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132回国会衆議院1995/04/11

法務委員会 第6号

発言数
191
登壇者
26
会派数
6
開催日
1995/04/11

会議録

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。茂木敏充君。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 自由民主党の茂木敏充でございます。  まず、今回の刑法改正についてお尋ねしたいと思います。今回の改正、まさに明治四十年以来八十八年ぶりの全面改正、こういうことで、この一大事業に当たりましての大臣並びに関係のお考えを伺いたいと思います。  まず第一に、今回表記の平易化というものに重点が置かれているわけですので、この点からお伺いいたしたいと思います。  そもそも刑法とは、国民に対してどのような行為が犯罪となり、どのような刑罰が科せられるかを明らかにするものであります。ゆえに、国民のだれもがわかりやすいものでなければならないと考えますが、私、いま一度現行の刑法を読んでみますと、何が書いてあるのかよくわからない。大変難解な条文が並んでいるわけでございます。それどころか、当時の時代的な影響もあるのかもしれませんけれども、どうもお上の方から決めたことを下々に知らしめる、こういった印象すら感じてしまうわけでございます。  国民生活に深くかかわり、その行動規範ともいうべき刑法がこのようであっては、今日、憲法に規定されております国民主権の精神にも合致しないのではないか、このように思われるわけですが、まず法務大臣、この点についてのお考えをお聞かせください。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 まさに委員御指摘のとおりであろうと思っております。  まさに刑法は国民の基本的な社会生活に関する犯罪について規定している法律でございまして、先生御指摘のとおり、いかなる行為が犯罪となるか、犯罪の要件、それに対していかなる罰則、刑罰があるか、法律効果があるか、これを定めた国家的な法規範であるという意味からも、まさに国民生活、また日常生活にとっても極めてかかわりの深い法律でございます。  この刑法がまず国民にとってわかりやすいものでなければならないというのは、もうこれは御指摘のとおりで、大変重要なことだ、かように考えておるところでございまして、そうした観点からも、本院法務委員会において附帯決議等もいただいております。そんな観点から、早急にこの改正を行う必要があると考えておりまして、今回御審議をいただいておるところでございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 この平易化の問題に関しましてはおおむね異論のないところだと思いますので、もう少し具体的な点についてお聞きしたいのです。  例えば条文の順序についてでございますが、これにつきましても、一般国民というよりはむしろ法曹関係者、こちらに関係の深いと思われる「総則」より始まりまして、罪の並べ方、こういうものを見ましても、やはりかつての時代的な背景を引きずっているような形でございまして、国家に対する罪というのが最初に出てきて、個人に対する罪というのはその後、こういう順序になっているわけでございます。  八十八年ぶりの全面改正ということでございますので、私は、やはり表記の平易化、これにとどまらず、刑法の基本的な枠組みについても検討すべきであった、このように考えているわけですが、国民主権の精神、こういったものに照らしまして、この点につきまして、これまでどのような議論がなされてきたのか、この経過等々御説明いただければと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 御指摘のように、国民主権の新憲法のもとでの刑法典の枠組みといいましょうか、平易性のあり方という点、いろいろと考え方があろうかと思うわけでございます。ただ今回は、あくまでも意味内容を変えずに、できるだけ早急に国民の皆さん方に内容のわかりやすい刑法典にするということで、基本的にはその内容を現行法規のままにという制約があるわけでございます。  そういう意味で、仮に今、新たに刑法を全面的に制定するあるいは改正するということになりますと、御指摘のような、条文の順序をどうするか、刑法の基本的な枠組みをどうするか、こういったことについて議論を尽くすべきであるということはごもっともであろうと思います。  ただ、先ほど申しましたように、今回、あくまでも表記の平易化というところを中心にといいましょうか、むしろそれのみにとどめるという大方針のもとに早急に刑法典の平易化を図るということでございますので、御指摘のような議論については、今後新たに全面的な改正をするときに議論を行うべきものであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 これまでの経過についても、簡単で結構ですから、多少御説明いただければと思うのですが。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 ただいま委員御指摘のような、刑法の条文の配列をどうするかとか、こういうふうな問題につきましては、刑法の実質的な意味での全面改正作業、これが昭和三十二年から行われてきているわけでございますが、この過程で条文の配列等についてもいろんな議論が行われたわけでございます。  その結果といたしまして、御案内のとおり「改正刑法草案」と申しますものが昭和四十九年に発表されておりますが、これにおきましても、現在の刑法と同様に、まず「総則」から始まりまして、国家的法益に対する罪、社会的法益に対する罪、それから個人的法益に対する罪というふうに一応並んでいるわけでございます。  その考え方は、いろいろあったと思いますけれども、一つには、国というのが国民主権のもとで成立した、いわば国民全体のもの、そういうふうな考え方というものも当然その背景にあったものと思われるわけでございます。  過去の議論の経過と申しますのは、そういうふうなものだというふうに承知しております。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 四年前の国会の附帯決議との関係について、ちょっとお伺いしたいと思うのです。  今回の改正作業に当たりましては、そのきっかけともなったというべき平成三年の国会における附帯決議、こういうものがあったわけなんですが、この附帯決議について、現在の検討状況と今後の見通しについてお伺いいたしたいと思うのです。  特に、財産犯に罰金刑を選択刑として導入する、この項目についてでございます。  かつては貧困ゆえの犯罪ということで、罰金を科しても払えないケースが多かった窃盗等の財産犯、これにつきましても今はだんだん少なくなりまして、むしろ生活のためではなく、多少語弊があるかもしれませんが、いわばゲーム感覚による犯罪、こういったものも増加しているように思われます。  こういうふうにして、比較的軽い財産犯に短期自由刑が科せられておるわけでございますが、短期自由刑につきましては、以前より、例えば刑務所に入っていろいろ周りの環境に染まってしまうとか、そういった種々の問題、弊害等も指摘されておるわけでございます。  そこで、選択的に罰金刑を導入すべきときが来ているのではないかと私は考えておるわけでございます。早急に御検討をいただきたいと思いますが、この点につき、今後の見通しについてお答えいただければと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 第百二十回国会におきまして罰金の額等の引上げの御審議をいただきました際の附帯決議、その中で、特に今の財産犯、窃盗等に選択的に罰金をという問題につきまして主としてお答えすることになりますけれども、当時そういう附帯決議をちょうだいいたしまして、私どもといたしましては、法制審議会の刑事法部会に財産刑検討小委員会というのをつくっていただきまして、そこで今御指摘の問題等について検討してもらったわけでございます。結局、平成五年三月の刑事法部会におきまして、その小委員会の検討結果を引き取りましてさらに御審議いただいたわけでございますが、結論的には、特にその時点で窃盗等について選択刑として罰金を設けることについて意見がまとまらなかった、むしろ反対する意見が多かったわけでございます。  御指摘のように、確かに短期自由刑の弊害といったようなもの、これをどう克服するかという課題があるわけでございますけれども、窃盗罪について罰金刑がないために特に弊害が生じているという現状ではないのではないか。そういう意味で、罰金刑を追加する必要性は薄い。また、仮に罰金刑を追加するということになりますと、これまで刑事政策的に起訴猶予で処理していたものが、場合によっては罰金を徴収するという処分に流れるおそれが強まるのではないか。そういう意味で、処罰範囲の拡大というような影響をもたらすおそれもあるというふうなこともございまして、現行の刑罰体系を前提とする限りは、窃盗罪に罰金刑を設けることに積極的な理由は見出しがたいとする消極論が多数であったわけでございます。ただ、将来罰金刑全体の見直しが行われる際には、その問題を含めて再検討すべきであるとの意見もありました。  いずれにいたしましても、この問題は刑罰体系全体の見直しの中で検討すべきものであると考えておりまして、今回の改正では取り上げないこととしたものでございますけれども、国会の附帯決議で検討を求められている事項でもございますので、引き続き所要の検討は進めてまいりたいと思っておるわけでございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 今法制審の話がちょっと出てきたわけですが、そちらに移らせていただきたいと思うのです。  今回の刑法の改正作業の過程におきまして、法制審議会の刑事法部会におきましてどのような事項の実質改正を求める意見が強かったのか、その概要をお聞きしたいと思うのです。  特に、先ほどの附帯決議の中の刑罰制度の適正化にもつながるわけですけれども、強盗致死傷につきまして、これは現行刑法の二百四十条に定められているわけですが、確かに、強盗を働いた上に人を傷つけた罪は重い、しかるべき刑に処せられて当然である、そのように考えております。しかしながら、例えば逃げようとした際に弾みでけがを負わせてしまった、このような場合にも一律に無期または七年以上の懲役に処す、こういうのはいかがなものかと考えているわけでございます。  そこで、この七年という下限につきまして軽減を求める意見も強かった、このように聞いておりますが、今回の改正でこれらが実現しなかった理由、そして今後の実現の見通しについてお伺いいたしたいと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 今回の刑法典の平易化を図るための諮問につきまして法制審議会で御議論いただきました過程で、実質的に、単にその表現を平易化するのみならず、諮問案自体には尊属加重規定の全廃が盛り込まれていたわけでございますけれども、調査審議の際に、審議会といたしまして、これに加えまして罪刑法定主義の規定をこの際新たに設けてはどうか、あるいは聾唖者の行為に関する規定を削除してはどうか、さらには今御指摘の強盗致傷罪の法定刑の下限を引き下げてはどうかなど、およそ十項目ほどの実質的な改正を行うことの可否について意見が述べられたわけでございます。  そのうち、御案内のとおり尊属加重規定の全廃及び聾唖者の行為に関する規定の削除についてはこれを盛り込むことにいたしまして、それぞれ意見が一致いたしました。他の点につきましては、いずれも立法化するには種々検討すべき点があるということから、今回の改正の範囲に盛り込むことは適当ではないとされたわけでございます。  そのうち、強盗致傷罪の下限引き下げの問題につきましては、確かに、執行猶予が相当であると思われますのに、酌量減軽のみでは執行猶予にできず、特に、今おっしゃいますように、事後強盗に係る事案につきまして実刑にするのが酷である事案が散見されるとして、強盗致傷罪の法定刑での下限を引き下げるべきであるとの意見があったわけでございます。  その点につきまして種々意見が交わされましたが、それぞれの罪に対する刑がどのようなものであるべきかについて、その罪の罪質や他の罪の列とのバランス、例えば放火罪その他ございますが、それら種々の観点から総合して考慮しなければならないということでございまして、結局、この問題は刑罰体系全体の見直しの中で検討すべきものであって、今回の改正で強盗致傷罪のみの法定刑の引き下げを行うことは、全体のバランスとの問題、さらには今回の改正の目的からいたしまして適当ではないとする意見が多数を占めたものであります。  この問題につきましても、今後引き続き刑罰の適正化の一環ということで検討してまいりたいと思っておるわけでございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 御説明としては大変理解できると思うのですが、そうはいいましても、何というか、今回平易化と尊属加重刑罰規定の削除、それから聾唖者の行為に関する規定の削除、これだけでして、残りの八項目というか何項目というか、それについては結局ほとんど触れられていない。そういう中で、今後の刑法改正の方向について、ごく一部ではありますが、「改正刑法草案」に基づきます立法作業は棚上げになったのではないか、こういう意見もあるようなのですが、この点も踏まえまして、法務大臣の今後の改正に対する御決意と申しますか、御意見をいただきたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 「改正刑法草案」に基づく刑法改正につきましては、極めていろいろ御意見があるところでございますし、また、昭和四十九年という、二十一年を経過した中でかなり社会も変化をいたしておると思っております。  今回の改正は、そうした意味で今後の刑法の改正のいわば基盤作業に大きな意味を持ってくる、かように考えておるところでございまして、今回この改正を成立させていただきましたならば、この平易になった刑法を踏まえて、刑法をめぐるさまざまな議論、御意見をいただきまして、まさに今日の社会状況に合致したよりよい刑法の実現を目指して努力をしてまいりたい、かように考えております。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 それでは、ちょっと時間の関係もありますので、サリン関係の問題の質問に移らせていただきたい、このように思っております。きょう、この後も御質問の方がいらっしゃると思うのですが、大ぐくりなところでまずお聞きしたいと思うのです。  連日のマスコミ報道を見ておりますと、個々の事件である、こう言いつつも、どうしても一連のといった印象がぬぐい切れないわけです 松本のサリン事件、そして公証役場事務長の拉致事件、地下鉄サリン事件、さらには警察庁の長官の狙撃事件、これらの捜査状況、これは捜査でございますから当然発表できない点等々ありますが、一方で、国民は今この事件とか世相に対して大変不安を覚えているわけでございまして、御説明いただける範囲で結構でございます、警察庁の方、いらしていましたらお願いいたします。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  まず、いわゆる松本サリン事件につきましては、現在長野県警察におきまして、引き続き捜査本部体制を維持しまして捜査を行っているところでございますけれども、犯人を特定するまでの有力な情報の入手には至っておりません。  公証役場事務長の逮捕監禁事件につきましては、犯人の一人を割り出して、現在警察庁特別手配に指定をしておりまして、先日石川県において潜伏していたということが判明をいたしまして、引き続き追跡捜査を行っているところでございます。また、この事件の三月二十二日の捜索によりまして、サリン製造に必要と思われます大量の化学薬品を発見して押収をしております。殺人予備の容疑を立証するために、三月二十六日以降、第七サティアンを中心といたしまして捜索を続行しておりまして、現在、捜索によって発見されました化学プラントの設備について、それが使用されたかどうかにつきまして引き続き詳細な検証をやっておるところでございます。  次に、地下鉄駅構内の毒物使用多数殺人事件の捜査状況でございますけれども、現在、被害者や乗客などの関係者から多数寄せられました不審者や不審物件に対する目撃情報を集約して絞りをかけておるという状況でございますし、また遺留物件につきましても、さらに詳細な分析を続行しまして入手経路の解明などの捜査を行っているところでございます。  次に、警察庁長官襲撃の捜査状況につきましては、発生直後より警視庁におきまして公安部長を中心といたしました特別捜査本部を設置をして、犯行現場や逃走方向を中心に目撃者の情報収集、あるいは百件以上現在までに捜査本部に寄せられております情報についての裏づけ捜査など、所要の捜査を進めているところでございます。  以上でございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 次に、サリンに関する特別立法の方についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、警察庁の方で現在再発防止に向けましてこの特別立法を御検討中ということで、この委員会の方でも議論がなされているところでございます。先般衆議院を通過いたしました化学兵器禁止法あるいは現行刑法との関係、相違点について、まず簡単にお伺いしたいと思います。  そもそもこのサリンというものは、私もよく存じ上げないのですが、いろいろ聞いてみますと、人を殺傷する以外に用途がない、このように考えられるものでございまして、当然法律によって取り締まられるべきものである、このように考えておるわけですが、化学兵器禁止法で対処することはできないものなのか。この二つの法を考えてみまして、概念的に競合しないものか。それから、現行刑法に照らして特別立法の整合性あるいは刑の均衡。これらにつきましてどのようなお考えか、まずお伺いしたいと思います。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  まず、先般国会におきまして御審議いただいたと承知しております化学兵器禁止法についてでございますけれども、この法律は、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約、いわゆる化学兵器禁止条約を実施するための法律ということでございます。このような観点から、化学兵器禁止法におきましては、化学兵器の製造、使用を禁止するとともに、その原材料、サリンというのはその原材料になるわけでございますけれども、これらの物質につきまして製造、使用を許可制に係らしめるということでございます。したがって、いわゆる一般の行政的規制の罰則という色彩を持っておるものでございます。  現在警察庁において検討を進めております法律につきましては、このサリン自体の持つ非常な危険性あるいは身体に及ぼす被害というもの、これを防止をするということを目的といたしまして、この観点から、サリンの発散、製造、所持等を原則的に禁止をして、またそれらの原材料を購入するような、あるいはそれを手助けするような予備行為も含めて処罰するほかに、被害発生やそのおそれがある場合におきまして警察官の迅速な措置について規定するなどの、公共の安全という観点からの立法を検討をしているところでございます。  化学兵器禁止法におきましても無許可使用罪あるいは無許可製造罪というものがございまして、これにつきましては、現在警察庁において検討している法律についても、多くの場合これらの点についてダブる場合があるかと思っておりますけれども、これらの罪につきましては相互にその観点を異にするということで、いわゆる観念的競合ということで併存し得るものであるというふうに考えております。また、このような関係につきましては、ほかの立法例についてもあるところでございます。  また、刑法との関係につきましては、私どもの方は、この特別立法につきましては化学兵器禁止法との平仄というものを、法定刑とのバランス、いわゆるサリンの発散は化学兵器の使用とそれ自体同じ効果を持つものではないかということでのバランスを考慮しておるところでございますけれども、一万刑法との関係におきましても、例えば人を死に至らしめるといったような場合につきましては、これは刑法の殺人罪で処断されるべきであろうということを考えて、私どもの方は公共の危険という面の発散の罪においてとどまっておるということでございまして、現行刑法とのバランスについては失してはいないのではないかなというふうに考えておるところでございます。  以上でございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 最後になると思うのですが、連日のマスコミ報道等を見ていますと、確かにオウム真理教、宗教法人といいましても大変特殊な、例外的なケースであると思うのですが、やはりここで宗教団体における人権それから信教の自由についてどうしてもお伺いしておきたいと思うわけです。  信教の自由、宗教の自由、これは当然憲法で保障されているわけでございますが、事今回のオウム真理教の一件に関しましては、信者に対して家族は大変な心配を寄せている場合であっても、教団側は本人の意志である、こう言い続けまして、当の本人は密室に閉じ込められたり薬漬けにされたり、意思表示すらできない状態で保護されているケースもあったわけでございます。これは明らかに刑法第二百二十条に定めるところによります逮捕監禁罪に当たると思われますが、どのようにお考えであられるか。  また、きょうは文化庁の方からもお越しいただいていると思いますが、オウム真理教に関しましては、信者が子供たちの就学義務を怠っていたり、ほかにも武器の製造を疑われたり、教団内部よりそれによって逮捕者を出す。こういう、およそ宗教団体としては理解できない、常識を超えた活動を行っていた、そういうわけなんですが、教団内部ではいわばこれが治外法権のような形で、このように宗教法人を隠れみのにしたり、余りにも逸脱した団体につきましては、未然に厳しく指導していく必要が今後あるのではないか、このように考えているわけですが、いかがでしょうか。  最近では、宗教法人法の見直しですとか、宗教法人審議会を持って宗教法人そのものを見直していく、こういうことも提案されているようでございますが、このあたりの見通し等々につきまして、御説明、お考えを伺いたいと思います。

中根孝司文化庁文化部宗務課長

○中根説明員 お答えいたします。  前段の、宗教法人がかかわっていろいろと犯罪行為等が行われているということであれば、それについては所定の法律によって処罰等を受けるのは、これは当然だというふうに思うわけでございます。ただ、制度論につきましては、宗教法人に関する制度をどうするかということにつきましては、今回の事件に関連するものも含めまして種々議論があるというふうに私ども承知しているところでございます。  そもそも宗教法人法の制定につきましては、憲法で保障された信教の自由の原則のもとに制定されたものでございます。その意味で、その改正に当たりましては、信教の自由あるいは政教分離の原則との関係もございまして、基本的に慎重に対応する必要があるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。  ただ、仮に宗教法人制度を見直すという場合には、宗教法人審議会の御意見をお伺いすることが必要になろうか、こういうふうに存じますが、今回の事件につきましては現在まだ捜査中ということでございますので、その捜査の進捗状況を考慮しつつ、必要な時点で宗教法人審議会を開催することも検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。

茂木敏充自由民主党・自由連合

○茂木委員 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきますが、できるだけ早いしかるべき時期に宗教法人審議会を開催することをお願いいたしまして、質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 山本有二君。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 今回の刑法改正作業、大変御苦労さまでございます。特に、刑法という占い法律は社会の実態とともに法律自体が古くなり、それ自体現代社会に適用にならないということもありますので、そういう法律の特性を考えて今回現代用語に改正していく、そういうお気持ちは大変ありがたいところでもあり、国民ニーズに適合するというように思いますので、今後その姿勢で頑張っていただきたいと思います。  本日は、それとはちょっと方向を変えて御質問をしたいと思います。選挙違反に関する問題でございます。  選挙の自由と投票の廉潔性を保つということは、民主主義の健全なあり方、また発展に欠くべからざることでございますし、ともかく選挙が汚いということは、国家自体のあるいは政府自体のあり方も問われるように思います。そういうことから考えまして、今の日本、それこそ政府が信頼され、国というものが信頼を置かれるということになるためにも、選挙犯罪のないようにということを願うわけであります。  今まで中選挙区制度で選挙犯罪が多々ございました。しかし、それを今度の政治改革の一環の中で小選挙区に変更いたしますと、小選挙区の特性としてどうしても一対一、どちらが勝つか、大鵬か柏戸が、あるいは貴乃花か曙かというようなことになりますと、過熱いたします。奄美の例ではありませんが、過熱をすれば必ず犯罪に結びつくだろうというように、容易に想像するわけであります。  そこで、中選挙区から小選挙区に移行して、それに伴う過熱対策、過熱に対して制御棒をどうやって入れるかということに対しましては、議員立法ではあったわけでありますが、連座制の範囲の拡大、それから当選無効に加えて資格停止、三番目には百日裁判をより実現していこうという法の改正、これは平成四年の法でありますが、私は、そういう三つの大きな改正をやったのだろうというように思います。  しかし、三つで十分足りるのだろうか、特に小選挙区、奄美対策、あるいはこれから過熱していくという選挙区に対して、この三つで大丈夫なのかなという不安を持っております。それとともに、この三つで不安という以上に、この三つが従来よりも十分機能してくれるかどうかということでありますし、また、法律問題として、特に連座制は問題を多少はらんでいるのではないかなというように思っております。  今、小選挙区になって、それこそ投票の方法すら国民はまだ熟知いたしておりません。例えば、私が高知市で出ておって今度は四万十川の方に移るけれども、まだ両方投票できると考えている人がたくさんおります。ですから、投票方法すら知らない人に、ましていわんや連座制の範囲を拡大しましたと言うたって、範囲がどこまで拡大したのかというのは全く国民の知るよしもないというふうに私は思っております。  そこで、啓蒙活動ということが大変大事だろうと思います。自治省も啓蒙活動を一生懸命やっていただいておりますし、警察も、取り締まりにおいては、今行われております統一地方選挙においてしっかりした取り締まりや注意をしていただいておるとは思います。しかし、この連座の概念、範囲拡大したときの概念がよくわからないというのは、あの政治改革の委員会の審議の中でも出ておりましたし、今なお私はそのことが不安でなりません。  連座というのは、いわば個人責任主義の例外でありますし、イギリスと日本しかこの制度はとっておりません。そして、罪刑法定主義だとか類推解釈の禁止だとか、幾ら刑法上うたってみましても、国論でどう考えたって、あいまいな解釈が当然だと思うような範囲の拡大ということになると、法制局等も頭を痛めたのでしょうけれども、私はこれまた若干問題があるだろうというように思います。  そういう、こういうを考えてみますと、連座を強化した、さあ小選挙区になるから我々は対策を講じたと言うけれども、連座なんてどうせ適用になるはずもないじゃないかと。例えば、連座制というのは今に始まった問題でなくて、随分昔からこの連座制度はありましたけれども、適用になったのは一回しかない。一回しかないから改正したっていいだろう、そして範囲拡大したっていいだろう、こういうような物の考え方で法律ができ上がっていく、国会が運営されていくということは、私は国会自体の自殺だろうと思います。  そういうことを思いますときに、この新しい法制度が適用になる現在、おとつい地方選挙、都道府県知事選挙が終わりましたけれども、このときに当たって何とか、質問というよりも、ぜひ問題の喚起をさせていただきたいということでございます。  そして、百日裁判におきましても、イギリスであれば連日開廷ということを法制化しておるわけでありまして、連日開廷ということぐらいであれば、実体審理を強要するわけでないわけでありますし、選挙犯罪は連日開廷なんだということが法曹三者でわかるならば、よその事件はちょっと置いておいてということにもつながるだろうし、思い切った、やはり百日裁判の実現のためにもっと踏み込んで頑張っていかなければ、実現はまだまだかなというようなことも思います。そういうことが私の本日の質問の趣旨でありますけれども、これから順次各省庁にお伺いさせていただきます。  そこで、選挙犯罪の実態からまず教えていただきたいわけでありますが、過去十年各種選挙で、中選挙区制度でありますけれども、特に衆議院選挙、どういうような犯罪、そして犯罪検挙数、検挙人員であったのか、それを警察庁にお伺いします。

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 お答えをいたします。  今委員御指摘の、過去十年間におきまして、地方選挙、国政選挙いろいろあるわけでございますが、その中でも、比較する意味では、過去数回行われました衆議院議員の総選挙、それから参議院議員の通常選挙、それから現在も行われておりますが統一地方途挙などにおきます、警察が取り締まりをいたしました結果に関しまして、御説明を申し上げます。  結果的には、その期間にそれぞれ数回が施行されておりますが、それぞれの選挙におきまして私どもが検挙いたしましたトータルの検挙件数、また検挙人員につきましては、いずれもおおむね減少傾向が見られます。罪種別に見ましても、その多くは買収罪が多いわけでございますが、買収罪また戸別訪問あるいは文書違反、こういうようなものにつきましても、先ほど申し上げました三種類の選挙について、いずれも減少をたどっているという状況でございます。  数字はよろしいのでございますか。(山本(有)委員「数字をちょっとお願いします」と呼ぶ)それでは、今御指摘のうちの総選挙のみについて若干申し上げます。  昭和六十一年七月に第三十八回の衆議院議員の総選挙が行われておりますが、この際には、トータルで、検挙いたしました件数が五千百十四件、人員で一万一千百七十六名の方を検挙いたしております。平成二年の第三十九回につきましては、件数で三千八百三十四件、人員で七千六百二十三名。最近の平成五年に施行されました第四十回の衆議院総選挙におきましては、トータルで三千二十一件を検挙し、人員につきましては五千八百三十五人。この三回を比較いたしますと、今申し上げましたように、件数、人員とも、いずれも減少しているという状況でございます。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 件数、人員とも減少しているということが一つの傾向であって、喜ばしいようにも思いますけれども、これは、私はたまたまこうなったのではないかなという気がいたしてなりません。それは、警察庁がもし本気でこの選挙犯罪というものに取り組まれれば、例えば一人の候補者、これを徹底的に調べ上げるならば、選挙違反というのはどこかで必ず出てくるだろうというようにも私は思います。  そうすると例えば、おい、君、こういうことを頼むよと言って、済まぬけどあなたの車を使ってガソリンをたいてそれで遠くの方まで頼むよということで、ガソリン代だけもし実費を渡しても買収罪になるわけですし、電話代をNTTに払う分をこっちが払っても買収罪になるわけであります。そんなことを考えてみますと、うっかりした、単に知りませんでしたでは済まないということを考えてみますと、私は、駐車違反とかいうことと非常に似通った、あまねく普遍性のある犯罪のような気がいたしまして、それであるならば、この取り締まり、減ったからよかった、減っておるからいい傾向だと言い切れるのかなという気がいたしてなりません。  そこで、今回、この小選挙区を控えて、また小選挙区になった後に、徹底的に民主主義の健全性を担保するために頑張ってもらわなければならぬのは、この警察庁であります。したがって、これはあえて聞かせていただきますが、統計的数値で出てこない暗数というのが必ずあると思うのです。駐車違反でもそういうことを研究なさっておるだろうと思いますけれども、一罰百戒で、一人を捕まえれば威嚇効果があってほかが静まるから、だからこれで大丈夫だというつもりもあるかもしれませんが、こういう選挙違反の取り締まり実態、そして捜査をすれば必ず見つかるのじゃないかなという、逆に我々活動する方も何か萎縮もしますし、にらまれたら終わりだというようなことになりますと、どうも国の警察行政と我々との、国民との間の関係も悪くなるだろうというようにも思います。  そんな意味で、今後、このいわゆる普遍性の検挙実態、そして捜査すれば見つかるというような、そんなふうなことも考え合わせまして、根絶のためにより努力を賜りたいと思いますけれども、警察庁にお考えがあるならば、それをお聞かせいただきたいというように思います。

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 お答えいたします。  今委員御指摘の、暗数というお話がございましたが、これにつきましては、もちろん買収罪等、犯罪形態としては潜在化する可能性があるわけでございますから、暗数がないという形でもちろん否定できる立場ではございません。  私ども、そういうことも踏まえまして、警察といたしましては、それぞれの選挙の際に、しっかりとした体制を確立をいたしまして幅広い違反情報の収集に努めまして、その中で把握をいたしました違反内容に応じてそれぞれ適切な措置を講じておるところでございます。  具体的には、先ほど検挙件数を申し上げましたが、もちろんそれぞれの違反取り締まりに当たりましては、軽微な違反につきましては警告等を行って違反の早期防止ということを図っておりまして、それは先ほどの数字には入ってございません。そういうような軽微な違反につきましては警告措置をとる、さらに買収罪等の悪質な違反につきましては厳正かつ徹底した措置を講じておるところでございます。  また、私ども警察といたしましては、先般の連座制の強化等を含めた改正公選法の趣旨を踏まえまして、私ども、あくまでも違反取り締まりを通じて選挙の公正の確保に努めるということが警察の責務でございますので、それを十分認識した上で、現在各都道府県警察におきましても選挙違反取り締まりの体制を強化いたしまして、先ほど申し上げましたような悪質な違反の検挙に努めているところでございます。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 それでは、連座制の適用範囲の拡大のことについてお伺いいたします。  拡大した一番のポイントは、組織的選挙運動管理者等というものがもし選挙犯罪を起こした場合に連座になるということになるわけでありますが、この組織的選挙運動管理者等というものの概念、中身、これについて解釈をいたしますと、ある程度例えば指揮監督をしたんだとかいうことが定義されるわけであります。  具体例の説明、解説を、これは自治省が書いたものを読ませてもらいますと、例えば同窓会、これでも「上層部はもちろんこと書いてありまして、最後に「ある分野を担当する末端の責任者も、これにあたります。」こうくるわけであります。そうすると、末端の責任者ということになると、弁当を手配したらもう既にそれに当たる、こうなるわけで、じゃ、弁当の手配というのは具体的にどうなのかというと、組織的に最初から最後まで弁当を手配したらそれはそうなるかもしれませんが、その日だけ、その時間だけたまたま選挙事務所に来て、じゃおれが弁当買ってくるよで、それでこれの中に入ったりする危険性も十分あるだろうと僕は思います。こういうことになると、やっている方もつらいし取り締まる方もつらいのじゃないかというように思います。  そこで、このようなあいまいな概念、これは議員立法で我々国会議員がつくった法律ですから余り自治省を責めてもしょうがないのですけれども、警察庁も自治省も運用上これは困るだろうと思うのです。そこの点、どういう解釈や特定をしていこうというおつもりなのか、お伺いさせてください。

大竹邦実自治省行政局選挙部選挙課長

○大竹説明員 お答え申し上げます。  組織的選挙運動管理者等に係る連座についてお尋ねでございますけれども、公職選挙法の第二百五十一条の三第一項におきましては、組織的選挙運動管理者等とは、「公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者と意思を通じて組織により行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案若しくは調整又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督その他当該選挙運動の管理を行う者をいう。」と定義をされているところでございます。  この規定につきましては、御案内のとおり第百三十一回国会におきまして議員提案により設けられたものでございますけれども、その際提案者の方からは、この「選挙運動の計画の立案若しくは調整」を行う者とは、選挙運動全体の計画の立案または調整を行う者を初め、ビラ配りの計画、ポスター張りの計画、個人演説会の計画、街頭演説等の計画を立てる者やその調整を行う者等で、いわば司令塔の役割を担う者であると説明されているところでございます。  また、「選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督」を行う者につきましては、ビラ記り、ポスター張り、個人演説会の会場設営、電話作戦等に当たる者の指揮監督を行う者等で、いわば前線のリーダーの役割を担う者という説明がされているところでございます。  また、「その他当該選挙運動の管理を行う者」につきましては、選挙運動の分野を問わず、計画の立案、調整あるいは指揮監督以外の方法により選挙運動の管理を行う者をいい、例えば、選挙運動従事者への弁当の手配、車の手配を取り仕切る、あるいは個人演説会場の確保を取り仕切る等、選挙運動における後方支援活動の管理を行う者を指すと説明されているところでございます。  自治省といたしましても、この立法者意思を尊重いたしまして、この説明に沿って解釈しているところでございます。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 これは押し問答になっても仕方がないのですが、「組織的選挙運動管理者等」、それと「相当の注意」、それから「意思を通じて」それから「組織」、こういう概念についても非常にあいまいなんですけれども、もうこれは一々定義をお聞かせいただかなくて結構です。  こういうことがあいまいであろうという事実の御認識はあるだろうと思いますけれども、苦しい答弁になるかもしれませんが、もしそれに対して何らかメルクマールをこしらえていくというつもりがあれば、ひとつお聞かせいただきたいと思います。

大竹邦実自治省行政局選挙部選挙課長

○大竹説明員 お答え申し上げます。  これにつきましては、既に法律に入っているものでございますので、この法律の条文に沿って解釈することは当然でございますけれども、やはり立法の際の国会におきますところの立法者の説明、すなわち立法者意思をそんたくしてこれを解釈すべきものと考えておるところでございます。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 ひとつしっかりここを明確に、国民にもよくわかるような、また自治省でありますから、こういうパンフレットをつくっていただいてありがたいと思いますけれども、なおこのパンフレットなんかも多分余り行き渡っていないのではないかと思うので、より選管と協力し合いながら今度の選挙、統一地方選挙、参議院選挙、次の衆議院選挙までに思い切って頑張ってやっていただきたいということをお願い申し上げます。  次に、百日裁判のことを、もうちょっと連座制について百日裁判との関係で聞いておきたいことがございます。  実は、この連座制をとりますと、買収罪でまず逮捕されて有罪判決がある、一審であり、二審であり、三審である。それぞれ百日裁判の適用があるから、まあ最短距離で三百日でいくところがこの連座というのは、新たに連座裁判というのをやらなきゃならぬわけでありまして、あるときは当選人を被告として、また逆にあるときは検事が被告として裁判をしなければならない。それが確定するとやっと連座制になる、連座制で候補者が資格停止になる。それは、高裁にまず訴えてそれで最高裁で結審というと、連座が最終的に確定するのが五審制というようになってしまうわけでありますが、そこのところの問題点があると思います。  それで、そういう認識のもとで、前提として百日裁判についてまずは聞いていきたいと思いますが、この百日裁判制度、一生懸命頑張ってやっておいでになるわけですけれども、百日では全然済んでいないように思います。けれども、やっと最近、初めて百日裁判が実現できました。それはあの新聞さんのでありますが、新聞さんの裁判においては、一審で百十六日、二審で九十五日、三審で六十三日。百日裁判がこれでやっと実現したかなという、これが唯一救いの例でありますが、それ以外は、過去にはもう四百日平均でやったような年もあります。そういうことを考えていきますと、この百日裁判の実現こそ選挙犯罪を撲滅する一つの大きな手段であることは間違いありません。百日を超えてどんどんやっていきますと、もう有罪判決があっても議員は議員のままでいられるわけでありますから。  そこで、百日裁判について三者協議が行われております。法務省、裁判所、弁護士会、この三者で法廷を構成するわけでありますから、百日裁判に向けて、三者協議で成果を上げ実行しておるのかどうか、そのことについて法務省にお伺いをいたします。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 御指摘のとおり、結局、資格を喪失させるという連座制なりあるいは当該選挙無効、当選無効の効果のある罰則の適用ということになりますと、議員任期中にその裁判が確定することが必要ということでございまして、かねてからいわゆる百日裁判の規定というのは公職選挙法にあったわけでございますが、御指摘のとおり平成四年の改正で、さらにそれを推進するという意味で詳しく規定が改正されたということでございます。  それを受けまして、従来からの三者協議におきます百日裁判実現に向けての諸方策に加えまして、日弁連、最高裁、法務省との間で昨年三月に合意を形成いたしました。その結果、趣旨といたしましては、法曹三者が法改正の趣旨を尊重し、相互に協力して被告人と弁護人の防御権、弁護権の保障に配慮しつつ、検察官及び弁護人において実行可能な事前準備の励行、あるいは審理計画の早期確定に努め、弁護人所属の弁護士会もこれに協力する必要があることが相互に確認されたわけでございます。  その合意の具体化につきましては、各地の実情に即してさらに協議が行われることとなっておりまして、各地におきまして、第一審強化方策地方協議会や具体的事件におきます事前打ち合わせの機会を通じ、法曹三者による真摯な協議が行われているものと承知しておりまして、それぞれの単位弁護士会、地方裁判所単位でそういった合意がなされておると承知しております。現に、御指摘のとおり、既に名古屋の管轄におきましては、御指摘の事件につきましてそれぞれの審級においてほぼ百日あるいはそれ以内の審理で判決あるいは決定が行われたということでございます。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 法曹三者で御努力をいただいておるわけでありますけれども、ここで先ほど申しました連座制をとると、五審制になる。三審までは刑事事件である。ところが当選無効になるとこれは刑事事件じゃないという特殊性がありますと、法曹三者の合意事項の中に、刑事事件の場合は国選弁護人を早くつける、弁護人をつけて、それで弁護士が一生懸命開廷を急いでくれると百日裁判が全うできる。ところが連座制になると、いわば民事扱いというようなことで、契約して弁護士を依頼しなきゃいかぬということになると、お金がない、引き受けてくれる人がないというような話も多々あるだろうと思います。  これを法務省に聞くよりも、それは日弁連に聞かなきゃいかぬわけですが、あえて、法曹三者の中で法務省も日弁連については非常にお詳しいところもありますから、ひとつこういった連座制の五審制ということに対する、百日裁判の趣旨をこれは没却しているのではないか。百日裁判というものに連座制でも趣旨が全うできるのかということについて、御意見をお伺いさせていただきたい。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 直接所管でないのでお答えしにくいところでございますけれども、刑事事件における百日裁判の促進、早期結審ということは、ひいてはそういう連座規定についての運用上も考慮すべきであろうというふうに私どもは受けとめなければならないと思います。  費用の点につきましては、これは行政訴訟ということでございますので、かつまた、考えてみますと、何といいましょうか当選人がかかわる案件ということでございますので、一般的に見ますと果たして経済的困窮者と言えるかどうかという面もあろうかと思いますので、この辺は別に考えるべき問題であろうかなというふうに思います。

山本有二自由民主党・自由連合

○山本(有)委員 ぜひ三者協議の舞台で、こういう問題もあるし、三者で連座制のときも早く促進することを、協議をお願いをさせていただきたいと思います。  最高裁も来ていただいておるようでありますが、訴訟指揮というのは、法廷の中では衆議院議長の議場における指揮権以上のものがあると私は思いますし、期日、開廷については裁判長の意向次第だろうと思います。その訴訟指揮権を遺憾なく発揮してくれれば、百日裁判の公職選挙法の条文、その規定が訓示規定だ、単に本当に努力目標だけだというそしりを免れるだろうと思います。したがって、最高裁判所の訴訟指揮権のやり方について強く百日裁判実現に向けてお願いをさせていただきまして、質問はカットいたしまして、私の質問とさせていただきます。  どうもありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 坂上富男君。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 私の質問時間二十五分でございますが、緊急な問題もありますので、この法務委員会でも取り上げさせていただきますことをお許しいただきたいと思います。  まず、私の新潟県笹神村を多分震源地とするマグニチュード六の地震が四月一日十二時四十五分ごろ発生をいたしております。相当な被害が出ているようでございます。被害町村は十四市町村に及んでおります。私は、この翌日の二日の午前中、現地を駆け足で調査をさせていただきました。そして、被害が報道される以上に相当出ていることも見させていただきました。それから、二日以降また被害がいろいろと判明していることもわかりました。  そんなような状況でございまして、例えば、豊浦町あるいは豊栄等にかかわっておる福島潟という干拓地がございます。ここは、生産調整をめぐりまして、その是非をめぐりまして、稲を植えるか植えないかということで新潟県当局、農水省当局と大変激しく争いまして、強行田植え、強行稲刈り等をいたしたり、あるいは裁判で法廷闘争をいたしたりいたした地域でございます。ここは土地改良区ということになっておりまして、福島潟土地改良区になっております。  そういうような状況にあるところに地震がありまして、二日現在でわかりませんでした。その後、二、三日いたしまして、田植えの準備をいたさなければならないものでございますから、排水管が大変よく整備をされてできているのでございますが、これが漏水をいたしまして、使用が不可能というような事態も起きておるわけでございます。あるいは、学校でございますが、学校が相当倒壊の寸前にあるというようなことでございます。また、豪農のやかたと言われております市島邸、これは東京高検検事長をなさった市島さんの実家だろうと思いますが、これが倒壊をいたしておるわけであります。  顕著に知られておるのはそういう部分なんでございますが、このことにつきまして、直ちに私は、翌日二日の日に参議院の予算委員会がありまして、社会党の穐山参議院議員がサリン問題で集中審議の御質問に立たれるというので、どうかひとつ総理にこの簡単な被害の状況をお訴えをして、これの対策と救援について強い要請をいたしてくれという要請を直ちにいたしまして、早速穐山議員の方から予算委員会で取り上げていただきまして、総理から被害の回復等、万遺憾なきようにするという答弁もいただいておるわけでございます。  そこで、少し各省庁別に具体的な被害の規模と今後の対策等についてお願いもいたしたいと思って質問をするわけでございます。特に関係いたしますのは、農水省、文部省あるいは国土庁、厚生省、建設省、通産省、大蔵省等、相当多岐にわたると思うのでございますが、これは一々また御答弁をいただいておったのでは大変でございますので、きのうのお話し合いで、ひとつ取りまとめて国土庁からでございましょうか、御答弁をいただくということになっておりますが、この被害規模の実態とこれに対する対策について、もう数字だけ、それから、問題点があるとすれば少し言っていただいて、御答弁いただきたいと思います。

大野慎一国土庁防災局防災業務課長

○大野説明員 去る四月一日に新潟県北部で発生いたしました地震につきまして、御説明を申し上げたいと存じます。  まず、負傷者あるいは住宅被害でございますが、消防庁の調べで、四月十日現在でございますが、重傷が六名、軽傷六十二名、住家につきましては千一棟に被害が生じております。このうち、全壊が五十三棟、半壊が百六十五棟となってございます。当面の住宅確保対策につきましては、災害救助法に基づきまして応急仮設住宅を必要とする戸数につきまして設置をするということといたしております。また、去る四月七日から、住宅再建の支援といたしまして、住宅金融公庫におきます災害復興住宅貸し付けの取り扱いも開始をいたしたところでございます。  農業関係につきましては、水路等農業用施設におきまして一億円余りの被害が出ております。特に、御指摘もございましたが、福島潟を中心といたします農業用施設の被害につきましては、農林水産省が担当官を現地に派遣をいたしまして復旧工法の指導を行っているところでございます。今後災害査定を早期に行うように努めますとともに、必要なところにつきましては早急に応急工事を実施などいたしまして、今期の作付に支障がないように対応をしてまいりたいと考えております。  また、学校関係でございますが、公立学校が十六校、私立学校につきましては七校園におきまして被害が発生しております。公立学校につきましては、災害復旧事業が円滑かつ迅速に行われますよう万全を期してまいりたいと存じます。また、私立学校施設でございますが、日本私学振興財団が行います災害復旧費に対します長期低利の融資を実施をいたしておるところでございます。  次に水道でございますが、厚生省の調べでは、二市三町三村で延べ約七百二十世帯が断水をするなどの被害を受けておりますが、四月六日には復旧工事がすべて完了いたしたところでございます。  また、河川、道路関係でございますが、建設省所管の河川二カ所、道路四カ所で被災をしておりまして、これも準備が整い次第災害査定を実施をいたしまして、早急復旧に努めてまいりたいと考えております。  このほか災害救助法に基づく対策といたしまして、避難所の設置や炊き出しによります食事供与も実施をいたしたところでございまして、今後とも新潟県と十分協議の上、適切に対応してまいりたいと考えております。  また、被害を受けました地方公共団体が行う災害復旧事業につきましては、自治省におきまして災害復旧事業債の措置を行うとともに、災害復旧事業費、あるいは罹災世帯数、さらに農作物の被害額などを指標といたしまして特別交付税の算定を行いまして、所要の財源措置を講じていくことにしております。  今後とも、政府といたしましては、被災地域の災害対策に万全を期してまいる考えでございます。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 ありがとうございました。  私も、まだ調査漏れも相当あると思いますし、質問漏れもあろうと思いますが、今後出てまいりましたらよろしくお願いをしたいと思うのであります。本当に地震というのは怖いということを実感をいたしました。特に新潟県は、昭和三十九年に新潟大震災という経験をしておりますので、五十年か百年ぐらいは大丈夫だろう、こう思っておりましたら、大変なことが私たちの足元にまた起きてきたわけでございます。これは、阪神大震災が起きる、そしてまた新潟県に第二の地震が起きるなど、もう想像することができないような事態が発生をいたしておるわけでございます。また、何か新潟県と山形県際のところに空白地帯がある、こう言われておるわけでございまして、ここも一つ危険だというようなことが報道もされておるわけでございまして、県民といたしましては大変不安を感じておるところでございます。  まず一番お願いをしたいのは、この救援と復旧のための政府の御努力をひとつ何としても強く要請をいたしておきたい、こう思うわけでございます。  次に、今度はサリン等の一連の事件についてでございます。  まず一つ、お伺いをいたしますが、サリンの製造や所持、これはもう人を殺す以外に、人が死ぬ以外に使用目的がないような化学薬品である、こう言われておるわけでございます。したがいまして、新聞報道、報道を見ておりますと、全部殺人予備罪でガサをずっとやっているのですね。サリンというのは、やはりあれでしょうかサリンそのものがもう殺人予備罪になる、こういう理解で立っておるのでしょうか。  例えば、人を殺す目的を持って出刃包丁を購入した、これは殺人予備罪、これは目的を持っておるから殺人予備罪になるわけでございますが、サリンは全くこれ以外に使用目的がないから、そのこと自体がもう殺人予備罪に当たる、こういう認識なんでございますか。それとも、やはり殺傷目的があった、この二つがあって構成要件になっているのですか、サリンの場合は。どうですか。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、サリンは人を殺傷する目的以外にはまず現在では予想されない危険な物質でございますけれども、私ども、殺人予備の立件に当たりましては、単にサリンを所持あるいは製造の容疑ということだけではありませんで、やはりその原材料物質の状況、あるいはそのほかの資料等に基づいて、殺人予備の容疑ありということでの容疑で現在捜査を進めているところでございます。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 殺人予備罪を適用いたしますと、これは相当な人数の関係者がおるわけでございますから、国民はまず差し当たり殺人予備罪で、一網打尽という言葉がありますが、こういうようなことを多分期待しておられると思うのでございますが、これは大体そういう方向で今捜査が進んでいる、こう理解していいですか。また、これが殺人予備罪でまず第一次の検挙というか、そういうようなことの見通しなんかはお話できますか、御答弁を。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  現在、殺人予備罪で鋭意捜査を進めておるところでございますけれども、その捜査の行き先がどういう形態になるかにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 これ以上余り私も言いませんが、まず一つは、今度、捜査の中の問題点の大きい部分でございますが、坂本弁護士さん一家の行方が依然としてわからないわけでございます。骨が出てきたということが捜査の中に出ているわけでございますが、これは一体骨をどういうふうに見ていられるのか出てきた骨というのは大体どの程度の規模というか、数というか、ものが出てきておるのか、その辺少しお話ができたら、ひとつしてみてください。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  先般、静岡県警察におきましてヘリコプターの駐機場を捜索いたしました際に、人骨様の骨、一体分というふうに聞いておりますけれども、それが出てきたということでございまして、今後の詳細な鑑定、捜査によって判明するかと思いますけれども、現在では全く未定の状況でございます。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 その次に、松本サリン事件でございます。  これはいろいろ聞きますと、いわゆるこの第一通報者の方でございますが、これは被疑者と断定などしたこともないし、被疑者として疑ったこともないというような警察庁の御答弁のようなんですが、国民や報道は、この第一通報者の方がどうも怪しいんじゃなかろうかとみんなが率直に思ったろうと思います。しかも、これを弁護した弁護士さんは、まさに国民の敵だと思われるくらいの非難、中傷もあったんだろうと私は思っているんですよ。本当に、今回の地下鉄サリン事件が起きまして、第一通報者でないということはもう国民のほとんどの皆さんが思ったんだろうと私は思うのです。私もそうだろうと思うのでございます。  ただ、私は、この松本サリン事件はその第一通報者の人権が大変侵害をされているんじゃなかろうか、こう思っておりますから、警察庁は、この人の人権の回復のために、被疑者にしたとかしないとかそんなことはしませんなどと言わないで、やはりこういうことはストレートに、本当に警察は確信を持って第一通報者はこういう疑いのない人でございますというふうなことを、私は明確にすべきだろうと思うし、今できるだろう。  私は、この中で、今回の事件の中でたった一つの救いは、これが判明したんじゃなかろうかということだけなんです。あとは、もうとてもじゃないが、想像を絶する戦慄すべき事件が発生をいたしまして、下手なことをいたしますと、国そのものに対する大きな挑戦が行われているんじゃなかろうかと心配しているわけでございますが、松本サリンの第一通報者の人権問題、きちっと対応していただきたいと思いますが、いかがです。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  御指摘のようにサリンという共通の点がございますけれども、松本サリン事件、それから地下鉄のサリン事件、オウム真理教の事件等におきまして、それぞれ現段階におきまして別の事件ということでの捜査を行っておる最中でございます。したがいまして、現段階におきまして特定の者が容疑者であるか否かということについてのお答えというのは、差し控えさせていただきたいと思っております。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 この第一通報者が犯人でないということぐらいはもう確認できるのじゃないの。本当に、こんなことになったら、通常の善良な国民としては不安でどうしようもないわ。しかも、私は思うのです。この人は化学薬品等を非常にたくさん持っておられた、こう言われておる。そのことを知った別の真犯人がここの場所でやったんじゃないか、こう私は実は思っているんです。  その辺もあわせて、警察当局はどういうふうに対応しておられますか。国民は大量な別件捜査その他のことについては、やむを得ない、本当に大変な事態だからというふうな認識をしているのでございますが、しかし、もうこうやって人権侵害された人については逐次明確に人権の回復のためにすべきことがやはり任務なんじゃなかろうかと思いますが、どうですか。  あなたはお立場上、まだそういう最高責任でないから、あるいはお答えしづらいかもしれませんが、やはり国民はそういうことを望んでいるんじゃないでしょうか。でありますから、もう少しきちっと答弁をし、また捜査の中でそういう観点から、どうもこの第一通報者の近くでやれば第一通報者が犯人と疑われる、こういうふうになってきたのではなかろうかと私は思っているのですが、一言でいいですから答えてください。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  現在、長野県警におきまして、犯人検挙に向けましてあらゆる角度からの捜査の推進中でございます。したがいまして、現段階におきましての答弁は差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 それでは、きょうの本論に入らせていただきます。  私は、特に聾唖者の必要的減軽条文の削除の問題について御質問をいたします。  前の前の国会に私は出ておったとき、私の知っております長岡聾学校の子供たちが国会見学に来るというのです。国会見学に来るというものですから、私は、手話なんかあるのかこう衆議院に聞きましたら、手話はありません、手話の人を、先生、連れてくることは構いませんよ、こういうわけでございます。私は、とんでもないじゃないか、こういう障害を持った子供たちが国会見学に来るのだから、万遺憾ないように対応してやっていただきたいと議長に上申書を出しました。それで、これが決定をされました。そして、日本で一番立派な、立派というか実力のある手話の先生をこの子供たちにつけてくれまして、国会見学をさせていただきました。  今の子供たちというのは、口話、口でもってしゃべる練習をしておるから必ずしも手話を必要としないらしいのですが、しかし、中途にこういう障害を負ったような子供たちには、やはり手話というものがある程度必要なんだそうです。  それから、主語と言ったかな、述語と言ったかな、私ちょっと忘れてしまったのですが、これが口話で言うとなかなか言われないもので、手話が必要だというようなことも何かあるのだそうでございます。これ、必ずしも正確な表現ではございませんが、そんなようなことがありまして、私は、この必要的減軽条文削除について非常に感慨無量な思いを実はしているわけであります。  その学校に、この間私は卒業式に呼ばれて行ってきました。それで、今持っておりますのは「久々比」という職員の先生方の機関誌的なものなのですが、いろいろのことにも私は影響すると思いますから、ちょっと読み上げさせていただきますと、卒業生の答辞なんですね。   振り返って見ると私は地元の幼稚園を卒業し、普通小学校で二年生まで勉強をしていました。しかし三年生になる頃、聴こえていた耳がなぜか聴こえが悪くなったり「困ったなあ」と思いました。耳が聴こえるように祈りました。そして三年生からは、この長岡聾学校へ転校してきました。○○村の家からは通学できないので寄宿舎に入ることになりました。寄宿舎に初めて泊ったとき、父母と別れた淋しさで夜になっても眠くならず、涙をたくさん流していました。母に会いたいと声を出していました。涙はずっと止まらず、がまんすることができませんでした。母の代わりに寮母さんが背中をたたいてくれました。それでやっと眠れたことを覚えています。学校には少しづつなれて友達もてきました。小学部で初めて友達から教えてもらって手話を使ったこと。中学部では、クラブに入り、毎日野球の練習をして色々教えてもらったこと。高等部に入って、勉強が一段と難しくなりました。人に話かけられたら話ができるようにと勉強には頑張ったつもりです。中間省略いたしまして、また相手とコミュニケーションをはかるためには相手の話を「よく見る」「よく聞く」ことを 忘れないようにしたいと思います。という非常に胸打つ答辞がありました。私は非常に胸打たれる思いでございました。たまたま聾唖者の差別規定であるこの刑法の、よって削除するという提案があったことを頭に思い浮かべながらこれを聞いておったわけでございます。  そんなようなことで、聾唖者の皆様方とどの程度この御調査をなさって廃止になるのか、あるいはまた、一年間に聾唖者が裁判にかかったのは今までどれぐらいあったものか、その辺ちょっと御答弁いただきたいと思います。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 まず、裁判にかかわった件数について先に申し上げますと、ここ十年間で、多いときは三十五人、少ない年で二十人、全体の割合からいたしますと〇・○五%から〇・〇八%という、大体この程度の数ということになっております。  この聾唖者の規定の削除の問題につきましては、既に昭和二十九年、二十年代の終わりごろからそのような方々の団体からも削除をすべきだという御意見も出ておりまして、刑法全面改正作業の中で種々の角度から検討をいたしたわけでございまして、結論的に削除が相当だというふうになっているわけでございます。  今回の法制審議会における審議におきましても、聾唖者に関する四十条の規定が適用された事例の件数、あるいは手話通訳その他の聾唖教育の実情等についての資料を十分検討いたしまして審議した結果、やはり削除が相当だということになったわけでございます。

坂上富男日本社会党・護憲民主連合

○坂上委員 質問時間が終了いたしましたので、要望だけいたしておきますが、今申し上げましたとおり、やはり障害を持った皆様方でございます。この必要的減軽あるいは必要的免除規定が削除されるということになりましても、これが実務の運営上、このことによってマイナスにならないよう、あるいはまた裁判の中でも、多分裁判官が、いわゆる自由減軽でございますか、裁量減軽というのでしたかね、そんなようなことの中からも御配慮いただけるのだろうと思いますが、私は、こういう障害を持った子供たちや皆様方に接してみてつくづく思うのでございまして、私たちが思う以上に生きるために必死の努力をなさっておるわけでございます。  そんなようなことから、この社会に入れられなくて、やはり犯罪を犯すという人も確かにないわけではないと思うのでございますが、この部分そのものが差別規定だという御指摘、これもまた承って、法務省の方としては廃止の提案をなさっておる。これもまた、私としては賛成でございますが、やはり運営面においてこの精神というものがきちっと生かされるように対応していただきたいということも申し上げたい、こう思っておるわけでございます。  それから、尊属殺等に関する加重問題、これは私が長らく主張しておった問題でございまして、これは本当に賛成でもございます。また、口語体問題でございますが、これは当然のことでもございまして、かえって遅きに失する感なきにしもあらずだ、こう思っておるわけでございますが、どうぞ関係官庁、対応をきちっとしていただきますよう要請をいたしまして、終わります。  ありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 冬柴鐵三君。

冬柴鐵三新進党

○冬柴委員 新進党の冬柴鐵三です。  きょうは、刑法二百条、尊属殺人の規定廃止という改正問題に重点を絞りまして質問をさせていただきたいと思います。  尊属殺人の規定の沿革を見てみますと、一八八〇年、今から百十五年も前に施行された旧刑法、これは明治十三年太政官布告第三十六号というものでございますが、そこまでさかのぼることができます。旧刑法では、三百六十二条一項は尊属殺を定めておりまして、その規定では尊属殺は死刑のみを規定しておりました。重ねて、同法の三百六十五条におきましては、尊属殺の罪については刑の減免等を行うことを禁止しておりまして、極端な厳罰をもって臨んだということが明らかでございます。一九〇七年、明治四十年、現行刑法が制定されたわけでございますけれども、その際、相当かんかんがくがくの議論があったようではございます。  この尊属殺人の罪は現行刑法二百条として継承をされまして、その際、法定刑は死刑または無期懲役というふうにされたわけであります。重ねて刑の減免の適用も、通常の罪と同じように行うことを認めた結果、死刑のみであった旧刑法に比べますと、現行法は、許される二回の減軽を行いますと、下限は三年六月の懲役まで選択することができるということで、相当その幅が広げられるところとなったわけであります。  しかし、同じ刑法二十五条によりますと、「三年以下ノ懲役若クハ禁錮又ハ五十万円以下ノ罰金」につきましては、情状によりその刑の執行を猶予することができると定められておりますので、いかにその特定の尊属殺の情状が、酌最すべき情状がたくさんあったとしても、法律上刑の執行を猶予することはできない、そういうような構成になっております。この点が、普通殺の場合は「人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ三年以上ノ懲役ニ処ス」というふうに下限が三年まで定められていて、酌量すべき情状がある場合には殺人といえども執行猶予がつけられるという部分と、大変に対照的と申しますか、著しい違いがそこに認められるというふうになっているということでございます。  なぜこんなに尊属殺人をあくまで厳罰をもって対処しようとしたのかということを考えてみますと、その思想的背景は、当然、儒教において最も重しとされた道徳のうちの孝、孝養の孝、忠孝の孝、明治初頭、明治政府が孝を重要な国民に対する教化政策と位置づけた点に求められるのではないかというふうに考えるわけでございます。もちろん儒教は、我が国徳川時代の武家社会を支配する揺るぎない根幹の道徳となり、さらに徳川末期には心学の普及などに伴いまして、侍だけではなく農工商の庶民にも相当程度浸潤をした基本的な思想であった。そういうことで、これを受けて明治政府は、国民統治の思想的根幹としてこれを用いようとされたものであろうというふうに思います。  したがいまして、封建時代からの伝承にかかわる家族制度の維持強化、これを図ろうとした点にありまして、そういうところに尊属殺重罰という思想的背景があったのではないかというふうに識者は指摘しますし、私もそうであろうというふうに思うわけでございます。  特に、血族の尊属、この人たちを殺すということを重罰にするだけではなしに、姻族、妻の両親及びその祖父母を殺害した場合にも尊属殺にするという点は、やはり今述べたような思想を抜いては説明がっかないというふうにも思うわけでございまして、私は、そういう沿革があったのだというふうに思います。もちろん、それは当時の国民が是認していた思想であっただろう、こういうふうにも思います。  昭和二十年、終戦に伴いまして、ポツダム宣言受諾により旧秩序は完全に否定されたわけでありまして、それに伴って今述べたような思想も根底から否定をされたというふうに思います。  昭和二十二年、日本国憲法発布に呼応しまして、このような思想を一掃する改正作業が行われました。民法典では親族、相続編を全面改正をいたしまして、家とか戸主とか家督相続等の家族制度と関連のある制度は全部廃止したことはもう周知のとおりでございます。なぜ廃止したか。これらの制度が、個人の尊厳と人格価値の平等を尊重すべきものとする新憲法の根本精神と相入れない、矛盾、抵触するというふうに判断されたからであろうと私は思います。  刑法も昭和二十二年、日本国憲法発布に呼応して一部改正が行われたわけでございますが、そのときは、なぜか尊属殺人等、尊属に対する罪については全く手をつけなかった。外患に対する罪等の削除がされたわけでございますが、これにはいろいろな思想的背景があったと思うのです。  私は、このように今までの部分を考えてきまして、刑法で尊属殺人等をあえてその際削除しなかったということは、儒教思想をなお維持するということ以外に、自然の情愛と申しますか、日本古来の純風美俗と申しますか、そういうようなものがなおそこにあって、残してもいいのではないかという配慮が働いたように思うわけでございます。  以上の沿革、経緯に関して、私はそのような認識をいたしておるわけでございますけれども、今回の改正については後で詳しく尋ねるとしまして、それまでの部分につきまして、そのような認識、こういうものについて、法務大臣としてはこの尊属殺についてどのようにお考えになっていらっしゃるのかその点についてお示しをいただきたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 委員から、刑法二百条の沿革、また経緯につきまして御認識を詳しく申されたわけでございますが、委員御指摘のような御理解が一般的に常識であると考えておりますし、私も先生御指摘のとおりと理解をいたしております。  あえて申し上げれば、この立法目的につきましては、端的に申し上げれば、歴史的な沿革の中から、尊属を卑属またはその配偶者が殺害することをもって一般に高度な社会的道義的非難に値するものと、かように考えてこられ、こうした行為を通常の殺人の場合よりも厳重に処罰加重し、もって強くこれを禁圧しようとするところにあったものだ、かように理解をいたしております。

冬柴鐵三新進党

○冬柴委員 先ほどちょっと述べましたけれども、政府が新憲法発布に呼応して、二十二年、刑法一部改正法において尊属殺人の規定を提案をしなかった理由というもの、それから今約五十年を経て提案をされるに至ったいきさつとか、その間の国民の思想の動きとか、そういうものを若干お尋ねしていきたいと思うわけでございます。  このことを考える上において、最高裁判所の昭和四十八年四月四日大法廷判決を避けて通るわけにはいかないわけでございまして、これは周知のとおり、尊属殺人罪を定めた刑法二百条は憲法十四条に違反して無効であるというような画期的な判断を示されたわけでございまして、今から二十二年前になります。  この判決によれば、結論に反対意見を述べた下田武三裁判官のほか、結論においては多数意見に加わったものの補足意見を述べられた岡原昌男裁判官の意見、あるいは、結論において多数意見に従うものの、その基本的な立論において意見を異にするということを明確に少数意見として相当詳細な意見を述べられた田中二郎、下村三郎、色川幸太郎及び大隅健一郎裁判官の意見というものは、今読んでも大変重厚にして精緻な法律論を展開していらっしゃるというふうに思うわけでございます。  こういうような経緯をたどって、尊属殺人の規定が今削除されようとしているわけでございます。各裁判官が推敲に推敲を重ねられた立派な意見だと思うのですけれども、どう評価しつつ今日に至ってきたのかというものを、この二百条、百十五年の歴史を持つ尊属殺の規定が削除されるに当たって、やはりこれは議事録の上においても明らかにしておく必要があろうと思うわけでございます。  まず、非常に特殊な意見、当時として非常に特殊な意見だろうと僕は思います、少数意見を述べられた下田武三裁判官の少数意見の中で、尊属殺を重罰に付するという「立法目的が憲法に違反するとされる各裁判官の意見」、「目的違憲説」とおっしゃっていますが、「にも、また立法目的は合憲であるとされながら、その目的達成の手段としての刑の加重方法が違憲であるとされる多数意見(手段違憲説)のいずれにも同調することができない」のだということを、孤軍奮闘していらっしゃるのですね。  その理由は、なるほど説得力があるのですが、尊属、卑属という関係は、「自然発生的な、情愛にみち秩序のある人間関係」であって、「往昔の奴隷制や貴族・平民の別、あるいは士農工商四民の制度のごとき、」「不合理な人為的社会的身分の差別と同一に論ずることは、とうていできない」、こういうふうに言われまして、「そもそも尊属・卑属のごとき親族的の身分関係は、」憲法十四条に言う「社会的身分には該当しない」、したがって「刑法上の差別を設けることの当否は、もともと同条項の」、すなわち憲法十四条の「関知するところではないと考える」という、相当大胆な議論を展開していらっしゃるわけでございます。  二十二年に削除を見送ったときに、下田裁判官のような意見が政府とか法制審の審議の中で支配的といいますか、あったのかどうか。これは歴史的な問題ですけれども、その点について、法務省の方で、過去の、五十年近い前の話ですけれども、明らかにしておいていただきたい、こういうふうに思います。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 記録を調べてみますと、御指摘の昭和二十二年の刑法の一部改正の時点におきまして尊属加重規定が改正されなかった理由につきまして、当時国会におきまして、司法大臣の発言ですが、ある個人を特に重く保護しようとする趣旨からきているのではなく、我が国における尊属尊重、敬愛の国民感情というものを認めて、いわゆる尊属一般を重んずるという意味で尊属に対する殺傷の罪を重くするということにしたのであり、これに理由があるので改正しなかったというふうに答弁されております。  また、当時の司法法制審議会というのがございましたが、そこでも、憲法改正に伴います刑法の中で改正に関し考慮すべき問題について審議されておりますが、尊属殺規定については存置することで差し支えないものとされておるわけでございます。

冬柴鐵三新進党

○冬柴委員 五十年たつとこれほど国民のコンセンサスが変わってくるのだなというふうに思うわけですけれども、もちろんそれは憲法十四条との関係で、そういうようなものは、憲法十四条は合理的差別までも禁止しているわけではないわけであって、それは、まず客観的には差別に当たるとしても合理的な理由があるという説明であったのだろうと思うのですけれども、下田裁判官のは、もともと憲法十四条はそういうものは対象にしていないのだ、こういうふうな意見でありますから、その点については当時どう考えられたのかはもうやぶの中といいますか、今さらせんさくできないのですけれども、結論においては国民はそれを納得をしていたということが明らかにされるわけでございます。  さて、次に、田中、小川、坂本、下村、色川及び大隅裁判官、もちろん田中裁判官に同調された小川、坂本という方も一緒になるわけですけれども、一致して、当時、昭和四十八年当時ですから終戦後二十七、八年たった後の話でしょうが、「普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人なるがゆえに差別的取扱いを認めること自体が、法の下の平等を定めた憲法十四条一項に違反するものと解すべきである」というふうに、言葉は違いますけれども、その趣旨をそれぞれ明確に述べられた上、詳細な意見を付されているわけでございます。  この意見は、昭和二十二年当時は、今刑事局長から御答弁ありましたように、もちろん二十二年では全くそういう意見はなかったようですけれども、昭和四十八年当時でも、最高裁の十五人の裁判官の中では多数意見を占めることはできなかったのでありますが、その後の大きな潮流はこの意見に向かっていて、現時点では、どうもこの当時の意見が現時点の国民においては多数意見を占めているのではないか、私自身もそのように思います。  この点について政府はどう考えていられるのか、また、このたびの法制審では大体どういうふうな考え方で、この尊属殺を削除するという思想的な背景というものはどういうふうにとられたのか、そこら辺も御説明いただければと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 委員御指摘のとおり、昭和四十八年四月の最高裁判所におきます田中二郎裁判官あるいは大隅裁判官等の、そもそも尊属についてそのような処罰上の法的差別を設けること自体が違憲であるという考え方があるわけでございますけれども、御案内のとおり、いわゆる多数意見は、尊属に対する報恩あるいは尊重という思想は社会生活上の基本的道義である、このような自然的な情愛ないし普遍的な倫理の維持は刑法上の保護に値するという前提に立っておられるわけでございまして、したがいまして、尊属殺人罪を重い社会的、道義的非難を受けるものとして一般的に刑を重くすることは、直ちに不合理な差別とは言えないとされているわけでございます。御指摘のとおり、余りにも極端な法定刑の差という点で憲法十四条に反するということになっておるわけでございます。  さらにまた、御案内のとおり昭和四十九年九月にも、これは刑法二百五条二項の尊属傷害致死罪についての合憲の判決でございまして、そのときにもこの尊属加重規定を設けること自体が直ちに憲法に違反するものではないと最高裁判所も考えていると理解されるわけでございます。  私ども法務当局といたしましては、そういう考え方を前提に今回作業を進めたわけでございまして、したがって、この尊属加重規定を設けるか否かについては、適正な立法政策にゆだねられている事項であると考えているわけでございます。  なお、法制審議会でどういうふうな考え方で臨んだかという点につきましては、これは実は、昭和四十八年の違憲判決後の法制審議会における審議、それから昭和三十九年以降の刑法全面改正の過程でいろいろと議論され、その結果が昭和四十九年に答申がありました法制審議会の答申、いずれも全面的に尊属加重規定を削除しておるわけでございますけれども、そのときの考え方が法制審議会といたしましては今日まで継続しているというふうに私ども受けとめております。  その当時の尊属加重規定全面削除の理由について次に申し上げますと、尊属殺の事案には情状において犯人に同情すべきものが少なくないので、一律に加重規定として取り扱うより通常の殺人罪の規定によって処理する方が適当であることと、それからまた当時の立法調査におきましても、諸外国で、例えばドイツ、ハンガリー等で尊属に対する殺人の加重規定を削除しているという動きがあったわけでございます。今なおこの種規定を存置している立法例は少数であることなどが考慮されたのでありますが、法制審議会の総会におきましてもこの考え方を維持するのが適当とされ、尊属殺のほかいわゆる尊属加重規定全般について現行法の規定を削除すべきが相当である、こういう考え方であったと理解しております。

冬柴鐵三新進党

○冬柴委員 大分明らかになってきたのですけれども、下田裁判官のいわゆる目的違憲説とか手段違憲説ということからいえば、目的違憲説まではとらない、どうも手段違憲説というようなことだろうと思うのです。私も、子供が親を尊敬し尊重するということは、これはもう普遍の道徳原理であって、これは儒教とかなんとかを超越した、人類普遍の基本的な道徳の重要な徳目の一つだろうというふうに思います。  けれども、私は、こういうものは、田中裁判官等もおっしゃっていますけれども、それは自律規範たるべきだろう。みずからが生まれながらにして、そういうものは人間であれば持つはずであるし、また持つことが当然であるし、教育の中でもそういうものを涵酒するということは必要だろうと思うのですけれども、他律規範として法律でこれを強制するということはいかがなものか。  私は、今憲法十四条の中にこんなものは含まないんだという下田さんの意見には到底左袒できませんし、それはそうなるだろう。けれども、では合理的かどうかといえば、刑法でそういう徳目を、強制するわけじゃないけれども反した人を重罰するということは、裏返せば同じようなことだと思うのです。法の世界ではそういうものは取り入れるべきではないのではないかというふうに私は思っているわけでございます。  法務大臣から、これは法律家じゃなしに、そういう徳目、これは他から強制されるものでなしに、みずから自分の行動を規制すべき規範としてこれは持ち続けるべきものであろう。刑法典からこの尊属殺の規定がこの際、あるいはその他尊属に対する罪が全部削除されたとしても、そういう子が親に対して尊敬し敬愛をするということを、日本国民全体がそういうものはなくしてもいいんだというようなことを言っているわけでは決してないわけであって、徳目として依然として厳然と守るべきものであって、これは日本国内だけではなく地球上どこであってもそうだろう。しかし、それを他律規範である法で強制すべきものではないという、そういう考えで削除することに私は賛成するし、そうあるべきであろうというふうに思っているわけですけれども、最後に、法務大臣にその点についての所感、法務大臣の個人的な見解で結構ですが、お伺いをしたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 尊属に対する尊重の考え方というのは、まさに人類普遍の、今日も私どもが共有するものであろうと思っております。  そこで、まさにこうした倫理は本来他律的ではなくて自律的規範に求められるものであるという先生の御指摘でございますが、まさにこうした、ある意味では倫理という問題でございますので、倫理そのものは個人の心の中の問題でございます。個人の心の中の問題を刑罰という手段で、ある意味では国家的に強制することができるのかどうかという問題があろうと私は思っておるわけでございます。  そうした中で、個人的な考えを申し上げれば、尊属と卑属が自然的な情愛また親密の情を持たれて、親が子を慈しみ子が親を尊重して、個人の尊厳また人格の価値の平等観、こうした中で自発的に遵守されるべき道徳であろうと思っております。  こうした観点から申し上げますと、刑法によって求めるべきかどうかというのは非常に議論のあるところでございますが、私は、今日この法改正の中におきましても、こうした今日の考え方というものは裁判の中の裁判官の裁量によって既にもう二十二年間判断をされてきておる、かような考え方に立っておるところでございます。

冬柴鐵三新進党

○冬柴委員 以上で終わりますけれども、これは法律ではこのように消えていくにしても、人類普遍の道徳、徳目でもあるし、裁判所の情状判断の中で十分に配慮されるものであろうということを申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。

中島洋次郎自由民主党・自由連合

○中島(洋)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。倉田栄喜君。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 新進党の倉田でございます。  まず私は、刑法の一部改正案でございますが、表記の平易化、口語化についてお尋ねをしておきたいと思います。  法務省当局の御見解は、表記の平易化、口語化については意味内容は実質変更なし、こういうことでありますけれども、しかし、いわゆる刑法を解釈をいたします場合に、それぞれの学説があったり解釈があったりする中で、言葉の持つ意味というのは大変大きいことはそのとおりだろうと思います。  そこで、この言葉の変更が、御当局では実質変更なしというふうにお考えになっておられても、解釈や学説に実質的には影響してくるのではないのか。それは、学説を立てるときに自説のよりどころとすることは当たり前のことですから、言葉が変更されるとそれぞれの自分の学説に有利に言葉や文言を解釈をされる、こういうふうになってくるのではなかろうかと思います。  そこで、この点をどんなふうにお考えになられるのか。実質変更なしという法務省の趣旨、これがどんな形で担保をされるのか。これは前にも御議論が出たことかと思いますけれども、なおやはり確認宣言みたいなものが必要なのではないのかと考えますが、この点について御見解をお尋ねいたしておきます。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 今回の改正におきまして、現行刑法の用語を可能な限り忠実に現代用語化して平易化するとの方針のもとに、特に法律家だけではなくて、ある意味では国語の専門学者の方にも参加をいただいて検討したようなことでございますが、平易化するという方針のもとに表現の工夫をいたしまして、法制審議会においても解釈に影響がないかどうか慎重に検討したところでございます。  特に、その解釈、学説等によって、用語を変えたために処罰範囲の拡大化を招来するというおそれがあってはならない。これは厳重に考え、取り組んできたところでございまして、現行刑法の解釈との差は生じない、かように考えておるところでございます。  また、今回の改正は一部改正の方式をとりまして、法律番号や条文番号の同一性も維持をいたしておるところでございます。こうした改正の形式も、改正前の刑法と改正後の刑法が同一の内容を保っているという解釈をするためにさようにいたしたと考えておりまして、こうした点から、特段の確認宣言等の措置を講ずる必要はないと現在考えておるところでございます。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 刑法が刑罰ということに関する国民の行為規範である以上、それが国民の皆さんにともかくわかるものでなければいけないことであるとすれば、平易化、口語化ということは私は時期を失するぐらい、当然やらなければいけない作業だ、こういうふうに考えております。  同時に、今大臣から御答弁をいただきましたように、そのことをもって刑罰の拡大であるとかあるいは従来の解釈の変更を伴うようなことが起こって、いわゆる法規範が混乱するようなことがあってはならないと思いますので、今の点は実質変更ない、また確認宣言するまでもなく今までのとおりであるということで承知したい、こういうふうに思っています。  それから、午前中にも既に御議論が出たところでありますが、尊属関連加重規定の削除について、これは前回の当委員会でも、大臣の方からは、法務省としてはこれは立法政策の問題であり、哲学論については議論があるところだけれども、あくまでも立法政策、バランス論で考えた、こういう御答弁がございました。  先ほど午前中最後の質問の中で、冬柴委員の質疑の中で、いわゆる刑法と道徳、法と家族、そういうことについてどういうふうにお考えになるのかということを含めて御質問がありました。私も本会議で質問させていただいたときに総理にはそのことをお聞きしたわけでございますけれども、必ずしも総理の御答弁は明確でありませんでした。法務省としてはいろいろ立法政策、バランス論ということで、私はそれも一つのお答えかと思いますけれども、やはり政治家としては一つの哲学を持って行動すべきである。そういう意味からすれば、政治家は、政治家個人としては本来よって立つところを明確にすべきである。  こういうところから、大臣御自身は、いわゆる子の親に対する報恩、尊重の心というのを刑法でもって保護するに価するかどうか、これは哲学論あるいは法律と道徳という世界になるわけですけれども、どうお考えになりますかと御質問をさせていただこうと思っておったわけでございますが、午前中、その点大臣からは私は明確に御答弁があったと思いますし、大臣の御答弁を評価したいと思いますが、大臣、何かその点について補足、御説明されるところがありますでしょうか。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 けさほど冬柴委員の御質問にお答えし、先生からも今御質問で御評価をいただいたことは大変ありがたく思っております。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 そこで、今回の尊属加重規定、法務省としては立法政策、バランス論で通常の刑で十分対応できる、こういうことでございましたけれども、やはり一方で社会がこれだけいろいろ変わってきている中で、子の親に対する尊重、報恩の心、こういうことも自然法の問題として大変重要なことかと思うのです。  そこでちょっとお聞きしておきたいのですけれども、バランス論というお答えでございましたので、尊属殺人、これは最近の傾向、去年ごとしあたりで結構でございますが、ふえているのか減っているのか、この辺はどうなっているのでしょうか。さらに、科刑の実例、法改正を伴うまでもなく、尊属殺の規定を適用せずに普通殺でやってきたということでございますが、執行猶予の例。さらに、もし把握をされておられるならば、逆に親が子を殺した場合、これは件数的にどんなふうになっているのか。  これは教育とか道徳観、いわば解釈の仕方はいろいろあると思いますけれども、法律が親子の尊重の世界に入っていかないというふうな考え方が一つあるとすれば、その考え方は何らかほかの面で、教育なり道徳なりそういうことで担保されなければいけないと思いますので、最近の尊属殺人あるいはその逆の場合の件数、刑の現状を含めて御説明をいただきたいと思います。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 まず尊属殺の事件の数の推移でございますけれども、昭和五十年以降平成五年まで、これは裁判にかかった事件について申し上げますと、合計で二百九十九件ございます。年間の数字というのは、これを割りますと大体二十で割るので十五件程度ということになってまいりますが、この数字はほとんど横ばい状態、多少の増減はあってもほとんど横ばい状態で、そう大きな変化はございません。  尊属殺につきまして、科刑の状況でございますが、今申し上げました二百九十九件の中で重いものを申し上げますと、死刑、無期または十年以上の懲役に処せられたものが八十件で二六・八%程度になります。その一方で、五年以下の非常に軽いといいますか、刑に処せられたものが百件で三三・四%程度になります。  一方、子殺しにつきましては、これは平成元年から五年までの数字を申し上げますけれども、殺人の件数としては二百九十一件と承知しております。この中で重いものを申し上げますと、無期または十年以上の懲役に処せられたものが二十件、七%前後、五年以下の懲役に処せられたものが二百四十五件、これはかなりの数に上っております。卑属殺の場合に、無理心中型とかいろいろ同情すべき事情が多いというのもまた一つの典型で、こういうような数字になっているのかと想像しているところでございます。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 次の質問ですけれども、刑法百九十五条の特別公務員暴行等については、今回表記の平易化ということで、例えば「陵虐」については「陵辱若しくは加虐」、こういうふうにされております。これも少し難しいかなと思います。しかし、「陵虐」よりも今回の方がはるかにその意味、内容が明らかになっていると思います。  今まで当委員会でも何回も、この特別公務員暴行等については事件もありましたし、議論もございました。一方で、被疑者にとってはある意味では社会的地位、いろいろなものがかかわってくるわけですから、なかなか事件の真相というものを供述しがたい状況もある。その中で、一方で捜査官としては何としても自白を得たいというか、真相を得たい。その捜査の、取り調べの過程の中で、行き過ぎた捜査のあり方、あるいはこれはいかにもどうかな、こういうことがあったことは既に御承知のとおりでございます。  今回、「陵辱」、この言葉の意味からすれば、捜査をするときにどこまで果たして許されるのかということは、これは捜査当局も重大な関心を持ってその後指導されておられると思います。これも昨年、ことしあたりで結構でございますが、捜査官がこの件で問題になった件、それから起訴された件、これは警察庁と法務省当局にお聞きしたいと思いますけれども、その後どんなふうになっておりますでしょうか。  さらに、この問題に関連をして、いわゆる取り調べの密室性、これに対する批判というのは従来からあったわけでございますが、今申し上げたとおり、取り調べのあり方についてもどのような指導がなされているのか、お尋ねをしたいと思います。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 初めに、特別公務員、警察官なり検察官等が当事者となっております特別公務員暴行陵虐、あるいはまたそれによってけがを負わせたという罪で起訴されました件数でございますけれども、平成五年中には三件、七名ということになっております。平成六年につきましては、そのような罪で起訴された事例の報告は受けておりません。  捜査等の過程で、特別公務員が参考人なり被疑者なりに暴行陵虐の行為に及ぶということ、これはあってはならないことでございまして、現に一昨年、検察官につきましてもそのような案件が続きましたことを私どもは深刻に受けとめておるわけでございまして、これまでもたびたびの御審議の際に検察の対応を御説明申し上げていたわけでございます。  今日まで、一線の検察官に対しまして、いろいろな機会で事件関係者の人権の尊重、あるいは特に、いわば物理的な力を事件関係者に加えるなどということは、どのような場面であっても調べの過程において一切許されるものではないという趣旨のことをよく徹底しておるわけでございます。  それからまた、一般的にどのような心がけで調べに臨むべきか。これらにつきましては、検事に採用いたしました早い段階でそれぞれの配属庁で指導を徹底しておるわけでございますけれども、本年四月から、新しく検事になりました者を全員東京に集めまして、そこで合宿方式による自己研さんと相互錬磨を含めまして、基本的な捜査に対する、あるいは公判に対する心構えというものをみっちりと指導するということを行いつつあるわけでございます。

林則清警察庁長官官房人事課長

○林説明員 お尋ねのいわゆる特別公務員暴行陵虐罪で警察官が起訴されたという件数につきましては、平成五年中には二件、六名ございます。平成六年以降は、これはございません。そういうことで、減少傾向にあるというふうに承知しております。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 取り調べの関係についてお答えをいたします。  被疑者の取り調べは、事案の真相を解明する上で重要な捜査手法の一つであると認識しておりますけれども、この取り調べも、委員御指摘のとおり、憲法、刑事訴訟法その他の法令の規定を遵守して行われなければならないということは当然のことでございます。  私ども、いやしくも人権を侵害することのないように、従来から部内の指導教養の徹底を図ってきたところでございます。まず、任意性の確保を第一に努めて、食事、休憩等に配慮する。あるいは、証拠を十分に収集した上で被疑者の取り調べを行いまして、得られた供述につきましては裏づけ捜査を徹底する。あるいは、無罪判決等において指摘されました場合につきましては、これを真摯に受けとめて、検討会を開くなどの措置を講じておるところでございます。  今後とも取り調べの適正を期するために、さらに指導教養の徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 取り調べと人権、捜査の密行性あるいは取り調べの密室性というものをどう考えていくかということは大変重要な問題だと思いますので、どうぞ指摘をされることがないようにやっていただきたいと思います。  そこで一つだけ。取り調べのときの弁護人を立ち会わせるとかいろいろ議論はあるところでございますが、特に被疑者が未成年の場合ですね。未成年の場合、刑事事件として取り調べを受けている場合、これも現行法上は成人の被疑者と同じような形で取り調べを受けていて、その少年の保護者であるべき両親さえもなかなか面接できないというケースもたまたまあります。私は、特に少年等の場合は、青少年の場合は両親が面会する場合は基本的には制限なしで認められるべきではないのか、あるいはもっと弾力的に考えていくべきではないのか、こういうふうに思いますけれども、この点、一般論で結構ですが、今どんなふうにやっておられますか。

渡邉晃警察庁長官官房総務課留置管理官

○渡邊説明員 少年の被留置者に対しましては、両親あるいは保護者から面会の申し出があった場合におきまして、接見禁止が付されている場合、あるいは夜間のために申し出に応じることができないというような場合等を除きまして、速やかにこれに応じているということでございます。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 接見禁止が付されている場合が問題になるケースが多いのだろうと思います。  少年事件に関しては、国家はその少年の保護者である、こういう観点から少年現件は運用されているということでございますので、あくまでもそういうことからすれば、その少年をどう保護育成していくか、今後の未来のことが重要なことでありますから、これもその接見禁止のあり方も含めて十分御検討をいただきたいことだ、こういうふうに思います。  そこで、次の質問に移らせていただきますけれども、國松長官が狙撃をされました。私は、この事件については、それは同僚の皆さん方もあるいは御当局の皆さん方も同じだと思いますけれども、大変なショックを受けておるわけでございます。そこで、冒頭ちょっと心配ですからお聞きいたしますけれども、長官の症状は現在いかがでしょうか。

近石康宏警察庁警備局警備課長

○近石説明員 國松長官の容体は安定しており、快方に向かっているというふうに伺っております。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 いわゆる治安、秩序あるいは国民が安全であるということ、長官が警備体制、警備、警察、治安のある意味ではトップ、これが狙撃をされるということは、非常に大きなはかり知れない不安もありますし、実は危機管理という言葉が最近地震にも関連して、あるいはいろいろな意味でも言われますけれども、これも非常に大きな危機管理の問題として実は重要な問題なのかな。  我が国がかつてこの問題についてそれほど深刻な議論はしてこなかった、今回の長官が狙撃をされた、警護はついていたというふうに聞いていますけれども、警護、防備のあり方、こういうことも含めて、今後これは非常に重要に、深刻に受けとめて、いわゆる国家の危機管理のある意味では大きな危機であるというふうに受けとめていただきたいというふうに考えております。  そこで、長官等の警護ですね。これは今回のことを踏まえながら、今後どのようにやっていかれるつもりなのか、これもお尋ねをしておきたいと思います。

近石康宏警察庁警備局警備課長

○近石説明員 長官等所要の警察幹部につきましては、これまでも自宅周辺に警察官を配置するなどして警戒を実施しておりましたが、去る三月二十日いわゆる地下鉄サリン事件が発生したことなどに伴いまして、警察官をなお増強配置して警戒を強化していたところであります。しかしながら、先般長官に対する狙撃事件が発生したことにかんがみまして、主要な警察幹部につきましては、さらに自宅等の警戒を強化するとともに、警察官による身辺警戒もあわせて行うこととしたところでございます。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 単純に警備をするということも、今までそういうことはなかったものですから、ある意味では警備をどういう形でやっていくのかということも含めてこれは深刻に受けとめていただいて、警備のあり方、どこが一番危ないのか、どういう形できちっと警護しなければいけないのか、これは十分に御検討をいただきたいと思います。  同時に、いわゆる銃社会、これは他の委員会で今御検討されていることだと思いますけれども、最近いわゆる銃犯罪というもの、これも治安、秩序という観点から国民の皆さんは大いに不安を持っておられるだろうと思います。暴力団以外の一般人の犠牲者も、銀行の役員の話だとか、あるいは出勤途上のお医者さんの話だとか、そしてごく普通の人が銃を手に入れたいと思ったら手に入れられるような状況があるという報道もなされているわけであって、これもどういうふうに対応していくのかということも大きな課題だし、私は、これも非常に大きな危機感を持っているわけでございます。  そこで、地方行政委員会等で御議論もなさっていることと思いますので、これは一般論として、いわゆる銃社会、銃の取り締まり、これを今後どんなふうに取り締まっていかれるのか、あるいはどんな対策を立てていかれるのか、お聞きをしたいと思います。

井上美昭警察庁生活安全局銃器対策課長

○井上説明員 悪化するけん銃犯罪情勢を踏まえまして、警察としましては、昨年末の関係閣僚会合や関係省庁会議においてけん銃対策の強化を申し合わせて、これを受けまして、専門的捜査員の増強等により取り締まり体制を強化するなど、全力を挙げて各種けん銃犯罪対策を推進しているところであります。  また、特にその中心となる施策といたしまして、現下のけん銃情勢に緊急に対応するべく、必要な規定を整備するため、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案を今国会に上程しているところであります。  その内容は、第一に、けん銃等の発射を抑止する観点から、新たに発射罪、けん銃実包の不法所持罪を新設する。第二に、けん銃等の密輸入等を防止する観点から、けん銃等の密輸入等に関する罰則を強化するとともに、通関の際にけん銃等を抜き取り、または別のものに差しかえた上でけん銃の密輸入等に関する人物を特定し、検挙しようとする捜査手法、いわゆるクリーン・コントロールドデリバリーの実効を上げるための罰則を新設する。第三に、警察官または海上保安官は、けん銃等に関する犯罪等に当たりまして、都道府県公安委員会の許可を、受けてけん銃等の譲り受け等をすることができる旨の規定を整備するなどの内容でございます。  警察といたしましては、改正法の成立の暁には、これに盛り込まれた規定を有効に活用しまして、関係省庁との連携をさらに密にしまして、警察総力を挙げてけん銃取り締まりをより一層徹底し、けん銃事犯の根絶を図っていく所存であります。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

倉田栄喜新進党

○倉田委員 銃刀法が大幅に改正されて、今御答弁の中でいわゆる泳がせ捜査というのも導入をされる、これは銃社会ということから考えればやむなきことなのかな、こういうふうにも思います。秩序、安全ということは、懸命に努力をしなければなかなか維持できないという現状が今日本の中にあるわけですから、御当局の御努力をお願いしたいと思います。  同時に、一方で取り締まり強化ということを申し上げますと、やはり一方で人権という重大な価値もあるわけでございますから、これが一方的になっていってはいけない。そこも十分に御配慮をいただきたいと思います。  例えば、一般論として申し上げますけれども、今回のいわゆるオウム真理教の捜索、当初、三月二十二日は逮捕監禁容疑、二十六日に殺人予備容疑、その後いろいろな容疑がつけ加わっているだろうと思いますけれども、捜索する場合については、憲法三十五条は物の特定、場所の明示ということはきちっと要求をされているわけでございますので、適正手続できちっとそこはやっていただかなければならない。この点についても、それはきちっとなされているかどうか、一般論で結構ですので、お答えを願いたいと思います。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  警察におきましては、犯罪捜査を遂行するに当たりまして、法令の定めるところに従いまして、一つ一つ真相の究明に努めているところでございます。  御指摘の点にございましたオウム真理教の関係におきましても、三月二十二日の監禁の時点の中において適正に行われておるということでございます。また、サリン等を生成するに足るような薬品類につきましては、殺人予備罪についての差し押さえを行っている状況でございます。今後とも、私ども、適正な捜査が行われるよう指導督励してまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 もう時間が参りましたので、最後に大臣に、これはまた後で同僚委員からも質問があると思いますけれども、今回の刑法改正、今回は内容の実質的な部分は余り伴わないことでありますけれども、残された問題は大きいかと思います。  そこで、これは要望でもいろいろ出ておりますけれども、法制審議会とかあるいは刑事法部会の審議資料をやはり公表した方がいいのじゃないかな、こういう議論があるということは大臣も御承知かと思いますが、これはいかがでしょうか。私は公開すべきであると思いますが、公開の考えはないのかどうか、大臣に最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 法制審の中で、刑事法部会においては公開を現在いたしておらないことは御承知のとおりでございまして、これは法制審議会規則四条で、会議における自由な言論の確保、それから審議の過程で知り得た公務上の秘密が漏れるのを防止するため、こうなっておるわけでございますが、かつて、部会等でも議論する中で、歴史的にも、確かに自由な言論を確保しがたくなるような実態も歴史的にはございました。  そんなこともございまして、現在、公開すべきでないとされておるわけでございますが、時代もかなり変わってきておることも事実でございますし、こうした委員会の御議論も踏まえて、部会において良識を持って対応していただけるものと考えております。

倉田栄喜新進党

○倉田委員 以上で終わります。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 富田茂之君。

富田茂之新進党

○富田委員 新進党の富田茂之でございます。  まず、刑法の一部改正に関しまして、尊属加重規定の一括削除が今回出てきたわけでありますが、このこれまでの経過について若干質問いたしたいと思います。  午前中、冬柴委員の方から、尊属加重規定の一括削除の思想的背景とか、新憲法下での一括削除の問題等について質疑がございましたが、ちょっと観点を変えまして、昭和四十八年当時、先ほど則定刑事局長の方から法制審での審議の中の一部の御紹介がございましたが、そのあたりの点について、ちょっと御質問をいたしたいと思います。  当時の新聞等を調査室の方からいただきまして読んでみたのですが、それによりますと、昭和四十八年四月四日の最高裁大法廷判決を受けまして、同年五月十一日、法務省の方で尊属加重規定を全面削除した刑法改正案要綱を決めて法制審議会に諮問、法制審議会は、これを受けまして同月十四日に総会を開いて審議した結果、諮問内容をそのまま認めて法務大臣に答申したというような経過が新聞報道でされておりました。  法制審議会の中では、   総会では、最高裁の尊属殺人罪違憲判決は重罰自体を違憲としていないので、二百条の刑の下限を引下げるだけの最小限の修正にとどめ多数意見に従うべきだ、との反対意見が出された。しかし、同審議会で審議している刑法全面改正草案はすでに「尊属重重罰」を削除しており、国民意識を踏まえた立法政策としては全面削除が妥当だとして圧倒的多数で原案を支持した。こういうふうに四十八年五月十五日付の朝日新聞が報道しております。  これは報道ですので、このとおりであるかどうかは定かではありませんが、「改正刑法草案の解説」という資料を、これもまた法務省の方からいただきまして読んでみましたら、先ほど刑事局長の方で御答弁の中で御説明されていた、この判決、最高裁の大法廷判決を前提とした場合でも、立法政策としてとり得る方法が二つある。ただ、「刑法全面改正の過程では、準備草案以来、尊属殺に関する規定は削除するという考え方」をとってきたんだということであります。  そして、その理由というのは、先ほども御説明ございましたが、「尊属殺の事案には、情状において犯人に同情すべきものが少なくないので、一律に加重類型として取り扱うよりも通常の殺人罪の規定によって処理する方が適当である」、これが一つ。また、諸外国においてもその当時、四十八年当時、「ドイツ、ハンガリー等で尊属に対する殺人の加重規定を削除しており、いまなおこの種規定を存置している立法例は少数である」、例として、フランス刑法、ベルギー刑法、ポルトガル刑法の三つが挙がっております。このぐらいしかなくなっているんだということだと思うのです。  こういうことを踏まえて、「法制審議会の総会においても、この考え方を維持するのが適当である」とされた、それで企画削除というふうになったんだとこの「改正刑法草案の解説」の中でも説明がされておりました。  新聞報道もほぼ同様と理解しておるのですが、四十八年当時の法制審議会の結果というのは、このように理解してよろしいのでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 今御紹介いただきましたような経緯と理由であるというふうに承知しております。

富田茂之新進党

○富田委員 そうだとすると、審議会の中でも議論されていましたように、四十八年の最高裁判決の事案に限らず、それまでの尊属殺が問題になった事件では、被告人に同情すべき点がかなり多くあったということの積み重ねが、もう既にその四十八年当時であったんだと思うのですね。また、外国の立法例も参考にしてということで、それまで積み重ねられた議論の中でも、もうこれは全面削除でいくんだということでされてきたと思うのですが、法制審に諮問されて、そのとおりの答申がされた。  にもかかわらず、昭和四十八年五月十八日付の朝日新聞の夕刊の写しがあるのですが、これによりますと、大見出しで、「自民、閣議決定を“凍結”刑法改正案「尊属殺」削除に難色」という大きな見出しがついておりまして、記事の冒頭部分で、   政府は十八日の閣議で、尊属殺人罪など一連の尊属重罰規定を全面削除した刑法改正案を決め、今国会に提出することにしていたが、自民党側はこの改正案の国会提出に難色を示し、同日午前の政調審議会で了承しなかった。このため、同改正案はさらに党内で意見調整のうえ取扱いを決めることになり、閣議決定は“凍結”された形になった。というふうな報道がされております。  これは、閣議決定がそもそもされなかったのか、あるいは、決定したけれども提出が凍結されたということなのか。また、このときの法制審議会への諮問と答申の結果、法務省としてはこういう考え方でいくんだというのがこの当時決まったと思うのですが、それがその後どうなってしまったのか。ちょっと経過がわかりませんので、法制審議会に諮問して答申を受けて、その後、それが二十二年ぶりに今回この法案で生き返ってきたというふうに思えるのですけれども、そのあたりの経過について御説明いただければと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 今御紹介がございましたように、昭和四十八年当時、法務当局といたしましては、尊属加重規定の一律削除が相当ということで法制審議会に諮問いたしまして、極めて短期間のうちに、その諮問どおりの答申を得たわけでございます。実は、刑法の全面改正の作業の過程でも、御指摘にございましたように、準備草案ということで、いわば検討材料自体において既に全面削除という方向で御検討いただいていたこともございましたので、極めて早期に答申をいただいたわけです。  それを受けまして、法務当局といたしましては、国会上程に向けまして立案作業と関係部局との調整を行ったわけでございまして、御指摘のとおり、閣議の場でも議論になったというふうに承知はしておるのですが、いわゆる閣議の決定があったかと申しますと、それはどうも、記録を調べてみますと、閣議決定があったことではなさそうでございます。 いずれにしましても、国会で御審議いただくわけでございますから、そのときの与党の御了解を得ませんと成立の見込みがないということで与党調整をさせていただきましたけれども、御指摘のとおり、当時の与党、つまり自民党との間での最終的な意見調整ができずに、国会上程を見合わせたという経緯でございます。

富田茂之新進党

○富田委員 先ほど御紹介しました朝日新聞の記事の中にこういうふうに紹介がされております。   自民党内には①最高裁判決は、刑法二百条の刑が重すぎることを違憲としているのであって、二百条そのものを違憲とはしていない②しかも、この判決は実父が娘に五人の子を生ませた結果、思いあまった娘が父親を殺害したという極めて特異な事件について行われた――などの理由から「親子関係はやはり人倫の大本であるべきで、特異なケースをきっかけに親殺しも普通殺人と同じ罪で処理されるのは社会道徳に反する」という考えが依然として強い。こういうふうな細分をしておりまして、こういう考え方があるからこの時点での全面削除というのはなかなか了承されていないのだというふうな報道になっております。  午前中の審議の中でも、どういう思想に基づいてやるのかという点ではもういろいろな意見があるのはわかりましたし、冬柴委員の質疑に対しまして大臣の方からかなり積極的な御答弁もありました。四十八年のときに、私は大勢ではなかったと思うのですがこのような意見があって、法案の提出までいかなかった。  それが、今回は刑法の平易化とあわせて提出されたということは、当時のような意見はもうなくなっているのか、あるいは、今、こういう意見も一部には残っているけれども、二十二年間、実務の運用の中でちょっと社会状況、裁判の状況も変わってきたのだということで、大方の国民の合意が得られるように情勢が変わってきたということなのか。そのあたり、四十八年当時あったとされる意見について大臣の方で何かお考え方、また、今はこう変わってきているのだというようなお考え方があれば、聞かせていただきたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 四十八年当時、約二十二年前でございますから、今日との国民的な考え方も変わっておったろうと思っております。まさに、先ほど、当時自民党の中においても他律規範なのか自律規範なのかというようなことの意見が一致を見なかった、こういうことで閣議了解もなかったのだ、できなかったのだろう、かように理解をいたします。  最近の世論調査等を見ますと、尊属というもちろん基本的道義はございますと同時に、歴史的な経過から推測いたしまして、やはり家、家督相続等々の今日とは違う環境、精神的にはあったわけでございまして、今日、もちろん家という考え方はないわけではございませんが、家そのものの思想がむしろ家族、ファミリーといいますか、家族全体の中のお互いに尊重し合い、またお互いに愛情を持ち合いという新たな家族意識に変わりつつある、こうした中で今回、加重規定があることそのものがやはり適正ではないという判断から二百条の削除に至った、かように考えておるところでございます。

富田茂之新進党

○富田委員 大臣の意見はよくわかりました。  私どもの新進党の中でもやはりいろいろな意見がございまして、私の次の質問予定者である吉田委員はまた私と全く考え方が異なっておりまして、それが民主主義だと思うのですが、また違った観点からの御質問があると思いますので、この点はこれで終わりにします。  先ほど倉出委員の方から、最後に、法制審議会の審議の公開について御質問がありましたけれども、大臣の方から、この委員会での質疑等を含めて、また部会で検討して、なるべく積極的に検討していきたいという御発言がございました。  自由な審議の保障とか、あるいは委員個人の生活が脅かされるおそれがあるとか、いろいろなことがあってこれまで公開されなかったというのは、前回の委員会の審議でもよくわかりましたし、そこは理解できるのですけれども、例えば議事録を匿名で公表したり、あるいは議事の要約、要点といったようなものを何か一般の人が知り得るような方法はないのか。今回の審議に当たっても、どういう意見があったかということで資料をいただきました。「参考事項」の中に意見としてこういう意見があったというのはいろいろありますので、こういうのも一つ手がかりになると思うのですが、こういう意見があって、その結果どうなったのか、議論の結果どういうふうに変わっていったのかというのがちょっとこの資料だけではやはりわかりません。  新聞報道なんかの中にも、何か一たん議論になったのにもとに戻ってしまったというようなちょっと批判めいた記事もありましたし、そういう点から考えて、委員の中にこういう意見があったのだというような要約がもう少しわからないのかな。匿名での公開も無理だ、要約、要点の公開も無理だということであれば、何か一般国民が審議内容を知り得るような手段がないのかな。先ほど「改正刑法草案の解説」の一部を紹介させていただきましたけれども、ああいう形で、ほかの資料を当たってみると当時の審議会の審議経過がわかるとか、いろいろ工夫はあると思うのですが、そのあたりはどうなんでしょう。

永井紀昭法務省大臣官房司法法制調査部長

○永井(紀)政府委員 お答えいたします。  民事関係も含めまして、法制審議会におきましては、その内容及び審議経過につきましては、その都度報道機関を通じまして発表しておりますし、そのほかいろいろな試案あるいは中間報告とか部会の答申等がありました場合には、多くの場合説明書を付しまして公表して、これへの国民の意見を聞くという機会を設けているケースがほとんどでございます。  それからなお、法案が成立いたしました後におきましては、それぞれの部局において、国会審議の経過につきましても含めて公表しているケースが多うございます。そういうことになっております。

富田茂之新進党

○富田委員 もう少し積極的にいろいろ検討していただきたいなと思うのです。今回この改正案が成立した後、また国民の方から、こういう点がまだわかりにくいとか、いろいろな意見がまだまだ出てくると思うのです。国会で審議されているということも知らない方が多いと思います。  そういうふうな意味で、今後のことなんですが、より国民にわかりやすい条文にするためにどういう努力が必要というふうに大臣は考えていらっしゃいますか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 法制審議会の刑事法部会で細かく議論していただきまして、今回の場合は、今お手元でごらんいただいていますような、主として議論の集中したところの考え方等をメモ形式で出させていただいておるわけでございます。かつて刑法の全面改正の作業をいたしましたときには、やはり大きな、またいろいろな難しい問題を含んでいたこともございまして、法制審議会の審議の内容をレポート形式に要約いたしまして、これを発表させていただいたという努力もさせていただいておるわけです。  今回は、確かに全面的に書き直すわけでございますけれども、内容的にはあくまでも現行法令をもとのままにということでございましたので、あえてそこまではさせていただかなかったわけでございますが、仮にこの審議が終わりまして成立しましたときには、特に用語の問題、それから尊属加重規定の削除の問題、それから聾唖者規定の削除の趣旨等々につきまして、できるだけわかりやすく国民の皆様方に承知していただくように、私どもとしてもいろいろな方法を考えてみたいと思っております。

富田茂之新進党

○富田委員 今の御説明は納得できますが、あと、今後の刑法改正のあり方という点で質問したいのですが、前回の委員会でも、それぞれ問題になり得る事案については、個別に社会的状況が変化すれば検討せざるを得ないだろうというような御答弁がありました。一つ一つ社会状況の変化に応じて刑法典の改正を考えていくというやり方もあると思いますが、「改正刑法草案」でしたか、お蔵入りなのかどうかという議論に対しても刑事局長の方は、そうではないというふうな趣旨ともとれますし、また、あのままでは今の国会の審議にはとても提供できないというのも認識されているというような御発言もありました。  刑法全体として改正に向かっていくという方法をとるのか、一つ一つ、また何か不都合な事情が生じてきたときにそれに適応するように変えていくのかという二通りの行き方というのがあると思うのですが、今後どちらでいくべきなのかについても、やはり国民議論を喚起していかないといけないと思いますし、そのあたりについてもある程度の方向性を法務省の方で何か示さないと、何か行き詰まってしまうのではないかという感じを受けているのですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 やはり二つの道を求めるということになろうかと思うわけでございまして、昭和三十年代から続いてきております刑法の全面改正、これが四十八年に一つの成果があらわれたわけでございますけれども、御指摘のとおり、またこれまで答弁させていただいておりますように、そのままでは今日において国会の審議になじむということはなかなか難しいわけでございます。しかしまた、いろいろとその時点における問題状況を踏まえた新しい考え方も反映されているわけでございまして、私どもは全面改正の大きな道の中で、そこで結集された知恵というものも踏まえながら、なお検討して大きくこれをまた結実させていく必要があると思っておるわけです。  ただ、御案内のとおり、これは相当のエネルギーと時間を要するわけでございます。その間、社会情勢や犯罪情勢の変化に伴いまして、比較的早期に手当てすべき必要性の高い問題もまた現に生起しているわけでございます。それらにつきましては、いわばアドホックにそれぞれの立法技術が高まっております時点におきまして手当てをしていくこともまた必要であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。

富田茂之新進党

○富田委員 わかりました。  最後に、東海大学医学部附属病院で平成三年の四月に、同大の医師が末期がん患者に塩化カリウム等を注射して死なせたとして殺人罪に問われておりましたいわゆる安楽死事件について、三月二十八日に横浜地方裁判所の方で判決が言い渡されました。この点について何点か御質問をいたしたいと思います。  この判決の中で、特に注目される点が二点あるというふうに私は考えております。一つは、治療行為の中止に限って家族の意思推定で足りるというふうな判断が示されました。それがまず一点。あと、積極的な安楽死が容認される基準として、新しく四つの要件を打ち出している。この二点がこの判決ではこれまでなかった点であって、かなり法律的にも注目を浴びるのではないかなというふうに考えております。  特に、積極的安楽死が容認される要件として判決は、一つとしてまず、患者が耐えがたい肉体的苦痛に苦しんでいる、二つ目として、患者は死が避けられず、その死期が迫っている、三つ目として、患者の肉体的苦痛を除去、緩和するために方法を尽くし、他に代替手段がない、四つ目として、生命の短縮を承諾する患者の明示の意思表示があるというような要件を打ち立てられていました、この判決は。  検察当局の方としては、この事件については昭和三十七年でしたか、名古屋高裁の判決で六つの要件が提示されておりましたが、それに従って本件は安楽死には相当しないのだということで、当該事件の論告求刑をされていたというふうに認識しているのですが、今回のこの判決が示したこの二点について法務・検察当局の方ではどのように評価されているのでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 御指摘の二点のうち、今回の横浜地裁判決が積極的安楽死の要件として四つの条件を御指摘のとおり掲げているわけでございます。  法務、検察といたしましては、この判決の説示そのものが今後の検察方針になるというわけではございませんで、御案内のとおり、あくまでも刑事事件でこのような微妙な案件というのは、それぞれ具体的な事情に応じて判断すべき問題だろうと思っておるわけでございます。また、例といたしまして、先ほどの名古屋の例あるいは今回の横浜の例、刑事事件として検討されるケースが非常に少ないわけでございまして、そういう中で直ちにこれが基本方針である、あるいは基本的な検討条件であると言うにはいささからゅうちょを感じておるわけでございます。  したがいまして、今後、いわゆる積極的安楽死についてこれを本当に認めるのかどうか、そういったことを含めまして、まだいろいろな考え方があり得るわけでございまして、法務、検察といたしましては、本件判決やこの問題に関します種々の議論を踏まえつつ、個々の事案ごとに慎重に検討して対処すべきものであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、いわゆる治療行為の中止の要件といたしまして、今回の横浜地裁判決は、治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在し、治療の中止を行う時点でそれがまた存在することを掲げておりますが、他方で、患者の明確な意思表示が存在しないときには推定的意思によることが許され、推定的意思を認定するについては、事前の意思表示が中止の時点と余りかけ離れた時点でなされたり、その内容が漠然としているときは家族の意思表示により補うことが必要である、また、患者の事前の意表示がない場合は、家族の意思表示から患者の意思を推定すること、言いかえますと、患者の意思を推定させるに足りる家族の意思表示によることが許されるとしているわけでございます。  このような要件に基づいて、治療行為の中止を認めることの当否につきましては、治療行為の中止を認める根拠をどのようにとられるかにかかわる問題と考えられ、これにつきましては、これまたさまざまな考え方があるものと思われるわけでございますが、本件は、患者が通常であれば合理的な意思の形成が可能なものである事案を前提とした判断として考えられます。  いずれにいたしましても、検察は今後とも、今回の判決で提起された問題も踏まえ、個々の事案について適切に捜査処理を行っていくべきものと考えているわけでございます。

富田茂之新進党

○富田委員 確かにこの判決は注目はされているのですが、いろいろな問題点を本当に含んでいるのだと思います。家族の意思推定におきましても、では、意思を伝えられない子供さんとか障害を持たれた方たちはどうするのだ、あるいはまた、代替手段がないことという要件を挙げておりますけれども、だれがそれを判断するのだ、お医者さんがそれを一人で判断するのか、あるいは大学や病院の方で倫理委員会、脳死の際の倫理委員会なんというのが問題になっておりますが、そういうようなところで審議するのか、あるいは裁判所の許可を求めるのかとか、まだまだいろいろな問題点を含んだ判決ではあると思います。ただ、これは四年間審理して、相当終未医療とか尊厳死とか、そういう専門家の方たちの証拠調べもやられたようで、かなりよく調べられた上での判決であるなというふうに、資料を読みまして思いました。  報道の中で、オランダではかなり積極的安楽死について考え方が進んでいる。年間で二千件ぐらい実際に積極的安楽死の事例があって、違法であることは違法ですけれども、要件を全部満たせば起訴されないというような取り扱いがされているようであります。その点に関しまして、法務省の方としてはオランダでの安楽死の要件とかあるいはその背景事情等についてはどの程度掌握されているのでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 外国法制でございますし、また最近若干動きがあったようでございますので、必ずしもつまびらかではございませんけれども、私どもの承知しておりますところでは、実体法的に安楽死を容認するという法律はオランダでもまだ制定はされてないようでございまして、かの国では、安楽死などが問題となります不自然死による死体を埋葬しますには、埋葬法の規定によりまして検察官の許可が必要ということになっております。  検察官はその場合に、患者本人がみずから意思を決定して担当医師に対して文書で持続的に死に至る行為を求めること、それから、他の医師の意見も聞いていること、こういうふうな条件を満たしている場合には検察官が当該死体についての埋葬許可を出す。許可を出すことが、ひいては訴追権を放棄する、行使しないという事実上の運営になっているようでございまして、平成五年の埋葬法の改正によりまして、従来から必要とされていましたこのような要件につきまして、担当医師から詳細な報告を質問回答方式ということで求めるという新たな規定を設けたようでございます。そういう意味で、手続的に明確にして、このような要件が満たされていないときには、従来からございます刑法による尊属殺人あるいは自殺幇助の罪で公訴が提起されるというふうになっていると承知しております。

富田茂之新進党

○富田委員 時間が参りましたので最後に、この積極的安楽死は裁判所だけが決める問題ではない。そもそも認められるのかどうか、仮に認められるとして、どのような要件を満たせば認めていいのかということは、本当に国民の合意形成が必要だと思います。法務省として、今後この点についてどのように国民の合意形成を図っていこうというふうに考えられているのか、大臣のお考えをお聞きして質問を終わりたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 安楽死についてでございますが、現在の日本の状況から申し上げまして、例えば今その要件の中に患者の意思表示等の条件もございましたが、その前にいわゆる病名告知と申しますか、それ、前段階も日本の国内では余り、まだ議論のあるところでございまして、そういう意味では、この判決を見ながら道が遠い感も否めないわけでございます。  いずれにしろ、お互いにいつかは関心を持って迎える大事なことでもございますし、また、昨今、世界的には死ぬ権利というような言葉もございますし、自己決定権について、むしろインフォームド・コンセントから始まってそうした全体の国民的論議がこの判決を機会に高まることを実は期待をいたしておるところでございまして、法務省として今どうしたことをもって国民の意思を、あるいは御意見を聴取するという段階には至っておらないということでございます。

富田茂之新進党

○富田委員 ありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 吉田公一君。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 このたび、刑法の一部を改正するという法律案でありますが、今回の改正の主な目的は平易な文章であらわすということが趣旨だと思うのでありますが、それに、ついでといっては恐縮でありますが、ついでに刑法二百条についても削除してしまう。別途に二百条については議論をすべきではないか、そう思っておりますが、その点はいかがでございますか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 確かに、今回の刑法改正の主眼は、現行法規の規定を平易化して国民の皆様方にわかりやすくするというところでございます。ただ、尊属殺人の規定につきましては、御案内のとおり昭和四十八年に最高裁でその規定自体が違憲であるという判決がございまして、それについての立法上の手当てが求められていたわけでございます。  過去の経緯につきましては先ほど来の御質問にお答えさせていただいたとおりでございますが、今回、表現ぶりを全面的に書きかえるに当たりまして刑法二百条の規定をどうするか、これをそのまま書きかえるというわけにはまいらないわけでございまして、過去の法制審議会の二度にわたります答申等々を踏まえまして、やはりこの際内容的に変更を迫られているというふうに受けとめたわけでございます。  しかもその間、昭和四十八年以降二十二年間にわたります裁判実務の運営を振りかえってよく検討いたしてみますと、実態的に、尊属殺人に当たるものにつきましても一般殺の刑法百九十九条が適用され、それぞれの案件に即して、倫理にもとる、いわば悪質なものについては極めて重い量刑がなされ、反面、一般殺の下限に近いあたりに量刑が、多くのものが集中しているという実態もございまして、幸いこの尊属殺の規定がなくとも一般殺の広い法定刑の範囲内でそれぞれの案件に適切に対応し得る、またしてきているという実態を踏まえまして、今回、尊属殺人の刑法二百条の規定を削除するのが相当と考えたわけでございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 一つの事例から違憲判決が出たわけですけれども、四十八年の四月に違憲判決が出て、しかし明治以来この法律はあるわけですし、四十八年以来二十三年たっておりますが、続いてきたことは確かです。その間、百九十九条を適用してきた。だけれども、本来は二百条があるのですから、百九十九条を適用するということ自体が本来は法律からいっておかしいのではないか、こう思うのです。  平易に改めるときに二百条を削除してしまおうということについて、いかがかと思っているわけですが、なぜ四十八年以来改正をしなかったか。先ほど富田委員からお話がありましたが、自民党が、内閣がと言っていましたが、だけれども、今回だって平易な文章に改めるときに削除として出てきたわけですから、その点の経緯について、なぜこのときにあわせて削除したのかということについて伺いたい。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 四十八年に一度立法上の手当てを試みたわけでございますが、先ほど御説明のような状況で実現するに至らなかったわけでございます。その後も実は、当時の野党であります社会党、あるいはその後与党の方にお変わりになったりしていることがございますけれども公明党、あるいは野党ですね、民社党等々で、単独あるいは共同提案ということで、昭和五十五年ごろまでに三回にわたって議員立法を求める動きがあったわけでございます。いずれも一律削除ということでございます。  しかしながら、それらがいずれも審議未了、廃案ということになっているわけでございまして、法務当局といたしましては、そのような状況を踏まえまして、昭和五十年代においては、あるいはその後の一部改正の時点におきましては、なかなか単独でその問題に限って立法上の手当てをするということは難しい問題を含んでいるのではなかろうか、こういうようなことであったわけでございます。  しかしながら、先ほど申しましたように、今回は全面的に法文を書き直すわけでございますので、そこで法務当局といたしましても、これはもう踏み切らざるを得ないという必要性に迫られてきたというのが実情でございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 二百条だけ取り上げてやるということは立法上非常に困難である、こういうことでありますが、それはむしろ、立法上困難であるのではなくて、要するに、我が国の民族の歴史あるいはまた倫理、儒教、宗教観、そういうものに基づいてそのことが余りに強く出されたので、封建制の名残じゃないか、あるいはまたかつての日本の精神構造の中心になっていた家、そういうことも考えてなかなか難しかったのではないか、そう思うのですね。  だから、立法上の技術的な問題よりもそういうものが背景にあったから難しいのであって、これは、二百条そのものはまさにおっしゃるとおり大変難しい問題だとは思うのですね。歴史的、倫理、儒教的、そういう、どこの民族にもどこの国土にもそうした民族独特の歴史というものがあるわけですから、何もヨーロッパのまねをする必要はないわけだ。中国には中国の歴史があるわけですね。東南アジアには東南アジア、日本には日本の歴史があるわけですから、つまり封建制度の名残だ、つまり戦前の家の制度、そういうものの名残がこの二百条にあるんじゃないか、だから、近代的になった今の日本の民主主義の中ではこれは不都合な話だ、こういうことになったんでしょうか。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 実は尊属に対する考え方が変わったのかあるいは否定するのか、強いて言えばこういう御指摘だと思いますが、尊属に対する尊重、報恩が今日も社会生活上基本的な道義であるということは、これはもう申すまでもない、かように思っておりますし、これは、ある意味では世界に共通する考え方、道義であろうと私は思っております。まさに法律以前の、人類共通の普遍的道徳であろうと思っております。  そこで、尊属と卑属とが自然的情愛と親密の情によって結ばれて、親が子を慈しみ子が親を尊重するということ、これは個人の尊厳と人格価値の平等の原理の上に立っても、まずもって個人の自覚に基づいて当然自発的に遵守されるべき、ある意味では普遍的な道徳あるいは倫理だ、かように考えておるところでございます。  ただ、尊属加重規定が刑法から削除されたゆえに、かつての言葉で言えば孝の徳が守られ、なくなったら孝の徳が守られなくなる、こういうような考え方をとっておるわけではございません。尊属加重規定を削除するということは、決して尊属、つまり親をないがしろにするということではない、これはもうはっきり申し上げられることでございます。むしろ、親族の間の犯罪という非常に悲しむべき事柄に対して、その事案の実情に即して、かつまた、家族という間の自然的情愛ないし普遍的な倫理を破壊した行為のいわば実情、内容に応じた科刑を可能にするものの改正である、かように考えておるところでございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 親子というのは本来自然愛でありますから、これは法律があろうがなかろうが当然のことだ、こう思っております。  ただ、親子の殺人を百九十九条と同じに取り扱え、こういうことなら、それでは、家族、親族間の犯罪に関する特例なんということ自体もおかしいんじゃないでしょうか、そういうことから言えば。つまり、親子のことについては別に尊属罪というのを規定してあったわけです。それでは、今度は親族に関する特例規定などというのは、これは他人と同じように取り扱ったらいいのじゃないか、そう思うのですが、いかがでございますか。  例えば、親族間の犯罪に関する特例というのがある。普通の人がやったら罪になる、だけれども、親族間の犯罪に関しては特例で、第二百四十四条第一項においては、特例を設けて免除する。それはなぜか。親子という家庭の特殊な中だから、特例として免除するのでしょう。そういう法律もあるんだ。だから、これはほかの窃盗罪や強盗罪や傷害罪と同じようにやればいいじゃないですか、他人がやったように。親族間の問題だけ特例に扱う、これもまず一つ関連としておかしいね。  それからもう一つは、どんな事情があっても生んでもらった子供が親を、それは相当ひどい事例があると思う。だけれども、いろいろな事情があれば親は殺されてもしょうがない、これは情状酌量の余地がある、そういう倫理になることが一番怖いんだね、事情があればいいんだと。しかし、人の命は、酔っぱらいであろうが何であろうが、どんな罪を犯した人であろうが命は命だ。どんな非道なおやじでも、殺した本人の忍耐力がなかったのかもしれないだろう。そして、大きく広い幅で人の社会を見ることができなかったかもしれない。もしそういうことができたら、何も親を殺さなくても済んだかもしれないだろう。だから、子供にも一〇〇%いいと言うわけにはいかないわけだよ。  だから、そういうことを考えますと、尊属罪というのはやはり残しておかなければおかしい。だって、法律というのはもともと予防的なこともあるわけでしょう。あなた、こういうことをしたらこういう罪になりますよということだから、人の物をとらないようにしてみたり、人をぶん殴ったりしないようにしている。暴力団同士で張り倒して、それでけん銃で殺したって、これは尊属罪と同じ法文で適用するなどということ自体がまず間違えている、私はそう思っておりますが、いかがですか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 財産犯につきましてのいわゆる親族相盗の規定とのかかわりということでございますけれども、これは親の物を勝手に子供が持ち出したときに、親としては警察ざたにしたくもないのに官憲の方がそれを検挙して処罰するというのが、いわば家庭の平穏等々からいいまして好ましくないというふうな考え方に基づいているものだと理解しておりまして、これは尊属について、それが被害者となった場合に子に対する加重規定を置く趣旨とはいささか場面を異にしておるのかなと思っておるわけでございます。  尊属に対して卑属、子供が危害を加えるということと暴力団抗争等々と対比の問題でございますけれども、その場合の尊属ということで委員も念頭に置いておられますのは、あくまでもあるべき親、いわば人倫の身として国民の頭にある平均的な親という姿であろうかと思うわけでございます。ところが、現実にそういう尊属殺が問題になります親という場合に、そういう基準から見て、人倫として親としての務めを果たしているのかどうか、こういったところが大変問題になるケースが実は大変多いわけでございます。  従来、この最高裁の四十八年の違憲判決が出ます前にも、法律上可能な二回のいわば刑の軽減措置を講ずる等々の案件もあり、かつまた、嫁が夫を亡くした後、そのしゅうとめ等を悲惨な状況で殺したという場合に、それはもはや尊属ではないというふうな理屈の上で一般殺に適用して、その具体的な案件に適切な量刑を図ろうとしたというふうな流れがあるわけでございまして、基本的には、結局、いわば戸籍上の尊属としての親ということ自体において、特に一般の殺人と区別してこれを加重する必要があるのかどうかといったところが、具体的なそれぞれのケースを通して見た裁判官の頭の中で、どうも割り切れないところがあったというのが実情ではないかというふうに思うわけでございます。     〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 そこで、先ほど富田委員からお話がありましたように、加重規定が百九十九条と違ってあるわけですね。だから、いろいろな特別な例が出てきて、そしてこの死刑か無期懲役しかない。だから、どんなにその子供の方をかばってやりたいと裁判官が思っても、つまり無期懲役か死刑しかないのだから。それはだれが考えたって非道なおやじだ、思い余ってやったことだから、裁判官も人の子だし、それは気の毒だ、こんな事例は。だけれども、二百条しかないということになれば、特例でも設けて、そしてやらなきゃしょうがないわけでしょう。  だから、加重規定が重過ぎるからできないのだから、もう少し百九十九条のように三年以上の懲役に処す、こういう一項を設けるなり、あるいは二百条第一項で別に法文を設けて救済する方法というのはあるのじゃないですかね。その点はいかがなのですか。いきなり削除してしまうなんということよりも、もっと知恵があるでしょう。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 実は従来からも、刑法二百条の規定が違憲であるということを踏まえまして、削除以外に方法はないのか、これは議論が確かにあったわけでございまして、御指摘のように一般殺の最低刑、つまり下限が懲役三年ということになっておるわけでございますので、これを仮に四年とか五年とかという形で残すということも考えられるわけでございます。  ただ、先ほどもちょっと触れましたが、昭和四十八年以降二十二年の長きにわたりまして、一般殺の規定で裁判の実務は現実に動いてきたわけでございます。その中で、また判決例の多くは、一般殺の下限に近いあたりに相当集中しているわけでございます。そういう実態があるところに、今日に至りまして、これを仮に下限を五年という案で尊属殺の規定を手直しするということになりますと、いわば刑の引き上げということになるわけでございまして、従来一般殺の最低三年あたりに集中しておりました案件につきましては、それらの同種の事案が起こりました場合に法定刑自体の範囲内で適切な量刑を盛ることが困難になってしまう。また、それらの人にとりましては刑の引き上げを受けたということになるわけでございまして、そういう意味で、これはやはり避けた方がよろしいのではなかろうかという判断に至ったわけでございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 それは百九十九条と比べるからそういうことになるので、二百条そのものを独立して考えれば重いも軽いもないわけですよ。百九十九条と考えて、今までの判例が百九十九条に近い、だから、加重刑になってしまうのじゃないか、こういうお話ですけれども、だけれども、それは執行猶予をつけたっていいのだし、裁判官の情状酌量で判断ができるようにするという、つまり日本の民族や歴史や倫理や道徳や宗教観というものをまさにこの一行をもってなくしてしまおうなんという乱暴な話ですよ、私に言わせれば。  もっともっと本来は立法政策の範疇に入る話です。そんなもの、平易な刑法改正のときにどさくさに紛れて削除してしまおうなんという話じゃないのです。もっともっと本来は立法政策の範疇に入るのだから、我々立法府の国会議員がもっと議論をして、削除をしたいのだがという提案をして、十二分に議論をしてもらいたい。これは、我が国の歴史や民族や倫理や宗教観に基づく大事な法律案を、削除したいのだが、ぜひ国会でもっと論議をしてもらいたいというのが本当の話じゃないですか。そういうことを省いてしまって、こういうときについでに削除してしまおうなんということ自体が間違いだ、私はそう思っているわけですね。立法政策の範疇だと私は思っているわけです。  それから、次に、最高裁の判決で違憲判決があったからこれを削除するのだという理由でありますが、しかし、先ほど私が申し上げたように、裁判官も人の子であり、そしてそれぞれ世間も知って人情もある。そうすると、この四十八年のこの事案については、要するに無期懲役か死刑しかないというような二百条でこの人を処罰するということは忍びない。したがって、違憲判決をしてから、二年六カ月というまさに百九十九条以下の判決をしているわけでしょう。どうもそういうことがあるのではないか、そう思うのですよ。  ただ、真意のほどはわかりませんよ。私は、違憲判決をしなければ、この四十八年四月四日の最高裁の判決は、違憲判決にしておかなければ、二年六カ月しかも二年の執行猶予つきだ、できなかった。だから違憲判決にしたのではないか、そう私は推論をしているのですよ。したがって、刑法百九十九条の適用よりも軽くなっているのだから、その辺どうなのですか。二百条の適用より、百九十九条よりか軽くなっているのですよ。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 最高裁判所裁判官の思考過程を推論するというのはなかなか難しいわけでございますし、またそれについて法務当局がコメントするというのは本来は差し控えるべきことだと思うのですが、一般的には刑事裁判官の場合に、私ども法務当局あるいは検察官の職務をやっておりました経験から推測いたしますと、やはり御指摘のような適正な量刑、その事案に即した適正な量刑がどの辺にあるかということが相当早い段階から頭にあると思います。  そういうことを前提といたしますと、御指摘のように当該四十八年で問題になりました案件について、どのように法律上の軽減規定を適用いたしましても三年半を下らないという点において相当引っかかかるものがあったのか。そこで、よくよく考えてみれば、余りにも法定刑が過酷過ぎて、それが一般殺との間における平等規定との関係上、憲法上問題になる、こういうことであったのか、これはあくまで推察でございますけれども、そういうことかと思います。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 おっしゃるように、私の先ほどの質問もあくまで推論なのですよ。だけれども、二年六カ月という百九十九条にもない、二百条にもないような判決を出したということは裁判官の、私は人としての判断をしたと思っているのですよ、法律じゃなくて。一人間としての判断をした。これはこれで立派なことだと思いますし、私どもも称賛に値することだと思うのですよ。  だけれども、本来は裁判官というものは、罪刑法定主義をとれば、法律に従ってそれぞれ判決を出さなければいけないというのが大原則ですから、だから裁判官を困らせるようなこういう無期懲役とか死刑しかないようなものについてはやはり改正をして――削除じゃないのですよ、改正をして、そして運用をさせるべきだ、私はそう思っている。個々の裁判官がその都度の事案によって、百九十九条の適用もしないような裁判官独自の判断をその都度やっていたのでは、これは公正な裁判にならないわけですよ。そういう意味で、ぜひ削除ではなくて別な法律を考えるべきだ、本来は立法政策の問題だ、私はそう実は思っているわけですね。  それから、憲法十四条第一項の違反だ、憲法違反だ、こう言う。それはなぜかというと、国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分、そういうものには差別をされない。この場合の憲法違反だったということは憲法十四条第一項の中の、じゃ、どれをとって違憲判決をしたか。社会的な身分を取り上げたのだと思うのですね。  じゃ、親子の間で社会的な身分ということを議論、それを取り上げて違憲判決をするということにはかなり無理がある、親と子の、家庭の中で。社会的身分ということで、まさか門地でやったわけじゃないのだ。そうすると、社会的身分については平等であるというこの一項の中の、これを取り上げて違憲判決にした。しかし、それは非常に無理があったのだ。したがって、今申し上げたように、二百条では非常に重過ぎるので、要するに二年六カ月という判例を出した、私はそう思っているのですね。  そこで、これに関連をいたしまして、つまり私は、親子関係というのは本来自然であって、宗教観や倫理観や我が国の民族の歴史、そういうものに基づいてこの尊属殺人罪というのは明治以来続いてきた。そうすると、先ほど私は親子間の特例というのを話に出しましたけれども、これだって普通の強盗、窃盗罪と同じように取り扱わなきゃおかしいじゃないか、そう言ってきたんですが、今度は、第二十四章「礼拝所及ヒ墳墓二関スル罪」というのがあるんですよ。  これも宗教観、倫理観、歴史観、そういうものに基づいてそれぞれ崇敬をすべきところだ。したがって、礼拝所不敬及び説教等の妨害、特別に法律が制定をされておりまして、「不敬」ということが書いてある、不敬罪の「不敬」。これはどういうことなんですか。何で「不敬」という言葉が残っているんですか。ほかの建物をけ飛ばしたって、同じように取り扱ったらいいじゃないか。ところが、「礼拝所及ヒ墳墓二関スル罪」という特例になっているわけだね。これはやはり宗教観や倫理や民族の歴史に基づいて、あえてこういうものを設けているわけでしょう。その点とうなんですか、器物破損罪とか損壊罪でいいじゃないですか。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 ただいま御指摘の「礼拝所不敬」、「不敬」と申しますのは、いわば冒涜する行為ということであります。  今委員の方から器物毀棄等で対応すればいいではないかという御指摘ではございますが、ここで言う「不敬」というのは、壊すことは必要がないわけでございまして、例えば、神社なりの拝殿とか寺院の本堂とかで、はたから見て大変宗教感情を冒涜する、そういうふうな行為があったときに、別に破壊とかそういうことを伴わなくてもやはり処罰するという話でございまして、若干尊属の場合とは性質を異にするものではないかと思っているところでございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 それはそうだよ。全然違う話に決まっているんだよ。だけれども、こういう「礼拝所不敬」というのは何か、宗教観でしょう、倫理観。親と子の関係だってそうであって、親子関係がないというなら動物と同じになってしまう。だけれども、親に孝行するということは今でも通用する話なんだ。じゃ、これは何から来ているんだ。親に孝行する、みんなが褒めることじゃないですか。これは自然のことでしょう。それは何だ。倫理観や儒教観や宗教観から来ているのが親子の関係なんだ。  そういう、同一に比較して、私は「礼拝所及ヒ墳墓二脚スル罪」というのは何だと。これはやはり霊魂に対する、人の霊に対するお互いが尊敬し合うという儒教精神や宗教心に基づいているんでしょう。だったら、そこらの建物と同じように、たかだか石なんだから、仮にけ飛ばしちゃった、ひっくり返しちゃった、そうすると器物損壊罪でやればいいのに、そうじゃなくてこれでやるんでしょう、「礼拝所及ヒ噴菓二関スル罪」という罪で処罰をするわけでしょう。おかしいじゃないですか。同じ石ころをひっくり返したのも、人のうちの石をひっくり返したのも、違う法律で処罰するなんということは平等じゃないじゃないですか。その点、いかがですか。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 ちょっと言葉が足りなかったかもしれませんけれども、もし冒涜する行為が、例えば破壊を伴う、壊すという行為を伴うことになりますと、それは器物毀棄、建造物損壊でも同時に処罰されることになります。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 だから、器物損壊罪でやるわけでしょう、ほかのものは。だけれども、この「礼拝所及ヒ墳墓二関スル罪」という罪で、お墓の石をひっくり返したりけ飛ばしたり、そういうことになると「不敬」だと、その罪でされるわけでしょう。  しかし、石は石じゃないですか。同じ物体じゃないですか。なぜお墓の石とほかの灯籠をひっくり返したのと違うかといえば、そこには宗教心というか、儒教心という気持ちがあるから、霊をちゃんとお祭りしなきゃいかぬという民族の歴史、道徳観があるから、お墓は別ですよと、人のうちの灯籠をひっくり返すのもお墓の石をひっくり返すのも、同じ石であっても全然意味が違いますよということを言っているんじゃないですか。それが同じというのはどういうわけですか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 礼拝の問題、墓所その他ですが、これはまさにそれぞれの国民がそういう宗教心を慈しんでいるということは否定できないわけでございまして、それをゆえなく冒涜する行為を取り締まる、これまたそれ自体において合理性があるというふうに考えておるわけでございます。

吉田公一新進党

○吉田(公)委員 だからそういうことでやっているわけでしょう。だから、親子の関係だって、ただ親が子供を産み落としたっきり知らんぷりじゃ、これは人間じゃないわけだよ。そこに儒教心や宗教心や倫理観があるから親に孝行する、そして子供を慈しんで育てる、これが人間じゃないか。だから、そこには動物にない人間特有の倫理観なり道徳や宗教観があるからそういう親子のきずなというのは強いわけだ。  だから、そういう宗教心からいけば、お墓もそういう我が国の民族の儒教精神、仏教心でこうなっているわけだから、親子の関係も日本民族のそういうもので成り立っているんじゃないか。だから尊属罪だけは切り離しちゃいますなんという話はだめだよと、そういう意味で私は申し上げているので、お墓と親子の尊属罪とは違うのは当たり前の話だ。そんなことは最初から私の方だってわかっている。  そういうことなんだから、平易な文章に改めるという刑法改正の際に、二百条だけ削除してしまう、しかもほとんど説明も何もなくて、この本が出てきたときに初めて、読んでわかったわけだ、私は。そうじゃなくて、立法政策の範疇であるということを考えて、きょうの委員の皆様方にも、ただ簡単に法務省が言ってきたから賛成するなんという話じゃなくて、もっともっと考えていただきたい、そう思っております。  質問を終わります。

中島洋次郎自由民主党・自由連合

○中島(洋)委員長代理 山本拓君。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 新進党の山本拓でございます。きょうは三十分時間をいただきましたので、大臣その他の皆さんに御質問したいと思います。  まず初めに、先般の地方統一選挙、結果を見ますと、大臣、東京とか大阪とか、もうこの結果を見れば、政治家はだれでも新聞が指摘していることを反省しなくてはならないと思っております。  我々政治家として、やはり国民の方向を向いて政治をやっていかなくちゃならないということを気持ちを新たにしなくてはならないと思いますし大臣は、今回の経過を見て、また政治家でありますし大臣でありますから、法務行政を今後推進していく上で、改めて国民の方向を向いた形での推進は当然だと思いますが、そこら辺の御所見を改めてお聞かせ願えたらと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 今回の選挙、特に政治家として、東京、大阪の結果等の国民の審判を見て感じましたのは、やはり従来からある既成政党に対する飽き、そして不信感、新しい時代に対応する意欲と能力、こうしたもののあらわれの一つでもあろうと思っております。  政治もここ数年、殊に最近は大きく場面を転回し、今日まで政権政党でございました自民党に対する期待から、また新たな連立政権に対する期待、そしてそうした次々と今日、今国会が変わってきた期待に対して、それぞれの党が国民の真の要請にこたえられたかというその国民の回答が今回の選挙の結果に一部あらわれている、そんな気がいたします。ですから、政党も今日、これまで以上に国民の中に入り、国民の目の高さで、そして新しい時代を真剣に見詰めていくという努力が何よりも肝要だなとつくづく感じておる次第でございます。  それから、法務省としては、やはり一番気になりますのは、法務行政と国民との距離ということ、これは私も法務大臣就任以来、国民から遠く離れた、高くとうときものだけであってはならない、国民に密着して、国民の中にある法務行政でありたいと望んでおりまして、今回の刑法の改正等もその一環としてなされる、かように感じておるところでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 そこで、今回の刑法改正、いろいろございますが、例えばわかりやすい表現に変えたということでございますが、一つ一つ取り上げていますと時間がありませんので、私は一点だけ一番わかりやすい漢字をちょっと探してみたのですが、先日うちの子供の中学生の教科書を見ておりましたら、「禁固」の「固」はやはりかねへんがないのですね。文部省が進めている義務教育を受けている、教えている漢字がやはり今回改正しようとする中の漢字と違う。  今ほど大臣からお話がありましたように、法務行政というのは、国民の方に距離を縮めるとか、これはもともと国民にわかりやすくするために変えるということであろうと思うのですが、そういう観点からいたしますと、やはり子供も国民のうちですし、それを習って大きくなったときにはそれを初めて理解していくわけですから、そういう観点からどうして文部省が、同じ国であります、国が国民にまた義務教育として教えている漢字とあえて違う文字を、ないなら仕方ありませんし、趣旨が変わるのなら仕方ありませんけれども、さほど「禁固」と「禁錮」じゃ、結局拘束する話は同じでありますから、どうしてあえてかねへんを使ったのか、そこらをお尋ねいたします。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 今回平易化と申しましても、その内容を変えないということで、どうしても相当の制約があったことも現実でございまして、現行刑法は全部で六十三字常用漢字にない字があるのを、いろいろな努力をいたしまして十四字に減らしたところでございます。  今御指摘の「禁錮」の「錮」については、新聞等ではかねへんをとった「固」という字を使うというのが慣例になっているということは私どもも承知しておりまして、法制審議会におきましても、かねへんをとるべきかどうかということについていろいろ議論がございました。ただ、かねへんをとりますと字の意味がもともと違っている。それともう一つは、今「禁錮」というのが刑の名前としてはっきり決まっておりまして、刑法だけではなくいろいろな法律で相当使われている。法令の上から申し上げますと、一つの法令用語として定着している、こういう状況があったわけでございます。  そういうふうなことを考えますと、「禁錮」をかねへんをとった「固」ということにすることは、刑のいわば名称そのものを改めて変えてしまうというふうな問題があるということからいかがなものかという意見が大勢を占めまして、結局かねへんをつけたままということにされたわけでございます。  法令用論も常用漢字を原則として使うということにはもちろんなっているわけでございますが、一応は一つの目安ということでございまして、専門的な用語その他で定着しているものについては例外的にある程度許容される、そういうふうなこともありまして、そういうことから従来このかねへんの「錮」がいろいろな法律で使われているということだと思っております。  なお、教科書に「錮」という字で書いてある、こういう御指摘でございますが、これは教科書を実際におつくりになる編集者といいますか、著者の方のいろいろな慣用等を考慮した取り扱いについて、ある程度幅のある取り扱いの差が出ているというふうに私どもは承知しております。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 そうすると、今の御説明だと、キンコ、かねへんがあるのとないのとでは、要するに「禁錮」を実際に運用するのは法務省ですから、そういう意味では文部省の指導もいろいろあるのだろうと思いますけれども、要するに法務省の考え方としては、子供たちに「禁錮」という正しい意味を伝える意味ではかねへんを使う「禁錮」の方をむしろ採用するように指導すべきだというお考えなのでしょうか。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 教科書の書き方につきまして、私どもの方であれこれコメントするというのはいかがなことかというふうに思うわけでございますが、正確に法令の用語ということでありますればやはりかねへんの「錮」で、常用漢字にないとすれば平仮名をつける、あるいはかねへんの「錮」を平仮名にするというのが、公用文という意味でいえばそういうことになるのだろうと思うのです。  ただ、教科書は先ほど申し上げましたように、それぞれ編集あるいは作成される方それぞれの御判断がある、そこら辺でいろいろな幅があるというふうに私どもとしては承知しているということでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 確かに、「錮」だけとらえれば意味が違うと思うのですが、熟語でキンコとした場合の、ついている場合とついていない場合と違いがあるとおっしゃっていますけれども、どこが違うのでしょうか。

古田佑紀法務省大臣官房審議官

○古田政府委員 どこが違うかとおっしゃられるとなかなか説明が難しいわけですが、かねへんの「錮」はふさぐとかそういうふうな意味があるというふうに聞いているわけでございまして、「固」はまさに固めるということで、言ってみますれば、その今の固める方の「禁錮」というのは、かねへんの「錮」が常用漢字にないために、そういうものに代替して使っているという使い方だというふうに考えているところです。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 大臣、私が指摘したいのは、どっちでもわかるのですけれども、我々は。だから、法務省の行政の姿勢として、要するに国民になるたけわかりやすく、国民のために行政を進めていく、そのために今度は平易な表現に変える。これは一つ一つ漢字を取り上げていると時間がありませんから、これを代表的に取り上げるのですが、「禁固」で熟語の意味が変わるならあれですけれども、変わらないわけですし、現に一般の新聞もかねへんなしだし、教科書も大半はかねへんなしだし、熟語として。だからそこをあえて、大臣が行政の推進の決意を今まで述べられてきた、国民に近づけるとか、国民に開かれたという言葉と今回の文字の採用の方法とちょっと誤差が出てきているのじゃないかなというふうに思うのですが、大臣はどう思われますか。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 今「禁錮」についての文字の使い方の問題がございましたが、まず国民すべてが読んでわかる刑法という観点からいたしますと、今回平易化いたしましたけれども、私も法学部出身でございますが、平易化しても実は専門家の先生じゃないとなかなかこの刑法はわからないというのが私は現実じゃないかと思います。そういった意味では、時間は少しかかりますけれども、専門家だけわかればいいという刑法ではなくて、もっとわかりやすくするという作業がこれからとられるべきであろうというふうに基本的には考えます。  そこで、文字そのものでございますが、特に法律というのはまさに権利主体であり、特に刑法は国家による最終的な強制力を持つ法律でございまして、今回この平易化の中で現代用語化について、もしその現代用語化したときに用語本来の意味するところが法律的には広く解釈されるというような変化があった場合に、これは極めて処罰範囲が拡大化するということにつながりますから、ある意味では簡単にすると同時に、処罰範囲の拡大化をもたらすというようなことがあってはならないという、実はわかりやすくという言葉と二律背反するある意味では要求もされておるわけでございます。  特にただいまの「禁錮」等につきましては、法律家でない私にとりましても御説明のつきかねるところでございますが、今回の平易化の中で、特に強制力を持った刑法であるがゆえにその処罰の範囲を拡大しないというところに格別配慮が払われてかようなことになっておるということもあるのではないか、かように思っております。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 この議論をやっていたって切りがありませんから、私が申し上げたいのは、なるべく平易と、そこはどっちでも要するに同じですけれども、しかしながら法務省の姿勢というものがそこに如実にあらわれているというふうに指摘しておきたいと思います。かねへんをつけるとやたらいかめしいということですけれども、どんな犯罪人であっても、その人は罪を犯しても、罪を憎めど人は憎ますという言葉がありますけれども、それは余りにもいかめしい、そういう表現で適用するのはいかがなものかなという観点から一言だけ指摘させていただきました。  続きまして、刑法改正によって確かにわかりやすくなりましたけれども、しかしながら問題は、何でもそうですが、運用する方法、要するに我々はいろいろなマスコミとか文章でしか知りませんけれども、かつての検察、警察の取り調べ方、運用方法はかなり強引なものがあったという、これは戦前の話を含めてですね。現代はそういうことはないと信じておりますけれども、時々テレビでしか見ないことが現実的に起こって、よく新聞をにぎわした実例もございます。  そういう意味からいたしますと、法務省のいわゆる検察権の運用、制度と運用は一体でありますから、これを変えた、明治以来のものを変えた、当然それを運用する側、中身は変わりませんけれども、運用する側の姿勢というものはもう変わってはいると思いますけれども、検察というのはなかなか国民にはベールに包まれておりますので、そこらの運用をなお一層変えていく。どこかでも聞いたことがあるのですが、大臣だったかな、検事正だったかな。そこらはひとつ、刑事局長でもいいですから、検察権の運用について、昔と今と随分変わっていると思いますけれども、またこれからどのように変えていく必要があるか、おつもりがあるか、または全く変えるつもりはないというおつもりか、そこら辺をお尋ねしたいと思います。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 検察権の運用についてどう変えるか、その場面はどこかという問題があろうかと思いますが、今私ども聞いておりまして、外からわかりやすくと、こういう点について主として問題提起させていただいたのかなと思いますが……  確かに、警察と捜査を実行いたします場合に、いわば効率的に捜査目的を達成するという意味では一種の秘匿性が要求されます。それからもう一つは、検察が調べ上げた事実というものは必ずしも肯定力のある事実ではないという制約がございますし、その過程で事件関係者のプライバシーにかかわる度合いが極めて多いという点がございます。そういう制約のもとで検察活動の中身をできるだけオープンにという点は、率直に申しまして極めて難しい面を含んでいることは確かだと思います。  ただ、やはり検察も国の行政作用の一つとして国民から批判を浴びることになるわけでございますし、そういうためにもまた国会で御審議いただいておるわけでございますが、いわば法令の許す範囲内でこの検察活動についてできるだけ御説明するということについては、今後とも一層努力を重ねていく必要があろうかと思います。  それから、戦前等との運用面での変わりぐあいということになりますと、これは端的に申しましてやはり検察審査会制度ができたということであろうかと思います。検察権の行使についての恣意的な検察官の判断ということではなくて、仮に不起訴になりましても検察審査会において審議され、それについて再起して、慎重な捜査の上また公訴権を運用しているという例も少なくないというあたりは、相当変わってきているかと思います。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 今回、統一地方選挙を今やっていますね。一回戦があって、二十三日に向けてまた第二次が始まりますが、今回の選挙で、公職選挙法が今度三月一日から厳しくなりまして、特に我々問題意識が強いのは、自分たちがつくったわけですけれども、組織的管理者の連座制規定というものが、大変厳しい規定を我々は設けたわけでございます。  ただ、心配なのは、この運用を間違えますと大変我々政治活動、政治家にとって恐怖的存在でございまして、これは確かに寝返りとかあるいはやらせはだめだということですが、大体スパイで入る人は腹をくくって入りますから絶対自白しないわけですから、そこらあたりを非常に怖いなと思っているわけであります。  私がここで検察権の運用を言うのは、警察は捕まえる、そしてまたそれを検察がどのように起訴し、判断していくかという運用が、その場所場所、四十七都道府県で恐らく統一的にやらないと、北海道は許されるけれども九州の方では厳しいとか東京は厳しいとか、ばらばらであっては非常にこれは不公平きわまりないし、同じ連座制規定があっても運用の仕方によっては天と地と変わってくるということでございますから、そういう意味で今回の特に連座制規定、これについて具体的にお尋ねします。  この新しい公職選挙法の組織的管理者にかかわる連座制規定について、検察としてはその解釈、運用を、いわゆる統一的な見解というのですか、九州から北海道四十七都道府県の検察の統一的な運用について何か話し合いをしておられるのかどうか、その点をお尋ねいたします。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 結論的にはそのとおりでございますということになるわけでございまして、今回新たな公職選挙法の改正による連座制規定の対象がふえたわけでございますし、また立法過程で種々議論ございました今の御指摘の組織的選挙運動管理者等々の概念等につきましても、これが全国のそれぞれの地方検察庁ごとに異なったり、あるいはそれの規定に基づきます検察官請求による当選無効訴訟というものがへんぱに行われては困るわけでございます。  そういう意味におきまして、私どもは国会の御審議の内容等、あるいは自治省等所管行政庁の見解等も踏まえながら、全国の検察庁に今回の一連の公職選挙法改正にかかわります問題点についてその見解を伝えておるわけでございまして、統一的な解釈と運用が行われるように、また検察独自におきましてもそういう措置を講じておるところでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 差し支えなければ、どのような形の見解を統一しているのでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 解釈によってといいましょうか、特に運用方針ということになりますと、これは現実的な検察の運用のやり方ということになりますので、この場で公にさせていただくことは差し控えるべきだと思っております。  ただ、御指摘ございますように、いわゆる政治活動の自由なり選挙運動の自由なり、その辺との兼ね合いというものは十分踏まえて対応する必要があるという点は、これは十分心得ているつもりでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 きょうは警察庁の方にも来ていただいていると思うのですが、警察庁の方は直接現場でやるわけですから、検察は数は少ないですけれども警察は何万人という警察官がやるわけですから、警察庁でもその取り締まりについては、特に今回の統一選挙から始まるわけでありますが、そこらの今度の新しい公職選挙法の連座制、いわゆる組織的管理者にかかわる連座制規定、その項目の取り締まりについて何か通達というのか、今刑事局長がおっしゃったような全国統一的な何かそういう指針というものはしているのでしょうか。

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 お答えいたします。  ただいまの連座制適用の組織的運動管理者につきましては、今回の改正でもいわゆる加重規定には入ってございません。したがいまして、私どもが捜査をするに当たっての構成要件になっていない。したがって、組織的運動管理者だからといって、その行った現金買収等が特別従来の買収罪の捜査と異なるということはないわけでございます。そういう意味において、今回の連座制に関します教養を特別やっているということはございません。  ただ、一連の今回の公選法の改正等につきましては、大変私ども警察としてもその意義を十分理解をいたしまして、当然今回の全国レベルの選挙が施行される際には全国の都道府県警察の責任者を集めまして会議を行い、そういう際に、今回の公選法の改正の趣旨とかその解釈とか、そういうようなものにつきましては、その場におきまして私どもから全国の警察に指導しておるところでございます。  それからまた、それを受けまして、各都道府県警察におきましても、署長会議あるいは責任者会議を開催するとか、あるいは各種の教養の機会を頻繁に開催をいたしまして、第一線警察官の指導教養の万全を図っているというような状況でございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 今、集められて統一的なことを指示されたということでありますが、差し支えなければどのような指示ということと、もう一つは、組織的管理者というその数ですね。二人以上か、三人以上か、大体五人以上か、そういった、大体、警察が運用する場合の組織的管理者というものを、何名以上の管理者ということが特に、取り締まりの対象ではございませんけれども、この運用の面で解釈を念頭に置いておられるのか、教えていただければ幸いだと思います。

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 今申し上げましたように、組織的運動管理者がどういう基準で当たるのかということは、直接、警察の公選法取り締まりの捜査に直結するものではないわけでございます。  警察が捜査を遂げた結果、そのようなものに当たれば、それは事後の、先ほどの行政訴訟の対象になるかとかどうかということは他の機関において判断されるものでございまして、私どもの中で、組織的運動管理者というものはどういうものかということについて、基準とかそういうようなものについて各県に示しておるということはございません。  ただ、一連の公選法の改正がありましたから、連座制の適用などについてこういう変化がある、また、そういう趣旨を体して、警察としては第一線において厳正な取り締まりをするということについての指示を行っておるということでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 その別なところで判断するというのは、組織的管理者は大体何名というある程度数は、厳密に言うと組織というのは二人以上ということですね。

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 それらの内容につきましては、当然、主管官庁の方で、公選法の解釈としてその解釈、内容がなされるもの、そういうものを他の機関は尊重するものだというように理解しております。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 だから、もう既に法律は施行されているわけですし、現にもうきょうあたりからあちこちで逮捕者が出ているという報道もありますけれども、それは自治省、公職選挙法は自治省ですか、そこはそこの解釈いろいろあるでしょうけれども、それを受けて今警察が、そこはちょっと知っているけれども言えないのか、言えないはずはないと思うんですが、そこは念頭にはない。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

栗本英雄警察庁刑事局捜査第二課長

○栗本説明員 それは、先ほども申しましたように、個別の現金買収事件とかその他の事件捜査をする際に、組織的運動管理者であるということを事件捜査上立証するということは必要でありませんので、その限りにおいて……(山本(拓)委員「それは検察庁」と呼ぶ)はい、そうでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 検察の方。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 組織的運動管理者等が一定の選挙犯罪で有罪が確定したという場合に、今回の公選法の改正によりますと、検察官が当該当選者についての当選無効、取り消し訴訟を提起する、こういうかかわりを検察官が持つことになるわけでございまして、その限度におきまして、私どもは、先ほど申しましたような運用指針と申しましょうか、こういったものを検察内部で全国に流している、こういうことでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 だから、その運用指針の中身の中で、大体何名というのか、組織的管理者というのは。わかりやすく言ってくださいね。一人では組織的管理者じゃありませんね。二人以上ということで理解してよろしいんですか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 公職選挙法上の概念でございまして、これは先ほど申しましたように、立法過程における種々の議論を踏まえながらその具体的案件に照らして解釈していく、こういうことだろうと思います。したがいまして、何名以上でというようなことにつきましては、それは即断できないというふうに思っております。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 即断というより、即断はその都度ということでよろしいんでしょうか。それとも、基本的には組織というのは、それは運用次第だと思うんですね。だから、二人以上であれば、夫婦であったらこれが組織がという、これは組織的管理者じゃないんだなという、だからそこら辺の、二人か、三人か、四人か、五人か知りませんけれども、そこらの判断というのは、あるけれども言えないのか、それとも個別にそれは任せてあるのか、どちらなんでしょうか。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 結局、組織的管理者というのはどういう場合にそう概念されるか、こういうことでございますから、やはりいろいろな要素を考えた上で初めて具体的にこうであるというふうに言えるんではなかろうか。その場合に、どのようなことを考えるかということは別といたしまして、それぞれの案件に即して決めるべきものだというふうに思っております。  ただ、申し上げたいことは、検察といたしましては、従来からも、特にこういう選挙犯罪につきましては、不偏不党、厳正公平、これは基本的な姿勢でございまして、今後ともそういう姿勢で対応するものと考えております。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 いや、だから結局最初からお聞きしている、これ、ばらばらで、いやここは組織的管理者で、この県は二人以上で運用する、いやここは五人から運用する、やはりそれでは困るという意味から、大体の、別に言わなくたっていいですよ、だけれども、そういうものが、統一的なのがあるのか、それとも個別に任せてあるのかということをお尋ねしているんです。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 運用について考慮すべき事項ということの中で、今言及されましたような事柄についてはそれなりに触れている、こういうことでございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 大臣、いかがですか。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 これにつきましては、検察部内において全国的に統一性ある運用を行うための所要の措置をとられている、かように承知をいたしておりまして、具体的中身については現在申し上げられないという状況でございます。

山本拓新進党

○山本(拓)委員 どうもありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 正森成二君。

正森成二日本共産党

○正森委員 それでは、今回の刑法の一部改正につきましては、前回私は参考人と法務省に対して非常に簡略でございますが質問させていただきました。そこで、きょうはその問題と少し離れて、別の問題について質問させていただきたいと思います。  それは、二月二十二日に判決がございましたロッキード事件の判決についてであります。それで、私がこの問題を取り上げますのは、この判決を読ませていただきますと、私が手元にございますのは官報の三月十四日に載りました判決全文ですが、国会に関係のあることが書いてあるんですね。それがどういうことかといいますと、嘱託尋問調書の証拠能力について述べたところですが、   我が国の憲法が、その刑事手続等に関する諸規定に照らし、このような制度の導入を否定しているものとまでは解されないが、刑訴法は、この制度に関する規定を置いていない。この制度は、前記のような合目的的な制度として機能する。反面、犯罪に関係のある者の利害に直接関係し、刑事手続上重要な事項に影響を及ぼす制度であるところからすれば、これを採用するかどうかは、これを必要とする事情の有無、公正な刑事手続の観点からの当否、国民の法感情からみて公正感に合致するかどうかなどの事情を慎重に考慮して決定されるべきものであり、これを採用するのであれば、その対象範囲、手続要件、効果等を明文をもって規定すべきものと解される。こう言っております。そういう明文の規定がないから証拠として採用することは許容されない、こう言っているわけです。  当然のことながら、これを明文でもって規定するのは国会の任務であります。そこで、この判決を正しく解釈する、あるいは疑問点をただすというのは立法府がまさになすべきことであるという観点であるということを申し上げておきます。  そこで、そこへ入る前に、最高裁来ておられますか。――まず、私が申し上げたいことがあります。それは、丸紅ルートの判決がなぜ最高裁でかくも長期間かかったのかという、国民が抱いている当然の疑問についてであります。これは私だけの疑問ではないということを新聞での論説等を引用しながら申し上げたいと思います。  例えば、読売新聞の二月二十三日ではこう書いております。「上告から約七年半。一、二審より長く、小法廷から大法廷に回付するだけで約五年を費やした。」中略「この間に、“主役”の田中角栄・元首相は亡くなり、裁判の持つ意味は変質してしまったように見える。ロ事件の裁判は、最高裁にもまた、迅速審理の実現という課題を投げかけたと言える。」こう言っているのです。  それだけでなしに、日本経済新聞ではもっと手厳しい論評が載っております。名前は申しませんが、有名な評論家でありますが、「それにしてもなぜこんなに判決が遅れたのか。要旨を見ても、この程度の判決を出すのに最高裁が八年もかかったというのはどう考えてもおかしい。事実審理を丹念にやった一審でも六年、二審が四年である。事実審理をやらない最高裁がどうして八年もかかったのか。田中被告が死ぬのを待っていたとしか考えられない。」こう言って、なかなかうがった見方ですね。それで、最後でこう言っております。「旧中被告が死んでからしかロッキード事件の判決を出せなかったという現実は、最高裁の歴史において、恥ずべき汚点として残るだろう。」こう言っております。  いいですか、これが国民の声なんですよ。何で八年もかかったのか。それで、大法廷に回すには憲法判断が若干あったからかもしれませんが、それを回すかどうかだけになぜ五年もかかったのか、それは国民の多くが抱いている疑問です。まずそれに答えてください。

高橋省吾最高裁判所刑事局長

○高橋最高裁判所長官代理者 刑事裁判が長期化する原因としましては、一般的には、その事件の記録が膨大であるとか、あるいは事実認定上あるいは法律上の争点が多岐にわたる場合等が考えられているところでございます。  本件では、第一審の公判回数が百九十一回、控訴審の公判回数が二十七回を超える重大な事件であり、その記録も極めて膨大で、事実認定上やあるいは法律上の争点が多岐にわたっている、そういう事情があることがうかがわれるところでありますけれども、それ以上の点になりますと、具体的な事件に関する訴訟進行の適否にかかわることでありまして、事務当局としてはお答えを差し控えたいと存じております。

正森成二日本共産党

○正森委員 今の答弁は、みずからの答弁で最高裁が怠慢であったということを証明していると思うんですね。一審は百九十一回公判を開いたと言っているでしょう。事実調べは多岐にわたり、証人を調べ、法律上の問題点も初めて詳細にやって、それで六年なんですよ。控訴審は二十七回かやったと言いますが、実際に公判を開いて、それで四年なんですよ。  最高裁は書面で見るだけじゃないですか、どれだけ多岐にわたっておるとしたって。それが大法廷に上げるということを決めるだけで五年もかかったと。それで、結果として、被告人が死んでしまって、事件の意味の変質が起こるようになるまで判決を下さないなんというのは、それこそ国民の正義感や法感情に反して、非常に問題であるというように思わなきゃならないです。  ただ、あなたは刑事局長で、いわば事務当局ですから、そして我が国の三権分立の建前上、我々はこれ以上最高裁に対して物を言うことはできないけれども、しかし、立法府として、特に選挙で選ばれている者として、国民感情を代弁することはできる。ふだんから当委員会においては、その訴訟の促進とかいうようなことは最高裁が率先して言っていることではありませんか。だから、そういう点からいって、私は重大な反省を求めたいということを申し上げておきたいのです。  それで、二番目に申し上げたいのは、この判決の切り捨て方ですね。必要最小限度で判決の中身を見てみますが、私が今読んだところのすぐ次にこう言っているのです。  「しかし、我が国の刑訴法は、この制度に関する」「この制度」というのは刑事免責ですね、「この制度に関する規定を置いていないのであるから、結局、この制度を採用していないものというべきであり、刑事免責を付与して得られた供述を事実認定の証拠とすることは、許容されないものといわざるを得ない。」こう言っているだけなんです。  こんなことは嘱託尋問をやった初めから、司法修習生と言いたいけれども、法学部の学生でさえわかっていることじゃないですか。そんなことを理由にして、それで一審、二審の裁判所が長期間心血を注いで、具体的な要件について検察を相手に、あるいは弁護人を相手にやったのに対して、最高裁が納得させられますか。  だから、こう言っているのですよ。「専門家から驚きの声」というのがあって、これは朝日新聞ですが、例えば渥美東洋中央大学教授は、   最高裁の見解には、反対である。日本でも、起訴猶予の手法を用いて相共犯者を参考人と見立て、共犯者に、不利益な供述を取得することは、一般的に認められている。したがって、米国で刑事免責制度に基づいて、取得した供述が、日本では免責の法律がないからといって、違法だという最高裁の主張は説得的でない。   現在、欧米諸国では、免責を与えて供述を取る手法を法律で明文化している。国際犯罪が急増している今日、日本でも国会が主導椎を発揮して、云々ということで、まあ立法した方がいいのじゃないかという意見です。それで、その次に、ロッキード事件において、東京地検特捜部検事としてロッキード事件を手がけた弁護士の堀田力氏の談です。こう言っている。   嘱託尋問調書を証拠として認めなかった点で、最高裁の論理構成は間違っていると思う。   当時から、日本に刑事免責制度がないのはわかりきっている。それを前提に、検事総長の「不起訴宣明」を受けて、米裁判所が、それが米国の刑事免責に準ずるものと判断してコーチャン氏らの証言を強制した。   その米裁判所の手続きが日本の憲法秩序からして認められるかどうかが問題なのにそれを全く諭ぜず、「日本で刑事免責制度がないから証拠として認定しない、国際司法共助であっても同じだ」というのでは、論点が欠落している。こう言っているのです。内容の当否は別として、論理的には全くそのとおりですね。それで、これは言いませんが、堀田力氏は、別に朝日の「論壇」で、こういう長大なものを、ほぼ同じ内容のものを書いております。  さらに、それだけでなしに、吉田淳一氏、これは久しぶりに名前を聞いた懐かしい人ですが、私たちは、ロッキード事件のときに法務委員会やあるいは予算委員会でしばしば質問いたしましたが、そのときに、私の記録に誤りがなければ、法務省刑事局の刑事課長をしていた人で、アメリカにまで渡米して、アメリカ側と細かい協定を、非常に詳細なものを結んできた人ですね。今は退官して公証人をしておられるようであります。その方が読売新聞の「論点」に書いておられます。非常によくできたものですが、長く言えば時間がかかりますので、要旨だけ言いますが、   現に本判決も、わが国の憲法が刑事免責のような制度の導入を否定しているものとまでは解されないとしている。そうであれば、本件証人尋問調書は、証拠としての許容性を認めるのが正しかったと思われる。   本判決は、わが国では刑事免責の制度を採用していないから事実認定の証拠とすることは、刑訴法一条に定める同法全体の精神に照らし許容されない、としている。このように、いわば抽象的な法の精神で事を決する場合には、実態に即した、より具体的かつ合理的な理由付けが要求されるものと考える。こういうように言っているのですね。そしてその後で、途中省略しますが、   本判決のように、刑事免責を付与して得られた供述を本来事実認定の証拠とすることが許容されず、本件のような国際司法共助でも全く同様であるとするならば、この証人尋問の嘱託や最高裁の宣明は一体何であったのか、重大な疑義が生ずる。   また、最高裁宣明まで取り付けて証人尋問手続きを実施した米連邦地裁側に、わが国の刑事司法に対する不信感を抱かせるにとどまらない。こう言っているのです。  多くのことは言いませんが、言いたいのは、そんな明文の規定がないからだめだなんて言うなら、そもそも一九七六年の七月に裁判所が宣明書を出すときにわかり切ったことなんです。しかし、これをやり、そして一審、二審の六つの裁判所は、そんな抽象的なことではなしに、非常に細かい、詳細な、具体的な論議を行い、三百二十一条一項三号に該当して、伝聞証拠であっても証拠能力を付与されることができるかどうかという具体的なことを、私はここに判決、決定とか持ってきましたが、膨大な分析を行って、その上で認めているのです。何なら判決のそのさわりのところを引用してもいいけれども、時間がないからいたしません。  そういう点から見て、余りにも、八年もかかったにしては、言ってみれば、簡にして明というのは簡明という言葉になっていいけれども、簡にしてわからないというのは簡不明というのですが、そういう内容じゃないですか。

高橋省吾最高裁判所刑事局長

○高橋最高裁判所長官代理者 本件の嘱託尋問調書の証拠の部分につきましては、第一審の判決は、安易な免責による証言は一般的に違法の疑いがあるけれども、本件では、コーチャンらを起訴できる可能性がなかったこと、同人らは免責制度になれている米国民であり、米国で公正な手続で尋問が行われたことなどの事情を考えると、刑事免責は合理的理由があり適法である、こういうふうにしております。  第二審の判決は、検察官が公訴権行使の一態様として証人らに対して不起訴を確約した措置は適法であり、不起訴確約に基づき自己負罪拒否特権を消滅させ、証言を強制して獲得された嘱託尋問調書は違法に収集された証拠ではないなどと判示しまして、本件嘱託尋問調書、委員御指摘のとおり、刑訴法の三百二十一条の一項三号に該当するとして証拠能力を肯定しております。  これに対して最高裁の判決によりますと、先ほど委員御指摘のとおり、我が国の刑事訴訟法は、いわゆる刑事免責の制度を採用しておらず、刑事免責を付与して獲得された供述を事実認定の証拠とすることは許容していないものと解すべきである以上、本件嘱託尋問調書については、その証拠能力を否定すべきものと解するのが相当である、こういうふうにしているところであります。  このように、確かに第一審、控訴審の判決と最高裁の判断は異なっておりますけれども、最高裁が証拠能力を否定した理由というのは、上記のようなところに帰するわけでありまして、これ以上私どもの方から付加して説明する点はないわけでございます。  なお、第一審、第二審の判断の当否につきましては、具体的な事件にかかわるということであり、私どもの立場上は、その点についてはお答えしかねる点を御理解いただきたいと思います。

正森成二日本共産党

○正森委員 我々立法府は、最高裁が明文の規定がないからと言っておるから、それじゃ明文の規定を設けるためには、最高裁はどういう考えでこういう判決を出したのかということを、繰り返し初めから言っているように問いただしているのですよ。そんなものは当たり前の話ですよ。  それで、私は何も証拠能力を認めないというのが絶対的にいかぬと言っているのじゃないですよ。一審や二審のあの詳細な分析に対応するような、あるいは検察側の主張に対応するような具体的かつ詳細な理由で言っておられるなら我々も大いに耳を傾ける。しかし、明文の規定がないなんて言うなら、そもそも嘱託尋問の宣明書を出したときからわかっていることじゃないですか。だから、そんなお粗末な議論で、それで八年もほったらかしておいてこういうことをやるというのは、国民感情に合致しないと言っているのです。  例えば全日空ルートのこの部分についての決定について少しだけ触れますと、そんな簡単なことを言っているのじゃないですよ。他国の異質な調書を証拠能力を認めるということで人権侵害その他がないだろうかということをも詳しく分析して、読むだけでも大分になりますが、時間がもうありませんから、一部だけを読みますと、こう言っているのです。   わが国の訴訟法とは異った手続によって行なわれた証拠調の結果等であっても、その手続がわが国の憲法ないし訴訟法秩序の基本的理念や手続構造に反する重大な不許容事由を有するものでない限り、これを可能な範囲において受け容れる余地を認めることが必要かつ適当であり、そのことをわが国の訴訟法は否定しているものではないと考える。こう言いまして、その許容限界については、いろいろ言っているのですよ。その一部だけ挙げますと、例えば、   わが国憲法三十八条二項が厳に戒めているような強制、拷問又は脅迫、その他、これに準じる基本的人権の侵害を伴うような手段によって右特権自己負罪拒否特権ですね、を事実上剥奪したという場合はもちろん、供述拒否権を有する者に対して供述させるために、欺瞞ないし利益誘導その他の虚偽誘発の危険が高く、あるいは、社会的に不公正と考えられるような手段を用い、これによって供述拒否権を放棄ないし消滅させだというような場合には、わが訴訟法上これを許容することはできないし、その結果得られた証拠についても証拠能力を認めることはできない。 こう言って、ここで詳細に分析しているのです。  さらにこうも言っていますよ。   とくに、免責を与えようとする相手方の選別に合理性がなく、あるいは免責を与えてでも供辻を得るやむを得ない必要性や、さらには、免責を与えて尋問する場合の尋問手続に相当でないと思われる事由の存するときは、刑事司法における公正感を損ね、まさに刑事責任についての「取引」の印象を生じ、あるいは虚偽を誘発する危険を高める可能性を生じさせるものとして、わが刑訴法上許容できないものと考える。こう言って、それがあっなかなかったかを一々細かく調べた上で、三百二十一条一項三号該当の書面として証拠能力があると言っているのですよ。  それについて言わないで、私はもう時間が来たから言いませんが、名前は言いません、ある少数補足意見を言っている人は、反対尋問権が保障されていないというようなことがあれば、三百二十一条一項三号の判断以前の問題だと言って、それでぽんとけっているのですよ。そんなもの、二百二十六条でやったものが、弁護人等の反対尋問権がないなんて、捜査段階のことだから当たり前じゃないですか。  そんなことは我が国でもどこでもやっておって、捜査段階の二百二十六条で被告人や弁護人が横におるなんというようなことはほとんど聞いたことがない。そんなことを堂々と言って、それで、これは三百二十一条一項三号の判断以前の問題だなんて言っている。そんなことではとても下級審は納得できないし、国会としても立法するかどうかに当たっても、その真意がわからなければ我々としては十分な判断ができない、私はこう思いますが、私の質問をこれで終わらしていただきますが、法務省として一言おっしゃってください。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 今委員御指摘のいろいろな問題点につきまして、私自身頭の中でいろいろな言葉がよぎりますけれども、法務当局としてこの席で申し上げるべきではない、こう思っております。

正森成二日本共産党

○正森委員 終わります。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 小森龍邦若。

小森龍邦無所属

○小森委員 発言の機会を与えていただきました日本社会党・護憲民主連合と法務委員会の理事の皆さん方に感謝を申し上げます。  さて、今回の刑法の一部改正の尊属殺の廃止でございますが、中身につきましてはいろいろ発言をなさった委員の皆さん方の議論によってかなり尽くされておるようでもありますし、また私の持ち時間が限られておりますので、一点だけお尋ねをいたします。  この尊属殺は、違憲の中身を持っておるということで、既に二十二年ほど前にこれは憲法違反だというような判決が出されておるわけでありますが、御承知のとおり、国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関である。どうも司法の判断を受けて後追いをしておる、こういうふうな感じにこの二十年余りの歳月を思うわけであります。遅きに失したのではないか、かように思いますが、法務大臣としてはそのことに関してはどのようなお考えでございましょうか。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 最高裁四十八年の四月の違憲判決後、今日まで二十二年かかっておるわけでございますが、この間、もちろん法務省といたしましても、その四十八年にはこの裁判の判例等総合的に検討した結果、同条二百条の削除にあわせ、尊属傷害致死、尊属遺棄及び尊属逮捕監禁に関する規定も削除することが適当であると考え、刑法の一部を改正する法律案を国会に提出すべく準備をしたところでございますが、当時の与党の了承を得るに至らず、提出に至りませんでした。  その後、四十九年にも尊属加重規定の全部削除を盛り込んだ改正法案の革案の答申を受けて、各方面の意見や批判をいただいたところでございますが、刑法の全面改正については反対意見も多数ございまして、残念ながら国会提出に至らなかったわけでございます。その間、刑法百九十九条が適用されてきており、尊属殺規定は実質的には効力を失っております。百二十国会で附帯決議等をいただき、今回御提案申し上げ、御審議をいただいておるというところでございます。

小森龍邦無所属

○小森委員 御説明を承りますと、若干の経過もあったようでありまして、必ずしも怠慢ということではなかったのかな、こういうふうに判断をいたします。  そこで、これはもちろん答弁を求めておるわけではありませんが、我が国における市民的権利にかかわるような問題で、裁判所の判例を待たず、進んで人権は人類普遍の原理という角度から、どの程度日本の社会の持つ前近代性を克服するために法律改正が行われたであろうかという観点から、今のようなことを関連して御質問申し上げたわけでありまして、後ほどまた私は、これは国会質問書等を通じて、その状況がどうか、私自身の、我が国社会の近代化といいますか、近代的合理性というか、それの歴史の足跡を顧みたい、かように思っておりますので、また後ほどの課題といたしたいと思っております。  そこで、この問題に関してもう一点だけお尋ねをしてみたいと思いますが、尊属という言葉の対称的な用語で卑属という言葉があります。私は、私自身が儒教的な考え方に染まっておるということかもしれませんが、尊属と言うことは、これは肯定できます。当然だと思います。しかし、それと反対の、子孫のことを卑属と言うのは、これは一体どういうことだろうかというふうに思うわけでありまして、卑属とはもちろん卑しいであります。  そこで、外国では尊属をどういう言葉を当てておるのか。恐らく先祖という言葉を当てておるのではないかと思いますが、卑属も恐らく子孫という言葉を当てておるのではないかと思いますが、これは外国語の議論をするのではなくて、その点の、卑属という言葉については、なかなか難しい答弁かもわかりませんが、法務大臣、どうお考えか。後ほどまた民法の問題とも関係しますので、ちょっとお尋ねしておきたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 先生御指摘のとおり、卑属、まさに読んで字のごとし、卑という字はいささか適当でないということも私は感じておりますが、長年これ使われてきて、社会通念上一般には使われておりますが、それでは、それに実はかわる言葉があるかどうかということになりますと、例えば先属と後属とか、なかなか残念ながら、いずれもいい言葉がないというのも、これまた頭を使った結果の事実でございまして、今後検討する課題であろうと思っております。

小森龍邦無所属

○小森委員 できればひとつ、民法などの問題も関連して、この誉葉が法律で生きておるということは、私どもとすれば余りおもしろくない言葉だと思いますので、いろいろとひとつ知恵をめぐらせていただきたいと申し上げておきたいと思います。  それから、警察庁の方にちょっとお尋ねをしますが、先日参議院の方で、どなたとは申し上げませんけれども、オウム真理教の捜査をめぐりまして、宗教団体というか、直接には私はオウムを指しておるのだろうと思いますが、これは今特殊部落となっておるので捜査が難しいのか、あるいは甘やかしておるのかというような意味の質問がございました。  国会の正式の発言で特殊部落というような言葉を使うということは、これはまあ被差別部落を比喩的に、マイナス的にイメージを与えるために比喩的に使っておることでありまして、同対審答申も、これは明確にべっ称であるということを明記いたしておるわけでありまして 直接国会議員の発言に対して、それは世間の世論の批判にはさらすべきだと思いますが、官僚の立場からすぐにこれを注意するとかということは難しかったかとは思いますが、特殊部落という言葉をそういう比喩的に使うということについてはとういうふうにお考えか、今日の時点における考えを聞かせていただきたいと思います。

篠原弘志警察庁刑事局刑事企画課長

○篠原説明員 お答えいたします。  御指摘の発言は、議院内におきます議員としての発言ということでございますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、基本的人権尊重の立場から、差別は許されるものではなく、また差別的な言葉遣いも穏当を欠くというふうに考えております。

小森龍邦無所属

○小森委員 同趣旨の質問を、人権擁護局を抱える人権担当の法務大臣としてどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 この発言でございますが、まず国会の委員会審議の場での御発言でございまして、行政の側にある私としてるる申し上げることは差し控えなければならないと思っております。  ただ、同僚、友人の立場として、もしそこに私が同席をしていたとすれば、この発言については、歴史的にも明治になって、まさに行政が同和地区を表現するものとして、べっ視するというような意味で使われてまいりました。この観点から、同僚、友人としては、適切な言葉でないという趣旨から訂正なりあるいは撤回なりを御進言申し上げた、かように思っております。

小森龍邦無所属

○小森委員 時間が参ったようでありますから、ごく簡単にもう一つだけ最後にお尋ねをしたいと思います。  最近アメリカが、最近といいましても昨年のことだと思いますが、人種差別撤廃条約を批准をいたしました。そこで、我が国において大変問題になっておりますのは、第四条のいわゆる規制の項でありますが、これが表現の自由に反するとかというようなことを、今まで私何回も議論に参加しましたが、主として法務省の方がそれを言い続けてきておるということでございまして、アメリカはその第四条をどういうふうに扱って批准をしたのであろうかということと、それから、大分人種差別撤廃条約批准の機運が高まりつつあるようでありますが、現時点で法務大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか、お尋ねします。

則定衛法務省刑事局長

○則定政府委員 アメリカ合衆国が昨年十月二十一日に批准書を寄託しておりますけれども、その中で四条関係については次のように留保を条件とするとしております。  合衆国の憲法及び法律は、個人の言論、表現、結社の自由を幅広く保障している。したがって、合衆国は、合衆国憲法及び法律によって保障されている範囲内である限り、これらの権利を立法または他のいかなる手段によっても制限する義務を同条約、特に第四条及び第七条のもとでは負わない。  以上でございます。

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 この条約も現在百四十数カ国、主たる国では残すのは日本のみとなっております。こうした観点からも早急に批准を目指しておるところでございますが、そのために、アメリカ等で四条留保がございましたが、我が国においても、こうした幅広い知恵を駆使して批准できる方向に向けて現在検討いたしておるところでございます。

小森龍邦無所属

○小森委員 ありがとうございました。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 これにて質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  刑法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 次に、内閣提出、参議院送付、更生保護事業法案並びに更生保護事業法の施行及びこれに伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案について順次趣旨の説明を聴取いたします。前田法務大臣。     ―――――――――――――  更生保護事業法案  更生保護事業法の施行及びこれに伴う関係法律   の整備等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――

前田勲男自由民主党法務大臣

○前田国務大臣 ただいま議題となりました更生保護事業法案並びに更生保護事業法の施行及びこれに伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。  更生保護事業は、民間篤志家のたゆまぬ努力によって維持運営され、犯罪を犯した者の社会復帰に大きく貢献するとともに、国が行う保護観察その他の更生の措置を円滑に実施する上で重要な機能を果たしておりますしかるに、更生保護事業の中核的存在である更生保護会は、その多くが建築後相当年数を経過して老朽化しているなど種々の問題を抱えておりますことから、昨年の第百二十九国会において更生保護会に対する補助制度の改善を内容とする更生緊急保護法の一部改正がなされたところであり、これに基づき、平成六年度予算において更生保護施設整備費補助金が認められるなど、更生保護会の施設整備の面では相応の改善措置を講じたところでございます。  ところで、ただいま申し述べた更生緊急保護法の一部改正の際、衆参両院において、更生保護事業の健全な育成、発展のため、法整備を含めて制度の改善、充実に努めること、更生保護事業の充実を図るため、社会福祉事業との均衡にも留意し、被保護者に対する補導援護体制の強化に努めることなどを趣旨とする附帯決議をいただきました。更生保護会の現状を見まずに、その経営基盤はなおも脆弱であり、また、近年、高齢者やアルコール・薬物濫用者など、処遇に特別の配慮を要する保護対象者が増加し、更生保護会における補導援護体制の強化が特に重要な課題となっているなど、更生保護事業は多くの困難に直面しており、早急にその改善を図る必要があります。このような現状にかんがみ、先ほどの附帯決議の趣旨を踏まえまして、ここに更生保護事業法案並びに更生保護事業法の施行及びこれに伴う関係法律の整備等に関する法律案を提案することといたした次第であります。  次に、更生保護事業法案の概要について御説明申し上げます。  第一に、この法律の目的は、更生保護事業の適正な運営を確保し、その健全な育成発達を図ることにあると定めまして、更生保護事業に関する国の責務を明らかにするとともに、地方公共団体の協力に関する規定を定めております。  第二に、更生保護事業を、継続保護事業、一時保護事業及び連絡助成事業の三種類と定め、それぞれの内容を明らかにしております。  第三に、更生保護事業を営むことを目的として、この法律の定めるところにより法務大臣の認可を受けて設立される法人を更生保護法人とし、その設立手続、法人の組織、管理、解散、合併及び法務大臣による監督について所要の規定を設けております。  第四に、更生保護事業の法務大臣による認可並びに監督及び更生保護法人に対する国の補助について所要の規定を設け、また地方公共団体も更生保護事業を営むことができることを定めております。  次に、更生保護事業法の施行及びこれに伴う関係法律の整備等に関する法律案の概要について御説明申し上げます。  この法律案は、ただいま御説明いたしました更生保護事業法の施行に伴い、更生緊急保護法を廃止し、これに伴う経過措置を定めるほか、犯罪者予防更生法その他の関係法律の規定の整備を行うものであります。  その主な内容は、次のとおりであります。  第一に、既存の更生保護会は、組織変更により更生保護法人になることができる旨を規定しております。  第二に、地方税法の一部を改正して、更生保護法人については法人住民税の均等割を課さないこととしております。  第三に、土地収用法の一部を改正して、更生保護事業を収用適格事業とすることと規定しております。  以上が、これら二法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

金子原二郎自由民主党・自由連合

○金子委員長 これにて両案についての趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会      ――――◇―――――

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