法務委員会 第2号
- 発言数
- 52 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1994/06/07
会議録
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 まず、委員の異動について御報告いたします。 去る五月十日、常松克安君が、また、昨六日、服部三男雄君が委員を辞任され、その補欠として荒木清寛君及び南野知惠子君がそれぞれ選任されました。 —————————————
○委員長(猪熊重二君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。 委員の異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(猪熊重二君) 御異議ないと認めます。 それでは、理事に平野貞夫君及び荒木清寛君を指名いたします。 —————————————
○委員長(猪熊重二君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 まず、法務行政の基本方針について、中井法務大臣から所信を聴取いたします。中井法務大臣。
○国務大臣(中井洽君) このたび法務大臣を命ぜられました中井洽でございます。 内外にわたり極めて困難な問題が山積しておりますこの時期に法務行政を担当することになり、その職責の重大であることを痛感いたしております。 法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全にあります。国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄を図るためには、その基盤ともいうべき法秩序が揺るぎなく確立され、国民の権利がよく保たれていることが極めて重要であると考えます。 私は、こうした認識のもとに、法務行政の各分野にわたって適切な方策を講ずるよう全力を尽くしたいと考えております。 次に、当面する法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べ、委員の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。 第一は、治安の確保及び法秩序の維持についてであります。 最近における犯罪情勢を概観いたしますと、全般的にはおおむね平穏に推移していると認められますが、強盗、殺人、放火等の凶悪事犯が多発し、暴力団関係事犯、薬物事犯、過激派や右翼によるテロ・ゲリラ事犯も後を絶たない上、地方公共団体首長らによる濱職事犯、大型の脱税事犯を初めとする財政経済事犯が相次いで発覚いたしております。また、来日外国人による犯罪が増加、凶悪化するとともに、諸外国との間において相互に犯罪人引き渡しや捜査共助等を要する事件が増加するなど、犯罪の国際化の傾向が顕著であります。 私は、このような情勢のもとで、各種犯罪事象に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実と適正な検察運営に不可欠な綱紀の保持に意を用い、さらに、刑事司法に関する国際協力を促進していくことにより、時代の要請に応じた良好な治安の確保と法秩序の維持に努めていきたいと考えております。 第二は、出入国管理行政の充実強化についてであります。 本格化する国際化時代を反映し、最近の出入国者数は増加の一途をたどっており、また、不法在留者も現在約三十万人と推計される状況のもとで、出入国管理行政における事務量は急激に増加し、これに加えて本年九月には関西新空港の開港が予定されておりますので、出入国管理行政を迅速かつ円滑に遂行していくため、今後一層の業務体制の充実強化に努めてまいりたいと考えております。 また、出入国管理行政の遂行に当たりましては、我が国社会の健全な発展の確保及び国際協調と国際交流の増進への寄与という基本理念のもと、専門的技術者等の外国人の受け入れの促進及び実践的な技術等の海外移転を図る技能実習制度の円滑な実施を図る一方、不法就労外国人問題に対する厳正かつ効果的な対策を推進していく所存でありますが、外国人に関する諸問題については、今後とも内外の情勢や世論を踏まえながら幅広い角度から検討を加え、これらに的確に対処してまいりたいと考えております。 第三は、一般民事関係事務の効率化と訟務事件の処理等についてであります。 一般民事関係事務は、登記事務を初めとして事務量が逐年増大するとともに、社会経済活動の多様化、国際化を反映して年々複雑困難の度を強めてきております。特に、登記事件は、公共事業の活発化等を背景に依然として高水準で推移しており、一般国民が直接窓口を訪れる機会も多くなってきております。そこで、このような現状に対処し、窓口サービスの抜本的改善を図るため、引き続き登記事務のコンピューター化を推進し、行政サービスの向上に努めてまいりたいと考えております。 民事関係の立法につきましては、法制審議会の各部会において調査、審議を進めているところでありますが、自己株式の取得規制の見直しに関しましては、本年二月に法制審議会の答申が得られましたので、商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を今国会こ提出いたしたところです。また、戸籍事務のコンピューター化につきましても、本年一月の民事行政審議会の答申を踏まえ、戸籍法及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしました。 次に、訟務事件の処理についてでありますが、最近の訟務事件は、量的にも高い水準にあるばかりでなく、質的な面においても、国際化の進展を反映したものや、最先端の知識、技術が問題となるものなど、複雑困難なものが増加する趨勢にあります。また、これらの訴訟は、集団化、大型化し、全国各地の裁判所に提起される傾向にあり、訴訟の結果いかんが国の政治、行政、国民生活等に重大な影響を及ぼすものも少なくありませんので、訟務事務処理体制の一層の充実強化を図り、適正円滑な事件処理に努めてまいりたいと考えております。 第四は、人権擁護行政についてであります。 人権の擁護は、憲法の重要な柱であり、民主政治の基本でもあります。人権の擁護については、国民のすべてが人権について正しい認識を持ち、互いに他人の人権を尊重し合いながら幸福を追求するという態度が必要であると考えます。 人権擁護行政につきましては、各種の広報活動によって国民の間に広く人権尊重の思想が普及高揚するように努めるとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて関係者に人権尊重の思想を啓発し、被害者の救済にも努めてまいりたいと考えております。 中でも、いじめ、体罰などの子供の人権問題、部落差別を初めとする各種の差別問題につきましては、関係省庁とも緊密な連絡をとりながら、一層活発な啓発活動を行ってまいりたいと考えております。 また、法律扶助制度は、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するために極めて重要なものでありますから、今後ともその充実に努めるとともに、法律扶助制度の調査研究にも意欲的に取り組んでまいりたいと考えております。 第五は、犯罪者に対する矯正処遇と更生保護についてであります。 犯罪者の矯正処遇につきましては、対象者に暴力団関係者、覚せい剤事犯者のほか、施設への入出所を繰り返している累入者等改善困難な者の占める割合が増加しているのに加え、外国人被収容者が増加し、あるいは高齢化傾向が顕著であるなど処遇の複雑困難化が著しくなってきていることから、これらの者の年齢、犯罪傾向、刑期その他の特性等を考慮した適切な処遇を推進するとともに、医療体制の拡充や社会内処遇への円滑な移行を図るなどして処遇の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。 また、これらの者の社会復帰及び再犯防止につきましては、犯罪のない明るい社会の実現のために多大な貢献をしている民間篤志家、団体との緊密な連携を保って社会内処遇の一層の充実、発展に努めてまいりたいと考えております。中でも更生保護会の保護施設につきましては、緊急にこれを整備する必要がありますところ、昨年十月、矯正保護審議会から建議を受けまして、施設の整備を図るため、更生緊急保護法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしました。 なお、監獄法の全面改正を図るための刑事施設法案につきましては、第百二十回国会に再提出されました後、継続審議の扱いとなっておりましたところ、第百二十六回国会におきまして衆議院の解散に伴い廃案となっております。しかし、刑事司法の重要な一翼を担う行刑制度の近代化を図る上におきまして、制定後八十年余を経た現行監獄法の全面改正は不可欠の課題であり、法改正へ向けて検討を加えてまいりたいと考えております。 第六は、司法制度に関する立法についてであります。 我が国における外国弁護士の受け入れ制度は、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法施行後、円滑に運用されてまいりましたが、臨時行政改革推進審議会第三次答申、外国弁護士問題研究会の提言及び総合経済対策等を踏まえ、最近における弁護士業務を取り巻く国際環境の変化及び国際的法律事件の増大にかんがみ、渉外的法律関係の一層の安定を図る等のため、外国法事務弁護士に係る承認の基準についての相互主義を緩和するとともに、外国法事務弁護士が弁護士と共同の事業を営むことができることとする等、外国法事務弁護士の活動に関する規制を合理化する等のため、右法律の改正法案を今国会に提出いたしました。 また、社会の高齢化等に対応した施策として、一般職の国家公務員について、家族を介護しなければならなくなった場合、一定期間介護に専念することを認める介護休暇制度を設ける等のため、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律案が提出されているところでありますが、裁判官についても、これと同様の趣旨で介護休暇を導入する必要があることから、裁判官の介護休暇に関する法律案を今国会に提出いたしました。 最後に、これら法務行政の適正円滑な推進の確保のため本国会に提出し、御審議をお願いすることを予定しております法律案は五件であります。今後提出法律案の内容について逐次御説明することになりますが、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかな成立に至るようよろしくお願い申し上げます。 以上、法務行政の重要施策につきまして所信の一端を申し述べましたが、委員長を初め委員皆様の一層の御協力、御支援を得まして、法務大臣としての重責を果たしたいと考えておりますので、どうか御指導のほどをよろしくお願い申し上げます。
○委員長(猪熊重二君) この際、牧野法務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。牧野法務政務次官。
○政府委員(牧野聖修君) お許しをいただきまして、一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。 このたび法務政務次官に就任をいたしました牧野聖修であります。 時局柄大任だとは思いますけれども、中井法務大臣を補佐いたしまして、時代に即応した法務行政の推進のため、誠心誠意努力をしてまいる所存でございます。委員の皆様方の温かい御指導と御支援をくださいまするよう心からお願いを申し上げまして、あいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○委員長(猪熊重二君) 次に、平成六年度法務省所管及び裁判所関係予算について説明を聴取いたします。 まず、原田法務大臣官房長。
○政府委員(原田明夫君) 平成六年度法務省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。 まず、法務省所管の一般会計予算額は五千四百四億六百万円であり、登記特別会計予算額は一千五百九十五億四千百万円でありまして、その純計額は六千二百八十六億五千五百万円となっております。この純計額を前年度当初予算額六千四十四億円と比較しますと二百四十二億五千五百万円の増額となっております。 次に、重点事項別に予算の内容について御説明申し上げます。 まず、定員の関係でありますが、前年度定員に比較いたしますと純増二百十一人となっております。 平成六年度の増員は、新規五百二十人と部門間配置転換による振りかえ増員七十六人とを合わせ、合計五百九十六人となっております。 その内容を申し上げますと、一、法務局における登記事務、訟務事務及び人権擁護事務の処理体制を強化するため、登記特別会計の百五十八人を含め百六十三人。二、検察庁における特捜事犯、財政経済事犯及び国際犯罪事犯等に対処するとともに、公判審理の迅速化を図るため九十二人。三、刑務所における保安体制、処遇体制及び医療体制の充実を図るため百十二人。四、少年院及び少年鑑別所における教育、観護体制の充実を図るため三十二人。五、保護観察活動等の充実を図るため二十六人。六、出入国審査及び在留資格審査並びに退去強制手続の業務の充実強化を図るため百七十一人となっております。 他方、平成三年七月五日の閣議決定に基づく平成六年度定員削減分として三百八十五人を削減することとなっております。 次に、主要事項の経費について御説明申し上げます。 第一に、法秩序の確保につきましては、三千七十六億七千万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと七十六億九千八百万円の増額となっております。 その内容について申し上げますと、まず、検察庁関係では、検察活動の充実を図る経費として九百三十五億九千四百万円を計上しております。 矯正施設関係では、刑務所等矯正機能の充実を図るため一千七百八十八億二千万円を計上しており、この経費の中には、被収容者の処遇の確保のための生活備品、日用品の改善及び食糧費の単価改定等に要する経費を含んでおります。 更生保護関係では、保護観察等の充実を図る経費として百六十三億九千三百万円を計上しております。 訟務関係では、国の利害に関係のある訴訟事務の処理経費として十三億九千八百万円を計上しております。 公安調査庁関係では、公安調査活動の充実を図る経費として百七十四億六千五百万円を計上しております。 第二に、出入国管理業務の充実等につきましては、二百六十三億七千百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと二十九億四千五百万円の増額となっております。 その内容の主なものについて申し上げますと、出入国及び在留管理業務の充実を図る経費として四十八億一千九百万円、不法就労外国人対策の強化を図る経費として十三億八千四百万円、外国人登録事務処理経費として六十五億九千八百万円等を計上しております。 第三に、国民の権利保全の強化につきましては、一般会計で八百八十一億二千八百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと二十七億四千百万円の増額となっております。 その内容について申し上げますと、まず、登記関係では、登記事務費として七百十二億九千二百万円を計上しております。この登記事務費は、登記事務を円滑、適正に処理するために設けられている登記特別会計の財源の一部として繰り入れるための経費であります。 法務局のうち登記を除く関係では、国籍、戸籍等の事務処理の充実を図る経費として百五十六億九百万円を計上しております。また、人権擁護関係では、地域改善対策としての啓発等人権擁護活動の充実を図るため十二億二千七百万円を計上しております。 第四に、施設の整備につきましては、老朽、狭隘化が著しい基幹の大行刑施設及び拘置支所の継続整備を含め、法務省の庁舎及び施設を整備するための経費として百六十億九千六百万円を計上しております。 第五に、登記特別会計につきましては、総額一千六百三十六億七千六百万円の歳入、一千五百九十五億四千百万円の歳出となっております。 歳出の主な内容といたしましては、登記所等管理経費九百十九億九千八百万円、登記事務のコンピューター化計画の推進及び登記簿謄抄本交付事務の適正、迅速化を図る経費五百四十七億九千五百万円、登記申請事件の審査等経費三十六億六千四百万円、法務局の支局出張所等を整備する施設整備費として七十九億三千八百万円等をそれぞれ計上しております。 以上、平成六年度法務省所管の予算の概要を御説明申し上げました。
○委員長(猪熊重二君) 次に、仁田最高裁判所事務総局経理局長。
○最高裁判所長官代理者(仁田陸郎君) 平成六年度裁判所所管歳出予算要求額について御説明申し上げます。 平成六年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は二千八百八十三億一千九百七十九万八千円でありまして、これを前年度当初予算額二千八百三十八億九千八百九十七万四千円に比較いたしますと、差し引き四十四億二千八十二万四千円の増加となっております。 これは、人件費において十九億七千八百七十一万九千円、裁判費において十七億五千五百十八万七千円、施設費において三億六千百三十八万一千円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において三億二千五百五十三万七千円が増加した結果であります。 次に、平成六年度歳出予算要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。 まず、人的機構の充実、すなわち増員であります。 民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件、破産事件の適正かつ迅速な処理及び司法修習体制の充実を図るため、判事補十人、裁判所書記官五十人、裁判所事務官七人、合計六十七人の増員をすることとしております。 他方、定員削減計画に基づく平成六年度削減分として裁判所事務官等三十二人が減員されることになりますので、差し引き三十五人の定員増となるわけであります。 次は、司法の体制の強化に必要な経費であります。 裁判運営の効率化及び近代化のため、庁用図書等裁判資料の整備に要する経費として七億三千二百四十四万一千円、複写機、計算機等裁判事務能率化器具の整備に要する経費として九億二千四百四十五万七千円、調停委員に支給する手当として六十九億二千六百二十四万九千円。裁判費の充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十九億九百四十七万一千円、通訳人謝金等に要する経費として三億八千三百六十九万円、証人、司法委員、参与員等旅費として九億五千百九十二万一千円を計上しております。また、裁判所施設の整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百二十五億三百九十七万二千円を計上しております。 以上が平成六年度裁判所所管歳出予算要求額の大要であります。 よろしく御審議のほどをお願いします。
○委員長(猪熊重二君) 以上で所信及び予算の説明聴取は終了いたしました。 これより大臣の所信に対する質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
○下稲葉耕吉君 自由民主党の下稲葉でございます。 まず、中井大臣に、大臣御就任、心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。 羽田内閣の成立に伴いまして永野法務大臣が御就任になったわけでございますが、記者会見等における発言が問題になりまして辞任されました。その後新しく法務大臣に就任されたわけでございまして、いろいろなことをお考えになっていることと思うのでございますが、法務大臣というポストは大変重要なポストでございますし、我々今から御指導いただいたり、あるいはまたいろいろ御意見申し上げることも多かろうと思うのでございます。 最初に、大臣に就任されまして、今申し上げましたような経緯で大臣に就任されたわけでございますが、大臣の御感想をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(中井洽君) お話ございましたように、突然の羽田総理からの任命でございまして、大変自分自身で驚いたというのが就任当時の率直な思いでございます。 同時に、一月たちまして、予算委員会、本会議、そしてきょう御審議をいただくということで、私も十四年ぐらいの国会生活になりますが、この参議院の委員会室に入らせていただきますのは実は初めてでございます。そういういろんな初めての経験をさせていただきながら、御指摘ございましたように、本当に法務大臣というポストの重さ、責任の重さ、これを痛感をしている毎日でございます。 下稲葉先生のような法務行政、特に御経験の深い諸先輩の御指導をいただいて、身を引き締めて間違いのない職責を果たしていきたい、この思いでいっぱいでございます。
○下稲葉耕吉君 大臣のあいさつ及び所信の冒頭にございますように、私は法務省の仕事は要するに法秩序の維持と国民の権利の保全にあるということだと思いますし、全くそのとおりだと思います。これは大臣のおっしゃるとおりでございます。 ちょっと余談になりますが、この文章は、中井洽というところが違って、三ケ月だとか後藤田だとか、この十行は全く同じことをおっしゃっております。私はそれはそれでいいと思うんです、法秩序の維持と国民の権利の保全というのが中心でございますから。 世界の状況を見てみましても、政治の問題、経済の問題、社会問題あるいはまた外交、いろいろ論議されておりますけれども、国内の治安が維持されていなければそれは政治だとか経済だとか社会だとかめちゃくちゃになっていることは周知のとおりでございます。日本は世界的に見まして大変治安がいい国でございまして、治安がいいということがもう日常茶飯事になっている。何か最近は水も高いんですけれども、水や空気みたいなものだ、当たり前なんだというふうな認識でいますと大変なことになりますし、また逆に言うと、それだけに治安関係の皆様方に対する国民の期待というものも大きい、こういうふうに思うわけでございます。 そこで、その所信に従いまして御質問申し上げたいと思うのでございますが、実は私今まで、中井法務大臣を初めといたしまして、前任者の数人の方々の所信表明を検討させていただきました。 第一に、治安の確保及び法秩序の維持について中井法務大臣が新しく言われていることは、「適正な検察運営に不可欠な綱紀の保持に意を用い、」というところが実は従来の法務大臣にない新しい表現になっているわけでございます。 今さら申し上げるまでもないんですが、最近、検察庁の方々にかかわるいろいろな疑惑だとか暴行事件だとか、その他いろいろ報道されている事案がございます。そういうふうなことで結果的に国民の検察に対する信頼というものがなくなったら私は大変なことだと思うし、これは非常に重要に受けとめなければならない問題じゃなかろうか。そういうふうなことで所信の中に、従来なかった表現でございますけれども、こういうふうな表現が入ってきたと私は思うんです。 まず、官房長でも刑事局長でも結構でございますが、今私は大ざっぱに申し上げましたけれども、個人名は要りません、具体的にこの種の問題がございましたということをお話しいただいて、それに対する大臣の御決意なりなんなりを承りたい、このように思います。
○政府委員(原田明夫君) ただいま下稲葉委員御指摘のとおり、最近、検事の暴行事件を初めといたしまして、世間一般にいろいろ御心配もおかけし、また憂慮もしていただきましたような事案が何件か発生いたしました。 まず、検事が取り調べに当たりまして参考人に暴力を用いたという事案で、ある若手検事でございますが、これはもう公になっておりますので申し上げますが、金沢元検事の件でございますが、これにつきましては法務当局といたしましても懲戒免職という極めて重い処分にいたしましたし、また本件につきまして、検察におきまして逮捕、勾留して捜査を遂げた後、裁判所に公判請求をいたしまして、過般判決があったものでございます。 検事が取り調べに当たりまして暴力を行使したということで、これ以外に二件実は問題になっているケースがございます。一件につきましては、過般、これも告訴人、また損害賠償請求を提起いたしました被害のあった方との間で裁判上の和解も成立した事案でございますが、それとは別個に現在法務・検察当局といたしまして、刑事事件として、また身分上の調査案件として鋭意検討されておりまして、近くその結論が出されると承知しております。 実はそれ以外にもう一件、やはり検事が被疑者に暴力を行使したということで、これは現在その方に係る刑事事件が裁判所にも係属いたしておりまして、そのことのゆえに公訴に対する不法性を主張されている事案がございまして、これにつきましてその公判廷で事案が明らかになると思いますと同時に、これにつきましても現在法務・検察当局におきまして、刑事事件として、また身分上の調査案件ということで鋭意調査をさせていただいているものでございます。 いずれにいたしましても、法務・検察当局としては前代未聞の事態が起こったということで大変厳粛に受けとめさせていただいております。このような事案は決してあってはならないことは言うまでもございませんが、全く例外的とは申せこのようなことがあったということを深刻に受けとめて、さまざまな観点から再びこのようなことが絶対に起こらないようにということで各般の施策を講じるように検討してまいりたい。長年にわたり法務・検察行政について御指導、また御助言を賜ってまいりました当委員会の先生方に対しても大変申しわけないことであった、国民の皆様方に対しても本当に申しわけないことであるということで深く反省しつつ、二度とこういう事態を起こさないように最大限の努力を払ってまいりたいと思いますし、今後ともよろしく御指導、御助言を願いたいと存じます。 それ以外に、新聞等で報ぜられましたとおり、検事が取材に参りました新聞記者に対しわいせつ的な行為に及んだということで一部の週刊誌等に報ぜられた事案がございまして、これにつきましても、被害者とされる記者からは告訴等の措置はなかったのでございますが、そのような行為と受け取られてやむを得ない行為があったということの認定のもとに懲戒処分をいたしまして、この検事は現在辞職しております。 先ほど申し上げましたように、近年、検察活動がさまざまな形で問題にされ、また国民の期待もいただく中でこのような形で不祥事犯が発生したということにつきましては、あってはならないことという観点で、再び申し上げますが、深く反省をもって受け入れて各般の施策を今後講じていきたいと考えております。 以上、簡単でございますが、御報告申し上げました。
○国務大臣(中井洽君) 検事が取り調べ中の参考人や被疑者に暴行を加えるというようなことは断じてあってはならないと考えております。しかしながら、そのあってはならない事件が、今、官房長から報告がありましたように、起こったということはまことに遺憾に存じます。そういう意味で、ただいま下稲葉先生から御指摘ありましたように、あえて所信の中に「不可欠な綱紀の保持に意を用い、」、こういう言葉を入れさせていただいた次第であります。 検察当局におきましては、今、官房長から話がありましたように、今回の事件を契機に職員の指導監督を徹底するなど再発防止のための努力を続けていると聞いておりますが、法務大臣といたしましても、検察がその適正な運営に不可欠な綱紀の保持に努め、国民の期待と信頼にこたえられるよう尽力してまいりたい、このように考えております。
○下稲葉耕吉君 お気持ちはよくわかります。 もう一言それにつけ加えてみたいと思うんですが、今、官房長は前代未聞だとおっしゃいました。なるほどそうだろうと思いますね。しかし、これが氷山の一角であってはならないわけでございます。 それから、一つ一つの事案を検討させていただきますと、割に幹部の方が多い。地検の次席さんだとか高検の検事さんだとか、そういうふうな方々の名前が出てきておるというふうなことです。むしろこういうふうな人たちは、今、官房長がおっしゃったように、綱紀の引き締めの側に立っていろいろおっしゃる立場の方じゃないかと思うんですよ。 そこで、大臣、いろいろおっしゃいましたけれども、私も昔の仕事でいろいろ似たようなことで大分苦しい目に遭ったこともあるんですが、口先で言うだけじゃだめなんですね。だから、こういうふうなことで具体的にどういうふうなことをやりますということを実は聞きたかったんです。一生懸命やりますということはもうどなたも一生懸命おっしゃるのであって、どういうふうな機会にどういうふうなことを徹底してやりますとか、どういうふうな組織をつくりますとか、あるいは制度的にもこうしますとか、法律的にもこうしますとか、あるいは人間関係こうやりますとか、いろいろあるだろうと思うんです。そういうふうな点で、もう一言ございますればお願いいたしたい。
○国務大臣(中井洽君) 今回の検事のこれらの事件、おっしゃるように氷山の一角ということがないと信じておりますが、金沢元検事の事件を契機に内部的にいろいろ調査もいたしまして、結果他の二件も浮かび上がってきたというところもあったやに聞いております。 今この二件がそれぞれ内部的にも、あるいは検察におきましても処理が進んでいる最中であります。これに並行いたしまして、原因あるいは対策、これらも鋭意研究あるいは議論いたしている最中だと聞いております。幅広く国会あるいは国民各層の御批判もいただく中で、こういう事犯が二度と起こらないようにいろんな面からの対策をとらせていきたい、このように考えております。
○下稲葉耕吉君 この問題はこの程度にいたしまして、次にこの所信の三ページにございます入管行政の充実強化についてということでございます。 入管局長にお伺いいたしますが、「最近の出入国者数は増加の一途をたどっており、」云々とあります。平成四年と平成五年、二年間の比較で外国人の入国者数を御報告いただきたい。
○政府委員(塚田千裕君) お答え申し上げます。 外国人の入国者数につきましては、平成四年で三百九十二万六千三百四十七人、平成五年では三百七十四万七千百五十七人となっております。
○下稲葉耕吉君 大臣、お聞きになりましたように、大臣の報告はうそですよ。減っています。 どうしてふえているの。
○政府委員(塚田千裕君) 最近の出入国者数と申しましたとき、私ども日本人の出入国者数も一緒に数えまして、そちらの方はふえておったものでございますからこのような表現といたしました。
○下稲葉耕吉君 そういうふうにおっしゃるのなら、私は畳みかけて聞きますよ。 トータルとしてふえていますか、減っていますか。どっちですか。
○政府委員(塚田千裕君) トータルでは微増だと私は理解しております。
○下稲葉耕吉君 平成五年で微増だと言ったね。間違いないですか。 あなたのところで出している資料、ここにあるよ。見せてやろうか。なければあるよ、ここに。
○政府委員(塚田千裕君) ちょっと微妙な数字でございますので、今計算いたしましてお答え申し上げます。
○下稲葉耕吉君 計算いたしましてというのはおかしいんだね。大臣が今我々にふえていると報告されているんです。大臣が国会に報告されているんですよ。それを計算しなければわからない、そんなことじゃ委員会をなめていますよ。 今、私読んだでしょう。「最近の出入国者数は増加の一途をたどっており、」ということだから、平成四年と平成五年を比べてくださいと。そうしたら、外国人の入国者は、平成四年が三百九十二万、平成五年は三百七十四万。十七万減っているんです。そうでしょう。それで、どうですかと聞いたら、日本人の出入国者がふえている、こう言いましたね。だから全体として微増だと言った。 微増といったら、幾ら微増なんですか。私の手元では減っているんだ。
○委員長(猪熊重二君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(猪熊重二君) 速記を起こして。
○政府委員(塚田千裕君) 最終的な数字がまだ出ないのでございますけれども、出国者と入国者、これは日本人と外国人すべてを足しまして私どもは平成四年よりは平成五年の方がふえているという理解でございます。正確な数字はすぐ出すようにいたします。申しわけありません。
○下稲葉耕吉君 それでは申し上げますが、同じ表に書いてあるんですよ。外国人入国者数、日本人出国者数、平成四年、平成五年。それで外国人入国者は、平成四年がさっき言ったように三百九十二万、平成五年は三百七十四万。これだけ減っている。日本人の出国者は、一千百七十九万、一千百九十三万だから十四万ふえている。けれども、外国人の入国者は十七万減っているんです。十七引く十四は三です。減っているんです。それにもかかわらず、増加の一途をたどっていると。 そこまであなたが主張されるのなら、もっと嫌なことを言いますよ。 「出入国管理行政の充実・強化についてであります。」というこの項目は全部前の大臣のときの報告と同じだ。ただ、一字違う。どこが違うかというと、前の法務大臣は、ここに書いてありますように、関西空港の開港予定が「来年九月」と書いてある。ここは「本年九月」と。この一字変わっただけだ。その間に日本に来たりあるいは日本人が出たり、実数は変わっているわけだよ。そんなことを勉強しないで全く同じ文章を出して、国会をごまかそうと思ったらとんでもない話だ。これは大臣の所信なんだから。公の席ですよ。衆議院でも通っているんですよ、それで。そういうふうに国会を軽視してはだめですよ。 入管局長、どうなんだ。
○政府委員(塚田千裕君) 国会を軽視するとか、そういうつもりは毛頭ございませんで、私の至らぬ点はまことに不明を恥じ入りまして、おわびを申し上げます。その辺のところはぜひ御理解を賜りたいと思います。それと、数字につきましては、即座に出なかったのはまことに失態でございまして、この点もおわび申し上げます。ただ、今計算をしておりますので、その数字につきましては披露させていただきます。
○国務大臣(中井洽君) 下稲葉先生から大変手厳しく御指摘をいただきまして、数字は後から申し上げると思いますが、委員の御指摘の数字で間違いがなかろうかと考えます。 私自身も、担当局から法務行政につきましてレクチャーを受けましたときに、平成四年から平成五年にかけて外国人の入国が約十七万減っておると、このことは言われて頭の中に入っておったわけでございますけれども、最近の出入国数はという形で、近年増加一途というような感じがありまして、これをついつい見過ごしまして、この点につきましてはまた先生の御指導に従って、委員長のもとお取り計らいを願えればありがたい、このように考えております。 ただ、前大臣と同じ文章じゃないかという御指摘でございましたが、出入国管理に関して、問題的には前大臣のころと変わらない、ただ量的増大あるいは質的困難、こういった形で非常に増加が見られる、そういう形で引き続き対策をやりたい、こういう気持ちで同じような文章になったのではないか、このように考えております。 同時に、就任しましてちょうどきようで一カ月でありますが、先月の二十八日の土曜日、あえて土曜日であったのでありますが、私は成田の飛行場へ視察に飛びまして、出入国管理の第一線の状況を詳しく視察をいたしてまいりました。文章は一緒ではありますけれども、心構えといたしまして、これからの本当に質的、量的に増大をし複雑化をする出入国管理が誤りのないよう対応させていきたい、このように考えております。
○下稲葉耕吉君 私は、入管行政が大変だということは非常によくわかりますし、この委員会もあるいはまた我々も入管体制の強化のために、あるいは施設の増強だとかあるいは増員だとか、いろいろ今までやってきたつもりでいるわけですし、また今後ともそういうようなつもりでやることについてはやぶさかではございません。微力でございますけれども、いろいろ御協力させていただきたいという気持ちが前提にあることはもう間違いないんです。 今、大臣がおっしゃいましたことでちょっと私ひっかかるのは、数が減ってきているんですよ。減ったんですよ。これはいろんな理由があるんです。しかし、去年の三ケ月大臣のときにはまだ正解だった。正しかった、三ケ月大臣のときにはまだふえていたんですから。ところが、去年の後半を契機にして数字が変わってきているんですね。その辺に対する認識が一行も出てきてないんです、これは。だからどういうふうにしようかという問題が私は出てくると思うんですよね。というのは、先ほども申し上げましたように、来年というのをことしと変えただけで、字が全く同じだと。 私は、大臣の所信の一番最初におっしゃった法秩序の問題、これはもう当然だと思います。しかし、入管行政というのはもうどんどん変わっているんですから、大臣のこの表現は間違っていますから、「増加の一途をたどっており、」というのは、果たして増加の一途をたどっているか。そのとおりなら私は訂正しますよ。しかし、入管局からいただいているこの表を見る限り、私は入管局からいただいた表を信用するしかない。外国人で入ってきた者と日本人で出国した者、信用するしかない。この表しかないんです、私の手元には。これじゃ減っているんですよ。おととしまではふえていたんですけれども、少なくとも去年が減っているということは間違いないんですよ。 だからそういうようなことで、三ケ月さんのときにはそういうふうな同じ内容のことでもよかったんだけれども、情勢が変わってきている、それをしっかり受けとめていただいて、その辺のところは検討してほしいと思います。 それから、三十万人、これはオーバーステイですね、不法滞在者、現在約三十万人と推計される状況だということです。 入管局長に伺いますが、オーバーステイの人たちが、不法滞在者がどんどんどんどんふえたのは平成三年から平成四年ごろだったと思うんですよ。このときは一年間に何人ぐらいふえていましたか、オーバーステイの人たちが。平成三年から平成四年まで、一年間で何人オーバーステイがふえているか。概数でいいですよ。そんなのはもう入管局長としてはイロハのイだと思うがね。
○国務大臣(中井洽君) 入管局長は正確な数字をということで今調べているようですが、私はレクチャーの中で、その当時、先生の御指摘のあった当時、毎月約一万人ぐらいずつふえた、こういう形で聞いております。
○下稲葉耕吉君 まさしく大臣のおっしゃるとおりで、あの一年間で大体十一万から十二万ふえているんです。だから一月一万人。毎日ジャンボ機で一機ぐらいずつふえていたわけですよ。今はどうかといいますと、一年間で幾らもふえていないでしょう。一年間で一万人もふえていない。数千人でしょう。しかも一番新しい統計によると、去年の五月から十一月までは減っているでしょう。 だから、その辺の認識というのはこのペーパーでは全然出てこないんだな。それだけに入管行政というのは動いているんですよ。いや、私は表現だけとらえて言っているんじゃないんですよ。基本的な姿勢を問題にしたいわけなんだ、そういうふうに動いているんだから。関西新空港はいいですよ。ただ、そういうふうなものに対応する入管局の姿勢というものは、私はきちっとしておらぬといかぬと思うんですよ。基本がわからないようじゃ全然だめじゃないですか。 局長、どうかね。
○政府委員(塚田千裕君) 下稲葉先生の御指摘は一々胸にこたえるものがございますけれども、ただこの不法就労三十万というのは不法残留者の数で推定しておるわけでございます。一番大きくは我が国の経済情勢、景気というようなこともございましてたまたま足踏みをしておりますけれども、これはやはり大きな流れとしては、傾向としては一時的な停滞であって、ストップであって、これから先の流れとしてままた大きく変わっていくということで、趨勢は今までと同じではないかというふうに理解してこのような表現になったわけでございます。 表現の仕方が稚拙だとか至らないとか、一々御指摘の点はしかと受けとめさせていただきまして、今後の執務上、注意をしてまいりたいと存じます。
○下稲葉耕吉君 いずれまた一緒に勉強をさせていただきたいと思しますが、入管の問題はこの程度にいたしておきます。 それから次に、法案の問題がいろいろ出ております。商法の一部改正だとか戸籍法の問題だとか、これはいずれ法案がこの委員会で審議されるだろうと思いますからその際にお伺いすることにいたしまして、今度は法律扶助制度の問題に、これは七ページでございますが、大臣触れておられます。 そこで二つに分けて言っておられますね。「今後ともその充実に努めるとともに、」ということと、「法律扶助制度の調査、研究にも意欲的に取り組んでまいりたい」、この二つであります。それについて具体的に御説明いただきたいと思います。担当の局長からでも結構です。
○政府委員(原田明夫君) ただいま御指摘いただきましたように、法律扶助制度全般にわたりまして大変関心も高まってまいりまして、この問題につきましては、従来から日本弁護士連合会、また法律協会とも協力いたしまして法務省の関係部局が鋭意検討してまいったわけでございますが、その成果を踏まえまして今後法律扶助制度の基本的なあり方につきましても十分調査研究いたしまして、そしてさらに充実させていきたいという観点からこのような考えを表明させていただいておるものでございます。 ただ、現在のところ、ただいま申し上げましたのは、従来検討されておりましたのはいわゆる民事事件を中心とする法律扶助制度ということで、その充実強化を図っていくという観点でございます。 また一方、法律扶助に関しましては、弁護士会等におきましては刑事事件につきましても特に被疑者段階における、被疑者のさまざまな権利の保全のために弁護制度を活用したいということで、それらにつきましても法律扶助の考え方を導入してはどうかという御意見もございます。 ただ、それにつきましては今後さらに検討する課題といたしまして当面は民事事件を中心とする法律扶助制度の研究ということで進めさせていただきたいというふうに考えていることが背景にございます。
○下稲葉耕吉君 県によっては弁護士会の方で当番弁護士制度とかなんとかということをしましたね。おっしゃるように、それは国選弁護人がつく前の段階の弁護活動、捜査段階の被疑者ですか、そういうふうなことまで法律扶助制度でいろいろやってほしいというふうな意見もあることも私承知いたしております。そういうふうなことで「調査、研究」というふうなことを言われているのかもしれないと思うんです。 御承知のとおり、外国では大変この制度が進んじゃって、それで日本はどうしたどうしたというような意見もあることも私わからぬわけじゃございません。ただ、やはり日本には日本としての制度というものがあるだろうと思いますし、この中の「充実」というのは、あれは何ですか、委託費ですか、要するに補助金ですね、それをふやしたいという意向だろうと思うんですね。それはそれでわかります。 後で時間があれば弁護士会とのかかわり合いの問題でちょっとこの問題にまた触れてみたいと思うんですけれども、私どもの方にも法律扶助制度の充実を図ってくれということで、日弁連の会長さんあたりがお見えになって陳情を受けていることもございます。それもよくわかります。そういうようなこともあって、今度はその「調査、研究」に本年度の予算を初めて組まれたのだろうと思いますが、その辺のことだろうと思います。 それから、これもまた弁護士会が関連してくるわけでございますけれども、明治四十一年に監獄法ができまして、たしか昭和五十五年でございましたか、法制審の答申が出て、それで刑事施設法案というのが国会にその後提案されまして、今日まで成案を見ていない。大臣のこの所信表明によりますと、廃案になっていると。「しかし、刑事司法の重要な一翼を担う行刑制度の近代化を図る上におきまして、」云々ということで「法改正へ向けて検討を加えてまいりたい」、こういうふうに言われております。 私はもう本当にこれは大変な問題だと思うんですが、事務当局じゃなくて大臣のお気持ちをひとつ聞かせていただければありがたいと思います。
○国務大臣(中井洽君) 明治時代の法律のままで今も運用しているということはこれは大変なことであると考え、法務省におきましてもいろいろとお願いはしてきたわけでありますが、残念ながら御指摘のような状況になっております。私自身もこの法案を関係団体、また国会の御理解、これを得て早期に国会に御提出をし、ぜひとも成立をして近代的な体制というものを一刻も早くつくり上げるべきだと考え、大臣としてできる限りの努力をさせていただきたい、このように考えております。
○下稲葉耕吉君 ちょっとほかの問題に入ります。 大臣、刑事訴訟法の四百七十五条を御存じでございますね。死刑の執行についての法務大臣の命令ということを決めてあるわけでございますが、大臣に御就任なさいまして、国会議員の中には死刑制度を廃止しようというふうなことで議員連盟なりなんなり結成されていろいろ御活躍されているということも私は承知いたしておりますが、法務大臣におつきになられたわけでございますので、この問題につきましてのお考えをひとつお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(中井洽君) 大臣に就任以来、このことを考えない日は実は一日もございません。 過般も、国会の死刑廃止議員連盟の竹村先生ほか、お越しをいただきました。先週の土曜日には三重県で知事主催の私の就任の祝賀会がございまして、国会議員を代表して田村元先生がお祝いを言ってくれたわけでありますが、その中でもこの件についてお触れをいただき、御忠告も賜りました。 制度そのものは、既に先生御承知のとおりで、裁判所が司法の独立の中で十分な御審議をいただいて刑を下されたわけでございます。法務大臣として、自分の良心に問いかけながら、また可能な限り一つ一つの事案を判断しながら職務を遂行していきたい、こんな思いでおります。
○下稲葉耕吉君 わかりました。 現在、死刑を存置している国が百カ国を超しているというふうに私認識しています。したがいまして、死刑を存置している国の方が多いわけです。アメリカでもそうですし、また近隣では中国、韓国。フィリピンが最近また死刑を復活いたしました。ヨーロッパで死刑を廃止している国が多いんですが、これもやはりそれぞれの国の歴史的な背景があるように私は思います。例えば、ドイツなんか死刑を廃止している。あれはもうナチのああいうふうな大変なことを背景にして、国民感情としてやはり死刑を廃止するべきではなかろうかというふうなことだったのだろうと思います。そういうふうな国際的な流れというふうなものを見てみましても、やはり存置国の方が多いというのは事実でございます。 それから、刑罰法令の中で死刑を規定している条文が十八条ございまして、その中で尊属殺、刑法の二百条、これは違憲ということで判決が確定いたしておりますから、現在刑罰法令の中に死刑を規定している条文というのは十七条というふうに、間違っていたら訂正してほしいと思いますが、私は認識いたしております。 その十七条なんですが、それぞれの条文について最高裁の資料等を検討いたしてみますと、ここ五年ぐらいになりましょうか、本来死刑を判決していい条文の適用を受けた判決が四千三、四百ありまして、その中で十七件しか選択をされていない。しかも、その判決を受けた内容を一つ一つ検討いたしてみますと、みんな人を殺した人なんですね。殺した人に対する死刑の判決なんです。しかもその殺した人が一人じゃない。数人の場合もあります。あるいは殺し方が非常に残虐な殺し方をしているというふうなことであって、人を殺してなくて死刑の判決を受けたというのは一件もないというのが最近の実態でござします。 それから、改正刑法草案では、今申し上げました十七が絞られまして八つになった。だから、死刑の選択というのは条文の中でもだんだん少なくなってきている、そういうのが趨勢ではなかろうか。加えて国民世論、いろんなところで世論調査をなさっておりますけれども、六〇%から七十数%というのが死刑存置に賛成なんですね。こういうふうな実態というものを私どもはまず十分認識すべきではなかろうか、それが背景にありますわね。 なるほど一つしかない命を国家の権力でなくしてしまう、これは人権上の問題があるんじゃないか。もう一つは誤判ですよね。反対論者の大きなポイントはその二つだろうと思うんですね。 それにつきましても、今申し上げましたようなことから考えますと、それは誤判があっちゃよくない。もう最大限の努力をして、しかも日本の制度というのは三審制度だと、しかも再審の道も開かれているというふうなこと。 それから、国家権力が人の命を絶つのはどうだろうかという議論は議論として僕はあると思う。これはもちろんあっていいことなんですけれども、やはり一つしかない命を償ってでもやってもらわなくちゃならないようなこともあるんだというふうな認識が私は必要じゃないだろうかと。 いろいろ反対論者の御意見も私わからぬわけじゃないですが、そういうふうなことを突き詰めていくと、やはり日本としては当分、それは国民の世論が変わって反対派が圧倒的に多いとかなんとかというふうな情勢になるとか、あるいは具体的なケースがあっていろいろ問題が出てきたとか何だかんだということなら格別、今の情勢では刑事訴訟法四百七十五条に規定されていることについて、やはり法の番人、法の執行者としての、責任者としての大臣がそういうふうなことで毅然とやられるべきじゃないかなというのが私の気持ちでございますけれども、もう一遍ひとつ大臣に。
○国務大臣(中井洽君) 先ほど下稲葉先生からお話のありました最近の死刑の判決の傾向というのはそのとおりであろうかと、このように承知をいたしております。 同時に、種々お考えをお述べいただいたわけでございます。 私も就任をしまして、先ほども申し上げましたように、いろんな角度から聞き、勉強もいたしてまいりました。書類として上がってくるのかこないのか、それもわかりませんが、どういう形で行われるのかというのを詳しく尋ねましたとき、担当の検事等が本当に全身全霊を込めて判決を読み直す、また調書ももう一度調べる、こういったことも聞かせていただきました。これに対して最高裁の方から、司法の独立があるのにもう一度調べ直すのか、こういう御異論もある、こんなことも含めてお聞かせも賜ってまいりました。それらすべてを頭の中にたたき込み、また自分自身の良心に問いかけ、そして法務大臣としての任務、このことも十分わきまえながら対応をしていきたい、このように考えております。
○下稲葉耕吉君 ありがとうございました。 それでは、私はこの際、日本弁護士会と法務省といいますか、あるいは最高裁も含めての問題について大臣の御意見なりなんなりを時間の許す限り伺いたいと思うんです。 御承知のとおり、弁護士法は議員立法でございます。だから、日本弁護士会に対する監督官庁といいますか所管官庁といいますか、私はないと思うんですが、間違いございませんでしょうか。
○政府委員(永井紀昭君) 国家行政組織法上の問題、それからその他の法令上の関係におきまして、いわゆる監督官庁と称するものはないというふうに解されております。
○下稲葉耕吉君 そこで、弁護士会、弁護士さんにまつわるいろいろな問題等もございます。 先ほど検察官の問題についていろいろお伺いしたんですが、そういうふうな形で国会の場で御答弁いただく方がいらっしゃらないわけでございます。 それから、私ども仕事を進めていく上で、弁護士会、日弁連と申しますか、日弁連の方たちと深くかかわり合いのある法案というのが本当に多いんですね。この委員会では本当に多いと思います。 例えば、今回出ております外国法事務弁護士の問題、いわゆる外弁問題、これも長いこと法務省、それから日弁連、それに外務省も入っていろいろ協議されている。結局、日弁連がオーケーされると大体法律ができちゃうというふうな形になりますね。 それから、法律扶助制度は、これは日弁連の方から、何とかしてください、何とかしてくださいといって、私ども陳情を受けたり、いろいろやっております。 あるいは今問題になっておりますPL法案、製造物責任法案の問題も底辺には弁護士会の方々の大変な意見というのがある。それはEC型のPL法案でいくのか、アメリカ型のPL法案でいくのか。アメリカ型のPL法案というのはもう弁護士さんたちと深くかかわっているわけですから、だからそういうふうな形で関係ないわけではない。 片や刑事施設法案あるいは拘禁四法案になりますと、これは先ほど申し上げましたが、長い歳月がかかっていても弁護士さん方の御理解が得られないものですから、結果として法案が成立していない。 刑事施設法に限って申し上げますならば、問題は代用監獄をどういうふうにするかというものと、いわゆる被疑者と弁護士間の交通といいますか、大体その辺のところが大きなところじゃないだろうかと思うんです。例えば、留置所をなくして拘置所だということになりますと、果たしてどういうふうな問題が起こるだろうか。拘置所の数から何から、私どもよく調べてみた。弁護士さん自身が地方に置いちゃ大変お困りなんじゃないかと思うようなことすらないわけじゃない。とするならば、どの辺のところで話し合いができるのだろうかできないのだろうかとか、そういうふうな問題等もございます。これが進まなければこの問題は解決しないと思うんです。 しかし、何とか話し合いがつきそうになる。法務省あるいは検察庁あたりが何回も弁護士会とお話し合いされて、うまいところまでいってこれはできるということになる。そうしますと、今度は弁護士会の役員の方々がおかわりになっちゃって、また話が振り出しに戻る、こういうふうなことを何回もやっているんですね。そういうふうなこともあります。 あるいは司法試験制度の問題を取り上げてもそうです。今の司法試験制度がいいのかどうか、いろいろ議論がございまして、五百人から七百人になった。七百人がいいのかどうか、将来の日本の弁護士さんというものが、全国で大体どれぐらいのバランスでおられたらいいのかどうか、そういうふうなところからだんだんだんだん今度は試験制度の問題なりなんなり入ってくるだろうと思うんですね。 あるいは弁護士法そのものにとってもそうでございます。 我々の大先輩で加藤武徳先生がおられました。法務委員会に入っておられました。あの方は知事もやられ、二十何年参議院議員をなさった。昔の司法試験の一次試験は合格されたんですね。国会議員をやめて、弁護士になりたいと。ところが、なれないんですね。ところが、当たりさわりがあったら失礼しますけれども、衆参の法制局の参事かなんか知りませんが、加藤武徳先生みたいに一次試験に合格していますと、その方は五年たてば弁護士の資格が得られるんですね。あるいは大学の教授なりなんなり、これは試験に受からなくても、どこの大学でもですよ、法学部の教授だとこれは試験がなくて、五年たって弁護士の資格が得られるんですよ。今、加藤武徳先生は司法研修所に元気でお通いになって、来年、二年たつものですから資格が得られることになるわけです。御子息が今参議院議員になっておられますけれども、そういうふうな問題。 あるいは今申し上げましたような日弁連そのものの意向というのが政府委員なりなんなりを通じて我々の場ではっきりできない。いろんな問題が、今若干申し上げただけですけれども、たくさんあるわけでございます。 そういうようなものを個々にそれは検討していくというのはもちろん大事ですけれども、せっかく力のある大臣が御就任なさったんですから、その辺のところを総合的に御検討なさって、前の前の後藤田法務大臣がそういうようなことで一生懸命おやりになりかかったんですけれども途中でとまっている経緯もございますので、その辺のところでひとつ大臣の今のところをお答えいただければと思います。
○国務大臣(中井洽君) 先生いろいろと御指摘をいただきまして、十分認識をさせていただきます。 同時にまた、私自身も幾つかの点で先生のお感じになっているようなことを国会議員で感じてきたこともございます。日弁連との関係につきましては、長期的観点から我が国の司法制度にとってこの関係を維持していくことが望ましいと考え、今後とも従来の姿勢を堅持していきたいと考えておりますが、御指摘のような各種問題がございます。 私は、就任いたしまして幾つか法務当局に申し上げたうちの一つは、基本的な法を預かる法務省ですから、法律の朝令暮改というのはよくない。しかし、国内情勢も国際環境もいろいろと激しく動く時代、そういう時期に、時代時代考えて改正というものをしていかなきゃならぬときに、これが議論となって取りかかって六年も七年もかかっているようでは到底間に合わない。何とかもう少し制度的な運用、あるいは話し合い、やり方を考えて、少なくとも二年ぐらいで結論が出てくる、方向が出てくる、こういうことを考えてくれないかと、このように申したところでございます。 先生おっしゃるように、力があるわけでもありませんし、どのぐらいやらせていただけるかどうかもわかりませんが、そういったことを胸に畳んで、日弁連の方とも腹を割って話し合いをさせていただきたいと考えているところでございます。
○下稲葉耕吉君 ありがとうございました。 何か大臣のお時間もあるようでございますので、私はこれで終わらせていただきます。
○委員長(猪熊重二君) 他にいろいろ質疑を予定されていた委員もおられるのですが、衆議院の方の審議の都合もこれあり、本日の調査はこの程度にとどめたいと存じます。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時散会 —————・—————