法務委員会 第2号
- 発言数
- 74 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1995/02/17
会議録
○金子委員長 これより会議を開きます。 お諮りいたします。 本日、最高裁判所涌井総務局長、堀籠人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ――――◇―――――
○金子委員長 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。 まず、趣旨の説明を聴取いたします。前田法務大臣。 ――――――――――――― 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案 〔本号末尾に掲載〕 ―――――――――――――
○前田国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を十二人増加しようとするものであります。 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において、地方裁判所における民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判官以外の裁判所の職員を五十六人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十二人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十四人増加しようとするものであります。 以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
○金子委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。 ―――――――――――――
○金子委員長 これより質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
○枝野委員 さきがけの枝野でございます。 今回の定員法に関しましては、財政状況の非常に厳しい中で、司法制度の充実という大変重要な課題にかんがみて、法務当局あるいは最高裁の事務当局が御尽力されて、こうした定員増の法案というものが提出されるに至ったことについては大変結構なことである、そして、その御尽力に対しては私どもとしても非常に敬意を表したいと考えております。 この具体的な内容については、まさに私ども無条件でもろ手を挙げて大賛成ということで、今後ますます一層の定員増、そして司法制度の充実を図っていただきたいし、私どもとしてもそのために御協力をさせていただきたいということだけを申し上げまして、この法律、裁判所における迅速な事件の処理という観点から、私は、それに関連をいたしまして、刑事司法制度一般の問題といたしまして、近時マスコミをにぎわしております加 てんめい のりあき納典明こと加納典明氏がわいせつ図画の事件で逮捕された問題を取り上げさせていただきたいと思います。 まず第一点といたしまして、警察当局にお尋ねをいたしますが、加納典明氏が逮捕された時点、そしてそれ以後、警察当局からマスコミ等に対してどのようなコメントがなされているのかいないのか、されているとすれば、どのようなコメントを出しているのかを、まず事実関係としてお尋ねしたいと思います。
○瀬川説明員 お答えをいたします。 本件につきましては、被疑者四名共謀の上、平成六年十一月から平成七年一月までにかけまして、わいせつ図画である写真誌「きクぜ!②」六万八千七百二十六冊を単価二千八十円から二千二百四十円の間で販売をしたというものであります。 本件事案につきまして、警視庁におきましては、一月二十四日、出版社等五カ所を捜索し、関係者からの事情聴取を行っておりましたが、二月十三日、被疑者四名をわいせつ図画販売罪で逮捕したものでございます。 これにつきまして、警視庁におきましては、同日、警視庁生活安全部保安課長が警視庁内にございます記者クラブに加入しております記者に対しまして広報を行っておりますが、その広報におきましては、このわいせつ図画販売被疑事件について、関係被疑者を逮捕したということ及び犯罪事実の要旨、そして適用法条といった点について説明、コメントをしているところでございます。
○枝野委員 ところで、逮捕したということは、逮捕する必要性があった、要件があったということだと思いますが、私も弁護士ですから、ある程度想像はついておりますが、少なくとも法律の世界、特に刑事司法の世界を知らない方から見ますと、この加納典明氏は、先ほどお話のあった家宅捜索のありました後にマスコミ等に対して、わいせつ性という部分については争うという趣旨のコメントを出しておりますが、問題となっているような写真を撮って、販売のルートに乗っけたというような関係、そして警察当局がこれを取り締まるのであれば、裁判所で徹底的にそのわいせつ性について争うというようなコメントを載せておりました。 したがって、一般社会から見れば、そうやって裁判所で堂々と争うと言っている人である以上は、逮捕して身柄を拘束しなくても、逃げたり隠れたりすることはないのじゃないかなというふうな印象を持つのが普通ではないかと思います。 そこで、警察当局に、今回の逮捕はどういった理由で、どういった要件に基づいて逮捕しているのかを御説明いただければと思います。
○瀬川説明員 お答えいたします。 本件につきましては、被疑者の中に写真家が含まれているわけでございますが、この写真家である被疑者におきましても、出版社の社長らと共謀いたしまして、極めてわいせつ性の強い図画を販売をした、非常に組織的に行われた犯罪であり、そして証拠隠滅のおそれも認められたということで、逮捕しなければ本件犯行の状況を明らかにすることができないと判断されたため、刑事訴訟法に基づき逮捕したものでございます。
○枝野委員 その証拠隠滅のおそれなのですが、ある程度お答えを推測はできるのですが、また捜査中の事件ですから、どこまで具体的にお答えをいただけばいいのか、難しいところはあると思います。常識的に考えれば、先ほど申しましたとおり、本人は写真を撮ったことについて認めていて、しかも、おれはわいせつではない、警察がわいせつと言っているのは勝手に言っているのだ、裁判で争うと言っている以上は、証拠といっても何を隠滅しようとしているのかというのは、素人には少なくともわかりにくいと思うのですが、捜査中の事件ですので可能な範囲で結構です、どういった証拠をどのように隠滅するということについて、おそれがあるとお考えになったのですか。
○瀬川説明員 具体的な捜査の内容につきましては、現在捜査中でございますので、差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほど御答弁申し上げましたとおり、本件犯行は、このわいせつ図画の販売につきまして組織的に敢行された犯罪である、そして、証拠隠滅のおそれが認められたということから逮捕に踏み切ったということで、御理解をいただきたいと思います。
○枝野委員 これ以上追及してもしょうがないので、次に、法務当局にまず原則論、基本的な一般論をお尋ねいたします。 逮捕という制度は何を目的として認められている制度であるか、御説明をお願いいたします。
○則定政府委員 御専門家でございますので、釈迦に説法でございますけれども、逮捕といいますのは、犯罪捜査の過程におきまして、逃走のおそれあるいは証拠隠滅のおそれがあるという場合に、この捜査の目的を遂げるために被疑者の身柄を確保するものである、こういうことでございます。
○枝野委員 まさに今御説明いただいたとおりでありまして、逮捕というのはあくまでも裁判、将来の刑事裁判において必要とされる証拠を確保する、収集するということが目的でありまして、逮捕そのものには、被疑者に対する制裁であるとかあるいはいわゆる一般予防的な効果、つまり、こういった逮捕を行うことによって同種の事件が起こらないようにするというような目的、効果というのは刑事訴訟法上存在しない、ないということでよろしゅうございますね。
○則定政府委員 おっしゃるとおりだろうと思います。この逮捕自体に、いわば刑罰自体が持っていると言われます犯罪抑止力というものはないかと思います。 ただ、例えば現行犯逮捕でありますとか、場合によりましては令状逮捕もそうでございますけれども、当該行為者にとっては同じ犯罪を引き続き行わないという意味におきます意味での抑止力というものは、当然のことながらあるのだろうと思います。
○枝野委員 さて、ここからが本題なんでございますが、まず前提として、誤解を招くといけませんので念のためにお断りをしておきますが、私は党でも女性局長という仕事をさせていただいておりまして、一般論として女性の性というものを商売にする、しかもそれが青少年、特に末成年などに一般に広く目に入るというような現実が存在している、そうしたことについてはきちんとした対応をとらなければならないということについては非常に強く感じておりまして、そのことと、これからここで取り上げて問題にしようとしていることとは、別の次元の問題であるということをまず念のために申し上げた上で、実は、今回の一連の報道等を見ておりますと、少なくとも一般の社会の皆さんにとっては、国民の皆さんにとっては、この加納典明氏というものの逮捕という行為が、最初警告を出していた、家宅捜索も行った、ところが御本人は、私は悪くないと、わいせつ性については争うということをマスコミで公言をしていた。そうした中で、写真家まで逮捕されるという極めてまれなケースとして彼が逮捕をされた。 これは、一般の国民から見ると、言うことを聞かないと、逮捕をして身柄を拘束して懲らしめるぞと、逮捕そのものが一種の制裁であり、逮捕そのものによって一般予防的な効果をねらったのではないかというふうな誤解を国民に与えかねないような、少なくとも報道等を通じて出てくるこの事件の流れではないか。 もちろん、彼が行ったことが犯罪性があってけしからぬことであるとするならば、これから刑事司法手続を踏まえた上で処分を受けて、その処分を受けることが一般予防的な効果を持つということでこの種の事件が起こらない、予防するという効果をもたらしてくれればいいのであって、逮捕という行為によって、ほかの、例えば出版社や写真家にこんなけしからぬことをするなというようなことを、印象を与えようとしていたり、あるいは国民に対して、こういうことをやったらひどい目に遭うんだよというようなことを印象づけようとしたりという意図が、万が一にもあったりしたとすれば、それは逮捕、勾留という手続の乱用であるというふうに考えられると思います。 実は、我が国の刑事裁判は、御承知のとおり警察、検察当局の御努力によって大変高い有罪率を持っていて、それによって、こうした事件に限らず、逮捕をされたという事実がそれだけによって、この人は悪い人だ、犯罪を犯したけしからぬ人だという印象を社会に与えて、それによって事実上、逮捕という事実だけで社会的に重大な制裁を受けるという現実がございます。 そして、人間のやることですから、逮捕だけで一〇〇%その人が有罪になる犯罪を犯していたということではありません。だからこそ裁判制度があるわけでございますから、それによって、逮捕によって社会的制裁を受けたというある種の被害者が出るようなことがあってはいけない、こういったことは、何はともあれ国民の受ける印象というものが大切なことでございます。 まず、警察当局に、そうした逮捕ということによって一般予防的な効果をねらったりとかいうような趣旨は全くなかったんだということを、念のために御確認をさせていただきたいと思います。
○瀬川説明員 繰り返しのようになって恐縮でございますけれども、先ほど御説明を申し上げましたように、本件につきましては、逮捕の必要性があるものというふうに判断をして逮捕したものでございまして、御指摘のような意図等は全くないということを申し上げたいと思います。
○枝野委員 そこで、ぜひとも今後警察当局にもそれから法務当局にも御検討をいただかなければならない、そして考慮をしていただかなければならない。既に我が国の社会においては、先ほど申し上げましたとおり、逮捕されたこと自体でこの人は悪い人なんだというふうな印象を国民が受けるという社会的な土壌が残念ながら存在する、これは否定できない事実だと思っております。 そうした中で逮捕権を行使するという場合においては、そうではないんだ、あくまでも逃亡を防ぐとか証拠の確保を行うとかという目的のために逮捕をするんだということを、皆様方がお考えになっている以上にきちんと、はっきりと示していく、マスコミ等を通じて国民に示していくという努力をしていただきませんと、こうした社会的風土というのは、強まることはあれ、適正な方向に薄まっていくことはないのではないか。 特に、今回のような知名度のある方、そして社会的な影響力の大きい事件にかんがみて、こうした事件では特にそうした配慮をしていただかないと、今後ますます国民の認識というものが余り妥当ではない方向に行ってしまうのではないかと考えております。この点について法務省の御見解をお伺いしたいと思います。
○則定政府委員 お答えいたします。 逮捕は、おっしゃいますように、当該被疑者についてその身体を拘束する、大変人権という意味において大きな影響力を持つ訴訟法上の処置でございます。従来から、逮捕するかどうかという点につきましては、刑事訴訟法の規定にのっとりまして慎重に吟味をした上、捜査当局がそれぞれの立場で逮捕を実施しておるわけでございます。 また、おっしゃいますように、いわゆる微妙な案件というものについて、当該行為者について逮捕するかどうか、これは非常に一般的に慎重に審査いたしました上、捜査の必要性等を考えまして逮捕しているものと考えておるわけでございます。
○枝野委員 いや、ちょっと私の発言の趣旨を御理解いただかなかったみたいで、逮捕権の行使そのものについてきちんとされているだろう、おかしな目的のために乱用したりはしていないだろう、それは私もそう思っております。 問題は、現実として、実態としては乱用していなくても、要するに、まさに刑事訴訟法上の逮捕の要件に基づいてやっていたとしても、残念ながら我が国の国民の意識の中ではそういうとらえ方をしてはいただけないという現実が存在するという中で、検察、警察、そして法務当局の広報というものについて一定の配慮を、ちょっとずつで結構ですから、一気にはいかない問題だと思います。一気にやろうとすれば、逆に法務、警察当局が国民の批判を浴びかねない問題だと思います。ちょっとずつで結構ですから、そうした配慮をしていただきたいという趣旨でございます。 せっかく法務大臣おいででございます。非常に具体的な事件と関連させてお尋ねをいたしましたので、お答えしにくいと思いますので、一般論としてで結構でございます。現実問題として我が国の国民の間には、逮捕をされたら、裁判を受ける前であってもこの人は悪い人だということで社会的制裁を受けるという現実がある中で、逮捕権の行使に当たって、あるいは行使した後の広報に当たって、いや、逮捕をされただけでは悪い人かどうかわからないのですよ、これから裁判で悪い人かどうかというのを決めていただくために逮捕をしたのですよというようなことをしっかりと国民に認識していただくために、ちょっとずつで結構ですから、法務関係の責任者として、そういった方向にちょっとずつ努力を進めていただくような方向で何とかしていただけないか、御感想をお伺いしたいと思います。
○前田国務大臣 法律論としての逮捕権と国民の意識の問題ということでございました。 もちろん、法務省、法務当局としても、逮捕権の乱用などということは、まさにあるべからざることであろうと思っております。また、国民の意識は、先生おっしゃいますように、逮捕されれば即悪い人という意識が今日まで、そういう歴史的な経過の中で醸成されてきたということは否めない事実でもあろうかと思いますが、しかし、昨今、またそれとは逆に、マスコミ等におきましても、逮捕された方の報道の取り扱い等も大変慎重かつ公正に、適正になりつつある、ある意味ではいい方向に向かっておる点もあろうかと思います。 先生の御指摘の点をよくこれからも踏まえながら、逮捕権その他については、今日までと同様に、慎重に、乱用など全くなきように取り組んでまいりたい、かように考えております。
○枝野委員 ありがとうございます。 こんなことを言うと、私も日本弁護士連合会の会員でございますので、日弁連から何か文句を言われそうなのですが、私は、個人的には、日本の検察、警察、そして法務当局、刑事手続の運用に当たっては、非常に適正に、それはきちんと犯罪を摘発するという面からも、あるいは最低限の人権を確保するという面からも、非常に適切にやっていただいているという信頼をさせていただいております。 それだけに、今のような誤解、国民の意識というものについて、十分な広報活動を行って、少しでもその意識が変わっていくように努力をしていただきたいということをお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。 ありがとうございました。
○金子委員長 富田茂之君。
○富田委員 新進党の富田茂之でございます。 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に関しまして質問させていただきます。 裁判官が著しく不足し、また裁判官の手持ち事件数が多過ぎて負担過重になっているという現状、また、そのため、訴訟遅延が著しくなりまして、十分な審理ができていないのじゃないかという、私も弁護士でありますのでそういうふうに現状をとらえておりますが、それにかんがみますと、裁判官の定員を増加するということには、そのことに関しましては本当に大賛成でございます。 ただ、法曹全体の人数をどういうふうに考えていくんだという観点からちょっと質問をしたいと思うのですが、二月十三日に法曹養成制度等改革協議会の中間報告がなされたようであります。 報道等によりますと、司法試験合格者の増員幅についてはかなり数字を明らかにして議論しているようなんですが、裁判官や検察官については数字を明らかにした増員計画が議論された形跡が認められません。これは、どういう理由でこのような経過になってしまったのか。法務省、最高裁の方で事務方もやっていらっしゃると思うのですが、そのあたりの経過をちょっと教えていただければと思います。
○永井(紀)政府委員 法曹養成制度等改革協議会は、御承知のとおり、法曹三者が共催しておりまして、法曹三者が全体で事務局を務めております。 先ほど委員御指摘の中間報告という言葉でございますが、実は、これは、法曹養成制度等改革協議会は、平成五年七月から二つの小委員会に分かれて細かい議論をやっていたわけです。全体会議をしばらく開いていなかったものですから、それぞれの小委員会における議論を全体会議にかけて、それで改めて、従来どういう議論が出てきたか、全体でまたひとつ討議をやりましょうという、そういう報告でございまして、改革協全体としての中間報告ということにはなっておりません。改革協で議論されております法曹人口に関するいろいろな考え方というものを相当羅列的に並べて報告したものでございます。――失礼しました。法曹人口問題等検討小委員会において議論されてきたものを改革協の全体会議に報告したというものでございます。 そこで、この中では、実は法曹全体の人口はどうあるべきかということが中心になっておりまして、個別的に、弁護士はどうあるべきか、裁判官はどうあるべきか、検察官はどうあるべきかという議論の前に、法曹全体としてはどういう養成をし、どういった人口があるべきかという議論をされたわけです。その結論的なものを要約して報告したものですから、裁判官がどう、検察官がどう、弁護士がどうという形では出ていないわけです。 ただ、人口小委員会の中では、極めて多くの委員から、裁判官も検察官ももっとふやすべきだ、それから弁護士もふやすべきだという意見はほとんど一致した意見として上がってきたわけですが、問題点は、むしろ、法曹全体としてどうあるべきかという議論として要約して報告したものですから、表立って裁判官、検察官がどうとか、そういう個別的なことは表面的には出てこなかった、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
○富田委員 今の説明でよくわかったのですが、それでは、最高裁並びに法務省というのは、今後裁判官や検察官について大幅に増員する必要があるというふうに御認識されているんでしょうか。それぞれの現在のお考え方をお聞かせ願いたいと思います。
○永井(紀)政府委員 裁判所も同様かもしれませんが、人口小におけるそれぞれの協議委員は、省なり裁判所を代表しているというよりも、むしろ一人一人の協議委員、外部の学識経験者あるいは大学の先生方と同じような立場で、一人の協議委員として発言しておりまして、まだそういう審議の経過の中でいろいろな議論をやっているところでございます。 人口小委員会におきましては、法曹人口に関する学識経験者からのヒアリングや世論調査の実施、あるいは我が国の法曹人口をふやすかどうか、司法修習制度はどうあるべきかといった点から検討が行われておりまして、先ほど申し上げましたけれども、今回の全体会議に対する報告というものも、人口小としての意見を一つにまとめたものではございません。協議の経過及び法曹養成制度に関する抜本的改革案についての各委員の意見を並列的にまとめたという性質のものでございます。 では、法務省を出身母体としております協議委員はどういうことを言ったかということはございますが、これが全体として、法務省がこうだああだということを確定的に述べたものではございません。なお、法務省を出身母体とする協議委員におきましても、検察はもっとふやすべきであるという意見を明確に述べているということをひとつ御紹介させていただきます。
○涌井最高裁判所長官代理者 裁判官の増員の関係でございますが、確かに、最近数年間ですと、毎年数名ないし十名程度の増員をお願いしているという状況でございます。ただ、もう少し大きいスパンでごらんいただきますと、昭和四十年以降の三十年間というような期間で見ていただきますと、その間、裁判官合計三百三十名余りの増員をしております。いわば、我々としては、これまで着実に裁判所裁判官の増員に努めてきたという姿勢は御理解いただけるかと思います。 委員御指摘の点は、むしろ、さらに将来の形、理想的な形というのを考えた場合、裁判官というのはどの程度の人数が要るのか、まずそれを考えて、そのための努力をすべきではないか、そういう御指摘かと思います。 これは、実は我々の方でもいろいろ議論はしておりますが、非常に難しい問題がございます。 そもそも、抽象的に申しますと、理想の姿といいますのは、あらゆる事件を適正迅速に処理できるような体制をつくるためにどれだけの裁判官が要るか、こういう言い方になろうかと思うのでございますが、ただ、御承知のように、民事訴訟の場合でございますが、訴訟といいますのは裁判所だけで自由にできるわけではございませんで、やはり双方の当事者なり代理人との共同作業ということになっております。そういたしますと、その代理人なり当事者の訴訟活動のあり方というのがどう変わっていくかというところで、かなり将来の訴訟の姿というのも変わってまいります。そういうふうな点も見ながら、どの辺の審理期間というのが理想になるのかというのが非常に難しいという点が一つございます。 それともう一つは、やはり裁判官の増員という場合には給源の問題がございまして、現実には、一気に増員、枠だけふやしていただきましても、それだけの人を持ってくる給源自体が命のところはございません。そういうところから、我々の方としては、事件数の動きとか、あるいは民事訴訟の審理の運営のやり方がどうなっていくかというところ、そういったところから、さらに裁判官の給源がどうなっていくか、そういう点を見ながら着実な増員を図っていくという方針を当面はとっていかざるを得ないのかな、そんなような考えでおるわけでございます。
○富田委員 法務省出身の委員の方は増加させるべきだという意見を述べられたということでありますし、裁判所の方、最高裁におかれましても、これまで着実に増員している、これからの当事者との関係で考慮していくことだということで、その増員に関してはそれぞれかなりの必要性を感じていると思うのですが、それであればなおさらのこと、今最高裁の方から御発言ありましたけれども、そういう事情を踏まえてもやはり将来の増員計画というものをきちんと立てて、立てた上で法曹全体の適正人口がこうあるべきだというふうに流れは行くのではないかなと私自身は思っているのです。 日本弁護士連合会の方からもちょっと意見を聞いたのですが、日弁連の一部には、今後二十年間で裁判官、検察官、弁護士をそれぞれ倍増しよう、そういう意見があるようであります。また、この意見は、改革協議会の中でも、日弁連出身の委員の方から紹介されたというふうに聞いております。この法曹三者のそれぞれの倍増論、二十年間で倍増していこうという意見について、最高裁、法務省はどのように現時点ではお考えになっているのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 日弁連からおいでになっていらっしゃる協議員の中から、そういう倍増論という意見が出たということは承知しております。ただ、全体的な意見として、果たしてそれが、直ちに倍増ということがいいかどうかという、余り評価的な議論はされませんでした。 ただ、法務省といたしましては数を的確に、倍がいいのか、あるいはどうなのかということを細かく議論したことはないわけですが、基本的には、これも最高裁からただいまお答えがありましたように、従来、検察官への任官者が非常に少のうございまして、観念的には倍増したいといいましても、任官者そのものがなかなかいなかったという現状があります。最近、少し検察官への任官者もふえてまいりましたので、そういうことを踏まえながらいろいろ今後検討していきたい、かように思っております。
○堀籠最高裁判所長官代理者 最高裁判所の事務当局といたしまして、現在検討している段階のところを申し上げますと、我が国の法曹が法役務に対する需要に十分こたえているとはいえないこと、あるいは我が国の社会情勢の変化、特に国際化が進むことなどを考えますと、紛争を法的に解決しようという合理的思考が強まることが予想されること、我が国の法曹人口が社会一般から見ますと少ないと見られているということは否定できないのではないか、このようなことから考えまして、司法試験の合格者については少なからず増員する方向で検討すべきではなかろうかというようなことを考えているところでございますが、具体的な数字につきましては、いろいろな諸要素を十分に考慮してするべきものであってということで、申し上げる段階に至っていないということを御理解いただきたいと思います。
○富田委員 実は、ことしの一月七日付の毎日新聞が、その社説で「裁判官は足りているのか」と。ちょっと最高裁等に対しては、かなり刺激的な表現を使って司法改革を求めております。この社説は、かなりきちんとした取材をされているな、いろいろなポイントから裁判官の現状について、今のままでは本当にだめなんじゃないか、いろいろ行革の中でリストラが進んでいますけれども、裁判官に関しては別枠で考えるべきじゃないかという鋭い指摘をされております。 その社説の中ででも、例えば経済同友会の報告書等を紹介されまして、経済同友会が「現代日本社会の病理と処方」という報告書を出されたようなのですが、その中で、裁判にかかる費用のほか、裁判の長期化を取り上げて、「本来の機能を果たしておらず、存在感すら薄れている」というように、こういう報告書の中で指摘されている。こういう危機的状況にあることを司法の当事者が本当に認識しているのかどうか、そういう疑問からこの社説が出てきたようなのですね。 かなりいろいろな点に触れておられまして、例えば裁判官の手持ち訴訟数、手持ち事件数や審理期間の問題、また、今の裁判官の定員の欧米諸国との比較、こういうのを具体的に挙げまして、やはり今のままでは足りないのじゃないか。今回、判事補が十二名増員されますけれども、こういう微増ではだめだ、本当にきちんとした計画を立てなければいけないという鋭い指摘がされております。 この中で私もちょっと気になったのは、先ほど最高裁の方から、この三十年を見てもらえれば三百三十名ですか、着実に増加しているんだというふうにおっしゃるのですが、四十年前の裁判官数と比べると一・三倍くらいにしかまだふえていない。ところが、民事とか行政の一般事件というのは四十年前に比べれば六倍くらいですか、事件数、いろいろ事件の統計のとり方等あると思うのですけれども、裁判官の増員数が事件の増加数にやはり追いついていないのじゃないか。現在の裁判官は、民事担当裁判官ですと手持ち事件が大体二百件以上ある。私も十年くらい前になりますが、司法修習で千葉の裁判所に行かせてもらいましたけれども、やはり裁判官、それぞれ二百件から三百件くらい持たれて、よくこんなに処理できるなというふうに思うくらいの事件を持たれていました。 今でも余り状況は変わらないんじゃないかと思うのですが、この社説の中ででも、「二、三百件の手持ちは決して過重ではない」という謙抑的な発言もあるというふうな、そういう紹介もされているのですが、修習生で現場を見たときの思い、あるいは弁護士になって裁判を担当して実際の裁判に当たってみますと、本当に一つの事件にきちんと時間的余裕を持って裁判官の皆さんが当たってもらえているのかな、やはりどこかで事務的な処理に終わってしまっているのじゃないかな、少しでも和解を勧めて早く事件を終わらせよう、自分の手持ち事件を少しでも減らそうというようになっている傾向が全くないとはやはりいえないと思うのですね。これはやはり、裁判官の人数をきちんとふやしていただいてきちんとした仕事をするというのが、国民のニーズに対しての本当の裁判所のこたえ方だと私は思います。 この社説は、そういうところを指摘して、やはりもう少し考えるべきだというふうにかなり具体的に訴えておりますので、最高裁の方にもきちんと読んでいただければと思います。 先ほどの改革協の中の人口小委員会の方でも、法曹全体の他の諸国との比較というのがかなりされているようですが、裁判官だけを取り上げた場合に、裁判官の国民一人当たりの人数がどうなんだというあたりの議論がどこまでされたのかな。それぞれ法務省や最高裁は御専門家ですから資料は持たれていると思うのですが、学者の皆さんとかあるいは民間から来られている方たちが、そういうところをどこまで意識されて司法試験の合格者の増加等を議論されてきたのかなというのが、ちょっと心配な面であります。 法曹全体の流れを議論していただくのですけれども、その中でもまず裁判官とか検察官ですね、いわゆる官の方がこういうふうにきちんとなっていくのだというのがはっきりしないと、民の代表であります日弁連の方としてもただ自分たちの方だけふやされるというのはなかなか納得しがたいところがあると思いますので、私は、そういう比較もきちんとしていくべきじゃないかな。それも、一般にきちんとこういう状況なんですというのを広報活動もしていただいて、そういうところで国民の皆さんがどういうふうに考えるのか、今の裁判官の定員でいいのか、検察官の定員でいいのか、もっとふやすべきだ、そのための費用は国民が負担してもやむを得ないのだというふうに議論は進んでいくべきじゃないかなというふうに僕は思っております。 そのあたりの資料がないのかということでお尋ねしましたら、日弁連の方から欧米諸国との裁判官の比較という数字をいただいたのですが、ちょっと紹介させていただきますと、これは平成五年の裁判所便覧をもとにされているようなんですが、日本の場合は、総人口一億二千四百四十五万二千人で、裁判官数が二千三十六名。これは簡裁判事を除いて、沖縄の裁判官も入れているようですけれども、裁判官一人当たりの国民数が六万一千百二十六人だ。これに対してアメリカでは、裁判官一人当たりの国民数というのが、連邦の裁判官を対象にしますと二万八千九百十二人、州の裁判官を対象で計算してみますと八千八百四十六人。イギリスは、裁判官一人当たり国民数三万二千二百三十二名。これはかなり日本に近いのですが、それでもいわゆるパートタイマーの裁判官が三倍近くいるということで、その人たちを入れるともっとこの数字は小さくなるようなんですね。ドイツでは、裁判官一人当たりの国民数というのは四千四百四十八人だ。フランスでは、裁判官一人当たりの国民数が一万二千五百二十五人。やはり日本が裁判官一人当たりの国民数というのは際立って大きい。イギリスのパートタイマー判事を入れない数字よりもまだ二倍以上。 こういう比較を考えますと、三十年間で三百三十人程度ではなかなか追いつかないのではないか、もう少しきちんとした増員計画を立てて、予算の問題はあると思いますけれども、やはりそこをきちんとしていかないと本当の意味で国民に開かれた司法の実現というのはまだまだ難しいのじゃないかなというふうにも考えます。また、裁判官の皆さんの過重負担というのもなかなかとれていかないのじゃないかなというような思いがいたします。 定員を将来的にこれだけにするのだというのはなかなか打ち上げにくい問題だと思うのですけれども、やはり最高裁の方でも予算獲得に向けてもう少し頑張ってもらいたいな。今までの枠の中でやっていくということじゃなくて、やはり司法は独立しているのですから、ほかの省庁とちょっと違う。本来独立した司法を実現するためには、ほかの省庁並みにシーリングで抑えられてもうその枠の中でしかできないのだということでは、やはりなかなか展望は開けていかないのじゃないかなという思いがいたします。どうかそのあたりも予算面でも頑張ってもらいたいな。 日弁連の方も裁判所の予算もきちんと調査しておりまして、昭和二十二年以降ですが、裁判所の予算は、対国家予算比、昭和三十年が〇・九三%とかなり高かったのですが、これ以降はもう下降しっ放し。平成二年度は〇・三九%。対GNP比でも、昭和二十九年度が〇・一一%だったのに、それ以降すっと下降して、平成元年度では〇・〇六五二%まで下降している。私も弁護士ですので、司法がこれだけ軽んじられているというのは、もう予算面でも情けないな、もう少し頑張ってもらいたいなと思います。本当に最高裁が頑張ろうという姿勢を示せば日弁連も協力していくと思いますので、どうかそのあたり御努力いただきたいなと思います。 新聞報道等によりますと、日弁連は今回の司法制度改革に腰が引けている。最高裁、法務省、また学者の皆さんはどんどん改革しろと言っているのに、日弁連だけは、いや余りふやしてもらっては困るんだというふうに言っているというふうに新聞では書かれているのですが、日弁連の皆さんは、私も日弁連の会員ですが、そういうことはないので、ずっとこの委員会でも取り上げさせていただきましたけれども、法律扶助制度の充実とか被疑者の国公選の弁護制度、そういうものにきちんと国が取り組んでくれ、そういう土壌ができて初めて法曹全体の適正な人数というのがどの程度であるべきかというのが出てくるのではないか、そういう観点に立って今の日弁連を代表されている委員の皆さんは改革協で意見を言われているのだと思うのです。そのあたりも最高裁、法務省にはきちんと御認識いただいて、これから改革協の中で適正な法曹人口というものを判断していっていただきたいというふうに思います。 ただいま裁判官の定員に関しましてちょっと気になることがあるものですから、つけ加えて質問させていただきますが、先ほどの改革協の中で司法試験の合格者数をふやすという議論が大分されているようでありますが、現在約七百人、昨年度は七百人をちょっと超えて合格者が出たようですけれども、改革協の中では、これを大体二倍の千五百名ぐらいにする、そのかわりに修習期間を現行の二年間から半分の一年にするという意見が大勢を占めたというふうに新聞報道でもされておりました。 この千五百とか修習期間一年という数字が、どういう根拠、またどういう経過でそれぞれの委員の皆さんから出てきたのか。先ほどの法務省の御説明では、取りまとめはしていない、各委員が意見を開陳して、それをそのまま全体会議に報告しただけだというふうにおっしゃっておりましたが、何かこの千五百という数字がかなりの委員の間で一致して出てきているというのは、ちょっと何でそんな数字が急に出たのかなという感じがいたします。前回のこの委員会で御質問したときに、法務省の意見として一委員が言っているというのはあるんだというような御説明がございましたが、学者の皆さんとか一般の委員の皆さんまでが同じような数字になってくるというのは、ちょっとどういうことなのかなと。そのあたり、何か根拠とか経過ではっきりしていることがあったら教えていただきたいと思います。
○永井(紀)政府委員 議論の経過の中で出てきた意見でございますので、まだ何とも申し上げられませんが、実は外部の協議委員の先生方は、千五百というのは最低千五百という言い方をしているのです。むしろ、三千人説とか二千人説というのがあるわけでございまして……。ただ、我々法曹界から出ている者は、二千人、三千人という話になると、これはもう司法修習のあり方を根本的に変えないとおよそできないだろうという議論もやったわけなんです。 特に、今の司法修習のあり方は実務修習といって、三つのところに、裁判所、検察庁、弁護士会に行って、そこでマン・ツー・マンといいますか、そういうことで指導を受けるということが非常にいいことであるという法曹三者の割合一致した意見があるものですから、実務修習をする以上は非常にそれを工夫しないとだめだろう、三千人ぐらいの合格者を出すとなれば、これはもうちょっと今の修習制度を抜本的にひっくり返さないとだめだろうということで、いろいろ協議をしてきたという経過がございます。 それで、要するに、先生方も本当は三千人とかおっしゃるのですけれども、我々がむしろ最低千五百人にしたらあるいは現在の実務修習のよさも取り入れてできるのではないかという意見を何人か言ったわけなんですね。それについて、それなら、当面は支障がないから千五百でいいかという議論も大分出てきたという、こういう経過でございます。 なお、千五百人というのは、外国のいろいろな、むしろ欧米では比較的少ないフランス並みに追いつくには、千五百人にしても二十年かかるだろうという。だから、せめてフランス並みぐらいに、欧米諸国では非常に数の少ないフランス並みにするまででも二十年かかってしまう。フランスは現に司法官が約二百名、司法官といいますのは裁判官と検察官ですが、それから弁護士が約千三百から千四百という、こういう数字で毎年養成を行っているわけです。こういった数字も一つは参考になることです。 もう一つは、先生、実務修習をやられて御経験がおありでしょうが、今実務修習は一年四カ月やっております。二つの期が四カ月ダブるんですね。それと、今現に七百名を超える合格者でありますから、ことしなどは四カ月はもう既に千五百に近い数で現に動いているという、そういった現実論もいろいろ議論されたわけでございまして、だから千五百がもう決まったとか、まだそいうことではございません。いろいろなそういう議論がされまして、差し当たって少なくとも千五百人ぐらいにすべきじゃないかという意見が割合多かった、こういうことでございます。
○富田委員 今ので経過はわかるのですが、やはり司法試験の合格者の増加という点に関しましても、裁判官とか検察官が将来的にどのくらいの人数になっていくのだというところがはっきりしていませんと、司法試験の合格者数の増加というのはただストレートに弁護士の増加に今のままではつながってしまうと思うのですね。任官者は定員枠がある限りはその中に縛られてしまうわけですから、仮に千五百人に増員したら、現在の任官状況を考えたら、もう千三百人以上が毎年弁護士がふえていく、ただそれだけであって、法曹三者全体、それぞれが適正にふえていくかどうかというのは、まだまだ甚だ疑わしいような状況だと思います。 今のお話ですと、フランスでは司法官関係を二百人、弁護士関係を千三百人ということですけれども、日本で毎年弁護士を千三百人程度ふやす必要が本当にあるのかという議論が私はなされていないんじゃないか。本当に千三百人の弁護士が毎年これから必要なのか。フランスに近づけるという意味では数字はよくわかりましたけれども、なぜ弁護士をそんなに急激にふやさなきゃいけないんだというのが、やはり日弁連の中の大きな疑問なんだと思うのですね。 抽象論はいろいろ言われます。弁護士が国民のニーズにこたえていないんだとか、弁護士や弁護士会の方が自分たちが今持っている権益を守ろうとして門戸を開放しないのだ、これは規制緩和の流れに反するのじゃないかというようなことはいろいろなところで言われるのですけれども、具体的に、弁護士がこれだけ足りないから毎年これだけふやさなきゃいけないのだ、こういう面で足りないからふやすべきだというような意見というのは、なかなかマスコミ等にも出てきませんし、増員論を言われる学者の先生たちの意見を聞いても、法律の実務家の感覚からいくと、ちょっとそれは違うのじゃないかなと。 具体的に弁護士のこういうところが悪いよと言われれば、弁護士はその点はきちんと対応して、直すべきところは直していける、弁護士会もそこは十分柔軟に対応できると思うのですね。本当に弁護士が国民のニーズにこたえていないのかといったら、そんなことはないのであって、法律事務所の敷居が高いとか、弁護士報酬の取り方が不明朗だ、はっきりしていないという点で、なかなか一般の方が法律事務所の扉をあけるというのは厳しいというのは、確かにあると思うのですね。そこは、弁護士並びに弁護士会の方がこれから一生懸命取り組んでいかなきゃいけないところだと思うのですけれども、弁護士人口だけが急激にふえるべきだという議論はちょっと違うのじゃないかなというふうに思います。 現に、ことしの春修習を終える修習生たちの中では、特に女子の修習生なんかは就職先がない。一般の大学卒の女子の就職が厳しいというようなことが言われていますけれども、せっかく司法試験に受かって二年間の修習を終えても、弁護士になりたいと思っても、勤めるべき事務所がない、そういう状況が去年の夏ぐらいからずっと続いているようです。 私も、ある修習担当をしている弁護士の先生にお伺いしましたら、そんなのを放置できないので、修習担当の中で内々に話をして、それぞれ自分たちで採ろう、本来勤務弁護士は必要ないけれども、路頭に迷わせるわけにはいかないから、そういう人たちも採るんだということで取り決めして採るようになったというような話も聞きました。 私は、千葉で事務所を開設しているんですが、私以外に弁護士二名、事務員三名の小さな事務所なんですけれども、そこの事務所にも来年の春卒業する、研修所を卒業する修習生がもう二人来ております、どうにか雇ってくれと。うちはもうそんな時期じゃありませんので、とても雇えるような状況じゃないのですが、今の修習生の弁護士事務所への就職状況というのはかなり厳しいのですね。そういうのも踏まえて、司法試験の合格者数というのも考えていかなければいけない。 また、裁判官や検察官を希望される修習生が本当にふえているわけですから、定員の微増ではなくて、やはり将来的な計画を示して、司法試験に受かればこれだけ裁判官や検事になれるぞというところを示さないと、継続的に、先ほど供給源の話がございましたけれども、それだけ裁判行になってくれるのか、検察官になってくれるのかというような点もあるわけですから、そういう意味でも、きちんとした増員計画というのが必要なんじゃないかなというふうに思います。 また、裁判官だけほかの国と比較して少ないと言ってちょっとあれですので、弁護士も確かにほかの国と比べて少ないという批判もよく聞いておりますし、そういう面から弁護士をふやすべきだという議論があるのもよくわかっております。ただ、日本の現状というのもきちんと押さえた上での議論をしてもらいたいなというふうに思います。 特に、日本では弁護士の職種の、弁護士だけではありませんけれども、その周りのいろいろ周辺業務をやられている、いわゆる法律に関係する仕事をされている人たちがかなり大勢いる。例えば弁理士さんや司法書士さん、税理士さん、行政書士さん、社会保険労務士さんなど、この人たちの人数を合わせるともう十三万五千人ぐらいいるんだ。それと弁護士の一万五千人を合わせれば十五万人近くがいわゆる法務に携わっている。ほかにも、現在は企業内の法務がかなり充実しておりますから、大学や大学院から企業法務の方に進まれる方も多い。そういう点も十分踏まえて、司法試験の合格者数の検討をしていただきたいなと思います。 先ほど法務省の方からも、現在の司法修習の利点というのをお話しいただきましたけれども、前回の委員会でも私は、司法修習は本当にいいんだということを大分言わせていただいたのですが、やはり現行の司法修習制度というのは、後継者の養成という点から見ても、法曹三者のいずれの道に進む者についても、法曹三者全体について実務体験が得られる、これは何物にもかえられない利点だと思います。また、実務法曹による理場で、本当に二年間、一年四カ月ですけれども、丁寧な指導を受けることができる、そういう意味で、この二つの意味で本当にすぐれた制度だと私自身は思います。 現行制度について、現時点で結構ですので、最高裁、法務省はどのように評価されているのか、ちょっとお聞かせ願えればと思います。
○永井(紀)政府委員 法務省が評価しているというより、むしろ改革協の中で出た意見でございますが、やはり法曹三者を経験した方は、あの実務修習制度の基本は非常にいい制度であろうということは、割合多くの委員が言っておられます。 ただ、委員の中には、少し二年間は長過ぎる、少し実務修習が間延びしているときがあるという、そういうことを言われました。それから、他の外部委員等におきましては、やはり二年は少し長過ぎるのではないか、むしろ本当は早く切り上げて、OJTといいますか、むしろそれぞれ登録ないし任官した後徹底的に継続教育をやるべきだという、こういったような意見も聞かれております。 現在の実務修習の骨格というものについては高い評価を割合している、こういうように思っております。
○堀籠最高裁判所長官代理者 司法修習の期間における実務修習につきましては、私どもといたしましても、法曹三者の相互理解を得るためには非常にいい制度だというふうに考えておるところでございます。 ただ、その期間がどうかということにつきましては、人によっては間延びしているのではないかという意見もありますし、その後の養成というようなことによっても賄われる部分があるのではないかという意見もありますので、固定的に二年ということを考えるほどの必要はないのではないか、このような考えを持っておるところでございます。
○富田委員 こういうすぐれた制度を慌てて変更する必要はないと私自身は思うのですが、現行の司法修習制度というのは、修習終了時に裁判官、検察官、弁護士、どの道に進んでもとりあえずひとり立ちでやっていけるのだというのを目標として設定されている制度だと思うのですね。仮にこれに改革を加えるとすると、一年というような、修習期間が短縮される、また実務修習がどこかで削られるというような方向になった場合には、大学とか大学院のカリキュラムを改革して法学教育を充実する、あるいは訴訟実務をもう教育として実施してしまう。それとか、法科系の大学、大学院の年限を延長して法曹人に必要な基礎知識を大学や大学院で修得してもらう、そういう別の施策が必要になると思うのですけれども、そういう点に関しては最高裁や法務省の方では何か検討されているのでしょうか。
○永井(紀)政府委員 これも、法務省が検討しているというより改革協の中で出た意見で、随分議論されております。 ただ、今司法試験の合格者が七百名ばかりでございますので、各大学あるいは大学院のカリキュラムを実践的な教育にしても、もう既にそれだけ法律家になれる人が限られているわけですから、果たして現在の各法学部等でそれがやり切れるかどうかというのが非常に疑問である、そういう考え方だと圧倒的に数をふやさなければだめなんじゃないかという、循環論みたいな議論も出ております。これが、改革協の中におけるいろいろな議論でそういう問題が出ておるというこを御紹介いたしました。
○富田委員 いろいろ難しいとは思うのですが、ただ法曹人口をふやせばいいという問題では決してないと思うのですね。 ちょっと御紹介させていただきたいのですが、ことしの二月七日、そこにいらっしゃる原田官房長が毎日新聞に「私見/直言」ということで御提言されておりまして、これからの法律家というのはこうあるべきじゃないかという文章を書かれております。私はこれ、二月七日の朝見てびっくりしまして、本当にこうあらねばいけないなというのをきちんと言われておりまして、私の事務所のまだ一年目の弁護士にすぐこれを送ってよく読めと言いましたら、こんなにいろんなことを弁護士はできなきゃいけないのかというようなことで、なかなか大変だと思う、実際弁護士になってもここまでできないというようなことだったのですが、ちょっとその中を御紹介させていただきますと、 これからの法律家は、法解釈学や判例に詳しいだけでは期待に応えられません。社会の仕組みと関係者の立場をより深く理解し、その気持ちを忖度できる洞察力がなければ法律家の資格はないでしょう。そうでなくては、こじれた人間関係を解きほぐす「癒し手」としての役割を果たすことはできませんし、人々が安心して秘密ごとを打ち明ける気にはなれないでしょう。あるいは、 交渉に当たる法律家は、依頼者の最大利益のために対面して戦う姿勢よりも、相交渉者と肩を並べて視野を広くし、前向きに関係者の希望の最大公約数的解決策を模索しつつ協働する側面が強調されるべきでしょう。また、法律家は場合により、断固として大方の納得できる正義と公正さを実現する意欲と技術がなければ役に立たないのです。というふうに言われております。本当にこのとおりだと思うのです。 こういう法曹を養成するんだという観点に立って、司法試験の合格者数もどうあるべきなのか、修習制度もどうあるべきなのかというところを一生懸命議論していっていただきたいなと思います。改革協に参加されている委員の方もきょういらっしゃるわけですから、そのあたりを十分踏まえて今後の議論を進めていただきたいと思います。 昨年十一月九日と二十九日の当委員会におきまして、東京入国管理局の警備官による中国人女性に対する暴行事件に関して御質問させていただきました。 その後、十二月二十日に、当委員会におきまして、委員長を初め暴行事件の理場である東京入国管理局第二庁舎の視察が行われました。私も参加させていただきました。入管の業務の現場を見させていただきまして、本当に業務の急激な拡大状況に対して職員が一生懸命頑張っている。そういうことはよくわかりましたし、また、暴行事件が頻繁に発生し得るような状況ではないなと、かなり明るい現場という印象を受けましたし、そういうところをきちんと見せていただいて、実に有意義な視察をさせていただいたなというのが率直な感想であります。 ただ、その視察の際にも質問させていただいたのですが、この暴行事件に関する損害賠償の民事裁判が、第一回の口頭弁論が十二月七日に開かれる予定であったのに、十二月三日の日に被害を受けた中国人女性の強制送還手続がとられた。中国の方に送り返されてしまった。これは裁判の直前ということで、やはり少し配慮が足りなかったのじゃないかというふうに思います。 何か東京入国管理局側あるいは国側に不都合なことがあって、急いで強制送還しちゃったんじゃないか、そういう不信感をこの当事者とか支援されている関係者なんかは抱いたのではないかなと思いますし、後でわかったのですが、特にこの中国人女性の強制送還に関する費用を国費から出した、自費で出ていったというわけじゃなくて、わざわざ国が費用を持って裁判の直前に送り返しているというこの事実を見ますと、一般から見ても何か不自然だな、ちょっとおかしいんじゃないかなという感じがするのじゃないかと思います。 法務当局は、この件についてどのような判断に基づいてこの十二月三日という日に中国人女性の強制送還手続を行ったのでしょうか。ちょっとそのあたりをお聞かせ願いたいと思います。
○塚田政府委員 実は当該中国人女性は、私どものいろいろな取り調べ、調査に対しまして事実をすぐ認めまして、事件が起きた直後に退去強制令書が発行されておりました。速やかに強制送還しなければならなかった事情にございました。私どもは、刑事告訴や損害賠償訴訟への影響あるいは本人の裁判を受ける権利も配慮した上で、成田空港から中国向けに退去強制したものであります。 事実はそのようなことでございます。
○富田委員 裁判を受ける権利に配慮されたということでしたけれども、この女性は、先ほども言いましたけれども、損害賠償請求の民事裁判を提起しておりますし、また、暴行を受けたということで刑事告訴も行っておるわけです。この女性の裁判を受ける権利が侵害されるというようなことになったら、これは本当に大問題だと思うのですが、ちょっと考えられる手続として、民事裁判における証拠保全の手続とかあるいは刑事事件の被害者としての事情聴取等は、この強制送還手続の前にきちんと実施されているのでしょうか。
○塚田政府委員 お尋ねのございました民事訴訟上の証拠保全、また刑事事件の被害者としての事情聴取、いずれも終了した上で強制送還をいたしました。
○富田委員 実は今月になりまして、この事件をずっと取材されている記者の皆さんからいろんな資料とか新聞をお送りいただきました。私の議員会館の事務所の方に送っていただきました。その中に、この女性の強制送還手続に関しまして、次のような記載がありました。ちょっと紹介させていただきますと、 驚くべきことに、入管がその女性のために準値した臨時旅券には送還理由として五二―四と記入されていた。これは密入国という意味である。 何も知らないこの女性は、上海の空港で罰金を支払わせられ、無実の容疑を知った。帰国するときに罰金を求められるのは犯罪者に対してだけである。 これは再入国を不可能にするための入管のでっちあげである。 筆者からの問い合わせに対して、法務省入国管理局広報課の担当者が一月九日に電話で回答してきた。「この女性は九一年十月に就学生として入国しており、その後不法在留していた。密入国ではない。五二―四の記入については当局の事務であるがそれ以上回答できない」 入国の時点を完全に誤解しており、入管は問題の本質を全く理解していないことが分かる。 また日本国内に向けては、密入国ではないと言いながら、出身国に密入国の通知をするというおよそ国際社会に通用しない裁判妨害作業をしている。というような記事でした。 これが事実だとすると、本当にこの女性にまたもう一つむごいことをしたなというふうに思うのですが、ちょっとこの記事を読んでいろいろ調べてみまして腑に落ちない点がありますので、何点か御説明いただきたいのですが、例えば臨時旅券に送還理由等を記載するのかどうか、これがまず第一点。 それと、ここで言われている五二―四というのが何を意味しているのか、記載するとして、五二―四という記載がこの旅券にされたとしたら、これは一体何を意味するものなのか、当局の方でわかる範囲でいいですから、ちょっと答えてください。
○塚田政府委員 まず、退去強制時に発給された旅券に送還理由を記載しているのかどうかという点でございますが、退去強制される者の旅券に出入国管理及び難民認定法第二十四条の退去強制事由の表示ということは、私どもはしておりません。 それと、五二―四とは何を意味するのかというお尋ねでございますが、私どもは、当該中国人女性の旅券にそのような記載があったとは確認しておりません。が、想像するに、五二―四とは出入国管理及び難民認定法第五十二条四項を表示したものではないかと思われます。なお、念のためでございますけれども、この項は自費出国に関する規定でございます。
○富田委員 今の出入国管理及び難民認定法五十二条四項は、自費出国の規定が確かに書いてあるわけですね。そうすると、本件は強制送還ですからちょっと違うんじゃないかな、何かまたそこでそごがあったのかなというふうな思いもしますし、またほかに五二―四という数字が出入国管理及び難民認定法以外の規定で何かあるのか、もしあるすれば、ちょっと教えていただきたいと思います。 それと、中国の入国管理業務において日本から強制送還された者が罰金等を徴収されるということが具体的にあるのかどうか。これは法務当局の方で把握している限りで結構ですから、教えていただきたいと思います。 また、先ほど記事を紹介させていただきましたけれども、入国管理局広報課の担当官が、取材に対し先ほどのような回答を本当にされたのか、されたとすれば、どういう意味でこういう回答をされたのかも、あわせてちょっと教えてください。
○塚田政府委員 まず、五二―四という記載でほかに何か思い当たる規定はないかというお尋ねでございますけれども、私ども、ほかに思い当たる規定等は承知してございません。 それと、入国管理局広報課の担当官が取材に対しこのような回答をしたのか、あるいはこの回答はどのような意味であるのかというお尋ねでございますけれども、本年の一月五日に社会党中央機関紙周の記者から、陶亜洋、問題の中国人女性でございます陶亜洋はいつ、どのように密入国したのか、二番目に、強制送還の際、一時旅券に記載された五二―四は何を意味するのかとの内容の質問がございました。 それに対しまして、一つ目の質問につきましては、同人は、同人はというのは中国人女性でございますが、中国人女性は就学生として上陸し、その後在留期限を超えて本邦に不法残留していたため退去強制令書が発行されたもの、それで、不法入国により退去強制令書が発行されたものではないと答えました。 また、第二点につきましては、私どもの事務の問題ではございますけれども、それ以外はお答えできないという回答をしております。この点につきましては、事務手続上のものでございまして、問い合わせの趣旨からして、最初の問いに対し、より明確に本人の送還に関し説明していることでございますので、あえて五二―四というようなことにつきましてさらに説明する必要はないと判断したことによるものと思います。 それと、中国の出入国管理業務において日本から強制送還された者が罰金等を徴収されることがあるのかというお尋ねでございますが、私どもの調査ではそのような法制度が存在するか否かについてはまだ承知できておりません。
○富田委員 この当該女性は、日本の民事裁判への出廷を強く希望しているようであります。仮にそういう必要が出た場合に、法務当局としては入国に関して特別に許可する意思があるのでしょうか。
○塚田政府委員 裁判の進行の状況に照らしまして、それが本当に必要であるという判断に至りました場合には、入国を考慮したいと考えております。
○富田委員 できるだけそういう方向で努力していただきたいと思います。 実は、一月三十一日付の朝刊で、本件の暴行事件の加害者になった警備官の方が庁舎内で自殺されたということを知りまして、本当に非常に驚いたとともに、正直なところ、やりきれない思いがいたしました。 この警備官に対して、当局の方では減給処分、十分の一の減給を二カ月という処分をされたようですけれども、この処分の点だけ見ますと、ちょっと事件の割には軽かったのじゃないかなという印象を私はその処分時には思いました。この点について、大臣の方は二回にわたり私の質問を聞かれていたと思うのですが、その経過を踏まえて、処分という点だけとらえてどのようにお思いになられるか、ちょっと御意見を。
○前田国務大臣 この入国警備官でございますが、先生御指摘のとおり、減給処分、二カ月、十分の一を行っております。先生お話しのとおり、残念ながらこの警備官は先般みずからとうとい命を絶ったわけでございますが、この処分につきましては、国家公務員法の規定に基づいた処分でございまして、適正な処分だったと考えております。
○富田委員 この処分後、職場をかえるとか勤務先をかえるとか、何か本人に対して別の配慮ができなかったのかなというふうに思うのですが、その点とういうふうに当局の方としては考えていらっしゃったのか。 また、報道によりますと、この警備官は何通か遺著を残されたようですけれども、特に上司あてとか当局あてに残したというような報道もなされております。暴行事件に触れる点、あるいは被害者に対しての何か思いをもし述べているような部分があって、明らかにして差し支えないということであれば、ちょっと教えていただきたいと思うのです。 また、新聞報道でしかわからないのですが、この民事裁判において国の方は、暴行の事実は認めた、ただ、請求にたいしては争うのだということを第一回で示されたということなんですが、具体的な中身には触れることは無理かもしれませんが、今後この裁判に対して国としてはどういうふうに対応されるおつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。
○塚田政府委員 勤務の変更等の措置はとれなかったのかという御質問でございますけれども、この職員につきましては、当面の措置として、昨年の十一月四日付をもちまして、入管法違反者の摘発を行う警備第二課から、違反調査の基本方針の企画立案、出入国及び外国人の在留管理並びに難民に関する資料の収集を所管する警備第一課というところに配置がえを行っておりました。 また、遺書の件でございますが、遺書の中に東京入国管理局職員あてのものがあったのは事実でございますけれども、その内容を公表するのは故人の遺志に、意に反することとなりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。また、その他の遺書につきましては詳細を承知する立場にございません。 それと、国側は、暴行の事実を認めながら請求に対しては争う方針のようだが、今後の対応ということでございますが、この入国警備官も、委員御存じのとおり、この中国人女性の方から暴行を受けまして一週間のけがをしております。 そういう事情もございまして、この裁判における今後の対応につきましては、相手方の主張を検討し、今申し上げた私どもの状況も踏まえて適切に対応し、妥当な結果を得たいと考えております。
○富田委員 もう時間も参りましたので、最後に一点だけお伺いしたいのですが、この事件以降も元入管職員の内部告発等があって、新聞報道されたり、入管業務への関心が一般でも非常に高まっていると思います。 先般、出入国管理政策懇談会という懇談会ですか、これが「出入国管理政策の現状と当面の課題」をまとめ、法務大臣に提出されたそうであります。その際、座長を務められておられます伊藤正己元最高裁判事が記者会見で、「暴力は申し開きできない。警備官への研修・訓練が十分でないことなどが考えられ、入管当局として真剣に取り組まなければならない」というふうに語られたそうであります。本当に私も同感です。 実は、二月六日に阪神大震災の関係で大阪入国管理局の方に行かせていただきまして、大阪の方の入管の業務を見させてもらいました。その際、局長さんから丁寧に御説明いただいたのですけれども、この一、二年で採用した職員が職員全体の三分の一を占めている、現場で業務を行いながら教育・訓練をしなければならないということで、その実情について一生懸命御説明いただきました。 職員をふやさなければならないという点はもっともだと思いますし、その点に関しては、私ども野党でありますが一生懸命協力していきたいと思います。ただ、職員に対する教育体制は万全なものとしていただかなければならないと思います。より一層この点に関する努力をしていただきたいと思います。 職員の暴行なんというのはあってはならないことですので、そういう点、暴力対策という点に関して大臣は今後どういう御決意で臨まれるのかお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
○前田国務大臣 職員のいわば研修・教育体制の強化ということでございますが、先生御指摘の伊藤座長の御発言のとおり、まさに申し開きのできない暴力事件等があったわけでございまして、これに対しまして私どもも、入管におきまして、法務総合研究所が実施をしておる研修、またそれぞれの局において自序研修、各種訓練を実施して職員の資質の向上に努めておるところでございますし、今後とも研修や訓練の充実に努めてまいりたいと思っております。 なお、私も各入管関係の会同、会議におきまして、綱紀の保持について常に徹底した指示をいたしておるところでございますし、また本年の三月には、指導的立場にございます入国警備官による、適正な処遇を徹底させるための警備・処遇専門研修、これを実施をいたします。また、適正な業務遂行のための実務マニュアル、これを作成しまして、若手職員と管理職との意見交換なども行い、綱紀の保持になお一層努めてまいりたいと思っております。特に、御指摘いただくわけでございますが、人的にも増員をいたしておる中、やはり職員の資質というものが極めて大事であろう、かように考えて、これからも熱心に取り組んでまいりたいと思っております。
○富田委員 どうもありがとうございました。
○金子委員長 正森成二君。
○正森委員 今回、十二名の判事補を増員する改正案が提出されておりますが、判事は過去七年間一人も増員されていないし、今回も増員されておりません。最高裁は、現在の裁判官不足、今回は判事補だけを補充されるわけですが、どう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。 ちなみに申し上げますと、これまでの国会での審議で最高裁は、判事の増員が進まない理由として、充員の可能性と質の高さが求められるという制約があるからだというように言っているわけですが、その見解は変わらないわけですか。 〔委員長退席、中島(洋)委員長代理着席〕
○涌井最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおりでございまして、裁判官の増員につきましては、昭和六十二年度にたしか八名、判事の増員をお願いしたことがございますが、それ以後は本年度まで、専ら簡裁判事と判事補で増員をお願いしてきておるわけでございます。確かに、民事訴訟の審理の充実ということでございますと、合議体の一員としてしか働けません判事補を増員するよりは、一人で事件の処理ができます判事を増員した方がより直截な対策ではないか、おっしゃるとおりだろうと思います。 ただ、判事の場合、一つ問題はやはり給源でございまして、現在はかってと違いまして、弁護士の方の中からも何名か判事に御任官いただけるような道ができておりますけれども、やはり基本的に判事の給源は、判事補で十年を経過しました層でございます。そういたしますと、判事を増員いたしますためには、まずその判事の給源といいますか、そこのところをふやしていかなければいけないのじゃないか、そういう趣旨で今回判事補の増員をお願いしておるわけでございまして、その給源をふやした上で、行く行くは判事の方もお願いしたい、こういうふうな考えでおるわけでございます。
○正森委員 非常に率直な答弁だったと思うんですよね。しかし、それをもう少し分析しますと、法務委員会の調査室がつくった裁判官の増員の推移という数字がある。これを見ますと、昭和五十三年までは判事補は伸びているが、判事は一名もふえていない。それから昭和五十四年から六十二年までは、判事はふえておるが判事補は全くふえていない。 これはどういうことかというと、まず判事補をふやして、御承知のように判事になるには十年かかりますから、大体その期間が過ぎれば判事補が判事になるから、判事の定員をふやさなければ、この人たちを判事にしてそしてはめ込むわけにはいかないんですね。そのときに判事をふやすと。それからしばらくはもう判事補もふやさないで、それで一定充足されたら今度判事補をふやして、それで年がたては今度は判事をふやすという、ところてん押しの増員計画をやっているのではないかということを非常にはっきり示しているんですね。これは今言われたように、判事には給源が必要だ、だれでもというわけにはいかない、その給源は専ら司法修習を終えた判事補であるという観点なのですね。 ところが、それではよくないというので、たしか平成四年に弁護士会とも協議が行われて、弁護士等在野から判事補あるいは判事に任官してもらうということになって、同じく資料によりますと、最近の二、三年で、弁護士から判事十八名、判事補二名というように任官されている方がおられるわけですね。しかし、これは定員が足りないその補足ということだけであって、これを予測して定員をふやすということはやっていないのですね。 ですから、発想の根本的な転換、給源は修習生を終えた判事補だけで、定員で足りないのができてどうにもこうにもならなかったらちょっと弁護士に声をかけるというようなのではなしに、我が国の現状の裁判の遅延を防ぐために、あるいは国民のニーズに対して十分サービスできるようにするためにはこれぐらい必要であるということをまず決めて、もちろん予算の関係もありますが、その給源で判事補を計画的にふやしてそれが判事に育つようにする、一方、常時適切な方があれば在野から判事補あるいは判事になれるように努力するという、給源の多面化ということを考えなければ、これの数字を見ますと、あくまでキャリア裁判官、修習生から判事補になった、言うたら最高裁子飼いの――子飼いのなんと言ったらいけませんが、そういう者で裁判官を構成しようとしている意図が非常に見られるのですね。これは、イギリスなどとは全く考え方が違うと言わなければなりません。 ここに裁判官が足りているのかというような一般紙の社説がありますが、それを見ても、裁判官一人当たりの人口を欧米と比較すると、我が国は四万四千人、これは簡裁判事も全部含めてですが。アメリカでは八千八百人、イギリスでは、これは無給判事もおりますが、国民千六百人に裁判官が一人いる。ドイツでは四千四百人で、「わが国の裁判官はケタ違いに少ない。」ということで、「司法の機能は、紛争の法的解決にとどまらず、行政権力のチェックという大きな役割もある。そうした面からも、他の行政庁とは違って増員政策があってもいいのではないか。」というようなことを書いているのですね。この指摘は非常にもっともな点がある。 多くは言いませんが、合弁護士の大幅増員ということが言われておりますが、一方、日弁連などの言い分を聞きますと、弁護士をふやしても、裁判官や検察官の人数が今のままでは、依然として訴訟の遅延は起こり、一方では弁護士の、今も質問がございましたが、就職難といいますか、あるいは過当競争という問題が起こるということが言われているのですね。ですから、これについてやはり考え直していただくということを法務省あるいは裁判所にお願いしたいというように思いますが、いかがですか。
○涌井最高裁判所長官代理者 先ほども御説明申し上げましたとおりでございまして、我々としては、やはり事件数の動向を見て、必要なだけの増員は何とかやっていきたいというふうに考えております。 ただ、将来を見通してどのくらいの数が適正な姿なのかという、数のはじき出し方というのが非常に難しゅうございまして、どうしてもそのあたり、これから民事訴訟法の訴訟の運営のあり方というのがどう変わっていくのか、あるいは、現在既に民事訴訟法の改正作業がかなり大詰めまで来ておりますが、新しい民事訴訟法のもとでの訴訟の運営がどういう形をとっていくのか、そのあたりも見ながら、どの程度の裁判官があれば適正迅速な事件の処理ができていくのか、そのあたりも見ながら着実に増員に努めていきたい、そういうふうに考えております。
○正森委員 そういう答弁しかきょうはできないのでしょうが、しかし、この統計数字を見ても、判事補の増員のときには判事の増員はなく、判事の増員のときには判事補の増員はないということからも明らかなように、主な給源を司法修習生のみにほとんど頼っておるということは歴然としているのですね。ですから、法曹一元という観点からも、そういう点についても心していただく必要があるということを指摘して、次の質問に移りたいと思います。 裁判官とともに、裁判官以外の職員の増員も非常におくれております、いろいろ毎年御努力を厳しい財政事情の中で行われているということは承知しておりますが。関係団体である全司法労組は、毎年、全国の職場実態から積み上げた増員要求を最高裁に提示しておって、私が伺いましたところでは、増員必要人数はおよそ一千名というように言われているのですね。今回は相当数増員されましたが、もちろんけたが二つぐらい違うわけですね。ですから、職場実態からいって、職員の増員は非常に必要ではなかろうか。 具体的に申しますと、最高裁が書記官の増員理由に挙げている、地裁における執行事件の急増ということを言っておられます。その点については、この関係の部門は繁忙をきわめて、残業がふえる、それでも処理し切れないので事件処理が遅延するというようなことで、資料をいただきましたが、例えば、一番忙しいのは東京地裁のこの部門を扱う民事二十一部だそうですね。大阪では民事十四部だそうです。民事二十一部の資料によりますと、不動産の競売などでは件数が約四倍になっている。これは平成二年と平成六年を比べた数字です。それから、債権等強制執行では一・八倍、担保権実行では二・六倍、債権配当手続では約五倍ということに対し、この間のこの部門の職員の増員は、昨年の大幅増員の結果やっと緩和されましたが、一・五倍だという点を見ますと、この点でもやはりいろいろ配慮される必要があるのじゃないですか。 〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
○涌井最高裁判所長官代理者 現在、全国の裁判所で執行事件を中心といたします民事関係の事件が非常に伸びております。委員御指摘のとおりでございます。 裁判所の方は、そういう点を考慮しまして、五年間で、総数で申し上げますと、書記官を百三十一名、事務官百六十三名、合計いたしますと二百九十四名の増員を図ってまいりました。今回お願いしております増員数を含めますと、六年間で三百五十人ぐらいの増ということになるわけでございます。これで本当に事件数が非常に伸びておる状態にきちんと対応していけるのかと言われますと、実は万全であるとまで言い切ることができるかどうか、問題はあろうかと思います。 ただ、私どもの方が考えておりますのは、この事件増に対する対策は人員だけではなかろう、例えばいろいろな新しいOA関係の機器を入れまして、執行事件につきましても計算関係の事務処理を機械化していくとか、あるいは、民事の方はそういう形で事件が伸びてきておりますが、例えば刑事関係の事件とかあるいは家庭裁判所の少年関係の事件というのは、これは一時のピークに比べますとかなり急激な事件の減少が生じておりますので、そういったところからも人を忙しい部門に移しますとか、そういった総合的な施策を講じた上で、どうしても必要な人数については増員をお願いしていかないといけない、そういうふうな形で今回増員をお願いしておるわけでございます。
○正森委員 調査室がつくりました資料を見ますと、非常にふえている部門があれば、確かに十年ぐらい前に比べると事件が減少しているという部門があることは承知しております。それで、配置がえ等をするからやりくりできるんだという御趣旨でしょうが、それにもある程度限界があって、例えば執行関係では裁判業務の外部委託が行われておるということになっているんですね。 例えば、今挙げました東京地裁民事二十一部や大阪地裁の十四部では、業務を外部に委託して正規の裁判所職員でない者が書記官や事務官の補助的な仕事をしている。しかし、御承知のように、裁判というのは個人のプライバシーあるいは秘密保持というのに非常に関係があるんですが、これらの外部委託の方はもちろん公務員ではないわけですね。非常に配慮されて、私などが聞いてみますと、何か元書記官とかそういう経験のある人を採用しているということも聞くのですが、しかし、当該職務を担当した経験があるという人は比較的少ないんですね。ですから、そういう点からいえば非常に問題があるのじゃないか。現在の業務委託の実態を簡単に説明してください。
○涌井最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、東京地裁と大阪地裁の執行部に一部アルバイトといいますか、外部の人に入っていただきまして、事務を手伝ってもらっております。 実は、東京地裁、大阪地裁、それぞれ執行部非常に忙しゅうございまして、本体の手当てはやはり増員といいますか、それでやっていこうということで、この二年間で東京地裁ですと二十二名、大阪地裁にも九名の増員をやっております。ただ、最近の事件増の傾向といいますのは、ある意味ではバブルがはじけました一時的な異常現象といいますか、そういう面もございますので、なかなか恒常的な人の手当てだけでは貯えない面もございます。 委員御指摘のように、裁判の仕事というのは、やはり書記官の仕事も法律的な判断作業でございますので、その本体のところを外部に委託するということは、もう性質上許されないことだろうと思います。ただ、幸い執行部の事件の場合には、定型的な書面をつくりましたり、それを当事者なりなんなりに送達しましたりというふうな割がし機械的な処理がございます。そういうところに限って外部委託ということを考えておるわけです。 現実には、外部委託をお願いしておりますのは大体裁判所職員のOBでございますので、それなりに守秘義務という点でも配慮はいただける方でございますし、現に委託をお願いするときには、そこはきちんと契約書の形で秘密は守るという約束をしていただいておりますし、日ごろの仕事の上でも管理職員の方で十分その辺は目を光らせておるという状況でございます。ただ、これが本筋でないとおっしゃる点は、まことにそのとおりであろうかと思っております。
○正森委員 私どもが関係者から聞いたところでは、本年度というのは年度からいうと九四年度ですね、東京の二十一部で外部委託で来ていただいているのが十二名ぐらい、それから大阪では四名ぐらいというように聞いております、ほかにあるのかもしれませんが。私どもは、現場の書記官あるいは事務官の健康等を守るために、補充されないのに外部委託を今直ちにやめろというような無理な要求を今しているわけではありません。 やむを得ない場合には臨時の処置をとらざるを得ないと思いますが、しかし、今あなたが答弁されたように、本筋は適切に本職の職員をふやすということが筋だろうということで、それぞれのところでは、例えば東京ではたしか四名ほど人員を要求している、大阪では書記官二十一名、事務官七名の増員を要求しているというように聞いておりますが、これらの増員要求に対して、本年度はもうこの法案が出ているからなかなか無理かもしれませんが、将来の展望としていろいろ配慮をされるかどうか、あるいは全体としての国民のニーズにこたえるために法務関係職員の増加についてどういうぐあいに考えておられるか、最後に法務大臣と最高裁のお考えを一言だけ伺って、ちょうど時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。
○涌井最高裁判所長官代理者 執行部の手当ての関係について申し上げますが、本年度の増員の一つの柱としてこの執行事件の処理を掲げておりますので、この増員をお認めいただいた際には、東京、大阪両地裁の執行部の事件数の動向等も見まして、人員の配置をしていきたいと思います。また、来年度以降も、事件の動向を見まして、必要に応じて増員等もお願いしていきたいと思っております。
○前田国務大臣 裁判業務を外部委託されるか否かは、独立の機関でございます最高裁判所が御判断されるものと認識をいたしております。 なお、法務大臣といたしましては、閣議の一員でもございますし、また裁判所の所掌事務に最も近い関係にある法務を担当する大臣でございます。一般論として申し上げますと、裁判所職員の増員につきましては、内閣としての意思決定の段階、つまり予算ということでございますが、裁判所に御協力をしていくことは、当然、当たり前のことと考えております。
○正森委員 終わります。
○金子委員長 これにて質疑は終局いたしました。 ―――――――――――――
○金子委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○金子委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕 ―――――――――――――
○金子委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午前十一時四十六分散会 ――――◇―――――