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139回国会参議院1996/12/12

行財政機構及び行政監察に関する調査会 第1号

発言数
63
登壇者
13
会派数
7
開催日
1996/12/12

会議録

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ただいまから行財政機構及び行政監察に関する調査会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る十一月二十八日、瀬谷英行君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。  また、去る十一月二十九日、小島慶三君が委員を辞任され、その補欠として上吉原一天君が選任されました。  また、去る二日、伊藤基隆君が委員を辞任され、その補欠として峰崎直樹君が選任されました。     —————————————

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 理事の選任及び補欠選任についてお諮りいたします。  新会派の結成等により今期国会における本調査会の理事の数が一名ふえております。  つきましては、その理事の選任及び委員の異動に伴う理事の補欠選任を行いたいと存じます。  理事の選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事に一井淳治君及び峰崎直樹君を指名いたします。     —————————————

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  行財政機構及び行政監察に関する調査のため、本日の調査会に中央大学法学部教授清水睦君、徳山大学学長浅野一郎君、関西大学法学部教授吉田栄司君及び前参議院外務委員会調査室長辻啓明君を参考人として出席を求め、その意見をお聞きしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 行財政機構及び行政監察に関する調査を議題といたします。「時代の変化に対応した行政の監査の在り方」のうち、国政調査権及び請願制度に関する件について、参考人から意見を聴取いたします。  本日は、中央大学法学部教授清水睦君、徳山大学学長浅野一郎君、関西大学法学部教授吉田栄司君及び前参議院外務委員会調査室長辻啓明君に御出席をいただいております。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところを本調査会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本調査会は、設置以来、「時代の変化に対応した行政の監査の在り方」をテーマに、新たな行政監視あるいは苦情処理にかかわる機関の設置を含む広範な論議をしてまいりました。  この議論の中に、既存の制度・権限の拡充・活用を点検すべきであるとの意見がございましたので、本日、参考人の皆様からは国政調査権及び請願制度に関して忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方でございますが、まず、参考人からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと思います。  それでは、まず清水参考人からお願いをいたします。清水参考人。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) お手元に「国政調査権の充実について」というレジュメがおありかと存じますが、私に意見を述べるようにと言われました事項は、「国政調査権の本質」、それから「国政調査権と行政権」、さらに「国政調査権充実の方策について」、レジュメでいいますと一と二と四でございます。三については、私の方で少し意見を述べさせていただきたいと思いましてつけ加えさせていただいたものでございます。  最初に、「国政調査権の本質」というところですが、これは浦和充子事件がこの本質といいますか、調査権の性格論争が始まる契機になったと思います。  しかし、この事件は必ずしもこの性格論争の題材としては適切なものであったとは思えません。といいますのは、この裁判が確定したものとはいえ、裁判を直接評価する、批判する、そういう形のものが果たしてこの調査権の権限の対象として認められるかどうか、そういうことだったものですから、これは学会では司法権の独立の問題ということで、そのためにいわゆる独立機能説の立場から支持する見解、これは参議院の法務委員会の立場と独立機能説というのはつながつたわけですけれども、学会では余り支持されなかったようであります。この場合は、むしろ最高裁判所のいわゆる補助的機能説が割に支持が学会では多かったと言うことができるかと思います。  それで、私は補助的機能説が妥当だというふうに思っておりますが、補助とか補充とかという言葉を使うことはちょっと問題があるのではないかと思っております。  といいますのは、この補助的機能説は、つまり議院の憲法上認められているかなり広い機能を有効に行使するためのいわば手段となる、そういう機能として国政調査権を見ているわけですので、手段的機能というふうに言うならばともかく、補助とか補充という言葉は目的と手段どの関係で、手段を指しては使われないと思うんですね。  ですから、補助とか補充というと何か機能としては余り強いものではない、いわば従的なものであるという感じがしますけれども、この手段としての機能というのは、目的を達成するために重要であり、かつ国政調査権の場合は不可欠な手段というふうに考えなければいけないと思いますので、どうも補助とか補充という言葉がともすれば調査権を軽視する雰囲気を持つように誤解されてしまうおそれがあるように思います。これは言葉の問題ですけれども、補助、補充という言葉は必ずしも適切ではないのではないかというふうに思います。  それから、新独立機能説というのは、いわゆる国民の知る権利を踏まえまして、国民に情報を提供する、そこに国政調査権の本質があるという考え方でありますけれども、これについては私は必ずしも賛成ではありません。国政調査権の機能が国民に調査の結果として得られる情報を知らせるということは十分認め、かつそれは重要なことだと思いますけれども、国政調査権の目的自体がそういう国民の知る権利を保障するところにあるんだということではないのではないか。やはり議院の機能、つまり立法権とかあるいは行政統制の機能を十分に効果的に発揮するために国政調査権というのはあるんだという理解が妥当なのではないかと思うわけでございます。  日本国憲法の定める議院内閣制は、六十五条で行政権が内閣にあるということになっております。しかし、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」というふうになっていますから、この憲法六十六条の三項からしますと、国会を構成する各議院は、内閣の行政権の行使について責任をとらせるという行政統制の権限を持っているわけでありますし、それは極めて多岐にわたるものであります。  国政調査権は、恐らく行政にのみ向けられるものではないかもしれませんが、やはり国政という言葉からしましてその範囲は行政が一番広いものを持っているわけですので、行政権に対する調査というのがメーン、最も重要なものであるということが言えると思うんです。したがいまして、そういう点では国政調査権と行政権との関係というのが国政調査権の問題を考える上では一番重要になってくるということになるわけでございます。  それで、この国政調査権と行政権との関係では、いわゆる並行調査ということが従来もいろいろ問題にされてきました。並行調査の場合には、検察事務レベルの問題と裁判所に事件が係属してからの調査の問題、この二つの問題があろうかと思います。  検察事務の場合は、国政調査権の行使は事実調査に限られるべきであって、検察権の行使の仕方についていろいろ調査をするというふうなことは、やはり検察行政の公正を確保するというふうな点から見ますと謙抑的であるべきではないかと思います。  それから、裁判所に事件が係属した場合には、事件の事実関係について調査を進めるということは妥当だと思いますけれども、その訴訟指揮とかあるいは判決がなされた場合、判決自体の評価を目的としまして調査をするということは司法権の独立、言いかえますと裁判官の独立という憲法上の要請と抵触するおそれがあるのではないかというふうに思います。  それから、次はいわゆる議院証言法の第五条に出てまいります内閣声明の問題でありますけれども、これは国政調査権の充実という観点かち考え  ますと一番の大きな壁なのではないか。つまり、内閣声明があればもうそこで調査はとまってしまうということになるわけでございますので、この内閣声明の制度は改正する必要がある。内閣声明を認めますと、最も調査権が行使されなければならないような重要な問題に当面したときに、もうこの内閣声明でストップせざるを得ないということになるわけでございます。この点は四の方でまた触れたいと思います。  次に、テレビ放映の禁止の問題でございます。  これは証人の人権という観点からテレビの放映は禁止されたわけでございますけれども、これについては国民の中から、下あるいはマスメディアの方からもいろいろ批判があることは御存じのとおりであります。私は、テレビの放映がなければ国政調査ができないというわけではないと思います。しかし、テレビの放映ということに国民が関心を持つのは、疑獄事件の調査のための特別委員会で調査が行われるような場合だと思います。ですから、国民が非常に関心を持っている問題ですから、原則的にはやっぱりテレビの放映というのは認めるべきではないのか。  ただ、証人の性格等からして非常にテレビの放映ということに恐怖を持つというふうな証人の場合には一委員会の配慮で例外的にテレビの放映を認めない。それも全面的にではなくて、どういう場面においては認めないかとか、そういうふうなことはいろいろ考慮する必要があるかと思いますけれども、例外的にテレビの放映を禁止するというふうな措置が委員会の裁量において行われるということはあってもよいのではないか。原則的にはやはりテレビの放映は認めるというのがよいのではないか、そういうふうに思います。  それから、四の方に行きますけれども、ドイツ基本法の四十四条一項には、調査委員会の設置について議員の四分の一の申し立てがあるときは設置しなければならないという規定がございます。これは少数派の国政調査権の問題に関する権利を定めている一つの例であると言われております。国政調査権の行使が行政に向けられる場合、議院内閣制の場合には野党と政府との対抗関係において問題になりますから、極言すれば国政調査権というのは、野党がイニシアチブをとって政府に対しいろいろな批判を行う場合の非常に有力な武器になるものである。ですから、与党よりは野党の方にイニシアチブを持たせるような国政調査権のあり方というものが考慮されるべきではないかと思います。  それから、二のところは裁判所との関係でございますが、司法権の独立という要請を強く意識しますと、国政調査権が裁判所に係属した事実の調査に対しても当然いろいろ遠慮をする、気兼ねをするという傾向も出てくるのではないかと思います。ですから、そういう場合には事実の認定等については、調査権の行使で一定の事実を明らかにしたというその事実と裁判所で認定された事実とが仮に食い違うような場合があっても、それは別に裁判所を拘束するものではないというふうにする必要があるのではないか。もちろん事実の評価につきましては、これは私の意見では、国政調査権はそういう評価をすべきではないと考えております。ですから、ドイツの基本法四十四条の四項の規定とは違う考え方をしております。  それから、なおこれは私のレジュメにちょっと誤りがありまして、「事実認定」というふうに書いてあるところは、これはドイツの基本法四十四条四項にはございません。認定事実の評価と判断について、裁判所は別に議会のそういうものに拘束はされないんだという趣旨のことが規定の上になっております。  ただ私は、事実認定について調査権を行使した結果とそれから裁判所の認定した事実とが仮に食い違うような場合に、裁判所は議院の認定事実には拘束されないんだということをはっきり規定しておけば、国政調査権の行使についても、司法権の独立を脅かすことにならないかというふうな気兼ねをする必要は議院の側にはないのではないか、そんなふうに考えているわけでございます。  それから、三のところの場合は、内閣声明の問題ですが、これはやはり秘密会という制度によって内閣声明を克服するという必要があるのではないか。私は、国政調査権の行使をする、それは委員会、特別委員会あるいはその調査のための特別の委員会、いろいろなものがあると思いますが、メンバーの人数が割に多いような場合には、仮にこの役員に限定すると。だから少数の人数で、内閣としては職務上の秘密で漏らすと国益を非常に害するというふうな、そういうことについてもそこでは明らかにしなければいけない。ただし、少数のメンバーの中に必ず野党の議員を入れておくということは必要であると思います。  つまり、そうすることによって、行政が行政の中に外に漏らしたくない秘密をいつまでも持っている、それで安心して国民の利益に反するようなことを行うということがあってはならないわけですから、そういうことができないように少数であれ、とにかく議会の議員がそういう秘密にタッチするという制度をやはりつくらなければいけないこれは行政上の秘密だけじゃなくて、企業秘密の場合も同様だと思います。企業秘密の場合にも、当然今は壁になっていると思いますけれども、それについてもやはり同じようなことが言えるのではないかと思います。  それから、参考人の制度は、私は認めるべきではないとは思いません。やはり、調査権を行使していくプロセスにおいて、証人には向かないけれども、参考人として呼んでいろいろ事情を聞く必要があるというふうなケースはあり得るだろうと思うんです。しかし、国政調査権の行使という名目のもとに参考人の方が主役を演ずる、そういうふうなことはやはり問題があるのではないか。その点、ひとつ考えてみなければいけないように思います。  それから、国政調査権を行政に対して有効に行使をするためには、やはり内閣から距離を置くということが必要で、それは議院内閣制をとっていますと国会全体についてそういうことは言えませんが、参議院は少なくとも内閣から距離を置くことによって、言いかえれば大臣は出さないということを徹底することによって、行政に対する国政調査権を強力に行使する基盤、条件をつくっておく、それが一番大事なことではないかと思います。  時間が来ましたので、六に書いてありますことはそのとおりでありますので、あと御質問等がございますれば、またそのときにお答えしたいと思います。  どうもありがとうございました。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ありがとうございました。  次に、浅野参考人にお願いをいたします。浅野参考人。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) 私の方からは、行政権との関係を中心とした国政調査権についてお話しさせていただきます。特にその部分のうち問題点を中心にして話させていただきたいと思います。  まず、その前提として、国政調査権についての一般的なお話をさせていただきます。  国政調査権を規定いたしました規定は憲法六十二条でございます。これは皆さん御承知のとおりだと思います。憲法六十二条は、「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と、このように規定しております。ここで重要なのは、「証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定しているところであろうかと思います。これは、その要求を受けた者がこれに応ずる義務があるということを意味し、その義務の違反に対しては法律をもって適当な制裁を定めることが許される趣旨であると、そういうふうに解釈しております。  このように、憲法は強制権を持った国政調査権を規定しているわけであります。明治憲法のもとでも議会に調査権というものが認められていたのでありますけれども、このような強制権を持ったものでなく、議院と人民との関係を切断した、また議院と諸官庁、地方議会との関係を遮断したものであり、政府が秘密にわたるものと認めた場合には報告または文書の要求に応ずる必要はありませんでした。したがって、全く名目的な国政調査権と言ってよいものでありました。そのようなわけで、まず国政調査権は強制権を持っているものであるということに大きな意味があると思います。  国政調査権といいますものは、議会が立法、予算の審議、行政監督など、その有する機能を有効、適切に行使するためにみずから必要とする事実、情報、資料等を収集し、これに基づいて自己の判断を形成する作用であると言えます。  このような国政調査権が議会に認められましたのは、国政調査権は近代議会がその民主的課題を果たすための不可欠の手段であると考えられるからであろうと思います。そして、議会制の本質的な要具である、このようにさえ言われておるわけであります。近代議会の民主的課題、これは何であろうかと考えてみますと、要するに議会による政府のコントロールということにあるのではなかろうかと、こう思うわけであります。  そして、この調査権というものは、英米では議会侮辱処罰権と結びつき、その他の国では法律により強制権が付与されたものであったわけであります。  ところで、国会は、行政府を指揮命令したり、行政の領域内の行為をみずから行うことができないのは当然でありましょう。しかし、議院内閣制のもとで行政全般を監督する地位にあると考えていいと思われますので、議院は行政を統制し、監視する機能を有するものであると考えられます。そして、この機能を有効、適切に行使するためには国政調査権は必要不可欠なものだと言ってよろしいかと存じます。  したがいまして、国政調査権は広く行政活動全般に及ぶことができると、こう考えられます。しかし、ここで二、三の問題が発生するわけであります。その問題というのは、まず制度的な問題から話させていただきます。  一つは、行政秘密の問題であります。守秘義務との関係と言っていいと思います。これにつきましては、強制権を伴う証人としての場合には、議院証言法五条にその取り扱いについて規定しておりますが、公務員が職務秘密として終局的に守秘できる事項は、国家の重大な利益に悪影響を及ぼすものに限定されることになります。これが先ほど清水先生が申されました内閣声明の問題と絡んでくると思います。  次に、強制権を伴わない国会法百四条による場合でございますが、この場合には昭和四十九年の十二月二十三日に内閣の統一見解が出されております。これは同年の参議院決算委員会で田中角栄元首相のいわゆる金脈問題が取り上げられました際に、国政調査権と公務員の守秘義務の限界が問題になりました。そして、それに対して政府が明らかにした統一見解であります。  その内容の主な部分は次のようであります。 国政調査権に基づいて政府に対して要請があった場合、その要請にこたえて職務上の秘密を開披するかどうかは、守秘義務によってまもられるべき公益と国政調査権の行使によって得られるべき公益とを個々の事案ごとに比較衡量することにより決定されるべきものと考える。   個々の事案について右の判断をする場合において、国会と政府との見解が異なる場合が時に生ずることは避け得ないところであろうが、政府としては、国会の国政調査活動が十分その目的を達成できるよう、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考える。 というのであります。  この場合、議院において国政調査権を行使して秘密の開披を求めると決定した段階において、既に国政調査権の行使によって得られるべき公益と守秘義務によって守られるべき公益との比較考量がなされているわけであろうと思います。そして、国政調査権の行使によって得られるべき公益が守秘義務によって守られるべき公益に優越すると判断されているわけであります。それなのに、この両者の比較考量につき国会の見解と政府側の見解を異にするから、守秘義務を理由として国政調査権の行使を拒むことができると考えますことは、たとえ最大限に協力すべきものといたしましても、議院に国政調査権を認めたこと自体を無意味たらしめるものと考えられます。  したがって、政府の見解は正当ではないと思われます。これは、その公表が国家の重大な利益に悪影響を及ぼすことになる事項についてのみ拒否できると考えるべきでありましょう。ここでも内閣声明の問題が出てくると思います。  二つは、検察権との関係であります。  検察事務は、行政権の作用でありますから国政調査の対象となりますが、裁判と密接にかかわる準司法的作用として、司法権独立の反射的効果として、または検察事務の性格からして司法権の独立に類似する原理が要請されることがあります。  したがって、起訴、不起訴について検察権の行使に政治的圧力を加えることが目的と考えられる調査、起訴事件に直接関連する事項や公訴の内容を対象とする調査、捜査の続行に重大な障害を来すような方法による調査は違法であるか、または適当であるとは思われません。  三つ目は、職権行使の独立性を認められた行政機関との関係の問題であります。  国会が法律によって独立性を認めた以上、その行政機関にある処分をさせ、またはさせないというようなことを目的とする査問的な国政調査権を行使することは許されるべきでないと考えられますけれども、独立性の認められた行政機関であるからといって、これに対する国政調査権がすべて否定されるわけではないと思います。国政調査権の行使によって達成しようとする国家的利益以上に行政機関の独立性を認めた国家的利益がその場合にあるかどうかということになるだろうと思いますが、終局的には、その機関を調査することが国家の重大な利益に悪影響を及ぼすことになるかどうかということが限界になるのだろうと思います。  さらに、直接は行政権との関係ではありませんが、調査権行使の限界の問題として並行調査の問題があります。  並行調査の問題と申しますのは、現に裁判所で係属中の事件の基礎となっているものと同じ事実を全く異なる目的のために、特に本件の場合は行政監督の目的のために調査することができるのかという問題であります。これについては公の機関を通じて、政党の政治上の立場からする影響が裁判官の心証形成に及ぶこととなり、司法権の独立を侵害することとなるから許されないとする考え方と、国政調査権は専ら事件の付随的事情、事件の経緯、事件の経済的、社会的なかんずく政治的意義を明らかにして行政監督に資する目的で行われるべきものであるから、調査方法に厳重に制約を設けて行われるものであれば許されるというような考え方があるようであります。これは裁判所の目的と全く異なった目的であることを明確にして、調査方法において司法の独立を侵さないように配慮すれば、この並行調査は認められると考えていいと思います。  もっとも、第二十二回国会で衆議院行政監察特別委員会は、その運営に関する了解事項を決議いたしました。その中で、「刑事事件として捜査中の事件又は刑事訴追をうけている事件は可及的に調査案件として採択しないこと。」、これを申し合わせたことがあります。これは、並行調査は認められないとの解釈によるものではなくて、同特別委員会が自制したものであろうかと思われます。  以上が制度的な面における問題であります。  次に、運用面では次のような問題が考えられます。  まず、強制力を伴わない国会法百四条による場合を考えてみます。  結局、これは行政秘密との関連が問題となるわけでありますが、情報が行政の側にあるわけでありますので、秘密の解釈をいかに限定して解釈することにいたしましても、行政の協力を得られなければ情報の開示を求めることができないのではないか、こう思います。現在の状況では行政の協力を求め得られないことは、厚生省のエイズに関連するもろもろの情報の例から見ても明らかでないかと思います。  また、百四条による調査権の行使は委員会の持つ権限でありますから、委員会の決定を得なければなりません。結局、多数党が積極的でなければなりませんが、議院内閣制のもとで与党、多数党が政府にとって好ましくない情報の開示に積極的たり得るでしょうか、疑問であります。特にそれが政治に絡む場合一層問題となるのではないでしょうか。  次に、強制力を伴う議院証言法による場合を考えてみます。  国政調査権の行使を効果あらしめるためには、できる限り強制権を伴う証人として情報の提供を求めることが必要だと思われます。しかし、この場合でも国政調査権行使の主体が委員会であることから、委員会の決定によらなければなりません。しかも、証人喚問については全会一致の原則が強調される傾向が強いようであります。また多数決による場合でも、行政に好ましくない情報のために証人喚問を決定しようとしますと、与党、多数党が積極的でないということ、また、証人喚問については政治的、政党的な思惑が先行し、その決定を得ることが困難であるということが考えられます。しかも、仮に証人喚問が決定されても、その喚問では政治的攻防に終始し、単なる政治的セレモニーになる傾向が強いようであります。  本来、国政調査権行使の目的は、行政権の統制、監督に必要な情報を収集し、これを分析して判断することにあるはずですが、その面から有効な効果が得られません。証人喚問は、結局、証人を偽証罪で告発して本人つるし上げの目的を達するということで終わってしまいます。これでは、何のために国政調査権を行使したのかということになるだろうと思います。  国政調査権は、本来、情報を収集し、分析しそれに基づいて目的に応じた判断をするところにあり、さらには収集した情報を国民に提供し、国民の国政監督の資料とするというところにあるのではないかと思います。  このように考えてまいりますと、国政調査権の行使、特に強制権を伴う行使は一回限りのものでなく、継続的、組織的、実質的に行われなければなりませんが、この点についても運用上問題があるのではなかろうかと思います。  証人尋問の方法でありますけれども、それを効果的に行うためには尋問のための準備をしなければなりません。しかし、準備のための委員会が行われるということはまずないようであります。また、尋問のためにはあらかじめ尋問の基礎となる事実について予備的な調査がなされなければなりませんが、これもほとんど行われていないようであります。  また、尋問に当たっては、尋問をする委員の間で尋問事項について相互に調整し、一体的、組織的に尋問を行わなければ実質的な尋問は不可能と思いますが、尋問事項の調整が行われた例はほとんどないと言っていいと思います。同一の政党の中ならできそうなものですが、これも困難なようで、政党が異なる場合はまず調整がないようであります。その結果、証人尋問は通常の審議の質疑のような形でなされております。このようでは有効な尋問が行われることは期待できません。また、証人尋問については証人尋問の技術が必要でありますが、その点の問題もあります。  このように考えていきますと、行政秘密の開示については、秘密会の活用と委員の守秘義務を明確にして受け入れ体制を整備することが必要であります。また証人尋問については、尋問のための準備のための委員会の開催と、その委員会では秘密を確保する手段を考える必要があります。さらに、調査権行使全般について言えることですが、準備のための調査を含めて、調査を補佐するためのスタッフの整備が必要ですし、特に、収集した情報を分析し評価することができるスタッフを設けることが必要です。  時間がないようですので、一番重要な問題点だけ指摘しておきますけれども、要するに、国政調査権を有効に行使するためには、少数党の調査権行使を認める必要があるのではないかと思います。そこで、少数者調査権ということが提唱されておりますので、これに少し触れさせていただきます。  少数者調査権というのは、ドイツ憲法で規定しておりますように、四分の一の少数でも調査権を行使できるということであります。これも、委員会の決定を少数でできるということはできませんから、少数の要求があれば調査権の行使を義務づけるという程度でしか具体化できないのではないかと、こういうふうに思っております。そうしてみると、この少数者調査権の問題も、結局のところ、多数の意思による運営の原則の枠内で考えられなければならないと、こう思うわけであります。  さらに、調査が終わった場合の調査の報告書の問題もございますが、これはもう時間がないようですので簡単にさせていただきます。調査が終わりましたならば、詳細な調査報告書を出していただき、そして国民の国政監督の判断のための資料にするということが必要でなかろうかと、こう思うわけであります。  そんなわけでいろいろ問題がありますが、この国政調査権を有効に行使するためには、このような難しいいろんな問題を解決していかなければならないと思います。  ところが、よくよく考えてみますと、国政調査権の活性化がいろいろ主張されておりますが、いまだにその活性化の方途がとられていないということは、今述べましたような問題の解決がいかに難しいかということになるのではなかろうかと思います。ですから、ぜひともこの難しい問題を解決されて国政調査権の活性化のために御努力いただきますことをお願いする次第でございます。  最後には時間が足りなくてはしょったような形になりましたけれども、これも国政調査権の活性化を祈っておるものでございますから、いろいろ勝手なことを言いましたことをお許しいただきたい、こう思っておるわけでございます。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。吉田参考人。

吉田栄司関西大学法学部教授

○参考人(吉田栄司君) 私の方からは請願権あるいは請願制度について憲法論的な位置づけ、とりわけ私自身のとらえ方というものを御説明させていただきまして、御参考に供したいと存じます。  なお、昨晩、西ドイツの制度についてもという御要望をファクスでいただきましたので、ごく簡単にその説明もつけ加えさせていただこうと存じます。  さて、日本国憲法の十六条という規定、請願権の規定なわけですが、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」と、こう規定している。  ここで、まずその規定の枠組みにちょっと注意を喚起したいのは三つの領域、損害救済ということと公務員罷免ということと法令の制定改廃という三領域を打ち出しているということ。さらに重要な点は、「その他の事項」というふうに書かれているということ。つまり、あらゆる公権力行使がその対象になっているというふうに考えられるというところに注意を喚起させていただきたい  その点について、実は成立の経緯で一点だけ申し上げたいのは、GHQ草案でリドレス・オブ・グリーバンスという用語が最初打ち出されていた。これは文字どおり不満、不平、文句、これの除去という言葉のはずだったのですが、意図的にといいますか、それを狭く訳出、つまり「損害の救済」と、こういう用語を当てられたがために、審議過程で、それではいかにも狭過ぎるということになって「その他」ということがつけ加えられて、文字どおり国民主権原理に転換したことを受けてこの規定にそういう広い範囲を与えたという経緯があることをまず最初に申し上げておきたいと思います。  さて、私のこの人権規定についてのとらえ直し方というものにつきまして、実は九三年の夏に関西大学の「法学論集」に書きました。以下、短い時間ではございますが、そこに書きましたものを中心にそのとらえ方というものを述べさせていただきたいと思います。  まず一のところで、この人権の法的性格について、従来どういう枠の中に位置づけられていたのか、それを整理し直してみました。ここには余り時間を割くつもりはございません。  端的に言いますと、国王に対してこいねがうという形で位置づけられたこの請願権、近代ヨーロッパ立憲主義の伝統の中で位置づけられていたこの人権が、明治憲法にも一応の規定を持っていた、日本国憲法になっても、結局そこで位置づけられていた性格づけと同じものが引きずられている。日本国憲法成立当初、美濃部達吉博士が打ち出したそのとらえ方、いわば明治憲法のもとでのこの規定のとらえ方とほぼ同様に、国に対して、公権力に対して、あるいは議会に対して国民がこいねがい出る、こいねがい出てもいい、こいねがい出る権利があるというだけの国務請求。国務の内容とすれば受理、それだけの権利性格というふうになおとらえられ続けているだろうと。  後に述べますような参政権的なとらえ方というのが六〇年代以降出てくるんですが、それをつなぐような位置づけとして、実は能動的権利という分類方法がございます。部内資料というふうな形で私の方にも送っていただきましたが、その中に出されているのでいいますと、京都大学の佐藤幸治先生等、こういう位置づけを与えられるようになってきて、それが学会においてかなり増大してきているだろうということはございます。あと、きょう参考人で来ておられます清水先生も、従来の国務請求権とか受益権とはやや異なる積極的な位置づけを与えようとされてはおられます。  しかし、そういったいずれの分類あるいはその試み、総じて見ますと、やはり請願を提出する権利、その法的性格ということについては放そうとしていない傾向がやはり強い。つまりは提出するだけの人権ですから、公権力機関の方とすれば、やっぱり受理するという義務が発生するレベルにとどまっている。  私といたしましては、このような把握は文字どおり、そこに書きましたように主権原理の転換を受けての請願権の位置づけとしては余りに弱い。いわば自明のことを書いているにすぎない。言いかえれば、無内容なとらえ方だというところでございます。参政権、つまり政治に参加していく人権として請願権にもっと積極的な位置づけが与えられてしかるべきだというふうに私は考えておりまして、それは六〇年代、その当時安保という問題がございまして、その時期以降幾つか参政権的な位置づけの論文が登場してきているわけですが、私は改めてそれを構成し直したいというふうに考えています。  レジュメに打ち出しましたように、日本国憲法の人権規定のほぼ冒頭のところ、十三、十四という規定、個人の尊重、幸福追求という人権をまず打ち出して、文字どおり個人の人権保障のためにこそ公権力行使があるのだということを明確にした上で十四条で平等を打ち出す。この個々人の自由、平等という理念のためにこそ、あるいはこれを充実、確保、発展させるためにこそ、あるいは前文の言葉を使いますと、福利を国民が享受するためにこそ公権力行使があるのだということを明確にした上で、実は十五、十六、十七がある。  ここで問題にしている請願権というのは実は十六、つまり選挙権の次に打ち込まれている。さらに十七で、国家賠償請求権という明治憲法下にはなかった人権、これが規定されている。明治憲法、つまり主権者は天皇という枠組みのもとでは天皇は悪をなし得ず、したがって国家は悪をなし得ず、役所は悪をなし得ずという基本構造がありましたので、主権原理が転換した以上、当然に改めて打ち込まれたのが十七です。その間に十六が位置づけられている。この十五、十六、十七の一体的把握こそが重要だろうというのが私の立場であります。  私のそのとらえ方、十六条の位置づけというものには実は背景がございまして、理論構成という偉そうな言い方は恐縮ではありますが、私自身の憲法論、私自身の考え、とらえ方の全体像は括弧書きで五つほど打ち出しましたが、国家と個々人あるいは国家機関相互というところすべてについて改めて責任追及システムという理解、打ち込み方、把握の仕方をしていくべきではないかというふうに考えておりまして、先ほどから議論されております議院の国政調査権もそのような責任追及手段、つまり国会議員一人一人に端を発して、それはもちろんハウスという意味での議院の国政調査権という形にもなるわけですが、もともとは全国民を代表するメンバーとしての議員、そこから責任追及手段というのが構成されていくべきものだろう。そうとらえることによって少数派調査権の必要性等も結局浮かび上がってくるんだろうというふうに私は思っておりますが、請願の方に話を戻します。  責任という言葉でここら辺を整理し直そうということなのですが、従属と独立、つまり一定拘束されつつ一定行動に独立性が認められる、そういう両者の関係においてこそ実は責任という概念は機能するんだろうというとらえ方を二番目に打ち出しました。  さらに、その責任というのは実は循環をする。日本語では責任と一言で済まされておりますが、アングロサクソン及び大陸、つまりヨーロッパの方におきましては三つないし四つ概念的区別がございます。このことが日本では意識されていない。それは、下に打ち出しましたように、任務、さらにその任務に応じて行動せよ、行動しているかと問われる応答、レスポンシブル、レスポンシビリティーというこういう用語。さらに、応答不十分だというふうに判定された場合にはしっかり弁明せよ、理由を言えということを問われ得る。その説明が不十分だということになりますと、任務を与えられていたそのメンバーがかえられる。つまり、不利益をこうむるという意味での制裁を受ける、受裁という用語がございますが、こういう枠組み。これは一番上の任務、これが一番大きいです。一番広いです。  そういう意味ではなお不分明なところがありますが、徐々にその範囲を狭めながら最終的には不利益をこうむる、取ってかわられるという構造になって、新たな任務者が設定されていく、こういう循環をとるんだろうと。このことは、行政学という政治学の一領域ではもうほぼ自明のこととして議論されている枠組みですが、憲法論ではこのことが必ずしも意識され区別されていない  私は、十五条、十六条、十七条、つまり選挙権、請願権というものはこの枠組みの中で把握され直すべきだというふうに考えているということでございます。言いかえますと、国民の代表としての全国民を代表する議員というメンバー、その人々の仕事の仕方というものに国民は常にチェックをかけていく、もっとこうせよ、もっとこうすべきだということを常に言っていくことができる、そういう位置づけが十六条には与えられてしかるべきだろうというふうに思っております。  三のところですが、現行法制につきましては次の辻先生の方からお話がございますでしょうから、私はごく簡単に触れます。  請願の現行法制での主体の問題、客体ないし対象の問題、さらに手続の問題ですが、まず主体は、憲法上「何人も」と、こうなっておりますので、現行の外国人あるいは未成年者の選挙権についてはクェスチョンをつけられる、こういった主体にも請願権の人権享有主体性を認めてしかるべきだということはそのとおり。客体、対象のところでも、先ほど冒頭に申し上げましたように、憲法上は「すべて」ですので、これはそういう枠組みになっている、これもまた正当だろう。あと手続で気になるのは、憲法上は「平穏に」とだけ言っているわけでして、ここで既存の法的枠組みとして紹介議員を打ち出していることについての若干の疑問がございます。  最後に、ごく簡単にですけれども、ドイツの制度について。  ドイツの憲法におきましてはその十七条で、日本国憲法の十六条とほぼ同様に、何人も個人で、または他人と共同して管轄機関及び代表議会、まあ連邦議会に当たるわけですが、これに対して文書をもって請願または訴願をなす権利を有すると、こういう規定を持っておりますが、重要なことは、七五年の段階でこの憲法を改正いたしまして、請願委員会というものを議会の中に、衆議院に当たる連邦議会の方ですが、置かなければならないというふうに改正をした。つまり、請願委員会という専門の委員会、請願処理のための委員会を憲法上の機関として国会内に置くということを打ち込んだと。さらにそれを受けて、この請願委員会の権限に関する法律というものを同年、七五年に制定しております。これを契機に改めてこの国会に当たる、衆議院に当たると言った方がよろしいんでしょうけれども、連邦議会の国民からの請願処理は数の上でも倍増していく。  さて、その具体的な手続ですが、これは私、九二年に連邦議会の議事規則を改めて全部邦訳しております。その連邦議会議事規則第九章、百八条から百十二条まで請願処理についての規定を持っております。これらの規定は先ほど申し上げた請願処理委員会の権限に関する法律とあわせて機能しているということでございます。  ごく簡単に言いますと、まずやはり受理をされて、それが登録をされて議会内に受け入れられるわけですが、そこで実は事務局の請願課、我が国においてもあるわけですが、そこが極めて活発な活動をしておりまして、いわば事前審査をかなり厳密にやっている。実は、内容的にそれは州の権限だと。御承知のようにドイツは連邦制をとっておりますので、連邦議会に提出された案件についても州の権限というものについては当然排除しなければならない、あるいは請願内容が特定できないというようなこと。あるいは対象についてはそれぞれ所管の委員会等があるわけですし、それぞれの委員会に付託をする場合もあるんですが、主にはこの請願委員会が一挙に処理をしていくということです。  手続上重要なことは、書類の提示、情報提供、施設への立ち入りという、先ほどから御説明のある国政調査権と極めて連動するような権限をこの委員会は持っている。さらに、請願者本人あるいは証人あるいは専門家、この公聴会といいますか聴取という権限も持っている。ここらの活動について関連する政府構成員、いわば閣僚の了解を得るというふうな手続を持ちつつそういう権限を持っている。  とりわけ重要なことは、各行政庁の決定についてもその変更を求める等の勧告権を持っている。日本の場合の行政行為には御承知のように公定力が認められていて、裁判所あるいは権限ある監督行政庁の取り消し等の手続がない限り効力を認められますが、そこに食い込むような権限が認められているということが注目すべきところだろうと存じます。  あと日本との相違で二点。  それはやはり紹介議員を必要としていないあらゆる国民にそれを認めているということ。次に申し上げますのは、これは日本の議会制度とやや違うところなので妙だととらえられるかもしれません、説明すると長くなるかもしれませんが、休会中も活動を続けることができるというところです。  とりあえずそのくらいで、時間も参りましたので、失礼いたします。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ありがとうございました。  次に、辻参考人にお願いいたします。辻参考人。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 辻でございます。  私に与えられましたテーマは、そこのレジュメにございますように「請願審査の問題点及びその改善策」ということでございます。  時間もありませんので早速入らせていただきますが、国会における請願審査が十分ではないというようなことは参議院の歴史の中で大いに論じられてきたところでございます。今から二十五年前、当時の河野議長さんが諮問機関を、参議院問題懇談会をつくりまして、そのとき私もちょうど事務方の責任者を命ぜられましてやった覚えがあります。そこで取り上げられまして以来、安井議長、徳永議長、木村議長、原議長と四代の議長のときにそれぞれ参議院改革協議会という場で取り上げられ、そこでそれぞれ答申がなされているわけでございます。  それらの答申を通じまして共通する請願改革の項目というのは、大きく分けまして三つあるということでございます。  その第一が請願審査の時期の適正化ということでございまして、その答申にありますところは、請願は会期末に一括審査するのではなくて会期の途中においても積極的に審査せよ、特に緊急に措置する必要のある請願については、その内容に応じて時機を失しないように審査せよ、さらに議案の審査や国政調査に当たっては、これに関連する請願に十分配慮することというようなことでございました。  二番目の採択請願のアフターケアの問題でございますが、それが不十分だということでございまして、採択した請願について、国会で処理できるものは積極的にその実現に努めること、それから内閣に送付した請願については、政府の処理状況を聴取するなど、その願意の実現を図ることというようになっているわけでございます。  三番目は、請願審査の結果について、請願者がこれを知ることができるように事務局から請願紹介議員に対し、当該議員紹介に係る請願に関する審査結果を速やかに通知することとなっているわけでございます。  この三点のうち、第三のいわゆる採択請願の紹介議員への通知、これは事務局でやりますので実際行われているわけでございますが、第一のもの及び第二のものにつきましてはいまだ不十分だというようなことが言われているわけでございます。最初の会期途中における請願審査につきましては、この答申を受けまして二、三回行われたことがございます。しかし、最近はほとんど行われていないということでございます。  そういうようなことで、例えば帝国議会の時代にあったように、あるいは今御説明がありましたドイツ連邦議会において請願審査を専門に行う常任委員会たる請願委員会を設置して、例えば週一回定期的に審査するようにしたらどうかというような意見もあるわけでございますけれども、私としては、せっかく常任委員会制度というものをつくってあるわけでございますので、それぞれの常任委員会が審査することが適当であろうと。  ただし、時機を失しないようにすることが必要でございますので、やはり各委員会としては付託請願につきまして絶えず注意を払う必要がある。そのために、委員に対しての請願情報の提供というものを欠かすことができないということ、あるいは適宜理事会で請願の取り扱いを協議する、あるいは請願の担当理事というようなものを置いて責任体制を確立するというようなことが考えられるんだろうと思うのでございます。  それから、採択請願のアフターケアについてでございますが、例えば参議院で発議いたしました公文書館法案のように、請願が立法化につながったものもあるわけでございますので、委員会での討議を通じて委員会提出法律案という制度もありますから、そういうものに結実していけば大変結構なことだろうと考えるわけでございます。立法化に至らないものでありましても、委員会の国政調査の場で請願が指摘している問題点について議論を深めていくということはもちろん現在も当然やっているわけでございますし、今後もさらにそれを深めていただきたい、こういうふうに思っているわけでございます。  それから第二番目、「地方議会における請願審査との対比」ということであります。  請願の取り扱いにつきましては、よく地方議会のそれと比較をされまして、国会は地方議会に比べて請願軽視だとか不親切だというような批判があるわけでございます。地方議会は住民密着型議会でございますので、請願も身近で具体的なものが多うございます。それに審査件数もそう多くありませんので、議案同様に一件一件丁寧な審査が行われているということでございます。  そこで、地方議会の取り扱いと国会のそれとの相違点というものを若干申し上げたいと思うのでございます。  まず第一に、地方議会の多くは請願の閉会中受理ということも行っているということでございます。請願の審査それ自体はもちろん閉会中始められるわけではございませんけれども、議会としては請願受理の窓口をいつもあけておく、そうすることによって住民は執行機関に対して請願書なり要望書を持ってくると同時に、その足で議会に対しても請願を提出できるということになっているわけでございます。そのことによりまして議会と住民との密着度が高まるということでございます。さらに、地方議会の場合には会期が非常に短うございますので、議会招集後受理では審査が十分行われがたいという実際の要請があるわけでございます。  さらに、閉会申請願を受理しておきますと、いわゆる臨時会の招集請求というのが地方議会にございますが、国会にもあるわけですけれども、その請求事件としてそれを取り上げることもできるというメリットもあるわけでございます。それに対しまして、国会の方は会期も長うございますし、その必要性も少ないということになっているわけでございます。仮に、事務局で閉会中仮受理をしておいて、次の議会の召集日に正式受理というようなことにしたらどうかというような話もあるわけでございますけれども、請願提出に先着争いが起こるというようなことでありまして、結局、国会の場合は請願についても議案同様に会期独立の原則を守るべきだというようなことに現在なっているわけでございます。  次に、複数委員会の所管にわたる請願の付託ということでございます。  最近は総合的な施策を求める請願が非常にふえてまいりました。そういうものは一つの委員会で処理できません。そうかといって、そのような請願のために特別委員会を一々設置するというわけにもまいりません。そこで、地方議会は請願の内容が二つ以上の委員会の所管に属するというような場合には二つ以上の請願が提出されたというふうにみなしまして、それぞれの委員会に付託しているのであります。これに対しまして、国会の場合は、提出の時点で紹介議員の御協力をいただきまして委員会単位のものに分けて別々に出していただいている。ただし、それぞれの請願書の提出理由のところで、これは総合的な施策を求める請願の一環として提出したものである、ほかにも同趣旨で提出したものがありますよというようなことを書いていただくということでございます。国会の納得ずくの分割方式というのも一理あるものと考えております。  それから第三は、委員会審査のやり方の問題でございます。  地方議会の場合は、先ほど説明しましたように、請願につきましても一件ずつ詳細な審査が行われる、その際行政当局の説明も聴取するということでございます。請願審査は文書審査でございますけれども、場合によっては請願提出者を参考人として招いて質疑も行われるということになっております。これに対しまして、国会の場合は皆さん御承知のとおりでございますが、委員会に先立つ理事会での協議で検討がなされるということで、委員会における実質審議がほとんど行われないということになっております。国会における請願は非常に多うございますので、一件一件審査するというわけにもなかなかいかないという実情もあると思います。  しかし、正式な委員会で政府側に請願事項についての現況とか対応策などを説明させるなど、一度はその請願に対する討議の機会を与える必要があるのではないか。つまり、請願審査が目に見える形で行われるということが国民との関係で大事なことではないかというふうに私は考えているわけでございます。  それから、請願議決の内容でございます。  地方議会の場合は、請願を採択するだけではなくて不採択ともはっきりと決定するわけです。これに対しまして、国会の場合は採択は決めますけれども不採択ということは決めないで、以下保留というようなことで、そのまま審議未了にするわけでございます。国民の請願権尊重の観点からいって、国会の扱いの方がそういう点ではいいのかなとも考えるわけでございます。  また、地方議会の場合は採択のほかに一部採択、趣旨採択という決定をいたしまして、なるべく多くの請願の趣旨を生かそうというような態度でございます。国会でも一部採択ということはないわけではございませんが、そう多いわけでもありません。参議院規則によりますと、採択請願については意見書を付することができることになっておりますので、この制度を活用いたしまして、委員会サイドで一部採択だとか、趣旨採択だとか、あるいは検討に値するとかいうような、いろいろな意見書をつけて採択するというようなことはいいのではないかと私は考えております。  それから、請願の継続審査でございます。  地方議会は会期が短うございますので、請願についても継続審査が認められております。これに対しまして、国会の方は継続審査は認められておりません。会期も長うございますし、請願件数も多うございますので、会期ごとに区切りをつけた方がよいという考え方からだというふうに理解しております。  それから第六は、請願審査結果の請願者への通知でございます。  地方議会の場合には、採択、不採択の別なく請願審査の結果を請願者に通知するというようなことにしている議会が多いわけでございます。これに対しまして、国会の場合は請願件数が余りにも多い、請願者の住所の確認ができない、それから請願提出に際して分割して出すとかいうような複雑な問題がありまして、そういうような理由で請願の結果を紹介議員に通知するだけにとどめているわけでございます。つまり、紹介議員には請願審査の入り口から出口まで面倒を見ていただくというようなことになっているわけでございます。今はもうコンピューター時代でございますので、請願者がいつでも自分の提出した請願の審査状況あるいは審査結果というものを知り得るような装置、いわゆるインターネットなどが盛んになっておるようでございますから、そういうことも考える必要があるのかなというふうに思っているわけでございます。  それから最後に、「請願改革命後の課題」でございますが、まず請願の多様性とその対応ということでございます。  請願は議会に対する国民の要望、意見表明の原点でありますので、いろいろなものがあるわけでございます。また、制限しないでいろいろなものを出していただくということがまさに大事だと思っておるわけでございます。六〇年安保以来、大衆運動の中で請願の署名活動が活発に行われることで、請願に対して特別なイメージを持っている方もおられると思うのでございますけれども、請願にはいろいろなものがありまして、施策の充実や改善を求める請願のほかにも個々の行政処分に対する苦情申し立て型請願というものもあってもいいわけですし、国会に対する政策提案型請願というものもあってもいいわけでございます。.そういう中で、請願の議決方法も今までのように単に採択、不採択というだけではなくて、その性格に応じたやり方があってもいいのではないかというふうに考えているわけでございます。例えば、議案に対する賛否を表明するようなもの、これは議案の審査に反映させればよいわけでございまして.請願それ自体に対する議決は私は必要はないということだと思います。  それから、苦情申し立て型請願というものは、これはやはり中身を十分審査して、妥当なものについては政府にその解決方を勧告するというようなことになろうかと思いますが、この場合、委員会がどの程度オンブズマン的な役割を果たしていくかというようなことが大変なテーマだと思います。現状では、紹介議員が国政調査の場で請願で述べられている要望事項というものを質疑などで取り上げるというようなこと、あるいは委員会が調査テーマとして集中審議の対象テーマとするというようなことはあり得るということでございます。つまり、請願と国政調査とはそういう意味で連動しているわけでございます。  それから、政策提案型請願につきましては、これは採択、不採択と決めるのではなくて、国会における検討資料として大いに尊重するということを議決するというようなこともあってもいいのではないか。いきなり請願審査の結果として採択、不採択と決めなくても、そういう決め方もあるのではないか、単に保留というのもちょっと寂しいなと思っております。  要するに、考え方といたしましては、決算の議決案のように請願の審査についての委員会としての議決案というものをつくっていただいて、それを委員長報告のとおり決するという形で本会議で決するというようなやり方、そうなりますと、国会として検討に値するとか、政府に改善方を勧告するというような内容のものも出てくるのではないか。現状では、そういうようなものは一応採択して、意見書案の中でそういう趣旨で採択したんだよというようなことを述べるというようなことになろうかと思うわけでございます。  次は、「世論調査の実施」と書いてありますが、これはアンケート調査のようなものを行ったらいいのではないかと考えます。請願は国民の声ではありますけれども、それが必ずしも国民の多数の声であるかはこれは別問題でありますので、国会としてはもちろん提出された請願は尊重すると同時に、みずからも積極的に国民の声を集める。請願審査と並行してアンケート調査のような形で行うことがいいのではないか。例えば、夫婦別姓の問題とか臓器移植の問題などは、国会の方から積極的に国民感情に対する調査というようなことが行われてもいいのではないか。総理府などがいろいろやっているようでございますけれども、国会も請願を受理するだけでなくて、そういった調査も積極的になさったらどうかと考えているわけです。  それから第三は、「アイデア提供型請願を歓迎」と書いてありますが、国会は今まで政府から提出された議案審査を中心として活動してきたわけでありまして、現在の国会法や議院規則というものも旧帝国議会時代の議院法とか規則と同様に、議案の趣旨説明、質疑、討論、採決というような審議中心の規定ぶりになっております。しかし、やっぱり国会が国権の最高機関として、あるいは唯一の立法機関としての役割を果たすためにはみずから積極的に提案していくという姿勢が大事だと思いますので、そのためには趣旨説明、質疑、討論、採決というのではなくて、調査、分析、立案というようなプロセスが私は大事ではないかと思います。  そうなりますと、国会の持っている調査能力、分析能力、立案能力というものが強化されなければなりませんけれども、同時に国民からも大いに知恵を出していただくことが大事だということで、これを請願という形でいただくのか、あるいは別の国民提案のような形で独立させるかは別といたしまして、そういうようなものも積極的に出していただく。テーマを決めて、国会の方から提言を求めるというようなこともあっていいのではないかと考えております。  最後に、「国民とともに考える国会」とありますが、現在の国会と国民との関係は、国民からは請願とか公聴会、参考人、あるいは委員派遣の際の意見聴取というような形で意見は吸収しているわけであります。一方、国会からは開かれた国会ということで、広報活動強化あるいは国民への情報の提供というようなことが行われているわけでございます。もちろんこういうものは今後とも活発に行われなければならぬと思うのでありますけれども、どうもいずれも言いっ放し、聞きっ放しで一方通行的なものに終わる可能性があるのではないかというふうに思うわけでございます。  そうならないためには、やっぱり国会と国民との間で討議がなされる必要があるのではないか。例えば、議会が主催するシンポジウムのようなものを全国各地で開くことで、国民とともに考えるようなことがあってもいいのではないか。単なる受け身の議会ではないという、むしろ事実を国民に伝えて国民と一緒に考えていくということが大事ではないかと思うわけでございます。  このようなことで、国民との関係の改善ということを検討し、かつ実行するような機構として、例えば議院運営委員会に国民との関係の改善に関する小委員会というようなものを設けまして、そこでは同時に、請願の取り扱いについての問題点なども解決していくというような方策というものも考えたらいいのではないかと思います。  以上、時間がありませんので早口でお話し申し上げて申しわけございませんでしたが、御質問があったらお答えすることにして、一応話を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。

守住有信自由民主党

○守住有信君 自由民主党の守住でございます。  きょうは四人の先生方、国政調査権、請願権、それぞれのお考え、分析、また実態に即したお話もたくさん出てまいりましたけれども、私はまず身近な請願の方のことから。  参議院でもお話しのように随分長い間議論されてきました。私の印象を申し上げますと、やはり国会の場が、まず条約もあれば予算もあれば予算分科会もあれば法案は山のように、時代は激変の時代ですから、新しい立法から始まりましてそういう論議、一般質疑が一回ぐらいあるぐらいで、もう本当に時間がないそれで、党は党で、党の活動というと、今十二月でございます。御承知のとおりでございまして、予算の編成から政策減税その他もろもろございます。  そういうことを考えますと、私だけでなくて歴代の議員の先生方、特に参議院においては参議院の独自性、特徴というものを念頭に置いてやられてきたと思います。ところが現実の問題として、これがそれだけの、実務的なものもありますが、単なる形式的な処理、紹介議員その他もろもろございましたけれども、あるいは特別の委員会をつくってそこでやる。しかし、それは同時に一般のそれぞれの常任委員会との関連もある。常任委員会がいわばそれぞれの専門委員会でございますから、請願という横割りの角度で物を見ていった場合に実質的な内容に触れていくわけです。そして、政府への勧告権、そういうことをやり、これは国政調査権とも絡んでくるわけですけれども、そういうことまで考えていった場合、どういう現実処理が、一歩前進の方法があるだろうかと。  私も日ごろ考えておりますけれども、辻参考人は実務をかつてやっておられたわけで、外務委員会だって条約その他一般のあれも、こういう激動の時代ですから、法令だけでなくていろいろあると思いますが、そこらあたりを本当に時間の限られた、まして衆議院なんかになると選挙もあります、我々もそうですが。我々は正直言って金曜日の夜、土曜日朝の一便で帰って、月曜日の朝一便で上京する、こういう状況です。  そしてまた、国会は昔は大分閉会がありましたけれども、最近長くなりました、私の印象では。しかし、私は決算委員ですから、閉会中も審査ということで、各省庁のべつ幕なし毎週二回ずつ集まって、そのためには勉強もせにゃいかぬ、質問もする。まして決算ですから、会計検査院とか行政監察を駆使しながら各省庁に。まさしくおっしゃったような内閣と一定の距離を置くというのが参議院だと思っておりますので、政権政党内閣ではありますけれども、一定の距離を置くというスタンスでずっと決算委員会も十何年離さぬでやってきました。そういう自分の体験あるいは先生方もみんな一生懸命それぞれの御努力をなさっておられる。そういう中で、しかしこの請願権というもののあり方、やり方、処理の仕方、何とかせにゃいかぬという思いが私もあるわけでございます。  いろいろ私の気持ち、実態を申し上げましたけれども、どういうやり方を現実的にすれば一歩前進がとれるだろうかというのが率直な気持ちでございます。そこらあたりにつきまして、いろんなアイデアなり施策の提言なりお持ちだろうと思いますから、お二人からお話しいただければありがたいと思います。  よろしくお願いします。

吉田栄司関西大学法学部教授

○参考人(吉田栄司君) 私、レジュメの二のところで、いわば理論的再構成をしていく必要があるだろうというふうに申し上げました。  そこで、応答責任あるいは弁明責任の追及手段としてこの請願権という人権を構成し直すべきだというふうに私は主張させていただいたわけです。この応答・弁明責任というものを具体的な制度で現実にどうすればいいのかということになりますと、やはりドイツの制度が参考になるだろう。応答・弁明ということに対応して、ドイツでは通知義務及びその通知に理由を付さなければならない、こういう形になっております。  ともかく、まずそういう位置づけを与えることだろうというふうに思っております。しかし、現実的には時間がないさまざまな委員会、もちろん議員の方々は時間がない、党は党でやる、こういうことでございますので、やはりそれを専門に処理していくスタッフを充実させた常設の委員会が少なくとも参議院には必要なのではないか、かように思います。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 私も国会で三十八年間働かせていただきましたので、よく実情は存じておるわけでございます。  請願にもいろいろありまして、例えば議案に関連するような請願については、外務委員会の調査資料の中ではそれぞれそれに関連する請願が出ていますよという紹介を議員さんにしているわけでございまして、そういうようにアップ・ツー・デートなというか、時宜に適した問題提起をそれぞれの委員の方々にすること、先ほど私も御説明しましたけれども、そういうことも非常に大事だろうと思います。  それから、国政調査といっても国会の国政調査はいわゆる一般社会の方が考えておられるような国政調査ではなくて、各省庁の全般にわたる質問が何でもできるような形になっておりますので、その中で自分が質問する場合にこういうような請願が出ている、それに関連しての質疑であるというような御紹介があれば、これはやっぱり請願が表に出た形になりますので、そういう形になるべくしていただきたいというようなことでございます。  いろいろあります。苦情処理型請願は、今度もしこの調査会等でこれを歓迎するということになりますと、今までの請願は未来にというか将来に対する対策樹立のような請願でございましたが、苦情処理型請願というのは過去及び現在におけるいわゆる作為または不作為といいますか、そういうものに対する苦情ということでございますので、これはまた若干その姿が違ってまいります。ドイツ型の請願委員会というのはそういうものを主としてやっているわけでございますので、そういうものを歓迎するということになりますと、今の制度では内閣委員会を中心におやりになるのかもしれませんが、新しい委員会をつくられて各論的にやっていくということも必要になるかもしれない。  特に、イギリスなんかの場合は議会コミッショナーという制度がありまして、その中で議員の紹介を付して出される苦情処理型の請願でも千件ぐらいあるし、国民にそれが周知徹底されますとさらにふえる傾向にあるというようなことでございますので、イギリスでは百二十人ぐらいのスタッフを抱えている。ドイツの請願委員会は八十人ぐらいスタッフを抱えているといいますが、そういうようなこともあります。  それから、今は苦情処理型請願だけに絞って申し上げますと、例えばドイツの場合には会期制度というのがありませんので、議員は任期期間中いつでも国会というのは開けるわけでございますし、さらに、請願については会期制度を越えて、前の議員の任期のときに出された請願も次の議員さんの任期まで引き継がれるわけでございます、処理するまで。そういうような多くの制度的な違いがある。  さらに、例えばアメリカやフランスは会期というものは持っていながら会期不継続の原則というのはない。日本は一国会一国会で会期不継続。継続審査という制度はありますけれども、請願についてはありません。アメリカやフランスではそういうものもない。議員さんの任期の間、つまりそれを議会期と言うんですけれども、その間は十分審査できるということになっております。ドイツのようにまでなりますと、これは憲法を改正しなければいけないと思いますのでなかなかできないと思いますけれども、そういうように根本論に立ち返ればいろいろ問題があるだろう。  しかし、請願の場合にはいろいろな請願のパターンがありますので、そのパターンに合った処理の仕方を考えていくしかないだろうということでございます。

守住有信自由民主党

○守住有信君 ここに今吉田先生がおっしゃいましたドイツの例で、あるいはまた応答責任、弁明責任、その手続、請願処理常任委員会の設置、制度化、こういうのを頭に入れたわけでございます。  もう一つは、今いろいろ辻さんがおっしゃいましたけれども、個別の苦情処理は五千人も地方に行政相談委員がおるわけですよ。この実務の話を、私は熊本でも実際に行って、地方の行監もありますから、そういう代表の方に直接お聞きしたんですけれども、努力をしておられる。ただ、余り知られていませんな、これははっきり言って。  ここには政府はおらぬわけだけれども、熊本市や県の広報、毎月発行しておりますよ。私はその中に入れさせたんですよ、行政相談委員の住所、電話番号、何だかんだ。それを一々縦割りで広報しておったらそんなの金かかってだめです。ところが、県や市は毎月物すごいいろんなことを広報しておる、写真入りで行事とかいろいろやっておる。そこへ入れさせた。そんなことでございます。  もう一つ、県議会との対比で六項目までありますが、私は自分の足元、はっきり言って熊本県議会ですが、それの本会議だけは会議録があります。各常任委員会、これを処理するわけでしょう、請願の問題もね。それには何の会議録もないんですよ。議長や議会事務局長、見せろ、会議録だと。国会の方は調査会であれ常任委員会であれ、全部会議録がありますな。閲覧は自由だ、公表されておる。ところが、県議会の方は本会議だけでございまして、それは東京都議会なんかみんな常任委員会も公表しておるかどうか知りませんよ、会議録つくっておるかどうか知らぬけれども、少なくとも私の足元にはない。  そして、いろんな項目でおっしゃいました。正しい処理の閉会中のやり方、閉会中私は意見も入れますけれども、決算委員会だけが閉会中も審査しておる。本来の国会の中で閣僚をとると法案の審査におくれを来す、迷惑をかける。人に迷惑をかけちゃいかぬ。だから、決算委員会は閉会中でも閣僚をそれぞれ並べて、省庁別にも総括も総理以下やるわけです。  そこで、地方議会は閉会中も請願の処理をやつておるというような感じでございましたので、ここもやっぱり本当にそうやっておるんですな、最後の結論だけでいいんですよ。あるいはまた各常任委員会の会議録も、地方議会で県を代表にしますが、請願の処理も含めてやっておるのかどうか、全体は知りませんので、そこらあたりの実態をよろしくお願いします。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 地方議会のお話でございますけれども、私の説明したのは、地方議会では閉会中も受理しているということでございまして、スタートは議会が始まってから。そして、実際の運用を私は地方議会にいろいろ聞いておるんでございますが、実際は例えば会期の終わりに継続審査というのを決めますね、継続審査を決めますと次の議会で審査する。  さらに、極端な話を言いますと、余り不採択とするについては支障があるというようなものはずっと継続で持っていって、そして議員の任期満了のときに審議未了にするというような扱いも実際はあるということを私は聞いておりますので、私が話をしたのは閉会中に審査するという意味ではございません。継続審査というのは次の議会に持っていくと。さらにその議会でも結論が出なければ、さらに持っていくというような審議をやっているようだということでございます。そのかわり、受理は閉会中もするということでございます。

守住有信自由民主党

○守住有信君 肝心の方が国政調査権の方でございますので、憲法六十二条を根拠としてということで、私も調査権というものを自分自身も、あるいは委員会としても意識しながらおるわけでございますけれども、やっぱり何か院のルールといいますかあるいは常任委員会のルールといいますか、それには従わなきゃいかぬ。  したがって、いかにも自分個人に調査権があるんだと、国会議員一人一人の背後にあるんだという意識は誤りじゃないのか。やはり国会、参議院全体あるいはそれぞれの常任委員会のお互い話し合って決めた長い慣行もございますから、そういうルールに従って一人の意識としては国政調査権を念頭に置いていろいろな調査活動をやる。そして、政府に対してもあるいは外部の団体に対しても、いろんな情報取材をやっておかしいと思うこと、あるいはまた時代の変化に即応できないようないろんな制度、運営方針、こういうものに向かってもある程度追及するわけですけれども、個人の国政調査権というものと院、ハウスの調査権というものの関係について、このところはどなたでもいいですから、御説明いただければありがたいと思います。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) 国政調査権はハウスにあるわけですので、議員、メンバーの権限ではないと思います。  しかし、ハウスの権限を委員会で行使する場合もあるわけですけれども、具体的にその調査に携わるのはメンバーですので、その辺でただいまの御質問がございましたような問題をどう考えるべきかということになるのではないかと思います。  私はメンバーの権限ではないと思いますけれども、ただ、ハウスあるいは委員会の権限であるから、委員会あるいはハウスの意思決定は通常多数決、場合によっては特別多数決ということでなされるわけですので、もしそういう線でいきますと、少数派の意思というのは多数派の賛成が得られなければ調査権を行使することについて積極性は生かされないという問題が出てまいります。  私の先ほどの報告でも、やはり少数派への配慮というのが大事であるということをここで申し上げさせていただき、また浅野先生からそういう趣旨の御意見もございましたけれども、少数派の権利への配慮ということを多数派が認めるということ、それは立法形式であれあるいは規則の形式であれ、まず前提になっているべきであると。  したがって、考え方としましては、国政調査権はハウスの権限であるけれども、その場合は少数派の調査権に対する発言といいますか、あるいはその意思というものを尊重するような配慮が必要になるのではないかと思います。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) ただいまの国政調査権が個人にあるかどうかという問題ですが、国政調査権は今清水先生が言われましたとおりにハウスが持っておる権限であります。ですから、これは委任できるにしても委員会まででございまして、個人に国政調査権が委任できるというわけにはまいりませんので、個人が国政調査権を持つということを考えるわけにはいかないだろうと思います。  それで、先生が今おっしゃった調査権というものは、先生方が自分の職務を行われるのに必要な範囲で事実上の調査ということはできるであろうと思いますけれども、これは権限と言えるものかどうかわかりませんですね。  それから、先ほどの少数者調査権の問題でございます。これは時間がなくてはしょってしまいましたけれども、少数者調査権の問題は、少数者から要求があった場合には調査権を行使することを義務づける、この義務づけはそんなに強い義務づけはできませんけれども、義務づけるところまでなら具体化できると思いますけれども、最後のところは、調査権を行使するかしないかは委員会が決定しなければいけないだろうと思います。  それで、ちょっと長くなりますけれども、ドイツの少数者調査権はどんなふうに行使しておるかということを調べてみますと、ドイツの場合は、調査委員会設置の四分の一の動議が出ます。そうすると、その動議は本会議にかけて決定することになっております。ただ、その動議を拒否できる場合というのは、今のまさにハウスの権限でないようなことを問題にして調査委員会の設置の動議が出たような場合には拒否できるけれども、そうでない場合は拒否できないというような解釈になっておるようです。  ドイツ憲法の規定でも、設置しなければならないと書いてあるだけで、そこから先は何も書いてありませんから、要求があれば設置するとは書いていないわけです、設置しなければならないという規定になっておると思います。

守住有信自由民主党

○守住有信君 私も、権利というものは議員個人にはない、しかし調査活動は大いにやるべきだと、縦横斜め、情報化時代ですからね。しかし、相手には守秘義務があるから、その場合には守秘義務のないようなところから情報を取材するとかね。  しかし、委員会においてはちゃんと委員としての自由な発言が国会には保障されておりますから、えぐり出すとか、徹底的にはできぬけれどもその端緒が出てくるとか、あるいはまた法律制度で矛盾があるとか、大きな制度論もあります、個別論だけじゃなくて。簡単に言うとそんな気持ちでやっておったわけでございますが、先生方のお話をほかの方々もたくさんいらっしゃいますから十分お聞きになった方がいいと思いますので、私はもうこのくらいにします。

猪熊重二平成会

○猪熊重二君 平成会の猪熊重二でございます。  本日は四人の先生方にはいろいろ貴重な御意見をお伺いしまして、教えていただきまして、大変ありがとうございました。  今の守住先生からの質問に関連するんですが、まず、国政調査権について少しお伺いしたいと思います。  国政調査権の調査主体、調査権を保持している主体というものは憲法の規定によるとハウスにあると、こういうことになっています。ところが、ハウスの権限行使ということは実際にはありませんでして、委員会におろすというか委員会で国政調査権を行使している。国会法、各院規則等でそうなっているんですが、ハウスに国政調査権を憲法上付与したことの趣旨がどこにあるのか。そこのところを明確にすることが、少数派とかあるいは個々の議員、メンバーとしての議員に国政調査権的なものを認めることができるのかできないのかとか、あるいはきょうちょっと話に出ませんでしたけれども、国会ないしハウスに設置するとした場合のオンブズマンの権限はどこにどういうふうに位置づけられるのかとか、こんなような問題につながっていくと思うんです。  それで、議院内閣制をとる現行の法制のもとにおいて、ハウスにもしくは委員会に国政調査権を付与するということになると、結局は多数党である与党がハウス、委員会を支配し、その支配を受けている与党の行政府が議院内閣制として成立していると非常に実効性が乏しいわけです。  いずれにせよ、ちょっと端的にお伺いしたいのは、なぜハウスにこのような強制権を持つ国政調査権を付与したんだろうか。逆に費えば、それ以外の関連する機関に持たせることの適法性というか合憲性というか、その辺について清水先生からお伺いしたいと思います。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) ただいまの御質問は、議院内閣制の問題にかかわっているように思います。  それで、議院内閣制をどういうふうにとらえるかということにつきましてはいろんな考え方がありますけれども、日本国憲法のもとにおける議院内閣制の理解につきましては、内閣と国会との力の均衡を図るというところに本質があるというふうな考え方ではなくて、内閣は国会に対して責任を負うといういわゆる責任本質説というのが学会では多数派のように思われるわけでございます。  そうしますと、先ほどもちょっと私申し上げましたけれども、憲法六十六条の三項に「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」という規定がございます。内閣の人事の面では、内閣総理大臣はもとより過半数の閣僚は国会議員でなければならないということになっているわけですけれども、その点で人事の面では国会とのつながりが当然憲法上は要求されておりますが、その反面において、国会に対して内閣は責任を負うというところが議院内閣制のいわば非常に重要な側面というふうにとらえられていきますと、当然この国政調査権において行政面への行使は国会側が主体として権限を持つということになります。かつ、国会は二つのハウスから成り立っておりまして、もちろん合同の委員会というふうな組織もあるわけですけれども、しかしそれはむしろ国会の活動スタイルとしては御存じのように例外的であって、参議院及び衆議院がそれぞれ単独で行動し、かつその意思の合致というものを踏まえて立法がなされたり、そのほかの場合もありますけれども、活動自体はハウス単位でなされているわけであります。  したがって、国政調査権の主体をハウスとするというのは、以上述べましたような理由からしてごく自然であるということになります。  そして、委員会が実際は国政調査権を行使するというふうになるのは、これはハウスのメンバーが全体として調査をするということは物理的に難しいということであり、審議を尽くし調査活動を効果あらしめるのは、やはり会議体の人数がある程度にとどまらなければできないということがありますので、すべてではありませんけれども、各ハウスの活動も委員会が中心になって行われているわけでございます。したがって、国政調査権も実際は委員会が担うということになるのがこれまた自然ということになるわけです。  そうなりますと、ただいま御質問がございましたように、委員会の意思決定というのはやはり多数決でなされると多数党の意思が委員会の意思になっていく。そうしますと、多数党というのは通常与党でございますから、与党の意思で実際の運営がなされると政権党の意思が物を言うから、結局時の内閣のもとにある行政に対して効果的な国政調査権の行使が望めないのではないかという、そういう御疑問であったかと思います。しかし、原則的にはそれは私はやむを得ないことなのではないかというふうに思います。  議院内閣制というものは、やはり与党を含めたハウス、国会、これが行政、政府を一応監視するという建前になっているわけですから、その建前は建前として、実際それでは効果が薄いというふうなことを考えれば、野党に行政に対する監視の重要な権限である国政調査権につきイニシアチブをとらせるという配慮を多数党自身がなすべきである。それをやはり一定の法規の形で保障を明確にするということが与党の雅量といいますか、与党が議院内閣制を憲法上のあるべき姿で運営していくという場合にはそういう態度が望ましいわけであって、これは憲法がその条文でそういうことを定めてはおりませんけれども、法律、規則等でそういうことを定めることは可能であり、そのことは別に憲法上の議院内閣制に反するわけではございませんので、そういうふうなことが重要であると思っているわけでございます。  以上、簡単ですけれども。

猪熊重二平成会

○猪熊重二君 例えば、各ハウスにオンブズマンというような制度を置いた場合に、このオンブズマンというのは第三者機関になりますね。参議院なら参議院に対して。このような機関に国政調査権を担当させるというふうなことは憲法上どのようにお考えでしょうか、簡単にお願いします。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) 私はオンブズマンの制度をそれほど深く研究しておりませんけれども、国会あるいはハウスの中にオンブズマン制度を採用した場合に、オンブズマンというのをいわゆる委員会というふうに考えていいのかどうなのか。  もしそうだとすれば、このオンブズマンが有効にその機能を果たすためには調査権が必要であるということになると思いますけれども、どうも国政調査権が持っているような強制力というふうなものをこのオンブズマンという制度に担わせるということが妥当なのかどうなのか、ちょっと私にはまだそれでよいという自信はございません。これは、私がオンブズマンの制度を余りよく勉強していないから自信がないということなので、まともなお答えにならなくて大変恐縮でございますけれども。

猪熊重二平成会

○猪熊重二君 では次に、浅野先生にやはり国政調査権に関して一点だけお伺いしたいと思います。  国政調査権と司法権の関係で、余り今のこの場所では関係ないことなんですけれども、ただ、国政調査権の権限の内容という側面では非常に重要なことだと思いますのでお伺いしますが、私は裁判批判というのはもう十分にあってよろしいと、こういうふうに考えているんです。その意味で、国政調査の対象としても司法権の問題は当然対象になると私は考えている。  なぜかということになりますと、司法権の独立は、裁判官の身分の保障と、それから裁判作用における裁判官の業務執行の独立性が保障されていれば、あとどんな批判があろうが、あるいはどんな調査があろうが、それによって裁判をぐらぐらさせるような裁判官はもともと裁判官の資格がないということにならざるを得ないだろうと思うものですからそう申し上げるんです。  要するに、裁判官の身分は七十八条によって保障されております。それから、七十六条の三項によって、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」のであって、国政調査の対象になっていろいろ聞かれたからそれに従うような裁判官じゃしょうがないだろうという意味において、身分とそれから自由心証の判断作用、これさえ保障されていれば当然構わないんだと、こう私は思うんです。  ちょっと暴論なんですけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) お答えいたします。  それについては、司法権の独立というのをどういうふうに考えるかということだと思います。少なくとも法律的に裁判官の自由心証を拘束しない限りはいいんだという、それで独立が保てるんだという考え方はあるかもしれません。けれども、そこまではどうかと思います。  ただ、裁判官をそういう法律的に拘束しなければいいのではなくて、もっと具体的、実質的に裁判官の自由心証に影響を及ぼすかどうか。その裁判官の自由心証に影響を及ぼすような行為をしてはいけない、これが司法権の独立を守る一項じゃないかと思いますので、結局は国政調査権を行使しても、それによって裁判官の自由心証に影響を及ぼすような方法、それから影響を及ぼすような対象で国政調査権を行使してはいけない、こういうことになるのではなかろうかと思います。一切できないというものではないだろうと思います。

猪熊重二平成会

○猪熊重二君 では、吉田先生に請願に関してお伺いします。  私は、きょう吉田先生のお話をお伺いして、ああいいことを、立派なことを述べてくださる憲法学者がお見えになったと、生意気なんですけれども本当にそう思ったんです。そうでないと、この憲法十六条は、今までの憲法教科書だとあってもなくてもいい規定になってしまっている。  確かに、沿革的に言えば請願権の内容というものはそうかもしれないけれども、現行憲法においてこんな当たり前の、先生もここにお書きになつているように、こんなものを書いたって、もし伝統的な意味の請願権であるとすれば国民主権原理からして自明のことを書いてあるのであって、無内容であって、先生はここに書いていないけれども、私は盲腸だというふうに思うわけなんです。そうではないんだと、せっかく憲法に請願権があるとしたら、参政権に対比されるような意味での請願権の内容というものをもっと憲法の先生方に言ってもらえれば、請願法なんというああいう法律もだんだん変わってくるし、国会だけでなくして、行政府あるいは地方団体の議会あるいは執行部の請願に対する取り扱いが違ってくると。  そういう意味で、先生は今、任務責任、応答責任、弁明責任、受裁責任と、こういうことをおっしゃられているわけですが、請願に関するこういうお考えを清水先生も、それから浅野先生もぜひお持ちいただいて、憲法学会として、請願権というのはこういうものだということになってくると、もっと国民主権原理に妥当する請願制度というものになると思うんです。  ところが、従前のような、盲腸のような請願だから、国会へ持ってきても会期末にちょこっとやって終わり。あれではつくって出す方が手間をかけてもったいない。せっかくの国民主権原理の発露としての請願権が全く有名無実になっている。有名無実になっているというよりも、伝統的な請願権の解釈から極論すればあれでいいことになってしまう。  そういう意味では、憲法十六条そのものの請願権の内容というものを、吉田先生がおっしゃったように実のあるものだということをぜひいろいろ御主張いただくとだんだん変わってくるのではなかろうかと思うんです。  何か質問だか、先生を褒めているんだか、お願いしているんだかわかりませんが、大変ありがとうございました。  時間の関係もあるので、私が今吉田先生に申し上げたことに関して何か一言お答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

吉田栄司関西大学法学部教授

○参考人(吉田栄司君) ありがとうございました。それでは一言だけ。  応答責任という言葉、レスポンシビリティーということを打ち出しましたが、欧米ではこうとらえられている。レスポンスする、答える。ドイツ語でもアントボルテンする、答える。こういう言葉をもとにしております。そういう責任の用語です。  GHQといいますよりはポツダム宣言ですね。御承知のように、日本に対しまして国民主権原理で貫徹された憲法をつくれと。それが二十世紀半ばの段階ではもう人類普遍的に求められている、日本にはまだそれがない、それでこういう戦争になったというとらえ方がされたときに、ポツダム宣言は、日本国民の自由に表明する意思に基づく平和的傾向を有し、かつ責任を負う政府の樹立までは占領する、こういう言い方をしているわけです。そこにこのレスポンシブルガバメントという概念が実はもう打ち出されておりまして、そのことがいわゆる国民主権あるいは民主主義、そういうことの端的な表現なのだという理解が一般的なわけです。  さらに、もう一言。  トラスト、信託。「国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、」という言葉がございます。この「信託」という用語も、国政を主権者国民は公権力行使者にゆだねている、信じて託している、託したらもう託しつ放しということではない。一番最初の報告の中で申し上げましたが、国民が福利を享受できるような形で国政は運営されてしかるべきで、福利を享受できないということになったら、当然不満不平が出ます。それを常に言っていっていい公権力行使のあり方を常に要求に対応する形で是正していってもらってしかるべきだ、こう打ち込んでいる。それが四年に一回あるいは三年に一回という選挙権行使以外に、十五条以外に十六条ではっと言われている、書かれている。そういうふうにやはり受けとめ直すべきなんだろうというふうに思います。  もう一点は、昨今の情報公開、この議論がございますが、情報公開の制度、枠組みは、アカウンタビリティー、弁明、具体的に公権力行使についてのアカウンタビリティーという第三段目に私が打ち出した、これが実は問題にされ、それが制度化されようとしている事柄なんだろうと。  最後のライアビリティーですが、国家賠償責任というのはこのライアビリティーです。つまり、金銭賠償するというのがライアビリティーですね。例の製造物責任法、あれはプロダクトライアビリティーです。つまり、これは民間のレベルの問題ですが、しかし公権力行使のレベルでもライアビリティーはあると、日本国憲法は十七条でこうやって打ち込んでいる。こういう枠組みなんだろうというのが私のとらえ方で、学会では多数支持をまだ得られていませんし、私自身まだしっかり理論構成し切れてはいないのですが、発言を開始しているという状況でございます。

猪熊重二平成会

○猪熊重二君 ありがとうございました。

一井淳治社会民主党・護憲連合

○一井淳治君 国政調査権に関しまして、清水先生、浅野先生に同じ質問をさせていただきたいと思います。  現在、国政調査権というものが十分に機能しているかどうかという点でございますけれども、国会が国政調査権を十分に使いこなしているかどうかという評価を第一にお聞きしたいわけでございます。そして、私自身、私個人的には、この国政調査権というものは極めて機能していない、残念な状態にあるというふうに評価しているんですけれども、もしお二人の先生がそのように評価しておられるんでしたら、その理由について御説明を願いたいと思います。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) 私は、ただいまの御意見と同じように、国政調査権は現在有効に行使されているとは言えないと思います。その理由は、格別私自身だけの何か特異なそういう理由と考えておるものがあるわけではございません。ですから、一般に言われているような事柄をここで繰り返すことになろうかと思います。  一つには、何と申しましても長期にわたる保守政党の政権維持ということで、私の見るところでは、やはり多数の意思というのが国政調査権を活性化するのをかなり妨げてきたのではないかと思います。  一つの例は、参考人制度の多様化といいますか、そういうところがあるのではないかと思います。私は、先ほど参考人制度というのは別に廃止する必要はないと申し上げました。ただし、これはどちらかというとむしろ例外的に考えるべきであって、もし参考人のような制度が原則的な制度というふうになっていきますと、これは国政調査権の行使でなくても幾らでも可能な制度だと思うんです。ですから、国政調査権に固有な制度というのは証人喚問の制度になるわけですから、そういう点では、ただ御意見拝聴というふうな制度であれば、これは国政調査権がなえてしまうのは当然であると思います。  もちろん参考人の制度というのは、証人の人権がともすれば侵害されたのではないかというケースも当初はあったようでありますので、それに対する一つの反作用というふうなことで生まれたとも思いますけれども、どうも私の印象では、多数党がやはり身内をかばうようなそういう面、あるいは疑獄事件のような場合には、その疑獄の渦の中にある、議員であればその議員及びその議員とかかわりを持つ企業とか、そういう人たちをどちらかというとカバーするような色彩がどうも出てきて、それが参考人制度の導入というふうになつたのではないのか。あるいはこれはちょっと偏った見方だと言われるかもしれませんが、私はそのような印象を持っております。  それからもう一つは、内閣声明の問題、これが国政調査権の充実を阻む一番のポイントになるということを申し上げました。昭和二十九年にたしか内閣声明が出されたことがあると思います。だから、しょっちゅう出されているわけではないと思いますけれども、しかし、これはやはり伝家の宝刀みたいな存在として議院の側からもまた政府の側からも見られているものではないかと思います。ですから、そういう点で行政上の秘密になかなか肉薄できないでいるということ、それがもう一つの理由。  それからさらに、理由として挙げられると思いますのは、これは私のレジュメの最後のところに書いてあることにかかわるわけですけれども、やはり議院、ハウス自体が国政調査権を有効に行使するための装置を果たして今まで持ってきたのかどうかということです。  委員会は、常任委員会はそれぞれ調査室がありますし、また政党も調査組織を持っているとは思いますけれども、しかし、国政調査権を有効に行使するためにはどういう問題についてどういう方法でアプローチするかということを判断するための情報がなくてはなりません。ですから、その情報ということにつきましては、主体的に情報を得るような装置をハウスが持っていなければならないと思うんです。  特別調査委員会になりますと、その調査委員会のところに調査室ができて慌てていろんな情報を集めるということでは泥縄式になるので、恐らくこれでは有効な調査はできないと思います。そうしますと、ハウスが持っているいろいろな委員会の調査室の機能というのがそこでは活用されることになると思うんです。ですから、それは弾力的な運用といいますか活用ということになると思います。今申し上げましたことは、委員会調査室の充実というふうなことが前提になってくると思います。  今までの疑獄事件が起きたときに、衆議院も参議院も調査のための特別委員会をつくって活動を続けてきましたけれども、しかし、どちらかというと外国からの情報あるいは検察情報、そういうものに依存するということがどうも多かったのではないか。非常に難しいことかもしれませんけれども、参議院は参議院独自のやっぱり調査機構というものを充実していくということが国政調査権の行使の条件になるのではないか。これは難しい大変なことかもしれませんが、しかしそういう方向がどうしても望ましい、そういうことは言えるのではないかと思います。  以上でございます。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) 清水先生がほぼ述べられましたけれども、私は現在、国政調査権は活性化していないと思います。  それで、はしょりましたけれども運用上の問題はいろいろ申し上げたと思いますが、これは大きく分けますと、結局、資料の提出を求めたときに政府が協力してくれないというのは大きい問題だと思います。そこで出てくる問題というのは、やはり行政秘密との関係という問題になってくるだろうと思います。そして、最後は結局、内閣声明の問題になっていくということです。ですから、内閣声明を出す場合をよほど限定されるような運用がなされなければいけないだろうという気がいたします。  それからもう一つ、調査権を行使する場合にはどうしても委員会の決定が要るということになります。委員会の決定といいますと、これは少数で委員会の決定はできませんから多数で決定せざるを得ない、そういうことになっていくだろうと思います。それで、そうした場合に、この議院内閣制のもとでは多数党の与党の皆さんはどうしても政府をかばうことになられるものですから、多数の決定が得られない、こういうことになっていくのではなかろうかと思います。  そこで出てきますのが少数者調査権の問題だろうと思うわけですけれども、さあそこで、少数者調査権といっても委員会の決定を少数でできるということは不可能であろうと思います。不可能ですけれども、調査権の行使を義務づけるところまでぐらいはできるのではないだろうかなという気がします。  それから、あと証人尋問の問題です。  証人尋問のやり方がどうもうまくないという感じがいたします。それで、証人尋問の場合に一番大事なことは、証人尋問をするというのは何も本人を呼んでつるし上げるというような目的で証人尋問してはいけないのではないか、むしろその証人から事実を引き出すというような方法の証人尋問でなくてはいけないのではなかろうか、こう思います。どうも今の運用というのは、とにかく御本人を呼んでつるし上げて、それで本当のことを言うはずがありませんですね。だから最後は偽証罪だということになります。  偽証の告発をするときは、最近三分の二ということになったというようなこともあります。厳しくなったのかどうかは知りません。偽証の告発をするときは、運用では全会一致だったようですけれども、それが議院証言法の改正で三分の二ということになったようですけれども、こういうような問題。告発の問題のみならず、証人尋問の決定をするときはどうも全会一致の原則でずっと行われておるような気がいたしますけれども、よほどの例外でないと多数決でやらないというようなこともあるような気がいたします。

山下芳生日本共産党

○山下芳生君 浅野先生に御質問いたします。  先生は、守秘義務を理由として国政調査権の行使を拒むことができると考えることは、憲法第六十二条において国会に国政調査権を認めたこと自体を無意味たらしめるとお述べになって、私はその理由として、国会において国政調査権を行使して秘密の開披を求めると決定した段階において、既に国政調査権の行使によって得られるべき利益と守秘義務によって守られるべき公益との比較考量がなされているわけだというふうに理解したのですけれども、それは政府の側からすれば国会の判断であって、我々には我々の立場があるということについて、もう少し説得的な御意見をお述べいただけないかというのが一つ。  それから同時に、国会でそういう判断をしたということと少数者調査権というものとの関係も出てくるのではないのかなということも少し疑問がわいたんですけれども、その点について御意見をいただけますでしょうか。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) まず前提の方の、国会が優越すると判断した、それはもうそのとおりだと思います。ですから、それは政府の方が政府の方で勝手に自分の判断をされるかもしれません。では、両方の判断が違ったときにどっちの判断が価値があるんだということになるだろうと思います。当然、国会の側はおれの方が価値があると考えられるべきではありませんでしょうか。そうでなかったら、何ら国政調査権を認めた意味がなくなってしまいますから。  ただ、第三者で判断するところがないということになりますと、究極のところ、先ほどの例が百四条に基づく政府見解のところでの問題ですけれども、どうしても政府が出してこなければ証人で呼んで出させることになります。そうすると、議院証言法の問題へ行きまして、最後は内閣声明の問題であります。これも内閣声明ですから内閣だけの判断の問題になってしまうわけなんです。これはどうしてかといいますと、結局、情報を持っているのが政府だから政府の方が強いんだということになるのではないかと思います。  それから、少数者調査権と今の問題は関係はないと思います。委員会で決定した後の問題ですから、少数者調査権とは直接関係がない。

山下芳生日本共産党

○山下芳生君 辻先生にお伺いをいたします。  請願専門の常任委員会の設置という案もあるようですけれども、それに対して先生は現在の各常任委員会で審査すべきだという御意見をお述べになりましたけれども、その御主張の理由を御説明いただけますでしょうか。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 今の常任委員会制度は、国政全般を分担する形で国政調査、議案の審査を含めまして行うことになっておりますので、やはり専門家である常任委員会が請願だけは除くというのではなくて、それも含めて審査することが適当であろうということが第一です。  それから第二番目に、請願にもいろいろありまして、例えば法案に反対する請願を常任委員会に持りていかなかったらそれこそ全く意味がないわけでして、先生がおっしゃっているのは、例えば苦情処理のような請願を担当する常任委員会をつくるというなら、それは話はわかると思うんです。例えば、行政監察委員会のようなものをつくってそこでやるということであれば、行政監察委員会ですから行政監察という国政調査を積極的にやる、同時に請願の審査もやる。請願の審査だけをやるのではなくて、その部門を新しくつくってそういうものを担当する委員会をつくっていく。  私なんかに言わせれば、どうせつくるなら行政監察だけではなくて決算も一緒にやったらいいのではないかというようなことも思いますけれども、それは国会で判断することでございます。そういうようなものをつくっておやりになるというのは、一つの所管をつくることですから、いわゆる請願審査というものではなくて、行政監督という一つの分野を担当する委員会というようなことであれば、それは一つの考え方でありましようということでございます。

山下芳生日本共産党

○山下芳生君 もう一つ辻先生にお伺いしますけれども、ずっと直接担当されてきて、二十五年来、四半世紀にわたって請願の扱いについて改革が検討されてきた、全会派一致して答申も出してきたということがあったにもかかわらず、なぜ実際請願の改革ができなかったのか、どこが障害になっているのか。先ほど猪熊先生の方からは、思想的な十六条についての認識をもっと深める必要がある、それが根本だという御指摘があったと思いますけれども、それも一つだと思うんですが、それも含めましてどういう障害がおありだとお感じでしょうか。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 私、実務家としていろいろ携わってきた立場から申しますと、先ほど守住先生からお話がありましたように、一つはやはり国会も非常に忙しいということがあります。それで、議案の審査なり国政調査に追われて、請願というものを独立した形で議題にするチャンスがなかなかないということでございます。  それで、従来の答申は、請願というものをある時点において、こんなことを言っちゃ悪いわけですけれども、十把一からげで議題にして審査しようというような態度をとりますとそれは余り意味がない。どうせまた同じような請願が会期末までずっと出るでしょうから、それを含めて審査する請願の一括処理ということになりますと、最終的にどうしても会期末にやらざるを得ないだろうということでございます。  問題は、そういう中でそれはあくまでも一括審査をすることといたしまして、時機に応じたものは取り上げるべきケースがありますから、そういうものをその都度その都度取り上げていく。例えば、国政調査で議論する場合に質問者の方から、当然自分も紹介議員になっているわけでございますので、そういう請願も提出されておるよというような形で取り上げていただくとか、あるいは議案の審査の場合にはそういう請願が出されているということを委員に配付して周知せしめるとか、そういうことは当然できるわけでございます。ただ、一括審査を時々やろうというようなこともなかなか国会の審議事情等からいいましてできていないということだろうと思います。

峰崎直樹民主党・新緑風会

○峰崎直樹君 民主党と新緑風会、一緒になりました。峰崎でございます。  私は、実はきょうの四人の方のいろんなお話を聞いて、また自分の四年間の国会議員生活を振り返って、国会、特に立法府というのはなぜこんなに力がないものだろうかという感じをずっと抱いてまいりました。  先日も民主党で日本版GAOという新しい、これについても後でまたちょっと時間があればお聞きしたいと思います。  その中で私、清水先生でしたでしょうか、それから浅野先生も国政調査権の関係でおっしゃっていました要するに調査機能、現実にどのようなことが起きているのか、何が問題なのかということの調査がしっかりしたものが持てないがゆえにまた法案をつくる、あるいは何が問題かということも指摘できない、もちろん限られた中であるんでしょうが。  そこで最初に、清水先生が指摘されている最後の六番目のところは本当にポイントだというふうに思うんです。もう先ほど来お答えを聞いた中で、調査スタッフの充実の方法について、一つは議会の中、立法府の中を強化していくという方法、これが一つの方法なんですね。  もう一つは、政党助成法が公布されて政党に対する援助というものが出始めた。そうすると、この政党助成法の中から必ず義務づけて、例えばそのうちの一割はシンクタンク機能、つまり調査機能を充実させなさいというようなやり方ももちろんあると思うんです。その場合に、ドイツでたしかあったと思うのでありますが、公務員を各政党に配置するということによって調査機能を政党に持たせていくというんですね。憲法上政党という規定がないというふうに言われてきたのでなかなかそこのところは難しいかなと思ったんですが、政党助成法が公布されたことに伴ってそういう方法というものが考えられないのか。  それから最後に、政治家一人一人、これは国民から選ばれてくるわけでありますから、政治家一人一人の立法スタッフ、これは政策スタッフということで、政策秘書ということでこの間強化をされたというふうに思います。この使い方についてはまたいろいろあるんだと思います。  四人の方に、特に最初の調査権のお二人に、このいわゆる調査スタッフの充実の方法として、日本においてこれから展開する場合にはどこを一番重視した方がいいのか。  ちなみに、立法府の中においては、三十八年間自民党の単独政権時代が続いたために、立法府の強化をしようと思っても、野党が力をつけるようなことについては余り今まで力をかしてこなかった。その結果、立派な行政府で、省庁へ行くと本当にびっくりするような大きい部屋に秘書もいて、そして自分の部屋で研究会ができるぐらいの、事務次官あるいは局長だとかといるけれども、我が立法府の国会へ行くと本当に貧弱なところで仕事をさせられているという、そんなところに全部あらわれてきている。  その意味で私は、院の中に出す場合には、相当これは覚悟を決めてといいますか、相当力を入れないとなかなかできないのではないかとも思っているんですが、その点についてお二人の参考人の方からの御意見をお聞かせください

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) 調査あるいはそのほかの機能、立法補佐機構というふうに言ってもいいかと思いますが、それの充実の方法についてという御質問でございました。  私は、立法府自体の調査機能の強化、これが一番重視されるべきではないかと思います。  私が従来聞いていたところですと、官庁から調査室に出向してこられた方がそこに腰を据えるのではなくてまた戻ってしまうという、これでは何か雇われマダムみたいな形になるわけですので、やはり立法府自体が自前の調査スタッフを充実させていくということが必要なのではないかと思います。  政党助成法によって一割ぐらいは各政党の調査機能の充実というふうに考えるのはどうかという御意見、御質問でございましたけれども、これは政党によって助成費が違いますし、また政党は議席数がその時々で変化もしますので、この調査機能の充実に充てられるべき財政の分というのも一定しないということになります。確かに立法、そのほか議院の機能は政党も担っている、いや個人の議員よりは政党が担うんだというふうに今日言えるわけですけれども、しかし、この立法は国会あるいはハウスの組織としての重責でございますから、それはそういう組織自体が立法その他国政監督等の機能を有効に行使するためのいろいろな条件を備える、充実すべきだというふうに思います。  それから、公務員を政党に配置する制度はどうも望ましくないのではないかなと私は思っております。といいますのは、やはり政党という存在につきましては、日本ではそれをいろいろ制度化するということについて従来消極論がございました。したがいまして、政党活動を法制化するというふうな、そういう側面を積み上げていくとでりことについては私はどうも消極的に考えておりますので、この三番目の充実の方法については消極的な意見を持っております。  それから、政治家一人一人のスタッフの強化、これは日本の国会議員に比べますとアメリカの国会議員の方がはるかにけたの違うスタッフを擁している、そういう議員もいるようですので、それはやはり一つの方策になるのではないか、それは十分考えられることだと思います。  要するに、自由民主党の長期政権によって自由民主党が、私の思っているところでは、国会あるいはハウス自体のスタッフの充実、調査機能の充実というような点に余り配慮してこなかった。政権を担当しているわけですから各官庁の機能に頼ればいいわけですので、国会自体にそういういろいろな機能の充実を考える必要がなかったわけです。ですから私は、自由民主党が野党になってすぐまた政権に戻るということではなくて、しばらく野党にいたとすればもう少し国会を考えるようになるのではないか。ですから、政権交代がしょっちゅう行われれば、これはやっぱりハウスの機能の充実ということにつながるのではないか、そんなふうなことを考えてはおりました。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 恐縮ですが、あと二人だけになったんですけれども、今ごろ申し上げるのもおかしいんだけれども、質問時間が十分しかないので端的にお答えになってください

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) 調査スタッフの充実の問題というのは、何も国政調査権を活性化するだけの問題じゃなくて、国会自体の調査スタッフの充実というのは非常に大事なことだろうと思います。  それで、これは私が退官して直後、今から九年か十年前に国会に政府の情報を集中して管理する情報センターをつくってください、さらにそういう情報センターだけでなくて、その情報を分析して判断できるようなスタッフも合わせたものをつくってください要するに、国会にシンクタンクをおつくりくださいという提案をもう既に十年ぐらい前にやっているんですけれども、どういうわけか私の提案をだれも読んでくださった方がいないのではないかと思うんです。  ということで、それぞれ政党とか先生方のスタッフの問題もありますけれども、とにかく国会にそういうシンクタンクをおつくりになる必要があるのではないでしょうか。直ちにできなければ、現在の調査室をそういう形に改編されるべきではないかと思います。

山田俊昭二院クラブ

○山田俊昭君 二院クラブの山田でございます。最初に私見を述べさせていただきまして、二、三の質問をいたします。  我が国の国政調査権の機能状況を概観いたしますと、行政事務、一般調査についてはおおむね正常に機能していると思われます。しかしながら、国民の最大の関心事とも言うべき具体的な案件、住専問題やエイズ問題に代表される行政の不手際、リクルート事件や佐川急便事件に代表される疑獄事件については大政党の思惑と数の論理の壁に阻まれ、加えて院及び各員の調査能力の不足から、ややもすれば決め手を欠き、国政調査権の重要な一つの使命とも言うべき真実を明らかにして、国民の知る権利に奉仕することすらままならないありさまであります。ちなみに、疑獄事件において国民から疑惑のまなざしで眺められたいわゆる灰色高官は、過去の事例を見ましても野党の議員に少なく、行政と癒着したいわゆる与党の族議員が圧倒的に多かったという現実を忘れてはなりません。  よって、私は、しょせん十分に機能していない既存の国政調査権に期待するよりは、行政府だけでなく政党政治が支配する国会や議院からも独立し、かつ野党の議員に重要な役割を担わせるところの議会型オンブズマンが設置されることが最も望ましいものと考えるものであります。それも良識の府である参議院に設置することを切望してやまないものであります。  こうした基本的な観点を踏まえまして、二、三質問をさせていただきます。  清水先生と浅野先生はともに国政監督を有効に行うためには国政調査権について野党がイニシアチブをとること、この必要性を説かれました。その一例としてドイツ憲法四十四条一項が規定するような少数者調査権について言及され、我が国においても立法措置によってこの種の機能の付与が可能である趣旨のことを述べられました。もし立法化を図るとしたらどのような具体的内容を盛り込むか、先生の私案を具体的にお示しいただいてお教え願いたいと思います。  先ほど浅野先生は、少数者調査権といっても我が国においては委員会を開くことを義務づける程度、あるいは証人尋問をもう少しうまくやるかという程度にしかないと、こうおつしゃったわけですが、せっかくドイツに先例がある少数者調査制度というものがあるのなら、日本にも国政調査権の活性化を図るためにそれをより具体化された立法がなされてしかるべきだと考えるものであります。  よって、先生の私案と申しますか、立法論で結構でございます。御指導をお願いいたします。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) ドイツ基本法の四十四条の一項の設置というのは、これは設置が義務づけられているから、素直に条文を読むと設置しなければならないということだと思います。ですから、この点を日本の立法で採用するということは可能だと思います。  ただ、浅野先生がおっしゃられましたように、調査権を行使する委員会の意思決定が多数決でなされる、これをひっくり返すような制度を考えるということは非常に難しいのではないか。ですから、例えば告発の要件の場合に三分の二というのは、これはもう過半数でよいと私は考えております。これは偽証した場合のことですから、本来国政調査権の有効な行使から見ますと間接的な規定にはなってくるわけですけれども、それでもやはり三分の二というふうな特別多数の要件ではなくて過半数ということになれば、これは条文で言いますと八条の二項は削除するということで可能なのではないかというふうに思います。  そういうことで、少数派の国政調査権の行使における配慮というのを具体的に立法でどうあらわすかということになりますと、委員会の活動面においてはいろいろ配慮するということで、そういう趣旨のことを条文化するということは可能だと思います。しかし、これはある程度道徳的な規定ということにならざるを得ないわけであって、少数派の意見がそのまま委員会の意思決定になるという、そういう立法化はやはり無理なのではないかと思います。  ただ、重要なことは、国政調査権の行使における少数派の意見というものが国民によく伝わるような、そういうルートについては配慮する必要があるのではないか。ですから、国政調査権の行使の結果、一体国民にどういうふうにそれが伝わっていくのかということになりますと、新聞などが記事にすればともかく、そうでない限りは一般の国民はよくわからないということになってしまうと思うんです。  ですから、少数派が正しいことを言っているのに多数派がそれを認めないということであれば、それはやっぱり国民レベルでの批判的な反応を待つということしかないのであって、委員会自体が少数派の意思を委員会の意思とするということは非常に難しい、それは無理だ、そんなふうに考えております。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) 今の少数者調査権の問題は、何回も申し上げておりますように、義務づけるところまではできるでしょうけれどもということを申し上げるしかありません。  それから、調査を行われた結果の問題は、これも簡単に申し上げましたけれども、それは今まで行われておりますような簡単な調査報告ではなくて、本来なら報告書をおつくりになって、これを国民に示されるべきではないかと思います。そうしますと、少数の方々がどういう意見を持たれたかということがそこに出てくるわけですから、後は国民に判断していただく、そういうことになるのではなかろうかと思います。

山田俊昭二院クラブ

○山田俊昭君 時間が来てしまって、どれを一つ聞こうかあれなんですが、調査の手段についてお尋ねをします。  現行法の国政調査権というのは、証人の出頭と証言及び記録の提出を求めているわけですけれども、実効性がどうもないこれは過去の例から明白だということで、それぞれの先生すべてが国政調査権が現状では十分機能していない、活性化されるべきであるけれども非常に困難である、これに期待することは極めて難しいという話なんですが、この国政調査権を実効あらしめるために、僕はいつも考えているんですけれども、委員会に捜索押収、単なる調査で資料提供ではなくて、出さなければこっちから強制的に取りに行くぞと、いわゆる捜索押収の権限が委員会に付与されてしかるべきでなかろうかと考えるんですが、憲法上何か問題があるんでしょうか。両先生にお尋ねをいたします。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) 憲法の保障する人身の自由との関係で、やはり捜索押収令状は裁判官の発行する許可状が必要だということになるわけですから、もしそういうふうな制度が仮に採用されるということであれば可能かもしれませんけれども、過去においてはイギリスの議会自身はかなり強い権限を持っておりましたし、アメリカの議会でも固有の処罰権というものを持ってきたという例もありますから、それが立法的に非常に難しいということにはならないように思います。  ただ、司法権との関係で捜索押収、そういうことが立法権が主体になってできるというふうなことになると、それは日本国憲法が想定している権力分立の原則に反するのではないかという疑問もあるいは出てくるかもしれませんが、私は理論的には不可能ではないのではないか、急に御質問いただいたので十分考えてはおりませんけれども、そのように思います。

浅野一郎徳山大学学長

○参考人(浅野一郎君) 国政調査権で必要とする事実というものは、刑事事件で犯罪認定に必要とする事実のような事実ではないだろうと思いますので、捜索押収というようなことはちょっと認めがたいのではないかと思います。  むしろ、そういうことをお考えであれば、行政作用が行っております立入調査というのがありますね、この程度のことであればあるいは認められるのではないか、これはちょっと今考えただけですのでもう少し詰めてみなければいけませんけれども、行政権で認められておるような立入調査、その程度は認められるかもしれないという気がいたします。

山田俊昭二院クラブ

○山田俊昭君 どうもありがとうございました。  終わります。

山口哲夫新社会党・平和連合

○山口哲夫君 新社会党の山口哲夫と申します。  清水先生にお尋ねいたします。  国政調査権の充実の方策について先生は、参議院が総体として野党性を帯びることが望ましい、そしてもう一つは内閣から距離を置くためにも参議院からは大臣は出さない方がいいのではないかと。全く同感でございますけれども、ただ野党性を帯びるということは、これは選挙制度そのものにも関連してこなければなかなかそういうことが実現できないのではないだろうか。現在の選挙制度でございますと、どうしても政党的な選挙にならざるを得ないんですけれども、この野党性を帯びるために選挙制度そのものを実際問題改正できるのかどうなのか、その具体的な方策があればぜひ教えていただきたいと思います。

清水睦中央大学法学部教授

○参考人(清水睦君) ここに「野党性」というふうに書きましたのは、余り強い意味でここへ表現したのではございません。つまり、内閣から距離を置くことによって政府批判、内閣批判については野党と同じような姿勢を持つということを期待するという意味であります。ですから、一般的には与党であれば当然内閣を支持するということにはなりますけれども、ただ、大臣を出さないということにおいて衆議院の与党とは違いがあるということ、そこに期待を込めているわけなんです。  ですから、選挙のことについては何か別のことを考えるべきだということではないんですけれども、この「野党性」という言葉を書いたためにちょっとその点あるいは誤解をいただいたかもしれません。

山口哲夫新社会党・平和連合

○山口哲夫君 辻先生にお尋ねいたします。実際に実務をなさってきたお立場からぜひ教えていただきたいと思うんです。  請願の問題については、議案に関係する請願でございますと、当然議会で、委員会で相当議論をやりますから、それを傍聴すれば自分の出した請願についてどんな議論が行われているかということがよくわかるんですが、しかし議案に関係のない請願もやっぱり出るわけですね。ところが、そういうものを十把一からげで会期末に処理してしまう。これでは自分の出した請願の内容について議会でどういう考えを持って議論しているのか全然わからないそういうことから申しますと、これはやはり会期中に請願の問題についてはきちっと時間をとって、特に議案に関係ない問題だけを取り上げてもやるべきだと私は思うんです。ただ、それが実際に今までできないというのは一体何なんだろうかなと、そう思うんです。  まず一つには、大臣がいなければ委員会が開けないということがよくあるんですが、請願の内容についてはそれぞれの党派で、議員の間で議論をすれば済むことではないだろうか。むしろそういうことがネックになっているのかな。それから、会期が短過ぎるのかな。しかし、会期を長くしなくても、実際にやろうという気持ちさえあれば理事会できちっと議論すればできることなのか、そういう実務の面からどうすればこれができるものか、お教えいただきたいと思います。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) ただいまの議案関連でない請願、政策提案型請願と申しましょうか、議会の方で苦情申し立て制度を含めましてそういう議案と関連のないもの、これにつきましてはやはり通常は、私の経験からいいますと、各委員会がきょうは議案の審査でなくて国政調査で質問をしようというようなことで議題となって行われている場合に、それぞれの先生方がその中から必要なものを取り上げて質問されるというような形、つまり国政調査の形で、今までここで議論されています国政調査は何か疑獄事件の追及のようなことばかりおっしゃっておりますけれども、そうでない普通の政策の改善とかというような問題についてはそういう形で取り上げられているわけでございます。  そういうことでございますので、請願が具体的な形で、こういうようなものも国民からは出されているんだよというような形で御紹介かたがた御質問していただくと大変結構であると思いますし、またそれに漏れるものもありますから、そういうものについてはもちろん会期末にでももっと時間を見てやることが大事だろうと。  ただ、請願を受理することが大事だということでぎりぎりまで受理すると、私が調査室で経験したことでございますけれども、そのためになかなかその検討が思うようにはいかない。ただ受理するだけが目的でなくて、やはり中身の検討が大事でございますので、請願の締め切り期日を若干前にしていただいて、検討した後一回は全体として極力議題になるような形にする、そういうことを踏まえつつ個別に取り上げるべきときに取り上げていくというような形にしたらいかがかと、こういうように考えております。

山口哲夫新社会党・平和連合

○山口哲夫君 吉田先生にお尋ねいたします。  これは私が不勉強なので申しわけないんですけれども、請願手続の件で紹介議員の問題に触れられました。紹介議員がもしいなければ請願ができないということになると、これは請願権そのものに対する問題となるのではないかと思うんです。しかし、実際問題そういうこともあり得るわけですね。全党派が反対しているという問題について、しかし国民の一人として請願はしたいという場合にだれも紹介してくれないということだって起き得るんですけれども、そういう場合には果たして受け付けるのかどうか。今、手続上恐らく受け付けていないのではないかと思うんですけれど、も、その点いかがでしょうか。

辻啓明前参議院外務委員会調査室長

○参考人(辻啓明君) 実務でございますので私が御説明いたします。  参議院規則の百七十三条というのが今削除されておりますけれども、要するに憲法に言う請願は紹介議員がなくても受理するわけでございます。ただ、それは国会では陳情書と称して受理していると。衆議院規則の場合では、「陳情書その他のもので、議長が必要と認めたものは、これを適当の委員会に参考のため送付する。」という形になっておりまして、国会でも紹介議員のないもの、それが陳情書として議長のところに参りますと、事務的に申しますと各委員会の調査室の方に回ってまいりまして、それを受理しているところでございます。  それで、先ほどお話ししました「第百七十三条削除」というところは、昭和三十年までは、「議院は、陳情書その他のものであってその内容が請願に適合するものは、これを受理して、請願書と同様に処理しなければならない。」という規定がありまして、議員の紹介でないものでもそれを請願同様の扱いで採択、不採択を決めていったわけです。衆議院ではこういう規則があります。今は参議院は規則がありませんが、しかし同様に参考のものとして各常任委員会に送付するという形でいわば誠実に処理されている、こういうふうに理解しているわけでございます。  ですから、憲法上の請願は、国会は紹介議員がなくても当然受理する、ただし国会法の審議の対象となる請願としては紹介が要ります、こういうことでございます。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  参考人の方は、どうぞ御退席いただいて結構です。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 次に、去る七月、イギリス、ドイツ、フランス各国の議会によるオンブズマン等行政統制の調査のため、本調査会委員による海外派遣が行われました。  つきましては、この際派遣委員から報告を聴取し、本調査会の参考にいたしたいと存じます。  それでは、報告を矢野哲朗君にお願いいたします。矢野哲朗君。

矢野哲朗自由民主党

○矢野哲朗君 お手元に資料が配付されましたけれども、長時間調査会が行われているようでありまして、朗読ははしょってさせていただきたいと思いますので、後で御一読願いたいと思います。  平成八年度特定事項調査第三班は、議会によるオンブズマン等行政統制の調査のため、平成八年七月十六日から七月二十九日まで、イギリス、ドイツ及びフランスを訪問いたしました。  派遣委員は、本調査会の井上孝会長を団長として、亀谷博昭、猪熊重二、伊藤基隆各議員及び私、矢野哲朗の五名でございます。  まず、イギリスでは、下院議会コミッショナー特別委員会についてジェイムズ・ポージー特別委員長から、また議会コミッショナーについてウィリアム・リード議会コミッショナーから、それぞれ制度の概要と運用状況の説明を聴取、並びに意見の交換を行いました。  議会コミッショナーは、一九六七年に議会コミッショナー法に基づいて設置され、下院議会コミッショナー特別委員会は議会コミッショナーの地位の強化を図るために同時に設けられました。  議会コミッショナーの機構についてでありますが、議会コミッショナーは一名であります。政府の推薦により、野党の党首と議会コミッショナー特別委員長との協議を経て国王が任命することになっております。免職は、六十五歳の定年、病気による職務執行不能の場合に限られております。また、議会コミッショナーは議会組織に属する公務員であり、資格要件は定められておりません。  任務としましては、過誤行政により被害をこうむった者の苦情の救済、苦情の再発防止のための制度改善の調査・勧告をすることにあり、権限の及ぶ範囲は国の行政機関、非省庁組織の公共機関、裁判所及びその職員の行政行為に対するものとなっております。スタッフとしては約百八十名おり、そのほとんどは各省庁からの出向となっております。  苦情の申し立てば文書により下院議員に対して行われ、下院議員から議会コミッショナーに付託される、いわゆる間接アクセス制をとっております。議会コミッショナーの調査は、あくまでも苦情の申し立てに基づき実施されるものであり、職権による調査の実施は認められておりません。  議会コミッショナーに付託される苦情件数は、ここ五年間で年平均一千件前後で、最近増加傾向にあります。その理由としては、議会コミッショナーの存在が国民に周知されてきたこと、一九九一年に政府において市民憲章が策定され、行政サービスの水準向上を図っていることから、これに係る苦情が新たにふえてきていることによります。  苦情の内容は、社会保障関係各種給付金の給付、国税の徴収、公共事業に伴う土地収用等、社会保障省、国税庁及び環境省に関係する案件が過半数を占めております。  案件受理から調査を完了するまでの所要期間は平均七十週となっており、処理期間が長期化しているようであります。  議会コミッショナーの調査結果と下院議会コミッショナー特別委員会との関係についてでありますが、過誤行政により不当な取り扱いを受けていることが議会コミッショナーにおいて判明し、それがいまだに、あるいは今後とも是正されないと考えられる場合には、議会コミッショナーはその案件に関する特別報告書を上下両院に提出することができることとなっております。  議会コミッショナーは、法律上行政機関に対して勧告等の権限の規定はありませんが、実際の運用では関係行政機関に対し事実上その是正を求めていますし、各行政機関は問題があると認めれば是正策を講じているとのことであります。是正されない場合は、下院議会コミッショナー特別委員会では、議会コミッショナーから特別報告書の内容等の説明を聴取するとともに、関係行政機関の大臣等を招致し、是正策が推進されない理由をただすことが行われております。最後まで行政機関が議会コミッショナーの是正勧告に従わなかった例は極めてまれということであります。  次に、ドイツにおいては、ドイツの連邦議会請願委員会について、連邦議会請願委員会ユッタ・ミュラー副委員長及び同委員会のロベルト・レットゲン委員、さらにはフォン・べーク請願委員会事務局長等から説明を聴取し、意見の交換を行いました。  ドイツでは、一九四九年、基本法第十七条で、外国人を含めて請願権を認めております。また、請願委員会は、一九七五年の基本法の改正により、連邦議会に基本法上の組織として設置されるようになりました。  請願委員会は常任委員会でありまして、委員は現在三十二名、所属議員の数に応じて各政党に比例配分されております。基本法第十七条は、「何人も、個人で、又は他人と共同して、管轄機関及び議会に対して、文書で請願又は苦情を申し立てる権利を有する。」と規定しておりますが、ここでの「請願又は苦情」は広義の請願として扱われております。狭義の請願と苦情を区分する基準は必ずしも明確ではありませんが、一般には将来の立法についての提案等を狭義の請願としているとのことであります。  委員会の所管は連邦国家の行政機関の作為または不作為に係る苦情すべてに及び、委員会は前年一年間の請願の状況を本会議に年次報告として提出することになっております。  国民からの請願は、直接請願委員会が随時受け付け、まず請願委員会事務局が事前の審査を行います。事務局が処理できない請願は請願委員会に付託され、特定の専門領域の処理をゆだねられた与野党各一名、計二名(三名の場合もある)の請願委員が報告者としての審査に付されます。報告者同士の意見が合致した場合、請願は委員会で一括採択されますが、報告者の意見が分かれた場合には、個々の請願について請願委員会の審査が行われます。  最近五年間の請願総数は年平均二万件で、うち州管轄事項、判読不明等を理由に三分の一が審査に至っていないとのことであります。審査の対象となった請願で最も多いのは社会保障、児童手当関連であり、それが四分の一を占めております。  委員会は政府に対して勧告し、また法律改正を提案する権限がありますが、請願に関する決議は政府を法的に拘束するものではないとのことであります。  委員会の権限は、一九七五年の改革によって強化され、連邦政府だけでなく連邦官庁等にも請願委員会への書類提出、情報提供、施設への立ち入り許可が義務づけられ、請願委員会には請願者、証人及び専門家の意見聴取の権限が与えられております。ただし、行政庁が法律により秘密保持を義務づけられている場合は、行政庁は調査を拒否することができることとなっており、その権限にも限界があるとのことでありました。スタッフとしては、請願委員会事務局に約八十名の職員がおり、上級職公務員はいずれも司法試験合格者で、公募により採用をしております。  しばらく割愛をさせていただきます。  今後の課題としては、一九七〇年から今日までの間に年間一万件から二万件へと請願受理件数がふえてきており、処理能力を超えつつあること、国民からは請願委員会の現在の能力、権限以上の期待があり、請願委員会のあり方、事務局の体制について質量ともに改善が必要になってきていると述べておりました。  次に、フランスでは、メディアトゥール事務局ピエール・ショボン調査官・憲法評議会担当参事官等から説明を聴取し、意見の交換を行いました。  メディアトゥールは、一九七三年のメディアトゥールに関する法律で創設され、政令で一名のメディアトゥールが任命されております。任期は六年で再任されないこととなっており、任期前に罷免されるのは政令で限定された事由に該当する場合に限られているとのことであります。  メディアトゥールの職務は、いわゆる苦情処理機関として、受理する案件は国、地方公共団体等の行政運営に及び、行政裁判所による法的解決が不可能な領域をも対応できるようになっております。これらの処理を通じて、行政府の業務運営の点検や過誤行政の指摘が行われます。  また、権限としては、各省の大臣に協力を求め、所属職員に質問をすること、行政文書の交付を求めることができる調査権があります。しかし、行政機関は国防、国家の安全、外交に関する秘密保持の観点から、これらの調査を拒否することができるとされております。  調査の結果、過誤行政が認められた場合には、問題となっている機関に対し、改善のための勧告あるいは法令の修正を示唆することができる権限を持っておりますが、苦情申し立てに基づかないで、職権により調査を開始する権限はないとのことであります。スタッフとしては事務局職員が約八十名おり、各省庁からの出向者で構成されております。独立性、中立性が確保されているとのことであります。この他、メディアトゥールの個人的補佐として各県に代表、フランス語ではデレゲと称する名称を持った地方連絡員が現在百二十五名配置されております。  苦情は、原則として国会議員を経由して申し立てるという間接アクセス制がとられております。苦情が国会議員を介して行政府に属するメディアトゥールに届くようにしたのは、本来立法府にある請願審査権の一部をメディアトゥールに与えた代償として考えられた措置であるとの説明がありました。  メディアトゥールに付託された苦情は、ここ数年平均で約四万件に上っております。そのうち内容的な調査が行われた案件は約六〇%程度で、その他は権限外、事前手続に不備があるなどから、門前払い的に却下されております。調査に付された案件のうち、約三〇%強が行政府の誤りを認めて是正の勧告を行っており、勧告に対しては、行政機関がどのような措置をとるか一定期間内にメディアトゥールに報告することが義務づけられております。  メディアトゥールは、当初、過誤行政の是正を目的に設置されたのでありますが、今日では行政を調査することによって行政改革、国家行政組織の近代化の一助にもなっていると、機能の変遷が見られるとのことでありました。  以上が調査の概要でありますが、最後に、今回の調査に当たりまして御協力をいただきました在外公館及び訪問先の関係者に対して厚く御礼を申し上げまして、報告を終わります。  なお、ただいま申し上げました報告のほかに、その詳細については別に調査報告書として調査会長に提出いたしましたので、本日の会議録に掲載できますようお取り計らいいただきたいと存じます。  以上で報告を終わります。

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) ありがとうございました。  ただいま特定事項調査第三班の報告がございましたが、私も団長として一緒に参りました。主として皆様方にお決めいただきました中間報告、行政を常時監視する委員会を新設すべきであるということ、それから、きょうもやりましたが、請願審査方法の改善を図るべきである、それから国政調査権の活用を図るべきである、こういう主として三つの柱から私も各国の事情をその意味で調べてまいりました。  調査した三カ国とも国の統治機構や国民性が違っておりますので、それぞれ異なった苦情処理制度をとっております。  しかし、その中で、私といたしましては、ドイツ連邦議会の請願委員会、それから請願委員会事務局による苦情処理制度は、私どもの調査会の今申しましたような方針に大変参考になるという印象を受けてまいりました。  つまり、ドイツでは苦情等を請願という形で受理をいたしまして、その請願等を通じての苦情の処理はもとより、それに伴って行政の監視等も行われているという事実、また請願の委員会における議決の形は我が国におきます採択、保留というようなことだけではなくて、政策等の見直しを求めるもの、それから行政上検討を求めるものというような段階をつけまして、委員会の意向がきめ細かく議決にあらわされておるというようなことも伺いました。  さらに、矢野君の報告にもありましたように、ドイツでは過去に請願委員会とオンブズマンとの併設をしてはという主張がございまして、論議があったようでございます。そのときに、オンブズマンによる勧告では、政策への結びつきが弱い、むしろ直接議会における政策論議との連携が図れる請願委員会だけとすることに国会としては決めたんだと、こういう説明がございました。  今後、仮に行政監視機関を国会に設けるといった場合に、それをどのような形態にするのかの議論にドイツの実例は非常に貴重な意見ではないかと私は印象を受けました。  以上、簡単ですが、所感の一端を申し添えまして御参考に供したいと存じます。  以上で海外派遣の報告は終了いたしました。  なお、先ほどの矢野君の報告の中で要請のございました詳細な報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上孝自由民主党

○会長(井上孝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時二十三分散会      —————・—————

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