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139回国会衆議院1996/12/13

法務委員会 第2号

発言数
140
登壇者
16
会派数
5
開催日
1996/12/13

会議録

八代英太自由民主党

○八代委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、人権擁護施策推進法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岸本光造君。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 自由民主党の岸本光造でございます。  人権擁護施策推進法案について、何点か質問をしてまいりたいと存じます。人権擁護施策推進法案とは大変長い法律名でございますもので、以下は人権擁護法というように略称して申し上げていきたいと思います。この法案が提出されました歴史的背景あるいはその意味について、認識をお伺いしたいと思う次第でございます。  御存じのように、地対財特法は本年度をもちまして失効するわけでございますが、これまで同和対策事業は、昭和四十年の同対審の答申を受けて以来、今日まで三つの法律で事業が進められてまいりました。数えてみますと、同対審の答申以来三十一、二年になるでしょうか。事業が始まって二十七、八年になると思いますが、この三つの法律で同和地区の環境改善あるいは国民の意識の変革、啓発などが大変進んでまいったというふうに私は思うわけでございます。  したがいまして、私は、この同和対策事業特別措置法、それから地域改善対策特別措置法、それから今日の地対財特法、この三つの法律は世界で一番よく仕事をした法律ではないかな、こういうふうに思うわけで、関係の皆さんの御尽力に敬意を表したいと思います。  この地対財特法が失効するに当たりまして、これで同和問題がもうすべて終わったという認識もあるわけでございます。ある意味では一つの区切りというふうに、転換点であるという認識もあるでしょうが、部落差別がやはり今でも厳然として存在しているという冷厳な現実を見るときに、これはやはり同和問題の新たな出発であると。したがって、この人権擁護の法律は、ある意味では同和対策の法律であるというふうに私は理解をするわけでありますが、その辺の認識について、大臣、関係の皆さんから御答弁をいただきたい、こう思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 本法案の提出につきましては、御承知のとおり、本年の五月に地域改善対策協議会から「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」意見具申がなされまして、その中で、「差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進」、さらに「人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化」が求められていることがございます。また、内閣総理大臣を本部長といたします人権教育のための国連十年の推進本部が昨年の十二月に設置をされまして、そこで本格的な取り組みが開始されていることがございます。我が国は、人煙に関するさまざまの条約に加入してきたこともございます。それから、同和問題等における差別事象その他のさまざまな人権侵害が今なお根強く存在しているということなどの、こういったさまざまな内外の情勢を背景としているものでございます。  このような状況を踏まえまして、人権に関する教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策を今後とも推進するとともに、これらの施策に関する基本的事項について十分な検討を行うことが必要であり、これが同和問題等の人権問題の早期の解決のためにも不可欠であるという考え方のもとにこの法案を提出することにしたものでございます。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 昭和四十年の同対審答申の同和問題の未解決の中に、こういう一文がございます。ちょっと読みます。  戦後のわが国の社会状況はめざましい変化を遂  げ、政治制度の民主化が前進したのみでなく、  経済の高度成長を基底とする社会、経済、文化  の近代化が進展したにもかかわらず、同和問題  はいぜんとして未解決のままでとり残されてい  るのである。   しかるに、世間の一部の人々は、同和問題は  過去の問題であって、今日の民主化、近代化が  進んだわが国においてはもはや問題は存在しな  いと考えている。けれども、この問題の存在は、  主観をこえた客観的事実に基づくものである。ここが大事ですね。中を略しまして、  いかなる時代がこようと、どのように社会が変  化しようと、同和問題が解決することは永久に  ありえないと考えるのは妥当でない。また、「寝  た子をおこすな」式の考えで、同和問題はこの  まま放置しておけば社会進化にともないいつと  はなく解消すると主張することにも同意できな  い。 という認識が四十年の同対審の答申の中にございます。  今度の人権擁護の提案理由の説明の中にこういうのがございます。「同和問題等社会的身分や門地による不当な差別、人種、信条、性別による不当な差別その他の人権侵害がなお存在しておりこというふうにあるわけですが、この今申し上げた同対審答申の中の認識とそれから提案理由の説明の中にある認識、この辺には三十年の歴史があるわけですが、読んでみたら同じように思うわけですね、今でも。この辺の認識の差、ずれ、これはどうですか。簡潔にやってください、時間がありませんから。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 同和問題に関する国民の差別意識につきましては、今御指摘の同対審の答申がなされて以降今日までの間にさまざまな施策が行われてきた結果、着実に解消に向けて進んできたものの、なお結婚問題を中心に依然として根深く存在しております。また、残念ながら今なお差別事象が発生しておりまして、速やかに解消しなければならない重要な人権問題であると考えている次第でございます。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 私、ここで気になるのが一つございます。  提案理由の説明の中で、今読みました部分でありますが、これは差別が二つの項に分かれております。「同和問題等社会的身分や門地による不当な差別」、これは憲法十四条の精神であろう、こういうふうに思います。それから、差別でも存在理由が全く根本的に違う差別があります。「人種、信条、性別による不当な差別」、こういうふうに書かれております。部落差別と人種、信条、性別による差別とは存在理由が全然違うわけです。だから、これを一緒くたにして差別というふうにくくってもらっては、同和問題が、この部落差別というのが差別一般に埋没してしまって解決の展望というのが出てこないのではないか、そういう認識を私は持つわけです。  何でもかんでも差別であると。この部落差別による差別と、それから性的あるいは障害者の方、そういう差別とは違うと思うのですね。その辺は部落差別を普通の差別、いろいろな差別がありますが、そういうものと一緒くたにしてはいけないという考え方を持っておりますが、その辺についてはいかがでしょう。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 今御指摘の同和問題等の社会的身分、門地による不当な差別と人種等による不当な差別は、いずれも重要な人権問題でございます。しかし、本法案は同和問題の早期解決が求められていることを重要な契機としているということで、提案理由説明におきましては、不当な差別の例示として「同和問題等社会的身分や門地による不当な差別」を特に区別して掲げたものでございます。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 あなたは、先ほどの答弁の中で部落差別は厳然として残っておるということを示されました。それで、例えば今の時代に聞いてびっくりするような差別が毎日毎日起こっているわけでございます。  岸和田という町が関西にございます。この岸和田のNTT職員が、自分の家の壁に張り紙をしておる。その張り紙はここではちょっと言うことをはばかるような差別の言葉を用いてビラを張っておるわけでございます。NTT職員でございます。  私も調べたんですが、NTTでは同和教育を何時間も何時間もかけてやっておるわけですが、本人は、風雨に打たれたこの張り紙をまた張りかえて、差別ビラを五枚壁に張っておるわけでございまして、これはもうどうしようもできないという現実が一つあるわけでございます。  それから、ある関西の県の、山の上の方の部落がございます。ここの部落の民たちは、下へおりていくのが嫌だと。何でやと聞いたら、下へ行ったらいじめられる、差別されると。山の中で同和地区住民が小さくなっておびえながら生活しているという現実も、これは今まさにこの日本の中にあるわけでございます。  それから、結婚差別。同和地区出身であるがゆえに結婚に反対されて、結婚できなくて自殺をしたお嬢さん。それから、就職差別。これは地名総鑑以来かなりなくなってまいりましたけれども、まだなお、今それが毎日毎日続いておるわけでございまして、この辺が、この人権擁護の法律で、同和対策を中心において、そして先ほど申しました三つの法律の成果を受けて質の高い同和対策を展開していく、これが今後必要ではないか、私はこう思うわけであります。  人権の問題、民主主義の問題、自由の問題、これらと絡めて、質の高い同和対策、同和運動、同和解放の運動を進めていく必要があると思います。  今幾つか事象を申し上げましたが、総務庁もきょうお見えですから、これらの問題について、どういうふうに今対応され、認識をしているか。知っていますね、この岸和田の事件なんか。それについてお考えがあれば述べていただきたい。あるでしょう。どうぞ。

川邊新総務庁長官官房地域改善対策室長

○川邊説明員 今の事例に出ているようなことがいまだに存在しているわけでございます。総務庁といたしましては、関係省庁と協力いたしまして、差別意識の撤廃に向けました。解消に向けました教育、啓発ということを従来からやってきたわけでございますけれども、やはり今後全体を、人権問題という視点からのとらえ方も含めまして、今回この法案で審議会をつくり、基本的なことを議論していただこうということでございます。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 それは、そういうふうにほんまにできますか、できるようにお願いをしたいと思いますが。  質の高い同和運動を展開していくという意味では、法務省、どうですか。今申し上げた質問で。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 ただいま委員御指摘のとおりでございまして、審議会を設置いたしまして、幅広い見地から慎重かつ適正に質の高い審議をしていただきたいと考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 いや、私は質の高い審議をしてくれと言っているのではなくて、質の高い部落解放、同和運動、人権の闘い、こういうものができるのかと聞いているんですよ。

川邊新総務庁長官官房地域改善対策室長

○川邊説明員 先生御指摘のように、いろいろな差別問題につきましては、経緯も違いますし、その事象も違いますし、その解決の手法もいろいろ違うだろうと思います。その中で、同和問題というのは我が国の非常に重要な問題であるということの認識も、御指摘のとおりだと思います。  ただ、地対協の意見具申で申し上げておりますのは、やはり現段階での差別意識の残っている状況を見て、やはり一つは、法のもとの平等とか個人の尊重といういわゆる普遍的な視点からのアプローチと、あるいは個別の差別問題の解決のアプローチと、両方相まってやっていくべきだ。そういう意味で、全体として、人権意識の高まり、個人の自覚ということを考えていくというような手法でやっていく、そこら辺の審議を審議会にも期待したいと思っております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 それで、ちょっと私、気になることがございまして、この人権擁護法案の提案理由の説明の中には、同和問題について、これは解決していかなくちゃいかぬと今の答弁のような話がるる述べられておるわけですが、この法案の中には同和問題が一字も出てこない。「社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別」ということで一貫されておるわけで、この同和問題というのが一行も入らなかった。これは恒久法でも何でもないのですよね。にもかかわらず同和という文字を排除されたということは、非常に何か腰が引けているんじゃないか。同和対策はもうこれで、地対財特法の失効で終わったよ、後はもう人権一般で全部やるんだよという、そういう空気を、においを私は感じるわけですが、その辺、どうですか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 腰が引けているのではないかという御質問でございますが、同和問題も今後における人権問題の中の重要な柱でございますので、他の人権ももちろん重要な問題ではございますが、他の人権とあわせて同和問題についても十分な審議をしていただきたいと考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 いやいや、だから、ほかの人権と同和にかかわる人権とは一緒くたにしたらいかぬよ、歴史が全部違うんだから。それぞれの対策も違うわけですから。だから、それが違うよと私は申し上げているのですが、その辺、どうですか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 地対協の意見具申でも、同和問題の特質を十分考慮して今後も対処するようにという趣旨のものがあったと思いますので、そういう点を十分念頭に置いてやっていただきたい、かように考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 それでは、腰が引けていない、こういうことですな。こういうふうに理解していいですな。  それでは次に、審議会は、これは二十人以内で、法務大臣の任命によって設置するというふうに案ではなっておるわけでございますが、この審議委員に我々はクレームをつけるようなことは一切ございませんし、立派な人権感覚を持たれた方々を選択してくれる、そのことを期待しておりますが、少なくともこの人権擁護の法律は同和対策の法律でもあるというふうに私は読みかえていきたいと思いますので、そういう立場の人間から申し上げますと、やはり同和問題に精通していると申しますか、非常に理解を持った方々、やはりこういう方々を委員に任命すべきではないか、こういうふうに思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 委員の選任につきましては、学識経験のある者のうちから大臣が任命するということでございまして、人権に関してさまざまな角度から公平、公正な審議が行われるような体制をとる必要があると考えております。したがいまして、委員の人選に当たりましては、この点を十分考慮しながら、広い学識経験と専門的な知識を有する人を選任したいと考えている次第でございます。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 私は、この審議会の委員というのは、日本の人権、民主主義、同和対策、そういう立場で大事な審議会になるだろうというふうに思いますので、この人選につきましては、法務大臣に特にこれはお願いしなくちゃいけませんが、何物にもとらわれない柔軟な思考を持った。みんながすばらしい人権感覚を持って、しかも同和対策に精通している人、よく理解をしている人、同対審の答申以来今日まで三十年前後の歴史があるわけですが、それらを踏まえて、ちゃんとした学識のある人、こういう人を委員に選任をいただきたい。これは法務大臣の権限ですから我々はこういうことを言うたらいかぬのですが、私は希望としてこれを、日本の人権のために、民主主義のために申し上げておきたい、こう思います。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 ただいまの御意見、十分胸に畳み込んだ上で任命行為を行いたい、こう思っております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  それから、これが二年を目途に答申なり意見具申なりいろいろなことが出されると思います。法的措置の問題も出てくるでありましょう。それは審議会の内容ですから、わかりませんが。しかし、いろいろな形で答申なり意見具申なりが出ることはもう確かなのでありますが、速やかにその措置をとるというふうに提案理由の説明の中に出ております。「政府といたしましては、審議会の答申または意見具申がなされた際には、これを最大限尊重し、人権の擁護に関する各種の施策を講じてまいりたいと考えております。」これは、ここに書かれておるとおり、速やかにお進めをいただきたい、それをお願いしたいのですが、どうですか、法務省と総務庁と両方、この問題についての考え方。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 審議会の答申等がなされました場合には、これを最大限尊重いたしまして、答申等にのっとって、法的な措置を含め、人権の擁護に関する必要な施策をできるだけ早急に講じてまいりたいと考えております。

川邊新総務庁長官官房地域改善対策室長

○川邊説明員 総務庁長官も諮問大臣でございますので、答申が出ましたら最大限尊重していきたいと考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 それでは、次にお伺いしたいと思いますが、一九九三年に総務庁が同和地区実態把握調査でいろいろな調査をされておりますが、その中で、人権侵害に対応して、人権を侵害された。そのときにどこかへ相談に行くわけですが、法務局へ行ったあるいは自分の住んでいる町の人権擁護委員の皆さんに相談した。こういうのはわずか〇・六%なんですね。それはおたくの調査でそういう結果が出ておるんですよ。  だから、人権擁護委員というのは二万人を限度にして全国に法務大臣から委嘱されている組織でありますが、これは実態的によくわからぬのですね。動いてないのと違うかと私は思うんです。というのは、私の町の、私は和歌山で人口一万六、七千の町でありますが、この町で民生委員というのはあちこち知っているんですよ。ああ、あの人、民生委員だ、この人、民生委員だとわかるのです。人権擁護委員というはだれもぱっと、ゆうべ寝ながら考えたのです、夜中に、うちの町の人権擁護委員はだれやったかなと。ぴんとこないんですよ、いないんですよ。それではこういう差別、人権侵害されたときに相談に行けないのですよ。民生委員やったら、あそこへ駆け込む、ここへ駆け込むというのはあるんですよ。  だから、人権擁護委員というのは一体今どれぐらい実数があって、二万人というふうに書いていますけれども、どんな働きをしているのか。それをちょっと教えていただいて、これは強化する必要があると思いますね、この際。できたら民生委員並みに、民生委員というのはかなり点在してますからね、だからそれぐらいやる必要があるんじやないか、こう思います。何か意見あったら言ってください。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 現在、人権擁護委員は約一万四千人足らずおります。そして常設、非常設の人権相談所を開設いたしまして、そこで皆さんが鋭意相談等に乗っておりますし、また人権侵犯事件の調査、一処理にも携わっております。  今御指摘の〇・六%という点につきましては、私どもも謙虚に受けとめて反省いたしておりますし、これからはなお一層人権擁護活動の活性化に努めてまいりたいと考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 あとわずかで二十一世紀になるわけですが、そのときにまだこの国において同和問題を論議しなければいけないということは、ある意味では不幸なことであります。これはできるだけ早く解決をして、そして人権が生き生き輝ける日本の国というのができなくちゃいけない、私はそういうふうに思うわけであります。そういう意味で、この人権擁護法案が同和対策を中心にして日本の人権が花開くように、そういう活動をしていただくようにお願いを申し上げたい、こう思います。  これで私の質問を終わりますが、この問題について、大臣御出席でございますから、所見ございましたら一言どうぞ。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 委員御指摘のように、この問題に関しては、趣旨説明にもいろいろ書いてございますように、同和問題を非常に重要な問題と考えて処理をしてまいりたいと考えております。

岸本光造自由民主党

○岸本委員 ありがとうございました。

八代英太自由民主党

○八代委員長 次に、栗原博久君。

栗原博久自由民主党

○栗原(博)委員 私は、実は今岸本先生の同和問題についての質疑を聞いておりまして、若いころ島崎藤村の「破戒」を読みましてやはり差別に対して目覚めて、政治の道も求めてまいったわけでありますが、ただいまの質疑の中で大変感嘆するものがございました。  さて、今回のこの人権擁護法ですか、この法律は憲法の原理原則等を記してあるわけですが、この法律は一つの政策法として大変意義があると私は思っています。それで、この法律の制定を機にしましてお聞きしたいことでございますが、らい病すなわちハンセン病の問題でございます。  本年の四月一日にこのハンセン病、らい病予防法は廃止されましたが、この経過を見ますと、明治四十年に癩予防ニ関スル件が可決成立して、その後昭和に入りましてこのらい病に対しては、特にアメリカにおいては昭和十八年ごろダプソン治療法というものが発見されて、らい病は隔離する必要がないというふうに言われておったにもかかわらず、我が国においては昭和二十八年にらい予防法が成立し、その過程においてこのらい予防法は近い将来に改正するという附帯決議もされていたにもかかわらず、ずっと四十年も放置されて、この法律によりますと外出禁止とか物件移動の制限あるいはまた罰則規定まで設けて、多くの方々が苦しみあえいでまいったと思うのであります。  それで、この法律ができるに際しまして一つお聞きしたいのでありますが、私は今手元に、「現代のスティグマ」という本で、これは大谷藤郎さんという方が、厚生省の医務局長もされた方でございますが、らい病がいかにして医師や官僚の人権感覚の欠如とか無責任さにあったということを現職でありながら訴えても、らい予防法が廃止されなかったわけであります。その間に、さっき申した多くの方々が苦しみ人権問題にあえいでまいったと思うのであります。  私は、時間がございませんので余り申し上げませんが、先生がこの本の中で実はこのように書いております。   スティグマとスケープゴート   古代社会では、奴隷や犯罪人は焼きごてで印  し、つまりスティグマを身体に灼きつけられ  た。スティグマを負わされた人間は、地域共同  体では許されることのない異分子であり、なに  かのときにはスケープゴートとしていけにえに  供された。   現代のスティグマは、古代のように身体に焼  きごてを当てるような目に見える残酷なことは  しないが、心に癒やしがたい傷を負わせること  において見えないところで今もなお存在してい  る。 このように、基本的な人権の侵害を先生はこの本で記しているわけであります。  そこで、大臣にお聞きしたいのでありますが、まだ今六千人近い方々が施設に入っておられます。この法律の廃止の際には、社会に出てもよろしい、施設に入っている方についてはずっと今までと同じような待遇をするということを言っている。また、今エイズも、エイズ予防法という法律がございます。あるいはまた、伝染病と違うこういうような一つの目的法があるわけですが、こういう法律に関する方々も、大変人権問題が叫ばれている。もうエイズは、当初出たころは大変な病気だという、そういうこともあったわけですが、今現場の病院ではエイズ患者の方々が大変な差別を受けているわけであります。このらいの予防法、要するに法の廃止にもかかわらず、ハンセン病の方々の人権問題等について、我が国の最高の立場にある大臣から、御所見と今後の人権確保についてどのように取り組んでいくか、この法律の制定を機にしてひとつお聞きしたいと思うのです。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 御指摘をいただきましたように、ハンセン病患者等に対する人権侵害等の問題が起こっておりますことは事実だと思います。まことに残念なことだと思っております。  差別や偏見を除去するために、関係機関との連携を十分保ちながら、患者等に対する人権侵害事件に対しては人権侵犯事件として調査をして徹底的にこれを措置するなど、こういった偏見あるいは差別、そういった問題がないように日本全国を通じて関係機関の指導をしてまいりたいと思っております。

栗原博久自由民主党

○栗原(博)委員 今後、この人権擁護施策推進法ですかこの趣旨にのっとりまして、同和の方々はもちろんでございますが、やはりこういうハンセン病の方とかあるいはエイズの方々とか、現代医療の中においてその谷間におる方々に対する救済等を切望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

八代英太自由民主党

○八代委員長 続きまして、漆原良夫君。

漆原良夫新進党

○漆原委員 新進党の漆原でございます。  人権の擁護の施策を推進するということ自体は大変歓迎すべきものであると思います。しかし、本法案は、もともと同和問題という個別的な、具体的な人権問題を経緯として発生したところ、人権問題の全般を一般的、抽象的に論ずるという、大きく対象が異なっており、そこに質的な違いがあるのではないかという感を受けるものであります。  そんな観点から若干質問させていただきたいと思うのですが、まず、同和問題が一般的人権の中に全部含まれております。根深い差別が存在しておるのが現実でありますけれども、同和問題の解決方法としてこれで十分なのかどうか、現実に同和関係者の意見を聴取されたのかどうか、また意見はどうであったのか、その辺の御見解を聞きたいと思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 この法案は、御承知のとおり地対協の意見具申を一つの重要な契機としているものでございまして、こうした契機を踏まえて、同和問題だけに限定しないで、広く人権一般の観点から人権の擁護に資することを究極的な目的にしているものでございます。  ただ、同和問題は、依然我が国における大変重要な人権問題であると同時に、この法案を策定した。今申しましたような重要な契機になったということでございますので、この審議会におきましても、我が国における重要な人権問題という認識のもとに御議論いただけるものと考えております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 同和問題には同和問題の固有の問題があると思います。新進党は同和対策基本法案というのを政府に提出しておるわけでありますが、一般法に対する特別法として同和問題解決のための固有の法律をつくるべきではないかと考えるのですが、この点いかがでございましょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 先ほども申し上げましたように、同和問題は、今後の審議会における重要な人権問題の柱であるということには違いはございませんが、同時に、地対協の意見具申が申しておりますように、人権一般としての教育、啓発、さらにあらゆる人権侵害に対する被害者の救済を図る、そのための諸方策を審議していただく、そういう趣旨でございます。

漆原良夫新進党

○漆原委員 そもそも、この同和問題から発生して人権全般に切りかわった。こういう大きな問題を審議会で審議するように切りかわった。この理由はどこにあるのでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 ただいま申し上げました地対協の意見具申が人権教育・啓発の点と被害者救済の点を指摘していることがまず第一でございます。それから、御承知のとおり、昨年の十二月に、内閣総理大臣を本部長とする人権教育のための国連十年の推進本部が内閣官房に設置されたわけでございます。また、我が国におきましては、近年、人種差別撤廃条約でございますとか児童の権利に関する条約に見られるように、人権に関するもろもろの条約に加入いたしておりまして、それに関して適正な対応が迫られているということがございます。  これに加えて、同和問題等における差別事象や子供のいじめ、不登校といった子供の人権問題、高齢化の進展に伴う高齢者の人権問題、あるいは女性に対する不当な差別等の問題、さらには外国人に対する不当な差別、あるいは障害者問題等々さまざまな人権侵害が今なお存在し、その解決が求められている。こういう状況を踏まえまして、この法案では、同和問題に限らないで広く人権一般を対象としているということでございます。

漆原良夫新進党

○漆原委員 政府の本法案の提案理由説明によりますと、人権の教育・啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策を今後とも推進していくとともに、これらの施策について、改めて十分な検討を行うことが必要である、こうなっております。  実際には、現在法務省は、人権擁護のために人権擁護機関を設置されまして人権の啓発及び侵害の救済に当たっておられまして、そこで関係機関の不断の努力によりまして人権侵犯事犯のうち九九%が処理されているという現実がございます。既にこういうふうな機関があり、適切に機能しておる。それにもかかわらず政府は、さらにこれらの施策について改めて十分な検討を行う必要があるというふうな御認識になっておるようですけれども、その必要性、具体的にどんなことが必要なのか、それを具体的に述べていただければと思いますが、よろしくお願いします。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 現在の人権擁護制度が御指摘のように十分機能しているかどうかには疑問がございます。地対協の意見具申でも、人権擁護制度の抜本的な見直しをするように、そして二十一世紀にふさわしい人権侵害救済制度の確立を目指して鋭意検討するようにということを言っておりますし、人権教育・啓発についてもさらに推進をするようにという指摘がされておりますし、人権擁護委員制度についても、もっと活発な活動をし、その周知徹底に努めるようにというような内容でございまして、今後ともまだまださまざまな施策を検討して推進していく必要があると考えております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 少し抽象的な御説明でよくわからないのですが、今ある制度、これを十分検討しようというからには、制度の不備という点を御認識されているのだろうと思うのです。一体、今の制度のどこが不備で、どこをどういうふうに変えていくべきなのか、その辺について政府の御意見を賜りたいのですが。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 具体的になかなか申し上げることは難しいわけですが、それはもう審議会の方でさまざまな観点から総合的に御検討をいただきたいと思っているわけでございます。  一つは、人権教育・啓発が法務省の専掌として行われているわけでありますが、先ほどから御指摘がありましたように、法務省の人権擁護機関は必ずしも十分な組織体制を備えているわけではございませんし、人権啓発等、人権擁護委員の活動も必ずしも十分ではございません。  それから、人権侵害による被害者の救済につきましても、現在は御承知のとおり大臣訓令に基づいて行っているわけでございますが、こういった点の問題と、あるいは行政と司法との役割の問題、行政権の行使のあり方の問題、あるいは、もっともっと広い意味では、人権教育の国連十年が言っておりますような、教育全体についての理念や制度そのものを考え直す必要があるのではないかというふうに考えております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 被害者の人権の救済について、この点については現在の制度はいかがと御認識でしょうか。できれば具体的に述べていただければありがたいのですが。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 例えば、大変悪質な人権侵害をした人に対しましては、現在の制度では、法務局の職員あるいは人権擁護委員が調査をする際に、そのいわば加害者である相手方に対しまして何回も足を運んで事実関係についての事情聴取に応じるように説得をするわけでございますが、中にはそれにどうしても応じない、いわば確信犯的な加害者がいるわけでございます。こういう者に対しましては、事例は少ないと思いますけれども、現在の制度のもとでは対応のしょうがない。こういった議論は地対協の議論の中でも出ているように伺っております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 私が今一番危惧しているというか考えているのは、従来は被害者の救済について、今おっしゃったように任意の調査、あるいはその処理結果に対しても法的拘束力を伴わないいわば説得ということで、大変な努力、御苦労があったと思うのです。  一方、人権侵害に対しては、地対協の意見にもありますように、迅速かつ簡易な処理が、救済が必要である、こういうふうになっておりますと、やはり何か調査に、今までは説得と協力という立場で、ある意味では人権の侵害に対しては政府としては消極的な立場といいますか、消極的な関与といいますか、そういう立場であったのが、今後もっと積極的に、法的拘束力を伴うような積極的関与に転換するべきではないのかというふうな御認識があるのかないのか、その辺をお聞かせいただきたい。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 現在の人権侵犯の調査処理手続は任意のものでございますが、それは要するに、人の心にかかわる問題であるということで、国民がお互いに人権尊重の気持ちをみずからの問題として醸成していかなければならない、そのためには、強制的な権力をむやみやたらに介入させてはならないという考え方があるのだろうと思います。  他方、先ほど申しましたような確信犯的なものに対する調査については、最小限度調査に応ずるような強制力が必要ではないかという議論もございます。また、最終的な処理につきましても、もう少し拘束力を持たせるようなものが必要ではないか、あるいは現に継続している侵害に対して排除をさせるというような方法もどうかというようなさまざまな議論がございます。  私どもは、どういう施策がいいとか悪いとかということを今考えているわけではございませんので、そういったあらゆる問題について、広範な角度から検討を願いたいと考えているところでございます。

漆原良夫新進党

○漆原委員 そういうふうになるとは思うのですが、司法的救済という観点からもいろいろ難しい問題があろうかと思います。その辺、ぜひ慎重にやっていただきたいというように思います。  もう一つ、本法案は五年間の時限立法になっているわけですけれども、五年後には人権擁護の目的が全部達成されて、なくなってしまうというわけではないと思うのですね。これをあえて五年間の時限立法にしたという理由はどこにあるのでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 審議会で審議していただきます以上は、できるだけ充実した審議であって、しかもできるだけ早くというのが理想でございます。しかしながら、今回の審議事項は大変に広い範囲にわたり、しかも教育、啓発につきましては人の内心にかかわる問題がありますし、人権侵犯の問題につきましても大変難しい行政と司法の役割分担等の問題もございます。そういう意味で少なくとも五年は必要ではないか、そういう考え方のもとに五年としたものでございます。

漆原良夫新進党

○漆原委員 本法案は、人権擁護施策推進法という大変大きな課題を、使命を帯びた名称になっておるのですけれども、五年たって審議会の答申があったらなくなってしまうというのでは、実質的には審議会を設置するためだけの法律ではなかろうか、名前負けするような法律ではなかろうかというふうに思うのです。むしろ、人権擁護施策推進のために審議会を設置するための法律というふうなものの方が実態に即応するのではないか、そういう名前に改めたらどうかというふうに考えるのですが、この点いかがですか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 この法律は、今までなかった大変重要な人権擁護の施策に関する法律であるというふうに理解いたしております。審議会で審議される事項も極めて重要なものでございますし、その前提として、国として人権擁護施策を推進する責務があるということを二条の中で確認をして規定している、これにもそれなりに大変重要な意味があると考えております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 その問題はその程度にしておきたいと思います。  最後に、法務大臣にお聞きしたいのですが、現代社会における人権問題、これは、えてして複雑な社会でありますから人権と人権との衝突という格好であらわれてくることが多いわけでございまして、一万の人権を擁護することは、場合によっては一万の人権を否定するという結果になりがちでございます。  今後、行政が積極的に、場合によっては人権に関与していく可能性もあるわけでございますから、万が一にも、仮にも行政による人権の侵害というふうにならないようにひとつ十分な御配慮をするべきだと思いますが、その点、法務大臣いかがでございましょうか。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 人権問題を取り扱うに際しましては、今御指摘のように、極めて慎重な態度が必要だと思っております。その意味では、行政機関と司法機関とが本当に厳密な連絡体制をとって誤りのないようにしていかなければならない、このように考えております。

漆原良夫新進党

○漆原委員 大変ありがとうございました。  これで質問を終わらせていただきます。

八代英太自由民主党

○八代委員長 続いて、福岡宗也君。

福岡宗也新進党

○福岡委員 新進党の福岡宗也でございます。  私の質問は、提出法案とは直接は関係ございませんけれども、現時点においてただしておきたいという問題二点ほどを御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  まず第一点は、身分法の改正法案上程の問題でございます。  最初に、従来行われてまいりました身分法の改正の経緯を若干申し上げたいと思うわけであります。  昭和二十二年に、新憲法の制定に伴いまして、憲法二十四条の家族生活は個人の尊厳と両性の本質的平等に基づいてなされなければならないとする原理を反映させるために、家の制度や妻の無能力の廃止、夫婦の平等、家督相続の廃止等、民主化の基本部分の改正がまずなされました。しかし、この改正は、まだ国民の意識というものが低いということもありましたし、時間が足りなかったということもありまして、基本的な部分のみが改正をされまして、その他の部分はそのまま残存されました。ために、近代化、合理化、男女平等の点についても不十分な点が多々あったわけであります。  したがって、この改正に際しまして、衆議院で可決された際におきましても、本法は可及的速やかに将来においてさらに改正する必要があることを認める旨の附帯決議がなされていたわけであります。そのために、昭和二十九年に、法務大臣から法制審議会に、民法に改正を加える必要があるとすればその要綱を示されたいという諮問がなされたわけであります。以後、法制審議会民法部会身分法小委員会において審議がなされまして、数次の改正がなされてきましたけれども、婚姻と離婚の制度についての抜本的な改正はなされなかったわけであります。  しかしながら、本年の二月二十六日に法制審議会より答申をされました民法の一部を改正する法律案要綱は、選択的夫婦別姓、嫡出にあらざる子に対する相続分の差別の撤廃等、こういう重要な問題を含む大幅な改正が盛り込まれたのであります。これは、個人の尊厳、男女の実質的平等の確立、家の拘束からの脱却という見地から見て、本当に画期的な改正であったというふうに思うわけであります。  そこで、まず法務当局に対する御質問でございますけれども、これは五点ほどございますので、一括して申し上げますので一括して御答弁をいただきたいというふうに思います。  その一は、このような重要な改正というものが法制審議会において平成三年の一月から審議をされることになりましたのは、それなりの背景があったというふうに思うのであります。  その第一は、国民の個人の尊厳に対する意識、家の拘束からの脱却に対する意識の変革という問題、また国際的な男女平等に対する世論の高まりと世論の変化、諸外国の法制の整備等、いろいろな問題があったと思うのですけれども、そういった背景、要因というものについて簡潔に、項目別にまず御答弁をいただきたいというふうに思います。  それから、質問の第二点は、平成三年一月、法制審議会民法部会が審議に入ったわけでありますけれども、その間五年間にわたりまして本当に慎重な審議がなされてきたわけであります。その審議の内容、経過、特に関係各界の意見聴取であるとか外国法制の調査、それから世論の調査等いろいろなことをされておると思いますけれども、その内容について簡単に御説明を願いたいと思います。それからさらに、この法案をまとめるについて法制審議会の意見としては全会一致であったと聞いておりますけれども、そうであったかどうか、御答弁願いたいと思います。  質問の第三点は、法務省は、法制審議会の答申を受けまして早速民事及び戸籍法の一部を改正する法律案を策定して、前回の通常国会に提出すべく鋭意準備を進めておられた。ところが、結局それは見送りになってしまったということでありますけれども、その見送りになった理由について御説明をいただきたいと思います。  質問の第四点。答申後の本年六月に民法改正に対する世論調査が総理府において行われております。これは全国の二十歳以上の人三千人を対象に行われているわけであります。そうしてその結果は、法律を改めても構わないと答えた者が三二・五%、通称として使えるように法律を改めてよいと答えた者が二二・五%で、別姓使用を可能とするための法改正をしてもよいという者の合計は五五%に上っているわけであります。そして、これは一九九四年に行われました世論調査に比べて二倍以上にふえているわけであります。特に特筆すべきことは、二十代、三十代の世代においては四〇%を超える者が賛成と言っているわけであります。さらに、嫡出子でない法律上の婚姻外の子についての不利益取り扱いをしてはならないというのも五四・五%とふえているわけであります。  かような結果が出ているわけでありますけれども、この結果について法務当局としてはどのような評価をされているのか、そしてこの結果を踏まえてどうしようとされているのかという点についてお伺いをいたしたいわけであります。  それからもう一つ、私の聞いた情報によりますと、法務当局は、こういった調査結果もありまして、法文を整理して来春の通常国会には上程する準備をされておると聞いておりますけれども、そのとおりであるかどうか、この点についてお伺いをしたいわけであります。  以上五点、まず御回答をいただきたいと思います。

濱崎恭生法務省民事局長

○濱崎政府委員 多数の論点にわたって御質問がございましたけれども、できるだけ簡潔に一つずつ御答弁させていただきます。  まず、法制審議会の審議を始めるに至った背景ということでございます。  一つは、女性の地位向上に向けての政府の方針というものがございます。国連の昭和五十年の国際婦人年から始まりまして、女性の地位の向上のための施策を積極的に推進していくということが提唱され、我が国でもこれを受けて男女平等の観点からのいろいろな施策が進められてまいりました。その一環として、婚姻制度等を中心とする家族法制の見直しが求められるようになりまして、具体的には、平成三年に閣議決定としての新国内行動計画において、こういった夫婦の氏のあり方を含めた婚姻、離婚法制の見直しを行うことが平成七年度までの政府の具体的施策の一つとして取り上げられたということがございます。  いま一つは、結婚してもそれぞれ旧来の姓を名乗れるようにしてもらいたいという要請が、女性の社会進出に伴いまして、婚姻によって氏を改めることに伴う不利益を解消するために導入してもらいたいということが次第に強くなってまいりまして、既に昭和五十年代からこの問題、総理府の世論調査においても取り上げられていたという状況がございます。そういった状況を踏まえまして、平成三年から法制審議会におきましてこの問題の検討が始まった。大ざっぱに申し上げて、こういう背景がございます。  次に、審議の経過でございます。  ちょうど五年間にわたって審議が行われ、答申があったわけでございますが、その間に平成四年十二月、それから六年七月、さらには平成七年九月、それぞれ中間的な審議の状況を踏まえた取りまとめをして関係各界に意見を照会して意見を聞いてまいった。そういう手順を踏みながら、またその間、平成六年九月に総理府において行われた世論調査の結果も見ながら審議を慎重に進めてきたということでございます。御指摘の外国法制の調査についても十分な調査がされたというふうに理解いたしております。  それから、全会一致かどうかということでございますが、いろいろな問題について、審議の経過においてはいろいろな御意見がございました。しかしながら、最終的には要綱全体について全会一致ということで答申がされたということであります。  次に、さきの通常国会に提出できなかった理由という御質問でございます。  この法制審議会の答申事項のうち、御指摘の選択的夫婦別氏制度の導入などにつきましては、国民生活に重要なかかわり、密接なかかわりを有する問題であるだけに、この答申が出された後も各方面からさまざまな御意見がございます。積極的な御意見もあります。しかしながら、時期尚早であるという大変強い御意見も多く寄せられている状況にあります。そういう状況を踏まえて、国民の意識に配慮しながらなお慎重に検討する必要があるというふうに考えられたことから、さきの通常国会への提出を見送るということにした次第でございます。  次に、本年十一月に公表された世論調査についての認識ということでございます。  御指摘のとおり、この法制審議会の答申に沿った改正をしても構わないという意見が三二・五%、反対であるという意見が三九・八%ということでございまして、その中間として、婚姻をすれば氏を同じくすべきだけれどもどんな場面でも通称として従前の氏を使用できるように法改正をしても構わないという考え方が二二・五%ございました。前回の平成六年の調査に比べて、賛成論がふえており反対論が減少しているということでございます。また、年齢別にも、御指摘のように二十代、三十代では賛成論が四十数%であるのに対し、反対論は二〇%前後ということでございますし、四十代でも賛成論の方が多いということでございます。しかしながら、五十代以上においては次第に反対意見が強くなるという状況で、全体としては先ほど申し上げたような状況にあるわけでございます。  したがいまして、私どもとしては次第にこういう考え方に賛成の意見が着実にふえつつあるというふうに認識をしておりますが、また一方で、なおこの考え方が国民の大方の支持を受けるには至っていないではないかという見方があるわけでございます。また、二二・五%の数字の見方につきましても、これは別姓に賛成という方に見る見方と、これは基本的には反対と見る見方とがあるという状況にございます。  今後の取り組みについてでございますが、この問題は、先ほど来申し上げましたように、法制審議会の長年の慎重な検討の結果、答申がされたものでございますし、また先ほど申しました男女平等参画社会の形成という方向にも沿うものでございますので、できるだけ早い時期に適切な法案を提出して御審議をお願いしたいというふうに考えているところでございますが、ただ、今申しましたように、いろいろ賛否両論、大変強い御意見が相対立している状況にございます。  したがいまして、今後とも適切に各方面で御議論をいただいて、それを踏まえて、できるだけ早期に法案を国会に提出することができるよう私どもとしては努力を続けてまいりたいというふうに考えているところでございまして、次期通常国会に提出するかどうかということについては、そういう状況を踏まえて、なお検討中でございます。

福岡宗也新進党

○福岡委員 前回の法務委員会におきまして、大臣は、慎重に取り扱わなければならないというふうに回答されておるわけでございますけれども、私としましては、従来から、五年にわたって審議をされておりますし、若い世代において今圧倒的な支持を受けているというこの夫婦別姓の問題等を含む改正については、前向きに取り組んでいただきたい。さらにまた、実際には、やるべき審議としてはもうほとんどないと思うのですね。そういう状況を踏まえまして、やはり上程をするということはこれは大臣の責務じゃないか。そして、むしろ議論は上程した上で国会において十分してもらうことの方が必要だというふうに考えておりますけれども、この点について一言だけお答え願いたいと思います。慎重にというのは、何をされるのかということ。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 この選択的夫婦別姓の問題、この問題については、今委員の御発言にもありましたように、極めて国民の皆様の意見がはっきり分かれてしまっておる。そういう状況で、極めて基本的な法律である民法を改正することが、国民の大方の賛成を得られる状況の中でなくて提案することが一体いいのかどうかということ、このことは慎重に考えるべき必要があるのじゃないか。したがって、提出の案の内容、あるいは時期、そういった問題についてはなお慎重に検討いたしまして、その上で本当に国民の皆様に御理解をいただいてできた改正だということになるように努めてまいりたい。そういう意味で若干時間をおかりいたしたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。

福岡宗也新進党

○福岡委員 最後に、国際的な世論とか動向というものにもやはりこれは合っているということでございまして、ドイツなんかもこういった形の改正がなされておるということでございます。やはり、日本の国が実質的な男女平等を確立する、しかも女性の社会的進出というのは多いという事情を踏まえて、早くこの問題を解決してあげないと非常に困っておられる人もたくさんいるという情勢を踏まえて、慎重、慎重というふうに言わずに、まず国会に上げて十分な論議をしていただく、こういう努力をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

八代英太自由民主党

○八代委員長 次に、上田勇君。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 新進党の上田でございます。  今回の法案、国民の人権を守るということは国にとりましても極めて重要な役割でありますし、今回の法案で国の責務ということが明らかになり、さらに、そういった人権擁護の諸施策について審議会を設けて議論されていくという前向きな取り組みについては、大変評価するものであります。もちろん日本国憲法において国民の基本的人権が保障されているにもかかわらず、今日までこうした人権擁護に関する法律が制定されてこなかったわけでありますが、今般こうした法案が提出されるということは、若干、違和感を感じるのですけれども、もちろん、これまでの同和対策の経緯などを考えるときに、これは全体的には一歩前進というふうにとらえているところであります。  それで、ちょっときょうは、法案の中身、また関連事項について何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、今回の法案というのは、先ほどからのいろいろな質疑の中で、地対協の意見具申に基づいて、これまでの同和対策のための諸施策を踏まえた上で、そういう経緯を経て提出されているということは、これまでの法務大臣の趣旨説明やこれまた法務省のいろいろなところでの御説明でも明らかであるわけであります。  先ほどの議論にもありましたけれども、ただ、一万の法案の条文を見ると、この第一条で法案が対象としている人権の範囲というのは、非常に広く読み取れるし、逆の言い方をすれば、非常にあいまいな面があるのではないかという感じがいたします。その第一条では、憲法第十四条の一項と同じような文言をそのまま引用されており、かつ「不当な差別の発生等」という意味で、「等」という言葉がつけてあって、これは御説明を伺うと、差別以外もすべて含むと。そうすると、非常に、極めて広い範囲ということが言えると思うのです。  そこで、まず初めに、これまでのいろいろ御説明を聞いている中で、非常にあいまいな印象を私としては受けておりますので、ひとつ大臣に、この法案で言うところの人権、この定義というのでしょうか範囲、このことについての考え方をお伺いしたいと思います。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 まことに難しい御質問でございまして、人権とは何だということでございますが、どうも、私も専門家でございませんので抽象的にしかお答えできないのですが、憲法の十四条、ただいま委員が御指摘になりました。その基本的人権を意味するものだと思います。そして、具体的には、平等権あるいは自由権あるいは生存権、そういったものを含む極めて広い概念であると思いますけれども、それ以上のことは私にはお答えを責任を持ってする能力がないということだと思っております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 もちろん、人権というのは、時とともにその考え方も変わることでありましょうし、当然この法案で設置される審議会の議論の中でもさらに発展していくという可能性もあるので、その境界を設定するのは非常に難しいということばわかるわけでありますが。  そこで、これまでの経緯というのは、やはり同和問題、このことが一つこの法案提出、法案のきっかけになっているということは先ほどから言及されているわけでありますので、そこで、この同和問題の今回の法案における位置づけについて伺いたいというふうに思います。  先ほどの答弁の中で、この同和問題というのは人権問題の中でも非常に重要な問題と認識しているという御答弁がございました。もちろん、先ほど漆原議員の方からも言及がありましたけれども、こうした観点から、新進党では、今国会に同和対策基本法というのを再提出させていただいているわけであります。  それはさておきまして、さらに、この法案の第一条の「目的」の中でも幾つかの不当な差別ということの例示がされているのですが、言葉は憲法と同じでありますが、順番が異なっております。そこで、「社会的身分、門地」というものが上に上がっていて、ということは、これはやはり、私が感じるのには、とりわけその中でも特別な重要性をそこに込められているのかなという感じがするわけでありますけれども、そうしたことも踏まえまして、この法案において同和問題がどのような位置づけになっているのか、そのことについて大臣の見解をお伺いしたいと思います。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、人権というものは極めて広い範囲の概念である、その中で、極めて重要な一つの問題点として残るのが同和問題だという意識でこの法案をつくっておるということを申し上げておきます。法案の中には同和という言葉は出てきませんけれども、趣旨説明の中には何遍も出てきておる。そういう意味で御理解をいただけたら幸せだと思います。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 わかりました。  やはり、この同和問題、個別の問題としてはこれまで最も具体的な事例とも言えますし、特段の位置づけが行われているということは今の御答弁でも言われましたので、ぜひとも審議会に諮問されるときにはまたそうしたお考えをお示しいただきたいというふうにお願いする次第でございます。  そこで、今度の法案というのは、具体的な項目としては審議会を設置するという内容に限定されているわけでありまして、この審議会というのは、同和問題を初めとしまして、すべての国民の権利にかかわる重要な内容についてその基本的事項を審議するということでありますから、非常に重要な役割を持っているというふうに思います。  そこで、この審議会の委員二十名ということでありますが、この委員の人選というのが極めて重要なことになってくるというふうに思います。条文では、「学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命する。」とあるだけなのですけれども、先ほどの議論の中でも、やはり同和問題を初めとする人権の問題に精通している委員であるべきであるというような御質問に対して、そのとおりだというような御答弁がありました。これまでも地対協の中にも、同和問題、とりわけやはり差別の痛みというのは、当事者とか当事者の事情をよく理解している人が当然必要で、そうでないと、本当の意味でのことがわからないということではないかと思いますので、こうしたことを踏まえた上で、審議会の委員の人選をお願いしたいわけであります。  そこで、こうした審議会の委員の選定についてのお考えをお伺いしたいというふうに思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 委員御指摘のとおり、本審議会の設置の趣旨と目的を十分踏まえまして、人権に関してさまざまな角度から公平で公正な審議が行われるような体制にする必要があると考えております。  したがいまして、委員の人選に当たりましてはこの点に十分配慮して、広い学識経験と専門的な知識を有する人を選任したい。具体的な選任に当たりましては、審議会に多様な国民の意見が正しく反映されるように慎重に行ってまいりたいと考えております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 これまでは、同和問題というのは地域対策協議会、地対協の中で議論されてきたわけでありますが、地対協の委員というのは、もちろんこれは地対協自体が事業という面を議論する性格上なのでしょうが、半数が各関係省庁の事務次官で構成されているわけであります。今回の審議会というのは、事業の執行というよりも、そういう意味では基本的な事項を議論するわけでありますので、同じような構成にはならないというふうに思うわけであります。  ここで、平成七年九月の閣議決定でございますが、「審議会等の透明化、見直し等について」という閣議決定が行われております。この中で、審議会のあり方について、「行政処分、不服審査、紛争処理、補助金等の交付及び試験、判定、検査その他これらに類する事務を行う審議会等を除く審議会」、これを「一般の審議会」というふうに定義しているわけでありますが、一般の審議会においては、「当該省庁の出身者又は現在当該省庁の顧問、参与等の職にある者は、原則として、これをその委員に任命しない。」というふうに書かれております。  今回設置される審議会というのは、今の定義からいえば一般の審議会に当たるというふうに思いますので、この閣議決定の内容に沿った形での任命が行われるというふうに理解してよろしいのでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 今御指摘の平成七年九月二十九日付の閣議決定に基づいて選任をしてまいりたいと考えております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 もう一点、この審議会というのは、委員の人選が重要であると同時に、公平で、なおかつ、今回は特に国民の権利にかかわる審議をするわけでありますので、国民の目からしてわかりやすく透明な審議会である必要があると思います。  そこで、今言及しました同じ閣議決定の中の文章に、「一般の審議会は、原則として、会議の公開、議事録の公開などを行うことにより、運営の透明性の確保に努める。」という文言もございます。したがいまして、本審議会も、いろいろな事情による特別な場合はあるかと思いますが、この場合でも議事要旨等は公開するというのがこの閣議決定の中で書かれております。そういったことを含めまして、原則としては公開というふうに理解してよろしいのでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 今御指摘の閣議決定に基づいて、透明性の確保に努めてまいりたいと考えております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 ということは、原則公開ということでよろしいのですか。もう一度確認させていただきます。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 閣議決定の文書を正確に、今手元にございませんが、原則的には一般の審議会は公開するようにという趣旨であろうと思います。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 とかくいろいろな行政が審議会という中で、なかなか外からはわかりにくいような議論で、これは実際に行われているか行われていないかは別にいたしまして、いわゆる省庁の意のままに運営されているというような批判がいろいろなところで出ているわけであります。そういった意味で、とりわけ今回は国民全体、すべての国民にかかわることでございますので、そうした透明性の確保といったことについては特段の御配慮をお願いしたいというふうに思う次第であります。  それで、次に話を移らせていただきますが、政府では、昨年の十二月に人権教育のための国連十年推進本部を設置いたしまして、ついこの間六日に、国内行動計画の中間取りまとめというのを拝見いたしました。その内容を見ますと、人権教育の推進であるとか、また各種重要課題への対応ということで、重要課題も具体的に七項目が挙げられております。そこで、これを拝見いたしますと、この法案で設置が予定されている審議会で議論されるであろうと私が想定した項目について、かなり具体的な、結論にも近いようなことまで含めて記述されております。  そこで、これは内閣の内政審議室の担当でありますし、今回の法案は法務省の方で御担当ということなので、場合によっては、省庁が違うことによって屋上屋を重ねるような嫌いはないのかという懸念を持つわけでありますけれども、この国内行動計画と今回の法案との関係について御説明をいただきたいと思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 委員が今御指摘になりましたように、今月の六日に中間まとめが発表されたわけでございますが、その内容として、学校教育、社会教育等のあらゆる場を通じた人権教育の推進等の人権意識の高揚を図るための諸施策の推進等を掲げているところでございます。  本件の法案によりまして設置される審議会では、人権尊重の理念に関する教育及び啓発に関する施策のあり方を調査審議することとされているわけでございますが、そのこと自体が本件十年の趣旨に沿う取り組みであるということに加えまして、審議会の意見は本件十年の取り組みに適切に反映されるように配慮すべきものであると考えております。  このような意味におきまして、本法案と本件十年の取り組みとは密接な関連を有するものと考えております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 この行動計画の中間取りまとめの中に「計画の推進」という項目で「人権教育・啓発の在り方等の基本的事項について検討する審議会の設置等」というのがあります。これは多分、今回のこの法案で設置される審議会のことだというふうに思うんです。そうするとちょっと私ここで疑問に思うのは、この審議会というのは教育、啓発に関する基本的事項について議論するというわけでありまして、これはもう法律で定められている審議会でありますので、その審議会の議論、その結果に沿って具体的な行政としての行動計画が策定されるというのが何か本来の姿のような感じがするんでありますけれども、どうもこれは何か立場が逆転していて、内閣の行動計画の中で審議会が規定されているということだと、今回この法案で設置される審議会で取り扱われるあるいは議論される内容というのが、あらかじめ行政サイドの枠組みの範囲で縛られているんじゃないかというような懸念があるんですが、その点についてお考えはどうでしょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 本件の審議会の審議事項は、教育、啓発にかかわること以外に人権侵害の被害者の救済も含むわけでございまして、審議の対象が広くなっております。一方、国連十年の方は、既に昨年の一月一日から開始されておりまして、できるだけ早急に行動計画を取りまとめるということが重要な使命になっております。  そういう関係で、今御指摘のような審議会の審議事項と一部重複することはございますけれども、十年は十年として、独自のやはり行動計画としてできるだけ早く推進していく必要性があるということでございます。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 どうもその辺、私まだちょっと納得いかない面もあります。  というのは、今回の審議会というのは、先ほどからの御説明によると、非常に広範囲な国民全体の権利に及ぶ人権について議論する、それも、もちろん同和問題初めいろいろに議論するとおっしゃって、それを五年間でやるというふうな御説明であったにもかかわらず、行政側の計画の中にそういった位置づけも行われているといったことについて、何か印象としてですけれども、もう既に決められた個別、重要な課題の対応などの項目というのが、その審議会のこれから大臣が諮問される内容になってしまうのかなという感じもするんですけれども、その辺ぜひ、この審議会、せっかく学識経験者の方々ということでありますし、本当にその差別の問題に精通された方々に入っていただくということでありますので、より深めた議論が行われるようなまた御配慮をお願いしたいというふうに思います。  それで最後に、ちょっとこれは国連の自由権規約のことについてお伺いしたいんですが、国連の市民的、政治的権利に関する国際規約、いわゆる自由権規約についてでありますが、この規約に基づきますと、締約国は自国の人権状況について定期報告書の提出が義務づけられておりまして、我が国もこれまで二、三回の報告書を提出して、さらに、近々第四回目の報告書を提出する予定になっているというふうに承知しております。  これらの報告書は国連人権委員会で審査というものが行われるというわけでありますけれども、第一点目、これまで三回報告書を提出しているわけでありますので三回の審査が行われてありますが、その審査の概要、それから国連人権委員会におきます我が国の人権状況についてどのような評価が行われているのか。そのあたり、御説明をいただきたいと思います。

川田司外務省総合外交政策局国際社会協力部人権難民課長

○川田説明員 先生御指摘のとおり我が国は、市民的、政治的権利に関する国際規約第四十条一の規定に基づきまして、この規定の実施状況に関する報告書を過去三回提出してきております。このうち、最も最近に提出した我が国の第三回報告書に対する審査と申しますのは一九九三年十月に行われました。  この審査の結果を踏まえまして規約人権委員会が意見を採択しているわけですけれども、この意見におきまして、特に非嫡出子、死刑制度及びいわゆる代用監獄の問題について改善を求められております。ただ、同時にこの意見は、一九八八年の第二回日本政府報告書査以来、日本における人権状況は改善されており、日本国内においては一般に人権は尊重されているとの評価が行われております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 その審査の中で指摘された事項というのは非常に難しい問題も含んでいるということだと思います。  ただし、この人権というのは、国内ではこういうものであり、国際的にはこういうものだというような使い分けというのはなかなかできないことだというふうに思うわけでありますが、そういう意味で、これまで三回そういう国連人権委員会の場で行われた審査の内容が今回の法案にはどういう形で生かされているのか、あるいは今度の審議会に対する諮問の中ではどういう形で生かされるのか。また、今回第四回目の審査というのが多分報告書を出せば出てくると思いますので、そうした中での議論というのを、この今回設置される審議会の議論の中でどういうような形で反映させていくつもりなのか。その辺のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 国際人権規約に関する委員会の意見につきましては、本法案を制定するに至った人権擁護に関する内外の情勢の一つの要素であるというふうに理解いたしております。そして、審議会では人権教育・啓発に関する施策と被害者救済に関する施策が審議の対象になるわけでございまして、国際人権規約に関する政府報告が審査された結果、本審議会で調査審議するべき事項について意見が出されれば、この意見は本審議会において調査審議に際しても十分考慮されるべきものと考えております。

上田勇新進党

○上田(勇)委員 もう時間でありますのでこれで終わりますが、最後に御要望でありますけれども、今回の法案で、審議会ではいわゆる人権侵害の被害者の救済という項目が入っております。人権運動に携われているさまざまな方から共通して出るのがいかにして人権が侵害された場合の被害者を救済していくか。そのことが次の人権侵犯を未然に防止するということであります。残念ながら、現状においてはそうした面が不十分じゃないかというのが実感でありますので、ぜひともその審議会において充実した議論をしていただきまして、この被害者救済という面に、五年間ということでありますけれども、できるだけ早く、また内容の充実した答申が出るように、またその答申が出た場合にはその施策の具体化を早急に図っていただくような御努力を要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

八代英太自由民主党

○八代委員長 続きまして、佐々木秀典君。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。法案を中心に質問をさせていただきます。  まず、人権擁護施策推進法案ですけれども、この法案が、同和問題を経緯といたしまして、地域改善対策協議会の意見具申を踏まえたものとされている。このことは法務省が作成されました本法案の概要によっても明らかなところだろうと思います。それとまた同時に、これまでも御質問の中で明らかにされておられますように、いわゆる「人権教育のための国連十年」、これに伴いまして、去る十二月六日に国内行動計画、これがつくられている。これも踏まえたものだというように理解されるわけです。  そこで、地対協の意見具申、これのどういうような内容を軸にして本法がつくられるようになるか、そしてまた、地対協の意見具申がどのように生かされることになっているのか、まずこれをお伺いしたい。そして、その次には、「人権教育のための国連十年」と本法とのかかわり、さっきも御質問あったようですけれども、それとのかかわりについても御指摘をいただきたいと思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 今委員が御指摘になりましたように、本法案の策定の契機になっております地対協の意見具申は、今後の重点施策として、一つは「差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進」、二つ目は「人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化」を挙げているわけでございまして、本法案におきましては、この趣旨を踏まえまして、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策と被害者救済に関する施策を推進する国の責務を定めた上で、これらの施策のあり方について調査審議する審議会を設置し、その所掌事務として先ほど申しましたような二つの柱を定めたものでございます。  それから、「人権教育のための国連十年」の取り組みとの関係につきましては、国連十年では、学校教育、社会教育等のあらゆる場を通じた人権教育の推進等、人権意識の高揚を図るための諸施策の推進等を掲げているところでございます。  この法律によりまして設置される審議会では、先ほども申しましたような教育、啓発に関する施策が調査審議されることになっているわけでございますが、そのこと自体が本件十年の趣旨に沿う取り組みであるということでありまして、また同時に、本審議会の意見が本件十年の本部長である内閣総理大臣に対してなされるということをも考えられることから、審議会の審議結果が十年の取り組みに反映されるように配慮するべきものであると考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 そこで、本法が必要とされる理由。本法は、今のように、同和の問題を契機にしていることは紛れもない事実だろうと思います。しかし、同和問題だけに限らず、今もお話しのように、極めて広い分野の人権問題あるいは差別などの問題、これの解消、これをなくすことを目指してこの法律をつくるのだというのが目的だろうと思うのですね。提案理由の大臣の説明の中でも、今日においても、同和問題等社会的身分や門地による不当な差別、人種、信条、性別による不当な差別その他の人権侵害がなお存在している、だからということになるのだろうと思いますね。  そこで、確かに、いろいろな資料によりましても、人権侵犯事犯というのは残念ながら現行の社会の中で数多く行われている。法務省人権擁護局などを中心にして、これをなくするための努力というのがさまざまな方法でなされていることは確かなのですけれども、なかなかそれがなくなっていない、逆にふえているのではないかと思われるわけですね。  例えば、法務省でつくっておられます人権に関するパンフレットの附属資料、私どもの手元には、衆議院の法務委員会調査室がおつくりになった資料の中の三十三ページ、三十四ページの中に、三十三ページの方では、法曹時報の四十八巻、平成八年四月号からの抜粋ということで出ている数字がございます。これは「人権侵犯事件の処理状況及び人権相談件数」という表ですけれども、これらを見ましても、ここに出ている表は「人権侵犯事件取扱件数」、平成三年から七年までの分が出ておりますけれども、平成三年以降昨年まで件数がやはり非常にふえているのですね。減っていないわけです。  特に、私どもとして注目しなければならないと思うのは、その下段の表ですけれども、「公務員の職務執行に伴う侵犯事件受理件数比較表」、これが平成五年から七年分が出ているのですけれども、残念ながら、これも年々ふえているのですね。総計で、平成五年の場合には百九十一件なのですけれども、平成七年の場合には三百二十七件と非常にふえている。  これは、関係者の御努力にもかかわらずこういうことになっているというのは、あるいは今まで見えなかったものが摘発されたり、あるいは相談件数として明るみに出てきたということなのかもしれないとは思うけれども、実際に件数が多くなっているのは確かだと思うのですね。だからこそこういう法律をつくる必要もあるのだろうということにはなるのだろうと思いますけれども。  その中で、例えば、本法の契機になっていると言われる同和問題、社会的身分や門地による差別事案、これはいろいろ随分報道されたり、私どもも聞いたりしているわけですけれども、法務省、これは人権擁護局を中心にして今までも取り扱われているのだろうと思いますけれども、当局の方で掌握されている最近の事例で特徴的な事例がありましたら御紹介いただければありがたいと思います。時間の関係がありますから、簡単で結構だと思いますけれども、指摘していただけるとありがたいと思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 人権擁護機関が取り扱いました社会的身分や門地による不当な差別事案といたしましては、元中学校の教諭が結婚を約束していた女子高校生が同和地区出身であることを理由に婚約を破棄したことによりましてこの女子高校生が自殺をした結婚差別事件、あるいは訪問販売業者がパソコン通信のネットワークを利用して同和地区を照会するメッセージを流した事件などがございます。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 これはまだ法務省の方で掌握されているかどうかわかりませんけれども、最近報道されている事案では、ついこの間、本年の十二月七日付の読売、産経、朝日、毎日など各紙によって報道されている事案で、大阪市内の興信所が、企業の社員採用に当たっての人事調査で、依頼もされていないのに同和地区出身者であるとの報告をした疑いを持たれた。こういうことが発覚をいたしまして、大阪府が十二月六日の日に、大阪は条例を持っているのですね、部落差別事象に係る調査等の規制に関する条例という条例を持っている。この条例に基づいて興信所を立入調査した。こういうことが報道されているのですね。  こういうことを見ても、まだまだやはり差別意識というものが隠然としてある。今も結婚その他による差別ということがありましたけれども、この事案は随分多いようですね。それと、就職の差別などもあるようですね。それからまた、悪質な投書だとか落書きだとかということも後を絶たない。聞くところによりますと、過日、部落解放同盟の委員長だった上杉佐一郎さんが亡くなったときに、その遺族に対して、故人の人格を誹謗するような大変な中傷にわたる手紙が相当舞い込んでいるなどということも、事実として私どもは聞いているわけですね。  こういうことというのは、やはりまだまだ根強く残っているのだとすれば、どうしてもこれの解消ということが考えられていかなければならないのだろう、私はそう思っているわけであります。地対協の報告の中でも、やはりそういう差別意識の解消を何としても図らなければならないということが強く指摘もされているようでございますし、そういう意味で本法が大きな役割を演じる必要があるだろう、またそれを私どもとしても期待をしたい、こう思うわけですね。  そこで、これまでこの同和の問題については総務庁が随分大きな役割を演じられたと思うのです。例えば今度の法律ができる、その後それによって、これまた後で質問させていただきますが、人権擁護推進審議会ができることになるわけですけれども、これは、主管は法務省になるわけですね。これまで同和問題について大きな役割を果たしてこられた総務庁としては、この法律ができた。場合にどういうかかわりを持つことになるのか、どういう役割を果たされることになるのか、その辺、総務庁にお伺いしたいと思います。

川邊新総務庁長官官房地域改善対策室長

○川邊説明員 総務庁は、我が国におきます人権問題の重要な柱を構成いたしております種々の事項に関する総合調整を行っているところでございますが、御指摘のように、特に同和問題につきましては、地対協の意見具申等の経緯もございまして、本法におきましても本審議会の諮問大臣に総務庁長官が入っているというところでございます。  この審議会につきましては、同和問題も含めました幅広い人権に関する教育、啓発について御審議をいただくというふうに理解しておりますが、私ども総務庁といたしましては、法務省等の関係省庁と緊密な連携を図りつつ、本審議会に対する諮問を初め関係資料の提出、説明など十分な協力を行ってまいりたいというふうに考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 今お話を伺いましたけれども、そうすると、これが言ってみれば主管が法務省になるようですけれども、総務庁としても、これをお任せということではないんだ、役割を果たしていくんだ、こういうことでよろしいのですね。ぜひそのことをお聞きしておきたいと思いました。  それから、本法によって人権擁護推進審議会、これができるわけですけれども、まずこの審議会の発足ですね。当然のことながら、この法律が制定され施行されてからということにはなるのでしょうけれども、審議会の発足のめどについてはどのようにお考えになっておりますか。もちろん委員の選考等の関係もあると思いますけれども。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 本法案が成立した後、できるだけ早く法律を施行して審議会を発足させることが望ましいわけでございますが、他方、本審議会の委員の人選は、その任務の重要性から慎重に行う必要がございます。また、審議会の発足とともに円滑に審議に入るためには、あらかじめ必要な資料の収集、整理等を十分しておく必要がございます。  こういったことから、本法案の成立から審議会の発足まで三カ月程度の期間が必要であるということでございまして、審議会の発足時期はおおむね平成九年四月ころになるものと考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 そういうめどがお示しをいただけたわけですけれども、できるだけ早急に適切な委員の御選任をいただいて、それで発足していただく、こういうことになるだろうと思いますね。  そこで、先ほども御質問が何回かあったようで。すけれども、一つは、この審議会の構成そして委員の選考ということがこれから具体的な問題になっていぐだろうと思うわけです。先ほどもちょっとお話がありましたけれども、同和問題についての地対協も委員は二十名だった。しかし、そのうち十名は、先ほども御指摘がありましたけれども、関係省庁の事務次官十名が当たっていたわけですね。今度のこの法律による審議会の場合は、こうした省庁の事務次官あるいはそれにかわる人たちが審議会の正式な委員になるということはお考えになっているのか。そうではなくて、二十名というのは全くそういう省庁の方々を除いた広く一般から選考する方々二十名で構成することになるのか。その辺はどうなのですか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 先ほど御説明いたしましたとおり、平成七年九月の閣議決定に基づきまして委員の選考をしてまいりたいと考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 これは、省庁、関係するお役所というのは当然のことながらこの問題には関与していかなければならないということを考えれば、わざわざ審議会の委員として選考をする、あるいはその構成員にするという必要はなかろう。むしろ、この審議会としてこれから取り扱っていただかなければならない分野が非常に多岐にわたるということになると、やはり二十名の委員構成というのはお役所の方々を除いた広く一般から選考される方々でなければならなかろう。また、果たしてこれだけで足りるのかなという思いもあるわけですけれども。私はそんなことを考えますので、ぜひ地対協の構成とは別な方法でお考えいただきたいということを要望しておきたいと思うのですね。  そこで、先ほども御確認をいただいたように、本法は人権教育のための国連十年行動計画で示された各課題とも関連してくると思うのですが、こちらの方で重要課題として七つの項目が挙げられていますね。それによりますと、広く、女性だとかあるいは障害者だとか子供だとかお年寄りだとか、さまざまな課題、もちろんその中には、同和の問題、アイヌの方々の問題、人権問題ということもかかわっている。ということになると、この審議会のメンバーとしてはそうした問題にも精通される方々というのが、分野別といいますか、課題別というか、当然入っていただかなければならないことになるだろうと思うのですね。そういう構成についてのお考えというのはどうなっておりましょう。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 具体的に選考基準をまだ決めたわけではございませんけれども、一般的に申し上げれば、委員が今御指摘になられましたように、さまざまの人権問題について広い知識、経験を有する人あるいは専門的知識を有する人を選任するのが正当であると考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 多分そうだろうと思うのですね。選考の基準といってもなかなか難しいのかもしれませんけれども、この法律の趣旨、これまでお話のあったような経過からすると、やはりそれぞれに人権の問題、特にそれぞれの分野についての人権の問題について実績のある方、真剣に考えていらっしゃる方でなければならなかろうと思うのですね。  恐らく、その選考の対象になろうとする方々については、これまでの研究あるいは活動の実績を示されるような資料もあるだろうと思います。だれもが見ても、こういう実績を持っておられる方、あるいはこういう活動をなすっている方、あるいはこういう見識を持っている方なら、なるほどこれからのこれら施策を考えていただくのに頼むに足りるというように、皆さんから信頼をされ期待される方々でなければならないと思いますので、この辺についてもやはり透明性を確保していただきたいと思いますし、納得できるような方を御選考いただきたい、こう思うのですね。  しかし、それにしても、取り扱う分野が非常に多いということを考えると、この運営の仕方が一体どうなっていくのだろうか、散漫になっていって結論を得るのに困難を生じないかというような心配もあるのですね。とりわけ本法が、これまでの論議で明らかなように、何といっても契機になったのは、この地対協の意見具申を踏まえた同和の問題ということが一つの中心、柱であることは先ほど法務大臣も御指摘のとおりでございますから、これに重点を置いた運営の仕方というか、これもやはり考えていただかなければならないとすると、この委員の構成においてもやはりその辺に重点を置いたようなシフトといいますか、これもお考えになっていただく必要があると思います。これはお答えをいただくというよりは要望として申し上げておきますので、十分この辺は検討していただきたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。  時間が迫ってまいりましたので進めたいと思いますけれども、この法律は五年をめどにという時限立法になっているわけですね。時限立法にしているということは、この時限の五年以内には具体的な措置をこの審議会の答申を得てつくりますよ、こういうことだろうと思うのですね。  それで、提案理由の御説明の中では教育、啓発については大体二年ぐらい、それから被害救済については五年ぐらいをめどにして、こういうことになっているだろうと思われますけれども、これらについても審議会でいろいろな御審議があるだろうと思うのですが、これは法務大臣あるいは総務庁長官などからの諮問を受けて審議会は審議をすることになるわけですから、自発的にというよりも大臣がどういう諮問をなさるかということが一つは重要なポイントになってくると思うのですね。これについて大臣としては、例えばこれに基づいてどんなことについて御審議をいただくかというようなことについての構想というかお考えというか、何かありましたらお示しをいただきたいと思います。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 この法案の決着を見ないうちにそういういささか行き過ぎた発言をすることは、お許しをいただいた方が適当ではなかろうかと思います。御可決をいただきまして法律として成立いたしますれば、できるだけ速やかに、御趣旨は大体わかっているような気がいたしますので、その辺を十分理解をしながら検討を進めてまいりたいと思っております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 恐らく法案の成立は間違いなかろうと私どもは思っているものですからお尋ねをしたわけですけれども、大臣としては御慎重な御答弁であったろうと思います。  しかし、例えば人権侵害による被害救済といっても、一体どこまで踏み込んで具体的な救済措置ができるのかなということは、いささかちょっと私どもとしてもまだ目に見えてこないところがあるのですよね。恐らく人権差別による被害といっても先ほどの事例などから考えてもいろいろあると思うのですね。これは、一つは名誉の問題あるいは生命、身体の損害の問題だとか、あるいは就職差別の場合の損害ということになるとどうなるのか、それの救済というのはどのようにしたらいいのか、いろいろあると思うのですけれども、これは個別救済までは考えないわけですか。これは人権擁護局長にお尋ねした方がいいのかもしれないけれども、つまり救済の仕方としてはどんなところまでお考えになっているのか、考えられるのか、この辺どうなっているのでしょう。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 個別救済という趣旨が、例えば特定の人権についての法律の策定を目的とした審議がという趣旨であれば、そうではないということでございます。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 具体的な損害の回復としては、例えば民法七百九条で言う不法行為による損害賠償がありますね。あるいはそれが刑事法令に触れるような場合にはもちろん告発だとか告訴だとか、そして司法的な救済というか糾弾というか、そういうことを求めていくことにもなるのだろうと思うのだけれども。そうすると、本法に基づいて、もちろんこれから検討されることになり、その後にとられるであろう措置、これは行政措置の場合と法的な措置の場合と両方があるだろうと思われるのですけれども、期待をする被害救済というのは具体的にはどんなイメージなのか、もう少し明らかになりませんか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 先ほど大臣がお答えになられたとおりでございまして、余り現段階で具体的なお話を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、仮にということでお話をするとすれば、現在の人権侵犯調査処理手続のあり方がいいのかどうか、あるいは人権相談がどうなのか、さらには人権擁護委員制度のあり方として現行のものでいいかどうかというようなことがあろうかと思います。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 確かにそうですね。人権相談あるいは人権調査などのあり方というのは、今のままで足りるかどいうと、確かに足らないですね。私が法務政務次官の当時に、例の子供の人権救済のための措置としてのオンブズマン制度もできたのですけれども、これも関係者の皆さんの御努力によって充実しつつあるとはいいながら、まだまだというような感じもするし、それから現在各地方に人権擁護委員もおられて、民間からの協力も得られておるけれども、果たしてそれが十分に人権救済のためにあるいは人権擁護のために役立っているか、それからまた一般の方々がそれを活用しているかということになると、まだまだというか、かなり問題がありそうにも思いますね。  ですから、この法律によってできる審議会の審議などを通じて、そうしたことについての本当の意味での充実、そして国民の皆さん全般が、そういう差別を解消する、あるいは人権侵犯などを起こさない、そういうことが大変なことなのだという意識をみんなが持つようになるということは、教育、啓発の事業も含めて私は大変大事なことになると思うわけです。しかし、これからまたいろいろな工夫が凝らされ、いろいろなアイデアも出てくるのだろうと思いますが、それが行政措置としてできることと、あるいはやはり法律に基づいてやらなければならない、新たな法律が必要だ、あるいは現行の法律の改正が必要だ、こういうことも当然予測されると思うのですね。  今度の法律に基づいて審議会が行うさまざまな措置、これは、地対協の意見の具申に基づいて総務庁長官が談話を出されておられるけれども、この中でも法的な措置を含むということも書いてあるし、それからまた与党人権と差別問題に関するプロジェクトチーム、これは自由民主党、社会民主党、新党さきがけの間での与党としてのプロジェクトチームですけれども、三十数回にわたる会合を開いて、それで本年の六月の五日に一定の合意をされておるわけです。その中には、教育、啓発の推進に関する法的な措置、人権侵害による被害の救済に関する法的措置、これが必要なんだということも言っておられて、それについて検討をすることが合意されているわけですね。  私は、今度の法律というのは、そのための一つのプロセスであって、これで完結するものではないので、どうしてもこれを具体化するためには、その審議会の議を経て、さらに今言いましたように新しい法律ないしは現行法の改正というような法的措置も当然視野に入ってくるだろうと思いますけれども、この辺については大臣、いかがでしょうか、そう考えてよろしいでしょうか。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 委員御指摘のとおりだと私も思っております。必要があれば法的な措置ということは当然とるということが出てくると思います。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 はい、よくわかりました。  それで、先ほどお尋ねの中でお答えをいただきましたと思いますけれども、一つは教育、啓発については具体的な措置、二年ぐらいをめどに、それからまた被害救済、確かにこれは、立法化などということを考えるといろいろな角度からの検討が必要でしょうから、しかも非常に広い分野にわたる人権被害救済ということを考えるとなかなかに工夫が要ると思いますので、時間はかかるだろうとは思うのです。しかし、審議の透明性の問題とも絡んで、今審議会ではどういう審議が行われ、どういう方向を目指し、そしてどんな状況かということをやはり広く知っていただく必要があるだろうと思うのです。  例えば、そうしたことについて、この審議会の中間的な答申とかあるいは御報告をいただくというようなことはお考えになっておられましょうか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 特に、人権教育・啓発に関する施策につきましては、二年程度を目途として早期に方向性を出していただくように審議会にお願いする所存でございまして、その具体的な方策といたしましては、中間答申等の措置が講じられるように配慮するのが妥当ではないかと考えております。

佐々木秀典民主党

○佐々木(秀)委員 時間が参りましたので質問を終わりますけれども、どうかこの法律が本当に有効に働いて、国民全般の人権意識の高揚、そして差別などということがなくなるために大きな役割を果たされることを期待をし、私どもはその点からこの法案に賛成するということを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

八代英太自由民主党

○八代委員長 続きまして、正森成二君。

正森成二日本共産党

○正森委員 日本共産党を代表して質問をさせていただきます。  本法案の条文を見ますと、例えば第一条の「目的」では、「この法律は、人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を整備し、もって人権の擁護に資することを目的とする。」こうされております。言うまでもなく、社会的身分、門地、人種、信条または性別によって不当な差別が行われてはならないことは憲法上も当然のことであり、労働基準法でもその点は明記されているところです。ですから私どもは、そのこと自体は当然のことである、今さら改めて法律を制定する必要もないぐらいである、こう考えております。  福沢諭吉が「学問のすすめ」で「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言いましたが、これは大原則であると私たちは終始一貫考えております。  しかし他方、遺憾ながら、法務大臣がこの間行われましたこの法律の提案理由の説明を見ますと、どうもそのような人権擁護一般ではなくて、「特に、同和問題につきましてはこ云々というように書かれております。その後で「これらの施策について、改めて十分な検討を行うことが必要であり、これが同和問題の早期解決のためにも不可欠と考え、この法律案を提出することとした次第であります。」つまり、この法案を提出することが同和問題を解決するために不可欠であるという前提をとっていると認めざるを得ないわけであります。  しかし私たちは、同和関係についての特別法が来年三月一応失効するわけですが、その後の段階については、部落問題解決の到達点を踏まえて、これ以上の特別の法的措置はかえって部落問題解決の妨げになるとの立場をとっております。  その根拠の第一は、同対審答申が掲げました「社会的、経済的、文化的に同和地区の生活水準の向上をはかり、一般地区との格差をなくすこと」は、ここ二十八年間に及ぶ総合的な特別対策のもとで国と自治体により約十四兆円の事業費が費やされまして、当初の目的が基本的に達成されております。  第二に、基本的人権の尊重をうたった憲法のもとで、国民の同和や同和地区に対する時代おくれな考え方が、長年にわたる多大の努力と社会進歩によって大きく薄れ、国民の常識の範囲で解決可能になったことであります。  部落差別は、言うまでもなく、封建的身分差別の残り物の問題であります。部落解放の事業が最終段階を迎えた現在、何らかの理由で同和に係る法律を制定したり継続させたりすることは、同和地区と一般地区との垣根、障害を人為的に残したり、新たな溝をつくり出し、決して問題の解決に役立たない。現在、部落問題を解決していく上で重要なことは、同和地区住民の自立意識の向上を図りながら、国民相互の主体的な営みのもとで、あらゆる生活分野で国民融合を促進させ、旧身分を理由にしたわだかまりを解消していくことであるというように私どもは確信しております。  そこで、こういう立場に立って一応伺いますが、政府自身は同和地区実態把握等調査というのを実行したはずであります。私の時間が短うございますので、お調べになった結論の幾つかを申しますので、それが事実であればそうだとお答えください。  この資料を見ますと、例えば結婚は、一九六五年の同和対策審議会の答申でも「最後の越え難い壁である。」というように指摘されてまいりました。ところが、政府の調査によりますと、同和地区外との結婚の増加は、一九一九年ではわずか三%でございましたが、それが一九九三年では三六・六%と、十二倍以上にふえております。  それだけではございませんで、年齢による地区外との通婚という点を見ますと、四十歳代を一つの契機として顕著な差がございまして、これが図面ですが、四十歳代以下では地区外との婚姻が急速に多くなっております。例えば二十五歳から二十九歳では七二・五%が地区外との通婚です。二十五歳未満ではそれが七三・五%になっているはずであります。  また、被差別体験があったかという調査を政府がされておりますが、部落住民の三三・二%が被差別体験を受けたことがある。最近十年間ではそれは一二・四%です。つまり、部落住人の三人に二人は過去に被差別体験がない、こう言っておりますし、ここ十年では、十人に九人までがそういうことはないと言っているわけであります。  あるいはまた、部落問題に関する、隣近所の人が同和地区の人だとわかった場合の態度という調査項目を見ますと、変わらず親しくつき合うというのが現在では八七・八%に増加しております。  あるいは、同和地区の人との子供の結婚に対する態度でも、「子どもの意志を尊重」と「しかたない」を合わせると現在では八六・七%が、これは当然であるということで、認めるという態度をとっ ております。  そして、「関心のある人権問題」は何かという調査に対しては、「いじめ・体罰問題」が八二・四%、「障害者問題」が六九・二%、「在日外国人問題」が、四五・四%、「女性問題」が四〇・五%で、「同和問題」はその後で三六・一%であります。  こういう点を見ますと、この同和問題を、それがなければ問題は絶対に解決しないのだといって法律を作成するという根拠は極めて薄弱ではないかという気がいたします。  まず総務庁ですか、私が言いました実態調査の事実がおおむねそのとおりであるかどうかという点をお答えいただきまして、次いで法務大臣なり法務省当局の御答弁をお願いします。

川邊新総務庁長官官房地域改善対策室長

○川邊説明員 今、先生、個別の数字をお話し――すべて聞き取れたわけではございませんので、それが正しいかどうかは必ずしもあれでございます。全体的な御議論としてはございますが、あえて申し上げれば、例えば自分の子供の結婚相手が同和地区の人とわかった場合に、地区外の住民の親の態度の中で、やはり絶対に結婚させない等の反対が依然一割以上見られるとかいうような実態があることも事実でございます。  個別の数字について、ちょっと、全部が正確かどうかは把握できません。

正森成二日本共産党

○正森委員 私が言っておりますように、百人が百人全部同和地区の方との結婚を認めるという段階にはなっていないということは私が申したとおりです。しかし、認めるという数字が圧倒的に多くなっているというのは、ここに政府のした調査資料があるんですから明白であります。  そこで、私はさらに申し上げたいんですが、政府は、総務庁は啓発推進指針というのをお出しになって、施策の適正な推進というのを言われましたが、私の知る限りでは、第一が行政の主体性の確立てあり、二が同和関係者の自立向上の促進であり、三がえせ同和行為の排除であり、四が同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりであったというように承知しております。  ところが、遺憾ながら、行政の主体性というのが非常に不十分でありまして、これは、私が二年前に決算委員会で質問いたしまして、当時の大内厚生大臣及び羽田総理大臣がいずれも認めまして、問題が是正されたという事実でありますが、浪速の保育所であった問題で、全国部落解放運動連合会の、つまり部落解放同盟と見解が対立するという立場の人の子供さんが、保育所への入所そのものが、大阪市の同和事業促進協議会を窓口に申請書類を出さなかった。窓口一本化方式で入所申請をしなかった。つまり、同促協と呼ばれておりますが、これは部落解放同盟が事実上主導権を持っております。ここへ出してオーケーと言われなければ受け付けてもらえないという、これを窓口一本化といいます。  入所決定がされないという事態が長く続きまして、裁判等で長い闘いの後、入所してもらうことになったんですが、その場合に、服装品の支給を拒否しまして、四月に入所してから、他の子供はそろいのスモック、青いスモックですが、あるいは体操シャツが支給されましたが、一部の子弟はこれが支給されない。わずか四歳や五歳の子供が色の違うものを着ていって、非常に子供心が傷つけられているという明白な人権侵害、それを大阪市が平然と容認しておるということを私が取り上げました結果、これはあり得べからざることであるということになりまして、大阪市もついにそれを是正いたしました。  同じころに、これは浪速区の栄小学校に通学している小学校の三年生と四年生の子供が、制服が普通支給されるんですが、部落解放同盟と対立する団体の子供だというので支給されない。そこで、そのころの子供は非常に体が大きくなりますが、子供たちはやはり制服が着たいということで、前の年のつんつるてんの小さいのを着て、親が私服を着たらいいじゃないかと言っても、やはり皆と一緒の制服が着たいと言って通学するというような事態が起こりました。これこそ明白な人権侵害ではないですか。  そういうことが行われている状況のもとで、部落解放同盟の一部の方の意見によってこういう法律をつくって、このような逆差別が完全に解消される、あるいはこの審議会で救済されるという保証はあるんですか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 本法案は、すべての国民のあらゆる人権擁護に資することを究極の目的とするものでございまして、一部の団体の利益を図るために利用されるようなことがあってはならないと思いますし、また、そのようなおそれはないというふうに確信いたしております。

正森成二日本共産党

○正森委員 建前としてはそうだと思うんですね。しかし、そうではなくて、それを是正するために刑事、民事の多年の裁判をやらなければならないという状態が起こっております。  八鹿高校事件などは有名ですが、私はきょうここに、平成元年(ワ)第一〇号損害賠償請求事件という広島県の三次市で起こった教育に対する介入事件と、それに対する損害賠償事件について、あらかじめ法務省に申しておきましたから、内容の一部を御紹介したいと思います。  ここでは小学校の児童が、これは同和地区出身のA子さんという人ですが、ほかの子供が私に差別用語を使ったということの訴えがあったんですが、それをちょっとよく聞いてみますと、「だれが言うちゃったかようわからん。ほんまにようわからん。ちがうかもしれん。」覚えてないというようなことを言われたわけであります。  そこで、この小学校の先生の一人がこう言ったんですね。   本件差別発言は、その事実の存否すら明確で  ないこと、仮に右発言が事実であったとして  も、年少な児童の発言であり、教育的配慮を要  すること、学内で起きた問題は学校として自主  的に解決すべきであり、他の民間団体の介入は  教育の自主性の原則に照らして許されないこと などで、職員会議で主張したわけであります。  そうすると、それがとんでもない差別発言であるということで、上司の教師からぶん殴られて二週間のけがをするだけでなしに、部落解放同盟はその組織を通じて、原告を差別者として糾弾するキャンペーンを展開し、また、原告を学校から排除するように広島県教育委員会や市教委に要求をいたしました。そして、市教委は、これに対して、これを受け入れて一カ月ないし三カ月の二回にわたって研修を命じる命令を出す。あるいは、処分をしないなら子供たちに同盟休校をさせるという圧力を部落解放同盟が加えました。これに対して、市当局やあるいは住んでいる町の当局は、本人を差別者とするポスターを張る、あるいは広報を出してこれを全戸に配るということをやって、それが名誉毀損であるということで訴えられた事件であります。  もう時間が参りましたのでごく簡単にいたしますが、それに対して裁判所はこう言っているわけであります。   原告の右見解は十分に成立し得る見解であ  る。というよりも、かく判断することこそ健全  な良識と言うべきであるのに、右摘示の市教  委、小学校当局の見解は、事実関係に立脚した  合理的判断とは到底言えず、かえって右見解を  とること自体が事実関係を離れた一つの思い込  み、立場的決定なのであって、これが職員会議  等で何度も確認されたからといって、それが事  実であることにはならず、また、原告がかかる  決定に従うよう拘束されるいわれがない。 というように判決は明白に言っております。  あるいは、その関係の中で、次のようにも指摘されております。この学校では、部落解放同盟にいろいろ報告をする。そして、ある意味では指導を仰ぐということは当然だが、それ以外には絶対に言ってはならぬ、言うたのは内部関係を漏らしたものであるということで、逆に処分の対象になるというような態度をとりました。  これに対して判決はどう言っているかといいますと、   部落解放同盟に報告することはできるが、他  の団体に報告できない事項を認めることは、い  かに当該団体と提携することが小学校の方針で  あったとしても、依然として外部の当該団体  に過ぎない部落解放同盟に一種特別の資格を認  めることとなり、これは明らかに公立小学校の  一般性、中立性を侵すものである。 こういうように判決は明言をしております。  さらに、総括のための学習会に出ろ、校長先生が指示して、これに対し従わなかったことがまた処分の対象になっているんですが、それについても、   原告はそのいずれにも出席しなかったことが  認められるけれども、教育長の証言によって  も、右総括学習会には部落解放同盟員多数が出  席することが認められるのであるから、別紙経  過、取り組み、ビラ等及び原告の見解によって  認められる部落解放同盟と原告との激しい対立  関係を考慮するならば、原告が右総括学習会に  出席したとしても、およそ建設的な討論ができ  ようはずがなく、かえって、原告に対する猛烈  な非難の場となる可能性が高い。したがって、  右職務命令は、原告に不可能を強いるものであ  って、著しく妥当性を欠き、明白に違法、無効  であるから、これに反した原告に研修命令を発  令するに足りるほどの理由はない。 こう言っております。  つまり、こういうことが学校当局、教育委員会で行われ、あるいは市当局、町当局まで協力している。これに対して自分自身の人権を守ろうと思えば、裁判に訴えて多年にわたって闘わなければできなかったという状況であります。  それなのに、本法案は、これは見解を異にする一部の団体の意向を強く反映して、審議会にもそういう人の意見が強く反映して、そして啓発行為の名のもとにそういう糾弾が行われる可能性を排除するものではないと言わなければならないんじゃないですか。そうすれば、これは今の二十有余年にわたる運動の成果の中でようやく融合の問題が大きな問題になったときに、これは逆行するものであるというように私は思わざるを得ません。  時間になりましたので、これに対する御答弁を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 今御指摘の判決があるということは承知いたしておりますが、判決についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。  先ほど申しましたように、本審議会は、すべての人権に関する教育、啓発の推進と、あらゆる人権が侵害された場合の被害者の救済に関する施策を審議するものでございます。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 政府委員からお答えを申し上げましたとおり、特定の民間団体に対してこの問題を片づけなければならぬという意識でつくった法律でございません。ただ、そういう団体も、当然人権擁護という必要な団体の一つに入るということだけははっきり申し上げます。

八代英太自由民主党

○八代委員長 続いて、保坂展人君。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  人権擁護施策推進法につきましては、既に各党の皆さんの質疑の中で多くが語られましたので、私の方からは、本法案が部落差別解決を高く掲げた法案であること、審議会メンバーに部落差別の現状に直面されている当事者の方あるいは差別問題に精通された方を複数任命することをお願いしたい。そして、二年以内に教育と啓発の意見具申を求めて速やかな法的措置も含む施策を講じていただきたいということを強く申し上げた上で、せっかくの機会ですから、人権ということに強く関連する、あるいじめ問題の事例を挙げながら御質問をしていきたいと思います。  つい一カ月前ですが、私のもとに目を赤く泣きはらした母親と実直な父親が、みずからの息子が大変ないじめに遭っているということで相談に来られました。  今現在高校三年生になっているその息子さんを仮にA君といたしますと、このA君は東京都内の都立高校の二年生のころ、つまりこれは昨年になるんですが、一回に一万円、二万円あるいは三万円と、十万円を超えるお金をとられたり、あるいは無理に呼び出しを受けて、呼び出されると顔が変形するぐらいに殴られる。さらに、誘いを断ると学校内で殴る、ける。あるいは校外で呼び出されてリンチを加えられたり、頭じゅうこぶだらけになって左こめかみから出血、学校から帰ってくると全身打撲でしゃがむこともできない。これはいじめというふうに呼んでいいのか、集団暴行を受けながら、このままでは怖くて学校に行けない、これは当然なことだと思うのですけれども、学校に行くことができなくなった。  そこで、A君の両親は困り果てていろいろな窓口を探したところ、子どもの人権オンブズマンという窓口を探した。オンブズマンの方に相談をしたところ、これはもう放置ができないということで直ちに学校に出向いたそうです。学校に出向きましたら学校の側は、その方も学校の元校長先生なんですが、被害者であるA君は復讐が怖くてこういうことをされたと言えないわけですね。A君からの申し立てがないんだから結局聞きようがない、さらには、加害者にも人権があるというようなことを繰り返す始末でなかなか誠意が感じられなかった。そして、いじめが怖くて学校に行けないというのも欠席という扱いで、当然これは進級ができないという心配もあったとおっしゃっていました。その過程でそのオンブズマンの方が申し入れをして、文部省の方でいじめを理由にした欠席は機械的に扱わないで進級ということでやってほしいということで、これは進級ができて現在三年生。  しかし、そのいろいろな経過を見て、これはこの学校でやっていくのは難しいだろう。学校に行けば集団暴行に遭う、お金をとられる。その暴行もかなりひどいものですから、今の危険もある、これは転校がいいんじゃないかということで、都の教育委員会に事情説明をしたそうです。そして、都の教育委員会で事情説明をした後に、学校を通して近隣の学校九校にそれぞれ照会をして、受け入れてもらえないか、こういうケースがあるんだけれどもどうだろうかと繰り返したところ、どの学校も結局だめだったということなんですね。十七歳あるいは十八歳の高校三年生の子供が、次の学校は自分が受け入れてもらえるだろうかと期待をかけながら九つも受け入れられないということを繰り返したわけなんです。  ことし七月に文部省が出した。児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議ですか、こういうパンフレットが出ているんですけれども、この中で非常にはっきりと、転校措置の弾力的な運用の徹底というところで、これまでもいじめからの保護という転校は認められていたけれども十分ではなかった。今後は、あくまでもいじめられている生徒を守り通すという観点から、転校措置の扱いについてこれまで以上の弾力化が必要であるというふうに変えてあるわけです。  実は、このオンブズマンの方は、自分としては万策尽きた。文部省にこの被害者の両親と一緒に行って何とかお願いをしたいということまでされているのですが、まだ何ともならなかったということなんです。この点について、文部省の高等学校の窓口の方から、現在高等学校でのひどいいじめ、そこからの救済の転校ということが速やかになされている状況なのか、なされていないとすれば、直ちに改善をする可能性があるのかどうかを伺いたい。簡潔にお願いします。

石川明文部省初等中等教育局高等学校課長

○石川説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり、高等学校におけるいじめの問題につきましても、個々の生徒の立場に立ち、具体的な事例に即してより柔軟な対応が求められるところでございます。必要に応じ転校措置の弾力的な運用を図っていくということも大変大切な問題と認識しております。先生がおっしゃったとおり、文部省といたしましても七月の協力者会議の報告を受けましてさまざまな機会を通じて転校措置の弾力的な運用の趣旨徹底を図っているところでございます。  ただ、高等学校段階における転校につきましては、受け入れた場合の教育指導上の観点から転学試験が行われるなど、義務教育段階と異なった側面もあるところでございまして、今後ともいじめ問題の解消に向けて各都道府県教育委員会等における一層積極的な対応を私どもとして促してまいりたい、このように考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 もう一つ、文部省の方に再質問があるのです。  いじめでそんなリンチに遭って顔じゅうはれて、行くとお金をとられるという状態では勉強に集中できないわけですね。当然学力が低下します。ですから、この生徒は学力的に非常に低い点しかとれなかった。仮にいじめられても、非常に高い点があれば転校は速やかにいったのではないかとその両親やあるいはそのオンブズマンの方は語られているんですが、この点についていかがでしょうか。

石川明文部省初等中等教育局高等学校課長

○石川説明員 通常、今申し上げましたように転学試験が行われるわけですけれども、そういった学力面のことも含めて柔軟に弾力的に運営をしていってもらいたいという気持ちを私どもも持っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 私も、この少年が九つもの学校を今か今かと待ちながら、合格になるかな合格になるかなと思いながら、結局は半年だめだったということで非常に傷ついているので、今後そういうことのないようにぜひお願いをしたいというふうに思います。  ところで、このオンブズマンの方が大変活躍をされて、活躍をされたからこそ、こういった子供に寄り添いながら人権侵害に対して行動をされたわけですけれども、まず、子どもの人権オンブズマンというのはどの程度知られているのかという問題があると思うのですね、先ほど佐々木さんのお話もありましたけれども。  リーフレットが小中学生に二十万枚配られたということなんですが、日本の小中学生何人に一人だったのかという気がするわけですね。それから学校にもポスターが四万六千枚というんですが、実際にそのオンブズマンの方が学校に両親と同行したときに、オンブズマンて何ですか、あなたの事務所はどこですかというふうに、つまり、どこのだれだかわからない人が来たという程度の認識でしかなかったようなのですが、この点について、やはり足らないのではないかという点が一点。  もう一つは、人権擁護委員の中から五百十五人の子どもの人権専門委員、つまり子どもの人権オンブズマンの方が指名を受けているわけなんですけれども、我々がそうなんですが、僕はちょうど今四十一ですけれども、十四、十五の子供、十六、十その子供と文化が違いますよね。なるべくやはり年齢が近い方がいい、こういう子供の悩みに寄り添いながら一緒に動くには。  年齢を見てみますと、平均年齢が六十五・四歳なんですね、八七%の方が六十歳以上なんです。三十代がたった一人。四十代ですら十九人しかいないのですね。ここを見ると、もう少し民間から広く、しかも各中学校区に一人ぐらいこういった存在の方がいても十分、忙しくてたまらないというぐらいの需要があるのではないか。つまり、民間から広く人材を求めるという点において、これからそういった方向でいけないのかということについて、今度は法務省の人権擁護局の方にお答えいただきたいと思います。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 子どもの人権専門委員制度の広報活動につきましては、委員御指摘の点を十分念頭に置いて、これからさらに積極的な活動を展開してまいりたいと思っております。  また、委員の権限の問題につきましては、今後設置されます審議会におきまして十分審議していただけるものと考えております。  また、子どもの人権専門委員は、人権擁護委員だけからではなくて、広く民間から募るべきだという点でございますが、その点につきましても十分念頭に置いて検討させていただきたいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 委員の権限についてはこれから聞くところだったのですけれども。  つまり、委員の権限について何が問題かといいますと、調査をする、そして調査をするに当たって誠実な回答を得ることが実は必要だと思うのですね。その誠実な回答がなかなか得られないというお話が、オンブズマンの方何人がからお聞きしています。  それから、人権侵害をされた子供の保護について、やはり関係機関に改善を強く求めていく権限、そしてまた、それらの活動が広く知らされなければいけないと思うのですね。  今のケースでも、先ほどの文部省の高等学校のお答えにしても、今後は学力の問題も含めて柔軟にということであれば、今この瞬間、いじめられて欠席が多くて退学をせざるを得ないという子供の手紙なんかも受け取っているので、ぜひそういう活動を広報していただきたいということについて、もう一度お願いできますか。

大藤敏法務省人権擁護局長

○大藤政府委員 御指摘を踏まえまして、政府の広報を初めテレビ、ラジオなどのマスメディア等のさまざまな媒体を利用した幅広い広報活動の充実強化に努めますとともに、アンケート調査や人権の花運動、人権作文や書道コンテスト、街頭啓発等のあらゆる機会をとらえて、学校、家庭、地域社会等に対して制度の周知を図ってまいりたいと考えております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 殴る、けるの暴行のいじめに遭って、そして九つ、十という学校を落ち続けて、そういう若者が本当に救済されるためには、これは文部省が出していただいた。欠席を機械的に欠席とせずに出席と扱って、卒業までは持っていけるわけです。そのことについては、今私がお話ししているA君も卒業という約束は得られたそうです。  しかし、これから長い人生、これだけ学校機関でいじめが防げなかった。本人にそれだけの不利益を負わせてしまったということを振り返るならば、こういった被害者であり、心の傷も含めて体の傷も負った少年に対して、いわゆる進路の推薦入学ですか、大学における推薦枠などを使って、頑張れということでバックアップするというようなことはお考えにないですか、文部省。

石川明文部省初等中等教育局高等学校課長

○石川説明員 先生御指摘のような、これからはいじめ問題に対しては小まめな対応が大事だと思っておりまして、そういった点も含めて、今後十分検討してまいりたいと思っております。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 時間がもう限られていますので、本当にいじめで苦しんだり心の傷を受けたり、そしてまた死の直前をさまよっている子が多いのですね。  今、私はA君という一人の少年を挙げながら、関係の機関の方にお答えいただきましたけれども、最後に法務大臣に、このいじめに悩む子供の救済、人権の保護という点について、御決意のほどを伺って質問を終わりたいと思うのですが、いかがでしょうか。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 御指摘のように、子供の人権侵害に対する問題については、今までのやり方では必ずしも十分でないという御意見でございますが、私もそんな感じがいたしております。今後、さらに努力を続けていくということをお約束をいたしたいと思います。

保坂展人社会民主党・市民連合

○保坂委員 では、その約束をぜひ、抽象的な約束ではなくて、各機関の方々ともに、そして民間のボランティアあるいは民間団体の方の積極的な力も生かしながら、悩んでいる子供が一年後、二年後に救済されてももう人生に失望してしまうわけです。そこのところも、何か申し出があったら一週間とか十日以内に解決に向かうという方向でぜひ御努力をお願いするということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

八代英太自由民主党

○八代委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――

八代英太自由民主党

○八代委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  人権擁護施策推進法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

八代英太自由民主党

○八代委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――

八代英太自由民主党

○八代委員長 この際、本案に対し、横内正明君外五名から、自由民主党、新進党、民主党、社会民主党・市民連合、新党さきがけ及び笹川堯君から、共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。横内正明君。

横内正明自由民主党

○横内委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表して、その趣旨の御説明を申し上げます。  本案の趣旨につきましては、既に当委員会の質疑の過程で明らかになっておりますので、この際、案文の朗読をもってその説明にかえさせていただきます。  それでは、案文を朗読いたします。     人権擁護施策推進法案に対する附帯決議(案)   同和問題を始めとする人権問題の解決のため、あらゆる差別の撤廃と人権の確立に向けての人権擁護施策を一層推進、強化することとし、政府は、次の諸点につき格段の努力をすべきである。  一 人権問題における教育及び啓発の重要性にかんがみ、学校教育、社会教育等の分野において「人権教育のための国連十年」の国内行動計画等を踏まえ、人権教育、人権啓発の取り組みに努めること。  二 人権尊重の理念に関する教育及び啓発の基本的事項については二年を目処に、人権侵害の場合の被害の救済施策については五年を目処になされる人権擁護推進審議会の答申等については、最大限に尊重し、答申等にのっとり、法的措置を含め必要な措置を講ずること。  三 人権擁護推進審議会委員の人選に当たっては、人権問題に精通した学識経験者を選任するよう配慮すること。  四 審議会の設置及び運営に関しては、平成七年九月二九日付け閣議決定に基づき、透明性の確保に努めること。  五 人権擁護施策の一層の推進のため、人権擁護体制の充実、強化を図ること。  六 人権関係条約の批准について、積極的に検討すること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ本附帯決議案に御賛同くださるようお願い申し上げます。

八代英太自由民主党

○八代委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  横内正明君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

八代英太自由民主党

○八代委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松浦法務大臣。

松浦功自由民主党法務大臣

○松浦国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に措置してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――

八代英太自由民主党

○八代委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

八代英太自由民主党

○八代委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――

八代英太自由民主党

○八代委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会

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