですね、これは政治的にも軍事的にも。 この辺のバランスのとり方をどういうふうに見ていったらよいのかという点をお聞かせいただければと思います。 以上です。
○参考人(長谷川潔君) エネルギーということなんですが、アジア諸国をざっと見てみますと、実は今、手元に統計はないんですが、エネルギーの自給率がかなり高い国が多いんです。したがいまして、例えば中国は準輸入国にもう既になっておりますが、それでも完全な輸入国ではない。インドネシア、これも将来は輸入国になるだろうと言われております。しかし、今のところは輸出国である。 そして、マレーシア、ベトナム、いろんなところをとっていきますと、タイにしても沖合で天然ガスが出ますし、国内でも石油は一応細々ながら出ているというような状況がありまして、実はアジアの発展途上国にとってエネルギー問題は将来の問題であるというのが、まだ率直に言って現時点での認識だろうと思います。 ただ、もう既にAPECの部会あたりで、そういった将来のエネルギー問題を考えようという動きが出てきておりますので、これは日本の通産省あたりもそういった旗を振っていると思います。 今後、じゃ中国がこのまま伸びていった場合、二十一世紀の中ごろには経済面でも世界の超大国になるのは間違いない。そうしますと、エネルギーはどうなるのか。これは食糧と並んで、ワールドウォッチなんかも非常に警告を発するそのとおりの延長線上に、ずっと数字を伸ばしていけばそうなってしまう。これからどうするかという入り口にかかってきている問題であって、このあたりは日本が相当旗を振れるはずであると。 先ほどおっしゃった炭素資源といいますか、石油とか石炭の利用というあたりも、これからもっとインドネシアあたりは考えると思いますけれども、そうなるとますます公害の問題が出てくるということで、これからの課題であると同時に、日本の役割が非常に大きい分野であるなという気がしております。 私自身、アジアの経済、政治を見ている中で、エネルギー自身をまともに大きく取り上げるという段階、そういった動きはまだ残念ながら目にしておりません。例えて言えば、先ほど広野先生のお話に出たのではないかと思いますが、環境より開発をという言葉がありましたけれども、かつて日本が炭鉱節で煙突から煙が出ているのを喜んでいる時代があったわけですね。さぞやお月さんも煙たかろうという、そういうのんきな時代があったわけですが、やっと今アジアはそれまでのそういった感じから脱しつつある。 どうすれば持続可能な成長ができるんだということを、大来先生がもう十年ぐらい前からかなりそういったことをおっしゃっていたんですが、そのときはまだ開発優先のときだったと思うんですが、やっと今そんなことに気がつき始めているなというのが正直なところです。 そして、原子力発電の問題がさらにポピュラーな問題として出てくると思います。まだ、ぽつりぽつりですけれども、もっと原子力発電を活用しようという動きが広がってくると思います。 目下私は、大ざっぱな話で恐縮ですが、先生の御質問にはそんなことしか申し上げられません。
○馳浩君 ありがとうございます。
○参考人(広野良吉君) 御質問ありがとうございました。 実は、皆さん方のお手元にこういう「参考人の主要論文等」というのが配付されております。それで、一九九七年二月のアジア調査会、そこで私が話をしました事柄を毎日新聞の方でまとめてくださいまして、簡単な論文形式になっております。 皆さん方、もしお持ちでしたらその五ページを見ていただきたいと思います。この「参考人の主要論文等」の「日本のODA政策の現状と問題点」、そこにDAC諸国のNGOによる援助実績というのが出ております。 これはたまたまNGO、すなわち我々が今、市民活動法案の中で議論しているところの市民組織というのは、もう一つの言葉で言うとNGOと言ってもいいと思うんです、ノンガバメントオーガニゼーションという。そのNGOが国際協力にどの程度自分のお金を出しているかという統計数字がここに出ております。 それを見てすぐおわかりのように、例えば一九九四年で見ますと、何といってもアメリカが最大です。二十六億ドルという数字が出ております。 その次に、ドイツ、それからイギリス、フランス、オランダ、それからカナダ、こういうふうにきているわけで、実は日本というのはその次にくる国であるわけです。 だから、日本は人口も一億二千万近い、そしてGDPでは世界で第二の大国である。その国においてNGOによる国際協力が何と世界第七位という状況にあるわけです。アメリカは断トツです、イギリスも断トツ、それからドイツも断トツ。ところが、日本は大変残念ながらこういう状況である。なぜこういうことが起こってくるのかということを考えなくちゃいけません。 なお、もう一つ、これには書いてありませんけれども、追加的なことを申し上げますと、じゃアメリカのNGOが、国際協力ではなくて国内でどれぐらいお金を使っているかというと、一九九五年の数字が私のところにありますけれども、千八百六十億ドルです。国内でアメリカのNGOが使っているお金が千八百六十億ドルです。膨大な額です。これはNGOが使っているお金です。 ところが、日本が使ったお金、これはあくまでも総理府並びに外務省その他がいろいろ検討した結果出てきた数字ですが、彼らはこれを正確と言っていません。ただしかし、大体こんなところかなという数字ですが、これが十八億ドルです。 アメリカは国内で千八百六十億ドル使っています。日本は国内でたった十八億ドルしか使っていない。 すなわち、アメリカの百分の一なんです。GNPにおいて日本はアメリカの二分の一以上なんです。人口もアメリカの約半分の国です。アメリカと日本の差がここに歴然とあらわれているわけです。千八百六十億ドル対十八億ドル。いかにも貧弱な状況であるわけです。なぜこういうことが起こってくるのか。対外的にもアメリカが二十六億ドル、日本が二億六千万ドル。対外的にも国際協力も十分の一。国内では何と百分の一しか日本はやっていないということです。 何でこんなことが起こってくるのかということを見ますと、この点に私はずっと関心がありましたからいろいろ調査してきたわけですけれども、アメリカはやっぱり何といってもNGOの国です。アメリカも早くからNGOに対する支援政策を盛りまして、一度かなり税制問題がいろいろ問題になったことがありますけれども、少なくともアメリカの連邦政府及び州政府はそれぞれのNGOに対していろんな形でもって支援をしております。 特に一番大きなのは税制上の優遇措置です。これは何といっても私たち市民活動法案をいろいろやってきた人間としては非常に重要な点です。何しろ税制上の優遇措置は非常に重要だということです。これをどういう内容にするかは、もちろんそれぞれの各国で事情がありますから違いますけれども、私は何とかして少なくともアメリカ並みの税制上の優遇措置はしてほしい、こういうふうに考えております。 それから、同じく二番目にNPO法案のことで我々が非常に関心がありますのは、その場合のNPO、日本ではNPOと言うんですが、NGOのことなんですけれども、NPOの範囲をどこまで持っていくかという点です。これは非常に重要だと思います。 私は、やはり市民社会というものを本当に日本が真剣に考えるのだったら、NPOというものについては相当幅広い形でもってやるべきであると。幸いにも最終的なNPO法案においてはかなりそういう方向にまとまったと私は聞いておりますけれども、実際は今首を振っている方がおられますのでまとまらなかったのかもしれませんが。 私は、何とかNPOという定義を少なくともアメリカ的なNPOの定義、アメリカの定義というのは何であるかというと、実にこのとおりです。ノンプロフィットオーガニゼーション、いわゆる非営利団体ということです。非営利団体であればすべてNPOなんです。だから、やはりそういう点でかなり自由な形。 結局、何を目的とするかが重要だと思うんです。 やっぱり自由と民主と公正に基づいた市民社会をつくっていくということであれば、ぜひNPOというものの範囲を広く考えていただきたい。それが第二番目です。 それから、三番目には組織の問題です。 御存じのように、NPOというのは非常に日本では組織が弱いんです。私自身も実はNGOをやっております。そういう中で、私自身も非常に苦しんでいますけれども、NGOをやっている中で非常に思うのは、私たち、ちゃんとした給与も払えないんです、自分たちのスタッフに対して。 なぜ払えないかというと、もちろんお金がないからです。 アメリカはいろんな有名なたくさんのNGOがありますけれども、そのうちの一つの大きな環境問題のNGOがあります。このNGOでは約二百八十名の博士号を持った人たちが働いているわけです。科学あるいは経済、行政学あるいは工学、あらゆる分野ですね。こういうようなものがNPOであるわけです。 やっぱりそういう意味で、組織が非常に日本では弱いんです。組織の弱い理由は、一つはもちろんお金がないからです。だからそういう方が、もし税制上の優遇措置があってお金をもっといただくことになればかなり組織を強化することができるんじゃないか。 それから最後に、その組織の点で申し上げたいのは、NPOというのに入りたい日本の若人が今いっぱいです。私、大学でも長く教えていますからわかりますけれども、またいろいろな大学で教えていますからわかりますが、日本の若人は本当にNPOでやりたいんです。日本の企業、消滅していく企業には入ったくありません。あるいはまた、いわゆる堕落したところの組織には入ったくありません。やっぱりNPOのようなこういう社会的、公共的な責任感を持った仕事をやっているところに若人は入りたいんです。 だから、そういうような若人が入る場としてのNPOは非常に重要なんです。それを強化するということは本当に大切で、ぜひ税制上の優遇措置のみならず、あらゆる面でこのNPOを今度の新しい法案の中でしっかりと位置づけてほしい。私のよく知っている国会議員の山本さんもおられますけれども、彼も一生懸命NPOを支持しているわけですから、ぜひやっていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。
○参考人(竹中平蔵君) 私に対する馳先生からの質問は、中国、インド、ASEANとの関係、大変大きな問題であったかと思います。ちょっと個別のイシューとも絡みますので、余り一般化してお話はしにくいのでありますけれども、基本的には中国とインドというのはある意味で日本の外交上の課題としてはやはり似ているところがあるわけです。 一つには、まず何といっても大国であるということです。先ほどから将来の予測数値がいろいろ出ていますけれども、世界銀行のあるエコノミストグループが発表した数字によりますと、これは西暦二〇二〇年でありますけれども、購買力平価ではかつて中国のGDPはアメリカの一・四倍になります。これは世界で一位です。二位がアメリカで、三位が日本で、四位にインドがきます。四位インドのサイズがアメリカの〇・四倍、したがって中国がアメリカの一・四倍、インドがアメリカの〇・四倍、両方足すと一・八倍、これはちょうど日本とアメリカを足したサイズと同じぐらいのサイズに中国とインドのサイズを合わせるとなるということになる。まさに非常に大国になってしまうわけです。 経済発展のパターンでもある意味で似ているところがあって、ともに先ほど言ったローカリゼーションとかアグロメレーションをフルに活用する国になると思います。例えば、中国には三千万人の華僑がいます。インドにも印僑が約八百万いるというふうに言われている。そうした人たちのネットワークを中心にした一つの経済システムをつくっていくということで、通常の国に比べてやはり経済のコミットの仕方も大変難しくなってくる。 結局のところ、実はある意味で、対中政策、対インド政策というのは日本にとっての対米政策と非常にオーバーラップしてくるというふうに思うわけです。つまり、こういった中国、インドというある意味で何年か前までは孤立国家的な存在であったところをいかに世界のシステムの中に取り込んでいくか、エンゲージさせていくかということがこれからかなりの期間問われていくわけでありますけれども、その中で当然のことながら日本とアメリカが非常に強く協力してこれを行っていかなければいけない。したがって、日米協力のあり方がある意味で対中政策、対インド政策になってくるという側面を持っていると思います。 その意味では、日本が独自に何か外交面の特色を発揮するというのは、実は私はかなり難しい国であろうかなというふうに思います。もちろん、アメリカに一方的に依存して、それに寄りかかっていくという外交では困るわけでありますけれども。そこで、よく言われる言葉でありますけれども、まさに真のパートナーシップを日米関係で発揮することによって、それが同時に対中政策、対インド政策の非常に円滑な遂行に結びついていくというのが一つの姿であろうかというふうに思います。 実は、それに比べますとASEANに対する外交というのは、日本がかなり独自にいろんなことを発揮できる余地がある分野であるというふうに思います。例えば、このASEANの中で特に中国とインドという存在を考える場合には、まさにインドチャイナですね、インドシナの国々に対する外交というのは日本にとっては非常に大きな幾つかの切り札を持っている分野だと思うし、現実にそれは生かされつつあるのではないかというふうに思います。 例えば、インドシナの開発のシンボルにもなりつつあるメコン流域開発、これは実はアジア開銀がまさにリーダーシップをとっているわけで、アジア開銀の最大の出資者は日本であり、その総裁は歴代日本人であり、非常に大きなことを現実にやり始めているわけです。残念ながら、これは私の印象ですけれども、その割に日本国内でメコン開発に対する議論というのが、日本の外交政策として必ずしも位置づけられていないと思います。こういったことに対する議論を深めて、さらに国民に知らしめるという役割をぜひ皆様方に期待したいなというふうに思います。 例えば、これは通産省が中心になって、今インドチャイナ・ワーキンググループというのが既にあって、そこで共同議長的な立場でかなりいろんなことをもうやっていっているはずなんですけれども、日本国内では余り報道されていません。その意味では、とにかくインドシナの開発のシンボルとしてのメコン流域開発を日本が、もちろんソフトの面でも具体的な資金の面でもさまざまにサポートしていくということが、当面このASEANとの地域協力の中の一つとして大変重要になってくるというふうに思います。
○山崎力君 今、最後の竹中先生の発言の中にもありましたのですが、三先生の今までのお話の中で一番の前提条件になることに関してちょっとお伺いしたいと思います。 というのは、いろいろ地域間競合とか地域間格差が出てどうなってくるか、雁行した発展形態がそのままいけばいいんだけれども、それがうまくいけば楽観論につながるという前提のもとに、そこのところが問題になったときにどうなるかということについてのお話は具体的に出てこなかったと思う、それが悲観論につながることだろうと思うんですが。その中で竹中先生は、政治が足を引っ張ってこなかったことが結果的に非常によかったとおっしゃっていたんですが、この政治という面を見ますと、やっぱり一番最初に来るのが香港返還に伴う中国の問題だろうと思います。 そして、中国自体がこれから我々の経済社会の中にスムーズに入ってこれるのかどうか。要するに、中国の地域間格差というものを中国がうまくまとめてこれから入ってくるかどうかということが、将来的に問題視するときに一番のリスク要因と考えられるのではないかというふうに感じました。その点についての三先生の将来の見通しを含めた考え方をお示し願えればと思います。 もしこれがまずくいきますと、今まで先生方のおっしゃられたいろいろなことは、すべてパアになってしまうというか烏有に帰す可能性も十分あるなと。特に香港の問題が、これは中国内乱とかなんとかというクリティカルな問題でなくても、中国政府が香港をこれからどうするのかという、ここ四、五年の間に返還後出てくる変化で大きく変化する要因にもなりかねないというのが私の考え方なんですが、その辺についてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○参考人(長谷川潔君) ポイントをつかれた御質問だと思います。 返還後の香港がどうなるかというのは、なかなか今の時点では非常に予測しづらいものがあります。中国がこの運営に失敗すると、先ほど竹中先生がおっしゃられたように局地経済圏という形でも周りの地域と結びついておりますし、また中国そのものの成長が低下していけば、やはりNIESに対する波及も考えられるということで、適切な御質問だと思います。 これをどう考えるかということですが、まず香港の運営をどうするか。これは、私自身いろんな人に聞いてみるんですが、本音のところはよくわからない面があります。ただ、中国として確実なことは、やはり香港の発展をそのまま継続させるような形でマネジメントしたいということを中国は考えております。 ただ、それがどのような種類の統制、コントロールを加えるか。今見ておりますと、情報面、それから民主化のレベル。英国がいろんな、中国側にすれば非常に怒りが込み上げてくるような格好で返還間際にばたばたと民主的なことを制度としてつくったわけです。今まで何十年とやってきた歴史の中で民主主義の政策なんかなかったというのが香港あるいは中国側から見た本音であります。それが、返還する前にばたばたといろんなことをやって、それで、今中国は、ある意味で中国国内の法律との整合性をとるために少し後ろへ後退させるようなことをやっているのが現状だと思います。 そして、現象的には、イギリスが引き揚げ、そしてイギリスにかわって中国に対して香港問題で文句を言うのはアメリカだという形になりつつあります。実際、台湾問題だけではなく香港問題に対するアメリカの発言というのが、これからかなりウエートを増してくるだろうと思われます。 そして、中国が国際社会にうまく入ってこられるのかということなんですが、実際、経済面ではもう既に国際社会にどっぶり入っているわけです。貿易の規模を見ましても、もうこれはWTOに早く入れた方が世界の利益になるという気が私どもはしますけれども。その意味では、アメリカと中国の関係が今後どうなるのか。 私どもの新聞で「米中時代」という連載を、昨年の八月ごろから何回かに分けてシリーズでやっておりますけれども、その実態を見ますと、米中というのはビジネス面では物すごく、こんなにまで結びついているのかというところまで行っています。航空機の問題しかり、これはボーイングが筆頭ですが、通信ではモトローラががっちり入り込んでおります。そして、金融証券システムをつくるのは、アメリカがコンサルタントに応じてアメリカの制度をそのまま、アメリカの標準を、アメリカンスタンダードを持ち込もうとしている。 そして、確かにアメリカと中国の間には人権、民主化、もちろん通商問題、昨年では月ベースで見ますと何カ月かは対米赤字の最大の国は中国だという事態になっております。通商摩擦がしたがって起きてくる。それから、武器拡散とか麻薬の問題。麻薬の問題は、雲南省あたりから香港を通じて出ていくというようなことで、アメリカはかなり神経をとがらせております。そういったいろんな問題を抱えているけれども、アメリカとしては、どうも中国とこれからうまくやらないと世界は安定しないということに基本的には考え始めた。 例えば、クリントン大統領が、APECに参加する直前にオーストラリアでクリントンのアジア・ドクトリンといいますか、そんな声明を発表しております。アジア政策を発表したんですが、その中の表現の仕方を見ますと、中国と協力することは非常に生産的であり建設的であるという言い方で、まずそうやって言い切って、その次にオールゾーという接続詞を持ってきて、中国との間では人権問題とか民主化問題とかいろいろな小異はあるという言い方をしています。 そして、APECの江沢民さんとクリントンとの会談で、相互に訪問しましょうというところまでいったことを見ますと、三月にゴア副大統領が北京に行きます、クリントンさんはまだ一回も北京に行っていないわけなんですが。そうやって年内に訪問するか、ことしのカナダでのAPECに江沢民主席が行って、それから多分その前後にワシントンに行くと思うんです。 その後、クリントンさんが年内かあるいは来年になるかもしれませんが訪中をする、こういった枠組みのつくられ方を見ていきますと、戦略的に基本的なところではお互いに提携をしましょうという関係になりつつある。そして、言えることは、ビジネスが先行していたのですが、政治がその後を追い始めているというのが今の米中関係だろうと思っております。 先ほどの質問に戻りますが、中国がうまく世界の経済の中に入ってこれるかどうか、これは当面現象的にはアメリカによるところが非常に大きい。私自身はWTOへの参加を早く認めていくべきだろうというふうに思っております。アメリカは、それをカードにして貿易面でのいろんな譲歩を得ようとしたりいろいろしておりますので、少しまだ時間はかかるかもしれませんが、これはしかし世界経済全体にとっても、今の中国の大きさから考えますとそうしていった方がもちろんいいだろうと思っております。 また、中国の最大の問題である地域間格差、地域内の経済格差、これをどう解決するか、と同時に国有企業の問題が中国は非常に大きな問題になっております。病院から学校から全部国有企業に併設されていて、社会政策的な面倒まで国有企業が見ていた。それを切り離して外資と同じレベルで競争させていくには、本来社会政策を中国政府自体が用意した上でやらないとおかしいんですが、用意しないまま切り離そうという動きもあります。 したがって、この面でも中国の国内が少し混乱する可能性はあります。ただ、ことし秋と言われております、九月末ごろか十月ごろだろうとは思いますが、五年に一回の共産党大会で江沢民体制が基盤を固められるかどうか、固めた上でいろいろそういった内政の問題をやっていくことになるだろうというふうに思っております。 お答えになったかどうかわかりませんが、中国をうまく国際社会にエンゲージあるいはコミットさせていくという方向は、これはもうぜひともアメリカを先頭に日本も後押ししていく、日本はもう後押しする姿勢を見せておりますが、これは正しい方向だと私自身は考えております。
○参考人(広野良吉君) 二つだけその点について申し上げたいと思います。 特に、東南アジアに行っておりまして思うのは、中国に対する見方がどうしても二つ出てくるという点です。 一つは、やはり市場としての中国、あるいはまた投資先としての中国一これは非常に大きな魅力があるわけであって、東南アジアのいろんな企業あるいは政府の方々も中国の経済的な意味での魅力、これは非常に高く評価している。これは、アメリカもそうですし日本もそうだと思います。 ヨーロッパもそうだと思います。しかし同時に、ちょうど中南米諸国にとって、かつてアメリカが巨大な北の国ということで脅威であったと同じように、東南アジアの方にとっては中国というのはやっぱりもう一つの脅威の面も持っている。その脅威の面というのは次の四点で脅威の面であるわけです。 一つは、経済的に脅威である。 やはり中国は、あれだけの膨大な労働力を持っておりますし低賃金であるわけですから、世界市場において今後どんどんと経済的に出てくる。中国自身の大きな経済力、これが競争力となってあらわれてくる、これは現にもうそういう状況が出てまいっております。これをどうするか。あるいはまたエネルギー問題ですね。中国はこの状況を続けていきますと、必ずエネルギー不足の問題が出てまいります。このときに、例えば原子力発電その他が出てくるわけですけれども、あるいはまた食糧の問題、こういうことで経済的な面でのもろもろの角度からの脅威があるということ。 それから、第二番目には環境の問題です。 現在のような状況を中国がやっていきますと、これは東南アジアの諸国にとっても大きな環境的な脅威になります。具体的に一つの例を申し上げますと、これは雲南省の例です。雲南省は、雲南省自身の開発のために、雲南省を流れているメコン川ですね、あのメコン川の水力を使って発電するということをたくさん計画し、現にもう始めました。 ところが、このメコン川というのは国際的な河川です。それで、中国が雲南省でもってそういうことをどんどんやりますと川の水量が大きなインパクトを受けます。その下流地域にある国は何であるかというと、当然それはタイでありラオスでありカンボジアであり、そして最後はベトナムです。 御存じのように、私自身もエカフェにおりまして、昔メコン川を担当いたしましたけれども、このメコンの、特にベトナムとかあるいはカンボジアの方々からすると、タイが水力発電をやるだけでも大きな影響があるのに、ましてや雲南省で中国がどんどん自己のエネルギー、電力を満足させるためにやりますと、実はメコンのデルタに水が逆流してくるわけですね。すなわち海水が入ってくるわけです。海水が入ってくることによって、あのメコンのデルタのすばらしい米作地帯、これが全部被害を受ける、完全に被害を受けるわけです。 それですから、中国のやることが、中国は確かに自分の利益のことを考えてやるけれども、それが非常にメコン川下流の諸国に大きなインパクトを与えますので、私たちは今中国に対して自制するようにということを一生懸命に言っている最中です。これはメコン川の委員会でもってやっております。 もちろん、日本の環境庁もエコ・アジアというのをやっておりまして、これはもうことしで七年目になりますが、エコ・アジアを通じてできるだけ中国に環境問題を考えてほしいということを言っております。 また同時に、日米のコモン・アジェンダというのをつくりまして、コモン・アジェンダの中では環境問題をやっておりますので、その環境問題をもちろん中国との関係で扱うという方向で、この前、橋本総理もそういうような発言があったやに聞いております。 それから、第三番目の大きな脅威は民主化の問題です。 民主化がどんどん進んでいけば脅威にならないんですけれども、果たしてそれがどうなるかということ。これが、もし下手をして中国の中でそれが進展しないことによって何かの政治的な不安が出てくると、これはやっぱり当然東南アジアにも大きな影響を与える。もちろん日本あるいはその他周辺諸国に影響を与えます。 それから、最後に軍事です。 これは先ほどからも出ておりますので、私はもう申し上げませんが、中国の持つ膨大な軍事力、これはやはり非常に脅威であって、軍事費を今世界のあらゆる先進国は削減しておりますけれども、大変残念ながら中国は削減するどころか近代化ということで拡大しております。いろんな理由があるでしょうけれども、やはりそれが脅威になることは事実であって、そういう意味ではARFとかあるいは国連とかその他いろんな場を通じて、何とかしてこういう脅威を少なくするようにすることが重要ではないかと思います。 それから最後に、この問題は非常にデリケートですので、私はこのことについてどうお話ししていいかわかりませんが、ただ、先日私は台湾に行ってまいりました。台湾に行ってきて、これはネイティブといいますか、台湾の一般の大衆のことであって政府のことじゃありません、台湾の人々といろいろ話をしました。かつて日本で教育を受けた人々とかいろんな方々とお話ししたわけですけれども、日本の大学、高等商業学校、いろいろ出た方々です。 そういう方々と話していましてわかったことは、やっぱり台湾の人々は、何とかして台湾の人々が本当に安定した生活ができるような状況をつくってほしい。自分たちとしてはやるけれども、何せ国際環境が非常に影響する台湾ですので、その台湾に対して、どういう格好か知りませんけれども、何らかの形で台湾の方々が安定した生活ができるということが非常に重要ではないか。その面で日本はやっぱり中国とよく話し合って、そういう面での何かをすることが台湾の人々に対する一種の恩返しにもなる、こういうふうに考えております。 どうもありがとうございました。
○参考人(竹中平蔵君) 今の広野先生のお話の中で雲南省の話が出ましたけれども、私もその雲南省からメコンのあたりを少し前に見てくる機会があったんですけれども、例えばラオスという国は、メコン川の流域開発が今のままでいけばインドシナのクウェートになるというふうに言われるわけですね。これは、川の落差が一番大きいのがラオスだそうで、したがってそこで電力をつくることが本来ならばできて、エネルギーで生産を高めることができるという意味でクウェートになる可能性があると。 しかし、それも上流で中国がどのような対応をするかだということで、やはり中国がどうなるかということは御質問のとおりで、大変大きな問題になっているわけだと思います。 まず、香港の話から少しさせていただきたいのですけれども、香港を見る限り、やはり香港そのものが少しずつ変わっていくということは、これはもう間違いないのではないかと思います。 アジアの発展のパターンの中で、例えば政府の役割が重要だ云々という話がありましたけれども、実はその唯一の例外が香港であったわけです。 香港は、御承知のように積極的非介入主義というのを建前として、むしろもう何もしないということを政策のメインに打ち立てていた。ところが香港は、一九九二年に元の財務長官が、積極的非介入主義をもう取り下げるという発言を既にしています。その意味でいいますと、やっぱり中国に戻るということを前提にして、政府の役割というのをむしろ少し強化していくという方向にこれは明らかに変化しているわけです。 香港については二つの変化があるのではないかというふうに思います。一つは、これは香港の変化というよりは、中国政府自身が香港と上海の役割分担をどこかで明確にしていくだろうということではないかと思います。 香港は、アジアの金融の中心地としての役割をもちろんこれからも担っていく、それが中国のメリットでもあるわけですけれども、その一部をやはり近い将来、多分新しい機能は上海にやらせるというようなことが一つの政策として考えられているように思います。その意味でいくと、香港の金融のセンターとしての位置づけというのは、相対的に低下する可能性があるというふうに私自身は思います。もちろん、すぐそんな大きな変化が起こるということではありません。 もう一つ考えられるといいますか、私自身がわかりませんのは香港ドルの価値がどうなるかということであります。 御承知のように、香港ドルは香港の二つの民間銀行が発券するわけでありますけれども、実は発券するに当たって、今それと同じ額のドルを積んでいます。完全にドルリンク、つまりドルの紙幣を出すかわりに別の紙幣を刷って出しているわけで、まさにドルがもう香港の通貨に今なっているわけであります。 しかし、中国に戻った後、この通貨のシステムがそのままで本当に長期間続いていくのだろうかということに関しては、地元の金融専門家の間にもさまざまな意見があるようです。そうしますと、ドルの裏づけがあったから香港ドルというのは安定するわけでありますけれども、それが違ってくると香港ドルの価値そのものが変動すると。これは、幾つかの大きなマクロ経済的なインパクトを与える可能性もあるわけで、その点についての不確定要因が当面あるということではないかと思います。 ただ、いずれにしても、香港の役割が当面大きく変わるということはないわけでありますけれども、少しずつ変化が出てくるというふうに考えておいた方がいいと思います。 さて、中国の問題なのでありますけれども、中国が今の政治と経済のある意味での矛盾をいつまで抱えていくんだろうか。これは、ある意味で永遠のなぞでありまして、私自身もわからないことだらけであります。 ただ、ちょっと幾つかロジックをたどっていくと、中国の経済の発展政策というのは、やはりこういった発展政策をとるというフレームワークを何か示してきたわけではなくて、ある意味で非常に地道なと言いますか、目の前の成功事例を積み重ねて今日まで来ているということではないかと思うんです。 その結果、どういう効果があったかなかったかということなんですけれども、中国の農村人口は八億だというふうに言われています。ところが、中国のいわゆる農耕地面積というのは全体の七%ぐらいしかない。七%の面積しかないところに八億の人間がいて、そのうち労働力人口が四億人いるわけですね。しかし、この七%の土地には四億人も要らないわけです。一億人でできるというふうに言われているんです。したがって、三億人が余剰人口であった。 では、そのうち何が起こってきたかというと、いわゆる開放政策の中で生まれてきた郷鎮企業で今のところ約一・三億人、一億三千万人はそれに吸収されているというふうに言われています。したがって、残りが一・七億人、これをどのように吸収していくかというのが実は経済政策上の大きな問題になっている。 しかし、これはとりもなおさず、一・三億人の人は既にそれによって大きな経済的な利害を持っているということです。つまり、開放政策によって直接利益を得ている人がこれだけいるということでありますから、開放政策は容易には後戻りしないんだという言い方がされますけれども、これはまさしくこの一・三億人という数字の中に裏づけられているということになると思います。しかし、一・七億人は余剰でありますから、その意味で中国は開放政策において明らかに今曲がり角を迎えている。つまり、今までのような形での経済開放特区を続けるというような政策は、これはもう明らかに変化しつつあるというふうに考えていいと思います。 したがって、問題になるのは、そこで次の新たな成功事例をどのような形で求めていくのかということであります。その点が実はまだ見えてきません。幾つかの説があるようでありますけれども、中国のいわゆる中堅クラスの都市、中堅クラスの都市といっても人口が二百万とか三百万の都市なわけですけれども、そういったところの経済発展を重視していくというのが今のところの意見のようであります。つまり、上海のクラスよりもう少し低いランクの、しかし大都市を重点的にやっていくということのようであります。 実は、沿岸部と内陸部の格差という言い方がよくされるわけですけれども、どうも中国の最近のエコノミストに聞いてみると、問題は沿岸と内陸の格差というよりは沿岸地域の中での目に見える格差、内陸同士の目に見える格差、そういうところにむしろ問題があるようです。その意味での成功事例をいかにつくっていくかというのが、やはり中国に新しく問われることではないかと思います。その意味でいうと、やはり日本の投資がそういった中堅の都市に行って成功事例を助けるということが、日本にとっても意味のある重要なことではないかというふうに思います。 もう一つ重要な点は、どうも最近の議論を聞いている限り、軍はこの開放政策をかなり強く支持しているということのようであります。一つの大きな理由は、開放政策の中で軍はさまざまな事業を営んで、それによって利益を得ているということです。つまり、自由化政策のメリットを最も受けている一つが軍であるという側面があった。したがって、これまたそんなに強硬な反改革の力が従来考えていたほどあるわけではないということだと思います。 最後に、貿易の話でありますけれども、やはりWTOへの加盟というのは中国にとってはぜひとも必要だし、日本やアメリカにとっても重要な課題であります。つまり中国の貿易相手の既に八五%はWTOへの加盟国でありますから、中国にとってはその中にみずからが入るということはまさしくメリットがある。 そのときに、問題はどの程度バリア、障壁を高くして、中国に世界のグローバルスタンダードを受け入れてもらうのかということではないかと思います。これについては、最近はどうもアメリカも余り高いバリアを設けない方がいいというような、これは短期的に非常に振れがあるようでありますけれども、意見になりつつある。その意味で、ことしは日中二十五年ということもありますけれども、非常に日本にとっても対中政策を推し進めるチャンスであるというふうに思います。
○笠井亮君 三人の参考人の方々にいろいろ私も伺いたいことがあったんですが、時間の関係もありますし、とりあえず広野参考人に一問だけさせていただくということで、また後で時間があれば伺います。 参考人のお話の中で、高い経済成長の光と影というお話が非常に印象に残って、リアルにその辺がわかったなというふうに思ったところであります。先ほど力説されましたNPO法の問題では、やはり私も非常に今勉強しているところですけれども、どの分野にするかを限定しないで非営利の一点でやるという問題とか、税制優遇の問題をきちっと重視するということは私も同感でございまして、私としても大いに力を尽くしたいなというふうに思っているところなので、先ほどのお話を伺ってそのことを申し上げておきたいと思います。 それで、伺いたいことはODAの問題なんですけれども、率直に伺いたいことがあるんですけれども、先ほど資料ということで事前にいただきました論文というんですか、その後のやりとりの中で、広野先生が、今日のODAの根幹はどこにあるのかということで、途上国の経済社会発展を促進することによって世界全体が繁栄し、その繁栄を通じて自国も繁栄していくという経済の相互依存性をしっかりと認識して、その上に立ってやるのが今日の日本のODAの根幹だというふうに端的に言われているなというふうに思ったんです。 先ほどお話の中にあったように、経済インフラに使っていくという点では道路整備だとかあるいはエネルギーの確保だとか、確かに途上国の経済発展にも寄与する面があるというのは間違いないと、私もそれはそのとおりだと思うんです。 同時に、二国間のODAの配分で、海外進出した大企業の経済活動に不可欠な経済基盤整備に向けられる割合というのが日本の場合には半分近くとかという指摘もありまして、かなりの部分があると。欧米と比べても極端にそういう部分が多いという指摘があるんじゃないかと思うんですけれども、その辺の実態がどうなっているか。 ODA白書の中でも、その辺のことを外務省も大いに気にしている点の一つじゃないかと思うんですけれども、その実態を伺いたいことと、かなりの部分がそういう形で使われるということになりますと、途上国の経済的な自立とかあるいはその当該国の国民生活の向上に役立つというよりも、我が国の企業の利益を優先したものと言わざるを得ない面があるのかどうか。しかも、そのはね返りが、先ほど長谷川参考人が言われたわけですけれども、日本の経済の空洞化という面があるとすれば、自国の繁栄ということにも必ずしもならないんじゃないかという面があると思うんです。 ODAのあり方の問題として、人道的な援助が少ないという問題とあわせて、今申し上げたような問題が根本から見直さなきゃいけない問題としてあるんじゃないかという問題意識を持っておるんですけれども、実態との関係でそれをどういうふうにお考えになりますか、伺いたいと思います。
○参考人(広野良吉君) ありがとうございます。 二国間のODAの配分について、特にインフラ整備を中心とするいわゆる生産的な基盤整備ということですが、日本のODAが確かにこういうような基盤整備に大幅に使われてきたというのは事実です。 それがどういう意味を持ったかというと、今おっしゃいましたような形でもって、日本の企業の進出に役立つような基盤整備、そういう御発言があったわけですが、実は基盤整備は、道路であれ、あるいは電力であれ、港湾であれ、空港であれ、これは何も日本の企業だけが使うんじゃなくてあらゆる国の企業がそれを使う。かつまた、その国の企業も使う、民族系企業もそれを使うという意味で、いわゆる日本の企業だけにとってメリットがあるんじゃなくて、あらゆる国の企業にとって、多国籍企業並びに民族系企業にとってメリットがあるわけであって、そういう意味では私は、いわゆる日本の生産基盤を重視したところのODAが日本の企業だけにメリットがあったとは思いません。これが第一。 それから第二番目には、では日本の企業がそういう生産基盤の整備にどの程度実際に受注してやったかといいますと、これはもう非常にかつては大きかったですね。かつてはもちろんひもつきでしたから多かったわけですが、今はもうひもつきではなくなりました。 そこで、日本の企業が日本の二国間のODAで受注している割合は、たった一八・二%ということでもう非常に少ない。逆に少な過ぎて、そのために日本の産業界からは何のためのODAだ、こういうことを時々言われているぐらいであって、欧米諸国もすべてそうですが、何とかして自分の国の産業の発展に役立つODAのあり方ということを今実は考えている最中です。そういう意味では、日本はまさにひもつきでないODAをやるという点ではトップバッターである、こういうふうに言ってよろしいと思います。もちろん、私は人道的な支援も重要だと思いますので、大いに今後もこれはやっていかなくちゃいけませんが、生産基盤の点についてはそういうふうに考えております。 ただ、もう一つちょっとつけ加えさせていただきますと、日本は必ずしも生産基盤の整備ということだけをやっているんではなくて、先ほど申しましたように、人づくりとか社会開発の面を最近物すごくやるようになりまして、御存じのように、デンマークのコペンハーゲンにおける社会サミット、これはかつて村山前総理が出席したわけですけれども、この社会サミットで20・20というプログラムが承認された。それは、日本の国のODAの二〇%は社会開発に回す、それからまた途上国、受け入れ国も自国の予算の二〇%を社会開発に回す、そういう20・20というプログラムが承認されて、その方向で今あらゆる国々が努力をし、日本もそのためにわざわざ、御存じのようにODAチャーター以外に、今度新しくOECD・DACに新開発戦略というのを提示いたしまして、それが今度OECD・DACの正式な場で承認され、昨年のリヨンにおけるサミットでも承認されまして、その中では社会開発に非常に重点を置いた日本の新しいODAのあり方というのが出ております。 以上でございます。
○益田洋介君 三人の先生方にそれぞれ一問ずつ簡潔に質問をさせていただきたいと思います。 まず最初に、長谷川先生のアジア親善交流協会での報告書の十五ページにありますが、クリストファー国務長官が米中の外相会議の席上で、米中がいろいろな面で協力を推し進めていくことはコンストラクティブでありプロダクティブであるというような表現をしたというふうに書かれております。 また一方では、ジョセフ・ナイが、東アジア戦略研究におきまして、二つの中国との接し方が考えられるだろうけれども、一つはコンテーンメントであって、もう一つはエンゲージメントだと。これは、封じ込めの方は今のところしない方がいいだろうと。むしろ、もう少し中国が発展するには、力をつけていくのには時間がかかることなので、現在のところはエンゲージメントで協力的な関係を持っていこうと、これが今のアメリカの主流の考え方、中国に対するつき合いの考え方だと思います。 それはそれとしまして、例えばマイクロソフトのビル・ゲイツが行けば、中国政府の要人はだれでも会ってくれるけれども、トヨタ自動車の豊田章一郎では門前払いを食うんだなんてお話まで興味深く読ませていただいたわけです。しかし一方で、昨年三月の例の台湾海峡での軍事演習、ミサイルの実弾発射ということがありまして、それ以降アメリカ国民の中国に対する警戒感といいますか、今非常に強まっているということを聞いております。昨年の四月には日米共同声明があって、これも多分に中国に対する日米安保の見直しというふうなスタンスも発信されております。 ですから、先生がここで言われているクリストファー国務長官との外相会談を通じての和やかさよりも関係は悪化しているんじゃないかというふうに私は思っております。これについて最新の状況といいますか、この台湾海峡での実弾演習の後を受けて、米中関係を先生はどういうふうにごらんになるかお伺いしたいと思います。 それから、広野先生は、いただいた資料の「日本のODA政策の現状と問題点」、この四ページにDAC議長報告というのがありまして、これはDAC諸国におけるODA実績の国民一人当たりの負担額ということで九四年のデータですが、圧倒的に北欧三国が多いわけです、日本は八位ですか、これで見ますと。ですから、一人当たり一万円程度の負担しかしていないということであり、その約三倍近い額をデンマークは負担をしているということです。これはかなり政治的な意図があって、外交政策上必要なことなんだというふうな考え方をされている国々じゃないかと思います。国民所得の一%を徴税して、それをODAに充てているんだというふうな話も伺っておりますが、なぜこの国々は圧倒的な負担を進んでしているのかということについての御見解をお伺いします。 最後に、竹中先生ですが、先ほどハードパワーとソフトパワーという御説明をレジュメの六番目の項目でいただきました。大体ハードパワーというのはわかったような気がしたんですけれども、ソフトパワーはインフルエンスだというようなお話だけでありますので、若干これはエラボレートしていただきたいと思います。 以上です。
○参考人(長谷川潔君) 先ほども申し上げましたけれども、アメリカとしてはいろんな問題を抱えながらも中国に対していろいろ物を言って、中国をコンテインする、封じ込めるんではなくて中国を巻き込みながら中国を望ましい方向に変えていこうという、少なくともホワイトハウスレベルではそういう意思決定がされているように私は見ております。もちろん、共和党の中には台湾問題をめぐって異論があるかと思います。 まさに李登輝総統が、一昨年の六月に訪米する直前まで、実はクリストファー長官は中国に対してビザは出さないというシグナルを送っていたんですが、それがあっという間にひっくり返ってビザを出してしまった。つまり、中国側から見れば、アメリカは約束違反をしたということでかなりかんかんになって怒ったわけなんですが、それは議会の影響力がホワイトハウスを動かしたということだろうと思います。 ホワイトハウスレベルでは、先ほど先生がおっしゃいましたナイ・イニシアチブの中でも、安保というものを見直しながら、つまりパワーバランスはきちんと整えながら、中国をエンゲージしていこうとするような方向で今考えているんだろうと私は思います。それが日米安保の見直し、再定義問題であり、アメリカが海外における展開能力十万人の兵力を維持するという政策であり、そういった形で、パワーバランスに留意しながら中国を何とかこちらの言うことを聞くように、望ましい方向ヘリードしていこうという流れにクリントン政権は明らかに立っているというふうに思います。 ただ、アメリカですから、日本国様、議会あるいは市民レベルの声が盛り上がりますとそれに左右されますので、その揺れ動く場面というのは出てくる可能性は排除できません。 確かにおっしゃったとおり、台湾のミサイル発射問題、これは中国は先ほど申し上げましたようにアメリカに裏切られた思いがそのときはありました。しかも、中国にとってはあれは国内であるということですから、まさかアメリカが空母機動部隊を台湾の近くまで、二空母まで派遣するとは考えていなかったと思います。これは双方、誤算が積み重なるおそれがあのときはあったと思います。 ただ、私どもの中国問題を専門にする編集委員の解説を聞きますと、実は李登輝訪米直後の方が危なかったといいます。その直後、同様に中国は演習をしたわけですが、あの当時は軍部の言っていることと北京政府の言うことがかなりばらついていた。前回の、昨年三月の台湾沖でのミサイル演習は、あのときは見事に統制がとれていました、中国の発言に。そういう意味では、中国としてはそんなにばらばらになっていない。 江沢民政権の軍部に対する基盤の弱さのようなものが、その前の演習のときにかなり出てしまったという側面があったかと思いますが、昨年の場合はミサイル演習でかなり緊張はいたしましたが、アメリカも台湾海峡には空母を入れておりません。その入り口に入らないで遠くから見守って、ペリー長官が、中国から訪米した軍の幹部にそんなことでどうするんだというふうに一生懸命説得した、何かもし間違いでもあったらどうするんだということでかなり説得をしたということであります。 米中の流れの方向としては、私が先ほどから申し上げているとおり、もちろんパワーバランスは、安保の面に配慮しつつ非常に経済重視でアメリカは外交を最近やっておりますので、その意味でも中国を排除するんではなくて、中国と話し合って自分たちの望む方向ヘリードしたいという姿勢に傾いているかと認識しております。 以上です。
○参考人(広野良吉君) 確かにおっしゃいましたとおり、特に北欧諸国は、ODAにおきましてはるかに他の国々を凌駕するような成績を上げております。 私のペーパーにもありますが、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、オランダというこの北欧諸国、オランダも北欧諸国の一環と考えれば、こういうような国々が本当にODAの大国の中では、国自身の規模が小さいのでODAそのものの量は少ないんですけれども、しかし一人当たりのODA並びにGNPに対するところの比率というこの両面から見て、非常にすばらしい成績を上げているということは事実です。 では、一体なぜこれらの国々が、アメリカとかその他いろんな国々でODAがだんだんと低くなっているのにもかかわらずここまで一生懸命やっているかというのは、次の三つの理由がある、こういうふうに私は考えます。 まず第一は、これらの国々は非常に人道的支援ということを一生懸命やっております。ODAに占める人道的支援の割合というのは、これはDACの統計にも出ておりますけれども、これら四カ国が世界で最も高いということであるわけです。 そういう意味で、この人道的支援ということを彼らは一生懸命やっております。これがやはり一つの大きな理由ではないか。 では、なぜ人道的支援をそこまでやっているのかということをまた考えるわけです。そのときにやはり考えますのは、これらデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、オランダというような国では言ってみれば早くから市民社会の形成が行われてきたと。そういう中で、国内でも、例えば災害があった場合にすぐ支援するとか、何か事情があった場合にそれに対して皆さん方が協力をするというネットワークが教会その他いろんな場を通じて、NGOを通じてできているわけであって、その同じ考え方を他の途上国に対してやっているというふうに考えてよろしいと思います。 では、なぜ国内だけでなくて海外にもやるのかということになりますが、それはやはり市民社会の考え方が地球的な規模で考えようというふうな努力が見られるのではなかろうかと思います。私自身も、これらの国にしょっちゅう行っていますけれども、本当に行って驚きますのは、例えば日曜日なんかの集会をやっても皆さん方、家庭の主婦も含めて大いにこういうような問題、途上国の問題には非常に熱心でして、そういう意味では私は常に敬意を表しております。 また、二番目の大きな理由は、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、オランダともに、かつて彼らの高度経済成長時代にたくさんの外国人労働力を入れました。その外国人労働力を入れた結果、彼らはかなりそれによって便益を受けたわけですけれども、そこで彼らがやったことは何かというと、外国人労働者のための教育を一生懸命自国でやりました。 そのために、例えばスウェーデンがやったことは、教育の国際化とは何かということを真剣に総理みずから先頭に立ってやりまして、結論は何であるかというと、外国人労働者のしゃべる言葉でもってスウェーデンの国内の教育を行うと。ですから、例えばギリシャ人の労働者に対してはギリシャ語でスウェーデンの国民教育をするということですね。だから、スウェーデン語でやるのではなくてギリシャ語でやるという、ここまで行ったわけですね。その場合に膨大な教育支出がふえたわけですけれども、いずれにしましてもそういうような考えを持った国でございますので、私としてはこういう面でここまで行っているのではないかと思います。 それから、第三番目の大きな理由は、これはデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、オランダともに、これらの国々は二国間のODAというのは比較的少ないわけです。これらの国々は多国間のODAがかなり多い国でして、これは国内的な理由によります。 すなわち、どういうことかといいますと、何しろ人間が少ないものですから官僚も少ないわけです。そこで、その二国間のODAをやるとなると非常に級密な計画をしなくちゃいけない。そうすると、相当のスタッフが必要なんです。ところが、官僚も少ないわけですから、言ってみればそんなスタッフを置く余裕がないわけですね。 そこで、国際機関にお願いしていろいろやっていただくと。そのとき彼らは注文をつけます。注文をつけますけれども、国際機関にお願いしてやるということで、彼らは自分たちの国内の事情からそういう意味でやっておりまして、それがやはり国際機関におけるこれらの国に対する評価を高くしております。同時にまた、これらの国々の人々も結構国際機関で働くようになっておりまして、この点は日本とはかなり違う状況であると言ってよろしいと思います。
○参考人(竹中平蔵君) ソフトパワーの話でありますけれども、具体的には、ある意味で外交上の影響力をもたらすようなソフトなインフラというふうにお考えいただければよろしいかと思います。 具体的には、三つのソフトインフラを私はイメージしております。 一つは、知的なソフトインフラであります。例えば、今アジアの発展途上国に行きますと、親がつくった企業を子供の世代が引き継いで近代化しております。それが経済発展のミクロ的な基礎になっているわけですけれども、彼らの非常に多くの部分が実はアメリカの大学院でMBA、経営修士号を取って帰ってきた人たちによって占められている。この人たちは恐らく一生、アメリカ人の人脈で、アメリカ的な経営手法で、アメリカというマーケットを意識しながらビジネスをしていくだろう。 結果的に、これは政府の力ではないわけですけれども、アメリカの社会が持っている大学というリソースがそういった外交面にも大きな影響力をもたらしているということではないかと思うわけです。その意味での知的なインフラ、大学に象徴されるような知的なインフラ、これが第一点であります。 第二点が情報のインフラ、これは典型的には例のCNNニュースのようなものをお考えいただければよろしいかと思います。これはもう世界じゅうどこに行っても、地元のビジネスリーダーとか地元の市長さん、県会議員の方々、皆さん今CNNニュースを聞いて世界じゅうのニュースをリアルタイムで得ているわけであります。ところが、これはとりもなおさず、アメリカ発のニュースを、アメリカの解釈に基づいて英語で聞いているということで、物事のよしあしの判断、何が重要かという価値判断そのものを、間接的に言うとこのアメリカ的なフィルターを通して世界じゅうの人が得ているということになってしまう。そういった意味での情報のインフラというのも重要なソフトパワーであろうかと思います。 第三番目が、いわゆる資本主義ないしは市場経済のインフラストラクチャーということではないかと思います。 例えば、これが先ほど言った弁護士のようなものになります。アメリカの国際弁護士がさまざまな国際機関で活躍していって、それが世界的な価値基準に大きな影響を与えている。中国で会計制度をつくるとなると、アメリカの国際公認会計士が大挙して押しかけて中国にそれらしきものをつくってしまった。東ヨーロッパが市場経済化されるときも、アメリカの国際経営コンサルタントが大挙して押しかけてそれらしきものをつくってしまった。 気がついてみると、アメリカでは毎年約五万人が日本でいうところの司法試験に合格いたします。これは大変むだな訴訟社会であるというふうに我々は批判してきたわけです。しかし、こういったすそ野の広いプロフェッショナルの中から国際機関で働ける、世界のシステムづくりを担う人材が出てきているわけであります。 日本の試験合格者は約七百人であったと思います。アメリカの五万人は極端でありますけれども、日本の七百人もまた別の意味で極端であります。日本よりも経済規模の小さいドイツやイギリスでも毎年大体九千人ぐらいの司法試験合格者が出ている。その意味でいうと、どうも日本の、弁護士の方がおられたら申しわけありませんけれども、弁護士連盟というのはある意味で供給制約をして、自分たちの仕事の割り当て制を守るためにそういったプロフェッショナルの人材を制約してきたということになってしまいます。 〔会長退席、理事板垣正君着席〕 結局、結果的にはそういったプロフェッショナルの人材が日本で育っていない。それを支えるためのプロフェッショナル制度、会計士の制度、弁護士の制度、さらにはそれを支える教育の改革というのがやはりその裏には伴っていかなければいけないわけです。これは社会面からいうと、成熟した市民社会という言葉を広野先生は頻繁に使っておられますけれども、成熟した市場経済社会、成熟した市民社会というのが結果的には外交面でも力になる、それをソフトパワーというふうに呼ばせていただいているわけであります。
○大脇雅子君 大脇でございます。 今、いろいろと中国の問題が取り上げられておりますが、中国では物価の上昇率を抑えて経済成長率の方がかなり上がってはきたのですが、第九次五カ年計画を見ますとゆがみの是正ということをしております、二〇〇〇年に向けて国有企業の見直しをすると。先ほど竹中先生がおっしゃったように、二〇二〇年では中国は経済成長率で国際的にもトップに立つということでありますと、我が国としてこれまでのスタンスというのは、日米の政策を基軸にして中国に対しても一定のアクセス、一定といいますか一つのアクセスをとってきたんですが、今後はやはり主体的かつ独自的な対中政策をしっかりと展開する必要があるのではないかというふうに考えるものでございます。 したがって、これから二十五周年を迎えまして新たな対中政策のあり方、日本の中国に対する経済政策はどのように持っていくべきか、とりわけ中国に対するODAについてはどのような考えをお持ちなのかということを三先生から御教示いただければ幸いだと思います。
○理事(板垣正君) 三先生ですか。
○大脇雅子君 三人の先生に。
○参考人(長谷川潔君) ことしは、今おっしゃったように日中国交正常化二十五周年、九月二十九日だったと思いますが、昨年はもう近年最悪というように日中関係が冷え込みました。これは一つには靖国参拝問題、中国の核実験、それから尖閣諸島問題、この三つが重なったということだと思うんです。 それで私、昨年末ごろ中国の外交関係者とお話ししていましたときに、来年はこういう記念の年ですけれども、何をやるかというデザインがなかなか描けませんという話がありました。それほどまでに冷え込んだと。ただ、十一月のAPEC首脳会議のときに、危ぶまれましたけれども何とか橋本首相と江沢民主席の会談が実現して、そこで底を打ったなという感じがいたしました。 一つは、対中政策というのは非常に現在難しい。米中がかなり接近し始めていますので、日本の中国政策というのは、米中と日本、この三つを考えますと非常にバランスの、間のとり方といいますか、難しくなってまいりました。今まではアメリカと中国が対立するという枠組みの中で、日本は中国を何とか助けて、例えばヒューストンで天安門事件後に開かれたサミットのときに日本は、第三次だと思いますが、円借款を再開すべきだと、そのときに出席された海部総理がおっしゃった。そのとき中国は本当に感謝したんです、世界から孤立していましたからね。円借款再開を提唱して、世界からの孤立の壁に穴をあけてくれたという意味で中国は非常に感謝したということもございました。 そして、昨年核実験に絡んで無償の援助がとめられたということに対して大変中国はショックを受けました。また、一部の国会議員の方々の間からは、核実験をするような中国に対してはいわゆる円借款もとめたらどうかというアイデアまで浮かんだと、これは私報道で知るだけですが。ということで、大変私は危険な方向に行っているなという感じがいたしました。 中国にとっての円借款の意味づけというのは、これは広野先生の御専門ですが、多分インフラ投資の三分の一程度の割合を占めている大変大切な資金パイプであります。中国にとっては、国交正常化のときに賠償を放棄したという意識が当然ありますので、こういった円借款というのは、援助というふうに言われておりますが、受ける側にとっては低利で貸していただくお金である、条件のいいソフトローンだという認識もあると思います。 それで、最近読んだ「ノーと言える中国」という非常に話題の書があるんですが、それを読んでいますと、その賠償を放棄したというのがどういう意味か日本はわかっていないと。中国のあの戦争の被害者というのはもう二千万を超える、そういう表記があったと思うんですが、それに対して賠償を求めたらどんな金額になるか日本はそのときちゃんと計算できているんだろうかと。それなのに円借款をとめるということはどういうことだと。 中国の経済成長は、このインフラをどう整備していくかにかなりの部分かかっているところがあります。その生命線とも言える円借款をとめるということは、中国の成長をとめるに等しいような話に結びついていく可能性があります。 これは、私の参考におつけした文書の中にも出ておりますけれども、私がタイに駐在して、バンコクで特派員をしていたときにおつき合いした岡崎久彦さんの表現でありますが、中国に対して円借款をとめるということは、経済的には断交を突きつけるような意味合いを持ちますよという表現が非常にぴったりしているなと私は思います。 ある国際政治学にも詳しいエコノミストは、日本の中国とのつき合い方は非常に微妙だ、こういう表現をされて極めて私印象に残っているんですが、米中関係以上に悪くならないような範囲で中国とつき合う、それを考えていくべきだというような表現をされたエコノミストがいます。 また、私、クリントンさんが当選する前ですが、ブルッキングス研究所の研究員とちょっと議論をしまして、そのころ米中は今ほどよくありませんので、こういう言い方をしました。日本は中国といろんなやりとりをする場合に、必ず米国に相談すべきであるというような言い方をしておりました。つまり日中が仲よくなると、米国の方から見れば猜疑心が起きてしまうというような関係を表現した言葉だと思います。 そんなふうに、日中のあり方というのは外交的には極めて難しいバランスの上をたどっていくようなことになるんではないかと思いますが、私自身は、脅威論というのも確かにありますけれども、隣の国の経済発展を助けていくという基本的なスタンス、今政府もそういったスタンスに立っているかと思いますが、その方向はやはり私自身正しいと思っておりますし、米国とも、もちろん中国とも両方うまくやっていくのが日本の外交の与えられた道であろうというふうに思っております。 以上です。
○参考人(広野良吉君) 日本の中国に対するODAということに限定してお答えしたいと思います。 日本の中国に対するODAは、御存じのようにバイラテラルの、二国間援助の中で最大のODAであると言ってよろしいと思います。これを長年続けてきているわけですけれども、なぜ中国に対してこれほど大きなODAを供与してきたかというのは、これは明らかに日本の経済基盤というものの整備にとっても中国が重要であると。また同時に、中国自身の経済の発展を促すことが中国の国民の生活の安定だけでなくて、言ってみれば平和に貢献するということで、いわゆる経済的な目的と、かつまた政治的な目的と申しますか国際関係的な目的、この両方があるわけです。そのために日本はかくも莫大なODAを中国に対して供与してきたわけです。 そのODAの大半はどこに行っているかといいますと、まず第一にインフラ、その中でも特に最近はエネルギー、輸送だけでなくて電力関係ですね、それから人づくり、食糧増産、最後に環境です。この環境の面につきましては先ほども私何回か申し上げましたので特に触れませんが、中国に対してODAを我々が供与する点においてもっと中国自身から環境関係のODAの要請をしてほしい、こういうお願いをしているわけです。 〔理事板垣正君退席、会長着席〕 中国側としては、どうしてもインフラとか食糧増産とかそういうところに重点が来ますので、我々としては環境もということで中国に対してやっているといってよろしいと思います。 こういうような形でもって、中国の経済発展あるいはまた中国の産業構造の高度化、あるいは食糧供給の安定、エネルギー供給の安定、そして長期的な中国経済の発展のために必要な人づくりということを日本が一生懸命やっているわけです。 こういうことをやるときに、じゃ何でも中国の要求するものをすべてやればいいかというと、そうではなくて、やはり日本自身はODAチャーターというのがあります。そのODAチャーターの中では、大量破壊の兵器を増産する、生産する、あるいはそれを輸出するというような国に対しては特別の配慮をすると、配慮というのはネガティブな配慮ですけれども。 そういうふうにODAチャーターではっきりうたっておりますし、また同時に民主化ということに対してもODAチャーターで一つうたっております。さらに、ODAチャーターの最初のプライオリティーは環境ということであります。そういう意味で、大量破壊に寄与するような兵器の生産、輸出、それから民主化、この三つの点からして常にODAチャーター、基準を持ちながら中国に対するODAを考えていくということではないかと思います。 私たちは、もちろん一般の市民であって、当然我々市民としては中国と仲よくやっていく、あるいはまた中国の経済発展に側面から支援することは、これは一般市民として言ってみれば当然の認識だと思いますので、先ほど触れましたようなWTOへの加盟とか、あるいは中国があらゆる場で、国際的な舞台で正式のメンバーとしてやることに対して大いに期待しております。 同時に、ODAのお金というものは基本的には税金である。その税金を使うということになれば、やはり日本国民の総意というものが重要になってくるわけであって、その面で、平和あるいは核を持たないというこの我が国の基本的な外交政策から考えると、どうしても中国に対しては、いろいろな意味でこれからも政策協議を続けて、我が国の考えるような平和のあり方、特に環境と両立するような経済発展のあり方ということを今後も要請していくということではなかろうかと思います。
○参考人(竹中平蔵君) 大変難しい問題でありますけれども、手短に議論させていただきます。 日本、アメリカ、中国、日米中の関係というのは大変難しいわけでありますけれども、気がついてみると、実はアメリカも中国も外交政策という面では非常に大きな特徴を持っていると思います。それは、一言で言えば、ダブルスタンダード外交を堂々と行っているということではないかと思うわけです。 例えば、アメリカでありますけれども、非常にリアリズムといいますか現実主義外交をすると言いながら、一方でいわゆる道義外交を展開するわけであります。神父さんのように人権がどうのこうのということを言ってみたりと思ったら極めて現実的になったり、外交のダブルスタンダードを堂々と使い分けているところはある意味で大国の大国たるゆえんかもしれません。同じことは中国にも言えるわけであります。中国も一方で全方位外交と言いながら、明らかに一方で威信外交という威信を振りかざした外交を行っている。 その点からいきますと、どうも日本がいろんなことを世界の中で言われるのは、この二つのスタンダードがないからだと。ある意味で非常にナイーブであり、正直であり、優しい国であるというふうな印象を持たれているのではないかというふうに思うわけであります。ダブルスタンダードというのは決してごまかしているのではなくて、ある意味で自分たちが選択する幅を示しているということになるのではないかと思うわけです。 その意味で言いますと、私は次のような形でのダブルスタンダード外交を続けていくことが一つの日本の対中外交になるのではないかというふうに考えています。 それは一つには、先ほどから議論しておりますように、東アジアというのはやはりいろんな意味での枠組みがない。安全保障を話し合う枠組みもないし、環境問題についてもそれを多国間で話し合う枠組みもない。そのような意味で、東アジアにおける枠組みづくりでは極めて日本が厳しい姿勢でもって、ある意味では原則論を堂々と主張するような外交を繰り返していくことが必要であろう。 しかし一方では、これは現実に行っていることでありますけれども、経済援助、ODA等々に関しては極めて現実的な立場から、相手の立場を非常に深くおもんばかったこれまでの政策をさらに深く展開していく。このある意味でのダブルスタンダードというのが、中国を考える場合、同様に日米協力して対中エンゲージメントに当たるという意味でも、大変重要な役割を担ってくるのではないかなというふうに思います。 最後にもう一点、やはり中国と日本との関係を考えます場合にどうしても避けて通れない問題として、グラスルーツの知的交流というのが今まで余りに不足していた。最近、この関係緊密化が求められている時代に、むしろ今まで以上にこの関係が弱くなっているという点が指摘されるように思います。 お話の中でもちょっと申し上げましたけれども、これは例えば留学生の数にもう典型的に示されております。日本の大学の留学生受け入れにはさまざまな規定がありまして、例えば向こうの大学、高校を出ていたらどうかとか、日本に来て何カ月以内はどうかとか、私も覚え切れないほどの細かな規定があって、なかなか容易に留学生として受け入れられないというような場合もあります。その意味では、相互の留学生がふえるような仕組み、これは幾つかのちょっとした知恵を出し合うことによってつくれるわけでありますから、それが結果的にはグラスルーツの知的交流、広い意味での社会政策としての外交を優位に展開する非常に重要な基礎であろうかというふうに思います。
○齋藤勁君 ただいまODAで何人かの方々からやりとりがあったので、関連してお伺いしたいんですけれども、これはぜひお三方の一言ずっといいましょうか、要点のみで結構なんですが、今国会でも財政再建ということでODAをもう一度見直そうということがいろいろあります。 一つは、九二年にODA大綱・四原則ができまして今日に至っているわけです。私自身も、このODA大綱からきちんとしたルールづくりをしていくという意味で基本法をやはり制定すべきではないかと個人的には思っている部分もあるんですが、いろいろ内外からこういうこともあるので大綱から基本法へということでございます。私自身も制裁的な援助なんてこれはもう間違いだと思いまして、当然のことながら政策転換を図っていくということがきちんとした視点の中になければいけないというふうに私も思います。この辺は大綱にも実はあるわけでございまして、この辺の基本法についての御見解をいただければなというふうに思います。 もう一つは、広野先生お一人だけに。それぞれお二方にもお伺いしたいと思いますが、時間の関係で。 先ほど、同友会のメンバーでもいらっしゃるというので、きょうは参議院議員をメンバーに来ていただいているんですが、ここにもし中小企業者がいたときに、今円高から円安になってこれからどういうふうになっていくかということで非常に深刻ですけれども、非常に今国内が空洞化をしているということで、これから企業人にとってどうしようかということで深刻なわけであります。 例えば自動車産業なり電機産業で、今ちょっとまた円高から円安になったということで一息ついているという部分もあるようでございます。企業人にとっても、雇用の問題から国内産業のどういう業種をどういうふうにしてこれから成長させていくかということで、ここにもし中小企業者がいるとしたら、これからこういうふうに対応しなさいよということで、新春経済人懇談会じゃございませんけれども、同友会でどういうようなお話をしているのかということも含めましてお聞かせいただければありがたいなというふうに思います。 とりわけ、先ほど長谷川参考人からももう分業ではなくなっていると。しかし、わずかに部品技術は違うんだというようなことになりますと大変深刻ではないかというふうに思いますので、ここら辺も含めてお考えをお聞かせいただければありがたいなというふうに思います。
○参考人(長谷川潔君) ODA大綱・四原則、これを基本法の方へ持っていくというお話、それについてどう思うかと。その動きは結構なことという言い方はおかしいですが、ただ私その運用が大変大切だろうと、仮説はともかくとして。ちょっとこのあたりは広野先生とは少し立場は違うかもしれませんが、確かに中国は軍備の近代化、そして伸び率も毎年一〇%を超えるような、あれは表面だけの予算で実際の国防予算はもっとほかに、解放軍のいろんなビジネスがありますので実際にはもっと大きいというのが定説であります。 そういったことから、例えば、じゃ円借款は要らないではないかというような、フレキシブルな運用ができないようであればかなり現実外交では苦しむと思います。外務省だけではなくて、日本政府が中国とどうつき合っていくかという面で苦しむ場面がいろいろ出てくると思います。そういった大変立派な憲章であり、世界的にも誇っていい憲章だと思いますけれども、その運用がある程度フレキシビリティーを持たないと、かえって国と国との間の摩擦を起こしはしないかなと、現実面ではそういった心配も私はいたします。 例えば、ミャンマーに対して円借款をとめております。そして今ミャンマーは、私どもの新聞で報じましたけれども、空港に円借款を出すという約束をしていてそれがたなざらしになっているわけですね。八八年の民主化運動のときに非常に弾圧をして以来とめているわけなんです。 結局ミャンマーは今何をしているかというと、中国から無利子融資を受けたりして、じゃ何とか空港をそういった格好で日本に頼らないでやっていこうという動き、そしてその円借款プロジェクトに絡んでいた大成建設のような会社はもう来なくていいと言われ出したということがあります。 それが、果たして日本とミャンマーの今後の関係を長期的に考えていった場合にどうなのかなという気も一部で私はしております、実際問題。 もちろん、そういった立派な大綱を、こういう表現は角が立つかもしれませんが、しゃくし定規に解釈してやっていくとODAを出す場もかなり制限されてくるだろうと。それが日本にとっていいのかどうかなという感じがいたします。 誤解を招くような表現で御説明しているのを承知の上で今お話ししているんですが、本音で今お話ししておりますのでそんな印象を受けます。
○参考人(広野良吉君) 問題が二つあると思いますので、別々にお答えしたいと思います。 まず第一は、ODA大綱の問題ですが、これを基本法に持っていくというのはどうか、こういう御意見でございます。 ODA大綱というものができた経緯があるわけですが、そのODA大綱ができた経緯の一番基本的なところは、やはり我が国の政府がODAを実際に供与する、特に八九年から日本はODAの最大の供与国になったわけですので、その中で一体日本は何のためにODAを出しているんだ、どういう制約条件を相手につけているんだというがはっきりしていないと。もちろん、日本の政府ははっきりさせていると言っているんですが、表に余りはっきりしていないというところから、ODA大綱をつくることによって我が国の基本政策はここにあるんだということをはっきり明示するということであったわけです。 この点につきましては、たまたまオランダのへーグで行われました国際会議で私この点申し上げましたけれども、現在もそうですが、当時のノルウェーのブルントラント首相が本当にすばらしいと、それこそ我が国が必要としているものだという発言をしておりました。 そういう意味で、ODA大綱のようなものがない国もまだたくさんある。大綱がないにもかかわらずあれだけのODAを出しているわけですね。 そういう意味では、ODA大綱があったからODAが出るのかどうか、これは量的な問題とは全然別問題であって、そういう意味で私は、日本政府が一九九二年の六月にこのODA大綱をはっきり出したということは、本当にODA大国としての言ってみれば決意をはっきりと表明したものであろう、そう思います。 じゃ、基本法はどうかということになるわけですけれども、ODA大綱を基本法に変えていくときに、当然ODA大綱の言っているような事柄を入れなくちゃいけない。制定すれば必ずODA大綱と同じようなことを当然言わなくちゃいけない。あるいはそれ以外にやるべきことがいろいろあると思います。入れなくてはいけないと思います。 そこで、基本法の制定で一番大きな問題になるのは、今まさに長谷川さんのおっしゃった点であって、いったん法律ができますとその運用が非常に難しくなってくる。これをやはり我が国の外交当局が一番恐れていると思います。だから、運用の面でそういう難しくならないような格好でのODA基本法の制定であれば我が国外交当局は全然問題ないんではないか、これは私個人の考え方です。 それからもう一つ、実は基本法にしたときに大きな問題点が出てまいります。それは何かというと、これはアメリカのやり方にあるようなことですね。 すなわち、アメリカの議会では、ODA基本法があるわけですけれども、そのODA基本法に対していろんなアメンドメント、附帯事項をつけるわけです。アメリカの議員は、それぞれ自分の地元のいわゆる利益ということを考えておりますので、その地元の利益に合ったやり方で、このことをやるときにはこういうような条項をつける、このときはこういう条項をつけるということで、アメリカの場合には、ODA基本法においてつくられるODA計画、これは三カ年計画ですけれども、このODA計画の中で国会議員がいろんな条項をつけるわけです。その条項をのまないとこの予算は認めない、こう来るわけですね。 そういう格好で、国会議員に地元の利益を優先してやられますと、まさにODAというのは外交関係の一環としてやっておりますので、これはどうしようもなくなってくるわけですね。もちろん国会議員の良心を私信頼していますけれども、やはり国会議員は地元から選ばれているわけですから、どうしてもその点が非常に心配なわけであって、その点もないということがはっきりわかればこれはもう問題ない。 だから、そういう意味では、ODA大綱からODA基本法にするときにはその運用で外交当局を縛らないこと、それからもう一つは、今申しました特定の地域の利益を優先した格好でやらないという、この二つの条件さえあれば、私はODA大綱が基本法になることは国民の一人として、市民の一人として一切問題にしませんし、その方向というものは、もし国会の方々が本当に真剣にお考えになるんでしたら、その二つの点をぜひ考えていただければ大変私としてはうれしいと思います。 それから、第二番目の産業空洞化の問題ですけれども、同友会は、これは皆さん方御存じかどうか知りませんが、一九六〇年から六三年にわたってアメリカのCEDという研究機関と一緒に勉強いたしました、共同研究を。その共同研究のときに何をやったかといいますと、世界経済における日本というような、英語ではジャパン・イン・ザ・ワールド・エコノミー、そういうタイトルの国際的な共同研究をしたわけです。 その共同研究をやったときから同友会はどう考えているかと申しますと、これは私、同友会の立場はもちろん言いませんけれども、同友会の一員としてどう考えているかといいますと、日本は何しろ世界経済の繁栄の中で日本経済の繁栄を図ると。だから、世界経済を犠牲にして図るんじゃなくて、世界経済の繁栄の中で日本の繁栄を図るということを同友会のメンバーはみんな言ってまいりました。その一環として、我が国はあらゆる局面において、我が国の政府が反対しても、同友会のメンバーとしてはそうやった方がいいと。 一つのいい例は、円の切り上げの問題です。一九六九年に、もう同友会は既に円の切り上げを提唱しております。そのときには日本の政府は大反対でした。円の切り上げは日本の中小企業をつぶしてしまう、あるいは日本の大企業をつぶしてしまう、輸出産業をつぶすということを言ったわけです。同友会のメンバーたちは、一九六五年から日本は御存じのように貿易収支の恒常的な黒字になりましたので、そういう中でいわゆるファンダメンタルズが変わったんだから当然日本は円の切り上げをすべきであるという意見を出したわけですけれども、御存じのように日本の政府は大反対で、結局それは実現しませんでした。 実現しなかったがゆえに、アメリカは一九七一年の八月十四日、日本でいうと八月十五日ですが、その日本の敗戦記念日の日を選んでニクソンは新経済政策を発表したわけですね。これは明らかに日本をターゲットに発表したわけであって、その経緯の過程で、私自身何回かホワイトハウスに同友会から頼まれて行ったことがあります。 そういうことで、かなりこういうような問題については同友会は前向きの姿でやってまいりました。貿易制限、あるいは貿易の障壁、あるいは非関税障壁の削減の問題でも同友会は常に前向きにやってまいりました。同じく、今まさに問題になっております産業空洞化の問題につきましても同友会は常に前向きで、例えば研究開発をもっと促進することが重要である、それから競争をもっと刺激することが重要である、こういうポジティブな面。それからまた同友会は、規制緩和することによって日本の企業の持つイニシアチブが出てくる、だから規制緩和は非常に重要だということを言い続けて、特に現在の代表幹事の牛尾さんは一生懸命それを言っております。 そういうわけで、常にポジティブな格好で同友会はやってきたわけであって、私は同友会のああいう考え方、時には経団連とは違った考え方でございますけれども、同友会は個人会員の組織のところですから自由に発言していいわけであって、業界の利益を代表する必要はないものですから、個々の良心に従い、社会的責任に従って企業経営者が個人の資格で発言しているわけで、そういう同友会の政策を本当に私は日本の政府に進めていただきたいなと、これはあらゆる面で考えております。
○参考人(竹中平蔵君) 大綱と基本法の話については、議論がもう随分出ていると思いますので簡単に申し上げたいと思いますけれども、私は、基本的にはやはり基本法に移行するというのが筋だと思います。 これは、ここ数年の政策問題についていろいろ議論されてきたことなわけですけれども、行政府が余りに大きな自由裁量権を持つというのは民主主義の政策決定のあり方としては問題が大き過ぎると。それによって問題が先延ばしされる、つまり待ちの政策になるというのが、例の不良債権問題なんかはこの典型であったわけです。もちろん、今までの議論にもありましたように、一方で利益誘導型の政策になってしまってはいけないという面はあるわけです。しかし、そこは民主主義でありますから、少々のリスクを冒してもそういった本法に持っていくというのがやはり建前で、そのときの安全装置をいかにつくるかということこそ議論するというのが筋だと思います。 二番目の企業の市場の話ですけれども、これはぜひ一点だけ申し上げておきたいんですけれども、最近ある国際的な研究プロジェクトがありまして、私は日本の構造問題をたまたま担当していろいろ分析してきたわけですけれども、その中で一つ非常にはっきりしてきたことがあります。それは、日本の経済というのは非常にはっきりとした二重構造になっているという問題であります。 つまり、自動車、家電のように国際的なマーケットで競争して勝てるような非常に生産性の高い産業、これは競争してきたから生産性が高くなった産業。しかし、さまざまな政策の保護、ないしは業界の自己規制も含めてさまざまな規制に守られて競争のインセンティブが働かなかったために、生産性が低いまま温存されてきた産業群。このはっきりとした二重構造群になっているということです。これは、大企業、中小企業の問題ではなくて、その分野によって違っているということです。 しかし、これまた明らかになってきたことは、気がついてみると、国際的に見て生産性の高い産業というのは、GDP全体で見ると日本の二割しかないということです。あと八割はさまざまな規制のまま国際的に見て極めて生産性の低いまま温存されてきた。ある意味では、この八割はこの二割の高い生産性の産業にぶら下がる形でその恩恵を享受しながら今日までやってきた。 しかし問題は、ここ数年の円高の中でこの二割の産業、具体的には自動車、家電でありますけれども、かなり本格的に海外に移転し始めた。そうすると、これは生産性の低い産業しか日本には残らないわけでありますから、そんな国の通貨がいつまでも高くいられるはずはない。だから円安圧力が生じてくるわけだし、株についても不安定な動きが出てくるんだということになる。 結局のところ、しかし日本経済のことを考えると、これはもう別に特別の方法があるわけではありません。この八割の産業に競争してもらって、頑張ってもらうしかないということです。そうしない限り、日本の国民の生活水準は上がりませんよというところまで来ているということだと思います。 しかし、これは考えようによっては、日本経済は今までキャッチアップして追いつき追い越せというふうに言ってきたけれども、追いつき追い越したのは、気がついてみると二割しかなかったということです。あと八割はまだ追いつき追い越せのプロセスにあるという意味ですから、本来競争条件をうまく整えていけば、日本が最も得意とできる分野であるという意味での日本経済の潜在力といいますか、ポテンシャルを示しているというものでもあろうかと思います。 そういう意味で、規制緩和が急がれるのは何かというと、この八割の人に一生懸命競争してもらいましょうと。競争がすべてを解決するわけではありませんけれども、それをやらないことにはその先に話が行かない。アジア太平洋の国々が猛烈な勢いで市場経済の中に入ってきている段階で、それはもうとめることのできない選択の道であるということではないかと思います。
○会長(林田悠紀夫君) 予定時間まであと二十二分となりました。まだ発言を希望される委員が四名いらっしゃいますので、質疑、答弁はまことに恐縮でありますが簡潔に述べられるようにお願い申し上げます。
○笠原潤一君 それでは、長谷川先生と竹中先生にお伺いしたいと思うんですが、最初に長谷川先生が言われましたが、中国の深セン、非常にここが今荒廃しつつあると。事実、私が新幹線に乗っておりましたら、私の隣に座った人が、深センの中でナフサとかブタンの貯蔵タンクをつくろうと。それはモービルが金を出して、日本の三菱がそれを受けて、そして、その人の名前は言えませんが、そこが設計をすると。それで、保険はどこが掛けるかといったら、結局ロイズに頼んだけれども、ロイズはノーと言ったというんですよ。その人の話を聞きまして、全く治安が悪くもう犯罪が非常に起こっていると。 したがって、広州もそうですけれども、かつて華やかだった広州とかそれから深セン、それから今また福建省からも最近物すごく難民が日本に入ってきていますね。 そこで、先ほどの山崎先生の話じゃありませんが、これから香港が中国へ返るわけですよ、七月には。そのときに、今まで中国のリスクを負っていたのはほとんどが香港の金融機関あるいは香港資本ですから、そういう人たちがやってくれたんだけれども、香港が中国へ返ってしまうと一体だれが日本の企業のいろんなリスクを負ってくれるかと。これが非常に大きな問題であるのと、同時に香港にいた華僑資本がみんな金を持って、例えばバンクーバーとかトロントに物すごく中国人が行っちゃったんですよ、これは事実なんです。 それで、彼らが今何を考えているかというと、やっぱり同じ同文同種ですから、中国経済というか、中国との関係があったのでもう一度戻りたいと思うんだけれども、社会主義体制の市場経済といっても、それは恐らくいろんな限界があるだろうと。それでは、彼らがどこへ行くかということは非常に大きな問題であるし、華僑三千万というけれども、これほとんど台湾系が多いと私は思っているんですよ、はっきり言えば。 私は今、沖縄の政務次官をやっていますから政府の一員ということですから、今は行きませんけれども、その前は台湾へ何回も行きまして、李登輝さんともお話ししたときに、ちょうどかつて浙江省の西湖ですか、あそこで遊覧船が沈んだときに、完全に台湾は中国に対してインベストメントをやめたんです。引き揚げることを非常にやったんです。また事実、今も台湾は中国に投資するのに対して非常に慎重な態度を見せています。 先ほどの、軍が中国と商売をやっている、これは実は現実の話でして、台湾も同じように、台湾の国民党というのは自分で御商売をやっていらっしゃるから非常に巨大な資本、金を持っているわけですよ。その投資をどうするかというのは非常に大きな問題。 それで、橋本総理がいみじくも、この日本の金融、かつて東京というのは金融の中心であったわけです。でも、今実際は金融市場としては非常に弱くなってしまったものですから、今どこへ行ったかというと香港だとかシンガポールだけれども、それをもう一遍東京へ返したいと言っていますけれども、果たして本当にそれができるかどうかということも、私は今、このいろんな問題で非常に至難なところだと思っています、今の状況からいえば。 ということで、この香港が中国に返った後、一体どういうふうに資本のメカニズムとかそういうものが動いていくかというのは、いわゆるロングタームと違ってショートタームの問題として非常に私は今心配しているんですが、その点についてお伺いをしたいと思います。 それからもう一つは、かつてアメリカというのは、一九六〇年代の終わりごろから技術移転の名のもとに、質のいい労働力を求めて、特に日本に対して来たわけですよ。ところがそれに気がついて、いやこれは空洞化になってしまうということで、国家というよりも州政府が大変な勢いで州知事を先頭にして日本へ来ましたよ。今、アメリカへ企業移転すごく多いでしょう、トヨタでもホンダでもそうですけれども。そうして、今、竹中先生おっしゃったように、かつてアメリカだって採算性の合わないようなものをみんな捨てちゃったんですよ。しかし、それを今、再び復興させようとして日本の技術やいろんなことをやっていますよ。 それから、例えばモールの問題なんか、サービス業でもそうですけれども、モールが全盛の時代から、今やファクトリーショップとか非常に小さいそういうものがどんどんよくなってきたし、それから都市が荒廃したのを再開発をやって今非常によくなってきましたよ。アメリカの中都市もそれから大都市も、ニューヨークなんか非常にきれいになったし犯罪も少なくなってきたんですよ。 そこら辺が日本とちょっと違ってくるんですが、そういうことを思い合わせますと、確かにアジアの経済は長期的に見ればそうかもわからぬけれども、短期的にはそういういろんな問題があって、一体これからここ四、五年の間あるいは七、八年の間にどういうことになるかというと、中国の国内問題も大変。きょうも新聞で御承知のように、例えばチベットとか新疆とかいろんな問題がたくさんあるんですよ。それで、ソ連も同じようなことをやったんだけれども、ああいうことが起きやしないかという心配をしている人もおるんです、実際の話が。そこら辺のことをちょっとお尋ねしたいと思うんです。 以上です。
○参考人(長谷川潔君) 返還後の香港がどうなるか、これについては私どもでまた近く二回目の調査をやろうと思っていますが、前回九月か十月ごろに、日本企業、欧米企業、そして香港の地元企業にそれぞれ五十社ずつアンケート調査をやってみました。その結果わかったことは、欧米企業はかなり楽観的に物を考えているのに対して、日本企業はかなり悲観的に、まあ程度の問題なんですが、環境が悪くなると見ておる比率が非常に高かった。 どんな面で悪くなるかといいますと、情報統制が始まる。実際に香港の報道機関は自主規制という形でもう既に始めているような気も私はしております。それから、中国からいろんな企業が今はもう何千社という単位でおりますが、結局中国の腐敗したいろんなシステムが香港に導入されて、香港のビジネス環境が悪化するのではないか、そういう心配を日本の企業の方々は多くの面で持っていらっしゃる。経済システムそのものは大きく変わらないと見ているけれども、その運営、マネジメントの仕方が大分変わってくるのではないかという見方をしている。 多分、私は、中国としては香港をシンガポールのような形にしたいのではないかなと思っております。シンガポールというのは、御存じのように経済的には非常に自由にしてあります一方で、政治的にはかなりコントロールをきつくしております。人口が少ないせいであれだけのコントロールができるんだろうとは思うんですが、よく逃げ出さないものだなという気がするんですが、多分、政治的あるいは言論、情報の面では、表立ってどこまでやるかは別として、カーテンの後ろではかなり締めつける方向にいくのではないかと個人的には考えております。 ただ、中国としては、先ほど申し上げましたように、やはり香港というのは海外の資本を取り入れる最大のゲートでありますから、そのゲートの機能を殺すようなことにはしたくない。これは中国の利にも反するということだと思います。そのあたり、実際どうなっていくかはこれは見てみないと何ともしょうがないというところがあります。 先生御指摘のように、深センや広東は非常に今荒れております。いろんなバブルが崩壊して、それは主に不動産バブルが多いんですが、あるいは深センを金融センターにしようと思ったけれどもできなかった。深切に行かれるとわかるんですが、証券会社や銀行ばかりです。製造業はそのさらに奥へ逃げ出してしまっているということで、結局、町としての経済機能をこれからどうやってもう一回立て直すのかなという疑問があります。 あと、先生がおっしゃったように、アメリカは確かに多国籍企業が海外に投資して空洞化いたしました。御存じのとおり、もうテレビをつくっているところは、海外の資本は別として国内産業としてはありませんし、いろんな意味で空洞化したのですが、御指摘のとおり投資誘致をいたしました。そして、誘致ができるだけの税制を変え、いろんなインセンティブをそろえました。 それに対して、日本の場合は、外へ出ていくけれども、例えば年間四百億ドル台の対外直接投資を持つ日本は、日本に投資してくれる外国の直接投資は四十億ドル程度でしかない。これが空洞化のアメリカとは大きく違う点であります。その意味では、長期的にはともかく、短期的には雇用の問題が出てきていると思います。潜在的な失業を企業が抱え込んだりしている状態が少なくとも今あるということが言えるかと思います。 その方向は、先ほど両参考人の先生がおっしゃったとおり、やはり規制緩和の方向にいかざるを得ないのだろうと私は思っております。
○参考人(竹中平蔵君) 中国の話、それとアメリカの話、実はこの二つの経済発展のパターンを見てみますと、二つの点において非常に共通点があるというふうに思います。 一つは、先ほど申し上げたように、マーケットがグローバリゼーションの結果、二十年間に世界のマーケット人口が二倍ぐらいになって拡大した。そうすると何が起こるかというと、当然のことながら競争が厳しくなるわけです。競争が厳しくなると何が起きるか。通常の場合だと、それによって失業が高まるわけですけれども、ちょっと理論的な面倒くさい説明は省きますけれども、一つだけ失業を高めない方法があります。 それはどうすることかというと、相対的に福祉を切り捨てるわけですね。これは、絶対的に切り捨てなくても福祉の水準を置いておけば、経済が高くなっていくと相対的に福祉が切り捨てられていくことになります。そうすると、いわゆる自助努力のメカニズムが働きますから、人々は働かざるを得なくなってマーケットは活性化するし経済がよくなる。実は、アメリカで起こってきたことはまさにこれだったわけです。したがって、経済全体は活性化するんだけれども、気がついてみると普通の人の生活はそんなによくなっていなかった。 同じことが、実はアジア全体について今とられています。市場化、市場のメカニズムを活用するということによって、そういったメリットが今出てきているわけですけれども、結果的に貧富の差が拡大するということになりますから、それによって社会的な荒廃が出てくる。今、そういった意味での矛盾がどんどん積み重なっているという時代だと思います。 しかし、この先どうなるかということは難しいのですけれども、結果的には、先ほど言いましたように中国は自由化の速度を少し変えてくるでしょう。それによって、今のようなだらだらとしたメカニズムが今後かなり長い間続いていく、矛盾を抱えながら続いていくということだと思います。 第二の共通点、これにかかわるわけですけれども、アメリカもアジアの発展途上国も、ともに海外からの資本を導入することによって投資を賄ってきたというもう一つの共通点があります。実は、社会の退廃、それによる政治の乱れというものが生じた場合には、この資本の流入がまず多分とまる。それによって経済的な問題が一気に露呈するという可能性があると思います。 しかし、結果的に言いますと、今のような形で少しずつハンドリングを行いながら、アメリカも中国も問題を抱えながら、つまり社会的な不安要因を抱えながら経済の発展をどうもここしばらぐは続けていくというのが一応のシナリオではないかというふうに思います。
○上田耕一郎君 簡潔に三人の参考人の方々にお伺いします。 長谷川さんのお話は、一昨年ここに見えた東工大の渡辺教授のお話を事実で裏づけた話で、大変興味深く聞いたのですが、いただいた資料でASEAN諸国に対する海外直接投資を見ると、アメリカが非常にふえているんですね。九五年は九二年の二倍になっておりまして、今後、クリントン政権は海外市場の自由化を非常に重視しておりますので、ますますアジア太平洋地域に対するアメリカの直接投資はふえるだろうと思うんです。 それで、APECの九三年のシアトル会議で、アメリカが貿易・投資の自由化の方向へ向けてきたんだけれども、お聞きしたいのは、先進国二〇一〇年、発展途上国二〇二〇年という目標が決まっているんですね。マニラ会議では行動計画も発展途上国からは余り具体的なものが出なかったと報道されているんですが、二十数年あるんだから大丈夫と思うけれども、保護政策をやめて完全自由化の方向へ向かっていく際、多様なこのアジアの諸国で、貧富の拡大だとか格差の拡大だとか農林漁業などの衰退だとか、そういう矛盾は大丈夫なんだろうかという実態がよくわかりませんので、私たちも去年訪問したとき、かなり貧しいところもちょっとかいま見たんですけれども、そこら辺を、各国の実態を御存じの長谷川さんにちょっと見通しをお伺いしたいと思います。 広野参考人には、これまで日本のODAが誇るべき成果を上げたという評価がありまして、今後ともアジア諸国に対して日本のODAは非常に重要な役割を果たすと思うんですけれども、私ども一番これまで問題にしてきたのは自主性なんですね。アメリカの戦略援助に対する追随は、この調査会でも外務省の経済協力局長が、毎年アメリカの外務次官と日本の審議官が協議しているということを私たちに認めたことがあるんだけれども、さきおととし、有名な鷲見一夫教授が参考人でお見えになって、一番問題なのは発展途上国に対する構造調整融資だと。IMFで決めて、世界銀行が融資を決めて、それに関連して日本がそのまま決めていくというのを引っ張りだしたんですが、詳細な資料を配られたんですよ。 これを見ると、アフリカの国が多いんですけれども、アジアもフィリピン、インドネシアなどがあるんですね。広野さんは国連でこの分野のお仕事もされていたので、実際に日本のODAの各国のプロジェクトを決めるときに、IMFや世界銀行のそういう決まったことがやっぱり日本にずっと直結してくるのかどうか、そこら辺の実態をお伺いしたい。 時間もありませんが、竹中参考人にちょっとお伺いしたいのは、軍備競争の問題にも触れられて、ハードパワーの一つに物を壊すのが軍事力だ、そう言われました。私どもが読んだものの中では、プリンストン大学のケント・カルダーの「アジア危機の構図」、あれを見ると、特にエネルギー不足、成長、軍拡で危険なトライアングルで危険なパワーゲームがアジアで広がるだろう、そう書いてある。 最近、軍事問題専門家のアメリカのマイケル・クレアが「東アジア各国の戦力増強」という論文を書いて、東アジア諸国が大規模かつ多様な軍産複合体を建設する方向に向かっている、アメリカはそのお気に入りの同盟国がそれをやることを熱心に援助している、これは自分の足を自分で撃つようなへまな近視眼的行為だという非常な厳しい批判をやっているんです。 今のところ、去年私どもがお伺いしたのでは、軍備拡大競争まで行かないで軍備の近代化ということがASEAN各国の当局者のお返事だったんですけれども、さて、二十一世紀になってこのお二人が危惧するようなそういう軍備拡張競争、パワーゲームの危険が東アジアに生まれるのかどうか、そこら辺どうごらんになっているかお伺いしたいんですが。 以上三問です。
○参考人(長谷川潔君) アメリカのアジア投資は、これだけの成長センターがここにある、市場も大きいということで今後もますますふえると思います。ましてや、このドル高を背景にして、これまでいわばプラザ合意後の十年間は日本とNIESが主役だった十年間だと思いますが、これからもう一つ主役が出てくる、それはアメリカだろうと思います。 それから、APECのボゴールで設定した自由化の期限、先進国二〇一〇年、途上国二〇二〇年という話でございますが、これはいろんな意味合いがもちろんあると思います。ただ、例えばASEANは、竹中先生おっしゃったように、二〇〇三年までにASEAN域内の工業品については関税を五%未満に引き下げましょうと、後から加盟したベトナムはもう三年ほど猶予を後ろにもらっておりますけれども。 そういった合意をしない限り、ASEANに対する投資が減り中国に負けてしまうというようなことがあって、投資のインセンティブ、魅力を高めるためにもこういった合意、進出した企業が域内で自由にやれる合意、例えばトヨタ自動車もそれを利用しようとしております。トヨタ自動車は、フィリピンからトランスミッションをタイへ持ってきて、マレーシアからドアパネルを持ってきてタイで組み立てるというような、そういった域内での流通、物のやりとりが非常に簡単にできるように国と国とのバリアを下げましょうという合意をASEANはその前にしている。 途上国にとっては、二十五年程度の一応余裕があるわけですから、それまでには何とか工業製品のいろんな得意分野を伸ばしていく体制をつくれるだろうという読みがあったと思います。 ただ問題は、私は農業だと思います。農業関連の問題というのは各国政治指導者にとって極めてリスキー、政治的には日本だけではなくてリスキーなものであり、これをどう自由化できるのか、その辺は私は極めて不透明だと思っております。実際に、私自身がスハルト大統領とかラモス大統領などにこのAPECの話をお聞きしたときも、農業については苦笑いといいますか、首をすっきり縦には振りません。これはいろいろ微妙な問題があるからねという話が返ってくることが非常に多かったです。したがって、農産物についてはなかなか難しいものがありそうだなという気がしております。 そして、貧富の格差の問題ですが、一言で申し上げますと、今のアジア各国、中国を含めてですが、高い成長率を続けることによって解消しようという大きな戦略を持っているように私には見えます。つまりパイを広げることが、そのパイのシェアをどうするかよりもまずそちらの方が肝心であって、少し前のベトナムの高官の方が、我々は貧しい平等さを求めてしまった、これが失敗しましたということをおっしゃっていましたけれども、まずパイを大きくすることで、その後その中の配分を公平に近づけていけるチャンスが出てくるのではないかという戦略、つまり高い成長率を保つ中でいろんな問題を解決していこうというふうに考えているように思います。 以上です。
○参考人(広野良吉君) ODAの自主性という問題、それから構造調整との関係でございますが、ODAの自主性という点では、先ほど質問者の方からお話がありましたとおり、日本は米国とも協議いたしておりますし、またドイツとも協議しておりますし豪州とも協議しておりますし、また英国とも協議しておりますしカナダともやっております。そういう意味では、いわゆるODAの大きな供与国とはすべて協議をしながらODAを供与するということをやっておるわけで、これは非常に重要です。積極的な意味を私は見出しております。 と申しますのは、やっぱり世界のODAが、現在約六百億ドルでございますが、この数年ここにとどまっているわけですね。世界のODAがどんどん伸びるという時代ではもうありませんので、できるだけODAの質を高めるということが重要で、そのためにはお互いにオーバーラップしないように、できるだけ各国がそれぞれ協議をしていくということが大切でございます。当然、こういうようなODAについては主要なODA供与国と協議するということ、これはやらなくてはいけないことであって、日本政府がそういうことを進めていることに対して私は納税者の一人として非常に大きな関心を持っております。 しかし、じゃそういう協議が自主性に対してマイナスの効果を持つかというと、私はそう思いません。やはり協議をすることによって、日本の国が持つODAに対する比較優位をできるだけ高めていくという意味からも自主性を強調することができるわけであって、そういう意味では日本のこういうような政策協議というものを高く評価しております。 それから、その一環としてもちろん日米のコモン・アジェンダをやっておりまして、その中では、先ほど申しましたとおり、人口とか環境とかエイズとか麻薬問題、最近は教育の問題も含めてできるだけ日米間の協力を推進するのみならず、これからほかの国々ともそういうことをやっていくというふうに聞いております。こういうように自主性を尊重しつつ、かつまた協議を進めるということは当然のことだと思います。 それから、構造調整との関係ですけれども、具体的には援助受け入れ国は、IMF並びに世銀に対しては借款、実は世銀の借款の大半はこれはODAではありません。世銀の借款の大半は市中金利を使っているわけです。ですからODAではないんですが、ところが世銀の中に第二世銀、IDAというのがありまして、このIDAの場合には御存じのようにあらゆる借款すべていわゆる金利ゼロという、ただしサービスチャージを一%課するという格好になっております。 IDAの資金の借入国は、ある意味でODAを受けているということになるわけで、IDAの資金以外の通常の世銀の資金を借りている場合にはすべて商業借款で、これは市中の金利でもってやってまいりますので、これはあくまでもODAではありません。 そういう意味で、一応IDAということだけに限定いたしますけれども、このIDAのお金を借りるというのは、もちろん途上国の中でも後発途上国、最貧国、こういう低所得国、これがIDAの資金を借りる資格を持っているわけですけれども、その場合には当然、IDAのお金を借り入れることでもってそこに申請するわけです。そこに申請した場合に、IDAはこれに対して厳密な中での研究、分析、協議をいたしまして、これにはお金を出す、これにはお金を出さないということを決めるわけです。 そういうことを決める最終的な決定権限はエグゼクティブボードにあるわけです。まあ言ってみれば理事会にあるわけです。その理事会のメンバーの一つが日本であるわけです。ですから日本は、そういうようなIDAが借款を出す場合に、そこに出していいかどうかという相談にあずかるということ、これが第一。 それから第二番目に、そういうような相談にあずかる場合に、例えばIMF及び世銀が話し合ってある方向を出してきた場合に、日本として、いやそれは待てよと、それはちょっとおかしいじゃないかと言うことはできるわけですね。ただ大変残念ながら、IMF・世銀のお互いの調整の中で、かつて日本は余り構造調整に対しては文句を言ってきませんでした。これは事実です。私の友人がたくさんこういう世銀の理事になっていますので、そういう理事から聞きます。日本の理事じゃなくて外国人の理事から聞きますと、かなり日本は黙っていることが多かったわけです、かつてはですね。 ところが、これはごく数年前から、日本は構造調整についてちょっと待てよと、本当にそれでいいのかということを言い出しました。これは、私は大きな進歩だと思っております。やはりお金を貸す限りは、果たしてそれでいいのかどうかをよく考えなくちゃいけないわけであって、例えば具体的に申しますとアメリカは、非常に大きな声でこのIDAの構造調整についてはいろいろ言っております。イギリスも言っております。カナダも言っております。それから最近ではオランダも非常に言っております。そういうわけで、それぞれ構造調整のいわゆる資金決定、借款決定の場合にはそういうことを言っておりますが、また日本もようやく今は数年前からそういうことに対してはっきりと口を出すようになってまいりました。 そういう意味で、大抵ほかの先生方、新潟大学の先生がおっしゃったことは、数年前まであるいは十年ぐらい前の日本のことであって、現在では日本はかなり構造調整についてはいろいろ言っております。具体的にちょっと申しますと、ネパールの件です。この件におきましても、実はIMF・世銀の方からこういうふうにしたいということがあったわけですけれども、日本政府はいろいろ協議した結果、ちょっと待てよと、これはおかしいじゃないかというふうに出ております。 そういう意味で、構造調整をそのまま、IMF・世銀が言ったから日本がそれをオンしていくというやり方は、数年前まではやっておりましたけれども、現在ではかなりこれについては、積極的に分析して積極的に発言するという方向に変わったわけであって、また納税者の一人としては大変うれしく思っております。
○参考人(竹中平蔵君) アジア太平洋におけるパワーゲームの危険性はあるかということでございますけれども、危険性は、そんなに大きいわけではないと思いますけれどもやはりあるということを申し上げなければいけないと思います。 幾つかの軍事拡大のメカニズムが、この地域にはビルトインされていると思います。例えば、最近のタイのエコノミストが話していた言葉でありますけれども、例えば彼は最近、ブルー・オーシャン・ネイビーという言葉を使います。つまり、青い大海にこぎ出していく海軍、こういう言葉は私の知る限りASEANの国々にはありませんでした。 ASEANの国々にとって軍隊というのは、外に向かっていくものではなくて国内で暴動が起きたときに鎮圧するというのが最大の目的であったわけです。しかし、経済発展している、しかも貿易のおかげで経済発展している、その貿易を守るために、つまりシーレーンを守るための海軍を増強したい。これは、経済発展とともに実はそういったニーズが出てきたというのが一面でありまして、今後これはやはり続くというふうに思われます。 もう一つ、先生のお言葉の中で軍産複合体の話がありましたけれども、これもASEANの国々の中には現実として見られると思います。この論理は次のようなものです。 まず、ハイテク産業を育てたい。そのハイテク産業の代表というのは軍需産業である。パトリオットミサイルに見られるように、あれは大変なハイテク技術である。だからそれをハイテク産業の取っかかりにしたい。したがって、そのためにはまず軍事支出を確実にふやしていって、そこで軍需産業を中心としたハイテク産業をつくっていこう。つまり、これは安全保障政策と産業政策が完全に一体化してしまっているということを意味しています。その意味では、こういった形の軍事支出の拡大というのはやはり続いていく。 もう一つは、アジアの発展途上国から見たところの中国という不確定要因、これがどうなっていくかということに非常に大きく依存するわけでありますけれども、その点を間違えますと、その意味での軍事拡大競争に本格的になってしまう危険がないわけではない。だからこそ、この地域の安全保障のフレームワークを今のうちからつくっていくことを考えなければいけないということではないかと思います。
○会長(林田悠紀夫君) まだまだ質疑を希望される委員がありますが、予定した時間を過ぎましたので、参考人に対する質疑はこの程度といたします。 長谷川参考人、広野参考人、竹中参考人に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変お忙しい中、長時間御出席をいただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時八分散会