労働委員会 第9号
- 発言数
- 57 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1993/05/18
会議録
○委員長(田辺哲夫君) ただいまから労働委員会を開会いたします。 委員の異動について御報告いたします。 昨日、森山眞弓君が委員を辞任され、その補欠として南野知惠子君が選任されました。 ―――――――――――――
○委員長(田辺哲夫君) 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本法律案審査のため、本日、参考人として、北海道大学法学部教授保原喜志夫君、日本経営者団体連盟常務理事成瀬健生君、日本労働組合総連合会副事務局長兼女性局長松本惟子君の三名の方々に御出席を願っております。 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査の参考にいたしたいと存じます。 これより、参考人の方々から御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、最初に参考人の方々からお一人二十分ずつ御意見をお述べいただきまして、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。どうぞ御協力のほどお願いいたします。 それでは、まず保原参考人からお願いいたします。
○参考人(保原喜志夫君) 保原でございます。よろしくお願いいたします。 私は、北海道大学で労働法の専攻をしておりますが、今回、労働基準法研究会のメンバーとして、今回の労働基準法、労働時間関係の改正案の検討に当たりましたので、私の立場から意見を述べさせていただきます。 お手元に二枚メモを用意させていただきましたので、それをごらんいただきたいと思います。このメモの順序は、法案要綱の順序に従っております。 まず、基本的な問題は、労働時間の短縮をどういうふうに進めるかということでございます。これは国の立法による方法と、もう一つは労使の協議による労働協約等の締結による方法がございますが、日本は二つの方法を併用しながらも、どちらかといえば、労働時間短縮で従来は国の立法がかなり大きな影響力を持ってきたというふうに思われます。諸外国を見ますと、フランスでも大体そういうような傾向が強いことが言えますけれども、これに対しましてドイツ、アメリカ、イギリス等では労使交渉によって主として労働時間の短縮が進んでいるというふうに理解をしております。 さて、今回の改正案でございますが、第一には労働時間の原則を週四十時間とするということでございます。現行法は一日八時間、それから一週間につきましては、暫定措置としまして週四十時間から四十八時間の範囲で命令で定める時間ということになっておりまして、現在では一般の企業につきましては一週四十四時間、ただし特定業種の小規模事業につきましては週四十六時間制になっております。 この週四十時間制は、来年の四月実施を目指しているわけでございますが、諸般の事情によりまして暫定措置が必要であるということから、一九九七年、平成九年三月三十一日まで一定の規模、業種の事業につきまして一週四十時間から四十四時間の範囲内で猶予措置を設けるということが考えられます。この平成九年三月末日というのは、昨年政府で決定されました生活大国五カ年計画、経済五カ年計画に沿うものでございます。 この週四十時間制を千八百時間の労働者一人平均の年間総労働時間の達成という一応の目標との関係で見ますと、これは私の計算でございますけれども、メモにお示ししましたような内容になるかと思います。これは一つの例でございますけれども、所定内で千八百時間、所定外で百五十時間。所定内は週四十時間で一日八時間労働としますと、週休二日ということになるかと思いますが、それから年休の二十日取得、それから休日という表現はあるいは適切でないかもしれませんが、いわば国民の祝日等の休日あるいは年末年始等を含みまして十五日という計算をしますと、大体このような数字になります。 実は、所定内だけで千八百時間になりますと、あと百五十時間余計になってしまうわけですけれども、これは労働時間の統計にはパートタイマー の労働時間も算入しておりまして、パートタイマーは日本では約今一〇%から一五%の間、一三%ぐらいかというふうに思いますけれども、そのパートタイマーの時間も算入しますと、大体こういうような数字になるのではないかというふうに思われます。年休二十日完全取得あるいは日曜日を除いた休日十五日というのは、かなり理想的な数字でありますけれども、このような内容を実現しないと千八百時間の達成はかなり難しいということができるかと思います。 次に、(2)でございますが、一年単位の変形労働時間制、これは正確には一年以内の単位の変形労働時間制の創設でございます。現行法では、一カ月単位の変形制、それから三カ月単位の変形制がそれぞれ要件を異にしておりますが、規定されております。そのほかに労働者個人個人である程度時間の設定が自由なフレックスタイム制も認められております。 この一年以内の単位の変形労働時間制につきましては、①、②、③に示されるような要件が課せられております。対象期間の労働時間の平均が週四十時間を超えない。あるいは労使協定でイ、ロ、ハの内容を定め、特にイが重要でありまして、対象労働者の限定が必要であります。つまり、対象期間について雇用関係が継続している者だけについて対象労働者と認める。したがいまして、この変形制が実施されている途中で、雇用契約が終了することを予定されているような労働者には適用をしてはいけないということになるわけであります。 そのほか、対象期間が三カ月を超える場合については特則を設けておりまして、労使の合意による協定を予定しております。これは、いわば労働時間の弾力化によりまして労働時間の短縮を一層促進しようというねらいによるものであります。ただ、乱用の危険を防ぐために、今申し上げました要件を設定しまして、なおかつ労使協定を重視しまして、円滑な運用を図ることが期待されております。 この一年以内の単位の変形労働時間制を設けるに至った理由は、基本的には労働時間の弾力化による時間短縮の促進ということでありますが、現在日本の企業では賃金を年単位で決めるという慣行がかなり普及してきておりまして、これからもそういう傾向が一層強まるのではないかというふうに思われます。そういうことで、労働時間と賃金の計算の周期を合わせるということも一つの理由でございます。 それから、(3)時間外・休日労働の割り増し賃金でございますが、これは最終的には二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定める率以上ということになったわけでございますが、労働基準法研究会の中でもさまざまの議論がありましたが、結局こういうことに一応落ちついたものでございます。諸外国の例では、特に労働協約等によりましてかなり高い割り増し率、例えば五割とか、休日労働については十割とかの割り増し賃金を設定しているところもございますけれども、日本の場合は週四十時間制を実施して、なおかつ割り増し率を急激に上げるということにはかなりの抵抗も予想されまして、いろいろな議論の末に大体こういう線に落ちついたわけでございます。 ただ、この時間外協定あるいは休日労働協定があった場合でも、労働者に時間外労働を命じるあるいは休日労働を命じる場合につきましては個々の労働者の同意が必要であるという個別同意説、あるいはそこまでいかなくても、少なくとも就業規則や労働協約等何らかの形での定めが必要でございますので、この法令の範囲内で、あるいは労働基準法は最低基準でございますからそれを上回る線で労使の協定は可能である、あるいは望ましいことであるというふうに考えられます。現在もそれから改正案でもいわば時間外労働の上限を法律で定めるというようなことはいたしておりませんけれども、大臣告示だったと思いますが、目安時間が設定されておりまして、その時間外協定を監督署に届け出る際にその目安時間が重視されるということになります。 続きまして、二枚目をごらんいただきたいと思います。 裁量労働の問題でございますが、これは現在まず労働時間管理が外されているものとしましては管理監督者でございますが、裁量労働制は労働時間管理そのものを外すのではなくて、ただ労働時間の詳細を特定のかなり裁量性を持った労働についている人についてはいわばみなし労働でやっていこうというような考え方であります。現在、裁量労働制が適用可能な業務の種類は通達で例示されておりまして、テレビのディレクター、研究所その他五つの業務の種類が例示されております。 それで、これを今回の法案では、命令によってその対象業務を特定するという方法をとっておりますけれども、その対象としましては、管理監督者に至らない人でもその次ぐらいの人につきまして一定の要件を設けまして、業務の性質上業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関して具体的な指示が困難なものにつきまして裁量労働制を採用して時間の短縮に結びつけようということであります。 外国の例につきましては、時間の関係で、もし御質問があれば後ほどお答えしたいと思います。 それから、年休でございますが、現在は継続勤務一年経過後に初めて最低十日の年休権を労働者は取得することになるわけですが、若者の強い休暇志向あるいは転職者の増大等労働力の流動化に対応するために、当初の継続勤務の要件を一年から六カ月、つまり半分に短縮する。後は一年ずつ一日ずつふえるということになりますから、一年半たちますと十一日、二年半たちますと十二日というふうになっていく計算になります。 それからもう一つは、育児休暇をとった人につきましては、八割出勤の要件の判断で出勤として取り扱うということに改正案はなっております。すなわち、一年間継続した者でも八割以上出勤した者でなければ年休権を認めないという取り扱いですが、新しい立法によりまして、育児休暇を取得した方につきましてはこの期間は出勤とみなすということでございます。恐らく介護休暇、介護休業についても早晩同じように考えなければいけないということになるかと思います。 その他、(6)としましては、林業への労働時間関係規定の適用でございまして、これは林業労働の近代化を図って若い労働者に魅力のある職場をつくるというのがねらいでございます。それから、年少者への一年単位の変形制の適用のための改正、その他でございます。 それからもう一つ、今回国会に提案されております改正案としまして、いわゆる時短促進法、つまり労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正がございます。これは、内容は大きく分けますと二つでありまして、労働時間短縮支援センターの指定等でありまして、これは一つの団体を限定して時短の促進の支援をするためのセンターを指定する、それからそのセンターではどういう業務を実施すべきかということを定めるという内容でございます。 甚だ簡単でございますけれども、私の報告にさせていただきます。
○委員長(田辺哲夫君) どうもありがとうございました。 次に、成瀬参考人にお願いいたします。
○参考人(成瀬健生君) 成瀬でございます。よろしくお願いいたします。 本日は、経営者サイドということでございますが、こちらの委員会で日経連の立場を含めまして御説明を申し上げる機会を得まして大変光栄に存じております。できるだけ日経連の考え方も皆様から御理解いただけるように説明を申し上げたいと思うわけでございます。 今回の労働基準法の改正法案につきましては、労働時間の短縮が基本的な目的でございまして、この最初の問題提起というのは新前川レポートの千八百時間という年間総実労働時間の目標、この辺から出発して、さらに昨年の生活大国五カ年計画で、その中に計画期間中に千八百時間達成を目 指す、こういう記述で、それを受けての動きというふうに理解しておるわけでございます。生活大国五カ年計画につきましては、「労働基準法の改正により、早期に週四十時間労働制に移行するとともに、」「実態として、計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する。」こと、また「時間外・休日労働の法定割増賃金率の引上げについて具体的に検討する。」ことなども記載されておるわけでございます。 こうした動きに対しまして、日経連の基本的なスタンスをまず御説明申し上げる必要があると思うわけでございますが、日経連は往々時短に反対であるというふうな御意見もお伺いするところでございますが、決して基本的に時短に反対というふうなことはございません。毎年日経連は、お手元にお配りしてございますこうした報告書を出しておりまして、これは夏から年末にかけまして組織全体で討議をいたしまして、まとめ上げて毎年報告をしておるものでございます。 ことしの一月に出しましたこの報告書でございますと、四十ページをちょっとお開きいただきたいと思うのでございますが、四十ページの上から六行目のところに、「三、労働時間問題への対応」と書いてございます。その下に、三行でございますが、「ゆとり・豊かさの実現こそが、わが国労使の最重要課題である。これを実現するためには、内外価格差の解消、土地・住宅問題の解決に加えて、総実労働時間の短縮に取り組まねばならない。」。その後に詳しく具体的な問題も書いてございますが、基本的にはこうしたスタンスをとりまして、労働時間短縮はやはり必要なんだということを強くキャンペーンいたしておるところでございます。 日経連はこうした指摘をしているだけではございません。最近では、日本全体といたしまして、労働時間短縮への一つの機運というふうなものが動いているというふうに見られるわけでございますけれども、その結果でございましょうか、毎月勤労統計調査によりますと、平成四年度の四月から三月、年度の労働者一人当たりの年間総実労働時間は二千時間を切ったわけでございまして、千九百五十七時間という数字が出てまいっております。この千九百五十七時間という数字は、ヨーロッパ大陸の諸国に比べますとまだかなり長うございますが、アメリカ、イギリスの数字に比べますと余り遜色のない数字になってきたということでございます。 さらに、先ほどの四十ページの次の四十一ページをちょっと見ていただきたいと思うのでございますが、この上の図表八のグラフにございますが、一九八八年以降、かなり急ピッチの労働時間短縮が実態として進んでおるわけであります。四年間で累計百四十二時間、一年にしますと総実労働時間が三十時間以上の短縮というふうな形になっておりまして、国際的に比較しましてもかなり急ピッチの短縮ではないかというふうに考えておるところでございます。 こうした動きも踏まえまして、経営者の中でもかなり労働時間短縮についての認識が進んでおるということは、私ども毎年春の労使交渉の後で調査をしております調査の中でも読み取れるところでございまして、この二、三年の間に労働時間短縮を労使交渉で取り上げた、そして実際に労働時間短縮を実施したというふうな答えをする企業の比率は二倍から三倍にふえているというふうな現実がございます。 こうした動きは、具体的に産業別、企業別の動きで見ましてもかなり顕著でございまして、鉄鋼業界でございますと、一九九〇年代の半ばまでには年間総実労働時間を千八百時間台にするということを目標で中期計画をつくって動いていらっしゃいますし、同じような形で中期計画を立てて時短を着実に進めておる業界というのは、電機、自動車、電力、紙・パルプ、非鉄金属、それぞれ独自に労使で目標を立て時短に取り組んでいるというのが実態であると認識をいたしております。 また、こうした大企業だけでございませんで、中小企業におきましても日経連が調査をいたしておりますけれども、最近時点の調査では、調査対象六百三十社のうち四一%の企業で、特に中小企業の場合には完全週休二日制の導入に向けての努力を強め、さらに所定労働時間の短縮を含めた形でいろいろな形の時短の促進に努めているというふうな結果が出ておりまして、中小企業におきましてもかなり本格的に時短に取り組むというような状況が出てきておるように見受けております。 こうしたことを申し上げます背景に私ども考えておりますのは、労働時間の短縮というのはやはり基本的には労使が話し合って自主的に進めるべきものだという考え方でございます。先ほどのお話にもございましたように、そうした考え方と法律でという考え方と二つあるということでございますが、私どもはどちらかといいますとやはり当人同士がその気にならないと本当の時短は進まないのではないかというふうな気持ちを強く持っておりまして、労使が自主的に話し合って進めるのが最もよろしいのではないか、こう考えておるわけでございます。ただ、企業サイドといたしましては、労働時間の短縮というのは賃上げと同様にどうしても企業にコスト増加を強いるというふうな面がございます。したがって、ここは労使の話し合いで、できる範囲でできるだけ早くと、こういうふうなことにならざるを得ないわけでございますけれども、従業員のニーズなど、特に日本の経営者は人間中心の経営ということで経営を進めておりますものですから、十分に話し合いながらという形で進める、こんな考え方が基本的には背景になっておるわけであります。 したがって、法律を改正して一律に時短を実現するということにつきましては、必ずしも賛同をしかねるといいますか、例えば法律で労働時間短縮されましても、どうしても仕事があれば残業をして労働時間が短縮されないというふうなケースも出てくるわけでございまして、やはり本人同士がその気になって真剣に取り組むということが第一だということは、ある意味では御理解をいただけるのではないかと思うわけであります。 しかし、こうした基本的な日経連スタンスはスタンスといたしまして、実際に労使の話し合い、またこうした法律改正の審議会の審議、話し合いという中ではやはり自分たちだけの都合を申し上げているわけにもまいらないわけでございまして、そういう意味では、今回の中央労働基準審議会での労働基準法等の改正法案要綱につきましては原則的に一部の点を除きまして妥当である、これを進めていただくということについてはある程度やむを得ない、ないしは進んでやるべきであろうというふうに認識している点も多々あるというふうに考えるところであります。 特に、今回の改正法案の中には変形労働時間制の拡充という問題が入っております。この点につきましては、経営者にとりましては大変ある意味では重要であるという認識もございます。ただ、問題なのは、この春の労使交渉が終わってからのことでございますが、急速な円高が進みまして、企業としてはかなり深刻な状況になっておるわけでございます。こうしたことを考えてみますと、労働時間短縮がコストアップになるだけではございませんで、円高が一〇%進めば、日本の賃金はドル建てで一〇%上がるというふうな国際環境の中での経営でございますので、罰則つきの強行法規であります労働基準法の改正、この辺につきましてはある程度慎重に弾力性のあるものの御配慮をいただきたいというふうな点は強くやはり感ずるところでございます。 なぜ、こういうことを申し上げるかということでございますが、今までの日本の労働時間の短縮につきましてはやはり経済、経営状態にかなり動かされている、影響されているという面があるように思うわけであります。 先ほどの四十一ページのグラフでございますが、見ていただきますとたちどころにおわかりいただけるかと思うわけですけれども、昭和三十五年あたりから第一次オイルショックのときまでかなり労働時間短縮が長期的に進んできておる状況が見られます。この間は日本経済は高度成長期だ ったわけでございます。そんな中で労働時間の短縮が進んだ。しかし、第一次オイルショックがございまして、その後約五年の間隔で第二次オイルショック、それから円高ショックというふうなことで日本経済大変な苦労を十五年近くやらなければならないような状況に外的なショックによって立たされたわけでございまして、残念ながらこの間はほとんど総実労働時間の短縮が見られておりません。多少長くなったような形跡もあるわけでございまして、かなり労働時間についての批判が出たところでございます。 ただし、一九八八年以降、日本経済がある程度の安定状態を取り戻して以降は、先ほど申し上げましたように大変急ピッチな労働時間短縮が行われている、こういうふうなことが見てとれるわけでございまして、やはり本当に日本経済が汗かいて労使が苦労しなきゃならないというふうなときはどうも労働時間の短縮がなかなか進めにくい、こういう点もございます。こんな点も踏まえまして、今の円高の行く先がどうなるかということは大変難しいところでございますけれども、場合によっては多少の弾力的な御配慮が必要ではないかというふうなことを感じておる次第でございます。 以上、全般的なことを申し上げたわけでございますが、具体的なポイントについて幾つか申し上げておきたいと思います。 まず、第一のポイントであります週四十時間制ということでございまして、四十時間に漸次移行するということはある程度妥当性のあることであろうと思うわけでございますが、やはり企業にはそのときそのときの条件もございます。 中小企業で大変今苦労していらっしゃるところもあるわけでございまして、そういう意味では猶予措置をできるだけ弾力的に講じていただくというふうな配慮を切にお願い申し上げたいと思っておるわけでございます。実際に、中小企業の場合には四十時間制を実現している企業はまだかなり少ないようでございまして、週四十四時間という猶予措置につきましては、ぜひ弾力的に適切な御検討をいただきたいというふうに思っておるわけでございます。また、平成九年三月までの存続ということになるのでございましょうけれども、その後どうするかという問題につきましても今から何とも予測しがたい面がございますけれども、ぜひその時点でまた実態に即応した御配慮をいただければというふうに考えております。 第二の点の変形労働時間制の点でございますけれども、今回の改正法案では一年単位の変形労働時間制の規定が入っておるわけでございますが、これはかなり以前から要望が強かったものでございます。 一年周期で仕事をしておるところがやはりいろいろございます。例えばビールのアルミ缶でございますとか、それから衣料の中でも冬物衣料とか夏物衣料とか両方やっていらっしゃるところもございますけれども、それぞれ特殊化していらっしゃるところもあります。また、冬に使う肌荒れ用のクリームなどという業界もございましたり、そのほかお酒などもやはり一年の周期で生産をする、こういうふうなことでございまして、もしこういう制度が活用できるようになれば大変これはありがたいという点がございます。 それが回り回ってといいますか、それが先かそれとも労働時間短縮が先か、いわば同時並行的にと申しましょうか、ないしは鶏か卵かということでございましょうか、労働時間短縮とそれとが両輪となって進んでいけるというふうな形で進められればよろしいかな。ある意味では、中小企業につきましては必ずしも四十時間ぴったり守れない、多少はみ出しても一年の変形労働時間制を活用できるというふうなことを御配慮いただければというふうな意見も経営者のサイドにはかなりある、こんなことも申し上げておきたいと思います。 第三の法定割り増し賃金率の問題でございますけれども、これは大変実は私ども問題視をいたしておるわけでございます。 と申しますのは、大変これは労働時間短縮とセットになりまして、ダブルパンチで経営に影響を与えてくるというふうな面もございますし、またよく主張されるところでございますけれども、やはり日本の残業というのは欧米の場合と少し趣を異にいたしましてある程度あるのが普通である。しかし、そうしたものがバッファーになって不況になってもできるだけ人減らしを行わなくて済むというふうな状況になっております。 過日のOECDの担当者と、OECD主要国は大変失業で苦労しているわけでございますが、失業の多発といいますか、高率の失業を避けるためにはある程度いろんな意味で弾力性を持ったような制度につくっておかないと、余りきっちりやるとやっぱり失業がふえてしまうというふうなことを話しまして、我々も多少考えを変えていかなきゃならないかななんという話もしたところでございました。ヨーロッパのような方法と日本のような方法と一長一短ございますが、今後まだ模索をしていかなければならない点があるように思うわけでございます。 四番目の点は、年次有給休暇でございますけれども、年次有給休暇につきましては、今回の改正では特にそれほど問題というふうには感じておりません。 ただ、年次有給休暇につきましての問題は、取得率が大変低いということでございまして、年次有給休暇をふやすという御意見もあるようでございますけれども、まずは取得率の向上ということがやるべき問題ではないかというふうに考えておるところでございます。 それから最後に、裁量労働制についてでございます。 この問題につきましては、先ほどもお話出ましたように今五業種が限定列挙というような形になっておりますが、これを最初に考えられた大学の先生にお伺いしましたらば、いや限定列挙というよりも例示のようなつもりだったというふうなお話も承ったところでございます。 やはり、ホワイトカラーの問題というのは今後労働時間管理も含めましていろんな面で大変問題になり、また重要な問題として論議をされなければならない問題ではないかと思っておるわけでございまして、裁量労働制の適用につきましては、ある程度柔軟な方向で進めていただくというふうなことと同時に、この裁量労働制という問題を含めまして、ホワイトカラー全体の労働時間のあり方の検討などが必要ではないかというふうにも考えておる面もございます。大変難しい問題でございまして、特に最近ではホワイトカラー管理職の受難時代なんということも言われるわけでございますが、何かやはり日本の経営として、また労使の間でも抜本的な検討を加えていく必要のある大きな問題ではないかなというふうな感じを持っているわけでございます。 最後に、一つつけ加えまして時短促進法の問題申し上げておきたいと思うわけでございますが、これは大変うまく活用されておりまして、中小企業で意外に多くのところが活用し、そして工場団地でございますとか、商店街などで一緒にみんなでもって時短をしよう、こんな動きが出ておるようでございますけれども、この政策による時短のバックアップをぜひ今後とも積極的にお願い申し上げたいというふうに考えております。 以上、ありがとうございました。
○委員長(田辺哲夫君) どうもありがとうございました。 次に、松本参考人にお願いいたします。
○参考人(松本惟子君) 私は、日本労働組合総連合会の松本でございます。 私は、今労働基準法改正の審議に当たりまして、当労働委員会で参考人の意見を聞く機会をつくっていただいたことに感謝を申し上げたいと思います。 せっかくの機会でございますので、今回の労働基準法改正の持つ課題と、それに対する簡単な評価と問題点を指摘させていただいた上で、女性労働者の置かれている状況と労働基準法改正に女性 は何を期待しているのか、そして今改正の争点ともなっている変形労働時間制について意見を述べさせていただきたいと思っております。 さて、宮澤内閣が昨年六月に閣議決定をしました生活大国五カ年計画では、「労働時間の短縮は、勤労者とその家庭にゆとりをもたらし、職業生活と家庭生活、地域生活との調和を図り、「生活大国」の実現を目指す上での最重要課題の一つである。」というふうに位置づけております。そして、「計画期間中に年間総労働時間千八百時間を達成することを目標」として、「労働基準法の改正により、早期に週四十時間労働制に移行するとともに、」「計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する。」と、こうおっしゃっております。 この観点から提案されました今回の労働基準法改正案の内容について見ますと、九四年四月から週四十時間制に移行したこと、それから猶予期間の終了時期を明記したこと、年次有給休暇の勤続要件の短縮と育児休業を出勤扱いとしたこと、時短に取り組む中小企業への援助措置を拡充することといったことにつきましては評価できます。 しかし、我が国の長時間労働の原因である時間外・休日労働の削減につきましては、その上限規制を見送り、割り増し賃金率の引き上げについても当面休日労働についてだけ引き上げ、時間外労働については現状のままとしています。そして、年次有給休暇の付与日数の引き上げと完全取得の条件整備となる病気休暇、介護休業の法制化も見送られております。これでは、年間総労働時間千八百時間という政府の目標達成は困難だと言わざるを得ません。また私は、新たに導入される年間単位の変形制について、経済計画にある就業生活と家庭生活の調和を図るということに逆行しないかと非常に心配をしております。 それでは、最近の女性労働者の状況について触れてみたいと思います。 一九九一年の女性労働者は一千九百十八万人で、雇用者数に占める割合は三八・三%となりました。一九八五年から比べますと、その数は五百六十四万人、雇用者数に占める割合では八・八%の増加となっております。女性雇用者の平均年齢はこの間一歳、それから平均勤続年数はこの間一・三年延びております。このように女性雇用者の数はふえ続けて、平均年齢、勤続年数も延び、女性の職域も少しずつ拡大し、共働き世帯が多数になっております。女性労働者の労働は、もはや日本の経済社会の発展には欠かせないものであり、同時に共働きが当たり前の社会となりつつあることを示していると思います。 それでは、女性労働者が働き続けるための条件はどうなっているか、現状について述べてみたいと思います。 まず、賃金を平成三年で見てみますと、事業所規模三十人以上の事業所での平均賃金の総額は男性の五〇・八%と、その格差は拡大する一方でございます。既に御承知かと存じますが、日本はILOの九二年ワールド・レイバー・レポートで、先進工業国の中では男女の賃金格差が最も大きいことが指摘されているわけでございます。ILO総会では、同一賃金に関する百号条約を批准している日本に対して賃金格差改善のための措置をとり、その推進状況を報告するように求められております。 次に、妊娠、出産にかかわることでございます。 女性労働者の中で、出産者の割合は年々低下をしております。出生率問題が言われながら低下をしておるわけでございます。昭和四十六年では二・四%だったものが、平成三年には一・四%となっております。妊娠中の軽作業への転換や育児時間請求者の割合も、これまた年々低下をしており、妊娠中の通院休暇、それから妊娠障害休暇も極めて不十分であるために、現在妊娠・出産を理由として退職する者が妊産婦の三割を超えております。妊娠・出産にかかわる制度は充実されているといいながら、実態は不十分であり、その結果先進国と違って年齢別労働力率は依然としてM字型となっております。 昨年四月に、男女を対象とした育児休業法が施行されました。家族的責任にかかわる制度で男女を対象としたことは、日本において画期的であったことは評価しておりますけれども、私どもが強く要求いたしました育児休業中の所得保障、これについては何ら措置が講じられておりません。満一歳未満の子を育てる労働者の年齢は、多くが三十五歳以下でございます。この年齢層の賃金はさほど高くはございません。ですから、法律で一年間休めるといっても、所得がなければ、休業しないか、休業しても期間を短くせざるを得ないわけでございます。そして、育児休業後の保育所入所の困難さから、入所時期に合わせた期間育休を取得するか、すぐ入所できるならば育休をとらないで職場復帰しようかと悩んでいる声が身近に聞こえてまいります。 問題は、子供を産み育て、働き続けることを願う労働者が、子供を産まないで仕事を続けるか子供を産んで仕事をやめるかの選択を迫られ、やむを得ず退職をしてしまうということでございます。 我が国も批准しております国連の女子差別撤廃条約には、「子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要である」と明記をされております。ILO百五十六号条約にも同様のことがうたわれております。したがいまして、政府は条約批准の責任上からも、育児休業中の所得保障、保育所の拡充、学童保育の法制化を早急に図るべきだと考えております。 均等法が施行されて七年が経過いたしました。施行以降、確かに職域は拡大し、男女差別定年年齢などは是正をされてきています。ところが、募集・採用、配置、昇進・昇格など、努力義務とされてきたステージでの改善の速度は鈍くて、特に募集・採用では、景気がよいときは女性の時代とか、女性の活用と言っておりましたのに、景気が後退した途端に、企業は女子大生の募集・採用数を大幅に減らしました。均等法を逆手にとったコース別雇用管理の導入が増加しておりますが、これが新たな差別を生み出し、差別の固定化につながるのではないかと懸念をされております。労働省は、「コース別雇用管理の望ましいあり方」で問題点を指摘しつつ、企業に対して指導をしておりますけれども、実際どの程度改善がされているのか大変疑問でございます。私どもは、早急に雇用における全ステージでの男女差別を禁止するよう法律を改正することを強く要望いたします。 一方、均等法の制定とともに、強い反対にもかかわらず労働基準法の女子保護規定が緩和をされました。さらに、八八年の労基法改正によって変形労働時間制が拡大導入をされました。均等法の目的である職業生活と家庭生活の調和は本当に実現できるのでしょうか。生活時間との関係で見てみたいと思います。 我が国は、性別役割分業意識が大変強い国です。古い調査ではありますが、一九八二年に総理府婦人担当室が行いました国際比較によりますと、男は仕事女は家庭という考え方には賛成、どちらかといえば賛成を合わせますと、旧西ドイツが三四%、イギリスが二六%、アメリカ三四%に対して、日本は何と七一%となっております。総理府の九一年の調査では、この考え方に賛成が男性で三四・七%、女性は二五・一%となっていますが、九一年の総務庁の共働きの妻と夫の家事・育児時間調査で見ますと、平日で妻は四・二一時間、夫は約五分となっております。仕事は、男性八・四二時間、女性五・四五時間ですが、この家事・育児時間と仕事時間を合わせますと、男性八・五時間、女性九・六六時間ということになります。その結果、共働き女性は睡眠時間や趣味、交際の時間を減らすことになっているわけでございます。役割分業に対する意識は変化してきておりますが、実態として家事、育児を担っているのは女性であることに変わりはありません。 このような中で、年次有給休暇はどのように使われているのでしょうか。連合が三十五歳以上の女性を対象に行った調査では、自分の病気や子供の保育園、学校行事が挙げられております。年休 の本来の目的である心身のリフレッシュからはほど遠い実態でございます。多くの人は年休を自分が病気になったときのために残しておくのでございます。したがいまして、何としても病気休暇の法制化を図っていただきたいと存じます。 さらに、老人介護の問題がございます。同調査によりますと、かつて働きながらと現在を合わせますと、介護経験者が一五・七%あり、その中でだれが介護をしたかといいますと、自分が中心にというのが四一・二%という答えが出ております。三十五歳以上の女性労働者が、今後仕事を続けていく上で障害となると思われるものに老親の介護を挙げているのは、当然と言えば当然でございます。介護休業法の制定と地域介護援助システムの充実を早急に図ることを要望いたします。 そして、女性労働者が労働時間短縮に最も強く期待しているのは何か。同調査では、長く働き続けていくためには労働時間の短縮、家族看護休暇、年次有給休暇の取得促進、これが挙げられており、時間短縮を進める上で最も力を入れてほしいことは一日の時短となっております。また、本年三月に小学校三年までの子供を持つ母親労働者の調査をいたしました。働きながら子育てのために必要なものとしては、育児休業中の所得保障と一日の時短が挙げられております。さらに、本年四月に一万人を対象とした調査を連合がいたしておりますが、ここでも時短や労働時間、休暇制度に対する要望の第一位は一日の時短というふうになっております。このように、長く働く女性を対象とした調査ではいずれも一日の時短への要望が強くなっております。生活は一日の二十四時間を単位として営まれているわけでございますから。 一日の会社での拘束時間が八ないし九時間、通勤時間が大都市であれば一時間近くとなりますが、小さな子供を持って働く女性は駆け足で保育所に駆け込み、子供を抱えながら買い物をし、帰宅してからは座る間もなく食事の支度、子供の世話をし、子供が寝た後にやっと自分の時間でございます。この間、多くの働き過ぎの夫は帰ってきません。帰ったころは子供は寝ている、こんな風景が当たり前となっています。これが生活大国を目指そうとしている日本の勤労者の姿でございます。 今や世界は、先ほど述べましたように子の養育は男女及び社会全体がともに責任を負うという考えのもとにさまざまな措置が講じられているのです。それにしましても、家庭責任を負えないどころか、世界的に有名になった過労死までしてしまう男性の働き方は異常としか言いようがございません。男も女もともに家庭生活と職業生活に責任を持つためには、まず一日の時短、何といっても青天井である男性の残業時間の規制をすることだと思います。男性の残業時間をこのままにして、一部エリート女性は男性と同じように働きなさい、そのほかの女性は家事、育児、介護を担いながらほどほどに働けばいい、働けなくなったらば家庭に入って、その後パートで働けばどうですか、この間の年金、税金は優遇いたしますよというふうに政府の女性労働政策は役割分業を基礎にし、女性労働者の二極分化をしようとしているのではないかと勘ぐってしまいたくなります。このように多くの女性労働者は、今なお家事、育児及び介護に責任を負いながら職業生活と家庭生活の両立を続けているのが現状でございます。 したがって、女性労働者が働き続けることができるようにするためには、会社人間の男性たちも家族的責任を持てるよう働き方を変えること、労働時間を短縮することが重要となります。しかし、変形労働時間制は女性労働者の置かれている現状を改善する方向ではなく、むしろ職業生活と家庭生活の両立を困難にするのではないかとの危惧の念を持たざるを得ません。 それでは、変形労働時間制の評価について労働省の意識調査を見てみましょう。一日の所定労働時間が八時間を超える日があっても休日がふえるのであればよいとする回答が男性四七・一%、女性四二・三%と、男性の方が多くなっております。ところが、一日の所定労働時間はどんなことがあっても八時間を超えない方がよいということについては、男性二六・四%なのに対して、女性が三一・六%で、女性の方が一日の労働時間八時間を重視していることがうかがえます。 この調査でも明らかなように、女性は一日の所定労働時間は八時間ということを非常に大切にしております。言うまでもありませんが、変形労働時間は一日八時間、週四十時間を弾力化するものです。これに我が国の場合は残業規制が不十分ですから、一日八時間、週四十時間を超えた時間に残業と通勤時間が上乗せされることになります。家事、育児及び介護に責任を負っている女性労働者にとっては最悪の場合仕事をやめざるを得ないことも起こりかねません。これでは、変形労働時間制の拡大に反対せざるを得ません。どうしても拡大するということであれば、変形期間を通した週平均の労働時間を四十時間ではなく三十八時間とか三十六時間とすべきだと考えております。 政府は、年間単位の変形制について、年間休日の増加が目的であるということを説明されております。しかし、一日を八時間とした場合に、四週八休制である年間百四日の休日を実施している企業では、これ以上休日をふやさなくても変形制を導入できます。年間休日をふやすとの趣旨を具体的に実現する制度とすべきであり、このためにはまず私は、第一にこの制度を導入する企業については完全週休二日制に相当する百四日の休日と国民祝祭日を加えた百二十日程度の休日確保を要件とすべきである。二つ目には、週四十八時間の上限は当然として、一日の上限について八時間とすること。三つ目は、育児・介護に責任を負っている労働者や勤労学生等については変形制の適用を除外することをはっきりとさせてほしいと思います。 以上、三点について提案をさせていただきます。今後の審議にぜひ生かしていただきたいことを申し上げまして、私の意見といたします。 ありがとうございました。
○委員長(田辺哲夫君) どうもありがとうございました。 以上で参考人の方々からの意見聴取は終わりました。 これより参考人の方々に対する質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
○千葉景子君 社会党の千葉景子でございます。 きょうは、お三名の参考人の方々にお越しをいただきまして、御多忙のところ本当にありがとうございます。 今大変貴重なそれぞれのお考えをお聞かせいただきまして、私どももこれからの審議の上でも参考にさせていただきたいというふうに思います。その意味で、さらにお述べいただいたことあるいはその他の部分にもかかわるところもございますけれども、お考えをお聞かせいただければと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。 さて、最初にですが、実は私、もう昨年になりますが、政府が今後の生活大国を目指すという方針を出されたときに、国会での本会議の代表質問に立たせていただきました。その際に私は、これから日本の社会にとって必要なこと、それを三つの間という字を使いまして、時間、空間、人間、こういうところにこれからの重要なポイントがあるんではないかという話をさせていただいたことがございます。 空間といいますと、例えば居住空間とかあるいは環境であるとか、そういう問題が出てこようかと思いますし、人間ということになりますと、人権あるいはお互いの共存をどうしていくかというような人間と人間との関係、こういうことにもなってこようかというふうに思います。もう一つの重要な柱が時間という問題、私たちにとってやはり限りある時間を本当に人間らしく使っていくためにはどうしたらいいか、こういう問題提起をさせていただいたことがございます。 そういう私自身の考え方から考えましても、今時間を一人一人が人間らしく生かしていくということをぜひ考えていきたいというふうに思ってい るところです。そして、それはやはり人間ですから生存を維持するという部分もございますし、あるいは自分のプライベートないろいろな時間を生かしていくという部分もございましょうし、あるいは地域の中でそれぞれが地域での生活をともに営んでいくという部分での時間もございましょう。そして、それらを維持していくためにお互いに働き仕事をしていくという部分があるかというふうに思います。そのあたりを調和よくゆとりを持って生活をしていくとすれば、この労働時間の短縮というのは、今日の日本の社会あるいは人間にとっても大変大きな重要ポイントであろうというふうに考えているところでございます。 そんなことを述べさせていただきまして、今回の法案でも問題になっております労働時間の短縮という問題ですが、今の国際的あるいは国内的な状況の中でそれぞれお三方に、労働時間短縮の基本的な考え方というんでしょうか意義などについてどのような基本的な御認識をお持ちであるのか、まずそこを保原先生の方から順次お話をいただければというふうに思います。
○参考人(保原喜志夫君) 労働時間の短縮がなぜ必要かという問題かと思いますけれども、申し上げるまでもなく我が国の場合には労働者の健康とそれから家族も含めたゆとりのある生活をどう実現するかというのが当面の課題かと思います。 諸外国におきましては、労働時間の短縮はほぼ目標が達成されたといいますか、国によっては大分格差がありますけれども、そういう認識が一般的かと思います。欧米では、むしろ少ない仕事を多くの労働者がどういうふうに分け合うかといういわゆるワークシェアリング、失業の拡大の防止あるいは雇用の増大といったことが時間短縮の主たる目標であるというふうに私は理解しておりまして、日本は残念ながらまだそこまではいっていないということで、一口に申し上げれば、人間らしい生活をするために労働時間の短縮をしなければいけない。今回の改正案は、その第一歩あるいは第二歩であるというふうに考えております。 以上でございます。
○参考人(成瀬健生君) 大変難しい哲学的なお話でございまして、どういうふうにお答えしていいか難しい点がございますが、やはり生活の中で働くということと余暇ということの組み合わせをそれぞれの個人が自分で適切と思われるような形でもって選び取れるような形になるのが理想ではないかなと考えております。 そうした中で、例えば私どもの感覚といたしましては、日本の企業というのは割合職場のあり方といいますか仕事のあり方の設計をいわゆる労働が余り苦痛でないような形に一生懸命設計をいたしまして、結構職場にいても生きがいがあるといいますか働きがいがあるというふうな努力もしてきたことが、結果的に多少日本の労働時間が外国に比べて長いというふうなことにつながっている面がないわけでもないかなと考えておるわけでございます。 労働の態様、それから余暇等の選択をどうするかという問題につきましては、経済の豊かさの進展に従って次第に余暇指向、余暇選好が強くなるというふうなことも言われるわけでございますが、日本の場合にはそうした段階の問題と、それから仕事の内容が経営者の今までの努力、もちろんこれは労使双方の努力でございましょうけれども、職場というものも結構いいところだというふうな形につくり上げたというふうなこともございまして、結果的に多少長くなっているかなという感じでもございます。 したがって、こうした労働時間というものは、その時代時代の背景の中でもって働く人たちがどういうふうに考えるかというふうなことの中で、その結果として決まっていくのではないかなというふうに考えておるわけでございまして、そういうふうな考え方が、日経連が主張しております労働時間短縮というのは結局は労使が話し合ってお互いに一番いいところで決めようではないかという考え方になっているのではないか、こんなふうに私どもは理解しております。
○参考人(松本惟子君) 申し上げたいと思います。 私は、時間というのは一回しか生まれない人間にとって、どんな人にも平等なかけがえのないものだというふうに考えております。人間は働いて生きていかなければなりません。かつて、日本は貧しかったから一生懸命働いて、働き過ぎて今さまざまなゆがみが出てきている、ひずみが出てきていると思うんです。 したがいまして、状況につきましてはその一端を先ほど男性と女性の働き方に例をとりながら述べさせていただいたわけでございますが、家庭的に見ましても、すっかり企業に従属をしてしまった男性、父さん元気で留守がいいと妻から言われるような状況も出ております。子供についても父親が触れ合いの時間を持てないでしまっているということ、それから地域社会にも人間が生きていくさまざまな活動や役割がございますけれども、そちらを見ましても、男性は定年退職後しかかかわりを持てないでいるというような状況でございます。最近では、均等法の中で男並みに働かされる女性も地域にかかわれなくなってきつつあるのではないか、これではいけないなというふうに思います。 それから、強調しておきたいのは健康の問題でございます。働き過ぎというのは決して人間にとって健康をもたらすものではありません。働くことはよいことですが、働き過ぎというのはよくないことだというふうに思います。したがって、私は今経済企画庁が出しました人生八十年に向かっての労働と生活のあり方、人生とのあり方の設計、これを支持したいというふうに思うんです。かつては人生五十年の中での設計であったけれども、これからは人生八十年の中に占める生涯労働時間、これを四十年と想定した場合に約七万時間ほどあると、生涯自由時間はその三倍の約二十一万時間と試算されるというふうに企画庁がこれからの予測を出しております。人生八十年の中で、私たちは生涯生活時間を計算しますと七十万時間あるわけですから、労働は人生の約一割、同じく自由時間は約三割という計算の中で、これまで失ってきたゆとり、豊かさを取り戻していきたいというふうに考えるべきであると思います。 憲法におきましても、人間の生き方について、人間は健康で最低限度の生活を営む権利、最低限度のとうたっているわけでございますから、それ以上のものを私どもは成果配分としてつくり出していかなければならないというふうに考えております。ですから、働く者にとってその過程にゆとりをもたらすこと、それから職業生活と家庭生活について必要であるということ、それから地域社会との調和を図るためにも大変大切であるということ、さらには世界との協調という意味で国際的公正基準という意味からも本当に欠かせない大切なものだというふうに考えております。
○千葉景子君 先ほどの最初のお話の中で、それぞれから御提起いただいた問題の中に変形制の問題がございます。今回の改正におきましても、一つの大きな改正点になっているわけでございますけれども、それぞれのお立場で若干とらえ方の違いというものもあるようでございます。 そこで、まず保原先生に。この変形制は、確かにヨーロッパ等でも導入をされているというところがございます。ただ、私の認識ですと、変形制導入に当たってはそれにかわる代償措置というんでしょうか、例えば休日の増加であるとか、そういうような形で変形制を導入するというのは労働時間あるいは休日を増加をさせる、そういう目的も持ちながらこういうものが利用されているというところも多いかというふうに思います。その辺のヨーロッパ等の実情あるいは制度などで特徴的なところがございましたら御指摘をいただきたいというふうに思います。
○参考人(保原喜志夫君) ただいまの千葉先生の問題でございますが、変形制が多く使われている、あるいは法律ではっきりしているところというのは現在のドイツそれからフランスが挙げられるかと思います。 ドイツでは、たしか最長六カ月ぐらいだったと思いますが、フランスは一年でありまして、ドイツは必ずしも季節変動に伴う生産量の調整とかそういうものを頭に置いていないといいますか、例えば同じ変形制にしましても時間短縮のために木曜日まではしっかり働いて金曜日は半分にするとか、そういうような変形制とか、さらにそれを六カ月単位で考えるとかあるいは三カ月単位で考えるとか、そういうことでございます。 これに対しまして、フランスは割合業種がばらついておりますが、一年の変形制が少しずつ採用されてきておりまして、これはおもちゃ屋さんだとか食品産業、衣類産業、さまざまでございますが、むしろ季節的変動に対応するということで、いわば時間短縮のために企業が最低こういうような変形制を認めてもらわないとやっていけないというようなことで、具体的な内容につきましては労使の協定によるわけでございますけれども、そういう運用がなされているというふうに聞いております。代償措置もさまざまでありますが、一般論としては変形制をとらないよりはとった方が労働者にとって時間あるいは休日について有利であるというような協定が多いようでございます。 それから、アメリカ、イギリスにつきましては、変形制の話は、恐らく労働協約にはあるんだと思いますけれども、何しろ労働時間の規制そのものがアメリカ、イギリスは大変緩やかでありまして、特にイギリスは法律の規制というのは全くと言っていいほどありませんから、労働協約を細かく見ればあるんだと思いますが、少なくとも現在の日本の学会では、まだアメリカ、イギリスについての変形制の議論はほとんどないと言うことができるかと思います。 そういうわけで、私も恐縮でございますがアメリカ、イギリスについては理解がまだ不十分でございますので、当面そういうふうに答えさせていただきたいと思います。
○千葉景子君 今のお話で、必ずしも世界全部というわけにはいきませんけれども、少なくともフランスなどでは変形制を導入することが労働者にとって労働時間の面などで有利になるという、そういう方向でなければやはり問題があるのではないかというふうに思います。 そういう中で、一年の変形制というものが取り入れられようという今回の法案でございますけれども、私は率直に言いまして、やはり先ほど松本さんからも御指摘がございましたけれども、女性という立場から見ても、それから人間の健康などという面から見ても、人間が生活しているのは一日一日をサイクルとして生活をしているということもございますから、そういうものが極端に壊されるというようなことになれば大変健康や生活にとっても影響が大であろうというふうに思っています。 ちょっと松本さんにお伺いをさせていただきたいんですけれども、従来からこの変形制は一カ月、三カ月というものが採用されておりまして、その中でも一カ月の変形制というものの実態というのが私どもなかなかよくわかりません。ただ、漏れ聞くところなどによりますと、これは労使協定も条件になっておりませんし、あるいは上限規制、日、週の規制が弱いということもあって、例えば極端に言うと一日十二時間というような労働時間になってしまうというような変形制がとられているような企業などもあるというようなことも聞いておるんですけれども、その辺の実態をどの程度把握されていらっしゃるでしょうか。 そして、そういう実態から考えて、今回の一年の変形制ですけれども、これの採用あるいはその条件、そういうことについて改めて基本的にはどうしたらよろしいか、お考えをぜひお聞きをさせていただきたいと思います。
○参考人(松本惟子君) お答えをいたします。 一カ月の導入でございますけれども、私は女性を労働組合で担当しておりまして、今労働時間と女性の生活調査をやっております。集計の最中でございますので本日ここできちんとしたことを申し上げられませんが、会話の中でよく聞きますのは、一カ月の変形制があちらこちらに入ってきているのではないだろうか、そしてこの一カ月の変形制というのは、先ほども申し上げましたように届け出をしなくていいとか、それから労使で協議をしなくてもいいというようないわばフリーハンドの形で入ってくるようになっております。したがって、ここについても、三カ月と同様にきちんとした手続と規制を加えるべきであると思います。 それから、一年の導入に対して私先ほど御意見を述べたわけですが、その中にも申しましたように大前提で、もっと先になって日本の労働時間がずっと短くなって、そして休暇も十分にとれるような状況になったときにこの問題が提起をされるというのであるならば別ですけれども、現状でこういったことを導入されますと、特に仕事の場だけではなく、生活の場での責任を負っている者にとっての圧迫が強くなるというようなことがございます。 したがって、基本的には反対と申し上げたいんですが、どうしてもとおっしゃる場合には、一日の規制、週の規制、それから妊産婦の方々、そして夜学校に通っている方々にちゃんとした条件を付すというか、きちんとその人たちは除くというようにしていただければというふうに思っております。
○千葉景子君 同じこの変形制について、先ほど成瀬参考人の御意見も伺いました。これがなかなか便利だという、経営する側にとってはそれなりの便利さがあろうということはわかりますけれども、今他の参考人の御意見も聞いていただいたかというふうに私も思いますが、やはり便利というだけで人間の生活やあるいは家庭の責任というものが無視されるというようなことになっては、これは大変憂慮すべきことだろうというふうに思います。 成瀬参考人のお話でも、日本の労使関係というのは人間を重視してきたというようなお話もあったわけでございまして、そういう意味ではこの変形制は便利だというだけではない。それに伴う、働く側に変形制を導入すれば、しかしこれだけどこかの部分でゆとりが出るとか、やはりそういうものも必要だろうと思いますし、それから一日のサイクルでの生活をどう保障していくかというふうなことも重要だというふうに思います。その点については、先ほどは経営の側の便利さの方だけがどうも強調されたような気がいたしますけれども、その辺はお考えはございますか。
○参考人(成瀬健生君) 御指摘のとおりでございまして、私も先ほど経営の立場からということを申し上げましたが、同時にそうした変形労働時間制の新しい導入と、それから労働時間の短縮というふうなものが、どちらが鶏でどちらが卵がというふうな、両方が促進し合うというふうな形でいければ最もよろしいのではないか。 経営の都合だけでももちろんいけないでございましょうし、また経営の都合を無視するということにもいかないだろうと思います。両々相まっていくというふうなことで、できるだけそれぞれの、またその場合には企業の労使でお話し合いをいただいて、弾力的な範囲で、できる範囲で運営をしていただく。どうしても法律で規制した方が安全だというお気持ちは一部には強いかと思いますけれども、ある程度労使の自主的な選択にお任せいただくというふうなことで見ていただけるところも必要ではないかなというふうに考えております。 基本的に、変形労働時間を導入することによって結果的にやはり労働時間が短くなるということは大きな目的の一つだ、それが主要な目的だという御意見もございますが、大きな目的の一つだろうと考えておりまして、それと両立するような形で、労使でそれぞれに知恵を凝らして設計していっていただくという努力がありますればこの制度はうまく活用できるんじゃないかと、こんなふうに考えております。
○千葉景子君 ちょっと少し各項目にわたっての質問に移らせていただきたいというふうに思いま す。 松本参考人からは、先ほどとりわけ女性の立場といいましょうか、そういう観点を踏まえての御意見をいただきました。この労働委員会も女性が大変多い委員会でございますし、男性の皆さんにもその中身というのは理解をいただけたところではなかろうか、私も非常に同感をするところが多いわけでございます。ただ、女性の問題というのは、ひいては男性の問題と言ってもいいわけでございまして、そういう意味で今回の改正案につきまして何点か、女性男性を問わず問題になる点あろうかというふうに思いますので、御質問をさせていただきたいと思います。 一つは、今回の法改正では、時間外の労働に対する規制というものにほとんど手がつけられないという結果になりました。ただ、今の流れ、労働時間の短縮ということから考えてみますと、日本の労働時間の長時間の大きな原因というのは、時間外労働、残業の多さというところにも起因をしているのではなかろうかというふうに思います。そういう意味では、時短を本格的に進めよう、あるいはさらにレベルアップをしていこうということになれば、時間外労働のところの規制というものがどうしても必要になるし、見落とされてはいけない部分であろうというふうに思います。 私は、そういう意味で、例えば上限規制を設けるなどの法的な規制が必要ではなかろうかというふうに考えている一人ではございますけれども、松本さん、いかがでしょうか。この時間外の労働規制、女性の立場ということも含めて、この問題についてどうお考えか、あるいは労働実態、実情を踏まえてどのように今後考えていくべきか、お考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(松本惟子君) 私も同様に、やはり時間外労働というのが、先ほど使用者側の代表の方が申し述べておられましたけれども、時間外労働問題の規制というのを大変大切だというふうに考えております。 諸外国では、日本よりも厳しく規制をしているのは雇用慣行が違うからだと。日本の場合には従来終身雇用慣行をとってまいりまして、景気の変動をここで調整しているからという雇用面からの御主張などがありました。確かに、そういった面も全く否定するわけではございませんけれども、先般ドイツのお話を伺う機会がございましたけれども、男女含めて八十から百時間程度です。外国では、全く時間外労働を景気調整弁に使っていないとは言えない。やっぱりドイツだってそういうことはやっているんだ。しかしながら、一日八時間、そしてその他の規制も、落ちついた人間の暮らしと仕事のバランスというものをとれるような状況での社会的なコンセンサスが進んでいるということで、随分うらやましいなと思ったりいたしました。 女性が働き続けるための問題として、この時間外労働が大変邪魔になる。それから、もう一つは男女平等という立場から、従来の社会というのは男性が尺度ですよと、こう言われてきたんですが、統計でも申し上げましたように共働きの女性もふえておりまして、女性労働者がもう四割近くになっているわけでございます。ともに働きともに家庭を守っていくためには、男性も女性もゆとりを持って働ける基盤整備というものが重要でございまして、私はできれば、これは連合の中でも方針として機関決定しているわけですが、男子も将来的には百五十時間ということに持っていきたいということを考えております。 そうは言っても、いきなり百五十時間というふうにはいかないと思いますから段階的な手続が要ると思います。したがって、現在年間三百六十、これもちょっと女性の立場からいえば多いなというふうには思うんですが、三百六十時間を上限とする目安時間の問題で行政指導が図られております。これを削減をしていくという方向で、千葉先生がおっしゃいましたように残業時間の法的規制を強めていっていただきたいというふうに考えております。
○千葉景子君 成瀬参考人、この時間外の問題ですけれども、多少こういうものがあるのが当然といいましょうか、そういうような社会ではないか、労使関係ではないかというようなニュアンスでのお話が先ほどございました。 ただ、確かに全くゼロということはだれも考えてはいないというふうに思いますが、時間外というのは、労働契約ということから考えますと特別な時間に労働を提供するということになるわけです。そういう意味では、やはりそこに何らかの保障なりあるいは特別な提供を受けることによる代償というものを考えていかなければいけないだろうというふうに思いますけれども、その辺についてはいかがでしょうか。多分、いやもう使い得というようなことはお考えではないと思いますけれども、その辺についていかがでしょうか。
○参考人(成瀬健生君) 先ほど申し上げましたのはいわば本音でございますが、やはり日本の経営者は、私が経営者団体におるからということではございませんけれども、雇用を大事にする、できるだけ失業を出さないように努力するということにおきましては世界に類を見ないほど努力しているというふうに感じております。そういう実態の中で考えてまいりますと、やはりいろいろなバッファーがありませんとなかなかスムーズにいかないということがございます。 この中で最大のバッファーといいますか要因になっていると思いますのは、日本の賃金決定そのものが、これは労使の話し合いでございますが、比較的景気に感応的である。これは日本の労使関係の築き上げてきたすばらしい関係ではないかというふうに考えておるわけでございますが、これがある程度コスト調整、例えばことしは景気が悪かったので去年よりも賃上げポイントが低かったと、こういうことが現実にかなり弾力的に行われるということが大変大きな問題だと思います。 それから、賞与につきましてもある程度弾力的に決めさせていただくことができる、労使交渉の中でそういうことができる。さらに、残業時間につきましてもある程度増減という形の範囲内でバッファーになり得る、こうしたものがございませんと経営者としてもなかなか打つ手がないというふうな面がございます。これが一つ、残業がある程度はどうしてもあってもしょうがないのではないかと私どもが考える理由でございます。 もう一つ、さはさりながら恒常的残業が多いではないかという御指摘を伺うわけでございます。これも残業のふえたときと減ったときと、山と谷がございまして、谷のときでも百何十時間もあるではないか。今たしか百四十四時間ぐらいだと思いますが、月に十二時間ぐらいでございます。こんな不況でもそうあるではないかと、こういう御指摘を受けるわけでございますが、これは統計の読み方の問題もございまして、例えばある会社が一―六月に毎月百時間残業があって七―十二月は全然ない、ある会社は七―十二月に毎月百時間あって一―六月はないとしますと、平均しますと毎月五十時間ということでございまして、五十時間恒常的残業と、こんなふうなことに統計上はなるわけでございます。ですから、この辺は読み方が大変難しいところだと思うわけでございまして、本当に不況のときでもこんなにまだあるんだから弾力的というよりも恒常的な部分が多過ぎる、こんな御指摘をいただくわけでございますが、これはもう少し中身を見てみないとわからないということでございます。 それともう一つ、これは相手に責任をかぶせてしまっては大変申しわけない話なのかもしれませんけれども、従業員ないしは組合員の中に多少やはり残業志向という面が、特に中高年齢層でございましょうか、まだ残っているという面があると思います。これは現場の本当のところの声でございまして、この辺の論議を今後詰めるといいますか、意識が次第に変わってくることによってだんだんそうした問題が整理されていくのではないかなというふうに考えております。 もう一つ、蛇足でございますがつけ加えさせていただきますと、残業時間を余り無理に縮めてまいりますと、既に欧米で見られますような二重就 業というふうな問題が起こってくる可能性もございます。過日、来日いたしましたコール首相も、いわゆるシュバルツ・アルバイトといいますか、裏労働がGNPの一割ぐらいに達しているのではないかというふうなことで、それを証拠に逆にドイツ人は仕事が終わってからまた別のところに行って働くぐらい働き好きなんだと、こういう言い方をされたわけでございますが、こうした問題との兼ね合いも含めつつ、やはり労使それぞれの意識の変化の中でこういう問題は徐々に進んでいくのじゃないかなというふうに考えております。
○千葉景子君 労使の意識の変化というお話が成瀬さんから大分出てまいるわけでございますけれども、先ほどの景気の問題も、景気のよいときには本当に賃金が十分にアップしているのかなと考えますと、ちょっとそれも疑問なところがあり、悪くなるとやはり厳しいからという抑制が働いている、こんな気もいたします、成瀬参考人を責めるというわけではございませんけれども。そういう意味では、労使の努力とかあるいは話し合いということを最終的には考えるにしても、その条件整備あるいは使用者側からの今の時代の要請にどうこたえていくかという姿勢というものがもっと必要とされるのではないかなと、そんな気がいたします。 この時間外の問題ですけれども、今回時間外割り増しの問題についても、法的には明示をされないということになりました。ヨーロッパと比較してあるいはアジアの諸国などと比較いたしましても、時間外割り増しについては日本というのはまだまだ低いレベルで抑えられているということが言えるのではないかというふうに思います。 そこで、保原参考人に少し各国の状況などを簡単で結構でございますので説明をいただくことと、それから松本参考人にやはりこの点について、先ほどの総量あるいは上限規制などと並行して時間外割り増しについてどうお考えになるか、お聞かせをいただきたいと思います。
○参考人(保原喜志夫君) 時間外労働につきましては、労働基準法研究会でもかなり激しいといいますかさまざまな意見がありまして、この問題については恐らく一年ぐらいかけて議論をやったかと思いますが、議論の途中で各方面の方々の御意見等を伺いまして、結局労基研の報告としましては、現在の二割五分よりは時間外労働手当を引き上げる、それから休日についてはそれよりもっと高い手当の率であるべきだという意見を出したわけであります。 ただ、御案内のとおり今回の立法では二割五分から五割の間で命令で定めるということになったわけですが、日本のように時間外労働、休日労働につきまして二割五分という低い割り増し率を決めているところは世界に余りないというふうに思います。 それで、先生方御案内のとおり昭和二十二年の労働基準法の当初の案では五割増しという案がありまして、これが原案だったわけですが、戦後の経済の荒廃期を脱するまでは、しばらくの間五割はちょっと企業には厳しいんじゃないかということで二割五分になったというふうに承っております。したがいまして、アジアの国なんかでも適用事業場が割合限定されているというような国もありますけれども、一般的には五割ぐらいがまあまあの相場と言うことができると思いまして、ヨーロッパでは休日労働につきましては十割というようなところもあるように聞いております。そういうわけで、日本はいわば各国との比較において見ますと、欧米諸国だけではなくてアジアの国との比較をしても割り増し率は低いと言うことができるというふうに思います。 この問題をどういうふうに考えるかということですが、各種労働経済学者の推計によりますと、一定規模以上の企業で時間外労働手当をどこまで払う、つまり何割増しぐらいになったらもう新しい人を雇った方がいいかという、そういうような計算がいろいろありまして、大体六、七割増しぐらいまでは企業としては時間外手当を払った方がまだ新しい人を雇うよりはましたというような計算に大体落ちついているんじゃないかと思います。したがいまして、仮にですが五割増しで払えと、今の倍だということになっても、企業の方はそれは大変困るけれども新しい人を雇うよりはいいかという選択が多くの場合なされるんじゃないかというふうに思います。 私個人の意見ですけれども、時間外手当はそういうわけでかなり高い水準にあってしかるべきではないかというふうに思っております。特に、休日出勤というのは、日本のように通勤時間が大変長いところでは心身ともに大きな負担になりますから、休日出勤については大幅な引き上げが妥当ではないかというふうに思っています。 ただ、今回週四十時間制を来年から実施するというのは、私個人の判断としましてもかなりの決断であったわけでありまして、週休二日制も全企業でやっているわけではないし、年休の取得もまだまだだというようなところで週四十時間できるのかというようなことがいろいろ言われたわけですけれども、しかしこれは何としても実現しなければいけないということで、当面やはり週四十時間制の実現に向かっていくためには、時間外労働の手当を非常にラジカルに引き上げるということには多くの方々の御賛成は得られないんじゃないかなというような判断を私自身はしたわけでございます。 諸外国では、そういうことでかなり割り増し率が高い、あるいはドイツのように原則として日曜、祝日は労働禁止であるというようなところもありまして、近い将来は日本もかなり割り増し率の引き上げで時間外労働を抑制するという方向が望ましいというふうに思っております。ただ問題は、そうすると企業はやっていけないんじゃないかということでございますが、これは統計ではありませんけれども、特に旧西ドイツでは労働協約の規制が大変厳しいためにかなり中小企業が倒産をしたというふうに聞いております。つまり、労働協約の規制によって中小企業が倒産をするという状況がありまして、西ドイツは、アメリカ、イギリス、フランスに比べると中小企業が最も少ない国でありますけれども、それはある人に言わせれば労働協約のせいだと、それぐらい厳しいものであります。 例えば、ドイツの法律は現在も週四十八時間制、それで時間外手当の割り増し率は二割五分であります。つまり、かつての日本と同じと言うことができますけれども、労働協約では今週三十五時間制とかそういうことになっておりまして、これは労働組合がどれだけ頑張っているか、あるいは企業協定で労働者がどれだけ頑張っているか。もちろん企業の方の御協力もあると思いますけれども、そういうことが言えるわけでありまして、最終的ぎりぎりのところでは中小企業の犠牲はある程度やむを得ないという乱暴なことまで言わなきゃいけないかという、そういう決断が迫られると思います。 正直な話、今はそういう決断は差し当たりはしないで、週四十時間労働制の実施に向けて全力投球をして、しかるべき時期に、少し企業が余裕ができたあるいはだんだん週四十時間制が定着してきたという段階で、そういう時間外手当の割り増しとかをもう一度検討する必要があるんじゃないかというふうに思っております。 それから、先ほどの千葉先生に対する答弁でちょっと訂正をさせていただきますが、一年変形制で、イギリスも一九七〇年代の後半から一年の変形制がある程度普及して、日本も少し研究が出てきたところでございます。初めは、二十四時間フル操業のところにまず採用されたようですが、それからだんだんメーカー一般とかあるいはサービス業等にも少しずつ採用されてきているようでありまして、その場合イギリスは法定労働時間というのはありませんから、現在のところはどうも週三十九時間ぐらいを前提にしてやっているようでございます。これは、これからかなりどうも普及しそうな感じでございます。 以上でございます。
○参考人(松本惟子君) 労使の自主努力が必要な のではないかということについてでございますが、労働組合としましては一生懸命頑張っているわけでございますが、何といっても未組織労働者が圧倒的に多い、こういう実情がございます。そういう実情の中では、やはり法律で最低基準を決めるということが大変重要な意味を持っているというふうに思います。連合といたしましても、時間外割り増しにつきましては、大手組合を中心にしながら引き上げの方向を図っているわけでございますけれども、労使の自主努力だけでは解決ができないのではないかというふうに考えております。 それから、割り増し賃金につきましては、安過ぎるから使用者は時間外労働をさせるという側面も非常に強いと思うんです。したがって、時間外労働を減らしていく、労働時間を短縮していくためには、やはり割り増し賃金は通常の労働の提供とは異なる特別の労働の提供でございますので、使用者がペナルティーを払うべきだと思います。日本は長い間とんざをし過ぎていたのではないか。この点につきましてはそう思います。 以上でございます。
○千葉景子君 じゃ時間ですので、最後に松本さんに、今回法的にはちょっと検討がされて提案はないんですけれども、深夜労働についてのお考えをお聞かせいただいて私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○参考人(松本惟子君) 深夜労働につきましては、社会的に必要な深夜労働を除きまして少なくしていくべきだと思います。過当な経済競争のためにこれを拡大していくということは慎むべきだと思います。 なぜならば、人間にとって、男女の労働者にとって、深夜働くということは、先生方もよく深夜お働きになっているようでございますけれども、余り自然な働き方ではございません、もう体験していらっしゃると思うんですね。とはいいながら、社会的な活動の面では全部を禁止するというわけにいかないと思いますので、申し上げたような考え方を持っております。 家庭生活にも社会生活にも健康面にも与える影響というのは多いわけでございますから、必要な、深夜働く労働者に対しては労働条件の向上を図っていただきたい。例えば、人員の増加だとか回数の制限だとか通勤手段、社会サービスですね、通勤手段だとか住宅の問題だとか休憩室の充実だとかいった環境整備をきちんとしていただきたいし、それから労働時間も深夜というのは昼間よりも負荷がかかりますから、この点についても昼間の労働者よりも厳しく規制をすべきだし、それからさらに深夜の労働でございますので金銭的な補償につきましても考えるべきだというふうに思います。
○千葉景子君 ありがとうございました。
○中西珠子君 本日は、参考人の御三方にはお忙しい中をおいでいただきまして、大変貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。 私は、限られた時間でございますので、まず保原先生にお聞き申し上げたいことをまとめて申し上げてよろしゅうございましょうか。 まず、先ほどから時間外労働や休日労働の割り増し賃金率の話が出ておりますけれども、この時間外労働の割り増し賃金率は長い間、労働基準法ができて以来ずっと据え置きであったわけでございまして、企業はほとんど九〇%以上がこの二割五分を払っているからだとかいろいろ理由がございまして、今回は時間外労働につきまして二割五分を引き上げるということはちょっと先送りになるらしゅうございますね。それから、休日労働につきましては五割ぐらいに引き上げるということを考えていらっしゃらないわけでもないと思うのでございますが、いずれにいたしましても二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定めるということに一応なっているわけでございます。 これは、私といたしましては、法律で定めるべきことをなぜ命令で定めるということになっているのかちょっと賄に落ちないわけでございますが、もし時間外労働の割り増し賃金率を二割五分以上に上げることが今すぐは難しい、五割にすることは今すぐは難しいということであれば、フランスの場合のように一週八時間までは二割五分とする、しかしそれを超える場合はもう五割というふうに段階的にでも法律の中に規定ができないものかといろいろ考えるわけでございますが、先生のお考えをお伺いいたしたいわけでございます。 それから、第二番目といたしましては、先ほど諸外国における裁量労働制の適用対象について例を挙げてお教えくださるということでございましたから、これをお教えいただきたいということでございます。 もう一つお聞きいたしたいことは、労働基準法では変形労働時間制の導入は労使協定というものを要件としておりますが、時間短縮促進の臨時措置法によりますと、企業レベルで労働時間短縮推進委員会というのが組織されまして、その場合は委員会が満場一致で変形労働制を決めたときにはその決議をもって労使協定とみなす、届け出は免除する、こういうことになっております。委員会の労働者代表は民主的に選ばれるということになっているんでしょうけれども、果たして民主的に選ばれるかどうかという保証がございませんのにこのような措置を導入することは変形労働時間制の乱用につながるのではないかというおそれがあるのでございますが、先生のお考えをお聞きしたいと思います。 それから、日経連の成瀬常務理事にお伺いいたしたいことでございますが、常務理事は年次有給休暇の問題につきましては取得率が大変低いということをお認めになっておりますが、取得率が低いのはいろんな理由がございますでしょうけれども、やはりとりにくい環境というのが職場にあるのではないかと思うんです。病気休暇がないから病気のときにとっておくとか、また子供の面倒形見るためにとっておくとかいろいろあると思いますけれども、とりやすい環境というのが職場にかい。それから、とったことのために不利益取り扱いをしないという条項をこの前の労働基準法改丁のときに国会で入れましたのですけれども、それでもなおかつ取得率が上がらないというのはやはりいろんな理由があるかと思いますけれども、使用者側がもう少しとりやすい環境をつくっていただけるとよろしいんではないかと思うわけでございます。 その点につきましてお伺いしたいということと、それから裁量労働制の適用につきましては柔軟な方向で進めてもらいたいというふうに御希望を披瀝されましたけれども、それに加えてホワイトカラーの労働時間の検討が必要だということもおっしゃいました。私も必要だと思うんでございますけれども、現在ちょっと問題になっておりますのは、四十時間労働制がほとんど実施されている大企業、殊に金融・保険業などで一応建前は週四十時間労働制であって、そしてまた年間の総労働時間も大きい業種では大変少ないということになっているにもかかわらず、サービス残業が多いということが労働基準監督署の摘発などもありましたりして指摘されているわけでございます。このようなサービス残業についての対策については日経連はどのような御方針で臨んでいらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。 それから、連合の女性局長の松本さん、日本の女性労働者の置かれた状況を各種の調査結果を駆使なすって大変鮮やかに御説明いただき、私も大変うれしかったと同時に、男性の議員の方々もよくおわかりになっていただいたと思うのでございます。 女性労働者が労働時間短縮に対して最も期待しているのは一日の労働時間の短縮である、これはもう本当に同感でございまして、変形労働時間制が拡大されますと職業生活や家庭生活の両立が不可能になってやめざるを得なくなる人が多くなってくるということを私も大変恐れておりまして、変形労働時間制には反対したい、こう考えているわけでございますが、法案が変形労働時間制を拡大して今度は一年単位の変形労働時間制を導入しようとしているわけでございます。これは、年間 のカレンダーをきちっとつくって休日も早く決めるというふうなことを既にやっている企業も多いし、また年間の休日をふやすためには一年単位の変形労働時間制の導入は大変いいのだと政府はおっしゃっておりますけれども、そのようになる保証というのは何もないわけでございまして、私は松本さんの御提案を三つとも支持いたします。それで、それに向かって実現のために努力をすることを申し上げたいと思うんです。 そういった点で、松本さんも変形労働時間制に対する危惧を大変お感じになっていると思うんでございますけれども、先ほどもございましたが、一カ月単位、三カ月単位の変形労働時間で大変困っているというふうな例はお持ちでしょうか、いかがでございましょうか。それは後ほどお伺いしたいと思います。 一度に申し上げてあれでございますけれども、私の時間が大変限られているものでございますから、お伺いしたいことを先に申し上げました。どうぞよろしくお願いいたします。
○参考人(保原喜志夫君) 中西先生の御質問でございますが、まず時間外・休日労働につきまして段階的な割り増し率を採用してはどうかということでございますが、労働基準法研究会報告書はまさにそういう時間外・休日労働につきまして段階的な割り増しを提案しております。これは、例えば外国の立法例ですと、フランスの制度でありまして、フランスは週八時間を超えると割り増し率がアップするという制度になっています。 私個人は、所定労働時間働いて、つまり労働基準法で上限規制があるわけです。一日例えば八時間働いてその後に残業するという場合に、やはり望ましいのは、ある程度高い割り増し率を払わせるということによって残業を減らすということが望ましいかと思います。ただ、一遍にそこまで行けないということであれば一定限度を超えた割り増し率を考えるというのが次善の策として妥当であるというふうに考えております。ただ問題は、何時間を超えたら割り増し率を上げるかというのはかなり問題がありまして、企業の方ではその限度までは二割五分なら二割五分でいいんだなということになりますと、そこまで恒常的な残業が行われるおそれもなしとしないわけでありまして、そういう意味で次善の策ということかと存じます。 次は、裁量労働の問題でございますが、これはアメリカではエグゼンプトという制度がありまして、時間管理あるいは最低賃金の管理を外れる人たちであります。これは三種類ありまして、大きく言いますと管理職、それからその中間の管理職を補佐する人たち、それから専門職、この三種類。そのほかにセールスマン等がありますが、これは除きます。 このエグゼンプトは大体労働者の約二割弱というふうに言われています。この人たちは年間で給料の契約をし、年間で労働時間の契約をするということであります。そして、原則は毎日出勤するわけですが、出勤時間は自由でありまして、朝遅く来るとかあるいは途中で帰るとか、これは自由である。ただ、労働協約によって細かいことを決めているということでございます。このエグゼンプトと認められるための要件がかなり細かく定まっているんですが、ただその要件をある程度緩和する規定がありまして、これは週給二百五十ドル以上の人ということであります。週給二百五十ドルというと大した額じゃないんです。むしろかなり安い額でありまして、したがって二割弱の人がそれに入ってしまうということでございますが、大体大学を卒業して二年から数年たってひとりで、自分の才覚で仕事ができるというふうになった人についてそういう制度の適用をしているようでございます。日本のプロ野球の契約更改を大体お考えいただければいいんじゃないかと思います。 ということは、もう仕事の評価を労働時間の量ではなくて、その成果、つまり質で評価する、仕事の評価の基準を量から質に変えるということでありまして、今回労働基準法研究会が提案しまして、この法案にも取り入れていただいております裁量労働制はまさに基本的にはそういう考え方であります。 そうしますと、仕事の質が各人について個々的に評価されるということになりまして、日本のいわば集団的な労働形態に合わないんじゃないかという御意見もありますが、日本のホワイトカラーはどちらかといえば先進国のホワイトカラーに比べて労働生産性が低いということが言われていまして、この労働生産性を引き上げるためにも質の評価というのが重要になってくるだろうと思います。ただ、どういうふうな物差しで質の評価をするかというのは、御案内のとおり大変難しい問題がありまして、これをこれから考えていかなければいけないということだと思いますけれども、アメリカではそういうことでございます。 それから、フランスではガードルというのがありまして、これは労働者層をフランスでは大きく三つに分けまして、ガードルとそれからアンプロワイエーといいますか職員層、それからウブリエという現場労働者の層、この三つに分けております。当然ガードルになるという人は大体学位を持っている人で、ドクターを持っている人も企業でたくさんフランスでは働いています、ドイツでも同じですけれども。それから、あとは企業によってまちまちでありますけれども、大学を卒業して二、三年から数年たちまして、ひとりで、自分の裁量である程度の仕事ができるようになりますとガードルと認められ、年俸制になります。 そういうことでございまして、今ちょっとフランスでは労働者の何割がガードルかというのをお答えできませんが、大学を卒業して二、三年から数年たちますと、そういうのに多くの人がなります。例えば、文系の大学の出身者で言いますと、一つの専門の法律とか経済とか企業会計とか何か専門のことができる、それからもう一つ、フランス語以外の外国語を一つしゃべれるというようなことが新聞広告のガードル募集のいわば条件として挙がっておりまして、大体そういうことをイメージしていただければいいんじゃないかと思います。 この人たちは、必ずしも管理職ではありません。上級のガードルは管理職ですけれども、管理職でない、二十代の人ももちろんいるわけですから、ガードル全員が労働時間の規制を外されているというわけではありません。これは法律では抽象的な文言でありまして、労働時間の規定の適用がその仕事の性質上困難なものについては労使協定で別にやってもいいというような規定でありますから、各企業によってまちまちでありますけれども、一般的に言えば中級以上のガードルにつきましては労働時間の管理を大体外すということになるのかと思います。ドイツについても大体似たような状況にあります。 ただ、日本と違いますのは、日本はホワイトカラーのかなりの部分が大卒でありまして、アメリカ、フランスのような考え方をしますと、いわゆるホワイトカラーの過半数がこの労働時間管理を外れてしまいますので、日本の運用に当たっては慎重にいかなければいけないというふうに思います。しかし、労働時間短縮を進めながら、なおかつ国際的な競争の中で安定した経済成長を遂げていくためには、いわゆるホワイトカラーの中以上の部分につきましては労働の評価を量から質に変えるという、そういう時代にきているんじゃないかというふうに思われます。 それから、最後に変形制の問題で、いわば従来の労使協定とそれから時短促進法の推進委員会の関係でございますが、御指摘のような危険はゼロとは言えないとは思います。私は、これは政府案にも何にもありませんけれども、将来はやはり今任意につくられているような企業の中での労使協議制、労使協議機関ですね、これをある程度制度化して、そういうものを各協定の受け皿にするというようなある程度の制度化をした方がいいんじゃないかというふうに思っております。 御指摘のような危険はゼロとはやっぱり言えないと思いますが、時短促進法の制度によって時短 が進むんであれば、実際の運用を見ながら、余りそういう乱用が起こるというような場合には手直しが必要かと思います。 以上でございます。
○参考人(成瀬健生君) 中西先生の御質問は二点と理解いたしました。 第一点につきましては、年休の取得率が今五二%ぐらいで低迷をしておりますが、この辺はとりにくいという面があるのではないかという御指摘でございました。 この点につきましては、とりにくさというふうなものほかなり一時より変わってきたというふうに認識をいたしております。日経連といたしましては、とりにくいとりやすいということもさることながら、年休の計画的な取得ということをできるだけ進めていくべきではないかということで、一生懸命にキャンペーンをいたしておるところでございます。 ただ、これは私個人の経験、また周囲の人の話なんかを聞いてもそうでございますが、以前は年休の取得率は六〇%を超えておったわけでございますが、週休二日制がかなり普及してきましてからは落ちまして五〇%になってしまった。つまり、週に二日休めるのならもう年休をとらなくてもいいみたいな、我々個人的に反省してみましても、そんなことで結局一年たったらとらなかったみたいなことがあったようでございますが、そうではなくて、やはり計画的にきちんととるという習慣をつけるということが今後ますます大事になっていくだろうと思います。それから、上役につきましても、まず社長、管理職から休みなさいというふうなこともセミナーなどでは一生懸命キャンペーンをいたしておるところでございます。 それから、もう一点でございますサービス残業の点でございますが、これはあってはいけないものという基本的な考え方を強く持っております。ですから、サービス残業はあるべきではないとはっきり日経連としても明言をしておるわけでございます。ただ、そういうときには論議になってまいりますと、これは残業なのかそれとも例えば自分で調べものをちょっとしたいからということで残っていたというふうな、ホワイトカラーの場合には非常にあいまいな部分がございまして、こういう部分につきましてはある程度自主的な判断でやっていただくよりしょうがないかなというふうな面が最後まで詰めていくと残るだろうと思います。 ですから、サービス残業なのかどうなのかというふうに目くじらを立てて余り論議をすると最後に残る点はあると思いますが、その点につきましてはそれぞれのケース・バイ・ケースの御判断をいただきまして、いわゆる指摘されておりますようなサービス残業というものはあってはならない、こういう考えで基本的にキャンペーンをいたしております。
○参考人(松本惟子君) お答えをいたします。 私は、変形労働時間というのは、もっと休日がふえて自由にとれる、それから一日や週や年間の総労働時間、時間外労働規制を含めまして日本の労働時間がもう少し短くなってから導入をする、あるいはそういう方向をもう少し進めた中で提案をされるということであれば、あえて反対はいたしませんが、現時点では先ほどもるる申し上げましたような理由によりまして基本的には反対でございます。 しかし、どうしてもとおっしゃる場合にはということで意見を申し上げたいと思います。まず、お尋ねの一カ月の問題でございます。一カ月単位の問題は、なぜ三カ月より一カ月の方が運用が出てきているのかと申しますと、一カ月というのは労使協議の必要がない、届け出の義務がない、それから三カ月のような要件がついてないということで、一カ月を繰り返して運用すれば実際には三カ月と同じような効果が出せるということで、使用者の方が運用されていると思います。したがって、原則的には禁止という形をとりながら、必要なところについて慎重に協議をしていただいて、適用除外ということでならと思います。それからもう一つは、労使の協議を前提にすること、届け出の義務を付すこと、そして要件については三カ月と同じような厳しい要件を一カ月についても付していただきたいというふうに思います。 それから、三カ月の問題でございますが、これにつきましても既にもう運用されているわけでございますが、一日十時間ということでありますので、これを八時間にやっていただきたい。 それから、一年につきましては、これもどうしてもという場合ということを前提にして先ほど三つほど申し上げましたが、もう一度申し上げさせていただきます。導入する企業につきましては、完全週休二日制に相当する百四日の休日と、国民祝祭日を加えた百二十日程度の休日確保を要件とする。それから、週四十八時間の上限は当然ですけれども、一日の上限を八時間。それからさらに、育児・介護など家庭責任にかかわる労働者につきましては、勤労学生等も含めて変形制の適用除外とすることをはっきりとさせていただきたいというふうに申し上げたいと思います。 以上でよろしいでしょうか。
○中西珠子君 ちょっと時間がございますので、松本さんに追加してお聞きしたいんでございます。 先ほど、保原先生にもお聞きしたことでございますが、時短促進臨時措置法によりまして、企業レベルで労働時間短縮推進委員会というのができた場合には、そこで満場一致で決めました変形労働時間制の導入につきましては、その決議をもって労使協定とみなしまして届け出も免除をすると、こういうことでございますね。そうすると、労働基準監督行政の方においては、その届け出も免除になりますと、なかなかこれは監督が難しいのではないか。もちろん、議事録も全部とっておきますから大丈夫というふうにおっしゃっておりますけれども、なかなか基準監督官も少ないし、非常に乱用という面が出てくるのではないかと私は心配するわけでございます。 それで、この労働時間短縮推進委員会の労使のメンバーというものも、労働代表が労働組合があるときはよろしいですけれども、今組織率も落ちておりますし、労働組合がなくて、労働者の多数を代表するものとして民主的に選ばれるということには一応はなっていますけれども、その保証は必ずしもないわけです。そういたしますと、労使協定とその決議がみなされて届け出免除をするということになりますと、変形労働時間を乱用されるおそれがあるのではないかと私は心配するわけでございますけれども、松本さんの御意見はいかがでしょうか。
○参考人(松本惟子君) 中西先生御指摘の問題が、私も運用に当たって法律をきちんとつくっても労使協議の相手、つまり労働者代表がどのように選ばれるかということが大切な問題だというふうに思うわけです。現状では、実際には聞くところによりますと労働組合のないところでは使用者の代表に近い方が選ばれて、そしてその協議によって届け出をするというふうなことも伺っておりますので、ここについてもぜひもう少し一歩踏み込んだ御論議をしていただいて、実効が上がるような対策が必要だというふうに思っています。 それから、もう一つは監督官の問題です。これは、どんなところでもいろんな意見が聞かれるわけですけれども、監督行政が、一生懸命なさっているとは思いますけれども、手薄ではないか。もっとやはり強化をしていただきたいというふうに考えております。目が届くように、そして問題がきちっと処理をされるように、そういう体制を御検討いただきたいなというふうに思っております。
○中西珠子君 まだ二、三分ございますので、成瀬参考人に今の問題についてお聞きしたいんでございますけれども、時短促進臨時措置法に基づきまして、労働時間短縮推進委員会ができまして、そこの満場一致の決議である場合は労使協定とみなされて、変形学働時間につきましても届け出免除をすると、こういうことになっております。 この委員会の制度というものもうまく運用されれば非常に時間短縮が進んで結構だと思いますけれども、労使の代表をそれぞれお選びになるときに、殊に労働代表を、労働時間短縮を進めるに当たって使用者側が変形労働時間制を導入したいと、こう考えていらっしゃるときに、使用者側代表と同じような御意見を持った労働代表を選んでしまうというふうなことがございませんようにお願いしたいと思うわけでございますけれども、労働者の代表を労働組合がない場合にはどのようにして普通お選びになっておりますか、その点もちょっとお伺いいたしたいわけでございます。
○参考人(成瀬健生君) 全国二百万ほどの企業がございますので、ちょっとカバーし切れないかと思いますが、かつて労働省でおとりになった労使コミュニケーション調査などによりましても、いわゆる企業従業員の八割が労使協議制でカバーされているというのが日本の特徴でございます。 組合がなくてもほとんどの企業が労使協議制を持っているというのが実態だろうと思っておりまして、私ども実態を見聞きいたしますと、そういうものをうまく活用されているところが多いように承っております。もちろんそれをうまく活用して何とかこうしようというところが全然ないとは申し上げるわけにはまいりませんけれども、そうした中でもともと時短を促進しようということでこれはやるものでございますので、やはりどういう従業員代表でございましても、お話し合いをしていくうちにある程度だんだん成熟してきていい話し合いができるようにお互いに訓練されていくと、こういうことではないかと思っておりまして、全般的には日本の労使協議制の伝統の中で余り間違いのない運用がなされているのではないかと、こんなふうに認識をいたしております。
○中西珠子君 どうもありがとうございました。 終わります。
○足立良平君 きょうはどうも御苦労さんでございました。 私は、労働時間の短縮といいますか、週休二日制の時代というのを考えてみますと、今までの社会経済あるいはまた一般の国民の日常生活そのものも、労働時間の短縮なり週休二日制というものが定着をしていくということによって相当変化していく、あるいはまたシステム的にも変わっていくべき性格のものではないか。 そうしませんと、例えば土曜日、日曜日に一般の人が休んでいるときに働いている人たちもたくさん今いるわけでありまして、そういう面で休んでいる人たちは土、日で別途のサービスを過大に要求をしていくということになりますと、国民全体としていろんな問題が出てくる。したがって、この週休二日制というものをさらに進めていくということは、社会のシステムあるいはまた経済のシステム、そういうものをまず転換をしていくということも当然我々の頭の中に入れていかなければいけない課題なのではないか、実はこのように思ったりいたしているわけであります。したがって、そういう観点も含めまして、いかにスムーズにこの千八百時間、あるいはまた将来的には千八百時間を超して千七百なり千六百時間に持っていくかということが日本のこれからの大きな課題なのではないか、こういうふうに実は思ったりいたしているわけであります。 〔委員長退席、理事大木浩君着席〕 そういう観点で、これは保原参考人にもうちょっと突っ込んで考え方をお聞かせ願いたいと思うんです。 今千八百時間を達成しようといたしますなら、何といいましても所定勤務時間というのは、比較的日本の場合、これからさらに進めていくとしまして、問題はいわゆる残業という時間外労働、あるいはまた有給休暇を余り取得しないとか、むしろそちらの方が大きな問題に当面なってくるわけですから、殊業というものを抑えていくということを考えてみますと、ちょうど私はエネルギー危機のときを思い出すんです。世界的にエネルギーというものが、価格が物すごく上がってまいりましたときに、日本はある程度市場原理にゆだねたわけですね。そのことが省エネルギーというものを世界一達成することができた。 労働時間の場合も、先ほどもいろんな議論がありましたけれども、監督行政を強めてきちんとやっていくといいましても、これは何百万とある企業をすべて監督行政できちんとそれを達成していくことが可能かどうかということを考えてみますと、先ほど同僚の中西議員が提起されましたように、例えばある一定の許容範囲内、これは難しいところなんですがね、ある一定の限度までは仮に二五%なら二五%充てるけれども、ある一定の限度を超えれば、企業の側としては経済的にどうしてもこれはだめだ、やらない方がいいんだというふうな、むしろ日本の企業の過当競争を抑えるような意味合いを持たせる割り増し賃率というものの考え方を導入できないものだろうかなというふうに実は私も思ったりいたしております。 ですから、そういう面では、経済的な側面から企業としてはどちらを選択するんだ。そうしたらその方がプラスになるんだ、やらない方がプラスなんだというふうなものを設定することの方が監督行政を強めるということよりはいいのではないかなという感じもしたりするんですが、参考人の方はむしろ余り法律的、画一的に決めることは云々という考え方をお持ちのようですけれども、その点の考え方をお聞かせ願いたい、こう思うんです。 それから、私も余り時間がございませんから、先にあらかじめ成瀬参考人にもひとつお聞かせを願いたいと思うんですが、残業時間といいますか、基準外労働というものを減らす意味合いで、もう一つは日本の経営の親企業、あるいはまたその関係企業といいますか、いわゆるジャスト・イン・タイムとか、そういう経営のシステムというものを私はやっぱり変えていかないと残業というものが減ってこないということは、これはもう統計上もはっきりいたしているわけでありまして、そういう面で今までの企業経営というものを日経連として、そういう残業時間を減らしていくために、例えばこれからの経営のあり方というものを一体どのようにお考えになっているのか、あるいはまた具体的にどのようにそれを変更しようとされているのか、この辺のところをお聞かせ願いたいと思います。 それから二つ目に、これは成瀬参考人にもう一つお願いをいたしたいと思いますのは、生産現場を見ますと、例えば品質管理の問題から始まりまして、日本の生産現場における生産性というものは大変高い状態に来ている。海外の生産現場を視察し、日本の国内の現場を視察いたしましてもそういう感じがする。 先ほど、保原参考人からも、ホワイトカラーといいますか、そういうところの生産性が低いんではないか、こういう指摘がございまして、統計的にもその種の資料が若干出ているようであります。結局、これほど第一次、第二次の石油ショック、あるいはまた円高不況なり、今回のバブルがはじけた以降のこういういろんな経済的な大きな変化の中で、日本の企業というのは生産性を高めるといいますか、効率経営というものにあれほど努力してきたにもかかわらず、先進国に比べてまだ生産性が相対的に低い。それはホワイトカラーだ。これは、一体なぜこういうふうなことになってきているのかということを、日経連の立場からもしお考えがあればお聞かせを願っておきたい、このように思います。 それから、これは松本参考人にお聞かせを願いたいと思うんですが、先ほど来これも有給休暇の取得の向上の問題について、計画的付与というものがこれから必要なんだという議論があります。私ももちろん必要だろうと思っております。ただ、この計画的付与というのは、考えてみますと今までは休暇を取得する労働者の自主権といいますか、時期的な選択権といいますか、そういうものが相当強く考えられていたわけでありまして、計画的付与というものを導入してまいりますと、一方においては従来自主的に決めているそういう個人の都合云々、これが若干制約をされてくる面があると思います。そして、それは当然労働組合の側で、中高年というよりも若い人たちというのは、もうとにかく人に決められるのが嫌であって、全部おれが決めたいんだよという意識が相当今の若い人たちは強いわけでありまして、そういう面で若干その辺のところの調整というのはなかなか難しい面があるんではないかな。これは、連合として一体どのようにお考えになっているのかお聞かせを願っておきたい、このように思います。 それともう一点、もし時間がございますなら簡単で結構かと思いますが、やはり労働時間とかこの種の普遍的な条件というものは、地域性、業種性、あるいは産業的にやはり一本である方がいいような感じがいたしますので、例えば連合では都道府県で一本にしていくとか、いろんな考え方がとられたりしていることを仄聞したりするんですけれども、そういうふうに地域的に都道府県ではこういうことをやっていくとかいうふうな、そういう統一的に取り組んでいかれる考え方があるかどうかもちょっと付言をしていただきたいと思います。 以上です。 〔理事大木浩君退席、委員長着席〕
○参考人(保原喜志夫君) 足立先生の残業手当の問題でございますが、労働基準法研究会報告では、先生御指摘のとおり段階的引き上げを考えたわけですが、これはこの程度であれば日本の国民のかなりの部分の御賛成を得られるのではないかという推測に基づいているわけでございまして、私の個人的な意見では、残業の一時間目から現在の二割五分より高い割り増し率を払うべきだと。ただ、それじゃ週四十時間は強制されるわ、残業手当は一気に上がるわというので企業はやっていけないよというようなところがたくさんありまして、差し当たり四十時間制を第一目標とすれば、残業手当については段階的引き上げかなという、そういう感じがします。 もう一つは、これも先ほどの話とちょっと重複しますが、どこまで残業手当の割り増し率を引き上げれば企業としては新しい人を雇った方がいいかという、そういう選択を迫られるかということでございますが、これは事業所の規模によりましてかなり違うということが言えます。つまり、大企業あるいは大きな事業所では、人件費の固定部分が大きいわけでございますので、残業手当の割り増し率をかなり高額に引き上げても、中小企業に比べればなおかつ既に雇っている労働者に働いてもらった方が得だというようなことになるかと思います。 したがいまして、残業手当の大幅引き上げでまず経済的に困難を来すのは中小企業であるというふうに思いまして、ここらはいろんな労働経済学者の計算がありますけれども、私は先生が御指摘のような段階的な引き上げというのが次善の策としては妥当かなという、そういう考えを持っている次第でございます。 もし、私の答弁で何か不足のところがありましたら、また御指摘いただきたいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 二点御質問いただいたように思います。 一つは、ジャスト・イン・タイム等の、親企業の発注方法などの改善も含めて考えないと労働時間短縮は中小企業では特にできないのではないか。 この点につきましては、先ほどの資料の四十一ページのところにそれに関連した記述がしてございまして、日経連としても御指摘のような点は大変重要だと思っております。やはり関連企業ぐるみでやりませんと、一つの企業でやろうと思ってもとてもできない問題でございます。場合によっては、ジャスト・イン・タイムではなくて、ある程度在庫を持たないとだめだというふうなケースも出てまいりまして、既にそういうふうな方向に踏み切られた企業も出ておるところでございます。日経連といたしましては、そうした産業の流れの中での時短でございますものですから、その流れをうまく活用した総ぐるみの時短の方向を検討すべきだということを強く主張いたしておるところでございまして、恐らく今後、個別には無理だということがはっきりしてきておりますものですから、こうした動きはだんだん進んでいくのではないか。特に、中小企業につきましては私ども大変気を使っておりまして、会員の中で多いものでございますから大企業ができるだけ配慮をするようにと、時短促進法でもその辺のことがうたわれておりますものですから、大変結構なことだというふうに考えておる次第でございます。 それから、二つ目の問題で、ホワイトカラーの生産性の低さの問題は御指摘のとおりでございまして、何か日本の生産性はアメリカに比べて三割から四割トータルで言えば低いというのが生産性本部や労働省の統計で出ておるようでございまして、それが製造業の現場ではないということもかなりはっきりしているということも御指摘のとおりでございます。そうしますと、製造業の中でいいますと、本社部門といいますか本部部門、それからあと流通部門でございますとかサービス部門でございますとか、こういうところの生産性が低いということに起因して全体の生産性が下がっているということではないかと思います。 特に、ホワイトカラーの問題につきましては、企業として率直に反省をしなきゃならない面があるのではないかと思っておるわけでございまして、今まで企業もそうでございましたし、それから従業員もそうでございましたけれども、管理職志向というのが大変強うございました。どうも考えてみますと、管理職というのはみずから付加価値を生産しない職種のようでございまして、管理をすることによって部下に付加価値を効率的に稼いでもらってその上がりで、ちょっと語弊があるかもしれませんが、そういう管理職志向というのが、企業も管理職を重視する、働く人間本人も管理職になりたいというふうなことで、特にそれに団塊の世代という人口構成上の問題が重なりまして、ついつい管理職がふえ、さらにちょうどここバブルがございましたものですから、ある程度余裕があったという面もございまして管理職が特にまたふえたというふうな命とがめが来ているのではないかと思います。 御指摘のような点は、企業としても率直に反省すべき点でございまして、今後いろんな努力を続けながらこの点のスリム化といいますか、管理職を専門職に教育し直すというふうな形で生産性の向上を図らなきゃならないと、この点は反省も含めて考えているところでございます。
○参考人(松本惟子君) お答えを申し上げます。 有給休暇の完全消化へ向けてということで、計画的付与とそれから請求権との関係についてのお尋ねでございました。 確かに、若い人だけでなくて、環境整備ができていないために、環境整備というのは多角・重層的にいろいろあると思いますが、女性の場合には家庭責任との関係の条件整備、それから病気休暇という問題がまだ解決されていませんので、これの制度化の問題もあると思います。これは、完全消化に向けての二つ、つまり請求権と計画消化については調整の問題ではないだろうか。労働組合としてはさまざまな工夫を凝らして今この取り組みをやっておりますが、個人の活用部分と、それから計画的に使える部分とを組み合わせて年間の消化を図っていくというようなことで調整しているということを申し上げておきたいと思います。 それから、統一的な取り組みをした方がいいのではないかということでございますが、御承知のように労働基準法は一本ということでございまして、これをどのように実効を上げていくかということで、地域や業種によって連合としてはさまざまな取り組みをしております。 ゆとりや自由時間の活用についての地域での取り組みといったこともあります。どなたかの御意見で、休みをとるのはいいけれども何をしたらいいかというふうな話もございました。休みまで管理をされるというのはいけないと思うんですけれども、そういった雰囲気をつくっていくという意味で取り組みをしていることと、それからもう一つは世論づくりが大切でございます。特に、意識の問題の喚起とあわせてやっていかなければならないという意味で、地方自治体においてゆとり宣言を採択していく取り組みを連合としては推進しております。これは自治体の過半数で今集約をされております。 最後に、時短促進法の中で、時短の実施計画について一定の地域や職種が集まってこの取り組みをしようということも書かれておりますので、連合といたしましても四十時間労働制に向かってこういったグループ的な活動を推進しているということがございます。
○足立良平君 終わります。
○吉川春子君 日本共産党の吉川です。 きょうは、貴重な御意見どうもありがとうございます。保原参考人から順次質問をさせていただきたいと思います。 まず、労基研報告の中に変形労働時間制について、「利用が進んでいないものもあり、利用状況等の実態を踏まえた上で、活用しやすいように改善策を検討する必要がある。」と、そういう基本的な立場に立って、「年単位の労働時間管理をすることができるような制度を普及させる必要がある。」と、こういうふうにされているわけですけれども、この「活用しやすいように」というのは一体どういう意味なのか。 それから、変形制を「普及させる必要がある。」としていますけれども、今一カ月、三カ月の変形制が適用されているわけです。これをいろいろ具体的に実態も把握された上でのこういう提言だと思うんですけれども、どういう検討がされて、どういう実態が把握されて今回の一年制の変形制導入になったかというようなことをちょっと具体的にお話しをいただきたいと思います。 それから、先ほど松本参考人の方からもかなりリアルなお話がありました。年単位の時間管理ということになりますと、八時間労働制が崩れていくわけですけれども、そういうことについてどうお考えでしょうか。とりわけ、女性が働き続けられなくなるという点の指摘についてはどういうふうにお答えされるんでしょうか、 それから、時短促進法なんですけれども、これはさっきも触れられましたように労働時間短縮委員会の決議があれば労使協定そのものが不要とされる、労基署への届け出義務も免除されるということなんです。大体、労基法というものが、憲法にいうところの私的契約ですか財産権の保護、そういうものに対する修正として、労使の自主的な問題にゆだねることによって物すごい危険が生ずるからこそ法律で介入する、こういう思想に基づいて労基法などができているわけなんですけれども、それを修正してまでこういうことがやられているわけです。私は、もうこれは大原則の修正で大問題だというふうに思うわけですけれども、修正までしてなぜそういうことを行うのか、その点について参考人のお考えを伺わせていただきたいと思います。 それから、変形労働制を導入すると働く人々にとってどういうメリットがあるとお考えなのか、具体的にどういうメリットがあったのか、その点を伺います。 それから、保原参考人について二点目なんですけれども、裁量労働についでお伺いいたしますが、みなし労働時間制で、いわゆるホワイトカラーの中には管理監督者以外の者でも業務の遂行について使用者から具体的な指示を受けずに自律的に働いている労働者が相当数存在しており、このような労働者については一律に労働時間管理を行うことは困難である云々、こういうふうにされていますね。そして、ホワイトカラーについては裁量労働制による対応が考えられるけれども、現行法では対象業務等において厳格な運用がなされており、利用が進んでいないとして弾力的な運用を提起されたわけなんです。 日本語が世界に通ずる一つの例として過労死という言葉があるんですけれども、この過労死がまさにホワイトカラーの中に物すごくふえているわけです。そして、この裁量労働という、今の枠を外してもっと一般的に適用されるようになると、過労死の現象というのがさらに激化していくんじゃないかというふうに私は大変心配をしておりますけれども、この問題についてどういうふうにお考えになるのか、大きく言ってその二点についてお願いします。 それから、日経連の成瀬参考人にお伺いいたしますけれども、変形労働時間の導入は経営者側にとっては大変重要であると先ほどお述べになりましたが、どういう点で経営者側にとって大変重要なのか、その点をリアルに数字も挙げて、もうそれ以上露骨には言いませんけれども、数字も挙げてお答えをいただきたいというふうに思います。 それから、三カ月の変形が余り活用されなかったということなんですけれども、この点についてはなぜ活用されなかったというふうに分析されておられるのか、そして一年制の導入ということになればこれはかなり活用されると考えられるのか、その辺の見通しについてお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。 それから三点目、労働時間短縮と変形労働時間とは車の両輪として進むことが望ましい、中小企業においては四十時間を踏み外しても変形労働を利用したいとの声もある、こういう御説明でしたけれども、三カ月の例を見ても、これはかなりいろいろ、労働者の三カ月間の休日とか時間とか全部つかまなければならないので事務量もなかなか大変です。これが一年制になりますと、先ほど来ずっと中小企業の立場を強調されておりますけれども、私はこれはある程度以上の規模の企業にとってメリットがあるんじゃないか、そういうことが活用できるんじゃないかというふうに考えられますけれども、その点はいかがでしょうか。 それから松本参考人にお伺いいたしますけれども、一カ月、三カ月の変形労働制が働く女性にどんな困難をつくり出しているかというのは私も本当に同感できますし、これが今度の労基法の改正の中で最も問題点だというふうに思います。それで、現場のいろんな実態をつかんでおられる立場の参考人にお伺いしたいんですけれども、この一カ月、三カ月が導入されて女性が働き続けられなくなった例とか、具体的な例でも、また数字などでつかんでおられましたらそういう内容について教えていただきたいと思います。 また、先ほど女性の職場進出の問題との絡みで雇用機会均等法の改正の問題についてお触れになりました。確かに、努力義務規定になっておりまして、ここが裁判になってもマイナス面があるとかいろいろ指摘されておりますけれども、これは労基法のように罰則を付して実効性を持たせるという意味での改正なのでしょうか。それから、この法律が、機会均等法が女性の職場進出についてコース別とか総合職とかそういうものを生み出したという背景もあるんですけれども、どういう点でデメリットになったのか、その辺についてもお伺いいたします。 以上です。
○参考人(保原喜志夫君) 吉川先生に大変難しい御質問をいただきまして、お答えが十分でなければまた後から御指摘いただきたいと思います。 今回、労基研の報告書で変形制を提案した、それで今回の改正案にも取り入れられたわけですが、労基研の考え方は、基本的には変形制を採用するということによって過労働時間四十時間を実現するステップにしたいということでございます。したがいまして、週四十時間よりさらに短くするために変形制を採用するというところまでいけばいいんですけれども、さしあたりは週四十時間制の実現に向けてのいわば条件整備であるというふうに少なくとも私は考えております。基本的にそういう考え方でございます。 それで、現在一カ月、三カ月の変形制があるわけですが、三カ月の変形制を四回組み合わせれば一年になるわけでありまして、そういう意味では、技術的に別に一年の変形制を採用しなくても不便だということではないわけでございます。ただ、一年間の見通しがつきますと、賃金と対応させて企業全体の計画が立てられる。そうなれば、労働時間短縮の週四十時間制実現に向かっての努 力が少しでもしやすい、そういうことになるんじゃないかというふうに思われます。 ただ、労働者にとってどういうメリットがあるかということでございますけれども、これは抽象的に申し上げるほかないんでありまして、週四十時間制というのは現在の企業にとりましてはかなりの負担であります。したがいまして、この負担をある程度解消する、生産性を落とさないでなおかつ四十時間制実現に向かってどういう努力をしていただくかという問題かと思います。そうしますと、労働者の犠牲をどう考えるかということになるかと思いますが、命令でしかるべき基準を設けまして、一日の最長労働時間あるいは一週間の最長労働時間を設定するということになるかと思います。現行の変形制では最長十時間までにたしかなっているはずでございますけれども、これよりは短い時間を設定するのが合理的であるというふうに思われます。 それから、時短促進法につきましては、私は立法に参画しておりませんので全くいわば外野からの意見ということになりますけれども、御指摘のとおりの危険は先ほど申し上げましたようになきにしもあらずだということでありまして、もし乱用されるということであればやはりこの制度については再検討の必要があるだろうと思います。そういう労働時間の協定はいわば労働者の基本的な労働条件の一つにかかわりますから、かなり重要なものでありまして、そういう意味では実際の運用の推移を見ながら必要な場合には規定の改正も含めて考える。その場合、先ほど申し上げましたように企業の中に民主的に選挙されたような労使協議制なり労使協議会なりのような制度をつくっていくことが望ましいのではないかと私は思います。 昭和六十二年の改正のときもそうでしたが、今回の改正でも事業場あるいは企業の労働者の代表との協定が必要な項目がたくさんふえてきています。特に、年休の割り当てなんかはかなり細かい議論をしないと長期休暇の付与は困難であると思いますので、私は民主的に選挙されたようなそういう制度が近い将来立法化されることを期待しているわけでございます。 以上でございます。
○参考人(成瀬健生君) 二点お答えさせていただきたいと思います。 最初に、変形労働時間制は使用者にとって大変重要だと申し上げた点につきまして、何か使用者がこれでえらく得をすることがあるのではないかというふうな御理解をいただいたのかもしれませんが、それはちょっと私の言い方が悪かったのかと思います。 日本の経営者というのは労使、特に企業を人間集団として従業員のことを大変重要視して考えております。したがって、でき得ることならばいろんな柔軟性のあるものを使ってお互いにプラスになるような、特に従業員につきましてよいことであるならばやろうという気がありますし、またそれができるために制度が整備されるならばそれを大いに活用したいという気持ちが強いわけでありまして、そんな意味で経営者単独で大変得になるからというふうな意味でおとりになったとすればちょっと私の説明が悪かったのではないか、言い方が悪かったのではないかというふうに考えるわけであります。 変形労働時間制を一年間にした場合に、例えば夏場に非常に忙しいとか冬場に忙しいというふうな場合に、夏場に忙しいときはもしそういう制度がございませんとするならば、場合によっては休日だけれどもちょっと仕事をしてくれやというふうな話になる可能性もございます。冬場は暇でございましても出勤日だから出勤してくれ、こういうことになるわけでありますけれども、変形制労働時間制が認められれば忙しいときに休日を多少減らし、暇なときに休日をふやすというふうな形でもって、暇なときには家に何日もいられる。こういうふうなことでもちろん全体として労働時間の短縮にもなるわけでございますし、仕事とそれから労働時間のマッチングがうまくいくような方法がとれるということになるわけでございまして、そうした点を考えてみますと、労使で考えてみて大変活用しやすい面が出てくるのではないか。 三カ月でございますと、やはり三カ月ごとにうまいぐあいに仕事の波があるということでありますとうまくマッチングがするかもしれませんけれども、なかなか仕事というのはやはり一年サイクルというふうな面も多い業界が多いわけであります。 それから、大企業ではできるけれども、中小企業はいろいろ手続が難しくてというお話もございました。そういう面がないとは言えないかと思います。しかし、ある意味では大企業の場合にはいろんな仕事をしておりますから、人員の振りかえによりまして忙しいときと暇なとき、それぞれの部門で調整というふうなことが可能になる場合もありますが、中小企業の場合には割合単品生産というふうなことでございまして、季節変動がきつく出るというふうなことがあるわけでございます。そんな意味では、かえって中小企業に使いやすいというふうな面も出てくるのではないか。これはやってみないとわからないことでございまして、実際に運用したときどうなるかという問題はもちろん残るわけでございますけれども、そんなふうな意見も聞いておりますし、感じも持っておるところでございます。 それから、これも私はちょっと言葉が不適切なようでございまして、中小企業の場合には四十時間を踏み外してもという御指摘受けたわけでございますけれども、一年の変形労働時間を導入することによって労働時間を短縮するということが目的であるといたしますれば、当初のときにそのとおり設計できてしまえばこれは大変結構なことなんでございますけれども、中小企業は現在労働時間がまだ短くなっておりません。四十六時間でぎりぎりというふうなところもあるわけでございます。 そうした状況、それからそれによるコストの負担というふうなことを考えてまいりますと、やはり四十時間ではなくて場合によっては四十二時間ぐらいでも一年間の変形労働時間制を活用できるような弾力的な御配慮がいただければ大変ありがたいという意見があるわけでございまして、そんなことを申し上げたかったというのが本心でございます。 以上でございます。
○参考人(松本惟子君) お答えいたします。 御質問は、変形労働時間で困っている、やめた例があるならばということと機会均等法との関係でございました。 変形労働時間制の導入につきましては、私は今度の改正労働基準法というのは労働時間短縮の方向に向かって全体が進んでいる、各条項ともそういった方向に向いて努力をしようということが合意されようとしているのに比べまして、この変形労働時間というのは既に一部入ってはいるんですが、従来の働き方とか生活のあり方の変更を伴う新たな提案の延長だというふうに考えているわけです。そういう点で働く者にとって大変問題が多いということを申し上げたいと思います。 労働時間短縮につきまして、先ほどからるる一日が生活のいわゆる単位で、サイクルである、これは本当に生活者にとっての切実な願いなわけでして、そこの部分に大方の女性がいるわけです。したがって、今日本の社会を変えていこうとするときに、これまでのいわゆる経済、企業優先から人間や暮らしを大事にしようということとあわせて、男性が男性とともに女性が職場で家庭と仕事の調和、これは男性が逆の方向でもっと家庭の方に帰ってほしいなとも思っているわけですが、男女平等の方向でのいわゆる基盤づくりという意味からすると、労働時間短縮に向かって一日というのが女性が言わなければいわゆる総労働時間短縮のパックの方でどんどん動いていくという傾向、それから今回の変形につきましても、女性がうんと声を出さないと問題にされにくいということから見まして、やっぱり女性労働者というのは第二 義的に扱われているというところの克服ができていないのではないか、社会的に。そういう意味で大事な問題と思います。 実際にやめた人がいるかどうかということですが、実は労働組合はまだ退職者のところまで手を伸ばして実態集約をするようなことができていないわけでございます。 会議のときにいろいろと意見が出まして、そこでの声をきょうは反映をさせていだたいたということと、それから業種によって変形制が導入をされていく。特に一日十時間、十二時間というようなところには現在のところ女性が少ないところが割と多い。少ないと言い切ってしまいませんけれども、営業だとかそういった導入されている業種は割と男性が多いところ。ここで、これがどんどん入っていけば女性はますますその業種、職種に参入していけなくなるというような意味もあります。特に、切実な声としては保育所の問題が上がってきております。保育所に預けられなくなったということ、あるいはトラブルが大変多くなった、それから妊産婦の方が都市圏では通勤でラッシュを避けて通勤しているんだけれども、このためにこういったことが難しくなって仕事が続けられなくなるのではないかというふうな強い声が出てきているということでございます。 それから均等法につきましては、これはまた別の機会に改めて議論になると思いますけれども、当初から罰則がなくても守られるんだったらそういう社会が好ましいわけですが、実際には法律があっても罰則がついていても守られにくいというところから、罰則をつけて雇用の場での男女平等を図っていくべきだと私どもは考えております。 それから、均等法が女性の職場進出にどんなデメリットがあったかということについては、デメリットとなっている部分をどういうふうに御質問の先生がイメージなさっていらっしゃるのかということがちょっとよくつかめませんので、確かに不十分な面があって女性の間にいろんな問題も出ているということはありますけれども、マイナスの方向に向かっているかどうかということについて、イメージがよくわからないので、ここではお答えを避けさせていただきたいと存じます。
○参考人(保原喜志夫君) ちょっと済みません。委員長、恐縮ですが。
○委員長(田辺哲夫君) 短時間でお願いします。
○参考人(保原喜志夫君) 吉川先生の御質問もう一つありましたので、恐縮でございます。 裁量労働と過労死の問題でございますけれども、先生がおっしゃるような危険は正直な話なしとしないと思います。 ただ、私は、今回の改正を機会に長く働けば褒められる、長く働く人が企業にとっていい人だという、そういう考え方を根本的に変えたいというふうに思っております。したがいまして、これは急に労働慣行が変わるとは思いませんけれども、つき合い残業を避ける、自分の仕事はこれだということがはっきりすれば自然にほかの人と関係なく自分は早く帰るあるいは遅く出るというようなことが可能になってくるんじゃないかということを考えておるわけです。 ただ、いろんな危険がありますので、まず休日の確保、それから長期休暇の確保というのが必要条件だと思いますので、そういう意味では先ほどの繰り返しになりますけれども、企業の中で長期休暇を交代してどういうふうにとるかというのがこれからかなり大きな問題になるんじゃないかというふうに思います。抽象的でございますが。
○笹野貞子君 私は、民主改革連合の笹野と申します。 きょうは参考人のお三方の先生方、お忙しいにもかかわりませず私どものために御意見をいただきまして大変ありがとうございました。 この労基法の改正につきましては、昭和二十二年以来、日本の労働条件のいろいろの問題につきまして、週法定時間を四十時間制にするとか、あるいは休日をふやす、割り増し賃金の問題等歴史の一段階を上るような評価はある反面、変形労働制とか、あるいは裁量制の導入とか、ともすればその運用によっては非常に危惧するような問題もあると思います。そこで、私たちとしましてはこういう二つの側面を持っているこの法律に対しまして、参考人の皆様方の意見を慎重にお聞きいたしまして、これからの委員会の審議の種といたしたいと思っております。 そこで、きょうはこういう場面に松本参考人が女性として参加していただいたということは、私は大変すばらしいことであると高く評価したいと思います。国際婦人年を契機といたしまして、日本の行政の中に審議会のメンバーは女性を一五%以上という取り決めをしたにもかかわりませず、いまだにまだその一五%という基準も達成しておりません。日本のもろもろの状況で、女性の意見がいかに反映しにくいかということを物語っております。そういう点で、きょうは松本参考人が女性の立場としてその豊富な経験と実績を踏まえながら御発言をいただいたということは大変私にとっては貴重な御意見だったというふうに思います。 そこで、時間の関係もありますので、レディーファーストということで松本参考人から先に御意見をお伺いいたしたいというふうに思います。本来であるならば公平を原則とするのでしょうけれども、女性の意見が通りにくいこの国会の中で松本参考人に思う存分発言していただいて、あとの男性は女性に温かくきっと時間の配分をお許しいただけるというふうに思いますので、どうぞ御発言を堂々となさっていただきたいというふうに思います。 そう申しますのは、この女性の労働、そして女性の社会参加ということが非常に活発に論議される反面、そういう女性が社会的にも、そして労働の場においても十分力を出せるためには、かえって労基法の六十四条にあるところの保護規定というのは邪魔をするのではないか、女性の社会参加というのをかえって阻害していくのではないかという、そういう議論が多々あります。 そこで、松本参考人にお聞きいたしますけれども、これからの女性の労働という問題を踏まえながら、つまり女性保護規定というものについての展望をお聞かせいただきたいというふうに思います。
○参考人(松本惟子君) 今回の労働基準法改正とは直接かかわっておりませんし、それから私が承知しておりますのは、女子労働者の保護規定に関しては中央労働基準審議会の議を経て今回の労基法改正に至る段階の中でも、婦人少年問題審議会にゆだねられたと。つまり、女性が参画をしております婦人少年問題審議会の中でこの問題について詮議をしようという合意がなされているというふうに承知しております。 したがいまして、余り時間をとって申し上げるのも適切でないかもしれませんので、かいつまんで私どもが考えておりますことにつきまして簡単に述べさせていただきたいと思います。 私は、変形労働時間制の導入にいたしましても、それから女子の時間外労働規制を緩和、撤廃するという意見にいたしましても、基盤が十分に準備をされていない、基盤が改善をされていないのに何だかそこら辺だけをつまみ食いをして載っけていこうとする傾向が強いのではないかということを感じます。 それからもう一つは、従来は女性の働き方は若年短期雇用型というふうに言われておりましたように若いとき未婚者が職場に出て働いて、あとは役割分業を社会の中で男性の働きを家庭の中から支えていったらいいというような社会通念が大変強かったと思うのです。したがって、雇用機会均等法の制定のときに、これは御存じのように国連による女子差別撤廃条約の批准の国内法の整備の要件として避けて通れない課題であったわけでございますが、そのときに男性ともにというのであれば男性と同じように働くのかということで保護と平等の関係がセッティングされたというふうに考えております。確かに、将来的には産む性を持つ女性労働者は母性保護の条件を平等の基盤として確立をされるべきだと思います。 この母性保護につきましても、政府のさまざまな文書の中では母性保護を除く保護規定の云々という乙とを書かれておりますが、これも先ほど陳述いたしましたように、母性保護の条件も果たして十分かというところも洗っていただきたいと思います。 それから、男性を基準にした、つまり外に出て働く男性を基準にして走り続けた日本のこのシステム、これを人間らしいシステムに切りかえていこうというのが昨今の状況だというふうに承知をしておりますので、従来の尺度は、つまり男性だけではないということで少しフレキシブルにお考えいただきまして、女性が男性とともに働くということは逆に男性の今までの働き方をも人間らしくしていく、つまり人間らしい働き方を取り戻していける方向になるんだということで、決して対立的なものではないというふうに考えております。 ですから、将来的には日本の労働条件の水準を法律を初め労使協定によって引き上げていく中で、母性保護を除く保護規定については議論をする必要がある、ここでなしというふうには言い切れないと思います。したがって、議論をしていく必要があるというふうに思いますし、既に先進工業国では日本の女性の時間外労働規制よりももっと厳しい条件を付して男性も働いている、その中で母性保護を除く労働保護につきましては男女別なくという国もございますので、将来展望としてはそういった方向を展望しながら、ステップをどのように踏んでいったらいいかという問題であろうと思います。 まだ具体的にこうだああだという段階ではなかろうと、これから審議会でもって議論もさせていただきたいし、私ども組織の中でも十分これから議論をしていかなければなりませんので、考え方のみ触れさせていただいて、よろしゅうございましょうか。
○笹野貞子君 今の御発言の中で基盤が整備されていないうちにという御発言がありましたので、私どももこれから女性の労働に関するもろもろのことに対しましては今の御発言を十分検討させていただきたいというふうに思っております。 なお、松本参考人に対しましては、これからこういう労働法の中で大変重大な問題が論議されていくかと思いますけれども、どうぞまた適切な御助言をいただきますようにお願いを申し上げます。 それでは、保原参考人に御質問させていただきます。 保原参考人は、もちろん大学の教授であられますし、教鞭をとって学生にこれからあるべき労働というものの理想を説いていらっしゃるというふうに思います。また、政府の労働基準法研究会で部会長もなさっていらっしゃいますし、今度の改正につきましても大変な影響力を持っていらっしゃるというふうに思います。そういう意味から、私は先生の御発言というのは大変今度の法改正についても影響力があるというふうに思っております。 そういう観点で御質問をさせていただきますけれども、昭和二十二年以来四十六年間にしてこの労基法の改正というのがなされました。私は、やっぱり労基法という法律は、これは人間の生活の進歩の発展の段階を示すものだというふうに思っております。そういう意味では、大変重要な人間の生活実態が、ここからその国の現状を読み取れるというふうに思っております。今回の改正につきまして、先生は公平な立場から、私たちの人間の歴史の発展段階とそして日本が世界の中の経済大国あるいはまた先進国と呼ばれているようなこの今の日本の現状で、この労基法の改正は非常に十分だ、これはもう国際的にいろんな面についても大変適切なものだというふうにお考えかどうか、その点をお聞かせください。
○参考人(保原喜志夫君) また、大変難しい御質問でございますけれども、笹野先生のおっしゃるとおりまさに労働基準法は人間の生活の進歩のあかしであるというふうに私も拝察しておる次第でございます。 一口に申し上げれば、今回の改正は、ちょうど昭和六十二年の改正が改正の大きな一歩だとすれば、今度は二歩目ということが言えるんじゃないかと思います。これで事足りるということではなくて、これからもっと労働者があるいはその家族が人間らしい生活ができるように労働基準法を改正していかなきゃいけないと思います。私は、基本的には週四十時間制よりもっと短い週の時間を法律で決めるというのはそろそろ限界がなという気がしておりまして、この過労働時間の短縮は今後は労使の御努力でぜひお願いをしたいというふうに思っております。そういう意味では労働組合への期待が大変大きいということでございます。 ただ、年休の消化につきましては現在のところなかなか進んでいない。これはやはり企業の側でなお一層の御努力をお願いをしたい。つまり、長期の年休取得を実現しないと年休の消化はできないんです。それで、私どもが外国へ行きましても、日本の消化率は半分以下だとかなんとか言うと、そんなざまでどうするんだとか、国会で大変悪い言葉で恐縮でございますが、そういうふうに日本が軽んじられるおそれがあります。つまり、人間らしい生活がそれではできないんじゃないかということでございますので、年休の完全取得のためにぜひ企業の側で、最終的には私はやはり労務指揮権を持っている企業の側で年休の時季の調整あるいは期間の調整をするほかないんじゃないかと思っています。その前に、労働組合あるいは労働者の意見を聞くということでございます。そういうふうに完全消化に近くなった段階で、もう少し年休の日数の延長を考えるべきであるというふうに思っております。 それからもう一つは、どんなに立派な法律がありましても守られないと意味がないわけでありまして、これは釈迦に説法で大変恐縮でございますが、労働基準監督官の大幅増員をぜひ先生方にお願いしたいと思います。 恐らくこの十年、二十年の間に仕事が数倍になっておりますが、労働基準監督官はほとんどふえておりません。それで、大体平均しますと一つの事業場の監督は四十年に一遍ということでございまして、まあ生涯間違って一遍監督に来ればあとはもう自分が管理職のうちは絶対に来ない、よっぽど大事故でも起こさない限りはもう大丈夫だという、そういうような安心感が企業にありますので、ぜひ労働基準監督官の大幅増員をお願いしまして、この法の内容の適正化と同時に、その実施体制の強化ということをぜひお願いしたいと思います。 以上でございます。
○笹野貞子君 私の持っている時間は二十三分までで、成瀬参考人には大変申しわけありませんけれども、最後に、私も早口で言いますので、どうぞ成瀬参考人も早口で二十三分に終えていただきたいというふうに思います。 さて、今回のもろもろの改正につきまして日経連の三鬼副会長が「経営者」という雑誌で発言をしているのを読みますと、こういうふうに書いてあります。 猶予期間が終わったら即座に四十時間に移行することには非常に無理があると思います。猶予期間の設定は、やはりそれぞれの時点での情勢を総合的に判断して決定することが必要でしょう。猶予期間が切れた時に、もう一度十分検試すべきでしょうね。というふうに書かれていまして、まだ改正がされていない今の時点からもう猶予期間を延ばすような発言をしているというのは、ちょっとこれはどうしたものかというふうに思うんです。こういうふうにしていたら、これはいつまでたっても今保原先生もおっしゃいましたように監督をもう何十倍にしたってやっていけないんですけれども、いかがなものでしょうか。今から延ばすようなことを言われたらちょっと困るので、延ばさないということをここで御発言いただければ大変いいと思います。
○参考人(成瀬健生君) 早口でお答えするのは大 変難しい問題でございますが、本心といたしまして、経営者がそういう発言をするというのは、やはり今後の経済情勢、経営情勢がちょっと皆目見当がつかないような今状況に立ち至っております。余り無理をいたしますと、恐らく空洞化がかなり進むのではないかというふうな危惧が今真剣に論議をされているところでございまして、国内生産をやめて中国に行くとかいう話が随分ございます。 こんな点も考えますと、経営者が責任を持って経営するためには柔軟な配慮をいただきたいことも出てくるなという経営者の先見性をもってそんなふうなコメントをしたのではないかと思っております。
○笹野貞子君 先見性というのはいい方に向かうものであって、今から悪いことを期待しながら先見性というのはちょっと私は納得いきませんので、どうぞきょうお帰りになりましたら、日本の働く者が住みやすい社会をつくるための経営者という先見性を出していただきますことをお願いいたしまして私の質問を終えます。 ありがとうございました。
○委員長(田辺哲夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。 参考人の方々には、長時間にわたりまして御出席を願い、かつ貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。 本日は、突然午後三時半より参議院本会議が企画されまして、当初の委員会の時間の変更がございました。それにもかかわらず御出席いただき、また委員会の時間が三十分ほど短縮されました。私どもといたしましてはまことに残念でございましたが、心からおわび申し上げたいと存じます。 ここに委員会を代表いたしましてお礼のごあいさつといたします。ありがとうございました。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時二十三分散会 ――――◇―――――