科学技術委員会 第3号
- 発言数
- 106 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1995/02/21
会議録
○野呂委員長 これより会議を開きます。 議事を進める前に、委員長より一言御理解をいただきたいと思います。 本日使用するこの委員室におきましては、質疑、答弁等につきましては、マイクの構造上、できれば自席で着席したまま発言をしていただくようお願いいたします。なお、都合上お立ちいただく場合には、声を大き目にしていただきたいと存じます。 宇宙開発に関する件、特にきく六号問題等について調査を進めます。 まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。 本件調査のため、本日、参考人として宇宙開発事業団理事長山野正登君、宇宙開発委員会技術試験衛星Ⅵ型特別調査委員会座長・京都大学名誉教授前田弘君及び文部省宇宙科学研究所所長・工学博士秋葉鐘二郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ―――――――――――――
○野呂委員長 この際、エクスプレス衛星を搭載したM-3SⅡ8号機について発言を求められておりますので、これを許します。文部省学術国際局早田研究機関課長。
○早田説明員 初めに、M-3SⅡ8号機によるエクスプレス衛星の打ち上げ失敗につき、深くおわびを申し上げる次第でございます。 座って発言をさせていただきます。 M-3SⅡ8号機によるエクスプレス衛星の打ち上げは、通商産業省、文部省宇宙科学研究所とドイツ宇宙機関との日独国際協力事業として進めてきた事業でございまして、本年一月十五日に打ち上げの運びとなったものでございます。しかしながら、衛星の予定軌道への投入失敗という結果となりましたことはまことに残念であり、御期待をいただいた先生方を初め、御協力、御支援をいただいた多くの関係者に対して、深くおわび申し上げる次第でございます。 それでは、お配りしてあるかと思いますが、資料に即しまして御説明をさせていただきたいと存じます。 初めに、MI3SⅡ8号機の打ち上げ計画についてでございますが、参考資料1及び参考資料2といたしまして、今回の計画の概念図及びM-3SⅡ型ロケット及びエクスプレス衛星の概要について資料をつけさせていただいておりますので、適宜御参照していただければ幸いでございます。 まず、今回の打ち上げ計画は、大気圏再突入実験及び宇宙環境の産業利用を目指し、日独が共同で開発した自律帰還型無人宇宙実験システム衛星、エクスプレス衛星と略称しておりますが、このエクスプレス衛星を通商産業省からの受託により文部省宇宙科学研究所がM-3SⅡ8号機によって打ち上げ、軌道投入後はドイツ側のドイツ航空宇宙研究所ドイツ宇宙運用センターが運用し、五日間の実験実施後、大気圏に再突入し、オーストラリア南部のウーメラ付近にて地上回収する予定でございました。 次に、打ち上げの経緯でございますが、平成七年一月十五日午後十時四十五分、文部省宇宙科学研究所は、鹿児島県内之浦町の鹿児島宇宙空間観測所からエクスプレス衛星を搭載したM-3SⅡ8号機を打ち上げましたが、第二段ロケットの不調により、予定された軌道への投入に失敗をいたしました。 そこで、第二段ロケットの不調の概要について御説明いたします。 この部分につきましては、M-3SⅡ8号機の飛翔経路の図でございます参考の3、それからエクスプレス衛星の計画軌道と推定軌道についての概念図でございます参考資料の4を適宜御参照いただければと思います。 M-3SⅡ8号機は三段式のロケットでございまして、当初の打ち上げ予定時刻どおり打ち上げられました。第一段ロケットの飛翔は正常でございまして、姿勢や軌道経路も含め、ロケットの軌道は計画どおりでございました。第一段ロケットの分離及び第二段ロケットの点火も、それぞれ予定された時刻に順調に行われました。そして、第二段ロケット点火後約十七秒間は正常に姿勢制御が行われ、第二段ロケットも予定の軌道に沿って飛翔いたしました。しかし、その直後より、第二段ロケットの機体が飛翔方向に対して上下方向に振動を起こし始め、その振れ幅は次第に増加し、継続をいたしました。 この振動による姿勢の異常を制御するために、第二段ロケットの姿勢制御装置、これは噴射口壁から液体を適宜噴射することによりまして火炎方向を調整し、姿勢を安定させるシステムでございます。この姿勢制御装置が作動し続け、第二段ロケットの燃焼中に姿勢制御に使用する噴射液を使い果たしたものでございます。 この結果、姿勢が不安定となりました第二段ロケットは、予定軌道より上向きに飛翔いたしました。その後、第二段ロケットの制御ジェット装置が働き、振動による姿勢の異常は正常な状態に回復したものの、軌道経路は予定より高めのまま、第三段ロケット及び衛星のキックモーターに点火したものでございます。 次に、エクスプレス衛星の状況でございますが、これまでに得られた情報によりますと、エクスプレス衛星は高度約二百五十キロメートルで水平方向に打ち出されましたが、速度不足により、本来遠地点となるべき側の高度が推定百二十キロメーター以下となった可能性があり、大気の抵抗を所定以上に受けることになりまして、結果として衛星寿命が二ないし三周程度で落下したものと推定されております。 最後に、宇宙科学研究所におきます原因究明でございます。 宇宙科学研究所は、平成七年一月十八日に、今回の失敗の原因究明、今後の対策等の調査検討を行うため、研究所内に所内、所外の専門家十五名によるM-3SⅡ18号機調査特別委員会を設置することを決定いたしました。 同委員会は、本年三月末を目途に結論を得ることとし、現在、鋭意調査検討を行っているところでございます。 なお、この検討結果につきましては、宇宙開発委員会にも報告することとなっております。 御説明申し上げましたように、本格的な原因究明をただいま実施中のところではございますが、文部省として、今回の失敗を厳しく受けとめ、今後の宇宙科学研究の発展に生かしていくよう最善の努力を傾注してまいりたいと存じますので、引き続きよろしく御指導と御支援をお願い申し上げる次第でございます。 以上でございます。
○野呂委員長 以上で説明は終わりました。 ―――――――――――――
○野呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。臼井日出男君。
○臼井委員 きょうはお三方の参考人の皆さん方、大変お忙しいところありがとうございました。 きく六号に関連して幾つかの質問をさせていただきたい、こう思うわけですが、私どもの日本の宇宙開発の状況は大変目覚ましいものがございます。昨年二月のH-Ⅱロケット一号機の打ち上げ成功というものが我が国のロケッ十分野で世界のレベルに達した、こういうふうに言って差し支えないわけでございまして、世界でも大変注目も集めましたし、私ども大変そのことに対して意義を感じている次第でございます。 それだけに、昨年八月のきく六号の故障、そしてことしの一月の、今御説明ございました回収型衛星エクスプレスの失敗というものは、私どもも大変大きな衝撃を受けたわけであります。軌道投入に失敗したのは、七九年の通信衛星あやめ、八〇年のあやめ二号以来のことでございます。 ただ、前回と異なる点というのは、当時はアポジエンジンの部分はアメリカ製だったわけでございまして、いわばその部分についてはブラックボックス、こういうことですぐに私どもでそれに対して原因追求というものはできなかった。しかし、今回は技術陣の御努力によりまして、私ども日本で独自の技術というものを開発した。そういうわけで、今回早速調査委員会をつくっていただきまして、既にその原因究明そのものはできているということは、やはり振り返ってみますと、我が国で独自の技術というものを開発していく、この方向は決して間違っていない、正しい、こう私どもは思う次第でございます。 特に、大型静止三軸衛星バス技術の確立というのは、将来に向けて大変特筆に値するすばらしいものと私は思っておりまして、これからもどうぞそういう意味では自信を持って頑張っていただきたい、このように思う次第でございます。 ただ、報告書の中で、「今回の特異な現象の可能性を予見することは困難であった。」こういうふうにおっしゃっておられるわけでございますが、御承知のとおり、宇宙空間というのは真空状態で、いろいろな温度差が激しく変化をする、凍結の危険もある、振動も空気のあるところとはいろいろ違った影響があるということはあらかじめわかっているわけでありますから、こういうふうに言い切るのではなくて、あらゆる可能性というものを追求し切らなければならない。これはやはり宿命でもあるわけで、ぜひともそういう点をお考えの上、これからも今回の不具合、失敗というものを教訓としてひとつ大いに頑張っていただきたい、こういうふうに冒頭に申し上げておきたいと思います。 最初に、今御報告のございましたM-3SⅡ8号機について御質問をさせていただきたいわけです今御説明のあったものは、きょう私はちょうだいをいたしましたが、その前に発表文というものをちょうだいいたしまして、お話をお聞かせいただいたので、事実関係だけ最初に確認をさせていただきたい、こう思います。 失敗の直接の原因はロケット本体にあって、エクスプレスにはなかった。特に、衛星は分離に成功している。しかし、計画軌道より飛行軌道が高目になったために、飛行速度が落ちて近地点高度が低くなった。そのために摩擦抵抗が大きくなって次第に高度が落ち、ついにはおっこちてしまった。したがって、エクスプレスの実験そのものは全くできなかった、こういう理解でよろしいでしょうか。
○早田説明員 お答えいたします。 これまでに得られた情報によりますと、衛星は水平方向に打ち出されたわけでございますが、その衛星の速度不足によりまして、本来地球から約四百キロメーター離れた遠地点になるべき側の高度が約百二十キロメーター以下というように低くなった可能性がございまして、そのため衛星は大気の影響を強く受けまして、二周ないし三周程度で落下したものと推定されております。 そういうことで、エクスプレス衛星は、予定されておりました石油精製触媒創製実験及び四種類の大気圏再突入実験は全くできなかったものでございまして、まことに残念な結果となりまして、多くの関係者に御迷惑をかけることになりましたことは遺憾なことでございます。 なお、原因につきましては徹底的に究明をいたしまして、今後同様な失敗を起こさないように十分指導してまいりたいと存じます。また、今回の反省を今後の宇宙科学の発展に生かしていきたいというふうに考えております。
○臼井委員 わかりました。 そこで、お聞きをしたいのですが、この資料によりますと、原因が二段ロケットの振動、こういうふうにはっきりおっしゃっていただいておりますので、あらかじめお示しをした質問と内容が多少異なることは御了解いただきたいと思うのですが、高度が高目な飛行になったというのは、二段ロケットの振動が激しくて姿勢制御の噴射液を使い切ってしまった、したがって最後まで修正ができなかった、こういうことでありますが、その二段ロケットの振動の原因というものがはっきりわかっているのでしょうか。 それから、地上からの姿勢制御の、あるいは軌道修正のシステムというものはなかったのかどうか。 それから三つ目として、衛星そのものが高目の軌道で行っているわけですから、当然のことながら反対の方向では逆に高度が落ちるということはもちろんわかって、速度は落ちているということもわかっているわけですが、そういうものに対してさらに速度を加速するような装置そのものは衛星にはなかったのか。 それから、三段点火と同時にレーダーの追尾が不可能になった、こういうふうに記述されておりますが、どうしてなのか、その辺をひとつお聞かせいただきたいと思います。
○秋葉参考人 まず最初の御質問でございますが、高目に飛行高度がなったということについての原因でございます。 この原因は、おっしゃるとおり、第二段ロケットの燃焼の途中でロケットの機体が振動を始めたということがその起因となっております。この振動の原因としては、特定の制御機器がおかしくなったということではございませんで、このような制御機器の組み合わせ及びそれで制御される機体の特性が組み合わされました姿勢制御系として、何らかの異常な現象が発生したということが今推定されております。 いずれにいたしましても、我々の研究所におきまして、なぜこのような現象が発生したか、その原因を究明すべく、現在、M-3SⅡ18号機調査特別委員会を設置いたしまして、鋭意調査検討しておるところでございます。 第二の質問でございますが、地上からの軌道修正のシステムを持っていないのかという御質問であります。 我々が通常の飛翔において生じる程度の軌道のずれというのは、地上からのコマンドにより、第三段打ち出し方向を制御する制御装置によりましてこれを修正することが可能でございます。今回も当然これを実行したわけでございますが、第二段のずれが非常に大きかったため、修正能力の限界を超えたものでございます。 三番目の御質問ですけれども、衛星そのものに軌道修正の機能はないのかという御質問につきましては、軌道上から再突入を開始するためのモーター、これはミッション上必要ですので持っておりますが、それ以外の軌道修正システムは本来これに関しては不要であったということで、備えておりません。 それから、最後の御質問でございますが、なぜ第三段点火と同時にレーダー追尾が不能になったかということ、それから第三段とモーターの点火が確認できなかったのかという御質問でございます。 レーダー追尾が不能になったというのは、ロケット側にレーダー電波を受けて送り返すという機器、トランスポンダーと呼んでおりますが、これが関係する部分として何らかの不具合が生じたというふうに考えられておりますが、これも同様に調査特別委員会で現在検討中でございます。 それから、第三段とキックモーターの点火についてでございますが、これにつきましては、その後でき上がりました軌道から正常に点火、燃焼したということが確実に言えるというふうに考えております。 以上でございます。
○臼井委員 お話で、今回の二段ロケットについては複合不調というか、いろいろな要素が絡み合っている。いずれ調査をしていただけると思うわけですが、ひとつ今後こういうことのないようにしていただきたい、こういうふうに思う次第でございます。 また、衛星そのものの重量というのは非常に限りがありますから、なかなか余計な機能というのを入れるのは難しいと思うわけですが、しかし、ロケットの不調というものは今後とも起こり得る、こういうことで、そうした場合の対処もぜひとも今後お考えおきいただきたい、このことをお願いをいたしておきたい、こういうふうに思います。 今後、このエクスプレスの再実験の予定についてはどうなっているのでしょうか。
○井上説明員 ただいま文部省宇宙科学研究所において進められております原因究明作業と並行しまして、通産省におきましても、今回の失敗によって実施することができませんでした微小重力実験等につきまして、これまで開発過程で得られました成果の評価、それから、今後の対応等を検討をするため、外部有識者の御参加をいただきましてエクスプレス対応策検討委員会を設けまして、現在検討を行っているところでございます。 通産省としましては、その検討委員会の成果を踏まえまして、エクスプレス計画の共同の実施者でございますドイツ宇宙機関、文部省宇宙科学研究所と十分協議の上、今後の対応について検討していきたいというふうに考えております。
○臼井委員 前田参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。 先生は、今回の技術試験衛星Ⅵ型特別調査委員会の座長として、その報告書の取りまとめに御苦労いただいたわけでございまして、本当に御苦労さまでございました。 その過程の中で、報告書をお出しをいただく中でいろいろなことをお感じいただいたと思うわけでございますが、今回の事故というものを将来の貴重な教訓とするために、お感じになったこと等、御意見をここで伺わせていただきたいと思います。
○前田参考人 それでは私から、このETS-Ⅵの特別調査委員会の中のアポジエンジン分科会を中心にいたしまして、今回の不具合を究明いたしましたところをまず簡単に御説明をいたしまして、その後でただいまの御質問の教訓の方にも触れたいと思います。 まず、今回の不具合につきましては、いわゆるFTAというような解析手法を用いまして、今回の不具合の原因の究明をいたしました後、宇宙開発事業団の方でそれの確認のための再現試験等を実施をいたしました。 その結果、今回の不具合は、御承知のように、アポジエンジンの出力が十分に出なかったということと、それからアポジエンジンの出力を停止することができなかったという、この二つの事象にまとめることができるかと思います。 これらの原因につきまして、ただいま申しましたようにいろいろと検討を重ねました結果、まず、アポジエンジンの出力が十分に出なかった原因といたしましては、このアポジエンジンに推進剤を供給いたします二液推薬弁のばねが様変位をいたしまして、その結果、ピストンヘッドとそれからケーシングの間に入り込んで、そのばねがかみ込みましたままで外れなくなってしまったということが、今回の不具合の原因であろうというふうに考えたわけでございます。 それから、第二点のアポジエンジンの出力が停止しなかったという現象につきましては、今申しましたように、ばねがかみ込みまして、そのためにピストンが傾いて、ピストンの軸とケーシングとが接触をいたしまして、すれましたために、非常に真空度の高い宇宙環境におきまして凝着を生じまして、ピストンが戻らなくなってしまったということがまず第一番の原因と考えられます。 それから、もう一つ可能性といたしましては、二液推薬弁を閉じるために駆動用のヒドラジンを供給いたしますパイロットバルブがございますが、このバルブを通じまして、バルブの配管から宇宙空間にヒドラジンを放出いたしますときに、配管内あるいは配管の出口のあたりでヒドラジンが凍結をいたしまして流路をふさいだために、圧力が抜けなくなってピストンが動かなくなったのではないかという、この二つの可能性が考えられる、こういうふうに推定をいたしましたわけでございます。 このうちで、まず最初のばねが大きな様変位を起こしたという現象でございますが、これは地上で二液推薬弁の試験を行いますときに、十分大きな振動を加えまして試験を行ったわけでありますけれども、このような地上の再現試験では、今申しましたようなばねの大きな様変位というふうなものは生じませんでした。しかし、実際の飛行振動環境では、地上で行いましたものに比べればかなり小さな振動でありますけれども、そのような振動を加えますと、今申しましたようなばねの大きな横変位が発生し得るということがこの確認試験の結果として認められました。 したがって、これはある意味で非常に特異な現象でありまして、いわば、ばねとピストンヘッドとの間の摩擦が振動状態で移動する、摩擦を受けながら移動するというような非常に非線形性の高い現象がその原因であろうというふうに解釈をしたわけでございます。 したがいまして、このようなばねの大きな様変位というふうなものを事前に予見することが可能であったかどうかというところが大変問題になるところでございますけれども、地上の試験のように十分大きな振動を与えて横変位を調べるというふうな方法では、こういった特異な現象が起こるということは多分やはりまだわからなかったのではないだろうか。したがって、今後は、このような特異な現象も起こり得るということを十分に考えて、それに対する慎重な対応が必要であろうというふうに考えたわけでございます。 それからもう一つ、先ほど言い落としましたが、宇宙空間におきましては、金属と金属との摩擦というふうな問題は、非常に摩擦係数が増大をするということが一般的には知られておりますけれども、果たして、例えば静止衛星の軌道のような超高真空というふうな状態では、どのような摩擦係数になるかということについては、なかなか十分なデータは得られていないというのが現状であると思います。 したがいまして、今後は、そういった従来十分に調べられていなかった現象につきましても、ぜひ力を入れてそういったデータの蓄積に努めて、その上で今後の開発に反映をさせていただきたいというのが、今回の事故に関しては、教訓として我々が考えたところでございます。 以上でございます。
○臼井委員 どうも御丁重にありがとうございました。 特異の現象というものが間々起こり得るということで、ひとつこういうことについてもこれからも大いに今後のために御研究をいただきたい、こういうふうに思います。ほぼそういうわけで原因というものは追求がされている、こういうふうに私は思う次第であります。 さて、運輸省では、アジア・太平洋地域衛星通信ネットワークづくりというものを研究しておられるというふうに伺っております。そのために、資料を拝見いたしますと、宇宙開発事業団の開発計画では、平成八年冬期に、本格的な衛星間通信、高度移動体通信等の新技術の開発を目指して、COMETSの打ち上げを計画しておられるわけでございますが、今回のETS-M型の失敗で十分な実験ができておらない。こういうことによってこの計画についてどれぐらいの影響があるのかないのか、その辺をお伺いしたい。 また、今後、アポジエンジンの改良というものにどの程度の期間等が必要であるか、この二点についてお伺いしたいと思います。
○山野参考人 まず、答弁に先立ちまして、先般のきく六号の打ち上げに際しまして、その静止化に失敗をいたしまして、国民の皆様並びに諸先生方の御期待に背く結果となりまして、まことに申しわけなく存じております。この席をおかりして深くおわび申し上げます。 さて、ただいまの御質問でございますが、きく六号は、現在、楕円軌道を安定に周回しておるわけでございまして、バス系につきましての機能確認並びに新しい技術を開発しますための搭載機器につきましても、宇宙実証によって成果が得られつつございます。 それから、通信実験につきましては、これも関係機関の御努力によりまして相当部分の実験ができるわけでございますが、そのうち、今御指摘のCOMETSに反映されるべきものとしましては、まず衛星間通信については、きく六号の成果が反映できる見込みでございます。 それから、高度衛星放送実験と高度移動体通信実験とは、これはきく六号とは全く独立した新しい宇宙実験でございますので、これについては影響はないかと存じます。 したがいまして、今回のきく六号のCOMETSに与える影響と申しますのは、アポジモーター部分に限るということになろうかと思いますが、このCOMETSで採用しておりますアポジモーターというのは、統合型二液アポジ推進系と申しておりまして、型式がきく六号と全く違うものではございますが、今般の特別委員会での原因究明を踏まえ、その教訓をできるだけ生かそうということで、違うタイプではありますけれども、新しいアポジ推進系の推薬弁の駆動部とか、あるいは特に軌道上で摺動する部分について、現在、より詳細な解析と確認試験の実施を計画中でございます。 これにつきましては、私どもだけではなくて、できるだけ外部の有識者のアドバイスも得たいということで、統合型二液アポジ推進系技術委員会というものを事業団内に設けまして、本年の五月をめどにその評価を得たいと考えております。 したがいまして、今のどの程度の期間が必要かというのは、ことしの五月ぐらいまでには結論を得て、二年後に打ち上げますCOMETSに十分反映してまいりたい、このように考えているところでございます。
○松井説明員 郵政省は、ETS-Ⅵを使いました通信実験を担当しております。 ETS-Ⅵを用いました通信実験でございますが、私ども郵政省では、静止軌道への投入が困難になったことを受けまして、直ちにNTT等関係機関とともに通信実験の可能性や実施方策につきまして検討を実施したところでございます。その結果、制約条件はあるものの、周回軌道におきましても搭載通信実験機器の基本的な特性、性能確認の実験やあるいは通信実験の一部、これにつきましては可能との見込みが得られましたので、昨年九月末に実験計画を取りまとめたところでございます。 現在、この実験計画に基づきまして、関係各機関の研究者が文字どおり夜を徹して実験を実施するなど、精力的に取り組んでいるところでございます。今後も、この衛星を使いまして、最大限多くの実験成果が得られるよう努力してまいりたいと考えているところでございます。 また、御指摘のございましたCOMETSにつきましては、映像情報の伝送を可能とする移動体衛星通信技術あるいはディジタル技術によります高精細度衛星テレビジョン技術などの開発、実験を行うこととしておりまして、その成果は今後の高度情報通信社会におきまして重要な役割を果たすものというふうに考えているところでございます。 このため、私ども郵政省では、ETS-Ⅵの実験に加えまして、COMETSを利用した通信放送実験を積極的に推進することとしておりまして、今後、宇宙開発事業団におきまして、このETS-Ⅵの経験を踏まえまして慎重にCOMETSの開発を進められ、予定どおり打ち上げられることを期待しているところでございます。 以上でございます。
○臼井委員 ぜひともそのように努力をいただきたい、こういうふうに思います。 もう時間が余りありませんが、この報告書の中で、先ほどお話がございましたとおり、特異な現象が真空中では起きる、こういうことでございまして、私はぜひともひとつ技術可能な限りこれからも今後のために頑張ってもらいたいというお話をしたわけです。 真空中の摩擦や凍結や宇宙空間の特殊性に関しての基礎研究、現在も地上施設はあるわけでございますが、恐らく十分ではない、こういう御指摘だろうと思うのですが、今後、真空中における実験設備はどの程度のものが必要なんでしょうか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○山野参考人 御質問の真空中における機器の模擬試験設備につきまして、現在宇宙開発事業団が持っておりますのは、十のマイナス七乗トール程度のスペースチャンバーを持っております。 これは世界的に見ましても、現在十のマイナス八乗ないしマイナス九乗というのが現状ではないかと存じますが、特別委員会の御指摘のあるような超高真空を模擬するといたしますと、十のマイナス十乗程度、できればそれ以上のものが必要かと存じます。これは技術的にも、経費的にも大変難しいものではございますが、できるだけそれに近いものを可能な限り早い時期に整備する必要がある、このように考えております。
○臼井委員 どうもありがとうございました。 金目のことが常についてまいりますが、やはり貴重な国費を使って打ち上げるわけですから、できる限りの可能性について調査できるような施設というものは、必要であるならばぜひともつくっていただきたい。私どもも委員の立場としても一生懸命に応援をさせていただきたい、こう思っております。 質問が大分予定より残っておりますが、いずれまたこの宇宙開発についていろいろ質問したいことがあるので、大臣にも質問を予定しておりましたけれども、申しわけございませんが割愛をさせていただきまして、本日はこれで私の質問を終わらせていただきます。 お三方にはどうもありがとうございました。
○野呂委員長 小野晋也君。
○小野委員 まず、日本の宇宙開発事業に対してこれまで御尽力をいただいてまいりました三参考人に対して敬意を表し、また、きょうの出席に御礼申し上げたいと思います。 実は、私自身も宇宙に夢を追いかけた男でございます。昭和三十年の四月の生まれでございますから、ちょうど日本にロケットが誕生したときにこの世に生をうけたということになろうかと思いますけれども、中学時代がアポロ十一号の月面着陸というようなことでございまして、そのとき以来、宇宙開発に夢を持ちながら青春時代を送ったという経歴を持っている男でございます。二十一世紀という時代を夢見ながら少年時代を過ごしてくる中に、この宇宙というのは、いつも大きなフロンティアを私たちに与えていただいていたと思います。 実際の業績を追いかけてみましても、この宇宙開発を通して得られましたさまざまな技術が産業界の方にも展開をされているわけでございますし、また、衛星の面から見ていただきましても、気象観測衛星ひまわりを初めといたしまして、測地衛星ですとか、地球資源探査衛星ですとか、通信衛星、放送衛星、また惑星探査衛星、さまざまな衛星が現実にこの宇宙に飛んでいって、そして私たち人類に新しい視点を与え、また、新しい私たちの活動領域を与えていただいているわけでございます。 したがいまして、この宇宙開発という問題を私たちは日本の政治の中におきましてもしっかりととらえながら、これから進めていかなくてはならないという考え方を持っているものでございます。 しかしながら、先ほど来お話がございましたとおり、昨年の夏以来、これまで高信頼性を持って世界に名をはせておりました日本の宇宙技術でございましたけれども、きく六号のアポジモーターの失敗、それからこの一月には、先ほど来お話のありましたエクスプレス衛星の打ち上げ失敗、そしてさらに、SFUという宇宙実験・観測フリーフライヤーの打ち上げに際して、小さなごみが弁の部分にあったがために打ち上げが延期をされて、三月にずれ込む予定であるというようなことが次々とあらわれてまいりますのを見ておりまして、このままで日本の宇宙開発の姿はいいのだろうかという疑問を持ち始めているのもまた事実でございます。 先ほど申しましたとおり、日本のロケットは、これまで世界じゅうのロケットの中で実用的に宇宙に衛星を運ぶ際に失敗率が一番低いということで名が通っていたわけでございまして、ロケットのコストが多少高くても、打ち上げの費用について間接的なコストが多少そこにかかっても、これだけの高信頼性が保たれているのならば十分に世界と競争していけるではないか、今後コストダウンに努力をしていけば、価格面競争でも対応できるというふうにこれまで進んできた路線に、黄信号がともり始めているのではなかろうかという気持ちがしてならないのでございます。 皆さん方が長い間築いてこられたこのロケットの自主開発路線というものが、今暗雲の中に入りつつあるというような危機意識の中に、私は、このような信頼性低下を引き起こしてきた原因等について、ぜひ真剣な探求をこれからも続けていただきたいと念願をさせていただきたいと思います。 また、今後、この日本のロケット開発の中におきましても、各種の、隻ば世界の環境ですとか資源ですとか、こうしうところのために貢献するような衛星計画も出ておりますし、また、宇宙に持っていってそれをまた帰還させようというHOPE計画もあれば、宇宙研の方では、M-5ロケットという大型の固体ロケット計画も今進行中でございます。そしてまた、もう少し先を展望すれば、宇宙ステーション計画も今進んでいる最中でございまして、こういうことを考えますと、今どうしても信頼性確立の問題に真摯に取り組んでいただきたいということで、きょうはこの点を中心にしまして、若干質問をさせていただきたいと思っている次第でございます。 まず第一問でございますけれども、信頼性の評価の問題でございます。 私ども昔を振り返ってみますと、アポロ十一号のときに、その成功率は幾らですかとアナウンサーがNASAの担当者に聞いてみると、九九・九九%ですというようなことを誇らしげに語っていたのを、今のことのように思い出しているわけでございます。我々から見ますと、月面に人を送り込んで、またそれを連れ帰るなどということは途方もないことだと思っていたのでございますが、この数字を示されますと、それだけきちんとした計画の上に乗って行われているミッションであれば、恐らくこれはうまくいくだろうなというような一種の安心感を与えられたような気がしているのでございます。 このような計算につきましては、個々の部品の信頼性を評価し、それをそれぞれ連結をした場合に起こってくるトラブル等についてもその検討を十分行いながら、この信頼度チェックということをされているわけでございましょうけれども、それならば、今回のきく六号の打ち上げに際して、ロケットシステム、そして衛星システム、この両面があろうかと思いますけれども、このようなきちんとした信頼性評価というものを数値的に検討されておられたのかどうか、この点につきまして山野参考人のお考えをお聞かせいただけたらと思 います。
○山野参考人 私ども事業団におきましても、今御指摘の部品の故障率及び計算方法を規定した基準文書に基づきまして、信頼度の予測を実施いたしております。今回のきく六号の開発完了時の信頼度の予測というのは、おのおのこうなっております。 まず、H-Ⅱロケットの打ち上げシステム全体の信頼度は、要求値九〇%に対しまして信頼度予測は九七・四四%でございました。それから、きく六号がロケットから分離されまして軌道に投入されました後で、ミッション期間である十年後にバス機器が機能を保持しておる確率、これを私どもは残存確率と呼んでおりますが、この残存確率につきましては、要求値八〇%に対しまして八一・三八%でございました。
○小野委員 そういう御報告でございますと、今回のこのアポジエンジンの不具合というようなことは、起こり得る確率ゼロという中に入っていたのではないかと思います。 そのあたりを考えてみますと、開発過程で、まあこの報告書の中を拝見させていただきましたけれども、予見できなかったことが起こったがゆえに、その対応においても苦慮をし、またこういうふうな信頼度から見ると、かなり問題があるようなトラブルが起こったんだということになろうかと思いますけれども、開発段階では仮にこれが予見できなかったとしても、事後になって評価をしてみようとするならば、その評価法の中に問題があったのではなかろうかという部分があるのでは ないかと思えるわけです。 このレポートを拝見させていただきますと、一二種類の評価を織りまぜながら開発を進めておられるわけです。一つはコンフィギュレーション管理、二つ目に信頼性管理、三つ目には品質管理、それぞれの部分にきちんとした対応を進められたのはもっともだと思いますけれども、しかし、それでもこのトラブルが起こったということは、この管理手法自身に問題があったと考えられるのか。それとも、先ほど臼井委員の方からの質問でも少し触れられておりましたけれども、実験機器において十分な実験機器が整えられていなかったからこそこのトラブルが予見できなかったのか。そしてまた、人材が不足しているがゆえにここまでエネルギーが回せなかったのか。このあたりについての御見解と、今後はもうこのようなトラブルを起こすわけにはいかないわけでございますから、改善方策についてお考えになっておられるところを、やはり山野参考人にお伺いしたいと思います。
○山野参考人 今、三点御指摘になりましたが、まず第一点の開発管理について申し上げますと、当事業団ではロケット、人工衛星の開発に当たりましては、確実にその成果が得られますように、開発の手順、手法、技術情報管理の面から次のような管理方式をとっております。 まず一つは、概念設計から製作までの開発作業を段階ごとに区切りまして、各段階の区切りごとに審査会でその成果の確認、評価を行うということ。第二に、開発の過程で信頼性、品質を確保しますために、米国のNASAから導入したものをもとにしてつくりました信頼性管理、品質管理についての共通仕様書を設けまして、これを適用する開発管理の手法をとるということ。 第三点としまして、開発において管理を必要とします図面、仕様書、不具合履歴等の技術情報につきましては、これを文書化して管理を行うということ。 これらの開発に必要な管理を適切に行いますために、開発を担当します部門ではプロジェクトチームというチームを編成いたしまして、さらにこれとは別に、また信頼性、品質管理、情報管理を行う技術管理部門を独立して組織いたしております。 そういう体制でこの開発管理に当たっておるわけでございまして、私どもはこの手順、手法、体制というものに問題があるとは思いませんが、問題は、それをいかに効率よく実効性を持たせて運営するかということにあろうかと思います。 それからいま一つ、ちょっと申し落としましたが、この技術情報管理等につきまして、実は将来的にはこれを電子化し、情報化していくことが望ましいわけでございますが、現在、当事業団ではまだ十分に電予化、情報化が進められておりません、ごく一部にしか入っておりませんので。今後は、これを実効性あるものにするという意味は、そういう電子化、情報化を一層推進するということに尽きようかと存じます。 それから、実験機器の不足につきましては、先ほど臼井先生にお答えしたとおりでございます。 それから、人材につきましては、これは私ども、現在も技術能力を向上しますために、職員の研修につきましては、新入職員から部長級に至りますまで階層別の研修を行うとか、あるいは信頼性、安全性等につきまして職能別の訓練を行うとか、あるいは海外に長期研修に派遣する、さらにまたOJTを行う等、いろいろな方法によりまして技術能力の向上に努めております。 これも今般の特別調査委員会の御報告にありますように、また先ほどお話にも出ましたように、より詳細な注意を持って対応すべきであるという御指摘もあるわけですが、そういう点に欠けるところがあったというのは、やはり私どもは、この日進月歩の宇宙開発の世界において、まだまだ技術能力は不足するものがあると認めざるを得ないと思います。 そういう意味で、この三点につきまして、今回の委員会報告の結論を踏まえまして、事業団の中に技術開発能力強化対策室というのを設けまして、その具体的な対応策につきまして現在検討中でございます。いずれ、これとは別個にまた外部の専門家によって組織しました諮問委員会を設けておりますので、できるだけ早い機会に、遅くとも四月の末までにはその結論を得て実行に移してまいりたい、このように考えております。
○小野委員 いろいろな取り組みをお進めいただいておるようでございますけれども、ぜひこれらに総合的に取り組んでいただいて、今後のトラブルの減少のために御尽力いただきたいと思います。 それにつけましても、これだけ巨大なシステムでございますから、今、山野参考人の方からお話ございましたとおり、一方においてはシステマチックな取り組みをきちんと行い、そのために必要な電子計算機等の管理手段を整えていただくと同時に、やはりそこに関与される人の能力というのはかなり大きなものがあろうかと思いますので、人材育成、特に細かなところまできめ細やかに注意を払うような開発陣といいましょうか、エンジニアの育成等についてもぜひ御尽力をいただきたいと要望しておきたいと存じます。 ここで前田参考人にお伺いをさせていただきたいと思うのですけれども、技術一般について考えてまいりましたときに、このしばらく、技術が非常に細分化を重ねていく過程の中で、技術者が見ていく分野というのが非常に狭くなっているのではなかろうかというような危惧を私どもは持っております。 特に、この宇宙開発という分野は、一般の産業界から見ると、物をとにかく軽量に、そしてコンパクトに取りまとめていかなければいけない。しかも、そのコンパクトなものが、一般では考えられないほど高性能のものでなければならないというようなことでございますから、その開発に当たる人も、何か一般の技術と違う分野で仕事をしているのだというような意味で、自分たちだけの世界をつくり上げておられるのではなかろうかというような気持ちがしてなりません。 そういうことを考えてまいりましたときに、今回のきく六号のトラブルにいたしましても、難しい、だから軽量化のためにぎりぎりの努力をして、高性能を出すために努力をした部分でトラブルが起こったというよりも、私たちが普通に見れば、何だこんなところと思われるような、ばねを使った部分でトラブルが起こっているというようなことを考えましたときに、今後の宇宙開発の対策として、単に宇宙の専門家だけで開発作業をチェックしていくというのではなくて、もっと外部の意見を導入していくというような試みをしていく必要があるのではないかという気持ちがいたします。 今回の調査を先生が中心になってやられたわけでございますけれども、宇宙技術専門家と言われる人たちが独特の考え方を持って取り組んでいるとか、偏った技術的な見識をお持ちになっているとか、こういうところを感じられるところはなかったでしょうか。いかがでございましょう。
○前田参考人 ただいまの御指摘は、私も大変同感するところがたくさんございます。 例えば今回の調査にいたしましても、先ほど申しましたように、今回の不具合の現象は、ばねが我々が予測しないような横ずれを起こしたということ、それから、仮に横ずれを起こしたといたしましても、摩擦係数が小さければ恐らく今回のような事故にはならなかったろうということで、たまたまそういった、我々が地上試験等では当然だと思っておりますようなことが重なりまして、今回の不具合を生じたというふうに理解をしております。 こういう点を考えますと、やはり私も機械慶でございますから、宇宙開発事業団の方々がこういった機械要素の設計をなさるときの気持ちというのが理解できるわけでございますけれども、今申しましたようなばねの使い方あるいは摩擦現象というふうなものも、事業団の技術者の方々は十分によく御存じだと思いますけれども、今回の調査委員会を通じまして見ておりますと、我々がごく常識的だと思っているようなことが、本当の意味でのその方面の専門家の方がごらんになりますと、かなり違うのじゃないかというふうなことの御指摘が幾つかございました。 そういう点で、やはり事業団でこういった技術開発をおやりになるときに、外部の専門家の方々の御意見が十分に反映されるようなシステムにすることが、今後の対策として非常に大切なことではないだろうかというふうな気持ちを持ったわけでございます。 今回はたまたまこういった現象についてのみでございますけれども、一般的に申せば、そういったようなことがこれから後も起こると思いますので、この教訓を踏まえて、これから後ぜひ努力をしなければならないというのが私の率直な感想でございます。
○小野委員 それで、ロケット開発の基本の問題を少しここらで取り上げてみたいと思うのですけれども、ロケット開発が目指すべき目標といたしましては、高機能で非常に信頼性の高いシステムをつくり上げていくという性能追求の方向が一つと、それからもう一つは、世界じゅうのロケットシステムの間でこれから競合関係がだんだんとふえてくるだろうということを考えてまいりましたときに、コスト競争力をいかに確保していくかという問題が出てまいります。 この両面は、今までのエンジニアリングの常識からいいますと、相反する立場に立つ二つの要素になろうかと思うわけでございますけれども、今後、宇宙開発事業団が世界に冠たるロケットシステムをつくり上げていくということを言われる場合には、ぜひともこの二条件をクリアしながら、両面において世界で第一等と言われるようなロケットシステムに仕上げていく必要が出てくるだろうというように考えております。 このあたりは山野理事長さん、ふだんから御腐心されている点だろうと思いますけれども、今後のロケット開発に当たって、先ほど申しました二点をどのように融合させながらこれからの日の丸ロケットと申しますか、日本の自主開発ロケットというものを開発していこうとしておられるのか、その基本の考えをお聞かせいただけたらと思います。
○山野参考人 ただいま御指摘の信頼性の向上とコスト低減という問題は、おっしゃいますとおり二律背反の原則ではございますが、双方とも将来の宇宙開発を発展させるために達成しなければならない要求であると考えております。その際、私どもは、まず信頼性を保ちながらコストダウンを図るというのを基本姿勢にしたいと考えております。 個別具体的な例としまして、今御指摘のロケッ十分野のH-Ⅱについての考え方を申し上げますと、まずH-Ⅱは、その開発の初期の段階におきましては、開発全体をスムーズに進めますために、例えば搭載電子機器の機能というものを小さく分散いたしました。それによって全体の開発のテンポを合わせるという方策をとったわけでございますが、これはその後、次第にその統合化を図って、部品点数の削減、あるいは工程の簡略化というのを進めることにいたしております。これは一つのコストダウンの道でございます。 それからまた、開発段階ではすべて部品は国産品を使いましたが、一たん開発が終了に近くなったわけでございますので、今後は国産品に限らないで、輸入品も活用していくという道がございます。 それから第三といたしまして、最初のころはデータとして試験データをたくさんとらなければいけませんが、開発が進むにつれまして、このデータ取得の数も減りますので、テレメーター項目の削減もできます。これも削減要素の一つでございます。 そういうふうなことでいろいろとH-Ⅱロケット、号機を追うごとにコスト低減を図ってまいりたいと考えておるわけでございますが、その中におきまして、先ほど申し上げました統合化というのは、例えば電子機器の統合化によって部品点数が減らせる、あるいは工程が簡略化できる、これはあわせて信頼性の向上にもつながる問題でございます。これが今御指摘の両者を融合させる問題ではないかと思います。 それから、単独に信頼性の向上という面では、例えばエンジンの部材の一体成形によって、えてして問題の起こりやすい溶接箇所を減らすといったふうな問題もあろうかと思います。そういうふうな各種の方策を講じまして、このH-Ⅱロケットのコストダウンと信頼性の向上という二律背反の両原則を達成してまいりたい、こう考えております。
○小野委員 いろいろな施策を通して、コスト低減ないし信頼性向上に御努力をいただけるということでございますので、ぜひよろしくお願い申し上げたいと同時に、今まで日本は、宇宙技術については大体において輸入国としてやってきたかと思いますが、部品によれば、世界で第一番の部品であるというようなものも皆さんの御努力でつくり上げられてきているわけでございますから、今後はそういうものを海外に輸出もしながら、コスト低減に取り組んでいただくというような点についてもぜひお願い申し上げたい、要望しておきたいと存じます。 最後になろうかと思いますけれども、参考人として御出席いただいております秋葉先生に、一点御質問をさせていただきたいと存じます。 今回のエクスプレスの問題でございますけれども、ドイツと日本が協力をしながら、国際協力の事業として、プロジェクトとして衛星の打ち上げを試みられたわけでございますが、私どもいろろと見ておりまして、今後の宇宙開発は、恐らく世界じゅうで協力関係を持ちながら、開発にも取り組めば打ち上げにも当たっていくというような流れが定着してくるのではなかろうかという気持ちがいたしております。 今回、ドイツと日本の宇宙研との間に協力関係を持ちながらこのプロジェクトを進めてこられまして、どういうことをお感じになられたのか。そして、今後さらに協力関係を強めていくためには、どのようなことを考えながらやっていかなくてはならないということをお感じになられたのか、お伺いをさせていただきたいと存じます。
○秋葉参考人 それではお答えいたします。 今回のエクスプレスの衛星、結果として大変思わぬ結果になってしまいまして残念でございますが、ドイツ側との関係は、極めて良好な関係を維持して終わったと認識しております。また、先方からも、そんなようなことで、この計画は協力という意味では成功であったというふうに伝えられております。 また、そのほか我々の研究所としては、最近では太陽観測衛星の「ようこう」とか、あるいは磁気圏尾部の観測衛星GEOTAIL、それからエックス線天文衛星の「あすか」等で、アメリカのNASA、その他ヨーロッパの各国の研究者とも協力のもとに、多大な成果を上げてきております。 また、今後予定しておりますものとしては、宇宙に電波望遠鏡を上げて電波天文観測を行うMUSES-B衛星、あるいは火星の大気観測衛星PLANET-B等におきまして、各国の科学者と協力してこれを行っていくという状況にございまして、御指摘のとおり、これからの科学衛星についてはますます国際協力が重要になってまいります。 そのような協力の場といたしまして、一九八五年から八六年にかけまして、ハレーすい星探査が日米欧ロの四カ国で行われました。これを契機に、この四機関によりまして宇宙科学関係機関連絡協議会、IACGと呼んでおりますが、これが常設されておりまして、各国が独自性を保ちつつ最大限の成果を上げるような機構として、有効に働いております。 それで、国際協力に当たっては、当然のことながら科学者間の密接な連携協力が必要でございますし、そのためには各種の観測結果あるいは今行われている研究等について、的確な情報の交流が極めて大事でございます。 それから、もう一つ大事な前提といたしましては、各国の研究者の研究能力が対等でなければいけないということでございまして、我が国の研究者の研究水準を向上するということが絶対に必要なことでございまして、そのため、固有の宇宙計画ということも一つ重要なことであるというふうに認識しております。 また、これからの国際協力に当たっては、ミッション遂行に際して、相互の開発テンポについての考え方の違いとか観測方策等についての意思の疎通、この辺についても十分調整を行わなければいけないというふうに思っております。 以上でございます。
○小野委員 今回、幾つか衛星の打ち上げの失敗をするというようなことが重なりましたことは、大変私も残念に感じております。しかしながら、これまでの技術の発展の歴史を振り返ってみますと、その歴史というのは、失敗と、その失敗を克服しながら新しいものを生み育ててきたその繰り返しだったような気持ちがいたします。 きょう参考人でお見えいただきました皆さんは、それぞれのお立場で宇宙開発に御尽力をいただいた方々でございまして、これまでの御尽力に敬意を表しますと同時に、これからがいよいよ正念場だろうと思います。未来の日本、また世界人類の可能性を切り開くために、この宇宙というフロンティアは私たち人類が忘れてはならないフロンティアだと思いますので、どうかこの難局を克服していただいて、日本の宇宙開発に新しい局面を切り開いていただきますことを心からお願い申し上げまして、きょうの質問を終えさせていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。
○野呂委員長 斉藤鉄夫君。
○斉藤(鉄)委員 きょうは三人の先生方、お忙しい中御出席くださいまして大変ありがとうございます。 今同僚の小野委員から、現在の宇宙開発に対しての危機感、またH-Ⅱロケットが成功したときのあの意気上がる宇宙開発、そして、二十一世紀の日本の科学技術を宇宙開発がその牽引車になるんだという宇宙が私たちに与えてくれた夢、そういうものに対する期待感を持ちながら私もきょうは質問をしてみたいと思います。 まず最初に、秋葉先生にお聞きすればいいのでしょうか、文部省の方にお聞きすればいいのでしょうか、ちょっと私もわかりませんが、M-3SⅡ型の今回のエクスプレス衛星軌道投入失敗につきまして、原因究明は現在進められているのだろうと思いますが、現在までにわかっている原因、また今後のその原因究明予定についてお聞かせ願えればと思います。
○秋葉参考人 お答えいたします。 エクスプレスが予定軌道を外れたことについて、今考えられている原因と今後の究明ということでございますが、まず、現在考えられている原因といたしましては、第一段ロケットの飛翔は正常でありましたが、その後、第二段ロケットの点火後、飛翔途中に上下方向に異常な振動が発生し、姿勢制御に使用する噴射液を使い果たし、その結果といたしまして予定軌道が高目になりまして、軌道経路が上向き方向にずれ、衛星を分離したということによりまして最終的に衛星打ち出し速度が不足し、衛星の寿命が短くなったということでございます。 この原因につきましては、ロケットの燃焼は正常であるということであります。また、各制御機器も、個別につきましては問題がないという状況下でございますので、これはそのような機器の組み合わせから成ります制御系、それに制御を受ける方の機体の特性、これ全体をひっくるめました全体の系といたしまして、何らかの特異な現象が発生したのではないかというふうに考えられておるところでございます。 現在、宇宙科学研究所では、この原因究明と今後の対策の調査検討を行うために、研究所内に所内、所外の研究者を加えましたM-3SⅡ-8号機調査特別委員会を設置いたしまして、今年度末を目途に結論を得べく、鋭意調査検討を進めているところでございます。 それから、この調査結果につきましては、宇宙開発委員会にも報告いたすということにしております。 以上が今後の究明の予定でございますが、我々といたしましても今回の失敗を厳しく受けとめまして、原因を徹底的に究明し、同様な失敗を繰り返さないようにいたしたいと存じております。 以上でございます。
○斉藤(鉄)委員 なぜ振動が起きたのだろうかということなんですけれども、エクスプレス衛星がちょっと重過ぎたのじゃないか。これまでの7号機までは、百キロだとか、最大でも四百二十キログラム。今回は七百六十五キロですか、その重さが能力ぎりぎり過ぎたのではないか、こういう指摘があるのですが、これについてはいかがでしょうか。
○秋葉参考人 能力につきましては、十分打ち上げ能力があるということで設計されております。 ただし、この不具合原因につきまして、機体特性が変わったということは十分考慮されるべきでありまして、現在調査委員会でその点を重点に考察を進めておるところでございます。
○斉藤(鉄)委員 今回の失敗が今後のM-3SⅡ型ロケットの打ち上げ予定に何らかの変更をもたらすのかどうか、その点について文部省からお答えいただきましょうか。
○早田説明員 お答えいたします。 M-3SⅡ型ロケットは今回の打ち上げが最後でございまして、現在、宇宙科学研究所におきましては、次期のロケットでございますM-5型ロケットの開発中でございます。M-5型ロケットもMI3SⅡ型ロケットの技術の延長上にあるということは事実だと思います。その意味で、原因を徹底的に究明し、M-5型ロケットの開発に支障がないように、十分に私どもとしても指導してまいりたいというふうに考えております。
○斉藤(鉄)委員 徹底的な原因究明をお願いして、今後の宇宙研の研究に大いに役立てて、また失敗がないように役立てていただきたいと思います。 次に、きく六号の失敗につきまして質疑をさせていただきたいと思います。 前田先生にお伺いしたいのですが、報告書を読ませていただきました。非常にわかりやすく書いてございまして、原因がよくわかったのですが、先ほど先生、この報告書の概要について御報告されましたけれども、その報告の中になかったFTA、フォールト・ツリー・アナリシスの概要、それから、幾つかの確認実験をされておりますが、どのような確認実験をどういう理由でされたのか。それから最終的な原因の推定ですが、その妥当性、ほぼこの原因に間違いないと言えるのか、これが原因である確率は何%というふうな数字が言えるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
○前田参考人 ただいまの御質問でございますが、まず最初にFTAについて簡単に御説明をいたしたいと思います。 FTAというのは、御承知のように、日本語では不具合要因解析というふうに訳しておりますが、一種の消去法でございます。つまり、一つの、今回で申しますと、例えばアポジエンジンの出力が十分に出なかった、約十分の一の出力しか出なかったというふうなことが起こるとすれば、その原因はどういうことであろうかということで、普通に考えられる項目をすべて洗い出しまして、それらの一個一個について、もしそれが原因とすればその後どういう事象が起こるかということを調べていきまして、結局、例えば今回の不具合で申しますと、アポジエンジンの出力が十分に出なかったということが生じますためには、最も可能性の高いのはどの項目であろうかというふうに詰めてまいりまして、先ほども申しましたように、恐らく二液推薬弁のばねが横ずれを起こしまして、かみ込んだのであろうというような結果を導いたわけでございます。 同様のことは、アポジエンジンの出力が三回行いました後で停止しなくなったという事象につきましても、やはりFTAを行いまして、結果として、この場合は二つ原因が残ったわけでございますけれども、一つは、ばねがかみ込んだままで動かなくなったのではないか、もう一つ考えられるのは、先ほども申しましたように、パイロットバルブが凍結をいたしまして圧力が抜けなくなったのではないか、この二つがこの現象に対しましては原因として考えられる、こういう結論を導いたわけでございます。 この結論につきましては、実際に事業団の方で地上試験を行われました初期の段階では、このような不具合はちょっと起こりそうもないというようなことでございました。しかし、考えてみますと、まず横ずれを起こしますためには、ロケットの打ち上げの飛行環境による振動が原因であろうということで、その振動条件を、従来考えられておりますような単なる大きなランダム振動を与えるだけではなくて、実際の飛行条件に近いかなり小さな振動環境でやってみましたところ、地上試験でもそのような横ずれが起こるということが確認されまして、我々のそういった推定が地上試験でも実証されたというふうに認めたわけでございます。 同様のことは、後の方の問題で、例えばパイロットバルブを何回か、今の場合三回でございますが、開閉いたしましたために、管内あるいは管の出口のところでヒドラジンが凍結をしたのではないかということも、まあ地上の場合は水で行っておりますけれども、やはり数回の実験で同じような現象が起こりましたので、ただいま申しましたようなFTAの手法を用いました原因究明が恐らく正しいであろうというふうな結論を導いたわけでございます。 それで、こういった現象が妥当であるかどうかということが確かに問題でございますけれども、我々、委員の方々といろいろ討論をいたしましたのですが、今回のこのような現象はかなり確率としては小さい現象でありまして、ある意味ではかなり不運な事象であったかなというようなところが、委員会としての皆さんのお持ちになった気持ちではなかったかというふうに私は考えております。 したがいまして、こういった事象がどのような確率で起こるかというふうなところまではなかなか詰められない問題でございますけれども、実際問題としては、ですから、地上試験等でこういった問題が予見されなかったかどうかというふうなことになりますと、率直なところを申しまして、かなり困難ではなかったかなというふうなことで、報告書には率直にそのような我々の見解を述べさせていただいた、こういうことでございます。
○斉藤(鉄)委員 非常によくわかりました。ありがとうございます。 今回、この報告書にもございますが、平常時正常に作動する、これは当たり前ですが、地上実験ではかなり厳しい条件で試験をしている。それで正常に作動した。ですから、この間にある条件については、多分正常時と厳しい状態の間がリニアに結ばれていて、その中間であろうと。だから、非常に厳しい条件で試験しておいて、大丈夫であればそれでいいんだ、こういう考え方でやられたわけですが、実際にはこの間がリニアになっていなくて、かなり非線形な現象が起きていた。 非常に微小な振動でこういう不具合が起きてしまったということなんですけれども、素人考えにそれを聞きますと、ほかにもそういうものはいっぱいあるんじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。宇宙開発につきましては、これは宇宙開発だけに限りませんが、人命に直接関係する部分もございます。将来の有人飛行となりますと直接人命にかかわるわけで、いや、あの現象は非線形で予測不可能だったという言いわけがなかなか言えない技術でもございます。そういう意味で、このような非線形な現象がほかにもあるのではないかという質問に対しては、どういうふうにお答えになりますでしょうか。 それから、そういうものを宇宙開発の中で今後見つけ出していかなくてはいけないわけですが、そのためにはどういうアプローチが必要なのか。その点について先生、どういうふうにお考えでしょうか。
○前田参考人 私がお答えしてよろしいのかどうかわかりませんけれども、私の率直な意見を申しますと、今御指摘のありましたようなそういう非線形な現象が起こるということは、確かにほかにもいろいろあろうかと思います。 例えば、今回の問題は摩擦に関連する問題で、御承知のように、摩擦というのは非常に非線形な現象でありますので、当初、事業団の方では、恐らくそういうことは起こるまいということで設計はなされておられたと思うのですけれども、たまたま今回のような不具合が起こってみますと、やはりその辺の検討が足りなかったのではあるまいかということになると思います。 ただ、摩擦の現象というのは非常に複雑なことで、例えばトライボロジーのようなことをおやりになっている専門の方々でも、なかなか難しい問題のように伺っております。ですから、果たして画一的にそういった現象がいつ起こるかというふうなことはとてもわかりませんので、先ほども申しましたように、外部の専門の方々に積極的に御意見を承るということにするという体制をとっていただくのも、実は、やはりそういった問題を積極的に指摘していただくということが必要ではあるまいかというふうに私は理解をいたしております。 いかがでしょうか、そのくらいでよろしゅうございますでしょうか。
○斉藤(鉄)委員 非常によくわかります。 これは前田先生と秋葉先生にお伺いしたいのですが、そういう非線形な現象が起きる。それを予測するためには実条件、つまり、宇宙空間で前もって一度実験していればわかったかもしれないということが言えるわけです。今回いきなり新しい試みである二液式アポジ推進系をかなり大きな形で使うよりも、いまワンステップ実証実験をやった方がよかったのではないかという意見もあるのですが、その点について両先生の御意見はいかがでございましょうか。
○前田参考人 確かにそういう意見が我々の委員会でもございました。ただ、先ほど私が申しましたように、今回の不具合に関しましては、かなり確率の低い現象であります。ということは、結局、宇宙実験を例えば一回やってすぐ起こるというふうな理解はちょっとできない現象であったかと思いますので、今回の不具合につきましては、宇宙実証ですぐ見つかったとは考えられないというふうに私は考えております。 ただ、そうではなくて、本当に宇宙実証をやれば見つかった、見つかるであろうという問題もたくさんあると思いますので、その辺はこれからぜひ検討を要する問題ではあるまいかというふうに考えております。
○秋葉参考人 ただいまの件、非線形現象の予測、あるいはめったに起きない事象を予測するというのは大変困難なことでありますが、おっしゃるように、これは事前の実証と宇宙実証というのは有力な手段でございます。そのほか、物によりましては数値シミュレーションということもございますし、それから、なるべくたくさんの既存データのデータベースをつくっておいて、それにょりまして設計審査を行うというやり方もあると思います。 いずれにしましても、このようなたまにしか起きない現象を予測するというのは、これは極めて困難でもございますし、それから予備実験等におきましてはかなりの費用も要するということで、そのあたりのバランスを考えた上で最善を尽くしていくべきものだというふうに考えております。 以上です。
○斉藤(鉄)委員 ちょっと予告の質問にないのですが、そのたまにしか起きない現象はなかなか予知が不可能だ、確かにそのとおりなのですが、そうしますと、たくさんの人を乗せていくようなロケット、飛行機でもそうですが、そういうものにそういう事故が起きたらば大変だ。だから、たまにしか起きない予測不可能な事象が起きるようなものは、基本的な安全性、一番技術の根幹には無関係なところでそれを使ってみる。そこが失敗しても大体は大丈夫というところで使うべきだ、こう思うわけですが、そういう工学的な手法といいましょうか、そういうことを考える学問といいましょうか、そういうものはあるのでしょうか。また、それが宇宙で使われておりますでしょうか。
○秋葉参考人 たまにしか起きないことを予測する手法という一般論というのはございませんけれども、これを問題にする分野といたしましては、当然、安全性工学あるいは信頼性工学といった分野がございます。そういうところで例えば冗長性を持たせるということもございます。 それから、安全性につきましては、これは人間が関与する場合としない場合とはかなり大きな隔たりもございまして、それに必要な方策を施すということにつきましても、それに要する費用のかけ方も格段に違うのではないかというふうに考えております。 以上です。
○斉藤(鉄)委員 ぜひ今後、宇宙の分野でも、こういう分野についての研究を進められるようにお願いしたいと思います。 それで、今回は本当に確率的に低い、先ほど前田先生、不運なというお言葉を使われましたけれども、そういう現象であったということで、宇宙開発事業団の責任を云々するつもりは全然ないのですけれども、しかし、現実にこういう失敗が起きた。 今回、宇宙開発事業団で初めて、いわゆるシステムインテグレーション、初めてではないかと思いますが、システムインテグレーションの方式がとられた。これまでは、ある元請の会社に全責任をとらせる形で契約をする、そういうプライム契約方式だったわけですが、今回のきく六号については、NASDAがシステムインテグレーターとして機能した、そういう本格的な第一号、初回の試みではなかったかと思うのですけれども、そういうシステムインテグレーションという契約方式をとったことと今回の不具合と何らかの関係があるというふうにお考えでしょうか。それとも、そういうレベルとはかけ離れた部分が、非常に確率的に低い事象であったというふうにお考えでしょうか。その点、山野理事長、いかがでございましょうか。
○山野参考人 今回のきく六号の契約方式でインテグレーター方式というのを採用したのは、衛星としては最初でございます。それは先生御指摘のとおりでございますが、実は若干歴史的な経緯もございまして、事業団が開発しました衛星は、初期のころはアメリカから導入した技術を使ったというものが主流でございまして、当時はプライム方式でやっておったわけでございます。その後、ブラックボックスで輸入した重要な機器部分に故障が頻発するということで、この部分を順次国産化に切りかえました。 そこで、これを国産化に切りかえますときには、事業団がそういった主要な搭載機器、サブシステムを直接契約をして購入しまして、これをプライムに支給するという方式を採用いたしました。こういうことによりまして、システムインテグレーターとしましては、最も重要なのはこういうシステム間、サブシステム間の技術的なインターフェース調整をやるということだと存じますが、その辺の勉強をかなりさせていただきました。 それで、今回きく六号の開発に着手するに当たりまして、御存じのように、このきく六号というのは主要な要素のすべてが自主技術によるものでございまして、今申し上げました全体のインテグレーションをします上で、技術調整をする面が非常に多岐にわたって数も多かったわけでございます。そういうふうなことで、この調整を特定のメーカーに任せるのではなくて、中立的な立場の事業団が直接それをするのが適切であろう。 これは特定のメーカーに任せました場合には、主契約業者と副契約業者が同じ業種の場合には、やはり自分の持っております技術、ノウハウの流れ出ることを恐れましてなかなかスムーズにいかないのでございます。そういうふうなことで、NASDAが中立的立場でもってこの調整役をするということでインテグレーターになりまして、開発を進めてまいったものでございます。 そういうふうなことで、私どもは、このインテグレーター方式にしましてもプライム方式にしましても、やはり基本は、事業団の開発と申しますのは宇宙開発事業団とメーカーとの協力関係で成り立っておるわけでございますので、この協力関係ができるだけ効果を発揮するような方式を選ぶべきだ、こう考えております。 したがって、今後、今回の御指摘を踏まえまして、体制面等にいろいろ具体策を練っていくわけでございます。その中で、NASDAとメーカーとの協力のあり方という中の一環としまして、どういう場合にはプライムがいいんだ、どういう場合にはシステムインテグレーターがいいんだということも、あわせ考えてまいりたいと考えております。 今回の不具合がこういう契約方式と関係があったかどうかという点を御指摘だと思います。 これはむしろ前田先生が御答弁されるべき問題ではございますが、私の私見で申し上げますと、契約方式と申しますより、私が今最後に申し上げましたNASDAとメーカーとの協力体制にすき間がなかったかどうか、そういったふうなことも反省材料の一つかなという気がいたしております。
○斉藤(鉄)委員 それでは、同じ質問を前田先生にしたいと思うのですが、報告書にも、開発管理体制に関する検討のところに、契約形態、きく六号の開発における企業との契約上のあり方に直接起因する問題は見当たらなかった、こういうふうに結論づけられておりますが、報告書をまとめられた立場から、先ほどの質問についてどういうふうにお考えでしょうか。
○前田参考人 私たちの委員会で、今回の不具合に関連をいたしまして、開発体制についての見直しをぜひやっていただきたいというふうな答申をいたしましたわけでございますけれども、これは決して、今回の不具合が開発の体制に関係をしているからという直接の原因で、そういうことを指摘したというわけではないと私は考えております。と申しますのは、先ほどからも御指摘のように、最近の大型化して複雑化いたしました衛星あるいはロケットのシステムにおきましては、各方面の非常に深い知識を持たれた専門家が数多く必要でございますし、それを結局事業団が一つのインテグレーターとしておまとめになるということにならざるを得ないのではないか。 そういう意味で、これからますますそのような傾向が強まるであろうということを予測いたしまして、従来の開発の形態をこの際一度お見直しになって、新しいインテグレーションをなさる方も非常にその技術力を高められるべきでありましょうし、また、要素技術等をおやりになる方々も非常に技術を高められることが必要でありましょうし、あるいは、先ほども御指摘のありました外部の専門家の知識も大いに取り入れるような体制をとるべきでありましょうし、そのような方策をこの際抜本的にお考えいただくべき好機ではあるまいかというつもりでそのような御指摘を申し上げた、こういうつもりでございます。 よろしゅうございますか。
○斉藤(鉄)委員 わかりました。よろしくお願いいたします。 報告書の中に、このインテグレーター方式についてちょっとわからないところがありましたので、お聞きしたいんです。「インテグレー夕方式による宇宙開発事業団の役割」というところの文章なんですが、「ETS-Ⅵに係る宇宙開発事業団のインテグレーション業務に際しては、支援会社が、予備設計の段階において」云々と書いてございまして、「支援会社が、ハードウェアのインテグレーションを担当して宇宙開発事業団を支援してきた。」こういうふうに文章があるわけでございます。 この文章だけ読みますと、宇宙開発事業団は、そうすると、そのシステムインテグレーションの最終責任は持ったのかもしれませんが、インテグレーションの実質業務は支援会社がやったんだというふうに読めるわけですが、この支援会社というのは具体的にはどういうことなんでしょうか、山野理事長。
○山野参考人 今御指摘の最後の部分は、インテグレーター支援会社がハードの製作はやるという位置づけになっております。
○斉藤(鉄)委員 そうしますと、宇宙開発事業団がシステムインテグレーターとして最終責任を持つということに変わりはなく、そのシステムインテグレーションまで下請でどこかの支援会社にやらせたという意味ではないわけですね。
○山野参考人 そうではございません。
○斉藤(鉄)委員 わかりました。 今回のこの不具合、この報告書の中にもございますが、技術開発上の貴重な経験としてどのように最大限に生かしていかれるのか、その点についてお聞きしたいと思います。山野理事長、お願いいたします。
○山野参考人 今回のきく六号の失敗と申しますのは、二液式のアポジエンジンという構成要素に不具合があったわけでございますが、これを今後最大限に生かしますためには、この不具合のあった二液式の推薬弁だけではなくて、違う部分についても反省すべき時期ではないかというふうに考えております。これは前田先生の方の委員会の御報告でも、この辺の原因究明と対策に相当部分を割いてはおられますが、ごらんになりました第二部の方では、むしろ事業団の一般的な技術開発能力の向上という問題を取り上げられておりまして、私はこの部分を非常に重要に考えております。 したがいまして、一般的にこういうふうな部分的な構成要素についての善後策を講ずるというだけではなくて、これを契機としまして、全社的に、事業団における審査体制の充実とか技術能力の向上とか、あるいは先ほど前田先生が御指摘になりました外部専門家の活用とか、あるいは事業団における、これは先生の御持論でもございますが、技術情報システムの高度化とか、そういう各般にわたりましてこの際見直しまして、いろいろ改善策を講じてまいりたい。それも、手前みそになりませんように、できるだけ幅広く、外部の専門家の御意見もちょうだいしながら進めてまいりたい、こう考えております。
○斉藤(鉄)委員 その点、今回の失敗が将来の開発に生かされるように御努力をお願いしたいと思います。 先ほど山野理事長のお答えにありました不具合管理、不具合をどういうふうに管理していくかということでございます。 報告書の中にも「技術情報管理」の項目に、「宇宙開発事業団においては不具合情報のデータベース化を行う信頼性情報システム」等を用いた、こういうふうに書いてございますが、今回の事故を契機にいたしまして、この不具合管理システムをどのように拡充をされる御計画か、どのように改善をされる御計画か、その点についてお聞きしたいと思います。
○山野参考人 不具合管理と申しますのは、御案内のとおり、品質管理の一環でございますが、現在、プロジェクトごとの不具合管理というものにつきましては、品質管理体制の中で不具合報告書という文書による処理を行っております。 これは、開発いたしますときに、適用図面あるいは仕様書等の要求に適合しない場合、あるいは機能的に疑わしい現象を示した場合には、軽微なもの以外はすべて製作メーカーから事業団の方に不具合報告書というものの提出を求めておりまして、これを製作メーカーとNASDAとで検討いたしまして、必要な場合は追加の試験や解析を行って、原因究明をした上で適当な是正措置を講ずるというふうにいたしておるわけでございます。 そういうふうにして個別なプロジェクトごとの不具合管理というのはいたしておるわけでございますが、そういったふうなものを総合化して、不具合情報を全体としてどういうふうに管理しておるか、いわゆる不具合情報システムというものにつきましては、これは、事業団におきましては昭和六十二年からその開発に着手をいたしております。 そのシステムに対するデータベースの入力は平成二年から開始をいたしまして、当時のN-Ⅱロケット及びそれによりまして打ち上げられました人工衛星の不具合データの入力から始めまして、現在に至っております。これは、NASDAの信頼性管理部という部局に設置しましたワークステーションと、NASDAの社内の二十六カ所並びに関連メーカー十一社の十一カ所に設置されました不具合情報システム用のパソコンというもので構成されております。 これらがすべてネットワークで完全に結ばれているわけではございませんが、現在のネットワークの現状と申しますのは、ワークステーションとNASDAの本社内の六カ所と私どもの筑波宇宙センター三カ所のパソコンは、NASDAネットというネットワークで結ばれております。それから、残りの二十九カ所は、これはNASDAネットには結ばれておりませんで、PCメールを利用してデータの受け渡しを行っております。したがって、全体としましては、このネットワークの構成というものはまだ十分ではないわけでございますが、私どもは、できるだけ早く総合的なネットワーク化を急ぎたいな、こう思っておるところでございます。
○斉藤(鉄)委員 不具合管理情報システム、全事業団規模で今整備されているということで、非常にすばらしいことだと思います。 そのシステムに入る情報ですけれども、どのレベルの情報まで入るのか。端的な聞き方をすれば、今回はばねの不具合というのは見つかりませんでしたけれども、もし見つかっていたとすれば、そういうほんのちょっとした小さい不具合まできちんと報告されて管理される体制にあるのか。それとも、協力会社の場合はやはり企業秘密もあると思います。そういう意味で、そういう小さい情報はネグレクトされて、大きな情報しか入ってこないようなシステムなのか、そのシステムに入っている情報の内容についてお聞かせください。
○山野参考人 現在このシステムに入っております情報と申しますのは、まず項目で申し上げますと、不具合報告書の番号、不具合を起こした物品の名称、発生の年月日、それから不具合発生の場所、不具合の現象の内容、さらに不具合の原因、それに対する是正処置、それからその是正の終了年月日、それから同種不具合の再発防止策、当然メーカー名が入りますが、そういったふうなものが項目として入っております。 この不具合情報の範囲としましては、一つは、ロケット、人工衛星の開発及び製造、それからさらに種子島における打ち上げ前準備作業で発生したすべての不具合。それから二つ目は、軌道上で発生した人工衛星の不具合。それから三つ目は、地上試験時あるいは打ち上げ前の準備作業時、追跡管制のとき、さらに地球観測データを取得するときに発生したそういうあらゆる場合の地上設備の不具合というものが入っておりまして、現在蓄積されております不具合情報というものは、今申し上げました三つにつきまして、それぞれ九千四百二件、二百八十二件、八千四百六十八件、合計一万八千百五十三件となっております。 私は、恐らく、先生今最後におっしゃった点につきまして、これは事業団が大いに活用しまして、再発防止等に活用しておると同時に、メーカーも活用する問題ではございますが、今ちょっと先生のおっしゃいましたように、A社がB社の情報を生で使うということは、現在できないことになっております。やはりそういう情報には企業秘密等が絡みまして、なかなか円滑にまいりません。将来はその辺も私は何らかの打開策を講じまして、例えばそういうふうな企業秘密部分を除いてできるだけ標準化するとか、加工するといった何らかの方法を講じて、これをメーカーも活用できるようにすべきではないかなと思っておりますが、現在はそこまでいっておりません。
○斉藤(鉄)委員 そうしますと、システムインテグレーターとしてのNASDAがあって、A社とB社という協力会社がある。A社の不具合情報についてはNASDAが全部管理している。B社の不具合についてもNASDAが全部管理している。しかし、A社とB社は直接それを知る関係にはない、こういう理解でよろしいでしょうか。
○山野参考人 おっしゃるとおりでございます。
○斉藤(鉄)委員 そうしますと、いよいよシステムインテグレーターとしてのNASDAの役割が非常に重要になってくると思います。B社のつくったもので起こる不具合の可能性をA社の情報から予測できるかもしれない。そういう意味でのNASDAの体制といいましょうか、今そこまでできる体制にNASDAはなっておりますでしょうか、それとも今後そういうふうにする御予定でしょうか。
○山野参考人 現在、できるだけおっしゃいます方向で努力はいたしておりますが、私は、やはりそれに加えまして、A社もB社の過去のデータを利用できるような方法、それは生ではもちろんいけませんから、先ほど申し上げましたように、差し支えない範囲まで事業団の努力で標準化する、あるいは加工してそのデータを活用していただくというふうな方向もあわせ講じてやったらどうかなというふうに考えております。
○斉藤(鉄)委員 それをすることによって格段の技術レベルの向上が図られると思いますので、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。 こういう不具合情報につきまして、今度は科学技術庁にお聞きしたいのですが、科学技術庁傘下のいろいろな研究所、これには宇宙もありますし、海洋もありますし、原子力もありますので、一概には相互間の情報の流れ、一元化ということは言えないかと思いますけれども、この各研究所なり科学技術庁の傘下の研究所から出てくる不具合情報、またいろいろな技術情報管理、それをどういうふうに管理、利用されているか、現状をお聞かせください。
○沖村政府委員 宇宙開発の分野につきましては、今事業団の理事長から御説明申し上げましたように、非常にデータベースがしっかりしております。これは宇宙開発のいろいろな政策にいろいろなデータをとるときに、オンラインでつながっているわけじゃございませんけれども、いろいろ勉強させて、反映させていただいております。 科学技術庁傘下の全体のそういうデータベースにつきましては、まず、御案内のように日本科学技術情報センターという特殊法人がございまして、そこは当庁の研究所ばかりではございませんけれども、全研究所の論文、データ等につきまして極力そこへ集約いたしまして、研究者、企業、各研究機関等にオンラインで差し上げるというシステムを構築しております。ということで、なるべくそこへ情報を集約していかなければいけないというふうに思っております。 それともう一点は、先生御案内のように、今、科学技術会議が中心になりまして、国立試験研究機関全体をオンラインネットワークで結ぶという仕事もやらせていただいておりまして、これは間もなくハード面ではつながるわけでございますけれども、ここへどういうデータを入れていって、そういう情報流通を効率的なものにしていくかということにつきましては、今後研究データをそこに入れていく地道な作業が必要だと思うのですけれども、ぜひそれを積極的に利用していくということをますますやっていきたいというふうに思っております。
○田中国務大臣 せっかくの斉藤先生のお尋ねでございますから、一言申し上げたいと思います。 科技庁が扱っているあらゆる分野での情報ということもお尋ねでございましたけれども、きょうは特にロケットのことを扱っていただいておりますので、宇宙関係ですので、それに限って申し上げますれば、宇宙開発というものは国民の期待を大変保大きく担っていますし、それから夢を乗せているものであるというふうに思います。 そして、その情報というものは、結局は予算、すなわち、国民の税金というもので賄われているわけでございますから、それはもう謙虚に、不具合のことも含めまして、公開は当然していくべきであろうというふうに思いますし、そのことによって、また将来の技術の進歩やら開発というものが、それを基礎にしてさらに進めていくこともできるわけだと思います。 ただし、個人的な情報、個人に関する情報ですとか、先ほどいろいろ企業のこともありましたけれども、そういうことの知的所有権に関することは難しい面もあるかというふうに思いますが、基本的には、当然進歩のために、それから予算の関係もありますけれども、情報は公開していくべきであろうというふうに考えております。
○斉藤(鉄)委員 その点よろしくお願いいたします。 最後に、情報の一元化と情報公開、今議論していることと関連いたしますけれども、情報の一元化の重要性ということについて、ちょっと払お話をさせていただきたいと思うのです。 今回、阪神大震災がございまして、地震予知ということがいろいろ言われているわけですけれども、これは新聞に書いてあったのですが、実は地震予知に責任のある気象庁にいろいろな地震情報、地震予知情報が入っていなかったということが新聞に報道されております。例えば、科学技術庁が総額冨二十億円かけてつくった深層観測施設ですか、これは関東のように非常に厚い堆積層に覆われ、また、交通機関などのノイズがあるところでは大変重要な地震予知情報になるわけですが、これが気象庁に提供されていない。それから、国土地理院のGPSも気象庁に提供されていない。非常に気象庁としては限られたデータで地震予知をしなければいけない。 また、民間でも、いろいろな建設会社や電力会社やガス会社等はかなりの地震観測網を持っている。そういう情報も気象庁に集められるようにはなっていない。宝の持ちぐされがいっぱいあるということが新聞に書いてございます。 宇宙開発についてもこの情報の一元化、これはもう技術情報、管理情報、不具合情報、すべてにおいて言えるわけですけれども、そういう情報の一元化、そのシステムのネットワークをつくらなくてはいけない。 例えば宇宙開発に関係することですと、田中大臣が最終的にはゴーのサインを押さなければいけないわけです。そういう事例もたくさんあるかと思いますが、その田中大臣のもとに来る情報というのは、一個の人間が判断できる範囲、例えば一個の人間ですから、五個か六個の情報しか私は判断できないと思うのです。その五個か六個の情報に百万以上の部品の情報がすべて含まれている形で、コンピューターによってすべての情報が含まれた形で、しかし、人間の前では五個か六個の情報として出てきて、それを大臣が判断して、これで行こうというふうに決断をする。そういうすべての情報の一元化ネットワーク、これをつくらなくては、日本の技術一般、特に宇宙開発は今後おくれていくのではないかな、このように思うわけですが、大臣、この点につきましていかがでしょうか。
○田中国務大臣 大変よい御指摘をいただきました。これは斉藤先生が前回の委員会、科技特でございましたかのときにも御指摘くだすったことでございまして、私も念頭にありました。 それから、予知連の先生方とも昨日、地震の関係で申し上げますけれども、予知連の四人の学者の先生方ともお話がありましたし、あとは各省庁、六、七省庁の代表の方もおいでになった会議も出席いたしまして、その印象等もすべて含めまして、情報の一元化、これはもう本当にこれだけの震災の後で、みんながこれだけ予知というものについて関心を持っておられるのに、国土地理院である、はいこれは気象庁です、これは大学であります、これは科技庁というふうなことではなくて、もう一元化を図っていくのは当然だと私も思いました。 各委員会でそのお尋ねが大変多うございましたし、それから、繰り返しになりますが、予知連の専門家の学者の先生方のお話を聞いた結果もそういうふうな気持ちになりましたので、本日、ちょうどタイミングがいいのですけれども、きょうの朝閣議がございまして、このことを私がるる説明を申し上げまして各大臣の御意見を伺いました結果、ぜひそれはやっていくべきであろうという結論になりまして、きょう報道に出るとありがたいと思って、きょうは科技庁の記者会見でもこのことを申し上げたのですけれども、当面事務方を中心といたしまして頻繁に会議をやっていただく。 きょうは閣議では、むしろ全員その関係の閣僚の会議を持ちましょうかというふうな提案も官房長官の方からございましたのですが、まず事務方で頻繁に会議をして一元化していこう。もちろん三月の末日になりますと、あのインターネットであらゆる情報をつないでいくというふうなことも、それは今先生がおっしゃったように、気象庁には深層観測施設のデータが行っていなかったというようなこともないようにいたしますけれども、それでもまだまだ私は不足だと思いますので、今のような御指摘を受けて、動き出しておるということを御報告申し上げますし、また私も、庁内で沖村開発局長にすぐ人選をしていただくようにということを指示をいたしました。 次に、宇宙の関係でございますけれども、今もシステムインテグレーションのことをおっしゃいましたけれども、いろいろなメーカーとの関係もございますし、大変山野理事長も御苦労なさっておられますし、各専門家の方々もよくしてくだすっているのですが、民間企業に対してどのぐらいのことができるのか、私はその辺が非常にいつももどかしく思っております。 これをシステマチックに情報を一元化できれば、非常に飛躍的に進歩することと思いますので、ぜひ専門家の皆様のお知恵、御意見を拝借していきたいし、また、民間の実績、それから研究の状態というものもやはり何とか入手して、有効活用させていただかなければならないというふうに思っております。
○斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。地震についてはぜひお願いします。また、宇宙についても御努力をお願いしたいと思います。 時間がなくなってきましたので、最後に、三人の先生方に同じ質問をして終わりたいと思います。 技術情報、管理の一元化ということとも関係するのですが、現在日本の宇宙開発は、科学技術庁がNASDA、それから航空宇宙技術研究所をお持ちになって、主に宇宙環境利用とか宇宙の利用、どちらかというとエンジニアリングを所轄されている。それから文部省が大学、それから宇宙科学研究所をお持ちになって、これは宇宙サイエンス、科学の方で所轄をされているわけです。 この二つに縦割りに分かれている科学、宇宙、科技庁と文部省と二つに分かれておりますが、これを一元化といいましょうか、一つにまとめたらどうだろうか。そうすると、先ほどの不具合情報についても一元化できるわけですし、いろいろな宇宙に関する情報が一元化できて、失敗も少なくなるのではないか、また効率化するのではないか、こういう意見がございます。 我々新進党も、行政改革の一環としてそういうことも考えているわけですが、この点につきまして三人の先生方の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○山野参考人 まず、現状は、先ほど来語がございましたように、ロケット系、それから目的、これも先生御指摘のように全く違うわけでございまして、私どもは液体ロケットを中心にいたしまして実用分野の宇宙開発、それから宇宙科学研究所の方は固体ロケットを中心としまして宇宙科学専門にというふうに特化されておりまして、現在はおのおのがそういう形の中で非常にうまく目的を達成しておると思います。 ただ、そういう中にありましても、当然協力すべきところは協力することでございまして、ロケッ十分野でも協力をいたしておりますし、それから定期的に両者の情報交換の会も持っておりまして、相協力してやっておるわけでございます。 これが長期的な将来になってまいりますと、例えば私どもが月、惑星を探査利用するといった時代になりますと、例えば宇宙開発事業団の開発しましたH-Ⅱロケットをお互いに共用して、科学ミッションと実用ミッションと相乗りでもって共同で作業するといったふうな場面もあろうかと思いますし、そういう時代になりますと、両者の協力がますます必要になってくると思いますので、そういう段階で、協力のあり方の中で、今先生のおっしゃるような問題も議論したらどうかなというのが私の今の考えでございます。
○前田参考人 この件に関しましては、私がお答えしてよろしいのかどうかちょっと心配でございますけれども、私の私見としてお答えさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。 私も、現在は宇宙開発委員会の技術評価部会のお仕事を担当させていただいておりますが、以前は宇宙研の方の委員会にも出席をさせていただいておりましたので、事業団の方も、それから宇宙研の方も、それぞれにおやりになっているところは私なりに大体わかっているつもりでございます。 私の感じといたしましては、宇宙研はペンシルロケット以来の長い歴史をお持ちでございまして、科学探査の面で非常に高い業績をいろいろ上げていらっしゃる。事業団の方は、いわゆる実利用の方面で非常にたくさんよい成果を上げてこられた。ということは、現在のその二本立てでやっていらっしゃるシステムが、少なくとも今までのところは非常にうまく機能してきたのではないかというふうに考えております。 ただ、今、理事長も申されましたように、これからはだんだんとロケットも衛星も大型化してまいりますし、目的も、必ずしも実利用とかあるいは科学探査というふうなはっきりした区別があいまいになってまいりまして、両方の機関で一緒になっておやりになるべき時期がやはり来るのではないだろうかというふうに考えております。 したがいまして、十分その辺についてはこれから長い目で御検討をいただいて、できるだけスムーズな形で、日本の宇宙開発が停滞をしないように進めていただくような形で一元化されるならば、それが多分理想的な形かなというふうに思います。
○秋葉参考人 最初に、我々宇宙科学研究所と宇宙開発事業団は全く目的が違っておりまして、私どもは研究所でございまして、特に宇宙科学の研究を推進するという使命を持っております。それに対しまして宇宙開発事業団は、主に実利用という分野につきまして宇宙開発事業を推進するという使命を持っておりまして、本来の目的が違うわけでございますが、かなり共通するアクティビティーを持っておるということも事実でございます。そのようなことにつきましては、協力関係を維持するということは当然重要でございまして、従来もこれはたくさんの例を見ることがございます。 例えて言うならば、我々が開発いたしました固体ロケット技術はH-Ⅱロケットのブースターに使われておりますし、現在事業団が開発を進めておりますJ-Iロケットには、我々のM-3SⅡ型の上段が使われるというようなことが現実に行われております。 このような協力関係は、やはり適当な競争関係ということによります一種の緊張関係のもとに進められるというのが、私としては効率的な宇宙開発に極めて重要なことではないかというふうに考えております。山野理事長、それから前田参考人の御意見どおり、これから協力分野がますます拡大するということは事実でありまして、我々もそのような姿勢で臨みたいというふうに考えております。
○斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。きょう予告してない質問も随分しまして、大変失礼いたしました。今後、皆様の御努力によって、宇宙開発が再び我々二十一世紀の日本の夢を与えてくれるようなそういう仕事をされることを望みまして、質問を終わります。 ありがとうございました。
○野呂委員長 秋葉忠利君。 〔委員長退席、笹木委員長代理着席〕
○秋葉委員 社会党の秋葉でございます。 きく六号について幾つか常識的な視点から、時間が余りありませんので、何点かについて伺いたいと思います。 私の視点といいますのは、科学技術を社会にどういうふうに導入すべきなのかといった少し大きな枠組みで、実はアメリカの大学にいた時代からそれを一つのテーマとして取り組んでまいりましたので、いわばその延長として幾つかの点について伺いたいと思います。 くしくも今回、この委員会が開かれている一月ぐらい前に関西の大きな震災がございました。これもやはり科学技術とそれから社会という面で大きな問題を投げかけているわけですけれども、きく六号の失敗ということ、同じ時期に重大な問題を考える、共通点を当然考え始めるというような傾向があるわけです。 まず最初に長官に伺いたいんですけれども、この二つの大きな出来事、共通の教訓といったようなものがあれば、科学技術庁としてでも結構ですし、個人としてでも結構ですけれども、どういった教訓がおありだというふうにお考えになっているか、まずその大枠のところから伺いたいと思います。
○田中国務大臣 なかなか難しいお尋ねでございますけれども、結論から申しますと、いずれも損害を軽減するために今日の教訓をいかに生かしていくかということに尽きるかと思います。 それから、きく六号につきましては、最善を尽くしてくだすって、専門家がよかれと思って本当にベストの状態で打ち上げをなさっているわけですから、そうであっても、その不具合というものが生じておりますし、そういう意味では、広い意味で事前に予知といいますか、予見することができなかったということに、そういう範疇に入るとすれば、地震と共通項であろうかというふうにはくくれるのかというふうに思います。
○秋葉委員 わかりました。実はもう少し根本的なところに立ち返ってのお考えを伺いたかったわけですけれども、ついでに、そのきく六号に関連して伺いたいんですけれども、小型エンジンの不調で静止軌道に乗れなかった人工衛星はこれまで何個あるのか。国別、原因別のデータをとりあえず伺いたいんですけれども、これは専門家の方でも結構ですし、科技庁の方でも結構です。 〔笹木委員長代理退席、委員長着席〕
○山野参考人 これは、軍事用のものは当然従来から公表されていませんので、全容を把握しておるわけではございませんが、これまでに公表されている資料によって調べた結果によりますと、アポジエンジンのふぐあいによって静止軌道に乗れなかった人工衛星と申しますのは、今回の私どものきく六号を含めて十四個ございます。 この十四個を国別で申しますと、米国が六個、我が国が三個、国際機関が三個、英国が一個、中国が一個でございます。 それから、この不具合の推定原因別にしてみますと、材料、構造、動作不良、そういった原因によるものが七件、燃料漏れによるものが三件、これは固体燃料でございますが、燃焼異常によるものが三件、原因不明が一件、そういったふうな内容になっておるようでございます。
○秋葉委員 ありがとうございました。 このデータで見ますと、ボーダーラインになるのかもしれませんけれども、十四件中三件が日本、今回の分を除いても二件ということで、そもそも人工衛星を打ち上げている国というのが少ないわけですから、資料としてこういう結論をそのまま導き出せるかどうかという問題が残るんでしょうけれども、その一番最後の英国の一件というのは注目に値するにしろ、日本でもやはりこの問題が日本の誇る技術であって、全く問題はないといった評価にはなかなかならないんじゃないかという気がいたします。 それは、今回の事故の調査結果にも、実はこういう素朴な視点からの疑問に答えるという姿が余りないような気がするんです。 前田先生に伺いたいんですが、調査委員会のあり方として、専門家が具体的に技術的な内容について精緻した上で議論を行わなくてはいけないということはある程度わかるものの、調査委員会そのもののあり方をやはり公開性を中心にして、結論だけではなくて議論の内容まで公開にする。そして、そこに十分な知識を持った、あるいは勉強する気のある素人でも傍聴をしたり、あるいは状況によっては参加できるといった形が望ましいというふうに思いますけれども、それは理想論で、具体的には難しいという話になるのかもしれませんが、そういった公開性ということについて、特に事故調査ということについてはどうお考えでしょうか。
○前田参考人 ただいま御指摘のございました調査委員会の審議を公開にしてはどうかという問題でございますが、今回の調査委員会につきましては、何しろ不具合の原因究明が非常に難しい問題でございましたし、したがって、各専門の委員の方々が自由に忌憚なく議論をしていただきますためには、非公開にしておく方がよろしかろうというようなコンセンサスがございましたので、そういう御意見で今回は非公開で行われたというふうに私は理解しております。 したがいまして、本来公開にすべきであるかどうかという点につきましては、私はなかなかそれに対する意見を述べるほどの立場にはないのではないかと思うのですけれども、ただ、その内容につきましては全部公開をされておりまして、技術面で委員会で審議されましたものは、すべてデータまで含めて資料が報告書として公開されておりますので、公開をすることについては特に問題があるということはないのではないかな、これは私の意見でございますけれども、そういうふうに感じております。 したがって、今後調査委員会が行われますときに、今御指摘のございましたような立場で公開をすべきかどうかということを、やはりもう少しきちんと審議をした上でやるべきかなというふうに今になって思っております。
○秋葉委員 公開すべきかどうかという点について私が関心がありますのは、理由は幾つかあるのですけれども、その一つは、実はマスコミを通して報道された事故の原因について、これは例えば調査委員会の委員の方々がマスコミの取材に対して個々にお答えになっているケースもあるでしょうし、あるいはほかの専門家の方々が寄せられた意見というのもあるわけですけれども、かなり厳しい評価が出てきております。 しかしながら、調査委員会の結論というのは、これは予見できなかった、だれにもミスはなかったという形になってしまった。そこのギャップがどうしても腑に落ちないというところがございます。そのギャップが脇に落ちないだけだったらいいのですけれども、一つは、この教訓をどういうふうに生かすかということで非常に重要な問題です。 もう一つは、これは問題提起をしておきたいのですけれども、一体こういった事故の責任をどうとるのかといった問題と絡んでまいります。責任というのは、何もだれかがお金を払えとか首を切れとかいうことにすぐつながるわけではありませんけれども、やはり事故なりあるいは大きな出来事については、責任の所在がきちんとどこかにあるということがその再発を防ぐ場合に非常に重要になってくるということを私は考えておりまして、そういう観点から、やはり公開性といったところからも考えるべきではないかということを申し上げているわけです。 時間がありませんので、その責任について伺いたいのですけれども、今回のきく六号の失敗について、これは最終的には国民の税金でこれだけの事業をやっているわけですし、失敗についても当然どこかでだれかが責任をとらなければいけないというふうに考えるのは、これは納税者としての当然の意識だと私は思いますけれども、一体こういった場合にだれがどのような形で責任をとるべきだというふうに考えているのか。これは科学技術庁としてのお答えになるのでしょうか、それとも総理に聞かなくては答えが出てこない問題なのでしょうか、よくわかりませんけれども、どういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。
○田中国務大臣 これは大変基本的な問題で、私も、今回、たびたび不運なことに、ロケット関係の不調なことが続いておりまして大変頭を悩ませておりますし、ロケット、宇宙関係以外でも、やはり科学技術全般の中で、むだはもちろん、むだのない科学技術の進歩なんというのはあり得ませんし、宇宙以外を含めましても、そういうすべての基本的なことに善意、しかもあらゆる技術者の方が善意を持ってよく進めていこうという大きな目標に向かってやっているわけでございますので、特に今の段階でのロケットに関しましては、だれが責任をとる、今、秋葉先生おっしゃったように、個人がやめればいいとかお金を払えばいい、そういう次元のことではなく、このことを奇貨としてといいましょうか、この教訓の中から多くのことを学んで、そして先ほど秋葉先生も言われたように、ある程度よいライバルといいますか、競争関係の中でいい知恵、エネルギーを出していくということの方にむしろ目を向けていくのが現段階ではないかというふうに思います。 が、将来の課題といたしましては、私はこれで満足はしているわけでは決してありませんで、情報の公開ということも含めまして、それから税金の問題は、私もロケットが失敗したり、不具合があったりするたびに非常に悩んでいることでもありますので、やはり情報の一元化ということを先ほど斉藤先生も御指摘になりましたけれども、トータルに、情報もそうですし、技術もそうです。 今のロケットに関しましては、技術を民間に発注しているといいますか、民間技術を導入しなければやっていけない、立ち行かないという実情もありますので、そういういろいろな複合的な問題をクリアしながら、一本化していける方向にみんなの英知を集めていくべきであろう、そういう段階だというふうに認識をしております。
○秋葉委員 問題を少し整理した方がいいと思うのですけれども、私は、日本の宇宙開発のあり方あるいは大型の科学技術プロジェクトのこれからの続け方について、抜本的な再検討をすべきだというふうに思います。 特にロケットのような場合には、今までの日本の宇宙開発というのは、どちらかというと一発主義、一〇〇%完璧主義といいますか、そういったものが中心になってきていて、失敗というものを前提としない考え方であったというふうに思います。ですから、そういった失敗を例えば大きな計画の中にどういうふうに取り込んでいくのか、その教訓をどういうふうに生かすのかといったような形で、新しい形の開発の戦略といいますか、そういうものが必要だというふうに私は思っています。 ただ、そのことと、では実際にそういう計画を立てて、具体的に事業を進めているときに失敗があった。その失敗は、みんな一生懸命やっているのだから、善意なんだから、これを前提として、失敗はある程度存在するということは仮定としてやっているのだから、その責任については問わなくていいというのと、これはちょっと話が違うのです。 責任の所在をはっきりさせるということは、原因の分析をシビアに行うということです。しかも、属人的にそのことをきちんとけじめをつけていくということだと思います。属人的ではなくても、組織的と言ってもいいのかもしれません。そういったことによって、次の場にその教訓を生かすということができるというふうに私は思います。 特にこのことを強調したいのは、今回覧間をするに当たってもうそれに突き当たりました。ですから、あえてそのことを申し上げているのですけれども、例えばきく六号の失敗があった。エクスプレスも失敗した。では、この次はと考えると、ひまわり五号の打ち上げがあるわけですね。 では、きく六号とエクスプレスの失敗をどういうふうにこの次の打ち上げに生かすのかという質問をしたいと思いますと、科学技術庁の方にその話をしたところ、いや、あれは担当はうちではありませんから気象庁に聞いてください。あるいは今度は気象庁に聞いたら、いや、打ち上げについては、これは宇宙開発事業団ですからこっちではありません。つまり、今回のような大きな失敗があって、これだけマスコミが注目し、そして一般の人も関心を持っている問題についても責任の所在がはっきりしない。こういう状況で本当に教訓が生かせるのかというところが問題提起です。私は生かせないと思います。 仮に、それを生かすために、もっとシビアに、どこに原因があったのかということを組織の中のどこか一カ所でもいいですし、あるいは一人の人にそれが最終的には帰属するのであれば、そういう形でも仕方がないのかもしれません。それ以外の方法もあるでしょう。しかしながら、やはり責任の所在をはっきりさせるということ、つまり、原因をきちんと分析をして、その結果を謙虚に生かすということは必要だというふうに思います。そういう意味で申し上げているので、やはり責任の所在と、それから善意でやっているかどうか、それから大きなシステムの中で失敗があるかどうかというのは別問題だ、こういうふうに思います。 ということで、たくさん質問があるものですから……。 それで、きく六号の話になりますけれども、気象庁としては、このきく六号あるいはエクスプレスの失敗というものを今後の気象衛星、これはほかの衛星と違って代替機がないわけですけれども、これに生かす上でどういうことを考えていらっしゃるのか。あるいは宇宙開発事業団の方でも、打ち上げに関してで結構ですけれども、簡単にお答えいただければと思います。
○由良説明員 お答えいたします。 ひまわり五号の打ち上げロケットにつきましては、これまでの事例を踏まえて、宇宙開発事業団においては所要の対策を講じておられるというふうに承っております。 また、ひまわり五号衛星につきましては、現在順調に運用しておりますひまわり四号とほぼ同等な衛星でございまして、特段の問題があるとは考えておりません。それで無事運用できるものと期待しているわけでございます。 しかしながら、万が一打ち上げが失敗した場合ということでございますれば、残念ながらバックアップの予備機を気象庁は用意してございません。ただ、順次後継機を用意してございまして、ひまわり五号の後継機、まあ六号ともいうべきものでございますが、それにつきましては、本年度の予算におきまして製作に着手しているというような状況でございます。 もし五号がうまく運用できなかった場合というようなことでございますが、気象業務の面では、当面ひまわり四号の延命策を図りまして、また、他の観測手段を動員いたしまして、台風等の監視、そういったものにつきまして最善の努力をし、防災情報の精度を落とさないよう努力するというふうに考えております。 以上でございます。
○山野参考人 宇宙開発事業団といたしまして、前回のきく六号の教訓をいかに次回のGMS-5の打ち上げに生かすかという点について、私どものいたしておる内容を御説明いたします。 私どもは、早速きく六号の教訓を生かすべく、三号のロケットと人工衛星双方につきまして総点検というものをいたしました。 まず、ロケットの方につきましては、これは二号機で、細かなものではありましてもいろいろな不具合がございましたので、これについて全部洗い直しをして点検をいたしております。 それから、今回の「きく」の方は、これは人工衛星に起こった不具合ではございましたが、同じように高真空中で作動する可能性のある弁につきましては、このロケットの弁もすべてこの際、宇宙空間でかみ込みをしないか、固着を起こさないかという点につきまして再確認をいたしました。 さらに、その他の部分につきましても、前回再点検を行った部分につきまして、再度点検を行うというふうにいたしております。 それから、人工衛星GMS-5の方でございますが、これは、前回のGMS-4から設計が変わっている箇所について設計内容の確認を行うとか、あるいは、きく六号ではコマンドのミスというのがあったわけでございますが、このコマンドにつきましても全コマンドにつきまして総点検を行うといったふうなことをいたしまして、できるだけこのきく六号の教訓を次回に生かすという努力をしておるつもりでございます。
○秋葉委員 それと、もう一つ。きく六号については、もうこれは失敗したから全部だめになってしまうということではなくて、仮に静止軌道に乗らなくても、現在のままの状態で少しでもこれを利用するということを当然考えなくてはいけないと思いますけれども、今まで想定されていなかった実験を行うとか、あるいはその一部を変更するといったことで、少なくともその一部分の部分をできるだけ大きくして生かすということも当然考えるべきだと思います。 実験のかなりの部分は郵政担当だそうですけれども、科学技術庁、それから郵政から、簡単で結構ですから、検討中のものはどんなものがあるのか、概略を説明していただきたいと思います。
○松井説明員 きく六号を使いました通信実験につきましては、当初予定の静止衛星軌道ではなく周回軌道となりますために制約条件があるわけでございますけれども、搭載通信実験機器の基本的な性能確認あるいは通信実験の一部は可能であり、郵政省は関係機関とともに実験結果を取りまとめ、現在、それに基づき実験を実施しておるところでございます。 さらに、きく六号の軌道が周回軌道になりましたために、米国やヨーロッパの上空を通過することとなったため、アメリカの航空宇宙局、NASAでございますけれども、あるいはヨーロッパの欧州宇宙機関、ESAと申しますが、との間でETS、きく六号に搭載しております光通信実験機器を用いた実験を共同で実施できる可能性も出てきたところでございます。 このため、きく六号の活用を積極的に図るという観点から、現在、NASA及びESAとの間で実験の実施について技術的な検討を行っているところでございます。共同実験ができるかどうかの結論はまだ出ておりませんけれども、いずれにしましても、私どもといたしましては、今後ともこのきく六号を最大限に活用し、多くの実験成果が得られるよう努力してまいりたいと考えているところでございます。
○沖村政府委員 科学技術庁関係の新しい軌道での実験でございますが、一つは、新しい軌道になりまして、楕円軌道ということで、バンアレン帯を通るということで新しいいろいろ宇宙上の経験をいたしております。これにつきまして、新しい経験につきましての観測をいろいろ行わさせていただいております。 それからまた、衛星本体につきましては、当初は静止軌道を回るということが急に楕円軌道を回るということになったわけでございますけれども、この楕円軌道を周回するにつきまして関連のソフトをいろいろ修正をいたしまして、太陽パドルをきちんと周回軌道上においても太陽に向ける、あるいは楕円軌道での周回運航に遺漏がないように、いろいろな技術経験をさせていただいているというところでございます。
○秋葉委員 ありがとうございました。 さっきの関西の大震災ときく六号の失敗、共通の教訓に入るのですけれども、いろいろ私も考えたのですが、例えばマスコミにあらわれたいろいろな言葉を拾ってみると、専門家の言うことは信用できないとか、専門家というのは、私もある分野の専門家ですから、私も含めて申し上げているのですが、そういうこともありましたし、それは極端にしても、さまざまな提言がありました。 その中で、余り取り上げられてはいませんけれども、例えば先端科学、華々しく注目されている科学とか先端の分野とか、そういったものに比べて忘れられてしまった科学であるとか、あるいはもう常識の部類に入ってしまった科学技術的な成果とかいうものを、当たり前のことだけれども大事にするというのが今回の教訓の最大のものかなというような気もしています。 例えば、関西大震災の中で亡くなった方の非常に多くの方々は、木造の非常に古い家に住んでいた。これはもう科学技術の分野ではなくて、地震の予知ができなくても、ちょっと大きい地震が来たら、ああいう家はつぶれるだろうというような家に住んでいた人が実際にかなり亡くなられた。これはもう常識をそのまま、私たち自身あるいはそういう家に住んでいる人、政治、科学者、そういったものもすべて含めて、社会全体として常識を大事にしていれば、かなりの部分は救えたのじゃないかという気持ちが非常に多くしています。 今回のきく六号でも、例えば真空中で摩擦が多くなる、これはやはり常識ですよね。それから、ロケットの中でいろいろな振動があるというのも、これも常識ですよね。しかも、その振動が影響を与える力というのは振動の大きさだけではないということも、これまた常識ですよね。それから、いろいろな可動部分について、ばねが非常に不安定な工学的な要素であるというのも、これまた常識ですね。ばねを固定化するためには大体通常溝を掘るというのも、これもまた常識ですね。それから、わからないことは事前に小さな実験をやってみるというのも常識ですし、経済的には、大きな損失を伴うものについては保険を掛けておくというのも、これも常識ですね。そういう常識を何一つやっていない。 というところで、予知できなかったという先ほどの調査委員会の結論だというふうにおっしゃいますけれども、これほどたくさんの常識が無視されてしまっていたということを、やはり重く考えなくてはいけないのではないか。そういう意味で、じゃ、こういった常識をきちんとシステムの中に取り込んでいくにはどうしたらいいかということを考える上で、やはり責任という形で決着をつけることが将来への推進力になるのではないかということで、先ほどの私の責任についての提言を申し上げたわけです。 時間がありませんので、最後に一つだけ。 我々が見落としからなところで非常に重要なことが、実は地球の運命そのものも変えてしまうかもしれないというような例として、恐らく御存じの方が多いと思いますけれども、一つ最近アメリカで行われた実験の結果について申し上げますけれども、テキサスで、バイオスファイアという名前で呼ばれているのだと思いますが、実験が行われました。 これは、かなり広いスペースをとって、完全に地球とは分離した閉じたシステムをつくる。その中に水も植物も動物も、そして人間も入ってしまって、空気の流通もしない。太陽が外から来るというのだけは防げませんけれども、ともかく完全に孤立化した中に人間が十人ぐらい入って、水の供給も受けない、エネルギーの供給も受けない、閉じたシステムとして隻ば一年間この中で暮らすという実験をやりました。これは、箱庭みたいなものをつくったり、あるいは池などで閉じたシステムをつくるというのは非常に難しいことはよく知られているのですけれども、何とかやろうということで実験をしましたけれども、これは失敗いたしました。 失敗した理由は幾つかあるのですけれども、その中の非常に象徴的なものを一つ申し上げますと、なぜこの実験がうまくいかなかったかというと、ミミズ、あの土の中を掘っているミミズの研究者が、実際に働ける人が全世界じゅうに六人しかいない。今度は閉じた生態系をつくるに当たって非常に大事なのは何かというと、土壌の中の細菌、土壌を更新して土壌の中に酸素を取り入れて、それを新しいものにしていかなくてはならない。その中でやはりミミズが非常に重要な役割を果たすのだけれども、そのミミズの専門家がいないために、結局土壌の更新が行われなかったということでこの研究は失敗した。 だから最先端の科学で、実は非常にばかにされていると言ったら語弊があるかもしれませんけれども、ミミズのような学問というのは現在の生物学の中ではもうはやらない。分子生物学でないと生物学ではないと言う人さえいるような世の中ですけれども、そういった風潮の中で、実はこの生態系のかぎを握っているのがミミズかもしれないというような例も往々ございます。 実は、そういった根本的な問題に対して、今回のきく六号も関西大震災も私たちに警鐘を与えているのではないかという気がして、ちょっと時間が短いものですから、もっと専門家の方に深い議論を伺った上でいろいろと議論させていただきたいと思いましたけれども、とりあえずの問題提起だけさせていただきました。 どうもありがとうございました。
○野呂委員長 吉井英勝君。
○吉井委員 私は、昨年八月二十八日のきく六号が衛星のアポジエンジンの故障で静止軌道に入れなかったという問題で、九月十四日、特別調査委員会がつくられて、きょう来ていただいております前田先生が座長を務めていただいて、また分科会の主査も務めていただいて、十一回の分科会で検討されたということを伺っております。 その報告の要旨の中には、アポジエンジンの出力が十分でなかった原因についての検討とか、アポジエンジンの出力を停止できなかった原因について二つばかり挙げての検討といいますか、可能性についての追求といいますか、ありました。その中で、そういうところからの考察として、「地上試験は飛行環境よりも厳しい条件で行われること等を考慮すると、今回の特異な現象の可能性を予見することは困難であった。」というふうな指摘などもありました。 そこで、前田先生にまず教えていただきたいのですが、飛行環境の設定として宇宙環境にどの程度近づけたものを考えていくか、またどの程度近づけてやれるかというその辺について、大変初歩的なところで申しわけないのですが、伺いたいと思います。
○前田参考人 ただいまの御質問の地上試験の問題でございますが、まず飛行環境、ここで申します環境というのは、主として振動環境とお考えいただきたいと思うのですけれども、H-Ⅱロケットで打ち上げをいたしますと、その一段目、二段目のロケットの噴射の際に生じます大きな振動が、時間的に申しますと、途中にある程度コースティングの時間を入れて衛星に加わるであろうということは、これは御理解いただけるかと思います。 そういう環境に対しまして、実際に、例えば今回問題になりました二液推薬弁のばねの特性がどうなるかというふうな問題を調べますにつきましては、従来の手法としては、普通打ち上げの際に生じますような振動よりははるかに高いレベルのランダム振動を与えて実験を行う、そして、それで何事もなければ、つまり十分にうまく作動してくれれば、恐らく飛行環境の条件のもとでも大丈夫であろうというようなやり方をとってきたというのが一般的なやり方でございます。 ただ、今回ああいった不具合が生じましてから再度地上試験を行いました結果といたしまして、先ほども申しましたように、そういった大きなレベルの、高いレベルの振動を与えましたときには起こらなかったばねの横ずれというような現象が、かなり小さい振動レベルで生じた、こういうことがわかったわけでございます。 これは、H-Ⅱの打ち上げが終わりまして、現段階でようやくそのような試験が行われたわけでございまして、もともと衛星が設計をされ、製作をされた当時といたしましては、飛行環境でどのようなレベルの振動が生ずるかというふうなことは、まだデータがなかったはずであります。したがって、地上試験ではそれがうまく見つけられなかったということを報告書といたしましては記述したつもりでございます。 ただいまの件につきまして、ですから、その地上試験を十分に充実すればああいった不具合がわかったかと申しますと、従来やっておりましたような試験方法ではやはり多少不十分である。例えば、今申しました振動に起因するばねの横ずれのような不具合、それから超高真空の中で摩擦係数が非常に増大をするというような現象、その二つがたまたま重なり合って今回のような不具合が生じたのであろうという結論を出しました点から申しますと、非常に高い真空状態で摩擦応力がそのように増大をするということを地上試験で再現をするということが大変難しい。 それから、振動の横ずれにつきましても、今申しましたような、従来のやり方では大変難しかったというふうなところが両方絡みまして今回の不具合を生じましたために、地上試験では恐らくなかなか見つけることが困難ではなかったかというふうに結論づけたわけでございます。
○吉井委員 さらにその点でお伺いしておきたいのですが、今もお話ありました真空の条件なのですが、例えばこの報告書を見せていただきますと、低流量時の模擬燃焼室試験というのが真空度約十トールということで行われたというのがありました。もちろん、物の性質によってどの程度の真空の室で十分かというのはありますから、一概に言えませんが、真空席十トール。真空という概念は大体低圧という概念の方で、かなり宇宙条件と違うところでやられていたような印象を私は率直に言って受けたわけです。 それから、チタン合金とステンレスの「真空度と摩擦係数」というところを報告書を見ておりますと、十のマイナス四乗トール台のところですから、恒星間空間で大体十のマイナス二十三乗か四乗ぐらいで、惑星間空間で十のマイナス十六乗トール前後ぐらいのところじゃないかと思うのですが、十のマイナス十六乗は無理としても、今の技術でいきますと、十のマイナス十乗、十一乗はかなりいっています。ですから、せめてもう少し超高真空の領域でデータをとることができたのじゃないか。そのときの摩擦係数の問題だけじゃなしに、別の問題などについても検討はできたのではないかという点も少し思ったのですが、この点はどうでしょうか。
○前田参考人 ただいまの問題につきましては、先ほど山野理事長の方からもちょっと御発言があったかと思うのですが、日本の現在持っております実験設備では十のマイナス七乗程度の真空度のチャンバーというのが精いっぱいでございまして、金材研あたりには十のマイナス十乗あたりのものがございますようでありますが、これは小型のチャンバーで、非常に小さな試験片での実験しかできないというように伺っております。 したがいまして、現在、静止衛星の高度になりますと、大体真空度が十のマイナス十二乗ないし十のマイナス十四乗トールぐらいというふうに聞いておりますので、その段階のような高真空を地上試験で実現することは、これは非常に困難ではないかというふうに思います。まして、その中で例えばヒドラジンを噴射させるというふうな実験は、これはほとんど不可能に近いような条件ではないかと思いますので、いずれにいたしましても、地上試験として、実際の宇宙空間に匹敵するような信頼性の高い実験データの得られる設備というのは、現段階ではなかなか困難というのが実情ではないでしょうか。
○吉井委員 今も触れられましたPV2の下流部凍結確認試験ですか、ヒドラジンの状態についての試験がされているのを読ませていただきましたが、これの圧力は十のマイナス二乗までぐらいの試験なのですね。宇宙環境の挙動を調べるものとしてはかなり不十分ではないか。もちろん、それは噴射の場合もあれば、噴射以外のことで研究する分野やデータをとっておく分野はかなりあって、それはもう少し高真空から超高真空の領域でもできたのではないかという印象を持ちます。 それから、燃焼試験にしましても、もちろん全部丸ごと燃焼、これはおっしゃるとおりなのですが、かなり流量を絞ったもので一定の特性をとるとか、それは工夫によっては、私はもう離れていますからよくわかりませんが、ターボモレキュラーポンプとメカニカルブースターとロータリーポンプをつないでとか、そんなやり方で、容量の大きいものであれば、量をかなり工夫すればその実験はできたのではないかなという印象を持つのですが、この可能性はどうなのでしょうか。
○前田参考人 確かに、今御指摘のようなところをもう少し詰めて考えるべきであったかと思いますけれども、委員会としては、事業団の方で確認試験を再三行っていただいたわけでありますので、その条件は、現在の我が国が持っております実験設備としてはベストの条件でやっていただいたというふうに私は理解をいたしております。 したがいまして、具体的にもっとよりよい試験ができたのではないかということも、今から思いますとあるいはあったかもしれませんけれども、不具合の原因を究明するというあの段階でいろいろ試験していただきましたところでは、例えばヒドラジンをそのまま使うということは非常に毒性も高いし、危険でもありますので、例えば水で置きかえるというふうな実験で済まさざるを得ないというふうなこともございまして、我々としてはやむを得ないところであったかというふうに理解をいたしました。
○吉井委員 今おっしゃった毒性の問題もあります。ですからそれは、真空ポンプで排気しても、回収するシステムをどうするかとか、もちろんそこは解決しなければいけないのですが、ただ、報告書の中で、実験には二・五メートルの長さで直径が一・六メートルのスペースチャンバーを使ったような絵が載っておりましたので、多分あれがスペースチャンバーなのでしょうが、あれよりもう少し大きいものがあるように思うのです。 いろいろなところのものも、よそから借りなければいけない事情とかいろいろあるでしょうけれども、そういうふうなもので、そして、さっき言いましたような最近の新しい真空ポンプの組み合わせなどによって、かなりなことは地上でできるのではないか。あるいはそういう面の技術開発を、打ち上げる方を急ぐ気持ちはよくわかるのですが、しかし、やはり技術というのは着実に積み上げていかないと、七百億を一遍にお釈迦にしてしまうか、それとも着実に積み上げていくかということ、私はその点は非常に大事な点ではないかと思うのです。 それで、現在の日本の進んだスペースチャンバーだったらかなりのものが多分あるのでしょうけれども、私の知っているのは四半世紀ぐらい前の電気試験所ぐらいしか知りませんからあれですけれども、そのスペースチャンバーなどでどの点まで地上実験、地上試験でさらに前進できるのか、あるいは、それをもっと前進させようと思ったらどういうものにこの装置の改良を加えていかなければいけないかとか、その辺も少し伺っておきたいと思います。
○前田参考人 前回の委員会のときに、今御指摘の実験装置、真空チャンバーでございますが、それに関してはいろいろ調査をいたしました。 例えば、金材研には非常に高真空の出せるチャンバーがあるということで、それを利用して実験がどのぐらいできるかというふうに検討いたしましたわけですが、これは容量が二十リットル程度の非常に小さいもので、とても例えば噴射の実験などには使えるようなものではない。たかだか材料の摩擦の検討を行う程度のものだということがわかっております。 それから、あともう少し大きなものは、当然もっと真空度の落ちるものでございますけれども、そういうところでも、できますのはたかだかシールがうまくいくかどうかというふうなことの検討等に使えるというのが現状だということで、ただいま御指摘がありましたような、もっと根本的に今回の不具合につながるような実験を地上で行うということは、非常に困難というのが率直なところであろうかと思うわけでございます。 ですから、これからはその辺の設備がどの程度充実できるかということが一つの大変重要な課題だと思いますので、報告書にもその辺を指摘しであったかと思いますが、特に事業団あるいは宇宙研のようなところで直接その辺をよく御検討いただいて、ぜひ有用な設備をこれから整えていただくという御努力を我々としてはお願いしたいというのが、率直な私たちの意見でございます。
○吉井委員 かなりの超高真空でボリュームの大きいものとなりますと、これはスペースチャンバーではなくて、たしか能力的には放射光施設などで既にあるように思うのです。ですから、技術的にはクリアできる領域にかなり近づいていると思うのですね。 ですから、今度の報告書の中でも、高真空の宇宙空間に推薬等を放出するシステムにおいて、急激な蒸発により配管内で凍結が発生する可能性がある問題とか、いろいろな指摘がありましたけれども、感じとしては、かなり初歩的なところでやっておけば、データを集積すれば、そこらはクリアできたのじゃないかという感じが非常にするわけです。 それで、宇宙では予期し得ない現象が起きる可能性があるとしてはいますが、今回の問題についてだけなら、私はかなり超高真空の分野に取り組んできた人々からすれば、ここまでできたのじゃないかという印象もするだけに、ここで秋葉所長にも聞いておきたいのですが、スペースチャンバーで四半世紀前ぐらいから、例えばロケット打ち上げ時に相当する時間ですね、加速度がどれぐらいまで何秒で、どこからが何秒というあれで、真空度ですね、圧力の方もぐっと下げていくようなスペースチャンバーなどもつくって、実際のロケット打ち上げ時の模擬試験などもやってきたように思うのです。 そういう中で、急速な真空排気によって材質を含めたそれぞれの製品の特性値を集積していった。それが今日に至っているのじゃないかと思うのですが、これからの日本の宇宙開発の分野で、私はやはり原点に戻った取り組みというのが、どうも基礎が少しおろそかにされてと言ったら、やっていらっしゃる方からは、おれらそういうつもりはないという反論があるいはあるかもしれませんが、上へ目が向かい過ぎてといいますか、着実に基礎を積み上げる、そこへの研究予算の投下とか、やはりそこらが随分軽かったのじゃないかという思いがいたします。 その点では秋葉所長に率直な御意見を伺いたいと思いますし、時間が参りましたので、あわせて山野理事長には、約八百億円も研究投資がむだになったというこの現実を踏まえて、実験に失敗はつきものだとちょっと気楽に言える金額じゃないだけに、ここから今後の問題としてどういう教訓を、長い教訓じゃなくて一言で結構ですから、今引き出していらっしゃるか、その点を伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○秋葉参考人 おっしゃいますとおり、基礎研究が重要であるという認識は我々は常に持っております。現在におきましては、特に超小型化、高機能化といった方向での基礎研究に鋭意取り組んでいきたいという姿勢で臨んでおります。
○山野参考人 今御指摘の点につきましては、私どもも実験だから失敗はつきものとは夢にも思っておりません。やはり常に一〇〇%の成功を目指して努力をしていかなければならないと考えております。 それから、今回の教訓は二面ございまして、一つは、先ほど来御議論のありました技術的に開発能力をどう向上するかという問題、いま一つは、私ども役職員の責任感、モラルというものをいかに向上するか、この二面があろうかと存じます。
○吉井委員 終わります。
○野呂委員長 参考人各位には、御多用中のところ、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時四分散会